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特表2024-527968粘着シート、それを含む光学フィルムおよび画像表示装置
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  • 特表-粘着シート、それを含む光学フィルムおよび画像表示装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】粘着シート、それを含む光学フィルムおよび画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/20 20180101AFI20240719BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240719BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240719BHJP
   C09J 133/06 20060101ALI20240719BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C09J7/20
C09J7/38
C09J133/00
C09J133/06
C09J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504962
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-26
(86)【国際出願番号】 KR2022008877
(87)【国際公開番号】W WO2023008747
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0098523
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEOLLABUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】クォン, ヘ リム
(72)【発明者】
【氏名】ジュン, キョン ムン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン, ビョン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ホ, ジ へ
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004CC05
4J004CD08
4J040DF001
4J040DF031
4J040EF282
4J040GA05
4J040GA07
4J040GA14
4J040GA22
4J040HD30
4J040HD36
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA26
4J040KA28
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA32
4J040KA35
4J040KA42
4J040LA06
(57)【要約】
本発明は粘着シートに関し、より詳細には、所定の範囲の水接触角を有する基材フィルムと、前記基材フィルム上に配置された粘着剤層とを含む粘着シートに関する。基材フィルムと粘着剤層との間に高い密着性を有し、高温・高湿などの過酷な条件下でも向上した粘着耐久性および信頼性を有する光学フィルムを提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水接触角が40°~65°の基材フィルムと、
前記基材フィルムの上面上に配置され、アクリル系共重合体および架橋剤を含む粘着剤組成物の硬化物を含む粘着剤層とを含み、
前記粘着剤層の上面に対して前記粘着剤層の前記上面と平行な一方向に1MPaの圧力および0.1m/sの速度で20回繰り返し荷重時、前記粘着剤層の前記一方向への移動距離(d)が15mm以下である、粘着シート。
【請求項2】
前記基材フィルムの前記上面の表面粗さ(Ra)が10nm~100nmである、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記基材フィルムの水接触角は40°~45°である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記基材フィルムは、コロナ放電処理またはプラズマ処理されている、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層は、下記の数学式1で計算されるゲル分率が70%~85%である、請求項1に記載の粘着シート。
[数学式1]
(数学式1において、W1は前記粘着剤層の初期重量であり、W2は前記粘着剤層を常温でエチルアセテートに3日間浸漬し、120℃で24時間乾燥した後に測定した重量である。)
【請求項6】
前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリレート単量体、(メタ)アクリル酸単量体、および極性官能基を有する架橋性単量体を含む重合性化合物の共重合体である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記極性官能基は、ヒドロキシ基、アミド基またはアミン基を含む、請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸単量体の含有量は、前記重合性化合物の全重量に対して0.01重量%~1重量%である、請求項6に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記架橋剤は、イソシアネート系化合物またはアジリジン系化合物を含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記架橋剤の含有量は、前記アクリル系共重合体100重量部に対して0.05重量部~3重量部である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項11】
前記粘着剤組成物は、イオン性帯電防止剤およびシランカップリング剤をさらに含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項12】
前記イオン性帯電防止剤は、融点が20℃~50℃のイオン性固体を含む、請求項11に記載の粘着シート。
【請求項13】
前記粘着剤組成物は、前記アクリル系共重合体100重量部に対して、前記イオン性帯電防止剤0.01重量部~5重量部および前記シランカップリング剤0.01重量部~2重量部を含む、請求項11に記載の粘着シート。
【請求項14】
請求項1に記載の粘着シートを含む、光学フィルム。
【請求項15】
前記基材フィルムの下面上に配置された反射防止層をさらに含む、請求項14に記載の光学フィルム。
【請求項16】
