(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ガラス製品、特に三次元成形平板ガラス製品の形成方法、及びその方法を実施する装置、並びにその方法を実施するための溶融金属の使用
(51)【国際特許分類】
C03B 25/08 20060101AFI20240719BHJP
C03B 29/08 20060101ALI20240719BHJP
C03B 35/22 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C03B25/08
C03B29/08
C03B35/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504893
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2022066385
(87)【国際公開番号】W WO2023006298
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021119253.6
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521282077
【氏名又は名称】フュラー グラーステクノロジー フェルトリーブス-ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】フュラー アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】アルテンドルファー ベルンハルト
【テーマコード(参考)】
4G015
【Fターム(参考)】
4G015CA01
4G015CB01
4G015CC01
4G015DA03
4G015GA00
(57)【要約】
本発明は、ガラス製品(10)、特に三次元成形平板ガラス製品を形成するための方法に関するものであり、以下の工程が実施される。成形プランジャ(20)と液体金属(30)、特にスズの溶融物との間に、ガラス(10)、例えば、均一な厚さの平板ガラス板、不均一な厚さの平板ガラス板、又は、予備成形された平板ガラス板ブランク又は液体二次元的に広がったガラスの平坦成形物を配置し、ガラスの平坦成形物(10)から形成される少なくとも一つの部分を、ガラスが10Pas~10
6.5Pasの範囲、好ましくは10Pas~10
4Pasの範囲、特に好ましくは10Pas~10
3Pasの範囲の粘度を有するガラスの成形温度に焼き戻し、ガラスの平坦成形物(10)が一方では成形プランジャ(20)によって、他方では溶融金属(30)によって加圧され、両側での加圧によって形成されるように、及び/又はガラスの平坦成形物(10)を成形プランジャ(20)上に吸引して適合させることによって、成形プランジャ(20)と溶融金属(30)の表面を互いに接近させ、好ましくは少なくとも一つの直線運動によって、例えばリニアモータ又はサーボモータによって、ガラスの平坦成形物(10)を形成し、ガラスの平坦成形物(10)を、ガラスが10
7Pa以上の粘度を有する成形温度以下の取扱温度に冷却し、及び冷却された平坦成形物(10)の離型、並びにこの方法を実施するための装置及びこの方法を実施するための溶融金属の使用。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス製品(10)、特に三次元成形平板ガラス製品を形成する方法であって、
a)ガラスの平坦成形物(10)、例えば、均一な厚さの平板ガラス板、不均一な厚さの平板ガラス板、予備成形された平板ガラス板ブランク、又は液体二次元拡散ガラスを、成形プランジャ(20)と特にスズである溶融金属(30)との間に配置し、
b)前記ガラスの平坦成形物(10)から形成される少なくとも一つの部分を、前記ガラスが10Pas~10
6.5Pasの範囲、好ましくは10Pas~10
4Pasの範囲、特に好ましくは10Pas~10
3Pasの範囲の粘度を有するガラスの成形温度まで焼き戻し、
c)前記ガラスの平坦成形物(10)が、一方は前記成形プランジャ(20)によって、他方は前記溶融金属(30)によって加圧され、両側での加圧及び/又は前記成形プランジャ(20)上への前記ガラスの平坦成形物(10)を吸引して適合させることによって形成されるように、前記成形プランジャ(20)と前記溶融金属(30)の表面とを、好ましくは、例えばリニアモータ又はサーボモータのような少なくとも一つの直線運動によって、互いに接近して動かすことにより、前記ガラスの平坦成形物(10)を形成し、
d)成形された前記ガラスの平坦成形物(10)を、前記ガラスが≧10
7Pasの粘度を有する成形温度以下の取扱温度まで冷却し、
e)冷却された前記平坦成形物(10)を離型する、ことを特徴とする、
方法。
【請求項2】
工程a)の前に、前記ガラスの平坦成形物(10)を≧10
6.5Pas、好ましくは≧10
7Pasの粘度を有する温度まで予熱することを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガラスの平坦成形物(10)を前記溶融金属(30)又は前記成形プランジャ(20)上に液体状に流し込み、その後、成形温度まで冷却することを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ガラスの平坦成形物(10)の焼き戻しは、少なくとも一つのヒーター(40)、例えば赤外線(IR)ヒーター及び/又は任意で補足的に少なくとも一つの誘導ヒーター及び/又は少なくとも一つのマイクロ波ヒーター、によって、及び/又は溶融金属(30)を加熱又は冷却することによって行われることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
酸素が存在しない状態、好ましくは前記ガラス、特に溶融スズである前記液体金属、及び前記成形プランジャの材料に対して不活性な雰囲気、例えば、希ガス雰囲気、特にアルゴン雰囲気、及び/又は窒素雰囲気、及び/又は二酸化炭素雰囲気において実施されることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
離型する工程は、形成されたガラスの平坦成形物(10)、即ち、三次元成形平板ガラス製品(10)を圧縮空気で加圧することによって行われることを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
離型された前記平坦成形物(10)は、少なくとも一方の面で表面調整され、特に表面調整される側を、好ましくは前記平坦成形物(10)を裏返しながら、金属浴(30)又は第二の金属浴に接触させることによって表面調整され、前記第二の金属浴は、好ましくは工程c)の間に使用される前記金属浴(30)よりも低い温度を有することを特徴とする、
請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ガラス製品、特に、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法によって、三次元成形平板ガラス製品(10)を製造するための装置であって、
特にスズである溶融金属を受け入れるのに適した受入区画(50)と、前記受入区画(50)の反対側にある前記成形プランジャ(20)と、を有し、
前記受入区画(50)と前記成形プランジャ(20)との間に成形空間が形成され、その中にガラスの平坦成形物(10)、特にガラスブランク又は液体ガラスを導入することができ、
前記成形プランジャ(20)と前記溶融金属は、を互いに接近して移動され、
前記成形プランジャ(20)は、適切な場合、低圧又は過圧を加えるための開口部を有し、
前記ガラスの平坦成形物(10)は、一方が前記成形プランジャ(20)によって、他方が溶融金属によって加圧され、両側での加圧及び/又は前記成形プランジャ(20)上に前記ガラスの平坦成形物(10)を吸引して適合させることによって形成されることを特徴とする、
装置。
【請求項9】
受入区画(50)は、溶融スズの収容に適し、任意に加圧することができる容器、特に補償容器と流体連通していることを特徴とする、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記成形プランジャ(20)は、例えば、鋼、金、銅、ルテニウム、オスミウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、又はタングステンのような耐熱性金属、又は、例えば、炭化物又は窒化物のような耐火性合金又はセラミック、のような700℃~1600℃の範囲の温度でガラスに対して不活性である耐熱性材料で作られている、又はそのような耐熱性材料で被覆されていることを特徴とする、
