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特表2024-527988カスケード反応器システムにおいてケイ素含有材料を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】カスケード反応器システムにおいてケイ素含有材料を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20240719BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C01B32/05
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024505035
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 EP2021071308
(87)【国際公開番号】W WO2023006209
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns-Seidel-Platz 4, D-81737 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティルマン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】クナイスル,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ドレーゲル,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】カリャーキナ,アレーナ
(72)【発明者】
【氏名】レンナー,トーマス
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA15
4G146AB01
4G146AD11
4G146AD15
4G146AD23
4G146AD25
4G146BA01
4G146CB11
4G146CB17
4G146CB32
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA27
5H050GA29
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
本発明は、1つ以上の多孔質粒子の存在下における1つ以上のケイ素前駆体の熱分解によってケイ素含有材料を製造する方法であって、ケイ素が、複数の反応器を含むカスケード反応器システムにおいて、多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積される方法を提供し、
該ケイ素含有材料を含むアノード材料、アノード及びリチウムイオン電池を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の多孔質粒子の存在下における1つ以上のケイ素前駆体の熱分解によってケイ素含有材料を製造する方法であって、ケイ素が、複数の反応器を含むカスケード反応器システムにおいて、前記多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積される方法。
【請求項2】
少なくとも段階1~7を含む、請求項1に記載の方法:
段階1:反応器Aに多孔質粒子を充填し、該粒子を前処理する、
段階2:前処理された粒子を反応器Bに移し、該反応器に少なくとも1つのケイ素前駆体を含む反応性成分を充填する、
段階3:前記ケイ素前駆体が反応器内で分解し始める目標温度まで前記反応器Bを加熱する、
段階4:前記ケイ素前駆体を分解し、前記多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積させ、ケイ素含有材料を形成し、圧力を少なくとも7barまで上昇させる、
段階5:前記反応器Bを冷却する、
段階6:堆積の過程で形成されたガス状反応生成物を前記反応器Bから除去し、前記ケイ素含有材料を反応器Cに移す、
段階7:前記反応器Cから前記ケイ素含有材料を取り出す。
【請求項3】
段階1が以下のように構成される、請求項2に記載の方法:
段階1
段階1.1:前記反応器Aに前記多孔質粒子を充填する、
段階1.2:反応器Aにおいて該粒子を前処理する、
段階1.3:前処理された粒子を前記反応器Bに移すか、又は貯蔵容器Dに中間貯蔵した後に前記反応器Bに移すか、又は材料が反応器Aに残る。
【請求項4】
段階2が以下のように構成される、請求項2又は3に記載の方法:
段階2
段階2.1:反応器Bにおける前記粒子の加熱又は冷却、
段階2.4:前記反応器Bに、少なくとも1つのケイ素前駆体を含む少なくとも1つの反応性成分を充填する。
【請求項5】
段階3が以下のように構成される、請求項2~4に記載の方法:
段階3
段階3.1:前記反応性成分が反応器B内で分解し始める目標温度まで前記反応器Bを加熱する。
【請求項6】
段階4が以下のように構成される、請求項2~5に記載の方法:
段階4.1:前記ケイ素前駆体を分解し、前記多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積させ、圧力を少なくとも7barまで上昇させる。
段階4.2:少なくとも7barの圧力がもたらされる所定の期間にわたる最低温度又は温度プロファイルを確立する。
【請求項7】
段階5が以下のように構成される、請求項2~6に記載の方法:
段階5
段階5.1:反応器B内の圧力を所定の圧力に調整する、
段階5.2:所定の温度又は所定の温度プロファイルまで前記反応器Bを冷却する。
【請求項8】
段階6が以下のように構成される、請求項2~7に記載の方法:
段階6
段階6.1:堆積の過程で形成されたガス状反応生成物を前記反応器Bから除去する、
段階6.2:前記粒子を反応器Cに移すか、又は貯蔵容器Eに中間貯蔵した後に反応器Cに移すか、又は材料が反応器Bに残る、
段階6.3:所定の温度又は所定の温度プロファイル及び所定の圧力に反応器Cを調節する。
【請求項9】
段階7が以下のように構成される、請求項2~8に記載の方法:
段階7
段階7.1:反応器Cにおいて前記粒子を後処理して粒子表面を不活性化する、
段階7.2:該粒子を所定の温度まで冷却し、反応器Cからケイ素含有材料を取り出し、好ましくは貯蔵容器Eに直接移すか、又は適切な容器に直接充填する。
【請求項10】
前記カスケード反応器が、2つの相互に依存する反応器のみからなり、段階1~6.1は同じ反応器中で実施され、段階1.3は省略され、又は段階2~7は1つの反応器中で実施され、段階6.2は省略される、請求項2~9に記載の方法。
【請求項11】
段階4.1及び4.2における反応器B内の圧力が、少なくとも10barに達する、請求項2又は6~10に記載の方法。
【請求項12】
段階4.1及び4.2における反応器B内の温度が、100~1000℃の範囲である、請求項2又は6~11に記載の方法。
【請求項13】
前記ケイ素前駆体が、ケイ素-水素化合物、塩素含有シラン、及び塩素含有シランのより高級な直鎖、分岐又は環状同族体、塩素化及び部分塩素化オリゴシラン及びポリシラン、メチルクロロシラン又はそれらの混合物から選択される少なくとも1つの反応性成分を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔質粒子が、非晶質炭素、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び窒化ケイ素又はこれらの材料に基づくハイブリッド材料から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項による方法によって得られる少なくとも1つのケイ素含有材料と、少なくとも1つのバインダと、を含むアノード材料。
【請求項16】
請求項15に記載のアノード材料で被覆された集電体を含むアノード。
【請求項17】
カソードと、アノードと、電極への2つの導電性接続部と、セパレータと、セパレータ及び該2つの電極に含浸される電解質と、記載した構成要素を収容するケーシングと、を備え、前記アノードが、請求項1~14に記載の方法によって得られるケイ素含有材料を含む、リチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質粒子の存在下におけるケイ素前駆体の熱分解によってケイ素含有材料を製造する方法であって、ケイ素は多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積される製造する方法、又、得られたケイ素含有材料のリチウムイオン電池のアノード用の活物質としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の貯蔵媒体として、リチウムイオン電池は、現在、最も高いエネルギー密度を有する実用的な電気化学エネルギー貯蔵器である。リチウムイオン電池は、主に、携帯用電子機器の分野において、工具用に、また、自転車、スクータ又は自動車等の電気駆動輸送手段に利用される。対応する電池の負極(「アノード」)に現在広く普及している活物質は、グラファイト状炭素である。しかし、欠点は、このようなグラファイト状炭素の電気化学容量が比較的低いことであり、これは理論的にグラファイト1グラム当たり最大372mAhであり、したがってリチウム金属で理論的に達成可能な電気化学容量の約10分の1にしか相当しない。アノードのための代替的な活物質は、例えば、EP1730800B1、US10,559,812B2、US10,819,400B2、又はEP3335262B1に記載されるように、ケイ素の添加を使用する。リチウムと共にケイ素は、ケイ素1グラム当たり3579mAhまでの非常に高い電気化学的に達成可能なリチウム含有量を可能にする2元の電気化学的に活性な合金を形成する[M.Obrovac,V.Chevrier Chem. Rev. 2014、114、11444]。
【0003】
ケイ素中のリチウムイオンのインターカレーション及びデインターカレーションは、体積の非常に急激な変化という欠点を伴う。これは、完全なインターカレーションの場合、300%まで到達することがある。このような体積の変化は、ケイ素含有活物質を厳しい機械的負荷にさらし、活物質が最終的に分解する可能性がある。活物質及び電極構造において、電解研削とも呼ばれるこの方法は、電気的接触の損失をもたらし、したがって電極の一部における容量の持続的で不可逆的な損失をもたらす。
【0004】
さらに、ケイ素含有活物質の表面は電解質の構成成分と反応して、連続的に不動態化保護層(固体電解質界面、SEI)を形成する。形成された成分はもはや電気化学的に活性ではない。それらの中に結合しているリチウムは、システムで利用できなくなるため電池の部分の容量の顕著かつ連続的な損失につながる。電池の充電/放電中のケイ素の体積の極端な変化のため、SEIは一定の間隔で分解され、これは、ケイ素含有活物質のまだ占有されていない表面がさらに露出され、さらにSEIが形成されることになる。完全な電池では、有用な容量に対応する可動性リチウムの量がカソード材料によって制限されるため、リチウムはますます消費され、ほんの数サイクル後の電池の容量は、性能の観点から許容できない程度まで低下する。
【0005】
複数の充電及び放電サイクルの過程における容量の低下は、フェージング又は連続容量損失とも呼ばれ、一般に不可逆的である。
【0006】
リチウムイオン電池のアノード用の活物質として、一連のケイ素-炭素複合粒子が記載されており、ケイ素は、ガス又は液体前駆体から出発して多孔質炭素粒子に組み込まれる。
【0007】
例えば、US10,147,950B2は、CVD(化学気相成長法)又はPE-CVD(プラズマ強化化学気相成長法)の方法による、好ましくは粒子の撹拌を伴う、管状炉又は同等の炉のタイプにおける300~900℃の高温での多孔質炭素中でのモノシランSiHからのケイ素の堆積を記載する。この方法は、2モル%のモノシランと不活性ガスとしての窒素との混合物を用いる。ガス混合物中のケイ素前駆体の濃度が低い結果として、反応時間は非常に長い。さらに、US10,147,950B2は、多孔質出発材料上及び多孔質出発材料中でのケイ素の堆積を実施するために、300~900℃の異なる温度範囲と0.01~100barの異なる圧力範囲との多数の可能な組み合わせを開示している。
【0008】
類似の手順がUS10,424,786B1に記載されており、ケイ素前駆体は、1.013barの全圧下で不活性ガスとの混合物として導入される。WO2012/097969A1は、200~950℃での多孔質炭素支持体上のケイ素前駆体としてのシランの加熱による1~20nmの範囲の超微細ケイ素粒子の堆積を記載し、シランは、堆積されたケイ素粒子の弱凝集及び/又は厚い層の形成を防止するために不活性ガスで希釈され、堆積は、0.1~5barの圧力範囲で行われる。
【0009】
Motevalianら、Ind. Eng. Chem. Res. 2017、56、14995は、多孔質マトリックスの非存在下における、高圧でのケイ素層の堆積を記載している。この場合もやはり、使用されるケイ素前駆体、この場合はモノシランSiHは、ガス体積全体において最大で5モル%という低い濃度でのみ存在する。
【0010】
上記の方法は、様々な重大な欠点を有する。ケイ素前駆体は通常、低い絶対圧及び分圧で、したがって低い濃度で使用され、それによってケイ素含有材料において高いケイ素分率を達成するために長い反応時間を必要とする。これらの方法の別の欠点は、供給される反応性ガスのわずかな部分のみが反応することであり、したがって反応器から出るガスは、費用がかかり不便なリサイクル又は廃棄の操作を経なければならず、これは、特に、ケイ素前駆体(厳しい技術的安全要件を受ける)を使用する場合に、コストをさらに増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1730800号明細書
【特許文献2】米国特許第10,559,812号明細書
【特許文献3】米国特許第10,819,400号明細書
【特許文献4】欧州特許第3335262号明細書
【特許文献5】米国特許第10,147,950号明細書
【特許文献6】米国特許第10,424,786号明細書
【特許文献7】国際公開第2012/097969号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】M.Obrovac,V.L.Chevrier Chem.Rev.2014、114、11444
【非特許文献2】Motevalianら、Ind.Eng.Chem.Res.2017、56、14995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この背景に対して、本発明の目的は、リチウムイオン電池のアノードにおいて活物質として使用される場合、多孔質粒子及びケイ素前駆体から出発して高いサイクル安定性を可能にする、好ましくはリチウムイオンに対して高い貯蔵容量を有するケイ素含有材料を製造するための方法を提供することであり、この方法は、実施するのが技術的に簡単であり、先行技術の上述の方法の欠点がない、特に反応時間に関しては上述の方法の欠点がない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、この目的は、カスケード反応器システムにおいて、少なくとも7barの圧力でケイ素前駆体を分解することによって、ケイ素を多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積させる方法によって実質的に達成された。これは、多結晶ケイ素を製造するための方法から、比較的高い圧力でのケイ素の堆積が、ダストの増大した望ましくない形成を伴うことが知られている。(J.O.Oddenら,Solar Energy Mat.&Solar Cells 2005、86、165)。これは、多孔質粒子の孔の内面及び外面へのケイ素の堆積及び生成物収率の両方に対して逆効果である。この有害な効果は、驚くべきことに、本発明の方法によって克服される。
【0015】
リチウムイオン電池のアノード用の活物質としてのケイ素含有材料の製造は、例えば、本発明による圧力下で多孔質粒子及びケイ素前駆体から出発して、驚くべきことに多孔質粒子中のケイ素前駆体物質の量を増加させ、したがって反応時間を短縮することができるので、特に経済的に興味深い。本方法のさらなる経済的利点は、使用されるケイ素前駆体に関してより高いケイ素収率にある。またケイ素の堆積は特に均一であり、特に多孔質粒子内において起こり、その結果、リチウムイオン電池のアノードにおける活物質としての適用において得られるケイ素含有材料の高い安定性をもたらし、同時にサイクル中の体積変化が小さい。1つの反応器(本発明によらない)内でのみ関連する材料を製造することとは対照的に、カスケード反応器の手順は、1つの反応器の長い冷却及び加熱段階が低減されるという利点を有する。これは、1つの反応器のみに対して時間及びエネルギー技術の点で有利であり、反応器に対する物理的応力を低減する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、1つ以上の多孔質粒子の存在下における1つ以上のケイ素前駆体の熱分解によってケイ素含有材料を製造する方法であって、ケイ素が、複数の反応器を含むカスケード反応器システムにおいて、多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積される方法を提供する。
【0017】
1つの好ましい実施形態では、方法は、少なくとも段階1~7を含む。
段階1:反応器Aに多孔質粒子を充填し、該粒子を前処理する、
段階2:前処理された粒子を反応器Bに移し、該反応器に少なくとも1つのケイ素前駆体を含む反応性成分を充填する、
段階3:ケイ素前駆体が反応器内で分解し始める目標温度まで反応器Bを加熱する、
段階4:ケイ素前駆体を分解し、多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積させ、ケイ素含有材料を形成し、圧力を少なくとも7barまで上昇させる、
段階5:反応器Bを冷却する、
段階6:堆積の過程で形成されたガス状反応生成物を反応器Bから除去し、ケイ素含有材料を反応器Cに移す、
段階7:反応器Cからケイ素含有材料を取り出す。
【0018】
好ましい一実施形態では、段階1は以下のように構成される。
段階1
段階1.1:反応器Aに多孔質粒子を充填する、
段階1.2:反応器Aにおいて粒子を前処理する、
段階1.3:前処理された粒子を反応器Bに移すか、又は貯蔵容器Dに中間貯蔵した後に、反応器Bに移すか、又は材料が反応器Aに残る。
【0019】
好ましい一実施形態では、段階2は以下のように構成される。
段階2
段階2.1:反応器Bにおける粒子の加熱又は冷却、
任意選択で、段階2.2:反応器Bにおいて圧力を確立する、
任意選択で、段階2.3:反応器Bに少なくとも1つのケイ素を含まない反応性成分を充填する、
段階2.4:反応器Bに、少なくとも1つのケイ素前駆体を含む少なくとも1つの反応性成分を充填する。
【0020】
好ましい一実施形態では、段階3は以下のように構成される。
段階3
段階3.1:反応性成分が反応器B内で分解し始める目標温度まで反応器Bを加熱する。
【0021】
少なくとも1つのケイ素を含まない反応性成分が反応器B内にある場合、好ましくは段階3.2が続く。
段階3.2:Si前駆体を含まない反応性成分を分解する。
【0022】
好ましい一実施形態では、段階4は以下のように構成される。
段階4
段階4.1:ケイ素前駆体を分解し、多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積させ、圧力を少なくとも7barまで上昇させる。
段階4.2:少なくとも7barの圧力がもたらされる所定の期間にわたる最低温度又は温度プロファイルを確立する。
【0023】
好ましい一実施形態では、段階5は以下のように構成される。
段階5
段階5.1:反応器B内の圧力を所定の圧力に調整する、
段階5.2:所定の温度又は所定の温度プロファイルまで反応器Bを調整する。
【0024】
好ましい一実施形態では、段階6は以下のように構成される。
段階6
段階6.1:堆積の過程で形成されたガス状反応生成物を反応器Bから除去する、
段階6.2:粒子を反応器Cに移すか、又は貯蔵容器Eに中間貯蔵した後に、反応器Cに移すか、又は材料が反応器Bに残る、
段階6.3:所定の温度又は所定の温度プロファイル及び所定の圧力に反応器Cを調節する。
【0025】
好ましい一実施形態では、段階7は以下のように構成される。
段階7
段階7.1:反応器Cにおいて粒子を後処理して粒子表面を不活性化する、
段階7.2:粒子を所定の温度まで冷却し、反応器Cからケイ素含有材料を取り出し、好ましくは貯蔵容器Eに直接移すか、又は適切な容器に直接充填する。
【0026】
段階1.1において、多孔質粒子は、加熱可能及び/又は真空定格及び/又は圧力定格反応器Aに充填され、この充填は手動又は自動で行うことができる。
【0027】
反応器Aに多孔質粒子を充填することは、例えば、不活性ガス雰囲気下、又は好ましくは周囲空気下で行うことができる。使用可能な不活性ガスの例としては、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素若しくは二酸化炭素、又はこれらの混合物、例えば、フォーミングガスが挙げられる。アルゴン又は特に窒素が好ましい。
【0028】
自動充填は、例えば、計量スクリュー、スターホイール、振動トラフ、プレート型計量デバイス、ベルト型計量デバイス、真空計量システム、ネガティブ計量システム、又は例えば、サイロ、バッグシェーカー、若しくは他の容器システムからの他の計量システムを使用して達成され得る。
【0029】
段階1.2において反応器A中で粒子を前処理する目的は、空気/酸素、水又は分散剤、例えば、界面活性剤若しくはアルコール等、及び不純物を粒子から除去することである。これは、不活性ガスによる不活性化、温度を1000℃まで上昇させること、圧力を0.01ミリbarまで低下させること、又は該個々の操作工程の組み合わせによって達成され得る。使用される不活性ガスは、例えば、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素若しくは二酸化炭素、又はそれらの混合物、例えば、フォーミングガスであり得る。アルゴン又は特に窒素が好ましい。
【0030】
段階1.2における前処理の目的はまた、さらなる物質で多孔質粒子の化学的表面性質を改変することであってもよい。添加は、乾燥の前又は後に行われてもよく、材料が段階1.3に移される前にさらなる加熱工程があってもよい。この物質は、ガス状、固体若しくは液体の形態で、又は溶液として反応器に導入され得、混合物、エマルション、懸濁液、エアロゾル又は発泡体も可能である。問題の物質は、例えば、二酸化炭素、水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、フッ化水素酸、リン酸、硝酸、リン酸二水素アンモニウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、アルコキシドであり得る。
【0031】
段階1.3における移送は、例えば、ドロップチューブ、連続コンベヤー、フローコンベヤー/吸引又は圧力搬送ユニット(例えば、真空コンベヤー、輸送用送風機)、機械的コンベヤー(例えば、ドライブ付きローラーコンベヤー、スクリューコンベヤー、円形コンベヤー、循環コンベヤー、バケットユニット、スターホイールロック、チェーンコンベヤー、スクレーパーコンベヤー、ベルトコンベヤー、振動コンベヤー)、重力コンベヤー(例えば、シュート、ローラーベッド、ボールベッド、レールベッド)によって、及び非連続コンベヤー、床ベース及びレールフリー(例えば、自動化車両、手動フォークリフトトラック、電動フォークリフトトラック、ドライバーレス輸送システム(DTS)、エアクッション車両、ハンドカート、電動カート、自動車(トラクタ、ワゴン、フォークリフトスタッカー)、移送キャリッジ、移送/リフトキャリッジ、棚アクセスデバイス(コンバータ有り/無し、湾曲した経路に従うことができる)、フロアベースのレールバウンド(rail-bound)(例えば、プラント鉄道、トラック車両)、フロアフリー(例えば、トロリートラック、クレーン(例えば、ブリッジクレーン、ポータルクレーン、ジブクレーン、タワークレーン)、電気オーバーヘッドトラック、小容器輸送システム、固定物(例えば、エレベータ、サービスリフト及びチェリーピッカー、段階的コンベヤー)によって達成され得る。
【0032】
貯蔵容器Dは、温度調節可能、移動可能、断熱されていてもよく、又は管システムによって反応器Bに接続され得る。
【0033】
段階2.1において、反応器B中の前処理された材料は、好ましくは100~1000℃、より好ましくは250~500℃、特に好ましくは300~400℃の温度にされる。
【0034】
任意の段階2.2において、反応器Bは、好ましくは0.01mbar~100bar、より好ましくは0.01mbar~10bar、特に好ましくは50mbar~3barの圧力に調整される。圧力は、不活性ガス及び/又は反応性ガスを使用して調整されてもよい。使用される不活性ガスは、例えば、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素若しくは蒸気、又はそれらの混合物、例えば、フォーミングガスであり得る。アルゴン、窒素、又は特に水素が好ましい。
【0035】
前記物質は、例えば、Tピース又は上流混合ブロックによって同時に、又は連続して反応器Bに導入されてもよく、反応器Bは、任意選択で事前に排気されてもよい。
【0036】
段階2.2において反応器Bは、好ましくは、最初に、換言すれば、特に、反応器Bが段階2.3及び/又は2.4の反応性成分で充填される前に不活性ガスで充填されるか、又は排気される。
【0037】
任意選択の段階2.3において、反応器Bは、ケイ素前駆体を含有しない反応性成分で充填される。
【0038】
段階2.4において、反応器Bは、少なくとも1つのケイ素前駆体を含む反応性成分で充填される。
【0039】
本方法の1つの変形例では、反応性成分は、例えば、下から、又は特定の撹拌機を介して、多孔質粒子の床に直接反応器に導入される。この変形例は、添加を開始する前に1bar未満の圧力で反応器Bに計量投入する場合に特に好ましい。
【0040】
反応器Bは、好ましくは、計量される多孔質粒子の量に関して、製造されるケイ素含有材料の目標容量に充分な量のケイ素が堆積されるような量の反応性成分で充填される。これは、段階2.1~6.1の1つの工程で、又は複数の反復で行うことができる。
【0041】
充填は、一般に反応器への反応性成分の導入を意味する。反応器への導入中、反応性成分の構成成分は、例えば、ガス状、液体又は昇華性固体形態で存在し得る。
【0042】
反応性成分は、好ましくは、例えば、ガス状、液体、固体、昇華性であり、又は任意に物質の状態が異なる物質からなる組成物である。
【0043】
段階2.4からの反応性成分は、少なくとも1つのケイ素前駆体及び任意選択で不活性ガス成分を含む。1つ以上のケイ素前駆体は、一般に、混合物として、又は別々に、又は不活性ガス成分との混合物として、又は純粋な物質として、反応器Bに導入することができる。反応性成分は、好ましくは、標準条件下(DIN 1343に準拠)の反応性成分の全圧内の不活性ガス成分の分圧に基づいて、0~99%、より好ましくは最大50%、特に好ましくは最大30%、非常に好ましくは最大5%の不活性ガス成分を含む。1つの非常に好ましい実施形態では、反応性成分は不活性ガス構成成分を含有しない。
【0044】
ケイ素前駆体は、例えば、熱処理の選択された条件下でケイ素を形成するように反応することができる少なくとも1つの反応性成分を含む。反応性成分は、好ましくは、モノシランSiH、ジシランSi等のケイ素-水素化合物、及びより高級な直鎖状、分岐状又は環状同族体、ネオペンタシランSi12、シクロヘキサシランSi12、塩素含有シラン、例えば、トリクロロシランHSiCl、ジクロロシランHSiCl、クロロシランHSiCl、テトラクロロシランSiCl、ヘキサクロロジシランSiCl、及びより高級な直鎖状、分岐状又は環状同族体、例えば、1,1,2,2-テトラクロロジシランClHSi-SiHCl、塩素化及び部分塩素化オリゴシラン及びポリシラン、メチルクロロシラン、例えば、トリクロロメチルシランMeSiCl、ジクロロジメチルシランMeSiCl、クロロトリメチルシランMeSiCl、テトラメチルシランMeSi、ジクロロメチルシランMeHSiCl、クロロメチルシランMeHSiCl、メチルシランMeHSi、クロロジメチルシランMeHSiCl、ジメチルシランMeSi、トリメチルシランMeSiH、又は記載されたケイ素化合物の混合物を含む群から選択される。
【0045】
本方法の1つの特定の実施形態では、モノシラン又はシランの混合物、例えば、モノシランSiH、トリクロロシランHSiCl、ジクロロシランHSiCl、モノクロロシランHSiCl及びテトラクロロシランSiClの混合物(各構成成分は0~99.9重量%で存在し得る)は、反応器内への配置の直前にのみ好適な方法によって生成される。一般的に言えば、これらの方法は、トリクロロシランHSiClから開始し、これは、好適な触媒(例えば、AmberLyst(商標)A21DRY)上で転位されて、記載された混合物の他の成分を形成する。得られる混合物の組成は、主として、1つ以上の異なる温度での1つ以上の転位段階後に得られる混合物のワークアップ(work-up)によって測定される。
【0046】
特に好ましい反応性成分は、モノシランSiH、オリゴマー又はポリマーシラン、特に一般式Sin+2(nは、2~10の範囲の整数を含んでもよい。)の直鎖状シラン、一般式-[SiH-(式中、nは、3~10の範囲の整数を含んでもよい)の環状シラン、トリクロロシランHSiCl、ジクロロシランHSiCl、及びクロロシランHSiClを包含する群から選択され、これらは単独で又は混合物として使用されてもよく、非常に好ましくは、SiH、HSiCl、及びHSiClが単独で又は混合物として使用される。
【0047】
さらに、加えて、段階2.3及び/又は2.4からの反応性成分はまた、例えば、ホウ素、窒素、リン、ヒ素、ゲルマニウム、鉄、又はニッケルを含有する化合物に基づくドーパント等の他の反応性構成成分を含んでもよい。ドーパントは、好ましくは、アンモニアNH、ジボランB、ホスファンPH、ゲルマンGeH、アルサンAsH、鉄ペンタカルボニルFe(CO)及びニッケルテトラカルボニルNi(CO)を包含する群から選択される。
【0048】
反応性成分中に存在し得るさらなる反応性構成成分としては、水素、又は1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、1~10個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、例えば、エテン、アセチレン、プロペン若しくはブテン、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ビニルアセチレン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、環状不飽和炭化水素、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン若しくはノルボルナジエン、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、p-、m-、o-キシレン、スチレン(ビニルベンゼン)、エチルベンゼン、ジフェニルメタン若しくはナフタレン、他の芳香族炭化水素、例えば、フェノール、o-、m-、p-クレゾール、シメン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセン若しくはフェナントレン、ミルセン、ゲラニオール、チオテルピネオール、ノルボルナン、ボルネオール、イソボルネオール、ボルナン、カンファー、リモネン、テルピネン、ピネン、ピナン、カレン、フェノール、アニリン、アニソール、フラン、フルフラール、フルフリルアルコール、ヒドロキシメチルフルフラール、ビスヒドロキシメチルフラン、及び多数のそのような化合物を含む混合画分、例えば、天然ガス凝縮物、原油蒸留物又はコーキングオーブン凝縮物からのもの、流動接触分解装置(FCC)、水蒸気分解装置又はフィッシャー・トロプシュ合成プラントからの生成物流からの混合画分、又は非常に一般的には、木材、天然ガス、原油、及び石炭の処理から生じる炭化水素含有材料流を含有する群から選択される炭化水素が挙げられる。
【0049】
段階2.1、2.2、2.3及び2.4は、それらの番号付けの順序で実行されてもよいが、その必要はない。それらはまた、任意の所望の順序で連続して繰り返し実行されてもよい。
【0050】
段階3.1において、換言すれば、一般に段階2.4において反応器Bに反応性成分を充填した後、目標温度に達するまで反応器Bを加熱する。目標温度では、ケイ素前駆体の分解が始まり、多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素が堆積する。ケイ素の堆積を伴うケイ素前駆体の分解の開始は、反応器B内の温度の上昇によってもたらされない反応器B内の圧力の上昇によって実験的に確認することができる。ケイ素前駆体の分解の場合、一般に反応条件下ではケイ素に加えてガス状分子が形成され、反応器B内の圧力を上昇させる。反応器Bの容積は、プロセスの実行中、一般に一定のままである。
【0051】
好ましくは、段階3.1において、容積Vを有する閉鎖反応器Bの加熱時の圧力変化dpは、例えば、式1に従う熱力学的状態方程式によって説明され得るように、本質的に温度変化dTに依存する。
【0052】
【数1】
【0053】
段階3.2におけるケイ素前駆体の分解のための目標温度の達成後に、反応器Bにおける段階4.1の温度は、段階3.1の目標温度に関連して、例えば、上昇するか、一定に保たれるか、又はわずかに低下することができる。
【0054】
全ての段階における反応器B内の温度、圧力又は差圧測定値は、反応器に一般的な測定のための技術及び装置を使用して測定することができる。慣例的な較正に続いて、異なる測定装置が同じ結果をもたらす。
【0055】
目標温度は、好ましくは250~1000℃、より好ましくは300~800℃、最も好ましくは300~550℃の範囲にある。例えば、SiHの場合、目標温度は、好ましくは300~500℃の間、より好ましくは320~450℃の範囲、非常に好ましくは320~420℃の範囲である。HSiClのための目標温度は、好ましくは380~1000℃の間、より好ましくは420~600℃の範囲である。HSiClのための目標温度は、好ましくは350~800℃の間、より好ましくは380~500℃の範囲である。
