(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】正極活物質及びその製造方法、極板、二次電池及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/505 20100101AFI20240719BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240719BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240719BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M4/525
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503681
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2022097507
(87)【国際公開番号】W WO2023236068
(87)【国際公開日】2023-12-14
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ ▲棟▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 奇
(72)【発明者】
【氏名】沈 重亨
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲幇▼▲潤▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】范 敬▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】柳 娜
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB02
4G048AB04
4G048AB06
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
4G048AE07
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA09
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本願は、正極活物質及びその製造方法、極板、二次電池及び電力消費装置に関する。当該正極活物質は、リチウムリッチマンガン系正極材料を含むコア材料と、前記コア材料の外面に被覆され、酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体を含む被覆層と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムリッチマンガン系正極材料を含むコア材料と、
前記コア材料の外面に被覆され、酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体を含む被覆層と、
を含むことを特徴とする正極活物質。
【請求項2】
前記酸素イオン伝導体は、La
2Mo
2O
9及び蛍石型酸素イオン伝導体のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記蛍石型酸素イオン伝導体は、ZrO
2、CeO
2及びGeO
2のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記リチウムイオン伝導体は、LiLaO
2、Li
2MoO
4、Li
3PO
4、Li
3BO
3及びLiTaO
3のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記酸素イオン伝導体はLa
2Mo
2O
9を含み、前記リチウムイオン伝導体はLiLaO
2及びLi
2MoO
4を含むことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記被覆層におけるランタン原子とモリブデン原子のモル比は、1:(1.02~1.1)であり、選択的に1:(1.02~1.05)であることを特徴とする請求項5に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記被覆層におけるモリブデン原子の含有量は300~5000ppmであり、及び/又は、
前記被覆層におけるランタン原子の含有量は500~5000ppmであることを特徴とする請求項5~6の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記被覆層におけるモリブデン原子の含有量は1000~4000ppmであり、及び/又は、
前記被覆層におけるランタン原子の含有量は1000~3000ppmであることを特徴とする請求項5~7の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記コア材料の表面にランタン原子及びモリブデン原子がドープされていることを特徴とする請求項5~8の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記コア材料にランタン原子及びモリブデン原子がドープされている表面の厚さは、3μm以下であり、選択的に2μm以下であることを特徴とする請求項9に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記被覆層の厚さは0.01~4μmであることを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記被覆層の厚さは0.02~1μmであることを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項13】
前記被覆層におけるIO
2
2-/IO
2-のピーク強度比は、0.5~1であり、選択的に0.7~0.9であり、
IO
2
2-は、X線光電子分光試験における531eVの酸素空孔のピーク強度値であり、IO
2-は、X線光電子分光試験における529eVの格子酸素に対応するピーク強度値であることを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項14】
前記リチウムリッチマンガン系正極材料の分子式は、xLi
2MnO
3・(1-x)LiNi
yCo
zMn
aM
1-y-z-aO
2であり、
ただし、0<x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、0<y+z+a≦1であり、Mは、Mg、B、Al、V、Ti、Zr、Sn及びMoのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1~13の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項15】
前記リチウムリッチマンガン系正極材料の粒子タイプは、二次粒子、単結晶又は擬似単結晶であり、及び/又は、
前記リチウムリッチマンガン系正極材料の比表面積は、<2.0m
2/gであり、選択的に0.1~1m
2/gであり、
前記リチウムリッチマンガン系正極材料のDv50粒径は、1~20μmであり、選択的に3~15μmであることを特徴とする請求項1~14の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項16】
請求項1~15の何れか一項に記載の正極活物質の製造方法であって、
前記コア材料の表面に前記被覆層を形成するステップを含むことを特徴とする正極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記酸素イオン伝導体はLa
2Mo
2O
9を含み、前記リチウムイオン伝導体はLiLaO
2及びLi
2MoO
4を含み、前記製造方法は、
モリブデン塩、ランタン塩及びリチウムリッチマンガン系前駆体を溶媒で混合し、且つ100~200℃で8~12h水熱反応させ、表面にLa
2Mo
2O
9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体を得るステップと、
前記表面にLa
2Mo
2O
9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体とリチウム塩を混合した後、焼成処理を行い、酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体により複合被覆された正極活物質を得るステップと、を含むことを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記リチウムリッチマンガン系前駆体は、Ni
