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特表2024-527910口内の機械的刺激に対する対象者反応の検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】口内の機械的刺激に対する対象者反応の検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20240719BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61C 19/04 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61B10/00 X
A61B5/00 M
A61C19/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504514
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2022070347
(87)【国際公開番号】W WO2023006544
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21187861.6
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21187880.6
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】コーイマン ヘルベン
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト ルツ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヒワレ サジトクマール
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン マーク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】スペルト ハンネ アドリアナ アリジャ
【テーマコード(参考)】
4C052
4C117
【Fターム(参考)】
4C052NN02
4C052NN12
4C052NN15
4C052NN16
4C117XB01
4C117XB02
4C117XD06
4C117XD08
4C117XD16
4C117XD38
4C117XE13
4C117XE20
4C117XE36
4C117XE43
4C117XG05
4C117XH02
4C117XH16
(57)【要約】
口内の1つ又は複数の部位において印加された機械的刺激に対する対象者の痛み反応の測定を介して1つ又は複数の部位における対象者の口腔健康指標を監視するための方法及びシステムである。少なくとも1つの実施形態のセットは、対象者の口内の口腔ロケーションに標準化された機械的刺激を印加するのに使用するための口腔器具を備えたシステムを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の口内の口腔ロケーションに標準化された機械的刺激を印加するのに使用するための口腔器具であって、前記口腔器具が、前記標準化された機械的刺激のユーザによる手動印加をガイドするための指示器又はフィードバック手段を含むか、又は前記口腔器具が、前記標準化された機械的刺激を自動的に印加するための作動機構を含む、口腔器具と、
印加された各標準化された機械的刺激に対する対象者の痛み反応を直接的又は間接的に示す生体信号を測定するための手段と
を備え、
前記口腔器具が、プローブ先端で歯周ポケットをプロービングするための歯科用プローブであり、且つ/又は
前記口腔器具が、歯間空間への挿入及び/若しくは歯間乳頭に対する印加のためのプローブ部分を備える、
システム。
【請求項2】
前記口腔器具が、プローブ先端で歯周ポケットをプロービングするための歯科用プローブであり、前記指示器又はフィードバック手段は、前記プローブ先端が、前記歯周ポケットの所定の深さに挿入されたときを示す機械的又は視覚的フィードバックを前記歯科用プローブの操作者に提供するプロービング深さ指示器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロービング深さ指示器は、プロービングされる前記歯周ポケットの前記所定の深さに対応する前記プローブ先端の終端遠位点からの高さにおいて、前記プローブ先端の表面からの隆起部又は外向き突出部を備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記口腔器具が、プローブ先端で歯周ポケットをプロービングするための歯科用プローブを含み、前記歯科用プローブは、ユーザによって前記プローブ先端が口腔ロケーションに当てられる力が、所定の基準力に等しくなるときを示す抵抗力フィードバックを提供するために前記プローブ先端に物理的に結合された弾性要素を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記口腔器具が、歯間空間への挿入及び/又は歯間乳頭に対する印加のためのプローブ部分を備え、任意選択で、前記プローブ部分は、少なくとも2つのプロングを持つフォーク部材を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記機械的刺激が、
口腔面に対する標準基準力の印加、及び/又は
標準基準深さまで歯周ポケットをプロービングすること
を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
1つのセッションにわたって前記口内の異なるロケーションにおいて前記口腔器具を使用して印加された複数の機械的刺激の各々に対する前記対象者の痛み反応の指示を取得するとともに、各痛み反応に関連付けられる口腔健康状態指標を決定し、前記口腔健康状態指標のデジタル記録を生成するプロセッサをさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、各痛み反応に関連付けられた口内ロケーションの指示をさらに取得し、前記デジタル記録が、口内ロケーションに応じた前記口腔健康状態指標を表す、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
所与の機械的刺激のために前記口腔器具の前記位置の前記指示の前記取得が、
位置追跡装置から前記口腔器具の位置を示す測位信号を受信すること、
示されたロケーションに前記所与の機械的刺激を手動で印加することをユーザに促すために、ユーザインタフェースによって前記ユーザに送達されたプロンプトに示された前記ロケーションの指示を取得すること、又は
ユーザインタフェースから前記口腔器具の前記位置のユーザ入力指示を受信することを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記プロセッサに動作可能に結合されたユーザインタフェースデバイスの制御を介してユーザフィードバックをさらに生成し、前記ユーザフィードバックが、口内ロケーションに応じた前記口腔健康状態指標の視覚的表現を含む、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサが、健康記録データストアにアクセスし、前記口腔健康状態指標の生成された前記デジタル記録を、対象者識別情報に関連付け、且つタイムスタンプと関連付けて前記健康記録データストアに追加する、請求項7から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサが、前記健康記録データストアにアクセスし、前記健康記録データストアに保存された、前記対象者についての口内ロケーションに応じた前記口腔健康状態指標の履歴記録にアクセスし、1つ又は複数の前記口内ロケーションについての決定された前記口腔健康状態指標を前記履歴記録の値と比較する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサが、前記口内の1つ又は複数のロケーションについての前記口腔健康状態指標に関する長期的傾向情報を生成し、ユーザへの提示のために前記長期的傾向情報をユーザインタフェースに出力する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記生体信号が、皮膚コンダクタンス信号であり、前記生体信号を測定するための手段が、皮膚コンダクタンス検知装置であり、任意選択で、前記皮膚コンダクタンス検知装置が、ガルバニック皮膚抵抗測定デバイスである、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔ケアセッション中に機械的刺激に対する対象者の痛み反応を監視するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの口腔病理は、患部に印加された接触等の機械的刺激に応答した患者の痛み反応に関連付けられる。
【0003】
