(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ユニバーサル受容体免疫細胞療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240719BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240719BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240719BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240719BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240719BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240719BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240719BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240719BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240719BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240719BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240719BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240719BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240719BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
A61K35/17
C12N15/13 ZNA
C12N15/12
C12N15/62 Z
C07K19/00
C07K16/30
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/725
C07K14/705
C12N15/11 Z
C12N5/0783
C12P21/02 C
C07K14/00
A61K45/00
A61K47/68
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504944
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 AU2022050795
(87)【国際公開番号】W WO2023004461
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523436296
【氏名又は名称】プレシャント セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】ヤトミ-クラーク,スティーブン エル.
(72)【発明者】
【氏名】リム,レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】ダーシー,フィリップ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】シェリー,ダニエル エイ.
(72)【発明者】
【氏名】セク,ケビン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA05
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA92Y
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC31
4C076EE59
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZB31
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB11
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB31
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045BA54
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ユニバーサル免疫受容体細胞ベースの療法のための方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫細胞療法から利益を得るであろう対象において疾患を治療する方法であって、
i)ユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を前記対象に投与することであって、前記ユニバーサル免疫受容体が、前記疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もある、投与することと、
ii)ステップi)の後7日以内に少なくとも2回、前記分子を前記対象に投与することと、
iii)ステップii)の少なくとも21日後に、前記対象を前記治療に対する応答性について分析することと、
iv)前記対象が前記治療に応答しているが、前記疾患が依然として検出可能である場合、ステップi)及びii)を繰り返すことと、を含む、方法。
【請求項2】
対象において腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激する方法であって、
i)ユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を前記対象に投与することであって、前記ユニバーサル免疫受容体が、前記腫瘍と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合している場合もしていない場合もある、投与することと、
ii)ステップi)の後7日以内に少なくとも2回、前記分子を前記対象に投与することと、
iii)ステップii)の少なくとも約21日後に、前記対象を前記治療に対する応答性について分析することと、
iv)前記対象が前記治療に応答しているが、前記腫瘍が依然として検出可能である場合、ステップi)及びii)を繰り返すことと、を含む、方法。
【請求項3】
前記分子が、ステップi)で前記ユニバーサル免疫受容体に結合しない、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記分子が、ステップi)で前記ユニバーサル免疫受容体に結合する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
ステップii)で、前記分子が2回投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記分子が、ステップi)の後3日目及び6日目に投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分子が、ステップi)の後に3回投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記分子が、ステップi)の後1日目、4日目、及び6日目に投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップi)の21日~49日後に、前記対象が、前記治療に対する応答性について分析される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記治療が、ステップi)の前に少なくとも1回、及びステップi)の後7日以内に少なくとも2回、前記分子を前記対象に投与することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記治療が、ステップi)の前に2回、及びステップi)の後7日以内に少なくとも2回、前記分子を前記対象に投与することを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記分子が、異なる用量、好ましくは、約0.25mg/m
2~2.0mg/m
2の用量、約5mg/m
2~25mg/m
2の用量、及び約50mg/m
2~100mg/m
2の用量で投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップiv)が、ステップi)の前記分子と同じ抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあるユニバーサル免疫受容体を投与することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップiv)が、ステップi)の前記分子と異なる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあるユニバーサル免疫受容体を投与することを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記分子が、前記疾患と関連付けられる2つ以上の抗原、好ましくは、前記疾患と関連付けられる2つの抗原を結合するドメインを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
免疫細胞療法から利益を得るであろう対象において疾患を治療する方法であって、
i)ユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を投与することであって、前記ユニバーサル免疫受容体が、前記疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もある、投与することと、
ii)ステップi)の後に14日~28日間、少なくとも2又は3日ごとに、前記分子を前記対象に投与することと、
iii)前記対象が前記治療に応答しているが、前記疾患が依然として検出可能である場合、ステップi)及びii)を繰り返すことと、を含む、方法。
【請求項17】
対象において腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激する方法であって、
i)ユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を前記対象に投与することであって、前記ユニバーサル免疫受容体が、前記腫瘍と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合している場合もしていない場合もある、投与することと、
ii)ステップi)の後に約14日~約28日間、少なくとも2又は3日ごとに、前記分子を前記対象に投与することと、
iii)前記対象が前記治療に応答しているが、前記腫瘍が依然として検出可能である場合、ステップi)及びii)を繰り返すことと、を含む、方法。
【請求項18】
前記分子が、ステップi)で前記ユニバーサル免疫受容体に結合しない、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記分子が、ステップi)で前記ユニバーサル免疫受容体に結合する、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項20】
前記分子が、ステップi)の後に、3日ごとに投与される、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記分子が、ステップi)の後に21日間、3日ごとに投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記分子が、ステップi)の前に少なくとも1回、及びステップi)の後に約14~約28日間、2日又は3日ごとに、対象に投与される、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記分子が、ステップi)の前に2回、及びステップi)の後に約14~約28日間、2日又は3日ごとに、対象に投与される、請求項16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激することが、前記対象のサイトカインレベルを増加させること、好ましくは、インターフェロンγ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子(TNF)、及びインターロイキン-2(IL-2)のうちの1つ以上又は全部のレベルを増加させることを含む、請求項2又は17に記載の方法。
【請求項25】
ステップiii)が、ステップi)の前記分子と同じ抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあるユニバーサル免疫受容体を投与することを含む、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
ステップiii)が、ドメインを含み、ステップi)の前記分子と異なる抗原を結合する分子に共有結合する場合もしない場合もあるユニバーサル免疫受容体を投与することを含む、請求項16~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記分子が、前記疾患と関連付けられる2つ以上の抗原、好ましくは、前記疾患と関連付けられる2つの抗原を結合するドメインを含む、請求項16~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記治療が、前記治療を受けていない対象と比較したときに、前記対象の生存率を増加させる、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記対象を、疾患又はがんを有するか又は有する疑いがあると診断するステップを更に含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
任意選択で、化学療法、放射線療法、手術、骨髄移植、薬物療法、凍結アブレーション、又は高周波アブレーションからなる群から選択される追加の治療剤の投与を更に含み、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ユニバーサル免疫受容体が、細胞外ヒンジ領域に結合したSpyCatcher又はSpyTag細胞外結合ドメインを含み、前記細胞外結合ドメインが同様にして膜貫通ドメインに結合し、前記膜貫通ドメインが同様にして免疫細胞受容体細胞内シグナル伝達ドメインに結合する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ユニバーサル免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインが、共刺激分子を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記SpyCatcher細胞外結合ドメインが、前記細胞外ヒンジドメインに結合する、請求項31又は請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記SpyTag細胞外結合ドメインが、前記細胞外ヒンジドメインに結合する、請求項31又は請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記分子が、SpyCatcher又はSpyTagと前記ドメインとを含む、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ドメインが、抗体、抗体断片、scFv、タンパク質足場、ペプチド、リガンド、オリゴヌクレオチド、アプタマー、標識剤、腫瘍抗原、自己抗原、ウイルス抗原、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記分子がSpyTagを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記分子がSpyCatcherを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記分子が、約0.25mg/m
2~2.0mg/m
2の用量、約5mg/m
2~25mg/m
2の用量、又は約50mg/m
2~100mg/m
2の用量で投与される、請求項1~11又は13~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記免疫細胞が、T細胞、NK細胞、樹状細胞、骨髄細胞、マクロファージ、幹細胞、又はそれらの組み合わせである、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記T細胞が、CD3+T細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記T細胞が、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、T調節細胞、又はiNKT細胞である、請求項40又は請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記免疫細胞の約10%~約50%が、CD8+細胞である、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記方法により、CD45RO+CD45RA-Tエフェクターメモリー細胞の富化及び/又はCD45RA+CD45RO-Tセントラルメモリー細胞の富化がもたらされる、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記細胞が自己細胞である、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記疾患が、がん、感染症、又は炎症性疾患である、請求項1、3~16、又は18~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記がんが、腎細胞がん、膵臓がん、頭頸部がん、前立腺がん、膠芽腫、悪性神経膠腫、骨肉腫、大腸がん、胃がん、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、滑膜肉腫、甲状腺がん、乳がん、黒色腫、白血病、急性骨髄性白血病(AML)、又はリンパ腫である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記対象が哺乳動物である、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記対象がヒトである、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
免疫細胞療法から利益を受け得る対象における対象において疾患を治療するための医薬品を製造するためにユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を使用することであって、前記ユニバーサル免疫受容体が、前記疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、前記分子が、前記対象に、前記細胞の投与後7日以内に少なくとも2回投与されることになり、7日の後少なくとも21日間、前記対象が前記治療への応答性について分析されることになり、前記対象が前記治療に応答しているが、前記疾患が依然として検出可能である場合、前記治療が繰り返される、使用すること。
【請求項51】
対象における腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激するための医薬品を製造するためにユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を使用することであって、前記ユニバーサル免疫受容体が、前記腫瘍と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、前記分子が、前記対象に、前記細胞の投与後7日以内に少なくとも2回投与されることになり、前記7日の後少なくとも21日間、前記対象が前記治療への応答性について分析されることになり、前記対象が前記治療に応答しているが、前記腫瘍が依然として検出可能である場合、前記治療が繰り返される、使用すること。
【請求項52】
免疫細胞療法の利益を受け得る対象における疾患を治療するための医薬品を製造するためにユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を使用することであって、前記ユニバーサル免疫受容体が、前記疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、前記分子が、前記対象に、前記細胞の投与の後に14日~28日間、2又は3日ごとに投与され、前記対象が前記治療に応答しているが、前記疾患が依然として検出可能である場合、前記治療が繰り返される、使用すること。
【請求項53】