bCo
cMn
dM
(1-b-c-d)(OH)
2であり、
ただし、0<b<0.4、0≦c≦0.05、0.6≦d<1であり、Mは、Mg、B、Al、V、Ti、Zr、Sn及びMoのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記溶媒は、水、エタノール、メタノール及びエチレングリコールのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記モリブデン塩は、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム及びモリブデン酸カリウムのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記ランタン塩は、塩化ランタン及び硝酸ランタンのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記リチウム塩は、炭酸リチウム、水酸化リチウム及び酢酸リチウムのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記リチウム塩におけるリチウム元素と前記表面にLa
2Mo
2O
9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体における全ての金属元素のモル比は、1:(1.1~1.8)であり、選択的に1:(1.1~1.5)であり、及び/又は、
前記水熱反応のpH値は8~10であり、及び/又は、
前記焼成処理の雰囲気は空気であり、及び/又は、
前記焼成処理のステップは、まず300~500℃で2~5h仮焼成し、続いて700~900℃で10~20h焼結することを含むことを特徴とする請求項17~18の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
正極集電体と、
前記正極集電体の表面に位置し、その成分が請求項1~15の何れか一項に記載の正極活物質又は請求項16~19の何れか一項に記載の製造方法により製造された正極活物質を含む正極活物質層と、
を含むことを特徴とする正極板。
【請求項21】
請求項20に記載の正極板を含むことを特徴とする二次電池。
【請求項22】
請求項21に記載の二次電池を含むことを特徴とする電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池の技術分野に属し、具体的に、正極活物質及びその製造方法、極板、二次電池及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、軽量で、汚染がなく、記憶効果がないなどの目立った特徴を有するため、様々な大衆消費電子製品及び電気自動車に広く適用されている。
【0003】
動力電池のエネルギー密度に対する要求の高まりにつれて、多くの正極材料が開発されてきた。例えば、高ニッケル三元正極材料は、高いエネルギー密度を有するが、その製造技術及び貯蔵環境のいずれに対する要求も非常に厳しい。それに比べ、リチウムリッチマンガン系正極材料は、大いに期待されている正極材料であり、高い放電比容量を有し、およそリン酸鉄リチウムの2倍であり、且つマンガンを含有するため、製造コストが比較的低い。しかしながら、リチウムリッチマンガン系正極材料の初回放電効率、サイクル性能及び倍率性能が劣るため、その実際の適用が大きく妨げられている。
【発明の概要】
【0004】
背景技術における技術的課題に鑑み、本願は、二次電池に適用され、二次電池の初回放電効率、サイクル性能及び倍率性能を向上可能な正極活物質を提供する。
【0005】
上記目的を実現するために、本願の第1の態様は、
リチウムリッチマンガン系正極材料を含むコア材料と、
前記コア材料の外面に被覆され、酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体を含む被覆層と、を含む正極活物質を提供する。
【0006】
従来技術に対して、本願は、少なくとも以下に記載の有益な効果を含む。
【0007】
本願の正極活物質は、リチウムリッチマンガン系正極材料を含有するコア材料の外面に、上記の酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体を同時に含む被覆層が形成されている。酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体がリチウムリッチマンガン系正極材料を含有するコア材料の被覆層として相乗的に導入され、酸素イオン伝導体の内部に高い酸素空孔濃度を有し、高い酸素吸着及び貯蔵能力を有し、更にリチウムリッチマンガン系格子酸素の放出を効果的に抑制することができ、同時にリチウムイオンの脱離を減少させ、更に正極活物質の初回充放電効率を向上させることもできる。同時に、リチウムリッチマンガン系正極材料の格子からの酸素放出が抑制され、リチウムリッチマンガン系正極材料の構造安定性が向上し、更に正極活物質のサイクル安定性を向上させることができる。それと同時に、リチウムイオン伝導体が導入され、高いイオン伝導率を有し、リチウムイオンの伝達速度を向上させ、リチウムイオンの脱離を減少させ、更に正極活物質の容量及び倍率性能を向上させることができる。
【0008】
本願の任意の実施形態において、前記酸素イオン伝導体は、La2Mo2O9及び蛍石型酸素イオン伝導体のうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
本願の任意の実施形態において、前記蛍石型酸素イオン伝導体は、ZrO2、CeO2及びGeO2のうちの少なくとも1つを含む。
【0010】
本願の任意の実施形態において、前記リチウムイオン伝導体は、LiLaO2、Li2MoO4、Li3PO4、Li3BO3及びLiTaO3のうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
本願の任意の実施形態において、前記酸素イオン伝導体はLa2Mo2O9を含み、前記リチウムイオン伝導体はLiLaO2及びLi2MoO4を含む。
【0012】
本願の任意の実施形態において、前記被覆層におけるランタン原子とモリブデン原子のモル比は、1:(1.02~1.1)であり、選択的に1:(1.02~1.05)である。
【0013】
本願の任意の実施形態において、前記被覆層におけるモリブデン原子の含有量は300~5000ppmであり、及び/又は、
前記被覆層におけるランタン原子の含有量は500~5000ppmである。
【0014】
本願の任意の実施形態において、前記被覆層におけるモリブデン原子の含有量は1000~4000ppmであり、及び/又は、
前記被覆層におけるランタン原子の含有量は1000~3000ppmである。
【0015】
本願の任意の実施形態において、前記コア材料の表面にランタン原子及びモリブデン原子がドープされている。
【0016】
本願の任意の実施形態において、前記コア材料にランタン原子及びモリブデン原子がドープされている表面の厚さは、3μm以下であり、選択的に2μm以下である。
【0017】
本願の任意の実施形態において、前記被覆層の厚さは0.01~4μmである。
【0018】
本願の任意の実施形態において、前記被覆層の厚さは0.02~1μmである。
【0019】
本願の任意の実施形態において、前記被覆層におけるIO2
2-/IO2-のピーク強度比は、0.5~1であり、選択的に0.7~0.9であり、
IO2
2-は、X線光電子分光試験における531eVの酸素空孔のピーク強度値であり、IO2-は、X線光電子分光試験における529eVの格子酸素に対応するピーク強度値である。
【0020】
本願の任意の実施形態において、前記リチウムリッチマンガン系正極材料の分子式は、xLi2MnO3・(1-x)LiNiyCozMnaM1-y-z-aO2であり、
ただし、0<x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、0<y+z+a≦1であり、Mは、Mg、B、Al、V、Ti、Zr、Sn及びMoのうちの少なくとも1つである。
【0021】
本願の任意の実施形態において、前記リチウムリッチマンガン系正極材料の粒子タイプは、二次粒子、単結晶又は擬似単結晶であり、及び/又は、
前記リチウムリッチマンガン系正極材料の比表面積は、<2.0m2/gであり、選択的に0.1~1m2/gであり、
