IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カイト ファーマ インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-527902DNVSIG3及びDNVSIG8受容体並びにその使用方法
<>
  • 特表-DNVSIG3及びDNVSIG8受容体並びにその使用方法 図1
  • 特表-DNVSIG3及びDNVSIG8受容体並びにその使用方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】DNVSIG3及びDNVSIG8受容体並びにその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/705 20060101AFI20240719BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/869 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240719BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240719BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240719BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
C12N15/12
C12N15/86 Z
C12N15/861 Z
C12N15/863 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0783
A61K35/12
A61K35/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504479
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 US2022038135
(87)【国際公開番号】W WO2023009412
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/225,840
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518431004
【氏名又は名称】カイト ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ベドヤ、 フェリペ
(72)【発明者】
【氏名】バレ、 デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ペダレディガリ、 ヴィジャ ゴパル レディ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C087AA01
4C087BB37
4C087BB65
4C087BC01
4C087BC11
4C087BC30
4C087CA04
4C087CA05
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
VSIG3及びVSIG8並びにそれらの対応するリガンドの下流のシグナル伝達効果を調節することに向けた用途に使用するための、V-Set及び免疫グロブリンドメイン含有3(VSIG3)受容体並びにV-Set及び免疫グロブリンドメイン含有8(VSIG8)受容体のドミナントネガティブ(DN)受容体変異体並びにその製造方法が記載されている。本発明は、VSIG3及び/又はVSIG8の機能的形態に関連する免疫抑制効果を、それらの同族リガンドの存在下で軽減するためのdnVSIG3及び/又はdnVSIG8受容体変異体の使用に向けられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号20~30の何れか1つと少なくとも約90%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む修飾ポリペプチド。
【請求項2】
(a)前記アミノ酸配列は、配列番号20~30の何れか1つと少なくとも約95%の配列同一性を共有する、及び/又は、
(b)前記アミノ酸配列は、配列番号20と少なくとも約95%の配列同一性を共有する、及び/又は、
(c)前記アミノ酸配列は、配列番号20と少なくとも約99%の配列同一性を共有する、及び/又は、
(d)前記アミノ酸配列は、配列番号20である、
請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号61~70の何れか1つと少なくとも約90%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む修飾ポリペプチド。
【請求項4】
(a)前記アミノ酸配列は、配列番号61~70の何れか1つと少なくとも約95%の配列同一性を共有する、及び/又は、
(b)前記アミノ酸配列は、配列番号61と少なくとも約95%の配列同一性を共有する、及び/又は、
(c)前記アミノ酸配列は、配列番号61と少なくとも約99%の配列同一性を共有する、及び/又は、
(d)前記アミノ酸配列は、配列番号61である、
請求項3に記載のポリペプチド。
【請求項5】
さらにシグナルペプチド配列を含む、請求項1~4の何れか1項に記載のポリペプチド。
【請求項6】
(a)請求項1から5の何れか1項に記載のポリペプチドをコードする、及び/又は、
(b)配列番号50~59の何れか1つと少なくとも約90%の配列同一性を共有する核酸配列を含む、及び/又は、
(c)配列番号72~81の何れか1つと少なくとも約90%の配列同一性を共有する核酸配列を含むポリヌクレオチド配列である、ポリヌクレオチド配列。
【請求項7】
(a)6(b)の核酸配列は、配列番号50~59の何れか1つと少なくとも約95%の配列同一性を共有する、及び/又は、
(b)6(b)の核酸配列は、配列番号50~59の何れか1つと少なくとも約99%の配列同一性を共有する、及び/又は、
(c)6(b)の核酸配列は、配列番号50である、及び/又は、
(d)6(c)の核酸配列は、配列番号72~81の何れか1つと少なくとも約95%の配列同一性を共有する、及び/又は、
(e)6(c)の核酸配列は、配列番号72~81の何れか1つと少なくとも約99%の配列同一性を共有する、及び/又は、
(f)6(c)の核酸配列は、配列番号72である、
請求項6に記載のポリヌクレオチド配列。
【請求項8】
(a)請求項1~5の何れか1項に記載のポリペプチド、又は、
(b)請求項6~7の何れか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、組成物。
【請求項9】
(a)請求項6~7の何れか1項に記載のポリヌクレオチド配列を含み、場合により、ベクターは、ウイルスベクターである、及び/又は、
(b)請求項6~7の何れか1項に記載のポリヌクレオチド配列を含み、該ポリヌクレオチド配列は、1つ又は複数のポリペプチドに作動可能に連結され、場合により、ベクターは、ウイルスベクターである、及び/又は、
(c)請求項6~7の何れか1項に記載のポリヌクレオチド配列を含み、場合により、該ポリヌクレオチド配列は、1つ又は複数のポリペプチドに作動可能に連結され、ベクターは、ウイルスベクターであり、さらに該ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター及び組み換えハイブリッドウイルスベクターからなる群から選択される、及び/又は、
(d)請求項6~7の何れか1項に記載のポリヌクレオチド配列を含み、場合により、ポリヌクレオチド配列は、1つ又は複数のポリペプチドに作動可能に連結され、ベクターは、レンチウイルスベクターである、ベクター。
【請求項10】
(a)請求項1~5の何れか1項に記載のポリペプチドであって、該ポリペプチドは、野生型VSIG3受容体の活性と比較してドミナントネガティブ受容体である、及び/又は、
(b)請求項6~7の何れか1項に記載のポリペプチドであって、該ポリペプチドは、野生型VSIG8受容体の活性と比較してドミナントネガティブ受容体である、及び/又は、
(c)請求項1から5の何れか1項に記載のポリペプチド及び請求項6~7の何れか1項に記載のポリヌクレオチド、及び/又は、
(d)請求項6~7の何れか1項に記載のポリヌクレオチド、及び/又は、
(e)請求項9に記載のベクター、を含む細胞。
【請求項11】
(a)細胞は、細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、動物細胞及びヒト細胞からなる群から選択される、及び/又は、
(b)細胞は、ヒト細胞である、及び/又は、
(c)細胞は、免疫細胞であるヒト細胞である、及び/又は、
(d)細胞は、T細胞であるヒト免疫細胞である、及び/又は、
(e)細胞は、T細胞であるヒト免疫細胞であり、該T細胞は、修飾抗原受容体を含む、及び/又は、
(f)細胞は、T細胞であるヒト免疫細胞であり、該T細胞は、修飾抗原受容体を含み、該修飾抗原受容体は、T細胞受容体又はキメラ抗原受容体(CAR)であり、及び/又は、
(g)細胞は、T細胞であるヒト免疫細胞であり、該T細胞は、修飾抗原受容体を含み、該修飾抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ムチン1のTnグリコフォーム(TnMUC1)、メソテリン、グリピカン2(GPC2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、葉酸受容体α(FRα)、上皮成長因子受容体(EGFR)、インターロイキン-13受容体サブユニットα2(IL-13Rα2)及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるバインダーを含む、及び/又は、
(h)細胞は、T細胞であるヒト免疫細胞であり、該T細胞は、修飾抗原受容体を含み、該修飾抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARは、バインダーを含み、該バインダーは、EGFR及びIL-13Rα2の組み合わせを含む、及び/又は、
(i)細胞は、T細胞であるヒト免疫細胞であり、該T細胞は、修飾抗原受容体を含み、該修飾抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARは、CD2、4-1BB、ICOS及びCD27からなる群から選択される共刺激ドメインを含む、及び/又は、
(j)細胞は、T細胞であるヒト免疫細胞であり、該T細胞は、修飾抗原受容体を含み、該修飾抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARは、スイッチ受容体及び/又はドミナントネガティブ受容体を含み、該受容体は、PD1/CD28、PDL1/CD28、CTLA4/CD28、BTLA/CD28、BTLA/ICOS、TIM3/CD28、TIGIT/CD226、dnTGFβ、TGFβ/IL-12R、TGFβ/CD28、TGFβ/OX40、IFNγ/CD28、IFNγ/OX40及びIFNγ/IL-12Rからなる群から選択される、及び/又は、
(k)細胞は、T細胞であるヒト免疫細胞であり、該T細胞は、修飾抗原受容体を含み、該修飾抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む、請求項10に記載の細胞。
【請求項12】
(a)ドミナントネガティブ受領体は、シグナル伝達が不可能であり、及び/又は、
(b)ドミナントネガティブ受領体は、シグナル伝達が不可能であり、該ドミナントネガティブ受容体の細胞外ドメインは、対応するリガンドに結合可能である、及び/又は、
(c)ドミナントネガティブ受容体は、シグナル伝達が不可能であり、該ドミナントネガティブ受容体の細胞外ドメインは、VISTAである対応するリガンドに結合可能である、及び/又は、
(d)野生型VSIG3の発現は、下方制御されている、及び/又は、
(e)野生型VSIG8の発現は、下方制御されている、
請求項10又は11に記載の細胞。
【請求項13】
請求項10~12の何れか1項に記載の細胞を投与する方法であって、該方法は、該細胞を含む組成物を対象に投与するステップを含み、場合により、
(a)該細胞は、対象にとって自己由来である、又は、
(b)該細胞は、対象にとって同種異系である、方法。
【請求項14】
修飾細胞を生成する方法であって、該方法は、請求項9に記載のベクターを細胞に導入することを含む、方法。
【請求項15】
(a)細胞は、細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、動物細胞及びヒト細胞からなる群から選択される、及び/又は、
(b)細胞は、ヒト免疫細胞である、及び/又は、
(c)細胞は、ヒト免疫細胞であり、該ヒト免疫細胞は、T細胞である、及び/又は、
(d)細胞は、ヒトT細胞であり、該T細胞は、修飾抗原受容体を含む、及び/又は、
(e)細胞は、修飾抗原受容体を含むヒトT細胞であり、該修飾抗原受容体は、T細胞受容体(TCR)又はキメラ抗原受容体(CAR)であり、及び/又は、
(f)細胞は、修飾抗原受容体を含むヒトT細胞であり、該修飾抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ムチン1のTnグリコフォーム(TnMUC1)、メソセリン、グリピカン2(GPC2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、葉酸受容体α(FRα)、並びに、上皮成長因子受容体(EGFR)及びインターロイキン-13受容体サブユニットα2の組み合わせ(IL-13Rα2)からなる群から選択されるバインダーを含む、及び/又は、
(g)細胞は、修飾抗原受容体を含むヒトT細胞であり、該修飾抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARは、バインダーを含み、該バインダーは、EGFR及びIL-13Rα2の組み合わせを含み、及び/又は、
(h)細胞は、修飾抗原受容体を含むヒトT細胞であり、該修飾抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARは、CD2、4-1BB、ICOS及びCD27からなる群から選択される共刺激ドメインを含む、及び/又は、
(i)細胞は、修飾抗原受容体を含むヒトT細胞であり、該修飾抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARは、スイッチ受容体及び/又はドミナントネガティブ受容体を含み、該受容体は、PD1/CD28、PDL1/CD28、CTLA4/CD28、BTLA/CD28、BTLA/ICOS、TIM3/CD28、TIGIT/CD226、dnTGFβ、TGFβ/IL-12R、TGFβ/CD28、TGFβ/OX40、IFNγ/CD28、IFNγ/OX40及びIFNγ/IL-12Rからなる群より選択される、及び/又は、
(j)細胞は、修飾抗原受容体を含むヒトT細胞であり、該修飾抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり、該CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
必要な対象を治療する際に使用するための組成物であって、該組成物は、請求項10~12の何れか1項に記載の細胞を含み、場合により、
(a)該細胞は、対象にとって自己由来である。又は、
(b)該細胞は、対象にとって同種異系である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年7月26日に出願された米国仮出願第63/225,840号に対する優先権を主張し、その内容全体が特に参照により組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、VSIG3及びVSIG8並びにそれらの対応するリガンドの下流のシグナル伝達効果を調節することに向けた用途に使用するための、V-Set及び免疫グロブリンドメイン含有3(VSIG3)受容体並びにV-Set及び免疫グロブリンドメイン含有8(VSIG8)受容体のドミナントネガティブ(DN)受容体変異体並びにその製造方法の分野に関する。本開示はさらに、DNVSIG3及び/又はDNVSIG8受容体変異体を含む組み換え細胞、及び必要とする対象に細胞を投与する方法に向けられる。より具体的には、本開示は、DNVSIG3及び/又はDNVSIG8受容体変異体を含み、修飾T細胞受容体及び/又は修飾キメラ抗原受容体をさらに含む、組み換えヒト免疫細胞に関する。
【0003】
配列表に関する声明
この出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は、125400_1235_Sequence_Listing.txtである。テキストファイルは、約102kbで、2021年6月16日に作成され、EFS-Web経由で電子的に提出されている。
【背景技術】
【0004】
背景
