(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】コア-シェル構造の金属ナノワイヤ
(51)【国際特許分類】
B22F 1/17 20220101AFI20240719BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240719BHJP
B22F 1/062 20220101ALI20240719BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20240719BHJP
B22F 9/00 20060101ALI20240719BHJP
H01B 5/00 20060101ALI20240719BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20240719BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B22F1/17
B22F1/00 L
B22F1/062
B22F1/05
B22F9/00 B
H01B5/00 H
H01B5/00 C
H01B1/00 C
H01B1/00 H
H01B1/22 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503737
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 KR2022010629
(87)【国際公開番号】W WO2023003359
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2021-0094841
(32)【優先日】2021-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0089004
(32)【優先日】2022-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502235773
【氏名又は名称】バイオニア コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】パク ハン オ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジェ ハ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュン ピョ
(72)【発明者】
【氏名】ユン ク ジン
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5G301
5G307
【Fターム(参考)】
4K017AA06
4K017AA08
4K017BA05
4K017CA04
4K017CA07
4K017DA01
4K017DA07
4K018BA02
4K018BB02
4K018BB04
4K018BC22
4K018BD04
4K018KA33
5G301DA03
5G301DA06
5G301DA29
5G301DA32
5G301DA42
5G301DA47
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5G301DA59
5G301DA60
5G301DD01
5G301DE01
5G307AA02
(57)【要約】
本発明は、導電性および透明性の特性を有するとともに酸化安定性に優れ、本発明の金属ナノワイヤを用いた二次加工工程後にも優れた酸化安定性を維持することができるコア-シェル構造の金属ナノワイヤに関する。詳細には、本発明に係るコア-シェル構造の金属ナノワイは、銅を含有するコア、および前記コア上に銀を含有するシェルを含み、コアの直径(D)とシェルの厚さ(L)との比(D/L)が10~60であり、シェルの厚さが5~40nmであり、X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d5/2のピーク強度(I1)と銅のCu 2p3/2のピーク強度(I2)が下記式1を満たすことを特徴とする。
(式1)
I2/I1≦0.2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含有するコア、および前記コア上に銀を含有するシェルを含み、
前記コアの直径(D)とシェルの厚さ(L)との比(D/L)が10~60であり、シェルの厚さが5~40nmであり、X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d
5/2のピーク強度(I
1)と銅のCu 2p
3/2のピーク強度(I
2)が下記式1を満たすことを特徴とする、コア-シェル構造の金属ナノワイヤ。
(式1)
I
2/I
1≦0.2
【請求項2】
前記金属ナノワイヤの直径は110~500nmであり、アスペクト比は5~100である、請求項1に記載のコア-シェル構造の金属ナノワイヤ。
【請求項3】
前記金属ナノワイヤのコアの直径は100~400nmである、請求項2に記載のコア-シェル構造の金属ナノワイヤ。
【請求項4】
前記銀のAg 3d
5/2のピークは、金属性銀(Ag
0)のピークからなる、請求項1に記載のコア-シェル構造の金属ナノワイヤ。
【請求項5】
前記コアに含有される銅酸化物(CuO)の含量は、コア全体の重量の2重量%以下である、請求項1に記載のコア-シェル構造の金属ナノワイヤ。
【請求項6】
前記金属ナノワイヤは、シェルに含有される銀の(111)結晶面のFWHMがコアに含有される銅の(111)結晶面のFWHMよりも大きい、請求項1に記載のコア-シェル構造の金属ナノワイヤ。
【請求項7】
前記金属ナノワイヤは、250℃以上の酸化開始温度を有する、請求項1に記載のコア-シェル構造の金属ナノワイヤ。
【請求項8】
前記X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d
5/2のピーク強度(I
1)と銅のCu 2p
3/2のピーク強度(I
2)が下記式2を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のコア-シェル構造の金属ナノワイヤ。
(式2)
I
2/I
1≦0.05
【請求項9】
前記金属ナノワイヤを含む厚さ8μmの導電性フィルムにおいて、前記導電性フィルムの初期比抵抗値に対する、前記導電性フィルムを60%の相対湿度および180℃の温度条件下で10日間放置した後に測定された比抵抗値の比を百分率で示した比抵抗変化率が103%以下である、請求項1に記載のコア-シェル構造の金属ナノワイヤ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のコア-シェル構造の金属ナノワイヤを含むペースト組成物。
【請求項11】
前記ペースト組成物は、バインダーをさらに含む、請求項10に記載のペースト組成物。
【請求項12】
前記バインダーは、有機バインダーまたはセラミックバインダーである、請求項11に記載のペースト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア-シェル構造の金属ナノワイヤに関し、詳細には、コア上に均一かつ薄く形成されたシェルによりコア金属の酸化を効果的に防止することができ、耐久性が著しく向上したコア-シェル構造の金属ナノワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の導電性材料である酸化インジウムスズ(ITO)、導電性高分子、カーボンナノチューブ、グラフェンなどを代替し、かつ、導電性と透明性を同時に改善させるために、銅、銀、ニッケル、インジウムなどの導電性金属をナノ単位の大きさに小さくして代替品として適用している。
【0003】
中でも、銅ナノワイヤは、高い導電率、柔軟性、および透明性と低価格などの利点を有しており、ディスプレイに主に用いられていた酸化インジウムスズ(ITO)を代替できる物質として浮上している。特に、銅ナノワイヤは、透明な導体であるという特徴を有するため、低放射率ウィンドウ、タッチ感受性調節パネル、太陽電池、および電磁波遮蔽物質など、非常に様々な用途に用いることができる。
【0004】
しかし、銅ナノワイヤは、長時間空気中にさらされると、酸化現象が発生して銅酸化物が形成され、このような酸化現象は、温度が高くなるにつれてより速く進行するため、このような銅酸化物は、純粋な銅に比べて電気伝導性が著しく低下する。したがって、銅と酸素との接触を物理的および/または化学的に完全に遮断することができない場合、電気的特性の劣化によりその使用が限定されるしかない。
【0005】
