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特表2024-527985設定可能な光線力学的療法システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】設定可能な光線力学的療法システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/06 20060101AFI20240719BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61K51/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505019
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 US2021043451
(87)【国際公開番号】W WO2023009110
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522375637
【氏名又は名称】ルメダ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクドウガル,トレヴァー
(72)【発明者】
【氏名】サンダース,ポール
【テーマコード(参考)】
4C082
4C085
【Fターム(参考)】
4C082PA02
4C082PC10
4C082PG13
4C082PJ30
4C085HH03
4C085KB44
(57)【要約】
光線力学的療法(PDT)装置及び方法が開示される。PDT装置は、患者の標的領域への治療光線の照射パターンを与える複数の発光装置を含む可撓性光学アプリケータを含み得る。PDTシステムは、コンピュータプロセッサを含む光学光線制御器を含む。開示される方法は、複数の治療光線パラメータ、光感作剤の選択、患者固有のパラメータ、最適光線間隔、及び他の関連パラメータに基づいて治療計画を決定することを含む。方法は、治療計画に対して適用治療光線をモニタすること、及び初期治療計画から逸脱する場合に更新された治療計画を決定することを更に含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学光線照射システムであって、
光源、
前記光源からの光線を受け、検出信号を出力するよう構成される検出器、
前記光源及び前記検出器に電気的に接続され、前記検出信号から前記光源のパラメータを少なくとも1つ決定するよう構成されるコンピュータプロセッサ、並びに
前記コンピュータプロセッサ及び前記光源に電気的に接続され、少なくとも部分的に前記少なくとも1つのパラメータに基づいて前記光源を制御するよう構成される光源制御器
を含む、光学光線照射システム。
【請求項2】
前記コンピュータプロセッサは、使用者の入力を受けるよう更に構成され、前記光源制御器は、前記使用者の入力及び前記少なくとも1つのパラメータに基づいて前記光源を制御するよう更に構成される、請求項1に記載の光学光線照射システム。
【請求項3】
前記使用者の入力は、光感作剤タイプ、治療タイプ、及び組織タイプの少なくとも何れかである、請求項2に記載の光学光線照射システム。
【請求項4】
前記光源の前記少なくとも1つのパラメータは、公称ピーク波長、フルエンス、デューティサイクル、及びフルエンス率の何れかである、請求項3に記載の光学光線照射システム。
【請求項5】
前記光感作剤タイプは、ポルフィマー(PHOTOFRIN(登録商標))、タラポルフィンナトリウム(Laserphyrin(登録商標))、2-(1-ヘキシロキシエチル)-2-デビニルピロフェオホルビド-a(HPPH-フォトクロル)、ベンゾポルフィリン誘導体一酸環A(ベルテポルフィン、Visudyne(登録商標))、レダポルフィン(LUZ11)、クロリンE6/P6/パープリン(Bremachlorin(登録商標)、Radachlorin(登録商標))、Ru(II)ポリピリジル錯体(TLD-1433)、パデリポルフィン二カリウム(TOOKAD(登録商標))、及び5-アミノレブリン酸塩酸塩(Gliolan(商標)、5-ALA)からなる群から選択される、請求項3に記載の光学光線照射システム。
【請求項6】
前記治療タイプは、壊死、アポトーシス、血管、及び免疫原性からなる群から選択される、請求項3に記載の光学光線照射システム。
【請求項7】
患者の組織を治療するよう構成され、前記コンピュータプロセッサは、閉回路で前記患者の前記組織を治療するよう前記光源制御器を動作させるよう構成される、請求項2に記載の光学光線照射システム。
【請求項8】
前記光源は、表面接触デバイス又は組織内デバイスを使用して前記患者の前記組織に前記光線を照射するよう構成される、請求項7に記載の光学光線照射システム。
【請求項9】
前記使用者の入力は、開始公称ピーク波長、開始フルエンス、開始フルエンス率、開始時間、及び開始ランタイムの何れかを更に含む、請求項3に記載の光学光線照射システム。
【請求項10】
前記光源は、調整可能な光源を含み、前記光源制御器は、所定の光波長域の範囲内に前記光源を制御するよう構成される、請求項1に記載の光学光線照射システム。
【請求項11】
前記コンピュータプロセッサは、前記検出信号をモニタするよう構成される、請求項1に記載の光学光線照射システム。
【請求項12】
前記光感作剤タイプは、2-(1-ヘキシロキシエチル)-2-デビニルピロフェオホルビド-aを含み、前記光源制御器は、前記光源を制御して公称ピーク波長665nmの光線を出力するよう構成される、請求項5に記載の光学光線照射システム。
【請求項13】
前記光感作剤タイプは、ポルフィマーナトリウムを含み、前記光源制御器は、前記光源を制御して公称ピーク波長630nmの光線を出力するよう構成される、請求項5に記載の光学光線照射システム。
【請求項14】
前記光感作剤タイプは、タラポルフィンを含み、前記光源制御器は、前記光源を制御して公称ピーク波長664nmの光線を出力するよう構成される、請求項5に記載の光学光線照射システム。
【請求項15】
前記光感作剤タイプは、5-アミノレブリン酸を含み、前記光源制御器は、前記光源を制御して公称ピーク波長630nmの光線を出力するよう構成される、請求項5に記載の光学光線照射システム。
【請求項16】
前記光感作剤タイプは、処方の活性化ピーク波長を有し、前記光源制御器は、前記光源を制御して前記処方の活性化ピーク波長を実質的に中心とする公称ピーク波長の光線を出力するよう構成される、請求項5に記載の光学光線照射システム。
【請求項17】
患者の組織に治療光線を照射する方法であって、
