(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】音響信号を用いた空間監視装置の音響信号自動設定方法
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
G01H17/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503930
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 KR2022009545
(87)【国際公開番号】W WO2023022365
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523439378
【氏名又は名称】キム、チェ ファン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チェ ファン
(72)【発明者】
【氏名】ペン、トン グク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポム ス
(72)【発明者】
【氏名】チン、チャン チュ
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB16
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064CC42
2G064CC43
(57)【要約】
本発明は、音響信号を用いた空間監視装置の音響信号自動設定方法であって、監視対象空間の物理的状況変化をより正確に把握することができるように、空間監視装置から放出する音響信号を自動設定する技術に開示する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象空間へ音響信号を放出する音響信号放出ステップと、
前記対象空間の音響信号を受信する音響信号受信ステップと、
受信された音響信号に基づいて空間の周波数応答を測定する空間の周波数応答測定ステップと、
測定された空間の周波数応答を、設定された判断条件に基づいて判断し、放出する音響信号を再設定するか否かを決定する音響信号再設定決定ステップと、
音響信号の再設定決定に応じて、放出する音響信号を変更して再設定する音響信号再設定ステップと、を含むことを特徴とする、空間監視装置の音響信号自動設定方法。
【請求項2】
前記音響信号再設定判断ステップにおける前記判断条件は、測定の安定性、スペクトルの変動性、周波数分解能の適正性、または騒音との区別性のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の空間監視装置の音響信号自動設定方法。
【請求項3】
前記音響信号放出ステップ乃至前記空間の周波数応答測定ステップを繰り返し行い、
前記音響信号再設定判断ステップは、
繰り返し測定された複数の空間の周波数応答相互間の類似性に基づいて測定の安定性を評価して、音響信号を再設定するか否かを判断することを特徴とする、請求項1に記載の空間監視装置の音響信号自動設定方法。
【請求項4】
前記音響信号再設定判断ステップは、
前記測定された空間の周波数応答において、スペクトルの最大値と最小値との差異または散布度(degree of scattering)を基準範囲と対比することにより、スペクトルの変動性を評価して、音響信号を再設定するか否かを判断することを特徴とする、請求項1に記載の空間監視装置の音響信号自動設定方法。
【請求項5】
前記音響信号再設定判断ステップは、
前記測定された空間の周波数応答において、スペクトル波形の傾きに基づいて周波数分解能の適正性を評価して、音響信号を再設定するか否かを判断することを特徴とする、請求項1に記載の空間監視装置の音響信号自動設定方法。
【請求項6】
前記音響信号再設定判断ステップは、
測定された空間の周波数応答を、以前に取得された空間の周波数応答または音響信号を放出せずに測定された騒音との比較を介して騒音との区別性を評価して、音響信号を再設定するか否かを判断することを特徴とする、請求項1に記載の空間監視装置の音響信号自動設定方法。
【請求項7】
前記音響信号再設定ステップは、
単一音の音響信号に対して、放出開始点の周波数、放出終了点の周波数、または音響信号放出持続時間のうちの少なくとも1つを調整して、放出する音響信号を再設定することを特徴とする、請求項1に記載の空間監視装置の音響信号自動設定方法。
【請求項8】
前記音響信号再設定ステップは、
複数の周波数成分を含む複合音の音響信号に対して、周波数間隔、中心周波数または周波数個数のうちの少なくとも1つを調整して、放出する音響信号を再設定することを特徴とする、請求項1に記載の空間監視装置の音響信号自動設定方法。
【請求項9】
保有した複数の音響信号それぞれに対して、前記音響信号放出ステップ乃至前記周波数応答測定ステップを行い、
前記音響信号再設定判断ステップは、
それぞれの音響信号に対応して測定された空間の周波数応答に対して、測定の安定性、スペクトルの変動性、周波数分解能の適正性、または前記対象空間に存在する騒音との区別性のうちの少なくとも1つの判断条件に基づいて、それぞれの音響信号に対する性能値を算出するステップと、
それぞれの音響信号に対する性能値を対比して、放出する音響信号を再設定するか否かを決定するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の空間監視装置の音響信号自動設定方法。
【請求項10】
監視対象空間へ音響信号を放出する音響信号放出ステップと、
前記対象空間の音響信号を受信する音響信号受信ステップと、
受信された或いはリアルタイムで受信される音響信号を設定された判断条件に基づいて判断し、放出する音響信号を再設定するか否かを決定する音響信号再設定判断ステップと、
音響信号の再設定決定に応じて、放出する音響信号を変更して再設定する音響信号再設定ステップと、を含むことを特徴とする、空間監視装置の音響信号自動設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響信号を用いた空間監視装置の音響信号自動設定方法であって、監視対象空間の物理的状況変化をより正確に把握することができるように、空間監視装置から放出する音響信号を自動設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
室内空間内の外部人の侵入、火災発生、ガス漏れなどを感知するために様々な感知センサと装置が使用されている。近年では、IOT技術の発達に伴い、室内空間の冷暖房の稼働状況、窓開放状況などの多様な状況を遠隔地で感知し、それに伴う後続措置が可能なシステムが構築されている。
【0003】
