(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】可撓性積層材料
(51)【国際特許分類】
H05K 1/03 20060101AFI20240719BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240719BHJP
B32B 27/04 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
H05K1/03 610H
B32B27/30 D
B32B27/04 Z
H05K1/03 630H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504140
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 CN2022090911
(87)【国際公開番号】W WO2023005311
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/109685
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロン リアオ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン デイビッド アモス
(72)【発明者】
【氏名】ジョン シー.フランコスキー
(72)【発明者】
【氏名】フランシスカス コーネリス ヨハネス ハルセボシュ
(72)【発明者】
【氏名】スコット デイビッド ケネディ
(72)【発明者】
【氏名】イン ワン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート トーマス ヤング
(72)【発明者】
【氏名】シャオリン リウ
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
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4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
積層物品は、誘電体基板であって、フッ素化パーフルオロコポリマー及び非フッ素化パーフルオロコポリマーを含むパーフルオロコポリマーマトリックスと、パーフルオロコポリマーマトリックス中に埋め込まれた石英布と、パーフルオロコポリマーマトリックス中に分散された添加材料であって、紫外光を吸収することができる、添加材料と、を含む、誘電体基板と、誘電体基板の表面上に配設された伝導性クラッディングと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層物品であって、
誘電体基板であって、
フッ素化パーフルオロコポリマー及び非フッ素化パーフルオロコポリマーを含むパーフルオロコポリマーマトリックスと、
前記パーフルオロコポリマーマトリックスに埋め込まれた石英布と、
前記パーフルオロコポリマーマトリックス中に分散された添加材料であって、紫外光を吸収することができる、添加材料と、を含む、誘電体基板と、
前記誘電体基板の表面上に配設された伝導性クラッディングと、を含む、積層物品。
【請求項2】
前記積層物品が、20μm~200μmの厚さを有する、請求項1に記載の積層物品。
【請求項3】
前記積層物品の前記厚さが、30μm~90μmである、請求項2に記載の積層物品。
【請求項4】
前記積層物品の前記厚さが、30μm~60μmである、請求項3に記載の積層物品。
【請求項5】
前記誘電体基板が、2.10~2.50の10GHzでの誘電率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項6】
前記誘電体基板の前記誘電率が、2.10~2.30である、請求項5に記載の積層物品。
【請求項7】
前記誘電体基板が、0~100℃の温度範囲にわたって-250~+50ppm/℃の値を有する誘電率の熱係数を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項8】
前記誘電体基板が、0.001未満の10GHzでの誘電正接を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項9】
前記誘電体基板が、0.0006~0.001の10GHzでの誘電正接を有する、請求項8に記載の積層物品。
【請求項10】
10GHzでの前記誘電体基板の前記誘電正接が、0.0006~0.0008である、請求項9に記載の積層物品。
【請求項11】
前記積層物品が、X-Y平面を画定する平面形状を有し、前記X-Y平面における前記積層物品の熱膨張係数が、5~25ppm/℃である、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項12】
前記X-Y平面における前記積層物品の前記熱膨張係数が、14~20ppm/℃である、請求項11に記載の積層物品。
【請求項13】
前記X-Y平面における前記積層物品の前記熱膨張係数が、16~22ppm/℃である、請求項11に記載の積層物品。
【請求項14】
前記フッ素化パーフルオロコポリマーが、フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーを含み、前記非フッ素化パーフルオロコポリマーが、非フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項15】
前記パーフルオロコポリマーマトリックスが、50~90重量%の前記フッ素化パーフルオロコポリマーを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項16】
前記パーフルオロコポリマーマトリックスが、10~50重量%の前記非フッ素化パーフルオロコポリマーを含む、請求項15に記載の積層物品。
【請求項17】
前記パーフルオロコポリマーマトリックス中の炭素原子百万個当たりのカルボキシル末端基の数が、前記積層物品が伝導性アノードフィラメント(CAF)を形成しないのに十分である、請求項1~16のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項18】
前記パーフルオロコポリマーマトリックス中の炭素原子百万個当たりのカルボキシル末端基の数が、2lb/インチを超える前記誘電体基板と前記伝導性クラッディングとの間の剥離強度を有する前記積層物品を提供する、請求項1~17のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項19】
前記パーフルオロコポリマーマトリックス中の炭素原子百万個当たりの前記カルボキシル末端基の数が、30~70個である、請求項1~18のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項20】
前記フッ素化パーフルオロコポリマーが、炭素原子百万個当たり5個以下のカルボキシル末端基を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項21】
前記非フッ素化パーフルオロコポリマーが、炭素原子百万個当たり100~300個のカルボキシル末端基を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項22】
前記パーフルオロコポリマーマトリックスが、10g/10分~30g/10分のメルトフローレート(MFR)を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項23】
前記パーフルオロコポリマーマトリックスが、288℃で少なくとも10秒のはんだフロート抵抗を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項24】
前記石英布が、50g/m
2未満の坪量を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項25】
前記石英布の前記坪量が、25g/m
2未満である、請求項24に記載の積層物品。
【請求項26】
前記石英布が、10μm~30μmの厚さを有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項27】
前記石英布が、アミノシラン又はメタクリレートシラン表面化学処理を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項28】
前記石英布が、プラズマ処理又はコロナ処理された石英布を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項29】
前記石英布が、フルオロポリマーで含浸されている、請求項1~28のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項30】
前記石英布が、フルオロポリマーコーティングを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項31】
前記石英布が、前記積層物品への組み込み前にフルオロポリマー処理で前処理される、請求項1~30のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項32】
前記誘電体基板が、5~20体積パーセントの前記石英布と、80~95体積パーセントの前記パーフルオロコポリマーマトリックスと、を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項33】
前記石英布の水接触角が、0°~60°である、請求項1~32のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項34】
前記添加材料が、無機粒子を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項35】
前記無機粒子が、酸化セリウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、又は酸化亜鉛の粒子を含む、請求項34に記載の積層物品。
【請求項36】
前記添加材料が、熱硬化性ポリマーを含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項37】
前記添加材料が、2%未満の体積パーセントで前記パーフルオロコポリマーマトリックス中に存在する、請求項1~36のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項38】
前記添加材料が、前記パーフルオロコポリマーマトリックス全体にわたって均質に分散されている、請求項1~37のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項39】
前記伝導性クラッディングが、前記誘電体基板の2つの対向する表面上に配設されている、請求項1~38のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項40】
前記伝導性クラッディングが、銅箔を含む、請求項1~39のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項41】
前記銅箔が、積層プロセスによって前記誘電体基板の前記表面上に配設されている、請求項40に記載の積層物品。
【請求項42】
前記伝導性クラッディングが、72μm未満の厚さを有する、請求項1~41のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項43】
前記伝導性クラッディングの前記厚さが、5μm~18μmである、請求項42に記載の積層物品。
【請求項44】
前記伝導性クラッディングが、1μm未満の二乗平均平方根(RMS)粗さを有する、請求項1~43のいずれか一項に記載の積層物品。
【請求項45】
前記伝導性クラッディングの前記RMS粗さが、0.5μm未満である、請求項44に記載の積層物品。
【請求項46】
プリント配線板であって、
