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  • 特表-不織布強化を有する多層複合材 図1
  • 特表-不織布強化を有する多層複合材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】不織布強化を有する多層複合材
(51)【国際特許分類】
   B29B 15/08 20060101AFI20240719BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20240719BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20240719BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20240719BHJP
   B32B 17/04 20060101ALI20240719BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20240719BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240719BHJP
   D04H 3/147 20120101ALI20240719BHJP
   B29K 105/10 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
B29B15/08
B29C70/10
B29C70/42
B32B5/28 A
B32B17/04 Z
B32B5/02 B
B32B27/32 Z
D04H3/147
B29K105:10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503658
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2021108422
(87)【国際公開番号】W WO2023004538
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チェン
(72)【発明者】
【氏名】グオ、クンペン
(72)【発明者】
【氏名】レン、シージエ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ホンジエ
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4F205
4L047
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB06
4F072AB10
4F072AB15
4F072AB22
4F072AB28
4F072AB29
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(57)【要約】
本開示の実施形態は、第1の布補強層、不織布、及び第2の布補強層を含む多層熱硬化性複合材に関する。不織布は、第1の布補強層と第2の布補強層との間に配置され得る。熱硬化性樹脂は、第1の布補強層、不織布、及び第2の布補強層に少なくとも部分的に浸透し得る。熱硬化性樹脂は、エポキシ、不飽和ポリエステル、又はポリウレタンであり得る。第1及び第2の布補強層はそれぞれ、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維のうちの1つ以上を含んでいてよい。不織布は、シース/コア構成を有する二成分繊維から形成され得る。シースは、エチレン-カルボン酸コポリマー、又はエチレン-カルボン酸コポリマーのアイオノマーから形成することができる。更なる実施形態は、多層熱硬化性複合材を作製する方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層熱硬化性複合材であって、
ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維のうちの1つ以上を含む第1の布補強層と、
シース/コア構成を有する二成分繊維から形成され、前記シースが、エチレン-カルボン酸コポリマー、又はエチレン-カルボン酸コポリマーのアイオノマーから形成される不織布と、
ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維のうちの1つ以上を含む第2の布補強層と、
を含み、
熱硬化性樹脂が、前記第1の布補強層、前記不織布、及び第2の布補強層に少なくとも部分的に浸透し、
前記熱硬化性樹脂が、エポキシ、不飽和ポリエステル、又はポリウレタンであり、
前記不織布が、前記第1の布補強層と前記第2の布補強層との間に配置されている、多層熱硬化性複合材。
【請求項2】
前記不織布が、スパンボンド不織布である、請求項1に記載の多層熱硬化性複合材。
【請求項3】
前記シースが、0.1モル%~60モル%のカチオン中和レベルを有するエチレン-カルボン酸コポリマーのアイオノマーを含む、請求項1又は2に記載の多層熱硬化性複合材。
【請求項4】
前記シースが、Znカチオン、Naカチオン、又はその両方で中和されている、請求項1~3のいずれかに記載の多層熱硬化性複合材。
【請求項5】
