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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】抗CD154抗体及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240719BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240719BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K47/68
A61P37/02
A61P37/06
A61P19/02
A61P1/04
A61P25/00
A61P13/12
A61P17/06
A61P7/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504862
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 KR2022011334
(87)【国際公開番号】W WO2023008982
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0100482
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0095658
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519001383
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニバーシティ アールアンドディービー ファウンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】518357128
【氏名又は名称】イファ ユニバーシティ-インダストリー コラボレーション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】EWHA UNIVERSITY - INDUSTRY COLLABORATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】52, Ewhayeodae-gil Seodaemun-gu Seoul 03760, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【弁理士】
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】チュン ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ キュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム サン イル
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】キム ス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク ソ リョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン シ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】カン ドン ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム ス リ
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC14
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、CD154に特異的に結合する抗体に関し、具体的には、配列番号1~3のアミノ酸配列を含むHCDRと、配列番号4~6のアミノ酸配列を含むLCDRとを含む抗体;並びに、前記抗体および薬物を含むT細胞媒介性自己免疫疾患または臓器移植拒絶反応の予防または治療用薬学組成物に関する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(heavy chain complementary determine region 1;HCDR1)と、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含む重鎖と、
配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(light chain complementary determine region 1;LCDR1)と、配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む軽鎖とを含む、抗体。
【請求項2】
配列番号7のアミノ酸配列および配列番号8のアミノ酸配列を含む単鎖可変断片(single chain variable fragment、scFv)を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体は、ヒトCD154(cluster of differentiation 154)に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体に薬物が接合されている、抗体-薬物コンジュゲート(antibody-drug conjugate)。
【請求項5】
前記薬物は、前記抗体にリンカーまたは二次抗体で接合される、請求項4に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項6】
さらにハプテン(hapten)を含む、請求項4に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項7】
前記ハプテンは、コンチニン(continine)である、請求項6に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項8】
