(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】車両用の電気駆動システム、該当する電気駆動システムを備えた車両、および該当する電気駆動システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240719BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240719BHJP
B60L 53/20 20190101ALI20240719BHJP
【FI】
H02J7/00 L
H02J7/00 P
B60L3/00 S
B60L53/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503993
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-15
(86)【国際出願番号】 EP2022070910
(87)【国際公開番号】W WO2023006726
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021003883.5
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ウルス・ベーメ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・オルネー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン・トレースター
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BB05
5H125BC21
5H125DD02
5H125EE23
5H125FF03
(57)【要約】
本発明は、車両(2)用の電気駆動システム(1)に関し、
-スイッチング装置(6)を備え、スイッチング装置は、
-充電接続部(7)が車両の電気エネルギー貯蔵装置に直接接続され、それによって、充電接続部(7)にある入力電圧(UE)によって電気エネルギー貯蔵装置(4)への充電が可能な第1のスイッチング状態と、
-充電接続部(7)がインバータを介して電気エネルギー貯蔵装置(4)に接続され、それによって、インバータ(5)によって電気エネルギー貯蔵装置(4)への充電が可能な第2および第3のスイッチング状態と、を有している。さらに、本発明は、車両(2)ならびに方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)用の電気駆動システム(1)であって、
-三相電気機械(3)と、
-前記三相電気機械(3)に電気を供給するための電気エネルギー貯蔵装置(4)と、
-前記三相電気機械(3)に接続されているインバータ(5)であって、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の正電位(P1)が前記インバータ(5)の正電位(P2)に接続されており、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の負電位(N1)が前記インバータ(5)の負電位(N2)に接続されている、前記インバータ(5)と、
-前記インバータ(5)の前記正電位と前記負電位(P1、N2)との間に接続されている、第1のコンデンサ(C1)と第2のコンデンサ(C2)からなる直列回路であって、前記第1のコンデンサ(C1)と前記第2のコンデンサ(C2)との間に前記インバータ(5)のセンタータップが形成されている、前記直列回路と、
を備える、前記電気駆動システム(1)において、
-スイッチング装置(6)により特徴づけられるものであり、前記スイッチング装置(6)は、
-充電接続部(7)の正電位(P3)が前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の前記正電位(P1)に接続されており、前記充電接続部(7)の負電位(N3)が前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の負電位(N2)に接続されていることにより、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)は前記電気接続部(7)にきている入力電圧(UE)によって充電可能である第1のスイッチング状態と、
-前記充電接続部(7)の前記正電位(P3)が前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の前記正電位(P1)に接続されており、前記充電接続部(7)の前記負電位(N3)が前記インバータ(5)の前記センタータップ(M)に接続されていることにより、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)は、前記インバータ(5)によって充電可能である第2のスイッチング状態、および/または
-前記充電接続部(7)の前記正電位(P3)が前記インバータ(5)の前記センタータップ(M)に接続されており、前記充電接続部(7)の前記負電位(N3)が前記インバータ(5)の前記負電位(N2)に接続されていることにより、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)は、前記インバータ(5)によって充電可能である第3のスイッチング状態と、
を有し、
前記インバータ(5)は、前記第1のコンデンサ(C1)および/または前記第2のコンデンサ(C2)を充電するように設定されており、前記第1のコンデンサ(C1)の第1の電圧と前記第2のコンデンサ(C2)の第2の電圧との合計が、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)を充電するために前記インバータ(5)の出力電圧として提供される、前記電気駆動システム(1)。
【請求項2】
前記インバータ(5)は、3レベルT型インバータとして構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項3】
前記インバータ(5)は、前記第2のスイッチング状態においては前記電気エネルギー貯蔵装置(4)のバッテリ電圧(U
Batt)と前記入力電圧(UE)間の電位差を調整するために、前記負電位(N1、N2、N3)の電圧レベルをこの電位差の分だけ低下させ、前記第3のスイッチング状態においては前記バッテリ電圧(U
Batt)と前記入力電圧(UE)間の電位差を調整するために、前記正電位(P1、P2、P3)の電圧レベルをこの電位差の分だけ増加させるように設定されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項4】
前記スイッチング装置(6)は、
-前記充電接続部(7)の前記正電位(P3)を前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の前記正電位(P1)に接続するための第1の充電コンタクタ(S1)と、
