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特表2024-527941適合可能な表面特性を有する縫合糸、並びに関連するシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】適合可能な表面特性を有する縫合糸、並びに関連するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 17/00 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A61L17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504839
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2022070732
(87)【国際公開番号】W WO2023006636
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/225,664
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】スペンシナー・デビッド・ビー
(72)【発明者】
【氏名】コネリー・デニス
(72)【発明者】
【氏名】ホイッタカー・グレゴリー・アール
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AC02
4C081BB01
4C081BB08
4C081CA161
4C081CA172
4C081CA181
4C081CA211
4C081CA271
4C081CB011
4C081CD041
4C081CD091
4C081CD121
4C081DA04
4C081DB01
4C081DB07
(57)【要約】
長手方向に沿って細長く、第1の構成から第2の構成にサイズが変化するように構成された縫合糸構造体は、長手方向に沿って延在し、それぞれの交点で繊維の第2のサブセットによって交差される繊維の第1のサブセットを含む複数の絡み合った繊維を有する外側材料層を含み、繊維の第1のサブセット及び繊維の第2サブセットが、縫合糸構造体が第1の構成と第2の構成との間で変化するにつれて、外側材料層の表面テクスチャ及び視覚的外観のうちの1つ以上を変化させるように、互いに対して再配向するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って細長い縫合糸構造体であって、前記縫合糸構造体は、第1の構成から第2の構成にサイズが変化するように構成されており、前記縫合糸構造体は、
前記縫合糸構造体の外面を画定する材料層であって、前記長手方向に沿って、かつ前記長手方向に沿って配向された中心軸の周りに延在し、複数の繊維を含む、材料層と、
前記複数の繊維内に延在する複数のバーブであって、前記バーブの外側端部は、前記縫合糸構造体が前記第1の構成にあるときに前記繊維間に長手方向に存在し、前記バーブは、前記縫合糸構造体が前記第2の構成にあるときに前記バーブの前記外側端部が前記中心軸に垂直な半径方向に沿って前記外面から外向きに延在するように展開可能である、複数のバーブと、を備える縫合糸構造体。
【請求項2】
前記バーブは、その内側端部から前記それぞれの外側端部まで延在し、前記縫合糸構造体が前記第2の構成にあるとき、前記バーブは、前記中心軸に対してそれぞれの展開角度で延在する、請求項1に記載の縫合糸構造体。
【請求項3】
前記バーブは、前記縫合糸構造体が前記第1の構成にあるとき、前記中心軸に対して第1の角度で延在し、前記展開角度は、前記それぞれの第1の角度よりも大きい、請求項2に記載の縫合糸構造体。
【請求項4】
前記展開角度は、前記第1の角度よりも約10パーセント大きい、請求項3に記載の縫合糸構造体。
【請求項5】
前記複数のバーブの少なくとも第1のサブセットの前記外側端部は、前記長手方向に沿って配向された第1の長手方向に方向成分を有するそれぞれの方向に沿って前記それぞれの内側端部から離間しており、前記第1の長手方向は一方向であり、前記長手方向は二方向である、請求項3に記載の縫合糸構造体。
【請求項6】
前記複数のバーブの少なくとも大部分の前記外側端部は、前記第1の長手方向に方向成分を有する前記それぞれの方向に沿って前記それぞれの内側端部から離間されている、請求項5に記載の縫合糸構造体。
【請求項7】
前記複数のバーブの第2のサブセットの前記外側端部は、前記第1の長手方向とは反対の第2の長手方向に方向成分を有するそれぞれの方向に沿って前記それぞれの内側端部から離間しており、前記第2の長手方向が一方向である、請求項5に記載の縫合糸構造体。
【請求項8】
前記複数のバーブの前記第1のサブセットの少なくともいくつか及び前記第2のサブセットの少なくともいくつかが、前記縫合糸構造体の少なくとも長手方向部分に沿って互いに散在している、請求項7に記載の縫合糸構造体。
【請求項9】
前記材料層は、前記複数の繊維が一緒に編まれた編組ジャケットであり、前記複数のバーブは、前記編組ジャケット内で編まれた少なくとも1つのキャリアストランドによって担持されている、請求項1に記載の縫合糸構造体。
【請求項10】
前記少なくとも1つのキャリアストランドは、前記中心軸の周りに螺旋状に延在する、請求項9に記載の縫合糸構造体。
【請求項11】
前記少なくとも1つのキャリアストランドは、前記長手方向に沿って実質的に真っ直ぐに延在する、請求項9に記載の縫合糸構造体。
【請求項12】
前記バーブは、前記外側端部から、前記中心軸と前記材料層との間に環状に配置された基材によって担持されるそれぞれの内側端部まで延在する、請求項1に記載の縫合糸構造体。
【請求項13】
前記長手方向に沿って細長いコアを更に備え、前記材料層は、前記コアの外面の周りに延在し、前記コアは、前記縫合糸を前記第1の構成から前記第2の構成に移行させるように、水性環境への曝露に応答して、前記半径方向に沿って拡張し、前記長手方向に沿って収縮するように構成されている、請求項1に記載の縫合糸構造体。
【請求項14】
前記材料層は、前記コアが半径方向に拡張し、長手方向に収縮することによって、前記繊維が前記バーブの前記外側端部を前記縫合糸構造体の前記外面から前記半径方向に沿って外向きに押し出すように構成されている、請求項1に記載の縫合糸構造体。
【請求項15】
長手方向に沿って細長い縫合糸構造体であって、前記縫合糸構造体は、第1の構成から第2の構成にサイズが変化するように構成されており、前記縫合糸構造体は、
前記長手方向に沿って延在する外側材料層を備え、前記外側材料層は、それぞれの交点において繊維の第2のサブセットによって交差される繊維の第1のサブセットを含む複数の絡み合った繊維を含み、前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットのうちの少なくとも1つの繊維は、別個の視覚的印を有し、前記外側材料層は、前記別個の視覚的印が、
前記縫合糸構造体が前記第1の構成にあるときの第1の可視化特性と、
前記縫合糸構造体が前記第2の構成にあるときの第2の可視化特性であって、前記第1の可視化特性とは視覚的に異なる、第2の可視化特性と、を有するように、構成されている、縫合糸構造体。
【請求項16】
前記別個の視覚的印は、前記交点に又は前記交点に隣接して位置する前記繊維の第1のサブセット上の別個の着色領域を含み、
前記第1の可視化特性及び前記第2の可視化特性のうちの一方は、前記別個の着色領域が前記繊維の第2のサブセットによって実質的に覆い隠されていることによって引き起こされ、
前記第1の可視化特性及び前記第2の可視化特性のうちの他方は、前記別個の着色領域の少なくとも一部が実質的に露出されることによって引き起こされる、請求項15に記載の縫合糸構造体。
【請求項17】
前記第1の可視化特性及び前記第2の可視化特性のうちの他方は、可視パターンを集合的に提示する前記別個の着色領域の前記少なくとも一部によって画定されている、請求項16に記載の縫合糸構造体。
【請求項18】
前記別個の着色領域の前記少なくとも一部が、前記縫合糸構造体が前記第2の構成にあるときに実質的に露出される前記別個の着色領域の1つ以上の端部を含む、請求項16に記載の縫合糸構造体。
【請求項19】
前記別個の着色領域は、前記繊維の第1のサブセットによって担持される着色トレーサフィラメントによって画定されている、請求項16に記載の縫合糸構造体。
【請求項20】
前記第1の可視化特性は、前記別個の着色領域が前記繊維の第2のサブセットによって実質的に覆い隠されていることによって引き起こされ、前記第2の可視化特性は、前記別個の着色領域の前記少なくとも一部が実質的に露出されることによって引き起こされる、請求項16に記載の縫合糸構造体。
【請求項21】
前記別個の視覚的印が、前記繊維の第1のサブセット上の別個の放射線不透過性領域を含む、請求項15に記載の縫合糸構造体。
【請求項22】
前記長手方向に沿って細長いコアを更に備え、前記外側材料層は、前記コアの外面の周りに延在し、前記コアは、前記縫合糸を前記第1の構成から前記第2の構成に移行させるように、水性環境への曝露に応答して、半径方向に沿って拡張し、前記長手方向に沿って収縮するように構成され、前記半径方向は、前記長手方向に実質的に垂直である、請求項15に記載の縫合糸構造体。
【請求項23】
前記外側材料層は、前記コアが半径方向に拡張しかつ長手方向に収縮することにより、少なくとも実質的に前記別個の視覚的印を前記第1の可視化特性から前記第2の可視化特性に移行させるように、前記繊維の第1のサブセットが前記繊維の第2のサブセットに対して再配向するよう構成されている、請求項22に記載の縫合糸構造体。
【請求項24】
前記第1の可視化特性と前記第2の可視化特性との間の差は、前記縫合糸構造体の少なくとも一部が受ける長手方向の歪みの変化を示す、請求項22に記載の縫合糸構造体。
【請求項25】
長手方向に沿って細長い縫合糸構造体であって、前記縫合糸構造体は、第1の構成から第2の構成にサイズが変化するように構成されており、前記縫合糸構造体は、
前記長手方向に沿って延在する外側材料層を備え、前記外側材料層は、それぞれの交点において繊維の第2のサブセットによって交差された繊維の第1のサブセットを含む複数の絡み合った繊維を含み、
前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットは、前記縫合糸構造体が前記第1の構成と前記第2の構成との間で変化するにつれて、前記外側材料層の表面テクスチャ及び視覚的外観のうちの1つ以上を変化させるように、互いに対して再配向するように構成されている、縫合糸構造体。
【請求項26】
