(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】内室を備える圧力容器及び圧力容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
F17C 1/06 20060101AFI20240719BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240719BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F17C1/06 ZAB
B32B27/00 H
B32B27/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503723
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 DE2022100474
(87)【国際公開番号】W WO2023001328
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】102021118904.7
(32)【優先日】2021-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594102418
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer-Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D-80686 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,ヘンニング
(72)【発明者】
【氏名】シャッケル,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヨングブロード,フィリップ
【テーマコード(参考)】
3E172
4F100
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB05
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC04
3E172CA22
3E172DA90
4F100AK01
4F100AK01A
4F100BA02
4F100BA07
4F100DG01
4F100DG01B
4F100DH01
4F100DH01B
4F100GB16
4F100JB16
4F100JB16A
4F100JK06
(57)【要約】
本発明は、特に水素貯蔵用の、内室(30)を有する圧力容器(1)に関し、強化繊維(16)及び熱可塑性プラスチックマトリクス(18)を含んだ複合材料ユニット(14、22、26)を有するか、又は強化繊維(16)及び熱可塑性プラスチックマトリクス(18)を含んだ複合材料ユニット(14、22、26)からなる容器壁(12)を備え、複合材料ユニット(14、22、26)は、強化繊維(16)が連続繊維として、特に非破壊的に取り外し可能なように配置及び構成されることにより、複合材料ユニットが再利用され得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に水素貯蔵用の、内室(30)を有する圧力容器(1)であって、
・強化繊維(16)及び熱可塑性ポリママトリクス(18)を有する複合材料ユニット(14、22、26)を備えるか、又は強化繊維(16)及び熱可塑性ポリママトリクス(18)を有する複合材料ユニット(14、22、26)からなる容器壁(12)を備え、
・前記複合材料ユニット(14、22、26)は、前記強化繊維(16)が連続繊維として、特に非破壊的に取り外し可能なように配置及び構成されることにより、前記複合材料ユニットが再利用され得る、
圧力容器(1)。
【請求項2】
前記複合材料ユニット(14、22、26)は、前記強化繊維(16)を含む前記熱可塑性プラスチックマトリクス(18)が取り外し可能なように配置及び構成される、請求項1に記載の圧力容器(1)。
【請求項3】
・前記複合材料ユニット(14、22、26)は、配置始端から配置終端(20、24、28)まで延び、
・前記配置終端(20、24、28)に隣接する前記複合材料ユニット(14、22、26)の脱離部(34)は、脱離可能に配置及び/又は構成される、
先行する請求項のうちいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項4】
前記脱離部(34)は、前記複合材料ユニット(14、22、26)の前記内室(30)に対する側に低強度の脱離層(38)を備える、先行する請求項3に記載の圧力容器(1)。
【請求項5】
前記脱離部(34)は、前記複合材料ユニット(14、22、26)の固着部の接着強度よりも前記脱離部(34)の接着強度、特にせん断強度が低くなるように部分的に固着される、先行する請求項3又は4に記載の圧力容器(1)。
【請求項6】
・前記脱離部(34)は、脱離延長部を伴って前記配置終端(20、24、28)から延び、
・前記脱離延長部の長さは、1mm超、2mm超、5mm超、10mm超、及び/又は100mm未満、50mm未満、25mm未満、15mm未満、10mm未満である、
先行する請求項3から5のうちいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項7】
・各々が配置終端(20、24、28)を有する2以上、好ましくは複数の複合材料ユニット(14、22、26)を備え、さらに/あるいは、
・前記複合材料ユニット(14、22、26)は、複合材料ウェブ、特に加工済みプリプレグである、
先行する請求項のうちいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項8】
・筒周方向(U)を有する円筒状容器部(10)を備え、
・第1の複合材料ユニット(14、22、26)は、前記円筒状容器部(10)の前記筒周方向(U)に沿って配置され、第2の複合材料ユニット(14、22、26)は、前記筒周方向(U)に対して角度をなして、特に直交して配置される、
先行する請求項のうちいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項9】
前記配置終端(20、24、28)の50%超、75%超、90%超、特に95%超は、前記円筒状容器部(10)の領域内に配置される、先行する請求項7又は8に記載の圧力容器(1)。
