(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】加水分解及び官能化されたデンプンを含む改善された糖コーティングプロセス
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240719BHJP
A23G 4/10 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A23L5/00 F
A23G4/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504534
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2022025361
(87)【国際公開番号】W WO2023006252
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ル ビアン、グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】クロケ、セバスチアン
(72)【発明者】
【氏名】ルフェヴル、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ、クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】カンピオン、ローレンス
【テーマコード(参考)】
4B014
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GB17
4B014GE03
4B014GL01
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP20
4B035LC05
4B035LE07
4B035LG01
4B035LG19
4B035LG21
4B035LG28
4B035LP26
4B035LT09
(57)【要約】
本発明は、加水分解及び官能化されたデンプンを使用する改善された糖コーティングプロセスに関する。本発明はまた、そのようなデンプンを含む糖コーティング組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖コーティング方法であって、
- 結晶性材料を含む糖コーティング液を移動コア床上に噴霧する工程(a)であって、前記コアが、有孔回転ドラムを備えたチャンバ内に置かれ、前記噴霧が、少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって行われる、工程(a)と、
- 工程(a)に付随する、前記噴霧された糖コーティング液を乾燥させる少なくとも1つの工程(b)と、
- 得られた糖コーティング固体形成物を回収する工程(c)と、を含み、
前記糖コーティング液が、加水分解及び官能化されたデンプンを含むことを特徴とする、糖コーティング方法。
【請求項2】
前記結晶性材料が、キシリトールを含む、請求項1に記載の糖コーティング方法。
【請求項3】
前記加水分解及び官能化されたデンプンが、1~5個の炭素原子を有するアルキル基で官能化されている、請求項1又は2に記載の糖コーティング方法。
【請求項4】
前記加水分解及び官能化されたデンプンが、ヒドロキシプロピル化されたデンプン、アセチル化されたデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、又はこれらの混合物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の糖コーティング方法。
【請求項5】
糖コーティング液であって、
(a)40~80%の、溶媒以外の成分であって、
(a.1)90.0~99.8%のキシリトール、
(a.2)0.1~3.0%の加水分解及び官能化されたデンプン、
(a.3)0.1~3.0%の不透明化剤、
(a.4)0.0~3.0%の他の成分からなり、
(a.1)~(a.4)のパーセンテージが、前記溶媒以外の成分の総重量に対する重量によって表現され、それらの合計が、100%に等しい、溶媒以外の成分と、
(b)60~20%の溶媒と、からなり、
(a)及び(b)のパーセンテージが、前記糖コーティング液の総重量に対する重量によって表現され、それらの合計が、100%に等しい、糖コーティング液。
【請求項6】
固体形成物を糖コーティングするための、請求項5に記載の糖コーティング液の、使用。
【請求項7】
請求項5に記載の糖コーティング液から得られる少なくとも1つの糖コーティング層を含む、糖コーティング固体形成物。
【請求項8】
固体形成物の糖コーティングのための粉末状組成物であって、
- 90.0~99.8%のキシリトール、
- 0.1~3.0%の加水分解及び官能化されたデンプン、
- 0.1~3.0%の不透明化剤、
- 0.0~3.0%の`他の成分からなり、
前記パーセンテージが、前記粉末状組成物の総重量に対する重量によって表現され、それらの合計が、100%に等しい、粉末状組成物。
【請求項9】
糖コーティング固体形成物のための、請求項8に記載の粉末状組成物の、使用。
【請求項10】
請求項8に記載の組成物から得られる少なくとも1つの糖コーティング層を含む、糖コーティングされた固体形成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された糖コーティング方法、並びにその実行に有用な糖コーティング組成物に関する。本発明はまた、この方法又はこの組成物を使用して糖コーティングされた固体形成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖コーティングは、菓子又は医薬品において特に使用される操作であり、これは、様々な理由で製品を保護するために、又は視覚的に若しくは風味に関して製品を魅力的にするために、固体又は粉末状製品の表面上に、多少なりとも硬質又は軟質の結晶化コーティングを作り出すことからなる。
【0003】
固体形成物(コア)のコーティングは、従来、その軸を中心に回転するコーターと呼ばれるタンク内で実施され、その内部には、今後のエンベロープの構成材料(「糖コーティング液又はシロップ」)が液体状態で分配される表面上に、移動質量を形成する複数のコアが存在する。硬質かつ結晶質のコーティングは、この液体を適用し、それによって提供される水を蒸発させることによって得られる。
【0004】
糖コーティングシロップは、主に、1種又は更には何種かの結晶性材料からなり、かつ、従来、アラビアガム又はゼラチンなどの結合剤、着色剤、TiO2などの不透明化剤、タルク、シリカ、炭酸カルシウムなどの鉱物充填剤、強力甘味料、香料、ビタミン及び活性成分を含有している。
【0005】
糖コーティングは、多数の連続工程を含む比較的労力がかかる方法である。「糖コーティングサイクル」とも呼ばれるこれらの工程の各々は、典型的には、一般に糖コーティングシロップをコア上に噴霧することによる塗布フェーズと、休止時間とも呼ばれる、当該シロップをコア上に分配するための回転フェーズと、高温で乾燥した空気を吹き付けることによって生成された各新しいシロップ層を乾燥させるフェーズと、を含む。
【0006】
糖コーティングは、特に魅力的な外観を有する固体形状を得ることを可能にするが、その実行について、及び得ることができる視覚効果に関して柔軟性を欠く。