【0056】
段階2.3においてケイ素前駆体を含有しない炭化水素がさらなる反応性成分として使用される場合、段階3.2において、並びに/又は段階4.1及び4.2の間のケイ素堆積のためにさらに適用される目標温度は、炭化水素の分解が始まり、炭素が多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積する温度である。この実施形態では、選択される目標温度は、好ましくは250~1000℃、より好ましくは350~850℃、最も好ましくは400~650℃の範囲である。
【0057】
本発明の方法において、段階4.1及び4.2中の反応器B内の圧力は、少なくとも7barまで上昇する。
【0058】
好ましい一実施形態では、プロセスの過程における反応の進行は、圧力変化に基づいて監視される。このようにして、例えば、浸透の程度又は浸透の終了を確認することが可能である。浸透とは、段階4.1及び4.2における多孔質粒子の孔内及び表面上のケイ素の堆積を指す。浸透の終了は、例えば、さらなる圧力上昇がないことから測定することができる。
【0059】
段階4.1及び4.2の間の容積Vを有する反応器B内の圧力変化dpは、一般に、例えば、式2によって表されるように、ケイ素の堆積の過程における温度変化dT及び/又は物質量変化dnから実質的に生じる。
【0060】
【数2】
【0061】
段階4.1及び4.2における圧力変化は、好ましくは、実質的にケイ素の堆積の過程における物質量変化の積である。したがって、有利には、ケイ素前駆体の反応の終了は、段階4.1及び4.2の終了時にさらなる圧力上昇がないことから認識することができ、したがってさらなる段階は、反応器から未反応ケイ素前駆体を不必要に除去することなく、時間に関して効果的に誘発することができ、完全な変換が達成される。
【0062】
段階4.1及び4.2におけるプロセスの一変形例では、温度は、外部加熱によって維持又は上昇されない。段階4.1及び4.2における温度は、好ましくは、ケイ素前駆体のおそらく発熱分解から生じる熱の結果として生じる。さらに好ましいのは、段階4.1及び4.2におけるわずかな温度低下であり、より好ましくは段階4.1及び4.2中の最大20℃の温度低下である。
【0063】
段階4.1及び4.2(ケイ素前駆体の分解)における反応器B内の圧力上昇dpは、好ましくは、段階3.1(圧力定格反応器の加熱)における圧力上昇よりも大きく、これは、例えば、式3a又は3bによって表される。
【0064】
【数3】
又は
【0065】
【数4】
【0066】
段階4.1及び4.2において、反応器B内の圧力は、好ましくは少なくとも10bar、より好ましくは少なくとも50bar、より好ましくは少なくとも100barに達する。段階4.1及び4.2における反応器B内の圧力は、好ましくは400bar未満、より好ましくは300bar未満、特に好ましくは200bar未満のままである。
【0067】
段階4.1及び4.2において反応器B内で支配的な温度は、好ましくは100~1000℃の範囲、より好ましくは300~900℃の範囲、最も好ましくは320~750℃の範囲である。
【0068】
段階4.1及び4.2における反応器B内の温度、圧力、圧力変化又は差圧測定値は、圧力定格反応器に一般的な測定のための技術及び装置を使用して測定され得る。慣例的な較正に続いて、異なる測定装置が同じ測定結果を生成する。物質の量又は物質の量の変化は、例えば、圧力定格反応器から所定の体積の試料を取り出し、ガスクロマトグラフィーによって従来の方法でその実質的な組成を測定することによって測定することができる。
【0069】
段階3.1及び任意選択的に段階4.1における反応器Bの加熱は、例えば、一定の加熱速度又は複数の異なる加熱速度で行うことができる。加熱速度は、プロセスの設計に従って、例えば、反応器のサイズに従って、反応器内の多孔質粒子の量に従って、撹拌技術に従って、又は計画された反応時間に従って、各個別の場合において当業者によって適合され得る。反応器B全体は、急速加熱にもかかわらず、ケイ素前駆体の分解が始まる温度での反応器B内の最大温度勾配が1000℃/分未満、より好ましくは100℃/分未満、非常に好ましくは10℃/分未満のままであるように、段階3.1で急速に加熱されることが好ましい。このようにして、例えば、ケイ素の大部分が多孔質粒子の外面上ではなく、多孔質粒子の孔内に堆積されることを保証することが可能である。
【0070】
ケイ素前駆体の分解が始まる温度は、例えば、使用される多孔質粒子、使用されるケイ素前駆体(単数又は複数)、及び分解の他の境界条件、例えば、分解の瞬間のケイ素前駆体の分圧、及び分解反応に影響を与える他の反応性成分、例えば、触媒の存在に依存し得る。
【0071】
段階3.1における反応器Bの加熱は、好ましくは毎分1~100℃の加熱速度で、より好ましくは毎分2~50℃の加熱速度で、非常に好ましくは毎分3~10℃の加熱速度で行われる。
【0072】
段階4.1及び4.2におけるケイ素前駆体の分解中、温度を一定に保つか、又は変化させることができる。目的は、使用に適したケイ素含有材料の生成を伴う、可能な限り短い時間でのケイ素前駆体のほぼ完全な変換である。
【0073】
操作の様々な段階における圧力上昇の速度を制御するために、使用することができる様々な技術的解決策がある。圧力上昇を増加又は減少させるために、反応器内容物に供給される熱は、好ましくは、それぞれ増加又は減少される。圧力上昇の速度を低減するために、冷却により反応器B及びCからの熱の除去を増大させることも好ましい。この目的のために、好ましくは、1つ以上の反応器壁が冷却されるか、又は熱を除去するために設備、例えば、冷却パイプ又は冷却リブが反応器に導入される。反応器内の圧力を非常に迅速に制御するために、反応器B又はCから少量のガスを供給若しくは除去すること、又は蒸発する液体を供給することが好ましい。これに関連して、反応器B又はCから除去された部分流は、流れ全体の一部の冷却及び/又は除去後に、好ましくは、閉回路で反応器内容物に完全に又は部分的に再び戻される。
【0074】
段階4.1及び4.2における反応の過程は、好ましくは、反応の終了を認識し、したがって、反応器占有時間を最小限にするために、分析的に監視される。反応の過程を観察するための方法には、例えば、発熱又は吸熱事象を測定するための温度測定、固体反応器内容物構成成分とガス反応器内容物構成成分との比の変化によって反応の過程を測定するための圧力測定、及び反応中のガス空間の組成の変化の観察を可能にするさらなる技術が含まれる。
【0075】
プロセスの実行中に反応器B内の圧力の変化、特に圧力の上昇を監視することが好ましい。この上昇は、堆積速度の指標であり、したがって多孔質粒子及び/又は得られるケイ素含有材料における残存表面積の指針である。
【0076】
本プロセスの別の好ましい変形例では、水素とシランの分離を可能にする技術的構成要素が使用される。この分離は、例えば、濾過及び/又は膜技術(溶液-拡散モデル及び流体力学モデル)、吸着、化学吸着、吸収若しくは化学吸着又は分子ふるい(例えば、ゼオライト)を介して行われ得る。
【0077】
この構成要素は、ガス状反応生成物としての水素の場合、段階2.4が、所望の量のケイ素が堆積されるまで連続的に延長されることを可能にする。段階6.1も同様に並行して連続的に延長される。
【0078】
本プロセスの別の好ましい変形例では、反応器Bは、発生する凝縮性又は再昇華性副生成物を除去するのに役立つ技術的設備を備える。この関連における1つの特に好ましい変形例では、四塩化ケイ素が凝縮され、ケイ素含有材料から別々に除去される。
【0079】
段階5.1において、反応器B内の圧力は、支配的な圧力を解放し、排気し、及び/又はさらなるガス、好ましくは、不活性ガス、例えば、個々に又は混合物として水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素又は水蒸気(水素が特に好ましい)で充填することによって調整される。
【0080】
段階5.2では、反応器Bを所定の温度に調整するか、又は所定の温度プロファイルを実行する。堆積の終了後、好ましくは、冷却は、任意選択で目標温度まで、好ましくはさらなる段階2.3及び/又は2.4の温度まで行われる。
【0081】
5.1及び5.2の順序は任意に選択することができる。段階5.1及び5.2は、それらの操作において時間的に重複し得る。
【0082】
段階6.1では、堆積の過程で形成された反応のガス状副生成物は、好ましくは堆積温度で、又は、例えば、パージによって反応器Bのガス空間からガス状反応副生成物を除去するのに望ましい温度に達した後に除去される。パージガスを使用することが好ましい。パージガスを充填する前に、反応器Bを少なくとも1回排気することが好ましい。好ましいパージガスは、不活性ガス、例えば、個々に又は混合物として水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素又は水蒸気であり、又は酸素とのそれらの混合物、例えば、空気又は希薄空気が使用される。ここで、ガス混合物の含水量は調整することができる。次いで、段階6.2において、反応器Bから得られた粒子を、反応器C又は適切な貯蔵容器のいずれかに移す。粒子が貯蔵容器に移された場合、粒子は容器上で直接反応器Cに移され得る。段階6.2における移送は、例えば、ドロップチューブ、連続コンベヤー、フローコンベヤー/吸引又は圧力搬送ユニット(例えば、真空コンベヤー、輸送用送風機)、機械的コンベヤー(例えば、ドライブ付きローラーコンベヤー、スクリューコンベヤー、円形コンベヤー、循環コンベヤー、バケットユニット、スターホイールロック、チェーンコンベヤー、スクレーパーコンベヤー、ベルトコンベヤー、振動コンベヤー)、重力コンベヤー(例えば、シュート、ローラーベッド、ボールベッド、レールベッド)、非連続コンベヤー、床ベース及びレールフリー(例えば、自動化車両、手動フォークリフトトラック、電気フォークリフトトラック、ドライバーレス輸送システム(DTS)、エアクッション車両、ハンドカート、電気カート、自動車(トラクタ、ワゴン、フォークリフトスタッカー)、移送キャリッジ、移送/リフトキャリッジ、棚アクセス装置(コンバータ有り/無し、湾曲した経路に従うことができる)、フロアベースのレールバウンド(例えば、プラント鉄道、トラック車両)、フロアフリー(例えば、トロリートラック、クレーン(例えば、ブリッジクレーン、ポータルクレーン、ジブクレーン、タワークレーン)、電気オーバーヘッドトラック、小容器輸送システム、固定物(例えば、エレベータ、サービスリフト及びチェリーピッカー、段階的コンベヤー)によって達成され得る。
【0083】
プロセスの段階7.1において、反応器C中のケイ素含有粒子は、後処理及び/又は不活性化され得る。これは、好ましくは、反応器Cを酸素で、より具体的には不活性ガスと酸素との混合物でパージすることによって行われる。このようにして、例えば、ケイ素含有材料の表面を改質及び/又は不活性化することが可能である。例えば、ケイ素含有材料の表面に存在する任意の反応性基の反応を達成することが可能である。この目的のために、好ましくは最大で20体積%、より好ましくは最大で10体積%、特に好ましくは最大で5体積%の酸素、また好ましくは最大で100体積%、より好ましくは最大で10体積%、特に好ましくは最大で1体積%の水を含有する、窒素及び酸素並びに任意選択でアルコール及び/又は水の混合物が好ましくは使用される。この工程は、好ましくは、最大で200℃、より好ましくは最大で100℃、特に好ましくは最大で50℃の温度で行われる。粒子表面はまた、不活性ガス及びアルコールを含むガス混合物で不活性化されてもよい。ここでは、窒素及びイソプロパノールを使用することが好ましい。しかし、メタノール、エタノール、ブタノール、ペンタノール又は長鎖及び分岐アルコール及びジオールを使用することも可能である。
【0084】
粒子はまた、液体溶媒又は溶媒混合物中での分散によって不活性化されてもよい。この混合物は、例えば、イソプロパノール又は水溶液を含み得る。
【0085】
段階7.1における粒子の不活性化は、任意選択で、C、Al及び/又はB含有前駆体を200~800℃の温度で使用し、任意選択でその後酸素含有雰囲気中で処理するコーティングによっても達成され得る。
【0086】
使用されるアルミニウム含有前駆体は、例えば、トリメチルアルミニウム((CHAl)、アルミニウム2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート(Al(OCC(CHCHCOC(CH)、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム(Al(N(CH)及びアルミニウムトリイソプロポキシド(C21AlO)であり得る。
【0087】
使用されるホウ素含有前駆体は、例えば、ボラン(BH)、トリイソプロピルボレート([(CHCHO]B)、トリフェニルボラン((CB)及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(CBであり得る。
【0088】
しかし、段階7.1では、例えば、tert-ブチルリチウム及びトリメチルホスフェートからのCVI堆積を介して、例えば、固体電解質による粒子の後塗りを導入することも可能である。
【0089】
本プロセスの段階7.2では、原則として、ケイ素含有材料は、任意選択で反応器C内に存在する不活性ガス雰囲気を保持しながら、反応器Cから取り出される。これは、例えば、以下の排出方法、すなわち、空気圧(過圧又は減圧によって)、機械的に(反応器内のスターホイールロック、プレート排出、排出スクリュー又は撹拌要素、ベルト排出)又は重量測定的に(ダブルフラップ弁又はダブルボール弁、任意選択で振動補助を伴う)によって達成することができる。
【0090】
本プロセスの別の好ましい実施形態では、段階2.1~5.2を1回以上繰り返す。
【0091】
本プロセスの1つの好ましい実施形態では、段階2.1~5.2は複数回繰り返され、この場合、段階2.4にそれぞれ充填されるケイ素前駆体は、各場合において同じであっても異なっていてもよく、2種以上のケイ素前駆体の混合物も可能である。同様に、2.3における反応性成分充填は、各場合において同じであっても異なっていてもよく、又は異なる反応性成分の混合物からなってもよい。個々の段階2.1~5.2の複数回の繰り返しの後、反応器Bにおける手順は段階6で終了する。段階2.1~6.1の順序及び実施は、当業者によって変更され得る。この関連において、個々の段階は省略されてもよい。
【0092】
このプロセスの別の好ましい実施形態では、段階6.1は段階4.2に直接続き、換言すれば、段階5を省略することができ、換言すれば、段階4.2の後、反応器Bを冷却することなく段階6.1を継続することも可能である。
【0093】
さらに好ましい実施形態では、段階2.1~6.1は、任意選択で段階5を省略して、単回又は複数回繰り返され(反応サイクル)、この場合、個々の又は複数の反復において、段階2.3の意味でケイ素を含まない反応性成分を使用することも可能であり、この場合、それぞれの反復におけるケイ素を含まない反応性成分は、同じであっても異なっていてもよい。ケイ素を含まない反応性成分は、好ましくはケイ素前駆体を含有しない。ケイ素を含まない反応性成分は、好ましくは1つ以上の炭化水素を含む。この好ましい実施形態では、ケイ素を含まない反応性成分は、例えば、ケイ素の堆積の前若しくは後に、又はケイ素の2回の堆積の間に、段階2.1~6.1の繰り返しで使用され得る。好ましいケイ素を含まない反応性成分は炭化水素である。ケイ素を含まない反応性成分を使用する場合、炭素は、好ましくは、多孔質粒子又はケイ素含有材料の孔内及び表面上に堆積される。
【0094】
特に好ましい一実施形態では、第1の反応サイクルで、段階2.4において、少なくとも1つのケイ素前駆体を含む反応性成分が充填され、第2の反応サイクルでは、段階2.3において、少なくとも1つの炭化水素を含む反応性成分が充填され、この後者の成分は、好ましくはケイ素を含まず、任意選択で段階5は省略される。この手段によって、例えば、外向きの自由ケイ素表面を有さないケイ素含有材料を得ることが可能である。2.3及び2.4の順序は可変である。
【0095】
任意選択で、第3の反応サイクルでは、段階2.3において、さらなる炭化水素を含有し、ケイ素を含まない反応性成分が使用され、段階5は任意選択で省略される。その結果、例えば、多孔質粒子と堆積されたケイ素との間に炭素層を有し、任意選択で外側炭素層をさらに担持するケイ素含有材料を得ることができ、これは、外側に向いた自由ケイ素表面が存在しないことを意味する。
【0096】
好ましいケイ素を含まない反応性成分は、1つ以上の炭化水素である。炭化水素の熱分解によって、一般に、多孔質粒子の孔内及び表面上に炭素を堆積させることが可能である。炭化水素の例は、1~10個の炭素原子、特に1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、好ましくはメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン及びシクロヘプタン、1~10個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、例えば、エテン、アセチレン、プロペン若しくはブテン、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ビニルアセチレン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、環状不飽和炭化水素、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン若しくはノルボルナジエン、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、p-、m-、o-キシレン、スチレン(ビニルベンゼン)、エチルベンゼン、ジフェニルメタン又はナフタレン、他の芳香族炭化水素、例えば、フェノール、o-、m-、p-クレゾール、シメン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセン若しくはフェナントレン、ミルセン、ゲラニオール、チオテルピネオール、ノルボルナン、ボルネオール、イソボルネオール、ボルナン、カンファー、リモネン、テルピネン、ピネン、ピナン、カレン、フェノール、アニリン、アニソール、フラン、フルフラール、フルフリルアルコール、ヒドロキシメチルフルフラール、ビスヒドロキシメチルフラン、及び多数のそのような化合物を含む混合画分、例えば、天然ガス凝縮物、原油蒸留物若しくはコーキングオーブン凝縮物からのもの、流動接触分解装置(FCC)、水蒸気分解装置又はフィッシャー・トロプシュ合成プラントからの生成物流からの混合画分、又は非常に一般的には、木材、天然ガス、原油、及び石炭の処理から生じる炭化水素含有物質流である。
【0097】
ケイ素を含まない反応性成分、すなわち、1つ以上の炭化水素を含むがケイ素前駆体を含まない反応性成分は、好ましくは、さらなる成分又は1つ以上の不活性ガス及び/又は、例えば、水素等の1つ以上の反応性構成成分及び/又は1つ以上のドーパントを含まない。ドーパントは、例えば、ホウ素、窒素、リン、ヒ素、ゲルマニウム、鉄又はニッケルを含む化合物である。ドーパントは、好ましくは、アンモニアNH、ジボランB、ホスファンPH、ゲルマンGeH、アルサンAsH、及びニッケルテトラカルボニルNi(CO)を包含する群から選択される。
【0098】
温度調節可能な反応器は、一般に反応器内部の温度が、例えば、-40~1000℃の範囲に確立され得るような様式で操作され得る反応器である。より狭い温度範囲が可能である。
【0099】
真空定格反応器は、一般に反応器内部の圧力が反応器の周囲圧力より低い/該周囲圧力と等しいような様式で操作され得る反応器である。
【0100】
圧力定格反応器は、一般に反応器内部の圧力が反応器の周囲圧力よりも大きい/該周囲圧力と等しいような様式で操作され得る反応器である。
【0101】
反応器は、同時に温度調整可能、圧力定格及び真空定格であってもよく、全ての組み合わせが可能である。あるいは、反応器はまた、それぞれの場合において、上記で特定された特徴のうちの1つのみを満たしてもよい。
【0102】
使用した反応器の最小要件は以下の通りである。
- 反応器A:温度調整可能かつ真空定格
- 反応器B:温度調整可能かつ圧力定格
- 反応器C:温度調整可能
【0103】
本発明の特定の変形例のための個々の反応器の技術的な任意の特徴は、以下の通りである。
【0104】
反応器A:
- 多孔質粒子を予熱し、乾燥させ、不活性化するためのシステム。
- システムは、多孔質粒子の特定の添加/計量のために接続され得る(技術的説明については、段階1.1を参照)。
- 多孔質粒子中の不純物の乾燥及び/又は除去のために、凝縮性又は再昇華性物質の除去を可能にするシステムが接続されてもよい。
- 多孔質粒子が反応器Bに移されることを可能にするシステムが接続されてもよい(技術的説明については、段階1.3を参照)
【0105】
反応器B:
- 空気冷却のためのシステム。
- 体積を増加させるために、さらなる圧力定格容器が接続されてもよく、これは、個々の反応サイクルにおいてより高い反応性成分量を可能にする。この容器は加熱されてもされなくてもよい。この容器と反応器Bとの間の圧力均等化は、受動的(拡散)又は能動的(技術的手段によって促進される)であり得る。
- 操作の単純化のために、水素分離器が接続されてもよい(技術的説明については、段階3.1を参照)。
- ガス状反応生成物中の凝縮性又は再昇華性の副生成物を除去するために、該副生成物が凝縮又は再昇華によって除去されることを可能にする容器が接続されてもよい。
- 材料を反応器C又は貯蔵容器に移すことができるシステムを接続することができる(技術的説明については段階1.3を参照)。
【0106】
反応器C
- 凝縮性又は再昇華性副生成物を除去するためのシステム。副生成物が凝縮又は再昇華によって除去されることを可能にする容器が接続されてもよい。
【0107】
本願の目的のためのカスケード反応器システムは、少なくとも2つの反応器の連結である。反応器の数の上限はない。互いに対する反応器A、B及びCの数、並びにそれらのサイズ、形状、材料及び構成も異なり得る。当業者は、全体としてカスケード反応器システムの出力を可能な限り効率的にするために、反応器の量及びそれらのサイズを互いに調整することができる。反応器は、互いに直接接続されてもよく、又は互いに局所的に分離されてもよく、この場合、充填は移動可能な貯蔵容器によって行われる。2つ以上の反応器Bを互いに接続し、各反応工程を追加の反応器B内で行うことも考えられる。
【0108】
本プロセスの2つの特定の実施形態では、カスケード反応器は、2つの相互に依存する反応器のみからなる。第1の実施形態では、段階1~6.1は同じ反応器内で実施され、この場合段階1.3は省略される。第2の実施形態では、段階2~7は1つの反応器内で実施され、この場合段階6.2は省略される。両方の場合において、反応器は、異なる温度域を有し得る。
【0109】
本願の目的のための反応器は、好ましくは、管状反応器、レトルト窯、流動床反応器、固定床反応器及びオートクレーブを包含する群から選択されるタイプの反応器である。特に好ましくは、流動床反応器及びオートクレーブが用いられ、特に好ましくはオートクレーブが用いられる。
【0110】
操作中、多孔質粒子及び得られるケイ素含有材料は、一般に静止層の形態をとってもよく、又は混合しながら撹拌された形態であってもよい。反応器A、B及びC内での多孔質粒子又は得られたケイ素含有材料の撹拌混合が好ましい。これは、例えば、全ての多孔質粒子と反応性成分との均質な接触、又は床における均質な温度分布を可能にする。粒子は、例えば、反応器内の内部を撹拌することによって、反応器全体の移動によって、又はガス流による反応器内での固体の流動化によって撹拌することができる。
【0111】
混合しない静止層に使用することができる反応器のタイプは、任意の所望の幾何学的形状の実施形態である。反応器構造の好ましい形態は、円筒形、円錐形、球形及び多面体の形態又はそれらの組み合わせである。
【0112】
反応器A、B及びCにおいて床を一緒に混合するために、固体の床を撹拌することができる全ての形態の反応器構造が好ましい。これらは、例えば、移動反応器、移動する撹拌要素を有する反応器、又はガストラバース反応器、又はそれらの組み合わせである。
【0113】
移動反応器における運動の形態は、好ましくは回転運動である。他の形態の移動も同様に適切である。回転反応器のための構成の好ましい形態は、例えば、ドラム反応器若しくは管状反応器、円錐形反応器、ダブルコーン反応器、オフセットコーンを有する反応器、球状反応器、多面体反応器、V字形反応器、ダブルV字形反応器、又はそれらの幾何学的組み合わせである。対称的な構成形態の場合、回転軸は、好ましくは反応器の対称軸内にある。構成の非対称形態の場合、回転軸は、好ましくは反応器の重心を通過する。別の好ましい実施形態では、回転軸は、タンブリング運動が生じるように選択される。移動反応器内の混合事象は、好ましくは、内部構造によって増強される。典型的な内部構造は、ガイドプレート、ブレード、翼、及びすきの刃である。本発明によれば、回転軸の向きは、ここでは自由に選択可能である。回転軸は、好ましくは、垂直に、水平に、又は水平実施形態に対して自由角度で配向される。床を一緒に混合するための構造のさらに好ましい形態は、移動する撹拌要素を有する固定反応器A、B及びCである。このために好ましい幾何学形状は、円筒形反応器、円錐形反応器、球形、多面体反応器、又はそれらの組み合わせである。撹拌要素の運動は、好ましくは回転運動である。他の形態の運動も同様に適切である。撹拌要素は、好ましくは撹拌シャフトを介して駆動され、撹拌シャフト毎に1つの撹拌要素又は複数の撹拌要素が存在してもよい。反応器A、B、及びCには、好ましくは、複数の撹拌シャフトが組み込まれており、撹拌シャフトのそれぞれには、1つの撹拌要素又は複数の撹拌要素が存在してもよい。主たる反応器軸は、好ましくは水平又は垂直に整列される。さらに好ましい実施形態では、撹拌シャフトは、任意の向きの反応器内に水平又は垂直に設置される。垂直に操作される反応器A、B及びCについて、好ましい構成形態は、例えば、撹拌要素又は複数の撹拌要素が、主撹拌シャフトによる回転運動によって床材料を混合するものである。さらに、2つ以上の撹拌シャフトが平行に走る構成の形態が好ましい。2つ以上の撹拌シャフトが互いに平行に動作しない好ましい構成形態もある。垂直に操作される反応器A、B又はCの別の好ましい構成形態は、スクリューコンベヤーの使用を特徴とする。スクリューコンベヤーは、床材料を好ましくは中央に搬送する。本発明に従うさらなる設計は、反応器の縁部に沿って回転するスクリューコンベヤーである。水平に操作される反応器A、B又はCについて、好ましい構成形態は、例えば、撹拌要素又は複数の撹拌要素が、主たる撹拌シャフトによる回転運動によって床材料を混合する形態である。また、2つ以上の撹拌シャフトが平行に走る構成形態も可能である。さらに好ましいのは、2つ以上の撹拌シャフトが互いに平行に動作しない構成形態である。垂直に操作される反応器A、B又はCについて、好ましい撹拌要素は、ヘリカル撹拌機、スパイラル撹拌機、アンカー撹拌機を含む群から選択される要素、又は一般に、床材料を軸方向若しくは半径方向に、又は軸方向及び半径方向の両方に搬送する撹拌要素である。水平に運転される反応器A、B又はCの場合、1つのシャフト上に複数の撹拌要素があることが好ましい。水平に運転される反応器の撹拌要素のための本発明に従う構成形態は、すきの刃、パドル、ブレード撹拌機、スパイラル撹拌機、又は一般に、床材料を軸方向及び半径方向の両方に搬送する撹拌要素である。移動する撹拌要素に加えて、移動する撹拌要素を有する固定反応器A、B又はCについても、ガイドプレート等の剛性内部構造が好ましい。特に好ましいのは、反応器と撹拌要素の両方が回転する構造形態である。
【0114】
混合のさらなる可能性として、材料の床は、好ましくはガス流にさらされる。ここで特に好ましいのは、流動床反応器等の構造形態である。さらに好ましいのは、混合域が、空気圧の使用によって反応器内に意図的にもたらされる反応器A、B又はCである。
【0115】
本発明のプロセスを実施するための反応器A、B又はCの構成については、それぞれの操作条件下で必要な機械的強度及び耐薬品性を有する場合、任意の材料が原則として適切である。耐薬品性に関して、反応器A、B又はCは、対応する固体材料、並びに媒体と接触している部品上に特定のコーティング又はめっきを有する化学的に抵抗のない材料(耐圧性)からなり得る。
【0116】
これらの材料は、本発明に従って、以下を含む群から選択される。
【0117】
- (DIN CEN ISO/TR 15608による)材料グループ1~11の鋼、グループ31~38のニッケル及びニッケル合金、グループ51~54のチタン及びチタン合金、グループ61及び62のジルコニウム及びジルコニウム合金、並びにグループ71~76の鋳鉄に対応する金属材料、
【0118】
- 単物質系における酸化物セラミック、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン(キャパシタ材料)、及び多物質系、例えば、チタン酸アルミニウム(酸化アルミニウム及び酸化チタンの混合形態)、ムライト(酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の混合形態)、チタン酸ジルコン酸鉛(圧電セラミック)、又は酸化ジルコニウムで強化された酸化アルミニウム(ZTA-ジルコニア強化酸化アルミニウム)-Al/ZrO)等の分散セラミック等を含むセラミック材料、
【0119】
- 非酸化物セラミック、例えば、炭化物、例は炭化ケイ素及び炭化ホウ素、窒化物、例は窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素及び窒化チタン、ホウ化物及びケイ化物、並びにこれらの混合物
【0120】
- 粒状複合材料の群に属する複合材料、例えば、超硬合金、セラミック複合材、コンクリート及びポリマーコンクリート等、繊維複合材料、例えば、ガラス繊維強化ガラス、金属マトリックス複合材(MMC)、繊維セメント、炭素繊維強化炭化ケイ素、自己強化熱可塑性物質、鋼鉄強化コンクリート、繊維強化コンクリート、繊維プラスチック複合材、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GRP)及びアラミド繊維強化プラスチック(ARP)、繊維-セラミック複合材(セラミックマトリックス複合材(CMC))、浸透複合材、例えば、金属マトリックス複合材(MMC)、分散強化アルミニウム合金又は分散硬化ニッケル-クロム超合金等、層状複合材料、例えば、バイメタル、チタン-グラファイト複合材料、複合プレート及び複合チューブ、ガラス繊維強化アルミニウム及びサンドイッチ構造、並びに構造複合材料。
【0121】
ケイ素含有材料を製造するための本発明の方法は、先行技術に対して様々な決定的な利点を提供する。特定の利点は、例えば、段階4の間に起こる温度単独に関連した圧力上昇ではないことによって補助される、短い反応時間でのケイ素前駆体の完全な変換の可能性である。別の利点は、不活性ガスの量を減らすか、又は不活性ガスを完全に回避する可能性であり、これは、同様に、より高い空間/時間収率をもたらし、したがって、基材上への所望の層のより迅速かつ均一な堆積を可能にする。さらに、開放反応器の操作において通常生じるような、反応器オフガスの連続的なリサイクル又は処理を防止することができる。また、密閉可能な反応器における記載された実施は、それぞれの堆積工程における反応物に基づいて、正確に調整可能な量の堆積生成物を用いて、同じ反応性成分から、又は異なる反応性成分から複数の堆積を実施することを容易とする。したがって、本発明の方法から得られるケイ素含有材料は、堆積される層の有利な均質性によっても区別される。本発明の方法の利点の結果として、ケイ素含有材料は、有利には、特に、優れた特性を有するリチウムイオン電池のアノード用の活物質として使用するために、迅速かつ経済的に入手可能である。また、特定の利点は、しばしば記載されるダスティングを回避することができることである。これは、例えば、ケイ素前駆体からのケイ素の堆積のために利用可能にされる多孔質粒子の大きい表面積によって、また、ケイ素前駆体による多孔質粒子の強い浸透によって達成することができる。同時に、このようにして高い収率の堆積ケイ素が得られる。反応工程の全てが同じ反応器内で行われる変形例(反例2を参照)とは対照的に、カスケード反応器は以下の利点を提供する。
- 大きな温度差を伴う冷却及び加熱操作の低減を通してのエネルギーの節約。
- 特定の操作工程の要件に対するそれぞれの反応器の精密設計による資本コストの節約。
- 高レベルのモジュール方式は、様々な量の要件及び操作パラメータへの適応のための幅広い機会を提供する。
- 異なる反応器A、B及びCを異なるサイズ及び数で組み合わせる可能性は、完全な故障のリスクを低減し、必要な変更の停止時間の計画性を作り出す。
- モジュール構成は、他の反応器が依然として動作している間に、1つの反応器に対する軽微な保守作業の実施を可能にする。
【0122】
本発明のプロセスのための多孔質粒子は、好ましくは、以下の成分式によって記載され得るように、硬質炭素、軟質炭素、メソカーボンマイクロビーズ、天然グラファイト又は合成グラファイト、単層及び多層カーボンナノチューブ及びグラフェンの形態の非晶質炭素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、混合酸化ケイ素-酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉛及び酸化ジルコニウム等の酸化物、炭化ケイ素及び炭化ホウ素等の炭化物、窒化ケイ素及び窒化ホウ素等の窒化物、並びに他のセラミック材料を含む群から選択される。
【0123】
0≦a、b、c、d、e、f、g≦1であり、少なくとも2つの係数a~g>0及びa×3+b×3+c×4+d×2+g×4≧e×3+f×2であるAlMgSi
【0124】
セラミック材料は、例えば、二元化合物、三元化合物、四元化合物、五元化合物、六元化合物又は七元化合物であることができる。好ましいセラミック材料は、以下の成分式を有するものである。
【0125】
非化学量論的窒化ホウ素BNでz=0.2~1、

