(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】半導体レーザ及びプロジェクタ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02 20060101AFI20240719BHJP
H01S 5/40 20060101ALI20240719BHJP
H01L 21/205 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
H01S5/02
H01S5/40
H01L21/205
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504892
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 EP2022068928
(87)【国際公開番号】W WO2023011845
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021119999.9
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイヒラー クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】レル アルフレド
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト スヴェン
【テーマコード(参考)】
5F045
5F173
【Fターム(参考)】
5F045AB18
5F045AF04
5F045AF09
5F045BB12
5F045CA12
5F045DB02
5F173AB79
5F173AD02
5F173AH22
5F173AL03
5F173AP84
5F173AP87
5F173AR52
(57)【要約】
少なくとも1つの実施形態において、半導体レーザ(1)は、レーザ放射線(L)を生成するための半導体層列(2)と透明基板(3)とを備える。半導体層列(2)は、レーザ放射線(L)を放出するように構成された第1のファセット(21)と、第1のファセット(21)の反対側の第2のファセット(22)とを含む。基板(3)は、第1のファセット(21)に第1の側面(31)と、第2のファセット(22)に第2の側面(32)とを含む。第1の側面(31)は、第1のファセット(21)に対して少なくとも所々、斜めに配向される、及び/または第2の側面(32)は、第2のファセット(22)に対して少なくとも所々、斜めに配向される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ放射線(L)を生成するための半導体層列(2)と、
前記レーザ放射線(L)に対して透過的であり、前記半導体層列(2)が適用される基板(3)と、を備える、半導体レーザ(1)であって、
前記半導体層列(2)は、前記レーザ放射線(L)を放出するように構成された第1のファセット(21)と、前記第1のファセット(21)の反対側に第2のファセット(22)と、を備え、
前記基板(3)は、前記第1のファセット(21)に第1の側面(31)と、前記第2のファセット(22)に第2の側面(32)と、を備え、
前記第1の側面(31)は、前記第1のファセット(21)に対して、少なくとも所々斜めに配向され、及び/または前記第2の側面(32)は、前記第2のファセット(22)に対して、少なくとも所々斜めに配向され、
前記第1の側面(31)と前記第1のファセット(21)との間の角度(A1)、及び/または前記第2の側面(32)と前記第2のファセット(22)との間の角度(A2)は、前記レーザ放射線(L)の全反射が、関連する前記側面(31、32)で生じるほど少なくとも大きく、その結果、前記レーザ放射線(L)は、関連する前記側面(31、32)で前記基板(3)を出ることができない、
前記半導体レーザ(1)。
【請求項2】
前記第1のファセット(21)と前記第1の側面(31)及び/または前記第2のファセットと前記第2の側面が、前記半導体層列(2)の上面図で見るとき、互いに傾斜している、
請求項1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項3】
前記第1のファセット(21)と前記第1の側面(31)及び/または前記第2のファセット(22)と前記第2の側面(32)が、共振器の縦軸(R)に沿って前記半導体層列(2)を通る断面図で見ると、互いに斜めに延びている、
請求項1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項4】
前記第1の側面(31)と前記第1のファセット(21)の間の前記角度(A1)、及び/または前記第2の側面(22)と前記第2のファセット(22)の間の前記角度(A2)が、少なくとも24°、最大でも45°であり、
前記半導体層列(2)が、材料系AlInGaNをベースとし、前記基板(3)がGaN基板である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項5】
前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または、前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、平らな面である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項6】
前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、前記基板(2)の結晶面に平行に配向され、ブレイクによって、生成される、
請求項5に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項7】
前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または、前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、複数の平らな部分表面(39)からなり、
前記部分表面(39)は、エッジによって互いに分離され、前記部分表面(39)の少なくとも1つは、前記関連するファセット(21、22)に対して斜めに配向される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項8】
前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または、前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、曲面である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項9】
前記第1の側面(31)の割合が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または、前記第2の側面(32)の割合が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、少なくとも60%である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項10】
前記第1の側面(31)のみが、前記第1のファセット(21)に対して少なくとも所々、斜めに配向される、または前記第2の側面(32)のみが、前記第2のファセット(22)に対して少なくとも所々、斜めに配向される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項11】