【0007】
興味深いことに、特許出願国際公開第20020/128290号において、本出願人は、固体形状を糖コーティングするための、改善された、特に単純かつ柔軟な糖コーティング方法を提案した。加えて、この方法は、隆起した窪み又は隆線などの不規則な形状を含む固体形成物を、これらの不規則な形状を保持しながら糖コーティングすることを可能にした。使用した結晶性材料は、キシリトール、マンニトール、スクロース、エリトリトール、イソマルト、又はマルチトールなどの糖又は糖アルコールであった。配合物は、アラビアガム又はポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)などの結合剤を含むことができる。アラビアガムは、PVAとは対照的に、再生可能な資源に由来するという利点を有する。しかしながら、それは糖コーティング層の魅力的でない黄変を誘起する。
【0008】
したがって、特許出願国際公開第20020/128290号の上述の方法で使用される配合物を改善する必要があった。
【0009】
目的
したがって、本発明は、再生可能な材料から構成される、特に、前述の特許出願国際公開第20020/128290号の方法に従って使用するための、糖コーティング組成物を提供することを目的とする。
【0010】
本発明はまた、経時的に黄変しない、かつ/又はアラビアガムを含まない糖コーティング組成物を提供することを目的とする。
【0011】
発明の提示
本出願人は、加水分解及び官能化されたデンプンの使用により、これらの組成物中のアラビアガムを効果的に置き換えることが可能になることを見出した。黄変現象が回避されることに加えて、結合剤として加水分解及び官能化されたデンプンを有する糖コーティングされた固体形成物は、結合剤としてアラビアガムで糖コーティングされたものと同等であるか、又は更にはそれよりも優れている。具体的には、本発明者らは、本発明に従って使用される加水分解及び官能化されたデンプンが、糖コーティングされた固体形成物の改善された安定性を得ることを可能にし得ることに注目した。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の第1の主題は、糖コーティング方法であって、
- 結晶性材料を含む糖コーティング液を移動コア床上に噴霧する工程(a)であって、当該コアが、有孔回転ドラムを備えたチャンバ内に置かれ、当該噴霧が、少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって行われる、工程(a)と、
- 工程(a)に付随する、当該噴霧された糖コーティング液を乾燥させる少なくとも1つの工程(b)と、
- 得られた糖コーティング固体形成物を回収する工程(c)と、を含み、
当該糖コーティング液が、加水分解及び官能化されたデンプンを含むことを特徴とする、糖コーティング方法である。
【0013】
好ましくは、当該結晶性材料は、キシリトールを含む。
【0014】
好ましくは、当該加水分解及び官能化されたデンプンは、1~5個の炭素原子を有するアルキル基で官能化されている。
【0015】
好ましくは、当該加水分解及び官能化されたデンプンは、ヒドロキシプロピル化されたデンプン、アセチル化されたデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、又はこれらの混合物から選択される。
【0016】
本発明の別の主題は、糖コーティング液であって、
(a)40~80%の、溶媒以外の成分であって、
(a.1)90.0~99.8%のキシリトール、
(a.2)0.1~3.0%の加水分解及び官能化されたデンプン、
(a.3)0.1~3.0%の不透明化剤、
(a.4)0.0~3.0%の他の成分からなり、
(a.1)~(a.4)のパーセンテージが、溶媒以外の成分の総重量に対する重量によって表現され、それらの合計が、100%に等しい、溶媒以外の成分と、
(b)60~20%の溶媒と、からなり、
(a)及び(b)のパーセンテージが、糖コーティング液の総重量に対する重量によって表現され、それらの合計が、100%に等しい、糖コーティング液である。
【0017】
本発明はまた、固体形成物を糖コーティングするためのそのような糖コーティング液の使用に関する。
【0018】
本発明の目的はまた、そのような糖コーティング液から得られる少なくとも1つの糖コーティング層を含む糖コーティングされた固体形成物である。
【0019】
固体形成物の糖コーティングのための粉末状組成物であって、
- 90.0~99.8%のキシリトール、
- 0.1~3.0%の加水分解及び官能化されたデンプン、
- 0.1~3.0%の不透明化剤、
- 0.0~3.0%の他の成分からなり、
これらのパーセンテージが、当該粉末状組成物の総重量に対する重量によって表現され、それらの合計が、100%に等しい、粉末状組成物。
【0020】
本発明はまた、固体形成物を糖コーティングするためのそのような粉末状組成物の使用に関する。
【0021】
本発明の目的はまた、そのような粉末状組成物から得られる少なくとも1つの糖コーティング層を含む糖コーティングされた固体形成物である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】溶液の温度に基づく、水中の様々な結晶性材料の最大溶解度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
したがって、本発明は、最初に、糖コーティング方法であって、
- 結晶性材料を含む糖コーティング液を移動コア床上に噴霧する工程(a)であって、当該コアが、有孔回転ドラムを備えたチャンバ内に置かれ、当該噴霧が、少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって行われる、工程(a)と、
- 工程(a)に付随する、当該噴霧された糖コーティング液を乾燥させる少なくとも1つの工程(b)と、
- 得られた糖コーティング固体形成物を回収する工程(c)と、を含み、
当該糖コーティング液が、加水分解及び官能化されたデンプンを含むことを特徴とする、糖コーティング方法に関する。
【0024】
「固体形成物」という表現は、従来、糖コーティングされた物質の任意の固体の提示物(「糖コーティングされた固体形成物」)、又は糖コーティング操作を受けることができる任意の固体の提示物(「コア」)を意味すると理解されている。典型的な例は、錠剤、硬質カプセル、軟質カプセル、ペレット、ミクロスフェア、顆粒、種子、クッキー、朝食シリアル、チューイングガムなどの菓子、ボイルドキャンディ、チューイングキャンディ、グミ、チョコレート、果実及び野菜、又は粉末及び/若しくは結晶の形態の製品である。これらの固体形成物は、例えば、食品、医薬品、獣医、又は化粧品の用途のために意図され得る。これらは、ヒト、成人若しくは子ども用、又は動物用であることが意図され得る。これらはまた、化学的又は農薬的使用が意図される製品であってもよいが、本発明の文脈において摂取されることが意図される固体形成物(「固体経口形成物」)が好ましい。好ましくは、これらの固体形成物は、錠剤及びチューイングガムから選択される。
【0025】
本発明の糖コーティング液は、結晶性材料及び官能化されて加水分解されたデンプンを含む。