請求項1に記載の粘着シートを含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、並びにそれを含む光学フィルムおよび画像表示装置に関する。より詳細には、アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物から形成された粘着シート、並びにそれを含む光学フィルムおよび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶表示(LCD)装置、有機発光表示(OLED)装置のような画像表示装置の表示パネルと様々な光学構造物または回路構造物などを接合するために、粘着剤または粘着シートを用いることができる。前記粘着剤は、画像表示装置の光学特性を劣化することがないように、向上した透明性を有するとともに優れた粘着力を有する必要がある。
【0003】
近年、折ったり曲げたりできるフレキシブルディスプレイが広く使用されており、高温・多湿の過酷な条件や外部からの物理的衝撃下でも動作可能なディスプレイが活発に研究されている。これに伴い、前記ディスプレイに結合される構造物もまた、適切な弾性、柔軟性および耐久性を有するように設計されている。
【0004】
そこで、前記構造物の接合に採用される粘着剤または粘着シートは、過酷な条件や物理的衝撃下でも前記構造物の脱落・剥離を防止できるように形成する必要がある。
【0005】
例えば、韓国公開特許第2010-0039274号では、画像表示装置に適用される偏光板用粘着剤を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの課題は、向上した粘着特性および耐久性を有する粘着シートを提供することである。
【0007】
本発明の一つの課題は、前記粘着シートを用いた光学フィルムまたは画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1.水接触角が40°~65°の基材フィルムと、前記基材フィルムの上面上に配置され、アクリル系共重合体および架橋剤を含む粘着剤組成物の硬化物を含む粘着剤層とを含み、
前記粘着剤層の上面に対して前記粘着剤層の前記上面と平行な一方向に1MPaの圧力および0.1m/sの速度で20回繰り返し荷重時、前記粘着剤層の前記一方向への移動距離(d)が15mm以下である、粘着シート。
【0009】
2.前記項目1において、前記基材フィルムの前記上面の表面粗さ(Ra)が10nm~50nmである、粘着シート。
【0010】
3.前記項目1において、前記基材フィルムの水接触角は40°~45°である、粘着シート。
【0011】
4.前記項目1において、前記基材フィルムは、コロナ放電処理またはプラズマ処理されている、粘着シート。
【0012】
5.前記項目1において、前記粘着剤層は、下記数学式1で計算されるゲル分率が70%~85%である、粘着シート。
[数学式1]
(数学式1において、W1は前記粘着剤層の初期重量であり、W2は前記粘着剤層を常温でエチルアセテートに3日間浸漬し、120℃で24時間乾燥した後に測定した重量である。)
【0013】
6.前記項目1において、前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリレート単量体、(メタ)アクリル酸単量体、および極性官能基を有する架橋性単量体を含む重合性化合物の共重合体である、粘着シート。
【0014】
7.前記項目6において、前記極性官能基は、ヒドロキシ基、アミド基またはアミン基を含む、粘着シート。
【0015】
8.前記項目6において、前記(メタ)アクリル酸単量体の含有量は、前記重合性化合物の全重量に対して0.01重量%~1重量%である、粘着シート。
【0016】
9.前記項目1において、前記架橋剤は、イソシアネート系化合物またはアジリジン系化合物を含む、粘着シート。
【0017】
10.前記項目1において、前記架橋剤の含有量は、前記アクリル系共重合体100重量部を基準として0.05重量部~3重量部である、粘着シート。
【0018】
11.前記項目1において、前記粘着剤組成物は、イオン性帯電防止剤およびシランカップリング剤をさらに含む、粘着シート。
【0019】
12.前記項目11において、前記イオン性帯電防止剤は、融点が20℃~50℃のイオン性固体を含む、粘着シート。
【0020】
13.前記項目11において、前記粘着剤組成物は、前記アクリル系共重合体100重量部を基準として前記イオン性帯電防止剤0.01重量部~5重量部および前記シランカップリング剤0.01重量部~2重量部を含む、粘着シート。
【0021】
14.前記項目1に記載の粘着シートを含む、光学フィルム。
【0022】
15.前記項目14において、前記基材フィルムの下面上に配置された反射防止層をさらに含む、光学フィルム。
【0023】
16.前記項目1に記載の粘着シートを含む、画像表示装置。
【発明の効果】
【0024】
例示的な実施形態による粘着シートは、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性が高く、高温・多湿の過酷な条件でも向上した粘着耐久性および信頼性を有することができる。例えば、粘着シートは、所定の表面粗さを有する基材フィルムと、前記基材フィルム上で所定の外力を印加したときに低い移動距離dを有する粘着剤層とを含むことができる。
【0025】
例示的な実施形態による粘着シートは、基材フィルムの鹸化(saponification)工程を必要としないので、工程の容易さおよび簡便性を改善することができる。また、鹸化工程による粘着シートの汚染を防止することができる。
【0026】
また、例示的な実施形態による粘着シートは、高い粘着性および密着性を有し、例えばフレキシブルディスプレイの様々な構造物の接合に適用され、繰り返し折り畳み、曲げなどの動作においても向上した粘着耐久性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、例示的な実施形態による粘着シートを説明するための概略断面図である。
図2図2は、粘着剤層の上面に対する繰り返し荷重による基材フィルム上における粘着剤層の移動距離dを説明するための例示的な断面図である。
図3図3は、例示的な実施形態による光学フィルムを説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態は、所定の範囲の水接触角を有する基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の面上に配置される粘着剤層とを含む粘着シートを提供する。例えば、前記粘着剤層は、アクリル系共重合体を含む粘着剤組成物から形成することができる。
【0029】
前記粘着剤層は、前記基材フィルムの前記一方の面と平行な一方向に対して所定の圧力及び所定の速度で往復荷重したとき、前記一方向への移動距離dが小さくてもよい。これにより、基材フィルムと粘着剤層との間の密着性を高くすることができ、高温・高湿などの過酷な条件下でも改善された耐久性および曲げ特性を有する粘着シートを提供することができる。
【0030】
以下、本発明を詳細に説明することとする。
【0031】
<粘着剤組成物および粘着シート>
以下、図面を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。ただし、本明細書に添付される図面は、本発明の好適な実施形態を例示するものであって、発明の詳細な説明とともに本発明の技術思想をさらに理解する一助となる役割を果たすものであるため、本発明は図面に記載された事項のみに限定されて解釈されるものではない。
