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特表2024-527960カンナビノイドおよび/またはオピオイドを含む経粘膜パッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】カンナビノイドおよび/またはオピオイドを含む経粘膜パッチ
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 1/12 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61P21/04
A61P25/00
A61P25/04
A61P29/00
A61P31/00
A61P25/08
A61P1/02
A61P11/00
A61P9/00
A61P1/12
A61P1/04
A61P25/28
A61P25/18
A61P25/02
A61P3/00
A61P25/22
A61P17/04
A61P25/20
A61P25/24
A61P1/14
A61P1/10
A61P1/08
A61K31/05
A61K31/352
A61K9/70
A61K9/00
A61K47/32
A61K47/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504932
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2022071416
(87)【国際公開番号】W WO2023006980
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21188925.8
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524032482
【氏名又は名称】カンナメディカル ファーマ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CANNAMEDICAL PHARMA GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー, イヴォンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ウィンドバーグス, マイケ
(72)【発明者】
【氏名】プランツ, ビクトリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター, アリス
(72)【発明者】
【氏名】フレイ, ナディーン
(72)【発明者】
【氏名】ザイフェルト, アンケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター, マルセル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA71
4C076AA89
4C076BB22
4C076CC01
4C076DD37
4C076DD59
4C076EE06
4C076EE08
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE30
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA32
4C084MA34
4C084MA57
4C084NA10
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA051
4C084ZA052
4C084ZA061
4C084ZA062
4C084ZA081
4C084ZA082
4C084ZA121
4C084ZA122
4C084ZA141
4C084ZA142
4C084ZA151
4C084ZA152
4C084ZA181
4C084ZA182
4C084ZA201
4C084ZA202
4C084ZA291
4C084ZA292
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA601
4C084ZA602
4C084ZA671
4C084ZA672
4C084ZA691
4C084ZA692
4C084ZA711
4C084ZA712
4C084ZA721
4C084ZA722
4C084ZA731
4C084ZA732
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4C084ZA892
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4C086NA10
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4C086ZA08
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4C086ZA69
4C086ZA71
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4C086ZB31
4C086ZC21
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4C206MA03
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA54
4C206MA77
4C206NA10
4C206ZA01
4C206ZA02
4C206ZA05
4C206ZA06
4C206ZA08
4C206ZA12
4C206ZA14
4C206ZA15
4C206ZA18
4C206ZA20
4C206ZA29
4C206ZA36
4C206ZA60
4C206ZA67
4C206ZA69
4C206ZA71
4C206ZA72
4C206ZA73
4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZB11
4C206ZB26
4C206ZB31
4C206ZC21
(57)【要約】
本発明は、生体適合性ポリマーと治療有効量の医薬有効成分とを含むエレクトロスパン繊維を含む経粘膜パッチであって、有効医薬成分がカンナビノイドもしくはオピオイド、またはカンナビノイドとオピオイドを含む経粘膜パッチ、ならびに医薬品としてのその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性ポリマーと治療有効量の医薬有効成分とを含むエレクトロスパン繊維を含む経粘膜パッチであって、前記有効医薬成分がカンナビノイドもしくはオピオイド、またはカンナビノイドおよびオピオイドを含む経粘膜パッチ。
【請求項2】
頬側または舌下の経粘膜パッチである、請求項1に記載のパッチ。
【請求項3】
前記有効医薬成分が、カンナビノイドもしくはオピオイド、またはカンナビノイドおよびオピオイドである、請求項1または2に記載のパッチ。
【請求項4】
オピオイドまたはカンナビノイドではない追加の有効医薬成分を含む、請求項1乃至3の何れか1項に記載のパッチ。
【請求項5】
前記有効医薬成分が、少なくとも1つのカンナビノイドである、請求項1乃至4の何れか1項に記載のパッチ。
【請求項6】
前記有効医薬成分が、THCとCBDとの組み合わせである、請求項1乃至5の何れか1項に記載のパッチ。
【請求項7】
THCとCBDの間の比が、20:1~1:20、特に1:1である、請求項6に記載のパッチ。
【請求項8】
前記生体適合性ポリマーが、唾液と接触して部分的にまたは完全に溶解可能である、請求項1乃至7の何れか1項に記載のパッチ。
【請求項9】
前記生体適合性ポリマーが唾液と接触しても変化しない、請求項1乃至8の何れか1項に記載のパッチ。
【請求項10】
医薬品として使用するための請求項1乃至9の何れか1項に記載のパッチ。
【請求項11】
症状が発生している疾患、特にALSまたは癌のような重篤な慢性疾患に罹患している患者の症状負担の治療または予防に使用するための、請求項10に記載のパッチ。
【請求項12】
治療される前記症状は、痛み、抑うつ、不穏下肢症、吐き気、便秘、嘔吐、食欲低下または喪失、睡眠障害、そう痒症、不安、疲労、呼吸困難、四肢のしびれ、めまい、錯乱、記憶障害、多幸症、落ち着きのなさ、傾眠、嘔吐、腹痛、下痢、頻脈、胸痛、かゆみ、口渇、発作、痙攣、呼吸障害、ストレス、全体的な活動性の低下、生活の質の低下、感染症の再発、炎症、およびこれらの2つ以上の組み合わせから選択される、請求項11に記載のパッチ。
【請求項13】
痛みの治療または予防に使用するための、請求項10乃至12の何れか1項に記載のパッチ。
【請求項14】
前記治療が、癌またはALSのセカンドラインもしくはサードライン治療または補助/アドオン治療である、請求項10乃至13の何れか1項に記載のパッチ。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1項に記載のパッチを調製するための方法であって、以下の工程(a)~(c)
