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特表2024-527933改良されたCRISPR-CAS技術
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】改良されたCRISPR-CAS技術
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6844 20180101AFI20240719BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20240719BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20240719BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12N15/09 110
C12N9/16 Z
C12Q1/6813 Z
C12N15/55
C12N15/11 Z
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
A61P43/00
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K38/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504805
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022038352
(87)【国際公開番号】W WO2023009526
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/225,802
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521434986
【氏名又は名称】シャーロック バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラメシュ, プラディープ
(72)【発明者】
【氏名】ブレイク, ウィリアム ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】マニング, ブレンダン ジョン
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR48
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX01
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC22
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC411
4C084ZC412
(57)【要約】
本開示は、改良されたCRISPR-Casタンパク質(例えば、改良された熱安定性)を提供する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質と、
標的核酸配列に相補的となるように選択された、または組み換えられたガイドRNAと、
を含むCRISPR-Cas複合体を、標的核酸配列を潜在的に含む試料と接触させるステップを含む、検出方法。
【請求項2】
前記接触させるステップは、前記CRISPR-Cas複合体及び試料を、前記Casタンパク質コラテラル活性による切断を受けやすいレポーターと接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接触させるステップは、前記温度を上回って、一定期間インキュベートすることを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料に存在する核酸を増幅するステップをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記増幅するステップは、熱安定性核酸ポリメラーゼを利用する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記増幅するステップ及び接触させるステップは、単一容器の中で行われる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記Casタンパク質は、Cas12タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記Casタンパク質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
コラテラル切断活性を有するCasタンパク質を利用する検出アッセイの実施方法において、改良は、熱安定性コラテラル切断活性を有するCasタンパク質を利用することを含む。
【請求項12】
前記Casタンパク質は、Cas12タンパク質である、請求項11に記載の改良。
【請求項13】
前記Casタンパク質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の改良。
【請求項14】
前記Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項12に記載の改良。
【請求項15】
検出アッセイの実施方法は、単一の反応容器で行われる、請求項11に記載の改良。
【請求項16】
前記熱安定性コラテラル切断活性は、約60℃を上回る温度で熱安定性である、請求項11に記載の改良。
【請求項17】
前記熱安定性コラテラル切断活性は、約65℃を上回る温度で熱安定性である、請求項11に記載の改良。
【請求項18】
前記Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項11に記載の改良。
【請求項19】
(a)少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質と、
(b)前記熱安定性Casタンパク質と複合体を形成することが可能であり、前記複合体の標的核酸配列への結合を指令することが可能である、少なくとも1つのガイドと、
を含む、自然に存在しない、または組み換えられた組成物。
【請求項20】
前記Casタンパク質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記少なくとも1つのガイドは、2つの異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の異なる領域にハイブリダイズすることができる、2つのガイド配列を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1つのガイドは、複数の異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の複数の異なる領域にハイブリダイズすることができる、複数のガイド配列を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
前記ガイド配列は、原核細胞内の1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
前記ガイド配列は、真核細胞内の1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる、請求項19に記載の組成物。
【請求項26】
(a)少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、
(b)前記Casタンパク質と複合体を形成することが可能であり、前記複合体の標的核酸配列への結合を指令することが可能である、少なくとも1つのガイドと、
を含む、自然に存在しない、または組み換えられた組成物。
【請求項27】
前記Casタンパク質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記少なくとも1つのガイドは、2つの異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の異なる領域にハイブリダイズすることができる、2つのガイド配列を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
前記少なくとも1つのガイドは、複数の異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の複数の異なる領域にハイブリダイズすることができる、複数のガイド配列を含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項31】
前記ガイド配列は、原核細胞内の1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる、請求項26に記載の組成物。
【請求項32】
前記ガイド配列は、真核細胞内の1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる、請求項26に記載の組成物。
【請求項33】
少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質を含む、標的核酸中のヌクレオチドを修飾するための、自然に存在しない、または組み換えられた組成物。
【請求項34】
前記Casタンパク質と複合体を形成することが可能であり、前記複合体の標的核酸配列への結合を指令することが可能である、少なくとも1つのガイド配列をさらに含む、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記Casタンパク質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項36】
前記Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項33に記載の組成物。
【請求項37】
前記Casタンパク質は、オフターゲット効果を低下させるように修飾されている、請求項33に記載の組成物。
【請求項38】
前記標的核酸中の前記ヌクレオチドの修飾により、点突然変異により引き起こされる疾患が治療される、請求項33に記載の組成物。
【請求項39】
前記標的核酸中の前記ヌクレオチドの前記修飾により、前記標的核酸配列によりコードされる遺伝子が不活性化する、請求項33に記載の組成物。
【請求項40】
前記標的核酸中の前記ヌクレオチドの前記修飾により、前記標的核酸配列によりコードされる遺伝子産物が修飾される、請求項33に記載の組成物。
【請求項41】
前記標的核酸中の前記ヌクレオチドの前記修飾により、前記標的核酸配列によりコードされる遺伝子産物の発現レベルが変更される、請求項33に記載の組成物。
【請求項42】
前記少なくとも1つのガイドは、2つの異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の異なる領域にハイブリダイズすることができる、2つのガイド配列を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項43】
前記少なくとも1つのガイドは、複数の異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の複数の異なる領域にハイブリダイズすることができる、複数のガイド配列を含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項44】
前記ガイド配列は、原核細胞内の1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる、請求項34に記載の組成物。
【請求項45】
前記ガイド配列は、真核細胞内の1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる、請求項34に記載の組成物。
【請求項46】
(a)少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、第1の制御エレメントと、
(b)ガイドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、第2の制御エレメントと、
を含む1つ以上のベクターを含む、ベクター系。
【請求項47】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする、請求項46に記載のベクター系。
【請求項48】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする、請求項46に記載のベクター系。
【請求項49】
Casタンパク質をコードする前記ヌクレオチド配列はコドン最適化されている、請求項46に記載のベクター系。
【請求項50】
(a)及び(b)は、単一のベクターに含まれる、請求項46に記載のベクター系。
【請求項51】
(a)及び(b)は、別個のベクターに含まれる、請求項46に記載のベクター系。
【請求項52】
前記ベクター系はウイルスベクターを含む、請求項46に記載のベクター系。
【請求項53】
細胞内で少なくとも1つの標的核酸を切断する方法であって、細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、前記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドと接触させることを含み、前記Casタンパク質は、前記少なくとも1つのガイドと複合体を形成することが可能であり、前記少なくとも1つの標的核酸中で破壊を引き起こすことが可能である、前記方法。
【請求項54】
細胞内で少なくとも1つの標的核酸の発現を変化させる方法であって、前記細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、前記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドと接触させることを含み、前記Casタンパク質は、前記少なくとも1つのガイドと複合体を形成することが可能であり、前記少なくとも1つの標的核酸中で破壊を引き起こすことが可能である、前記方法。
【請求項55】
細胞内での、少なくとも1つの標的核酸の発現を変化させる方法であって、前記細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、前記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドと接触させることを含み、前記Casタンパク質は、前記少なくとも1つのガイドと複合体を形成することが可能であり、前記少なくとも1つの標的核酸配列を編集することが可能である、前記方法。
【請求項56】
細胞内での、少なくとも1つの標的核酸を修飾する方法であって、細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、前記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドと接触させることを含み、前記Casタンパク質は、前記少なくとも1つのガイドと複合体を形成することが可能であり、前記少なくとも1つの標的核酸配列を編集することが可能である、前記方法。
【請求項57】
前記標的核酸を編集することは、前記標的核酸配列においてペイロード核酸を挿入することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ヌクレオチド配列は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする、請求項53~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
ヌクレオチド配列は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする、請求項53~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記少なくとも1つのガイドは、2つの異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸の異なる領域にハイブリダイズすることができる、2つのガイド配列を含む、請求項53~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記少なくとも1つのガイドは、複数の異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸の複数の異なる領域にハイブリダイズすることができる、複数のガイド配列を含む、請求項53~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記ガイド配列は、原核細胞内の1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる、請求項53~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記ガイド配列は、真核細胞内の1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる、請求項53~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質をコードする核酸。
【請求項65】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする、請求項65に記載の核酸。
【請求項66】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする、請求項65に記載の核酸。
【請求項67】
処置を必要とする対象における障害または疾患の処置方法であって、前記対象に、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドを投与することを含む、前記方法。
【請求項68】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記ヌクレオチド配列は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
前記少なくとも1つのガイドは、2つの異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸の異なる領域にハイブリダイズすることができる、2つのガイド配列を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
前記少なくとも1つのガイドは、複数の異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸の複数の異なる領域にハイブリダイズすることができる、複数のガイド配列を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記少なくとも1つのガイド配列は、原核細胞内の1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる、請求項67に記載の方法。
【請求項73】
前記少なくとも1つのガイド配列は、真核細胞内の1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる、請求項67に記載の方法。
【請求項74】
前記Casタンパク質は、前記ガイドと複合体を形成することが可能であり、前記標的核酸中で破壊を引き起こすことが可能である、請求項67に記載の方法。
【請求項75】
前記Casタンパク質は、前記ガイドと複合体を形成することが可能であり、前記標的核酸配列を編集することが可能である、請求項67に記載の方法。
【請求項76】
前記Casタンパク質は修飾要素と会合している、請求項1~45のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項77】
前記修飾要素は、アデノシンデアミナーゼである、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記修飾要素は、シチジンデアミナーゼである、請求項76に記載の組成物。
【請求項79】
請求項1~45のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項80】
(a)シス切断活性;
(b)トランス切断活性;
(c)感度;
(d)RNAまたはDNA標的核酸に対する選択性;
(e)RNAまたはDNA非標的核酸に対する選択性;及び
(f)酵素安定性
の1つ以上を調査することを含む、Casタンパク質の特性決定方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
様々な、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列反復-CRISPR関連(「Cas」)タンパク質が、例えば、対象となる、治療薬(例えば、遺伝子編集)としての特定の核酸を検出するための検出(例えば、診断)系で有用な、コラテラル(トランス)切断活性及び改良された熱安定性を有することが発見されてきた。例えば、Sashital Genome Med 2018:10,32によるレビューを参照されたい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0002】
【非特許文献1】Sashital Genome Med 2018:10,32
【発明の概要】
【0003】
本開示は、熱安定活性、及び/またはCasタンパク質コラテラル活性を特徴とする、改良されたCRISPR-Casタンパク質を提供する。本開示は、改良されたガイドRNA技術もまた提供する。
とりわけ、本開示は、具体的には、特定のコラテラル活性アッセイにおけるものを含む、特定のCas酵素の使用に伴う問題源を同定する。例えば、本開示は、例えば、このような特定のコラテラル活性アッセイを含む特定の使用が、一定期間、高温でのインキュベーションを伴うステップを含み、様々なCas酵素は、このような条件下において、十分なレベルの活性(例えば、コラテラル活性)を維持するには十分安定していない場合があることを記録する。多くの実施形態では、このようなステップは、核酸伸長、及び/または増幅ステップであり得る、またはこれらを含み得る。
【0004】
あるいは、またはさらに、本開示は、例えば、特定のコラテラル活性アッセイを含む、Cas酵素を利用する様々な反応の、特に好ましい実施形態が、単一の反応槽(即ち、所謂「ワンポット」)アッセイで行うことができるものであるという考察を提供する。ありとあらゆる高温工程(複数可)(これは、例えば、1つ以上の核酸伸長、及び/または増幅ステップ(複数可)であり得る、または、これらを含み得る)により、十分な活性を維持するには活性(例えば、コラテラル切断活性)が十分安定していないCas酵素が、このようなワンポットアッセイでは有用たり得ないことを、本開示は認めている。特定のCasタンパク質(複数可)(例えば、Cas13及びCas12)が、適切な温度(複数可)で、例えば、核酸伸長及び/または増幅反応が通常行われる温度(例えば、約60~65℃超)で十分安定しないことを、本開示はさらに記録する。
【0005】
様々なCasタンパク質(例えば、Cas9)の熱安定バリアントが既に記載されており、及び/または、別の方法で一般に入手可能となっている、という認識を、本開示は包含する(例えば、Mougiakos et al.Nat Commun.8:1647,2017を参照されたい)。当業者は、熱安定性を達成するのに必要であり得る、及び/または十分であり得る、配列変化及び/またはエレメントを調査するために、このような熱安定性バリアントを、関連する非熱安定性ホモログ(例えば、オルソログ)を比較することができ、さらに、他のホモログ(例えば、オルソログ)内でこのような配列変化及び/またはエレメントを同定することができ、及び/または、このような配列変化及び/またはエレメントを他のホモログ(例えば、オルソログ)に導入することができる。またさらに、当業者は、(例えば、水噴出孔などにおけるような高温条件で生残する、または、他の好熱性の、微生物中における)自然の熱安定性Casタンパク質の潜在的な源を十分認識している。したがって、当業者は本開示を読み、本明細書に記載する使用のために適切な、熱安定性Casタンパク質を速やかに同定及び/または開発することが可能であろう。
【0006】
いくつかの実施形態では、有用な熱安定性Casタンパク質は、Cas12またはCas13ホモログ(例えば、オルソログ)である。いくつかの実施形態では、有用な熱安定性Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、80%、85%、90%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Cas酵素である。
【0007】
あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、有用な熱安定性Casタンパク質は、約50℃超の温度で;いくつかの実施形態では、約55℃、約56℃、約57℃、約58℃、約59℃、約60℃、約61℃、約62℃、約63℃、約64℃、約65℃、約66℃、約67℃、約68℃、約69℃、約70℃、約71℃、約72℃、約73℃、約74℃、約75℃、約76℃、約77℃、約78℃、約79℃、約80℃、約81℃、約82℃、約83℃、約84℃、約85℃、約86℃、約87℃、約88℃、約89℃、約90℃、約91℃、約92℃、約93℃、約94℃、約95℃、約96℃、約97℃、約98℃、約99℃、約100℃、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される温度より上で、(例えば、そのコラテラル切断活性機能を十分に)発揮する。多くの実施形態では、有用な熱安定性Casタンパク質は、約60℃超の温度で(例えば、そのコラテラル切断活性機能を十分に)発揮する。
【0008】
いくつかの実施形態では、有用な熱安定性Casタンパク質は、核酸伸長及び/または増幅反応(複数可)が行われる温度範囲内で(例えば、そのコラテラル切断活性機能を十分に)発揮し;当業者は、そのような様々な反応、及び当該反応が行われる温度範囲に通暁している。いくつかの実施形態では、そのような温度範囲は、約60℃、約61℃、約62℃、約63℃、約64℃、約65℃、約66℃、約67℃、約68℃、約69℃、約70℃、約71℃、約72℃、約73℃、約74℃、約75℃、約76℃、約77℃、約78℃、約79℃、約80℃、約81℃、約82℃、約83℃、約84℃、約85℃、約86℃、約87℃、約88℃、約89℃、約90℃、約91℃、約92℃、約93℃、約94℃、約95℃、約96℃、約97℃、約98℃、約99℃、約100℃、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される温度を上回ってよい。いくつかの実施形態では、温度範囲は約60℃~約90℃であり得る。いくつかの実施形態では、温度範囲は約60℃~約80℃であり得る。いくつかの実施形態では、温度範囲は約60℃~約75℃であり得る。いくつかの実施形態では、温度範囲は約65℃~約90℃であり得る。いくつかの実施形態では、温度範囲は約60℃~約80℃であり得る。いくつかの実施形態では、温度範囲は約60℃~約75℃であり得る。
【0009】
したがって、本明細書で記載するとおり、いくつかの実施形態では、有用な熱安定性Casタンパク質は、Cas12またはCas13ホモログ(例えば、オルソログ)、例えば、約50℃超、及び、いくつかの実施形態では約60℃超、例えば、約60~65℃以内、及び/または、約60~65℃超の温度にて熱安定性である、配列番号1~10のいずれか1つと、80%、85%、90%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCas酵素である。本開示を読む当業者は、いくつかの実施形態では、有用な熱安定性Casタンパク質は、活性(例えば、標的結合及びコラテラル切断活性)が、例えば、60~65℃の範囲内の温度で、本明細書に記載するアッセイ(例えば、いくつかの実施形態では、ワンポットアッセイ)を行うのに十分熱安定性である、Cas12(例えば、配列番号1~10、もしくは、例えば、これらと少なくとも90%、95%、99%、もしくはそれ以上のアミノ酸配列同一性を有するこれらのバリアント)、または、Cas13(もしくは、それと少なくとも90%、95%、99%、もしくはそれ以上のアミノ酸配列同一性を有する、そのバリアント)であることを具体的に理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、十分な熱安定性活性とは、本明細書に記載する適切な参照熱安定性Casタンパク質(例えば、AacまたはRS9)に、適度に相当する(例えば、約25%以内の)活性である。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質と、標的核酸配列に相補的となるように選択された、または組み換えられたガイドRNAと、を含むCRISPR-Cas複合体を、標的核酸配列の核酸を潜在的に含む試料と接触させるステップを含む、検出方法について記載する。
【0011】
いくつかの実施形態では、接触させるステップは、CRISPR-Cas複合体及び試料を、Casタンパク質コラテラル活性による切断を受けやすいレポーターと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触させるステップは、当該温度を上回って、一定期間インキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、検出方法は、試料に存在する核酸を増幅するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、増幅するステップでは、熱安定性核酸ポリメラーゼを利用する。いくつかの実施形態では、増幅するステップ及び接触させるステップは、単一容器の中で行われる。
【0012】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas12タンパク質である。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質を利用する検出アッセイの実施方法において、改良は、熱安定性コラテラル切断活性を有するCasタンパク質を利用することを含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、Cas12タンパク質である。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、検出アッセイの実施方法は、単一の反応容器で行われる。いくつかの実施形態では、熱安定性コラテラル切断活性は、約60℃を上回る温度で熱安定性である。いくつかの実施形態では、熱安定性コラテラル切断活性は、約65℃を上回る温度で熱安定性である。
【0014】
当業者は、例えば、Cas12型とCas13型Casタンパク質を定義するために用いられる、Casタンパク質の分類システムを理解している。特に、当業者は、Cas12とCas13に特徴的な配列エレメントに通暁している。例えば、Koonin et al.,Curr Opin Microbiol.,2017 June;37:67-78、Makarova et al., Nat Rev Microbiol.,2015 November;13(11):722-736、Shmakov et al.,Mol Cell.,2015 November 5;60(3):385-397、Yan and Hunnewell et al.,Science,2018 Dec 6、Yan et al.,Mol Cell.,2018 April 19;70, 327-339、Makarova et al.,Nat Rev Microbiol.,2011 June;9(6):467-477、Makarova et al.,CRISPR Journal,2018,Volume 1,Number 5、Shmakov et al.,Nat Rev Microbiol.,2017 March;15(3):169-182、Yan and Hunnewell et al.,Science,2019 Jan 4;363,88-91、Abudayyeh et al.,Science,2016 August 5;353,6299、Gootenberg and Abudayyeh et al.,Science,2017 April 28,356,438-442、Gootenberg and Abudayyeh et al.,Science, 2018 April 27;360,439-444を参照されたい。
