(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】神経刺激性ステロイドの結晶形
(51)【国際特許分類】
C07J 43/00 20060101AFI20240719BHJP
A61K 31/58 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240719BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07J43/00 CSP
A61K31/58
A61P25/00
A61P43/00 111
A61P25/20
A61P9/00
A61P25/04
A61P25/08
A61P25/24
A61P25/14
A61P25/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505045
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022038459
(87)【国際公開番号】W WO2023009584
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514058913
【氏名又は名称】セージ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】クアン, シャンミン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ティアンルイ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C091
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA12
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZA36
4C086ZC41
4C091AA01
4C091BB01
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE04
4C091EE10
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ01
4C091KK01
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN01
4C091PA02
4C091PA07
4C091PB01
4C091QQ01
4C091SS05
(57)【要約】
本発明は、無水化合物(1)の結晶形、及びその医薬組成物に関する。また、本明細書では、化合物(1)の結晶固体形態を作製する方法、ならびにGABA活性を調節し(例えば、GABA活性のポジティブアロステリック調節)、CNS関連障害を治療するために化合物(1)の結晶形及びその医薬組成物を使用する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(1)の結晶形であって、前記化合物(1)は、以下の構造式で表され、
【化4】
前記結晶形は、結晶性無水化合物(1)である、前記化合物(1)の結晶形。
【請求項2】
前記結晶形は、粉末X線回折パターンにおいて15.4±0.3、15.6±0.3、18.1±0.3、18.8±0.3、及び22.6±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする、請求項1に記載の結晶形。
【請求項3】
前記結晶形は更に、粉末X線回折パターンにおいて9.4±0.3、11.9±0.3、22.2±0.3、及び23.4±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする、請求項2に記載の結晶形。
【請求項4】
前記結晶形は、約30℃の温度から開始して10℃/分の速度で加熱すると、約146℃~約157℃のT
開始で吸熱を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の結晶形。
【請求項5】
前記結晶形は、
13C SSNMRスペクトルにおける200.0±0.3ppm、164.3±0.3ppm、81.3±0.3ppm、70.5±0.3ppm、及び62.2±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の結晶形。
【請求項6】
前記結晶形は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける60.9±0.3ppm、60.0±0.3ppm、56.7±0.3ppm、47.8±0.3ppm、及び45.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする、請求項5に記載の結晶形。
【請求項7】
前記結晶形は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける42.6±0.3ppm、39.3±0.3ppm、38.3±0.3ppm、35.5±0.3ppm、25.8±0.3ppm、及び22.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする、請求項6に記載の結晶形。
【請求項8】
前記結晶形は、粉末X線回折パターンにおいて8.9±0.3、14.6±0.3、16.4±0.3、18.0±0.3、及び20.0±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする、請求項1に記載の結晶形。
【請求項9】
前記結晶形は更に、粉末X線回折パターンにおいて11.6±0.3、15.0±0.3、17.4±0.3、21.2±0.3、及び29.0±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする、請求項8に記載の結晶形。
【請求項10】
前記結晶形は更に、粉末X線回折パターンにおいて9.6±0.3、12.9±0.3、及び29.6±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする、請求項9に記載の結晶形。
【請求項11】
前記結晶形は、約30℃の温度から開始して10℃/分の速度で加熱すると、約160℃~約166℃のT
開始で吸熱を有する、請求項1または8~10のいずれか一項に記載の結晶形。
【請求項12】
前記結晶形は、約200℃以上の温度で分解する、請求項1または8~11のいずれか一項に記載の結晶形。
【請求項13】
前記結晶形は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける200.2±0.3ppm、199.1±0.3ppm、162.8±0.3ppm、82.9±0.3ppm、82.1±0.3ppm、及び12.6±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする、請求項1または8~12のいずれか一項に記載の結晶形。
【請求項14】
前記結晶形は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける70.4±0.3ppm、63.6±0.3ppm、49.7±0.3ppm、35.5±0.3ppm、及び15.5±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする、請求項13に記載の結晶形。
【請求項15】
前記結晶形は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける62.9±0.3ppm、61.4±0.3ppm、60.6±0.3ppm、45.4±0.3ppm、及び37.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする、請求項14に記載の結晶形。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の結晶形と、薬学的に許容される賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項17】
治療有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の結晶形または請求項16に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、GABA
A受容体を調節することを必要とする前記対象においてGABA
A受容体を調節する、方法。
【請求項18】
治療有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の結晶形または請求項16に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、GABA
A受容体媒介CNS関連障害を治療することを必要とする前記対象におけるGABA
A受容体媒介CNS関連障害を治療する、方法。
【請求項19】
治療有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の結晶形または請求項16に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、CNS関連障害を治療することを必要とする前記対象におけるCNS関連障害を治療する、方法。
【請求項20】
前記CNS関連障害は、睡眠障害、気分障害、統合失調症スペクトラム障害、けいれん性障害、記憶及び/もしくは認知障害、運動障害、パーソナリティ障害、自閉症スペクトラム障害、痛み、外傷性脳損傷、血管疾患、薬物乱用障害及び/もしくは離脱症候群、耳鳴り、またはてんかん重積状態である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記CNS関連障害は、気分障害である、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記気分障害は、うつ病である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記うつ病は、産後うつ病である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記うつ病は、大うつ病性障害である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記大うつ病性障害は、中等度の大うつ病性障害である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記大うつ病性障害は、重度の大うつ病性障害である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記CNS関連障害は、振戦である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項28】
前記振戦は、本態性振戦である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記CNS関連障害は、発作である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項30】
前記CNS関連障害は、てんかんである、請求項18または19に記載の方法。
【請求項31】
前記CNS関連障害は、てんかん重積状態である、請求項18または19に記載の方法。
【請求項32】
前記てんかん重積状態は、けいれん性てんかん重積状態または非けいれん性てんかん重積状態である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記てんかん重積状態は、初期てんかん重積状態、確定したてんかん重積状態、難治性てんかん重積状態、及び超難治性てんかん重積状態から選択されるけいれん性てんかん重積状態である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記てんかん重積状態は、全身性てんかん重積状態及び複雑部分てんかん重積状態から選択される非けいれん性てんかん重積状態である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の結晶形または請求項16に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、鎮静及び/または麻酔を導入することを必要とする前記対象に鎮静及び/または麻酔を導入するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本PCT出願は、2021年7月28日に出願された米国仮出願第63/226,374号の利益を主張し、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、特定のGABA受容体の活性を調節し(例えば、選択的に調節し)、患者におけるCNS関連障害の治療または重症度の軽減、及び患者におけるCNS関連障害の症状の発生率の予防的防止または軽減に有用な神経刺激性ステロイドの固体形態(例えば、結晶)に関する。