前記エチレン-カルボン酸コポリマー、又はエチレン-カルボン酸コポリマーのアイオノマーが、1重量%~20重量%のカルボン酸含有量を有する、請求項1~4のいずれかに記載の多層熱硬化性複合材。
【請求項6】
前記エチレン-カルボン酸コポリマー、又はエチレン-カルボン酸コポリマーのアイオノマーが、ASTM D1238に従って190℃、2160gの荷重で測定したときに12g/10分~60g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する、請求項1~5のいずれかに記載の多層熱硬化性複合材。
【請求項7】
前記二成分繊維が、1μm~100μmの平均繊維直径を有する、請求項1~6のいずれかに記載の多層熱硬化性複合材。
【請求項8】
前記二成分繊維が、連続繊維である、請求項1~7のいずれかに記載の多層熱硬化性複合材。
【請求項9】
前記コアが、ポリアミドを含む、請求項1~8のいずれかに記載の多層熱硬化性複合材。
【請求項10】
熱硬化性複合材を形成するためのプロセスであって、
乾燥多層複合材に熱硬化性樹脂を少なくとも部分的に浸透させて、湿潤未硬化複合材を形成することと、
前記湿潤未硬化複合材を硬化させて多層熱硬化性複合材を形成することと、を含み、前記乾燥多層複合材が、
ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維のうちの1つ以上を含む第1の布補強層と、
シース/コア構成を有する二成分繊維から形成され、前記シースが、エチレン-カルボン酸コポリマー、又はエチレン-カルボン酸コポリマーのアイオノマーから形成される不織布と、
ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維のうちの1つ以上を含む第2の布補強層と、
を含む、プロセス。
【請求項11】
前記不織布が、スパンボンド不織布である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記乾燥多層複合材をプレスして乾燥多層複合材を形成することを更に含む、請求項10又は11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記乾燥多層複合材に熱硬化性樹脂を少なくとも部分的に浸透させることが、
前記乾燥多層複合材を型内に入れることと、
前記型内に架橋性液状樹脂を注入することと、
を含む、請求項10~12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
前記湿潤未硬化複合材を硬化させることが、前記湿潤未硬化複合材を3時間かけて少なくとも50℃に加熱することを含む、請求項10~13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
前記湿潤多層複合材を真空に供することを更に含む、請求項10~14のいずれかに記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、多層複合材に関し、より具体的には、不織布層を有する熱硬化性多層複合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性複合材は、一般に、高強度、低密度、及び高剛性を示す。したがって、航空機、航空宇宙、自動車、高速鉄道、風力ブレード、スポーツ用品、高圧ガスタンク、並びに高強度及び低重量を必要とする多くの他の用途において広く使用されている。しかし、極端に脆い場合が多い。したがって、多くの複合材料において、特に積層布では、厚さ方向の耐衝撃性が不十分であることが多い。
【0003】
熱硬化性複合材の最も一般的な破壊モードは、布層間の層間剥離であると考えられる。層は、一般に、樹脂のみによって互いに結合されているので、厚さ方向における複合材の補強が不十分である。補強なしでは、衝撃後に架橋樹脂を通して亀裂が急速に広がり、層間剥離を引き起こす。
【0004】
熱硬化性複合材を強化するために様々な方法が使用されてきた。例えば、三次元織、Z-ピニング、よこ編生地、三次元織物が全て試みられてきた。しかし、これらの技術では、複合材製造プロセスの複雑さ及びコストが増す。
【0005】
したがって、製造の複雑さを増大させることなく、全ての軸にわたって十分な衝撃強度を提供することができる複合構造体が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、不織布強化層、複数の布補強層、及びこれらの層に少なくとも部分的に浸透した熱硬化性樹脂を含む多層熱硬化性複合材を提供することによって、この必要性に対処する。実施形態は更に、本開示の多層熱硬化性複合材を作製する方法に対処する。これらの熱硬化性複合材は、従来の複合材と比較して、改善された機械的特性、特に横軸を横切る衝撃強度を提供する。
【0007】
一実施形態では、多層熱硬化性複合材は、第1の布補強層、不織布、及び第2の布補強層を含み得る。不織布は、第1の布補強層と第2の布補強層との間に配置され得る。熱硬化性樹脂は、第1の布補強層、不織布、及び第2の布補強層に少なくとも部分的に浸透し得る。熱硬化性樹脂は、エポキシ、不飽和ポリエステル、又はポリウレタンであり得る。第1の布補強層は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維のうちの1つ以上を含み得る。第2の布補強層は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維のうちの1つ以上を含み得る。不織布は、シース/コア構成を有する二成分繊維から形成され得る。シースは、エチレン-カルボン酸コポリマー、又はエチレン-カルボン酸コポリマーのアイオノマーから形成することができる。