-前記充電接続部(7)の前記正電位(P3)を前記インバータ(5)の前記センタータップ(M)に接続するための第2の充電コンタクタ(S2)、または
-前記充電接続部(7)の前記負電位(N3)を前記インバータ(5)の前記センタータップ(M)に接続するための第3の充電コンタクタ(S3)と、
-前記充電接続部(7)の前記負電位(N3)を前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の前記負電位(N1)に接続するための第4の充電コンタクタ(S4)と、
を有していることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項5】
前記スイッチング装置(6)は、前記充電接続部(7)の前記入力電圧(UE)が第1の規定電圧値を有している場合、前記第1のスイッチング状態に切り替わるように設定されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項6】
前記スイッチング装置(6)は、前記充電接続部(7)の前記入力電圧(UE)が第2の規定電圧値を有し、かつ前記負電位(N1、N2、N3)の電圧レベルを低下させるために前記インバータ(5)を昇圧コンバータとして作動させる場合、自動的に前記第2のスイッチング状態に切り替わるように設定されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項7】
前記スイッチング装置(6)は、前記充電接続部(7)の前記入力電圧(UE)が第2の規定電圧値を有し、かつ前記正電位(P1、P2、P3)の電圧レベルを上昇させるために前記インバータ(5)を昇圧コンバータとして作動させる場合、自動的に前記第3のスイッチング状態に切り替わるように設定されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電気駆動システム(1)を備えた車両(2)。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の電気駆動システム(1)を作動するための方法であって、
-前記三相電気機械(3)が前記電気エネルギー貯蔵装置(4)によって電気を供給される、前記方法において、
-前記電気エネルギー貯蔵装置(4)が前記入力電圧(UE)を充電されるように、前記電気駆動システム(1)の前記スイッチング装置(6)を前記第1のスイッチング状態に切り替える工程と、
-前記電気エネルギー貯蔵装置(4)が前記インバータ(5)によって充電されるように、前記スイッチング装置(6)を前記第2のスイッチング状態に切り替える工程、および/または
-前記電気エネルギー貯蔵装置(4)が前記インバータ(5)によって充電されるように、前記スイッチング装置(6)を前記第3のスイッチング状態に切り替える工程と、
により特徴づけられる、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に基づく車両用の電気駆動システムに関する。更に、本発明は、該当する電気駆動システムを備えた車両に関する。同様に、本発明は、請求項9の上位概念に基づく電気駆動システムの動作方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
今日、電気で駆動される、または電気で作動する車両は、800ボルトの電圧レベルを有している。その場合、これらの車両は、800ボルトの車両バッテリを有しており、このバッテリによって車両電装システムおよび/または電気駆動ユニットにエネルギーを供給することができる。このことは、例えば特許文献1および特許文献2において開示されている。車両の電気駆動ユニットが車両を駆動するために、このユニットは交流電圧を必要とする。この交流電圧は、インバータによって車両バッテリのバッテリ電圧から生成される。このことは、例えば特許文献3において開示されている。
特許文献4および特許文献5は、それぞれ自動車のスイッチング構成を開示している。このとき、車両の電気機械には、電力変換器によって車両の高電圧バッテリから電気エネルギーが供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE102019005621A1
【特許文献2】DE102009052680A1
【特許文献3】DE102018000488A1
【特許文献4】DE102018009848A1
【特許文献5】DE102018009840A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、400ボルトの充電スタンドにおいて、より簡単かつ追加の労力なしに800ボルトの電圧レベルを備える電気自動車を充電できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立請求項に基づく、電気駆動システム、車両、ならびに方法によって解決される。有利な発展形態は、従属請求項より明らかになる。
【0006】
本発明の第1の態様は、
-三相電気機械と、
-三相電気機械に電気を供給するための電気エネルギー貯蔵装置と、
-三相電気機械に接続されているインバータであって、電気エネルギー貯蔵装置の正電位がインバータの正電位に接続されており、電気エネルギー貯蔵装置の負電位がインバータの負電位に接続されているインバータと、
-インバータの正電位と負電位との間に接続されている、第1のコンデンサと第2のコンデンサからなる直列回路であって、第1のコンデンサと第2のコンデンサとの間にインバータのセンタータップが形成されている、第1のコンデンサと第2のコンデンサからなる直列回路と、を備える車両用の電気駆動システムに関し、さらに、
-スイッチング装置
を有しており、このスイッチング装置は、
-充電接続部の正電位が電気エネルギー貯蔵装置の正電位に接続されており、充電接続部の負電位が電気エネルギー貯蔵装置の負電位に接続されていることにより、電気エネルギー貯蔵装置は電気接続部にきている入力電圧によって充電可能である第1のスイッチング状態と、
-充電接続部の正電位が電気エネルギー貯蔵装置の正電位に接続されており、充電接続部の負電位がインバータのセンタータップに接続されていることにより、電気エネルギー貯蔵装置は、インバータによって充電可能である第2のスイッチング状態、および/または
-充電接続部の正電位がインバータのセンタータップに接続されており、充電接続部の負電位がインバータの負電位に接続されていることにより、電気エネルギー貯蔵装置は、インバータによって充電可能である第3のスイッチング状態と、を有している。
【0007】
提案されている電気駆動システムにより、電気で駆動される車両、特に800ボルトの電圧レベルを持つ電気自動車は、追加の労力なしに下位互換性を実行できることから、より簡単に400ボルト充電スタンドおよび/または充電ユニットで充電することができる。従って、電圧のより低い充電スタンドにおいても充電プロセスを実行可能にするための、より簡便かつ改善された方式が提供されることにより、電気自動車をさらに効率的に作動させることができる。