発光装置を有する設定可能な光線力学的療法システムを用意すること、
治療タイプを選択すること、
光感作剤を選択すること、
前記治療タイプ及び前記光感作剤に従って治療光線の複数のパラメータを決定すること、
前記治療光線の前記複数のパラメータに基づいて初期治療計画を決定すること、
前記患者に前記光感作剤を投与すること、並びに
前記初期治療計画に基づいて組織に治療光線を照射することを含む、方法。
【請求項18】
前記組織の標的領域のデジタル画像を得ることを更に含み、
前記治療光線の前記複数のパラメータを決定することは、前記発光装置による照射パターンを決定することを含み、前記照射パターンは、前記デジタル画像と実質的に一致する、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記治療タイプ及び前記光感作剤に基づいて最適な薬剤-光線照射間隔を決定することを更に含み、
前記初期治療計画を決定することは、前記最適な薬剤-光線照射間隔を更に含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記治療光線をモニタして前記治療光線と前記初期治療計画とを比較すること、
前記治療光線と前記初期治療計画の差を導くこと、
前記差に基づいて更新された治療計画を決定すること、及び
前記更新された治療計画に従って前記組織に前記治療光線を照射することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記光感作剤は、処方の活性化ピーク波長を有し、前記組織に前記治療光線を照射することは、前記処方の活性化ピーク波長を実質的に中心とする公称ピーク波長の前記治療光線を出力するように光源を制御することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記光感作剤は、2-(1-ヘキシロキシエチル)-2-デビニルピロフェオホルビド-aを含み、公称ピーク波長665nmを実質的に中心とする前記治療光線を出力するように前記光源を制御する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記光感作剤タイプは、ポルフィマーナトリウムを含み、公称ピーク波長630nmを実質的に中心とする前記治療光線を出力するように前記光源を制御する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記光感作剤タイプは、タラポルフィンを含み、公称ピーク波長664nmを実質的に中心とする前記治療光線を出力するよう前記光源を制御する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記光感作剤タイプは、5-アミノレブリン酸を含み、公称ピーク波長630nmを実質的に中心とする前記治療光線を出力するように前記光源が制御される、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記初期治療計画を決定することは、前記発光装置のデューティサイクルを決定することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記初期治療計画を決定することは、前記発光装置のフルエンス及びフルエンス率を決定することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記治療タイプを選択することは、壊死、アポトーシス、血管、及び免疫原性からなる群から選択することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記組織の前記標的領域の前記デジタル画像を使用して前記発光装置を位置決めすることを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記発光装置は、表面接触デバイスを含み、前記表面接触デバイスは、前記標的組織に対して位置決めされる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
患者の組織に治療光線を照射する前記方法は、術中処置の一部である、請求項17に記載の方法。
【請求項32】
患者の組織に治療光線を照射するプロセッサに実装された方法であって、
前記患者に光感作剤を投与すること、
手術部位の術前画像を取得することであって、ここで前記術前画像は第1のマーカー及び標的組織を含む、取得すること、
プロセッサ及び発光装置を有する設定可能な光線力学的療法システムを用意することであって、ここで前記発光装置は、第2のマーカーを含む、用意すること、
前記第2のマーカーが前記第1のマーカーに近接するよう前記標的組織に対して前記発光装置を位置決めすること、
前記手術部位の術中画像を取得することであって、ここで前記術中画像は、前記第1のマーカー及び前記第2のマーカーを含む、取得すること、
前記術中画像を使用して前記第1のマーカー及び前記第2のマーカーを整列させることであって、ここで整列させることは、前記第1のマーカーと前記第2のマーカーの間の距離を決定すること、及び前記発光装置を前記距離動かして前記第1のマーカー及び前記第2のマーカーを整列させることを含む、整列させること、並びに
プロセッサを使用して、
治療タイプを選択すること、
前記光感作剤を選択すること、
前記治療タイプ及び前記光感作剤に従って前記治療光線の複数のパラメータを決定すること、
前記治療光線の前記複数のパラメータに基づいて初期治療計画を決定するすること、及び
前記初期治療計画に従って前記標的組織に前記治療光線を照射すること
を含む、プロセッサに実装された方法。
【請求項33】
前記治療光線の前記複数のパラメータを決定することは、前記発光装置による照射パターンを決定することを含み、前記照射パターンは、前記術前画像又は前記術中画像と実質的に一致する、請求項32に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項34】
前記治療タイプ及び前記光感作剤に基づいて最適な薬剤-光線照射間隔を決定し、前記初期治療計画を決定するすることは、前記最適な薬剤-光線照射間隔を更に含む、請求項32に記載のプロセッサに実装された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光線力学的療法に関する。
【背景技術】
【0002】
光線療法は、様々な形態で疾患の治療に使用され得る。例えば、光線療法の中には、標的腫瘍又はがん組織の近位又は内部に設置されたファイバーオプティック装置を介して治療光線を照射するものがある。
【0003】