例えば、歯周病は、米国の成人人口のおよそ46%に影響を及ぼしている慢性的な歯肉疾患であるが、影響を受けている人の50%超が未診断である。プロービングに対する痛み反応は、歯周ポケットの深さ、したがって、歯周病の程度に比例するのが尤もらしいと考えられる(V.Canakci及びC.F.Canakci、「Pain levels in patients during periodontal probing and mechanical non-surgical therapy」、Clin Oral Invest(2007)11:377~383)。例えば、本論文によれば、プロービング中に(視覚的アナログスケール(VAS)法を使用して)主観的に報告された痛みレベルは、深さ4mm未満のポケット深さを持つ部位と比較すると、ポケット深さが4mmを超える部位において大幅に高かった。また、プロービングに対して出血している部位では、プロービングに対する出血を伴わない部位よりもVASスコアが大幅に高かった。したがって、歯周の場合、痛み反応は、疾患重症度と密接に相関していることが分かる。
【0004】
さらに、他の口腔病理も、痛みと関連付けられる。例えば、歯感染症は、患部の歯に対して圧力が印加される際に痛みをもたらし、感染の重症度は、痛み反応の強さに関連付けられる。さらに、歯肉炎などの他の歯肉疾患、又は口腔潰瘍でさえも、疾患重症度と相関する痛み反応に関連付けられる。
【0005】
特定の生体/生理的信号は、物理的刺激に対する患者の痛み反応に応じて変化し得ることが知られている。1つのそのような生体信号は、ガルバニック皮膚抵抗を使用して測定可能な皮膚コンダクタンスである。皮膚コンダクタンスの測定値は、急性の痛みを示し得る生理的覚醒の結果としての皮膚の抵抗及び電気伝導率における変化を反映する。別の例は、心拍数又は心拍数変動である。生理的尺度は、痛み及び/又は他の覚醒反応の客観的定量化を実現する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書で提示される一般概念は、対象者における口腔疾患を検出及び追跡するために、対象者の痛み反応を使用するものである。痛み反応は、口腔疾患と関連付けられることが知られているが、疾患重症度についての客観的で比較可能なメトリックを提供するためにこれを使用することは、これまで提案されてこなかった。さらに、口腔ケアにおける痛み反応を測定するための知られている方法は、患者による主観的報告に基づいている。痛みのレベルを測定するための一般的な方法としては、例えば、視覚的アナログスケール(VAS)がある。ただし、これは、極めて主観的である。また、自動化もされていない。さらに、このスケールは、典型的には、歯科治療の終了後に1回だけ採用されるため、この痛み測定法は、複数の異なるセッションにわたって所与の患者の痛みの相対的変化を測定することのみに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特許請求の範囲によって定義される。
【0008】
本発明の一態様による例によれば、対象者の口内の複数のロケーションにおいて口腔器具を使用して印加された標準化された機械的刺激に対する対象者の痛み反応を測定するのに使用するとともに、それに基づいて、複数のロケーションにおける所定の口腔健康指標を評価するためのプロセッサが提供される。
【0009】
プロセッサは、対象者の生体/生理的信号を受信することと、印加される複数の機械的刺激ごとに口腔器具の位置の指示を取得することと、生体信号から印加される各機械的刺激に対する対象者の痛み反応を決定することと、(例えば、アルゴリズムを使用して)口内ロケーションごとに、それに関連付けられた痛み反応に基づいて口腔健康状態指標を決定することと、口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標の表現を含むデジタル記録を生成することとを行うように適合される。
【0010】
解決すべき課題は、口内の異なるロケーションにおいて、歯周病などの1つ又は複数の口腔疾病の深刻度の客観的で体系化された評価を可能にすることである。器具と口腔面との基準となる物理的相互作用/係合に応答して対象者が受ける痛みレベルは、疾患重症度についての代理尺度として使用される。
【0011】
場合によっては、口腔健康状態指標は、単に、所与のロケーションに印加された機械的刺激に応答して対象者が受ける痛みレベルの尺度である。したがって、記録は、単に、口内のロケーションに応じた痛みレベルを記載する。これは、各ロケーションにおける健康状態の間接的表現を提供する。代替として、アルゴリズム又は伝達関数を適用して、(生体信号からの)痛み情報を歯周病などの特定の口腔疾病についてのメトリックに変換する。
【0012】
複数の口腔部位の各々に所定の機械的刺激が印加され、痛み反応が測定される。例えば、機械的刺激は、口の周囲の歯の部位における歯周ポケットへの口腔プローブの挿入であり、この挿入は、予め定義された力又は深さレベルを用いて行われる。他の刺激としては、歯間空間におけるプロービング部材の挿入、又は歯の露出面若しくは歯肉に対するタッピング力の印加を挙げることができる。
【0013】
生体/生理的信号は、患者の生理的覚醒と直接的又は間接的に相関する信号である。
【0014】
いくつかの実施形態では、口腔健康状態指標は、歯周病の重症度の指標である。
【0015】
いくつかの実施形態では、機械的刺激は、口腔面に対する標準基準力の印加を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、機械的刺激は、標準基準深さまで歯周ポケットをプロービングすることを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、機械的刺激は、温度刺激を含む。
【0018】
所与の機械的刺激のための口腔器具の位置の指示の取得は、位置追跡装置から口腔器具の位置を示す測位信号を受信すること、示されたロケーションに刺激を手動で印加することをユーザに促すためにユーザインタフェースによってユーザに送達されたプロンプトに示されたロケーションの指示を取得すること、又はユーザインタフェースから口腔器具の位置のユーザ入力指示を受信することを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、生体信号は、皮膚コンダクタンス検知装置から受信した皮膚コンダクタンス信号を含む。皮膚コンダクタンス検知装置は、ガルバニック皮膚反応測定デバイスである。他の好適な生体信号の例としては、心拍数、PPG信号、瞳孔拡張が挙げられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、プロセッサに動作可能に結合されたユーザインタフェースデバイスの制御を介してユーザフィードバックを生成するようにさらに適合される。ユーザフィードバックは、口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標の視覚的表現を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、健康記録データストアにアクセスし、口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標の生成されたデジタル記録を、対象者識別情報と関連付け、且つタイムスタンプと関連付けて、健康記録データストアに追加するように適合される。これにより、経時的な口内の複数のロケーションにわたる対象者の口腔疾患状態の記録を保持することが可能となる。
【0022】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、健康記録データストアにアクセスし、健康記録データストアに保存された、対象者についての口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標の履歴記録にアクセスし、1つ又は複数の口内ロケーションについての決定された口腔健康状態指標を履歴記録の値と比較するように適合される。例えば、健康状態指標は、本質的に相対的な尺度であるため、経時的な指標の値の変化が、最も関連性の高い情報をもたらす。
【0023】
いくつかの例では、プロセッサは、口内の1つ又は複数のロケーションについての口腔健康状態指標に関する長期的傾向情報を生成し、ユーザへの提示のためにユーザインタフェースに長期的傾向情報を出力するように適合される。
【0024】
いくつかの実施形態では、口腔健康状態指標は、口腔疾病又は疾患の重症度レベルを示す段階的なメトリックであり、口内ロケーションごとの段階的なメトリックは、ロケーションにおいて決定された痛みレベルに応じて計算される。代替として、口腔健康状態指標は、口腔疾患の有無を示す2値的メトリックである。
【0025】
本発明のさらなる態様は、対象者の口内の口腔ロケーションに標準化された機械的刺激を印加するのに使用するための口腔器具を提供し、口腔器具は、ユーザによる標準化された機械的刺激の手動印加をガイドするための指示器若しくはフィードバック手段を含むか、又は口腔器具は、標準化された機械的刺激を自動的に印加するための作動機構を含む。
【0026】
本発明のさらなる態様は、前述の口腔器具を備え、印加された各標準化された機械的刺激に対する対象者の痛み反応を直接的又は間接的に示す生体信号を測定するための手段をさらに備えるシステムを提供する。
【0027】
好ましい実施形態のセットでは、口腔器具は、プローブ先端で歯周ポケットをプロービングするための歯科用プローブであり、且つ/又は口腔器具は、歯間空間への挿入及び/若しくは歯間乳頭に対する印加のためのプローブ部分を備える。
【0028】
いくつかの実施形態では、口腔器具は、機械的刺激を印加するための動力式作動機構(例えば、電動又は空圧式)を備える。ここで、器具は、定義された機械的刺激を口腔ロケーションに印加するように作動可能な動力式の機械的刺激生成部を備える。