非化学量論的窒化炭素CNでz=0.1~4/3、

炭窒化ホウ素BCNでx=0.1~20及びz=0.1~20、x×3+4≧z×3、

ホウ素ニトリドキシド(nitridoxide)BNでz=0.1~1及びr=0.1~1、3≧r×2+z×3、

炭窒化ホウ素酸化物BCNでx=0.1~2、z=0.1~1及びr=0.1~1、x×3+4≧r×2+z×3、

ケイ素カルボキシドSiCOでx=0.1~2及びz=0.1~2、x×4+4≧z×2、

炭窒化ケイ素SiCNでx=0.1~3及びz=0.1~4、x×4+4≧z×3、

ケイ素ボロカルボニトリド(borocarbonitride)SiCNでw=0.1~3、x=0.1~2、z=0.1~4、w×4+x×3+4≧z×3、

ケイ素ボロカルボキシド(borocarboxide)SiCOでw=0.10~3、x=0.1~2及びz=0.1~4、w×4+x×3+4≧z×2、

ケイ素ボロカルボニトリドオキシド(borocarbonitridooxide)SiCNでv=0.1~3、w=0.1~2、x=0.1~4及びz=0.1~3、v×4+w×3+4≧x×3+z×2、及び

アルミニウムボロシリコカルボニトリドオキシド(borosilicocarbonitridooxide)AlSiCNでu=0.1~2、v=0.1~2、w=0.1~4、x=0.1~2及びz=0.1~3、u×3+v×3+x×4+4≧w×3+z×2。
【0126】
多孔質粒子は、ヘリウムピクノメトリにより測定される0.1~7g/cm、より好ましくは0.3~3g/cmの密度を有することが好ましい。これは、リチウムイオン電池の重量容量(mAh/cm)を増大させるのに有利である。
【0127】
使用される好ましい多孔質粒子は、非晶質炭素、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及び窒化ケイ素、又はこれらの材料に基づく混合材料であり、非晶質炭素、窒化ホウ素、及び二酸化ケイ素の使用が特に好ましい。
【0128】
多孔質粒子は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.5μm以上、最も好ましくは2μm以上の直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd50は、好ましくは20μm以下、より好ましくは12μm以下、最も好ましくは8μm以下である。
【0129】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは直径パーセンタイルd10≧0.2μm~d90≦20.0μmの間、より好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μmの間、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmの間である。
【0130】
多孔質粒子は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下、最も好ましくは2μm以下の直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5以上、最も好ましくは1μm以上である。
【0131】
多孔質粒子は、好ましくは4μm以上、より好ましくは8μm以上の直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは18μm以下、より好ましくは15以下、最も好ましくは13μm以下である。
【0132】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは15.0μm以下、より好ましくは12.0μm以下、非常に好ましくは10.0μm以下、特に好ましくは8.0μm以下、最も好ましくは4.0μm以下のスパンd90-d10を有する。
【0133】
本発明のプロセスによって製造可能なケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは0.8μm以上、最も好ましくは1.0μm以上のスパンd90-d10を有する。
【0134】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、多孔質粒子の分散媒としてエタノールを用い、測定装置Horiba LA 950を用いたMieモデルを使用する静的レーザー散乱法によって、ISO 13320に従って測定することができる。
【0135】
多孔質粒子は、粒子の形態で存在することが好ましい。粒子は、例えば、単離又は弱凝集されてもよい。多孔質粒子は、好ましくは強凝集せず、好ましくは弱凝集しない。強凝集したとは、一般に、多孔質粒子の製造の過程で、初めに一次粒子が形成されて融合し、及び/又は一次粒子が、例えば、共有結合を介して互いに結合し、このようにして強凝集体(aggregates)を形成することを意味する。一次粒子は、通常、単離された粒子である。強凝集体又は単離された粒子は、弱凝集体(agglomerates)を形成し得る。弱凝集体は、例えば、ファンデルワールス相互作用又は水素結合を介して互いに連結された強凝集体又は一次粒子の緩い合体である。弱凝集した凝集体は、従来の混練及び分散技術によって容易に分割して強凝集体に戻すことができる。強凝集体は、これらの技術によって一次粒子に分解することができないか、又は部分的にのみ分解することができる。強凝集体、弱凝集体又は単離粒子の形態の多孔質粒子の存在は、例えば、従来の走査型電子顕微鏡(SEM)によって可視化することができる。マトリックス粒子の粒径分布又は粒径を測定するための静的光散乱法は、対照的に、強凝集体又は弱凝集体を区別することができない。
【0136】
多孔質粒子は、任意の所望の形態を有してもよく、したがって、例えば、スパッタ状(sputtery)、板状、球状、又は針状であってもよく、スパッタ状又は球状粒子が好ましい。形態は、例えば、真球度ψ又は真球度Sによって特徴付けることができる。Wadellによる定義によれば、真球度ψは、本体の実際の表面積に対する等しい体積の球の表面積の比である。球の場合、ψの値は1である。この定義によれば、本発明の方法のための多孔質粒子は、好ましくは0.3~1.0、より好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の真球度ψを有する。
【0137】
真球度Sは、表面上に投影された粒子の投影と同じ面積Aを有する等価円の円周と、この投影の測定された円周Uとの比であり、
【0138】
【数5】
である。理想的な真球度の粒子の場合、Sの値は1となるであろう。本発明の方法のための多孔質粒子について、真球度Sは、数値的数真球度分布のパーセンタイルS10~S90に基づいて、好ましくは0.5~1.0、より好ましくは0.65~1.0の範囲である。真球度Sは、例えば、個々の粒子の光学顕微鏡写真から、又は好ましくは粒子が10μm未満の場合、走査型電子顕微鏡を用いて、例えば、ImageJ等の画像解析ソフトウェアによるグラフィック評価によって測定される。
【0139】
多孔質粒子は、好ましくは、0.2cm/g以上、より好ましくは0.6cm/g以上、最も好ましくは1.0cm/g以上のガスの接近可能な孔容積を有する。これは、高容量のリチウムイオン電池を得るのに有用である。ガスの接近可能な孔容積は、DIN 66134に従って窒素によるガス収着測定によって測定した。
【0140】
多孔質粒子は、好ましくは開放孔である。開放孔とは、一般に、孔が、例えば、チャネルを介して粒子の表面につながっており、好ましくは、周囲との物質移動の状態、特にガス状化合物の移動の状態であり得ることを意味する。これは、ガス収着測定値(Brunauer, Emmett and Teller、「BET」に準拠した評価)、すなわち比表面積を使用して検証することができる。多孔質粒子は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは500m/g以上、最も好ましくは1000m/g以上の比表面積を有する。BET比表面積は、DIN 66131(窒素を含む)に従って測定される。
【0141】
多孔質粒子の孔は、任意の所望の直径、すなわち、一般にマクロ孔(50nm超)、メソ孔(2~50nm)、及びミクロ孔(2nm未満)の範囲の直径を有し得る。多孔質粒子は、異なる孔タイプの任意の所望の混合物中で使用することができる。好ましくは、総孔容積に基づいて30%未満のマクロ孔を有する多孔質粒子、より好ましくはマクロ孔を有さない多孔質粒子、非常に好ましくは少なくとも50%の孔が5nm未満の平均孔直径を有する多孔質粒子を使用する。非常に特に好ましくは、多孔質粒子は、2nm(測定方法:メソ孔範囲ではDIN 66134に準拠したBJH(ガス吸着)及びミクロ孔範囲ではDIN 66135によるHorvath-Kawazoe(ガス吸着)に準拠した孔径分布、マクロ孔範囲における孔サイズ分布の評価は、DIN ISO 15901 1に準拠した水銀ポロシメトリーによって行われる)未満の孔直径を有する孔のみを含む。
【0142】
好ましい多孔質粒子は、0.3cm/g未満、より好ましくは0.15cm/g未満のガスの接近不可能な孔容積を有するものである。このようにしても、リチウムイオン電池の容量を増大させることができる。ガスの接近不可能な孔容積は、以下の式によって測定することができる。
ガスの接近不可能な孔容積=1/純物質密度-1/骨格密度。
【0143】
ここで、純物質密度は、相組成又は純物質の密度(あたかも閉鎖孔を有していないかのような物質の密度)に基づく多孔質粒子の理論密度である。純物質密度に関するデータは、例えば、Ceramic Data Portal of the National Institute of Standards(NIST、https://srdata.nist.gov/CeramicDataPortal/scd)において当業者が見出すことができる。例えば、酸化ケイ素の純物質密度は2.203g/cm、窒化ホウ素の純物質密度は2.25g/cm、窒化ケイ素の純物質密度は3.44g/cm、炭化ケイ素の純物質密度は3.21g/cmである。骨格密度は、ヘリウムピクノメトリによって測定される多孔質粒子(ガスが接近可能)の実際の密度である。
【0144】
明確にするために、多孔質粒子はケイ素含有材料とは異なることに留意されたい。多孔質粒子は、ケイ素含有材料を製造するための出発材料として機能する。一般に、多孔質粒子の多孔質粒子の孔内及び表面上に位置するケイ素は存在せず、より具体的には、ケイ素前駆体の堆積によって得られるケイ素は存在しないことが好ましい。
【0145】
多孔質粒子の孔内及び表面上へのケイ素の堆積による本発明の方法によって得られるケイ素含有材料は、好ましくは0.5~20μmの範囲の直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する。d50値は少なくとも1.5μmが好ましく、少なくとも2μmがより好ましい。直径パーセンタイルd50は最大13μmであることが好ましく、最大8μmであることがより好ましい。
【0146】
ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは直径パーセンタイルd10≧0.2μm~d90≦20.0μmの間、より好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μmの間、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmの間にある。
【0147】
ケイ素含有材料は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下、最も好ましくは1μm以下の直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.4μm以上、最も好ましくは0.6μm以上である。
【0148】
ケイ素含有材料は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上の直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、最も好ましくは12μm以下である。
【0149】
ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは15.0μm以下、より好ましくは12.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下、特に好ましくは8.0μm以下、最も好ましくは4.0μm以下のスパンd90-d10を有する。ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは0.8μm以上、最も好ましくは1.0μm以上のスパンd90-d10を有する。
【0150】
ケイ素含有材料の粒子は、好ましくは粒子の形態である。粒子は、単離又は弱凝集されてもよい。ケイ素含有材料は、好ましくは強凝集せず、好ましくは弱凝集しない。単離された、弱凝集された及び強凝集していないという用語は、多孔質粒子に関して先に既に定義されている。強凝集体又は弱凝集体の形態のケイ素含有材料の存在は、例えば、従来の走査型電子顕微鏡(SEM)によって可視化することができる。
【0151】
ケイ素含有材料は、任意の所望の形態を有してもよく、したがって、例えば、スパッタ状、板状、球状又は針状であってもよく、スパッタ状又は球状粒子が好ましい。
【0152】
Wadellの定義によれば、真球度ψは、本体の実際の表面積に対する等しい体積の球の表面積の比である。球の場合、ψの値は1である。この定義によれば、本発明の方法によって利用可能なケイ素含有材料は、好ましくは0.3~1.0、より好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の真球度ψを有する。
【0153】
真球度Sは、表面上に投影された粒子の投影と同じ面積Aを有する等価円の円周と、この投影の測定された円周Uとの比であり、
【0154】
【数6】
である。理想的な真球度の粒子の場合、Sの値は1となるであろう。本発明の方法によって接近可能なケイ素含有材料について、真球度Sは、数値的真球度分布のパーセンタイルS10~S90に基づいて、好ましくは0.5~1.0、より好ましくは0.65~1.0の範囲である。真球度Sは、例えば、個々の粒子の光学的顕微鏡写真から、又は好ましくは10μm未満の粒子では、走査型電子顕微鏡により、例えば、ImageJ等の画像解析ソフトウェアによる図形評価により測定される。
【0155】
リチウムイオン電池のサイクル安定性は、形態、材料組成、特にケイ素含有材料の比表面積又は内部多孔度によってさらに高めることができる。
【0156】
ケイ素含有材料は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、非常に好ましくは30~60重量%、特に好ましくは40~50重量%の多孔質粒子を含有する。
【0157】
ケイ素含有材料は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、非常に好ましくは30~60重量%、特に好ましくは40~50重量%の、ケイ素前駆体からの堆積によって得られるケイ素を含有する(好ましくはICP-OES等の元素分析による測定)。
【0158】
多孔質粒子が二酸化ケイ素の形態でケイ素化合物を含む場合、例えば、ケイ素前駆体からの堆積を介して得られるケイ素の上述の重量%の数値は、元素分析によって確認されたケイ素含有材料中のケイ素質量から、元素分析によって確認された多孔質粒子中のケイ素質量を差し引き、その結果をケイ素含有材料の質量で割ることによって測定することができる。
【0159】
ケイ素含有材料に含まれ、ケイ素前駆体からの堆積を介して得られるケイ素の体積は、ケイ素の密度(2.336g/cm)で割った、ケイ素含有材料の総質量の割合としての、ケイ素前駆体からの堆積を介して得られるケイ素の質量分率の結果である。
【0160】
ケイ素含有材料の孔容積Pは、ガスが接近可能な孔容積とガスの接近不可能な孔容積の合計の結果である。ケイ素含有材料のGurwitschのガスが接近可能な孔容積は、DIN 66134に従って窒素によるガス収着測定によって測定することができる。
【0161】
ケイ素含有材料の、ガスが接近不可能な孔容積は、以下の式を使用して測定することができる。
ガスが接近不可能な孔容積=1/骨格密度-1/純物質密度。
【0162】
ここで、ケイ素含有材料の純物質密度は、ケイ素含有材料に含まれる成分の理論的な純物質密度の合計に、材料全体におけるそれらのそれぞれの重量ベースの割合を乗じたものから計算することができる理論的な密度である。したがって、例えば、ケイ素が多孔質粒子上に堆積されるケイ素含有材料の場合、
純物質密度=ケイ素の理論的純物質密度×重量%で表されるケイ素の割合+多孔質粒子の理論的純物質密度×重量%で表される多孔質粒子の割合。
【0163】
純物質密度に関するデータは、例えば、Ceramic Data Portal of the National Institute of Standards(NIST、https://srdata.nist.gov/CeramicDataPortal/scd)から当業者によって得ることができる。例えば、酸化ケイ素の純物質密度は2.203g/cm、窒化ホウ素の純物質密度は2.25g/cm、窒化ケイ素の純物質密度は3.44g/cm、炭化ケイ素の純物質密度は3.21g/cmである。
【0164】
ケイ素含有材料の孔容積Pは、ケイ素含有材料に含まれ、ケイ素前駆体の堆積から得られるケイ素の体積に基づいて、好ましくは0~400体積%の範囲、より好ましくは100~350体積%の範囲、特に好ましくは200~350体積%の範囲にある。
【0165】
ケイ素含有材料に含まれる気孔は、ガスが接近可能でもガスが接近不可能でもよい。ケイ素含有材料のガスが接近不可能な気孔に対するガスが接近可能な気孔の体積の比は、一般に0(ガスが接近可能な孔なし)~1(全ての孔がガスが接近可能である)の範囲にあり得る。ケイ素含有材料のガスが接近不可能な気孔に対するガスが接近可能な気孔の体積比は、好ましくは0~0.8の範囲、より好ましくは0~0.3の範囲、特に好ましくは0~0.1の範囲にある。
【0166】
ケイ素含有材料の孔は、例えば、マクロ孔(50nm超)、メソ孔(2~50nm)及びミクロ孔(2nm未満)の範囲内にある任意の所望の直径を有し得る。ケイ素含有材料はまた、異なる孔タイプの任意の所望の混合物を含有してもよい。ケイ素含有材料は、好ましくは、総孔容積に基づいて最大で30%のマクロ孔を含有し、特に好ましくはマクロ孔を有さないケイ素含有材料であり、非常に特に好ましくは総孔容積に基づいて少なくとも50%の孔を有し、5nm未満の平均孔直径を有するケイ素含有材料である。より特に好ましくは、ケイ素含有材料は、最大で2nmの直径を有する孔のみを有する。
【0167】
ケイ素含有材料は、少なくとも1つの寸法において、好ましくは最大1000nm、より好ましくは100nm未満、非常に好ましくは5nm未満の構造サイズを有するケイ素構造を含む(測定方法:走査型電子顕微鏡法(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡法(HR-TEM))。
【0168】
ケイ素含有材料は、好ましくは1000nm未満、より好ましくは100nm未満、非常に好ましくは5nm未満(測定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))の層厚を有するケイ素層を含む。ケイ素含有材料はまた、粒子の形態のケイ素を含んでもよい。ケイ素粒子は、好ましくは最大1000nm、より好ましくは100nm未満、非常に好ましくは5nm未満(測定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))の直径を有する。ここでのケイ素粒子の数値は、好ましくは、顕微鏡画像における粒子の周りの円の直径に基づく。
【0169】
ケイ素含有材料は、好ましくは最大100m/g、より好ましくは30m/g未満、特に好ましくは10m/g未満の比表面積を有する。BET比表面積は、DIN 66131(窒素による)に準拠して測定される。したがって、ケイ素含有材料をリチウムイオン電池のアノードの活物質として使用する場合、SEI形成を減少させることができ、初期クーロン効率を高めることができる。
【0170】
ケイ素前駆体から堆積されたケイ素含有材料中のケイ素は、例えば、Li、Fe、Al、Cu、Ca、K、Na、S、Cl、Zr、Ti、Pt、Ni、Cr、Sn、Mg、Ag、Co、Zn、B、P、Sb、Pb、Ge、Bi、希土類又はそれらの組み合わせを含む群から選択されるドーパントをさらに含んでもよい。ここで、リチウム及び/又はスズが好ましい。ケイ素含有材料中のドーパントの量は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは最大で1重量%、より好ましくは最大で100ppmであり、ICP OESによって測定することができる。
【0171】
ケイ素含有材料は、一般に、圧縮荷重及び/又は剪断荷重下で驚くほど高い安定性を有する。ケイ素含有材料の圧力安定性及び剪断安定性は、例えば、圧縮荷重下(例えば、電極圧縮時)及び剪断荷重下(例えば、電極の調製時)でのSEMにおけるケイ素含有材料の多孔質構造の変化の非存在又は実質的な非存在によって明らかにされる。
【0172】
ケイ素含有材料は、炭素等の元素を任意選択でさらに含んでもよい。炭素は、好ましくは、最大で1μm、好ましくは100nm未満、より好ましくは5nm未満、非常に好ましくは1nm未満の層厚(SEM又はHR TEMによって測定可能)を有する薄層の形態で存在する。これらの炭素層は、ケイ素含有材料の孔内及び表面上の両方に存在し得る。段階2.1~6.1の対応する反復を通じたケイ素含有材料中の異なる層の順序及びそれらの数もまた任意である。したがって、第1に、多孔質粒子上に、例えば、炭素等の多孔質粒子とは異なるさらなる材料の層があり得、その層は、ケイ素層又はケイ素粒子の層を有し得る。また、多孔質粒子とケイ素層又はケイ素粒子からなる層との間に多孔質粒子の材料とは異なる材料のさらなる層が存在するかにかかわらず、ケイ素層上又はケイ素粒子の層上に多孔質粒子の材料とは異なるか又は同じであり得るさらなる材料の層が存在することも可能である。
【0173】
ケイ素含有材料は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、特に好ましくは20重量%以下の追加の元素を含有する。ケイ素含有材料は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、特に好ましくは2重量%以上の追加の元素を含有する。重量%で表される数値は、ケイ素含有材料の総重量に基づく。代替の実施形態では、ケイ素含有材料は、追加の元素を含有しない。
【0174】
本発明のさらなる主題は、リチウムイオン電池のアノードのためのアノード材料における活物質としてのケイ素含有材料の使用、及びリチウムイオン電池を製造するためのそのようなアノードの使用である。
【0175】
アノード材料は、好ましくは、本発明の方法によって利用可能なケイ素含有材料と、1つ以上の結合剤と、任意選択でさらなる活物質としてのグラファイトと、任意選択で1つ以上のさらなる導電性成分と、任意選択で1つ以上の添加剤とを含む混合物をベースとする。
【0176】
アノード材料におけるさらなる導電性成分の使用により、電極内及び電極と集電体との間の接触抵抗を低減することが可能であり、それにより、本発明のリチウムイオン電池の通電容量が改善される。好ましいさらなる導電性成分の例は、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ又は金属粒子、例えば、銅である。
【0177】
導電性カーボンブラックの一次粒子は、好ましくは、直径パーセンタイルd10=5nm~d90=200nmの間の体積加重粒径分布を有する。導電性カーボンブラックの一次粒子はまた、鎖状の分岐を有し得、そして最大μmサイズの構造を形成し得る。カーボンナノチューブは0.4~200nm、より好ましくは2~100nm、最も好ましくは5~30nmの直径を有することが好ましい。金属粒子は、好ましくは直径パーセンタイルd10=5nm~d90=800nmの間にある体積加重粒径分布を有する。
【0178】
アノード材料は、アノード材料の総重量に基づいて、好ましくは0~95重量%、より好ましくは0~40重量%、最も好ましくは0~25重量%の1つ以上のさらなる導電性成分を含む。
【0179】
リチウムイオン電池のアノードにおいて、ケイ素含有材料は、アノード材料中に存在する全活物質に基づいて、好ましくは5~100重量%、より好ましくは30~100重量%、最も好ましくは60~100重量%で存在し得る。
【0180】
好ましい結合剤は、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、より具体的にはリチウム塩又はナトリウム塩、ポリビニルアルコール、セルロース又はセルロース誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリイミド、特にポリアミドイミド、又は熱可塑性エラストマー、特にエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーである。特に好ましいのは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はセルロース誘導体、特にカルボキシメチルセルロースである。また、特に好ましいのは、前記結合剤のアルカリ金属塩、特にリチウム塩又はナトリウム塩である。最も好ましいのは、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、特にリチウム塩又はナトリウム塩である。結合剤の酸基の全て又は好ましくは一部は、塩の形態で存在し得る。結合剤は、好ましくは100000~1000000g/molのモル質量を有する。2種以上の結合剤の混合物を使用してもよい。
【0181】
グラファイトとしては、一般に天然又は合成グラファイトを使用することができる。グラファイト粒子は、好ましくは、直径パーセンタイルd10>0.2μm~d90<200μmの間の体積加重粒径分布を有する。
【0182】
添加剤の例は、孔形成剤、分散剤、流動制御剤又はドーパント、例えば、元素リチウムである。
【0183】
アノード材料のための好ましい配合物は、好ましくは5~95重量%、より具体的には60~90重量%のケイ素含有材料、0~90重量%、より具体的には0~40重量%のさらなる導電性成分、0~90重量%、より具体的には5~40重量%のグラファイト、0~25重量%、より具体的には5~20重量%の結合剤及び0~80重量%、より具体的には0.1~5重量%の添加剤を含み、重量%で表される数字は、アノード材料の総重量に基づいており、アノード材料の全ての構成成分の割合は合計で100重量%になる。
【0184】
アノードインク又はアノードペーストを構成するアノード材料の構成成分は、好ましくは、好ましくは水、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド及びエタノール、及びこれらの溶媒の混合物を包含する群から選択される溶媒中で、好ましくはローターステーター機、高エネルギーミル、遊星混練機、撹拌ボールミル、振盪板又は超音波装置を使用して処理される。
【0185】