【請求項10】
前記配置終端(20、24、28)は、前記圧力容器(1)の容器表面(13)に沿って実質的に均等に分布する、先行する請求項のうちいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項11】
前記内室(30)を形成する中空体(32)、特にライナを備え、前記1つの複合材料ユニット(14、22、26)又は前記複数の複合材料ユニット(14、22、26)は、前記中空体(32)の外側に配置される、先行する請求項のうちいずれか一項に記載の圧力容器(1)。
【請求項12】
特に水素を貯蔵するための、内室(30)を有する圧力容器(1)、特に先行する請求項1から11のうちいずれか一項に記載の圧力容器(1)を製造するための方法であって、
・強化繊維(16)及び熱可塑性プラスチックマトリクス(18)を含む複合材料ユニット(14、22、26)で容器壁(12)を製造するステップを有し、
・前記複合材料ユニット(14、22、26)は、前記強化繊維(16)が連続繊維として、特に非破壊的に取り外し可能なように配置及び構成される、
方法。
【請求項13】
前記複合材料ユニット(14、22、26)は、配置終端(20、24、28)を有し、
・圧力容器(1)上の配置終端(20、24、28)の配置終端位置を検出するステップと、
・前記配置終端位置を特徴付けるデータを生成及び提供するステップと
を有する、先行する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複合材料ユニット(14、22、26)は、配置方向に配置され、
・前記複合材料ユニット(14、22、26)の前記配置方向を検出するステップと、
・前記配置方向を特徴付けるデータを生成及び提供するステップと
を有する、先行する請求項12又は13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
・前記配置終端位置を特徴付けるデータに基づいて、さらに/あるいは前記配置方向を特徴付けるデータに基づいて、前記圧力容器のデジタルイメージを生成するステップを有する、先行する請求項13又は14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
各々が配置終端(20、24、28)を有する複数の複合材料ユニット(14、22、26)は、好ましくは隣接する複数の配置終端(20、24、28)が互いに隣り合わせに配置される、先行する請求項12から15のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
圧力容器のデジタルイメージ用のコンピュータに実行される方法であって、
・圧力容器形状寸法、配置終端位置、配置方向、前記圧力容器の製造中に検出される製造パラメータ及び/又は機械パラメータを特徴付けるデータを受信するステップと、
・前記圧力容器形状寸法、前記配置終端位置、前記配置方向、前記圧力容器の製造の際に検出される前記製造パラメータ及び/又は機械パラメータを特徴付ける前記データに基づいて前記デジタルイメージを生成するステップと
を有する、方法。
【請求項18】
命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがプロセッサ(52)によって実行されると、請求項17に記載のコンピュータに実行される方法のステップを前記プロセッサに実行させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項19】
請求項18に記載の前記コンピュータプログラム製品が保存されるコンピュータ可読データ記憶キャリア。
【請求項20】
請求項17に記載のコンピュータに実行される方法によって取得される圧力容器のデジタルイメージを特徴付けるデータ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に水素貯蔵用の、内室を有する圧力容器に関し、特に水素貯蔵用の、内室を有する圧力容器、特にリサイクル可能な圧力容器を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力容器が一般的に知られている。圧力容器は異なるタイプに分類される。第1類型は、固体金属の圧力容器に関する。第2類型は、円筒形状のコンテナ部分の強度を増すために繊維で巻回された金属ライナを有する圧力容器に関する。ライナは、一般的に圧力容器の内室を形成する中空体として理解される。第3類型は、強度を増すために基本的に完全に繊維で巻回された金属ライナを有する圧力容器に関する。第4類型は、強度を増すために完全に繊維で巻回されたプラスチックライナを有する圧力容器に関する。第5類型は、ライナを有することなく、繊維を巻くことによって容器壁を完全に形成した圧力容器に関する。
【0003】
圧力容器は、様々な用途や様々な大きさで使用される。車両用の代替的駆動技術の重要性が増していることにより、圧力容器はますます移動用途に利用され、又はガスの輸送に使用されている。移動用途及び輸送のための高い安全性の要求を満たすために、繊維強化壁を有する圧力容器が主としてこれらの用途に使用されている。さらに、繊維複合材料強化壁を有する圧力容器は一般的に軽量であるという利点を提供するので、移動用途及び輸送用の非常に長距離の航続が可能な車両が実現可能となる。さらに、繊維複合材料強化壁を備えた圧力容器が高強度であることにより、高密度のエネルギ貯蔵が可能となるので、燃料タンクとして利用されるそのような圧力容器を備えた車両は、長い航続距離を有する。
【0004】
そのような方法で製造され得る圧力容器は多数なので、リサイクル可能性が最も重要である。これまで、熱硬化性繊維複合プラスチックで作られる圧力容器は、例えば確立された方法で容易に製造できるので、主として水素用途に利用されてきた。熱硬化性繊維複合材料で作られた圧力容器は、一度硬化されると再成形するのは一般的に不可能である。
【0005】
そのような圧力容器のリサイクルプロセスは、基本的に少なくとも部分的には機械的に、熱的に、さらに/あるいは化学的に材料を破壊するものに基本的に限られている。特に1つの可能性としては、圧力容器をハンマーミル又はグラニュレータ内で機械的に破砕し、例えば細断することが考えられる。リサイクル材料の品質と均質性は、機械的な細断によって通常劣化する、というのも、繊維が不均一な形態で長さが短くなって存在しているためである。
