(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】プロゲストゲン単独経口避妊
(51)【国際特許分類】
A61K 31/567 20060101AFI20240719BHJP
A61P 15/18 20060101ALI20240719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K31/567
A61P15/18
A61P43/00 111
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/04
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504981
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 IB2022056637
(87)【国際公開番号】W WO2023007312
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524033722
【氏名又は名称】ナヴァド ライフ サイエンスズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】エッテル、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】オスターヴァルト、ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】コフハー、プリティ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC17
4C076CC30
4C076DD29
4C076DD41
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE38
4C076FF04
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA09
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA06
4C086ZA86
4C086ZC03
(57)【要約】
プロゲストゲン単独の避妊を提供する方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
避妊を望むヒト対象者に避妊を提供する方法であって、少なくとも28日間の処置期間に亘って約0.110mg~約0.150mgのレボノルゲストレル(LNG)を含む剤形を1日1回前記対象者に経口投与することを含む方法。
【請求項2】
前記剤形が、約0.115mgのLNG、約0.120mgのLNG、約0.125mgのLNG、約0.130mgのLNG、約0.135mgのLNG、約0.140mgのLNG又は約0.145mgのLNG、及び少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記LNGが、唯一の医薬活性剤、添加剤(additive)又は補助剤(adjuvant)であって、前記処置期間中に前記対象者に避妊目的で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処置期間中は前記対象者にエストロゲン化合物を投与しない、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処置期間中は前記対象者に葉酸塩を投与しない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処置期間中は前記LNGの用量調整(dose titration)を行なわない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処置期間が、前記LNGの剤形の投与を中断することなく、前記LNGの剤形の前記1日1回の投与が行なわれる少なくとも55日以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記処置期間が、前記LNGの剤形の投与を中断することなく、前記LNGの剤形の前記1日1回の投与が行なわれる少なくとも180日以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記剤形が、前記LNG及び少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤を含む錠剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
避妊を望むヒト対象者に避妊を提供する方法であって、少なくとも28日間の処置期間に亘って約0.115mg~約0.145mgのレボノルゲストレル(LNG)及び1種以上の薬学的に許容される添加剤からなる錠剤を前記対象者に経口投与することからなる方法。
【請求項11】
前記錠剤が、約0.115mgのLNG、約0.120mgのLNG、約0.125mgのLNG、約0.130mgのLNG、約0.135mgのLNG、約0.140mgのLNG、又は約0.145mgのLNG、及び滑沢剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、可溶化剤、香味剤、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記処置期間中は前記対象者にエストロゲンを投与しない、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記処置期間中は前記対象者に葉酸塩を投与しない、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記処置期間中は前記LNGの用量調整を行なわない、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記処置期間が、前記LNGの錠剤の投与を中断することなく、前記LNGの錠剤の前記1日1回の投与が行なわれる少なくとも60日以上である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記処置期間が、前記LNGの錠剤の投与を中断することなく、前記LNGの錠剤の前記1日1回の投与が行なわれる少なくとも180日以上である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経口避妊の提供方法に関する。該方法は、プロゲストゲン、好ましくはレボノルゲストレル(以下LNG)又はノルゲストレル(以下NG)を含む剤形の少なくとも1日1回の経口投与を有し、該プロゲストゲンは該剤形における唯一の活性成分である。
【背景技術】
【0002】