【0029】
一例として、器具は、電動歯ブラシであり、作動機構は、歯ブラシヘッドの突出した洗浄要素によって制御されたタッピング動作を駆動することを含む。これは、いくつかの例では、循環的なタッピング運動である。さらなる例では、機械的刺激は、口腔面上の歯ブラシの洗浄要素の定義された往復又は進行経路を含む。代替として、器具は、マウスピースであり、このマウスピースは、マウスピースが口内に受容されるとき、定義された口腔ロケーションに刺激を印加するための作動可能なプロービング又は付勢要素を備える。
【0030】
いくつかの実施形態では、口腔器具は、プローブ先端で歯周ポケットをプロービングするための歯科用プローブを備える。指示器又はフィードバック手段は、プローブ先端が歯周ポケットの所定の深さに挿入されたときを示す機械的又は視覚的フィードバックをプローブの操作者に提供するプロービング深さ指示器を含む。
【0031】
1つの例のセットでは、プロービング深さ指示器は、プロービングされるポケット内の所定の深さに対応するプローブ先端の終端遠位点からの高さにおいて、プローブ先端の表面からの隆起部又は外向き突出部を備える。
【0032】
いくつかの実施形態では、口腔器具は、プローブ先端で歯周ポケットをプロービングするための歯科用プローブを備え、歯科用プローブは、ユーザによってプローブ先端が口腔ロケーションに当てられる力が、所定の基準力に等しくなるときを示す抵抗力フィードバックを提供するためにプローブ先端に物理的に結合された弾性要素を備える。
【0033】
弾性要素は、フォースリミッタを提供する。これは、有効最大印加力を課す効果を持ち、それにより、歯科用プローブのユーザが、一貫性のある基準力刺激を印加することを保証する。これは、ばね部材を備えてもよい。これは、ばねサスペンション機構を提供してもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、口腔器具は、歯間空間への挿入及び/又は歯間乳頭に対する印加のためのプローブ部分を備え、任意選択で、プローブ部分は、少なくとも2つのプロングを持つフォーク部材を備える。
【0035】
例えば、プロングのペアは、歯の両側の歯間空間に挿入するためのものである。プロングの間の空間は、調節可能である。例えば、プロングは、互いに弾性的に変位可能である。
【0036】
いくつかの実施形態では、前述の生体信号は、皮膚コンダクタンス信号を含み、生体信号を測定するための手段は、皮膚コンダクタンス検知装置である。皮膚コンダクタンス検知装置は、例えば、ガルバニック皮膚抵抗測定デバイスを含む。生体信号を測定するための手段は、さもなくば、生体信号測定装置と呼ばれる。
【0037】
いくつかの実施形態では、器具は、口腔洗浄器又は電動フロスであり、機械的刺激は、流体噴射からの流体の制御されたパルスを含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、システムは、プロセッサをさらに備える。プロセッサは、本発明のプロセッサ態様に関して上で既に説明した機能のいずれか、及び/又は本開示で説明する任意の例若しくは実施形態において説明する機能のいずれかを持つように適合される。
【0039】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、1つのセッションにわたって、生体信号(例えば、その処理)に基づいて、口内の異なるロケーションにおいて口腔器具を使用して印加された複数の機械的刺激の各々に対する対象者の痛み反応の指示を取得するように適合される。プロセッサは、例えば、分類器アルゴリズムを使用して、各痛み反応に関連付けられた口腔健康状態指標を決定し、口腔健康状態指標のデジタル記録を生成するようにさらに適合される。
【0040】
対象者の痛み反応は、プロセッサが、生体信号を受信し、それに基づいて各痛み反応を決定すること、又はプロセッサが、ユーザインタフェースを介して、生体信号からユーザによって手動で取得された痛み反応のユーザ入力指示を受信することによって取得される。
【0041】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、各痛み反応に関連付けられた口内ロケーションの指示を取得するようにさらに適合され、デジタル記録は、口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標を表す。
【0042】
いくつかの実施形態では、所与の機械的刺激のための口腔器具の位置の指示の取得が、位置追跡装置から口腔器具の位置を示す測位信号を受信すること、示されたロケーションに所与の機械的刺激を手動で印加することをユーザに促すために、ユーザインタフェースによってユーザに送達されたプロンプトに示されたロケーションの指示を取得すること、又はユーザインタフェースから口腔器具の位置のユーザ入力指示を受信することを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、プロセッサに動作可能に結合されたユーザインタフェースデバイスの制御を介してユーザフィードバックを生成するようにさらに適合され、ユーザフィードバックは、口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標の視覚的表現を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、健康記録データストアにアクセスし、口腔健康状態指標の生成されたデジタル記録を、対象者識別情報と関連付け、且つタイムスタンプと関連付けて、健康記録データストアに追加するように適合される。
【0045】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、健康記録データストアにアクセスし、健康記録データストアに保存された、対象者についての口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標の履歴記録にアクセスし、1つ又は複数の口内ロケーションについての決定された口腔健康状態指標を履歴記録の値と比較するように適合される。
【0046】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、口内の1つ又は複数のロケーションについての口腔健康状態指標に関する長期的傾向情報を生成し、ユーザへの提示のためにユーザインタフェースに長期的傾向情報を出力するように適合される。
【0047】
いくつかの実施形態では、生体信号は、皮膚コンダクタンス信号を含み、生体信号を測定するための手段は、皮膚コンダクタンス検知装置であり、任意選択で、皮膚コンダクタンス検知装置は、ガルバニック皮膚抵抗測定デバイスである。
【0048】
本発明のさらなる態様は、対象者の口内の複数のロケーションにおいて口腔器具を使用して印加された標準化された機械的刺激に対する対象者痛み反応を測定するのに使用するとともに、それに基づいて、複数のロケーションにおける所定の口腔健康指標を評価するためのコンピュータ実施方法を提供し、方法は、(好ましくは対象者の生理的覚醒と相関する)対象者の生体/生理的信号を受信するステップと、印加された複数の機械的刺激ごとに口腔器具の位置の指示を取得するステップと、生体信号から印加された各機械的刺激に対して対象者の痛み反応を決定するステップと、口内ロケーションごとにそれに関連付けられた痛み反応に基づいて口腔健康状態指標を決定するステップと、口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標の表現を含むデジタル記録を生成するステップとを有する。
【0049】
本発明のさらなる態様は、特に、プロセッサが、各機械的刺激に対する対象者の痛み反応を直接的又は間接的に示す、対象者の生体パラメータを測定するための生体信号検知手段に動作可能に結合されているとき、プロセッサに、上述の、又は本開示若しくは任意の請求項で説明する任意の実施形態による方法を実行させるように構成されたコード手段を含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0050】
本発明のこれら及び他の態様は、以下で説明する実施形態を参照して、明らかとなり、解明されるであろう。
【0051】
本発明のより深い理解のために、また、本発明がどのように実行されるかをより明確に示すために、例示のみを目的として、添付の図面に対する参照が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】1つ又は複数の実施形態による例示のプロセッサを示す図である。
図2】本発明の1つ又は複数の実施形態による例示のシステムのブロック図である。
図3】痛み反応を区別して検出するための接触イベントと生理的反応イベントとの間の時間的近接度(又は時間的相関)の分析を示す図である。
図4】痛み反応を区別して検出するための接触イベントと生理的反応イベントとの間の時間的近接度(又は時間的相関)の分析を示す図である。
図5】痛み反応を区別して検出するための接触イベントと生理的反応イベントとの間の時間的近接度(又は時間的相関)の分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明について、図を参照して説明する。
【0054】