【背景技術】
【0003】
脳の興奮性は、動物の覚醒レベル、つまり昏睡からけいれんに至るまでの連続体として定義され、様々な神経伝達物質によって調節される。一般に、神経伝達物質は、神経膜にわたるイオンのコンダクタンスを調節する役割を担っている。安静時、神経膜は約-70mVの電位(または膜電圧)を持ち、細胞内部は細胞外部に対して負である。電位(電圧)は、神経細胞の半透膜全体にわたるイオン(K+、Na+、Cl-、有機陰イオン)のバランスの結果である。神経伝達物質は、シナプス前小胞に貯蔵されており、ニューロンの活動電位の影響下で放出される。アセチルコリンなどの興奮性化学伝達物質がシナプス間隙に放出されると、膜脱分極(-70mV~-50mVへの電位変化)を引き起こす。この効果は、アセチルコリンによって刺激されてNa+イオンに対する膜透過性を高めるシナプス後ニコチン性受容体によって媒介される。膜電位の低下は、シナプス後活動電位の形でニューロンの興奮性を刺激する。
【0004】
γ-アミノ酪酸受容体複合体(GRC)の場合、脳の興奮性に対する効果は、神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)によって媒介される。脳内のニューロンの最大40%がGABAを神経伝達物質として利用するため、GABAは脳全体の興奮性に大きな影響を与える。GABAは、神経細胞膜にわたる塩化物イオンのコンダクタンスを調節することにより、個々のニューロンの興奮性を調節する。GABAはGRC上のその認識部位と相互作用して、GRCの電気化学的勾配を下って細胞内への塩化物イオンの流れを促進する。細胞内でこのアニオンのレベルが向上すると、膜内外電位差の過分極が引き起こされ、ニューロンが興奮性入力に対して感受性が低下する(すなわち、ニューロンの興奮性が低下する)。つまり、神経細胞内の塩素イオン濃度が高くなると、脳の興奮性(覚醒度)が低下することになる。
【0005】
脳の興奮性の調節剤としてだけでなく、CNS関連障害の予防剤及び治療剤として作用する、神経刺激性ステロイドの新規かつ改良された結晶形が必要とされている。本明細書に記載されるこのような神経刺激性ステロイドの結晶形は、この目的に向けられている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、化合物(1)の結晶形を提供し、上記化合物(1)は、以下の構造式で表され、
【化1】
上記結晶形は、結晶性無水化合物(1)である。
【0007】
いくつかの実施形態では、上記結晶形は、粉末X線回折パターンにおいて15.4±0.3、15.6±0.3、18.1±0.3、18.8±0.3、及び22.6±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、上記結晶形は更に、粉末X線回折パターンにおいて9.4±0.3、11.9±0.3、22.2±0.3、及び23.4±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。
【0008】
いくつかの実施形態では、上記結晶形は、粉末X線回折パターンにおいて15.4±0.2、15.6±0.2、18.1±0.2、18.8±0.2、及び22.6±0.2度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、上記結晶形は更に、粉末X線回折パターンにおいて9.4±0.2、11.9±0.2、22.2±0.2、及び23.4±0.2度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。
【0009】
いくつかの実施形態では、上記結晶形は、約30℃の温度から開始して10℃/分の速度で加熱すると、約146℃~約157℃のT開始で吸熱を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、上記結晶形は更に、13C SSNMRスペクトルにおける200.0±0.3ppm、164.3±0.3ppm、81.3±0.3ppm、70.5±0.3ppm、及び62.2±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記結晶形は更に、13C SSNMRスペクトルにおける60.9±0.3ppm、60.0±0.3ppm、56.7±0.3ppm、47.8±0.3ppm、及び45.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、上記結晶形は更に、13C SSNMRスペクトルにおける42.6±0.3ppm、39.3±0.3ppm、38.3±0.3ppm、35.5±0.3ppm、25.8±0.3ppm、及び22.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記結晶形は、粉末X線回折パターンにおいて8.9±0.3、14.6±0.3、16.4±0.3、18.0±0.3、及び20.0±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記結晶形は更に、粉末X線回折パターンにおいて11.6±0.3、15.0±0.3、17.4±0.3、21.2±0.3、及び29.0±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、上記結晶形は更に、粉末X線回折パターンにおいて9.6±0.3、12.9±0.3、及び29.6±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記結晶形は、粉末X線回折パターンにおいて8.9±0.2、14.6±0.2、16.4±0.2、18.0±0.2、及び20.0±0.2度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記結晶形は更に、粉末X線回折パターンにおいて11.6±0.2、15.0±0.2、17.4±0.2、21.2±0.2、及び29.0±0.2度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、上記結晶形は更に、粉末X線回折パターンにおいて9.6±0.2、12.9±0.2、及び29.6±0.2度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記結晶形は、約30℃の温度から開始して10℃/分の速度で加熱すると、約160℃~約166℃のT開始で吸熱を有する。別の実施形態では、結晶形(または化合物(1))は、約200℃以上の温度で分解する。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記結晶形は更に、13C SSNMRスペクトルにおける200.2±0.3ppm、199.1±0.3ppm、162.8±0.3ppm、82.9±0.3ppm、82.1±0.3ppm、及び12.6±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記結晶形は更に、13C SSNMRスペクトルにおける70.4±0.3ppm、63.6±0.3ppm、49.7±0.3ppm、35.5±0.3ppm、及び15.5±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、上記結晶形は更に、13C SSNMRスペクトルにおける62.9±0.3ppm、61.4±0.3ppm、60.6±0.3ppm、45.4±0.3ppm、及び37.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記化合物(1)の結晶形は、実質的に純粋である。例えば、結晶形は、不純物を実質的に含まない(例えば、約30重量%未満の不純物、約25重量%未満の不純物、約10重量%未満の不純物、約5重量%未満の不純物、約1重量%未満の不純物、約0.5重量%未満の不純物、約0.1重量%未満の不純物、または約0.05重量%未満の不純物を含む)。
【0016】
本発明の別の態様は、本明細書に記載の結晶形と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0017】
本発明の別の態様は、治療有効量の本明細書に記載の結晶形または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、GABAA受容体を調節することを必要とする対象におけるGABAA受容体を調節する、方法を提供する。
【0018】
本発明の別の態様は、治療有効量の本明細書に記載の結晶形または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、GABAA受容体媒介CNS関連障害を調節することを必要とする対象におけるGABAA受容体媒介CNS関連障害を調節する、方法を提供する。
【0019】
本発明の別の態様は、治療有効量の本明細書に記載の結晶形または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、CNS関連障害を治療することを必要とする対象におけるCNS関連障害を治療する、方法を提供する。
【0020】
いくつかの実装では、上記CNS関連障害は、睡眠障害、気分障害、統合失調症スペクトラム障害、けいれん性障害、記憶及び/もしくは認知障害、運動障害、パーソナリティ障害、自閉症スペクトラム障害、痛み、外傷性脳損傷、血管疾患、薬物乱用障害及び/もしくは離脱症候群、耳鳴り、またはてんかん重積状態である。例えば、上記CNS関連障害は、気分障害である。別の例では、上記気分障害は、うつ病である。例えば、上記うつ病は、産後うつ病である。別の例では、上記うつ病は、大うつ病性障害である。例えば、上記大うつ病性障害は、中等度の大うつ病性障害である。そして、別の例では、上記大うつ病性障害は、重度の大うつ病性障害である。
【0021】
いくつかの実装では、上記CNS関連障害は、振戦(例えば、本態性振戦)である。
【0022】
いくつかの実装では、上記CNS関連障害は、発作である。
【0023】
いくつかの実装では、上記CNS関連障害は、てんかんである。
【0024】
いくつかの実装では、上記CNS関連障害は、てんかん重積状態である。例えば、上記てんかん重積状態は、けいれん性てんかん重積状態または非けいれん性てんかん重積状態である。いくつかの例では、上記てんかん重積状態は、初期てんかん重積状態、確定したてんかん重積状態、難治性てんかん重積状態、及び超難治性てんかん重積状態から選択されるけいれん性てんかん重積状態である。別の例では、上記てんかん重積状態は、全身性てんかん重積状態及び複雑部分てんかん重積状態から選択される非けいれん性てんかん重積状態である。
【0025】
本発明の別の態様は、有効量の本明細書に記載の結晶形または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、鎮静及び/または麻酔を導入することを必要とする対象に鎮静及び/または麻酔を導入するための方法を提供する。
【0026】
以下の図は例として提示されており、特許請求される発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】化合物(1)の形態S1の例示的なXRPDパターンを示す。
【0028】
【
図2】TG曲線及びDSC曲線を含む、化合物(1)の形態S1のTGA/DSC熱分析の例示的なサーモグラムを示す。
【0029】
【
図3】化合物(1)の形態S1の例示的な
13C固体NMRスペクトルを示す。
【0030】
【
図4】25℃における化合物(1)の形態S1の例示的なDVS等温線プロットを示す。
【0031】
【
図5】化合物(1)の形態S4の例示的なXRPDパターンを示す。
【0032】
【
図6】化合物(1)の形態S1(上)及び形態S4(下)の例示的なXRPDパターンを示す。
【0033】
【
図7】TG曲線及びDSC曲線を含む、化合物(1)の形態S4のTGA/DSC熱分析の例示的なサーモグラムを示す。
【0034】
【
図8】化合物(1)の形態S1と形態S4との間の関係を示すエナンチオトロピー図である。
【0035】
【
図9】化合物(1)の形態S4の例示的な
13C固体NMRスペクトルを示す。
【0036】
【
図10】化合物(1)の形態S1(実線)及び形態S4(破線)の例示的な
13C固体NMRスペクトルの重ね合わせを示す。
【0037】
【