【0015】
多くの実施形態では、本開示で提供されるCas12(例えば、熱安定性Cas12)は、(例えば、配列番号1~10のいずれかの)例示したCasタンパク質との、全体的な配列類似度、及び/または、Cas12、Cas13、これらのサブ種、及び/または熱安定性Casタンパク質に特徴的な、1つ以上の配列エレメントが存在することを特徴とすることを、当業者はさらに理解するであろう。いくつかの実施形態では、特徴的な配列エレメント、及び、適度に低くてよい、特定の配列同一性全体(例えば、特徴的な配列エレメントの40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または95%)の存在が、本明細書に記載する、提供されるCasタンパク質を示す。あるいは、いくつかの実施形態では、本明細書に記載する、提供されるCasタンパク質は、このような特徴的な配列エレメントの存在に関係なく、例示した(例えば、配列番号1~10のいずれかの)Casと、高い配列同一性(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)を示す。いくつかの実施形態では、1つ以上の特徴的な配列エレメント、及び、高い(例えば、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%)配列同一性の両方が存在する。
【0016】
いくつかの態様では、本開示は、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質と、標的核酸配列に相補的となるように選択された、または組み換えられたガイドRNAと、を含むCRISPR-Cas複合体を、標的核酸配列を潜在的に含む試料と接触させるステップを含む、検出方法を提供する。いくつかの実施形態では、接触ステップは、CRISPR-Cas複合体及び試料を、Casタンパク質コラテラル活性による切断を受けやすいレポーターと接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触ステップは、当該温度を上回って、一定期間インキュベートすることを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、提供する検出方法は、試料に存在する核酸を増幅するステップを含む(例えば、さらに含む)。いくつかの実施形態では、増幅ステップでは、熱安定性核酸ポリメラーゼを利用することができる。いくつかの実施形態では、増幅するステップ及び接触させるステップは、単一容器の中で、及び/または、構成成分の除去ステップ(複数可)及び/または洗浄ステップ(複数可)を介在させることなく、実施される。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する技術は、Cas12タンパク質であるCasタンパク質を利用する。いくつかの実施形態では、このようなCasタンパク質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つと、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、このようなCasタンパク質は、配列番号1~10の1つ以上と、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0019】
いくつかの態様では、本開示は、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質を利用する検出アッセイを行う、改良された方法であって、上記改良は、熱安定性コラテラル切断活性を有するCasタンパク質を利用することを含む、上記方法を提供する。いくつかの実施形態では、このような実施形態で利用するCasタンパク質は、Cas12タンパク質である。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、配列番号1~10の1つ以上と、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、提供する、検出アッセイの実施方法(例えば、改良された方法)は、単一の反応容器で行われる。熱安定性コラテラル切断活性を有するCasタンパク質を利用する、提供する技術のいくつかの実施形態では、このような活性は、約60℃を上回る温度で熱安定性である。いくつかの実施形態では、このような活性は、約65℃を上回る温度で熱安定性である。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1~10の1つ以上と、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0021】
いくつかの態様では、本開示は、(a)少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質と、(b)このような熱安定性Casタンパク質と複合体を形成することが可能であり、当該複合体の標的核酸配列への結合を指令することが可能である、少なくとも1つのガイドと、を含む、組成物(及び特に、組み換えられた、または別の方法で非自然となった組成物)を提供する。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、配列番号1~10の1つ以上と、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイドは、2つの異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の異なる領域にハイブリダイズすることができる、2つのガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイドは、複数の異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の複数の異なる領域にハイブリダイズすることができる、複数のガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、利用するガイド配列は、原核細胞内で1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、利用するガイド配列は、真核細胞で1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。
【0022】
いくつかの態様では、本開示は、(a)少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質をコードするポリヌクレオチドと、Casタンパク質と複合体を形成することが可能であり、当該複合体の標的核酸配列への結合を指令することが可能である、少なくとも1つのガイドと、を含む、組成物(及び特に、組み換えられた、または別の方法で非自然となった組成物)を提供する。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、配列番号1~10の1つ以上と、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイドは、2つの異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の異なる領域にハイブリダイズすることができる、2つのガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイドは、複数の異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の複数の異なる領域にハイブリダイズすることができる、複数のガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、利用するガイド配列は、原核細胞内で1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、利用するガイド配列は、真核細胞で1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。
【0023】
いくつかの態様では、本開示は、少なくとも60~65℃を上回る温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質を含む標的核酸中でヌクレオチドを修飾するための組成物(及び特に、組み換えられた、または別の方法で非自然となった組成物)を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、Casタンパク質と複合体を形成することが可能であり、当該複合体の標的核酸配列への結合を指令することが可能である、少なくとも1つのガイド配列を含む(例えば、さらに含む)。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、配列番号1~10の1つ以上と、少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、オフターゲット効果を低下させるように修飾されている。いくつかの実施形態では、標的核酸中のヌクレオチドの修飾により、点突然変異により引き起こされる疾患が治療される。いくつかの実施形態では、標的核酸中のヌクレオチドの修飾により、標的核酸配列によりコードされる遺伝子が不活性化する。いくつかの実施形態では、標的核酸中のヌクレオチドの修飾により、標的核酸配列によりコードされる遺伝子産物が修飾される。いくつかの実施形態では、標的核酸中のヌクレオチドの修飾により、標的核酸配列によりコードされる遺伝子産物の発現レベルが変更される。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイドは、2つの異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の異なる領域にハイブリダイズすることができる、2つのガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイドは、複数の異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸配列の複数の異なる領域にハイブリダイズすることができる、複数のガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、利用するガイド配列は、原核細胞内で1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、利用するガイド配列は、真核細胞で1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。
【0024】
いくつかの態様では、本開示は、(a)少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、第1つの制御エレメントと、(b)ガイドをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された、第2の制御エレメントと、を含む1つ以上のベクターを含む、ベクター系を提供する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1~10の1つ以上と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、Casタンパク質をコードするヌクレオチド配列はコドン最適化されている。いくつかの実施形態では、(a)及び(b)は、単一のベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、(a)及び(b)は、別個のベクターに含まれる。いくつかの実施形態では、ベクター系はウイルスベクターを含む。
【0025】
いくつかの態様では、本開示は、細胞内で少なくとも1つの標的核酸を切断する方法であって、細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、上記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドと接触させることを含み、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイドと複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸中で破壊を引き起こすことが可能である、上記方法を提供する。
【0026】
いくつかの態様では、本開示は、細胞内で少なくとも1つの標的核酸の発現を変化させる方法であって、上記細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、上記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドと接触させることを含み、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイドと複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸中で破壊を引き起こすことが可能である、上記方法を提供する。
【0027】
いくつかの態様では、本開示は、細胞内で少なくとも1つの標的核酸の発現を変化させる方法であって、上記細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、上記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドと接触させることを含み、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイドと複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸配列を編集することが可能である、上記方法を提供する。
【0028】
いくつかの態様では、本開示は、細胞内で少なくとも1つの標的核酸を修飾する方法であって、細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、上記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドと接触させることを含み、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイドと複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸配列を編集することが可能である、上記方法を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態では、標的核酸を編集することは、標的核酸配列においてペイロード核酸を挿入することを含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1~10の1つ以上と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイドは、2つの異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸の異なる領域にハイブリダイズすることができる、2つのガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイドは、複数の異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸の複数の異なる領域にハイブリダイズすることができる、複数のガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、利用するガイド配列は、原核細胞内で1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、利用するガイド配列は、真核細胞で1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。
【0030】
いくつかの態様では、本開示は、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質をコードする核酸を提供する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1~10の1つ以上と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする。
【0031】
いくつかの態様では、本開示は、処置を必要とする対象における障害または疾患の処置方法であって、上記対象に、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドを投与することを含む、上記方法を提供する。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1または配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1~10の1つ以上と少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するCasタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイドは、2つの異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸の異なる領域にハイブリダイズすることができる、2つのガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイドは、複数の異なる標的核酸配列、または、1つの標的核酸の複数の異なる領域にハイブリダイズすることができる、複数のガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイド配列は、原核細胞で1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、利用する少なくとも1つのガイド配列は、真核細胞で1つ以上の標的核酸配列にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、ガイドと複合体を形成することができ、標的核酸中で破壊を引き起こすことができる。いくつかの実施形態では、利用するCasタンパク質は、ガイドと複合体を形成することができ、標的核酸配列を編集することができる。
【0032】
いくつかの態様では、本開示は、Casタンパク質が修飾要素と会合している組成物を提供する。いくつかの実施形態では、修飾要素は、アデノシンデアミナーゼである。いくつかの実施形態では、修飾要素は、シチジンデアミナーゼである。
【0033】
いくつかの態様では、本開示は、本開示のCasタンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0034】
いくつかの態様では、本開示は、(a)シス切断活性;(b)トランス切断活性;(c)感度;(d)RNAまたはDNA標的核酸に対する選択性;(e)RNAまたはDNA非標的核酸に対する選択性;及び、(f)酵素安定性のうちの1つ以上を調査することを含む、Casタンパク質の特性決定方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】候補となる熱安定性Casタンパク質のPal1、Pal2低MW、Pal2高MW、及びPal3の、例示的な特性決定を示す。
【0036】
図2】56℃における、例示的なPal1及びPal2活性を示す。
【0037】
図3】異なる例示的なガイドでの、37℃、56℃、及び70℃におけるPal1の例示的な活性を示す。
【0038】
図4】対照と比較しての、56℃及び70℃でのPal1の例示的な活性を示す。Pal1の活性が標的DNAに対して特異的であることを、これらのデータは示唆する。
【0039】
図5】Pal1の例示的な温度プロファイルを示す。
【0040】
図6】異なる例示的なガイドでの、37℃、56℃、及び70℃におけるPal2高MWの例示的な活性を示す。
【0041】
図7】対照と比較しての、56℃でのPal2高MWの例示的な活性を示す。Pal2高MWの活性が標的DNAに対して特異的であることを、これらのデータは示唆する。
【0042】
図8】Pal2高MWの例示的な温度プロファイルを示す。
【0043】
図9】ベンダー(ThermoFisher)推奨のプロトコルに従い実施した、例示的なタンパク質サーマルシフトアッセイを示す。簡潔に述べると、Cas酵素(PAL1、PAL2、PAL3、PAL4、PAL5、PAL6、PAL8、PAL9、またはPAL10)(500ng/uL)を、タンパク質サーマルシフト色素(8x)タンパク質サーマルシフト緩衝液と混合し、QuantStudio 5 qPCR機器に配置して温度をゆっくりと上げながら蛍光変化を追跡した。X4-M4チャネルにて、そのままの蛍光強度の一次導関数を取ることにより、融解温度(Tm)を抽出するデータ分析を行った。
【0044】
図10】SARS CoV2のN遺伝子またはOrf1ab遺伝子のいずれかを標的にする、組み換えられたシングルガイドRNA(sgRNA)と複合体化した、熱安定PAL5 Cas12bのコラテラル活性シグナルを示す。非標的対照(NTC)を灰色で示す。標的を、精製したインビトロ転写(IVT)RNAとして供給する。
【0045】
図11】SARS CoV2のN遺伝子またはOrf1ab遺伝子のいずれかを標的にする、組み換えられたシングルガイドRNA(sgRNA)と複合体化した、熱安定PAL5 Cas12bのコラテラル活性シグナルを示す。非標的対照(NTC)を灰色で示す。低濃度で供給される標的をまず、LAMPを用いて増幅し、ここでの生成物を同時に、PAL5 Cas12bを用いて検出した。
【0046】
図12】Sars CoV2のN遺伝子を標的にする、組み換えられたシングルガイドRNA(sgRNA)と複合体化した、熱安定性PAL8 Cas12bのコラテラル活性シグナルを示す。バックグラウンドを上回る明瞭なシグナルを示す、試験したsgRNA(N-1)及び(N-5)の、2つのバリアントが存在する。非標的対照(NTC)を灰色で示す。標的を、精製したインビトロ転写(IVT)RNAとして供給する。
【0047】
図13】SARS CoV2のN遺伝子(SCoV2-N1)を標的にする、組み換えられたシングルガイドRNA(sgRNA)と複合体化した、熱安定性PAL8 Cas12bのコラテラル活性シグナルを示す。非標的対照(NTC)を灰色で示す。低濃度で供給される標的をまず、LAMPを用いて増幅し、ここでの生成物を同時に、PAL8 Cas12bを用いて検出する。
【0048】
図14】SARS CoV2のN遺伝子を標的にする、組み換えられたシングルガイドRNA(sgRNA)と複合体化した、熱安定性PAL9 Cas12bのコラテラル活性シグナルを示す。バックグラウンドを上回る明瞭なシグナルを示す、試験したsgRNA(N-1)、(N-2)、及び(N-3)の、3つのバリアントが存在する。非標的対照(NTC)を灰色で示す。標的を、精製したインビトロ転写(IVT)RNAとして供給する。
【0049】
図15】Sars CoV2のN遺伝子を標的にする、組み換えられたシングルガイドRNA(sgRNA)と複合体化した、熱安定性PAL9 Cas12bのコラテラル活性シグナルを示す。非標的対照(NTC)を灰色で示す。バックグラウンドを上回る明瞭なシグナルを示す、試験したsgRNA(N-1)、(N-2)、及び(N-3)の、3つのバリアントが存在する。低濃度で供給される標的をまず、LAMPを用いて増幅し、ここでの生成物を同時に、PAL9 Cas12bを用いて検出する。
【0050】
図16】SARS CoV2のN遺伝子を標的にする、組み換えられたシングルガイドRNA(sgRNA)と複合体化した、熱安定性PAL10 Cas12bのコラテラル活性シグナルを示す。バックグラウンドを上回る明瞭なシグナルを示す、試験したsgRNA(N-1)及び(N-3)の、2つのバリアントが存在する。非標的対照(NTC)を灰色で示す。標的を、精製したインビトロ転写(IVT)RNAとして供給する。
【0051】
図17】Sars CoV2のN遺伝子を標的にする、組み換えられたシングルガイドRNA(sgRNA)と複合体化した、熱安定性PAL10 Cas12bのコラテラル活性シグナルを示す。非標的対照(NTC)を灰色で示す。バックグラウンドを上回る明瞭なシグナルを示す、試験したsgRNA(N-1)及び(N-3)の、2つのバリアントが存在する。低濃度で供給される標的をまず、LAMPを用いて増幅し、ここでの生成物を同時に、PAL10 Cas12bを用いて検出する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
定義
投与:本明細書で使用される場合、「投与」という用語は、典型的には、対象または系への組成物の投与を指す。当業者であれば、適切な状況下で、対象、例えばヒトへの投与に利用できる様々な経路を認識されよう。例えば、いくつかの実施形態では、投与は経眼、経口、非経口、局所などであってよい。いくつかの特定の実施形態では、投与は、気管支(例えば、気管支滴注による)、頬側、経皮的(例えば、皮膚局所、皮内、皮間(interdermal)、経皮などのうちの1つ以上であるか、またはそれを含み得る)、経腸、動脈内、皮内、胃内、髄内、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、くも膜下腔内、静脈内、心室内、特定臓器内(例えば、肝臓内)、粘膜、経鼻、経口、直腸、皮下、舌下、局所、気管(例えば、気管内滴注による)、経膣、硝子体などであり得る。いくつかの実施形態では、投与は、間欠的な(例えば、時間的な隔たりがある複数の用量の)投薬及び/または定期的な(例えば、一定期間を隔てた個々の用量の)投薬を含み得る。いくつかの実施形態では、投与は、少なくとも選択された期間の連続投与(例えば、灌流)を伴ってもよい。
【0053】
剤:本明細書で使用される場合、「剤」という用語は、例えば、低分子、ポリペプチド、核酸、糖、脂質、金属、またはこれらの組み合わせもしくは複合体を含む、任意の化学クラスの化合物、分子、または要素を意味することができる。いくつかの実施形態では、「剤」という用語は、ポリマーを含む化合物、分子、または要素を意味することができる。いくつかの実施形態では、本用語は、1つ以上のポリマー部分を含む化合物または要素を意味することができる。いくつかの実施形態では、「剤」という用語は、特定のポリマーまたはポリマー部分を実質的に含有しない化合物、分子、または要素を意味することができる。いくつかの実施形態では、本用語は、いかなるポリマーまたはポリマー部分を欠く、または実質的に含有しない、化合物、分子、または要素を意味することができる。
【0054】
アミノ酸:本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、最も広義には、ポリペプチド鎖であり得るか、ポリペプチド鎖であるか、または、例えば、1つ以上のペプチド結合の形成を通してポリペプチド鎖に組み込まれた化合物及び/または物質を意味する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、一般構造H2N-C(H)(R)-COOHを有する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、自然に存在するアミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、非天然アミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、D-アミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、L-アミノ酸である。「標準アミノ酸」は、自然に存在するペプチドに一般的に見出される20種類の標準的なL-アミノ酸のうちのいずれかを意味する。「非標準アミノ酸」は、それが合成的に調製されるか自然源から得られるかにかかわらず、標準アミノ酸以外の任意のアミノ酸を意味する。いくつかの実施形態では、アミノ酸は、ポリペプチドにおけるカルボキシ末端及び/またはアミノ末端のアミノ酸を含め、上記の一般構造と比較して構造修飾を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、アミノ酸は、一般構造と比較して、(例えば、アミノ基、カルボン酸基、1つ以上のプロトン、及び/またはヒドロキシル基の)メチル化、アミド化、アセチル化、ペグ化、グリコシル化、リン酸化、及び/または置換によって修飾されていてもよい。いくつかの実施形態では、このような修飾は、例えば、修飾されたアミノ酸を含むポリペプチドの循環半減期を、修飾されていないことを除いては同一のアミノ酸を含むものと比較して変化させ得る。いくつかの実施形態では、このような修飾は、修飾されたアミノ酸を含むポリペプチドの関連する活性を、修飾されていないことを除いては同一のアミノ酸を含むものと比較して著しく変化させない。文脈から明らかになるように、いくつかの実施形態では、「アミノ酸」という用語は、遊離アミノ酸を意味するように使用される場合がある。いくつかの実施形態では、この用語は、ポリペプチドのアミノ酸残基を意味するように使用される場合がある。
【0055】
類似体:本明細書で使用される場合、「類似体」という用語は、1つ以上の特定の構造的特徴、構成要素、構成成分、または部分を参照物質と分かち合う物質を意味する。通常、「類似体」は、参照物質と著しい構造的類似性、例えば、コアまたはコンセンサス構造の共有を示すが、1つ以上の特定の明確な様式で異なってもいる。いくつかの実施形態では、類似体は、例えば、参照物質の化学的操作により、参照物質から生成することが可能な物質である。いくつかの実施形態では、類似体は、参照物質を生成するものと実質的に同様(例えば、複数のステップを共有する)の、合成プロセスを実施することにより生成可能な物質である。いくつかの実施形態では、類似体は、参照物質を生成するために使用されるものとは異なる合成プロセスを実施することで生成することができる。
【0056】
動物:本明細書で使用される場合、動物界における任意のメンバーを意味する。いくつかの実施形態では、「動物」とは、いずれかの性の、及び任意の発育段階のヒトを指す。いくつかの実施形態では、「動物」とは、任意の発育段階の非ヒト動物を指す。特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長目、及び/またはブタ)である。いくつかの実施形態では、動物としては、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫、及び/または寄生虫が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、動物は、遺伝子導入動物、遺伝子組換え動物、及び/またはクローンであり得る。
【0057】
およそ:本明細書で使用される場合、「およそ」または「約」という用語は、1つ以上の目的の値に適用される場合、記載された参照値と同様の値を意味する。特定の実施形態では、「およそ」または「約」という用語は、特に記載されない限り、ないしは別の方法で文脈から明らかである場合(そのような数字が可能な値の100%を超える場合を除く)、記述される参照値のいずれかの方向の(それより大きいか、またはそれ未満)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以内に入る値の範囲を指す。
【0058】