【0032】
図1は、例示的な実施形態による粘着シートを示す概略断面図である。
【0033】
図1を参照すると、例示的な実施形態による粘着シートは、基材フィルム110と、前記基材フィルム110の一方の面上に配置された粘着剤層120とを含むことができる。
【0034】
例示的な実施形態によれば、前記粘着剤層120は、アクリル系共重合体、架橋剤、イオン性帯電防止剤およびシランカップリング剤を含む粘着剤組成物から形成することができる。例えば、粘着剤層120は、前述した粘着剤組成物の硬化物を含むことができる。
【0035】
例示的な実施形態によれば、前記アクリル系共重合体は、(メタ)アクリレート単量体、(メタ)アクリル酸単量体、および極性官能基を有する架橋性単量体を含む重合性化合物の共重合体を含むことができる。本明細書で使用される用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを包含する意味で使用される。本明細書で使用される用語「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を包含する意味で使用される。
【0036】
前記(メタ)アクリレート単量体は、炭素数1~12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単量体であってもよい。例えば、前記アルキル(メタ)アクリレート単量体は、炭素数1~12の脂肪族アルコールに由来するものであってもよい。
【0037】
前記アルキル(メタ)アクリレート単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、またはラウリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記(メタ)アクリレート単量体の含有量は、前記重合性化合物の全重量に対して80重量%~99重量%であってもよく、好ましくは90重量%~98重量%であってもよい。(メタ)アクリレート単量体の含有量が80重量%未満であると、粘着剤組成物の架橋密度および密着力が低下することがある。(メタ)アクリレート単量体の含有量が99重量%を超えると、粘着剤組成物の凝集力が低くなり、粘着剤層の耐久性が低下することがある。
【0039】
前記(メタ)アクリル酸単量体は、粘着剤組成物に粘着力を付与する役割を果たすことができる。例えば、アクリル系共重合体が側鎖に、(メタ)アクリル酸単量体に由来する酸性基を有することにより、粘着剤組成物の密着性および架橋度を向上させることができる。
【0040】
しかし、(メタ)アクリル酸単量体は粘着剤組成物に親水性を付与し、イオン性帯電防止剤の表面移行性に影響を与える可能性がある。また、後述する架橋剤が(メタ)アクリル酸に由来する酸性基と反応して消耗することにより、粘着剤層の凝集力および密着性が低下することがある。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記(メタ)アクリル酸の含有量は、前記重合性化合物の全重量に対して1重量%以下であってもよい。例えば、(メタ)アクリル酸単量体の含有量は、重合性化合物の全重量に対して0.01重量%~1重量%であり、好ましくは0.05重量%~1重量%、より好ましくは0.1重量%~0.7重量%であってもよい。(メタ)アクリル酸単量体の含有量が0.01重量%未満であると、粘着剤組成物の粘着力が低下することがある。(メタ)アクリル酸単量体の含有量が1重量%を超えると、粘着力が増加しすぎてリワーク性が低下することがあり、イオン性帯電防止剤の表面移行に影響を与えて耐久性が低下することがある。
【0042】
前記架橋性単量体は極性官能基を有し、粘着剤層に凝集力および粘着強度を付与することができる。例えば、前記極性官能基は、ヒドロキシ基、アミド基及び/又はアミン基であってもよく、アクリル系共重合体の架橋度を向上させることができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、架橋性単量体は、ヒドロキシ基含有単量体、アミド基含有単量体及び/又はアミン基含有単量体を含むことができる。これらは単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
前記ヒドロキシ基含有単量体の例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アルキレン基の炭素数が2~4のヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、7-ヒドロキシヘプチルビニルエーテル、8-ヒドロキシオクチルビニルエーテル、9-ヒドロキシノニルビニルエーテル、及び10-ヒドロキシデシルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0045】
前記アミド基含有単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-第3級ブチルアクリルアミド、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0046】
前記アミン基含有単量体の例としては、N,N-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0047】
好ましくは、前記架橋性単量体として4-ヒドロキシブチルビニルエーテル及び/又は(メタ)アクリルアミドを含むことができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記架橋性単量体の含有量は、前記重合性化合物の全重量に対して0.05重量%~10重量%であってもよく、好ましくは0.1重量%~8重量%であってもよい。架橋性単量体の含有量が0.05重量%未満であると、粘着剤組成物の凝集力が小さくなり耐久性が低下することがある。架橋性単量体の含有量が10重量%を超えると、粘着剤組成物のゲル分率が高くなりすぎて粘着力および耐久性が低下することがある。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記単量体のほかに、当分野で公知の他の重合性単量体を、粘着力を低下させない範囲、例えばアクリル系共重合体の製造に用いられる全単量体100重量部に対して10重量部以下の量でさらに含むことができる。
【0050】
前記アクリル系共重合体の製造方法は、特に限定されず、当分野で通常用いられる塊状重合、溶液重合、乳化重合または懸濁重合等の方法を用いて製造することができ、好ましくは溶液重合法を用いて製造することができる。また、重合時に通常用いられる溶媒、重合開始剤、分子量を制御するための連鎖移動剤などを使用することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記アクリル系共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算、Mw)は50,000g/mol~2,000,000g/molであってもよく、好ましくは400,000g/mol~2,000,000g/molであってもよい。例えば、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)によって測定することができる。アクリル系共重合体の重量平均分子量が50,000g/mol未満であると、共重合体間の凝集力が不足して粘着耐久性が低下することがある。2,000,000g/molを超えると、塗工時の工程性を確保するために多量の希釈溶媒が必要となることがある。