【0008】
別の実施形態では、熱硬化性複合材を形成するためのプロセスは、乾燥多層複合材に熱硬化性樹脂を少なくとも部分的に浸透させて湿潤未硬化複合材を形成することと、当該湿潤未硬化複合材を硬化させて熱硬化性複合材を形成することとを含む。乾燥多層複合材は、第1の布補強層、不織布、及び第2の布補強層を含み得る。第1の布補強層は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維のうちの1つ以上を含み得る。第2の布補強層は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維のうちの1つ以上を含み得る。不織布は、シース/コア構成を有する二成分繊維から形成され得、当該シースは、エチレン-カルボン酸コポリマー又はエチレン-カルボン酸コポリマーのアイオノマーから形成される。
【0009】
実施形態の追加の特徴及び利点は、後に続く詳細な説明で述べられ、一部はその説明から当業者にとって容易に明らかになるか、又は後に続く「発明を実施するための形態」を含む本明細書に記載される実施形態、特許請求の範囲、並びに添付図面を実施することによって認識されるであろう。
【0010】
以上及び以下の説明の両方が、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みの提供を意図していることを理解されたい。添付図面は、種々の実施形態の更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示の特定の実施形態の以下の「発明を実施するための形態」は、以下の図面と併せて読むと最も良く理解され得るが、そこでは、同様の構造が同様の参照数字で示されている。
【0012】
図1】本開示の1つ以上の実施形態による熱硬化性複合材の概略図である。
図2】本発明の更なる実施形態の熱硬化性複合材の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態は、多層熱硬化性複合材及びそのような複合材を作製する方法を提供することによって、全ての軸にわたる衝撃強度の必要性に対処する。これらの複合材は、不織布、複数の布補強層、及び熱硬化性樹脂を含み得る。理論に束縛されるものではないが、不織布の繊維上の反応性基が熱硬化性樹脂と反応し、反応性基を有さない不織布と比べてより強い結合をもたらし得ると考えられる。
【0014】
定義
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、任意の追加の成分、工程、又は手順の存在を排除することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲から任意の他の成分、工程、又は手順を排除する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる構成成分、工程、又は手順を排除する。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「アイオノマー」は、少なくとも幾つかのイオン性基、イオン化可能基、又はその両方を有するポリマー化合物を指す。
【0016】
「ポリマー」という用語は、同一又は異なる種類に限らず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、総称であるポリマーは、用語「ホモポリマー」及び「コポリマー」を包含する。用語「ホモポリマー」は、1種のモノマーのみから調製されるポリマーを指し、用語「コポリマー」は、2種以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指し、本開示の目的のために、「ターポリマー」及び「インターポリマー」を含み得る。微量の不純物(例えば、触媒残渣)は、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれてもよい。ポリマーは、単一のポリマー又はポリマーブレンドであってもよい。
【0017】
本明細書で使用するとき、「gsm」及び「g/m」は1平方メートル当たりのグラムを意味し、「min.」/「mins.」は分を意味し、「hr.」/「hrs.」は時を意味し、「sec.」は秒を意味し、「mol.」はモルを意味し、「mol.%」はモルパーセントを意味し、「wt.%」は重量パーセントを意味し、「mbar」はミリバールを意味し、「MPa」はメガパスカルを意味し、「kJ/m」はキロジュール/平方メートルを意味し、「g/cm」はグラム/立方センチメートルを意味し、「in.」はインチを意味し、「℃」は摂氏度を意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「S/m」はジーメンス/メートルを意味し、「μm」はマイクロメートルを意味し、「cP」はセンチポアズを意味する。
【0018】
実施形態
