(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】免疫エフェクター機能を有する操作されたVLRB抗体
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240719BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240719BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240719BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240719BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240719BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240719BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240719BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240719BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 107
A61P43/00 105
A61P37/04
A61P31/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024504987
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 US2022074225
(87)【国際公開番号】W WO2023010060
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524033766
【氏名又は名称】ノヴァブ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】キャノン, ロビック エドワード
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AB01
4B065AC14
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4B065CA46
4C076BB01
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4C085GG10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045EA29
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
キメラ可変リンパ球受容体B(VLRB)-免疫グロブリン抗体を作製および使用するための組成物が提供される。この抗体は、典型的には、重鎖および軽鎖融合タンパク質から形成された2つの重鎖および軽鎖から構成される。典型的には、重鎖融合タンパク質は、第1の可変リンパ球受容体B(VLRB)抗原結合ドメインおよびCH1免疫グロブリンドメイン(CH1)、ならびに必要に応じて、免疫グロブリンヒンジドメイン(ヒンジ)、CH2免疫グロブリンドメイン(CH2)、CHS免疫グロブリンドメイン(CHS)およびCH4免疫グロブリンドメイン(CH4)のうちの1つまたは複数を含む。重鎖融合タンパク質は、第2の(VLRB)抗原結合ドメイン、免疫グロブリン重鎖の可変領域(VH)、一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)もまた含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の可変リンパ球受容体B(VLRB)抗原結合ドメインとCH1免疫グロブリンドメイン(CH1)またはCL免疫グロブリンドメイン(CL)とを含む重鎖融合タンパク質であって、必要に応じて、前記VLRBが、融合タンパク質のN末端、前記融合タンパク質のC末端、またはそれらの組合せにある、重鎖融合タンパク質。
【請求項2】
免疫グロブリンヒンジドメイン(ヒンジ)をさらに含む、請求項1に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項3】
CH2免疫グロブリンドメイン(CH2)をさらに含む、請求項1または2に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項4】
CH3免疫グロブリンドメイン(CH3)をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項5】
CH4免疫グロブリンドメイン(CH4)をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の重鎖融合物。
【請求項6】
第2の(VLRB)抗原結合ドメインをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項7】
免疫グロブリン重鎖の可変領域(VH)をさらに含む重鎖融合タンパク質であって、必要に応じて、前記VHが、前記融合タンパク質のN末端にあり、前記VLRB抗原結合ドメインとVHドメインとが、前記融合タンパク質の異なる末端に融合されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項8】
必要に応じて、前記融合タンパク質のN末端またはC末端に、一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、VHH、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)のうちの1つまたは複数をさらに含む重鎖融合タンパク質であって、前記VLRB抗原結合ドメインと一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、VHH、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)とが、前記融合タンパク質の異なる末端にある、請求項1から7のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項9】
表1のドメイン構造を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項10】
VLRB抗原結合ドメインと表1の構造とを含む重鎖融合タンパク質。
【請求項11】
前記VLRB抗原結合ドメインの一方または両方が、がんもしくは腫瘍抗原または免疫細胞によって発現される抗原に結合する、請求項1から10のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項12】
前記VH、ScFv、VHH、LまたはRのうちの1つまたは複数が、がんもしくは腫瘍抗原または免疫細胞によってその上に発現される抗原に結合する、請求項8から11のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項13】
前記免疫グロビンドメインの各々が、哺乳動物、必要に応じてヒトの、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、またはそれらに対して70%の配列同一性を有するそのバリアントから独立して選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項14】
前記IgGが、IgG1、IgG2、IgG3および/もしくはIgG4である、ならびに/または前記IgAが、IgA1および/もしくはIgA2である、請求項13に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項15】
N末端および/またはC末端のVLRBドメインと共に、構造CH1-ヒンジ-CH2-CH3またはCL-ヒンジ-CH2-CH3を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項16】
前記CLドメインが、配列番号23もしくは24、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントである、請求項1から15のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項17】
前記CH1、CH2および/またはCH3が、配列番号25、26、62、63もしくは64のCH1、CH2および/もしくはCH3の配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項18】
配列番号25、26、62、63、64、65もしくは66のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項19】
シグナル配列ありもしくはなしの配列番号53、55もしくは56のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖融合タンパク質であって、必要に応じて、前記VLRB抗原結合ドメインが、配列番号53、56または56と比較して突然変異されていない、請求項1から18のいずれか一項に記載の重鎖融合タンパク質。
【請求項20】
シグナル配列ありまたはなしの配列番号53、55または65のうちの1つのアミノ酸配列を含む重鎖融合タンパク質。
【請求項21】
1つまたは2つの可変リンパ球受容体B(VLRB)抗原結合ドメインとCLまたはCH1ドメインとを含む軽鎖融合タンパク質であって、前記VLRB抗原結合ドメインが、同じまたは異なり、必要に応じて、前記VLRB抗原結合ドメインが、CLもしくはCH1ドメインのN末端、前記CLもしくはCH1ドメインのC末端、またはそれらの組合せにある、軽鎖融合タンパク質。
【請求項22】
必要に応じて、前記融合タンパク質のN末端またはC末端に、免疫グロブリン軽鎖の可変領域(VL)、ScFv、VHH、LまたはRをさらに含む軽鎖融合タンパク質であって、前記VLRB抗原結合ドメインと一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、VHH、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)とが、前記融合タンパク質の異なる末端にある、請求項21に記載の軽鎖融合タンパク質。
【請求項23】
表2のドメイン構造を含む、請求項22に記載の軽鎖融合タンパク質。
【請求項24】
1つまたは複数のVLRB抗原結合ドメインと表2のドメイン構造とを含む軽鎖融合タンパク質。
【請求項25】
前記VLRB抗原結合ドメインが、がんもしくは腫瘍抗原または免疫細胞によってその上に発現される抗原に結合する、請求項21から24のいずれか一項に記載の軽鎖融合タンパク質。
【請求項26】
前記免疫グロブリン軽鎖の可変領域(VL)、ScFv、VHH、LまたはRが、がんもしくは腫瘍抗原または免疫細胞によってその上に発現される抗原に結合する、請求項22から25のいずれか一項に記載の軽鎖融合タンパク質。
【請求項27】
前記免疫グロビンドメインの各々が、哺乳動物、必要に応じてヒトの、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、またはそれに対して70%の配列同一性を有するそのバリアントから独立して選択される、請求項1から26のいずれか一項に記載の軽鎖融合タンパク質。
【請求項28】
前記IgGが、IgG1、IgG2、IgG3および/もしくはIgG4である、ならびに/または前記IgAが、IgA1および/もしくはIgA2である、請求項27に記載の軽鎖融合タンパク質。
【請求項29】
1つもしくは2つの前記VLRB抗原結合ドメインまたは1つのVLRB抗原結合ドメインと、必要に応じて、前記融合タンパク質のN末端またはC末端の免疫グロブリン軽鎖(VL)、ScFv、VHH、LまたはRとからなる軽鎖融合タンパク質であって、前記VLRB抗原結合ドメインと一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、VHH、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)とが、前記CLまたはCHドメインのN末端およびC末端に融合されている、請求項21から28のいずれか一項に記載の軽鎖融合タンパク質。
【請求項30】
前記CLドメインが、配列番号23もしくは24、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントである、請求項21から29のいずれか一項に記載の軽鎖融合タンパク質。
【請求項31】
前記CH1が、配列番号25、26、62、63、64、65もしくは66のCH1の配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項21から29のいずれか一項に記載の軽鎖融合タンパク質。
【請求項32】
配列番号24のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、請求項21から31のいずれか一項に記載の軽鎖融合タンパク質。
【請求項33】
シグナル配列ありもしくはなしの配列番号54のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖融合タンパク質であって、必要に応じて、前記VLRB抗原結合ドメインが、配列番号54と比較して突然変異されていない、請求項1から18のいずれか一項に記載の軽鎖融合タンパク質。
【請求項34】
シグナル配列ありまたはなしの配列番号54のアミノ酸配列を含む軽鎖融合タンパク質。
【請求項35】
それにコンジュゲートされた活性薬剤カーゴをさらに含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の重鎖および/または請求項21から33のいずれか一項に記載の重鎖。
【請求項36】
請求項1から34のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする核酸。
【請求項37】
発現制御配列をさらに含む、請求項36に記載の核酸。
【請求項38】
請求項36または37に記載の核酸を含む細胞。
【請求項39】
請求項1から20のいずれか一項に記載の2つの重鎖融合タンパク質および請求項21から34のいずれか一項に記載の2つの軽鎖融合タンパク質を含むキメラ抗体。
【請求項40】
前記2つの重鎖融合タンパク質が同じである、請求項39に記載の抗体。
【請求項41】
前記2つの重鎖融合タンパク質が異なる、請求項39に記載の抗体。
【請求項42】
前記2つの軽鎖融合タンパク質が同じである、請求項39から41のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項43】
前記2つの軽鎖融合タンパク質が異なる、請求項39から42のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項44】
単一特異性である、請求項39から43のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項45】
二特異性である、請求項39から43のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項46】
多特異性である、請求項39から43のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項47】
表3、表4、または
図2、3A~3D、4、5もしくは6のうちのいずれかに記載の構造を含む、請求項39から47のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項48】
それ自体、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖、必要に応じて配列番号54とテトラマー性抗体構造を形成する配列番号53を含むキメラ抗体。
【請求項49】
少なくとも1つのVLRB抗原結合ドメインを含むキメラ抗体であって、必要に応じて、MM3 VLRBホールH鎖、必要に応じて配列番号56、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖、必要に応じて配列番号54とテトラマー性抗体を形成する配列番号55を含む、キメラ抗体。
【請求項50】
少なくとも1つのVLRB抗原結合ドメインを含むキメラ抗体であって、必要に応じて、MM3 VLRBホールH鎖、必要に応じて配列番号56、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖、必要に応じて配列番号54とテトラマー性抗体構造を形成する配列番号65を含む、キメラ抗体。
【請求項51】
少なくとも1つのVLRB抗原結合ドメインを含むキメラ抗体であって、必要に応じて、MM3 VLRBホールH鎖、必要に応じて配列番号56、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖、必要に応じて配列番号54とテトラマー性抗体構造を形成する配列番号66を含む、キメラ抗体。
【請求項52】
表1から独立して選択される2つの重鎖および表2から独立して選択される2つの軽鎖を含むキメラ抗体であって、少なくとも1つのVLRB抗原結合ドメインを含む、キメラ抗体。
【請求項53】
表3、表4、または
図2、3A~3D、4、5もしくは6のうちのいずれかに記載の構造を含むキメラ抗体であって、少なくとも1つのVLRB抗原結合ドメインを含む、キメラ抗体。
【請求項54】
ヒンジ-CH2-CH3に融合されたVLRB抗原結合ドメインのダイマーを含むキメラ抗体。
【請求項55】
配列番号51または52のうちのいずれか1つのアミノ酸配列のダイマーを含む、請求項54に記載の抗体。
【請求項56】
がんまたは腫瘍抗原に結合することができる、請求項39から55のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項57】
免疫細胞に結合することができる、請求項39から56のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項58】
がんまたは腫瘍抗原および免疫細胞の両方に結合することができる、請求項39から57のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項59】
前記免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞またはマクロファージである、請求項57または58に記載の抗体。
【請求項60】
抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)および/または抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)活性を有する、請求項39から59のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項61】
T細胞活性化、T細胞増殖、標的細胞のT細胞による殺滅、またはそれらの組合せを誘導することができる、請求項39から62のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項62】
それにコンジュゲートされた活性薬剤カーゴを含む、請求項39から61のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項63】
請求項39から62のいずれか一項に記載の抗体を含む組成物。
【請求項64】
それを必要とする対象において治療結果または診断結果を誘導するための有効量の、請求項63に記載の組成物。
【請求項65】
非経口または経腸投与に適切な製剤における、請求項63または64に記載の組成物。
【請求項66】
それを必要とする対象を処置する方法であって、請求項63から65のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項67】
それを必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、請求項63から65のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項68】
がんについて対象を処置する方法であって、請求項63から65のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項69】
前記抗体が、前記がんの細胞に結合する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
感染症について対象を処置する方法であって、請求項63から65のいずれか一項に記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項71】
前記抗体が、感染細胞に結合する、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記抗体が、1つまたは複数の免疫細胞型に結合する、請求項66から71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)および/または抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)活性から選択される免疫応答を含む、請求項66から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記抗体が、T細胞に対して特異的な抗CD3抗原結合ドメイン/抗体を含む、または抗CD8抗原結合ドメインもしくはCD8リガンドTL抗原を含み、細胞傷害性T細胞に対して特異的である、上述の請求項のいずれか。
【請求項75】
前記VLRBドメインのうちの1つまたは複数が、抗CD3もしくは抗CD8抗原結合ドメインを含むScFvドメインまたはCD8リガンドと必要に応じて組み合わされたMM3 VLRB抗原結合ドメインであり、必要に応じて、前記リガンドが胸腺白血病抗原である、上述の請求項のいずれかの融合タンパク質および/または抗体。
【請求項76】
配列番号22または配列番号34の抗CD3結合ドメインを含む、上述の請求項のいずれか。
【請求項77】
図3A、3B、3C、3D、4、5または6のうちのいずれか1つの構造を有する、請求項68から70のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項78】
ヒンジ-CH2-CH3に融合されたVLRB抗原結合ドメインを含む融合タンパク質。
【請求項79】
配列番号51または52のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項78に記載の融合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全体が本明細書によって参考として本明細書に具体的に援用される、2021年7月27日出願の米国仮特許出願第63/203,616号に基づく優先権を主張する。
【0002】
配列表に対する言及
2022年7月27日に作成され、68,193バイトのサイズを有する、名称「NOVAB_101_PCT.xml」のxmlファイルとして提出された配列表は、37 C.F.R.§1.834(c)(1)に従って、これにより参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
発明の分野
開示される発明は、一般に、免疫エフェクター機能を有するように操作された可変リンパ球受容体の分野にある。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
Ig抗体とは異なり、VLRB抗体は、腫瘍およびウイルス感染細胞を殺滅するためまたは病原体を中和するために必要な生物学的エフェクター機能、例えば、補体活性化、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)または抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)を動員/活性化する固有の能力を有さず、Igリサイクリングおよび延長された血中半減期を担うFcRnが含まれる細胞性Fc受容体と相互作用しない。VLRB抗体を「武器化する」ための最初の試みは、ヒトIgG Fc配列との融合物としてそれらを発現させることを含んだ。しかし、それにもかかわらず、FcRn結合によって得られるヒトIgG1 Fc配列の改善された生物学的活性、即ち、補体活性化、ADCC、ADCPおよび延長された血中半減期を有する改善された組成物が、いまだに望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改善されたVLRBベースの組成物およびその使用の方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
キメラ可変リンパ球受容体B(VLRB)-免疫グロブリン抗体を作製および使用するための組成物が提供される。抗体は、典型的には、重鎖および軽鎖融合タンパク質から形成された2つの重鎖および軽鎖から構成される。したがって、重鎖および軽鎖融合タンパク質もまた提供される。
【0007】
典型的には、重鎖融合タンパク質は、第1の可変リンパ球受容体B(VLRB)抗原結合ドメインとCH1免疫グロブリンドメイン(CH1)またはCL免疫グロブリンドメイン(CL)とを含む。好ましくは、重鎖タンパク質は、免疫グロブリンヒンジドメイン(ヒンジ)、CH2免疫グロブリンドメイン(CH2)、CH3免疫グロブリンドメイン(CH3)およびCH4免疫グロブリンドメイン(CH4)のうちの1つまたは複数を含む。重鎖融合タンパク質は、第2の(VLRB)抗原結合ドメイン、免疫グロブリン重鎖の可変領域(VH)、一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)もまた含み得る。例示的な重鎖融合タンパク質のドメイン構造は、表1に提供される。
典型的には、軽鎖融合タンパク質は、可変リンパ球受容体B(VLRB)抗原結合ドメインとCL免疫グロブリンドメイン(CL)またはCH1免疫グロブリンドメイン(CH1)とを含む。例示的なドメイン構造は、表2に提供される。
【0008】
一部の実施形態では、VLRB抗原結合ドメインのうちの1つもしくは複数および/またはVL、VH、ScFv、VHH(即ち、ナノボディ)、LもしくはRのうちの1つもしくは複数は、がんもしくは腫瘍抗原または免疫細胞型によってその上に発現される抗原に結合する。免疫グロビン(immunoglobin)ドメインは、典型的には、哺乳動物、必要に応じてヒトの、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントから独立して選択される。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3および/もしくはIgG4であり得る、ならびに/またはIgAは、IgA1および/もしくはIgA2である。一部の実施形態では、免疫グロビンドメインの全てが、同じ抗体アイソタイプ由来である。融合タンパク質のいずれもが、それにコンジュゲートされた活性薬剤カーゴをさらに含み得る。
【0009】
例えば、その組換え発現のための、融合タンパク質をコードする核酸およびそれを含むベクターもまた、核酸を保有する細胞と同様に提供される。
【0010】
2つの重鎖融合タンパク質および2つの軽鎖融合タンパク質から形成されたキメラ抗体が提供される。一部の実施形態では、2つの重鎖は、同じである。他の実施形態では、2つの重鎖は、異なる。一部の実施形態では、2つの軽鎖は、同じである。他の実施形態では、2つの軽鎖は、異なる。ヘテロテトラマーの所望のアセンブリは、例えば、ノブイントゥホールおよび/またはクロスマブ(crossmab)戦略(即ち、突然変異)を重鎖および/または軽鎖中に取り込むことによって、容易にされ得る。キメラ抗体は、単一特異性、二特異性または多特異性であり得る。例示的な構造は、表3および4、ならびに
図2、3A~3D、4、5および6に提供される。
【0011】
一部の実施形態では、キメラ抗体を形成する重鎖融合タンパク質のうちの1つもしくは複数は、VLRB抗原結合ドメインを含まず、その代わり、免疫グロブリン重鎖の可変領域(VH)、一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)を含み得る。同様に、一部の実施形態では、キメラ抗体を形成する軽鎖融合タンパク質のうちの1つまたは複数は、VLRB抗原結合ドメインを含まず、その代わり、免疫グロブリン重鎖の可変領域(VH)、一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)を含み得る。しかし、アセンブルされると、キメラ抗体は、典型的には、少なくとも1つの、好ましくは2つまたはそれよりも多くの同じまたは異なるVLRB抗原結合ドメインを含む。
【0012】
一部の実施形態では、キメラ抗体は、がんまたは腫瘍抗原に結合することができる。さらにまたはあるいは、一部の実施形態では、キメラ抗体は、免疫細胞、例えば、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞またはマクロファージに結合することができる。一部の実施形態では、キメラ抗体は、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)および/または抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)活性を有する。キメラ抗体は、それにコンジュゲートされた活性薬剤カーゴを有し得る。
【0013】
抗体を含む医薬組成物もまた提供される。典型的には、組成物は、それを必要とする対象において治療結果または診断結果を誘導するための有効量のキメラ抗体を有する。製剤は、典型的には、例えば、非経口または経腸投与による対象への投与に適切である。
【0014】
それを必要とする対象を処置する方法であって、キメラ抗体組成物を対象に投与するステップを含む、方法もまた提供される。例えば、有効量のキメラ抗体を対象に投与して、対象において免疫応答を増加させるステップを含む方法は、それを必要とする対象において免疫応答を増加させる(例えば、誘導する、活性化する、増強するなど)。がんについて対象を処置する方法は、有効量のキメラ抗体を対象に投与して、がんの1つまたは複数の症状を処置するステップを含み得る。一部のかかる実施形態では、キメラ抗体は、がんの細胞、および必要に応じて免疫細胞に結合するが、必要に応じて、好ましくは、がん細胞に対する免疫応答を増加させる。例えば、一部の実施形態では、組成物は、がん細胞に対する免疫細胞を動員および/または活性化する。感染症について対象を処置する方法は、有効量のキメラ抗体を対象に投与して、感染症の1つまたは複数の症状を処置するステップを含み得る。一部のかかる実施形態では、キメラ抗体は、感染細胞、および必要に応じて免疫細胞に結合するが、必要に応じて、好ましくは、感染細胞に対する免疫応答を増加させる。好ましい実施形態では、免疫応答には、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)活性、細胞傷害性細胞を動員および/または活性化することが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A-D】
図1Aは、VLRB抗原結合ドメインの編成の実例である。
図1Bは、VLRB RBC36-H3三糖抗原複合体の3次元構造表示である。
図1Cは、IgG構造の実例である。
図1Dは、VLRBとFc配列とがヒンジドメインで融合された二価VLRB-IgG Fcの実例である。
【0016】
【
図2】
図2は、操作されたVLRB:CL-VLRB:CH1四価IgGキメラの実例である。
【0017】
【
図3A-B】
図3Aは、正確なH鎖対形成を確実にするためにノブインホール法を使用した、IgG重(「H」)鎖のうちの一方(「ノブ」H鎖)のC末端に結合された一価抗CD3 scFvを有する操作された四価VLRB IgGの実例である。
図3Bは、正確なH鎖対形成を確実にするためにノブインホール法を使用した、IgG H鎖のうちの一方(「ノブ」H鎖)のN末端に結合された一価抗CD3 scFvを有する操作された三価VLRB IgGの実例である。
図3Cおよび3Dは、H/L鎖対のうちの一方上のCLおよびCH1の逆転(「クロスマブ」)ならびに正確なH鎖対形成を確実にするための「ノブインホール」を用いた、IgG軽鎖のうちの一方のC末端(3C)またはN末端(3D)に結合された一価抗CD3 scFvを有するVLRB IgGを構築するための2つの方法を示す。
図3Cは、H鎖CH1ドメインによるCLドメインの置換によって改変されたIgG L鎖のうちの一方のC末端に結合された一価抗CD3 scFvを有する操作された四価VLRB IgGの実例であり、相補的なH鎖(「ホール」H鎖)は、CLドメインによるCH1ドメインの置換によって改変されている。ノブインホール法は、正確なH鎖対形成を確実にする。
図3Dは、H鎖CH1ドメインによるCLドメインの置換によって改変されたIgG L鎖のうちの一方のN末端に結合された一価抗CD3 scFvを有する操作された三価VLRB IgGの実例であり、相補的なH鎖(「ホール」H鎖)は、CLドメインによるCH1ドメインの置換によって改変されている。ノブインホール法は、正確なH鎖対形成を確実にする。
【
図3C-D】
図3Aは、正確なH鎖対形成を確実にするためにノブインホール法を使用した、IgG重(「H」)鎖のうちの一方(「ノブ」H鎖)のC末端に結合された一価抗CD3 scFvを有する操作された四価VLRB IgGの実例である。
図3Bは、正確なH鎖対形成を確実にするためにノブインホール法を使用した、IgG H鎖のうちの一方(「ノブ」H鎖)のN末端に結合された一価抗CD3 scFvを有する操作された三価VLRB IgGの実例である。
図3Cおよび3Dは、H/L鎖対のうちの一方上のCLおよびCH1の逆転(「クロスマブ」)ならびに正確なH鎖対形成を確実にするための「ノブインホール」を用いた、IgG軽鎖のうちの一方のC末端(3C)またはN末端(3D)に結合された一価抗CD3 scFvを有するVLRB IgGを構築するための2つの方法を示す。
図3Cは、H鎖CH1ドメインによるCLドメインの置換によって改変されたIgG L鎖のうちの一方のC末端に結合された一価抗CD3 scFvを有する操作された四価VLRB IgGの実例であり、相補的なH鎖(「ホール」H鎖)は、CLドメインによるCH1ドメインの置換によって改変されている。ノブインホール法は、正確なH鎖対形成を確実にする。
図3Dは、H鎖CH1ドメインによるCLドメインの置換によって改変されたIgG L鎖のうちの一方のN末端に結合された一価抗CD3 scFvを有する操作された三価VLRB IgGの実例であり、相補的なH鎖(「ホール」H鎖)は、CLドメインによるCH1ドメインの置換によって改変されている。ノブインホール法は、正確なH鎖対形成を確実にする。
【0018】
【
図4】
図4は、各CH3ドメインのC末端に融合されたVLRBを有する抗CD3モノクローナル抗体から構成される操作された二価二特異性VLRB-IgGキメラの実例である。
【0019】
【
図5】
図5は、CL-VLRB-抗CD3二特異性キメラ抗体の実例である。
【0020】
【
図6】
図6は、2つのVLRB-CH1-CH2-CH3融合タンパク質および2つのVLRB-CL-ScFv融合タンパク質から形成されたVLRB:Cl-VLRB:CH四価-CL:ScFv二価IgG構造の実例である。
【0021】
【
図7】
図7は、それらから形成された二価VLRB
2ヒトIgG1 Fcの図式的表示と対になった、VLRBヒトIgG1 Fc融合タンパク質のドメイン構造の実例である。
【0022】
【
図8】
図8は、それらから形成された四価VLRB
4ヒトIgG1の図式的表示と対になった、VLRBヒトIgG1の重鎖(「H」)および軽鎖(「L」)融合タンパク質のドメイン構造の実例である。
【0023】
【
図9】
図9は、それらから形成された二特異性四価VLRB
4-一価scFv
1ヒトIgG1の図式的表示と対になった、単一特異性VLRBおよび二特異性VLRB-scFvアームの重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖融合タンパク質のドメイン構造の実例である。この例示的な図では、MM3 VLRB4-抗CD3ヒトIgG1二特異性T細胞エンゲージャー(「BiTe」)を形成するために、VLRBはMM3であり、scFvは抗CD3である;「ノブ」および「ホール」突然変異が示される;両方の重(「H」)鎖が、L234A/L235A/P329G突然変異を有する。
【0024】
【
図10A-B】
図10Aおよび10Bは各々、10A)Daudi細胞、CD38
hiならびに10B)KMS-11 CD38
-、BJAB CD38
lo、Raji CD38
intおよびDaudi CD38
hiへの、VLRB融合タンパク質および対照Ab結合についての例示的なフローサイトメトリーデータを示す一連のプロットである。D-MM3およびT-MM3は、それぞれMM3 VLRB
2およびVLRB
4ヒトIgG1 Fc融合タンパク質に相当する。
【0025】
【
図11】
図11は、MM3 VLRB
4:抗CD3 scFv BiTeの細胞株結合についての例示的なフローサイトメトリーデータを示す一連のプロットである。
【0026】
【
図12】
図12は、抗ヒトCD3抗体比較対象と共に、JurkatおよびヒトPBMCへのMM3 VLRB
4:抗CD3 scFv BiTe結合についての例示的なフローサイトメトリーデータを示す一連のプロットである。Jurkat TCR/CD3細胞は、PromegaのT細胞活性化キットカタログ番号1621のものである。