アノードインク又はアノードペーストは、好ましくは2~7.5のpHを有する(例えば、SenTix RJDプローブを備えたWTW pH340i pHメーターを使用して、20℃で測定される)。
【0186】
アノードインク又はアノードペーストは、ドクターブレードによって、例えば、銅箔又は別の集電体に塗布することができる。他のコーティング方法、例えば、回転コーティング(スピンコーティング)、ローラーコーティング、浸漬又はスロットダイコーティング、塗装又は噴霧もまた、本発明に従って使用され得る。
【0187】
銅箔を本発明のアノード材料でコーティングする前に、銅箔は、例えば、ポリマー樹脂又はシランをベースとする市販のプライマーで処理されてもよい。プライマーは銅への接着の改善をもたらすことができるが、それ自体は一般に実質的に電気化学的活性を有さない。
【0188】
アノード材料は、通常、一定重量まで乾燥される。乾燥温度は、使用される成分及び使用される溶媒によって導かれる。それは、好ましくは20~300℃の間、より好ましくは50~150℃の間にある。アノードコーティングの乾燥層厚を意味する層厚は、好ましくは2~500μm、より好ましくは10~300μmである。
【0189】
最後に、電極コーティングは、所定の多孔度を設定するためにカレンダー処理されてもよい。このように製造された電極は、好ましくは15~85%の多孔度を有し、これはDIN ISO 15901-1に従って水銀ポロシメトリーによって測定することができる。ここで、このようにして求めることができる孔容積の25~85%は、0.01~2μmの孔径を有する孔により提供されることが好ましい。
【0190】
本発明のさらなる主題は、カソードと、アノードと、これらの電極に対する2つの導電性接続部と、セパレータと、電解質であって、セパレータ及び2つの電極が含浸される電解質と、また、上記の構成要素を収容するケーシングとを備え、アノードは、本発明の方法に従って入手可能なケイ素含有材料を含むリチウムイオン電池である。
【0191】
本発明の関連において、リチウムイオン電池という用語は、セルも包含する。セルは、一般に、カソード、アノード、セパレータ、及び電解質を含む。1つ以上のセルに加えて、リチウムイオン電池は、好ましくは、電池管理システムをさらに備える。電池管理システムは、一般に、例えば、電子回路によって、特に充電状態を認識するため、徹底的な放電から保護するため、又は過充電から保護するために、電池を制御する役割を果たす。
【0192】
本発明に従って使用することができる好ましいカソード材料としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物(ドープ又は非ドープ)、リチウムマンガン酸化物(スピネル)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウム鉄リン酸塩、リチウムコバルトリン酸塩、リチウムマンガンリン酸塩、リチウムバナジウムリン酸塩、又はリチウムバナジウム酸化物が挙げられる。
【0193】
セパレータは、一般に、電気絶縁性のイオン透過性膜であり、好ましくはポリオレフィン、例えば、ポリエチレン(PE)若しくはポリプロピレン(PP)、又はポリエステル、又は対応するラミネートから作製される。あるいは、電池製造において慣例であるように、セパレータは、ガラス又はセラミック材料からなっていてもよく、又はガラス又はセラミック材料でコーティングされていてもよい。セパレータは、従来、第1の電極を第2の電極から分離し、したがって電極間の導電性接続(短絡)を防止する。
【0194】
電解質は、好ましくは、非プロトン性溶媒中に1つ以上のリチウム塩(=導電性塩)を含む溶液である。導電性塩は、好ましくは、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムヘキサフルオロアルセネート、リチウムパークロレート、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムイミド、リチウムメチド、リチウムトリフルオロメタンスルホネートLiCFSO、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)LiN(CFSO及びリチウムボレートを含む群から選択される。導電性塩の濃度は、溶媒に基づいて、好ましくは0.5mol/l~問題の塩の溶解限度である。より好ましくは、導電性塩の濃度は0.8~1.2mol/lである。
【0195】
使用される溶媒は、好ましくは、個々に又は混合物として、環状カーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、ジオキソラン、アセトニトリル、炭酸の有機エステル、又はニトリルである。
【0196】
電解質は、好ましくは、例えば、ビニレンカーボネート又はフルオロエチレンカーボネート等の膜形成剤を含む。このようにして、本発明の方法に従って得られるケイ素含有材料を含むアノードのサイクル安定性の有意な改善を達成することが可能である。この改善は、主として、活性粒子の表面上の固体電解質界面の形成に起因する。電解質中の膜形成剤の割合は、好ましくは0.1~20.0重量%の間、より好ましくは0.2~15.0重量%の間、最も好ましくは0.5~10重量%の間である。
【0197】
リチウムイオン電池の電極の実際の容量を可能な限り最適に互いに一致させるために、正極及び負極の材料を量的に均衡させることが有利である。この関連において特に重要なのは、二次リチウムイオンセルの第1の又は最初の充電/放電サイクル(活性化として知られる)において、被覆層がアノード中の電気化学的に活性な材料の表面上に形成されるという事実である。この被覆層は、固体電解質界面(SEI)と呼ばれ、一般に、主に電解質分解生成物と、ある特定の量のリチウムとからなり、したがってこのリチウムはさらなる充電/放電反応にはもはや利用できない。SEIの厚さ及び組成は、使用されるアノード材料及び使用される電解質溶液の性質及び品質に依存する。
【0198】
グラファイトの場合、SEIは特に薄い。グラファイトでは、典型的には、第1の充電工程において可動性リチウムの5~35%の損失がある。これに対応して、電池の可逆容量も低下する。
【0199】
本発明の方法によって得られるケイ素含有活物質を有するアノードの場合、第1の充電工程は、好ましくは最大で30%、より好ましくは最大で20%、最も好ましくは最大で10%の可動性リチウムの損失を伴い、これは、例えば、US10,147,950B1におけるように、先行技術に記載されている値をはるかに下回る。
【0200】
本発明の方法によって得ることができるケイ素含有材料をアノードが含むリチウムイオン電池は、全ての慣例の形態で製造することができ、そのようなものは、例えば、巻かれた、折り畳まれた、又は積み重ねられた形態である。
【0201】
上記のようなリチウムイオン電池の製造に利用されるすべての物質及び材料は知られている。そのような電池の部品の製造、及び電池を得るためのそれらの組み立ては、電池製造の分野で知られている方法に従って行われる。
【0202】
本発明の方法によって得られるケイ素含有材料は、著しく改善された電気化学的特性に関し注目に値し、高い体積容量及び優れた性能特性を有するリチウムイオン電池をもたらす。本発明の方法によって得られるケイ素含有材料は、リチウムイオン及び電子に対して透過性であり、したがって帯電輸送を可能にする。リチウムイオン電池におけるSEIは、本発明の方法によって得られるケイ素含有材料によって大幅に低減することができる。さらに、本発明の方法によって得られるケイ素含有材料の設計のため、活物質の表面からのSEIの剥離はもはや存在しないか、又は少なくとも大幅に低減される。このすべては、本発明の方法によって得ることができるケイ素含有材料をアノードが含有するそのようなリチウムイオン電池の部分において高いサイクル安定性をもたらす。
【実施例
【0203】
以下の実施例は、本明細書に記載される本発明のさらなる解明に役立つ。
【0204】
特性測定に使用した分析方法及び機器は以下の通りであった。
【0205】
無機分析/元素分析:
実施例で報告したC含量は、Leco CS230分析器を使用して確認した。O含有量並びに適切な場合にはN及びH含有量の測定のために、Leco TCH-600分析器を使用した。他の報告された元素の定性的及び定量的測定は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析(Optima 7300 DV、Perkin Elmer製)によって行った。この分析のために、試料をマイクロ波(icrowave 3000、Anton Paar製)中で酸分解(HF/HNO)に供した。ICP-OES測定は、ISO 11885(水質-誘電結合プラズマ原子発光分析法(ICP-OES)による選択元素の定量“Water quality - Determination of selected elements by inductively coupled plasma optical emission spectrometry(ICP-OES)(ISO 11885:2007)、独語版EN ISO 11885:2009”)によって手引きされ、これは酸性水溶液(例えば、飲料水、廃水及び他の水の酸性化サンプル、土壌及び沈殿物の王水抽出物)の分析に使用される。
【0206】
粒径の測定:
本発明の関連において、粒径分布は、Horiba LA 950を用いた静的レーザー散乱によってISO 13320に準拠して測定した。ここで、試料の調製において、個々の粒子のサイズではなく弱凝集体のサイズを測定しないように、測定溶液中の粒子の分散に特に注意を払わなければならない。測定のため、粒子をエタノールに分散させた。この目的のために、分散体を、測定前に、必要であれば、LS24d5ソノトロードを備えたHielscherモデルUIS250v超音波実験室機器において、250W超音波で4分間処理した。
【0207】
BET比表面積測定:
材料の比表面積を、Sorptomatic 199090機器(Porotec)又はSA-9603MP機器(Horiba)を用いて、BET法(窒素を用いたDIN ISO9277:2003-05に準拠した測定)により、窒素を用いたガス吸着によって測定した。
【0208】
骨格密度:
骨格密度、すなわち、外部からガスが接近可能な孔空間のみの体積に基づく多孔質固体の密度を、DIN 66137-2に準拠してHeピクノメトリによって測定した。
【0209】
ガスが接近可能な孔容積:
ギュルヴィッチ(Gurwitsch)のガスが接近可能な孔容積は、DIN 66134に準拠して窒素を用いたガス収着測定によって測定した。
【0210】
実験例を実施する際に使用した材料及び装置は以下の通りであった。
【0211】
使用した反応器A、B及びCは、円筒形の下部(ビーカー)及び多数の接続部(例えば、ガス供給、ガス除去、温度測定及び圧力測定である)を有する蓋からなっていた。3つの反応器のそれぞれの容積は12リットルであった。反応器を電気的に加熱した。温度は基本的にヒーターと反応器の間で測定した。使用した撹拌機は、非常に近接したヘリカル撹拌機であった。これらの撹拌機の高さは、反応器内部のクリアハイトの約50%であった。
【0212】
本発明によらない反例2では、使用した反応器は同じであり、反応器A、B及びCは同じ反応器であり、工程間の材料の移動はなかったという特別な特徴を有していた。
【0213】
使用したグレード4.0のSiHは、Linde GmbHから入手した。
【0214】
実施例で使用した多孔質粒子は、以下の特性を有していた。
密度:2.19g/cm;(Heピクノメトリ)
BET比表面積:2255m/g
Gurvich体積:1.16cm/g
炭素含有率:93.39重量%(EA)
酸素含有率:5.45重量%(EA)
水素含有率:0.70重量%(EA)
ミクロ孔容積:0.46cm/g
粒径分布:d50 4.4μm
【0215】
[実施例1]
カスケード反応器システムにおいてモノシランSiHをケイ素前駆体として使用するケイ素含有材料の製造。
【0216】
段階1.1において、反応器Aに多孔質粒子である842gの多孔質材料を充填し、密封した。次いで、段階1.2において、反応器Aを350℃まで調整し、240分間、1×10-3barの最終圧力まで排気した。続いて、段階1.3において、材料を窒素雰囲気下で反応器Bに移し、これを350℃まで加熱した。
【0217】
段階2.1では、反応器B中の多孔質材料を350℃まで加熱した。段階2.2では、反応器Bを最初に1×10-3barまで排気した。続いて、段階2.4において、158gの量のSiHを15.0barの圧力で充填した。段階3.1及び4.1において、反応器Bを430℃の温度まで15分間かけて加熱し、段階4.2において、この温度を70分間維持した。段階4.2の過程で、式2に従って、圧力は35.8barまで上昇した。その後、反応器B内の圧力を段階5.1で1.5barまで低下させ、段階5.2で反応器の温度を350℃まで低下させた。
【0218】
その後、段階2.4、3.1、4.1、4.2、5.1及び5.2を指定された順序で10回実施した。この操作中、xgのSiHを、様々な段階2.4(x=139、133、131、128、122、119、116、114、110、77)において指定された順序で計量し、その間に最初にybarの圧力を確立させた(y=15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、14.9、11.0)。10例全てにおいて、反応器Bを、段階3.1及び4.1において、430℃の温度まで15分間かけて加熱し、段階4.2の反復においてこの温度を60分間維持した。段階4.2の過程で、式2に従って、圧力はzbar(z=35.6、35.0、34.2、33.4、33.1、32.6、32.0、31.5、31.8、23.4)まで上昇した。最初の9回の反復の段階4.2に続いて、段階5.1の圧力を1.5barまで低下させ、反応器Bを段階5.2で30分間かけて350℃の温度まで冷却した。段階4.2の10回目及び最後の繰り返しの後、段階5を省略して、反応器B内の圧力を段階6.1で1.0barまで低下させた。高温の材料は、その後、段階6.2において、管接続部を通して反応器Cに移された。段階6.3では、4.5barの圧力を窒素を用いて反応器C内で発生させ、ケイ素含有材料を反応器C内で90分間かけて70℃の温度まで冷却した。続いて、段階7.1において、反応器Cを窒素で5回、酸素分率5%の希薄な空気で10回、酸素分率10%の希薄な空気で10回、酸素分率15%の希薄な空気で10回、続いて空気で10回パージした。段階7.2において、微細な黒色固体の形態の1992gの量のケイ素含有材料を単離した。ケイ素含有材料は以下の特性を有していた。
- BET比表面積:43m/g
- 炭素含有率:40.2重量%(EA)
- 酸素含有率:2.77重量%(EA)
- ケイ素含有率:57.0重量%(EA)
【0219】
全部で操作を36時間継続した。3つの反応器は全て同時に作動していた。カスケード反応器の時間測定工程は、反応器Bにおける操作であり、この場合、18時間であった。
【0220】
[反例2(本発明によらない)]
反応器内でモノシランSiHをケイ素前駆体として使用するケイ素含有材料の製造(反例については、実施例1の反応器A、B及びCは同じ圧力容器である)。
【0221】
段階1.1では、反応器に842gの多孔質材料を充填し、密封した。次いで、段階1.2において、反応器を350℃まで調整し、240分間、1×10-3barの最終圧力まで排気した。続いて、段階2.4において、318gの量のSiHを15.0barの圧力で充填した。段階3.1及び4.1では、反応器を15分間かけて430℃の温度まで加熱し、段階4.2では、この温度を70分間維持した。段階4.2の過程で、式2に従って、圧力は35.8barまで上昇した。その後、反応器内の圧力を段階5.1で1.5barまで低下させ、段階5.2で反応器の温度を350℃まで低下させた。その後、段階2.4、3.1、4.1、4.2、5.1及び5.2を指定された順序で10回実施した。この操作中、xgのSiHを、様々な段階2.4(x=137、130、131、130、123、120、118、116、111、75)において指定された順序で計量し、その間に最初にybarの圧力を確立させた(y=15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、14.9、15.0、15.0、11.0)。10例全てにおいて、反応器を、段階3.1及び4.1において、15分間かけて430℃の温度まで加熱し、この温度を段階4.2において60分間維持した。段階4.2の過程で、式2に従って、圧力はzbar(z=35.7、35.2、34.0、33.3、33.1、32.8、32.0、31.3、31.5、23.74)まで上昇した。最初の9回の反復の段階4.2の後に、段階5.1の圧力を1.5barまで低下させ、反応器を段階5.2で30分間かけて350℃の温度まで冷却した。段階4.2の10回目及び最後の繰り返しの後、段階5を省略して、反応器内の圧力を段階6.1で1.0barまで低下させた。段階6.3では、4.5barの圧力を窒素を用いて反応器内に発生させ、ケイ素含有材料を14時間かけて70℃の温度まで冷却した。続いて、段階7.1において、反応器を窒素で5回、酸素分率5%の希薄な空気で10回、酸素分率10%の希薄な空気で10回、酸素分率15%の希薄な空気で10回、その後に空気で10回パージした。段階7.2において、微細な黒色固体の形態の1986gの量のケイ素含有材料を単離した。ケイ素含有材料は以下の特性を有していた。
- BET比表面積:39m/g
- 炭素含有率:39.6重量%(EA)
- 酸素含有率:2.87重量%(EA)
- ケイ素含有率:57.0重量%(EA)
【0222】
全部で操作を47時間継続した。
【0223】
[実施例3]
リチウムイオン電池のアノードにおける活物質としての使用におけるケイ素含有材料の電気化学的特性測定:
【0224】
29.71gのポリアクリル酸(85℃で一定重量まで乾燥させた、Sigma Aldrich、Mw約450000g/mol)及び756.6gの脱イオン水を、ポリアクリル酸が完全に溶解するまで、シェーカー(290 1/分)を用いて2.5時間撹拌した。水酸化リチウム一水和物(Sigma Aldrich)を、pHが7.0(WTW pH340i pHメーター及びSenTix RJDプローブを用いて測定した)になるまで溶液に数回にわけて添加した。続いて、この溶液をシェーカーによってさらに4時間混合した。
【0225】
3.87gの中和させたポリアクリル酸溶液及び0.96gのグラファイト(Imerys、KS6L C)を50ml容器に導入し、プラネタリーミキサー(SpeedMixer、DAC 150 SP)中において2000rpmで混合した。次に、実施例1及び例2からのケイ素含有材料のそれぞれ3.40gを2000rpmで1分間撹拌した。次いで、導電性カーボンブラックの8%分散体1.21g及び脱イオン水0.8gを添加し、プラネタリーミキサーで2000rpmで組み込んだ。次いで、3000rpm及び一定の20℃で30分間、溶解機中で分散を行った。インクを再びプラネタリーミキサー中で2500rpmで5分間減圧下で脱気した。次いで、完成した分散液を、0.1mmのギャップ高さを有するフィルムアプリケータフレーム(Erichsen、Modell 360)を用いて、0.03mmの厚さを有する銅箔(Schlenk Metallfolien、SE-Cu58)に塗布した。次いで、このようにして製造されたアノードコーティングを、1barの空気圧下で50℃で60分間乾燥させた。乾燥したアノードコーティングの平均基本重量は2.1mg/cmであり、コーティング密度は0.9g/cmであった。
【0226】
電気化学的研究を、2電極配置のボタンセル(CR2032型、宝泉)について行った。前記電極コーティングを対電極又は負極として使用した(Dm=15mm)。94.0%の含有率及び15.9mg/cmの平均基本重量を有するリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物6:2:2をベースとするコーティング(SEI社から入手)を、作用電極又は正極として使用した(Dm=15mm).60μlの電解質を含浸させたガラス繊維濾紙(Whatman、GDタイプD)をセパレータとして用いた(Dm=16mm)。使用した電解質は、フルオロエチレンカーボネート及びジエチルカルボネートの1:4(v/v)混合物中のリチウムヘキサフルオロホスフェートの1.0モル溶液からなっていた。セルをグローブボックス(1ppm未満のHO、O)で構築した。使用した全ての成分の乾燥質量中の含水量は20ppm未満であった。
【0227】
電気化学的試験を20℃で行った。セルを、最初のサイクルでは5mA/g(C/25に相当)、それ以降のサイクルでは60mA/g(C/2に相当)の定電流でcc/cv(定電流/定電圧)法により充電し、電圧限界4.2Vに達した後、充電を、電流が1.2mA/g(C/100に対応する)又は15mA/g(C/8に対応する)を下回るまで定電圧で行った。セルを、最初のサイクルでは5mA/g(C/25に相当)、それ以降のサイクルでは60mA/g(C/2に相当)の定電流で、2.5Vの電圧限界に達するまでcc(定電流)法により放電した。選択された特定の電流は、正極のコーティングの重量に基づいた。セルの放電容量に対するセルの充電容量の比は、クーロン効率と呼ばれる。電極は、1:1.2のカソード対アノードの容量比を確立するように選択した。
【0228】
実施例1及び例2の活物質を含むリチウムイオン電池のフルセルの電気化学的試験の結果を表1に示す。
【0229】
【表1】
【0230】
比較例2では、容積12リットルの反応器内で、本発明によらない方法によって48時間かけて1986gの材料を製造した。実施例1において、1992gの材料を、18時間にわたって12リットルの容積を有する3つの反応器において、本発明による方法によって製造した。したがって、実施例1では、例2の場合と比較して、材料の収率が時間に関して2.5倍高かった。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質粒子の存在下におけるケイ素前駆体の熱分解によってケイ素含有材料を製造する方法であって、ケイ素は多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積される製造する方法、又、得られたケイ素含有材料のリチウムイオン電池のアノード用の活物質としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電力の貯蔵媒体として、リチウムイオン電池は、現在、最も高いエネルギー密度を有する実用的な電気化学エネルギー貯蔵器である。リチウムイオン電池は、主に、携帯用電子機器の分野において、工具用に、また、自転車、スクータ又は自動車等の電気駆動輸送手段に利用される。対応する電池の負極(「アノード」)に現在広く普及している活物質は、グラファイト状炭素である。しかし、欠点は、このようなグラファイト状炭素の電気化学容量が比較的低いことであり、これは理論的にグラファイト1グラム当たり最大372mAhであり、したがってリチウム金属で理論的に達成可能な電気化学容量の約10分の1にしか相当しない。アノードのための代替的な活物質は、例えば、EP1730800B1、US10,559,812B2、US10,819,400B2、又はEP3335262B1に記載されるように、ケイ素の添加を使用する。リチウムと共にケイ素は、ケイ素1グラム当たり3579mAhまでの非常に高い電気化学的に達成可能なリチウム含有量を可能にする2元の電気化学的に活性な合金を形成する[M.Obrovac,V.Chevrier Chem. Rev. 2014、114、11444]。
【0003】
ケイ素中のリチウムイオンのインターカレーション及びデインターカレーションは、体積の非常に急激な変化という欠点を伴う。これは、完全なインターカレーションの場合、300%まで到達することがある。このような体積の変化は、ケイ素含有活物質を厳しい機械的負荷にさらし、活物質が最終的に分解する可能性がある。活物質及び電極構造において、電解研削とも呼ばれるこの方法は、電気的接触の損失をもたらし、したがって電極の一部における容量の持続的で不可逆的な損失をもたらす。
【0004】
さらに、ケイ素含有活物質の表面は電解質の構成成分と反応して、連続的に不動態化保護層(固体電解質界面、SEI)を形成する。形成された成分はもはや電気化学的に活性ではない。それらの中に結合しているリチウムは、システムで利用できなくなるため電池の部分の容量の顕著かつ連続的な損失につながる。電池の充電/放電中のケイ素の体積の極端な変化のため、SEIは一定の間隔で分解され、これは、ケイ素含有活物質のまだ占有されていない表面がさらに露出され、さらにSEIが形成されることになる。完全な電池では、有用な容量に対応する可動性リチウムの量がカソード材料によって制限されるため、リチウムはますます消費され、ほんの数サイクル後の電池の容量は、性能の観点から許容できない程度まで低下する。
【0005】
複数の充電及び放電サイクルの過程における容量の低下は、フェージング又は連続容量損失とも呼ばれ、一般に不可逆的である。
【0006】
リチウムイオン電池のアノード用の活物質として、一連のケイ素-炭素複合粒子が記載されており、ケイ素は、ガス又は液体前駆体から出発して多孔質炭素粒子に組み込まれる。
【0007】
例えば、US10,147,950B2は、CVD(化学気相成長法)又はPE-CVD(プラズマ強化化学気相成長法)の方法による、好ましくは粒子の撹拌を伴う、管状炉又は同等の炉のタイプにおける300~900℃の高温での多孔質炭素中でのモノシランSiHからのケイ素の堆積を記載する。この方法は、2モル%のモノシランと不活性ガスとしての窒素との混合物を用いる。ガス混合物中のケイ素前駆体の濃度が低い結果として、反応時間は非常に長い。さらに、US10,147,950B2は、多孔質出発材料上及び多孔質出発材料中でのケイ素の堆積を実施するために、300~900℃の異なる温度範囲と0.01~100barの異なる圧力範囲との多数の可能な組み合わせを開示している。
【0008】
類似の手順がUS10,424,786B1に記載されており、ケイ素前駆体は、1.013barの全圧下で不活性ガスとの混合物として導入される。WO2012/097969A1は、200~950℃での多孔質炭素支持体上のケイ素前駆体としてのシランの加熱による1~20nmの範囲の超微細ケイ素粒子の堆積を記載し、シランは、堆積されたケイ素粒子の弱凝集及び/又は厚い層の形成を防止するために不活性ガスで希釈され、堆積は、0.1~5barの圧力範囲で行われる。
【0009】
Motevalianら、Ind. Eng. Chem. Res. 2017、56、14995は、多孔質マトリックスの非存在下における、高圧でのケイ素層の堆積を記載している。この場合もやはり、使用されるケイ素前駆体、この場合はモノシランSiHは、ガス体積全体において最大で5モル%という低い濃度でのみ存在する。
【0010】
上記の方法は、様々な重大な欠点を有する。ケイ素前駆体は通常、低い絶対圧及び分圧で、したがって低い濃度で使用され、それによってケイ素含有材料において高いケイ素分率を達成するために長い反応時間を必要とする。これらの方法の別の欠点は、供給される反応性ガスのわずかな部分のみが反応することであり、したがって反応器から出るガスは、費用がかかり不便なリサイクル又は廃棄の操作を経なければならず、これは、特に、ケイ素前駆体(厳しい技術的安全要件を受ける)を使用する場合に、コストをさらに増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1730800号明細書
