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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】モジュール型データセンタ
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20240719BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
H05K7/20 H
H05K7/20 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503839
(86)(22)【出願日】2022-07-18
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 US2022037472
(87)【国際公開番号】W WO2023003811
(87)【国際公開日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】63/223,275
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524026953
【氏名又は名称】ソルナ コンピューティング,インク.
【氏名又は名称原語表記】Soluna Computing, Inc.
【住所又は居所原語表記】122 E 42nd St #4305, New York, New York 10168, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ニコラウス レイ ランカスター
(72)【発明者】
【氏名】ディプル パテル
【テーマコード(参考)】
5E322
【Fターム(参考)】
5E322AA11
5E322BA01
5E322BA03
5E322BA04
5E322BB03
(57)【要約】
環境(例えば開放空間)内に配置されるように構成されたデータセンタは、複数のモジュールを含む。とりわけ、各モジュールは、動作中に熱を発生させる複数の処理デバイスを収容するように構成された内部を形成するハウジングを有する。内部の温度を管理するために、各モジュールは、環境から空気を受け取るように構成された空気入口と、ハウジングから空気を排出するように構成された空気出口とを有する。モジュールのうちの少なくとも3つのモジュールは、隣接するモジュール間に少なくとも1つの横方向空間が形成されるように、離間されている。複数のモジュールは、好ましくは、少なくとも3つのモジュールが当該少なくとも3つのモジュールの排出空気を受け取るように構成された内部領域を形成するように配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境内に配置されるように構成されたデータセンタであって、
該データセンタが複数のモジュールを含み、
各モジュールは、動作中に熱を発生させる複数の処理デバイスを収容するように構成されたハウジングおよび内部を有しており、
各モジュールは、前記環境から空気を受け取るように構成された空気入口と、前記ハウジングから空気を排出するように構成された空気出口とを有しており、
前記複数のモジュールのうちの少なくとも3つのモジュールは、隣接するモジュール間に少なくとも1つの横方向空間が形成されるように離間されており、前記複数のモジュールは、前記少なくとも3つのモジュールが該少なくとも3つのモジュールの排出空気を受け取るように構成された内部領域を形成するように配置されている、
データセンタ。
【請求項2】
前記モジュールは、環境圧力を有する環境内に配置されており、前記内部領域は、前記環境圧力と実質的に同じ圧力を有する、請求項1記載のデータセンタ。
【請求項3】
各モジュールが屋根を有しており、前記複数のモジュールのうち少なくとも2つのモジュールは、内側縁部および外側縁部を有する傾斜した屋根を有しており、前記内側縁部は前記内部領域に接しているかまたは前記内部領域内へ延在しており、前記外側縁部は前記内部領域の外部にあり、前記内側縁部は前記外側縁部の高さよりも低い高さにある、請求項1記載のデータセンタ。
【請求項4】
各空気入口が上部入口縁部を有しており、各空気出口が上部出口縁部を有しており、前記複数のモジュールの空気出口が、空気流を前記内部領域へ方向付けるように構成されており、前記空気入口が前記内部領域から離間されており、各モジュールの上部出口縁部は各上部入口縁部よりも低い高さにある、請求項1記載のデータセンタ。
【請求項5】
所与のモジュールが、所与の空気入口と所与の空気出口と前記所与の空気入口に隣接したエアバッファとを有しており、前記エアバッファは、前記所与の空気出口から前記所与の空気入口へと戻る排出空気の再循環を低減するように構成されている、請求項1記載のデータセンタ。
【請求項6】
前記複数のモジュールが、前記少なくとも1つの横方向空間と共に少なくとも部分的に内部領域を画定しており、前記少なくとも1つの横方向空間は、2つのモジュールの隣接するハウジング部分によって画定される、請求項1記載のデータセンタ。
【請求項7】
各モジュールが、前記空気入口からの空気を、前記ハウジングを通して前記空気出口から上方へ向かって前記内部領域内の水平面に対して約5°~90°の角度で方向付けるように構成された出口エアムーバを備えている、請求項1記載のデータセンタ。
【請求項8】
前記データセンタはさらに、前記内部領域内に、出口空気を上方へ向かって方向付けるように構成されたフローダイバータを備えている、請求項1記載のデータセンタ。
【請求項9】
前記データセンタはさらに、複数の付加的なモジュールを含み、
前記複数の付加的なモジュールのそれぞれは、付加的なハウジングと、動作中に熱を発生させる複数の付加的な処理デバイスを収容するように構成された付加的な内部とを有しており、
前記複数の付加的なモジュールは、第2の内部領域および第3の内部領域を形成しており、
前記内部領域は、オフセットされた非線形のパターンで配置されている、
請求項1記載のデータセンタ。
【請求項10】
前記3つ以上のモジュールのそれぞれの空気出口は前記ハウジングの一方側にあり、
前記空気出口は、前記3つ以上のモジュールそれぞれの排出側を形成しており、
前記排出側のそれぞれが前記内部領域の境界の一部を形成している、
請求項1記載のデータセンタ。
【請求項11】
前記内部領域は、長方形状、ダイヤモンド形状または菱形状を形成している、請求項1記載のデータセンタ。
【請求項12】
前記データセンタはさらに、前記空気出口を通って流れる空気の音の振幅を低減するように構成された複数のバフルを備えている、請求項1記載のデータセンタ。
【請求項13】
前記データセンタはさらに、前記複数のモジュールそれぞれの内部に複数の処理デバイスを有している、請求項1記載のデータセンタ。
【請求項14】