【0026】
従来、糖コーティングにおける「結晶性材料」という用語は、それらが溶解している溶媒の蒸発によって結晶化することができる物質を意味すると理解されている。糖コーティングによって標的化された結晶質コーティングを形成するのは、これらの結晶性材料である。
【0027】
好ましくは、本開示による糖コーティング液の結晶性材料は、糖及び糖アルコールから選定され、好ましくは、単量体及び二量体から選定される少なくとも1つの物質を含む。
【0028】
好ましくは、本開示による糖コーティング液において、糖及び糖アルコールは、結晶性材料の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも90重量%を占める。最も優先的には、結晶性材料は、完全に、糖及び糖アルコールから選定される物質から構成される。
【0029】
好ましくは、これらの糖及び糖アルコールは、キシリトール、スクロース、エリトリトール、マンニトール、デキストロース、イソマルト、マルチトール、又は任意にこれらの組み合わせから選定される。好ましくは、これらの結晶性材料は、キシリトールを含む。好ましくは、糖コーティング液の結晶性材料は、完全に、単一物質、好ましくはキシリトールからなる。
【0030】
好ましい実施形態では、本開示による糖コーティング方法は、
- 糖コーティング液を移動コア床上に噴霧する工程(a)であって、当該コアが、有孔回転ドラムを備えたチャンバ内に置かれ、当該噴霧が、少なくとも1つの圧縮空気ノズルによって行われる、工程(a)と、
- 工程(a)に付随する、当該噴霧された糖コーティング液を乾燥させる少なくとも1つの工程(b)と、
- 得られた糖コーティング固体形成物を回収する工程(c)と、を含み、
当該糖コーティング液が、キシリトール、並びに加水分解及び官能化されたデンプンを含むことを特徴とする。
【0031】
糖コーティング液の結晶性材料の濃度は、結晶性材料が当該糖コーティング液中に可溶化されるように選定される。典型的には、特に糖コーティング液が水性液体である場合、本開示による糖コーティング液は、90%以下の結晶性材料の濃度を有し、このパーセンテージは、当該糖コーティング液の総重量に対する重量によって表現される。好ましくは、この濃度は、80%以下、好ましくは70%以下である。この濃度は、好ましくは20%以上、好ましくは30%以上、好ましくは40%以上、好ましくは50%以上である。この濃度は、例えば、約60%に等しい。
【0032】
結晶性材料の最大濃度は、当然ながら、これらの結晶性材料の性質、並びに糖コーティング液の温度に依存する。キシリトール、スクロース、エリスリトール、マンニトール、デキストロース、イソマルト、及びマルチトールについては、例えば、溶液の温度に基づく水中のこれらの結晶性材料の最大濃度を呈する
図1を参照することができる。したがって、例えば、20℃での糖コーティング液の結晶性材料の濃度は、優先的に、結晶性材料の組成がスクロースからなる場合は67%以下、マンニトールである場合は15%以下、マルチトールである場合は61%以下、キシリトールである場合は63%以下、イソマルトである場合は25%以下、エリスリトールである場合は27%以下、デキストロースである場合は48%以下である。
【0033】
好ましくは、糖コーティング液の結晶性材料又はキシリトールの含有量は、糖コーティング液の溶媒以外の成分の総重量に対して50重量%以上である。この含有量は、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上、例えば約99%に等しい。
【0034】
好ましくは、本開示による糖コーティング液は、80%以下、好ましくは70%以下、好ましくは60%以下の結晶性材料、特にキシリトールの含有量を有し、このパーセンテージは、糖コーティング液の総重量に対する重量で表現される。この含有量は、好ましくは20%以上、好ましくは30%以上、好ましくは40%以上、好ましくは50%以上である。この含有量は、例えば、約59%に等しい。
【0035】
本発明の糖コーティング液は、加水分解及び官能化されたデンプンを更に有する。
【0036】
「デンプン」という表現は、従来、当業者に公知の任意の技術によって、任意の好適な植物源から単離したデンプンを指すことが想起される。単離したデンプンは、一般に、3%超の不純物を含有しない。当該パーセンテージは、単離したデンプンの総乾燥重量に対する不純物の乾燥重量で表現される。これらの不純物は、典型的には、タンパク質、コロイド状材料、及び繊維状残渣を含む。適切な植物源は、例えば、マメ科植物、穀類、及び塊茎を含む。本開示によるデンプンは、例えば、マメ科植物(例えば、エンドウマメ)、穀類(例えば、トウモロコシ、イネ、コムギ、カラスムギ)、及び塊茎(例えば、ジャガイモ、タピオカ)に由来し得る。
【0037】
好ましくは、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、マメ科デンプン及び/又は穀類、好ましくはエンドウマメ又はトウモロコシデンプン、好ましくはエンドウマメ、好ましくは丸エンドウマメ(smooth pea)に由来する。好ましい実施形態では、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、特にエンドウマメデンプンに由来する場合、20~50%、好ましくは30~45%、好ましくは30~40%、例えば約35%に等しいアミロース含有量を有するデンプンに由来し、これらのパーセンテージは、デンプンの総乾燥重量に対するアミロースの乾燥重量によって表現される。このアミロース含有量を、複合体を形成するようアミロースによって吸収されたヨウ素の電位差分析によって、当業者が決定することができる。別の好ましい実施形態では、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、特にトウモロコシデンプンに由来する場合、5%よりも大きい、好ましくは10~40%、好ましくは15~35%、好ましくは20~30%、例えば約25%に等しいアミロース含有量を有するデンプンに由来する。
【0038】
本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、任意の適切な技術によって、例えば、酸処理、熱処理、酵素処理、又はこれらの組み合わせによって加水分解され得る。それらは、マルトデキストリン又はピロデキストリンを含むデキストリンであり得る。「マルトデキストリン」は、従来、2~20のデキストロース当量を有する加水分解されたデンプンを指す。それらは、一般に酸又は酵素加水分解によって得られる。「ピロデキストリン」は、従来、少量の水の存在下で、酸若しくは塩基の作用と組み合わせて又は組み合わせずに、高温(一般に、少なくとも100℃)の作用から得られる。そのような処理は、従来、分枝及びいわゆる「非定型」結合の形成をもたらし、したがって、ピロデキストリンは、他の加水分解されたデンプン、特にマルトデキストリンとは構造的に異なる。好ましくは、本開示による加水分解されたデンプンは、酸加水分解によって得られる。好ましくは、本開示による官能化されて加水分解されたデンプンは、ピロデキストリンではない。
【0039】