結合:本明細書で使用される「結合」という用語は、典型的には、2つ以上の要素における非共有結合的会合を意味するものと理解される。「直接」結合は、要素または部分間の物理的接触を伴い、間接結合は、1つ以上の中間体要素による物理的接触による物理的相互作用を伴う。2つ以上の要素同士の間の結合は、典型的には、相互作用する要素または部分が単独で、またはより複雑な系との関連で(例えば、担体要素と共有結合的もしくは別様に関連した状態、及び/または生物学的系もしくは細胞で)研究される場合を含め、種々の状況のうちのいずれかにおいて評価され得る。調査した条件下において、関連する要素が、他の利用可能な結合パートナーよりも互いに会合する可能性が高い場合に、2つの要素間の結合は「特異的」であるとみなすことができる。
【0059】
生物学的試料:本明細書で使用される場合、「生物学的試料」という用語は、典型的には、本明細書に記載される目的の生物学的源(例えば、組織または生物または細胞培養物)から得られた、またはそれに由来する試料を意味する。いくつかの実施形態では、目的の供給源は、動物またはヒトのような生物を含む。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、生物学的組織もしくは流体であるか、またはそれらを含む。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、骨髄、血液、血液細胞、腹水(ascites)、組織または細針生検試料、細胞含有体液、浮遊核酸、喀痰、唾液、尿、脳脊髄液、腹水(peritoneal fluid)、胸水、糞便、リンパ、婦人科体液、皮膚スワブ、膣スワブ、口腔スワブ、鼻腔スワブ、乳管洗浄液または気管支肺胞洗浄液のような洗液もしくは洗浄液、吸引液、擦過物、骨髄標本、組織生検標本、手術標本、糞便、他の体液、分泌物、及び/または排泄物、及び/またはそこからの細胞などであり得るか、またはこれらを含むことができる。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、個体から入手した細胞であるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態では、入手した細胞は、試料を入手した個体に由来する細胞であるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態では、試料は、任意の適切な手段によって、目的の供給源から直接取得される「一次試料」である。例えば、いくつかの実施形態では、一次生物学的試料は、生検(例えば、細針吸引液または組織生検)、手術、体液(例えば、血液、リンパ、糞便など)の収集などからなる群から選択される方法によって得られる。いくつかの実施形態では、文脈から明らかになるように、「試料」という用語は、一次試料の加工によって(例えば、1つ以上の成分を除去すること及び/または1つ以上の作用因子を加えることによって)得られる調製物を意味する。例えば、半透膜を使用する濾過。このような「加工試料」は、例えば、試料から抽出されたかあるいは一次試料を、例えば、mRNAの増幅または逆転写、特定の成分の単離及び/または精製などの技術に供することによって取得された核酸またはタンパク質を含み得る。
【0060】
がん:「がん」、「悪性腫瘍」、「新生物」、「腫瘍」、及び「癌腫」という用語は、本明細書では、比較的異常な、無制御な、及び/または自律的な増殖を示す結果、細胞増殖の制御の著しい喪失を特徴とする異常増殖表現型を示す細胞を意味するように使用される。いくつかの実施形態では、腫瘍は、前がん性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、及び/または非転移性の細胞であるか、またはこれらを含む場合がある。いくつかの実施形態では、関連するがんは、固形腫瘍を特徴とする場合がある。いくつかの実施形態では、関連するがんは、血液腫瘍を特徴とする場合がある。一般に、当技術分野で知られている様々な種類のがんの例としては、例えば、白血病、リンパ腫(ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫)、骨髄腫及び骨髄増殖性疾患を含む造血癌;肉腫、黒色腫、腺腫、及び固形組織の癌腫;口、喉、喉頭、及び肺の扁平上皮癌;肝癌;前立腺癌、子宮頸癌、膀胱癌、子宮癌、及び子宮内膜癌、及び腎細胞癌などの泌尿生殖器癌;骨癌;膵癌;皮膚癌;皮膚黒色腫または眼内黒色腫;内分泌系の癌;甲状腺の癌;副甲状腺の癌;頭頚部癌;乳癌;胃腸癌;神経系の癌;乳頭腫などの良性病変、などが挙げられる。
【0061】
担体:本明細書で使用される場合、組成物を投与する際に用いられる希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを意味する。いくつかの例示的な実施形態において、担体は、例えば、水、ならびに、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの石油、動物、植物、もしくは合成由来の油を含む油などの無菌液体を含み得る。いくつかの実施形態では、担体は、1つ以上の固体成分であるか、またはそれを含む。
【0062】
組成物:当業者には、本明細書で使用される場合、「組成物」という用語が、1つ以上の特定の成分を含む物理的に独立した要素を意味するように使用され得ることが理解されよう。一般に、特記なき限り、組成物は、例えば、ガス、ゲル、液体、固体などの任意の形態であり得る。
【0063】
含む(comprising):名前を挙げた要素またはステップを1つ以上「含む(comprising)」として本明細書に記載される組成物または方法は、オープンエンドであり、名前を挙げた要素またはステップは必須であるが、他の要素またはステップが組成物または方法の範囲内に追加されてもよいことを意味する。冗長さを避けるために、名前を挙げた要素またはステップを1つ以上「含む(comprising)」(または「含む(comprises)」)と記載される任意の組成物または方法は、名前を挙げた同じ要素またはステップ「から本質的になる(consisting essentially of)」(または「から本質的になる(consists essentially of)」)対応する、より限定された組成物または方法も表し、これは、組成物または方法が、名前を挙げた必須の要素またはステップを含み、組成物または方法の基本的特性(複数可)及び新規特性(複数可)に実質的に影響を与えない追加の要素またはステップを含んでもよいことを意味することも理解されたい。また、名前を挙げた要素またはステップを1つ以上「含む(comprising)」またはそれら「から本質的になる(consisting essentially of)」として本明細書に記載される任意の組成物または方法は、名前を挙げていない他のあらゆる要素またはステップを除外する、名前を挙げた要素またはステップ「からなる(consisting of)」(または「からなる(consists of)」)対応する、より限定された、クローズエンドの組成物または方法も表すことを理解されたい。本明細書で開示されるあらゆる組成物または方法において、名前を挙げた必須の要素またはステップのいずれかの公知のまたは開示された均等物が、その要素またはステップの代わりに使用されてもよい。
【0064】
設計された:本明細書で使用される場合、「設計された」という用語は、(i)構造が、人の手により選択される、または選択された、(ii)人の手を必要とするプロセスにより作製される、及び/または、(iii)自然物質及び他の既知の剤とは異なる剤を意味する。
【0065】
決定する:本明細書に記載される多くの方法論は、「決定する」ステップを含む。当業者は、本明細書を読めば、そのような「決定」が、例えば本明細書で明示的に言及される特定の技術を含む、当業者にとって利用可能な種々の技術のいずれかを利用し得る、またはその使用によって達成され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、決定することは、物理的試料の操作を伴う。いくつかの実施形態では、決定することは、例えば、関連する分析を実施するように適合されたコンピュータまたは他の処理ユニットを利用した、データまたは情報の考慮及び/または操作を伴う。いくつかの実施形態では、決定することは、源から、関連する情報及び/または材料を受け取ることを伴う。いくつかの実施形態では、決定することは、試料または要素の1つ以上の特徴を比較可能な参照と比較することを伴う。
【0066】
組み換えられた:一般に、「組み換えられた」という用語は、人の手により操作されている態様を意味する。例えば、ポリヌクレオチドは、自然ではその順で互いに結合していない2つ以上の配列が、人の手により操作され、組み換えられたポリヌクレオチドでは互いに直接結合される場合に、及び/または、ポリヌクレオチド中の特定の残基が非自然である、及び/または、人の手の作用により、自然では結合していない要素もしくは部分と結合させられて生じる場合に、「組み換えられた」とみなすことができる。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、組換えポリヌクレオチドは、第1つのコード配列と作動可能に会合するが、第2のコード配列とは作動可能に会合しないことが自然では見出されており、人の手により、第2のコード配列と作動可能に会合するように結合された、調節配列を含む。同様に、操作に供されることで、その遺伝的、後成的、及び/または、表現型の同一性が、そのように操作されていない、別の面で同一の細胞などの、適切な参照細胞と比較して変化している場合に、細胞または生物は、「組み換えられた」とみなされる。いくつかの実施形態では、操作は、その遺伝子情報が変化する遺伝操作であるか、またはこれを含む(例えば、以前に存在しなかった新しい遺伝物質が、例えば、形質転換、交配、体細胞ハイブリダイゼーション、形質移入、形質導入、もしくは他のメカニズムによって導入されているか、または以前に存在した遺伝物質が、例えば、置換もしくは欠失突然変異、もしくは交配プロトコルによって変更もしくは除去されている)。いくつかの実施形態では、組み換えられた細胞は、そのような適切な参照細胞と比べて変化した量で及び/または変化したタイミングに従って、特定の目的の作用因子(例えば、タンパク質、核酸、及び/またはそれらの特定の形態)を含む及び/または発現するように操作されているものである。一般的な実践であり、当業者に理解されているように、組換えポリヌクレオチドまたは細胞の子孫は通常、実際の操作が以前の要素で行われていたとしても、依然として「組み換えられた」と呼ばれる。
【0067】
賦形剤:本明細書で使用される場合、例えば、所望の一貫性もしくは安定化効果をもたらすため、またはそれに寄与するために、医薬組成物に含まれ得る非治療薬を意味する。適切な薬学的賦形剤としては、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0068】
発現:本明細書で使用される場合、核酸配列の「発現」という用語は、核酸配列からの任意の遺伝子産物の生成を指す。いくつかの実施形態では、遺伝子産物は転写物であり得る。いくつかの実施形態では、遺伝子産物はポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、核酸配列の発現は、(1)DNA配列からのRNAテンプレートの生成(例えば、転写による)、(2)RNA転写物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集などによる)、(3)ポリペプチドもしくはタンパク質へのRNAの翻訳、及び/または(4)ポリペプチドもしくはタンパク質の翻訳後修飾、のうち1つ以上を伴う。
【0069】
機能的:本明細書で使用される場合、「機能的」生物学的分子とは、特性決定される性質及び/または活性を示す形態の、生物学的分子である。生物学的分子は、2つの機能を有することができる(即ち、二機能性であることができる)か、または多くの機能を有することができる(即ち、多機能性であることができる)。
【0070】
遺伝子:本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、産物(例えば、RNA産物及び/またはポリペプチド産物)をコードする染色体中のDNA配列を意味する。いくつかの実施形態では、遺伝子は、コード配列(即ち、特定の産生物をコードする配列)を含み、いくつかの実施形態では、遺伝子は、非コード配列を含む。いくつかの特定の実施形態では、遺伝子は、コード(例えば、エクソン)配列と非コード(例えば、イントロン)配列との両方を含み得る。いくつかの実施形態では、遺伝子は、例えば、1つ以上の態様の遺伝子発現(例えば、細胞型特異的発現、誘導性発現など)を制御し得る、またはそれに影響を与え得る、1つ以上の制御性要素を含み得る。
【0071】
遺伝子産物または発現産物:本明細書で使用される場合、用語「遺伝子産物」または「発現産物」とは、概して、遺伝子(処理前及び/または処理後)から転写したRNA、または、遺伝子から転写したRNAによりコードされるポリペプチド(修飾前及び/または修飾後)を意味する。
【0072】
ゲノム:本明細書で使用される場合、「ゲノム」という用語は、個々の生物または細胞に含まれ、その染色体の完全なDNA配列によって表される全遺伝情報を意味する。
【0073】
相同性:本明細書で使用される場合、「相同性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)間及び/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。いくつかの実施形態では、ポリマー分子は、その配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一である場合、互いに「相同」であるとみなされる。いくつかの実施形態では、ポリマー分子は、その配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%類似する場合、互いに「相同」であるとみなされる。
【0074】
宿主細胞:本明細書で使用される場合、外来性DNA(組換えまたはその他)が導入された細胞を意味する。当業者は、本開示を読めば、そのような用語が特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫も意味することを理解するであろう。突然変異または環境的影響のいずれかに起因して、後続の世代においてある特定の修飾が起こる場合があるため、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一でない場合があるが、本明細書で使用される用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。いくつかの実施形態では、宿主細胞には、外来性DNA(例えば、組換え核酸配列)を発現するのに好適な生命界のいずれかから選択される原核細胞及び真核細胞が含まれる。例示的な細胞としては、原核生物及び真核生物のもの(単細胞または多細胞)、細菌細胞(例えば、E.coli、Bacillus spp.、Streptomyces spp.などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、P.methanolicaなど)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、Trichoplusia niなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または例えばハイブリドーマもしくはクアドローマなどの細胞融合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞はヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は真核細胞であり、以下の細胞:CHO(例えば、CHO Kl、DXB-1 1 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT 060562、セルトリ細胞、BRL 3 A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、及び、上述の細胞に由来する細胞株から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のウイルス遺伝子を含む。
【0075】
ヒト:いくつかの実施形態では、ヒトは、胚、胎児、幼児、小児、ティーンエージャー、成人、または高齢者である。
【0076】
同一性:本明細書で使用される場合、「同一性」という用語は、ポリマー分子間、例えば、核酸分子(例えば、DNA分子及び/またはRNA分子)間及び/またはポリペプチド分子間の全体的な関連性を指す。いくつかの実施形態では、ポリマー分子は、その配列が少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一である場合、互いに「実質的に同一」であるとみなされる。2つの核酸またはポリペプチド配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較目的のために、2つの配列をアラインすることにより実施することができる(例えば、最適アラインメントのために、第1及び第2配列の1つまたは両方にギャップを導入することができ、同一でない配列を、比較目的のために無視することができる)。特定の実施形態では、比較目的のためにアラインされた配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または実質的に100%である。次いで、対応する位置にあるヌクレオチドを比較する。第1つの配列の位置が、第2の配列の対応する位置と同一の残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)で占められている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップの数、及び2つの配列の最適なアラインメントのために導入される必要がある各ギャップの長さを考慮した配列によって共有される同一の位置の数の関数である。配列の比較及び2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。例えば、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMeyers and Miller(CABIOS,1989,4:11-17)のアルゴリズムを使用して、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントを決定できる。いくつかの例示的な実施形態において、ALIGNプログラムを用いる核酸配列の比較では、PAM120重み付け残基表、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用する。2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、代替的には、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを使用し、NWSgapdna.CMP行列を使用して決定することもできる。
【0077】
「向上する」、「増加する」、「阻害する」または「低下する」:本明細書で使用される場合、「向上する」、「増加する」、「阻害する」、「低下する」という用語、またはそれらの文法的均等物は、ベースラインまたは他の参照測定値に対して相対的な値を示す。いくつかの実施形態では、適切な参照測定値は、特定の作用因子もしくは処置が存在しない(例えば、その前及び/または後の)さもなければ比較可能な条件下での、または適切な比較可能な参照作用因子の存在下での、特定の系における(例えば、単一の個体における)測定値であるか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、適切な参照測定値は、関連性のある作用因子または処置の存在下での、特定の様式で応答することが既知であるかまたは期待される比較可能な系における測定値であるか、またはそれを含み得る。
【0078】
腹腔内:本明細書で使用される場合、「腹腔内投与」、及び「腹腔内投与される」という語句は、対象の腹膜に化合物または組成物を投与することを意味する、当該技術分野で理解される意味を有する。
【0079】
インビトロ:本明細書で使用される「インビトロ」という用語は、多細胞生物内ではなく、人工環境において、例えば、試験管または反応容器内、細胞培養下などで起こる事象を意味する。
【0080】
インビボ:本明細書で使用される場合、ヒト及び非ヒト動物のような多細胞生物内で起こる事象を意味する。細胞に基づく系の文脈では、この用語は生きている細胞内で(例えば、インビトロ系ではなく)起こる事象を意味するように使用されることもある。
【0081】
単離された:本明細書で使用される場合、(1)最初に生成されたときに(自然において及び/または実験環境においてかを問わず)関連していた構成要素の少なくとも一部から分離している、及び/または(2)人工的に設計、生成、調製、及び/または製造されている物質及び/または要素を意味する。単離された物質及び/または要素は、最初に会合した他の構成成分の、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または、約99%超から分離することができる。いくつかの実施形態では、単離した薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%を超えて純粋である。本明細書で使用される場合、物質が「純粋」であるのは、それが他の成分を実質的に含まない場合である。いくつかの実施形態では、当業者には理解されるように、物質は、例えば1つ以上の担体または賦形剤(例えば、緩衝液、溶剤、水など)のような特定の他の成分と合わされた後でも、「単離されている」またはさらには「純粋」であると見なされ得る。そのような実施形態では、物質の単離率または純度は、そのような担体または賦形剤を含めずに計算される。一例を挙げると、いくつかの実施形態において、自然界で生じるポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの生物学的ポリマーは、a)その起源または誘導源によって、自然界でその自然状態でそれに付随する成分のいくつかまたは全てと会合していない場合、b)それは、自然界でそれを産生する種由来の同じ種の他のポリペプチドまたは核酸を実質的に含まない、c)それを自然界でそれを産生する種以外の細胞または他の発現システムからの成分によって発現されるか、またはそれ以外で会合される場合、「単離された」と見なされる。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、化学合成された、または自然界でそれを産生するものとは異なる細胞系で合成されたポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドであると見なされる。あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、1つ以上の精製技術に供されているポリペプチドは、a)自然において会合する、及び/または、b)最初に産生されるときに会合した、他の構成成分から分離されている程度には「単離された」ポリペプチドであるとみなされ得る。
【0082】
リンカー:本明細書で使用される場合、お互いに異なる要素を接続する多要素作用因子の部分を指すために使用される。例えば、当業者は、構造に2つ以上の機能的ドメインまたは組織的ドメインが含まれるポリペプチドが、多くの場合、そのようなドメイン同士を結合させる一続きのアミノ酸をそれらの間に含むことを理解している。いくつかの実施形態では、リンカー要素を含むポリペプチドは、一般形態S1-L-S2の全体構造を有し、ここで、S1及びS2は、同じであっても異なっていてもよく、リンカーによって互いに関連付けられた2つのドメインを表す。いくつかの実施形態では、ポリペプチドリンカーは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、またはそれ以上のアミノ酸長である。いくつかの実施形態では、リンカーは、強固な3次元構造をとらない傾向があり、むしろポリペプチドに柔軟性を与えることを特徴とする。ポリペプチド(例えば、キメラ系)を組み換える際に適切に使用可能な、様々な異なるリンカー要素が、当該技術分野において既知である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak,R.J.,et al.(1994)Structure 2:1 121-1123を参照されたい)。
【0083】
部分:当業者であれば、「部分」は、本明細書に記載するような特定の構造及び/または活性を有する、定義された化学基または要素であることを理解するであろう。
【0084】
核酸:本明細書で使用される場合、その最も広い意味で、オリゴヌクレオチド鎖に組み込まれる、または組み込むことができる、任意の化合物及び/または物質を意味する。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合によりオリゴヌクレオチド鎖に組み込まれた、または、組み込むことが可能な化合物及び/または物質である。文脈から明らかとなるように、いくつかの実施形態では、「核酸」とは、個別の核酸残基(例えば、ヌクレオチド及び/またはヌクレオシド)を意味し、いくつかの実施形態では、「核酸」とは、個別の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖を意味する。いくつかの実施形態では、「核酸」はRNAであるか、または、これを含む。いくつかの実施形態では、「核酸」はDNAであるか、または、これを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の自然核酸残基であるか、これを含むか、または、これからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の核酸類似体であるか、それを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、核酸類似体は、ホスホジエステル骨格を利用しないという点で核酸とは異なる。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の「ペプチド核酸」であるか、それを含むか、またはそれからなり、ペプチド核酸は、当該技術分野において公知であり、ホスホジエステル結合の代わりにペプチド結合を骨格に有し、本発明の範囲内にあるとみなされる。あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合ではなく、1つ以上のホスホロチオエート及び/または5’-N-ホスホラミダイト結合を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の自然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)であるか、それを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、0(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、インターカレート塩基、及びそれらの組み合わせ)であるか、それを含むか、またはそれからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、自然核酸のものと比較して、1つ以上の修飾糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAまたはタンパク質などの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のイントロンを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、自然源からの単離、相補的鋳型に基づく重合による酵素合成(インビボまたはインビトロ)、組換え細胞または系における複製、及び化学合成のうちの1つ以上によって調製される。いくつかの実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、またはそれ以上の残基長である。いくつかの実施形態では、核酸は部分的に、または完全に一本鎖であり、いくつかの実施形態では、核酸は部分的に、または完全に二本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、ポリペプチドをコードする、または、ポリペプチドをコードする配列の補体である、少なくとも1つの要素を含むヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は酵素活性を有する。
【0085】
作動可能に連結された:本明細書で使用される場合、記載されている成分が、それらの意図された様式で機能することを可能にする関係にある近位を指す。機能的要素に「作動可能に連結された」制御要素は、機能的要素の発現及び/または活性が、制御要素と両立する条件下で実現するように会合している。いくつかの実施形態では、「作動可能に連結された」制御要素は、目的のコーディング要素と隣接しており(例えば、共有結合的に連結されており)、いくつかの実施形態では、制御要素は、目的の機能的要素に対してトランスで作用するか、またはそれから離れて作用する。
【0086】
経口:本明細書で使用される「経口投与」及び「経口投与される」という語句は、当該技術分野で理解されている意味を有し、化合物または組成物の口による投与を意味する。
【0087】
患者:本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、提供される組成物が、例えば、実験、診断、予防、美容、及び/または治療の目的で投与されるまたは投与され得る任意の生物を意味する。典型的な患者には、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、及び/またはヒトなどの哺乳動物)が含まれる。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。いくつかの実施形態では、患者は、1つ以上の障害もしくは病態に罹患しているか、またはそれらに感受性がある。いくつかの実施形態では、患者は、障害または病態の1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態では、患者は、1つ以上の障害または状態と診断されている。いくつかの実施形態では、障害または状態は、がんあるいは1つ以上の腫瘍の存在であるか、またはがんあるいは1つ以上の腫瘍の存在を含む。いくつかの実施形態では、患者は、疾患、障害、または病態を診断する及び/または治療するために特定の治療を受けているか、または受けたことがある。
【0088】
ペイロード:一般に、本明細書で使用される場合、「ペイロード」という用語は、別の部分との会合により送達または輸送され得る剤を意味する。いくつかの実施形態では、そのような会合は共有結合であってよく、またはこれを含んでよく、いくつかの実施形態では、そのような会合は、非共有相互作用(複数可)であってよい、またはこれを含んでよい。いくつかの実施形態では、会合は直接的であってよく、いくつかの実施形態では、会合は間接的であってよい。「ペイロード」という用語は、特定の化学的同一性または種類に限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、ペイロードは、例えば、脂質、金属、核酸、ポリペプチド、糖(例えば、多糖類)、低分子、またはこれらの組み合わせもしくは複合体を含む、例えば任意の化学クラスの要素であってよい、またはこれを含んでよい。いくつかの実施形態では、ペイロードは、生物学的修飾因子、検出可能な剤(例えば、色素、フルオロフォア、放射線標識など)、検出剤、栄養素、治療剤など、またはこれらの組み合わせであってよい、または、これを含んでよい。いくつかの実施形態では、ペイロードは、細胞もしくは生物、または、その画分、抽出物、もしくは構成成分であってよい、または、これを含んでよい。いくつかの実施形態では、ペイロードは、自然で見出される、及び/または、自然から入手される、自然産生物であってよい、または、これを含んでよい。あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、本用語は、人の手の作用により設計、組み換え、及び/または作製された、及び/または、自然では発見されないという点で人工である、1つ以上の要素を意味するために使用することができる。いくつかの実施形態では、ペイロードは、単離された形態、または純粋な形態の剤であってよい、または、これを含んでよい。いくつかの実施形態では、そのような剤は粗形態であってよい。