対象における腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激するための医薬品を製造するためにユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を使用することであって、前記ユニバーサル免疫受容体が、前記腫瘍と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、前記分子が、前記対象に、前記細胞の投与の後に14日~28日間、2又は3日ごとに投与され、前記対象が前記治療に応答しているが、前記腫瘍が依然として検出可能である場合、前記治療が繰り返される、使用すること。
【請求項54】
配列番号5若しくは配列番号6として提供されるアミノ酸の配列、又は配列番号5及び配列番号6の一方若しくは両方と少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列を含む実質的に精製された及び/又は組換えのポリペプチドであって、SpyCatcherを含むタンパク質に共有結合し、がん細胞上でHER2受容体を結合することができる、ポリペプチド。
【請求項55】
配列番号7及び/若しくは配列番号10として提供される又は配列番号8及び/若しくは配列番号9として提供されるアミノ酸の配列、あるいはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列を含む実質的に精製された及び/あるいは組換えのポリペプチドであって、SpyCatcherを含むタンパク質に共有結合し、がん細胞上でEGFRvIII受容体を結合することができる、ポリペプチド。
【請求項56】
配列番号11及び/若しくは配列番号14として提供される又は配列番号12及び/若しくは配列番号13として提供されるアミノ酸の配列、あるいはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列を含む実質的に精製された及び/あるいは組換えのポリペプチドであって、SpyCatcherを含むタンパク質に共有結合し、がん細胞上でIL-13Ra2受容体を結合することができる、ポリペプチド。
【請求項57】
配列番号15及び/若しくは配列番号16として提供されるアミノ酸の配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列を含む実質的に精製された及び/又は組換えのポリペプチドであって、SpyCatcherを含むタンパク質に共有結合し、がん細胞上でCD33受容体を結合することができる、ポリペプチド。
【請求項58】
配列番号17及び/若しくは配列番号18として提供されるアミノ酸の配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列を含む実質的に精製された及び/又は組換えのポリペプチドであって、SpyCatcherを含むタンパク質に共有結合し、がん細胞上でC型レクチン様(CLL1)受容体を結合することができる、ポリペプチド。
【請求項59】
請求項54~58のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする単離された及び/又は外因性のポリヌクレオチド。
【請求項60】
請求項59に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項61】
請求項59に記載のポリヌクレオチド及び/又は請求項60に記載のベクターを含む、単離されたトランスジェニック細胞。
【請求項62】
請求項61に記載の細胞を培養することと、前記ポリペプチドを前記細胞又は培養培地から精製することと、を含む、請求項59に記載のポリペプチドを産生させる方法。
【請求項63】
疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあるユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を含む医薬組成物であって、前記ドメインが、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列のうちの1つ以上又は全部を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、2021年7月28日に出願されたAU2021/902320からの優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ユニバーサル免疫受容体細胞ベースの療法のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
血液がんに対する細胞免疫療法としてのキメラ抗原受容体(CAR)T細胞などのキメラ免疫ベースの細胞療法の成功にもかかわらず、これらの療法は、発生する可能性がある固有の合併症を有することがあり、これにより治療有効性が制限され得る。主な毒性は、治療可能なB細胞無形成からより重篤なサイトカイン放出症候群及び神経毒性に及び得る。更に、従来の免疫細胞療法は、これまでのところ、固形腫瘍を治療するための有効性が限られていることが示されている。これは、免疫抑制性腫瘍微小環境(TME)、非効率的な細胞輸送、及び抗原発現の不均一性を含む多くの要因に起因する。固形悪性腫瘍と血液悪性腫瘍との両方の背景において、腫瘍逃避に起因して再発が一般的である。これらは全て、細胞免疫療法において現在満たされていないニーズであり、これらは、免疫細胞を発現するユニバーサル免疫受容体により対処することができる。
【0004】
ユニバーサル免疫受容体(UIR)は、(i)細胞外アダプタータンパク質(SpyCatcherなど)を有する従来のCARと同様の標準的な細胞内シグナル伝達ドメインと、(ii)アダプタータンパク質(SpyTAGなど)にコンジュゲートした標的化抗体との2つの別個の構成要素で構成される(WO2017/112784)。次いで、標的化抗体は、腫瘍抗原及びSpyCatcher受容体上の細胞外アダプターを標的化するための免疫学的架橋として機能して、抗原特異的細胞応答を誘発することができる。CARの抗原認識ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインから別個の個性要素に切り離すことにより、その後、同じUIRを有する1つ以上の異なる抗原を標的にして、免疫逃避又は腫瘍不均一性を克服し、用量調整又は離脱を行って、投与後のUIR免疫細胞機能を調節することで、養子免疫療法の安全性を更に増加させることが可能になる。
【0005】
がんなどの疾患をより効果的かつ確実に治療すると同時に、現在のCAR Tなどの療法で遭遇する一般的な問題を最小限に抑えるために、改善されたユニバーサル免疫受容体細胞ベースの療法が必要であり。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ユニバーサル免疫受容体系を用いて対象を効果的に治療するための方法を提供する。CAR T細胞などの組換え免疫細胞の持続は、エピジェネティックな変化をもたらす一過性の休止により達成され得る。本発明の場合、これは、タグ付き結合剤の定期的な投薬及び投薬の中断により達成される。
【0007】
ある態様では、本発明は、免疫細胞療法から利益を得るであろう対象において疾患を治療する方法であって、
i)ユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を対象に投与することであって、ユニバーサル免疫受容体が、疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もある、投与することと、
ii)ステップi)の後7日以内に少なくとも2回、分子を対象に投与することと、
iii)ステップii)の少なくとも約21日後に、対象を治療に対する応答性について分析することと、
iv)対象が治療に応答しているが、疾患が依然として検出可能である場合、ステップi)及びii)を繰り返すことと、を含む、方法、を提供する。
【0008】
別の態様では、対象において腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激する方法であって、
i)ユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を対象に投与することであって、ユニバーサル免疫受容体が、腫瘍と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合している場合もしていない場合もある、投与することと、
ii)ステップi)の後7日以内に少なくとも2回、分子を対象に投与することと、
iii)ステップii)の少なくとも約21日後に、対象を治療に対する応答性について分析することと、
iv)対象が治療に応答しているが、腫瘍が依然として検出可能である場合、ステップi)及びii)を繰り返すことと、を含む、方法、を提供する。
【0009】
ある実施形態では、本分子は、ステップi)でユニバーサル免疫受容体に結合しない。
【0010】
ある実施形態では、本分子は、ステップi)でユニバーサル免疫受容体に結合する。
【0011】
ある実施形態では、ステップii)で、本分子は2回投与される。ある実施形態では、本分子は、ステップi)の後3日目及び6日目に投与される。
【0012】
ある実施形態では、ステップii)で、本分子は3回投与される。ある実施形態では、本分子は、ステップi)の後1日目、4日目、及び6日目に投与される。
【0013】
ある実施形態では、ステップii)の約21日~約49日後に、対象を治療に対する応答性について分析する。ある実施形態では、ステップii)の約21日後に、対象を治療に対する応答性について分析する。ある実施形態では、ステップii)の約49日後に、対象を治療に対する応答性について分析する。
【0014】
ある実施形態では、ステップii)は、ステップi)の前に少なくとも1回、及びステップi)の後7日以内に少なくとも2回、本分子を対象に投与することを含む。別の実施形態では、ステップii)は、ステップi)の前に2回、及びステップi)の後7日以内に少なくとも2回、本分子を対象に投与することを含む。
【0015】
ある実施形態では、ステップ(ii)は、次の投薬レジメンのうちの1つを含む:
(a)ステップi)の免疫細胞の投与後7日以内に、24~48時間の時間枠内で投薬し、任意選択で繰り返すこと、
(b)ステップi)の免疫細胞の投与後7日以内に、24時間ごとに投薬すること、
(c)ステップi)の免疫細胞の投与後7日以内に、所与の時間枠内で治療を一時停止し、次の時間枠内で治療を再開し、次の時間枠内で治療を一時停止することを含む、断続的に投薬すること。
【0016】
上記(a)、(b)、又は(c)のうちのいずれかにおいて、ステップi)で投与されるUIR細胞は、非武装(unarmed)であっても事前武装(prearmed)であってもよい。
【0017】
別の実施形態では、本分子は、異なる用量で投与される。一例では、異なる用量は、約0.75mg/m2、約15mg/m2の用量、及び約75mg/m2の用量である。別の実施形態では、異なる用量は、約0.25mg/m2、約0.5mg/m2、約0.75mg/m2、約1mg/m2、約2.5mg/m2、約5.0mg/m2、約7.5mg/m2、約10mg/m2、約12.5mg/m2、約15.0mg/m2、約17.5mg/m2、約20mg/m2、約22.5mg/m2、約25mg/m2、約35mg/m2、約45mg/m2、約55mg/m2、約65mg/m2、約70mg/m2、約75mg/m2、約80mg/m2、約85mg/m2、約90mg/m2、約95mg/m2以上のうちのいずれか1つ以上を含んでもよい。別の実施形態では、用量は、約0.25mg/m2~2.0mg/m2、約0.5mg/m2~1.5mg/m2、又は約0.5mg/m2~1.0mg/m2であってもよい。別の実施形態では、用量は、約5mg/m2~25mg/m2、約10mg/m2~20mg/m2、又は約12mg/m2~17mg/m2であってもよい。別の実施形態では、用量は、約50mg/m2~100mg/m2、約60mg/m2~90mg/m2、又は約70mg/m2~80mg/m2であってもよい。
【0018】
別の実施形態では、対象に投与される分子の異なる用量は、約1.6の体表面積(BSA)につき、約0.25mg、約24mg、又は約120mgを含む。別の例では、約1.6のBSAにつき、対象に投与される分子の異なる用量は、約0.1mg、約0.15mg、約0.25mg、約0.35mg、約0.45mg、約0.6mg、約12mg、約16mg、約20mg、約24mg、約28mg、約32mg、約36mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg以上のうちの1つを含む。別の実施形態では、対象に投与される分子の異なる用量は、約0.1mg~2.0mg、約0.2mg~1.5mg、又は約0.2mg~0.75mgを含む。別の実施形態では、対象に投与される分子の異なる用量は、約4mg~36mg、約12mg~32mg、又は約20mg~28mgを含む。別の実施形態では、分子の異なる用量は、約60mg~160mg、約80mg~140mg、又は約100mg~130mgを含む。
【0019】
ある実施形態では、ステップiv)は、ステップi)の分子と同じ抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあるユニバーサル免疫受容体を投与することを含む。別の実施形態では、ステップiv)は、ステップi)の分子と異なる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあるユニバーサル免疫受容体を投与することを含む。
【0020】
ある実施形態では、本分子は、疾患と関連付けられる2つ以上の抗原を結合するドメインを含む。ある実施形態では、本分子は、疾患、好ましくはがんと関連付けられる2つの抗原を結合するドメインを含む。別の実施形態では、本分子は、疾患、好ましくはがんと関連付けられる3つの抗原を結合するドメインを含む。
【0021】
別の態様では、本発明は、免疫細胞療法から利益を得るであろう対象において疾患を治療する方法であって、
i)ユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を対象に投与することであって、ユニバーサル免疫受容体が、疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もある、投与することと、
ii)ステップi)の後に約14日~約28日間、少なくとも2又は3日ごとに、分子を対象に投与することと、
iii)対象が治療に応答しているが、疾患が依然として検出可能である場合、ステップi)及びii)を繰り返すことと、を含む、方法、を提供する。
【0022】
別の態様では、対象において腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激する方法であって、
i)ユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を対象に投与することであって、ユニバーサル免疫受容体が、腫瘍と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合している場合もしていない場合もある、投与することと、
ii)ステップi)の後に約14日~約28日間、少なくとも2又は3日ごとに、分子を対象に投与することと、
iii)対象が治療に応答しているが、腫瘍が依然として検出可能である場合、ステップi)及びii)を繰り返すことと、を含む、方法、を提供する。
【0023】
上記の態様のある実施形態では、本分子は、ステップi)でユニバーサル免疫受容体に結合しない。
【0024】
上記の態様のある実施形態では、本分子は、ステップi)でユニバーサル免疫受容体に結合する。
【0025】
上記の態様のある実施形態では、本分子は、ステップi)の後に、3日ごとに投与される。
【0026】
上記の態様のある実施形態では、本分子は、ステップi)の後に約21日間、3日ごとに投与される。
【0027】
上記の態様のある実施形態では、対象は、ステップii)の完了から7日以内、5日以内、3日以内、又は1日以内に、治療に対する応答性について分析される。
【0028】
ある実施形態では、ステップi)は、ステップi)の免疫細胞の投与の前に少なくとも1回、及びステップi)の後に約14日~約28日間、2日又は3日ごとに、分子を対象に投与することを含む。ある実施形態では、ステップii)は、ステップi)の前に2回、及びステップi)の後に約14日~約28日間、2日又は3日ごとに、分子を対象に投与することを含む。
【0029】
ある実施形態では、腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激することは、対象のサイトカインレベルを増加させること、好ましくは、インターフェロンγ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子(TNF)、及びインターロイキン-2(IL-2)のうちの1つ以上又は全部のレベルを増加させることを含む。
【0030】
ある実施形態では、ステップiii)は、ステップi)の分子と同じ抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあるユニバーサル免疫受容体を投与することを含む。別の実施形態では、ステップiii)は、ステップi)の分子と異なる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあるユニバーサル免疫受容体を投与することを含む。
【0031】
ある実施形態では、本分子は、疾患と関連付けられる2つ以上の抗原を結合するドメインを含む。ある実施形態では、本分子は、疾患と関連付けられる2つの抗原を結合するドメインを含む。別の実施形態では、本分子は、疾患と関連付けられる3つの抗原を結合するドメインを含む。
【0032】
ある実施形態では、本治療により、対象における生存期間が増加する。ある実施形態では、生存期間は、治療を受けていない対象と比較して増加する。ある実施形態では、生存期間は、治療を受けていない対象と比較して、3、6、9、12、24、36、48、60、72、84、96か月以上増加する。
【0033】
ある実施形態では、対象は、がん、感染症、又は炎症性疾患などの疾患を有すると診断されているか、又は有する疑いがある。したがって、ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象を、がん、感染症、又は炎症性疾患などの疾患を有するか、又は有する疑いがあると診断するステップを含む。
【0034】
ある実施形態では、本方法又は使用は、任意選択的に、化学療法、放射線療法、手術、骨髄移植、薬物療法、凍結アブレーション、又は高周波アブレーションからなる群から選択される追加の治療剤の投与を更に含む。
【0035】
ある実施形態では、本ユニバーサル免疫受容体は、細胞外ヒンジ領域に結合したSpyCatcher又はSpyTag細胞外結合ドメインを含み、細胞外結合ドメインが同様にして膜貫通ドメインに結合し、膜貫通ドメインが同様にして免疫細胞受容体細胞内シグナル伝達ドメインに結合する。
【0036】
ある実施形態では、ユニバーサル免疫受容体細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子を更に含む。
【0037】
ある実施形態では、SpyCatcher細胞外結合ドメインは、細胞外ヒンジドメインに結合する。代替的な実施形態では、SpyTag細胞外結合ドメインは、細胞外ヒンジドメインに結合する。
【0038】
ある実施形態では、分子は、SpyCatcher又はSpyTagとドメインとを含む。
【0039】
ある実施形態では、ドメインは、抗体、抗体断片、scFv、タンパク質足場、ペプチド、リガンド、オリゴヌクレオチド、アプタマー、腫瘍抗原、自己抗原、ウイルス抗原、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。ある実施形態では、ドメインは、抗体又は抗体断片である。
【0040】
ある実施形態では、分子は、SpyTagを含む。代替的な実施形態では、分子は、SpyCatcherを含む。
【0041】
代替的な実施形態では、上述のSpyTygはSnoopTagであり、上述のSpyCatcherはSnoopCatcherである。
【0042】
ある実施形態では、分子は、細胞外結合ドメインを結合する第1のドメインと、疾患と関連付けられる抗原を結合する第2のドメインとを含むポリペプチドである。ある実施形態では、分子は、標識剤である第3のドメインを更に含む。
【0043】
ある実施形態では、分子は、約0.25mg/m2、約0.5mg/m2、約0.75mg/m2、約1mg/m2、約2.5mg/m2、約5.0mg/m2、約7.5mg/m2、約10mg/m2、約12.5mg/m2、約15.0mg/m2、約17.5mg/m2、約20mg/m2、約22.5mg/m2、約25mg/m2、約35mg/m2、約45mg/m2、約55mg/m2、約65mg/m2、約70mg/m2、約75mg/m2、約80mg/m2、約85mg/m2、約90mg/m2、約95mg/m2以上の用量で対象に投与される。別の実施形態では、対象に投与される分子の用量は、約0.25mg/m2~2.0mg/m2、約0.5mg/m2~1.5mg/m2、又は約0.5mg/m2~1.0mg/m2である。別の実施形態では、対象に投与される分子の用量は、約5mg/m2~25mg/m2、約10mg/m2~20mg/m2、又は約12mg/m2~17mg/m2である。別の実施形態では、対象に投与される分子の用量は、約50mg/m2~100mg/m2、約60mg/m2~90mg/m2、又は約70mg/m2~80mg/m2である。好ましくは、対象に投与される分子の用量は、約0.75mg/m2、約15mg/m2、又は約75mg/m2である。
