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特表2024-527888トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ
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  • 特表-トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ 図1
  • 特表-トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ 図2
  • 特表-トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ 図3A
  • 特表-トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ 図3B
  • 特表-トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ 図4
  • 特表-トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ 図5
  • 特表-トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ 図6
  • 特表-トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ 図7
  • 特表-トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ 図8
  • 特表-トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ 図9
  • 特表-トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】トンネルグラフトおよび塞栓フィルターを有する大動脈プロテーゼ
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20240719BHJP
【FI】
A61F2/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504164
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 US2022038295
(87)【国際公開番号】W WO2023009488
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/225,789
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506074417
【氏名又は名称】ボルトン メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】カサノバ,アマンダ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA15
4C097BB01
4C097CC01
4C097DD10
4C097EE08
4C097EE11
(57)【要約】
大動脈グラフトアセンブリは、管状大動脈構成要素の主要長手軸に対して垂直に伸長する近位端を有する壁開口を画定する管状構成要素、および管状大動脈構成要素の壁に連結され、壁開口から管状大動脈構成要素の近位端に向かって伸長するトンネルグラフトを含む。大動脈グラフトアセンブリの植え込みの結果生じる塞栓を捕捉するフィルターは、管状大動脈構成要素の壁内の開口およびトンネルグラフトの少なくとも1つ(on)に広がる。大動脈グラフトアセンブリの送達のための方法は、大動脈グラフトアセンブリを、壁開口を通って、トンネルグラフトと干渉する関係に送達し、それによりフィルターを破裂させる工程を含み、フィルターは、捕捉された塞栓を保持し続ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) トンネル管腔を画定し、管状大動脈構成要素の壁により連結される近位端および遠位端を含む管状大動脈構成要素、ここで該壁は、近位端と遠位端の間にある壁開口を画定し、該壁開口は近位端および遠位端を有する;
b) 管状大動脈構成要素の壁に連結され、壁開口から管状大動脈構成要素のトンネル管腔内で、管状大動脈構成要素の近位端に向かって伸長するトンネルグラフト、ここで該トンネルグラフトは、近位端および遠位端を有し、トンネルグラフト管腔の遠位端と近位端の間に伸長するトンネルグラフト管腔を画定し、該遠位端は管状大動脈構成要素の壁開口に、またはその近位にある;