詳細な説明及び具体例は、装置、システム、及び方法の例示的な実施形態を示しているが、例示の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム、及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の請求項、及び添付の図面からより深く理解されるであろう。図は、概略的なものに過ぎず、縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。また、同じ参照符号が、同じ又は同様の部分を示すために様々な図を通して使用されることも理解されたい。
【0055】
本発明は、口内の1つ又は複数の部位において印加された所定の機械的刺激に対する対象者の痛み反応の測定を介して口内の1つ又は複数の部位における対象者の口腔健康指標を監視するための方法及びシステムを提供する。例えば、1つの実施形態のセットは、異なる部位に対する機械的刺激の印加に基づいて、且つ各刺激に対する対象者の痛み反応の記録に基づいて口内の複数の部位についての口腔健康指標を決定することを含み、痛み反応は、感情的/心理的覚醒の知られている代理指標である生理的信号を介して客観的に測定される。少なくとも1つの実施形態のセットは、対象者の口内の口腔ロケーションに標準化された物理的刺激を印加するのに使用するための口腔器具を備えるシステムを含む。
【0056】
したがって、一般的な発明概念の少なくとも一態様は、標準化され再現可能な物理的/機械的刺激を生成し、それにより、異なる部位において測定された痛み反応における差異が、健康指標と相関しており、刺激の差に相関するものではないと確実に考えることができるようにするための手段である。このようにして、対象者の痛み反応は、口腔健康状態指標のための代理として確実に使用することができる。
【0057】
本発明の少なくとも1つのさらなる態様は、皮膚コンダクタンス又は心拍数などの生体信号の使用に基づいて複数のロケーションにおける痛み反応の測定と、口内のロケーションに応じた健康状態指標のデータ記録の生成とを含む。これは、デジタル口内マップと呼ばれる。
【0058】
口腔健康状態指標は、診断指標である。
【0059】
口腔健康指標は、歯周病などの特定の口腔疾患の診断状態の指標である。これは、2値的指標(疾患あり/疾患なし)であってもよいし、段階的メトリック、例えば、段階的スケールに沿った疾患のレベルであってもよい。後者では、任意の一時点における口内のロケーションに応じた疾患の拡大の差異分析が可能になるとともに、経時的な疾患進行の追跡も可能となるため、好ましい。例えば、歯周病の場合、指標は、標準化された4段階の進行モデルに従って各部位の分類を検出及び追跡するために使用される。
【0060】
提案された方法は、痛み反応及び対応する健康状態指標が決定及び記録される客観的で自動化された手段により、患者による自宅使用のためのシステムにおいて具体化され得る。リアルタイムの専門家分析は、健康状態指標を取得するために必要とされていない。提案された方法はまた、専門的な臨床使用のためのシステムにおいて具体化することもできる。提案された方法は、歯科医が、検査を行うのに必要な労力及び時間を削減し、患者の痛み体験の持続時間が短縮される。本方法はまた、歯科専門医が、疾患進行を追跡するのにより簡便で確実なやり方を可能にする。
【0061】
実施形態では、対象者の生体信号は、印加された機械的刺激に対して対象者の痛み反応を測定するために使用される。1つの実施形態のセットでは、皮膚コンダクタンス測定は、生体信号として使用される。ここで皮膚コンダクタンス測定について簡単に概説する。
【0062】
皮膚コンダクタンスは、皮膚電気活動、すなわち、発汗によって媒介される。これは、痛み体験とリンクすることが示されている(例えば、H.Storm、「Changes in skin conductance as a tool to monitor nociceptive stimulation and pain」、Curr.Opin.Anaesthesiol.、21巻、6号、796~804ページ、2008.を参照されたい)。
【0063】
皮膚電気系は、身体全体にわたって均一に振る舞う。ただし、手のひらや足底のエクリン汗腺は、痛みなどの心理的刺激に特に応答する。高皮膚コンダクタンスレベルや皮膚コンダクタンス信号におけるピークは、感情的覚醒を反映し、一方、低レベルや平滑な信号は、リラックスや快適さを反映する(例えば、S.D.Kreibig、「Autonomic nervous system activity in emotion: A review」、Biol.Psychol.、84巻、3号、394~421ページ、2010.を参照されたい)。
【0064】
痛みのある状況では、皮膚電気系が活性化され、汗腺が満たされる。これにより、皮膚抵抗の低下が生じ、その結果、皮膚コンダクタンスが増大する。その後まもなく、値は、それらの以前のレベルに戻る。これにより、皮膚コンダクタンス信号における特定可能なピーク(これは、皮膚電気反応(EDR)と呼ばれる)が生成され、ピークの振幅は、交感神経の発火強度を示しており、これは、急性の痛みレベルと相関している。これらのピークは、刺激固有であり、短時間の遅延(典型的には約1~2秒)後に現れて、イベント後に消失する。
【0065】
皮膚コンダクタンスは、ガルバニック皮膚反応(GSR)測定機器を介して測定することができる。
【0066】
皮膚コンダクタンスは、心理的ストレスと痛みとの両方を示し得る。痛み及び非痛み覚醒イベントは、皮膚コンダクタンス信号を分析し、信号における関連性のあるピークを特定することによって検出することができる。関連性のあるピークは、ピークの立ち上がりの高さの和、又はある時間間隔中のピーク曲線下の面積に基づいて特定される。皮膚コンダクタンスのフェイジック成分及びトニック成分のさらなるメトリックは、J.T.Cacioppo、L.G.Tassinary、及びG.G.Berntson、The handbook of psychophysiology、第3版、44巻 New York:Cambridge University Press、2007、並びにW.Boucsein、Electrodermal activity、第2版 New York、NY:Springer Science+Business Media、2012に記載されている。
【0067】
皮膚コンダクタンスが、痛みと相関している唯一の生体信号というわけではない。例えば、心拍数、PPG信号、眼球運動、又は瞳孔拡張も感情的覚醒と相関している。例えば、心拍数の場合、時間に応じた心拍数値のデータ系列を測定し、心拍数のピークが、痛み及び/又は非痛み覚醒イベントを検出するための皮膚コンダクタンスのピークの代わりに使用される。
【0068】
様々な実施形態は、一般的な発明概念に一緒に寄与する以下の構成要素のうちの1つ又は複数の組合せを含む。
【0069】
いくつかの実施形態は、口内の1つ又は複数のロケーション、例えば、歯、歯の部位、歯の部位ポケットに標準化され再現可能な物理的刺激を与えるための(例えば、口腔器具の形態の)手段を備える。
【0070】
いくつかの実施形態は、各刺激が与えられるロケーションの指示を取得するための手段を備える。これは、ロケーション検知又は検出手段であってもよい。代替として、これは、ユーザインタフェースを通してユーザ入力によって、又は所定のロケーションスケジュールに対する参照によって提供されてもよく、任意選択で、各々の次のロケーションを示すプロンプトが、ユーザに提供される。
【0071】
いくつかの実施形態は、各物理的刺激に対する患者の生理的反応を検知するための手段を提供する。これは、生体信号検知装置又はデバイスを含む。
【0072】
いくつかの実施形態は、刺激ロケーションにおける健康状態指標(例えば、特定の口腔疾患の重症度の段階的程度)に対して痛み反応に関連するアルゴリズムを提供する。これは、場合によっては、健康状態の絶対測定値を決定することを含んでもよいし、(対象者の以前の値との比較による)相対的なメトリックを含んでもよい。場合によっては、これは、単に痛み反応の測定レベルによって提供されてもよい。
【0073】
ロケーションごとに口腔健康状態指標を決定することは、いくつかの例では、口腔健康状態指標、例えば、疾患の重症度についての対応する値を伴う測定された痛み反応(例えば、痛みレベル)に関連する予め保存されたルックアップテーブルにアクセスすることを含む。
【0074】
いくつかの例では、ロケーションごとに口腔健康状態指標を決定することは、測定された痛み反応(例えば、痛みレベル)が独立変数となる伝達関数の適用を含み、測定された痛み反応を入力として使用して関数を評定すると、口腔健康状態指標の出力値が得られる。
【0075】
いくつかの例では、口腔健康状態指標を決定することは、測定された痛み反応に基づいて健康状態指標の値を取得するように適合されたアルゴリズム(例えば、分類器アルゴリズム)の使用を含む。アルゴリズムは、分類器アルゴリズムであってもよいし、いくつかの例では、予め訓練された機械学習アルゴリズムであってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態は、口内のロケーションに応じて、健康メトリック、痛みの相対的な程度、又は経時的な健康状態の進行の指標を示すデジタル口内マップを構築するためのアルゴリズムをさらに備える。
【0077】
本発明の1つ又は複数の実施形態による例示のプロセッサを図1に示す。
【0078】
プロセッサ12は、対象者の口内の複数のロケーションにおいて口腔器具を使用して印加された標準化された機械的刺激に対する対象者の痛み反応を測定するのに使用するとともに、それに基づいて複数のロケーションにおける所定の口腔健康指標を評価するためのものである。