環境内に配置されるように構成されたデータセンタであって、
該データセンタが、複数の処理デバイスを収容するように構成された少なくとも3つのモジュールを含み、前記少なくとも3つのモジュールのそれぞれが、横方向空間が形成されるように他の2つのモジュールに隣接しており、
前記環境内に配置された前記少なくとも3つのモジュールが1つの内部領域を形成しており、
前記内部領域は、前記少なくとも3つのモジュールによって画定される複数の凹部を形成しており、
各モジュールは、前記内部領域から上方へ向かって所定の角度で延在する傾斜した屋根を有しており、該傾斜した屋根は、前記内部領域の方向で、前記内部領域を形成する他のモジュールの屋根へと収束しており、
各モジュールは、空気流を前記内部領域内へ直接に押し流すように配置されている、
データセンタ。
【請求項15】
各モジュールが、上部入口縁部を有する空気入口と上部出口縁部を有する空気出口とを有しており、
前記複数のモジュールの空気出口は、空気流を前記内部領域内へ方向付けるように構成されており、該空気入口は前記内部領域から離間されており、
各モジュールの上部出口縁部はそれぞれの対応する上部入口縁部よりも低い高さにある、
請求項1記載のデータセンタ。
【請求項16】
所与のモジュールは、所与の空気入口と所与の空気出口と前記所与の空気入口に隣接したエアバッファとを有しており、前記エアバッファは、前記所与の空気出口から前記所与の空気入口へと戻る排出空気の再循環を低減するように構成されている、請求項14記載のデータセンタ。
【請求項17】
各モジュールは空気出口を有しており、
前記データセンタはさらに、前記空気出口を通って流れる空気の音の振幅を低減するように構成された複数のバフルを有している、
請求項14記載のデータセンタ。
【請求項18】
前記内部領域はダイヤモンド形状を有する、請求項14記載のデータセンタ。
【請求項19】
少なくとも1つの横方向空間を有する内部領域を形成する複数のモジュールを含むデータセンタを熱的に管理する方法であって、前記複数のモジュールは環境内に存在しており、前記方法が、
前記環境に曝されておりかつ前記内部領域から離間された複数の空気入口を介して前記環境から空気を受け取ることと、
熱を発生させる処理デバイスからの熱が吸収されるように、受け取られた空気を前記複数のモジュールを通して方向付けることであって、該受け取られた空気の温度は、空気が熱を吸収して加熱空気を発生させるときに上昇する、ことと、
前記複数のモジュールから直接に前記内部領域内へと前記加熱空気を強制的に流出させることであって、前記少なくとも1つの横方向空間が前記内部領域のための圧力放出部を形成する、ことと
を含む、方法。
【請求項20】
前記方法がさらに、受け取られた空気が前記モジュールに流入するときに、該受け取られた空気の音の振幅を低減させることを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記方法がさらに、前記加熱空気を前記モジュールから強制的に流出させる高さにおけるよりも大きな振幅で入口空気を受け取ることを含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記加熱空気を強制的に流出させることは、前記加熱空気を水平面に対して上向きに方向付けることを含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
前記方法はさらに、前記内部領域の外側の複数のエアバッファを使用して、前記複数のモジュールにおける空気入口を介した前記複数のモジュールへの前記加熱空気の再流入を少なくとも部分的に阻止することを含む、請求項19記載の方法。
【請求項24】
前記環境は卓越風を有しており、前記内部領域は、卓越風を受け取るより狭い端部を有するダイヤモンド形状を有している、請求項19記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本特許出願は、2021年7月19日付にて出願された、Nicholaus LancasterおよびDipul Patelを発明者とする“MODULAR DATA CENTER”なるタイトルの米国仮特許出願第63/223275号明細書の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
政府の権利
無し。
【0003】
分野
例示的な実施形態は、一般的にはデータセンタに関し、より具体的には様々な実施形態はデータセンタの熱プロファイルの管理に関する。
【0004】
背景
データセンタは、企業が重要なアプリケーションおよびデータを含むコンピュータシステムおよび関連するコンポーネントの収容のために利用する建物または建物群である。データセンタは、典型的には、Eメールおよびファイルの共有、人工知能、機械学習および通信サービスを含む、様々なビジネスアプリケーションおよびアクティビティをサポートする。これらのアクティビティは、ネットワーク接続、中央処理およびデータセンタ内でのデータストレージのためのインフラストラクチャを介して可能となる。
【0005】
このために、データセンタの建物は、典型的には、コンピュータおよびサーバ、通信システムおよびストレージシステムならびにセキュリティシステムを収容する。また、データセンタは稼働のために大量の電力も必要とする。したがって、設備を最適な容量および信頼性で運用し続けるために、当該建物には、典型的には換気システムおよび冷却システムなどの環境制御部と冗長容量コンポーネントとが設けられている。望ましくないことに、データセンタの温度が上昇すると、機器の誤動作が発生し、当該機器の全体的な寿命が短縮されてしまうことがある。
【0006】
概要
本発明の一実施形態によれば、環境(例えば開放空間)内に配置されるように構成されたデータセンタが、複数のモジュールを含む。とりわけ、各モジュールは、動作中に熱を発生させる複数の処理デバイスを収容するように構成された内部を形成するハウジングを有している。内部の温度を管理するために、各モジュールは、環境から空気を受け取るように構成された空気入口と、ハウジングから空気を排出するように構成された空気出口とを有している。複数のモジュールのうちの少なくとも3つのモジュールは、隣接するモジュール間に少なくとも1つの横方向空間が形成されるように離間されている。複数のモジュールは、好ましくは、少なくとも3つのモジュールが当該少なくとも3つのモジュールの排出空気を受け取るように構成された内部領域を形成するように配置されている。
【0007】