請求項1~45のいずれか一項に記載の積層物品を含み、
伝導体パターンが、前記伝導性クラッディング内に形成されている、プリント配線板。
【請求項47】
貫通孔が、前記積層物品の厚さを通って画定され、前記貫通孔をめっきする銅フィルムを含む、請求項46に記載のプリント配線板。
【請求項48】
請求項46に記載の複数のプリント配線板を含む多層積層構造体を含む、多層プリント配線板。
【請求項49】
前記積層構造体内の隣接するプリント配線板の間に配設された熱可塑性接着剤を含む、請求項48に記載の多層プリント配線板。
【請求項50】
前記熱可塑性接着剤が、前記パーフルオロコポリマーマトリックスの融点を0~200℃下回る温度で接合された、請求項49に記載の多層プリント配線板。
【請求項51】
前記熱可塑性接着剤が、前記パーフルオロコポリマーマトリックスの前記融点を0~50℃下回る温度で接合された、請求項50に記載の多層プリント配線板。
【請求項52】
前記積層構造体内の隣接するプリント配線板の間に配設された熱硬化性接着剤を含む、請求項48に記載の多層プリント配線板。
【請求項53】
前記熱硬化性接着剤が、150℃~250℃の温度で硬化された、請求項52に記載の多層プリント配線板。
【請求項54】
貫通孔が、前記多層プリント配線板の前記厚さの少なくとも一部分を通って画定され、前記貫通孔をめっきする銅フィルムを含む、請求項46~53のいずれか一項に記載の多層プリント配線板。
【請求項55】
5G通信ネットワークで使用可能なアンテナであって、
請求項48~54のいずれか一項に記載のプリント配線板を含む、アンテナ。
【請求項56】
多層プリント配線板を作製する方法であって、前記方法が、
請求項1に記載の複数の積層物品の各々の前記伝導性クラッディング内に伝導体パターンを形成して、それぞれのプリント配線板を形成することと、
複数のプリント配線板を積層して、多層積層構造体を形成することと、を含む、方法。
【請求項57】
前記複数のプリント配線板を積層することが、熱可塑性接着剤を使用して隣接するプリント配線板を接着することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記熱可塑性接着剤を、前記パーフルオロコポリマーマトリックスの融点を0~200℃下回る温度で接合することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記熱可塑性接着剤を、前記パーフルオロコポリマーマトリックスの前記融点を0~50℃下回る温度で接合することを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記複数のプリント配線板を積層することが、熱硬化性接着剤を使用して、隣接するプリント配線板を接着することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項61】
前記熱硬化性接着剤を150℃~250℃の温度で硬化させることを含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記多層積層構造体の厚さの少なくとも一部分を通る貫通孔を画定することを含む、請求項56~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
紫外線掘削プロセスにおいて前記貫通孔を画定することを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
積層物品を作製する方法であって、
層状物品を形成することであって、前記層状物品が、
第1及び第2のポリマーフィルムであって、各フィルムが、
フッ素化パーフルオロコポリマー及び非フッ素化パーフルオロコポリマーを含むパーフルオロコポリマーマトリックスと、
紫外線添加剤と、を含む、第1及び第2のポリマーフィルムと、
前記第1のポリマーフィルムと前記第2のポリマーフィルムとの間に配設された石英布と、
前記第1のフィルムと接触して配設された伝導性クラッディングと、を含む、形成することと、
前記層状物品に熱及び圧力を加えて、前記積層物品を形成することと、を含む、方法。
【請求項65】
前記フッ素化パーフルオロコポリマーが、フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーを含み、前記非フッ素化パーフルオロコポリマーが、非フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記層状物品に熱及び圧力を加えることが、加熱されたプラテン内で前記層状物品を圧縮することを含む、請求項64又は65に記載の方法。
【請求項67】
前記層状物品に熱及び圧力を加えることが、前記層状物品をロールツーロール積層プロセスにおいて加工することを含む、請求項64~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記層状物品に熱及び圧力を加えることが、前記パーフルオロコポリマーマトリックスの融点よりも10~30℃高い温度を前記層状物品に加えることを含む、請求項64~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記層状物品に熱及び圧力を加えることが、前記層状物品に300℃~400℃の温度を加えることを含む、請求項64~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記層状物品に熱及び圧力を加えることが、前記層状物品に200psi~1000psiの圧力を加えることを含む、請求項64~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記第1のフィルム及び前記第2のフィルムを溶融加工及び押し出しプロセスにおいて形成することを含む、請求項64~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記第1のフィルム及び前記第2のフィルムを形成することが、前記フッ素化パーフルオロコポリマーと前記非フッ素化パーフルオロコポリマーとを混合することを含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記フッ素化パーフルオロコポリマーと前記非フッ素化パーフルオロコポリマーとを混合する前に、添加材料を前記フッ素化パーフルオロコポリマー中に分散させることを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記石英布をフルオロポリマー処理で処理することを含む、請求項64~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記石英布をフルオロポリマー処理で処理することが、前記石英布をフルオロポリマーコーティングでコーティングすることを含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記石英布をフルオロポリマーコーティングでコーティングすることが、前記石英布を溶液コーティングプロセスにおいてコーティングすることを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記石英布をフルオロポリマーコーティングでコーティングすることが、前記石英布の表面上にフルオロポリマー粒子を堆積させることを含む、請求項75又は76に記載の方法。
【請求項78】
各ポリマーフィルムが、前記フッ素化パーフルオロコポリマー及び前記非フッ素化パーフルオロコポリマーを含む第1の層と、前記非フッ素化パーフルオロコポリマーを含む第2の層と、を含み、各第2の層が、前記石英布と接触して配設され、各第2の層が、前記伝導性クラッディングと接触して配設される、請求項64~77のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年7月30日に出願されたPCT出願第PCT/CN2021/109685号に対する優先権を主張し、この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
金属クラッド積層体は、様々な電子用途においてプリント配線板基板として使用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
第1の態様では、積層物品は、誘電体基板であって、フッ素化パーフルオロコポリマー及び非フッ素化パーフルオロコポリマーを含むパーフルオロコポリマーマトリックスと、パーフルオロコポリマーマトリックス中に埋め込まれた石英布と、パーフルオロコポリマーマトリックス中に分散された添加材料であって、紫外光を吸収することができる、添加材料と、を含む、誘電体基板と、誘電体基板の表面上に配設された伝導性クラッディングと、を含む。
【0004】
実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含むことができる。
【0005】
積層物品は、20μm~200μm、例えば30μm~90μm、例えば30μm~60μmの厚さを有する。
【0006】
誘電体基板は、2.10~2.50、例えば、2.10~2.30の10GHzでの誘電率を有する。
【0007】
誘電体基板は、0~100℃の温度範囲にわたって-250~+50ppm/℃の値を有する誘電率の熱係数を有する。
【0008】
誘電体基板は、0.001未満、例えば、0.0006~0.001、例えば、0.0006~0.0008の10GHzでの誘電正接を有する。
【0009】
積層物品は、X-Y平面を画定する平面形状を有し、X-Y平面における積層物品の熱膨張係数は、5~25ppm/℃、例えば、14~20ppm/℃、例えば、16~22ppm/℃である。
【0010】
フッ素化パーフルオロコポリマーは、フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーを含み、非フッ素化パーフルオロコポリマーは、非フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーを含む。
【0011】
パーフルオロコポリマーマトリックスは、50~90重量パーセントのフッ素化パーフルオロコポリマー、例えば、50~80重量パーセントのパーフルオロコポリマーを含む。パーフルオロコポリマーマトリックスは、10~50重量パーセントの非フッ素化パーフルオロコポリマーを含む。
【0012】
パーフルオロコポリマーマトリックス中の炭素原子百万個当たりのカルボキシル末端基の数は、積層物品が伝導性アノードフィラメント(conductive anodic filament、CAF)を形成しないのに十分である。
【0013】
パーフルオロコポリマーマトリックス中の炭素原子百万個当たりのカルボキシル末端基の数は、2lb./インチを超える誘電体基板と伝導性クラッディングとの間の剥離強度を有する積層物品を提供する。
【0014】
パーフルオロコポリマーマトリックス中の炭素原子百万個当たりのカルボキシル末端基の数は、30~70である。
【0015】
フッ素化パーフルオロコポリマーは、炭素原子百万個当たり5個以下のカルボキシル末端基を有する。
【0016】
非フッ素化パーフルオロコポリマーは、炭素原子百万個当たり100~300個のカルボキシル末端基を有する。
【0017】
パーフルオロコポリマーマトリックスは、10g/10分~30g/10分のメルトフローレート(melt flow rate、MFR)を有する。
【0018】
パーフルオロコポリマーマトリックスは、288℃で少なくとも10秒、例えば60秒のはんだフロート抵抗を有する。
【0019】
石英布は、50g/m2未満、例えば25g/m2未満の坪量を有する。
【0020】
石英布は、10μm~30μmの厚さを有する。
【0021】
石英布は、アミノシラン又はメタクリレートシラン表面化学処理を含む。
【0022】
石英布は、プラズマ処理又はコロナ処理された石英布を含む。
【0023】
石英布は、フルオロポリマーで含浸される。
【0024】
石英布は、フルオロポリマーコーティングを含む。
【0025】
石英布は、積層物品に組み込む前にフルオロポリマー処理で前処理される。
【0026】