請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記成形プランジャ(20)は、少なくとも一つの空洞、特に少なくとも一つの流路及び/又は導管を備え、特に気体の加熱又は冷却流体が流れることを特徴とする、
請求項8~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記成形プランジャ(20)は、少なくとも二つのプランジャ構成要素を含み、好ましくは、各プランジャ構成要素は独立して移動可能であることを特徴とする、
請求項8~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記成形プランジャ(20)は、フレーム(60)、特に、例えばカバーリングのようなリングによって囲まれ、特に、ガイドされており、前記成形プランジャを囲むフレーム(60)、特に、リングは、任意に開口部を有し、
これにより、ガラスの平坦成形物(10)と前記成形プランジャ(20)との間の接触面上の開口部を介して、低圧又は過圧を発生させることが可能であることを特徴とする、
請求項8~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも一つの搬送装置、例えば、搬送キャリッジを備え、
少なくとも一つの前記搬送装置は、保持装置(70)及び/又は支持装置を案内するためのものであり、例えば、グリッパ又はランスの形態で、前記ガラスの平坦成形物(10)を前記成形空間に導入するため、及び/又は成形された平板ガラス製品(10)を前記成形空間から取り出すためのものであることを特徴とする、
請求項8~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
三次元成形平板ガラス製品の製造のための固定型成形プランジャの対向プランジャとして、特に溶融スズである溶融金属の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲1の前文に記載のガラス製品、特に三次元成形平板ガラス製品を形成する方法、特許請求の範囲8の前文に記載のガラス製品を製造する装置、及び特許請求の範囲15の前文に記載のガラス製品を製造するための溶融金属の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス製品、特に三次元成形平板ガラス製品、例えば携帯電話、タブレットカバー、又は自動車の窓などを形成する方法は、以前から知られており、殆どの場合、平板ガラスブランクを所望の形態にプレスする及び/又は所望の形態に研削するという事実に基づいている。プレス工程では、プランジャ及び対向プランジャを有するプランジャ工具が使用され、これにより、プランジャ及び対向プランジャは、製造される三次元成形平板ガラス製品の形態で、それぞれ相補的な方法、即ち、例えば、凹形及び凸形で形成される。
【0003】
この製造方法の一つの問題は、プレス工程中に、プランジャ及び対向プランジャの両方がプレスされるガラス製品に接触することが避けられないが、これはプレスされたガラス表面の品質に関して不利である。ガラス表面の品質の最適化は、プレス工具の接触面に特定の適切なガラス接触材料を使用することによって実際に改善できる。しかしながら、特にそれぞれのプレスされた表面の高品質が要求される場合には、通常、それぞれのガラス表面の後処理が依然として必要である。
【0004】
ガラスの成形及び形成には、主に鋳造合金や鋼合金、又は鋼合金のクロムコーティングが使用されるが、これらは限界温度を超えると固着する形でガラスが付着する。そのため、金型は500℃以下の温度範囲を維持するように設計されるが、ガラスの成形は10Pas~106Pas(10Pa・s~106Pa・s)の粘度で行われるため、800℃~1500℃の温度範囲で行われる。
【0005】
結果として、ガラス及びガラス接触材料の温度勾配は、それぞれの成形されたガラス部品内の温度勾配をもたらす。したがって、成形プロセスは、異なる温度範囲におけるガラス及びガラス接触材料の異なる熱膨張によって時間的に制限される。この技術分野において、成形プロセスにおけるこの時間的制限は、とりわけ、以下のようにすべきである。
・ガラスからの熱を十分に素早く放熱できず、臨界接合温度を超えて加熱してしまうような金型の過熱を避ける。
・高温になるとガラスの収縮が速くなり、加工対象物の内部輪郭を形成する金型部品、即ち、プランジャの凸部にガラスが収縮するため、ガラスが金型から分離できなくなることを避ける。
・ガラス内部に蓄積された赤外線によって表面の再加熱が行われないため、成形プロセスにおいて、ガラスが部品内の温度勾配を十分な均一化ができず、歪みによる表面のひび割れ、変形が生じることを避ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この技術分野において、これは非常に複雑で困難なプロセス制御につながり、それにもかかわらず、得られるガラスの品質の点で不利である。
【0007】
上述したように、三次元成形平板ガラス製品の生産のためのさらなる可能性は、このブランクが所望の三次元形状をとるまでアブレーションによってガラスブランクを研削することである。しかしながら、このプロセスもまた不利であり、特に時間が掛かり、さらに、それぞれのガラス表面の高品質が要求される場合には面倒であり、実施が困難である。
【0008】
本発明は、ガラス表面の高品質を実現しつつ、後処理の必要性を最小限に抑えた高精度な平板ガラス製品を製造できる、三次元成形平板ガラス製品の製造方法、及びその製造方法を行うための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、特許請求の範囲1に記載の方法、特許請求の範囲8に記載の装置及び特許請求の範囲15に記載の用途により解決される。
【0010】
特に、この目的は、ガラス製品、特に三次元成形平板ガラス製品を形成する方法により解決され、以下の工程が実行される。
a)ガラスの平坦成形物、例えば、均一な厚さの平板ガラス板、不均一な厚さの平板ガラス板、又は予備成形された平板ガラス板ブランク、又は液体二次元拡散ガラスを、成形プランジャと溶融金属、即ち、特に溶融スズである液体金属、との間に配置し、
b)ガラスの平坦成形物を、ガラスが10Pas~106.5Pasの範囲、好ましくは10Pas~104Pasの範囲、特に好ましくは10Pas~103Pasの範囲の粘度を有するガラスの成形温度まで焼き戻し、
c)ガラスの平坦成形物が、一方は成形プランジャによって、他方は溶融金属によって加圧され、両側での加圧及び/又は成形プランジャ上のガラスの平坦成形物を吸引して適合させることによって形成されるように、成形プランジャと溶融金属の表面を互いに接近して動かすことにより、ガラスの平坦成形物を形成し、
d)成形されたガラスの平坦成形物を、ガラスの粘度が≧107Pas(107Pas以上)である成形温度以下の取扱温度まで冷却し、
e)冷却された平坦成形物を離型する。
【0011】
本発明の本質的な点は、本発明の方法が、固体で硬い形態の成形プランジャのみを使用し、対向プランジャとして液体金属の溶融金属を使用しているにもかかわらず、プレス工程として実施されることにある。本発明によれば、スズはガラスに対して極めて不活性であり、非常に高い表面品質のガラス表面を製造することができるため、液体金属として液体スズを使用することが好ましい。さらに、液体スズを用いたスズ浴は、ガラスの成形を可能にする高温に加熱することができる。
【0012】
本発明に係るプロセスでは、金属浴のような溶融金属を受け入れるための容積又は容器と成形プランジャとの間に配置された成形空間に、ガラスの平坦成形物が導入される。続いて、ガラスの平坦成形物、即ち、ガラスブランクは、成形温度まで焼き戻しされる。
【0013】
この文脈において、溶融金属を受け入れるための容積又は容器は、成形空間へのガラスの平坦成形物の導入中に、既に溶融金属で満たされてもよいことに留意すべきである。
【0014】
しかしながら、本発明の別の実施形態によれば、ガラスの平坦成形物が成形空間に導入された後にのみ、溶融金属のために設けられた容積又は容器に溶融金属を導入することもできる。
【0015】
さらに別の実施形態によれば、ガラスの平坦成形物の導入時に、溶融ガラスの容積又は容器内に既に溶融金属が存在するが、その後、溶融金属の表面の平坦化が行われることも可能である。この場合、例えば、金属浴を上昇させること及び/又は溶融金属のさらなる添加によって溶融金属の液面を上げること、又は必要に応じて、例えば、容積又は容器から溶融金属を除去することによって溶融金属の液面を下げることが可能である。
【0016】
本発明の文脈において、ガラスの成形温度は、成形されるそれぞれのガラスが10Pas~106.5Pasの範囲、好ましくは10Pas~104Pasの範囲、特に好ましくは10Pas~103Pasの範囲の粘度を有する温度であると理解される。有利な態様では、示された範囲の粘度を有する平板ガラスのガラスブランクを所望の三次元形状に成形して、本発明に従った方法で三次元成形された平板ガラス製品を製造することができる。