【0027】
【
図13】
図13は、細胞株へのO13 VLRB
2ヒトIgG1 Fc融合タンパク質(D-O13)の結合についてのフローサイトメトリーデータを示す一連のプロットおよび対応する棒グラフである。
【0028】
【
図14A-C】
図14A~14Cは、VLRB融合タンパク質による補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)の活性化を示す。
図14Aは、20%ヒト血清、ならびに0.5μgのN8ならびにMM3(D-MM3)VLRB
2ヒトIgG1 FcおよびMM3 VLRB
4ヒトIgG1(T-MM3)融合タンパク質、ならびに0.25μgダラツムマブを用いたDaudi細胞溶解のCDCアッセイの結果を示すフローサイトメトリープロットである。死細胞は、PI染色で検出される。
図14Bは、NFAT誘導されたルシフェラーゼ発現(Promegaカタログ番号G7015)によって測定した、Jurkat/FcγRIIIa V158エフェクター細胞によるDaudi細胞活性化のADCCアッセイの結果を示すプロットである。T-MM3は、MM3 VLRB
4ヒトIgG1融合タンパク質に相当し、Daraはダラツムマブである。
図14Cは、培養培地中へのLDHの放出によって測定した、NK92/CD16aエフェクター細胞によって媒介されるDaudi細胞溶解のADCCアッセイの結果を示すプロットである。エフェクター細胞の標的細胞に対する比は、5:1であった。このアッセイは、Genescript(Piscataway、NJ)が実施した。抗ヒトCD20 Abリツキシマブは、陽性対照(青色の線およびデータポイント)であり、MM3 VLRB
2ヒトIgG1 Fcは、試験試料(緑色の線およびデータポイント)であった。
【0029】
【
図15A】
図15Aは、O13 VLRB
2ヒトIgG1融合タンパク質によるCDC活性化を示す一連のフローサイトメトリープロットである。
図15Bは、O13 VLRB
2ヒトIgG1融合タンパク質によるADCC活性化を示す折れ線グラフである。
【
図15B】
図15Aは、O13 VLRB
2ヒトIgG1融合タンパク質によるCDC活性化を示す一連のフローサイトメトリープロットである。
図15Bは、O13 VLRB
2ヒトIgG1融合タンパク質によるADCC活性化を示す折れ線グラフである。
【0030】
【
図16】
図16は、Jurkat TCR/CD3 NFAT T細胞(Promegaカタログ番号1621)の活性化を示す折れ線グラフである。標的細胞株および活性化剤は、示される通りである。
【0031】
【
図17A-B】
図17A~17Dは、MM3 VLRB
2:抗CD3 scFv BiTe(図中ではMM3/抗CD3)によるヒトPBMC T細胞の活性化を示す折れ線グラフである。標的細胞は、示される通りである。
【
図17C-D】
図17A~17Dは、MM3 VLRB
2:抗CD3 scFv BiTe(図中ではMM3/抗CD3)によるヒトPBMC T細胞の活性化を示す折れ線グラフである。標的細胞は、示される通りである。
【0032】
【
図18】
図18は、ヒトPBMC T細胞細胞傷害性の活性化を示す棒グラフである。%細胞傷害性=100×(試料-PBMC自発-Daudi自発)/(Daudi最大-Daudi自発)であって、式中、試料=MM3 VLRB BiTe+PBMC+Daudi細胞、PBMC自発=MM3 VLRB BiTe+PBMC、Daudi自発=PBMC+DaudiおよびDaudi最大=溶解されたDaudiである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細な説明
I. 定義
本明細書で使用される場合、用語「特異的に結合する」は、他の抗原には有意に結合しないままでの、そのコグネート抗原への抗体の結合を指す。好ましくは、抗体は、その第2の分子と、約105mol-1よりも大きい(例えば、106mol-1、107mol-1、108mol-1、109mol-1、1010mol-1、1011mol-1および1012mol-1またはそれよりも大きい)親和性定数(Ka)で、抗原に「特異的に結合する」。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「腫瘍」または「新生物」は、新生物性細胞を含有する組織の異常な塊を指す。新生物および腫瘍は、良性、前悪性または悪性であり得る。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「がん」または「悪性新生物」は、制御されない成長、隣接する組織への浸潤、およびしばしば身体の他の場所への転移を示す細胞を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「抗新生物性」は、がんの成長、浸潤および/または転移を阻害または予防することができる組成物、例えば、薬物または生物製剤を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「個体」、「宿主」、「対象」および「患者」は、投与または処置の標的である任意の個体を指すために、相互交換可能に使用される。対象は、脊椎動物、例えば、哺乳動物であり得る。したがって、対象は、ヒトまたは獣医患者であり得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「治療(的に)有効(な)」は、使用される組成物の量が、疾患または障害の1つまたは複数の原因または症状を軽快させるのに十分な量であることを意味する。かかる軽快は、低減または変更だけを要求し、排除は必ずしも要求しない。がんを処置するための組成物の治療有効量は、好ましくは、腫瘍退縮を引き起こすのに、または放射線もしくは化学療法に対して腫瘍を感作させるのに十分な量である。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」は、生物学的にも他の点でも望ましくないことのない材料を指す、即ち、材料は、いずれの望ましくない生物学的影響を引き起こすことも、それが含有される医薬組成物の他の構成成分のいずれかと有害な様式で相互作用することもなしに、対象に投与され得る。担体は、必然的に、当業者に周知のように、活性成分のいずれの分解をも最小化するため、および対象におけるいずれの有害な副作用をも最小化するために、選択される。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「処置」は、疾患、病的状態または障害を治癒、軽快、安定化または予防することを意図した、患者の医学的管理を指す。この用語は、積極的処置、即ち、疾患、病的状態または障害の改善に向けて特に指向された処置を含み、原因処置、即ち、関連疾患、病的状態または障害の原因の除去に向けて指向された処置もまた含む。さらに、この用語は、対症的処置、即ち、疾患、病的状態または障害の治癒ではなく症状の軽減のために設計された処置;予防的処置、即ち、関連疾患、病的状態または障害の発症を最小化するまたは部分的もしくは完全に阻害するために指向された処置;および支持処置、即ち、関連疾患、病的状態または障害の改善に向けて指向された別の特定の治療を補完するために使用される処置を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、改変(例えば、リン酸化またはグリコシル化)にかかわらず、任意の長さのアミノ酸の鎖を指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「バリアント」ポリペプチドは、対応する野生型ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸配列変更を含有する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸配列変更」は、例えば、1つまたは複数のアミノ酸の置換、欠失または挿入であり得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」は、1つのポリペプチドのアミノ末端と別のポリペプチドのカルボキシル末端との間で形成されるペプチド結合または他の連結を介した2つまたはそれよりも多くのポリペプチドの接続によって形成されるポリペプチドを指す。融合タンパク質は、構成要素ポリペプチドの化学的カップリングによって形成され得る、または単一の連続する融合タンパク質をコードする核酸配列から単一のポリペプチドとして発現され得る。単鎖融合タンパク質は、単一の連続するポリペプチド骨格を有する融合タンパク質である。融合タンパク質は、2つの遺伝子を単一の核酸配列へとインフレームで接続するための分子生物学における従来の技法を使用し、次いで、融合タンパク質が産生される条件下で適切な宿主細胞において核酸を発現させることによって、調製され得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、挿入されたセグメントの複製をもたらすように別のDNAセグメントがその中に挿入され得る、レプリコン、例えば、プラスミド、ファージまたはコスミドである。本明細書に記載されるベクターは、発現ベクターであり得る。
【0046】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」は、1つまたは複数の発現制御配列を含むベクターである。
【0047】
本明細書で使用される場合、「発現制御配列」は、別のDNA配列の転写および/または翻訳を制御および調節するDNA配列である。
【0048】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」は、発現制御配列が、目的のコード配列の発現を効果的に制御するように、遺伝子構築物中に取り込まれることを意味する。
【0049】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドの「断片」は、全長タンパク質のより短いポリペプチドであるポリペプチドの任意のサブセットを指す。一般に、断片は、5アミノ酸長またはそれよりも長い。
【0050】
本明細書で使用される場合、「価数」は、1分子当たりの利用可能な結合部位の数を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「保存的」アミノ酸置換は、置換されたアミノ酸が類似の構造的または化学的特性を有する置換である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「非保存的」アミノ酸置換は、置換されたアミノ酸の電荷、疎水性または嵩が有意に変更される置換である。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、組換え発現ベクターがその中に導入され得る原核生物および真核生物細胞を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「同一性」は、当該分野で公知のように、配列を比較することによって決定される、2つまたはそれよりも多くのポリペプチド配列間の関連性である。当該分野では、「同一性」は、かかる配列のストリング間のマッチによって決定される、ポリペプチド間の配列関連性の程度もまた意味する。「同一性」および「類似性」は、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., Ed., Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., Ed., Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., Eds., Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., Eds., M Stockton Press, New York, 1991;ならびにCarillo, H., and Lipman, D., SIAM J Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載されるものが含まれるがこれらに限定されない公知の方法によって、容易に計算することができる。
【0055】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最も大きいマッチを生じるように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公に入手可能なコンピュータープログラムで成文化される。2つの配列間のパーセント同一性は、Needelman and Wunsch, (J. Mol. Biol., 48: 443-453, 1970)アルゴリズム(例えば、NBLASTおよびXBLAST)を取り込む分析ソフトウェア(即ち、Genetics Computer Group、Madison Wis.のSequence Analysis Software Package)を使用することによって決定され得る。デフォルトパラメーターが、本開示のポリペプチドについて同一性を決定するために使用される。
【0056】
例として、ポリペプチド配列は、参照配列と同一、即ち、100%同一であり得る、または参照配列と比較してある特定の整数までのアミノ酸変更を含み得、その結果、%同一性は100%未満である。かかる変更は、以下から選択される:少なくとも1つのアミノ酸欠失、保存的および非保存的置換が含まれる置換、または挿入であって、当該変更は、参照ポリペプチド配列のアミノ末端位置またはカルボキシ末端位置において、あるいは参照配列中のアミノ酸間に個々に、または参照配列内に1つもしくは複数の連続する群のいずれかで散在して、これらの末端位置間の任意の場所において生じ得る。所与の%同一性のためのアミノ酸変更の数は、参照ポリペプチド中のアミノ酸の総数にそれぞれのパーセント同一性の数的パーセント(100で除算した)を乗算し、次いで、参照ポリペプチド中のアミノ酸の当該総数からその積を減算することによって、決定される。
【0057】
本明細書で使用される場合、「必要に応じた」または「必要に応じて」は、引き続いて記載される事象、状況または材料が、生じても生じなくてもよいまたは存在してもしなくてもよいこと、ならびにその記載が、事象、状況または材料が生じるまたは存在する場合およびそれが生じないまたは存在しない場合を含むことを意味する。
【0058】
範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして、本明細書で表され得る。かかる範囲が表される場合、文脈が他を具体的に示さない限り、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までの範囲もまた、具体的に企図され、開示されたとみなされる。同様に、先行する「約」の使用によって値が近似値として表される場合、文脈が他を具体的に示さない限り、特定の値が、開示されたとみなされるべき別の具体的に企図される実施形態を構成することが理解される。文脈が他を具体的に示さない限り、範囲の各々の終点が、他の終点に関連して、および他の終点から独立しての両方で重要であることがさらに理解される。文脈が他を具体的に示さない限り、明示的に開示された範囲内に含まれる個々の値および値の下位範囲の全てもまた、具体的に企図され、開示されたとみなされるべきことを、理解すべきである。最後に、全ての範囲は、第1の終点を含んで第1の終点から、第2の終点を含んで第2の終点までの、範囲としてのおよび個々の数の収集としての両方の、列挙された範囲を指すことを理解すべきである。後者の場合、個々の数のいずれもが、その範囲が言及する量、値または特色の1つの形態として選択され得ることを理解すべきである。この方法で、範囲は、第1の終点を含んで第1の終点から、第2の終点を含んで第2の終点までの、数または値のセットを記載し、ここから、そのセットの単一のメンバー(即ち、単一の数)が、その範囲が言及する量、値または特色の1つの形態として選択され得る。上記は、特定の場合に、これらの実施形態の一部または全てが明示的に開示されているかどうかにかかわらずに適用される。
【0059】
本明細書で開示される全ての化合物は、本明細書で具体的に開示されることが意図され、本明細書で具体的に開示されたとみなすべきである。さらに、本開示内で同定され得る全てのサブグループは、本明細書で具体的に開示されることが意図され、本明細書で具体的に開示されたとみなすべきである。結果として、任意の化合物、または化合物のサブグループは、使用のために具体的に含まれ得もしくは使用から具体的に排除され得、または化合物のリスト中に具体的に含まれ得もしくはリストから具体的に排除され得ることが、具体的に企図される。
【0060】
開示される組成物ならびに本明細書で開示される方法内で使用される組成物自体を調製するために使用される構成成分が開示される。これらおよび他の材料は、本明細書で開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、群などが開示される場合、これらの化合物の各種々の個々のおよび集合的な組合せおよび並べ替えの具体的な言及は、明示的に開示されていない場合があるが、各々が、具体的に企図され本明細書に記載されることが理解される。例えば、特定のポリペプチドが開示および議論され、いくつかのポリペプチドに対してなされ得るいくつかの改変が議論される場合、逆が具体的に示されない限り、可能なポリペプチドおよび改変の各々および全ての組合せおよび並べ替えが、具体的に企図される。したがって、分子A、BおよびCのクラスならびに分子D、EおよびFのクラスが開示され、組合せ分子の例A-Dが開示される場合、各々が個々に列挙されていない場合であっても、各々は、個々におよび集合的に企図され、組合せA-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-EおよびC-Fが開示されたとみなされることを意味している。同様に、これらの任意のサブセットまたは組合せもまた開示される。したがって、例えば、A-E、B-FおよびC-Eのサブグループが、開示されたとみなされる。この概念は、開示される組成物を作製および使用する方法におけるステップが含まれるがこれらに限定されない、本出願の全ての態様に適用される。したがって、実施され得る種々のさらなるステップが存在する場合、これらのさらなるステップの各々は、開示される方法の任意の具体的な実施形態または実施形態の組合せと共に実施され得ることが理解される。
【0061】
II. VLRB-Igキメラ
各々が免疫グロブリン定常ドメイン(複数可)に連結された、少なくとも1つの、好ましくは2つまたはそれよりも多くのVLRB抗原結合ドメイン、および必要に応じて1つまたは複数の他の標的部分結合ドメインから構成される2つの重鎖および2つの軽鎖から典型的には構成されるキメラ分子が提供される。キメラVLRB-Ig、VLRB-Ig、キメラ抗体、または単に抗体として本明細書で言及されるが、これらの構造は、抗体の天然のY字型構造を模倣し、抗原結合ドメインの価数を増加させ、特異的な結合を受け得る標的の数を増加させ、免疫エフェクター応答(複数可)を増加させ、またはそれらの組合せを行うように、設計される。設計、製造、および使用の方法の原理は、以下でより詳細に議論される。
【0062】
A. 設計戦略
唯一の現生無顎脊椎動物であるヤツメウナギおよびヌタウナギ(hagfish)では、可変リンパ球受容体(VLR)が、外来抗原の認識において主要な役割を果たしている。有顎脊椎動物における免疫グロブリンの可変、多様および連結(variable,diverse,and joining)遺伝子セグメント(VDJ)とは対照的に、無顎脊椎動物は、多様なロイシンリッチリピート(LRR)モジュールの、不完全なvlr遺伝子への体細胞DNA再編成によって、受容体多様性の問題を解決している。得られた成熟vlr遺伝子は、N末端LRRキャッピング領域(LRRNT)、第1のLRR(LRR1)、最大で7つの24残基可変LRR(LRRV)、末端(terminal)または末端(end)LRRV(LRRVe)、連結ペプチド(connecting peptide)(CP)、C末端LRRキャッピング領域(LRRCT)、ならびにタンパク質をグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーおよび疎水性テイルに連結して、VRLBの細胞表面形態を生じるスレオニン/プロリンリッチストーク領域をコードする(Han, et al., Science, 321(5897):1834-7 (2008))。VLRAおよびVLRCは、固有の1回膜貫通タンパク質であり、分泌されない。分泌型のVLRBは、GPI連結を欠如し、ダイマー構造のペンタマー、即ち、1分子当たり10個のVLRB結合ドメインを形成する(Herrin, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2008;105(6):2040-5. Epub 2008/02/02. doi: 10.1073/pnas.0711619105. PubMed PMID: 18238899; PMCID: PMC2542867.)。
【0063】
可変リンパ球受容体(VLRB)の抗原結合ドメインは、可変数の高度に多様なタンデムに連結されたロイシンリッチリピート(LRR)ドメインから構成される。これらは、典型的には27~39アミノ酸長、最も典型的には、32または39アミノ酸長のアミノ末端LRRドメイン(LRRNT)、第1の18アミノ酸残基のLRR(LRR1)、その後ろの、可変数(なしから8までであるが、3よりも大きいことはめったにない)の、各々典型的には24または23アミノ酸残基のLRRドメイン(LRRV1、LRRV2など)、および典型的には13アミノ酸残基の短い連結ペプチド(CP)を介して、LRR1およびLRRVドメインとは異なり、高度に可変性の長さ、48~63アミノ酸残基のカルボキシ末端LRRドメイン(LRRCT)に連結された、これもまた24アミノ酸長の末端LRRV(LRRVe)で、
図1Aに示されるように整列される(Herrin and Cooper, J Immunol. 185(3):1367-74 (2010). Epub 2010/07/28. doi: 10.4049/jimmunol.0903128. PubMed PMID: 20660361)。VLRが、手のひら(palm)の一方の末端に「親指(thumb)様」キャップを形成するLRRCTドメイン中の可変的に存在するループと共に、三日月型の「手のひら様」タンパク質構造を形成するように、LRRCTを除く全てのVLR LRRドメインが、カノニカルベータ鎖-ターン-アルファヘリックスLRRドメイン3次元構造を採用する(
図1B)。VLR:抗原複合体のX線結晶構造は、各LRRドメインのβ鎖によって形成される連続したβシート表面である、VLRの凹表面への限局化された抗原結合を有する(Han, et al., Science, 321(5897):1834-7 (2008). Epub 2008/09/27. doi: 10.1126/science.1162484、Collins, et al., Structure, 25(11):1667-78 e4 (2017). Epub 2017/10/11. doi: 10.1016/j.str.2017.09.003、Gunn, et al., J Mol Biol., 430(9):1350-67 (2018). Epub 2018/03/30. doi: 10.1016/j.jmb.2018.03.016.、Kirchdoerfer, et al., Structure, 20:479-486 (2012). [PubMed: 22405006]、Collins, et al., Acta Cryst., 682 - 687 (2017)、Luo, et al., J Biol Chem. 288(32):23597-606 (2013). Epub 2013/06/21. doi: 10.1074/jbc.M113.480467、Velikovsky, Nature Struct. Mol. Biol. 16, 725-730 (2009))。各LRRドメイン内の同定されたアミノ酸位置は、VLR凹表面上で溶媒に曝露され、結合した抗原との接触を形成する潜在力を有する(
図1B)。
【0064】
しかし、Ig抗体とは異なり、VLRB抗体は、腫瘍およびウイルス感染細胞を殺滅するためまたは病原体を中和するために必要な生物学的エフェクター機能、例えば、補体活性化、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)または抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)を動員/活性化する固有の能力を有さず、Igリサイクリングおよび延長された血中半減期を担うFcRnが含まれる細胞性Fc受容体と相互作用しない。
【0065】
天然に存在する抗体分子の基本構造は、非共有結合的相互作用および鎖間ジスルフィド結合によって一緒に保持される、2つの同一な重鎖および2つの同一な軽鎖からなるY字型テトラマー性四次構造である。例えば、
図1Cを参照されたい。
【0066】
哺乳動物種では、5つの型の重鎖:アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューが存在し、これが、免疫グロブリンのクラス(アイソタイプ):それぞれIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMを決定する。重鎖N末端可変ドメイン(VH)の後ろには、重鎖ガンマ、アルファおよびデルタでは、3つのドメイン(N末端からC末端に、CH1、CH2およびCH3と番号付けされる)を含有する定常領域が続くが、重鎖ミューおよびイプシロンの定常領域は、4つのドメイン(N末端からC末端に、CH1、CH2、CH3およびCH4と番号付けされる)から構成される。IgA、IgGおよびIgDのCH1およびCH2ドメインは、異なるクラス間で長さが異なり、IgAおよびIgGの場合には、異なるサブタイプ間で長さが異なる柔軟性のあるヒンジによって分離される:IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4は、15、12、62(または77)および12アミノ酸のヒンジをそれぞれ有し、IgA1およびIgA2は、20および7アミノ酸のヒンジをそれぞれ有する。
【0067】
2つの型の軽鎖:ラムダおよびカッパが存在し、これらは、重鎖アイソタイプのいずれかと会合することができるが、所与の抗体分子では、両方とも同じ型のものである。両方の軽鎖は、機能的に同一なようである。それらのN末端可変ドメイン(VL)の後には、CLと呼ばれる単一のドメインからなる定常領域が続く。
【0068】
重鎖および軽鎖は、CH1ドメインとCLドメインとの間でのタンパク質/タンパク質相互作用によって対形成し、2つの重鎖は、それらのCH3ドメイン間でのタンパク質/タンパク質相互作用によって会合する。免疫グロブリン分子の構造は、一般に、CH1ドメインとCLドメインとの間およびヒンジ間での鎖間ジスルフィド結合によって安定化される。
【0069】
治療的抗体の臨床的有効性は、免疫グロブリン分子の異なる部分にそれぞれ関連する、それらの抗原結合機能およびそれらのエフェクター機能の両方に依存する。抗原結合領域は、Y字型構造のアームに対応し、これらのアームは各々、重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインと対形成した完全な軽鎖からなり、Fab断片(抗原結合断片の代わり)と呼ばれる。Fab断片は、鎖間ジスルフィド結合のアミノ末端側でヒンジ領域において抗体分子を切断して2つの同一な抗原結合アームを放出するパパイン消化によって、ネイティブ免疫グロブリン分子から最初に生成された。他のプロテアーゼ、例えば、ペプシンもまた、鎖間ジスルフィド結合のカルボキシ末端側でではあるが、ヒンジ領域において抗体分子を切断して、2つの同一なFab断片からなり、ジスルフィド結合を介して連結されたままである断片を放出する;F(ab’)2断片中のジスルフィド結合の還元は、Fab’断片を生成する。
【0070】
VHドメインおよびVLドメインに対応する抗原結合領域の一部は、Fv断片(可変断片の代わり)と呼ばれる;これは、抗原結合部位(パラトープとも呼ばれる)を形成するCDR(相補性決定領域)を含有する。抗体をそのゴールに特に指向させることに加えて、その標的抗原への結合の際に、抗原結合領域は、標的化された抗原および抗体によって認識される当該抗原上のエピトープの両方に依存して、陽性または陰性であり得る種々の生物学的シグナルを誘導し得る。がん治療の分野での使用のために、細胞分裂停止または腫瘍細胞の死を生じる成長阻害性またはアポトーシス促進性シグナルを送達する抗体が一般に好まれる(Verma et al., J Immunol, 186, 3265-76; 2011)。
【0071】
抗体のエフェクター機能は、エフェクター分子、例えば、補体タンパク質への、または免疫細胞、例えば、マクロファージもしくはナチュラルキラー(NK)細胞の表面上のFc受容体へのその結合から生じる。これは、標的化された抗原のファゴサイトーシスまたは溶解をもたらす異なる効果、例えば、抗体依存性ファゴサイトーシス(ADP)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞媒介性細胞傷害(CDC)を生じる。エフェクター分子または細胞へのその結合を担う抗体のエフェクター領域は、Y字型構造のステムに対応し、重鎖の対形成したCH2およびCH3ドメイン(または抗体のクラスに依存して、CH2、CH3およびCH4ドメイン)を含有し、Fc(結晶化可能断片の代わり)領域と呼ばれる。
【0072】
Fc領域によって媒介されるADCC、ADPおよびCDCは、mAbの治療活性において主要な役割を果たす。ADCC機構が中心であると思われるが、それは、Fcガンマ受容体について遺伝的に欠損したヌードマウスにおいて、2つの主要な臨床的に首尾よいmAbである抗HER2および抗CD20の、ヒト腫瘍異種移植片に対する治療作用が、ほぼ完全に無効にされたことが実証されているからである(Clynes et al., Nat Med, 6, 443-6, 2000)。ADP機構もまた、ヒト腫瘍のいくつかのマウスモデルにおいて中心的に重要であることが示されており(Uchida et al., J. Exp. Med. 199: 1659-69, 2004)、CDCもまた、抗CD20のin vivoでの治療活性において基本的な役割を果たすことが実証されている(Di Gaetano et al., J Immunol, 171, 1581-7, 2003)。
【0073】
これらの能力をVLRB抗体に付与するための戦略が提供される。戦略は、典型的には、その抗原結合性断片、および必要に応じて1つまたは複数の他の細胞標的化または結合部分を、CH1ドメイン、CLドメインまたはそれらの組合せを有する分子に融合または連結して、VLRB-Igキメラを形成することを含む。好ましい実施形態では、キメラは、他のIg定常ドメイン、例えば、CH2、CH3、ヒンジ領域、またはそれらの組合せもまた含み、必要に応じて、Igの1つまたは複数の可変領域をさらに含み得る。好ましい実施形態では、分子は、抗体と類似したダイマー性Y字型構造を取る。
【0074】
キメラVLRB-Ig、キメラを構築するために使用され得る融合タンパク質、ならびに本明細書で使用され得る例示的なVLRBおよびIg配列の構造は、以下でより詳細に議論される。
【0075】
B. VLRB-Igキメラ融合タンパク質
開示されるVLRB-Igキメラは、VLRB抗体およびIg抗体の要素を組み合わせる融合タンパク質を使用してアセンブルされ得る。
【0076】
重鎖融合タンパク質設計には、N末端からC末端に、表1に概略された構築物が含まれるがこれらに限定されない:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0077】
軽鎖融合タンパク質設計には、N末端からC末端に、表2に概略された構築物が含まれるがこれらに限定されない:
【表2】
【0078】
開示される融合タンパク質では、「VLRB」は、抗原に結合することができるVLRB抗体のセグメント、断片またはバリアントを含むドメインを指す。したがって、典型的には、VLRBドメインは、VLRBの抗原結合ドメイン(例えば、
図1Aならびに本明細書および当該分野の他の場所での記載を参照されたい)、または親VLRB抗原結合ドメインに対して例えば少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくはそれよりも高い配列同一性を有するその抗原結合性バリアントを少なくとも含む。一部の実施形態では、融合タンパク質のVLRBドメインは、VLRB抗体全体、または親VLRB抗体に対して例えば少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくはそれよりも高い配列同一性を有するその抗原結合性バリアントである。
【0079】
開示される融合タンパク質では、「CH1」、「CH2」、「CH3」および「CH4」は、哺乳動物IgのCH1、CH2、CH3およびCH4ドメイン、ならびにそれらのバリアントを指す。一部の実施形態では、ドメイン(複数可)および/またはそのバリアントは、哺乳動物Igの定常領域の1つまたは複数の免疫学的機能を維持する。好ましい保持される機能には、ADCC、ADPおよび/またはCDCが含まれるがこれらに限定されない。Igは、その全てのサブクラスを含む、それぞれ任意のIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMであり得る。
【0080】
開示される融合タンパク質では、「ヒンジ」は、Igヒンジ領域もしくはドメイン、または別の柔軟性のあるリンカー、例えば、以下で議論されるものを指す。ヒンジの配列/長さは、Igの異なるクラスおよびサブクラス間で異なる。例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4は、15、12、62(または77)および12アミノ酸のヒンジをそれぞれ有し、IgA1およびIgA2は、20および7アミノ酸のヒンジをそれぞれ有する。定常ドメインの各々は、適切な型の入手可能なIg定常ドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3、CH4、ヒンジなど)の全てから、独立して選択され得る。したがって、定常ドメインのアイソタイプ混合が企図される。しかし、好ましい実施形態では、全ての定常ドメインが、同じアイソタイプ由来である。
【0081】
開示される融合タンパク質では、「VH」および「VL」は、親VHまたはVLドメインに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれよりも高い配列同一性を典型的には有する、抗体またはその抗原結合性断片のそれぞれ重鎖および軽鎖の可変領域を指す。集合的にFv断片(可変断片の代わり)と呼ばれ、これらのドメインは、Igの抗原結合部位を各々が形成する3つのCDR(相補性決定領域)を含有する。好ましくは、融合タンパク質の「VH」および/または「VL」ドメインは、その親VHおよび/もしくはVL CDR配列の3つ全て、またはそれに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくはそれよりも高い配列同一性を有するそのバリアント配列(複数可)を含有する。
【0082】
開示される融合タンパク質では、「ScFv」は、柔軟性のあるペプチドリンカーによって一緒に接続された、先行する段落で定義された重鎖の可変領域(「VH」)および軽鎖の可変領域(「VL」)を含む融合タンパク質、またはその抗体結合性断片を指す。scFvは、VH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VH配向であり得るが、scFvに適切な様式でアセンブルされて、抗原結合のための所望の構造を形成する(即ち、単一のポリペプチド鎖のVHおよびVLが互いに会合してFvを形成するように)。VLおよびVH領域は、親抗体に由来し得る、または化学的にもしくは組換え的に合成され得る。「ScFv」は、本明細書で使用される場合、一価単鎖可変断片(即ち、モノ-scFv)だけでなく、多価単鎖可変断片、例えば、ジ-scFv、トリ-scFvなどもまた指し、各々、単独でおよび組み合わせて具体的に開示される。ジ-scFvおよびトリ-scFvは、単一特異性、二特異性、三特異性などであり得、各々、単独でおよび組み合わせて具体的に開示される。
【0083】
開示される融合タンパク質では、「VHH」は、ナノボディを指す。ナノボディは、アルパカ重鎖IgG抗体(HCAb)に由来する、小さい組換え的に産生された抗原結合性VHH断片である。
【0084】
開示される融合タンパク質では、「R」および「L」は、非抗体標的化部分またはドメイン、例えば、受容体(「R」)またはリガンド(「L」)を指す。したがって、一部の実施形態では、融合タンパク質は、抗体の抗原結合ドメインの代わりに、ポリペプチド受容体またはポリペプチドリガンドを含む。抗原結合ドメインと同様、R/Lドメインは、キメラ抗体を、例えば、免疫細胞上、例えば、CD8+細胞傷害性T細胞上、腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生血管構造上で特異的に発現される、または正常組織と比較して腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生血管構造上で過剰発現される細胞表面リガンドまたは受容体に標的化および/または連結することができる。
【0085】