【0006】
熱的リサイクルプロセスは、エネルギ回収のための材料の焼却と熱分解によるマトリクスプラスチックの分解とを含んでいる。マトリクスプラスチックはこれらの方法により基本的に完全に溶解する。当初の状態と比較して繊維の特性は損なわれており、このことは、これらの繊維は要求水準の低い用途にしか使用できないことを意味する。
【0007】
化学的リサイクルプロセスにおいては、マトリクスプラスチックは溶媒を用いた加溶媒分解によって除去される。必要とされるエネルギは熱的リサイクルプロセスに比べれば低いものの、この方法にはコストのかかる反応炉と触媒とが必要とされる。
【0008】
熱硬化性繊維複合材料の使用の代替案は、異なる特性を有する熱可塑性繊維複合材料の使用である。熱可塑性繊維複合材料からなるコンポーネントもまた、通常細断によってリサイクルされるが、結果として生じる材料の機械的特性は、出発材料と比較して損なわれている。
【0009】
DE 10 2016 117 559 A1には、熱可塑性繊維複合材料をリサイクルするための方法及び装置が記載されている。この方法は、コンポーネントから一層ごとに熱可塑性繊維複合材料を除去してリサイクル材料として取得することによる熱可塑性繊維複合材料のリサイクル方法を提供している。この方法はまた、分離を促進するために繊維複合材料を加熱することを含み得る。この方法を用いる際は、層状に貼り付けられた多数の繊維複合材料を有するコンポーネントに多大な時間がかかることが示されている。特に、手の届きづらい表面あるいは高度に湾曲した表面における開始プロセスは、限られた範囲でしか自動化できない。特に、リサイクルに要求される時間と人手による労力は、この方法の効率性を減じている。
【0010】
DE 10 2017 220 882 A1には、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂で作られた強化材を有する圧力容器が記載されている。文献「Christ, Timo Klaus: Dissertation. Computational and experimental investigations into the failure behavior of CFRP-wrapped cryogenic pressure vessels. Technische Universitaet Muenchen zur Erlangung des akademischen Grades eines Doktor-Ingenieurs (Dr.-Ing.): 28.11.2017 URL:https://mediatum.ub.tum.de/doc/1366807/1366807.pdf [2022年4月1日取得]」には、圧力容器の様々な製作方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、上述した不都合のうちの1つ以上を減ずるか又は排除する、特に水素貯蔵用の、内室を有する圧力容器、及び、内室を有する圧力容器を製造する方法を提供することである。特に、本発明の目的は、低コストで圧力容器のリサイクルを可能にする解決策を提供することである。さらに、本発明の目的はリサイクル可能な圧力容器の選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、独立請求項の特徴による圧力容器及び方法によって解決される。これらの態様のさらなる利点を有する実施形態は、各従属請求項において提供される。特許請求の範囲及び明細書中に個別に列挙した特徴は、あらゆる技術的に適切な方法で互いに組み合わせることができ、これにより本発明のさらなる実施形態が示される。
【0013】
第1の態様によれば、強化繊維及び熱可塑性マトリクスを有する複合材料ユニットを有するか又は強化繊維及び熱可塑性マトリクスを有する複合材料ユニットからなる容器壁を備える、内室を有する圧力容器によって課題が解決される。複合材料ユニットは、強化繊維が連続繊維として特に非破壊的に取り出し可能であるように配置及び構成されているので、複合材料ユニットは再利用され得る。
【0014】
本発明は、熱可塑性繊維複合材料の再利用性又はリサイクル可能性をコンポーネント特有のリサイクル特性によって向上させ得るとの知見に基づいている。特に、複合材料ユニットの強化繊維が連続繊維として取り外され得るように配置及び構成されている複合材料ユニットを有する圧力容器によって、上述の多大な時間を要し、手が届きづらいか、あるいは高度に湾曲した表面での開始プロセスの自動化が限られているということが低減され得る。
【0015】
さらに、本発明は、そのような圧力容器を使用することによってリサイクル効率を増大させ得るとの認識に基づいている。本発明者らは、リサイクルプロセスに必要とされる機械的な力及び高温が、そのような圧力容器を使用することによって低減され得るということを発見した。さらに、化学的リサイクルプロセスのための反応炉を設ける必要もない。
【0016】
圧力容器は高品質なリサイクルを可能にする。この圧力容器から回収され得るリサイクル材料は、連続繊維の半製品から高品質な製品を製造するために再利用され得る。このことにより、圧力容器のライフサイクルの終了時に得られるリサイクル済み材料が既存の製造プロセスにおいて再利用可能となり、材料生産においてエネルギとコストとが節約される。そのように構成された圧力容器又は圧力容器に備えられた複合材料ユニットは、有利にリサイクル可能又は再利用可能である。なぜなら、特に、複合材料ユニットの固体構造、強化繊維を除去すること及び熱可塑性マトリクスを少なくとも部分的に取り外すことによって分解し得るからである。
【0017】
新たな半製品の材料特性の類似点が存在することにより、循環型経済という意味での繊維強化プラスチックの使用が初めて可能となる。特に、そのように設計され、下記でより詳細に述べられる圧力容器を、その耐用期間の終わりにリサイクルすることができ、処理された材料を再利用することができる。
【0018】
本圧力容器は、特に流体、好ましくはガス、特に水素、好ましくは液化ガス、特に液化水素を貯蔵するための再利用可能な圧力容器である。圧力容器は内室を有しており、この内室は特に水素貯蔵用、好ましくは液化水素貯蔵用に構成されている。また、内室は空洞として理解され得る。内室は、流体を充填又は流出させることのできる1,2又はそれより多くの数の開口を有していてよい。
【0019】