好ましくは、モジュールは環境内に配置されており、これにより、内部領域は、環境圧力と実質的に同じ圧力を有する。出口空気が入口内へ逆流することを低減するために、モジュールのうちの少なくとも2つが、内側縁部および外側縁部を有する傾斜した屋根を有している。内側縁部は内部領域に接しているかまたは内部領域内へ延在しており、一方、外側縁部は内部領域の外部にある(つまり、内側縁部は内部領域により近い)。内側縁部は外側縁部の高さよりも低い高さにある(つまり、外側縁部のほうがより高い高さにある)。したがって、各空気入口は上部入口縁部を有すると考えることができ、一方、各空気出口は上部出口縁部を有すると考えることができる。上記のように、モジュールの空気出口は、空気流を内部領域へ方向付けるように構成されており、内部領域から離間されている。各モジュールの上部出口縁部は、好ましくは、それぞれの上部入口縁部よりも低い高さにある。モジュールのそれぞれは、多くの場合に上記の屋根の外側縁部を含む、上部屋根部分を有していると考えることができる。当該実施形態および他の実施形態において、モジュールは、少なくとも1つの横方向空間と共に少なくとも部分的に内部領域を画定している。空気の流れを容易にするために、少なくとも1つの横方向空間は、複数のモジュールの上部屋根部分よりも低い高さにある。
【0008】
所与の空気出口から排出された空気が所与の空気入口へと戻る再循環を低減するためのさらなる安全手段として、所与のモジュールは、その空気入口に隣接したエアバッファを有している。さらに、対流する空気流に関して、各モジュールは、空気入口からの空気を、ハウジングを通して空気出口から上方へ向かって内部領域内の水平面に対して1°~90°の角度で方向付けるように構成された出口エアムーバを備えることができる。さらに、空気流を管理するために、システムは、内部領域内に、出口空気を上方へ方向付けるように構成されたフローダイバータを備えることができる。
【0009】
3つ以上のモジュールのそれぞれの空気出口は、内部領域の一部を形成するそれぞれのハウジングの一方側にあってよい。当業者は、長方形状、ダイヤモンド形状または菱形状などの複数の形状を有するように内部領域を成形することができる。空気出口を通って流れる空気の音の振幅を低減するために、幾つかのモジュールは、(例えば入力側に)複数のバフルを有することができる。
【0010】
データセンタは、複数の他の内部空間を形成する複数の付加的なモジュールを含むことができる。例えば、複数の付加的なモジュールのそれぞれは、自身のハウジング(「付加的なハウジング」と称される)と、動作中に熱を発生させる複数の付加的な処理デバイスを収容するように構成された、自身の内部(「付加的な内部」と称される)とを有しうる。複数の付加的なモジュールは、第2の内部領域および第3の内部領域を形成する。風をより効果的に管理するために、内部領域は、好ましくは、オフセットされた非線形のパターンで配置される。
【0011】
他の一実施形態によれば、データセンタは、複数の処理デバイスを収容するように構成された少なくとも3つのモジュールを含む。少なくとも3つのモジュールのそれぞれは、横方向空間が形成されるように他の2つのモジュールに隣接している。少なくとも3つのモジュールは、環境内に配置されており、当該少なくとも3つのモジュールによって画定される複数の凹部を形成する1つの内部領域を形成している。各モジュールは、下方の内部領域へ向かって所定の角度で延在し、かつ内部領域の方向で他のモジュールの屋根へと収束する、傾斜した屋根を有する。当該収束は効果としての収束であることに留意されたい。すなわち、屋根によって形成される線分が無限へと延長され、当該線分が内部領域の外側のエリアから当該内部領域へ向かって(または多くの場合にこれを超えて)トラバースされるとき、他の屋根の線分と衝突または交差することとなる(ここでの収束は屋根の物理的な収束を必要としない)。各モジュールは、空気流を内部領域内へ直接に押し流すように配置されている。
【0012】
他の実施形態によれば、方法により、少なくとも1つの横方向空間を有する内部領域を形成する複数のモジュールを含むデータセンタが熱的に管理される。このために、方法は、環境に曝されておりかつ内部領域から離間された複数の空気入口を介して環境から空気を受け取り、次いで、熱を発生させる処理デバイスから熱が吸収されるように、受け取られた空気を複数のモジュールを通して方向付ける。対流プロセスとして、受け取られた空気の温度は、空気が熱を吸収して加熱空気を発生させるときに上昇する。次いで、方法は、複数のモジュールから直接に内部領域内へと加熱空気を強制的に流出させる。熱伝達を容易にするために、少なくとも1つの横方向空間が内部領域のための圧力放出部を形成する。
【0013】
当業者であれば、以下に簡潔にまとめた図を参照しながら説明する以下の「例示的な実施形態の説明」から、本発明の様々な実施形態の利点をいっそう完全に理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の例示的な実施形態によるデータセンタを概略的に示す図である。
図2】様々な実施形態の単一のモジュールの空気流および圧力を示す概略図である。
図3A】本発明の例示的な実施形態により構成された4つのモジュールの配置構成を概略的に示す図である。
図3B】本発明の例示的な実施形態により配置された一連のモジュールフォーメーションを概略的に示す図である。
図4A】例示的な実施形態による、各モジュールの排出側が内部領域へ向かうように構成された4つのモジュールを概略的に示す平面図である。
図4B】例示的な実施形態による、各モジュールの排出側が内部領域へ向かうように構成された3つのモジュールを概略的に示す平面図である。
図4C】例示的な実施形態による、各モジュールの排出側が内部領域へ向かうように構成された6つのモジュールを概略的に示す平面図である。
図5】本発明の様々な実施形態の空気流を矢印で概略的に示す図である。
図6】本発明の例示的な実施形態による、複数のモジュールを通って流れる空気の温度を概略的に示す図である。
図7】例示的な実施形態によるモジュールフォーメーションを介したより高速な空気速度を赤色で概略的に示す図である。
図8】本発明の例示的な実施形態による一連のモジュールフォーメーションの温度および空気流を概略的に示す図である。この図には、内部領域がどのように風から保護されているかも示されている。
図9】例示的な実施形態による、データセンタを対流冷却するプロセスを示す図である。
【0015】
例示的な実施形態の説明
例示的な実施形態では、データセンタの3つ以上のモジュールが、これらのモジュールからの熱排気を効率的に管理するための内部領域を形成するように志向され、構成されている。このために、各モジュールは、空気入口および対応する空気出口を有し、空気流を調整する内部を形成するハウジングを有している。各モジュールはまた、望ましくない熱を発生させる複数の内部処理デバイス(例えばサーバ、コンピュータなど)を有する。様々な実施形態において、空気出口は、各モジュールの高温排出空気を内部領域内へと方向付ける。当該高温排出空気は、好ましくは、他のモジュールからの高温排出空気と相互作用し、モジュール内部から熱をより効果的に除去する。様々な実施形態の詳細を以下に説明する。
【0016】