(a)生体適合性ポリマーの溶液を提供する工程と、
(b)前記有効医薬成分を含む液体を提供する工程と、
(c)前記生体適合性ポリマーの溶液をエレクトロスピニングして、前記ポリマーを含む繊維を製造する工程と、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナビノイドおよび/またはオピオイドを含むエレクトロスパン繊維を含む経粘膜パッチ、その調製方法および医薬品としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鎮痛薬には、パラセタモール、イブプロフェン、アスピリンなど、処方箋が無くとも購入できる薬がある。しかし、これらの薬には、アレルギーがある人、持病のある人、他の薬を服用している人など、人により様々な副作用の可能性があることが知られている。
【0003】
モルヒネとモルヒネ様薬剤(オキシコドン、タペンタドール、フェンタニル、ブプレノルフィンなど)は強力な鎮痛剤である。それらは錠剤、カプセル、パッチなど様々な剤形があり、痛みを管理する長期的な計画の一環として、医師または痛みの専門家と相談した上で処方される。投与量と反応は注意深くモニターされる。
【0004】
患者の痛みの治療には効果的であるが、上記のような薬物療法は、上述したような不快な副作用を伴うことが多く、過剰投与の危険性もある。従来の薬物療法に見られるような副作用やリスクが少なく、しかも痛みの治療に高い効果を発揮する、患者に使用する鎮痛薬を提供することは有益であろう。
【0005】
深刻な不安事象に直面した人々の脳内においてセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンのレベルに測定可能な変化が起こり、そのため脳内の神経伝達物質の不均衡を是正するいくつかのタイプの抗うつ薬は、うつ病の症状とは無関係であっても、重篤な不安の治療に有効である。
【0006】
抗うつ薬は気分を改善することはできるが、長期的な解決策にはならない。副作用がしばしば感じられ、リスクと利益を考慮しなければならない。抗うつ薬の一般的な副作用には、吐き気、頭痛、不安、発汗、めまい、興奮、体重増加、口の渇き、性的障害などがある。
【0007】
例えば、痛みの治療や予防のためのカンナビノイドの治療的使用は、すでにかなり成功していることが証明されている。これまでのところ、有効成分の組成が異なる抽出物は、主に医師の処方に基づく処方箋の形で使用されてきた。これまでのところ、経口粘膜スプレーとしてテトラヒドロカンナビノール(THC)とカンナビジオール(CBD)の組み合わせを含む完成した医薬品が1つだけ医薬品として販売許可を得ており、ドイツではサティベックス(Sativex)(登録商標)という商品名で販売されている。しかし、投与された用量のほとんどが飲み込まれるため、消化管経由の生物学的利用能が強く影響され、その結果、有効性に高い個人間および個人内変動が生じる。一般的に、THCとCBDは、投与量の一部のみが患者内で薬学的に活性化する。
【0008】
特許文献1は、1種類以上のカンナビノイドと揮発性オイルの組み合わせを含むカンナビノイドベースの医薬品エキスに関するもので、吐き気や嘔吐の治療に使用される。
【0009】
特許文献2は、結晶形態のTHCと薬学的に許容される担体を含む医薬組成物および医薬品としてのその使用に関する。治療の適応症として、痛み、嘔吐、食欲不振または体重減少が当該特許の主題である。
【0010】
特許文献3は、約0.1:5から約5:1のCBD:THCの割合でCBDとTHCを含む医薬組成物であって、一般的に、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはそれらの任意の組み合わせを含む医薬組成物に関する。担体としては、オリーブ油、ヘンプ油、ゴマ油、ヤシ油などのいくつかの油が開示されている。本組成物は主に、社交性の低下、かんしゃく、言葉の使い方の拙さなどの自閉症の症状の治療のためのものである。
【0011】
特許文献4は、神経変性疾患の治療のための組成物を開示し、前記組成物は、2つのカンナビノイドの混合物と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含み、前記組成物は、オイル、エマルジョン、ゲル、またはエアロゾルの形態である。
【0012】
特許文献5は、舌下投与または頬側投与用の固体剤形の医薬組成物に関する。この組成物は、カンナビノイドと、カンナビノイドが溶媒和された薬学的に許容される溶媒と、溶媒和されたカンナビノイドが吸着された薬学的に許容される吸着剤とを含む。吸着剤は、シリカ、微結晶セルロース、セルロース、珪化微結晶セルロース、クレー、タルク、デンプン、プレゼラチン化デンプン、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、炭酸マグネシウム、およびそれらの混合物から主に選択される。
【0013】
特許文献6は、関節リウマチの疾患修飾治療薬として使用するためのCBDとTHCの組み合わせを含む医薬組成物に関する。CBD:THCの比率は、実質的に1:1と規定され、患者が摂取する量は、1日あたり各カンナビノイドが5~25mgの範囲であり、舌下または頬側から摂取する。
【0014】
特許文献7と特許文献8は、口腔内への有効成分の投与用に指定されたパウチに関するものであり、このパウチには、1種類以上のカンナビノイドと水不溶性組成物の組み合わせを含むマトリックス組成物が含まれている。水不溶性組成物は、セルロースを含むと定義されている。これらの文献はまた、痛み、特に神経痛および癌関連の痛みの緩和のための前記パウチの使用を開示している。
【0015】
エレクトロスピニングは、医薬用途にも使用可能な生体適合性ポリマーの繊維を調製するための汎用性の高い方法である。この点に関して、2020年10月8日に欧州特許庁に出願された欧州特許出願EP20200785.2およびそこに開示された先行技術を参照されたい。
【0016】
エレクトロスピニングに関する総説が「エレクトロスピニング:極細繊維の魅力的な調製法」(Electrospinning:A Fascinating method for the Preparation of Ultrathin Fibers)というタイトルで非特許文献1に公表されている。エレクトロスパンナノファイバーの医薬的な応用に関しては、「ヒト皮膚創傷治療のための機能性エレクトロスパン繊維」(Functional electrospun fibers for the treatment of human skin wounds)というタイトルでヴァインベルクス(Windbergs)等によって執筆され、非特許文献2に公表された刊行物、およびシトール(Shitole)等により出版された刊行物である非特許文献3を参照する。
【0017】
頬側からの投与に関連する一般的な問題は、口腔内の唾液の継続的な分泌により投与量を飲み込んでしまうことである。これは、経口カンナビノイドスプレーまたはエアロゾルの薬物動態の変動にしばしば観察される、上述の議論の一因となっている。最適な薬物送達のためには、カンナビノイドまたはオピオイドの吸収を可能にするのに十分な時間、頬側および舌下の剤形が口腔粘膜と接触していなければならない。特に、剤形が唾液によって消化管に洗い流されるのを防ぐ必要がある。同時に、剤形の崩壊または溶解の速度は、患者に不快感や不便を与えるほど遅くてはならない。さらに、好適な頬側および舌下投与剤形は、サイズが小さく、形状が使用中に患者に不快感を与えないように指定されるべきである。最も重要なことは、製剤は、カンナビノイドの経粘膜吸収が最適化されるべくカンナビノイドが送達されるように設計されなければならないということである。
【0018】
したがって、癌やALS(筋萎縮性側索硬化症)などの重篤な疾患の痛みや不安などの症状負担を軽減および/または緩和することを含むがこれらに限定されない様々な症状の治療および予防に有効な大麻ベースの医薬を提供し、同時に認知機能の障害など大麻使用に関連する副作用を引き起こさない、または最小限に抑えることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】欧州特許第2283832号明細書
【特許文献2】欧州特許第1901734号明細書
【特許文献3】欧州特許第3681525号明細書
【特許文献4】欧州特許第3525823号明細書
【特許文献5】欧州特許第3171871号明細書
【特許文献6】国際公開第2005/120478号パンフレット
【特許文献7】欧州特許第3641726号明細書
【特許文献8】欧州特許第3641727号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】「エレクトロスピニング:極細繊維の魅力的な調製法」(Electrospinning:A Fascinating method for the Preparation of Ultrathin Fibers)(アンゲヴァンテ・ケミー(Angew.Chem.)Ind.Ed.2007年,46,p.5670-5703.)