【0052】
前記架橋剤は、粘着剤の凝集力、密着性および高温信頼性を向上させ、粘着剤の形状を維持する役割を果たすことができる。例えば、架橋剤は、前記架橋性単量体に由来する架橋性官能基と反応して粘着剤の凝集力および耐久性を向上させることができる。また、架橋剤は、基材フィルム110の表面の極性官能基(例えば、カルボキシル基)と反応して、粘着剤層120の基材密着性を改善することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記架橋剤は、イソシアネート系化合物、アジリジン系化合物、エポキシ系化合物、メラミン系化合物、過酸化物系化合物、金属キレート系化合物またはオキサゾリン系化合物を含むことができる。好ましくは、前記架橋剤はイソシアネート系化合物及び/又はアジリジン系化合物を含むことができる。イソシアネート系化合物およびアジリジン系化合物は極性官能基に対する反応性が高く、コロナ放電処理またはプラズマ処理された基材フィルムに対して高い密着性を有することができる。
【0054】
前記イソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;トリメチロールプロパン等の多価アルコール系化合物1当量にジイソシアネート化合物3当量を反応させた付加体、ジイソシアネート化合物3当量を自己縮合(self-condensation)させたイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物3当量のうちの2当量から得られるジイソシアネートウレアに残りの1当量のジイソシアネートが縮合したビュレット体、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビストリイソシアネート等の3つの官能基を含有する多官能イソシアネート化合物などが挙げられる。これらは単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。より好ましくは、前記架橋剤はキシレンジイソシアネートを含むことができ、この場合、耐久性および基材密着性をさらに向上させることができる。
【0055】
前記アジリジン系化合物の例としては、ペンタエリスリトール-トリス-(β-(N-アジリジニル)プロピオネート、トリメチロールプロパン-トリス(β-N-アジリジニル)プロピオネート、トリメチロールプロパントリス(2-メチル-1-アジリジンプロピオネート)、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、またはトリ-1-アジリジニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。これらは単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、前記架橋剤の含有量は、前記アクリル系共重合体100重量部に対して0.05重量部~3重量部であってもよく、好ましくは0.1重量部~2重量部であってもよい。架橋剤の含有量が0.05重量部未満であると、不足する架橋度により凝集力が低くなり、粘着耐久性および切断性が低下することがある。架橋剤の含有量が3重量部を超えると、架橋反応が発生しすぎて残留応力が高くなり、基材フィルム110への密着性が低下することがある。
【0057】
前記イオン性帯電防止剤は、陰イオンと陽イオンで構成されるイオン性塩を含むことができ、粘着剤層120にイオン伝導性を付与することができる。例えば、粘着剤層120の表面比抵抗の値は、6×1010Ω/□以下であってもよく、好ましくは3×1010Ω/□以下であってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、イオン性帯電防止剤はアルカリ金属塩、イオン性液体またはイオン性固体を含むことができ、好ましくはイオン性固体を含むことができる。
【0059】
イオン性帯電防止剤がイオン性固体を含むことにより、粘着剤組成物の経時変化安定性および粘着剤層120の耐久性を向上させることができる。また、イオン性固体は、前述の他の成分に対して高い相溶性を有し、粘着剤組成物の透明性を高く維持することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、イオン性固体の融点は20℃~50℃であってもよい。この場合、イオン性固体の移動性が最小化し、粘着シートの耐久性、信頼性を改善することができる。例えば、イオン性固体の融点が20℃未満であると、イオン性固体の運動性が高くなり、粘着シートまたは反射防止フィルムの端部にイオン性固体が移動して溶出することがある。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記イオン性固体は、陰イオンとして、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF 、ClO 、NO 、CO 2-、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、F(HF) 、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N、OTf(トリフルオロメタンスルホネート)、OTs(トルエンスルホネート)、OMs(メタンスルホネート)、及び/又はBPh (テトラフェニルボレート)などを含むことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記イオン性固体は、陽イオンとして、イミダゾリウム、ピリジニウム、アルキルアンモニウム、アルキルピロリジウム、及び/又はアルキルホスホニウムなどを含むことができる。
【0063】
例えば、前記イオン性固体は、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルキルピロリジウム塩、及び/又はアルキルホスホニウム塩を含むことができる。これらは単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
