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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】RFコイルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A61B5/055 355
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504848
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-03-05
(86)【国際出願番号】 IB2022057231
(87)【国際公開番号】W WO2023012706
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/229,455
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512129837
【氏名又は名称】ビューレイ・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViewRay Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】フミェレフスキ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ケーニッヒ, スティーブン
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AC01
4C096AD10
4C096CC06
4C096CC09
4C096CC12
(57)【要約】
MRI時に患者からRF信号を受信するよう構成された導体から成るマルチターンループを備えるRFコイルアセンブリを開示する。マルチターンループは、共にRFコイルアセンブリの平面内に実質的に延在する内側ループと外側ループとを含む。内側ループは少なくとも部分的に、外側ループの内側に入れ子状に設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI時に患者からRF信号を受信するように構成された導体で形成された複数のマルチターンループを備え、前記複数のマルチターンループの各々は、共に前記RFコイルアセンブリの平面内に実質的に延在する内側ループおよび外側ループを含み、前記内側ループは少なくとも部分的に、前記外側ループの内側に入れ子状に設けられている、RFコイルアセンブリ。
【請求項2】
前記内側ループおよび前記外側ループは、螺旋形状を形成する、請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項3】
一のマルチターンループにおいて、前記内側ループおよび前記外側ループは、直列に配置されている、請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項4】
前記内側ループが前記外側ループの内側に入れ子状に設けられていることで、前記RFコイルアセンブリのインダクタンスが大きくなる、請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項5】
前記複数のマルチターンループは、第1のマルチターンループおよび第2のマルチターンループを有し、それぞれの前記外側ループは少なくとも部分的に、共通導体から形成されている、請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項6】
前記複数のマルチターンループのうちの少なくとも1つがさらに、少なくとも部分的に前記内側ループの内側に入れ子状に配置されている第3のループを有する、請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項7】
第1のマルチターンループと、
前記第1のマルチターンループに隣接する第2のマルチターンループと、
受動絶縁回路と
をさらに備え、
前記第1のマルチターンループと前記第2のマルチターンループのそれぞれの前記外側ループが少なくとも部分的に、共通導体で形成されており、
前記受動絶縁回路は、前記共通導体内に配置され、前記第1のマルチターンループと前記第2のマルチターンループとを電磁的に絶縁する、
請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項8】
第1のマルチターンループと、
前記第1のマルチターンループに隣接していない第3のマルチターンループと、
前記第1のマルチターンループと前記第3のマルチターンループとの間に接続されているインダクタ対であって、前記第1のマルチターンループと前記第3のマルチターンループとを電磁的に絶縁するインダクタ対と、
をさらに備える、請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項9】
前記複数のマルチターンループがフェーズドアレイコイルを形成する、請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項10】
前記複数のマルチターンループのうち第1のマルチターンループは、前記複数のマルチターンループのうち第2のマルチターンループに隣接しているが、電磁的に絶縁はしていない、請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項11】
電磁的に絶縁するべく、前記第1のマルチターンループと前記第2のマルチターンループとの間に設けられているコンデンサをさらに備える、請求項10に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項12】
前記RFコイルアセンブリの平面に延在するシングルターンループをさらに備える、請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項13】
前記シングルターンループは、前記複数のマルチターンループのうち2つの間に配置されている、請求項12に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項14】
前記RFコイルアセンブリは表面コイルの一部である、請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項15】
前記表面コイルはさらに、第2の複数のマルチターンループを含む第2のRFコイルアセンブリを有し、前記第2のRFコイルアセンブリは少なくとも部分的に、前記複数のマルチターンループと重なり合っている、請求項14に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項16】