【0044】
ある実施形態では、約1.6の体表面積(BSA)につき、分子は、約0.1mg、約0.15mg、約0.25mg、約0.35mg、約0.45mg、約0.6mg、約12mg、約16mg、約20mg、約24mg、約28mg、約32mg、約36mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg以上の用量で対象に投与される。別の実施形態では、対象に投与される分子の用量は、約0.1mg~2.0mg、約0.2mg~1.5mg、又は約0.2mg~0.75mgである。別の実施形態では、対象に投与される分子の用量は、約4mg~36mg、約12mg~32mg、又は約20mg~28mgである。別の実施形態では、対象に投与される分子の用量は、約60mg~160mgg、約80mg~140mg、又は約100mg~130mgである。好ましくは、対象に投与される分子の用量は、約0.25mg、約24mg、又は約120mgである。当業者であれば、異なるBSAに対する等価用量を計算する方法を理解する。
【0045】
ある実施形態では、免疫細胞は、T細胞、NK細胞、樹状細胞、骨髄細胞、マクロファージ、幹細胞、又はそれらの組み合わせである。
【0046】
ある実施形態では、T細胞は、CD3+T細胞である。ある実施形態では、T細胞は、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、T調節細胞、又はiNKT細胞である。
【0047】
ある実施形態では、本明細書に記載の方法により、CD4+及び/又はCD8+T細胞の富化が提供される。別の実施形態では、免疫細胞の少なくとも約10%がCD8+細胞である。ある実施形態では、免疫細胞の少なくとも約20%がCD8+細胞である。ある実施形態では、免疫細胞の少なくとも約30%がCD8+細胞である。ある実施形態では、免疫細胞の少なくとも約40%がCD8+細胞である。ある実施形態では、免疫細胞の少なくとも約50%がCD8+細胞である。ある実施形態では、免疫細胞の少なくとも約60%がCD8+細胞である。ある実施形態では、免疫細胞の約10%~約60%がCD8+細胞である。ある実施形態では、免疫細胞の約10%~約50%がCD8+細胞である。ある実施形態では、免疫細胞の約10%~約40%がCD8+細胞である。ある実施形態では、免疫細胞の約10%~約30%がCD8+細胞である。
【0048】
別の実施形態では、本明細書に記載の方法によりCD45RO+CD45RA-Tエフェクターメモリー細胞の富化が提供される。別の実施形態では、本明細書に記載の方法には、CD45RA+CD45RO-Tセントラルメモリー細胞の富化が含まれる。
【0049】
本発明により分子に共有結合したユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞の投与が提供される実施形態では、本方法により、脾臓及び/又は腫瘍におけるCD8+ユニバーサル免疫受容体細胞が増加する。
【0050】
ある実施形態では、細胞は、自己細胞である。代替的な実施形態では、細胞は、同種異系である。
【0051】
ある実施形態では、疾患は、がん、感染症、又は炎症性疾患である。
【0052】
本発明を使用して治療され得るがんの例には、腎細胞がん、膵臓がん、頭頸部がん、前立腺がん、膠芽腫、悪性神経膠腫、骨肉腫、大腸がん、胃がん、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、滑膜肉腫、甲状腺がん、乳がん、黒色腫、白血病、急性骨髄性白血病(AML)、又はリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
ある実施形態では、対象が、哺乳動物である。ある実施形態では、対象が、ヒトである。
【0054】
本発明は、免疫細胞療法から利益を受け得る対象における対象において疾患を治療するための医薬品を製造するためにユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を使用することであって、本ユニバーサル免疫受容体が、疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、分子が、対象に、細胞の投与後7日以内に少なくとも2回投与されることになり、7日の後少なくとも21日間、対象が治療への応答性について分析されることになり、対象が治療に応答しているが、疾患が依然として検出可能である場合、治療が繰り返される、使用すること、を更に提供する。
【0055】
また、免疫細胞療法から利益を受け得る対象における対象において疾患を治療することに使用するためのユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞、本ユニバーサル免疫受容体が、疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、分子が、対象に、細胞の投与後7日以内に少なくとも2回投与されることになり、7日の後少なくとも21日間、対象が治療への応答性について分析されることになり、対象が治療に応答しているが、疾患が依然として検出可能である場合、治療が繰り返される、免疫細胞、も提供される。
【0056】
また、対象における腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激するための医薬品を製造するためにユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を使用することであって、ユニバーサル免疫受容体が、腫瘍と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、分子が、対象に、細胞の投与後7日以内に少なくとも2回投与されることになり、7日の後少なくとも21日間、対象が治療への応答性について分析されることになり、対象が治療に応答しているが、腫瘍が依然として検出可能である場合、治療が繰り返される、使用すること、も提供される。
【0057】
また、対象における腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激することに使用するためのユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞であって、ユニバーサル免疫受容体が、腫瘍と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、分子が、対象に、細胞の投与後7日以内に少なくとも2回投与されることになり、7日の後少なくとも21日間、対象が治療への応答性について分析されることになり、対象が治療に応答しているが、腫瘍が依然として検出可能である場合、治療が繰り返される、免疫細胞、も提供される。
【0058】
また、免疫細胞療法の利益を受け得る対象における疾患を治療するための医薬品を製造するためにユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を使用することであって、ユニバーサル免疫受容体が、疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、分子が、対象に、細胞の投与の後に14日~28日間、2又は3日ごとに投与され、対象が治療に応答しているが、疾患が依然として検出可能である場合、治療が繰り返される、使用すること、も提供される。
【0059】
また、免疫細胞療法の利益を受け得る対象における疾患を治療することに使用するためのユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞であって、ユニバーサル免疫受容体が、疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、分子が、対象に、細胞の投与の後に14日~28日間、2又は3日ごとに投与され、対象が治療に応答しているが、疾患が依然として検出可能である場合、治療が繰り返される、免疫細胞、も提供される。
【0060】
また、対象における腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激するための医薬品を製造するためにユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を使用することであって、ユニバーサル免疫受容体が、腫瘍と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、分子が、対象に、細胞の投与の後に14日~28日間、2又は3日ごとに投与され、対象が治療に応答しているが、腫瘍が依然として検出可能である場合、治療が繰り返される、使用すること、も提供される。
【0061】
また、対象における腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激することに使用するためのユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞であって、ユニバーサル免疫受容体が、腫瘍と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあり、分子が、対象に、細胞の投与の後に14日~28日間、2又は3日ごとに投与され、対象が治療に応答しているが、腫瘍が依然として検出可能である場合、治療が繰り返される、免疫細胞、も提供される。
【0062】
別の態様では、本発明は、配列番号5若しくは配列番号6として提供されるアミノ酸の配列、又は配列番号5及び配列番号6の一方若しくは両方と少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列を含む実質的に精製された及び/又は組換えのポリペプチドであって、SpyCatcherを含むタンパク質に共有結合し、がん細胞上でHER2受容体を結合することができる、ポリペプチド、を提供する。
【0063】
別の態様では、本発明は、配列番号7及び/若しくは配列番号10として提供される又は配列番号8及び/若しくは配列番号9として提供されるアミノ酸の配列を含む、あるいはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列を有する、実質的に精製された及び/あるいは組換えのポリペプチドであって、SpyCatcherを含むタンパク質に共有結合し、がん細胞上でEGFRvIII受容体を結合することができる、ポリペプチド、を提供する。
【0064】
別の態様では、本発明は、配列番号11及び/若しくは配列番号14として提供される又は配列番号12及び/若しくは配列番号13として提供されるアミノ酸の配列を含む、あるいはそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列を有する、実質的に精製された及び/あるいは組換えのポリペプチドであって、SpyCatcherを含むタンパク質に共有結合し、がん細胞上でIL-13Ra2受容体を結合することができる、ポリペプチド、を提供する。
【0065】
別の態様では、本発明は、配列番号15及び/若しくは配列番号16として提供されるアミノ酸の配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列を含む実質的に精製された及び/又は組換えのポリペプチドであって、SpyCatcherを含むタンパク質に共有結合し、がん細胞上でCD33受容体を結合することができる、ポリペプチドを提供する。
【0066】
別の態様では、本発明は、配列番号17及び/若しくは配列番号18として提供されるアミノ酸の配列又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列を含む実質的に精製された及び/又は組換えのポリペプチドであって、SpyCatcherを含むタンパク質に共有結合し、がん細胞上でC型レクチン様(CLL1)受容体を結合することができる、ポリペプチド、を提供する。
【0067】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドをコードする単離された及び/又は外因性のポリヌクレオチドを提供する。
【0068】
更なる態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0069】
また別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチド及び/又は本発明のベクターを含む、単離されたトランスジェニック細胞を提供する。ある実施形態では、細胞は、細菌細胞又は哺乳動物細胞である。
【0070】
また別の態様では、本発明は、疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子に共有結合する場合もしない場合もあるユニバーサル免疫受容体を含む免疫細胞を含む医薬組成物を提供する。ある実施形態では、ドメインは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、又はそれと少なくとも90%同一であるアミノ酸の配列のうちの1つ以上又は全部を含む。
【0071】
別の態様では、本発明は、本発明の細胞を培養することと、ポリペプチドを細胞又は培養培地から精製することと、を含む、本発明のポリペプチドを産生させる方法を提供する。
【0072】
ある実施形態では、細胞は、免疫細胞活性化剤、好ましくは、IL-2、抗CD3抗体、又は抗CD28抗体の存在下で培養される。別の実施形態では、免疫細胞活性化剤は、Tim-3及び/又はPD-1の発現を増加させる。また別の実施形態では、免疫細胞の少なくとも約30%が、Tim-3及び/又はPD-1陽性である。
【0073】
本明細書におけるいずれの実施形態も、別段の定めがない限り、いずれの他の実施形態にも準用されるものとする。
【0074】
本発明は、例示のみを目的とする本明細書に記載される特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。機能的に等価な産生物、組成物、及び方法は、本明細書に記載されるように、明らかに本発明の範囲内である。
【0075】
本明細書全体をとおして、別段の定めがない限り、又は文脈上別段の必要がない限り、単一のステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群への言及は、1つ及び複数(すなわち、1つ以上)のそれらのステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群を包含するように解釈されなければならない。
【0076】
本発明は、以下の非限定的な例によって、及び添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図6】結合剤の投薬レジメンにより、インビボでの機能的UIR発現が調節される。(A)「非武装」OmmniCAR T細胞(FLAG+のみ)、及び「武装」OmmniCAR T細胞(FLAG+IgG+)の発現である。(B)漸増濃度の抗体結合剤で武装化されたCD8+FLAG+又はCD4+FLAG+CAR T細胞においてIgG MFIによって検出された「武装」OmniCAR受容体である。(C)MDA-MB231-HER2腫瘍とともに24時間共培養した漸増濃度の結合剤で武装化したOmniCAR T細胞によるサイトカインIFNγ、TNF、及びIL-2の産生である。(D)養子移入後1日目又は7日目の血液から単離したT細胞上の武装OmniCAR受容体の%を示すFACSプロットである。(E)3~4日ごとに様々な用量の結合剤を投薬した群についての、移入後1日目の血液からのCD8+FLAG+CAR T細胞のIgG+%である。(F)3~4日ごとに様々な用量の結合剤を投薬した群についての、移入後1日目の血液中の武装IgG+FLAG+OmniCAR T細胞の数である。
【
図7-1】結合剤の投与レジメンにより、インビボでT細胞のメモリー表現型、拡大、及び持続性が調節される。(A)処置レジメンの概略図(低用量=1ug、高用量=25ug)である。事前調整した腫瘍保持マウスを、処置計画1~3に従って、1000万~2000万個の非武装又は事前武装OmniCAR T細胞の単回用量で処置し、抗体結合剤を更に投薬した。(B)移入後1日目のCD8+FLAG+細胞/血液1uLの数である。(C)移入後7日目の血液由来のOmniCAR T細胞上でのIgG染色のMFIである。(D)非形質導入OmniCAR群対非武装OmniCAR群についての移入後7日目の全CD8+T細胞/血液1uLの数である。(E)CD45RO+CD45RA-(Tエフェクターメモリー)集団又はCD45RA+CD45RO-(Tセントラルメモリー)集団のメモリー表現型である。データは、平均±SEMとして示す。
【
図8】結合剤の投薬レジメンにより、インビボでの抗腫瘍有効性が調節される。(A)事前武装OmniCAR T細胞で処置し、高用量の結合剤を投薬したマウスの腫瘍成長曲線である。(B)脾臓又は(C)腫瘍を治療の終点で抽出し、CD8+FLAG+OmniCAR T細胞を計数した。(D)終点での腫瘍由来のCD8+FLAG+ OmniCAR TILのTIM3+PD1+集団%である。(E)急性骨髄性白血病(AML)のマウスモデルにおける経時的な腫瘍負荷を決定するための生物発光画像法である。NSGマウスに、500万個のKG-1細胞を与え、動物を未処置のままにした(対照)か、又はCAR-T移入後3日目、6日目、及び9日目に、事前武装OmniCAR-T細胞並びに25ugのCD33及びCLL-1結合剤を与えた。データは、平均±SEMとして示す。
【
図9】結合剤の投薬レジメン及び特別な設計により、OmniCAR抗原非依存性シグナル伝達又は抗原依存性シグナル伝達が調節される。(A)CD8+FLAG+(上)の%又はCD4+FLAG+(下)の%によってサブセットした、72時間後の刺激していない又は刺激した(OKT3)T細胞のTIM3発現である。(B)CD8+FLAG+(上)の%又はCD4+FLAG+(下)の%によってサブセットした、72時間後の刺激していない又は刺激した(OKT3)T細胞のPD-1発現(左)である。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001、データは平均±SEMとして示す。
【
図10-1】複数の腫瘍抗原を順次又は同時に標的化するためのメトロノミック投薬である。(A)U251MG-HER2(GFP)腫瘍とU251MG-EGFRviii(mCherry)腫瘍との混合腫瘍培養の数である。(B)混合腫瘍培養と共培養した抗HER2武装OmniCAR T細胞である。(C)混合腫瘍培養と共培養した抗EGFRviii武装OmniCAR T細胞である。(D)共培養後20時間での抗HER2結合剤を加えた(HER2LTスイッチング)又は加えない(スイッチングなし)混合腫瘍培養とともに共培養した抗EGFRviii武装OmniCAR T細胞である。データは、平均±SDとして示す。(E)同じOmniCAR T細胞試料(下)上の3つの結合剤の発現のヒストグラム(上)である。FACSは、同じOmniCAR T細胞産物上の各二重組み合わせにおける結合剤発現をプロットする。(F)マウスの血清中のHER2及びEGFRvIII抗体結合剤の存在の決定である。
【
図11】メモリー及び抗腫瘍機能的能力を調節するための、従来のCAR T細胞と比較したOmniCARにおける抗原非依存性トニックシグナル伝達のモデルである。(A)時間、用量調節、又は複数結合剤の組み合わせ戦略を包含するメトロノミック投与の概略図である。(B)トニックシグナル伝達の抗原非依存性調節と、メモリー表現型と、機能的/抗腫瘍能力との間の相互関係のモデルである。
【0078】
配列表の凡例
配列番号1-SpyCatcherユニバーサル免疫受容体アミノ酸配列
配列番号2-SpyCatcherユニバーサル免疫受容体をコードするヌクレオチド配列
配列番号3-N末端シグナルを有する標準Her2-SpyTag結合剤
配列番号4-N末端シグナルを有する半減期が短いHer2-SpyTag結合剤
配列番号5-N末端シグナルを有しない標準Her2-SpyTag結合剤
配列番号6-N末端シグナルを有しない半減期が短いHer2-SpyTag結合剤
配列番号7-EGFRvIII重鎖アミノ酸配列
配列番号8-SpyTag アミノ酸配列を有するEGFRvIII重鎖
配列番号9-EGFRvIII軽鎖アミノ酸配列
配列番号10-SpyTagアミノ酸配列を有するEGFRvIII軽鎖
配列番号11-IL-13Ra2重鎖アミノ酸配列
配列番号12-SpyTagアミノ酸配列を有するIL-13Ra2重鎖
配列番号13-IL-13Ra2軽鎖アミノ酸配列
配列番号14-SpyTagアミノ酸配列を有するIL-13Ra2軽鎖
配列番号15-CD33重鎖アミノ酸配列