【非特許文献2】「ヒト皮膚創傷治療のための機能性エレクトロスパン繊維」(Functional electrospun fibers for the treatment of human skin wounds)、ヴァインベルクス(Windbergs)等、ユーロピアンジャーナルオブファーマシューティクスアンドバイオファーマシューティクス(European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics)119(2017年)p.283-299
【非特許文献3】シトール(Shitole)等、インアジアンジャーナルオブファーマシューティカルテクノロジー(In Asian J. Pharm. Tech)2020年;10(3);p.187-201
【発明の概要】
【0021】
本発明は、治療有効量の医薬有効成分および生体適合性ポリマーを含むエレクトロスパン繊維を含む経粘膜パッチであって、前記有効医薬成分がカンナビノイドもしくはオピオイド、またはカンナビノイドおよびオピオイドを含む経粘膜パッチに関する。
【0022】
前記パッチは、経口経粘膜パッチ、特に頬側経粘膜パッチまたは舌下経粘膜パッチであってもよい。以下、本発明に係るパッチのいくつかの実施形態を以下に説明する。
【0023】
前記有効医薬成分が、カンナビノイドもしくはオピオイド、またはカンナビノイドおよびオピオイドである、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0024】
オピオイドまたはカンナビノイドではない追加の有効医薬成分を含む、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0025】
前記有効医薬成分がTHCおよび/またはCBDを含み、1~50mg、または2~30mg、または2.5~25mg、または5~20mg、または10~15mg、好ましくは2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、22.5mg、または30mgの量で存在する、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0026】
前記有効医薬成分が0.125~25mg/cmの量で存在する、上記実施形態のいずれかに記載のパッチ。
【0027】
前記有効医薬成分が、ブプレノルフィン、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、モルヒネ、タペンタドール、トラマドール、オキシモルフォン、それらの薬学的に許容される塩、およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される少なくとも1つのオピオイドを含む、上記実施形態のいずれかに記載のパッチ。
【0028】
前記有効医薬成分が少なくとも1つのカンナビノイドである、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0029】
前記有効医薬成分が、カンナビジオール(CBD)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビゲロール(CBG)、δ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビノール(CBN)、THCA(テトラヒドロカンナビノール酸)、CBDA(カンナビジオール酸)、CBN(カンナビノール)、CBG(カンナビゲロール)、CBC(カンナビクロメン)、CBL(カンナビシクロール)、CBV(カンナビバリン)、THCV(テトラヒドロカンナビバリン)、CBDV(カンナビジバリン)、CBCV(カンナビクロメバリン)、CBGV(カンナビゲロバリン)、CBGM(カンナビゲロールモノメチルエーテル)、CBE(カンナビエルソイン)およびCBT(カンナビシトラン)から選択される少なくとも1つのカンナビノイド、またはそれらの2つ以上の組み合わせである、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0030】
前記有効医薬成分が、カンナビジオール(CBD)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビゲロール(CBG)、δ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、およびカンナビノール(CBN)から選択される少なくとも1つのカンナビノイド、またはそれらの2つ以上の組み合わせである、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0031】
前記有効医薬成分が、THCとCBDとの組み合わせを含むか、またはTHCとCBDとの組み合わせである、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0032】
THCとCBDの間の比が、100:1~1:100、または50:1~1:50、または20:1~1:20、または10:1~1:10、または5:1~1:5、または4:1~1:4、または3:1~1:3、または2:1~1:2、または1:1、特に5:1、または4:1、または3:1、または2:1、または1:1である、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0033】
THCとCBDの間の比率が2:1~1:2、特に1:1である、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0034】
前記有効医薬成分が即時放出される、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0035】
前記有効医薬成分が制御された放出様式で放出される、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0036】
前記有効医薬成分の一部が即時放出され、前記有効医薬成分の残りが制御された放出様式で放出される、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0037】
前記有効医薬成分が、5秒~5時間、30秒~5時間、または15分~5時間、または25分~4時間、または30分~3時間、または60分~2時間、好ましくは30分~2時間以内に放出される、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0038】
薬学的に許容される賦形剤を含む、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0039】
前記生体適合性ポリマーが、唾液と接触して部分的にまたは完全に溶解可能である、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0040】
前記生体適合性ポリマーが唾液と接触しても変化しない、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0041】
前記生体適合性ポリマーが天然または合成のものである、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0042】
前記生体適合性ポリマーが、キトサン、デキストリン、アルギン酸塩、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、ポリ(ラクチド-co-グリコール酸)(PLGA)、ヒアルロン酸、CMC、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(アクリル酸)、メタクリル酸エステルの水膨潤性コポリマー、およびグルカン、例えばα-グルカンからなる群から選択される、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0043】
前記エレクトロスパン繊維が、前記ポリマーがシェルを形成し、前記有効医薬成分がコアを形成するコアシェル構造を有する、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0044】
前記パッチが粘膜に自己接着する、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0045】
前記パッチが、約0.2cm~約3.5cm、好ましくは約1cm~約4cmの幅、および約0.2cm~約6cm、好ましくは約1cm~約4cmの長さを有する、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0046】
前記パッチが約0.2cm~約3cm、好ましくは約1cm~約2cmの直径を有する、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0047】
正方形、長方形、楕円形、角丸の正方形または長方形、または円の形状である、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0048】
