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特表2024-527970ウイルス感染及び癌の予防及び処置のための改変T細胞受容体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ウイルス感染及び癌の予防及び処置のための改変T細胞受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20240719BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240719BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240719BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240719BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20240719BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240719BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240719BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/12
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/725
C07K14/705
C12N5/10
C12N5/0783
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61P31/12
A61K38/17
A61K48/00
A61K35/12
A61P35/02
A61P31/22
A61P31/20
A61P31/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504966
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022074202
(87)【国際公開番号】W WO2023010047
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/227,195
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518419057
【氏名又は名称】ナントセル,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オルソン,クリフォード,アンダーズ
(72)【発明者】
【氏名】ガーバン,エルメス
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,ジェイ,ガードナー
(72)【発明者】
【氏名】ニアジ,ケイバン
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,ノエ
(72)【発明者】
【氏名】シーリング,ピーター,アラン
(72)【発明者】
【氏名】シクスト,マルコス
(72)【発明者】
【氏名】ヒガシデ,ウェンディ,エム.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA02
4C084BA08
4C084DC50
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZB33
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA12
4C087MA13
4C087MA16
4C087MA52
4C087MA56
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB33
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
改変T細胞受容体、改変T細胞受容体を含む細胞、改変T細胞受容体をコードする核酸、及び改変T細胞受容体を使用する方法が企図される。2つのペプチド鎖を含む改変T細胞受容体が本明細書に開示される。2つのペプチド鎖は、同じでも異なっていてもよく、各ペプチド鎖は、可変領域、定常領域、及び連結ペプチドを含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、並びにCD28領域及びCD3ζITAM領域を含む細胞内ドメインを含む。改変T細胞受容体をコードする核酸、及び核酸を含むベクターも開示される。さらに、改変T細胞受容体を含む細胞を投与することを含む、癌及び/又はウイルス感染を処置する方法が開示される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のペプチド鎖及び第2のペプチド鎖を含む改変T細胞受容体(TCR)であって、各ペプチド鎖は、
細胞外ドメイン;
膜貫通ドメイン;及び
細胞内ドメイン
を含み、
前記細胞外ドメインは、可変領域、定常領域、及び連結ペプチドを含み、
前記可変領域及び前記定常領域は、リンカーを介して係合しており、
前記第1のペプチド鎖の前記定常領域は、Ig-Cκドメインを含み、前記第2のペプチド鎖の前記定常領域は、Ig-CH-1ドメインを含み、
1)前記第1のペプチド鎖の前記膜貫通ドメインは、HLA-DRAドメインを含み、前記第2のペプチド鎖の前記膜貫通ドメインは、HLA-DRBドメインを含むか、又は2)前記第1のペプチド鎖の前記膜貫通ドメインは、HLA-DRBドメインを含み、前記第2のペプチド鎖の前記膜貫通ドメインは、HLA-DRAドメインを含む改変TCR。
【請求項2】
前記リンカーは、フレキシブルリンカーである、請求項1に記載のTCR。
【請求項3】
前記Ig-CH-1ドメインは、IgG-CH-1a、IgG-CH-1b、又はIgM-CH-1である、請求項1又は2に記載のTCR。
【請求項4】
前記HLA-DRBドメインは、HLA-DRB1又はHLA-DRB2である、請求項1~3のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項5】
前記ペプチド鎖の各々上の前記可変領域は、同じ可変領域である、請求項1~4のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項6】
各ペプチド鎖上の前記可変領域は、互いに異なる、請求項1~5のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項7】
前記細胞内ドメインは、CD28領域及びCD3ζITAM領域を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項8】
前記第1のペプチド鎖は、
前記定常領域としてのIg-Cκ;
前記膜貫通ドメインとしてのHLA-DRA;並びに
前記細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζ
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項9】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号39を含む、請求項8に記載のTCR。
【請求項10】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号43を含む、請求項8に記載のTCR。
【請求項11】
前記第2のペプチド鎖は、
前記定常領域としてのIg-CH-1;
前記膜貫通ドメインとしてのHLA-DRB;並びに
前記細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζ
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項12】
前記第2のペプチド鎖は、配列番号40を含む、請求項11に記載のTCR。
【請求項13】
前記第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、請求項11に記載のTCR。
【請求項14】
前記第2のペプチド鎖は、配列番号45を含む、請求項11に記載のTCR。
【請求項15】
前記第2のペプチド鎖は、配列番号46を含む、請求項11に記載のTCR。
【請求項16】
前記第1のペプチド鎖は、前記定常領域としてのIg-Cκ、前記膜貫通ドメインとしてのHLA-DRA;並びに前記細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζを含み;
前記第2のペプチド鎖は、前記定常領域としてのIg-CH-1、前記膜貫通ドメインとしてのHLA-DRB、並びに前記細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζを含む、
請求項1~15のいずれか一項に記載のTCR。
【請求項17】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号39を含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号40を含む、請求項16に記載のTCR。
【請求項18】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号15をさらに含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号16をさらに含む、請求項17に記載のTCR。
【請求項19】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号43を含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、請求項16に記載のTCR。
【請求項20】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号30をさらに含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号31をさらに含む、請求項19に記載のTCR。
【請求項21】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号43を含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、請求項16に記載のTCR。
【請求項22】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号30をさらに含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号31をさらに含む、請求項21に記載のTCR。
【請求項23】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号43を含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、請求項16に記載のTCR。