プロゲストゲン単独ピル(以下POP)は長年使用されているが、避妊を望む女性及びそれらを処方する医師のいずれからも依然として許容できる程度は限られている。それらの作用機序は多面的であり、子宮頸管粘液の性質の変化、子宮内膜の変化、卵管の運動性の変化などのような主に末梢的な作用メカニズムを含んでいる。対象者によっては排卵抑制が起こる可能性がある。
【0003】
プロゲストゲン単独ピルは排卵抑制を下回るレベルで投与される傾向にあり、例えばLNG0.03mg、NG0.075mg、ノルエチステロン(norethisterone)0.35mg、酢酸ノルエチステロン(norethisterone acetate)0.3mg、酢酸メゲストロール(megestrol acetate)0.7mgである。しかしながら、POPの失敗率は複合避妊ピルの失敗率よりも高く、よって許容できる程度は限られている。例えば、LNG0.03mg/日のLNG単独ピル(MICROLUT(登録商標)、28mini(登録商標))は、現在市販されている主要な混合経口避妊薬(以下COC)のように血栓症のリスクを上昇させない大きな利点があるにもかかわらずニッチ製品にとどまっている。
【0004】
1日当たり0.075mgで投与するPOPであるデソゲストレル(desogestrel)は、その処方量が排卵抑制レベルを超えていることからより優れた避妊効果を示すが、出血作用に依然として問題がある。デソゲストレル0.075mgで予防できるかもしれない妊娠1件につき、5人の女性が不規則な出血のために早期に中止することが報告されている。ドロスピレノン(drospirenone)の場合、不規則な出血の問題は4日間の休薬によってコントロールされる。しかしながら、出血パターンは依然として最適ではなく、避妊効果はデソゲストレル-POPの避妊効果より低いようである。
【0005】
従って、POPは、避妊効果が比較的低いこと、出血の問題、及び/又は投薬スケジュールのためニッチ市場にとどまっている。
【0006】
性交後(緊急)のホルモン避妊においては、LNGが非常に多量の投与量で用いられており、例えばLNGを1.5mgで1回投与するか、又は1日当たり0.75mgを2日連続投与している。米国特許出願公開第2011/0245211号明細書には、緊急避妊のためにこのようにLNGを非常に多量の投与量で使用し、この緊急投薬の後に次の月経まで低用量でPOPを投与することが記載されている。米国特許出願公開第2011/0245211号明細書は、低用量のPOPでは、POPを0.150mg未満にできることを示唆しているが、この出願は、通常の避妊法を開始したときの次の月経までのつなぎ法として用量0.30mgのLNGを使用することのみが記載されている。
【0007】
国際公開第2014/072245号には、LNGの投与量の範囲を0.60mg~0.100mgの間で連続投与すなわち連日投与するPOP投与計画(regimen)が記載されており、さらなる医薬活性剤、添加剤、又は補助剤は含んでいない。オエッテル(Oettel)らによる「プロゲストゲン単独ピル(POP)はニッチな選択肢ではない:レボノルゲストレルの用量、末梢及び中枢の避妊効果と出血挙動の間の相関関係に関する新しい前臨床及び臨床データ (The Progestin-Only Pill(POP) Is Not a Niche Option: New Preclinical and Clinical Data about the Interrelations between Levonorgestrel-Dose, Peripheral as Well as Central Contraceptive Effects and Bleeding Behavior)」J. Reproduktionsmed Endokrinol, 2015年12月(Special Issue 1): pp. 1-5は、国際公開第2014/07245号に記載のLNG0.90mg/日の投与計画では出血不順は示さず、LNG0.90mg/日の投与計画ではLNG0.60mg/日の投与計画よりも良好な出血プロファイルが得られたと報告している。国際公開第2014/07245号及び上記オエッテルの2015年の論文に示されたデータを根拠にして、0.100mg/日を超えるLNGが経口投与される場合、より高用量のLNGの望ましくない副作用を回避するためにエストロゲン化合物が必要であると考えられていた。より具体的には、1日当たり0.100mgを超えるLNGを避妊目的で対象者に投与した場合、以下の望ましくない副作用が起こりうると考えられていた。すなわち、(i)卵巣の卵胞発育の過度の抑制によるエストロゲンの欠乏であり、気分不安定、血管運動症状/ほてり、性器萎縮、骨減少症/骨粗鬆症などの望ましくない作用を伴う、及び/又は(ii)アンドロゲンによる副作用。
【0008】
高い避妊効果(すなわち、完全又は実質的に完全な排卵抑制)と、許容可能な出血パターンとを有し、低エストロゲン性の副作用を伴わず、プロゲストゲンピルの休薬の必要性の有無にかかわらず毎日服用可能なPOPが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の必要性及びその他を満たす新たなPOP避妊投与計画を提供する。
【0010】
ある実施形態において、本発明は、避妊を必要とするか又は避妊を望むヒト対象又は患者に避妊を提供する方法であって、LNG又はNGを含むPOP剤形の経口投与を含む、方法である。ある態様において、POP剤形は、1日1回の投与される0.110mg~0.150mgのLNGを含む。別の態様では、POP剤形は、1日1回の投与される0.220mg~0.300mgのNGを含む。上記の方法は、高い避妊効果、許容可能な出血パターン、低減された低エストロゲン性副作用及び/又は低減されたアンドロゲン性副作用を提供する。
【0011】
本発明のある実施形態において、上記LNG又はNGは、避妊目的で投与される唯一の医薬活性剤、添加剤(additive)又は補助剤(adjuvant)である。この実施形態のいくつかの態様において、避妊方法及び特に剤形は、限定するものではないがエチニルエストラジオールを含むエストロゲン化合物のような追加のホルモンを何ら含んでおらず、葉酸のような葉酸塩又はそれらの組み合わせを何ら含んでいない。
【0012】
ある実施形態において、本発明の方法は、所望の避妊処置の開始から少なくとも1ヶ月又はそれ以上の間、同じ用量のLNG又はNGを投与することを含む。本発明のこの態様は、最初の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日又はそれ以上の間、LNG又はNGの用量調整(dose titration)において容量を漸増したり漸減したりする必要がない。
【0013】
ある実施形態において、本発明の方法は剤形、好ましくは錠剤又はカプセルのような固体経口剤形の投与を含み、上記剤形は0.110mg~0.150mgのLNG又は0.220mg~0.300mgのNGを含み、上記剤形は少なくとも23日又はそれ以上の間同じ用量で1日1回投与され、LNG又はNGの投与の中断又は投与の停止の必要はない。上記同じ用量の投与は、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、125日、又は限定するものではないがより長期間の6、12、18、24、30、36、42、48ヶ月を含む期間継続してもよい。