加水分解されたデンプンは、グルコース、グルコースシロップ、及びシクロデキストリンから十分に区別されなければならず、その加水分解率は、当業者によって従来理解されるように、「デンプン」と呼ばれるには高すぎる。言い換えれば、グルコース、グルコースシロップ及びシクロデキストリンは、本発明の意味の範囲内の加水分解されたデンプンではない。
【0040】
本発明による官能化されたデンプンは加水分解されており、これは、官能化されたデンプンが由来する天然デンプンと比較して、減少した分子量を有することを意味する。したがって、代替的に又は追加的に、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、その重量平均分子量(molecular weight、Mw)によって定義されてもよく、これは、好ましくは、屈折率検出(refractometric detection、RI)を用い、かつ光散乱検出器(MALLS)と結合されたサイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)によって決定されるとき、10,000kDa未満である。好ましくは、Mwは、以下の方法によって決定される:加水分解及び官能化されたデンプンの試料を、ジメチルスルホキシドと0.1Mの硝酸ナトリウムとの混合物中で希釈する。100及び1000オングストロームの多孔度を有する2つのカラム(例えば、SUPREMAカラム)を使用する。溶出を、0.5mL/分の流量で、水性媒体中で実施する。系を40℃の温度に維持する。好ましくは、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、9,000kDa以下、好ましくは7,000kDa以下、好ましくは5,000kDa以下、好ましくは4,000kDa以下のMwを有する。Mwは、好ましくは、100kDa以上、好ましくは500kDa以上、好ましくは1,000kDa以上、好ましくは2,000kDa以上、好ましくは2,500kDa以上、好ましくは3,000kDa以上である。Mwは、例えば、約3,500kDaに等しい。
【0041】
好ましくは、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、10乾燥重量%の当該デンプンを含む水溶液で決定される、20℃、100s-1のせん断速度で、10,000mPa.s未満の水中粘度を有する。好ましくは、粘度は、5cm 1°(CP50)のコーンプレート幾何形状を有するレオメータ(例えば、Physica MCR301、Anton Paar)で決定される。例えば、以下のように進行することが可能である:温度を、例えば、ペルチェを介して調節する。10%の乾燥デンプン溶液を20℃で平衡に維持する。0.006~1000s-1(log)の範囲のせん断速度を20℃で3分間適用する。好ましくは、この粘度(10%乾燥、20℃、100s-1のせん断速度で)は、5000mPa.s以下、好ましくは1,000mPa.s以下、好ましくは500mPa.s以下、好ましくは100mPa.s以下、好ましくは50mPa.s以下である。せん断速度は、好ましくは1mPa.s以上、好ましくは10mPa.s以上、好ましくは20mPa.s以上、好ましくは30mPa.s以上、例えば約40mPa.sに等しい。例えば、約42mPa.sに等しい。
【0042】
本開示による加水分解されたデンプンはまた、官能化される。言い換えれば、加水分解されたデンプンは、そのヒドロキシル官能基のうちの少なくとも1つにグラフトされた官能基を含む。言い換えれば、本発明の意味における「官能化」という表現は、架橋を除外する。好ましくは、本開示による官能化されたデンプンは、エーテル化及び/又はエステル化、好ましくはエーテル化されている。好ましくは、本開示によるデンプンは、1~5個の炭素原子、好ましくは2~4個の炭素原子、好ましくは2又は3個の炭素原子、好ましくは3個の炭素原子を有するアルキル基で官能化される。好ましくは、アルキル基は、脂肪族アルキル基、更に好ましくは飽和脂肪族基である。
【0043】
好ましくは、本開示による官能化されたデンプンは、ヒドロキシプロピル化されたデンプン、アセチル化されたデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、又はこれらの混合物から選定される。官能化されたデンプンは、好ましくはヒドロキシプロピル化されたデンプンであり、好ましくは単独で使用される。
【0044】
本開示によるヒドロキシプロピル化されたデンプンは、例えば、プロピレンオキシドを用いたエーテル化によって得ることができる。加水分解されてヒドロキシプロピル化されたデンプンは、好ましくは、0.5~10%のヒドロキシプロピル基の含有量を有し、当該パーセンテージは、加水分解されてヒドロキシプロピル化されたデンプンの総乾燥重量に対するヒドロキシプロピル基の乾燥重量で表現される。ヒドロキシプロピル基の含有量は、当業者によって、例えばプロトン核磁気共鳴(proton Nuclear Magnetic Resonance、プロトンNMR)によって、好ましくは2021年1日(1st 2021)に施行されているような欧州薬局方に従う方法(「STARCH,PREGELATINIZED HYDROXYPROPYL」)に従って決定することができる。ヒドロキシプロピル基の含有量は、好ましくは0.5~9%、好ましくは0.5~8%、好ましくは0.5~7%、例えば約7%に等しい。
【0045】
本開示による官能化されたデンプンは、エーテル化若しくはエステル化されるか、又はエーテル化及びエステル化の両方であってもよい。しかしながら、好ましくはエステル化又はエーテル化されている。それは、同じ性質又は異なる性質の基で置換(すなわち、官能化)され得る。しかしながら、好ましくは、同じ性質の基で置換され、例えば及び好ましくは、ヒドロキシプロピル基のみで置換される。
【0046】
好ましくは、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、70%以上の水中での低温溶解度を有し、当該パーセンテージは、デンプンの総重量に対する可溶性デンプンの乾燥重量で表現される。好ましくは、この水中での低温溶解度は、80%以上、好ましくは90%以上、好ましくは95%以上である。この水中での低温溶解度は、例えば、約98%に等しい。この溶解度は、例えば、20℃で、5グラムの当該デンプンを200mLの蒸留水に入れることによって決定することができる。溶解した乾燥重量は、遠心分離及び上清の脱水後に決定することができる。この溶解度は、例えば、以下のプロトコルに従って決定することができる:250mLビーカーに、200mLの蒸留水を添加する。5gのデンプンを添加し、混合物を15分間の磁気撹拌によって均質化する。得られた溶液/懸濁液を4,000rpmで10分間遠心分離する。25mLの上清を取り出し、晶析装置に導入し、水が蒸発するまで60℃のオーブンに入れた。次に、それを103℃±2℃のオーブン内に1時間置く。残渣を室温に冷却するためにデシケータに入れ、次いで乾燥重量による溶解度を計算するために秤量する。
【0047】
そのような水中での低温溶解度を有するデンプンは、従来、不溶性デンプンから、当該不溶性デンプンの焼成及び/又は加水分解によって得ることができる。当該焼成は、典型的には、不溶性顆粒が破裂して溶解するように、デンプン懸濁液を加熱することによって実施することができる。本開示による官能化されたデンプンは加水分解されており、当然ながら加水分解のレベルに応じて、追加の処理を必要とせずに水中で低温溶解性である場合がある。