【請求項24】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号30をさらに含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号31をさらに含む、請求項23に記載のTCR。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項に記載のTCRを含む細胞。
【請求項26】
請求項1~24のいずれか一項に記載のTCRをコードする核酸。
【請求項27】
請求項26に記載の核酸を含むベクター。
【請求項28】
癌又はウイルス感染の出現の低減又はそれらの処置が必要とされる患者における癌又はウイルス感染の出現を低減させるか、又はそれらを処置する方法であって、医薬組成物を前記患者に投与することを含み、
前記医薬組成物は、治療有効量の請求項1~24のいずれか一項に記載の改変TCR又は請求項1~24のいずれか一項に記載の改変TCRをコードする核酸を含む方法。
【請求項29】
前記医薬は、前記核酸を含むベクターを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記医薬組成物は、前記改変TCR又は前記改変TCRをコードする核酸を含む細胞を含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記癌は、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、頭頸部癌、胃癌、HIV/AIDS関連癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、口腔癌、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽腫、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、及び膣癌からなる群から選択される、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ウイルス感染は、ヘルペスウイルス科(herpesviridae)、アデノウイルス科(adenoviridae)、ポリオーマウイルス科(polyomavididae)、ポックスウイルス科(poxviridae)、レオウイルス科(reoviridae)、コロナウイルス科(coronaviridae)、ピコルナウイルス科(picornaviridae)、フラビウイルス科(flaviviridae)、へぺウイルス科(hepeviridae)、トガウイルス科(togaviridae)、フィロウイルス科(filoviridae)、パラミクソウイルス科(paramyxoviridae)、ニューモウイルス科(pneumoviridae)、ラブドウイルス科(rhabdoviridae)、ハンタウイルス科(hantaviridae)、及びオルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)からなる群から選択されるウイルス科からのウイルスにより引き起こされる、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
癌又はウイルス感染の予防又は処置が必要とされる患者における癌又はウイルス感染を予防又は処置するための、請求項1に記載のTCR、請求項25に記載の細胞、請求項26に記載の核酸又は請求項27に記載のベクターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月29日に出願された米国仮特許出願第63/227,195号明細書の利益を主張する。上記出願の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
本開示は、2022年7月25日に作成されたファイルサイズ107キロバイト(KB)の名称「17768IB-01-WO-POA_seq_listing.xml」の配列表xmlファイルとして本明細書と同時に提出されたアミノ酸配列及び核酸配列の参照を含有する。上記配列表は、米国特許法施行規則第1.52条(e)(5)に従って参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、ウイルス感染及び/又は癌の予防及び/又は処置のために対象に投与され得る改変T細胞受容体(TCR)に関する。
【背景技術】
【0004】
背景の説明は、本明細書に記載される組成物及び方法の理解において有用であり得る情報を含む。これは、本明細書に提供される情報のいずれかが従来技術であるか又は組成物及び方法に関連することを承認するものでもなく、具体的若しくは黙示的に参照される任意の刊行物が従来技術であることを承認するものでもない。
【0005】
TCRは、抗原提示細胞(APC)からの主要組織適合抗原複合体(MHC)I又はII分子により提示される抗原を認識する、T細胞の表面上に位置する膜貫通タンパク質である。適切な副刺激によるT細胞受容体を介するシグナリングは、(例えば、ヘルパーCD4T細胞による炎症促進性サイトカインの放出又は細胞傷害性CD8T細胞による細胞溶解の開始を介して)T細胞が抗原に応答することを活性化するシグナリング経路を開始させる。
【0006】
癌及びウイルスは、TCRシグナリングを軽減し、それによりT細胞応答を下方調節することによりT細胞媒介免疫応答を逃れ得る。TCRをT細胞応答を促進するように改変することは、癌又はウイルス感染に対する宿主の免疫応答を改善し得る。
【0007】
T細胞受容体(TCR)分子は、細胞状況において二量体として機能する。T細胞TCRのトランスジェニック改変は、二量体中の各単量体ユニットについての遺伝子を付加することを要求する。しかしながら、T細胞は天然TCRを既に含有するため、トランスジェニックTCR単量体が天然TCRとヘテロ二量体化することが考えられる。これらのハイブリッドTCRは、トランスジェニックT細胞においてオフターゲット効果を生じさせ得、トランスジェニック及び/又は内因性TCRの効果がそれらのそれぞれのペプチド鎖の交差結合により低減又は排除される(Govers & al.(2010)Trends Mol.Med.16(2):77-87)。したがって、癌及び/又はウイルス感染の処置のために特異的抗原(例えば、癌細胞又はウイルスからの抗原)に対する免疫応答を向上させるための改変T細胞受容体を提供することが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
ウイルス感染及び/又は癌を処置及び/又は予防するために使用され得る改変TCRが本明細書に開示される。改変TCRは、2つの異なるペプチド鎖を含むヘテロ二量体である。改変TCRの個々のペプチド鎖は、各々、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む。細胞外ドメインは、可変領域、定常領域、及び連結ペプチドを含み、可変領域及び定常領域は、リンカーを介して係合している。連結ペプチドは、定常領域と膜貫通ドメインとの間に位置する。一部の実施形態において、細胞内ドメインは、CD28領域及びCD3ζITAM領域を含む。
【0009】
機能性改変TCRをT細胞中に発現させる方法であって、改変TCRのペプチド断片は、細胞表面上で互いに自己集合し、同様にT細胞表面上で発現される内因性TCRペプチドとは自己集合しない方法も開示される。改変TCRは、HLA提示されるペプチドについての特異性を有するα及びβ鎖を含む可変領域を発現するように遺伝子操作され得る。改変TCRは、腫瘍特異的抗原についての特異性を有するIg可変ドメインを含む可変領域を発現するように遺伝子操作され得る。
【0010】
改変TCRを含む細胞も本明細書に開示される。
【0011】
改変TCRをコードする核酸及び改変TCRをコードする核酸を含むベクターも本明細書に開示される。
【0012】
癌又はウイルス感染の予防及び/又は処置が必要とされる患者における癌又はウイルス感染の予防及び/又は処置の方法であって、改変TCR、改変TCRをコードする核酸、又は改変TCRを含む細胞を含む治療有効量の医薬組成物を患者に投与することを含む方法も本明細書に開示される。
【0013】
種々の目的、特徴、態様、及び利点は、添付の図面とともに、以下の好ましい実施形態の詳細な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ペプチド鎖P-NR-025及びP-NR-026のヘテロ二量体を含む本開示の改変TCRの一実施形態を示す。
図2】ペプチド鎖P-NR-027及びP-NR-028のヘテロ二量体を含む本開示の改変TCRの別の実施形態を示す。
図3A】本開示の改変TCRの特定のペプチド鎖をコードするプラスミド構築物を示す。図3Aは、ペプチド鎖p-NR-025をコードするプラスミドを示す。図3Bは、ペプチド鎖p-NR-026をコードするプラスミドを示す。図3Cは、ペプチド鎖p-NR-027をコードするプラスミドを示す。図3Dは、ペプチド鎖p-NR-028をコードするプラスミドを示す。
図3B】本開示の改変TCRの特定のペプチド鎖をコードするプラスミド構築物を示す。図3Aは、ペプチド鎖p-NR-025をコードするプラスミドを示す。図3Bは、ペプチド鎖p-NR-026をコードするプラスミドを示す。図3Cは、ペプチド鎖p-NR-027をコードするプラスミドを示す。図3Dは、ペプチド鎖p-NR-028をコードするプラスミドを示す。
図3C】本開示の改変TCRの特定のペプチド鎖をコードするプラスミド構築物を示す。図3Aは、ペプチド鎖p-NR-025をコードするプラスミドを示す。図3Bは、ペプチド鎖p-NR-026をコードするプラスミドを示す。図3Cは、ペプチド鎖p-NR-027をコードするプラスミドを示す。図3Dは、ペプチド鎖p-NR-028をコードするプラスミドを示す。
図3D】本開示の改変TCRの特定のペプチド鎖をコードするプラスミド構築物を示す。図3Aは、ペプチド鎖p-NR-025をコードするプラスミドを示す。図3Bは、ペプチド鎖p-NR-026をコードするプラスミドを示す。図3Cは、ペプチド鎖p-NR-027をコードするプラスミドを示す。図3Dは、ペプチド鎖p-NR-028をコードするプラスミドを示す。
図4-1】本開示の改変TCRのペプチド鎖をコードするプラスミド構築物で形質移入された活性化ナチュラルキラー(aNK)細胞のキリングアッセイの結果を示す。図4A及び4Bは、改変TCRのP-NR-025+P-NR-026及びP-NR-027+P-NR-028で形質移入されたaNK細胞による標的細胞溶解をそれぞれ示す。図4C~4Eは、陽性及び陰性対照aNK細胞の標的細胞溶解を示す。
図4-2】図4-1の続きである。
図4-3】図4-2の続きである。
図5】キメラTCRのP-NR-025+P-NR-026、P-NR-025+PWH295、PWH305+PWH308、及びPWH303+PWH308のペプチド鎖をコードするプラスミド構築物で形質移入されたaNK(NK92)細胞中のキメラTCR発現を示す。
図6図5に示される野生型及びキメラTCRを発現するaNKにおけるキリングアッセイの結果を示す。
図7】キメラTCRのPWH305+PWH308及びPWH303+PWH308のペプチド鎖をコードするプラスミド構築物で形質移入されたaNK中のキメラTCR発現を示す。