前記薬物は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、メルタンシン(DM1)、カリケアミシン(calicheamicins)、ピロロベンゾジアゼピン(pyrrolobenzodiazepine、PBD)二量体、α-アマニチン(α-amanitin)およびデュオカルマイシン(duocarmycin)を含む群から選択される、請求項4に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項9】
請求項4~8のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲートを含む、T細胞媒介性自己免疫疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
前記T細胞媒介性自己免疫疾患は、移植片対宿主病(graft-versus host diseases)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、全身性エリテマトーデス(systemic Lupus erythematous)、クローン病(Crohn’s disease)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、ループス腎炎(lupus nephritis)、乾癬(psoriasis、pSS)、原発性巣状分節性糸球体硬化症(focal and segmental glomerular sclerosis)、および免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia)を含む群から選択される、請求項9に記載の薬学組成物。
【請求項11】
請求項4~8のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲートを含む、臓器移植拒絶反応(transplantation rejection)の予防または治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD154に特異的に結合する抗体に関し、具体的には、活性化されたT細胞の表面に発現するCD154を認識する抗体;並びに、前記抗体および薬物を含むT細胞媒介性自己免疫疾患または臓器移植拒絶反応の予防または治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞の活性化は、炎症性疾患、自己免疫疾患、移植拒絶反応などで現れる必須の現象であり、T細胞受容体連結(engagement)以外に共刺激シグナル(costimulatory signal)を必要とする。新たに活性化された(recently activated)T細胞のCD154は、抗原提示細胞(antigen-presenting cell、APC)のCD40に結合し、CD80とCD86の発現を促進するとともに、サイトカインの産生を促進する。CD80とCD86に結合して、APCのCD80/CD86とT細胞のCD28との結合を抑制するCTLA-4 Ig(abatacept、Orencia)とベラタセプト(belatacept、Nulojix)は、効果的にT細胞の活性化を抑制することにより、自己免疫疾患の進行を抑制する(Nature Review Immunol、2001、1:220)。
【0003】
CD28の他にも多数のT細胞共刺激シグナルが判明しているが、疾患の治療において最も重要なシグナル伝達経路は、T細胞のCD154(CD40L)とCD40との相互作用によるシグナルである。CD4+T細胞のCD154の発現レベルは、自己免疫関節炎患者の疾患の重症度(disease severity)、臨床的な結果(clinical outcome)、疾患の治癒度(disease remission)、TNF阻害剤の治療効果などと非常に密接に関連している(Cells、2019、8:927)。CD154に結合する抗体は、CD40との相互作用の阻害以外にも、CD154を発現する活性化T細胞を補体依存性細胞傷害(complement mediated cytotoxicity、CDC)により除去することにより、MHCミスマッチ皮膚移植モデル(MHC-mismatched skin transplantation model)における移植拒絶反応を抑制した(Nature Medicine、2003、3:1275)。その後、CD154に結合する抗体の臨床開発が活発に進められ、BG9588、IDEC-131、ABI793などが開発されたが、血栓塞栓症(thromboembolism)の発症により開発が中断された。その原因は、活性化された血小板から分泌されるsoluble CD154と抗体が免疫複合体(immune complex)を形成した後、血小板のFcγRIIaと結合して血小板を活性化させるためであることが判明した(J Immunol、2010、185:1577)。その後、FcのないCD154ブロックカー(blocker)であるVIB4920は、シェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)を対象として臨床開発が進められている(NCT04129164)。また、抗CD40L抗体として、ダピロリズマブペゴル(Darpirolizumab pegol)(NCT04294667)、SAR441334(INX-021;NCT04572841、NCT05039840、NCT04879628)もまた、Fc受容体に対する結合力を阻害して血栓塞栓症の発症を抑制するために様々なフォーマットで臨床開発が進められている。
【0004】
CD154のリガンド(ligand)であるCD40の阻害剤も開発されているが、CD40阻害剤の臨床的効果はCD154阻害剤と比較して劣っていることが示された。その理由の一つは、CD154のリガンドはCD40の以外にもCD11bなどが存在するためである(Am J Transplant、2020、20:2216)。
【0005】
