(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】非水電解液及びそれを含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0568 20100101AFI20240719BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240719BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240719BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240719BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240719BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240719BHJP
【FI】
H01M10/0568
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504865
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2022094220
(87)【国際公開番号】W WO2023221120
(87)【国際公開日】2023-11-23
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ ▲則▼利
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼ 昌隆
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ04
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ20
5H050AA07
5H050AA09
5H050AA15
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050HA02
(57)【要約】
非水電解液及びそれを含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供する。非水電解液は、電解質塩、非水溶媒及び第1の添加剤を含み、電解質塩はリチウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムを含み、第1の添加剤はフルオロエチレンカーボネートを含み、かつ非水電解液の総質量に基づいて、リチウムビスフルオロスルホニルイミドの含有量A1、テトラフルオロホウ酸リチウムの含有量A2、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムの含有量A3及びフルオロエチレンカーボネートの含有量B1は、A1が9%~15%であり、A1/A2が30~1500であり、A1/B1が3.6~15であり、かつA2/A3が0.02~30であることを満たす。非水電解液を含む二次電池は、優れたサイクル性能、貯蔵性能、安全性能及び動的性能を同時に両立させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質塩、非水溶媒及び第1の添加剤を含む非水電解液であって、
前記電解質塩は、
前記非水電解液の総質量に基づいて、前記非水電解液における質量含有量がA1であるリチウムビスフルオロスルホニルイミドと、
前記非水電解液の総質量に基づいて、前記非水電解液における質量含有量がA2であるテトラフルオロホウ酸リチウムと、
前記非水電解液の総質量に基づいて、前記非水電解液における質量含有量がA3であるジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムと、を含み、
前記第1の添加剤は、前記非水電解液の総質量に基づいて、前記非水電解液における質量含有量がB1であるフルオロエチレンカーボネートを含み、
前記非水電解液は、A1が9%~15%であり、A1/A2が30~1500であり、A1/B1が3.6~15であり、かつA2/A3が0.02~30であることを満たす、非水電解液。
【請求項2】
A1/A2は、50~250であり、選択的に50~150であり、及び/又は、
A1/B1は、4~9であり、選択的に4~7であり、及び/又は、
A2/A3は、0.5~13.5であり、選択的に1~10である、請求項1に記載の非水電解液。
【請求項3】
前記非水電解液は、さらに(A2+A3)/B1が0.008~0.8であることを満たし、選択的に、(A2+A3)/B1が0.026~0.2である、請求項1又は2に記載の非水電解液。
【請求項4】
前記非水電解液は、以下の条件(1)~(4)のうちの少なくとも一つを満たす。
(1)A1は、10%~15%であり、選択的に10%~13%であり、
(2)A2は、0.01%~0.3%であり、選択的に0.05%~0.2%であり、
(3)A3は、0.01%~0.5%であり、選択的に0.015%~0.1%であり、
(4)B1は、1.0%~2.5%であり、選択的に1.5%~2.5%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の非水電解液。
【請求項5】
前記非水溶媒は、
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートのうちの少なくとも一種類を含み、前記非水溶媒の総質量に基づいて前記非水溶媒における質量含有量がC1である第1の溶媒と、
エチルメチルカーボネート、ジエチルプロピルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネートのうちの少なくとも一種類を含み、前記非水溶媒の総質量に基づいて前記非水溶媒における質量含有量がC2である第2の溶媒と、
ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチルのうちの少なくとも一種類を含み、前記非水溶媒の総質量に基づいて前記非水溶媒における質量含有量がC3である第3の溶媒と、を含み、
前記非水溶媒は、C1が10%~30%であり、C2が50%~90%であり、C3が0%~20%であることを満たし、
選択的に、C1/(C2+C3)が0.1~0.45であり、より選択的に0.2~0.3である、請求項1~4のいずれか一項に記載の非水電解液。
【請求項6】
前記非水電解液は、ビニレンカーボネート、硫酸エチレン、1,3-プロパンスルトンのうちの少なくとも一種類を含み、前記非水電解液の総質量に基づいて前記非水電解液における質量含有量がB2である第2の添加剤をさらに含み
B2が0.05%~2%であり、選択的に0.5%~2%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の非水電解液。
【請求項7】
(A1+B2)/C1は、0.4~1.3であり、選択的に0.4~0.8である、請求項6に記載の非水電解液。
【請求項8】
前記非水電解液は、スルファミン酸及びその塩のうちの少なくとも一種類を含み、前記非水電解液の総質量に基づいて前記非水電解液における質量含有量がB3である第3の添加剤を含み、
B3が0.005%~0.1%であり、選択的に0.005%~0.05%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の非水電解液。
【請求項9】
正極シート、負極シート及び請求項1~8のいずれか一項に記載の非水電解液を含む、二次電池。
【請求項10】
前記非水電解液の室温導電率は、x mS/cmであり、前記負極シートの厚さはLμmであり、かつ前記二次電池は、L≦120×√(x/8)を満たす、請求項9に記載の二次電池。
【請求項11】
前記正極シートは、分子式がLi
aNi
bCo
cMn
dAl
eM
fO
gA
hの層状材料を含み、Mは遷移金属サイトのドープカチオン、Aは酸素サイトのドープアニオンを示し、ここで、0.8≦a≦1.2、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f≦0.2、0≦g≦2、0≦h≦2、b+c+d+e+f=1、g+h=2である、請求項9又は10に記載の二次電池。
【請求項12】
Li
aNi
bCo
cMn
dAl
eM
fO
gA
hは、以下の条件(1)~(8)のうちの少なくとも一つを満たす。
(1)Mは、Si、Ti、Mo、V、Ge、Se、Zr、Nb、Ru、Pd、Sb、Ce、Te及びWから選択される少なくとも一種類であり、
(2)Aは、F、N、P及びSから選択される少なくとも一種類であり、選択的に、AはFから選択され、
(3)0<b<0.98であり、選択的に、0.50≦b<0.98であり、
(4)c=0であり、
(5)0<c≦0.20であり、選択的に、0<c≦0.10であり、
(6)d=0かつ0<e<0.50であり、選択的に、d=0かつ0<e≦0.10であり、
(7)e=0かつ0<d<0.50であり、選択的に、e=0かつ0<d≦0.10であり、
(8)0<d<0.50かつ0<e<0.50であり、選択的に、0<d≦0.30かつ0<e≦0.10である、請求項11に記載の二次電池。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の二次電池を含む電池モジュール。
【請求項14】
請求項9~12のいずれか一項に記載の二次電池、請求項13に記載の電池モジュールのうちの一種類を含む電池パック。
【請求項15】
請求項9~12のいずれか一項に記載の二次電池、請求項13に記載の電池モジュール、請求項14に記載の電池パックのうちの少なくとも一種類を含む電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池の技術分野に属し、具体的には非水電解液及びそれを含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は、水力、火力、風力及び太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動オートバイ、電気自動車、軍事装置、航空宇宙等の複数の分野に広く応用されている。二次電池の応用及び普及に伴い、その総合性能はますます多く注目されている。例えば、二次電池はエネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、安全性能が高く、レート性能が高いなどを同時に満たす必要がある。非水電解液は、正極と負極との間でイオン伝導作用を果たし、二次電池の性能に影響する重要な要因の一つであるため、総合性能が良好な非水電解液を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本願の目的は、二次電池に良好なサイクル性能、貯蔵性能、ヒートオーブン安全性能及び動的性能を同時に両立させることができる非水電解液及びそれを含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を提供することである。
【0004】
本願の第1の態様は、電解質塩、非水溶媒及び第1の添加剤を含む非水電解液であって、
前記電解質塩は、
前記非水電解液の総質量に基づいて、前記非水電解液における質量含有量がA1であるリチウムビスフルオロスルホニルイミドと、
前記非水電解液の総質量に基づいて、前記非水電解液における質量含有量がA2であるテトラフルオロホウ酸リチウムと、
前記非水電解液の総質量に基づいて、前記非水電解液における質量含有量がA3であるジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムと、を含み、