前記第2の複数のマルチターンループはそれぞれ、第2の内側ループおよび第2の外側ループを有し、前記外側ループはそれぞれ少なくとも部分的に、隣接する第2の外側ループに重なり合っており、前記内側ループはそれぞれ少なくとも部分的に、隣接する第2の内側ループに重なり合っている、請求項15に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項17】
前記第2の複数のマルチターンループはそれぞれ、第2の内側ループおよび第2の外側ループを有し、前記外側ループはそれぞれ少なくとも部分的に、隣接する第2の外側ループに重なり合っている、請求項15に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項18】
前記第2の複数のマルチターンループはそれぞれ、第2の内側ループおよび第2の外側ループを有し、前記外側ループはそれぞれ少なくとも部分的に、隣接する第2の外側ループおよび隣接する第2の内側ループに重なり合っている、請求項15に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項19】
前記RFコイルアセンブリは、頭部コイルの一部である、請求項1に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項20】
前記複数のマルチターンループは、軸を中心として円形状に形成され、遠位端よりも近位端において半径が大きい、請求項19に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項21】
前記頭部コイルはさらに、第2の複数のマルチターンループを含む第2のRFコイルアセンブリを有し、前記第2のRFコイルアセンブリは少なくとも部分的に、前記複数のマルチターンループに重なり合っている、請求項19に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項22】
前記頭部コイルは、
第2のRFコイルアセンブリと、
コンデンサと
を有し、
前記複数のマルチターンループのうちの第1のマルチターンループと、前記第2のRFコイルアセンブリのうちの第2のマルチターンループとは重なり合っておらず、
前記コンデンサは、前記RFコイルアセンブリと前記第2のRFコイルアセンブリとの間に接続され、電磁的に絶縁する、
請求項19に記載のRFコイルアセンブリ。
【請求項23】
前記患者の頭部が通過することが可能な開口部を有する可撓性発泡体ハウジングをさらに備え、前記複数のマルチターンループは少なくとも部分的に、前記可撓性発泡体ハウジング内に収容される、請求項19に記載のRFコイルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許仮出願第63/229,455号(出願日:2021年8月4日、名称:「RF Coil Assemblies」に基づき優先権を主張するものであり、この米国仮特許出願の開示は、参照により全て本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像(MRI)または核磁気共鳴撮像は、高周波パルス、強力な磁場(この強力な磁場に弱い勾配磁場を印加して修正し、位相および周波数を局所化し、エンコードまたはデコードする)、および身体組織の相互作用を利用して、患者の体内の平面または立体の画像、スペクトル信号および投影像を取得する非侵襲の撮像技術である。RFコイルは、患者の組織内の原子を励起してRF放射線を放出させ、そのRF放射線をRFコイルが(RFコイルを通る磁束の変化として)検出し、患者の画像を再構成するために使用し得る。磁気共鳴撮像は、軟組織の撮像において特に有用性が高く、疾患の診断および治療に利用されることがある。疾患を診断するために患者の体内の構造のうち動きがあるものを撮像する必要がある際に、リアルタイムMRIまたはシネMRIを用いる場合がある。リアルタイムMRIはまた、放射線治療または画像誘導外科手術等のインターベンショナル処置と共に利用される場合もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
RFコイルアセンブリおよびMRIシステムでのRFコイルアセンブリの使用について開示する。RFコイルアセンブリのいくつかの実施態様は、MRI実施時に患者からRF信号を受信するよう構成された導体から成るマルチターンループを含む。マルチターンループは、共に実質的にRFコイルアセンブリの平面内にある内側ループと外側ループとを含み、内側ループは少なくとも部分的に、外側ループの内側に、入れ子状に収められている。
【0004】
一部の変形例では、内側ループおよび外側ループは、螺旋形状としてよい。マルチターンループは、第1のマルチターンループと、第2のマルチターンループとを含むとしてよく、各マルチターンループの外側ループは、共通の導体で形成されている。第1のマルチターンループは、第2のマルチターンループに隣り合っているとしてよい。共通の導体に受動絶縁回路を配置するとしてよく、これによって第1のマルチターンループと第2のマルチターンループとを電磁気的に絶縁するとしてよい。
【0005】
他の変形例では、RFコイルアセンブリは、第1のマルチターンループと、第1のマルチターンループに隣接していない第3のマルチターンループとを含むとしてよい。第1のマルチターンループと第3のマルチターンループとの間にインダクタ対を接続して、第1のマルチターンループと第3のマルチターンループとを電磁気的に絶縁するとしてよい。
【0006】
一部の変形例では、マルチターンループによりフェーズドアレイコイルを形成する。RFコイルアセンブリは、表面コイルまたは頭部コイルの一部であってよい。
【0007】
本明細書で説明する主題の1または複数の変形例の詳細については、添付図面および以下の説明に記載する。本明細書で説明する主題のその他の特徴および利点は、明細書および図面から、そして、請求項から明らかになるであろう。本願で開示する主題の特徴は特定の実施例に基づいて例示を目的として記載しているが、このような特徴に限定されるものではないと容易に理解されよう。本開示に続く特許請求の範囲は、保護を求める主題の範囲を定義するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付図面は、本明細書に組み込まれるとともにその一部を構成するが、本明細書で開示する主題の態様を図示すると共に、明細書と組み合わせることで、開示した実施例に対応付けられている原理の一部の説明となる。図面は以下の通りである。
【0009】
図1】本開示の特定の態様に応じた磁気共鳴撮像システム(MRI)の一実施例を示す図である。