【0017】
ガラスブランク、即ち、ガラスの平坦成形物がガラスの成形温度に達した後、成形プランジャと溶融金属が互いに接近して移動し、ガラスブランクの加圧によって所望の三次元成形されたガラス製品へのガラスの平板成形が三次元成形される。
【0018】
本発明によれば、予備成形されたガラスブランクは、出発ガラス本体として、又は出発平坦成形物として使用することができ、均一な厚さの平板ガラス板、又は成形される所望の三次元ガラス製品に応じて、不均一な厚さ又は予備成形された平板ガラス板ブランクとして形成される。
【0019】
さらに、本発明によれば、液体ガラスを出発ガラスとして使用することも可能であり、出発ガラスは、成形プランジャと溶融金属の間に導入され、成形プランジャと溶融金属が互いに接近して移動すると形成される。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、ガラスブランクを所望の三次元成形平板ガラスに実際に形成する際には、成形プランジャと溶融金属が互いに接近して移動するにつれて、成形プランジャの三次元的な型輪郭が軟化した平板ガラスブランクに押し込まれ、その結果、成形プランジャと対向する側の平板ガラスブランクが対向プランジャとして溶融金属に押し込まれる。
【0021】
本発明によれば、溶融金属は成形プランジャの対向プランジャとして機能し、これにより、溶融金属は軟化した平板ガラスブランクに適合し、その表面張力とその水圧との相互作用において、軟化した平板ガラスブランクを成形プランジャの三次元的な型輪郭に対して均質かつ均一に押し込む。
【0022】
成形プランジャと溶融金属の互いに接近する移動は、異なる方法で影響を与えることができる。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、溶融金属は成形プランジャの下方にあることが好ましく、これにより、溶融金属と成形プランジャとが互いに接近して移動するときに、溶融金属の液面を上げることと、必要に応じて同時に成形プランジャを下げることの両方ができる。
【0024】
溶融金属と成形プランジャとが一緒に移動するとき、又は所望の三次元成形平板ガラス製品を成形するときに、成形プランジャ又は成形プランジャによって導かれた軟化した平板ガラス製品が溶融金属内に過度に押し出される又は押し込まれることを防止するために、成形プロセス中に上昇する圧力が一方で正確に監視され、他方で溶融金属浴と成形プランジャとが互いに接近する動きが正確に制御される。さらに、成形プランジャを正確に囲み、成形プランジャを導くガイド内で成形プランジャを所望のように移動させ、これにより、ガイドは、特に、封止する方法で、成形プランジャの側面に位置する容積を閉じ、溶融金属中の平板ガラス製品と成形プランジャの浸漬中に、溶融金属の液面が最大でもガイドの下面まで上げるようにする。成形プランジャによって導かれた軟化した平板ガラス製品のそれぞれの成形プランジャをさらに溶融金属中に浸漬すると、一方では成形プランジャとガイドで、他方では金属浴で、すぐに測定可能な圧力上昇につながる。
【0025】
同様に、圧力上昇は、軟化した平板ガラス製品が成形プランジャの型輪郭に対してその表面全体にわたって均一に押され、それに嵌合するときにも発生する。この状態では、平板ガラス製品のそれ以上の変形は発生しないため、溶融金属と成形プランジャが互いに接近してさらに移動すると、成形プロセスの終了を示す明確に測定可能な圧力上昇が生じる。
【0026】
プレスプロセス中に溶融金属に蓄積される圧力は、溶融金属全体で均一であるため、本発明によるプロセスは、平板ガラスブランクの全面にわたって、成形プランジャの三次元的な型輪郭に対して柔らかい平板ガラスブランクに均一な押圧をもたらすため、従来のガラスプレスで発生するような完成した平板ガラス製品の応力を、本発明によるプロセスで回避することができる。
【0027】
本発明の別の実施形態によれば、成形プランジャは、成形動作中に、所望により、動作条件に応じて、成形プランジャに隣接するガラスの平坦体に過圧又は低圧のいずれかを加えることができる開口部を有することができる。
【0028】
このような成形プランジャは、ガラスの平坦体に過圧を加えるための開口部を有することにより、一方の金属浴と他方の成形プランジャとが互いに接近し、成形プランジャを介して加えられた過圧は、ガラスの平坦体と成形プランジャとの間の距離が、加えられた過圧に依存して規定された距離以下になると直ちにガラスの平板本体を吸引するという点においても、本発明による平坦ガラス本体の成形を行うことができる。
【0029】
このようにして、ガラスの平坦体と成形プランジャとが十分に接近すると、本発明による成形温度に焼き戻しされたガラスの平坦体の成形は、成形プランジャが焼き戻しされたガラスの平坦体を吸引することにより、焼き戻しされたガラスの平坦体が、成形プランジャによって規定された成形プランジャの輪郭に正確に一致するという点において、発生することができる。
【0030】
このような本発明の成形プロセスでは、成形プランジャによる吸引力によって焼き戻しされたガラスの平坦体を金属浴の表面から浮き上がらせることができる。本発明によれば、関連する利点は、このような浮き上がりによって、最初に液体金属表面上に置かれていたガラスの平板形成が、実質的に成形温度である高温の液体金属表面から除去され、冷却された成形プランジャとの接触によって、成形プランジャによって加えられた低圧によってガラスがそれに適合した後、直ちに又は少なくとも非常に急速に冷却され、成形プランジャによって予め定められた所望の形態で凝固することである。その後の処理のために取り扱うことができるように、ガラスの平坦体が十分に寸法的に安定している粘度へのガラスの冷却は、最初に成形温度であるガラスの平坦体と、ガラスの平坦体との接触の過程でガラスの平坦体の熱を放散する冷却された成形プランジャとの接触によって行われる。本発明によれば、ガラスの成形プランジャは、ガラスの平坦体の成形を可能にするが、成形プランジャへのガラスの平坦体の固着が生じない程度に十分に低い温度に焼き戻しされるので、成形されたガラスの平坦体は、成形後、特に直ちに成形プランジャから剥離及び/又は除去することができる。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態によれば、液体金属浴の液面は、成形温度に焼き戻しされたガラスの平坦体の吸引プロセス中に成形プランジャによってさらに上げることができ、これは、金属浴自体を上昇させるか、又は液体金属のさらなる添加によって浴中の液体金属の液面のみを上げることによって実現することができる。このような液体金属の液面の上昇は、一方ではガラスの平坦体が成形プランジャに適合し、他方では液体金属によって成形プランジャに押し付けられるまで継続することができる。このような実施形態は、最初に成形温度に焼き戻しされたガラスの平坦体を、金属浴の温度制御によって標的化された方法でさらに加熱又は冷却することができ、その間、本発明によれば、金属浴は完全に液体のままであるという利点を有する。
【0032】
本発明によれば、ガラスの平坦体を少なくとも成形温度、又はガラスの種類に応じたガラスの平坦体の関連する粘度までさらに加熱又は持続的焼き戻しすることは、例えば、ガラスの平坦体を、アンダーカットを有する成形体に成形する場合に特に有利である。このような場合、本発明によれば、マルチピース成形プランジャを使用することにより、取扱温度まで冷却された完全成形ガラスを非破壊的に離型することができる。
【0033】
いずれにしても、成形プランジャに接触するガラスの平坦体は、液体金属と接触することにより、液体金属自体が冷却され、それによってガラスの平坦体からターゲットを絞って熱が引き出されるという点で、特に、ターゲットを絞って温度制御された方法で冷却することができる。
【0034】
取扱温度まで冷却された成形されたガラスの平坦体を離型するために、成形プランジャの開口部を通して過圧を加えることもでき、それによって、冷却されたガラスの平坦体の成形プランジャからの離型が引き起こされ及び/又は促進される。
【0035】
本発明によれば、成形空間へのガラスブランクの導入は、保持装置及び/又はガラスの平坦成形物のための支持装置のいずれかによって行うことができ、この装置は、例えば、グリッパ又はランスの形態で設計され、ガラスブランクを保持し、特に、ガラスブランクを溶融金属と成形プランジャの間の成形空間内に移動させる。
【0036】