誘電体基板は、5~20体積パーセントの石英布及び80~95体積パーセントのパーフルオロコポリマーマトリックスを含む。
【0027】
石英布の水接触角は、0°~60°である。
【0028】
添加材料は、無機粒子を含む。例えば、無機粒子としては、酸化セリウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、又は酸化亜鉛の粒子が挙げられる。
【0029】
添加材料は、熱硬化性ポリマーを含む。
【0030】
添加材料は、2%未満の体積パーセントでパーフルオロコポリマーマトリックス中に存在する。
【0031】
添加材料は、パーフルオロコポリマーマトリックス全体にわたって均質に分散される。
【0032】
伝導性クラッディングは、誘電体基板の2つの対向する表面上に配設される。
【0033】
伝導性クラッディングは、例えば、積層プロセスによって誘電体基板の表面上に配設された銅箔を含む。
【0034】
伝導性クラッディングは、72μm未満、例えば5μm~18μmの厚さを有する。
【0035】
伝導性クラッディングは、1μm未満、例えば0.5μm未満の二乗平均平方根(root mean square、RMS)粗さを有する。
【0036】
第2の態様では、プリント配線板は、伝導体パターンが伝導性クラッディング内に形成されている第1の態様の積層物品を含む。
【0037】
いくつかの例では、貫通孔は、積層物品の厚さを通って画定され、貫通孔をめっきする銅フィルムを含む。
【0038】
第3の態様では、多層プリント配線板は、第2の態様による、複数のプリント配線板を含む多層積層構造体を含む。
【0039】
実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含むことができる。
【0040】
多層プリント配線板は、積層構造体内の隣接するプリント配線板の間に配設された熱可塑性接着剤を含む。
【0041】
熱可塑性接着剤は、パーフルオロコポリマーマトリックスの融点を0~200℃下回る温度、例えば、パーフルオロコポリマーマトリックスの融点を0~50℃下回る温度で接合された。
【0042】
多層プリント配線板は、積層構造体内の隣接するプリント配線板の間に配設された熱硬化性接着剤を含む。
【0043】
熱硬化性接着剤は、150℃~250℃の温度で硬化された。
【0044】
貫通孔は、多層プリント配線板の厚さの少なくとも一部分を通って画定され、貫通孔をめっきする銅フィルムを含む。
【0045】
第4の態様では、5G通信ネットワークで使用可能なアンテナは、第2又は第3の態様によるプリント配線板を含む。
【0046】
第5の態様では、多層プリント配線板を作製する方法は、第1の態様の複数の積層物品の各々の伝導性クラッディング内に伝導体パターンを形成して、それぞれのプリント配線板を形成することと、複数のプリント配線板を積層して、多層積層構造体を形成することと、を含む。
【0047】
実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含むことができる。
【0048】
複数のプリント配線板を積層することは、熱可塑性接着剤を使用して、隣接するプリント配線板を接着することを含む。
【0049】
本方法は、パーフルオロコポリマーマトリックスの融点を0℃~200℃下回る温度、例えば、パーフルオロコポリマーマトリックスの融点を0℃~50℃下回る温度で接合することを含む。
【0050】
複数のプリント配線板を積層することは、熱硬化性接着剤を使用して、隣接するプリント配線板を接着することを含む。
【0051】
本方法は、熱硬化性接着剤を150℃~250℃の温度で硬化させることを含む。
【0052】
本方法は、多層積層構造体の厚さの少なくとも一部分を通る貫通孔を、例えば、紫外線掘削プロセスにおいて画定することを含む。
【0053】
第6の態様では、積層物品を作製する方法は、層状物品を形成することを含む。層状物品は、第1及び第2のポリマーフィルムを含み、各フィルムは、フッ素化パーフルオロコポリマー及び非フッ素化パーフルオロコポリマーを含むパーフルオロコポリマーマトリックス、並びに紫外線添加剤と、第1及び第2のポリマーフィルムの間に配設された石英布と、第1のフィルムと接触して配設された伝導性クラッディングと、を含む。本方法は、層状物品に熱及び圧力を加えて、積層物品を形成することを含む。
【0054】
実施形態は、以下の特徴のうちの1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせを含むことができる。
【0055】
フッ素化パーフルオロコポリマーは、フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーを含み、非フッ素化パーフルオロコポリマーは、非フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーを含む。
【0056】
層状物品に熱及び圧力を加えることは、加熱されたプラテン内で層状物品を圧縮することを含む。
【0057】
層状物品に熱及び圧力を加えることは、ロールツーロール積層プロセスにおいて層状物品を加工することを含む。
【0058】
層状物品に熱及び圧力を加えることは、パーフルオロコポリマーマトリックスの融点よりも10~30℃高い温度を層状物品に加えることを含む。
【0059】
層状物品に熱及び圧力を加えることは、層状物品に300℃~400℃の温度を加えることを含む。
【0060】
層状物品に熱及び圧力を加えることは、層状物品に200psi~1000psiの圧力を加えることを含む。
【0061】
本方法は、溶融加工及び押し出しプロセスにおいて第1及び第2のフィルムを形成することを含む。
【0062】
第1及び第2のフィルムを形成することは、フッ素化パーフルオロコポリマーと非フッ素化パーフルオロコポリマーとを混合することを含む。
【0063】
本方法は、フッ素化パーフルオロコポリマーと非フッ素化パーフルオロコポリマーとを混合する前に、添加材料をフッ素化パーフルオロコポリマー中に分散させることを含む。
【0064】
本方法は、石英布をフルオロポリマー処理で処理することを含む。
【0065】
石英布をフルオロポリマー処理で処理することは、石英布をフルオロポリマーコーティングでコーティングすることを含む。
【0066】
石英布をフルオロポリマーコーティングでコーティングすることは、石英布を溶液コーティングプロセスにおいてコーティングすることを含む。
【0067】
石英布をフルオロポリマーコーティングでコーティングすることは、石英布の表面上にフルオロポリマー粒子を堆積させることを含む。
【0068】
各ポリマーフィルムは、フッ素化パーフルオロコポリマー及び非フッ素化パーフルオロコポリマーを含む第1の層、並びに非フッ素化パーフルオロコポリマーを含む第2の層を含み、各第2の層が、石英布と接触して配設され、各第2の層が、伝導性クラッディングと接触して配設される。
【0069】
1つ以上の実装形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴及び利点は、説明及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図2】可撓性金属クラッド積層体のための層状構造体の図である。
【
図3A】伝導性アノードフィラメントを有する積層体の図である。
【
図3B】伝導性アノードフィラメントを有する積層体の図である。
【
図8】可撓性金属クラッド積層体を作製する方法のフローチャートである。
【
図9】様々な可撓性銅クラッド積層体についての5GHzでの誘電率のプロットである。
【
図10】様々な可撓性銅クラッド積層体についての5GHzでの誘電正接のプロットである。
【
図11】様々な可撓性銅クラッド積層体についての剥離強度試験結果のプロットである。
【
図12】様々な可撓性銅クラッド積層体についてのウィッキング試験結果のプロットである。
【
図13】様々な可撓性銅クラッド積層体についての熱膨張係数のプロットである。
【
図14】様々な可撓性銅クラッド積層体についての5GHzでの誘電率のプロットである。
【
図15】様々な可撓性銅クラッド積層体についての5GHzでの誘電正接のプロットである。
【
図16】様々な可撓性銅クラッド積層体についての厚さ試験結果のプロットである。
【
図17】様々な可撓性銅クラッド積層体についての剥離強度試験結果のプロットである。
【
図18】様々な可撓性銅クラッド積層体についてのウィッキング試験結果のプロットである。
【
図19】様々な可撓性銅クラッド積層体についての5GHzでの誘電率のプロットである。
【
図20】様々な可撓性銅クラッド積層体についての5GHzでの誘電正接のプロットである。
【
図21】様々な可撓性銅クラッド積層体についての厚さ試験結果のプロットである。
【
図22】様々な可撓性銅クラッド積層体についての剥離強度試験結果のプロットである。
【
図23】様々な可撓性銅クラッド積層体についてのウィッキング試験結果のプロットである。
【
図24】様々な可撓性銅クラッド積層体についての剥離強度試験結果のプロットである。
【
図25】様々な可撓性銅クラッド積層体についてのウィッキング試験結果のプロットである。
【
図28】様々な可撓性銅クラッド積層体についての剥離強度試験結果のプロットである。
【
図29】様々な可撓性銅クラッド積層体についてのウィッキング試験結果のプロットである。
【
図30A】モデル化された挿入損失のプロットである。
【
図30B】モデル化された挿入損失のプロットである。
【
図31A】2つの銅箔についての表面粗さスキャン結果である。
【
図31B】2つの銅箔についての表面粗さスキャン結果である。
【
図32】フィルム中の10
6個の炭素原子当たりのカルボキシル末端基の数の関数としての、ブレンドされたPFAフィルムの誘電正接のプロットである。
【
図33】ブレンドされたPFAフィルム中の10
6個の炭素原子当たりのカルボキシル末端基の数の関数としての、積層体の誘電正接のプロットである。
【
図34】ブレンドされたPFAフィルム中の10
6個の炭素原子当たりのカルボキシル末端基の数、関数としての積層体のsharpieウィッキング挙動のプロットである。
【
図35】ブレンドされたPFAフィルム中の10
6個の炭素原子当たりのカルボキシル末端基の数、関数としての積層体の銅剥離強度のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本明細書では、高周波数、例えば10GHzでの、低い誘電率及び低い散逸を有する金属クラッド可撓性積層体について説明する。本明細書で説明される可撓性積層体は、他の用途の中でも、5Gセルラー通信ネットワークで使用するか、又は自動車レーダで使用するためのアンテナなどの、高周波用途におけるプリント配線板のための基板に使用することができる。本明細書で説明される可撓性積層体は、パーフルオロコポリマーマトリックス、及びその中に埋め込まれた石英布、例えば石英織布から形成された誘電体基板を含む。パーフルオロコポリマーマトリックスは、完全フッ素化及び非完全フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーなどの、完全フッ素化パーフルオロコポリマー(本明細書では「フッ素化パーフルオロコポリマー」と称される)及び非完全フッ素化パーフルオロコポリマー(本明細書では「非フッ素化パーフルオロコポリマー」と称される)を含む。誘電体基板中の添加材料は、例えば、積層体の厚さを通る貫通孔を形成するために、積層体を紫外線レーザで掘削することができるように、紫外光を吸収することができる。可撓性積層体は、銅箔などの伝導性クラッディングによって片側又は両側にクラッディングされる。
【0072】
図1を参照すると、金属クラッド可撓性積層体100は、誘電体基板102、並びに誘電体基板102の上部表面106a及び下部表面106bにそれぞれ配設された金属(例えば、銅)箔104a、104b(総称して、伝導性クラッディング104と称される)などの伝導性クラッディングを含む。伝導性クラッディング104は、
図1の誘電体基板102の両方の表面106a、106b上に存在するが、いくつかの例では、伝導性クラッディングは、誘電体基板102の単一の表面上のみ(例えば、上部表面106a上のみ)に配設される。