【0014】
ある実施形態において、本発明の方法は剤形、好ましくは錠剤又はカプセルのような固体経口剤形の投与を有し、上記剤形は0.110mg~0.150mgのLNG又は0.220mg~0.300mgのNGを含み、上記剤形は少なくとも23、24、25、26、27、28、29又は30日間同じ用量で1日1回投与され、その後は1、2、3、4、5、6、7又は8日間投与を中断し、この投与中断期間中はLNG又はNGが投与されず、及び/又はエストロゲンなどの追加のホルモン剤が投与されない。上記投与中断期間の後、0.110mg~0.150mgのLNG又は0.220mg~約0.300mgのNGを含む剤形の1日1回投与を少なくとも23、24、25、26、27、28、29又は30日間再開し、その後さらに1、2、3、4、5、6、7又は8日間投与を中断し、この投与中断期間中はLNG又はNGが投与されず、及び/又はエストロゲンなどの追加のホルモン剤が投与されない。この投与及び投与中断のパターンは、最大6、12、18、24、30、36、42、48ヶ月又はそれ以上繰り返すことができる。
【0015】
本発明のある態様において、LNG又はNGの1日用量は、28日間の処置後において、好ましくは45日間の処置後において、最も好ましくは処置の全期間に亘って、120pmol/Lを超える、125pmol/Lを超える、130pmol/Lを超える、135pmol/Lを超える、140pmol/Lを超える、145pmol/Lを超える、又は150pmol/Lを超える平均エストラジオールレベルとなる量である。この態様のある実施形態では、LNG又はNGの経口剤形の1日1回投与を少なくとも45日以上行った後の平均エストラジオールレベルは、375pmol/L、350pmol/L、325pmol/L、300pmol/L、290pmol/L、280pmol/L、270pmol/L、260pmol/L、250pmol/L、240pmol/L、230pmol/L、220pmol/L、210pmol/L、又は200pmol/L未満の平均エストラジオール血漿濃度を生じるべきである。
【0016】
本発明のある態様において、LNG又はNGの1日用量は、LNG又はNGの経口剤形の1日1回投与の少なくとも5、6、7、8、9又は10日後の平均プロゲステロンレベル(P)が5nmol/L未満、好ましくは4nmol/L未満、最も好ましくは3.5nmol/L未満となる量である。上記のPレベルは、積極的処置の間、すなわちLNG又はNGの1日1回投与期間中は維持されるべきである。
【0017】
本発明のある態様において、LNG又はNGの1日投与量は、以下の平均LNG血漿濃度を提供する量、
LNG又はNGの1日1回投与の約2時間後においては、約800pg/mL~約2600pg/ml、好ましくは約1000pg/mL~約2500pg/mL、より好ましくは約1200pg/mL~約2400pg/mL、最も好ましくは少なくとも約1600pg/mL~約2300pg/mL、
LNG又はNGの1日1回投与の約6時間後においては、約300pg/mL~約1200pg/mL、好ましくは約350pg/mL~約1000pg/mL、より好ましくは約400pg/mL~約900pg/mL、最も好ましくは少なくとも約700pg/mL以上、
LNG又はNGの1日1回投与の約24時間後においては、約200pg/mL~約800pg/mL、好ましくは約250pg/mL~約700pg/mL、より好ましくは約300pg/mL~約600pg/mL、最も好ましくは少なくとも約350pg/mL以上
である。
【0018】
ある実施形態において、LNG又はNGの1日用量は、少なくとも約900pg/mL、好ましくは少なくとも約1000pg/mL、より好ましくは少なくとも約1100pg/mL、最も好ましくは少なくとも約1200pg/mLの平均最大LNG血漿濃度(Cmax)、及び約0.5時間~約6時間の、最大LNG血漿濃度になるまでの時間(Tmax)を提供する量である。
【0019】
本発明のある態様において、LNG又はNGの1日用量は、投与24時間後の平均濃度時間曲線下面積(AUC)(AUC0-24)が、少なくとも約14,000hr・pg/mL、好ましくは少なくとも約14,500hr・pg/mL、最も好ましくは少なくとも約14,700hr・pg/mLとなる量である。ある態様において、上記LNGのAUC0-24は、20,000hr・pg/mL未満、好ましくは19,000hr・pg/mL未満、最も好ましくは18,500hr・pg/mL未満のAUCであるべきである。
【0020】
本発明のある実施態様において、上記方法は、経口避妊を必要とするか又は経口避妊を望む対象者又は患者に、23、24、25、26、27、28、29又は30錠の錠剤を含むキットと、食物の有無にかかわらず1日1回好ましくは朝に1錠を服用する指示とを提供することを含み、各錠剤は0.110mg~0.150mgのLNG又は0.220mg~0.300mgのNGと、少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤(excipient)とを含む。この実施形態のある態様において、上記錠剤はブリスター包装される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例2の試験で報告された被験者の容体を示すフローチャートである。
【
図2A】実施例2の試験で報告された経時的な平均卵胞径を示す。
【
図2B】実施例2の試験で報告された経時的な平均エストラジオール(E
2)血清濃度を示す。
【
図2C】実施例2の試験で報告された経時的な平均卵胞刺激ホルモン(FSH)血清濃度を示す。
【
図2D】実施例2の試験で報告された経時的な平均黄体形成ホルモン(LH)血清濃度を示す。
【
図2E】実施例2の試験で報告された経時的な平均プロゲステロン(P)血清濃度を示す。
【
図3】実施例2の試験で報告された1日当たり0.095mg、0.115mg又は0.135mgのLNGによる55(±1)日の処置後の平均血漿濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
特に断りのない限り、全ての用語は当該技術分野における通常の意味を有することが意図されており、本開示の時点で当業者であれば使用したであろう用語として用いている。本出願全体を通して、「ある(a)」、「ある(an)」、及び「上記、該(the)」などの単数形が便宜上しばしば使用されるが、これらの単数形は、特に指定されない限り、又は文脈上明らかに単数形のみが必要とされない限り、複数形を包含することが意図されていることを理解されたい。また、本出願において言及される全ての刊行物、特許、書籍、雑誌記事などは、本開示と矛盾しない限り、参照することによりその全体があらゆる目的で組み込まれることも理解されたい。
【0023】