【0079】
プロセッサは、対象者の生体信号24を受信するように適合される。これは、例えば、皮膚コンダクタンス信号、又は心拍数信号である。
【0080】
プロセッサは、印加された複数の機械的刺激の各々に対して口腔器具の口腔位置の指示24を取得するようにさらに適合される。
【0081】
プロセッサは、生体信号から印加された各機械的刺激に対する対象者の痛み反応を決定するようにさらに適合される。これは、例えば、機械的刺激の印加に続く予め定義された時間ウィンドウ内に発生する印加された刺激に時間的に相関又は同期した生体信号におけるピーク又はスパイクを検出することに基づいてもよい。これは、立ち上がりが所定の高さを超えるそのようなピーク又はスパイクを検出することに基づいてもよい。
【0082】
プロセッサは、口内ロケーションごとにそれに関連付けられた痛み反応に基づいて、例えば、分類器アルゴリズムの使用に基づいて口腔健康状態指標を決定するようにさらに適合される。
【0083】
プロセッサは、口内ロケーションに応じて口腔健康状態指標の表現を含むデジタル記録を生成するようにさらに適合される。これは、例えば、データストアに転送される。例えば、プロセッサは、健康記録データストアにアクセスし、口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標の生成されたデジタル記録を、対象者識別情報と関連付け、且つタイムスタンプと関連付けて、健康記録データストアに追加するように適合される。この情報を使用して、時間に応じた健康状態指標の進行を追跡することができる。
【0084】
例えば、同じプロセッサ、又は異なるプロセッサが、健康記録データストアにアクセスし、健康記録データストアに保存された、対象者についての口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標の履歴記録にアクセスし、1つ又は複数の口内ロケーションについての決定された口腔健康状態指標を履歴記録の値と比較するように適合される。口内の1つ又は複数のロケーションについての口腔健康状態指標に関する長期的傾向情報が決定される。長期的傾向情報は、ユーザへの提示のためにユーザインタフェースに出力される。
【0085】
痛み反応の検出に関して、これは、以下のようなやり方で行われる。
【0086】
プロセッサは、測定セッション中に対象者に結合された生体信号検知装置から対象者についての生体信号を受信するようにさらに適合される。プロセッサは、生体信号における生理的反応イベントを特定するように適合される。生理的反応は、信号における上昇又は下降スパイク、例えば、信号におけるピーク又はドロップを意味する。例えば、生理的反応イベントは、1つ又は複数の予め定義された特性を持つ信号におけるスパイクを含む生体信号におけるイベント指紋によって特徴付けられる。例えば、特性は、予め定義された閾値を超えるベースラインに対するピーク若しくはドロップ高さ、又は予め定義された高さ閾値を超える立ち上がりを含む。特性は、スペクトル特性、例えば、ピークのスペクトルシグネチャ又はピーク/ドロップのスペクトル成分を含む。ベースラインは、検査又は測定セッションが開始する前、好ましくは対象者の安静時に実行された生体信号のベースライン測定によって定義される。
【0087】
場合によっては、プロセッサは、機械的刺激の印加のタイミングの指示を取得するように適合され、機械的刺激の各印加は、接触イベントと呼ばれる。生体信号は、任意の生理的反応を検出し、次いで、その生理的反応において特定可能な痛みシグネチャがあるかどうか、及び/又はそれがどの程度あるかを分類するために、各接触イベントに後続してプロービング又はサンプリングされる。検出された痛み反応に基づいて、健康状態指標を決定することができる。生理的反応を痛みイベントとして分類することは、例えば、ベースラインに対する所定の高さを超える立ち上がりを持つ信号における関連するピーク若しくはドロップ、予め定義された閾値を超えるピーク若しくはドロップの立ち上がりに沿った値の和、又は予め定義された閾値を超えるピーク若しくはドロップ下の面積に依存する。痛みレベルは、例えば、ピーク若しくはドロップの高さ、又はピーク若しくはドロップの立ち上がりの高さに基づいて決定される。
【0088】
いくつかの例では、プロセッサは、各生理的反応イベントと直前の接触イベントとの間の時間的近接度を決定し、時間的近接度が予め定義された基準を満たすという条件に従う生理的反応イベントのみを痛みイベントとして分類するようにさらに適合される。例えば、プロセッサは、生理的反応イベントが接触イベント直後の予め定義された時間ウィンドウ内に発生したことに応じて、生理的反応イベントを痛み状態に関連付けられるものとして分類するように構成される。
【0089】
接触イベント(機械的刺激)のタイミングの指示は、各機械的刺激が、口腔面に印加されたときを能動的に検知する接触検出手段、ユーザが機械的刺激を印加する度にユーザ入力信号(例えば、補助員による入力又はボタン若しくはペダルを使用した)を受信するユーザインタフェース、プロンプトの生成に応答して刺激を印加することをユーザに促すために、ユーザインタフェースに発せられるプロンプトのセット(プロンプトは、画面上の視覚的指示、可聴音、又は器具を通して発せられる触覚信号である)のうちの1つから取得される。
【0090】
所与の機械的刺激に対する口腔器具の位置の指示の取得は、様々なやり方で行われ得る。いくつかの例では、これは、位置追跡装置から口腔器具の位置を示す測位信号を受信することを含む。いくつかの例では、これは、示されたロケーションに所与の機械的刺激を手動で印加することをユーザに促すために、ユーザインタフェースによってユーザに送達されたプロンプトに示されたロケーションの指示を取得することを含む。いくつかの例では、これは、ユーザインタフェースから口腔器具の位置のユーザ入力指示を受信することを含む。
【0091】
図1は、単一のプロセッサを示しているが、それによって実行されるステップは、複数のプロセッサを備える処理構成部によって実施されてもよいし、分散型処理システム、例えば、クラウドベースの処理システムによって実施されてもよい。プロセッサは、入出力部(I/O)に動作可能に結合され、このI/Oを介して入力信号が受信され、データ出力が転送される。
【0092】
図2は、一部又はすべてが本発明の実施形態に従って提供される、例示のシステムの構成要素を示す。
【0093】
本システムは、対象者の口内の口腔ロケーションに標準化された機械的刺激を印加するのに使用するための口腔器具62を備える。器具は、ユーザによる刺激の手動印加をガイドするための指示器又はフィードバック手段を含む。代替として、器具は、刺激を自動的に印加するための作動機構を含む。作動機構は、動力式(例えば、電動又は空圧式)であってもよいし、非動力式(例えば、作動イベントごとに弾性的にチャージされる)であってもよい。
【0094】
本発明の一態様は、口腔器具を単独で提供する。口腔器具の例示の実装形態について、例示のシステムに関連して本開示で後述する。各々の場合において、器具は、それ自体が本発明の別個の態様として提供され得ることに留意されたい。
【0095】
本システムは、印加された各刺激に対する対象者の痛み反応を直接的又は間接的に示す生体信号を測定するための手段66をさらに備える。これは、いくつかの例では、ガルバニック皮膚反応測定装置などの皮膚コンダクタンス検知装置を備える。
【0096】
本システムは、1つのセッションにわたって口内の異なるロケーションにおいて口腔器具62を使用して印加された複数の機械的刺激の各々に対する対象者の痛み反応の指示を取得するとともに、分類器アルゴリズムを使用して各痛み反応と関連付けられた口腔健康状態指標を決定し、口腔健康状態指標のデジタル記録を生成するように適合されたプロセッサ12をさらに備える。対象者の痛み反応は、プロセッサが、生体信号を受信し、それに基づいて各痛み反応を決定すること、又はプロセッサが、ユーザインタフェースを介して、生体信号の読取りからユーザによって手動で取得された痛み反応のユーザ入力指示を受信することによって取得される。
【0097】
プロセッサ12は、各痛み反応と関連付けられた口内ロケーションの指示を取得するようにさらに適合され、デジタル記録は、口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標を表す。
【0098】
特定の例では、本システムは、各機械的刺激の印加を検出するための接触検出手段64をさらに備える。上述のように、これは、各接触イベント(各機械的刺激)を検出するためのセンサであってもよい。代替として、これは、機械的刺激が印加される度にユーザ入力を受信するユーザインタフェースであってもよい。代替として、これは、各新規刺激のタイミングに関してユーザをガイドするプロンプトを生成するユーザインタフェースコントローラからの信号であってもよい。
【0099】
ここで2つの例示的な実施形態について詳細に概説する。第1の実施形態は、臨床使用のためのものであり、第2の実施形態は、ユーザによる自宅使用のためのものである。
【0100】
第1の実施形態によれば、歯、歯の部位、又は歯の部位ポケットにおいて刺激を与えるための手段を備えるシステムが提供される。これは、歯科専門医(DP)による臨床環境における使用のためのものである。
【0101】