先行技術の光線療法の中には、治療光線を吸収し、周囲の組織成分(例えば、酸素)と相互作用して標的組織を破壊可能な反応種を生成する光感受性薬剤(例えば、光感作物質)の前投与と組み合わせることができるものがある。この治療形態は、光線力学的療法(「PDT」)として知られる。PDTは、光線(例えば、レーザによって与えられる光線)を使用して光感作物質を活性化する。この処置は、がん細胞を破壊し、腫瘍に栄養供給する血管を閉鎖し、免疫系を促進して全身のがん細胞を殺すという3つの異なる機序で効果を発揮することができる。この処置に伴う副作用は軽度であり、この処置は、標準的化学療法及び外科手術及びその後の放射線療法と併用することができる。最も一般的なPDT法の先行技術は、個別の光感作物質に対する光線の投与に1本の光ファイバを使用し、ここで個別の光感作物質に対する待ち時間が、光感作剤に関する処方情報における特有の適応として指示される。個別の薬剤に応じて、要求される照射レベルに適合させるために様々な光線機器が必要となる場合がある。
【0004】
先行技術の例は、既知量の光投与量を腫瘍表面全体に高速で効率的に供給する能力に欠ける。少なくとも前述の理由から、既知の問題を緩和する光線療法装置及び方法の提供が望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つ又は複数のコンピュータのシステムが、システムにインストールされ、操作時にシステムに動作を行わせるソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの組み合わせを有することによって、特定の操作又は動作を行うよう構成され得る。1つ又は複数のコンピュータプログラムが、データ処理装置によって実行される際、装置に動作を行わせる命令を含むことによって、特定の操作又は動作を行うよう構成され得る。1つの包括的態様は、光学光線照射システムを含む。また、光学光線照射システムは、光源、光源からの光線を受け、検出信号を出力するよう構成される検出器、光源及び検出器に電気的に接続され、検出信号から光源のパラメータを少なくとも1つ決定するよう構成されるコンピュータプロセッサ、並びにコンピュータプロセッサ及び光源に電気的に接続され、少なくとも部分的に少なくとも1つのパラメータに基づいて光源を制御するよう構成される光源制御器を含む。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ又は複数のコンピュータ記憶装置に記録されたコンピュータプログラムを含み、各々が本方法の動作を行うよう構成される。
【0006】
実装形態は、以下の1つ又は複数の特徴を含んでよい。コンピュータプロセッサが、使用者の入力を受け付けるよう更に構成され、光源制御器が、使用者の入力及び少なくとも1つのパラメータに基づいて光源を制御するよう更に構成される光学光腺照射システム。使用者の入力は、光感作剤タイプ、治療タイプ、及び組織タイプの少なくとも何れかである。光源の少なくとも1つのパラメータは、公称ピーク波長、フルエンス、デューティサイクル、及びフルエンス率の何れかである。光感作剤タイプは、ポルフィマー(PHOTOFRIN(登録商標))、タラポルフィンナトリウム(Laserphyrin(登録商標))、2-(1-ヘキシロキシエチル)-2-デビニルピロフェオホルビド-a(HPPH-フォトクロル)、ベンゾポルフィリン誘導体一酸環A(ベルテポルフィン、Visudyne(登録商標))、レダポルフィン(LUZ11)、クロリンE6/P6/パープリン(Bremachlorin(登録商標)、Radachlorin(登録商標))、Ru(II)ポリピリジル錯体(TLD-1433)、パデリポルフィン二カリウム(TOOKAD(登録商標))、及び5-アミノレブリン酸塩酸塩(Gliolan(商標)、5-ALA)を含み得る群から選択される。光感作剤タイプは、2-(1-ヘキシロキシエチル)-2-デビニルピロフェオホルビド-aを含んでよく、光源制御器は、光源を制御して公称ピーク波長665nmの光線を出力するよう構成される。光感作剤タイプは、ポルフィマーナトリウムを含んでよく、光源制御器は、光源を制御して公称ピーク波長630nmの光線を出力するよう構成される。光感作剤タイプは、タラポルフィンを含んでよく、光源制御器は、光源を制御して公称ピーク波長664nmの光線を出力するよう構成される。光感作剤タイプは、5-アミノレブリン酸を含んでよく、光源制御器は、光源を制御して公称ピーク波長630nmの光線を出力するよう構成される。光感作剤タイプは、処方の活性化ピーク波長を有し、ここで光源制御器は、光源を制御して処方の活性化ピーク波長を実質的に中心とする公称ピーク波長の光線を出力するよう構成される。治療タイプは、壊死、アポトーシス、血管、及び免疫原性を含み得る群から選択される。使用者の入力は、開始公称ピーク波長、開始フルエンス、開始フルエンス率、開始時間、及び開始ランタイムの何れかを更に含んでよい。光学光線照射システムは、患者の組織を治療するよう構成され、ここでコンピュータプロセッサは、閉回路で患者の組織を治療するよう光源制御器を動作させるよう構成される。光源は、表面接触デバイス又は組織内デバイスを使用して患者の組織に光線を照射するよう構成される。光源は、調整可能な光源を含んでよく、光源制御器は、所定の光波長域の範囲内に光源を制御するよう構成される。コンピュータプロセッサは、検出信号をモニタするよう構成される。記載される技術の実装形態は、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータでアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含んでよい。
【0007】
1つの包括的態様は、患者の組織に治療光線を照射する方法を含む。また、方法は、発光装置を有する設定可能な光線力学的療法システムを用意すること、治療タイプを選択すること、光感作剤を選択すること、治療タイプ及び光感作剤に従って治療光線の複数のパラメータを決定すること、治療光線の複数のパラメータに基づいて初期治療計画を決定すること、患者に光感作剤を投与すること、並びに初期治療計画に基づいて組織に治療光線を照射することを含む。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ又は複数のコンピュータ記憶装置に記録されたコンピュータプログラムを含み、各々が本方法の動作を行うよう構成される。
【0008】