ここで図1を参照すると、多層熱硬化性複合材100は、第1の布補強層120と、第2の布補強層130と、第1の布補強層120と第2の布補強層130との間に配置された不織布110とを含み得る。多層熱硬化性複合材100は、第1の布補強層120、不織布110、及び第2の布補強層130に少なくとも部分的に浸透する熱硬化性樹脂を更に含み得る。
【0019】
不織布110は熱可塑性であってよい。熱可塑性不織布層を含む熱硬化性多層複合材は、熱可塑性不織布層を含まない熱硬化性多層複合材と比較して改善された靭性を有し得ると考えられる。
【0020】
不織布110は、種々の技術によって製造された任意のタイプの不織布によって調製され得る。例えば、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、短繊維不織布、又はフラッシュ紡糸不織布等であってよい。幾つかの例示的な実施形態によれば、不織布はスパンボンド不織布であってよい。
【0021】
本明細書で使用するとき、「スパンボンド不織布」は、繊維を紡糸し、次いでデフレクター又は空気流のいずれかによってウェブに直接分散させる1つの連続プロセスで調製される不織布である。スパンボンド不織布は、熱的に樹脂と結合されてもよく、又は交絡によって結合されてもよい。
【0022】
本明細書で使用するとき、「浸透する」は、各層の表面の下方に浸透することを意味する。したがって、熱硬化性樹脂が第1の布補強層120、不織布110、及び第2の布補強層130に少なくとも部分的に浸透するとき、樹脂は、これらの層のそれぞれの表面の下方に浸透する。
【0023】
不織布110は、第1の布補強層120と第2の布補強層130との間に配置され得る。幾つかの実施形態によれば、不織布110は、第1の布補強層120及び第2の布補強層130と直接接触していてよい。代替的な実施形態によれば、第1の布補強層120は、不織布110と直接接触していなくてもよい。同様に、不織布110は、第2の布補強層130と直接接触していなくてもよい、すなわち、それらの間に介在層が存在する。布補強層と不織布110との間に1つ以上の追加の層が存在してもよい。
【0024】
幾つかの実施形態によれば、不織布110は、第1の布補強層120及び第2の布補強層130の全表面積の少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%を占めていてよい。したがって、第1の布補強層120は、その表面積の10%超にわたって第2の布補強層130に接触していなくてもよい。
【0025】
不織布110は、シース/コア構成を有する二成分繊維から形成され得る。用語「二成分繊維」は、繊維の長さに沿って互いに緊密に接着された一対のポリマー組成物を含む繊維を指し得る。ポリマー組成物の対は、断面においてシース-コア構成を形成し得る。二成分シース-コア構成は、断面が円形、三葉形、五葉形、八葉形、ダンベル形、海島形、又は星形であってよい。これら全ての構成において、コアは、内部に配置されてよく、シースによって取り囲まれていてよく、これらはいずれも、実質的に繊維の全長に延在していてよい。
【0026】
二成分繊維は、1μm~100μmの平均繊維径を有し得る。例えば、二成分繊維は、2μm~50μm、2μm~90μm、5μm~75μm、5μm~50μm、10μm~40μm、又はこれらの任意の部分集合の平均繊維径を有し得る。
【0027】
二成分繊維は、連続繊維であってよい。「連続繊維」という用語は、不定または極端な長さの繊維を指す。実際には、製造上の問題により「連続繊維」に1つ以上の破断が存在する場合があるが、「連続繊維」は「短繊維」と区別可能であり、その理由は、短繊維は所定の長さに切断されるが、連続繊維は切断されないためである。連続繊維は、少なくとも0.1インチ、少なくとも0.25インチ、少なくとも0.5インチ、少なくとも1インチ、少なくとも2インチ、少なくとも3インチ、少なくとも4インチ、少なくとも5インチ、又は更には少なくとも6インチの平均繊維長を有し得る。
【0028】
シースは、コアよりも低い融点を有していてよい。例えば、シースは、コアの融点よりも少なくとも5℃、少なくとも10℃、少なくとも20℃、少なくとも40℃、又は更には少なくとも60℃低い融点を有し得る。
【0029】
不織布110は、10g/m~1000g/mの坪量を有し得る。本明細書で使用するとき、「坪量」は、材料のシートの表面積当たりの質量を指す。幾つかの例では、不織布110は、50g/m~1000g/m、100g/m~1000g/m、10g/m~500g/m、10g/m~100g/m、50g/m~100g/m、10g/m~50g/m、又はこれらの任意の部分集合の坪量を有し得る。
【0030】
不織布110は、0.1mm~10mmの平均厚さを有し得る。例えば、不織布110は、0.1mm~8mm、0.1mm~5mm、0.1mm~1mm、1mm~10mm、1mm~5mm、3mm~8mm、又はこれらの任意の部分集合の平均厚さを有し得る。
【0031】
好ましい厚さを達成するために、不織布110は、複数の層の不織布110を含んでいてもよい。例えば、不織布110は、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、又は20を超える層の不織布110を含み得る。不織布110の層は、熱硬化性多層複合材に組み合わされる前に、一緒にホットプレスされてもよく、又は単に互いの上に置かれてもよい。
【0032】