癌免疫療法における最近の進歩により、免疫系を利用することで癌細胞を除去できることを実証している。これらの治療法のほとんどは、様々な免疫抑制シグナルをブロックするモノクローナル抗体の投与による免疫応答の誘発に依存している。しかし、内因性反応に依存すると、有毒な自己免疫副作用を回避しながら、高い治療効果を達成することが困難になる。より正確な治療のために、特定の抗原を発現する細胞を認識して細胞傷害効果を発揮するように、キメラ抗原受容体(CAR)等の修飾抗原受容体を用いてT細胞を組み換えることができる。これらの治療法の成功に対する課題は、リダイレクトされたT細胞が腫瘍床に浸潤する際に遭遇する免疫抑制的な微小環境である。
【0005】
固形腫瘍内で治療の成功を達成するには、修飾抗原受容体を有するT細胞が免疫抑制シグナルを克服する必要がある。1つのアプローチは、組み換えT細胞療法と組み合わせて、PD-1及び/又はCTLA-4等の免疫抑制経路をブロックし、遺伝子反応を増強することである。前立腺がん等の多くのがんは、免疫抑制環境を作り出す分子を分泌することが知られている。これらの免疫抑制分子に関連する経路を特定することは、最終的にこれらの免疫抑制効果をもたらすシグナル伝達を軽減する機会を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、癌免疫療法で使用される組み換えT細胞に対する免疫抑制分子の免疫抑制効果を軽減する必要性を満たすことである。このニーズは、VSIG3及び/又はVSIG8におけるシグナル伝達を軽減又は排除する、人工的に作り出されたドミナントネガティブ型のVセット及び免疫グロブリンドメイン含有3(VSIG3)及び/又はVセット及び免疫グロブリンドメイン含有8(VSIG8)を発現する組み換えT細胞の使用によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示内容の概要
本開示は一般に、野生型受容体と比較して受容体におけるシグナル伝達が破壊されるように野生型受容体が修飾されているドミナントネガティブVSIG3及びVSIG8受容体に向けられる。本開示はさらに、本明細書に記載のドミナントネガティブVSIG3及びVSIG8受容体に関連するポリヌクレオチド、ベクター、細胞、及び投与方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの態様では、本開示は、配列番号20~28の何れか1つと、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む修飾ポリペプチドに広く向けられる。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、配列番号20と少なくとも約95%の配列同一性を共有する。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、配列番号20と少なくとも約99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、配列番号20である。
【0009】
いくつかの態様では、本開示は、配列番号61~70の何れか1つと、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%の配列同一性を共有するアミノ酸配列を含む修飾ポリペプチドに広く向けられる。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、配列番号61と少なくとも約95%の配列同一性を共有する。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、配列番号61と少なくとも約99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、配列番号61である。
【0010】
いくつかの態様では、本明細書に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、シグナルペプチド配列をさらに含む。いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載のポリペプチドの何れか1つをコードするポリヌクレオチド配列に広く向けられる。いくつかの態様では、本開示は、配列番号50~59の何れか1つと、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%の配列同一性を共有する核酸配列を含むポリヌクレオチド配列に広く向けられる。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、配列番号50と少なくとも約95%の配列同一性を共有する。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、配列番号50と少なくとも約99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様では、核酸配列は、配列番号50である。
【0011】
いくつかの態様では、本開示は、配列番号72~81の何れか1つと、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%の配列同一性を共有する核酸配列を含むポリヌクレオチド配列に広く向けられる。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、配列番号72と少なくとも約95%の配列同一性を共有する。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、配列番号72と少なくとも約99%の配列同一性を共有する。いくつかの態様では、核酸配列は、配列番号72である。
【0012】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載されるポリペプチドの何れか1つ又は複数を含む組成物に広く向けられる。
【0013】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の組み換えドミナントネガティブ受容体の何れか1つをコードする、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列の何れか1つ又は複数を含むベクターに広く向けられる。
いくつかの態様では、本明細書に記載の何れか1つ又は複数のポリヌクレオチド配列は、1つ又は複数のポリペプチドに作動可能に連結される。いくつかの態様では、本明細書に記載の何れか1つ又は複数のポリヌクレオチド配列は、1つ又は複数のポリペプチドに作動可能に連結される。
【0014】
いくつかの態様では、ベクターはウイルスベクターである。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡状ウイルスベクター(foamy virus vector)、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター及び組み換えハイブリッドウイルスベクター(engineered hybrid virus vector)からなる群から選択される。いくつかの態様では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0015】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の何れか1つ又は複数のポリペプチドを含む細胞に広く向けられる。いくつかの態様では、ポリペプチドは、野生型VSIG3の活性と比較して活性が破壊されたドミナントネガティブ受容体である。いくつかの態様では、ポリペプチドは、野生型VSIG8の活性と比較して活性が破壊されたドミナントネガティブ受容体である。
【0016】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の何れか1つ又は複数のポリヌクレオチドを含む細胞に広く向けられる。いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の何れか1つ又は複数のベクターを含む細胞に広く向けられる。いくつかの態様では、細胞は、細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、動物細胞及びヒト細胞からなる群から選択される。いくつかの態様では、細胞は、ヒト細胞である。いくつかの態様では、ヒト細胞は、免疫細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は、T細胞である。
【0017】
いくつかの態様では、T細胞等の細胞は、修飾抗原受容体を含む。いくつかの態様では、修飾抗原受容体は、T細胞受容体又はキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの態様では、ドミナントネガティブ受容体は、シグナル伝達が不可能である。いくつかの態様では、ドミナントネガティブ受容体の細胞外ドメインは、その対応するリガンドに結合可能である。いくつかの態様では、対応するリガンドはVISTAである。いくつかの態様では、野生型VSIG3の発現は、細胞内で下方制御されている。いくつかの態様では、野生型VSIG8の発現は、細胞内で下方制御されている。いくつかの態様では、いくつかの態様では、野生型VSIG3及びVSIG8の発現は、細胞内で下方制御されている。
【0018】
いくつかの態様では、修飾された抗原受容体は、CARであり、CARは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ムチン1のTnグリコフォーム(TnMUC1)、メソテリン、グリピカン2(GPC2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、葉酸受容体α(FRα)、上皮成長因子受容体(EGFR)、インターロイキン-13受容体サブユニットα2(IL-13Rα2)及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるバインダーを含む。いくつかの態様では、修飾された抗原受容体はCARであり、CARは、CD2、4-1BB、ICOS及びCD27からなる群から選択される共刺激ドメイン(co-stimulatory domain)を含む。いくつかの態様では、修飾抗原受容体はCARであり、CARは、スイッチ受容体及び/又はドミナントネガティブ受容体を含み、受容体は、PD1/CD28、PDL1/CD28、CTLA4/CD28、BTLA/CD28、BTLA/ICOS、TIM3/CD28、TIGIT/CD226、dnTGFβ、TGFβ/IL-12R、TGFβ/CD28、TGFβ/OX40、IFNγ/CD28、IFNγ/OX40及びIFNγ/IL-12Rからなる群から選択される。いくつかの態様では、バインダーは、EGFR及びIL-13Rα2の組み合わせを含む。いくつかの態様では、修飾抗原受容体は、CARであり、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0019】
いくつかの態様において、本開示は、組み換えドミナントネガティブVSIG3及び/又はVSIG8受容体に対応するポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドを含む、本明細書に記載の何れか1つ又は複数の組み換え細胞を投与する方法に広く向けられ、該方法は、該細胞を含む組成物を対象(subject)に投与することを含む。
いくつかの態様では、細胞は、対象に対し自己由来(autologous)である。いくつかの態様では、細胞は、対象に対し同種異系(allogeneic)である。いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の何れか1つ又は複数のベクターを細胞に導入することを含む、修飾細胞を生成する方法に広く向けられる。
【0020】
いくつかの態様では、細胞は、細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、動物細胞及びヒト細胞からなる群から選択される。いくつかの態様では、細胞は、ヒト免疫細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は、T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、修飾抗原受容体を含む。
【0021】
いくつかの態様では、修飾抗原受容体は、T細胞受容体(TCR)又はキメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの態様では、修飾抗原受容体は、CARであり、CARは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ムチン1のTnグリコフォーム(TnMUC1)、メソテリン、グリピカン2(GPC2)、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)、葉酸受容体α(FRα)、並びに、上皮成長因子受容体(EGFR)及びインターロイキン-13受容体サブユニットα2(IL-13Rα2)の組み合わせ、からなる群から選択されるバインダーを含む。いくつかの態様では、バインダーは、EGFR及びIL-13Rα2の組み合わせを含む。
【0022】
いくつかの態様では、修飾抗原受容体は、CARであり、CARは、CD2、4-1BB、ICOS及びCD27からなる群から選択される共刺激ドメイン(co-stimulatory domain)を含む。いくつかの態様では、修飾抗原受容体はCARであり、CARは、スイッチ受容体及び/又はドミナントネガティブ受容体を含み、受容体はPD1/CD28、PDL1/CD28、CTLA4/CD28、BTLA/CD28、BTLA/ICOS、TIM3/CD28、TIGIT/CD226、dnTGFβ、TGFβ/IL-12R、TGFβ/CD28、TGFβ/OX40、IFNγ/CD28、IFNγ/OX40及びIFNγ/IL-12Rからなる群から選択される。いくつかの態様では、修飾抗原受容体は、CARであり、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0023】
上記の概要、以下の図面の説明、及び詳細な説明はいずれも例示的かつ説明的なものである。これらは、本発明のさらなる詳細を提供することを意図しているが、限定するものとして解釈されるべきではない。他の目的、利点及び新規な特徴は、本発明の以下の詳細な説明から当業者には容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、野生型VSIG3及び組み換えドミナントネガティブVSIG3(dnVSIG3)の特徴を示す。VSIG3及びdnVSIG3は、両方とも細胞膜の脂質二重層を横切り、両方とも細胞外ドメイン及び膜貫通ドメインを含む。dnVSIG3は、細胞内ドメインのほとんど又はすべてを欠いており、下流のシグナル伝達が不可能であるが、VSIG3は、下流のシグナル伝達が可能な完全な細胞内ドメインを含む。
【0025】
図2図2は、VSIG3及びdnVSIG3の特徴を示し、野生型VSIG3対切断型dnVSIG3の長さの相対的な違いを簡単に示している。
【0026】
開示の詳細な説明
I.ドミナントネガティブ変異体
ドミナントネガティブ変異体は、受容体における1つ又は複数の変異が、未修飾の受容体と比較して野生型バージョンの受容体の機能を干渉又は破壊する重要なクラスの変異を表す。
【0027】
いくつかの態様では、ドミナントネガティブ変異体は、その対応するリガンドに結合できる細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、ドミナントネガティブ変異体の細胞外ドメインは、その対応するリガンドに対する親和性において差異を示さない。
【0028】
いくつかの態様では、受容体の機能の干渉/破壊は、受容体の機能の完全な喪失をもたらす。いくつかの態様では、受容体の細胞外ドメインは、その対応するリガンド又は結合パートナーに結合することができるが、受容体のドメインの欠如又は変化のために細胞内シグナル伝達を発生することができず、従って、この変異した受容体を発現する細胞は、野生型受容体と比較して、対応する受容体リガンドの存在下では応答することができない。
【0029】
いくつかの態様では、受容体の機能の干渉/破壊は、受容体の細胞外側から受容体の細胞内側へシグナルを伝達する能力の低下をもたらす。いくつかの態様では、受容体の細胞外側から受容体の細胞内側へシグナルを伝達する能力の低下は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%の減少である。
II. VSIG3及びVSIG8
【0030】
本開示のドミナントネガティブ変異体受容体は、Vセット及び免疫グロブリンドメイン含有3(VSIG3)並びにVセット及び免疫グロブリンドメイン含有8(VSIG8)に向けられる。
【0031】
VSIG3は、T細胞活性化のVドメイン含有免疫グロブリン抑制因子(VISTA)である少なくとも1つの結合パートナー又はリガンドを有することが知られている。VSIG3/VISTA経路は、ヒトT細胞の機能を阻害できると報告されている。VSIG3は、T細胞受容体シグナル伝達の存在下でのヒトT細胞増殖の阻害に関連しており、さらに、IFN-γ、IL-2、IL-17、CCL5/Rantes、CCL3/MIP-1α及びCXCL11/I-TACを含むヒトT細胞におけるサイトカイン及びケモカイン産生の大幅な減少にも関連している。Wang et al.,Immunology156(1):74-85(2019)を参照されたい。Wangは、VSIG3をVISTAのリガンドとして説明しているが、VSIG3は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含む膜貫通受容体であると考えられている。