前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットは、前記縫合糸構造体が前記第1の構成と前記第2の構成との間で変化するにつれて、前記外側材料層の表面テクスチャを変化させるように、互いに対して再配向するように構成され、前記表面テクスチャの変化は、前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットの再配向によって前記外側材料層の外面から外向きにバーブの外側端部を押し出すことにより引き起こされる、請求項15に記載の縫合糸構造体。
【請求項27】
前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットは、前記縫合糸構造体が前記第1の構成と前記第2の構成との間で変化するときに、前記外側材料層の視覚的外観を変化させるように、互いに対して再配向するように構成され、前記外観の変化は、前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットの再配向によって前記繊維の別個の着色領域を露出状態から覆い隠された状態に移行させることにより引き起こされる、請求項15に記載の縫合糸構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2021年7月26日に出願された米国特許出願第63/225,664号の利益を主張し、その全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、縫合糸材料に関し、より詳細には、埋め込みに応答して表面テクスチャ及び/又は表面視覚的提示の変化を受けるように構成された縫合糸材料に関する。
【背景技術】
【0003】
軟骨、皮膚、筋肉、骨、腱及び靱帯などの組織への損傷は、損傷を修復し、治癒を促進するために外科的介入を必要とすることが多い。組織損傷を修復するための外科的処置は、損傷した組織内又はそこに隣接して埋め込まれた1つ以上の固定装置に接続された縫合糸を使用して行われる。縫合糸はまた、修復部を固定するために、様々な外科的技術により、組織を通過させるか、又はその周囲に通すこともできる。縫合糸はまた、修復を行うために使用される2つ以上のアンカーを相互接続することができる。縫合糸アンカーは、金属及び耐久性ポリマーなどの非吸収性材料、並びに吸収性ポリマー、バイオセラミック、吸収性複合材、及び加工骨などの生体吸収性材料を含む様々な材料から形成された本体を用いて製造されている。
【0004】
例えば、縫合糸アンカーは、織物の縫合糸材料の比較的柔らかく柔軟な性質により、他のタイプの骨アンカーに比べて骨内のより小さな予設したドリル穴内に縫合糸アンカーが概ね適合することによって、アンカー挿入前に除去されるべき骨の量が低減するため、骨材料内の固定に対して利点を呈する。更に、縫合糸は、例えば、アンカー本体内の穴又は他の通路を使用して、固定的又は摺動的に縫合糸アンカーを介して、又はその周囲に接続でき、固定又は摺動ノット、アンカー構成要素間の干渉、アンカーと周囲の組織との間の干渉、又は他の手段を使用して固定できる。いくつかの縫合糸アンカーは、縫合糸がアンカーを通って又はアンカーの周りを一方向に摺動するように設計され、縫合糸の一部をアンカーに対して引っ張ることによって、外科的修復部位の締め付けを可能にする。
【0005】
それらの多くの外科用途の中でも、縫合糸アンカーを縫合糸と共に使用して、損傷した腱又は靱帯を骨に再付着させ、関節接合部を取り囲む欠陥のある組織を締め付け、かつ、膝内の半月板損傷などの軟骨内の裂傷を修復する。いくつかの用途では、調節可能な長さの縫合糸によって接合された2つ以上のアンカーは、組織の裂傷の緊締、又は欠陥のある組織の安定化を可能にする。
【0006】
縫合糸アンカー設計において非常に重要であるのは、取り付けられた縫合糸がアンカーに対して張力をかけられたときに、アンカーの破損又は抜け(骨からなど)のリスクを最小限にするために、保持強度(骨内のアンカーの保持強度など)を最大化することである。縫合糸アンカーのいくつかの欠点としては、関連状況に応じて、いくつかの種類の縫合糸アンカーの設定が困難であるため、固定強度が他のアンカータイプよりも低くなり得ること、及び皮質骨などの硬骨材料中の縫合糸アンカーの拡張が達成されることが挙げられ得る。縫合糸アンカーで観察される他の問題としては、経時的な弛緩(すなわち緩み)及びクリープ、並びにアンカーと解剖学的構造の界面における長期の微細な運動が挙げられる。これらの問題は、修復部に適用される圧縮量を減少させ得る。加えて、経時的に、治癒には適していない間隙が、修復部に導入される場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、長手方向に沿って細長く、第1の構成から第2の構成にサイズが変化するように構成された縫合糸構造体は、縫合糸構造体の外面を画定し、長手方向に沿って、かつ長手方向に沿って配向された中心軸の周りに延在する材料層を含む。材料層は、複数の繊維と、複数の繊維内に延在する複数のバーブとを含む。バーブの外側端部は、縫合糸構造体が第1の構成にあるとき、繊維の間に長手方向に存在する。バーブは、縫合糸構造体が第2の構成にあるときに、バーブの外側端部が、中心軸に垂直な半径方向に沿って外面から外向きに延びるように、展開可能である。
【0008】
本開示の別の実施形態によれば、長手方向に沿って細長く、第1の構成から第2の構成にサイズが変化するように構成された縫合糸構造体は、長手方向に沿って延在し、それぞれの交点で繊維の第2のサブセットによって交差される繊維の第1のサブセットを含む複数の絡み合った繊維を有する外側材料層を含む。繊維の第1のサブセット及び繊維の第2のサブセットのうちの少なくとも1つの繊維は、別個の視覚的表示を有する。別個の視覚的印は、縫合糸構造体が第1の構成にあるときに第1の可視化特性を有し、縫合糸構造体が第2の構成にあるときに第2の可視化特性を有し、第2の可視化特性が第1の可視化特性とは視覚的に異なるように、外側材料層が構成される。
【0009】
本開示の追加の実施形態によれば、長手方向に沿って細長く、第1の構成から第2の構成にサイズが変化するように構成された縫合糸構造体は、長手方向に沿って延在し、それぞれの交点で繊維の第2のサブセットによって交差される繊維の第1のサブセットを含む複数の絡み合った繊維を有する外側材料層を含み、繊維の第1のサブセット及び繊維の第2のサブセットが、縫合糸構造体が第1の構成と第2の構成との間で変化するにつれて、外側材料層の表面テクスチャ及び視覚的外観のうちの1つ以上を変化させるように、互いに対して再配向するように構成される。
【0010】
本開示の更なる実施形態では、解剖学的構造を修復する方法は、本明細書に記載される縫合糸及び/又は縫合糸材料のいずれかを展開することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
前述の概要及び本出願の例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、よりよく理解されるであろう。本出願の特徴を例示する目的で、例示的な実施形態を図面に示す。しかしながら、本出願は、図示される正確な配置及び手段に限定されないことを理解すべきである。図面のうち:
図1A】本開示の一実施形態による、縫合糸の斜視図である。
図1B図1Aの断面線1B~1Bに沿った縫合糸の断面端面図である。
図1C図1Aに示される縫合糸の一部分の斜視図である。
図2A図1Aに示される縫合糸の交差繊維の略図であり、繊維は縫合糸の第1の構成で示されている。
図2B図2Aに示される交差繊維の略図であり、繊維は縫合糸の第2の構成で示されている。
図3A図1Aに示される縫合糸の概略的な断面側面図であり、縫合糸が第1の構成にあるときのそれぞれの配向における展開可能な一方向保持部材を示す。
図3B図3Aに示される縫合糸の概略的な断面側面図であり、縫合糸が第2の構成にあるときのそれぞれの展開配向における一方向保持部材を示す。
図4A】本開示の別の実施形態による、図1Aに示される縫合糸の概略的な断面側面図であり、縫合糸が第1の構成にあるときのそれぞれの配向における展開可能な二方向保持部材を示す。
図4B図4Aに示される縫合糸の概略的な断面側面図であり、縫合糸が第2の構成にあるときのそれぞれの配向における二方向保持部材を示す。
図5A】本開示の一実施形態による、展開可能な保持部材を担持する螺旋状に延在する繊維を有する縫合糸の側面図である。
図5B】本開示の一実施形態による、図5Aに示される縫合糸の編組パターンの略図である。
図5C】本開示の一実施形態による、展開可能な保持部材を担持する軸方向に延びる繊維を有する縫合糸の側面図である。
図6A】本開示の一実施形態による、二次元織物構造として構築された縫合糸テープの上面図である。
図6B】本開示の一実施形態による、図6Aに示される縫合糸テープの一部の拡大平面図である。
図6C図6Bに示される断面線6C-6Cに沿った縫合糸テープの断面図である。
図7A】本開示の一実施形態による、縫合糸構造体の交差繊維の略図であり、繊維は、縫合糸構造体の第1の視覚的構成で示される。
図7B図7Aに示される交差繊維の概略図であり、繊維は縫合糸構造体の第2の視覚的構成で示されている。
図8A】本開示の一実施形態による、第1の視覚的構成における縫合糸の一部の側面図である。
図8B】本開示の一実施形態による、第2の視覚的構成における図8Aに示される縫合糸の一部の側面図である。
図9A】第1の視覚的構成における、本開示の別の実施形態による、縫合糸の一部の側面図である。
図9B】第2の視覚的構成における、図9Aに示される縫合糸の一部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、本開示の一部を形成する、添付図面及び実施例に関連する以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。本開示は、本明細書に説明及び/又は図示される特定の装置、方法、用途、条件又はパラメータに限定されるものではなく、本明細書で使用される専門用語は実施例を用いて具体的な実施形態を説明する目的のためだけのものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。また、添付の特許請求の範囲を含む明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数を含み、特定の数値への言及は、文脈により明確に別様に指示されない限り、少なくともこの特定の値を含む。
【0013】
「複数」という用語は、本明細書で使用される場合、1つよりも多いことを意味する。値の範囲が表されている場合、別の実施形態においては、ある特定の値から、及び/又は他の特定の値までが含まれる。同様に、先行する「約」によって値が近似の形式で表現された場合、その特定値により別の実施形態が形成されることが理解されるであろう。全ての範囲は境界値を含み、組み合わせ可能である。