図8図7に示される野生型及びキメラTCRを発現するaNKにおけるキリングアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
I.定義
以下の定義は、上記で、及び本開示の全体にわたり使用される種々の用語を指す。
【0016】
「T細胞受容体」又は「TCR」は、典型的にはT細胞の表面上で見出される二量体ポリペプチドを指す。TCRの各ペプチド鎖は、一般に、可変領域及び定常領域を含む細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、並びに細胞内ドメインを含む。可変領域は、MHCにより提示される抗原と相互作用するTCRの部分である。定常領域は、2つのペプチド鎖がジスルフィド結合により共有結合的に繋がっている2つのペプチドの各々の区域である。細胞内ドメインは一般にCD3ζを含み、それは1つ以上の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含む。ITAMは、適切な細胞内シグナリング経路への可変領域の結合を媒介する。
【0017】
「コードすること」は、核酸に関して使用される場合、転写が細胞中の核酸から開始される場合、産生された転写産物が所与のタンパク質に翻訳されることを表す。すなわち、核酸は、tRNAのコドントリプレットが細胞における転写及び翻訳の通常の作動に従ってその核酸からポリペプチドを産生する場合、ペプチドを「コードする」。
【0018】
「有効量」又は「治療有効量」は、所望の結果をもたらすために必要な1つ以上の薬剤の量及び/又は投与量、及び/又は投与計画、例えば、対象におけるウイルス感染を予防するために十分な量、対象におけるウイルス感染の出現を低減させるために十分な量、及び/又は対象におけるウイルス感染を処置するために十分な量を指す。或いは、有効量又は治療有効量は、対象における癌の出現を低減させるために十分な量及び/若しくは投与量及び/若しくは投与計画、並びに/又は対象における癌を処置するために十分な量を指す。
【0019】
「癌」は、患者の身体、組織、又は器官における腫瘍、新生物、又はそうでなければ不所望な、異常な、且つ/又は無秩序な細胞増殖の発症を含む1つ以上の病態を指す。ある実施形態において、癌は、膀胱癌、骨癌、脳癌(髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫を含む)、乳癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、頭頸部癌、胃癌(gastric cancer)、HIV/AIDS関連癌、腎臓癌、白血病(急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞白血病(BCL)、慢性リンパ性癌(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、及び慢性T細胞性リンパ性白血病(CTLL)を含む)、肝臓癌、肺癌(非小細胞及び小細胞を含む)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫及びホジキンリンパ腫を含む)、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、口腔癌(口内、舌、唾液腺、又は歯茎の癌を含む)、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽腫、肉腫、皮膚癌、胃癌(stomach cancer)、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、及び膣癌からなる群から選択される。特定の実施形態において、癌は、膀胱癌、乳癌、結腸癌、又は膵臓癌である。
【0020】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における「同一」又は「同一性」パーセントは、同じであるか又は比較ウィンドウにわたり比較され、最大対応についてアラインされる場合に同じであるアミノ酸残基又はヌクレオチドの規定の割合を有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。本開示の目的のためのアミノ酸又は核酸配列の同一性の程度は、National Center for Biotechnology Information(ウェブアドレスwww.ncbi.nlm.nih.gov)により提供されるソフトウェアを介して公的に利用可能なAltschul et al.(199)J.Mol.Biol.215:403-10に記載されるBLASTアルゴリズムを使用して決定される。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインされた場合にある正の値の閾値スコアTに一致するか又はそれを満たす問い合わせ配列中の長さWの短いワードを同定することにより高スコアリング配列ペア(high scoring sequence pair)(HSP)を同定する。Tは、隣接ワードスコア閾値と称される(Altschul et al.,前掲)。初期隣接ワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出すための検索を開始させるためのシードとして作用する。次いで、ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加し得る限り各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一致残基のペアについての報酬スコア;常に>0)及びN(不一致残基についてのペナルティスコア;常に<0)を使用して計算される。アミノ酸配列については、累積スコアを計算するためにスコアリング行列が使用される。各方向におけるワードヒットの伸長は、累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ下落する場合;1つ以上の負のスコアリング残基アラインメントの蓄積に起因して累積スコアがゼロ以下になる場合;又はいずれかの配列の末端に達する場合に停止される。アミノ酸配列又は核酸配列の同一性パーセントを決定するため、BLASTプログラムのデフォルトパラメータが使用され得る。アミノ酸配列の分析については、BLASTPデフォルトは、ワード長(W)、3;期待値(E)、10;及びBLOSUM62スコアリング行列である。核酸配列の分析については、BLASTNプログラムデフォルトは、ワード長(W)、11;期待値(E)、10;M=5;N=-4;及び両鎖の比較である。TBLASTNプログラム(タンパク質配列を使用してヌクレオチド配列データベースに問い合わせを行う)は、デフォルトとしてワード長(W)3、期待値(E)10、及びBLOSUM62スコアリング行列を使用する(Henikoff & Henikoff(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915参照)。
【0021】
配列同一性パーセントの計算に加え、BLASTアルゴリズムは2つの配列間の類似性の統計分析も実行する(例えば、Karlin & Altschul(1993)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 90:5873-87参照)。最小和確率(smallest sum propability)(P(N))は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然生じる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小和確率が約0.01未満である場合、参照配列と類似するとみなされる。
【0022】
「ウイルス感染」は、ウイルスが宿主、例えば、患者に侵入し、複製する病態を指す。ウイルス感染は、宿主がウイルス感染の症状を呈することを要求しない。用語「ウイルス」は、特に限定されず、DNA及びRNAウイルスの両方を指す。DNAウイルスは、一本鎖又は二本鎖ウイルスであり得、限定されるものではないが、ヘルペスウイルス科(herpesviridae)、アデノウイルス科(adenoviridae)、ポリオーマウイルス科(polyomavididae)、及びポックスウイルス科(poxviridae)を含むDNAウイルスの任意の科に属し得る。DNAウイルスの特定の実施形態としては、ヒトヘルペスウイルス及び水痘帯状疱疹ウイルスが挙げられる。RNAウイルスも一本鎖又は二本鎖であり得、限定されるものではないが、レオウイルス科(reoviridae)、コロナウイルス科(coronaviridae)、ピコルナウイルス科(picornaviridae)、フラビウイルス科(flaviviridae)、へぺウイルス科(hepeviridae)、トガウイルス科(togaviridae)、フィロウイルス科(filoviridae)、パラミクソウイルス科(paramyxoviridae)、ニューモウイルス科(pneumoviridae)、ラブドウイルス科(rhabdoviridae)、ハンタウイルス科(hantaviridae)、及びオルトミクソウイルス科(orthomyxoviridae)を含むRNAウイルスの任意の科に属し得る。RNAウイルスの特定の実施形態としては、ロタウイルス、コロナウイルス、SARSウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、ウエストナイルウイルス、C型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス、ジカウイルス、風疹ウイルス、シンドビスウイルス、チクングニアウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、及びD型インフルエンザウイルスが挙げられる。一部の実施形態において、ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルスである。
【0023】
「対象」、「個体」、及び「患者」は、互換的に哺乳類、好ましくは、ヒト又は非ヒト霊長類を指すが、家庭飼育哺乳類(例えば、イヌ又はネコ)、実験用哺乳類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット)、及び農業用哺乳類(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ)も指す。ある実施形態において、対象は、医師又は他の医療従事者の看護下のヒト(例えば、成人男性、成人女性、若年男性、若年女性、男児、女児)であり得る。ある実施形態において、対象は、医師又は他の医療従事者の看護下でなくてよい。
【0024】
「処置する」及び「処置」は、各々、治療薬を処置が必要とされる対象に投与することにより感染を低減させるか、阻害するか、又はそうでなければ改善する方法を指す。一部の実施形態において、処置が必要とされる対象としては、感染、例えば、ウイルス感染を有するか、有すると診断されるか、又は有することが疑われる対象が挙げられ得る。特定の実施形態において、処置する又は処置は、治療剤を、疾患、障害、又は病態(例えば、癌又はウイルス感染)を有するか、有すると診断されるか、又は有することが疑われる対象に投与することを含む。一部の実施形態において、対象は、無症候性であり得る。処置は、改変TCR、改変TCRを含む細胞、改変TCRをコードする核酸、及び/又は改変TCRをコードする核酸を含むベクターの投与を含む。