前記第1のファセット(21)と前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向される前記第1の側面(31)の領域との間の距離、及び/または前記第2のファセット(22)と前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向される前記第2の側面(32)の領域との間の距離が、最大で12μmである、
請求項1~10のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項12】
前記半導体層列(2)の平面図で見るとき、前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、前記半導体層列(2)に隣接するエッジで前記半導体層列(2)と同一平面で終端する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項13】
前記半導体層列(2)の平面図で見るとき、前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または、前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、前記半導体層列(2)に隣接するエッジにおいて、前記半導体層列(2)を超えて突出する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項14】
前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるときの前記第1の側面(31)及び/または前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるときの前記第2の側面(32)と、前記半導体層列(2)との間で、前記基板(3)に段差(5)があり、
前記段差(5)の段差高(H)及び段差幅(B)は、それぞれ、最大10μmである、
請求項13に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項15】
前記半導体層列(2)が、複数のレーザエミッタ(6)を含むか、または複数のレーザエミッタ(6)に構成され、
前記レーザエミッタ(6)は、前記基板(3)上に互いに平行に配置されている、
請求項1~14のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項16】
前記レーザエミッタ(6)が、共通の平面で終端する、
請求項15に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項17】
前記基板(3)の前記第1の側面(31)及び/または前記第2の側面(32)及び/または底面(33)に取り付けられた少なくとも1つの放射線遮断層(7)をさらに備え、
前記放射線遮断層(7)は、前記レーザ放射線(L)に対して反射または吸収するように構成される、
請求項1~16のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項18】
前記基板(3)の縦面(34)に取り付けられた少なくとも1つのフォトダイオード(8)をさらに備え、
前記縦面(34)は、前記第1の側面(31)に対して横方向に、かつ、前記第2の側面(32)に対して横方向に配向される、
請求項1~17のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項19】
少なくとも1つの請求項1~18のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)を備えるプロジェクタ(10)であって、
前記少なくとも1つの半導体レーザ(1)の下流に配置された少なくとも1つの光学系(11)をさらに備える、
前記プロジェクタ(10)。
【請求項20】
前記少なくとも1つの半導体レーザ(1)が搭載されるハウジング(13)をさらに備え、
前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、前記基板(3)を伝搬するレーザ放射線(L)を偏向するように構成され、
前記ハウジング(13)は、前記基板(3)から出るレーザ放射線(L)のための障壁として構成される、
請求項19に記載のプロジェクタ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体レーザについて詳細に記載する。このような半導体レーザを有するプロジェクタについても詳細に記載する。
【背景技術】
【0002】
文献US2014/0 133 504A1及びUS2013/0 230 067A1は、基板上に放射線不透過層を有する半導体レーザに関する。ISLE法は、文献US2016/0 027 959A1に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高いビーム品質でレーザ放射線を放出する半導体レーザを詳細に記載することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、とりわけ、独立請求項の特徴を有する半導体レーザによって及びプロジェクタによって解決される。好ましいさらなる実施形態は、従属請求項の主題である。
【0005】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、レーザ放射線を生成するための半導体層列を備える。
【0006】
半導体層列は、少なくとも1つの活性領域を含み、この活性領域は、動作中にエレクトロルミネッセンスによってレーザ放射線を生成するように構成される。半導体層列は、詳細にはIII-V半導体化合物材料をベースとする。半導体材料は、例えば、AlnIn1-n-mGamN等の窒素化合物半導体材料、またはAlnIn1-n-mGamP等のリン化合物半導体材料、またはAlnIn1-n-mGamAsもしくはAlnGamIn1-n-mAskP1-k等のヒ素化合物半導体材料であり、それぞれ、0≦n≦1、0≦m≦1、及びn+m≦1、ならびに0≦k<1である。例えば、0<n≦0.8、0.4≦m<1、及びn+m≦0.95、ならびに0<k≦0.5は、半導体層列の少なくとも1つの層またはすべての層に適用される。半導体層列は、ドーパント及び追加成分を含み得る。しかしながら、簡単にするために、半導体層列の結晶格子の必須の成分のみ、すなわち、Al、As、Ga、In、NまたはPを、これらが、少量の他の物質によって部分的に置換され得る及び/または補われ得る場合でさえ、詳細に記載する。
【0007】
半導体層列は、好ましくは、AlnIn1-n-mGamN材料系ベースである。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、レーザ放射線に対して透過的な基板を含む。半導体層列は、基板上に堆積される。例えば、半導体層列は、基板上に成長し、その結果、基板は、成長基板である。詳細には、基板は、GaNまたはサファイアからなる。半導体層列は、基板上に直接、すなわち、中間層無しに、配置することができる。
【0009】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体層列は、レーザ放射線を放出するように構成された第1のファセットを含む。さらに、半導体層列は、第1のファセットの反対側に第2のファセットを含む。第2のファセットもレーザ放射線を放出するように構成されるか、または第2のファセットは、詳細には共振器端部ミラー表面として、レーザ放射線を反射するように構成される。第1及び/または第2のファセットは、光学的に有効なコーティングを備えてよい。例えば、第1のファセット上に反射防止コーティングがあり、第2のファセット上に高反射性コーティングがある。
【0010】