【0010】
図2A】本開示の特定の態様に応じたRFコイルアセンブリの一実施例を示す図である。
【0011】
図2B】本開示の特定の態様に応じたマルチターンループとシングルターンループとを組み合わせたRFコイルアセンブリの一実施例を示す図である。
【0012】
図3A】本開示の特定の態様に応じたRFコイルアセンブリの表面コイルの実施例を示す図である。
【0013】
図3B】本開示の特定の態様に応じたRFコイルアセンブリにおける重複絶縁部の実施例を示す図である。
【0014】
図3C】本開示の特定の態様に応じたRFコイルアセンブリにおける重複絶縁部の別の実施例を示す図である。
【0015】
図4】本開示の特定の態様に応じたRFコイルアセンブリの頭部コイルの実施例を示す図である。
【0016】
図5】本開示の特定の態様に応じた頭部コイル用のコイルハウジングを示す図である。
【0017】
図6】本開示の特定の態様に応じた頭部コイル用の電子機器ハウジングの内部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
RFコイルは、磁気共鳴画像法(MRI)において、患者の体内の解剖学的画像を構築するために使用される信号を受信するために利用することができる。多くの従来のMRI装置は、撮像時に得られるRF信号を改善するべく動作時の磁場強度を上げようとするが(1.5T以上)、本開示のRFコイルと組み合わせて使用することが企図されている他のシステムは、動作磁場強度としてより低いレベル(例えば、1.0T未満、約0.5Tまたは約0.35T)が適しているとしてよい。MRIで使用する磁場が低いことによって、例えば、患者が感じる熱が低くなり、アーチファクトが軽減され、MRI磁石の小型化およびコスト削減が可能となり、安全性が向上する等の利点が得られる。したがって、本開示によれば、検出システムの感度を上げることにより低磁場での撮像を容易にするべくRFコイル技術が改善される。しかし、開示された実施形態によれば低磁場MRIの実現が容易になるが、MRI磁場強度に関係なく同様の利点が実現され得る。したがって、本開示に係るシステムは、低磁場MRIでの用途のみに限定して考えられるべきではない。
【0019】
図1は、本開示の特定の態様に応じた、磁気共鳴撮像システム(MRI)100の一実施例を示す図である。図1において、MRI100は、主電磁石102と、傾斜磁場コイルアセンブリ104と、RFコイルシステム106とを備える。MRI100の内部には、人間である患者110が横たわるための患者カウチ108がある。
【0020】
MRI100の主電磁石102は、図1に示すように、ギャップ116を有し、バットレス114で離間させているギャップを有するソレノイド状電磁石であってよい。「ギャップ」という用語は、本明細書で用いる場合、図1に図示している種類のソレノイド状磁石のギャップ116を意味する。患者を撮像のために配置する、双極磁石構成におけるオープンな空間を意味するものではない。一実施例では、図1に示すギャップ116は28cmである。図1にも図示されているように、主電磁石102の電流は、軸122に沿って示される主磁場B0を発生させるために、第1の方向118または第2の方向120のいずれであってもよく、磁場の方向は主電磁石の電流方向によって決まる。
【0021】
傾斜磁場コイルアセンブリ104は、撮像データの空間エンコードを可能とするべく、主電磁石102の磁場に加えて弱い可変性の磁場を加えるために必要なコイルを含む。傾斜磁場コイルアセンブリ104は、連続的な円筒状アセンブリであってもよいし、図1に図示しているような分割された傾斜磁場コイルアセンブリであってもよいし、または、利用している特定のMRI構成で必要となりえるその他の構成であってもよい。
【0022】
磁気共鳴撮像システムは、患者110からの磁気共鳴撮像データの取得および処理を、画像再構築を含めて、実行するよう構成されている制御システムを備える。このような制御システムは、数多くのサブシステム、例えば、傾斜磁場コイルアセンブリ104、RFコイルシステム106、これらのシステムの一部分の動作を制御するサブシステム、および、RFコイルシステム106から受信したデータを処理して画像再構築を実行するサブシステムを含むとしてよい。例えば、インターベンショナル装置(例えば、放射線治療装置)がMRI100と一体化されている場合には、追加の制御システム機能を含むとしてよい。
【0023】
図1に3つの異なるタイプのRFコイルを示す。これらはどのように組み合わせてもよい。本体コイル106は、MRIシステムに一体化されているRFコイルで、一般的に少なくとも患者の身体の長さの分だけ延在してよい。本体コイルは、MRIを実施する際に利用される原子励起用のRF信号を供給するため、および/または患者からのRF信号を受信するために利用するとしてよい。図1には、表面コイル130と頭部コイル140という2種類の他のRFコイルも図示している。表面コイル130は、MRI処置時に患者から発せられるRF信号(および磁束の変化)をより局所的且つ正確に検出するための複数のRFコイルの集合体とすることができる。一部の実施形態では、表面コイルは、本体コイルよりも患者の表面に近いブランケットまたはケージであってもよい。図1に図示されているRFコイルのうち最後のタイプは頭部コイル140である。頭部コイルは、患者に近い位置に配置されるという点では表面コイルと同様であるが、主に患者の頭部を取り囲むような形状を持つとしてよい。このように、頭部コイル140は、患者の頭部が内部に収まるように円筒形状のケージ等の開放構造としてもよい。本開示は、RF頭部コイルおよび/またはRF表面コイルを改良するが、本明細書で開示する特徴は、RF本体コイルを含む一般的なMRI RFコイルシステムに適用することができる。
【0024】
図2Aは、本開示の特定の態様に応じた、磁気共鳴撮像システム(MRI)100の一実施例を示す図である。図2Aには、MRI時に患者からRF信号を受信するように構成された導体212で形成された複数のマルチターンループ(220、230、240)を有するRFコイルアセンブリ210の一例が図示されている。このような導体は、MRI画像の再構築に利用される信号を収集するアンテナの役割を果たすとしてよい。本開示から分かるように、複数のターンを利用することで、マルチターンループの内側に画定する領域で収集する信号が大幅に増加し得る。
【0025】
複数のループを使用することで導電材料が増え、コイルの損失が増加する可能性がある。しかし、本開示に係る実施形態の効果として予測していなかったものの1つとして、収集される信号の増加分がコイル損失の増加分を上回ることが挙げられる。例えば、一部の実施形態に係るRFコイルアセンブリが収集することのできる患者が放出するRF信号の量は約3倍になる一方で、コイル損失の増加は約2倍に過ぎない。したがって、特定の実施形態で得られる信号ノイズ比(SNR)は、シングルターンループで構成された同等のアセンブリよりも約35%高くなり得る。