配列番号16-SpyTagアミノ酸配列を有するCD33軽鎖アミノ酸配列
配列番号17-CLL1重鎖アミノ酸配列
配列番号18-SpyTagアミノ酸配列を有するCLL1軽鎖アミノ酸配列
【発明を実施するための形態】
【0079】
一般的な技法及び定義
別途具体的に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有すると解釈されるものとする(例えば、細胞培養、細胞ベースの免疫療法、分子遺伝学、タンパク質化学、及び生化学)。
【0080】
別段の指示がない限り、本発明で利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技法は、当業者に周知の標準的な手順である。そのような技法は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984),J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989)、T.A.Brown(編),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes 1 and 2,IRL Press(1991)、D.M.Glover and B.D.Hames(編),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes 1-4,IRL Press(1995 and 1996)、及びF.M.Ausubel et al.(編),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988,現在までの全ての改訂を含む)、Ed Harlow and David Lane(編)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(編)Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons(including all updates until present現在までの全ての改訂を含む)などの情報源の文献全体で記載及び説明されている。
【0081】
「及び/又は」、例えば、「X及び/又はY」という用語は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味又はいずれかの意味を明示的に支持するように解釈されるものとする。
【0082】
本明細書で使用される場合、反対に述べられない限り、約という用語は、指定された値の+/-10%、より好ましくは+/-5%、より好ましくは+/-1%を指す。
【0083】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」という単語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、記載された要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群を含めることを暗示するが、任意の他の要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群を除外することを暗示しないことが理解される。
【0084】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、任意の動物であり得る。一実施形態では、動物は、脊椎動物である。例えば、動物は、哺乳動物、鳥類、脊索動物、両生類、又は爬虫類であり得る。例示的な対象には、ヒト、霊長類、家畜(例えば、ヒツジ、ウシ、ニワトリ、ウマ、ロバ、ブタ)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、捕獲野生動物(例えば、キツネ、シカ)が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、哺乳動物は、ヒトである。ある実施形態では、本発明の方法は、獣医使用のためのものである。
【0085】
本明細書で使用される「治療する」又は「治療」という用語は、医療専門家による対象の直接的な治療(例えば、対象に治療薬を投与することによる)、又は(i)特許請求される方法に従って対象に自己治療を指示する(例えば、薬物を自己投与する)、若しくは(ii)特許請求される方法に従って第三者に対象を治療するように指示する、任意の形態の指示を提供することによって、少なくとも1人の当事者(例えば、医師、看護師、薬剤師、又は医薬品販売担当者)によって行われる間接的な治療の両方を指す。また、「治療する」又は「治療」という用語の意味には、例えば、疾患の進行を予防又は遅らせるのに十分な初期段階で治療薬を投与することによる、治療される疾患の予防又は低減も含まれる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「対象は治療に応答しているが、疾患は依然として検出可能である」という用語は、疾患の検出可能な低減(少なくとも75%の低減、少なくとも50%の低減、又は少なくとも25%の低減など)(腫瘍負荷の低減など)を指すが、疾患は依然として存在する。本発明の方法を使用して治療することができる疾患を検出するための方法は、当該技術分野で周知であり、画像法(PET、PET_SPECT、及びMRIなど)、細胞検出、及び病原体検出技法を含む。
【0087】
本明細書で使用される場合、「サイトカイン放出症候群」(CRS)は、キメラ抗原受容体細胞療法、治療用抗体、及びハプロ同一同種移植と関連付けられる、発熱及び多臓器機能障害を特徴とする急性全身性炎症症候群を指す。
【0088】
ポリペプチドは、参照アミノ酸配列に対するそのアミノ酸配列の同一性の程度(同一性%)によって、又はある参照アミノ酸配列に対する同一性%が別の参照アミノ酸配列に対するものよりも大きいことによって定義されてもよい。参照アミノ酸配列に対するポリペプチドの同一性%は、典型的には、ギャップ作成ペナルティ=5、及びギャップ延長ペナルティ=0.3のパラメータを有するギャップ分析(Needleman and Wunsch,1970;GCGプログラム)によって決定される。クエリ配列は、少なくとも100アミノ酸長であり、ギャップ分析は、少なくとも100個のアミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。更により好ましくは、クエリ配列は、少なくとも250アミノ酸長であり、ギャップ分析は、少なくとも250個のアミノ酸の領域にわたって2つの配列を整列させる。更により好ましくは、ギャップ分析は、参照アミノ酸配列の全長にわたって2つの配列を整列させる。
【0089】
定義されたポリペプチドに関して、本明細書に提供されるものよりも高い同一性%数値が好ましい実施形態を包含することが理解される。このため、該当する場合、最小同一性%数値の観点から、ポリペプチドが、関連する指定された配列番号と、少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、更により好ましくは少なくとも99.9%同一であるアミノ酸配列を含むことが好ましい。ある実施形態では、上で列挙した範囲の各々について、同一性%は100%を含まない、すなわち、アミノ酸配列は指定された配列番号とは異なる。
【0090】
本明細書で使用される「併用療法」、「併用投与」、又は「同時投与」などの用語は、選択された治療剤の単一の対象への投与を包含することを意味し、薬剤が、同じ若しくは異なる投与経路によって、又は同じ若しくは異なる時間に投与される治療レジメンを含むことを意図している。
【0091】
ユニバーサル免疫受容体
本明細書で使用される場合、「ユニバーサル免疫受容体」又は「UIR」は、免疫細胞が、細胞外ヒンジ領域に結合した細胞外結合ドメインを含むタンパク質を組換え発現するキメラ抗原受容体系であり、細胞外結合ドメインが同様にして膜貫通ドメインに結合し、膜貫通ドメインが同様にして免疫細胞受容体細胞内シグナル伝達ドメインに結合する。この系は、細胞外結合ドメインを結合する第1のドメインと、疾患と関連付けられる抗原(がん細胞の表面上のがん抗原など)を結合する第2のドメインとを含む可溶性分子を更に含む。本明細書で使用される場合、「ユニバーサル免疫受容体」という用語は、細胞外結合ドメインに結合した(武装とも称される)又は結合していない(非武装とも称される)分子を指し得る。本発明に使用するためのUIRは、第1のドメインが細胞外結合ドメインを結合するときに共有結合を形成する。
【0092】
本発明に使用するためのユニバーサル免疫受容体の例は、SpyTag/SpyCatcher系(WO2017/112784)である。「SpyTag/SpyCatcher系」という用語は、バージョン1(US9,547,003)、バージョン2(WO 2018/197854)、及びバージョン3(WO2020/183198)などの系の各バージョンを包含する。別の例として、本発明で使用するための普遍的な免疫受容体は、SnoopTag/SnoopCatcher系(Veggiani et al.,2016;WO2016/193746)である。
【0093】
本発明の背景における「キメラ抗原受容体」又は代替的に「CAR」という用語は、免疫細胞内にあるときに、分子が例えばがん細胞を結合した細胞外結合ドメインに共有結合すると、標的細胞に対する特異性を、及び細胞内シグナル生成を、細胞に提供する。
【0094】
CAR(UIR)を使用して、選択された標的に特異的なT細胞、樹状細胞、又はナチュラルキラー(NK)細胞などの免疫細胞を生成することができる。CARを生成するための好適な構築物は、US5,843,728、US5,851,828、US5,912,170、US6,004,811、US6,284,240、US6,392,013、US6,410,014、US6,753,162、US8,211,422、及びWO9215322に記載されている。代替的なCAR構築物は、連続した世代に属するものとして特徴付けることができる。第一世代CARは、典型的には、抗原に特異的な抗体の一本鎖可変断片からなり、例えば、柔軟なリンカー、例えば、CD8aヒンジドメイン及びCD8a膜貫通ドメインによって、CD3C又はFcRy又はscFv-FcRyのいずれかの膜貫通及び細胞内シグナル伝達ドメインに連結した、特定の抗体のVHに連結したVLを含む(例えば、US7,741,465、US5,912,172、及びUS5,906,936を参照されたい)。第二世代CARは、CD28、CD28z、OX40(CD134)、又は4-1BB(CD137)などの1つ以上の共刺激性分子の細胞内ドメインを、エンドドメイン、例えば、scFv-CD28/OX40/4 BB-CD3内に組み込む(例えば、US8,911,993、US8,916,381、US8,975,071、US9,101,584、US9,102,760、US9,102,761を参照されたい)。第三世代CARは、CD3C鎖、CD97、GDI la-CD18、CD2、ICOS、CD27、CD154、CDS、OX40、4-1BB、又はCD28シグナル伝達ドメインなどの共刺激エンドドメインの組み合わせ、例えば、scFv-CD28-4BB-CD3C又はscFv-CD28-OX40-CD3Qを含む(例えば、US8,906,682、US8,399,645、US5,686,281、WO2014/134165、及びWO2012/079000を参照されたい)。いくつかの実施形態では、共刺激は、共刺激を用いた、例えば、プロフェッショナル抗原提示細胞上の抗原との相互作用に続いて活性化及び拡大されるように選択される、抗原特異的T細胞内でのCARの発現によって連携させることができる。例えば、T細胞攻撃の標的化を改善し、かつ/又は副作用を最小限に抑えるために、追加の操作された受容体を免疫細胞に提供することができる。
【0095】
当業者であれば、「抗体」が、概して、1つ以上のポリペプチド鎖、例えば、VLを含むポリペプチド及び/又はVHを含むポリペプチドからなる少なくとも1つの可変領域を含むタンパク質であるとみなされることを認識する。抗体はまた、概して、定常ドメインを含み、そのうちのいくつかは、重鎖の場合、定常断片又は断片結晶化可能(Fc)領域を含む定常領域内に配列され得る。VHとVLとは相互作用して、1つ又はいくつかの密接に関係する抗原に特異的に結合することができる抗原結合部位を含むFvを形成する。概して、哺乳動物由来の軽鎖は、κ軽鎖又はλ軽鎖のいずれかであり、哺乳動物由来の重鎖は、α、δ、ε、γ、又はμである。抗体は、いずれの種類(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであることもできる。「抗体」という用語は、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ヒト抗体、及びキメラ抗体も包含する。
【0096】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」、又は「全抗体」という用語は、抗体の抗原結合断片とは対照的に、実質的にインタクトな形態の抗体を指すように互換的に使用される。具体的には、全抗体には、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものが含まれる。定常ドメインは、野生型配列定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列定常ドメイン)であっても、そのアミノ酸配列バリアントであってもよい。
【0097】
本明細書で使用される「抗体断片」という用語は、標的抗原、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv断片、抗体の他の抗原結合部分配列に結合する能力を保持する抗体断片を含み、全抗体の修飾によって産生されたもの又は組換えDNA技術を使用してデノボ合成されたもの、及びIgG以外の抗体から得られる対応する断片を含むことができる。これらの抗体断片は、J.Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp 98-118(N.Y.Academic Press 1983)に記載されているように、タンパク質分解性断片化手順などの従来の手順、及び当業者に既知の他の技法によって得られる。断片は、インタクトな抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングされる。
【0098】
好適な抗体又は抗原結合断片としては、IgG、IgA、IgM、IgE、モノクローナル抗体、Fab’、rIgG(半抗体)、f(ab’)2、ナノボディ、キメラ抗体、scFv、scFvマルチマー、単一ドメイン抗体、又は単一ドメイン融合抗体が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗体又は抗体様分子は、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片である。本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、単一の分子組成物の抗体分子の調製を指す。モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0099】
ある実施形態では、分子は、ポリペプチドである。ある実施形態では、分子は、単一のオープンリーディングフレームによってコードされる単一のポリペプチド鎖である。
【0100】
ある実施形態では、分子は、標識剤である第3のドメインを更に含む。いくつかの実施形態では、標識剤は、mycタグ、FLAGタグ、Hisタグ、HAタグ、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP))、フルオロフォア(例えば、テトラメチルローダミン(TRITC)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC))、ジニトロフェノール、ペリジニンクロロフィルタンパク質複合体、緑色蛍光タンパク質、フィコエリスリン(PE)、ヒスチジン、ビオチン、ストレプトアビジン、アビジン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、パルミトイル化、ニトロシル化、アルカラニンホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、放射性同位体、及び放射性同位体標識に使用される任意の種類の化合物、例えば、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10 -テトラ酢酸(DOTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、及び1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)からなる群から選択される。
【0101】
疾患と関連付けられる抗原を結合するドメインを含む分子は、当該技術分野で既知の任意の手段によって産生させることができる。一実施形態では、分子は、その分子を発現する組換え細胞から産生させ、精製する。別の実施形態では、分子は、合成される。
【0102】
UIR発現細胞を調製する方法
細胞の供給源
拡大、及び可能な遺伝子修飾又は他の修飾の前に、T細胞、樹状細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞、又はそれらの組み合わせなどの免疫細胞を含むか、又はそれらからなる細胞集団を、対象から得ることができる。免疫細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍などのいくつかの供給源から得ることができる。
【0103】
本開示のある特定の実施形態では、免疫細胞、例えば、T細胞は、Ficoll(商標)分離などの当業者に知られている任意の数の技法を使用して、対象から収集された血液の単位から得ることができる。好ましい一実施形態では、個体の循環血液からの細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、樹状細胞、他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含む、リンパ球を含有する。一実施形態では、アフェレーシスによって回収された細胞は、血漿画分を除去するために、かつ任意選択的に、後続の処理ステップのために細胞を適切な緩衝液又は培地に配置するために、洗浄され得る。一実施形態では、細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。代替の実施形態では、洗浄溶液は、カルシウムを欠き、マグネシウムを欠き得るか、又は全てではないが多くの二価カチオンを欠き得る。
【0104】
カルシウムの非存在下での最初の活性化ステップは、増幅された活性化につながる可能性がある。当業者であれば容易に理解されるように、洗浄ステップは、製造元の指示に従い、半自動「フロースルー」遠心分離器(例えば、Cobe 2991細胞プロセッサ、Baxter CytoMate、又はHaemonetics Cell Saver 5)を使用することによるなど、当業者に既知の方法によって達成され得る。洗浄後、細胞は、例えば、無Ca、無Mg PBS、PlasmaLyte A、又は緩衝液の有無にかかわらず他の生理食塩溶液などの様々な生体適合性緩衝液に再懸濁され得る。代替的に、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、細胞を培養培地中に直接再懸濁し得る。
【0105】
本出願の方法は、5%以下、例えば2%のヒトAB血清を含む培養培地条件を利用することができ、公知の培養培地条件及び組成物、例えば、Smith et al.(2015)に記載されるものを採用することができることが認識される。
【0106】
一実施形態では、T細胞は、例えば、PERCOLL(商標)勾配による遠心分離又は対向流遠心溶出法によって、赤血球を溶解させ、単球を枯渇させることによって、末梢血リンパ球から単離される。
【0107】
本明細書に記載の方法は、例えば、T調節細胞枯渇集団である免疫細胞、例えば、T細胞の特定の亜集団の選択を含むことができる。例えば、CD25+の枯渇した細胞集団は、例えば、本明細書に記載の負の選択技術を使用して得ることができる。好ましくは、T調節枯渇細胞の集団は、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%未満のCD25+細胞を含有する。
【0108】
一実施形態では、T調節(TREG)細胞、例えば、CD25+T細胞は、抗CD25抗体若しくはその断片、又はCD25結合リガンド、IL-2を使用して集団から除去される。一実施形態では、抗CD25抗体若しくはその断片、又はCD25結合リガンドは、基質、例えばビーズにコンジュゲートされるか、又はそれ以外の場合、基質、例えばビーズ上にコーティングされる。一実施形態では、抗CD25抗体又はその断片は、本明細書に記載の基質にコンジュゲートされる。
【0109】