本圧力容器は容器壁を備えている。容器壁は、内室を少なくとも部分的に取り囲んでいる。容器壁は、好ましくは100バール以上、200バール以上、350バール以上あるいは700バール以上の公称圧力を許容するように配置及び構成されている。以下でより詳細に述べる中空体は、容器壁と内室との間に配置することができる。容器壁は、複合材料ユニットを備えるか又は複合材料ユニットから構成されている。
【0020】
複合材料ユニットは、強化繊維及び熱可塑性マトリクスを有している。複合材料ユニットは、例えば熱可塑性プラスチックテープであり得る。複合材料ユニットは、例えばテープ及び/又はフィラメントの形態で構成された複合材料テープであってよい。さらに、複合材料ユニットの強化繊維及び熱可塑性マトリクスは、圧力容器を製造する際にそれぞれ独立して供給されて相互に接着させることができる。
【0021】
強化繊維は、例えばカーボン繊維又はガラス繊維であり得る。カーボン繊維及びガラス繊維は、熱可塑性樹脂マトリクスの溶融温度でも熱的に安定であるという利点を有する。さらに、当業者に知られたポリマ繊維のような他の強化繊維もまた適用することができる。複合材料ユニットは、特に連続繊維を含む加工された熱可塑性連続繊維半製品である。熱可塑性連続繊維半製品の連続繊維は、好ましくは単一方向に配置及び/又は整列される。さらに、熱可塑性連続繊維半製品の連続繊維の単一方向配置及び/又は配向から逸脱した追加の繊維配向も提供され得る。熱可塑性連続繊維半製品はUDテープとも呼ばれる。複合材料ユニットは、好ましくは30%超、40%超、特に50%超の繊維体積を含有するのが望ましい。
【0022】
複合材料ユニットは、強化繊維が連続繊維として取り外し可能なように配置及び構成されている。このことにより、強化繊維は取り外された後もほとんど完全に高品質の状態で存在し得る。連続繊維は、特に50mm超、100mm超、1m超、10m超、100m超、又は1000m超の長さを有するような強化繊維として理解される。強化繊維が連続繊維として取り外し可能であるということは、例えば、強化繊維が基本的に非破壊的に取り外され得ることを意味し得る。
【0023】
複合材料ユニットが再利用可能ということは、特に、強化繊維と、場合によっては熱可塑性マトリクスとが、後に再利用され得るように取り外され得るということを意味する。このことは、再利用されるために複合材料ユニットを巻回すること又はマトリクス材料をそれに加えることを含んでよい。
【0024】
さらに、強化繊維とプラスチックマトリクスとが基本的に取り外し可能であるように、複合材料ユニットが取り外し可能に配置されるのが望ましい。特に、プラスチックマトリクスが強化繊維とともに完全に、あるいは部分的に非破壊的に取り外し可能であって、複合材料ユニット自体が実質的に非破壊的に取り外し可能となるのが望ましい。基本的に非破壊的に取り外し可能とは、例えば、取り外された後に強化繊維の20%超、30%超、40%超又は50%超が連続繊維として存在することを意味する。
【0025】
また、圧力容器は天然ガスを貯蔵するように構成することもできる。また、圧力容器は圧縮空気を貯蔵するように構成することもできる。さらに、圧力容器は道路、鉄道、航空での移動用途、あるいは定置型の用途及び輸送用もまた目的とされるのが望ましい。
【0026】
複合材料ユニットは、例えば積層ワインディングプロセスを用いて容器壁へと加工され得る。積層ワインディングプロセスにおいては、複合材料ユニットの層が、巻回中に、すなわちインサイチュで、あるいはその後、あるいはそのいずれの場合においても固着され得る。また、強化繊維及びプラスチックマトリクスは、コンポーネントの製造中に複合材料ユニットを形成するために結合され得る。
【0027】
圧力容器の好ましい実施形態は、強化繊維入り熱可塑性マトリクスが取り外し可能なように複合材料ユニットが配置及び構成されているということによって特徴付けられる。そのように構成された圧力容器は、複合材料ユニットが基本的に非破壊的に取り外し可能であるので、例えば、圧力容器のようなコンポーネントを製造するために複合材料ユニットが巻回されて再度使用され得る、という利点を有する。したがって強化繊維とプラスチックマトリクスとを必ずしも分離する必要はない。結果的に、圧力容器の特に高効率なリサイクルが可能であり、取り外された複合材料ユニットの再処理にはほとんど労力が必要とされない。
【0028】
特に、複合材料ユニットの強化繊維とプラスチックマトリクスとの良好な接着は、複合材料ユニットの取り外しに有利な影響をもたらす。
【0029】
圧力容器のさらに好ましい実施形態は、複合材料ユニットが配置始端から配置終端まで延びており、複合材料ユニットの配置終端に近接する脱離部が取り外し可能に配置及び/又は構成されているという形態を提供する。
【0030】
特に、複合材料ユニットは、最初に配置始端に配置され、次いで配置始端と配置終端との間の部分に配置され、最後に配置終端に配置される。例えば、巻回された圧力容器の場合においては、配置始端は巻き始めであり、配置終端は巻き終わりである。配置始端は、圧力容器の半径方向において配置終端よりも内室から短い距離にあることが好ましい。
【0031】
特に、脱離部は、非破壊的に脱離可能なように配置及び/又は構成されている。特に、脱離部は、例えば別の複合材料ユニット、同じ複合材料ユニット、又は中空体であり得る基材から脱離可能に配置及び/又は構成されている。特に、脱離可能に配置及び/又は構成されているとは、脱離部が複合材料ユニットの他の部分よりも少ない力及び/又は少ない労力で基材から脱離可能であることを意味する。
【0032】
脱離部が規定されることにより、複合材料ユニットがより容易につかみやすくなり、そのことにより複合材料ユニットの脱離がより容易になる。特に、有利に手の届きやすい巻き付け領域は機械的及び/又は熱的に影響を受けやすい。
【0033】
圧力容器のさらに好ましい実施形態においては、脱離部が複合材料ユニットの内室に対面する側に強度を弱めた脱離層を有するという形態が提供される。
【0034】
リリース層は、例えば、複合材料ユニットの材料とは異なる材料からなるか、又は複合材料ユニットの材料とは異なる材料を含んでいてよい。リリース層の材料は、例えばプラスチックであってよい。さらに、中間層は、複合材料ユニットのマトリクス材料含有量よりもマトリクス材料含有量が多い繊維複合材料を含むか、又はそのような繊維複合材料から構成され得る。さらに、リリース層が、例えばナノ粒子及び/又は短繊維などの追加的な要素を含んでいるのが好ましい。