【0032】
dnVSIG3受容体は、T細胞上で発現すると、主に腫瘍細胞及び骨髄細胞上で発現されるチェックポイント阻害剤であるVISTAに関与し、VSIG3-VISTAライゲーションによって引き起こされる免疫抑制シグナル伝達を阻止する。
【0033】
野生型ヒトVSIG3アミノ酸配列は、Uniprot Accession Q5DX21に関連付けられている。このアミノ酸配列は431個のアミノ酸(配列番号1)からなる。この野生型ヒトVSIG3をコードする対応する核酸配列、コード配列は、1,296ヌクレオチド(配列番号31)からなる。配列番号1のアミノ酸配列は、シグナルペプチド(1~22位)、細胞外ドメイン(23~241位)、膜貫通ドメイン(242~262位)、及び細胞内ドメイン(263~431位)を含む。野生型ヒトVSIG3には、天然に存在するアイソフォーム(isoforms)又はスプライスバリアント(splice variants)と呼ばれる18個の追加バリアントを持つ。VSIG3配列とドミナントネガティブVSIG3(DNVSIG3)配列については、以下の表で説明する。
【0034】
いくつかの態様では、ドミナントネガティブVSIG3は、野生型と比較して、以下の変異を含む。
【0035】
(1)細胞内ドメインのN末端側又はC末端側から、少なくとも約5残基、少なくとも約10残基、少なくとも約15残基、少なくとも約20残基、少なくとも約25残基、少なくとも約30残基、少なくとも約35残基、少なくとも約40残基、少なくとも約45残基、少なくとも約50残基、少なくとも約55残基、少なくとも約60残基、少なくとも約65残基、少なくとも約70残基、少なくとも約75残基、少なくとも約80残基、少なくとも約85残基、少なくとも約90残基、少なくとも約95残基、少なくとも約100残基、少なくとも約105残基、少なくとも約110残基、少なくとも約115残基、少なくとも約120残基、少なくとも約125残基、少なくとも約130残基、少なくとも約135残基、少なくとも約140残基、少なくとも約145残基、少なくとも約150残基、少なくとも約155残基、少なくとも約160残基又は少なくとも約165残基、又は、これらの値の何れかの間に入る任意の数の残基、例えば、約7残基、約52残基、約93残基等の切断(truncation)。
【0036】
(2)細胞内ドメインのN末端側又はC末端側から、約5残基、約10残基、約15残基、約20残基、約25残基、約30残基、約35残基、約40残基、約45残基、約50残基、
約55残基、約60残基、約65残基、約70残基、約75残基、約80残基、約85残基、約90残基、約95残基、約100残基、約105残基、約110残基、約115残基、約120残基、約125残基、約130残基、約135残基、約140残基、約145残基、約150残基、約155残基、約160残基又は約165残基、又は、これらの値の何れかの間に入る任意の数の残基、例えば、約7残基、約52残基、約93残基等の切断(truncation)。
【0037】
(3)細胞内ドメイン内の、約5の連続残基(consecutive residues)、約10の連続残基、約15の連続残基、約20の連続残基、約25の連続残基、約30の連続残基、約35の連続残基、約40の連続残基、約45の連続残基、約50の連続残基、約55の連続残基、約60の連続残基、約65の連続残基、約70の連続残基、約75の連続残基、約80の連続残基、約85の連続残基、約90の連続残基、約95の連続残基、約100の連続残基、約105の連続残基、約110の連続残基、約115の連続残基、約120の連続残基、約125の連続残基、約130の連続残基、約135の連続残基、約140の連続残基、約145の連続残基、約150の連続残基、約155の連続残基、約160の連続残基又は約165の連続残基、又は、これらの値の何れかの間に入る任意の数の残基、例えば、約7残基、約52残基、約93残基等の欠失(deletion)。
【0038】
(4)細胞内ドメイン全体の欠失。
【0039】
(5)得られる細胞内ドメインが細胞内ドメインのN末端部分の約1~約30残基からなるような、細胞内ドメインのC末端の切断。
いくつかの態様では、得られる細胞内ドメインは、細胞内ドメインのN末端部分の、約5~約30残基、約10~約30残基、約15~約30残基、約20~約30残基、約25~約30残基、約5~約25残基、約10~約25残基、約15~約25残基、約20~約25残基、約5~約20残基、約10~約20残基、約15~約20残基、約5~約15残基、約10~約15残基又は約5~約10残基からなる。
【0040】
(6)約1~約10、約2~約10、約3~約10、約4~約10、約5~約10、約6~約10、約7~約10、約8~約10、約2~約8、約2~約6、約2~約5、約2~約4、約4~約6、約4~約5、約1~約5、約2~約3又は約1~約2残基間の、膜貫通ドメインからの欠失。
【0041】
いくつかの態様では、(1)~(5)の何れか1つの変異は、(6)の変異とさらに組み合わされる。
【0042】
いくつかの態様では、dnVSIG3受容体の何れか1つをコードする任意のポリヌクレオチド配列が企図される(contemplated)。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。コドン最適化ポリヌクレオチド配列は、非コドン最適化ポリヌクレオチド配列と同じアミノ酸配列をコードする。
【表1-1】
【表1-2】
【0043】
VSIG8は、IL-2、IFN-γ、IL-17、IL-6、及びIL-19等のサイトカイン及びMCP-1、MCP-10、IP-10等のケモカイン及び抗CD3活性化ヒトCD3T細胞におけるIGFBP3及びRBP4等の他のタンパク質の産生の阻害に関与すると記載されている。さらに、T細胞受容体シグナル伝達の存在下でCD4及びCD8T細胞の両方でのIFN-γ及びIL-2産生を大幅に減少させること及び抗CD3誘発ヒトT細胞増殖を顕著に抑制することが記載されている。VSIG8はさらに、ナイーブCD4陽性T細胞のTh1細胞への変換の大幅な減少と関連している。Wang et al.,J.Immunol.200(1 Supplement)47.4(2018)を参照されたい。VSIG3は、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含む膜貫通受容体であり、VISTAとの結合パートナー(リガンド)のようなものと考えられている。VISTA及びVSIG8/dnVSIG8の間の相互作用は、VSIG3について上で説明したのと同じ方法で動作すると考えられている。
【0044】
野生型ヒトVSIG8アミノ酸配列は、414アミノ酸(配列番号60)からなる。野生型ヒトVSIG8をコードする核酸配列、コード配列は、1245ヌクレオチド(配列番号71)からなる。配列番号60のアミノ酸配列は、シグナルペプチド(1~21位)、細胞外ドメイン(22~263位)、膜貫通ドメイン(264~284位)、及び細胞内ドメイン(285~414位)を含む。野生型ヒトVSIG8タンパク質は、Uniprot Accession P0DPA2に関連付けられている。
【0045】
いくつかの態様では、ドミナントネガティブVSIG8は、野生型と比較して、以下の変異を含む:
【0046】
(1)細胞内ドメインのN末端側又はC末端側から、少なくとも約5、少なくとも約10、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、少なくとも約30、少なくとも約35、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約65残基、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約80、少なくとも約85、少なくとも約90、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約105、少なくとも約110、少なくとも約115、少なくとも約120、少なくとも約125又は少なくとも約130残基、又は、これらの値の何れかの間に入る任意の数の残基、例えば、約7残基、約52残基、約93残基等の切断。
【0047】
(2)細胞内ドメインのN末端側又はC末端側からの約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125又は約130残基、又は、これらの値の何れかの間に入る任意の数の残基、例えば、約7残基、約52残基、約93残基等の切断。
【0048】
(3)細胞内ドメイン内の約5、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、約105、約110、約115、約120、約125又は約130の連続残基、又は、これらの値の何れかの間に入る任意の数の連続残基、例えば、約7残基、約52残基、約93残基等の欠失。
【0049】
(4)細胞内ドメイン全体の欠失。
【0050】
(5)得られる細胞内ドメインが細胞内ドメインのN末端部分の約1~約30残基からなるような、細胞内ドメインのC末端の切断。
いくつかの態様では、得られる細胞内ドメインは、細胞内ドメインのN末端部分の、約5~約30残基、約10~約30残基、約15~約30残基、約20~約30残基、約25~約30残基、約5~約25残基、約10~約25残基、約15~約25残基、約20~約25残基、約5~約20残基、約10~約20残基、約15~約20残基、約5~約15残基、約10~約15残基又は約5~約10残基からなる。
【0051】
(6)約1~約10、約2~約10、約3~約10、約4~約10、約5~約10、約6~約10、約7~約10、約8~約10、約2~約8、約2~約6、約2~約5、約2~約4、約4~約6、約4~約5、約1~約5、約2~約3又は約1~約2残基間の、膜貫通ドメインからの欠失。
【0052】
いくつかの態様では、(1)~(5)の何れか1つの変異は、(6)の変異とさらに組み合わされる。
【0053】
VSIG8配列及びドミナントネガティブVSIG8(DNVSIG8)配列は、上記の表1に記載されている。
【0054】
いくつかの態様では、dnVSIG3受容体の何れか1つをコードする任意のポリヌクレオチド配列が企図される。いくつかの態様では、ポリヌクレオチド配列はコドン最適化されている。コドン最適化ポリヌクレオチド配列は、非コドン最適化ポリヌクレオチド配列と同じアミノ酸配列をコードする。
III.dnVSIG3及び/又はdnVSIG8の影響
【0055】
いくつかの態様において、dnVSIG3及び/又はdnVSIG8を発現する細胞は、対応するVSIG3又はVSIG8の野生型と比較して、細胞が、dnVSIG3及び/又はdnVSIG8の細胞外ドメインと結合する同族リガンドの存在下にある場合に、細胞によって産生される1つ又は複数のサイトカインの量の減少を示す。
【0056】
いくつかの態様では、1つ又は複数のサイトカインはインターロイキンである。いくつかの態様では、インターロイキンは、IL-1α、IL-1β、IL-1ra(アンタゴニスト)、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL14、IL-15、IL-16、IL-17A、IL-17B、EL-17C、IL-17D、IL-17E、IL-17F、IL-18、IL-19、IL-20、IL-21、IL-22、IL-23、IL-24、IL-25、IL-26、IL-27、IL-28A/B、IL-29、IL-30、IL-31、IL-32、IL-33、IL-35から選択され得る。
【0057】
いくつかの態様では、サイトカインは、TNFファミリーから選択される、例えば、次のリストから選択される1つ又は複数のサイトカインであり得る:TNF、特にTNFα、LTα、LTβ、LIGHT、TWEAK、APRIL、BAFF、TL1A、GITRL、OX40L、CD40L(CD154)、FASL、CD27L、CD30L、4-1BBL、TRAIL、RANKリガンド。好ましいサイトカインのさらなる例は、次のリストから選択され得る:FLT3リガンド、G-CSF、GM-CSF、IFNα/β/ω、IFNγ、LIF、M-CSF、MIF、OSM、幹細胞因子、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、TSLPリガンド。
【0058】
いくつかの態様において、dnVSIG3及び/又はdnVSIG8を発現する細胞は、対応するVSIG3又はVSIG8の野生型と比較して、細胞がdnVSIG3及び/又はdnVSIG8の細胞外ドメインと結合する同族リガンドの存在下にある場合に、細胞によって産生される1つ又は複数のケモカインの量の減少を示す。
【0059】
いくつかの態様では、1つ又は複数のケモカインは、CCL1、CCL11、CCL12、CCL13、CCL14、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL2、CCL20、CCL21、CCL22、CCL24、CCL25、CCL26、CCL27、CCL28、CCL3、CCL4、CCL5、CCL6、CCL7、CCL8、CCL9、CX3CL1、CXCL1、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCL14、CXCL15、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CXCL6、CXCL7、CXCL8、CXCL9、XCL1及びXCL2から選択され得る。
【0060】
いくつかの態様では、細胞がdnVSIG3及び/又はdnVSIG8の細胞外ドメインと結合する同族リガンドの存在下にある場合に、dnVSIG3及び/又はdnVSIG8を発現する細胞によって産生される1つ又は複数のサイトカイン及び/又はケモカインの量の減少は、少なくとも約の減少である。
【0061】
いくつかの態様では、未修飾のVSIG3又はVSIG8と比較した、任意の1つ又は複数のサイトカイン及び/又は任意の1つ又は複数のケモカインの量の減少は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%又は少なくとも約95%の減少である。
【0062】
いくつかの態様では、未修飾のVSIG3又はVSIG8と比較した、任意の1つ又は複数のサイトカイン及び/又は任意の1つ又は複数のケモカインの量の減少は、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%又は約95%の減少である。
IV.ベクターと細胞
【0063】
本開示の核酸は、発現ベクター及び/又はクローニングベクター内に存在し得る。
発現ベクターは、選択マーカー、複製起点及びベクターの複製及び/又は維持を提供する他の特徴を含むことができる。適切な発現ベクターには、例えば、プラスミド、ウイルスベクター等が含まれる。多数の適切なベクター及びプロモーターが当業者に知られており、多くは、対象の組換え構築物を生成するために市販されている。次のベクターは例として提供されており、決して限定するものとして解釈されるべきではない:細菌:pBs、ファージスクリプト、PsiX174、pBluescript SK、pBs KS、pNH8a、pNH16a、pNH18a、pNH46a(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ、USA);pTrc99A、pKK223-3、pKK233-3、pDR540及びpRIT5(Pharmacia、Uppsala、Sweden)。真核生物:pWLneo、pSV2cat、pOG44、PXR1、pSG(Stratagene)、pSVK3、pBPV、pMSG及びpSVL(Pharmacia)。
【0064】
発現ベクターは一般に、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供するために、プロモーター配列の近くに位置する便利な制限部位を有する。発現宿主内で機能する選択マーカーが存在してもよい。
適切な発現ベクターには、これに限定されないが、
ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、アデノウイルスに基づくウイルスベクター)(例えば、Li et al.,Invest.Opthalmol.Vis.Sci.(1994)35:2543-2549、Borras et al.,Gene Ther.(1999)6:515-524、Li and Davidson,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1995)92:7700-7704、Sakamoto et al.,H.Gene Ther.(1999)5:1088-1097、国際公開第94/12649号、国際公開第93/03769号、国際公開第93/19191号、国際公開第94/28938号、国際公開第95/11984号及び国際公開第95/00655号、を参照されたい。)、