c) 管状大動脈構成要素の近位端を支持する近位ステント;
d) 管状大動脈構成要素の遠位端を支持する遠位ステント;ならびに
e) 開口およびトンネルグラフトの少なくとも1つに広がる少なくとも1つのフィルター
を含む、大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項2】
フィルターが約90μm~約100μmのメッシュサイズを有する、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項3】
フィルターが、ナイロン、ニチノールおよびポリエステルの少なくとも1つ(on)を含む、請求項2記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項4】
トンネルグラフトが、トンネルグラフトの近位端で第1のステント、および第1のステントの遠位にある第2のステントを含む、請求項3記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項5】
フィルターが、第1のステントと第2のステントの間でトンネルグラフトに広がる、請求項4記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項6】
フィルターが開口に広がる、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項7】
トンネルグラフトが二叉に分かれ、それぞれのトンネルグラフトが近位端および遠位端を有し、それぞれのトンネルグラフトが第1のステントおよび第2のステントをさらに含む、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項8】
それぞれのトンネルグラフト管腔の遠位端が開口の近位端の近位にある、請求項7記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項9】
少なくとも2つのフィルターを含む大動脈グラフトアセンブリであって、該フィルターの少なくとも1つがそれぞれのトンネルグラフト管腔に広がる、請求項8記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項10】
トンネルグラフト管腔のそれぞれが近位端で第1のステントおよび遠位端で第2のステントを含む、請求項9記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項11】
該フィルターの少なくとも1つが、近位と、それぞれのトンネルグラフトの第1のステントおよび第2のステントの間にある、請求項10記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項12】
トンネルグラフトが、トンネルグラフトの近位端と遠位端の間に少なくとも3つのステントを含み、フィルターの少なくとも1つが、トンネルグラフトのステントの2つの間でトンネルグラフトに広がる、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項13】
主要長手軸に対して直交して見られる場合に、壁開口の近位端が、管状大動脈構成要素の主要長手軸に対して垂直に伸長する第1の面に横たわる弓を含む、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項14】
第1の面における壁開口の近位端の長さが、壁開口の近位端の近位の点で主要長手軸に対して直交して伸長する第2の面におけるトンネルグラフト管腔の直径よりも大きい、請求項2記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項15】
a) 管状大動脈構成要素を含む大動脈グラフトアセンブリを、大動脈を通して患者の動脈瘤部位に送達する工程、ここで該管状大動脈構成要素は、トンネル管腔を画定し、壁により連結される近位端および遠位端を有し、該壁は、近位端と遠位端の間にある壁開口を画定し、該壁開口は、近位端および遠位端を有し、該大動脈グラフトアセンブリは、壁開口から、管状大動脈構成要素のトンネル管腔内で、管状大動脈構成要素の近位端に向かって伸長するトンネルグラフトをさらに含み、少なくとも1つのフィルターは、開口およびトンネルグラフトの少なくとも1つに広がる;
b) 患者の動脈瘤部位で少なくとも1つの脈管口の上に壁開口を整列させる工程;ならびに