前記イミダゾリウム塩の例としては、1,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド(融点125℃)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド(融点99℃)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド(融点78℃)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(融点65℃)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホネート(融点75℃~80℃)、1-ブチル-1-(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル)-イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点120℃~121℃)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド(融点74℃)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(融点80℃~84℃)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点61℃)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアイオダイド(融点79℃)、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド(融点181℃)、1-メチルイミダゾリウムクロライド(融点75℃)、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムメチルサルフェート(融点113℃)、1-メチル-3-(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル)-イミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点80℃)、1-アリール-3-メチルイミダゾリウムクロライド(融点55℃)、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムクロライド(融点70℃)、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート(融点136℃)、または1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(融点77℃)などが挙げられる。
【0065】
前記ピリジニウム塩の例としては、1-ブチル-3-メチルピリジニウムブロマイド(融点43℃)、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロマイド(融点137℃)、1-ブチル-4-メチルピリジニウムクロライド(融点158℃)、1-ブチルピリジニウムブロマイド(融点104℃)、1-ブチルピリジニウムクロライド(融点132℃)、1-ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(融点75℃)、1-ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(融点45℃)、1-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(融点44℃)、1-エチルピリジニウムブロマイド(融点120℃)、1-エチルピリジニウムクロライド(融点1140℃)などが挙げられる。
【0066】
前記アルキルアンモニウム塩の例としては、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルポニル)イミド(融点56℃)、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロライド(融点75℃)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(融点119℃)、トリブチルメチルアンモニウムメチルサルフェート(融点62℃)、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルポニル)イミド(融点94℃~96℃)、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート(融点161~163℃)、テトラブチルアンモニウムベンゾエート(融点64℃~67℃)、テトラブチルアンモニウムメタンサルフェート(融点78℃~80℃)、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート(融点50℃~53℃)、テトラ-n-ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(融点246℃)、テトラブチルアンモニウムトリフルオロアセテート(融点74℃~76℃)、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート(融点90℃~92℃)、テトラヘキシルアンモニウムブロマイド(融点97℃)、テトラヘキシルアンモニウムアイオダイド(融点99℃)、テトラオクチルアンモニウムクロライド(融点50~54℃)、テトラオクチルアンモニウムブロマイド(融点95~98℃)、テトラヘプチルアンモニウムブロマイド(融点89℃~91℃)、テトラペンチルアンモニウムブロマイド(融点99℃)、およびn-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(融点185℃)などが挙げられる。
【0067】
前記アルキルピロリジウム塩の例としては、1-ブチル-1-メチルピロリジウムブロマイド(融点160℃以上)、1-ブチル-1-メチルピロリジウムクロライド(融点114℃以上)、1-ブチル-1-メチルピロリジウムテトラフルオロボレート(融点152℃)などが挙げられる。
【0068】
前記アルキルホスホニウム塩の例としては、テトラブチルホスホニウムブロマイド(融点104℃)、テトラブチルホスホニウムクロライド(融点62℃~66℃)、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(融点96℃~99℃)、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート(融点59℃~62℃)、テトラブチルホスホニウムp-トルエンスルホネート(融点54℃~57℃)、トリブチルヘキサデシルホスホニウムブロマイド(融点57℃~62℃)などが挙げられる。
【0069】
好ましくは、前記イオン性固体は、1-ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、及び/又は1-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェートを含むことができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、前記イオン性帯電防止剤の含有量は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.01重量部~5重量部であってもよい。イオン性帯電防止剤の含有量が0.01重量部未満であると、粘着剤層の帯電防止性が低いことがあり、イオン性帯電防止剤の含有量が5重量部を超えると、イオン性帯電防止剤が析出することがあり、粘着剤層の耐久性が低下することがある。
【0071】
前記シランカップリング剤は、基材フィルム110と粘着剤層120との間の密着力を向上させる役割を果たすことができる。例えば、シランカップリング剤は、粘着剤組成物の粘着力を増加させて気泡や浮きを防止することができ、粘着シートの耐久性を向上させることができる。
【0072】