少なくとも1つの実施形態によれば、基板は、第1のファセットに第1の側面と、第2のファセットに第2の側面とを含む。第1の側面は、第1のファセットに直接隣接してよく、対応して、第2の側面は、第2のファセットに直接隣接してよい。あるいは、第1の側面と第1のファセットとの間、及び/または第2の側面と2つのファセットとの間に距離がある。
【0011】
側面は、詳細には、関連するファセットの平面図で見える基板の外側境界面、及び/または関連するファセットに対する角度もしくは平均角度が最大で75°または最大で60°または最大で45°である境界面である。側面は、基板の主面であってよい。主面は、例えば、基板の6つの最大の外側境界面のうちの1つである。基板の境界面は、詳細にはエッジによって互いに分離され、隣接する境界面の角度は、好ましくは少なくとも60°または少なくとも80°である。言い換えれば、基板の隣接する境界面は、互いに対して小さな角度のみを含み、共通の側面及び/または当該側面の部分表面として理解されることが可能である。
【0012】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の側面は、第1のファセットに対して完全にまたは所々、斜めに配向され、及び/または第2の側面は、第2のファセットに対して完全にまたは所々、斜めに配向される。
【0013】
少なくとも1つの実施形態において、半導体レーザは、レーザ放射線を生成するための半導体層列と透明基板とを備える。半導体層列は、レーザ放射線を放出するように構成された第1のファセットと、第1のファセットの反対側の第2のファセットとを含む。基板は、第1のファセットに第1の側面と、第2のファセットに第2の側面とを含む。第1の側面は、第1のファセットに対して少なくとも所々、斜めに配向される、及び/または第2の側面は、第2のファセットに対して少なくとも所々、斜めに配向される。詳細には、第1の側面と第1のファセットとの間の角度、及び/または第2の側面と第2のファセットとの間の角度は、レーザ放射線の全反射が当該側面において生じるほど少なくとも大きく、その結果、レーザ放射線は、当該側面において基板を出ることができない。
【0014】
本明細書に記載の半導体レーザでは、基板モードは、異なる傾斜面によって抑制することができる。
【0015】
傾斜面に加えて、詳細には基板からのレーザ放射線を遮断するための2つの他の方法がある。例えば、側面の光吸収層は、レーザ放射線が基板から出るのを防止することができる。さらに、基板内を伝搬するレーザ放射線は、基板内及び/または基板下の吸収層によって減衰することができる。
【0016】
これに対して、本明細書に記載の半導体レーザは、主に、レーザ領域と基板領域とで異なる傾斜面を用いて、基板内を導かれる光を光軸から離れる方向に向ける。半導体-空気界面におけるレーザ放射線の全反射を利用することができる。
【0017】
通常、半導体層列は、レーザファセットを生成するためにブレイクされる。これにより、エピタキシャル層の領域すなわちレーザ領域と基板との両方を含むファセットが生成される。本明細書に記載の半導体レーザでは、レーザファセットと基板の分離とは、2つの別個のステップで生成されることが好ましい。これは、1つの共通ファセットだけでなく、異なる法線ベクトルを含む2つの異なるファセットを生成する。このようにして、基板内を伝搬する不要な光は、所望のレーザ光とは異なる方向に向けることができる。これは、ファセット上または基板の中もしくは上の吸収体も反射体も、もはや必要ではないことを意味する。しかしながら、このような吸収体または反射体は、追加的に及び/または組み合わせて使用することもできる。
【0018】
したがって、本明細書に記載のレーザでは、基板内を導かれる光を光軸から離れる方向に向けるために、レーザ領域と基板領域とで異なる傾斜面を使用する。角度は、水平方向及び/または垂直方向で異なってよい。基板ファセットの角度は、基板内を導かれる光が光軸から離れる方向に向けられるように選択されると有利である。光は、例えば、レーザファセットに対してわずかな角度差を有して、ハウジング内に偏向することができる。例えば、基板光の光軸方向のデカップリングが完全に抑制されるように、全反射角以上の角度を選択することができる。偏向された基板光は、フォトダイオード上に向けることによって、レーザの出力パワーを監視するためにも使用することができる。
【0019】
本明細書に記載の半導体レーザは、基板内を導かれる不要な光が偏向及び/または抑制されるので、ビーム品質の著しい改善を可能にする。これは、基板表面に対するレーザファセットの異なる角度によって基本的に達成される。レーザファセット、すなわち半導体層列のファセットは、有利には、ファセットエッチングによって生成することができ、これは費用効果が高く、依然としてウェハ複合体である間に、半導体レーザを試験することを可能にする。基板表面は、鋸引き、またはステルスダイシング等の費用対効果の高い方法を用いて生成することができる。
【0020】
半導体層列のファセットに対する側面の角度を適切に選択することによって、レーザ光を別々に方向転換する必要なく、偏向された基板光を使用してレーザの出力パワーを監視することもできる。これにより、効率を高めることができる。
【0021】
さらに、基板モードを避けるために、アクティブレーザビームから数μmの距離に吸収層を要することを必要としない。これにより、レーザダイオードの効率に負の影響を与えるリスクが回避される。時間のかかる単一アレイ工程及び吸収体被覆工程の必要もない。
【0022】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは利得導波型である。あるいは、半導体レーザは屈折率導波型であり、リッジ導波路を含むことが好ましい。
【0023】
以下では、言葉の単純化のために、側面及び関連するファセットという用語を通常、使用する。これは、第1のファセット及び第1の側面の対、または第2のファセット及び第2の側面の対のいずれかを意味するが、これは、両方の対、すなわち、第1のファセット及び第1の側面、ならびに第2のファセット及び第2の側面を意味することもできる。
【0024】
少なくとも1つの実施形態によれば、ファセット及び関連する側面は、上面図で見るとき、半導体層列上で互いに対して斜めに延びる。詳細には、上面図は、半導体層列が適用される基板の上面の垂直図も指す。言い換えれば、ファセット及び関連する側面は、異なる水平配向を含む。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、共振器の縦軸に沿って半導体層列を通る断面図で見るとき、及び/または上面に垂直な断面図で見るとき、ファセット及び関連する側面は、互いに対して斜めに延びる。縦の共振器軸は、好ましくは、第1及び第2のファセットによって画定され、第1及び第2のファセットは、縦の共振器軸に対して垂直に配向されてよい。言い換えれば、ファセット及び関連する側面は、異なる垂直配向を含む。
【0026】
少なくとも1つの実施形態によれば、関連するファセットに対して斜めに配向された少なくとも1つの側面と関連するファセットとの間の角度は、少なくとも1°または少なくとも2°または少なくとも10°または少なくとも24°である。代替的または追加的に、上記の角度は、最大で65°または最大で45°または最大で30°である。例えば、この角度は、レーザ放射線が側面で基板を出ることができないように、側面で全反射が生じるほど少なくとも大きい。
