IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2024-527929ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを調製する方法
<>
  • 特表-ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを調製する方法 図1
  • 特表-ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを調製する方法 図2
  • 特表-ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを調製する方法 図3
  • 特表-ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを調製する方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20240719BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240719BHJP
   C08G 64/18 20060101ALI20240719BHJP
   C08G 64/42 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08G81/00
B29C45/00
C08G64/18
C08G64/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504800
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2022070228
(87)【国際公開番号】W WO2023006517
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21187927.5
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーゼンフェルダー ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ファンデン アインデ ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ブッツ マルク
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ファン ドルスト ポール
(72)【発明者】
【氏名】スパーペンス マックス
(72)【発明者】
【氏名】デ ヴォルフ マルクス
(72)【発明者】
【氏名】エンベルク ローラント
(72)【発明者】
【氏名】カーレンベルク グレゴール
【テーマコード(参考)】
4F206
4J029
4J031
【Fターム(参考)】
4F206AA28
4F206AA33
4F206AM36
4F206JA07
4F206JF01
4F206JL02
4F206JQ90
4J029AA09
4J029AB01
4J029AB04
4J029AB07
4J029AC03
4J029AD01
4J029AE01
4J029AE05
4J029HA01
4J029JE172
4J029JE222
4J029KB03
4J029KB15
4J029KC02
4J029KC05
4J029KD02
4J029KD07
4J029KD17
4J029KE17
4J029LA12
4J029LA20
4J031AA52
4J031AA59
4J031AB04
4J031AC03
4J031AC05
4J031AD01
4J031AE03
4J031AE04
4J031AE05
4J031AF05
4J031AF18
4J031AF19
4J031AF24
4J031AF29
(57)【要約】
本発明は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを重縮合によって調製する連続方法であって、少なくとも1つの薄膜蒸発器の使用を特徴とし、上記少なくとも1つの薄膜蒸発器は、少なくとも1つの薄膜蒸発器内で回転する少なくとも2つのワイパーブレード要素を周縁部に有する、方法に関する。本発明による方法においては、オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを反応させて、SiCoPCとしても知られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを形成する。この方法は、少なくとも1つの薄膜蒸発器を用いたオリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの反応中に或る特定の方法パラメーターを順守することも特徴とする。本発明による方法によって調製されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、大きなポリシロキサンドメインの体積分率が小さく、同時にポリシロキサンドメインのサイズ分布が狭く、良好な機械的特性、特にISO 7391/ISO 180Aに準拠したノッチ衝撃試験における強靭な破壊挙動、例えば射出成形又は押出しにおける良好な加工性、及び良好な流動性を特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正確に1つの薄膜蒸発器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する方法であって、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(2)オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(1)で提供された前記反応混合物を、前記正確に1つの薄膜蒸発器に導入する方法工程、
なお、前記薄膜蒸発器は、周縁に少なくとも2つのワイパーブレード要素を有する正確に1つのローターを有する正確に1つの反応チャンバを備え、該正確に1つのローターは、前記薄膜蒸発器内で回転し、各ワイパーブレード要素は、1つの外縁を有する;
(3)工程(2)からの前記反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、前記反応混合物は、前記薄膜蒸発器の取入口から該薄膜蒸発器の出口まで搬送される;
(4)工程(3)で得られた前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを前記薄膜蒸発器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
ここで、工程(3)において、前記正確に1つの薄膜蒸発器で以下の方法条件:
(3.a)前記周縁の少なくとも2つの回転ワイパーブレード要素の前記外縁と前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~5000 1/s、
(3.b)前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバ内の圧力が0.01mbara~10mbara、
(3.c)前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度が280℃~370℃、
(3.d)前記反応混合物の表面更新周波数が10Hz~50Hz、
であることが観察される、方法。
【請求項2】
直列に配置された複数の薄膜蒸発器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する方法であって、この数が少なくとも2であり、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(2)オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(1)で提供された前記反応混合物を、前記少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最初の蒸発器に導入する方法工程、
なお、前記少なくとも2つの薄膜蒸発器の各々が、正確に1つのローターを有する正確に1つの反応チャンバを備え、各ローターは、周縁に少なくとも2つのワイパーブレード要素を有し、各薄膜蒸発器内の前記正確に1つのローターは回転し、各ワイパーブレード要素は、1つの外縁を有する;
(3)工程(2)からの前記反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、前記反応混合物は、前記少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最初の薄膜蒸発器の取入口から該少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最後の薄膜蒸発器の出口まで搬送される;
(4)工程(3)で得られた前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを前記最後の薄膜蒸発器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
工程(3)において、前記少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最後の蒸発器で以下の方法条件:
(3.a)前記周縁の少なくとも2つの回転ワイパーブレード要素の前記外縁と前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~5000 1/s、
(3.b)前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバ内の圧力が0.01mbara~10mbara、
(3.c)前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度が280℃~370℃、
(3.d)前記反応混合物の表面更新周波数が10Hz~50Hz、
であることが観察される、方法。
【請求項3】
方法工程(3)において、前記単一の薄膜蒸発器又は直列に配置された複数の薄膜蒸発器の前記最後の薄膜蒸発器で以下の方法条件:
(3.a.a)ワイパーブレード要素の回転外縁と前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~4000 1/sであること、
が観察される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
方法工程(3)において、前記単一の薄膜蒸発器又は直列に配置された複数の薄膜蒸発器の前記最後の薄膜蒸発器で以下の方法条件:
(3.b.a)前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバ内の圧力が0.1mbara~6mbara、好ましくは0.2mbara~2mbaraであること、
が観察される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
工程(1)で提供された前記オリゴカーボネートの相対溶液粘度が1.11~1.22、特に好ましくは1.13~1.20である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が2重量%~15重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、該ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が3重量%~10重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が4重量%~8重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が4.5重量%~5.5重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
工程(1)で提供された前記オリゴカーボネートのOH基含有量が1200ppm~2300ppm、特に好ましくは1400ppm~2200ppmである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
工程(1)において、1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、好ましくは1.11~1.22の相対溶液粘度を有し、特に好ましくは1.13~1.20の相対溶液粘度を有し、かつ、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有する、好ましくは1200ppm~2300ppmのOH基含有量を有する、特に好ましくは1400ppm~2200ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、かつ、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する、前記反応混合物を、ダイナミックミキサー及び/又はスタティックミキサーを用いて製造する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記方法の工程(3)において、好ましくは以下の方法条件:
前記最初の薄膜蒸発器では、
(3.1.a)回転ワイパーブレード要素の前記外縁と前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~5000 1/s、
(3.1.b)前記反応チャンバ内の圧力が1mbara~10mbara、
(3.1.c)前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度が270℃~350℃の、
(3.1.d)前記反応混合物の表面更新周波数が10Hz~30Hz、
前記最後の薄膜蒸発器では、
(3.2.a)前記少なくとも2つの回転ワイパーブレード要素の前記外縁と前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~4000 1/s、好ましくは500 1/s~2000 1/s、
(3.2.b)前記反応チャンバ内の圧力が0.1mbara~3mbara、好ましくは0.2mbara~2mbara、
(3.2.c)前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度が280℃~370℃、
(3.2.d)前記反応混合物の表面更新周波数が10Hz~30Hz、
であることが観察される、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
以下の特徴:
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして2重量%~15重量%のポリシロキサン含有量、
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおける、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が70%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が30%未満であり、同時に、直径が500nmの長さを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であり、相対溶液粘度が1.38~1.24、好ましくは1.36~1.26、特に好ましくは1.35~1.27であること、
を含むポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー。
【請求項14】
以下の特徴:
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして4.5重量%~5.5重量%のポリシロキサン含有量、
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおける、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が70%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が30%未満であり、同時に、直径が500nmの長さを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であり、相対溶液粘度が1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.32であること、
を含む、請求項13に記載のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー。
【請求項15】
成形体の製造への請求項13に記載のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを重縮合によって製造する連続方法であって、少なくとも1つの薄膜蒸発器の使用を特徴とし、この少なくとも1つの薄膜蒸発器は、少なくとも1つの薄膜蒸発器内で回転する少なくとも2つのワイパーブレード要素を周縁に備える、方法に関する。本発明による方法においては、オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを反応させて、SiCoPCとしても知られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る。この方法は、少なくとも1つの薄膜蒸発器を用いたオリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの反応において、或る特定のプロセスパラメーターが観察されることを更に特徴とする。本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、大きなポリシロキサンドメインの体積分率が小さく、同時にポリシロキサンドメインのサイズ分布が狭く、良好な機械的特性、特にISO 7391/ISO 180Aに準拠したノッチ付き衝撃試験における強靭な破壊挙動、例えば射出成形又は押出しにおける良好な加工性、及び良好な流動性を特徴とする。
【0002】
本発明の文脈において、大きなポリシロキサンドメインの体積分率が小さく、同時にポリシロキサンドメインのサイズ分布が狭いことは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が70%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が30%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満である場合に達成される。ポリシロキサンドメインのこのような狭いサイズ分布と同時の大きなポリシロキサンドメインのこのような体積分率は、以下で「微細なポリシロキサンドメインサイズ分布」とも称される。