図1には、本発明の例示的な実施形態により構成されるデータセンタ10が概略的に示されている。データセンタ10は、大きな環境内に(以下で説明する)所定の形式で配置された複数のモジュール12と、モジュール12およびその内部電子コンポーネント(例えばサーバ)および他のデータセンタコンポーネントに電力を供給するエネルギ源14とを含んでいる。好ましい実施形態では、エネルギ源14は、(図示されている)風力エネルギファーム、ソーラーファーム、水力発電所などの再生可能源である。
【0017】
付加的にもしくは代替的に、他の実施形態では、データセンタ10を公営のもしくは他の従来の電力供給網に接続することができる。当該接続は、いわゆる「メーター裏側」および/または「メーター前側」で行うことができる。例えば、こうした実施形態では、商用電力コストが低いときには従来の電力供給網からの電力を使用し、商用電力コストが高いときには再生可能電力を使用することができる。実際には、従来のグリッドが使用される場合であっても、再生可能エネルギ源では、バッテリ内に、または(例えば従来の電力供給網のコストが高いときに)将来の使用のための他の手段内に、エネルギを生成して貯蔵し、かつ/または再生可能に生成された余剰エネルギを従来の電力供給網へと戻し売りすることができる。当業者は、データセンタ10が他の様々な再生可能エネルギ源および/または非再生可能エネルギ源を利用できることを理解しているはずであり、したがって、本明細書では単なる例示として論じる。
【0018】
データセンタ10はまた、とりわけエネルギ源14によって生成された供給電力を貯蔵および管理する制御システム16を有する。このために、制御システム16は、上記のエネルギ源14を介して上記の複数のモジュール12に電力を供給する。当該制御システム16は、どの時点でどのエネルギ源(例えばグリッドまたはローカルの再生可能源および/またはマイクログリッド)を使用するか、どの程度の量を使用するかなどを自動的に選択するように予めプログラミング可能である。さらに、制御システム16は、手動でのグリッド制御を容易にするユーザインタフェース、ならびにモジュール12およびそのシステムを管理する様々な制御機能の制御部を有することができる。
【0019】
様々な実施形態において、一部もしくは全部のモジュール12が環境内に持続的に構築されている。例えば、各モジュール12は、自身の実質的に持続的な移動を可能にする従来の(すなわち従来の家屋またはオフィスビルディングと類似した)建築技術および建築製品によって構築可能である。例えば、各モジュール12は、セメントパッド上または基礎上に配置することができ、または実質的に持続的な形式で地面に固定することもできる。実際に、住宅などの持続的な構造物を移動させる煩雑かつ非能率的な手法が存在し、ここでの実施形態におけるモジュール設計はこうした手法を提案することに関する。
【0020】
なお、他の実施形態では、モジュール12は、トレーラまたは幾つかのモバイルホームと同様に、モジュール12がより容易に移動可能となる形式で環境に固定されている。特に、モジュールの移動をいっそう利用できるようにする装置によって、これらのモジュールを寸法設計し、環境内に配置することができる。例えば、所与のモジュール12は、環境内の所望の位置において準備された地面部分に配置可能であり、ステーク、固定具またはその他の技術によって名目的な固定を行うことができる。モジュール12を(例えば卓越風に対して相対的な最適位置に関して自身の位置を微調整するために)移動させるべく、作業員または他の者は、地面の全ての(取り外し可能な)連結装置を単純に取り外して、モジュール12を所望の新たな位置へ移動させることができる。
【0021】
内部コンポーネント(例えば、サーバ、コンピュータ、ルータなど)を環境から保護するために、各モジュール12は、熱的に制御される内部を形成するハウジング18を有する。様々な実施形態のモジュールハウジング18は、長方形状の金属容器として実現可能であるが、他のフォームファクタを有していてもよく、かつ/または木材、プラスチック、コンクリートおよび他の構造材料もしくは材料の組み合わせから形成されていてもよい。好ましくは、以下で述べるように、ハウジング18は、モジュール12の外部ではあるが近傍の空気流を管理するように特別に構成された傾斜した屋根を有している。よって、ハウジング18は、内部コンポーネントを環境から保護する、実質的に密閉された構造体である。様々な実施形態、例えば上記の実施形態の幾つかでは、ハウジング18は、モジュール12がポータブルであり、ひいてはモジュール12が異なる位置へ輸送可能であるように構成されている。
【0022】
ハウジング18の内部は、その中心的機能を提供するための複数の処理デバイスを含む。様々な実施形態では、とりわけ、処理デバイスは、コンピュータ、サーバ、ネットワーク機器(例えばスイッチおよびルータ)ならびに様々な情報セキュリティ要素、例えば物理的セキュリティデバイスおよびファイアウォールを含む。当業者であれば理解されるように、これらのコンポーネントは例示的なものであり、処理デバイスおよび関連するアクセサリの機能コンポーネントを形成することのできる様々な種類のハードウェア、ソフトウェアおよびハードウェアとソフトウェアとの組み合わせが存在する。モジュール12内に含まれている処理デバイスは、ブロックチェーンコンピューティング、ブロックチェーンまたはビットコインマイニング、ウェブサービス、ビデオまたは他のマルチメディア伝送、ストレージおよびデータ管理などのアプリケーションをサポートする様々な共通の機能のいずれかを実行する。
【0023】
当業者に知られているように、各モジュール12内の複数のデバイスは、使用中に相当量の熱を発生する。高い外気温または日光曝露などの環境要因も、モジュール12内の温度を上昇させうる。したがって、各モジュール12は、空気流をモジュール12の一方側の空気入口20A(「吸気部」とも称される)から反対側の排気部または空気出口20B(「排出出口」とも称される)へ方向付ける対流冷却システムを有する。図1(および後に詳述する図3A)に示されているように、モジュール12は、好ましくは、3つ以上のモジュール12の排気側/空気出口側が、共通の領域、すなわち3つ以上のモジュール12によって形成された開放内部領域22に面するように配置される。図1には、例えば4つずつのモジュール12から成る6つのセット(以下では「モジュールセット」と称する)が示されており、これらのモジュールのそれぞれが内部領域22を形成している。各モジュールセットの4つのモジュール12それぞれの空気出口20Bは、内部領域22へ向かって方向付けられている。好ましくは、4つのモジュール12の排出空気が相互作用し、モジュール12から上方へ向かって押し流される。
【0024】