このような銅酸化物の生成を防止するために、大韓民国登録特許10-1991964号は、コア-シェル構造を有するナノワイヤを提供しているが、依然として酸化防止のためのナノワイヤ上にコーティングされたシェルの品質均一性や、ナノワイヤを用いた二次加工時のナノワイヤの切断によるコア金属の露出などの問題から銅酸化物の生成の可能性が大きいという問題を抱えている。
【0006】
そこで、優れた導電性を有するとともに酸化安定性に優れ、構造的に安定し、二次加工後にも酸化安定性を維持することができる、耐久性が向上した金属ナノワイヤが開発される必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-1991964号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、導電性および透明性の特性を有するとともに酸化安定性に優れたコア-シェル構造の金属ナノワイヤを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、本発明のコア-シェル構造の金属ナノワイヤを用いることで、二次加工時にも酸化安定性が維持され、耐久性が向上したコア-シェル構造の金属ナノワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るコア-シェル構造の金属ナノワイヤは、銅を含有するコア、およびコア上に銀を含有するシェルを含み、コアの直径(D)とシェルの厚さ(L)との比(L/D)が10~60であり、シェルの厚さが5~40nmであり、X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d5/2のピーク強度(I1)と銅のCu 2p3/2のピーク強度(I2)が下記式1を満たすことを特徴とする。
【0011】
(式1)
I2/I1≦0.2
【0012】
本発明の一実施形態に係る金属ナノワイヤにおいて、金属ナノワイヤの直径は110~500nmであり、アスペクト比は5~100であってもよい。
本発明の一実施形態に係る金属ナノワイヤにおいて、金属ナノワイヤのコアの直径は100~400nmであってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態に係る金属ナノワイヤにおいて、X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d5/2のピークは、金属性銀(Ag0)のピークからなってもよい。
本発明の一実施形態に係る金属ナノワイヤにおいて、コアに含有される銅酸化物(CuO)の含量は、コア全体の重量の2重量%以下であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る金属ナノワイヤにおいて、金属ナノワイヤは、シェルに含有される銀の(111)結晶面のFWHMがコアに含有される銅の(111)結晶面のFWHMよりも大きくてもよい。
本発明の一実施形態に係る金属ナノワイヤにおいて、金属ナノワイヤは、250℃以上の酸化開始温度を有してもよい。
【0015】
本発明の一実施形態に係る金属ナノワイヤにおいて、前記X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d5/2のピーク強度(I1)と銅のCu 2p3/2のピーク強度(I2)が下記式2を満たしてもよい。
【0016】
(式2)
I2/I1≦0.05
【0017】
本発明の一実施形態に係る金属ナノワイヤにおいて、金属ナノワイヤを含む厚さ8μmの導電性フィルムにおける、前記導電性フィルムの初期比抵抗値に対する、前記導電性フィルムを60%の相対湿度および180℃の温度条件下で10日間放置した後に測定された比抵抗値の比を百分率で示した比抵抗変化率が103%以下であってもよい。
【0018】
本発明は、他の一態様として、前述したコア-シェル構造の金属ナノワイヤを含むペースト組成物を提供する。
【0019】
本発明の一実施形態に係るペースト組成物において、ペースト組成物は、バインダーをさらに含んでもよい。
本発明の一実施形態に係るペースト組成物において、バインダーは、有機バインダーまたはセラミックバインダーであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るコア-シェル構造の金属ナノワイヤは、酸化に弱いコア上に薄くかつ均一に形成されたシェルによりコア上で発生し得る酸化反応を効果的に抑制することができ、構造的に安定した形状を有し、金属ナノワイヤを用いた二次加工工程後にも優れた酸化安定性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例1で合成された走査型電子顕微鏡写真である。
【
図2】実施例2で合成された走査型電子顕微鏡写真である。
【
図3】実施例3で合成された走査型電子顕微鏡写真である。
【
図4】比較例1で合成された走査型電子顕微鏡写真である。
【
図5】比較例2で合成された走査型電子顕微鏡写真である。
【
図6】実施例1、実施例2、および比較例1で合成された試料の熱重量分析(TGA)の分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明のコア-シェル構造の金属ナノワイヤを詳細に説明する。以下に紹介される図面は、当業者に本発明の思想が十分に伝わるように例として提供されるものである。したがって、本発明は、以下に提示される図面に限定されず、他の形態で具体化されてもよく、以下に提示される図面は、本発明の思想を明確にするために誇張して示されてもよい。この際、用いられる技術用語および科学用語は、特に定義しない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付図面において、本発明の要旨を不要に曖昧にする恐れがある公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0023】
また、明細書および添付された特許請求の範囲で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。
本明細書および添付された特許請求の範囲において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書に記載された特徴または構成要素が存在することを意味し、特に限定しない限り、1つ以上の他の特徴または構成要素が付加される可能性を予め排除するものではない。
【0024】
本発明の一態様に係るコア-シェル構造の金属ナノワイヤは、銅を含有するコア、およびコア上に銀を含有するシェルを含み、コアの直径(D)とシェルの厚さ(L)との比(D/L)が10~60であり、シェルの厚さが5~40nmであり、X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d5/2のピーク強度(I1)と銅のCu 2p3/2のピーク強度(I2)が下記式1を満たすことを特徴とする。
【0025】
(式1)
I2/I1≦0.2
【0026】
銅を含有するコアは、銅が空気中にさらされると酸化され、電気的特性が低下し得るという欠点があり、このような欠点は、従来のように銅を含有するコア上に銀を含有するシェルを含むコア-シェル構造で緩和させることができるが、コア上にコーティングされたシェルの品質均一性が一定ではないため、コアに含有された銅が外部に露出し、依然として金属ナノワイヤの表面で電気的特性を低下させ得る銅酸化物が生成される可能性が存在する。
【0027】
これに対し、本発明のコア-シェル構造の金属ナノワイヤは、コア-シェル構造において、コアの直径(D)とシェルの厚さ(L)との比(D/L)が10~60であり、シェルの厚さが5~40nmであり、X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d5/2のピーク強度(I1)と銅のCu 2p3/2のピーク強度(I2)が前記式1を満たしており、銅を含有するコア上に薄くかつ均一に形成された銀を含有するシェルにより銅を含むコアが外部にほぼ露出しないため、著しく優れた酸化安定性を有することができる。
【0028】
一実施形態において、X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d5/2のピーク強度(I1)と銅のCu 2p3/2のピーク強度(I2)との比(I2/I1)は0.2以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.05以下、さらに好ましくは0.03以下であってもよく、0.001以上であってもよい。
【0029】