そこで、CD154を特異的に標的化してCD154とCD40との間の相互作用を阻害しながらも、同時にCD154+T細胞の特異的な死滅を誘導できる抗体の開発が必要なのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、CD154を特異的に標的化し、CD154+T細胞と特異的に結合できる抗体を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、抗CD154抗体を含むT細胞媒介性自己免疫疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明は、抗CD154抗体を含む臓器移植拒絶反応の予防または治療用薬学組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1.配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(heavy chain complementary determine region 1;HCDR1)と、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含む重鎖と、
配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(light chain complementary determine region 1;LCDR1)と、配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む軽鎖とを含む、抗体。
【0010】
2.前記項目1において、配列番号7のアミノ酸配列および配列番号8のアミノ酸配列を含む単鎖可変断片(single chain variable fragment、scFv)を含む、抗体。
【0011】
3.前記項目1において、前記抗体はヒトCD154(cluster of differentiation 154)に結合する、抗体。
【0012】
4.前記項目1~3のいずれかの抗体に薬物が接合されている、抗体-薬物コンジュゲート(antibody-drug conjugate)。
【0013】
5.前記項目4において、前記薬物は、前記抗体にリンカーまたは二次抗体で接合される、抗体-薬物コンジュゲート。
【0014】
6.前記項目4において、さらにハプテン(hapten)を含む、抗体-薬物コンジュゲート。
【0015】
7.前記項目6において、前記ハプテンは、コンチニン(continine)である、抗体-薬物コンジュゲート。
【0016】
8.前記項目4において、前記薬物は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、メルタンシン(DM1)、カリケアミシン(calicheamicins)、ピロロベンゾジアゼピン(pyrrolobenzodiazepine、PBD)二量体、α-アマニチン(α-amanitin)およびデュオカルマイシン(duocarmycin)を含む群から選択される、抗体-薬物コンジュゲート。
【0017】
9.前記項目4~8のいずれかの抗体-薬物コンジュゲートを含む、T細胞媒介性自己免疫疾患の予防または治療用薬学組成物。
【0018】
10.前記項目9において、前記T細胞媒介性自己免疫疾患は、移植片対宿主病(graft-versus host diseases)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、全身性エリテマトーデス(systemic Lupus erythematous)、クローン病(Crohn’s disease)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、ループス腎炎(lupus nephritis)、乾癬(psoriasis、pSS)、原発性巣状分節性糸球体硬化症(focal and segmental glomerular sclerosis)、および免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia)を含む群から選択される、薬学組成物。
【0019】
11.前記項目4~8のいずれかの抗体-薬物コンジュゲートを含む、臓器移植拒絶反応(transplantation rejection)の予防または治療用薬学組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、CD154に特異的に結合する新規な抗体を提供することができる。これは、好ましくは、抗CD154抗体に薬物を接合した抗体-薬物コンジュゲートとして活用することができ、前記抗体-薬物コンジュゲートは、T細胞媒介性自己免疫疾患などの予防または治療用薬学組成物として活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、抗CD154抗体がCD154+L細胞に結合することをフローサイトメトリーにより確認したものである。
図2図2は、LALA突然変異を含む抗CD154抗体がCD154+L細胞に結合することをフローサイトメトリーにより確認したものである。
図3図3は、CD4+T細胞を活性培地で培養した後、時間によるCD4+CD154+T細胞の割合を確認したデータ及びCD4+CD154+T細胞と抗CD154抗体が結合することをフローサイトメトリーにより確認したものである。
図4図4は、抗CD154抗体がCD154に結合し、CD154の機能を阻害することを確認したものである。
図5図5は、抗CD154抗体の血中半減期を確認したものである。
図6図6は、抗CD154抗体の細胞内への内部化(internalization)及び局在(localization)を確認したものである。
図7図7は、抗CD154抗体-薬物コンジュゲートがCD154+L細胞を死滅できることを確認したものである。
図8図8は、LALA突然変異を含む抗CD154抗体薬物コンジュゲートがCD154+L細胞を死滅できることを確認したものである。
図9図9は、抗CD154抗体-薬物コンジュゲートがCD154+T細胞を死滅できることを確認したものである。
図10図10は、抗CD154抗体アミノ酸配列を示すものである。
図11図11は、13個のニワトリ由来の残基がヒト由来の残基で置換された部分ヒト化抗体のscFv部位のアミノ酸配列を示すものである。