前記リチウムリッチマンガン系正極材料のDv50粒径は、1~20μmであり、選択的に3~15μmである。
【0022】
本願の第2の態様は、本発明の第1の態様による正極活物質の製造方法であって、
前記コア材料の表面に前記被覆層を形成するステップを含む正極活物質の製造方法を提供する。
【0023】
本願の任意の実施形態において、前記酸素イオン伝導体はLa2Mo2O9を含み、前記リチウムイオン伝導体はLiLaO2及びLi2MoO4を含み、前記製造方法は、
モリブデン塩、ランタン塩及びリチウムリッチマンガン系前駆体を溶媒で混合し、且つ100~200℃で8~12h水熱反応させ、表面にLa2Mo2O9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体を得るステップと、
前記表面にLa2Mo2O9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体とリチウム塩を混合した後、焼成処理を行い、酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体により複合被覆された正極活物質を得るステップと、を含む。
【0024】
本願の任意の実施形態において、前記リチウムリッチマンガン系前駆体は、NibCocMndM(1-b-c-d)(OH)2であり、
ただし、0<b<0.4、0≦c≦0.05、0.6≦d<1であり、Mは、Mg、B、Al、V、Ti、Zr、Sn及びMoのうちの少なくとも1つである。
【0025】
本願の任意の実施形態において、前記溶媒は、水、エタノール、メタノール及びエチレングリコールのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記モリブデン塩は、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム及びモリブデン酸カリウムのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記ランタン塩は、塩化ランタン及び硝酸ランタンのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記リチウム塩は、炭酸リチウム、水酸化リチウム及び酢酸リチウムのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記リチウム塩におけるリチウム元素と前記表面にLa2Mo2O9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体における全ての金属元素のモル比は、1:(1.1~1.8)であり、選択的に1:(1.1~1.5)であり、及び/又は、
前記水熱反応のpH値は8~10であり、及び/又は、
前記焼成処理の雰囲気は空気であり、及び/又は、
前記焼成処理のステップは、まず300~500℃で2~5h仮焼成し、続いて700~900℃で10~20h焼結することを含む。
【0026】
本願の第3の態様は、
正極集電体と、
前記正極集電体の表面に位置し、その成分が本願の第1の態様により提供される正極活物質又は本願の第2の態様により提供される製造方法により製造された正極活物質を含む正極活物質層と、を含む正極板を提供する。
【0027】
本願の第4の態様は、本願の第3の態様により提供される正極板を含む二次電池を提供する。
【0028】
本願の第5の態様は、本願の第4の態様により提供される二次電池を含む電力消費装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本願の技術的解決手段をより明らかに説明するために、以下、本願に使用される図面を簡単に紹介する。明らかに、以下に説明される図面は、本願の幾つかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な努力をすることなく、図面に基づいて更に他の図面を得ることができる。
【
図3】電池モジュールの一実施形態の模式図である。
【
図6】二次電池を電源として用いる電力消費装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、具体的な実施形態を参照しながら本願を更に述べる。これらの具体的な実施形態は、単に本願を説明するためのものであり、本願の範囲を制限するものではないことを理解されたい。
【0031】
簡潔にするために、本明細書には、幾つかの数値範囲のみが具体的に開示されている。しかしながら、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、また、任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に、任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、単独で開示された各点又は単一の数値自体は、下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせたり、他の下限又は上限と組み合わせたりして、明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0032】
本明細書の説明において、別途説明がない限り、「以上」、「以下」は、その値自体を含み、「1つ又は複数」のうちの「複数」は、2つ以上を意味することを説明しておく。
【0033】
本明細書の説明において、別途説明がない限り、「又は(or)」という用語は包括的である。つまり、「A又は(or)B」という語句は、「A、B、又はAとBの両者」を表す。より具体的には、Aが真(又は存在)でBが偽(又は存在しない)であるという条件、Aが偽(又は存在しない)でBが真(又は存在)であるという条件、又はAとBが何れも真(又は存在)であるという条件のうちの何れか1つも、条件「A又はB」を満たす。別途説明がない限り、本願において使用される用語は、当業者が一般に理解されている公知の意味を有する。別途説明がない限り、本願において言及された各パラメータの数値は、当分野でよく使用されている様々な測定方法により測定することができる(例えば、本願の実施例において与えられた方法により試験することができる)。
【0034】
二次電池
二次電池は、電池が放電した後に充電により活物質を活性化して使用し続けることができる電池を指す。
【0035】
通常の場合、二次電池は、正極板、負極板、セパレータ及び電解質を含む。電池の充放電過程で、活性イオンは、正極板と負極板の間で挿入・脱離を繰り返す。セパレータは、正極板と負極板の間に設けられ、隔離の役割を果たす。電解質は、正極板と負極板の間においてイオンを伝導する役割を果たす。
【0036】
正極板
二次電池では、前記正極板は、通常、正極集電体及び正極集電体に設けられる正極活物質層を含み、正極活物質層は、正極活物質を含む。
【0037】
前記正極集電体としては、通常の金属箔又は複合集電体を採用することができる。金属材料を高分子基材に設けることで複合集電体を形成することができる。例として、正極集電体は、アルミニウム箔を採用することができる。
【0038】
背景技術に記載のように、リチウムリッチマンガン系正極材料は、高い放電比容量を有するが、その初回放電効率、サイクル性能及び倍率性能が劣るため、その実際の適用が大きく妨げられている。
【0039】
本願の技術者は、大量の研究を重ねた結果、リチウムリッチマンガン系正極材料は、最初のサイクルの4.5V以上の高電圧充電状態で、リチウムリッチマンガン系正極材料に酸素放出問題が発生しやすく、同時に遷移金属層における一部のリチウムイオンがO2-と一緒に抜け、Li2Oを形成して脱離し、この部分の結晶空孔が後続の充放電過程でリチウムイオンを更に受けにくく、リチウムリッチマンガン系正極材料の初回充放電効率を低下させてしまうことを見出した。同時に、リチウムリッチマンガン系正極材料の内部に大量の酸素空孔が形成されることによって、リチウムリッチマンガン系正極材料における遷移金属イオンの移動が引き起こされやすく、晶体構造の再配列が発生してリチウムリッチマンガン系正極材料の構造が不安定になる問題が引き起こされ、更にサイクル性能の劣化を招く。また、リチウムリッチマンガン系正極自体の電子伝導率及びイオン伝導率が低く、且つ高電圧でリチウムリッチマンガン系正極表面と電解液の副反応が激しくなるため、リチウムリッチマンガン系正極の倍率性能が非常に悪くなる。
【0040】