不織布110は、二成分繊維を含み得る。二成分繊維は、シース及びコアを含み得る。二成分繊維のシースは、エチレン-カルボン酸コポリマー、又はエチレン-カルボン酸コポリマーのアイオノマーから形成することができる。二成分繊維のコアは、ポリアミドから形成され得る。
【0033】
二成分繊維は、10重量%~60重量%のシースであってよい。例えば、二成分繊維は、シースの10重量%~50重量%、10重量%~40重量%、10重量%~30重量%、20重量%~60重量%、20重量%~50重量%、20重量%~40重量%、30重量%~60重量%、30重量%~50重量%、30重量%~45重量%、40重量%~50重量%、又はこれらの任意の部分集合であってよい。
【0034】
二成分繊維のシースは、少なくとも80重量%のエチレン-カルボン酸コポリマー又はそのアイオノマーを含み得る。例えば、シースは、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、又は更に少なくとも99.99重量%のエチレン-カルボン酸コポリマー又はそのアイオノマーを含み得る。
【0035】
幾つかの実施形態では、カルボン酸は、アクリル酸又はメタクリル酸であってよい。幾つかの例示的な実施形態では、カルボン酸はメタクリル酸である。二成分繊維のシースは、70重量%~99重量%のエチレンモノマーを含み得る。「エチレンモノマー」は、エチレン-カルボン酸コポリマー又はそのアイオノマー等のポリマーに組み込まれ得ることが理解されるべきである。例えば、シースは、80重量%~99重量%、70重量%~90重量%、80重量%~90重量%、90重量%~99重量%、又はこれらの任意の部分集合のエチレンモノマーを含み得る。
【0036】
エチレン-カルボン酸コポリマー、又はエチレン-カルボン酸コポリマーのアイオノマーについては、様々な酸含有量が企図される。例えば、エチレン-カルボン酸コポリマー又はエチレン-カルボン酸コポリマーのアイオノマーは、1重量%~20重量%、1重量%~15重量%、1重量%~10重量%、1重量%~5重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、5重量%~10重量%、10重量%~20重量%、10重量%~15重量%、15重量%~20重量%、又はこれらの任意の部分集合の酸含有量を有し得る。
【0037】
エチレン-カルボン酸コポリマー又はそのアイオノマーの酸基の少なくとも一部は中和されてもよい。幾つかの実施形態によれば、これらの酸基は、Znカチオン、Naカチオン、Kカチオン、Caカチオン、Mgカチオン、又はそれらの組み合わせ等のカチオンで中和されてもよい。
【0038】
シースの様々なカチオン中和レベルが企図される。例えば、シースは、0.1モル%~60モル%のカチオン中和レベルを有し得る。本明細書で使用するとき、シースの「カチオン中和レベル」は、カチオンで中和された、シース中の酸基の百分率を指す。「モル%」を計算する際に言及されるモルは酸基のモルであることが理解されるべきである。幾つかの実施形態では、シースは、1モル%~60モル%、5モル%~60モル%、10モル%~60モル%、20モル%~60モル%、40モル%~60モル%、0.1モル%~60モル%、0.1モル%~40モル%、0.1モル%~20モル%、0.1モル%~10モル%、0.1モル%~1モル%、5モル%~50モル%、10モル%~40モル%、10モル%~30モル%、又はその任意の部分集合のカチオン中和レベルを有し得る。
【0039】
エチレン-カルボン酸コポリマー、又はそのアイオノマーは、12g/10分~60g/10分のメルトフローレート(melt flow rate、MFR)を有し得る。例えば、MFRは、12g/10分~45g/10分、12g/10分~30g/10分、20g/10分~60g/10分、20g/10分~40g/10分、40g/10分~60g/10分、又はこれらの任意の部分集合であってよい。MFRは、ASTM D1238に従って、190℃、2160g荷重で測定してよい。特定の範囲内のより高いメルトフローレートにより、より容易な加工が可能になると考えられる。
【0040】
エチレン/カルボン酸コポリマーの好適なアイオノマーとしては、Dow,Inc(Midland,MI)から入手可能なSURLYN(商標)アイオノマー樹脂が挙げられる。
【0041】
アイオノマーは、0.950~0.980g/ccの密度を有し得る。例えば、アイオノマーは、0.950~0.970g/cc、0.950~0.960g/cc、0.960~0.980g/cc、0.960~0.970g/cc、0.970~0.980g/cc、又はこれらの任意の組み合わせの密度を有し得る。
【0042】
理論に束縛されるものではないが、二成分繊維のシース中の酸性反応性基が界面結合エネルギーを改善するので、強化性能が改善されると考えられる。対照的に、標準的なポリエステル、ポリアミド、及びポリプロピレン不織布は、これらの反応性基を欠いており、したがって、本樹脂との結合強度が不十分である。
【0043】
二成分繊維のコアは、ポリアミドを含み得る。ポリアミドは、繰り返しアミド(-CONH-)基を含むポリマーであってよい。例えば、二成分繊維のコアは、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド66/610、ポリアミド666、ポリアミド6/69、ナイロン1010、ナイロン1012、PA 6T、又はそれらのブレンドのうちの1つ以上を含み得る。市販のポリアミドとしては、DuPontから入手可能なZytel(登録商標)樹脂を挙げることができる。