【特許文献2】米国特許第10,559,812号明細書
【特許文献3】米国特許第10,819,400号明細書
【特許文献4】欧州特許第3335262号明細書
【特許文献5】米国特許第10,147,950号明細書
【特許文献6】米国特許第10,424,786号明細書
【特許文献7】国際公開第2012/097969号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】M.Obrovac,V.L.Chevrier Chem.Rev.2014、114、11444
【非特許文献2】Motevalianら、Ind.Eng.Chem.Res.2017、56、14995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
この背景に対して、本発明の目的は、リチウムイオン電池のアノードにおいて活物質として使用される場合、多孔質粒子及びケイ素前駆体から出発して高いサイクル安定性を可能にする、好ましくはリチウムイオンに対して高い貯蔵容量を有するケイ素含有材料を製造するための方法を提供することであり、この方法は、実施するのが技術的に簡単であり、先行技術の上述の方法の欠点がない、特に反応時間に関しては上述の方法の欠点がない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、この目的は、カスケード反応器システムにおいて、少なくとも7barの圧力でケイ素前駆体を分解することによって、ケイ素を多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積させる方法によって実質的に達成された。これは、多結晶ケイ素を製造するための方法から、比較的高い圧力でのケイ素の堆積が、ダストの増大した望ましくない形成を伴うことが知られている。(J.O.Oddenら,Solar Energy Mat.&Solar Cells 2005、86、165)。これは、多孔質粒子の孔の内面及び外面へのケイ素の堆積及び生成物収率の両方に対して逆効果である。この有害な効果は、驚くべきことに、本発明の方法によって克服される。
【0015】
リチウムイオン電池のアノード用の活物質としてのケイ素含有材料の製造は、例えば、本発明による圧力下で多孔質粒子及びケイ素前駆体から出発して、驚くべきことに多孔質粒子中のケイ素前駆体物質の量を増加させ、したがって反応時間を短縮することができるので、特に経済的に興味深い。本方法のさらなる経済的利点は、使用されるケイ素前駆体に関してより高いケイ素収率にある。またケイ素の堆積は特に均一であり、特に多孔質粒子内において起こり、その結果、リチウムイオン電池のアノードにおける活物質としての適用において得られるケイ素含有材料の高い安定性をもたらし、同時にサイクル中の体積変化が小さい。1つの反応器(本発明によらない)内でのみ関連する材料を製造することとは対照的に、カスケード反応器の手順は、1つの反応器の長い冷却及び加熱段階が低減されるという利点を有する。これは、1つの反応器のみに対して時間及びエネルギー技術の点で有利であり、反応器に対する物理的応力を低減する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、1つ以上の多孔質粒子の存在下における1つ以上のケイ素前駆体の熱分解によってケイ素含有材料を製造する方法であって、ケイ素が、複数の反応器を含むカスケード反応器システムにおいて、多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積される方法を提供する。
【0017】
1つの好ましい実施形態では、方法は、少なくとも段階1~7を含む。
段階1:反応器Aに多孔質粒子を充填し、該粒子を前処理する、
段階2:前処理された粒子を反応器Bに移し、該反応器に少なくとも1つのケイ素前駆体を含む反応性成分を充填する、
段階3:ケイ素前駆体が反応器内で分解し始める目標温度まで反応器Bを加熱する、
段階4:ケイ素前駆体を分解し、多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積させ、ケイ素含有材料を形成し、圧力を少なくとも7barまで上昇させる、
段階5:反応器Bを冷却する、
段階6:堆積の過程で形成されたガス状反応生成物を反応器Bから除去し、ケイ素含有材料を反応器Cに移す、
段階7:反応器Cからケイ素含有材料を取り出す。
【0018】
好ましい一実施形態では、段階1は以下のように構成される。
段階1
段階1.1:反応器Aに多孔質粒子を充填する、
段階1.2:反応器Aにおいて粒子を前処理する、
段階1.3:前処理された粒子を反応器Bに移すか、又は貯蔵容器Dに中間貯蔵した後に、反応器Bに移すか、又は材料が反応器Aに残る。
【0019】
好ましい一実施形態では、段階2は以下のように構成される。
段階2
段階2.1:反応器Bにおける粒子の加熱又は冷却、
任意選択で、段階2.2:反応器Bにおいて圧力を確立する、
任意選択で、段階2.3:反応器Bに少なくとも1つのケイ素を含まない反応性成分を充填する、
段階2.4:反応器Bに、少なくとも1つのケイ素前駆体を含む少なくとも1つの反応性成分を充填する。
【0020】
好ましい一実施形態では、段階3は以下のように構成される。
段階3
段階3.1:反応性成分が反応器B内で分解し始める目標温度まで反応器Bを加熱する。
【0021】
少なくとも1つのケイ素を含まない反応性成分が反応器B内にある場合、好ましくは段階3.2が続く。
段階3.2:Si前駆体を含まない反応性成分を分解する。
【0022】
好ましい一実施形態では、段階4は以下のように構成される。
段階4
段階4.1:ケイ素前駆体を分解し、多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積させ、圧力を少なくとも7barまで上昇させる。
段階4.2:少なくとも7barの圧力がもたらされる所定の期間にわたる最低温度又は温度プロファイルを確立する。
【0023】
好ましい一実施形態では、段階5は以下のように構成される。
段階5
段階5.1:反応器B内の圧力を所定の圧力に調整する、
段階5.2:所定の温度又は所定の温度プロファイルまで反応器Bを調整する。
【0024】
好ましい一実施形態では、段階6は以下のように構成される。
段階6
段階6.1:堆積の過程で形成されたガス状反応生成物を反応器Bから除去する、
段階6.2:粒子を反応器Cに移すか、又は貯蔵容器Eに中間貯蔵した後に、反応器Cに移すか、又は材料が反応器Bに残る、
段階6.3:所定の温度又は所定の温度プロファイル及び所定の圧力に反応器Cを調節する。
【0025】
好ましい一実施形態では、段階7は以下のように構成される。
段階7
段階7.1:反応器Cにおいて粒子を後処理して粒子表面を不活性化する、
段階7.2:粒子を所定の温度まで冷却し、反応器Cからケイ素含有材料を取り出し、好ましくは貯蔵容器Eに直接移すか、又は適切な容器に直接充填する。
【0026】
段階1.1において、多孔質粒子は、加熱可能及び/又は真空定格及び/又は圧力定格反応器Aに充填され、この充填は手動又は自動で行うことができる。
【0027】
反応器Aに多孔質粒子を充填することは、例えば、不活性ガス雰囲気下、又は好ましくは周囲空気下で行うことができる。使用可能な不活性ガスの例としては、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素若しくは二酸化炭素、又はこれらの混合物、例えば、フォーミングガスが挙げられる。アルゴン又は特に窒素が好ましい。
【0028】
自動充填は、例えば、計量スクリュー、スターホイール、振動トラフ、プレート型計量デバイス、ベルト型計量デバイス、真空計量システム、ネガティブ計量システム、又は例えば、サイロ、バッグシェーカー、若しくは他の容器システムからの他の計量システムを使用して達成され得る。
【0029】
段階1.2において反応器A中で粒子を前処理する目的は、空気/酸素、水又は分散剤、例えば、界面活性剤若しくはアルコール等、及び不純物を粒子から除去することである。これは、不活性ガスによる不活性化、温度を1000℃まで上昇させること、圧力を0.01ミリbarまで低下させること、又は該個々の操作工程の組み合わせによって達成され得る。使用される不活性ガスは、例えば、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素若しくは二酸化炭素、又はそれらの混合物、例えば、フォーミングガスであり得る。アルゴン又は特に窒素が好ましい。
【0030】
段階1.2における前処理の目的はまた、さらなる物質で多孔質粒子の化学的表面性質を改変することであってもよい。添加は、乾燥の前又は後に行われてもよく、材料が段階1.3に移される前にさらなる加熱工程があってもよい。この物質は、ガス状、固体若しくは液体の形態で、又は溶液として反応器に導入され得、混合物、エマルション、懸濁液、エアロゾル又は発泡体も可能である。問題の物質は、例えば、二酸化炭素、水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、フッ化水素酸、リン酸、硝酸、リン酸二水素アンモニウム、硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、アルコキシドであり得る。
【0031】
段階1.3における移送は、例えば、ドロップチューブ、連続コンベヤー、フローコンベヤー/吸引又は圧力搬送ユニット(例えば、真空コンベヤー、輸送用送風機)、機械的コンベヤー(例えば、ドライブ付きローラーコンベヤー、スクリューコンベヤー、円形コンベヤー、循環コンベヤー、バケットユニット、スターホイールロック、チェーンコンベヤー、スクレーパーコンベヤー、ベルトコンベヤー、振動コンベヤー)、重力コンベヤー(例えば、シュート、ローラーベッド、ボールベッド、レールベッド)によって、及び非連続コンベヤー、床ベース及びレールフリー(例えば、自動化車両、手動フォークリフトトラック、電動フォークリフトトラック、ドライバーレス輸送システム(DTS)、エアクッション車両、ハンドカート、電動カート、自動車(トラクタ、ワゴン、フォークリフトスタッカー)、移送キャリッジ、移送/リフトキャリッジ、棚アクセスデバイス(コンバータ有り/無し、湾曲した経路に従うことができる)、フロアベースのレールバウンド(rail-bound)(例えば、プラント鉄道、トラック車両)、フロアフリー(例えば、トロリートラック、クレーン(例えば、ブリッジクレーン、ポータルクレーン、ジブクレーン、タワークレーン)、電気オーバーヘッドトラック、小容器輸送システム、固定物(例えば、エレベータ、サービスリフト及びチェリーピッカー、段階的コンベヤー)によって達成され得る。
【0032】
貯蔵容器Dは、温度調節可能、移動可能、断熱されていてもよく、又は管システムによって反応器Bに接続され得る。
【0033】
段階2.1において、反応器B中の前処理された材料は、好ましくは100~1000℃、より好ましくは250~500℃、特に好ましくは300~400℃の温度にされる。
【0034】
任意の段階2.2において、反応器Bは、好ましくは0.01mbar~100bar、より好ましくは0.01mbar~10bar、特に好ましくは50mbar~3barの圧力に調整される。圧力は、不活性ガス及び/又は反応性ガスを使用して調整されてもよい。使用される不活性ガスは、例えば、水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素若しくは蒸気、又はそれらの混合物、例えば、フォーミングガスであり得る。アルゴン、窒素、又は特に水素が好ましい。
【0035】
前記物質は、例えば、Tピース又は上流混合ブロックによって同時に、又は連続して反応器Bに導入されてもよく、反応器Bは、任意選択で事前に排気されてもよい。
【0036】
段階2.2において反応器Bは、好ましくは、最初に、換言すれば、特に、反応器Bが段階2.3及び/又は2.4の反応性成分で充填される前に不活性ガスで充填されるか、又は排気される。
【0037】
任意選択の段階2.3において、反応器Bは、ケイ素前駆体を含有しない反応性成分で充填される。
【0038】
段階2.4において、反応器Bは、少なくとも1つのケイ素前駆体を含む反応性成分で充填される。
【0039】
本方法の1つの変形例では、反応性成分は、例えば、下から、又は特定の撹拌機を介して、多孔質粒子の床に直接反応器に導入される。この変形例は、添加を開始する前に1bar未満の圧力で反応器Bに計量投入する場合に特に好ましい。
【0040】
反応器Bは、好ましくは、計量される多孔質粒子の量に関して、製造されるケイ素含有材料の目標容量に充分な量のケイ素が堆積されるような量の反応性成分で充填される。これは、段階2.1~6.1の1つの工程で、又は複数の反復で行うことができる。
【0041】
充填は、一般に反応器への反応性成分の導入を意味する。反応器への導入中、反応性成分の構成成分は、例えば、ガス状、液体又は昇華性固体形態で存在し得る。
【0042】
反応性成分は、好ましくは、例えば、ガス状、液体、固体、昇華性であり、又は任意に物質の状態が異なる物質からなる組成物である。
【0043】
段階2.4からの反応性成分は、少なくとも1つのケイ素前駆体及び任意選択で不活性ガス成分を含む。1つ以上のケイ素前駆体は、一般に、混合物として、又は別々に、又は不活性ガス成分との混合物として、又は純粋な物質として、反応器Bに導入することができる。反応性成分は、好ましくは、標準条件下(DIN 1343に準拠)の反応性成分の全圧内の不活性ガス成分の分圧に基づいて、0~99%、より好ましくは最大50%、特に好ましくは最大30%、非常に好ましくは最大5%の不活性ガス成分を含む。1つの非常に好ましい実施形態では、反応性成分は不活性ガス構成成分を含有しない。
【0044】
ケイ素前駆体は、例えば、熱処理の選択された条件下でケイ素を形成するように反応することができる少なくとも1つの反応性成分を含む。反応性成分は、好ましくは、モノシランSiH、ジシランSi等のケイ素-水素化合物、及びより高級な直鎖状、分岐状又は環状同族体、ネオペンタシランSi12、シクロヘキサシランSi12、塩素含有シラン、例えば、トリクロロシランHSiCl、ジクロロシランHSiCl、クロロシランHSiCl、テトラクロロシランSiCl、ヘキサクロロジシランSiCl、及びより高級な直鎖状、分岐状又は環状同族体、例えば、1,1,2,2-テトラクロロジシランClHSi-SiHCl、塩素化及び部分塩素化オリゴシラン及びポリシラン、メチルクロロシラン、例えば、トリクロロメチルシランMeSiCl、ジクロロジメチルシランMeSiCl、クロロトリメチルシランMeSiCl、テトラメチルシランMeSi、ジクロロメチルシランMeHSiCl、クロロメチルシランMeHSiCl、メチルシランMeHSi、クロロジメチルシランMeHSiCl、ジメチルシランMeSi、トリメチルシランMeSiH、又は記載されたケイ素化合物の混合物を含む群から選択される。
【0045】
本方法の1つの特定の実施形態では、モノシラン又はシランの混合物、例えば、モノシランSiH、トリクロロシランHSiCl、ジクロロシランHSiCl、モノクロロシランHSiCl及びテトラクロロシランSiClの混合物(各構成成分は0~99.9重量%で存在し得る)は、反応器内への配置の直前にのみ好適な方法によって生成される。一般的に言えば、これらの方法は、トリクロロシランHSiClから開始し、これは、好適な触媒(例えば、AmberLyst(商標)A21DRY)上で転位されて、記載された混合物の他の成分を形成する。得られる混合物の組成は、主として、1つ以上の異なる温度での1つ以上の転位段階後に得られる混合物のワークアップ(work-up)によって測定される。
【0046】
特に好ましい反応性成分は、モノシランSiH、オリゴマー又はポリマーシラン、特に一般式Sin+2(nは、2~10の範囲の整数を含んでもよい。)の直鎖状シラン、一般式-[SiH-(式中、nは、3~10の範囲の整数を含んでもよい)の環状シラン、トリクロロシランHSiCl、ジクロロシランHSiCl、及びクロロシランHSiClを包含する群から選択され、これらは単独で又は混合物として使用されてもよく、非常に好ましくは、SiH、HSiCl、及びHSiClが単独で又は混合物として使用される。
【0047】
さらに、加えて、段階2.3及び/又は2.4からの反応性成分はまた、例えば、ホウ素、窒素、リン、ヒ素、ゲルマニウム、鉄、又はニッケルを含有する化合物に基づくドーパント等の他の反応性構成成分を含んでもよい。ドーパントは、好ましくは、アンモニアNH、ジボランB、ホスファンPH、ゲルマンGeH、アルサンAsH、鉄ペンタカルボニルFe(CO)及びニッケルテトラカルボニルNi(CO)を包含する群から選択される。
【0048】
反応性成分中に存在し得るさらなる反応性構成成分としては、水素、又は1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、1~10個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、例えば、エテン、アセチレン、プロペン若しくはブテン、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ビニルアセチレン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、環状不飽和炭化水素、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン若しくはノルボルナジエン、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、p-、m-、o-キシレン、スチレン(ビニルベンゼン)、エチルベンゼン、ジフェニルメタン若しくはナフタレン、他の芳香族炭化水素、例えば、フェノール、o-、m-、p-クレゾール、シメン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセン若しくはフェナントレン、ミルセン、ゲラニオール、チオテルピネオール、ノルボルナン、ボルネオール、イソボルネオール、ボルナン、カンファー、リモネン、テルピネン、ピネン、ピナン、カレン、フェノール、アニリン、アニソール、フラン、フルフラール、フルフリルアルコール、ヒドロキシメチルフルフラール、ビスヒドロキシメチルフラン、及び多数のそのような化合物を含む混合画分、例えば、天然ガス凝縮物、原油蒸留物又はコーキングオーブン凝縮物からのもの、流動接触分解装置(FCC)、水蒸気分解装置又はフィッシャー・トロプシュ合成プラントからの生成物流からの混合画分、又は非常に一般的には、木材、天然ガス、原油、及び石炭の処理から生じる炭化水素含有材料流を含有する群から選択される炭化水素が挙げられる。
【0049】
段階2.1、2.2、2.3及び2.4は、それらの番号付けの順序で実行されてもよいが、その必要はない。それらはまた、任意の所望の順序で連続して繰り返し実行されてもよい。
【0050】
段階3.1において、換言すれば、一般に段階2.4において反応器Bに反応性成分を充填した後、目標温度に達するまで反応器Bを加熱する。目標温度では、ケイ素前駆体の分解が始まり、多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素が堆積する。ケイ素の堆積を伴うケイ素前駆体の分解の開始は、反応器B内の温度の上昇によってもたらされない反応器B内の圧力の上昇によって実験的に確認することができる。ケイ素前駆体の分解の場合、一般に反応条件下ではケイ素に加えてガス状分子が形成され、反応器B内の圧力を上昇させる。反応器Bの容積は、プロセスの実行中、一般に一定のままである。
【0051】
好ましくは、段階3.1において、容積Vを有する閉鎖反応器Bの加熱時の圧力変化dpは、例えば、式1に従う熱力学的状態方程式によって説明され得るように、本質的に温度変化dTに依存する。
【0052】
【数1】
【0053】
段階3.2におけるケイ素前駆体の分解のための目標温度の達成後に、反応器Bにおける段階4.1の温度は、段階3.1の目標温度に関連して、例えば、上昇するか、一定に保たれるか、又はわずかに低下することができる。
【0054】
全ての段階における反応器B内の温度、圧力又は差圧測定値は、反応器に一般的な測定のための技術及び装置を使用して測定することができる。慣例的な較正に続いて、異なる測定装置が同じ結果をもたらす。
【0055】
目標温度は、好ましくは250~1000℃、より好ましくは300~800℃、最も好ましくは300~550℃の範囲にある。例えば、SiHの場合、目標温度は、好ましくは300~500℃の間、より好ましくは320~450℃の範囲、非常に好ましくは320~420℃の範囲である。HSiClのための目標温度は、好ましくは380~1000℃の間、より好ましくは420~600℃の範囲である。HSiClのための目標温度は、好ましくは350~800℃の間、より好ましくは380~500℃の範囲である。
【0056】
段階2.3においてケイ素前駆体を含有しない炭化水素がさらなる反応性成分として使用される場合、段階3.2において、並びに/又は段階4.1及び4.2の間のケイ素堆積のためにさらに適用される目標温度は、炭化水素の分解が始まり、炭素が多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積する温度である。この実施形態では、選択される目標温度は、好ましくは250~1000℃、より好ましくは350~850℃、最も好ましくは400~650℃の範囲である。
【0057】
本発明の方法において、段階4.1及び4.2中の反応器B内の圧力は、少なくとも7barまで上昇する。
【0058】
好ましい一実施形態では、プロセスの過程における反応の進行は、圧力変化に基づいて監視される。このようにして、例えば、浸透の程度又は浸透の終了を確認することが可能である。浸透とは、段階4.1及び4.2における多孔質粒子の孔内及び表面上のケイ素の堆積を指す。浸透の終了は、例えば、さらなる圧力上昇がないことから測定することができる。
【0059】
段階4.1及び4.2の間の容積Vを有する反応器B内の圧力変化dpは、一般に、例えば、式2によって表されるように、ケイ素の堆積の過程における温度変化dT及び/又は物質量変化dnから実質的に生じる。
【0060】
【数2】
【0061】
段階4.1及び4.2における圧力変化は、好ましくは、実質的にケイ素の堆積の過程における物質量変化の積である。したがって、有利には、ケイ素前駆体の反応の終了は、段階4.1及び4.2の終了時にさらなる圧力上昇がないことから認識することができ、したがってさらなる段階は、反応器から未反応ケイ素前駆体を不必要に除去することなく、時間に関して効果的に誘発することができ、完全な変換が達成される。
【0062】
段階4.1及び4.2におけるプロセスの一変形例では、温度は、外部加熱によって維持又は上昇されない。段階4.1及び4.2における温度は、好ましくは、ケイ素前駆体のおそらく発熱分解から生じる熱の結果として生じる。さらに好ましいのは、段階4.1及び4.2におけるわずかな温度低下であり、より好ましくは段階4.1及び4.2中の最大20℃の温度低下である。
【0063】
段階4.1及び4.2(ケイ素前駆体の分解)における反応器B内の圧力上昇dpは、好ましくは、段階3.1(圧力定格反応器の加熱)における圧力上昇よりも大きく、これは、例えば、式3a又は3bによって表される。
【0064】
【数3】
又は
【0065】
【数4】
【0066】
段階4.1及び4.2において、反応器B内の圧力は、好ましくは少なくとも10bar、より好ましくは少なくとも50bar、より好ましくは少なくとも100barに達する。段階4.1及び4.2における反応器B内の圧力は、好ましくは400bar未満、より好ましくは300bar未満、特に好ましくは200bar未満のままである。
【0067】
段階4.1及び4.2において反応器B内で支配的な温度は、好ましくは100~1000℃の範囲、より好ましくは300~900℃の範囲、最も好ましくは320~750℃の範囲である。
【0068】
段階4.1及び4.2における反応器B内の温度、圧力、圧力変化又は差圧測定値は、圧力定格反応器に一般的な測定のための技術及び装置を使用して測定され得る。慣例的な較正に続いて、異なる測定装置が同じ測定結果を生成する。物質の量又は物質の量の変化は、例えば、圧力定格反応器から所定の体積の試料を取り出し、ガスクロマトグラフィーによって従来の方法でその実質的な組成を測定することによって測定することができる。
【0069】
段階3.1及び任意選択的に段階4.1における反応器Bの加熱は、例えば、一定の加熱速度又は複数の異なる加熱速度で行うことができる。加熱速度は、プロセスの設計に従って、例えば、反応器のサイズに従って、反応器内の多孔質粒子の量に従って、撹拌技術に従って、又は計画された反応時間に従って、各個別の場合において当業者によって適合され得る。反応器B全体は、急速加熱にもかかわらず、ケイ素前駆体の分解が始まる温度での反応器B内の最大温度勾配が1000℃/分未満、より好ましくは100℃/分未満、非常に好ましくは10℃/分未満のままであるように、段階3.1で急速に加熱されることが好ましい。このようにして、例えば、ケイ素の大部分が多孔質粒子の外面上ではなく、多孔質粒子の孔内に堆積されることを保証することが可能である。
【0070】
ケイ素前駆体の分解が始まる温度は、例えば、使用される多孔質粒子、使用されるケイ素前駆体(単数又は複数)、及び分解の他の境界条件、例えば、分解の瞬間のケイ素前駆体の分圧、及び分解反応に影響を与える他の反応性成分、例えば、触媒の存在に依存し得る。
【0071】
段階3.1における反応器Bの加熱は、好ましくは毎分1~100℃の加熱速度で、より好ましくは毎分2~50℃の加熱速度で、非常に好ましくは毎分3~10℃の加熱速度で行われる。
【0072】
段階4.1及び4.2におけるケイ素前駆体の分解中、温度を一定に保つか、又は変化させることができる。目的は、使用に適したケイ素含有材料の生成を伴う、可能な限り短い時間でのケイ素前駆体のほぼ完全な変換である。
【0073】
操作の様々な段階における圧力上昇の速度を制御するために、使用することができる様々な技術的解決策がある。圧力上昇を増加又は減少させるために、反応器内容物に供給される熱は、好ましくは、それぞれ増加又は減少される。圧力上昇の速度を低減するために、冷却により反応器B及びCからの熱の除去を増大させることも好ましい。この目的のために、好ましくは、1つ以上の反応器壁が冷却されるか、又は熱を除去するために設備、例えば、冷却パイプ又は冷却リブが反応器に導入される。反応器内の圧力を非常に迅速に制御するために、反応器B又はCから少量のガスを供給若しくは除去すること、又は蒸発する液体を供給することが好ましい。これに関連して、反応器B又はCから除去された部分流は、流れ全体の一部の冷却及び/又は除去後に、好ましくは、閉回路で反応器内容物に完全に又は部分的に再び戻される。
【0074】
段階4.1及び4.2における反応の過程は、好ましくは、反応の終了を認識し、したがって、反応器占有時間を最小限にするために、分析的に監視される。反応の過程を観察するための方法には、例えば、発熱又は吸熱事象を測定するための温度測定、固体反応器内容物構成成分とガス反応器内容物構成成分との比の変化によって反応の過程を測定するための圧力測定、及び反応中のガス空間の組成の変化の観察を可能にするさらなる技術が含まれる。