【0089】
薬学的に許容される:本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という語句は、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を生じずに、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適な、合理的な利益/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物、及び/または剤形を意味する。
【0090】
薬学的に許容される担体:本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される担体」とは、主題の化合物の、体のある器官または部分から、体の別の器官または部分への運搬または輸送に関与する、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、または溶媒封入材料などの、薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合し、かつ患者に有害でないという意味において「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロース;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及びダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱因子を含まない水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;pH緩衝溶液;ポリエステル、ポリカーボネート及び/またはポリ酸無水物;ならびに医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合性物質が挙げられる。
【0091】
薬学的に許容される塩:本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的状況で使用するのに適切な化合物の塩、すなわち、適切な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを生じずに、ヒト及び下等動物の組織と接触させて使用するのに好適な、合理的な利益/リスク比に見合う、塩を意味する。薬学的に許容される塩は、当該技術分野で周知である。例えば、S.M.Berge,et al.は、J.Pharmaceutical Sciences,66:1-19 (1977)で詳細に、薬学的に許容される塩について記載している。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩としては、限定するものではないが、非毒性の酸付加塩が挙げられ、これは、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸のような無機酸、または酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸のような有機酸と形成されるか、あるいは、イオン交換のように、当該技術分野で使用されている他の方法を使用することによって形成される、アミノ基の塩である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩としては、限定されるものではないが、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩酪酸、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。例示的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される塩は、適切な場合、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸、硫酸、リン酸、硝酸、1~6個の炭素原子を有するアルキル、スルホン酸及びアリールスルホン酸などの対イオンを使用して形成される、非毒性のアンモニウム、第四級アンモニウム、及びアミンのカチオンを含む。
【0092】
ポリペプチド:本明細書で使用される場合、アミノ酸のポリマー鎖を指す。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、自然に存在するアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、自然に存在しないアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、人工的に設計及び/または作製されるという点で、操作されたアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、またはその両方を含むか、またはそれらからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸のみまたは非天然アミノ酸のみを含むか、またはそれらからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、D-アミノ酸、L-アミノ酸、または両方を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、D-アミノ酸のみを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、L-アミノ酸のみを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、またはそれらの任意の組み合わせで、1つ以上のペンダント基または他の修飾、例えば、1つ以上のアミノ酸側鎖の修飾またはそれへの結合を含み得る。いくつかの実施形態では、そのようなペンダント基または修飾は、アセチル化、アミド化、脂質化、メチル化、PEG化など(これらの組み合わせを含む)からなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは環状であってもよく、及び/または環状部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは環状ではなく、及び/または環状部分を含まない。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは直鎖状である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ステープルポリペプチドであるか、またはそれを含み得る。いくつかの実施形態では、「ポリペプチド」という用語は、参照ポリペプチド、活性、または構造の名称に付加され得、そのような場合、これは、関連する活性または構造を共有し、したがってポリペプチドの同じクラスまたはファミリーのメンバーであると考えることができるポリペプチドを指すために本明細書で使用される。そのようなクラスごとに、アミノ酸配列及び/または機能が知られているクラス内の例示的なポリペプチドを本明細書が提供し、及び/または当業者はそれに気付くであろう。いくつかの実施形態では、そのような例示的なポリペプチドは、ポリペプチドのクラスまたはファミリーの参照ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドクラスまたはファミリーのメンバーは、クラスの参照ポリペプチドと、いくつかの実施形態では、クラス内の全てのポリペプチドと)、有意な配列相同性または同一性を示し、共通の配列モチーフ(例えば、特徴的な配列要素)を共有し、及び/または共通の活性を共有する(いくつかの実施形態では、同等のレベルで、または指定範囲内で)。例えば、いくつかの実施形態では、メンバーのポリペプチドは、参照ポリペプチドとの配列相同性または同一性の、全体の程度の少なくとも約30~40%、及び、多くの場合、約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上を超え、及び/または、多くの場合、90%、もしくはさらに、95%、96%、97%、98%、もしくは99%超の、非常に高い配列同一性を示す、少なくとも1つの領域(例えば、いくつかの実施形態では、特徴的な配列エレメントであり得る、または、これを含み得る、保存領域)を示す。そのような保存領域は通常、少なくとも3~4個、及び多くの場合、最大20個以上のアミノ酸を包含し、いくつかの実施形態では、保存領域は、少なくとも1つの、一続きの、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個、またはそれ以上の連続アミノ酸を包含する。いくつかの実施形態では、関連するポリペプチドは、親ポリペプチドの断片を含むか、またはそれからなり得る。いくつかの実施形態では、として有用なポリペプチドは、複数の断片を含むことができるか、または、これからなることができ、これらそれぞれは、目的のポリペプチドで発見されるものよりも、互いに比較して、異なる空間配置で、同じ親ポリペプチドにて発見される(例えば、親において直接結合する断片は、目的のポリペプチドにおいては空間的に隔たれている、もしくは、その逆となる、及び/または、断片は、親と比較して、目的のポリペプチドにおいて異なる順序で存在することができる)ため、目的のポリペプチドは、その親のポリペプチドの誘導体である。いくつかの実施形態では、「ポリペプチド」は、「タンパク質」と呼ばれる場合がある(例えば、「Casタンパク質」という用語は、本明細書で定義する「Casポリペプチド」を指して用いられる場合がある。いくつかの実施形態では、「Cas12タンパク質」は、例えば、本明細書に記載する適切な参照ポリペプチドとの相同性もしくは同一性パーセント、及び/または、共有の特徴的な配列エレメントを考慮に入れ、「Cas13タンパク質」と区別することができる)。
【0093】
タンパク質:本明細書で使用される場合、「タンパク質」という用語は、ポリペプチド(すなわち、ペプチド結合によって互いに連結された一連の少なくとも2つのアミノ酸)を意味する。タンパク質は、アミノ酸以外の部分を含むことができる(例えば、糖タンパク質、プロテオグリカンなどであり得る)、及び/または別途加工もしくは修飾され得る。当業者は、「タンパク質」が、細胞によって産生される完全なポリペプチド鎖(シグナル配列の有無を問わない)であっても、またはその特徴的部分であってもよいことを理解するであろう。当業者は、タンパク質が、例えば、1つ以上のジスルフィド結合によって連結されるか、または他の手段によって会合される2つ以上のポリペプチド鎖を含み得る場合があることを理解するであろう。ポリペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸、または両方を含有する場合があり、かつ当該技術分野で公知の種々のアミノ酸修飾または類似体のいずれかを含有する場合がある。有用な修飾としては、例えば、末端アセチル化、アミド化、メチル化などが挙げられる。いくつかの実施形態では、タンパク質は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、合成アミノ酸、及びこれらの組み合わせを含み得る。「ペプチド」という用語は、一般的に、約100アミノ酸未満、約50アミノ酸未満、20アミノ酸未満、または10アミノ酸未満の長さを有するポリペプチドを意味するように使用される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、抗体、抗体断片、それらの生物学的に活性な部分、及び/またはそれらの特有の部分である。
【0094】
純粋:本明細書で使用される場合、作用因子または要素は、他の成分を実質的に含まない場合、「純粋」である。例えば、約90%超の特定の作用因子または要素を含有する調製物は、典型的には、純粋な調製物とみなされる。いくつかの実施形態では、作用因子または要素は、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%純粋である。
【0095】
組換え:本明細書で使用される場合、組換え手段により設計、改変、調製、発現、作製、製造、及び/または単離されたポリペプチド、例えば、宿主細胞に形質移入された組換え発現ベクターを用いて発現したポリペプチド;組換えコンビナトリアルヒトポリペプチドライブラリーから単離されたポリペプチド;ポリペプチド、または、その1つ以上の構成要素(複数可)、部分(複数可)、要素(複数可)、もしくはドメイン(複数可)をコードする、及び/または、この発現を指令する、1つ以上の遺伝子、または遺伝子構成要素に対してトランスジェニックである、または別の方法で操作され、これを発現する、動物(例えば、マウス、ウサギ、ヒツジ、サカナなど)から単離されたポリペプチド;及び/または、選択された核酸配列エレメントを互いにスプライシングもしくはライゲーションすること、選択された配列エレメントを化学合成すること、及び/または、ポリペプチド、もしくは、その1つ以上の構成要素(複数可)、部分(複数可)、要素(複数可)、もしくはドメイン(複数可)をコードする、及び/または、この発現を指令する核酸を、別の方法で生成することを伴う、任意の他の方法により調製、発現、作製、または単離されるポリペプチドを意味することを意図する。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素のうちの1つ以上は、自然に見出される。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素のうちの1つ以上は、インシリコで設計される。いくつかの実施形態では、そのような1つ以上の選択された配列要素は、例えば、目的のソース生物(例えば、ヒト、マウスなど)の生殖系列のような、例えば、自然源または合成源由来の既知の配列要素の変異誘発(例えば、インビボまたはインビトロ)から生じる。
【0096】
参照:本明細書で使用される場合、比較を行う対象となる標準または対照を表す。例えば、いくつかの実施形態では、目的の薬剤、動物、個体、集団、試料、配列、または値が、参照または対照の薬剤、動物、個体、集団、試料、配列、または値と比較される。いくつかの実施形態では、参照または対照は、目的の試験または測定と実質的に同時に試験及び/または測定される。いくつかの実施形態では、参照または対照は、任意選択的に有形媒体に具現化された履歴参照または対照である。典型的には、当業者に理解されるように、参照または対照は、評価対象と比較可能な条件または状況下で決定または解析される。当業者は、特定の可能な参照または対照への依存及び/または比較を正当化するのに十分な類似性が存在するときを理解するであろう。いくつかの実施形態では、適切な参照Casタンパク質配列を、文献レポート、または配列データベース(例えば、GENBANK)で見出すことができる。当業者に周知のいくつかの例を挙げると、いくつかの実施形態では、適切な参照Cas12タンパク質、または適切な参照Cas13タンパク質は、例えば、Koonin et al.,Curr Opin Microbiol.,2017 June;37:67-78、Makarova et al., Nat Rev Microbiol.,2015 November;13(11):722-736、Shmakov et al.,Mol Cell.,2015 November 5;60(3):385-397、Yan and Hunnewell et al.,Science,2018 Dec 6、Yan et al.,Mol Cell.,2018 April 19;70,327-339、Makarova et al.,Nat Rev Microbiol.,2011 June;9(6):467-477、Makarova et al.,CRISPR Journal,2018,Volume 1,Number 5、Shmakov et al.,Nat Rev Microbiol.,2017 March;15(3):169-182、Yan and Hunnewell et al.,Science,2019 Jan 4;363,88-91、Abudayyeh et al.,Science,2016 August 5;353,6299、Gootenberg and Abudayyeh et al.,Science,2017 April 28,356,438-442、Gootenberg and Abudayyeh et al.,Science, 2018 April 27;360,439-444に記載されているもののいずれかであり得る。あるいは、いくつかの実施形態では、本明細書に記載する例示したCasタンパク質(例えば、配列番号1~10のうちの1つ)は、他のタンパク質が比較される参照として機能し得る。
【0097】
試料:本明細書で使用される場合、用語「試料」は、本明細書に記載のように、対象となる供給源から得られたか、または対象となる供給源から誘導された物質のアリコートを典型的には指す。いくつかの実施形態では、対象となる供給源は、生物学的または環境的供給源である。いくつかの実施形態では、対象となる源は、細胞、または、微生物、植物、もしくは動物(例えば、ヒト)などの生物であることができるか、または、これを含むことができる。いくつかの実施形態では、対象となる供給源は、生物学的組織または流体であるか、または、これを含む。いくつかの実施形態では、生物学的組織または流体は、羊水、眼房水、腹水、胆汁、骨髄、血液、母乳、脳脊髄液、耳垢、乳び、チャイム(chime)、射精液、内リンパ、滲出液、糞便、胃酸、胃液、リンパ、粘液、心膜液、外リンパ、腹膜液、胸膜液、膿、粘膜分泌物、唾液、皮脂、精液、血清、恥垢、痰、滑液、汗、涙、尿、膣分泌物、硝子体液、吐瀉物、及び/またはこれらの組み合わせもしくは成分(複数可)であることができるか、または、これを含むことができる。いくつかの実施形態では、生物学的流体は、細胞内液、細胞外液、血管内液(血漿)、間質液、リンパ液、及び/または、細胞透過液であることができるか、または、これを含むことができる。いくつかの実施形態では、生物学的流体は、植物滲出液であることができるか、または、これを含むことができる。いくつかの実施形態では、生物学的組織または試料は、例えば、吸引、生検(例えば、微細針または組織生検)、スワブ(例えば、口、鼻、皮膚、または膣スワブ)、掻き取り、手術、洗浄または灌注(例えば、気管支肺胞、管、鼻、眼、口、子宮、膣、または他の洗浄または灌注)により入手することができる。いくつかの実施形態では、生物学的試料は、個体から入手した細胞であるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態では、試料は、任意の適切な手段によって目的の供給源から直接に取得される「一次試料」である。いくつかの実施形態では、文脈から明らかになるように、「試料」という用語は、一次試料の加工によって(例えば、1つ以上の成分を除去すること及び/または1つ以上の作用因子を加えることによって)得られる調製物を意味する。例えば、半透膜を使用する濾過。このような「加工試料」は、例えば、試料から抽出されたかあるいは一次試料を、例えば、核酸の増幅または逆転写、特定の成分の単離及び/または精製などの1つ以上の技術に供することによって取得された核酸またはタンパク質を含み得る。
【0098】
一塩基多型(SNP):本明細書で使用される場合、「一塩基多型」または「SNP」という用語は、代替の塩基が、あるアレルを互いに区別することが知られている、ゲノム内の特定の塩基位置を意味する。いくつかの実施形態では、1またはいくつかのSNP及び/またはCNPは、互いに複雑な遺伝バリアントを区別するには十分であるため、分析のためには、1つの、または一連のSNP及び/またはCNPを、特定のバリアント、形質、細胞型、個体、種など、またはこれらのセットに特徴的であるとみなすことができる。いくつかの実施形態では、1つの、または一連のSNP及び/またはCNPは、特定のバリアント、形質、細胞型、個体、種など、またはこれらのセットを画定するものとみなすことができる。
【0099】
対象:本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、生物、典型的には哺乳動物(例えば、いくつかの実施形態では出生前のヒト形態を含むヒト)を意味する。いくつかの実施形態では、対象は、関連する疾患、障害または病態に罹患している。いくつかの実施形態において、対象は、疾患、障害、または病態に感受性がある。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害または病態の1つ以上の症状または特徴を示す。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または病態のいかなる症状または特性も示さない。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または病態への感受性またはそのリスクに特徴的な1つ以上の特徴を有する者である。いくつかの実施形態では、対象は、患者である。いくつかの実施形態では、対象は、診断及び/または治療が投与される、及び/または投与されたことがある個体である。
【0100】
実質的に:本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、目的の特徴または特性の完全または近完全(near-total)な程度または度合いを示すという定性的状態を指す。生物学分野の当業者は、生物学的現象及び化学的現象が完了すること、及び/または完全な状態まで進むこと、または絶対的な結果を達成もしくは回避することは、あったとしてもまれであることを理解するであろう。したがって、用語「実質的に」は、多くの生物学的及び化学的現象に固有の完成の潜在的な欠如を捕捉するために本明細書で使用される。
【0101】
治療:本明細書で使用される場合、「処置」(また「処置する」または「処置すること」)という用語は、特定の疾患、障害、及び/または病態の1つ以上の症状、特徴、及び/または原因を部分的または完全に緩和する、改善する、軽減する、阻害する、その発生を遅延させる、その重症度を低下させる、及び/またはその発生率を低下させる療法の投与を意味する。いくつかの実施形態では、そのような治療は、関連する疾患、障害及び/または病態の徴候を呈さない対象、及び/または、疾患、障害、及び/または病態の初期徴候のみを呈する対象の治療であり得る。あるいは、またはさらに、そのような処置は、関連する疾患、障害、及び/または病態の1つ以上の確立された徴候を示す対象のものであり得る。いくつかの実施形態では、処置は、関連する疾患、障害、及び/または病態に罹患していると診断された対象のものであり得る。いくつかの実施形態では、処置は、関連する疾患、障害、及び/または病態の発症リスクの増加と統計的に相関する1つ以上の感受性因子を有することが既知の対象のものであり得る。したがって、いくつかの実施形態では、処置は予防的であり得る。いくつかの実施形態では、処置は治療的であり得る。
【0102】
腫瘍:本明細書で使用される場合、「腫瘍」という用語は、細胞または組織の異常な成長を意味する。いくつかの実施形態では、腫瘍は、前がん性(例えば、良性)、悪性、前転移性、転移性、及び/または非転移性の細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、腫瘍は、がんに関連しているか、またはがんの兆候である。いくつかの実施形態では、腫瘍は分散性腫瘍または液状腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、腫瘍は、固形腫瘍であり得る。
【0103】
ベクター:本明細書で使用される場合、核酸分子に連結された別の核酸を輸送できるその核酸分子を指す。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは環状二本鎖DNAループを指し、これに追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る。別の種類のベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。特定のベクターは、ベクターが導入された宿主細胞内で自律的に複製することが可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム性の哺乳動物ベクターなど)。他のベクター(例えば、非エピソーム性の哺乳動物ベクター)は、宿主細胞内に導入されると宿主細胞のゲノムに組み込まれることにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、あるベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指令することができる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、及び組織培養、ならびに形質転換(例えば、電気穿孔法、リポフェクション)のために標準的な技術を使用してよい。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、または当該技術分野において一般的に行われるようにして、または本明細書に記載されるようにして行うことができる。前述の技術及び手順は通常、当該技術分野において周知の従来の方法に従って、そして、本明細書を通して引用及び議論される、種々の一般的、及びより具体的な参考文献に記載されているとおりに実施することができる。例えば、あらゆる目的で本明細書に参照により援用する、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照されたい。
(発明を実施するための形態)
【0104】
CRISPR-Cas技術
通常、Casタンパク質及び/またはガイドは、CRISPR-Cas技術の主要構成要素である。CRISPR-Cas技術、または、CRISPR-Casシステムとは、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNA、もしくは活性な部分tracrRNA)、tracr-メイト配列(内因性CRISPRシステムの文脈における、「直接反復」、及び、tracrRNAにより加工された部分直接反復を含む)、ガイド(内因性CRISPRシステムの文脈においては、「スペーサー」とも呼ばれる)、または、本明細書で用いられるとおりの「RNA(複数可)」(例えば、本明細書で開示するCasタンパク質などのCasをガイドするRNA(複数可)、例えば、CRISPR RNA及びトランス活性化(tracr)RNA、またはシングルガイドRNA(sgRNA)(キメラRNA))、または、CRISPR座位由来の他の配列及び転写物を含む、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与する、または、その活性を指令する、転写物及び他のエレメントをまとめて指す。一般に、CRISPR-Cas技術は、標的核酸の位置において、CRISPRの複合体形成を促進するエレメント(内因性CRISPRシステムの文脈では、プロトスペーサーとも呼ばれる)を特徴とする。いくつかの実施形態では、tracrRNAは必要ではない。
【0105】
本開示の組換え、または、自然に存在しない技術のいくつかの実施形態では、直接反復は、自然に存在する配列、または、自然に存在しない配列を含み得る。いくつかの実施形態では、直接反復(DR)は、自然に存在する長さ、及び/または配列であり得る。いくつかの実施形態では、直接反復は、36ヌクレオチド(nt)長であることができるが、これより長い、または短い直接反復に変えることができる。例えば、いくつかの実施形態では、直接反復は、30nt以上、例えば、30~100nt以上であることができる。例えば、直接反復は、30nt、40nt、50nt、60nt、70nt、70nt、80nt、90nt、100nt長以上であることができる。いくつかの実施形態では、本開示の直接反復は、自然に存在する直接反復の5’末端と3’末端との間に挿入された、合成ヌクレオチド配列を含むことができる。特定の実施形態では、挿入された配列は、自己相補性、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%自己相補性であり得る。さらに、本開示の直接反復は、(機能的ドメインと会合するための)アダプタータンパク質に結合するアプタマーまたは配列などのヌクレオチドの挿入を含み得る。特定の実施形態では、このような挿入を含有する直接反復の一端は、短いDRのおよそ最初の半分であり、他端は、短いDRのおよそ2番目の半分である。いくつかの実施形態では、直接反復はインシリコで同定することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は熱安定性Casタンパク質である。
【0107】
CRISPR複合体の形成の文脈において、「標的核酸配列」とは、ガイド配列を含むガイドが相補性を有する(例えば、有するように設計されている)配列であって、標的核酸配列とガイド配列とでのハイブリダイゼーションが、CRISPR複合体の形成を促進する、上記配列を意味する。いくつかの実施形態では、標的核酸は、任意のポリヌクレオチド、例えば、DNAまたはRNAポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸は、細胞の核または細胞質内に位置する。いくつかの実施形態では、標的核酸はエキソビボに存在する。いくつかの実施形態では、標的核酸はインビトロ系内に存在する。いくつかの実施形態では、標的核酸は試料中、例えば、生物学的試料または環境試料中に存在する。
【0108】
いくつかの実施形態では、ガイド(例えば、定常ドメイン及び/またはスペーサー)は、約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、100、125、150、160、170、180、190以上のヌクレオチド長であるか、またはこれを上回る。いくつかの実施形態では、ガイドは、約200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、75、50、45、40、35、30、25、20、15、12以下のヌクレオチド長であるか、またはこれ未満である。いくつかの実施形態では、ガイドは、CRISPR-Casエフェクターに対して、10~30ヌクレオチド長、例えば、20~30または20~40ヌクレオチド長以上、例えば、30ヌクレオチド長または約30ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、ガイドは、10~30ヌクレオチド長、例えば、20~30ヌクレオチド長、例えば、30ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、ガイドは、90~200ヌクレオチド長、例えば、100~190ヌクレオチド長、例えば、110~180ヌクレオチド長、例えば、120~170ヌクレオチド長である。ガイドが、CRISPR複合体を標的核酸に直接配列特異的結合させる能力を、任意の好適なアッセイにより調査することができる。例えば、いくつかの実施形態では、試験されるガイド配列を含む、CRISPR複合体を形成するのに十分なCRISPRシステムの構成要素を、例えば、本明細書の他の箇所で論じている、CRISPR-Cas技術の構成要素をコードするベクターまたはベクター系を形質移入し、続けて、標的核酸配列内での優先的な切断を調査することにより、対応する標的核酸配列を有する宿主細胞に提供する。同様に、いくつかの実施形態では、例えば、標的核酸、CRISPR複合体の構成要素(試験されるガイド配列、及び、試験ガイド配列とは異なる対照ガイド配列)を提供し、試験ガイド配列反応と対照ガイド配列反応とでの、標的核酸配列での切断の結合または速度を比較することにより、試験管内で標的核酸の切断を調査する。他のアッセイも可能であり、当業者には想起されるであろう。
【0109】