【0026】
説明を目的として、図2Aのマルチターンループ(220、230、240)はそれぞれ、破線で境界線を示している。この境界線は実際の構造的特徴ではなく、各マルチターンループの概形を形成している導体を示唆するために図示しているものと理解されたい。図2Aに図示したRFコイルアセンブリの一例は、各マルチターンループが内側ループ222および外側ループ224の2つのループを有する実施形態を示す。しかしながら、ターン数(またはループ数)は例えば、3、5、10など任意の値が可能であるものと理解されたい。ターン数が3の例では、RFコイルアセンブリは、内側ループ222の内側に少なくとも部分的に入れ子状に収納されている第3のループを有するとしてよい。このように、本開示はさらに、さまざまな設計に応じて入れ子状に格納しているループを増やし得るものである。しかし、コイル損失、設計の複雑度、材料を追加するための費用などを考慮した上で、SNRの増加を最適化するように特定のターン数を選択するとしてもよい。このように、本開示に係るターン数が2のマルチターンループは、単に設計上の都合で任意に選択されたものではなく、構造の複雑度への影響はわずかに抑えられる一方で、SNRを大幅に改善することが実証されている一実装例である。
【0027】
「ループ」という用語は、本明細書で用いる場合、実質的に(必ずしも完全ではない)閉じた導体構造を指す。ループは、1つの導体で構成する必要はなく、任意の数の導体で構成するとしてよい。例えば、図2Aに図示した第1のマルチターンループ220では、内側ループ222は内側端214を始点とし、概ね矩形状のループを形成するように回り込む。しかし、ループは、一つ一つ閉じるのではなく、外側に延びて外側ループ224を形成して外側端216まで延びる。このように、ループは、RF信号の検出対象の領域を実質的に囲んでいる。例えば、任意のループは、領域のうち少なくとも80%、90%、または95%を囲んでいるとしてよい。しかし、別のループの一部を形成する導体、または、2つのループ間のつなぎ目を形成する導体によって、このような領域を100%の割合で囲むことも可能である。
【0028】
「マルチターンループ」という用語は、本明細書で用いる場合、少なくとも2つのループを有する導体構造を指す。これは、図2Aに破線で示す外形で説明する。この破線は、ほとんどの位置で2つの導体が外縁から中心に向かって延びている導体構造を概して囲んでいる。
【0029】
「ターン」という用語は、本明細書で用いる場合、マルチターンループのループ数を指す。例えば、図2Aは、それぞれが2つのターンを有する複数のマルチターンループを図示している。
【0030】
図2AのRFコイルアセンブリでは、一部の実施形態において、(例えば、マルチターンループ220の)内側ループおよび外側ループが直列に配置され得ることを示す。「直列」という用語は、内側ループが外側ループから「直列」で続いているので、外側ループの電流が直接内側ループに流れることを意味する。これとは対照的に、「並列」では、電流が内側の導体と外側の導体とに分割されることがある。このため、「直列」という用語は、「並列」の導体を使用してインダクタンスを低減しつつ強度に結合されたコイルを有する構造とは区別される。本開示に係る入れ子式マルチターンループでは複数の導体を隣接させるが、特定の実施形態では「並列」とはみなされないことに留意すべきである。なぜなら、少なくとも、外側ループ内に入れ子状に内側ループを配置することにより、RFコイルアセンブリのインダクタンスが増加する可能性があり、そのようにインダクタンスが増加することは、インダクタンスが低減するように構成することが可能な並列設計とは対照的だからである。
【0031】
一部の実施形態では、内側ループおよび外側ループは両方とも、RFコイルアセンブリの平面内に実質的に位置するとしてよい。この例は図2Aに図示している。内側ループは少なくとも部分的に外側ループの内側に入れ子状に配置することができる。「平面」または「平面的(planar)」という用語は、本明細書で使用される場合、所定の実施形態を平坦にした場合の物理的レイアウトを指す。例えば、図1の表面コイル130および頭部コイル140は概して、患者の形状に合わせて半円筒形である。しかし、このような設計を「平坦にする」場合、患者軸から概ね径方向にループが積層されることはないため、どのように平面的に見なされるかは明らかである。これとは対照的に、「ソレノイド」設計とは、複数のループを形成する複数の導体が互いに重なるので、ループの領域に対して巻線が法線方向に延びているものを指す。本明細書で使用される場合、「平面」または「平面的(planar)」という用語は、図4のような設計も含む。複数のマルチターンループアセンブリ(420および430)は、それぞれを平らにしても、(設計が完全な円筒形ではないので)完全な平面にはならないが、それにもかかわらずアセンブリに含まれる複数の導体は、隣接しており、重なり合うことはなくソレノイド状にもならない。
【0032】
本開示の実施形態に係る平面RFコイルアセンブリは、多くの非平面構成に比べて、寄生容量を低減することができる。本開示に係る平面設計は、ループの平面に対する法線方向における厚みが薄い複数の導体で構成するとしてよい。本開示で用いる導体の厚さは約20マイクロメートルとしてよいが、他の実施形態では最大で0.2mm、または0.4mm、1.0mm、または1.0mmを超える厚さとしてよい。このような導体と組み合わせて利用するRF周波数は、例えば、約5~300MHzであってよい。非常に薄い導体を使用することが可能で、その厚さは表皮深さの3倍以下、5倍以下、あるいは3倍~5倍である。放射線治療では、放射線の減衰を抑制するために、表皮深さの数倍程度は妥協する場合がある。導体間の寄生容量は、入れ子状に格納した導体の厚みが薄いため、非常に小さい。しかし、一部の実施形態ではハイブリッド型の採用が考えられている。いくつかのループを入れ子状に(すなわち、平面内に)配置し、他の幾つかのループをソレノイド構成で積層する。このようなハイブリッド構成は平面構成とはみなされない。
【0033】
平面マルチターンループの一例を図2Aに図示しており、内側ループおよび外側ループが螺旋形状を形成している。しかし、このような螺旋形状は、従来の円形の螺旋である必要はなく、ほぼ矩形(図示のとおり)、八角形、円形、楕円形、あるいは不規則な(すなわち多角形ではない)形状など、さまざまな形状としてよい。
【0034】