医薬品として使用するための上記何れかの実施形態に記載のパッチ。
【0049】
症状が発生している疾患、特に癌またはALSのような重篤な慢性疾患に罹患している患者の症状負担の治療または予防に使用するための、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0050】
治療される前記症状は、痛み、抑うつ、不穏下肢症、吐き気、便秘、嘔吐、食欲低下または喪失、睡眠障害、そう痒症、不安、疲労、呼吸困難、四肢のしびれ、めまい、錯乱、記憶障害、多幸症、落ち着きのなさ、傾眠、嘔吐、腹痛、下痢、頻脈、胸痛、かゆみ、口渇、呼吸障害、痙攣、発作、ストレス、全体的な活動性の低下、生活の質の低下、感染症の再発、炎症、およびこれらの2つ以上の組み合わせから選択される、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0051】
前記症状が、不安、痛み、全体的な活動性の低下および/または生活の質の低下から選択される、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0052】
痛みの治療または予防に使用するための、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0053】
前記痛みが、多発性硬化症、アルツハイマー病または他の神経変性疾患、パーキンソン病、運動ニューロン疾患、神経変性疾患、または外傷性脳損傷による炎症を含む炎症に起因する、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0054】
前記痛みが、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、線維筋痛症、癌、ALSおよび末梢神経障害による痛みを含む急性または慢性の痛みである、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0055】
前記痛みが、上部/首、下部、肩および頸部痛を含む背部痛、神経障害性疼痛、癌またはALSに関連する痛みである、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0056】
一実施形態において、首および/または頸部の痛みが治療される。
【0057】
さらなる実施形態において、神経障害性疼痛が治療される。
【0058】
副作用として痛みをもたらす疾患または状態、例えば感染症、特にウイルス感染症に関連する痛みの治療または予防に使用するための、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0059】
前記治療が、癌のセカンドラインもしくはサードライン治療または補助/アドオン治療である、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0060】
前記治療が、ALSのセカンドラインもしくはサードラインまたは補助/アドオン治療である、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0061】
症状が発生している疾患、特に感染症、特にウイルス感染症であって、治療されるべき症状が、特に、痛み、抑うつ、食欲低下または喪失、睡眠障害、不安、疲労、呼吸困難、錯乱、記憶障害、傾眠、呼吸障害、痙攣、発作、ストレス、全体的な活動性の低下、生活の質の低下、感染症の再発、炎症に伴う痛み、およびそれらの2つ以上の組み合わせから選択される疾患に罹患している患者の症状負担の治療または予防に使用するための、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0062】
予防または治療中に、1日当たり1~50mg、または2~40mg、または2.5~30mg、または5~25mg、または10~20mgのTHCが投与される、上記実施形態の何れかに記載のパッチ。
【0063】
本発明はさらに、先の実施形態の何れかに記載のパッチを調製するための方法であって、以下の工程(a)~(c)
(a)生体適合性ポリマーの溶液を提供する工程と、
(b)前記有効医薬成分を含む液体を提供する工程と、
(c)前記生体適合性ポリマーの溶液をエレクトロスピニングして、前記ポリマーを含む繊維を製造する工程と、
を含む、方法に関する。
【0064】
前記工程(c)が、前記生体適合性ポリマーを含む前記溶液と前記有効医薬成分を含む前記液体とを同軸エレクトロスピニングすることにより、前記生体適合性ポリマーがシェルを形成し、前記有効医薬成分がコアを形成するコアシェル繊維を形成する工程を含む、上記実施形態に記載の方法。
【0065】
一実施形態において、さらなる賦形剤が前記溶液および/または前記液体中に存在する。
【0066】
さらなる賦形剤が前記溶液および/または前記液体中に存在し、好ましくは、前記さらなる賦形剤は、共溶媒、乳化剤、導電性を増加させる薬剤、緩衝剤、浸透促進剤、界面活性剤、および粘度調整剤からなる群より選択される、上記実施形態に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0067】
導入
本発明に係る医薬剤形は、カンナビノイドおよび/またはオピオイドの局所粘膜適用を可能にする経粘膜パッチである。パッチは、特に治療上有効な量のTHCおよびCBDの組み合わせを有効医薬成分として含む。このパッチは、主に口腔粘膜を介してこれらの有効医薬成分を投与することを可能にする。エレクトロスピニングされた生体適合性ポリマー繊維を基礎とするパッチは、粘膜に付着し、有効成分を直接粘膜に放出し、その結果、肝臓を介した有効成分の分解を凌いで、患者の血流に有効成分を高濃度で均一に送達する。
【0068】
有効医薬成分の送達は、即時放出または制御された放出様式によることができる。さらなる実施形態において、パッチは、有効医薬成分の一部が即時放出により送達され、残りが制御された放出様式で送達されるものであってもよい。
【0069】
本発明に係る経粘膜パッチは、カンナビノイドの(経口)送達のための他の先行技術の形態と比較して、カンナビノイドの作用の迅速な開始とともに(経口)生物学的利用能を改善することが発見された。従って、本発明の経粘膜パッチは、投与量の嚥下およびその後のカンナビノイドの胃腸吸収に関連する高い初回通過分の代謝を回避するため、経口の生物学的利用能が向上し、正確かつタイムリーなカンナビノイドの送達を提供する、便利で安全な、即効性の経口投与形態に対する満たされていない医療上の必要性を提供する。
【0070】
ほとんどの経口投与剤形とは対照的に、パッチによって貼る場合には水分を摂取する必要がない。パッチは、基本的にどのような状況や場面でも、個別に貼ることができる。パッチの組成と個々の繊維の直径とサイズは、有効成分の放出動態を制御する。特定の実施形態において、経粘膜パッチは、唾液の影響下で所定の時間にわたって溶解するため、口腔内に留まる。パッチの大きさは、パッチを単に切断することによって容易に調整することができる。
【0071】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0072】
特に、不定冠詞「a」または「an」の使用は、「1つ以上」を意味することに留意されたい。したがって、「有効医薬成分」という用語は、常に「1つ」および「2つ以上」の有効成分の組込みを含む。
【0073】
本明細書で使用される用語「含んでいる(comprising)」または「含む(comprises)」は、「含んでいるが、これらに限定されない」を意味する。この用語は、任意の記載された特徴、要素、整数、工程、または構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、要素、整数、工程、構成要素、またはそれらのグループの追加の存在を排除しない、オープンエンドであることを意図している。したがって、用語「含んでいる(comprising)」または「含む(comprises)」は、より限定的な用語「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」を含む。一実施形態において、本出願全体を通じて、特に特許請求の範囲内で使用される用語「含んでいる(comprising)」または「含む(comprises)」は、用語「からなる(consisting of)」に置き換えることができる。
【0074】
経粘膜パッチ
「経粘膜(transmucosal)」という用語は、特許請求の範囲に記載されたパッチ内の有効成分が粘膜を通して、または粘膜を横切って患者の血流に入ることを意味する。最も広い意味での「経粘膜(transmucosal)」という用語は、鼻腔、直腸腔、膣腔、眼腔、および口腔の粘膜内側を介した有効医薬成分の送達を包含する。特に、このパッチは経口経粘膜パッチであり、典型的には頬側または舌下に貼られる。
【0075】
パッチは粘膜に自己接着するものであってもよいし、生体適合性接着剤で構成された接着剤成分を含むものであってもよい。
【0076】