【0044】
二成分繊維のシース及び/又はコアは、他の添加剤を含んでいてもよい。例えば、シース及び/又はコアは、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線安定剤、スピン仕上げ剤、及び他の従来の添加剤を含んでいてもよい。
【0045】
理論に束縛されるものではないが、エチレン-カルボン酸コポリマー又はそのアイオノマーのみである単一成分で構築された不織布110は、特に高温で、所望の用途に役立つのに十分な機械的強度を欠くであろうと考えられる。しかし、本発明の二成分不織布は、高温及び低温の両方で十分な機械的強度を提供することができると考えられる。
【0046】
スパンボンド不織布110は、国際公開第2019/084774号に開示されているものなどの従来のスピンボンディング法を使用して調製してよい。
【0047】
第1の布補強層120は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維のうちの1つ以上を含み得る。第2の布補強層130は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維のうちの1つ以上を含み得る。
【0048】
第1及び第2の布補強層120、130は、それぞれ独立して、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%、又は更には少なくとも99.9重量%のガラス繊維、炭素繊維、ポリアラミド繊維、ポリエチレン繊維、又は玄武岩繊維、及び布補強層に浸透した任意の熱硬化性樹脂を含み得る。
【0049】
第1及び第2の布補強層は、10gsm~10,000gsmの坪量を有し得る。例えば、第1及び第2の布補強層は、10gsm~1,000gsm、100gsm~10,000gsm、100gsm~1,000gsm、又はこれらの任意の部分集合の重量を有し得る。
【0050】
第1及び第2の布補強層はそれぞれ、一方向配向布、二軸配向布、又はその両方を含み得る。第1及び第2の布補強層は、同じ配向の布を含んでいてもよいが、含んでいる必要はないことが理解されるべきである。
【0051】
布補強層は、0.1mm~10mmの平均厚さを有し得る。例えば、布補強層は、0.1mm~8mm、0.1mm~5mm、0.1mm~1mm、1mm~10mm、1mm~5mm、3mm~8mm、又はこれらの任意の部分集合の平均厚さを有し得る。
【0052】
熱硬化性樹脂は、第1の布補強層120、不織布110、及び第2の布補強層130に少なくとも部分的に浸透し得る。
【0053】
熱硬化性樹脂は、エポキシ、不飽和ポリエステル、又はポリウレタンであってよい。樹脂は、23℃~70℃の温度範囲で流動性であってよい。例えば、23℃~70℃の樹脂の粘度は、0.1cP~1000cP、0.1cP~500cP、0.1cP~300cP、1cP~1000cP、1cP~800cP、1cP~500cP、1cP~300cP、10cP~1000cP、10cP~800cP、10cP~500cP、10cP~300cP、100cP~1000cP、100cP~500cP、又はこれらの任意の部分集合であり得る。
【0054】
第1の布補強層120、不織布110、及び第2の布補強層130は、合わせて10重量%~50重量%の熱硬化性樹脂含有量を有し得る。例えば、複合材は、10~40重量%、20~50重量%、30~50重量%、又はこれらの任意の部分集合の熱硬化性樹脂含有量を有し得る。
【0055】
熱硬化性樹脂は、硬化性であり得る。熱硬化性樹脂は、熱的に硬化されてもよく、化学的に硬化されてもよく、又はその両方であってもよい。熱硬化性樹脂は、40℃~500℃、40℃~100℃、40℃~80℃、60℃~500℃、60℃~100℃、又はこれらの任意の部分集合の温度で熱的に硬化し得る。
【0056】
多層熱硬化性複合材100は、樹脂硬化剤を更に含んでいてもよい。樹脂硬化剤は、多層熱硬化性複合材100の樹脂又は他の成分と反応して、樹脂をより速く硬化させることができる。樹脂及び樹脂硬化剤の総重量に対する樹脂の重量の比は、50重量%~100重量%、60重量%~90重量%、70重量%~80重量%、又はこれらの任意の部分集合であってよい。樹脂と硬化剤との好適な組み合わせとしては、100/33の比のAirstone(商標)760エポキシ樹脂及びAirstone 766(商標)エポキシ硬化剤(両方ともOlin(商標)Epoxyから入手可能)を挙げることができる。
【0057】
ここで図2を参照すると、多層熱硬化性複合材100は、布地補強材の追加の層等の追加の層を含んでいてもよい。例えば、多層熱硬化性複合材100は、第3の布補強層150を含んでいてもよい。第3の布補強層150は、不織布110層の第1の布補強層120とは反対側に配置され得る。第3の布補強層150は、第1の布補強層120とは異なる繊維配向を有していてよい。
【0058】
多層熱硬化性複合材100は、第4の布補強層140を含んでいてもよい。第4の補強層140は、不織布110層の第2の布補強層130とは反対側に配置され得る。第4の布補強層140は、第2の布補強層130とは異なる繊維配向を有していてよい。
【0059】