特定の理論に拘束されることを望むものではないが、アフェレーシスの前に、又はUIR発現細胞産物の製造中に、対象における免疫細胞の負の調節因子のレベルを減少させること(例えば、望ましくない免疫細胞、例えば、TREG細胞の数を減少させること)により、対象の再発のリスクを低減させることができる。例えば、Treg細胞を枯渇させる方法は、当該技術分野で既知である。TREG細胞を減少させる方法には、シクロホスファミド、抗GITR抗体(本明細書に記載される抗GITR抗体)、CD25-枯渇、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0110】
いくつかの実施形態では、製造方法は、UIR発現細胞の製造前にTREG細胞の数を低減させる(例えば、枯渇させる)ことを含む。例えば、製造方法は、試料、例えば、アフェレーシス試料を、抗GITR抗体及び/又は抗CD25抗体(又はその断片、若しくはCD25結合リガンド)と接触させて、例えば、UIR発現細胞(例えば、T細胞、NK細胞)産物を製造する前に、TREG細胞を枯渇させることを含む。
【0111】
刺激のための細胞は、洗浄ステップの後に凍結させることもできる。理論に拘束されないことを望むと、凍結及びその後の解凍ステップは、細胞集団内の顆粒球及びある程度の単球を除去することによって、より均一な産物を提供する。血漿及び血小板を除去する洗浄ステップの後、細胞は、凍結溶液に懸濁され得る。多くの凍結溶液及びパラメータが、当該技術分野で知られており、この背景では有用であるが、1つの方法は、20%のDMSO及び8%のヒト血清アルブミンを含有するPBS、又は10%のデキストラン40及び5%のデキストロース、20%のヒト血清アルブミン及び7.5%のDMSO、若しくは31.25%のPlasmalyte-A、31.25%のデキストロース5%、0.45%のNaCl、10%のデキストラン40及び5%のデキストロース、20%のヒト血清アルブミン、並びに7.5%のDMSOを含む培養培地、又は例えばHespan及びPlasmaLyte Aを含有する他の好適な細胞凍結培地を使用することを伴い、次いで、細胞を、1分間当たり1°の速度で-80℃に凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相に保管する。制御された凍結の他の方法、及び-20℃又は液体窒素中での即座の制御されない凍結が使用されてもよい。
【0112】
ある特定の実施形態では、凍結保存された細胞を本明細書に記載されるように解凍し、洗浄し、本発明の方法を使用して活性化する前に室温で1時間休ませる。
【0113】
本発明の背景において、本明細書に記載の拡大された細胞が必要とされ得る前の期間の、対象からの血液試料又はアフェレーシス産物の収集も企図される。このように、拡大される細胞の供給源は、必要な任意の時点で収集することができ、本明細書に記載のものなど、免疫細胞療法から利益を得るであろう任意の数の疾患又は状態のための免疫細胞療法において後で使用するために、T細胞などの所望の細胞を単離及び凍結することができる。一実施形態では、血液試料又はアフェレーシスは、概して健康な対象から採取される。ある特定の実施形態では、血液試料又はアフェレーシスは、疾患を発症するリスクがあるがまだ疾患を発症していない概して健康な対象から採取され、目的の細胞は、単離され、後で使用するために凍結される。ある特定の実施形態では、T細胞は、拡大され、凍結され、後で使用されてもよい。ある特定の実施形態では、試料は、本明細書に記載される特定の疾患の診断直後に、任意の治療の前に患者から収集される。更なる実施形態では、細胞は、ナタリズマブ、エファリズマブ、抗ウイルス剤、化学療法、放射線などの薬剤、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸塩、及びFK506などの免疫抑制剤、抗体、又はCAMPATH、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、及び放射線などの他の免疫除去剤による治療を含むが、それに限定されない、任意の数の関連する治療様式の前に、対象からの血液試料又はアフェレーシスから単離される。
【0114】
UIR発現細胞を作製する方法
ある実施形態では、本発明の方法は、UIRをコードするベクター又は核酸を細胞に導入することによるUIR発現細胞の作製を含む。遺伝子を細胞に導入及び発現させる方法は、当該技術分野で既知である。発現ベクターの背景において、ベクターは、当該技術分野の任意の方法によって、宿主T細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、又は昆虫T細胞に容易に導入され得る。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主T細胞に移入され得る。
【0115】
宿主T細胞中にポリヌクレオチドを導入するための物理的方法は、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを含む。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生させるための方法は、当該技術分野で周知である(例えば、Sambrook Molecular Cloning:A Laboratory Manual,volumes 1-4,Cold Spring Harbor Pressを参照されたい)。ポリヌクレオチドを宿主T細胞に導入するための好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0116】
目的のポリヌクレオチドを宿主T細胞に導入するための生物学的方法には、DNA及びRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳動物、例えば、ヒト細胞に挿入するための最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る(例えば、US5,350,674及びUS5,585,362を参照されたい)。
【0117】
ポリヌクレオチドを宿主T細胞に導入するための化学的手段には、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、並びに水中油乳剤、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系などのコロイド分散系が含まれる。インビトロ及びインビボで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。標的化ナノ粒子又は他の好適なサブミクロンサイズの送達系によるポリヌクレオチドの送達などの、核酸の最先端の標的化送達の他の方法が利用可能である。
【0118】
例示的な非ウイルス送達ビヒクルは、リポソームである。脂質製剤の使用は、核酸の宿主T細胞への導入(インビトロ、エクスビボ、又はインビボ)のために企図される。別の実施形態では、核酸は、脂質と関連付けられてもよい。脂質に関連する核酸は、リポソームの水性内部にカプセル化されてもよく、リポソームの脂質二重層内に散在されてもよく、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方と関連付けられる連結分子を介してリポソームに結合されてもよく、リポソームに捕捉されてもよく、リポソームと複合体化されてもよく、脂質を含有する溶液に分散されてもよく、脂質と混合されてもよく、脂質と組み合わされてもよく、脂質中に懸濁液として含有されてもよく、ミセルに含有されるか、若しくはそれと複合体化されてもよく、又は別様には脂質と関連付けられてもよい。脂質、脂質/DNA、又は脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液中の任意の特定の構造に限定されない。例えば、それらは、二重層構造に、ミセルとして、又は「崩壊した」構造で存在してもよい。それらはまた、単に溶液中に散在されてもよく、場合によっては、サイズ又は形状が均一ではない凝集体を形成してもよい。脂質は、天然に存在する脂質か、又は合成脂質であり得る脂肪性物質である。例えば、脂質としては、細胞質内に天然に存在する脂肪液滴、並びに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含有する化合物のクラスが挙げられる。使用に好適な脂質を、商業的供給源から得ることができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma Aldrichから得ることができ、ジセチルホスフェート(「DCP」)は、K&K Laboratoriesから得ることができ、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから得ることができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、例えば、Avanti Polar Lipids,Inc.から得ることができる。クロロホルム又はクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムは、メタノールよりも容易に蒸発するため、唯一の溶媒として使用される。「リポソーム」は、封入された脂質二重層又は凝集体の生成によって形成される様々な単層及び多層脂質ビヒクルを包含する一般的な用語である。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内部水性媒体を有する小胞構造を有するものとして特徴付けることができる。
【0119】
多層リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が、過剰な水溶液に懸濁されるときに自発的に形成される。脂質成分は、閉じた構造を形成する前に自己再構成され、脂質二重層の間に水及び溶解した溶質を捕捉する(Ghosh et al.,1991)。しかしながら、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造を想定するか、又は単に脂質分子の不均一な凝集体として存在し得る。リポフェクタミン核酸複合体も企図される。
【0120】
宿主T細胞に外因性核酸を導入するために使用される方法にかかわらず、又は別様には細胞を本発明の阻害剤に曝露するために使用される方法にかかわらず、宿主T細胞中の組換えDNA配列の存在を確認するために、様々なアッセイを行うことができる。そのようなアッセイとしては、例えば、サザンブロッティング及びノーザンブロッティング、RT-PCR及びPCRなどの当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ;例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット)によって、又は本明細書に記載されるアッセイによって、特定のペプチドの存在又は非存在を検出して、本発明の範囲に入る薬剤を特定することなどの「生化学的」アッセイが挙げられる。
【0121】
免疫細胞を培養及び拡大させる方法
T細胞などの免疫細胞は、概して、例えば、US6,352,694、US6,534,055、US6,905,680、US6,692,964、US5,858,358、US6,887,466、US6,905,681、US7,144,575、US7,067,318、US7,172,869、US7,232,566、US7,175,843、US5,883,223、US6,905,874、US6,797,514、US6,867,041、及びUS2006/0121005に記載の方法を使用して活性化及び拡大させてもよい。
【0122】
本明細書に開示される方法によってT細胞を拡大させることにより、細胞を、約10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1000倍、2000倍、3000倍、4000倍、5000倍、6000倍、7000倍、8000倍、9000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍又はそれ以上、及びそれらの間の全ての整数又は部分整数だけ増殖させることができる。一実施形態では、T細胞は、約20倍~約50倍の範囲で拡大する。
【0123】
ある実施形態では、細胞を、約7日~約14日間、又は約7日~約10日間培養する。
【0124】
概して、免疫細胞の集団、例えば、T調節細胞枯渇細胞は、それに結合された表面と、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤及びT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドを接触させることによって拡大し得る。具体的には、T細胞集団は、抗CD3抗体若しくはその抗原結合断片又は表面上に固定された抗CD2抗体と接触させることにより、又はカルシウムイオノフォアと併用してタンパク質キナーゼC活性化因子(例えば、ブリオスタチン)と接触させることなどにより、本明細書に記載されるように刺激され得る。T細胞の表面上のアクセサリ分子の共刺激のために、アクセサリ分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の集団は、T細胞の増殖を刺激するために適切な条件下で、抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触させることができる。CD4+ T細胞又はCD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するために、抗CD3抗体及び抗CD28抗体を使用することができる。抗CD28抗体の例としては、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone、Besancon,France)が挙げられ、当該技術分野において一般的に知られている他の方法(Berg et al.,1998、Haanen et al.,1999、Garland et al.,1999)と同様に使用され得る。
【0125】
免疫細胞培養に適切な条件は、血清(例えば、ウシ胎仔又はヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGF、及びTNF-a、又は当業者に既知の細胞の成長のための任意の他の添加剤を含む、増殖及び生存能に必要な因子を含有し得る適切な培地(例えば、最小必須培地若しくはRPMI Media 1640、又はX-vivo 15(Lonza))を含む。細胞の成長のための他の添加剤としては、界面活性剤、プラスマネート、並びにN-アセチル-システイン及び2-メルカプトエタノールなどの還元剤が挙げられるが、これらに限定されない。培地には、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、及びビタミンが添加され、無血清であるか、又は適切な量の血清(若しくは血漿)若しくは定義されたホルモンのセット、並びに/又はT細胞の成長及び拡大に十分な量のサイトカインが補充された、RPMI1640、AIM-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 15、及びX-Vivo 20、Optimizerが含まれ得る。抗生物質、例えば、ペニシリン及びストレプトマイシンは、実験培養物にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養物には含まれない。標的T細胞は、成長を支援するのに必要な条件、例えば、適切な温度(例えば、37℃)及び雰囲気(例えば、空気プラス5%CO2)下で維持される。
【0126】
造血幹細胞及び前駆細胞のエクスビボ拡大のための手順は、US5,199,942に記載されており、本発明の細胞に適用することができる。他の好適な方法は、当該技術分野で既知であり、したがって、本発明は、細胞のエクスビボ拡大の任意の特定の方法に限定されない。簡潔に述べると、免疫細胞(例えば、T細胞)のエクスビボ培養及び拡大は、(1)末梢採血又は骨髄外植体から哺乳動物由来のCD34+造血幹細胞及び前駆細胞を収集することと、(2)そのような細胞をエクスビボで拡大させることと、を含む。US5,199,942に記載の細胞成長因子に加えて、flt3-L、IL-1、IL-3、及びc-キットリガンドなどの他の因子を、細胞の培養及び拡大に使用することができる。
【0127】
免疫細胞
本明細書で使用される場合、「免疫細胞」という語句は、抗原の認識時に免疫応答に影響を及ぼすか、又は免疫応答を誘導することができる細胞を指す。いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、樹状細胞、又は幹細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。細胞は、それらが投与される対象に対して自己であっても同種異系であってもよい。
【0128】
本発明に有用な幹細胞の例としては、造血幹細胞/前駆細胞及び人工多能性幹細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
本明細書で使用される場合、「細胞傷害性活性」という語句は、NK細胞などの免疫細胞が生細胞を破壊する能力を指す。
【0130】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、当該技術分野におけるその通常の意味を有し、体液性免疫及び細胞性免疫の両方を含む。免疫応答は、抗抗原抗体の発症、抗原特異的T細胞の拡大、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の増加、抗腫瘍又は抗腫瘍抗原遅延型過敏症(DTH)応答の発症、病原体のクリアランス、病原体及び/又は腫瘍の成長及び/又は広がりの抑制、腫瘍低減、転移の低減又は排除、再発までの時間の増加、病原体又は腫瘍を含まない生存期間の増加、並びに生存時間の増加のうちの1つ以上として顕出し得る。免疫応答は、B細胞活性化、T細胞活性化、ナチュラルキラー細胞活性化、抗原提示細胞(例えば、B細胞、DC、単球、及び/又はマクロファージ)の活性化、サイトカイン産生、ケモカイン産生、特異的細胞表面マーカー発現、特に、共刺激分子の発現のうちの1つ以上によって媒介され得る。免疫応答は、体液性、細胞性、Th1若しくはTh2応答、又はそれらの組み合わせを特徴とし得る。ある実施形態では、免疫応答は、自然免疫応答である。
【0131】
T細胞
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、T細胞、例えば、UIR-T細胞である。T細胞又はTリンパ球は、細胞媒介性免疫において中心的な役割を果たすリンパ球の一種である。それらは、細胞表面にT細胞受容体(TCR)が存在することによって、B細胞及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)などの他のリンパ球と区別することができる。T細胞にはいくつかのサブセットがあり、各々が異なる機能を有する。
【0132】
ある実施形態では、T細胞は、セントラルメモリー(TCM)T細胞であるか、又はそれを含む。TCM細胞は、リンパ節を巡回し、既知の病原体に対するセントラル免疫サーベイランスを提供するが、一次組織免疫サーベイランスを行うものとしては説明されていない。ある実施形態では、本発明の方法を使用して産生されるTCM細胞は、CD45RO+ CD62L+T細胞、好ましくはCD45RO+CD62Lhi T細胞を含む。そのような細胞はまた、CCR7+であってもよい。
【0133】
ある実施形態では、T細胞は、セントラルメモリー幹細胞(TCM)T細胞であるか、又はそれを含む。TSCM細胞は、幹細胞様の自己再生能力、並びにメモリー及びエフェクターサブセットの全スペクトルを再構成する多能性能力を備えた、メモリーリンパ球のまれなサブセットである。ある実施形態では、TSCM細胞は、CD27+CD95+T細胞を含む。
【0134】
本明細書で使用される場合、調節T細胞(TREG)又はその変形は、免疫寛容の維持に重要であるT細胞の集団を指す。それらの主な役割は、免疫反応の終わりに向かってT細胞媒介免疫をシャットダウンし、胸腺内の負の選択のプロセスを逃れた自己反応性T細胞を抑制することである。CD4+TREG細胞の2つの主要なクラスであるFoxp3+及びFoxp3-が説明されている。
【0135】
ガンマデルタ(γδ)T細胞は、「非従来型」T細胞のプロトタイプであり、末梢血中のT細胞の比較的小さなサブセットを表す。これらは、γ鎖とδ鎖とで構成されるヘテロ二量体T細胞受容体(TCR)の発現によって定義される。これにより、これらが、αβ TCRを発現するCD4+ヘルパーT細胞及びCD8+細胞傷害性T細胞と区別される。
【0136】
iNKT(不変NKT)細胞は、抗原がTCRと結合するときに、Th1又はTh2サイトカインを速やかに分泌する先天性リンパ球として分類される。活性化されたiNKT細胞は、NK細胞、DC、B細胞、及びT細胞の応答の動員、活性化、又は調節を介して、適応免疫応答を調節することができる。
【0137】