前記第1の添加剤は、前記非水電解液の総質量に基づいて、前記非水電解液における質量含有量がB1であるフルオロエチレンカーボネートを含み、
前記非水電解液は、A1が9%~15%であり、A1/A2が30~1500であり、A1/B1が3.6~15であり、かつA2/A3が0.02~30であることを満たす、非水電解液を提供する。
【0005】
本願の発明者らが鋭意に研究した発見として、リチウムビスフルオロスルホニルイミドを主なリチウム塩とする非水電解液が、テトラフルオロホウ酸リチウム、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム及びフルオロエチレンカーボネートを採用し、かつリチウムビスフルオロスルホニルイミドの含有量A1、テトラフルオロホウ酸リチウムの含有量A2、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムの含有量A3及びフルオロエチレンカーボネートの含有量B1を合理的に調整してA1/A2を30~1500、A1/B1を3.6~15及びA2/A3を0.02~30にすると、前記非水電解液は高い熱安定性、高い導電率及び広い電位窓を同時に有し、かつ前記非水電解液はさらにアルミニウム箔集電体を不活性化しかつ負極活物質の表面に緻密で、安定で低インピーダンスの界面膜を形成することができる。それにより、本願の非水電解液を採用する二次電池は、良好なサイクル性能、貯蔵性能、ヒートオーブン安全性能及び動的性能を同時に両立させることができる。
【0006】
本願の任意の実施形態において、A1/A2は50~250であり、選択的に50~150である。A1/A2が適切な範囲内にある場合、リチウムビスフルオロスルホニルイミドとテトラフルオロホウ酸リチウムとの間の相乗作用効果を十分に発揮することに役立つ。それにより、前記非水電解液はアルミニウム箔集電体をより腐食しにくく、二次電池のサイクル性能及び貯蔵性能をさらに改善することができる。
【0007】
本願の任意の実施形態において、A1/B1は4~9であり、選択的に4~7である。A1/B1が適切な範囲内にある場合、リチウムビスフルオロスルホニルイミドとフルオロエチレンカーボネートとの間の相乗作用効果を十分に発揮することに役立ち、非水電解液は高い熱安定性と導電率とを同時に両立させることができる。それにより、二次電池のサイクル性能及びヒートオーブン安全性能をさらに改善することができる。
【0008】
本願の任意の実施形態において、A2/A3は0.5~13.5であり、選択的に1~10である。A2/A3が適切な範囲内にある場合、テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムとの間の相乗作用効果を十分に発揮することに役立ち、アルミニウム箔集電体をよりよく保護することができるだけでなく、負極活物質の表面に低インピーダンスの有機-無機複合界面膜を形成することができる。それにより、二次電池のサイクル性能及び動的性能をさらに改善することができる。
【0009】
本願の任意の実施形態において、前記非水電解液は(A2+A3)/B1が0.008~0.8であることをさらに満たし、選択的に、(A2+A3)/B1が0.026~0.2である。それにより、非水電解液におけるBF4
-及びDFOB-が自由イオンを形成することを保証し、陰イオンと陽イオンとの会合を減少させるため、BF4
-及びDFOB-の二次電池の動的性能に対する改善作用を十分に発揮することができる。
【0010】
本願の任意の実施形態において、A1は10%~15%であり、選択的に10%~13%である。
【0011】
本願の任意の実施形態において、A2は0.01%~0.3%であり、選択的に0.05%~0.2%である。
【0012】
本願の任意の実施形態において、A3は0.01%~0.5%であり、選択的に0.015%~0.1%である。
【0013】
本願の任意の実施形態において、B1は1.0%~2.5%であり、選択的に1.5%~2.5%である。
【0014】
本願の任意の実施形態において、前記非水溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートのうちの少なくとも一種類を含み、且つ前記非水溶媒の総質量に基づいて前記非水溶媒における質量含有量がC1である第1の溶媒と、エチルメチルカーボネート、ジエチルプロピルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネートのうちの少なくとも一種類を含み、且つ前記非水溶媒の総質量に基づいて前記非水溶媒における質量含有量がC2である第2の溶媒と、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチルのうちの少なくとも一種類を含み、且つ前記非水溶媒の総質量に基づいて前記非水溶媒における質量含有量がC3である第3の溶媒と、を含む。前記非水溶媒は、C1が10%~30%であり、C2が50%~90%であり、C3が0%~20%であることを満たす。
【0015】
本願の任意の実施形態において、C1/(C2+C3)は0.1~0.45であり、選択的に0.2~0.3である。
【0016】
本願の任意の実施形態において、前記非水電解液は、ビニレンカーボネート、硫酸エチレン、1,3-プロパンスルトンのうちの少なくとも一種類を含み、且つ前記非水電解液の総質量に基づいて前記非水電解液における質量含有量であるB2が0.05%~2%であり、選択的に0.5%~2%である第2の添加剤をさらに含む。第2の添加剤は、正極及び/又は負極の界面性能をさらに改善することに役立ち、それにより二次電池のサイクル性能、貯蔵性能、ヒートオーブン安全性能及び動的性能のうちの少なくとも一つをさらに改善することができる。
【0017】
本願の任意の実施形態において、(A1+B2)/C1は0.4~1.3であり、選択的に0.4~0.8である。これにより、二次電池は優れたサイクル性能を有し、かつ動的性能及び電力性能の悪化を回避することができる。
【0018】
本願の任意の実施形態において、前記非水電解液は、スルファミン酸及びその塩のうちの少なくとも一種類を含み、且つ前記非水電解液の総質量に基づいて前記非水電解液における質量含有量であるB3が0.005%~0.1%であり、選択的に0.005%~0.05%である第3の添加剤をさらに、含む。それにより、二次電池のサイクル性能及び動的性能の向上に役に立つ。
【0019】
本願の第2の態様は、正極シート、負極シート及び非水電解液を含む二次電池を提供し、ここで、前記非水電解液は本願の第1の態様の非水電解液である。それにより、本願の二次電池は良好なサイクル性能、貯蔵性能、ヒートオーブン安全性能及び動的性能を同時に両立させることができる。
【0020】
本願の任意の実施形態において、前記非水電解液の室温導電率はx mS/cmであり、前記負極シートの厚さはLμmであり、かつ前記二次電池はL≦120×√(x/8)を満たす。
【0021】
本願の任意の実施形態において、前記正極シートは、分子式がLiaNibCocMndAleMfOgAhの層状材料を含み、Mは遷移金属サイトのドープカチオン、Aは酸素サイトのドープアニオンを示し、ここで、0.8≦a≦1.2、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f≦0.2、0≦g≦2、0≦h≦2、b+c+d+e+f=1、g+h=2である。
【0022】
本願のいくつかの実施形態において、Mは、Si、Ti、Mo、V、Ge、Se、Zr、Nb、Ru、Pd、Sb、Ce、Te及びWから選択される少なくとも一種類である。
【0023】
本願のいくつかの実施形態において、Aは、F、N、P及びSから選択される少なくとも一種類であり、選択的に、AはFから選択される。
【0024】
本願のいくつかの実施形態において、0<b<0.98、選択的に、0.50≦b<0.98である。
【0025】
本願のいくつかの実施形態において、c=0である。
【0026】
本願のいくつかの実施形態において、0<c≦0.20であり、選択的に、0<c≦0.10である。
【0027】
本願のいくつかの実施形態において、d=0かつ0<e<0.50であり、選択的に、d=0かつ0<e≦0.10である。
【0028】
本願のいくつかの実施形態において、e=0かつ0<d<0.50であり、選択的に、e=0かつ0<d≦0.10である。
【0029】
本願のいくつかの実施形態において、0<d<0.50かつ0<e<0.50であり、選択的に、0<d≦0.30かつ0<e≦0.10である。
【0030】
本願の第3の態様は、本願の第2の態様の二次電池を含む電池モジュールを提供する。
【0031】
本願の第4の態様は、本願の第2の態様の二次電池、第3の態様の電池モジュールのうちの一種類を含む電池パックを提供する。
【0032】
本願の第5の態様は、本願の第2の態様の二次電池、第3の態様の電池モジュール、第4の態様の電池パックのうちの少なくとも一種類を含む電力消費装置を提供する。
【0033】
本願の二次電池は、良好なサイクル性能、貯蔵性能、ヒートオーブン安全性能及び動的性能を同時に両立させることができる。本願の電池モジュール、電池パック及び電力消費装置は、本願が提供する二次電池を含むため、少なくとも前記二次電池と同様の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下は本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下に説明された図面は本願のいくつかの実施形態に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、更に図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【
図1】本願の二次電池の一実施形態の模式図である。
【
図2】
図1の二次電池の実施形態の分解模式図である。
【
図3】本願の電池モジュールの一実施形態の模式図である。
【
図4】本願の電池パックの一実施形態の模式図である。
【
図5】
図4に示す電池パックの実施形態の分解模式図である。
【
図6】本願の二次電池を電源として含む電力消費装置の一実施形態の模式図である。 図面において、図面は必ずしも実際の比率に応じて描かれない。符号の説明は以下のとおりである。1電池パック、2上筐体、3下筐体、4電池モジュール、5二次電池、51ケース、52電極アセンブリ、53カバープレート。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、適宜的に図面を参照しながら本願の非水電解液及びそれを含む二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を具体的に開示した実施形態を詳細に説明する。ただし、不必要な詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細な説明、実際の同じ構造の重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを回避し、当業者の理解を容易にするためのものである。また、図面及び以下の説明は、当業者が本願を十分に理解するために提供されたものであり、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0036】