例示的な実施形態では、各モジュール12は、内部に空気流を発生させて制御する複数のエアムーバ24(例えば、空気入口20Aもしくはその近傍の1つもしくは複数のエアムーバ24、および空気出口20Bもしくはその近傍の1つもしくは複数のエアムーバ)を有する。エアムーバ24は受動の装置または能動の装置とすることができ、とりわけファン、ブロワもしくはタービンを含むことができる。内部モジュール温度の効率的な調整により、熱に関連する損傷が緩和され、処理デバイスの耐用期間、またデータセンタ10自体の耐用期間が効果的に延長される。図2には、例示的な単一のモジュール12の空気流のダイヤグラムが概略的に示されている。当該図で見て右方から左方へ流れることで、モジュール12の空気入口側に比較的低温の空気が流入する。モジュール12内の複数のエアムーバ24(概略的に示されている)は、こうした低温の空気を、処理デバイスを通してかつ/または処理デバイスの周囲へ方向付ける。冷却媒体がモジュール12内のデバイスと相互作用すると、入口空気がコンポーネントから熱を収集し、コンポーネントおよびハウジング内部を効果的に対流冷却する。次いで、エアムーバ24は、加熱空気(すなわち、入口空気が空気出口20Bへ向かって移動するときに熱対流によって加熱された空気)をハウジング18の排気側へと方向付け、そこから空気が内部領域22内へと放出される。
【0025】
しかし、発明者らは、使用中、空気出口20Bからの高温空気が不所望にもハウジング18の上部を介して空気入口20Aへ戻り、再循環しうることを発見した。結果として、こうした再循環は、冷却の利点を大幅に抑圧してしまい、内部コンポーネントを損傷させるおそれがある。なお、この問題を緩和するために、ハウジングの屋根26は、好ましくは非水平のコンフィグレーションを志向している。この例では、ハウジング18の屋根26は、水平面(すなわち、水平面とはおおまかにはモジュール12が取り付けられる基準面である)に対して傾斜しているかまたは角度を付けられている。当該角度の設定が浅すぎると高温空気の再循環が過剰となりうるが、角度の設定が深すぎると他の点で空気流全体に悪影響が及ぶ可能性がある。試験後、発明者らは、約5°~20°の間およびこれを含む屋根角度が満足のいく結果を提供することを発見した。より正確には、約10°~15°の間およびこれを含む屋根角度が満足のいく結果を提供すると期待される。
【0026】
当該実施形態における屋根26は、空気出口20Bと同じ側にある内側縁部28と空気入口20Aと同じ側にある外側縁部30とを有していると考えられる。したがって、内側縁部28は、内部領域22に接するかまたは内部領域22内へ延在するものであってよい。このため、外側縁部30から内部領域22までの距離は、内側縁部28から内部領域22までの距離よりも大きい。図2に示されているように、内側縁部28は、外側縁部30よりも低い高さ(すなわち、この場合、ハウジングの基部から内側縁部28までの距離)にある。換言すれば、ハウジング18の基部から内側縁部28までの距離は、ハウジング18の基部から外側縁部30までの距離よりも小さい。これらの縁部28および30は、図2に示されているように張り出し部を形成していてもよいし、またはハウジング18のそれぞれの入口側および出口側を形成する壁部で終端して、張り出し部を形成しなくてもよい。
【0027】
傾斜した屋根26は幾つかの環境では十分でありうるが、モジュール12は、空気の再循環をさらに低減するように、空気入口20Aと空気出口20Bとを相互に相対的に配置しかつ方向付けることもできる。とりわけ、空気出口20Bは、より大きな流量で出口空気が環境内へ押し流されるよう、さらに集中させることができる。実際には、熱放出および空気流を最適化するために、ここでの流量を同じモジュールセット31内の他のモジュール12(すなわち、単一の内部領域22を形成する3つ以上のモジュール12)と協調させることができる。したがって、空気入口20Aの許容表面積(すなわち、空気がハウジング18/モジュール12に流入することのできる開放空間)を、空気がハウジング18/モジュール12から流出する表面積よりも大きくすることができる。加えて、空気入口20Aは、空気出口20Bの高さよりも高い位置から開始していてよい。特に、図2の実施形態では、空気入口20Aは、上部空気入口縁部32Aおよび下部空気入口縁部32Bを有すると考えられる。対応する形式において、空気出口20Bも、上部空気入口縁部34Aおよび下部空気入口縁部34Bを有すると考えられる。望ましくない空気の再循環を低減するために、発明者らは、上部空気入口縁部32Aの高さが上部空気出口縁部34Aの高さよりも高いかまたは大きいほうが好ましいことを認識している。付加的にもしくは代替的に、下部空気入口縁部32Bの高さは、好ましくは下部空気出口縁部34Bの高さよりも低いかまたは小さい。
【0028】
当業者は、ここでの説明の教示に一致する空気入口20Aおよび空気出口20Bの適切な形状、面積、構成および寸法を選択することができる。例えば、空気入口20Aおよび空気出口20Bをそれぞれ所定の寸法および形状の複数の開口から形成することができる。当該寸法および形状は、モジュールハウジング18内の所望の空気流および圧力の関数とすることができる。例えば、空気入口20Aは、水平に方向付けられた複数の長方形状の開口から形成することができる。好ましい実施形態では、空気入口20Aと空気出口20Bとの間の方向を変化させる空気の量が最小化される位置に空気出口20Bが形成される。このために、単一のモジュール12では、空気入口20Aは、好ましくは、対応する空気出口20Bから直接の反対側の領域にある。例えば、所与のモジュール12において、空気入口20Aは、3つ以上のモジュール12の内部領域22を形成する壁に画定可能であり、一方、空気出口20Bは、空気入口20Aを有する壁とは反対側の壁(例えば、空気入口20Aを形成する壁から最も遠い壁)に形成可能である。
【0029】
各モジュール12は、空気出口20Bからモジュール12を通って再循環する空気の量をさらに低減するために、複数のバッファまたはスカフォールド(例えばモジュール12の屋根26上にありかつ/または空気入口20Aに一体化されている「バッファ36」)を有することができる。図2の実施形態のバッファ/スカフォールド36は、ハウジング18の側部における空気入口開口内へ下方から直接に流入してくる空気をブロックするフードとして実現可能である。幾つかの実施形態では、モジュール12の内部は、熱を発生させるコンポーネント(例えば、サーバ、コンピュータ、スイッチなど)を収容したラックの前面をラックの背面から分離する熱バリアを有することができる。当該バリアはさらに、冷却装置ラックの側部への高温空気流を低減する。
【0030】