c) 外部制御管を引き込み、それにより遠位クラスプおよび近位クラスプから管状大動脈構成要素を解放し、それにより患者の動脈瘤部位で管状大動脈構成要素を展開する工程
を含む、プロテーゼを植え込むための方法。
【請求項16】
分岐ステントグラフトを、大動脈分岐から、開口を通って、および少なくとも部分的にトンネルグラフトを通って方向づけ、それによりフィルターを破裂(rupture)させる工程をさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
壁開口の近位端が、主要長手軸に対して直交して見られる場合に、管状大動脈構成要素の主要長手軸に対して垂直に伸長する第1の面にある弓を含み、管状大動脈構成要素が、送達デバイスの外部制御管の遠位端で遠位クラスプにより半径方向および解放可能に収縮され、保持構成要素により、近位クラスプの近位にある外部制御管で近位クラスプに解放可能に取り付けられ、管状大動脈構成要素が、外部制御管内に伸長する送達デバイスの制御カテーテルによりさらに支持される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
第1の面における壁開口の近位端の長さが、壁開口の近位端の近位の点で主要長手軸に対して直交して伸長する第2の面におけるトンネルグラフト管腔の直径よりも大きい、請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての他所参照
本願は、2021年7月26日に出願された米国仮特許出願第63/225,789号の利益を主張し、該出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
大動脈瘤は、生命を脅かす状態である。大動脈瘤を治療するために使用される外科的介入は、病変の長手方向の範囲にわたる1つ以上のエンドグラフトの経管腔的(transluminal)配置による血管内修復を含む。エンドグラフトは、動脈瘤嚢を架橋してそれを高圧の動脈血流から排除することを意図して大動脈内に配置され、動脈瘤部位内およびその周囲の大動脈壁のリモデリングを可能にし得る。大動脈の特定の領域において、エンドグラフトの正確な配置は、大動脈から分岐する血管への血流を維持して、臓器への損なわれた血流を最小化するために決定的である。例えば、現在、大動脈デバイスが、左頸動脈に開口を分岐させる(offset)様式で大動脈弓内に配置される場合、動脈は閉塞され得、脳への虚血を生じ得る。大動脈弓でまたはその付近で動脈瘤を治療するほとんどの外科的方法は一般的に、胸骨切開または開胸を含み、心肺バイパスを必要とすることがあり、しばしば高い合併症発現頻度を生じる。
【0003】
さらに、特に病気に罹った組織の領域におけるエンドグラフトの植え込みに関連する外傷は、展開の外科的手法の間に生じる塞栓に関連し得る脳卒中のリスクを引き起こす。
【0004】
したがって、血管内方法により大動脈瘤を治療する新規で有用なデバイスおよび方法を開発する必要性がある。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
本発明は、血管修復システム、送達システムならびに大動脈血管損傷、特に動脈瘤、浸透性アテローム性動脈硬化性潰瘍および解離(dissection)などの大動脈疾患に関連する血管損傷を治療するために該送達システムおよびその構成要素を使用する方法に関する。
【0006】
態様において、本発明は、管状大動脈構成要素の壁により連結される近位端および遠位端を有する管状大動脈構成要素を含む大動脈グラフトアセンブリであり、該壁は、近位端および遠位端の間にある壁開口を画定し、該壁開口は、近位端および遠位端を有する。トンネルグラフトは、管状大動脈構成要素の壁に連結され、壁開口から管状大動脈構成要素の近位端に向かって伸長する。トンネルグラフトは、近位端および遠位端を有し、トンネルグラフト管腔の遠位端および近位端の間に伸長するトンネルグラフト管腔を画定し、トンネルグラフト管腔の遠位端は、管状大動脈構成要素の壁開口にある。近位ステントは、管状大動脈構成要素の近位端を支持する。遠位ステントは、管状大動脈構成要素の遠位端を支持する。少なくとも1つのフィルターは、開口およびトンネルグラフトの少なくとも1つに広がる。
【0007】