RFコイルアセンブリにおいて、あるマルチターンループから他のマルチターンループを電磁的に絶縁する場合、本明細書で開示する複数の絶縁方法を任意に組み合わせることで絶縁するとしてよい。「電磁的に絶縁」という用語は、本明細書で用いる場合、任意の2つのループ同士の電磁結合を概して低減させることを意味する。電磁的に絶縁することで結合を低減させる場合、低減の度合いは、コイル形状および/または実施例で用いる電子部品として何を選択するかに応じて決まるとしてよい。
【0035】
一部の実施形態では、隣接するマルチターンループ同士が共有している導体を利用して、例えば、後述する受動絶縁回路などで、電磁結合を抑制するとしてよい。例えば、RFコイルアセンブリのマルチターンループは、第1のマルチターンループおよび第2のマルチターンループを有するとしてよく、各マルチターンループの外側ループは少なくとも一部が共通導体235で形成されているとしてよい。これにより、複数のマルチターンループの少なくとも一部を物理的に接続することができる(すなわち、同一の導体で形成されており、途中で途切れていない)。他の実施形態において、RFコイルアセンブリが有する全ての外側ループを共通導体で形成する必要はない。
【0036】
一部の実施形態では、例えば図2Aに示されるように、RFコイルアセンブリは、第1のマルチターンループと第2のマルチターンループとを電磁的に絶縁するために共通導体235に配置される受動絶縁回路262を備えるとしてよい。受動絶縁回路は、マルチターンループ同士の電磁結合を抑制するべく、コンデンサ、インダクタ等を任意で組み合わせるとしてよい。他の実施形態では、隣接していないマルチターンループの間でさらにデカップリングを実現するとしてよい。いくつかの実施形態では、必要なコンデンサは1つのみである。
【0037】
一部の実施形態では、RFコイルアセンブリは、第1のマルチターンループと、第1のマルチターンループに隣接していない第3のマルチターンループとを含むとしてよい。第1のマルチターンループと第3のマルチターンループとの間にインダクタ対264を接続して、第1のマルチターンループと第3のマルチターンループとを電磁気的に絶縁するとしてよい。インダクタ対は、隣接しないマルチターンループの一部および/またはすべてに設けるとしてよい。例えば、第4のマルチターンループが存在する実施形態では、第1および第3のマルチターンコイル間、第1および第4のマルチターンコイル間、第2および第4のマルチターンコイル間にインダクタ対を設けるとしてよい。また、隣接する素子間にインダクタ対を設けるとしてもよい。
【0038】
一部の実施形態では、電子デカップリング素子(以下でさらに詳細に説明する)をRFコイルアセンブリの外側に配置することができる。電子デカップリング素子は、同軸ケーブル、編組線などの配線でRFコイルアセンブリに接続することができる。このような実施形態は、放射線のビーム経路に回路素子を設けない方が良い放射線治療において、適しているとしてよい。例えば、図2Aの破線は、構成要素の境界280の例を示している。このような構成要素の境界280は、RFコイルアセンブリのうち、電子デカップリング要素が全く存在しないか、または電子デカップリング素子の数を少なくしている領域を示すとしてよい。このように、構成要素の境界は、RFコイルアセンブリのうち、放射線ビーム照射に対する干渉が抑制され得る部分を画定することができる。
【0039】
開示された実施形態のいずれかに係るRFコイルアセンブリに含まれ得る電子デカップリング素子は、能動離調回路272、整合コンデンサ274および前置増幅器276を含むとしてよい。能動離調回路は、RF送信フェーズ中などの必要な場合に、対応するマルチターンコイルを離調(スイッチオフ)させるダイオードスイッチを含むとしてよい。整合コンデンサ274は、マルチターンコイルのインピーダンスを前置増幅器の入力インピーダンスに整合させることで、電力伝達の改善および/または信号反射の低減を実現するとしてよい。前置増幅器は、マルチターンループから受信したRF信号を増幅し、増幅された信号を画像再構築システムに供給するとしてよい。第2のマルチターンループ230および第3のマルチターンループ240に関しても、同様の電子素子を図示している。
【0040】
図2Aは、RFコイルアセンブリにおいて特定の場所にあるものとして同調/絶縁用のさまざまな電子素子(例えば、コンデンサ、インダクタ、ダイオードなど)を図示しているが、これは例示に過ぎず、説明している素子はRFコイルアセンブリにおいて別の位置に設け得るものと理解されたい。
【0041】
さらに他の実施形態では、前置増幅器の絶縁を利用することにより、マルチターンループを互いから電磁的に絶縁するとしてもよい。不整合増幅器は、例えば、図2Aに示すような増幅器を含むとしてよい。あるマルチターンループの電子回路を全体的に他のマルチターンループと異ならせることで、電磁気結合の可能性が低くなる。
【0042】
特定の実施形態に係るマルチターンループは、フェーズドアレイコイルを形成するとしてよい。このようにRFコイルアセンブリをフェーズドアレイとして適用することで、フェーズドアレイコイルに含まれる多数のコイルからのRF信号を組み合わせることができるため、単一コイルまたは切り替え可能なコイルアレイに比べて信号ノイズ比が改善し得る。このようにフェーズドアレイで利用する場合、一部の実施形態に係るRFコイルアセンブリは、第2のマルチターンループに隣接し、第2のマルチターンループとは電磁的に絶縁されている第1のマルチターンループを含むとしてよい。絶縁方法の例は、本明細書で既に説明されているが、いくつかの具体的な実施形態では、電磁的な絶縁を実現するべく第1のマルチターンループと第2のマルチターンループとの間にコンデンサを設けるとしてよい。
【0043】
図2Bは、本開示の特定の態様に応じた、シングルターンループとマルチターンループとを組み合わせたRFコイルアセンブリの一実施例を示す。特定の実施形態では、RFコイルアセンブリ290が、任意の数のマルチターンループ294に加えて、1または複数のシングルターンループ292を含むとしてよい。シングルターンループは、例えば、患者の顔(頭部コイルの場合)または他の各部位(表面コイルの場合)へのアクセスを可能にするよう、導体間の開口部を大きくすることが可能である。図2Bでは、マルチターンループと同様に、RFコイルアセンブリの平面内にあるシングルターンループを図示している。一部の実施形態では、図2Bのように、シングルターンループを2つのマルチターンループの間に配置することができる。他の実施形態では、シングルターンループをRFコイルアセンブリの端部に設けるとしてよい。したがって、RFコイルアセンブリにおいて任意の位置に任意の数のシングルターンループを配置することができる。
【0044】