【0073】
可撓性積層体100の誘電体基板102は、フッ素化及び非フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーなどの、フッ素化パーフルオロコポリマー及び非フッ素化パーフルオロコポリマーを含むパーフルオロコポリマーマトリックス110に埋め込まれた、石英織布などの石英布108を含む。以下で更に考察されるように、パーフルオロコポリマーマトリックス110により、低い誘電率及び低い誘電正接を有する誘電体基板102が提供され、一方、石英布により、誘電体基板102のx-y平面における熱膨張係数(coefficient of thermal expansion、CTE)を伝導性クラッディング104のCTEと整合させることが可能になる。紫外(ultraviolet、UV)光、例えば、180nm~400nmの波長を有する光を吸収することができる添加材料112が、パーフルオロコポリマーマトリックス110中に分散される。UV反応性添加材料112の存在は、例えば、可撓性積層体100の厚さを通るビアなどの回路構造体の形成のために、可撓性積層体100がUVレーザによって掘削されることを可能にする。
【0074】
可撓性積層体100は、約200μm未満又は約100μm未満、例えば、20μm~200μm、例えば、30μm~90μm又は30μm~60μmのz軸に沿った厚さを有する平面構造である。誘電体基板102の厚さは、可撓性積層体100の厚さの大部分を構築する。例えば、誘電体基板102は、約200μm未満又は約100μm未満、例えば、20μm~200μm、例えば、30μm~90μm又は30μm~60μmのz軸に沿った厚さを有する。各伝導性クラッディング104a、104bは、約72μm未満、例えば、約18μm未満、例えば、5μm~18μmのz軸に沿った厚さを有する。
【0075】
可撓性積層体100の誘電体基板102は、低い誘電率、例えば、約2.5未満、例えば、2.1~2.5、例えば、2.1~2.3の10GHzでの誘電率を有する。誘電率は、0~100℃の温度範囲にわたって、-250~50ppm/℃、例えば、-100~50ppm/℃又は-50~25ppm/℃のaa値を有する熱係数を有する。誘電体基板102はまた、低誘電正接、例えば、0.001未満又は0.0008未満、例えば、0.0002~0.001、例えば、0.0006~0.001、例えば、0.0006~0.0008などの、0.0015未満の10GHzでの誘電正接を有する。
【0076】
可撓性積層体100の改善された電気的特性(例えば、低い誘電率及び低い誘電正接)は、設計者が、既存の可撓性材料に対する所与の特性インピーダンスについて、例えば、最大25%以上の挿入損失の改善を実現することを可能にする。伝導性クラッディング104内(例えば、銅箔内)の低レベルの強磁性元素(例えば、Fe、Ni、又はCo)は、低い挿入損失を達成するのに役立ち得ると考えられる。
【0077】
誘電体基板102の熱膨張係数(CTE)及び伝導性クラッディング104のCTEは、可撓性積層体100のx-y平面において同様である。例えば、伝導性クラッディング104が銅箔であるとき、誘電体基板102のx-y平面におけるもののCTEは、5~25ppm/℃、例えば、16~22ppm/℃、例えば、14~20ppm/℃であり得る。誘電体基板102と伝導性クラッディング104との間のCTE値の整合は、例えば、可撓性積層体が伝導性クラッディングの除去及び温度変化を受けたときに、その元の寸法を約0.1%以内に維持するように、可撓性積層体100に寸法安定性、例えば、約0.1%未満の寸法安定性を提供する。
【0078】
可撓性積層体100の伝導性クラッディング104は、誘電体基板に強く接着される。例えば、誘電体基板102と伝導性クラッディング104との間の剥離強度は、2lb./インチを超える、例えば、4lb./インチを超える、例えば、2~20lb./インチ又は4~20lb./インチである。可撓性積層体100は、曲げに対して機械的に堅牢であり、可撓性積層体100の構成要素のうちのいずれも破損することなく、電子デバイスに典型的に見られる曲げ半径にわたって曲げることができる。この可撓性は、可撓性積層体100のデバイスへの設置を容易にする。
【0079】
可撓性積層体100は、UVレーザによって掘削することができ、可撓性積層体100の厚さを通って(例えば、可撓性積層体100のz軸に沿って)貫通孔を形成することができるように、金属化技法、例えば、プラズマ金属化に適合する。可撓性積層体100の誘電体基板102は、少なくとも5秒、少なくとも10秒、少なくとも30秒、又は少なくとも60秒、例えば、5~20秒、10~15秒、10~30秒、10~60秒、又は30~60秒の288℃でのはんだフロート抵抗を有する。
【0080】
可撓性積層体100は、プリント配線板、例えば、可撓性プリント回路板アンテナに使用することができる。例えば、可撓性積層体100の寸法及び電気的特性は、可撓性積層体100を、以下で更に考察されるように、5G通信ネットワーク上で使用可能なモバイルデバイスのためのアンテナなどの高周波用途での使用、又は自動車レーダ若しくは他の高周波用途での使用に好適なものにすることができる。いくつかの例では、複数の可撓性積層体100自体を積層して、多層回路板構造体にすることができる。可撓性積層体は、実質的に無空隙であり、伝導性アノードフィラメントの形成に抵抗性があり、これは、プリント配線板基板としての可撓性積層体の電気的信頼性に寄与する。
【0081】
可撓性積層体100の誘電体基板102の低い誘電率及び低い誘電正接は、少なくとも部分的に、パーフルオロコポリマーマトリックス110の組成による。パーフルオロコポリマーマトリックス110は、フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーなどのフッ素化パーフルオロコポリマー、及び非フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーなどの非フッ素化パーフルオロコポリマーを含む。フッ素化パーフルオロコポリマー、非フッ素化パーフルオロコポリマー、又はその両方は、直鎖の非分岐ポリマーであり得る。フッ素化パーフルオロコポリマーは、低い又はゼロの極性を有し、したがって、低い誘電率及び低い誘電正接を有する。しかしながら、フッ素化パーフルオロコポリマーは、一般に、非反応性であり、例えば、フッ素化コポリマーは、石英布108及び伝導性クラッディング104への不十分な接着を有する。非フッ素化パーフルオロコポリマーは、石英布108及び伝導性クラッディング104に引き付けられる反応性末端基(例えば、カルボキシル又はアミド末端基)を有する。これらの反応性末端基の存在により、パーフルオロコポリマーマトリックスと石英布108と伝導性クラッディング104との間の接着が促進される。
【0082】
いくつかの例では、パーフルオロコポリマーは、水性分散重合によって作製され、重合されたままの状態で、106個の炭素原子当たり少なくとも約400個の反応性末端基を含有することができる。これらの末端基のほとんどは、押し出し及びフィルム形成中に遭遇するような熱又はフィルム積層条件に曝露されたときに、それらが分解及び脱炭酸などの化学反応を受け、押し出されたポリマーを変色させるか、若しくはそれに不均一な気泡を充填するか、又はその両方が起こり得るという意味で熱的に不安定である。本明細書で説明されるフッ素化パーフルオロコポリマーを作製するために、重合されたパーフルオロコポリマーを安定化させて、実質的に全ての反応性末端基を熱的に安定な-CF3末端基で置換する。安定化の例示的な方法は、例えば、米国特許第4,742,122号及び米国特許第4,743,658号に開示されているようなプロセスによる、フッ素元素などのフッ素化剤へのフルオロポリマーの曝露であり、これらの内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0083】
非フッ素化パーフルオロコポリマーは、典型的には、フッ素化パーフルオロコポリマーよりも高い誘電正接を有する。パーフルオロコポリマーマトリックス110の組成は、誘電体基板102についての十分に低い誘電率及び低い誘電正接、並びに石英布108及び伝導性クラッディング104への十分な接着の両方を達成するように調整することができる。例えば、パーフルオロコポリマーマトリックス110の組成は、石英布108及び伝導性クラッディング104への十分な接着を依然として維持しながら、可能な限り多くのフッ素化コポリマーを提供するように調整することができる。誘電体基板102についての十分に低い誘電率は、約2.5未満、例えば、2.1~2.5、例えば、2.1~2.3の10GHzでの誘電率である。誘電体基板102についての十分に低い誘電正接は、0.0002~0.001、例えば、0.0006~0.001、例えば、0.0006~0.0008などの、0.001未満の10GHzでの誘電正接である。いくつかの例では、パーフルオロコポリマーマトリックス110と石英布108と伝導性クラッディング104との間の接着の十分性は、誘電体基板102と伝導性クラッディング104との間の剥離強度によって決定される。例えば、接着は、剥離強度が2lb./インチを超える、例えば、4lb./インチを超える、例えば、2~20lb./インチ又は4~20lb./インチである場合、十分である。いくつかの例では、パーフルオロコポリマーマトリックス110と石英布108と伝導性クラッディング104との間の接着の十分性は、以下で更に考察される伝導性アノードフィラメント(CAF)の形成に抵抗する可撓性積層体100の傾向によって決定される。
【0084】
いくつかの例では、パーフルオロコポリマーマトリックス110の組成は、フッ素化パーフルオロコポリマーの非フッ素化パーフルオロコポリマーに対する比(例えば、重量比又は体積比)によって示される。フッ素化パーフルオロコポリマーの重量百分率は、50%~80%などの50%~90%、例えば、50%、60%、70%、75%、80%、又は90%であり得る。非フッ素化パーフルオロコポリマーの重量百分率は、10%~50%、例えば、10%、20%、25%、30%、40%、又は50%であり得る。
【0085】
いくつかの例では、パーフルオロコポリマーマトリックス110の組成は、パーフルオロコポリマーマトリックス110中に存在するカルボキシル末端基の数(例えば、個数濃度)によって示される。そのようなカルボキシル末端基の非限定的な例としては、-COF、-CONH2、-CO2CH3、及び-CO2Hが挙げられ、重合媒体、開始剤、存在する場合は連鎖移動剤、及び存在する場合は緩衝剤の選定などの、重合態様によって決定される。パーフルオロコポリマーマトリックス100中に存在する炭素原子百万個当たりのカルボキシル末端基の数は、30~70個、例えば、35~65個であり得る。このカルボキシル末端基の数は、パーフルオロコポリマーマトリックス110と石英布108と伝導性クラッディング104との間の十分な接着を達成する一方で、十分に低い誘電率及び誘電正接も達成するように選択され得る。例えば、カルボキシル末端基の数は、可撓性積層体100中にCAFが形成されないように選択され得る。いくつかの例では、フッ素化パーフルオロコポリマー及び非フッ素化パーフルオロコポリマーの組成は、各タイプのパーフルオロコポリマー中に存在するカルボキシル末端基の数(例えば、個数濃度)によって示される。フッ素化パーフルオロコポリマーは、炭素原子百万個当たり10個未満のカルボキシル末端基、例えば、炭素原子百万個当たり5個以下、又は1個以下、又は1個よりも少ないカルボキシル末端基を有し得る。非フッ素化パーフルオロコポリマーは、炭素原子百万個当たり100~300個のカルボキシル末端基、例えば、炭素原子百万個当たり120~280個又は150~250個のカルボキシル末端基を有し得る。パーフルオロコポリマー中のカルボキシル末端基の分析及び定量は、米国特許第3,085,083号、米国特許第4,742,122号、及び米国特許第4,743,658号で説明されているような赤外分光法によって実施することができ、これらの全ての内容は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。熱的に安定な末端基-CF3(フッ素化の生成物)の存在は、フッ素処理後に不安定な末端基が存在しないことから推定される。-CF3末端基の存在により、他の末端基と比較してパーフルオロコポリマーの誘電正接の低減がもたらされる。