別の態様において、本発明は、大動脈を通って患者の動脈瘤部位へと管状大動脈構成要素を含む大動脈グラフトアセンブリを送達する工程を含む、プロテーゼを植え込むための方法であり、該管状大動脈構成要素は、トンネル管腔を画定し、壁により連結される近位端および遠位端を有し、該壁は、近位端と遠位端の間にある壁開口を画定し、該壁開口は、近位端および遠位端を有し、該大動脈グラフトアセンブリはさらに、壁開口から、管状大動脈構成要素のトンネル管腔内で管状大動脈構成要素の近位端に向かって伸長するトンネルグラフトを含み、ここで少なくとも1つのフィルターが、開口およびトンネルグラフトの少なくとも1つに広がる。壁開口は、患者の動脈瘤部位で少なくとも1つの脈管口(vessel ostium)上に整列される。外部チューブは引き込まれ、それにより管状大動脈構成要素が遠位および近位クラスプから解放され、それにより患者の動脈瘤部位で管状大動脈構成要素が展開される。
【0008】
本発明の大動脈アセンブリシステムおよび方法は、大動脈弓などでの大動脈プロテーゼおよび分岐プロテーゼの植え込みの際に、形成されるかまたは押しのけられる塞栓を隔離するか、トラップするかまたはそうでなければ捕捉するフィルターを含む。例えば患者の大動脈弓への管状大動脈構成要素の植え込みの際に、塞栓(すなわち血餅、気泡、脂肪堆積物の断片または血流中に持ち込まれて血管にとどまり、塞栓症を引き起こし得る他の物体)が形成され、これは外科的部位を回避し得、患者の解剖学的措置の他の部分に輸送され得、それにより脳卒中およびあるいは死を引き起こし得る。本発明の大動脈アセンブリシステムのフィルター構成要素は、塞栓を捕捉し、それにより外科的部位から離れる塞栓の輸送を防ぐ。
【0009】
本発明の大動脈アセンブリシステムおよび方法は、大動脈の弓または腹部大動脈(例えば腹腔動脈、上腸間膜動脈および腎動脈)からの分岐での、その付近でのまたはその周囲での大動脈瘤などの大動脈瘤を治療するために使用され得る。本発明の大動脈アセンブリシステムは、トンネルグラフト内へと先細りする比較的大きな開口を有し、これは、外科医に、該システムの配置における誤りの比較的大きな余地を提供し、カニューレ挿入を容易にし、少なくとも1つの血管についての単一の開口の整列を可能にする。2つの開口と共に近位に伸長する1つの開口を有するトンネルグラフトを含む本発明の大動脈アセンブリシステムは、大動脈中、特に末梢および主要な血管へと分岐する大動脈の領域中の容易な整列を可能にする。開口のサイズは、手順の間に血液が標的血管へと流れることを可能にする。部分的にトンネルグラフトおよびステントまたはトンネルグラフトを支持するステントの比較的大きな直径のために、本発明の大動脈グラフトアセンブリは一般的に、血液の流れを急速にまたは長期にわたり制限しない。
【0010】
本発明は、大動脈瘤、浸透性アテローム性動脈硬化性潰瘍、解離などの種々の大動脈病状を治療するために使用され得、そのために合併症および生命を脅かす血管状態の結果として生じる死を回避し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
図1図1は、本発明の大動脈アセンブリシステムの態様の斜視図であり、本発明のフィルターは見えない。
図2図2は、図1に示される態様の側面図である。
図3A図3Aは、本発明の大動脈アセンブリシステムのトンネルグラフトおよびトンネルグラフトを支持する2つのステントの間のフィルターを示す図1および2に示される態様の断面図である。
図3B図3Bは、トンネルグラフトおよびトンネルグラフト内のフィルターを示す図3Aに示される態様の詳細である。
図4図4Aは、本発明の大動脈アセンブリシステムの別の態様の図であり、トンネルグラフトは、開口の近位端に近位の点で2つのトンネルグラフトへと分岐される。図4Bは、線4B-4Bに沿って得られる図4Aの本発明の大動脈アセンブリシステムの態様の図である。
図5図5Aは、本発明の大動脈アセンブリシステムのさらに別の態様の図であり、トンネルグラフトは、単一のトンネルグラフトを分割する壁により二又に分かれる。図5Bは、線5B-5Bに沿って得られる図5Aの本発明の大動脈アセンブリシステムの態様の図である。
図6図6は、本発明の大動脈アセンブリシステムのさらに別の態様の断面図であり、フィルターが、本発明の大動脈アセンブリシステムの管状大動脈構成要素の開口に広がる。
図7図7は、本発明の大動脈アセンブリシステムの態様の断面図であり、トンネルグラフトは、4つのステントを含み、そのそれぞれは、大動脈アセンブリシステムのフィルターにより他のものから仕切られる。
図8図8は、患者の大動脈弓での植え込み後の本発明の大動脈アセンブリシステムの態様の断面図である。
図9図9は、腕頭動脈内の開口を通る、大動脈アセンブリシステムのトンネルグラフト内への分岐ステントグラフトの少なくとも部分的な植え込み後の図8に示される植え込まれた大動脈アセンブリシステムの断面図である。