いくつかの実施形態では、ガイド配列と、その対応する標的核酸配列との相補性の程度は、約50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、もしくは100%である、または、およそこれらの割合を上回ることができる。いくつかの実施形態では、ガイドまたはRNAまたはcrRNAは、約5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75以上のヌクレオチド長である、または、およそこれらの値を上回ることができる。あるいは、いくつかの実施形態では、ガイドまたはRNAまたはcrRNAは、約75、50、45、40、35、30、25、20、15、12未満の、またはこれを下回るヌクレオチド長であることができる。そして有利には、tracrRNAは、30または50ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、ガイド配列と、その対応する標的核酸配列との相補性の程度は、94.5%、または95%、または95.5%、または96%、または96.5%、または97%、または97.5%、または98%、または98.5%、または99%、または99.5%、または99.9%超、または100%である。いくつかの実施形態では、オフターゲットは、標的核酸配列とガイドの間で、100%、または99.9%、または99.5%、または99%、または99%、または98.5%、または98%、または97.5%、または97%、または96.5%、または96%、または95.5%、または95%、または94.5%、または94%、または93%、または92%、または91%、または90%、または89%、または88%、または87%、または86%、または85%、または84%、または83%、または82%、または81%、または80%を下回る相補性であり、オフターゲットは、標的核酸配列とガイドの間で、100%、または99.9%、または99.5%、または99%、または99%、または98.5%、または98%、または97.5%、または97%、または96.5%、または96%、または95.5%、または95%、または94.5%の相補性となるのが有利である。
【0110】
いくつかの実施形態では、ガイド配列/標的核酸配列に沿ったミスマッチの位置を含む、ガイド配列と標的核酸配列との間に、ミスマッチ、例えば、1つ以上のミスマッチ(1つまたは2つのミスマッチなど)を導入することにより、切断活性(例えば、効率)の調節を利用することができる。いずれか1つの理論に拘束されることを望むものではないが、いくつかの実施形態では、ガイド配列に沿ってミスマッチの位置を選択することにより、切断活性(例えば、効率)を調節することができる。例えば、いくつかの実施形態では、(例えば、細胞集団中で)標的の100%未満の切断が所望される場合、ガイド配列と標的核酸配列の間で、1つ以上の、例えば、好ましくは2つのミスマッチを、ガイド配列に導入することができる。いくつかの実施形態では、ミスマッチ位置のガイド配列がより中心となると、切断活性は低くなる(例えば、
【0111】
いくつかの実施形態では、(標的核酸配列にハイブリダイズし、1つ以上のCasタンパク質と複合体を形成したガイド配列を含む)CRISPR複合体が形成されることにより、標的核酸配列内、またはこの付近(例えば、標的核酸配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50以上の塩基対以内)で、切断がもたらされる。いずれか1つの理論に拘束されることを望むものではないが、標的核酸配列中、またはこの付近の切断部位の位置は、例えば、特に、RNA標的の場合、二次構造に依存し得る。場合によっては、内因性CRISPRシステムの文脈においては、(標的核酸配列にハイブリダイズし、1つ以上のCasタンパク質と複合体を形成したガイド配列を含む)CRISPR複合体が形成されることにより、標的核酸配列内、またはこの付近(例えば、標的核酸配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50以上の塩基対以内)において、1つまたは(適用可能な場合)両方の鎖の切断がもたらされる。
【0112】
熱安定性Casタンパク質
本明細書中に記載するように、本開示は、特定のCasタンパク質、例えば、上述したとおり、そのような特定のタンパク質の活性が、高温で十分安定していないという点で、コラテラル活性を有するCasタンパク質における問題源を同定する。これは、例えば、高温の恩恵にあずかる、または高温(例えば、核酸伸長及び/または増幅が実施される温度において、及び/または、細胞もしくは生物(例えば、高温のみにおいて生残する、もしくは成長する好熱生物)において)を必要とするシステムまたはアッセイにおいてCasタンパク質を利用する場合に、特に困難であることを証明し得る。さらに、本開示はさらに驚くべきことに、いくつかのタンパク質に関しては、温度上昇時の活性喪失が不可逆的であり得ることを示す。この現実は、具体的には、熱安定性コラテラル活性を有するCasタンパク質を含む、熱安定性活性を有するCasタンパク質(例えば、「熱安定性Casタンパク質」)が、特に望ましいという、本開示により提供される考察の重要性を増大させる。
【0113】
したがって、本開示は、改良されたCasタンパク質を提供し、特に、コラテラル活性を有する改良されたCasタンパク質を提供し、さらに、本明細書に記載する(例えば、コラテラル活性が熱安定性である)熱安定性Casタンパク質を利用する、改良された技術を提供する。
【0114】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載する熱安定性Casタンパク質(例えば、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質)を含む標的核酸において、ヌクレオチドに結合させる、ヌクレオチドを検出する、及び/またはヌクレオチドを修飾するための、自然に存在しない、または組換え組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、提供される組成物は、本明細書に記載する熱安定性Casタンパク質(例えば、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質)と、熱安定性Casタンパク質と複合体を形成することが可能であり、当該複合体の標的核酸への結合を指令することが可能である、少なくとも1つのガイドと、を含む、自然に存在しない、または組換え組成物を含む。いくつかの実施形態では、提供される組成物は、Casタンパク質/ガイド複合体を含む。いくつかの実施形態では、提供される組成物は、標的核酸に結合したCasタンパク質/ガイド複合体を含む。いくつかの実施形態では、提供される組成物は、コラテラル切断に感受性の核酸と組み合わさったCasタンパク質を含む。いくつかのそのような実施形態では、そのような感受性核酸は、ガイド結合部位を含まない、及び/または、そのようなガイド結合部位を含まない標的核酸に結合しない、及び/または、そうでない場合、会合しない。いくつかの実施形態では、感受性核酸は標識され、(例えば、本明細書で提供するCasタンパク質のコラテラル活性による)その切断が(例えば、蛍光または可視光色の放出により)検出可能となる。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に記載する熱安定性Casタンパク質(例えば、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質)をコードするポリヌクレオチドを含む、自然に存在しない、または組換え組成物を提供する。いくつかのそのような実施形態では、そのような組成物を、Casタンパク質と複合体を形成することが可能であり、当該複合体の標的核酸配列への結合を指令することが可能である、少なくとも1つのガイドと組み合わせる(例えば、これと組み合わせて使用する)ことができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する(例えば、熱安定性コラテラル切断活性を有する)Cas酵素は、明白なコラテラル切断活性を有しないか、または、明白なコラテラル切断活性を有するが、本明細書に記載する関連温度を上回ると、そのような活性を失うかのいずれかである、Cas酵素のホモログ(例えば、オルソログ)である。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する、熱安定性コラテラル切断活性を有するCas酵素は、Cas12(例えば、Cas12aまたはCas12b)酵素である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する、熱安定性コラテラル切断活性を有するCas酵素は、配列番号1~10のいずれか1つと、80%、85%、90%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Cas酵素である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する、改良されたコラテラル活性アッセイは、配列番号1~10のいずれか1つと、80%、85%、90%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、Cas酵素を用いて実施される。
【0118】
コドン最適化
いずれか1つの理論に拘束されることを望むものではないが、いくつかの種は、特定の生物中のコドンに対して、tRNA種の豊富さが対応するmRNA中で、当該コドンを利用することにより、mRNAの翻訳効率と相関することができるコドンバイアス(すなわち、生物によるコドン利用法の差)を示す。コドン最適化には様々な方法が、当該技術分野において周知である。いくつかの実施形態では、コドンは、演算法により最適化される。
【0119】
いくつかの実施形態では、コドン最適化とは、適切な参照配列(例えば、自然配列)に対して、少なくとも1つのコドン(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50個、またはそれ以上のコドン)を置き換えることにより細胞内で発現を向上させるための、核酸配列の修飾を意味する。いくつかの実施形態では、適切な参照配列のコドンが、核酸配列によりコードされる天然アミノ酸配列を維持しながら、細胞の遺伝子でより頻繁に用いられる、または最も頻繁に用いられるコドンで置き換えられる。
【0120】
いくつかの実施形態では、本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列がコドン最適化される。いくつかの実施形態では、本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、真核細胞での発現のためにコドン最適化される。いくつかのそのような実施形態では、真核細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態では、本開示のCasタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、原核細胞での発現のためにコドン最適化される。
【0121】
修飾要素
いくつかの実施形態では、本開示のCasタンパク質は、キメラ系として、例えば、ヌクレオチド塩基を化学修飾することにより、核酸配列(例えば、標的核酸配列)、及び/または核酸(例えば、標的核酸)構造を修飾(例えば、編集)することができる、1つ以上の修飾要素と会合している(例えば、融合している、すなわち、共有結合または非共有結合している)。
【0122】
いくつかの実施形態では、修飾要素は、塩基編集活性を有する。いくつかの実施形態では、修飾要素は、デアミナーゼである。いくつかのそのような実施形態では、修飾要素は、シチジンデアミナーゼまたはその機能的断片である。いくつかの実施形態では、シチジンデアミナーゼまたはその機能的断片は、当該技術分野において周知の任意のシチジンデアミナーゼと、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%、99%、またはそれ以上の配列(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)同一性を含む。いくつかの実施形態では、シチジンデアミナーゼまたはその機能的断片は、(例えば、CをUに変換する)シチジンデアミナーゼ活性を示す。いくつかのそのような実施形態では、修飾要素は、アデノシンデアミナーゼまたはその機能的断片である。いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼまたはその機能的断片は、当該技術分野において周知の任意のアデノシンデアミナーゼと、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97% 98%、99%、またはそれ以上の配列(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)同一性を含む。いくつかの実施形態では、アデノシンデアミナーゼまたはその機能的断片は、(例えば、AをIに変換する)アデノシンデアミナーゼ活性を示す。
【0123】
いくつかの実施形態では、修飾要素は、部位特異的な様式で標的核酸配列を修飾する。いくつかの実施形態では、例えば、修飾要素活性は、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性、脱ミリストイル化活性、インテグラーゼ活性、トランスポーゼース活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、またはヌクレアーゼ活性を含み、これらのいずれかは、DNAまたはDNA関連ポリペプチド(例えば、ヒストンもしくはDNA結合タンパク質)を修飾することができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、本開示のキメラ系は、1つの修飾要素を含む。いくつかの実施形態では、キメラ系は、複数の修飾要素(例えば、少なくとも2つの修飾要素)を含む。いくつかの実施形態では、キメラ系は、Casタンパク質に対する修飾要素C末端を含む。いくつかの実施形態では、キメラ系は、Casタンパク質に対する修飾要素N末端を含む。いくつかの実施形態では、キメラ系の修飾要素とCasタンパク質は、直接結合している。いくつかの実施形態では、キメラ系の修飾要素とCasタンパク質は、間接的に(例えば、リンカーにより)結合している。
【0125】
熱安定性Casタンパク質の例示的な特性決定
とりわけ、本開示は、Casタンパク質(例えば、本開示の熱安定性Casタンパク質)の特性決定方法を提供する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質の、シス(例えば、標的核酸)切断活性、トランスまたは「コラテラル」(例えば、非標的核酸)切断活性、感度、RNA及び/またはDNA標的核酸の選択、RNA及び/またはDNA非標的核酸の選択、及び/または、酵素安定性のうちの1つ以上を特性決定する。
【0126】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、1つのガイドにより特性決定される。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、2つ以上のガイド(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、25、50、75、100、250、500、750、1,000、またはそれ以上のガイド配列)により特性決定される。いくつかのそのような実施形態では、2つ以上のガイドは、異なるガイド配列を含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、Casタンパク質は特定温度で特性決定される。いくつかのそのような実施形態では、特定の温度は、25℃、30℃、35℃、37℃、40℃、42℃、45℃、47℃、50℃、52℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、60℃、62℃、65℃、67℃、70℃、72℃、80℃、90℃、または100℃を含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、一定範囲の温度にわたり特性決定される。いくつかのそのような実施形態では、一定範囲の温度は、10~100℃、20~90℃、30~80℃、40~70℃、50~70℃、10~90℃、10~80℃、10~70℃、20~100℃、20~80℃、20~70℃、30~100℃、30~90℃、または30~70℃を含む。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、複数の温度で特性決定される。いくつかのそのような実施形態では、複数の温度は、10~100℃の間の任意の温度の、任意の組み合わせを含む。
【0128】
シス切断活性
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する熱安定性Casタンパク質の、シス(例えば、標的核酸)切断活性を特性決定する。いくつかの実施形態では、シス切断活性は、インビトロ切断アッセイにより特性決定される。いくつかのそのような実施形態では、インビトロ切断アッセイは、例えば、宿主細胞でCasタンパク質を発現させることと、細胞溶解物を調製することと、標的核酸(例えば、DNA及び/またはRNA)調製する(例えば、増幅する)ことと、Casを含有する細胞溶解物を、標的核酸及びガイドと共にインキュベートすることと、切断活性を(例えば、ゲル電気泳動、レポーターにより)適切な参照標準と比較して調査することと、を含む。いくつかの実施形態では、適切な参照標準は、シス切断活性を示さない対照タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質)を発現する宿主細胞である。
【0129】
いくつかの実施形態では、シス切断活性は、エキソビボ切断アッセイにより特性決定される。いくつかのそのような実施形態では、エキソビボ切断アッセイは、例えば、宿主細胞及びガイドにおいてCasタンパク質を発現させることと、対象となるポリヌクレオチドを宿主細胞から抽出する(例えば、DNA及び/またはRNA)ことと、シーケンシングをして切断活性(例えば、挿入、欠失、及び/または変異パターン)を測定することと、を含む。いくつかの実施形態では、シーケンシングは、ディープシーケンシングを含む。いくつかの実施形態では、シーケンシングは、次世代シーケンシングを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、シス切断活性は、エンドポイントアッセイにより特性決定される。いくつかの実施形態では、シス切断活性は、速度論的アッセイにより特性決定される。
【0131】
トランス切断活性
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCasタンパク質の、トランス、または「コラテラル」(例えば、非標的核酸)切断活性を特性決定する。トランス、または「コラテラル」活性とは、Casタンパク質が標的核酸に結合した(例えば、「活性化」Casタンパク質となった)後の、非標的核酸の非特異的切断活性である。いくつかの実施形態では、標的核酸の認識時に、Casタンパク質のトランス切断活性が活性化されるため、非標的核酸(酵素に応じて、DNAもしくはRNA、または両方)が切断される。いくつかの実施形態では、トランス切断活性はレポーターにより調査される。いくつかのそのような実施形態では、レポーターは、関連する切断可能な核酸(例えば、DNAまたはRNA)を含み、活性化されたコラテラル活性の結果としてその切断が検出可能となる(例えば、フルオロフォアをクエンチャーから分離することで、蛍光が検出可能となる、など)ように、適切に構成される(例えば、標識される)。いくつかの実施形態では、陰性対照(例えば、標的核酸なしの対照)を用いる。いくつかのそのような実施形態では、トランス切断活性はインビトロで調査される。
【0132】
いくつかの実施形態では、トランス切断活性は、エンドポイントアッセイにより特性決定される。いくつかの実施形態では、トランス切断活性は、速度論的アッセイにより特性決定される。
【0133】
感度
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCasタンパク質の感度を特性決定する。いくつかの実施形態では、80%、85%、90%、95%、99%、またはそれ以上の時間で検出、切断、及び/または修飾可能である、標的核酸の最低濃度を調査することにより、感度を調査する。いくつかのそのような実施形態では、感度は、Cas酵素を、標的核酸の希釈液(例えば、連続希釈液)と接触させることにより、標的核酸の検出、切断、及び/または修飾を調査することにより測定される。
【0134】
RNAまたはDNA標的核酸、及び/または非標的核酸の選択
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCasタンパク質の、RNAまたはDNA標的核酸(例えば、シス切断活性)、及び/または非標的核酸(例えば、トランスもしくは「コラテラル」切断活性)の選択を特性決定する。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCasタンパク質の、RNAまたはDNA標的核酸(例えば、シス切断活性)の選択を特性決定する。いくつかのそのような実施形態では、Casタンパク質がDNA標的核酸と接触する際を、Casタンパク質がRNA標的核酸と接触する際との切断活性を比較することにより、シスCasタンパク質活性を調査することにより選択を特性決定する。いくつかの実施形態では、DNA標的核酸は二本鎖DNAである。いくつかの実施形態では、DNA標的核酸は一本鎖DNAである。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCasタンパク質の、RNAまたはDNA非標的核酸(例えば、トランス、もしくは「コラテラル」切断活性)の選択を特性決定する。いくつかのそのような実施形態では、Casタンパク質がDNA非標的核酸と接触する際を、Casタンパク質がRNA非標的核酸と接触する際とのトランス切断活性を比較することにより、トランスCasタンパク質活性を調査することにより選択を特性決定する。いくつかの実施形態では、DNA非標的核酸は二本鎖DNAである。いくつかの実施形態では、DNA非標的核酸は一本鎖DNAである。いくつかの実施形態では、非標的核酸は、レポーター(例えば、切断によりフルオロフォアをクエンチャーと分離し、蛍光が検出可能となるなどのレポーター)を含む。いくつかのそのような実施形態では、レポーターはDnaseAlertである。いくつかのそのような実施形態では、レポーターはRnaseAlertである。
【0137】
酵素安定性
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する熱安定性Casタンパク質の酵素安定性を特性決定する。いくつかのそのような実施形態では、(例えば、タンパク質溶解法を用いて)酵素変性を調査することにより酵素安定性を特性決定する。いくつかの実施形態では、酵素変性を調査することは、Casタンパク質を緩衝液及び色素と混合し、融解曲線を生成することを含む。いずれか1つの理論に拘束されることを望むものではないが、いくつかの実施形態では、温度が増加するにつれ、Casタンパク質はアンフォールドして、色素が結合可能な疎水性領域が露出する。色素結合の際に、色素が蛍光を発する。いくつかのそのような実施形態では、温度変化に伴う蛍光の変化を、融解曲線の温度に対してプロットする。いくつかの実施形態では、Casタンパク質の融解温度を測定し、適切な参照標準(例えば、熱安定性が周知のCasタンパク質、例えば、Aac及び/またはRS9)の融解温度と比較することができる。いくつかのそのような実施形態では、融解温度の変化は、タンパク質の安定性(例えば、熱安定性)及び活性の変化に相関している。
【0138】
標的核酸
いくつかの実施形態では、本開示に従った有用な標的核酸は、特定の長さに限定されない。いくつかの実施形態では、標的核酸は、ガイド配列がハイブリダイズする配列を含む、任意の長さのヌクレオチド(オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド)である。いくつかの実施形態では、標的核酸は、三次元構造を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、コード及び/または非コード領域を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、siRNA、shRNA、miRNA、リボザイム、cDNA、プラスミド、ベクター、外来性ヌクレオチド配列、及び/または、内因性ヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、例えば、メチル化ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体を含む、修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、標的核酸配列には、非核酸成分が散らばっていてよい。いくつかの実施形態では、標的核酸は、一本鎖、二本鎖、もしくはマルチ鎖DNAもしくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、または、プリン及びピリミジン塩基、もしくは他の自然、化学もしくは生化学的に修飾された、非自然、もしくは誘導体化ヌクレオチド塩基を含むポリマーである。
【0139】
いくつかの実施形態では、標的核酸は、CRISPR-Cas技術により認識され、本明細書に記載するCasタンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、標的核酸は修飾もしくは切断されているか、または、標的核酸によりコードされた遺伝子は、Casタンパク質結合及び活性の結果として、発現が変化する。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、特異的で認識可能な、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含む。
【0140】
ガイド
本開示のいくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、ガイド配列を含む少なくとも1つのガイドを含む。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、ガイドが、特異的標的核酸にハイブリダイズすることができるほど十分な相補性を有するヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態では、ガイドは、標的核酸配列に対して相補的なガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、標的核酸配列に対して50%、60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上相補的である。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはそれ以上のヌクレオチド長である。
【0141】
いくつかの実施形態では、本開示の技術は、複数のガイドを利用する。いくつかの実施形態では、複数のガイドは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、250、500、750、1,000、またはそれ以上のガイドを含む。いくつかの実施形態では、2つ以上のガイドは同一のガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、さらに2つのガイドは、異なるガイド配列を含む。いくつかの実施形態では、2つ以上のガイド配列は、同一の標的核酸の異なる標的部位にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、2つ以上のガイド配列は、異なる標的核酸配列にハイブリダイズする。
【0142】
いくつかの実施形態では、ガイドが、CRISPR-Cas技術の配列特異的結合を標的核酸に指令する能力を、任意の好適なアッセイにより調査することができる。例えば、本明細書で開示するCRISPR-Cas技術の構成要素は、試験されるガイド配列を含むCRISPR複合体を形成するのに十分であり、例えば、(例えば、本明細書の他の箇所に記載する)CRISPR-Cas技術の構成要素をコードするベクターを形質移入した後、標的核酸配列中での選択的切断を特性決定することにより、対応する(例えば、相補的な)標的核酸配列を有する細胞に供することができる。同様に、例えば、標的核酸、CRISPR-Cas技術の構成要素(試験されるガイド、及び、試験ガイド配列とは異なるガイド配列を含む対照ガイドを含む)を提供し、試験ガイド配列反応と対照ガイド配列反応とでの、標的核酸での切断の結合または速度を比較することにより、試験管内で標的核酸の切断を調査することができる。他のアッセイも可能であり、当業者には想起されるであろう。ガイド配列を、任意の標的核酸配列を標的にするように選択することができる。いくつかの実施形態では、標的核酸配列は、細胞のゲノム内にある核酸配列である。例示的な標的核酸としては、標的ゲノムに固有のものである。
【0143】
いくつかの実施形態では、組成物は、Casタンパク質及び異種ガイド配列を含む。例えば、ガイド配列及びCasタンパク質は、自然界では、同じ細胞または同じ種に存在しない。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術では、ガイド配列を含むcrRNAまたは類似のポリヌクレオチドを用い、ここで、ポリヌクレオチドはRNA、DNA、または、RNAとDNAの混合物であり、及び/または、ポリヌクレオチドは、1つ以上のヌクレオチド類似体を含む。いくつかのそのような実施形態では、配列は、天然crRNAの構造、例えば、バルジ、ヘアピン、またはステムループ構造を含むがこれらに限定されない、任意の構造を含むことができる。いくつかの実施形態では、ガイド配列を含むポリヌクレオチドは、RNAまたはDNA配列であることができる第2のポリヌクレオチド配列とのデュプレックスを形成する。
【0145】
いくつかの実施形態では、本開示のガイドは、自然に存在しない核酸、及び/または、自然に存在しないヌクレオチド及び/またはヌクレオチド類似体、及び/または化学修飾を含む。自然に存在しない核酸としては、例えば、自然に存在するヌクレオチドと、自然に存在しないヌクレオチドとの混合物を挙げることができる。いくつかの実施形態では、自然に存在しないヌクレオチド及び/またはヌクレオチド類似体は、リボース、ホスフェート、及び/または塩基部分にて修飾される。いくつかの実施形態では、ガイドは、リボヌクレオチド及び非リボヌクレオチドを含む。いくつかのそのような実施形態では、ガイドは、1つ以上のリボヌクレオチド、及び1つ以上のデオキシリボヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ガイドは、1つ以上の自然に存在しないヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体、例えば、ホスホロチオエート結合、ボラノホスフェート結合を有するヌクレオチド;リボース環の2’炭素と4’炭素の間にメチレン架橋を含むロック核酸(LNA)ヌクレオチド;または、架橋核酸(BNA)を含む。修飾ヌクレオチドの他の例としては、2’-0-メチル類似体、2’-デオキシ類似体、2-チオウリジン類似体、N6-メチルアデノシン類似体、または2’-フルオロ類似体が挙げられるが、これらに限定されない。修飾塩基のさらなる例としては、2-アミノプリン、5-ブロモ-ウリジン、シュードウリジン(Y)、N1-メチルシュードウリジン(me1Y)、5-メトキシウリジン(5moU)、イノシン、7-メチルグアノシンが挙げられるが、これらに限定されない。ガイドRNA化学修飾の例としては、1つ以上の末端ヌクレオチドにおける、2’-0-メチル(M)、2’-0-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、S-拘束エチル(cEt)、または2’-0-メチル-3’-チオPACE(MSP)の組み込みが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、このような化学修飾ガイドRNAは、未修飾ガイドRNAと比較して、安定性の増加、及び活性の増大を含むことができるものの、オンターゲットとオフターゲット特異性を予測できない(Hendel,2015,Nat Biotechnol.33(9):985-9,doi:10.1038/nbt.3290,published online 29 June 2015;Allerson et ah,J.Med.Chem.2005,48:901-904;Bramsen et ah,Front.Genet.,2012,3:154;Deng et al.,PNAS,2015,112:11870-11875;Sharma et ah,MedChemComm.,2014,5:1454-1471;Li et al.,Nature Biomedical Engineering,2017,1,0066 DOI:10.1038/s41551-017-0066を参照されたい)。