【0008】
これらの利点は、すでに車両に搭載されている三相電気機械のインバータが、その一次機能の他に二次機能を追加的に有することによって達成できる。インバータの一次機能とは、三相交流機のために交流電圧を提供することである。二次的機能とは、特に400ボルト充電スタンドにおいて、インバータを車両充電モードのために流用することである。インバータはすでに車両に搭載されているので、追加のコンポーネントおよび/または構成部品を使用することなく車両の下位互換性を実現することができる。インバータのこのような流用、特にインバータの二次的機能の使用により、電気自動車のコスト、重量、取付けスペースを節約することが可能となる。
【0009】
さらに、切り替え装置およびこの切替え装置のそれぞれのスイッチング状態により、三相電気機械の中性点にアクセスする必要なく、またはインバータ内の該当するスイッチング素子を追加的に考慮したり、使用したりする必要なく、400ボルト充電スタンドで車両の充電プロセスを実行することができる。
【0010】
特に、提案されている電気駆動システムを用いることにより、車両の三相電気機械の多目的利用が可能になる。第1および第2のコンデンサをセンタータップに相互連結することにより、第1および第2のコンデンサのスイッチング装置のスイッチング状態に応じて、電気エネルギー貯蔵装置の電圧の半分まで予備充電できるので、充電プロセスをより効率的に準備することができる。400ボルト充電スタンドでの充電プロセス中に、第1または第2のコンデンサ内の電圧を徐々に上昇させることができる。このことは、例えばバッテリ電圧の半分であってよい。DC充電スタンドは、今後の充電プロセスの妥当性を確認するために、DC電圧の上昇を監視しているので、このことは有利である。これが行われない場合、充電が中断するおそれがある。このことは、第1または第2のコンデンサを電気エネルギー貯蔵装置の電圧の半分まで予備充電することによって防止できる。
【0011】
例えば、車両は、少なくとも部分的に電気で作動する車両であってよい。特に、車両は、電気自動車、ハイブリッド車またはプラグイン車であってよい。特に、車両は、乗用車またはトラックであってよい。
【0012】
電気エネルギー貯蔵装置は、例えば車両バッテリ、車両のトラクションバッテリまたはバッテリシステムであってよい。特に、電気エネルギー貯蔵装置は、800ボルトの電圧レベルを備える高電圧バッテリである。三相電気機械は、特に、走行のために車両を駆動する電気機械または電気モーターである。
【0013】
特に、スイッチング装置の支援によって、インバータをブーストコンバータとして、または昇圧コンバータとして構成するか、または実現できることにより、電気エネルギー貯蔵装置は、この電気エネルギー貯蔵装置に対して低い電圧レベルを備える充電スタンドでも充電が可能になる。このことは、特に、三相電気機械に介入することなく行われる。特に、充電プロセスのために、入力電圧を昇圧変換させることができる。このことは、特に、インバータと、第1と第2のコンデンサの間にあるセンタータップとを用いて行うことができる。
【0014】
オプションで、電気駆動システムの支援により、DCブースト機能が三相電気機械のインバータを介して実現可能である。これにより、電気エネルギー貯蔵装置の充電時に入力電圧を昇圧するために、追加の充電ユニットや変圧器を省略することができる。
【0015】
特に、個々の正電位は共通の正電位に属していてよい。このとき、個々の正電位は、共通の正電位の部分電位と呼ぶことができる。同様に、個々の負電位は共通の負電位に属していてよい。このとき、個々の負電位は、共通の正電位の部分電位と呼ぶことができる。
【0016】
とりわけ、第1の変形例におけるスイッチング装置は、可能な作動状態として第1および第2のスイッチング状態を有することができる。第2の変形例において、スイッチング装置は、可能な作動状態として第1および第3のスイッチング状態を有することができる。同様に、スイッチング装置は両方の変形例の組み合わせを有していてもよい。これにより、PEに対する車両の電位アンバランスによる充電ステーションの電気絶縁の過負荷を防止することができる。
【0017】
本発明によれば、インバータは、第1のコンデンサおよび/または第2のコンデンサを充電するように設定されており、第1のコンデンサの第1の電圧と第2のコンデンサの第2の電圧との合計が、電気エネルギー貯蔵装置を充電するためにインバータの出力電圧として提供されるようになっている。その結果、第1と第2のコンデンサの間にあるセンタータップをインバータによって充電接続部に接続できることにより、昇圧モードまたはブースト機能を実現することができる。特に、第1のコンデンサおよび/または第2のコンデンサの充電は交互に行われる。このことは、特に、インバータの現在のスイッチング状態またはクロッキングモードに応じて行うことができる。従って、例えば、第1のコンデンサは第1のクロックにおいて充電することができ、第2のコンデンサは第1のクロック直後の第2のクロックにおいて充電することができる。400ボルト充電スタンドでの電気エネルギー貯蔵装置の充電プロセスでは、それぞれ第1および第2のコンデンサが、実質的に400ボルトの電圧で充電可能である。従って、第1のコンデンサと第2のコンデンサの合計により、電気エネルギー貯蔵装置に必要な出力電圧の提供が可能である。
【0018】
本発明の別の実施例では、インバータが3レベルT型インバータとして形成されている。このようなインバータの特殊な形態により、三相電気機械の中性点に介入することなく、昇圧モードを実現することができる。例えば、3レベルT型インバータとしてのインバータを使用することにより、追加のコンポーネントなしで車両の下位互換性を達成できる。インバータは、例えば、3レベルインバータ、ソフトスイッチング3レベルインバータ、またはT型の3レベルインバータとして形成されていてよい。特に、インバータは、NPC(Neutral Point Claimed、中性点クランプ)トポロジーの3レベルインバータであり、またはNPC回路の中性点クランプ式インバータとして形成されていてよい。特に、インバータは、中性点クランプ3レベルインバータである。これは、従来から使用されている2レベルインバータに対して、明らかに高い絶縁耐力を有している。
【0019】
本発明のさらなる実施例では、インバータが、第2のスイッチング状態においては電気エネルギー貯蔵装置のバッテリ電圧と入力電圧間の電位差を調整するために、負電位の電圧レベルをこの電位差の分だけ低下させ、また第3のスイッチング状態においてはバッテリ電圧と入力電圧間の電位差を調整するために、正電位の電圧レベルをこの電位差の分だけ増加させるように設定されている。
【0020】