【0035】
圧力容器のさらなる好ましい実施形態においては、脱離部が部分的に固着されているので、脱離部の接着強度、特にせん断強度が複合材料ユニットの固着部の接着強度よりも弱い脱離形態が提供される。脱離部の部分的な固着は、例えば圧力容器の製造の際に、より低温で、より低圧力で、さらに/あるいはより高速で処理することによって構成することができる。
【0036】
部分的に固着された脱離部の接着強度は、好ましくは5MPaから30MPaまでの間、例えば20MPaであってよく、固着された部分の接着強度は、好ましくは30MPaから80MPaまでの間、例えば50MPaであってよい。接着強度、好ましくはせん断強度は、特に基材に対する脱離部の強度に関するものである。
【0037】
基材は、例えば、脱離部の下に位置する別の複合材料ユニットの部分、又は同一の複合材料ユニットの部分である。そのように構成された脱離部は、製造中に直接形成することができ、追加の加工ステップ及び/又は材料は基本的に不要である。
【0038】
圧力容器のさらなる好ましい実施形態は、脱離部が配置終端から脱離延長部を伴って延びており、脱離延長部が1mm超、2mm超、5mm超、10mm超、及び/又は100mm未満、50mm未満、25mm未満、15mm未満、10mm未満であることによって特徴付けられる。
【0039】
さらに、圧力容器は、それぞれ配置終端を有する2つ以上、好ましくは複数の複合材料ユニットを備えているのが好ましい。単一の複合材料ユニットの長さは、例えば100mから2000mであってよい。特に、圧力容器は、5から15、例えば10の複合材料ユニットを備えているのが好ましい。したがって、好ましくは20から150の層、特に50から100の層が、互いに重なり合って構成されていてよい。複合材料ユニットは複合材料ウェブであることがさらに好ましい。
【0040】
圧力容器のさらなる好ましい実施形態においては、圧力容器は、筒周方向を有する円筒状容器部を備えており、第1の複合材料ユニットが容器部の筒周方向に沿って配置されており、さらに/あるいは第2の複合材料ユニットが筒周方向に対してある角度をなして、特に垂直に配置されている。
【0041】
筒周方向に沿うということは、特に第1の複合材料ユニットが主として延びる方向又は長さ方向が筒周方向に対して基本的に平行に整列されていることを意味する。基本的にとは、例えば、第1の複合材料ユニットの主として延びる方向又は長さ方向と筒周方向との間の角度のずれが15度未満、10度未満、5度未満、2.5度未満存在することを意味し得る。また、このずれは巻回角度によって定義されてよく、10度の角度のずれは巻回角度80度に相当する。第2の複合材料ユニットは、例えば交差層及び/又は局所的強化層であってよい。
【0042】
好ましくは、圧力容器は第1のドーム部を有している。さらに、圧力容器は第2のドーム部を有しているのが好ましい。好ましくは、筒状の容器部は、第1のドーム部と第2のドーム部との間に配置されている。圧力容器の好ましい実施形態においては、第2の複合材料ユニットが円筒状容器部、第1のドーム部、及び第2のドーム部の周りに巻き付けられている形態が提供される。
【0043】
圧力容器のさらに好ましい実施形態によれば、配置終端の50%超、75%超、90%超、特に95%超が、円筒状容器部の領域内に配置されている形態が提供される。
【0044】
円筒状容器部の領域内とは、特に配置終端が円筒状容器部に隣接しており、特に、配置終端がドーム部の領域内に配置されていないことを意味する。したがって、配置終端は、複合材料ユニットの取り外しのために手がより届きやすく、さらに、配置終端は、通常はドーム部に存在している複雑な応力状態と形状変化とを呈する位置の外側に位置することになる。
【0045】
さらに、配置終端は、圧力容器の容器表面に沿って、さらに/あるいは円筒状容器部において、実質的に均等に分布しているのが好ましい。実質的に均等に分布しているとは、例えば、配置終端が基本的に、容器表面の方向において互いに均等に離間していることを意味する。特に配置終端が、容器表面上、特に円筒状容器部において異なる位置に配置されているのが好ましい。
【0046】
圧力容器のさらに好ましい実施形態によれば、圧力容器は内室を形成する中空体、特にライナを備えており、1つの複合材料ユニット又は複数の複合材料ユニットが中空体の外側に配置され、さらに/あるいは複合材料ユニットが下面で中空体の外側に面している形態が提供される。そのような圧力容器は特に低コストで製造可能である。
【0047】
さらなる態様によれば、冒頭で述べた課題は、圧力容器、特に流体、例えば水素、好ましくは液化水素を貯蔵するための内室を有する、特にリサイクル可能な圧力容器、特に上記で述べた実施形態のうちの1つによる圧力容器の製造方法であって、強化繊維及び熱可塑性マトリクスを含む複合材料ユニットを用いて容器壁を製造するステップを有し、複合材料ユニットは強化繊維が非破壊的に取り外し可能なように配置及び構成されている、圧力容器の製造方法によって解決される。
【0048】
特に、本方法は積層ワインディング方法である。好ましくは、本方法は、複合材料ユニットに力及び/又は熱を加えることによるインサイチュでの固着を含んでいる。さらに、積層ワインディング方法は、複合材料ユニットの部分的な固着を含んでいてよく、部分的に固着された複合材料ユニットは、以後に固着される。以後の固着は、例えば熱的影響のある超過圧力雰囲気内、特にオートクレーブ内で行われ得る。
【0049】
本方法の好ましい実施形態は、複合材料ユニットが配置終端を有し、本方法は、圧力容器上の配置終端の配置終端位置を検出するステップと、配置終端位置を特徴付けるデータを生成及び提供するステップとを有する形態を提供する。配置終端の配置終端位置は、例えば、圧力容器上の基準点に対して決定され得る。
【0050】
脱離部は、配置終端に近接して構成されるのが好ましい。特に、脱離部は、結合強度が低くなるように部分的に固着されるのが好ましい。
【0051】
さらに好ましくは、本方法は、複合材料ユニットが配置される方向を設計するための経路設計を実行するステップを有している。
【0052】
さらに好ましくは、本方法は、温度、圧力、テープ特性及び/又は固着特性を検出し、上記で述べたうちの1又は2以上のパラメータを特徴付けるデータを生成及び提供するステップを有している。
【0053】