【0014】
寸法、角度、比、及び他の形状に関して本明細書で使用される場合、「およそ」、「約」、及び「実質的に」という用語は、製造公差を考慮する。更に、「およそ」、「約」、及び「実質的に」という用語は、規定の寸法又は角度よりも10%大きい又は小さいものを含み得る。更に、「およそ」、「約」、及び「実質的に」という用語は、規定された特定の値にも等しく適用され得る。
【0015】
「縫合糸構造体」という用語は、本明細書中で使用される場合、本体を形成するために一緒に組み合わされるか又は他の方法で凝集される構成縫合糸材料(複数可)の構築された本体をいう。非限定的な例として、「縫合糸構造体」という用語は、本明細書中で使用される場合、縫合糸、布地、テープ、フラットブレード、スリーブ、チューブ、ジャケット、メッシュ、アンカー、ノットなどを包含し、上記の縫合糸構造体の種々の組み合わせを含む。
【0016】
「繊維」という用語は、本明細書で使用される場合、縫合糸構造体を作製するために、構成材料の1つ以上の他の本体と編まれ、ニット編みされ、織られ、巻かれ、絡み合わされ、又は別様に凝集されることが可能な構成材料である別個の細長い本体を指す。「繊維」という用語は、本明細書で使用される場合、それ自体が1つ以上の構成材料のより小さい本体から構築される、構成材料の別個の細長い本体を包含することを理解されたい。例えば、「繊維」という用語は、本明細書で使用される場合、モノリシック構造及びポリリシック構造の両方を包含し、モノフィラメントタイプの繊維又はマルチフィラメントタイプの繊維であり得る。
【0017】
フィラメントという用語は、本明細書で使用される場合、繊維及び/又は縫合糸構造体内の構成材料として使用することができる細長いモノリシック体を指す。したがって、以下の開示では、フィラメントは繊維の構成要素として称され得るが、繊維はフィラメントの構成要素として称されない。
【0018】
「交差」及び「ピック」という用語はそれぞれ、本明細書で使用される場合、縫合糸構造体内の別の繊維と交差するか、又は他の方法で交差する1つの繊維を指す。
【0019】
「ピックカウント」という用語は、本明細書で使用される場合、縫合糸の長さ1インチに沿った繊維(ピック)の量を指す。ピックカウントは、典型的には、「インチ当たりのピック」(PPI)又は「センチメートル当たりのピック」(PPC)として定義される。
【0020】
本明細書に開示される実施形態は、第1の構成で解剖学的構造内に又は解剖学的構造に隣接して挿入可能であり、その後、埋め込み/修復部位における生体内環境などの水性環境への曝露(すなわち、水和)に応答して第2の構成に自動的に物理的に変換する構造を有する縫合糸構造体、特に弛緩低減縫合糸構造体に関する。自動的な物理的変換は、治療及び治癒に対して著しい利点を提供することができる。
【0021】
以下に説明される実施形態のうちのいくつかでは、自動的な物理的変換は、縫合糸構造体の表面テクスチャを変化させ、それによって、その保持及び/又は固定強度を増加させる。表面テクスチャの変化は、縫合糸と組織の界面において組織を把持することができるか、又はそうでなければ縫合糸と組織の界面における縫合糸スライド及び/又は微細な運動などの相対的平行移動を別様に制限し、したがって、より安定した治癒環境を作り出すことができるバーブなどの保持部材の展開を伴うことができる。加えて、自動的な物理的変換は、物理的変換を本格的に開始する前に埋め込み処置を完了できるような持続時間にわたって生じ得る。このようにして、縫合糸構造体は、表面テクスチャが把持増大構成に変化する前に、中立構成にある間に、必要に応じて軟組織を通して及び/又は軟組織に沿って挿入することができる。
【0022】
以下に記載される追加の実施形態において、物理的変換は、縫合糸構造体の外面の視覚的提示を変化させる。視覚的提示におけるこの変化は、縫合糸構造体の物理的状態(例えば、変形又は「歪み」)に関する視覚的に観察可能な情報又は「フィードバック」を提供する。非限定的な例として、そのような変化は、縫合糸構造体内の他の繊維に対して、繊維のうちの少なくともいくつかによって担持される視覚的表示の配向及び/又は相対位置を変化させることを伴い、第1の構成と第2の構成との間の視覚的提示における光学的に知覚可能な変化をもたらす。そのような物理的変換は、手術中又は手術後に縫合糸の物理的状態のそのような変化が生じた場合に医師に警告することができ、それによって、医師が、手術中の調整が必要であるかどうか、及び/又は追加の手術中若しくは手術後の処置を行うと治療が強化されるかどうかを評価することを可能にする。
【0023】
これらの利点は、弛緩低減縫合糸構造体(米国マサチューセッツ州DePuy Synthes Mitek Sports Medicine of Raynhamから入手可能なDYNACORD(商標)など)が水和に応答して長さの減少を受けると、編組繊維が互いに交差する交差角度が増加し、それによって縫合糸構造体の平均ピックカウントが増加するという本発明者らの驚くべき予想外の発見に大部分が由来する。したがって、編組角度(繊維が縫合糸構造体の長手方向軸に対して配向される角度)も更に、縫合糸構造体の長さが減少するにつれて増加する。本開示の実施形態は、この現象を有利に利用して、縫合糸構造体(複数可)における追加の変換可能な変化、例えば、上記で言及され、以下でより詳細に説明される表面テクスチャ及び視覚的提示の変化を作動させる。
【0024】
図1Aを参照すると、本開示の一例による弛緩低減縫合糸構造体は、中心長手方向軸10に沿って第1の端部6から第2の端部8まで延在する可撓性の実質的に円筒形の本体5を有する縫合糸4であり得る。縫合糸4は、長手方向軸10に沿って配向された長手方向Xに沿って延在する。長手方向Xは、本明細書で言及される場合、二方向であり、2つの一方向成分、具体的には、第2の端部8から第1の端部6に延びる第1の長手方向X1と、第1の端部6から第2の端部8に延びる第2の長手方向X2とを有することを理解されたい。したがって、第1長手方向X1及び第2の長手方向X2は互いに反対である。縫合糸4又はその任意の部分は、長手方向軸10に沿って(したがって長手方向Xに沿っても)測定された長さL1などの長手方向寸法を画定する。図1Aは、長手方向軸10に沿って2つの中間基準位置11、13の間で測定されるものとして長さL1を示しているが、以下の開示の目的のために、長さL1は、例えば、第1の端部6から第2の端部8までを含む、縫合糸4の任意のそれぞれの長手方向部分に沿って測定され得る。縫合糸4又はその任意の部分は更に、長手方向Xに垂直である半径方向Rに沿って測定される断面寸法D1を画定する。「長手方向」、「長手方向に」という用語、及びこれらの派生語は、本明細書で使用される場合、長手方向Xを指し、「半径方向」、「半径方向に」という用語、及びこれらの派生語は、半径方向Rを指すことを理解されたい。縫合糸4の断面寸法D1(複数可)は、長さL1に対して公称であるので、縫合糸4は、「一次元」縫合糸構造体と称され得ることを理解されたい。
【0025】
縫合糸4は、埋め込み中及び埋め込み後に縫合糸4が生体内に配置されたときに受けるような、水和に応答する物理的変換を受けるように構成されている。この物理的変換は、水和に応答して第1の構成から第2の構成への縫合糸4のサイズの変化を含む。このサイズ変換は、医師によって行われる任意の物理的操作、再配置、又は再配向とは無関係であることを理解されたい。例えば、水和されると、縫合糸4は、半径方向Rに沿って膨潤して断面寸法D1を増加させ、長手方向Xに沿って収縮して長さL1を減少させるように構成することができる。
【0026】
ここで図1Bを参照すると、縫合糸4は、コア構造80などの少なくとも1つの変換可能な材料を含み、縫合糸4の物理的変換(すなわち、サイズの変化)を作動させる。コア構造80は、円形断面形状を有することができる。縫合糸4は更に、円形断面形状を有することもできるが、縫合糸4及び/又はコア80の他の断面形状も本開示の範囲内である。本実施形態では、縫合糸の長手方向軸10は、コア構造80に対して中心に位置することが好ましい。したがって、縫合糸4の長手方向軸10は、コア構造80の中心軸10として特徴付けることもできる。したがって、コア構造80は、「軸方向コア」80(又は単に「コア」80)と称され得る。他の実施形態では、コア構造80は、縫合糸4内に偏心して配置され得る(すなわち、コア80の中心軸は、縫合糸4の長手方向軸10からオフセットされ得る)。
【0027】
コア80は、半径方向Rに沿ってコア80の外面82の対向する位置間で測定される断面寸法D2を画定する。コア80が円形断面形状を有する図示の実施形態では、断面寸法D2は、コア80の外径である。中立構成又は非膨潤構成にあるとき、断面寸法D2は、好ましくは、約0.004インチ~約0.040インチ(約0.102mm~約1.016mm)の範囲である。加えて、コア80(形状にかかわらず)は、好ましくは約20A~約90Aの範囲のデュロメータ(すなわち、硬度)を有する。本実施形態では、コア80は、水和されると、半径方向Rに沿って膨潤することによって第1の構成から第2の構成に移行し、したがって、断面寸法D2を増加させるように構成される。この膨潤作用は更に、好ましくは、コア80を軸方向に(すなわち、長手方向Xに沿って)収縮させ、したがって、縫合糸4が第2の構成に移行するにつれて縫合糸4の長さL1を減少させる。
【0028】
縫合糸4は、コア80の外面82の外周部の周りに延在する材料層12を含むことができる。したがって、材料層12は、「外側材料層」12と称され得る。材料層12は更に、近位端6から遠位端8まで縫合糸4の全長L1に沿ってなど、長手方向Xに沿って延在する。材料12の層は更に、縫合糸4の「スリーブ」、「ジャケット」、又は「シース」と称することもできる。図1B及び図1Cに示すように、ジャケット12は、ジャケット12内の繊維90の少なくともいくつかがジャケット12内の他の繊維90によって交差されるように、編まれ、ニット編みされ、織られ、巻かれ、又は他の方法で互いに絡み合わされた複数の繊維90から構築される。このようにして、各交差繊維90は、上で定義したように、ピックカウントを有する。ジャケット12は更に、ピックカウントを有する。ジャケット12は外面92を画定し、外面92は、本実施形態では縫合糸4の外面を画定する。図1Bに示されるように、外面92は、半径方向Rに沿って測定される半径方向距離R1で長手方向軸10から離間される。コア80が半径方向に膨潤し、長手方向に収縮するとき、外面92はジャケット12を半径方向に拡張させ、したがって寸法D1を増加させ、長手方向に収縮させ、したがって縫合糸長さL1を減少させる。コア80の膨潤は更に、以下により詳細に記載されるように、ジャケット12内の繊維90を互いに対して再配置及び再配向させる。繊維90は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリジオキサノン(PDS)、ポリプロピレン(PP)、ナイロン及びステンレス鋼を含む材料の群から選択される材料組成を有することができ、モノフィラメント又はマルチフィラメント繊維であってよく、所望に応じて着色剤を用いて又は用いずに使用することができる。追加の実施形態において、縫合糸4は、コア80と外側材料層12のとの間に環状に延びる材料の1つ以上の追加の層又は「内側」層を含み得ることが理解されるべきである。そのような内側材料層(複数可)は、編まれ、ニット編みされ、織られ、巻かれ、又は他の方法で互いに絡み合わされた1つ以上の追加の複数の繊維90から構築され得る。内側層の繊維90(複数可)は、前述の材料の群から選択される材料組成を有することができる。更に、内側層(複数可)の繊維90は、ジャケット12のものと同じ又は異なる材料組成を有することができる。