【0003】
好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は60%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は20%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は0.1%未満である。
【0004】
特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は50%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は10%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は0.1%未満である。
【0005】
非常に特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は40%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は1%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は0.1%未満である。
【0006】
ポリシロキサンドメインのサイズを決定するために、ポリマーサンプルを低温で切断し、以下により詳細に記載するように走査電子顕微鏡法による試験に供する。本発明の文脈において、ポリシロキサンドメインの直径は、切断により見られるポリシロキサンドメインの断面の円相当面積の直径を意味すると理解される。
【背景技術】
【0007】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが低温衝撃強度/低温ノッチ付き衝撃強度、耐薬品性及び屋外耐候性、並びに経時特性及び耐火性の点で良好な特性を示すことが知られている。ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、これらの特性の点で従来のポリカーボネート、すなわち標準的なポリカーボネートよりも優れている。本発明の文脈において、従来のポリカーボネート又は標準的なポリカーボネートとは、ビスフェノール-Aをベースとしたホモポリカーボネートを意味すると理解される。
【0008】
本発明の文脈において、相対溶液粘度は、いずれの場合もジクロロメタン中、5g/lの濃度で25℃にてウベローデ粘度計を用いて決定される。
【0009】
従来技術によると、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、ビスフェノールモノマー及びポリジオルガノシロキサンから出発し、ホスゲンを用いる、いわゆる相界面プロセスによって工業的に製造される。炭酸ジフェニルを用いる、いわゆる溶融トランスエステル化プロセスによる、ビスフェノールモノマー及びポリジオルガノシロキサンから出発したポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造も従来技術から知られている。
【0010】
相界面プロセスの場合、従来技術によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造は、ホスゲン等の特別な取扱い要件を有する出発物質を必要とするという不利点を有する。さらに、標準的なポリカーボネートを製造するように構成された工業プラントを、溶融トランスエステル化プロセスにおけるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に使用する場合、反応器内にて高温でポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造するための反応混合物の滞留時間は、非常に長くなる。これにより、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーに対する熱応力が著しく増大し、ポリシロキサンポリカーボネートブロックコポリマーの特性に悪影響を及ぼす。
【0011】
相界面プロセスによるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造は、文献から知られており、例えば特許文献1又は特許文献2に記載されている。
【0012】
特許文献3には、カーボネート末端ポリシロキサンとビスフェノール、特にビスフェノール-A及び炭酸ジアリール、特に炭酸ジフェニルとからの溶融トランスエステル化によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造が記載されており、特許文献3には、相界面プロセスの不利点も詳細に述べられている。ポリシロキサンとビスフェノール及び炭酸ジアリールとの高い不適合性のために、溶融トランスエステル化プロセスにおいてポリカーボネートマトリックスにポリシロキサンを組み込む際に微細なポリシロキサンドメインサイズ分布を得ることは、多大な困難が伴わなければ達成することができない。
【0013】
溶融トランスエステル化プロセスにおけるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造は、文献から知られており、例えば特許文献4又は特許文献5に記載されている。それらに開示されている反応時間は、大規模な工業規模プロセスには経済的に有用でない。これらの文献には、反応時間、ひいては滞留時間を短縮する方法についての実際的な教示は全く含まれていない。
【0014】
特許文献5には、15nmまでの小さなポリシロキサンドメインサイズが達成可能であることも開示されているが、図面のみから明らかなポリシロキサンドメインサイズ分布は、現在の需要には有用でない。さらに、微細なポリシロキサンドメインサイズ分布をどのように得ることができるかは開示されていない。
【0015】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおける広範な、すなわち微細でないポリシロキサンドメインサイズ分布は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから製造される成形品の美的外観及び/又は機械的特性に悪影響を及ぼす。大きなポリシロキサンドメインは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中のポリカーボネート相からのポリシロキサン相の脱混合につながる可能性があり、これはポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの不均質な表面構造として現れ、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから作られた射出成形された成形体においてフローライン及びストライピング、並びに望ましくない光学干渉を引き起こす可能性がある。かかる成形体の美的外観は不十分であり、かかる成形体はもはや均一に着色可能ではなく、したがって多くの商業用途には適さない。大きなポリシロキサンドメインは剪断を受けやすく、かかるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから射出成形によって製造された成形体において剥離を引き起こす可能性があるため、かかるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、射出成形における加工が更に困難であり、結果として、しばしば非常に低い射出速度しか用いることができず、これはサイクル時間が長くなることから望ましくない。
【0016】
さらに、特許文献4も特許文献5も、得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの流動性を調整し得る方法について何ら示していない。
【0017】
当業者は、ポリシロキサンドメインによって理解されるものを認識しており、これは例えば刊行物の非特許文献1及び非特許文献2の両方に見ることができる。
【0018】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおける大きなポリシロキサンドメインの体積分率を低減するために添加剤が使用され得ることは原則として知られている。相溶化剤の添加は、例えば特許文献6/特許文献7に記載されている。しかしながら、特許文献6/特許文献7に記載されている相溶化剤は非常に高価であり、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの原料コストを著しく上昇させる。他の相溶化剤も、非常に高価であるか、又は溶融トランスエステル化プロセスにおける高い温度のために分解を起こすか、若しくは不十分な溶融安定性を有する生成物をもたらし、用いることができないことから不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第3189662号
【特許文献2】欧州特許出願公開第0122535号
【特許文献3】米国特許5504177号
【特許文献4】欧州特許第0864599号
【特許文献5】欧州特許出願公開第0770636号
【特許文献6】欧州特許出願公開第3719077号
【特許文献7】国際公開第2020201178号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】"Structure to Property Relationship in Polycarbonate/Polydimethylsiloxane Copolymers", Matthew R. Pixton, published in "Associacao Brasileira de Polimeros, Sao Paulo, SP (Brazil); [vp.]; 2005; 2 p; 8. Brazilian congress on polymers; 8. congresso brasileiro de polimeros; Aguas de Lindoia, SP (Brazil); 6-10 Nov 2005"
【非特許文献2】"Structure to Property Relationship in Polycarbonate/Polydimethylsiloxane Copolymers", Matthew R. Pixton, published in "ANTEC 2006, Annual Technical Conference, Charlotte, North Carolina, May 7-11, 2006, Conference Proceedings, pages 2655-2659"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、上述の従来技術から出発して、従来技術の少なくとも1つの不利点を克服することが目的であった。特に、本発明の目的は、良好な流動性と同時に微細なポリシロキサンドメインサイズ分布を有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造を可能にする、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造する方法を提供することであった。射出成形においてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを更に加工する際に、複雑な形状及び薄い肉厚を有する部品の製造を可能にするため、良好な流動性は有利である。本発明の更なる目的は、短い滞留時間を可能にし、コスト効率が良く、ホスゲン等の特別な取扱い要件を有する出発物質が避けられるように方法を構成することであった。本文脈において、滞留時間とは、ポリシロキサン成分の組込みにより、所望の相対溶液粘度を有する所望のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に必要とされる時間を意味すると理解され、下記の本発明による方法において、滞留時間は反応時間と一致する。
【0022】
方法は連続運転が可能であるものとする。加えて、本発明の更なる目的は、高価な相溶化剤を避けることを可能にすることであった。
【0023】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が70%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が30%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であるものとする。
【0024】
好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が60%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が20%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であるものとする。
【0025】
特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が50%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が10%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であるものとする。
【0026】
非常に特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が40%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が1%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であるものとする。
【0027】
同時に、流動性は高いままでなければならない。しかしながら、流動性は、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから、特に射出成形によって、製造される成形品の機械的特性の低下をもたらす値を超えてはならない。相対溶液粘度を流動性の尺度とみなすことができる。このため、2重量%~15重量%、好ましくは3重量%~10重量%のポリシロキサン含有量を有し、特に好ましくは4重量%~8重量%のポリシロキサン含有量を有する、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの相対溶液粘度は、好ましくは1.24~1.38、好ましくは1.26~1.36、特に好ましくは1.27~1.35であるものとする。本発明に従って製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、この範囲の相対溶液粘度で、例えば射出成形又は押出しによって容易に加工可能である。
【0028】
非常に特に好ましくは、4.5重量%~5.5重量%のポリシロキサン含有量を有する、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの相対溶液粘度は、1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.32であるものとする。
【0029】
ここでも、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が70%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が30%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であるものとする。
【0030】
ここでも、好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が60%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が20%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であるものとする。
【0031】
ここでも、特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が50%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が10%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であるものとする。
【0032】
ここでも、非常に特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が40%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が1%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であるものとする。
【0033】
本発明に従って製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、この非常に特に好ましい範囲の相対溶液粘度で、例えば射出成形又は押出しによって特に容易に加工可能である。
【0034】
これは特に、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが4.5重量%~5.5重量%のポリシロキサン含有量を有する場合に当てはまる。
【0035】
本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが、低いポリシロキサン含有量であっても、ISO 7391/ISO 180Aに準拠したノッチ付き衝撃試験において-60℃まで強靭な破壊挙動を示すことが更に特に好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0036】
これらの目的は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造する方法によって達成され、この方法は、正確に1つの薄膜蒸発器の使用又は代替的には2つ以上の直列に配置された薄膜蒸発器の使用を特徴とし、いずれの場合も特定の方法条件が維持される。
【0037】