ここで使用する用語「レボノルゲストレル(levonorgestrel)」すなわち「LNG」(17α-エチニル-18-メチル-19-ノルテストステロン;17α-エチニル-18-メチルエストル-4-エン-17β-オール-3-オン及び13β-エチル-17α-ヒドロキシ-18,19-ジノルプレグン-4-エン-20-イン-3-オンとしても知られている)は、ラセミ化合物ノルゲストレルすなわち「NG」のd異性体である。
【0024】
ここで使用する用語「プロゲストゲン」は、プロゲステロン受容体に結合して活性化させるステロイドホルモンの種類を広く指している。このプロゲストゲンという用語には、天然プロゲストゲンと合成プロゲストゲンの両方が含まれる。天然プロゲストゲンはプロゲステロンである。合成プロゲストゲンはプロゲスチンと称することもある。
【0025】
「約」は、基準値と同一又は実質的に同一の特性を有するように、基準値に十分に近い値を有することを意味する。従って、文脈によっては、「約」は、例えば、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、又は±1%未満を意味することがある。
【0026】
「薬学的に許容される」は、医薬品又は医薬組成物に使用できる材料又は方法を指している。
【0027】
「剤形」、「医薬製剤」、及び「医薬組成物」という用語は、互換的に使用されることがあり、対象者又は患者への薬物の送達のために1つ以上の薬学的添加剤と混合又は組み合わされる薬物又は活性医薬成分を指している。ここに記載する剤形は、経口固体剤形又は経口液体剤形などの様々な剤形であってよい。ある実施形態では、剤形は錠剤又はカプセル剤形である。
【0028】
「投与」は、特に断らない限り経口投与を含む。「投与」は、LNGなどの特定の化合物を含む剤形の処方又は処方箋を出す工程も含むことができる。「投与」は、特定の化合物又はその化合物を含む剤形に関与する方法を実行するための指示を提供することも含むことができる。
【0029】
「即時(immediate)放出」(インスタント放出又はIRとしても知られる)とは、投与時に実質的に即時に1つ以上の薬物又は医薬剤を放出、すなわち送達し、その結果、500~900mLの水性媒体を用いて米国薬局方の溶解装置で試験した場合、約1時間(又はそれ未満)以内、好ましくは45分未満、最も好ましくは約30分以内に実質的に完全な溶解をもたらす剤形を指している。
【0030】
「対象者、被験者(subject)」及び「患者」という用語は、特に指示がない限り互換的に使用することができ、ヒトを含み、好ましくは避妊を必要とする又は避妊を望む閉経前の女性を含む。
【0031】
本発明において使用され得る剤形の一実施形態は、処置量のLNG又はNGを含む錠剤又はカプセルである。上記錠剤又はカプセルは、1つ以上の薬学的に許容される添加剤及び0.110mg~0.150mgのLNG、好ましくは約0.115mg~約0.145mgのLNG、より好ましくは約0.115mg~約0.140mgのLNGを含んでもよい。あるいは、上記錠剤又はカプセルは、1つ以上の薬学的に許容される添加剤及び0.220mg~0.300mgのNG、好ましくは約0.230mg~約0.290mgのNG、より好ましくは約0.230mg~約0.280mgのNGを含んでもよい。本発明に使用される錠剤のある実施形態は、約0.115mg、約0.120mg、約0.125mg、約0.130mg、約0.135mg、約0.140mg又は約0.145mgのLNG及び1つ以上の薬学的に許容される添加剤を含む。あるいは、本発明で使用される錠剤は、約0.230mg、約0.240mg、約0.250mg、約0.260mg、約0.270mg、約0.280mg又は約0.290mgのNG及び1つ以上の薬学的に許容される添加剤を含む。上記の錠剤は、LNG又はNGを即時放出方式で放出する。本発明で使用する剤形及び/又は本発明の方法において、上記LNG又はNGは唯一の薬物又は活性医薬成分となる。本発明の剤形及び/又は方法は、また、他の潜在的に薬学的に活性な材料を含むべきでなく、又は葉酸塩すなわち葉酸のような他の避妊に関連する薬学的に活性な材料の投与を含むべきでない。本発明の方法は、限定するものではないが、鎮痛薬、抗糖尿病薬、心血管/高血圧薬、コレステロール低下薬、抗生物質、抗真菌薬、抗うつ薬、抗精神病薬、筋弛緩薬、鎮静薬又はこれらの組み合わせのような他の非避妊薬の同時投与を包含する。
【0032】
本発明において使用され得る1つ以上の薬学的に許容される添加剤としては、滑沢剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、可溶化剤、香味剤、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、又はこれらの混合物が挙げられる。上記添加剤の例は、当該技術分野において周知であり、「医薬品添加剤ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)」2009年第6版、及び「米国薬局方(United States Pharmacopeia)」2006年第29版,pp.3257-3261に記載されており、これらは参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0033】
ある実施形態において、本発明で使用される剤形は、少なくとも1つの充填剤若しくは希釈剤、少なくとも1つの結合剤及び少なくとも1つの滑沢剤若しくは流動化剤、又はこれらの組み合わせを含む。好ましくは、剤形は、上記LNG又はNGを少なくとも1種の充填剤及び少なくとも1種の結合剤と共に造粒し、その造粒物を1種以上の滑沢剤及び流動化剤と混合し、その混合物を圧縮して錠剤にすることによって調製される錠剤である。
【0034】
本発明の固体剤形に採用され得る充填剤の例としては、二塩基性リン酸カルシウム(無水)、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、粉末セルロース、珪化微結晶セルロース、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトール及びそれらの混合物が挙げられる。
【0035】
本発明の固体剤形に採用され得る結合剤の例としては、アカシア、ポビドン、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリレート、メチルセルロース、エチルセルロース、プレゼラチン化デンプン、ゼラチン、トラガカント、ゼイン、又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、上記結合剤は、ポビドン、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリメタクリレート、メチルセルロース、ゼラチン及びエチルセルロース、又はそれらの混合物から選択される。特に好ましい結合剤としては、ポビドン、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン及びそれらの混合物のような水溶性結合剤が挙げられる。上記結合剤が高分子結合剤である場合、上記結合剤が低分子量を有すること、及び/又は20℃で2%(w/v)の水性調製物の濃度で試験したときに200mPa・s未満、好ましくは100mPa・s未満、最も好ましくは50mPa・s未満の粘度を示すことが好ましい。