図12図12は、抗CD154抗体のLCDRアミノ酸配列およびHCDRアミノ酸配列を示すものである。
図13図13は、25個のニワトリ由来の残基がヒト由来のアミノ酸配列に変更された部分ヒト化抗体のscFv部位のアミノ酸配列を示すものである。
図14図14は、31個のニワトリ由来の残基がヒト由来のアミノ酸配列に変更された部分ヒト化抗体のscFv部位のアミノ酸配列を示すものである。
図15図15は、LALA突然変異を含む抗CD154抗体(IgG1)にMMAEを結合させた抗体-薬物コンジュゲートの模式図を示すものである。
図16図16は、HIC-HPLCにより、抗CD154抗体とFcBPリンカーとの間の接合有無を確認したデータである。
図17図17は、HIC-HPLCにより、抗CD154抗体とMMAE薬物との間の接合有無を確認したデータである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。特に定義がない限り、本明細書における全ての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する技術者が理解する当該用語の一般的な意味と同じであり、仮に本明細書に使われる用語の意味と衝突する場合には、本明細書に使われる定義に従う。
【0023】
本発明は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(heavy chain complementary determine region 1;HCDR1)と、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含む重鎖と、
配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(light chain complementary determine region 1;LCDR1)と、配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む軽鎖とを含む抗体に関するものである。
【0024】
本発明の抗体は、前記配列番号1~3のHCDRアミノ酸配列および配列番号4~6のLCDRアミノ酸配列を有するものであれば、残りのアミノ酸配列を限定しない。例えば、配列番号7のアミノ酸配列および配列番号8を含む単鎖可変断片(single chain variable fragment、scFv)を含む抗体であってもよい。但し、これに限定されるものではない。
【0025】
前記単鎖可変断片を含む抗体の場合は、重鎖可変部の配列と軽鎖可変部の配列がリンカー等で連結されていてもよい。前記リンカー配列は、当業者によって制限なく選択され、例えば配列番号15のアミノ酸配列であってもよい。但し、これに限定されるものではない。
【0026】
抗原の特定のエピトープを認識して抗原-抗体複合体を形成する抗体の主要部位は、重鎖および軽鎖の可変領域、特に相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)がこの複合体の形成に寄与するので、前述した本発明の抗体の可変領域、特にCDRを含むそのモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などを本発明の範囲に含む。前記ヒト化抗体は、例えば、配列番号9のアミノ酸配列および配列番号10のアミノ酸配列を含む抗体であってもよく、配列番号11のアミノ酸配列および配列番号12のアミノ酸配列を含む抗体であってもよく、配列番号13のアミノ酸配列および配列番号14のアミノ酸配列を含む抗体であってもよい。但し、これらに限定されるものではない。
【0027】
また、本発明のモノクローナル抗体の可変領域、特にCDRが同一である以上、IgG~IgGのIgGサブクラス(subclass)なども本発明の範囲に含まれ、IgGサブクラス(subclass)アミノ酸配列中の一部の配列に突然変異が存在する場合も含まれ得る。例えば、ヒトIgG1配列においてLALA突然変異(Leu234Ala/Leu235Ala)が存在する場合、Fc部位に対する抗Fc抗体の結合を抑制でき、血栓塞栓症(thromboembolism)のような副作用を最小限に抑えることができる。また、本発明は、前述のような結合特性を有する限り、2つの全長の軽鎖および2つの全長の重鎖を有する完全な形態のみならず、抗体分子の機能的断片を含む。「抗体分子の機能的断片」とは、少なくとも抗原結合機能を保持している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどがある。但し、これらに限定されるものではない。
【0028】
また、本発明の抗体は、二重(bispecific)、三重(trispecific)又はそれ以上の抗原に結合できる多重抗体であっても、抗原結合部位の1つ以上が前記配列番号1~3のHCDR配列および配列番号4~6のLCDR配列を有するものであれば、関係なく本発明の範囲に含まれる。例えば、二重抗体としてCD154とハプテンにそれぞれ特異的に結合するFv(variable fragment)配列を有するものであってもよく、その場合、ハプテンと薬物等をコンジュゲートして抗体-薬物コンジュゲートを作成することもできる。但し、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明の抗体は、CD154(cluster of differentiation 154)に結合することができる。CD154は、活性化されたCD4+T細胞、すなわち免疫応答を活発に行うことができるCD4+T細胞で主に発現され、休止(in-activated)状態のT細胞では発現されない細胞表面タンパク質に該当する。但し、CD4+T細胞以外にも活性を有するCD8+T細胞、NK細胞(natural killer cell)、単核球(monocytes)、好塩基球(basophils)、好酸球(eosinophils)または活性化された血小板表面でも発現され得る。したがって、本発明の抗体は、活性化されたT細胞と休止状態のT細胞とを区別し、活性化されたT細胞の表面タンパク質に選択的に結合できる抗体に該当する。本発明の抗体は、ヒト、アカゲザル(Macaca mulatta、Rhesus macaque)、3ストライプ夜猿(Aotus trivirgatus、Three-striped night monkey)、夜猿(Douroucouli)及びスーティーマンガベイ(Cercocebus atys、Sooty mangabey)を含む群のCD154に結合できる。但し、これらに限定されるものではない。