実装形態は、以下の1つ又は複数の特徴を含んでよい。方法は、組織の標的領域のデジタル画像を得ることを含んでよく、ここで治療光線の複数のパラメータを決定することは、発光装置による照射パターンを決定することを含み、照射パターンは、デジタル画像と実質的に一致する。方法は、組織の標的領域のデジタル画像を使用して発光装置を位置決めすることを含んでよい。発光装置は、表面接触デバイスを含んでよく、ここで表面接触デバイスは、標的組織に対して位置決めされる。初期治療計画を決定することは、最適な薬剤-光線照射間隔を更に含む。方法は、治療光線をモニタして治療光線と初期治療計画とを比較すること、治療光線と初期治療計画の差を導くこと、差に基づいて更新された治療計画を決定すること、及び更新された治療計画に従って組織に治療光線を照射することを含んでよい。光感作剤は、処方の活性化ピーク波長を有し、ここで組織に治療光線を照射することは、処方の活性化ピーク波長を実質的に中心とする公称ピーク波長の治療光線を出力するよう光源を制御することを含んでよい。光感作剤は、2-(1-ヘキシロキシエチル)-2-デビニルピロフェオホルビド-aを含んでよく、公称ピーク波長665nmを実質的に中心とする治療光線を出力するよう光源が制御される。光感作剤タイプは、ポルフィマーナトリウムを含んでよく、公称ピーク波長630nmを実質的に中心とする治療光線を出力するよう光源が制御される。光感作剤タイプは、タラポルフィンを含んでよく、公称ピーク波長664nmを実質的に中心とする治療光線を出力するよう光源が制御される。光感作剤タイプは、5-アミノレブリン酸を含んでよく、公称ピーク波長630nmを実質的に中心とする治療光線を出力するよう光源が制御される。初期治療計画を決定することは、発光装置のデューティサイクルを決定することを更に含む。初期治療計画を決定することは、発光装置のフルエンス及びフルエンス率を決定することを更に含む。治療タイプを選択することは、壊死、アポトーシス、血管、及び免疫原性を含み得る群から選択することを含む。患者の組織に治療光線を照射する方法は、術中処置の一部である。記載される技術の実装形態は、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータでアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含んでよい。
【0009】
1つの包括的態様は、患者の組織に治療光線を照射する、プロセッサに実装された方法を含む。また、プロセッサに実装された方法は、患者に光感作剤を投与すること、手術部位の術前画像を取得することであって、ここで術前画像は第1のマーカー及び標的組織を含む、取得すること、プロセッサ及び発光装置を有する設定可能な光線力学的療法システムを用意することであって、ここで発光装置は、第2のマーカーを含む、用意すること、第2のマーカーが第1のマーカーに近接するよう標的組織に対して発光装置を位置決めすること、手術部位の術中画像を取得することであって、ここで術中画像は、第1のマーカー及び第2のマーカーを含む、取得すること、術中画像を使用して第1のマーカー及び第2のマーカーを整列させることであって、ここで整列させることは、第1のマーカーと第2のマーカーの間の距離を決定すること、及び発光装置を当該距離動かして第1のマーカー及び第2のマーカーを整列させることを含む、整列させること、並びにプロセッサを使用し、治療タイプを選択すること、光感作剤を選択すること、治療タイプ及び光感作剤に従って治療光線の複数のパラメータを決定すること、治療光線の複数のパラメータに基づいて初期治療計画を決定するすること、及び初期治療計画に従って標的組織に治療光線を照射することを含む。この態様の他の実施形態は、対応するコンピュータシステム、装置、及び1つ又は複数のコンピュータ記憶装置に記録されたコンピュータプログラムを含み、各々が本方法の動作を行うよう構成される。
【0010】
実装形態は、以下の1つ又は複数の特徴を含んでよい。プロセッサに実装された方法において、治療光線の複数のパラメータを決定することは、発光装置を使用する照射パターンを決定することを含み、照射パターンは、術前画像又は術中画像の何れかと実質的に一致する。初期治療計画を決定するすることは、最適な薬剤-光線照射間隔を更に含む。記載される技術の実装形態は、ハードウェア、方法若しくはプロセス、又はコンピュータでアクセス可能な媒体上のコンピュータソフトウェアを含んでよい。
【0011】
本発明の前述の特徴を詳細に理解することができるよう、先に簡単に要約された発明を、その一部が添付の図面に説明される実施形態を参照し、より具体的に記載する。なお、添付の図面は、本発明の典型的な実施形態のみを説明し、よって本発明は他の同様に有効な実施形態を許容してよいので、添付の図面が本発明の範囲を限定すると考えられるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に従う設定可能なPDTシステムの概略図である。
図2】本開示に従う設定可能なPDTシステムの概略図である。
図3】本開示に従う設定可能なPDTシステムにおける最適な薬剤-光線照射間隔のグラフ表示である。
図4】本開示に従う設定可能なPDTシステムにおける線量率のグラフ表示である。
図5】本開示に従う設定可能なPDTシステムにおける光変調スキームのグラフ表示である。
図6】本開示に従う設定可能なPDTシステムの操作手順のフローチャートである。
図7】本開示に従う設定可能なPDTシステムの操作手順のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態の詳細な説明において、添付の図面を参照する。添付の図面は、本記載の一部を構成し、本明細書に記載される実施例が実施され得る具体的な実施形態を例示として示すものである。本開示の範囲を逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、構成が変更され得ることを理解すべきである。
【0014】
広範囲の放射照度値にわたって制御された光線照射線量を、最適な薬剤-光線照射間隔で光感作剤を含有する生体標的に照射することができ、最適なPDT効果を発揮する光線照射システムが開示される。
【0015】