本発明の文脈において、薄膜蒸発器は、軸方向に延びる回転対称、好ましくは円筒形の反応チャンバを備え、その上端に、溶融分散液の形態のポリマー溶融物と液体ポリシロキサンとから構成される反応混合物が供給され、その下端で、上記混合物が更に反応した反応混合物の形態で装置から排出される垂直に配置された装置を意味すると理解され、少なくとも2つのワイパーブレード要素、一般に3つ、4つ又はそれ以上のワイパーブレード要素を周縁に備えるローターが装着されている。各ワイパーブレード要素は外縁を有し、ワイパーブレード要素の外縁は軸方向に延び、軸方向に延びる回転対称反応チャンバの内表面領域に向かって配向し、軸方向に延びる回転対称反応チャンバの内周縁上に反応混合物を広げることで、反応混合物の表面更新を常に確実にする。反応チャンバの内表面領域は、反応チャンバと同じ幾何学形状を有し、すなわち、円筒形の反応チャンバも円筒形内表面領域を有する。そのため、ワイパーブレード要素は、軸方向に平行に又は前後軸に対して作用角で配置することができる。本発明による方法の実施に原則として適した薄膜蒸発器は、例えば欧州特許出願公開第3318311号、欧州特許出願公開第1792643号、独国特許出願公開第19535817号、独国特許出願公開第102012103749号、独国特許出願公開第2011493号若しくは旧東ドイツ国特許第226778号、又は刊行物(1)「Platzer (ed.): Polymerization Kinetics and Technology, Advances in Chemistry; American Chemical Society: Washington, DC, 1973, pages 51 to 67: Fritz Widmer: Behaviour of Viscous Polymers during Solvent Stripping or Reaction in an Agitated Thin Film; Swiss Federal Institute of Technology, Zurich, Switzerland」に開示されており、ここで、独国特許出願公開第19535817号、旧東ドイツ国特許第226778号若しくは欧州特許出願公開第3318311号に開示されている薄膜蒸発器、又は(1)の図7、58頁及び図9、60頁に開示されている薄膜蒸発器が、本発明による方法の実施に特に適している。さらに、薄膜蒸発器を構成するための選択肢が、論文"Scaleup of Agitated Thin-film Evaporators", William B. Glover, reprinted from Chemical Engineering, April 2004に開示されている。
【0038】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得るためのオリゴカーボネートとポリシロキサンとの重縮合では、重縮合中に形成されるヒドロキシル化合物、一般にフェノールを蒸発により効果的に除去する必要があり、したがって常に表面更新が必要とされるため、薄膜蒸発器の反応チャンバの内表面領域に反応混合物の溶融物を広げることが重要である。良好な表面更新に加えて大きな表面積が生じる、かかる作業では、一般に回転ディスク反応器又は他の高粘度反応器等の反応器が必要とされるが、反応器内の反応混合物の滞留時間は、60分~180分である。標準的なポリカーボネートを製造するための重縮合において、特に回転ディスク反応器の使用は従来技術、例えば米国特許出願公開第2002188091号又は独国特許出願公開第10142735号に記載されている。
【0039】
したがって、高価な相溶化剤を使用してもポリシロキサンドメインの十分に微細なサイズ分布が確実にならないため、回転ディスク反応器又は他の高粘度反応器が、狭いポリシロキサンドメインサイズ分布と良好な流動性との良好な組合せを有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造には適さないことは全く驚くべきことであった。
【0040】
(1)この目的は、本発明の第1の実施形態において以下により特に達成される:
正確に1つの薄膜蒸発器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する方法であって、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(2)オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(1)で提供された反応混合物を、正確に1つの薄膜蒸発器に導入する方法工程、
なお、薄膜蒸発器は、周縁に少なくとも2つのワイパーブレード要素を有する正確に1つのローターを有する正確に1つの反応チャンバを備え、該正確に1つのローターは、薄膜蒸発器内で回転し、各ワイパーブレード要素は、1つの外縁を有する;
(3)工程(2)からの反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、反応混合物は、薄膜蒸発器の取入口から該薄膜蒸発器の出口まで搬送される;
(4)工程(3)で得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを薄膜蒸発器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
工程(3)において、正確に1つの薄膜蒸発器で以下の方法条件:
(3.a)周縁の少なくとも2つの回転ワイパーブレード要素の外縁と薄膜蒸発器の反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~5000 1/s、
(3.b)薄膜蒸発器の反応チャンバ内の圧力が0.01mbara~10mbara、
(3.c)反応チャンバ内の反応混合物の温度が280℃~370℃、
(3.d)反応混合物の表面更新周波数が10Hz~50Hz、
であることが観察される、方法。
【0041】
(2)代替的に、この目的は、本発明の第2の実施形態において以下により達成される:
直列に配置された複数の薄膜蒸発器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する方法であって、この数が少なくとも2であり、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(2)オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(1)で提供された反応混合物を、少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最初の蒸発器に導入する方法工程、
なお、少なくとも2つの薄膜蒸発器の各々が、正確に1つのローターを有する正確に1つの反応チャンバを備え、各ローターは、周縁に少なくとも2つのワイパーブレード要素を有し、各薄膜蒸発器内の正確に1つのローターは回転し、各ワイパーブレード要素は、1つの外縁を有する;
(3)工程(2)からの反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、反応混合物は、少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最初の薄膜蒸発器の取入口から該少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最後の薄膜蒸発器の出口まで搬送される;
(4)工程(3)で得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを最後の薄膜蒸発器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
工程(3)において、少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最後の蒸発器で以下の方法条件:
(3.a)周縁の少なくとも2つの回転ワイパーブレード要素の外縁と薄膜蒸発器の反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~5000 1/s、
(3.b)薄膜蒸発器の反応チャンバ内の圧力が0.01mbara~10mbara、
(3.c)反応チャンバ内の反応混合物の温度280℃~370℃、
(3.d)反応混合物の表面更新周波数10Hz~50Hz、
であることが観察される、方法。
【0042】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、以下のことが当てはまる。
【0043】
圧力測定は、例えばWIKAのIS-3圧力センサー又はEndress+HauserのCerabar圧力センサーを用いて行うことができる。しかしながら、当業者に既知の他の好適な従来技術の圧力センサーを使用することも可能である。
【0044】
反応混合物の温度の測定は例えば、測定チップが反応混合物中に十分に深く浸漬されたL型熱電対又はPt100抵抗温度計を用いて行うことができる。しかしながら、当業者に既知の他の好適な従来技術の温度測定手段を使用することも可能である。薄膜蒸発器の内部における温度測定は、欧州特許出願公開第3318311号から既知の方法で行うことができる。
【0045】
回転速度は、好ましくは当業者に既知の方法でローター上の従来技術のイニシエーター/パルサーを介して測定することができる。しかしながら、当業者に既知の他の好適な従来技術のタコメーターを使用することも可能である。表面更新周波数は、回転速度に周縁のワイパーブレード要素の数を乗算することによって得られる。
【0046】
剪断速度は、処理チャンバの内周とローターの速度とから決定されるローターの回転速度を、ローター先端とハウジング壁との間の間隔で除算することによって算出される。
【0047】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、工程(3)における反応混合物の滞留時間は、好ましくは2分~12分、特に好ましくは3分~10分である。
【0048】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、それにより製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは全て、このように短い滞留時間で得ることができる。
【0049】
本発明の第2の実施形態において、直列に配置された薄膜蒸発器の数は、2つ又は3つ又は4つ又はそれ以上の直列に配置された薄膜蒸発器であり得る。
【0050】
本発明の第2の実施形態において、直列に配置された薄膜蒸発器の数が正確に2つであることが本発明によると好ましい。
【0051】
本発明に従って用いることができる薄膜蒸発器は、薄膜蒸発器内で回転可能な少なくとも2つのワイパーブレード要素を周縁に備えることを特徴とする。薄膜蒸発器は、薄膜蒸発器内で回転可能な3つ以上のワイパーブレード要素、特に3つ、4つ又はそれ以上のワイパーブレード要素を周縁に備えるのが好ましい。
【0052】
薄膜蒸発器の軸方向に延びる回転対称反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域の少なくとも一部は、熱伝達領域としても機能する。熱伝達領域を介して反応チャンバに熱を供給してもよく、又は熱伝達領域を介して反応チャンバから熱を除去してもよい。薄膜蒸発器において、熱伝達領域として機能する、反応混合物を適用する軸方向に延びる回転対称反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域の割合は、90%~100%、好ましくは100%である。
【0053】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、熱伝達領域の温度は、280℃~340℃であり、方法工程(3)において反応混合物の反応中に、例えば反応混合物の剪断により生成した任意の熱を、熱伝達領域を介して除去することができる。熱伝達領域は、温度プロファイルを有していても、又は2つ以上の温度帯を有していても、又はその両方であってもよい。
【0054】
本発明の文脈において、「mbara」という用語は、絶対圧力をmbarで報告するための単位「mbar absolute」を表す。
【0055】
工程(1)において、好ましくは、オリゴカーボネートを重縮合によって製造し、それを先に別の場所で製造されたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンと混合することによって反応混合物が提供される。しかしながら、先に別の場所で製造された反応混合物を可塑化し、溶融物として提供することも可能である。
【0056】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、方法工程(1)における反応混合物、及び直列に配置された複数の薄膜蒸発器の最後の薄膜蒸発器からの排出時に得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー、及びポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得るための反応において方法工程(1)で反応混合物から中間で形成される反応混合物が溶融形態であることが当てはまる。本発明による方法の第1の実施形態においては、唯一の薄膜蒸発器を最後の薄膜蒸発器とみなすことができる。
【0057】
本発明による方法の第1の実施形態に従って得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び本発明による方法の第2の実施形態に従って得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの両方が、好ましくは以下の特徴を有する:
ポリシロキサンドメインが微細なサイズ分布を有し、すなわち、
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が70%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が30%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であり、同時に、相対溶液粘度が1.38~1.24、好ましくは1.36~1.26、特に好ましくは1.35~1.27であり、この相対溶液粘度は、所望の相対溶液粘度とも称される。
好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が60%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が20%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であり、ここでも、相対溶液粘度が1.36~1.24、好ましくは1.36~1.26、特に好ましくは1.35~1.27であり、ここでも、この相対溶液粘度は、所望の相対溶液粘度とも称される。
特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が50%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が10%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であり、ここでも、相対溶液粘度が1.38~1.24、好ましくは1.36~1.26、特に好ましくは1.35~1.27であり、ここでも、この相対溶液粘度は、所望の相対溶液粘度とも称される。
非常に特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が40%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が1%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であり、ここでも、相対溶液粘度は1.38~1.24、好ましくは1.36~1.26、特に好ましくは1.352~1.27であり、ここでも、この相対溶液粘度は、所望の相対溶液粘度とも称される。
【0058】
本発明による方法の第1の実施形態に従って得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び本発明による方法の第2の実施形態に従って得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの両方が、2重量%~15重量%のポリシロキサン含有量を有する従来技術のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー、更に3重量%~10重量%のポリシロキサン含有量を有する従来技術のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー、更に4重量%~8重量%のポリシロキサン含有量を有する従来技術のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーよりも優れており、ここで、ポリシロキサン含有量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量を指す。これは特に、本発明に従って製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーと、溶融トランスエステル化プロセスによって製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーとを比較する場合に当てはまる。
【0059】
但し、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、4.5重量%~5.5重量%のポリシロキサン含有量を有し、このポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.32の相対溶液粘度を有し、ここでも以下のことが当てはまる。
【0060】
ポリシロキサンドメインは微細なサイズ分布を有し、すなわち、
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が70%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が30%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満である。
【0061】
好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は60%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は20%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は0.1%未満である。
【0062】