このような多様な感知技術には、一般に、CCTV、IRカメラ、振動感知センサ、ガス感知センサなどが適用されている。従来技術の場合、侵入、火災、ガスなどのそれぞれの状況別にそれに応じた個別のセンシング装置が要求されるので、様々な室内空間状況を監視するためには、その分多くのセンシング装置が要求され、それにより設備の構築に多くのコストが消費され、電力消費量も相当であるという問題がある。
【0004】
上記の諸般問題を解決するために、最近では、音響信号を放出し、受信される音響信号の変化に基づいて室内空間状況を把握する技術が提示されている。
【0005】
音響信号に基づいて空間状況を把握する装置の一つとして周波数応答センサ(Frequency Response Sensor)がある。周波数応答センサは、複数の周波数の音(音響信号)を放出し音響信号を受信して、受信された音響信号の音圧または位相スペクトルの変化を分析することにより、監視対象空間内で事物の動きや温度の変化などを感知する装置である。
【0006】
図1は、周波数応答センサが時間t1で測定した音圧スペクトルの一例を示すグラフであり、
図2は、周波数応答センサが時間t1で測定した音圧スペクトルと、t1以後のt2で測定した音圧スペクトルとを併せて示すグラフである。前記
図2に示すような音圧スペクトルの時間による横軸方向の移動、すなわち周波数シフトSを測定することにより、監視対象空間の温度変化を感知することができる。したがって、監視対象空間の温度変化を正確に感知するためには、周波数シフトの正確な測定が重要である。
【0007】
周波数シフトの測定精度は、周波数に応じて変化する音圧値の最大値MAXと最小値MINとの差異が大きいほど向上することができる。例えば、音圧レベルの最大値と最小値との差異が小さいため、概ね平坦(flat)な曲線で表現される音圧スペクトルの場合、音圧スペクトルのシフトが発生してもシフト程度を正確に測定することが困難であるので、これに基づいて空間の温度変化を精密に把握するのに困難がある。極端な例として、もし周波数による音圧値の変化が全くないため、スペクトルが一つの水平線で表現されるならば、実際には、音圧スペクトルのシフトが発生してもそのシフト量を測定することが不可能である。よって、音圧レベルの最大値と最小値との差異がある程度以上の値を有するように、放出される音響信号の周波数を適切に調節する必要がある。
【0008】
さらに、上記では、音圧値の最大値と最小値との差異を確保しなければならないという観点から、放出される音響信号を適切に調節しなければならないと説明したが、音圧値の最大値と最小値との差異以外にも、様々な判断基準を適用して、放出される音響信号を最適化することができる。
【0009】
ところが、少なくとも一つの判断基準を適用して、放出される音響信号を最適化したとしても、もしその状態で監視対象空間内の家具や機器の配置が変わった場合、空間監視装置の位置や方向が変更された場合、季節の変化に応じて温度が変わった場合などのさまざまな要因により、既存に設定されていた音響信号がもはや最適な音響信号ではないものに変わることができる。したがって、監視対象空間の形態、家具又は機器の配置、温度、監視装置の位置と方向などの様々な要因が変更されると、それに合わせて、放出される音響信号を適正なものに再び設定する必要がある。
【0010】
上述した様々な要因の変化に応じて毎回手動で音響信号を再設定することは非常に面倒なことであり、特に、専門家ではない一般ユーザが音響信号を適切なものに再設定することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するために案出されたもので、音響信号を用いる空間監視装置を介して空間状況を感知する場合、対象空間の形態、監視装置の設置位置、対象空間における固定的な事物の配置変更などの様々な要素に合わせて毎回適切な音響信号を再設定しなければならない煩わしさを解消しようとする。
【0012】
特に、専門家ではない一般ユーザが対象空間に適した音響信号を直接見つけて再設定することが難しいという問題を解決しようとする。
【0013】
本発明の目的は、上述したものに限定されず、上述していない本発明の他の目的および利点は、以降の説明によって理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による空間監視装置の音響信号自動設定方法の一実施形態は、監視対象空間へ音響信号を放出する音響信号放出ステップと、前記対象空間の音響信号を受信する音響信号受信ステップと、受信された音響信号に基づいて空間の周波数応答を測定する空間の周波数応答測定ステップと、測定された空間の周波数応答を、設定された判断条件に基づいて判断して、放出する音響信号を再設定するか否かを決定する音響信号再設定決定ステップと、音響信号の再設定決定に応じて、放出する音響信号を変更して再設定する音響信号再設定ステップと、を含むことができる。
【0015】
一例として、前記音響信号再設定判断ステップにおける前記判断条件は、測定の安定性、スペクトルの変動性、周波数分解能の適正性、または騒音との区別性のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0016】
測定の安定性判断条件の一例として、前記音響信号放出ステップ乃至前記空間の周波数応答測定ステップを繰り返し行い、前記音響信号再設定判断ステップは、繰り返し測定された複数の空間の周波数応答相互間の類似性に基づいて測定の安定性を評価して、音響信号を再設定するか否かを判断することができる。
【0017】
スペクトルの変動性判断条件の一例として、前記音響信号再設定判断ステップは、前記測定された空間の周波数応答において、スペクトルの最大値と最小値との差異または散布度(degree of scattering)を基準範囲と対比することにより、スペクトルの変動性を評価して、音響信号を再設定するか否かを判断することができる。
【0018】
周波数分解能の適正性判断条件の一例として、前記音響信号再設定判断ステップは、前記測定された空間の周波数応答において、スペクトル波形の傾きに基づいて周波数分解能の適正性を評価して、音響信号を再設定するか否かを判断することができる。
【0019】
騒音との区別性判断条件の一例として、前記音響信号再設定判断ステップは、測定された空間の周波数応答を、以前に取得された空間の周波数応答または音響信号を放出せずに測定された騒音との比較を介して騒音との区別性を評価して、音響信号を再設定するか否かを判断することができる。
【0020】
さらに、前記音響信号再設定ステップは、単一音の音響信号に対して、放出開始点の周波数、放出終了点の周波数、または音響信号放出持続時間のうちの少なくとも1つを調整して、放出する音響信号を再設定することができる。
【0021】
或いは、前記音響信号再設定ステップは、複数の周波数成分を含む複合音の音響信号に対して、周波数間隔、中心周波数または周波数個数のうちの少なくとも1つを調整して、放出する音響信号を再設定することができる。
【0022】