本方法のさらに好ましい実施形態は、複合材料ユニットがある配置方向で配置され、複合材料ユニットの配置方向を検出するステップと、配置方向を特徴付けるデータを生成及び提供するステップとを有する形態を提供する。配置方向は、繊維方向又は繊維配向と少なくとも実質的に等しい。配置方向及び/又は配置終端位置を特徴付けるデータは、例えばCAD及び/又はCAMシステムに提供され得る。
【0054】
好ましくは、圧力容器は、複数の配置終端位置及び/又は複数の配置方向を有しており、本方法は、配置終端位置及び/又は配置方向を特徴付けるデータを生成及び提供するステップを含んでいる。
【0055】
本方法のさらに好ましい実施形態は、配置終端位置又は配置位置を特徴付けるデータに基づいて、さらに/あるいは配置方向又は複数の配置方向を特徴付けるデータに基づいて、圧力容器のデジタルイメージを生成するステップを含んでいる。さらに、デジタルイメージは、圧力容器の圧力容器形状寸法を特徴付けるデータに基づいて生成され得る。そのようなデジタルイメージはデジタルツインとも呼ばれ得る。特に、デジタルイメージは、圧力容器の形状寸法、1又は2以上の寸法及び/又は最終的な配置位置を表している。さらに、デジタルイメージは、1又は2以上の配置方向を表し得る。
【0056】
さらに、本方法は、所定の配置方向が実現されるように圧力容器を位置合わせするステップを含んでいるのが好ましい。
【0057】
本方法のさらに好ましい実施形態によれば、複数の複合材料ユニットはそれぞれ1つの配置終端に配置され、好ましくは隣接する配置終端が互いに隣り合わせに配置される。
【0058】
さらなる態様によれば、冒頭で述べた課題は、圧力容器のデジタルイメージ用のコンピュータに実行される方法であって、圧力容器形状寸法、配置終端位置、配置方向、圧力容器の製造中に記録される製造パラメータ及び/又は機械パラメータを特徴付けるデータを受信するステップと、圧力容器形状寸法、配置終端位置、配置方向、圧力容器の製造中に記録される製造パラメータ及び/又は機械パラメータを特徴付けるデータに基づいてデジタルイメージを生成するステップとを有する方法によって解決される。
【0059】
さらなる態様によれば、冒頭で述べた課題は、命令を含むコンピュータプログラム製品であって、プログラムがプロセッサによって実行されると、前述の態様において述べた態様によるコンピュータに実行される方法のステップをプロセッサに実行させる、コンピュータプログラム製品によって解決される。
【0060】
コンピュータに実行される方法は、好ましくはプロセッサを備えるデバイスによって実行され、さらにデバイスは、特にトランシーバとメモリとを含んでいる。プロセッサは、論理デバイス、IC、ASCI、FPGA、演算処理装置などのハードウェアモジュールを含み得る。プロセッサは、CPU又はマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラの形態の集積回路であり得る。
【0061】
ハードウェアモジュールはさらにメモリを含み得る。メモリは不揮発性メモリであり得る。メモリは、メモリによってプロセッサ及び/又はトランシーバから受信するデータを保存するように適合され得る。メモリは、上記で述べた態様によるコンピュータプログラム製品を保存し得る。トランシーバは、コンピュータ、モバイルデバイス、ローカル又は外部ネットワーク及び/又はクラウドにデータを送信するように、さらに/あるいは、コンピュータ、モバイルデバイス、ローカル又は外部ネットワーク及び/又はクラウドからデータを受信するように適合されたインタフェースであり得る。
【0062】
さらなる態様によれば、冒頭で述べた課題は、前述の態様において言及した態様によるコンピュータプログラム製品が保存されるコンピュータ可読データキャリアによって解決される。
【0063】
さらなる態様によれば、冒頭で述べた課題は、前述の態様において言及した態様によるコンピュータに実行される方法によって得られる圧力容器のデジタルイメージによって解決される。
【0064】
本方法とその考えられる実施形態は、先行する態様において説明された圧力容器の製造における使用に本方法とその考えられる実施形態が特に適するように作用する特徴又は方法ステップを有する。方法ステップは、コンピュータに実行される方法におけるコンピュータに実行される方法ステップとして部分的に又は完全に実行され得る。
【0065】
さらなる態様及びその考えられる実施形態のさらなる利点、実施形態及び実施形態の詳細については、圧力容器の対応する特徴及び実施形態の先行する説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
好ましい実施形態は、例示として添付の図面を参照して説明される。
【
図1】
図1は、圧力容器の例示的な実施形態を示す模式的な二次元図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す圧力容器の詳細を示す模式的な二次元断面図である。
【
図3】
図3は、脱離部の詳細を示す模式的な二次元図である。
【
図4】
図4は、プロセッサを含むデバイスの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図において、同一又は本質的に機能的に同一又は類似の要素には同一の符号が付されている。
【0068】
図1に示される圧力容器1は、長さ方向Lにおいて第1の容器端部2から第2の容器端部4まで延びている。第1の容器端部2に隣接して、圧力容器1は第1のドーム部6を有し、第2の容器端部4に隣接して、圧力容器1は第2のドーム部8を有している。圧力容器1は、第1のドーム部6と第2のドーム部8との間に円筒状容器部10を有している。
【0069】
図2に示される圧力容器1は内室30を有しており、内室30は実質的に容器壁12によって囲まれている。ここでは、容器壁は、3つの例示的な複合材料ユニット14、22、26の配置を説明するため模式的にのみ示されている。
【0070】
第1の複合材料ユニット14は、円筒状容器部10の筒周方向Uに沿って整列されている。第2の複合材料ユニット22及び第3の複合材料ユニット26は、第1の複合材料ユニット14に対してある角度をなして配置されている。
【0071】
典型的には、実質的に容器壁12の全体は複合材料ユニット14、22、26によって構成されている。円筒状容器部10は、第1の複合材料ユニット14によって少なくとも部分的に構成されている。第1の複合材料ユニット14は、いずれも概略的に示されている強化繊維16、特に連続強化繊維と、熱可塑性樹脂マトリクス18とを含んでいる。第1の複合材料ユニット14は、強化繊維16が非破壊的に取り外し可能なように配置及び構成されている。