多層熱硬化性複合材100を形成するためのプロセスは、乾燥多層複合材に熱硬化性樹脂を少なくとも部分的に浸透させて湿潤未硬化複合材を形成することと、当該湿潤未硬化複合材を硬化させて熱硬化性複合材を形成することとを含み得る。乾燥多層複合材は、上述したように、第1の布補強層120、不織布110、及び第2の布補強層130を含み得る。
【0060】
熱硬化性複合材を形成するためのプロセスは、任意選択で乾燥多層複合材をプレスして乾燥多層複合材を形成することを更に含んでいてもよい。
【0061】
乾燥多層複合材に熱硬化性樹脂を少なくとも部分的に浸透させることは、乾燥多層複合材を型内に入れることと、熱硬化性樹脂を当該型内に注入することとを含み得る。乾燥多層複合材に熱硬化性樹脂を少なくとも部分的に浸透させることは、樹脂トランスファー成形(resin transfer molding、RTM)又は真空支援樹脂トランスファー成形(vacuum assisted resin transfer molding、VARTM)を使用して達成され得る。
【0062】
湿潤未硬化複合材を硬化させることは、湿潤未硬化複合材を3時間かけて少なくとも50℃に加熱することを含み得る。例えば、湿潤未硬化複合材は、少なくとも60℃又は少なくとも70℃の温度で、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、又は少なくとも6時間硬化され得る。
【0063】
熱硬化性複合材を形成するためのプロセスは、湿潤多層複合材を真空に供することを更に含んでいてもよい。真空は、硬化工程の前及び/又は間に適用してよい。真空は、0mbar~20mbar、5mbar~20mbar、10mbar~20mbar、0mbar~15mbar、5mbar~15mbar、又はこれらの任意の部分集合であってよい。
【0064】
真空の存在により、樹脂が乾燥多層複合材を横切って流れて湿潤多層複合材を形成することができる。次いで、樹脂及び多層複合体を真空バッグ内に一緒に密封してよい。真空はまた、樹脂を多層複合材に押し込むのを支援することもできる。
【0065】
試験方法
モードI層間破壊靱性(GIc
ASTM D5528-13に従って、各複合シートサンプルのモードI層間破壊靱性(GIc)を試験した。INSTRON 5969 Universal試験システムにおいてダブルカンチレバービーム(double cantilever beam、DCB)を使用してサンプルを試験した。試験速度は、5mm/分に設定した。サンプルサイズは125mm×25mm×4mmであり、ポリフッ化ビニリデン樹脂(「PVDF」)フィルム(13μm)による初期層間剥離の片側が中心層に挿入されており、初期層間剥離長さは縁部から約50mmであった。試験前に、実験室において23℃及び相対湿度50%で48時間超にわたってサンプルを平衡化した。記録した各測定値は、6つの試験片の平均である。
【0066】
修正ビーム理論(Modified Beam Theory、MBT)法に従って、モードIを計算した。完全に組み込まれた(すなわち、層間剥離前面にクランプで固定された)ダブルカンチレバービームの歪みエネルギー放出速度のビーム理論式を、式1によって記載する。
【0067】
式1
【数1】
【0068】
(式中、
【0069】
P=荷重、
【0070】
δ=荷重点変位、
【0071】
b=試験片幅、及び
【0072】
a=層間剥離長さである)。
【0073】
モードII層間破壊靱性(GIIc
切り欠き曲げ(end-notched flexure、ENF)試験を使用し、ASTM D7905-19に従って、複合シートサンプルのモードII層間破壊靱性(GIIc)を試験した。サンプルサイズは160mm×25mm×4mmであり、PVDFフィルム(13μm)による初期層間剥離の片側が中心層に挿入されており、初期層間剥離長さは縁部から約50mmであった。試験前に、サンプルを実験室において23℃及び相対湿度50%で48時間超にわたって平衡化した。記録された各測定値は、6つの試験片の平均である。測定値は、式2を用いて計算した。
【0074】
式2
【数2】
【0075】
(式中、mはCC係数であり、PMaxは破壊試験からの最大力であり、aは破壊試験で使用される亀裂長さであり、Bは試験片幅であり、他の変数は上記の通りである)。
【0076】
曲げ強度及び弾性率
曲げ強度及び弾性率は、ISO 14125に従って測定した。
【0077】
密度
密度は、ASTM D792に従って測定した。
【0078】
バーコール硬度
バーコール硬度は、ASTM D2583に従って測定した。
【0079】
メルトフローレート
MFRは、ASTM D1238に従って190℃、2160g荷重で測定した。
【0080】
繊維含有量
サンプル全体の強化繊維含有量は、ASTM D3171-15、方法A8に従って測定した。
【実施例
【0081】
一連の本発明の実施例及び比較例を、本開示の幾つかの実施形態に従って調製した。使用した原材料の一覧を表1に示す。特に断らない限り、全てのサンプルは500mm×500mmのシートであった。剥離フィルムは250mm×500mmであった。試験中にサンプルを適切な層で確実に破損させるように、剥離フィルムを使用してもよい。したがって、試験サンプル中に剥離フィルムが存在していたが、それは任意選択の構成要素である。
【表1】
【0082】
本発明の実施例1(IE1):