【0025】
「併用」又は「併用して」は、薬剤(例えば、改変TCR、改変TCRを含む細胞、及び/又は改変TCRをコードする核酸)を追加の薬剤の存在下で投与することを含む。治療処置方法における併用投与としては、第1、第2、第3、又は追加の薬剤を同時投与する方法が挙げられる。併用投与としては、第1又は追加の薬剤を、第2又は追加の薬剤の存在下で投与し、第2又は追加の薬剤は、例えば、事前に投与されていてよい方法も挙げられる。併用治療処置方法は、異なる行為者により段階的に実施され得る。例えば、ある行為者が対象に第1の薬剤を投与し得、第2の行為者が対象に第2の薬剤を投与し得、投与ステップは、同時にか又はほぼ同時に実施され得る。行為者及び対象は、同じ実体(例えば、ヒト)であり得る。したがって、この用語は、同時投与及び実質的に同時の投与、すなわち、ほぼ同時の投与の両方を包含する。
【0026】
II.改変T細胞受容体
本発明の改変TCRは、TCR構造をベースとする二量体ペプチドに関する。特に、改変TCRは、2つのペプチド鎖を含み、その各々は、細胞外ドメイン(可変領域、定常領域、及び連結ペプチドを含む)、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む。具体的な実施形態において、可変領域及び定常領域は、リンカーを介して係合している。別の具体的な実施形態において、連結ペプチドは、定常領域と膜貫通ドメインとの間に位置する。さらなる具体的な実施形態において、2つのペプチド鎖は、各ペプチド鎖の連結ペプチド間のジスルフィド結合により互いに連結されている。
【0027】
細胞外ドメインは、可変領域、定常領域、及び連結ペプチドを含む。可変領域の正確な配列は、それがMHC分子上に提示される抗原を認識し得ることを除き特に限定されない。慣例では、改変TCRペプチド鎖の一方上の可変領域は「Vα」と呼ばれ得、他方のペプチド鎖上の可変領域は「Vβ」と称され得る。一部の実施形態において、両方のペプチド鎖の可変領域は、同じである。代替的な実施形態において、ペプチド鎖の各々上の可変領域は、異なる。特定の実施形態において、Vαは、配列番号15(Vα-1)又は配列番号30(Vα-2)の配列を含む。別の実施形態において、Vβは、配列番号16(Vβ-1)又は配列番号31(Vβ-2)の配列を含む。或いは、可変領域は、配列番号15、配列番号16、配列番号30、又は配列番号31と少なくとも70%の配列同一性(すなわち、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、又は少なくとも99%の配列同一性)を有する配列を含む。ある実施形態において、可変領域は、配列番号15又は配列番号30と少なくとも70%の配列同一性(すなわち、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するが、配列番号15又は配列番号30の3つの相補性決定領域(CDR)のいずれか又は全てと100%の同一性を有する配列を含む。ある実施形態において、可変領域は、配列番号16又は配列番号31と少なくとも70%の配列同一性(すなわち、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するが、配列番号16又は配列番号31の3つの相補性決定領域(CDR)のいずれか又は全てと100%の同一性を有する配列を含む。
【0028】
定常領域は、可変領域と連結ペプチドとの間のペプチド配列を表す。具体的な実施形態において、定常領域は、免疫グロブリン(Ig)ドメイン又はコイルドコイルドメインを含む。一部の実施形態において、両方のペプチド鎖の定常領域は、同じである。代替的な実施形態において、ペプチド鎖の各々の定常領域は、異なる。
【0029】
特定の実施形態において、定常領域は、Igドメインである。Igドメインは、特に限定されず、それとしては、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが挙げられ得る。定常領域は、Ig-Cκ、IgG-CH-1、又はIgM-CH-1を含み得る。具体的な実施形態において、Ig-Cκは、配列番号17の配列を含む。別の実施形態において、IgG-CH-1は、配列番号18(IgG-CH-1a)又は配列番号32(IgG-CH-1b)の配列を含む。さらに別の実施形態において、IgM-CH-1は、配列番号33の配列を含む。特定の実施形態において、改変TCRの一方のペプチド鎖の定常領域は、Ig-Cκの配列を含み、改変TCRの他方のペプチド鎖の定常領域は、Ig-CH-1、例えば、IgG-CH-1a、IgG-CH-1b、及びIgM-CH-1の配列を含む。或いは、定常領域は、配列番号17、配列番号18、配列番号32、又は配列番号33と少なくとも70%の配列同一性(すなわち、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、又は少なくとも99%の配列同一性)を有する配列を含む。
【0030】
代替的な特定の実施形態において、定常領域は、コイルドコイルドメイン、例えば、WinZipドメインである。WinZipドメインは、記載されている。例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第6,897,017号明細書参照。具体的な実施形態において、WinZipドメインは、WinZip-A2(配列番号20に対応)及びWinZip-B1(配列番号19に対応)からなる群から選択される。特定の実施形態において、改変TCRの一方のペプチドの定常領域は、WinZip-A2を含み、改変TCRの他方のペプチドの定常領域は、WinZip-B1を含む。
【0031】
可変領域及び定常領域を繋げるリンカーは、フレキシブルリンカーであり得る。特定の実施形態において、リンカーは、GGSGG(配列番号2)のアミノ酸配列を含む。
【0032】
連結ペプチドは、定常領域を膜貫通ドメインに連結する。一部の実施形態において、連結ペプチドは、GSG又はGGCGG(配列番号1)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0033】
各ペプチド鎖の細胞外ドメイン(可変領域、定常領域、及び連結ペプチドを含む)は、膜貫通ドメインに共有結合的に係合している。一部の実施形態において、膜貫通ドメインの配列は、ヒト白血球抗原(HLA)から選択される。一部の実施形態において、両方のペプチド鎖の膜貫通ドメインは、同じである。他の実施形態において、両方のペプチド鎖の膜貫通ドメインは、異なる。特定の実施形態において、膜貫通ドメインは、HLA-DRA、HLA-DRB1、又はHLA-DRB2を含む。具体的な実施形態において、膜貫通ドメインは、配列番号21(HLA-DRA)、配列番号22(HLA-DRB1)、又は配列番号34(HLA-DRB2)のアミノ酸配列を含む。或いは、膜貫通ドメインは、配列番号21、配列番号22、又は配列番号34と少なくとも70%の配列同一性(すなわち、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、又は少なくとも99%の配列同一性)を有する配列を含む。一実施形態において、一方のペプチド鎖についての膜貫通ドメインは、HLA-DRAを含み、改変TCRの他方のペプチド鎖についての膜貫通ドメインは、HLA-DRB、例えば、HLA-DRB1又はHLA-DRB2を含む。別の特定の実施形態において、改変TCRの一方のペプチド鎖についての膜貫通ドメインは、配列番号21のアミノ酸配列を含み、改変TCRの他方のペプチド鎖についての膜貫通ドメインは、配列番号22又は配列番号34のアミノ酸配列を含む。
【0034】
改変TCRのペプチド鎖は、細胞内ドメインをさらに含み、各々は、CD28領域及びCD3ζITAM領域を含む。特定の実施形態において、CD28領域は、配列番号23のアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、CD3ζITAM領域は、配列番号24のアミノ酸配列を含む。或いは、定常領域は、配列番号23又は配列番号24と少なくとも70%の配列同一性(すなわち、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、又は少なくとも99%の配列同一性)を有する配列を含む。いっそうさらなる実施形態において、改変TCRの各ペプチド鎖の細胞内ドメインは、配列番号23のアミノ酸配列及び配列番号24のアミノ酸配列を含む。
【0035】
一実施形態において、改変TCRのペプチド鎖の各々は、互いに同じである。別の実施形態において、改変TCR中の2つのペプチド鎖の各々は、互いに異なる。
【0036】
表1は、二量体化して改変TCRを形成するペプチド鎖の具体的な組み合わせを説明する。
【0037】
【表1】
【0038】
表2は、細胞外ドメイン(可変領域、定常領域、及び連結ペプチドを含む)、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインを含む、互いにホモ二量体化し得るか又は他のペプチド鎖とヘテロ二量体化し得る特定のペプチド鎖を説明する。
【0039】
【表2】
【0040】
表1又は表2のペプチド鎖は、ホモ二量体又はヘテロ二量体を形成して改変TCRを生成し得る。例えば、P-NR-025(配列番号5)及びP-NR-026(配列番号6)は、二量体化して改変TCRを形成し得る(図1)。或いは、P-NR-027(配列番号3)及びP-NR-028(配列番号4)は、二量体化して別の改変TCRを形成し得る(図2)。キメラTCRを形成するための追加のペプチド鎖の組み合わせは、以下の表3に示される。
【0041】
【表3】
【0042】
配列番号15~24、31~34、及び39~46は、改変TCR(すなわち、規定の可変領域、定常領域、連結ペプチド、膜貫通ドメイン、CD28領域、及びCD3ζITAM領域配列)を構成するペプチド鎖の好適な部分の例として提供されるにすぎないが、それらの配列の多くのバリエーションも抗ウイルス又は抗癌治療目的に有用である。例えば、配列番号15~24、31~34、及び39~46のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性(すなわち、少なくとも75%の配列同一性、少なくとも80%の配列同一性、少なくとも85%の配列同一性、少なくとも90%の配列同一性、少なくとも95%の配列同一性、少なくとも96%の配列同一性、少なくとも97%の配列同一性、少なくとも98%の配列同一性、又は少なくとも99%の配列同一性)を有するポリペプチドも治療目的に有用であり、但し、分子が個々の配列番号15~24、31~34、及び39~46の分子の全体的な結合部位、構造、及び/又は配向を広く保持することを条件とする。
【0043】
III.ポリヌクレオチド及びベクター