特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は50%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は10%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は0.1%未満である。
【0063】
非常に特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は40%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は1%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は0.1%未満である。
【0064】
4.5%~5.5%のポリシロキサン含有量を有する、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの有利な相対溶液粘度は、かかるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの上述の利点が大いに達成されることを意味する。特に、かかるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、例えば射出成形又は押出しによって特に容易に加工可能である。
【0065】
非常に特に好ましい範囲は、指定の相対溶液粘度と同時に、このポリシロキサン含有量を有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが、良好な機械的特性及び良好な加工性を達成し得るように選択される。特にポリシロキサン含有量がより高い場合に相対溶液粘度が上昇することで、加工性が最適でなくなる可能性がある。しかしながら、より低い相対溶液粘度の従来のポリカーボネートを混入することで、非常に特に好ましい範囲に相当するポリシロキサン含有量を確立することが可能である。かかる混合物は、この場合も良好な流動性と同時に良好な機械的特性を特徴とする。当業者であれば、従来のポリカーボネートとポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーとの混合/配合、特に従来のポリカーボネートとポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーとの混合物の所望の相対溶液粘度を達成するために従来のポリカーボネートが有する必要がある相対溶液粘度についても精通している。このため、特にポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中のポリシロキサン含有量が高い場合、ポリシロキサン含有量と相対溶液粘度との組合せが、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーと従来のポリカーボネートとの従来技術の配合によって達成可能であることから、特に好ましい範囲は限定されない。しかしながら、高いポリシロキサン含有量を有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの相対溶液粘度値が過度である場合に、この高い相対溶液粘度値を、相対溶液粘度がより低い従来のポリカーボネートとの混和によって、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの良好な加工性が依然として確実な相対溶液粘度値まで低下させることができない場合もある。
【0066】
本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、低いポリシロキサン含有量であっても、ISO 7391/ISO 180Aに準拠したノッチ付き衝撃試験において-60℃まで強靭な破壊挙動を示す。
【0067】
工程(3.a)で用いられる高い剪断速度が、オリゴカーボネート及びヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する反応混合物、特にそれから形成されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーに高い機械的応力、特に熱応力を与えるため、これは驚くべきことである。熱応力は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの望ましくない変色、特に黄変、及び本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから製造された成形品のより低い機械的特性、特により低い低温衝撃強度をもたらし得る望ましくない副反応をもたらす。
【0068】
当業者であれば、このように高い剪断速度を用いたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造を避けようとしたであろう。
【0069】
しかしながら、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造する方法において、選択された低圧、選択された温度及び選択された表面更新周波数を適用すると同時に、選択された高い剪断速度を用いることで、熱応力がより低い方法条件が達成され得ることが今回見出された。
【0070】
これは当業者にとって驚くべきことであった。これが第2の実施形態、すなわち少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の使用においても、相溶化剤が用いられないにも関わらず達成されたことも、当業者にとって特に驚くべきことであった。
【0071】
本発明によると、方法工程(3)において、単一の薄膜蒸発器又は直列に配置された複数の薄膜蒸発器の最後の薄膜蒸発器で以下の方法条件:
(3.a.a)ワイパーブレード要素の回転外縁と薄膜蒸発器の反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~4000 1/sであること、
が観察される場合が好ましい。
【0072】
本発明による方法のこの好ましい実施形態は、上述の第1の実施形態又は上述の第2の実施形態による第3の実施形態である。
【0073】
本発明によると、方法工程(3)において、単一の薄膜蒸発器又は直列に配置された複数の薄膜蒸発器の最後の薄膜蒸発器で以下の方法条件:
(3.b.a)薄膜蒸発器の反応チャンバ内の圧力が0.1mbara~6mbara、好ましくは0.2mbara~2mbaraであること、
が観察される場合も好ましい。
【0074】
本発明による方法のこのより好ましい実施形態は、上述の第1の実施形態又は上述の第2の実施形態による第4の実施形態である。
【0075】
本発明によると、工程(1)で提供されたオリゴカーボネートの相対溶液粘度が1.11~1.22、特に好ましくは1.13~1.20である場合も好ましい。
【0076】
本発明による方法のこの非常に特に好ましい実施形態は、上述の第1の実施形態又は上述の第2の実施形態による第5の実施形態である。
【0077】
同様に、本発明によると、本発明による方法の第1の実施形態に従って製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び本発明による方法の第2の実施形態に従って製造されたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの両方のポリシロキサン含有量が2重量%~15重量%であることが好ましく、ここで、該ポリシロキサン含有量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする。
【0078】
本発明による方法のこのより好ましい実施形態は、上述の第1の実施形態又は上述の第2の実施形態による第6の実施形態である。
【0079】
本発明によると、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が3重量%~10重量%であることが特に好ましく、ここで、該ポリシロキサン含有量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする。
【0080】
本発明による方法のこの特に好ましい実施形態は、上述の第6の実施形態による第7の実施形態である。
【0081】
本発明によると、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が4重量%~8重量%であることが非常に好ましく、ここで、該ポリシロキサン含有量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする。
【0082】
本発明による方法のこの非常に特に好ましい実施形態は、上述の第7の実施形態による第8の実施形態である。
【0083】
本発明によると、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が4.5重量%~5.5重量%であることがとりわけ特に好ましく、ここで、該ポリシロキサン含有量は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする。
【0084】
本発明による方法のこの非常に特に好ましい実施形態は、上述の第8の実施形態による第9の実施形態である。
【0085】
本発明によると、工程(1)で提供されたオリゴカーボネートのOH基含有量が1200ppm~2300ppm、特に好ましくは1400ppm~2200ppmである場合が更に好ましい。
【0086】
本発明による方法のこのより好ましい実施形態は、上述の第1の実施形態又は上述の第2の実施形態による第10の実施形態である。
【0087】
本発明によると、工程(1)において、1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、好ましくは1.11~1.22の相対溶液粘度を有し、特に好ましくは1.13~1.20の溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有し、好ましくは1200ppm~2300ppmのOH基含有量を有し、特に好ましくは1400ppm~2200ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する反応混合物を、ダイナミックミキサー及び/又はスタティックミキサーを用いて製造する場合が更に好ましい。
【0088】
本発明による方法のこの更に好ましい実施形態は、上述の第1の実施形態又は上述の第2の実施形態による第11の実施形態である。
【0089】
直列に配置された薄膜蒸発器の数が少なくとも2つである場合、方法の工程(3)において、以下の方法条件:
最初の薄膜蒸発器では、
(3.1.a)500 1/s~5000 1/sの回転ワイパーブレード要素の外縁と薄膜蒸発器の反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度、
(3.1.b)1mbara~10mbaraの反応チャンバ内の圧力、
(3.1.c)270℃~350℃の反応チャンバ内の反応混合物の温度、
(3.1.d)10Hz~30Hzの反応混合物の表面更新周波数、
最後の薄膜蒸発器では、
(3.2.a)500 1/s~4000 1/s、好ましくは500 1/s~2000 1/sの少なくとも2つの回転ワイパーブレード要素の外縁と薄膜蒸発器の反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度、
(3.2.b)0.1mbara~3mbara、好ましくは0.2mbara~2mbaraの反応チャンバ内の圧力、
(3.2.c)280℃~370℃の反応チャンバ内の反応混合物の温度、
(3.2.d)10Hz~30Hzの反応混合物の表面更新周波数、
が観察されるのが好ましい。
【0090】
本発明による方法のこの実施形態は、上述の第2の実施形態による第12の実施形態である。
【0091】
本発明によると、例えば工程(3)において得られるような「中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー」という用語は、例えば工程(6)において得られるようなポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーとの区別のために使用される。したがって、「中間体」という用語は、中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーがポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーよりも低い分子量を有することを明確にするために使用される。このため、中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーよりも低い相対溶液粘度を有する。このため、中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、1.20~1.27の相対溶液粘度を有する。「中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー」という用語における「中間体」という形容詞は、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(既にポリマーである)及びオリゴカーボネート(既にオリゴマーである)の形成された反復単位を指し、中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが特に「ポリマー」でもあり得ることが理解される。しかしながら、最終生成物と対照的に、中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、形成された反復単位がより少ない。より低い相対溶液粘度を有するオリゴカーボネートの使用により、一般に同様により低い相対溶液粘度を有する中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが得られることが当業者には明らかである。また、中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが、工程(1)で用いられるオリゴカーボネートよりも高い相対溶液粘度を有する、更に凝縮されたオリゴカーボネートも含有することが当業者には明らかである。
【0092】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造するための反応混合物が、2つの直列に配置された薄膜蒸発器を連続的に横断し、これらの薄膜蒸発器は、パイプ導管を介して互いに直接接続される。これら2つの薄膜蒸発器の間に更なる反応器が存在しないことが好ましい。しかしながら、ポンプ又は混合要素、例えばスタティックミキサー又はダイナミックミキサーを、薄膜蒸発器の間の接続に用いることができる。これらのポンプ又はこれらの混合要素の目的は、単に物質の機械的処理であるため、これらのポンプ又はこれらの混合要素は、反応器とはみなされない。第2の薄膜蒸発器に続いて、更なる薄膜蒸発器又は2つ以上の更なる薄膜蒸発器を全て直列に配置してもよい。
【0093】
薄膜蒸発器を1つのみ使用する場合、反応チャンバの単位内表面積当たりの反応混合物の適用速度は、20kg/mh~100kg/mhの反応混合物である。2つ以上の薄膜蒸発器を使用する場合、直列に配置された薄膜蒸発器の反応チャンバの内表面積の合計の単位内表面積当たりの反応混合物の適用速度は、20kg/mh~100kg/mhの反応混合物である。これは特に、正確に2つの直列に配置された薄膜蒸発器が本発明による方法に使用される場合に当てはまる。
【0094】
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの重縮合への薄膜蒸発器の使用は、例えば上述の特許文献4或いは特許文献5から原則として知られている。しかしながら、薄膜蒸発器を使用する詳細なプロセスは記載されておらず、薄膜蒸発器を介してプロセスを構成する理論的選択肢のみが記載されている。薄膜蒸発器を用いた例示的な実施形態は明記されていない。この文献には、良好な流動性と同時に微細なポリシロキサンドメインサイズ分布を有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造を可能にするプロセスの実行方法についての実際的な教示は全く提示されていない。
【0095】
さらに、少なくとも1つの薄膜蒸発器の使用により、高粘度反応器又は回転ディスク反応器の使用と比較して滞留時間を著しく短縮し得ることが今回実証された。これは少なくとも2つの薄膜蒸発器が直列に配置されている場合にも当てはまる。
【0096】
少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器が、少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器における、工程(1)で提供された反応混合物及びそれから得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの全滞留時間を、1つのみの薄膜蒸発器の使用と比較して延長すると想定されるため、これは驚くべきことである。これにより、得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーに対する熱応力が増大すると予想される。これにより、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの望ましくない変色、特に黄変、及び本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから製造された成形品のより低い機械的特性、特により低い低温衝撃強度をもたらすと予想される望ましくない副反応が引き起こされると予想される。
【0097】
したがって、当業者であれば、2つ以上の直列に配置された薄膜蒸発器を用いたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造を避けようとしたであろう。
【0098】
しかしながら、2重量%~15重量%のポリシロキサン含有量を有し、好ましくは3重量%~10重量%のポリシロキサン含有量を有し、特に好ましくは4重量%~8重量%のポリシロキサン含有量を有し、非常に特に好ましくは4.5重量%~5.5重量%のポリシロキサン含有量を有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造する方法において、少なくとも2つの薄膜蒸発器を使用する場合に、1つのみの薄膜蒸発器を使用する場合よりも低い熱応力の方法条件を確立することも可能であることが見出された。
【0099】