【0146】
いくつかの実施形態では、ガイドの5’及び/または3’末端は、蛍光色素、ポリエチレングリコール、コレステロール、タンパク質、または検出タグを含む、種々の機能性部分により修飾される(Kelly et al.,2016,J.Biotech.233:74-83を参照されたい)。いくつかの実施形態では、ガイドは、標的核酸及び1つ以上のデオキシリボヌクレオチドに結合する領域内にリボヌクレオチド、及び/または、Casタンパク質に結合する領域内にヌクレオチド類似体を含む。いくつかの実施形態では、デオキシリボヌクレオチド及び/またはヌクレオチド類似体は、限定されるものではないが、5’及び/または3’末端、ステムループ領域、及びシード領域などのガイド配列に組み込まれる。いくつかの実施形態では、修飾は、ステムループ領域の5’ハンドルには存在しない。いくつかの実施形態では、ガイドのステムループ領域の5’ハンドルでの化学修飾により、その機能が喪失され得る(Li,et al.,Nature Biomedical Engineering,2017,1:0066を参照されたい)。いくつかの実施形態では、ガイド配列の、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、75、またはそれ以上のヌクレオチドが、化学修飾される。いくつかの実施形態では、ガイドの3’または5’末端のいずれかにおける、3~5ヌクレオチドが化学修飾される。いくつかの実施形態では、2’-F修飾などの軽微な修飾のみが、シード領域に導入される。いくつかの実施形態では、2’-F修飾は、ガイドの3’末端に導入される。いくつかの実施形態では、ガイドの5’及び/または3’末端における、3~5個のヌクレオチドが、T-O-メチル(M)、2’-0-メチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、S拘束エチル(cEt)、または、2’-0-メチル-3’-チオPACE(MSP)で化学修飾されている。いくつかの実施形態では、このような修飾により、ゲノム編集効率を向上させることができる(Hendel et al.,Nat.Biotechnol.(2015)33(9):985-989を参照されたい)。いくつかの実施形態では、遺伝子破壊度合いを向上させるために、ガイドのホスホジエステル結合が全てホスホロチオエート(PS)で置換されている。いくつかの実施形態では、ガイドの5’及び/または3’末端における、6個以上のヌクレオチドが、2’-OMe、2’-F、またはS拘束エチル(cEt)で化学修飾されている。いくつかの実施形態では、このような化学修飾ガイドは、遺伝子破壊度合いの向上を媒介することができる(Ragdarm et al.,0215,PNAS,E7110-E7111を参照されたい)。いくつかの実施形態では、ガイドは、その3’及び/または5’末端に化学的部分を含むように修飾されている。いくつかの実施形態では、そのような部分としては、アミン、アジド、アルキン、チオ、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、またはローダミンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、化学的部分は、アルキル鎖などのリンカーにより、ガイド配列とコンジュゲートしている。いくつかの実施形態では、修飾ガイドの化学的部分を用いて、ガイドを、DNA、RNA、タンパク質、またはナノ粒子などの別の分子に結合することができる。いくつかの実施形態では、このような化学修飾ガイドを用いて、例えば、CRISPRシステムにより遺伝子編集された細胞を同定、または濃縮することができる(Lee et al.,eLife,2017,6:e25312,DOI:10.7554を参照されたい)。
【0147】
いくつかの実施形態では、ガイドに対する修飾は、化学修飾、挿入、欠失、または分割である。いくつかの実施形態では、化学修飾としては、2’-0-メチル(M)類似体、2’-デオキシ類似体、2-チオウリジン類似体、N6-メチルアデノシン類似体、2’-フルオロ類似体、2-アミノプリン、5-ブロモ-ウリジン、シュードウリジン(Y)、N1-メチルシュードウリジン(me 1 Y)、5-メトキシウリジン(5moU)、イノシン、7-メチルグアノシン、2’-Oメチル-3’-ホスホロチオエート(MS)、S拘束エチル(cEt)、ホスホロチオエート(PS)、または、2’-0-メチル-3’-チオPACE(MSP)の組み込みが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ガイドは、1つ以上のホスホロチオエート修飾を含む。いくつかの実施形態では、ガイドの、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または25ヌクレオチドが、化学修飾される。いくつかの実施形態では、シード領域中の1つ以上のヌクレオチドが化学修飾されている。いくつかの実施形態では、3末端の1つ以上のヌクレオチドが化学修飾されている。いくつかの実施形態では、5’-ハンドル中のヌクレオチドのいずれもが、化学修飾されていない。いくつかの実施形態では、シード領域中の化学修飾は、2’-フルオロ類似体の組み込みなどの、軽微な修飾である。いくつかの実施形態では、Cpfl CrRNAの3’末端におけるこのような化学修飾により、遺伝子切断効率が改良される(Li,et al.,Nature Biomedical Engineering,2017,1:0066を参照されたい)。
【0148】
いくつかの実施形態では、ガイドの5’ハンドルのループが修飾される。いくつかの実施形態では、ガイドの5’ハンドルのループが、欠失、挿入、分割、または化学修飾を有するように修飾される。いくつかの実施形態では、ループは、3、4、または5個のヌクレオチドを含む。
【0149】
いくつかの実施形態では、ガイド配列は、非ホスホジエステル結合により化学的に結合した、またはコンジュゲートした、部分を含む。いくつかの実施形態では、ガイド配列は、非限定例においては、非ヌクレオチドループにより化学的に結合した、またはコンジュゲートした、直接反復配列部分と標的化配列部分を含む。いくつかの実施形態では、部分は、非ホスホジエステル共有リンカーにより結合している。共有リンカーの例としては、カルバメート、エーテル、エステル、アミド、イミン、アミジン、アミノトリジン、ヒドロゾン(hydrozone)、ジスルフィド、チオエーテル、チオエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、スルホンアミド、スルホネート、フルホン(fulfone)、スルホキシド、尿素、チオ尿素、ヒドラジド、オキシム、トリアゾール、感光性結合、C-C結合形成基(ディールス-アルダー環化付加ペアまたは閉環メタセシスペア、及びマイケル反応ペアなど)からなる群から選択される化学的部分が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
いくつかの実施形態では、ガイドの部分はまず、標準的なホスホラミダイト合成手順を用いて合成される(Herdewijn,P.,ed.,Methods in Molecular Biology Col 288,Oligonucleotide Synthesis: Methods and Applications,Humana Press,New Jersey(2012))。いくつかの実施形態では、非標的ガイド部分を官能基化させ、当該技術分野において周知の標準的な手順を用いるライゲーション用の、適切な官能基を含有させることができる(Hermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press(2013))。官能基の例としては、ヒドロキシル、アミン、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸活性エステル、アルデヒド、カルボニル、クロロカルボニル、イミダゾリルカルボニル、ヒドロジド(hydrozide)、セミカルバジド、チオセミカルバジド、チオール、マレイミド、ハロアルキル、スルホニル、アリル、プロパルギル、ジエン、アルキン、及びアジドが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ガイドの非標的部分が官能基化されたら、2つのオリゴヌクレオチドの間に、共有化学結合または連結が形成され得る。化学結合の例としては、カルバメート、エーテル、エステル、アミド、イミン、アミジン、アミノトリジン、ヒドロゾン(hydrozone)、ジスルフィド、チオエーテル、チオエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、スルホンアミド、スルホネート、スルホン、スルホキシド、尿素、チオ尿素、ヒドラジド、オキシム、トリアゾール、感光性結合、C-C結合形成基(ディールス-アルダー環化付加ペアまたは閉環メタセシスペア、及びマイケル反応ペアなど)に基づくものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
いくつかの実施形態では、ガイドの1つ以上の部分は、化学合成することができる。いくつかの実施形態では、化学合成では、2’-アセトキシエチルオルトエステル(2’-ACE)(Scaringe et al.,J.Am.Chem.Soc.(1998)120:11820-11821;Scaringe,Methods Enzymol.(2000)317:3-18)、または、2’-チオノカルバメート(2’-TC)の化学的性質(Dellinger et al.,J.Am.Chem.Soc.(2011)133:11540-11546;Hendel et al.,Nat.Biotechnol.(2015)33:985-989)を用いる、自動化固相オリゴヌクレオチド合成機を用いる。
【0152】
いくつかの実施形態では、ガイド部分は、様々なバイオコンジュゲーション反応、ループ、架橋、ならびに、糖修飾、ヌクレオチド間ホスホジエステル結合、プリン及びピリミジン残基を介する非ヌクレオチド結合を用いて共有結合することができる。Sletten et al.,Angew.Chem.Int.Ed.(2009)48:6974-6998;Manoharan,M.Curr.Opin.Chem.Biol.(2004)8:570-9;Behlke et al.,Oligonucleotides(2008)18:305-19;Watts,etak,Drug.Discov.Today(2008)13:842-55;Shukla,et al.,ChemMedChem(2010)5:328-49。
【0153】
いくつかの実施形態では、ガイド部分は、クリックケミストリーを用いて共有結合することができる。いくつかの実施形態では、ガイド部分は、トリアゾールリンカーを用いて共有結合することができる。いくつかの実施形態では、ガイド部分は、アルキン及びアジドが関与し、非常に安定したトリアゾールリンカーを得る、ヒュスゲン1,3-双極性環化付加反応を用いて、共有結合することができる(He et al.,ChemBioChem(2015)17:1809-1812;WO 2016/186745)。いくつかの実施形態では、ガイド部分は、5’-ヘキシン部分と3’-アジド部分のライゲーションにより、共有結合される。いくつかの実施形態では、5’-ヘキシンガイド部分と3’-アジドガイド部分のいずれか、または両方を、2’-アセトキシエチルオルトエステル(2’-ACE)基で保護することができ、その後、Dharmacon手順を用いて除去することができる(Scaringe et al.,J.Am.Chem.Soc.(1998)120:11820-11821;Scaringe,Methods Enzymol.(2000)317:3-18)。
【0154】
いくつかの実施形態では、ガイド部分は、スペーサー、アタッチメント、バイオコンジュゲート、発色団、レポーター基、色素標識RNA、及び、自然に存在しないヌクレオチド類似体などの部分を含むリンカー(例えば、非ヌクレオチドループ)により共有結合することができる。より具体的には、本発明の目的に適したスペーサーとしては、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール、ポリアルコール、ポリプロピレングリコール、または、エチレンとプロピレングリコールの混合物)、ポリアミン基(例えば、スペニン(spennine)、スペルミジン、及びこれらのポリマー類似体)、ポリエステル(例えば、ポリ(エチルアクリレート))、ポリホスホジエステル、アルキレン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、好適なアタッチメントとしては、限定されるものではないが、蛍光標識などの、リンカーに結合して、当該リンカーに追加の性質を付加する、任意の部分が挙げられる。好適なバイオコンジュゲートとしては、ペプチド、グリコシド、脂質、コレステロール、リン脂質、ジアシルグリセロール及びジアルキルグリセロール、脂肪酸、炭化水素、酵素基質、ステロイド、ビオチン、ジゴキシゲニン、炭水化物、多糖類が挙げられるが、これらに限定されない。好適な発色団、レポーター基、及び色素標識RNAとしては、蛍光色素(フルオレセイン及びローダミンなど)、化学発光、電気化学発光、及び生物発光マーカー化合物が挙げられるが、これらに限定されない。2つのRNA成分をコンジュゲートする例示的なリンカーの設計は、WO2004/015075にもまた記載されている。
【0155】
いくつかの実施形態では、本開示に従った有用なリンカー(例えば、非ヌクレオチドループ)は、特定の長さに限定されない。いくつかの実施形態では、有用なリンカーは、任意の長さのリンカーである。いくつかの実施形態では、リンカーは、約0~16ヌクレオチドに等しい長さを有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、約0~8ヌクレオチドに等しい長さを有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、約0~4ヌクレオチドに等しい長さを有する。いくつかの実施形態では、リンカーは、約2ヌクレオチドに等しい長さを有する。例示的なリンカー設計は、WO2011/008730にもまた記載されている。
【0156】
多重化
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術は、複数のガイドを利用する。いずれか1つの理論に拘束されることを望むものではないが、複数のガイドを用いることで、複数の標的核酸を標的にすることが可能となる。いくつかの実施形態では、複数のガイドはタンデムに配置され、任意選択的に、核酸配列(例えば、DR配列)により分離されることができる。いくつかの実施形態では、タンデムな2つ以上のガイドの位置は、活性に影響を及ぼさない。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術は、多重化用の複数のガイドを利用する。いくつかの実施形態では、2つ以上のCasタンパク質を用いる。いくつかの実施形態では、単独のCasタンパク質を利用する。いくつかのそのような実施形態では、単独のCasタンパク質は、複数のガイド、例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも350、少なくとも400、少なくとも450、少なくとも500、少なくとも750、少なくとも1,000、またはそれ以上のガイドと共に送達される。
【0158】
いくつかの実施形態では、1つのガイド、または複数のガイドは、複数の標的核酸にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、複数の標的核酸を切断する、及び/または編集する。いくつかのそのような実施形態では、切断、及び/または編集は、1つの標的核酸、または複数の標的核酸のヌクレオチドを変異させる、挿入する、及び/または欠失させる。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドの変異、挿入、及び/または欠失は、標的核酸によりコードされる、または、標的核酸の制御エレメントにより制御される遺伝子の、遺伝子発現の変化をもたらす。
【0159】
いくつかの実施形態では、複数のガイド配列は、同一の標的核酸の、複数の異なる標的核酸または異なる領域(例えば、配列)にハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する複数のガイドによりCRISPR-Cas技術を用いることで、複数の遺伝子産物の発現を変化させる方法が提供される。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイド配列と接触させることを含み、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイドと複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸中で破壊を引き起こすことが可能である。いくつかの実施形態では、方法は、細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドと接触させることを含み、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイドと複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸配列を編集することが可能である。
【0160】
標的核酸配列の修飾方法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術を、標的核酸配列の修飾(例えば、遺伝子編集)のために用いることができる。いくつかの実施形態では、標的核酸配列を修飾することで、標的核酸配列により制御される、またはコードされる遺伝子産物の発現における、遺伝子サイレンシング、または、発現レベルの変化(例えば、増加もしくは低下)をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、本開示のCRISPR-Cas技術を、標的核酸配列の部位特異的修飾に用いることができる。いくつかの実施形態では、標的核酸配列の部位特異的修飾により、標的核酸配列により制御される、またはコードされる遺伝子産物の発現における遺伝子サイレンシング、または、発現レベルの変化(例えば、増加もしくは低下)がもたらされる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術は、標的核酸配列の修飾方法において用いられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術は、細胞(複数可)(例えば、原核細胞または真核細胞)における標的核酸の修飾方法において用いられる。
【0161】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、細胞に、本明細書の他の箇所で論じるベクターまたはベクター系を送達することを含む、細胞における1つ以上のヌクレオチド修飾を誘導することを含む。いくつかの実施形態では、変異(複数可)は、ガイド(複数可)、RNA(複数可)、またはsgRNA(複数可)による、細胞(複数可)の各標的核酸配列における、1つ以上のヌクレオチドまたはペイロードの導入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態では、変異(複数可)は、ガイド(複数可)による、上記細胞(複数可)の各標的核酸配列における、1~75ヌクレオチドの導入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態では、変異(複数可)は、ガイド(複数可)による、上記細胞(複数可)の各標的核酸配列における、1、5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、または75ヌクレオチドの導入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態では、変異(複数可)は、ガイド(複数可)による、上記細胞(複数可)の各標的核酸配列における、5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、または75ヌクレオチドの導入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態では、変異(複数可)は、ガイド(複数可)による、上記細胞(複数可)の各標的核酸配列における、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、または75ヌクレオチドの導入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態では、変異(複数可)は、ガイド(複数可)による、上記細胞(複数可)の各標的核酸配列における、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、または75ヌクレオチドの導入、欠失、または置換を含む。いくつかの実施形態では、変異(複数可)は、ガイド(複数可)による、上記細胞(複数可)の各標的核酸配列における、40、45、50、75、100、200、300、400、または500ヌクレオチドの導入、欠失、または置換を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、毒性及びオフターゲット効果を最小限にするために、送達されるCas mRNAまたはタンパク質及びガイド(複数可)の濃度を制御する。いくつかの実施形態では、例えば、細胞または真核生物動物モデルにおいて、異なる濃度を試験し、ディープシーケンシングを用いて、潜在的なオフターゲットゲノム座位における修飾の程度を分析することにより、Cas mRNAまたはタンパク質及びガイド(複数可)の最適濃度を決定する。
【0163】
いくつかの実施形態では、本開示の技術は、細胞内で標的核酸を切断する方法であって、細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイド配列と接触させることを含み、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイド配列と複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸中で破壊を引き起こすことが可能である、上記方法を提供する。
【0164】
いくつかの実施形態では、本開示の技術は、細胞内で標的核酸により制御またはコードされる遺伝子の発現を変化させる方法であって、上記細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイド配列と接触させることを含み、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイド配列と複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸中で破壊を引き起こすことが可能である、上記方法を提供する。
【0165】
いくつかの実施形態では、本開示の技術は、細胞内で標的核酸により制御またはコードされる遺伝子の発現を変化させる方法であって、上記細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイド配列と接触させることを含み、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイド配列と複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸配列を編集することが可能である、上記方法を提供する。
【0166】
いくつかの実施形態では、本開示の技術は、細胞内で標的核酸を修飾する方法であって、細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイド配列と接触させることを含み、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイド配列と複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸配列を編集することが可能である、上記方法を提供する。
【0167】
いくつかの実施形態では、方法は、CRISPR-Cas技術を標的核酸に結合することと、標的核酸を切断することと、を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、二本鎖破壊を導入することにより、標的核酸デュプレックス(例えば、DNAまたはRNAデュプレックス)を切断する。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、一本鎖破壊を導入することにより、標的核酸デュプレックス(例えば、DNAまたはRNAデュプレックス)を切断する。
【0168】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術は、対象となる核酸配列(例えば、ドナー鋳型核酸配列)を含む、外来性ドナー鋳型核酸(例えば、DNA分子またはRNA分子)を含む。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型核酸配列は、これが置き換えるゲノム配列と同一ではない。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型核酸配列は、相同性により指令される修復を支持するための十分な相同性が存在する限り、ゲノム配列に対して、少なくとも1つ以上の単独塩基変化、挿入、欠失、反転、または再配列を含有することができる。いずれか1つの理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術により誘発された切断事象の回復の際、細胞の分子機構は、切断事象の修復及び/または回復に、外来性ドナー鋳型核酸を利用する。あるいは、細胞の分子機構は、切断事象の修復及び/または回復に、内因性ドナー鋳型を利用することができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型核酸配列は、切断部位において、ゲノム配列に十分な相同性、例えば、70%、80%、85%、90%、95%、または100%の相同性を含み、ヌクレオチド配列は、例えば、切断部位から約50塩基、40塩基、30塩基、20塩基、15塩基、10塩基、5塩基、または1塩基以内で、切断部位に隣接している。いずれか1つの理論に拘束されることを望むものではないが、切断部位に隣接するヌクレオチド配列との相同性は、当該ヌクレオチド配列と、相同性を有するゲノム配列とでの、相同性により指示される修復を支持する。例えば、いくつかの実施形態では、ドナーとゲノム配列との間の、およそ25、50、100、または200ヌクレオチド、または200を超えるヌクレオチド(または、10~200ヌクレオチド、またはそれ以上の間の、任意の整数値)の配列相同性は、相同性により指示される修復を支持する。
【0170】
いくつかの実施形態では、本開示に従った有用なドナー鋳型核酸は、特定の長さに限定されない。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型核酸は、任意の長さのヌクレオチド(オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド)である。例えば、いくつかの実施形態では、ドナー鋳型核酸は、10ヌクレオチド以上、25ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、250ヌクレオチド以上、500ヌクレオチド以上、1,000ヌクレオチド以上、500ヌクレオチド以上などを含む。
【0171】
挿入
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術を使用して、1つ以上のヌクレオチドを標的核酸に挿入することにより、標的核酸配列を編集する。いくつかの実施形態では、挿入は、無傷挿入である(例えば、目的の核酸配列を標的核酸に挿入することで、切断事象の回復の際に、意図しない追加の核酸配列が生じない)。
【0172】
いくつかの実施形態では、挿入は、遺伝子産物をコードする標的核酸配列のコード領域内で、フレームシフト変異をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するCRISR-Cas技術は、標的核酸における、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、または0.01%未満の挿入形成をもたらす。
【0173】
いくつかの実施形態では、挿入頻度を計算するために、挿入が発生することができるウィンドウの両端に隣接する、2つの10bp配列への厳密な一致を、シーケンス読取りでスキャンする。例えば、厳密な一致が位置しない場合、読取りを分析から除外する。この挿入ウィンドウの長さが参照配列に厳密に一致する場合、読取りを、挿入非含有として分類する。挿入ウィンドウが参照配列よりも2塩基以上長い場合、シーケンス読取りを挿入として分類する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供する修飾要素は、核酸の領域内での挿入形成を制限することができる。いくつかの実施形態では、領域は、修飾要素により標的にされるヌクレオチドに、または、修飾要素により標的にされるヌクレオチドの2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以内に位置する。
【0174】
いくつかの実施形態では、標的核酸で形成される挿入の数は、核酸(例えば、細胞のゲノム内の標的核酸)が修飾要素に曝される時間量に依存する場合がある。いくつかの実施形態では、挿入の数または割合は、標的核酸(例えば、細胞のゲノム内の核酸)を修飾要素に曝した、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも7日、少なくとも10日、または少なくとも14日後に測定される。本明細書に記載する修飾要素の特性は、いくつかの実施形態では、キメラ系、または、本明細書で提供するキメラ系を用いる方法のいずれかに適用可能であることが理解されなければならない。
【0175】
欠失
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術を使用して、標的核酸の1つ以上のヌクレオチドを欠失させることにより、標的核酸配列を編集する。
【0176】
いくつかの実施形態では、欠失は、遺伝子産物をコードする標的核酸配列のコード領域内で、フレームシフト変異をもたらす。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するCRISPR-Cas技術は、標的核酸における、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、または0.01%未満の欠失形成をもたらす。
【0177】