開示される融合タンパク質では、「-」は、キメラ融合タンパク質のドメイン間の連結を指し、必要に応じたリンカードメインもまた示し得る。典型的には、ドメインは、隣接するドメイン間で直接的に、または介在する柔軟性のあるリンカーを介してのいずれかで、ペプチド結合(複数可)によって連結されるが、連結の一部または全てについては化学的連結もまた企図される。
【0086】
開示される融合タンパク質では、「/」は、表3に関して以下でより詳細にこれも議論されるように、選択肢を示す。例えば、ScFv/VHH/R/Lは、ドメインが、本明細書で定義される「ScFv」ドメインまたは「R」ドメインまたは「L」ドメインであり得ることを示す。
【0087】
上記ドメインの各々、およびそれらの例は、以下でより詳細に議論される。
【0088】
C. キメラVLRB-Ig構造
開示される融合タンパク質は、典型的には、部分的または完全抗体の全体構造と似たダイマーまたはテトラマーをアセンブルするために使用される。開示されるキメラ抗体は、1つまたは複数のVLRB抗原結合ドメインを含有し、したがって、多くは、1つまたは複数の抗体可変ドメイン、ScFv、VHH、R、Lなどを含む。
【0089】
一部の実施形態では、キメラ抗体は、軽鎖の非存在下で、1つの、好ましくは2つの重鎖を含む。かかる抗体は、典型的には、モノマーとしての、またはヘテロダイマーとしてもしくはより好ましくはホモダイマーとして好ましい、ヒンジ-CH2-CH3/CH4構造を含む。かかる構造は、本明細書でIgG Fcとも呼ばれる(例えば、
図1Dを参照されたい)。好ましくは、キメラ抗体は、少なくとも1つの、好ましくは2つの重鎖と、1つの、好ましくは2つの軽鎖とを含むが、より高次の構造もまた形成し得る。
【0090】
好ましい実施形態では、キメラ抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成される伝統的な抗体構造を形成する。天然に存在する抗体と同様、2つの重鎖間および重鎖および軽鎖の対間で形成されるジスルフィド結合は、鎖をテトラメーター(tetrameter)へと連結することができる。
【0091】
典型的には、重鎖および軽鎖(複数可)のN末端は、1つまたは複数の抗原結合ドメイン(例えば、VLRB抗原結合ドメイン、抗体可変ドメイン、ScFv、VHH、R、Lなど)を示す。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖(複数可)のC末端は、あるいはまたはさらに、抗原結合ドメイン(例えば、VLRB抗原結合ドメイン、ScFv、VHH、R、Lなど)を示す。
【0092】
種々のホモダイマー性およびヘテロダイマー性構築が想定される。例えば、一部の実施形態では、得られたテトラマーは、一緒になってY字様形状を形成する、2つの同一な半分を有する。フォークの各末端は、同一な抗原結合部位を含有する。
【0093】
他の実施形態では、半分は、同一ではない。したがって、同一なおよび非同一な重鎖および軽鎖の種々の組合せが提供される。VLRB抗原結合ドメインは、可変ドメインおよび/またはScFvおよび/またはVHHおよび/またはRおよび/またはLと組み合わされ得る。さらに、2つまたはそれよりも多くのクラスの抗原結合ドメインまたは他の標的化部分(例えば、VLRB、抗体可変ドメイン、ScFv、VHH、Rおよび/またはL)が存在する場合、各ドメインは、同じまたは異なり得る。この方法で、キメラ抗体は、同じ抗原に対して多価および/または異なる抗原もしくは他の標的に対して多価であり得る。したがって、キメラ抗体は、調節可能な価数を有して、単一特異性、二特異性または多特異性であり得る。
【0094】
ヘテロダイマー化技術が、所望の構成成分および所望の場所のアセンブリを駆動するために取り込まれ得る。例えば、一部の実施形態では、重鎖および必要に応じて軽鎖(複数可)は、「ノブイントゥホール」技術を特色とし、それにより、相補的な突然変異が、重鎖のドメイン(例えば、CH3鎖ドメイン)および/または軽鎖/重鎖対のドメイン(例えば、CLおよびCH1ドメイン)のうちの1つまたは複数においてなされる(例えば、Merchant, et al. "An efficient route to human bispecific IgG." Nat Biotechnol. 1998;16:677-81. doi: 10.1038/nbt0798-677を参照されたい)。これらの非共有結合的相互作用は、ヒンジ領域中のジスルフィド架橋と共に、同じまたは異なる軽鎖を有する抗体のヘテロダイマー形成に向けて、アセンブリを駆動する(Spiess, et al., "Bispecific antibodies with natural architecture produced by co-culture of bacteria expressing two distinct half-antibodies." Nat Biotechnol. 2013;31:753-8. doi: 10.1038/nbt.2621.)。その各々の全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる、Shatz, "Knobs-into-holes antibody production in mammalian cell lines reveals that asymmetric afucosylation is sufficient for full antibody-dependent cellular cytotoxicity," MAbs. 2013 Nov 1; 5(6): 872-881. doi: 10.4161/mabs.26307;Rouet, et al., "Stability engineering of the human antibody repertoire", FEBS Lett. 2014 Jan 21;588(2):269-77. doi: 10.1016/j.febslet.2013.11.029. Epub 2013 Nov 28;およびRouet and Christ, "Bispecific antibodies with native chain structure." Nat Biotechnol 32, 136-137 (2014). doi.org/10.1038/nbt.2812もまた参照されたい。
【0095】
一部の実施形態では、抗体は、「クロスマブ」である。重鎖のヘテロダイマー化を容易にするノブイントゥホール技術に基づくと、軽鎖とそれらのコグネート重鎖との正確な会合は、二特異性(または多特異性)抗体の一方の半分の抗原結合性断片(Fab)内での重鎖ドメインと軽鎖ドメインとの交換によって達成される。この「クロスオーバー」は、抗原結合ドメインを保持するが、2つのアームを、軽鎖誤対形成がもはや生じることができないように異なるものにする。例えば、その全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる、Schaefer, et al., "Immunoglobulin domain crossover as a generic approach for the production of bispecific IgG antibodies", PNAS, 108(27):11187 - 11192 (2011), pnas.org/cgi/doi/10.1073/pnas.1019002108、特にCH1-CLクロスマブを参照されたい。
【0096】
例えば、一部の実施形態では、抗体は、表1の2つの重鎖および表2の2つの軽鎖から形成され、抗体は、少なくとも1つのVRLBドメインを含む。以下の表3は、標的化部分ドメインのための8つの場所と共に、非限定的な例示的な抗体属構造を提供する。
【0097】
【0098】
より具体的には、構造3a、3bおよび3cは、CLドメインのN末端およびC末端、CH1ドメインのN末端、ならびにCH3またはCH4ドメインのC末端を、ローマ数字i、ii、iii、iv、v、vi、viiおよびviiiによって示される結合/標的化部分のための融合点として示す。結合/標的化部分(即ち、各ローマ数字)は、上で議論した、VLRB、VH、VL、ScFv、VHH、RまたはLであり得る。これらのドメインの各々は、上記標的化部分ドメインのいずれかによって占有されないまたは占有されることができるが、全ての可能な組合せで、少なくとも1つのVLRBが存在することを条件とする。
【0099】
表3の構造によって包含される全ての亜属および各かかる具体的な構造は、具体的に開示される。2つまたはそれよりも多くの同じドメインが存在する場合、それは、同じまたは異なる抗原または結合パートナーを標的化し得る。実例として、ローマ数字i、ii、iii、iv、v、vi、viiおよびviiiの全てがVLRBによって占有される構造において、各VLRBは、任意の所望の場所において、たった1つのVLRBが8回存在する、もしくは8つもの多くのVLRBが各々1回存在する、またはそれらの任意の下位組合せであるなど、同じまたは他とは異なり得る。アラビア数字は、異なるVLRBを示すために使用され得る。例えば、8つの異なるVLRBが存在する場合、これらは、VLRB1、VLRB2、VLRB3、VLRB4、VLRB5、VLRB6、VLRB7またはVLRB8として示され得る。同様に、同じVLRBが8回使用される場合、8つ全てのVLRBが、VLRB1として示され得る。
【0100】
各々が同じまたは異なる標的に対して指向される、VLRB、VH、VL、ScFv、VHH、Rおよび/またはLとのより高次の組合せもまた、同じ方法で扱われ、異なる結合標的を示すためのアラビア数字をこれもまた使用して、任意の所望の位置において同じまたは異なるVH、VL、ScFv、VHH、Rおよび/またはLを有する属構造に由来する亜属および種構造において同様に標識され得るが、少なくとも1つのVLRBが存在することを条件とする。位置は、占有されないままの場合もある。典型的には、VLが存在する場合、それは、CLのN末端に融合され、CH1のN末端に融合した対形成されたVHに隣接する。
【0101】
別のアノテーションされた位置では、「CH3/CH3-CH4」は、CH3またはCH3-CH4のいずれかが、言及された位置において独立して選択され得ることを意味する。
【0102】
VLRB、VL、VH、ScFv、VHH、R、L、CHL、CH1、ヒンジ、CH2、CH3およびCH4が含まれるがこれらに限定されない他の用語は、融合タンパク質に関して上で議論したように定義される。
【0103】
構造3bおよび3cは、軽鎖および重鎖対の特異的な所望のダイマー化を駆動するための例示的な「クロスマブ」設計を提供する。
【0104】
表4は、示されるように図中にも示される、表3の属の非限定的な例示的な種を提供する。
【0105】
【0106】
D. 例示的なドメイン
1. VLRB配列
VLRBドメインは、VLRB抗体の抗原結合性構成成分を少なくとも含む。例示的なVLRB構築および配列は、例えば、各々の全体が参照により具体的に組み込まれる、米国特許出願公開第2011/0165584号、同第2012/0189640号、同第2017/0081385号および同第2017/0008947号に提供される。
【0107】
VLRBの構造は、上で議論され、そこ、ここ、および本明細書の他の場所でのかかる情報は、開示される設計戦略において使用され得る。VLRBドメインは、N末端ロイシンリッチリピート(LRRNT)、1つまたは複数のロイシンリッチリピート(LRR)(本明細書で内部LRRと呼ばれる)、C末端ロイシンリッチリピート(LRRCT)、および連結ペプチドを含み得、連結ペプチドは、アルファヘリックスを構成する。ポリペプチドの長さは、約130もしくは137ほどの少ないアミノ酸または約225もしくは285ほどの多いアミノ酸を有し得る。
【0108】
必要に応じて、連結ペプチドが、LRRCTのN末端側に位置する、より具体的には、内部LRRとLRRCTとの間に位置する。連結ペプチドは、内部LRRおよびLRRCTに連結され得る。したがって、一部の実施形態では、VLRBドメインは、LRRNT、1つまたは複数の内部LRR、連結ペプチド、およびLRRCTを、その順序で含む。一部の実施形態では、LRRNTとLRRCTとの間の内部LRR領域は、1、2、3、4、5、6、7、8または9つのロイシンリッチリピートを含み、LRR1は、LRRNTに隣接して、またはLRRNTの近くに位置する。本明細書で使用される場合、LRR1、2、3、4、5、6、7、8または9は、LRRNTからLLRCTへと連続的に並ぶとみなされる。したがって、開示されるドメインは、LRRNT、1、1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8または1~9つのLRR、連結ペプチド、およびLRRCTを、その順序で含み得る。
【0109】
ロイシンリッチリピート(LRR)は、タンパク質-タンパク質相互作用に典型的には関与する短い配列モチーフであり、LRRは、複数のロイシン残基を含む。LRRは、例えば、2位、5位、7位、12位、16位、21位および24位において、ロイシンまたは他の脂肪族残基を含有する。しかし、ロイシンまたは他の脂肪族残基は、2位、5位、7位、12位、16位、21位および24位の残基に加えて、またはその代わりに、他の位置に存在し得ることが理解され、本明細書で企図される。例えば、ロイシンは、2位ではなく3位に存在し得る。構造的に、モチーフは、ベータ-シート構造を形成することも理解される。したがって、例えば、開示されるVLRBドメインは、LRRNT、5つのLRR、LRRCTおよび連結ペプチドを含み得、7つのベータ-シート構造、および連結ペプチドのアルファヘリックスを含み得る。
【0110】
各LRRの長さおよび配列は、ドメイン中の他のLRRから、ならびにLRRNTおよびLRRCTから変動し得ることが理解される。例えば、一部の実施形態では、VLRBドメインは、LRRNT、1~9つのLRR、連結ペプチドおよびLRRCTを含み、第1の内部LRRはLRR1であり、LRR1は、約20アミノ酸未満、例えば、約18アミノ酸を含む。必要に応じて、ドメインは、LRR2~9をさらに含み、LRR2~9は、各々約25アミノ酸未満である。一部の実施形態では、LRR2~9は、各々約24アミノ酸を含む。LRR1~9は、長さおよび特定のアミノ酸配列の両方が、所与のドメインにおいて互いに同じまたは異なり得る。
【0111】
LRRNTおよびLRRCTで示される末端LRRは、典型的には、各内部LRRよりも長い。LRRNTおよびLRRCTは、不変の領域(類似の可変リンパ球受容体と比較して、ポリペプチドの残部に関連してほとんどバリエーションを有さない領域)を含む。可変領域は、受容体に特異性を提供するが、不変の領域および受容体にわたる全般的な構造的類似性は、防御免疫機能を維持することを助ける。ドメインは、LRRNTを含み得、LRRNTは、約40アミノ酸未満を含む。したがって、LRRNTは、1つまたは複数の保存的アミノ酸置換の存在下または非存在下で、アミノ酸配列CPSQCSC(配列番号1)、CPSRCSC(配列番号2)、CPAQCSC(配列番号3)、CPSQCLC(配列番号4)、CPSQCPC(配列番号5)、NGATCKK(配列番号6)、またはNEALCKK(配列番号7)を必要に応じて含む。ドメインは、LRRCTを含み得、LRRCTは、約60アミノ酸未満、必要に応じて、40~60アミノ酸長である。一部の実施形態では、LRRCTは、配列KNWIVQHASIVN-(P/L)-X-(S/Y/N/H)-GGVDNVK(配列番号8)またはKNWIVQHASIVN-(P/L)-XX-(S/Y/N/H)-GGVDNVK(配列番号9)を含み、式中、(P/L)は、その位置におけるPまたはLのいずれかを意味し、Xは、任意のアミノ酸を意味し、(S/Y/N/H)は、その位置におけるS、Y、NまたはHのいずれかを意味する。特に、LRRCTが、保存的アミノ酸置換の存在下または非存在下で、アミノ酸配列TNTPVRAVTEASTSPSKCP(配列番号10)、SGKPVRSIICP(配列番号11)、SSKAVLDVTEEEAAEDCV(配列番号12)、またはQSKAVLEITEKDAASDCV(配列番号13)を含む、ポリペプチドが、具体的に開示される。
【0112】
全てのペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質と同様、LRRCTおよびLRRNTのアミノ酸配列中に、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の性質または機能を変更しない置換が存在し得ることが理解される。かかる置換には、保存的アミノ酸置換が含まれる。
【0113】
開示される組成物は、連結ペプチドもまた含み得る。典型的には、かかるペプチドは、15アミノ酸長未満の短いペプチドであり、アルファヘリックスを形成し得る。したがって、例えば、10、11、12、13、14および15アミノ酸長の、アルファヘリックスを形成する連結ペプチドが、具体的に開示される。連結ペプチドは、ポリペプチドの構造的構成成分を連結するように機能することが理解される。ポリペプチドの連結ペプチドは、LRRCTに連結され得ることがさらに理解される。
【0114】
ポリペプチドは、ストーク領域を含み得る。ストーク領域は、典型的には、スレオニン-プロリンリッチ領域を含み、必要に応じて、GPIアンカーおよび疎水性テイルと共に、ポリペプチドの膜結合形態で存在する。
【0115】
内因性VLRB抗体は、典型的には、ポリペプチドを膜表面上に維持するグリコシル-ホスファチジル-イノシトール(GPI)アンカー、および疎水性テイルを含む。
【0116】
開示される融合タンパク質は、典型的には好ましくは可溶性であるので、融合タンパク質およびキメラ抗体構築物のVLRBドメインは、ストーク、GPIアンカーおよび疎水性テイルドメインのうちの1つ、2つまたは3つ全てを欠如し得る。一部の実施形態では、VLRBドメインは、GPIアンカーおよび疎水性テイルを欠如し、ストークドメイン(例えば、7アミノ酸)の一部または全てを含む。かかる部分的ストークドメインは、発現構築物におけるVLRBドメイン置換を容易にするための制限酵素部位として機能し得る。
【0117】
VLRBドメインは、所望の機能を有する。本明細書に記載されるVLRBドメインのポリペプチドは、抗体が抗原または薬剤に選択的に結合するのと同等に、抗原または薬剤に選択的に結合する。ポリペプチドは、必要に応じて、可変リンパ球受容体(天然に存在するまたは天然に存在しない)またはその断片もしくはバリアントである。用語「可変リンパ球受容体」は、本明細書で広い意味で使用され、用語「抗体」と同様、種々の特異性を有する種々のバージョンを含む。ポリペプチドは、本明細書に記載されるin vitroアッセイを使用して、または類似の方法によって、それらの所望の活性について試験され得、その後、それらの治療活性、診断活性または他の精製活性が、公知の試験方法に従って試験され得る。
【0118】
ポリペプチドは、細胞外薬剤(例えば、病原体)または抗原に結合することができる。薬剤または抗原には、ペプチド、ポリペプチド、脂質、糖脂質およびタンパク質が含まれ得るがこれらに限定されない。薬剤または抗原は、病原性生物が含まれるがそれらに限定されない種々の供給源に起源し得る。薬剤または抗原への結合は、選択的であることが理解される。「選択的に結合する」または「特異的に結合する」は、他の抗原または薬剤の部分的または完全な排除に至るまで、1つの薬剤または抗原に結合することを意味する。「結合する」は、アッセイ方法の背景の少なくとも約1.5倍の検出可能な結合を意味する。選択的または特異的結合について、かかる検出可能な結合は、所与の抗原または薬剤について検出され得るが、対照抗原または薬剤については検出されない。したがって、例えば、ウイルス、細菌、真菌または原生動物抗原または薬剤に選択的に結合するVLRBポリペプチドが開示される。
【0119】
開示される融合タンパク質およびVLRB-Ig抗体のVLRB抗原結合ドメインとしての使用のために使用または改変され得るポリペプチドの例には、ストーク、GPIアンカーおよび疎水性テイルドメインありの、または好ましくはなしの、その配列表およびその中で開示される全ての配列が含まれる、その全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0165584号の配列識別子1~43、45~52、54、56、60~65、68~72、75、77~78、81~119、122~125、129~132、134~144および146~155の抗原結合ドメインまたは完全配列、ならびにその各々の全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれるGenBank受託番号AY577941~AY578059およびCK988414~CK988652が含まれる。米国特許出願公開第2011/0165584号の配列識別子1~20のアミノ酸配列を含む配列は、全長VLRの例を示す。米国特許出願公開第2011/0165584号の配列識別子43のアミノ酸配列を含む配列は、シグナルペプチドありの全長VLRの例である。これらの公開された出願の各々はまた、その配列表を含むその全体が参照により組み込まれる。
【0120】
他の特定のVLR抗原結合ドメインは、以下に由来し得る:
その配列表およびその中で開示される全ての配列が含まれる、その全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0189640号の配列識別子20は、血液型決定基Hに特異的に結合する抗原特異的ポリペプチドを提供する;
その配列表およびその中で開示される全ての配列が含まれる、その全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0189640号の配列識別子5、22、47、49、51、53、55、57、59または61は、抗原特異的ポリペプチドを提供し、結合ポリペプチドは、病原体、例えば、Bacillus anthracis細胞表面ポリペプチド、例えば、BclAに特異的に結合する;
【0121】
一部の実施形態では、VLRBドメインは、VLRB MM3の抗原結合ドメインを含むまたはそれからなる。
【0122】
例示的なMM3抗原結合ドメインには、以下が含まれる:
ACPSQCSCPGTDVNCHERRLASVPAEIPTTTKILRLYINQITKLEPGVFD RLTQLTQLGLWDNQLQALPEGVFDRLVNLQKLYLNQNQLLALPVGVFDKLTQLTYLDLNNNQLKSIPRGAFDNLKSLTHIWLYGNPWDCECSDILYLKNWIVQHASIVNPHPYGGVDNVKCSGTNTPVRAVTEASTSPSKCPG(配列番号14)(これは、その配列表およびその中で開示される全ての配列が含まれる、その全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国特許出願公開第2019/0202887号の配列識別子56のポリペプチド配列である)、もしくは
ACPSQCSCPGTDVNCHERRLASVPAEIPTTTKILRLYINQITKLEPGVFDRLTQLTQLGLWDNQLQALPEGVFDRLVNLQKLYLNQNQLLALPVGVFDKLTQLTYLDLNNNQLKSIPRGAFDNLKSLTHIWLYGNPWDCECSDILYLKNWIVQHASIVNPHPYGGVDNVKCSGTNTPVRAVTEASTSPSKCPGYVATTT(配列番号15:これは、MM3抗原結合ドメインとストークの一部とを含む);
またはそのヒト化抗原結合ドメイン、例えば、
CPAACTCSNNIVDCRGKGLTEIPTNLPETITEIRLEQNTIKVIPPGAFSP YKKLRILRLYINQISELAPDAFQGLRSLNQLVLWDNKITELPKSLFEGLFSLQLLYLNANKINCLRVDAFQDLHNLNYLDLNNNKLQTIAKGTFSPLRAIQHIWLYGNPFICDCHLKWLADYLHASIVNPHPYGGVDNARCTSPRRLAN(配列番号16)(これは、米国特許出願公開第2019/0202887号の配列識別子64のポリペプチド配列である)
CPAACTCSNNIVDCRGKGLTEIPTNLPETITEIRLEQNTIKVIPPGAFSP YKKLRILRLYINQISELAPDAFQGLRSLNQLVLWDNKITELPKSLFEGLFSLQLLYLNANKINCLRVDAFQDLHNLNYLDLNNNKLQTIAKGTFSPLRAIQHIWLYGNPFICDCHLKWLADYLHHASIVNPHPYGGVDNARCTSPRRLAN(配列番号17)(これは、米国特許出願公開第2019/0202887号の配列識別子74のポリペプチド配列である);
CPAACTCSNNIVDCRGKGLTEIPTNLPETITEIRLEQNTIKVIPPGAFSP YKKLRILRLYINQISELAPDAFQGLRSLNQLVLWDNKITELPKSLFEGLFSLQLLYLNANKINCLRVDAFQDLHNLNYLDLNNNKLQTIAKGTFSPLRAIQHIWLYGNPFICDCHLKWLADYLHTHASIVNPHPYGGVDNRCTSPRRLAN(配列番号18)(これは、米国特許出願公開第2019/0202887号の配列識別子75のポリペプチド配列である);
CPAACTCSNNIVDCRGKGLTEIPTNLPETITEIRLEQNTIKVIPPGAFSP YKKLRILRLYINQISELAPDAFQGLRSLNQLVLWDNKITELPKSLFEGLFSLQLLYLNANKINCLRVDAFQDLHNLNYLDLNNNKLQTIAKGTFSPLRAIQHIWLYGNPFICDCHLKWLADYLHTNHASIVNPHPYGGVDNARCTSPRRLAN(配列番号19)(これは、米国特許出願公開第2019/0202887号の配列識別子76のポリペプチド配列である);
CPAACTCSNNIVDCRGKGLTEIPTNLPETITEIRLEQNTIKVIPPGAFSP YKKLRILRLYINQISELAPDAFQGLRSLNQLVLWDNKITELPKSLFEGLFSLQLLYLNANKINCLRVDAFQDLHNLNYLDLNNNKLQTIAKGTFSPLRAIQHIWLYGNPFICDCHLKWLADYLHTNPHASIVNPHPYGGVDNRCTSPRRLAN(配列番号20)(これは、米国特許出願公開第2019/0202887号の配列識別子77のポリペプチド配列である);
あるいは、それに対して例えば80、85、90、95、97、98%のパーセント同一性または類似性を有するそのバリアント。
【0123】
本明細書で教示されるおよびさもなくば当該分野で公知の構造および機能に基づいて、これらの配列は、ポリペプチドの属の例であることが理解される。開示される融合タンパク質およびVLRB-Ig抗体のVLRBドメイン(複数可)として使用され得る全長VLRおよびその断片が開示されることが理解される。
【0124】
VLRB抗体および抗原結合ドメインの他の例は、その各々の全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる米国特許出願公開第2020/0308247号、同第2019/0256574号、同第2019/0202897号、同第2019/0202887号、同第2017/0081385号、同第2017/0008947号、同第2016/0376348号、同第2012/0189640号、同第2012/0107929号および同第2011/0165584号に開示されている。VLRBドメインのいずれかは、例えば、米国特許出願公開第2019/0202887号などで議論されるように、ヒト化され得る。したがって、一部の実施形態では、VLRBドメインは、ヒト化VLRB抗原結合ドメインである。
【0125】
選択された抗原特異性を有する抗原特異的タンパク質を作製する方法もまた、当該分野で公知であり、開示される融合タンパク質およびキメラ抗体のVLR抗原結合ドメインを調製するために使用され得る。これらの方法は、例えば、米国特許出願公開第2012/0189640号に記載され、ヤツメウナギまたはヌタウナギに、1つまたは複数の標的抗原(例えば、標的炭水化物、標的タンパク質、標的病原体、標的糖タンパク質、標的脂質、標的糖脂質、標的腫瘍抗原、標的リガンド、標的受容体、標的細胞、または例えば、2つの炭水化物、1つの炭水化物および1つのタンパク質を含むそれらの任意の組合せなど)を投与するステップ;ヤツメウナギまたはヌタウナギのリンパ球から抗原特異的タンパク質コードRNAを単離するステップ;単離されたRNAから抗原特異的タンパク質コードcDNAを増幅するステップ;cDNAを発現ベクター中にクローニングするステップ;発現ベクターで形質転換された細菌において発現ベクターを発現させるステップ;cDNAクローンを単離するステップ;培養細胞にcDNAクローンをトランスフェクトするステップ;標的抗原に結合する能力について培養物上清をスクリーニングするステップ、および標的抗原に結合する抗原特異的タンパク質を、上清から単離するステップを含み得る。
【0126】
他の実施形態では、作製する方法は、総RNAの調製、オリグ(olig)-dTプライマーを用いたcDNAの調製、次いで、クローニングを容易にするようにベクター配列と相補的な領域もまた含有するVLRB遺伝子特異的プライマーを用いたcDNAの増幅を含み得る。
【0127】
トランスフェクトーマと呼ばれるトランスフェクション/スクリーニングプロセスが使用され得るが、これは、数百のトランスフェクタントがスクリーニングされる低スループットであり、数百万(酵母)または数億(ファージ)がスクリーニングされる酵母ディスプレイおよびファージ/ファージミドディスプレイによって大部分が取って代わられている。VLRBファージディスプレイについては、例えば、Hassan, et al., "Generation of lamprey monoclonal antibodies ("Lambribodies") using a phage display system," Biomolecules, 9, 868 (2019); doi:10.3390/biom9120868を参照されたい;酵母ディスプレイについては、Tasumi, et al., "High-affinity lamprey VLRA and VLRB monoclonal antibodies," Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 106, 12891-12896 (2009)を参照されたい。その各々の全体はこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
【0128】
別の例示的なVLRB抗原結合ドメインは、
ACPSQCSCSGTTVNCKSKSLASVPAGIPTTTRVLYLNDNQITKLEPGVFDRLVNLQTLWLNNNQLTSLPAGLFDSLTQLTILALDSNQLQALPVGVFGRLVDLQQLYLGSNQLSALPSAVFDRLVHLKELLMCCNKLTELPRGIERLTHLTHLALDQNQLKSIPHGAFDRLSSLTHAYLFGNPWDCECRDIMYLRNWVADHTSIVMRWDGKAVNDPDSAKCAGTNTPVRAVTEASTSPSKCPGYVATTT(配列番号21、O13 VLRB抗原結合ドメイン)である。
【0129】
2. 抗体可変および受容体/リガンドドメイン
それ由来のVH、VL、ScFvおよびVHH抗原結合ドメインが、開示される融合タンパク質およびVLRB抗体において利用され得る、例示的な抗体が提供される。かかる抗体には、以下が含まれるがこれらに限定されない:ダラツムマブ(DARZALEX(登録商標))ならびにReichert, Mabs,3(1): 76-99 (2011)で議論されているもの、例えば、AIN-457、バピネオズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ダロツズマブ、エプラツズマブ、ファーレツズマブ、ギレンツキシマブ(girentuximab)(WX-G250)、ナプツモマブエスタフェナトクス、ネシツムマブ、オビヌツズマブ、オテリキシズマブ、パギバキシマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、REGN88、レスリズマブ、ソラネズマブ、T1h、テプリズマブ、トラスツズマブエムタンシン、トレメリムマブ、ベドリズマブ、ザルツムマブおよびザノリムマブ、ならびに以下が含まれるがこれらに限定されない他の場所:非ホジキンリンパ腫を処置するために承認されたキメラ抗CD20抗体であるリツキシマブ(Rituxan(登録商標)、IDEC/Genentech/Roche)(例えば、米国特許第5,736,137号を参照されたい);Genmabによって現在開発中の抗CD20であるHuMax-CD20、米国特許第5,500,362号に記載された抗CD20抗体、AME-133(Applied Molecular Evolution)、hA20(Immunomedics,Inc.)、HumaLYM(Intracel)およびPRO70769(PCT/US2003/040426、表題「Immunoglobulin Variants and Uses Thereof」)、乳房がんを処置するために承認されたヒト化抗Her2/neu抗体であるトラスツズマブ(Herceptin(登録商標)、Genentech)(例えば、米国特許第5,677,171号を参照されたい);Genentechによって現在開発中であるペルツズマブ(rhuMab-2C4、Omnitarge);米国特許第4,753,894号に記載された抗Her2抗体;種々のがんについて臨床試験中のキメラ抗EGFR抗体であるセツキシマブ(Erbitux(登録商標)、Imclone)(米国特許第4,943,533号;PCT WO 96/40210);Abgenix-Immunex-Amgenによって現在開発中のABX-EGF(米国特許第6,235,883号);Genmabによって現在開発中のHuMax-EGFr(米国特許出願第10/172,317号);425、EMD55900、EMD62000およびEMD72000(Merck KGaA)(米国特許第5,558,864号;Murthy et al. 1987, Arch Biochem Biophys. 252(2):549-60;Rodeck et al., 1987, J Cell Biochem. 35(4):315-20;Kettleborough et al., 1991, Protein Eng. 4(7):773-83);1CR62(Institute of Cancer Research)(PCT WO 95/20045;Modjtahedi et al., 1993, J. Cell Biophys. 1993, 22(1-3):129-46;Modjtahedi et al., 1993, Br J Cancer. 1993, 67(2):247-53;Modjtahedi et al, 1996, Br J Cancer, 73(2):228-35;Modjtahedi et al, 2003, Int J Cancer, 105(2):273-80);TheraCIM hR3(YM Biosciences、Canada and Centro de Immunologia Molecular、Cuba(米国特許第5,891,996号;米国特許第6,506,883号;Mateo et al, 1997, Immunotechnology, 3(1):71-81);mAb-806(Ludwig Institute for Cancer Research、Memorial Sloan-Kettering)(Jungbluth et al. 2003, Proc Natl Acad Sci USA. 100(2):639-44);KSB-102(KS Biomedix);MRI-1(IVAX、National Cancer Institute)(PCT WO 0162931A2);ならびにSC100(Scancell)(PCT WO 01/88138);B細胞慢性リンパ球性白血病の処置のために現在承認されているヒト化mAbであるアレムツズマブ(Campath(登録商標)、Millenium);Ortho Biotech/Johnson & Johnsonによって開発された抗CD3抗体であるムロモナブ-CD3(Orthoclone OKT3(登録商標))、IDEC/Schering AGによって開発された抗CD20抗体であるイブリツモマブチウキセタン(Zevalin(登録商標))、Celltech/Wyethによって開発された抗CD33(p67タンパク質)抗体であるゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg(登録商標))、Biogenによって開発された抗LFA-3 Fc融合物であるアレファセプト(Amcvive(登録商標))、Centocor/Lillyによって開発されたアブシキシマブ(ReoPro(登録商標))、Novartisによって開発されたバシリキシマブ(Simulect(登録商標))、Medimmuneによって開発されたパリビズマブ(Synagis(登録商標))、Centocorによって開発された抗TNFアルファ抗体であるインフリキシマブ(Remicade(登録商標))、Abbottによって開発された抗TNFアルファ抗体であるアダリムマブ(Humira(登録商標))、Celltechによって開発された抗TNFアルファ抗体であるHumicade(登録商標)、Centocorによって開発された完全ヒトTNF抗体であるゴリムマブ(CNTO-148)、Immunex/Amgenによって開発されたp75 TNF受容体Fc融合物であるエタネルセプト(Enbrel(登録商標))、Rocheによって以前に開発されたp55TNF受容体Fc融合物であるレネルセプト、Abgenixによって開発中の抗CD147抗体であるABX-CBL、Abgenixによって開発中の抗IL8抗体であるABX-IL8、Abgenixによって開発中の抗MUC18抗体であるABX-MAI、Antisomaによって開発中の抗MUC1であるペムツモマブ(Pemtumomab)(R1549,90Y-muHMFG1)、Antisomaによって開発中の抗MUC1抗体であるTherex(R1550)、Antisomaによって開発中のAngioMab(AS1405)、Antisomaによって開発中のHuBC-1、Antisomaによって開発中のチオプラチン(Thioplatin)(AS1407)、Biogenによって開発中の抗アルファ-4-ベータ-1(VLA-4)およびアルファ-4-ベータ-7抗体であるAntegrene(ナタリズマブ)、Biogenによって開発中の抗VLA-1インテグリン抗体であるVLA-1 mAb、Biogenによって開発中の抗リンホトキシンベータ受容体(LTBR)抗体であるLTBR mAb、Cambridge Antibody Technologyによって開発中の抗TGF-ベータ2抗体であるCAT-152、Abbottによって開発中の抗IL-12 p40抗体であるABT 874(J695)、Cambridge Antibody TechnologyおよびGenzymeによって開発中の抗TGFベータ1抗体であるCAT-192、Cambridge Antibody Technologyによって開発中の抗エオタキシン-1(Eotaxinl)抗体であるCAT-213、Cambridge Antibody TechnologyおよびHuman Genome Sciences Inc.によって開発中のLyntphoStat-B(登録商標)抗Blys抗体、Cambridge Antibody TechnologyおよびHuman Genome Sciences,Inc.によって開発中の抗TRAIL-R1抗体であるTRAIL-R1mAb、Genentechによって開発中の抗VEGF抗体であるAvastin(登録商標)(ベバシズマブ、rhuMAb-VEGF)、Genentechによって開発中の抗HER受容体ファミリー抗体、Genentechによって開発中の抗組織因子抗体である抗組織因子(ATF)、Genentechによって開発中の抗IgE抗体であるXolair(登録商標)(オマリズマブ(Omalizurnab))、GenentechおよびXomaによって開発中の抗CD11a抗体であるRaptiva(登録商標)(エファリズマブ(Efalizurnab))、GenentechおよびMillenium Pharmaceuticalsによって開発中のMLN-02抗体(以前にはLDP-02)、Genmabによって開発中の抗CD4抗体であるHuMax CD4、GenmabおよびAmgenによって開発中の抗IL15抗体であるHuMax-IL15、GenmabおよびMedarexによって開発中のHuMax-Inflam、GenmabおよびMedarexおよびOxford GcoSciencesによって開発中の抗ヘパラナーゼI抗体であるHuMax-Cancer、GenmabおよびAmgenによって開発中のHuMax-Lymphoma、Genmabによって開発中のHuMax-TAC、IDEC Pharmaceuticalsによって開発中の抗CD40L抗体であるIDEC-131、IDEC Pharmaceuticalsによって開発中の抗CD4抗体であるIDEC-151(クレノリキシマブ)、IDFC Pharmaceuticalsによって開発中の抗CD80抗体であるIDEC-114、IDEC Pharmaceuticalsによって開発中の抗CD23であるIDEC-152、IDEC Pharmaceuticalsによって開発中の抗マクロファージ遊走因子(MIF)抗体、Imcloneによって開発中の抗イディオタイプ抗体であるBEC2、Imcloneによって開発中の抗KDR抗体であるIMC-1C11、Imcloneによって開発中の抗flk-1抗体であるDC101、Imcloneによって開発中の抗VEカドヘリン抗体、Immunomedicsによって開発中の抗癌胎児性抗原(CEA)抗体であるCEA-Cide(登録商標)(ラベツズマブ)、Immunomedicsによって開発中の抗CD22抗体であるLymphoCide(登録商標)(エプラツズマブ)、Immunomedicsによって開発中のAFP-Cide、Immunomedicsによって開発中のMyelomaCide、Immunomedicsによって開発中のLkoCide、Immunomedicsによって開発中のProstaCide、Medarexによって開発中の抗CTLA4抗体であるMDX-010、Medarexによって開発中の抗CD30抗体であるMDX-060、Medarexによって開発中のMDX-070、Medarexによって開発中のMDX-018、MedarexおよびImmuno-Designed Moleculesによって開発中の抗Her2抗体であるOsidem(登録商標)(IDM-I)、MedarexおよびGenmabによって開発中の抗CD4抗体であるHuMaxe-CD4、MedarexおよびGenmabによって開発中の抗IL15抗体であるHuMax-IL15、MedarexおよびCentocor/J&Jによって開発中の抗TNFα抗体であるCNTO 148、Centocor/J&Jによって開発中の抗サイトカイン抗体であるCNTO 1275、MorphoSysによって開発中の抗細胞間接着分子-1(ICAM-1)(CD54)抗体であるMOR101およびMOR102、MorphoSysによって開発中の抗線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR-3)抗体であるMOR201、Protein Design Labsに