図10図10は、左総頸動脈内の開口を通る、本発明の大動脈アセンブリシステムのトンネルグラフト内への分岐ステントグラフトの少なくとも部分的な植え込み後の図8および9に示される植え込まれた大動脈アセンブリシステムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
本発明の特徴および他の詳細は、本発明の工程としてまたは本発明の部分の組合せとしてのいずれかで、ここでより具体的に記載され、特許請求の範囲において指摘される。本発明の特定の態様は、例示として示され、本発明の限定としては示されないことが理解される。本発明の原理的特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の態様において使用され得る。
【0013】
「近位」は、送達システムまたは送達システムの構成要素、例えば頂部クラスプおよびノーズコーンについて参照がなされる場合、デバイスを使用する臨床医に対して最も近いことを意味する。同様に、「遠位」は、送達システムまたは送達システムの構成要素、例えば頂部クラスプおよびノーズコーンについて参照がなされる場合、デバイスを使用する臨床医から離れることを意味する。
【0014】
送達されるプロテーゼ、例えば大動脈グラフトアセンブリ、管状大動脈構成要素、トンネルグラフト、分岐グラフトおよびステントについて参照がなされる場合、単語「近位」は、患者の心臓に向かうプロテーゼまたはプロテーゼの構成要素の一部を意味し、「遠位」は、患者の心臓から離れるプロテーゼまたはプロテーゼの構成要素の一部を意味する。明確さのために、単語「最近位」は、「近位」または「遠位」とは対照的に、近いことを意味する。
【0015】
本発明の大動脈グラフトアセンブリは、例えば経大腿アクセスにより植え込まれ得る。管状分岐構成要素は、例えば上大動脈血管アクセス(例えば上腕動脈)によりまたは経大腿もしくは経心尖(trans apical)アクセスにより植え込まれ得る。
【0016】
本発明は一般的に、大動脈グラフトアセンブリおよび大動脈グラフトアセンブリを展開するための方法に関する。本発明はまた、少なくとも1つの管状分岐グラフトを患者および大動脈グラフトアセンブリ内に植え込む方法に関する。図1および2に示される本発明の大動脈グラフトアセンブリの一態様において、大動脈グラフトアセンブリ10は、壁18により連結される近位端14および遠位端16を有する管状大動脈構成要素12を含む。壁18は、近位端14と遠位端16の間にある壁開口20を画定する。壁開口20は、主要長手軸24に対して直交して見られる場合に管状大動脈構成要素12の主要長手軸24に対して垂直に伸長する近位端22を有する。壁開口20はまた、壁開口20の遠位端26を画定する。
【0017】
例えば図3Aおよび3Bに示されるトンネルグラフト28は、管状大動脈構成要素12の壁18に連結され、壁開口20から管状大動脈構成要素12の近位端14に向かって伸長する。トンネルグラフト28は、近位端30および遠位端32を含む。トンネルグラフト28の遠位端32は、管状大動脈構成要素12の壁開口20にある。
【0018】
図1および2に戻って参照すると、近位ステント34は、管状大動脈構成要素12の近位端14を支持する。遠位ステント36は、管状大動脈構成要素12の遠位端16を支持する。同様に、遠位ステント36は、管状大動脈構成要素12の内壁に取り付けられ得る。
【0019】
任意に、放射線不透過性マーカー38が、管状大動脈構成要素12の主要長手軸24に平行な線に沿って配置される。一態様において、放射線不透過性マーカー38は、壁開口20に隣接する壁開口遠位ステント50の近位頂部にある。別の放射線不透過性マーカーは、近位ステント34の遠位頂部48にある。さらに、放射線不透過性マーカー38は、管状大動脈構成要素12の近位端14および遠位端16の少なくとも1つにある。また任意に、放射線不透過性マーカー40は、管状大動脈構成要素12で壁開口20の円周の周囲に伸長する。放射線不透過性マーカー38、40は、白金、イリジウム、金等の任意の適切な材料で作製され得る。放射線不透過性マーカーの例は、その全教示が参照により本明細書に援用される米国特許番号:8,062,345および10,105,248に記載される。
【0020】
図1および2に示される、一態様における近位ステント34は、近位頂部46および遠位頂部48を含む。一態様において、遠位頂部48の少なくとも一部は、壁開口20の近位端22に隣接する。壁開口遠位ステント50は、近位頂部52および遠位頂部54を含み、壁開口遠位ステント50の近位頂部52の一部は、壁開口20の遠位端26に隣接する。管状大動脈構成要素12の近位端14でのクラスプステント56は、管状大動脈構成要素12の最近位端14の最近位にある少なくとも2つの曝露された近位頂部58を含む。一態様において、クラスプステント56は、管状大動脈構成要素12の内壁に取り付けられる。