【0086】
フッ素化パーフルオロコポリマー、非フッ素化パーフルオロコポリマー、又はその両方のメルトフローレート(MFR)もまた、パーフルオロコポリマーマトリックス110と石英布108と伝導性クラッディング104との間の接着に影響を及ぼし得る。高いMFRを有するポリマーは、より低いMFRを有するポリマーで起こり得るよりも、可撓性積層体100の積層中により容易に流動する。積層プロセス(以下でより詳細に考察される)中のパーフルオロコポリマーマトリックス110の流動は、パーフルオロコポリマーマトリックス110が石英布108の繊維を完全に封入することを可能にし、実質的に空隙がない、例えば、非多孔質である誘電体基板102をもたらす。無空隙誘電体基板102は、CAF形成に対して抵抗性がある。例えば、フッ素化パーフルオロコポリマーのMFRは、1~40g/10分、例えば、2~15g/10分、例えば、2g/10分、4g/10分、6g/10分、8g/10分、10g/10分、12g/10分、14g/10分、16g/10分、18g/10分、20g/10分、25g/10分、30g/10分、35g/10分、又は40g/10分であり得る。非フッ素化パーフルオロコポリマーのMFRは、1~40g/10分、例えば、2~20g/10分、例えば、2g/10分、5g/10分、10g/10分、15g/10分、又は20g/10分であり得る。フッ素化及び非フッ素化パーフルオロコポリマーは、10~30g/10分、例えば、10g/10分、15g/10分、18g/10分、21g/10分、24g/10分、27g/10分、又は30g/10分のパーフルオロコポリマーマトリックスについての全体的なMFRをもたらす比で提供され得る。
【0087】
フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)パーフルオロコポリマーに好適な材料としては、それぞれ、約40g/10分のMFRを有するTeflon(商標)パーフルオロアルカン(perfluoroalkane、PFA)416HP、又は約16g/10分若しくは14g/10分のMFRを有するTeflon(商標)PFA 440HP(A/B)(The Chemours Company、Wilmington,DE)が挙げられる。非フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)に好適な材料としては、約40g/10分のMFRを有するTeflon(商標)PFA 316又は約14g/10分のMFRを有するTeflon(商標)PFA 340(Chemours)が挙げられる。
【0088】
フッ素化パーフルオロコポリマー、非フッ素化パーフルオロコポリマー、又はその両方は、250℃~350℃、例えば、280℃~320℃、290℃~310℃、例えば、約305℃などの高い融点を有する。フッ素化パーフルオロコポリマー、非フッ素化パーフルオロコポリマー、又はその両方の高い融点により、高温に抵抗性があるパーフルオロコポリマーマトリックス100がもたらされ、IPC-TM-650試験方法に従って測定されるとき、少なくとも5秒、少なくとも10秒、少なくとも30秒、又は少なくとも60秒、例えば5~20秒、10~15秒、10~30秒、10~60秒、又は30~60秒の288℃でのはんだフロート抵抗などの十分なはんだフロート抵抗を有する誘電体基板102が提供される。
【0089】
パーフルオロコポリマーマトリックス110の組成は、誘電体基板102が、例えば、可撓性積層体100の厚さを通って形成される貫通孔の金属化のためのプラズマ処理に適合することを可能にするように選択され得る。
【0090】
パーフルオロコポリマーマトリックス100に含めるのに好適なフッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの特定の例としては、約40g/10分のMFRを有するTeflon(商標)パーフルオロアルカン(PFA)416HP又は約14g/10分のMFRを有するTeflon(商標)PFA 440HP(The Chemours Company、Wilmington,DE)が挙げられる。パーフルオロコポリマーマトリックス100に含めるのに好適な非フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)コポリマーの特定の例としては、約40g/10分のMFRを有するTeflon(商標)PFA 316又は約14g/10分のMFRを有するTeflon(商標)PFA 340(The Chemours Company)が挙げられる。
【0091】
いくつかの例では、パーフルオロコポリマーマトリックス100は、フッ素化末端基及び反応性末端基の両方を有する単一のタイプのパーフルオロコポリマー(例えば、フッ素化パーフルオロコポリマーと非フッ素化パーフルオロコポリマーとの混合物ではなく)から形成される。単一のタイプのパーフルオロコポリマーにおけるフッ素化末端基の反応性末端基に対する比は、パーフルオロコポリマーマトリックス110と石英布108との間の十分な接着、及び十分に低い誘電率及び誘電正接の両方を達成するように選択される。
【0092】
石英織布108の存在により、誘電体基板102のCTEを金属箔104のCTEに整合させることができる。パーフルオロコポリマーマトリックス110中に埋め込まれる石英織布108は、スプレッドガラス(例えば、石英)束から形成される。
【0093】
石英(二酸化ケイ素)は、パーフルオロコポリマーマトリックス110よりも低いCTEを有する。パーフルオロコポリマーマトリックス110のガラス織布108に対する比を調節することによって、x-y平面における誘電体基板102のCTEを金属箔104の平面内CTEに整合させることができ、それによって寸法安定性を有する可撓性積層体100を提供する。例えば、誘電体基板102は、ガラス織布108に対して、5~20体積パーセントの石英織布108、及び80~95体積パーセントのパーフルオロコポリマーマトリックス110を含むことができる。誘電体基板102のx-y平面におけるCTEは、5~25ppm/℃、例えば、16~22ppm/℃、例えば、14~20ppm/℃であり得、それによって、約0.1%未満の寸法安定性を提供する。対照的に、パーフルオロコポリマーマトリックス110単独でのCTEは、100~300ppm/℃であり得る。
【0094】
石英は、低い誘電率(10GHzで約3.7)及び低い損失(10GHzで約0.0001)を有し、これは、誘電体基板102が、パーフルオロコポリマーマトリックス中に埋め込まれた石英布の存在を伴っても、低い誘電率及び低い損失を有することを意味する。石英織布108は、約30μm未満、例えば、10μm~30μmの厚さを有し、薄い誘電体基板102を達成するのに役立つ。石英布108の坪量は、約50g/m2未満、例えば、約25g/m2未満、例えば、10g/m2~25g/m2である。特定の例では、石英布108は、22μm厚の1027C石英ガラス(Shin-Etsu Quartz Products Co.,Ltd.、Tokyo,Japan)である。
【0095】
いくつかの例では、石英織布108は、パーフルオロコポリマーマトリックス110による石英織布108の繊維の濡れ性を改善するために、残留有機物を除去するために、又は繊維の表面を機械的に改変して、石英布108の繊維とパーフルオロコポリマーマトリックス110との間の接着を強化するために、1つ以上の表面処理に供される。表面処理の目的は、パーフルオロコポリマーが石英束を完全に封入するように、パーフルオロコポリマーによる繊維の実質的に完全な濡れを促進することであり得る。パーフルオロコポリマーによる石英束の十分な封入及び石英束への十分な接着により、誘電体基板102が空隙を実質的に含まない、例えば、非多孔質であることが可能になり、これは次に、後処理中、例えば、可撓性積層体100の厚さを通るビアの形成中に、伝導性アノードフィラメントの形成及びエレクトロマイグレーションの発生を阻止するのに役立つ。
【0096】
表面処理は、清浄な石英表面がパーフルオロコポリマーに曝露されるように石英布の表面から残留有機物(例えば、残留デンプン)を除去するための熱処理を含むことができる。表面処理は、石英布の表面上へのメタクリレートシラン、アミノシラン、又はフルオロシランなどの接着促進剤の添加を含むことができる。表面処理は、プラズマ又はコロナ処理を含むことができる。表面処理は、石英布の表面上にポリマー(例えば、フルオロポリマー)フィルムを形成するための、フルオロポリマー、例えば、パーフルオロアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(fluorinated ethylene propylene、FEP)、又はTeflon(商標)非晶質フルオロポリマーなどのポリマーコーティングによる処理を含むことができる。例えば、石英布をフルオロポリマーの分散液を含有する溶液中に浸漬して、石英布の表面上にフルオロポリマーの単層を形成することができる。表面処理は、石英布の表面上にフッ素化分子の層、例えば、単層を形成するための、フッ素化シランによる処理を含むことができる。熱処理に続くプラズマ又はコロナ処理などの、表面処理の組み合わせを適用することができる。石英布108に適用される表面処理(複数可)は、パーフルオロコポリマーマトリックス110による繊維の濡れ性を改善することができ、パーフルオロコポリマーマトリックス110による石英布108の繊維のより良好な封入、及びパーフルオロコポリマーマトリックス110と石英布108の繊維との間のより強い接着を可能にし、それによって、CAF形成に抵抗性がある無空隙誘電体基板102の形成に寄与する。
【0097】
石英布の濡れ性は、水接触角(water contact angle、WCA)によって特性評価することができる。表面処理後の石英織布は、0°~60°のWCAを有し得る。
【0098】
いくつかの例では、粒子、例えば、シリカ粒子は、石英布108ではなくパーフルオロコポリマーマトリックス110中に埋め込まれる。粒子のサイズ及び表面処理は、金属箔104と整合するCTEを達成し、かつパーフルオロコポリマーマトリックス110による粒子の濡れ性を改善するように選択される。
【0099】
いくつかの例では、積層構造体は、例えば、石英布への表面処理の適用に加えて、又はその代わりに、石英布の良好な封入を達成するように設計することができる。
図2を参照すると、例示的な金属クラッド可撓性積層体は、層150の組を積層することによって製作することができる。層の組は、石英布108のいずれかの側に配設された非フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)層162a、162bと、各非フッ素化層162の外側に面する側に配設されたフッ素化パーフルオロコポリマー及び非フッ素化パーフルオロコポリマーを含むパーフルオロコポリマー層164a、164bと、を含む、フルオロポリマーフィルムの複数の層を含む。上述の金属(例えば、銅)箔104a、104bなどの)伝導性クラッディングは、層150の組の両方の外側に配設される。
図2に示される構造体を積層して可撓性積層体を生成するとき(積層プロセスの更なる考察については以下を参照のこと)、非フッ素化層162は、非フッ素化層162及びパーフルオロコポリマー層164が、石英布108が埋め込まれるマトリックスを形成するように、例えば可撓性積層体のための誘電体基板を形成するように、石英布108を封入する。
【0100】
再び