あるいは、ガラスブランクの成形空間への導入は、成形プランジャ自体及び/又は成形プランジャの外部軸ガイドによって行うこともできる。後者の場合、成形プランジャの軸方向への移動性に加えて、成形プランジャは成形プランジャの軸方向への角度で並進移動可能に設計される。上述したように、成形プランジャ及び/又はその軸ガイドは、この場合、成形プランジャとともに並進移動可能であり、ガラスの平坦体に作用する真空を印加できる開口部を有し、真空によってガラスブランクを成形プランジャ及び/又はそのガイドに保持することができる。
【0037】
ガラスブランクが成形空間に運び込まれた後、ガラスブランクは、溶融金属の上に緩く浮遊しているか、又は所望であれば、その端部を金属浴の端部、即ち、溶融金属を含む容器の上端部、又は成形プランジャのガイド上に保持して固定することができ、成形されるガラスブランクのそれぞれの位置、特に成形を意図した最終位置を正確に定義し、必要であれば、成形プランジャから独立して軸方向に移動可能な成形プランジャの保持装置及び/又は支持装置又はガイドの移動によって補正することができる。溶融金属と成形プランジャが反対側から平板ガラスブランクに近づくと、ガラスブランクの成形が行われる。
【0038】
したがって、本発明の一実施形態によれば、ガラスブランク又は溶融ガラスを、溶融金属を受け入れるのに適した容器内に配置された溶融金属上に配置することができ、ガラスが溶融金属上に実質的に浮遊するようにすることができる。成形プランジャと溶融金属とが互いに接近して移動すると、成形温度まで焼き戻したガラス上に成形プランジャを下降させることができ、これにより、成形プランジャは、この成形温度で柔らかいガラスを液体溶融金属の中に押し込んで成形する。この成形の過程で、ガラスブランクの柔らかいガラスは、成形プランジャの圧力を受けて成形プランジャのガラス接触面に適合し、成形プランジャのガラス接触面の形態をとる一方、液体溶融金属は、成形プランジャに対する対向プランジャとして機能し、焼き戻しされたガラスブランクの反対側からガラスブランクに対して均一な対向圧力を作用させる。
【0039】
本発明の他の実施形態によれば、成形プランジャと溶融金属との接近は、溶融金属の液体金属の液面を上げることによっても可能であり、成形プランジャが溶融金属に上から接近することはないが、この接近の過程で、浮遊ガラスブランクを有する溶融金属が成形プランジャに接近し、ガラスブランクを成形プランジャに押し付ける。
【0040】
本発明によれば、液体金属の液面が上がるように、液体金属の受入区画をより多くの液体金属で満たすことによって、溶融金属の液面を上げることができる。又は、液体金属の受入区画の底部及び/又は金属槽が配置されている容器全体を移動可能にして、金属槽の液体金属の液面を上げ下げして、プレス操作のために溶融金属と成形プランジャを接近させ、その後の離型操作のために溶融金属と成形プランジャを互いに離隔させることができる。
【0041】
本発明の上記の実施形態は、所望のように組み合わせることもできる、即ち、例えば、同時に成形プランジャを溶融金属の表面に近づける一方で、溶融金属の液面を上げることによって組み合わせることもできる。この場合、二つの接近する動きが互いに同時に行われるので、このような組み合わせは、例えば、高い生産速度が望まれる三次元成形平板ガラス製品の生産に適している。
【0042】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、形成されるガラスの平坦体は、保持及び/又は支持装置によって、形成されるガラスの平坦体が、その外縁領域を有する液体金属を含む容器の縁に静止するように、成形空間に導入される。
【0043】
この成形プロセスにおいて、容器の縁に位置する形成されるガラスの平坦体の外縁領域は、容器の縁と反対側の形成されるガラスの平坦体の縁領域に圧力を加えることによって、液体金属用の容器の縁、即ち、金属浴の縁に固定され、形成されるガラスの平坦体の縁領域が容器の縁に固定される。本発明によれば、このような縁領域に形成されるガラスの平坦体の加圧は、成形プランジャから独立して移動可能な成形プランジャのガイドによって特に有利に円周方向に行うことができる。
【0044】
このようにして、形成されるガラスの平坦体は、成形プロセス中に金属浴の縁に固定されると同時に、成形プロセスの過程で金属浴中の液体金属の液面が上がり、特に同時に成形プランジャが下がるときに、金属浴に金属が溢れることに対して封止する。
【0045】
本発明のこの実施形態によれば、一つ又は複数の開口部は、成形プランジャのガイド上及び金属浴の上部、例えばその縁の両方に設けることができ、これらの開口部は、ガラスの平坦体が容器の縁に固定された後、ガラスの平坦体と液体金属の表面との間に位置する空間の通気及び換気の両方に役立つ。このようにして、ガラスの平坦体と液体金属の表面との間に望ましくない気泡又は低圧が形成されることなく、金属浴中の液体金属の液面を下げることも上げることもできる。
【0046】
この文脈において、本発明では、必ずしもガラスの平坦成形物全体が成形温度に焼き戻しされるのではなく、むしろ有利な態様では、実際に三次元成形領域のみが焼き戻しされることも指摘されるべきである。これは、ガラスの平坦成形物の各端部領域を、ガラスを把持して取り扱うことができる取扱温度にいつでも保つことができることを意味する。このようにして、例えば、ガラスの平坦成形物を成形空間内に搬送し、そこから除去するために本発明に使用される保持及び/又は支持装置によって、実際の成形プロセス中であっても、ガラスの平坦成形物の各端部領域を把持して保持することが可能である。
【0047】
また、焼き戻しされたガラスブランクの成形は、操作中にガラスブランクを下方に位置する成形プランジャに置き、その後、ガラスブランクを焼き戻し、その後、ガラスブランクに液体金属を流し込んで成形し、成形温度に達したガラスブランクを、液体金属の重量と液体金属に加えられた付加的な圧縮力によって下方に位置する成形プランジャに押し当てて成形することによっても行うことができる。また、本発明のこの実施形態では、成形プランジャの、おそらく同時に、好ましくは軸方向の移動を行うことができる。
【0048】
プレス工程において、成形プランジャによって成形されたガラス面に成形プランジャが接触することにより、ガラス面の冷却が発生し、それにより平坦体の凝固が起こり、平坦体はプレス工程によって製造された形状で凝固する。
【0049】
製造された三次元成形平板ガラス製品の凝固後、この平板ガラス製品は、三次元成形平板ガラス製品が取扱温度に達するまで冷却される。本発明によれば、取扱温度は、各成形ガラスの粘度が≧107Pasであることによって規定される。このような≧107Pasの粘度では、各成形ガラスは、板ガラス製品を取り扱う際に、板ガラス製品の変形が生じない程度に固化されるので、板ガラス製品をプレス装置から取り出すことができる。
【0050】
なお、本発明によれば、所望の三次元成形板ガラス製品を製造するためには、ケイ酸アルミニウムガラスを使用することが好ましいが、他のガラスを使用してもよい。これらの異なるガラスは、ある程度、軟化温度及び加工温度が大きく異なるため、本発明の文脈では、加工プロセスは、特定の温度に基づくのではなく、それぞれのプロセスに必要な粘度に基づくものであり、この粘度において、それぞれの使用ガラスは、それぞれの加工工程に必要な液体、軟化又は固体のような凝集状態を有し、それぞれの使用ガラスは、搬送又は成形又は後処理、例えば、火入れ研磨又はその他の表面調整のいずれかを行うことができる。
図9では、それぞれの関連温度における異なるガラスのそれぞれの粘度間の例示的な相関関係が、異なるガラスについて示されている。
【0051】
所望の三次元成形平面ガラス製品が取扱温度まで冷却された後、冷却された平坦成形物、即ち、製造された三次元成形平面ガラス製品の離型が行われる。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、ガラスの平坦成形物又はガラスの平坦成形物の少なくとも一部を形成するガラスの平坦成形物は、工程a)の前、即ち、溶融金属と成形プランジャとの間の成形空間への導入の前に、ガラスが≧106.5Pas、好ましくは≧107Pasの粘度を有する温度に予熱される。
【0053】
このような粘度では、ガラスブランクは、依然として保持されるだけでなく、取り扱うことができるが、すでにその成形温度に近い温度に予熱されているので、平坦成形物又はその成形される部分の成形温度への焼き戻しは、プレス工具内で非常に迅速に行うことができる。
【0054】
この文脈で、ガラスブランクは、本発明のプレスプロセスの過程で、ブランク表面の不純物又は微細構造が有利に平滑化されるので、プレス工具へのガラスブランクの導入の過程で、すでに軟化現象を有する可能性があり、したがって、本発明の方法の重要な利点は、表面に小さな損傷を有するブランク又は微細構造のブランクも、問題なく本発明のプロセスに使用できるという事実も言及すべきである。これは、特に、プレス工具の金属浴側に損傷表面が配置されている場合に適用される。
【0055】