さらに一歩進んで、保有した複数の音響信号それぞれに対して、前記音響信号放出ステップ乃至前記周波数応答測定ステップを行い、前記音響信号再設定判断ステップは、それぞれの音響信号に対応して測定された空間の周波数応答において、測定の安定性、スペクトルの変動性、周波数分解能の適正性、または前記対象空間に存在する騒音との区別性のうちの少なくとも1つの判断条件に基づいて、それぞれの音響信号に対する性能値を算出するステップと、それぞれの音響信号に対する性能値を比較して、放出する音響信号を再設定するか否かを決定するステップと、を含むことができる。
【0023】
本発明による空間監視装置の音響信号自動設定方法の他の一実施形態は、監視対象空間へ音響信号を放出する音響信号放出ステップと、前記対象空間の音響信号を受信する音響信号受信ステップと、受信された或いはリアルタイムで受信される音響信号を設定された判断条件に基づいて判断し、放出する音響信号を再設定するか否かを決定する音響信号再設定判断ステップと、音響信号の再設定決定に応じて、放出する音響信号を変更して再設定する音響信号再設定ステップと、を含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
このような本発明によれば、対象空間の形態、空間監視装置の設置位置、対象空間における固定的な事物の配置変更などの様々な要素を考慮して、最適な感知性能に到達するように音響信号を自動的に再設定することができる。
【0025】
特に、ユーザが適切な音響信号を見つけ難いという問題を解消して、最適な性能を発揮することが可能な音響信号を自動的に設定することができる。
【0026】
このような音響信号の自動再設定によって対象空間の状況をより精密に感知することができる。
【0027】
本発明の効果は、上述したものに限定されず、上述していない別の効果は、以降の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】周波数応答センサが時間t1で測定した音圧スペクトルの一例を示すグラフである。
【
図2】周波数応答センサが時間t1で測定した音圧スペクトルと、時間t1以後の時間t2で測定した音圧スペクトルの一例を併せて示すグラフである。
【
図3】本発明による音響信号自動設定方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図4】本発明による音響信号自動設定方法を実現するための空間監視装置の実施形態を示す構成図である。
【
図5】本発明を実現する空間監視装置の音響信号処理部の一実施形態を示す構成図である。
【
図6】本発明による音響信号自動設定方法における音響信号再設定判断過程の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図7】本発明による音響信号自動設定方法における測定の安定性判断条件の実施形態を示すフローチャートである。
【
図8】本発明による音響信号自動設定方法における測定の安定性評価の一例を示す。
【
図9】本発明による音響信号自動設定方法におけるスペクトルの変動性判断条件の実施形態を示すフローチャートである。
【
図10】本発明による音響信号自動設定方法におけるスペクトルの変動性評価の一例を示す。
【
図11】本発明による音響信号自動設定方法における周波数分解能の適正性判断条件の実施形態を示すフローチャートである。
【
図12】本発明による音響信号自動設定方法における音響信号の周波数分解能の適正性評価の一例を示す。
【
図13】本発明による音響信号自動設定方法における騒音との区別性判断条件の実施形態を示すフローチャートである。
【
図14】本発明による音響信号自動設定方法における騒音との区別性判断のための空間監視装置の動作関係の一例を示す。
【
図15】本発明による音響信号自動設定方法で保有した複数の音響信号の中から最適な音響信号を選択する過程の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明では、空間監視装置が音響信号を用いて監視対象空間の状況を監視する際に、より正確な感知のために、放出する音響信号が最適化されるように自動設定する方案を提示するが、これに関連して、本発明による音響信号自動設定方法について説明する。
【0030】
本発明による音響信号自動設定方法は、測定された空間の周波数応答に基づいて、音響信号を再設定するか否かを判断する第1方式と、タイムドメイン上で受信された音響信号自体で音響信号を再設定するか否かを判断する第2方式を含むことができる。
【0031】
前記第1方式に関連して、
図3は、本発明による音響信号自動設定方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【0032】
空間監視装置100が監視する対象空間へ音響信号を放出(S100)し、前記対象空間の音響信号を受信(S200)することができる。ここで放出する音響信号は、以後、対象空間の監視のために用いられる音響信号になることができる。或いは、放出する音響信号は、対象空間の騒音、対象空間の形態、対象空間に配置された固定的な事物の配置位置などを把握するためのテスト音響信号であってもよい。
【0033】
音響信号は、時間に応じて周波数が変わる単一音の音響信号であってもよく、時間に応じて周波数が変わらない複数の周波数成分を含む複合音の音響信号であってもよく、時間に応じて周波数が変わる複数の周波数成分を含む複合音の音響信号であってもよく、単一音の音響信号と複合音とが交番する音響信号であってもよい。
【0034】
空間監視装置100は、対象空間の音響信号を受信して空間の周波数応答を測定(S300)し、測定された空間の周波数応答に基づいて、予め設定された判断条件に基づいて対象空間へ放出する音響信号に対する再設定を行う否かを判断(S400)することができる。ここで、音響信号を再設定するか否かに対する判断条件は、測定された空間の周波数応答に対する測定の安定性、スペクトルの変動性、周波数分解能の適正性、または前記対象空間に存在する騒音との区別性などの様々な判断条件が選択的または重畳的に設定できる。
【0035】
対象空間へ放出する音響信号の再設定が必要でない場合、空間監視装置100は、既存の音響信号を維持させて対象空間に対する状況感知を持続することができる。もし対象空間へ放出する音響信号の再設定が必要であると決定される場合、空間監視装置100は、再設定判断結果に基づいて、対象空間へ放出する音響信号を変更して再設定(S500)し、変更された音響信号で対象空間に対する状況感知を行うことができる。
【0036】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳細に説明するが、本発明は、実施形態によって限定または制限されるものではない。
【0037】
本発明、本発明の動作上の利点、および本発明の実施によって達成される目的を説明するために、以下では、本発明の好適な実施形態を例示し、これを参照して説明する。
【0038】