本願に開示された「範囲」は、下限及び上限の形式で限定され、所定の範囲は一つの下限及び一つの上限を選択することにより限定され、選択された下限及び上限は、特に範囲の境界を限定する。このような方式で限定する範囲は、端点を含み又は端点を含まず、かつ任意に組み合わせることができ、即ち任意の下限は任意の上限と組み合わせて一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対し60~120及び80~110の範囲を列挙すれば、60~110及び80~120の範囲も予想されると理解される。また、最小範囲値1及び2、及び最大範囲値3、4及び5を列挙すると、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4及び2~5という範囲は全て予想される。本願において、他の説明がない限り、数値範囲「a~b」は、a~bの間の任意の実数組合せの縮約表現を示し、ここでa及びbは、いずれも実数である。例えば、数値範囲「0~5」は本明細書において全て「0~5」の間の全ての実数を示し、「0~5」はこれらの数値の組み合わせの縮約表現である。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現する場合、該パラメータが例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12等の整数であることが開示されていることに相当する。
【0037】
特に説明しない場合、本願の全ての実施形態及び選択可能な実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成可能であり、かつこのような技術案は本願の開示内容に含まれると考えられるべきである。
【0038】
特に説明しない場合、本願の全ての技術的特徴及び選択可能な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成可能であり、かつこのような技術案は本願の開示内容に含まれると考えられるべきである。
【0039】
特に説明しない場合、本願の全てのステップを順に行うことができ、ランダムに行うこともでき、好ましくは順に行う。例えば、前記方法がステップ(a)及び(b)を含むとは、前記方法が順に行うステップ(a)及び(b)を含むことができ、順に行うステップ(b)及び(a)を含むこともできることを示す。例えば、前記方法が更にステップ(c)を含むことができるとは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に加えることができることを示す。例えば、前記方法はステップ(a)、(b)及び(c)を含むことができ、ステップ(a)、(c)及び(b)を含むこともでき、更にステップ(c)、(a)及び(b)などを含むことができる。
【0040】
特に説明しない場合、本願に言及された「有する」、「備える」及び「含む」は開放式であり、閉鎖式であってもよい。例えば、前記「有する」、「備える」及び「含む」は、列挙されない他の成分を更に有する、備えるか又は含むことができ、列挙された成分のみを備えるか又は含むことができることを示す。
【0041】
特に説明しない場合、本願において、「又は」との用語は包括的である。例えば、「A又はB」とのフレーズは「A、B、又はA及びBの両方」を表す。より具体的には、以下のいずれかの条件はいずれも「A又はB」との条件を満たす。Aは真(又は存在)でありかつBは偽(又は存在しない)であり、Aは偽(又は存在しない)でありかつBは真(又は存在)であり、或いはAとBはいずれも真(又は存在)である。
【0042】
本願において、「複数」、「複数種類」という用語は二つ又は二種類以上を指す。
【0043】
二次電池の応用及び普及に伴い、その総合性能はますます多く注目されている。非水電解液は、二次電池性能に影響を与える重要な要因の一つであり、現在商業化応用が最も広い非水電解液系は、ヘキサフルオロリン酸リチウムの混合炭酸エステル溶液である。しかし、ヘキサフルオロリン酸リチウムは高温環境下での熱安定性が悪く、高い温度で分解してPF5を生成する。PF5は、強いルイス酸性を有し、溶媒分子における酸素原子上の孤立電子対と作用して溶媒を分解させる。また、PF5は、非水電解液における微量の水分に対し高い感度を有し、水に触れるとHFを生成し、それにより非水電解液の酸性度を増加させ、さらに正極活物質及び正極集電体を腐食しやすく、正極活物質における遷移金属イオンの溶出をもたらす。また、正極活物質における遷移金属イオンは溶出して負極に遷移した後、遷移金属に還元される。このように生成された遷移金属が「触媒」に相当し、負極活物質の表面の固体電解質界面膜(solid electrolyte interphase、SEI)の分解を触媒し、副生成物を生成する。前記副生成物の一部がガスであるため、二次電池が膨張し、二次電池の安全性能に対し影響を与える。前記副生成物の他の一部が負極活物質の表面に堆積し、リチウムイオンの伝送チャネルを阻害するため、二次電池のインピーダンスが増加し、二次電池の動的性能に対し影響を与える。また、損失した界面膜を補足するために、非水電解液及び電池内部の活性リチウムイオンが絶えず消費され、二次電池の容量維持率に対し不可逆的な影響を与える。
【0044】
本願の発明者らが鋭意に研究した意外な発見として、非水電解液に適切な含有量のリチウムビスフルオロスルホニルイミド、テトラフルオロホウ酸リチウム、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム及びフルオロエチレンカーボネートを同時に含む場合、二次電池は同時に良好なサイクル性能、貯蔵性能、ヒートオーブン安全性能及び動的性能を両立させることができる。
非水電解液
【0045】
具体的には、本願の実施形態の第1の態様は、電解質塩、非水溶媒及び第1の添加剤を含む非水電解液を提供する。前記電解質塩は、前記非水電解液の総質量に基づいて前記非水電解液における質量含有量がA1であるリチウムビスフルオロスルホニルイミド(LiFSI)と、前記非水電解液の総質量に基づいて前記非水電解液における質量含有量がA2であるテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)と、前記非水電解液の総質量に基づいて前記非水電解液における質量含有量がA3であるジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム(LiDFOB)と、を含む。前記第1の添加剤は、前記非水電解液の総質量に基づいて前記非水電解液における質量含有量がB1であるフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含む。前記非水電解液は、A1が9%~15%であり、A1/A2が30~1500であり、A1/B1が3.6~15であり、かつA2/A3が0.02~30であることを満たす。
【0046】
本願の非水電解液は、リチウムビスフルオロスルホニルイミドを主なリチウム塩とし、その前記非水電解液における質量含有量が9%~15%である。リチウムビスフルオロスルホニルイミドの化学式は、F2NO4S2・Liであり、N原子は二つの電子吸引性のスルホニル基に接続され、それによりN原子上の電荷が十分に非局在化され、さらにリチウムビスフルオロスルホニルイミドは低い格子エネルギーを有し、解離されやすいため、非水電解液の導電率を向上させ、非水電解液の粘度を低減させることができる。また、リチウムビスフルオロスルホニルイミドは、さらに耐高温性が良く、加水分解されにくいという特性を有し、負極活物質の表面により薄い、インピーダンスがより低い、かつ熱安定性がより高い界面膜を形成することができ、それにより負極活物質と非水電解液との間の副反応を減少させることができる。したがって、リチウムビスフルオロスルホニルイミドは、ヘキサフルオロリン酸リチウムに代わって次世代の主なリチウム塩の一つとなることが期待されている。
【0047】
しかし、リチウムビスフルオロスルホニルイミドを主なリチウム塩とする欠点の一つは、アルミニウム箔集電体に対し約3.7V.vsLi/Li+の腐食である。また、このような腐食は高温、高電圧でさらに進行する。アルミニウム箔集電体の腐食は、二次電池の性能に対し深刻な影響を与え、例えば電池分極及び不可逆的な容量損失を増加させ、さらに二次電池の安全性能に対し影響を与える。主に、一部の固体の不溶性腐食生成物が二次電池の内部抵抗を増加させる点と、一部の可溶性腐食生成物が非水電解液を汚染してその分解を促進し、二次電池の自己放電を増加させる点と、腐食過程で生成されたAl3+が拡散作用により負極に遷移してアルミニウムデンドライトに還元される可能性がある点で示されている。発明者らは、研究過程において意外にも、リチウムビスフルオロスルホニルイミドを主なリチウム塩とするもう一つの欠点として、リチウムビスフルオロスルホニルイミドが負極のLiC6と反応して大量のガス(例えば、SO2、NO2)及び熱量を放出し、二次電池の安全性能、特にヒートオーブン安全性能に対し影響を与えることを発見した。
【0048】
それにより、リチウムビスフルオロスルホニルイミドを主なリチウム塩とする二次電池は、現在商業化を実現することが困難である。
【0049】
本願の発明者らが鋭意に研究した発見として、リチウムビスフルオロスルホニルイミドを主なリチウム塩とする非水電解液が、テトラフルオロホウ酸リチウム、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム及びフルオロエチレンカーボネートを採用し、かつリチウムビスフルオロスルホニルイミドの含有量A1、テトラフルオロホウ酸リチウムの含有量A2、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムの含有量A3及びフルオロエチレンカーボネートの含有量B1を合理的に調整するして、A1/A2を30~1500、A1/B1を3.6~15及びA2/A3を0.02~30にすると、前記非水電解液は高い熱安定性、高い導電率及び広い電位窓を同時に有し、かつ前記非水電解液はさらにアルミニウム箔集電体を不活性化しかつ負極活物質の表面に緻密で、安定で低インピーダンスの界面膜を形成することができる。それにより、本願の非水電解液を採用する二次電池は、良好なサイクル性能、貯蔵性能、ヒートオーブン安全性能及び動的性能を同時に両立させることができる。
【0050】
メカニズムは、明らかではないが、発明者らが推測する原因は以下のいくつかの点を含む。
【0051】
第1に、テトラフルオロホウ酸リチウムは、アルミニウム箔集電体に対し不活性化作用を有し、アルミニウム箔集電体の表面に優先的に酸化分解されて一層の不活性化膜を形成し、リチウムビスフルオロスルホニルイミドのアルミニウム箔集電体への腐食を効果的に改善することができる。また、BF4
-のイオン半径が小さく、会合しやすいため、その含有量が多すぎると、非水電解液の導電率を低減させる。発明者らが鋭意に研究した更なる発見として、リチウムビスフルオロスルホニルイミドの含有量A1及びテトラフルオロホウ酸リチウムの含有量A2を合理的に調整してA1/A2を30~1500にすると、両者の間の相乗作用効果を十分に発揮することができる。それにより、前記非水電解液は高い熱安定性と高い導電率を同時に有し、かつアルミニウム箔集電体を腐食しにくい。A1/A2が1500よりも大きい場合、テトラフルオロホウ酸リチウムのアルミニウム箔に対する不活性化作用効果はリチウムビスフルオロスルホニルイミドのアルミニウム箔集電体への腐食を阻止することができず、二次電池のサイクル性能が悪くなる。A1/A2が30よりも小さい場合、多すぎるテトラフルオロホウ酸リチウムは非水電解液の導電率を著しく低減させ、二次電池の動的性能が悪くなる。
【0052】