X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d5/2のピーク強度(I1)と銅のCu 2p3/2のピーク強度(I2)との比(I2/I1)が0.2超過である場合、コア-シェル構造の金属ナノワイヤにおいて、外部に露出した銅が酸化され、金属ナノワイヤの酸化安定性が低下し得るため、X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d5/2のピーク強度(I1)と銅のCu 2p3/2のピーク強度(I2)との比(I2/I1)は、前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0030】
一具体例として、X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d5/2のピークは、金属性銀(Ag0)のピークからなってもよい。
詳細には、本発明のコア-シェル構造の金属ナノワイヤにおいて、金属ナノワイヤに含まれ、コア上に位置する銀を含有するシェルは、酸化されていない銀、すなわち、Ag2O、AgO、Ag2O2などの酸化銀ではなく、金属性銀(Ag)を含有するものとして、優れた電気伝導度特性を有することができる。一例として、シェルに含有された銀の酸化度は1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.1%未満であってもよく、0.01%以上であってもよい。
【0031】
本発明の一具体例において、コアに含有される銅酸化物(CuO)の含量は、コア全体の重量の4重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下であってもよく、0.01重量%以上であってもよい。
【0032】
コアに含有される銅酸化物が前述した範囲の含量で含まれることで、コアが銅本来の優れた電気的特性を維持することができ、また、コア上に位置し、酸化度が著しく低い銀を含有するシェルを含む本発明のコア-シェル構造の金属ナノワイヤは、優れた酸化安定性に基づいて電気的特性を維持することができる。
【0033】
一具体例として、金属ナノワイヤは、シェルに含有される銀の(111)結晶面の半値幅(full width half maximum、FWHM)がコアに含有される銅の(111)結晶面の半値幅(FWHM)よりも大きくてもよい。
【0034】
この際、半値幅とは、X線回折ピークの半値幅を意味し、コア-シェル構造の金属ナノワイヤにおいて、シェルに含有される銀の(111)結晶面の半値幅がコアに含有される銅の(111)結晶面の半値幅よりも大きいとは、銀の結晶の大きさが銅の結晶の大きさに比べて小さいことを意味する。このように、銅を含有するコア上に銅の結晶の大きさよりも小さい銀が緻密に位置してコアを包むことで、銅が外部に露出するのを効果的に防止し、本発明のコア-シェル構造の金属ナノワイヤが優れた酸化安定性を有することができる。
【0035】
本発明のコア-シェル構造の金属ナノワイヤが前述したように優れた酸化安定性を有することができるのは、コア上に極めて薄くかつ均一に位置する銀を含有するシェルに起因する。
【0036】
一例として、シェルの厚さは5~40nmであってもよく、具体的には5~30nmであってもよく、より具体的には5~20nmであってもよく、さらに具体的には6~10nmであってもよい。
【0037】
シェルの厚さが5nm未満である場合、コアに含有された銅の酸化を効果的に抑制することができず、シェルの厚さが40nm以上である場合、コア上に位置するシェルの均一性が低下し、銅酸化物の生成可能性が存在し得、経済的な面で有利でないため、シェルの厚さは、前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0038】
一具体例として、コアの直径(D)とシェルの厚さ(L)との比(D/L)は10~60、好ましくは15~50、より好ましくは20~50、さらに好ましくは30~50であってもよく、コアの直径は、一例として、100~400nm、好ましくは150~400nm、より好ましくは200~400nmであってもよい。
【0039】
本発明のコア-シェル構造の金属ナノワイヤに含まれるコアの直径が前述した範囲を有し、コアの直径(D)とシェルの厚さ(L)との比(D/L)が前述した範囲を有することで、コア上に位置するシェルの均一性に優れることになり、酸化に対する抵抗性が強いコア-シェル構造の金属ナノワイヤを提供することができる。
【0040】
一実施形態において、金属ナノワイヤの直径は110~500nmであってもよく、具体的には160~500nmであってもよく、より具体的には210~500nmであってもよく、金属ナノワイヤのアスペクト比は5~100であってもよく、好ましくは8~60であってもよく、より好ましくは10~40であってもよい。
【0041】
金属ナノワイヤを用いて、金属ナノワイヤのネットワーク構造の形成などのために、ロールミリング(roll milling)などの方法で組成物を製造する二次加工工程後にも、金属ナノワイヤが酸化安定性を維持するとともに、優れた分散性を有し、かつ、高い導電性を有するためには、金属ナノワイヤの直径およびアスペクト比が前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0042】
具体的に、金属ナノワイヤは、複数の金属ナノワイヤが互いに接触して絡み合ったネットワーク構造として用いられるが、このために、一般的に金属ナノワイヤがバインダーと混合された組成物の製造のような二次加工工程を経ることになる。この際、組成物中で金属ナノワイヤ間の凝集なしに分散される分散の程度に応じて、最終的に形成された金属ナノワイヤネットワークの電気的および/または物理的物性が大きく左右されるため、優れた分散性を有することは非常に重要である。
【0043】
また、金属ナノワイヤの酸化安定性の面で、銅を含有するコア上に位置するシェルによりコアに含有された銅の酸化に対する抵抗性が強化されたとしても、二次加工工程中に金属ナノワイヤが切断され、銅を含有するコアが外部に露出し、酸化安定性が低下し得るため、金属ナノワイヤが二次加工工程後にも優れた酸化安定性を維持できるように構造的に安定した形状を有することが重要である。
【0044】
一例として、金属ナノワイヤの長さは1~50μmであってもよく、好ましくは2~35μmであってもよく、より好ましくは3~20μmであってもよい。
【0045】
本発明のコア-シェル構造の金属ナノワイヤが前述した範囲内の長さを有するため、構造的に安定し、金属ナノワイヤ自体も優れた酸化安定性を有するだけでなく、二次加工工程後にも優れた酸化安定性を維持することができる。
【0046】
一例として、二次加工工程を経て製造できる金属ナノワイヤとバインダーが混合された組成物を用いて、基板上に金属ナノワイヤをコーティングしてもよい。
【0047】
この際、金属ナノワイヤがコーティングされた基板としては、有機または無機材料から製造された基板を用いてもよく、具体的な一例として、プラスチック基板、ガラス基板、または石英基板などであってもよい。前述した基板を構成する物質の例としては、メタクリル樹脂、芳香族ポリエステル、変性ポリフェニレンオキシド(Modified Polyphenylene Oxide:MPPO)、セルロースエステル(Cellulose ester)、セルロースアセテート、石英(quartz)、スチレン-ブタジエン共重合体、シリコンウェハ、アクリロニトリルブタジエンスチレン(acrylonitrile butadiene styrene copolymer、ABS樹脂)、エポキシ樹脂、オレフィンマレイミド共重合体、溶融シリカ、ガラス、再生セルロース(Regenerated cellulose)、トリアセチルセルロース、フェノール樹脂、ポリジメチルシクロヘキセンテレフタレート、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート(polymethylacrylate)、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニリデンフルオライド(Polyvinylidenfluoride)、ポリビニルアセテート、ポリスルホネート、ポリスルホン(Polysulfone)、ポリスチレン(PS)、ポリシラザン(polysilazane)、ポリシラン(polysilane)、ポリシロキサン(polysiloxane)、ポリアラミド、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル(Polyacrylonitrile、PAN)、ポリエステル、ポリエーテルスルホン(Polyethersulfone、PES)、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalte、PEN)、ポリエチレンスルホン、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephtalate、PET)、ポリエチルメタクリレート(polyethylmetacrylate)、ポリエチルアクリレート(polyethylacrylate)、ポリエポキシド、ポリ塩化ビニル、ポリオキシエチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリイミド樹脂、ポリカルボシラン(polycarbosilane)、ポリカーボネート(Polycarbonate)、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン(PP)、AS樹脂、GaAs、MgO、シリカ、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシクロヘキセンテレフタレートなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0048】