【0036】
本発明の固体剤形に採用され得る崩壊剤の例としては、クロスカルメロースナトリウム、デンプン、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、粉末セルロース、キトサン、グアーガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
本発明の固体剤形に採用され得る流動化剤の例としては、コロイド状二酸化ケイ素、トウモロコシデンプン、タルク及びそれらの混合物が挙げられる。
【0038】
本発明の固形剤形に採用され得る滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコール(好ましくは、上記ポリエチレングリコールが6000以上の分子量を有する)、ステアリン酸ポリオキシエチレン、ラウリル硫酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0039】
上記錠剤はまた、1つ以上の水溶性審美的又は保護用のコーティングを含んでもよい。上記錠剤は、乾燥剤の有無にかかわらず、ポリエチレン又はポリプロピレン製ボトルなどの従来の医薬品パッケージに入れられてもよく、上記ボトルは密封されて子供には開けられない閉鎖具でキャップされる。上記コーティングされた錠剤は、従来のブリスターパックに入れられてもよい。
【0040】
本発明の方法は、避妊を必要とするか又は望む対象者又は患者、好ましくは閉経前のヒト女性に避妊を提供する。本方法は、0.110mg~0.150mgのLNG、好ましくは約0.115mg~約0.145mgのLNG、より好ましくは約0.115mg~約0.140mgのLNGを含む剤形、好ましくは固形剤形を、1日1回、好ましくは朝に食事と共に又は食事なしで経口投与することを含む。あるいは、本方法は、0.220mg~0.300mgのNG、好ましくは約0.230mg~約0.290mgのNG、より好ましくは約0.230mg~約0.280mgのNGを含む剤形、好ましくは固形剤形を、1日1回、好ましくは朝に食事と共に又は食事なしで経口投与することを含む。必須ではないが、毎日の投与は、毎日ほぼ同じ時間すなわち約24時間±2時間ごとに行なうべきである。
【0041】
本発明の方法は、排卵を完全に(100%)又は実質的に完全に(90%、91%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%)阻害することにより高い避妊効果を提供する。
【0042】
本発明の方法は、許容可能な出血パターンすなわち本方法の開始後の最初の5~7日間又は最初の処置サイクルを除いた28日サイクルの間に、17、16、15、14、又は13日未満の普通の出来事(mean occasion)としての軽い出血すなわちスポッティングをもたらすことがある。ここで使用する処置サイクルは、23~30日の投与計画、好ましくは28日の投与計画を一般に指している。
【0043】
本発明の方法は、低減された低エストロゲン性副作用及び/又は低減されたアンドロゲン性副作用を提供する。低エストロゲン性副作用の低減及び/又はアンドロゲン性副作用の低減は、許容可能なエストラジオール血漿レベル、好ましくは17β-エストラジオール(E2)血漿レベルの維持によるものと考えられる。本発明のある態様において、上記LNG又はNGの1日用量は、28日間の処置後、好ましくは45日間の処置後、最も好ましくは処置の全期間に亘って、120pmol/L、125pmol/L、130pmol/L、135pmol/L、140pmol/L、145pmol/L、又は150pmol/Lを超え、375pmol/L、350pmol/L、325pmol/L、300pmol/L、290pmol/L、280pmol/L、270pmol/L、260pmol/L、250pmol/L、240pmol/L、230p/mol/L、220pmol/L、210pmol/L又は200pmol/L未満の平均E2レベルを提供する量である。
【0044】
本発明の方法は、所望の避妊処置の開始から、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月又はそれ以上の継続的な処置又はサイクルの間、同じ用量のLNG又はNGを投与することをさらに含み得る。本発明は、最初のサイクルの後に、LNG又はNGの用量調整において用量を漸増したり漸減したりする必要性がない。
【0045】
必須ではないが、本発明の方法は、約0.110mg~約0.150mgのLNG又は約0.220mg~約0.300mgのNGを含む剤形、好ましくは錠剤又はカプセルのような固形経口剤形を、サイクル間の投与中断の有無にかかわらず投与することを含む。例えば、剤形は、少なくとも23、24、25、26、27、28、29又は30日サイクルの間、好ましくは同じ用量で1日1回投与されることができ、その後、1、2、3、4、5、6、7又は8日間投与を中断し、上記投与中断期間中は、プラセボすなわちLNG若しくはNGを投与せず、及び/又は限定するものではないがエチニルエストラジオールを含むエストロゲンなどの追加のホルモン剤を投与しない。投与中断期間の後、約0.110mg~約0.150mgのLNGN又は約0.220mg~約0.300mgのNGを含む剤形の1日1回投与を少なくとも23、24、25、26、27、28、29又は30日間再開し、その後さらに1、2、3、4、5、6、7又は8日間投与を中断する。この投与及び投与中断のパターンは、最大6、12、18、24、30、36、42、48ヶ月又はそれ以上繰り返されることができる。
【0046】
本発明のある態様において、上記LNG又はNGの1日用量は、以下の平均LNG血漿濃度、好ましくは定常定常LNG血漿濃度を提供する量、
LNG又はNGの1日1回投与の約2時間後においては、約800pg/mL~約2600pg/ml、好ましくは約1000pg/mL~約2500pg/mL、より好ましくは約1200pg/mL~約2400pg/mL、最も好ましくは少なくとも約1600pg/mL~約2300pg/mL、
LNG又はNGの1日1回投与の約6時間後においては、約300pg/mL~約1200pg/mL、好ましくは約350pg/mL~約1000pg/mL、より好ましくは約400pg/mL~約900pg/mL、最も好ましくは少なくとも約700pg/mL以上、
LNG又はNGの1日1回投与の約24時間後においては、約200pg/mL~約800pg/ml、好ましくは約250pg/mL~約700pg/mL、より好ましくは約300pg/mL~約600pg/mL、最も好ましくは少なくとも約350pg/mL以上、