【0021】
一態様において、クラウンステント60は、クラスプステント56と管状大動脈構成要素12の近位端14の間に配置される。クラウンステント60およびクラスプステント56は、図1に示されるように入れ子になり得る。クラウンステント60およびクラスプステント56は、管状大動脈構成要素12の内壁76に取り付けられる。
【0022】
一態様において、少なくとも1つのステント64が、近位ステント34と遠位ステント36の間で管状大動脈構成要素12に配置される。ステント64の少なくとも一部は、支柱70により連結される近位頂部66および遠位頂部68を含む。一態様において、少なくとも1つの部分ステント72は、図2に示されるように、それぞれ壁開口20の近位端22および遠位端26に隣接するステント34、50の間で管状大動脈構成要素12に配置される。
【0023】
本発明に使用されるステントは、適切な材料で構築される。一態様において、本発明により使用されるステントは、ニチノールなどの適切な形状記憶合金を含む。本発明における使用のためのステントの構築のための適切な材料のさらなる記載は、その教示がそれらの全体において参照により本明細書に援用される米国特許番号:7,763,063および8,062,345に見られ得る。
【0024】
一態様において、管状部分は、図3Aおよび3Bに示されるように、管状部分86の近位92および遠位端94のそれぞれでステント88、90を含む。好ましくは、管状部分86の近位92および遠位94端でのステント88、90は、支柱により連結される近位および遠位頂部を含む。好ましくは、管状部分86の近位端92でのステント88は、少なくとも1つのバーブ96を含む(図3Aおよび3B)。フィルター95は、ステント88と90の間でトンネルグラフト28に広がり、ステント88および90による干渉を回避する。フィルター95は、トンネルグラフト28に縫い付けられる。フィルター95は、一態様において、塞栓を捕捉するメッシュパターンおよび小孔を有するが、赤血球の通過を可能にする。孔の直径は、赤血球の通過を可能にしながら、塞栓の捕捉に適する。メッシュにおける孔径の適切な範囲の例としては、例えば約80μm~約90μmの範囲、約90pm~100μmの範囲、約100μm~110μmの範囲および約80μm~約110μmの範囲が挙げられる。フィルター95は一般的に、大動脈プロテーゼ系および任意の分岐ステントグラフトのトンネルグラフト28内への植え込み後に体内に残るので、典型的には生体適合性である。フィルター95はまた、分岐ステントグラフトのトンネル28内への植え込みの間に、フィルター95に捕捉された粒子が患者の血流中に放出することなく、ガイドワイヤカテーテルなどの送達デバイスによる貫通を可能にするように十分に薄い。フィルター95はまた、γ線滅菌に耐えるように十分に安定である。一態様において、フィルター95は、トンネル内に円周状に縫い付けられ、縫い付けられたメッシュの尾方の半分は、分岐リム送達システム先端がそれを押す場合にそれが尾方部分で壊れるようにゆるく縫い付けられる。フィルター95の適切な材料の例としては、ナイロン、ニチノールおよび5-0ポリエステルなどのポリエステルが挙げられる。管状大動脈構成要素12の、例えば患者の大動脈弓内への植え込みの際に、塞栓(すなわち血餅、気泡、脂肪堆積物の断片、または血流中に持ち込まれて血管にとどまり、塞栓症を引き起こし得る他の物体)が形成されて、外科的部位を回避し、患者の解剖学の他の部分に輸送され得、それにより脳卒中および、あるいは死の可能性を増加する。フィルター95は塞栓を捕捉し、それにより外科的部位から離れるそれらの輸送を防ぎ、脳卒中または他の結果的な傷害の可能性を低下させるかまたはそれを防ぐ。
【0025】
一態様において、壁開口20の近位端22の弧の長さは、管状大動脈構成要素12の円周の2分の1以下である。壁開口20の近位端22の適切な弧の長さの例としては、約6mm、約8mm、約10mm、約12mmまたは約14mmからなる群より選択される構成メンバーに等しい弧の長さが挙げられる。一態様において、壁開口20の長手方向の長さは約90mm以下である。別の態様において、壁開口20の長手方向の長さは約14mm以上である。
【0026】