第2に、FECは、高い電位で還元分解反応を発生して負極活物質の表面に一定の柔軟性を有しかつLiFリッチな界面膜を形成することができ、それにより低電位の非水溶媒の還元分解及び非水溶媒が負極活物質に埋め込まれることを抑制することができる。同時に、形成された界面膜は、多くの化学的性質が安定したLiF成分を含有するため、LiFSIとLiC6との反応を効果的に減少させ、二次電池のヒートオーブン安全性能を向上させることができる。また、FECは、高電圧の酸化に耐え、高電圧で正極活物質とマッチングすることに役立ち、それにより二次電池のエネルギー密度を向上させることに役立つ。発明者らが鋭意に研究した更なる発見として、リチウムビスフルオロスルホニルイミドの含有量A1及びフルオロエチレンカーボネートの含有量B1を合理的に調整してA1/B1を3.6~15にする場合、FECが二次電池のヒートオーブン安全性能、サイクル性能及びエネルギー密度に対する改善作用を十分に発揮することに役に立つ。A1/B1が15よりも大きい場合、FECの負極への保護効果はLiFSIとLiC6との反応を阻止することができず、二次電池のヒートオーブンの安全性能が悪くなる。A1/B1が3.6よりも小さい場合、負極活物質の表面の界面膜におけるLiFの成分が多すぎ、二次電池の内部抵抗が明らかに増加し、動的性能が悪くなる。
【0053】
第3に、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムのアニオン(DFOB-)の半径が小さく、非水電解液の電荷移転抵抗が小さくなり、それにより高温や低温でいずれも相対的に高い導電率を有し、非水電解液の電位窓を広げることができる。ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム構造におけるB-O結合は、Al3+と結合してアルミニウム箔集電体の表面に一層の不活性化膜を形成することができ、それによりリチウムビスフルオロスルホニルイミドのアルミニウム箔集電体への腐食を効果的に改善することができる。ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムは、負極活物質の表面に一層の低インピーダンスの界面膜をさらに形成することができる。同時に、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムの分子構造に一つのオキサレート基を含有し、その熱安定性がテトラフルオロホウ酸リチウムよりも低く、熱を受ける時に酸化されて二酸化炭素ガスを形成するため、その含有量が多すぎると、非水電解液の熱安定性を低減させ、二次電池のガス生成量を増加させる。発明者らが鋭意に研究した更なる発見として、テトラフルオロホウ酸リチウムの含有量A2及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムの含有量A3を合理的に調整してA2/A3を0.02~30にすると、アルミニウム箔集電体をよりよく保護することができるだけでなく、負極活物質の表面に低インピーダンスの有機-無機複合界面膜を形成することができ、それにより二次電池のサイクル性能及び動的性能をさらに改善することができる。A2/A3が30よりも大きい場合、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムの負極界面のインピーダンスに対する低減作用が弱く、テトラフルオロホウ酸リチウムの二次電池の動的性能への悪化を補うことができない。A2/A3が0.02よりも小さい場合、多すぎるジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムが非水電解液の熱安定性を悪化させ、二次電池の貯蔵性能及びヒートオーブン安全性能が悪くなる。
【0054】
したがって、本願の非水電解液を用いた二次電池が良好なサイクル性能、貯蔵性能、ヒートオーブン安全性能及び動的性能を同時に両立させることができることは、上記各成分の間の相乗作用効果によるものと考えられる。テトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムにより、リチウムビスフルオロスルホニルイミドのアルミニウム箔集電体への腐食を効果的に改善し、電池分極を減少させ、不可逆的な容量損失を低減させ、二次電池のサイクル性能及び貯蔵性能を向上させることができる。フルオロエチレンカーボネートにより、リチウムビスフルオロスルホニルイミドとLiC6との反応を効果的に減少させ、二次電池のヒートオーブン安全性能を向上させることができる。テトラフルオロホウ酸リチウム、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム及びフルオロエチレンカーボネートにより、負極活物質の表面にF原子及びB原子を含有する有機-無機複合界面膜を形成し、二次電池の内部抵抗を低減させ、二次電池の動的性能を向上させることができる。
【0055】
いくつかの実施例において、A1/A2は、30~1000、30~750、30~500、30~400、30~300、30~250、30~200、30~150、30~100、30~80、50~1000、50~750、50~500、50~400、50~300、50~250、50~200、50~150、50~120、50~100又は50~80であってもよい。
【0056】
いくつかの実施例において、A1/B1は、4~15、4~14、4~13、4~12、4~11、4~10、4~9、4~8、4~7、5~15、5~14、5~13、5~12、5~11、5~10、5~9、5~8又は5~7であってもよい。
【0057】
いくつかの実施例において、A2/A3は、0.1~30、0.1~25、0.1~20、0.1~18、0.1~15、0.1~13.5、0.1~12、0.1~11、0.1~10、0.1~9、0.1~8、0.1~7、0.1~6、0.1~5、0.5~30、0.5~25、0.5~20、0.5~18、0.5~15、0.5~13.5、0.5~12、0.5~11、0.5~10、0.5~9、0.5~8、0.5~7、0.5~6、0.5~5、1~30、1~25、1~20、1~18、1~15、1~13.5、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6又は1~5である。
【0058】
A1/A2が適切な範囲内にある場合、リチウムビスフルオロスルホニルイミドとテトラフルオロホウ酸リチウムとの間の相乗作用効果を十分に発揮することに役立つ。それにより、前記非水電解液はアルミニウム箔集電体をより腐食しにくく、二次電池のサイクル性能及び貯蔵性能をさらに改善することができる。
【0059】
A1/B1が適切な範囲内にある場合、リチウムビスフルオロスルホニルイミドとフルオロエチレンカーボネートとの間の相乗作用効果を十分に発揮することに役立つ。非水電解液は高い熱安定性と導電率を同時に両立させることができ、それにより二次電池のサイクル性能及びヒートオーブン安全性能をさらに改善することができる。
【0060】
A2/A3が適切な範囲内にある場合、テトラフルオロホウ酸リチウムとジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムとの間の相乗作用効果を十分に発揮することに役立つ。アルミニウム箔集電体をよりよく保護することができるだけでなく、負極活物質の表面に低インピーダンスの有機-無機複合界面膜を形成することができ、それにより二次電池のサイクル性能及び動的性能をさらに改善することができる。
【0061】
テトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムのアニオン半径が小さく、非水電解液で完全に解離されにくく、かつ陰イオンと陽イオンが会合しやすい。発明者らが鋭意に研究した更なる発見として、テトラフルオロホウ酸リチウムの含有量A2、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムの含有量A3及びフルオロエチレンカーボネートの含有量B1を合理的に調整して(A2+A3)/B1を0.008~0.8にすると、前記非水電解液の粘度が適切であり、かつ高い導電率を保持することができる。可能な理由としては、FECが高い誘電率を有するため、非水電解液におけるBF4
-及びDFOB-が自由イオンを形成することを保証し、陰イオンと陽イオンとの会合を減少させ、それによりBF4
-及びDFOB-の二次電池の動的性能に対する改善作用を十分に発揮することができる。また、(A2+A3)/B1が0.8よりも大きい場合、非水電解液におけるBF4
-及びDFOB-が会合しやすく、非水電解液の粘度が増加し、導電率を低減させる可能性があること、及び、(A2+A3)/B1が0.008よりも小さい場合、FECの自体の粘度が高いため、非水電解液の導電率を低減させる可能性があることは、効果的に回避されることができる。選択的に、いくつかの実施例において、(A2+A3)/B1は、0.01~0.8、0.01~0.7、0.01~0.6、0.01~0.5、0.01~0.4、0.01~0.3、0.01~0.2、0.026~0.8、0.026~0.7、0.026~0.6、0.026~0.5、0.026~0.4、0.026~0.3、0.026~0.2、0.1~0.8、0.1~0.7、0.1~0.6、0.1~0.5、0.1~0.4、0.1~0.3又は0.1~0.2である。
【0062】
本願の非水電解液は、リチウムビスフルオロスルホニルイミドを主なリチウム塩とし、その前記非水電解液における質量含有量が高い。いくつかの実施例において、A1は、10%~15%、11%~15%、12%~15%、13%~15%、9%~14%、10%~14%、11%~14%、12%~14%、13%~14%、9%~13%、10%~13%、11%~13%、又は12%~13%であってもよい。
【0063】
LiBF4の含有量が増加すると、非水電解液の導電率を低減させ、負極活物質の表面に安定な界面膜を形成することに不利である。いくつかの実施例において、A2は0.01%~0.3%であってもよい。選択的に、A2は0.02%~0.3%、0.02%~0.26%、0.02%~0.22%、0.02%~0.2%、0.02%~0.18%、0.02%~0.16%、0.02%~0.14%、0.02%~0.12%、0.02%~0.1%、0.05%~0.3%、0.05%~0.26%、0.05%~0.22%、0.05%~0.2%、0.05%~0.18%、0.05%~0.16%、0.05%~0.14%、0.05%~0.12%、又は0.05%~0.1%であってもよい。
【0064】
LiDFOBの分子構造に一つのオキサレート基を含有し、熱を受ける時に酸化されて二酸化炭素ガスを形成し、非水電解液の熱安定性を低減させる。いくつかの実施例において、A3は0.01%~0.5%であってもよい。選択的に、A3は0.01%~0.45%、0.01%~0.4%、0.01%~0.35%、0.01%~0.3%、0.01%~0.25%、0.01%~0.2%、0.01%~0.15%、0.01%~0.1%、0.015%~0.45%、0.015%~0.4%、0.015%~0.35%、0.015%~0.3%、0.015%~0.25%、0.015%~0.2%、0.015%~0.15%、又は0.015%~0.1%であってもよい。
【0065】
FECの含有量が増加すると、非水電解液の粘度を増加させ、導電率を低減させる。同時に、FECは、高温で分解してHFを形成しやすく、HFは、正極活物質の構造安定性を破壊し、二次電池のガス生成量を増加させ、二次電池の貯蔵性能及びヒートオーブン安全性能に対し影響を与える。いくつかの実施例において、B1は1.0%~2.5%であってもよい。例えば、B1は1.1%~2.5%、1.2%~2.5%、1.3%~2.5%、1.4%~2.5%、1.5%~2.5%、1.6%~2.5%、1.7%~2.5%、1.8%~2.5%、1.9%~2.5%、又は2%~2.5%であってもよい。