これに基づき、本願の一実施形態は、コア材料及び被覆層を含む正極活物質を提供する。コア材料は、リチウムリッチマンガン系正極材料を含む。被覆層は、コア材料の外面に被覆され、酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体を含む。
【0041】
如何なる理論にも限定されることなく、本願の正極活物質は、リチウムリッチマンガン系正極材料を含有するコア材料の外面に、上記の酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体を同時に含む被覆層が形成されている。酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体がリチウムリッチマンガン系正極材料を含有するコア材料の被覆層として相乗的に導入され、酸素イオン伝導体の内部に高い酸素空孔濃度を有し、高い酸素吸着及び貯蔵能力を有し、更にリチウムリッチマンガン系格子酸素の放出を効果的に抑制することができ、同時にリチウムイオンの脱離を減少させ、更に正極活物質の初回充放電効率を向上させることもできる。同時に、リチウムリッチマンガン系正極材料の格子からの酸素放出が抑制され、リチウムリッチマンガン系正極材料の構造安定性が向上し、更に正極活物質のサイクル安定性を向上させることができる。それと同時に、リチウムイオン伝導体が導入され、高いイオン伝導率を有し、リチウムイオンの伝達速度を向上させ、リチウムイオンの脱離を減少させ、更に正極活物質の容量及び倍率性能を向上させることができる。
【0042】
上記正極板について、その正極活物質層における成分は、上記被覆型の正極活物質を含む。
【0043】
本願の技術者は、鋭意研究したところ、本願の正極活物質が上記設計条件を満たした上で、下記条件のうちの1つ又は複数を更に選択的に満たす場合、二次電池の性能を更に改善可能であることを見出した。
【0044】
幾つかの実施形態において、酸素イオン伝導体は、La2Mo2O9及び蛍石型酸素イオン伝導体のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。更に、蛍石型酸素イオン伝導体は、ZrO2、CeO2及びGeO2のうちの少なくとも1つを含む。
【0045】
幾つかの実施形態において、リチウムイオン伝導体は、LiLaO2、Li2MoO4、Li3PO4、Li3BO3及びLiTaO3のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない。
【0046】
幾つかの実施形態において、リチウムイオン伝導体はLiLaO2及びLi2MoO4を含み、特定の2種類のリチウムイオン伝導体の組み合わせを採用すれば、正極材料のイオン伝導率を顕著に向上させることができるとともに、リチウムリッチマンガン系材料の陽イオン混合及びMn3+の溶出を効果的に抑制することもできる。幾つかの実施形態において、酸素イオン伝導体はLa2Mo2O9を含み、リチウムイオン伝導体はLiLaO2及びLi2MoO4を含む。酸素イオン伝導体とリチウムイオン伝導体は同じ元素を有するため、この特定の組み合わせを採用すれば、両者の間は良好な適合性を有し、被覆層における酸素イオン伝導体とリチウムイオン伝導体の両者をより緊密に結合させ、被覆層自体の安定性及びイオンの迅速伝導性の向上に寄与する。
【0047】
更に、被覆層におけるランタン原子とモリブデン原子のモル比は、1:(1.02~1.1)であり、更に好ましくは1:(1.02~1.05)である。被覆層におけるモリブデンとランタンのモル比を制御することで、化学量論比のモリブデン酸ランタンが合成されることを確保することができる。
【0048】
更に、被覆層におけるモリブデン原子の含有量は300~5000ppmであり、選択的に1000~4000ppmである。更に、被覆層におけるランタン原子の含有量は500~5000ppmであり、選択的に1000~3000ppmである。被覆層におけるモリブデン原子及びランタン原子の含有量を制御することで、被覆層が厚過ぎて正極活物質の容量発揮に影響を与えることがないように確保し、好適な被覆効果を達成することができる。
【0049】
コア材料の表面にLa2Mo2O9をin situ形成する場合、コア材料の表面にランタン原子及びモリブデン原子がドープされることが理解される。更に、コア材料にランタン原子及びモリブデン原子がドープされている表面の厚さは、3μm以下であり、選択的に2μm以下である。更に選択的に、コア材料にランタン原子及びモリブデン原子がドープされている表面の厚さは、1μm以下であり、例えばドープ厚さは、0.1μm~1μm、0.1μm~0.6μmである。
【0050】
幾つかの実施形態において、被覆層の厚さは、0.01~4μmであり、例えば0.01μm、0.1μm、0.2μm、0.3μm、0.4μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、2μm、3μm、4μmである。被覆層の厚さは所定の範囲にあることが好ましく、被覆層の厚さが大き過ぎてコア材料のイオン伝導性及び被覆均一性に影響を与え、更に正極活物質の容量が低下する問題を引き起こすことを回避し、更に被覆層の厚さが小さ過ぎて改善効果が明らかでないという問題を回避することもでき、このように正極活物質の初回放電効率、サイクル性能及び倍率性能を更に向上させる。
【0051】
選択的に、被覆層の厚さは0.01~1μmであり、更に選択的に0.02~0.5μmである。例えば酸素イオン伝導体がLa2Mo2O9を含み、リチウムイオン伝導体がLiLaO2及びLi2MoO4を含む場合、被覆層の厚さは、選択的に0.01~1μmであり、更に選択的に0.02~0.5μmである。
【0052】
幾つかの実施形態において、被覆層におけるIO2
2-/IO2-のピーク強度比は0.5~1であり、選択的に0.7~0.9であり、IO2
2-は、X線光電子分光試験における531eVの酸素空孔のピーク強度値であり、IO2-は、X線光電子分光試験における529eVの格子酸素に対応するピーク強度値である。被覆層におけるIO2
2-/IO2-のピーク強度比を所定の範囲に制御することで、被覆層に適量の酸素空孔を有するようになり、材料の酸素放出を効果的に抑制し、正極活物質におけるリチウムリッチマンガン系正極材料の構造安定性を向上させ、リチウムリッチマンガン系正極材料の相転移を抑制することができる。
【0053】
幾つかの実施形態において、リチウムリッチマンガン系正極材料の分子式は、xLi2MnO3・(1-x)LiNiyCozMnaM1-y-z-aO2であり、
ただし、0<x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、0<y+z+a≦1であり、Mは、Mg、B、Al、V、Ti、Zr、Sn及びMoのうちの少なくとも1つである。上記被覆層は、その初回放電効率、サイクル性能及び倍率性能を改善するように、上記リチウムリッチマンガン系正極材料に適用可能である。
【0054】
選択的に、リチウムリッチマンガン系正極材料は、0.35Li2MnO3・0.65LiNi0.46Co0.08Mn0.46O2、0.35Li2MnO3・0.65LiNi0.45Co0.08Mn0.46Mg0.01O2、0.35Li2MnO3・0.65LiNi0.45Co0.08Mn0.46Al0.01O2、0.35Li2MnO3・0.65LiNi0.45Co0.08Mn0.46Ti0.01O2、0.35Li2MnO3・0.65LiNi0.45Co0.08Mn0.46V0.01O2といった種類を含むが、これらに限定されない。
【0055】
幾つかの実施形態において、コア材料は、上記リチウムリッチマンガン系正極材料であることが理解される。別の実施形態において、コア材料には、上記リチウムリッチマンガン系正極材料が含有される他、当分野で常用の他の正極材料が含有されてもよい。
【0056】
幾つかの実施形態において、リチウムリッチマンガン系正極材料の粒子タイプは、二次粒子、単結晶又は擬似単結晶である。二次粒子は、一次粒子が凝集して形成した二次球状粒子を指す。
【0057】
幾つかの実施形態において、リチウムリッチマンガン系正極材料の比表面積は、<2.0m2/gであり、選択的に0.1~1m2/gである。
【0058】
幾つかの実施形態において、リチウムリッチマンガン系正極材料のDv50粒径は、1~20μmであり、選択的に3~15μmである。
【0059】
本願のコア材料に使用されるリチウムリッチマンガン系正極材料は、形態が規則的であり、粒度分布が均一であり、比表面積が小さいため、高い圧縮密度を有し、製造された二次電池が高いエネルギー密度及び優れたサイクル性能を有することを確保することができる。