図11】25℃における化合物(1)の形態S4の例示的なDVS等温線プロットを示す。
【0038】
【
図12】化合物(1)の形態S1及び形態S4の相互変換条件を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、一般に、化合物(1)の結晶形(例えば、無水結晶形)、その薬学的に許容される製剤、化合物(1)のそのような結晶形を調製する方法、及びGABA受容体活性の調節(例えば、ポジティブアロステリック調節)及び/またはCNS関連障害の治療のためのそのような結晶形の使用に関する。
【0040】
I.定義
【0041】
本明細書で使用される場合、「化合物(1)」は、以下の構造(または構造式)を有する化合物を指す。
【化2】
【0042】
本明細書で使用される場合、「XRPD」は、粉末X線回折を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「VT-XRPD」という用語は、可変温度XRPDを指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「XRPDパターン」及び「粉末X線回折パターン」という用語は互換的に使用され、サンプルによって異なる角度で散乱されたX線の強度のプロットを指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「IPA」はイソプロピルアルコールを指す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「TGA」は熱重量分析を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「DSC」は示差走査熱量測定を指す。
【0048】
本明細書で使用される場合、「NMR」は核磁気共鳴を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「DVS」は動的蒸気吸着を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「DCM」はジクロロメタンを指す
【0051】
本明細書で使用される場合、「EtOAc」は酢酸エチルを指す。
【0052】
本明細書で使用される場合、「MeOH」はメタノールを指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「MTBE」はメチルtert-ブチルエーテルを指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「RH」は相対湿度を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合、「RT」は室温を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「HPLC」は高圧液体クロマトグラフィーを指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「結晶性」は、高度に規則的な化学構造を有する固体、すなわち、結晶格子内に長距離の構造秩序を有する固体を指す。分子は、格子の3次元空間に規則的かつ周期的に配置される。本出願の目的上、「結晶形」、「単結晶形」、「結晶固体形」、及び「固体形」という用語は同義であり、互換的に使用され、これらの用語は、異なる特性を持つ結晶を区別する(例えば、異なるXRPD回折パターン、異なる13C SSNMRスペクトル、異なるDSCスキャン結果、及び/または異なるTGAスキャン結果)。
【0058】
「実質的に結晶性」という用語は、少なくとも特定の重量百分率が結晶性である形態を指す。特定の重量百分率は、70%、75%、80%、85%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または70%~100%の間の任意の百分率である。特定の実施形態では、結晶化度の特定の重量百分率は少なくとも90%である。特定の別の実施形態では、結晶化度の特定の重量百分率は少なくとも95%である。いくつかの実施形態では、化合物(1)は、本明細書に記載の結晶固体形態(例えば、形態S1及びS4)のいずれかの実質的に結晶性のサンプルであり得る。
【0059】
「実質的に純粋」という用語は、いかなる不純物も実質的に含まない化合物(1)の特定の結晶固体形態(例えば、形態S2または形態S4)の組成物及び/または化合物(1)のいずれか他の結晶もしくは固体形態に関する。いくつかの例では、化合物(1)の実質的に純粋な結晶(または固体)形態(例えば、形態S1または形態S4)またはそのサンプルは、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも94重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、または少なくとも少なくとも99.5重量%純粋である。いくつかの実施形態では、化合物(1)は、本明細書に記載の結晶固体形態(例えば、形態S1及びS4)のいずれかの実質的に純粋なサンプルであり得る。いくつかの実施形態では、化合物(1)は、実質的に純粋な形態S1であり得る。いくつかの実施形態では、化合物(1)は、実質的に純粋な形態S4であり得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、「無水」または「無水物」という用語は、化合物(1)の結晶形を指す場合、水のものを含む溶媒分子が結晶形の単位格子の一部を形成しないことを意味する。それにも関わらず、無水結晶形のサンプルは、無水結晶形の単位格子の一部を形成しない溶媒分子、例えば、結晶形の生成から残された残留溶媒を含み得る。好ましい実施形態では、溶媒は、無水形のサンプルの全組成の0.5重量%を構成することができる。より好ましい実施形態では、溶媒は、無水形のサンプルの全組成の0.2重量%を構成することができる。いくつかの実施形態では、化合物(1)の無水結晶形のサンプルは、溶媒分子を含まない(または非常に低レベル)、例えば、検出可能な量の溶媒を含まない。
【0061】
本明細書で使用される場合、「溶媒和物」という用語は、化合物(1)の結晶形を指す場合、溶媒分子、例えば、有機溶媒及び/または水が結晶形の単位格子の一部を形成することを意味する。溶媒として水を含む溶媒和物は、本明細書では「水和物」とも呼ばれる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「同形(isomorphic)」という用語は、化合物(1)の結晶形を指す場合、その形態が異なる化学成分を含むことができる、例えば、単位格子中に異なる溶媒分子を含むが、同一のXRPDパターンを有することを意味する。同形結晶形は、本明細書では「同形(isomorph)」と呼ばれることがある。
【0063】
本明細書に記載される化合物(1)の結晶性無水形、例えば、形態S1または形態S4は、特定の温度または温度範囲にわたって、1つ以上の転移(例えば、溶融、または溶融して別の結晶形に結晶化する)を受けることができる。このような特定の温度または温度範囲は、結晶形のDSC曲線における1つ以上の吸熱(各吸熱は開始温度(T開始)で表される)によって表すことができる。いくつかの実施形態では、このような開始温度で、化合物(1)の結晶形のサンプルは融解し、同時に起こる副工程、例えば、結晶化または化学分解を受ける。いくつかの実施形態では、このような開始温度では、同時に起こる他の工程が存在しない場合、化合物(1)の結晶形が融解する。
【0064】
化合物(1)の結晶形のXRPD回折パターンにおけるピークを指す場合の「特性ピーク」という用語は、0°~40°の範囲にわたる2θの値が全体として、化合物(1)の結晶形の1つに一意に割り当てられる特定のピークの集合を指す。
【0065】
II.化合物(1)の結晶(固体)形
【0066】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の分析方法によって示されるように、化合物(1)の結晶形を提供する。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形は無水である(例えば、形態S1及びS4)。化合物(1)及び化合物(1)の調製方法は、米国特許出願公開番号US20160083417、及びPCT出願公開番号WO2014169831に開示される。
【0067】
A.形態S1
【0068】
本発明は、化合物(1)の形態S1を提供し、
【化3】
これは、化合物(1)の安定した無水結晶形である。
【0069】
いくつかの実施形態では、形態S1は、粉末X線回折パターンにおいて15.4±0.3、15.6±0.3、18.1±0.3、18.8±0.3、及び22.6±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、上記結晶形は更に、粉末X線回折パターンにおいて9.4±0.3、11.9±0.3、22.2±0.3、及び23.4±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態S1は、粉末X線回折パターンにおいて15.4±0.3、15.6±0.3、18.1±0.3、18.8±0.3、22.6±0.3、9.4±0.3、11.9±0.3、22.2±0.3、及び23.4±0.3度で測定される2シータ値に対応するピークを特徴とする。
【0070】
いくつかの実施形態では、形態S1は、粉末X線回折パターンにおいて15.4±0.2、15.6±0.2、18.1±0.2、18.8±0.2、及び22.6±0.2度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、上記結晶形は更に、粉末X線回折パターンにおいて9.4±0.2、11.9±0.2、22.2±0.2、及び23.4±0.2度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態S1は、粉末X線回折パターンにおいて15.4±0.2、15.6±0.2、18.1±0.2、18.8±0.2、22.6±0.2、9.4±0.2、11.9±0.2、22.2±0.2、及び23.4±0.2度で測定される2シータ値に対応するピークを特徴とする。
【0071】
そして、いくつかの実施形態では、形態S1は、
図1に示されるXRPDパターンに示される全てまたは実質的に全てのピークを有する粉末X線回折パターンを特徴とする。例えば、形態S1は、以下の表2に記載の33個の特性ピークのうちの少なくとも15個(例えば、少なくとも20個、少なくとも25個、または少なくとも30個)を有する粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0072】
いくつかの実施形態では、形態S1は、約30℃の温度から開始して約2℃/分~約15℃/分(例えば、約5℃/分~12℃/分、約7℃/分~約10℃/分)の速度で加熱すると、約146℃~約157℃(例えば、約147℃~約156℃、約148℃~約156℃、約149℃~約156℃、または約150℃~約156℃)のT開始で吸熱を有する。いくつかの実施形態では、形態S1は、約30℃の温度から開始して約10℃/分の速度で加熱すると、約146℃~約157℃(例えば、約147℃~約156℃、約148℃~約156℃、約149℃~約156℃、または約150℃~約156℃)のT開始で吸熱を有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、形態S1は、