【0066】
いくつかの実施例において、前記非水溶媒は、第1の溶媒、第2の溶媒、第3の溶媒のうちの少なくとも一種類を含む。
【0067】
前記第1の溶媒は、環状カーボネート化合物であり、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)のうちの少なくとも一種類を含むことができる。選択的に、前記第1の溶媒はエチレンカーボネートを含む。
【0068】
前記第2の溶媒は、鎖状カーボネート化合物であり、例えばエチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルプロピルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)のうちの少なくとも一種類を含むことができる。選択的に、前記第2の溶媒はエチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルプロピルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)のうちの少なくとも一種類を含む。
【0069】
いくつかの実施例において、前記非水溶媒は、少なくとも第1の溶媒及び第2の溶媒を含む。上記電解質塩及び第1の添加剤の含有量が高い場合、非水電解液の粘度を増加させ、導電率を低減させ、負極活物質の表面に均一で、緻密で、安定で低インピーダンスの界面膜を形成することに不利である。第1の溶媒は、高い誘電率を有するため、非水電解液の導電率を増加させ、第2の溶媒は小さい粘度を有するため、非水電解液の粘度を低減させることができる。したがって、非水溶媒が同時に第1の溶媒及び第2の溶媒を含む場合、非水電解液が適切な粘度及び導電率を有することに役立ち、さらにリチウムイオンの輸送及び負極活物質の表面に均一で、緻密で、安定で低インピーダンスの界面膜を形成することに役立つ。
【0070】
いくつかの実施例において、前記非水溶媒は、第3の溶媒を更に含むことができる。前記第3の溶媒は、カルボン酸エステル化合物であり、例えばギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)のうちの少なくとも一種類を含むことができる。第3の溶媒は、非水電解液が適切な粘度及び導電率を有することに役立ち、さらにリチウムイオンの輸送に有利である。また、第3の溶媒は、さらに非水電解液におけるBF4
-及びDFOB-が自由イオンを形成することを保証し、陰イオンと陽イオンとの会合を減少させることに役立ち、それによりBF4
-及びDFOB-の二次電池容量維持率及び動的性能に対する改善作用を十分に発揮することができる。
【0071】
本願の非水溶媒は、上記第1の溶媒、第2の溶媒、第3の溶媒以外の他の溶媒をさらに含んでいてもよい。例として、前記他の溶媒は、スルホン系溶媒、例えばスルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)等を含むことができる。
【0072】
いくつかの実施例において、いずれも前記非水溶媒の総質量に基づいて、前記非水溶媒における前記第1の溶媒の質量含有量はC1であり、前記非水溶媒における前記第2の溶媒の質量含有量はC2であり、前記非水溶媒における前記第3の溶媒の質量含有量はC3であり、かつ前記非水溶媒は、C1が10%~30%であり、C2が50%~90%であり、C3が0%~20%であることを満たす。
【0073】
いくつかの実施例において、C1/(C2+C3)は、0.1~0.45であり、選択的に0.2~0.3である。非水溶媒が適切な含有量の第1の溶媒を含有する場合、特に、適切な含有量のエチレンカーボネートを含有する場合、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムが分解して形成したラジカルはエチレンカーボネートの開環、重合を誘導し、負極活物質の表面に形成された界面膜をより緻密で、滑らかにし、それによりデンドライトの成長を効果的に抑制することができる。
【0074】
いくつかの実施例において、前記非水電解液は、ビニレンカーボネート(VC)、硫酸エチレン(DTD)、1,3-プロパンスルトン(PS)のうちの少なくとも一種類を含む第2の添加剤をさらに含む。これらの第2の添加剤は、正極及び/又は負極の界面特性をさらに改善することに役立ち、それにより二次電池のサイクル性能、貯蔵性能、ヒートオーブン安全性能及び動的性能のうちの少なくとも一つをさらに改善することができる。
【0075】
いくつかの実施例において、前記非水電解液の総質量に基づいて、前記非水電解液における前記第2の添加剤の質量含有量はB2であり、、B2は0.05%~2%であってもよい。選択的に、B2は0.1%~2%、0.2%~2%、0.3%~2%、0.4%~2%、0.5%~2%、0.6%~2%、0.7%~2%、0.8%~2%、0.9%~2%、1%~2%、0.1%~1%、0.2%~1%、0.3%~1%、0.4%~1%、0.5%~1%、0.6%~1%、0.7%~1%、0.8%~1%、0.9%~1%、又は1%~1%である。
【0076】
いくつかの実施例において、リチウムビスフルオロスルホニルイミドの含有量A1、第2の添加剤の含有量B2、第1の溶媒の含有量C1は(A1+B2)/C1が0.4~1.3であることを満たし、選択的に0.4~0.8である。第2の添加剤は、正極及び負極の表面に成膜して持続的な副反応を低減することに役立ち、それにより二次電池のサイクル性能、貯蔵性能、ヒートオーブン安全性能及び動的性能のうちの少なくとも一つを改善することができるが、第2の添加剤の含有量が多い場合、正極の界面インピーダンス及び/又は負極の界面インピーダンスが増加し、二次電池の電力性能に対し影響を及ぼす。リチウムビスフルオロスルホニルイミドは、非水電解液の導電率及び熱安定性を向上させ、正極の界面インピーダンス及び/又は負極の界面インピーダンスを低減させることができるが、アルミニウム箔集電体に対し一定の腐食があり、その含有量が高い場合に二次電池のサイクル性能に対し影響を与える。第1の溶媒は高い誘電率を有し、リチウム塩の解離に役に立つため、ある程度で非水電解液の導電率を向上させることができるが、その含有量が多い場合、一方では非水電解液の粘度を増加させ、他方では非水電解液の熱安定性に対し影響を与えて二次電池の貯蔵性能に対し影響を与える。発明者らがさらに研究した発見として、(A1+B2)/C1を0.4~1.3、選択的に0.4~0.8の間に制御すると、上記各成分の間の相乗効果を十分に発揮することに役立ち、かつ各成分の単独使用時の欠陥を効果的に低減させ、それにより二次電池が優れたサイクル性能を有し、かつ動的性能及び電力性能の悪化を回避することができる。
【0077】
いくつかの実施例において、前記非水電解液は、スルファミン酸及びその塩のうちの少なくとも一種類を含む第3の添加剤を更に含む。スルファミン酸の分子式はH3NO3Sであり、スルファミン酸塩はアンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、類アルカリ土類金属塩のうちの少なくとも一種類を含む。例として、スルファミン酸塩はスルファミン酸アンモニウム、スルファミン酸リチウム、スルファミン酸ナトリウム、スルファミン酸亜鉛のうちの少なくとも一種類を含むことができる。選択的に、前記第3の添加剤はスルファミン酸、スルファミン酸リチウム又はそれらの組み合わせを含む。
【0078】
スルファミン酸の酸性が強く、通常リチウムビスフルオロスルホニルイミドを作製するために用いられ、現在はそれを非水電解液に応用することができることを発見していない。本願の発明者らが更に研究した不思議な発見として、本願の非水電解液が適量のスルファミン酸及びその塩を含有する場合、二次電池のサイクル性能及び動的性能を改善することに役立つ。メカニズムは明らかではないが、発明者らが推測する原因として、スルファミン酸及びその塩が非水電解液の導電率を向上させ、非水電解液の粘度を低減させることに役立ち、同時にある程度でリチウムデンドライト等の金属をゆっくりと溶解する作用を果たすことができる。それにより、負極活物質の表面に還元して堆積されたリチウム単体、アルミニウム単体及び遷移金属単体等を減少させることができるため、二次電池が改善されたサイクル性能及び動的性能を有することができる。
【0079】
スルファミン酸及びその塩は、水に溶解しやすくかつ酸性が高く、その含有量が高い場合、正極活物質を腐食しかつ正極界面膜及び負極界面膜の安定性を破壊する。いくつかの実施例において、前記非水電解液の総質量に基づいて、前記非水電解液における前記第3の添加剤の質量含有量はB3であり、B3は選択的に0.005%~0.1%であり、より選択的に0.005%~0.05%である。
【0080】
いくつかの実施例において、前記非水電解液は、さらに上記第2の添加剤及び第3の添加剤を同時に含むことができる。
【0081】
いくつかの実施例において、前記非水電解液は、他の電解質塩、例えばヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiTFS)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート(LiDFOP)及びリチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート(LiTFOP)のうちの少なくとも一種類を更に含むことができる。これらの他の電解質塩は、正極および/又は負極の界面特性をより改善したり、非水電解液の導電率又は熱安定性を改善する効果を奏することができる。選択的に、前記非水電解液の総質量に基づいて、これらの他の電解質塩の前記非水電解液における総質量含有量は1%以下であり、より選択的に0.5%以下である。
【0082】
本願の非水電解液は、本分野の一般的な方法に従って作製することができる。例えば、前記添加剤、前記非水溶媒、前記電解質塩等を均一に混合させ、非水電解液を得ることができる。各材料の添加順序は特に限定されず、例えば、前記添加剤、前記電解質塩等を前記非水溶媒に加えて均一に混合し、非水電解液を得ることができる。
【0083】
本願において、非水電解液における各成分及びその含有量は、本分野の既知の方法に従って測定することができる。例えば、ガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)、イオンクロマトグラフィー(IC)、液体クロマトグラフィー(LC)、核磁気共鳴スペクトル法(NMR)等により測定することができる。
【0084】
なお、本願の非水電解液のテストの場合、作製されたばかりの非水電解液を直接採用してもよく、二次電池から非水電解液を取得してもよい。二次電池から非水電解液を取得する方法の一つの例示的な方法は、二次電池を放電終止電圧(安全にするために、通常電池を満放電状態にする)に放電した後に遠心処理を行い、その後に適量の遠心処理により得られた液体、つまり非水電解液を取得するステップを含む。二次電池の注液口から非水電解液を直接取得してもよい。
二次電池
【0085】
本願の実施形態の第2の態様は、電極アセンブリ及び非水電解液を含む二次電池を提供し、ここで、前記非水電解液は本願の第1の態様の非水電解液であり、それにより本願の二次電池は良好なサイクル性能、貯蔵性能、ヒートオーブン安全性能及び動的性能を同時に両立させることができる。
【0086】
本願の二次電池は、リチウム二次電池であってもよく、特にリチウムイオン二次電池であってもよい。
【0087】