【0072】
第1の複合材料ユニット14は、第1の配置終端20から第1の配置始端まで延びている。圧力容器1の製造の際は、第1の複合材料ユニット14は、第1の配置始端から始まって配置されており、そして筒状の容器部10に巻き付けられている。第1の複合材料ユニット14の最後に配置される端部は、第1の配置終端20である。
【0073】
第2の配置終端24を有する第2の複合材料ユニット22は、ドーム部6、8及び円筒状容器部10に巻き付けられる交差層として構成されている。第3の配置終端28を有する第3の複合材料ユニット26は、ドーム部6の大きな応力のかかる領域における局所的強化層として構成されている。
【0074】
図2は圧力容器1の詳細図を示しており、長さ方向Lは、図の面に対して直交して方向付けられており、筒周方向Uは、第1の複合材料ユニット14が主として延びる方向に沿って方向付けられている。複合材料ユニット14、22、26が中空体32上に配置されているのが分かる。中空体32はライナとも呼ばれる。中空体32は圧力容器1の形成に必ずしも不可欠ではない。例えば、第5類型として構成された圧力容器1は中空体32を持たない。
【0075】
さらに、第1の配置終端20の具体的な構成が図示される。第1の複合材料ユニット14の脱離部34は、第1の配置終端20に隣接している。特に、脱離部34は、非破壊的な方法で脱離され得るように配置及び構成されている。
【0076】
脱離部34は、第1の配置終端20から端部36まで延びている。脱離層38は、脱離部34と下層の複合材料ユニットとの間に配置されている。脱離層38は、例えば、脱離部34と下層の基材、特に複合材料ユニットとの間の堅固な結合を防止し、あるいは結合強度を弱めるプラスチックであり得る。
【0077】
図3は脱離部34の詳細図を示しており、複合材料ユニット14の緩み端部35が脱離層38上に配置されている。脱離層38に加えて、又は脱離層38の代わりに、脱離部34が部分的に固着される構成が提供されてもよい。
【0078】
図4は、圧力容器1のデジタルイメージ用のコンピュータに実行される方法を実行するデバイス50を示しており、この方法は、圧力容器形状寸法、配置終端位置、配置方向、圧力容器1の製造中に記録される製造パラメータ及び/又は機械パラメータを特徴付けるデータを受信するステップと、圧力容器1の製造中に記録される圧力容器形状寸法、配置終端位置、配置方向、製造パラメータ及び/又は機械パラメータを特徴付けるデータに基づいてデジタルイメージを生成するステップとを有する。この目的のために、デバイス50は、コンピュータに実行される方法のステップを実行するためのプロセッサ52を含んでいる。メモリ54は、プロセッサ及び/又はトランシーバ56からメモリ54によって受信されたデータを保存するように適合され得る。
【0079】
図5は、例示的な方法の模式図を示している。ステップ100において、容器壁12が強化繊維16及び熱可塑性樹脂マトリクス18を含んだ複合材料ユニット14、22、26で形成される。複合材料ユニット14、22、26は、強化繊維16が非破壊的に取り外し可能なように配置及び構成されている。
【0080】
実質的には同時に、ステップ102において、圧力容器1上の配置終端20、24、28の各々の配置終端位置が検出される。ステップ104において、配置終端位置を特徴付けるデータが生成及び提供される。
【0081】
ステップ106において、また好ましくは上述したステップのうちの1つ以上と並行して、複合材料ユニット14、22、26の配置方向が検出され、配置方向を特徴付けるデータが生成及び提供される。ステップ108において、さらなる複合材料ユニットが、好ましくは容器壁12の所望の厚さを生成するように配置される。
【0082】
上記で説明した圧力容器1には、特に簡単な方法でリサイクル可能であるという際立った利点がある。複合材料ユニット14、22、26が、連続繊維としての強化繊維16と、おそらく熱可塑性プラスチックマトリクスとが非破壊的に取り外し可能なように配置及び構成されているということによって、複合材料ユニット14、22、26は、非常に簡単な方法で圧力容器1から取り外され得る。
【0083】
このことは、圧力容器1のリサイクルに要求される時間を大幅に減少させ、人手による必要な労力を減少させるので、自動化の度合いを高めることができる。特に、脱離部34の形態での脱離可能な配置終端20、24、28を設けたことにより、リサイクルの容易な圧力容器1が実現可能となる。さらに、配置終端20、24、28をキャプチャして設けることにより、圧力容器1のリサイクルの際にデータメモリから配置終端20、24、28の位置を提供できる可能性もある。
【符号の説明】
【0084】
1 圧力容器
2 第1の容器端部
4 第2の容器端部
6 第1のドーム部
8 第2のドーム部
10 容器の円筒部
12 容器壁
13 容器表面
14 第1の複合材料ユニット
16 強化繊維
18 熱可塑性マトリクス
20 第1の配置終端
22 第2の複合材料ユニット
24 第2の配置終端
26 第3の複合材料ユニット
28 第3の配置終端
30 内室
32 中空体
34 脱離部
35 複合材料ユニットの緩み端部
36 端部
38 脱離層
50 デバイス
52 プロセッサ
54 メモリ
56 トランシーバ
L 長さ方向
U 筒周方向
【手続補正書】
【提出日】2024-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内室(30)を有する圧力容器(1)であって、
・強化繊維(16)及び熱可塑性ポリママトリクス(18)を有する複合材料ユニット(14、22、26)を備えるか、又は強化繊維(16)及び熱可塑性ポリママトリクス(18)を有する複合材料ユニット(14、22、26)からなる容器壁(12)を備え、
・前記複合材料ユニット(14、22、26)は、前記強化繊維(16)が連続繊維として、特に非破壊的に取り外し可能なように配置及び構成されることにより、前記複合材料ユニットが再利用され得る、
圧力容器(1)。
【請求項2】
・前記複合材料ユニット(14、22、26)は、前記強化繊維(16)が非破壊的に取り外し可能なように配置及び構成されることにより、前記複合材料ユニットが再利用され得る、
請求項1に記載の圧力容器(1)。
【請求項3】