現在の分子生物学者らは、本明細書に記載されるペプチド鎖を発現する核酸を作製する手法、及びそのような核酸を細胞中で発現させて関連タンパク質を得る手法を理解している。本明細書に提供されるさらなる実施形態としては、改変TCRを構成するペプチド鎖をコードする核酸又はポリヌクレオチドが挙げられる。例えば、本明細書に記載される改変TCRをコードする核酸は、配列番号7~14及び35~38として本明細書に提示される。通常の分子生物学者は、配列番号8、10、12、14、及び35~38のヌクレオチド配列を変更してそれぞれ配列番号5、6、3、4、及び26~29のペプチド鎖、並びにそれらの適切なバリアント(例えば、配列番号5、6、3、及び4のいずれか1つと少なくとも70%の同一性(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%を有するバリアント)をコードさせる手法を理解している。配列番号5、6、3、4、及び26~29のペプチド鎖をコードする核酸の非限定的な例は、それぞれ配列番号8、10、12、14、及び35~38として本明細書に提供される。
【0044】
ある実施形態において、上記の核酸は、サポーター細胞系中で発現され得る。哺乳類細胞系、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は293T細胞がそれらの目的に特に好適である。本明細書に記載されるタンパク質は、一般に、可溶性であり、したがって、それらが細胞内保持について改変されない限り産生細胞から排出される。このように産生されたタンパク質は、培養培地から精製され得る。所望により、タンパク質は、精製を容易にするために(例えば)ポリ-ヒスチジンタグ又は他のそのような市販のタグによりタグ付けされ得る。次いで、このように産生及び精製されたタンパク質は、下記の通りそれが必要とされる対象に投与され得る。
【0045】
或いは、上記核酸は、初代T細胞、例えば、末梢血、腫瘍、及び/又はリンパ節から得られたT細胞中で発現され得る。初代T細胞は、当該技術分野において慣用の通り回収及び操作され得る。初代T細胞は、本明細書に記載される改変TCRにより処置可能な病態を有する対象からのものであり得る。或いは、初代T細胞は、処置されるべき対象と免疫適合性である初代T細胞を有する別の対象からのものであり得る。
【0046】
さらに又は代替的に、本明細書に記載される核酸は、ベクター(例えば、形質移入ベクター又はウイルス形質導入ベクター)中に取り込まれ得る。次いで、このようなベクターは、対象自身の細胞中に形質移入又は形質導入され得る。このように、対象自身の細胞は、改変TCRを産生する。上記核酸を含むベクターの非限定的な例は、配列番号7~14として本明細書に提供される。ベクターと改変TCRのペプチド鎖との相互関係は、上記表2に示される。図3A~3Dは、それぞれ配列番号8、10、12、及び14の実施形態を示す。
【0047】
一部の実施形態において、改変TCRをコードする核酸は、細胞中に取り込まれる。このような細胞は、改変TCRをコードする核酸を翻訳してTCRを発現し得る。細胞は、対象自身の細胞(例えば、自己細胞)又は適切なドナーからの細胞(例えば、異種細胞)であり得る。
【0048】
IV.予防又は処置の方法
上記のタンパク質、ペプチド、細胞、核酸、及びベクターは、ウイルス感染及び/又は癌を処置及び/若しくは予防し、並びに/又はそれらの出現を低減させるために使用され得る。ウイルス感染及び/又は癌を処置及び/又は予防するため、本明細書に記載される改変TCR、改変TCRを含む細胞、改変TCRをコードする核酸、及び改変TCRをコードする核酸を含むベクターが、それが必要とされる対象に治療有効量で投与され得る。対象は、症候性又は無症候性であり得る。これらの改変TCRの治療有効量としては、限定されるものではないが、対象体重1kg当たり1μgの改変TCR、5μg/kg、10μg/kg、50μg/kg、100μg/kg、500μg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、50mg/kg、100mg/kg、500mg/kg、及び1mg/kg以上が挙げられる。
【0049】
改変TCR、改変TCRを含む細胞、改変TCRをコードする核酸、及び改変TCRをコードする核酸を含むベクターが投与される場合、限定されるものではないが、経口投与、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、及び吸入(例えば、エアロゾル吸入)を含む任意の好適な投与経路が使用され得る。特定の実施形態において、TCRは、TCRを発現するようにT細胞又はNK細胞を改変し、次いで改変された免疫細胞を患者中に注入することにより投与される。
【0050】
好ましい実施形態において、改変TCRは、感染性疾患の癌を有する患者に由来する自己T細胞中に形質移入される。T細胞は、全血、腫瘍、又は流入領域リンパ節に由来し得る。一実施形態において、ドナーT細胞が使用され得る。本明細書に記載される改変TCRは、初代T細胞中に核酸として形質移入され得、核酸は、任意の好適なベクターのDNA又はRNAであり得る。DNAベクターは、アデノウイルスであり得る。核酸は、RNAであり得る。RNAは、ナノ粒子フォーマット、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第11,141,377号明細書に記載のものであり得る。形質移入は、標準的技術、例えば、エレクトロポレーション(例えば、米国特許第11,377,652号明細書及び米国特許出願公開第2022/0025402号明細書に記載されるもの、両方とも参照により本明細書に組み込まれる)によるか、又はMaxCyte(商標)システム(Rockville,USA)を使用することにより実施され得る。このように形質移入された自己T細胞は、エクスビボで濃縮及び拡大培養され得る。例えば、CD3濃縮T細胞は、Immunocult(商標)(StemCell Technologies,Cambridge,USA)及びIL-2中で拡大培養され得る。T細胞は、患者に治療有効量で投与され得る。一部の実施形態において、本明細書に記載される方法により製造されたT細胞を含む組成物が、10~1012個の細胞/kg体重、10~1010個の細胞/kg体重、10~10個の細胞/kg体重、10~10個の細胞/kg体重、10~10個の細胞/kg体重、10~10個の細胞/kg体重、又は10~10個の細胞/kg体重(それらの範囲内の全ての整数値を含む)の投与量で投与され得る。T細胞の数は、組成物が意図される治療使用に依存する。
【0051】
改変TCRをコードする核酸が細胞、例えば、T細胞中に形質移入されるべき場合、(限定されるものではないが)10ng、50ng、100ng、500ng、1μg、5μg、10μg、50μg、100μg、500μg、1mg、5mg、10mg、50mg、100mg、及び500mg以上を含む任意の好適な量が細胞中に形質移入され得る。対象細胞を本明細書に記載されるポリヌクレオチドで形質移入するため、対象から細胞を抽出し、それらを公知の技術に従って形質移入し、次いで形質移入された細胞を対象中に輸注して戻すことが有用である。エレクトロポレーションは、特に好適な形質移入方法である(例えば、国際公開第20/14264号パンフレット及び国際公開第21/07315号パンフレット参照、それらの各々は、参照により全体として本明細書に組み込まれる)。特に好適な細胞としては、全身を循環する細胞、例えば、循環リンパ球(例えば、T細胞、NK細胞)が挙げられる。
【0052】
核酸が形質導入されるべき場合、ウイルスベクターが対象に直接投与され得るか、又は細胞が形質導入及び再輸注のために抽出され得る。ウイルスベクターは、対象に、限定されるものではないが、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、及び吸入(例えば、エアロゾル吸入)を含む任意の好適な投与経路により投与され得る。
【0053】
治療有効ウイルス量としては、限定されるものではないが、1×10個のウイルス粒子(VP)、5×10VP、1×10VP、5×10VP、1×10VP、5×10VP、1×1010VP、又は1×1010VP超が挙げられる。アデノウイルスベクターは、アデノウイルスの大きい積荷容量のため、この目的に特に好適である。好適なアデノウイルスベクターとしては、各々が参照により全体として本明細書に組み込まれる国際公開第98/17783号パンフレット、国際公開第02/27007号パンフレット、国際公開第09/6479号パンフレット、及び国際公開第14/31178号パンフレットに開示されるものが挙げられる。これらのアデノウイルスベクターの投与に好適な方法は、参照により全体として本明細書に組み込まれる国際公開第16/112188号パンフレットに開示される。
【0054】
上記のタンパク質、ペプチド、細胞、核酸、及びベクターは、患者における癌を処置及び/若しくは予防し、並びに/又はその出現を低減させるために使用され得る。癌は、膀胱癌、骨癌、脳癌(髄芽腫、髄膜腫、神経芽腫を含む)、乳癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、頭頸部癌、胃癌、HIV/AIDS関連癌、腎臓癌、白血病(急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、B細胞白血病(BCL)、慢性リンパ性癌(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、及び慢性T細胞性リンパ性白血病(CTLL)を含む)、肝臓癌、肺癌(非小細胞及び小細胞を含む)、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫及びホジキンリンパ腫を含む)、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、口腔癌(口内、舌、唾液腺、又は歯茎の癌を含む)、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽腫、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、及び膣癌であり得る。特定の実施形態において、患者は、膀胱癌、乳癌、結腸癌、又は膵臓癌を有し得る。
【0055】
上記のタンパク質、ペプチド、細胞、核酸、及びベクターは、患者におけるウイルス感染を処置及び/若しくは予防し、並びに/又はその出現を低減させるために使用され得る。ウイルスは、DNA又はRNAウイルスのいずれかであり得る。患者は、DNAウイルス、例えば、一本鎖又は二本鎖ウイルスからの感染を罹患していてよい。DNAウイルスは、限定されるものではないが、ヘルペスウイルス科(herpesviridae)、アデノウイルス科(adenoviridae)、ポリオーマウイルス科(polyomavididae)、及びポックスウイルス科(poxviridae)を含むDNAウイルスの任意の科に属し得る。或いは、患者は、RNAウイルス、例えば、一本鎖又は二本鎖ウイルスからの感染を罹患していてよい。RNAウイルスは、限定されるものではないが、レオウイルス科(reoviridae)、コロナウイルス科(coronaviridae)、ピコルナウイルス科(picornaviridae)、フラビウイルス科(flaviviridae)、へぺウイルス科(hepeviridae)、トガウイルス科(togaviridae)、フィロウイルス科(filoviridae)、パラミクソウイルス科(paramyxoviridae)、ニューモウイルス科(pneumoviridae)、ラブドウイルス科(rhabdoviridae)、ハンタウイルス科(hantaviridae)、及びオルトミクソウイルス科(orthomyxoviridae)を含むRNAウイルスの任意の科に属し得る。特に、患者は、ロタウイルス、コロナウイルス、SARSウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、A型肝炎ウイルス、黄熱病ウイルス、ウエストナイルウイルス、C型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス、ジカウイルス、風疹ウイルス、シンドビスウイルス、チクングニアウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルス、D型インフルエンザウイルス、及びヒト免疫不全ウイルスに感染していてよい。