【0027】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの側面は、関連するファセットに対して斜めに配向され、平面である。これは、当該側面がキンクまたは曲率を含まないことを意味する。そうすると、この側面の平均粗さRaは、例えば、最大1μmまたは最大0.3μmまたは最大0.1μmである。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、関連するファセットに対して斜めに配向された少なくとも1つの側面は、基板の結晶面に対して平行に配向される。例えば、この側面は、ブレイク、劈開及び/またはスクライビングによって生成される。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの側面は、関連するファセットに対して斜めに配向され、複数の部分表面から構成される。好ましくは、関連する部分表面の少なくとも1つ、一部またはすべては、平面、すなわち、曲率のない表面である。エッジによって互いに分離され得るこれらの部分表面間の角度は、例えば、最大で55°または最大で30°または最大で15°または最大で5°である。
【0030】
少なくとも1つの実施形態によれば、部分表面の1つまたは複数またはすべては、関連するファセットに対して斜めに配向される。これは、当該側面を割り当てられたファセットに対して所々、平行に配向することができることを意味する。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも1つの側面は、関連するファセットに対して斜めに配向され、曲面である。当該側面は、この表面にわたって変化しないままの曲率を含むか、または変化する曲率も示すことが可能である。当該側面は、円柱の場合のように空間の一方向に沿って、または球面の場合のように空間の二方向に沿って湾曲させることができる。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、関連するファセットに対して斜めに配向される少なくとも1つの側面の一部は、少なくとも95%または少なくとも80%または少なくとも60%または少なくとも30%である。関連する側面の残りの部分は、関連するファセットに平行に配向されてよい。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、第1の側面のみが、第1のファセットに対して少なくとも所々、斜めに配向される、または第2の側面のみが、第2のファセットに対して少なくとも所々、斜めに配向される。これは、第1の側面または第2の側面のいずれかが、関連するファセットに対して完全に平行に配向されることを意味する。
【0034】
少なくとも1つの実施形態によれば、当該ファセットと、それに対して斜めに配向された側面の領域との間の距離は、最大で25μmまたは最大で12μmまたは最大で6μmである。これは、斜めに配向された領域が、関連するファセットの近くに位置することを意味する。
【0035】
少なくとも1つの実施形態によれば、関連するファセットに対して斜めに配向された少なくとも1つの側面は、半導体層列に面するエッジにおいて半導体層列と同一平面にある。これは、詳細には、半導体層列に対して上面視のとき、及び/または半導体層列が適用される基板の主面に対して上面視のときに当てはまる。
【0036】
少なくとも1つの実施形態によれば、関連するファセットに対して斜めに配向された少なくとも1つの側面は、半導体層列に面するエッジにおいて半導体層列を超えて突出している。これは、詳細には、半導体層列に対して上面視のとき、及び/または半導体層列が適用される基板の主面に対して上面視のときに当てはまる。言い換えれば、側面は、関連するファセットを超えて突出している。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、関連するファセットに対して斜めに配向された少なくとも1つの側面と半導体層列との間の基板内に段差が存在する。このような段差は、バルコニーとも呼ばれてよい。
【0038】
少なくとも1つの実施形態によれば、段差の段差高及び/または段差幅は、それぞれ、最大で20μmまたは最大で10μmまたは最大で5μmである。代替的にまたは追加的に、段差の段差高及び/または段差幅は、それぞれ少なくとも2μmまたは少なくとも4μmである。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体層列は、いくつかのレーザエミッタを含むか、またはいくつかのレーザエミッタを形成するように構成される。好ましくは、各レーザエミッタは、それ自体の共振器を有する。レーザエミッタは、互いに独立して電気的に動作させることができる。あるいは、レーザエミッタは、互いに電気的に結合され、例えば、電気的に並列に接続される。レーザエミッタは、レーザバーを形成することができる。
【0040】
詳細には、各レーザエミッタは、別個の第1のファセット及び別個の第2のファセットを含む。すべての第1のファセットは、互いに平行に整列させることができ、これは、すべての第2のファセットに対しても可能である。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、レーザエミッタは、基板上で互いに平行に配置される。詳細には、レーザエミッタの縦の共振器軸は、互いに平行に配向される。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、レーザエミッタは、共通平面で終端する。すなわち、レーザエミッタのすべての第1のファセット及び/またはすべての第2のファセットを通る平面及び/または直線がある。この共通の平面及び/または直線は、すべての第1のファセット及び/またはすべての第2のファセットに平行に配向されることが可能である。あるいは、この共通の平面及び/または直線は、すべての第1のファセット及び/または第2のファセットに対して斜めに配向される。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、1つまたは複数の放射線遮断層をさらに備える。少なくとも1つの放射線遮断層は、基板の第1の側面及び/または第2の側面及び/または底面に取り付けられる。放射線遮断層は、レーザ放射線に対して反射または吸収するように構成される。吸収とは、例えば、レーザ放射線の吸収度が少なくとも75%または少なくとも90%であることを意味する。反射とは、例えば、レーザ放射線の反射度が少なくとも75%または少なくとも90%であることを意味する。
【0044】
少なくとも1つの実施形態によれば、半導体レーザは、1つまたは複数のフォトダイオードを含む。少なくとも1つのフォトダイオードは、好ましくは、基板の縦面に取り付けられる。縦面は、例えば、共振器の縦軸に対して平行または略平行に配向される。略という用語は、例えば、最大30°または最大15°または最大5°の角度公差を概ね意味する。これは、縦面が、第1の側面に対して横方向に、かつ第2の側面に対して横方向に配向され得ることを意味する。
【0045】
さらに、プロジェクタを開示する。プロジェクタは、上記実施形態の1つまたは複数に関連して記載したような1つまたは複数の半導体レーザを備える。したがって、半導体レーザの特徴もプロジェクタについて開示され、逆の場合も同じである。
【0046】
少なくとも1つの実施形態では、プロジェクタは、少なくとも1つの半導体レーザと、少なくとも1つの半導体レーザの下流の少なくとも1つの光学系とを含む。1つの光学系または複数の光学系は、例えば、コリメータレンズである。しかしながら、少なくとも1つの光学系は、可動ミラー、またはミラーと組み合わせた液晶マスク等のビームガイドも含み得る。
【0047】
少なくとも1つの実施形態によれば、プロジェクタは、少なくとも1つの半導体レーザが搭載されるハウジングを備える。関連するファセットに対して斜めに配向された少なくとも1つの側面は、基板を伝搬するレーザ放射線を偏向するように構成され、その結果、ハウジングは、基板から出るレーザ放射線の障壁として構成される。言い換えれば、ハウジングはダイアフラムとして作用し、所望の割合のレーザ放射線、詳細には第1のファセットから出る部分のみを通過させる。
【0048】