13C SSNMRスペクトルにおける200.0±0.3ppm、164.3±0.3ppm、81.3±0.3ppm、70.5±0.3ppm、及び62.2±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、結晶形S1は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける60.9±0.3ppm、60.0±0.3ppm、56.7±0.3ppm、47.8±0.3ppm、及び45.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形S1は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける42.6±0.3ppm、39.3±0.3ppm、38.3±0.3ppm、35.5±0.3ppm、25.8±0.3ppm、及び22.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形S1は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける200.0±0.3ppm、164.3±0.3ppm、81.3±0.3ppm、70.5±0.3ppm、62.2±0.3ppm、60.9±0.3ppm、60.0±0.3ppm、56.7±0.3ppm、47.8±0.3ppm、及び45.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形S1は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける42.6±0.3ppm、39.3±0.3ppm、38.3±0.3ppm、35.5±0.3ppm、25.8±0.3ppm、及び22.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、結晶形S1は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける200.0±0.3ppm、164.3±0.3ppm、81.3±0.3ppm、70.5±0.3ppm、62.2±0.3ppm、60.9±0.3ppm、60.0±0.3ppm、56.7±0.3ppm、47.8±0.3ppm、45.9±0.3ppm、42.6±0.3ppm、39.3±0.3ppm、38.3±0.3ppm、35.5±0.3ppm、25.8±0.3ppm、及び22.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。そして、いくつかの実施形態では、形態S1は、
図3に示される全てまたは実質的に全てのピークを有する
13C SSNMRスペクトルを特徴とする。例えば、形態S1は、以下の表3に記載の24の特性ピークのうちの少なくとも13個(例えば、少なくとも15個、少なくとも17個、少なくとも20個、または少なくとも22個)を有する
13C SSNMRスペクトルを特徴とする。
【0074】
B.形態S4
【0075】
本発明は、化合物(1)の安定した無水結晶形である化合物(1)の形態S4を提供する。
【0076】
いくつかの実施形態では、形態S4は、粉末X線回折パターンにおいて8.9±0.3、14.6±0.3、16.4±0.3、18.0±0.3、及び20.0±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、結晶形S4は更に、粉末X線回折パターンにおいて11.6±0.3、15.0±0.3、17.4±0.3、21.2±0.3、及び29.0±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、結晶形S4は更に、粉末X線回折パターンにおいて9.6±0.3、12.9±0.3、及び29.6±0.3度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態S4は、粉末X線回折パターンにおいて8.9±0.3、14.6±0.3、16.4±0.3、18.0±0.3、20.0±0.3、11.6±0.3、15.0±0.3、17.4±0.3、21.2±0.3、及び29.0±0.3度で測定される2シータ値に対応するピークを特徴とする。
【0077】
いくつかの実施形態では、形態S4は、粉末X線回折パターンにおいて8.9±0.2、14.6±0.2、16.4±0.2、18.0±0.2、及び20.0±0.2度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、結晶形S4は更に、粉末X線回折パターンにおいて11.6±0.2、15.0±0.2、17.4±0.2、21.2±0.2、及び29.0±0.2度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、結晶形S4は更に、粉末X線回折パターンにおいて9.6±0.2、12.9±0.2、及び29.6±0.2度で測定される2シータ値に対応する1つ以上のピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態S4は、粉末X線回折パターンにおいて8.9±0.2、14.6±0.2、16.4±0.2、18.0±0.2、20.0±0.2、11.6±0.2、15.0±0.2、17.4±0.2、21.2±0.2、及び29.0±0.2度で測定される2シータ値に対応するピークを特徴とする。
【0078】
そして、いくつかの実施形態では、形態S4は、
図5に示されるピークの全てまたは実質的に全てを有する粉末X線回折パターンを特徴とする。例えば、形態S4は、以下の表4に記載の18個の特性ピークのうちの少なくとも15個(例えば、少なくとも10個、少なくとも12個、または少なくとも15個)を有する粉末X線回折パターンを特徴とする。
【0079】
いくつかの実施形態では、形態S4は、約30℃の温度から開始して約2℃/分~約15℃/分(例えば、約5℃/分~12℃/分、または約7℃/分~約10℃/分)の速度で加熱すると、約160℃~約166℃(例えば、約161℃~約166℃、約162℃~約166℃、または約163℃~約165℃)のT開始で吸熱を有する。いくつかの実施形態では、形態S4は、約30℃の温度から開始して約10℃/分の速度で加熱した場合、約160℃~約166℃(例えば、約161℃~約166℃、約162℃~約166℃、または約163℃~約165℃)のT開始で吸熱を有する。そして、いくつかの実施形態では、結晶形は約200℃以上の温度で分解する。
【0080】
いくつかの実施形態では、形態S4は、
13C SSNMRスペクトルにおける200.2±0.3ppm、199.1±0.3ppm、162.8±0.3ppm、82.9±0.3ppm、82.1±0.3ppm、及び12.6±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、結晶形は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける70.4±0.3ppm、63.6±0.3ppm、49.7±0.3ppm、35.5±0.3ppm、及び15.5±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。別の実施形態では、結晶形は更に、
13C SSNMRスペクトルにおける62.9±0.3ppm、61.4±0.3ppm、60.6±0.3ppm、45.4±0.3ppm、及び37.9±0.3ppmに対応する1つ以上のピークを特徴とする。そして、いくつかの実施形態では、形態S4は、
図9に示されるピークの全てまたは実質的に全てを有する
13C SSNMRスペクトルを特徴とする。例えば、形態S4は、以下の表5に記載の34の特性ピークのうちの少なくとも12個(例えば、少なくとも15個、少なくとも20個、または少なくとも25個)を有する
13C SSNMRスペクトルを特徴とする。
【0081】
III.化合物(1)の結晶形の生成方法
【0082】
本発明の別の態様は、(a)化合物(1)を極性有機溶媒に溶解することと、(b)極性有機溶媒を非極性有機溶媒と交換してスラリーを生成することと、(c)スラリーを約50℃~70℃未満(例えば、約55℃~約65℃)の温度に加熱することと、(d)スラリーを周囲温度(例えば、約20℃~約30℃)まで冷却して、冷却されたスラリーを形成することと、(e)冷却したスラリーから結晶性化合物(1)を濾過して、化合物(1)の形態S1を生成することとを含む、化合物(1)の結晶性無水形の生成方法を提供する。
【0083】
本発明の別の態様は、(a)化合物(1)を極性有機溶媒に溶解することと、(b)極性有機溶媒を非極性有機溶媒と交換してスラリーを生成することと、(c)スラリーを70℃以上の温度に加熱することと、(d)スラリーを周囲温度(例えば、約20℃~約30℃)まで冷却して、冷却されたスラリーを形成することと、(e)冷却したスラリーから結晶性化合物(1)を濾過して、化合物(1)の形態S4を生成することとを含む、化合物(1)の結晶性無水形の生成方法を提供する。
【0084】
これらの方法のいくつかの実装では、交換ステップ(b)は、部分真空蒸留によって極性有機溶媒を除去し、非極性溶媒を加えることを含み、溶媒(複数可)と化合物(1)の混合物の総体積は実質的に一定のままである(例えば、混合物の総体積は、溶媒交換中に±約20%以下、±約15%以下、±約10%以下、または±約5%以下変化する)。
【0085】
これらの方法のいくつかの実装では、極性有機溶媒は、テトラヒドロフラン、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、ジクロロメタン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0086】
これらの方法のいくつかの実装では、非極性溶媒は、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ペンタン、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0087】
これらの方法のいくつかの実装は、ステップ(e)の濾過を行う前に、冷却されたスラリーを約5時間以下(例えば、約5時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約1時間以下、または約0.5時間以下)の期間保持(またはエージング)することを更に含む。
【0088】
IV.医薬組成物
【0089】
別の態様では、本発明は、「活性成分」、「活性医薬成分」、または「API」とも呼ばれる本発明の化合物の固体形態(すなわち、化合物(1))と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、医薬組成物は、有効量の活性成分を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の活性成分を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、予防有効量の活性成分を含む。
【0090】
本明細書で提供される医薬組成物は、経口(経腸)投与、非経口(注射による)投与、直腸投与、局所投与、経皮投与、皮内投与、くも膜下腔内投与、皮下(SC)投与、筋肉内(IM)投与、舌下/口腔、眼、耳、膣、及び鼻腔内または吸入投与(これらに限定されない)を含む様々な経路によって投与され得る。
【0091】
一般に、本明細書で提供される化合物(1)の固体形態は、有効量で投与される。実際に投与される化合物(1)の固体形態の量は、典型的には、治療される状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、反応、患者の症状の重症度などを含む関連状況に応じて医師によって決定される。
【0092】
CNS障害の発症を予防するために使用される場合、本明細書で提供される化合物(1)の固体形態は、典型的には、医師の助言及び監督の下、上記用量レベルで、症状を発症するリスクのある対象に投与される。特定の状態を発症するリスクのある対象は、一般に、その状態の家族歴がある対象、または遺伝子検査またはスクリーニングによってその状態を特に発症しやすいと特定された対象を含む。
【0093】
本明細書で提供される医薬組成物は、慢性的に投与することもできる(「慢性投与」)。慢性投与は、長期間、例えば、3か月、6か月、1年、2年、3年、5年などにわたる、または、例えば、対象の残りの生涯にわたって無期限に継続され得る、固体形態の化合物(1)またはその医薬組成物の投与を指す。特定の実施形態では、慢性投与は、例えば、長期間にわたって治療範囲内で、血中または脳中に一貫したレベルの化合物(1)を提供することを目的とする。
【0094】
本発明の医薬組成物は、更に、様々な投与方法を使用して送達され得る。例えば、特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、血中の化合物(1)の濃度を有効レベルまで上昇させるために、注射として与えられ得る。注射用量の配置は、体全体で望まれる活性成分の全身レベルに依存し、例えば、筋肉内または皮下注射用量は、活性成分のゆっくりとした放出を可能にする。
【0095】
経口投与用の組成物は、バルク液体溶液もしくは懸濁液、またはバルク粉末の形態をとることができる。しかし、より一般的には、正確な投与を容易にするために、組成物は単位剤形で提供される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物に対する単位剤形として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、適切な医薬賦形剤と関連して、所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性物質を含む。典型的な単位剤形は、液体組成物の予め充填され、予め計量されたアンプルもしくはシリンジ、あるいは固体組成物の場合には丸剤、錠剤、カプセルなどが含まれる。このような組成物では、化合物(1)の固体形態は、通常、微量成分(約0.1~約50重量%、好ましくは約1~約40重量%)であり、残りは、所望の剤形を形成するのに役立つ様々なビヒクルまたは賦形剤及び加工助剤である。