前記シランカップリング剤の例としては、ビニルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、または3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。これらは単独でまたは2以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、シランカップリング剤の含有量は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.01重量部~3重量部であってもよく、好ましくは0.01重量部~2重量部であってもよい。前記範囲内では、粘着シートの耐久性および密着性を改善することができる。
【0074】
前記粘着剤組成物は、用途によって要求される粘着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度などを調節するために、当技術分野で公知の通常の添加剤をさらに含むことができる。例えば、粘着付与剤、酸化防止剤、腐食防止剤、レベリング剤、表面潤滑剤、染料、顔料、消泡剤、充填剤、光安定剤、可塑剤などを含むことができる。
【0075】
粘着剤層120は、前述の粘着剤組成物を基材フィルム110の一方の面上に塗布し、乾燥及び/又は硬化工程を行うことによって形成することができる。例えば、前記粘着剤組成物をロールコート、グラビアコート、リバースコート、スプレーコート、エアナイフコート、ダイコーター等のコーティング法で基材フィルム110上に塗布することにより粘着剤層120を形成することができる。
【0076】
例示的な実施形態によれば、粘着剤層120のゲル分率は70%~85%、好ましくは70%~80%であってもよい。粘着剤層120のゲル分率は、下記数学式1で計算することができる。
【0077】
[数学式1]
【0078】
数学式1において、W1は粘着剤層の初期重量であってもよい。W2は、前記粘着剤層を常温でエチルアセテート溶液に日間浸漬し、120℃で24時間乾燥した後に測定した重量であってもよい。
【0079】
粘着剤層120のゲル分率が70%未満であると、架橋度および凝集力が低くなるため、経時耐久性およびリワーク性が低下することがある。粘着剤層のゲル分率が85%を超えると、過剰架橋により粘着剤層120の耐久性および密着性が低下することがあり、粘着シートの剥離時に対象体の損傷が発生することがある。
【0080】
例示的な実施形態によれば、基材フィルム110の表面の水接触角は40~65°であってよく、好ましくは40°~50°、より好ましくは40°~45°であってもよい。例えば、基材フィルム110の粘着剤層120が配置される接合面の脱イオン水DIWに対する接触角は40°~65°であってもよい。例えば、水接触角は、23℃および50%RHの条件で基材フィルム110の一方の面に脱イオン水(DIW)を0.1ml滴下してから5秒後に測定した接触角であってもよい。
【0081】
例えば、粘着剤層120は、粘着剤組成物を基材フィルム110の前述した水接触角を有する一方の面に塗布・硬化することにより形成することができる。基材フィルム110の水接触角が前記範囲にあると、アクリル系共重合体に対する親和性が高くなり、粘着剤層と基材フィルムとの密着性を向上させることができる。
【0082】
図2は、基材フィルム110上における外力による粘着剤層120の移動距離dを説明するための例示的な断面図である。
【0083】
図2の(a)は、粘着シートの初期状態を説明するための例示的な断面図であり、図2の(b)は、繰り返し荷重後の粘着シートの状態を説明するための例示的な断面図である。
【0084】
例示的な実施形態によれば、粘着剤層120は、粘着剤層120の上面に対して前記上面と平行な一方向に1MPaの圧力および0.1m/sの速度で20回繰り返し荷重したとき、前記一方向への移動距離dが15mm以下であってもよい。好ましくは、基材フィルム110の一方の面における粘着剤層120の移動距離dは、0mm超~15mm以下であってもよい。
【0085】
例えば、粘着剤層120の移動距離dとは、粘着シートの初期状態を基準として、粘着剤層120が前記初期状態から前記一方向に移動した距離を意味し得る。
【0086】
具体的には、移動距離dは、基材フィルム110の粘着剤層120が貼り付けられる反対側の面の全面に両面粘着テープを介してSUS304板に固定した後、粘着剤層120の上面に対して弾性ゴムを粘着剤層120の前記上面と平行な一方向に1MPaの圧力および0.1m/sの速度で20回往復して粘着剤層120が移動した最大距離として測定することができる。
【0087】
粘着剤層120の基材フィルム110上での移動距離dが前記範囲内にあると、粘着剤層120と基材フィルム110との間の密着性および粘着力を向上させることができる。これにより、粘着シートの粘着耐久性を高めることができ、例えば、画像表示装置内の構造物間の浮き、剥離を防止することができる。
【0088】
例えば、基材の表面が疎水性である粘着シートの場合は、基材に対する粘着剤の密着性および粘着力が劣化することがある。この場合、基材と粘着剤との間の接着性を改善するために、基材の表面をアルカリ水溶液に浸漬して鹸化(saponification)する前処理工程を行うか、または基材と粘着剤との間に別のコート層を形成することができる。
【0089】
しかし、鹸化工程を行うか、または別のコート層を形成する場合には、工程が複雑になることによって粘着シートの収率が低下することがあり、追加の工程によって粘着シートの汚染および品質低下が発生することがある。
【0090】
例示的な実施形態による粘着シートは、粘着剤層120が前述した粘着剤組成物の硬化物を含むことにより、粘着剤層120が配置される基材フィルム110の一方の面が40°~65°の水接触角を有しても、基材フィルム110と粘着剤層120との間の密着性を高くすることができる。
【0091】
これにより、基材フィルム110と粘着剤層120との接合面に別のコート層、例えばアンカー層を含まなくても、基材フィルム110と粘着剤層120との密着性および粘着力を向上させることができる。また、基材フィルム110に対して鹸化処理が必要とされないので、アルカリ処理の省略が可能であり、粘着シートの品質低下を防止することができる。
【0092】
例示的な実施形態によれば、基材フィルム110は、少なくとも一方の面の表面粗さRaが10nm~100nmであってもよく、好ましくは20nm~60nmであってもよい。前記表面粗さは、原子顕微鏡(Atomic Force Microscope、AFM)を用いて測定することができる。
【0093】
例えば、粘着剤層120は、粘着剤組成物を前述の表面粗さを有する基材フィルム110の一方の面に塗布・硬化することにより形成することができる。前記表面粗さは、基材フィルムの表面積を増加させることができる。この場合、基材フィルム110の表面の屈曲または凹凸内に粘着剤組成物が入り込んで硬化し、基材フィルム110と粘着剤層120との密着性、粘着性を向上させることができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、基材フィルム110は、粘着剤層120が貼り付けられる面を表面処理することができる。前記表面処理は、コロナ放電処理またはプラズマ処理などを含むことができる。例えば、前記基材フィルム110をコロナ放電処理またはプラズマ処理して、前述の表面粗さRa及び/又は水接触角を形成することができる。