まず、本出願で使用した用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定するものではなく、単数の表現は、文脈上明らかに別段の意味を持たない限り、複数の表現を含むことができる。また、本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、本明細書に記載の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0039】
本発明の説明において、関連する公知の構成または機能についての具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にするおそれがあると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0040】
本発明は、音響信号を用いた空間監視装置において、より正確な測定のために、放出する音響信号を自動的に設定する方案を開示する。
【0041】
本発明が適用される空間監視装置は、対象空間へ音響信号を放出し、前記対象空間の音響信号を受信して、測定された空間の周波数応答に基づいて空間状況を把握することができる。
【0042】
本発明で言及する空間の周波数応答(frequency response)は、次のように説明できる。対象空間を一種の閉回路と看做し、ここに入力信号として音響信号を放出した後、出力信号として音響信号を受信する場合、このとき、受信音響信号の周波数別音圧または周波数別位相などの要素を「空間の周波数応答」と定義することができる。
【0043】
このような空間の周波数応答を表現する一例として、周波数を横軸とし、受信音響の音圧を縦軸としてグラフで表示することができ、音圧要素の代わりに位相要素を縦軸に表示することもできる。
【0044】
空間の周波数応答は、空間の物理的特性に応じて変わるので、空間の周波数応答を用いて空間の物理的状況を推論することができ、ひいては、空間の周波数応答が変化するパターンを用いて空間の物理的特性の変化を把握することができる。このとき、空間の物理的特性の差異による空間の周波数応答の差異が大きいほど、或いは空間の物理的特性の変化に起因した空間の周波数応答の変化量が大きいほど、空間の周波数応答を用いて空間の物理的状況をより精密に感知することができる。
【0045】
図4は、本発明による音響信号自動設定方法を実現するための空間監視装置の実施形態を示す構成図である。
【0046】
本発明が適用される空間監視装置100は、音響信号放出部110、音響信号受信部130、音響信号処理部150、状況判断部170などを含むことができる。
【0047】
音響信号放出部110は、スピーカ111などを含むことにより、対象空間へ音響信号を放出することができる。音響信号放出部110は、時間に応じて周波数が変わる単一音の音響信号を放出することもでき、時間に応じて周波数が変わらない複数の周波数成分を含む複合音の音響信号を放出することもでき、時間に応じて周波数が変わる複数の周波数成分を含む複合音の音響信号を放出することもでき、単一音の音響信号と複合音とが交番する音響信号を放出することもできる。
【0048】
また、音響信号放出部110は、一つのスピーカを介して音響信号を放出することもでき、複数のスピーカを介して音響信号を放出することもできる。複数のスピーカを介して音響信号を放出する場合、同じ音響信号を放出することもでき、それぞれ異なる音響信号を放出することもできる。
【0049】
音響信号受信部130は、マイクロホン131などを含むことにより、対象空間上の音響信号を受信することができる。音響信号受信部130は、1つのマイクロホンを介して音響信号を受信することもでき、複数のマイクロホンを介して音響信号を受信することもできる。これ以外にも、音響信号受信部130は、音圧、音の強度(Sound Intensity)などを測定することが可能な様々な測定機器を含むことができる。
【0050】
音響信号処理部150は、対象空間へ放出する音響信号を音響信号放出部110に提供することができる。また、音響信号処理部150は、音響信号受信部130が受信した音響信号の伝達を受け、対象空間のいろいろな要素を考慮して最適な感知性能が得ることができるように、放出する音響信号を再設定することができる。
【0051】
状況判断部170は、空間の周波数応答に基づいて対象空間の状況を判断することができる。対象空間で物体移動、温度変化、空気移動などの様々な状況変化が発生する場合、それにより受信される音響信号が変化し、受信された音響信号を用いて測定された空間の周波数応答も変動する。状況判断部170は、測定された空間の周波数応答の変化有無、変化の程度、変化パターンなどを用いて、対象空間にどんな状況変化が発生したかを把握することができる。
【0052】
本発明は、上述した空間監視装置を介して対象空間を監視する際に最適な感知性能が発揮されるように、対象空間へ放出する音響信号を自動設定することができる。
【0053】
図5は、本発明を実現する空間監視装置の音響信号処理部の一実施形態を示す構成図である。
【0054】
音響信号処理部150は、制御部151、周波数応答測定部153、再設定判断部155、音響信号調整部157などを含むことができる。
【0055】
制御部151は、音響信号放出部110を制御して対象空間へ音響信号を放出することができ、音響信号受信部130を制御して対象空間上の音響信号を受信することができる。
【0056】
周波数応答測定部153は、音響信号受信部130で受信された音響信号に基づいて空間の周波数応答を測定することができる。周波数応答測定部153は、フーリエ変換(Fourier Transform)アルゴリズムまたは高速フーリエ変換アルゴリズム(Fast Fourier Transform)を用いて、受信された音響信号を周波数ドメインに変換して空間の周波数応答を測定することができる。一例として、受信された音響信号を周波数ドメインの音圧値に変換して音圧スペクトルを測定することができる。
【0057】
再設定判断部155は、受信された音響信号または測定された空間の周波数応答を、予め設定された判断条件に基づいて判断して、放出する音響信号を再設定するか否かを決定することができる。
【0058】
好ましくは、再設定判断部155は、予め設定されたイベント発生の際に音響信号の再設定手順を開始することができる。一例として、ユーザの音響信号再設定要求がある場合、空間監視装置100の動作開始のために初期電源が供給される場合、一定時間間隔の周期が到来する場合、空間監視装置100の動作が不安定であると疑われる場合、対象空間に新たな騒音が流入する場合、対象空間上の固定的な物体の配置変化などの空間特性が変更される場合などの様々な場合が、音響信号を再設定するか否かを判断するためのイベントとして設定されることができる。
【0059】