いくつかの実施形態では、欠失頻度を計算するために、挿入が発生することができるウィンドウの両端に隣接する、2つの10bp配列への厳密な一致を、シーケンス読取りでスキャンする。例えば、厳密な一致が位置しない場合、読取りを分析から除外する。この欠失ウィンドウの長さが参照配列に厳密に一致する場合、読取りを、挿入非含有として分類する。挿入ウィンドウが参照配列よりも2塩基以上短い場合、シーケンス読取りを欠失として分類する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供する修飾要素は、核酸の領域内での欠失形成を制限することができる。いくつかの実施形態では、領域は、修飾要素により標的にされるヌクレオチドに、または、修飾要素により標的にされるヌクレオチドの2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10ヌクレオチド以内に位置する。
【0178】
いくつかの実施形態では、標的核酸で形成される欠失の数は、標的核酸(例えば、細胞のゲノム内の標的核酸)が修飾要素に曝される時間量に依存する場合がある。いくつかの実施形態では、欠失の数または割合は、標的ヌクレオチド配列(例えば、細胞のゲノム内の核酸)を修飾要素に曝した、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも7日、少なくとも10日、または少なくとも14日後に測定される。本明細書に記載する修飾要素の特性は、いくつかの実施形態では、キメラ系、または、本明細書で提供するキメラ系を用いる方法のいずれかに適用可能であることが理解されなければならない。
【0179】
変異
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術を使用して、標的核酸の1つ以上のヌクレオチドを変異させることにより、標的核酸配列を編集することができる。いくつかの実施形態では、変異は点突然変異である。いくつかの実施形態では、変異は、サイレント変異である(例えば、変異が、関連する参照アミノ酸配列に対するアミノ酸配列の変化をもたらさない)。いくつかの実施形態では、変異は、自然に存在しない終止コドンを導入する。いくつかの実施形態では、変異は、自然に存在しない開始コドンを導入する。いくつかの実施形態では、変異は、自然に存在する終止コドンを除去する。いくつかの実施形態では、変異は、自然に存在する開始コドンを除去する。
【0180】
いくつかの実施形態では、標的核酸配列中で、多数の挿入または欠失を生成することなく、標的核酸配列内の特定のヌクレオチドを効率的に修飾する(例えば、変異させる、または脱アミノ化する)キメラ系(例えば、Casタンパク質と、本明細書の他の箇所に記載されている修飾要素とを含む)を生成する、及び/または用いるのが望ましい。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する任意のキメラ系は、挿入/欠失よりも高い割合で、目的の修飾(例えば、点突然変異または脱アミノ化)を生成することができる。
【0181】
いくつかの実施形態では、本開示のキメラ系は、標的核酸中で単独のヌクレオチドを修飾する。いくつかの実施形態では、修飾は、G-AもしくはC-T点突然変異、T-CもしくはA-G点突然変異、または、病原性一塩基多型を修復する、及び/または修正する。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するキメラ系のいずれかは、意図しない点突然変異などの、著しい数の意図しない変異を生成することなく、標的核酸配列(例えば、対象のゲノム内の核酸)内で、例えば、点突然変異などの、目的の変異を効率的に生成することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するキメラ系のいずれかは、少なくとも0.01%の、目的の変異(すなわち、少なくとも0.01%の塩基編集効率)を生成することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供するキメラ系のいずれかは、少なくとも0.01%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の、目的の変異を生成することができる。
【0183】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するキメラ系は、1:1を上回る、目的の点突然変異の、挿入/欠失または意図しない点突然変異に対する比率を生み出すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供する塩基エディターは、少なくとも1.5:1、少なくとも2:1、少なくとも2.5:1、少なくとも3:1、少なくとも3.5:1、少なくとも4:1、少なくとも4.5:1、少なくとも5:1、少なくとも5.5:1、少なくとも6:1、少なくとも6.5:1、少なくとも7:1、少なくとも7.5:1、少なくとも8:1、少なくとも8.5:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも11:1、少なくとも12:1、少なくとも13:1、少なくとも14:1、少なくとも15:1、少なくとも20:1、少なくとも25:1、少なくとも30:1、少なくとも40:1、少なくとも50:1、少なくとも100:1、少なくとも200:1、少なくとも300:1、少なくとも400:1、少なくとも500:1、少なくとも600:1、少なくとも700:1、少なくとも800:1、少なくとも900:1、または少なくとも1000:1、またはそれ以上である、目的の点突然変異の、挿入/欠失または意図しない点突然変異に対する比率を生み出すことができる。
【0184】
いくつかの実施形態では、目的の突然変異及び挿入/欠失の数は、例えば、国際PCT出願第PCT/2017/045381(WO2018/027078)号及び同第PCT/US2016/058344(WO2017/070632)号;Komor,A.C.,et al.,“Programmable editing of a target base in genomic DNA without double-stranded DNA cleavage” Nature 533,420-424(2016);Gaudelli,N.M.,et al.,“Programmable base editing of A・T to G・C in genomic DNA without DNA cleavage” Nature 551,464-471(2017);及び、Komor,A.C.,et al.,“Improved base excision repair inhibition and bacteriophage Mu Gam protein yields C:G-to-T:A base editors with higher efficiency and product purity” Science Advances 3:eaao4774(2017)に記載されている、任意の好適な方法を使用して測定することができ、これらの内容全体は参照により本明細書に組み込まれている。
【0185】
遺伝子発現レベルの変化
いくつかの実施形態では、本開示のCRISPR-Cas技術を使用して、標的核酸により制御された、またはコードされた遺伝子産物の遺伝子発現を変化させる(例えば、増加させる、または低下させる)。いくつかの実施形態では、遺伝子発現レベルは、例えば、遺伝子もしくはプロモーターの挿入、欠失、変異、遺伝子発現の不活性化、遺伝子発現の活性化、酵素組換え、指向性進化法、ナレッジベースのデザイン、ランダム変異導入法、遺伝子シャッフリング、及び/またはコドン最適化により、変化する。
【0186】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現レベルの変化は、DNAを標的にすることを含む。いくつかの実施形態では、DNAを標的にすることは、制御エレメントを標的にすることを含む。いくつかのそのような実施形態では、制御エレメントは、例えば、プロモーター、エンハンサー、内部リボソーム侵入部位(IRES)、ならびに、他の発現調節エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル及びポリU配列などの転写終結シグナル)を含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、遺伝子発現レベルの変化は、RNAを標的にすることを含む。いくつかの実施形態では、RNAを標的にすることは、RNAプロセシングを標的にすることを含む。いくつかのそのような実施形態では、RNAプロセシングを標的にすることは、例えば、RNAスプライシング(選択的スプライシングを含む)、RNAポリメラーゼ、ウイルス複製、tRNA生合成、及びRNA活性化を標的にすることを含む。
【0188】
ペイロード
いくつかの実施形態では、本開示は、標的核酸の位置において、ペイロード核酸の挿入を標的にする方法を提供する。いくつかのそのような実施形態では、方法は、標的核酸を、本明細書に記載する技術及びペイロード核酸(例えば、ペイロード核酸を含むドナー鋳型核酸)と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、本開示は、標的核酸におけるある位置からの、ペイロード核酸の除去を標的にする方法であって、上記方法は、標的核酸を、本明細書に記載する技術と接触させることを含む、上記方法を提供する。
【0189】
いくつかの実施形態では、ドナー鋳型核酸は、AAVウイルスベクターなどのベクター中で、または、直鎖一本鎖もしくは二本鎖DNA断片として、のいずれかで送達される。いくつかの実施形態では、相同組換え修復(HDR)によるドナー鋳型核酸の挿入のために、ドナー鋳型核酸は、対象となる座位に挿入されるペイロード核酸、加えて、所望の挿入部位に隣接する内因性配列に相同なフランキング配列を含む。いくつかの実施形態では、例えば、1kb長未満の短いペイロードを挿入するために、フランキング相同配列は、例えば、15~200ヌクレオチド長の範囲の、短いものであることができる。別の場合において、例えば、1kb長以上の長いペイロードを挿入するために、例えば、200ヌクレオチド長を上回るものなど、効率的なHDRを容易にするために、長い相同フランキング配列が必要である。いくつかの実施形態では、鋳型DNAフランキング領域に相同な配列間で、HDR用標的ゲノム座位を切断することにより、HDRの頻度を著しく増加させることができる。いくつかの実施形態では、HDRを容易にする切断事象としては、dsDNA切断、二重ニック形成、及び一本鎖ニック形成活性が挙げられるが、これらに限定されない。
【0190】
いくつかの実施形態では、ペイロード核酸は、特定の核酸に限定されない。いくつかの実施形態では、ペイロード核酸は、対象となる任意の核酸を含む。いくつかの実施形態では、例えば、ペイロード核酸は直鎖または環状である。いくつかの実施形態では、例えば、ペイロード核酸はプラスミド、ウイルスゲノム、RNA及び/またはDNAポリヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、ペイロード核酸は修飾核酸である。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型核酸は二本鎖(例えば、DNAまたはRNA)である。いくつかの実施形態では、ドナー鋳型核酸は一本鎖(例えば、DNAまたはRNA)である。外来性ドナー鋳型核酸を設計する方法は、例えば、WO2016094874に記載されており、その内容全体が参照により明示的に本明細書に組み込まれている。いくつかの実施形態では、ペイロード核酸は、障害及び/または疾患の処置、予防、及び/または診断において有用な核酸である。
【0191】
ベクター系及びベクター
いくつかの実施形態では、本開示のCRISPR-Cas技術は、Casタンパク質(複数可)、キメラ系(複数可)、ガイド(複数可)、及び/またはドナー鋳型核酸(複数可)を送達する、及び/または発現させるための系を含む。いくつかの実施形態では、系は、ベクター及び/またはベクター系を含む。ガイド及びドナー鋳型核酸の送達方法、加えて、タンパク質及びポリペプチドを外来的に発現する方法は当該技術分野において周知であり、当業者は、様々な技術を上手く用いることができることを認識するであろう。
【0192】
Casタンパク質及び/またはキメラ系をコードする、または、本開示のガイドもしくはドナー鋳型核酸を提供する組換えポリヌクレオチド(例えば、DNAまたはRNA)は、利用可能な種々の方法により調製することができる。例えば、所望の配列を、制限酵素を用いてDNAから除去することができる、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いてプラスミドもしくはゲノムポリヌクレオチド配列から増幅することができる、または、化学合成技術を用いて合成することができる。いくつかの実施形態では、周知の方法の組み合わせを利用して、組換えポリヌクレオチドを調製する。
【0193】
いくつかの実施形態では、本開示のCasタンパク質及び/またはキメラ系をコードする組換えポリヌクレオチドを、Casタンパク質及び/またはキメラ系を発現可能なベクターにクローニングする。いくつかの実施形態では、本開示のガイドまたはドナー鋳型核酸を提供する組換えポリヌクレオチドを、ベクターにクローニングする。クローニングは、利用可能な種々の方法(例えば、Gibsonアセンブリ、制限酵素消化及びライゲーションなど)により実施することができる。いくつかの実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、非ウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ベクターは、プラスミドである。
【0194】
いくつかの実施形態では、発現することができるベクターは、発現を制御する配列(複数可)(例えば、プロモーター、開始シグナル、停止シグナル、ポリアデニル化シグナル、活性化因子、抑制因子など)に動作可能に連結された、本開示のCasタンパク質及び/またはキメラ系をコードする組換えポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、発現を制御する配列(複数可)は、所望のレベルの発現を実現するように選択される。いくつかの実施形態では、発現を制御する2つ以上の配列(例えば、プロモーター)が利用される。いくつかの実施形態では、発現を制御する2つ以上の配列(例えば、プロモーター)が、複数のタンパク質及び/またはポリペプチドをコードする複数の組換えポリヌクレオチドの所望のレベルの発現を実現するために利用される。いくつかの実施形態では、複数の組換えタンパク質及び/またはポリペプチドは、同じベクター(例えば、バイシストロン性ベクター、トリシストロン性ベクター、マルチシストロン性)から発現する。いくつかの実施形態では、複数の組換えポリペプチドが発現し、そのそれぞれは、別々のベクターから発現する。
【0195】
いくつかの実施形態では、本開示のCasタンパク質及び/またはキメラ系をコードする組換えポリヌクレオチドを含むベクターを使用して、インビトロタンパク質合成によりCasタンパク質及び/またはキメラ系を発現させる。
【0196】
いくつかの実施形態では、本開示のCasタンパク質またはキメラ系をコードする組換えポリヌクレオチドを含む発現が可能なベクターを用いて、宿主細胞でCasタンパク質またはキメラ系を発現させる。いくつかの実施形態では、本開示のガイド及び/またはドナー鋳型核酸をもたらすことができるベクターを用いて、ガイド及び/またはドナー鋳型核酸を宿主細胞にもたらす。宿主細胞は、本明細書で開示するCRISPR-Cas技術を発現するのに好適な、種々の利用可能な、及び周知の宿主細胞(例えば、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、懸濁HEK293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞)から選択することができる。
【0197】
ベクターを宿主細胞に導入する種々の方法が、当該技術分野において周知である。いくつかの実施形態では、ベクターは、形質移入を使用して宿主細胞に導入され得る。いくつかの実施形態では、形質移入は、例えば、リン酸カルシウム形質移入、リポフェクション、またはポリエチレンイミン媒介形質移入を使用して完了される。いくつかの実施形態では、ベクターは、形質導入を使用して宿主細胞に導入され得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、上記組換えポリヌクレオチドの発現を可能にするために、形質転換された宿主細胞は、ベクターが宿主細胞に導入された後に、培養される。いくつかの実施形態では、形質転換された宿主細胞は、少なくとも12時間、16時間、20時間、24時間、28時間、32時間、36時間、40時間、44時間、48時間、52時間、56時間、60時間、64時間、68時間、72時間またはそれ以上培養される。形質転換された宿主細胞は、選択された宿主細胞の必要条件に従った増殖条件(例えば、温度、二酸化炭素レベル、増殖培地)で培養される。当業者であれば、選択された宿主細胞に対する培養条件が当該技術分野において周知であることを認識するであろう。
【0199】
使用
本明細書に記載するCRISPR-Cas技術は、例えば複数の細胞型及び組織で、標的核酸配列を修飾する(例えば、欠失する、挿入する、変異させる、転座させる、不活性化する、または活性化する)こと、ならびに、例えば、特異的高感度酵素レポーターアンロック(SHERLOCK)ベースアッセイにおいて、標的核酸(例えば、DNA及び/またはRNA)を検出することを含む、多種多様の使用を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する熱安定性Casタンパク質は、好熱性生物における、標的核酸の遺伝子編集及び/または検出において特に有用である。さらなる用途としては、核酸の追跡及び標識、濃縮アッセイ(例えば、試料から所望の配列を抽出すること)、循環腫瘍DNAの検出、次世代ライブラリーの調製、薬剤のスクリーニング、疾患及び障害の診断及び予後の提供、様々な遺伝病もしくは障害の処置、ならびに、様々な非遺伝病もしくは障害の処置、または、ゲノム操作による健康の増強が挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
遺伝子編集
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術は、遺伝子編集に用いられる。いくつかの実施形態では、遺伝子編集は、所望の標的遺伝子の発現における、遺伝子サイレンシング事象または発現の変化(例えば、増加もしくは低下)をもたらす。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術は、標的核酸により制御される、またはコードされる遺伝子産物の発現レベルを変化させる方法で用いられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術を、所望の細胞の標的核酸の修飾方法で用いる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示する技術は、細胞(例えば、真核細胞または原核細胞)において、標的核酸の部位特異的修飾を行い、発現した遺伝子産物の遺伝子発現または機能の所望の修正を実現する方法を提供する。
【0201】
いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質と、熱安定性Casタンパク質と複合体を形成することが可能であり、当該複合体の、少なくとも1つの標的核酸への結合を指令することが可能である、少なくとも1つのガイド配列と、を含む、組み換えられた自然に存在しないCRISPR-Cas技術を提供する。
【0202】
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、上記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイド配列と接触させることを含む、細胞内で少なくとも1つの標的核酸を切断する方法であって、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイド配列と複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸中で破壊を引き起こすことが可能である、上記方法を提供する。
【0203】
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞内での、少なくとも1つの標的核酸の発現を変化させる方法であって、上記細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、上記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイド配列と接触させることを含み、上記Casタンパク質は、上記ガイド配列と複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸配列を編集することが可能である、上記方法を提供する。
【0204】
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、上記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイド配列と接触させることを含む、細胞内で少なくとも1つの標的核酸を修飾する方法であって、上記Casタンパク質は、上記ガイド配列と複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸配列を編集することが可能である、上記方法を提供する。
【0205】
いくつかの実施形態では、本開示は、細胞内での、少なくとも1つの標的核酸の発現を変化させる方法であって、細胞を、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、上記少なくとも1つの標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイドと接触させることを含むみ、上記Casタンパク質は、上記少なくとも1つのガイドと複合体を形成することが可能であり、上記少なくとも1つの標的核酸配列を編集することが可能である、上記方法を提供する。
【0206】
したがって、いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1~10のいずれか1つに対して、約80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、配列番号1と同一である。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、配列番号2と同一である。
【0207】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、本開示のCRISPR-Casシステムを少なくとも1つの標的核酸に接触させることと、少なくとも1つの標的核酸の切断を行うことと、を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、二本鎖破壊を導入することにより、標的DNAまたはRNAデュプレックスを切断する。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、一本鎖破壊またはニックを導入することにより、標的DNAまたはRNAを切断する。
【0208】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、標的DNAを部位特異的な様式で修飾する修飾要素を含むキメラ系を含み、修飾活性は、メチルトランスフェラーゼ活性、デメチラーゼ活性、アセチルトランスフェラーゼ活性、デアセチラーゼ活性、キナーゼ活性、ホスファターゼ活性、ユビキチンリガーゼ活性、脱ユビキチン化活性、アデニル化活性、脱アデニル化活性、SUMO化活性、脱SUMO化活性、リボシル化活性、脱リボシル化活性、ミリストイル化活性、脱ミリストイル化活性、インテグラーゼ活性、トランスポーゼース活性、リコンビナーゼ活性、ポリメラーゼ活性、リガーゼ活性、ヘリカーゼ活性、またはヌクレアーゼ活性を含み、これらのいずれかは、DNAまたはDNA関連ポリペプチド(例えば、ヒストンもしくはDNA結合タンパク質)を修飾することができる。
【0209】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、アデノシンまたはシトシン塩基を修飾可能であり、部位特異的修飾要素として機能することができる、デアミナーゼ酵素を含むヌクレオチド塩基を化学修飾することによりDNA配列を編集可能な修飾要素(複数可)を含む、キメラ系を含む。様々な修飾要素が当該技術分野において周知であり、本明細書に記載する方法及び系で使用することができる。本開示を通した例示的な修飾要素は、例えば、Rees and Liu Nature Review Genetics,2018,19(12):770-788に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0210】
いくつかの実施形態では、修飾要素活性は、終止コドン(複数可)の導入をもたらし、例えば、遺伝子(複数可)をサイレンシングする。いくつかの実施形態では、修飾要素活性は、終止コドン(複数可)の除去をもたらす。いくつかの実施形態では、修飾要素活性は、開始コドン(複数可)の導入をもたらす。いくつかの実施形態では、修飾要素活性は、開始コドン(複数可)の除去をもたらし、例えば、遺伝子(複数可)をサイレンシングする。いくつかの実施形態では、修飾要素は、アミノ酸配列を変化させることにより、タンパク質機能の変化をもたらす。
【0211】
いくつかの実施形態では、本開示のCasタンパク質は、ヒストンによる融合により、標的核酸をエピジェネティック修飾する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、リーダー、ライター、またはイレーサータンパク質などの酵素をエピジェネティック修飾することによる融合により、標的核酸をエピジェネティック修飾する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、ヒストン修飾酵素と融合し、標的核酸の選択された領域でのヒストン修飾パターンを変化させる。ヒストン修飾は、例えば、メチル化、アセチル化、ユビキチン化、リン酸化、及び、多くの異なる組合せを含む、多くの異なる方法において生じることができ、DNAの構造変化をもたらす。いくつかの実施形態では、ヒストン修飾は、転写の抑制または活性化をもたらす。
【0212】
いくつかの実施形態では、本開示のCasタンパク質は、転写活性化因子タンパク質、転写リプレッサータンパク質、低分子/薬剤応答性転写制御因子、または、誘発性転写調節因子との融合による転写の増加または低下により、標的核酸の転写を制御する。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術を用いて、結合が遺伝子発現の増加または低下をもたらす箇所での、標的をコードするmRNA(すなわち、タンパク質コード遺伝子)の発現を制御する。
【0213】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術を用いて、プロモーターまたはエンハンサーなどの遺伝制御エレメントを編集することにより、遺伝子調節を制御する。
【0214】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術を用いて、tRNA、rRNA、snoRNA、siRNA、miRNA、及び長鎖ncRNAを含む、標的非コードRNAの発現を制御する。
【0215】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術を、クロマチンループ構造の標的組換えに用いる。いずれか1つの理論に拘束されることを望むものではないが、制御性ゲノム領域間でのクロマチンループの標的組換えにより、内因性クロマチン構造を操作する手段が提供され、新規のエンハンサー-プロモーター接続が形成され、遺伝欠陥を克服する、または、異常なエンハンサー-プロモーター接続を阻害することが可能となる。
【0216】
いくつかの実施形態では、生細胞のイメージングにCRISPR-Cas技術を用いる。例えば、いくつかの実施形態では、蛍光標識したCasタンパク質を、セントロメア及びテロメアなどの反復ゲノム領域に標的化させ、細胞周期をとおして、自然クロマチン座位を追跡し、3D核空間内での、転写活性及び不活性領域の位置の相違を測定する。
【0217】
処置方法
当業者により速やかに理解されるように、いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術は、様々な治療用途のうちの1つ以上で有用である。したがって、いくつかの実施形態では、治療を必要とする対象における障害または疾患の処置方法が提供される。いくつかのそのような実施形態では、方法は、対象に、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性である、コラテラル切断活性を有するCasタンパク質、及び、標的核酸にハイブリダイズすることができる少なくとも1つのガイド配列を投与することを含む。
【0218】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するCRISPR-Cas技術を用いて標的核酸配列を編集し、(例えば、1つ以上のヌクレオチドを挿入する、欠失させる、または変異させることで)標的核酸を修飾することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術は、所望の核酸配列(例えば、ペイロード核酸)を含む外来性ドナー鋳型核酸(例えば、DNA分子またはRNA分子)を含む。いずれか1つの理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術により誘発された切断事象の回復の際、細胞の分子機構は、切断事象の修復及び/または回復に、外来性ドナー鋳型核酸を利用することができる。あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、細胞の分子機構は、切断事象の修復及び/または回復に、内因性鋳型を利用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術を用いて標的核酸を修飾し、挿入、欠失、及び/または点突然変異をもたらす。いくつかのそのような実施形態では、挿入は、無傷挿入である(すなわち、目的の核酸配列を標的核酸に挿入することで、切断事象の回復の際に、意図しない追加の核酸配列が生じない)。
【0219】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示 するCRISPR-Cas技術を用いて、様々な疾患及び障害、例えば、遺伝病、単一遺伝子疾患、ヌクレアーゼ活性により処置可能な疾患、様々ながんなどを治療する。いくつかの実施形態では、本明細書で記載する方法を用いて、対象、例えば、ヒト患者などの哺乳類を処置する。いくつかの実施形態では、哺乳動物対象は、限定されるものではないが、イヌ、ネコ、ウマ、サル、ウサギ、ラット、マウス、ウシ、ヤギ、またはヒツジなどの家畜哺乳類であることも可能である。
【0220】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するCRISPR-Cas技術を、有益な臨床バリアントまたはサプレッサー突然変異を挿入することによる病原性変異の修正に用いる。
【0221】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するCRISPR-Cas技術を、RNA、毒性RNA、及び/または変異RNA(例えば、スプライシング欠陥もしくは切断)の過剰発現により引き起こされる疾患の処置に用いる。