電極アセンブリは、通常正極シート、負極シート及びセパレータを含む。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設置され、主に正極と負極との短絡を防止する作用を果たし、同時にリチウムイオンを通過させることができる。
[正極シート]
【0088】
いくつかの実施例において、前記正極シートは、正極集電体と前記正極集電体の少なくとも一つの表面に設置されかつ正極活物質を含む正極膜層とを含む。例えば、前記正極集電体は、自体の厚さ方向に対向する二つの表面を有し、前記正極膜層は、前記正極集電体の二つの対向表面のうちのいずれか一つ又は両方に設けられている。
【0089】
前記正極膜層は、正極活物質を含む。前記正極活物質は、本分野で公知の二次電池に用いられる正極活物質を採用することができる。例えば、前記正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びその各自の改質化合物のうちの少なくとも一種類を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物の例としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、及びこれらの改質化合物の少なくとも一種類を含むことができる。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例としては、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素の複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素の複合材料及びそのそれぞれの改質化合物の少なくとも一種類を含むことができる。本願はこれらの材料に限定されず、二次電池の正極活物質として用いられる従来公知の他の材料を使用することができる。これらの正極活物質は一種類のみを単独で使用してもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0090】
いくつかの実施例において、前記正極活物質は、分子式がLiaNibCocMndAleMfOgAhの層状材料を含み、Mは遷移金属サイトのドープカチオン、Aは酸素サイトのドープアニオンを示し、ここで、0.8≦a≦1.2、0≦b≦1、0≦c≦1、0≦d≦1、0≦e≦1、0≦f≦0.2、0≦g≦2、0≦h≦2、b+c+d+e+f=1、g+h=2。
【0091】
分子式がLiaNibCocMndAleMfOgAhの層状材料は、Mカチオン、Aアニオン、又はMカチオンとAアニオンとの両方により選択可能的にドープして改質されることができる。ドープした後に得られた層状材料の結晶構造はより安定であり、二次電池の電気化学性能、例えばサイクル性能、動的性能等をさらに向上させることができる。
【0092】
いくつかの実施例において、Mは、Si、Ti、Mo、V、Ge、Se、Zr、Nb、Ru、Pd、Sb、Ce、Te及びWから選択される少なくとも一種類である。
【0093】
いくつかの実施例において、Aは、F、N、P及びSから選択される少なくとも一種類である。選択的に、AはFから選択される。Fによりドープして改質された後、LiaNibCocMndAleMfOgAhの結晶構造がより安定であり、それにより二次電池がより良好なサイクル性能及び動的性能を有することができる。
【0094】
a、b、c、d、e、f、g、hの値は、LiaNibCocMndAleMfOgAhを電気的に中性に保持する条件を満たす。
【0095】
いくつかの実施例において、0<b<0.98である。選択的に、0.50≦b<0.98、0.55≦b<0.98、0.60≦b<0.98、0.65≦b<0.98、0.70≦b<0.98、0.75≦b<0.98又は0.80≦b<0.98である。
【0096】
いくつかの実施例において、c=0である。
【0097】
いくつかの実施例において、0<c≦0.20である。選択的に、0<c≦0.15、0<c≦0.10、0<c≦0.09、0<c≦0.08、0<c≦0.07、0<c≦0.06、0<c≦0.05、0<c≦0.04、0<c≦0.03、0<c≦0.02又は0<c≦0.01。コバルトは地殻において含有量が少なく、採掘が困難でかつ高価であるため、低コバルトまたは無コバルトは正極活物質の必然的な発展傾向となっている。しかしながら、コバルトは、正極活物質のリチウムイオンの拡散速度に大きく寄与し、低コバルト又は無コバルトは正極活物質のリチウムイオンの拡散速度を低減させ、二次電池のサイクル性能に対し影響を与える。研究者らは、低コバルト又は無コバルトの正極活物質のリチウムイオンの拡散速度を向上させるように研究しているが、現在はまだ良好な解決手段がない。
【0098】
本願の発明者らが研究した意外な発見として、テトラフルオロホウ酸リチウムの含有量A2及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムの含有量A3を合理的に調整してA2/A3を0.02~30にすると、正極活物質の表面に低インピーダンスの界面膜をさらに形成し、かつテトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムの構造におけるB原子がさらに正極活物質におけるO原子と結合しやすく、それにより正極活物質の電荷移転抵抗を低減させ、正極活物質の体相内でのリチウムイオンの拡散抵抗を低減させることができる。したがって、非水電解液が適切な含有量のテトラフルオロホウ酸リチウム及びジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムを含有する場合、低コバルト又は無コバルトの正極活物質が顕著に改善されたリチウムイオンの拡散速度を有することができ、低コバルト又は無コバルトの正極活物質の体相内のリチウムイオンが表面にタイムリーに補充することができ、低コバルト又は無コバルトの正極活物質の表面にリチウムが脱離すぎることを回避することができ、それにより低コバルト又は無コバルトの正極活物質の結晶構造を安定させることができる。低コバルト又は無コバルトの正極活物質の結晶構造がより安定であるため、低コバルト又は無コバルトの正極活物質の表面にリチウムが脱離すぎることにより正極活物質の構造的性質、化学的性質又は電気化学的性質が不安定になるなどの問題が発生する確率を大幅に低減させることができる。例えば、上記問題としては、正極活物質の不可逆的な歪み及び格子欠陥の増加という問題である。
【0099】
いくつかの実施例において、d=0かつ0<e<0.50である。選択的に、d=0かつ0<e≦0.45、d=0かつ0<e≦0.40、d=0かつ0<e≦0.35、d=0かつ0<e≦0.30、d=0かつ0<e≦0.25、d=0かつ0<e≦0.20、d=0かつ0<e≦0.15、又はd=0かつ0<e≦0.10である。
【0100】
いくつかの実施例において、e=0かつ0<d<0.50である。選択的に、e=0かつ0<d≦0.45、e=0かつ0<d≦0.40、e=0かつ0<d≦0.35、e=0かつ0<d≦0.30、e=0かつ0<d≦0.25、e=0かつ0<d≦0.20、e=0かつ0<d≦0.15、又はe=0かつ0<d≦0.10である。
【0101】
いくつかの実施例において、0<d<0.50かつ0<e<0.50である。選択的に、0<d≦0.30かつ0<e≦0.10である。
【0102】
いくつかの実施例において、g=2、h=0である。
【0103】
いくつかの実施例において、g=0、h=2である。
【0104】
いくつかの実施例において、0<g<2、0<h<2、かつg+h=2である。
【0105】
例として、分子式がLiaNibCocMndAleMfOgAhの層状材料は、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.8Co0.05Mn0.15O2、LiNi0.7Mn0.3O2、LiNi0.69Co0.01Mn0.3O2、LiNi0.68Co0.02Mn0.3O2、LiNi0.65Co0.05Mn0.3O2、LiNi0.63Co0.07Mn0.3O2、LiNi0.61Co0.09Mn0.3O2のうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。
【0106】
LiaNibCocMndAleMfOgAhは、本分野の一般的な方法に従って作製することができる。例示的な作製方法としては、リチウム源、ニッケル源、コバルト源、マンガン源、アルミニウム源、M元素の前駆体、A元素の前駆体を混合した後に焼結することにより得られる方法である。焼結の雰囲気は酸素含有雰囲気であってもよく、例えば、空気雰囲気又は酸素ガス雰囲気である。焼結の雰囲気のO2濃度は、例えば70%~100%である。焼結温度及び焼結時間は、実際の状況に応じて調節することができる。
【0107】
例として、リチウム源は、酸化リチウム(Li2O)、リン酸リチウム(Li3PO4)、リン酸二水素リチウム(LiH2PO4)、酢酸リチウム(CH3COOLi)、水酸化リチウム(LiOH)、炭酸リチウム(Li2CO3)及び硝酸リチウム(LiNO3)のうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例として、ニッケル源は、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、シュウ酸ニッケル及び酢酸ニッケルのうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例として、コバルト源は硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、シュウ酸コバルト及び酢酸コバルトのうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例として、マンガン源は硫酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、シュウ酸マンガン及び酢酸マンガンのうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例として、アルミニウム源は硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、シュウ酸アルミニウム及び酢酸アルミニウムのうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例として、M元素の前駆体はM元素の酸化物、硝酸化合物、炭酸化合物、水酸化物及び酢酸化合物のうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。例として、A元素の前駆体はフッ化アンモニウム、フッ化リチウム、フッ化水素、塩化アンモニウム、塩化リチウム、塩化水素、硝酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫化水素アンモニウム、硫化水素、硫化リチウム、硫化アンモニウム及び単体硫黄のうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。
【0108】
いくつかの実施例において、正極膜層の総質量に基づいて、分子式がLiaNibCocMndAleMfOgAhである層状材料の質量百分率は80%~99%である。例えば、分子式がLiaNibCocMndAleMfOgAhである層状材料の質量百分率は80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は以上の任意の数値で構成された範囲であってもよい。選択的に、分子式がLiaNibCocMndAleMfOgAhである層状材料の質量百分率は85%~99%、90%~99%、95%~99%、80%~98%、85%~98%、90%~98%、95%~98%、80%~97%、85%~97%、90%~97%、又は95%~97%である。