また、2つの薄膜蒸発器を使用する場合、プロセスパラメーター、例えば表面更新周波数、温度、圧力又は剪断速度をより広い範囲で変化させることが可能であり、これにより製造方法が失敗しにくくなり、方法条件の変化、例えば工程(1)で添加されるオリゴカーボネート又は工程(1)で添加されるヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの異なる特徴に適合させることが容易になる。
【0100】
本発明は、以下の特徴を含むポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを更に提供する:
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして2重量%~15重量%のポリシロキサン含有量、
ポリシロキサンドメインが微細なサイズ分布を有すること、すなわち、
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が70%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が30%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であり、同時に、相対溶液粘度が1.38~1.24、好ましくは1.36~1.26、特に好ましくは1.35~1.27であり、ここでも、この相対溶液粘度は、所望の相対溶液粘度とも称される。
好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が60%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が20%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であり、ここでも、相対溶液粘度が1.38~1.24、好ましくは1.36~1.26、特に好ましくは1.35~1.27であり、ここでも、この相対溶液粘度は、所望の相対溶液粘度とも称される。
特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が50%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が10%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であり、ここでも、相対溶液粘度が1.38~1.24、好ましくは1.36~1.26、特に好ましくは1.35~1.27であり、ここでも、この相対溶液粘度は、所望の相対溶液粘度とも称される。
非常に特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が40%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が1%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であり、ここでも、相対溶液粘度が1.38~1.24、好ましくは1.36~1.26、特に好ましくは1.35~1.27であり、ここでも、この相対溶液粘度は、所望の相対溶液粘度とも称される。
【0101】
好ましくは、本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、3重量%~10重量%のポリシロキサン含有量、特に好ましくは4重量%~8重量%のポリシロキサン含有量を有する。
【0102】
本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが、非常に特に好ましくは、4.5重量%~5.5重量%のポリシロキサン含有量を有する限りにおいて、このポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは1.24~1.34、好ましくは1.26~1.33、特に好ましくは1.27~1.32の相対溶液粘度を有し、ここでも以下が当てはまる。
【0103】
ポリシロキサンドメインは微細なサイズ分布を有し、すなわち、
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が70%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が30%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満である。
【0104】
好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は60%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は20%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は0.1%未満である。
【0105】
特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は50%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は10%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は0.1%未満である。
【0106】
非常に特に好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は40%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は1%未満であり、同時に、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は0.1%未満である。
【0107】
4.5%~5.5%のポリシロキサン含有量を有する、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの有利な相対溶液粘度は、かかるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの上述の利点が大きく達成されることを意味する。特に、かかるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、例えば射出成形又は押出しによって特に容易に加工可能である。
【0108】
本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、低いポリシロキサン含有量であっても、ISO 7391/ISO 180Aに準拠したノッチ付き衝撃試験において-60℃まで強靭な破壊挙動を示す。
【0109】
本発明は、特に射出成形又は押出しによって成形体を製造するための本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの使用を更に提供する。
【0110】
本発明は、ハウジング、ヘルメット、食器洗い機対応の家庭用品、やかんの覗き窓、調節つまみ及び調節ボタン、スナップクロージャー、ケーキ及びチョコレートの型、太陽光発電所用のプラグコネクタ、太陽光発電所用のカップリングの製造への本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの使用を更に提供する。
【0111】
ハウジングの製造への使用に関しては、本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、以下の物品のハウジングの製造に適している:
医療機器、モバイル電気小型機器、モバイルスキャナー、モバイルプレイステーション、モバイル音楽プレーヤー、ウェアラブル機器、モノのインターネット用のセンサー又はコンピューター機器、モバイル電気充電機器、モバイル電気アダプター、機械工学用の制御手段、スマートメーター、モバイルワイヤレス機器、タブレット型コンピューター、電気機器用の充電ステーション、5G基地局用のアンテナハウジング、屋外電気用途、配電盤、現金自動預払機、パーキングメーター。
【0112】
本発明による方法の第1の実施形態及び本発明による方法の第2の実施形態の両方において、本発明による方法の工程(1)で用いられるオリゴカーボネートの製造は、例えば国際公開第2019238419号に開示されているような溶融トランスエステル化プロセスを介して行われ、製造に関するその開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。本発明による方法の工程(1)に有用なオリゴカーボネートの製造は、独国特許出願公開第10119851号、国際公開第02077066号、国際公開第02077067号又は国際公開第02085967号にも記載されている。
【0113】
直列に配置された薄膜蒸発器の最後の蒸発器、好ましくはさらに、1つのみの薄膜蒸発器を使用する場合には唯一の薄膜蒸発器、又は正確に2つの直列に配置された薄膜蒸発器を使用する場合には2つの薄膜蒸発器のうち2番目の蒸発器からの完全に反応した溶融ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの排出は、一軸スクリュー、二軸スクリュー又はギヤポンプを用いて行うことができる。直列に配置された薄膜蒸発器の最後の蒸発器からの溶融ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの排出に続いて、任意に添加剤及び/又は添加物の供給及び組込みを行ってもよい。添加物の組込みは、排出装置内又は排出装置の下流のスタティックミキサー内で行うことができる。次いで、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの溶融物を、1つ以上のノズルを用いて成形し、従来技術によるペレット化装置によって粉砕する。
【0114】
本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおけるより微細なポリシロキサンドメインサイズ分布は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの美的外観の改善、例えばより均一な表面構造、及び本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから作られた射出成形された成形体におけるフローライン若しくはストライピング又は望ましくない光学干渉の形成の減少をもたらす。ポリカーボネート相からのポリシロキサン相の脱混合の傾向が減少し、本発明に従って製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの射出成形のための加工ウィンドウが拡大する。本発明に従って製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから製造される成形体における剥離の傾向も減少する。
【0115】
これは特に、本発明による方法によって製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが4.5重量%~5.5重量%のポリシロキサン含有量を有する場合に当てはまる。
【0116】
本発明に従って製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから製造される成形体は、低いポリシロキサン含有量であっても、ISO 7391/ISO 180Aに準拠したノッチ付き衝撃試験において-60℃まで強靭な破壊挙動を示す。
【0117】
本発明に従って用いられるオリゴカーボネート及び本発明に従って用いられるヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、工程(3)において触媒を用いて反応させることができる。触媒を用いない反応様式は、原則として可能であるが、結果として、より高い温度又はより長い滞留時間を許容しなければならない場合がある。
【0118】
本発明による方法に適した触媒としては、例えば以下である:
アンモニウム触媒、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラメチルアンモニウムテトラフェニルボラネート、ジメチルジフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、セチルトリメチルアンモニウムテトラフェニルボラネート及びセチルトリメチルアンモニウムフェノキシド。特に好適な触媒としては、式(K):
【化1】
(式中、R、R、R及びRは、同一の又は異なるC1~C10アルキル、C6~C14アリール、C7~C15アリールアルキル又はC5~C6シクロアルキル、好ましくはメチル又はC6~C14アリール、特に好ましくはメチル又はフェニルとすることができ、Aは水酸化物アニオン、硫酸アニオン、硫酸水素アニオン、炭酸水素アニオン、炭酸アニオン若しくはハロゲン化物アニオン、好ましくは塩化物アニオン等のアニオン、又は式-ORのアルコキシド若しくはアロキシドとすることができ、ここで、RはC6~C14アリール、C7~C15アリールアルキル又はC5~C6シクロアルキル、好ましくはフェニルとすることができる)のホスホニウム触媒も挙げられる。
【0119】
特に好ましい触媒は、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド又はテトラフェニルホスホニウムフェノキシドであり、テトラフェニルホスホニウムフェノキシドが非常に特に好ましい。これらのアンモニウム触媒及び/又はホスホニウム触媒のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いることが特に好ましい。
【0120】
触媒は、用いるオリゴカーボネートの重量をベースとして0.0001重量%~1.0重量%、好ましくは0.001重量%~0.5重量%、特に好ましくは0.005重量%~0.3重量%、非常に特に好ましくは0.01重量%~0.15重量%の量で用いるのが好ましい。
【0121】
触媒は、単独で又は触媒混合物として用いることができ、純粋な形態で、又は例えば水若しくはフェノール中の溶液として、例えばフェノールとの固溶体として添加することができる。触媒は、例えばマスターバッチを用いて、若しくは好ましくはオリゴカーボネートとともに反応に導入してもよく、又は別個に/追加で添加してもよい。
【0122】
オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを、3~7の範囲のpK(25℃)を有する弱酸の有機塩又は無機塩の存在下で反応させることも同様に好ましい。この塩は、本発明の文脈において助触媒とも称される場合がある。好適な弱酸は、カルボン酸、好ましくはC2~C22カルボン酸、例えば酢酸、プロパン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、安息香酸、4-メトキシ安息香酸、3-メチル安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、p-トルエン酢酸、4-ヒドロキシ安息香酸及びサリチル酸、ポリカルボン酸の部分エステル、例えばコハク酸のモノエステル、リン酸の部分エステル、例えばモノ有機又はジ有機リン酸エステル、分岐脂肪族カルボン酸、例えば2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2-ジメチルブタン酸、2,2-ジメチルペンタン酸及び2-エチルヘキサン酸を含む。
【0123】
好適な有機塩又は無機塩は、炭酸水素塩、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸リチウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、ジカリウム塩又はジリチウム塩から選択又は誘導される。塩は炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム及び対応するオレイン酸塩を更に含んでいてもよい。これらの塩は、単独で又は任意の所望の混合物で使用することができる。
【0124】
塩は、特に好ましくはカルボン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びホスホニウム塩からなる群から選択される。更なる好ましい実施形態においては、有機塩又は無機塩は、カルボン酸から誘導される。
【0125】
有機塩又は無機塩は、ポリシロキサンと有機塩又は無機塩との総重量をベースとして0.08ppm~10ppm、非常に特に好ましくは0.1ppm~5ppmの量で用いるのが好ましい。
【0126】
好ましい実施形態においては、有機塩又は無機塩はナトリウム塩、好ましくはカルボン酸のナトリウム塩である。有機塩又は無機塩は、得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中のナトリウム含有量が、形成されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして0.003ppm~0.5ppmの範囲となるような量で用いるのが好ましい。助触媒は、好適な溶媒でヒドロキシアリール末端ポリシロキサンに溶解するのが好ましい。ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのナトリウム含有量は、例えば原子発光分光法によって決定することができる。
【0127】
ナトリウム含有量がより高いと、熱応力下でポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの分解が増加する可能性があるため、得られるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中のナトリウム含有量が従来技術よりも少ないことが有利である。
【0128】
有機塩又は無機塩は、単独で又は任意の所望の混合物で用いることができる。有機塩又は無機塩は、固体として又は溶液で添加してもよい。好ましい実施形態においては、有機塩又は無機塩は、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンと有機塩又は無機塩とを含有する混合物の形態で添加される。
【0129】
触媒は、単独で又は混合して用いることができ、純粋な形態で又は溶液として、例えば水又はフェノール中で添加することができる。
【0130】
少なくとも1つの触媒がオリゴカーボネートに組み込まれ、助触媒がヒドロキシアリール末端ポリシロキサンに組み込まれる場合が特に好ましい。
【0131】
オリゴカーボネート(成分A)
本発明の文脈におけるオリゴカーボネート(以下、成分(A)とも称される)は、ホモオリゴカーボネートであるのが好ましい。オリゴカーボネートは、既知の方法で直鎖状又は分岐状であってもよい。本発明に従って用いられるオリゴカーボネートの製造は、上記のように、好ましくは溶融トランスエステル化プロセスによって、特に国際公開第2019238419号に従って行われる。本発明による方法に有用なオリゴカーボネートの製造は、独国特許出願公開第10119851号、国際公開第02077066号、国際公開第02077067号又は国際公開第02085967号にも記載されている。