【0222】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するCRISPR-Cas技術は、様々な疾患を引き起こすRNA依存性機能に影響を及ぼす、トランス作用変異を標的にする。
【0223】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するCRISPR-Cas技術を用いて、スプライシング欠陥及び疾患を引き起こす可能性がある、シス作用スプライシングコードを破壊する変異を標的にする。
【0224】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するCRISPR-Cas技術を、特にRNAウイルスに対する、抗ウイルス活性に用いる。いくつかの実施形態では、RNAウイルスは、例えば、Arenaviridae、Arteriviridae、Astroviridae、Birnaviridae、Bornaviridae、Bunyaviridae、Caliciviridae、Coronaviridae、Flaviviridae、Filoviridae、Hepeviridae、Nodaviridae、Nymaviridae、Orthmyxoviridae、Paramyxoviridae、Picobirnaviridae、Picornaviridae、Pneumoviridae、Reoviridae、Rhabdoviridae、またはTogaviridaeファミリーのウイルスである。いくつかの実施形態では、Casタンパク質は、ウイルスRNA配列を標的にするために選択される好適なRNAガイドを用いて、ウイルスRNAを標的にする。
【0225】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するCRISPR-Cas技術を用いて、対象(例えば、哺乳動物対象、例えば、ヒト対象)におけるがんを処置する。例えば、本明細書に記載するCasタンパク質は、いくつかの実施形態では、異常な(例えば、点突然変異を含む、または代わりにスプライシングされた)RNA分子を標的にするガイドによってプログラミングされ、がん細胞中において、当該がん細胞での細胞死を(例えば、アポトーシスにより)誘導することが発見されている。
【0226】
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術を用いて、対象における感染症を処置する。例えば、本明細書に記載するCasタンパク質は、いくつかの実施形態では、感染性剤細胞における細胞死を標的にし、これを誘発するために、感染性剤(例えば、細菌、ウイルス、寄生生物、または原生動物)により発現されるRNA分子を標的にするガイド配列によりプログラミングされる。いくつかの実施形態では、本明細書で開示するCRISPR-Cas技術は、細胞内の感染性剤が宿主対象の細胞に感染する疾患を処置する。いくつかの実施形態では、Casタンパク質を、感染性剤遺伝子によりコードされるRNA分子を標的にするようにプログラミングすることによって、感染性剤に感染した細胞が標的にされ、細胞死が誘発される。
【0227】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示するCRISPR-Cas技術は、治療送達のための細胞の生成に有用である。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、体細胞(例えば、造血幹細胞(HSC)、間葉系幹細胞(MSC))、及び、不死化細胞株(例えば、神経幹細胞株CTX)の生成に有用である。いくつかのそのような実施形態では、CRISPR-Cas技術により生成した細胞を、(例えば、障害及び/または疾患の処置のために)対象に投与する。
【0228】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組換え系のタンパク質及び/またはポリヌクレオチドのいずれかを含む、組成物、医薬組成物、ベクター、宿主細胞、及びキットを本明細書で提供する。
【0229】
コラテラル活性アッセイ
本明細書で提供する技術は、例えば、感染性剤(例えば、ウイルス、微生物、寄生生物など)由来の核酸、特定の生理学的状態または病状(例えば、がんまたは炎症性または代謝性疾患、障害または病状などといった、例えば、疾患、障害、または病状の存在または状態)を示す核酸、出生前核酸などを含む広範囲の核酸の検出を達成するために、幅広く適用可能であることを、当業者は速やかに理解するであろう。
【0230】
いくつかの実施形態では、標的核酸は、本明細書に記載するCas酵素と、ガイドとを含むアッセイにより検出される。いくつかの実施形態では、ガイドの構造は、Casタンパク質/ガイド複合体の活性に影響を及ぼす可能性がある。いくつかの実施形態では、Casタンパク質/ガイド複合体の構造は、Casコラテラル活性の熱安定性に寄与する。
【0231】
当業者は、Casタンパク質コラテラル活性を用いて開発されている、及び開発の途中にある、急増している多量の有能な検出(例えば、診断)アッセイを十分理解している。例えば、Sashital Genome Med 2018:10,32を参照されたい。さらに、当業者は、Casタンパク質のコラテラル活性に基づく「CRISPR/Casバイオセンシングシステムの詳細な分類」が最近、一般に入手可能となっていることを十分理解している。Li et al Trends Biotechnol.37:730,July 2019によるレビューを参照されたい。
【0232】
特に興味深いフォーマットとしては、「SHERLOCK」及び/または「HUDSON」系として参照されるものを含む、Cas13ベース(例えば、Cas13aまたはCas13bベース)の系(例えば、Gootenberg et al,Science 356:438,2017;Gootenberg et al,Science 360:339,2018;Myhrvold et al.,Science 360:444,2018を参照されたい;US10266887もまた参照されたい)、ならびに、「HOLMES」または「DETECTR」系として参照されるものを含む、Cas12ベース(例えば、Cas12aまたはCas12bベース)の系(例えば、Cheng et al.CN特許出願CN107488710A;PCT/CN18/82769及びUS16/631,157;Li et al.Cell Disc.4:20,2018;Chen et al.Science 360:436,2018;Li,L.et al.bioRxiv Published online July 26,2018.http://dx.doi.org/10.1101/362889;US10253365を参照されたい)が挙げられる。Cas13aとCas13b酵素の両方が、SHERLOCK及び/またはHUDSON系で用いられており、Cas12aとCas12bの両方も同様である。
【0233】
従来技術で周知のとおり、そして、本明細書で引用される参考文献に記載されているとおり、Casタンパク質コラテラル切断活性を利用する典型的な検出アッセイには、コラテラル活性を有するCasタンパク質と、対象となる標的核酸配列に相補的なガイドと、を含む適切なCRISPR-Cas複合体を、標的核酸を含有し得る試料と接触させることが伴う。標的核酸配列の認識時に、Casタンパク質のコラテラル活性が活性化されることで、Casタンパク質が無関係の核酸(酵素に応じて、DNAもしくはRNA、または両方)を切断する。活性化されたコラテラル活性の結果としてその切断が検出可能となる(例えば、フルオロフォアをクエンチャーから分離することで、蛍光が検出可能となる、など)ように、適切に構成される(例えば、標識される)、関連する切断可能な核酸のレポーターが提供される。
【0234】
多くのアッセイにおいて、標的核酸配列が生成される、及び/または増幅される(例えば、RNAからDNAにコピーされる、及び/または、プライマー伸長、DNA複製(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応による)、及び/または転写により増幅される)。例えば、上述のLiのレビュー(Li et al Trends Biotechnol.37:730,July 2019)における、図3及び4を参照されたい。
【0235】
したがって、多くの実施形態では、コラテラル活性アッセイは、(1)標的核酸のコピー及び/または増幅ステップと、(2)標的核酸結合ステップと、(3)シグナル放出及び/または検出ステップと、を含む。
【0236】
典型的には、提供される技術を1つ以上の試料に適用し、試料における1つ以上の標的核酸の存在及び/またはレベルを調査する。いくつかの実施形態では、試料は生物学的試料であり、いくつかの実施形態では、試料は環境試料である。いくつかの実施形態では、試料は粗試料(例えば、一次試料、または、最小の処理を受けている試料)である。
【0237】
いくつかの実施形態では、試料は処理される(例えば、核酸は、一次試料から部分的に、または実質的に単離される、または精製される)。いくつかの実施形態では、最小の処理のみが行われる(すなわち、試料は粗試料である)。
【0238】
通常、本明細書に記載するコラテラル活性アッセイはインビトロアッセイである。いくつかの実施形態では、コラテラル活性アッセイは無細胞アッセイであり得る(例えば、インタクトな細胞を、または、いくつかの実施形態では、細胞断片を、実質的に非含有であり得る)。
【0239】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するコラテラル活性アッセイは、生物学的一次試料(例えば、血液、唾液、涙、尿など)、または環境一次試料(例えば、土壌、水など)である、または、これらから調製される試料にて行われる。
【0240】
いくつかの実施形態では、核酸検出ステップ及び標的結合ステップは、単一容器内で行われる。いくつかの実施形態では、標的結合ステップ及びシグナル放出ステップは、単一容器内で行われる。いくつかの実施形態では、(1)標的コピー及び/または増幅ステップのステップ、(2)標的結合ステップのステップ、ならびに(3)シグナル放出及び/または検出ステップのステップは、単一容器内で行われる。いくつかの実施形態では、全ステップが単一容器で行われる、すなわち、提供される改良されたアッセイは、ワンポットアッセイである。
【0241】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する、改良されたコラテラル活性アッセイはインビトロアッセイである。いくつかの実施形態では、コラテラル活性アッセイは無細胞アッセイであり得る(例えば、インタクトな細胞を、または、いくつかの実施形態では、細胞断片を、実質的に非含有であり得る)。
【0242】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する改良されたコラテラル活性アッセイは、生物学的一次試料(例えば、血液、唾液、涙、尿など)、または環境一次試料(例えば、土壌、水など)である、または、これらから調製される試料にて行われる。
【0243】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、本開示はとりわけ、本開示のCRISPR-Cas技術を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、少なくとも60~65℃超の温度で熱安定性であるコラテラル切断活性を有するCasタンパク質と、熱安定性Casタンパク質と複合体を形成することが可能であり、当該複合体の、少なくとも1つの標的核酸への結合を指令することが可能である、少なくとも1つのガイド配列と、を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物はドナー鋳型核酸をさらに含む。
【0244】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本開示のCRISPR-Cas技術を発現することができる、及び/またはこれを提供することができる、ベクターまたはベクター系を含む。
【0245】
いくつかの実施形態では、本開示のCRISPR-Cas技術は、適切な薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることにより、医薬組成物中に配合される。
【0246】
いくつかの実施形態では、本開示のCRISPR-Cas技術は、薬学的に許容されるビヒクル中で医薬組成物に配合される。いくつかのそのような実施形態では、例えば、薬学的に許容されるビヒクルは、監督機関により認可されたビヒクルであってよい。
【0247】
いくつかの実施形態では、ビヒクルとは、本発明の化合物が、対象への投与のために配合される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または担体を意味する。いくつかのそのような実施形態では、医薬用ビヒクルは、脂質、例えばリポソーム、例えばリポソームデンドリマー;水、及び、石油、動物、植物または合成由来(例えば、ピーナッツオイル、大豆油、鉱油、ゴマ油など)、生理食塩水のものを含む油などの液体;アラビアゴム、ゼラチン、デンプンペースト、タルク、ケラチン、コロイダルシリカ、尿素などであることができる。いくつかの実施形態では、補助剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、及び着色剤を使用する。いくつかの実施形態では、医薬組成物を、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座薬、注射、吸入薬、ゲル、微粒子、及びエアロゾルなどの、固体、半固体、液体、または気体形態の調製物に配合する。
【0248】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術の投与は、様々な方法で達成することができる。いくつかの実施形態では、投与は、経口、頬側、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、気管内、眼内などの投与を含む。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、投与後に全身性となることができるか、または、局所投与、壁内投与の使用、または、移植部位にて活性用量を保持する作用を果たすインプラントの使用により局在化することができる。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、即座の活性のために配合されるか、または、持続放出のために配合される。
【0249】
いくつかの実施形態では、処置方法は、中枢神経系の疾患または障害を処置することを含む。いくつかのそのような実施形態では、CRISPR-Cas技術を、血液脳関門(BBB)を通過する医薬組成物に配合する必要があり得る。例えば、いくつかの実施形態では、血液脳関門(BBB)を通過する薬剤送達は、マンニトールもしくはロイコトリエンなどの浸透方法、または、ブラジキニンなどの血管作動物質の生化学的な使用によるいずれかにより、BBBの破壊を伴う。いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術を脳に標的化するための、BBBの開口を用いる。いくつかの実施形態では、BBB破壊剤は、組成物が血管内注射により投与される際に、本発明の治療用組成物と同時投与される。いくつかの実施形態では、例えば、カベオリン-1媒介性トランスサイトーシス、グルコース及びアミノ酸担体などの担体媒介性トランスポーター、インスリンまたはトランスフェリンに対する受容体媒介性トランスサイトーシス、及び、p-糖タンパク質などの活性流出トランスポーターを含む、内因性輸送システムの使用の、BBBを通過させる他の方法が用いられる。
【0250】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術は、局所送達により、例えば、髄腔内送達により、BBBを超えて送達される。
【0251】
いくつかの実施形態では、CRISPR-Cas技術を含む有効量の調製物が提供される。いくつかの実施形態では、投与される、本明細書に記載する医薬組成物の有効量または有効用量の計算は、当業者の技術範囲内であり、当業者には日常的なものであろう。いくつかのそのような実施形態では、投与される最終量は、投与経路、及び処置される障害または状態の性質に依存するであろう。
【0252】
いくつかの実施形態では、特定の患者に与えられる有効量は様々な因子に依存し、これらのいくつかは、患者毎で異なるであろう。有能な臨床医は、患者に投与し、必要に応じて病状の進行を停止する、または逆転される、有効量の医薬組成物を決定することができるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、LD50動物データ、及び、剤に関して入手可能なその他情報を利用して、臨床医は、投与経路に応じて、個体に対する最大安全用量を決定することができる。いくつかの実施形態では、例えば、治療用組成物が投与される流体本体がより大きいことを考慮すると、静脈内投与される用量は、髄腔内投与される用量を上回る場合がある。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、治療濃度を維持するために、より高用量で、または反復用量で投与される。従来技術を利用して、有能な臨床医は、日常的な臨床試験の過程において、特定の医薬組成物の用量を最適化することが可能であろう。
【0253】
いくつかの実施形態では、医薬組成物としては、所望される製剤に応じて、薬学的に許容される、無毒性の、希釈剤の担体が挙げられ、これらは、動物またはヒト投与用の医薬組成物を製剤化するために一般的に用いられるビヒクルとして定義される。いくつかの実施形態では、希釈剤は、組合せの生物活性に影響を及ぼさないように選択される。いくつかのそのような実施形態では、例えば、希釈剤は蒸留水、緩衝水、生理食塩水、PBS、リンゲル液、デキストロース溶液、及びハンクス液である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、他の担体、アジュバント、または無毒性非治療剤、非免疫原性安定剤、賦形剤などを含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、pH調整及び緩衝剤、毒性調整剤、湿潤剤、及び洗剤などの、生理学的条件に近づける追加の物質を含む。
【0254】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、例えば、酸化防止剤などの、種々の安定化剤のいずれかを含む。医薬組成物がポリペプチドを含むいくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ポリペプチドのインビボ安定性を向上させる、または別の方法で、その薬理学的性質を向上させる(例えば、ポリペプチドの半減期を増大させる、その毒性を低下させる、及び、適切な参照標準と比較して、溶解度または取込みを向上させる)、様々な周知の化合物と複合体化される。限定されるものではないが、このような修飾剤または錯化剤の例としては、サルフェート、グルコネート、シトレート、及びホスフェートが挙げられる。いくつかの実施形態では、組成物の核酸またはポリペプチドを含む医薬組成物を、適切な参照標準と比較して、そのインビボ性質を向上させる分子と複合体化させることができる。そのような分子としては、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、及び脂質が挙げられる。
【0255】
いくつかの実施形態では、高純度の医薬組成物を製剤化するために用いられる構成成分は、潜在的に有害な汚染物質(例えば、少なくとも国の食品(NF)グレード、一般には、少なくとも分析グレード、より典型的には、少なくとも医薬品グレード)を実質的に非含有である。いくつかの実施形態では、インビボ使用が意図される組成物は滅菌されている。いくつかの実施形態では、所与の医薬組成物が使用前に合成を必要とする程度にまで、得られた生成物は通常、潜在的なあらゆる毒性剤、特にあらゆる内毒素を含有せず、これらは、合成または精製プロセス中に存在し得ることとなる。
【0256】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は予防及び/または治療的処置のために投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物の毒性及び治療効果は、例えば、LD50(集団の50%を致死させる用量)、及び/または、ED50(集団の50%において治療に有効な用量)を測定することを含む、細胞培養及び/または実験動物などにおける、標準的な薬学手順に従い測定される。
【0257】
キット
別の態様では、本開示は、上記組成物及び方法に開示される要素のいずれか1つ以上を含有するキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載するベクター及び/またはベクター系を含む。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載するCRISPR-Cas技術の構成要素、例えば、Casタンパク質(複数可)、ガイド(複数可)、ドナー鋳型核酸(複数可)、及び/またはポリヌクレオチド、ベクター、及び/または、これをコードするもしくは提供するベクター系(例えば、DNAもしくはRNA)の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、キットは、キットを使用するための、1つ以上の言語での取扱説明書を含む。いくつかのそのような実施形態では、取扱説明書は、本明細書に記載する特定の用途及び/または方法に対するものである。要素は個別に、または組み合わせて提供することができる。キットは、任意の好適な容器で提供することができる。いくつかの実施形態では、好適な容器は、例えば、バイアル瓶、ボトル、またはチューブである。
【0258】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載する要素の1つ以上を利用するプロセスで用いるための、1つ以上の試薬を含む。試薬は、任意の好適な容器で提供することができる。例えば、いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の反応または保存緩衝液を提供する。試薬は、特定のアッセイで使用可能な形態で、または、使用前に1つ以上の他の構成要素の添加を必要とする形態(例えば、濃縮物もしくは凍結乾燥形態)で提供することができる。いくつかの実施形態では、緩衝液は特定の緩衝液に限定されない。いくつかの実施形態では、緩衝液は、炭酸ナトリウム緩衝液、重炭酸ナトリウム緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、トリス緩衝液、MOPS緩衝液、HEPES緩衝液、及びこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の緩衝液であることができる。いくつかの実施形態では、緩衝液はアルカリ性である。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約7~約10のpHを有する。いくつかの実施形態では、キットは、ガイド配列及び制御エレメントを作動可能に連結させるためにベクターに挿入するためのガイド配列に対応する、1つ以上のオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、キットは、相同組換え鋳型ポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載する、ベクターの1つ以上及び/またはポリヌクレオチドの1つ以上を含む。キットは、有利には、本発明の系の要素全てを提供することを可能にし得る。
【実施例
【0259】
実施例1:例示的な熱安定性Casタンパク質の候補
本実施例は、特定の熱安定性Casタンパク質の候補について記載する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【0260】
実施例2:追加の候補熱安定性Casタンパク質の例示的な特性決定
本実施例は、例示的な熱安定性Casタンパク質である、Pal1(配列番号1)、Pal2低MW、Pal2高MW(配列番号2)、及びPal3(配列番号3)の特性決定を示す。DnaseAlertをレポーターとして用いる、Casのみの反応において、37℃及び56℃の両方で、4つのガイド(342-353と表記)で、各酵素を試験した。蛍光シグナルを、各反応について時間に対してプロットした(図1)。Pal1は、56℃で2つのガイドに対する低い活性を示した。Pal2低MWまたはPal3に対しては活性が観察されなかった一方で、Pal2高MWに関しては、56℃で2つのガイドに対して活性が観察された。56℃におけるPal1及びPal2活性を図2に示す。これらの酵素を用いる研究のさらなる結果を、図3~8に示す。確認できるとおり、Pal1は、56℃及び70℃において、2つのガイドに対して活性を示した。Pal1は、57℃で最大活性を示し、少なくとも67℃に対して顕著な活性を示した。Pal2高MWは、56℃で2つのガイドに対する活性を示した。Pal2高MWはまた、47~52℃で最大活性を示し、少なくとも57℃以下で顕著な活性を示した。Pal2低MW、または、Pal3~6のいずれに対しても、37℃、56℃、または70℃で顕著な活性は観察されなかった。したがって、当業者は、これらの酵素は、少なくとも約56℃で、及び/または、56℃~70℃の範囲内で、熱安定性であることを理解する。これらの、例示される特定の酵素は、その関連する活性(複数可)が、劇的に低下する、及び/または、37℃などのより低温で検出されないため、熱活性であると記載され得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、好熱性生物の酵素は多くの場合、そのような温度において活性の低下(または、検出不可能な活性)を示し得ることに留意されたい。
【0261】
例示的な熱安定性Casタンパク質である、Pal1(配列番号1)、Pal2(配列番号2)、Pal3(配列番号3)、Pal4(配列番号4)、Pal5(配列番号5)、Pal6(配列番号6)、Pal8(配列番号8)、Pal9(配列番号9)、及びPal10(配列番号10)をさらに特性決定するために、例示的なタンパク質融解法を用いて、酵素変性を調査した。Casタンパク質を緩衝液及び色素と混合し、融解曲線を生成した。温度が上昇すると、Casタンパク質はアンフォールドする。例示的なCasタンパク質がアンフォールドすると、疎水性領域が露出し、Casタンパク質への色素の結合がもたらされる。結合時に、色素が蛍光を発する。温度変化に伴う蛍光の変化を、溶解曲線の温度に対してプロットする。Casタンパク質の融解温度を計算し、適切な参照標準(例えば、既知の熱安定性を有するCasタンパク質、例えば、Aac及び/またはRS9)の融解温度と比較した。融解温度の変化は、タンパク質の安定性(例えば、熱安定性)及び活性の変化に相関している(図9)。Casタンパク質(PAL1~10)は、参照熱安定性タンパク質Aac及びRS9と比較して、熱安定性活性を有する、すなわち、Casタンパク質PAL1~10は熱安定性であることを、図9は示す。
【0262】
実施例3: ガイド-RNAとの複合体における、熱安定性Casタンパク質のコラテラル活性シグナル
【0263】
本実施例は、本明細書に記載するCasタンパク質のコラテラル活性をさらに示す。異なる組換えガイドRNAに複合体化した、熱安定性Casタンパク質(PAL5、PAL8、PAL9、及びPAL10)のコラテラル活性を、2つの異なるアッセイ:標的増幅を伴わないアッセイ(casのみ)、及び、標的増幅を伴うアッセイ(RT-SLK)で試験した。異なる標的及び長さを有するガイドRNAを組み換えた(配列番号11~19)。組換えガイドRNAを表2に示す。
【0264】
【表2-1】
【表2-2】
【0265】
Casのみの反応(図10、12、14、及び16):
Casのみの反応は、純粋なgBlock DNAとして供給される、意図する標的にハイブリダイズした組換えガイド-RNAと複合体化した、関連するCas酵素を含む。詳細には、Casのみの反応のために、標的の増幅を、Cas検出とは別に実施した(Pal5のみ)。いくつかの実験では、一本鎖DNA標的(オリゴ)を、100nMの濃度でCas反応に直接加えた。Pal5に関して、20uLの反応物(1X Warmstart RT-LAMPミックス(NEB)、1X プライマーミックス)中の、N遺伝子またはO遺伝子特異的LAMPプライマーを用いて、100cp/uL(200cp/反応)のSARS-CoV-2ゲノムRNAから開始する、LAMP増幅標的を増幅した。反応物を、60℃で40分間インキュベートした。Casのみの反応全てに関して、5uLの、ssDNA標的、またはLAMP増幅産物のいずれかを、250nMのPal酵素、250nMの対応するガイド、8mMのMgCl2、及び、250nMのDNAse Alertに添加した。Cas酵素の活性化を60℃で、QS5 PCR機にて監視し、蛍光を毎分測定した。
【0266】
リアルタイムSHERLOCK(RT-SLK)反応(図11、13、15、及び17):
RT-SLK反応に関して、標的核酸をまず、LAMPを用いて指数関数的に増幅させ、その一方で、増幅した物質を同時に、そのガイドRNAとの複合体中で、Cas酵素を用いて検出する。詳細には、RT-SLK反応のために、LAMPベース増幅を、単独チューブ内でCas読取りと組み合わせた。20uLのRT-SLK反応用の終濃度は以下のとおりである:1x Warmstart RT-LAMPミックス(NEB)を、1xのLAMPプライマー(プライマーセットN、またはプライマーセットO)、0.01U/uLのTIPP(熱安定性無機ホスファターゼ(NEB))、125nM C7-FAMレポーターまたはDNAse Alert(250nM)、250nMのCas酵素、及び、250nMの対応するガイドRNAと組み合わせた。出発標的物質として、100cp/uL(200cp/反応)のSARS-CoV-2ゲノムRNAを用い、反応物をQS5 PCR機に入れ、60℃でインキュベートし、蛍光を監視し、毎分測定した。
【0267】
試験した熱安定性Casタンパク質(PAL5、PAL8、PAL9、及びPAL10)は、「ワンポット」検出アッセイにおいて機能的であり、簡便な分子診断を可能にすることを、図10~17は示す。さらに、熱安定性Casタンパク質のPAL5、PAL8、PAL9、及びPAL10は、LAMPなどの、化学的に可能となる増幅(RT-SLK反応)と適合性があることを、図11、13、15、及び17は示す。増幅と検出をワンポットに組み合わせる能力により、全体的な診断アッセイまたは治療アッセイの複雑さが軽減される。
【0268】
ガイドの可変ドメイン(表2において太字で示す)を単に交換することにより、ガイド-RNAは、複数の標的(ここではSCoV2-NまたはSCV2-O)の検出を可能にすることを、図10及び11は示す。したがって、ガイド-RNA crEF82、またはガイド-RNA crEF88のいずれかに複合体化したPAL5は、その標的を検出することが可能であった。2つのガイド-RNAは、異なる性能レベルを有したが、共に、バックグラウンドを上回る鮮明なシグナルを示した。
【0269】
PAL9またはPAL10に複合体化した様々な長さのガイド-RNAは全て、完全な機能を保持した(全て、バックグラウンドを上回る鮮明なシグナルを示した)ことを、図14~17は示す。このことは、長いガイドRNA(例えば、crJP103、crJP104、またはcrJP107)と比較して、小さいガイド-RNA(例えば、crJP105またはcrJP109)は、診断または治療アッセイにおいて、機能活性を損なわないことを示す。
【0270】
均等物
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または定型的な実験のみを使用してそれらを確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されることを意図するものではなく、以下の特許請求の範囲に記述されるようなものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】