【0029】
上述の膨潤変換を提供するために、コア80は、好ましくは、コア80を膨潤させる、1つ以上の浸透圧活性物質86(すなわち、水を取り込む物質)と共に組み込まれた、高弾性ポリマー糸84を含む。ポリマー糸84は、フィラメント状ポリマー材料(非分解性、部分分解性、又は完全分解性の種類)であり得る。例えば、ポリマー糸84は、熱可塑性エラストマー(ポリウレタン、ポリエステル)、架橋エラストマー(シリコーン、ポリウレタン、エラスチン、コラーゲン)、又はゲル(ポリエチレングリコール、アルギン酸、キトサン)として構成することができる。浸透圧活性物質86は、塩(NaCl)及びリン酸三カルシウム(TCP、更にコア内の骨成長を有利に促進する)の一方又は両方を含むことができるが、他の生体適合性無機塩及びその水溶液、塩化カルシウム、炭酸カルシウムなどの他の浸透圧材料を用いることができ、又は、例えばデキストランなどの低分子多糖類など、有機浸透圧活性分子を使用することができる。一例では、コア80は、微細塩結晶及びTCPを含む浸透圧活性物質86が組み込まれたシリコーン糸を含む。コア80内に含まれる塩及びTCPの量は、約2重量%~約40重量%の範囲であり得る。ポリマー糸84は、溶融物又は溶液から押し出されてもよく、塩(NaCl)粒子は、好ましくは共押出、つまり押出前にポリマー物質に混合されることを理解されたい。コア80は、非限定的な例として、成形などの他の方法によって形成できることを理解されたい。
【0030】
浸透圧活性物質86は更に、又は代替的に、生体適合性ゲル又はヒドロゲル(例えば、アルギン酸、キトサン又はこれらのコポリマー、ポリアクリレート、ポリエチレングリコールなどの群のもの)内に埋め込まれ得ることを理解されたい。作用が原則的に浸透圧活性物質と同等である効果についても、ヒドロゲルの単独使用によって達成することができる。フィックの法則によると、膨潤システムを包囲する膜が特に重要であり、この膜は、HOの透過特性及び拡散特性によって、またその厚さによって、浸透速度に大きく影響する。もちろん、膜を複数の層で構成することができ、あるいは安定した、又は溶解拡散を抑制する層で構成することができる。ヒドロゲルを使用すると、そのような膜状の特性を、外に向かって大きくなる架橋密度によって得ることができる。浸透性に影響する濃度の違いは、糸のコアとその周囲の血液との間、あるいは糸のコアと間質性及び/又は間質液との間で得ることができる。ヒドロゲルが上述の方法で使用される実施形態では、このようなヒドロゲル膜構造はまた、軸方向コア80と称され得ることを理解されたい。コア80は、2014年10月28日にMayerらの名前で発行された米国特許第8,870,915号(「Mayer参考文献」)及びJohnsonらの名前で2020年6月11日に公開された米国特許公開第2020/0178951(A1)号(「Johnson Reference」)により完全に記載されているように構築することができ、これらのそれぞれの開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。半径方向の膨潤及び長手方向の収縮を含むコア80の膨潤の程度は、コア直径D2、コア材料84、並びに浸透活性物質86のタイプ及び重量パーセントなどのコア80の特定のパラメータを変化させることによって調整され得ることを理解されたい。これらのパラメータは、様々な治療用途において有利なサイズ変換を伴う縫合糸構造体4を提供するように、所望に応じて調整され得る。
【0031】
コア80が半径方向に膨潤して長手方向に収縮すると、ジャケット12も半径方向に膨潤して長手方向に収縮する。このサイズ変換中、ジャケット12内の個々の繊維90は、ジャケット12のピックカウントを増加させるように、互いに対して再配置及び再配向される。
【0032】
ここで図2A及び図2Bを参照すると、縫合糸4の第1の構成(図2A)及び第2の構成(図2B)において、一対の交差繊維90bによって交差されている基準繊維90aが示されている。基準繊維90aはその中心軸94aに沿って延在し、交差繊維90bはそれぞれの中心軸94bに沿って延在する。交差繊維90bの中心軸94bは、それぞれの交点96において基準繊維90aの中心軸94aと交差する。
【0033】
図2Aを参照すると、縫合糸が乾燥しているか、又はそうでなければ水和されていないときなどの中立構成などの第1の構成では、交差繊維90bは、基準繊維90aの中心軸94a、中心軸94bとそれぞれの交差繊維90bとの間に対する角度として測定され得る交差角度A1で基準繊維90aと交差し、長手方向Xに沿って配向された軸10aと交差する。加えて、交点96は、この例では長手方向Xに沿ってなど、距離L2で互いから離間される。
【0034】
図2Bを参照すると、第2の構成への変換中にコア80が半径方向に膨潤し、長手方向に収縮すると、交差角度A1はA1’に増加する。加えて、長手方向の収縮は、交点96間の距離L2をL2’に減少させることもできる。このようにして、コア80の半径方向の膨潤及び長手方向の収縮は、A1からA1’への交差角度の再配向を作動又は「駆動」し、ジャケット12内の隣接する交差繊維90b間の長手方向距離をL2からL2’へ減少させることなどによって、繊維90(又は繊維90の少なくともいくつか)の更なる再配置を駆動することができる。本発明者らは、試験(以下でより詳細に説明される)を通して、繊維90に関するこの再配向及び再配置が、ジャケット12内の平均ピックカウントを増加させることを観察した。
【0035】
以下の実施形態は、有利な方法で縫合糸4を更に変換させるための作動機構として、そのような繊維90の再配向及び再配置を採用する。例えば、縫合糸4の表面テクスチャを変化させるために繊維構造のこれらの変化を採用する実施形態は、図3A図6Cを参照して説明され、縫合糸4の状態の視覚的フィードバックを提供するために繊維構造のそのような変化を採用する実施形態は、図7A図7Dを参照して説明される。
【0036】
ここで図3A図3Bを参照すると、縫合糸4は、サイズ変換に応答して縫合糸4の表面テクスチャを変化させるように展開されるように構成される、バーブ20などの複数の保持構造を含むことができる。バーブ20は、ジャケット12内に埋め込むか、又は他の方法で配置することができ、隣接する繊維90の間に長手方向に存在することができる。図示のように、バーブ20は、長手方向Xに沿って各交差部に配置することができる。しかしながら、他の実施形態では、バーブ20は、意図された治療のための特定の保持の必要性に依存して、1つおきの交差、又は3つおきの交差、又は3つおきより多くの交差に配置され得る。バーブ20は、それぞれのバーブ軸26に沿って内側バーブ端部22から外側バーブ端部24まで延在し、バーブ軸26は、長手方向軸10からそれぞれのバーブ角度A2で延在する。バーブ20は更に、それぞれのバーブ軸26に沿って内側端部22と外側端部24との間で測定されるバーブ長さL3を画定する。バーブ20は、好ましくは、それらの内側端部22と外側端部24との間で実質的に直線状に延びる。しかしながら、バーブ20は、湾曲、フック、ジグザグなどを含む様々な他の幾何学的形状を有することができることが理解されるべきである。バーブ20の内側端部26は、スリーブ28などのバーブ基材28によって担持されてもよく、バーブ基材28は、ジャケット12とコア80の外面82との間の環状空間30内に存在してもよい。バーブスリーブ28は、コア80の外面80と水性環境との間に流体連通を提供するように構成される。例えば、バーブスリーブ28は、多孔性であってもよく、又はそうでなければ半径方向に貫通する複数の開口部を画定していてもよい。このような実施形態では、バーブスリーブ28は、縫合糸4の長さに沿って周方向及び/又は長手方向に互いに間隔をあけて離間した基材材料のストリップを、例えばネット状、メッシュ状、又はウェブ状に含むことができる。追加的又は代替的に、バーブスリーブ28のストリップは、コア80の周りに螺旋状に延びることができる。バーブ20、又は少なくともその外側端部24は、実質的に剛性又は可撓性であることを含む、種々の材料品質を有することができる。バーブ20は、任意選択で、再吸収可能であり得、例えば、組織治癒が経時的に生じるにつれて、バーブ20は、それらの保持機能の必要性が経時的に減少する場合などに再吸収され得る。バーブ20は、非限定的な例として、ポリジオキサノン(PDS)などの材料で構築することができる。
【0037】
ここで図3Aを参照すると、バーブ20は、縫合糸4が第1の構成にあるとき、外側バーブ端部24がジャケット12内に実質的に存在するか、又は少なくともジャケット12の外面92の下に存在するように構成され得る。別の言い方をすれば、第1の構成では、外側バーブ端部24は、好ましくは、ジャケット12の外面92が長手方向軸10から離間される半径方向距離R1よりも小さいか、等しいが、大きくない半径方向距離R2で長手方向軸10から離間される。このような実施形態では、外側バーブ端部24は、第1の構成にあるとき、隣接する繊維90の間に長手方向に存在することが好ましい。半径方向距離R2は、本開示の範囲から逸脱することなく、縫合糸4が第1の構成にあるときに、半径方向距離R1よりも名目上大きくなり得ることを理解されたい。
【0038】