ある実施形態では、T細胞は、ナイーブT細胞である。本明細書で使用される場合、「ナイーブT細胞」という用語は、成熟し、胸腺によって放出されたが、対応する抗原にまだ遭遇していないT細胞の集団を指す。言い換えれば、ナイーブT細胞は、成熟と活性化との間の段階にある。ナイーブT細胞は、L-セレクチン(CD62L)及びC-Cケモカイン受容体7型(CCR7)の表面発現、活性化マーカーCD25、CD44、又はCD69の非存在、及びメモリーCD45ROアイソフォームの非存在を一般に特徴としている。それらはまた、サブユニットIL-7受容体-α、CD127、及びコモン-γ鎖、CD132からなる機能的IL-7受容体を発現する。
【0138】
機能的内因性T細胞受容体(TCR)を欠くT細胞は、例えば、その表面上にいかなる機能的TCRも発現しないように操作されてもよく、機能的TCRを含む1つ以上のサブユニットを発現しないように操作されてもよく、又はその表面上にほとんど機能的TCRを産生しないように操作されてもよい。代替的に、T細胞は、例えば、TCRのサブユニットのうちの1つ以上の変異形態又は切断形態の発現によって、実質的に障害のあるTCRを発現することができる。「実質的に障害のあるTCR」という用語は、このTCRが、宿主において有害な免疫反応を誘発しないことを意味する。
【0139】
本明細書に記載のT細胞は、例えば、その表面に機能的HLAを発現しないように操作され得る。例えば、本明細書に記載のT細胞は、T細胞表面発現HLA、例えば、HLAクラス1及び/又はHLAクラスIIが下方調節されるように操作され得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、機能的TCR及び機能的HLA、例えば、HLAクラスI及び/又はHLAクラスIIを欠く場合がある。
【0140】
機能的TCR及び/又はHLAの発現を欠く修飾されたT細胞は、TCR又はHLAの1つ以上のサブユニットのノックアウト又はノックダウンを含む任意の好適な手段によって得ることができる。例えば、T細胞は、siRNA、shRNA、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、又はジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ(ZFN)を使用したTCR及び/又はHLAのノックダウンを含み得る。
【0141】
ナチュラルキラー細胞
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、ナチュラルキラー細胞である。ナチュラルキラー(NK)細胞は、感染した細胞及び形質転換された細胞を殺傷することができるCD56 CD3大顆粒リンパ球であり、先天性免疫系の重要な細胞サブセットを構成する。細胞傷害性CD8+Tリンパ球とは異なり、NK細胞は、事前の感作を必要とせずに腫瘍細胞に対する細胞傷害を発揮し、MHC-I-陰性細胞を根絶することもできる。ある実施形態では、NK細胞は、CD3-CD56+CD7+CD127-NKp46+T-bet+Eomes+である。ある実施形態では、細胞傷害性NK細胞CD56dim CD16+。
【0142】
樹状細胞
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、樹状細胞である。樹状細胞は、CD34+幹細胞から骨髄に起源し、主要組織適合性複合体(MHC)クラスII分子を発現する、特化された抗原提示細胞の異質の群である。成熟樹状細胞は、T細胞及びNK細胞などのエフェクター免疫細胞をプライミング、活性化、及び拡大することができる。樹状細胞療法は、当該技術分野で既知である(例えば、Sabado et al.,2017を参照されたい)。簡潔に述べると、樹状細胞は、患者から単離されてもよく、疾患特異的抗原、例えば、がん特異的抗原に曝露されてもよく、又はUIR若しくは疾患特異的抗原を発現するように遺伝子修飾されてもよく、次いで、患者に戻して注入されて、エフェクター免疫細胞、例えば、T細胞をプライミング、活性化、及び拡大する。
【0143】
骨髄細胞
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、骨髄細胞である。顆粒球、単球、マクロファージ、及び樹状細胞は、集合的に骨髄細胞と呼ばれる白血球のサブグループを表す。それらは、血液及びリンパ系を通して循環し、様々なケモカイン受容体を介して、組織損傷及び感染の部位に迅速に動員される。組織内で、それらは、貪食及び炎症性サイトカインの分泌のために活性化され、それによって保護免疫において主要な役割を果たす。骨髄細胞療法は、当該技術分野で既知であり、がん、感染症、又は疾患の治療に有用であり得る。例えば、骨髄細胞は、腫瘍間質に豊富であることが知られており、これらの細胞の存在は、多くのがん型において患者の転帰に影響を及ぼし得る。簡潔に述べると、骨髄細胞は、患者から単離されてもよく、疾患特異的抗原、例えば、がん特異的抗原に曝露されてもよく、又はUIR若しくは疾患特異的抗原を発現するように遺伝子修飾されてもよく、次いで、患者に戻して注入されて、エフェクター免疫細胞、例えば、T細胞をプライミング、活性化、及び拡大する。
【0144】
マクロファージ
マクロファージは、細菌及び他の有害生物の検出、食作用、及び破壊に関与する特殊化された細胞である。加えて、それらはまた、T細胞に抗原を提示し、他の細胞を活性化する分子(サイトカインとして知られる)を放出することによって炎症を開始し得る。
【0145】
UIR発現細胞療法
UIR細胞療法は、免疫細胞(例えば、T細胞)が、UIRを発現するように遺伝子修飾され、UIR発現細胞(例えば、UIR-T細胞)が、それを必要とするレシピエントに注入される、細胞療法の一種である。注入された細胞は、レシピエントにおけるUIRの標的を発現する疾患細胞を殺傷することができる。抗体療法とは異なり、UIR修飾免疫細胞(例えば、UIR-T細胞)は、インビボで複製することができ、持続した腫瘍制御をもたらすことができる長期持続性をもたらす。様々な実施形態では、UIR細胞は、患者に投与され、UIR細胞の患者への投与後、少なくとも4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、2年、3年、4年、又は5年間、患者においてUIR細胞又はその子孫が持続する。
【0146】
ある実施形態では、対象に投与されるとき、UIR細胞は、事前武装される。より具体的には、細胞は、対象に投与される前にUIRを共有結合するような条件下で分子に曝露されており、よって、それらが投与されるときに標的細胞(がん細胞など)を結合することができる。
【0147】
ある実施形態では、対象に投与されるとき、UIR細胞は、事前武装されない。より具体的には、細胞は、対象に投与される前にUIRを共有結合するような条件下で分子に曝露されていない。この実施形態では、細胞が機能するために、細胞がインビボで武装となるように、分子も対象に投与される。
【0148】
一実施形態では、事前武装UIR細胞を投与し、続いて、約21日間、3日ごとに、例えば、1日目、4日目、及び6日目に、分子を投与する。
【0149】
ある実施形態では、事前武装UIR細胞を投与し、続いて、週に2回、例えば、3日目及び6日目に、分子を投与し、続いて、約21日間の休薬を行う。
【0150】
ある実施形態では、非武装UIR細胞を投与し、続いて、週に2回、例えば、3日目及び6日目に、分子を投与し、続いて、約21日間の休薬を行う。
【0151】
ある実施形態では、事前武装UIR細胞を投与し、続いて、週に3回、例えば、1日目、4日目、及び6日目に、分子を投与し、続いて、約21日間の休薬を行う。
【0152】
ある実施形態では、非武装UIR細胞を投与し、続いて、週に3回、例えば、1日目、4日目、及び6日目に、分子を投与し、続いて、約49日間の休薬を行う。
【0153】
本発明は、ある数のサイクルで実施されてもよい。例えば、本明細書で定義される第1のサイクルの後、対象を分析して、対象が治療に応答したかどうかを決定する。対象が治療に応答するが、疾患が依然として検出可能である場合、対象を治療の第2のサイクルに供してもよい。更に、第2のサイクルの後に、対象が治療に応答するが、疾患が依然として検出可能である場合、対象を治療の第3のサイクルに供してもよい。
【0154】
ある実施形態では、対象は、治療に応答したかどうかを決定する前に休薬する。ある実施形態では、対象は、約21日間休薬する。ある実施形態では、対象は、約28日間休薬する。ある実施形態では、対象は、約35日間休薬する。ある実施形態では、対象は、約42日間休薬する。ある実施形態では、対象は、約49日間休薬する。
【0155】
本発明はまた、免疫細胞(例えば、T細胞)が、例えばインビボ転写RNAによって、UIRを一過性に発現するように修飾され、UIR-T細胞が、それを必要とするレシピエントに注入される、細胞療法の種類を含む。注入された細胞は、レシピエントにおいて腫瘍細胞を殺傷することができる。このため、様々な実施形態では、患者に投与される免疫細胞(例えば、UIR-T細胞)は、UIR-T細胞を患者に投与した後、1か月未満、例えば、3週間、2週間、1週間存在する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、UIR-T細胞によって励起される抗腫瘍免疫応答は、能動免疫応答であっても受動免疫応答であってもよく、又は代替的に、直接的対間接免疫応答に起因してもよい。
【0156】
本発明が、対象における腫瘍に対するユニバーサル免疫受容体媒介性免疫応答を刺激するための方法を企図する場合、UIR-T細胞によって励起される免疫応答は、能動免疫応答であるか受動免疫応答であるか、又は直接対間接免疫応答であるかにかかわらず、対象においてがんを治療するのに十分であると想定される。
【0157】
上述のように、エクスビボ手順は、当該技術分野で周知であり、上記で説明されている。簡潔に述べると、細胞は、哺乳動物(例えば、ヒト)から単離され、UIRを発現するベクターを用いて遺伝子修飾される(すなわち、インビトロで形質導入又はトランスフェクトされる)。UIR発現細胞(例えば、UIR-T細胞)は、治療効果を提供するために哺乳動物レシピエントに投与することができる。哺乳動物レシピエントは、ヒトであってもよく、UIR発現細胞は、レシピエントに関して自己であり得る。代替的に、細胞は、レシピエントに関して、同種、同系、又は異種であり得る。
【0158】
本発明のUIR細胞は、本明細書に記載されるように、単独で、又は希釈剤と組み合わせた、及び/又はIL-2若しくは他のサイトカイン若しくは細胞集団などの他の成分と組み合わせた医薬組成物としてのいずれかで、投与されてもよい。免疫細胞は、単独で、又は希釈剤と組み合わせた、及び/又はIL-2、IL-15若しくは他のサイトカイン若しくは細胞集団などの他の成分と組み合わせた医薬組成物としてのいずれかで、投与されてもよい。簡潔に述べると、医薬組成物は、1つ以上の薬学的に又は生理学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて、本明細書に記載される免疫細胞を含んでもよい。かかる組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液;グルコース、マンノース、スクロース、又はデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;ポリペプチド又はグリシンなどのアミノ酸;抗酸化剤;EDTA又はグルタチオンなどのキレート剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);及び防腐剤を含んでもよい。開示される方法で使用するための組成物は、いくつかの実施形態では、静脈内投与のために製剤化される。
【0159】
本明細書に記載される細胞を含む医薬組成物は、104~109個の細胞/体重1kg、例えば、105~106個の細胞/体重1kg(これらの範囲内の全ての整数値を含む)の投薬量で投与されてもよい。細胞組成物は、これらの投薬量で複数回投与されてもよい。細胞は、免疫療法で一般的に知られている注入技法を使用することによって投与することができる(例えば、Rosenberg et al.,1988を参照されたい)。特定の患者に最適な投薬量及び治療レジメンは、患者を疾患の徴候についてモニタリングし、適宜に治療を調整することによって、医療分野の当業者によって容易に決定され得る。
【0160】
本明細書に記載の分子(結合剤)を含む薬学的組成物は、例えば、1kg当たり0.5mg~5mgの用量で投与されてもよい。
【0161】
ある特定の実施形態では、活性化された免疫細胞を対象に投与し、次いで、その後再採血し(又はアフェレーシスを行い)、その血液から免疫細胞を活性化及び拡大し、これらの活性化及び拡大した細胞を患者に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週間ごとに複数回実行されることができる。ある特定の実施形態では、免疫細胞は、10cc~400ccの採血から活性化され得る。ある特定の実施形態では、免疫細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、又は100ccの採血から活性化される。この複数回採血/複数回再注入プロトコルを使用することは、ある特定の免疫細胞の集団を選出するように機能し得る。
【0162】
併用療法
本発明のUIR-T細胞などの免疫細胞又は本発明の方法によって産生される免疫細胞は、PRLRアンタゴニスト(例えば、抗PRLR抗体又はPRLRの小分子阻害剤)、EGFRアンタゴニスト(例えば、抗EGFR抗体[例えば、セツキシマブ又はパニツムマブ]又はEGFRの小分子阻害剤[例えば、ゲフィチニブ又はエルロチニブ])、Her2/ErbB2、ErbB3、又はErbB4などの別のEGFRファミリーメンバーのアンタゴニスト(例えば、抗ErbB2[例えば、トラスツズマブ又はT-DM1]、抗ErbB3、若しくは抗ErbB4抗体、又はErbB2、ErbB3、若しくはErbB4活性の小分子阻害剤)、cMETアンタゴニスト(例えば、抗cMET抗体)、IGF1Rアンタゴニスト(例えば、抗IGF1R抗体)、B-raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、GDC-0879、PLX-4720)、PDGFR-アルファ阻害剤(例えば、抗PDGFR-アルファ抗体)、PDGFR-ベータ阻害剤(例えば、抗PDGFR-ベータ抗体、又はイマチニブメシレート若しくはスニチニニブマレートなどの小分子キナーゼ阻害剤)、PDGFリガンド阻害剤(例えば、抗PDGF-A、-B、-C、又は-D抗体、アプタマー、siRNAなど)、VEGFアンタゴニスト(例えば、アフリベルセプトなどのVEGF-Trap、例えば、US7,087,411を参照されたい(本明細書では「VEGF阻害融合タンパク質」とも称される)、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)、VEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブ、又はパゾパニブ))、DLL4アンタゴニスト(例えば、REGN421などのUS2009/0142354に開示されている抗DLL4抗体)、Ang2アンタゴニスト(例えば、H1H685PなどのUS2011/0027286に開示されている抗Ang2抗体)、FOLH1アンタゴニスト(例えば、抗FOLH1抗体)、STEAP1又はSTEAP2アンタゴニスト(例えば、抗STEAP1抗体又は抗STEAP2抗体)、TMPRSS2アンタゴニスト(例えば、抗TMPRSS2抗体)、MSLNアンタゴニスト(例えば、抗MSLN抗体)、CA9アンタゴニスト(例えば、抗CA9抗体)、ウロプラキンアンタゴニスト(例えば、抗ウロプラキン[例えば、抗UPK3A]抗体)、MUC16アンタゴニスト(例えば、抗MUC16抗体)、Tn抗原アンタゴニスト(例えば、抗Tn抗体)、CLEC12Aアンタゴニスト(例えば、抗CLEC12A抗体)、TNFRSF17アンタゴニスト(例えば、抗TNFRSF17抗体)、LGR5アンタゴニスト(例えば、抗LGR5抗体)、一価のCD20アンタゴニスト(例えば、リツキシマブなどの一価抗CD20抗体)、PD-1抗体、PD-L1抗体、CD3抗体、CTLA-4抗体などからなる群から選択される1つ以上の追加の治療活性成分と共製剤化、及び/又はそれらと組み合わせて投与され得る。本発明のCAR-T細胞と組み合わせて有益に投与され得る他の薬剤には、例えば、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤、及びサイトカイン阻害剤(IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18などのサイトカイン、又はそれらのそれぞれの受容体に結合する低分子サイトカイン阻害剤及び抗体を含む)が含まれる。
【0163】
本発明は、本明細書に記載されるUIR-T細胞などの免疫細胞のいずれかを、1つ以上の化学療法剤と組み合わせて含む、組成物及び治療製剤を含む。化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロスホスファミド(Cytoxan(商標))などのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホン酸塩;ベンゾドーパ、カルボクオン、メトレドーパ、及びウレドーパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンホスホルアミド、及びトリメチロメラミンを含む、エチレンイシンイミン及びメチルアメラミン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、オキシド塩酸化メクロレタミン、メルファラン、ノベミチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトーシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソウレア;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オートラマイシン、アザセリン、ブレマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシンなどの抗生物質;メトトレキサート及び5-フルオラシル(5-FU)などの抗代謝物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎薬、フロリン酸などの葉酸補充剤、アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルニチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン類、例えば、パクリタキセル(Taxol(商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton,N.J.)及びドセタキセル(Taxotere(商標)、Aventis Antony、France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼロダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラマイシン;カペシタビン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。また、この定義には、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY 117018、オナプリストン、及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲン、並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン、並びに上記のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体など、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤も含まれる。
【0164】
開示される治療剤のいずれかの投与は、注射、輸血、又は移植を含む、任意の都合のよい様式で実行されてもよい。本明細書に記載される組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射、又は腹腔内で患者に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、開示される組成物は、i.v.注射によって投与される。本組成物はまた、腫瘍、リンパ節、又は感染部位に直接注射されてもよい。
【0165】
当業者であれば理解するように、上記の細胞及び/又は分子は、治療有効量で対象に投与されることになる。本明細書で使用される場合、「有効量」又は「治療有効量」という用語は、治療される疾患又は状態の症状のうちの1つ以上をある程度緩和するか、又は悪化を防止する、投与される十分な量の治療剤を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、若しくは原因の低減若しくは進行の防止、又は生体系の他の任意の所望の変化であり得る。例えば、治療上の使用のための「有効量」は、過度の有害な副作用なしに疾患症状の臨床的に有意な減少をもたらすために必要な治療剤の量である。
【0166】