本発明に係る方法を実施するために、予備成形されたガラスブランクを使用しないことを条件として、本発明によれば、ガラスを溶融金属又は成形プランジャに液体状に流し込み、冷却することによってその成形温度まで焼き戻しすることができる。このように、本発明に係る方法は、予備成形されたガラスブランクの処理に限定されるものではなく、特に多様な方法で使用することができる。
【0056】
本発明によれば、ガラスの平坦成形物の焼き戻しは、ブランク又は平坦成形物の加熱の場合には、ヒーター、例えば赤外線(IR)ヒーター及び/又は任意に補助的に、少なくとも一つの誘導ヒーター及び/又は少なくとも一つのマイクロ波ヒーターによって行われる。さらに、ブランクの加熱又は冷却は、溶融金属を加熱又は冷却することによる熱伝導によっても又は追加的に行うことができる。
【0057】
さらに、本発明によれば、成形プランジャは、複数部品の成形プランジャの別個の温度制御が可能な流体流路を有することも可能であり、それにより、成形プランジャは、それぞれのプロセス工程に対して最適な温度を示すために、流体によって加熱及び冷却されることができる。気体流体は、好ましくは、冷却流体又は加熱流体として使用することができる。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、工程c)、即ち、成形プランジャ及び金属浴を互いに接近させることは、少なくとも一つのリニアモータ、特にサーボモータによって実行される。直線運動を発生させるこのようなモータの使用は、プレス工具の非常に正確な制御を可能にし、さらに、圧力上昇の場合に即時かつ瞬間的な反応を可能にする。
【0059】
上述したように、本発明で使用される溶融金属はスズ溶融物であり、この材料は高温でもガラスに対して不活性であり、ガラスブランクの表面上の欠陥部分の「修復」を可能にしながら、定性的に最適化されたガラス表面の製造を可能にする。
【0060】
本発明によれば、溶融スズのこの「修復」特性は、表面調整の形で完成した三次元成形平板ガラス製品の後処理にも使用される。この目的のために、成形されたガラスの平坦成形物は、例えばグリッパ及び/又は真空保持装置によって、それが取扱温度まで冷却された後に回転させ、成形プロセス中に溶融金属と接触しなかった側で液体スズと接触させることができる。ガラスと液体スズの接触を通して、ガラス表面の欠陥箇所及び/又はガラス表面上の応力は、例えば研削又は研磨によるガラス表面の手動又は機械的な後処理を必要とせずに、それぞれ「修正」又は修復される。
【0061】
好ましい実施形態によれば、表面調整中にガラスの平坦成形物が接触する溶融金属は、例えば超音波によって発生し得る高周波振動を受ける。このようにして、ガラスの平坦成形物と液体金属、即ち、液体スズとの平面的な均一接触が好ましい。
【0062】
さらに、本発明によるプロセスは、酸素が存在しない状態、即ち、好ましくは、ガラス、特に溶融スズである液体金属、及び成形プランジャの材料に対して不活性な雰囲気、例えば、希ガス雰囲気、特にアルゴン雰囲気、及び/又は窒素雰囲気及び/又は二酸化炭素雰囲気において実施される。このようにして、これらの成分及び特にスズ浴のあらゆる酸化を回避することができる。
【0063】
本発明の好ましい実施形態によれば、スズ浴は、使用されるそれぞれの不活性ガスで層状に覆われ、ここで、重希ガス及び二酸化炭素は、空気と比較してそれらのより高い比重のために特に適している。この実施形態によれば、ガラスの平坦成形物及び/又は成形プランジャのガイドに隣接するその領域に配置される、特にスズである液体金属が容器は、金属浴の上方で不活性雰囲気が生成されるそれぞれのガラスのためのリザーバと流体連通している。
【0064】
本発明によれば、不活性ガス供給の目的のために、例えば、金属浴と形成されるガラスの平坦体との間の空間の通気及び換気が可能な一つ又は複数の開口部を使用することもできる。
【0065】
不活性雰囲気中で本発明に係る実際の形成プロセスを行うことができるようにするために、グリッパ、真空保持装置又は支持装置のいずれかによって保持されたガラスブランクは、エアロックを介して、制御された雰囲気を有する空間に持ち込まれ、この空間は、それぞれ所望の不活性及び/又は保護ガス又はそれらの混合物で満たされ、好ましくは、環境空気が制御された雰囲気を有する空間に侵入するのを防ぐために、わずかな過圧下に置かれる。
【0066】
エアロック内では、最初に排気が行われ、次いで、不活性及び/又は保護ガスによる空間の浸水が行われる。このプロセスには時間がかかるため、本発明によれば、ガラスブランクの予熱を同時に行うことができ、このようにして本発明に係る方法の時間系列を短縮することができる。
【0067】
このとき、エアロックチャンバの排気の代わりに、不活性及び/又は保護ガスによる空気の置換を行うことも考えられ、これにより、成形チャンバ内の過圧により成形室から流出する不活性ガス及び/又は保護ガスをこの目的に用いることができる。
【0068】
本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明によるプレス装置全体を不活性及び/又は保護ガスベルの下に配置することがさらに可能であり、この不活性及び/又は保護ガスベルは下向きに開放され、ベル内部のわずかな過圧によりベル内部に制御された雰囲気を維持することができる。この場合、ガラスブランク及び完成したガラス製品は、ベルの下から出し入れされる。ベルは下方に開いているので、本発明の実施形態には、空気よりも比重の低い不活性ガスが好適である。
【0069】
ガラスブランクが支持装置に支持されている場合には、ガラスブランクの加熱は、好ましくは赤外線によって、基本的に上から行われるが、ガラスブランクが金属浴の端部に保持されているとき及び/又はその端部と共に置かれているときには、ガラスブランクの加熱は、上からだけでなく下からも可能である。
【0070】
ガラスブランクを保持するためのグリッパの使用は、本発明によれば有利であり、グリッパと共にブランクを移動させることができ、かつ回転させることができるので、例えば、表面調整を行うために非常に有利である。
【0071】
本発明によれば、成形された平板ガラス製品は、グリッパによってプレス工具から除去することができるが、真空保持装置によっても除去することができ、この装置は、成形プランジャ内及び/又は成形プランジャを少なくとも部分的に囲む成形プランジャの環状のガイド内に統合することができる。この場合、本発明によれば、成形プランジャは、軸方向だけでなく、横方向にも移動可能に設計されている。本発明のそのような実施形態は、成形プランジャが、いずれにしてもプレスプロセス中に成形された平坦成形物に接触し、したがってプレスガラス表面の保護としても機能するので、特に有利である。
【0072】
プレス工具から平坦ガラス製品を除去するために、成形プランジャは、真空を印加することができる微小開口部を有することができ、形成された平坦ガラス製品を成形プランジャに保持することができる。このようにして、本発明によれば、完成した成形された平坦ガラス製品は、除去プロセス中に成形プランジャに確実に接着することができ、除去後に真空を解除することによって簡単な方法で成形プランジャから分離することができる。
【0073】
上述したように、成形プランジャを囲む成形プランジャのガイドは、例えば円形の成形プランジャの場合、リングとして設計することができ、また、真空を印加できる開口部を有することができる。このガイドは、機能的には、例えばカバーリングとも呼ばれ、ガラスブランクの端部に沿ってガラスブランクに当てられ、ガイドに形成された開口部を介して低圧が印加されたときにガラスブランクをこのように保持し、ブランク又はその端部がガイドによって吸引される。このようにして、ガラスブランクの搬送と、溶融金属からの三次元成形平板ガラス製品の持ち上げ及びピックアップのいずれかを実行することができる。
【0074】
さらに、製造プロセス全体にわたって、ガラスブランクをグリッパ又は支持装置によって保持することもでき、これにより、ガラスブランクは、本発明のプロセスを実行するために、最初に支持装置上に置かれるか、又はグリッパによって把持される。例えば、搬送キャリッジ又は他の搬送装置に接続することができるこの保持及び/又は支持装置の助けを借りて、ガラスブランクは、次いで、周囲雰囲気からエアロック内に搬送され、そこで加熱されて、ガラスブランクの把持及び搬送をまだ可能にする温度になるが、同時に雰囲気の交換がエアロック内で行われ、その過程で周囲雰囲気は不活性及び/又は保護ガス雰囲気に置換される。雰囲気交換の完了後、ブランクは、次いで、成形空間内に搬送され、溶融金属のための容積又は容器と成形プランジャとの間に配置される。続いて、成形温度までのガラスブランクの加熱が行われる。ガラスブランクは、このプロセス中も保持又は支持される。ガラスブランクは、溶融金属と成形プランジャを近づけることによって形成され、それによってガラスブランクは、一方で溶融金属と、他方で成形プランジャと密接に接触し、溶融金属が成形プランジャに対する対向プランジャとして機能し、成形プランジャの成形輪郭に対してガラスブランクを正確に押し付けるように成形される。