スイッチング装置の第2のスイッチング状態では、昇圧モードを実現することができ、この昇圧モードでは、充電スタンドまたは充電ステーションの正電位が、電気エネルギー貯蔵装置の正電位に直接接続されている。例えば400ボルトの充電スタンドと、例えば800ボルトの電気エネルギー貯蔵装置との電圧差の電圧調整は、負電位の電圧レベルを例えば400ボルト(電圧差に該当)分だけ調整するか、低下させることによって行われる。この電圧差は、三相電気機械のチョークまたはモーターコイルがクロック周期で作動することによって発生し得る。このとき、クロック周期で作動するとは、短絡から短絡の開放に切り替わること、またはチョークでのチョーク電流の蓄積から、還流ダイオードを介したチョーク電流の還流に切り替わること、およびその逆と理解することができる。このとき、充電スタントと電気エネルギー貯蔵装置との間の電圧差は、チョーク電流蓄積における逆流防止ダイオードに存在している。この時点において、電気エネルギー貯蔵装置は充電することができない。その代わり、チョーク電流の上昇によって、チョーク内のエネルギーを上昇させることができる。この場合、正電位は同じ電位基準を有している。
【0021】
スイッチング装置の第3のスイッチング状態では、車両と充電スタンドの間の負電位が相互に直接接続されている。充電スタンド(400ボルト)と電気エネルギー貯蔵装置(800ボルト)の電圧差の調整は、特に、正電位の電圧レベルを400ボルト(電圧差に該当)分だけ調整するか、上昇させることによって行われる。この電圧差は、すでに前述したように、クロック周期で作動するチョークによって発生する。しかし、ここではチョークおよび還流ダイオードが正電位内に配置されている。
【0022】
本発明のさらなる実施例では、スイッチング装置が、充電接続部の正電位を電気エネルギー貯蔵装置の正電位に接続するための第1の充電コンタクタを有している。さらに、スイッチング装置は、充電接続部の正電位をインバータのセンタータップに接続するための第2の充電コンタクタも有している。その代わりに、スイッチング装置は、充電接続部の負電位をインバータのセンタータップに接続するための第3の充電コンタクタを有していてもよい。さらに、スイッチング装置は、充電接続部の負電位をインバータの負電位に接続するための第4の充電コンタクタも有している。
【0023】
特に、第1から第4の充電コンタクタは、電気スイッチまたはスイッチング素子である。特に、スイッチング装置は、どのスイッチング状態になるかに応じて、充電コンタクタを適宜切り替えることができる。スイッチング装置が現在どのスイッチング状態になっているか、またはどのスイッチング状態になるかに応じて、例えば電気駆動システムの制御装置または制御ユニットによって、スイッチング装置の充電コンタクタを適宜切り替えることが可能である。
【0024】
充電コンタクタの支援により、スイッチング装置は、電気エネルギー貯蔵装置の充電プロセスがインバータによって負電位または正電位のいずれかを介して実行できるように、切り替わることができる。特に、第1および第4の充電コンタクタの支援により、電気エネルギー貯蔵装置の充電プロセスは、インバータとは無関係に、特に直接の800ボルト充電プロセスにおいて実行可能である。
【0025】
本発明のさらなる実施例において、スイッチング装置は、充電接続部の入力電圧が第1の規定電圧値を有している場合、第1のスイッチング状態に自動的に切り替わるように設定されている。従って、どの充電プロセスが行われるかに応じて、該当するスイッチング状態が自動的に設定されるか、または切り替えられる。第1のスイッチング状態は、入力電圧が第1の規定電圧値に一致している場合、常に、自動的に使用されるか、または設定される。第1の規定電圧値は、特に、電気エネルギー貯蔵装置の電圧レベルが実質的に該当している電圧値である。例えば、800ボルトのエネルギー貯蔵装置を搭載した800ボルト車両の場合、第1の規定電圧値は800ボルトに該当する。特に、第1のスイッチング状態では、電気エネルギー貯蔵装置の充電は、直接充電接続部を介して、従って直接充電スタンドを介して行われる。
【0026】
例えば、スイッチング装置は、制御ユニットまたは制御装置を有しており、それによってスイッチ状態の自動切り替えが可能になる。そのために、例えば、電圧測定装置を用いて入力電圧を特定することができ、設定するスイッチング状態を決定する際にそれを考慮することができる。
【0027】
さらなる実施例では、充電接続部の入力電圧が第2の規定電圧値を有し、かつ負電位の電圧レベルを低下させるためにインバータを昇圧コンバータとして作動させる場合、スイッチング装置は、自動的に第2のスイッチング状態に切り替わるように設定されている。すでに前述したように、スイッチング状態の切替えは自動的に行われる。例えば、第1のスイッチング状態から第2のスイッチング状態への自動切替え、またはその逆の自動切替えを実行することができる。特に、現在、スイッチング装置によって接続または作動が可能なスイッチング状態は、それぞれ1つだけである。
【0028】
第2の規定電圧値は、特に、充電スタンドの電圧値である。例えば、第2の規定電圧値は、400ボルト充電スタンドの場合、400ボルトである。さらに、電位差の分だけ負電位を低下させる場合、スイッチング装置の第2のスイッチング状態が設定または使用される。この場合、充電スタンドと車両との間の正電位は、互いに直接接続されると考えられる。
【0029】
本発明のさらなる実施例では、充電接続部の入力電圧が第2の規定電圧値を有し、かつ正電位の電圧レベルを上昇させるためにインバータを昇圧コンバータとして作動させる場合、スイッチング装置は、自動的に第3のスイッチング状態に切り替わるように設定されている。この場合、前述した実施形態を参照することができる。第2のスイッチング状態と同様に、第3のスイッチング状態の使用または接続には、例えば400ボルトの第2の規定電圧値が重要である。特に電気駆動システムの正電位を適合または上昇させる場合、第3のスイッチング状態が自動的に設定または接続される。この場合、充電スタンドと車両との間の負電位は、互いに直接接続されている。正電位の電圧レベルは、電圧差の分だけ上昇させることができる。
【0030】
特に、指定された電圧値とは、測定公差および/または5パーセント、特に10パーセントの公差を有することのできる目標電圧値として理解される。
【0031】
「実質的に」という用語は、特に+/-5パーセント、特に+/-10パーセントの公差であると理解される。
【0032】
本発明のさらなる態様は、前述の態様による、またはその有利な実施形態による電気駆動システムを搭載した車両に関する。
【0033】
特に、上記の電気駆動システムはこの車両に統合することができる。特に、この車両は、前述の態様による該当する電気駆動システムを有している。
【0034】
例えば、この車両は、電気自動車または少なくとも部分的に電気で作動する車両である。特に、この車両は、800ボルトの電圧レベルを有している。
【0035】
特に、電気駆動システムは、走行のためにこの車両を駆動することができる。
【0036】
本発明のさらなる態様は、前述の態様のいずれか1つによる、またはその有利な実施形態による電気駆動システムの作動方法に関し、