以下に、本明細書に記載の半導体レーザ及び本明細書に記載のプロジェクタについて、例示の実施形態を用いて図面を参照しながらより詳細に説明する。同一の参照符号は、個々の図における同一の要素を示す。しかしながら、縮尺への参照は示されず、むしろ、個々の要素は、より良い理解のために誇張されたサイズで示される場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【
図6】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【
図7】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【
図8】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【
図9】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【
図10】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略側面図を示す。
【
図11】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略側面図を示す。
【
図12】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【
図13】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【
図14】本明細書に記載の半導体レーザ用の基板の概略上面図を示す。
【
図15】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【
図16】本明細書に記載の半導体レーザを有するプロジェクタの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【
図17】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略側面図を示す。
【
図18】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略側面図を示す。
【
図19】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略側面図を示す。
【
図20】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【
図21】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【
図22】本明細書に記載の半導体レーザの例示的な実施形態の概略上面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、半導体レーザ1の例示的な実施形態を示す。半導体レーザ1は、基板3と、レーザ放射線を生成するための半導体層列2とを備える。半導体層列2は、第1のファセット21及び第2のファセット22によって縦の共振器軸Rに沿って画定される。半導体層列2を電気的に接触させるために、第1の電極41が、半導体層列2上に、及び任意選択で基板の上面30上に配置され、これは、詳細には、少なくとも1つの金属及び/または透明な導電性酸化物(略してTCO)から作られる。
【0051】
基板3は、詳細には半導体層列2の成長基板である。この場合、半導体層列2は材料系AlInGaNをベースとすることが好ましく、基板3はGaNまたはサファイアからなる。基板3は、半導体層列2で生成されたレーザ放射線に対して透過的である。レーザ放射線は、例えば、少なくとも435nm及び最大で580nmの最大強度の波長を有する、例えば、緑色光または青色光である。
【0052】
第1のファセット21に関連する第1の側面31と、第2のファセット22に関連する基板3の第2の側面32とは、上面視でファセット21、22に対して斜めに配向されている。側面31、32は、基板3の縦面34に対して横方向に延びる。縦面34は、共振器の縦軸Rに対して平行に配向することができる。側面31、32は、好ましくは、
図1に従って上面30に対して垂直に配向される平坦な表面である。
【0053】
側面31、32と関連するファセット21、22との間の角度A1、A2は同じであり、例えば、10°以上30°以下である。したがって、上面視で、基板3及び上面30は、平行四辺形の形状を備える。
【0054】
ファセット21、22上の任意選択の反射防止コーティングまたは高反射コーティング、ならびに第1の電極41上の短絡を防止するための電気絶縁層は、図を簡略化するために示されていない。
【0055】
したがって、レーザファセット21、22及び基板ファセットとも呼ばれる側面31、32は、縦の共振器軸Rに沿った光軸に対して異なる角度を有し、その結果、基板3内のレーザ放射線は、半導体層列2内の縦の共振器軸Rに沿って導かれるレーザ放射線とは異なる方向に反射され、または出現する。これを達成するために、ファセット21、22は、好ましくは、ファセットエッチングによって生成される。側面31、32は、例えば、ブレイク、鋸引き、エッチング、及び/またはステルスダイシングもしくは選択的レーザエッチング(略してISLE)等のレーザ切断によって生成される。ステルスダイシングでは、集光された分離レーザにより基板内に破砕核が生成されるが、分離レーザにより材料除去を行うレーザスクライビング工程とは異なり、ステルスダイシングでは、分離レーザによりウェハの材料に破砕核のみが誘導される。
【0056】
図2及び
図3は、修正半導体レーザ9を示す。これらの修正半導体レーザ9では、ファセット21、22と側面31、32とが互いに平行に整列している。透明基板3を有するこのような修正半導体レーザ9において、レーザ放射線は、半導体層列2の導波路から基板3内に結合し、そこで伝搬することができる。この、いわゆる基板モードは、光学的遠視野における干渉として見え、これは結像誤差を引き起こし得る。
【0057】
図4は、このような修正半導体レーザ9の動作時の側面21を示し、
図5は、このような修正半導体レーザ9を用いて走査した投影面12を示す。
図4から分かるように、詳細にはInGaNレーザでは、レーザ共振器からの放出に加えて、レーザ放射線Lが基板3から放出される。基板モードが放出される領域は、半導体層列2におけるメインモードの拡大に比べて非常に大きい。さらに、基板モードは、大きなビーム角で放出される。
【0058】
レーザ投影用途では、レーザビームLは、できるだけ小さい領域に集束されなければならない。この領域は、基板光によって大幅に拡大され、これは、特にレーザ投影用途において、結像誤差につながる。この用途では、実際の画像121の周囲に邪魔になるハロー122が生成される(
図5参照)。
【0059】
しかしながら、本明細書に記載の半導体レーザ1では、レーザファセット21、22と関連する基板ファセット31、32とは、光軸に対する垂直及び/または水平の角度が異なる。これは、レーザファセット21、22上の法線ベクトルが、関連する基板ファセット31、32上の法線ベクトルと異なることを意味する。これにより、このようなハロー122を防止し、レーザ放射線Lの高品質な放出を実現することが可能になる。
【0060】
レーザファセット21、22及び基板ファセット31、32は、それぞれエッチングまたはブレイクすることができる。基板ファセット21、22は、さらに、例えば、ステルスダイシング、レーザ切断または鋸引きによって製造することもでき、それによって、ファセット21、22、31、32の製造のための任意の組み合わせが考えられる。半導体レーザ1の第1のファセット21及び第2のファセット22、ならびに基板3の第1及び第2の側面31、32は、それぞれ同じ方法で作製することもでき、異なる方法で作製することもできる。