刺激を与えるための手段は、歯科医によって使用される口腔器具である。1つの例のセットによれば、口腔器具は、歯周ポケットをプロービングするのに使用するための歯科用プローブを含む。この歯科用プローブは、遠位端においてプローブ先端に至るハンドルを備える。この点において、その構造は、歯周プロービングのために現在使用されている標準的な歯科用プローブのものと同様である。ただし、このプローブは、対象者の口内の口腔ロケーションに対する標準的な機械的刺激の印加を可能にするように適合される。これは、ユーザによる刺激の手動印加をガイドするための指示器又はフィードバック手段を通したものであってもよい。代替として、刺激を自動的に印加するための作動機構を含めることを通したものであってもよい。
【0102】
一例として、プローブは、プロービングされるポケットにおける所定の深さに対応するプローブ先端の終端遠位点からの高さにおいて、プローブ先端の表面からの隆起部又は外向き突出部を備える。DPは、隆起部が歯肉に接触するまで歯周ポケットにプローブを挿入する。これにより、(例えば、年齢、性別に基づく)患者の人口統計グループに従って、同じ深さまで各ポケットがプロービングされることを保証する。このようにして、各々の歯の部位ポケットに一様な刺激が与えられ、この場合、刺激は、予め定義された深さまでの歯周ポケットのプロービングである。
【0103】
第2の例によれば、歯科用プローブは、ユーザによってプローブ先端が口腔ロケーションに当てられる力が、所定の基準力に等しくなるときを示す抵抗力フィードバックを提供するためにプローブ先端に物理的に結合された弾性要素を備える。したがって、定義されたプロービング深さまでプロービングをガイドすることに基づく前述の例とは異なり、この例は、ユーザが一定のプロービング圧を印加するのをガイドすることを目的とする。
【0104】
口腔器具は、プロービング中の圧力を制限するように修正された歯科用プローブである。これは、ばね装着式プローブ先端を含み、これにより、プローブ先端の圧力は、ばねサスペンションによって制限される(先端は、圧力に応答して器具の本体内へと弾性的に引っ込み、弾性付勢手段が露出位置に向かって先端を付勢して戻す)。別のアプローチは、(電気活性ポリマーなどの)応答性材料など、能動作動素子を使用して圧力を動的に制限する。DPは、患者の人口統計グループによる圧力限界に達するまでポケットにプローブを挿入する。これにより、各ポケットが同じプローブ圧でプロービングされることを保証する。このようにして、同じプロービング圧で各々の歯の部位ポケットに固定刺激が与えられる。
【0105】
したがって、器具は、標準化され再現可能な物理的刺激を生成するためのデバイスを提供する。これにより、痛み反応を口腔健康状態指標と確実に相関させることが可能となる。例えば、これにより、例えば、歯へのアクセスにおける差異(上側と下側、左と右、口の前と口の奥)、又はDPの疲労若しくは過失(例えば、検査開始時には一貫性が高いが、終了時には一貫性が低下する)による、刺激の強度の不本意な差を回避する。
【0106】
本実施形態におけるシステムは、刺激が与えられる口内のロケーションの指示を取得するための手段をさらに備える。これは、様々なやり方で達成することができる。一例は、ロケーション検知を使用するものである。例えば、プローブ(又は機械的刺激を与えるための他のデバイス)は、慣性測定ユニット(IMU)、カメラ、他の光センサ(近接又は距離センサ)などのロケーション検出に使用するための1つ又は複数の集積センサを備える。追加又は代替として、プローブは、プローブの外部にある追加のユニット(例えば、患者に対するプローブ位置を追跡する固定カメラ、又はプローブから離間された電磁若しくは他のモダリティエミッタを持つトランシーバ構成部)と、受信した信号をリダイレクトして返送する(又はその逆を行う)ためのトランシーバを持つプローブとを少なくとも備えたロケーション検知システムの一部であってもよい。別の例は、ユーザインタフェース(UI)の使用である。UIは、例えば、視聴覚手段によって、印加される各々の次の刺激のための口腔ロケーションを示すガイダンスをDPに提供するために使用される。UIは、UIを介して、例えば、発話、ジェスチャ制御によって、又はプローブに組み込まれたユーザ制御機能を用いて、例えば、触覚フィードバック若しくはプローブ上のボタンを用いて各刺激ロケーションの確認を促す。
【0107】
本実施形態のシステムは、生理的尺度を用いて与えられた刺激に対する患者の痛み反応を測定するための手段をさらに備える。これは、生体又は生理的信号検知装置を含む。これに関して複数の可能性が存在する。一例は、皮膚コンダクタンス測定装置、例えば、ガルバニック皮膚反応(GSR)装置である。
【0108】
さらなる例は、心拍数検知手段である。心拍数は、痛みに応答して増大する。また、痛みに伴う心拍数変動の低下がある。したがって、いくつかの実施形態では、心拍数及び/又は心拍数変動(HRV)の一方又は両方が、生体/生理的信号として使用される。心拍数の場合、痛みは、上昇スパイク(心拍数信号における高いピーク)を引き起こす。HRVの場合、痛みは、HRV信号の下降スパイクを引き起こす。
【0109】
別の例は、痛み反応と相関する顔の表情、例えば、しかめっ面、食いしばり等の検出である。カメラを使用して、顔の画像データを取得し、顔分析アルゴリズムを使用して、顔の表情における変化を検出することができる。
【0110】
別の例は、様々な筋肉群における電気活動の測定である。
【0111】
別の例は、例えば、カメラによる、瞳孔サイズ又は瞼の動きの追跡である。
【0112】
別の例は、血流の測定であり、血流は、痛み/ストレスに応答して増大する。
【0113】
別の例は、血圧の測定であり、血圧は、痛み/ストレスに応答して増大する。
【0114】
本実施形態では、システムは、所与のロケーションについて測定された痛み反応に基づいて口内のロケーションごとに健康状態指標を決定するように適合されたプロセッサをさらに備える。ロケーションに応じた健康状態指標のデジタル記録がさらに作成される。健康状態指標を決定するために、(生体信号から導出された)痛みレベルと口腔健康指標、例えば、歯周病の重症度との間の予め定義された関連性を包含するアルゴリズムが適用される。この関連性は、単純な相対関係(例えば、2つを関連させる線形又は非線形関数)によって具体化される。代替として、これは、複数のアルゴリズムを包含するモデル又は訓練データを使用して訓練された機械学習モデルにおいて具体化される。機械学習モデルに関して、訓練プロシージャ中に使用される訓練データは、特定の時間ウィンドウに跨る対象者の例示の前の生体信号読み取り値、又は生体信号反応から導出された痛みレベル指標を含む訓練データエントリを含む。これらは、その生体信号又はその痛み反応についての健康状態指標値を示すグランドトゥルースを用いてタグ付けされる。
【0115】
プロセッサは、ロケーションに応じた健康状態指標のデジタル記録の視覚的表現を生成するようにさらに適合される。例えば、これは、マップ上にロケーションごとの健康状態指標がマーキングされた、例えば、オーバーレイされたカラーフィルタ又は文字によるマーキングを用いる口の視覚的マップを含む。健康状態指標によって示される特定の口腔疾患の異なる重症度は、異なる色若しくは同じ色の異なる階調、又は他の視覚的しるしを介して示される。視覚的表現は、歯科医への表示のためにユーザインタフェースに出力される。
【0116】
いくつかの例では、視覚的口内マップは、単に、患者の口内のロケーションに応じた痛みレベルの指示を提供し、これは、DPに可能性のある問題エリアを示すのに十分である。他の例では、口内マップは、ロケーションに応じた健康状態指標の指示を提供する。追加又は代替として、処置が経時的に複数の時点で繰り返される場合、経時的な(相対的)疾患進行についての口内マップを構築してもよい。例えば、痛みレベルの増大は、歯周病の重症度の増大を示し、歯周病の絶対レベルの決定は、経時的な傾向よりも重要度が低くなる。
【0117】
いくつかの例では、痛み反応測定の信頼性及び/又はロケーションごとに決定された健康状態指標の信頼性を向上させるために追加の機能が提供される。
【0118】
特に、いくつかの例では、生体信号のベースライン測定は、検査又は歯科的処置を開始する前に取得される。これは、患者が安静にした状態で、予め定義された時間ウィンドウにわたって生体信号の平均レベルを決定することに基づいて取得される。例えば、皮膚コンダクタンスの場合、ベースラインレベルは、患者の通常覚醒状態による汗腺反応度を示す。例えば、患者が臨床処置中によりストレスを感じている場合、ベースラインの皮膚コンダクタンスレベルが高くなり、その結果、反応度が高くなる。痛み反応を決定する際にこのことを考慮に入れ、それにより、裏に潜んだストレス反応が痛み反応と混同されないようにすることができる。
【0119】
いくつかの例では、生体信号の新規ベースライン測定値が、生体信号における各痛み反応イベントの直後、又は印加された各刺激の直後に取得される。例えば、刺激、及びその結果生じる生体信号における(上昇又は下降)スパイクの後、生体信号は、その以前のレベルには完全には戻らないか、又は戻るまでにある程度の時間を要することがある。刺激が非常に迅速に連続的に与えられる場合、元のベースラインは、もはやリアルタイムのベースラインを真に示すものではなくなる。各刺激後、又は生体信号における各痛み反応イベント後に新規ベースライン測定値を取得することにより、ベースラインの再較正が可能となる。
【0120】