アデノ随伴ウイルス(例えば、Ali et al.,Hum.Gene Ther.(1998)9:81-86、Flannery et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1997)94:6916-6921、Bennett et al.,Invest.Opthalmol.Vis.Sci.(1997)38:2857-2863、Jomary et al.,Gene Ther.(1997)4:683 690、Rolling et al.,Hum.Gene Ther.(1999)10:641-648、Ali et al.,Hum.Mol.Genet.(1996)5:591-594、Srivastava,国際公開第93/09239号、,Samulski et al.,J.Vir.(1989)63:3822-3828、Mendelson et al.,Virol.(1988)166:154-165、及び、Flotte et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1993)90:10613-10617、を参照されたい。)、
SV40、単純ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、Miyoshi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1997)94:10319-23;、Takahashi et al.,J. Virol.(1999)73:7812-7816、を参照されたい。)、
レトロウイルスベクター(例えば、マウス白血病ウイルス、脾臓壊死ウイルス、並びに、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、鳥白血病ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、骨髄増殖性肉腫ウイルス及び乳腺腫瘍ウイルス等のレトロウイルス由来のベクター);等、が挙げられる。
【0065】
使用に適した追加の発現ベクターは、例えば、限定されないが、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、組み換えハイブリッドウイルスベクター、トランスポゾン媒介ベクター等、である。ウイルスベクター技術は、当該技術分野で周知であり、例えば、Sambrook et al.,2012,Molecular Cloning、A Laboratory Manual,volumes1-4,Cold Spring Harbor Press,NY、及び他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスには、これらに限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス及びレンチウイルスが含まれる。
【0066】
一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生物において機能する複製起点、プロモーター配列、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位及び1つ又は複数の選択マーカーを含む(例えば、国際公開第01/96584号、国際公開第01/29058号、国際公開第01/29058号及び米国特許第6,326,193号)。
【0067】
いくつかの実施形態では、発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)を使用して、ドミナントネガティブ受容体を免疫細胞又はその前駆体(例えば、T細胞)に導入してもよい。従って、本発明の発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、ドミナントネガティブ受容体をコードする核酸を含み得る。いくつかの実施形態では、発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、その中にコードされているドミナントネガティブ受容体の機能的発現を助ける追加の要素を含むことになる。いくつかの実施形態では、ドミナントネガティブ受容体をコードする核酸を含む発現ベクターは、哺乳類プロモーターをさらに含む。一実施形態では、ベクターは伸長因子-1αプロモーター(EF-1αプロモーター)をさらに含む。EF-1αプロモーターの使用は、下流の導入遺伝子(例えば、ドミナントネガティブ受容体をコードする核酸配列)の発現効率を高める可能性がある。生理学的プロモーター(例えば、EF-1αプロモーター)は、組み込みを介した遺伝毒性を誘導する可能性が低く、幹細胞を形質転換するレトロウイルスベクターの能力を無効する可能性がある。ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)での使用に適した他の生理学的プロモーターは、当業者に知られており、本発明のベクターに組み込むことができる。いくつかの実施形態では、ベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、力価及び遺伝子発現を改善し得る非必須シス作用配列(non-requisite cis acting sequence)をさらに含む。非必須シス作用配列の1つの非限定的な例は、効率的な逆転写及び核インポート(nuclear import)にとって重要である中央ポリプリントラクト(central polypurine tract)及び中央終結配列(central termination sequence)(cPPT/CTS)である。他の非必須シス作用配列は当業者に知られており、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、ベクターは、転写後調節エレメント(posttranscriptional regulatory element)をさらに含む。転写後調節エレメントは、RNA翻訳を改善し、導入遺伝子発現を改善し、RNA転写物を安定化させる可能性がある。転写後調節エレメントの一例は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)である。従って、いくつかの実施形態では、本発明のベクターは、WPRE配列をさらに含む。様々な転写後調節エレメントは、当業者に知られており、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に組み込むことができる。本発明のベクターは、RNA輸送のためのrev応答エレメント(RRE)、パッケージング配列、及び5’及び3’長末端リピート(LTRs)等の追加のエレメントをさらに含み得る。「長末端反復(long terminal repeat)」又は「LTR」という用語は、U3、R及びU5領域を含むレトロウイルスDNAの末端に位置する塩基対のドメインを指す。LTRは一般に、レトロウイルス遺伝子の発現(例えば、遺伝子転写物の促進、開始及びポリアデニル化)及びウイルス複製に必要な機能を提供する。一実施形態では、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、3’U3欠失LTRを含む。従って、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、導入遺伝子の機能的発現の効率を高めるために、本明細書に記載のエレメントの任意の組み合わせを含み得る。例えば、本発明のベクター(例えば、レンチウイルスベクター)は、ドミナントネガティブ受容体をコードする核酸に加えて、WPRE配列、cPPT配列、RRE配列、5’LTR、3’U3欠失LTR’を含み得る。
【0068】
本発明のベクターは、自己不活化(self-inactivating)ベクターであってもよい。本明細書で使用する場合、用語「自己不活化ベクター」は、3’LTRエンハンサープロモーター領域(U3領域)が(例えば、欠失又は置換によって)修飾されているベクターを指す。自己不活化ベクターは、ウイルス複製の最初のラウンド以降のウイルス転写を妨げ得る。結果、自己不活性化ベクターは、一度だけ感染して宿主ゲノム(例えば、哺乳類ゲノム)に組み込まれることができ、それ以上通過することはできない。従って、自己不活化ベクターは、複製能力のあるウイルスを作成するリスクを大幅に軽減し得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明の核酸は、RNA、例えばインビトロ合成RNAであってもよい。RNAのインビトロ合成方法は、当業者に知られており、任意の既知の方法を使用して、本開示のドミナントネガティブ受容体をコードする配列を含むRNAを合成することができる。RNAを宿主細胞に導入する方法は、当該技術分野で知られている。例えば、Zhao et al.Cancer Res.(2010)15:9053を参照されたい。本開示のドミナントネガティブ受容体をコードするヌクレオチド配列を含むRNAの宿主細胞への導入は、インビトロ、エクスビボ、又はインビボで行うことができる。例えば、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球等)に、本開示のドミナントネガティブ受容体をコードするヌクレオチド配列を含むRNAをインビトロ又はエクスビボでエレクトロポレーションする(electroporated)ことができる。
【0070】
ポリペプチド又はその一部の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターは、ウイルスベクターを介してトランスフェクト(transfected)又は感染しようとしている細胞の集団からの発現細胞の同定及び選択を容易にするために、選択可能なマーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子又はその両方を含んでもよい。いくつかの実施形態では、選択マーカーは、DNAの別個の部分上に担持され、同時トランスフェクション手順(co-transfection procedure)で使用され得る。選択可能なマーカー及びレポーター遺伝子の両方には、宿主細胞での発現を可能にする適切な調節配列が隣接していてもよい。有用な選択マーカーには、これらに限定されないが、抗生物質耐性遺伝子が含まれる。
【0071】
レポーター遺伝子は、潜在的にトランスフェクトされた細胞を同定するため及び調節配列の機能を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物又は組織には存在又は発現されず、その発現が何らかの容易に検出可能な特性、例えば酵素活性によって示されるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の適切な時点で評価される。適切なレポーター遺伝子には、限定されないが、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌アルカリホスファターゼ又は緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードする遺伝子が含まれ得る(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters479:79-82)。
【0072】
いくつかの態様では、細胞は、dnVSIG3及び/又はdnVSIG8を含む。いくつかの態様では、細胞は、dnVSIG3及び/又はdnVSIG8をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの態様では、細胞は、dnVSIG3及び/又はdnVSIG8をコードするポリヌクレオチドをさらに含むベクターを含む。いくつかの態様では、細胞は、dnVSIG3及び/又はdnVSIG8を発現する。
【0073】
いくつかの態様では、本開示の細胞には、哺乳動物細胞又は昆虫細胞等の高等真核細胞が含まれる。いくつかの態様では、本開示の細胞には、酵母細胞等の下等真核細胞が含まれる。いくつかの態様では、本開示の細胞には、原核細胞が含まれる。いくつかの態様では、本開示の細胞には、細菌細胞、真菌細胞、酵母細胞、植物細胞、動物細胞及びヒト細胞が含まれる。
【0074】
いくつかの態様では、ヒト細胞は免疫細胞である。いくつかの態様では、免疫細胞は、T細胞、例えば、CD8陽性T細胞(例えば、CD8陽性ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞又はエフェクターメモリーT細胞)、CD4陽性T細胞、ナチュラルキラーT細胞(例えば、NKT細胞)、制御性T細胞(Treg)、幹細胞メモリーT細胞、リンパ前駆細胞、造血幹細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)又は樹状細胞である。いくつかの態様では、細胞は、単球又は顆粒球、例えば、骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球及び/又は好塩基球である。いくつかの態様では、細胞は、人工多能性幹(iPS)細胞、iPS細胞由来の細胞、例えば、対象から生成され、変化するように操作され(例えば、変異を誘導する)若しくは1つ又は複数の標的遺伝子の発現を操作され、例えば、T細胞、例えば、CD8陽性T細胞(例えば、CD8陽性ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞又はエフェクターメモリーT細胞)、CD4陽性T細胞、幹細胞メモリーT細胞、リンパ前駆細胞、又は造血幹細胞に分化されているiPS細胞である。
【0075】
いくつかの態様では、細胞には、T細胞又は他の細胞型の1つ又は複数のサブセット、例えば、全T細胞集団、CD4陽性細胞、CD8陽性細胞及び機能、活性化状態、成熟度、分化、拡大、再循環、局在化及び/又は持続能力の可能性、抗原特異性、抗原受容体の種類、特定の器官又は区画における存在、マーカー又はサイトカイン分泌プロファイル及び/又は分化の程度、によって定義されるそれらの部分集団が含まれる。T細胞及び/又はCD4陽性及び/又はCD8陽性T細胞のサブタイプ及びサブ集団の中には、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、メモリーT細胞及びそれらのサブタイプである、幹細胞メモリーT(TSCM)、セントラルメモリーT(TCM)、エフェクターメモリーT(TEM)若しくは最終分化エフェクターメモリーT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MATT)細胞、自然発生的及び適応制御性T(Treg)細胞、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞等のヘルパーT細胞、α/βT細胞、δ/γT細胞がある。いくつかの態様では、当該技術分野で利用可能な任意の数のT細胞株を使用することができる。
【0076】
いくつかの態様では、本開示の方法は、対象から免疫細胞を単離すること、免疫細胞を調製すること、処理すること、培養すること、及び/又は組み換えることを含む。いくつかの態様では、組み換え細胞の調製には、1つ又は複数の培養及び/又は調製ステップが含まれる。記載されるような組み換え用の細胞は、生物学的サンプル、例えば、対象から得られるか又は対象に由来するサンプル等のサンプルから単離され得る。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患若しくは症状を有する対象又は細胞療法を必要とする対象、又は、細胞療法が施される対象である。いくつかの態様における対象は、細胞が単離、処理及び/又は組み換えられる養子細胞療法等の特定の治療的介入を必要とするヒトである。従って、いくつかの態様における細胞は、初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。サンプルには、対象から直接採取された組織、体液、及びその他のサンプル、並びに、分離、遠心分離、遺伝子組み換え(例えば、ウイルスベクターによる形質導入)、洗浄及び/又はインキュベーション等の1つ又は複数の処理ステップから得られるサンプルが含まれる。生物学的サンプルは、生物学的供給源から直接得られたサンプル、又は処理されたサンプルであり得る。生体サンプルには、これらに限定されないが、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿及び汗等の体液、組織及び器官サンプル、それらに由来する処理サンプルを含む、が挙げられる。
【0077】
いくつかの態様では、細胞が由来するか又は単離されるサンプルは、血液若しくは血液由来のサンプルであるか、又は、アフェレーシス若しくは白血球アフェレーシス生成物であるか、又はそれらに由来する。サンプルの例としては、全血、末梢血単核球(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺若しくは他の器官及び/又はそれらに由来する細胞が挙げられる。サンプルには、細胞療法、例えば、養子細胞療法の場合、自己及び同種異系源由来のサンプルが含まれる。
V.キメラ抗原受容体(CAR)及び修飾T細胞受容体
【0078】