【0048】
好ましくは、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、事前ゼラチン化されている。事前ゼラチン化は、従来、デンプン粒子がもはや偏光光学顕微鏡での複屈折を呈しない(結晶相がない)ことを意味する。事前ゼラチン化は、一般的に、複屈折デンプンから、水の存在下での熱処理(一般に50~90℃、具体的にはデンプンの植物起源に基づく)(当該処理は、先行する段落のように、一般的に「焼成」と呼ばれる)、及び追加の乾燥(焼成後及び/又は同時に)によって得ることができる。化学物質を加工助剤として使用することができる。事前ゼラチン化は、例えば、ドラム乾燥によって実施することができる。その場合、デンプンは、ドラム乾燥工程の前又はその最中に硬化させることができる。デンプンはまた、焼成し、次いで霧化することもできる。これはまた、押出成形によっても得ることができる。本開示において、事前ゼラチン化は、優先的に、焼成及び霧化によって実施される。
【0049】
本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、得られた糖コーティング固体形成物の品質及び/又はこの方法の作業性に関して、本発明で求められる特性と上述の好ましい修飾が矛盾しない限り、上述の好ましい修飾以外の他の化学的及び/又は物理的修飾を受けてもよい。しかしながら、本明細書に開示される問題に対処するのに必要ではないように思われるので、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、好ましくは、更に修飾されない。
【0050】
好ましくは、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、CAS番号9049-76-7の製品である。好ましくは、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、2021年3月1日に施行された欧州薬局方(「STARCH,PREGELATINIZED HYDROXYPROPYL」)に従うものである。
【0051】
特に有用な官能化されて加水分解されたデンプンは、市販されている。例えば、本出願人によって販売されている加水分解されてヒドロキシプロピル化されたデンプンLYCOAT(登録商標)RS720(CAS番号113894-92-1)、又はLYCOAT(登録商標)RS780(CAS番号113894-92-1)を挙げることができる。
【0052】
好ましくは、糖コーティング液の官能化されて加水分解されたデンプン含有量は、0.1%以上、好ましくは0.2%以上、好ましくは0.3%以上、好ましくは0.4%以上であり、このパーセンテージは、糖コーティング液の溶媒以外の成分の総重量に対する重量で表現される。この含有量は、好ましくは5.0%未満、好ましくは4.0%以下、好ましくは3.0%以下、好ましくは2.0%以下、好ましくは1.0%以下である。この含有量は、例えば、約0.1~約1.0%、又は約0.5~約0.9%である。
【0053】
好ましくは、結晶性材料/官能化されて加水分解されたデンプンの重量比は、50以上、好ましくは70以上、好ましくは90以上、好ましくは100以上、好ましくは110以上、好ましくは120以上、好ましくは130以上、好ましくは140以上、好ましくは150以上、好ましくは170以下、好ましくは190以上である。この重量比は、好ましくは300以下、好ましくは250以下、好ましくは230以下、好ましくは210以下である。この重量比は、例えば、約200に等しい。
【0054】
好ましくは、本開示による糖コーティング液は、80%以下、好ましくは70%以下、好ましくは65%以下の溶媒以外の成分の含有量を有し、このパーセンテージは、糖コーティング液の総重量に対する重量で表現される。この含有量は、好ましくは20%以上、好ましくは30%以上、好ましくは40%以上、好ましくは50%以上、好ましくは55%以上である。この含有量は、例えば、約60%に等しい。
【0055】
本開示による糖コーティング液は、典型的には極性であり、優先的には大部分の溶媒として、最も優先的には唯一の溶媒として水を含む。
【0056】
好ましくは、簡便性の理由から、かつこれが可能であるため、本発明による糖コーティング方法は、単一の糖コーティング液を実行し、すなわち、糖コーティング液は、糖コーティングの持続時間にわたって一定の配合物を有する。
【0057】
本開示による糖コーティング液は、特に、得られた糖コーティング固体形成物の品質及び/又はこの方法の作業性に関連して、本発明で求められる特性にこれが反しない限り、前述のもの以外の物質を含んでもよい。このような他の化合物は、例えば、
- アラビアガム、ポリビニルアルコールなどの他の結合剤、
- 結晶性材料、並びに/又はキシリトール以外の糖及び/若しくは糖アルコール、
- 顔料などの着色剤、
- 香料、甘味料、
- 対象とする活性剤、例えば、医薬品、栄養、機能性食品、又は植物検疫剤
である。
【0058】
しかしながら、好ましくは、本開示による糖コーティング液において、官能化されて加水分解されたデンプンは、結合剤の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは約100重量%を占める。したがって、好ましくは、本開示による官能化されて加水分解されたデンプンは、糖コーティング液の唯一の結合剤である。具体的には、本発明による糖コーティング液は、好ましくは、PVAを含まないか、又はアラビアガムを含まない、好ましくは、PVA及びアラビアガムを含まない。
【0059】
キシリトール以外の結晶性材料は、単量体及び二量体、好ましくはマンニトール、スクロース、エリスリトール、デキストロース、イソマルト、マルチトール、又は任意にこれらの組み合わせから従来選択される糖及び糖アルコールから従来選択されている。好ましくは、本開示による糖コーティング液において、キシリトールは、結晶性材料の合計及び/又は糖及び糖アルコールの合計の少なくとも50重量%を占める。好ましくは、このキシリトール含有量は、60%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、好ましくは約100%に等しい。したがって、好ましくは、本開示による糖コーティング液は、キシリトール以外の結晶性材料を含まず、及び/又は糖を含まず、及び/又はキシリトール以外の糖アルコールを含まない。
【0060】
好ましくは、本開示による糖コーティング液は、不透明化剤、好ましくは二酸化チタンを更に含む。好ましくは、糖コーティング液の官能化された不透明化剤含有量は、0.1%以上、好ましくは0.3%以上、好ましくは0.5%以上、好ましくは0.7%以上、好ましくは0.9%以上であり、このパーセンテージは、糖コーティング液の溶媒以外の成分の総重量に対する重量で表現される。好ましくは、この不透明化剤含有量、特に二酸化チタンの含有量は、20.0%以下、好ましくは15.0%以下、10.0%以下、5.0%以下である。この含有量は、例えば、約1%に等しい。
【0061】