【0075】
プロセスの実行中に反応器B内の圧力の変化、特に圧力の上昇を監視することが好ましい。この上昇は、堆積速度の指標であり、したがって多孔質粒子及び/又は得られるケイ素含有材料における残存表面積の指針である。
【0076】
本プロセスの別の好ましい変形例では、水素とシランの分離を可能にする技術的構成要素が使用される。この分離は、例えば、濾過及び/又は膜技術(溶液-拡散モデル及び流体力学モデル)、吸着、化学吸着、吸収若しくは化学吸着又は分子ふるい(例えば、ゼオライト)を介して行われ得る。
【0077】
この構成要素は、ガス状反応生成物としての水素の場合、段階2.4が、所望の量のケイ素が堆積されるまで連続的に延長されることを可能にする。段階6.1も同様に並行して連続的に延長される。
【0078】
本プロセスの別の好ましい変形例では、反応器Bは、発生する凝縮性又は再昇華性副生成物を除去するのに役立つ技術的設備を備える。この関連における1つの特に好ましい変形例では、四塩化ケイ素が凝縮され、ケイ素含有材料から別々に除去される。
【0079】
段階5.1において、反応器B内の圧力は、支配的な圧力を解放し、排気し、及び/又はさらなるガス、好ましくは、不活性ガス、例えば、個々に又は混合物として水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素又は水蒸気(水素が特に好ましい)で充填することによって調整される。
【0080】
段階5.2では、反応器Bを所定の温度に調整するか、又は所定の温度プロファイルを実行する。堆積の終了後、好ましくは、冷却は、任意選択で目標温度まで、好ましくはさらなる段階2.3及び/又は2.4の温度まで行われる。
【0081】
5.1及び5.2の順序は任意に選択することができる。段階5.1及び5.2は、それらの操作において時間的に重複し得る。
【0082】
段階6.1では、堆積の過程で形成された反応のガス状副生成物は、好ましくは堆積温度で、又は、例えば、パージによって反応器Bのガス空間からガス状反応副生成物を除去するのに望ましい温度に達した後に除去される。パージガスを使用することが好ましい。パージガスを充填する前に、反応器Bを少なくとも1回排気することが好ましい。好ましいパージガスは、不活性ガス、例えば、個々に又は混合物として水素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素又は水蒸気であり、又は酸素とのそれらの混合物、例えば、空気又は希薄空気が使用される。ここで、ガス混合物の含水量は調整することができる。次いで、段階6.2において、反応器Bから得られた粒子を、反応器C又は適切な貯蔵容器のいずれかに移す。粒子が貯蔵容器に移された場合、粒子は容器上で直接反応器Cに移され得る。段階6.2における移送は、例えば、ドロップチューブ、連続コンベヤー、フローコンベヤー/吸引又は圧力搬送ユニット(例えば、真空コンベヤー、輸送用送風機)、機械的コンベヤー(例えば、ドライブ付きローラーコンベヤー、スクリューコンベヤー、円形コンベヤー、循環コンベヤー、バケットユニット、スターホイールロック、チェーンコンベヤー、スクレーパーコンベヤー、ベルトコンベヤー、振動コンベヤー)、重力コンベヤー(例えば、シュート、ローラーベッド、ボールベッド、レールベッド)、非連続コンベヤー、床ベース及びレールフリー(例えば、自動化車両、手動フォークリフトトラック、電気フォークリフトトラック、ドライバーレス輸送システム(DTS)、エアクッション車両、ハンドカート、電気カート、自動車(トラクタ、ワゴン、フォークリフトスタッカー)、移送キャリッジ、移送/リフトキャリッジ、棚アクセス装置(コンバータ有り/無し、湾曲した経路に従うことができる)、フロアベースのレールバウンド(例えば、プラント鉄道、トラック車両)、フロアフリー(例えば、トロリートラック、クレーン(例えば、ブリッジクレーン、ポータルクレーン、ジブクレーン、タワークレーン)、電気オーバーヘッドトラック、小容器輸送システム、固定物(例えば、エレベータ、サービスリフト及びチェリーピッカー、段階的コンベヤー)によって達成され得る。
【0083】
プロセスの段階7.1において、反応器C中のケイ素含有粒子は、後処理及び/又は不活性化され得る。これは、好ましくは、反応器Cを酸素で、より具体的には不活性ガスと酸素との混合物でパージすることによって行われる。このようにして、例えば、ケイ素含有材料の表面を改質及び/又は不活性化することが可能である。例えば、ケイ素含有材料の表面に存在する任意の反応性基の反応を達成することが可能である。この目的のために、好ましくは最大で20体積%、より好ましくは最大で10体積%、特に好ましくは最大で5体積%の酸素、また好ましくは最大で100体積%、より好ましくは最大で10体積%、特に好ましくは最大で1体積%の水を含有する、窒素及び酸素並びに任意選択でアルコール及び/又は水の混合物が好ましくは使用される。この工程は、好ましくは、最大で200℃、より好ましくは最大で100℃、特に好ましくは最大で50℃の温度で行われる。粒子表面はまた、不活性ガス及びアルコールを含むガス混合物で不活性化されてもよい。ここでは、窒素及びイソプロパノールを使用することが好ましい。しかし、メタノール、エタノール、ブタノール、ペンタノール又は長鎖及び分岐アルコール及びジオールを使用することも可能である。
【0084】
粒子はまた、液体溶媒又は溶媒混合物中での分散によって不活性化されてもよい。この混合物は、例えば、イソプロパノール又は水溶液を含み得る。
【0085】
段階7.1における粒子の不活性化は、任意選択で、C、Al及び/又はB含有前駆体を200~800℃の温度で使用し、任意選択でその後酸素含有雰囲気中で処理するコーティングによっても達成され得る。
【0086】
使用されるアルミニウム含有前駆体は、例えば、トリメチルアルミニウム((CHAl)、アルミニウム2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート(Al(OCC(CHCHCOC(CH)、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム(Al(N(CH)及びアルミニウムトリイソプロポキシド(C21AlO)であり得る。
【0087】
使用されるホウ素含有前駆体は、例えば、ボラン(BH)、トリイソプロピルボレート([(CHCHO]B)、トリフェニルボラン((CB)及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(CBであり得る。
【0088】
しかし、段階7.1では、例えば、tert-ブチルリチウム及びトリメチルホスフェートからのCVI堆積を介して、例えば、固体電解質による粒子の後塗りを導入することも可能である。
【0089】
本プロセスの段階7.2では、原則として、ケイ素含有材料は、任意選択で反応器C内に存在する不活性ガス雰囲気を保持しながら、反応器Cから取り出される。これは、例えば、以下の排出方法、すなわち、空気圧(過圧又は減圧によって)、機械的に(反応器内のスターホイールロック、プレート排出、排出スクリュー又は撹拌要素、ベルト排出)又は重量測定的に(ダブルフラップ弁又はダブルボール弁、任意選択で振動補助を伴う)によって達成することができる。
【0090】
本プロセスの別の好ましい実施形態では、段階2.1~5.2を1回以上繰り返す。
【0091】
本プロセスの1つの好ましい実施形態では、段階2.1~5.2は複数回繰り返され、この場合、段階2.4にそれぞれ充填されるケイ素前駆体は、各場合において同じであっても異なっていてもよく、2種以上のケイ素前駆体の混合物も可能である。同様に、2.3における反応性成分充填は、各場合において同じであっても異なっていてもよく、又は異なる反応性成分の混合物からなってもよい。個々の段階2.1~5.2の複数回の繰り返しの後、反応器Bにおける手順は段階6で終了する。段階2.1~6.1の順序及び実施は、当業者によって変更され得る。この関連において、個々の段階は省略されてもよい。
【0092】
このプロセスの別の好ましい実施形態では、段階6.1は段階4.2に直接続き、換言すれば、段階5を省略することができ、換言すれば、段階4.2の後、反応器Bを冷却することなく段階6.1を継続することも可能である。
【0093】
さらに好ましい実施形態では、段階2.1~6.1は、任意選択で段階5を省略して、単回又は複数回繰り返され(反応サイクル)、この場合、個々の又は複数の反復において、段階2.3の意味でケイ素を含まない反応性成分を使用することも可能であり、この場合、それぞれの反復におけるケイ素を含まない反応性成分は、同じであっても異なっていてもよい。ケイ素を含まない反応性成分は、好ましくはケイ素前駆体を含有しない。ケイ素を含まない反応性成分は、好ましくは1つ以上の炭化水素を含む。この好ましい実施形態では、ケイ素を含まない反応性成分は、例えば、ケイ素の堆積の前若しくは後に、又はケイ素の2回の堆積の間に、段階2.1~6.1の繰り返しで使用され得る。好ましいケイ素を含まない反応性成分は炭化水素である。ケイ素を含まない反応性成分を使用する場合、炭素は、好ましくは、多孔質粒子又はケイ素含有材料の孔内及び表面上に堆積される。
【0094】
特に好ましい一実施形態では、第1の反応サイクルで、段階2.4において、少なくとも1つのケイ素前駆体を含む反応性成分が充填され、第2の反応サイクルでは、段階2.3において、少なくとも1つの炭化水素を含む反応性成分が充填され、この後者の成分は、好ましくはケイ素を含まず、任意選択で段階5は省略される。この手段によって、例えば、外向きの自由ケイ素表面を有さないケイ素含有材料を得ることが可能である。2.3及び2.4の順序は可変である。
【0095】
任意選択で、第3の反応サイクルでは、段階2.3において、さらなる炭化水素を含有し、ケイ素を含まない反応性成分が使用され、段階5は任意選択で省略される。その結果、例えば、多孔質粒子と堆積されたケイ素との間に炭素層を有し、任意選択で外側炭素層をさらに担持するケイ素含有材料を得ることができ、これは、外側に向いた自由ケイ素表面が存在しないことを意味する。
【0096】
好ましいケイ素を含まない反応性成分は、1つ以上の炭化水素である。炭化水素の熱分解によって、一般に、多孔質粒子の孔内及び表面上に炭素を堆積させることが可能である。炭化水素の例は、1~10個の炭素原子、特に1~6個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素、好ましくはメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン及びシクロヘプタン、1~10個の炭素原子を有する不飽和炭化水素、例えば、エテン、アセチレン、プロペン若しくはブテン、イソプレン、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ビニルアセチレン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、環状不飽和炭化水素、例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン若しくはノルボルナジエン、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、p-、m-、o-キシレン、スチレン(ビニルベンゼン)、エチルベンゼン、ジフェニルメタン又はナフタレン、他の芳香族炭化水素、例えば、フェノール、o-、m-、p-クレゾール、シメン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセン若しくはフェナントレン、ミルセン、ゲラニオール、チオテルピネオール、ノルボルナン、ボルネオール、イソボルネオール、ボルナン、カンファー、リモネン、テルピネン、ピネン、ピナン、カレン、フェノール、アニリン、アニソール、フラン、フルフラール、フルフリルアルコール、ヒドロキシメチルフルフラール、ビスヒドロキシメチルフラン、及び多数のそのような化合物を含む混合画分、例えば、天然ガス凝縮物、原油蒸留物若しくはコーキングオーブン凝縮物からのもの、流動接触分解装置(FCC)、水蒸気分解装置又はフィッシャー・トロプシュ合成プラントからの生成物流からの混合画分、又は非常に一般的には、木材、天然ガス、原油、及び石炭の処理から生じる炭化水素含有物質流である。
【0097】
ケイ素を含まない反応性成分、すなわち、1つ以上の炭化水素を含むがケイ素前駆体を含まない反応性成分は、好ましくは、さらなる成分又は1つ以上の不活性ガス及び/又は、例えば、水素等の1つ以上の反応性構成成分及び/又は1つ以上のドーパントを含まない。ドーパントは、例えば、ホウ素、窒素、リン、ヒ素、ゲルマニウム、鉄又はニッケルを含む化合物である。ドーパントは、好ましくは、アンモニアNH、ジボランB、ホスファンPH、ゲルマンGeH、アルサンAsH、及びニッケルテトラカルボニルNi(CO)を包含する群から選択される。
【0098】
温度調節可能な反応器は、一般に反応器内部の温度が、例えば、-40~1000℃の範囲に確立され得るような様式で操作され得る反応器である。より狭い温度範囲が可能である。
【0099】
真空定格反応器は、一般に反応器内部の圧力が反応器の周囲圧力より低い/該周囲圧力と等しいような様式で操作され得る反応器である。
【0100】
圧力定格反応器は、一般に反応器内部の圧力が反応器の周囲圧力よりも大きい/該周囲圧力と等しいような様式で操作され得る反応器である。
【0101】
反応器は、同時に温度調整可能、圧力定格及び真空定格であってもよく、全ての組み合わせが可能である。あるいは、反応器はまた、それぞれの場合において、上記で特定された特徴のうちの1つのみを満たしてもよい。
【0102】
使用した反応器の最小要件は以下の通りである。
- 反応器A:温度調整可能かつ真空定格
- 反応器B:温度調整可能かつ圧力定格
- 反応器C:温度調整可能
【0103】
本発明の特定の変形例のための個々の反応器の技術的な任意の特徴は、以下の通りである。
【0104】
反応器A:
- 多孔質粒子を予熱し、乾燥させ、不活性化するためのシステム。
- システムは、多孔質粒子の特定の添加/計量のために接続され得る(技術的説明については、段階1.1を参照)。
- 多孔質粒子中の不純物の乾燥及び/又は除去のために、凝縮性又は再昇華性物質の除去を可能にするシステムが接続されてもよい。
- 多孔質粒子が反応器Bに移されることを可能にするシステムが接続されてもよい(技術的説明については、段階1.3を参照)
【0105】
反応器B:
- 空気冷却のためのシステム。
- 体積を増加させるために、さらなる圧力定格容器が接続されてもよく、これは、個々の反応サイクルにおいてより高い反応性成分量を可能にする。この容器は加熱されてもされなくてもよい。この容器と反応器Bとの間の圧力均等化は、受動的(拡散)又は能動的(技術的手段によって促進される)であり得る。
- 操作の単純化のために、水素分離器が接続されてもよい(技術的説明については、段階3.1を参照)。
- ガス状反応生成物中の凝縮性又は再昇華性の副生成物を除去するために、該副生成物が凝縮又は再昇華によって除去されることを可能にする容器が接続されてもよい。
- 材料を反応器C又は貯蔵容器に移すことができるシステムを接続することができる(技術的説明については段階1.3を参照)。
【0106】
反応器C
- 凝縮性又は再昇華性副生成物を除去するためのシステム。副生成物が凝縮又は再昇華によって除去されることを可能にする容器が接続されてもよい。
【0107】
本願の目的のためのカスケード反応器システムは、少なくとも2つの反応器の連結である。反応器の数の上限はない。互いに対する反応器A、B及びCの数、並びにそれらのサイズ、形状、材料及び構成も異なり得る。当業者は、全体としてカスケード反応器システムの出力を可能な限り効率的にするために、反応器の量及びそれらのサイズを互いに調整することができる。反応器は、互いに直接接続されてもよく、又は互いに局所的に分離されてもよく、この場合、充填は移動可能な貯蔵容器によって行われる。2つ以上の反応器Bを互いに接続し、各反応工程を追加の反応器B内で行うことも考えられる。
【0108】
本願の目的のための反応器は、好ましくは、管状反応器、レトルト窯、流動床反応器、固定床反応器及びオートクレーブを包含する群から選択されるタイプの反応器である。特に好ましくは、流動床反応器及びオートクレーブが用いられ、特に好ましくはオートクレーブが用いられる。
【0109】
操作中、多孔質粒子及び得られるケイ素含有材料は、一般に静止層の形態をとってもよく、又は混合しながら撹拌された形態であってもよい。反応器A、B及びC内での多孔質粒子又は得られたケイ素含有材料の撹拌混合が好ましい。これは、例えば、全ての多孔質粒子と反応性成分との均質な接触、又は床における均質な温度分布を可能にする。粒子は、例えば、反応器内の内部を撹拌することによって、反応器全体の移動によって、又はガス流による反応器内での固体の流動化によって撹拌することができる。
【0110】
混合しない静止層に使用することができる反応器のタイプは、任意の所望の幾何学的形状の実施形態である。反応器構造の好ましい形態は、円筒形、円錐形、球形及び多面体の形態又はそれらの組み合わせである。
【0111】
反応器A、B及びCにおいて床を一緒に混合するために、固体の床を撹拌することができる全ての形態の反応器構造が好ましい。これらは、例えば、移動反応器、移動する撹拌要素を有する反応器、又はガストラバース反応器、又はそれらの組み合わせである。
【0112】
移動反応器における運動の形態は、好ましくは回転運動である。他の形態の移動も同様に適切である。回転反応器のための構成の好ましい形態は、例えば、ドラム反応器若しくは管状反応器、円錐形反応器、ダブルコーン反応器、オフセットコーンを有する反応器、球状反応器、多面体反応器、V字形反応器、ダブルV字形反応器、又はそれらの幾何学的組み合わせである。対称的な構成形態の場合、回転軸は、好ましくは反応器の対称軸内にある。構成の非対称形態の場合、回転軸は、好ましくは反応器の重心を通過する。別の好ましい実施形態では、回転軸は、タンブリング運動が生じるように選択される。移動反応器内の混合事象は、好ましくは、内部構造によって増強される。典型的な内部構造は、ガイドプレート、ブレード、翼、及びすきの刃である。本発明によれば、回転軸の向きは、ここでは自由に選択可能である。回転軸は、好ましくは、垂直に、水平に、又は水平実施形態に対して自由角度で配向される。床を一緒に混合するための構造のさらに好ましい形態は、移動する撹拌要素を有する固定反応器A、B及びCである。このために好ましい幾何学形状は、円筒形反応器、円錐形反応器、球形、多面体反応器、又はそれらの組み合わせである。撹拌要素の運動は、好ましくは回転運動である。他の形態の運動も同様に適切である。撹拌要素は、好ましくは撹拌シャフトを介して駆動され、撹拌シャフト毎に1つの撹拌要素又は複数の撹拌要素が存在してもよい。反応器A、B、及びCには、好ましくは、複数の撹拌シャフトが組み込まれており、撹拌シャフトのそれぞれには、1つの撹拌要素又は複数の撹拌要素が存在してもよい。主たる反応器軸は、好ましくは水平又は垂直に整列される。さらに好ましい実施形態では、撹拌シャフトは、任意の向きの反応器内に水平又は垂直に設置される。垂直に操作される反応器A、B及びCについて、好ましい構成形態は、例えば、撹拌要素又は複数の撹拌要素が、主撹拌シャフトによる回転運動によって床材料を混合するものである。さらに、2つ以上の撹拌シャフトが平行に走る構成の形態が好ましい。2つ以上の撹拌シャフトが互いに平行に動作しない好ましい構成形態もある。垂直に操作される反応器A、B又はCの別の好ましい構成形態は、スクリューコンベヤーの使用を特徴とする。スクリューコンベヤーは、床材料を好ましくは中央に搬送する。本発明に従うさらなる設計は、反応器の縁部に沿って回転するスクリューコンベヤーである。水平に操作される反応器A、B又はCについて、好ましい構成形態は、例えば、撹拌要素又は複数の撹拌要素が、主たる撹拌シャフトによる回転運動によって床材料を混合する形態である。また、2つ以上の撹拌シャフトが平行に走る構成形態も可能である。さらに好ましいのは、2つ以上の撹拌シャフトが互いに平行に動作しない構成形態である。垂直に操作される反応器A、B又はCについて、好ましい撹拌要素は、ヘリカル撹拌機、スパイラル撹拌機、アンカー撹拌機を含む群から選択される要素、又は一般に、床材料を軸方向若しくは半径方向に、又は軸方向及び半径方向の両方に搬送する撹拌要素である。水平に運転される反応器A、B又はCの場合、1つのシャフト上に複数の撹拌要素があることが好ましい。水平に運転される反応器の撹拌要素のための本発明に従う構成形態は、すきの刃、パドル、ブレード撹拌機、スパイラル撹拌機、又は一般に、床材料を軸方向及び半径方向の両方に搬送する撹拌要素である。移動する撹拌要素に加えて、移動する撹拌要素を有する固定反応器A、B又はCについても、ガイドプレート等の剛性内部構造が好ましい。特に好ましいのは、反応器と撹拌要素の両方が回転する構造形態である。
【0113】
混合のさらなる可能性として、材料の床は、好ましくはガス流にさらされる。ここで特に好ましいのは、流動床反応器等の構造形態である。さらに好ましいのは、混合域が、空気圧の使用によって反応器内に意図的にもたらされる反応器A、B又はCである。
【0114】
本発明のプロセスを実施するための反応器A、B又はCの構成については、それぞれの操作条件下で必要な機械的強度及び耐薬品性を有する場合、任意の材料が原則として適切である。耐薬品性に関して、反応器A、B又はCは、対応する固体材料、並びに媒体と接触している部品上に特定のコーティング又はめっきを有する化学的に抵抗のない材料(耐圧性)からなり得る。
【0115】
これらの材料は、本発明に従って、以下を含む群から選択される。
【0116】
- (DIN CEN ISO/TR 15608による)材料グループ1~11の鋼、グループ31~38のニッケル及びニッケル合金、グループ51~54のチタン及びチタン合金、グループ61及び62のジルコニウム及びジルコニウム合金、並びにグループ71~76の鋳鉄に対応する金属材料、
【0117】
- 単物質系における酸化物セラミック、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、二酸化チタン(キャパシタ材料)、及び多物質系、例えば、チタン酸アルミニウム(酸化アルミニウム及び酸化チタンの混合形態)、ムライト(酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の混合形態)、チタン酸ジルコン酸鉛(圧電セラミック)、又は酸化ジルコニウムで強化された酸化アルミニウム(ZTA-ジルコニア強化酸化アルミニウム)-Al/ZrO)等の分散セラミック等を含むセラミック材料、
【0118】
- 非酸化物セラミック、例えば、炭化物、例は炭化ケイ素及び炭化ホウ素、窒化物、例は窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素及び窒化チタン、ホウ化物及びケイ化物、並びにこれらの混合物
【0119】
- 粒状複合材料の群に属する複合材料、例えば、超硬合金、セラミック複合材、コンクリート及びポリマーコンクリート等、繊維複合材料、例えば、ガラス繊維強化ガラス、金属マトリックス複合材(MMC)、繊維セメント、炭素繊維強化炭化ケイ素、自己強化熱可塑性物質、鋼鉄強化コンクリート、繊維強化コンクリート、繊維プラスチック複合材、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GRP)及びアラミド繊維強化プラスチック(ARP)、繊維-セラミック複合材(セラミックマトリックス複合材(CMC))、浸透複合材、例えば、金属マトリックス複合材(MMC)、分散強化アルミニウム合金又は分散硬化ニッケル-クロム超合金等、層状複合材料、例えば、バイメタル、チタン-グラファイト複合材料、複合プレート及び複合チューブ、ガラス繊維強化アルミニウム及びサンドイッチ構造、並びに構造複合材料。
【0120】
ケイ素含有材料を製造するための本発明の方法は、先行技術に対して様々な決定的な利点を提供する。特定の利点は、例えば、段階4の間に起こる温度単独に関連した圧力上昇ではないことによって補助される、短い反応時間でのケイ素前駆体の完全な変換の可能性である。別の利点は、不活性ガスの量を減らすか、又は不活性ガスを完全に回避する可能性であり、これは、同様に、より高い空間/時間収率をもたらし、したがって、基材上への所望の層のより迅速かつ均一な堆積を可能にする。さらに、開放反応器の操作において通常生じるような、反応器オフガスの連続的なリサイクル又は処理を防止することができる。また、密閉可能な反応器における記載された実施は、それぞれの堆積工程における反応物に基づいて、正確に調整可能な量の堆積生成物を用いて、同じ反応性成分から、又は異なる反応性成分から複数の堆積を実施することを容易とする。したがって、本発明の方法から得られるケイ素含有材料は、堆積される層の有利な均質性によっても区別される。本発明の方法の利点の結果として、ケイ素含有材料は、有利には、特に、優れた特性を有するリチウムイオン電池のアノード用の活物質として使用するために、迅速かつ経済的に入手可能である。また、特定の利点は、しばしば記載されるダスティングを回避することができることである。これは、例えば、ケイ素前駆体からのケイ素の堆積のために利用可能にされる多孔質粒子の大きい表面積によって、また、ケイ素前駆体による多孔質粒子の強い浸透によって達成することができる。同時に、このようにして高い収率の堆積ケイ素が得られる。反応工程の全てが同じ反応器内で行われる変形例(反例2を参照)とは対照的に、カスケード反応器は以下の利点を提供する。
- 大きな温度差を伴う冷却及び加熱操作の低減を通してのエネルギーの節約。
- 特定の操作工程の要件に対するそれぞれの反応器の精密設計による資本コストの節約。
- 高レベルのモジュール方式は、様々な量の要件及び操作パラメータへの適応のための幅広い機会を提供する。
- 異なる反応器A、B及びCを異なるサイズ及び数で組み合わせる可能性は、完全な故障のリスクを低減し、必要な変更の停止時間の計画性を作り出す。
- モジュール構成は、他の反応器が依然として動作している間に、1つの反応器に対する軽微な保守作業の実施を可能にする。
【0121】
本発明のプロセスのための多孔質粒子は、好ましくは、以下の成分式によって記載され得るように、硬質炭素、軟質炭素、メソカーボンマイクロビーズ、天然グラファイト又は合成グラファイト、単層及び多層カーボンナノチューブ及びグラフェンの形態の非晶質炭素、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、混合酸化ケイ素-酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉛及び酸化ジルコニウム等の酸化物、炭化ケイ素及び炭化ホウ素等の炭化物、窒化ケイ素及び窒化ホウ素等の窒化物、並びに他のセラミック材料を含む群から選択される。
【0122】
0≦a、b、c、d、e、f、g≦1であり、少なくとも2つの係数a~g>0及びa×3+b×3+c×4+d×2+g×4≧e×3+f×2であるAlMgSi
【0123】
セラミック材料は、例えば、二元化合物、三元化合物、四元化合物、五元化合物、六元化合物又は七元化合物であることができる。好ましいセラミック材料は、以下の成分式を有するものである。
【0124】
非化学量論的窒化ホウ素BNでz=0.2~1、