よって開発中の抗CD3抗体であるNuvion(登録商標)(ビジリズマブ)、Protein Design Labsによって開発中の抗ガンマインターフェロン抗体であるHuZAFO、Protein Design Labsによって開発中の抗α5β1インテグリン、Protein Design Labsによって開発中の抗IL-12、Xomaによって開発中の抗Ep-CAM抗体であるING-1、GenentechおよびNovartisによって開発中のXolair(登録商標)(オマリズマブ)ヒト化抗IgE抗体、ならびにXomaによって開発中の抗ベータ2インテグリン抗体であるMLN01。別の実施形態では、治療薬には以下が含まれる:KRN330(Kirin);huA 33抗体(A33、Ludwig Institute for Cancer Research);CNTO 95(アルファVインテグリン、Centocor);MEDI-522(アルファV133インテグリン、Medimmune);ボロシキシマブ(αVβ1インテグリン、Biogen/PDL);ヒトmAb 216(B細胞グリコシル化(glycosolated)エピトープ、NCI);BiTE MT103(二特異性CD19×CD3、Medimmune);4G7×H22(二特異性B細胞×FcガンマR1、Meclarex/Merck KGa);rM28(二特異性CD28×MAPG、米国特許第EP1444268);MDX447(EMD 82633)(二特異性CD64×EGFR、Medarex);カツマキソマブ(removah)(二特異性EpCAM×抗CD3、Trion/Fres);エルツマキソマブ(Ertumaxomab)(二特異性HER2/CD3、Fresenius Biotech);オレゴボマブ(OvaRex)(CA-125、ViRexx);Rencarex(登録商標)(WX G250)(炭酸脱水酵素IX、Wilex);CNTO 888(CCL2、Centocor);TRC105(CD105(エンドグリン)、Tracon);BMS-663513(CD137アゴニスト、Brystol Myers Squibb);MDX-1342(CD19、Medarex);シプリズマブ(MEDI-507)(CD2、Medimmune);オファツムマブ(Humax-CD20)(CD20、Genmab);リツキシマブ(Rituxan)(CD20、Genentech);THIOMAB(Genentech);ベルツズマブ(hA20)(CD20、Immunomedics);エプラツズマブ(CD22、Amgen);ルミリキシマブ(IDEC 152)(CD23、Biogen);ムロモナブ-CD3(CD3、Ortho);HuM291(CD3 fc受容体、PDL Biopharma);HeFi-1(CD30、NCI);MDX-060(CD30、Medarex);MDX-1401(CD30、Medarex);SGN-30(CD30、Seattle Genetics);SGN-33(リンツズマブ)(CD33、Seattle Genetics);ザノリムマブ(HuMax-CD4)(CD4、Genmab);HCD 122(CD40、Novartis);SGN-40(CD40、Seattle Genetics);Campathlh(アレムツズマブ)(CD52、Genzyme);MDX-1411(CD70、Medarex);hLL1(EPB-I)(CD74.38、Immunomedics);ガリキシマブ(IDEC-144)(CD80、Biogen);MT293(TRC093/D93)(切断型コラーゲン、Tracon);HuLuc63(CS1、PDL Pharma);イピリムマブ(MDX-010)(CTLA4、Brystol Myers Squibb);トレメリムマブ(チシリムマブ(Ticilimumab)、CP-675,2)(CTLA4、Pfizer);1-IGS-ETR1(マパツムマブ(Mapatumumab))(DR4TRAIL-R1アゴニスト、Human Genome Science/Glaxo Smith Kline);AMG-655(DR5、Amgen);アポマブ(Apomab)(DR5、Genentech);CS-1008(DR5、Daiichi Sankyo);HGS-ETR2(レクサツムマブ)(DR5TRAIL-R2アゴニスト、HGS);セツキシマブ(Erbitux)(EGFR、Imclone);IMC-11F8(EGFR、Imclone);ニモツズマブ(EGFR、YM Bio);パニツムマブ(Vectabix)(EGFR、Amgen);ザルツムマブ(HuMaxEGFr)(EGFR、Genmab);CDX-110(EGFRvIII、AVANT Immunotherapeutics);アデカツムマブ(adecatumumab)(MT201)(Epcam、Merck);エドレコロマブ(Panorex、17-1A)(Epcam Glaxo/Centocor);MORAb-003(葉酸受容体a、Morphotech);KW-2871(ガングリオシドGD3、Kyowa);MORAb-009(GP-9、Morphotech);CDX-1307(MDX-1307)(hCGb、Celldex);トラスツズマブ(Herceptin)(HER2、Celldex);ペルツズマブ(rhuMAb 2C4)(HER2(DI)、Genentech);アポリズマブ(HLA-DRベータ鎖、PDL Pharma);AMG-479(IGF-1R、Amgen);抗IGF-1R R1507(IGF1-R、Roche);CP 751871(IGF1-R、Pfizer);IMC-A12(IGF1-R、Imclone);B1111022(Biogen);Mik-ベータ-1(IL-2Rb(CD122)、Hoffman LaRoche);CNTO 328(IL6、Centocor);抗KIR(1-7F9)(キラー細胞Ig様受容体(KIR)、Novo);Hu3S193(ルイス(y)、Wyeth、Ludwig Institute of Cancer Research);hCBE-11(LTβR、Biogen);HuHMFG1(MUC1、Antisoma/NCI);RAV 12(N結合型炭水化物エピトープ、Raven);CAL(副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTH-rP)、University of California);CT-011(PD1、CtireTech);MDX-1106(ono-4538)(PDL Nileclarox/Ono);MAb CT-011(PD1、Curetech);IMC-3G3(PDGFRa、Imclone);バビツキシマブ(ホスファチジルセリン、Peregrine);huJ591(PSMA、Cornell Research Foundation);muJ591(PSMA、Cornell Research Foundation);GC1008(TGFb(汎)阻害剤(IgG4)、Genzyme);インフリキシマブ(Remicade)(TNFα、Centocor);A27.15(トランスフェリン受容体、Salk Institute、INSERN WO 2005/111082);E2.3(トランスフェリン受容体、Salk Institute);ベバシズマブ(Avastin)(VEGF、Genentech);HuMV833(VEGF、Tsukuba Research Lab-WO/2000/034337、University of Texas);IMC-18F1(VEGFR1、Imclone);ならびにIMC-1121(VEGFR2、Imclone)。
【0130】
他の抗体には、抗原結合ドメインの一方または両方が本明細書に議論されるようにVLRB-Ig中に取り込まれている、二特異性T細胞エンゲージャーが含まれる。適切な二特異性抗体および他の抗体の例は、Tian, et al., "Bispecific T cell engagers: an emerging therapy for management of hematologic malignancies", Journal of Hematology & Oncology volume 14, Article number: 75 (2021)中で議論されているが、表5のものに限定されない。
【表5-1】
【表5-2】
【0131】
例示的な非VLRB抗原結合ドメインは、低親和性TR66抗CD3 scFv(KD=100nM)であり、以下の実験において使用される:
DVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTRYTMHWVRQAPGQGLEWIGYINPSRGYTNYADSVKGRFTITTDKSTSTAYMELSSLRSEDTATYYCARYYDDHYCLDYWGQGTTVTVSSGEGTSTGSGGSGGSGGADDIVLTQSPATLSLSPGERATLSCRASQSVSYMNWYQQKPGKAPKRWIYDTSKVASGVPARFSGSGSGTDYSLTINSLEAEDAATYYCQQWSSNPLTFGGGTKVEIKS (配列番号22)(その全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれるWO 2007/073499A2もまた参照されたい)および抗CD3高親和性VH-L-VL scFv
【化1】
(その全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれるWO 2017/091656もまた参照されたい)であり、式中、CDRは太字で同定され、リンカーは小文字で示される。
【0132】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、免疫細胞、腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生血管構造上で特異的に発現される、または正常組織と比較して腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生血管構造上で過剰発現される細胞表面受容体またはリガンドに結合するR/Lドメインを含む。腫瘍はまた、多数のリガンドを、腫瘍の成長および発達に影響を与える腫瘍微小環境中に分泌する。したがって、R/Lは、細胞、例えば、免疫細胞の表面上で典型的には発現されるリガンド、例えば、組織適合性抗原ファミリーのメンバー、または増殖因子、サイトカインおよびケモカインが含まれるがこれらに限定されない、腫瘍の表面上で発現されるリガンドに結合する受容体(複数可)であり得る。他の実施形態では、R/Lは、免疫細胞または腫瘍の表面上に発現される受容体に結合するリガンドである。
【0133】
したがって、一部の実施形態では、融合タンパク質は、ケモカインまたはケモカイン受容体に特異的に結合するドメインを含有する。ケモカインは、それらのコグネートGタンパク質共役受容体(GPCR)に結合して、細胞性応答、通常は指向性の遊走または走化性を惹起する、可溶性の小さい分子量(8~14kDa)のタンパク質である。腫瘍細胞は、ケモカインを分泌し、それに応答し、これが、増加した内皮細胞動員および血管形成、免疫学的監視の転覆、ならびに腫瘍白血球プロファイルを操って、ケモカイン放出が腫瘍の成長および離れた部位への転移を可能にするようにそれを歪めることによって達成される成長を容易にする。したがって、ケモカインは、腫瘍進行にとって極めて重要である。
【0134】
ケモカインの保存された2つのN末端システイン残基の位置決めに基づいて、これらは、4つの群、即ち、CXC、CC、CX3CおよびCケモカインへと分類される。CXCケモカインは、CXC配列に先行するモチーフ「glu-leu-arg(ELRモチーフ)」の存在または非存在に基づいて、ELR+およびELR-ケモカインへとさらに分類され得る。CXCケモカインは、好中球、リンパ球、内皮および上皮細胞上のそれらのコグネートケモカイン受容体に結合し、それを活性化する。CCケモカインは、樹状細胞、リンパ球、マクロファージ、好酸球、ナチュラルキラー細胞のいくつかのサブセットに対して作用するが、マウス好中球以外の好中球はCCケモカイン受容体を欠如するので、好中球を刺激することはない。およそ50種のケモカインおよびわずか20種のケモカイン受容体が存在し、したがって、リガンド/受容体相互作用のこの系には、かなりの冗長性が存在する。
【0135】
腫瘍および間質細胞から産生されたケモカインは、腫瘍および間質細胞上に存在するケモカイン受容体に結合する。腫瘍細胞の自己分泌ループおよび腫瘍と間質細胞との間のパラ分泌刺激ループは、腫瘍の進行を容易にする。特に、CXCR2、CXCR4、CCR2およびCCR7は、腫瘍形成および転移において主要な役割を果たす。CXCR2は、血管形成において極めて重要な役割を果たし、CCR2は、腫瘍微小環境中へのマクロファージの動員において役割を果たす。リンパ節は、CCR7に対するリガンドであるCCL21を有するので、CCR7は、センチネルリンパ節中への腫瘍細胞の転移に関与する。CXCR4は、広範な種々の腫瘍の転移性の伝播に主に関与する。
【0136】
3. 定常ドメイン
ある特定の実施形態では、CHL、CH1、ヒンジ、CH2、CH3および/またはCH4は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列が含まれるがこれらに限定されない哺乳動物配列である。これらは、キメラ抗体が投与される対象にとって内因性の配列であり得る。好ましい実施形態では、配列は、ヒト配列である。ある特定の実施形態では、CHL、CH1、CH2および/またはCH3配列は、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgM、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4アイソタイプ由来であり、および/またはCH4配列は、IgEもしくはIgMアイソタイプ由来である。CHL、CH1、ヒンジ、CH2、CH3および/またはCH4配列のうちのいずれかは、天然に存在する配列、またはそれと少なくとも70、75、80、85、90、95もしくはそれよりも高い配列同一性を有するそのバリアントであり得る。好ましいバリアントは、定常ドメインのうちの1つもしくは複数、または全体としてのキメラ抗体の活性または性能を改善する、またはあるいは、活性、例えば、1つもしくは複数のFcRへの結合または補体の活性化を排除する、直交性突然変異である。
【0137】
CLアミノ酸配列は、ラムダ軽鎖定常ドメイン配列であり得る。特定の実施形態では、CLアミノ酸配列は、ヒトラムダ軽鎖定常ドメイン配列、例えば、その全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれるUniProt受託番号P0CG04のラムダ軽鎖配列である。
GQPKANPTVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADGSPVKAGVETTKPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS (配列番号23)は、P0CG04・IGLC1_HUMAN、免疫グロブリンラムダ定常1のポリペプチド配列である。したがって、一部の実施形態では、CLドメインは、配列番号23、またはそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその断片もしくはバリアントである。
【0138】
CLアミノ酸配列は、カッパ軽鎖定常ドメイン配列であり得る。好ましい実施形態では、CLアミノ酸配列は、ヒトカッパ軽鎖定常ドメイン配列である、例えば、カッパ軽鎖配列は、その全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれるUniProt受託番号P01834である。
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC (配列番号24)は、P01834・IGKC_HUMAN免疫グロブリンカッパ定常のポリペプチド配列である。したがって、一部の実施形態では、CLドメインは、配列番号24、またはそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその断片もしくはバリアントである。
【0139】
一部の実施形態では、重鎖ドメイン配列のうちの1つまたは複数は、その各々の全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる、UniProt受託番号またはP0DOX5またはP01857のヒトIgG1配列に由来し、その配列は以下に提供される:
【化2】
は、P0DOX5・IGG1_HUMAN、免疫グロブリンガンマ-1重鎖のポリペプチド配列であり、これは、以下のドメイン/領域アノテーションもまた提供する:
【表6】
【化3】
は、P01857・IGHG1_HUMAN、免疫グロブリン重鎖定常ガンマ1のポリペプチド配列であり、これは、以下のドメイン/領域アノテーションもまた提供する:
【表7】
【0140】
配列番号25、P0DOX5・IGG1_HUMAN、免疫グロブリンガンマ-1重鎖および配列番号26、P01857・IGHG1_HUMAN、免疫グロブリン重鎖定常ガンマ1は、配列番号25の抗原認識に関与する可変(V)ドメインを欠如する配列番号26に関連する。配列番号25のこの可変ドメインは、典型的には、開示される構築物では利用されない(例えば、存在しないまたは置換されている)。その一部が以下でより詳細に議論される例示的な突然変異部位は、配列番号25および26中で太字で示される。
【0141】
したがって、一部の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号26、もしくは配列番号25の対応する配列のCH1、ヒンジ、CH2および/もしくはCH3領域(複数可)のうちの1つもしくは複数、またはそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその断片もしくはバリアントを含む。
【0142】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、好ましくは配列番号25の可変ドメイン(例えば、アミノ酸120~444)もしくは対応する配列なしの配列番号26、またはそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその断片もしくはバリアントを含む。一部の実施形態では、バリアントは、太字残基のうちの1つまたは複数において突然変異を含み、必要に応じて、突然変異のうちの1つまたは複数は、以下でより詳細に議論される。
【0143】
例示的な実施形態では、CH1配列は、IgG1アイソタイプ由来である。具体的な例では、CH1配列は、UniProt受託番号P01857(配列番号26)、アミノ酸1~98:
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKV(配列番号57)、またはそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその断片もしくはバリアントである。
【0144】
例示的な実施形態では、ヒンジ配列は、IgG1アイソタイプ由来である。具体的な例では、CH1配列は、UniProt受託番号P01857(配列番号26)、アミノ酸99~110、EPKSCDKTHTCP(配列番号58)、またはそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその断片もしくはバリアントである。
【0145】
ある特定の実施形態では、CH1配列およびCL配列は別々に、内因性CH1およびCL配列中に直交性の改変、例えば、操作されたジスルフィド架橋、荷電対突然変異、またはそれらの組合せを導入する改変をそれぞれ含む。例えば、その各々の全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,053,562号、同第9,527,927号、同第8,592,562号、同第9,248,182号および同第9,358,286号を参照されたい。
【0146】
例示的なCH2配列は、UniProt受託番号P01857(配列番号26)、アミノ酸111~223:
【化4】
のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその断片もしくはバリアントである。一部の実施形態では、バリアントは、太字残基のうちの1つまたは複数において突然変異を含み、必要に応じて、突然変異のうちの1つまたは複数は、以下でより詳細に議論される。開示される抗体のために有用なオルソロガスなCH2アミノ酸配列は、その各々の全体がこれにより参照により本明細書に組み込まれる国際PCT出願WO2017/011342およびWO2017/106462中に、より詳細に記載されている。
【0147】
CH2配列は、N末端可変ドメイン-定常ドメイン(例えば、CH1)をCH2ドメインに連結するN末端ヒンジ領域ペプチドを含み得るか、またはさもなくばそれを介して連結され得る。さらに、ヒンジ領域は、典型的には、N末端可変ドメイン-定常ドメインセグメントとCH2ドメインとの間の柔軟性、ならびに重鎖間(例えば、第1のポリペプチド鎖と第3のポリペプチド鎖との間)にジスルフィド架橋を形成するアミノ酸配列モチーフの両方を提供する。
【0148】
一部の実施形態では、CH3配列は、IgGアイソタイプ、例えば、IgG1アイソタイプ由来である。一部の実施形態では、CH3配列は、IgAアイソタイプ由来である。特定の実施形態では、CH3配列は、UniProt受託番号P01857(配列番号26)、アミノ酸224~330:
【化5】
、またはそれと少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するその断片もしくはバリアントである。一部の実施形態では、バリアントは、太字残基のうちの1つまたは複数において突然変異を含み、必要に応じて、突然変異のうちの1つまたは複数は、以下でより詳細に議論される。
【0149】
一部の実施形態では、CH3配列は、内因性CH3配列のセグメント、または操作もしくは改変された配列である。
【0150】
1つまたは複数の重鎖突然変異(例えば、挿入、欠失および/または置換)が、開示される構築物において利用される配列または断片中に取り込まれ得る。例示的な突然変異には、UniProt受託番号P0DOX5(配列番号25)に言及して以下に提供されるもの、P01857(配列番号26)および丸括弧中の例示的なドメイン(配列番号62~64)中の対応する残基、ならびに同様に、他のIgG参照配列中で同定されるもの、または他のIgG参照配列中の対応する残基に適用されるものが含まれる。例えば、特定の実施形態では、CH3配列は、N末端アミノ酸G343(224)およびQ344(225)を欠如する内因性CH3配列を有する。特定の実施形態では、CH3配列は、C末端アミノ酸P447(328)、G448(329)およびK449(330)を欠如する内因性CH3配列を有する。特定の実施形態では、CH3配列は、N末端アミノ酸G343(224)およびQ344(225)ならびにC末端アミノ酸P447(328)、G448(329)およびK449(330)の両方を欠如する内因性CH3配列を有する。
【0151】
ある特定の実施形態では、CH3配列は、1つまたは複数の置換を有する天然に存在する配列である。特定の実施形態では、突然変異は、特定のCH3配列の特異的対形成をガイドするため、免疫原性を低減させるため、またはそれらの組合せのために内因性CH3配列中に導入される1つまたは複数の直交性突然変異である。一部の実施形態では、CH3配列は、ノブ-ホール直交性突然変異;直交性突然変異を含有するCH3ドメインと共に操作されたジスルフィド架橋を形成するS356(237)CもしくはY351(232)C突然変異のいずれかのイソアロタイプ(isoallotype)突然変異、またはそれらの組合せを含む。一部の好ましい実施形態では、イソアロタイプ突然変異と組み合わされるノブ-ホール直交性突然変異は、以下の突然変異的変化である:D358(239)E、L360(241)M、T368(249)S、L370(251)AおよびY409(290)V。1つのアロタイプの特定のアミノ酸を別のアロタイプの特定のアミノ酸で置き換えることによってキメラ抗体の免疫原性を低減させるように操作されたCH3配列は、それが教示する全てについてこれにより参照により本明細書に組み込まれるStickler et al. (Genes Immun. 2011 April; 12(3): 213-221)により詳細に記載されるように、本明細書でイソアロタイプ突然変異と呼ばれる。特定の実施形態では、G1m1アロタイプの特定のアミノ酸が、置き換えられる。好ましい実施形態では、イソアロタイプ突然変異D358(239)EおよびL360(241)Mが、CH3配列中でなされる。一部の特定の例では、ヒトIgG1 CH3アミノ酸配列は、以下の突然変異的変化を有し得る:P345(226)V;Y351(232)C;およびトリペプチド挿入447(328)P、448(329)G、449(330)K。他の実施形態では、以下の突然変異的変化を有するヒトIgG1 CH3配列:T368(249)K;およびトリペプチド挿入447(328)K、448(329)S、449(330)C。他の実施形態では、ヒトIgG1 CH3は、以下の突然変異的変化を有する配列を有する:Y349(230)Cおよびトリペプチド挿入、447(328)P、448(329)G、449(330)K、またはその他の点では内因性のCH3配列中に取り込まれた449(330)C突然変異を有するヒトIgG1 CH3配列。
【0152】
一部の実施形態では、Fc領域(例えば、CH2-CH3(-CH4)ドメイン(複数可))は、Fc媒介性エフェクター機能を増加させるように改変されている。例えば、一部の実施形態では、Fcドメインは、腫瘍もしくは腫瘍関連新生血管構造上で特異的に発現される、または正常組織と比較して腫瘍もしくは腫瘍関連新生血管構造上で過剰発現される特異的Fc受容体への結合を増強する1つまたは複数のアミノ酸挿入、欠失または置換を含有し得る。
【0153】
非ホジキンリンパ腫またはワルデンシュトレームマクログロブリン血症についてリツキシマブ(CD20に対するキメラマウス/ヒトIgG1モノクローナル抗体)で処置された患者における治療転帰は、ヒトIgG1のFcドメインに対する別個の固有の親和性を有するFcγ受容体の対立遺伝子バリアントの、個体の発現と相関した。特に、低親和性活性化性Fc受容体CD16A(FcγRIIIA)の高親和性対立遺伝子を有する患者は、より高い応答率を示し、非ホジキンリンパ腫の場合には、改善された無進行生存を示した。別の実施形態では、Fcドメインは、低親和性阻害性Fc受容体CD32B(FcγRIIB)への結合を低減させ、低親和性活性化性Fc受容体CD16A(FcγRIIIA)への結合の野生型レベルを保持するまたは結合を増強する1つまたは複数のアミノ酸挿入、欠失または置換を含有し得る。好ましい実施形態では、Fcドメインは、CD16Aへの結合を増強するアミノ酸挿入、欠失または置換を含有する。CD16Aへの結合を増加させ、CD32Bへの結合を低減させる、ヒトIgG1のFcドメイン中の多数の置換は、当該分野で公知であり、Stavenhagen, et al., Cancer Res., 57(18):8882-90 (2007)に記載されている。CD32Bへの低減された結合および/またはCD16Aへの増加した結合を有するヒトIgG1 Fcドメインの例示的なバリアントは、F245(130)L、R294(175)P、Y302(183)L、V307(188)IまたはP398(279)L置換を含有する。これらのアミノ酸置換は、ヒトIgG1 Fcドメイン中に任意の組合せで存在し得る。一実施形態では、ヒトIgG1 Fcドメインバリアントは、F245(130)L、R294(175)PおよびY302(183)L置換を含有する。別の実施形態では、ヒトIgG1 Fcドメインバリアントは、F245L、R294P、Y302L、V307(188)IおよびP398(279)L置換を含有する。
【0154】
別の実施形態は、それらの半減期を増加させるFcRへの結合を低減させる、IgG2-4ハイブリッドおよびIgG2-4突然変異体を含む。代表的なIG2-4ハイブリッドおよびIgG4突然変異体は、Angal, S. et al. (1993) "A Single Amino Acid Substitution Abolishes The Heterogeneity Of Chimeric Mouse/Human (Igg4) Antibody," Molec. Immunol. 30(1):105-108;Mueller, J.P. et al. (1997) "Humanized Porcine VCAM-Specific Monoclonal Antibodies With Chimeric Igg2/G4 Constant Regions Block Human Leukocyte Binding To Porcine Endothelial Cells," Mol. Immun. 34(6):441-452;および米国特許第6,982,323号に記載されている。一部の実施形態では、IgG1および/またはIgG2ドメインは、欠失されており、例えば、Angal, s. et al.は、セリン241(122)がプロリンで置き換えられたIgG1およびIgG2を記載している。
【0155】
キメラ抗体における置換、付加または欠失は、抗体のFc領域中にあり得、それにより、1つまたは複数のFcγRへの抗体の結合親和性を改変するように機能し得る。1つまたは複数のFcγRへの改変された結合を有する抗体を改変するための方法は、当該分野で公知であり、例えば、PCT公開番号WO 04/029207、WO 04/029092、WO 04/028564、WO 99/58572、WO 99/51642、WO 98/23289、WO 89/07142、WO 88/07089、ならびに米国特許第5,843,597号および同第5,642,821号を参照されたい。1つの特定の実施形態では、Fc領域の改変は、変更された抗体媒介性エフェクター機能、他のFc受容体(例えば、Fc活性化受容体)への変更された結合、変更された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性、変更されたC1q結合活性、変更された補体依存性細胞傷害活性(CDC)、食作用活性、またはそれらの任意の組合せを有する抗体を生じる。
【0156】
一部の実施形態では、分子が、変更されたFc受容体(FcR)結合活性を示すように、例えば、活性化受容体、例えば、FcγRIIAもしくはFcγRIIIAに対する減少した活性、または阻害性受容体、例えば、FcγRIIBに対する増加した活性を示すように、そのFc領域が改変された、抗体を包含する。好ましくは、かかる抗体は、(野生型Fc受容体と比較して)減少した抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)活性を示す。
【0157】
Fc媒介性エフェクター機能に影響を与える改変は、当該分野で周知である(米国特許第6,194,551号およびWO 00/42072;Stavenhagen, J.B. et al. (2007) "Fc Optimization Of Therapeutic Antibodies Enhances Their Ability To Kill Tumor Cells In Vitro And Controls Tumor Expansion In Vivo Via Low-Affinity Activating Fcgamma Receptors," Cancer Res. 57(18):8882-8890;Shields, R.L. et al. (2001) "High Resolution Mapping of the Binding Site on Human IgG1 for FcγRI, FcγRII, FcγRIII, and FcRn and Design of IgG1 Variants with Improved Binding to the FcγR," J. Biol. Chem. 276(9):6591-6604を参照されたい)。FcγRIIAまたはFcγRIIIAへの低減された結合を有するが、FcγRIIBへの無変化のまたは増強された結合を有する、ヒトIgG1 Fcドメインの例示的なバリアントは、S241(122)A、H270(151)A、S269(150)G、E271(152)A、E295(176)A、E295(176)D、Y298(179)F、R303(184)A、V305(186)A、A329(210)G、K324(205)A、E335(216)A、K336(217)A、K340(221)A、A341(222)A、D378(259)Aを含む。