又は上記の組み合わせである。
【0047】
ある実施形態において、上記LNG又はNGの1日用量は、好ましくは定常状態において、約900pg/mL~約2700pg/ml、好ましくは約1000pg/mL~約2600pg/mL、より好ましくは約1100pg/mL~約2500pg/mL、最も好ましくは少なくとも約1500pg/mL~約2400pg/mLの平均最大LNG血漿濃度(Cmax)、及び約0.5時間~約6時間、好ましくは約0.75時間~約5時間、最も好ましくは約1時間~約4時間の最大LNG血漿濃度までの時間(Tmax)を提供する量である。
【0048】
本発明のある態様において、LNG又はNGの1日用量は、好ましくは定常状態において、少なくとも約14,000時間・pg/mL、好ましくは少なくとも約14,500時間・pg/mL、最も好ましくは少なくとも約14,700時間・pg/mLの投与24時間後の平均濃度時間曲線下面積(AUC)(AUC0-24)を提供する量である。ある態様において、LNGのAUC0-24は20,000hr・pg/mL未満、好ましくは19,000hr・pg/mL未満、最も好ましくは18,500hr・pg/mL未満のAUCであるべきである。
【0049】
本発明のある態様において、上記方法は、経口LNG又はNG剤形の1日1回投与の少なくとも5、6、7、8、9又は10日後の平均プロゲステロン血漿レベル(P)を、5nmol/L未満、好ましくは4nmol/L未満、最も好ましくは3.5nmol/L未満とする。前述のPレベルは、処置又は処置サイクルの間、維持されるべきである。
【0050】
以下は単に例示であり、決して限定を意図するものではない。
【0051】
[実施例]
[実施例1]
LNGをごく少量のポビドン(A部)と共にクロロホルム及びエタノールを組み合わせたものに溶解し、本発明の方法に使用できるLNG錠剤を調製した。この溶液をラクトース及びトウモロコシデンプンと共に造粒し、続いて精製水及びポビドン(B部)溶液と共にさらに造粒した。
【0052】
得られた造粒物を乾燥してある大きさにし、コロイド状二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウムと混合して錠剤に圧縮した。上記錠剤の組成を次の表1-1に示す。
【0053】
【0054】
その他の造粒技術、例えばスラッギング、造粒流体及び充填剤、崩壊剤及び滑沢剤も、本開示を逸脱することなく使用することができる。
【0055】
[実施例2]
実施例1で調製した上記錠剤を単施設、非盲検、適応設計試験で試験し、健康な月経周期の女性に対して、異なる高用量のLNGを1日1回、28日間に亘って2回の連続した処置サイクルで投与した場合のホルモン、卵巣機能及び膣出血パターンへの影響を評価した。
【0056】
研究参加者は、18~45歳の健康な女性ボランティアで、体格指数(BMI)≧18kg/m2、>30歳の場合は非喫煙者、≦30歳の場合は1日最大10本の喫煙者であった。主な除外基準は、肝疾患、静脈又は動脈血栓塞栓性疾患の危険因子、既知の周期不順、過去3周期における妊娠又は授乳、試験薬の安全性、吸収又は薬物動態に影響を及ぼす可能性のある疾患又は薬剤の使用であった。被験者はバリア避妊薬を使用するか、試験期間中は異性交遊を控える必要があった。
【0057】
上記試験は適応設計を採用した。最大で5つの処置グループが計画され、各グループは30人の女性で構成され、そのうち少なくとも5人はBMI≧30kg/m2であった。投与量は1日あたり0.060mg、0.075mg、0.095mg、0.115mg又は0.135mgと計画された。
【0058】
最初の投与量は1日当たり0.095mgであった。その後の投与量の選択は、前の処置グループにおける排卵の発生によって決めた。排卵を完全に阻害する最低用量が確認された時点で試験を中止し、一段高い用量と一段低い用量を調査した。
【0059】
スクリーニング検査の後、被験者がホルモン避妊薬を使用している場合は洗浄サイクルを設けた。処置前の周期をモニターし、被験者に排卵周期があるかどうかを評価した。排卵が観察されるまで、経膣超音波検査(TVUS)により3日(±1)ごとに卵胞の成長を測定した。排卵が27日目(±1)まで起こり、排卵後のプロゲステロン(P)濃度が≧16nmol/Lであった場合、被験者は適格であり、試験薬を投与された。
【0060】
被験者は、前処置周期後の月経出血初日から試験薬の摂取を開始した。56日間連続で、毎朝ほぼ同じ時間に1錠を経口投与した。処置3日目(±1)から27日目(±1)までと、31日目(±1)から55日目(±1)までは、3日ごと(±1)の受診を計画した。各受診時に最大卵胞様構造(FLS)の直径と血清卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、エストラジオール(E2)及びP濃度を測定した。
【0061】
処置3日目(±1)に活性FLSが存在した場合、被験者は試験から除外された。TVUSで排卵が疑われた場合、排卵が疑われた2、4及び6日後にP測定のための追加受診が計画された。
【0062】
最後の処置日の後、排卵が観察されるまで3日ごと(±1)に評価を継続し、排卵の2日後(±1)及び必要に応じて4日後(±1)にP測定を行った。排卵から6日後(±1)、又はそれまで排卵が観察されなかった場合は30日目(±1)に試験終了時検査を行った。
【0063】
血清SHBG濃度は、処置前周期の排卵後、処置55日目(±1)、及び試験終了時の検査で測定された。複数回投与によるPKパラメータは、各投与グループにつき約15人の被験者で調査され、そのうち5人はBMI≧30kg/m2であった。LNG測定のための血液サンプルは、処置55日目(±1)の投与前と投与後0.5、1、2、3、4、6、24時間に採取した。
【0064】
試験期間中、被験者は毎日膣からの出血を記録した。処置期間中、被験者は試験薬の摂取時間も記録した。
【0065】
受診するたびに、被験者は有害事象と併用薬の使用について質問された。試験期間中、安全性検査と妊娠検査が定期的に行なわれた。身体検査がスクリーニング時と試験終了時に行なわれた。
【0066】
主要評価項目はHoogland-Skoubyスコア(表1-2)による卵巣の活性で、28日間の処置期間ごとに測定した(Hoogland HJ, Skouby SO. 「経口避妊薬による卵巣活動の超音波評価」、Contraception 1993; 47: pp.583-90)。
【0067】
【0068】