【0132】
本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造するには、5000g/mol~20000g/mol、特に好ましくは8000g/mol~19000g/mol、特に好ましくは10000g/mol~18000g/molの分子量(Mw)を有するオリゴカーボネートを用いることが好ましい。このオリゴカーボネートは、好ましくは1000ppm~2500ppm、好ましくは1300ppm~2300ppm、特に好ましくは1400ppm~2200ppmのフェノール性OH基含有量を有する。フェノール性OH基は、IR分光法によって決定するのが好ましい。本発明の文脈において、ppb及びppmは、特に明記しない限り、重量部を意味すると理解される。
【0133】
オリゴカーボネート、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン又はポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーについて本発明の文脈で報告されるモル質量の決定に使用される方法は、Currenta GmbH & Co. OHGからいつでも請求に応じて利用可能なCurrenta GmbH & Co. OHGの方法番号2301-0257502-09Dである。
【0134】
1.08~1.22の相対溶液粘度を有するオリゴカーボネートを本発明によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に用いる場合が更に好ましい。溶液粘度(ηrel;eta relとも称される)は、ジクロロメタン中、5g/lの濃度にて25℃でウベローデ粘度計を用いて決定するのが好ましい。
【0135】
オリゴカーボネートの製造に好ましいジフェノールは、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,3-ビス[2-(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンである。
【0136】
特に好ましいジフェノールは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、ハイドロキノン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン及び2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。
【0137】
オリゴカーボネートは、ビスフェノールAをベースとしたホモオリゴカーボネートである。このホモオリゴカーボネートは、非常に特に好ましくはフェノールを末端基として有する。
【0138】
末端基としてフェノールを有するオリゴカーボネート(フェニル末端オリゴカーボネート)も好ましい。tert-ブチルフェノール及びクミルフェノールが更に可能な末端基である。
【0139】
本発明による方法によって得ることができるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、好ましくは以下の構造(4)~(7)の少なくとも1つ、特に好ましくは2つ以上を含む:
【化2】
ここで、フェニル環は、互いに独立してC1~C8アルキル、ハロゲン、好ましくはC1~C4アルキル、特に好ましくはメチルで一置換又は二置換されていてもよく、Xは単結合、C1~C6アルキレン、C2~C5アルキリデン又はC5~C6シクロアルキリデン、好ましくは単結合又はC1~C4アルキレン、特に好ましくはイソプロピリデンを表し、構造単位(4)~(7)の総量(好ましくは定量的HPLCを用いた全加水分解により決定される)は、一般に50ppm~1000ppmの範囲、好ましくは80ppm~850ppmの範囲である。このためまた、本発明に従って製造されるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、好ましくは上述の構造(4)~(7)の少なくとも1つ、特に好ましくは2つ以上を含む。
【0140】
再配置構造の量を決定するために、それぞれのポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを全加水分解に供し、式(4a)~式(7a)の対応する分解生成物を形成し、その量をHPLCによって決定する。これは例えば以下のように達成することができる:ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーサンプルを、ナトリウムメトキシドを用いて還流下で加水分解する。対応する溶液を酸性化し、濃縮乾固する。乾燥残渣をアセトニトリルに溶解し、式(4a)~式(7a)のフェノール化合物を、UV検出を伴うHPLCを用いて決定し、ここで、式(4a)の化合物は、式(4)の化合物の分解生成物であり、式(5a)の化合物は、式(5)の化合物の分解生成物であり、式(6a)の化合物は、式(6)の化合物の分解生成物であり、式(7a)の化合物は、式(7)の化合物の分解生成物である:
【化3】
【0141】
このように遊離した式(4a)の化合物の量は、好ましくは10ppm~500ppm、特に好ましくは30ppm~300ppmである。
【0142】
このように遊離した式(5a)の化合物の量は、好ましくは0ppm(すなわち、10ppmの検出限界未満)~100ppm、特に好ましくは1ppm~50ppmである。
【0143】
このように遊離した式(6a)の化合物の量は、好ましくは1ppm(すなわち、10ppmの検出限界未満)~100ppm、より好ましくは1ppm~50ppmである。
【0144】
このように遊離した式(7a)の化合物の量は、好ましくは10ppm(すなわち、10ppmの検出限界)~300ppm、好ましくは20ppm~250ppmである。
【0145】
ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン成分(B)
本発明に従って使用されるポリシロキサンは、ヒドロキシアリール末端である。これは、ポリシロキサンの少なくとも1つの末端、好ましくは少なくとも2つの末端、特に好ましくは全ての末端(3つ以上の末端が存在する場合)がOH末端基を有することを意味すると理解される。
【0146】
成分Bは、式(1):
【化4】
(式中、
は水素又はC~Cアルキル、C~Cアルコキシ、好ましくは水素、メトキシ又はメチルであり、
、R、R及びRは、各々互いに独立してC~Cアルキル又はC~C12アリール、好ましくはメチル又はフェニルであり、
Yは単結合、SO-、-S-、-CO-、-O-、C~Cアルキレン、C~Cアルキリデン、C~C12アリーレンであり、任意にヘテロ原子を含む更なる芳香環に縮合していてもよく、又はC~Cアルキルによって一置換若しくは多置換されていてもよいC~Cシクロアルキリデンラジカルであり、好ましくは単結合、-O-、イソプロピリデン、又はC~Cアルキルによって一置換若しくは多置換されていてもよいC~Cシクロアルキリデンラジカルであり、
Vは酸素、C~Cアルキレン又はC~Cアルキリデン、好ましくは酸素又はCアルキレンであり、
p、q及びrは、各々独立して0又は1であり、
q=0である場合、Wは単結合、好ましくは同時にr=0であり、
q=1かつr=0の場合、Wは酸素、C~Cアルキレン又はC~Cアルキリデン、好ましくは酸素又はCアルキレンであり、
q=1かつr=1の場合、W及びVは、各々独立して酸素又はC~Cアルキレン又はC~Cアルキリデン、好ましくはCアルキレンであり、
ZはC~Cアルキレン、好ましくはCアルキレンであり、
oは10~500、好ましくは10~100の反復単位の平均数であり、
mは1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1.5~5の反復単位の平均数である)のヒドロキシアリール末端ポリシロキサンであるのが好ましい。一般式(1a)の2つ以上のシロキサンブロックがテレフタル酸及び/又はイソフタル酸を介して互いに連結して、エステル基を形成するジフェノールを使用することも同様に可能である。
【0147】
式(2)及び式(3):
【化5】
(式中、R1は水素、C~Cアルキル、好ましくは水素又はメチル、特に好ましくは水素であり、
各R2は、独立してアリール又はアルキル、好ましくはメチルであり、
Xは単結合、-SO-、-CO-、-O-、-S-、C~Cアルキレン、C~Cアルキリデン又はC~C12アリーレンであり、任意にヘテロ原子を含む更なる芳香環に縮合していてもよく、
Xは、好ましくは単結合、C~Cアルキレン、C~Cアルキリデン、C~C12シクロアルキリデン、-O-、-SO-、-CO-、-S-、-SO-であり、特に好ましくは、Xは単結合、イソプロピリデン、C~C12シクロアルキリデン又は酸素であり、非常に特に好ましくはイソプロピリデンであり、
nは10~400、好ましくは10~100、特に好ましくは15~50の平均数であり、
mは1~10、好ましくは1~6、特に好ましくは1.5~5の平均数である)の(ポリ)シロキサンが特に好ましい。
【0148】
シロキサンブロックは、同様に好ましくは以下の構造:
【化6】
から誘導することができ、ここで、式(VII)、式(VIII)及び式(IX)におけるaは、10~400、好ましくは10~100、特に好ましくは15~50の平均数を表す。
【0149】
一般式(VII)、一般式(VIII)又は一般式(IX)の少なくとも2つの同一の又は異なるシロキサンブロックが、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸を介して互いに連結して、エステル基を形成する場合も同様に好ましい。
【0150】
式(1a)において、p=0であり、VがCアルキレンであり、r=1であり、ZがCアルキレンであり、R及びRがメチルであり、q=1であり、WがCアルキレンであり、m=1であり、Rが水素又はC~Cアルキル、好ましくは水素又はメチルであり、R及びRが各々互いに独立してC~Cアルキル、好ましくはメチルであり、oが10~500である場合も同様に好ましい。
【0151】
式(1)~式(3)のいずれかによるヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの製造は、例えば特許文献2、米国特許出願公開第20130267665号又は国際公開第2015/052229号に記載されている。
【0152】
式(1)、式(2)又は式(3)、或いは式(VII)又は式(VIII)のヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、いずれの場合もオリゴカーボネート及びヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの質量の合計をベースとして0.5重量%~50重量%、好ましくは1重量%~40重量%、特に好ましくは2重量%~20重量%、非常に特に好ましくは2.5重量%~10重量%の量で用いられる。
【0153】
本発明による方法によって得ることができるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及びそれから更に製造されるポリマー組成物は、熱可塑性ポリマー、特にポリカーボネートについて既知の方法で任意の所望の成形体に加工することができる。
【0154】
これに関連して、本発明による方法によって得ることができるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及びそれから更に製造されるポリマー組成物は、例えばホットプレス、紡糸、ブロー成形、熱成形、押出し又は射出成形によって、製造品、成形体又は成形品(成形部品)に変換することができる。多層システムにおける使用も興味深い。本発明に従って得ることができる組成物の適用は、例えば多成分射出成形において、又は共押出層の基材として用いることができる。しかしながら、適用は、例えばフィルムとのラミネーション又は溶液でのコーティングによる、既成の本体に対するものであってもよい。
【0155】
基層と任意の外層(単数/複数)とから構成されるシート又は成形体(多層システム)は、(共)押出し、直接スキニング、直接コーティング、インサート成形、インモールドコーティング、又は当業者に既知の他の好適な方法によって製造することができる。
【0156】
本発明による方法によって得ることができるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及びそれから更に製造されるポリマー組成物、特にポリカーボネート組成物は、既知の芳香族ポリカーボネートがこれまで使用されており、離型特性の改善に加えた良好な流動性、低温で高い靱性及びより良好な耐薬品性が更に必要とされるいずれの分野にも、例えば大型自動車の外装部品及び外装用の制御ボックス、シート、ツインウォールシート、電気部品及び電子部品、並びに光学記憶媒体の製造に用いることができる。このため、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、IT分野ではコンピュータハウジング、マルチメディアハウジング、及び携帯電話ハウジングに、家庭分野では洗濯機又は食器洗い機等に、スポーツ分野では、例えばヘルメット用の材料として用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0157】
例示的な実施形態
実施例を参照して本発明を説明するが、本発明をこれらの実施例に限定することは何ら意図されない。下記の決定方法が、反対の記載がない限り、本発明における対応する全てのパラメーターに用いられる。
【0158】
相対溶液粘度
相対溶液粘度(ηrel;eta relとも称される)はジクロロメタン中、5g/lの濃度にて25℃でウベローデ粘度計を用いて決定した。
【0159】
原子間力顕微鏡法(AFM)によるポリシロキサンドメインサイズ及びポリシロキサンドメインサイズ分布の評価
ポリシロキサンドメインサイズ及びポリシロキサンドメインのサイズ分布を原子間力顕微鏡法によって決定した。この目的で、それぞれのサンプル(押出バッチにおいてはペレット材料の形態)を、ウルトラミクロトームを用いて窒素冷却(-196℃)下で切断した。BrukerのD3100 AFM顕微鏡を使用した。AFM画像は、室温(25℃、相対湿度30%)で記録した。「ソフト間欠接触モード」又は「タッピングモード」を測定に用いた。約2.8Nm-1のばね定数及び約75kHzの共振周波数を有する「タッピングモードカンチレバー」(Nanoworldのpointprobe)をサンプルの走査に使用した。タッピング力は、標的振幅と自由振動振幅(空気中で自由振動するプローブチップの振幅)との比率によって制御する。サンプリングレートは1Hzに設定した。表面形態を記録するために、位相差画像及びトポグラフィー画像を2.5μm×2.5μmの領域で記録した。ポリシロキサンドメインは、Olympus SIS画像処理ソフトウェア(Olympus Soft Imaging Solutions GmbH、48149、ドイツ、ミュンスター)を用い、位相差画像から明暗コントラストにより自動的に評価した。ポリシロキサンドメインの直径は、切断により見られるポリシロキサンドメインの断面の円相当面積の直径により決定した。
【0160】
各サンプルを5×5mmの領域にわたって4回の走査に供し、位相差画像を上記のように画像解析によって評価した。球状物体と仮定して、切断したポリシロキサンドメインの体積を算出し、統計的に評価した。画像処理ソフトウェアを用いて個々の直径を分類し、直径の分布を取得した。この分布を用いて、直径が100nm未満のポリシロキサンドメインの体積分率、及び直径が200nm未満のポリシロキサンドメインの体積分率、及び直径が500nm超のポリシロキサンドメインの体積分率を決定した。分解能の限界は20nmであった。
【0161】
出発物質:
オリゴカーボネート(成分A)
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に使用した出発物質は、フェニル末端基及びフェノール性OH末端基を有し、1.17の相対溶液粘度を有する直鎖ビスフェノールAオリゴカーボネートであった。このオリゴカーボネートは、UV安定剤、離型剤又は熱安定剤等の任意の添加剤を何ら含有しなかった。オリゴカーボネートの製造は、例えば国際公開第2019238419号に記載されている溶融トランスエステル化プロセスによって行い、高粘度反応器の出口で直接取り出した。オリゴカーボネートは、0.16重量%のフェノール性末端基含有量を有する。
【0162】
オリゴカーボネートは、使用前に空気循環乾燥機において120℃で少なくとも2時間乾燥させた。
【0163】
相溶化剤を含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)
用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、14mg KOH/g~20mg KOH/gのヒドロキシ含有量及び350mPas~650mPasの粘度(23℃)を有する、nが25~32であり、mが2.5~4の範囲である(R=H、R=メチル;X=イソプロピリデン)、式(3)のビスフェノールA末端ポリジメチルシロキサンであった。ポリシロキサンに安息香酸ナトリウムを混入し、ナトリウム含有量は、0.8ppm~1.3ppmである。ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン9部に対し、相溶化剤としてシロキサンDow Corning(商標)40-001(Dow Corning Corporation)を1部添加する。
【0164】
相溶化剤を含まないヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B2)
用いたヒドロキシアリール末端ポリシロキサンは、14mg KOH/g~20mg KOH/gのヒドロキシ含有量及び350mPas~650mPasの粘度(23℃)を有する、nが25~32であり、mが2.5~4の範囲である(R=H、R=メチル;X=イソプロピリデン)、式(3)のビスフェノールA末端ポリジメチルシロキサンであった。ポリシロキサンに安息香酸ナトリウムを混入し、ナトリウム含有量は、0.8ppm~1.3ppmである。
【0165】
実施例7及び実施例8(本発明)の実験セットアップ