【0061】
図6~
図11は、上面30に垂直な断面図で見たとき、側面31、32の少なくとも一方が関連するファセット21、22に対して斜めに配向された半導体レーザ1のさらなる例示的な実施形態を示す。これは、関連するファセット21、22に対する側面31、32の垂直傾斜とも呼ぶことができる。対照的に、側面31、32は、
図1に示すように、すなわち上面30の平面図において見られるように、関連するファセット21、22に対して水平に傾斜している。
【0062】
図6及び
図7によれば、側面31、32は紙面に垂直な平面であり、基板3は断面視で対称台形であるが、非対称台形の形状であってもよい。縦の共振器軸Rは、上面30に対して平行に、かつ底面33に対して平行に配向される。第2の電極42は、GaN基板などの導電性基板3の場合、基板3の底面33上に位置する。第1の電極41と基板3との間の電気的な絶縁は図示されていない。あるいは、第2の電極42は、基板3が電気絶縁性である場合、例えばサファイア基板の場合、上面30上に配置することもできる。
【0063】
図6は、ファセット21、22が側面31、32に対して後退していることを示す。これは、基板3が共振器の縦軸Rの延長として半導体層列2を越えて突出することを意味する。対照的に、基板3と半導体層列2とは、
図7に示すように、互いに同一平面にある。
【0064】
図8及び
図9は、側面31、32が、それぞれ、2つの部分表面38、39で構成されていることを示す。部分表面38は、ファセット21、22に平行に配向され、部分表面39は、ファセット21、22に対して斜めに配向され、それによって、部分表面38、39は、エッジによって互いから分離することができる。ファセット21、22に対して平行に配向された部分表面38は、底面33まで延びることができる斜めに配向された部分表面39よりも半導体層列2に近い位置にある。
【0065】
上面30に垂直な方向における平行な部分表面38の広がりは、好ましくは最大で30μmまたは最大で10μmまたは最大で5μmである。例えば、基板3の全厚は、50μm以上200μm以下である。ファセット21、22を上面から見ると、斜めに配向された部分表面31、32の面積は、好ましくは、この画角から生じる、それぞれ関連する側面31、32の総面積の少なくとも30%または少なくとも60%または少なくとも90%の大きさであるように見える。
【0066】
部分表面38、39は、例えば、楔形の、任意選択で追加の段付き鋸刃を用いて製造することができる。
【0067】
図8は、
図6と同様、ファセット21、22が側面31、32に対して後退していることを示す。対照的に、基板3と半導体層列2とは、
図7同様、
図9に示すように、互いに同一平面にある。
【0068】
図示の他に、
図6~
図9では、ファセット21、22は、詳細には側面31、32と同様に、部分表面に細分されてもよい。
【0069】
他のすべての点において、
図1~
図5に関する説明は、
図6~
図9に同様に適用され、逆の場合も同じである。
【0070】
図10に示す例示的な実施形態では、基板3は、上面30に垂直な断面図で見たときに平行四辺形の形状である。このような傾斜側面31、32は、例えば、いわゆるオフカットで基板をブレイクすることによって、または、半極性基板を用いて生成することができる。オフカットとは、側面31、32の結晶面がファセット21、22に対して斜めに配向していることを意味する。
【0071】
図11によれば、側面31の一方のみが、関連するファセット21に対して斜めに配向される。表面22、32は、互いに平行に整列される。これは、他のすべての例示的な実施形態に、詳細には、垂直方向に異なる傾斜を有する
図6~
図10の半導体レーザに同様に適用することができる。
【0072】
同様に、水平方向に異なる傾きを有する側面31の一方のみを斜めに配向することができる(
図12参照)。
【0073】
【0074】
垂直に細分された側面31、32に対する
図6~
図9と同様に、側面31、32が、上面30の平面図で見られるように、水平に細分されているのが
図13に示されている。ファセット21、22についても同様である。
【0075】
したがって、共振器の縦軸Rに沿って互いに対向する側面31、32の領域は、ファセット21に対して斜めであるだけではなく、互いに対して斜めに配向することができる。この場合、基板3は、上面30の上面図において見ると、点対称の形状を有することができる。第1のファセット21の上面図では、部分表面38、39は同じサイズであるように見える。
【0076】
他のすべての点において、
図1~
図12に関する説明は、
図13に同様に適用され、逆の場合も同じである。
【0077】
図14では、側面31におけるレーザ放射線Lの反射がより詳細に描かれている。光Lは、法線に対して角度A1で側面31に当たる。
【0078】
好ましくは、角度A1、A2は、基板ファセット31、32に対して選択され、これは、全反射角度Atr=アークサイン(1/n)以上であり、ここで、nは、レーザ放射線Lに対する基板3の屈折率である。以下はGaN:Atr~24°に当てはまる。
【0079】
A1、A2を、
図14の例に示すように、例えば45°または約45°に選択すると、基板3内を導かれる光Lを半導体レーザ1の縦面34で放出することができる。フォトダイオード8をそこに配置して、レーザ放射線Lの出力パワーを制御することができる(
図15を参照)。
図15の半導体レーザ1は、
図1の半導体レーザ1に対応し、同様に、他の例示の実施形態の半導体レーザ1は、1つまたは複数のフォトダイオード8を備えることができる。
図6~
図11の半導体レーザでは、このようなフォトダイオード8は、底面33にも配置することができる。
【0080】
【0081】
図16は、
図1の半導体レーザ等の、前述の例示的な実施形態の1つによる少なくとも1つの半導体レーザ1を備えるプロジェクタ10を示す。さらに、プロジェクタ10は、レーザ放射線Lを形成する光学系11と、TOハウジング等のハウジング13とを備える。図示されるものとは異なって、光学系11は、ハウジング13の開口部を閉じることもできる。
【0082】
基板3内で導かれたレーザ放射線Lは、側面31、32によって偏向され、光学系11に当たることなく不透明なハウジング13に当たり、したがってハウジング13を出ない。この場合、角度A1、A2は、全反射の角度よりも小さいことが好ましい。
【0083】
図16では、簡略化のため、1つの半導体レーザ1のみを示している。しかしながら、詳細には、半導体レーザ1は、青色光、緑色光、赤色光を生成するために存在する、よって、青色光、緑色光用の半導体レーザ1は、少なくとも1つの斜めに配向された側面31、32を備えていることが好ましい。光学系11は、図示していないビーム誘導用の可動ミラー及び/または液晶マスクも備えることができる。
【0084】
他のすべての点において、
図1~
図15に関する説明は、
図16に同様に適用され、逆の場合も同じである。
【0085】
図17の半導体レーザ1の側面31、32は、少なくとも3つの斜めの部分表面39に分割されている。部分表面39は、底面33に向かう方向において、上面30に対する角度が次第に小さくなる。
【0086】
図18は、側面31、32が真っ直ぐな表面や部分表面で形成される必要はなく、曲面であってもよいことを示している。
図18では、
図17に示す基板3の形状を近似している。
【0087】
図17または
図18による側面31、32の少なくとも一方のそのような設計は、
図13と同様に、水平方向に傾斜した側面31、32にも使用することができる。
【0088】
他のすべての点において、
図1~
図16に対するコメントは、
図17及び
図18にも同様に適用され、逆の場合も同じである。
【0089】