本発明の一実施形態において、コア-シェル構造の金属ナノワイヤは、250℃以上の酸化開始温度を有してもよい。
この際、金属ナノワイヤの酸化開始温度および特定の温度での変曲点は、熱重量分析(Thermogravimetric analysis、TGA)の結果から得られたものであってもよい。
【0049】
具体的に、酸化開始温度は、熱重量分析結果グラフにおいて、初期に重量変化がない直線と初期重量に対して1重量%の変化がある点での接線が交差する交差点での温度と定義することができる。
【0050】
一具体例として、コア-シェル構造の金属ナノワイヤは、250℃以上、具体的には280℃以上、より具体的には300℃以上で酸化が開始されてもよく、上限値は限定されるものではないが、コア-シェル構造の金属ナノワイヤは、400℃以下の温度で酸化が開始されてもよい。一般的に、銅の酸化は、160~180℃の範囲で開始されるが、本発明のコア-シェル構造の金属ナノワイヤが250℃以上の酸化開始温度を有するとは、銅を含有するコア部分が外部に露出しなかったことを意味し得る。
【0051】
すなわち、本発明のコア-シェル構造の金属ナノワイヤは、前述した厚さ範囲で銅を含有するコア上に銀を含有するシェルが薄くかつ均一に位置し、前述した範囲の酸化開始温度を有し、安定的に酸化に対する強い抵抗性を有することができる。
【0052】
一実施形態として、前述した金属ナノワイヤを含む厚さ8μmの導電性フィルムにおいて、前記導電性フィルムの初期比抵抗値に対する、前記導電性フィルムを60%の相対湿度および180℃の温度条件下で10日間放置した後に測定された比抵抗値の比を百分率で示した比抵抗変化率は103%以下、好ましくは102%以下、より好ましくは101%以下であってもよく、下限値は限定されるものではないが、実質的には99%以上であってもよい。
【0053】
ここで、比抵抗変化率が前述した範囲を満たすとは、銅を含有するコア上に銀を含有するシェルが緻密かつ均一に位置し、前述した苛酷な条件下で10日間放置した後にも初期比抵抗特性を維持することを意味する。
【0054】
金属ナノワイヤを含む導電性フィルムは、前述したように、二次加工工程を経て製造できる金属ナノワイヤとバインダーが混合された組成物を用いて形成されることができ、二次加工工程後にも優れた酸化安定性を維持できることが分かる。
【0055】
本発明は、他の一態様として、前述したコア-シェル構造の金属ナノワイヤを含むペースト組成物を提供する。
一実施形態として、ペースト組成物は、組成物の全重量を基準として5~80重量%、具体的には10~70重量%、より具体的には30~60重量%の金属ナノワイヤを含んでもよい。
【0056】
一実施形態において、ペースト組成物は、バインダーをさらに含んでもよく、バインダーは、ペースト組成物の全重量の5~30重量%、具体的には10~30重量%で含まれてもよい。
【0057】
一具体例において、バインダーは、有機バインダーまたはセラミックバインダーであってもよく、有機バインダーは、具体的には、エポキシ系樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素ゴム、ニトリルゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、およびニトロセルロースなどの有機樹脂から選択される1つ以上であってもよく、エポキシ系樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネート、ウレタン変性エポキシ樹脂、およびエポキシ樹脂などから選択されるいずれか1つまたは2つ以上のエポキシ樹脂であってもよいが、これに限定されない。
【0058】
セラミックバインダーは、ケイ素(Si)原子と酸素(O)原子が交互になっているポリシロキサン主鎖を有する高分子であり、一般的に、シリコーンは、それぞれのケイ素原子に通常2個のメチル、エチル、プロピルなどのアルキルまたはフェニル(-C6H5)の有機原子団が結合している構造を有し、本発明に係るペースト組成物に含まれるセラミックバインダーは、水素、ヒドロキシ基、メチル基、またはフェニル基が結合したものであってもよく、一例として、ジメチルシロキサン繰り返し単位を含むポリジメチルシロキサン系樹脂であってもよく、メチルフェニルシロキサン繰り返し単位、エチルフェニルシロキサン繰り返し単位、またはジフェニルシロキサン繰り返し単位をさらに含むポリシロキサン系樹脂であってもよい。
【0059】
一具体例として、ペースト組成物は、組成物の全重量を基準として5~30重量%の溶媒をさらに含んでもよいが、これに限定されない。
一具体例において、溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、クロロホルム、ジクロロベンゼン、ジメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、ピリジン、メチルナフタレン、ニトロメタン、アクリロニトリル、オクタデシルアミン、ブチルカルビトールアセテート、アニリン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールエチルエーテル、およびテルピネオールから選択されるいずれか1つまたは2つ以上であってもよい。
【0060】
本発明は、また他の一態様として、前述したコア-シェル構造の金属ナノワイヤの製造方法を提供する。
本発明に係るコア-シェル構造の金属ナノワイヤの製造方法は、a)銅ナノワイヤを製造するステップと、b)製造された銅ナノワイヤが水分散された水分散液に酸化膜除去溶液を添加して酸化膜を除去するステップと、c)b)ステップの溶液に第1還元剤を添加した後、第1硝酸銀溶液を滴下して第1銀コーティング層を形成するステップと、d)第2還元剤を添加した後、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を滴下して第2銀コーティング層を形成するステップと、e)f)ステップで製造された銀コーティング銅ナノワイヤを洗浄および乾燥するステップと、を含む。
【0061】
本発明の製造方法により製造されたコア-シェル構造の金属ナノワイヤは、先ず、銅ナノワイヤを製造し、酸化膜除去溶液を用いて銅ナノワイヤの表面に形成された酸化膜を除去した後、第1硝酸銀溶液および第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を順次滴下して銅ナノワイヤ上に銀コーティング層を形成させるため、従来に比べて極めて薄くかつ均一であり、緻密に形成された銀を含有するシェルが銅を含有するコア上に形成されることができる。
【0062】
一実施形態において、銅ナノワイヤに上に形成される銀コーティング層は、2回にわたって順次形成されてもよいが、3回、4回、5回、6回、または7回にわたって順次形成されてもよいことはもちろんである。ただし、製造工程効率および経済的なことを考慮して、銅ナノワイヤ上に銀コーティング層を2回にわたって順次形成させることが好ましい。
【0063】
具体的に、銅ナノワイヤを含む溶液に第1硝酸銀溶液を滴下して第1銀コーティング層を形成した後、第1銀コーティング層が形成された銅ナノワイヤを含む溶液に第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を滴下して第2銀コーティング層を形成させることができる。この際、銀-アンモニア錯体溶液は、硝酸銀溶液とアンモニア水が混合された溶液であってもよい。
【0064】
より詳細には、第2銀コーティング層は、銀-アンモニア錯体を含む第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液により形成されることができ、銀-アンモニア錯体に含まれたAgイオンが銅ナノワイヤの銅から出た電子により還元され、銅ナノワイヤ上に銀原子がコーティングされるものである。
【0065】