いくつかの態様では、本出願の細胞は、1つ又は複数のキメラ抗原受容体(CAR)を発現する修飾T細胞である。いくつかの態様では、本出願の細胞は、1つ又は複数の修飾T細胞受容体(TCR)を発現する修飾T細胞である。
【0079】
いくつかの態様では、CAR又はTCRは、1つ又は複数の腫瘍抗原に結合する結合ドメインを含む。いくつかの態様では、腫瘍抗原は、5T4、707-AP、9D7、AFP、AlbZIP、HPG1、α-5-β-1-インテグリン、α-5-β-6-インテグリン、α-アクチニン-4/m、α-メチルアシル-コエンザイムAラセマーゼ、ART-4、ARTC1/m、B7H4、BAGE-1、BCL-2、bcr/abl、β-カテニン/m、BING-4、BRCA1/m、BRCA2/m、CA15-3/CA27-29、CA19-9、CA72-4、CA125、カルレティキュリン、CAMEL、CASP-8/m、カテプシンB、カテプシンL、CD19、CD20、CD22、CD25、CDE30、CD33、CD4、CD52、CD55、CD56、CD80、CDC27/m、CDK4/m、CDKN2A/m、CEA、CLCA2、CML28、CML66、COA-1/m、コアクトシン様タンパク質、コラーゲンXXIII、COX-2、CT-9/BRD6、Cten、サイクリンB1、サイクリンD1、cyp-B、CYPB1、DAM-10、DAM-6、DEK-CAN、EFTUD2/m、EGFR、ELF2/m、EMPRIN、EpCam、EphA2、EphA3、ErbB3、ETV6-AML1、EZH2、FAP、FGF-5、FN、FRα、フラウ-1、G250、GAGE-1、GAGE-2、GAGE-3、GAGE-4、GAGE-5、GAGE-6、GAGE7b、GAGE-8、GDEP、GnT-V、gp100、GPC2、GPC3、GPNMB/m、HAGE、HAST-2、ヘプシン、Her2/neu、HERV-K-MEL、HLA-A*0201-R171、HLA-A11/m、HLA-A2/m、HNE、ホメオボックスNKX3.1、HOM-TES-14/SCP-1、HOM-TES-85、HPV-E6、HPV-E7、HSP70-2M、HST-2、hTERT、iCE、IGF-1R、IL-13Rα2、IL-2R、IL-5、未熟ラミニン受容体、カリクレイン-2、カリクレイン-4、Ki67、KIAA0205、KIAA0205/m、KK-LC-1、K-Ras/m、LAGE-A1、LDLR-FUT、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A12、MAGE-B1、MAGE-B2、MAGE-B3、MAGE-B4、MAGE-B5、MAGE-B6、MAGE-B10、MAGE-B16、MAGE-B17、MAGE-C1、MAGE-C2、MAGE-C3、MAGE-D1、MAGE-D2、MAGE-D4、MAGE-E1、MAGE-E2、MAGE-F1、MAGE-H1、MAGEL2、マンマグロビンA、MART-1/メラン-A、MART-2、MART-2/m、マトリックスタンパク質22、MC1R、M-CSF、ME1/m、メソテリン、MG50/PXDN、MMP11、MN/CAIX抗原、MRP-3、MUC-1、TnMuc-1、MUC-2、MUM-1/m、MUM-2/m、MUM-3/m、ミオシンクラスI/m、NA88-A、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ-V、Neo-PAP、Neo-PAP/m、NFYC/m、NGEP、NMP22、NPM/ALK、N-Ras/m、NSE、NY-ESO-B、NY-ESO-1、OA1、OFA-iLRP、OGT、OGT/m、OS-9、OS-9/m、オステオカルシン、オステオポンチン、p15、p190マイナーbcr-abl、p53、p53/m、PAGE-4、PAI-1、PAI-2、PAP、PART-1、PATE、PDEF、Pim-1-キナーゼ、Pin-1、Pml/PARα、POTE、PRAME、PRDX5/m、プロステイン、プロテイナーゼ-3、PSA、PSCA、PSGR、PSM、PSMA、PTPRK/m、RAGE-1、RBAF600/m、RHAMM/CD168、RU1、RU2、S-100、SAGE、SART-1、SART-2、SART-3、SCC、SIRT2/m、Sp17、SSX-1、SSX-2/HOM-MEL-40、SSX-4、STAMP-1、STEAP-1、サバイビン、サバイビン-2B、SYT-SSX-1、SYT-SSX-2、TA-90、TAG-72、TARP、TEL-AML1、TGFβ、TGFβRll、TGM-4、TPI/m、TRAG-3、TRG、TRP-1、TRP-2/6b、TRP/INT2、TRP-p8、チロシナーゼ、UPA、VEGFR1、VEGFR-2/FLK-1及びWT1、から選択される。
いくつかの態様では、CARは、上記抗原の2つ又は少なくとも2つと結合する1つ又は複数の結合ドメインを含む。少なくとも米国特許公開2019/0275083A1号を参照されたい。
【0080】
いくつかの態様では、腫瘍抗原は、好ましくは、p53、CA125、EGFR、Her2/neu、hTERT、PAP、MAGE-A1、MAGE-A3、メソテリン、MUC-1、GP100、MART-1、チロシナーゼ、PSA、PSCA、PSMA、STEAP-1、VEGF、VEGFR1、VEGFR2、Ras、CEA又はWT1からなる、より好ましくはPAP、MAGE-A3、WT1及びMUC-1からなる群から選択される。
【0081】
いくつかの態様では、CARは、共刺激ドメインを含む。いくつかの態様では、共刺激ドメインは、CD2、4-1BB、ICOS及びCD27から選択される。いくつかの態様では、CARは、CD2、4-1BB、ICOS及びCD27から選択される2つの共刺激ドメインを含む。いくつかの態様では、CARは、1つ又は複数のシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含む。
【0082】
いくつかの態様では、CARは、1つ又は複数のスイッチ受容体を含む。いくつかの態様では、CARは、dnVSIG3又はdnVSIG8ではない第2又は第3のドミナントネガティブ受容体を含む。いくつかの態様では、受容体は、PD1/CD28、PDL1/CD28、CTLA4/CD28、BTLA/CD28、BTLA/ICOS、TIM3/CD28、TIGIT/CD226、dnTGFβ、TGFβ/IL-12R、TGFβ/CD28、TGFβ/OX40、IFNγ/CD28、IFNγ/OX40及びIFNγ/IL-12Rからなる群から選択される。
VI.修飾免疫細胞の産生
【0083】
本開示は、腫瘍免疫療法、例えば、養子免疫療法のための修飾免疫細胞又はその前駆体(例えば、T細胞)を産生又は生成する方法を提供する。細胞は一般に、1つ又は複数のドミナントネガティブ受容体をコードする1つ又は複数の核酸を導入することによって組み換えられる。いくつかの態様では、1つ又は複数のドミナントネガティブ受容体をコードする1つ又は複数の核酸は、1つ若しくは複数のCAR又は1つ若しくは複数のTCRを発現するようにすでに修飾されているT細胞に導入される。
【0084】
いくつかの実施形態では、対象の1つ又は複数のドミナントネガティブ受容体をコードする1つ又は複数の核酸が、発現ベクターによって細胞に導入される。本発明の対象のドミナントネガティブ受容体をコードする核酸配列を含む発現ベクターが本明細書で提供される。適切な発現ベクターとしては、レンチウイルスベクター、ガンマレトロウイルスベクター、泡状ウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、組み換えハイブリッドウイルス、裸のDNA(限定されるわけではないが、トランスポゾン媒介ベクター(transposon mediated vectors)、例えば、Sleeping Beauty、Piggybak及びインテグラーゼ、例えば、Phi31)、が挙げられる。他の適切な発現ベクターは本明細書に記載されている。
【0085】
本開示の核酸を含む発現ベクターは、当業者に知られている任意の手段によって宿主細胞に導入することができる。発現ベクターには、必要に応じてトランスフェクション用のウイルス配列が含まれていてもよい。あるいは、発現ベクターは、融合、エレクトロポレーション、バイオリスティック、トランスフェクション、リポフェクション等によって導入され得る。宿主細胞は、発現ベクターの導入前に培養物中で増殖及び拡大され、続いてベクターの導入及び組み込みのための適切な処理が行われてもよい。次いで、宿主細胞を増殖させ、ベクター内に存在するマーカーによってスクリーニングすることができる。使用され得る様々なマーカーは、当該技術分野で知られており、hprt、ネオマイシン耐性、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシン耐性等が含まれ得る。本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株(cell line)」、及び「細胞培養(cell culture)」という用語は、互換的に使用され得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、免疫細胞又はその前駆体、例えば、T細胞、NK細胞、又はNKT細胞である。
【0086】
本開示はまた、安定して発現された本開示の1つ又は複数のドミナントネガティブ受容体を含む遺伝子組み換え細胞を提供する。いくつかの実施形態では、遺伝子組み換え細胞は、遺伝子組み換えTリンパ球(T細胞)、ナイーブT細胞(TN)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリー細胞(TEM))、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)及び治療上適切な子孫を生み出すことができるマクロファージである。一実施形態では、遺伝子組み換え細胞は、自己細胞である。
【0087】
修飾細胞(例えば、主題のドミナントネガティブ受容体を含む)は、本開示の核酸を含む発現ベクターで宿主細胞を安定にトランスフェクトすることによって産生され得る。本開示の修飾細胞を生成するさらなる方法には、これらに限定されないが、化学的形質転換法(例えば、リン酸カルシウム、デンドリマー、リポソーム及び/又はカチオン性ポリマーを使用する)、非化学的形質転換法(例えば、エレクトロポレーション、光形質転換、遺伝子電気伝達及び/又は流体力学的送達)及び/又は粒子ベースの方法(例えば、インパレフェクション、遺伝子銃の使用及び/又はマグネトフェクション)が挙げられる。本開示の主題のドミナントネガティブ受容体を発現するトランスフェクトされた細胞は、エクスビボで増殖され得る。
【0088】
発現ベクターを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等が挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当該技術分野でよく知られている。例えば、Sambrook et al.(2001),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York.を参照されたい。発現ベクターを宿主細胞に導入するための化学的方法には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ等のコロイド分散系、及び、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系が含まれる。
【0089】
使用に適した脂質は、商業的供給源から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、ミズーリ州セントルイスのSigma社から入手でき、リン酸ジセチル(「DCP」)は、K&K Laboratories社(ニューヨーク州プレインビュー)から入手でき、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behring社から入手でき、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(バーミンガム、アラバマ州)から入手できる。クロロホルム又はクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20℃で保存できる。クロロホルムは、メタノールよりも蒸発しやすいため、唯一の溶媒として使用できる。「リポソーム」は、密閉された脂質二重層又は凝集体の生成によって形成される、様々な単一及び多重ラメラ膜脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜と内部水性媒体を備えた小胞構造を有するとして特徴づけられる。多重ラメラリポソームには、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。リン脂質が過剰な水溶液に懸濁すると、それらは自発的に形成される。脂質成分は、閉じた構造を形成する前に自己再配列を受け、脂質二重層の間に水及び溶解溶質を捕捉する(Ghosh et al.,1991 Glycobiology 5:505-10)。溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造をとることもあれば、単に脂質分子の不均一な集合体として存在することもある。リポフェクタミン-核酸複合体もまた企図される。
【0090】
外因性核酸を宿主細胞に導入する又は細胞を本発明の阻害剤に曝露するために使用される方法に関係なく、宿主細胞中の核酸の存在を確認するために、様々な評価が行われ得る。このような評価には、例えば、サザン及びノーザンブロッティング、RT-PCR及びPCRのような、当業者に周知の分子生物学的評価、例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット)によって、又は本明細書に記載される評価によって、本発明の範囲に属する薬剤を同定するために、特定のペプチドの存在又は非存在を検出するような生化学的方法が含まれる。
【0091】
いくつかの態様では、宿主細胞に導入される核酸はRNAである。別の実施形態では、RNAは、インビトロ転写されたRNA又は合成RNAを含むmRNAである。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で生成されたテンプレートを使用したインビトロ転写によって産生され得る。任意の供給源からの目的のDNAは、適切なプライマー及びRNAポリメラーゼを使用して、PCRによってインビトロmRNA合成用のテンプレートに直接変換できる。DNAの供給源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列又は任意の他の適切なDNA供給源であり得る。
【0092】
PCRは、その後細胞に導入されるmRNAのインビトロ転写のためのテンプレートを生成するために使用され得る。PCRを実施する方法は当該技術分野でよく知られている。PCRで使用するプライマーは、PCRのテンプレートとして使用されるDNAの領域と実質的に相補的な領域を有するように設計される。「実質的に相補的(Substantially complementary)」とは、本明細書で使用される場合、プライマー配列中の塩基の大部分又はすべてが相補的であるヌクレオチドの配列を指す。実質的に相補的な配列は、PCRに使用されるアニーリング条件下で、意図されたDNA標的とアニール又はハイブリダイズすることができる。プライマーは、DNAテンプレートの任意の部分に実質的に相補的になるように設計することができる。例えば、プライマーは、5’及び3’UTRを含む、細胞内で通常転写される遺伝子の部分(オープンリーディングフレーム)を増幅するように設計できる。プライマーは、目的の特定のドメインをコードする遺伝子の一部を増幅するように設計することもできる。一実施形態では、プライマーは、5’及び3’UTRのすべて又は一部を含む、ヒトcDNAのコード領域を増幅するように設計される。PCRに有用なプライマーは、当該技術分野で周知の合成方法によって生成される。「フォワードプライマー」は、増幅されるDNA配列の上流にあるDNAテンプレート上のヌクレオチドに実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含むプライマーである。「上流」は、本明細書において、コード鎖に対して増幅されるDNA配列の5側の位置を指すために使用される。「リバースプライマー」は、増幅されるDNA配列の下流にある二本鎖DNAテンプレートに実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含むプライマーである。「下流」は、本明細書において、コード鎖に対して増幅されるDNA配列の3’側の位置を指すために使用される。
【0093】
RNAの安定性及び/又は翻訳効率を促進する能力を有する化学構造も使用され得る。RNAは、5’及び3’UTRを有することが好ましい。一実施形態では、5’UTRは、0~3000ヌクレオチドの長さである。コード領域に付加される5’及び3’UTR配列の長さは、UTRの異なる領域にアニールするPCR用のプライマーの設計を含むが、これに限定されない、異なる方法によって変更することができる。このアプローチを使用して、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクション後に最適な翻訳効率を達成するために必要な5’及び3’UTRの長さを変更することができる。