これを別の言い方で説明すると、痛み後の生体信号の減少は、連続的な信号と生理学系の回復能力との間の時間に依存する。最初の刺激の後に生理学系が回復するのに十分な時間がない場合、開始時の初期ベースライン測定値(安静時の生理機能を表す)は、(煙突効果により)後続の刺激の痛みを決定するための良い比較対象とはならない。その場合、新規バックグラウンド測定値が、新規比較対象として機能する。これの利点としては、刺激間の時間間隔が、生理機能が回復するのに十分でない場合でも正確な比較値(ベースライン)が得られることや、ベースラインが、個人固有となり、それにより、個人間の安静時ベースラインや生理機能回復速度における自然な差異を考慮できることが挙げられる。
【0121】
いくつかの例では、治療中の生体信号(例えば、GSR反応度)の最大レベルを記録し、これを、生理的反応における対象者固有の差を制御するための制御パラメータとして使用する。例えば、生理的反応イベントのピーク/ドロップは、このパラメータに従って正規化され、対応する痛みレベルの決定がそれに従って正規化される。
【0122】
いくつかの例では、年齢、性別、又は事前の健康状態などの対象者の人口統計学的特性が、ロケーションごとに健康状態指標を決定する際の因子として使用される。
【0123】
健康状態指標決定の信頼性は、刺激の標準化及び再現性によって補助される。ただし、ユーザが、測定に何らかのバイアスを不本意に持ち込む可能性は残る。したがって、いくつかの例では、システムは、意図しない刺激バイアスを検出し、フラグ立てする機能を備える。手段は、任意選択で、刺激バイアスを補正するために提供されてもよい。これは、プロセッサによって適用される処理を通して達成することができる。
【0124】
例えば、一例では、プロセッサは、口の左側と右側との間の痛み測定値及び/又は健康状態指標測定値における非対称性をチェックするように適合される。例えば、左側及び右側の測定値の平均が、互いに比較される。(例えば、何らかの閾値を超える差を伴って)一方の側が他方の側と比較して平均反応が高い場合、このことは、何らかの測定バイアスを示す(例えば、右利きのDPは、口の一方の側に他方の側よりもアクセスしやすいことに気づく)。
【0125】
追加又は代替として、プロセッサは、上顎の歯と下顎の歯との間の非対称性をチェックするように適合される。ここでも、一方の顎が他方の顎と比較して明確に高い反応がある場合、このことは、何らかの測定バイアスを示す(例えば、DPは、下顎にアクセスすることが他方よりも容易であることに気づき、したがって、より制御された刺激を印加する)。
【0126】
追加又は代替として、プロセッサは、検査の間の痛み反応における上昇又は下降の系統的傾向(例えば、安定的に増加するスコア)をチェックするように適合される。ここでも、そのようなパターンは、刺激を与える際のバイアスを示しているため、刺激は標準化されていない。
【0127】
上記のいずれの場合でも、処理アルゴリズムにおけるさらなるステップは、人工的なバイアスを除去するための生体信号、痛み反応尺度、又は導出された健康状態指標の補正を含む。例えば、バイアスが、裏に潜んだ系統的傾向である場合、これは、フィルタ(例えば、ハイパスフィルタ)を通して除去される。より一般的には、当技術分野ではバックグラウンド除去法が知られており、当業者は、データ内の検出されたバイアスを補正するためにこれらをどのように適用するかを理解するであろう。
【0128】
本発明の第2の例示の実施形態は、患者による自宅使用のためのシステム又はデバイスを提供する。いくつかの例では、これは、内部に痛み反応を取得するための機能が組み込まれた口腔ケアデバイス、例えば、洗浄デバイスを含む。このデバイスはまた、標準化された物理的刺激を生成するように適合され、これらの刺激は、ユーザが、デバイスを通常操作しながら、自動的に関連性のあるデータを取得できるように通常の口腔ケア機能と組み合わされる。
【0129】
一例では、システムは、ブラッシングマウスピースデバイスと、生体信号センサ(例えば、皮膚コンダクタンスセンサ又はPPGセンサ)とを備え、それらの両方が、スマートフォンなど、ユーザに帰属するモバイルデバイスに通信可能に結合するように適合されたシステムが提供される。スマートフォンは、専用アプリがインストールされてもよい。マウスピースは、口内の知られているロケーションに(機械的)刺激を与え(以下をさらに参照されたい)、痛み反応が、生体センサを用いて同時に測定される。生体センサは、マウスピースデバイスのハンドルに組み込まれる。代替として、生体センサは、補助センサであってもよい。これは、スマートウォッチなどの二次的なウェアラブルデバイスに組み込まれる。スマートフォンは、取得した測定データを受信するとともに、前述した方法論を実行して、口内ロケーションごとに健康状態指標情報を決定し、好ましくは、例えば、歯周病の程度の視覚的口内マップを生成し、これをユーザに視覚的に表示するように適合される。
【0130】
このアプローチは、いくつかの利点を持ち得る。
【0131】
ユーザにとっては、痛みのロケーションを客観的に決定することは、口腔ヘルスケア行動を改善するのに有益である。ただし、すべての痛覚が同じ神経、例えば、三叉神経を通って移動するため、ユーザが痛みの位置特定を行うことは困難である。したがって、システムは、異なる口腔部位における相対的な痛みレベルを測定することによってユーザが痛みの発生源を特定するのを助ける。
【0132】
いくつかの例では、取得した情報はまた、さらなる評価のため、又は治療計画に使用するため、DPのコンピュータ又はサーバに送られる。
【0133】
デバイスはまた、歯科的処置又は臨床治療後の回復を監視するためにも有用となり得る。
【0134】
いくつかの例では、アプリは、DPによって送信された個人向けのOHC行動助言をモバイルデバイスで受信するように構成され、これは、最終的にはチェアタイムを短縮する。
【0135】
ブラッシングマウスピースデバイスを使用する代わりに、電動歯ブラシデバイスを口腔ケアデバイスとして使用してもよい。これは、例えば、皮膚コンダクタンス電極をハンドルに組み込んでもよい。
【0136】
機械的刺激を送達するための他の選択肢には、以下のものがある。
【0137】
一実施形態は、歯間空間への挿入及び/又は歯間乳頭に対する印加のためのプローブ部分を備えた口腔器具を備える。例えば、プローブ部分は、少なくとも2つのプロングを持つフォーク状部材を備える。器具は、プローブ部分の振動を駆動するための手段を含む。使用にあたって、振動又は力を加えるフォーク状器具は、ユーザによって歯間乳頭の上部に置かれるか又は歯間空間に挿入される。フォークは、クリアな高調波を伴って振動するように制御される。これは、一定の力又は一定の往復運動のいずれかによる周期的な歯の接触を可能にするようにタッピング又は突っつき運動を生成し、ここで、往復運動とは、定義された往復経路に沿って器具を引きずる又は擦ることを意味する。追加又は代替として、一定の力又は一定の往復運動のいずれかを用いて歯間乳頭の高さにおいて歯肉を突っつくように適合される。
【0138】
いくつかの例では、よく制御されたタッピング運動を加えるように適合された同じタイプの器具又は異なる器具が、提供され得る。これはまた、電動歯ブラシ(PTB)に組み込まれるか/それによって送達され得る。
【0139】
いくつかの例では、提供される器具は、歯間ブラシを含み、機械的刺激は、歯間空間にブラシを挿入することによって与えられる。歯間ブラシの代わりに、電動フロッシング器具が、使用されてもよく、フロッシング部材は、歯間空間に挿入される。いずれの場合も、器具は、ブラシ又はフロッシング部材が挿入される圧力を検知するための圧力センサを備える。これは、例えば、音響フィードバックを使用して標準基準力を印加する際にユーザをガイドするためのフィードバックを提供する。
【0140】
いくつかの例では、提供される器具は、流体フロッシング又は口腔灌漑デバイスを含む。これは、加圧された流体パルス又は噴射を提供するように適合される。このパルス又は噴射は、一定方向に(例えば、歯肉に対して垂直に)一定の力刺激を与えることができる。
【0141】
器具が歯間空間に挿入される例では、任意選択で、検知手段は、歯間空間の検知又は検出、及びそれへの挿入のために器具に組み込まれる。器具の小さなプロービング先端を歯間空間にガイドすることは困難となる場合があり、検知は、この際に補助することができる。歯間空間の確実な検出を可能にすることにより、正しい角度において、正しく、標準化され再現可能な流体圧力又は流動刺激を印加することが容易となる。例えば、洗浄要素(例えば、植毛)が歯肉ライン若しくはポケットに対してあるブラッシング角度となるように歯ブラシが配向されるとき(例えば、ポケットへの噴射)、又は制御された/最適なブラッシングユーザ運動が使用されるとき、標準化され再現可能な流体刺激を与えることができる。
【0142】
例として、歯間空間検知を実施するための好適な手段について、文献WO2020/212248A1及びEP3725263A1に詳細に記載されている。
【0143】
生体信号は、痛みだけでなく、ストレスなどの非痛み心理的覚醒状態も示す。したがって、いくつかの例では、精度及び信頼性を向上させるために、生体信号において痛み反応を非痛み反応と区別する機能を持つようにさらに構成される。
【0144】
特に、いくつかの例では、プロセッサは、各生理的反応イベントと直前の接触イベント(すなわち、機械的刺激印加)との間の時間的近接度を決定し、時間的近接度が予め定義された基準を満たす、例えば、生理的反応イベントが接触イベントの予め定義された時間ウィンドウ内に発生したという条件に従う生理的反応イベントのみを痛みイベントとして分類するようにさらに適合される。