【0030】
また、本発明は、前記抗体に薬物が接合された抗体-薬物コンジュゲート(antibody-drug conjugate)に関するものである。
【0031】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、薬物を、抗体が特異的に結合できる細胞に送達するものであり、CD154に特異的に結合できる本発明の抗体と薬物とをコンジュゲートすることにより、CD154を発現する細胞に選択的に薬物を送達することができる。
【0032】
本発明で前記抗体と薬物との接合は、直接結合であってもよく、リンカー(linker)または抗体に結合した二次抗体(secondary antibody)による間接結合であってもよい。但し、これらに限定されるものではなく、抗体と薬物を共同で標的細胞に送達できるものであれば良い。
【0033】
本発明で前記「二次抗体」とは、抗原に結合する他の抗体(一次抗体)のアミノ酸配列に特異的に結合する抗体を意味するものであり、標的抗原に直接結合する一次抗体とは結合の対象に差異がある。本発明で「リンカー」とは、薬物と抗体の連結に用いられるものであり、例えば、リンカー配列を前記抗体のFc配列に結合し、リンカー配列と薬物を連結して抗体-リンカー-薬物(antibody-linker-drug)の形で製造して使用してもよく、前述のように、前記抗体を二重抗体で構成し、ハプテン-リンカー-薬物をハプテンに特異的なFv部位に結合させて使用してもよい。前記リンカー又は前記二次抗体は、いずれも本発明の前記抗体と薬物を結合させる用途に使用するものであり、抗体と薬物を結合させる用途であれば、二次抗体配列またはリンカーの種類とは無関係に当業者の使い方によって使用可能である。
【0034】
本発明における前記薬物の種類は制限されず、目的に応じて当業者によって選択され得る。例えば、CD154を表面に発現する活性化T細胞を死滅させるために、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、メルタンシン(DM1)、カリケアミシン(calicheamicins)、ピロロベンゾジアゼピン(pyrrolobenzodiazepine、PBD)二量体、α-アマニチン(α-amanitin)およびデュオカルマイシン(duocarmycin)を含む群から薬物を選択して抗体とコンジュゲートすることができる。前述のように、コンジュゲートの方法は制限なく選択することができ、目的によって前記薬物の種類を変えることができる。
【0035】
本発明における前記抗体-薬物コンジュゲートは、さらにハプテンを含むことができる。本発明でハプテンは、リンカーを介して薬物と結合し、本発明の抗体におけるハプテンに特異的な結合部位を有するFv部位と結合させて安定な抗体-薬物コンジュゲートを形成する用途に使用され、この目的に合致するハプテンであれば、制限なく本発明の範囲に含まれる。すなわち、前記ハプテンの例としては、コチニン(cotinine)が挙げられる。但し、これに限定されるものではなく、免疫原性がないが抗原性を有する分子として、ハプテンに特異的な抗体を形成できるものであれば良い。
【0036】
本発明の前記抗体-薬物コンジュゲートを使用する場合、抗体-薬物コンジュゲート(antibody-drug conjugate;以下「ADC」という。)方式の作用機序によってT細胞媒介性自己免疫疾患を予防または治療するか、または、臓器移植拒絶反応を抑制することができる。前記「ADC」とは、抗体に薬物を結合させて注入する方法であり、抗体に特異的に結合する抗原を発現する細胞において抗体の内部化(internalization)を誘導することによって細胞内に薬物を送達し、細胞特異的に薬物を送達する原理の治療方法に該当する。前述のように、抗CD154抗体部位によって活性化されたT細胞に結合した後に細胞内に内部化され、共に結合した薬物によってT細胞の死滅を誘導することにより、前記疾患の予防または治療効果を示すことができる。
【0037】
また、本発明は、前記抗体-薬物コンジュゲートを含むT細胞媒介性自己免疫疾患の予防または治療用薬学組成物に関するものである。
【0038】
本発明で前記「T細胞媒介性自己免疫疾患」とは、T細胞の過剰な増殖または過剰な活性化などにより、T細胞による免疫応答が定常状態よりも高いレベルに誘導されて発症する自己免疫疾患を意味する。前記T細胞媒介性自己免疫疾患は、例えば、移植片対宿主病(graft-versus host diseases)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、全身性エリテマトーデス(systemic Lupus erythematous)、クローン病(Crohn’s disease)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、ループス腎炎(lupus nephritis)、乾癬(psoriasis、pSS)、原発性巣状分節性糸球体硬化症(focal and segmental glomerular sclerosis)、および免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia)を含む群から選択される疾患であってもよい。但し、これらに限定されるものではない。
【0039】
また、本発明は、前記抗体-薬物コンジュゲートを含む臓器移植拒絶反応(transplantation rejection)の予防または治療用薬学組成物に関するものである。
【0040】
本発明の前記抗体-薬物コンジュゲートは、臓器移植過程または臓器移植後の拒絶反応に関与する活性化されたT細胞の免疫応答を抑制することにより、臓器移植拒絶反応を抑制することができる。
【0041】