実験後、発明者らは、モジュール12の排気が内部領域22へ向かって内向きに空気を方向付けることにより、より効率的な空気流およびより低温のモジュール温度が可能となることを発見した。他の利点のなかでもとりわけ、ここでのモジュール構成により、隣接するモジュール12の空気流システムを通って再利用される排出空気の体積が低減され、限定的な風抵抗のために、空気を各モジュール12の空気出口/排出側20Bへ方向付けるエアムーバ24の効率が高まる。加えて、発明者らは、多くの事例において、こうしたコンフィグレーションにより、風が空気入口20Aへ向かって流れて戻るまでに、空気加熱時間を十分に長くすることができることを認識している。理論的には、風が加熱空気を取り込んでこれを吸気側へ向かって方向付ける時点までに、この加熱空気が空気入口20A内へ有効には引き戻されない程度に強勢となる。なお、きわめて強い風であっても、内部領域22によって少なくとも部分的に排気圧力および速度特性がある程度まで保護されるので、いっそう効果的な運転が可能となる。
【0031】
幾つかの実施形態では、エアムーバ24自体(例えばブロワ)が方向付けられるか、または空気出口20Bのエアムーバ24が加熱された出口空気を上方へ方向付けるように構成される。例えば、空気出口20Bもしくはその近傍のエアムーバ24は、空気を内部領域22内へ直線状に(すなわち、モジュール12の基部に対して水平に)方向付けることができ、または上方へ1°以上の角度で(例えば、水平面から最大90°の角度で)方向付けることができる。十分な角度とは、10°~45°、45°~60°、60°~90°または5°~90°を含みうる。空気流を最適化するために、エアムーバ24は、その出口空気流を、内部領域22を形成する別のモジュール12からの1つもしくは複数の空気流と交差するように方向付ける。したがって、空気流は組み合わされ、固有の熱と共により望ましい速度で上方へ向かって流れる。また、論理回路または他のコンポーネントも、冷却を最適化するために、エアムーバの出口流の角度を自動的にもしくは動的に調整することができる。とりわけ、当該角度は、天候、モジュール12のセット(「モジュールセット31」と称されるモジュール12のセット)における他のモジュール12の動作、冷却されるコンポーネントおよび環境の関数でありうる。さらに、Z方向(すなわち垂直方向)に運動可能であることに加えて、エアムーバ24は、X/Y平面(すなわち水平面)において運動可能であってよく、または3つ全ての軸に沿って運動可能であってよい。
【0032】
上記のように、3つ以上のモジュール12から成るセットは、上記の内部領域22を形成するように相互に相対的に方向付けられている。これらのモジュール12は、空へ向かって開放されている間、横方向で閉鎖された内部領域22を形成しないように配置されている。その代わりに、好ましい実施形態では、様々な図に示されているように、隣接するモジュール12どうしが、横方向空間38を形成するように、離間して配置されている。したがって、モジュール12は、内部領域22を画定する周方向の開放空間を少なくとも部分的に形成していると考えることができる。周方向の開放とは、モジュールセット31の周囲の領域が少なくとも1つの開口を有し、必ずしも取り囲まれていないことを意味する(すなわち、以下で説明するように、長方形状または他の形状であってよい)ことに留意されたい。
【0033】
より詳細には、様々な図に示されている例では、各モジュール12は、他の2つのモジュール12に隣接しかつその間にあると考えられる。しかし、ここでの隣接性は、横方向空間38を形成するために開放されている。ここでの横方向空間38は、モジュール12の相互に最も近い部分によって形成されていると考えることができる。例えば、図3Aに概略的に示されている(図面の垂直方向での)上方2つのモジュール12は、隣り合っているが相互に離間して配置された隣接する垂直方向縁部を有する。これら2つの縁部は、内部領域22を横方向で開放しており、少なくとも部分的に上方2つのモジュール12間の横方向空間38を形成している。この図における下方2つのモジュール12も同じ関係を有しており、図示されているように、各モジュール12は、他方の側に別の横方向空間38を有している。したがって、隣接するハウジング部分が横方向空間38を形成すると考えることができる。このように、横方向空間38は、モジュール12のそれぞれの屋根26において終端していると考えることができる。張り出し部は、図2に示されているようなものであるとするならば、より高いほうへ延在しうるかまたはより横方向空間38内へ延在しうる。
【0034】
発明者は、内部領域22を閉鎖することが、望ましくないことに「煙突効果」を引き起こす差圧を発生させうることを発見した。しかしその代わりに、空気出口20Bに差圧が存在しない場合、例示的な実施形態では、内部領域22の上部と内部領域22の下方部分との間での著しい差圧が低減される。換言すれば、空気出口圧力を無視したとき、入口領域内の圧力は、好ましくは環境圧力とほぼ同じであるかまたはこれに近い。したがって、モジュール12間の横方向空間38は、出口空気を効率的に除去するという所望の利点を提供するように決定されたものである。こうした圧力平衡化構成は、横方向空間38を有さない潜在的な設計(横方向閉鎖設計)と比較した場合に、様々な環境において改善された利点をもたらす満足のいく結果を提供する。
【0035】
図3Aには、4つのモジュール12の例示的な配置が概略的に示されており、これらのモジュール12の排出側(すなわち、空気出口20Bを有する側)がダイヤモンド形状の内部領域22を形成している。同様に、図3Bには、別の配置構成における複数の長方形状のモジュールセット31が示されている。例示的な実施形態では、長方形状または類似のハウジング18と共に、各モジュール12の排出側を有するモジュール12の壁が平面を形成すると考えることができ、このような各平面の交差によって内部領域22の境界が形成される。よって、モジュール12の平面によって画定される境界は、幾何学的形状(例えば、長方形状、ダイヤモンド形状、五角形状、六角形状、リング形状、楕円形状または菱形状)を形成する。幾つかの実施形態では、平面の境界によって形成される形状は不規則に成形可能である。実際にはこれらの平面は交差しているが、内部領域22は横方向で閉鎖された領域ではなく、1つもしくは複数の開口を有している。図4Aには、全体として内部領域22へ向かう排出側を有するように編成された4つのモジュール12の平面図が概略的に示されている。この例での各モジュール12の平面によって形成された内部領域22の境界は、菱形状またはダイヤモンド形状に類似している。
【0036】
より詳細には、他の図面とは異なり、例示の目的で、図4Aには、図面のみに存在する延長線によって延在する平面と共に当該有効領域が明示的に示されており、当該延長線は、図面において論述を簡単にするためのものである。ここでの延長線は、延長されることで様々な平面の交差を示し、内部領域22が特に交点においてどのように複数の凹状領域を形成するかを示すものである。同様の内部領域22は、モジュール12が内部領域22を形成する平坦な側部を有していない場合にも形成されていると考えることができる。
【0037】