【0075】
ガラスブランクが、好ましくは金属浴を封止する方法で金属浴の端部上に保持され固定されると、追加の液体金属、即ち、液体スズは、成形プロセスの過程で金属浴のために設けられた容積内に押し込まれ、その結果、金属浴、特にスズ浴の液面は、ガラスブランクが液体スズと接触する程度まで上がり、ガラスブランクは反対側から成形プランジャによって所望の形状に押し込まれる。
【0076】
プレス工程では、プレス工程の完了後、成形された平板ガラス製品の冷却がそれぞれ同時に行われ、三次元成形平板ガラス製品が所望の形状に固化する。本発明によれば、冷却は主に成形プランジャ自体によって開始され、これはプレス工程の終わりに向けてガラスの成形温度よりもわずかに低い温度を有する。成形プランジャは、平板ガラス製品の成形された表面全体と直接かつ即時に接触するので、成形温度以下の平板ガラス製品の取扱温度までの均一な冷却が行われ、平板ガラス製品の粘度が増加し、それ以上の成形が不可能となる。
【0077】
本発明の一実施形態によれば、成形プランジャは、この目的のための加熱装置及び冷却装置を有することができるので、本発明による方法の実行中に、成形プランジャをそれぞれのプロセス工程に必要な温度まで焼き戻しすることができる。このような加熱又は冷却装置は、例えば、成形プランジャの内部に形成され、加熱又は冷却流体が流れることができる流路又は導管の形態で設計することができる。あるいは、成形プランジャは、例えば、誘導的に加熱することもできる。また、本発明に係るガイドは、ガイドと成形プランジャとの間の応力を回避するために加熱及び/又は冷却装置を有するので、成形プランジャのガイドについても同様である。
【0078】
さらに、この時点で、ガラスブランクがガラスブランクを形成するために最適な温度及び粘度を有するように、プロセス工程に応じて、金属浴を加熱及び冷却することができることを指摘しておく。これは、ガラスブランクを加熱するために誘導及び/又は赤外線ヒーターを使用することに加えて、ガラスブランクは、金属浴との接触により加熱することができ、又は金属浴が冷却された場合に冷却できることを意味する。
【0079】
さらに、金属浴の液面は、成形プロセスが完了した後に再び下げることができることに留意すべきである。この目的のために、金属浴は液体金属のためのリザーバ及び/又は補償容器と流体連通しており、これにより、金属浴を補充するために必要な液体金属もこの容器から取り出すことができる。
【0080】
成形された平板ガラス製品が、平板ガラス製品のそれ以上の望ましくない変形が生じない程度に凝固した後、平板ガラス製品を拾い上げて裏返し、成形プロセス中に金属浴と接触しなかったその側面も金属浴と接触させ、それまで成形プランジャと接触していただけの表面も液体スズと接触させ、この液体スズとの接触によって不純物が「治癒」され、平板ガラス製品の完全に滑らかで欠陥のない表面が形成される。このようにして、本発明により製造された成形平板ガラス製品は、両側で最適化された完全な表面を得る。
【0081】
表面調整が実施された後、完全に成形され表面処理された平板ガラス製品は、保持及び/又は支持装置及びその搬送装置によってエアロックを介して成形装置から外の雰囲気に戻され、そこで再び雰囲気の交換が行われる。
【0082】
本発明のさらなる実施形態によれば、成形された平板成形物を圧縮空気で加圧する助けを借りて、離型工程を実施することができる。これは、成形された平板ガラス製品が、冷却中に、例えば収縮によって、成形プランジャ又は成形プランジャのガイド、例えばリングと密接に接触する場合に特に有用である。この場合、圧縮空気を使用して、成形された平板ガラス製品を成形プランジャ及び/又はそのガイドからゆっくりと押し出すことができる。
【0083】
前述したように、離型された平坦成形物は、少なくとも一方の面で本発明にしたがって表面処理され、特に、好ましくは平坦成形物を回転させながら、処理される所望の面を金属浴又はさらなる金属浴と接触させることによって表面処理される。ここで、さらなる金属浴は、好ましくは成形プロセス中、即ち、工程c)に使用される金属浴よりも低い温度を有する。
【0084】
この時点で、三次元成形平板ガラス製品の一つ以上の表面の後処理に使用される金属浴は、ガラスブランクを形成するために使用されたのと同じ金属浴であってもよいことに留意されたい。あるいは、表面調整又は処理を行うために使用される第2の金属浴が提供されてもよい。本発明によれば、この第2の金属浴もスズ浴であるため、本発明に係る第2の金属浴は、成形に用いられる金属浴よりも幾分温度が低い。これは、平板ガラス製品の表面の平滑化及び修復が液体スズとの接触のみを必要とするため、特に有利であり、それによってスズは、しかしながら、ガラスの融解が起こるような高い焼き戻しを必要としない。むしろ、ガラスの表面張力によってガラスの平滑化が起こるように、処理される平板ガラス製品の表面の数μmのみが軟化されれば、表面調整を行うのに十分である。
【0085】
ところで、本発明による方法は、連続的な、即ち、スルーフィード工程として、また、各ガラス製品が保持装置によって保持されるか、又は、代替的に、少なくとも一つの支持装置及び適切な場合には少なくとも一つの旋回装置によって処理される、いわゆるバッチ工程の両方として実施することができる。
【0086】
本発明のさらなる実施形態によれば、ガラスブランクは、成形装置の外、即ち、周囲雰囲気中に、またランスのような支持装置上に配置することができ、その手段によって、次に、不活性雰囲気への雰囲気の交換が行われる、キャリッジ又は他の変位機構のような搬送装置によってエアロック内に運ばれる。このエアロックでは、ガラスブランクは、その粘度がガラスブランクの取り扱い及び搬送のためにまだ十分に高い温度に予熱することができる。続いて、即ち、雰囲気の交換後、ガラスブランクは、エアロックを支持装置の上に置き、それぞれ支持装置のランスによって、スズ浴、即ち、スズ浴を受け入れるための容積又は容器、及びプランジャ、即ち、成形プランジャとそのガイド、即ち、例えばリングとの間に導かれる。そこでは、ガラスブランクの上に配置された成形プランジャのガイドは、ガラスブランクのさらなる搬送を引き受け、ガイドは真空ノズルを介してガラスブランクの端部を吸引し、それらを支持装置、例えばランスから持ち上げ、そしてそれらをスズ浴又はその端部に堆積させる。その後、最初はガイドの後ろに格納されていた成形プランジャが、ガイドによってガラスブランクに向かって前方に移動され、ガラスブランクの反対側では、金属浴が成形プランジャに対する対向プランジャとして機能する程度に金属浴の液面及び/又は圧力が上昇又は増加し、成形プランジャと金属浴の間に配置されたガラスブランクが形成される。
【0087】
ガラスブランクが成形された後、製造された成形平板ガラス製品は、再びリングによって把持され、即ち、低圧によって吸い込まれ、金属浴又は金属浴の端部から持ち上げられる。
【0088】
その後、成形された平板ガラス製品は、第2のランスのような第2の支持装置上に堆積され、エアロックを介して再び形成装置から搬送される。
【0089】
あるいは、本発明によれば、成形された平板ガラス製品は、成形装置から排出される前に表面調整を受けることもできる。この場合、成形プランジャのガイドによって金属浴から持ち上げられた平板ガラス製品は、真空グリッパによってガイドと反対側に把持され、成形された平板ガラス製品のまだ金属浴と接触していない側がスズ浴と接触するように回転させられるので、ガラスがスズ浴と接触することによって欠陥の修復が行われる。また、この場合、成形に使用されるスズ浴又はこのスズ浴の下流にある、任意で成形に使用されるスズ浴よりも低い温度のスズ浴を使用することができる。
【0090】
また、ここで、真空グリッパ、即ち、使用される真空保持装置は、表面調整が再び行われた後に形成された平板ガラス製品を支持装置に堆積させることも、エアロックを介して成形装置から直接移動させることもできることに言及されるべきである。
【0091】
さらに、実際の成形プロセス及び必要に応じて平板ガラス製品の表面調整は、大部分が真空化された室内で、それぞれ低圧で行うこともできることに言及されるべきである。
【0092】
さらに、本発明の対象物は、特に、ガラス製品、特に、三次元成形平板ガラス製品を製造するための装置、特に、上記記載の方法によっても解決され、装置は、溶融金属、特にスズを受け入れるのに適した受入区画と、受入区画の反対側にある成形プランジャとを有し、受入区画の方向と成形プランジャに隣接して、ガラス、特にガラスブランク又は液体ガラスの平坦成形物を導入することができる成形空間が配置され、成形プランジャと溶融金属を互いに接近して移動させることができ、成形プランジャは、ガラスの平坦成形物を一方では成形プランジャから、他方では溶融金属から加圧することができるように、低圧又は過圧を適用するための開口部を任意に有している、両側面の加圧及び/又は成形プランジャ上のガラスの平坦成形物を吸引及び適合させることによって形成することができる。