【0158】
その各々の全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる、米国特許出願公開第2021/0179734号、同第20110150867号、同第2005/0037000号および同第2005/0064514号もまた参照されたい。
【0159】
さらなる突然変異には、表8のものが含まれるがそれらに限定されない:
【表8】
【0160】
それらの全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる、Lo, et al., "Effector attenuating substitutions that maintain antibody stability and reduce toxicity in mice." J Biol Chem. (2017) 292:3900-8. doi: 10.1074/jbc.M116.767749、Oganesyan, et al., "Structural characterization of a human Fc fragment engineered for lack of effector functions." Acta Crystallogr D Biol Crystallogr. (2008) 64:700-4. doi: 10.1107/S0907444908007877およびChu, et al., "Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcgammaRIIb with Fc-engineered antibodies." Mol Immunol 45:3926-3933 (2008)もまた参照されたい。
【0161】
例示的な配列には、以下が含まれるがこれらに限定されない:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG((配列番号61)ヒトIgG1ヒンジ-CH2-CH3 Fc配列)、ならびにそれに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するその断片およびバリアント;
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC((配列番号24)ヒトIgカッパCL配列)、ならびにそれに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するその断片およびバリアント;
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG((配列番号62)ヒトIgG1 C
H1-ヒンジ-C
H2-C
H3配列)、ならびにそれに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するその断片およびバリアント;
【化6】
ヒトIgG1 CH1-ヒンジ-CH2-CH3配列(イタリック/太字/一重下線で示されるL117A/L118A/P212G「LALA PG」FcR1、RII、RIIIサイレンシング;S237C/T249W「ノブ」突然変異を伴う))、ならびにそれに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するその断片およびバリアント;ならびに
【化7】
【化8】
ヒトIgG1 C
H1-ヒンジ-C
H2-C
H3配列(イタリック/太字/一重下線で示されるL117A/L118A/P212G「LALA PG」FcR1、RII、RIIIサイレンシング;Y232C/T249S/L251A/Y290V「ホール」突然変異を伴ってイタリック))、ならびにそれに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するその断片およびバリアント。
【0162】
4. リンカーおよびシグナル配列
a. シグナル配列
シグナルペプチド(シグナル配列、標的化シグナル、局在化シグナル、局在化配列、輸送ペプチド、リーダー配列またはリーダーペプチドと呼ばれることもある)は、分泌経路に向けて運命づけられるほとんどの新たに合成されたタンパク質のN末端に(または時折、非古典的には、C末端もしくは内部に)存在する短いペプチド(通常は16~30アミノ酸長)である。これらのタンパク質には、ある特定のオルガネラ(小胞体、ゴルジまたはエンドソーム)の内側に存在するもの、細胞から分泌されたもの、またはほとんどの細胞膜中に挿入されたもののいずれかが含まれる。シグナルペプチドの末端には、シグナルペプチダーゼによって認識および切断され、したがって、切断部位と呼ばれるアミノ酸のストレッチが、典型的には存在する。
【0163】
全ての開示される融合タンパク質は、シグナル配列ありおよびなしで明示的に開示される。以下の実施例の構築物において使用される例示的な非限定的なシグナル配列は、MEWSWVFLFFLSVTTGVHS(配列番号27)である。
【0164】
b. リンカー
用語「リンカー」は、本明細書で使用される場合、限定なしに、ペプチドリンカーを含む。ペプチドリンカーは、可変領域またはVLRB抗原結合ドメインによるエピトープの結合を妨害しないことを条件として、任意のサイズであり得る。一部の実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のグリシンおよび/またはセリンアミノ酸残基を含む。リンカーは、VLRBおよび/もしくはScFv抗原結合ドメインを、軽鎖および重鎖のCLおよび/もしくはC1および/もしくはCH3および/もしくはCH4ドメインに連結すること、ならびに/またはScFvの重鎖(複数可)および軽鎖(複数可)を、それらの適切なコンフォメーション配向で一緒に結合させることが含まれ得る、その意図した目的に基づいて選択される。二価、三価および他の多価scFvは、典型的には、3つまたはそれよりも多くのリンカーを含む。リンカーは、長さおよび/またはアミノ酸組成が同じまたは異なり得る。したがって、リンカーの数、リンカー(複数可)の組成およびリンカー(複数可)の長さは、当該分野で公知のように、scFvの所望の価数に基づいて決定され得る。リンカー(複数可)は、二価、三価および他の多価scFvの形成を可能にし得るまたは形成を駆動し得る。例示的な柔軟性のあるリンカーには、アミノ酸配列Gly-Ser、Gly-Ser-Gly-Ser(配列番号28)、Ala-Ser、Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号29)、(Gly4-Ser)2(配列番号30)および(Gly4-Ser)4(配列番号31)、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3(配列番号32)、およびGly4-Ala-Gly4(配列番号33)が含まれるがこれらに限定されない。他のリンカーには、表9のものが含まれる(V. Mallajosyula et al., Sci. Immunol. 10.1126/sciimmunol.abg5669 (2021)。
【0165】
【0166】
5. カーゴ
開示される融合タンパク質またはキメラ抗体のいずれもが、1つまたは複数のカーゴを含むようにさらに改変され得る。典型的には、カーゴは、活性薬剤である。送達される薬剤には、治療的、栄養的、診断的および予防的化合物が含まれる。タンパク質、ペプチド、炭水化物、多糖、核酸分子および有機分子、ならびに診断剤が送達され得る。
【0167】
活性薬剤には、薬物およびイメージング剤が含まれる。治療剤は、抗生物質、抗ウイルス薬、抗寄生生物(蠕虫、原生動物)薬、抗がん薬(本明細書で「化学療法薬」と呼ばれ、細胞傷害薬物、例えば、ドキソルビシン、シクロスポリン、マイトマイシンC、シスプラチンおよびカルボプラチン、BCNU、5FU、メトトレキセート、アドリアマイシン、カンプトテシン、エポチロンA~F、ならびにタキソールが含まれる)、抗体およびその生物活性断片(ヒト化、単鎖およびキメラ抗体が含まれる)、抗原およびワクチン製剤、ペプチド薬物、抗炎症薬、栄養補助食品、例えば、ビタミン、ならびにオリゴヌクレオチド薬物(DNA、mRNA、アンチセンス、siRNA、miRNA、抗miRNA、piRNA、アプタマー、リボザイム、リボヌクレアーゼPのための外部ガイド配列が含まれるRNA、および三重鎖形成剤、例えば、tcPNAが含まれる)が含まれる。一部の実施形態では、活性薬剤は、オリゴヌクレオチドをコードするベクター、プラスミドまたは他のポリヌクレオチド、例えば、上で議論したものである。
【0168】
送達される例示的な薬物には、抗血管形成剤、抗増殖剤および化学療法剤が含まれる。かかる組成物は、抗体薬物コンジュゲート(ADC)と呼ばれ得る。抗体の標的化を治療的薬物(例えば、細胞傷害薬物のがん殺滅能)と組み合わせることによって、ADCは、健康な組織と罹患組織との間の高感度の区別を可能にする。
【0169】
DNAを損傷させるまたはDNA修復を阻害する抗新生物性薬物の非限定的な例には、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、イホスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、プロカルバジン、テモゾロミドおよびバルルビシンが含まれる。一部の実施形態では、抗新生物性薬物は、神経膠芽腫に対して一般に使用されるDNA損傷性アルキル化剤であるテモゾロミドである。一部の実施形態では、抗新生物性薬物は、DNA損傷の塩基除去修復中のステップを阻害するPARP阻害剤である。例えば、PARP阻害剤は、オラパリブ(C24H23FN4O3)であり得る。
【0170】
一部の実施形態では、抗新生物性薬物は、DNA修復を転写レベルで抑制し、クロマチン構造を破壊する、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤である。一部の実施形態では、抗新生物性薬物は、細胞におけるユビキチン代謝の破壊によってDNA修復を抑制するプロテアソーム阻害剤である。ユビキチンは、DNA修復を調節するシグナル伝達分子である。一部の実施形態では、抗新生物性薬物は、DNA損傷応答シグナル伝達経路を変更することによってDNA修復を抑制するキナーゼ阻害剤である。
【0171】
さらなる抗新生物性薬物には、アルキル化剤(例えば、テモゾロミド、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバジン、ロムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、クロラムブシルおよびイホスファミド)、代謝拮抗薬(例えば、フルオロウラシル、ゲムシタビン、メトトレキセート、シトシンアラビノシド、フルダラビンおよびフロクスウリジン)、一部の有糸分裂阻害薬、ならびにビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビンおよびビンデシン)、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、バルルビシン、イダルビシンおよびエピルビシン、ならびにアクチノマイシン、例えば、アクチノマイシンDが含まれる)、細胞傷害性抗生物質(マイトマイシン、プリカマイシンおよびブレオマイシンが含まれる)、ならびにトポイソメラーゼ阻害剤(カンプトテシン、例えば、イリノテカンおよびトポテカン、ならびにエピポドフィロトキシンの誘導体、例えば、アムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシドおよびテニポシドが含まれる)ならびに細胞骨格標的化薬物、例えば、パクリタキセルが含まれるがこれらに限定されない。
【0172】
予防薬には、腫脹を緩和する化合物、放射線損傷を低減させる化合物および抗炎症薬が含まれ得る。
【0173】
診断的材料の代表的なクラスには、常磁性分子、蛍光化合物、磁性分子および放射性核種が含まれる。例示的な材料には、金属酸化物、例えば、酸化鉄、金属粒子、例えば、金粒子などが含まれるがこれらに限定されない。バイオマーカーもまた、診断適用のために表面にコンジュゲートされ得る。
【0174】
例えば、イメージングのために、放射性材料、例えば、テクネチウム99(99mTc)または磁性材料、例えば、Fe2O3が使用され得る。他の材料の例には、放射線不透過性であるガスまたはガス発生性化合物が含まれる。脳腫瘍のための最も一般的なイメージング剤には、酸化鉄およびガドリニウムが含まれる。診断剤は、放射性、磁性、またはx線もしくは超音波検出可能であり得る。他の検出可能な標識には、例えば、放射性同位体、フルオロフォア(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE))、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、元素粒子(例えば、金粒子)または造影剤が含まれる。これらは、ポリマー内に封入され得、ポリマー内に分散され、またはポリマーにコンジュゲートされ得る。
【0175】
例えば、蛍光標識は、蛍光標識されたポリマーを得るために、ナノ担体のポリマーに化学的にコンジュゲートされ得る。他の実施形態では、標識は、造影剤である。造影剤は、医学的イメージングにおいて身体内の構造または流体のコントラストを増強するために使用される物質を指す。造影剤は、当該分野で公知であり、これには、X線減衰および磁気共鳴シグナル増強に基づいて機能する薬剤が含まれるがこれらに限定されない。適切な造影剤には、ヨウ素およびバリウムが含まれる。
【0176】
活性薬剤は、使用されている処置の型に基づいて選択され得る。がん、感染症および傷害を処置するための例示的な活性薬剤。
【0177】
キメラ抗体は、ペプチド結合によって、または当該分野で周知の型の化学的もしくはペプチドリンカー分子によって、ポリペプチドに化学的に連結され得る。薬物または他の小分子医薬品を抗体断片に結合させるための方法は、周知であり、二官能性化学的リンカー、例えば、(4-ヨードアセチル)-アミノ安息香酸N-スクシンイミジル;(4-ヨードアセチル)-アミノ安息香酸スルホスクシンイミジル;4-スクシンイミジル-オキシカルボニル-A逆(.A-inverted.)-(2-ピリジルジチオ)トルエン;スルホスクシンイミジル-6-[アルファ-メチル-A逆-(ピリジルジチオール)-トルアミド(toluamido)]ヘキサノエート;N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロプリオネート(proprionate);スクシンイミジル-6-[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロプリオンアミド(proprionamido)]ヘキサノエート;スルホスクシンイミジル-6-[3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ヘキサノエート;3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸(dichlorotriazinic acid)、S-(2-チオピリジル)-L-システインなどの使用を含み得る。さらなる二官能性連結分子は、例えば、米国特許第5,349,066号、同第5,618,528号、同第4,569,789号、同第4,952,394号および同第5,137,877号で議論されている。
【0178】
リンカーは、切断可能または切断不能であり得る。高度に安定なリンカーは、循環中に落ちるペイロードの量を低減させ得、したがって、安全性プロファイルを改善し、より多くのペイロードが標的細胞に到達することを確実にする。リンカーは、ジスルフィド、ヒドラゾンもしくはペプチド(切断可能)、またはチオエーテル(切断不能)が含まれる化学的モチーフに基づき得、標的細胞への活性薬剤の分布および送達を制御し得る。切断可能および切断不能型のリンカーは、前臨床試験および臨床試験において安全であることが証明されている(例えば、カテプシンによって切断可能な酵素感受性リンカーを含むブレンツキシマブベドチン;および安定な切断不能リンカーを含むトラスツズマブエムタンシンを参照されたい)。特定の実施形態では、リンカーは、エドマン分解によって切断可能なペプチドリンカーである(Bachor, et al., Molecular diversity, 17 (3): 605-11 (2013))。
【0179】
E. 抗原標的
開示されるキメラ抗体は、1つの標的に対して単一特異性であり得る、または2つもしくはそれよりも多くの標的に対して二特異性もしくは多特異性であり得る。一部の実施形態では、キメラ抗体は、腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生血管構造に特異的な抗原、または正常組織と比較して腫瘍細胞もしくは腫瘍関連新生血管構造において上方調節される抗原に結合する。一部の実施形態では、キメラ抗体は、例えば、感染性疾患原因因子、がんなどに応答したBおよび/またはT細胞活性化の調節に関与する、免疫組織に特異的な抗原に結合する。一部の実施形態では、キメラ抗体は、二特異性または多特異性であり、腫瘍標的および免疫細胞標的の両方に結合する。
【0180】
一部の実施形態は、T細胞の動員および/または活性化を容易にし得る。例えば、二特異性キメラ抗体は、T細胞受容体(抗CD3抗体またはscFv)と、また、T細胞を好ましくは動員および活性化してがん細胞を溶解させるVLRB抗体によって認識されるがん細胞と、相互作用し得る。
【0181】
1. 免疫細胞標的
抗原は、免疫細胞または腫瘍細胞によって発現されるチェックポイントリガンドまたは受容体、例えば、CTLA4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3(例えば、MGA271)、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GALS、LAGS、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aRおよびB-7ファミリーリガンドであり得る。
【0182】
抗原は、免疫細胞または腫瘍細胞によって発現される共刺激リガンドまたは受容体であり得、例えば、共刺激分子は、MHCクラスI分子、BTLA、Tollリガンド受容体、OX40、CD27、CD28、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、and 4-1BB(CD137)、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、CD4,CD8アルファ、CD8ベータ、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、CD40およびCD19aのうちの1つまたは複数を含む。
【0183】
他の免疫細胞抗原には、CD3、CD4、CD8、NKG2A、TLRおよびIDOが含まれるがこれらに限定されない。
【0184】
2. 腫瘍標的
腫瘍によって発現される抗原は、腫瘍に特異的であり得る、または非腫瘍細胞と比較して、腫瘍細胞上でより高いレベルで発現され得る。抗原性マーカー、例えば、がん細胞によって独自に発現されるか、または適切な対照と比較して、悪性状態を有する対象において顕著により高いレベルで存在する(例えば、統計的に有意に上昇される)かのいずれかの、腫瘍関連抗原として公知の血清学的に定義されたマーカーが、ある特定の実施形態における使用のために企図される。
【0185】
腫瘍関連抗原には、例えば、細胞オンコジーンにコードされる産物もしくは異常に発現されるプロトオンコジーンにコードされる産物(例えば、neu、ras、trkおよびkit遺伝子によってコードされる産物)、または増殖因子受容体もしくは受容体様細胞表面分子(例えば、c-erb B遺伝子によってコードされる表面受容体)の突然変異形態が含まれ得る。他の腫瘍関連抗原には、形質転換事象に直接関与し得る分子、または発癌性形質転換事象には直接関与しないかもしれないが、腫瘍細胞によって発現される分子(例えば、癌胎児性抗原、CA-125、黒色腫(melonoma)関連抗原など)が含まれる(例えば、米国特許第6,699,475号;Jager, et al., Int. J. Cancer, 106:817-20 (2003);Kennedy, et al., Int. Rev. Immunol., 22:141-72 (2003);Scanlan, et al. Cancer Immun., 4:1 (2004)を参照されたい)。
【0186】
細胞性腫瘍関連抗原をコードする遺伝子には、細胞オンコジーンおよび異常に発現されるプロトオンコジーンが含まれる。一般に、細胞オンコジーンは、細胞の形質転換に直接関連する産物をコードし、これに起因して、これらの抗原は、免疫療法のための特に好ましい標的である。一例は、発癌性形質転換に関与する細胞表面分子をコードする腫瘍原性neu遺伝子である。他の例には、ras、kitおよびtrk遺伝子が含まれる。プロトオンコジーン(オンコジーンを形成するように突然変異される正常遺伝子)の産物は、異常に発現され得(例えば、過剰発現され得)、この異常な発現は、細胞形質転換に関連し得る。したがって、プロトオンコジーンによってコードされる産物が標的化され得る。一部のオンコジーンは、腫瘍細胞表面上で発現される増殖因子受容体分子または増殖因子受容体様分子をコードする。一例は、c-erbB遺伝子によってコードされる細胞表面受容体である。他の腫瘍関連抗原は、悪性形質転換に直接関与してもしなくてもよい。しかし、これらの抗原は、ある特定の腫瘍細胞によって発現され、したがって、有効な標的を提供し得る。一部の例は、癌胎児性抗原(CEA)、CA125(卵巣癌に関連する)および黒色腫特異的抗原である。
【0187】
卵巣癌および他の癌腫では、例えば、腫瘍関連抗原は、容易に得られる生物学的流体、例えば、血清または粘膜分泌物の試料中で検出可能である。1つのかかるマーカーは、これもまた血流中に落ち、血清中で検出可能な癌腫関連抗原であるCA125である(例えば、Bast, et al., N. Eng. J. Med., 309:883 (1983);Lloyd, et al., Int. J. Canc., 71:842 (1997))。血清および他の生物学的流体中のCA125レベルは、卵巣癌および他の癌腫の診断および/または予後プロファイルを提供することを試みて、他のマーカー、例えば、癌胎児性抗原(CEA)、扁平上皮癌抗原(SCC)、組織ポリペプチド特異的抗原(TPS)、シアリルTNムチン(STN)および胎盤アルカリホスファターゼ(PLAP)のレベルと共に測定されている(例えば、Sarandakou, et al., Acta Oncol., 36:755 (1997);Sarandakou, et al., Eur. J. Gynaecol. Oncol., 19:73 (1998);Meier, et al., Anticancer Res., 17(4B):2945 (1997);Kudoh, et al., Gynecol. Obstet. Invest., 47:52 (1999))。上昇した血清CA125は、神経芽細胞腫に付随しても起き得るが(例えば、Hirokawa, et al., Surg. Today, 28:349 (1998))、上昇したCEAおよびSCCは、とりわけ、結腸直腸がんに付随して起き得る(Gebauer, et al., Anticancer Res., 17(4B):2939 (1997))。
【0188】
モノクローナル抗体K-1との反応性によって定義される腫瘍関連抗原メソテリンは、上皮卵巣、子宮頸および食道腫瘍が含まれる扁平上皮癌の大多数の上に、ならびに中皮腫上に存在する(Chang, et al., Cancer Res., 52:181 (1992);Chang, et al., Int. J. Cancer, 50:373 (1992);Chang, et al., Int. J. Cancer, 51:548 (1992);Chang, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93:136 (1996);Chowdhury, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:669 (1998))。MAb K-1を使用すると、メソテリンは、細胞関連腫瘍マーカーとしてのみ検出可能であり、卵巣がん患者由来の血清中、またはOVCAR-3細胞によって馴化された培地中では、可溶性形態では見出されない(Chang, et al., Int. J. Cancer, 50:373 (1992))。しかし、構造的に関連するヒトメソテリンポリペプチドには、腫瘍関連抗原ポリペプチド、例えば、悪性疾患を有する患者由来の生物学的流体中で天然に存在する可溶性抗原として検出可能な別個のメソテリン関連抗原(MRA)ポリペプチドもまた含まれる(WO 00/50900を参照されたい)。
【0189】
腫瘍抗原には、細胞表面分子が含まれ得る。公知の構造の、公知のまたは記載された機能を有する腫瘍抗原には、以下の細胞表面受容体が含まれる:HER1(GenBank受託番号U48722)、HER2(Yoshino, et al., J. Immunol., 152:2393 (1994);Disis, et al., Canc. Res., 54:16 (1994);GenBank受託番号X03363およびM17730)、HER3(GenBank受託番号U29339およびM34309)、HER4(Plowman, et al., Nature, 366:473 (1993);GenBank受託番号L07868およびT64105)、上皮増殖因子受容体(EGFR)(GenBank受託番号U48722およびKO3193)、血管内皮細胞増殖因子(GenBank番号M32977)、血管内皮細胞増殖因子受容体(GenBank受託番号AF022375、1680143、U48801およびX62568)、インスリン様増殖因子-I(GenBank受託番号X00173、X56774、X56773、X06043、欧州特許番号GB2241703)、インスリン様増殖因子-II(GenBank受託番号X03562、X00910、M17863およびM17862)、トランスフェリン受容体(Trowbridge and Omary, Proc. Nat. Acad. USA, 78:3039 (1981);GenBank受託番号X01060およびM11507)、エストロゲン受容体(GenBank受託番号M38651、X03635、X99101、U47678およびM12674)、プロゲステロン受容体(GenBank受託番号X51730、X69068およびM15716)、卵胞刺激ホルモン受容体(FSH-R)(GenBank受託番号Z34260およびM65085)、レチノイン酸受容体(GenBank受託番号L12060、M60909、X77664、X57280、X07282およびX06538)、MUC-1(Barnes, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 86:7159 (1989);GenBank受託番号M65132およびM64928)、NY-ESO-1(GenBank受託番号AJ003149およびU87459)、NA 17-A(PCT公開番号WO 96/40039)、メラン-A/MART-1(Kawakami, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 91:3515 (1994);GenBank受託番号U06654およびU06452)、チロシナーゼ(Topalian, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 91:9461 (1994);GenBank受託番号M26729;Weber, et al., J. Clin. Invest, 102:1258 (1998))、Gp-100(Kawakami, et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 91:3515 (1994);GenBank受託番号S73003、Adema, et al., J. Biol. Chem., 269:20126 (1994))、MAGE(van den Bruggen, et al., Science, 254:1643 (1991);GenBank受託番号U93163、AF064589、U66083、D32077、D32076、D32075、U10694、U10693、U10691、U10690、U10689、U10688、U10687、U10686、U10685、L18877、U10340、U10339、L18920、U03735およびM77481)、BAGE(GenBank受託番号U19180;米国特許第5,683,886号および同第5,571,711号)、GAGE(GenBank受託番号AF055475、AF055474、AF055473、U19147、U19146、U19145、U19144、U19143およびU19142)、SSX2遺伝子によってコードされるHOM-MEL-40抗原が特に含まれるCTAクラスの受容体のいずれか(GenBank受託番号X86175、U90842、U90841およびX86174)、癌胎児性抗原(CEA、Gold and Freedman, J. Exp. Med., 121:439 (1985);GenBank受託番号M59710、M59255およびM29540)、ならびにPyLT(GenBank受託番号J02289およびJ02038);p97(メラノトランスフェリン(melanotransferrin))(Brown, et al., J. Immunol., 127:539-46 (1981);Rose, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83:1261-61 (1986))。
【0190】
さらなる腫瘍関連抗原には、胸腺白血病抗原(TL)、前立腺表面抗原(PSA)(米国特許第6,677,157号;同第6,673,545号);β-ヒト絨毛性ゴナドトロピンβ-HCG)(McManus, et al., Cancer Res., 36:3476-81 (1976);Yoshimura, et al., Cancer, 73:2745-52 (1994);Yamaguchi, et al., Br. J. Cancer, 60:382-84 (1989): Alfthan, et al., Cancer Res., 52:4628-33 (1992));グリコシルトランスフェラーゼβ-1,4-N-アセチルガラクトサミニルトランスフェラーゼ(GalNAc)(Hoon, et al., Int. J. Cancer, 43:857-62 (1989);Ando, et al., Int. J. Cancer, 40:12-17 (1987);Tsuchida, et al., J. Natl. Cancer, 78:45-54 (1987);Tsuchida, et al., J. Natl. Cancer, 78:55-60 (1987));NUC18(Lehmann, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:9891-95 (1989);Lehmann, et al., Cancer Res., 47:841-45 (1987));黒色腫抗原gp75(Vijayasardahi, et al., J. Exp. Med., 171:1375-80 (1990);GenBank受託番号X51455);ヒトサイトケラチン8;高分子量黒色腫抗原(Natali, et al., Cancer, 59:55-63 (1987);ケラチン19(Datta, et al., J. Clin. Oncol., 12:475-82 (1994))が含まれる。
【0191】
目的の腫瘍抗原には、当該分野で、悪性状態を有する対象中の、免疫原性の「がん/精巣」(CT)抗原とみなされる抗原が含まれる(Scanlan, et al., Cancer Immun., 4:1 (2004))。CT抗原には、以下が含まれるがこれらに限定されない、1つまたは複数のメンバーを含有し、免疫応答を誘導することが可能な、少なくとも19の異なるファミリーの抗原が含まれる:MAGEA(CT1);BAGE(CT2);MAGEB(CT3);GAGE(CT4);SSX(CT5);NY-ESO-1(CT6);MAGEC(CT7);SYCP1(C8);SPANXB1(CT11.2);NA88(CT18);CTAGE(CT21);SPA17(CT22);OY-TES-1(CT23);CAGE(CT26);HOM-TES-85(CT28);HCA661(CT30);NY-SAR-35(CT38);FATE(CT43);およびTPTE(CT44)。
【0192】
腫瘍関連抗原または腫瘍特異的抗原が含まれる、標的化され得るさらなる腫瘍抗原には、以下が含まれるがこれらに限定されない:アルファ-アクチニン-4、Bcr-Abl融合タンパク質、Casp-8、ベータ-カテニン、cdc27、cdk4、cdkn2a、coa-1、dek-can融合タンパク質、EF2、ETV6-AML1融合タンパク質、LDLR-フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA-A2、HLA-A11、hsp70-2、KIAAO205、Mart2、Mum-1、2および3、neo-PAP、ミオシンクラスI、OS-9、pml-RARα融合タンパク質、PTPRK、K-ras、N-ras、トリオースリン酸イソメラーゼ(Triosephosphate isomeras)、Bage-1、Gage 3、4、5、6、7、GnTV、Herv-K-mel、Lage-1、Mage-A1、2、3、4、6、10、12、Mage-C2、NA-88、NY-Eso-1/Lage-2、SP17、SSX-2、ならびにTRP2-Int2、メランA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15(58)、CEA、RAGE、NY-ESO(LAGE)、SCP-1、Hom/Mel-40、PRAME、p53、H-Ras、HER-2/neu、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタイン・バーウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72-4、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p16、TAGE、PSMA、PSCA、CT7、テロメラーゼ、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、13HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3(CA 27.29/BCAA)、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68/KP1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質/サイクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPS、CD19(例えば、B細胞急性白血病において発現される)、EpCAM(例えば、CTCにおいて発現される)、CD20(例えば、B細胞急性白血病において発現される)、ならびにCD45(例えば、CTCにおいて発現される)。他の腫瘍関連抗原および腫瘍特異的抗原は、当業者に公知であり、開示される融合タンパク質による標的化のために適切である。
【0193】
抗原は、腫瘍新生血管構造に特異的であり得る、または正常脈管構造と比較した場合に、腫瘍新生血管構造においてより高いレベルで発現され得る。正常脈管構造と比較して腫瘍関連新生血管構造によって過剰発現される例示的な抗原には、VEGF/KDR、Tie2、血管細胞接着分子(VCAM)、エンドグリンおよびα5β3インテグリン/ビトロネクチンが含まれるがこれらに限定されない。正常脈管構造と比較して腫瘍関連新生血管構造によって過剰発現される他の抗原は、当業者に公知であり、開示される融合タンパク質による標的化のために適切である。
【0194】
別の実施形態では、キメラ抗体は、ケモカインまたはケモカイン受容体に特異的に結合する。ケモカインは、それらのコグネートGタンパク質共役受容体(GPCR)に結合して、細胞性応答、通常は指向性の遊走または走化性を惹起する、可溶性の小さい分子量(8~14kDa)のタンパク質である。腫瘍細胞は、ケモカインを分泌し、それに応答し、これが、増加した内皮細胞動員および血管形成、免疫学的監視の転覆、ならびに腫瘍白血球プロファイルを操って、ケモカイン放出が腫瘍の成長および離れた部位への転移を可能にするようにそれを歪めることによって達成される成長を容易にする。したがって、ケモカインは、腫瘍進行にとって極めて重要である。
【0195】