処置中に排卵が観察された場合、その後の黄体期はラングレン基準(Landgren criterion)を用いて評価した。すなわち、上記の基準では、少なくとも5日間のP濃度が>16nmol/Lであった場合、黄体期は適切であるとみなした(ラングレンら、「300μgのノルエチステロン(正味)ミニピルのホルモン効果。1.前処置周期及びNET投与2ヶ月目における43人の被験者の毎日のステロイドレベル(Hormonal effects of the 300 μg norethisterone (NET) minipill. 1. Daily steroid levels in 43 subjects during A pretreatment cycle and during the second month of NET administration)」、Contraception 1980;21: pp.87-113)」。最大FLSの直径(2方向の平均)のTVUS測定は、Voluson E8 Expert装置(GEメディカルシステムズ)を用いて行った。血清FSH、LH、E2、P及びSHBG濃度は、バリデーションされた化学発光微粒子免疫測定法(Abbott、ロングフォード、アイルランド)によって測定した。全ての薬力学的パラメータは記述的に評価された。
【0069】
血漿LNG濃度は、タンデム質量分析法が連結したバリデーションされた液体クロマトグラフィー(ACC、ライダーズバッハ、ドイツ)により測定した。PKパラメータは、ノンコンパートメント解析によって導出した。分散分析(ANOVA)を、90%信頼区間の計算の基礎として、曲線下面積(AUC)及び最大濃度(Cmax)値の点推定値及び信頼区間、並びにパラメータ解析によって計算された処置の比較に使用した。各処置グループ並びにBMI<30及び≧30kg/m2のサブグループの記述統計量を算出した。
【0070】
被験者の構成を
図1に示す。平均(±SD)年齢は33.3(±6.2)歳、平均BMIは全グループで25.4(±4.9)kg/m
2、低BMIサブグループで23.7(±3.0)kg/m
2、高BMIサブグループで33.5(±3.1)kg/m
2であった。
【0071】
適応設計に基づき、3種類の用量が試験された。すなわち、LNG0.095mg、0.115mg及び0.135mgである。Hoogland-Skoubyスコアの分布を表2に示す。
【0072】
【0073】
LNG0.095mgグループの2人の被験者(BMI30.8及び22.0kg/m2)は処置期間1において排卵し、ラングレン基準(≧5日間においてP>16nmol/L)によれば黄体期は適切であった。排卵が起こらなかった最低用量は1日当たりLNG0.115mgであった。また、最高用量グループ(0.135mg)においても、いずれの被験者もHoogland-Skoubyスコアで定義された排卵は認められなかった。このグループの1人の被験者(BMI20.4kg/m2)は、処置3日目のFLSが12.3mmであり、5日目から11日目までのP濃度は6.64と12.19nmol/Lの間にあった。彼女は小さな卵胞の異常排卵が生じていた可能性があり、LHピークの鈍化が先行し、後に不適切な黄体期があった。
【0074】
全ての処置グループにおいて、被験者の大部分はHoogland-Skoubyスコアが4、すなわち活性FLSであった。最低用量グループにおける2回の排卵を除き、LNGの用量が増加するにつれてスコアが低くなる、すなわち卵巣抑制が強くなる明確な傾向は認められなかった。
【0075】
最大FLSの最大径、及び全処置期間における1サイクルごと及び被験者ごとのE2濃度の最大値及び平均値を表3に示す。
【0076】
【0077】
平均FLS径とホルモン濃度の経時的経過を
図2A-2Eに示す。この結果はHoogland-Skoubyのスコアと一致しており、ほとんどの被験者で処置中に卵胞の成長とそれに伴うE
2濃度の増加がみられた。FLS径とE
2濃度は、0.095mgグループと0.115mgグループで同等であった。0.135mgグループでは、FLS径はいずれの処置サイクルにおいてもより小さく、E
2濃度は最初の処置期間においてより低かったことから、最高用量グループではより多くの卵胞発育抑制が起こったことが示された。グループ間の差は処置期間2においてより小さく、E
2濃度は安定しており、処置期間1よりも低かった。全処置期間における被験者1人当たりの平均E
2濃度の平均値は、0.095、0.115及び0.135mgグループでそれぞれ241、219及び180pmol/Lであった。いずれの投与量においても、平均E
2濃度は、0.115mgグループの1人を除き、80~90%の被験者で≧110pmol/L(30pg/mL)、全被験者で≧73.4pmol/L(20pg/mL)であった。
【0078】
平均FSH濃度は、E2レベルの上昇による負のフィードバックにより、処置期間1の間にわずかに低下した。個々のLH濃度は、0.095mgグループの排卵期被験者の1例で68.0IU/LのLHピークがあった以外は、全て12.1IU/L未満であった。他の排卵期被験者では排卵前のLHピークは観察されなかった。処置の間は個々のP濃度は全て5nmol/L未満であったが、ただし、0.095mgグループでは排卵していた2人の被験者、0.135mgグループでは排卵異常の被験者、及び初回処置の受診時に単一P濃度が5.85nmol/Lであった他の被験者は例外であり、おそらくは処置前周期からの残留である。
【0079】
2つのBMIグループにおける最大FLS径とE2農度の比較では、明確な差は認められなかった。
【0080】
大半の被験者において、排卵は30日の処置後期間内に起こり、その後P濃度は≧16nmol/Lとなった。各投与グループにつき1又は2人の被験者において、排卵後のP濃度は16nmol/L未満のままであった。1グループにつき1又は2人の被験者では30日以内に排卵が起こらなかった。0.095、0.115及び0.135mgの投与グループにおいて、それぞれ最終処置から平均15.5日後、14.1日後及び12.8日後に排卵が観察された。
【0081】
全ての処置グループにおいて、処置期間2の終了時にSHBG濃度が約60%抑制された。最終処置から平均22日後の試験終了時検査において、平均SHBG濃度はまだ基準値に戻っていなかった。
【0082】
55±1日目の試験薬投与後の平均血漿LNG濃度を
図3に示す。最大値は投与1時間後に達し、その後急速に低下した。平均PKパラメータを表4に示す。統計学的評価は、観察された投与間隔に渡る総曝露量について用量の比例性と、用量が増加するにつれて最大曝露量が無視できるほど低くなる傾向とを示した(
図3B-C)。全ての投与量において、BMI≧30kg/m
2のサブグループで曝露量が低い傾向が観察された。
【0083】
【0084】
最初の7日間を除く処置期間中に出血(bleeding)又は出血(spotting)が認められた日数の平均値(±SD)は、0.095、0.115及び0.135mgグループにおいて、それぞれ12.3(±8.6)、14.5(±9.4)及び16.0(±11.5)であり、中央値は11.5、14.5及び13.0日であった。出血(spotting)が最も多くみられ、出血がみられた場合は主に軽い出血であった。
【0085】
にきび(アンドロゲン上昇の主症状)に関する所見を表5に示す。
【0086】
【0087】
3つのLNG-POPグループにおけるにきび事象の数は少なく、LNG-POPのアンドロゲン関連の副作用のリスク増加に関する懸念が軽減した。
【0088】