【0060】
上記正極活物質は、通常、更にバインダ、導電剤及び他の選択的な助剤を選択的に含むことができる。
【0061】
例として、導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、Super P(SP)、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの1つ又は複数であってもよい。
【0062】
例として、バインダは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水系アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアクリル酸(PAA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの1つ又は複数であってもよい。
【0063】
本願は、上記コア材料の表面に上記被覆層を形成するステップを含む上記正極活物質の製造方法を更に提供する。
【0064】
被覆層を形成する方法は、固相被覆法、スプレー法、in situ堆積法などの当分野で慣用の技術を採用することができることが理解される。
【0065】
幾つかの実施形態において、酸素イオン伝導体はLa2Mo2O9を含み、リチウムイオン伝導体はLiLaO2及びLi2MoO4を含み、好ましくは、その製造方法は、以下のステップS11~S12を含む。
【0066】
ステップS11において、モリブデン塩、ランタン塩及びリチウムリッチマンガン系前駆体を溶媒で混合し、且つ100~200℃で8~12h水熱反応させ、表面にLa2Mo2O9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体を得る。
【0067】
ステップS12において、表面にLa2Mo2O9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体とリチウム塩を混合した後、焼成処理を行い、酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体により複合被覆された正極活物質を得る。
【0068】
このように、ステップS12の焼成処理ステップにより、一部のLa2Mo2O9と一部のリチウム塩を反応させてLiLaO2及びLi2MoO4をリチウムイオン伝導体として形成し、一部のLa2Mo2O9が酸素イオン伝導体として残存する一方、リチウムリッチマンガン系前駆体をリチウム塩と反応させてリチウムリッチマンガン系正極材料に変換するとともに、La2Mo2O9における一部のランタン及びモリブデン金属イオンをリチウムリッチマンガン系正極材料の表層にドープすることができる。
【0069】
本願の上記製造方法によれば、酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体により複合被覆されたリチウムリッチマンガン系材料を合成することができ、酸素イオン伝導体がLa2Mo2O9を含み、リチウムイオン伝導体がLiLaO2及びLi2MoO4を含むことで、正極活物質が優れた初回放電効率、サイクル性能及び倍率性能を有するようになる。
【0070】
幾つかの実施形態において、リチウムリッチマンガン系前駆体は、NibCocMndM(1-b-c-d)(OH)2である。
【0071】
ただし、0<b<0.4、0≦c≦0.05、0.6≦d<1であり、Mは、Mg、B、Al、V、Ti、Zr、Sn及びMoのうちの少なくとも1つである。リチウムリッチマンガン系前駆体におけるMn含有量が高く、Co含有量が低いことは、コストの削減に寄与し、また、上記製造過程でリチウムリッチマンガン系前駆体に対してドープすることができ、焼結過程でドープされる金属イオンを格子にドープし、正極活物質の構造安定性を向上させることに寄与する。
【0072】
選択的に、リチウムリッチマンガン系前駆体は、Ni0.30Co0.05Mn0.65(OH)2、Ni0.29Co0.05Mn0.65Mg0.01(OH)2、Ni0.29Co0.05Mn0.65Al0.01(OH)2、Ni0.29Co0.05Mn0.65Ti0.01(OH)2、Ni0.29Co0.05Mn0.65V0.01(OH)2といった種類を含むが、これらに限定されない。
【0073】
幾つかの実施形態において、溶媒は、水、エタノール、メタノール及びエチレングリコールのうちの少なくとも1つである。
【0074】
幾つかの実施形態において、モリブデン塩は、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム及びモリブデン酸カリウムのうちの少なくとも1つである。
【0075】
幾つかの実施形態において、ランタン塩は、塩化ランタン及び硝酸ランタンのうちの少なくとも1つである。
【0076】
幾つかの実施形態において、リチウム塩は、炭酸リチウム、水酸化リチウム及び酢酸リチウムのうちの少なくとも1つである。
【0077】
更に、ステップS12において、リチウム塩におけるリチウム元素及び表面にLa2Mo2O9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体における全ての金属元素のモル比は、1:(1.1~1.8)であり、選択的に1:(1.1~1.5)である。全ての金属元素は、Ni、Co、Mn、M、Mo及びLaを含む。このように、ステップS12で加えられたリチウム塩は、リチウムリッチマンガン系前駆体がリチウムリッチマンガン系正極材料を形成するために必要とされるリチウムを満たすことができるだけでなく、表面のLa2Mo2O9が部分的に反応してLiLaO2及びLi2MoO4を形成するために必要とされるリチウムを満たすこともできることを確保することができる。
【0078】
更に、水熱反応のpH値は8~10である。
【0079】
更に、焼成処理の雰囲気は空気である。
【0080】
更に、焼成処理のステップは、まず300~500℃で2~5h仮焼成し、続いて700~900℃で10~20h焼結することを含む。
【0081】
上記製造方法は、プロセスが簡単であり、製造された正極活物質が良好な初回放電効率、サイクル性能及び倍率性能を有する。
【0082】
負極板
二次電池では、前記負極板は、通常、負極集電体及び負極集電体に設けられる負極活物質層を含み、負極活物質層は、負極活物質を含む。
【0083】
前記負極集電体は、通常の金属箔又は複合集電体を採用することができ、例えば金属材料を高分子基材に設けて複合集電体を形成することができる。例として、負極集電体は、銅箔を採用することができる。
【0084】
慣用の負極活物質は、人工グラファイト、天然グラファイト、ハードカーボン材料、ソフトカーボン、シリコン系材料及びスズ系材料のうちの1つ又は複数を含むが、これらに限定されない。前記シリコン系材料は、ケイ素単体、一酸化ケイ素などのシリコン酸素化合物、シリコン炭素複合体、シリコン窒素複合体及びシリコン合金のうちの1つ又は複数から選択することができる。前記スズ系材料は、スズ単体、酸化スズ化合物及びスズ合金のうちの1つ又は複数から選択することができる。これらの材料としては、全て市販のものを購入することができる。幾つかの実施形態において、電池のエネルギー密度を更に高めるために、前記負極活物質は、シリコン系材料を含む。
【0085】
セパレータ
幾つかの実施形態において、二次電池には、セパレータが更に含まれる。本願において、セパレータの種類について特に制限しておらず、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造のセパレータを選択することができる。
【0086】
幾つかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1つから選択することができる。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に制限されない。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は、同じであってもよく、又は異なってもよく、特に制限されない。
【0087】
電解液
二次電池は、電解液を含むことができ、電解液は、正極と負極の間においてイオンを伝導する役割を果たす。前記電解液は、電解質塩及び溶媒を含むことができる。
【0088】