ケモカインの保存された2つのN末端システイン残基の位置決めに基づいて、これらは、4つの群、即ち、CXC、CC、CX3CおよびCケモカインへと分類される。CXCケモカインは、CXC配列に先行するモチーフ「glu-leu-arg(ELRモチーフ)」の存在または非存在に基づいて、ELR+およびELR-ケモカインへとさらに分類され得る。CXCケモカインは、好中球、リンパ球、内皮および上皮細胞上のそれらのコグネートケモカイン受容体に結合し、それを活性化する。CCケモカインは、樹状細胞、リンパ球、マクロファージ、好酸球、ナチュラルキラー細胞のいくつかのサブセットに対して作用するが、マウス好中球以外の好中球はCCケモカイン受容体を欠如するので、好中球を刺激することはない。およそ50種のケモカインおよびわずか20種のケモカイン受容体が存在し、したがって、リガンド/受容体相互作用のこの系には、かなりの冗長性が存在する。
【0196】
腫瘍および間質細胞から産生されたケモカインは、腫瘍および間質細胞上に存在するケモカイン受容体に結合する。腫瘍細胞の自己分泌ループおよび腫瘍と間質細胞との間のパラ分泌刺激ループは、腫瘍の進行を容易にする。特に、CXCR2、CXCR4、CCR2およびCCR7は、腫瘍形成および転移において主要な役割を果たす。CXCR2は、血管形成において極めて重要な役割を果たし、CCR2は、腫瘍微小環境中へのマクロファージの動員において役割を果たす。リンパ節は、CCR7に対するリガンドであるCCL21を有するので、CCR7は、センチネルリンパ節中への腫瘍細胞の転移に関与する。CXCR4は、広範な種々の腫瘍の転移性の伝播に主に関与する。
【0197】
III. 核酸
A. 融合タンパク質をコードする単離された核酸分子
融合タンパク質をコードする単離された核酸およびそのバリアントが含まれる核酸が、開示される。本明細書で使用される場合、「単離された核酸」は、哺乳動物ゲノムにおいて核酸の一方または両方の側に通常は隣接する核酸が含まれる、哺乳動物ゲノム中に存在する他の核酸分子から分離された、核酸を指す。
【0198】
単離された核酸は、例えば、天然に存在するゲノムにおいてそのDNA分子に直接隣接して通常は見出される核酸配列のうちの1つが除去されているまたは存在しないことを条件とした、DNA分子であり得る。したがって、単離された核酸には、限定なしに、他の配列とは独立した別々の分子として存在するDNA分子(例えば、化学的に合成された核酸、またはPCRもしくは制限エンドヌクレアーゼ処置によって産生されるcDNAもしくはゲノムDNA断片)、ならびにベクター、自律複製するプラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)中に、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNA中に取り込まれる組換えDNAが含まれる。さらに、単離された核酸には、操作された核酸、例えば、ハイブリッドまたは融合核酸の一部である組換えDNA分子が含まれ得る。例えば、cDNAライブラリーもしくはゲノムライブラリー、またはゲノムDNA制限消化物を含有するゲルスライス内の数百~数百万の他の核酸中に存在する核酸は、単離された核酸とはみなされない。
【0199】
核酸は、センスもしくはアンチセンス配向であり得る、または開示される融合タンパク質をコードする参照配列に対して相補的であり得る。
【0200】
核酸は、DNA、RNA(例えば、mRNA)または核酸アナログであり得る。核酸アナログは、塩基部分、糖部分またはリン酸骨格において改変され得る。かかる改変は、例えば、核酸の安定性、ハイブリダイゼーションまたは溶解度を改善し得る。塩基部分における改変には、デオキシチミジンの代わりのデオキシウリジン、およびデオキシシチジンの代わりの5-メチル-2’-デオキシシチジンまたは5-ブロモ-2’-デオキシシチジンが含まれ得る。糖部分の改変は、2’-O-メチルまたは2’-O-アリル糖を形成する、リボース糖の2’ヒドロキシルの改変が含まれ得る。デオキシリボースリン酸骨格は、各塩基部分が6員モルホリノ環に連結されているモルホリノ核酸、またはデオキシリン酸(deoxyphosphate)骨格がシュードペプチド骨格によって置き換えられており、4種の塩基が保持されているペプチド核酸を産生するために、改変され得る。例えば、Summerton and Weller (1997) Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 7:187-195;およびHyrup et al. (1996) Bioorgan. Med. Chem. 4:5-23を参照されたい。さらに、デオキシリン酸骨格は、例えば、ホスホロチオエートもしくはホスホロジチオエート骨格、ホスホロアミダイト、またはアルキルホスホトリエステル骨格で置き換えることができる。
【0201】
B. 融合タンパク質を発現するベクターおよび宿主細胞
核酸、例えば、上記のものは、細胞における発現のためにベクター中に挿入され得る。本明細書で使用される場合、「ベクター」は、別のDNAセグメントが、挿入されたセグメントの複製をもたらすように挿入され得る、レプリコン、例えば、プラスミド、ファージまたはコスミドである。ベクターは、発現ベクターであり得る。「発現ベクター」は、1つまたは複数の発現制御配列を含むベクターであり、「発現制御配列」は、別のDNA配列の転写および/または翻訳を制御および調節するDNA配列である。
【0202】
ベクター中の核酸は、1つまたは複数の発現制御配列に作動可能に連結され得る。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」は、目的のコード配列の発現を発現制御配列が効果的に制御するように、遺伝子構築物中に取り込まれることを意味する。発現制御配列の例には、プロモーター、エンハンサーおよび転写終結領域が含まれる。プロモーターは、典型的には、転写が開始するポイントの上流100ヌクレオチド以内(一般に、RNAポリメラーゼIIのための開始部位の近傍)の、DNA分子の領域から構成される発現制御配列である。コード配列をプロモーターの制御下に置くために、プロモーターの下流1ヌクレオチドと約50ヌクレオチドとの間に、ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位を位置決めすることが必要である。エンハンサーは、時間、場所およびレベルに関して発現特異性を提供する。プロモーターとは異なり、エンハンサーは、転写部位から種々の距離に位置する場合に機能することができる。エンハンサーは、転写開始部位の下流にも位置し得る。RNAポリメラーゼが、コード配列をmRNAへと転写することができ、このmRNAが次いで、コード配列によってコードされるタンパク質へと翻訳され得る場合、コード配列は、細胞において「作動可能に連結された」および発現制御配列の「制御下」にある。
【0203】
適切な発現ベクターには、限定なしに、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、タバコモザイクウイルス、ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスに由来するプラスミドおよびウイルスベクターが含まれる。多数のベクターおよび発現系が、Novagen(Madison、WI)、Clontech(Palo Alto、CA)、Stratagene(La Jolla、CA)およびInvitrogen Life Technologies(Carlsbad、CA)などの会社から市販されている。
【0204】
発現ベクターは、タグ配列を含み得る。タグ配列は、典型的には、コードされるポリペプチドとの融合物として発現される。かかるタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかを含む、ポリペプチド内のいずれの場所でも挿入され得る。有用なタグの例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c-myc、ヘマグルチニン、Flag(商標)タグ(Kodak、New Haven、CT)、マルトースE結合タンパク質およびプロテインAが含まれるがこれらに限定されない。
【0205】
発現される核酸を含有するベクターは、宿主細胞中に移入され得る。用語「宿主細胞」は、組換え発現ベクターが導入され得る原核生物および真核生物細胞を含む意図である。本明細書で使用される場合、「形質転換された」および「トランスフェクトされた」は、いくつかの技法のうちの1つによる細胞中への核酸分子(例えば、ベクター)の導入を包含する。特定の技法に限定されないが、いくつかのこれらの技法は、当該分野で十分に確立されている。原核生物細胞は、例えば、電気穿孔または塩化カルシウム媒介性形質転換によって、核酸で形質転換され得る。核酸は、例えば、リン酸カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔またはマイクロインジェクションが含まれる技法によって、哺乳動物細胞中にトランスフェクトされ得る。宿主細胞(例えば、原核生物細胞または真核生物細胞、例えば、CHO細胞)が、例えば、本明細書に記載される融合タンパク質を産生するために使用され得る。
【0206】
IV. 製造の方法
A. 融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を産生するための方法
融合タンパク質をコードする単離された核酸分子は、限定なしに、一般的な分子的クローニングおよび化学的核酸合成技法が含まれる、標準的な技法によって産生され得る。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法が、バリアント共刺激ポリペプチドをコードする単離された核酸を得るために使用され得る。PCRは、標的核酸が酵素的に増幅される技法である。典型的には、目的の領域の末端またはそれを超えたところからの配列情報が、増幅される鋳型の対向する鎖と配列が同一なオリゴヌクレオチドプライマーを設計するために使用され得る。PCRは、総ゲノムDNAまたは総細胞性RNA由来の配列が含まれる、DNAならびにRNA由来の特定の配列を増幅するために使用され得る。プライマーは、典型的には、14~40ヌクレオチド長であるが、10ヌクレオチド~数百ヌクレオチド長の範囲であり得る。一般的なPCR技法は、例えば、PCR Primer: A Laboratory Manual, ed. by Dieffenbach and Dveksler, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1995に記載されている。RNAを鋳型の供給源として使用する場合、逆転写酵素が、相補的DNA(cDNA)鎖を合成するために使用され得る。リガーゼ連鎖反応、鎖置換増幅、自家持続配列複製または核酸配列ベースの増幅もまた、単離された核酸を得るために使用され得る。例えば、Lewis (1992) Genetic Engineering News 12:1;Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878;およびWeiss (1991) Science 254:1292-1293を参照されたい。
【0207】
単離された核酸は、単一の核酸分子としてまたは一連のオリゴヌクレオチドとしてのいずれかで、化学的に合成され得る(例えば、3’から5’の方向での自動化されたDNA合成のためにホスホラミダイト技術を使用して)。例えば、所望の配列を含有する、長いオリゴヌクレオチド(例えば、>100ヌクレオチド)の1つまたは複数の対が合成され得、各対は、オリゴヌクレオチド対がアニールした場合に二重鎖が形成されるような、相補的な短いセグメント(例えば、約15ヌクレオチド)を含有する。DNAポリメラーゼが、オリゴヌクレオチドを伸長させて、オリゴヌクレオチド対1つ当たり単一の二本鎖核酸分子を生じるために使用され得、これは次いで、ベクター中にライゲーションされ得る。単離された核酸は、変異誘発によっても得ることができる。融合タンパク質コード核酸は、PCRを介したオリゴヌクレオチド特異的変異誘発および/または部位特異的変異誘発が含まれる標準的な技法を使用して突然変異させることができる。Short Protocols in Molecular Biology. Chapter 8, Green Publishing Associates and John Wiley & Sons, edited by Ausubel et al, 1992を参照されたい。改変され得るアミノ酸位置の例には、本明細書に記載されるものが含まれる。
【0208】
B. 融合タンパク質を作製するための方法
融合タンパク質は、例えば、化学的合成によって、または宿主細胞における組換え産生によって、得ることができる。融合タンパク質を組換え的に産生するために、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有する核酸は、細菌または真核生物宿主細胞(例えば、昆虫、酵母または哺乳動物細胞)を形質転換、形質導入またはトランスフェクトするために使用され得る。一般に、核酸構築物は、融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結された調節配列を含む。調節配列(本明細書で発現制御配列とも呼ばれる)は、典型的には、遺伝子産物をコードしないが、その代わり、それが作動可能に連結された核酸配列の発現に影響を与える。
【0209】
ポリペプチドを発現および産生するために有用な原核生物および真核生物系は、当該分野で周知であり、これには、例えば、Escherichia coli株、例えば、BL-21、および培養哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞が含まれる。
【0210】
真核生物宿主細胞では、いくつかのウイルスベースの発現系が、融合タンパク質を発現させるために利用され得る。ウイルスベースの発現系は、当該分野で周知であり、これには、バキュロウイルス、SV40、レトロウイルスまたはワクシニアベースのウイルスベクターが含まれるがこれらに限定されない。
【0211】
バリアント共刺激ポリペプチドを安定に発現する哺乳動物細胞株は、適切な制御エレメントおよび選択可能なマーカーを有する発現ベクターを使用して産生され得る。例えば、真核生物発現ベクターpCR3.1(Invitrogen Life Technologies)およびp91023(B)(Wong et al. (1985) Science 228:810-815を参照されたい)は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS-1細胞、ヒト胎児由来腎臓293細胞、NIH3T3細胞、BHK21細胞、MDCK細胞およびヒト血管内皮細胞(HUVEC)におけるバリアント共刺激ポリペプチドの発現に適切である。電気穿孔、リポフェクション、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAEデキストラン、または他の適切なトランスフェクション法による発現ベクターの導入後、安定な細胞株は、(例えば、G418、カナマイシンまたはハイグロマイシンに対する抗生物質耐性によって)選択され得る。トランスフェクトされた細胞は、目的のポリペプチドが発現されるように培養され得、ポリペプチドは、例えば、細胞培養物上清からまたは溶解された細胞から回収され得る。あるいは、融合タンパク質は、(a)増幅された配列を、哺乳動物発現ベクター、例えば、pcDNA3(Invitrogen Life Technologies)中にライゲーションすること、ならびに(b)コムギ胚芽抽出物またはウサギ網状赤血球溶解物を使用してin vitroで転写および翻訳することによって産生され得る。
【0212】
融合タンパク質は、例えば、クロマトグラフィー法、例えば、DEAEイオン交換、ゲル濾過およびヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーを使用して、単離され得る。例えば、細胞培養物上清または細胞質抽出物中の共刺激ポリペプチドは、プロテインGカラムを使用して単離され得る。一部の実施形態では、バリアント共刺激ポリペプチドは、ポリペプチドが親和性マトリックス上に捕捉されるのを可能にするアミノ酸配列を含有するように「操作され」得る。例えば、タグ、例えば、c-myc、ヘマグルチニン、ポリヒスチジンまたはFlag(商標)(Kodak)が、ポリペプチド精製を助けるために使用され得る。かかるタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかを含む、ポリペプチド内のいずれの場所でも挿入され得る。有用であり得る他の融合物は、ポリペプチドの検出を助ける酵素、例えば、アルカリホスファターゼを含む。免疫親和性クロマトグラフィーもまた、共刺激ポリペプチドを精製するために使用され得る。
【0213】
バリアントポリペプチドを産生するためにランダム突然変異を導入するための方法は、当該分野で公知である。ランダムペプチドディスプレイライブラリーが、所望の融合タンパク質バリアントについてスクリーニングするために使用され得る。かかるランダムペプチドディスプレイライブラリーを創出およびスクリーニングための技法は、当該分野で公知であり(Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Ladnerら、米国特許第4,946,778号;Ladnerら、米国特許第5,403,484号およびLadnerら、米国特許第5,571,698号)、ランダムペプチドディスプレイライブラリーおよびかかるライブラリーをスクリーニングするためのキットは、市販されている。
【0214】
C. VLRB-Ig抗体を製造する方法
開示されるキメラ抗体は、当該分野で公知の任意の適切な方法を使用して調製され得る。例えば、組換えキメラ抗体は、開示される融合タンパク質をコードする1つまたは複数のベクターの所望の組合せ(複数可)を、宿主細胞にトランスフェクトすることによって産生され得る。抗体の生成および産生の組換え手段の例示的な記載には、Delves, Antibody Production: Essential Techniques (Wiley, 1997);Shephard, et al., Monoclonal Antibodies (Oxford University Press, 2000);Goding, Monoclonal Antibodies: Principles And Practice (Academic Press, 1993);Current Protocols In Immunology (John Wiley & Sons, most recent edition);米国特許第4,816,397号(Bossら)、米国特許第6,331,415号および同第4,816,567号(共にCabillyら)、英国特許GB 2,188,638(Winterら)および英国特許GB 2,209,757、Goeddel et al., Gene Expression Technology Methods in Enzymology Vol. 185 Academic Press (1991)、ならびにBorreback, Antibody Engineering, W. H. Freeman (1992)が含まれる。組換え抗体の生成、設計および発現に関するさらなる情報は、Mayforth, Designing Antibodies, Academic Press, San Diego (1993)中に見出すことができる。
【0215】
抗体は、カスタム設計の組換え産生を専門にする供給業者によっても作製され得る。
【0216】
V. 製剤
VLRB-Igを含む医薬組成物が提供される。ペプチドまたはポリペプチドを含有する医薬組成物は、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)または皮下注射)、経皮(受動的に、またはイオン泳動もしくは電気穿孔を使用してのいずれか)または経粘膜(経鼻、腟、直腸または舌下)経路の投与による投与のためのものであり得る。組成物は、生体分解性インサートを使用しても投与され得、適切なリンパ系組織(例えば、脾臓、リンパ節、または粘膜関連リンパ系組織)に直接的に、または臓器もしくは腫瘍に直接的に送達され得る。組成物は、投与の各経路に適切な投薬形態で製剤化され得る。一部の実施形態では、組成物は、経腸投与のために製剤化される。
【0217】
用語「有効量」または「治療有効量」は、処置されている障害の1つもしくは複数の症状を処置、阻害もしくは緩和するのに、または所望の薬理学的および/もしくは生理学的効果を他の方法で提供するのに十分な投薬量を意味する。正確な投薬量は、種々の因子、例えば、対象依存的変数(例えば、年齢、免疫系の健康状態など)、疾患、およびもたらされている処置に従って変動する。
【0218】
一部の実施形態では、VLRB-Igは、腫瘍モデル化およびバイオアベイラビリティからの外挿に基づいて、0.1~20mg/kgの範囲で投与される。最も好ましい範囲は、5~20mg/kgのVLRB-Igである。一般に、静脈内注射または注入のために、投薬量は、代替的な経路によって投与される場合よりも低くてもよい。
【0219】
A. 非経口投与のための製剤
好ましい実施形態では、ペプチドおよびポリペプチドを含有するものが含まれる開示される組成物は、非経口注射または注入によって、水性溶液中で投与される。製剤は、懸濁物またはエマルジョンの形態でもあり得る。一般に、有効量のペプチドまたはポリペプチドを含む医薬組成物が提供され、必要に応じて、この医薬組成物は、薬学的に許容される希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体を含む。かかる組成物は、滅菌水、緩衝食塩水(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pHおよびイオン強度;ならびに必要に応じて、添加剤、例えば、洗剤および可溶化薬剤(例えば、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80、ポリソルベート80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、ならびに防腐剤(例えば、Thimersol、ベンジルアルコール)および増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)を含む。非水性溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油およびコーン油、ゼラチン、ならびに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルである。製剤は、凍結乾燥され得、使用の直前に再溶解/再懸濁され得る。製剤は、例えば、細菌保持フィルターを介した濾過によって、滅菌剤を組成物中に取り込むことによって、組成物に照射することによって、または組成物を加熱することによって、滅菌され得る。
【0220】
B. 経腸投与のための製剤
VLRB-Igは、経口送達のためにも製剤化され得る。経口固体投薬形態は、当業者に公知である。固体投薬形態には、錠剤、カプセル、丸剤、トローチもしくはロゼンジ、サシェ、ペレット、粉末もしくは顆粒、またはポリマー性化合物、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの粒状調製物中への、もしくはリポソーム中への材料の取り込みが含まれる。かかる組成物は、本発明のタンパク質および誘導体の物理的状態、安定性、in vivo放出の速度、およびin vivoクリアランスの速度に影響し得る。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 21st Ed. (2005, Lippincott, Williams & Wilins, Baltimore, Md. 21201) pages 889-964を参照されたい。組成物は、液体形態で調製され得る、または乾燥粉末(例えば、凍結乾燥された)形態であり得る。リポソームまたはポリマー封入が、組成物を製剤化するために使用され得る。Marshall, K. In: Modern Pharmaceutics Edited by G. S. Banker and C. T. Rhodes Chapter 10, 1979もまた参照されたい。一般に、製剤は、活性薬剤と、胃環境においてVLRB-Igを保護し、腸における生物学的に活性な材料の放出を保護する不活性成分とを含む。
【0221】
薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁物およびシロップが含まれる、経口投与のための液体投薬形態は、不活性希釈剤;アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤;ならびに甘味剤、香味剤および芳香剤が含まれる他の構成成分を含有し得る。
【0222】
C. 制御送達ポリマー性マトリックス
1つまたは複数のVLRB-Igを含有する組成物は、制御放出製剤で投与され得る。制御放出ポリマー性デバイスは、ポリマー性デバイス(ロッド、シリンダー、フィルム、ディスク)の移植、または注射(マイクロ粒子)の後の全身的な長期放出のために作製され得る。マトリックスは、ペプチドが、固体ポリマー性マトリックスまたはマイクロカプセル内に分散され、コアが、ポリマー性シェルとは異なる材料のものであり、ペプチドが、性質が液体または固体であり得るコア中に分散または懸濁される、マイクロ粒子、例えば、ミクロスフェアの形態であり得る。本明細書で具体的に定義されない限り、マイクロ粒子、ミクロスフェアおよびマイクロカプセルは、相互交換可能に使用される。あるいは、ポリマーは、数ナノメートル~4センチメートルの範囲の薄い平板もしくはフィルム、製粉もしくは他の標準的な技法によって産生された粉末、またはさらには、ゲル、例えば、ヒドロゲルとして、成型され得る。マトリックスはまた、免疫応答をモジュレートするため、免疫不全患者(例えば、カテーテルが挿入された高齢者、または早産児)において感染症を予防するため、または褥瘡、褥瘡性潰瘍(decubitis ulcer)などの治癒を容易にするために使用されるマトリックスの場合には、治癒を助けるために、医学的デバイス中にまたはその上に取り込まれ得る。非生分解性または生分解性のいずれかのマトリックスがVLRB-Igの送達のために使用され得るが、生分解性マトリックスが好ましい。これらは、天然または合成ポリマーであり得るが、分解および放出プロファイルのより良い特徴付けに起因して、合成ポリマーが好ましい。ポリマーは、放出が所望される期間に基づいて選択される。一部の場合には、線形放出が最も有用であり得るが、他の場合には、パルス放出または「バルク放出」が、より有効な結果を提供し得る。ポリマーは、ヒドロゲル(典型的には、最大で約90重量%の水を吸収する)の形態であり得、必要に応じて、多価イオンまたはポリマーと架橋結合され得る。
【0223】
マトリックスは、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出および当業者に公知の他の方法によって形成され得る。生体分解性ミクロスフェアは、例えば、Mathiowitz and Langer, J. Controlled Release, 5:13-22 (1987);Mathiowitz, et al., Reactive Polymers, 6:275-283 (1987);およびMathiowitz, et al., J. Appl. Polymer Sci., 35:755-774 (1988)によって記載されるように、薬物送達のためのミクロスフェアを作製するために開発された方法のいずれかを使用して調製され得る。
【0224】
制御放出経口製剤が望ましい場合がある。VLRB-Igは、拡散または浸出機構のいずれかによる放出を可能にする不活性マトリックス、例えば、フィルムまたはゴム中に取り込まれ得る。緩徐に崩壊するマトリックスもまた、製剤中に取り込まれ得る。別の形態の制御放出は、浸透圧効果に起因して単一の小さい開口部を介して水が進入して薬物を押し出すことを可能にする半透過性膜中に薬物が封入されたものである。経口製剤のために、放出の場所は、胃、小腸(十二指腸、空腸(jejunem)または回腸)または大腸であり得る。好ましくは、放出は、活性薬剤(もしくは誘導体)の保護によって、または腸中などの、胃環境を過ぎた場所での活性薬剤の放出によってのいずれかで、胃環境の有害な影響を回避する。完全な胃抵抗性を確実にするために、腸溶コーティング(即ち、少なくともpHの5.0に対して不透過性)が不可欠である。これらのコーティングは、Banner Pharmacapsから入手可能なものなど、混合フィルムとして、またはカプセルとして、使用され得る。
【0225】
デバイスは、移植または注射の領域を処置するために局所放出のために製剤化され得、典型的には、全身の処置のための投薬量よりもずっと少ない投薬量を送達することができる。デバイスは、全身送達のためにも製剤化され得る。これらは、皮下で移植または注射され得る。
【0226】
VI. 使用の方法
A. 治療方法および診断方法
典型的には、VLRB-Igは、上で議論したように、例えば、標的細胞上の抗原、受容体、リガンドまたは他の部分に結合する1つまたは複数のドメイン(例えば、VLRB、ScFv、VHH、VH/VL、Rおよび/またはLドメイン)を含有することによって、1つまたは複数の標的細胞に結合するように設計される。これは、ADCCおよび/もしくはCDCおよび/もしくはADCPを増加、誘導もしくは増強するように、より多くのより多くの標的細胞へのカーゴの送達を増加させるように、2つの異なる標的細胞間の近接もしくは連絡を増加もしくは増強するように、エフェクター細胞、例えば、細胞傷害性T細胞を動員して、標的細胞、例えば、腫瘍細胞との複合体を形成するように、ならびに/または1つもしくは複数の異なる型の標的の凝集を誘導するように機能し得る。2つまたはそれよりも多くの細胞が(例えば、2つの異なる標的細胞間の近接または連絡を増加または増強するため、エフェクター細胞を標的細胞に動員するため、1つまたは複数の異なる型の標的の凝集を誘導するためなどに)標的化される実施形態について、典型的には、2つまたはそれよりも多くの異なる標的細胞上の2つまたはそれよりも多くの異なる抗原、受容体、リガンドまたは他の部分を標的化する1つまたは複数のドメイン(例えば、VLRB、ScFv、VH/VL、Rおよび/またはLドメイン)を含む二特異性または多特異性抗体が、利用される。
【0227】
1つまたは複数の異なる細胞型が標的化され得る実施形態、例えば、1つまたは複数の標的細胞へのカーゴの増加した送達、ならびに誘導または増強されたADCCおよび/またはCDCについて、キメラ抗体は、単一特異性、二特異性または多特異性であり得る。したがって、開示される方法は、典型的には、1つまたは複数の標的細胞型に結合するVLRB-Ig抗体の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む。かかる方法は、好ましくは、診断結果を達成する(例えば、対象における標的細胞の場所または量を検出する)または治療結果(例えば、疾患または障害の1つまたは複数の症状の低減または予防)を達成するのに有効である。
【0228】
例えば、本明細書で提供されるVLRB-Ig抗体は、例えば、がんまたは感染症を処置するために、免疫応答刺激性治療薬として、in vivoおよびex vivoで有用であり得る。
【0229】
一部の実施形態では、VLRB-Igは、VLRB-Igによって誘導される抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞傷害(CDC)および/または抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)を容易にするように設計される。
【0230】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害とも呼ばれるが、ADCCは、免疫系のエフェクター細胞が、その膜表面抗原に特異的抗体が結合した標的細胞を能動的に溶解させる、細胞媒介性免疫防御の機構である。これは、体液性免疫応答の一部としての抗体が、感染症またはがんを制限するおよび封じ込めるために利用され得る機構の1つである。
【0231】
ADCCは、これもまた標的を溶解するが、いずれの他の細胞も要求しない免疫補体系とは無関係である。ADCCは、免疫グロブリンG(IgG)抗体と典型的には相互作用するナチュラルキラー(NK)細胞であることが古典的に公知のエフェクター細胞を要求する。しかし、マクロファージ、好中球および好酸球もまた、ADCCを媒介することができ、例えば、好酸球は、IgE抗体を介して、蠕虫として公知のある特定の寄生虫を殺滅する。
【0232】
したがって、一部の実施形態では、開示されるキメラ抗体は、ADCC活性、または対照と比較して改善されたADCC活性を示し得る。ADCC活性は、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)反応を惹起する抗体の能力を指す。ADCCは、FcRを発現する抗原非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が、標的細胞の表面に結合した抗体を認識し、引き続いて、標的細胞の溶解(即ち、「殺滅」)を引き起こす、細胞媒介性反応である。ADCCにおける一次メディエーター細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。NK細胞は、FcγRIIIを発現し、FcγRIIAは活性化受容体であり、FcγRIIIBは阻害性受容体である。単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。
【0233】
CDCは、IgGおよびIgM抗体のエフェクター機能である。それらが標的細胞(例えば、細菌またはウイルス感染細胞)上の表面抗原に結合している場合、古典的補体経路が、タンパク質C1qをこれらの抗体に結合させることによって誘発され、膜侵襲複合体(MAC)の形成および標的細胞溶解を生じる。補体系は、ヒトIgG1、IgG3およびIgM抗体によって効率的に活性化され、IgG2抗体によって弱く活性化され、IgG4抗体によっては活性化されない。ADCCおよびCDCは、治療的抗体がそれによって抗腫瘍効果を達成し得る2つの作用機構である。
【0234】
したがって、さらにまたはあるいは、開示されるキメラ抗体は、CDC活性を示し得る、または対照と比較して改善されたCDC活性を示し得る。CDC活性は、標的細胞上の結合した抗体を認識し、引き続いて、標的細胞の溶解を引き起こす、補体系の1つまたは複数の成分の反応を指す。
【0235】
ADCPは、抗体コーティングされた外来粒子、例えば、微生物または腫瘍細胞の排除の強力な機構である。マクロファージ上で発現されるFcγRIIaおよびFcγRIのエンゲージメントは、IgGオプソニン化粒子の貪食をもたらすシグナル伝達カスケードを誘発する。例えば、Tay, et al., Front Immunol., 10: 332, doi: 10.3389/fimmu.2019.00332 (2019)を参照されたい。
【0236】
したがって、さらにまたはあるいは、開示されるキメラ抗体は、ADCP活性を示し得る、または対照と比較して改善されたADCP活性を示し得る。ADCP活性は、抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)反応を惹起する抗体の能力を指す。
【0237】
さらにまたはあるいは、開示される二特異性または多特異性キメラ抗体は、2つまたはそれよりも多くの標的細胞型を近接近させるために使用され得る。対になる標的細胞の例には、免疫細胞およびがん細胞、例えば、細胞傷害性T細胞および腫瘍細胞標的、2つの異なる免疫細胞などが含まれるがこれらに限定されない。この方法で、抗体は、2つの細胞間のシグナル伝達を容易にし得る。細胞間の相互作用および/またはシグナル伝達の例には、以下が含まれるがこれらに限定されない:
T細胞標的と相互作用する抗原提示細胞(APC)標的によって誘導される増加した免疫応答活性化;
腫瘍または感染細胞標的に対するNK細胞またはマクロファージ標的によって誘導される増加した免疫応答エフェクター機能、例えば、ADCCおよび/またはCDCおよび/またはADCP;ならびに
抗CD8:腫瘍特異的VLRBによる腫瘍へのCD8細胞傷害性T細胞の動員。
【0238】
さらにまたはあるいは、開示されるキメラ抗体は、コンジュゲートされたカーゴを、上で紹介したように、標的細胞に送達することができる。送達は、例えば、細胞傷害剤または診断剤を腫瘍細胞に、免疫応答誘導剤、例えば、炎症促進性(proinflammtory)サイトカインを免疫細胞に、などであり得る。
【0239】
B. 処置のための標的細胞および疾患
したがって、VLRB-Ig抗体によって提示される抗原結合ドメイン、リガンドまたは受容体は、意図した使用に基づいて選択され得、所望の細胞型(単数または複数)を標的化するように設計され得る。一部の実施形態では、標的細胞型のうちの1つまたは複数は、がん細胞である。細胞が標的化され得るがんには、癌腫、神経膠腫、肉腫、血液およびリンパ系(白血病、リンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫、孤立性形質細胞腫、多発性骨髄腫が含まれる)、泌尿生殖器系のがん(前立腺がん、膀胱がん、腎がん、尿道がん、陰茎がん、精巣がんが含まれる)、神経系のがん(髄膜腫(mengiomas)、神経膠腫、神経膠芽腫、上衣腫が含まれる)、頭頸部のがん(口腔、鼻腔、鼻咽頭腔、中咽頭腔(oropharyngeal cavity)、喉頭および副鼻腔の扁平上皮癌が含まれる)、肺がん(小細胞および非小細胞肺がんが含まれる)、婦人科がん(子宮頸がん、子宮内膜がん、腟がん、外陰部がん卵巣および卵管がんが含まれる)、胃腸がん(胃、小腸、結腸直腸、肝臓、肝胆道および膵がんが含まれる)、皮膚がん(黒色腫、扁平上皮癌および基底細胞癌が含まれる)、乳房がん(乳管および小葉がんが含まれる)、ならびに小児がん(神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、ウィルムス腫瘍、髄芽細胞腫が含まれる)が含まれるがこれらに限定されない。