さらには、空間監視装置100が音響信号を放出して対象空間に対する監視を行う間、周期的な監視作動時間帯域間の合間時間帯域である未監視時間帯域で、音響信号を再設定するか否かを判断することもできる。例えば、1秒単位で時間帯域を分割して対象空間監視作動と音響信号再設定判断を交互に行うこともできる。
【0060】
再設定判断部155は、受信された音響信号または測定された空間の周波数応答を、測定の安定性、スペクトルの変動性、周波数分解能の適正性、または前記対象空間に存在する騒音との区別性などのいろいろな判断条件に基づいて判断して、音響信号を再設定するか否かを決定することができる。すなわち、再設定判断部155は、音響信号を受信しながら、タイムドメイン上の音響信号自体をいろいろな判断条件に基づいて判断して、再設定するか否かを決定することもでき、或いは受信された音響信号を周波数ドメイン上の信号に変換して、測定された空間の周波数応答をいろいろな判断条件に基づいて判断して、再設定するか否かを決定することもできる。
【0061】
さらに、再設定判断部155は、それぞれ異なる複数の音響信号を保有し、保有したそれぞれの音響信号に対して判断条件に基づいた性能値を算出し、算出された性能値を対比して最適な音響信号を選択することもできる。このために、再設定判断部155は、時間に応じて周波数が変わる単一音を有する互いに異なる複数の音響信号、時間に応じて周波数が変わらない複数の周波数成分を含む複合音を有する互いに異なる複数の音響信号、時間に応じて周波数が変わる複数の周波数成分を含む複合音を有する互いに異なる複数の音響信号、及び単一音の音響信号と複合音とが交番する互いに異なる複数の音響信号を保有することができる。
【0062】
音響信号調整部157は、再設定判断部155の判決結果に基づいて、放出する音響信号を調整して再設定することができる。
【0063】
放出する音響信号が、時間に応じて周波数が変わる単一音の音響信号である場合、音響信号調整部157は、放出開始点の周波数、放出終了点の周波数、または音響信号放出持続時間のうちの少なくとも1つを調整して、放出する音響信号を再設定することができる。
【0064】
或いは、放出する音響信号が、複数の周波数成分を含む複合音の音響信号である場合、音響信号調整部157は、周波数間隔、中心周波数または周波数個数のうちの少なくとも1つを調整して、放出する音響信号を再設定することができる。
【0065】
さらに、再設定判断部155が、それぞれ異なる複数の音響信号を保有し、保有音響信号の中から、最適な性能を有する音響信号を選択する場合、音響信号調整部157は、再設定判断部155から選択された音響信号の伝達を受け、これを放出する音響信号に再設定することもできる。
【0066】
音響信号調整部157によって再設定された音響信号は、制御部151に提供され、制御部151は、音響信号放出部110を制御して、対象空間へ再設定された音響信号を放出することができる。
【0067】
先立って、前記
図3の実施形態を参照して、本発明による音響信号自動設定方法について説明した。
【0068】
このように、本発明では、対象空間に対する状況感知性能向上のために音響信号を自動的に設定することができるが、音響信号を再設定するか否かに対する判断過程について具体的な実施形態によって考察する。
【0069】
図6は、本発明による音響信号自動設定方法における音響信号再設定判断過程の一実施形態を示すフローチャートである。
【0070】
空間監視装置100は、受信された音響信号に基づいて空間の周波数応答を測定(S300)するが、一例として、受信された音響信号をフーリエ変換(FT)または高速フーリエ変換(FFT)を介して周波数ドメインに変換して周波数ドメイン上の空間の周波数応答を測定することができる。
【0071】
別の一例として、時間に応じて周波数が変わる単一音の音響信号が放出される場合、特定の時間には特定単一周波数の音響が放出されるので、空間監視装置100は、放出時間に応じて測定された音圧値または位相値を直ちに放出周波数による音圧値または位相値に変換することにより、空間の周波数応答を測定することもできる。すなわち、この場合には、周波数による音圧値がほぼリアルタイムで測定されるので、別にフーリエ変換が必要ない。
【0072】
前述したように、空間の周波数応答は、受信された音響信号の周波数別音圧または周波数別位相などの要素で表すことができるが、一例として、周波数を横軸とし、音圧を縦軸としてグラフで表示することができる。
【0073】
以下では、説明の便宜のために、空間の周波数応答に対して周波数別の音圧変化を示すスペクトルを一例として説明するが、本発明において空間の周波数応答が周波数別音圧変化に限定されるものではない。
【0074】
空間の周波数応答が測定(S300)されると、これに基づいて、様々な判断条件として測定の安定性判断(S410)、スペクトルの変動性判断(S420)、周波数分解能の適正性判断(S430)、騒音との区別性判断(S440)を介して、既存に設定された音響信号を維持(S450)するか、それとも既存に設定された音響信号の感知性能が低下するので、新しい音響信号に再設定する(S460)かを決定することができる。
【0075】
ここで、それぞれの判断条件は実行順序が変更されることもでき、状況に応じては、特定の判断条件のみが選択され、音響信号を再設定するか否かが決定されることもできる。
【0076】
それぞれの判断条件について実施形態によってさらに詳細に説明する。
【0077】
図7は、本発明による音響信号自動設定方法における再現性判断条件の実施形態を示すフローチャートである。
【0078】
音響信号を選択する際に、同じ対象空間で状況変更がない場合、一定レベルの範囲に類似するように空間の周波数応答が測定されれば空間監視装置の安定性が確保されたと言える。もし同じ対象空間で状況変動がないにも拘らず、それぞれ異なるように空間の周波数応答が測定される場合、空間監視装置に対する信頼性は失われる可能性がある。ところが、空間監視装置の信頼性または測定の安定性は、例えば、放出される音響信号の周波数などに応じて変動することができる。よって、本発明では、測定の安定性が維持できる音響信号を自動的に設定することにより、空間監視装置の安定性を確保しようとする。
【0079】
測定の安定性を判断するために、空間監視装置100は、設定された測定回数だけ対象空間へ音響信号を放出(S110)し、対象空間の音響信号を受信(S210)し、それぞれの音響信号ごとに空間の周波数応答を測定(S310)してスペクトルを得ることができる。それぞれの周波数応答スペクトル間の相関または類似性を分析(S413)し、放出する音響信号に対する測定の安定性を評価(S415)することができる。
【0080】
測定の安定性に対する一例として、
図8を参照して説明するが、前記
図8は、空間の周波数応答として音圧スペクトルを示す。
【0081】
対象空間へ同じ音響信号の放出と受信を繰り返し行うことにより、前記
図8の(a)のような第1音圧スペクトル211と前記