ここで、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液に含まれた銀-アンモニア錯体は、下記反応式1により形成されてもよい。
【0066】
(反応式1)
1)2AgNO3+2NH4OH→Ag2O↓+H2O+2NH4NO3
2)Ag2O+4NH4OH→2[Ag(NH3)2]OH+3H2O
3)[Ag(NH3)2]OH+NH4NO3→[Ag(NH3)2]NO3+NH4OH
【0067】
反応式1の3)で形成された[Ag(NH3)2]+が銀-アンモニア錯体である。前述したように、銀-アンモニア錯体に含まれたAgイオンが還元される反応は、下記反応式2で示すことができる。
【0068】
(反応式2)
Cu+2[Ag(NH3)2]NO3→[Cu(NH3)4](NO3)2+2Ag↓
【0069】
前述したように、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を用いて銅ナノワイヤ上に銀コーティング層を形成させ、銅ナノワイヤ表面での酸化反応を抑制することができるが、銀コーティング層を緻密かつ均一に形成させるには限界がある。
【0070】
具体的に、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を用いて銅ナノワイヤ上に銀コーティング層を形成させる場合、銀コーティング層は、銀の核生成および生成された核の成長が同時に進行して形成されるため、コーティング層の均一性および緻密性の向上に限界がある。
【0071】
このため、銀コーティングされた銅ナノワイヤの酸化安定性を向上させるためには、不要に厚い銀コーティング層を形成させるか、または厚い銀コーティング層が形成されても一部の緻密でない銀コーティング層領域で局部的に酸化安定性が低下するという欠点がある。
【0072】
これに対し、本発明に係る金属ナノワイヤは、第1銀コーティング層が形成された銅ナノワイヤを含む溶液に第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を滴下して第2銀コーティング層を形成させることで、最終的に銅ナノワイヤ上に形成される銀コーティング層は、従来に比べて極めて薄いにもかかわらず、均一かつ緻密に形成され、金属ナノワイヤの酸化安定性を著しく向上させることができる。
【0073】
前述したように、第1銀コーティング層が形成された銅ナノワイヤ上に第2銀コーティング層を形成させるためには、第1銀コーティング層が形成された銅ナノワイヤの表面で銀-アンモニア錯体との反応のために銅を一部露出させる必要がある。
【0074】
詳細には、一次銀コーティング層は、多量の銀核が均一に生成されるが、この際、核成長が抑制され、銅ナノワイヤの表面に銅が露出したコーティング層であってもよく、第2銀コーティング層の形成のために、第1銀コーティング層が形成された銅ナノワイヤを含む溶液に第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を滴下する場合、核成長が優勢になり、最終的に形成される銀コーティング層の緻密性および均一性を著しく向上させることができる。
【0075】
一実施形態として、第1銀コーティング層は、酸化膜が除去された銅ナノワイヤが水分散された水分散液に第1還元剤を添加した後、第1硝酸銀溶液を滴下して形成してもよい。
【0076】
一具体例において、第1硝酸銀溶液の濃度は0.01~1Mであってもよく、具体的には0.01~0.8Mであってもよく、より具体的には0.01~0.2Mであってもよく、さらに具体的には0.03~0.1Mであってもよい。
【0077】
銅を含むコア上に一次的に形成された第1銀コーティング層は、第1硝酸銀溶液により形成されてもよく、この際、第1硝酸銀溶液の濃度が0.01M未満である場合、銀コーティング層が形成されず、1.0M超過である場合、銀コーティング層が厚くかつ不均一に形成され、第2銀コーティング層の形成が円滑でなく、緻密かつ均一な銀コーティング層を形成させることができないため、第1硝酸銀溶液の濃度は、前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0078】
一具体例として、第1硝酸銀溶液の滴下は、酸化膜が除去された銅ナノワイヤが水分散された水分散液に第1還元剤を添加した後、水分散液を500~10,000rpm、具体的には5,000~10,000rpmで撹拌しつつ、第1硝酸銀溶液を分当たり0.1~500ml、好ましくは0.5~100mlで注入することを特徴とする。
【0079】
第1硝酸銀溶液の注入速度が0.1ml/min未満である場合、還元される銀の量が少なく、銀コーティング層が形成されず、500ml/min超過である場合、銀が銅ナノワイヤ上にコーティングされず、溶液中に自由銀粒子が形成され得るため、第1硝酸銀溶液は、前述した注入速度で注入されることが好ましい。
【0080】
この際、続いて行われる第2銀コーティング層の形成により、最終的に形成される銀コーティング層を均一かつ緻密に形成させるためには、第1硝酸銀溶液は1~30分間、具体的には10~20分間注入されてもよい。
【0081】
また、水分散液の撹拌速度が500rpm未満である場合、銅ナノワイヤの表面に銀コーティングが十分に行われず、10,000rpm超過である場合、水分散液に分散された銅ナノワイヤの剪断強度以上の力が加えられ、剪断破壊により長さが短くなり得るため、撹拌速度は、前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0082】
一実施形態として、第1銀コーティング層の形成のために添加される第1還元剤は、銀イオンを還元させ、銀コーティングを行うことができる還元剤であれば限定なく使用可能であり、一例として、第1還元剤は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸、ドデカン酸、タプシン酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、トラウマチン酸、ムコン酸、グルチン酸、シトラコン酸、メサコン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ジアミノピメリン酸、タルトロン酸、アラビナル酸、サッカリン酸、メソキサル酸、オキサロ酢酸、アセトンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェン酸、酒石酸、酒石酸ナトリウムカリウム、アスコルビン酸、ヒドロキノン、グルコース、およびヒドラジンからなる群から選択される1つまたは2つ以上であってもよい。
【0083】
一具体例として、第1還元剤の濃度は0.001~3Mであってもよく、具体的には0.005~2Mであってもよく、より具体的には0.005~1Mであってもよい。
【0084】
第1還元剤の濃度が0.001M未満である場合、還元反応が少なくなり、銀コーティング層が形成されず、3M超過である場合、試薬消費量が大きくなり、経済的および/または環境的損失が大きくなって効率的でないため、第1還元剤の濃度は、前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0085】
一具体例として、第1銀コーティング層が形成される銅ナノワイヤは、酸化膜が除去された銅ナノワイヤであってもよい。
銅ナノワイヤは、製造後に容易に酸化され、表面に酸化膜(酸化銅)が形成され得、このような酸化膜は、銅ナノワイヤの電気伝導度を低下させ、表面にコーティングされる銀との接触を妨害し得る。したがって、銀コーティング層が形成される前に銅の表面上に形成された酸化膜を除去することが好ましい。
【0086】
一実施形態として、銅ナノワイヤが水分散された水分散液に酸化膜除去溶液を添加して酸化膜が除去されてもよい。
酸化膜除去溶液は、アンモニア水と硫酸アンモニウムの混合溶液であってもよく、この際、アンモニア水と硫酸アンモニウムの混合溶液の濃度は0.001~0.3M、具体的には0.001~0.1Mであってもよい。前記アンモニア水と硫酸アンモニウムの混合溶液の濃度が0.001M未満である場合、酸化膜の除去が十分に行われず、銀コーティング層が形成されないか、または銅ナノワイヤの電気伝導度が低下し得、0.3M超過である場合、銅ナノワイヤが分解され、銅の消費量が大きく、全体的な収量が減少し得るため、酸化膜除去溶液の濃度は、前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0087】
また、酸化膜除去溶液は、アンモニアイオンを含む溶液の他に、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム塩などのアミンを含む物質に代替して用いてもよく、他のアミン系物質または添加剤をさらに含んでもよいが、これに限定されない。
【0088】