【0095】
前記表面処理により、基材フィルム110の表面にカルボン酸誘導体(R-COOH)を発生することができる。前記カルボン酸誘導体のカルボキシル基は、粘着剤組成物の架橋剤と反応することができ、これにより、粘着体層120の架橋密度、凝集力および基材フィルム110への密着性をより向上させることができる。
【0096】
例示的な実施形態によれば、前記基材フィルム110は、アクリル系、セルロース系、ポリオレフィン系またはポリエステル系などを含むことができる。この場合、基材フィルム110の透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などを向上させることができる。
【0097】
例えば、前記基材フィルム110は、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレンなどのセルロース系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィン、ノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂などを含むことができる。
【0098】
いくつかの実施形態では、粘着シートは、粘着剤層120の一方の面上に配置される離型フィルムをさらに含むことができる。例えば、基材フィルム110、粘着剤層120、および離型フィルムを順次配置することができる。
【0099】
例えば、粘着シートは、基材フィルム110および離型フィルムが粘着剤層120の両面に貼り付けられた形態で提供することができる。この場合、粘着剤層120の一方の面上に形成された離型フィルムを除去し、粘着剤層120の露出面を対象体(例えば、表示パネル)に貼り付けることができる。
【0100】
<光学フィルム、画像表示装置>
図3は、例示的な実施形態による光学フィルムを説明するための概略断面図である。
【0101】
図3を参照すると、光学フィルムは、基材フィルム110と、基材フィルム110の上面上に配置された粘着剤層120と、基材フィルムの底面に配置された光学機能層130とを含むことができる。
【0102】
例えば、光学フィルムは、基材フィルム110の一方の面上に光学機能層130を形成した後、基材フィルム110の他方の面上に粘着剤組成物を塗布および硬化して粘着剤層120を形成することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、光学機能層130は、反射防止層、ハードコート層、位相差層、または偏光子などを含むことができる。例えば、前記光学フィルムは、光学機能層130に応じて、反射防止フィルム、ハードコートフィルム、ウィンドウフィルム、位相差フィルム、または偏光板などで提供することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、光学フィルムは、粘着剤層120の基材フィルム110と接触しない一方の面上に配置される離型フィルムをさらに含むことができる。例えば、光学フィルムは、基材フィルム110および離型フィルムが粘着剤層120の両面に貼り付けられた形態で提供することができる。この場合には、粘着剤層120の一方の面上に形成された離型フィルムを除去し、粘着剤層120の露出面を粘着対象体(例えば、表示パネル)に貼り付けることができる。
【0105】
例示的な実施形態によれば、前記粘着シートまたは前記光学フィルムを含む画像表示装置を提供することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、画像表示装置は、表示パネルと、粘着剤層120を介して前記表示パネルの上面に配置される光学フィルムとを含むことができる。例えば、前記光学フィルムから前記離型フィルムを除去した後、露出した粘着剤層120を表示パネルに貼り付けることによって画像表示装置を提供することができる。
【0107】
前記表示パネルは、液晶表示パネル(LCD)または有機発光表示パネル(OLED)であってもよい。
【0108】
画像表示装置は前記構成に加えて、当分野で公知の他の構成をさらに含むことができる。例えば、位相差フィルム、ハードコートフィルム、保護フィルム、ウィンドウフィルム、タッチパネルなどをさらに含むことができる。前記構成は、例示的な実施形態による粘着剤組成物によって互いに貼り付けることができる。
【0109】
前述のように、前記基材フィルム110と前記粘着剤層120との間の密着性および接合性が改善されることにより、向上した耐久性および安定性を有することができる。したがって、繰り返し曲げ・折り畳みなどの物理的な外力、または高温・多湿の過酷な条件下でも、画像表示装置の粘着性を長期間維持することができ、構造物の破断、剥離および浮き現象を防止することができる。
【0110】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、これらの実施例は単に本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではなく、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で実施例に対する様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0111】
製造例
製造例1:アクリル系共重合体(A-1)の製造
窒素カスが還流され、温度の調節が容易であるように冷却装置が設けられた1Lの反応器に、n-ブチルアクリレート(BA)98重量部、アクリル酸(AA)0.5重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)1.5重量部からなる単量体混合物を投入した後、溶媒としてエチルアセテート(EAc)100重量部を投入した。その後、酸素を除去するために窒素ガスを反応器に1時間吹き込んで置換した後、温度を62℃に維持した。前記混合物を均一に混合した後、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.07重量部を投入し、8時間反応させて、アクリル系共重合体(重量平均分子量:約130万)を製造した。
【0112】
製造例2:アクリル系共重合体(A-2)の製造
窒素カスが還流され、温度の調節が容易であるように冷却装置が設けられた1Lの反応器に、n-ブチルアクリレート(BA)98.1重量部、アクリル酸(AA)0.3重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)1.6重量部からなる単量体混合物を投入した後、溶媒としてエチルアセテート(EAc)100重量部を投入した。その後、酸素を除去するために窒素ガスを反応器に1時間吹き込んで置換した後、温度を80℃に維持した。前記混合物を均一に混合した後、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.07重量部を投入し、8時間反応させて、アクリル系共重合体(重量平均分子量:約130万)を製造した。
【0113】
製造例3:アクリル系共重合体(A-3)の製造