非化学量論的窒化炭素CNでz=0.1~4/3、

炭窒化ホウ素BCNでx=0.1~20及びz=0.1~20、x×3+4≧z×3、

ホウ素ニトリドキシド(nitridoxide)BNでz=0.1~1及びr=0.1~1、3≧r×2+z×3、

炭窒化ホウ素酸化物BCNでx=0.1~2、z=0.1~1及びr=0.1~1、x×3+4≧r×2+z×3、

ケイ素カルボキシドSiCOでx=0.1~2及びz=0.1~2、x×4+4≧z×2、

炭窒化ケイ素SiCNでx=0.1~3及びz=0.1~4、x×4+4≧z×3、

ケイ素ボロカルボニトリド(borocarbonitride)SiCNでw=0.1~3、x=0.1~2、z=0.1~4、w×4+x×3+4≧z×3、

ケイ素ボロカルボキシド(borocarboxide)SiCOでw=0.10~3、x=0.1~2及びz=0.1~4、w×4+x×3+4≧z×2、

ケイ素ボロカルボニトリドオキシド(borocarbonitridooxide)SiCNでv=0.1~3、w=0.1~2、x=0.1~4及びz=0.1~3、v×4+w×3+4≧x×3+z×2、及び

アルミニウムボロシリコカルボニトリドオキシド(borosilicocarbonitridooxide)AlSiCNでu=0.1~2、v=0.1~2、w=0.1~4、x=0.1~2及びz=0.1~3、u×3+v×3+x×4+4≧w×3+z×2。
【0125】
多孔質粒子は、ヘリウムピクノメトリにより測定される0.1~7g/cm、より好ましくは0.3~3g/cmの密度を有することが好ましい。これは、リチウムイオン電池の重量容量(mAh/cm)を増大させるのに有利である。
【0126】
使用される好ましい多孔質粒子は、非晶質炭素、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及び窒化ケイ素、又はこれらの材料に基づく混合材料であり、非晶質炭素、窒化ホウ素、及び二酸化ケイ素の使用が特に好ましい。
【0127】
多孔質粒子は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.5μm以上、最も好ましくは2μm以上の直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd50は、好ましくは20μm以下、より好ましくは12μm以下、最も好ましくは8μm以下である。
【0128】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは直径パーセンタイルd10≧0.2μm~d90≦20.0μmの間、より好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μmの間、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmの間である。
【0129】
多孔質粒子は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下、最も好ましくは2μm以下の直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.5以上、最も好ましくは1μm以上である。
【0130】
多孔質粒子は、好ましくは4μm以上、より好ましくは8μm以上の直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは18μm以下、より好ましくは15以下、最も好ましくは13μm以下である。
【0131】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、好ましくは15.0μm以下、より好ましくは12.0μm以下、非常に好ましくは10.0μm以下、特に好ましくは8.0μm以下、最も好ましくは4.0μm以下のスパンd90-d10を有する。
【0132】
本発明のプロセスによって製造可能なケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは0.8μm以上、最も好ましくは1.0μm以上のスパンd90-d10を有する。
【0133】
多孔質粒子の体積加重粒径分布は、多孔質粒子の分散媒としてエタノールを用い、測定装置Horiba LA 950を用いたMieモデルを使用する静的レーザー散乱法によって、ISO 13320に従って測定することができる。
【0134】
多孔質粒子は、粒子の形態で存在することが好ましい。粒子は、例えば、単離又は弱凝集されてもよい。多孔質粒子は、好ましくは強凝集せず、好ましくは弱凝集しない。強凝集したとは、一般に、多孔質粒子の製造の過程で、初めに一次粒子が形成されて融合し、及び/又は一次粒子が、例えば、共有結合を介して互いに結合し、このようにして強凝集体(aggregates)を形成することを意味する。一次粒子は、通常、単離された粒子である。強凝集体又は単離された粒子は、弱凝集体(agglomerates)を形成し得る。弱凝集体は、例えば、ファンデルワールス相互作用又は水素結合を介して互いに連結された強凝集体又は一次粒子の緩い合体である。弱凝集した凝集体は、従来の混練及び分散技術によって容易に分割して強凝集体に戻すことができる。強凝集体は、これらの技術によって一次粒子に分解することができないか、又は部分的にのみ分解することができる。強凝集体、弱凝集体又は単離粒子の形態の多孔質粒子の存在は、例えば、従来の走査型電子顕微鏡(SEM)によって可視化することができる。マトリックス粒子の粒径分布又は粒径を測定するための静的光散乱法は、対照的に、強凝集体又は弱凝集体を区別することができない。
【0135】
多孔質粒子は、任意の所望の形態を有してもよく、したがって、例えば、スパッタ状(sputtery)、板状、球状、又は針状であってもよく、スパッタ状又は球状粒子が好ましい。形態は、例えば、真球度ψ又は真球度Sによって特徴付けることができる。Wadellによる定義によれば、真球度ψは、本体の実際の表面積に対する等しい体積の球の表面積の比である。球の場合、ψの値は1である。この定義によれば、本発明の方法のための多孔質粒子は、好ましくは0.3~1.0、より好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の真球度ψを有する。
【0136】
真球度Sは、表面上に投影された粒子の投影と同じ面積Aを有する等価円の円周と、この投影の測定された円周Uとの比であり、
【0137】
【数5】
である。理想的な真球度の粒子の場合、Sの値は1となるであろう。本発明の方法のための多孔質粒子について、真球度Sは、数値的数真球度分布のパーセンタイルS10~S90に基づいて、好ましくは0.5~1.0、より好ましくは0.65~1.0の範囲である。真球度Sは、例えば、個々の粒子の光学顕微鏡写真から、又は好ましくは粒子が10μm未満の場合、走査型電子顕微鏡を用いて、例えば、ImageJ等の画像解析ソフトウェアによるグラフィック評価によって測定される。
【0138】
多孔質粒子は、好ましくは、0.2cm/g以上、より好ましくは0.6cm/g以上、最も好ましくは1.0cm/g以上のガスの接近可能な孔容積を有する。これは、高容量のリチウムイオン電池を得るのに有用である。ガスの接近可能な孔容積は、DIN 66134に従って窒素によるガス収着測定によって測定した。
【0139】
多孔質粒子は、好ましくは開放孔である。開放孔とは、一般に、孔が、例えば、チャネルを介して粒子の表面につながっており、好ましくは、周囲との物質移動の状態、特にガス状化合物の移動の状態であり得ることを意味する。これは、ガス収着測定値(Brunauer, Emmett and Teller、「BET」に準拠した評価)、すなわち比表面積を使用して検証することができる。多孔質粒子は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは500m/g以上、最も好ましくは1000m/g以上の比表面積を有する。BET比表面積は、DIN 66131(窒素を含む)に従って測定される。
【0140】
多孔質粒子の孔は、任意の所望の直径、すなわち、一般にマクロ孔(50nm超)、メソ孔(2~50nm)、及びミクロ孔(2nm未満)の範囲の直径を有し得る。多孔質粒子は、異なる孔タイプの任意の所望の混合物中で使用することができる。好ましくは、総孔容積に基づいて30%未満のマクロ孔を有する多孔質粒子、より好ましくはマクロ孔を有さない多孔質粒子、非常に好ましくは少なくとも50%の孔が5nm未満の平均孔直径を有する多孔質粒子を使用する。非常に特に好ましくは、多孔質粒子は、2nm(測定方法:メソ孔範囲ではDIN 66134に準拠したBJH(ガス吸着)及びミクロ孔範囲ではDIN 66135によるHorvath-Kawazoe(ガス吸着)に準拠した孔径分布、マクロ孔範囲における孔サイズ分布の評価は、DIN ISO 15901 1に準拠した水銀ポロシメトリーによって行われる)未満の孔直径を有する孔のみを含む。
【0141】
好ましい多孔質粒子は、0.3cm/g未満、より好ましくは0.15cm/g未満のガスの接近不可能な孔容積を有するものである。このようにしても、リチウムイオン電池の容量を増大させることができる。ガスの接近不可能な孔容積は、以下の式によって測定することができる。
ガスの接近不可能な孔容積=1/純物質密度-1/骨格密度。
【0142】
ここで、純物質密度は、相組成又は純物質の密度(あたかも閉鎖孔を有していないかのような物質の密度)に基づく多孔質粒子の理論密度である。純物質密度に関するデータは、例えば、Ceramic Data Portal of the National Institute of Standards(NIST、https://srdata.nist.gov/CeramicDataPortal/scd)において当業者が見出すことができる。例えば、酸化ケイ素の純物質密度は2.203g/cm、窒化ホウ素の純物質密度は2.25g/cm、窒化ケイ素の純物質密度は3.44g/cm、炭化ケイ素の純物質密度は3.21g/cmである。骨格密度は、ヘリウムピクノメトリによって測定される多孔質粒子(ガスが接近可能)の実際の密度である。
【0143】
明確にするために、多孔質粒子はケイ素含有材料とは異なることに留意されたい。多孔質粒子は、ケイ素含有材料を製造するための出発材料として機能する。一般に、多孔質粒子の多孔質粒子の孔内及び表面上に位置するケイ素は存在せず、より具体的には、ケイ素前駆体の堆積によって得られるケイ素は存在しないことが好ましい。
【0144】
多孔質粒子の孔内及び表面上へのケイ素の堆積による本発明の方法によって得られるケイ素含有材料は、好ましくは0.5~20μmの範囲の直径パーセンタイルd50を有する体積加重粒径分布を有する。d50値は少なくとも1.5μmが好ましく、少なくとも2μmがより好ましい。直径パーセンタイルd50は最大13μmであることが好ましく、最大8μmであることがより好ましい。
【0145】
ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは直径パーセンタイルd10≧0.2μm~d90≦20.0μmの間、より好ましくはd10≧0.4μm~d90≦15.0μmの間、最も好ましくはd10≧0.6μm~d90≦12.0μmの間にある。
【0146】
ケイ素含有材料は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下、最も好ましくは1μm以下の直径パーセンタイルd10を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd10は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.4μm以上、最も好ましくは0.6μm以上である。
【0147】
ケイ素含有材料は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上の直径パーセンタイルd90を有する体積加重粒径分布を有する。直径パーセンタイルd90は、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、最も好ましくは12μm以下である。
【0148】
ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは15.0μm以下、より好ましくは12.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下、特に好ましくは8.0μm以下、最も好ましくは4.0μm以下のスパンd90-d10を有する。ケイ素含有材料の体積加重粒径分布は、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは0.8μm以上、最も好ましくは1.0μm以上のスパンd90-d10を有する。
【0149】
ケイ素含有材料の粒子は、好ましくは粒子の形態である。粒子は、単離又は弱凝集されてもよい。ケイ素含有材料は、好ましくは強凝集せず、好ましくは弱凝集しない。単離された、弱凝集された及び強凝集していないという用語は、多孔質粒子に関して先に既に定義されている。強凝集体又は弱凝集体の形態のケイ素含有材料の存在は、例えば、従来の走査型電子顕微鏡(SEM)によって可視化することができる。
【0150】
ケイ素含有材料は、任意の所望の形態を有してもよく、したがって、例えば、スパッタ状、板状、球状又は針状であってもよく、スパッタ状又は球状粒子が好ましい。
【0151】
Wadellの定義によれば、真球度ψは、本体の実際の表面積に対する等しい体積の球の表面積の比である。球の場合、ψの値は1である。この定義によれば、本発明の方法によって利用可能なケイ素含有材料は、好ましくは0.3~1.0、より好ましくは0.5~1.0、最も好ましくは0.65~1.0の真球度ψを有する。
【0152】
真球度Sは、表面上に投影された粒子の投影と同じ面積Aを有する等価円の円周と、この投影の測定された円周Uとの比であり、
【0153】
【数6】
である。理想的な真球度の粒子の場合、Sの値は1となるであろう。本発明の方法によって接近可能なケイ素含有材料について、真球度Sは、数値的真球度分布のパーセンタイルS10~S90に基づいて、好ましくは0.5~1.0、より好ましくは0.65~1.0の範囲である。真球度Sは、例えば、個々の粒子の光学的顕微鏡写真から、又は好ましくは10μm未満の粒子では、走査型電子顕微鏡により、例えば、ImageJ等の画像解析ソフトウェアによる図形評価により測定される。
【0154】
リチウムイオン電池のサイクル安定性は、形態、材料組成、特にケイ素含有材料の比表面積又は内部多孔度によってさらに高めることができる。
【0155】
ケイ素含有材料は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、非常に好ましくは30~60重量%、特に好ましくは40~50重量%の多孔質粒子を含有する。
【0156】
ケイ素含有材料は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、非常に好ましくは30~60重量%、特に好ましくは40~50重量%の、ケイ素前駆体からの堆積によって得られるケイ素を含有する(好ましくはICP-OES等の元素分析による測定)。
【0157】
多孔質粒子が二酸化ケイ素の形態でケイ素化合物を含む場合、例えば、ケイ素前駆体からの堆積を介して得られるケイ素の上述の重量%の数値は、元素分析によって確認されたケイ素含有材料中のケイ素質量から、元素分析によって確認された多孔質粒子中のケイ素質量を差し引き、その結果をケイ素含有材料の質量で割ることによって測定することができる。
【0158】
ケイ素含有材料に含まれ、ケイ素前駆体からの堆積を介して得られるケイ素の体積は、ケイ素の密度(2.336g/cm)で割った、ケイ素含有材料の総質量の割合としての、ケイ素前駆体からの堆積を介して得られるケイ素の質量分率の結果である。
【0159】
ケイ素含有材料の孔容積Pは、ガスが接近可能な孔容積とガスの接近不可能な孔容積の合計の結果である。ケイ素含有材料のGurwitschのガスが接近可能な孔容積は、DIN 66134に従って窒素によるガス収着測定によって測定することができる。
【0160】
ケイ素含有材料の、ガスが接近不可能な孔容積は、以下の式を使用して測定することができる。
ガスが接近不可能な孔容積=1/骨格密度-1/純物質密度。
【0161】
ここで、ケイ素含有材料の純物質密度は、ケイ素含有材料に含まれる成分の理論的な純物質密度の合計に、材料全体におけるそれらのそれぞれの重量ベースの割合を乗じたものから計算することができる理論的な密度である。したがって、例えば、ケイ素が多孔質粒子上に堆積されるケイ素含有材料の場合、
純物質密度=ケイ素の理論的純物質密度×重量%で表されるケイ素の割合+多孔質粒子の理論的純物質密度×重量%で表される多孔質粒子の割合。
【0162】
純物質密度に関するデータは、例えば、Ceramic Data Portal of the National Institute of Standards(NIST、https://srdata.nist.gov/CeramicDataPortal/scd)から当業者によって得ることができる。例えば、酸化ケイ素の純物質密度は2.203g/cm、窒化ホウ素の純物質密度は2.25g/cm、窒化ケイ素の純物質密度は3.44g/cm、炭化ケイ素の純物質密度は3.21g/cmである。
【0163】
ケイ素含有材料の孔容積Pは、ケイ素含有材料に含まれ、ケイ素前駆体の堆積から得られるケイ素の体積に基づいて、好ましくは0~400体積%の範囲、より好ましくは100~350体積%の範囲、特に好ましくは200~350体積%の範囲にある。
【0164】
ケイ素含有材料に含まれる気孔は、ガスが接近可能でもガスが接近不可能でもよい。ケイ素含有材料のガスが接近不可能な気孔に対するガスが接近可能な気孔の体積の比は、一般に0(ガスが接近可能な孔なし)~1(全ての孔がガスが接近可能である)の範囲にあり得る。ケイ素含有材料のガスが接近不可能な気孔に対するガスが接近可能な気孔の体積比は、好ましくは0~0.8の範囲、より好ましくは0~0.3の範囲、特に好ましくは0~0.1の範囲にある。
【0165】
ケイ素含有材料の孔は、例えば、マクロ孔(50nm超)、メソ孔(2~50nm)及びミクロ孔(2nm未満)の範囲内にある任意の所望の直径を有し得る。ケイ素含有材料はまた、異なる孔タイプの任意の所望の混合物を含有してもよい。ケイ素含有材料は、好ましくは、総孔容積に基づいて最大で30%のマクロ孔を含有し、特に好ましくはマクロ孔を有さないケイ素含有材料であり、非常に特に好ましくは総孔容積に基づいて少なくとも50%の孔を有し、5nm未満の平均孔直径を有するケイ素含有材料である。より特に好ましくは、ケイ素含有材料は、最大で2nmの直径を有する孔のみを有する。
【0166】
ケイ素含有材料は、少なくとも1つの寸法において、好ましくは最大1000nm、より好ましくは100nm未満、非常に好ましくは5nm未満の構造サイズを有するケイ素構造を含む(測定方法:走査型電子顕微鏡法(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡法(HR-TEM))。
【0167】
ケイ素含有材料は、好ましくは1000nm未満、より好ましくは100nm未満、非常に好ましくは5nm未満(測定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))の層厚を有するケイ素層を含む。ケイ素含有材料はまた、粒子の形態のケイ素を含んでもよい。ケイ素粒子は、好ましくは最大1000nm、より好ましくは100nm未満、非常に好ましくは5nm未満(測定方法:走査型電子顕微鏡(SEM)及び/又は高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM))の直径を有する。ここでのケイ素粒子の数値は、好ましくは、顕微鏡画像における粒子の周りの円の直径に基づく。
【0168】
ケイ素含有材料は、好ましくは最大100m/g、より好ましくは30m/g未満、特に好ましくは10m/g未満の比表面積を有する。BET比表面積は、DIN 66131(窒素による)に準拠して測定される。したがって、ケイ素含有材料をリチウムイオン電池のアノードの活物質として使用する場合、SEI形成を減少させることができ、初期クーロン効率を高めることができる。
【0169】
ケイ素前駆体から堆積されたケイ素含有材料中のケイ素は、例えば、Li、Fe、Al、Cu、Ca、K、Na、S、Cl、Zr、Ti、Pt、Ni、Cr、Sn、Mg、Ag、Co、Zn、B、P、Sb、Pb、Ge、Bi、希土類又はそれらの組み合わせを含む群から選択されるドーパントをさらに含んでもよい。ここで、リチウム及び/又はスズが好ましい。ケイ素含有材料中のドーパントの量は、ケイ素含有材料の総重量に基づいて、好ましくは最大で1重量%、より好ましくは最大で100ppmであり、ICP OESによって測定することができる。
【0170】
ケイ素含有材料は、一般に、圧縮荷重及び/又は剪断荷重下で驚くほど高い安定性を有する。ケイ素含有材料の圧力安定性及び剪断安定性は、例えば、圧縮荷重下(例えば、電極圧縮時)及び剪断荷重下(例えば、電極の調製時)でのSEMにおけるケイ素含有材料の多孔質構造の変化の非存在又は実質的な非存在によって明らかにされる。
【0171】
ケイ素含有材料は、炭素等の元素を任意選択でさらに含んでもよい。炭素は、好ましくは、最大で1μm、好ましくは100nm未満、より好ましくは5nm未満、非常に好ましくは1nm未満の層厚(SEM又はHR TEMによって測定可能)を有する薄層の形態で存在する。これらの炭素層は、ケイ素含有材料の孔内及び表面上の両方に存在し得る。段階2.1~6.1の対応する反復を通じたケイ素含有材料中の異なる層の順序及びそれらの数もまた任意である。したがって、第1に、多孔質粒子上に、例えば、炭素等の多孔質粒子とは異なるさらなる材料の層があり得、その層は、ケイ素層又はケイ素粒子の層を有し得る。また、多孔質粒子とケイ素層又はケイ素粒子からなる層との間に多孔質粒子の材料とは異なる材料のさらなる層が存在するかにかかわらず、ケイ素層上又はケイ素粒子の層上に多孔質粒子の材料とは異なるか又は同じであり得るさらなる材料の層が存在することも可能である。
【0172】
ケイ素含有材料は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、特に好ましくは20重量%以下の追加の元素を含有する。ケイ素含有材料は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上、特に好ましくは2重量%以上の追加の元素を含有する。重量%で表される数値は、ケイ素含有材料の総重量に基づく。代替の実施形態では、ケイ素含有材料は、追加の元素を含有しない。
【0173】
本発明のさらなる主題は、リチウムイオン電池のアノードのためのアノード材料における活物質としてのケイ素含有材料の使用、及びリチウムイオン電池を製造するためのそのようなアノードの使用である。
【0174】
アノード材料は、好ましくは、本発明の方法によって利用可能なケイ素含有材料と、1つ以上の結合剤と、任意選択でさらなる活物質としてのグラファイトと、任意選択で1つ以上のさらなる導電性成分と、任意選択で1つ以上の添加剤とを含む混合物をベースとする。
【0175】
アノード材料におけるさらなる導電性成分の使用により、電極内及び電極と集電体との間の接触抵抗を低減することが可能であり、それにより、本発明のリチウムイオン電池の通電容量が改善される。好ましいさらなる導電性成分の例は、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ又は金属粒子、例えば、銅である。
【0176】
導電性カーボンブラックの一次粒子は、好ましくは、直径パーセンタイルd10=5nm~d90=200nmの間の体積加重粒径分布を有する。導電性カーボンブラックの一次粒子はまた、鎖状の分岐を有し得、そして最大μmサイズの構造を形成し得る。カーボンナノチューブは0.4~200nm、より好ましくは2~100nm、最も好ましくは5~30nmの直径を有することが好ましい。金属粒子は、好ましくは直径パーセンタイルd10=5nm~d90=800nmの間にある体積加重粒径分布を有する。
【0177】
アノード材料は、アノード材料の総重量に基づいて、好ましくは0~95重量%、より好ましくは0~40重量%、最も好ましくは0~25重量%の1つ以上のさらなる導電性成分を含む。
【0178】
リチウムイオン電池のアノードにおいて、ケイ素含有材料は、アノード材料中に存在する全活物質に基づいて、好ましくは5~100重量%、より好ましくは30~100重量%、最も好ましくは60~100重量%で存在し得る。
【0179】
好ましい結合剤は、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、より具体的にはリチウム塩又はナトリウム塩、ポリビニルアルコール、セルロース又はセルロース誘導体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリイミド、特にポリアミドイミド、又は熱可塑性エラストマー、特にエチレン-プロピレン-ジエンターポリマーである。特に好ましいのは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸又はセルロース誘導体、特にカルボキシメチルセルロースである。また、特に好ましいのは、前記結合剤のアルカリ金属塩、特にリチウム塩又はナトリウム塩である。最も好ましいのは、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸のアルカリ金属塩、特にリチウム塩又はナトリウム塩である。結合剤の酸基の全て又は好ましくは一部は、塩の形態で存在し得る。結合剤は、好ましくは100000~1000000g/molのモル質量を有する。2種以上の結合剤の混合物を使用してもよい。
【0180】
グラファイトとしては、一般に天然又は合成グラファイトを使用することができる。グラファイト粒子は、好ましくは、直径パーセンタイルd10>0.2μm~d90<200μmの間の体積加重粒径分布を有する。
【0181】
添加剤の例は、孔形成剤、分散剤、流動制御剤又はドーパント、例えば、元素リチウムである。
【0182】
アノード材料のための好ましい配合物は、好ましくは5~95重量%、より具体的には60~90重量%のケイ素含有材料、0~90重量%、より具体的には0~40重量%のさらなる導電性成分、0~90重量%、より具体的には5~40重量%のグラファイト、0~25重量%、より具体的には5~20重量%の結合剤及び0~80重量%、より具体的には0.1~5重量%の添加剤を含み、重量%で表される数字は、アノード材料の総重量に基づいており、アノード材料の全ての構成成分の割合は合計で100重量%になる。
【0183】