試験薬の忍容性は良好であった。最も多く報告された有害事象は、頭痛、鼻咽頭炎、及び毛包嚢胞であった。被験者のうち1人はめまいのため早期に投与を中止したが、これはおそらく試験処置に関連したものであった。深刻な有害事象が1例(肺炎)みられたが、これは処置とは無関係であった。健康診断結果やルーチンの臨床検査値に臨床的に関連する変化はなかった。被験者の1人は追跡調査期間中に妊娠し、受胎は最後の試験処置後かなり経ってからであった。
【0089】
試験の結果、LNG-POPの投与量を増やすと一貫して排卵が阻害されることが示された。最も低い有効量は1日当たり0.115mgであった。ほとんどの被験者で卵胞発育とそれに伴うE2濃度の上昇がみられたが、LHサージと正常な排卵はLNGの1日当たり0.115mg又は0.135mgでの処置中に阻害された。0.135mg投与グループでは異常排卵の可能性があったが、妊娠に至ることは思われなかった。LNG0.115mg及び0.135mgの排卵抑制力は、従来のLNG0.03mgのPOPよりも高かった。
【0090】
一般に、プロゲストゲン単独製剤は卵胞発育とE2産生を完全には抑制しない。そのため、低エストロゲン性の副作用、特に骨量減少の発生を防ぐことができる。全てのLNG処置グループにおいて、平均E2濃度は110pmol/L(30pg/mL)をはるかに超えており、この値は骨量減少の促進や他の低エストロゲン性副作用(例えば、膣の乾燥、気分の変化)につながらないと想定される下限値である。
【0091】
LNGの高用量(すなわち0.10mgよりも多量)では、完全な排卵阻害が起こるだけでなく、出血パターンも低用量より悪くなく、高用量は予想されたよりも安全性プロファイルが優れているようであることが予想外に判明した。通常、この用量範囲では、経口避妊のために、LNGは一般にエストロゲンの不足(低エストロゲン症)とアンドロゲンリスクの上昇を克服するためにエストロゲン(E2など)と併用される。しかしながら、上述したような有害で望ましくない副作用は、これらの高用量のLNG-POPには存在しないようである。
【0092】
本明細書に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない要素又は要素群、限定又は限定群がなくても実施することができる。従って、例えば、本明細書の各例において、「含む(comprising)」、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」、及び「からなる(consisting of)」という用語のいずれかを、他の2つの用語のいずれかと置き換えてもよい。採用された用語及び表現は、説明の用語として使用されたものであり、限定を意味するものではなく、このような用語及び表現の使用には、提示や説明がなされた特徴又はその一部のいかなる等価物を排除する意図がなく、クレームされた本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが認められている。従って、本発明は、好ましい実施形態及び任意の特徴によって具体的に開示されているが、ここに開示された概念の修正及び変形は、当業者によって利用される可能性があり、そのような修正及び変形は、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるとみなされることを理解すべきである。
【0093】
(付記)
(付記1)
避妊を望むヒト対象者に避妊を提供する方法であって、少なくとも28日間の処置期間に亘って約0.110mg~約0.150mgのレボノルゲストレル(LNG)を含む剤形を1日1回前記対象者に経口投与することを含む方法。
【0094】
(付記2)
前記剤形が、約0.115mgのLNG、約0.120mgのLNG、約0.125mgのLNG、約0.130mgのLNG、約0.135mgのLNG、約0.140mgのLNG又は約0.145mgのLNG、及び少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤を含む、付記1に記載の方法。
【0095】
(付記3)
前記LNGが、唯一の医薬活性剤、添加剤(additive)又は補助剤(adjuvant)であって、前記処置期間中に前記対象者に避妊目的で投与される、付記1に記載の方法。
【0096】
(付記4)
前記処置期間中は前記対象者にエストロゲン化合物を投与しない、付記1に記載の方法。
【0097】
(付記5)
前記処置期間中は前記対象者に葉酸塩を投与しない、付記1に記載の方法。
【0098】
(付記6)
前記処置期間中は前記LNGの用量調整(dose titration)を行なわない、付記1に記載の方法。
【0099】
(付記7)
前記処置期間が、前記LNGの剤形の投与を中断することなく、前記LNGの剤形の前記1日1回の投与が行なわれる少なくとも55日以上である、付記1に記載の方法。
【0100】
(付記8)
前記処置期間が、前記LNGの剤形の投与を中断することなく、前記LNGの剤形の前記1日1回の投与が行なわれる少なくとも180日以上である、付記1に記載の方法。
【0101】
(付記9)
前記剤形が、前記LNG及び少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤を含む錠剤である、付記1に記載の方法。
【0102】
(付記10)
避妊を望むヒト対象者に避妊を提供する方法であって、少なくとも28日間の処置期間に亘って約0.115mg~約0.145mgのレボノルゲストレル(LNG)及び1種以上の薬学的に許容される添加剤からなる錠剤を前記対象者に経口投与することからなる方法。
【0103】
(付記11)
前記錠剤が、約0.115mgのLNG、約0.120mgのLNG、約0.125mgのLNG、約0.130mgのLNG、約0.135mgのLNG、約0.140mgのLNG、又は約0.145mgのLNG、及び滑沢剤、充填剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、可溶化剤、香味剤、pH調整剤、抗酸化剤、キレート剤、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤を含む、付記10に記載の方法。
【0104】
(付記12)
前記処置期間中は前記対象者にエストロゲンを投与しない、付記10に記載の方法。
【0105】
(付記13)
前記処置期間中は前記対象者に葉酸塩を投与しない、付記10に記載の方法。
【0106】
(付記14)
前記処置期間中は前記LNGの用量調整を行なわない、付記10に記載の方法。
【0107】
(付記15)
前記処置期間が、前記LNGの錠剤の投与を中断することなく、前記LNGの錠剤の前記1日1回の投与が行なわれる少なくとも60日以上である、付記10に記載の方法。
【0108】
(付記16)
前記処置期間が、前記LNGの錠剤の投与を中断することなく、前記LNGの錠剤の前記1日1回の投与が行なわれる少なくとも180日以上である、付記10に記載の方法。
【国際調査報告】