がん組織に光線力学的療法(PDT)を適用することで、免疫療法処置に対する応答が増強されることが臨床研究から示されている。従来、細胞構造内の光感作剤(光感作物質)の最適な位置条件にPDTによる処置を適合させることは不可能であった。先行技術の方法を用いると、光感作物質投与後、光感作物質が一般的には血管作用を介して正常細胞を離れるのに、典型的には24~48時間の待ち時間が必要である。本明細書で後に詳細に記載されるように、正常細胞を避けるために、より焦点が絞られた直接的な光線の適用を使用することができる。また、PDTは、免疫療法を最も確実に成功させるのにより最適な時間であり得る24~48時間よりも前に適用することができる。また、他のPDTの適用よりも比較的低い比率に線量率(mW/cmで測定)を厳密に制御する必要がある。先行技術では、PDTは、一定線量率の単一円筒光拡散器(cylindrical light diffuser:CLD)又は光学的表面アプリケータ(optical surface applicator:OSA)を使用して適用される。図1を参照すると、光学制御機器11、光ケーブル12、及び光学照射装置13を含む、本開示の設定可能なPDTシステム10の形態の光学光線照射システムが示される。ある特定の実施形態において、光学制御機器11は、少なくとも1つのコンピュータプロセッサ、光源、光源制御器、並びに光学制御機器と光ケーブル12を光学的に結合する入力及び出力を含む様々な入力及び出力を含む。光源は、単一波長の治療光線を発生させるよう構成される光源、各々異なる波長の治療光線を発生させるよう各々が構成される複数の光源、又は各々異なる波長又は所定の波長帯の治療光線を発生させるよう構成される調整可能な光源を含み得る。光源制御器は、特に光源のデューティサイクル及びパワー出力を制御するよう構成される。以下により詳細に開示されるように、光学照射装置13は、光ケーブル12に光学的に結合され、且つ光学制御機器11内の光源から治療光線を患者に照射するよう構成されるCLDを含む様々な装置を含み得る発光器を含む。光学照射装置13は、光学照射装置から発せられる光を検出するよう構成されるファイバ検出器も含み得る。光ケーブル12は、発光器に光学的に結合される照射ファイバ及び検出ファイバに光学的に結合される収集ファイバを含む任意の数の光ファイバを含む。ここで図2を参照すると、光学制御機器21、光ケーブル22、及び光学照射装置23を含む、本開示の設定可能なPDTシステム20が示される。ある特定の実施形態において、光学制御機器21は、少なくとも1つのコンピュータプロセッサ、光源、光源制御器、並びに光学制御機器と光ケーブル12を光学的に結合する入力及び出力を含む様々な入力及び出力を含む。光源は、単一波長の治療光線を発生させるよう構成される光源、単一波長の治療光線を発生させるよう各々が構成される複数の光源、各々異なる波長の治療光線を発生させるよう各々が構成される複数の光源、又は各々異なる波長の治療光線を発生させるよう構成される調整可能な光源を含み得る。光源制御器は、特に光源のデューティサイクル及びパワー出力を制御するよう構成される。以下により詳細に開示されるように、光学照射装置23は、光学アプリケータ内に位置する複数のCLDを含む、光ケーブル12に光学的に結合し、且つ光学制御機器11内の光源(複数可)からの治療光線を患者に照射するよう各々が構成される様々な装置で構成され得る複数の発光器を含む光学アプリケータの形態の表面接触デバイスである。光学照射装置23は、複数の発光器から発せられる光を検出するよう構成される複数のファイバ検出器も含み得る。光ケーブル22は、発光器の1つに各々が光学的に結合される複数の照射ファイバ及び検出ファイバの1つに各々が光学的に結合される複数の収集ファイバを含む任意の数の光ファイバを含む。
【0016】
PDTは、壊死効果又はアポトーシス効果によって酸化的細胞死を引き起こすことが知られる。PDTの適用は、抗腫瘍免疫応答を引き起こし得るか、又は高め得ることが研究により示されている。これらの効果は、光感作物質の種類、その局在性、露光の光線量及び線量率、並びに細胞遺伝子型といった複数の因子に依存する。以下により詳細に開示されるように、本開示のPDT光線照射は、正常組織を避け、患者の標的組織に厳密に焦点を合わせることができる。この発見は、最適な薬剤-光線照射間隔(DLI)におけるPDTの適用に更なる柔軟性を持たせることができる方法を可能とする。本明細書で用いられるDLIは、光感作剤を投与してから光線投与までの時間と定義される。最適DLIは、ある特定の治療効果が発揮されるよう選択される。広範囲の放射照度値にわたって制御された光線照射線量を、最適なPDT効果を発揮する最適DLIで光感作剤を含有する生体標的に照射可能な照光機器はこれまで存在していなかった。図3を参照し、DLIをグラフで表す。ここで、DLIは横座標に示され、最適PDT治療は縦座標に示される。比較PDT治療31は、先行技術を表し、ここでDLIは、(簡略化のために単一の時間で示されているが)24~48時間であり、相対的最適化レベルは低い。本開示の一部として、DLIが数分から数時間の最適化帯32は、著しく高い相対的最適化PDT治療効果を示す。最適化DLI帯32における最適化PDT治療効果が高い理由の一つは、血管作用及び他の知られる作用によって消散されずに、標的組織のがん細胞中により多くの光感作物質が存在するからである。最適化DLI帯32における最適化PDT治療効果が高い別の理由は、高濃度の光感作物質の存在下で免疫応答増強を引き起こすためである。
【0017】
図2を参照すると、本明細書に開示される方法を使用する設定可能なPDTシステム20は、光学制御機器21及び光学アプリケータ23を使用して正確に焦点が絞られた治療光線を厳密な線量率で標的がん組織に適用することを含む。本開示の実施形態において、本明細書でフルエンス率とも称される線量率は、調整することができ、選択されたDLIにおいて、mW/cmで測定される最適な平均線量率を与え、免疫療法処置に対するがん細胞のより十分な応答を増強させる化学過程を最適化する。
【0018】
図4を参照すると、本開示の設定可能なPDTシステム20によって可能となる2つの異なるPDT治療タイプの例のグラフ表示40が示される。詳述される治療例は2つのみであるが、設定可能なPDTシステム20は、そのような治療タイプに限定されず、多くの異なる治療タイプが本開示によって企図されることを当業者であれば認識するだろう。第1の事例では、腫瘍の外科的除去後に標的領域に投与され得るPDTアジュバント処置41が示される。PDTアジュバント処置41は、二次性腫瘍の形成を抑制するために適用され得る。典型的には、比較的長いDLIの後にアジュバント処置を行うことが推奨される。この例において、光学制御機器21は、光源を制御し、総線量42が30J/cmとなるよう、フルエンス又は線量が50mW/cmの治療光線を約10分間標的領域に当ててPDTアジュバント処置41を行う。本明細書で後に詳細に記載されるように、総露光面積は、正常組織への露光を避けて特定のがん組織を厳密に標的とするよう、治療計画に準拠して光学制御機器21によって制御される。グラフ表示40には、PDT免疫増強処置43も示される。本明細書で先に開示されたように、PDT免疫増強処置43は、そのような処置が短いDLIで実施される場合、より高濃度の光感作物質の存在下で免疫反応の増強を引き起こすために適用され得る。この例において、光学制御機器21は、光源を制御し、総線量42が30J/cmとなるよう、フルエンス又は線量が25mW/cmの治療光線を約20分間標的領域に当ててPDT免疫増強処置43を行う。PDTアジュバント処置41と同様、総露光面積は、正常組織への露光を避けて特定のがん組織を厳密に標的とするよう、治療計画に準拠して光学制御機器21によって制御される。先行技術のPDT法よりも高濃度の光感作物質を周囲の正常組織が含むため、がん組織を厳密に標的とする能力は、PDT免疫増強処置43において重要であることを当業者は理解するだろう。