【0109】
いくつかの実施例において、前記正極膜層は、正極導電剤を更に選択可能に含むことができる。本願は前記正極導電剤の種類に対し特に限定せず、例として、前記正極導電剤は超伝導カーボン、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも一種類を含む。いくつかの実施例において、前記正極膜層の総質量に基づいて、前記正極導電剤の質量百分率は5%以下である。
【0110】
いくつかの実施例において、前記正極膜層は、正極接着剤を更に選択可能に含んでもよい。本願は、前記正極接着剤の種類に対し特に制限せず、例として、前記正極接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン‐テトラフルオロエチレン‐プロピレンの三元コポリマー、フッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレン‐テトラフルオロエチレンの三元コポリマー、テトラフルオロエチレン‐ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、フッ素含有アクリレート系樹脂のうちの少なくとも1種類を含むことができる。いくつかの実施例において、前記正極膜層の総質量に基づいて、前記正極接着剤の質量百分率は5%以下である。
【0111】
いくつかの実施例において、前記正極集電体は金属箔シート又は複合集電体を採用することができる。金属箔シートの例として、アルミニウム箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属材料層とを含んでいてもよい。例として、金属材料はアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金から選択される少なくとも1種類である。例として、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等から選択される。
【0112】
前記正極膜層は、通常、正極スラリーを正極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスにより形成される。前記正極スラリーは、通常、正極活物質、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤、及び任意の他の成分を溶媒に分散させて均一に撹拌することにより形成される。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)であってもよいが、これに限定されない。
[負極シート]
【0113】
いくつかの実施例において、前記負極シートは、負極集電体と前記負極集電体の少なくとも一つの表面に設置されかつ負極活物質を含む負極膜層とを含む。例えば、前記負極集電体は、自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、前記負極膜層は、前記負極集電体の二つの対向表面のうちのいずれか一つ又は両方に設けられている。
【0114】
前記負極活物質は、本分野で公知の二次電池に用いられる負極活物質を採用することができる。例として、前記負極活物質は天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、ケイ素系材料、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの少なくとも一種類を含むが、これらに限定されない。前記ケイ素系材料は単体ケイ素、ケイ素酸化物、ケイ素炭素複合体、ケイ素窒素複合体、ケイ素合金材料のうちの少なくとも一種類を含むことができる。前記スズ系材料は単体スズ、スズ酸化物、スズ合金材料のうちの少なくとも一種類を含むことができる。本願はこれらの材料に限定されず、二次電池の負極活物質として用いられる従来の公知の他の材料を使用することができる。これらの負極活物質は一種類のみを単独で使用してもよく、二種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0115】
いくつかの実施例において、前記負極膜層は、負極導電剤を更に選択可能に含むことができる。本願は前記負極導電剤の種類に対し特に限定せず、例として、前記負極導電剤は超伝導カーボン、導電性黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの少なくとも一種類を含むことができる。いくつかの実施例において、前記負極膜層の総質量に基づいて、前記負極導電剤の質量百分率は5%以下である。
【0116】
いくつかの実施例において、前記負極膜層は負極接着剤を更に選択可能に含むことができる。本願は前記負極接着剤の種類に対し特に限定せず、例として、前記負極接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR‐1B、水性アクリル系樹脂(例えば、ポリアクリル酸PAA、ポリメタクリル酸PMAA、ポリアクリル酸ナトリウムPAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの少なくとも1種類を含むことができる。いくつかの実施例において、前記負極膜層の総質量に基づいて、前記負極接着剤の質量百分率が5%以下である。
【0117】
いくつかの実施例において、前記負極膜層は他の助剤を更に選択可能に含むことができる。例として、他の助剤は増粘剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、PTCサーミスタ材料等を含むことができる。いくつかの実施例において、前記負極膜層の総質量に基づいて、前記他の助剤の質量百分率は2%以下である。
【0118】
いくつかの実施例において、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用することができる。金属箔シートの例として、銅箔を採用することができる。複合集電体は、高分子材料基層と、高分子材料基層の少なくとも一方の表面に形成された金属材料層とを含んでいてもよい。例として、金属材料は銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀、銀合金から選択される少なくとも1種類である。例として、高分子材料基層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)等から選択される。
【0119】
いくつかの実施例において、前記非水電解液の室温導電率はx mS/cmであり、前記負極シートの厚さはLμmであり、かつ前記二次電池はL≦120×√(x/8)を満たす。
【0120】
本願の発明者らが研究した更なる発見として、非水電解液の室温導電率x mS/cm及び負極シートの厚さLμmがL≦120×√(x/8)を満たす場合、非水電解液は負極活物質の表面に均一で、緻密で、安定で低インピーダンスの有機-無機複合界面膜を形成することに役立つ。それにより、二次電池が優れた電気化学性能、特に優れた動的性能を有することができる。
【0121】
前記負極膜層は、通常負極スラリーを負極集電体に塗布し、乾燥、冷間プレスにより形成される。前記負極スラリーは、通常、負極活物質、選択可能な導電剤、選択可能な接着剤、その他の選択可能な助剤を溶媒に分散させて均一に撹拌することにより形成される。溶媒はN-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよいが、これらに限定されない。
[セパレータ]
【0122】
前記セパレータは前記正極シートと前記負極シートとの間に設置され、主に正極と負極との短絡を防止する作用を果たし、同時にリチウムイオンを通過させることができる。本願は、前記セパレータの種類に対し特に制限せず、任意の公知の良好な化学安定性及び機械安定性を有する多孔質構造セパレータを選択することができる。
【0123】
いくつかの実施例において、前記セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの少なくとも1種類を含むことができる。前記セパレータは単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよい。前記セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料が同じであるか又は異なる。
【0124】
いくつかの実施例において、前記正極シート、前記セパレータ及び前記負極シートは巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリに作製されることができる。
【0125】
いくつかの実施例において、前記二次電池は、外装を含むことができる。当該外装は、上記電極アセンブリ及び非水電解液を封止するために用いることができる。
【0126】
いくつかの実施例において、前記二次電池の外装は、ハードケースであってもよく、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼ケースなどである。前記二次電池の外装はソフトパッケージであってもよく、例えばバグ式ソフトパッケージである。前記ソフトパッケージの材質はプラスチックであってもよく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの少なくとも1種類である。
【0127】
本願の二次電池の形状は特に限定されず、円柱形、角形又は他の任意の形状であってもよい。
図1は、一例としての角形構造の二次電池5である。
【0128】
いくつかの実施例において、
図2に示すように、外装はケース51及びカバープレート53を含むことができる。ここで、ケース51は底板と底板に接続された側板を含み、底板と側板が囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティに連通する開口を有し、カバープレート53は、前記開口をカバーすることで、前記収容キャビティを閉鎖する。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリ52を形成する。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティに封止されている。非水電解液は、電極アセンブリ52に含浸されている。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は一つ又は複数であってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0129】
本願の二次電池の作製方法は公知である。いくつかの実施例において、正極シート、セパレータ、負極シート及び非水電解液を組み立てて二次電池を形成することができる。例として、正極シート、セパレータ、負極シートを巻回プロセス又は積層プロセスにより電極アセンブリを形成し、電極アセンブリを外装に置き、乾燥した後に非水電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形などの工程を経て、二次電池を得る。
【0130】
本願のいくつかの実施例において、本願に係る二次電池を電池モジュールに組み立てることができる。電池モジュールに含まれる二次電池の数は複数であってもよく、具体的な数は電池モジュールの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0131】