一般に、本開示による糖コーティング液は、5.0%未満、好ましくは4.0%以下、好ましくは3.0%以下、好ましくは2.0%以下、好ましくは1.0%以下、例えば約0.0%に等しい顔料及び/又は着色剤を含み、これらのパーセンテージは、糖コーティング液の溶媒以外の成分の総重量に対する重量で表現される。
【0062】
別の好ましい実施形態では、本開示による糖コーティング液は、
(a)40~80%、好ましくは45~75%、好ましくは50~70%、好ましくは55~65%、例えば約60%の、溶媒以外の成分であって、
(a.1)90.0~99.8%、好ましくは95.0%~99.5%、好ましくは96.0%~99.0%、好ましくは97.0%~99.0%、好ましくは98.0%~99.0%、例えば98.5%のキシリトール、
(a.2)0.1~3.0%、好ましくは0.2~2.0%、好ましくは0.3~1.0%、好ましくは0.4~0.8%、好ましくは0.4~0.7%、好ましくは0.4~0.6%、例えば0.5%の加水分解及び官能化されたデンプン、
(a.3)0.1~3.0%、好ましくは0.5~2.0%、例えば1.0%の不透明化剤、
(a.4)0.0~3.0%、好ましくは2.0%未満、好ましくは1.0%未満、好ましくは0.5%未満、例えば0.0%の他の成分、好ましくは着色剤物質からなり、
(a.1)~(a.4)のパーセンテージが、溶媒以外の成分の総重量に対する重量によって表現され、それらの合計が、100%に等しい、溶媒以外の成分と、
(b)60~20%、好ましくは55~25%、好ましくは50~30%、好ましくは45~35%、例えばおよそ40%の溶媒であって、当該溶媒が、優先的には水である、溶媒と、からなり、
(a)及び(b)のパーセンテージが、糖コーティング液の総重量に対する重量によって表現され、それらの合計は、100%に等しい。
【0063】
本発明はまた、固体形成物を糖コーティングするためのそのような糖コーティング液の使用に関する。好ましくは、当該糖コーティングは、以前に記載されたような本開示による方法に従って実施される。
【0064】
本開示による糖コーティング方法は、好ましくは、即時使用可能な混合物を好適な溶媒、好ましくは水と混合することによって、糖コーティング液を調製する工程を更に含み得る。
【0065】
好ましくは、この即時使用可能な混合物は、溶媒を除いて、糖コーティング液について前に定義されたような組成を有し、溶媒は当然ながら省略される。
【0066】
本開示による即時使用可能な混合物は、典型的には、粉末状混合物の形態である。
【0067】
好ましい実施形態では、本開示による即時使用可能な混合物は、
- 90.0~99.8%、好ましくは95.0%~99.5%、好ましくは96.0%~99.0%、好ましくは97.0%~99.0%、好ましくは98.0%~99.0%、例えば98.5%のキシリトール、
- 0.1~3.0%、好ましくは0.2~2.0%、好ましくは0.3~1.0%、好ましくは0.4~0.8%、好ましくは0.4~0.7%、好ましくは0.4~0.6%、例えば0.5%の加水分解及び官能化されたデンプン、
- 0.1~3.0%、好ましくは0.5~2.0%、例えば1.0%の不透明化剤、
- 0.0~3.0%、好ましくは2.0%未満、好ましくは1.0%未満、好ましくは0.5%未満、例えば0.0%の他の成分、好ましくは着色剤物質からなる粉末状組成物であり、
これらのパーセンテージが、当該粉末状組成物の総重量に対する重量によって表現され、それらの合計が、100%に等しい。
【0068】
本発明はまた、固体形成物を糖コーティングするためのそのような粉末状組成物の使用に関する。好ましくは、当該糖コーティングは、以前に記載されたような本開示による方法に従って実施される。
【0069】
本開示による方法を実行するために使用される設備は、典型的には、糖コーティング液を噴霧するための装置へ糖コーティング液を輸送するための少なくとも1つの出口を含む、糖コーティング液を貯蔵するためのユニットを備える。この輸送は、例えば、蠕動ポンプによって保証することができる。糖コーティング液は、噴霧装置を介して、チャンバ内に収容されたコア床に適用され、当該チャンバは、当該コア床の移動用の回転ドラムを備える。より正確には、ドラムは、有孔回転ドラムであり、選択された噴霧装置は、少なくとも1つの圧縮空気ノズルを備える。設備は、糖コーティング液を乾燥させるためのドラムチャンバに、空気入口を更に備える。乾燥空気は、特に回転ドラムの穿孔を介して、特にチャンバから空気を吸引することによって吐出される。
【0070】
本開示による方法に有用な設備の要素は市販されており、それらの構成は、当業者にとって特定の困難を表すものではない。
【0071】
糖コーティング液の温度は、典型的には、結晶性材料、特にキシリトールが、噴霧されるべき当該糖コーティング液中で十分に可溶化されるように選択される。したがって、この温度はまた、液体中に存在する結晶性材料の量の関数でもある。好ましくは、糖コーティング液の温度は、90℃未満、好ましくは80℃未満、好ましくは70℃未満、好ましくは60℃未満、好ましくは50℃未満、好ましくは40℃未満、好ましくは30℃未満である。この温度は、好ましくは少なくとも10℃、好ましくは少なくとも15℃、又は更には少なくとも20℃である。この温度は、好ましくは周囲温度に対応し、これは、典型的には約20~約25℃で変動する。キシリトールが結晶性材料として使用される場合、糖コーティング液に使用される溶媒の温度は、好ましくは、この段落において上で定義されたとおりである。しかしながら、キシリトールの高い溶解エンタルピーのために、糖コーティング液の温度は、一般に、より低い。したがって、例えば、溶媒として20℃の水を使用する糖コーティング液については、糖コーティング液は、一般に、キシリトールの水への溶解後に10~15℃、及び糖コーティング中に15~20℃の温度を有する。
【0072】
好ましくは、糖コーティング液は、その使用中、撹拌下に保たれる。好ましくは、回転速度は、糖コーティング液の均質性を維持するように選定される。
【0073】
好ましい実施形態では、糖コーティング液は、単一ジャケット貯蔵ユニット内に貯蔵され、かつ/又は本開示による方法において有用な設備は、糖コーティング液を加熱するための装置を有していない。実際に、本開示による方法が必ずしも高温の糖コーティング液の使用を必要としないため、これらの装置は、本開示による方法において義務的ではない。
【0074】
糖コーティング液を噴霧するために、使用される圧縮空気ノズルの数は、従来、製造業者の推奨に従って、糖コーティングチャンバの寸法に基づいて選択されている。このノズルの数は、典型的には、糖コーティングチャンバの40cm直径断面当たり1~2つのノズルである。このノズルの数は、例えば、1~10、例えば1~6の範囲である。
【0075】
好ましくは、噴霧のために、本開示による方法は、圧縮空気ノズルのみを使用する。
【0076】
好ましくは、本開示に従って使用されるノズルは、0.1~2.8mm、好ましくは0.1~2.5mm、好ましくは0.1~2.2mm、例えば0.3~2.0mm、又は0.5~1.8mm、又は0.5~1.5mm、又は0.5~1.2mm、又は0.5~1.0mmの範囲から選択される直径を有する孔を有する。
【0077】