例として、電解質塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)、リチウムビスオキサラトボレート(LiBOB)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、リチウムジフルオロジオキサラトホスフェート(LiDFOP)及びリチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート(LiTFOP)のうちの1つ又は複数から選択することができる。
【0089】
例として、前記溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの1つ又は複数から選択することができる。
【0090】
幾つかの実施形態において、電解液には、添加剤が更に含まれる。例えば、添加剤は、負極成膜添加剤を含むことができ、正極成膜添加剤を含むこともでき、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤などの電池の特定の性能を改善可能な添加剤を含むこともできる。
【0091】
幾つかの実施形態において、本願の二次電池は、リチウムイオン二次電池である。
【0092】
当分野で通常の方法により二次電池を製造することができ、例えば、正極板、セパレータ、負極板を順に巻き付け(又は積層し)、隔離の役割を果たすようにセパレータを正極板と負極板の間に介在させ、セルを得て、セルを外装体に置き、電解液を注入して開口を封止し、二次電池を得る。
【0093】
本願の実施例において、二次電池の形状は、特に制限されず、円柱形、方形又は他の任意の形状であってもよい。
図1は、一例としての方形構造を有する二次電池5である。
【0094】
幾つかの実施例において、二次電池は、外装体を含むことができる。当該外装体は、正極板、負極板及び電解液をパッケージングするために用いられる。
【0095】
幾つかの実施例において、
図2を参照し、外装体は、ケース51及び蓋板53を含むことができる。そのうち、ケース51は、底板及び底板に接続される側板を含むことができ、底板と側板は収容室を形成するように囲まれている。ケース51は、収容室に連通する開口を有し、蓋板53は、前記収容室を密閉するように、前記開口を覆うことができる。
【0096】
正極板、負極板及びセパレータは、巻付けプロセス又は積層プロセスによって電極組立体52を形成することができる。電極組立体52は、前記収容室内にパッケージングされる。電解液は、電極組立体52に浸潤する。二次電池5に含まれる電極組立体52の数は、1つ又は複数であってもよく、ニーズに応じて調節することができる。
【0097】
幾つかの実施例において、二次電池の外装体は、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウム製ケース、鋼製ケースなどの硬質ケースであってもよい。二次電池の外装体は、例えば袋式ソフトパックなどのソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、プラスチックであってもよく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0098】
幾つかの実施例において、二次電池は、電池モジュールに組み立てることができ、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよく、具体的な数は、電池モジュールの適用及び容量に応じて調節することができる。
【0099】
図3は、一例としての電池モジュール4である。電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に配列されて設けられてもよい。勿論、他の任意の形態で配列されてもよい。更に、締結部材によって当該複数の二次電池5を固定してもよい。
【0100】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングを更に含むことができ、複数の二次電池5は、当該収容空間に収容される。
【0101】
幾つかの実施例において、上記電池モジュールは、更に電池パックに組み立てることができ、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの適用及び容量に応じて調節することができる。
【0102】
図4及び
図5は、一例としての電池パック1である。電池パック1には、電池ボックス及び電池ボックスに設けられる複数の電池モジュール4を含むことができる。電池ボックスは、上部ボックス2及び下部ボックス3を含み、上部ボックス2は、下部ボックス3を覆い、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方法に応じて電池ボックスに配列することができる。
【0103】
電力消費装置
本願は、前記二次電池、電池モジュール又は電池パックのうちの少なくとも1つを含む電力消費装置を更に提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記装置の電源として使用されてもよく、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして使用されてもよい。前記装置は、携帯電話、ノートパソコンなどの移動機器、又は二次電池式電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなどの電動車両、電気車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含むことができるが、これらに限定されない。
【0104】
前記装置としては、その使用上のニーズに応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0105】
図6は、装置の一例である。当該電力消費装置6は、二次電池式電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。当該装置の二次電池に対する高出力及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0106】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどであってもよい。当該装置は、通常、軽量化・薄型化を要求しており、二次電池を電源として採用することができる。
【0107】
以下、実施例に合わせて本願の有益な効果を更に説明する。
【0108】
具体的な実施例
本願が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有益な効果をより明らかにするために、以下、実施例及び図面に合わせて更に詳細に説明する。明らかに、説明される実施例は、本願の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。以下、少なくとも1つの例示的な実施例についての説明は、実際には単に説明のためのものであり、本願及びその適用に対して一切制限しない。本願における実施例に基づき、当業者が創造的な努力をしない前提で得られた全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0109】
本願の実施例において使用される材料は、全て市販のものを購入することができる。
【0110】
一、正極活物質の製造及び性能試験
1.正極活物質の製造
正極活物質1~5
S1において、リチウムリッチマンガン系前駆体を溶媒に均一に分散させ、続いてそれぞれモリブデン塩(モリブデン酸アンモニウム)及びランタン塩(硝酸ランタン)を溶媒に溶解して溶液とした。
【0111】
S2において、水浴条件でステップS1におけるモリブデン塩(モリブデン酸アンモニウム)及びランタン塩(硝酸ランタン)溶液を前駆体の分散液に滴下して溶液のpHを9に調節し、続いて溶液を常温で4h撹拌した後に反応器に移し、100~200℃で8~12h水熱反応させ、反応器が室温まで冷却した後、モリブデン塩とランタン塩で生成されたモリブデン酸ランタン(La2Mo2O9)を前駆体の表面にin situ堆積した。
【0112】
S3において、ステップS2で得られた前駆体生成物を脱イオン水で洗浄して真空乾燥した後、リチウム塩(炭酸リチウム)とボールミルで混合し、まず300~500℃で2h仮焼成し、その後に700~900℃で10~20h高温焼結し、室温まで自然冷却し、表面が被覆されたリチウムリッチマンガン系正極材料を得た。リチウムリッチマンガン系正極材料の表面に酸素イオン伝導体La2Mo2O9及びリチウムイオン伝導体LiLaO2とLi2MoO4の複合被覆層が被覆されている。具体的なパラメータは、表1に示す通りである。