【0094】
5’及び3’UTRは、目的の遺伝子の天然に発生する内因性5’及び3’UTRであり得る。あるいは、UTR配列をフォワード及び及びリバースプライマーに組み込むことによって、又はテンプレートのその他の修飾によって、目的の遺伝子にとって内因性ではないUTR配列を追加することもできる。目的の遺伝子に対して内因性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性及び/又は翻訳効率を変更するのに役立つ。例えば、3’UTR配列内のAUリッチエレメントは、mRNAの安定性を低下させることができることが知られている。従って、3’UTRは、当該技術分野でよく知られているUTRの特性に基づいて、転写されるRNAの安定性を高めるように選択又は設計することができる。
【0095】
一実施形態では、5’UTRは、内因性遺伝子のコザック配列を含むことができる。あるいは、上記のようにPCRによって目的の遺伝子に内因性ではない5’UTRが付加されている場合、5’UTR配列を付加することによってコンセンサス(consensus)コザック配列を再設計することができる。コザック配列は、いくつかのRNA転写産物の翻訳効率を高めるが、効率的な翻訳を可能にするためにすべてのRNAに必要なわけではないようである。多くのmRNAについてコザック配列が必要であることは、当該技術分野で知られている。他の実施形態では、5’UTRは、そのRNAゲノムが細胞内で安定しているRNAウイルスに由来することができる。他の実施形態では、mRNAのエキソヌクレアーゼ分解を阻害するために、3’又は5’UTRにおいて様々なヌクレオチド類似体を使用することができる。
【0096】
遺伝子クローニングを必要とせずにDNAテンプレートからのRNAの合成を可能にするためには、転写プロモーターを、転写される配列の上流でDNAテンプレートに結合させるべきである。RNAポリメラーゼのプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5’末端に付加されると、RNAポリメラーゼプロモーターは、転写されるオープンリーディングフレームの上流でPCR産物に組み込まれることになる。一実施形態では、プロモーターは、本明細書の他の場所に記載されているように、T7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターには、T3及びSP6RNAポリメラーゼプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。T7、T3及びSP6プロモーターのコンセンサスヌクレオチド配列は、当該技術分野で知られている。
【0097】
一実施形態では、mRNAは、細胞内でのリボソーム結合、翻訳の開始及びmRNAの安定性を決定する5’末端のキャップ及び3’ポリ(A)テールの両方を有する。環状DNAテンプレート、例えばプラスミドDNA上では、RNAポリメラーゼは、真核細胞での発現には適さない長いコンカテマー(concatameric)生成物を産生する。3’UTRの末端で線状化されたプラスミドDNAを転写すると、転写後にポリアデニル化されても真核生物のトランスフェクションには効果のない通常サイズのmRNAが生成される。
【0098】
線状DNAテンプレート上では、ファージT7RNAポリメラーゼは、転写物の3’末端をテンプレートの最後の塩基を越えて伸長することができる(Schenborn及びMierendorf,Nuc Acids Res.,13:6223-36(1985);Nacheva and Berzal-Herranz,Eur.J.Biochem.,270:1485-65(2003))。
【0099】
転写DNAテンプレートのポリA/Tセグメントは、100Tテール(サイズは50~5000Tであり得る)等のポリTテール(polyT tail)を含むリバースプライマーを使用することによってPCR中に、又は、DNAライゲーション又はインビトロ組換えを含むが、これに限定されない、任意の他の方法によってPCR後に生成することができる。ポリ(A)テールは、RNAに安定性をもたらし、その分解を減少させる。一般に、ポリ(A)テールの長さは、転写されたRNAの安定性と正の相関がある。一つの実施形態では、ポリ(A)テールは、100~5000のアデノシンである。
【0100】
RNAのポリ(A)テールは、大腸菌ポリAポリメラーゼ(E-PAP)等のポリ(A)ポリメラーゼを使用するインビトロ転写後にさらに伸長することができる。一実施形態では、ポリ(A)テールの長さを100ヌクレオチドから300~400ヌクレオチドに増加させると、RNAの翻訳効率が約2倍増加する。さらに、3’末端に様々な化学基を結合すると、mRNAの安定性が向上する。このような結合には、修飾/人工ヌクレオチド、アプタマー(aptamers)及びその他の化合物が含まれ得る。例えば、ATP類似体(analogs)は、ポリ(A)ポリメラーゼを使用してポリ(A)テールに組み込むことができる。ATP類似体は、RNAの安定性をさらに高めることができる。
【0101】
5’キャップはまた、RNA分子に安定性を提供する。好ましい実施形態では、本明細書に開示される方法によって産生されるRNAは、5’キャップを含む。5’キャップは、当該技術分野で知られ、本明細書に記載されている技術(Cougot et al.,Trends in Biochem.Sci.,29:436-444(2001)、Stepinski,et al.,RNA,7:1468-95(2001)、Elango,et al.,Biochim.Biophys.Res.Commun.,330:958-966(2005))を使用して提供される。
【0102】
いくつかの実施形態では、インビトロ転写RNA等のRNAを細胞にエレクトロポレーションする。糖、ペプチド、脂質、タンパク質、抗酸化剤、界面活性剤等、細胞の透過性及び生存率を促進する因子を含む、細胞エレクトロポレーションに適した任意の溶質を含めることができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、本開示の主題のドミナントネガティブ受容体をコードする核酸は、RNA、例えばインビトロ合成RNAである。RNAのインビトロ合成方法は、当該技術分野で知られており、任意の既知の方法を使用して、主題のドミナントネガティブ受容体をコードする配列を含むRNAを合成することができる。RNAを宿主細胞に導入する方法は、当該技術分野で知られている。例えば、Z Zhao et al.Cancer Res.(2010)15:9053を参照されたい。ドミナントネガティブ受容体をコードするヌクレオチド配列を含むRNAの宿主細胞への導入は、インビトロ、エクスビボ又はインビボで行うことができる。例えば、宿主細胞(例えば、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ球等)は、1つ又は複数の主題のドミナントネガティブ受容体をコードするヌクレオチド配列を含むRNAをインビトロ又はエクスビボでエレクトロポレーションすることができる。
【0104】
開示された方法は、標的のがん細胞を殺す遺伝子修飾されたT細胞の能力の評価を含む、癌、幹細胞、急性及び慢性感染症及び自己免疫疾患の分野における基礎研究及び治療におけるT細胞活性の調節に適用することができる。
【0105】
本方法はまた、例えば、プロモーター又は入力RNAの量を変更することによって、発現レベルを広範囲に制御する能力を提供し、発現レベルを個別に調節することを可能にする。さらに、PCRベースのmRNA産生技術により、様々な構造やドメインの組み合わせを備えたmRNAの設計が大幅に容易になる。
【0106】
本発明のRNAトランスフェクション法の1つの利点は、RNAトランスフェクションが本質的に一過性(transient)であり、ベクターを必要としないことである。RNA導入遺伝子は、リンパ球に送達され、短時間のインビトロ細胞活性化後に、追加のウイルス配列を必要とせずに、最小限の発現カセット(cassette)として、そこで発現され得る。これらの条件下では、導入遺伝子が宿主細胞ゲノムに組み込まれる可能性は低い。RNAのトランスフェクションが効率的であり、リンパ球集団全体を均一に修飾できるため、細胞のクローニングは必要ない。
【0107】
インビトロ転写RNA(IVT-RNA)によるT細胞の遺伝子修飾は、2つの異なる戦略を利用し、その両方が様々な動物モデルで連続的に試験されている。細胞は、リポフェクション又はエレクトロポレーションによって、インビトロで転写されたRNAでトランスフェクションされる。導入されたIVT-RNAの発現を長時間持続させるためには、様々な修飾を用いてIVT-RNAを安定化させることが望ましい。
【0108】
インビトロ転写のテンプレートとして標準化された方法で利用され、安定化されたRNA転写物が生成されるように遺伝子修飾されたIVTベクターがいくつか文献で知られている。現在、当該技術分野で使用されているプロトコールは、以下の構造を有するプラスミドベクターに基づいている:RNA転写を可能にする5’RNAポリメラーゼプロモーター、その後に、非翻訳領域(UTR)が3’及び/又は5’に隣接する目的の遺伝子及び50~70のAヌクレオチドを含む3’ポリアデニルカセット。インビトロ転写の前に、環状プラスミドは、II型制限酵素(認識配列は切断部位に対応する)によってポリアデニルカセットの下流で線上化される。従って、ポリアデニルカセットは、転写産物中の後のポリ(A)配列(the later poly(A) sequence)に対応する。この手順の結果、一部のヌクレオチドは線状化後に酵素切断部位の一部として残り、3’末端のポリ(A)配列を延長又はマスクする。この非生理学的オーバーハングが、そのような構築物から細胞内で産生されるタンパク質の量に影響を与えるかどうかは明らかではない。
【0109】
別の態様では、RNA構築物(RNA construct)は、エレクトロポレーションによって細胞内に送達される。例えば、米国特許公開第2004/0014645号、米国特許公開第2005/0052630A1号、米国特許公開第2005/0070841A1号、米国特許公開第2004/0059285A1号、米国特許公開第2004/0092907A1に教示される、哺乳動物細胞への核酸構築物のエレクトロポレーションの配合及び方法論を参照されたい。任意の既知の細胞タイプのエレクトロポレーションに必要な電場強度を含む様々なパラメータは、関連する研究文献、並びにこの分野の多数の特許及び出願で一般的に知られている。例えば、米国特許第6,678,556号、第7,171,264号及び第7,173,116号を参照されたい。エレクトロポレーションを治療に適用するための装置は、例えば、MedPulser(商標登録)DNA Electroporation Therapy System(Inovio/Genetronics社、カリフォルニア州サンディエゴ)が市販されており、米国特許第6,567,694号、第6,516,223号、第5,993,434号、第6,181,964号、第6,241,701号及び第6,233,482号に記載されている。エレクトロポレーションはまた、例えば、米国特許公開第2007/0128708A1号に記載されているように、インビトロでの細胞のトランスフェクションに使用することもできる。エレクトロポレーションは、インビトロで細胞に核酸を送達するために利用することもできる。従って、当業者に知られている多くの利用可能なデバイス及びエレクトロポレーションシステムの何れかを利用する発現構築物を含む核酸の細胞へのエレクトロポレーション媒介投与は、目的のRNAを標的細胞に送達するための刺激的な新しい手段を提供する。
【0110】
いくつかの実施形態では、免疫細胞(例えば、T細胞)は、主題のドミナントネガティブ受容体をコードする核酸分子の導入前、導入中及び/又は導入後にインキュベート又は培養することができる。いくつかの実施形態では、細胞(例えば、T細胞)は、主題のドミナントネガティブ受容体をコードする核酸分子の導入前、導入中、又は導入後に、例えば、ドミナントネガティブ受容体をコードするウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)による細胞の形質導入前、導入中、又は導入後にインキュベート又は培養することができる。いくつかの実施形態では、方法は、主題のドミナントネガティブ受容体をコードする核酸分子を導入する前に、刺激又は活性化剤(例えば、抗CD3/抗CD28抗体)で細胞を活性化又は刺激することを含む。
VII.医薬組成物
【0111】
また、1つ又は複数のドミナントネガティブ受容体を含む本開示の免疫細胞の集団、そのような細胞及び/又はそのような細胞が濃縮された組成物、例えば、組換え受容体を発現する細胞が、組成物中の全細胞のうち、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%以上を占める組成物、又は、T細胞若しくはCD8陽性若しくはCD4陽性細胞等の特定の型の細胞も提供される。組成物の中には、養子細胞療法等の投与用の医薬組成物及び製剤が含まれる。また、細胞及び組成物を対象、例えば患者に投与するための治療方法も提供される。
【0112】
また、投与用の細胞を含む組成物も提供され、これには医薬組成物及び製剤が含まれ、例えば、所与の用量又はその分画に投与用の細胞数を含む単位用量形態の組成物等が含まれる。医薬組成物及び製剤は、一般に、1つ又は複数の任意の薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は少なくとも1つの追加の治療薬を含む。
【0113】
用語「医薬製剤(pharmaceutical formulation)」は、その中に含まれる有効成分の生物学的活性が効果的であることを可能にするような形態であり、製剤が投与される対象に対して許容できないほど有毒である追加の成分を含まない製剤を指す。「薬学的に許容される担体(pharmaceutically acceptable carrier)」とは、有効成分以外の医薬製剤中の成分で、対象に対して無毒なものを指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤又は保存剤が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの態様では、担体の選択は、特定の細胞及び/又は投与方法によって部分的に決定される。従って、様々な適切な製剤が存在する。例えば、医薬組成物は防腐剤を含むことができる。適切な防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムが挙げられる。いくつかの態様では、2つ以上の防腐剤の混合物が使用される。防腐剤又はその混合物は、典型的には全組成物の約0.0001重量%~約2重量%の量で存在する。担体は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)により記載されている。
薬学的に許容される担体は、一般に、使用される用量及び濃度ではレシピエントに対して無毒であり、以下が挙げられるが、これらに限定されない:リン酸塩、クエン酸塩、その他の有機酸等の緩衝液、アスコルビン酸及びメチオニン等の抗酸化物質、防腐剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール、メチル又はプロピルパラベン等のアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール及びm-クレゾール等)、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン等のタンパク質、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン又はリジン等のアミノ酸、単糖類、二糖類及びグルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物、EDTA等のキレート剤、スクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール等の糖類、ナトリウム等の塩を形成する対イオン、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)及び/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤。
【0114】
いくつかの態様では、緩衝剤が組成物中に含まれる。適切な緩衝剤としては、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム及び他の様々な酸及び塩が挙げられる。いくつかの態様では、2つ以上の緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤又はその混合物は、典型的には全組成物の約0.001重量%~約4重量%の量で存在する。投与可能な医薬組成物を調製する方法は既知である。例示的な方法は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams&Wilkins;21st ed.(May 1,2005)により詳細に記載されている。