【0240】
一部の実施形態では、標的細胞型のうちの1つまたは複数は、免疫細胞である。免疫細胞には、Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、抗原提示細胞、B細胞およびマクロファージが含まれるがこれらに限定されない。
【0241】
一部の好ましい実施形態では、キメラ抗体は、腫瘍細胞型および免疫細胞型に対して二特異性または多特異性である。
【0242】
一部の実施形態では、キメラ抗体は、二特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)である。BiTEは、その全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる、Tian, et al. "Bispecific T cell engagers: an emerging therapy for management of hematologic malignancies." J Hematol Oncol 14, 75 (2021), pages 1-18, doi.org/10.1186/s13045-021-01084-4で概説されている。BiTEは、典型的には、免疫細胞標的、例えば、CD3と腫瘍抗原とを同時に標的化する。BiTEは、腫瘍抗原を有するがん(例えば、腫瘍)に対する免疫応答を誘導するために使用され得る。一部の実施形態では、VLRBドメインは、腫瘍抗原を標的化し、別の結合/標的化ドメイン(例えば、ScFv、VHH、VH/VL、Rおよび/またはLドメイン)は、免疫細胞を標的化する。他の実施形態では、VLRBドメインは、免疫細胞を標的化し、別の結合/標的化ドメイン(例えば、ScFv、VHH、VH/VL、Rおよび/またはLドメイン)は、腫瘍抗原を標的化する。例示的なBiTE構築物は、本明細書で議論され、以下の実施例で実験的に実証される。
【0243】
C. 組合せ治療
開示されるキメラ抗体組成物は、既存の抗原、例えば、がんを有する対象における腫瘍抗原に対する対象の免疫応答を開始または増強するために使用され得る予防的ワクチンまたは治療的ワクチンと併せて投与され得る。組合せは、同じまたは別々の混合物で投与され得る。
【0244】
予防的免疫応答、治療的免疫応答または脱感作された免疫応答の所望の転帰は、当該分野で周知の原理に従って、疾患によって変動し得る。同様に、がん、アレルゲンまたは感染性因子に対する免疫応答は、疾患を完全に処置し得る、症状を緩和し得る、または疾患に対する治療介入全体における1つの様相であり得る。例えば、がんに対する免疫応答の刺激は、処置に影響を与えるために、外科的、化学療法的、放射線学的、ホルモン的および他の免疫性アプローチとカップリングされ得る。腫瘍を根絶するために第1の治療剤に加えて投与される処置は、アジュバント療法と呼ばれ得る。アジュバント処置は、がんが再発する可能性を減少させるために、一次処置、例えば、手術または放射線を補強するために与えられる。このさらなる処置は、より強力なおよび/または延長された応答によって明らかなような、一次応答の増幅を生じ得る。
【0245】
アジュバント療法には、5つの主要な型が存在する(これらの一部は、一次/単独療法としても使用され得ることに留意されたい):1.)がん細胞の増殖を予防することまたは細胞の自己破壊を引き起こすことのいずれかによってがん細胞を殺滅する薬物を使用する化学療法、2.)ホルモン産生を低減させ、がんの成長を予防するためのホルモン療法、3.)がん細胞を殺滅するために高出力線を使用する放射線療法、4.)任意の残存がん細胞を攻撃および根絶するように身体特有の免疫系に影響することを試みる免疫療法。免疫療法は、身体特有の防御を刺激する(がんワクチン)か、それを補完する(抗体または免疫細胞の受動的投与))かのいずれかであり得、がん細胞内に存在する特定の分子を標的化する標的化治療は、正常な健康な細胞単独を残す。例えば、乳房がんの多くの症例は、HER2と呼ばれるタンパク質を過剰量産生する腫瘍によって引き起こされる。トラスツズマブ(Herceptin)は、HER2陽性腫瘍を標的化するアジュバント療法として使用される。
【0246】
典型的には、アジュバント処置は、複数の機構を誘導し、腫瘍を根絶する可能性を増加させるために、一次処置と併せて共投与されるまたは与えられる。免疫療法、および特にワクチンは、優れた特異性と既存の免疫寛容を回避する能力とを有する持続性の抗腫瘍効果を誘導するという独自の利点を提供する。
【0247】
一部の実施形態では、開示されるキメラ抗体は、第1の治療剤、例えば、がん治療剤の投与後に二次治療剤として投与される。他の実施形態では、開示されるキメラ抗体は、一次治療剤であり、二次治療剤の前に投与される。二次治療剤投与のタイミングは、0日目から一次処置後14日目までの範囲であり得、単一のまたは複数の処置を含み得る。ある特定の実施形態では、VLRB-Ig抗体は、一次処置の投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13もしくは14日後に、または二次薬剤の前に投与される。
【0248】
一部の実施形態では、第2の薬剤は、上で議論したカーゴのうちの1つである。例えば、一部の実施形態では、代表的な治療剤には、化学療法剤およびアポトーシス促進剤、例えば、アムサクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロイコボリン、リポソームドキソルビシン、リポソームダウノルビシン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、サトラプラチン、ストレプトゾシン、テガフール-ウラシル、テモゾロミド、テニポシド、チオテパ、チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、またはそれらの組合せが含まれるがこれらに限定されない。代表的なアポトーシス促進剤には、フルダラビンタウロスポリン(fludarabinetaurosporine)、シクロヘキシミド、アクチノマイシンD、ラクトシルセラミド、15d-PGJ(2)およびそれらの組合せ、ならびに/または免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1、CTLA4およびB7-H1アンタゴニスト、例えば、抗PD-1、抗B7-H1および抗CTLA4抗体などが含まれるがこれらに限定されない。
【0249】
D. さらなる方法
さらなる治療方法、診断方法および研究ベースの方法もまた提供される。例えば、キメラ抗体は、選択された薬剤を検出するために、選択された薬剤の活性を遮断するために、薬剤を精製するために、イメージングツールとして、および治療剤として、使用され得る。
【0250】
試料中の薬剤を検出する方法であって、試料を、組成物が試料中の薬剤に結合することができる条件下でキメラ抗体と接触させるステップ、および試料中の薬剤に結合した組成物を検出するステップを含む方法が、本明細書で提供される。結合した組成物は、試料中の薬剤を示す。検出方法は、当該分野で周知である。例えば、キメラ抗体は、検出可能なタグで標識され得る。検出方法は、試料中の薬剤の存在または非存在を示すために使用され得る。しかし、検出方法は、定量化方法とさらに組み合わされ得る。in vitroアッセイ方法には、対照試料、または標準と比較した量を確立するために使用され得る既知の薬剤量の試料との比較に基づいて薬剤の定量化を可能にする、比色分析アッセイ、例えば、ELISAが含まれる。これらの方法には、放射された放射線に基づく定量化を可能にする放射測定アッセイ、および蛍光アッセイ、または上記可視化および定量化の任意の手段もまた含まれ得る。
【0251】
試料は、任意の生物学的試料が含まれる、試験される任意の試料であり得る。試料には、流体試料(例えば、水、血液、尿など)、組織試料、培養物試料、細胞性試料などが含まれ得る。
【0252】
キメラ抗体は、遮断抗体と匹敵して、それが結合する任意の薬剤の活性を遮断するためにも使用され得る。したがって、薬剤の活性を遮断する方法であって、薬剤を、組成物が薬剤に結合する条件下でキメラ抗体と接触させるステップを含む方法もまた、開示される。薬剤への組成物の結合は、薬剤の活性を遮断する。接触させるステップは、in vivoまたはin vitroであり得る。したがって、例えば、試料の夾雑を低減させるために、毒素に結合するキメラ抗体が、試料に添加され得、毒素活性を遮断し得る。
【0253】
キメラ抗体は、アゴニスト性抗体と匹敵して、それが結合する薬剤の活性を促進するためにも使用され得る。したがって、薬剤の活性を促進する方法であって、薬剤を、組成物が薬剤に結合する条件下で組成物と接触させるステップを含む方法もまた、開示される。薬剤への組成物の結合は、薬剤の活性を促進する。
【0254】
本明細書で開示されるキメラ抗体は、未知の機能を有する遺伝子の機能を決定するために使用され得る。したがって、開示されるキメラ抗体をタンパク質ノックダウンアッセイにおいて使用する方法が、本明細書で開示される。例えば、開示される組成物は、未知の機能の遺伝子を含む細胞の細胞質において発現され得る。RNA転写物が細胞の細胞質において翻訳されている場合、開示される組成物は、問題の遺伝子のタンパク質産物に結合し得る。タンパク質発現の喪失が細胞に対して有する影響をモニタリングすることによって、タンパク質の機能が決定され得る。したがって、未知の機能の遺伝子産物に対して特異的なキメラ抗体が、具体的に開示される。遺伝子の機能を決定する方法であって、遺伝子のタンパク質産物に対して特異的なキメラ抗体を、その遺伝子を発現する細胞の細胞質中に導入するステップ、および未知の機能を有する遺伝子のタンパク質産物の喪失に起因する影響をモニタリングするステップを含む方法もまた、提供される。
【0255】
キメラ抗体は、イメージング方法においても使用され得る。例えば、イメージング方法は、有効量の開示される組成物を対象に投与するステップ、および対象における結合した組成物の局在化を検出するステップを含み得る。イメージング方法の例は、上記される。
【0256】
精製の方法が提供される。薬剤を試料から精製する方法であって、試料を、組成物が薬剤に結合し、組成物/薬剤複合体を形成する条件下でキメラ抗体と接触させるステップ;および薬剤を組成物/薬剤複合体から単離するステップを含み得る方法が、本明細書で開示される。例えば、組成物を、カラムに結合させることができ、試料を、試料中の薬剤が、結合した組成物に結合するのを可能にする条件下で、カラムを通過させることができる。薬剤は、引き続いて、所望の溶離剤中でカラムから溶出させることができる。精製方法は、研究方法として、および商業的方法として、有用である。例えば、かかる方法は、薬理学的化合物から夾雑物を除去する際に有用である。
【0257】
VII. 例示的な実施形態
非限定的な例示的な実施形態は、
図2~6に示される。
図2は、操作されたVLRB:CL-VLRB:CH1四価単一特異性IgGキメラの実例である。四価単一特異性MM3 VLRBヒトIgG1、カッパ構造は、ヒトIgG1 VHCH遺伝子およびヒトVLCカッパ遺伝子のVLおよびVH配列を、MM3 VLRB配列で置き換えることによって、高収量CHO細胞株において組換え発現によって産生されている。
【0258】
図3Aは、正確なH鎖対形成を確実にするためにノブインホール法を使用した、IgG H鎖のうちの一方(「ノブ」H鎖)のC末端に結合された一価抗CD3 scFvを有する操作された四価VLRB IgGの実例である。
図3Bは、正確なH鎖対形成を確実にするためにノブインホール法を使用した、IgG H鎖のうちの一方(「ノブ」H鎖)のN末端に結合された一価抗CD3 scFvを有する操作された三価VLRB IgGの実例である。
図3Cおよび3Dは、H/L鎖対のうちの一方上のCLおよびCH1の逆転(「クロスマブ」)ならびに正確なH鎖対形成を確実にするための「ノブインホール」を用いた、IgG軽鎖のうちの一方のC末端(3C)またはN末端(3D)に結合された一価抗CD3 scFvを有するVLRB IgGを構築するための2つの方法を示す。
【0259】
図4は、各CH3ドメインのC末端に融合されたVLRBを有する抗CD3モノクローナル抗体から構成される操作された二価二特異性VLRB-IgGキメラの実例である。
【0260】
図5は、2×抗CD3 mAb VLおよびVH、ならびにCLドメインのC末端に融合された2×VLRBを有する二価抗CD3、二価VLRB抗体の実例であり、重鎖は、CH1、CH2およびCH3ドメインをさらに含む。
【0261】
図6は、VLRB-scFVキメラの実例であり、VLRBドメインは、4×単一特異性、2×二特異性、1×単一特異性および1×三特異性、または1×四特異性であり得、scFvは、同じ(即ち、二価単一特異性)または異なり(即ち、一価二特異性)得る。
【0262】
代替的な例示的な実施形態では、上記図の抗CD3または抗CD3 scFvドメインは、抗CD8抗体(もしくはscFv)またはCD8リガンドドメインで置換される。例示的なCD8リガンドは、胸腺白血病抗原である。これらの抗体は、その全てがCD8およびCD3を発現する細胞傷害性T細胞を動員するが、これもまたCD3を発現するがCD8は発現しない調節性または他の阻害性T細胞は動員しないように設計され、好ましくは、CD4 T細胞の動員を回避する。例えば、その各々の全体がこれにより参照により本明細書に具体的に組み込まれる、Clement, et al., J Immunol., 187(2): 654-663. doi:10.4049/jimmunol.1003941 (2011)、Tsujimura, et al., International Immunology, Vol. 15, No. 11, pp. 1319-1326 doi: 10.1093/intimm/dxg131 (2003)およびWO 2014/164553を参照されたい。
【0263】
これらの実施形態では、MM3 VLRBは、形質細胞腫腫瘍細胞に結合し、T細胞を(CD3またはCD8への結合を介して)動員および活性化して、腫瘍細胞を溶解し得る。
【0264】
例示的な非限定的な融合タンパク質には、以下の実施例で利用したものが含まれる:
(1)VLRBヒトIgG1 Fc融合タンパク質
(a)二価MM3 VLRB
2ヒトIgG1 Fc
シグナル配列(破線の下線)
MM3 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1ヒンジ-C
H2-C
H3 Fc配列(イタリック)
【化9】
【化10】
*C末端リシンはCai, et al. (2011) Biotechnol Bioeng 108: 404 - 412 doi: 10.1002/bit.22933に従って除去した。
【0265】
他のVLRBヒトIgG1 Fc融合タンパク質は、O13 VLRB2ヒトIgG1 Fc融合タンパク質について以下に示されるように、MM3 VLRB配列を新たなVLRBの配列で置き換え、上記構築物の全ての他の配列を維持することによって産生した。
【0266】
(b)二価O13 VLRB
2ヒトIgG1 Fc
シグナル配列(破線の下線)
O13 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1ヒンジ-C
H2-C
H3 Fc配列(イタリック)
【化11】
*C末端リシンはCai, et al. (2011) Biotechnol Bioeng 108: 404 - 412 doi: 10.1002/bit.22933に従って除去した。
【0267】
(2)四価MM3 VLRB
4ヒトIgG1
(a)MM3 VLRBヒトIgG1 H鎖構築物
シグナル配列(破線の下線)
MM3 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1 C
H1-ヒンジ-C
H2-C
H3配列(イタリック)
【化12】
【0268】
(b)MM3 VLRBヒトIgカッパL鎖構築物
シグナル配列(破線の下線)
MM3 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgカッパC
L配列(イタリック)
【化13】
【0269】
(3)MM3 VLRB4:TR66抗CD3 scFvヒトIgG1 BiTe
正確なH鎖対形成を容易にするために「ノブインホール」技術を利用し、FcR1、IIおよびIII結合をサイレンシングするためにLALA PG突然変異を利用するが、IgG1抗体の望ましい血液T1/2を付与するためにFcRn結合は保持する。
全ての構築物は、多価MM3 VLRB提示を取り込むことによって腫瘍結合を増加/増強させるように、ならびに一価抗CD3 scFv提示を取り込むことによって腫瘍エンゲージメントの非存在下でのT細胞活性化、即ち、非特異的T細胞活性化および殺滅をもたらすCD3の架橋結合を回避するように、設計される。
【0270】
(a)L234A/L235A/P329G FcR1、II、IIIサイレンシング変化を有する、C末端TR66抗CD3 scFv構築物を有する、MM3 VLRBヒトIgG1 H鎖S354C/T366W「ノブ」
シグナル配列(破線の下線)
MM3 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1 C
H1-ヒンジ-C
H2-C
H3配列(イタリック/太字/一重下線で示されるL344A/L345A/P439G(他の場所では「L234A/L235A/P329G」とも呼ばれる)「LALA PG」FcR1、RII、RIIIサイレンシング;S464C/T476W(他の場所では「S354C/T366W」とも呼ばれる)「ノブ」突然変異を伴ってイタリック)
TR66抗CD3 scFv配列(二重下線)
【化14】
【0271】
(b)L234A/L235A/P329G FcR1、II、IIIサイレンシング変化を有するMM3 VLRBヒトIgG1 H鎖Y349C/T366S/L368A/Y407V「ホール」構築物
シグナル配列(破線の下線)
MM3 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1 C
H1-ヒンジ-C
H2-C
H3配列(イタリック/太字/一重下線で示されるL344A/L345A/P439G(他の場所では「L234A/L235A/P329G」とも呼ばれる)「LALA PG」FcR1、RII、RIIIサイレンシング;Y459C/T476S/L478A/Y517V(他の場所では「Y349C/T366S/L368A/Y407V」とも呼ばれる)「ホール」突然変異を伴ってイタリック)
【化15】
【0272】
(4)MM3 VLRB
4:高親和性抗CD3 scFvヒトIgG1 BiTe
(a)C末端に高親和性抗CD3 scFvを有するMM3 VLRBノブH鎖
シグナル配列(破線の下線)
MM3 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1 C
H1-ヒンジ-C
H2-C
H3配列(イタリック/太字/一重下線で示される「ノブ」突然変異を伴ってイタリック)
高親和性抗CD3 scFv配列(二重下線)
【化16】
【0273】
(b)N末端に結合された高親和性抗CD3 scFvを有するノブH鎖
シグナル配列(破線の下線)
高親和性抗CD3 scFv配列(二重下線)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1 C
H1-ヒンジ-C
H2-C
H3配列(イタリック/太字/一重下線で示される「ノブ」突然変異を伴ってイタリック)
【化17】
【化18】
【0274】
一部の実施形態では、配列番号53は、それ自体、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖(例えば、配列番号54)とテトラマー性抗体を形成する。
【0275】
一部の実施形態では、配列番号55は、MM3 VLRBホールH鎖(例えば、配列番号56)、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖(例えば、配列番号54)とテトラマー性抗体を形成する。
【0276】
一部の実施形態では、配列番号65は、MM3 VLRBホールH鎖(例えば、配列番号56)、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖(例えば、配列番号54)とテトラマー性抗体を形成する。
【0277】
一部の実施形態では、配列番号66は、MM3 VLRBホールH鎖(例えば、配列番号56)、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖(例えば、配列番号54)とテトラマー性抗体を形成する。
【0278】
開示される発明は、以下の番号付きの段落によってさらに理解され得る:
段落1. 1つまたは複数の可変リンパ球受容体B(VLRB)抗原結合ドメインとCH1免疫グロブリンドメイン(CH1)またはCL免疫グロブリンドメイン(CL)とを含む重鎖融合タンパク質であって、必要に応じて、前記VLRBが、融合タンパク質のN末端、前記融合タンパク質のC末端、またはそれらの組合せにある、重鎖融合タンパク質。
段落2. 免疫グロブリンヒンジドメイン(ヒンジ)をさらに含む、段落1に記載の重鎖融合タンパク質。
段落3. CH2免疫グロブリンドメイン(CH2)をさらに含む、段落1または2に記載の重鎖融合タンパク質。
段落4. CH3免疫グロブリンドメイン(CH3)をさらに含む、段落1から3のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落5. CH4免疫グロブリンドメイン(CH4)をさらに含む、段落1から4のいずれか一つに記載の重鎖融合物。
段落6. 第2の(VLRB)抗原結合ドメインをさらに含む、段落1から5のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落7. 免疫グロブリン重鎖の可変領域(VH)をさらに含む重鎖融合タンパク質であって、必要に応じて、前記VHが、前記融合タンパク質のN末端にあり、前記VLRB抗原結合ドメインとVHドメインとが、前記融合タンパク質の異なる末端に融合されている、段落1から6のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落8. 必要に応じて、前記融合タンパク質のN末端またはC末端に、一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、VHH、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)のうちの1つまたは複数をさらに含む重鎖融合タンパク質であって、前記VLRB抗原結合ドメインと一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、VHH、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)とが、前記融合タンパク質の異なる末端にある、段落1から7のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落9. 表1のドメイン構造を含む、段落1から9のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落10. VLRB抗原結合ドメインと表1の構造とを含む重鎖融合タンパク質。
段落11. 前記VLRB抗原結合ドメインの一方または両方が、がんもしくは腫瘍抗原または免疫細胞によって発現される抗原に結合する、段落1から10のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落12. 前記VH、ScFv、VHH、LまたはRのうちの1つまたは複数が、がんもしくは腫瘍抗原または免疫細胞によってその上に発現される抗原に結合する、段落8から11のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落13. 前記免疫グロビンドメインの各々が、哺乳動物、必要に応じてヒトの、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、またはそれらに対して70%の配列同一性を有するそのバリアントから独立して選択される、段落1から12のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落14. 前記IgGが、IgG1、IgG2、IgG3および/もしくはIgG4である、ならびに/または前記IgAが、IgA1および/もしくはIgA2である、段落13に記載の重鎖融合タンパク質。
段落15. N末端および/またはC末端のVLRBドメインと共に、構造CH1-ヒンジ-CH2-CH3またはCL-ヒンジ-CH2-CH3を含む、段落1から14のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落16. 前記CLドメインが、配列番号23もしくは24、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントである、段落1から15のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落17. 前記CH1、CH2および/またはCH3が、配列番号25、26、62、63もしくは64のCH1、CH2および/もしくはCH3の配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、段落1から16のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落18. 配列番号25、26、62、63、64、65もしくは66のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、段落1から17のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落19. シグナル配列ありもしくはなしの配列番号53、55もしくは56のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む重鎖融合タンパク質であって、必要に応じて、前記VLRB抗原結合ドメインが、配列番号53、56または56と比較して突然変異されていない、段落1から18のいずれか一つに記載の重鎖融合タンパク質。
段落20. シグナル配列ありまたはなしの配列番号53、55または65のうちの1つのアミノ酸配列を含む重鎖融合タンパク質。
段落21. 1つまたは2つの可変リンパ球受容体B(VLRB)抗原結合ドメインとCLまたはCH1ドメインとを含む軽鎖融合タンパク質であって、前記VLRB抗原結合ドメインが、同じまたは異なり、必要に応じて、前記VLRB抗原結合ドメインが、CLもしくはCH1ドメインのN末端、前記CLもしくはCH1ドメインのC末端、またはそれらの組合せにある、軽鎖融合タンパク質。
段落22. 必要に応じて、前記融合タンパク質のN末端またはC末端に、免疫グロブリン軽鎖の可変領域(VL)、ScFv、VHH、LまたはRをさらに含む軽鎖融合タンパク質であって、前記VLRB抗原結合ドメインと一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、VHH、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)とが、前記融合タンパク質の異なる末端にある、段落21に記載の軽鎖融合タンパク質。
段落23. 表2のドメイン構造を含む、段落22に記載の軽鎖融合タンパク質。
段落24. 1つまたは複数のVLRB抗原結合ドメインと表2のドメイン構造とを含む軽鎖融合タンパク質。
段落25. 前記VLRB抗原結合ドメインが、がんもしくは腫瘍抗原または免疫細胞によってその上に発現される抗原に結合する、段落21から24のいずれか一つに記載の軽鎖融合タンパク質。
段落26. 前記免疫グロブリン軽鎖の可変領域(VL)、ScFv、VHH、LまたはRが、がんもしくは腫瘍抗原または免疫細胞によってその上に発現される抗原に結合する、段落22から25のいずれか一つに記載の軽鎖融合タンパク質。
段落27. 前記免疫グロビンドメインの各々が、哺乳動物、必要に応じてヒトの、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、またはそれに対して70%の配列同一性を有するそのバリアントから独立して選択される、段落1から26のいずれか一つに記載の軽鎖融合タンパク質。
段落28. 前記IgGが、IgG1、IgG2、IgG3および/もしくはIgG4である、ならびに/または前記IgAが、IgA1および/もしくはIgA2である、段落27に記載の軽鎖融合タンパク質。
段落29. 1つもしくは2つの前記VLRB抗原結合ドメインまたは1つのVLRB抗原結合ドメインと、必要に応じて、前記融合タンパク質のN末端またはC末端の免疫グロブリン軽鎖(VL)、ScFv、VHH、LまたはRとからなる軽鎖融合タンパク質であって、前記VLRB抗原結合ドメインと一価もしくは多価単鎖可変断片(ScFv)、VHH、ポリペプチドリガンド(L)またはポリペプチド受容体(R)とが、前記CLまたはCHドメインのN末端およびC末端に融合されている、段落21から28のいずれか一つに記載の軽鎖融合タンパク質。
段落30. 前記CLドメインが、配列番号23もしくは24、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントである、段落21から29のいずれか一つに記載の軽鎖融合タンパク質。
段落31. 前記CH1が、配列番号25、26、62、63、64、65もしくは66のCH1の配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、段落21から29のいずれか一つに記載の軽鎖融合タンパク質。
段落32. 配列番号24のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む、段落21から31のいずれか一つに記載の軽鎖融合タンパク質。
段落33. シグナル配列ありもしくはなしの配列番号54のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも70%の配列同一性を有するそのバリアントを含む軽鎖融合タンパク質であって、必要に応じて、前記VLRB抗原結合ドメインが、配列番号54と比較して突然変異されていない、段落1から18のいずれか一つに記載の軽鎖融合タンパク質。
段落34. シグナル配列ありまたはなしの配列番号54のアミノ酸配列を含む軽鎖融合タンパク質。
段落35. それにコンジュゲートされた活性薬剤カーゴをさらに含む、段落1から20のいずれか一つに記載の重鎖および/または段落21から33のいずれか一つに記載の重鎖。
段落36. 段落1から34のいずれか一つに記載の融合タンパク質をコードする核酸。
段落37. 発現制御配列をさらに含む、段落36に記載の核酸。
段落38. 段落36または37に記載の核酸を含む細胞。
段落39. 段落1から20のいずれか一つに記載の2つの重鎖融合タンパク質および段落21から34のいずれか一つに記載の2つの軽鎖融合タンパク質を含むキメラ抗体。
段落40. 前記2つの重鎖融合タンパク質が同じである、段落39に記載の抗体。
段落41. 前記2つの重鎖融合タンパク質が異なる、段落39に記載の抗体。
段落42. 前記2つの軽鎖融合タンパク質が同じである、段落39から41のいずれか一つに記載の抗体。
段落43. 前記2つの軽鎖融合タンパク質が異なる、段落39から42のいずれか一つに記載の抗体。
段落44. 単一特異性である、段落39から43のいずれか一つに記載の抗体。
段落45. 二特異性である、段落39から43のいずれか一つに記載の抗体。
段落46. 多特異性である、段落39から43のいずれか一つに記載の抗体。
段落47. 表3、表4、または
図2、3A~3D、4、5もしくは6のうちのいずれかに記載の構造を含む、段落39から47のいずれか一つに記載の抗体。
段落48. それ自体、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖、必要に応じて配列番号54とテトラマー性抗体構造を形成する配列番号53を含むキメラ抗体。
段落49. 少なくとも1つのVLRB抗原結合ドメインを含むキメラ抗体であって、必要に応じて、MM3 VLRBホールH鎖、必要に応じて配列番号56、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖、必要に応じて配列番号54とテトラマー性抗体を形成する配列番号55を含む、キメラ抗体。
段落50. 少なくとも1つのVLRB抗原結合ドメインを含むキメラ抗体であって、必要に応じて、MM3 VLRBホールH鎖、必要に応じて配列番号56、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖、必要に応じて配列番号54とテトラマー性抗体構造を形成する配列番号65を含む、キメラ抗体。
段落51. 少なくとも1つのVLRB抗原結合ドメインを含むキメラ抗体であって、必要に応じて、MM3 VLRBホールH鎖、必要に応じて配列番号56、および/または1つもしくは複数のMM3 VLRB L鎖、必要に応じて配列番号54とテトラマー性抗体構造を形成する配列番号66を含む、キメラ抗体。
段落52. 表1から独立して選択される2つの重鎖および表2から独立して選択される2つの軽鎖を含むキメラ抗体であって、少なくとも1つのVLRB抗原結合ドメインを含む、キメラ抗体。
段落53. 表3、表4、または
図2、3A~3D、4、5もしくは6のうちのいずれかに記載の構造を含むキメラ抗体であって、少なくとも1つのVLRB抗原結合ドメインを含む、キメラ抗体。
段落54. ヒンジ-CH2-CH3に融合されたVLRB抗原結合ドメインのダイマーを含むキメラ抗体。
段落55. 配列番号51または52のうちのいずれか1つのアミノ酸配列のダイマーを含む、段落54に記載の抗体。
段落56. がんまたは腫瘍抗原に結合することができる、段落39から55のいずれか一つに記載の抗体。
段落57. 免疫細胞に結合することができる、段落39から56のいずれか一つに記載の抗体。
段落58. がんまたは腫瘍抗原および免疫細胞の両方に結合することができる、段落39から57のいずれか一つに記載の抗体。
段落59. 前記免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞またはマクロファージである、段落57または58に記載の抗体。
段落60. 抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)および/または抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)活性を有する、段落39から59のいずれか一つに記載の抗体。
段落61. T細胞活性化、T細胞増殖、標的細胞のT細胞による殺滅、またはそれらの組合せを誘導することができる、段落39から62のいずれか一つに記載の抗体。
段落62. それにコンジュゲートされた活性薬剤カーゴを含む、段落39から61のいずれか一つに記載の抗体。
段落63. 段落39から62のいずれか一つに記載の抗体を含む組成物。
段落64. それを必要とする対象において治療結果または診断結果を誘導するための有効量の、段落63に記載の組成物。
段落65. 非経口または経腸投与に適切な製剤における、段落63または64に記載の組成物。
段落66. それを必要とする対象を処置する方法であって、段落63から65のいずれか一つに記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
段落67. それを必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、段落63から65のいずれか一つに記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
段落68. がんについて対象を処置する方法であって、段落63から65のいずれか一つに記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
段落69. 前記抗体が、前記がんの細胞に結合する、段落68に記載の方法。
段落70. 感染症について対象を処置する方法であって、段落63から65のいずれか一つに記載の組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
段落71. 前記抗体が、感染細胞に結合する、段落70に記載の方法。
段落72. 前記抗体が、1つまたは複数の免疫細胞型に結合する、段落66から71のいずれか一つに記載の方法。
段落73. 抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)および/または抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)活性から選択される免疫応答を含む、段落66から72のいずれか一つに記載の方法。
段落74. 前記抗体が、T細胞に対して特異的な抗CD3抗原結合ドメイン/抗体を含む、または抗CD8抗原結合ドメインもしくはCD8リガンドTL抗原を含み、細胞傷害性T細胞に対して特異的である、上述の段落のいずれか。
段落75. 前記VLRBドメインのうちの1つまたは複数が、抗CD3もしくは抗CD8抗原結合ドメインを含むScFvドメインまたはCD8リガンドと必要に応じて組み合わされたMM3 VLRB抗原結合ドメインであり、必要に応じて、前記リガンドが胸腺白血病抗原である、上述の段落のいずれかの融合タンパク質および/または抗体。
段落76. 配列番号22または配列番号34の抗CD3結合ドメインを含む、上述の段落のいずれか。
段落77.