好ましい一例として、酸化膜除去溶液を用いた酸化膜の除去は、1~60分間、具体的には1~30分間、より具体的には1~20分間行うことが好ましい。1分未満の反応時間を有する場合、酸化膜が除去されず、60分を超える場合、銅ナノワイヤが溶解し得る。
【0089】
一実施形態において、銅ナノワイヤ上に第1銀コーティング層を形成し、第2還元剤を添加した後、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を滴下して第2銀コーティング層を形成してもよい。
この際、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液の濃度は、第1硝酸銀溶液の濃度に比べて薄い濃度を有してもよい。
【0090】
第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液は、前述したように、硝酸銀溶液とアンモニア水が混合された溶液であり、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液の濃度が第1硝酸銀溶液の濃度に比べて薄い濃度を有するとは、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液に含まれた硝酸銀溶液の濃度が第1硝酸銀溶液の濃度に比べて低いことを意味し得る。
【0091】
このように、銅ナノワイヤ上にコーティング層を形成するにあたり、第1硝酸銀溶液、および第1硝酸銀溶液の濃度に比べて薄い濃度の硝酸銀溶液を含む第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を用いて2回にわたってコーティング層を形成させるため、銅ナノワイヤ上に従来に比べて薄く、均一かつ緻密な銀コーティング層が形成されることができる。
【0092】
一実施形態として、第1硝酸銀溶液:第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液に含まれた硝酸銀溶液の濃度比は1:0.01~0.9、具体的には1:0.05~0.8、より具体的には1:0.1~0.6であってもよい。
【0093】
前述したように、第1硝酸銀溶液:第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液に含まれた硝酸銀溶液の濃度比が前述した範囲を満たすことで、銅ナノワイヤ上に従来に比べて薄く、均一かつ緻密な銀コーティング層が形成され、銀コーティングされた銅ナノワイヤの酸化安定性を著しく向上できるという利点がある。
【0094】
具体的な一例として、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液に含まれる硝酸銀溶液の濃度は0.005~0.5Mであってもよく、具体的には0.01~0.1Mであってもよく、より具体的には0.01~0.05Mであってもよい。
【0095】
銅を含むコア上に一次的に薄い厚さに形成された銀コーティング層の厚さを維持し、かつ、より緻密かつ均一な銀コーティング層が形成されるためには、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液に含まれる硝酸銀溶液の濃度は、前述した範囲を満たすことが好ましい。
【0096】
一具体例において、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液に含まれるアンモニア水の濃度は、銀-アンモニア錯体が形成され、銅を含むコア上に銀を含むシェル層が形成可能であれば自由に調節可能であり、一例として、0.01~0.3Mであってもよく、具体的には0.01~0.1Mであってもよい。
【0097】
一実施形態において、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液の滴下は、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液の注入時間条件を除いた前述した第1硝酸銀溶液の滴下条件と同様に行われてもよい。
具体的に、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液の注入は30~120分間、好ましくは50~80分間行われてもよい。
【0098】
第1硝酸銀溶液の濃度に比べて薄い濃度の第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を用いて、最終的に形成される銀コーティング層を緻密かつ均一に形成させるために、前述した時間の間、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を注入して第2銀コーティング層を形成させることが好ましい。
【0099】
第2銀コーティング層の形成のために添加される第2還元剤は、前述した第1還元剤と同一ないし類似のものであり、詳しい説明は省略する。
ただし、第2銀コーティング層の形成時、銀被膜が均一かつ緻密に形成できる点で、弱い還元剤を用いることが好ましく、好ましい一例として、第2還元剤は、酒石酸ナトリウムカリウムであってもよい。
【0100】
一具体例として、第2還元剤の濃度は0.001~3Mであってもよく、具体的には0.005~2Mであってもよく、より具体的には0.005~1Mであってもよい。
【0101】
一実施形態として、銅ナノワイヤ上に形成された第1銀コーティング層および第2銀コーティング層を含む銀コーティング層の厚さは5~40nm、具体的には5~30nmであってもよく、より具体的には5~20nmであってもよく、さらに具体的には6~10nmであってもよい。
【0102】
一実施形態において、銅ナノワイヤが分散された水分散液に第1硝酸銀溶液を滴下して第1銀コーティング層を形成した後、前記溶液に含まれた銅イオンを除去するステップをさらに含んでもよい。この際、銅イオンの除去は、前述した酸化膜除去溶液と同様の溶液を用いて行われてもよい。
【0103】
前述したように、第1銀コーティング層は、酸化膜が除去された銅ナノワイヤが水分散された水分散液に第1硝酸銀溶液を滴下して形成されることができ、この際、水分散液中には銅イオンが含まれていてもよい。
【0104】
第1硝酸銀溶液を滴下して第1銀コーティング層を形成した後、銅イオンを除去することで第1銀コーティング層を形成した後に続いて行われる第2還元剤を添加した後、第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を滴下して第2銀コーティング層を形成することで、製造される銀コーティング層の純度を著しく向上できるという利点がある。
【0105】
一実施形態において、コア-シェル構造の金属ナノワイヤにおいて、金属ナノワイヤのコアに該当する銅ナノワイヤは、銅化合物を含む水溶液に第3還元剤を添加した後、銅イオンを還元させて製造されてもよい。
【0106】
具体的に、水にアルカリ、銅化合物、およびキャッピング剤を添加した後に撹拌して製造された銅化合物を含む水溶液に、ヒドラジン、アスコルビン酸、L(+)-アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、シュウ酸、ギ酸、ホスファイト、リン酸、サルファイト、またはナトリウムボロハイドライドから選択されるいずれか1つ以上の第3還元剤を添加した後、銅イオンを還元させて銅ナノワイヤを製造してもよい。
【0107】
この際、キャッピング剤は、銅化合物に含まれた銅イオンが還元された銅ナノ構造に結合し、銅が縦方向に成長してナノワイヤ状を有するようにする役割を行う。キャッピング剤としては、ピペラジン(C4H10N2)および/またはヘキサメチレンジアミン(C6H16N2)が用いられてもよく、より詳細な銅ナノワイヤの製造方法は、本出願人の大韓民国登録特許第10-1789213号を参照する。
【0108】
一実施形態において、製造された銅ナノワイヤを水溶液と分離して洗浄および乾燥するステップを含んでもよい。
銅ナノワイヤの製造時に形成され得る銅ナノワイヤ表面の不純物を除去できる物質を用いて洗浄して乾燥してもよく、好ましくは、蒸留水およびエタノール溶液を用いて洗浄してもよい。銅ナノワイヤの洗浄時、銅ナノワイヤ表面の不純物を蒸留水で数回洗浄した後、迅速な乾燥のためにエタノールを用いて1~2回洗浄し、真空オーブンで常温(20~28℃)で12~30時間乾燥することが好ましいが、これに限定されない。
【0109】
一実施形態として、銅ナノワイヤから分離された残留水溶液をリサイクルして銅ナノワイヤを製造してもよい。
具体的に、銅ナノワイヤを得た後、すなわち、銅ナノワイヤの洗浄および乾燥のために分離された残留水溶液には、相当量の銅前駆体と還元剤が残っていることになる。そこで、残留水溶液に銅化合物と第3還元剤をさらに添加して銅ナノワイヤを再合成することができる。
【0110】