【0115】
製剤には、水溶液が含まれ得る。製剤又は組成物はまた、細胞で治療される特定の適応症、疾患又は症状に有用な複数の有効成分、好ましくは、それぞれの活性が互いに悪影響を及ぼさない、細胞に対して相補的な活性を有する有効成分を含有してもよい。このような有効成分は、意図した目的に有効な量で組み合わせて存在するのが適切である。従って、いくつかの実施形態では、医薬組成物は、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン及び/又はビンクリスチン等の他の薬学的に活性な薬剤又は薬物をさらに含む。いくつかの実施形態における医薬組成物は、疾患又は症状を治療又は予防するのに有効な量、例えば治療有効量又は予防有効量で細胞を含む。いくつかの実施形態における治療効果又は予防効果は、治療対象の定期的な評価によって監視される。所望の用量は、細胞の単回ボーラス投与、細胞の複数回ボーラス投与又は細胞の連続注入投与によって送達され得る。
【0116】
製剤には、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、頬側、舌下又は坐剤投与用の製剤が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞集団は、非経口的(parenterally)に投与される。「非経口(parenteral)」という用語は、本明細書で使用される場合、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣及び腹腔内投与が含まれる。いくつかの実施形態では、細胞は、静脈内、腹腔内又は皮下注射による末梢全身送達を使用して対象に投与される。いくつかの実施形態における組成物は、滅菌液体製剤、例えば、等張水溶液、懸濁液、乳濁液、分散液又は粘性組成物として提供され、いくつかの態様では選択されたpHに緩衝され得る。液体製剤は、通常、ゲル、他の粘性組成物及び固体組成物よりも調製が容易である。さらに、液体組成物は、特に注射による投与がいくらかより便利である。一方、粘性組成物は、特定の組織とより長い接触時間を提供するために、適切な粘度範囲内で配合することができる。液体又は粘性組成物は、担体を含むことができ、担体は、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)及びそれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒であり得る。
【0117】
無菌注射用溶液は、適切な担体、希釈剤又は賦形剤、例えば、無菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロース等との混和物等の溶媒に細胞を組み込むことによって調製することができる。組成物は、所望の投与経路及び製剤に応じて、湿潤剤、分散剤又は乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化剤又は増粘剤、保存剤、香味剤及び/又は着色料等の補助物質を含むことができる。いくつかの態様では、適切な製剤を調製するために標準テキストが参照され得る。
【0118】
抗菌保存剤、酸化防止剤、キレート剤及び緩衝剤を含む、組成物の安定性及び無菌性を高める様々な添加剤を添加することができる。微生物の作用は、様々な抗菌剤や抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール及びソルビン酸によって確実に防止できる。注射可能な医薬形態の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0119】
インビボ投与に使用される製剤(formulations)は、一般に無菌である。無菌性は、例えば、無菌ろ過膜を通したろ過によって容易に達成され得る。いくつかの態様では、インビボ投与に使用される製剤は、一般に微生物を含まない。いくつかの態様では、インビボ投与に使用される製剤は一般にウイルスを含まない。いくつかの態様では、インビボ投与に使用される製剤は、一般に、病原性ウイルスを含まない。
VIII.治療方法
【0120】
本明細書に記載の修飾細胞(例えば、T細胞)は、免疫療法用の組成物に含まれてもよい。組成物は、医薬組成物を含んでもよく、さらに薬学的に許容される担体を含んでもよい。修飾T細胞を含む医薬組成物の治療有効量が投与され得る。
【0121】
一態様では、本発明は、本発明の修飾T細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む、養子細胞移植療法のための方法を含む。別の態様では、本発明は、修飾T細胞の集団を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象における疾患又は症状を治療する方法を含む。
【0122】
また、本発明の修飾細胞(例えば、修飾T細胞)を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における疾患又は症状を治療する方法も含まれる。一実施形態において、それを必要とする対象における疾患又は症状を治療する方法は、対象CAR及び/又はドミナントネガティブ受容体を含む修飾細胞(例えば、改変T細胞)を対象に投与することを含む。一実施形態では、それを必要とする対象における疾患又は状態を治療する方法は、対象CAR(例えば、標的細胞上のPSMAに対する親和性を有するCAR)及びドミナントネガティブ受容体及び/又はスイッチ受容体を含む修飾細胞(例えば、修飾T細胞)を対象に投与することを含む。一実施形態では、それを必要とする対象における疾患又は状態を治療する方法は、対象CAR(例えば、標的細胞上のPSMAに対する親和性を有するCAR)、ドミナントネガティブ受容体及び/又はスイッチ受容体を含む修飾細胞(例えば、修飾T細胞)を対象に投与することを含み、修飾細胞は、二特異性抗体を発現及び分泌することができる。
【0123】
養子細胞療法のための免疫細胞の投与方法は公知であり、提供される方法及び組成物と組み合わせて使用することができる。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えば、Gruenberg et alの米国特許出願公開第2003/0170238号、Rosenbergの米国特許第4,690,915 号、Rosenberg(2011)Nat Rev Clin Oncol.8(10):577-85に、記載される。例えば、Themeli et al.(2013) Nat Biotechnol.31(10):928-933、Tsukahara et al.(2013)Biochem Biophys Res Commun 438(1):84-9、Davila et al.(2013)PLoS ONE8(4):e61338、を参照のこと。ある実施形態では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞療法を受けようとする対象から、あるいはそのような対象に由来する試料から、細胞を単離及び/又は他の方法で調製する自己移植によって実施される。従って、いくつかの態様では、細胞は、治療を必要とする対象、例えば患者に由来し、単離及び処理後の細胞は、同じ対象に投与される。
【0124】
いくつかの実施形態では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、同種移植によって実施され、この場合、細胞は、細胞療法を受ける、あるいは最終的に受ける対象者以外の対象者、例えば、第1の対象者から単離及び/又は他の方法で調製される。このような実施形態では、次いで、細胞は、同じ種の異なる対象、例えば第2の対象に投与される。いくつかの実施形態では、第1及び第2の対象は遺伝的に同一である。いくつかの実施形態では、第1及び第2の対象は遺伝的に類似している。いくつかの実施形態では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラス又はスーパータイプを発現する。
【0125】
本発明の修飾免疫細胞は、癌を治療するために、動物、好ましくは哺乳動物、さらにより好ましくはヒトに投与することができる。さらに、本発明の細胞は、癌に関連する任意の状態、特に疾患を治療又は軽減することが望ましい腫瘍細胞に対する細胞性免疫応答の治療に使用することができる。本発明の修飾細胞又は医薬組成物で治療される癌の種類には、癌腫(carcinoma)、芽腫及び肉腫(sarcoma)及び特定の白血病又はリンパ系悪性腫瘍、良性及び悪性腫瘍(benign and malignant tumors)、及び悪性腫瘍(malignancies)、例えば、肉腫(sarcomas)、癌腫(carcinomas)、及び黒色腫が含まれる。他の例示的な癌としては、これらに限定されないが、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病、肺癌、甲状腺癌等が挙げられる。癌は、非固形腫瘍(血液腫瘍等)又は固形腫瘍であり得る。成人の腫瘍/癌及び小児の腫瘍/癌も含まれる。
【0126】
本発明の細胞は、適切な前臨床及び臨床実験並びに治験において決定される用量及び経路及び回数で投与することができる。細胞組成物は、これらの範囲内の用量で複数回投与され得る。本発明の細胞の投与は、当業者によって決定される所望の疾患又は症状を治療するのに有用な他の方法と組み合わせてもよい。
【0127】
本発明の細胞の投与は、当業者に知られている任意の便利な方法で実施することができる。本発明の細胞は、エアロゾル吸入、注射、摂取、輸血、インプランテーション(implantation)又は移植(transplantation)によって対象に投与され得る。本明細書の組成物は、患者に経動脈、皮下、皮内、腫瘍内、節内、髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射により、又は腹腔内に投与され得る。他の例では、本発明の細胞は、対象の炎症部位、対象の局所疾患部位、リンパ節、器官、腫瘍等に直接注射される。
【0128】
ある実施形態では、細胞又は細胞の個々の下位集団は、約100万~約1000億の細胞、例えば、約100万~約500億の細胞の範囲(例えば、約500万の細胞、約2500万の細胞、約5億の細胞、約10億の細胞、約50億の細胞、約200億の細胞、約300億の細胞、約400億の細胞又は又は前述の値の何れか2つによって定義される範囲)、例えば、約1000万~約1000億の細胞(例えば、約2000万の細胞、約3000万の細胞、約4000万の細胞、約6000万の細胞、約7000万の細胞、約8000万の細胞、約9,000万の細胞、約100億の細胞、約250億細胞、約500億の細胞、約750億の細胞、約900億の細胞又は前述の値の何れか2つによって定義される範囲)、場合によっては、約1億の細胞~約500億の細胞(例えば、約1億2千万の細胞、約2億5千万の細胞、約3億5千万の細胞、約4億5千万の細胞、約6億5千万の細胞、約8億の細胞、約9億の細胞、約30億の細胞、約300億の細胞、約450億の細胞)、又は、これらの範囲内の任意の値の範囲で、対象に投与される。
【0129】
いくつかの実施形態では、総細胞の用量及び/又は細胞の個々の下位集団の用量は、1×10細胞/kg若しくは約1×10細胞/kg~約1×1011細胞/kg、10、及び、1011若しくは約1011細胞/キログラム(kg)体重、例えば、約10~約10細胞/kg体重、例えば、1×10細胞/kg、約1×10細胞/kg、約1.5×10細胞/kg、約2×10細胞/kg又は約1×10細胞/kg体重の範囲内である。例えば、いくつかの実施形態では、細胞は、10若しくは約10~10若しくは約10T細胞/キログラム(kg)体重、例えば、約10~約10T細胞/kg体重、例えば、1×10T細胞/kg体重若しくは約1×10T細胞/kg体重、約1.5×10T細胞/kg、約2×10T細胞/kg、又は、約1×10T細胞/kg体重で、又は、一定誤差の範囲内で、投与される。他の例示的な実施形態では、本開示の方法で使用するための修飾細胞の適切な用量範囲は、限定されないが、約1×10細胞/kg~約1×10細胞/kg、約1×10細胞/kg~約1×10細胞/kg、約1×10細胞/kg~約1×10細胞/kg、約1×10細胞/kg~約1×10細胞/kg、約1×10細胞/kg~約1×1010細胞/kg、約1×1010細胞/kg~約1×1011細胞/kgが含まれる。例示的な実施形態では、本開示の方法で使用するための適切な用量は、約1×10細胞/kgである。例示的な実施形態では、本開示の方法で使用するための適切な用量は、約1×10細胞/kgである。他の実施形態では、適切な用量は、約1×10総細胞~約5×10総細胞である。いくつかの実施形態では、適切な用量は、約1×10総細胞~約5×10総細胞である。いくつかの実施形態では、適切な用量は、約1.4×10総細胞~約1.1×10総細胞である。例示的な実施形態では、本開示の方法で使用するための適切な用量は、約7×10総細胞である。例示的な実施形態では、適切な用量は、約1×10総細胞~約3×10総細胞である。
【0130】
いくつかの実施形態では、修飾細胞の用量は、それを必要とする対象に、単回用量又は複数回用量で投与される。いくつかの実施形態では、修飾細胞の用量は、複数回用量、例えば、週に1回又は約7日ごとに、2週間に1回又は約14日ごとに、3週間に1回又は約21日ごとに、4週間に1回又は約28日ごとに投与される。例示的な実施形態では、修飾細胞の単回用量が、それを必要とする対象に投与される。例示的な実施形態では、修飾細胞の単回用量が、それを必要とする対象に急速静脈内注入によって投与される。
IX.定義
【0131】
以下の用語は当業者にはよく理解されていると考えられるが、以下の定義は、ここで開示される主題の説明を容易にするために記載される。
【0132】
用語「a」又は「an」は、その実体の1つ又は複数を指してもよく、即ち、複数の指示対象(referents)を指してもよい。従って、用語「a」又は「an」、「1つ又は複数(one or more)」、及び「少なくとも1つ(at least one)」は、本明細書では互換的に使用される。さらに、不定冠詞「a」又は「an」による「要素(an element)」への言及は、文脈上、要素が1つだけであることを明確に要求しない限り、複数の要素が存在する可能性を排除するものではない。
【0133】
本明細書全体を通じて、「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「一態様(one aspect)」又は「一態様(an aspect)」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴(particular feature)、構造(structure)又は特性(characteristic)が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体の様々な場所に現れる「一実施形態において(in one embodiment)」又は「一実施形態において(in an embodiment)」という語句は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0134】
本明細書で使用される場合、数値の前にある用語「約(about)」又は「およそ(approximately)」は、その値にその値の10%の範囲をプラス又はマイナスした値を示す。
【0135】
当業者には理解されるように、あらゆる目的、特に書面による説明を提供するという観点から、本明細書に開示されるすべての範囲は、あらゆる可能な部分範囲及びその部分範囲の組み合わせも包含する。リストされた範囲はどれも十分に説明されており、同じ範囲を少なくとも等しい半分、三分の一、四分の一、五分の一、十分の一等に分割できるものであると容易に認識できる。非限定的な例として、本明細書で議論される各範囲は、下位3分の1、中間の3分の1、及び上位3分の1等に容易に分割することができる。また、当業者には理解されるように、「~まで(up to)」、「少なくとも(at least)」、「より大きい(greater than)」、「より小さい(less than)」等の文言はすべて、言及された数を含み、上述したように、その後にサブレンジ(subranges)に分解できる範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲は個々のメンバーを含む。従って、例えば、1~3個のセルを有するグループは、1、2又は3個のセルを有するグループを指す。同様に、1~5個のセルを持つグループは、1、2、3、4、5個のセルを持つグループ等を指す。
【0136】
本明細書で使用される場合、「対照(control)」は、比較目的で実験に使用される代替サンプルである。対照には、「陽性(positive)」又は「陰性(negative)」があり得る。本明細書で使用される「対照サンプル(control sample)」又は「参照サンプル(reference sample)」は、実験サンプルとの比較のための対照として機能するサンプル又は参照を指す。例えば、実験サンプルは、バイアル内に化合物A、B、及びCを含み、対照は、実験サンプルと同様に処理された同じ種類のサンプルであってもよいが、化合物A、B又はCの1つ又は複数が欠如している。