次に図3Bを参照すると、コア80が膨潤すると、ジャケット12が半径方向に膨潤して、長手方向に収縮し、隣接する交差繊維90間の長手方向距離L2を減少させることによる方法(L2からL2’)を含めて、上述のように繊維90を再配向及び再配置させる。繊維90が互いに接近して距離L2を減少させるにつれて、バーブ角度をA2からA2’に増加させることによってバーブ20を再配向し、それによって外側バーブ端部24を外向きに押し付け、その半径方向距離R2’がジャケット外面92の半径方向距離R1’よりも大きくする。バーブ20は、縫合糸の変換に応答して外向きに駆動又は「展開」されるので、バーブ角度A2’は、「展開角度」A2’と称され得る。バーブ20が完全に展開されたときなどの第2の構成では、展開されたバーブ角度A2’は、中立構成におけるバーブ角度A2よりも最大約10度大きくすることができる。ジャケット12は、好ましくは、編む、ニット編みする、織る、巻くなどの織物製造プロセスに従って、絡み合った繊維90から構築されるので、縫合糸4に沿った異なる長手方向位置及び縫合糸4の周りの異なる円周方向位置において、前述の寸法R1、R1’、R2、R2’、L2、L2’、L3、A1、A1’、A2、A2’にわずかな変動があり得ることを理解されたい。したがって、定量化の目的で、前述の寸法R1、R1’、R2、R2’、L2、L2’、L3、A1、A1’、A2、A2’は、縫合糸4の全長又は部分長に沿った、及び縫合糸4の全周又は部分周に沿った各それぞれの寸法の平均として測定することができる。
【0039】
図3A及び図3Bに例示されるように、バーブ20は、外側バーブ端部24の実質的に全て又は少なくとも大部分が、それぞれが第1長手方向X1及び第2の長手方向X2のいずれかのみの方向成分を有するそれぞれの方向に沿って、それぞれの内側端部22から離れるように延びるように構成することができる(第1の長手方向X1又は第2の長手方向X2)。別の言い方をすれば、バーブ20は全て、概して1つの長手方向(X1又はX2)に対向するように構成され得る。したがって、本実施形態のバーブ20は、「一方向」バーブ20と称され得る。このようにして、いったん展開されると、バーブ20は、バーブ20が面する第1長手方向X1又は第2の長手方向X2における移動に対抗する増大した保持力を縫合糸4に提供することができる。
【0040】
バーブ20は、縫合糸4の全体に沿って、長手方向及び円周方向の両方に配列され得ることが理解されるべきである。他の実施形態において、バーブ20は、縫合糸4の全体未満に沿って(例えば、縫合糸4の1つ以上の別個の部分(例えば、別個の長手方向部分及び/又は別個の円周方向部分)に沿って)配列され得るが、縫合糸4の他の部分は、バーブ20を欠いている。バーブ20は、特定の外科的処置のために所望に応じて、縫合糸4の種々の部分に沿って配列され得ることが理解されるべきである。非限定的な例として、バーブ長さL3、展開角度A3’、形状、再吸収性、及び/又は剛性/可撓性など、バーブ20の様々な特徴を必要に応じて調整され得ることも理解されたい。更に、バーブ20の前述の特徴のいずれかは、必要に応じて、縫合糸4の種々の長手方向部分及び/又は円周方向部分において異なり得る。非限定的な例として、いくつかのバーブ20の長さL3は、他のバーブ20の長さL3とは異なり得る。別の非限定的な例として、バーブ20のうちのいくつかは、再吸収可能であり得るが、他のものは、再吸収不可能であり、その結果、時間の経過と共に、再吸収可能なバーブ20が再吸収され得るが、他のものは、埋め込まれた縫合糸構造体上に残る。
【0041】
ここで図4A及び図4Bを参照すると、追加の実施形態では、縫合糸4は、二方向バーブ20を含むことができる。例えば、複数のバーブ20は、1つの長手方向X1、X2(例えば、第1の長手方向X1)に対向するバーブ20の第1のサブセット20aと、反対の長手方向X1、X2(例えば、第2の長手方向X2)に対向するバーブ20の第2のサブセット20bとを含むことができる。このようにして、いったん展開されると、バーブ20の第1のサブセット20a及び第2のサブセット20bは、縫合糸4に、第1の長手方向X1及び第2の長手方向X2の両方の移動に対抗する増加した保持力を提供することができる。示されるように、バーブ20の第1のサブセット20a及び第2のサブセット20bは、互いに散在し得る。他の実施形態では、バーブ20の第1のサブセット20a及び第2のサブセット20bは、縫合糸4の異なる別個の長手方向部分及び/又は円周方向部分に沿って配列され得る。例えば、いくつかの実施形態では、バーブ20の第1のサブセット20aは、縫合糸4の第2の端部8と長手方向中心との間に位置することができ、第1の長手方向X1に(すなわち、長手方向中心に向かって)対向することができ、バーブ20の第2のサブセット20bは、縫合糸4の長手方向中心と第1の端部6との間に位置することができ、第2の長手方向X2に(すなわち、長手方向中心に向かって)対向することができる。このような実施形態では、いったんバーブ20が展開されると、第1のサブセット20a及び第2のサブセット20bは、縫合糸4の長手方向中心に向かう縫合糸4の移動に抵抗することができる。更なる実施形態では、縫合糸4は、バーブ20の第1のサブセット20aのみを有する1つ以上の別個の部分、バーブ20の第2のサブセット20bのみを有する1つ以上の別個の部分、散在するバーブ20の第1のサブセット20a及び第2のサブセット20bの両方を有する1つ以上の別個の部分、バーブ20を欠く1つ以上の別個の部分、及び上記の任意の組み合わせを有し得る。第1のサブセット20a及び第2のサブセット20bを含むバーブ20は、特定の外科処置のために所望に応じて、縫合糸4の種々の長手方向部分及び/又は円周方向部分に沿って配列され得ることが理解されるべきである。
【0042】
ここで図5A図5Cを参照すると、他の実施形態では、バーブ20は、縫合糸4のジャケット12に一体化された(例えば、編まれた、ニット編みされた、織られた、巻かれた、又は別様に絡み合わされた)1つ以上の繊維90cによって担持され得る。例えば、ここで図5A及び図5Bを参照すると、バーブ20は、ジャケット12内の他の繊維90の中で、丸編みなどで編まれた1つ以上の繊維90c(したがって「バーブ繊維」80cとも称される)上に配置することができる。ジャケット12の1つ以上のバーブ繊維90cは、コア80の周りに螺旋状に延びることができる。バーブ繊維90cは、モノフィラメント繊維又はマルチフィラメント繊維とすることができる。1つの非限定的な例によれば、バーブ繊維90cは、モノフィラメント縫合糸であり得る。バーブ20は、示されるように、一方向であり得るが、各バーブ繊維90cは、二方向バーブ20を担持し得る。追加的に又は代替的に、二方向バーブ付き縫合糸4は、非限定的な例として、第1の長手方向X1に面する複数の一方向バーブ20を有する少なくとも1つの第1のバーブ繊維90cを含むことができ、第2の長手方向X2に面する複数の一方向バーブ20を担持することができる少なくとも1つの第2のバーブ繊維90cも含むこともできる。
【0043】
ここで図5Cを参照すると、追加の実施形態では、バーブ繊維90cは、概して長手方向Xに沿って延在し、ジャケット12の他の繊維90と編まれるか又は他の方法で絡み合わさられる軸方向繊維90cであり得る。更なる実施形態において、縫合糸4のバーブ20は、1つ以上の螺旋状に延びるバーブ繊維90cと1つ以上の軸方向に延びるバーブ繊維90cとの組み合わせ上に配置され得る。更に別の実施形態では、縫合糸4は、ジャケット12内の繊維90の全て、又はその外面92を画定する繊維90の少なくとも実質的に全てが、展開可能なバーブ20を担持できるように構築され得る。このような実施形態では、各繊維90のバーブ密度(すなわち、繊維長さ1インチ当たりのバーブ20の量)は、バーブ20の総数が前述の縫合糸4の数と同じ又は同様のままであるように、前述の実施形態に対して低減され得る。
【0044】
図5A図5Cを参照して説明される実施形態のバーブ20を展開する動作機構は、図3A図4Bを参照して上述されるものと実質的に同様であることを理解されたい。特に、縫合糸4が半径方向拡張及び長手方向収縮を受けると、繊維90、90cは、互いに対して再配向及び再配置され、バーブ20の外側端部24をジャケット12の外面92から半径方向外向きに押す。
【0045】
ここで図6A図6Dを参照すると、他の実施形態では、展開可能なバーブ20を有する縫合糸構造体50は、実質的に平坦なテープ状の幾何学的形状を有し得、したがって、「縫合糸テープ」又は単に「テープ」50と称され得る。このような実施形態では、テープ50は、構築されたテープ50が実質的に平坦になることを可能にするように編まれるか、又は別様に絡み合わさられる、縫合糸繊維90のフラット編組から加工されることができる。テープ50は、長手方向Xに沿って測定される長さL4と、長手方向Xに実質的に垂直な横方向Yに沿って測定される幅Wとを画定することができる。テープ50は更に、長手方向X及び横方向Yに実質的に垂直な横断方向Tに沿って測定される厚さtを画定することができる。テープ50が平面構成にあるとき、長さL4は好ましくは幅Wより大きく、幅Wは好ましくは厚さtより大きい。例えば、幅Wは、厚さtよりも数倍大きくてもよい。このような実施形態では、テープ50は、平坦で実質的に平面の構造を有するものとして特徴付けることができる。テープ50の厚さtが、その長さL4及び幅Wに対して公称である場合、テープ50は、「二次元」縫合糸構造体と称され得ることを理解されたい。テープ50は、非限定的な例として、「3次元」アンカー構造体を形成するように、必要に応じて折り畳まれるか、又は他の方法で操作され得ることも理解されるべきである。テープ50は、長さL4を画定するように互いに長手方向に離間された第1の端部51及び第2の端部52を含む。テープ50は更に、幅Wを画定するように横方向Yに沿って互いに離間された第1の側縁部53及び第2の側縁部54から延在する。テープ65は更に、厚さtを画定するように横方向Tに沿って互いに離間された第1の側部57及び第2の側部58(本実施形態では、テープ50が平面構成にあるときに概ね平坦である)を有する。いくつかの実施形態では、テープ50は、1つ以上の一次元部分に隣接する平坦な二次元部分を含むことができる。例えば、テープ50は、テープ50が「ラウンド-フラット-ラウンド」編組構造を有するように、その両端部51、52から長手方向に延在する2つの一次元部分(例えば、ラウンド編組から構築される)を有するフラット部分(例えば、フラット編組から構築される)を含むことができる。
【0046】
テープ50は、水和されるとサイズ変換を受けるように構成される。例えば、テープ50は、横断方向Tに沿って膨潤することができる。これを達成するために、テープ50は、上述したように構成することができる少なくとも1つのコア構造80など、膨潤機能を提供する材料を取り囲む繊維90の編組構造、織物構造、編物構造、又は巻回構造を含むことができる。少なくとも1つのコア構造80は、中心軸10と平行に延びることができる。マルチコア80の実施形態では、各コア構造80は、テープ50の長手方向軸10と実質的に平行に延在し得る中心コア軸85を画定する。
【0047】