本発明の薬学組成物は、薬学の分野における通常の方法により、患者の体内投与に適した単位投与型の製剤、好ましくは、タンパク質医薬品の投与に有用な製剤の形態に製剤化して当分野で通常使用される投与方法を用いて、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄膜腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔を含む非経口投与経路によって投与できるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
この目的に適した製剤としては、注射用アンプルのような注射剤、注入剤、およびハイポスプレー(hypospray)のような噴霧剤などの非経口投与用製剤が好ましい。注射または注入用製剤の場合には、懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとることができ、懸濁化剤、保存剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化剤を含むことができる。また、前記抗体分子は、使用前に適切な滅菌液体に再調整して使用できる乾燥された形態に製剤化することもできる。
【0043】
本発明の薬学組成物の有効成分として、前記抗体は、ヒトを含む哺乳動物に対して1日当たりに0.01~50mg/kg体重、好ましくは0.1~20mg/kg体重を1回又は数回に分けて投与することができる。しかし、有効成分の実際の投与量は、予防または治療しようとする疾患、疾患の重症度、投与経路、患者の体重、年齢および性別、薬剤の組み合わせ、反応の感受性および治療に対する耐性・反応などの様々な関連因子に照らして決定しなければならない。したがって、前記の投与量は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明することとする。
【0045】
実施例1.抗CD154抗体(anti-hCD154)の確立
ヒトCD154に対するモノクローナル抗体を作成するために、ヒトCD154をニワトリに免疫注射した後に作成した抗体ライブラリーから、細胞膜の表面に発現されたヒトCD154に結合する抗体を開発した。具体的なプロトコルは、従来の確立された方法に従って行われた。抗体の重鎖および軽鎖のCDR配列を図12に示し、可変領域の配列を図10に示す。
【0046】
その後、抗CD154部位と抗コチニンscFv(single chain variable fragment)を結合させた融合抗体を作成するために、抗体の軽鎖と重鎖の末端部位が抗コチニンScFvとリンカー(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)で連結されたベクターを作製し、当該ベクターをHEK293F細胞(Invitrogen)に25-kDA線状ポリエチレンイミン(linear polyethyleneimine)(Polyscience、Warrington、PA、USA)を用いて公知の方法によりトランスフェクションし、プロテインAアガロースビーズ(RepliGen、Waltham、MA、USA)を用いて、クロマトグラフィーによって抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv抗体を分離した。
【0047】
またさらに、ヒト化(humanize)抗体中のLALA突然変異を含むIgGを作成するために、ヒトIgG1においてLeu234AlaおよびLeu235Ala突然変異を誘導し、遺伝子組換えにより抗hCD154抗体の重鎖および軽鎖がそれぞれLALA突然変異(mutation)を含むIgG1重鎖定常領域(heavy chain constant region)およびIg kappa重鎖定常領域(light chain constant region)に連結されたベクターを作製し、前述のようにして抗体を分離して抗hCD154(1H8-7B)IgG1(LALA)抗体を作成した(図11)。
【0048】
実施例2.抗CD154抗体のhCD154結合能の確認(in vitro)
抗体のhCD154との結合力を測定するために、前記実施例1で製造した抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv融合タンパク質を、hCD154を発現するL細胞または未発現L細胞に処理し、フローサイトメトリー(flow cytometry)を行った。具体的には、連続希釈した抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv融合タンパク質をL細胞(hCD154-)またはL細胞(hCD154+)に処理してインキュベートし、APC-コンジュゲート抗Cκ抗体を用いて、細胞に結合した抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv融合タンパク質の量を測定した。各サンプルは10,000個の細胞を用いて分析した。その結果、CD154+L細胞と1H8抗体が活性化されたヒトT細胞が結合することが確認された(図1)。
【0049】
また、LALA突然変異を含む抗hCD154(1H8_7B)IgG1(LALA)に対しても同様にして実験を行ったところ、前述の抗体と同様に、L細胞の表面に発現したヒトCD154に結合できることを確認した(図2)。
【0050】
実施例3.ヒト活性CD4+T細胞のCD154の発現の確認および抗CD154抗体の結合能の確認
一次ヒトCD4+T細胞を3日間、抗CD28、抗CD3抗体を3日間処理して活性化し、ヒトIL-2下で2日間培養した。当該細胞株を、活性の直後、6時間、48時間、96時間、120時間、150時間後、それぞれPE標識マウス抗hCD154抗体およびFITC標識マウス抗CD4抗体を用いてhCD154の発現量を測定した。その結果、6時間後には全細胞株の約60%がCD4+/CD154+T細胞であることを確認した。その後の150時間までも平均約50%内外のダブルポジティブ(double-positive)細胞が存在することを確認した(図3A、3B)。タイムポイント毎に10,000個の細胞を用いて分析した。
【0051】