図1を参照すると、添加材料112は、パーフルオロコポリマーマトリックス110中に分散される、例えば、均質に分散される。添加材料112は、可撓性積層体100がUV掘削プロセスによって加工されて、例えば、可撓性積層体100の上部表面と下部表面106との間にビアを形成することができるように、UV光を吸収することができる材料である。添加材料112は、2%未満、例えば、1~2体積パーセント、例えば、1体積%、1.25体積%、1.5体積%、又は2体積%の体積百分率で誘電体基板102中に存在する。添加材料112は、パーフルオロコポリマーマトリックス110中に添加材料112を含めることにより、誘電体基板102の誘電率又は誘電正接が著しく増加しないように、比較的低い誘電率、例えば、10~1000の誘電率を有する材料であり得る。例えば、2体積%未満の添加材料112を含めることにより、誘電体基板102の誘電率を10%未満、例えば、5%未満又は2%未満だけ増加させることができる。
【0101】
いくつかの例では、添加材料112は、無機粒子、例えば、酸化セリウム(CeO2)、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸カルシウム(CaTiO3)、酸化亜鉛(ZnO)、又は他の好適な材料の粒子である。粒子は、約5μm未満、約2μm未満、約1μm未満、又は約0.5μm未満、例えば、0.1μm~0.5μmの直径を有し得る。例えば、より小さな粒子は、多くの場合、同様の組成のより大きな粒子よりも効果的なUV光吸収剤である。いくつかの例では、添加材料112は、パーフルオロコポリマーマトリックス110にブレンドされる、ポリイミドなどの低損失熱硬化性材料などの有機(例えば、ポリマー)添加剤である。いくつかの例では、無機粒子及び有機添加剤の両方が添加材料として使用される。
【0102】
可撓性積層体100の銅箔104は、例えば、可撓性積層体100をプリント配線板として使用することができるように、伝導性パターンを画定することができるプラットフォームを提供する。いくつかの例では、銅箔104は、機械的プロセス、例えば、ロールツーロール積層プロセスによって誘電体基板102の表面(複数可)106上に配設される。例えば、銅箔は、電着された銅箔又は圧延された銅箔であり得る。いくつかの例では、銅箔104は、誘電体基板102の上に堆積される、例えば、電解めっきされる。
【0103】
銅箔104は、約72μm未満、例えば、約18μm未満、例えば、10μm~18μmの厚さを有する。銅箔104は、非接触干渉分光法によって測定されるとき、1μm未満、例えば、0.5μm未満のRMS粗さなどの低い二乗平均平方根(RMS)粗さを有する。銅箔104の低いRMS粗さは、可撓性積層体100から作製された回路の低い挿入損失を維持するのに役立つ。いくつかの例では、銅箔104のRMS粗さは、低い挿入損失(例えば、低いRMS粗さによって達成可能)と、銅箔104と誘電体基板102との間の良好な接着(例えば、より高いRMS粗さによって達成可能)とのバランスを取るように選択される。例えば、上で考察されるように、誘電体基板102と銅箔104との間の十分に高い剥離強度は、2lb./インチを超える、例えば、4lb./インチを超える、例えば、2~20lb./インチ又は4~20lb./インチである剥離強度である。
【0104】
銅箔104は、少なくとも約99.9%の純度を有する。銅箔104の表面化学は、亜鉛による処理、熱安定性添加剤、及び酸化に抵抗する処理などの、表面処理の影響を受ける場合がある。これらの表面処理は、銅箔104の片方又は両方の表面に適用することができる。鉄及び亜鉛などの元素は、基板の電気的性能をあまり低下させることなく剥離強度を高めるのに効果的であることが見出されている。
【0105】
上で考察されるように、可撓性積層体100の誘電体基板102は、実質的に空隙がなく、パーフルオロコポリマーマトリックス110と石英布108との間に十分な接着性を有し、これにより、可撓性積層体が伝導性アノードフィラメント(CAF)の形成に抵抗することが可能になる。CAFは、例えば、電界の印加によって誘起された金属のエレクトロマイグレーションによって、例えば、誘電体基板の空隙又は弱い領域内に形成する金属フィラメントである。CAF形成は、例えば、CAFがプリント配線板を通るビア間に短絡経路を形成するときに、電気的故障につながる場合がある。可撓性積層体は、最初の96時間の平衡期間後に10Mオームを超える抵抗が試験期間全体を通して10倍未満の抵抗降下があるときに、CAF形成を有しないとみなすことができる。CAF試験は、例えば、適用基準に依存して、100VDC~1000VDCの印加電圧で最大1000時間以上持続することができる。
【0106】
CAF形成の例を
図3Aに示す。
図3Aは、ガラス繊維204が埋め込まれた状態の誘電体マトリックス202を有する仮想的な積層体200を示す。貫通孔(ビアと称されることもある)206は、積層体200の厚さを通して形成され、金属208、例えば銅でめっきされる。電界の印加により、金属208が、例えば、誘電体マトリックス202とガラス繊維204との間の界面で、誘電体マトリックス202内で陽極溶解し、移動し、再堆積して、隣接するビア206間に延在するフィラメント210を形成する。
【0107】
図3Bは、埋め込まれたガラス繊維254を有する誘電体マトリックス252と、積層体250の上部表面、下部表面、及び内部表面上に画定された伝導体パターン262、例えば、銅パターンと、を有する仮想的な積層体250におけるCAF形成の別の例を示す。金属、例えば銅のフィラメント260は、伝導体パターン262とガラス繊維254との間の界面に形成する。
【0108】
再び
図1を参照すると、可撓性積層体の誘電体基板102は、実質的に無空隙であり、パーフルオロコポリマーマトリックス110と石英布108との間に強い接着を有する。これは、例えば、パーフルオロコポリマーの性質(例えば、反応性末端基の個数濃度)、石英布の表面化学、並びに圧力及び温度などの製造パラメータ(以下で考察される)によって達成される。加えて、パーフルオロコポリマーマトリックス110中の石英布108の配置は、布の繊維と伝導性クラッディング104との間に実質的に接触がないようなものである。結果として、誘電体基板102におけるCAF形成は最小限であり、可撓性積層体100には、信頼性が高くかつ堅牢なプリント配線板基板を使用することができる。
【0109】
図4を参照すると、多層プリント配線板300は、上述の複数の可撓性積層体100から形成することができる。
図4の例では、多層プリント配線板300は、接着剤層302によって接続された2つの可撓性積層体100a、100bを含む。ビア(貫通孔とも称される;図示せず)は、例えば、UV掘削によって、多層プリント配線板の厚さの全て又は一部分を通して画定することができ、UVエネルギーは、可撓性積層体100の誘電体基板内の添加材料によって吸収される。ビアは、銅フィルムなどの金属でめっきすることができる。接着剤層302は、例えば、可撓性積層体100のパーフルオロコポリマーマトリックスの融点を下回る温度で接合することができる接着剤であり得る。いくつかの例では、接着剤は、パーフルオロコポリマーマトリックスの融点よりも0℃~50℃低い温度で接合することが可能である熱可塑性接着剤である。いくつかの例では、接着剤は、パーフルオロコポリマーマトリックスの融点よりも低い0℃~200℃の温度、例えば、150℃~250℃の温度で接合することが可能である熱硬化性接着剤である。
【0110】
図5を参照すると、複数(本明細書では、3つ)の可撓性積層体100が互いに積層されて、多層プリント配線板400を形成する。中央可撓性積層体100cは、上部及び下部伝導性クラッディングを含む。可撓性積層体100d、100eは、各々、単一の伝導性クラッディングを含む。可撓性積層体100c、100dは、それぞれ接着剤層402a、402bによって中央可撓性積層体100eに接合される。接着剤層402a、402bは、例えば、可撓性積層体100のパーフルオロコポリマーマトリックスの融点を下回る温度で接合することができる接着剤であり得る。いくつかの例では、接着剤は、パーフルオロコポリマーマトリックスの融点よりも0℃~50℃低い温度で接合することが可能である熱可塑性接着剤である。いくつかの例では、接着剤は、パーフルオロコポリマーマトリックスの融点よりも低い0℃~200℃の温度で接合することが可能な熱硬化性接着剤である。
【0111】
ビア(図示せず)は、例えば、UV掘削によって、多層プリント配線板400の厚さの全て又は一部分を通して画定することができる。
【0112】
本明細書で説明される可撓性積層体100から作製されるプリント配線板は、様々な用途、例えば、高周波通信用途などの高周波用途に使用することができる。例えば、
図6を参照すると、1つ以上の可撓性積層体を含むプリント配線板502は、5G通信ネットワーク上で動作可能な通信デバイス500(例えば、モバイル通信デバイス)のためのアンテナ又はアンテナ給電線のために使用することができる。例えば、可撓性積層体は、異なる平面上に位置するデバイスの電子構成要素を接続するための通信デバイスアンテナ又はアンテナ給電線のためのプリント配線板のための基板として有用であり得る。1つ以上の可撓性積層体を含むプリント配線板504は、セルラー通信ネットワークのタワー508内の送信アンテナなどの通信ネットワーク機器に使用することができる。可撓性積層体を含むプリント配線板は、モバイルコンピューティングデバイス内のカメラ給電線などの他の用途にも使用することができる。
【0113】
本明細書で説明される可撓性積層体は、積層プロセスによって製造することができる。
図7を参照すると、ある例では、石英布108は、2つのパーフルオロコポリマーフィルム120a、120b間に配設される。各パーフルオロコポリマーフィルム120a、120bは、10μm~50μm、例えば、20μm~30μmの厚さを有する。伝導性クラッディング104a、104bは、それぞれパーフルオロコポリマーフィルム120a、120b上に配設される。例えば、伝導性クラッディング104は、電着銅箔又は圧延アニール銅箔である。各伝導性クラッディング104a、104bは、約72μm未満、例えば、約18μm未満、例えば、10μm~18μmの厚さを有する。
【0114】
材料の層104、108、120は、加熱及び圧縮されて、材料の層を固化し、それによって可撓性積層体100を形成する。いくつかの例では、石英布108及び2つのパーフルオロコポリマーフィルム120a、120bは、誘電体基板を形成するために積層され、伝導性クラッディング(例えば、銅箔)は、第2の加工ステップにおいて誘電体基板上に電着される。
【0115】
積層プロセスのパラメータ(例えば、温度、時間、及び圧力)は、パーフルオロコポリマーが流動することを可能にするパーフルオロコポリマーの目標粘度を達成するように選択され、それによって、石英布108のガラス束を濡らして封入し、パーフルオロコポリマーと伝導性クラッディング104との間の良好な接着を可能にする。例えば、プロセスパラメータは、パーフルオロコポリマーが330℃で2000Pa-s~5000PA-sのゼロ剪断粘度に達するように選択される。温度は、パーフルオロコポリマーの融点を超える、例えば、パーフルオロコポリマーの融点よりも高い10℃~30℃であり得る。例えば、温度は、300℃~400℃、例えば、320℃~330℃、例えば、300℃、320℃、340℃、360℃、380℃、又は400℃であり得る。温度上昇速度は、1~5℃/分、例えば、1℃/分、2℃/分、3℃/分、4℃/分、又は℃/分であり得る。材料の層に加えられる圧力は、100psi~1000psi、例えば、200psi~1000psi、又は600psi~1000psiであり得る。滞留時間(例えば、静的積層プロセスの場合)は、30分~120分、例えば、30分、60分、90分、又は120分であり得る。
【0116】
図7は、一組のローラ600を使用する等圧ロールツーロール積層プロセスを示す。いくつかの例では、ロールツーロール積層プロセスは、等積ギャップ制御積層プロセスである。いくつかの例では、積層プロセスは、材料の層が、加熱されたプラテン間でプレスされる静的積層プロセスである。
【0117】
パーフルオロコポリマーフィルム120は、例えば、溶融加工及び押し出しによって形成される。いくつかの例では、添加材料は、溶融フッ素化パーフルオロコポリマー中に混合され、フッ素化コポリマーと添加材料との混合物は、溶融非フッ素化パーフルオロコポリマーと混合される。いくつかの例では、添加材料は、溶融非フッ素化パーフルオロコポリマー中に混合され、非フッ素化パーフルオロコポリマーと添加材料との混合物は、溶融フッ素化パーフルオロコポリマーと混合される。得られたパーフルオロコポリマー混合物を押し出して、パーフルオロコポリマーフィルムを形成する。添加材料を非フッ素化パーフルオロコポリマーと混合することは、パーフルオロコポリマーフィルム全体にわたる添加材料の一体化及び分散に役立つ。