一般的に、銅ナノワイヤの製造に用いられるアルカリ溶液は、高濃度で投入しなければならないため、そのまま廃棄される場合、新しいアルカリ溶液の購入費用および処理費用が消費されるため経済的ではない。したがって、銅ナノワイヤから分離された残留水溶液に銅化合物と第3還元剤をさらに供給して反応させる場合、製造費用を大幅に削減できるという利点がある。
【0111】
この際、残留水溶液のリサイクルは1~30回、好ましくは4~20回、より好ましくは6~15回まで可能である。残留水溶液は、残留水溶液に銅化合物と第3還元剤をさらに供給して製造される銅ナノワイヤが均一なナノワイヤ状に製造される点で、前述した範囲内でリサイクルされることが好ましい。
【0112】
本発明の一実施形態において、前述した方法により製造された第1銀コーティング層および第2銀コーティング層を含む銀コーティングされた銅ナノワイヤであるコア-シェル構造の金属ナノワイヤは、洗浄および乾燥するステップを経て得てもよく、前記洗浄および乾燥は、前述した銅ナノワイヤの洗浄および乾燥と同様の方法で行われてもよい。
【0113】
一実施形態として、最終的に得られたコア-シェル構造の金属ナノワイヤにおいて、コアの直径(D)とシェルの厚さ(L)との比(D/L)が10~60であり、シェルの厚さが5~40nmであり、X線光電子分光スペクトルにおける銀のAg 3d5/2のピーク強度(I1)と銅のCu 2p3/2のピーク強度(I2)が下記式1を満たしてもよい。
【0114】
(式1)
I2/I1≦0.2
ここで、コアとは、銅ナノワイヤを意味し、シェルとは、第1銀コーティング層および第2銀コーティング層を含む銀コーティング層を意味する。
【0115】
本発明において、前記コア-シェル構造の金属ナノワイヤの製造時における製造工程方法は、バッチ反応式、プラグフロー反応式、連続撹拌槽型反応式工程で製造してもよいが、これに限定されない。
【0116】
以下、実施例により、本発明に係るコア-シェル構造の金属ナノワイヤについてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を詳細に説明するための1つの参照にすぎず、本発明は、これに限定されず、様々な形態で実現されてもよい。
【0117】
また、特に定義しない限り、全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野における当業者により一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本願の説明で用いられる用語は、単に特定の実施例を効果的に記述するためのものであって、本発明を限定するためのものではない。
【0118】
(製造例)銅ナノワイヤの製造
3000mlの丸底フラスコに水(超純水)2000mlを入れ、撹拌器を装着して撹拌しつつ、水酸化ナトリウム(NaOH、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)を1200g(15M)を投入した。発熱反応で熱くなった反応器の内部温度を50℃を超えないように冷却した後、硝酸銅(II)(Cu(NO3)23H2O、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)3.8g(0.0079M)を水(超純水)100mlに溶解し、反応器に投入した。その後、ピペラジン(C4H10N2、シグマアルドリッチ)9.7g(0.268M)を水(超純水)100mlに溶解して添加した後、300rpmの平均撹拌速度で10分間撹拌した。反応器を70℃に昇温した後、ヒドラジン(N2H4、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)4mlを水(超純水)240ml(0.04M)に混合した後、反応器の内部にシリンジポンプ(syringe pump)を用いて4ml/minの速度で1時間添加した。反応器を70℃に維持し、反応が終了すると、常温に徐々に温度を冷却した後、ヒドラジン1vol%の洗浄液2Lを用いて洗浄した後、真空オーブン(JEIO Tech、OV-12)で25℃、24時間乾燥した。
乾燥後に得られた銅ナノワイヤは、長さが2~10μmであり、直径が100~500nmであることを確認した。
【0119】
(実施例1)
5Lのフラスコに水(超純水)1200mlと前記製造例により製造された銅ナノワイヤ15.0gを添加した後、ホモミキサー(Homomixer、K-Corporation、Primix)を用いて10,000rpmで撹拌した。これに銅ナノワイヤの酸化膜を除去するために、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム塩(EDTA-2Na Dihydrate、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)22.5gを水(超純水)150mlに溶解して入れ、3分間10,000rpmで撹拌した。これに還元剤としてL-アスコルビン酸(C6H8O6、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)13.1gを水(超純水)150mlに溶解した後に添加し、再び3分間撹拌した。
【0120】
酸化膜が除去された銅ナノワイヤに一次銀コーティングを行うために、水(超純水)150mlと硝酸銀(AgNO3、Juntek)1.67gを混合して第1硝酸銀溶液を製造し、蠕動ポンプ(Peristaltic pump、Leadfluid、BT100L)を用いて分当たり10mlの速度で約15分間添加して反応させた。
その後、一次銀コーティングが完了した試料を水(超純水)2Lで洗浄して乾燥し、一次銀コーティング銅ナノワイヤ試料を得た。
【0121】
次に、二次銀コーティングを行うために、一次銀コーティングが完了した試料と水(超純水)1200mlを5Lのフラスコに入れ、ホモミキサー(Homomixer、K-Corporation、Primix)を用いて10,000rpmで撹拌した。銅イオンを安定的に除去するために、エチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム塩(EDTA-2Na Dihydrate、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)22.5gを水(超純水)150mlに溶解して入れ、3分間10,000rpmで撹拌した。
【0122】
還元剤として酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(KNaC4H4O6・4H2O)21gを水(超純水)150mlに溶解して入れ、再び3分間撹拌した。二次銀コーティングを行うために、硝酸銀4.23gに水(超純水)655mlを入れて硝酸銀溶液を製造した後、アンモニア水(NH4OH、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)4.34mlを添加して第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液を製造した。製造された第2銀-アンモニア錯体溶液を分当たり10mlの速度で約66分間添加して反応させた。
【0123】
反応の完了後、濾過紙を用いて分離された金属ナノワイヤを水(超純水)2Lで洗浄し、常温で24時間乾燥し、薄くかつ均一に銀コーティングされた銅ナノワイヤを得た。
【0124】
得られた銀コーティング銅ナノワイヤを走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、COXEM、EM-30AXN)を用いて測定し、その結果を
図1に示した。銀コーティングされた銅ナノワイヤの長さおよび厚さを分析した結果、長さは2.1~6.3um、厚さは191~450nmと測定された。
【0125】
(実施例2)
実施例1と同様に実施するが、酸化膜が除去された銅ナノワイヤへの銀コーティングは、水(超純水)150mlと硝酸銀(AgNO3、Juntek)2.95gを混合して製造された第1硝酸銀溶液、および二次銀コーティングを行うために、硝酸銀2.95gに水(超純水)655mlを入れて硝酸銀溶液を製造した後、アンモニア水(NH4OH、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)4.34mlを添加して第2銀-アンモニア錯体溶液を用いたことを除いては同様に実施した。
【0126】
得られた銀コーティング銅ナノワイヤを走査型電子顕微鏡を用いて測定し、その結果を
図2に示した。銀コーティングされた銅ナノワイヤの長さおよび厚さを分析した結果、長さは2.0~4.1um、厚さは299~412nmと測定された。
【0127】
(実施例3)