【0019】
図5を参照すると、本開示の設定可能なPDTシステム20によって可能となる、変調された治療光線を標的領域に照射するための2つの異なるデューティサイクルの例のグラフ表示50が示される。詳述されるデューティサイクルの例は2つのみであるが、設定可能なPDTシステム20は、このデューティサイクルの種類及び数に限定されず、多くの異なるデューティサイクルが本開示によって企図されることを当業者であれば認識するだろう。設定可能なPDTシステム20で適用される平均線量率を制御するために、デューティサイクル変調技術が適用される。PDTアジュバント処置41に関連して免疫増強処置43について先に述べたように、異なるデューティサイクルが適用され、異なる治療タイプを提供することができる。低平均線量デューティサイクル51は、3つのオンサイクル52、53、54から構成され、その間にオフ(滞留(dwell))時間が存在する。光学制御機器21は、低平均線量デューティサイクル51完了時に総線量を与えるよう、治療計画に準拠してオン/オフサイクル用のフルエンス率をもたらすよう光源を制御する。4つのオンサイクル55、56、57、58から構成され、その間にオフ(滞留)時間が存在する高平均線量デューティサイクル51も示される。光学制御機器21は、高平均線量デューティサイクル58完了時に総線量をもたらすよう、治療計画に準拠してオン/オフサイクル用のフルエンス率を与えるよう光源を制御する。デューティサイクルの変調に加え、光学制御機器21のコンピュータプロセッサは、PDT線量の任意の処方を適用してアジュバント処置及び免疫反応の増強を最適化するようプログラムされ得る。
【0020】
改めて図2を参照すると、設定可能なPDTシステム20が示される。光学制御機器21の光制御器は、複数の発光器によって照射される放射照度(照射パターン及びフルエンス率の両方)を測定するよう構成され、且つ5mW/cmから300mW/cmの幅広いフルエンス率を出力するよう構成される。本明細書で先に開示されたように、設定可能なPDTシステム20は、これらのフルエンス率を調節し、適合する表面アプリケータの形態の光学照射装置23及び装置全体にわたって所望の空間プロファイルを可能とする光拡散装置を使用して標的組織に光線を向かわせるよう更に構成される。設定可能なPDTシステム20の光学照射装置23は、術間処置における患者体内での使用に特に適する。他の実施形態は、組織内装置を含む。複数の発光器及び光制御器は、高度に制御可能な照射パターンを可能とし、関心標的領域に治療光線を厳密に適用することができる。これらの設定可能なPDTシステム20の特性は、本明細書で先に開示されたように、処方の治療反応をひき起こすDLIが短い治療法を可能とする。本明細書で先に開示されたように、ある特定の実施形態において、設定可能なPDTシステム20の光源は、様々な波長の治療光線を発生させるよう構成される光源を含むことができ、且つ各々異なる波長の治療光線を発生させるよう各々が構成される複数の光源又は各々異なる波長の治療光線を発生させるよう構成される調整可能な光源を含むことができる。様々な波長の治療光線を発生させる能力は、有利なことに、設定可能なPDTシステム20を、処方の様々なトリガー波長を有する広範囲の光感作剤と共に使用することを可能とする。設定可能なPDTシステム20に適する様々な光感作剤として、既知及び未開発の光感作剤、中でもポルフィマーナトリウム(PHOTOFRIN(登録商標))、タラポルフィンナトリウム(Laserphyrin(登録商標))、2-(1-ヘキシロキシエチル)-2-デビニルピロフェオホルビド-a(HPPH-フォトクロル)、ベンゾポルフィリン誘導体一酸環A(ベルテポルフィン、Visudyne(登録商標))、レダポルフィン(LUZ11)、クロリンE6/P6/パープリン(Bremachlorin(登録商標)、Radachlorin(登録商標))、Ru(II)ポリピリジル錯体(TLD-1433)、パデリポルフィン二カリウム(TOOKAD(登録商標))、及び5-アミノレブリン酸塩酸塩(Gliolan(商標)、5-ALA)が挙げられる。単なる例として、処方の活性化ピーク波長は、Gliolan(商標)については630nmであり、Laserphyrin(登録商標)については664nmであり、PHOTOFRIN(登録商標)については630nmであり、HPPH-フォトクロルについては665nmである。なお、処方の活性化ピーク波長は、本開示の実施形態を使用して達成され得、照射される治療光線は、処方の活性化ピーク波長を中心とする公称ピーク波長を有し得る。しかし、本明細書で直前に開示された処方の活性化ピーク波長は、本開示の実施形態を使用して達成され得る処方の活性化ピーク波長の例であり、未開発の光感作剤及び医師に処方された適応外の使用にも適合するよう、他の波長を有する治療光線も照射され得る。このように、本開示の実施形態は、広く正確な活性化ピーク波長もたらすよう構成され得る治療光線照射システムを独創的に可能とする。
【0021】