【0118】
図8は、可撓性積層体100を作製するための例示的なプロセスのフローチャートである。紫外光を吸収することが可能である添加材料を、非フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)パーフルオロコポリマーなどの非フッ素化パーフルオロコポリマー中に分散する(700)。添加材料は、例えば、酸化セリウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、若しくは酸化亜鉛の粒子;又はポリイミドなどのポリマー添加剤である。分散された添加材料を有する非フッ素化パーフルオロコポリマーを、フッ素化テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)パーフルオロコポリマーなどのフッ素化パーフルオロコポリマーと混合して(702)、パーフルオロコポリマー混合物を形成する。パーフルオロコポリマー混合物を溶融加工し、押し出して、パーフルオロコポリマーフィルムを形成する(704)。
【0119】
石英織布を、熱処理、コロナ若しくはプラズマ処理、又は石英布の繊維の表面上へのコーティングの形成などの表面処理に曝露する(706)。銅箔、例えば、電着銅箔又は圧延アニール銅箔も、熱処理、コロナ若しくはプラズマ処理、又は接着促進剤若しくは熱安定性添加剤の堆積などの表面処理に曝露される(708)。
【0120】
2つのパーフルオロコポリマーフィルム間に配設された処理済み石英布を含む材料の層状スタックが形成され(710)、スタックの上部及び下部の両方に処理された伝導性クラッディングを有する。材料の層状スタックを、例えば、静的積層プロセス又はロールツーロール積層プロセスにおいて熱及び圧力を加えることによって積層して、可撓性積層体を形成する(712)。
【実施例】
【0121】
以下のポリマー及びポリマー分散液をこれらの実施例において使用する。
【0122】
PFA1:Teflon(商標)PFA 440HP(A/B)(Chemours)、16g/10分(「A」の場合)及び14g/10分(「B」の場合)のMFRを有する高純度フッ素化パーフルオロアルコキシ(perfluoroalkoxy、PFA)溶融加工可能な樹脂。
【0123】
PFA2:Teflon(商標)PFA 340(Chemours)、14g/10分のMFRを有する汎用非フッ素化PFA溶融加工可能な樹脂。
【0124】
PFA3:Teflon(商標)PFA 416HP(Chemours)、40g/10分のMFRを有する高純度フッ素化PFA溶融加工可能な樹脂。
【0125】
PFA-分散液1:Teflon(商標)PFA 335D(Chemours)、これは、非イオン性界面活性剤で安定化され、約2g/10分のMFRを有するオフホワイトの水性PFA分散液である。
【0126】
PFA-分散液2:テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene、TFE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(perfluoro(ethyl vinyl ether)、PEVE)、及びアリルグリシジルエーテル(allyl glycidyl ether、AGE)のターポリマー。12g/10分のMFR、244℃の融点、15重量%のPEVE含有量、及び0.1重量%のアリルグリシジルエーテル含有量を有する。そのようなターポリマーの製造は、米国特許出願公開第2010/0036053(A1)号、例えば、実施例4で説明されており、この内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
PFA-分散液3:非イオン性界面活性剤で安定化され、約16g/10分のMFRを有する、Teflon(商標)PFA 940HP Plus(Chemours)のオフホワイトの水性分散液。
【0128】
実施例1:可撓性銅クラッド積層体の特性評価
様々なタイプのPFAフィルムを、Shin-Etsu製の1027C-04石英布及びJX Nippon Mining & Metals Corporation(Tokyo,Japan)製の12μm厚のBHFX-P92C-HG圧延銅箔と組み合わせて、可撓性銅クラッド積層体を形成した。PFAフィルムを、Chemoursによって製造されたPFA1及び/又はPFA2ポリマーから押し出した。これらのグレードを、フッ素化パーフルオロコポリマーの非フッ素化パーフルオロコポリマーに対する所望の比を達成するためにブレンドした。場合によっては、酸化セリウム(Sigma Aldrich、St.Louis,MO)を添加して、複合物のUV吸収特性を評価した。材料を、熱油真空プレス内で、320℃のピーク温度及び200psiの圧力で積層した。表1において概説した手順に従って試験を実行した。
【0129】
【表1】
使用した材料及びプロセス条件を含む実験構成の詳細を表2A及び2Bに示す。「構築物」欄における5つの値は、積層体の各側上の銅クラッディングの厚さ(この実施例では、12μm)、積層体を作り出すために使用されるパーフルオロコポリマーフィルムの厚さ(この実施例では、25μm;2層の12.5μmのPFAフィルムから構築される)、及びガラス布のタイプ(この例では、1027ガラス)を指す。試験前に、試料を23℃及び50%の相対湿度で24時間平衡化させた。
【0130】
【0131】
【0132】
表2A~2Bに詳述した実験から得られたデータを、表3及び
図9~
図12に示す。具体的には、
図9及び
図10は、それぞれ、5GHzでの誘電率及び誘電正接の結果を示す。
図11は、縦方向(machine direction、MD)剥離強度試験結果を示す。
図12は、Sharpieウィッキング試験からの結果を示す。
【0133】
Sharpieウィッキング試験では、孔を可撓性積層体内に形成し、Sharpie(登録商標)油性マーカーを孔の縁部の周りに擦り付け、孔をイソプロパノールで洗浄して、過剰なインクを除去する。インクがウィッキングされた孔の縁部から離れた径方向距離を測定する。理論に束縛されるものではないが、このウィッキング試験は、石英布の繊維とパーフルオロコポリマーマトリックスとの間の接着の指標として働くと考えられる。不十分な接着又は不十分な封入は、空隙を残し、この中にインクが吸い込まれて、より長い進行距離をもたらし得る。対照的に、良好な接着及び良好な封入を有する基板は、低いウィッキング距離を示すであろう。
【0134】
【0135】
これらの結果は、カルボキシル化末端基のブレンドを含有するフィルムが、電気的性能(誘電正接)を犠牲にして、より高い銅剥離強度値を達成することを示す。これらの結果はまた、ガラス束浸透効率の主要な指標である十分に低い及び/又はゼロのsharpieウィッキング結果を達成するために、カルボキシル化末端基の重要性を示す。
【0136】
実施例2:可撓性銅クラッド積層体の特性評価
様々なタイプのPFAフィルムを、Shin-Etsu製の1027C-04石英布及びWieland(Louisville,KY)製の18μm厚のC110 CopperBond圧延銅箔と組み合わせて、可撓性銅クラッド積層体を形成した。PFAフィルムを、Chemoursによって製造されたPFA1(フッ素化PFA)及び/又はPFA2(非フッ素化PFA)グレードから押し出した。これらのグレードを、フッ素化パーフルオロコポリマーの非フッ素化パーフルオロコポリマーに対する所望の比を達成するためにブレンドした。場合によっては、酸化セリウム(Sigma Aldrich)又は二酸化チタン(Chemours)を添加して、複合物のUV吸収特性を評価した。材料を、熱油真空プレス内で、60分の滞留時間、1気圧の真空、及び2℃/分の上昇速度を伴って、320℃のピーク温度及び200psiの圧力で積層した。前に表1において概説した手順に従って試験を実行した。2組の実験に使用した材料を含む実験構成の詳細を表4に示す。
【0137】
【0138】
これらの2組の実験から得られたデータを表5及び
図13に示し、これは、縦方向CTE(machine direction CTE、MD CTE)試験結果を示す。横方向CTE(CMD CTE)も測定した。これらの結果は、再び、カルボキシル化末端基のブレンドを含有するフィルムが、電気的性能(誘電正接)を犠牲にして、より高い剥離強度値を達成することを示す。これらの結果はまた、ガラス束浸透効率の主要な指標である十分に低い及び/又はゼロのsharpieウィッキング結果を達成するために、カルボキシル化末端基の重要性を再び示す。最後に、これらの結果は、1027C-04石英布と組み合わせた25μmのフィルム厚さが17ppm/℃に近いCTE結果を達成することを示す。
【0139】
【0140】
【0141】
実施例3:可撓性銅クラッド積層体の特性評価
PFA1ポリマーの完全フッ素化押し出しフィルムを、Shin-Etsu製の1027C-04石英布及びWieland(Louisville,KY)製の18μm厚のC110 CopperBond圧延銅箔と組み合わせて、可撓性銅クラッド積層体を形成した。材料を、連続等圧ダブルベルトプレス内で、320℃のピーク温度及び最大80バールの様々な圧力で積層した。前に表1において概説した手順に従って試験を実行した。使用した材料及びプロセス条件を含む実験構成の詳細を表6A及び6Bに示す。
【0142】
【0143】
【表9】
これらの実験から得られたデータを表7A及び7B並びに
図14~
図18に示す。具体的には、
図14及び
図15は、それぞれ、5GHzでの誘電率及び誘電正接結果を示す。
図16は厚さ試験の結果を示し、
図17は剥離強度試験結果を示し、
図18はSharpieウィッキング試験からの結果を示す。これらの結果は、非常に低いレベルのカルボキシル化末端基を含有するフィルムが、非常に不十分なガラス束浸透(ウィッキング)及び非常に低いレベルの誘電体に対する銅の接着を達成することを実証している。
【0144】
【0145】
【0146】
実施例4:可撓性銅クラッド積層体の特性評価
様々なタイプのPFAフィルムを、Shin-Etsu製の1027C-04石英布及びJX Nippon製の12μm厚のBHFX-P92C-HG圧延銅箔と組み合わせて、可撓性銅クラッド積層体を形成した。PFAフィルムを、Chemoursによって製造されたPFA1(フッ素化PFA)、PFA3(フッ素化PFA)、又はPFA2(非フッ素化PFA)グレードから押し出した。これらのグレードを、フッ素化パーフルオロコポリマーの非フッ素化パーフルオロコポリマーに対する所望の比を達成するためにブレンドした。場合によっては、酸化セリウム(Sigma Aldrich)又は二酸化チタン(Chemours)を添加して、複合物のUV吸収特性を評価した。材料を、熱油真空プレス内で、60分の滞留時間、1気圧の真空、及び2℃/分の上昇速度を伴って、320℃のピーク温度及び200psiの圧力で積層した。前に表1において概説した手順に従って試験を実行した。使用した材料を含む実験構成の詳細を表8に示す。
【0147】
【0148】
これらの実験から得られたデータを表9及び
図19~
図23に示す。具体的には、
図19及び
図20は、それぞれ、5GHzでの誘電率及び誘電正接結果を示す。
図21は厚さ試験の結果を示し、
図22は剥離強度試験の結果を示し、
図23はSharpieウィッキング試験からの結果を示す。絞り出されたときの積層体の縁部からのフィルム流動距離を測定することによって、推定される絞り出しを測定する。
【0149】
【0150】
これらの結果は、剥離強度及びガラス束の濡れに対する充填剤の存在の強い影響を実証している(sharpieウィッキング)。これらの実験は、カルボキシル化末端基と組み合わせたときのより高いMFRのフッ素化樹脂(PFA3(フッ素化)グレード、MFR=40)が、ガラスの濡れ及び銅箔への接着を改善することを示している。これらの結果はまた、誘電正接及びウィッキングの両方に基づいて、R101チタニア粒子(Chemours)がR103チタニア粒子(Chemours)よりも好ましかったことを示す。