-三相電気機械が電気エネルギー貯蔵装置によって電気を供給され、
-電気エネルギー貯蔵装置が入力電圧によって充電されるように、電気駆動システムのスイッチング装置を第1のスイッチング状態に切り替える工程と、
-電気エネルギー貯蔵装置がインバータによって充電されるように、スイッチング装置を第2のスイッチング状態に切り替える工程、および/または
-電気エネルギー貯蔵装置がインバータによって充電されるように、スイッチング装置を第3のスイッチング状態に切り替える工程と、を有している。
【0037】
特に、本方法により、800ボルト電気自動車の充電プロセスを、400ボルトの充電スタンドであっても、より簡単かつ追加の労力なしで実行することができる。
【0038】
特に、上記の方法は、前述した態様のいずれか1つによる、またはその有利な実施形態による電気駆動システムによって実行することができる。特に、上記の方法は、前述した電気駆動システムによって実行される。
【0039】
この電気駆動システムの好ましい実施形態は、本車両ならびに本方法の有利な実施形態として見なすことができる。この電気駆動システムならびに本車両は、本方法またはその有利な実施形態を実現する具体的な特徴を有する。
【0040】
個々の態様の実施例は、その他の態様の有利な実施例として見なすことができ、その逆も同様である。
【0041】
本発明の更なる利点、特徴、および詳細は、好適な実施例ならびに(1つ以上の)図面に基づく以下の説明より明らかになる。上記の説明において挙げた特徴および特徴の組み合わせ、ならびに以下の各図に関する説明において挙げられる特徴および特徴の組み合わせ、ならびに/または各図においてのみ示される特徴および特徴の組み合わせは、それぞれ提示した組み合わせにおいてのみ使用されるのではなく、本発明の範囲から逸脱することなく他の組み合わせで使用することもできるし、単独で使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に基づく電気駆動システムの実施形態の概略的ブロック図である。
【
図2】
図1による電気駆動システムの機能シーケンスの一例を示した図である。
【
図3】
図1の駆動システムのシミュレーションセットアップの概略図である。
【
図4】
図3のシミュレーションセットアップのシミュレーション結果の例を示した図である。
【
図5】
図1の駆動システムのさらなる実施形態の概略的ブロック図である。
【
図6】
図5による電気駆動システムの機能シーケンスの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図中、機能的に同一の要素には同一の参照符号を付している。
【0044】
図1は、例として車両2の電気駆動システム1の概略的ブロック図を示したものである。
【0045】
電気駆動システム1は、特に、車両2を駆動するための電気駆動または電気駆動ユニットである。言い換えると、電気駆動システム1は、走行のために車両2を駆動することに用いられる。従って、電気駆動システム1には、車両2を駆動できるようにする多数のコンポーネントまたはシステムが含まれていてよい。
【0046】
例えば、電気駆動システム1は、駆動装置、スイッチング装置または電気システムと呼ぶこともできる。
【0047】
車両2は、少なくとも部分的に電気で駆動される車両、例えばハイブリッド車または電気自動車であってよい。
【0048】
車両2を駆動するために、電気駆動システム1は、三相電気機械3を有することができる。特に、この三相電気機械3は、電気機械、特に電気モーターである。特に、三相電気機械3は、モーターモードで、従って電気モーターとして作動させることができる。三相電気機械3をモーターモードで作動させるために、三相電気機械3には、その位相を介して交流電圧、特に高電圧交流電圧が供給可能である。三相電気機械3の位相は、例えば共通の中性点によって相互に接続されていてよい。
【0049】
三相電気機械3に交流電圧を供給できるようにするため、電気駆動システム1、従って車両2は少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵装置4を有することができる。電気エネルギー貯蔵装置4を使って、一方では、三相電気機械3およびその他の車両コンポーネントおよび/または車両システムおよび/または車両電装システムに電気エネルギーを供給することができる。
【0050】
例えば、電気エネルギー貯蔵装置4は、複数の個別バッテリまたはバッテリシステムであってよい。特に、電気エネルギー貯蔵装置4は、バッテリ、特に車載バッテリである。例えば、電気エネルギー貯蔵装置4は、高電圧バッテリと呼ぶことができる。
【0051】
電気エネルギー貯蔵装置4を使って、バッテリ電圧UBattを提供することができる。特に、車両2は、800ボルトの電圧レベルを備えるバッテリ駆動車両であってよい。このとき、バッテリ電圧UBattにより、実質的に800ボルトの電圧が提供可能である。
【0052】
三相電気機械3は、その作動状態のために交流電圧を必要とする。この交流電圧は、インバータ5によって提供される。このことは、バッテリ電圧UBattを交流電圧に変換することによって行われる。インバータ5は、例えば、変換器またはインバータであってよい。特に、インバータ5は、駆動インバータとも呼ぶことができる。特に、三相電気機械3のために交流電圧を提供することは、インバータ5の一次機能または主機能によって行われる。
【0053】
例えば、インバータ5は、電気エネルギー貯蔵装置4と三相電気機械3との間に相互連結または配置されていてよい。
【0054】
特に、電気エネルギー貯蔵装置4の正電位P1は、インバータ5の正電位P2に接続または配線されている。同様に、電気エネルギー貯蔵装置4の負電位N1は、インバータ5の負電位N2に接続または配線されている。言い換えると、電気エネルギー貯蔵装置4とインバータ5の正極ないしプラス極が互いに接続されている。同様に、電気エネルギー貯蔵装置4のマイナス極は、インバータ5のマイナス極に接続されている。
【0055】
さらに、インバータ5の正電位P2と負電位N2の間は、第1のコンデンサC1と第2のコンデンサC2からなる直列回路が接続または配置されている。電気エネルギー貯蔵装置4から見ると、この直列回路はインバータ5の入力側にあり、特にインバータ5と電気エネルギー貯蔵装置4との間に直接存在している。特に、第1のコンデンサC1の正電位は、インバータ5の正電位P2に接続されている。第1のコンデンサC1の負電位は、第2のコンデンサC2の正電位に接続されている。従って、第2のコンデンサC2の負電位は、インバータ5の負電位N2に接続されている。第1と第2のコンデンサC1、C2の間には、センタータップMがある。
【0056】
例えば、インバータ5は、3レベルT型インバータとして構成されていてよい。
【0057】