【0096】
経口投与の場合、1日あたり1~5回、特に2~4回、通常は3回の経口投与が代表的な投与計画である。これらの投与パターンを使用すると、各用量は、約0.01~約20mg/kg(例えば、約0.1~約10mg/kg、約0.2~約5mg/kg、約0.1~約1mg/kg、約0.2~約0.8mg/kg、約0.2~約0.7mg/kg、または約0.2~約0.5mg/kg)の本明細書で提供される化合物(1)の固体形態を提供する。いくつかの例では、結晶性化合物(1)(例えば、形態S1または形態S4)は、1日あたり経口用量当たり約10mg~約70mg(例えば、約15mg~約60mg、約25mg~約55mg、または約30mg~約50mg)の用量で投与される。
【0097】
経皮用量は、一般に、注射用量を使用して達成される血中レベルと同等またはより低い血中レベルを提供するように選択され、その量は、一般に、例えば、経皮パッチの薬物リザーバまたは薬物接着剤リザーバの約0.01~約20重量%の範囲、好ましくは約0.1~約20重量%の範囲、好ましくは約0.1~約10重量の範囲、より好ましくは約0.5~約15重量%の範囲である。
【0098】
固体組成物は、例えば、以下の成分のいずれか、または同様の性質の化合物(1)の固体形態を含み得る。その成分は、結合剤、界面活性剤、希釈剤もしくは充填剤、緩衝剤、付着防止剤、流動促進剤、親水性もしくは疎水性ポリマー、遅延剤(例えば、遅延放出剤)、分解防止剤または安定剤、崩壊剤及び超崩壊剤、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、充填剤、香料、着色剤、潤滑剤、吸着剤、保存剤、可塑剤、コーティング、もしくは甘味料、またはそれらの混合物である。例えば、賦形剤(複数可)は、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤、マンニトール、微結晶セルロース、マルトデキストリン、デンプンもしくはラクトースなどの希釈剤、アルギン酸、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、プリモゲル)、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、もしくはベヘン酸グリセリルなどの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素もしくはタルクなどの流動促進剤、ソルビン酸カリウムもしくはメチルパラベンなどの保存剤、ラウリル硫酸ナトリウム、ドキュセートナトリウム、ポリソルベート20、ポリソルベート80、臭化セチルトリエチルアンモニウム、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマー、もしくはCremophor ELなどの界面活性剤、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、クエン酸、トコフェロールもしくは酢酸トコフェロール、亜硫酸ナトリウム、もしくはメタ重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリレートコポリマー、酢酸セルロース、酢酸エチル、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、シェラックなどのうちの1つ以上を含むコーティング、スクロース、スクラロース、アセスルファムK、アスパルテームナトリウムもしくはサッカリンなどの甘味料、または、ペパーミント、サリチル酸メチル、チェリー、グレープ、レモン、またはオレンジ香料などの香料であり得る。周知の医薬賦形剤はいずれも剤形に組み込むことができ、FDA’s Inactive Ingredients Guide, Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Twenty-first Ed.,(Pharmaceutical Press,2005);Handbook of Pharmaceutical Excipients,Sixth Ed.(Pharmaceutical Press,2009)に記載され、その内容全体は、参照により組み込まれる。
【0099】
経皮組成物は、典型的には、有効成分(複数可)を含む局所用軟膏またはクリームとして配合される。軟膏として配合される場合、有効成分は通常、パラフィン系または水混和性軟膏基剤のいずれかと組み合わされる。あるいは、活性成分は、例えば、水中油型クリーム基剤を用いてクリームに配合され得る。このような経皮製剤は、当技術分野で周知であり、一般に、活性成分または製剤の皮膚浸透及び安定性を高めるための追加の成分を含む。このような既知の経皮製剤及び成分は全て、本明細書に提供される範囲内に含まれる。対象となる局所送達組成物は、ローション(スプレーローションを含む、外用を目的とした懸濁液または乳濁液の形態で不溶性物質を含む液体)、及び水溶液などの液体製剤、ゲル(分散相が分散媒と結合してゼリーなどの半固体状になったコロイド)、クリーム(柔らかい固体または濃い液体)、及び軟膏(軟質、粘稠な製剤)などの半固体製剤、及び局所パッチなどの固体製剤を含む。従って、対象となる送達ビヒクル成分は、水中油型(O/W)及び油中水型(W/O)の乳濁液、乳製液、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、セラム、粉末、マスク、パック、スプレー、エアゾール、スティック、及びパッチを含むが、これらに限定されない。
【0100】
本明細書で提供される化合物(1)の固体形態は、経皮装置によって投与することもできる。従って、経皮投与は、リザーバまたは膜タイプのパッチ、または粘着性マトリックスもしくは他のマトリックスの種類のいずれかのパッチを使用して達成することができる。対象となる送達組成物は、ローション(スプレーローションを含む、外用を目的とした懸濁液または乳濁液の形態で不溶性物質を含む液体)、及び水溶液などの液体製剤、ゲル(分散相が分散媒と結合してゼリーなどの半固体状になったコロイド)、クリーム(柔らかい固体または濃い液体)、及び軟膏(軟質、粘稠な製剤)などの半固体製剤、及び局所パッチなどの固体製剤を含む。従って、対象となる送達ビヒクル成分は、水中油型(O/W)及び油中水型(W/O)の乳濁液、乳製液、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、セラム、粉末、マスク、パック、スプレー、エアゾール、スティック、及びパッチを含むが、これらに限定されない。経皮パッチの場合、活性剤層は1つ以上の活性剤を含み、そのうちの1つは化合物(1)である。特定の実施形態では、マトリックスは、接着性マトリックスである。マトリックスは、ポリマー物質を含み得る。接着剤マトリックスに適したポリマーは、ポリウレタン、アクリレート、スチレン系ブロック共重合体、シリコーンなどを含むが、これらに限定されない。例えば、接着マトリックスは、アクリレートポリマー、ポリシロキサン、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン系ブロックポリマー、それらの組み合わせなどを含むが、これらに限定されない。接着剤の追加の例は、Satas,“Acrylic Adhesives,”Handbook of Pressure-Sensitive Adhesive Technology,2nd ed.,pp.396-456(D.Satas,ed.),Van Nostrand Reinhold,New York(1989)に記載され、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
特定の実施形態では、活性剤層は、浸透促進剤を含む。浸透促進剤は、オレイルアルコール及びラウリルアルコールなどの炭素数12~22の飽和または不飽和の高級アルコール(これらに限定されない)などの脂肪族アルコール、リノール酸、オレイン酸、リノレン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、及びパルミチン酸(これらに限定されない)などの脂肪酸、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、及びパルミチン酸イソプロピル(これらに限定されない)などの脂肪酸エステル、トリエタノールアミン、塩酸トリエタノールアミン、及びジイソプロパノールアミン(これらに限定されない)などのアルコールアミン、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジグリセロール、ポリグリセロール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ソルビタン、ソルビトール、イソソルビド、メチルグルコシド、オリゴ糖、及び還元性オリゴ糖などの多価アルコールのアルキルエーテル(これらに限定されない)などの多価アルコールアルキルエーテル(好ましくは、多価アルコールアルキルエーテルのアルキル基部分の炭素数は6~20である)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、及びポリオキシエチレンオレイルエーテル(これらに限定されない)などのアルキル基部分の炭素数が6~20であり、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位(例えば、-OCH2CH2-)の数が1~9であるポリオキシエチレンアルキルエーテル(これらに限定されない)などのポリオキシエチレンアルキルエーテル、6~18個の炭素原子を有する脂肪酸のグリセロールエステル、ジグリセリド、トリグリセリド(これらに限定されない)などのグリセリド(例えば、グリセロールの脂肪酸エステル)、またはそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックスは、ポリビニルピロリドンを含む。組成物は、1つ以上の充填剤または1つ以上の酸化防止剤を更に含み得る。いくつかの実施形態では、記載されている経皮製剤は多層構造を有することができる。例えば、経皮製剤は、接着性マトリックス及び裏打ちを有することができる。
【0102】
経口投与可能、注射可能または局所投与可能な組成物のための上記の成分は、単に代表的なものである。他の物質ならびに加工技術などは、Part 8 of Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,1985,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvaniaに記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0103】
本発明の化合物(1)の固体形態は、徐放性形態で、または徐放性薬物送達システムから投与することもできる。代表的な徐放性物質の説明は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載される。
【0104】
V.使用方法と治療法
【0105】
他の実施形態では、化合物(1)の結晶形は、1つ以上の同位体置換を含み得る。例えば、水素は、2H(Dもしくは重水素)または3H(Tもしくはトリチウム)であり得、炭素は、例えば、13Cまたは14Cであり得、酸素は、例えば、18Oであり得、窒素は、例えば、15Nなどであり得る。別の実施形態では、特定の同位体(例えば、3H、13C、14C、18Oまたは15N)は、化合物(1)の固体形態の特定の部位を占める元素の全同位体存在量の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または少なくとも99.9%を表すことができる。
【0106】
A.医薬組成物
【0107】
一態様では、本明細書では、本明細書に記載の化合物(1)の固体形態(例えば、形態S1または形態S4)及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。特定の実施形態では、化合物(1)の固体形態は、医薬組成物中に有効量で提供される。特定の実施形態では、化合物(1)の固体形態は、治療有効量で提供される。
【0108】
特定の実施形態では、医薬組成物は、有効量の活性成分を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の活性成分を含む。
【0109】