図3A、3B、3C、3D、4、5または6のうちのいずれか1つの構造を有する、段落68から70のいずれか一つに記載の抗体。
段落78. ヒンジ-CH2-CH3に融合されたVLRB抗原結合ドメインを含む融合タンパク質。
段落79. 配列番号51または52のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、段落78に記載の融合タンパク質。
【実施例】
【0279】
(実施例1)
キメラVLRB-IgG抗体の構築、およびその結合、およびそれによる免疫応答モジュレーション
材料および方法
細胞および試薬。
全てのヒト造血細胞株は、M.Cooper(Emory University、Atlanta、Georgia、USA)によって提供され、グルタミン、100U/mlペニシリン-ストレプトマイシン、50μM 2-メルカプトエタノールおよび10%FBSを補充したRPMI 1640(完全培地)中で培養した。細胞を、37℃および5%CO2で加湿雰囲気中で維持した。非特定化した抗凝固剤処置したヒト血液試料および血清は、Yerkes Primate Research Center(Emory University)によって提供された。ヒト末梢血単核球(PBMC)を、Lymphoprep(商標)勾配培地(Stem Cell Technologies、カタログ番号07801)での密度勾配遠心分離によって単離した。細胞表面抗原CD19、CD38、CD3、BCMA、CD4、CD8、CD25およびCD69に対するマウスモノクローナルAb;CD38特異的治療的抗体Darzalex(ダラツムマブ(daratumummab))ならびにフルオロフォア標識ヤギ抗マウスIgG二次Abは、商業的に調達した。
【0280】
モノクローナルVLRB
2ヒトIgG1 Fc、MM3 VLRB
4ヒトIgG1およびMM3 VLRB
4:抗CD3 scFvヒトIgG1融合タンパク質。
モノクローナルVLRB Ab MM3(Yu, et al., "Identification of human plasma cells with a lamprey monoclonal antibody." JCI Insight. 2016;1(3). Epub 2016/05/07. doi: 10.1172/jci.insight.84738. PubMed PMID: 27152361; PMCID: PMC4854299.)、N8(Chan, et al., "A tyrosine sulfation-dependent HLA-I modification identifies memory B cells and plasma cells." Sci Adv. 2018;4(11):eaar7653. Epub 2018/11/13. doi: 10.1126/sciadv.aar7653. PubMed PMID: 30417091; PMCID: PMC6221509.)およびO13(Collins, et al., "Structural Insights into VLR Fine Specificity for Blood Group Carbohydrates." Structure. 2017;25(11):1667-78 e4. Epub 2017/10/11. doi: 10.1016/j.str.2017.09.003. PubMed PMID: 28988747; PMCID: PMC5677568.)の単離および結合特性は、以前に記載されている。二価MM3、N8およびO13 VLRB
2ヒトIgG1 Fcならびに四価MM3 VLRB
4ヒトIgG1融合タンパク質(
図7および8)、ならびにMM3 VLRB:抗CD3 scFvヒトIgG1二特異性T細胞エンゲージャー(BiTe)(
図9)は、Curia-LakePharmaが彼らのTunaCHO(商標)組換えタンパク質発現技術を用いて産生し、プロテインA親和性クロマトグラフィーによって培養培地から精製した。BiTe設計は、正確なH鎖対形成を容易にするための「ノブインホール」突然変異(Carter, et al., "Bispecific IgG by Design." J. Immunol. Meth. 248: 7 - 15, (2001))ならびにFcRI、FcRIIおよびFcRIII結合をサイレンシングするための「LALA PG」突然変異(Lo, et al., "Effector-Attenuating Substitutions That Maintain Antibody Stability and Reduce Toxicity in Mice." J. Biol. Chem. 292: 3900 - 3908, (2017))を取り込んでいる。
【0281】
BiTe構造は、腫瘍細胞結合を改善するために設計されたMM3 VLRBについては四価であり、MM3 VLRB腫瘍細胞エンゲージメントの非存在下でCD3の架橋結合およびT細胞活性化を回避するために設計された抗CD3 scFvについては一価である。抗CD3 scFv配列は、WO 2007/073499A2の配列識別子65からである。MM3 VLRB配列は、米国特許第10,167,330号B2の配列識別子57からである。
【0282】
O13 VLRB抗体は、ヒトO血液型2型H三糖抗原(H3)、フコースβ1,2ガラクトースβ1,4 N-アセチルグルコサミンを認識する。
【0283】
他に示さない限り、全ての構築物のための遺伝子は、LakePharmaが合成し、コードされるタンパク質は、彼らの独占所有権のあるベクター/CHO細胞組換えタンパク質発現技術を用いた一過的発現によって産生し、プロテインAクロマトグラフィーによって培養培地から精製した。
【0284】
(1)VLRBヒトIgG1 Fc融合タンパク質
(a)二価MM3 VLRB
2ヒトIgG1 Fc
シグナル配列(破線の下線)
MM3 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1ヒンジ-C
H2-C
H3 Fc配列(イタリック)
【化19】
*C末端リシンはCai, et al. (2011) Biotechnol Bioeng 108: 404 - 412 doi: 10.1002/bit.22933に従って除去した。
【0285】
他のVLRBヒトIgG1 Fc融合タンパク質は、O13 VLRB2ヒトIgG1 Fc融合タンパク質について以下に示されるように、MM3 VLRB配列を、新たなVLRBの配列で置き換え、上記構築物の全ての他の配列を維持することによって産生した。
【0286】
(b)二価O13 VLRB
2ヒトIgG1 Fc
シグナル配列(破線の下線)
O13 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1ヒンジ-C
H2-C
H3 Fc配列(イタリック)
【化20】
【化21】
*C末端リシンはCai, et al. (2011) Biotechnol Bioeng 108: 404 - 412 doi: 10.1002/bit.22933に従って除去した。
【0287】
(2)四価MM3 VLRB
4ヒトIgG1
(a)MM3 VLRBヒトIgG1 H鎖構築物
シグナル配列(破線の下線)
MM3 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1 C
H1-ヒンジ-C
H2-C
H3配列(イタリック)
【化22】
【0288】
(b)MM3 VLRBヒトIgカッパL鎖構築物
シグナル配列(破線の下線)
MM3 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgカッパC
L配列(イタリック)
【化23】
【0289】
(3)MM3 VLRB4:TR66抗CD3 scFvヒトIgG1 BiTe
正確なH鎖対形成を容易にするために「ノブインホール」技術を利用し、FcR1、IIおよびIII結合をサイレンシングするためにLALA PG突然変異を利用するが、IgG1抗体の望ましい血液T1/2を付与するためにFcRn結合は保持する。
【0290】
全ての構築物は、多価MM3 VLRB提示を取り込むことによって腫瘍結合を増加/増強させるように、ならびに一価抗CD3 scFv提示を取り込むことによって腫瘍エンゲージメントの非存在下でのT細胞活性化、即ち、非特異的T細胞活性化および殺滅をもたらすCD3の架橋結合を回避するように、設計される。
【0291】
(a)L234A/L235A/P329G FcR1、II、IIIサイレンシング変化を有する、C末端TR66抗CD3 scFv構築物を有する、MM3 VLRBヒトIgG1 H鎖S354C/T366W「ノブ」
シグナル配列(破線の下線)
MM3 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1 C
H1-ヒンジ-C
H2-C
H3配列(イタリック/太字/一重下線で示されるL344A/L345A/P439G(他の場所では「L234A/L235A/P329G」とも呼ばれる)「LALA PG」FcR1、RII、RIIIサイレンシング;S464C/T476W(他の場所では「S354C/T366W」とも呼ばれる)「ノブ」突然変異を伴ってイタリック)
TR66抗CD3 scFv配列(二重下線)
【化24】
【化25】
【0292】
(b)L234A/L235A/P329G FcR1、II、IIIサイレンシング変化を有するMM3 VLRBヒトIgG1 H鎖Y349C/T366S/L368A/Y407V「ホール」構築物
シグナル配列(破線の下線)
MM3 VLRB配列(太字)
リンカー配列(小文字)
ヒトIgG1 C
H1-ヒンジ-C
H2-C
H3配列(イタリック/太字/一重下線で示されるL344A/L345A/P439G(他の場所では「L234A/L235A/P329G」とも呼ばれる)「LALA PG」FcR1、RII、RIIIサイレンシング;Y459C/T476S/L478A/Y517V(他の場所では「Y349C/T366S/L368A/Y407V」とも呼ばれる)「ホール」突然変異を伴ってイタリック)
【化26】
【化27】
【0293】
組換え融合タンパク質の純度を、SE-UPLCクロマトグラフィーによって評価し、分子量を、還元性および非還元性SDSゲル電気泳動によって決定した。組換え融合タンパク質についての収量、純度、分子量および吸光係数は、表10に示される。
【0294】
【0295】
結合アッセイ。
細胞へのVLRB融合タンパク質および他のAb試薬の結合を、Miltenyi MACSQuant(商標)Analyzer 10 Flow Cytometerを用いるフローサイトメトリーによってアッセイした。二価VLRB2ヒトIgG1 Fcおよび四価VLRB4ヒトIgG1融合タンパク質およびダラツムマブを、Zenon(商標)ヒトIgG標識キット(Thermofisher、カタログ番号Z25402)を使用して、フルオロフォアで直接標識した。細胞を、ブロッキング緩衝液(Southern Biotech、カタログ番号0060-01)と共に氷上で20分間インキュベートし、スナップキャップ細胞ストレイナー(Vendor、カタログ番号60819-524)で裏ごしし、1ウェル当たり400,000細胞で96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに移し、300×gで4℃で5分間の遠心分離によって単離した。細胞を、示された濃度のフルオロフォア標識VLRB融合タンパク質を含有する100μL PBS-2%FBS中に再懸濁し、PBS-2%FBS中で氷上で30分間インキュベートし、フローサイトメトリー分析前に冷PBS-2%FBSで2回洗浄した。他のAb試薬については、マイクロタイタープレートウェル中の細胞を、示された濃度の未標識のAb試薬を含有するPBS-2%FBS 100μLによって、PBS-2%FBS中で氷上で30分間再懸濁し、その後、結合したAb試薬を、フルオロフォア標識ヤギ抗マウスAbで検出した。死細胞は、ヨウ化プロピジウム(1μg/ml)の含有によって排除した。フローサイトメトリーデータを、FlowJoソフトウェアパッケージを使用して分析した。
【0296】
補体依存性細胞傷害(CDC)アッセイ。
VLRB融合タンパク質および他のAbによる補体依存性細胞傷害(CDC)の活性化を、死細胞を定量化するためのPI染色を用いたフローサイトメトリーによって評価した。示された濃度のVLRB融合タンパク質および他のAbを、PBS-2%FBS中で示された数の標的細胞と共に氷上で30分間インキュベートし、冷PBS-2%FBSで1回洗浄し、補体の供給源として0%、20%または40%のヒト血清を含有するRPMI 1640中に再懸濁し、PIによる染色およびフローサイトメトリー分析の前に、37℃および5%CO2で加湿雰囲気中で4時間インキュベートした。
【0297】
抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)アッセイ。
VLRB融合タンパク質および他のAbによる抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)の活性化を、細胞培養培地中に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を、Promega ADCC Reporter Bioassayキット(Promegaカタログ番号G7015)を用いて検出することによって、ヒトPBMCエフェクター細胞を用いて評価した。示された濃度のVLRB融合タンパク質または他のAbを、PBS-2%FBS中で示された数の標的細胞と共に氷上で30分間インキュベートし、冷PBS-2%FBSで洗浄し、示された数の、NFAT誘導されるルシフェラーゼに連結されたヒトFcγRIIIa V158(高親和性)を安定に発現するJurkat細胞を含有する完全培地中に再懸濁し、37℃および5%CO2で加湿雰囲気中で6時間インキュベートした。発光を、FLUOstar(登録商標)Omegaマルチモードマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)を用いて測定した。
【0298】
PBMCの活性化アッセイ。
MM3 VLRB BiTeタンパク質によるヒトPBMC T細胞の活性化を、PBMC T細胞CD25およびCD69細胞表面発現のフローサイトメトリー測定によって、Jurkat TCR/CD3 NFAT細胞(Promegaカタログ番号J1621)を用いて評価した。Jurkat TCR/CD3 NFAT細胞を用いるアッセイは、キットの使用説明書に従った。ヒトPBMCを用いるアッセイについて、示された濃度のMM3 VLRB BiTeタンパク質を、PBS-2%FBS中で示された数の標的細胞と共に氷上で30分間インキュベートし、冷PBS-2%FBSで1回洗浄し、次いで、示された数のPBMCを含有する完全培地中に再懸濁し、37℃および5%CO2で加湿雰囲気中で一晩インキュベートし、その後、CD25およびCD69の両方の細胞表面タンパク質を用いて測定されるような、CD4およびCD8の両方のPBMC T細胞の活性化を可視化するための、抗CD25および抗CD4、抗CD25および抗CD8、抗CD69および抗CD4、ならびに抗CD69および抗CD8のAb組合せを用いて染色した。
【0299】
標的細胞の細胞傷害性T細胞による殺滅の活性化。
MM3 VLRB BiTeによる標的細胞の細胞傷害性T細胞による殺滅の活性化を、細胞培養培地中に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)を、Promega ADCC Reporter Bioassayキット(Promegaカタログ番号G7015)を用いて検出することによって、T細胞およびDaudi標的細胞の供給源としてのヒトPBMCを用いて評価した。示された濃度のMM3 VLRB BiTeタンパク質を、PBS-2%FBS中で示された数の標的細胞と共に氷上で30分間インキュベートし、冷PBS-2%FBSで洗浄し、次いで、示された数のヒトPBMCを含有する完全培地中に再懸濁し、37℃および5%CO2で加湿雰囲気中で4時間インキュベートした。発光を、FLUOstar(登録商標)Omegaマルチモードマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)を用いて測定した。
【0300】
結果
VLRB Ig融合タンパク質の結合特性。
MM3、N8およびO13 VLRB
2ヒトIgG1 Fc、MM3 VLRB
4ヒトIgG1ならびにMM3 VLRB
4:抗CD3 scFvヒトIgG1二特異性T細胞エンゲージャー(BiTe)融合タンパク質の結合特性を、フローサイトメトリーによって評価した。結果は表11に要約され、例となるフローサイトメトリーデータは、
図10~13に示される。硫酸化チロシン改変されたHLAクラス1抗原に対するN8 VLRBの特異性(Chan, et al. "A tyrosine sulfation-dependent HLA-I modification identifies memory B cells and plasma cells." Sci Adv. 2018;4(11):eaar7653. Epub 2018/11/13. doi: 10.1126/sciadv.aar7653. PubMed PMID: 30417091; PMCID: PMC6221509.)、O血液型2型H三糖抗原に対するO13 VLRBの特異性(Collins, et al., "Structural Insights into VLR Fine Specificity for Blood Group Carbohydrates." Structure. 2017;25(11):1667-78 e4. Epub 2017/10/11. doi: 10.1016/j.str.2017.09.003. PubMed PMID: 28988747; PMCID: PMC5677568.)およびCD38のより高次の構造、例えば、テトラマーに対するMM3 VLRBの特異性(Yu, et al., "Identification of human plasma cells with a lamprey monoclonal antibody." JCI Insight. 2016;1(3). Epub 2016/05/07. doi: 10.1172/jci.insight.84738. PubMed PMID: 27152361; PMCID: PMC4854299.)は、記載されている。表11および
図10~13に示されるこれらのVLRB融合タンパク質の細胞株結合特異性は、「親」VLRB抗体について報告されたデータと一致している。
【0301】
CD38を発現することが公知の全ての細胞株は、ダラツムマブおよび抗CD38 HIT mAbによる結合について陽性である。高い量のCD38を発現する細胞株であるDaudiおよびRajiは、MM3 VLRB2ヒトIgG1 FcおよびMM3 VLRB4ヒトIgG1による結合についても陽性であるが、低レベルのCD38を発現するBJABなどの細胞株は、MM3 VLRB結合について陰性である。四価MM3 VLRB4ヒトIgG1の結合は、二価MM3 VLRB2ヒトIgG1 Fcの結合よりも優れている。結合の特異性は、全ての抗CD38試薬によるKMS-11 CD38-細胞への結合の非存在によって、N8試薬についてはDaudi、RajiおよびBJAB N8-細胞への結合の非存在によって、ならびにN8+KMS-11細胞への、弱くはあるがN8 VLRB2ヒトIgG1 Fcの結合によって、支持される;最後に、MM3は、CD38がより高次の構造、即ち、テトラマーを形成する場合に創出される「ネオトープ(neotope)」を認識する可能性が高く、高いCD38発現が、MM3 VLRB検出可能なCD38テトラマーの形成を質量作用を介して駆動するために必要である可能性が高い。
【0302】
CDCおよびADCC免疫エフェクター機能の活性化。
図14A~14Cは、VLRB融合タンパク質によるCDCおよびADCC免疫エフェクター機能の活性化を測定するためのアッセイの結果を報告する。試験したタンパク質量(0.5μg)および補体量(20%ヒト血清)では、二価MM3 VLRB
2ヒトIgG1 Fcも四価MM3 VLRB
4ヒトIgG1融合タンパク質も、検出可能なCDC活性化活性を実証しなかった(
図14A)。四価MM3 VLRBヒトIgG1融合タンパク質(
図14B)は、陽性対照ダラツムマブIgG1抗体よりもかなり低い効力でではあるが、FcγRIII(CD16a)媒介性ADCCエフェクター機能の活性化を実証したが、二価MM3 VLRBヒトIgG1 Fc融合タンパク質(
図14C)は実証しなかった。MM3 VLRB
2 IgG1 Fc構造と比較してMM3 VLRB
4 IgG1構造の増加した価数および結合力増強された見掛けの親和性は、陽性対照抗CD38 IgG1 mAbダラツムマブで達成されたものよりもかなり低いものの、CD16aの安定な結合および架橋結合のためのIgG1 Fc結合部位のより高い密度を生じるようである。
【0303】
MM3 VLRB融合タンパク質のエフェクター活性の非存在または低いエフェクター活性は、O13 VLRB
2ヒトIgG1 Fc融合タンパク質の強力なCDCおよびADCC活性化特性によって示されるように、VLRB IgG融合タンパク質の固有の特性ではない(
図15A~15B)。O13 VLRB標的である血液型O 2型H三糖グリカン抗原は、以下のためにO13 VLRB
2 IgG1 Fc結合部位を「凝集させる」のに十分な密度で、KMS-12およびKMS-18細胞の表面上に存在する:(a)細胞溶解のための抗体媒介性「古典的」補体経路を開始させるための補体C1q成分の安定な結合、および(b)標的細胞の溶解を活性化するための、CD16a Fc受容体(FcγRIIIa)の安定な結合および架橋結合;一方で、Daudi(および他の)細胞のMM3 VLRB標的であるCD38テトラマーの細胞表面密度は、安定な結合または架橋結合のためにMM3 VLRB
2 IgG1 Fc C1qまたはFcγRIII結合部位を凝集させるには不適切である。BJAB細胞上に存在はするものの、H三糖は、KMS-12および18細胞上よりもBJAB細胞上でかなり存在量が低く(
図13)、その密度は、BJAB標的細胞によってADCCを完全に活性化するには不十分であること(
図15B)に留意されたい。
【0304】
MM3 VLRB
4:抗CD3 scFvヒトIgG1 T細胞活性化。
MM3 VLRB BiTeによるT細胞の活性化を、Jurkat TCR/CD3 NFATエフェクター細胞(Promegaカタログ番号J1621)を用いて(
図16)、およびPBMC T細胞のCD25およびCD69細胞表面発現のフローサイトメトリー測定によってヒトPBMC T細胞を用いて(
図17A~17D)、評価した。アッセイで利用した標的細胞は、図に示される通りである。MM3 VLRB BiTeによる、Daudi標的細胞と共に、Jurkat TCR/CD3 NFAT細胞細胞の活性化は、陽性対照ブリナツモマブ抗CD19 scFv:抗CD3 BiTeによる活性化と匹敵し、これは、CD19発現が、Daudi細胞によるMM3 CD38テトラマー標的の発現に匹敵することを示している。MM3 VLRB BiTeの分子量は、ブリナツモマブの分子量よりも4倍超大きく、等しい重量の2つのBiTeは、ブリナツモマブの4分の1未満のモル濃度量のMM3 VLRB BiTeに対応することに留意されたい。種々の標的細胞株を用いたMM3 VLRB BiTeの活性化効力は、これらの細胞株に対するテトラマー性MM3 VLRBヒトIgG1融合タンパク質の結合強度に従い(表11を参照されたい)、これは、MM3 VLRB BiTeのT細胞活性化活性が、分子標的発現密度によって決定されることを示している。ヒトPBMC CD8およびCD4 T細胞は、MM3
hi標的/アクチベーターDaudi細胞が存在する場合にのみ、MM3 VLRB
4:抗CD3 scFvヒトIgG1 BiTeによって細胞表面CD25を発現するように活性化され、存在する場合には、CD25細胞表面発現によって測定される最小限の活性化は、MM3
loRaji細胞が含まれる他の標的/アクチベーター細胞を用いて検出され、即ち、CD25細胞表面発現を用いて測定される、MM3 VLRB
4:抗CD3 scFvヒトIgG1によるT細胞活性化は、抗原特異的である(
図17A~17D)。ヒトPBMC CD8およびCD4 T細胞は、MM3
hi標的Daudi細胞およびMM3
lo標的Raji細胞が存在する場合には、MM3 VLRB
4:抗CD3 scFvヒトIgG1 BiTeによって細胞表面CD69を発現するように活性化されるが、MM3
-BJAB標的細胞が存在する場合にはそうではない。CD69細胞表面発現によって測定され、CD25細胞表面発現によってより低い程度まで測定されるヒトPBMC CD8 T細胞の活性化は、KMS-11 MM3
-標的細胞の存在下でMM3 VLRB
4:抗CD3 scFvヒトIgG1 BiTeを用いて見られ、これは、KMS-11細胞が、「正常」ヒトPBMC CD8 T細胞によって認識され得、それを活性化することができることを示している。CD69の細胞表面発現は、CD25の細胞表面発現よりも感度の高い、またはより特異性の低い、T細胞活性化の指標であるようである。
【0305】
T細胞による殺滅のMM3 VLRB
4:抗CD3 scFvヒトIgG1活性化。
Daudi標的細胞を溶解するヒトPBMC T細胞の活性化についての結果は、
図18に示される。示されるように、MM3 VLRB BiTeは、PBMC T細胞を用量依存的に「武装させ」て、Daudi細胞を殺滅する。
【0306】
【表11】
要約
1)VLRB
2 IgG Fc、VLRB
4 IgGおよびVLRB
4:抗CD3 scFv IgG融合タンパク質は、従来の組換えタンパク質産生法を用いて許容される収量で産生され得、プロテインA親和性クロマトグラフィーを用いて許容される純度まで精製され得る(表10)。
2)VLRB IgG融合タンパク質は、親VLRB抗体の結合特性を保持する(表11および
図10A~13)。
3)VLRB
4 IgG融合タンパク質は、VLRB
2 IgG Fc融合タンパク質と比較して、優れた結合を実証している(表11および
図10A~10C)。
4)VLRB
4 IgG融合タンパク質は、VLRB
2 IgG Fc融合タンパク質と比較して、免疫エフェクター機能、例えば、CDCおよびADCCの優れた活性化を実証している(
図14A~14C)。
5)VLRB
4:抗CD3 scFv IgG BiTeは、VLRB抗体によって認識される分子標的とCD3
+T細胞との両方に結合する(
図11および12)。
6)VLRB抗体によって認識される標的を発現する細胞への、およびCD3
+T細胞へのVLRB
4:抗CD3 scFv IgG BiTeの結合は、VLRB抗体によって認識される細胞を溶解するようにT細胞を活性化する。
7)CD3
+ T細胞単独へのVLRB
4:抗CD3 scFv IgG BiTeの結合は、VLRB抗体によって認識されない他の細胞を溶解するようにT細胞を活性化することはない、即ち、VLRB BiTeによるT細胞活性化は、VLRB抗体によって認識される抗原に対して抗原特異的である。
【0307】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、開示される発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で引用される刊行物およびそれらがそのために引用されている材料は、参照によって具体的に組み込まれる。
【0308】
当業者は、慣用に過ぎない実験を使用して、本明細書に記載される発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識する、または確認することができる。かかる均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含される意図である。
【配列表】
【国際調査報告】