一連の布を型に敷いて、以下の順序で本開示の乾燥多層複合材を形成した。
1:3層の二軸炭素繊維布A。
2:2層の一方向炭素繊維布B。
3.1層のアイオノマー/ポリアミド不織布。
4:1層の剥離フィルム。
5:2層の一方向炭素繊維布B。
6:3層の二軸炭素繊維布A。
7:1片の剥離プライ。
8:フローメッシュ。
【0083】
比較例1(CE1):
不織布強化なしの炭素繊維/エポキシ複合材を、以下の方法に従って調製した。一連の布を型に敷いて、以下の順序で乾燥多層複合材を形成した。
1:3層の二軸炭素繊維布A。
2:2層の一方向炭素繊維布B。
3:1層の剥離フィルム。
4:2層の一方向炭素繊維布B。
5:3層の二軸炭素繊維布A。
6:1片の剥離プライ。
7:フローメッシュ。
【0084】
比較例2(CE2):
強化層として1層のポリアミド不織布Aを有する炭素繊維/エポキシ複合材を、以下の方法に従って調製した。一連の布を型に敷いて、以下の順序で乾燥多層複合材を形成した。
1:3層の二軸炭素繊維布A。
2:2層の一方向炭素繊維布B。
3.1層のポリアミド不織布A。
4:1層の剥離フィルム。
5:2層の一方向炭素繊維布B。
6:3層の二軸炭素繊維布A。
7:1片の剥離プライ。
8:フローメッシュ。
【0085】
比較例3(CE3):
強化層として1層のポリアミド不織布Bを有する炭素繊維/エポキシ複合材を、以下の方法に従って調製した。一連の布を型に敷いて、以下の順序で乾燥多層複合材を形成した。
1:3層の二軸炭素繊維布A。
2:2層の一方向炭素繊維布B。
3.1層のポリアミド不織布B。
4:1層の剥離フィルム。
5:2層の一方向炭素繊維布B。
6:3層の二軸炭素繊維布A。
7:1片の剥離プライ。
8:フローメッシュ。
【0086】
プレス、密封、及び硬化
長さ300mmの注入ホースをサンプルの片側のフローメッシュに隣接して配置し、真空出口をサンプルの反対側に配置した。接着密封ストリップの2つのループを、型内に敷かれた各層の周りに貼り付けた。次いで、乾燥多層複合体を2層の真空バッグフィルムで密封した。
【0087】
VARTM法を用いて、樹脂を乾燥多層複合材に移した。具体的には、真空ポンプを上記真空出口に接続し、系を0~20mbarの真空に加圧した。樹脂系(Airstone 760エポキシ樹脂/Airestone 766エポキシ硬化剤=100/33、樹脂硬化剤混合物)を真空下で5分間脱気して、全ての気泡を除去した。樹脂が脱気されたら、それを注入ホースに接続し、真空圧によってフローメッシュを通し、サンプルの表面を横切って流した。樹脂入口を密封し、真空バッグの表面を横切る圧力差により樹脂をサンプル中に押し込んだ。
【0088】
完了したら、70℃で6時間加熱することによって湿潤サンプルを硬化させた。硬化後、生成物を型から取り出した。剥離プライ及びフローメッシュ等の補助材料を除去し、積層体を試験片に切断した。
【0089】
結果。
表2は、本発明の実施例及び比較例のそれぞれのモードI及びモードII層間破壊靱性を開示する。
【表2】
【0090】
モードI又はモードII層間破壊靱性のいずれかによれば、本発明の実施例は、比較例よりも著しく良好に機能する。モードI下でのCE1の顕著な欠陥は、不織二成分強化層の欠如によって引き起こされると考えられる。
【0091】
本発明のサンプル及び比較サンプルは、密度、硬度、曲げ強度、及び曲げ弾性率等の他の材料特性についても同様の結果を示した。これは、本複合材強化プロセスの他の機械的特性に対する悪影響が最小限であることを示す。
【0092】
1つの例外は、サンプルCE3の曲げ強度が低いことである。CE1に対するCE3の曲げ強度の30%の低下は、複合材中の過度に密な熱可塑性不織布に起因すると考えられる。この密度は、エポキシ樹脂の不十分な浸透を引き起こし得ると考えられる。
【0093】
存在する場合、あらゆる相互参照されるか又は関連する特許又は出願、及び本出願が優先権又はその利益を主張するあらゆる特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文献は、明示的に除外されるか、又は別段限定されない限り、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。あらゆる文献の引用は、それが本明細書に開示若しくは特許請求されたあらゆる発明に関する先行技術であること、又はそれ単独で、若しくはあらゆる他の参考文献とのあらゆる組み合わせで、そのような発明を教示、示唆、若しくは開示することを認めるものではない。更に、本文書における任意の用語の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書における同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合は、本文書においてその用語に割り当てられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0094】
本発明の特定の実施形態を例示し、説明したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行い得ることは当業者には明らかであろう。そのため、添付の特許請求の範囲において、本発明の範囲内にあるそのような変更及び修正を全て網羅することが意図されている。
図1
図2
【国際調査報告】