図6B及び図6Cに示されるように、テープ50は、1つ以上のコア80を複数の繊維90と一緒に織る、ニット編みする、又は編むことによって構築され得る。これらの繊維90は、上述したような材料組成を有することができる。テープ50は、好ましくは、第1の複数の繊維90dが、コア80(又はマルチコア実施形態では個々に各コア80)を取り囲むジャケット12を形成するように編まれるように構築される。第1の複数の繊維90dは、好ましくは、1つ以上のコア80のそれぞれの周囲に予め編まれている。次に、第2の複数の繊維90eを用いてコア80を相互接続し、好ましくは、コア80がテープ50内で互いに横方向に整列され、各コア80は、テープ50が平面構成にあるとき、中心コア軸85及び/又は中心長手方向軸10のいずれかに対して垂直に延在する単一の直線軸88によって交差され得る。各コア80を取り囲むジャケット12は、この実施形態では任意選択であり、テープ50が有利に機能するために含まれる必要はないことを理解されたい。
【0048】
バーブ20は、テープ50を構築するために他の繊維90d、繊維90eと共に編まれているか、又は他の方法で絡み合わされている1つ以上のバーブ繊維90cによって担持され得る。バーブ20をテープ50から展開するための機構は、縫合糸4に関して上述したものと同様である。コア80が水性環境中で半径方向に膨潤し、長手方向に収縮すると、テープ50の厚さtが増加し、長さL4が減少する。これにより、繊維90c~繊維90eは、ピックカウントを増加させるように互いに対して再配向及び再配置され、それにより、バーブ20の外側端部24がテープ50の側部57、58から外側に延びる。バーブ20を担持するバーブ繊維90cは、所望に応じてバーブ20を配列及び配向するために、種々の量及びパターンでテープ50内で編まれ得るか、又は他の方法で絡み合わさられ得ることが理解されるべきである。更に、バーブ20は、テープ50の側部57、58の片側又は両側で長手方向Xに対して一方向又は多方向に配列され得る。追加的又は代替的に、バーブ20は更に、テープ50の側部57、58の片側又は両側で横方向Yに対して一方向又は多方向として配列され得る。追加的に又は代替的に、バーブ20は、テープ50の側部57、58の片側又は両側の様々な別個の部分に沿って配列され得る。
【0049】
前述の実施形態の縫合糸構造体4、縫合糸構造体50は、多くのタイプの治療、特に、創傷閉鎖などの縫合糸構造体と軟組織との間の接触界面を伴う治療、及び回旋筋腱板修復などのより複雑な外科的処置において有利であると予想される。回旋筋腱板修復に関して、損傷した棘上筋腱を、上腕骨の大結節に予設したドリル穴内に固定された骨アンカーに固定するために、縫合糸が一般的に使用される。先行技術の縫合糸及び技法を使用するそのような回旋筋腱板修復中、外科医は、一般的に、固定された骨アンカーから損傷した棘上筋腱を通って延在する縫合糸の自由端を挿入し、縫合糸の自由端の少なくともいくつかを引っ張って、棘上筋腱の側端を上腕骨の大結節に引き寄せる。縫合糸をピンと張った状態で、外科医は、棘上筋腱の外面で縫合糸の自由端を例えば対で互いに結び、それによって腱を上腕骨に固定することができる。しかし、棘上筋腱は、このような修復の間に膨潤する傾向があり、これは、根底にある損傷及び処置自体から生じる炎症によって引き起こされる。更に、関節鏡視下修復の間、腱は、関節鏡視下修復の間の可視性を改善するために、関節を充填するための生理食塩水の使用から生じる浮腫に起因して、更に膨潤され得る。腱が手術後に治癒して脱炎するにつれて、腱は通常、その正常な炎症を起こしていないサイズに戻り、腱を骨アンカーに接続する縫合糸に弛緩を引き起こす可能性がある。そのような弛緩は、縫合糸と腱界面において、反復される前後の微細な平行移動などの微細な運動をもたらし得る。時間が経つにつれて、そのような微細な運動は、縫合糸が腱の部分を徐々に切断することを引き起こす可能性があり、これは修復に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0050】
前述の実施形態の縫合糸構造体4、縫合糸構造体50は、少なくとも2つの自動機構に従って、様々なタイプの縫合糸ベースの修復処置にわたるそのような術後の微細な運動を回避するか、又は少なくとも低減、最小化、及び/若しくは緩和することができる:(a)第1に、縫合糸4又はテープ50の長手方向収縮は、組織(例えば、腱)が治癒し、炎症がなくなるにつれて弛緩を低減することができ、それによって、縫合糸と組織の界面における微細な運動を低減する。(b)第2に、バーブ20の展開は、縫合糸4と軟組織との間の相対位置(複数可)を維持するように、縫合糸と組織の界面において軟組織(例えば、腱、筋肉、靭帯、軟骨)を係合及び把持し、それによって、界面における微細な運動を更に低減することができる。更に、これらの自動機構(長手方向の収縮及びバーブ20の展開)は、好ましくは同時に起こり、それによって、先行技術の縫合糸構造体と比較して、処置を更に有意に増強し、より有利な治癒環境を提供する。弛緩低減機構(すなわち、長手方向の収縮)がその完全な範囲未満で生じる場合であっても、バーブ20の部分的な展開は、縫合糸と組織の界面における微細な運動の有利な低減を提供することができる。同様の利点が、例えば、アキレス腱の縫合糸ベースの修復に対して提供され得る。追加の例として、上述の縫合糸4及びテープ50を含む、本明細書に記載される縫合糸構造体は、2017年3月21日にOveresらの名前で発行された米国特許第9,597,064号(「Overes I Reference」)により完全に記載される種々の外科的修復処置において有利に使用され得て、この開示全体は、参照により本明細書に援用される。更に、当業者であれば、上述した様々な縫合糸4が、更に他のタイプの外科的修復においてどのように有利に使用され得るかを認識するであろう。
【0051】
更に、前述の実施形態のバーブ20は、ノットベースの縫合糸アンカーと骨に予設したドリル穴のボアとの間など、縫合糸と骨の界面における固定を高めるために使用することができる。このような外科的処置では、組織アンカーは、上述した縫合糸4及びテープ50のいずれかなどの1つ以上の縫合糸構造体を含むことができる。例えば、縫合糸4は、予め形成されたノット構造体から延びる作動部材として使用することができ、縫合糸4に張力をかけて、予め形成されたノット構造体を束にして固定用ノットにすることができる。そのような実施形態では、予め形成されたノット構造体は、1つ以上の追加の縫合糸4、テープ50、又は同様の縫合糸構造体によって画定され得る。追加的に又は代替的に、予め形成されたノット構造体は、予め形成されたノット構成及び作動部材の両方を形成するような方法で、縫合糸4が織られ、編まれ、ニット編みされ、又は巻かれることなどによって、作動部材を形成する同じ縫合糸4によって画定され得る。本明細書に記載される展開可能なバーブ付き縫合糸構造体4、縫合糸構造体50は、2014年9月9日にSengunらの名で発行された米国特許第8,828,053号(「Sengun Reference」)により完全に記載されるものを含む、種々の予め形成されたノット構成及び修復処置において使用され得る。2015年11月3日にOveresらの名で発行された米国特許第9,173,645号(「Overes参考文献」)、2017年8月8日にCorraoらの名で発行された米国特許第9,724,080号(「Corrao参考文献」)、2017年8月29日にManosらの名で出願された米国特許第9,743,919号(「Manos参考文献」)により完全に記載されているように構成され得、そのそれぞれの開示全部が参照により本明細書に組み込まれる。展開可能なバーブ20は、前述の実施形態及び参照のアンカーと骨の界面における固定を有利に改善することができる。更に、そのようなタイプの縫合糸ベースのノット構成では、展開可能なバーブ20は、有利には、ノット強度を増加させるか、又は別様にノットが緩むことを防止するように、束ねられたノットの隣接部分に係合する(例えば、食い込む)ように配列及び構成され得る。
【0052】
更なる実施形態では、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50のバーブ20のうちの1つ以上及び各バーブまでは、1つ以上の化合物又は薬剤を溶出するために活性化可能であるようにも構成され得る。このような実施形態において、バーブ20、及び任意選択でバーブ20を担持する構成要素(例えば、バーブ基材28及び/又はバーブ繊維90c)は、このような化合物又は薬剤を溶出するように活性化可能な材料から形成され得る。追加的に又は代替的に、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50のバーブ20のうちの1つ以上及び各バーブ20までは、種々の化合物を吸収又は別様に取り込むように構成されることができる。このような実施形態において、バーブ20の吸収特性は、必要に応じて、例えば、ポリマーバーブ基材28及び/又はバーブ20を担持するバーブ繊維90cの特定の疎水性/親水性の性質及び/又は表面化学を調整することによって、調整され得る。バーブ20、バーブ基材28、及び/又はバーブ繊維90cは、水和によって作動される自動応答を有するこのような特徴を含む、前述の特徴の種々の組み合わせを可能にするように、複数のポリマー材料のような複数の材料から構築され得ることが理解されるべきである。コア80、したがって縫合糸構造体4、縫合糸構造体50のサイズ変換特性は、特定の修復用途の必要性に基づいて有利なバーブ20展開特性を提供するために、所望に応じて(例えば、コア直径D2並びに浸透圧活性物質86のタイプ及び重量パーセントを変化させることによって)適合され得ることも理解されたい。
【0053】
図7A図8Bを参照すると、追加の実施形態では、上述の縫合糸4及びテープ50などの縫合糸構造体は、水和に応答したそれらのサイズ変換が縫合糸構造体の1つ以上の可視化特性の変化を引き起こすように構成され得る。縫合糸構造体の可視化特性(例えば、視覚的提示)のそのような変化は、縫合糸構造体又はその一部の状態に関する視覚的フィードバックを提供するように調整することができる。そのような視覚的フィードバックは、非限定的な例として、軸方向歪み(長手方向変形)などの縫合糸構造体の術中及び/又は術後の状態を確認する必要性によって縫合糸構造体の弛緩低減特徴が取って代わられる修復において使用されるときなどに、特に有利であり得る。本発明者らは、上述の弛緩低減縫合糸4及びテープ50(すなわち、膨潤性コア80を用いて構築されたもの)のピックカウントが、中立構成にある場合(すなわち、乾燥しており、軸方向荷重を受けていない場合)と、長手方向Xに沿った特定の引張荷重で水和され軸方向に歪んだ構成にある場合とで、概ね等しい傾向があることを発見した。したがって、そのようなタイプの修復処置のために、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50は、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50によって受ける長手方向歪みの視覚的表示(複数可)(すなわち、視覚的フィードバック)を提供する視覚的表示をその外面上に含むことができる。