パッチは粘膜に貼付するのに適した形状であればいかなるものであってもよい。典型的な形状は、正方形、長方形、楕円形、角丸な正方形または長方形、または円形である。パッチは、治療される患者に対してすぐに使用できるように、上記の形状の1つで個別に包装してもよい。あるいは、患者が適切な形や大きさに切り取ることができるように、「ストックフォーム」形態で包装してもよい。
【0077】
パッチは、約0.2cm~約3.5cm、好ましくは約1cm~約4cmの幅と、約0.2cm~約6cm、好ましくは約1cm~約4cmの長さを有してもよい。
【0078】
パッチは、約0.2cm~約3cm、好ましくは約1cm~約2cmの直径を有してもよい。
【0079】
有効医薬成分
本明細書で使用される「有効医薬成分(active pharmaceutical ingredient)」という用語は、「有効成分」またはAPIという用語と互換的に使用され、所望の治療効果を引き起こす薬剤または薬剤の混合物を指す。本開示内の有効成分は、カンナビノイドおよび/またはオピオイドを含む。
【0080】
一実施形態において、有効成分はカンナビノイドまたはオピオイド、もしくはそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0081】
一実施形態において、有効医薬成分は少なくとも1つのオピオイドである。
【0082】
有用なオピオイドの例としては、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルヒネ、ベジトラミド、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、デソモルヒネ、デキストロモルアミド、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルホン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レボルファノール、レボメタドン、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、メペリジン、メプタジノール、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロヒネ、ナルブフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ナロルフィン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルフォン、パパベレタム、ペンタゾシン、ペチジン、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、ピリトラミド、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、チリジン、タペンタドール、トラマドール、それらの薬学的に許容される塩、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
特定の実施形態において、オピオイドは、ブプレノルフィン、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、ヒドロコドン、オキシコドン、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、モルヒネ、タペンタドール、トラマドール、オキシモルフォン、それらの薬学的に許容される塩、およびそれらの混合物から選択される。
【0084】
本明細書で使用する「カンナビノイド(cannabinoid)」という用語は、合成カンナビノイドと同様に、大麻植物に存在する化学化合物を含む。これまでのところ、110種類を超える化合物が大麻植物から発見されており、これらはすべて、本明細書で使用する「カンナビノイド」という用語に包含される。カンナビノイドは、エンドカンナビノイド(動物の体内で産生される)、フィトカンナビノイド(大麻および他のいくつかの植物で産生される)、および合成カンナビノイドであってもよい。
【0085】
カンナビノイドは、遊離の形態で、または塩;エステルの酸付加塩;アミド;鏡像異性体;異性体;互変異性体;プロドラッグ;異なる異性体形態(例えば、鏡像異性体およびジアステレオ異性体)の形態で、純粋な形態およびラセミ混合物を含む混合物の両方で含まれてもよい。カンナビノイドには、カンナビノイド受容体に対して高い親和性(例えばKi<250nM)を有する化合物(THCなど)、およびカンナビノイド受容体に対して有意な親和性を有さない化合物(カンナビジオール(CBD)など)が含まれる。カンナビノイドには、特徴的なジベンゾピラン環構造(THCに見られるタイプ)を有する化合物や、ピラン環を有さないカンナビノイド(カンナビジオール(CBD)など)も含まれる。
【0086】
用語「カンナビノイド(cannabinoid)」はまた、例えば、カンナビジオール(CBD)、δ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)のような、1つの原子、分子または基を別のもので置換することにより、類似の構造を有する別の化合物から製造される誘導体を包含することを意味する。他のカンナビノイドとしては、ジメチルヘプチルペンチルカンナビジオール(DMHP-CBD)、6,12-ジヒドロ-6-ヒドロキシ-カンナビジオール(例えば、米国特許第5,227,537号明細書参照);(3S,4R)-7-ヒドロキシ-A6-テトラヒドロカンナビノール同族体および誘導体(米国特許第4,876,276号明細書に記載);(+)-4-[4-DMH-2,6-ジアセトキシ-フェニル]-2-カルボキシ-6,6-ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト-2-エン、および他の4-フェニルピネン誘導体(例えば、米国特許第5,434,295明細書参照)、および(-)CBD-モノメチルエーテル、(-)CBDジメチルエーテル;(-)CBDジアセテート;(-)3‘-アセチル-CBDモノアセテート;および±AFl lなどのカンナビジオール(-)(CBD)アナログ(例えば、コンスローエ(Consroe)等(1981年)ジャーナルオブクリニカルファーマコロジー(J.Clin.Pharmacol.)21:428s-436s参照)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCV)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールバリアント(CBGV)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビシクロール(CBN)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、カンナビトリオール(CBO)、カンナビノールプロピルバリアント(CBNV)、およびテトラヒドロカンナビノール酸(THCA)が含まれる。他の多くの有用なカンナビノイドは、アグレル(Agurell)等(1986年)ファーマコロジカルレビュー(Pharmacol.Rev.)38:p31-p43に開示されている。
【0087】
カンナビノイドという用語には、カンナビノイドのプロドラッグ、薬学的に許容される塩、代謝産物、例えば11-OH-THC、およびカンナビノイドの複合体も含まれる。
【0088】
一実施形態において、カンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビゲロール(CBG)、δ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビノール(CBN)、THCA(テトラヒドロカンナビノール酸)、CBDA(カンナビジオール酸)、CBN(カンナビノール)、CBG(カンナビゲロール)、CBC(カンナビクロメン)、CBL(カンナビシクロール)、CBV(カンナビバリン)、THCV(テトラヒドロカンナビバリン)、CBDV(カンナビジバリン)、CBCV(カンナビクロメバリン)、CBGV(カンナビゲロバリン)、CBGM(カンナビゲロールモノメチルエーテル)、CBE(カンナビエルソイン)およびCBT(カンナビシトラン)から選択される少なくとも1つのカンナビノイド、またはそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0089】
一実施形態において、有効医薬成分が、カンナビジオール(CBD)、カンナビクロメン(CBC)、カンナビゲロール(CBG)、δ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)、およびカンナビノール(CBN)から選択される少なくとも1つのカンナビノイドである。
【0090】
一実施形態において、有効医薬成分はTHCとCBDの組み合わせである。
【0091】
THCとCBDの間の比は、20:1~1:20、または10:1~1:10、または5:1~1:5、または4:1~1:4、または3:1~1:3、または2:1~1:2、または4:1、または3:1、または2:1、または1:1であってもよい。