本明細書で提供される医薬組成物は、経口(経腸)投与、非経口(注射による)投与、直腸投与、経膣投与、経皮投与、皮内投与、くも膜下腔内投与、皮下(SC)投与、静脈内(IV)投与、筋肉内(IM)投与、及び鼻腔内投与(これらに限定されない)を含む様々な経路によって投与され得る。
【0110】
一般に、本明細書で提供される化合物(1)の固体形態は、有効量で投与される。実際に投与される化合物(1)の固体形態の量は、典型的には、治療される状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、反応、患者の症状の重症度などを含む状況に応じて医師によって決定される。
【0111】
CNS障害の発症を予防するために使用される場合、本明細書で提供される化合物は、典型的には、医師の助言及び監督の下、上記用量レベルで、症状を発症するリスクのある対象に投与される。特定の状態を発症するリスクのある対象は、一般に、その状態の家族歴がある対象、または遺伝子検査またはスクリーニングによってその状態を発症しやすいと特定された対象を含む。
【0112】
本明細書で提供される医薬組成物は、慢性的に投与することもできる(「慢性投与」)。慢性投与は、長期間、例えば、3か月、6か月、1年、2年、3年、5年などにわたる、または、例えば、対象の残りの生涯にわたって無期限に継続され得る、化合物またはその医薬組成物の投与を指す。特定の実施形態では、慢性投与は、例えば、長期間にわたって治療範囲内で血中の化合物の一定レベルを提供することを目的とする。
【0113】
本発明の医薬組成物は、更に、様々な投与方法を使用して送達され得る。例えば、特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、血中の化合物の濃度を有効レベルまで上昇させるために、ボーラスとして与えられ得る。ボーラス用量の配置は、体全体に望まれる有効成分の全身レベルに依存し、例えば、筋肉内または皮下のボーラス投与では有効成分の徐放が可能であるが、静脈に(例えば、静脈内点滴によって)直接送達されるボーラスでははるかに速い送達が可能となり、血中の有効成分の濃度が有効レベルまで迅速に上昇する。別の実施形態では、医薬組成物は、対象の体内の活性成分の定常状態濃度の維持を提供するために、例えば、静脈内点滴による持続注入として投与され得る。更に、別の実施形態では、医薬組成物は、最初にボーラス用量として投与され、続いて持続注入され得る。
【0114】
経口投与用の組成物は、バルク液体溶液もしくは懸濁液、またはバルク粉末の形態をとることができる。しかし、より一般的には、正確な投与を容易にするために、組成物は単位剤形で提供される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物に対する単位剤形として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、適切な医薬賦形剤と関連して、所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性物質を含む。典型的な単位剤形は、液体組成物の予め充填され、予め計量されたアンプルもしくはシリンジ、あるいは固体組成物の場合には丸剤、錠剤、カプセルなどが含まれる。このような組成物では、化合物は、通常、微量成分(約0.1~約50重量%、好ましくは約1~約40重量%)であり、残りは、所望の剤形を形成するのに役立つ様々なビヒクルまたは賦形剤及び加工助剤である。
【0115】
経口投与の場合、1日あたり1~5回、特に2~4回、通常は3回の経口投与が代表的な投与計画である。これらの投与パターンを使用すると、各用量は本明細書で提供される化合物の約0.01~約20mg/kgを提供し、好ましい用量はそれぞれ約0.1~約10mg/kg、特に約1~約5mg/kgを提供する。
【0116】
経皮用量は、一般に、注射用量を使用して達成される血中レベルと同等またはより低い血中レベルを提供するように選択され、その量は、一般に、約0.01~約20重量%の範囲、好ましくは約0.1~約20重量%の範囲、好ましくは約0.1~約10重量の範囲、より好ましくは約0.5~約15重量%の範囲である。
【0117】
注射用量レベルは、約0.1mg/kg/時間~少なくとも20mg/kg/時間の範囲であり、全て約1~約120時間、特に24~96時間である。適切な定常状態レベルを達成するために、約0.1mg/kg~約10mg/kg以上の事前負荷ボーラスを投与することもできる。最大総用量は、体重40~80kgのヒト患者の場合、1日あたり約5gを超えることはないと予想される。
【0118】
経口投与に適した液体形態は、緩衝剤、懸濁剤及び分散剤、着色剤、香料などを含む適切な水性または非水性ビヒクルを含み得る。固体形態は、例えば、以下の成分のいずれか、または同様の性質の化合物を含み得る。その成分は、微結晶セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなどの結合剤、デンプンまたは乳糖などの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル、またはコーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤、スクロースもしくはサッカリンなどの甘味料、またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料などの香料である。
【0119】
注射可能な組成物は、典型的には、注射可能な滅菌生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、または当技術分野で周知の他の注射可能な賦形剤に基づいている。前と同様に、このような組成物中の活性化合物は典型的には微量成分であり、しばしば約0.05~10重量%であり、残りは注射可能な賦形剤などである。
【0120】
経皮組成物は、典型的には、有効成分(複数可)を含む局所用軟膏またはクリームとして配合される。軟膏として配合される場合、有効成分は通常、パラフィン系または水混和性軟膏基剤のいずれかと組み合わされる。あるいは、活性成分は、例えば、水中油型クリーム基剤を用いてクリームに配合され得る。このような経皮製剤は、当技術分野で周知であり、一般に、活性成分または製剤の皮膚浸透または安定性を高めるための追加の成分を含む。このような既知の経皮製剤及び成分は全て、本明細書に提供される範囲内に含まれる。
【0121】
本明細書で提供される化合物は、経皮装置によって投与することもできる。従って、経皮投与は、リザーバまたは多孔質膜タイプ、または固体マトリックスの種類のいずれかのパッチを使用して達成することができる。
【0122】
経口投与可能、注射可能または局所投与可能な組成物のための上記の成分は、単に代表的なものである。他の物質や加工技術などは、Part 8 of Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th edition,1985,Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvaniaに記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
本発明の化合物は、徐放性形態で、または徐放性薬物送達システムから投与することもできる。代表的な徐放性物質の説明は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載される。
【0124】
本発明はまた、本発明の化合物の薬学的に許容される酸付加塩にも関する。薬学的に許容される塩を調製するために使用され得る酸は、非毒性の酸付加塩、すなわち、薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩(例えば、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩、パラトルエンスルホン酸塩など)を形成するものである。
【0125】
別の態様では、本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物、例えば、静脈内(IV)投与などの注射に適した組成物を提供する。
【0126】
薬学的に許容される賦形剤は、所望の特定の剤形、例えば、注射に適した、あらゆる希釈剤または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、保存剤、潤滑剤などを含む。医薬組成物薬剤の配合及び/または製造における一般的な考慮事項は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)、及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition(Lippincott Williams & Wilkins,2005)に記載される。
【0127】
例えば、滅菌注射用水性懸濁液などの注射可能な製剤は、適切な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を使用して公知技術に従って配合され得る。使用できる賦形剤の例は、水、滅菌生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、またはリン酸塩(緩衝食塩水リンゲル液)を含むが、これらに限定されない。
【0128】
特定の実施形態では、医薬組成物は、シクロデキストリン誘導体を更に含む。最も一般的なシクロデキストリンは、それぞれ6、7、及び8個のα-1,4-結合グルコース単位からなるα-、β-、及びγ-シクロデキストリンであり、必要に応じて、結合された糖部分上に1つ以上の置換基を含み、これは、置換または非置換のメチル化、ヒドロキシアルキル化、アシル化、及びスルホアルキルエーテル置換を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、シクロデキストリンは、スルホアルキルエーテルβ-シクロデキストリン、例えば、CAPTISOL(登録商標)としても知られるスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンである。例えば、U.S.5,376,645を参照する。特定の実施形態では、組成物は、ヘキサプロピル-β-シクロデキストリンを含む。より特定の実施形態では、組成物はヘキサプロピル-β-シクロデキストリン(水中10~50%)を含む。
【0129】
注射可能な組成物は、例えば、細菌保持フィルタを通した濾過によって、または使用前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体に溶解または分散できる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0130】
一般に、本明細書で提供される化合物は、有効量で投与される。実際に投与される化合物の量は、典型的には、治療される状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、反応、患者の症状の重症度などを含む状況に応じて医師によって決定される。
【0131】
正確な投与を容易にするために、組成物は単位剤形で提供される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳動物に対する単位剤形として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、適切な医薬賦形剤と関連して、所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性物質を含む。典型的な単位剤形は、液体組成物の充填済み、計量済みのアンプルまたはシリンジを含む。このような組成物では、化合物は、通常、微量成分(約0.1重量%~約50重量%、好ましくは約1重量%~約40重量%)であり、残りは、所望の剤形を形成するのに役立つ様々なビヒクルまたは担体及び加工助剤である。
【0132】
本明細書で提供される化合物は、単独の活性剤として投与することができ、または他の活性剤と組み合わせて投与することができる。一態様では、本発明は、本発明の化合物と別の薬学的に活性な薬剤との組み合わせを提供する。組み合わせた投与は、例えば、個別投与、逐次投与、同時投与、及び交互投与を含む、当業者に明らかな任意の技術によって進めることができる。
【0133】