【0054】
そのような実施形態では、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50の外面における繊維90のうちのいくつか及び最大で全ては、その上に提示された別個の視覚的印を有することができる。例えば、図7A及び図7Bに示すように、視覚的表示は、繊維90の第1のサブセット90fの別個の部分98に位置する着色トレーサフィラメントを含むことができる。これらの別個の部分98は、「トレーサ」98と称され得る。図7Aに示すように、トレーサ98は、繊維90の第1のサブセット90fの軸94aに沿って、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50が第1の視覚的構成にあるとき、例えば、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50が水和され、第1の好ましい軸方向荷重又は好ましい軸方向荷重範囲にあるとき、繊維90の第1のサブセット90fの外面が繊維90の第2のサブセット90gによって交差される交差位置96など、繊維90の第1のサブセット90fの軸94aに沿って規則的な間隔で配置され得る。縫合糸構造体4、縫合糸構造体50又はその一部が、その後、長手方向張力の減少(例えば、修復された解剖学的構造のサイズ減少、例えば炎症の減少に起因するもの、又は修復された解剖学的構造の位置シフトに起因するもの)を受ける場合、コア80(複数可)は、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50又はその部分の長手方向収縮を駆動することができる。
【0055】
ここで図7Bを参照すると、上述したように、このような長手方向の収縮は、ピックカウントを増加させ、好ましくは、繊維の第1のサブセット90f及び繊維の第2のサブセット90gの間の交差角度A1をA1からA1’に増加させ、着色トレーサ98の端部99などの着色トレーサ98の部分を露出させること、又は他の方法で覆いを取ること、又は不明瞭にしないことができる。この変化は、歪みの変化に応答して縫合糸構造体4、縫合糸構造体50(又はその一部)の多数の交差繊維90f、90gにわたって複製されるので、全体的な視覚的提示において結果として生じる変化は、歪み変化を受ける縫合糸構造体4、縫合糸構造体50のそのような部分にわたるパターン変化及び/又は着色変化として現れることができる。追加的に又は代替的に、着色トレーサ98は、繊維交点96間の距離L2がL2からL2’に減少するにつれて、少なくともその部分が露出するように構成することができる。
【0056】
ここで図8A及び図8Bを参照すると、1つの非限定的な例によれば、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50は、第1の視覚的構成にあるときに(例えば、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50が好ましい歪み状態にあるときに)、着色トレーサの実質的に全てが第2の複数の繊維90gによって覆われるか又は他の方法で覆い隠されるように構成することができる。このような実施形態では、目に見えるようになる任意の着色トレーサ98又はその部分は、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50のそれぞれの部分に沿った歪みの意図しない変化(例えば、好ましい歪み状態からの逸脱)を示すことができる。他の実施形態では、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50は、第1の視覚的構成にあるとき、着色トレーサ98又はその一部が、可視パターン又は可視設計を提示するように露出されるように構成することができる。次いで、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50又はその部分が、好ましい歪み状態から離れて歪みの変化を受ける場合、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50のそのような部分に沿った着色トレーサ98又はその部分は、その部分に沿って覆われるか、覆い隠されるか、又は別様に見えなくなる。更に他の実施形態では、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50は、第1の視覚的構成にあるとき、露出した着色トレーサ98又はその一部が第1の可視パターン又は可視設計を提示し、これが次に、好ましい歪み状態から逸脱する縫合糸構造体4、縫合糸構造体50のそれぞれの部分(複数可)に沿って1つ以上の異なる可視パターン又は可視設計に変化するように構成され得る。非限定的な例として、図9A及び図9Bに示すように、第1の可視パターンは、着色トレーサ98によって提供される実質的に正方形の着色領域と、非着色領域とを有する市松模様パターンであってもよく、非着色領域は、歪み変化に応答して圧縮されて非正方形(例えば、平行四辺形)になる。
【0057】
他の実施形態では、視覚的印は、縫合糸繊維90の染色された、塗装された、又は別様に着色された部分によって生成され得る。追加的に又は代替的に、視覚的印は、漂白などによって着色縫合糸繊維90から色を除去するか又は着色縫合糸繊維90の色を変化させることによって生成し得る。追加の実施形態では、視覚的印は、繊維90内に及び/又は繊維90間に組み込まれた放射線不透過性部材を含むことができる。例えば、縫合糸構造体は、放射線不透過性であるか、又は放射線不透過性の別個の部分を有する1つ以上のトレーサ糸又は繊維90を含むことができ、この部分は、歪み変化に応答して、X線及び/又は蛍光透視画像下で見られるように、縫合糸構造体又はその一部に視覚的提示(例えば、パターン、設計)の変化を提示させる。追加の実施形態では、視覚的印は、繊維90内に及び/又は繊維90間に組み込まれた超音波で観察可能な部材を含むことができる。例えば、縫合糸構造体は、超音波で観察可能であるか、又は超音波で観察可能な別個の部分を有する1つ以上のトレーサ糸又は繊維90を含むことができ、この部分は、歪み変化に応答して、超音波画像で見られるように、縫合糸構造体又はその部分に視覚的提示(例えば、パターン、設計)の変化を提示させる。更なる実施形態では、視覚的印は、低い歪みなどの1つの構成で隆起又は突起を提示することなどによって、縫合糸構造体の外面上の可視表面テクスチャの変化を含むことができ、隆起又は突起は、高い歪みなどの別の構成で滑らかな表面テクスチャに変化し、逆もまた同様である。表面テクスチャのそのような変化は、縫合糸構造体の歪み状態に関する追加の視覚的手がかりを医師に提供することができる。
【0058】
更に他の実施形態では、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50は、水和に応答した自動的なサイズ変更及びピックカウント変更が、1つ以上の繊維90を破断させ、それによって繊維90の破断端部などの破断部分を露出させることができるように構成し得る。繊維90の破断部分は、繊維90の非破断部分とは異なる色であってもよい。このようにして、繊維90の破断部分の存在は、縫合糸構造体の視覚的提示を変化させることができる。追加的に又は代替的に、繊維90の破断部分は、染料を放出して、視覚的提示の変化を提供することができる。追加的に又は代替的に、繊維90の破断部分は、薬剤を放出することができる。視覚的提示の変化を引き起こすために繊維90の破断部分を使用するこれらの実施形態は、縫合糸構造体の一部が機械的破損を受けたことを示す視覚的フィードバックを提供するために使用でき、したがって、縫合糸構造体の交換を要することを知らせる1回限りの発生を含み得ることを理解されたい。コア80、したがって縫合糸構造体4、縫合糸構造体50のサイズ変換特性は、修復用途の特定の必要性に基づいて縫合糸構造体4、縫合糸構造体50の視覚的提示における有利な変化を提供するために、所望に応じて(例えば、コア直径D2並びに浸透圧活性物質86のタイプ及び重量パーセントを変化させることによって)適合され得ることを理解されたい。
【0059】
更なる実施形態において、縫合糸構造体4、縫合糸構造体50は、水和に応答して、表面テクスチャ(例えば、展開可能なバーブ20を介して)及び視覚的提示(例えば、着色トレーサ98の露出/隠蔽)の両方の変化を受けるように構成され得ることが理解されるべきである。
【0060】
上記で開示された実施形態(例えば、展開可能なバーブ20を有する、及び/又は視覚的提示を変化させる)のいずれも、折り畳まれ、曲げられ、結ばれ、又は他の方法で成形され、及び/又は組み合わせられてより大きな縫合糸構造体にされる縫合糸4及び/又はテープ50などの様々な三次元縫合糸構造体において使用され得ることも理解されるべきである。1つの非限定的な例として、上記に開示された実施形態は、編まれ、ニット編みされ、織られ、巻かれ、又は他の方法で互いに絡み合わされた複数の縫合糸4から構築されたメッシュに組み込まれ得る。
【0061】
上述の縫合糸構造体についてのピックカウントの変化は、上述の縫合糸4と同様の縫合糸及びそれらのコアを水和に曝露することがピックカウントの変化をもたらすかどうかを決定するために本発明者らが行った一連の試験に従って発見された。縫合糸の3つの試料、特にサイズ2 DYNACORD(商標)の3つの編組試料を試験した(5.0mm直径D1)。これらの試料は以下のとおりであった:(1)部品番号114290、ロット番号PRD027201、青色、非滅菌縫合糸、ブレーダーからバルク包装。(2)部品番号114291、ロット番号L990490、白色-青緑色、滅菌縫合糸、エンジニアリングビルド103333333から採取した試料、及び(3)部品番号114292、ロット番号PRD027564、白色-黒色、非滅菌縫合糸、ブレーダーからバルク包装。各縫合糸を、0.9%生理食塩水を有する生理食塩水溶液で満たされたそれぞれの250mL試料カップに入れ、カップを蓋で閉じた。次いで、カップを37.1℃(約98.8°F)の温度制御されたチャンバに約21時間入れた。次いで、縫合糸を生理食塩水から取り出し、ピックカウント試験法TM-101953に従ってSmartScope光学撮像装置を使用してそれらのピックカウントを測定した。検査中の縫合糸の量を制限するために、縫合糸をSmartScopeガラス上に直接配置し、縫合糸1本当たり2箇所で測定した。これらの検査結果を下記の表1に列挙する。
【0062】
【表1】