特に、電気駆動システム1は、スイッチング装置6を有している。スイッチング装置6により、電気エネルギー貯蔵装置4のさまざまな作動モードまたは充電モードまたは充電プロセスを設定したり、切り替えたりすることができる。スイッチング装置6は、例えばスイッチング機構、スイッチング装置またはスイッチングマトリクスとも呼ぶことができる。
【0058】
スイッチング装置6のスイッチング状態に応じて、800ボルト充電プロセスまたは400ボルト充電プロセスを実行することができる。電気エネルギー貯蔵装置4の800ボルト充電プロセスの場合、電気エネルギー貯蔵装置4は、スイッチング装置6を用いて直接相互に接続される。電気エネルギー貯蔵装置4の400ボルト充電プロセスの場合、電気エネルギー貯蔵装置4の充電プロセスは、スイッチング装置6を用いて、間接的にインバータ5を介して行われる。
【0059】
スイッチング装置6の第1のスイッチング状態において、充電接続部7の正電位P3は、電気エネルギー貯蔵装置4の正電位P1に接続することができる。このとき、追加的に、充電接続部7の負電位N3は、電気エネルギー貯蔵装置4の負電位N1に接続することができる。従って、電気エネルギー貯蔵装置4は、充電接続部7にきている入力電圧UEによって直接充電可能である。
【0060】
充電接続部7は、特に車両側の充電接続部であり、例えば充電ソケットまたは充電コンセントなどであってよい。特に、充電接続部7により、電気駆動システム1と、車両2の外部充電ステーション8または充電スタンドとの連結が可能である。特に、充電ステーション8は、DC充電スタンドまたは充電ユニットまたは充電インフラである。特に、充電ステーション8は、直流充電源とも呼ぶことができる。
【0061】
スイッチング装置6によって、充電ステーション8は、充電接続部7を介して、直接電気エネルギー貯蔵装置4またはインバータ5に接続するか、切り替えることができる。
【0062】
特に、スイッチング装置6は、さまざまなスイッチング素子を有している。例えば、スイッチング装置6は、第1の充電コンタクタS1、第2の充電コンタクタS2、第3の充電コンタクタS3、第4の充電コンタクタS4を有していてよい。これらの充電コンタクタS1からS4は、例えばコンタクタ、スイッチング素子または機械式スイッチであってよい。
図1のこの実施例では、スイッチング装置6が、第1の充電コンタクタS1、第3の充電コンタクタS3、および第4の充電コンタクタS4を有している。
【0063】
スイッチング装置が第1のスイッチング状態をとる場合、充電コンタクタS1、S4は閉じられる。従って、正電位P1、P3は互いに接続されている。同様に、負電位N3、N1も接続される。第3の充電コンタクタS3は、ここでは開いた状態にある。
【0064】
特に、スイッチング装置6は、充電接続部7の入力電圧UEが第1の規定圧力値を有する場合、常に、第1のスイッチング状態で作動する。このことは、例えば充電接続部7に800ボルトの入力電圧UEがきている場合である。従って、ここでは、電気エネルギー貯蔵装置4が、充電ステーション8である800ボルト充電ステーションで直接充電される。
【0065】
特に、第1のスイッチング状態の設定は、スイッチング装置6によって、または電気駆動システム1の制御装置もしくは制御ユニットによって自動的に行われる。
【0066】
特に、スイッチング装置6は、常に1つのスイッチング状態しか有することができない。スイッチング状態を切り替える必要がある場合、スイッチング装置6の現在のスイッチング状態は、自動的に別のスイッチング状態、または望ましいスイッチング状態に切り替わる。
【0067】
特に、それぞれの充電接続部の入力電圧が第2の規定電圧値を有している場合、スイッチング装置6は第2のスイッチング状態に切り替わるように設定されている。この場合、入力電圧UEは、400ボルトの電圧値を有することができる。従って、充電ステーション8は、500ボルト直流電圧よりも電圧値が小さい電圧を提供している。この場合、インバータ5によって、この電圧の昇圧または昇圧変換が行われる。従って、ここではインバータ5が昇圧モードになるため、バッテリ電圧UBattに比べて低い入力電圧UEを昇圧または昇圧変換することができる。この状態においては、電気駆動システム1および特に車両2の負電位を調整するか、または昇圧することが必要である。従って、スイッチング装置6は、第2のスイッチング状態となるように切り替えられなければならない。例えば、このことは自動的に行うことができる。特に、例えば第1のスイッチング状態から第2のスイッチング状態に切り替えることができる。特に、スイッチング装置6には、常に唯一のスイッチング状態しか存在していない。
【0068】
スイッチング装置6の第2のスイッチ状態では、充電接続部7の正電位P3が電気エネルギー貯蔵装置4の正電位P1およびインバータ5の正電位に接続されているか、または相互連結されているか、または配線されている。しかし、このとき、ここではそれぞれ、充電接続部7の負電位N3は、インバータ5のセンタータップMに接続されている。このことは、第3の充電コンタクタS3によって行われる。スイッチング装置6の第2のスイッチング状態では、充電コンタクタS1、S3が閉じており、第4の充電コンタクタS4が開いている。この場合、入力電圧UEは、インバータ5に提供できるため、インバータ5の特殊な形態により、入力電圧UEを昇圧することができる。
【0069】
このように、インバータ5は、車両2の下位互換性を簡単に提供するために用いられる。この下位互換性(ここでは、800ボルト車両を400ボルト充電スタンドで充電すること意味する)を達成できるようにするために、インバータ5は、3レベルインバータ、ソフトスイッチング3レベルインバータ、またはT型の3レベルインバータとして形成されていてよい。特に、インバータ5は、NPC(中性点クランプ、Neutral Point Claimed)トポロジーの3レベルインバータとして、またはNPC回路の中性点クランプ式インバータとして形成されていてよい。
【0070】
電気エネルギー貯蔵装置4を充電するためにインバータ5によって入力電圧UEを変換できるようにするため、インバータ5は、三相電気機械の三相のそれぞれについて3つのスイッチング装置を有している。このとき、これらの各スイッチング装置は、IGBTまたはMOSFETなど、多数のさまざまな半導体を有していてよい。例えば、コンデンサC1、C2およびセンタータップMは、インバータ5の中間回路を形成する。特に、インバータ5は、第1のコンデンサC1および/または第2のコンデンサC2を選択的に、特に周期的に充電するように設定されていてよい。従って、例えば、第1のコンデンサC1の第1の電圧と、第2のコンデンサC2の第2の電圧との合計を、インバータの出力電圧として電気エネルギー貯蔵装置4の充電のために生成または提供することができる。特に、インバータ5は、インバータ5のどの半導体スイッチが開閉しているかに応じて、第1のコンデンサC1または第2のコンデンサC2を入力電圧UEによって充電することができる。これにより、C1およびC2からなる直列回路を用いて、バッテリ電圧UBattに相当する出力電圧を提供することが可能である。従って、電気エネルギー貯蔵装置4には、インバータ5のコンデンサC1、C2を介して充電することができる。