図1は、正確に2つの特殊縮合反応器を、重縮合によるポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に使用する実施形態における本発明による方法の工程(1)~(4)である、本発明による方法の実施形態の1つに関する実験のための実験セットアップを示す。オリゴカーボネート(成分A)を、ペレット材料の形態で重量計量天秤4を用いて可塑化押出機1に導入し、溶融させた。ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B2)を液体形態でリザーバ容器6に供給し、ポンプ7を介して可塑化押出機1に連続的に計量供給した。可塑化押出機1へのヒドロキシアリール末端ポリシロキサンの計量供給は、オリゴカーボネートの溶融物中、すなわち押出機1の可塑化ゾーンの下流で行った。可塑化押出機により、成分A及び成分Bの予備混合を行った。混合物は、INDAG DLS/M 007ダイナミックミキサー5に送られた。ミキサーは500rpmで運転した。得られた反応混合物は、続いて第1の薄膜蒸発器2に送られた。真空ポンプ9を用いて第1の薄膜蒸発器2を排気した。オフガスを凝縮器8に通し、そこで凝縮性構成要素、特にフェノールが分離された。第1の薄膜蒸発器2から排出させた後、中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー及び未変換オリゴカーボネート及び未変換ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する得られた反応混合物は、ギヤポンプ3により溶融物導管を介して第2の薄膜蒸発器2’に送られた。第2の薄膜蒸発器2’の後、得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを、ギヤポンプ3’を用いてダイプレート(図示せず)を通して紡糸し、ペレット化した。第2の薄膜蒸発器2’も真空ポンプ9’を介して排気し、凝縮器8’においてオフガスの凝縮性構成要素、特にフェノールを分離した。
【0166】
2つの薄膜蒸発器2及び2’は各々、0.5mの熱伝達領域を有していた。2つの薄膜蒸発器2及び2’の熱伝達領域の各々を、周縁にワイパーブレード要素を有する垂直ローターが通過した。
【0167】
二軸押出機を用いた実験セットアップ
(比較例1及び比較例2、並びに発明例5及び発明例6に使用する中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造のため)
二軸押出機を用いた実験セットアップのスキームは、図2から明らかである。
【0168】
図2は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造のためのスキームを示す。オリゴカーボネート(成分A)を、重量フィーダー2を介して二軸押出機1に計量供給した。押出機(Leistritz Extrusionstechnik GmbH、ニュルンベルクのZSE 27 MAXX)は、蒸気の除去のための真空ゾーンを有する共回転二軸押出機であった。二軸押出機1は、11個のハウジングセクションa~kからなっていた。オリゴカーボネート(成分A)の添加は、ハウジングセクションaにおいて差動計量天秤2を介して行い、オリゴカーボネートの溶融は、ハウジングb及びcにおいて行った。ハウジングセクションd及びeは、相溶化剤を含有する液体ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)を組み込むためにも使用した。ハウジングセクションe、g、i及びjには、縮合生成物、特にフェノールを除去するための脱気口を設けた。ハウジングセクションeを第1の真空ステージに割り当て、ハウジングセクションg、i及びjを第2の真空ステージに割り当てた。第1の真空ステージにおける圧力は、特に明記しない限り、45mbara~65mbaraであった。第2の真空ステージにおける圧力は、1mbara未満であった。相溶化剤を含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)を初めにタンク3に充填し、計量ポンプ4を介して二軸押出機1に導入した。真空ポンプ5及び6を介して負圧を発生させた。蒸気を二軸押出機1から引き出し、2つの凝縮器7及び8に通し、そこで縮合生成物、特にフェノールが凝縮された。ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの溶融物をストランドに形成し、水浴9に通し、ペレタイザー10によって粉砕した。
【0169】
高粘度反応器を用いた実験セットアップ
(比較例3及び比較例4のため)
高粘度反応器を用いた実験セットアップのスキームは、図3から明らかである。
【0170】
図3は、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造のためのスキームを示す。オリゴカーボネート(成分A)を、重量供給手段4を介して二軸押出機1に計量供給した。二軸押出機1(Leistritz Extrusionstechnik GmbH、ニュルンベルクのZSE 27 MAXX)は、蒸気の除去のための真空ゾーンを有する共回転二軸押出機である。二軸押出機1は、11個のハウジングセクションa~kからなっていた。オリゴカーボネートの添加は、ハウジングセクションaにおいて行い、このオリゴカーボネートの溶融は、ハウジングセクションb及びcにおいて行った。相溶化剤を含有する液体ヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)の添加は、ハウジングセクションdにおいて行った。ハウジングセクションe及びfは、液体ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを組み込むために使用した。ハウジングセクションg、h、i及びjには、縮合生成物を除去するための脱気口を設けた。ハウジングセクションg及びhを第1の真空ステージに割り当て、ハウジングセクションi及びjを第2の真空ステージに割り当てた。第1の真空ステージにおける圧力は、特に明記しない限り、250mbara~500mbaraであった。第2の真空ステージにおける圧力は、1mbara未満であった。ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを初めにタンク6に充填し、計量ポンプ7を介して二軸押出機1に導入した。2つの真空ポンプ8を介して負圧を発生させた。蒸気を二軸押出機1から引き出し、2つの凝縮器9に回収した。このように脱気され、部分的に凝縮された溶融物を、二軸押出機1のハウジングセクションkから導管を介して高粘度反応器2に送った。
【0171】
高粘度反応器2は、水平かつ軸方向に平行に配置された2つの逆回転ローターを有する自浄式装置であった。この構成は、欧州特許出願公開第0460466号に記載されており、その図7を参照されたい。用いた高粘度反応器2は、924mmの長さで187mmのハウジング直径を有していた。反応混合物が充填可能な高粘度反応器2の内部は、44.6リットルの容積を有していた。高粘度反応器は、同様に真空ポンプ8及び凝縮器9に接続されていた。高粘度反応器2の圧力は、0.1mbara~5mbaraであった。反応の終了後に、得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを、排出スクリュー3を介して排出させ、続いて(水浴10及びペレタイザー11を介して)ペレット化した。
【0172】
比較例1:回転ディスク反応器を用いた実験
図2による実験セットアップを、初めに中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造に使用した。この目的で、1.17の相対溶液粘度を有するオリゴカーボネート(成分A)9.5kg/hを二軸押出機1のハウジングaに計量供給した(図2を参照されたい)。相溶化剤を含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)を、二軸押出機1のハウジングdに0.475kg/hで導入した。二軸押出機1は、400rpmの速度で運転した。この結果、二軸押出機1のスクリュー要素のスクリューチャンバと二軸押出機1のハウジング壁との間の剪断速度は5970 1/sとなった。
【0173】
押出機ハウジングを以下のスキームに従って加熱した:ハウジングaは非加熱、ハウジングbは170℃、ハウジングc及びdは240℃、ハウジングeは250℃、ハウジングfは260℃、ハウジングg及びhは270℃、ハウジングiは275℃、ハウジングjは285℃、ハウジングkは295℃。40mbaraの圧力をハウジングeにかけた。0.6mbaraの圧力をハウジングg、i及びjにかけた。中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを323℃の溶融温度で押出し、水浴10に通し、ペレット化した。
【0174】
このように製造した10kgの中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを、それぞれ直径800mmの2枚のディスクを有するUhde Inventa Fischer GmbHの回転ディスク反応器において溶融させた。溶融物を回転ディスク反応器において300℃及び1mbaraで87分間、2.5rpmのローター速度で重縮合した。フェノールを連続的に除去した。得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを排出させ、ペレット化した。このように得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、eta rel 1.26の相対溶液粘度を有していた。反応器のディスクは、ワイパーによってワイピングされ、10 1/sの剪断速度が得られる。ディスクでの落下膜の剪断速度は、10 1/s未満である。
【0175】
比較例2:
比較例1と同様に二軸押出機を用いて製造した中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー(図2)10kgを、比較例1の回転ディスク反応器において溶融させた。中間体ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを回転ディスク反応器において300℃及び1mbarで110分間、2.5rpmの速度で重縮合した。反応器のディスクは、ワイパーによってワイピングされ、10 1/sの剪断速度が得られる。ディスクでの落下膜の剪断速度は、10 1/s未満である。フェノールを連続的に除去した。得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを排出させ、ペレット化した。このように得られたポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、eta rel 1.33の相対溶液粘度を有する。
【0176】
比較例1及び比較例2のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー中のポリシロキサンドメインのサイズ分布を、AFMによって更に上で説明したように決定した。比較例1のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいて、AFM画像に見られるポリシロキサンの73体積%が、500nm超のポリシロキサンドメインに存在し、200nm未満のドメインには7.9体積%の体積分率のポリシロキサンしか存在しないことが見出された。比較例2のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおいては、AFM画像に見られるポリシロキサンの34体積%が、500nm超のポリシロキサンドメインに存在し、200nm未満のドメインには20体積%のポリシロキサンしか存在しない。経験から、特に500nm超のポリシロキサンドメインが射出成形品において著しい表面欠陥を引き起こすことが示された。200nm超のポリシロキサンドメインであっても、射出成形品の美的外観の悪化を引き起こす可能性がある。このため、比較例1及び比較例2の製品は、微細なポリシロキサンドメインサイズ分布という要件を満たしていない。
【0177】
比較例3
高粘度反応器を用いた実験
図3による実験セットアップを用いて、オリゴカーボネート(成分A)28.6kg/h及び相溶化剤を含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)1.43kg/hを二軸押出機1に計り入れた。二軸押出機1の速度は850rpmであった。この結果、二軸押出機1のスクリュー要素のスクリューチャンバと二軸押出機1のハウジング壁との間の剪断速度は12700 1/sとなった。押出機ハウジングを以下のスキームに従って加熱した:ハウジングaは非加熱、ハウジングbは170℃、ハウジングc及びdは240℃、ハウジングeは250℃、ハウジングfは260℃、ハウジングg及びhは270℃、ハウジングiは275℃、ハウジングjは285℃、ハウジングkは295℃。140mbaraの圧力をハウジングeにかけ、0.8mbaraの圧力をハウジングg、i及びjの各々にかけた。二軸押出機1からの出口温度は、308℃であった。押出ポリマー溶融物を、パイプ導管を介して高粘度反応器2に移した。高粘度反応器の速度は、30rpmであった。この結果、高粘度反応器2のローターと高粘度反応器2のハウジング内壁との間の剪断速度は114 1/sとなった。高粘度反応器2のハウジング温度は、330℃であった。高粘度反応器2の内部の圧力は、0.5mbaraであった。1.376の相対溶液粘度を有する薄い色のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが得られた。
【0178】
比較例4
高粘度反応器を用いた実験
図3による実験セットアップを用いて、オリゴカーボネート(成分A)23.8kg/h及び相溶化剤を含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)1.19kg/hを二軸押出機1に計り入れた。押出機の速度は700rpmであった。この結果、二軸押出機1のスクリュー要素のスクリューチャンバと二軸押出機1のハウジング壁との間の剪断速度は10450 1/sとなった。二軸押出機1の押出機ハウジングを以下のスキームに従って加熱した:ハウジングaは非加熱、ハウジングbは170℃、ハウジングc及びdは240℃、ハウジングeは250℃、ハウジングfは260℃、ハウジングg及びhは270℃、ハウジングiは275℃、ハウジングjは285℃、ハウジングkは295℃。ハウジングe並びにハウジングg、i及びjの各々は、標準圧力であった。溶融物を高粘度反応器2に移した。速度は45rpmであった。この結果、高粘度反応器2のローターと高粘度反応器2のハウジング内壁との間の剪断速度は172 1/sとなった。高粘度反応器2のハウジング温度は、310℃であった。高粘度反応器2のハウジングに加えた圧力は、1.6mbaraであった。1.31の相対溶液粘度を有する薄い色のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが得られた。
【0179】
比較例3及び比較例4のAFMによるポリシロキサンドメインサイズ分布
比較例3及び比較例4の製品におけるポリシロキサンドメインのサイズは、比較例1及び比較例2に用いたのと同じ方法で決定した。これらの製品は、500nm超のポリシロキサンドメインを含有しない。比較例3の製品については、用いたポリシロキサンの89.2体積%が100nm未満のドメインに存在し、用いたポリシロキサンの100体積%が200nm未満のドメインに存在する。このため、比較例3の製品は、微細なポリシロキサンドメインサイズ分布を有するが、この分布は、所望の範囲の外である非常に高い相対溶液粘度との組合せでしか達成可能でなかった。このように高い相対溶液粘度を有する材料は、射出成形プロセスで加工可能であるが、追加のコスト及び複雑さを伴う。比較例4から、相対溶液粘度が所望の範囲になるように製造プロセスを適合させることが原則として可能であることが示される。しかしながら、この場合、微細なポリシロキサンドメインサイズ分布はもはや得られない。比較例4の製品においては、用いたポリシロキサンの74.8体積%が100nm超のドメインに存在し、用いたポリシロキサンの38.4体積%が200nm超のドメインに存在する。
【0180】
実施例5
(本発明;図4による正確に1つの薄膜蒸発器を用いる)
図2による実験セットアップにおいて、初めに1.17の相対粘度を有するオリゴカーボネート(成分A)21kg/hを二軸押出機1のハウジングaに計量供給し、相溶化剤を含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)を1.05kg/hで二軸押出機1のハウジングdに導入した。二軸押出機1は、500rpmの速度で運転した。この結果、二軸押出機1のスクリュー要素のスクリューチャンバと二軸押出機1のハウジング壁との間の剪断速度は7560 1/sとなった。二軸押出機1の押出機ハウジングを以下のスキームに従って加熱した:ハウジングaは非加熱、ハウジングbは170℃、ハウジングc及びdは240℃、ハウジングeは250℃、ハウジングf~kは260℃。負圧はかけない。負圧がないこということは、例えばフェノールのような形成された任意の反応生成物が、排出されるとしても、ごく僅かしか排出されないことを意味するため、本質的に、反応性結合を有しないオリゴカーボネートとポリシロキサンとの物理的混合物(ブレンド)が形成される。
【0181】
このようにして形成されるオリゴカーボネートとポリシロキサンとのブレンドを可塑化押出機1内で溶融させ、ギヤポンプ(図示せず)を用いて図4による薄膜蒸発器2に搬送する。ブレンドを約265℃の溶融温度及び20kg/hの処理量で薄膜蒸発器2に導入し、334℃のハウジング温度で凝縮させる。薄膜蒸発器2における圧力は、0.4mbaraであった。ワイパーブレード要素の外縁と薄膜蒸発器2の反応チャンバの内表面領域との間の剪断速度は、3930 1/sであった。1.30の相対溶液粘度を有する薄い色のペレット材料が得られた。
【0182】
薄膜蒸発器2は、0.5mの熱伝達領域を有していた。薄膜蒸発器2の熱伝達領域は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって500rpmの速度でワイピングされた。これにより33.3Hzの表面更新周波数が得られる。
【0183】
実施例6
(本発明;図4による正確に1つの薄膜蒸発器を用いる)
実施例5に記載したのと全く同じように、オリゴカーボネート(成分A)と相溶化剤を含有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B1)とのブレンドを初めに製造した。これを可塑化押出機1内で溶融させ、ギヤポンプ(図示せず)を用いて図4による薄膜蒸発器2に搬送する。ブレンドを薄膜蒸発器2に約265℃の溶融温度及び18kg/hの処理量で導入し、334℃のハウジング温度で凝縮させる。薄膜蒸発器2における圧力は、0.4mbarであった。ワイパーブレード要素の外縁と薄膜蒸発器2の反応チャンバの内表面領域との間の剪断速度は、3530 1/sであった。薄膜蒸発器2は、0.5mの熱伝達領域を有していた。薄膜蒸発器2の熱伝達領域は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって450rpmの速度でワイピングされた。これにより30Hzの表面更新周波数が得られる。