図3Aは、本開示の特定の態様に応じた、RFコイルアセンブリの表面コイルの実施例を示す図である。図3Aにおいて、RFコイルアセンブリ310は表面コイルの一部であり、図1に示すコイル130と同様であってよい。表面コイル310の一部は、図3Aの下側により詳細に示している。
【0045】
一部の実施形態では、複数のRFコイルアセンブリを利用することができ、重複絶縁部を含むとしてよい。例えば、図3Aに示すように、表面コイル310は、複数のマルチターンループを有するRFコイルアセンブリ320と、第2の複数のマルチターンループを有する第2のRFコイルアセンブリ330とを備えるとしてよい。第2のRFコイルアセンブリは少なくとも部分的に、RFコイルアセンブリに含まれる複数のマルチターンループと重なり合うとしてよい。具体的には、第2の複数のマルチターンループはそれぞれ、第2の内側ループ334および第2の外側ループ332を含むとしてよい。図3Aに示すように、外側ループ322は少なくとも部分的に、隣接する第2の外側ループ332に重なり、内側ループ324はそれぞれ少なくとも部分的に、隣接する第2の内側ループ334に重なる。重複領域340によって、RFコイルアセンブリ320および第2のRFコイルアセンブリ330は互いから電磁的に絶縁され得る。特定の実施形態では、表面コイル310に含まれるRFコイルアセンブリのいずれも、RFコイルアセンブリ210の他の特徴、デカップリング電子回路、共通導体などを有するとしてよい。本実施形態に係る各RFコイルアセンブリのマルチターンループは、積層している/重なり合っているのは別個のRFコイルアセンブリであるため、依然として平面構成であると考えられる。
【0046】
図3Bは、本開示の特定の態様に応じた、RFコイルアセンブリにおける重複絶縁部の一実施例を示す図である。図3Bの実施形態は、図3Aに示されたものと類似しているが、重複部を含む別の構成を示している。図3Bは、外側ループ390が少なくとも部分的に隣接する第2の外側ループ391と重なり合って重複領域392を形成している一実施形態を示す。内側ループ393は重なり合っていない。説明を目的として、第2のRFコイルアセンブリの第2の複数のマルチターンループは、他方のRFコイルアセンブリと区別するために、破線で示している。図3Bによれば、参照番号を付与しているのは一対のループのみだが、本開示に係る重複部は、任意の数のループに応用し得ることが分かる。
【0047】
図3Cは、本開示の特定の態様に応じた、RFコイルアセンブリにおける重複絶縁部の別の実施例を示す図である。図3Cでは、外側ループ395は少なくとも部分的に、隣接する第2の外側ループ396および隣接する第2の内側ループ397に重なり合って、重複領域398を形成している。図3A図3B、および図3Cの重複部の構成は、本明細書で開示している任意の実施形態に係るRFコイルアセンブリで利用することができる。
【0048】
図4は、本開示の特定の態様に応じた、RFコイルアセンブリの頭部コイルの実施例を示す図である。頭部コイル410は、上述した表面コイルの実施形態と同様に、1または複数のRFコイルアセンブリを含むとしてよい。図4に図示している実施例は、第1のRFコイルアセンブリ420および第2のRFコイルアセンブリ430を有するが、一般的には、任意の数のRFコイルアセンブリを含むとしてよい。一部の実施例では、マルチターンループは、頭部コイルが近位端450および遠位端460を有するように、軸440を中心として概ね円筒状に形成され得る。しかしながら、頭部コイルの実施形態は、概して(図5に示す構成のように)矩形、六角形、八角形などに構成することもできる。
【0049】
特定の実施形態では、遠位端460よりも近位端450の方が半径が大きいとしてよい。「近位端」は、本明細書で用いる場合、頭部コイルのうち、患者の頭部または頸部の基部に近くなる方の部分を指す。「遠位端」という用語は、頭部コイルのうち、患者の頭頂部に近くなる方の部分を指す。一部の実施形態では、頭部コイルの特定の位置における半径は、患者の頭部に概ね合うように選択するとしてよい。したがって、軸方向に沿って半径が変わることで、半球形状、錐台(frustrum)形状などの形状が得られるとしてよい。他の実施形態では、半径は、軸方向の磁場フォールオフを少なくとも部分的に打ち消すように選択するとしてよい。したがって、一部の実施例では、RFコイルアセンブリが、頭部コイルの軸に沿って内側または外側に向けて半径が逓減しているテーパー部470を含むとしてよい。
【0050】
本明細書で開示する一部の実施形態に係るRFコイルアセンブリは、別個のRFコイルアセンブリが重なり合うことで形成される絶縁部を含むとしてよい。例えば、図4の頭部コイルの実施形態では、RFコイルアセンブリ420が含む複数のマルチターンループのうち第1のマルチターンループ422と、第2のRFコイルアセンブリ430が含む第2のマルチターンループ432とが、図3A図3Bまたは図3Cに図示されている構成と同様に、いくつかの位置で重なり合っている。重複領域(1または複数)は、軸440を中心として任意の位置(1または複数)であってよいが、図4と同様の一部の実施形態では、重複領域および対応する重なり合っている導体は、頭部コイルの側面に位置しているとしてよい。このような実施態様は、放射線照射の多くの態様が側面や底面からではなく、主として患者の上方から行われる可能性があるため、頭部コイルを介した放射線照射の改善が容易であるとしてよい。
【0051】
他の実施形態では、重複部ではなく、コンデンサ等の絶縁用の電子素子を使用し得る。したがって、そのような実施形態では、第1のRFコイルアセンブリが含む複数のマルチターンループの第1のマルチターンループと、第2のRFコイルアセンブリが含む第2のマルチターンループとが重なり合わない場合がある。そして、RFコイルアセンブリと第2のRFコイルアセンブリとの間に、1または複数のコンデンサを接続し、電磁的に絶縁するとしてよい。
【0052】
図5は、本開示の特定の態様に応じた、頭部コイル用のコイルハウジングを示す図である。一部の実施例において、RFコイルアセンブリの構成要素は少なくとも部分的に、コイルハウジング510に収容されているとしてよい。例えば、複数のマルチターンループのうち一部または全てが、コイルハウジングの内部に収納されており、コイルハウジングによって保護されているとしてよい。一部の実施形態では、コイルハウジングは、患者の頭部が通れるように開口部520を有するコイルハウジングを含むとしてよい。RFコイルアセンブリのマルチターンループは少なくとも部分的に、コイルハウジングに収容されているとしてよい。
【0053】