図3は、一例としての電池モジュール4の模式図である。
図3に示すように、電池モジュール4において、複数の二次電池5は電池モジュール4の長さ方向に沿って順に配列して設置されてもよい。当然のことながら、他の任意の方式で配列することができる。当該複数の二次電池5は、更に締結具によって固定されていてもよい。
【0132】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングを更に含み、複数の二次電池5は該収容空間に収容されている。
【0133】
いくつかの実施例において、上記電池モジュールは、更に電池パックに組み立てることができる。電池パックに含まれる電池モジュールの数量は電池パックの応用及び容量に応じて調整することができる。
【0134】
図4及び
図5は、一例としての電池パック1の模式図である。
図4及び
図5に示すように、電池パック1に電池ボックスと電池ボックスに設置された複数の電池モジュール4とを含むことができる。電池ボックスは上筐体2及び下筐体3を含み、上筐体2は下筐体3をカバーし、かつ電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成するために用いられる。複数の電池モジュール4は、電池ボックス内に任意に配置することができる。
電力消費装置
【0135】
本願の実施形態は、本願の二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも1種類を含む電力消費装置を更に提供する。前記二次電池、電池モジュール又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動機器(例えば携帯電話、ノートパソコン等)、電動車両(例えば純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電気トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0136】
前記電力消費装置は、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0137】
図6は、一例としての電力消費装置の模式図である。当該電力消費装置は、純粋な電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。当該電力消費装置の高電力及び高エネルギー密度への需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0138】
他の例としての電力消費装置は、携帯電話、タブレットコンピュータ、ノートパソコン等であってもよい。当該該電力消費装置は、通常薄型化が求められ、二次電池を電源として採用することができる。
実施例
【0139】
以下の実施例は、本願の開示する内容をより具体的に説明し、これらの実施例は単に説明するために用いられ、本願の開示する内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは当業者にとって明らかである。特に断らない限り、以下の実施例に記載された全ての部、百分率、及び比はいずれも質量に基づいたものである。また、実施例で使用された全ての試薬を購入して取得するか又は従来の方法に従って合成して取得することができ、かつ更に処理する必要とせず直接使用可能である。また、実施例で使用された装置をいずれも購入して取得することができる。
【0140】
実施例1~43及び比較例1~9の二次電池は、いずれも下記の方法で作製する。
正極シートの作製
【0141】
正極活物質であるLiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、導電剤であるカーボンブラック、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比97.5:1.4:1.1で適量の溶媒NMP中に十分に撹拌して混合させ、均一な正極スラリーを形成する。正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、正極シートを得る。
負極シートの作製
【0142】
負極活物質である黒鉛、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、導電剤であるカーボンブラック(Super P)を重量比96.2:1.8:1.2:0.8で適量の溶媒である脱イオン水に十分に撹拌して混合させ、均一な負極スラリーを形成する。負極スラリーを負極集電体である銅箔の表面に均一に塗布し、乾燥、冷間プレスを経て、負極シートを得る。
セパレータ
【0143】
セパレータとしては、多孔質ポリエチレン(PE)フィルムを用いる。
非水電解液の調製
【0144】
電解質塩、添加剤を非水溶媒に加えて均一に混合させ、非水電解液を得る。各成分の組成及びその含有量はそれぞれ表1~3に示すとおりである。表1~3において、各電解質塩の成分及び各添加剤の成分の含有量は、いずれも非水電解液の総質量に基づくものであり、第1の溶媒、第2の溶媒及び第3の溶媒の含有量はいずれも非水溶媒の総質量に基づくものである。「/」は、対応する成分を添加しないことを示す。
二次電池の作製
【0145】
正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層して巻回し、電極アセンブリを得る。電極アセンブリを外装に入れ、上記非水電解液を添加し、封止、静置、化成、老化等の工程を経た後、二次電池を得る。
試験過程
(1)二次電池の常温サイクル性能の試験
【0146】
25℃で、二次電池を1Cの定電流で4.3Vまで充電し、定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し続け、この時に二次電池は満充電状態であり、この時の充電容量を記録し、第1回の充電容量とする。二次電池を5min静置した後、1Cの定電流で2.8Vまで放電し、これは一つのサイクル充放電過程であり、この時の放電容量を記録し、第1回の放電容量とする。二次電池を上記方法に応じてサイクル充放電試験を行い、各サイクル後の放電容量を記録する。二次電池の25℃で600回サイクルした容量維持率(%)=600回サイクル後の放電容量/第1回の放電容量×100%。
(2)二次電池の高温サイクル性能の試験
【0147】
45℃で、二次電池を1Cの定電流で4.3Vまで充電し、定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し続け、この時に二次電池は満充電状態であり、この時の充電容量を記録し、第1回の充電容量とする。二次電池を5min静置した後、1Cの定電流で2.8Vまで放電し、これは一つのサイクル充放電過程であり、この時の放電容量を記録し、第1回の放電容量とする。二次電池を上記方法に応じてサイクル充放電の試験を行い、各サイクル後の放電容量を記録する。二次電池の45℃で600回サイクルした容量維持率(%)=600回サイクル後の放電容量/第1回の放電容量×100%。
(3)二次電池の高温貯蔵性能の試験
【0148】
60℃で、二次電池を1Cの定電流で4.3Vまで充電し、定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し続け、この時に排水法で二次電池の体積を測定しかつV0とする。二次電池を60℃の恒温箱に入れ、30日間貯蔵した後に取り出し、この時に排水法で二次電池の体積を測定しかつV1とする。二次電池の60℃で30日間貯蔵した後の体積膨張率(%)=[(V1-V0)/V0]×100%。
(4)二次電池の初期直流内部抵抗の試験
【0149】
25℃で、二次電池を1Cの定電流で4.3Vまで充電し、定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し続け、この時に二次電池が満充電状態である。二次電池を0.5Cの定電流で放電しかつ二次電池を50%SOCまで調整し、この時に二次電池の電圧をU1とする。二次電池を4Cの電流I1で30秒間定電流で放電し、0.1秒のサンプリング点を採用し、放電末期電圧をU2とする。二次電池の50%SOC時の放電直流内部抵抗は、二次電池の初期直流内部抵抗を示し、二次電池の初期直流内部抵抗(mΩ)=(U1-U2)/I1である。
(5)二次電池のヒートオーブン安全性能の試験
【0150】
25℃で、二次電池を1Cの定電流で4.3Vまで充電し、定電圧で電流が0.05Cになるまで充電し続け、この時に二次電池は満充電状態である。満充電状態の二次電池を密封の良好な高温箱に置き、5℃/minで100℃まで昇温し、1時間保持した後に5℃/minで105℃まで昇温し、30分間保持する。その後に5℃/minの昇温速度で5℃上昇したごとに30min保持し、二次電池が故障するまで停止し、二次電池が故障する前の最高温度Tmaxを記録する。Tmaxが高いほど、二次電池のヒートオーブン安全性能が高くなる。
【0151】
試験結果の信頼性を保証するために、上記各試験は、少なくとも3つの並行サンプルを用いて試験しかつ平均値を試験結果とすることができる。
【0152】
表1~3は、実施例1~43及び比較例1~9の非水電解液の作製パラメータを示し、表4及び表5は実施例1~43及び比較例1~9の上記性能試験方法に応じて得られた試験結果を示す。
【0153】
【0154】
【0155】
比較例1~9及び実施例1~43の試験結果から分かるように、リチウムビスフルオロスルホニルイミドを主なリチウム塩とする非水電解液が、テトラフルオロホウ酸リチウム、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム及びフルオロエチレンカーボネートを採用し、かつリチウムビスフルオロスルホニルイミドの含有量A1、テトラフルオロホウ酸リチウムの含有量A2、ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウムの含有量A3及びフルオロエチレンカーボネートの含有量B1を合理的に調整してA1/A2を30~1500、A1/B1を3.6~15、A2/A3を0.02~30にすると、二次電池は、高い容量維持率、低い内部抵抗、低い体積膨張率及び高いヒートオーブン安全性能を同時に両立させることができる。
【0156】
実施例37~41の試験結果から分かるように、非水電解液が第2の添加剤及び/又は第3の添加剤を更に含む場合、二次電池の総合性能をさらに向上させることに役立つ。
【0157】
発明者らは、負極シートの厚さの二次電池性能への影響をさらに研究した。実施例44~47の正極シートの作製、負極シートの作製、非水電解液の作製及び二次電池の作製はいずれも実施例5と同じであり、相違点は負極シートの厚さが異なることである。
【0158】
【0159】
表6の試験結果から分かるように、非水電解液の室温導電率x mS/cmと負極シートの厚さLμmがL≦120×√(x/8)を満たす場合、二次電池の総合性能をさらに向上させることに役立つ。
【0160】
なお、本願は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単に例示であり、本願の技術案の範囲内に技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏する実施形態は、いずれも本願の技術範囲に含まれる。また、本願の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者が想到できる各種変形を実施の形態に加える形態、実施形態における一部の構成要素を組み合わせて構築される他の形態も、本願の範囲に含まれる。
【国際調査報告】