図3A、3B、6および7を参照すると、壁開口20の近位端22と管状大動脈構成要素12の近位端14の間の間隔は、約10mm~約80mmの範囲であり得る。典型的な態様において、壁開口20の近位端22と管状大動脈構成要素12の近位端14の間の間隔は、約20mm、約40mm、約60mm、約80mmまたは約90mmからなる群より選択される構成メンバーである。一態様において、壁開口20の近位端22と管状大動脈構成要素12の近位端12の間の間隔は、図3Aに示されるように、約40mmである。別の態様において、壁開口20の近位端22と管状大動脈構成要素12の近位端14の間の間隔は、図6および7に示されるように、約60mmである。
【0027】
図1に示される一態様において、保持構成要素78が、壁開口20の遠位の管状大動脈構成要素12で、管状大動脈構成要素12内に配置される(保持構成要素78の外部部分のみが図1に示される)。一態様において、保持構成要素は、縫合糸ループである。別の態様において、保持構成要素78は、磁石またはステント頂部の少なくとも1つである。さらに別の態様において、保持構成要素78は放射性不透過性である。一態様において、保持構成要素78は、壁開口20の遠位端26に隣接するステント50の近位頂部52にある。
【0028】
図4Aおよび5Aに示される一態様において、管状大動脈構成要素12と壁開口20との界面は、管状大動脈構成要素12の主要長手軸24に直交して見られる場合、参照される図に示されるように多角形であり、多角形は4つの面を有する。種々の態様において、多角形は正方形、長方形、平行四辺形またはひし形であり得る(示さず)。
【0029】
特定の態様において、内部部分83は、壁開口20の反対にある管状大動脈構成要素12の一面上にあり、本質的に図2に示される管状大動脈構成要素12の主要長手軸24に平行である。潰れる場合、クラスプステント56の曝露される頂部58は、クラスプステント56で管状大動脈構成要素12の近位端14の少なくとも部分的な潰れを引き起こす。一態様において、トンネルグラフト28の遠位端32は、図4Aに見られ得るように、トンネルグラフト28の近位端30の直径よりも大きい直径を有する。別の態様において、トンネルグラフト28の近位端30は、図3A、4A、5A、6および7に示されるように、管状大動脈構成要素12の近位端14の最も近位の縁と壁開口20の近位端22の間にある。図3Bに示されるように、トンネルグラフト28は、縫合糸29などの適切な手段により管状大動脈構成要素12の内壁に固定される。
【0030】
図4Aおよび5Aに見られ得るように、トンネルグラフト28は、壁開口20での開放部分84および管状部分86を含む。分岐点97は、管状部分86の遠位端および開放部分84の近位端に印をつける。開口20の近位端22は、開放部分84の近位端の遠位にある。開放部分84は、開口22から近位に伸長する。一態様において、トンネルグラフト28は、図3A、3Bおよび7に示されるように、管状部分86の近位92および遠位端94のそれぞれでステント88、90を含む。好ましくは、ステント88、90は、管状部分86の近位端92および遠位端94で、支柱により連結される近位および遠位頂部を含む。フィルター95は、縫い付けなどにより管状部分86により画定される内部管腔に固定されてそこに広がる。
【0031】
図6に示される別の態様において、フィルター103は、管状大動脈構成要素12の開口20に広がる。好ましくは、管状部分86の近位端92でのステント88は、少なくとも1つのバーブ96を含む(図3Aおよび3B)。図7に示される別の態様において、バーブ96は、管状部分86のステント98の遠位頂部から伸長する。任意に、管状部分86はさらに、管状部分86の近位92および遠位94端のそれぞれで、ステント88、90の間に少なくとも1つのステント98を含む。好ましくは、近位端92および遠位端94で、ステント88、90の間のステント98の少なくとも1つは、少なくとも1つのバーブを含む。最も好ましくは、管状部分86のステントはニチノールを含む。90、92および98の少なくとも2つの間で、フィルター94は、縫い付けなどにより図7のトンネルグラフトにより画定される内部管腔に固定されてそこに広がる。
【0032】
図3Aおよび3Bにも見られ得るように、管状部分86の遠位端94は一般的に円錐形であり、管状部分86の遠位端94は本質的に、示されないが連続物としてまたは任意に縫い目で、壁開口20の近位端22でトンネルグラフト28の近位端92に適合する。一態様において、トンネルグラフト28の近位端の最大直径は、管状部分94の遠位端の直径以下である。トンネルグラフト28の近位端30の適切な最大直径の例としては、例えば約6mm、約8mm、約10mm、約12mmまたは約14mmからなる群より選択される直径以上の直径が挙げられる。