当業者であれば、内部領域22の境界が本開示の範囲内の3つ、4つもしくは5つ以上のモジュール12によって画定可能であることを認識するであろう。例えば、図4Bでは、内部領域22は三角形状である。代替的に、図4Cでは、6つのモジュール12が六角形状の内部領域22を形成するように方向付けられている。他の実施形態と同様に、これらの図には、上記の内部領域22に面するモジュール12の排出側と、この排出側とは反対側の、内部領域22から離れる方向を向いた空気入口側とが明示されている。
【0038】
好ましい実施形態では、内部領域22を形成するモジュールセット31内の内部領域22/モジュール12は、2つのモジュール12が有効点を形成する鋭角を成しているダイヤモンド形状である。性能を向上させるために、当該点は一般に、モジュール12が配置されている環境の卓越風の方向を指している。具体的には、ここでの有効点は、好ましくは、当該環境または当該地域での通常の風の一般的な方向における点に対してアライメントされている。すなわち、「卓越風」とは、風の最も一般的な方向(例えば東から西へ吹く風)を指す。
【0039】
幾つかの実施形態では、出口空気を所定の方向に方向付けるように構成されたフローダイバータ40(図4A)を内部領域22内に設けることもできる。例えば、フローダイバータ40は空気を上方へ方向付けることができる。このために、フローダイバータ40は、流体/空気を所望の形式で方向付ける表面フィーチャ(例えば、凹部、凸面など)を有することができる。別の例として、フローダイバータ40がピラミッド形状を有していてもよい。よって、出口エアムーバ24の一部または全部は、その空気流を所定の形式で、フローダイバータ40へ向かって、例えばフローダイバータ40の箇所で直接にまたは間接的に方向付けることができる。幾つかの実施形態では、出口エアムーバ24を方向付け、フローダイバータ40から離れるように流れを方向付けることができる。よって、こうした理由および他の理由から、フローダイバータ40は、内部領域22の全体としての中心に配置することもできるし、または中心からオフセットさせて配置することもできる。幾つかの実施形態では、複数の同様のもしくは異なるフローダイバータ40を内部領域22内に展開して、より複雑な流れパターンを生じさせることもできる。これらのフローダイバータ40は、あたかも単一のフローダイバータ40であるかのように協働可能であり、またはデータセンタの要求によって指定された通りに独立して動作可能である。
【0040】
モジュール12が好ましくは内部領域を形成する一方で、幾つかの実施形態では、1つもしくは複数の天然のかつ/または人工の構造を使用して、内部領域22を部分的に形成もしくは画定することができる。例えば、とりわけ、一群の岩、一群の木、レンガ壁もしくは木壁、空のモジュールハウジング18、トレーラまたはその他の対象物が内部領域22の境界の一部を形成することができる。
【0041】
代替的な実施形態では、単一のモジュール12を、上述したように同様の機能を実行することのできる内部領域22と共に幾何学的形状(または不規則な形状)で構築することができる。例えば、ここでの単一のモジュール12の実施形態は、開放された内部領域22を有する、トロイダル形状、ダイヤモンド形状、菱形状などを形成することができる。
【0042】
発明者らは、ここでのモジュール12のコンフィグレーションが空気出口20Bから発生する騒音も低減することを発見した。特に、モジュール12の排気側を通って放出される空気はデータセンタ10の箇所に大きな騒音を発生させ、非制御の環境へと放出される空気がこのような問題を引き起こす可能性がある。当該配置構成において各モジュール12の排出側を内部領域22に面するように方向付けることによって騒音が低減されると、空気流が出口を介して放出された後に管理可能となるので、データセンタ10全体にわたる排出騒音を好適に低減することができる。
【0043】
他の実施形態では、1つもしくは複数のモジュール12における空気出口20Bが、モジュールの異なる部分、例えばモジュール12の上部にあってもよい。幾つかのこのような実施形態では、内部領域22へ向かって流れを方向付けるエアムーバ装置を設けることができる。他の実施形態と同様に、内部領域22は、各モジュール12の1つの壁、この場合は空気出口20Bを有さない内壁によって形成されている。他の実施形態では、空気出口20Bは、異なるモジュール12の異なる領域に接してまたは異なる領域内に設けることができる。例えば、1つのモジュール12はその上部/屋根26に空気出口20Bを有することができ、一方、他のモジュール12は壁に面する内側に空気出口20Bを有することができる。
【0044】
図3Bを参照すると、当該実施例のデータセンタ10は、それぞれが内部領域22を形成するモジュールセット31を有すると考えることができる。各セット31は、他のセットのモジュール12と同一のもしくは異なるモジュール12から形成することができる。図1の実施形態とは異なり、モジュール12のセットは、非線形のパターンで相互にオフセットされている。換言すれば、ここでの複数のモジュールセット31は、3つ以上のモジュールセット31から成る直線を形成せず、その代わりにジグザグ状のパターンを形成している。こうした配置構成は、隣接するモジュールセット31の空気入口20A内への加熱された出口空気の供給を最小化するために、モジュールセット31を離間させる役割を果たしている。例えば、奥側右方から左方へ開始される3つのセットを、第1のモジュールセット、第2のモジュールセットおよび第3のモジュールセット31として識別することができる。相互に過度に接近して配置されている場合、これらのセットのうちのいずれかからの加熱空気が他のセットの入口に供給される可能性がより大きくなる。しかし、当該データセンタ10では、物的財産を浪費せず、他の2つのモジュールセット31からの望ましくない高温空気のフィードバックが最小化されるよう、第2のモジュールセット31が斜めにもしくは他の形式でオフセットされた状態で配置される。よって、第1のモジュールセット31と第3のモジュールセット31とは、フィードバックリスクを最小化するために大きく離間され、一方、第2のモジュールセット31は、第1のモジュールセット31および第3のモジュールセット31に対する影響を緩和するためにオフセットされている。
【0045】