【0113】
説明:表1におけるLi/Meは、ステップS3で加えられたリチウム塩(炭酸リチウム)におけるリチウム元素とステップS3で加えられた前駆体生成物における全ての金属元素のモル比を指す。ステップS3で加えられた前駆体生成物における全ての金属元素の物質の量は、元素試験により得ることができることが理解される。
【0114】
2.正極活物質の性能試験
1)コア材料の分子構造及びDv50粒径試験。
Dv50は、体積分布における50%に対応する粒度寸法を指す。例として、Dv50は、GB/T 19077-2016粒度分布レーザ回折法を参照し、英国Malvern Instruments社製のMastersizer 2000E型レーザ粒度分析計などのレーザ粒度分析計を採用して容易に測定することができる。
【0115】
2)モリブデン及びランタンのコア材料へのドープ厚さ試験:表1においてドープ厚さと略称する。
モリブデン及びランタンのコア材料へのドープ厚さは、公知のイオン研磨断面(CP)に基づく元素面スキャン及びラインスキャン分析により特徴付けることができる。
【0116】
3)被覆層のLa:Moのモル比試験、La及びMoの含有量試験、IO2
2-/IO2-試験。
被覆層のLa:Moのモル比、La及びMoの含有量試験は、それぞれ公知のエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を採用して面スキャン分析を行い、且つ誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP-AES)を採用して試験分析を行うことができる。IO2
2-/IO2-は、公知のX線光電子分光(XPS)を採用して分析することができ、IO2
2-は、X線光電子分光試験における531eVの酸素空孔のピーク強度値であり、IO2-は、X線光電子分光試験における529eVの格子酸素に対応するピーク強度値である。
【0117】
正極活物質1~5の一部の原料及び性能試験の結果は、下記表1に示す通りである。
【0118】
被覆層の厚さは、全ての被覆層の総厚さである。
【0119】
【0120】
コア材料1~5は、それぞれ0.35Li2MnO3・0.65LiNi0.46Co0.08Mn0.46O2、0.35Li2MnO3・0.65LiNi0.45Co0.08Mn0.46Mg0.01O2、0.35Li2MnO3・0.65LiNi0.45Co0.08Mn0.46Al0.01O2、0.35Li2MnO3・0.65LiNi0.45Co0.08Mn0.46Ti0.01O2、0.35Li2MnO3・0.65LiNi0.45Co0.08Mn0.46V0.01O2である。
【0121】
実施例6:
リチウムリッチマンガン系正極材料の0.35Li2MnO3・0.65LiNi0.45Co0.08Mn0.46Al0.01O2及び酸素イオン伝導体のLa2Mo2O9及びリチウムイオン伝導体のLiLaO2を固相混合し、混合完了後、空気雰囲気において400℃で2h仮焼成し、その後に800℃で12h保温し、変性後のリチウムリッチマンガン系正極材料を得た。
【0122】
実施例7~13において、表2に示すように各原料の組成を変更する以外、実施例6と同じ製造方法を採用した。
【0123】
正極活物質6~13の性能試験の結果は、下記表2に示す通りである。
【0124】
【0125】
二、正極板の製造
正極板1~13
上記正極活物質1~13、導電性カーボンブラック(SP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を質量比96.8:2.2:1で混合し、N-メチルピロリドン(NMP)に溶解し、スラリーを混合した後に正極スラリーを得て、正極スラリーを幅400mmのアルミニウム箔に塗布してベーキングし、冷間プレスし、裁断して正極板を得た。
【0126】
三、電池の製造
1.正極板:上記で製造された正極板1~13を使用した。
2.セパレータ:ポリエチレン(PE)多孔質高分子膜をセパレータとして使用した。
3.負極板:グラファイト、バインダのスチレンブタジエンゴム(SBR)、バインダのポリアクリル酸(PAA)、分散剤(CMC-Na)及び導電性カーボンブラック(Super-P,SP)、カーボンナノチューブ(CNT)を95%:2%:1%:1%:0.7%:0.3%の重量比で適量の脱イオン水において十分に撹拌して混合し、負極スラリーとして製造した。更に、負極スラリーを厚さ6μmの銅箔に塗布し、乾燥及び冷間プレスを行って負極活物質層を形成し、負極板として裁断した。
4.電解液:エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を3:6:1の体積比で混合した後、十分に乾燥されたリチウム塩(LiPF6)を1mol/Lの割合で有機溶媒に溶解して混合した。所望の電解液を得た。
5.全電池の組み立て:上記正極板、セパレータ、負極板を順に積層し、隔離の役割を果たすように正負極の間に介在させ、巻き付けてベアセルを得た。ベアセルを外装体のアルミニウム製ケースに置き、上記製造された電解液を高温ベーキング後の乾電池に注入し、真空パッケージング、静置、化成、整形などのプロセスを経て、リチウムイオン二次電池1~13を得て、表3に示す通りである。
【0127】
四、電池性能の評価
各電池1~13の性能評価は、いずれも以下の方法により実施される。
【0128】
1.初回放電効率
注液後の電池1~13を45℃の条件で0.02Cの定電流で3.4Vまで充電し、5min静置してから、0.1Cで3.75Vまで定電流充電し、容量をZ1と記録し、続いて排気及び二次パッケージングを行い、二次パッケージング後の電池を25℃の条件に置き、0.33Cで4.5Vまで定電流充電し、0.02Cまで定電圧充電し、5分間静置し、容量をZ2と記録し、続いて0.33Cで2.0Vまで放電し、容量をD1と記録した。
【0129】
初回効率の計算式は、初回効率=D1/(Z1+Z2)である。
【0130】
2.放電容量の試験
25℃の恒温環境で、2.0V~4.5Vで、0.33Cで4.5Vまで充電し、続いて4.5Vで電流が0.05Cとなるまで定電圧充電し、5min静置し、続いて0.33Cで2.0Vまで放電し、0.33Cの放電率での当該リチウムイオン電池の容量の具体的な結果(即ち0.33Cの放電容量)を記録し、5min静置し、0.33Cで4.5Vまで充電し、続いて4.5Vで電流が0.05Cとなるまで定電圧充電し、5min静置し、続いて0.5Cで2.0Vまで放電し、0.5Cの放電率での当該リチウムイオン電池の容量の具体的な結果(即ち0.5Cの放電容量)を記録した。
【0131】
3.サイクル性能の試験:
1)25℃の恒温環境で、1回目の充電及び放電を行い、上限電圧が4.46Vに達するまで、0.5C(即ち、2時間以内に理論容量を完全に放電する電流値)の充電電流で定電流及び定電圧充電を行い(電流が0.05Cとなるまで充電する)、5分間静置した後、最終電圧が2.3Vとなるまで、0.5Cの放電電流で定電流放電を行い、初回サイクルの放電容量を記録し、その後、充放電サイクルを連続的に行う。
【0132】
25℃において500clsフル電気で循環した場合の容量維持率、即ち500サイクル目の容量維持率=(500サイクル目の放電容量/初回サイクルの放電容量)×100%。
【0133】
2)45℃の恒温環境で、1回目の充電及び放電を行い、上限電圧が4.46Vに達するまで、0.5C(即ち、2時間以内に理論容量を完全に放電する電流値)の充電電流で定電流及び定電圧充電を行い(電流が0.05Cとなるまで充電する)、5分間静置した後、最終電圧が2.3Vとなるまで、0.5Cの放電電流で定電流放電を行い、初回サイクルの放電容量を記録し、その後、充放電サイクルを連続的に行う。
【0134】
45℃において500clsフル電気で循環した場合の容量維持率、即ち500サイクル目の容量維持率=(500サイクル目の放電容量/初回サイクルの放電容量)×100%。
【0135】
【0136】
表3から分かるように、比較例1における正極活物質の被覆層に酸素イオン伝導体を含有せず、比較例2の被覆層にリチウムイオン伝導体を含有せず、各実施例における正極活物質の被覆層は、酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体を同時に含有し、比較例に比べれば、各実施例で製造された二次電池は、好ましい初回放電効率、サイクル性能及び倍率性能を同時に有する。
【0137】
更に、実施例1~5及び実施例6~11から分かるように、実施例1~5において特定の種類の酸素イオン伝導体とリチウムイオン伝導体を相乗的に採用し、製造された二次電池は、より良好な初回放電効率、サイクル性能及び倍率性能を同時に有することができる。