PDTに対する細胞応答は、光感作物質の局在性及び活性化部位に大きく依存するため、本開示の方法で光感作物質の局在性を理解及び制御し、前述の、ある特定の効果を発揮させ、PDTシステム20の潜在的な治療的利用を拡大させることができる。設定可能なPDTシステム20の光照準能は、光感作物質が活性化され且つ所望のPDT効果が発揮される所望の位置に光感作物質がある、光感作剤が正常組織から消える前の最適時点でのDLIを可能とする。投与時点から光感作物質が標的位置に到達するまで、協同して光感作物質の潜伏及び最終位置に影響する様々な物理的、化学的、及び生物学的事象が時間の経過とともに起こる。これは、特定の光感作物質の薬物動態及びDLIに依存し得、これは、設定可能なPDTシステム20及び本明細書に開示される方法を使用し、所望の最終位置に応じて調節され得る。光感作物質を静脈内投与すると、光感作物質は、まず血清タンパク質に結合し、その薬物動態に基づいて様々に会合し分散される。光感作物質は、次いで血管から進出して腫瘍部位に到達し、細胞外基質と、次いで腫瘍内の細胞と会合する。当業者であれば認識するように、光感作物質は、多くの細胞小器官及び細胞内コンパートメントに局在することが示されており、光感作物質の細胞取り込みは、その治療効果を最終的に決定する光感作物質の細胞取り込み及び細胞内局在性を決定する全体構造、電荷及び電荷分布、及び脂溶性といった薬剤分子の構造的特性によって駆動される。本開示の実施形態を用いる方法の1例において、ポルフィマーナトリウムで構成される光感作物質に関し、3時間のDLIの後の適切な波長の治療光線は、原形質膜内でポルフィマーナトリウムを活性化させ、壊死性細胞死をもたらす。同例において、24時間のDLIの後、ポルフィマーナトリウムは、細胞小器官内に位置し、適切な波長の治療光線が、アポトーシス効果をもたらす。或いは、溢出前に、短いDLI、多くのポルフィリイン系光感作物質については通常1時間で光感作物質を活性化させると、急性の血管反応が見られる血管作用がもたらされる。
【0022】
所与の光感作物質の薬物動態、疾患状態におけるその取り込み、組織タイプ、及び患者特有のバイオメトリクスに関する情報を用いることで、設定可能なPDTシステム20による目標とするPDT光線の照射によって、所望の効果を得るよう所望の位置で薬を活性化させるために、正常組織のクリアランスより前に実施可能なDLIの処方が可能となることが見出された。更に、治療光線の線量測定パラメータは、所望の効果を更に最適化するよう調節され得ることが見出され、本明細書に記載される。PDTの有効性に必要とされる腫瘍の酸化に光フルエンス率が影響することも示され、ここで高いフルエンス率の使用は、腫瘍周囲への酸素供給を枯渇させて低酸素状態を引き起こし、治療効果を制限することがある。光化学的酸素消費量が光感作物質吸収係数、光感作物質濃度、及び光フルエンス率の積に比例するように、本開示の設定可能なPDTシステム20によって制御可能なパラメータの組み合わせは、PDT処置効率の最適化に使用され得る。換言すると、適切な組織への酸素供給を維持するPDT効率は、設定可能なPDTシステム20の光制御器を使用し、光感作物質のパラメータを固定してフルエンス率を調節することにより最適化され得る。
【0023】
操作手順100が示される図6を参照し、本開示の方法の例を最もよく示すことができる。ステップ102において、使用者又は使用者のチームは、行われる治療タイプを選択する。治療タイプとして、壊死、アポトーシス、血管、免疫原性又は免疫反応性(抗腫瘍免疫応答を引き起こす治療)、及び他の既知のPDT治療タイプを含むあらゆるタイプのPDTを挙げることができる。治療タイプは、光学制御機器21内のコンピュータプロセッサ又は独立型コンピュータに入力され得る。ステップ104において、使用者は、投与される光感作剤のタイプを選択する。光感作剤として、既知又は未開発の光感作剤、中でもポルフィマー(PHOTOFRIN(登録商標))、タラポルフィンナトリウム(Laserphyrin(登録商標))、2-(1-ヘキシロキシエチル)-2-デビニルピロフェオホルビド-a(HPPH-フォトクロル)、ベンゾポルフィリン誘導体一酸環A(ベルテポルフィン、Visudyne(登録商標))、レダポルフィン(LUZ11)、クロリンE6/P6/パープリン(Bremachlorin(登録商標)、Radachlorin(登録商標))、Ru(II)ポリピリジル錯体(TLD-1433)、パデリポルフィン二カリウム(TOOKAD(登録商標))、及び5-アミノレブリン酸塩酸塩(Gliolan(商標)、5-ALA)を挙げることができる。ステップ106において、使用者は、ステップ102、104からの入力に基づき初期治療計画を決定する。選択された光感作剤は、光学制御機器21内のコンピュータプロセッサ又は独立型コンピュータに入力され得る。ステップ106において、標的領域のデジタル画像を学制御機器21内のコンピュータプロセッサ又は独立型コンピュータに入力する。デジタル画像は、CATスキャン、MRI、X線、又は他の適切なデジタル画像であり得る。標的エリアは、肉眼的腫瘍、切除腫瘍の腫瘍床、又は腫瘍細胞の蛍光画像であり得る。ステップ108において、選択された治療タイプ、選択された光感作剤、及び標的領域のデジタル画像に基づき、コンピュータプロセッサは、標的領域への治療光線投与に関する複数のパラメータを決定する。照射パターンを与える発光器を適切に選択することは重要な要素である。本開示のある特定の実施形態において、光学アプリケータ23(図2)は、円筒光拡散器、分割型円筒光拡散器、点光拡散器等を含み得る複数の発光器を含む。1つの重要なパラメータは、デジタル画像に厳密に適合する照射パターンの生成に、光学アプリケータ23内の複数の発光器のうちどれを点灯させるかを決定することである。このパラメータには、人工知能法を用いることができ、照射パターンを決定する光学スイッチ及び複数の光源の操作を含んでよい。このパラメータは、標的領域の治療を確実に完了させるためにデジタル画像の周囲にマージンを与えるアルゴリズムも含むことができる。別のパラメータは、ステップ104で選択された光感作剤に適合するよう、治療光線の適切な波長を選択することである。このパラメータは、適切な波長に調整可能な光源を調整するか、又は光学制御機器21内の適切な波長を有する光源に光学的に結合させる光学スイッチを使用することによって制御され得る。ステップ108における標的領域への治療光線の投与に関する複数のパラメータの中で投与量は別のパラメータである。投与量は、標的領域に投与される治療光線の適切なフルエンス率(mW/cm)、変調(図5)、及び総フルエンス(J/cm)を決定することを含む。ステップ110において、初期治療計画が決定され、これは、ステップ108の出力、及び本明細書で先に開示されたように、初期治療計画に含まれる他のパラメータの中でも選択された治療タイプをもたらす適切な効果を発揮するのに最適な薬剤-光線照射間隔を含む。初期治療計画は、光制御器、光源(複数可)、検出器、及び他の構成要素を操作して治療計画を実行するために光学制御機器21内のコンピュータプロセッサ上で実行されるコンピュータコードによる一連の命令を含み得る。ステップ112において、選択された光感作剤が使用者によって患者に投与される。
【0024】