好ましくは、噴霧流量は、1~20g/分/コアkg、好ましくは1~15g/分/コアkg、好ましくは2~15g/分/コアkg、好ましくは5~10g/分/コアkgの範囲から選択される。好ましくは、噴霧のために選択される流量は、糖コーティング方法中に増加される。具体的には、本発明者らは、特定の結晶性材料の場合に、糖コーティングの開始時の低流量の使用が、コアの表面上で起こる第1の結晶化フェーズを促進することを可能にすることを見出した。次いで、流量を増加させて糖コーティングを加速させ得る。
【0078】
噴霧のために、霧化圧力及び圧潰圧力は、流量及びノズルの孔に基づいて調整され、かつ製造業者の推奨に従って調整される。この流量及びこのノズル孔は、典型的には、使用される設備のサイズに依存する。これらの霧化圧力及び圧潰圧力は、典型的には、霧化圧力の場合は0.5バール~4.0バール、好ましくは0.5バール~3.5バール、例えば0.7バール~2.5バールの範囲、及び/又は圧潰圧力の場合は0.7バール~3.5バールの範囲で選択される。この霧化圧力は、例えば、約1に等しい。
【0079】
本発明の糖コーティング方法では、糖コーティング液は、回転ドラムによって移動させたコア床上に噴霧される。これらのコアの性質は、好ましくは、固体形成物について上で定義したものであり、これらは、例えば、錠剤又はチューイングガムである。これらのコアは、完全に裸であってもよく、又は1つ以上の層、例えば、グミング、フィルムコーティング、又は更には糖コーティング層でコーティングされていてもよく、当該層は、優先的には、本開示による糖コーティング方法に使用されるものと同じ設備において得られる。
【0080】
移動中にコア床を設定するために、ドラムの回転速度は、チャンバの寸法及び糖コーティングされるコアのサイズに基づいて選択される。この回転速度は、一般に、3~30rpmの範囲、好ましくは5~20rpmの範囲、好ましくは5~15rpmの範囲で選択される。この回転速度は、特に直径48.26cmの有孔回転ドラムについては、例えば、約9rpmに等しい。
【0081】
有利な実施形態では、特に簡便性及び/又はスペースの理由で、かつ本開示による方法がそれを可能にするので、コア床の移動は、長手方向軸に沿った当該コアの輸送を除外する。このことは、特に、糖コーティングされているコアが、1つのチャンバから別のチャンバへと輸送されないこと、すなわち、単一のチャンバ内で糖コーティングされること、及び/又はコア床が、それに沿って輸送される長手方向チャンバ内に糖コーティングされないことを意味する。
【0082】
乾燥のために、選定される入口空気温度は、好ましくは100℃未満、好ましくは80℃以下、好ましくは70℃以下、好ましくは60℃以下、好ましくは50℃以下である。この温度は、一般に20℃以上、好ましくは30℃以上である。この温度は、例えば、約40℃に等しい。
【0083】
乾燥のために、空気流量は、50~8000m3/時の範囲、例えば、100~7000m3/時の範囲、例えば、100~1000m3/時で選択され得る。この堆積は、例えば、500m3に等しい。この堆積は、一般にタービンのサイズに依存する。
【0084】
乾燥空気の排出は、好ましくは、有孔回転ドラムの穿孔により空気を吸引することによって実施される。
【0085】
好ましくは、本開示による回転ドラムの有孔壁の面積は、当該ドラムの壁の表面の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%を占める。また、好ましくは、ドラムの壁は、その表面全体にわたって穿孔される。
【0086】
好ましくは、糖コーティングされているコア床の温度は、70℃以下、好ましくは60℃以下、好ましくは50℃以下、好ましくは40℃以下である。糖コーティング中のコア床のこの温度は、一般に、少なくとも10℃、又は更には少なくとも20℃である。糖コーティングされるコア床のこの温度は、例えば約25~約30℃である。好ましくは、糖コーティングの開始前、すなわち、噴霧が始まる前に、本開示による糖コーティング方法は、糖コーティングされるコア床を加熱する工程を含む。この工程は、特に、コア床を、糖コーティングされるコアの温度に対応する標的温度に持ち込むことを目的とする。
【0087】
本発明の糖コーティング方法は、噴霧液の噴霧と乾燥とを付随して行う。しかしながら、特に、得られた糖コーティング固体形成物の品質及び/又はこの方法の作業性に関連して、本明細書で求められる特性にこれが反しない限り、乾燥の非存在下で分布工程(「一時停止時間」)及び噴霧工程を導入することが考えられる。
【0088】
好ましくは、その間に噴霧が任意に乾燥に付随して実施されない糖コーティング方法のフェーズは、糖コーティング方法の時間の50%未満、好ましくは40%未満、好ましくは30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満を占める。最も優先的には、糖コーティングは、乾燥の非存在下での噴霧フェーズを含まない。
【0089】
好ましくは、可能な一時停止時間(その間に噴霧も乾燥も存在しない2つの噴霧フェーズの間の時間)は、糖コーティング方法の時間の50%未満、好ましくは40%未満、好ましくは30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは10%未満、好ましくは5%未満を占める。最も優先的には、糖コーティングは、一時停止時間を含まない。
【0090】
優先的には、糖コーティング(又は「質量増加」)のパーセンテージは、単位時間当たり、分当たり少なくとも0.1%、好ましくは分当たり少なくとも0.2%、好ましくは1分当たり少なくとも0.3%、好ましくは分当たり少なくとも0.4%である。単位時間当たりのこの質量増加は、一般に、1分当たり1.0%未満、又は更には分当たり0.8%未満、又は更には分当たり0.7%未満である。この質量増加は、例えば、1分当たり約0.4又は0.5%に等しい。
【0091】
本開示による方法は、特に、得られた糖コーティング固体形成物の品質及び/又はこの方法の作業性に関連して、本明細書で求められる特性にこれが反しない限り、固体形成物を糖コーティングすることを目的とするもの以外の他の通常の工程を更に含んでもよい。挙げることができる他の工程の例としては、グミング、平滑化、研磨及び着色がある。有利には、そのような工程が実施される場合、それらは、本開示による糖コーティング方法で使用されるものと同じ設備で実施される。使用される組成物が、結晶化された物質、特に糖及び/又は糖アルコールの層が効果的に形成されるそのような量の結晶性材料を含んでいる場合、例えばグミング又は着色などのこれらの工程のうちのいくつかが、糖コーティング工程に時として同化され得ることが理解される。
【0092】
好ましくは、本開示による糖コーティング方法は、糖コーティング後に平滑化工程を含む。好ましくは、この平滑化工程は、その実行のために本開示による糖コーティング液を使用する。好ましくは、この平滑化は、乾燥させることなく液体を噴霧する第1の工程、噴霧も乾燥もしない第2の工程、噴霧しないが乾燥させる第3の工程を含む。これらの3つの工程は、優先的な実施形態による平滑化サイクルを構成する。好ましくは、平滑化は、1~5、好ましくは1~4、好ましくは1~3のサイクルを含む。
【0093】
着色は、所望される場合、糖コーティング液に着色剤を添加することを介して直接実施されてもよい。
【0094】