【0056】
実施形態
実施形態1:第1のペプチド鎖及び第2のペプチド鎖を含む改変T細胞受容体(TCR)であって、各ペプチド鎖は、細胞外ドメイン;膜貫通ドメイン;及び細胞内ドメインを含み、細胞外ドメインは、可変領域、定常領域、及び連結ペプチドを含み、可変領域及び定常領域は、リンカーを介して係合しており、第1のペプチド鎖の定常領域は、Ig-Cκドメインを含み、第2のペプチド鎖の定常領域は、Ig-CH-1ドメインを含み、1)第1のペプチド鎖の膜貫通ドメインは、HLA-DRAドメインを含み、第2のペプチド鎖の膜貫通ドメインは、HLA-DRBドメインを含むか、又は2)第1のペプチド鎖の膜貫通ドメインは、HLA-DRBドメインを含み、第2のペプチド鎖の膜貫通ドメインは、HLA-DRAドメインを含む改変TCR。
【0057】
実施形態2:リンカーは、フレキシブルリンカーである、実施形態1のTCR。
【0058】
実施形態3:Ig-CH-1ドメインは、IgG-CH-1a、IgG-CH-1b、又はIgM-CH-1である、実施形態1又は2のTCR。
【0059】
実施形態4:HLA-DRBドメインは、HLA-DRB1又はHLA-DRB2である、実施形態1~3のいずれか1つのTCR。
【0060】
実施形態5:ペプチド鎖の各々上の可変領域は、同じ可変領域である、実施形態1~4のいずれか1つのTCR。
【0061】
実施形態6:各ペプチド鎖上の可変領域は、互いに異なる、実施形態1~5のいずれか1つのTCR。
【0062】
実施形態7:細胞内ドメインは、CD28領域及びCD3ζITAM領域を含む、実施形態1~6のいずれか1つのTCR。
【0063】
実施形態8:第1のペプチド鎖は、定常領域としてのIg-Cκ;膜貫通ドメインとしてのHLA-DRA;並びに細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζを含む、実施形態1~7のいずれか1つのTCR。
【0064】
実施形態9:第1のペプチド鎖は、配列番号39を含む、実施形態8のTCR。
【0065】
実施形態10:第1のペプチド鎖は、配列番号5を含む、実施形態9のTCR。
【0066】
実施形態11:第1のペプチド鎖は、配列番号43を含む、実施形態8のTCR。
【0067】
実施形態12:第1のペプチド鎖は、配列番号26を含む、実施形態11のTCR。
【0068】
実施形態13:第2のペプチド鎖は、定常領域としてのIg-CH-1;膜貫通ドメインとしてのHLA-DRB;並びに細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζを含む、実施形態1~7のいずれか1つのTCR。
【0069】
実施形態14:第2のペプチド鎖は、配列番号40を含む、実施形態13のTCR。
【0070】
実施形態15:第2のペプチド鎖は、配列番号6を含む、実施形態14のTCR。
【0071】
実施形態16:第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、実施形態13のTCR。
【0072】
実施形態17:第2のペプチド鎖は、配列番号27を含む、実施形態16のTCR。
【0073】
実施形態18:第2のペプチド鎖は、配列番号45を含む、実施形態13のTCR。
【0074】
実施形態19:第2のペプチド鎖は、配列番号28を含む、実施形態18のTCR。
【0075】
実施形態20:第2のペプチド鎖は、配列番号46を含む、実施形態13のTCR。
【0076】
実施形態21:第2のペプチド鎖は、配列番号29を含む、実施形態20のTCR。
【0077】
実施形態22:第1のペプチド鎖は、定常領域としてのIg-Cκ、膜貫通ドメインとしてのHLA-DRA;並びに細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζを含み;第2のペプチド鎖は、定常領域としてのIg-CH-1、膜貫通ドメインとしてのHLA-DRB、並びに細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζを含む、実施形態1~21のいずれか1つのTCR。
【0078】
実施形態23:第1のペプチド鎖は、配列番号39を含み、第2のペプチド鎖は、配列番号40を含む、実施形態22のTCR。
【0079】
実施形態24:第1のペプチド鎖は、配列番号15をさらに含み、第2のペプチド鎖は、配列番号16をさらに含む、実施形態23のTCR。
【0080】
実施形態25:第1のペプチドは、配列番号5を含み、第2のペプチド鎖は、配列番号6を含む、実施形態24のTCR。
【0081】
実施形態26:第1のペプチド鎖は、配列番号43を含み、第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、実施形態22のTCR。
【0082】
実施形態27:第1のペプチド鎖は、配列番号30をさらに含み、第2のペプチド鎖は、配列番号31をさらに含む、実施形態26のTCR。
【0083】
実施形態28:第1のペプチドは、配列番号26を含み、第2のペプチド鎖は、配列番号27を含む、実施形態27のTCR。
【0084】
実施形態29:第1のペプチド鎖は、配列番号43を含み、第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、実施形態22のTCR。
【0085】
実施形態30:第1のペプチド鎖は、配列番号30をさらに含み、第2のペプチド鎖は、配列番号31をさらに含む、実施形態29のTCR。
【0086】
実施形態31:第1のペプチドは、配列番号26を含み、第2のペプチド鎖は、配列番号28を含む、実施形態30のTCR。
【0087】
実施形態32:第1のペプチド鎖は、配列番号43を含み、第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、実施形態22のTCR。
【0088】
実施形態33:第1のペプチド鎖は、配列番号30をさらに含み、第2のペプチド鎖は、配列番号31をさらに含む、実施形態32のTCR。
【0089】
実施形態34:第1のペプチドは、配列番号26を含み、第2のペプチド鎖は、配列番号29を含む、実施形態33のTCR。
【0090】
実施形態35:実施形態1~34のいずれか1つのTCRを含む細胞。
【0091】
実施形態36:実施形態1~34のいずれか1つのTCRをコードする核酸。
【0092】
実施形態37:実施形態36の核酸を含むベクター
【0093】
実施形態38:癌又はウイルス感染の出現の低減又はそれらの処置が必要とされる患者における癌又はウイルス感染の出現を低減させるか、又はそれらを処置する方法であって、医薬組成物を患者に投与することを含み、医薬組成物は、治療有効量の請求項1~34のいずれか1つの改変TCR又は実施形態1~34のいずれか1つの改変TCRをコードする核酸を含む方法。
【0094】
実施形態39:医薬は、核酸を含むベクターを含む、実施形態38の方法。
【0095】
実施形態40:医薬組成物は、改変TCR又は改変TCRをコードする核酸を含む細胞を含む、実施形態38又は39の方法。
【0096】
実施形態41:癌は、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、頭頸部癌、胃癌、HIV/AIDS関連癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、口腔癌、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽腫、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、及び膣癌からなる群から選択される、請求項38~40のいずれか1つの方法。
【0097】
実施形態42:ウイルス感染は、ヘルペスウイルス科(herpesviridae)、アデノウイルス科(adenoviridae)、ポリオーマウイルス科(polyomavididae)、ポックスウイルス科(poxviridae)、レオウイルス科(reoviridae)、コロナウイルス科(coronaviridae)、ピコルナウイルス科(picornaviridae)、フラビウイルス科(flaviviridae)、へぺウイルス科(hepeviridae)、トガウイルス科(togaviridae)、フィロウイルス科(filoviridae)、パラミクソウイルス科(paramyxoviridae)、ニューモウイルス科(pneumoviridae)、ラブドウイルス科(rhabdoviridae)、ハンタウイルス科(hantaviridae)、及びオルトミクソウイルス科(orthomyxoviridae)からなる群から選択されるウイルス科からのウイルスにより引き起こされる、請求項38~40のいずれか1つの方法。
【0098】
実施形態43:癌又はウイルス感染の予防又は処置が必要とされる患者における癌又はウイルス感染を予防又は処置するための、請求項1のTCR、請求項35の細胞、請求項36の核酸又は請求項37のベクターの使用。
【実施例
【0099】
以下の実施例は、本明細書に開示される本発明をさらに説明するために提供されるが、決してその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0100】
実施例1:TCR構築物のクローニング
HLA-DRA又はHLA-DRB1連結ペプチドプラス膜貫通(CP-TM)領域DNAテンプレートを、部分的にオーバーラップする長鎖オリゴヌクレオチド(IDT)をアニーリングすることにより構築した。これらのCP-TM配列の各々を、オーバーラップ伸長PCR(OE-PCR)により、事前にクローニングされたテンプレートから得られたCD28細胞内(IC)プラスCD3ζ(IC)配列に融合させた。Ig-Cκ又はIg-CH-1からの細胞外定常ドメインをコードするDNAテンプレートを、事前にクローニングされたpAO156テンプレートからPCRにより得た。リンカー-WinZip-B1又はリンカー-WinZip-A2コイルドコイルドメインから構成される細胞外定常ドメインを、リンカー-WinZip-B1又はリンカー-WinZip-A2のいずれかをコードするgBlock DNA断片(IDT)として得た。これらの細胞外定常ドメインの各々を、HLA-DRA又はHLA-DRB1 CP-TMプラスCD28-CD3ζ細胞内配列のいずれかにOE-PCRにより融合させた。これらの不変CP-TM-IC配列を多目的発現ベクター(pRNi)中にクローニングした。不変CP-TM-ICインサートを、5’末端における平滑ライゲーションによりクローニングしてEcoRV部位、及び3’末端におけるPacIオーバーラップを再生した。pRNi中の得られた不変CP-TM-IC構築物は、コード配列のすぐ上流にNcoI制限部位を有する。したがって、5’末端におけるBsaI又はEsp3I制限部位及び平滑リン酸化3’末端を有する任意のTCR Vα又はVβ配列を設計するか又は増幅させ、NcoI及びEcoRVにより消化された不変CP-TM-ICベクターの1つにクローニングすることができる。図3A~3Dは、クローニングされた改変TCR構築物の特定の実施形態を説明する。