【0071】
従って、ここでは、インバータ5が入力電圧UEの昇圧のために流用されることに注意しなければならない。というのも、インバータ5の本来の一次機能は、三相電気機械3用にバッテリ電圧UBattを交流電圧に変換することだからである。結果的に、インバータ5は、充電ステーション8が500ボルト未満の充電電圧を供給できる場合に、電気エネルギー貯蔵装置4を充電するという追加の二次機能を有していることになる。
【0072】
次の
図2には、例えば、スイッチング装置6が第2のスイッチング状態にある場合の、電気駆動システム1の機序が図示されている。電流経路SP1は、例えば、インバータ5のクロック周期またはクロッキングによる半導体スイッチ9が閉じられている場合の電流経路を示している。2つの半導体スイッチ10、11は、スイッチング装置6の第2のスイッチング状態の間、永久的に閉じられている。インバータ5の残りの半導体スイッチは開いたままであるか、導電性ボディダイオードでは効率最適化のために閉じることができる。
【0073】
次のクロッキングモードまたはサイクルでは、電流経路SP2が設定される。特に、2つの電流経路SP1、SP2は交互に利用可能になる。従って、電流経路SP1またはSP2は、交互に、クロック周期で行われる。電流経路SP2では、クロック周期による半導体スイッチ9が開いている。2つの半導体スイッチ10、11は、引き続き閉じている。さらに、インバータ5の左ハーフブリッジの半導体スイッチ9の代わりに、インバータ5の中央または右ハーフブリッジの半導体スイッチ12または13を使用することもできる。経年劣化を均一化するためには、クロッキングによる半導体スイッチ9、12、13間の切替えが有利であると考えられる。
【0074】
次の
図3には、電気駆動システム1の概略的シミュレーションセットアップが示されている。ここでは、スイッチング装置6の第2のスイッチング状態がシミュレートされる。
【0075】
例えば、電流増加および電流還流の経過を分かりやすくするために、コンデンサC1とC2は省略することができる。クロック周波数は例えば10キロヘルツであり、三相電気機械3の各モーターコイルは1ミリヘンリーである。クロック周期による半導体スイッチ9は、電流が80アンペアを下回るとオンになり、150アンペアを上回ると開く。
【0076】
図3のシミュレーション結果が、
図4に例示的に示されている。ここで、例えば経過Aには、充電ステーション8の電流が示されている。このとき、半導体スイッチ9が150アンペアで再び開くまで、80アンペアの電流が、クロック周期による半導体スイッチ9のゲートの制御により、一定の勾配で上昇する様子を見ることができる。この電流は、三相電気機械3のモーターコイルの電流と同一である。例えば、モーターコイルL2およびL3は逆の符号が付けられており、モーターコイルL1に比べ電流は半分になっている。このことは、特に経過C、D、Eで見ることができる。経過CにはL1の電流が示されており、経過DおよびEにはモーターコイルL2およびL3の電流が示されている。経過Dには、クロック周期による半導体スイッチ9の制御ゲートが示されている。経過Fでは、例えば、電気エネルギー貯蔵装置4における電流経過が表されている。電気エネルギー貯蔵装置4の充電は、半導体スイッチ9が開いているフェーズ(還流フェーズ)においてのみ行われ、このことは、ブーストコンバータの一般的な挙動に相当する。
【0077】
図5には、スイッチング装置6が第3のスイッチング状態にある場合の例が示されている。第3のスイッチング状態も同様に、自動で接続可能であるか、または切替え可能である。充電接続部7の入力電圧UEが第2の規定電圧値、特に400ボルトを有している場合、第3のスイッチング状態となる。この場合、インバータ5により、電気駆動システム1または車両2の正電位の昇圧が行われる。第3のスイッチング状態では、充電接続部7の正電位は、インバータ5のセンタータップMに接続することができる。充電接続部7の負電位N3は、インバータ5の負電位N2に接続するか、または相互連結することができる。従って、ここでも同様に、電気エネルギー貯蔵装置4の充電はインバータ5によって行われる。この場合も、第2のスイッチング状態と同様に、第1のコンデンサC1と第2のコンデンサC2の充電は交互に行われる。また、ここでも同様に、インバータ5の出力電圧として、第1のコンデンサC1の第1の電圧と第2のコンデンサC2の第2の電圧の合計を提供または生成することができる。この場合、第2の充電コンタクタS2と第4の充電コンタクタS4を接続することができる。特にこの実施形態では、スイッチング装置6が、第1の充電コンタクタS1、第2の充電コンタクタS2、第4の充電コンタクタS4を有していてよい。
【0078】
以下の
図6では、
図2と同様に、それぞれの電流経路SP3、SP4のみが示されている。しかし、ここでは、スイッチング装置6が第3のスイッチング状態にある間、または第3のスイッチング状態にある場合の電気駆動システム1の機序が示されている。
【0079】
電流経路SP3は、インバータ5の半導体スイッチ14がクロック周期で作動している電流経路を示している。2つの半導体スイッチ15、16は、永久的に閉じられていてよい。特に、この電流経路SP3において、半導体スイッチ14は閉じられている。
【0080】
図2の形態と同様に、ここでも2つの電流経路SP3およびSP4は、同時にではなく、交互に実施されている。電流経路SP4において、半導体スイッチ14は開いている。
【0081】
ここでも同様に、その他の半導体スイッチは開いたままであるか、導電性ボディダイオードでは効率最適化のために閉じることができる。
【0082】
図2の説明と同様に、ここでもインバータ5のそれぞれのハーフブリッジの半導体スイッチは交互に使用されてよい。
【0083】
ここでのシミュレーションセットアップおよびシミュレーション結果については、
図3および4のシミュレーションセットアップおよびシミュレーション結果と同様に考察することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 電気駆動システム
2 車両
3 三相電気機械
4 電気エネルギー貯蔵装置
5 インバータ
6 スイッチング装置
7 充電接続部
8 充電ステーション
9~16 半導体スイッチ
C1、C2 第1および第2のコンデンサ
L1、L2、L3 モーターコイル
UBatt バッテリ電圧
UE 入力電圧
P1、P2、P3 正電位
N1、N3、N3 負電位
S1、S2、S3、S4 第1から第4の充電コンタクタ
SP1、SP2、SP3、SP4 電流経路
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(2)用の電気駆動システム(1)であって、
-三相電気機械(3)と、
-前記三相電気機械(3)に電気を供給するための電気エネルギー貯蔵装置(4)と、