【0151】
実施例5:可撓性銅クラッド積層体の特性評価
75重量%の416(フッ素化)及び25重量%の340(非フッ素化)グレードの樹脂マトリックス組成物、並びに1.25体積%のR101チタニア(Chemours)のフィラー充填量を有するブレンドされたPFAフィルムを、JPS Composite Materials(Anderson,SC)製のスプレッド106電子グレード生機ガラス布及びJX Nippon製の12μm厚のBHFX-P92C-HG圧延銅箔と組み合わせて、可撓性銅クラッド積層体を形成した。場合によっては、布上の残留デンプンサイズ剤を熱分解して除去するために、積層前にガラス布を熱処理した(HT106SE)。布の熱処理を、対流式オーブン内で、700°Fで30分間実行した。また、106SE及びHT106SE布を、樹脂濡れ能力及び界面接着に対するガラス表面コーティングの影響を判定するために、Chemours製の種々の市販及び実験用PFA材料の薄層(約1~5gsm)で使用前にコーティングした。対照としてShin-Etsu製の1027C-04石英を使用して1つの構成物を作製した。材料を、熱油真空プレス内で、60分の滞留時間、1気圧の真空、及び2℃/分の上昇速度で、320℃のピーク温度及び600psiの圧力で積層した。前に表1において概説した手順に従って試験を実行した。使用した材料及びプロセス条件を含む実験構成の詳細を表10に示す。
【0152】
【0153】
この実験から得られたデータを表11、並びに
図24及び
図25に示し、これらは、それぞれ、剥離強度試験結果及びSharpieウィッキング結果を示す。この実験は、より高い剥離強度数及び全体的により低いsharpieウィッキング結果によって証明されるように、銅箔及びガラス界面の両方への接着における全体的な改善を実証した。
【0154】
【0155】
実施例6:水接触角の特性評価
様々なポリマーフィルム及び補強材に対する表面処理の効果を研究した。水接触角測定を、VCA Optimaゴニオメータ(AST Products、Billerica,MA)を使用して、判定を補助するためにエッジ検出及び角度分析ソフトウェアで行った。大気コロナ処理を、Electro-Technic Products Inc.(Chicago,IL)製の実験室用処理機を使用して実行した。ガス媒体として空気を使用するプラズマ処理を、Diener Electronic GmbH & Co.(Ebhausen,Germany)製のAtto低圧プラズマシステムを使用して実行した。研究した表面は、ガラス、PFA1 PFAフィルム、50重量%の各成分でのPFA1/PFA2ブレンドPFAフィルム、Shin-Etsu製の1027C-04石英布、Shin-Etsuからの1017C-02石英布、及びJPS Composite Materials製のスプレッド106生機布であった。これらの処理の結果を、
図26及び
図27に示す。具体的には、
図26は、プラズマ及びコロナ処理の前後のガラス及びPFAフィルムの水接触角測定値を示す。
図27は、プラズマ及びコロナ処理の前後の石英及びガラス布の水接触角測定値を示す。ガラス補強材の濡れ能力における明確かつ著しい改善が実証されたが、PFAフィルムも同様にいくらかの改善を示した。
【0156】
実施例7:可撓性銅クラッド積層体の特性評価
75重量%の416(フッ素化)及び25重量%の340(非フッ素化)グレードの樹脂マトリックス組成物、並びに1.25体積%のR101チタニア(Chemours)のフィラー充填量を有するブレンドされたPFAフィルムを、種々のガラス布タイプ及びJX Nippon製の12μm厚のBHFX-P92C-HG圧延銅箔と組み合わせて、可撓性銅クラッド積層体を形成した。使用したガラス布を以下の表12で説明する。
【0157】
【0158】
布の熱処理を、対流式オーブン内で、700°Fで30分間実行した。大気コロナ処理を、Electro-Technic Products製の実験室用処理機を使用して実行した。材料を、熱油真空プレス内で、60分の滞留時間、1気圧の真空、及び2℃/分の上昇速度を伴って、320℃のピーク温度及び600psiの圧力で積層した。前に表1において概説した手順に従って試験を実行した。使用した材料を含む実験構成の詳細を表13に示す。
【0159】
【0160】
この実験から得られたデータを表14、並びに
図28及び
図29に示し、これらは、それぞれ、剥離強度結果及びSharpieウィッキング結果を示す。この実験は、銅箔への適切な接着、及び全体的なより低いsharpieウィッキング結果によって証明されるように、ガラス界面に対する改善を実証した。具体的には、1017C-02及びHTC1027C-04+340試料は、大幅に改善されたウィッキング結果を示した。
【0161】
【0162】
実施例8:挿入損失の特性評価
挿入損失を、50μm厚の誘電体基板を有する上述の可撓性積層体100、並びにポリイミド及びフルオロポリマー(polyimide and fluoropolymer、PI-FP)、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer、LCP)、及びポリイミド(Polyimide、PI)を含む他の市販の積層材料についてモデル化した。
図30A及び
図30Bは、可撓性積層体(「G2」とマーク付けされている)及び他の積層材料についてのモデル化された挿入損失を示す。これらのプロットは、可撓性積層体100の誘電体基板102の電気的特性によって達成され得る増加した挿入損失を示す。
【0163】
実施例9:銅箔の元素及び粗さ特性評価
銅箔を、エネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X-Ray Analysis、EDX)を使用して分析した。分析した2つの銅箔は、JX Nippon製の12μmのBHFX-P92C-HG及びCircuit Foil Luxembourg(Wiltz,Luxembourg)製の18μmのBF-NN-HTであった。EDX結果を表15及び16に示す。基本的に、銅は、熱安定性(Zn)を強化する予想される表面処理を有することが見出された。一般に、非常に低いレベルの低強磁性元素(例えば、Fe、Ni、Co)の存在により、低挿入損失を達成することが可能になることが理解される。これらの結果は、特性評価された両方の銅箔が低い強磁性レベルを含むことを示している。
【0164】
【0165】
【0166】
また、Bruker ContourGT白色光干渉分光計を使用して銅箔を分析して、それらの表面粗さを特性評価した。
図31A及び
図31Bは、それぞれ、BHFX-P92C-HG及びBF-NN-HT銅箔についての粗さスキャンの50倍の倍率での代表的な三次元(three-dimensional、3D)結果を示す。多数回の表面粗さスキャンの結果を表17に表す。供給元AはCircuit Foils Luxembourgであり、供給元BはWielandであり、供給元CはJX Nipponである。表17において、Saは算術平均高さであり、Skuは尖度であり、Spは最大ピーク高さであり、Sqは二乗平均平方根ピーク高さであり、Sskは歪度であり、Svは最大ピット高さであり、Szは最大高さである。
【0167】
【0168】
実施例10:銅クラッド積層体に対する末端基含有量の効果
銅クラッド積層体特性に対する末端基含有量の効果を、PFA2のPFA1に対する様々な比でR101チタニア(Chemours)と組み合わせたPFA1(フッ素化PFA)及びPFA2(非フッ素化PFA)樹脂を調製することによって評価した。約70グラムの樹脂の混合物を乾燥ブレンドし、次いで、ローラブレードを含む60cc容積の混合ボウルを装備したRheometer Services Inc.(Wall,NJ)System10バッチミキサに供給した。ブレンドを150rpm、350℃で10分間混合して、成分を分散させた。次いで、混合物を、ボウルから取り出し、その後、電気試験及びその後の積層に使用するために、約0.20mm厚さにより約100mm×100mmである350℃のプラークにプレスした。10GHzでのDk及びDfを含む、プレスされたフィルムの電気的特性を試験し、表18に示す電気的特性を有することが見出された。
【0169】
【0170】
予想どおり、誘電率(Dk)は、PFA2充填量とかなり一致したままであり、誘電正接(Df)は、ブレンド中のPFA2の濃度が増加するにつれて直線的に上がった。
【0171】
選択ブレンドについて106個の炭素原子当たりのカルボキシル末端基の総数を決定するための測定も行い、結果を表19に示す。
【0172】
【0173】
誘電正接データで観察されたように、106個の炭素原子当たりのカルボキシル末端基の数は、PFAブレンド中のPFA2の濃度が増加するにつれて、ほぼ直線的に増加した。
【0174】
図32は、10
6個の炭素原子当たりのカルボキシル末端基の数の関数としての測定された誘電正接(Df)のプロットである。この図に示されるように、ブレンドされたPFAフィルム中のカルボキシル末端基のレベルは、フィルムの電気的特性に直接関係する。
【0175】
これらのブレンドされたPFAフィルムを、2116C-04石英布(Shin-Etsu)及び12μmのBHFX-P92C-HG銅箔(JX Nippon Mining & Metals Corporation)と組み合わせた。銅箔及び石英布は両方とも、12インチ×12インチパネルとして提供され、PFAフィルムは4インチ×4インチパネルとして提供された。構築材料を、電気加熱プレス(PHI、City of Industry,CA)内で、320℃及び600psiで60分の滞留時間で積層して、銅クラッド積層体を形成した。実験の詳細を表20A及び20Bに示す。
【0176】
【0177】
【0178】
積層材料を様々な特性について試験した。結果を表21A及び21Bに示す。エッチング目視検査は、表面上で平坦かつ滑らかに位置する試料の能力の定性的特性評価である。
【0179】
【0180】
【0181】
図33は、10
6個の炭素原子当たりのカルボキシル末端基の総数の関数としての積層体の誘電正接のプロットであり、誘電正接と末端基の数との間の良好な相関関係を示している。
図34は、10
6個の炭素原子当たりのカルボキシル末端基の総数の関数としての積層体のsharpieウィッキングのプロットであり、ここでも、カルボキシル末端基の増加とsharpieウィッキングの減少との間の良好な相関関係を示している。これらの結果は、PFAブレンド中のカルボキシル末端基の数が増加するにつれて、電気的性能(誘電正接)を犠牲にして、ガラス束浸透効率(低いsharpieウィッキング結果によって示されるように)が改善することを示す。
図35は、10
6個の炭素原子当たりのカルボキシル末端基の総数の関数としての積層体の銅剥離強度のプロットである。これらのデータは、これらの2つのパラメータ間の関係を示唆している。
【0182】
実施例11:市販の積層体のSharpieウィッキング挙動
積層体についてのSharpieウィッキング試験結果は、CAF試験下での積層体の性能を予測する。この関連を実証するために、良好なCAF抵抗性を有することが知られている市販の材料を、sharpieウィッキング試験に供した。これらの試験の結果を表22に示す。これらの結果は、0.5mm未満のsharpieウィッキング結果が、良好なCAF抵抗性を有する材料に対応することを示す。
【0183】
【0184】
主題の特定の実施形態について説明している。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。例えば、特許請求の範囲に列挙された動作は、異なる順序で実行することができ、依然として所望の結果を達成することができる。一例として、添付の図面に示されるプロセスは、所望の結果を達成するために、示される特定の順序又は連続的な順序を必ずしも必要としない。ある特定の実装形態では、並行作業及び並列処理が有利であり得る。
【国際調査報告】