これらの結果は、体温で約21時間の水和時間が、これらの試料縫合糸のピックカウントを約5ピック(5ppi(インチ当たりのピック)としても測定される)だけ増加させたことを実証する。これらの試験から、本発明者らは、コアが半径方向に膨潤し、長手方向に収縮することから生じるピックカウントのそのような変化が、表面テクスチャ(例えば、バーブ展開)及び可視化特性(例えば、着色フィラメントの露出及び/又は隠蔽)の変化を含む、縫合糸における更なる物理的変化を駆動するための作動機構として使用され得ることを見出した。
【0063】
本開示を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、代用、及び改変を行い得る点を理解されたい。更に、本開示の範囲は、本明細書に説明される特定の実施形態に限定されるものではない。特に、前述の実施形態からの特徴のうちの1つ又は2つ以上は、本明細書の他の実施形態において使用されることができる。当業者がそのプロセスから容易に理解するように、本明細書において説明される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実施する、又は実質的に同じ結果を達成する、現在存在する又は後に開発される機械、製造法、組成物、手段、方法、又は工程は、本開示に従って利用され得る。
【0064】
〔実施の態様〕
(1) 長手方向に沿って細長い縫合糸構造体であって、前記縫合糸構造体は、第1の構成から第2の構成にサイズが変化するように構成されており、前記縫合糸構造体は、
前記縫合糸構造体の外面を画定する材料層であって、前記長手方向に沿って、かつ前記長手方向に沿って配向された中心軸の周りに延在し、複数の繊維を含む、材料層と、
前記複数の繊維内に延在する複数のバーブであって、前記バーブの外側端部は、前記縫合糸構造体が前記第1の構成にあるときに前記繊維間に長手方向に存在し、前記バーブは、前記縫合糸構造体が前記第2の構成にあるときに前記バーブの前記外側端部が前記中心軸に垂直な半径方向に沿って前記外面から外向きに延在するように展開可能である、複数のバーブと、を備える縫合糸構造体。
(2) 前記バーブは、その内側端部から前記それぞれの外側端部まで延在し、前記縫合糸構造体が前記第2の構成にあるとき、前記バーブは、前記中心軸に対してそれぞれの展開角度で延在する、実施態様1に記載の縫合糸構造体。
(3) 前記バーブは、前記縫合糸構造体が前記第1の構成にあるとき、前記中心軸に対して第1の角度で延在し、前記展開角度は、前記それぞれの第1の角度よりも大きい、実施態様2に記載の縫合糸構造体。
(4) 前記展開角度は、前記第1の角度よりも約10パーセント大きい、実施態様3に記載の縫合糸構造体。
(5) 前記複数のバーブの少なくとも第1のサブセットの前記外側端部は、前記長手方向に沿って配向された第1の長手方向に方向成分を有するそれぞれの方向に沿って前記それぞれの内側端部から離間しており、前記第1の長手方向は一方向であり、前記長手方向は二方向である、実施態様3に記載の縫合糸構造体。
【0065】
(6) 前記複数のバーブの少なくとも大部分の前記外側端部は、前記第1の長手方向に方向成分を有する前記それぞれの方向に沿って前記それぞれの内側端部から離間されている、実施態様5に記載の縫合糸構造体。
(7) 前記複数のバーブの第2のサブセットの前記外側端部は、前記第1の長手方向とは反対の第2の長手方向に方向成分を有するそれぞれの方向に沿って前記それぞれの内側端部から離間しており、前記第2の長手方向が一方向である、実施態様5に記載の縫合糸構造体。
(8) 前記複数のバーブの前記第1のサブセットの少なくともいくつか及び前記第2のサブセットの少なくともいくつかが、前記縫合糸構造体の少なくとも長手方向部分に沿って互いに散在している、実施態様7に記載の縫合糸構造体。
(9) 前記材料層は、前記複数の繊維が一緒に編まれた編組ジャケットであり、前記複数のバーブは、前記編組ジャケット内で編まれた少なくとも1つのキャリアストランドによって担持されている、実施態様1に記載の縫合糸構造体。
(10) 前記少なくとも1つのキャリアストランドは、前記中心軸の周りに螺旋状に延在する、実施態様9に記載の縫合糸構造体。
【0066】
(11) 前記少なくとも1つのキャリアストランドは、前記長手方向に沿って実質的に真っ直ぐに延在する、実施態様9に記載の縫合糸構造体。
(12) 前記バーブは、前記外側端部から、前記中心軸と前記材料層との間に環状に配置された基材によって担持されるそれぞれの内側端部まで延在する、実施態様1に記載の縫合糸構造体。
(13) 前記長手方向に沿って細長いコアを更に備え、前記材料層は、前記コアの外面の周りに延在し、前記コアは、前記縫合糸を前記第1の構成から前記第2の構成に移行させるように、水性環境への曝露に応答して、前記半径方向に沿って拡張し、前記長手方向に沿って収縮するように構成されている、実施態様1に記載の縫合糸構造体。
(14) 前記材料層は、前記コアが半径方向に拡張し、長手方向に収縮することによって、前記繊維が前記バーブの前記外側端部を前記縫合糸構造体の前記外面から前記半径方向に沿って外向きに押し出すように構成されている、実施態様1に記載の縫合糸構造体。
(15) 長手方向に沿って細長い縫合糸構造体であって、前記縫合糸構造体は、第1の構成から第2の構成にサイズが変化するように構成されており、前記縫合糸構造体は、
前記長手方向に沿って延在する外側材料層を備え、前記外側材料層は、それぞれの交点において繊維の第2のサブセットによって交差される繊維の第1のサブセットを含む複数の絡み合った繊維を含み、前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットのうちの少なくとも1つの繊維は、別個の視覚的印を有し、前記外側材料層は、前記別個の視覚的印が、
前記縫合糸構造体が前記第1の構成にあるときの第1の可視化特性と、
前記縫合糸構造体が前記第2の構成にあるときの第2の可視化特性であって、前記第1の可視化特性とは視覚的に異なる、第2の可視化特性と、を有するように、構成されている、縫合糸構造体。
【0067】
(16) 前記別個の視覚的印は、前記交点に又は前記交点に隣接して位置する前記繊維の第1のサブセット上の別個の着色領域を含み、
前記第1の可視化特性及び前記第2の可視化特性のうちの一方は、前記別個の着色領域が前記繊維の第2のサブセットによって実質的に覆い隠されていることによって引き起こされ、
前記第1の可視化特性及び前記第2の可視化特性のうちの他方は、前記別個の着色領域の少なくとも一部が実質的に露出されることによって引き起こされる、実施態様15に記載の縫合糸構造体。
(17) 前記第1の可視化特性及び前記第2の可視化特性のうちの他方は、可視パターンを集合的に提示する前記別個の着色領域の前記少なくとも一部によって画定されている、実施態様16に記載の縫合糸構造体。
(18) 前記別個の着色領域の前記少なくとも一部が、前記縫合糸構造体が前記第2の構成にあるときに実質的に露出される前記別個の着色領域の1つ以上の端部を含む、実施態様16に記載の縫合糸構造体。
(19) 前記別個の着色領域は、前記繊維の第1のサブセットによって担持される着色トレーサフィラメントによって画定されている、実施態様16に記載の縫合糸構造体。
(20) 前記第1の可視化特性は、前記別個の着色領域が前記繊維の第2のサブセットによって実質的に覆い隠されていることによって引き起こされ、前記第2の可視化特性は、前記別個の着色領域の前記少なくとも一部が実質的に露出されることによって引き起こされる、実施態様16に記載の縫合糸構造体。
【0068】
(21) 前記別個の視覚的印が、前記繊維の第1のサブセット上の別個の放射線不透過性領域を含む、実施態様15に記載の縫合糸構造体。
(22) 前記長手方向に沿って細長いコアを更に備え、前記外側材料層は、前記コアの外面の周りに延在し、前記コアは、前記縫合糸を前記第1の構成から前記第2の構成に移行させるように、水性環境への曝露に応答して、半径方向に沿って拡張し、前記長手方向に沿って収縮するように構成され、前記半径方向は、前記長手方向に実質的に垂直である、実施態様15に記載の縫合糸構造体。
(23) 前記外側材料層は、前記コアが半径方向に拡張しかつ長手方向に収縮することにより、少なくとも実質的に前記別個の視覚的印を前記第1の可視化特性から前記第2の可視化特性に移行させるように、前記繊維の第1のサブセットが前記繊維の第2のサブセットに対して再配向するよう構成されている、実施態様22に記載の縫合糸構造体。
(24) 前記第1の可視化特性と前記第2の可視化特性との間の差は、前記縫合糸構造体の少なくとも一部が受ける長手方向の歪みの変化を示す、実施態様22に記載の縫合糸構造体。
(25) 長手方向に沿って細長い縫合糸構造体であって、前記縫合糸構造体は、第1の構成から第2の構成にサイズが変化するように構成されており、前記縫合糸構造体は、
前記長手方向に沿って延在する外側材料層を備え、前記外側材料層は、それぞれの交点において繊維の第2のサブセットによって交差された繊維の第1のサブセットを含む複数の絡み合った繊維を含み、
前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットは、前記縫合糸構造体が前記第1の構成と前記第2の構成との間で変化するにつれて、前記外側材料層の表面テクスチャ及び視覚的外観のうちの1つ以上を変化させるように、互いに対して再配向するように構成されている、縫合糸構造体。
【0069】
(26) 前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットは、前記縫合糸構造体が前記第1の構成と前記第2の構成との間で変化するにつれて、前記外側材料層の表面テクスチャを変化させるように、互いに対して再配向するように構成され、前記表面テクスチャの変化は、前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットの再配向によって前記外側材料層の外面から外向きにバーブの外側端部を押し出すことにより引き起こされる、実施態様15に記載の縫合糸構造体。
(27) 前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットは、前記縫合糸構造体が前記第1の構成と前記第2の構成との間で変化するときに、前記外側材料層の視覚的外観を変化させるように、互いに対して再配向するように構成され、前記外観の変化は、前記繊維の第1のサブセット及び前記繊維の第2のサブセットの再配向によって前記繊維の別個の着色領域を露出状態から覆い隠された状態に移行させることにより引き起こされる、実施態様15に記載の縫合糸構造体。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
【国際調査報告】