【0101】
実施例2:mRNA合成及びエフェクター細胞エレクトロポレーション
実施例1の改変TCR構築物を発現ベクター中に挿入した。構築物を、上流でT7プロモーター及び5’UTRにより、且つ下流でマウスヘモグロビンアルファから採用された3’UTR、及び短鎖ポリ(A)とそれに続くAarI線形化部位により挟んだ。これは、AarIによる最終ベクターP-NR-025、P-NR-026、P-NR-027、及びP-NR-028の線形化後に改変TCRのT7ベースのインビトロ転写を可能とする。活性化ナチュラルキラー(aNK)細胞を、インビトロ転写及びポリアデニル化されたmRNA(NEBカタログ番号E2040S及びM0276S)により、2mmギャップキュベットを有するBIO-RAD Gene Pulser IIを使用して50μL中で3×10個の細胞当たり3μgのmRNAでエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションされたaNKを、6ウェルTC処理プレートのウェル中で完全RPMI培地(10%のFBS及び1×PSAが補充されたL-Gluを有するCorning RPMI 1640)中で1mL当たり1×10個の細胞で37℃及び5%のCOで一晩インキュベートした。
【0102】
実施例3:キリングアッセイ
HLA-A2を安定的に発現する標的D3C6細胞(すなわち、全てのMHC-IアレルがノックアウトされたKG-1細胞)に、4μg/mLのhCMV pp65 NLVペプチド-HLA-A0201拘束性(NLVPMVATV(配列番号25)、DMSO中)又は等容量のDMSOのいずれかを4.4mL中で6.4×10個の細胞/mLで各々パルスした。パルスされた標的細胞を、T-25フラスコ中で完全IMDM培地(10%のFBS及び1×PSAが補充されたATCCイスコフIMDM)中で37℃及び5%のCOで一晩インキュベートした。エレクトロポレーションから20~24時間後、実施例2のaNKエフェクター細胞をPBS(カルシウムもマグネシウムも有さない)中で洗浄し、完全RPMI 1640培地中で再懸濁させた。次いで、エフェクターaNKを計数し、ウェル当たり1×10個から6.25×10個までの生存エフェクター細胞まで段階希釈し、丸底96ウェルプレート中に堆積させた。未結合ペプチド又はDMSOをパルスされた標的細胞から、完全RPMI培地により1回洗浄し、PBSにより2回洗浄することにより除去した。洗浄された標的細胞を20μLのカルセイン-AM(Fisher Scientificカタログ番号C3099)を有する2mLのPBS中で各々再懸濁させ、穏やかに振盪させながら37℃及び5%のCOで20分間インキュベートした。カルセインがロードされた標的細胞をPBSにより洗浄し、次いで完全RPMIにより洗浄してから10mLの完全RPMI中で再懸濁させ、計数した。標的細胞を96ウェル丸底プレートのウェルにウェル当たり5×10個の生存標的細胞でそれらのエフェクター細胞と一緒にロードした。キリングアッセイプレートを400×gで5分間遠心分離し、37℃及び5%のCOで4時間インキュベートした。インキュベーション後、22μLの9%(v/v)のTriton X-100(Sigma Aldrich)を最大溶解対照ウェルに添加し、プレートを室温で5分間インキュベートした。キリングプレートを再度遠心分離し、485±20nmの波長における励起及び528±20nmにおける発光の読取のために100μLの上清を96ウェルイムノアッセイプレートに移した。各サンプルをトリプリケートでプレーティングした。
【0103】
図4A~4Eは、pp65-NLV又はDMSO(対照)がパルスされ、TCRαβ-ITAM融合物がエレクトロポレーションされたaNK細胞又は対照aNK細胞のいずれかに曝露されたHLA-A2陽性標的細胞の%特異的標的細胞溶解を実証する。図4Aの「P-NR-025+P-NR-026 aNK」は、図1に示されるTCRαβ-ITAM融合物を示す。図4Bの「P-NR-027+P-NR-028 aNK」は、図2に示されるTCRαβ-ITAM融合物を示す。図4Cの「P-NR-002+P-NR-016+CD3γδ aNK」は、他の構築物と同じ抗pp65-NLV-HLA-A2可変ドメインを含有し、陽性キリング対照として機能するようにCD3γδにより同時エレクトロポレーションされた野生型TCRαβを示す。図4Dの「P-WT-173」も陽性キリング対照であるが、同じ野生型抗pp65-NLV-HLA-A2 TCRαβ及びCD3γδを安定的に発現する。陰性対照は、GFP単独によりエレクトロポレーションされたaNKにより示される(図4E)。P-NR-025+P-NR-026、P-NR-027+P-NR-028、P-NR-002+P-NR-016、及びP-WT-173は全て、HLA-A02上のNLVペプチドに結合することが事前に決定された同じ可変TCRαβ配列ペアを含有した。エラーバーは、技術的反復の±標準偏差を示すにすぎない。
【0104】
実施例4:活性化NK細胞中のP-NR-025+P-NR-026、P-NR-025+PWH295、PWH308+PWH305、又はPWH308+PWH305のキメラTCR発現及び細胞傷害性
aNK(NK92)細胞をRPMI緩衝液により洗浄し、RPMI中で10個の細胞/50μLの濃度で再懸濁させた。第1及び第2のペプチド鎖をコードする5μgのmRNAを、2mmキュベットに対して50μLのRPMI中で10個のaNK細胞と合わせた。キュベットをBioRad GenePulser IIにより200Vの3回の20msパルスに供した。エレクトロポレーションされた細胞を、IL-2を含有する培養培地(10%のFBS及び1×PSAが補充されたL-Gluを有するCorning RPMI 1640)に移し、一晩インキュベートした。
【0105】
一晩のインキュベーション後、各サンプルからの2×10個の細胞を得、PBS/BSA/EDTA緩衝液により洗浄した。細胞を100μLの洗浄緩衝液中で再懸濁させた。5μLのPE-HLA-A0201、NLVPMVATV-PE、又はHLA-A2デキストラマー陰性対照を各サンプルに添加した。サンプルを4℃で20分間インキュベートし、PBS/BSA/EDTAにより洗浄し、200μL中で再懸濁させた。細胞をフローサイトメトリーを介して分析した。図5は、エレクトロポレーションされたaNK中の種々のキメラTCRの発現を示す。
【0106】
エレクトロポレーション後の一晩のインキュベーション後、aNKを3回洗浄し、カルセインAMにより染色されたHLA-A2安定KG-1細胞と10:1(エフェクター:標的)の比でインキュベートした。4時間のインキュベーション後、上清を得、カルセインAMの蛍光について分析した。図6は、本明細書に記載される改変TCRを発現するaNK細胞による標的細胞の%特異的キリングを示す。
【0107】
実施例5:初代T細胞中のPWH308+PWH305及びPWH308+PWH305のキメラTCR発現及び細胞傷害性
ヒト初代T細胞をドナー由来ロイコパック(leukopack)(Charles River,Wilmington,USA)から得た。末梢血単核細胞(PBMC)をficoll勾配を介して分離し、K100緩衝液により洗浄し、K100中で10個の細胞/100μLの濃度で再懸濁させた。次いで、CD3豊富なT細胞をImmunoCult(商標)(StemCell Technologies,Cambridge,USA)及びIL-2中で拡大培養した。第1及び第2のペプチド鎖をコードする10μgのmRNAを、2mmキュベットに対して100μLのK100緩衝液中で10個のT細胞と合わせた。細胞を、両方とも参照により本明細書に組み込まれる米国特許第11,377,652号明細書及び米国特許出願公開第20220025402号明細書に記載されるエレクトロポレーションプロトコルに従ってエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションされた細胞を培養培地に移し、一晩インキュベートした。
【0108】
一晩のインキュベーション後、各サンプルからの2×10個の細胞を得、PBS/BSA/EDTA緩衝液により洗浄した。細胞を100μLの洗浄緩衝液中で再懸濁させた。5μLのPE-HLA-A0201、NLVPMVATV-PE、又はHLA-A2デキストラマー陰性対照を各サンプルに添加した。サンプルを4℃で20分間インキュベートし、PBS/BSA/EDTAにより2回洗浄し、200μL中で再懸濁させた。細胞をフローサイトメトリーを介して分析した。図7は、エレクトロポレーションされた初代T細胞中の種々のキメラTCRの発現を示す。
【0109】
エレクトロポレーション後の一晩のインキュベーション後、初代T細胞を3回洗浄し、カルセインAMにより染色されたHLA-A2安定KG-1細胞と10:1(エフェクター:標的)の比でインキュベートした。4時間のインキュベーション後、上清を得、カルセインAMの蛍光について分析した。図8は、本明細書に記載される改変TCRを発現する初代T細胞による標的細胞の%特異的キリングを示す。
【0110】
実施例6:改変TCRによる患者由来T細胞の形質移入
患者T細胞は全末梢血に由来するか、又は腫瘍若しくは流入領域リンパ節から単離される。T細胞を本明細書に記載される改変TCRによりエレクトロポレーションする。エレクトロポレーションされたT細胞をエクスビボで臨床的に有効な数の細胞まで増殖させ、治療関連数の細胞を患者に投与する。
【0111】
本明細書に引用される刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参照文献は、各参照文献が個別的且つ具体的に参照により取り込まれることが示され、全体として本明細書に記載されるのと同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)用語「a」及び「an」及び「the」及び「少なくとも1つ」並びに同様の参照対象の使用は、本明細書に特記されない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。用語「少なくとも1つ」とそれに続く1つ以上の項目のリスト(例えば、「A及びBの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書に特記されない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、列記される項目から選択される1つの項目(A又はB)又は列記される項目の2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する」は、注記されない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「限定されるものではないが、~を含む」を意味する)と解釈されるべきである。本明細書の値の範囲の記述は、本明細書に特記されない限り、その範囲内に収まる各別個の値を個々に指す省略方法として機能すると意図されるにすぎず、各別個の値は、それが個別的に本明細書に記述されるかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に特記されない限り、又は特に明らかに文脈と矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書に提供される任意の及び全ての例、又は例示的な語(例えば、「例えば」)の使用は、本発明をより良好に明らかにすることが意図されるにすぎず、特に特許請求されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書における語は、特許請求されない任意の要素を本発明の実施に不可欠として示すものと解釈されるべきでない。