アノードインク又はアノードペーストを構成するアノード材料の構成成分は、好ましくは、好ましくは水、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド及びエタノール、及びこれらの溶媒の混合物を包含する群から選択される溶媒中で、好ましくはローターステーター機、高エネルギーミル、遊星混練機、撹拌ボールミル、振盪板又は超音波装置を使用して処理される。
【0184】
アノードインク又はアノードペーストは、好ましくは2~7.5のpHを有する(例えば、SenTix RJDプローブを備えたWTW pH340i pHメーターを使用して、20℃で測定される)。
【0185】
アノードインク又はアノードペーストは、ドクターブレードによって、例えば、銅箔又は別の集電体に塗布することができる。他のコーティング方法、例えば、回転コーティング(スピンコーティング)、ローラーコーティング、浸漬又はスロットダイコーティング、塗装又は噴霧もまた、本発明に従って使用され得る。
【0186】
銅箔を本発明のアノード材料でコーティングする前に、銅箔は、例えば、ポリマー樹脂又はシランをベースとする市販のプライマーで処理されてもよい。プライマーは銅への接着の改善をもたらすことができるが、それ自体は一般に実質的に電気化学的活性を有さない。
【0187】
アノード材料は、通常、一定重量まで乾燥される。乾燥温度は、使用される成分及び使用される溶媒によって導かれる。それは、好ましくは20~300℃の間、より好ましくは50~150℃の間にある。アノードコーティングの乾燥層厚を意味する層厚は、好ましくは2~500μm、より好ましくは10~300μmである。
【0188】
最後に、電極コーティングは、所定の多孔度を設定するためにカレンダー処理されてもよい。このように製造された電極は、好ましくは15~85%の多孔度を有し、これはDIN ISO 15901-1に従って水銀ポロシメトリーによって測定することができる。ここで、このようにして求めることができる孔容積の25~85%は、0.01~2μmの孔径を有する孔により提供されることが好ましい。
【0189】
本発明のさらなる主題は、カソードと、アノードと、これらの電極に対する2つの導電性接続部と、セパレータと、電解質であって、セパレータ及び2つの電極が含浸される電解質と、また、上記の構成要素を収容するケーシングとを備え、アノードは、本発明の方法に従って入手可能なケイ素含有材料を含むリチウムイオン電池である。
【0190】
本発明の関連において、リチウムイオン電池という用語は、セルも包含する。セルは、一般に、カソード、アノード、セパレータ、及び電解質を含む。1つ以上のセルに加えて、リチウムイオン電池は、好ましくは、電池管理システムをさらに備える。電池管理システムは、一般に、例えば、電子回路によって、特に充電状態を認識するため、徹底的な放電から保護するため、又は過充電から保護するために、電池を制御する役割を果たす。
【0191】
本発明に従って使用することができる好ましいカソード材料としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物(ドープ又は非ドープ)、リチウムマンガン酸化物(スピネル)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウム鉄リン酸塩、リチウムコバルトリン酸塩、リチウムマンガンリン酸塩、リチウムバナジウムリン酸塩、又はリチウムバナジウム酸化物が挙げられる。
【0192】
セパレータは、一般に、電気絶縁性のイオン透過性膜であり、好ましくはポリオレフィン、例えば、ポリエチレン(PE)若しくはポリプロピレン(PP)、又はポリエステル、又は対応するラミネートから作製される。あるいは、電池製造において慣例であるように、セパレータは、ガラス又はセラミック材料からなっていてもよく、又はガラス又はセラミック材料でコーティングされていてもよい。セパレータは、従来、第1の電極を第2の電極から分離し、したがって電極間の導電性接続(短絡)を防止する。
【0193】
電解質は、好ましくは、非プロトン性溶媒中に1つ以上のリチウム塩(=導電性塩)を含む溶液である。導電性塩は、好ましくは、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムヘキサフルオロアルセネート、リチウムパークロレート、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムイミド、リチウムメチド、リチウムトリフルオロメタンスルホネートLiCFSO、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)LiN(CFSO及びリチウムボレートを含む群から選択される。導電性塩の濃度は、溶媒に基づいて、好ましくは0.5mol/l~問題の塩の溶解限度である。より好ましくは、導電性塩の濃度は0.8~1.2mol/lである。
【0194】
使用される溶媒は、好ましくは、個々に又は混合物として、環状カーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ガンマ-ブチロラクトン、ジオキソラン、アセトニトリル、炭酸の有機エステル、又はニトリルである。
【0195】
電解質は、好ましくは、例えば、ビニレンカーボネート又はフルオロエチレンカーボネート等の膜形成剤を含む。このようにして、本発明の方法に従って得られるケイ素含有材料を含むアノードのサイクル安定性の有意な改善を達成することが可能である。この改善は、主として、活性粒子の表面上の固体電解質界面の形成に起因する。電解質中の膜形成剤の割合は、好ましくは0.1~20.0重量%の間、より好ましくは0.2~15.0重量%の間、最も好ましくは0.5~10重量%の間である。
【0196】
リチウムイオン電池の電極の実際の容量を可能な限り最適に互いに一致させるために、正極及び負極の材料を量的に均衡させることが有利である。この関連において特に重要なのは、二次リチウムイオンセルの第1の又は最初の充電/放電サイクル(活性化として知られる)において、被覆層がアノード中の電気化学的に活性な材料の表面上に形成されるという事実である。この被覆層は、固体電解質界面(SEI)と呼ばれ、一般に、主に電解質分解生成物と、ある特定の量のリチウムとからなり、したがってこのリチウムはさらなる充電/放電反応にはもはや利用できない。SEIの厚さ及び組成は、使用されるアノード材料及び使用される電解質溶液の性質及び品質に依存する。
【0197】
グラファイトの場合、SEIは特に薄い。グラファイトでは、典型的には、第1の充電工程において可動性リチウムの5~35%の損失がある。これに対応して、電池の可逆容量も低下する。
【0198】
本発明の方法によって得られるケイ素含有活物質を有するアノードの場合、第1の充電工程は、好ましくは最大で30%、より好ましくは最大で20%、最も好ましくは最大で10%の可動性リチウムの損失を伴い、これは、例えば、US10,147,950B1におけるように、先行技術に記載されている値をはるかに下回る。
【0199】
本発明の方法によって得ることができるケイ素含有材料をアノードが含むリチウムイオン電池は、全ての慣例の形態で製造することができ、そのようなものは、例えば、巻かれた、折り畳まれた、又は積み重ねられた形態である。
【0200】
上記のようなリチウムイオン電池の製造に利用されるすべての物質及び材料は知られている。そのような電池の部品の製造、及び電池を得るためのそれらの組み立ては、電池製造の分野で知られている方法に従って行われる。
【0201】
本発明の方法によって得られるケイ素含有材料は、著しく改善された電気化学的特性に関し注目に値し、高い体積容量及び優れた性能特性を有するリチウムイオン電池をもたらす。本発明の方法によって得られるケイ素含有材料は、リチウムイオン及び電子に対して透過性であり、したがって帯電輸送を可能にする。リチウムイオン電池におけるSEIは、本発明の方法によって得られるケイ素含有材料によって大幅に低減することができる。さらに、本発明の方法によって得られるケイ素含有材料の設計のため、活物質の表面からのSEIの剥離はもはや存在しないか、又は少なくとも大幅に低減される。このすべては、本発明の方法によって得ることができるケイ素含有材料をアノードが含有するそのようなリチウムイオン電池の部分において高いサイクル安定性をもたらす。
【実施例
【0202】
以下の実施例は、本明細書に記載される本発明のさらなる解明に役立つ。
【0203】
特性測定に使用した分析方法及び機器は以下の通りであった。
【0204】
無機分析/元素分析:
実施例で報告したC含量は、Leco CS230分析器を使用して確認した。O含有量並びに適切な場合にはN及びH含有量の測定のために、Leco TCH-600分析器を使用した。他の報告された元素の定性的及び定量的測定は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析(Optima 7300 DV、Perkin Elmer製)によって行った。この分析のために、試料をマイクロ波(icrowave 3000、Anton Paar製)中で酸分解(HF/HNO)に供した。ICP-OES測定は、ISO 11885(水質-誘電結合プラズマ原子発光分析法(ICP-OES)による選択元素の定量“Water quality - Determination of selected elements by inductively coupled plasma optical emission spectrometry(ICP-OES)(ISO 11885:2007)、独語版EN ISO 11885:2009”)によって手引きされ、これは酸性水溶液(例えば、飲料水、廃水及び他の水の酸性化サンプル、土壌及び沈殿物の王水抽出物)の分析に使用される。
【0205】
粒径の測定:
本発明の関連において、粒径分布は、Horiba LA 950を用いた静的レーザー散乱によってISO 13320に準拠して測定した。ここで、試料の調製において、個々の粒子のサイズではなく弱凝集体のサイズを測定しないように、測定溶液中の粒子の分散に特に注意を払わなければならない。測定のため、粒子をエタノールに分散させた。この目的のために、分散体を、測定前に、必要であれば、LS24d5ソノトロードを備えたHielscherモデルUIS250v超音波実験室機器において、250W超音波で4分間処理した。
【0206】
BET比表面積測定:
材料の比表面積を、Sorptomatic 199090機器(Porotec)又はSA-9603MP機器(Horiba)を用いて、BET法(窒素を用いたDIN ISO9277:2003-05に準拠した測定)により、窒素を用いたガス吸着によって測定した。
【0207】
骨格密度:
骨格密度、すなわち、外部からガスが接近可能な孔空間のみの体積に基づく多孔質固体の密度を、DIN 66137-2に準拠してHeピクノメトリによって測定した。
【0208】
ガスが接近可能な孔容積:
ギュルヴィッチ(Gurwitsch)のガスが接近可能な孔容積は、DIN 66134に準拠して窒素を用いたガス収着測定によって測定した。
【0209】
実験例を実施する際に使用した材料及び装置は以下の通りであった。
【0210】
使用した反応器A、B及びCは、円筒形の下部(ビーカー)及び多数の接続部(例えば、ガス供給、ガス除去、温度測定及び圧力測定である)を有する蓋からなっていた。3つの反応器のそれぞれの容積は12リットルであった。反応器を電気的に加熱した。温度は基本的にヒーターと反応器の間で測定した。使用した撹拌機は、非常に近接したヘリカル撹拌機であった。これらの撹拌機の高さは、反応器内部のクリアハイトの約50%であった。
【0211】
本発明によらない反例2では、使用した反応器は同じであり、反応器A、B及びCは同じ反応器であり、工程間の材料の移動はなかったという特別な特徴を有していた。
【0212】
使用したグレード4.0のSiHは、Linde GmbHから入手した。
【0213】
実施例で使用した多孔質粒子は、以下の特性を有していた。
密度:2.19g/cm;(Heピクノメトリ)
BET比表面積:2255m/g
Gurvich体積:1.16cm/g
炭素含有率:93.39重量%(EA)
酸素含有率:5.45重量%(EA)
水素含有率:0.70重量%(EA)
ミクロ孔容積:0.46cm/g
粒径分布:d50 4.4μm
【0214】
[実施例1]
カスケード反応器システムにおいてモノシランSiHをケイ素前駆体として使用するケイ素含有材料の製造。
【0215】
段階1.1において、反応器Aに多孔質粒子である842gの多孔質材料を充填し、密封した。次いで、段階1.2において、反応器Aを350℃まで調整し、240分間、1×10-3barの最終圧力まで排気した。続いて、段階1.3において、材料を窒素雰囲気下で反応器Bに移し、これを350℃まで加熱した。
【0216】
段階2.1では、反応器B中の多孔質材料を350℃まで加熱した。段階2.2では、反応器Bを最初に1×10-3barまで排気した。続いて、段階2.4において、158gの量のSiHを15.0barの圧力で充填した。段階3.1及び4.1において、反応器Bを430℃の温度まで15分間かけて加熱し、段階4.2において、この温度を70分間維持した。段階4.2の過程で、式2に従って、圧力は35.8barまで上昇した。その後、反応器B内の圧力を段階5.1で1.5barまで低下させ、段階5.2で反応器の温度を350℃まで低下させた。
【0217】
その後、段階2.4、3.1、4.1、4.2、5.1及び5.2を指定された順序で10回実施した。この操作中、xgのSiHを、様々な段階2.4(x=139、133、131、128、122、119、116、114、110、77)において指定された順序で計量し、その間に最初にybarの圧力を確立させた(y=15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、14.9、11.0)。10例全てにおいて、反応器Bを、段階3.1及び4.1において、430℃の温度まで15分間かけて加熱し、段階4.2の反復においてこの温度を60分間維持した。段階4.2の過程で、式2に従って、圧力はzbar(z=35.6、35.0、34.2、33.4、33.1、32.6、32.0、31.5、31.8、23.4)まで上昇した。最初の9回の反復の段階4.2に続いて、段階5.1の圧力を1.5barまで低下させ、反応器Bを段階5.2で30分間かけて350℃の温度まで冷却した。段階4.2の10回目及び最後の繰り返しの後、段階5を省略して、反応器B内の圧力を段階6.1で1.0barまで低下させた。高温の材料は、その後、段階6.2において、管接続部を通して反応器Cに移された。段階6.3では、4.5barの圧力を窒素を用いて反応器C内で発生させ、ケイ素含有材料を反応器C内で90分間かけて70℃の温度まで冷却した。続いて、段階7.1において、反応器Cを窒素で5回、酸素分率5%の希薄な空気で10回、酸素分率10%の希薄な空気で10回、酸素分率15%の希薄な空気で10回、続いて空気で10回パージした。段階7.2において、微細な黒色固体の形態の1992gの量のケイ素含有材料を単離した。ケイ素含有材料は以下の特性を有していた。
- BET比表面積:43m/g
- 炭素含有率:40.2重量%(EA)
- 酸素含有率:2.77重量%(EA)
- ケイ素含有率:57.0重量%(EA)
【0218】
全部で操作を36時間継続した。3つの反応器は全て同時に作動していた。カスケード反応器の時間測定工程は、反応器Bにおける操作であり、この場合、18時間であった。
【0219】
[反例2(本発明によらない)]
反応器内でモノシランSiHをケイ素前駆体として使用するケイ素含有材料の製造(反例については、実施例1の反応器A、B及びCは同じ圧力容器である)。
【0220】
段階1.1では、反応器に842gの多孔質材料を充填し、密封した。次いで、段階1.2において、反応器を350℃まで調整し、240分間、1×10-3barの最終圧力まで排気した。続いて、段階2.4において、318gの量のSiHを15.0barの圧力で充填した。段階3.1及び4.1では、反応器を15分間かけて430℃の温度まで加熱し、段階4.2では、この温度を70分間維持した。段階4.2の過程で、式2に従って、圧力は35.8barまで上昇した。その後、反応器内の圧力を段階5.1で1.5barまで低下させ、段階5.2で反応器の温度を350℃まで低下させた。その後、段階2.4、3.1、4.1、4.2、5.1及び5.2を指定された順序で10回実施した。この操作中、xgのSiHを、様々な段階2.4(x=137、130、131、130、123、120、118、116、111、75)において指定された順序で計量し、その間に最初にybarの圧力を確立させた(y=15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、15.0、14.9、15.0、15.0、11.0)。10例全てにおいて、反応器を、段階3.1及び4.1において、15分間かけて430℃の温度まで加熱し、この温度を段階4.2において60分間維持した。段階4.2の過程で、式2に従って、圧力はzbar(z=35.7、35.2、34.0、33.3、33.1、32.8、32.0、31.3、31.5、23.74)まで上昇した。最初の9回の反復の段階4.2の後に、段階5.1の圧力を1.5barまで低下させ、反応器を段階5.2で30分間かけて350℃の温度まで冷却した。段階4.2の10回目及び最後の繰り返しの後、段階5を省略して、反応器内の圧力を段階6.1で1.0barまで低下させた。段階6.3では、4.5barの圧力を窒素を用いて反応器内に発生させ、ケイ素含有材料を14時間かけて70℃の温度まで冷却した。続いて、段階7.1において、反応器を窒素で5回、酸素分率5%の希薄な空気で10回、酸素分率10%の希薄な空気で10回、酸素分率15%の希薄な空気で10回、その後に空気で10回パージした。段階7.2において、微細な黒色固体の形態の1986gの量のケイ素含有材料を単離した。ケイ素含有材料は以下の特性を有していた。
- BET比表面積:39m/g
- 炭素含有率:39.6重量%(EA)
- 酸素含有率:2.87重量%(EA)
- ケイ素含有率:57.0重量%(EA)
【0221】
全部で操作を47時間継続した。
【0222】
[実施例3]
リチウムイオン電池のアノードにおける活物質としての使用におけるケイ素含有材料の電気化学的特性測定:
【0223】
29.71gのポリアクリル酸(85℃で一定重量まで乾燥させた、Sigma Aldrich、Mw約450000g/mol)及び756.6gの脱イオン水を、ポリアクリル酸が完全に溶解するまで、シェーカー(290 1/分)を用いて2.5時間撹拌した。水酸化リチウム一水和物(Sigma Aldrich)を、pHが7.0(WTW pH340i pHメーター及びSenTix RJDプローブを用いて測定した)になるまで溶液に数回にわけて添加した。続いて、この溶液をシェーカーによってさらに4時間混合した。
【0224】
3.87gの中和させたポリアクリル酸溶液及び0.96gのグラファイト(Imerys、KS6L C)を50ml容器に導入し、プラネタリーミキサー(SpeedMixer、DAC 150 SP)中において2000rpmで混合した。次に、実施例1及び例2からのケイ素含有材料のそれぞれ3.40gを2000rpmで1分間撹拌した。次いで、導電性カーボンブラックの8%分散体1.21g及び脱イオン水0.8gを添加し、プラネタリーミキサーで2000rpmで組み込んだ。次いで、3000rpm及び一定の20℃で30分間、溶解機中で分散を行った。インクを再びプラネタリーミキサー中で2500rpmで5分間減圧下で脱気した。次いで、完成した分散液を、0.1mmのギャップ高さを有するフィルムアプリケータフレーム(Erichsen、Modell 360)を用いて、0.03mmの厚さを有する銅箔(Schlenk Metallfolien、SE-Cu58)に塗布した。次いで、このようにして製造されたアノードコーティングを、1barの空気圧下で50℃で60分間乾燥させた。乾燥したアノードコーティングの平均基本重量は2.1mg/cmであり、コーティング密度は0.9g/cmであった。
【0225】
電気化学的研究を、2電極配置のボタンセル(CR2032型、宝泉)について行った。前記電極コーティングを対電極又は負極として使用した(Dm=15mm)。94.0%の含有率及び15.9mg/cmの平均基本重量を有するリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物6:2:2をベースとするコーティング(SEI社から入手)を、作用電極又は正極として使用した(Dm=15mm).60μlの電解質を含浸させたガラス繊維濾紙(Whatman、GDタイプD)をセパレータとして用いた(Dm=16mm)。使用した電解質は、フルオロエチレンカーボネート及びジエチルカルボネートの1:4(v/v)混合物中のリチウムヘキサフルオロホスフェートの1.0モル溶液からなっていた。セルをグローブボックス(1ppm未満のHO、O)で構築した。使用した全ての成分の乾燥質量中の含水量は20ppm未満であった。
【0226】
電気化学的試験を20℃で行った。セルを、最初のサイクルでは5mA/g(C/25に相当)、それ以降のサイクルでは60mA/g(C/2に相当)の定電流でcc/cv(定電流/定電圧)法により充電し、電圧限界4.2Vに達した後、充電を、電流が1.2mA/g(C/100に対応する)又は15mA/g(C/8に対応する)を下回るまで定電圧で行った。セルを、最初のサイクルでは5mA/g(C/25に相当)、それ以降のサイクルでは60mA/g(C/2に相当)の定電流で、2.5Vの電圧限界に達するまでcc(定電流)法により放電した。選択された特定の電流は、正極のコーティングの重量に基づいた。セルの放電容量に対するセルの充電容量の比は、クーロン効率と呼ばれる。電極は、1:1.2のカソード対アノードの容量比を確立するように選択した。
【0227】
実施例1及び例2の活物質を含むリチウムイオン電池のフルセルの電気化学的試験の結果を表1に示す。
【0228】
【表1】
【0229】
比較例2では、容積12リットルの反応器内で、本発明によらない方法によって48時間かけて1986gの材料を製造した。実施例1において、1992gの材料を、18時間にわたって12リットルの容積を有する3つの反応器において、本発明による方法によって製造した。したがって、実施例1では、例2の場合と比較して、材料の収率が時間に関して2.5倍高かった。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の多孔質粒子の存在下における1つ以上のケイ素前駆体の熱分解によってケイ素含有材料を製造する方法であって、ケイ素が、複数の反応器を含むカスケード反応器システムにおいて、前記多孔質粒子の孔内及び表面上に堆積される方法。
【請求項2】
少なくとも段階1~7を含む、請求項1に記載の方法:
段階1:反応器Aに多孔質粒子を充填し、該粒子を前処理する、
段階2:前処理された粒子を反応器Bに移し、該反応器に少なくとも1つのケイ素前駆体を含む反応性成分を充填する、
段階3:前記ケイ素前駆体が反応器内で分解し始める目標温度まで前記反応器Bを加熱する、
段階4:前記ケイ素前駆体を分解し、前記多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積させ、ケイ素含有材料を形成し、圧力を少なくとも7barまで上昇させる、
段階5:前記反応器Bを冷却する、
段階6:堆積の過程で形成されたガス状反応生成物を前記反応器Bから除去し、前記ケイ素含有材料を反応器Cに移す、
段階7:前記反応器Cから前記ケイ素含有材料を取り出す。
【請求項3】
段階1が以下のように構成される、請求項2に記載の方法:
段階1
段階1.1:前記反応器Aに前記多孔質粒子を充填する、
段階1.2:反応器Aにおいて該粒子を前処理する、
段階1.3:前処理された粒子を前記反応器Bに移すか、又は貯蔵容器Dに中間貯蔵した後に前記反応器Bに移すか、又は材料が反応器Aに残る。
【請求項4】
段階2が以下のように構成される、請求項2又は3に記載の方法:
段階2
段階2.1:反応器Bにおける前記粒子の加熱又は冷却、
段階2.4:前記反応器Bに、少なくとも1つのケイ素前駆体を含む少なくとも1つの反応性成分を充填する。
【請求項5】
段階3が以下のように構成される、請求項2~4に記載の方法:
段階3
段階3.1:前記反応性成分が反応器B内で分解し始める目標温度まで前記反応器Bを加熱する。
【請求項6】
段階4が以下のように構成される、請求項2~5に記載の方法:
段階4.1:前記ケイ素前駆体を分解し、前記多孔質粒子の孔内及び表面上にケイ素を堆積させ、圧力を少なくとも7barまで上昇させる。
段階4.2:少なくとも7barの圧力がもたらされる所定の期間にわたる最低温度又は温度プロファイルを確立する。
【請求項7】
段階5が以下のように構成される、請求項2~6に記載の方法:
段階5
段階5.1:反応器B内の圧力を所定の圧力に調整する、
段階5.2:所定の温度又は所定の温度プロファイルまで前記反応器Bを冷却する。
【請求項8】
段階6が以下のように構成される、請求項2~7に記載の方法:
段階6
段階6.1:堆積の過程で形成されたガス状反応生成物を前記反応器Bから除去する、
段階6.2:前記粒子を反応器Cに移すか、又は貯蔵容器Eに中間貯蔵した後に反応器Cに移すか、又は材料が反応器Bに残る、
段階6.3:所定の温度又は所定の温度プロファイル及び所定の圧力に反応器Cを調節する。
【請求項9】
段階7が以下のように構成される、請求項2~8に記載の方法:
段階7
段階7.1:反応器Cにおいて前記粒子を後処理して粒子表面を不活性化する、
段階7.2:該粒子を所定の温度まで冷却し、反応器Cからケイ素含有材料を取り出し、好ましくは貯蔵容器Eに直接移すか、又は適切な容器に直接充填する。
【請求項10】
前記カスケード反応器が、2つの相互に依存する反応器のみからなり、段階1~6.1は同じ反応器中で実施され、段階1.3は省略され、又は段階2~7は1つの反応器中で実施され、段階6.2は省略される、請求項2~9に記載の方法。
【請求項11】
段階4.1及び4.2における反応器B内の圧力が、少なくとも10barに達する、請求項2又は6~10に記載の方法。
【請求項12】
段階4.1及び4.2における反応器B内の温度が、100~1000℃の範囲である、請求項2又は6~11に記載の方法。
【請求項13】
前記ケイ素前駆体が、ケイ素-水素化合物、塩素含有シラン、及び塩素含有シランのより高級な直鎖、分岐又は環状同族体、塩素化及び部分塩素化オリゴシラン及びポリシラン、メチルクロロシラン又はそれらの混合物から選択される少なくとも1つの反応性成分を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔質粒子が、非晶質炭素、二酸化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素及び窒化ケイ素又はこれらの材料に基づくハイブリッド材料から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】