-前記三相電気機械(3)に接続されているインバータ(5)であって、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の正電位(P1)が前記インバータ(5)の正電位(P2)に接続されており、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の負電位(N1)が前記インバータ(5)の負電位(N2)に接続されている、前記インバータ(5)と、
-前記インバータ(5)の前記正電位と前記負電位(P1、N2)との間に接続されている、第1のコンデンサ(C1)と第2のコンデンサ(C2)からなる直列回路であって、前記第1のコンデンサ(C1)と前記第2のコンデンサ(C2)との間に前記インバータ(5)のセンタータップが形成されている、前記直列回路と、
を備える、前記電気駆動システム(1)において、
-スイッチング装置(6)により特徴づけられるものであり、前記スイッチング装置(6)は、
-充電接続部(7)の正電位(P3)が前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の前記正電位(P1)に接続されており、前記充電接続部(7)の負電位(N3)が前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の負電位(N
1)に接続されていることにより、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)は前記電気接続部(7)にきている入力電圧(UE)によって充電可能である第1のスイッチング状態と、
-前記充電接続部(7)の前記正電位(P3)が前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の前記正電位(P1)に接続されており、前記充電接続部(7)の前記負電位(N3)が前記インバータ(5)の前記センタータップ(M)に接続されていることにより、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)は、前記インバータ(5)によって充電可能である第2のスイッチング状態、および/または
-前記充電接続部(7)の前記正電位(P3)が前記インバータ(5)の前記センタータップ(M)に接続されており、前記充電接続部(7)の前記負電位(N3)が前記インバータ(5)の前記負電位(N2)に接続されていることにより、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)は、前記インバータ(5)によって充電可能である第3のスイッチング状態と、
を有し、
前記インバータ(5)は、前記第1のコンデンサ(C1)および/または前記第2のコンデンサ(C2)を充電するように設定されており、前記第1のコンデンサ(C1)の第1の電圧と前記第2のコンデンサ(C2)の第2の電圧との合計が、前記電気エネルギー貯蔵装置(4)を充電するために前記インバータ(5)の出力電圧として提供される、前記電気駆動システム(1)。
【請求項2】
前記インバータ(5)は、3レベルT型インバータとして構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項3】
前記インバータ(5)は、前記第2のスイッチング状態においては前記電気エネルギー貯蔵装置(4)のバッテリ電圧(U
Batt)と前記入力電圧(UE)間の電位差を調整するために、前記負電位(N1、N2、N3)の電圧レベルをこの電位差の分だけ低下させ、前記第3のスイッチング状態においては前記バッテリ電圧(U
Batt)と前記入力電圧(UE)間の電位差を調整するために、前記正電位(P1、P2、P3)の電圧レベルをこの電位差の分だけ増加させるように設定されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項4】
前記スイッチング装置(6)は、
-前記充電接続部(7)の前記正電位(P3)を前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の前記正電位(P1)に接続するための第1の充電コンタクタ(S1)と、
-前記充電接続部(7)の前記正電位(P3)を前記インバータ(5)の前記センタータップ(M)に接続するための第2の充電コンタクタ(S2)、または
-前記充電接続部(7)の前記負電位(N3)を前記インバータ(5)の前記センタータップ(M)に接続するための第3の充電コンタクタ(S3)と、
-前記充電接続部(7)の前記負電位(N3)を前記電気エネルギー貯蔵装置(4)の前記負電位(N1)に接続するための第4の充電コンタクタ(S4)と、
を有していることを特徴とする、請求項1
または2に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項5】
前記スイッチング装置(6)は、前記充電接続部(7)の前記入力電圧(UE)が第1の規定電圧値を有している場合、前記第1のスイッチング状態に切り替わるように設定されていることを特徴とする、請求項1
または2に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項6】
前記スイッチング装置(6)は、前記充電接続部(7)の前記入力電圧(UE)が第2の規定電圧値を有し、かつ前記負電位(N1、N2、N3)の電圧レベルを低下させるために前記インバータ(5)を昇圧コンバータとして作動させる場合、自動的に前記第2のスイッチング状態に切り替わるように設定されていることを特徴とする、請求項1
または2に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項7】
前記スイッチング装置(6)は、前記充電接続部(7)の前記入力電圧(UE)が第2の規定電圧値を有し、かつ前記正電位(P1、P2、P3)の電圧レベルを上昇させるために前記インバータ(5)を昇圧コンバータとして作動させる場合、自動的に前記第3のスイッチング状態に切り替わるように設定されていることを特徴とする、請求項1
または2に記載の電気駆動システム(1)。
【請求項8】
請求項1
または2に記載の電気駆動システム(1)を備えた車両(2)。
【請求項9】
請求項1
または2に記載の電気駆動システム(1)を作動するための方法であって、
-前記三相電気機械(3)が前記電気エネルギー貯蔵装置(4)によって電気を供給される、前記方法において、
-前記電気エネルギー貯蔵装置(4)が前記入力電圧(UE)を充電されるように、前記電気駆動システム(1)の前記スイッチング装置(6)を前記第1のスイッチング状態に切り替える工程と、
-前記電気エネルギー貯蔵装置(4)が前記インバータ(5)によって充電されるように、前記スイッチング装置(6)を前記第2のスイッチング状態に切り替える工程、および/または
-前記電気エネルギー貯蔵装置(4)が前記インバータ(5)によって充電されるように、前記スイッチング装置(6)を前記第3のスイッチング状態に切り替える工程と、
により特徴づけられる、前記方法。
【国際調査報告】