【0138】
以上の記載は、本願の具体的な実施形態に過ぎず、本願の保護範囲はこれに限定されず、当業者が本願に開示された技術範囲内で様々な等価の修正や置換を容易に想到でき、これらの修正や置換は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるものとする。従って、本願の保護範囲は、特許請求の範囲による保護範囲を基準とするものである。
【符号の説明】
【0139】
1 電池パック
2 上部ボックス
3 下部ボックス
4 電池モジュール
5 二次電池
51 ケース
52 電極組立体
53 蓋板
6 電力消費装置
【手続補正書】
【提出日】2024-01-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムリッチマンガン系正極材料を含むコア材料と、
前記コア材料の外面に被覆され、酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体を含む被覆層と、
を含むことを特徴とする正極活物質。
【請求項2】
前記酸素イオン伝導体は、La
2Mo
2O
9及び蛍石型酸素イオン伝導体のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記蛍石型酸素イオン伝導体は、ZrO
2、CeO
2及びGeO
2のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記リチウムイオン伝導体は、LiLaO
2、Li
2MoO
4、Li
3PO
4、Li
3BO
3及びLiTaO
3のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記酸素イオン伝導体はLa
2Mo
2O
9を含み、前記リチウムイオン伝導体はLiLaO
2及びLi
2MoO
4を含むことを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記被覆層におけるランタン原子とモリブデン原子のモル比は、1:(1.02~1.1)であり、選択的に1:(1.02~1.05)であることを特徴とする請求項5に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記被覆層におけるモリブデン原子の含有量は300~5000ppmであり、及び/又は、
前記被覆層におけるランタン原子の含有量は500~5000ppmであることを特徴とする請求項
5に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記被覆層におけるモリブデン原子の含有量は1000~4000ppmであり、及び/又は、
前記被覆層におけるランタン原子の含有量は1000~3000ppmであることを特徴とする請求項
5に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記コア材料の表面にランタン原子及びモリブデン原子がドープされていることを特徴とする請求項
5に記載の正極活物質。
【請求項10】
前記コア材料にランタン原子及びモリブデン原子がドープされている表面の厚さは、3μm以下であり、選択的に2μm以下であることを特徴とする請求項9に記載の正極活物質。
【請求項11】
前記被覆層の厚さは0.01~4μmであることを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項12】
前記被覆層の厚さは0.02~1μmであることを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項13】
前記被覆層におけるIO
2
2-/IO
2-のピーク強度比は、0.5~1であり、選択的に0.7~0.9であり、
IO
2
2-は、X線光電子分光試験における531eVの酸素空孔のピーク強度値であり、IO
2-は、X線光電子分光試験における529eVの格子酸素に対応するピーク強度値であることを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項14】
前記リチウムリッチマンガン系正極材料の分子式は、xLi
2MnO
3・(1-x)LiNi
yCo
zMn
aM
1-y-z-aO
2であり、
ただし、0<x<1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦a≦1、0<y+z+a≦1であり、Mは、Mg、B、Al、V、Ti、Zr、Sn及びMoのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項15】
前記リチウムリッチマンガン系正極材料の粒子タイプは、二次粒子、単結晶又は擬似単結晶であり、及び/又は、
前記リチウムリッチマンガン系正極材料の比表面積は、<2.0m
2/gであり、選択的に0.1~1m
2/gであり、
前記リチウムリッチマンガン系正極材料のDv50粒径は、1~20μmであり、選択的に3~15μmであることを特徴とする請求項1~
3の何れか一項に記載の正極活物質。
【請求項16】
請求項
1に記載の正極活物質の製造方法であって、
前記コア材料の表面に前記被覆層を形成するステップを含むことを特徴とする正極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記酸素イオン伝導体はLa
2Mo
2O
9を含み、前記リチウムイオン伝導体はLiLaO
2及びLi
2MoO
4を含み、前記製造方法は、
モリブデン塩、ランタン塩及びリチウムリッチマンガン系前駆体を溶媒で混合し、且つ100~200℃で8~12h水熱反応させ、表面にLa
2Mo
2O
9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体を得るステップと、
前記表面にLa
2Mo
2O
9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体とリチウム塩を混合した後、焼成処理を行い、酸素イオン伝導体及びリチウムイオン伝導体により複合被覆された正極活物質を得るステップと、を含むことを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記リチウムリッチマンガン系前駆体は、Ni
bCo
cMn
dM
(1-b-c-d)(OH)
2であり、
ただし、0<b<0.4、0≦c≦0.05、0.6≦d<1であり、Mは、Mg、B、Al、V、Ti、Zr、Sn及びMoのうちの少なくとも1つであることを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記溶媒は、水、エタノール、メタノール及びエチレングリコールのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記モリブデン塩は、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム及びモリブデン酸カリウムのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記ランタン塩は、塩化ランタン及び硝酸ランタンのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記リチウム塩は、炭酸リチウム、水酸化リチウム及び酢酸リチウムのうちの少なくとも1つであり、及び/又は、
前記リチウム塩におけるリチウム元素と前記表面にLa
2Mo
2O
9がin situ堆積されたリチウムリッチマンガン系前駆体における全ての金属元素のモル比は、1:(1.1~1.8)であり、選択的に1:(1.1~1.5)であり、及び/又は、
前記水熱反応のpH値は8~10であり、及び/又は、
前記焼成処理の雰囲気は空気であり、及び/又は、
前記焼成処理のステップは、まず300~500℃で2~5h仮焼成し、続いて700~900℃で10~20h焼結することを含むことを特徴とする請求項17~18の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
正極集電体と、
前記正極集電体の表面に位置し、その成分が請求項
1に記載の正極活物
質を含む正極活物質層と、
を含むことを特徴とする正極板。
【請求項21】
請求項20に記載の正極板を含むことを特徴とする二次電池。
【請求項22】
請求項21に記載の二次電池を含むことを特徴とする電力消費装置。
【国際調査報告】