【0092】
より一般的に言えば、有効医薬成分はTHCおよび/またはCBDであり、パッチ中に1~50mg、または2~30mg、または2.5~25mg、または5~20mg、または10~15mg、好ましくは2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、22.5mg、または30mgの量で存在する。
【0093】
一実施形態において、有効医薬成分はパッチ中に0.125~25mg/cmの量で存在する。
【0094】
一実施形態において、有効医薬成分は、5秒~5時間、30秒~5時間、または15分~5時間、または25分~4時間、または30分~3時間、または60分~2時間、好ましくは30分~2時間以内に放出される。
【0095】
生体適合性ポリマーを含むエレクトロスパン繊維
本発明に係るパッチは、エレクトロスパン繊維の形態の生体適合性ポリマーを含む。特定の実施形態において、当該ポリマーは粘膜付着性である。
【0096】
粘膜付着(または粘膜-付着)とは一般に、生物学的物質または合成物質が粘膜に「付着」し、その結果、長期間にわたってその物質が組織に生体付着する能力を意味すると理解されている。材料が粘膜付着性であるためには、粘膜を保護する高度に水和した粘性のハイドロゲル層である粘液と相互作用しなければならない。
【0097】
生体適合性ポリマー、特に繊維のシェルに使用するために考慮すべき因子には、使用される最終的なシェルの材料と同様に、ポリマーの生体適合性、親水性、疎水性、分解性、溶解性、および/または足場安定性が含まれ、それらに基づいている。もちろん、材料はエレクトロスピニングに適していなければならない。好ましいのは、水素結合供与体として作用し、水との相互作用を促進し、吸水につながり、および/または構造的完全性も保持できる生体適合性ポリマーである。
【0098】
もちろん、生体適合性ポリマーはエレクトロスピニング可能である必要がある。さらに、カンナビノイドおよび/またはオピオイドとの適合性も必要である。
【0099】
生体適合性ポリマーは、唾液と接触して溶解するものであっても、あるいは唾液と接触しても溶解しないものであってもよい。
【0100】
好ましい生体適合性ポリマーの例は、ポリカプロラクトン(PCL)、キトサン、アルギン酸塩、ポリ(アクリル酸)、CMC、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、および/またはポリ(D,L-乳酸-co-グリコール)酸(PLGA)、ならびにこれらの生体適合性誘導体から選択される。これらの誘導体は、当業者に公知であり、それぞれの文献から引用することができる(例えば、PLGAについては、サー・H(Sah H)、トーマ・LA(Thoma LA)、デウス・HR(Desu HR)、サー・E(Sah E)、ウッド・GC(Wood GC)著『機能的なPLGAベースのナノ粒子系を開発するために使用される概念および実施』インターナル ジャーナル オブ ナノメディシン(Int. J Nanomedicine.)2013年;8:p747-p765、doi:102147/11N.540579;スネドロバ・E(Snejdrova E)、ポドジメック・S(Podzimek S)、マルチシュカ・J(Martiska J)、ホラス・O(Holas 0)、ディットリッヒ・M(Dittrich M)著『薬物送達特性を調整した分岐PLGA誘導体』アクタ ファーマシューティカ(Acta Pharm.)2020年、70(1)、p63-p75、doi:102478/acph-2020-0011。さらに、HPMC、HMC、およびポリビニルピロリドンを用いてもよい。
【0101】
本発明の範囲内では、ポリマー繊維を調製するために、いくつかのエレクトロスピニング法が利用可能であり、典型的には有効成分と一緒に調製される。
【0102】
これは、ポリマー繊維は混合エレクトロスピニングによって調製することができることを意味する。混合エレクトロスピニングの間、有効医薬成分の組成物/ブレンド(以下では「API」ともいう)、ここではカンナビノイドおよび/またはオピオイドは、任意で追加の医薬成分とともに、エレクトロスピニングポリマー溶液に溶解または分散され、その液体が繊維生成のために紡糸される。その結果、APIがその中に均一に分散されたエレクトロスパンポリマー繊維が得られる。
【0103】
エレクトロスピニングの類似形態として、いわゆるエマルジョンエレクトロスピニングがある。この形態のエレクトロスピニングはエマルジョンに基づく。通常、APIは界面活性剤とともに1つの相を形成し、非混和性溶媒と共にエマルジョンを形成し、このエマルジョンを適当なポリマーと混合し、エレクトロスピニングすることでそれぞれの繊維を製造する。
【0104】
あるいは、ポリマー繊維は同軸エレクトロスピニングによって調製してもよい。同軸エレクトロスピニングは、一般に、高電圧に接続する2つ以上のノズルを使用する。例えば、2つの異なる溶液および/またはエマルジョンおよび/または懸濁液、すなわちポリマー溶液、およびAPIを含む溶液またはエマルジョンまたは懸濁液が、同心ノズルを介して適用される。一実施形態において、APIを含む溶液/エマルジョン/懸濁液は内側ジェット/ノズルを通して紡糸され、ポリマーは外側ジェット/ノズルを通して紡糸される。結論的には、コア-シェル構造が得られ、コアを形成するAPIはシェルを表すポリマーで覆われる。同軸エレクトロスピニングによって調製されたポリマー繊維は、APIの放出制御投与に特に適している。
【0105】
エレクトロスピニングし、最終的に本発明に係るパッチに使用する繊維を得るための様々な実施形態に関するさらなる詳細については、本願の序文で既に引用した文献を特に参照されたい。
【0106】
APIとポリマーをそれぞれ含む溶液/エマルジョン/懸濁液は、緩衝剤や界面活性剤など、当技術分野で公知の賦形剤を含んでもよい。
【0107】
本発明の文脈において、生体適合性ポリマーを溶解するために、任意の適切な溶媒を使用してもよい。溶媒は生体適合性ポリマーと相溶性があり、エレクトロスピニングプロセスに適していなければならない。また、例えば、エタノールなどのアルコール類やクロロホルムなどの適当な溶媒の混合物を使用することもできる。
【0108】
追加の有効医薬成分(追加のAPI)
本発明のパッチは、当該パッチ中に存在するカンナビノイドまたはオピオイドと相乗的に作用してもしなくてもよい1つ以上の追加の(または第2の)有効医薬成分をさらに含んでもよい。当該追加のAPIは、カンナビノイドでもオピオイドでもない。
【0109】
追加のAPIは、非オピオイド鎮痛剤、非ステロイド性抗炎症剤、抗偏頭痛剤、Cox-II阻害剤、β-アドレナリン遮断剤、抗けいれん剤、抗うつ剤、抗がん剤、中毒性障害の治療剤、パーキンソン病およびパーキンソン症候群の治療剤、不安治療剤、てんかん治療剤、発作治療剤、脳卒中治療剤、そう痒症治療剤、精神病治療剤、ALS治療剤、認知障害治療剤、片頭痛治療剤、嘔吐治療剤、ジスキネジア治療剤、うつ病治療剤、アルツハイマー病治療剤、他の神経変性疾患治療剤、炎症性疾患治療剤、多発性硬化症治療剤、クローン病治療剤、Naチャネル遮断薬、Caチャネル遮断薬、抗けいれん薬、またはそれらの混合物であってよい。
【0110】
有用な非オピオイド鎮痛剤の例としては、非ステロイド性抗炎症剤、例えば、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、メタミゾール、ノバミンスルホン、ピロプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラモプロフェン、ムロプロフェン、トリオキサプロフェン、スプロフェン、アミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、ブクロキシ酸、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラック、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザック、クリダナク、オクスピナク、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ジフルリサール、フルフェニサル、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム、ならびにそれらの薬学的に許容される塩、およびそれらの混合物等が含まれる。
【0111】
抗けいれん薬の例としては、プレガバリン、ガバペンチン、プリミドン、フェルバマット(felbamat)、トピラマット(topiramat)、ジアゼパム、ロラゼパム、フェノバルビタール、クロナゼパム、クロバザムがある。
【0112】