【0113】
本発明を実施するための本発明者らが理解する最良の態様を含む本発明の特定の実施形態が、本明細書に記載される。それらの特定の実施形態の変法は、当業者が上記の詳細な説明を読めば明らかになり得る。本発明者らは、当業者がそのような変法を適宜用いることを予測し、本発明者らは、本明細書に具体的に記載されるもの以外で本発明が実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用可能な法律により認められる通り、本明細書に添付される特許請求の範囲に記述される主題の全ての改変及び均等物を含む。さらに、全ての考えられるそれらの変法における上記要素の任意の組み合わせは、本明細書に特記されない限り、又は特に文脈と明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。
【0114】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2024-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のペプチド鎖及び第2のペプチド鎖を含む改変T細胞受容体(TCR)であって、各ペプチド鎖は、
細胞外ドメイン;
膜貫通ドメイン;及び
細胞内ドメイン
を含み、
前記細胞外ドメインは、可変領域、定常領域、及び連結ペプチドを含み、
前記可変領域及び前記定常領域は、リンカーを介して係合しており、
前記第1のペプチド鎖の前記定常領域は、Ig-Cκドメインを含み、前記第2のペプチド鎖の前記定常領域は、Ig-CH-1ドメインを含み、
1)前記第1のペプチド鎖の前記膜貫通ドメインは、HLA-DRAドメインを含み、前記第2のペプチド鎖の前記膜貫通ドメインは、HLA-DRBドメインを含むか、又は2)前記第1のペプチド鎖の前記膜貫通ドメインは、HLA-DRBドメインを含み、前記第2のペプチド鎖の前記膜貫通ドメインは、HLA-DRAドメインを含む改変TCR。
【請求項2】
前記リンカーは、フレキシブルリンカーである、請求項1に記載のTCR。
【請求項3】
前記Ig-CH-1ドメインは、IgG-CH-1a、IgG-CH-1b、又はIgM-CH-1である、請求項に記載のTCR。
【請求項4】
前記HLA-DRBドメインは、HLA-DRB1又はHLA-DRB2である、請求項に記載のTCR。
【請求項5】
前記ペプチド鎖の各々上の前記可変領域は、同じ可変領域である、請求項に記載のTCR。
【請求項6】
各ペプチド鎖上の前記可変領域は、互いに異なる、請求項に記載のTCR。
【請求項7】
前記細胞内ドメインは、CD28領域及びCD3ζITAM領域を含む、請求項に記載のTCR。
【請求項8】
前記第1のペプチド鎖は、
前記定常領域としてのIg-Cκ;
前記膜貫通ドメインとしてのHLA-DRA;並びに
前記細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζ
を含む、請求項に記載のTCR。
【請求項9】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号39を含む、請求項8に記載のTCR。
【請求項10】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号43を含む、請求項8に記載のTCR。
【請求項11】
前記第2のペプチド鎖は、
前記定常領域としてのIg-CH-1;
前記膜貫通ドメインとしてのHLA-DRB;並びに
前記細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζ
を含む、請求項に記載のTCR。
【請求項12】
前記第2のペプチド鎖は、配列番号40を含む、請求項11に記載のTCR。
【請求項13】
前記第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、請求項11に記載のTCR。
【請求項14】
前記第2のペプチド鎖は、配列番号45を含む、請求項11に記載のTCR。
【請求項15】
前記第2のペプチド鎖は、配列番号46を含む、請求項11に記載のTCR。
【請求項16】
前記第1のペプチド鎖は、前記定常領域としてのIg-Cκ、前記膜貫通ドメインとしてのHLA-DRA;並びに前記細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζを含み;
前記第2のペプチド鎖は、前記定常領域としてのIg-CH-1、前記膜貫通ドメインとしてのHLA-DRB、並びに前記細胞内ドメインとしてのCD28及びCD3ζを含む、
請求項に記載のTCR。
【請求項17】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号39を含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号40を含む、請求項16に記載のTCR。
【請求項18】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号15をさらに含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号16をさらに含む、請求項17に記載のTCR。
【請求項19】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号43を含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、請求項16に記載のTCR。
【請求項20】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号30をさらに含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号31をさらに含む、請求項19に記載のTCR。
【請求項21】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号43を含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、請求項16に記載のTCR。
【請求項22】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号30をさらに含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号31をさらに含む、請求項21に記載のTCR。
【請求項23】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号43を含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号44を含む、請求項16に記載のTCR。
【請求項24】
前記第1のペプチド鎖は、配列番号30をさらに含み、前記第2のペプチド鎖は、配列番号31をさらに含む、請求項23に記載のTCR。
【請求項25】
請求項に記載のTCRを含む細胞。
【請求項26】
請求項に記載のTCRをコードする核酸。
【請求項27】
請求項26に記載の核酸を含むベクター。
【請求項28】
癌又はウイルス感染の出現の低減又はそれらの処置が必要とされる患者における癌又はウイルス感染の出現を低減させるか、又はそれらを処置する方法であって、医薬組成物を前記患者に投与することを含み、
前記医薬組成物は、治療有効量の請求項に記載の改変TCR又は請求項1~24のいずれか一項に記載の改変TCRをコードする核酸を含む方法。
【請求項29】
前記医薬は、前記核酸を含むベクターを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記医薬組成物は、前記改変TCR又は前記改変TCRをコードする核酸を含む細胞を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記癌は、膀胱癌、骨癌、脳癌、乳癌、中枢神経系の癌、子宮頸癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、眼癌、胆嚢癌、頭頸部癌、胃癌、HIV/AIDS関連癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、リンパ腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、口腔癌、神経内分泌癌、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽腫、肉腫、皮膚癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、及び膣癌からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記ウイルス感染は、ヘルペスウイルス科(herpesviridae)、アデノウイルス科(adenoviridae)、ポリオーマウイルス科(polyomavididae)、ポックスウイルス科(poxviridae)、レオウイルス科(reoviridae)、コロナウイルス科(coronaviridae)、ピコルナウイルス科(picornaviridae)、フラビウイルス科(flaviviridae)、へぺウイルス科(hepeviridae)、トガウイルス科(togaviridae)、フィロウイルス科(filoviridae)、パラミクソウイルス科(paramyxoviridae)、ニューモウイルス科(pneumoviridae)、ラブドウイルス科(rhabdoviridae)、ハンタウイルス科(hantaviridae)、及びオルトミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)からなる群から選択されるウイルス科からのウイルスにより引き起こされる、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
癌又はウイルス感染の予防又は処置が必要とされる患者における癌又はウイルス感染を予防又は処置するための、請求項1に記載のTCR、請求項25に記載の細胞、請求項26に記載の核酸又は請求項27に記載のベクターの使用。
【国際調査報告】