図8の(b)のような第2音圧スペクトル212が取得された場合を仮定する。
【0082】
第1音圧スペクトル211と第2音圧スペクトル212に対する相関を分析して類似程度を把握すると、基準値以上に類似すると評価できるので、測定の安定性が満たされることができる。選択された音響信号に対して反復的に測定の安定性評価によって一定レベルに測定の安定性が満たされる場合、選択された音響信号は、対象空間の監視に適した音響信号として決定されることができる。
【0083】
これとは異なる場合として、対象空間への同じ音響信号の放出と受信を繰り返し行うことにより、前記
図8(a)のような第1音圧スペクトル211と前記
図8(c)のような第3音圧スペクトル213が取得された場合を仮定する。
【0084】
第1音圧スペクトル211と第3音圧スペクトル213に対する相関を分析して類似程度を把握すると、基準値以下であって類似していないと評価できるので、測定の安定性が満たされることができない。このような場合、選択された音響信号は、対象空間の監視に適していない音響信号として決定でき、空間監視装置100は、音響信号の再設定過程を行うことができる。
【0085】
このように、対象空間へ放出する音響信号に対する繰り返し測定の安定性評価によって、対象空間の監視に適した音響信号か否かを判断し、判断結果に基づいて音響信号を再設定することができる。
【0086】
図9は、本発明による音響信号自動設定方法におけるスペクトルの変動性判断条件の実施形態を示すフローチャートである。
【0087】
空間の周波数応答として音圧スペクトルを例に挙げると、音圧スペクトルで周波数シフトを測定して監視対象空間の温度変化の把握が可能であるが、周波数シフトの測定精度は、周波数に応じて変化する音圧値の最大値と最小値との差異が大きいほど向上することができる。もし音圧値の最大値と最小値との差異が小さすぎて音圧スペクトルが平坦な曲線で表れる場合、周波数シフトを精密に測定することが困難である。したがって、音圧スペクトルで音圧値の最大値と最小値の差異が一定レベル以上に異なる音響信号を選択する必要がある。
【0088】
音響信号を選択する際に、音響信号を対象空間へ放出し、音響信号を受信して、これに基づいて測定した音圧スペクトルが基準範囲以上の音圧幅を有する場合、スペクトルの変動性を有すると判断できる。これとは逆に、測定された音圧スペクトルの音圧値が周波数に応じて基準範囲未満にやや変化する場合、これは、スペクトルの変動性が足りないと判断され、このような音響信号は、空間状況の感知には適さない。
【0089】
本発明では、スペクトルの変動性が一定レベル以上となるように音響信号を自動設定することにより、空間監視装置の精度を向上させることができる。
図9を参照すると、スペクトルの変動性を判断するために、空間監視装置100は、測定された空間の周波数応答に対するスペクトルにおける最大値と最小値を把握(S421)する。そして、最大値と最小値との差異を算出(S423)し、これを基準範囲と対比(S425)することにより、放出する音響信号に対するスペクトルの変動性を評価(S427)することができる。
【0090】
スペクトルの変動性評価に対する一例として、
図10を参照して説明するが、前記
図10は、空間の周波数応答として音圧スペクトルを示す。
【0091】
対象空間へ音響信号を放出し受信して、前記
図10(a)のような第4音圧スペクトル221が取得された場合を仮定する。第4音圧スペクトル221における音圧値の最大値MAXと最小値MINを把握し、最大値MAXと最小値MINとの差異値を算出すると、差異値はH1で表されるが、差異値H1が、設定された基準範囲を満たす場合、スペクトルの変動性が満たされることができる。選択された音響信号に対するスペクトルの変動性が満たされる場合、選択された音響信号は、対象空間の監視に適した音響信号として決定されることができる。
【0092】
これとは異なる場合として、対象空間へ音響信号を放出し受信して、前記
図10(b)のような第5音圧スペクトル222が取得された場合を仮定する。第5音圧スペクトル222における音圧値の最大値MAXと最小値MINを把握し、最大値MAXと最小値MINとの差異値を算出すると、差異値はH2で表されるが、差異値H2が、設定された基準範囲を満たさない場合、スペクトルの変動性が満たされないことができる。このような場合、選択された音響信号は、対象空間の監視に適していない音響信号として決定されることができ、空間監視装置100は、音響信号の再設定過程を行うことができる。
【0093】
上記では、スペクトルの変動性を判断する基準として、スペクトル音圧値の最大値と最小値との差異値を用いたが、その他にも音圧値の分散、標準偏差、平均偏差(mean deviation)、四分偏差(quartile deviation)などの散布度(degree of scattering)などがスペクトルの変動性を判断する基準になってもよい。
【0094】
このように対象空間へ放出する音響信号に対するスペクトルの変動性評価によって、対象空間の監視に適した音響信号か否かを判断し、判断結果に基づいて音響信号を再設定することができる。
【0095】
図11は、本発明による音響信号自動設定方法における周波数分解能の適正性判断条件の実施形態を示すフローチャートである。
【0096】
音響信号を選択する際に、前述したスペクトルの変動性を満たしても、音響信号に対する周波数分解能の適正性が満たされない場合、空間の周波数応答測定に誤りが含まれることができる。
【0097】
周波数の分解能とは、特定の周波数と区別可能な最も隣接する周波数との間隔をいう。複数の周波数成分を含む複合音の音響信号を放出して空間の周波数応答を測定する場合、測定された音圧スペクトルは、前記
図10でのように整数個の周波数で表現できるが、この場合、周波数間の間隔が直ちに分解能になることができる。
【0098】
放出音響が、単一周波数が時間に応じて直線的に変わるサインスイープ(sine sweep)の形態であれば、測定される音圧スペクトルが整数個の点で表示されるのではなく、曲線で表示され得る。ところが、たとえスペクトルが曲線で表現されるとしても、実際には、特定の周波数と最も隣接する周波数を区別することができる能力としての分解能は存在する。この場合、分解能は、監視装置を構成する部品の性能、監視装置の動作条件またはデータ処理条件などによって決定される。例えば、音響信号受信段階で特定のサンプリングレート(sampling rate)を用いて音響信号を記録することができるが、この場合、サンプリングレートが分解能に影響を及ぼすことができる。或いは、例えば測定された音圧スペクトルで不要なノイズを除去する方法として「移動平均」技法を用いてスペクトルを表現することができるが、このとき、移動平均値を演算する区間の大きさによって分解能が決定されることができる。
【0099】