本明細書に提供される医薬組成物の説明は主にヒトへの投与に適した医薬組成物を対象とするが、そのような組成物が一般にあらゆる種類の動物への投与に適していることは当業者には理解されるであろう。ヒトへの投与に適した医薬組成物を様々な動物への投与に適したものにするための修飾はよく理解されており、通常の熟練した獣医薬理学者は、通常の実験を用いてそのような修飾を設計及び/または実行することができる。医薬組成物の配合及び/または製造における一般的な考慮事項は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 21st ed.,Lippincott Williams & Wilkins,2005に記載される。
【0134】
一態様は、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物(例えば、固体組成物)を含むキットを提供する。
【0135】
B.組み合わせ療法
【0136】
化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)は、追加の薬剤または治療法と組み合わせて投与され得る。本明細書に開示される化合物を投与される対象は、別の薬剤または療法による治療から恩恵を受けるであろう疾患、障害もしくは状態、あるいはその症状を有し得る。組み合わせ療法は、それぞれが別々に配合され投与される2つ以上の薬剤を投与することによって、または単一の製剤中で2つ以上の薬剤を投与することによって達成され得る。いくつかの実施形態では、組み合わせ療法における2つ以上の薬剤を同時に投与することができる。別の実施形態では、組み合わせ療法における2つ以上の薬剤は別々に投与される。例えば、第1薬剤(または薬剤の組み合わせ)の投与は、第2薬剤(または薬剤の組み合わせ)の投与に数分、数時間、数日、または数週間先行することができる。従って、2つ以上の薬剤は、相互に数分以内、または相互に1、2、3、6、9、12、15、18、もしくは24時間以内、または相互に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14日以内、または相互に2、3、4、5、6、7、8、9週間以内に投与することができる。場合によっては、更に長い間隔も可能である。多くの場合、組み合わせ療法で使用される2つ以上の薬剤が同時に患者の体内に存在することが望ましいが、そうである必要はない。
【0137】
組み合わせ療法はまた、成分薬剤の異なる配列を使用して、組み合わせで使用される1つ以上の薬剤の2回以上の投与を含み得る。例えば、薬剤Xと薬剤Yを組み合わせて使用する場合、それらを任意の組み合わせで1回以上、例えば、X-Y-X、X-X-Y、Y-X-Y、Y-Y-X、X-X-Y-Yなどの順序で連続的に投与することができる。追加の薬剤の例は以下に記載される。
【0138】
1.選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)
【0139】
いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物は、SSRI(複数可)と組み合わせて投与される。SSRIは、脳内のセロトニンのレベルを高める抗うつ薬を含む。例示的なSSRIは、シタロプラム(Celexa)、エスシタロプラム(Lexapro)、フルオキセチン(Prozac)、フルボキサミン(Luvox)、パロキセチン(Paxil)、及びセルトラリン(Zoloft)を含むが、これらに限定されない。
【0140】
2.MAO阻害剤(MAOI)
【0141】
いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物は、MAOI(複数可)と組み合わせて投与される。MAOIは、脳内のモノアミンオキシダーゼ活性を阻害する抗うつ薬を含む。例示的なMAOIは、イソカルボキサジド(Marplan)、フェネルジン(Nardil)、セレギリン(Emsam)、及びトラニルシプロミン(parnate)を含むが、これらに限定されない。
【0142】
3.ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(NERI)
【0143】
いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物は、NERI(複数可)と組み合わせて投与される。例示的なNERIは、アトモキセチン(Strattera)、レボキセチン(Edronax、Vestra)、ブプロピオン(Wellbutrin、Zyban)、デュロキセチン、デシプラミン(ノルプラミン)、アメダリン(UK-3540-1)、ダレダリン(UK-3557-15)、エディボキセチン(LY-2216684)、エスレボキセチン、ロルタラミン(LM-1404)、ニソキセチン(LY-94,939)、タロプラム(タスロプラム)(Lu 3-010)、タルスプラム(Lu 5-005)、タンダミン(AY-23,946)、及びビロキサジン(Vivalan)を含むが、これらに限定されない。
【0144】
4.抗精神病薬
【0145】
いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物は、抗精神病薬剤(複数可)と組み合わせて投与される。抗精神病薬は、ドーパミン経路におけるドーパミン作動性神経伝達を低下させるD2アンタゴニストを含む。例示的な抗精神病薬は、アセナピン(Saphris)、アリピプラゾール(Abilify)、カリプラジン(Vrayar)、クロザピン(Clozaril)、ドロペリドール、フルペルラピン、メソリダジン、ヘミフマル酸クエチアピン、ラクロプリド、スピペロン、スルピリド、トリメトベンズアミド塩酸塩、トリフルオペラジン二塩酸塩、ルラシドン(Latuda)、オランザピン(Zyprexa)、クエチアピン(Seroquel)、ゾテピン、リスペリドン(Risperdal)、ジプラシドン(Geodon)、メソチダジン、塩酸クロルプロマジン、及びハロペリドール(Haldol)を含むが、これらに限定されない。
【0146】
5.カンナビノイド
【0147】
いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物は、カンナビノイド(複数可)と組み合わせて投与される。例示的なカンナビノイドは、カンナビジオール(Epidiolex)、テトラヒドロカンナビノール酸、テトラヒドロカンナビノール、カンナビドール酸、カンナビノール、カンナビゲロール、カンナビクロメン、テトラヒドロカンナビバリン、及びカンナビジバリンを含むが、これらに限定されない。
【0148】
6.NMDA受容体拮抗薬
【0149】
いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物は、NMDA受容体拮抗薬(複数可)と組み合わせて投与される。NMDA受容体拮抗薬は、N-メチル-d-アスパラギン酸受容体の作用を阻害する薬物のクラスである。例示的なNMDA拮抗薬は、ケタミン、エスケタミン、ケトベミドン、イフェンドプリル、5,7-ジクロロキヌレン酸、リコチネル、メマンチン、ガベスチネル、フェンシクリジン、デキストロメトルファン、レマセミド、セルフォテル、チレタミン、デキストロプロポキシフェン、アプチガネル、デキサナビノール、及びアマンタジンを含むが、これらに限定されない。NMDA受容体拮抗薬はまた、メタドン、デキストロプロポキシフェン、ペチジン、レボルファノール、トラマドール、ネラメキサン、及びケトベミドンなどのオピオイドも含む。
【0150】
7.GABA受容体作動薬
【0151】
いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物は、GABA受容体作動薬(複数可)(例えば、GABAA受容体作動薬)と組み合わせて投与される。GABA受容体作動薬は、1つ以上のGABA受容体の作動薬である薬物または化合物のクラスである。例示的なGABA受容体作動薬は、クロバザム、トピラメート、ムシモール、プロガビド、リルゾール、バクロフェン、ガバペンチン、ビガバトリン、バルプロ酸、チアガビン、ラモトリギン、プレガバリン、フェニトイン、カルバマゼピン、チペンタール、チアミラール、ペントバルビタール、セコバルビタール、ヘキソバルビタール、ブトバルビタール、アモバルビタール、バルビタール、メホバルビタール、フェノバルビタール、プリミドン、ミダゾラム、トリアゾラム、ロメタゼパム、フルタゾラム、ニトラゼパム、フルリトラゼパム、ニメタゼパム、ジアゼパム、メダゼパム、オキサゾラム、プラゼアム、トフィソパム、リルマザフォノエ、ロラゼパム、テマゼパム、オキサゼパム、フルイダゼパム、クロルジザエポキシド、クロキサゾラム、フルトプラゼパム、アルプラゾラム、エスタゾラム、ブロマゼパム、フルラゼパム、クロラゼプ酸カリウム、ハロキサゾラム、ロフラゼプ酸エチル、カゼパム、クロナゼパム、メキサゾラム、エチゾラム、ブロチゾラム、クロチザエパム、プロポフォール、フォスプロポフォール、ゾルピデム、ゾピクロン、エグゾピクロン、ムシモール、TFQP/ガボクサドール、イソグバシン、コウジアミン、GABA、ホモタウリン、ホモヒポタウリン、トランス-アミノシクロペンタン-3-カルボン酸、トランス-アミノ-4-クロトン酸、b-グアニジノプロピオン酸、ホモ-b-プロリン、イソニペコチン酸、3-((アミノイミノメチル)チオ)-2-プロペン酸(ZAP A)、イミダゾール酢酸、及びピペリジン-4-スルホン酸(P4S)を含むが、これらに限定されない。
【0152】
8.コリンエステラーゼ阻害剤
【0153】
いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物は、コリンエステラーゼ阻害剤(複数可)と組み合わせて投与される。一般に、コリン作動薬は、アセチルコリン及び/またはブチリルコリンの作用を模倣する化合物である。コリンエステラーゼ阻害剤は、アセチルコリンの分解を防止する薬物のクラスである。例示的なコリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル(Aricept)、タクリン(Cognex)、リバスチグミン(Exelon、Exelon Patch)、ガランタミン(Razadyne、Reminyl)、メマンチン/ドネペジル(Namzaric)、アンベノニウム(Mytelase)、ネオスチグミン(Bloxiverz)、ピリドスチグミン(Mestinon Timespan、Regonol)、及びガランタミン(Razadyne)を含むが、これらに限定されない。
【0154】
本開示は、とりわけ、気管支筋/気道弛緩剤、抗ウイルス剤、酸素剤、抗体、及び抗菌剤からなる群から選択される薬剤を以前に投与された対象への、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物の投与も企図する。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはこれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはこれらの任意の組み合わせ)を含む組成物を投与する前に、気管支筋/気道弛緩剤、抗ウイルス剤、酸素剤、抗体、及び抗菌剤からなる群から選択される追加剤を対象に投与する。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはこれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはこれらの任意の組み合わせ)を含む組成物を、気管支筋/気道弛緩剤、抗ウイルス薬、酸素剤、及び抗菌剤から選択される薬剤と対象に同時投与する。
【0155】
C.使用方法及び治療方法
【0156】
一態様では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはこれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはこれらの任意の組み合わせ)を含む組成物は、治療を必要とする対象(例えば、レット症候群、脆弱X症候群、またはアンジェルマン症候群を有する対象)におけるCNS関連障害(例えば、睡眠障害、うつ病などの気分障害、統合失調症スペクトラム障害、けいれん性障害、てんかん誘発、記憶及び/もしくは認知の障害、運動障害、パーソナリティ障害、自閉症スペクトラム障害、痛み、外傷性脳損傷、血管疾患、薬物乱用障害及び/もしくは離脱症候群、または耳鳴り)を治療するための1つ以上の治療薬として有用であることが想定される。GABA調節に関連する典型的なCNS状態は、睡眠障害[例えば、不眠症]、気分障害[例えば、うつ病(例えば、大うつ病性障害(MDD))]、気分変調性障害(例えば、軽度のうつ病)、双極性障害(例えば、I及び/もしくはII)、不安障害(例えば、全般性不安障害(GAD)、社会不安障害)、治療抵抗性うつ病(TRD)、ストレス、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、強迫性障害(例えば、強迫性障害(OCD))]、統合失調症スペクトラム障害[例えば、統合失調症、統合失調感情障害]、けいれん性障害[例えば、てんかん(例、てんかん重積状態(SE))、発作]、記憶及び/もしくは認知の障害[例えば、注意障害(例、注意欠陥多動性障害(ADHD))、認知症(例、アルツハイマー型認知症、ルイス小体型認知症、血管型認知症])、運動障害[例えば、ハンチントン病、パーキンソン病]、パーソナリティ障害[例えば、反社会性パーソナリティ障害、強迫性パーソナリティ障害]、自閉症スペクトラム障害(ASD)[例えば、自閉症、シナプトファシーなどの自閉症の単一遺伝的原因、例えば、レット症候群、脆弱X症候群、アンジェルマン症候群]、痛み[例えば、神経障害性疼痛、傷害関連疼痛症候群、急性痛、慢性痛]、外傷性脳損傷(TBI)、血管疾患[例えば、脳卒中、虚血、血管奇形]、薬物乱用障害及び/または離脱症候群[例えば、アヘン剤、コカイン、及び/もしくはアルコールの追加]、ならびに耳鳴りを含むが、これらに限定されない。