RFコイルアセンブリの導体は、発泡フレキシブルPCBに設けられるとしてよい。発泡フレキシブルPCBは、他の多くのプラスチック材料に比べて、放射減衰効率が低い材料である。一部の実施形態では、コイルハウジングは硬化プラスチック、ゴム等とすることができる。図5の例に示すように、導体はハウジング内に収容されているが、コイルハウジングを貫通する1または複数の空間530を設けるとしてもよい。しかし、他の実施形態では、コイルハウジングは実質的に、患者の頭部を隙間なく取り囲むとしてよい。コイルハウジングは、放射線ビームの照射角度に関係なく、放射線ビームを均一に減衰させるように構成される場合もあるとしてよい。このような構成は、ビームが導体を通過するか否かにかかわらず、ビームが実質的に等しく減衰されるように材料を適切に組み合わせることで実現できる。
【0054】
本明細書に開示する他の実施例に応じて、RF信号をデカップリングおよび/または増幅するための電子素子は、電子機器ハウジング540に配置するとしてよい。電子機器ハウジング540は、コイルハウジング510とは異なる材質であってよい。例えば、電気的および/または磁気的に保護するべく、電子機器ハウジングを金属箔、プレート等から作製するとしてよい。電子機器ハウジングはさらに、増幅器などの電子システムに電力を供給するためのケーブル550またはフィードスルーを有するとしてよく、また、MRIシステムの他の構成要素に出力信号を伝送することが可能であるとしてよい。
【0055】
図6は、本開示の特定の態様に応じた、頭部コイル用の電子機器ハウジングの内部を示す図である。図6では、電子機器ハウジング540の背面図が描かれており、内部に収納されているさまざまな電子素子が見えるように外部ケーシング610を透明なものとして図示している。特に、RFコイルアセンブリ用の増幅器などのさまざまな電子素子の実装を容易にするために、回路基板620は、電子機器ハウジング内に配置することが可能で、RFコイルアセンブリが備えるマルチターンコイルの各々に利用される電子素子を実質的に均等に幾何学的に分散して配置することが可能な形状にすることができる。これは図6を参照すると分かる。RFコイルアセンブリはほぼ八角形の形状(コイルハウジング510で見えにくくなっている)を持ち、同様に回路基板620も八角形の形状を持つ。
【0056】
以下では、任意に組み合わせて請求の対象となり得る項目を記載することで、本開示のさらなる特徴、特性、および例示的な技術的解決策を説明する。
【0057】
項目1.MRI時に患者からRF信号を受信するように構成された導体で形成されている複数のマルチターンループを備えるRFコイルアセンブリであって、前記複数のマルチターンループの各々は、共に前記RFコイルアセンブリの平面内に実質的に延在する内側ループおよび外側ループを含み、前記内側ループは少なくとも部分的に、前記外側ループの内側に入れ子状に設けられている、RFコイルアセンブリ。
【0058】
項目2.前記内側ループおよび前記外側ループは、螺旋形状を形成する、項目1に記載のRFコイルアセンブリ。
【0059】
項目3.一のマルチターンループにおいて前記内側ループおよび前記外側ループは、直列に配置されている、項目1または2に記載のRFコイルアセンブリ。
【0060】
項目4.前記内側ループが前記外側ループの内側に入れ子状に設けられていることで、前記RFコイルアセンブリのインダクタンスが大きくなる、項目1から3のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0061】
項目5.前記複数のマルチターンループは、第1のマルチターンループおよび第2のマルチターンループを有し、それぞれの前記外側ループは少なくとも部分的に、共通導体から形成されている、項目1から4のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0062】
項目6.前記複数のマルチターンループのうちの少なくとも1つがさらに、少なくとも部分的に前記内側ループの内側に入れ子状に配置されている第3のループを有する、項目1から5のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0063】
項目7.第1のマルチターンループと、前記第1のマルチターンループに隣接する第2のマルチターンループと、受動絶縁回路とをさらに備え、前記第1のマルチターンループおよび前記第2のマルチターンループのそれぞれの前記外側ループが少なくとも部分的に、共通導体で形成されており、前記受動絶縁回路は、前記共通導体内に配置され、前記第1のマルチターンループと前記第2のマルチターンループとを電磁的に絶縁する、項目1から6のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0064】
項目8.第1のマルチターンループと、前記第1のマルチターンループに隣接していない第3のマルチターンループと、前記第1のマルチターンループと前記第3のマルチターンループとの間に接続されているインダクタ対であって、前記第1のマルチターンループと前記第3のマルチターンループとを電磁的に絶縁するインダクタ対と、をさらに備える、項目1から7のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0065】
項目9.前記複数のマルチターンループがフェーズドアレイコイルを形成する、項目1から8のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0066】
項目10.前記複数のマルチターンループのうち第1のマルチターンループは、前記複数のマルチターンループのうち第2のマルチターンループに隣接しているが、電磁的に絶縁はしていない、項目1から9のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0067】
項目11.電磁的に絶縁するべく、前記第1のマルチターンループと前記第2のマルチターンループとの間に設けられているコンデンサをさらに備える、項目1から10のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0068】
項目12.前記RFコイルアセンブリの平面に延在するシングルターンループをさらに備える、項目1から11のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0069】
項目13.前記シングルターンループは、前記複数のマルチターンループのうち2つの間に配置されている、項目1から12のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0070】
項目14.前記RFコイルアセンブリは表面コイルの一部である、項目1から13のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0071】