本開示による方法に有用な設備は、特に、得られた糖コーティング固体形成物の品質及び/又はこの方法の作業性に関連して、本明細書で求められる特性にこれが反しない限り、糖コーティング方法で従来使用されている他の要素を含んでもよい。しかしながら、好ましくは、本開示に従って使用されるドラムのチャンバは、塊破砕機を含まない。
【0095】
本発明はまた、本開示による糖コーティング方法に従って得られた、又は得ることができる糖コーティングされた固体形成物に関する。本発明はまた、本開示による糖コーティング液を使用する糖コーティングされた固体形成物に関する。
【0096】
好ましくは、本開示による糖コーティングされた固体形成物は、1%よりも大きい糖コーティングのパーセンテージを有する。「質量増加」としても知られている糖コーティングのこのパーセンテージは、従来、以下のように決定される:
【0097】
【数1】
好ましくは、糖コーティングのこのパーセンテージは、3%よりも大きく、好ましくは5%よりも大きい、好ましくは10%よりも大きい、好ましくは20%以上、好ましくは25%以上である。このパーセンテージは、好ましくは50%以下、好ましくは40%以下、好ましくは35%以下である。このパーセンテージは、例えば、約30%に等しい。
【0098】
本開示において、成分の量は、一般に、重量パーセンテージで表現される。特に明記しない限り、これらの重量は、一般に粉末形態であるそれらの元の形態の成分の量である。これらの粉末状成分は、一般に、少量の水(%水分又は「脱水による質量損失」とも呼ばれる)及びいくらかの不純物を含有する。この点に関して、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンは、一般に、15重量%以下、一般に3~12%の水を含有し、キシリトールなどの糖アルコールは、一般に、1%以下の水を含有する。これは、例えば、10重量%の加水分解及び官能化されたデンプンに言及される場合、これは、一般に、乾燥重量で(すなわち、無水重量で)8.8~9.7%に相当することを意味する。
【0099】
反対に、本開示において、乾燥重量に言及される場合、これは無水重量を指す。
【0100】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の実施例を読むことで明確に把握され、以下の実施例は、本発明を例示するものであり、限定するものではない。
【実施例】
【0101】
A.糖コーティング試験
1.使用した設備
以下の特性を有する設備を使用した:
- 有孔回転ドラム、48.26cmの直径、
- ブレード×6、
- 圧縮空気霧化ノズル1つ(Schlick 970/7-1 S75)、孔径0.8mm、
- 蠕動ポンプ(Watson Marlow model 323)、3ローラーヘッド(313 DW)、
- Exacanalチューブ、4mmの内径、8mmの外径。
【0102】
2.コア
以下の定性的組成を有するチューイングガムを使用した:ソルビトール(NEOSORB(登録商標)P60W、ROQUETTE)、ベースガム、マルチトールシロップ(LYCASIN(登録商標)85/55、ROQUETTE)、マンニトール(Mannitol 60、ROQUETTE)、粉末香料、液体香料、スクラロース、アセスルファムK)
【0103】
3.全ての試験についての共通パラメータ
【0104】
【0105】
4.キシリトール及びアラビアガムを用いた糖コーティング
アラビアガムで最良の結果が得られるように、操作条件を最適化した。このセクションに示した条件下で最良の結果を得た。
【0106】
糖コーティング液は、以下の配合物を有した。
【0107】
【0108】
パーセンテージは、糖コーティング液の総重量に対する重量で表現される。
【0109】
糖コーティング液を以下のように調製した:2つの溶液を調製した。ブレードミキサー中で水をキシリトールと混合することによって、溶液Aを調製した。次いで、アラビアガムを40%溶液の形態で導入した。キシリトールを分散及び溶解するのに十分な速度で全体を約45分間撹拌した。二酸化チタン及び水を含む溶液Bを高せん断ミキサー(POLYTRON)(3~5分、11,000~30,000rpm)で調製した。溶液Aを溶液Bに添加した。
【0110】
糖コーティング条件は以下のとおりであった。
【0111】
【0112】
次いで、糖コーティング液に使用されるものと同じ溶液を使用して、平滑化工程を以下のように実施した。
【0113】
【0114】
5.キシリトール及び官能化されて加水分解されたデンプンを用いた糖コーティング
本開示による官能化されて加水分解されたデンプンで最良の結果が得られるように、操作条件を最適化した。
【0115】
試験1
糖コーティング液は、以下の配合物を有した。
【0116】
【0117】
パーセンテージは、糖コーティング液の総重量に対する重量で表現される。
【0118】
糖コーティング液をポイント4と同様に調製した。LYCOAT(登録商標)RS720を25%溶液の形態で導入した。
【0119】
糖コーティング条件は以下のとおりであった。
【0120】
【0121】
次いで、糖コーティング液に使用されるものと同じ溶液を使用して、平滑化工程を以下のように実施した。
【0122】
【0123】
試験2
糖コーティング液は、以下の配合物を有した。
【0124】
【0125】
パーセンテージは、糖コーティング液の総重量に対する重量で表現される。
【0126】
糖コーティング液をポイント4と同様に調製した。LYCOAT(登録商標)RS720を25%溶液の形態で導入した。
【0127】
糖コーティング条件は以下のとおりであった。
【0128】
【0129】
次いで、試験1と同様に平滑化工程を実施した
【0130】
B.安定性
安定性試験を、セクション4.及びセクション5.、試験1に従って得られた糖コーティングされた製品に対して実施した。これを行うために、糖コーティングされたチューイングガムを、包装せずに30℃、70%の相対湿度に3週間置いた。水取り込みを経時的に測定した(吸水による質量増加の%)。また、以下の条件下で試験を実施した:40℃、75%の相対湿度、包装なし。
【0131】
チューイングガムの2つのバッチは、同じ水取り込みプロファイルを有した。
【0132】
また、安定性試験を他のコアに対して第2の工程で実施した。これらの試験は、本明細書では提示していないが、本開示による加水分解及び官能化されたデンプンが、アラビアガムよりも良好な結果を得ることさえ可能にすることを示した。
【0133】
試験3
以下の組成を有する即時使用可能な粉末状組成物によって糖コーティング液を生成する試験も実施した。
【0134】
【0135】
パーセンテージは、粉末状組成物の総重量に対する重量で表現される。
【0136】
糖コーティング液は、以下の組成を有した:60%のこの即時使用可能な組成物及び40%の水。
【0137】
この方法を使用することによって、糖コーティング試験を首尾よく実施した。
【0138】
本発明者らはまた、より大きな粒径のキシリトール(貯蔵中に潜在的に集塊を形成する低粒径のキシリトール)を用いて試験を実施した。したがって、これらの試験では、XYLISORB(登録商標)90(およそ90μmに等しい平均直径)をXYLISORB(登録商標)300(およそ300μm平均直径)に置き換えた。非常に良好な結果も得られた。
【国際調査報告】