「治療有効量」という用語は、例えば、予防有効量を含む。治療剤の「有効量」は、過度の有害な副作用なしに所望の薬理学的効果又は治療改善を達成するのに有効な量である。「有効量」又は「治療有効量」は、対象の年齢、体重、全身状態、治療される状態、治療される状態の重症度、及び処方医師の判断のいずれかの化合物の代謝における変動に起因して、対象によって異なる場合があることが理解される。
【0167】
定期的な実験(用量漸増臨床試験を含むが、これらに限定されない)によってそのような治療有効量を決定することは、当該技術分野の技術の範囲内であるとみなされる。任意の個々の症例における適切な「有効量」は、用量漸増研究などの技法を使用して決定され得る。
【0168】
1つ以上の治療剤が組み合わせて使用される場合、各治療剤の「治療有効量」は、それ自体が使用されるときに治療有効であるであろう治療剤の量を指すことができ、又は1つ以上の追加の治療剤との組み合わせによって治療的に有効である低減した量を指してもよい。
【0169】
治療の方法
本発明の、又は本発明を使用して産生される免疫細胞、例えば、UIR-T細胞は、とりわけ、疾患又は障害の治療、予防、及び/又は改善に有用である。例えば、本発明のUIR-T細胞は、がん、感染症、又は炎症性疾患の治療に有用である。別の例として、本発明の方法によって産生される樹状細胞は、例えば、がん、感染症(細菌又はウイルス感染症など)、又は自己免疫疾患(糖尿病など)を治療するための樹状細胞ワクチン(例えば、Datta et al.,2014を参照されたい)として使用することができる。更なる例として、NK-UIR細胞などのNK細胞を使用して、がんを治療することができる(例えば、Liu et al.,2021を参照されたい)。
【0170】
UIR細胞は、脳及び髄膜、中咽頭、肺及び気管支樹、消化管、男性及び女性の生殖管、筋肉、骨、皮膚及び付属器、結合組織、脾臓、免疫系、血液形成細胞及び骨髄、肝臓及び尿路、並びに眼などの特殊感覚器官に発生する原発性及び/又は転移性腫瘍を治療するために使用され得る。ある特定の実施形態では、本発明のUIR細胞は、次のがん:腎細胞がん、膵臓がん、頭頸部がん、前立腺がん、悪性神経膠腫、骨肉腫、大腸がん、胃がん(例えば、MET増幅を伴う胃がん)、悪性中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、滑膜肉腫、甲状腺がん、乳がん、黒色腫、白血病、又はリンパ腫のうちの1つ以上を治療するために使用される。
【0171】
ある実施形態では、本発明のUIR細胞は、白血病、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、又は慢性リンパ性白血病を治療するために使用される。ある実施形態では、白血病は、低CD33+芽球が優勢である急性骨髄性白血病である。
【0172】
別の実施形態では、本発明のUIR細胞は、リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫を治療するために使用される。非ホジキンリンパ腫の種類としては、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、又は末梢T細胞リンパ腫が挙げられる。ある実施形態では、リンパ腫は、低レベルのCD19及び/又はCD20を有するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫又は非ホジキンリンパ腫である。
【0173】
武装ユニバーサル免疫受容体が結合し得る抗原の例としては、CD19、CD20、ROR1、CD22がん胎児性抗原、アルファフェトプロテイン、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異的抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gpl20、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メオテリン、GD3、HERV-K、IL-1 IRa、k鎖、l鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、又はVEGFR2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
本明細書に記載される治療の方法の背景において、UIR細胞などの免疫細胞は、単剤療法として(すなわち、唯一の治療剤として)、又は1つ以上の追加の治療剤(その例は本明細書の他の場所に記載される)と組み合わせて(併用療法)投与されてもよい。
【0175】
一実施形態では、対象は、がん(例えば、がん)を発症するリスクがある。対象が、対照集団よりもがんを発症するリスクが高い場合、対象は、リスクがある。対照集団は、がんに罹患していないか、又はがんの家族歴を有する一般集団から無作為に選択された(例えば、年齢、性別、人種、及び/又は民族によってマッチングされた)1人以上の対象を含み得る。がんに関連する「リスク因子」が、その対象に関連することが判明した場合、対象は、がんのリスクがあるとみなされ得る。リスク因子には、例えば、対象の集団に関する統計学的又は疫学的研究をとおして、所与の障害と関連付けられる任意の活動、形質、事象、又は特性が含まれ得る。このため、基礎となるリスク因子を特定する研究に、対象が具体的に含まれていなくても、対象は、がんのリスクがあると分類され得る。
【0176】
一実施形態では、対象は、がんを発症するリスクがあり、細胞又は組成物は、がんの症状の発現前又は発現後に投与される。一実施形態では、細胞又は組成物は、がんの症状の発現前に投与される。一実施形態では、細胞又は組成物は、がんの症状の発現後に投与される。一実施形態では、本発明の細胞又は組成物は、リスクがある対象におけるがんの症状のうちの1つ以上を緩和又は軽減する用量で投与される。
【0177】
ある実施形態では、対象は、がん、感染症、又は炎症性疾患などの疾患又は障害を有すると診断されているか、又は有する疑いがある。ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、対象を、がん、感染症、又は炎症性疾患などの疾患又は障害を有するか、又は有する疑いがあると診断するステップを含む。
【0178】
本明細書で使用される診断は、対象又は患者が本発明の免疫細胞による治療を必要とするという決定を指す。本明細書に記載の方法に従って診断される疾患又は障害の種類は、当該技術分野で既知の又は本明細書に記載のいずれの種類であってもよい。
【0179】
ある実施形態では、本発明の免疫細胞による治療を必要とする対象を特定又は診断するステップは、対象が、がんを有するという決定を含み、
-血液プロファイリング、
-細胞生検吸引物又は組織生検、
-コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、骨スキャン、磁気共鳴イメージング(MRI)、ポジトロン放出断層撮影(PET)スキャン、超音波及びX線などのイメージング、
-身体検査、のうちの1つ以上又は全ての評価を含んでもよい。
【0180】
NK細胞により治療することができる疾患の例としては、がん(例えば、黒色腫、前立腺がん、乳がん、及び肝臓がん)、並びにウイルス感染症(例えば、HSV、肝炎ウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、及びHIV-1による感染症)、細菌感染症(例えば、マイコバクテリア、リステリア、及びブドウ球菌による感染症)、及び原虫感染症(例えば、マラリア原虫による感染症)、及び真菌感染症(例えば、アスペルギルスによる感染症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0181】
炎症性疾患の例としては、抗生物質耐性微生物感染症、特発性肺線維症、及びアルツハイマー病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0182】
当業者には明らかであるように、対象におけるがんの症状の「低減」は、同じくがんに罹患しているが、本明細書に記載の方法による治療を受けていない別の対象と比較したものとなる。これは、必ずしも2人の対象の対照比較を必要としない。むしろ、集団データを信頼することができる。例えば、本明細書に記載の方法で治療を受けていないがんに罹患している対象の集団(任意選択的に、治療された対象と同様の対象の集団、例えば、年齢、体重、人種)を評価し、平均値を、本明細書に記載の方法で治療された対象又は対象の集団の結果と比較する。
【0183】
一実施形態では、本発明の免疫細胞及び方法は、がん、感染症、又は炎症性疾患などの疾患又は障害に罹患している対象の生存を改善するために使用される。生存が企図される場合、生存分析は、カプラン・マイヤー法を使用して行うことができる。カプラン・マイヤー法は、生存期間データから生存関数を推定し、治療後一定期間生存する患者の割合を測定するために使用することができる。生存関数のカプラン・マイヤー法のプロットは、十分な大きさの試料が採取されたときに、その集団の真の生存関数に近づく、大きさが減少する一連の水平ステップである。連続した別個のサンプリングされた観察(「クリック」)間の生存関数の値は、一定であると仮定される。カプラン・マイヤー曲線の重要な利点は、この方法が、最終的な結果が観察される前に(例えば、患者が研究から離脱した場合)、試料からの「打ち切り」データ損失を考慮に入れることができることである。プロットでは、小さな垂直のチェックマークは、患者データが打ち切られた損失を示す。切り捨てや打ち切りが発生しない場合、カプラン・マイヤー曲線は、経験分布と同等である。
【0184】
統計学では、ログランク検定(Mantel-Cox検定としても知られている)は、2つのグループの患者の生存分布を比較する仮説検定である。これは、ノンパラメトリック検定であり、データが正しく打ち切られる場合に使用するのに適している。これは、測定が事象までの時間である場合に、対照群と比較して新薬の有効性を確立するために、臨床試験で広く使用されている。ログランク検定統計量は、観察された各事象時間における2つのグループのハザード関数の推定値を比較する。これは、各観察された事象時間におけるグループのうちの1つにおける観察された事象及び予想される事象の数を計算し、次いでこれらを加算して、事象が存在する全ての時点にわたる全体的な概要を得ることによって構築される。ログランク統計量は、2つのグループを比較するCox比例ハザードモデルのスコア検定として導出することができる。したがって、これは、そのモデルに基づく尤度比検定統計量と漸近的に等価である。
【実施例】
【0185】
実施例1-ユニバーサル免疫受容体
配列番号2として提供されるポリヌクレオチド配列によってコードされる、CD8aリーダー、SpyCatcher v003、CD8aヒンジ、CD8a膜貫通ドメイン、CD28z共刺激ドメイン、及びCD3z細胞内シグナル伝達ドメイン(配列番号1)を、N末端からC末端の順に有する、SpyCatcherユニバーサル免疫受容体を産生させた。
【0186】
配列番号1:SpyCatcherユニバーサル免疫受容体。第1の下線付きセクションはCD8リーダーであり、第2の下線付きセクションはSpyCatcherであり、第3の下線付きセクションは、CD8aヒンジ、続いてCD8a膜貫通ドメインであり、第4の下線付きセクションは、CD8a膜貫通ドメイン、続いて、CD28z共刺激ドメイン(このセクションのC末端IDを除く)であり、第5の下線付きセクションはCD3z細胞内シグナル伝達ドメインである。
【0187】
【0188】
配列番号2:配列番号1のSpyCatcherユニバーサル免疫受容体をコードするポリヌクレオチド。
atggccttaccagtgaccgccttgctcctgccgctggccttgctgctccacgccgccaggccgggatccGTGACAACACTGAGCGGACTGTCTGGCGAGCAAGGCCCTTCTGGCGATATGACCACCGAAGAGGATAGCGCCACACACATCAAGTTCAGCAAGCGCGACGAGGACGGCAGAGAACTTGCTGGCGCTACCATGGAACTGAGAGACAGCAGCGGCAAGACCATCAGCACCTGGATCTCTGACGGCCACGTGAAGGACTTCTATCTGTACCCCGGCAAGTACACCTTCGTGGAAACCGCCGCTCCTGACGGCTACGAAGTGGCCACACCTATCGAGTTCACCGTGAACGAGGATGGCCAAGTGACCGTGGATGGCGAAGCTACAGAAGGCGACGCCCATACAgctagcaccacgacgccagcgccgcgaccaccaacaccggcgcccaccatcgcgtcgcagcccctgtccctgcgcccagaggcgtgccggccagcggcggggggcgcagtgcacacgagggggctggacttcgcctgtgatttttgggtgctggtggtggttggtggagtcctggcttgctatagcttgctagtaacagtggcctttattattttctgggtgaggagtaagaggagcaggctcctgcacagtgactacatgaacatgactccccgccgccccgggcccacccgcaagcattaccagccctatgccccaccacgcgacttcgcagcctatcgctccatcgatagagtgaagttcagcaggagcgcagacgcccccgcgtacaagcagggccagaaccagctctataacgagctcaatctaggacgaagagaggagtacgatgttttggacaagagacgtggccgggaccctgagatggggggaaagccgagaaggaagaaccctcaggaaggcctgtacaatgaactgcagaaagataagatggcggaggcctacagtgagattgggatgaaaggcgagcgccggaggggcaaggggcacgatggcctttaccagggtctcagtacagccaccaaggacacctacgacgcccttcacatgcaggccctgccccctcgctaa
【0189】
更に、Her2を結合する2つのSpyTag結合分子を産生させた。一方は、N末端シグナルペプチド、Her2を結合する抗体可変ドメイン、抗体定常ドメイン、リンカー、及びSpyTagを含む標準Her2結合剤(配列番号3)と称される。他方は、短半減期結合剤と称され、より短い半減期を付与する抗体定常ドメイン有する(配列番号4)。発現及びプロセシングの後、N末端シグナルペプチドを除去し、投与される分子がこのペプチドを欠くようにする(それぞれ配列番号5及び6)。
【0190】
配列番号3:N末端シグナル配列を有する標準Her2結合剤(SpyTag付き重鎖)。第1の下線付きセクションは、N末端シグナル配列、続いて、Her2を結合する抗体可変ドメインであり、第2の下線付きセクションは、抗体定常ドメイン、続いて、リンカーであり、第3の下線付きセクションはSpytagである。
【0191】
【0192】
配列番号4:N末端シグナル配列を有する短半減期Her2バリアント(SpyTag付き重鎖)。第1の下線付きセクションは、N末端シグナル配列、続いて、Her2を結合する抗体可変ドメインであり、第2の下線付きセクションは、短半減期抗体定常ドメイン、続いて、リンカーであり、第3の下線付きセクションはSpytagである。
【0193】
【0194】
配列番号5:N末端シグナル配列を有しない標準Her2結合剤(SpyTag付き重鎖)(抗Her2-ST)。
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYGSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKGGGGSGGGGSRGVPHIVMVDAYKRYK
【0195】
配列番号6:N末端シグナル配列を有しない短半減期Her2バリアント(SpyTag付き重鎖)。
【0196】
【0197】
各結合剤に関係するDNA配列を、まず、SpyTag配列を含むポリヌクレオチドとしてデノボ合成し、次いで、これをトランスフェクショングレードのエンドトキシン不含プラスミド(例えば、pAb20-hCL-1)にクローニングした。これを次に、TunaCHOなどの許容的細胞株に一過性にトランスフェクトし、その後、これをDMEM/F12中で14日間培養した後、タンパク質A精製、サイズ排除クロマトグラフィー、及び超高速液体クロマトグラフィーを使用して、結合剤を精製する。同一性の確認は、質量分析法を使用して行った。追加の結合剤が開発及び合成されており、本明細書の配列番号8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、及び18により開示される。
【0198】
実施例2-細胞のトランスフェクション及び拡大
多形核細胞又は富化T細胞のいずれかの調製物を、CD3/CD28ビーズを用いて24時間活性化させた後、レトロネクチン又はポリブレンの存在下で更に24時間、SpyCatcher構築物をコードするレンチウイルスにより形質導入し、そうしたらすぐに50IU/mLの組換えIL-2を加える。CD3/CD28ビーズを7日間の連続培養後に除去し、T細胞を更に7日間培養する。形質導入効率を、細胞表面上のSpyCatcherの発現に基づいて決定し、T細胞の数及び表現型を、Coulter Courter及びマルチパラメータフローサイトメトリーを使用して決定する。
【0199】
実施例3-UIR-T細胞のメトロノミック投薬
メトロノミック投薬がUIR-T細胞の持続性及び活性に与える影響を決定するために、免疫不全NOD-SCID-ガンマ(NSG)マウスに、2~5×10
6のMCF7又はSKBR3乳がん細胞のいずれかを(乳房脂肪褥又は皮下注射を介して)注射する。腫瘍成長を2日ごとに測定する。腫瘍注射後5~10日後、又は腫瘍が20~30mm
3に達したら、これらのマウスを0.5~1Gyの全身照射で事前調整する。同じ日に、これらのマウスに、21日間3日ごとにマウス当たり12.5μg~50μgの濃度の抗Her2-ST(SpyTag付き抗Her2結合剤又は短半減期バージョン)とともに、事前武装UIR T細胞(200μLのPBS中1×10
7個のUIR T細胞)を静脈内に注射する(
図1)。各投薬サイクルは21日間継続する。
【0200】
ST結合剤の不連続投薬が持続性及びUIR-T活性に与える影響も、28日間の投薬プロトコルにおいて評価し、ここでは、腫瘍サイズが20~30mm
3に達したとき(0日目)に、事前武装UIR Tを投与し、抗Her2-ST(又は短半減期バージョン)を、最初の1週間に2回(例えば、3日目及び6日目に)、マウス当たり12.5μg~50μgの濃度で投与し、続いて21日間の休薬期間を入れる(
図2)。
【0201】
ST結合剤のインビボ武装化及び不連続投薬がUIR-Tの持続性及び細胞傷害性に与える影響も、更なる28日間の投薬プロトコルにおいて評価し、ここでは、腫瘍サイズが20~30mm
3に達したとき(0日目)に、非武装UIR Tを投与し、抗Her2-ST(又は短半減期バージョン)を、最初の1週間に3回(例えば、3日目及び6日目に)、マウス当たり12.5μg~50μgの濃度で投与し、続いて21日間の休薬期間を入れる(
図3)。
【0202】
ST結合剤のインビボ武装化及び不連続投薬がUIR-Tの持続性及び細胞傷害性に与える影響も、更なる28日間の投薬プロトコルにおいて評価し、ここでは、腫瘍サイズが20~30mm
3に達したとき(0日目)に、非武装UIR Tを投与し、抗Her2-ST(又は短半減期バージョン)を、最初の1週間に3回(例えば、1日目、4日目、及び7日目に)、マウス当たり12.5μg~50μgの濃度で投与し、続いて21日間の休薬期間を入れる(
図4)。
【0203】
ST結合剤のインビボ武装化及び不連続投薬がUIR-Tの持続性及び細胞傷害性に与える影響も、より長い56日間の投薬プロトコルにおいて評価し、ここでは、腫瘍サイズが20~30mm
3に達したとき(0日目)に、非武装UIR Tを投与し、抗Her2-ST(又は短半減期バージョン)を、最初の1週間に3回(例えば、1日目、4日目、及び7日目に)、マウス当たり12.5μg~50μgの濃度で投与し、続いて49日間の休薬期間を入れる(
図5)。
【0204】
実施例4-UIR-T細胞の抗腫瘍有効性及び投薬
材料及び方法
細胞株及びマウスモデル
ヒト乳がん細胞株MDA-MB231をATCCから調達し、NOD-SCIDガンマ(NSG)マウスに接種するために使用した。各細胞株に対するPCR分析を定期的に行って、細胞株がマイコプラズマ陰性であることを確認した。全ての腫瘍細胞株を、10%の熱不活性化されたウシ胎仔血清(FBS)、1mMピルビン酸ナトリウム、2mMグルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、10mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、100U/mLペニシリン、及び100μg/mLストレプトマイシンを補充したDMEM(Gibco、Life Technologies、Grand Island,New York,USA)中で培養した。細胞を、37℃、CO210%の加湿したインキュベーター中で成長させた。他の細胞株には、American Type Culture Collection(ATCC、Manassas,VA,USA)から入手した、レトロウイルス及びレンチウイルスパッケージ株、HEK293gp、PA317、並びにGP+E86が含まれる。GP+E86、PA317、HEK293T、及びHEK293gpを、上記の腫瘍細胞培地と同じ培地中に維持した。