【0093】
本発明の一実施形態によれば、液体金属、特にスズの受入区画は、溶融スズの収容及び分配に適し、必要に応じて加圧することができる補償容器と流体連通している。
【0094】
このようにして、本発明によれば、一方では、成形プロセス中にスズの対圧を増加させることが可能であり、他方では、液体金属の液面をそれぞれ増加させるために補償容器からスズを使用することが可能である。さらに、成形温度に加熱されたガラスの平坦成形物を成形用の金属浴に成形プランジャが押し込む際に、補償容器を使用して金属の液面を制御することができる。
【0095】
本発明によれば、成形プランジャは、例えば、鋼、金、銅、ルテニウム、オスミウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン又はタングステンのような耐熱性材料、又は、炭化物又は窒化物のような耐火性合金、又はセラミックのような700℃~1600℃の範囲の温度でガラスに対して不活性である耐熱性材料で作られているか、又は被覆されている。
【0096】
前述したように、成形プランジャは、少なくとも一つの空洞、特に加熱又は冷却流体、特に気体流体が流れる少なくとも一つの流路及び/又は導管を含むことができる。
【0097】
このようにして、成形プランジャの別個の焼き戻しが可能であり、成形プランジャの温度をそれぞれのプロセス工程に適合させることができる。例えば、成形プランジャを制御された方法で冷却して、成形された平板ガラスの完成品の冷却を促進することができ、また、これが望まれる場合には、プレス工程中に高温を保つことができる。
【0098】
さらに、成形プランジャ及び/又はそのガイドは、ガラスの平坦成形物と成形プランジャとの間の接触面で過圧又は過圧を発生させることができる開口部を有することができる。
【0099】
このようにして、成形プランジャ及び/又はそのガイド自体を、成形プランジャに過圧を有するガラスブランク又は平板ガラス製品を保持して搬送することによって、一方ではガラスブランクの搬送手段として、他方では成形された平板ガラス製品の搬送手段として使用できる。ガラスブランク又は平板ガラス製品が成形プランジャから独立しない場合は、過圧の適用を使用することができる。プレス工具でガラスブランクを離型するために過圧の適用が必要な場合は、窒素又はアルゴンのような不活性ガスを使用して過圧を発生させることができる。この時点では、圧縮空気も適用可能である。この目的のために、成形プランジャのガス供給は、所望のガス又は空気を成形プランジャから製品を取り外すために使用することができるように、反転弁を有することができる。
【0100】
本発明のさらなる有利な実施形態によれば、装置は、実際の成形空間及び/又は後処理空間内で、不活性ガス及び/又は保護ガス雰囲気に対する外気雰囲気の交換、又は低圧又は真空をそれぞれ発生させるために役立つ装置のエアロックを介して、成形空間にガラスの平坦成形物を導入し、及び/又は成形された平板ガラス製品を成形空間から除去するための少なくとも一つの搬送キャリッジを備えることができる。ここで、搬送キャリッジは、プレス位置におけるプレス工具内の位置とプレス工具外の位置との間で移動することができ、これにより、ガラスブランク及び完成成形された平板ガラス製品の両方を搬送キャリッジの助けを借りて搬送することができる。このようにして、例えば、成形プランジャ及び/又はそのガイド、又は代替として、保持装置又はランスのような他の支持装置のいずれかを搬送キャリッジに取り付けて、ガラスブランクの両方をプレス工具内に搬送するとともに、完成された成形平板ガラス製品をその後プレス工具外に搬送することができる。さらに、搬送キャリッジは、いくつかの成形プランジャ、保持装置及び/又は支持装置を有することもでき、それぞれが交互に又は連続的にガラスブランク及び完成された成形平板ガラス製品を形成し搬送する。このようにして、本発明によれば、例えば、好ましくは連続的な循環動作が可能である。
【0101】
上述したように、本発明に係る装置は、所望のバッチモード又は連続モードのいずれかで動作することができる。本発明に係る装置は、バッチモードで動作する場合には一つのエアロックのみを有するが、本発明に係る装置は、連続モードで動作するために、好ましくは互いに反対に配置された二つ以上のエアロックを有することもでき、ここで、第1のエアロックは入力エアロックとして機能し、第2の、特に反対のエアロックは出力エアロックとして機能する。
【0102】
さらに、本発明に係る装置は、少なくとも一つのヒーター、例えば、赤外線(IR)ヒーター及び/又は任意で補足的に、少なくとも一つの誘導ヒーター及び/又は少なくとも一つのマイクロ波ヒーターを含み、特にガラスブランク及び所望であれば、プレス工具の構成要素、特に金属浴を加熱する。
【0103】
本発明のさらに有利な実施形態によれば、成形プランジャは、好ましくは少なくとも一つの結合装置によって交換可能であり得る。可能なさらなる結合は、流体供給又は真空装置のような成形プランジャに接続された構成要素のために提供され得る。
【0104】
本発明のさらに重要な態様は、成形プランジャが一体型として設計され得るが、マルチピースとしても設計され得ることである。成形プランジャのマルチピース設計は、例えば、アンダーカットを有する平板ガラス製品を製造することを可能にし、ここで、成形プランジャ、又は、それぞれのアンダーカットを覆う成形プランジャのそれぞれの部分は、形成された平板ガラス製品の離型を可能な程度まで後退させることができる。本発明によれば、マルチピースとして設計された成形プランジャのそれぞれの部分は、互いに独立して個別に移動可能であり、このようなマルチピースの成形プランジャの個々の部分は、プレス又は成形プロセスの間又はその前に互いに緊密に結合することができるので、マルチピースの成形プランジャは、平板ガラス製品の成形を行うための成形プロセス中に滑らかで均一な表面を有する。
【0105】
さらに、本発明に係る対象物は、溶融金属、特に、固体の成形プランジャに対する対向プランジャとして機能し、三次元成形平板ガラス製品の製造に使用されるスズ溶融物を使用することによっても解決される。
【0106】
要約すると、本発明に係る方法及びその利点、即ち、液体ガラス接触材料としての液体スズの使用は、以下のように記述することができる。
【0107】
液体スズの使用は、冷却プロセスの段階でのみ成形プロセスを実施することができるのではなく、一つ前の段階、即ち、ガラスを最適な成形温度及び温度均一性に調整する段階ですでに採用することを可能にする。これにより、ガラスを最適な条件下で成形プロセスに供給することができる。
【0108】
さらに、本発明による方法は、スズの温度が金型とガラスの間の温度デルタを最小にするだけでなく、温度デルタを逆転させることができるので、プロセスにおける温度パラメータを拡張することができる。
【0109】
したがって、ガラスブランクが装填されるとき、スズ浴は装填されるときにガラス自体が有するよりも高い温度を有することができ、この場合、スズ浴はその温度をガラスに伝達することができる。
【0110】
さらに、スズの高い熱伝導率により、スズ浴は、加熱プロセス中の非常に迅速な温度制御を可能にするとともに、成形温度への加熱及び成形プロセス中の温度の保持の形でガラスブランクの予備調整を可能にし、成形中の温度パラメータの制御を可能にし、成形時間帯を有利に増加させる。
【0111】
これは、個々のプロセス段階での時間及び成形圧力、保持圧力及び温度制御の両方のアクティブ制御によるプロセス制御の改善をもたらす。これにより、経時的なガラスの均質化、即ち、成形中及び冷却中のガラスの加熱、再加熱及び温度勾配の制御が可能になる。
【0112】
したがって、従来技術のように、受動的な熱伝導率又は金型工具の間接的な空気/水冷却によってではなく、能動的な温度制御によって温度制御の自由度が増大する。
【0113】
スズ圧力の調節は、少なくとも一つのサーボ弁によって行うことができる。
【0114】
工程制御は、例えばガラスブランクの上流加熱や、必要に応じて専用冷却などの下流工程を含むなど、実際の成形、成形工程における工程時間の短縮という意味で最小限に抑えることができる。
【0115】
また、本発明の成形工程においてスズ浴を用いることにより、スズとの接触により、成形された三次元平面ガラスの表面品質を向上させることができる。
【0116】
このように、ガラスの固有成分として成形されたガラス表面に薄い酸化スズ層を形成することにより、成形された三次元平面ガラスの表面構造を最適化することができる。
【0117】