他の適切な非オピオイド鎮痛剤の例としては、以下の、非限定的な化学的クラスの鎮痛薬、解熱薬、非ステロイド性抗炎症剤:アスピリン、サリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サルサレート、ジフルニサル、アセチルサリチル酸、スルファサラジン、およびオルサラジンが含まれるサリチル酸誘導体類;アセトアミノフェンおよびフェナセチンが含まれるパラアミノフェノール誘導体類;インドメタシン、スリンダク、およびエトドラクが含まれるインドールおよびインデン酢酸類;トルメチン、ジクロフェナク、およびケトロラクが含まれるヘテロアリール酢酸類;メフェナム酸、およびメクロフェナム酸が含まれるアントラニル酸類(フェナメート);オキシカム(ピロキシカム、テノキシカム)、およびピラゾリジンジオン(フェニルブタゾン、オキシフェンタルタゾン)が含まれるエノール酸;並びに、ナブメトンが含まれるアルカノン類が挙げられる。
【0113】
NSAIDsのより詳細な説明については、ポール・A・インセル(Paul A. Insel)著『痛風の治療に使用される鎮痛解熱、抗炎症剤と薬剤(Analgesic Antipyretic and Antiinflammatory Agents and Drugs Employed in the Treatment of Gout)』グッドマン&グリマン ザ・ファーマコロジカル・ベーシス・オブ・セラピューティクス(Goodman&Gilman‘s The Pharmacological Basis of Therapeutics)617-57(ペリー・B.モリンホフ(Perry B. Molinhoff)、レイモンド・W・ルッドン(Raymond W. Ruddon)編、第9版、1996年)、およびグレン・R・ハンソン著『レミントンの鎮痛・解熱・抗炎症薬』ザ・サイエンス・アンド・プラクティス・オブ・ファーマシー(The Science and Practice of Pharmacy)第2巻、p1196-1221(A・R・ジェンナーロ(A.R. Gennaro)編、第19版、1995年)を参照されたい。適切なCox-II阻害剤ならびに5-リポキシゲナーゼ阻害剤、およびそれらの組み合わせは、米国特許第6,136,839号明細書に記載されている。有用なCox-II阻害剤の例としては、ロフェコキシブおよびセレコキシブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
薬学的に許容される賦形剤
「薬学的に許容される」という用語は、賦形剤が動物、特にヒトへの使用について公的規制機関によって承認されているか、一般に認められた薬局方に記載されていることを意味する。
【0115】
有用な水溶性希釈剤は、薬学的に許容されるものでなければならない。有用な希釈剤としては、糖類、ポリオール類、サッカライド類、多糖類、デキストレート、デキストリン類、デキストロース、フルクトース(アドバントース(ADVANTOSE) FS 95)、ラクチトール(フィンラックDC(FINLAC DC))、乳糖、エリスリトール、マルトース、イソマルト類、マルチトール、マルトデキストリン、ポリデキストロース、トレハロース、マンニトール(パーリトール(PEARLITOL) 300 DC、パーリトール(PEARLITOL) 400 DC、パーリトール(PEARLITOL) 500 DC、MA OGEM 2080、MA OGEM EZ、パーテック(PARTEK)M100、パーテック(PARTECK) M200、パーテック(PARTECK) M300)、ポリエチレングリコール、ソルビトール(パーテック(PARTECK) SI 150、パーテック(PARTECK) SI 400、パーテック(PARTECK) SI 450)、スクロース、キシリトールおよびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。例示的な希釈剤の1つはマンニトールである。
【0116】
パッチに包含可能な他の有用な賦形剤としては、着色剤、香料、コーティング剤、甘味剤、粘度剤、放出制御剤、粘膜接着剤、溶解促進剤、緩衝剤(例えば、リン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、ホウ酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩緩衝剤類)、浸透促進剤、放出調節剤、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
治療対象状態
最も広い定義では、上記のパッチは患者に対して医薬品として使用することができる。
【0118】
患者は動物または人間である。
【0119】
このパッチは、症状発生疾患、特にALSや癌等の重篤な慢性疾患に罹患している患者の症状負担の治療や予防に使用することができる。
【0120】
治療される症状は、痛み、抑うつ、不穏下肢症、吐き気、便秘、嘔吐、食欲低下または喪失、睡眠障害、そう痒症、不安、疲労、呼吸困難、四肢のしびれ、めまい、錯乱、記憶障害、多幸症、落ち着きのなさ、傾眠、嘔吐、腹痛、下痢、頻脈、胸痛、かゆみ、口渇、痙攣、発作、呼吸障害、全体的な活動性の低下、生活の質の低下、感染症の再発、炎症が含まれ、特に症状は、不安、痛み、全体的な活動性の低下および/または生活の質の低下から選択されるが、これらに限定されない。
【0121】
このパッチは、痛みの治療または予防にも使用できる。痛みは、多発性硬化症、アルツハイマー病、または他の神経変性疾患、パーキンソン病、運動ニューロン疾患、ウイルス感染などの感染症、外傷性脳損傷による炎症を含む炎症に起因してもよい。
【0122】
痛みは、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、線維筋痛症、癌、ALS、末梢神経障害による痛みを含む、急性または慢性の痛みであってもよい。
【0123】
痛みは、上部/首、肩、頸部および下部背痛を含む背部痛、神経障害性疼痛、癌またはALSに関連する痛みであるか、またはこれらを含む痛みを含んでもよい。
【0124】
このパッチは、副作用として痛みをもたらす疾患や状態に関連した痛みの治療や予防にも使用されてもよい。
【0125】
このパッチは、癌やALSのセカンドラインやサードライン、あるいは補助/アドオン治療にも使用されてもよい。
【0126】
症状が生じている疾患、特に感染症、特にウイルス感染症に罹患している患者における症状負担の治療または予防における使用のための、上記実施形態の何れかに記載のパッチであって、治療されるべき症状が、特に、痛み、抑うつ、食欲低下または喪失、睡眠障害、不安、疲労、呼吸困難、錯乱、記憶障害、傾眠、呼吸障害、痙攣、発作、ストレス、全体的な活動性の低下、生活の質の低下、感染症の再発、炎症に関連する痛み、およびこれらの2つ以上の組み合わせから選択される。
【0127】
本明細書で使用される、「治療」、「処置」等の用語は、一般に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。その効果は、疾患、状態、またはそれらの症状を完全にまたは部分的に予防するという点では予防的であってもよく、および/または疾患もしくは状態、および/または疾患もしくは状態に起因する症状などの副作用の部分的または完全な治癒という点では治療的であってもよい。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物、特にヒトの疾患または状態のあらゆる治療を対象とし、(a)疾患または状態の素因を有し得るが、まだ疾患または状態を有すると診断されていない被験体において、疾患または状態の発生を予防すること、(b)疾患または状態を阻害すること(例えば、その発症を阻止すること)、または(c)疾患または状態を緩和すること(例えば、疾患または病態の退行を引き起こすこと、1つ以上の症状の改善を提供すること)を含む。いずれの状態の改善も、当該分野で公知の標準的な方法および技術に従って容易に評価することができる。疾患の方法によって処置される被験体の集団には、望ましくない状態または疾患に罹患している被験体、および状態または疾患の発症リスクのある被験体が含まれる。本明細書で使用される「治療」は、特に、複数の症状、例えば、2、3、4、5、6、または7以上の症状の治療を指す。本明細書で使用される「治療」はまた、特に、他の薬を併用すること、および/または多剤併用の低減を意味する。
【0128】
「治療上有効な量」または「有効量」という用語は、それが投与される対象に所望の効果をもたらす用量または量を意味する。正確な用量または量は、治療の目的によって異なり、当業者であれば公知の技術を用いて確認できるであろう。「治療上有効な量」とは、疾患の症状を改善するために有効な量をいう。治療上有効な量は、予防が治療とみなされることがあるため、「予防上有効な量」であることもある。
【0129】
「十分な量」という用語は、所望の効果をもたらすのに十分な量を意味する。
【0130】
「改善」という用語は、疾患状態、例えば神経変性疾患状態の治療において、予防、重症度または進行の軽減、寛解、または治癒を含む、治療上有益な結果に関する。
【0131】
本明細書において、「補助/アドオン治療」という用語は、当業者によって理解されるとおりに使用される。特に、最初の治療が十分に有効ではないことが証明された場合に、前の治療の有効性を強化または促進するために行われるあらゆる治療を包含する。