【0033】
好ましくは、管状部分86は、管状大動脈構成要素12の主要長手軸24に平行な主要長手軸を有する。管状部分86の近位端92は、管状大動脈構成要素12の近位端14の最も近位の縁の遠位にある。示されない一態様において、管状部分86の近位端92は、管状大動脈構成要素12の近位端14の最も近位の縁と境界を接するかまたは代替的に、図3A、3B、4A、5A、6および7に示されるように、管状大動脈構成要素12の近位端14の遠位にある。
【0034】
一態様において、図3Aおよび3Bに示されるように、少なくとも1つの放射線不透過性マーカー99が、トンネルグラフト28の近位端92およびトンネルグラフト28の管状部分86の遠位端94の少なくとも1つに配置される。図3A、3B、6および7に示されるさらに別の態様において、トンネルグラフト28の近位端92は、約5mm~約10mmまたは約5mm~約15mmまたは約8mm~約15mmの範囲の直径を有する。一般的に、管状部分86は、約20mm~約60mmまたは約20mm~約100mmの範囲の長さを有する。最も一般的に、管状部分86は、約30~50mmの範囲の長さを有する。好ましくは、トンネルグラフト28の近位端92は、管状大動脈構成要素12の近位端14の少なくとも約5mm、約10mmおよび約15mmまたは約20mm内にある。
【0035】
図8~10に示される態様において、本発明の方法は、図8に見られ得るように、本発明の大動脈グラフトアセンブリ10を、患者の大動脈弓120などの外科的部位に植え込む工程を含む。本発明の大動脈グラフトアセンブリ10の植え込みの際に、外科的部位(例えば大動脈グラフトアセンブリにより治療される動脈瘤の部位)を回避することが可能である場合に患者に脳卒中のリスクを提示する塞栓が形成され得る。大動脈グラフトアセンブリ10の管状大動脈構成要素12の20開口の少なくとも1つおよび本発明の大動脈グラフトアセンブリの少なくとも1つのトンネルグラフトに縫い付けられ、そこに広がるフィルター95は、任意のかかる塞栓を引き離すかまたは捕捉し、それによりそれらの外科的部位からの回避を防ぐ。植え込み後の一態様において、開口20は、それが大動脈弓120と遭遇する無名動脈(innominate artery)(「腕頭動脈」とも称される)122に広がる。
【0036】
その後、少なくとも1つの管状分岐構成要素124は、患者の、図9に示される無名動脈122、左総頸動脈126、左鎖骨下動脈128、右総頸動脈130または右鎖骨下動脈132の少なくとも1つ内で、壁開口20を通って、管状大動脈構成要素12内のトンネルグラフト28内に植え込まれ、それにより開口20またはトンネルグラフト28に広がるフィルター95を破裂させる。塞栓を引き離すフィルター95の破裂は、塞栓を患者の血流へと戻して放出しない。むしろ、塞栓はフィルターにより引き離されるかまたは捕捉されるまま残る。好ましい態様において、本発明の方法は、分岐構成要素124を無名動脈122に、および別の管状分岐構成要素134を左総頸動脈126に植え込む工程を含む。
【0037】
それらの全ての関連のある教示がそれらの全体において参照により本明細書に援用される2007年1月30日に出願された米国出願第11/699,700号(現在は放棄された);2007年7月26日に出願された同11/828,653号(現在は放棄された);2008年6月12日に出願された同12/137,592号(現在は放棄された);および2007年2月1日に出願された同11/701,876号(現在は放棄された);ならびに米国特許番号:7,763,063;8,007,605;8,062,345;8,062,349;8,070,790;8,292,943および8,308,790、8,740,963、9,198,786、9,320,631、9,364,314および9,592,112に記載される適切なシステム、送達デバイスおよびシステムの構成要素、ステントグラフトは、本発明の方法により本発明の大動脈グラフトアセンブリを送達するために使用され得る。
【0038】
本明細書に引用される全ての特許、公開出願および参照文献の関連のある教示は、それらの全体において参照により援用される。
【0039】
本発明は、その例示的な態様に関して特に示され、記載されるが、形態および詳細における種々の変化は、添付の特許請求の範囲により包含される発明の範囲を逸脱することなく、本発明においてなされ得ることが当業者に理解される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】