前記複合材料ユニット(14、22、26)は、前記強化繊維(16)を含む前記熱可塑性
ポリママトリクス(18)が取り外し可能なように配置及び構成される、請求項1に記載の圧力容器(1)。
【請求項4】
・前記複合材料ユニット(14、22、26)は、配置始端から配置終端(20、24、28)まで延び、
・前記配置終端(20、24、28)に隣接する前記複合材料ユニット(14、22、26)の脱離部(34)は、脱離可能に配置及び/又は構成される、
先行する請求項
1に記載の圧力容器(1)。
【請求項5】
前記脱離部(34)は、前記複合材料ユニット(14、22、26)の前記内室(30)に対する側に低強度の脱離層(38)を備える、先行する請求項
4に記載の圧力容器(1)。
【請求項6】
前記脱離部(34)は、前記複合材料ユニット(14、22、26)の固着部の接着強度よりも前記脱離部(34)の接着強
度が低くなるように部分的に固着される、先行する請求項
4又は
5に記載の圧力容器(1)。
【請求項7】
前記脱離部(34)は、前記複合材料ユニット(14、22、26)の固着部のせん断強度よりも前記脱離部(34)のせん断強度が低くなるように部分的に固着される、先行する請求項6に記載の圧力容器(1)。
【請求項8】
・前記脱離部(34)は、脱離延長部を伴って前記配置終端(20、24、28)から延び、
・前記脱離延長部の長さは、1mm
超又は100mm未
満である、
先行する請求項
4に記載の圧力容器(1)。
【請求項9】
・各々が配置終端(20、24、28)を有する2以
上の複合材料ユニット(14、22、26)を備え
、あるいは、
・前記複合材料ユニット(14、22、26)は、複合材料ウェ
ブである、
先行する請求項
1に記載の圧力容器(1)。
【請求項10】
前記複合材料ユニット(14、22、26)は、加工済みプリプレグである、
先行する請求項9に記載の圧力容器(1)。
【請求項11】
・筒周方向(U)を有する円筒状容器部(10)を備え、
・第1の複合材料ユニット(14、22、26)は、前記円筒状容器部(10)の前記筒周方向(U)に沿って配置され、第2の複合材料ユニット(14、22、26)は、前記筒周方向(U)に対して角度をなし
て配置される、
先行する請求項
9に記載の圧力容器(1)。
【請求項12】
前記第2の複合材料ユニット(14、22、26)は、前記筒周方向(U)に対して直交して配置される、
先行する請求項11に記載の圧力容器(1)。
【請求項13】
前記配置終端(20、24、28)の50%
超は、前記円筒状容器部(10)の領域内に配置される、先行する請求
項11に記載の圧力容器(1)。
【請求項14】
前記配置終端(20、24、28)は、前記圧力容器(1)の容器表面(13)に沿って実質的に均等に分布する、先行する請求項
9に記載の圧力容器(1)。
【請求項15】
前記内室(30)を形成する中空体(32
)を備え、前記1つの複合材料ユニット(14、22、26)又は前記
2以上の複合材料ユニット(14、22、26)は、前記中空体(32)の外側に配置される、先行する請求項
9に記載の圧力容器(1)。
【請求項16】
内室(30)を有する圧力容器(1
)を製造するための方法であって、
・強化繊維(16)及び熱可塑性プラスチックマトリクス(18)を含む複合材料ユニット(14、22、26)で容器壁(12)を製造するステップを有し、
・前記複合材料ユニット(14、22、26)は、前記強化繊維(16)が連続繊維とし
て取り外し可能なように配置及び構成される、
方法。
【請求項17】
前記複合材料ユニット(14、22、26)は、前記強化繊維(16)が非破壊的に取り外し可能なように配置及び構成される、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複合材料ユニット(14、22、26)は、配置終端(20、24、28)を有し、
・
前記圧力容器(1)上の配置終端(20、24、28)の配置終端位置を検出するステップと、
・前記配置終端位置を特徴付けるデータを生成及び提供するステップと
を有する、先行する請求項
16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記複合材料ユニット(14、22、26)は、配置方向に配置され、
・前記複合材料ユニット(14、22、26)の前記配置方向を検出するステップと、
・前記配置方向を特徴付けるデータを生成及び提供するステップと
を有する、先行する請求項
16又は
17に記載の方法。
【請求項20】
・前記配置終端位置を特徴付けるデータに基づいて
、前記圧力容器のデジタルイメージを生成するステップを有する、先行する請求項
18に記載の方法。
【請求項21】
・前記配置方向を特徴付けるデータに基づいて、前記圧力容器のデジタルイメージを生成するステップを有する、先行する請求項19に記載の方法。
【請求項22】
各々が配置終端(20、24、28)を有する複数の複合材料ユニット(14、22、26)
が配置される、先行する請求項
16又は17に記載の方法。
【請求項23】
隣接する複数の前記配置終端(20、24、28)が互いに隣り合わせに配置される、先行する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
圧力容器のデジタルイメージ用のコンピュータに実行される方法であって、
・圧力容器形状寸法、配置終端位置、配置方向、前記圧力容器の製造中に検出される製造パラメータ及び/又は機械パラメータを特徴付けるデータを受信するステップと、
・前記圧力容器形状寸法、前記配置終端位置、前記配置方向、前記圧力容器の製造の際に検出される前記製造パラメータ及び/又は機械パラメータを特徴付ける前記データに基づいて前記デジタルイメージを生成するステップと
を有する、方法。
【請求項25】
命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムがプロセッサ(52)によって実行されると、請求項
24に記載のコンピュータに実行される方法のステップを前記プロセッサに実行させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項26】
請求項
25に記載の前記コンピュータプログラム製品が保存されるコンピュータ可読データ記憶キャリア。
【請求項27】
請求項
24に記載のコンピュータに実行される方法によって取得される圧力容器のデジタルイメージを特徴付けるデータ構造。
【国際調査報告】