図19の例示的な実施形態では、他のすべての例示的な実施形態でも可能であるように、湾曲した部分表面39を平坦な部分表面38と組み合わせてよいことが分かる。湾曲した部分表面39は、好ましくは、ファセット21、22に平行に配向された部分表面38よりも上面30の近くに位置する。
【0090】
さらに、
図19において、基板3は、ファセット21、22の少なくとも一方の上、またはファセット21、22の各々の上に段差5を任意選択で含むことが分かる。段差5では、基板3と半導体層列2とは互いに同一平面にある。段差5は、例えば、ファセット21、22のドライエッチング等のエッチング中に生成される。これは、基板3は、このエッチング工程中にエッチングできることを意味する。段差5により、側面31、32は、ファセット21、22から離間して配置される。
【0091】
段差5の段差高Hは、小さいことが好ましく、例えば、1μm以上7μm以下、または1μm以上5μm以下である。上面30に平行な方向の段差幅Bは、同じように小さいことが好ましく、例えば、1μm以上7μm以下、1μm以上5μm以下である。
【0092】
このような段差5は、ファセット21、22が側面31、32と同一平面にない他のすべての例示的な実施形態にも存在することが好ましい。
【0093】
最後に、
図19は、少なくとも1つの放射線遮断層7が基板3上に任意選択で存在することを示す。例えば、放射線遮断層7は、側面31、32を部分的に覆うが、図示しているものの他に、側面31、32を完全に覆ってもよい。放射線遮断層7は、底面33や段差を部分的または完全に覆うことも可能である。
【0094】
1つまたは複数のそのような反射または吸収する放射線遮断層7が、他のすべての例示的な実施形態にも存在し得る。
【0095】
他のすべての点において、
図1~
図18に関する説明は、
図19も同様に適用され、逆の場合も同じである。
【0096】
図20の半導体レーザ1は、複数のレーザエミッタ6を備え、各レーザエミッタ6は、縦の共振器軸Rのうちの1つを有する共振器を備え、縦の共振器軸Rは、好ましくは、互いに平行に配向される。共通基板3の上面30の上面図で見ると、すべての第1のファセット21及びすべての第2のファセット22が一直線上に位置することが可能である。したがって、すべてのレーザエミッタ6は、共通の平らな側面31、32を割り当てられる。基板3は、詳細には平行四辺形に成形される。
【0097】
また、
図20に示すように、縦面34の少なくとも1つは、例えば、鋸引き、レーザ切断及び/またはステルスダイシングによって、所々、または表面全体にわたって粗面処理63を施すことができる。これは、光を横方向に効率的に分離し、複数の反射またはリングモードが基板3内に形成されるのを防止する。縦面34の少なくとも1つにおけるこのような粗面処理63は、他のすべての例示的な実施形態においても存在してよい。
【0098】
他のすべての点において、
図1~
図19に関する説明は、
図20にも同様に適用され、逆の場合も同じである。
【0099】
図21の半導体レーザ1では、上面30上の基板3内の隣接するレーザエミッタ6間に任意選択のトレンチ61がある。トレンチ61は、レーザ放射線Lに対して侵入不可能な遮断材料62で部分的または完全に充填することができる。
【0100】
他の点では、
図20に関する説明は、
図21に同様に適用され、逆の場合も同じである。
【0101】
図22によれば、レーザエミッタ6の第2のファセット32は、各々、関連する第2の側面32に平行に配置され、すべてのレーザエミッタ6は、同じ長さであってよい。第1のファセット21は、それぞれ、第1の側面31に対して斜めに配向される。好ましくは、第1のファセット21はすべて、完全に共通平面内にある。これにより、レーザエミッタ6からのレーザ放射線の光学的取り扱いが簡単になる。
【0102】
第1の側面31は、上面30に関して上面視で、例えば鋸歯状である。第1の側面31と第1のファセット21との間の角度は、すべての第1のファセット21について同じであってよい。
【0103】
他のすべての点において、
図20及び
図21に関するコメントは、
図22にも同様に適用され、逆の場合も同じである。
【0104】
したがって、個々のエミッタに関する上記の記載は、好ましくは、複数のエミッタ及び/またはレーザエミッタ6のアレイにも適用され、様々なレーザエミッタ6は、同じレーザファセット角度及び/または基板ファセット角度を有してよく、または少なくとも部分的に異なる角度を備えてもよい。
図20~
図22の例示的な実施形態は、それぞれ、水平に傾斜した側面21、22のみを含むが、例えば
図6~
図11に示すような垂直に傾斜した側面21、22も同様に使用することができる。
【0105】
上記の例示的な実施形態では、側面31、32は、それぞれ、ファセット21、22に対して垂直または水平方向に傾斜している。垂直方向と水平方向の両方に傾きが存在することも可能である。例えば、
図1の例示的な実施形態は、
図6~
図10の例示的な実施形態と組み合わせることができる。
【0106】
本明細書に記載の発明は、例示的な実施形態に基づく記載により限定されるものではない。むしろ、特に特許請求の範囲の特徴の任意の組み合わせを含む任意の新しい特徴及び特徴の任意の組み合わせは、この特徴または組み合わせ自体が本特許請求の範囲または例示的な実施形態に明示的に記載されていなくても、本発明に含まれる。
【0107】
本特許出願は、ドイツ特許出願第10 2021 119 999.9号の優先権を主張し、その開示内容を参照により本明細書に組み込む。
【符号の説明】
【0108】
1 半導体レーザ
2 半導体層列
21 第1のファセット
22 第2のファセット
3 基板
30 上面
31 第1の側面
32 第2の側面
33 底面
34 縦面
38 平行な部分表面
39 斜め部分表面
41 第1の電極
42 第2の電極
5 段差
6 レーザエミッタ
61 トレンチ
62 遮断材料
63 粗面処理
7 放射線遮断層
8 フォトダイオード
9 修正半導体レーザ
10 プロジェクタ
11 光学系
12 投影面
121 主領域
122 ハロー
13 ハウジング
A1 第1の側面と第1のファセットとの間の角度
A2 第2の側面と第2のファセットとの間の角度
B 段差幅
H 段差高
L レーザ放射線
R 縦の共振器軸
【手続補正書】
【提出日】2024-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ放射線(L)を生成するための半導体層列(2)と、
前記レーザ放射線(L)に対して透過的であり、前記半導体層列(2)が適用される基板(3)と、を備える、半導体レーザ(1)であって、
前記半導体層列(2)は、前記レーザ放射線(L)を放出するように構成された第1のファセット(21)と、前記第1のファセット(21)の反対側に第2のファセット(22)と、を備え、
縦の共振器軸が、前記第1及び第2のファセットによって画定され、前記第1及び第2のファセットは、前記縦の共振器軸に対して垂直に配向され、
前記基板(3)は、前記第1のファセット(21)に第1の側面(31)と、前記第2のファセット(22)に第2の側面(32)と、を備え、
前記半導体層列が適用される前記基板の上面の平面図で見て、前記第1の側面(31)は、前記第1のファセット(21)に対して、少なくとも所々斜めに配向され、及び/または前記第2の側面(32)は、前記第2のファセット(22)に対して、少なくとも所々斜めに配向され、
前記第1の側面(31)と前記第1のファセット(21)との間の角度(A1)、及び/または前記第2の側面(32)と前記第2のファセット(22)との間の角度(A2)は、
前記縦の共振器軸に沿って導かれる前記レーザ放射線(L)の全反射が、関連する前記側面(31、32)で生じるほど少なくとも大きく、その結果、前記レーザ放射線(L)は、関連する前記側面(31、32)で前記基板(3)を出ることができない、
前記半導体レーザ(1)。