実施例1と同様に実施するが、酸化膜が除去された銅ナノワイヤへの銀コーティングは、水(超純水)150mlと硝酸銀(AgNO3、Juntek)4.23gを混合して製造された第1硝酸銀溶液、および二次銀コーティングを行うために、硝酸銀1.67gに水(超純水)655mlを入れて硝酸銀溶液を製造した後、アンモニア水(NH4OH、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)4.34mlを添加して第2銀-アンモニア錯体溶液を用いたことを除いては同様に実施した。
【0128】
得られた銀コーティング銅ナノワイヤを走査型電子顕微鏡を用いて測定し、その結果を
図3に示した。銀コーティングされた銅ナノワイヤの長さおよび厚さを分析した結果、長さは2.1~6.3um、厚さは191~450nmと測定された。
【0129】
(比較例1)
実施例1と同様に実施するが、一次銀コーティング反応は行わず、二次銀コーティングを行うために、硝酸銀5.90gに水(超純水)655mlを入れて硝酸銀溶液を製造した後、アンモニア水(NH4OH、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)4.34mlを添加して第2銀-アンモニア錯体溶液のみを用いて銅ナノワイヤに銀コーティング層を形成させたことを除いては同様に実施した。
【0130】
得られた銀コーティング銅ナノワイヤを走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope(COXEM、EM-30AXN)を用いて測定し、その結果を
図4に示した。銀コーティングされた銅ナノワイヤの長さおよび厚さを分析した結果、長さは1.3~5.4um、厚さは214~478nmと測定された。
【0131】
(比較例2)
実施例1と同様に実施するが、一次銀コーティング反応は行わず、二次銀コーティングを行うために、硝酸銀5.90gに水(超純水)655mlを入れて硝酸銀溶液を製造した後、アンモニア水(NH4OH、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)4.34mlを添加して第2銀-アンモニア錯体溶液のみを用いて銅ナノワイヤに銀コーティング層を形成させるが、この際、分当たり20mlの速度で約33分間添加して反応させたことを除いては同様に実施した。
【0132】
得られた銀コーティング銅ナノワイヤを走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope(COXEM、EM-30AXN)を用いて測定し、その結果を
図5に示した。銀コーティングされた銅ナノワイヤの長さおよび厚さを分析した結果、長さは1.6~8.3um、厚さは131~787nmと測定された。
【0133】
(比較例3)
比較例1と同様に実施するが、一次銀コーティング反応は行わず、二次銀コーティングを行うために、硝酸銀12.2gに水(超純水)655mlを入れて硝酸銀溶液を製造した後、アンモニア水(NH4OH、Samchun Pure Chemical Co., Ltd.)4.34mlを添加して第2銀-アンモニア錯体溶液のみを用いて銅ナノワイヤに銀コーティング層を形成させたことを除いては同様に実施した。
【0134】
(実験例1)銀コーティング銅ナノワイヤの構造および表面分析
コア-シェル構造であるそれぞれの銀コーティング銅ナノワイヤに対して、コアの直径および銅ナノワイヤ上に形成された銀コーティング層の厚さをFIB-SEM(Focused Ion Beam Scanning Electron Microscope、LYRA3 XMU、TESCAN)を用いて測定し、銀コーティング銅ナノワイヤの表面をX線光電子分光法(XPS、Thermo VG Scientific、Sigma Probe)により分析し、その結果を表1に示した。
【0135】
この際、それぞれの銀コーティング銅ナノワイヤのXPSスペクトルから算出されたAg 3d5/2のピーク強度(I1)とCu 2p3/2のピーク強度(I2)を比較し、銅ナノワイヤ上に形成された銀コーティング層の均一性を判断した。
【0136】
【0137】
表1のX線光電子分光スペクトル分析結果を参照すると、実施例1~実施例3は、銀のAg 3d5/2のピーク強度(I1)と銅のCu 2p3/2のピーク強度(I2)との比が0.2以下と確認されたのに対し、比較例1~比較例3の数値は、0.2超過と確認され、このことから、比較例1~比較例3の金属ナノワイヤは、表面に銀が均一にコーティングされず、銅が外部に露出していることが分かる。
【0138】
これに対し、実施例1~実施例3の場合、銅コア上に15nm未満の薄い銀コーティング層が均一かつ緻密に形成されていることが分かり、このことから、銅コアが外部に露出するのを効果的に抑制し、優れた酸化安定性を有することができることが分かる。
【0139】
また、第1硝酸銀溶液:第2硝酸銀-アンモニア錯体溶液に含まれた硝酸銀溶液の濃度比が1:0.58である実施例1の場合、厚さ8.2nmの薄い銀コーティングが形成され、観察されたI2/I1数値が0.029と著しく低いことが分かり、実施例1は、銅ナノワイヤの表面に銀がより緻密かつ均一にコーティングされていることが分かる。
【0140】
また、実施例1~実施例3のX線光電子分光スペクトルにおけるAg 3d5/2のピークは、金属性銀(Ag0)のピークからなることが観察され、コア上にコーティングされた銀も酸化度が極めて低いことが観察された。
さらに、実施例1~実施例3の金属ナノワイヤにおいて、コアである銅ナノワイヤに含有される銅酸化物の含量が0.4重量%であることを確認した。
【0141】
(実験例2)銀コーティング銅ナノワイヤの熱重量分析
実施例1、実施例2、および比較例1の金属ナノワイヤに対して熱重量分析(TGA、Labsys EVO)を行い、その結果を
図6に示した。
【0142】
この際、熱重量分析は、空気雰囲気下で行われ、得られたそれぞれの熱重量分析結果グラフにおいて、初期に重量変化がない直線と初期重量に対して1重量%の変化がある点での接線が交差する交差点での温度を酸化開始温度と定義し、それぞれの金属ナノワイヤの酸化安定性を比較した。
【0143】
図6を参照すると、実施例1および実施例2の酸化開始温度は、それぞれ312℃および253℃と非常に優れた酸化安定性を有することが観察されたのに対し、比較例1の場合は、210℃で酸化が開始されることが観察され、このことから、実施例1および実施例2は、比較例1に比べて酸化安定性に優れることが分かる。
【0144】
(実験例3)銀コーティング銅ナノワイヤの耐久性の評価
製造されたそれぞれの金属ナノワイヤの耐久性を判断するために、実施例1~実施例3および比較例1~比較例3で製造された金属ナノワイヤをエポキシ樹脂(SE-55F、SHIN-A T&C)と混合した後、3ロールミル(3-rollmill、EXAKT 50)を用いて組成物を製造した後、バーコータ(Bar coater、ERICHSEN、Model-510)を用いて、10μm×10μmサイズのポリイミドフィルム上に厚さ8μmにコーティングした後、200℃で40分間熱処理してコーティング層を形成させた。
この際、前記組成物は、組成物の全重量を基準として50重量%の金属ナノワイヤが含まれるように製造された。
【0145】
その後、それぞれのコーティング層に対して初期比抵抗を測定し、それぞれのコーティング層を60%の相対湿度および180℃の温度条件下で10日間放置した後に比抵抗を再び測定して算出された比抵抗変化率から耐久性を評価し、その結果を下記表2に示した。
【0146】
この際、比抵抗変化率は、初期比抵抗値(R0)に対する、前記相対湿度および温度条件下で10日間放置した後に測定された比抵抗値(R)の比(R/R0)を百分率(%)で示した。
【0147】
【0148】
表2を参照すると、実施例1~実施例3の比抵抗値は、高温多湿の条件下で10日間放置したにもかかわらず、初期比抵抗値と同様に維持されることが分かり、特に、実施例1の場合、銅ナノワイヤ上に厚さ8.2nmの薄い銀コーティング層が形成されたにもかかわらず、銅ナノワイヤの表面に銀がより緻密かつ均一にコーティングされ、初期比抵抗値と同様に維持されることを確認した。
これに対し、比較例1~比較例3の場合、高温多湿の条件下で銅が酸化され、比抵抗値が初期に比べて高くなることが観察された。
【0149】
以上、特定の事項と限定された実施例により本発明を説明したが、これは本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されない。本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正および変形が可能である。
【0150】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本発明の思想の範囲に属するといえる。
【国際調査報告】