図5には、本発明の様々な実施形態の空気流が矢印で概略的に示されている。この図における矢印は、空気がモジュール12を通って流れる方向を指す例示的な空気流を表している。図5の着色されたバックグラウンドは、モジュール12を通って流れる空気の様々な温度を表す温度凡例に対して調整されている。空気がモジュール12に流入すると、エアムーバ24は、モジュール12内の空気を循環させ、空気出口20Bを通して内部領域22内へ方向付ける。よって、モジュール12は、外部に面した空気入口20Aを通して新鮮な空気流を受け取り、図示および上述したように、各モジュール12の空気出口20Bは他のモジュール12の空気出口20Bへ向かって方向付けられる。上記のように、好ましい実施形態では、内部領域22は、上記の横方向空間38を有する外気領域である。換言すれば、内部領域22は、実質的にモジュール12によって形成されている平坦な幾何学的形状を超えた箇所では少なくとも部分的に覆われていないかもしくは別の形式でも制限されていない。当業者は、内部領域22が部分的にもしくは完全に覆われていてもよく、または別の形式で収容されていてもよいことを理解するであろう。さらに、幾つかの実施形態では、モジュール12および/または内部領域22は、空気流をさらに最適化するためまたは別の目的に用いるための(例えば、水、回転タービン、転炉、ミルなど用の熱要素のための)壁または他の流体方向付けデバイスを有することができる。実際に、幾つかの実施形態では、内部領域22を形成する1つもしくは複数のユニットとして、壁またはその他の非モジュール型構造を使用することができる。例えば、図5のモジュールセット31は、2つのモジュール(例えば図における上部および下部のモジュール)と、2つの壁または空のシェル(例えば左右の構造)とを有することができる。
【0046】
図6には、例示的な実施形態における空気流の別のビジュアライゼーションが概略的に示されている。この図面の空気温度および空気流は、温度変化を反映させた温度凡例に対して色調整された線によって表現されている。上記にて図示および説明したように、より低温の空気が空気入口側を通ってモジュール12内へ流入し、空気出口20Bから内部領域22内へ流出する。空気温度はモジュール12内の処理デバイスを通過してもしくは周回して流れるにつれて上昇し、最終的にはモジュール12の排出側から高温空気として放出される。モジュール12の向きは、内部領域22から環境内へと上昇する高温排出空気が組み合わされた排出流の有効流を発生させる。様々な実施形態では、排出空気は、風および/または自然の気流によって押し出される。各モジュール12の空気入口側のバッファ36およびモジュールセットコンフィグレーションが、モジュール12の空気流システムを通して不所望にも再利用されてしまう排気量を低減させる。さらに、上記のように、バフルを用いてまたはバフルを用いずに空気流を方向付ける、モジュールの屋根26またはその他の領域におけるスカフォールドは、システムの物理的に離間された別の領域のより低温の空気との混合によって、高温空気を低減することができる。
【0047】
図7には、様々な実施形態における空気速度の例示的な表現が概略的に示されている。この種の表現によって、内部領域22がどの程度の強さで外部風から遮断されているかを示すことができる(例えば、外部風が内部領域22に僅かな影響を与えることもありうる)。空気の色は、速度凡例に対して調整されている。モジュール12のフォーメーションにより、風がモジュール12のうちの幾つかの空気入口側へ直接に流入可能となり、一方、各モジュール12の排出側は、フォーメーションにおける他のモジュール12により少なくとも部分的に風から遮断され、これにより、モジュール12から空気を放出するエアムーバ24の効率が支援される。組み合わされた排出空気は上昇し、風によって引き出し可能となる。
【0048】
図8には、風が図7とは異なる方向に吹いている間の一連のモジュールセットのフォーメーションが概略的に示されている。この図にはまた、比較的近接して離間されて配置されたモジュール12がどのように風に対して緊密に保護されているか、また隣接するモジュール12の空気入口20Aがどのように排出部に対して保護されているかが示されている。またここには、鋭角の側部が全体として風に対して(または卓越風を指す向きに)アライメントされているダイヤモンド形状のモジュールセット31/内部領域22も示されている。
【0049】
このように、空気流は、温度凡例に対して色調整された線によって示されている。他の図と同様の形式で、風は、各フォーメーションにおいてモジュール12の空気入口側へと吹き付け、一方、排出側は高温空気を内部領域22内へと放出し、上述した排出が発生する。風はさらに、高温排出流を、一連のモジュールフォーメーションを介して、これらから離れるように押し出す。よって、フォーメーションの背面側のモジュール12では高温排気の取り込みが回避され、データセンタ10内の各モジュールセット31内の冷却システムの効率が高まる。
【0050】
図9には、例示的な実施形態による、上述したデータセンタ10(および同様に構造化された他のデータセンタ)を対流冷却するプロセスが示されている。ここで、当該プロセスは、データセンタ10のコンポーネントを冷却するために通常使用される長時間のプロセスに比べて簡単化されていることに留意されたい。したがって、ここでのプロセスは、当業者が使用する可能性が高い付加的なステップを含むことができる。さらに、これらのステップのうちの幾つかは図示とは異なる順序でまたは同時に実行可能である。したがって、当業者は、必要に応じてプロセスを修正することができる。
【0051】
さらに、上記のように、記載している材料および構造の多くは、使用可能な広範な種々の材料および構造の1つにすぎない。当業者は、用途および他の制約に応じて適切な材料および構造を選択することができる。したがって、特定の材料および構造についての説明は、全ての実施形態を限定することを意図するものではない。
【0052】
図9のプロセスは、モジュールセット31内の1つもしくは複数のモジュール12がそのそれぞれの空気入口20Aにおいて冷却空気を受け取るステップ900から開始される。次いで、当該空気は、対流冷却を生じさせるために、熱を発生する様々なコンポーネント(例えばサーバ、コンピュータなど)の上方および周囲へ強制的に流出される(ステップ902)。このために、各モジュール12は、モジュール内部に、空気を所望の形式で方向付ける内部流体/空気流機器(例えばエアムーバ24またはエアガイド)を有する。空気がモジュール12および過熱した製造機器を通過すると、この空気が熱を吸収し、空気出口20Bを介して内部領域22内へ強制的に流出される(ステップ904)。対流冷却空気がモジュール内部で数回のターンを行ってもよいが、空気入口20Aおよび空気出口20Bは好ましくは実質的に直線状に形成されるか、または空気入口20Aの少なくとも一部と空気出口20Bの一部とが直線を成す。ただし、他の実施形態では、このような直線が成されなくてもよい。
【0053】
当業者は、データセンタ10以外の分野においても様々な実施形態を使用することができる。例えば、製造工場、化学製造工場、半導体ファブ、オフィスビルディングにおいて様々な実施形態を使用することができる。ただし、このような他の実施形態では、上記で論じていないカスタマイズが必要となる可能性が高い。
【0054】
上述した本発明の実施形態は単なる例示であることが意図されており、当業者には多数の変更および修正が明らかであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】