前記の結果により、T細胞の活性化から6時間経過した一次ヒトCD4+T細胞に実施例1の抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv抗体を処理し、APC-コンジュゲート抗Cκ抗体を用いて細胞に結合した抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv融合タンパク質の量を測定することにより、T細胞と抗体の結合有無を確認した。その結果、1H8抗体が、活性化されたCD4+T細胞に結合することを確認した(図3C)。
【0052】
実施例4.抗CD154抗体のCD154-CD40結合阻害能の確認
ヒトCD154またはCD154を発現するL細胞とCD40+ダウディ(Daudi)細胞を共培養する場合、ダウディ細胞がCD80及びCD86を発現することに着目し、抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv融合タンパク質(2,500nM)を組換えHAタグ(HA-tagged)hCD154タンパク質(250nM)と混合し、ダウディ細胞に処理した。また、ダウディ細胞にCD154+L細胞または抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv融合タンパク質(30nM)を共に処理した。その後、CD80とCD86の発現レベルをPE標識マウス抗CD80抗体およびFITC標識マウス抗CD86抗体で測定した。
【0053】
その結果、組換えHAタグ(HA-tagged)hCD154タンパク質を処理するか、またはCD154+L細胞をダウディ細胞に処理する場合、CD86およびCD80の発現量が増加するのに対して、抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv抗体を共に処理する場合には、その発現量の増加幅が大幅に減少することを確認した。このことから、抗CD154抗体は、効果的にCD154及びCD40の結合を阻害できることを確認した(図4)。
【0054】
実施例4.抗CD154抗体の血中半減期の確認
NSGマウス(n=4)に対して、500μgの抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFvを静脈注射した。その後、様々な時間間隔を置き、眼窩静脈から血液サンプルを収集し、血中における抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFvの濃度をELISAにより測定した。具体的には、組換えhCD154タンパク質でコーティングされたマイクロタイタープレート(Microtiter plate)を血液または標準溶液下でインキュベートし、HRPコンジュゲート抗ヒトCκ抗体をプローブとして使用し、TMBを基質として使用して測定した。全ての実験は3回繰り返して行い、データは平均と標準偏差で表している。
【0055】
その結果、抗体は注射後約20時間が経過するまでも分解せずに維持できることを確認した。また、半減期は約6時間内外であることを確認した(図5)。
【0056】
実施例5.抗CD154-薬物コンジュゲートの製造(anti-hCD154(1H8-7B)IgG1(LALA)-MMAE)
前記の実施例1で述べた抗hCD154(1H8-7B)IgG1(LALA)にMMAEを結合させ、抗体-薬物コンジュゲートを作製した(図15)。
【0057】
具体的には、FcBP(Orn)-Nリンカーを合成し、pH7.4 1X PBS(リン酸緩衝生理食塩水)バッファー中で抗体のK248位置にアジド(azide)を導入するために、抗体(1.53mg、10.2nmol)当たりに3.0当量(30.6nmol)の化合物FcBP(Orn)-Nを反応液に入れ、反応を行った。反応は常温で6時間行い、反応のモニタリングおよび終了はHIC-HPLCにより確認した。その結果、図16に示すように、反応の後、抗CD154抗体とFcBPリンカーに反応が存在することを確認した。精製は透析(Dialysis、pH7.4 1X PBS)3回の精製を行い、CD154アジド(azide)を確保した(収率=91%)。
【0058】
その後、化合物FcBP(Orn)-Nによりアジド(azide)の2分子が導入されたCD154-Nを用いて抗体薬物複合体を作製した。0.9mg/mLの濃度で1.7mLの量(10.2nmol)を用いて反応を行い、抗体に結合しているアジド(azide)との生物直交反応(biorthogonal chemistry)のためにDBCO-BG-MMAE薬物の結合を試みた。抗体に対して6.0当量(61.2nmol)の薬物を使用し、結合反応は常温で3時間、pH7.4 1X PBSバッファー中で行った。結合反応はHIC-HPLCにより観察した(図17)。精製は透析(Dialysis、pH7.4 1X PBS)3回の精製を行い、抗CD154-MMAE ADCを確保した。
【0059】
実施例6.抗CD154-薬物コンジュゲートの細胞内流入の確認
hCD154+L細胞およびhCD154-L細胞を抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv融合タンパク質と共にインキュベートした。細胞の表面に結合した抗体を除去し、細胞を固定した後、FITCコンジュゲート抗ヒトCκ抗体(緑色)で染色した。初期エンドソームを検出するために、ウサギ抗Rab5抗体を共に処理してインキュベートし、Alexa Fluor 546コンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(red)を処理した。細胞の核は、DAPIを用いて染色した。
【0060】
その結果、抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv融合タンパク質と初期エンドソームは、細胞内で共に位置することを確認した(図6)。
【0061】
実施例7.抗CD154-薬物コンジュゲートの細胞死滅能の確認
抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFvにコチニン-デュオカルマイシンを処理して製造した抗体-薬物コンジュゲート(抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFv;コチニン-デュオカルマイシン)または実施例5の抗体-薬物コンジュゲート(抗hCD154(1H8-7B)IgG1(LALA)-MMAE)をそれぞれhCD154+L細胞またはhCD154-L細胞に処理した。その後、細胞毒性アッセイ(cytotoxicity assay)を行い、処理濃度による細胞死滅の程度を測定した。
【0062】
その結果、抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFvにコチニン-デュオカルマイシンを結合させた抗体-薬物コンジュゲート、および抗hCD154(1H8-7B)IgG1(LALA)にMMAEを結合させた抗体-薬物コンジュゲートは、いずれもCD154が人工的に発現されたCD154+L細胞を死滅できることを確認した(図7図8)。
【0063】
さらに、フローサイトメトリーを用いて、抗hCD154xコチニンscFv-hCκ-scFvとコチニン-デュオカルマイシンとが結合した抗体薬物コンジュゲートのCD4+T細胞の死滅能を確認した。前記抗体薬物コンジュゲートをCD4+T細胞に48時間処理し、ヨウ化プロピジウム(Propidium iodide)を用いて生存細胞/死滅細胞の割合を測定した。その結果、薬物(drug)のみを処理した場合(13.7%)と比較して、抗体-薬物コンジュゲートを処理した場合(30.6%)には、T細胞の死滅率が増加することを確認した(図9A)。FVS(Fixable Viability Stain)染色により測定した場合もまた、薬物のみを処理した場合よりも(48.7%)、抗体薬物コンジュゲートをCD4+T細胞に60時間処理した実験群において(74.9%)、より高い死滅能を示すことを確認した(図9B)。また、前記サンプル(60時間処理)におけるFVSの平均蛍光強度(MFI)および細胞の生存/死滅の割合を別々に示したとき、デュオカルマイシンまたはhCD154と結合しないscFv-hCk-scFvのみを単独処理した場合には死滅細胞の割合にほとんど差がないが、抗体-薬物コンジュゲートを処理した場合には死滅細胞の割合が大きく増加することを確認した。これにより、前記効果は抗体-薬物コンジュゲート自体による効果であり、抗体-薬物コンジュゲートがhCD154を発現する細胞を選択的に死滅できることを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【配列表】
2024527947000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(heavy chain complementary determine region 1;HCDR1)と、配列番号2のアミノ酸配列を含むHCDR2と、配列番号3のアミノ酸配列を含むHCDR3とを含む重鎖と、
配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(light chain complementary determine region 1;LCDR1)と、配列番号5のアミノ酸配列を含むLCDR2と、配列番号6のアミノ酸配列を含むLCDR3とを含む軽鎖とを含む、抗体。
【請求項2】
配列番号7のアミノ酸配列および配列番号8のアミノ酸配列を含む単鎖可変断片(single chain variable fragment、scFv)を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体は、ヒトCD154(cluster of differentiation 154)に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体に薬物が接合されている、抗体-薬物コンジュゲート(antibody-drug conjugate)。
【請求項5】
前記薬物は、前記抗体にリンカーまたは二次抗体で接合される、請求項4に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項6】
さらにハプテン(hapten)を含む、請求項4に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項7】
前記ハプテンは、コンチニン(continine)である、請求項6に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項8】
前記薬物は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、メルタンシン(DM1)、カリケアミシン(calicheamicins)、ピロロベンゾジアゼピン(pyrrolobenzodiazepine、PBD)二量体、α-アマニチン(α-amanitin)およびデュオカルマイシン(duocarmycin)を含む群から選択される、請求項4に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【請求項9】
請求項に記載の抗体-薬物コンジュゲートを含む、T細胞媒介性自己免疫疾患の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
前記T細胞媒介性自己免疫疾患は、移植片対宿主病(graft-versus host diseases)、関節リウマチ(rheumatoid arthritis)、全身性エリテマトーデス(systemic Lupus erythematous)、クローン病(Crohn’s disease)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、ループス腎炎(lupus nephritis)、乾癬(psoriasis、pSS)、原発性巣状分節性糸球体硬化症(focal and segmental glomerular sclerosis)、および免疫性血小板減少症(immune thrombocytopenia)を含む群から選択される、請求項9に記載の薬学組成物。
【請求項11】
請求項に記載の抗体-薬物コンジュゲートを含む、臓器移植拒絶反応(transplantation rejection)の予防または治療用薬学組成物。
【国際調査報告】