【0137】
本明細書で使用される場合、用語「有効量(effective amount)」は、所望の治療効果及び/又は予防効果を達成するのに十分な量、例えば、1つ又は複数の結果の予防、又は、1つ又は複数の結果の増加をもたらす量を指す。
【0138】
本明細書で使用される場合、「個体(individual)」、「患者(patient)」、又は「対象(subject)」という用語は、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物又はヒトであり得る。好ましい態様では、個体、患者又は対象はヒトである。
【0139】
本明細書で使用される場合、用語「薬物(drug)」、又は「薬学的活性剤(pharmaceutically active agent)」、又は「生物活性剤(bioactive agent)」、又は「活性剤(active agent)」は、互換的に使用され、生物活性を有し、治療目的に適合又は使用される任意の有機又は無機の化合物又は物質を意味する。タンパク質、ホルモン、抗がん剤、鎮痛薬、麻酔薬、小分子化合物及び模倣物、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA及び遺伝子治療は、より広い定義の「薬物」に含まれる。本明細書で使用される場合、薬剤への言及は、本明細書における他の化学化合物への言及と同様に、ジアステレオマー及びエナンチオマー等の異性体、塩、溶媒和物、及び多形体、特定の結晶形態、並びに、該当する場合は、本明細書に記載される化合物のラセミ混合物及び純粋な異性体を含む、薬学的に許容される形態の化合物を含むことを意味する。
【0140】
本明細書で使用される場合、「注射可能な(injectable)」という用語は、針を通して本開示の組成物を注射する能力を指す。
【0141】
本明細書で使用される場合、「ドミナントネガティブ受容体(dominant-negative receptor)」という語句は、野生型受容体の活性を破壊する修飾ポリペプチドをもたらすドミナントネガティブ変異を含む特定の受容体のバリアントである。活性の破壊は、シグナル伝達に関与する受容体の能力の完全な破壊である場合もあれば、部分的な破壊である場合もある。ドミナントネガティブ受容体はさらに、ネガティブシグナル伝達分子の効果、例えば本開示の修飾免疫細胞に対するネガティブシグナル伝達分子の効果を低減するように設計された分子を指す。ドミナントネガティブ受容体を含む修飾免疫細胞は、修飾免疫細胞の微小環境においてネガティブシグナル伝達分子と結合し、ネガティブシグナル伝達分子が修飾免疫細胞に及ぼす影響を低減してもよい。
【0142】
本明細書で使用される場合、「核酸」という語句は、任意のDNA又はRNA分子を意味し、ポリヌクレオチドと同義に使用される。本明細書において、特定のタンパク質及び/又はペプチドをコードする核酸又は核酸配列に言及する場合、核酸又は核酸配列は、それぞれ、好ましくは、適切な宿主、例えばヒトにおいて、その発現、即ち、特定のタンパク質又はペプチドをコードする核酸配列の転写及び/又は翻訳を可能にする調節配列も含む。
【0143】
本明細書で使用される場合、用語「ペプチド」は、アミノ酸モノマーのポリマーを意味する。通常、モノマーは、ペプチド結合によって結合される。用語「ペプチド」は、アミノ酸のポリマー鎖の長さを制限しない。本発明のいくつかの実施形態では、ペプチドは、例えば、50未満のモノマー単位を含み得る。より長いペプチドはポリペプチドとも呼ばれ、通常は50~600のモノマー単位、より具体的には50~300のモノマー単位を有する。
【0144】
本明細書で使用される用語「タンパク質」は、生物学的機能を促進する、三次元フォームに折り畳まれた1つ又は複数のペプチド及び/又はポリペプチドを意味する。
【0145】
本明細書で使用する場合、「タンパク質バリアント(protein variants)」又は「ペプチドバリアント(peptide variants)」という語句は、野生型と比較して修飾され得るタンパク質/ペプチドであり、1つ又は複数の置換、挿入及び/又は欠失アミノ酸等の、1つ又は複数の変異において元の配列とは異なるアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、これらのフラグメント及び/又はバリアントは、全長のネイティブタンパク質と比較して、同じ生物学的機能又は特異的活性、例えばその特異的抗原性を有する。本発明の文脈において定義されるタンパク質又はペプチドの「バリアント」は、それらのネイティブの、即ち変異していない(non-mutated)生理学的配列と比較して保存的アミノ酸置換(conservative amino acid substitution(s))を含んでいてもよい。これらのアミノ酸配列及びそれらをコードするヌクレオチド配列は、特に、本明細書で定義されるバリアントという用語に該当する。同じクラスに由来するアミノ酸が互いに交換される置換は、保存的置換と呼ばれる。特に、これらは、脂肪族側鎖、正又は負に荷電した側鎖、側鎖又はアミノ酸に芳香族基を有するアミノ酸であり、側鎖が水素橋(hydrogen bridges)に入ることができる、例えばヒドロキシル官能基を有する側鎖である。これは、例えば、極性側鎖を有するアミノ酸が、同様に極性側鎖を有する別のアミノ酸で置換されること、又は、例えば、疎水性側鎖を特徴とするアミノ酸が、同様に疎水性側鎖を有する別のアミノ酸で置換されること(例えばセリン(スレオニン)がスレオニン(セリン)で、又は、ロイシン(イソロイシン)がイソロイシン(ロイシン)で)を意味する。挿入及び置換は、特に、三次元構造に修飾を引き起こさない又は結合領域に影響を与えない配列位置で可能である。挿入又は欠失による三次元構造の修飾は、例えば、CDスペクトル(円二色性スペクトル)を使用して簡単に決定できる。
【0146】
本明細書で使用する「コードする(encoding)」とは、遺伝子、cDNA、mRNA等のポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列が、定義されたヌクレオチド配列(即ち、rRNA、tRNA、mRNA)又は定義されたアミノ酸配列の何れかを有する生物学的プロセスにおいて、他のポリマー及び巨大分子の合成のためのテンプレートとして機能する固有の特性及びそこから生じる生物学的特性を指す。従って、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞又は他の生物学的系においてタンパク質を産生する場合、遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に記載されているコード鎖と、遺伝子又はcDNAの転写のテンプレートとして使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子又はcDNAのタンパク質又は他の産物をコードしていると呼ぶことができる。
【0147】
本明細書で使用される場合、「同一性(identity)」とは、2つのポリマー分子間、特に2つのアミノ酸分子間、例えば2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の同一性を指す。2つのアミノ酸配列が同じ位置に同じ残基を有する場合、例えば、2つのポリペプチド分子のそれぞれの位置がアルギニンによって占められている場合、それらはその位置では同一である。2つのアミノ酸配列がアラインメントにおいて同じ位置に同じ残基を持つ同一性又はその程度は、しばしばパーセンテージで表される。2つのアミノ酸配列間の同一性は、一致又は同一の位置の数の直接的な関数であり、例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、長さ10アミノ酸のポリマー中の5つの位置)が同一であれば、2つの配列は50%同一であり、位置の90%(例えば、10個中9個)が一致又は同一であれば、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0148】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された(operably linked)」又は「作動可能に連結された(operatively linked)」という語句は、後者(the latter)の発現をもたらす、調節配列と異種核酸配列との間の機能的連結を指す。例えば、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係にある場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と作動可能に連結される。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を与える場合、プロモーターは、コード配列に作動可能に連結される。
【0149】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、単離された核酸を含み、単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用できる物質の組成物である。線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド及びウイルスを含むが、これらに限定されない、多数のベクターが当該技術分野で知られている。従って、用語「ベクター」には、自律的に複製するプラスミド又はウイルスが含まれる。この用語はまた、例えば、ポリリジン化合物、リポソーム等の、細胞への核酸の導入を促進する非プラスミド及び非ウイルス化合物を含むものと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
「有効量(Effective amount)」又は「治療有効量(therapeutically effective amount)」は、本明細書では互換的に使用され、特定の生物学的結果を達成するのに有効な又は治療若しくは予防的利点を提供する、本明細書に記載の化合物、製剤、材料(material)又は組成物の量を指す。このような結果には、哺乳動物に投与した場合に、本発明の組成物の非存在下で検出される免疫応答と比較して、検出可能なレベルの免疫抑制又は寛容(tolerance)を引き起こす量が含まれ得るが、これらに限定されない。免疫応答は、当該技術分野で認められた多数の方法によって容易に評価することができる。当業者であれば、本明細書で投与される組成物の量は変化し、治療される疾患又は症状、治療される哺乳動物の年齢及び健康及び身体状態、疾患の重症度、投与される特定の化合物等の多くの要因に基づいて容易に決定できることを理解するであろう。
【0151】
本明細書で使用する場合、「自己由来(autologous)」という用語は、同じ個体に由来し、後にその個体に再導入される任意の物質を指すことを意味する。「同種異系(Allogeneic)」とは、同じ種の異なる動物に由来するあらゆる材料を指す。「異種(Xenogeneic)」とは、異なる種の動物に由来するあらゆる材料を指す。
【0152】
本明細書で使用される「キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor)」又は「CAR」という用語は、免疫細胞上で発現され、抗原に特異的に結合するように組み換えられた人工T細胞受容体を指す。CARは、養子細胞移植(adoptive cell transfer)による治療法として使用されてもよい。T細胞は患者から採取され、抗原又は特定の形態の抗原に特異的な受容体を発現するように修飾される。いくつかの実施形態では、CARは、選択された標的、例えば、前立腺特異的膜抗原を発現する細胞に対する特異性を有する。CARはまた、細胞内活性化ドメイン、膜貫通ドメイン及び腫瘍関連抗原結合領域を含む細胞外ドメインを含み得る。
【0153】
本明細書で使用される用語「ダウンレギュレーション(downregulation)」は、1つ又は複数の遺伝子の遺伝子発現の減少又は排除を指す。
【0154】
本技術は、本出願に記載される特定の態様に関して限定されるものではなく、これらは本技術の個々の態様の単一の例示として意図されている。当業者には明らかなように、本技術の多くの修正及び変形は、その精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に列挙したものに加えて、本技術の範囲内で機能的に同等の方法及び装置は、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正及び変形は、本技術の範囲内に含まれることが意図されている。この本発明の技術は、特定の方法、試薬、化合物組成物、又は生物学的システムに限定されず、当然ながら変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図したものではないことも理解されたい。
【0155】
実施例1
この実施例の目的は、dnVSIG3の調製を説明することであった。
【0156】
dnVSIG3(SEQID NO:20)は、VSIG3野生型バリアント6(SEQ ID NO:6)のアミノ酸配列を修飾し、タンパク質のC末端を166アミノ酸切断することにより作製された。このdnVSIG3は、細胞内ドメインがほぼ完全に失われており、細胞内ドメインは4アミノ酸しか残っていないことが特徴である。
【0157】
この実施例は、dnVSIG3の調製の成功を実証する。
【0158】
本明細書に例示的に記載される方法は、本明細書に特に開示されていない如何なる要素(element or elements)、制限(limitation or limitations)も存在しない状態で適切に実施することができる。従って、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」等の用語は、制限なく拡大的に解釈されるものとする。さらに、本明細書で使用される用語(terms)及び表現(expressions)は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用において、図示及び説明された特徴又はその一部と同等のものを排除する意図はない。請求される開示の範囲内で様々な変更が可能であることが認識される。従って、本開示は、好ましい実施形態及び任意の特徴によって具体的に開示されるが、本明細書において開示されたその中に具体化された開示の修正及び変形は、当業者によって援用され得、そのような修正及び変形は、本開示の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0159】
本開示は、本明細書において広範かつ一般的に記載されている。一般的な開示に含まれる狭義の種及び亜属の各グループもまた、方法の一部を構成する。これには、切除された材料が本明細書に具体的に記載されているかどうかに関係なく、属から任意の主題を除去するただし書き又は否定的な制限を伴う方法の一般的な説明が含まれる。本技術は、本出願に記載された特定の実施形態の点で限定されるものではなく、これらは、本技術の個々の態様の一例として意図されたものである。当業者には明らかなように、本技術は、その精神及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変形が可能である。本明細書に列挙したものに加えて、本技術の範囲内で機能的に等価な方法及び装置は、前述の説明から当業者には明らかであろう。このような修正及び変形は、本技術の範囲内に入ることが意図される。本技術は、特定の方法、試薬、化合物組成物又は生物学的系に限定されないことを理解されたい。また、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0160】
当業者であれば、本開示が、そこに固有のものと同様に、前述の目的を遂行し、目的及び利点を得るために十分に適合していることを容易に理解する。当業者であれば、このような変更及び他の用途が生じるであろう。これらの変更は、本開示の精神の範囲内に包含され、本開示の非限定的な実施形態を示す特許請求の範囲によって定義される。
【0161】
さらに、本開示の特徴又は態様がマーカッシュグループに関して説明される場合、当業者は、それによって本開示がマーカッシュグループの任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループに関しても説明されることを認識するであろう。
【0162】
本明細書で引用されるすべての参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報及び特許出願は、あらゆる目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【0163】
しかし、本明細書で引用される参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報及び特許出願への言及は、世界中の如何なる国においても、それらが有効な先行技術を構成するか又は共通の一般的な技術の一部を形成するという認識又は何らかの形の示唆ではなく、また、そのように解釈されるべきではない。
図1
図2
【国際調査報告】