もしスペクトルの周波数帯域(ウィンドウ)内にあまり多くの数のピークが存在する場合、十分な分解能が確保されなければ、そのスペクトルを正確に表現することができない。このような場合、周波数分解能が適切になるように音響信号を変更すれば、空間の周波数応答を正確に測定することができる。
【0100】
一例として、
図12の(a)と(b)を比較して説明すると、2つの場合はいずれも、音圧の最大値と最小値との差異、すなわちスペクトルの変動性は同じであるが、前記
図12の(a)はスペクトルが相対的に平坦であり、すなわちウィンドウ内のピークの数が少なく、これに対し、前記
図12の(b)はウィンドウ内のピークの数が多い。したがって、前記
図12の(a)におけるスペクトルは、例えば20個の周波数を用いて20個の点で表現することができる。しかし、前記
図12(b)のようなスペクトルをまともに表現することができるためには、例えば200個の周波数を用いて200個の点で表現しなければならず、よって、周波数間隔または周波数分解能がその分狭くなければならない。
【0101】
本発明では、周波数分解能の適正性を評価し、それに合わせて音響信号を再設定することができる。もし周波数分解能が適正でないと評価された場合、中心周波数を変えて他の帯域の周波数で周波数分解能の適正性を再び評価するか、或いは中心周波数はそのままにしたまま分解能(例えば、周波数間隔)自体を調節することができる。
【0102】
一例として、周波数分解能の適正性に対する評価は、スペクトルの傾き(分子は周波数幅、分母は音圧幅)に基づいて判断することができる。例えば、1つの音圧スペクトルを、周波数間隔dを有するN個の周波数(横軸座標値)に対する音圧値(縦軸座標値)で表現する場合、もしスペクトルの傾きの絶対値の平均が小さければ、すなわち、前記
図12の(a)のようにスペクトルが平坦であれば、周波数間隔dが大きくてもスペクトルの形状が適切に表現できる。これに対し、スペクトルの傾きの絶対値の平均が大きいほど、すなわち、前記
図12の(b)のようにスペクトルに多くの数のピークがあるほど周波数間隔dが十分狭くなれば、そのスペクトルをまともに表現することができる。
【0103】
スペクトルがN個の周波数に対する音圧値で表現される場合、隣接周波数間の音圧値の差異の絶対値pは、N-1個が存在するが、N-1個のpを全て足した値をウィンドウ幅d*(N-1)で割ると、これがスペクトル波形の傾き絶対値の平均となる。一方、スペクトルが曲線で表現される場合であれば、スペクトルに存在する多数のピークに対して極大値と極小値との差異の絶対値をすべて足した数値をウィンドウ幅で割ると、これがスペクトルの傾き絶対値の平均となる。
【0104】
前記
図11を参照すると、周波数分解能の適正性評価によって音響信号を選択するために、空間監視装置100は、測定された空間の周波数応答に対するウィンドウを把握(S431)し、スペクトル波形の傾きを把握(S433)して傾き絶対値の平均値を算出(S435)する。そして、算出された平均値を基準範囲と対比(S437)して周波数分解能の適正性を評価(S439)することができる。
【0105】
このように、対象空間へ放出する音響信号に対する周波数分解能の適正性評価によって、対象空間の監視に適した音響信号か否かを判断し、判断結果に基づいて音響信号を再設定することができる。
【0106】
図13は、本発明による音響信号自動設定方法における騒音との区別性判断条件の実施形態を示すフローチャートである。
【0107】
対象空間に存在する騒音と放出される音響信号とが一定レベル以上に類似して音響信号と騒音との間に干渉が発生する場合、取得された空間の周波数応答が監視対象空間の物理的状態を正確に反映することができないという問題が発生する。したがって、対象空間内に存在する騒音区間を回避することができるように音響信号が設定される必要がある。
【0108】
また、対象空間内に多数の空間監視装置が設置された場合、互いに近接した周波数の音響信号を放出すると、互いに異なる空間監視装置から放出した音響信号は騒音として機能することができる。よって、それぞれの空間監視装置ごとに互いに異なる周波数の音響信号を放出するように設定する必要がある。
【0109】
本発明では、対象空間内の騒音を把握し、放出する音響信号と騒音との区別性を評価して騒音区間を回避することが可能な音響信号を設定することができる。
【0110】
騒音との区別性を判断するための過程を、前記
図13の(a)と(b)に示された2つの一例を挙げて説明する。
【0111】
一例として、前記
図13の(a)は、前もって信頼性が確保された空間の周波数応答を利用する場合である。空間監視装置100は、騒音のない状態で測定されて信頼性が確保された空間の周波数応答を保有した状態で騒音との区別性の判断の際にこれを抽出(S441a)することができる。
【0112】
そして、現時点で音響信号を放出し受信して測定された空間の周波数応答を信頼性の確保された状態での空間の周波数応答と対比(S443a)して騒音の流入程度と区別性を評価(S445a)することができる。
【0113】
他の一例として、前記
図13の(b)は、音響信号の放出区間と音響信号の未放出区間とを交互に行いながら音響信号と騒音との干渉性を把握する場合である。空間監視装置100は、
図14に示すように、音響信号を放出するS区間と音響信号を放出しないN区間とを交互に動作しながら、S区間で対象空間の音響信号を測定し、N区間で対象空間の騒音を測定(S441a)する。そして、S区間で測定した音響信号とN区間で測定した騒音とを対比して周波数干渉程度を把握(S443a)し、騒音との区別性を評価(S445a)することができる。
【0114】
もし音響信号と騒音の相互周波数帯域が同一でなければ、選択された音響信号は、対象空間の監視に適した音響信号として決定できる。これとは逆に、音響信号と騒音の相互周波数帯域が一定レベル以上に同一であれば、音響信号と騒音との間に干渉が発生するので、選択された音響信号は、対象空間の監視に適していない音響信号として決定でき、空間監視装置100は、音響信号の再設定過程を行うことができる。
【0115】
このように、対象空間へ放出する音響信号に対する騒音との区別性の評価によって、対象空間の監視に適した音響信号か否かを判断し、判断結果に基づいて音響信号を再設定することができる。
【0116】
上述した様々な判断条件を評価し、その結果に基づいて、空間監視装置100は音響信号を再設定することができる。
【0117】
空間監視装置100が単一音の音響信号を再設定する場合には、放出開始点の周波数、放出終了点の周波数または音響信号放出持続時間のうちの少なくとも1つを調整して、放出する音響信号を再設定することができる。
【0118】
また、空間監視装置100が複数の周波数成分を含む複合音の音響信号を再設定する場合には、周波数間隔、中心周波数または周波数個数のうちの少なくとも1つを調整して、放出する音響信号を再設定することができる。
【0119】
さらに、本発明において、空間監視装置100は、複数の音響信号を保有し、それぞれの音響信号ごとに判断条件に基づいて評価して最適な音響信号を選択することもできる。