さらに、中間プロセス工程では、ガラス製品の三次元性のためにスズ浴と接触していなかったガラス部品の側面を、幾何学的変形が生じない温度範囲で温かい液体スズと接触させ、ガラスの表面欠陥の「修復」が効果的に行われる。
【0118】
本発明の更なる実施形態は、従属請求項から明らかであろう。
【0119】
以下、実施例を参照して本発明を説明し、図を参照してより詳細に説明する。以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【
図1】第1の実施形態に係る三次元形状の平面ガラス製品を開いた位置で製造するための本発明に係る装置の概略図である。
【
図2】平板ガラスブランクが敷設された、
図1に示す実施形態による本発明による装置の概略図である。
【
図3】成形プロセスの準備のために、
図1に示す実施形態による本発明による装置の概略図である。
【
図4】成形プロセスのための準備がさらに進んだ状態である、
図1に示された実施形態による本発明による装置の概略図である。
【
図5】
図1に示した実施形態による本発明の装置の成形プロセス中の概略図である。
【
図6】
図2にマークされた断面Zの概略拡大詳細図である。
【
図7】
図3にマークされた断面Yの概略拡大詳細図である。
【
図8】
図4にマークされた断面Xの概略拡大詳細図である。
【
図9】異なるガラスのそれぞれの粘度とそれぞれの関連温度との相関を例示的に示す図である。
【0121】
以下の説明では、同一で同様に作用する部品に対して同じ参照符号を使用する。
【0122】
図1は、本発明に係る第1の実施形態に係る平板ガラス10の製造装置1の概略図である。
図1によれば、本発明の装置1は、開いた起動位置に示されている。
【0123】
本発明の装置1は、本質的に3つのサブユニット、即ち、プランジャユニット1a、ガラスの平坦成形物10のための搬送ユニット1b、及び金属浴ユニットとして設計された対向プランジャユニット1cを含む。
【0124】
プランジャユニット1aは、次に、成形プランジャ20と、成形プランジャ20が締結装置、好ましくはクイッククランプシステム90によって取り付けられるプランジャ受け80とを含む。さらに、プランジャユニット1aは、締結リング100を含むカバーリングユニットと、締結リング100に締結され、ボルト110’が軸方向に案内される直角下方、即ち、対向プランジャユニット1cの方向に向けられたサスペンションボルト110と、受け120と、カバーリング60とを含む。受け120は、サスペンションボルト110に摺動自在に配置されたボルト110’を締結する役割を果たし、締結リング100、サスペンションボルト110、ボルト110’、受け120及びカバーリング60の連携により、プランジャユニット1a、特に成形プランジャ20の案内が可能となる。
【0125】
搬送ユニット1bは、本質的に保持装置70から構成され、これにより、ガラスの平坦成形物10を保持し、特に支持し、搬送することが可能となる。
【0126】
図1に示す本発明の実施例によれば、対向プランジャユニット、即ち、金属浴ユニット1cは、二つのヒーター40を含み、これらは、少なくとも一つの加熱要素41と、金属浴を誘導的に加熱するためのコイル42とを含む。さらに、対向プランジャユニット1cは、液体金属、特にスズ30を受け入れるためのチューブ状の容器50と、液体金属のための入口及び出口開口部125と、不活性ガス入口130と、不活性ガス出口135とを含み、これを介して、例えば二酸化炭素のような不活性ガスを供給及び排出し、金属浴30を覆うことができる。
【0127】
さらに、対向プランジャユニット1cは、不活性ガス区画138を含み、これは、金属浴30の液面35の上方に配置され、金属浴30を空気よりも特に重い不活性ガスで覆う役割を果たす。次に、不活性ガス区画138は、
図7に詳細に示される環状ギャップ137を介して不活性ガス受入区画139と流体連通、特にガス連通している。不活性ガス受入区画139及び所望であれば環状ギャップ137自体は、不活性ガス入口130及び不活性ガス出口135と流体連通、特にガス連通している。
【0128】
さらに、対向プランジャユニット1cは、プレス又はリフティング装置(図示せず)に接続するためのクイックチェンジシステム150を備えており、このようなリフティング装置によって、対向プランジャユニット1c全体及び/又は容器50を、とりわけ外側スリーブ140及び封止ディスク145に対して垂直方向に昇降させることが可能である。このような相対的な動きは、例えば、
図1と
図3~5との比較から明らかである。ここで、
図1~5は、三次元成形平板ガラス10を製造するために本発明の装置によって可逆的に通過される本発明の装置のそれぞれの動作状態を示す図である。
【0129】
本発明によれば、対向プランジャユニット1cは、さらに、金属浴30を取り囲み、封止ディスク145を有する外側スリーブ140を備える。
【0130】
図1によれば、プランジユニット1a、搬送ユニット1b及び対向プランジャユニット1cは、互いに離れて模式的に示されている。
【0131】
図2は、本発明による三次元成形平板ガラス10を製造するための成形プロセスのその後の流れを示し、平板ガラス10が保持装置70によって液体金属50用タブの端部55に堆積される。
【0132】
図3は、三次元成形平板ガラス製品10を製造するための本発明による成形プロセスのさらなる過程において、液体金属30用の容器50が外側スリーブ140及び封止ディスク145に対して上昇し、液体金属用容器50が上昇することにより、不活性ガスが不活性ガス区画138から環状ギャップ137を介して不活性ガス受入区画139に特に押圧されて搬送されることを示している。この状態では、平板ガラスブランク10は、一方では、液体金属30用の容器50のタブ端部55の端部に載置され、他方では、その下側で液体金属30と接触している。平板ガラスブランク10の縁部がタンク縁部55に接触することにより、平板ガラスブランク10の縁部が液体金属30に接触する平板ガラスブランク10の部分に対して冷却されたままであることが保証され、カバーリング60を平板ガラスブランク10の縁部に降ろした後、
図5に示すその後のプレス処理の過程でタンク縁部55と平板ガラスブランク10との間に金属が逃げないような封止が設けられる。
【0133】
図5に示す本発明の装置の動作状態は、成形プランジャ20を降ろすことにより平板ガラスブランク10が三次元成形平板ガラス10に形成される様子を示している。液体金属30は、三次元成形平板ガラス10の所望の形状に応じて、成形工程の過程で変位するため、このために設けられた槽である液体金属30用の受皿50と液体金属30用の入口及び出口開口部125とは、一方では金属浴の液面を制御することができ、他方では成形プランジャ20に対して反圧を発生させることができる加圧可能な補償容器(図示せず)と流体連通しており、金属浴30は成形プランジャ20に対向して形成される平板ガラス10側に作用する。さらに、
図6、
図7及び
図8は、
図2~
図4にマークされた部分Z、Y及びXのそれぞれの詳細図を示す。
【0134】
所望の三次元成形平板ガラス10の製造のその後の過程では、平板ガラス10の成形後に、本発明の装置の成形とは逆の工程制御が行われ、プランジャユニット1aが対向プランジャユニット1cから取り外され、続いて平板ガラス10を有する搬送ユニット1bが成形位置から取り外される。その後、成形された平板ガラス10は、例えば真空ホルダによって保持装置70から取り外され、表面調整のために裏返して別の金属浴30の上に置かれることができる。また、この時点で、平板ガラス10の端部が最初に取り外され、裏返した後の平板ガラス10が、成形プランジャ20への対向プランジャとしても機能した同じ金属浴30の中で表面調整されることも考えられる。
【0135】
この時点で、上記のすべての部品は、単独で、又は任意の組み合わせで考慮され、特に図面に示された詳細は、本発明に不可欠であると主張されることに留意されたい。その変形は、当業者にはよく知られている。
【符号の説明】
【0136】
1 本発明の装置
1a プランジャユニット
1b 搬送ユニット
1c 対向プランジャユニット、金属浴ユニット
10 ガラスの平坦成形物
20 成形プランジャ
30 液体金属の溶融、金属浴
35 金属浴の液面
40 ヒーター
41 発熱体
42 コイル
50 受器、容器、液体金属浴用浴槽
55 浴槽縁
60 フレーム、リング、カバーリング
70 保持装置
80 プランジャ受け
90 クイッククランプシステム
100 締結リング
110 サスペンションボルト
110’ ボルト
120 受信機
125 液体金属の入口及び出口開口部
130 不活性ガス入口
135 不活性ガス出口
137 環状ギャップ
138 不活性ガス区画
139 不活性ガス受入区画
140 外側スリーブ
145 封止ディスク
150 クイックチェンジシステム
【国際調査報告】