【0132】
実際の投与量、投与速度、投与時間は、治療される疾患の性質と重症度に依存する。治療の処方、例えば投与量等の決定は、開業医やその他の医療専門家の責任の範囲内であり、通常、治療される疾患、個々の患者の状態、投与部位、投与方法、および開業医に知られているその他の要因を考慮する。
【0133】
いくつかの実施形態において、本発明に係るパッチは、特定の原疾患、損傷、障害、または状態を治療するために投与される。さらに、または代替的に、本発明に係るパッチは、疾患、損傷、障害、または状態に関連する痛みまたは不安を処置するために投与されてもよい。他の実施形態において、パッチは、原疾患、損傷、障害、または状態の二次的な症状を治療するために投与されてもよい。
【0134】
「予防する」という用語は、組成物を投与されない被験体と比較して、被験体の病状について症状の頻度を減少させるか、または発症を遅延させる医薬の投与を含むことが当技術分野で認識されている。例えば、痛みまたは不安を含むがこれらに限定されない、患者内の症状負担の予防には、例えば、未処置の対照集団に対して処置された集団の被験体によって感じられる痛みまたは不安感覚の程度を減少させること、または遅延させることが含まれる。
【0135】
一実施形態において、本発明によるパッチは、痛みの治療または予防のために使用される。痛みは、慢性疼痛または急性疼痛であってもよい。慢性疼痛または急性疼痛は、持続時間、および根本的なメカニズムが異なる。
【0136】
神経障害性疼痛および癌疼痛は、当技術分野で知られている慢性疼痛のサブカテゴリーである(ワン、ワン(Wang and Wang)著(2003年)アドバンスド・ドラッグ・デリバリー・レビューズ(Advanced Drug Delivery Reviews)55:p949-965)。神経障害性疼痛は、神経系(例えば、神経、脊髄、CNS、PNS)の損傷(例えば、疾患、損傷、加齢)に起因する。癌に関連した痛みは、実施された特定の治療法(放射線、化学療法、手術等)、または腫瘍の浸潤、神経の圧迫、腫瘍から分泌される物質に関連する。
【0137】
本発明のパッチによって治療される痛みは、侵害受容性、炎症性、または神経障害性であってもよい。侵害受容性の痛みとは、例えば、温度の変化や極端な変化、酸への暴露、化学物質への暴露、力への暴露、圧力への暴露の後に感じられる痛みである。炎症は、傷害や疾患に対する免疫系の反応と、マクロファージ、肥満細胞、好中球、その他の免疫系細胞の動員によって生じる。炎症は、サイトカインやその他の因子(ヒスタミン、セロトニン、ブラジキニン、プロスタグランジン、ATP、H+、神経成長因子、TNFa、エンドセリン、インターロイキン等)の放出とともに、発熱、腫脹、痛みを引き起こす場合がある。炎症の痛みに対する標準的な治療には、Cox2阻害薬やオピオイドが含まれる。神経障害性疼痛は、神経系(神経、脊髄、CNS、PNS等)の損傷(疾患、傷害、加齢等)から生じる。神経障害性疼痛の治療には、三環系抗うつ薬、抗けいれん薬、Na+チャネル遮断薬、NMDA受容体拮抗薬、およびオピオイドが有用である。
【0138】
「痛みの治療または予防」には、ALSや癌等の重篤な慢性疾患を有する患者の症状負担の中の1つの症状としての痛みの治療も含まれる。特定の実施形態において、痛みは、感染症、心臓病、腎臓病、炎症に起因する。ここで、炎症には、多発性硬化症、ALS、アルツハイマー病または他の神経変性疾患、炎症性疾患、パーキンソン病、運動ニューロン疾患および外傷性脳損傷による炎症が含まれる。痛みは、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、線維筋痛症、癌、ALS、末梢神経障害による慢性疼痛を含む急性および/または慢性の痛みであってもよい。
【0139】
一実施形態において、痛みは、運動ニューロン疾患、神経変性疾患、多発性硬化症、線維筋痛症、癌、末梢神経障害による痛みを含む急性または慢性の痛みである。
【0140】
一実施形態において、痛みは、上部/首、肩、頸部および下部背痛を含む背部痛、神経障害性疼痛、癌に関連する痛みである。
【0141】
一実施形態において、痛みの治療または予防は、副作用として痛みをもたらす疾患または状態、例えば癌やALSのセカンドラインやサードライン、あるいは補助/アドオン治療に関するものである。
【0142】
別の実施形態において、パッチは、緑内障、神経痛、体性痛、慢性疼痛、神経障害性疼痛、陣痛、炎症、筋痙縮(脊髄損傷や多発性硬化症に伴うもの等)、運動障害(ジストニア、パーキンソン病、ハンチントン病、トゥレット症候群に伴うもの等)、片頭痛、てんかん、ALS、アルツハイマー病や他の神経変性疾患、および炎症性疾患からなる群から選択される状態を治療または予防するために使用されてもよい。
【0143】
さらなる実施形態では、痛みは、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、線維筋痛症、癌、ALS、および末梢神経障害による慢性疼痛を含む慢性疼痛、急性疼痛、神経障害性疼痛、慢性疾患による痛み、侵害受容性疼痛、多発性硬化症、アルツハイマー病またはその他の神経変性疾患、パーキンソン病、運動ニューロン疾患、および外傷性脳損傷による炎症を含む炎症性疼痛、神経障害性疼痛、化学療法誘発性疼痛、または内臓痛からなる群から選択される。
【0144】
本発明によるパッチはまた、上記の症状負担の一部であるという形でも、不安を治療するために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、治療される不安は、末期疾患を有する患者または慢性疾患を有する患者に関連する。いくつかの実施形態において、不安は全般性不安障害であってもよい。いくつかの実施形態において、不安は、社会不安、1つ以上の特定の恐怖症、パニック障害、強迫性障害、および心的外傷後ストレス障害からなる群から選択されてもよい。
【0145】
経粘膜パッチの調製
カンナビノイドはそれが溶媒和または溶解する溶媒と混合される。本明細書で使用される「溶媒和する」または「溶媒和」とは、溶媒の分子が溶質(ここではカンナビノイド)の分子またはイオンと引き合い、会合する過程を指す。溶媒和は、溶質、すなわちカンナビノイドを溶媒で取り囲むプロセスである。それには、濃度勾配を均一にし、溶質を溶媒中に均一に分布させることが含まれる。溶媒は薬学的に許容される溶媒であってもよい。有用な溶媒の非限定的な例としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール、置換ポリエチレングリコール類、炭酸プロピレン、エタノール、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、置換ポリエチレングリコール類、ビサボロール、グリセリン、ミネラルオイル、オレイン酸エチル、オレイン酸、脂肪酸エステル類、乳酸、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、炭酸プロピレン、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、ペリリルアルコール、セバシン酸ジブチル、フェニエチルアルコール、n-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、2-ピロリドン、スクワラン、動物油類、植物油類、ジメチルイソソルビド、水添植物油類、ミリスチン酸イソプロピル、リモネン、パルミチン酸イソプロピル、グリコフロール、テルペン類、エッセンシャルオイル類、アルコール類、エタノール等のジオール類、ポリオール類、シリコーンオイル類、およびそれらの組み合わせが挙げられる。例示的な溶媒の1つは、アルコールエタノールである。溶媒の非限定的な範囲は、約0.5%~約95.0%、約1%~約80%、約5%~約70%、または約15%~約35%の重量/カンナビノイドに対する溶媒重量である。
【実施例1】
【0146】
PVP(13%重量/体積)とTHC/CBD(重量/重量、比1:1)を水/エタノール(1:1体積/体積)に溶解し、エレクトロスピニング溶液を調製する。一晩溶解した後、均一な溶液が形成されるまで溶液を攪拌する。この溶液を超音波槽で短時間脱気し、ハミルトンガラスシリンジ(10mL)に充填し、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製ルアーロックアダプターとPTFEチューブを介してステンレス製紡糸針と接続する。この溶液を、15kV、2mL/時の流速で、回転金属ドラムコレクター(250RPM)で2時間エレクトロスピニングした。繊維はコレクターから取り出され、アルミホイルに包まれ、さらに使用するまで4℃のデシケーターに保管される。
【実施例2】
【0147】
生体適合性ポリマーと治療有効量の医薬有効成分(THC/CBD)とを含むエレクトロスパン繊維を含む以下の経粘膜パッチ組成物は、上記実施例1と同様または類似の方法で調製した。
【0148】
処方1
【表1】
【0149】
処方2
【表2】
【0150】
処方3
【表3】
【0151】
処方4
【表4】
【国際調査報告】