【0120】
これに関連し、
図15は、保有した複数の音響信号の中から最適な音響信号を選択する過程の実施形態を示すフローチャートである。
【0121】
空間監視装置100は、保有した音響信号のうちの1つを選択(S610)し、選択された音響信号を対象空間へ放出して対象空間の音響信号を受信(S620)することができる。
【0122】
空間監視装置100は、受信された音響信号に基づいて空間の周波数応答を測定(S630)し、判断条件に基づいた当該音響信号を評価(S640)することができる。ここで、判断条件は、上述した測定の安定性、スペクトルの変動性、周波数分解能の適正性、または騒音との区別性のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0123】
そして、空間監視装置100は、保有した複数の音響信号の一部または全部に対する判断 終了か否か(S650)に応じて再び他の音響信号を選択して判断条件に基づいて音響信号を繰り返し評価することができる。一例として、空間監視装置100は、保有した複数の音響信号のうち、中心周波数が一定間隔ずつ離隔した音響信号を抽出して評価を行うことができる。
【0124】
ここで、空間監視装置100が保有した複数の音響信号は、時間に応じて周波数が変わる単一音からなるそれぞれ異なる複数の音響信号、時間に応じて周波数が変わらない複数の周波数成分を含む複合音からなるそれぞれ異なる複数の音響信号、時間に応じて周波数が変わる複数の周波数成分を含む複合音からなるそれぞれ異なる複数の音響信号、単一音と複合音とが交番するそれぞれ異なる複数の音響信号などの多様な形態の音響信号であり得る。
【0125】
空間監視装置100は、複数の音響信号を評価して最適な音響信号を選択(S660)することができるが、一例として、それぞれの音響信号に対応して測定された空間の周波数応答に対する測定の安定性、スペクトルの変動性、周波数分解能の適正性、または騒音との区別性のうちの少なくとも1つの判断条件に基づいて、それぞれの音響信号に対する性能値を算出し、それぞれの音響信号に対して算出された性能値を対比して最適な音響信号を決定することができる。一例として、音響信号ごとにそれぞれの判断条件評価による評価値を掛けたり足したりして最終性能値を算出するか、或いはそれぞれの判断条件別に重みを付け、それぞれの判断条件評価による評価値に重みを考慮して乗算または合算した最終性能値を算出することができる。そして、複数の音響信号それぞれの最終性能値を対比して最適な音響信号が決定されることができる。
【0126】
もし選択された最適な音響信号が、既存に放出していた音響信号である場合、音響信号を再設定する必要がないが、既存に放出していた音響信号と異なる場合、空間監視装置100は、選択された最適な音響信号として放出する音響信号を再設定(S670)することができる。
【0127】
このような過程によって、空間監視装置100は、保有した複数の音響信号のうち、該当対象空間の監視に最適な音響信号に再設定して対象空間の監視を行うことができる。
【0128】
上記では、測定された空間の周波数応答を用いて1つ以上の判断基準をもって、音響信号を再設定するか否かを判断する前記第1方式に対する事例を説明した。ところが、音響信号を再設定するか否かを判断するために、上述した前記第1方式のように測定された空間の周波数応答、すなわち周波数ドメイン上で表現されたスペクトルを用いることもできるが、タイムドメイン上で受信された音響信号自体を用いて、音響信号を再設定するか否かを判断する第2方式が適用されることもできる。
【0129】
前記第2方式は、複数の周波数成分を含む複合音の音響信号に適用されることもできるが、便宜上、以下では、時間に応じて周波数が変わる単一音の音響信号を用いる場合を基準に説明する。
【0130】
このような前記第2方式は、一定時間受信された音響信号またはリアルタイムで受信されるタイムドメイン上の音響信号を、測定の安定性、スペクトルの変動性、周波数分解能の適正性、騒音との区別性などの判断基準に基づいて判断して、音響信号を再設定するか否かを決定することができる。
【0131】
例えば、測定の安定性を判断するために、既設定の回数だけ繰り返し受信されたタイムドメイン上の音響信号相互間の類似性を判断することにより、測定の安定性を評価し、これに基づいて、音響信号を再設定するか否かを判断することができる。
【0132】
一例として、スペクトルの変動性を判断するために、タイムドメイン上でリアルタイムにて受信される音圧などの最大値と最小値との差異を把握し、これを基準範囲と対比することにより、スペクトルの変動性を評価することもできる。
【0133】
他の一例として、周波数分解能の適正性を判断するために、タイムドメイン上で一定時間受信された音圧変動傾きを把握し、これを基準範囲と対比することにより、周波数分解能の適正性を評価することができる。
【0134】
別の一例として、受信された音響信号を、以前に受信して取得された音響信号と比較するか、或いは音響信号を放出しない区間で受信された騒音と比較することにより、騒音との区別性を評価することができる。
【0135】
このように様々な判断基準に基づいて、音響信号を再設定するか否かを判断するとき、その判断ステップが必ずしも前記第1方式を用いた空間の周波数応答を測定した後に行われる必要はなく、場合によっては、空間の周波数応答測定過程を経ずに前記第2方式に従って音響信号を受信した後またはリアルタイムで受信されるタイムドメイン上の音響信号自体を判断基準に基づいて評価することにより、音響信号を再設定するか否かを判断することもできる。
【0136】
以上で説明した本発明によれば、対象空間の形態、空間監視装置の設置位置、対象空間における固定的な事物の配置変更などの様々な要素を考慮して、最適な感知性能に到達するように音響信号を自動的に再設定することができる。
【0137】
特に、ユーザが適切な音響信号を見つけ難いという問題を解消して、最適な性能を発揮することが可能な音響信号を自動的に設定することができる。このような音響信号の自動再設定によって対象空間の状況をより正確に感知することができる。
【0138】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱することなく多様な修正及び変形が可能であろう。したがって、本発明に記載された実施形態は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものである。これらの実施形態によって本発明の技術思想が限定されない。本発明の保護範囲は、以下の請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にある全ての技術思想は、発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【国際調査報告】