項目15.前記表面コイルはさらに、第2の複数のマルチターンループを含む第2のRFコイルアセンブリを有し、前記第2のRFコイルアセンブリは少なくとも部分的に、前記複数のマルチターンループと重なり合っている、項目1から14のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0072】
項目16.前記第2の複数のマルチターンループはそれぞれ、第2の内側ループおよび第2の外側ループを有し、前記外側ループはそれぞれ少なくとも部分的に、隣接する第2の外側ループに重なり合っており、前記内側ループはそれぞれ少なくとも部分的に、隣接する第2の内側ループに重なり合っている、項目1から15のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0073】
項目17.前記第2の複数のマルチターンループはそれぞれ、第2の内側ループおよび第2の外側ループを有し、前記外側ループはそれぞれ少なくとも部分的に、隣接する第2の外側ループに重なり合っている、項目1から16のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0074】
項目18.前記第2の複数のマルチターンループはそれぞれ、第2の内側ループおよび第2の外側ループを有し、前記外側ループはそれぞれ少なくとも部分的に、隣接する第2の外側ループおよび隣接する第2の内側ループに重なり合っている、項目1から17のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0075】
項目19.前記RFコイルアセンブリは、頭部コイルの一部である、項目1から18のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0076】
項目20.前記複数のマルチターンループは、軸を中心として円形状に形成され、遠位端よりも近位端において半径が大きい、項目1から19のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0077】
項目21.前記頭部コイルはさらに、第2の複数のマルチターンループを含む第2のRFコイルアセンブリを有し、前記第2のRFコイルアセンブリは少なくとも部分的に、前記複数のマルチターンループに重なり合っている、項目1から20のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0078】
項目22.前記頭部コイルは、第2のRFコイルアセンブリと、コンデンサとを有し、前記複数のマルチターンループのうちの第1のマルチターンループと、前記第2のRFコイルアセンブリのうちの第2のマルチターンループとは重なり合っておらず、前記コンデンサは、前記RFコイルアセンブリと前記第2のRFコイルアセンブリとの間に接続され、電磁的に絶縁する、項目1から21のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0079】
項目23.前記患者の頭部が通過することが可能な開口部を有する可撓性発泡体ハウジングをさらに備え、前記複数のマルチターンループは少なくとも部分的に、前記可撓性発泡体ハウジング内に収容される、項目1から22のいずれか1つに記載のRFコイルアセンブリ。
【0080】
上記の記載および特許請求の範囲において、「~のうち少なくとも1つ」または「~のうち1または複数」等の表現の後に、複数の要素または特徴が接続詞と共に並べられることがある。「および/または」という用語も、2つ以上の要素または特徴が列挙される際に記載される場合がある。これらの表現は、使用されている文脈において暗示的または明示的に相反する記載がない限り、列挙した要素または特徴のうちいずれかを個別に、または、記載した要素または特徴のうちいずれかと残りの要素または特徴の何れかとを組み合わせたものを意味することを意図しているものである。例えば、「AおよびBのうち少なくとも1つ」、「AおよびBのうち1または複数」および「Aおよび/またはB」という表現はそれぞれ、「Aのみ」、「Bのみ」または「AおよびB」を意味することを意図している。3つ以上が列挙されている場合も同様の解釈をするものとする。例えば、「A、BおよびCのうち少なくとも1つ」、「A、BおよびCのうち1または複数」および「A、Bおよび/またはC」という表現はそれぞれ、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「AおよびB」、「AおよびC」、「BおよびC」または「AおよびBおよびC」を意味することを意図している。「~に基づき」という用語を上記および特許請求の範囲で用いる場合、記載していない特徴または要素も考慮され得るように、「~に少なくとも部分的に基づいて」を意味することを意図する。
【0081】
本明細書で説明する主題は、所望の構成に応じて、システム、装置、方法、コンピュータプログラムおよび/または物品で具現化され得る。添付図面で図示する、および/または、本明細書で説明する任意の方法またはロジックフローは、所望の結果を実現するために必ずしも図示している特定の順序または逐次順序が必要なわけではない。上記の説明に記載した実施例は、本明細書で説明する主題に一致した全ての実施例を代表するものではない。そうではなく、説明している主題に関するさまざまな態様に一致している一部の例に過ぎない。上記でいくつか変形例を詳細に説明したが、他の点で変形または追加をすることも可能である。具体的には、本明細書で記載した内容に加えてさらなる特徴および/または変形を行うこともできる。上述した実施態様は、開示した特徴のさまざまなコンビネーションおよびサブコンビネーション、および/または、上述したさらなる特徴のコンビネーションおよびサブコンビネーションに関するとしてよい。さらに、上述した利点は、請求項の適用を、これらの利点のうちいずれかまたはすべてを実現するプロセスおよび構造に限定することを意図したものではない。
【0082】
これに加えて、各セクションのタイトルは、本開示に基づく請求項に記載されている発明を限定または特徴付けるものではない。さらに、「背景技術」に記載した技術の説明は、当該技術が本開示の発明に対する先行技術と認めたものと解釈されるべきではない。「発明の概要」の記載もまた、請求項に記載されている本発明を特徴付けるものと解釈されるべきではない。さらに、本開示に全体的に言及する場合、または、「発明」という用語を単数形で使用する場合、以下に記載する請求項の範囲に対する限定を暗示していることを意図するものではない。本開示に基づく複数の請求項の限定事項にしたがって複数の発明を記載するとしてよい。したがってこれらの請求項は、保護すべき発明およびその均等物を定義する。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
【国際調査報告】