【0145】
接触イベントの発生と密接な時間的相関がある生理的信号におけるスパイクは、痛み反応の指示である(すなわち、生理的反応は、接触と因果関係があり、したがって、痛みである可能性が高い)。一方、接触イベントと密接な時間的相関のないスパイクは、体験全体に対する対象者の一般化された交感反応、例えば、心理的ストレス反応である可能性の方が高い。生理的反応と先行する接触イベントとの間の時間的近接度を測定することによって、痛みをより確実に特定することができる。したがって、この実施形態のセットは、歯又は口腔組織との機械的係合と生体信号との間の時間的相関の使用を提案する。相関の程度を使用して、対象者の反応を痛み又は非痛み覚醒として区別して分類することができる。
【0146】
一例では、生体信号に加えて、接触イベントの各々のタイミングの指示が取得される。これを行うための手段は、本開示で既に論じているため、簡略化のため、繰り返さない。
【0147】
生理的反応イベントが、接触イベントに続く予め定義された時間ウィンドウ内に収まる場合、生理的反応は、痛み反応として分類され、任意の接触イベントに続く任意の上記時間ウィンドウの範囲外となる場合、非痛み覚醒イベント(例えば、心理的ストレス反応)として分類される。時間ウィンドウは、およそ2秒であり、例えば、いくつかの例では、1~2秒である。ただし、時間ウィンドウの長さは、痛み検出の感度と痛み検出の特異性とを最適化するために、必要に応じて構成される。また、いくつかのシナリオでは、物理的刺激が、関連する遅延時間を示す場合、時間の相関が、わずかにズレて、刺激と生理的反応との間の遅れの拡大(例えば、1~3秒、又は0~3秒)に繋がることがある。そのような遅延時間の一例として、物理的刺激が皮膚からの温度差を含む場合、それにより、皮膚の熱容量が痛みを感じるまでの遅延を生じさせるものがある。
【0148】
図3は、先行する接触イベントに対する生理的反応イベントの時間的近接度に基づく生理的反応イベントの分類を概略的に示す。時間(x軸)に応じた生体信号24が、時間に応じた接触信号22とともに示されている。接触信号は、接触イベントのタイミングの指示を提供する。これは、例えば、接触センサ、又はユーザインタフェースから受信される。この例では、接触信号は、接触が発生するときには1の値、接触が発生しないときには0の値を持つ2値的信号である。これは、各々が接触イベントを表す、信号における一連の矩形波特徴をもたらす。生体信号は、多値信号である。生体信号は、複数の生理的反応イベントを呈し、生理的反応イベントは、1つ又は複数の特性を持つ信号における所定のシグネチャ又は指紋によって特徴付けられる。最も典型的には、生理的反応イベントは、生体信号の2つの時点の間に存在するものとして特定され、これらの2つの時点の間において、信号は、ベースラインレベルに対する予め定義された閾値/高さを上回る。追加又は代替として、生理的反応イベントの検出に課される他の条件があってもよく、これらの条件としては、信号におけるベースラインレベルに対する所定のピーク/ドロップ高さのピーク/ドロップ、ピーク/ドロップの立ち上がりで所定の勾配を呈する信号のピーク/ドロップ、ピーク/ドロップ下の予め定義された最小面積を持つ信号のピーク/ドロップ、及び/又はピーク/ドロップの立ち上がりに沿った予め定義された最小和を呈する信号のピーク/ドロップが挙げられる。
【0149】
図3は、生体信号における特定された生理的反応イベント42、44のセットを示し、42a~42eの一部が、痛み反応イベントとして特徴付けられ、44a~44cの一部が、非痛み覚醒反応イベント(例えば、心理的ストレスイベント)として特徴付けられる。
【0150】
図4は、図3のデータ系列の痛み反応イベント42bのうちの1つの分類をより詳細な形で概略的に示す。生体信号24及び接触信号22のうち、痛みイベントの直前及び痛みイベントの全体にわたる部分が示されている。生理的反応イベント25は、生体信号24における信号のピークとして特定可能であり、これは、所定のピーク高さを上回っている。生理的反応イベントのピークの開始時刻72は、先行する接触イベント23の開示時刻52から延びる所定の時間ウィンドウΔt内に収まっている。したがって、生理的反応イベントは、この場合、痛みイベントとして分類される。
【0151】
図5は、図3のデータ系列の非痛み反応イベント44aのうちの1つの分類をより詳細な形で概略的に示す。生体信号24及び接触信号22のうち、痛みイベントの直前及び痛みイベントの全体にわたる部分が示されている。生理的反応イベント25は、生体信号24における信号のピークとして特定可能であり、これは、所定のピーク高さを上回っている。生理的反応イベントのピークの開始時刻72は、この場合、任意の先行する接触イベントの開示時刻52から延びる所定の時間ウィンドウΔtの範囲外となっている。特に、これは、生理的反応イベントの開始に先行する時間的に最も近い接触イベント23に続く時間ウィンドウΔtの範囲外である。したがって、生理的反応イベントは、この場合、非痛み覚醒反応、例えば、ストレス反応として分類される。
【0152】
本発明の一態様はまた、対象者の口内の複数のロケーションにおいて口腔器具を使用して印加された標準化された機械的刺激に対する対象者の痛み反応を測定するのに使用するとともに、それに基づいて、複数のロケーションにおける所定の口腔健康指標を評価するためのコンピュータ実施方法を提供する。
【0153】
本方法は、対象者の生体信号を受信するステップと、印加される複数の機械的刺激ごとに口腔器具の位置の指示を取得するステップと、生体信号から印加された各機械的刺激に対する対象者の痛み反応を決定するステップと、分類器アルゴリズムを使用して口内ロケーションごとに、それに関連付けられた痛み反応に基づいて口腔健康状態指標を決定するステップと、口内ロケーションに応じた口腔健康状態指標の表現を含むデジタル記録を生成するステップとを有する。
【0154】
本発明のさらなる態様はまた、プロセッサが、各機械的刺激に対する対象者の痛み反応を直接的又は間接的に示す、対象者の生体パラメータを測定するための生体信号検知手段に動作可能に結合されているとき、プロセッサに、上で概説した方法を実行させるように構成されたコード手段を含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0155】
上述のように、様々な実施形態が、プロセッサを利用する。プロセッサは、必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアで、多くのやり方で実装され得る。プロセッサは、典型的には、必要とされる機能を実行するために、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を使用してプログラムされる1つ又は複数のマイクロプロセッサを採用する。プロセッサは、一部の機能を実行するための専用のハードウェアと、他の機能を実行するための1つ又は複数のプログラムされたマイクロプロセッサ及び関連する回路構成との組合せとして実装される。
【0156】
本開示の様々な実施形態で採用される回路構成の例としては、限定されないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が挙げられる。
【0157】
様々な実装形態において、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM(登録商標)など、揮発性及び不揮発性のコンピュータメモリなどの1つ又は複数の記憶媒体に関連付けられる。記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、必要とされる機能を実行する1つ又は複数のプログラムを用いて符号化される。様々な記憶媒体が、プロセッサ又はコントローラ内に固定されてもよいし、それに保存された1つ又は複数のプログラムがプロセッサにロード可能となるように持ち運び可能であってもよい。
【0158】
開示される実施形態に対する変形は、特許請求される発明を実践する当業者によって、図面、開示、及び添付の請求項の検討から容易に理解及び実行され得る。特許請求の範囲において、「備える(含む、有する)」という単語は、他の要素又はステップを除外せず、単数形は複数を除外しない。
【0159】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、特許請求の範囲に記載されるいくつかのアイテムの機能を満たしてもよい。
【0160】
単に、特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという事実は、利点を得るためにこれらの手段の組合せを使用できないことを示すものではない。
【0161】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの好適な媒体に保存/配布されてもよいが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介してなど、他の形態で配布されてもよい。
【0162】
「~するように適合される」という用語が、特許請求の範囲又は説明において使用される場合、「~するように適合される」という用語は、「~するように構成される」という用語と同義であることが意図されることに留意されたい。
【0163】
特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】