本開示の光線治療を患者に提供する方法の実施形態に従い、ステップ114において、発光器が、患者の標的領域の近くに位置される。一部の実施形態において、方法は、術間処置において発光器を生体内に設置することを含むことが企図される。可撓性光学アプリケータ23が使用される実施形態において、光学アプリケータは、標的領域に対して空間的に正確に光学アプリケータを設置するよう、デジタル画像と併せて使用され得る第1の放射線マーカーを含み得る。肉眼的腫瘍を除去する外科的処置が完了した後、設定可能なPDTシステム20で治療される標的領域上に第2の放射線マーカーを置くことができる。術前画像を取得し、標的領域、及び標的領域に対する第2の放射線マーカーの位置を決定することができる。第1のマーカーと第2のマーカーを整列させ、患者の体内の標的領域の近くに光学アプリケータ23を置く。術中画像を取得し、第1のマーカーと第2のマーカーの整列を確認することができる。オフセット距離が存在する場合、光学アプリケータは、第1のマーカーと第2のマーカーが整列するよう光学アプリケータをオフセット距離だけ動かすことによって再配置され得る。必要なDLIが経過すると、ステップ116において、初期治療計画が開始され、設定可能なPDTシステム20を使用して標的領域に治療光線が照射される。治療光線適用中、光学アプリケータ23内の検出器が、治療光線の投与量のモニタに使用され、コンピュータプロセッサが、モニタされた治療光線と治療計画とを比較する。光学アプリケータ23が高度に自動化されたシステムであり、閉回路で作動することを考慮すると、計画に厳密に従って標的領域に治療光線を照射することが可能である。初期治療計画が完了し、初期計画を満たすとコンピュータプロセッサがステップ120で判断する実施形態において、PDTセッションは、ステップ122で完了される。
【0025】
図7を参照すると、患者を効果的に治療するために更新された治療計画200の実行が必要となるように操作手順100(図6)が初期治療計画から逸脱した本開示の方法が示される。初期治療計画100からの逸脱は、ステップ202で判断される。そのような差異は、ステップ108における治療光線の複数のパラメータの何れかからの逸脱、DLIの逸脱、電力の遮断等を含み得る。独創的なことに、光学制御機器21は、逸脱を判断することができ、ステップ204における逸脱に基づき更新された治療計画を更に決定することができる。ステップ116及び118と同様に、更新された治療計画200の実施中、ステップ206において、設定可能なPDTシステム20を使用して治療光線が標的領域に照射され、光学アプリケータ23内の検出器ファイバからの検出信号を使用して治療光線がモニタされ、ステップ208において、コンピュータプロセッサがモニタされた治療光線と更新された治療計画とを比較する。コンピュータプロセッサによって更新された治療計画200が満たされているとステップ210において判断される実施形態において、更新された治療計画は、ステップ212で完了する。コンピュータプロセッサによって更新された治療計画200が満たされていないとステップ210において判断される実施形態において、更新された治療計画が完了するまでステップ202~210が繰り返される。
【0026】
本明細書において開示され、特許請求される方法の全ては、本開示に照らして、過度の実験なしに成され、且つ実行され得る。本開示の装置及び方法は、好ましい実施形態に関して記載されているが、本開示の概念、趣旨、及び範囲から逸脱することなく、変形例が、方法に適用されてよく、本明細書に記載の方法のステップ又は一連のステップにおいて適用されてよいことは、当業者には明らかであろう。また、開示される装置を改良してもよく、構成要素は、同一又は類似の結果が達成されるであろう場合、取り除かれるか、又は本明細書に記載の構成要素と置換されてもよい。当業者に明らかなそのような類似の置換及び改良は全て、本発明の趣旨、範囲、及び概念の範囲内であるとみなされる。
【0027】
本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書に記載さるが、以下の特許請求の範囲に現在記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、様々な改良及び変更を行うことができる。従って、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきであり、そのような改良は全て、本発明(複数可)の範囲に含まれるよう意図される。特定の実施形態に関して本明細書に記載されるあらゆる利益、利点、又は問題に対する解決策は、何れか又は全ての特許請求の範囲の重要な、必要な、又は必須の特徴又は要素として解釈されることを意図するものではない。
【0028】
別段の記載がない限り、「第1の」及び「第2の」といった用語は、そのような用語が説明する要素を恣意的に区別するために使用される。従って、これらの用語は、そのような要素の時間的又は他の優先順位付けを示すことを必ずしも意図するものではない。「接続される」又は「動作可能に接続される」という用語は、必ずしも直接的ではなく、必ずしも機械的ではないが、結合されていると定義される。「a」及び「an」という用語は、別段の記載がない限り、1つ又は複数として定義される。「comprise」(並びに「comprises」及び「comprising」といった任意の形態のcomprise)、「have」(並びに「has」及び「having」といった任意の形態のhave)、「include」(並びに「includes」及び「including」といった任意の形態のinclude)、及び「contain」(並びに「contains」及び「containing」といった任意の形態のcontain)という用語は、オープンエンドの連結動詞である。結果として、1つ又は複数の要素を「含む(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」、又は「含有する(contains)」システム、デバイス、又は装置は、当該1つ又は複数の要素を有するが、当該1つ又は複数の要素のみを有することに限定されない。同様に、1つ又は複数の操作を「含む(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」、又は「含有する(contains)」方法又はプロセスは、当該1つ又は複数の操作を有するが、当該1つ又は複数の操作のみを有することに限定されない。
【0029】
上記は、本発明の実施形態を対象としているが、本発明の他の実施形態及び更なる実施形態は、その基本的な範囲から逸脱することなく考案されてよく、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって判定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】