窒素カスが還流され、温度の調節が容易であるように冷却装置が設けられた1Lの反応器に、n-ブチルアクリレート(BA)97重量部、アクリル酸(AA)1.5重量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(2-HEMA)1.5重量部からなる単量体混合物を投入した後、溶媒としてエチルアセテート(EAc)100重量部を投入した。その後、酸素を除去するために反応器に窒素ガスを1時間吹き込んで置換した後、温度を80℃に維持した。前記混合物を均一に混合した後、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.07重量部を投入し、8時間反応させて、アクリル系共重合体(重量平均分子量:約130万)を製造した。
【0114】
製造例4:TACフィルムの製造
トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを準備した。TACフィルムは、下記表1の表面粗さ及び水接触角を有するようにコロナ放電処理した。表面粗さ及び水接触角は以下のようにして測定した。コロナ放電処理を行った場合は「○」、コロナ放電処理を行っていない場合は「×」とした。鹸化処理は行わなかった。
【0115】
1)表面粗さの測定
TACフィルムの表面粗さ(Ra)を光学式表面粗さ計(Wyko NT9100、Veeco Metrogy Group社製)を用いて測定した。
【0116】
2)水接触角の測定
23℃及び50%RHの条件でTACフィルムの表面に脱イオン水(DIW)を0.1ml滴下し、5秒後、接触角測定器(DSA100)を用いて水の接触角を測定した。
【0117】
【表1】
【0118】
実施例
(1)粘着剤組成物の調製
下記の表2及び表3に示すような成分及び含有量で混合した後、エチルアセテートに固形分20重量%の濃度で希釈することにより、実施例及び比較例の粘着剤組成物を調製した。ここで、含有量は重量部で示す。
【0119】
(2)粘着シートの製造
調製した粘着剤組成物をシリコーン離型剤でコーティングされた離型フィルム上に塗布し、100℃で2分間乾燥して、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。前記形成された粘着剤層の上に、前記準備されたTACフィルムを接合して粘着シートを製造した。
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
表2及び表3に示す具体的な成分名は以下の通りである。
アクリル系共重合体(A)
A-1:前記製造例1で製造された共重合体
A-2:前記製造例2で製造された共重合体
A-3:前記製造例3で製造された共重合体
架橋剤(B)
B-1: Coronate-HXR(日本ポリウレタン工業社製)
B-2:D-110N(三井化学社製)
B-3:CL-427(Menadiona社製)
帯電防止剤(C)
1-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート
シランカップリング剤(D)
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403、信越社製)
TACフィルム(E)
前記表1に示すTACフィルム
【0123】
実験例
(1)外力印加時の移動距離の測定
前記で製造された粘着シートを長さ25mm×幅50mmの大きさに切断し、TACフィルム面を、両面粘着テープ(幅:25mm、SOOKWANG社製)を介してSUS304板に貼り付けた。その後、弾性ゴム(ネオプレンゴム、ゴウダ社製)を用いて粘着剤層の上面に対して粘着剤層の上面と平行な方向に1MPaの圧力と0.1m/sの速度で長さ(25mm)方向に20回往復した。このとき、粘着剤層がTACフィルム上で押し出される距離を測定して移動距離(d)を測定した。
【0124】
(2)耐久性(耐熱、耐湿熱)の評価
製造された粘着シートを長さ200mm×幅300mmに切断し、離型フィルムを剥離した後、露出した粘着剤層をガラス基板(210mm×350mm×0.7mm)に貼り付け、オートクレーブ処理(50℃×30分、0.5MPa)を行って試片を作製した。このとき、加えられた圧力は5kg/cmであり、気泡や異物が生じないようにクリーンルーム作業を行った。
【0125】
耐熱性の評価は、試片を80℃の温度で1000時間放置した後、気泡や剥離の発生有無を観察して行った。耐湿熱性の評価は、試片を60℃、90%RHの条件下で1000時間放置した後、気泡や剥離の発生有無を観察して行った。このとき、試片の状態を評価する直前に常温で24時間放置した後に観察した。評価基準は以下の通りである。
【0126】
<評価基準>
◎:気泡や剥離なし
○:気泡や剥離<5個
△:5個≦気泡や剥離<10個
×:10個≦気泡や剥離
【0127】
(3)粘着力の評価
前記で製造された粘着シートを長さ25mm×幅100mmに切断し、離型フィルムを剥離した後、露出した粘着剤層をガラス基板に貼り付け、オートクレーブ処理(50℃×30分、0.5MPa)を行って試片を作製した。
【0128】
常温粘着力を測定するために、前記で作製した試片を23℃の温度および50%RHの条件下で24時間放置した。万能引張試験機(UTM、Instron社製)を用いて、粘着シートをガラス基板から300mm/minの剥離速度および180°の剥離角度で剥離して常温粘着力を測定した。
【0129】
加温粘着力を測定するために、前記で作製した試片を50℃の温度および50%RHの条件下で48時間放置した。その後、23℃の温度および50%RHの条件下で万能引張試験機(UTM、Instron社製)を用いて、粘着シートをガラス基板から300mm/minの剥離速度および180°の剥離角度で剥離して加温粘着力を測定した。
【0130】
(4)ゲル分率の評価
精秤した250メッシュの金網(100mm×100mm)に粘着シートの粘着剤層を約0.25g貼り付け、ゲル分が漏れないように取り囲んだ。精密天秤で重量を正確に測定した後、金網をエチルアセテート溶液に3日間浸漬した。浸漬した金網を取り出して少量のエチルアセテート溶液で洗浄し、120℃で24時間乾燥した後、重量を測定した。測定した重量を用いて、下記の数学式1でゲル分率を計算した。
【0131】
[数学式1]
【0132】
式中、Aは金網の重量、Bは粘着剤層を貼り付けた金網の重量、Cは浸漬後乾燥した金網の重量を意味する。したがって、(B-A)は粘着剤層の初期重量を意味し、(C-A)は浸漬後乾燥した粘着剤層の重量を意味する。
【0133】
測定の結果を下記の表4及び表5に併せて示す。
【0134】
【表4】
【0135】
【表5】
【0136】
前述の実施例による粘着シートは、未鹸化のTACフィルム上での粘着剤層の移動距離dが15mm以下であることから、粘着シートの耐久性および耐熱性が向上したことを確認することができる。例えば、粘着剤層が未鹸化のTACフィルムに対しても高い密着性を有することにより、粘着シートの破断、切断および剥離現象を抑制することができる。
【0137】
これに対し、比較例による粘着シートは、未鹸化のTACフィルムに対する粘着剤層の密着性が実質的に実現されず、耐久性および耐熱性が低下した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】