【0184】
1.285の相対溶液粘度を有する薄い色のペレット材料が得られた。
【0185】
実施例7-本発明;図1による正確に2つの薄膜蒸発器を用いる
36.9kg/hのオリゴカーボネート(成分A)を可塑化押出機1内で可塑化し、相溶化剤を含まないヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B2)2kg/hを可塑化押出機1内で溶融物に組み込み、予備混合物を製造した。更なる均質化のために、オリゴカーボネートと相溶化剤を含まないヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの予備混合物を、500rpmの速度で運転するINDAG MaschinenbauのDLM/S 007ダイナミックミキサー5に通した。284℃の温度で、予備混合物は続いて、ワイパーブレード要素の外縁と反応チャンバの内表面との間の剪断速度3110 1/s、上半分が310℃、下半分が300℃のハウジング温度、及び圧力1mbaraで運転する、0.5mの熱伝達領域を有する第1の薄膜蒸発器2に入った。得られた溶融物を排出させ、ギヤポンプ3を用いて、0.5mの熱伝達領域を有する第2の薄膜蒸発器2’に搬送した。
【0186】
第2の薄膜蒸発器2’は、ワイパーブレード要素の外縁と反応チャンバの内表面領域との間の剪断速度860 1/s及び圧力1mbaraで運転した。薄膜蒸発器2’の反応チャンバの上半分を320℃、下半分を317℃に加熱した。溶融物をこのように更に凝縮させ、ギヤポンプ3’を介して361℃で排出させた。薄膜蒸発器2の熱伝達領域は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって330rpmの速度でワイピングされた。これにより22Hzの表面更新周波数が得られる。薄膜蒸発器2’の熱伝達領域は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって220rpmの速度でワイピングされた。これにより14.7Hzの表面更新周波数が得られる。
【0187】
1.324の相対溶液粘度を有する薄い色のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが得られた。
【0188】
実施例8
(本発明;図1による正確に2つの薄膜蒸発器を用いる)
41kg/hのオリゴカーボネート(成分A)を可塑化押出機1内で可塑化し、相溶化剤を含まず、19.2mg KOH/gのOH価を有するヒドロキシアリール末端ポリシロキサン(成分B2)2.32kg/hを可塑化押出機1内で溶融物に組み込み、予備混合物を製造した。更なる均質化のために、オリゴカーボネートと相溶化剤を含まないヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとの予備混合物を、500rpmの速度で運転するINDAG MaschinenbauのDLM/S 007ダイナミックミキサー5に通した。275℃の温度で、予備混合物は続いて、ワイパーブレード要素の外縁と反応チャンバの内表面領域との間の剪断速度710 1/s、均一に290℃のハウジング温度及び圧力1mbaraで運転する、0.5mの熱伝達領域を有する第1の薄膜蒸発器2に入った。得られた溶融物を排出させ、ギヤポンプ3を用いて、0.5mの熱伝達領域を有する第2の薄膜蒸発器2’に搬送した。
【0189】
第2の薄膜蒸発器2’は、ワイパーブレード要素の外縁と反応チャンバの内表面領域との間の剪断速度635 1/s及び圧力1mbaraで運転した。薄膜蒸発器2’の上半分を均一に310℃に加熱した。溶融物をこのように更に凝縮させ、ギヤポンプ3’を介して329℃で排出させた。薄膜蒸発器2の熱伝達領域は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって189rpmの速度でワイピングされた。これにより12.6Hzの表面更新周波数が得られる。薄膜蒸発器2’の熱伝達領域は、周縁に4つのワイパーブレード要素を有する垂直ローターによって202rpmの速度でワイピングされた。これにより13.5Hzの表面更新周波数が得られる。
【0190】
1.315の相対溶液粘度を有する薄い色のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーが得られた。
【0191】
比較例1から、回転ディスク反応器を用いたプロセスにより、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造が可能となることが示される。比較例1の材料の相対溶液粘度eta rel 1.26は、十分な流動性を示す範囲内である。しかしながら、このポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインを含む。直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は、73体積%と非常に高い。ポリシロキサンドメインのこのサイズ分布を有するポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから製造された射出成形品は、多くの商業用途に使用することができない。
【0192】
比較例2から、より長い滞留時間によってポリシロキサンドメイン分布をより微細にし得ることが示される。直径が500nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率は、著しく低下する。しかしながら、相対溶液粘度も顕著に上昇するため、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーは、もはや許容可能な流動性を示さない。ポリシロキサンドメインのサイズ分布は、相対溶液粘度の上昇とともにより微細になるため、流動性が相対溶液粘度1.33で著しく悪化するにも関わらず、ポリシロキサンの体積の3分の1超が、直径が500nmを超えるドメインに依然として見られることは驚くべきことである。したがって、このポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーから製造された射出成形品も、多くの商業用途に使用することができない。
【0193】
このため、回転ディスク反応器を用いたプロセスは、本発明の目的を達成しない。
【0194】
比較例3及び比較例4は高粘度反応器を用いて行った。比較例3から、微細なポリシロキサンドメインサイズ分布が高粘度反応器でも達成可能であることが示される。しかしながら、粘度が相対溶液粘度1.376と高いため、流動性は満足のいくものではない。対照的に、比較例4は有用な流動性を示すが、ポリシロキサンドメインのサイズ分布が悪い。
【0195】
このため、高粘度反応器を用いたプロセスも本発明の目的を達成することができない。
【0196】
発明例5及び発明例6から、正確に1つの薄膜蒸発器を使用し、中程度の温度で高い剪断速度、低い圧力及び高い表面更新速度を用いるプロセスにより、微細なポリシロキサンドメインサイズ分布と射出成形における加工に有用な流動性との両方を示すポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造が可能となることが示される。このため、正確に1つの薄膜蒸発器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造する上述のプロセスは、本発明の目的を達成する。
【0197】
発明例7及び発明例8から、2つの薄膜蒸発器のカスケードを使用し、中程度の温度で高い剪断速度、低い圧力及び高い表面更新速度を用いるプロセスにより、微細なポリシロキサンドメインサイズ分布と射出成形における加工に有用な流動性との両方を示すポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの製造が可能となることが示される。このため、正確に2つの薄膜蒸発器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを製造する上述のプロセスは、本発明の目的を達成する。本発明による方法のこの構成は、相溶化剤を添加することなしに目的が達成されるため、特に有利である。
【0198】
便宜上、個々の実験において得られた付随するポリシロキサンドメインの様々な直径に対するポリシロキサンドメインの体積分率の値及び付随する相対溶液粘度を表1に再掲する。
【0199】
【表1】
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-04-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正確に1つの薄膜蒸発器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する方法であって、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(2)オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(1)で提供された前記反応混合物を、前記正確に1つの薄膜蒸発器に導入する方法工程、
なお、前記薄膜蒸発器は、周縁に少なくとも2つのワイパーブレード要素を有する正確に1つのローターを有する正確に1つの反応チャンバを備え、該正確に1つのローターは、前記薄膜蒸発器内で回転し、各ワイパーブレード要素は、1つの外縁を有する;
(3)工程(2)からの前記反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、前記反応混合物は、前記薄膜蒸発器の取入口から該薄膜蒸発器の出口まで搬送される;
(4)工程(3)で得られた前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを前記薄膜蒸発器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
ここで、工程(3)において、前記正確に1つの薄膜蒸発器で以下の方法条件:
(3.a)前記周縁の少なくとも2つの回転ワイパーブレード要素の前記外縁と前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~5000 1/s、
(3.b)前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバ内の圧力が0.01mbara~10mbara、
(3.c)前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度が280℃~370℃、
(3.d)前記反応混合物の表面更新周波数が10Hz~50Hz、
であることが観察される、方法。
【請求項2】
直列に配置された複数の薄膜蒸発器を用いてポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを連続製造する方法であって、この数が少なくとも2であり、
該方法が以下の方法工程:
(1)1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する反応混合物を提供する方法工程、
(2)オリゴカーボネートとヒドロキシアリール末端ポリシロキサンとを含有する工程(1)で提供された前記反応混合物を、前記少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最初の蒸発器に導入する方法工程、
なお、前記少なくとも2つの薄膜蒸発器の各々が、正確に1つのローターを有する正確に1つの反応チャンバを備え、各ローターは、周縁に少なくとも2つのワイパーブレード要素を有し、各薄膜蒸発器内の前記正確に1つのローターは回転し、各ワイパーブレード要素は、1つの外縁を有する;
(3)工程(2)からの前記反応混合物を反応させて、ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを得る方法工程、
なお、前記反応混合物は、前記少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最初の薄膜蒸発器の取入口から該少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最後の薄膜蒸発器の出口まで搬送される;
(4)工程(3)で得られた前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーを前記最後の薄膜蒸発器から排出させる方法工程、
を特徴とし、
工程(3)において、前記少なくとも2つの直列に配置された薄膜蒸発器の最後の蒸発器で以下の方法条件:
(3.a)前記周縁の少なくとも2つの回転ワイパーブレード要素の前記外縁と前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~5000 1/s、
(3.b)前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバ内の圧力が0.01mbara~10mbara、
(3.c)前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度が280℃~370℃、
(3.d)前記反応混合物の表面更新周波数が10Hz~50Hz、
であることが観察される、方法。
【請求項3】
方法工程(3)において、前記単一の薄膜蒸発器又は直列に配置された複数の薄膜蒸発器の前記最後の薄膜蒸発器で以下の方法条件:
(3.a.a)ワイパーブレード要素の回転外縁と前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~4000 1/sであること、
が観察される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
方法工程(3)において、前記単一の薄膜蒸発器又は直列に配置された複数の薄膜蒸発器の前記最後の薄膜蒸発器で以下の方法条件:
(3.b.a)前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバ内の圧力が0.1mbara~6mbara、好ましくは0.2mbara~2mbaraであること、
が観察される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
工程(1)で提供された前記オリゴカーボネートの相対溶液粘度が1.11~1.22、特に好ましくは1.13~1.20である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が2重量%~15重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、該ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーのポリシロキサン含有量が4.5重量%~5.5重量%であり、該ポリシロキサン含有量は、前記ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
工程(1)において、1.08~1.22の相対溶液粘度を有し、好ましくは1.11~1.22の相対溶液粘度を有し、特に好ましくは1.13~1.20の相対溶液粘度を有し、かつ、1000ppm~2500ppmのOH基含有量を有する、好ましくは1200ppm~2300ppmのOH基含有量を有する、特に好ましくは1400ppm~2200ppmのOH基含有量を有するオリゴカーボネートを含有し、かつ、ヒドロキシアリール末端ポリシロキサンを含有する、前記反応混合物を、ダイナミックミキサー及び/又はスタティックミキサーを用いて製造する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記方法の工程(3)において、好ましくは以下の方法条件:
前記最初の薄膜蒸発器では、
(3.1.a)回転ワイパーブレード要素の前記外縁と前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~5000 1/s、
(3.1.b)前記反応チャンバ内の圧力が1mbara~10mbara、
(3.1.c)前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度が270℃~350℃の、
(3.1.d)前記反応混合物の表面更新周波数が10Hz~30Hz、
前記最後の薄膜蒸発器では、
(3.2.a)前記少なくとも2つの回転ワイパーブレード要素の前記外縁と前記薄膜蒸発器の前記反応チャンバの軸方向に延びる回転対称内表面領域との間の剪断速度が500 1/s~4000 1/s、好ましくは500 1/s~2000 1/s、
(3.2.b)前記反応チャンバ内の圧力が0.1mbara~3mbara、好ましくは0.2mbara~2mbara、
(3.2.c)前記反応チャンバ内の前記反応混合物の温度が280℃~370℃、
(3.2.d)前記反応混合物の表面更新周波数が10Hz~30Hz、
であることが観察される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
以下の特徴:
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの総重量をベースとして2重量%~15重量%のポリシロキサン含有量、
ポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーにおける、ポリシロキサンドメインの総体積をベースとして測定される、直径が100nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が70%未満であり、同時に、直径が200nmを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が30%未満であり、同時に、直径が500nmの長さを超えるポリシロキサンドメインの体積分率が0.1%未満であり、相対溶液粘度が1.38~1.24、好ましくは1.36~1.26、特に好ましくは1.35~1.27であること、
を含むポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマー。
【請求項11】
成形体の製造への請求項10に記載のポリシロキサン-ポリカーボネートブロックコポリマーの使用。
【国際調査報告】