【請求項2】
前記第1のファセット(21)と前記第1の側面(31)及
び前記第2のファセットと前記第2の側面が、前記半導体層列(2)の上面図で見るとき、互いに傾斜している、
請求項1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項3】
前記第1の側面(31)と前記第1のファセット(21)の間の前記角度(A1)、及び/または前記第2の側面(22)と前記第2のファセット(22)の間の前記角度(A2)が、少なくとも24°、最大でも45°であり、
前記半導体層列(2)が、材料系AlInGaNをベースとし、前記基板(3)がGaN基板である、
請求項
1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項4】
前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または、前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、平らな面である、
請求項
1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項5】
前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、前記基板(2)の結晶面に平行に配向され、ブレイクによって、生成される、
請求項
4に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項6】
前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または、前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、複数の平らな部分表面(39)からなり、
前記部分表面(39)は、エッジによって互いに分離され、前記部分表面(39)の少なくとも1つは、前記関連するファセット(21、22)に対して斜めに配向される、
請求項
1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項7】
前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または、前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、曲面である、
請求項
1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項8】
前記第1の側面(31)の割合が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または、前記第2の側面(32)の割合が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、少なくとも60%である、
請求項
1に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項9】
前記第1の側面(31)のみが、前記第1のファセット(21)に対して少なくとも所々、斜めに配向される、または前記第2の側面(32)のみが、前記第2のファセット(22)に対して少なくとも所々、斜めに配向される、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項10】
前記第1のファセット(21)と前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向される前記第1の側面(31)の領域との間の距離、及び/または前記第2のファセット(22)と前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向される前記第2の側面(32)の領域との間の距離が、最大で12μmである、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項11】
前記半導体層列(2)の平面図で見るとき、前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、前記半導体層列(2)に隣接するエッジで前記半導体層列(2)と同一平面で終端する、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項12】
前記半導体層列(2)の平面図で見るとき、前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または、前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、前記半導体層列(2)に隣接するエッジにおいて、前記半導体層列(2)を超えて突出する、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項13】
前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるときの前記第1の側面(31)及び/または前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるときの前記第2の側面(32)と、前記半導体層列(2)との間で、前記基板(3)に段差(5)があり、
前記段差(5)の段差高(H)及び段差幅(B)は、それぞれ、最大10μmである、
請求項
12に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項14】
前記半導体層列(2)が、複数のレーザエミッタ(6)を含むか、または複数のレーザエミッタ(6)に構成され、
前記レーザエミッタ(6)は、前記基板(3)上に互いに平行に配置されている、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項15】
前記レーザエミッタ(6)が、共通の平面で終端する、
請求項
14に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項16】
前記基板(3)の前記第1の側面(31)及び/または前記第2の側面(32)及び/または底面(33)に取り付けられた少なくとも1つの放射線遮断層(7)をさらに備え、
前記放射線遮断層(7)は、前記レーザ放射線(L)に対して反射または吸収するように構成される、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項17】
前記基板(3)の縦面(34)に取り付けられた少なくとも1つのフォトダイオード(8)をさらに備え、
前記縦面(34)は、前記第1の側面(31)に対して横方向に、かつ、前記第2の側面(32)に対して横方向に配向される、
請求項1~
8のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)。
【請求項18】
少なくとも1つの請求項1~
8のいずれか1項に記載の半導体レーザ(1)を備えるプロジェクタ(10)であって、
前記少なくとも1つの半導体レーザ(1)の下流に配置された少なくとも1つの光学系(11)をさらに備える、
前記プロジェクタ(10)。
【請求項19】
前記少なくとも1つの半導体レーザ(1)が搭載されるハウジング(13)をさらに備え、
前記第1の側面(31)が、前記第1のファセット(21)に対して斜めに配向されるとき、及び/または前記第2の側面(32)が、前記第2のファセット(22)に対して斜めに配向されるとき、前記基板(3)を伝搬するレーザ放射線(L)を偏向するように構成され、
前記ハウジング(13)は、前記基板(3)から出るレーザ放射線(L)のための障壁として構成される、
請求項
18に記載のプロジェクタ(10)。
【国際調査報告】