【0205】
第3世代レンチウイルス産生
第3世代レンチウイルスエンベロープ、パッケージング、及び移送プラスミドを使用し、これらはAddgeneから調達した。移入プラスミドは、pULTRAプラスミドの修飾バリアントであった。T175フラスコを、ポリD-リジン(50μg/mL)で事前にコーティングし、2300万個のHEK293Tパッケージ細胞を洗浄した後で播種した。24時間後、Lipofectamine 3000試薬を製造業者の指示に従って使用して、細胞を1:1:1:1のモル比のプラスミドでトランスフェクトした。ウイルス上清を、トランスフェクション後1日目、2日目、及び3日目に収集し、濾過し(0.45μM)、Takara BioからのLenti-X-Concentrater試薬で濃縮した後、アリコートを-80℃で凍結させた。
【0206】
ヒトPBMCのレンチウイルス形質導入
新鮮なドナーヒトPBMCを、1: 1比のPBSで希釈することによって処理した後、Ficoll分離によって分離させた。白血球を血清及び赤血球から分離させ、収集した後、更なる赤血球溶解を行った。溶解後、細胞を、OKT3(30ng/mL)、600IUのヒトIL-2、及び完全RPMI(10% FCS、ピルビン酸ナトリウム、グルタマックス、NEAA、HEPES、及びペニシリン/ストレプトマイシン)培地で、100万細胞/mLの細胞濃度で、最低48時間活性化させた。活性化後、活性化したT細胞を600IUのIL-2とともに100万T細胞/mLで再播種した後、レンチブースト試薬(1:400)とともに1MOI機能力価のレンチウイルスを加えた。細胞に培地及びIL-2を足し、最低72時間培養した。
【0207】
フローサイトメトリー
収集した細胞を、最初にFACS緩衝液で洗浄し、次いで、氷上で30分間、フルオロフォアにコンジュゲートした抗体で染色した。細胞をFACS緩衝液で少なくとも2回洗浄した後、FACS緩衝液に再懸濁させ、ビーズ(20μL、約20,000ビーズ)を計数した。細胞内又は核内染色の場合、染色された細胞を、製造業者の指示に従って、それぞれBD Biosciencesキット又はeBioscienceキットを使用して、更に固定し、透過させた。その後、固定し透過された細胞を、室温で30分間、フルオロフォアにコンジュゲートした抗体で更に染色した後、パーマ/洗浄緩衝液で少なくとも2回洗浄し、カウントビーズを用いてパーマ/洗浄緩衝液に最後に再懸濁させた。染色した試料を、BD FACSymphony、FACSFortessa、又はLSR(BD Biosciences)で取得した。標的T細胞集団の数は、標的化集団の試料/ビーズ事象×事象における入力ビーズの数を使用して計算した。
【0208】
CAR T細胞と腫瘍細胞との共培養
OKT3(1:1000)によるヒトCAR T細胞の直接活性化のために、平底96ウェルプレートを少なくとも1時間37℃で事前にコーティングした。腫瘍共培養のために、CAR T細胞及び腫瘍細胞を、平底96ウェルプレート中で、50,000個の腫瘍細胞/ウェルとともに、様々なE:T比で、200μLの補充RPMI培地中で共培養した。細胞を、示すように、37℃及び5%CO2で24~72時間共培養した。
【0209】
Incucyte殺傷アッセイ
まず腫瘍細胞を形質導入して、HER2にはGFP又はEGFRvIIIにはmCherryの蛍光マーカーに連結した標的抗原を発現させた。腫瘍を384ウェルプレートに5000個の細胞/ウェルで一晩播種した後、製造業者によって提供されるCaspase 3/7染料を推奨濃度で用いて、様々な比のCAR T細胞を各ウェルに加えた。次いで、プレートを、5%CO2、37℃のインキュベーター内部に位置するincucyteマシンに加え、1~4時間ごとに合計24~72時間撮像した。画像を、Incucyte分析ソフトウェアで分析する。
【0210】
サイトカイン産生の定量化
収集した上清を、サイトメトリックビーズアレイ(CBA)アッセイ(BD Biosciences)によって分析した。12.5μLの上清をV底96ウェルプレートに移した。試験した各サイトカインを含む標準物質の半系列希釈液を、最高濃度5000pg/mLでプレーティングした。製造業者の指示に従って、0.25μLのビーズ/サイトカイン/ウェルのサイトカイン特異的ビーズを含む捕捉カクテルを、B Dビーズ緩衝溶液を用いてそれぞれ12.5μL/ウェル(ヒト)まで作製し、各ウェルに加えた。次いで、プレートを最大1時間室温でインキュベートした。マウス又はヒトのサイトカインのPE検出抗体カクテルのためのビーズと同じ体積を作製し、各ウェルに加えた。プレートを、再度、最大1時間室温の暗所でインキュベートした。最後に、細胞を、提供された洗浄緩衝液で少なくとも2回洗浄した後、75~100μLの洗浄緩衝液に再懸濁させ、BD FacsVerse(Becton Dickinson)で分析し、データをFCAPソフトウェア(BD biosciences)で処理した。
【0211】
OmniCAR T細胞の「武装化」及び「事前武装化」、抗体結合剤の投薬スケジューリング
非武装のOmniCAR T細胞は、spyCatcher受容体CARに結合した標的化抗体結合剤を有しず、腫瘍抗原に結合することができないため、腫瘍細胞を活性化することも殺傷することもできない。抗体結合剤を計100nMの濃度でT細胞培地(10e6/mL未満)中のOmniCAR T細胞に加え、約30分間37℃にて5%CO2中でインキュベートすることにより、OmniCAR T細胞を「武装化」すると、機能的なspyCatcher:spyTAG受容体が形成される。「事前武装」OmniCAR T細胞は、養子移植前にエクスビボで又は体/マウスの外で武装化されたCAR T細胞である。抗体は、養子移入の前に洗い流す。
【0212】
腫瘍保持マウスの養子移入及び処置
ヒトHER2抗原を皮下発現するように形質導入した2~5×106個のMDA-MB231乳がん細胞を、NSGマウスに注射した。腫瘍の確立後、続いてマウスを0.5gyの全身照射の事前調整レジメンに供し、その後、24時間ごとにマウス当たり25,000IUのIL-2の4用量を補充したOmniCAR T細胞の養子移入を行う。結合剤を、メトロノミッス投薬スケジュールに基づいて、腫瘍内、静脈内、又は腹腔内に送達した(
図11A)。
【0213】
腫瘍浸潤免疫サブセットの分析
腫瘍浸潤CAR T細胞表現型を調べるために、マウスを安楽死させ、腫瘍又は脾臓を取り出した。腫瘍を機械的に消化させ、1mg/mLのコラゲナーゼIV型(Sigma-Aldrich)及び0.02mg/mLのDNAse(Sigma-Aldrich)を補充したDMEMを用いて、37℃で一定に振盪しながら30分間酵素的に消化させた。次いで、腫瘍単一細胞懸濁液を、70μmフィルターを通して濾過した後、フローサイトメトリー染色のためにアリコートする。脾臓も機械的に消化させ、70μmフィルターを通して濾過した後、染色する。
【0214】
結果
結合剤の投薬レジメンにより、インビボでの機能的UIR発現が調節される。
上述したプロトコルを使用し、第3世代レンチウイルスを使用してOmniCAR T細胞を生成し、抗FLAG抗体を使用して非抗原特異的OmniCAR受容体の形質導入効率及び発現を検出した(
図6A)。「非武装」OmniCAR T細胞は、抗体結合剤成分を欠いており、そのため抗腫瘍応答を励起するために腫瘍抗原に結合することができない。抗ヒトIgG抗体を加えることで、それらが自発的にOmniCAR受容体と複合体を形成するときに完全長抗体結合剤を検出することができるようになり、これにより、それぞれの標的抗原に対して完全に機能性である「武装」OmniCAR T細胞が得られる(
図6A)。
【0215】
ヒトHER2抗原に対する漸増濃度の抗体結合剤とともにインキュベートすることで、抗IgGによる検出が増加し、これは、CD8+ FLAG+CAR T細胞とCD4+ FLAG+ CAR T細胞との両方における「武装」OmniCAR受容体の発現の増加に対応する(
図6B)。武装受容体の発現の増加と相関して、HER2で形質導入した乳がん細胞株MDA-MB231(MDA-MB231-HER2)と共培養したときに3つの別個のドナーから生成されたOmniCAR T細胞が活性化され、漸増濃度の機能性サイトカインIFNγ、TNF、及びIL-2を分泌した(
図6C)。OmniCAR T細胞は、NSGマウスへの養子移入後に武装化することもできる。この目的で、1000万~2000万個のOmniCAR T細胞をNSGマウスに移入し、抗体結合剤を漸増濃度で3日ごとに投薬した。移入後1日目及び7日目に血液を収集し、「武装」FLAG+ CAR T細胞を両方の時点で検出し、発現レベルは、増加した結合剤投薬濃度に対応した(
図6D)。治療後1日目に、より高い投薬量の結合剤により、武装受容体の検出の増加(
図6E)、並びに武装OmniCAR T細胞の早期拡大及び数(
図6F)が得られた。同様に、7日目の武装受容体の発現(MFI)は、結合剤の投薬量の増加に対応した(
図6D)。
【0216】
結合剤の投与レジメンにより、インビボでT細胞のメモリー表現型、拡大、及び持続性が調節される。
OmniCAR療法の治療有効性を更に調査するために、NSGマウスにヒトMDA-MB231-HER2乳がん細胞を注射した。腫瘍が確立されたら、マウスを、OmniCAR T細胞、及び抗HER2抗体結合剤の異なる用量及び投薬レジメンを用いて処置した(
図7A)。以前の観察と同様に、より高い投薬量の抗体結合剤により、マウスの末梢におけるCD8+ FLAG+ OmniCAR T細胞の早期拡張が得られた(
図7B)。5ug/マウス超の結合剤の投与により、「武装」OmniCAR受容体の発現がより大きくなり、これは、腫瘍保有マウス若しくは非腫瘍保有マウスのいずれかにおける結合剤の投薬、又は1週間超の投与間の長い間隔を置いた期間と一致していた(
図7C)。
【0217】
用量及び投薬戦略を調節することで、インビボでOmniCAR T細胞のメモリー表現型が調節され得、この効果は、腫瘍保持マウス及び非腫瘍保持マウスの背景で観察された(
図7D)。結合剤の濃度が低いと、CD45RO+CD45RA-Tエフェクターメモリー亜集団の%が事前武装単独よりも大きくなる一方、結合剤の濃度が高いと、CD45RA+CD45RO-Tセントラルメモリー亜集団の%がより大きくなり、これは抗原非依存性であるように見える(
図7D)。実際、高用量処置群において末梢で移入されたOmniCAR T細胞の7日目に観察された拡大の多くは抗原非依存性であり、OmniCAR T細胞の拡大がOmniCAR受容体からのシグナル伝達の調節に結び付けられる固有の特徴であることを示している(
図7E)。
【0218】
結合剤の投薬レジメンにより、インビボでの抗腫瘍有効性が調節される
拡大及び機能の観察と一致して、事前武装OmniCAR T細胞及び高用量の抗体結合剤で処置したマウスは、未処置のマウスと比較して抗腫瘍効果を媒介し、全体的な腫瘍サイズを低減させ得る(
図8A)。試験の終点で、脾臓及び腫瘍をマウスから単離した。予期したとおり、高い結合剤用量での処置により、脾臓における生着が低減した(
図8B)。同様に、このパターンは、腫瘍内で検出された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の数に変換された(
図8C)。より高い投薬量の結合剤により、機能的OmniCAR受容体発現の増加に起因した抗原特異的シグナル伝達の増加も駆動され、その結果、TIM3+PD1+CD8+FLAG+CAR TILの%が増加し得る(
図8D)。
【0219】
提案されたレジメンの効果を、急性骨髄性白血病(AML)のモデルにおいても試験した。生物発光画像法を行って、AMLのマウスモデルにおける経時的な腫瘍負荷を決定した。NSGマウスに、500万個のKG-1細胞を与え、動物を未処置のままにした(対照)か、又はCAR-T移入後3日目、6日目、及び9日目に、事前武装OmniCAR-T細胞並びに25ugのCD33及びCLL-1結合剤を与えた。対照群と比較した場合、CAR-T移入後3日目、6日目、及び9日目に、事前武装OmniCAR-T細胞及び25μgのCD33及びCLL-1結合剤で処置したマウスにおいて、腫瘍成長に対する有意な効果が観察された(
図8E)。
【0220】
結合剤の投薬レジメン又は特別な設計により、OmniCAR抗原非依存性シグナル伝達又は抗原依存性シグナル伝達が調節される
従来のCAR T又は非形質導入T細胞と比較して、養子移植後のCAR T細胞の優れた増殖を駆動するOmniCARの固有の能力は、抗原非依存性であることが以前に示された(
図7D)。関与する可能性のある機序を調査するために、活性化、増殖、又はチェックポイントT細胞マーカーの発現のレベルについて、OmniCAR T細胞をインビトロで非形質導入又は従来のCAR T細胞と直接比較した。IL-2の存在下で刺激なしで72時間超共培養した後、CD8とCD4との両方、それぞれ非武装又は武装OmniCAR T細胞は、非形質導入又は従来のCAR T細胞と比較したとき、活性化マーカーTIM3の発現を上方調節した(
図9A)。
【0221】
重要なことに、CD8及びCD4武装OmniCAR T細胞の両方が、それらの非武装の相対物と比較して、より高いレベルのTim3を発現した(
図9A)。OKT3(αCD3)で72時間超刺激すると、全てのCD8+群は、Tim3を同様のレベルに上方調節したが、非武装又は武装OmniCAR T細胞の両方が全体的により高い発現を有した(
図9A)。興味深いことに、非武装及び武装CD4+OmniCAR T細胞の両方が、従来のCAR T細胞と比較して有意に高いTim3発現を有し、OKT3で刺激されると活性化のレベルがより高くなることを示した(
図9A)。第2の後期チェックポイント受容体であるPD-1は、刺激なしではインビトロで高度に発現されなかったが、これは刺激すると上方調節されたものの、CD8+画分における武装化によってはされなかった(
図9B)。しかしながら、PD-1の発現は、CD4+画分で顕著であり、非武装及び武装CD4+OmniCAR T細胞は、より高いレベルのPD-1を発現し、刺激していない細胞における武装化により、PD-1発現が更に高くなった(
図9B)。PD-1は、刺激したCD4+OmniCAR T細胞において上昇し続けるが、武装OmniCAR T細胞は、非武装と比較してPD-1が低減し、これにより、CD4+T細胞における武装OmniCAR受容体からのシグナル伝達が低減する可能性が示される(
図9B)。
【0222】
まとめると、非武装又は武装OmniCAR受容体は、それぞれ、刺激していない又は刺激したCD8又はCD4画分に対して固有のシグナル伝達効果を有し、養子移入後のOmniCAR T細胞産物の異なる画分を差別的に調節するための用途を強調する。CD8画分とCD4画分との間の複雑な相互作用により、移入されたOmniCAR T細胞の優れた増殖が駆動され得る。
【0223】
複数の腫瘍抗原を順次又は同時に標的化するためのメトロノミック投薬
OmniCARプラットフォームの利点は、複数の腫瘍抗原を、異なる抗体結合剤の順次又は同時投薬によって標的化できることである。ヒト膠芽腫細胞株U251MGを修飾して、ヒトHER2又は変異型EGFRvIII受容体のいずれかを別々に発現させた。混合腫瘍共培養において、U251MG-HER2とU251MG-EGFRvIIIとの両方が、安定した成長動態を有した(
図10A)。OmniCAR T細胞を、ヒトHER2抗原のみに対して武装化した場合、混合腫瘍共培養において、U251MG-HER2細胞を発現するHER2のみが排除された(
図10B)。同様に、OmniCAR T細胞を変異型EGFRvIII抗原のみに対して武装化した場合、混合腫瘍共培養物において、U251MG-EGFRvIIIを発現するEGFRvII細胞のみが排除された(
図10C)。最後に、異なる標的への抗原スイッチングを示すために、OmniCAR T細胞を標的とするEGFRvIIIを混合腫瘍アッセイにおいて共培養し、100nMのHER2結合剤を20時間後に加えた(
図10D)。HER2結合剤を加えるまで、EGFRvIII発現腫瘍のみが排除されたが、CAR T細胞殺傷は、HER2結合剤を加えた後にHER2発現腫瘍にスイッチされ、これにより、抗原の迅速かつ効率的な標的化が順次行われることが示された(
図10D)。複数の腫瘍抗原を同時に標的化するために、OmniCAR T細胞を、3つ以上の異なる結合剤の等価レベルの発現及び共発現で、一度に2つ以上の抗体結合剤を用いて武装化することができる(
図10E)。最後に、HER2及びEGFRvIII抗体結合剤の存在は、それらの投与から2週間後にマウスの血清中で検出することができる(
図10F)。
【0224】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法は、血液悪性腫瘍の治療において広く成功を収めており、複数の固形腫瘍を治療するための臨床試験中である。しかしながら、対処する必要がある独自の毒性及びその後の再発に関係するいくつかの課題がある。ユニバーサル免疫受容体は、急速に出現する養子免疫療法の武装形態であり、これは、安全性の増加及び副作用の低減(注入後のCAR応答のオン/オフのスイッチング)、並びに腫瘍再発をもたらす腫瘍逃避機序(抗原喪失又は抗原不均一性など)を克服するための複数の腫瘍抗原を標的とすることによって、これらの課題に対処する可能性を有する。加えて、ユニバーサルCAR T細胞は、現在臨床にある従来のCAR療法と比較して、はるかに大きな汎用性、低コスト、及び既製品有用性を有する可能性があり得る。したがって、
図11Aで強調されているメトロノミック投薬戦略は、インビトロ及びインビボでの抗原特異的機能性UIR発現の発現を調節する能力だけでなく、インビボでのT細胞のメモリー分化、拡大、及び持続を調節する能力をOmniCAR T細胞に与えることができる。
【0225】
投薬レジメンを、不連続投与、連続投与、若しくは定期投与をとおして、時間的に調節することにより、又は投薬濃度を調節することにより(
図11A)、抗原非依存性トニックシグナル伝達及び抗原依存性CARシグナル伝達の強度を直接的又は間接的に調節して、最適なT細胞メモリーサブセット、T細胞活性化、及び抗腫瘍機能の維持につなげることが可能である(
図11B)。OmniCARプラットフォームに固有なのは、抗原非依存性トニックシグナル伝達を調節する能力であり、これは、強固なアーキテクチャ、したがって固定レベルのトニックシグナル伝達を有する従来のCAR T細胞よりも高いレベルで、改善された安全性、抗腫瘍活性、及びT細胞拡大を駆動する(
図11B)。抗原標的間で迅速かつ効率的に連続してスイッチングする能力、又は複数の腫瘍抗原を同時に標的化するように2つ以上の抗原結合剤で武装化することにより、複数の抗原を標的化することもできる(
図10A~E)。結論として、これらの知見は、養子移植後の抗腫瘍治療応答を微調整するためのOmniCAR UIRプラットフォームの柔軟性と相乗的に組み合わせる戦略として、メトロノミック投薬を支持している。
【0226】
当業者であれば、広く説明した本発明の主旨又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されている本発明に対して多数の変形及び/又は変更を行うことができることを理解する。したがって、本実施形態は、全ての点で例示的であり、限定的ではないものとみなされるべきである。
【0227】
本明細書で説明及び/又は参照される全ての刊行物は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0228】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品などのいずれの考察も、本発明の背景を提供する目的であるにすぎない。これらの事項のいずれか又は全てが、先行技術の基礎の一部を形成していること、又は本出願の各請求項の優先日前に存在した本発明に関連する分野における共通一般的知識であったことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0229】
参照文献
Berg et al.(1998)Transplant Proc.30:3975-3977.
Datta et al.(2014)Yale J Biol Med 87:491-518.
Garland et al.(1999)J.Immunol Meth.227:53-63.
Ghosh et al.(1991)Glycobiology 5:505-510.
Haanen et al.(1999)J.Exp.Med.190:1319-1328.
Lui et al.(2021)J Hemat Oncol 14:7.
Rosenberg et al.(1988)New Eng.J.of Med 319:1676.
Sabado et al.(2017)Cell Res 27:74-95.
Smith et al.(2015)Clinical & Translational Immunology 4:e31.
Veggiani et al.(2016)PNAS 113:1202-1207.
【配列表】
【国際調査報告】