【0157】
特定の実装では、上記CNS関連障害は、睡眠障害、気分障害、統合失調症スペクトラム障害、けいれん性障害、記憶及び/もしくは認知障害、運動障害、パーソナリティ障害、自閉症スペクトラム障害、痛み、外傷性脳損傷、血管疾患、薬物乱用障害及び/もしくは離脱症候群、耳鳴り、またはてんかん重積状態である。特定の実施形態では、CNS関連障害は、うつ病である。特定の実施形態では、CNS関連障害は、産後うつ病である。特定の実施形態では、CNS関連障害は、大うつ病性障害である。特定の実施形態では、大うつ病性障害は、中等度の大うつ病性障害である。特定の実施形態では、大うつ病性障害は、重度の大うつ病性障害である。
【0158】
一態様では、治療を必要とする対象に有効量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を投与することを含む、対象における発作活動を緩和または予防する方法が提供される。いくつかの実施形態では、該方法は、てんかん誘発を緩和または予防する。
【0159】
更に、別の態様では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)と別の薬理活性薬剤との組み合わせが提供される。本明細書で提供される化合物は、単独の活性剤として投与することができ、または他の薬剤と組み合わせて投与することができる。組み合わせた投与は、例えば、個別投与、逐次投与、同時投与、及び交互投与を含む、当業者に明らかな任意の技術によって進めることができる。
【0160】
別の態様では、有効量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を対象に投与することを含む、脳の興奮に関連する状態に罹りやすい、または脳の興奮に関連する状態に悩まされている対象における脳の興奮を治療または予防する方法が提供される。
【0161】
更に、別態様では、治療を必要とする対象に有効量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)またはその医薬組成物を投与することを含む、対象におけるストレスまたは不安を治療または予防する方法が提供される。
【0162】
更に、別の態様では、治療を必要とする対象に有効量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)またはその医薬組成物を投与することを含む、対象における不眠症を緩和または予防する方法が提供される。
【0163】
更に、別の態様では、睡眠を誘発し、通常の睡眠で見られるレム睡眠のレベルを実質的に維持する方法が提供され、該方法は、実質的なリバウンド不眠症を誘発せず、有効量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を投与することを含む。
【0164】
更に、別の態様では、治療を必要とする対象に有効量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を投与することを含む、対象における月経前症候群(PMS)または産後うつ病(PND)を緩和または予防する方法が提供される。
【0165】
更に、別の態様では、治療を必要とする対象に有効量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を投与することを含む、対象における気分障害を治療または予防する方法が提供される。特定の実施形態では、気分障害は、うつ病である。
【0166】
更に、別の態様では、治療有効量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を対象に投与することによる、認知増強または記憶障害の治療方法が提供される。特定の実施形態では、この障害は、アルツハイマー病である。特定の実施形態では、この障害はレット症候群である。
【0167】
更に、別の態様では、治療有効量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を対象に投与することによる、注意障害の治療方法が提供される。特定の実施形態では、注意障害は、ADHDである。
【0168】
中枢神経系(CNS)の炎症(神経炎症)は、全ての神経疾患の特徴であると認識されている。主な炎症性神経障害は、多発性硬化症(ミエリンタンパク質に対する免疫媒介反応を特徴とする)、髄膜脳炎(感染性因子が炎症反応を引き起こす)を含む。追加の科学的証拠は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、及び外傷性脳損傷などの他の神経学的状態における炎症メカニズムの潜在的な役割を示唆している。一態様では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)は、神経炎症の治療に有用である。別の実施形態では、本発明の結晶形は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、及び外傷性脳損傷を含む神経学的状態における炎症の治療に有用である。
【0169】
特定の実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)は、対象に慢性的に投与される。特定の実施形態では、化合物は、経口、皮下、筋肉内、または静脈内に対象に投与される。
【0170】
1.神経内分泌障害及び機能不全
【0171】
本明細書では、神経内分泌障害及び機能不全を治療するために使用できる方法が提供される。本明細書で使用される場合、「神経内分泌障害」または「神経内分泌機能不全」とは、脳に直接関係する身体のホルモン産生の不均衡によって引き起こされる様々な状態を指す。神経内分泌障害は、神経系と内分泌系の間の相互作用が関係する。視床下部と下垂体はホルモンの生成を調節する脳の2つの領域であるため、外傷性脳損傷などによる視床下部または下垂体の損傷は、ホルモンの生成及び脳の他の神経内分泌機能に影響を与える可能性がある。いくつかの実施形態では、神経内分泌障害または機能不全は、女性の健康障害または状態(例えば、本明細書に記載の女性の健康障害または状態)に関連している。いくつかの実施形態では、神経内分泌障害または機能不全は、女性の健康障害または多嚢胞性卵巣症候群に関連している。
【0172】
神経内分泌障害の症状は、行動的、感情的、及び睡眠関連の症状、生殖機能に関連した症状、身体症状(疲労、記憶力の低下、不安、うつ病、体重の増減、情緒不安定、集中力の欠如、注意力の低下、脂質の減少、不妊症、無月経、筋肉量の減少、腹部の体脂肪の増加、低血圧、心拍数の低下、脱毛、貧血、便秘、寒冷不耐性、乾燥肌を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない。
【0173】
2.神経変性疾患及び障害
【0174】
本明細書に記載の方法は、神経変性疾患及び障害を治療するために使用され得る。「神経変性疾患」という用語は、ニューロンの構造もしくは機能の進行性の喪失、またはニューロンの死に関連する疾患及び障害を含む。神経変性疾患及び障害は、アルツハイマー病(軽度、中等度、または重度の認知障害の関連症状を含む)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、酸素欠乏性及び虚血性損傷、運動失調及びけいれん(統合失調感情障害または統合失調症の治療に使用される薬剤によって引き起こされる発作の治療及び予防含む)、良性物忘れ、脳浮腫、マクロード神経表皮細胞症症候群(MLS)を含む小脳失調症、閉鎖性頭部損傷、昏睡、打撲傷(例えば、脊髄損傷、及び頭部損傷)、多発梗塞性認知症及び老人性認知症を含む認知症、意識障害、ダウン症、薬物誘発性もしくは薬物誘発性のパーキンソニズム(神経弛緩薬誘発性の急性アカシジア、急性ジストニア、パーキンソニズムもしくは遅発性ジスキネジア、神経弛緩薬性悪性症候群、または薬物誘発性の姿勢振戦など)、てんかん、脆弱X症候群、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、頭部外傷、聴力障害及び聴力損失、ハンチントン病、レノックス症候群、レボドパ誘発性ジスキネジー、精神遅滞、無動及び運動不能(固縮)症候群を含む運動障害(大脳基底核石灰化、皮質基底核変性、多系統萎縮症、パーキンソン病-ALS認知症複合体、パーキンソン病、脳炎後パーキンソン病、及び進行性核上性麻痺を含む)、筋肉のけいれん及び筋肉のけい縮または筋力低下に関連する障害(良性遺伝性舞踏病、薬物誘発性舞踏病、半球症、ハンチントン病、神経棘赤球症、シデナム舞踏病、及び症候性舞踏病など)、ジスキネジア(複雑チック、単純チック、及び症候性チックなどのチックを含む)、ミオクローヌス(全身性ミオクローヌス及び限局性サイロクローヌスを含む)、振戦(安静時振戦、姿勢振戦、及び意思振戦など)及びジストニア(軸性ジストニア、ジストニア性書痙、片麻痺性ジストニア、発作性ジストニア、及び眼瞼けいれん、口下顎ジストニア、発作性発声障害及び斜頸などの局所性ジストニアを含む)、眼球損傷、網膜症、または目の黄斑変性症を含む神経細胞の損傷、脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、出血性脳卒中、脳虚血、脳血管けいれん、低血糖、健忘、低酸素、酸素欠乏、周産期仮死及び心停止に続く神経毒性損傷、パーキンソン病、発作、てんかん重積状態、脳卒中、耳鳴り、尿細管硬化症、及びウイルス感染による神経変性(例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)及び脳症によって引き起こされる)を含むが、これらに限定されない。神経変性疾患は、脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、出血性脳卒中、脳虚血、脳血管けいれん、低血糖、健忘、低酸素、酸素欠乏、周産期仮死及び心停止に続く神経毒性損傷を含むが、これらに限定されない。神経変性疾患を治療または予防する方法はまた、神経変性疾患に特徴的な神経機能の喪失を治療または予防することも含む。
【0175】
3.気分障害
【0176】
臨床的うつ病、産後うつ病もしくは産後抑鬱、周産期うつ病、非定型うつ病、メランコリックうつ病、精神病性大うつ病、緊張型うつ病、季節性感情障害、気分変調、二重うつ病、うつ病性パーソナリティ障害、反復性短期うつ病、軽度うつ病、双極性障害もしくは躁うつ病、慢性疾患によって引き起こされるうつ病、治療抵抗性うつ病、難治性うつ病、自殺傾向、自殺念慮、または自殺行動などの気分障害を治療する方法も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、うつ病(例えば、中等度または重度のうつ病)に苦しむ対象に治療効果を提供する。いくつかの実施形態では、気分障害は、本明細書に記載の疾患または障害(例えば、神経内分泌疾患及び障害、神経変性疾患及び障害(例えば、てんかん)、運動障害、振戦(例えば、パーキンソン病)、女性の健康障害または状態)に関連している。
【0177】
臨床的うつ病は、大うつ病、大うつ病性障害(MDD)、重度うつ病、単極性うつ病、単極性障害、再発性うつ病としても知られ、自尊心の低下と、通常は楽しい活動に対する興味や楽しみの喪失を伴う、広範かつ持続的な気分の落ち込みを特徴とする精神障害を指す。臨床的うつ病を有する人の中には、睡眠障害があり、体重が減少し、一般的に興奮してイライラしている人もいる。臨床的うつ病は、個人の感じ方、考え方、行動に影響を与え、様々な感情的及び身体的問題を引き起こす可能性がある。臨床的うつ病を有する人は、日常生活に支障をきたし、人生には生きる価値がないかのように感じることがある。
【0178】
周産期うつ病は、妊娠中のうつ病を指します。症状は、イライラ、泣く、落ち着かない、睡眠障害、極度の疲労(感情的及び/または肉体的)、食欲の変化、集中力の低下、不安及び/または心配の増大、赤ちゃん及び/または胎児からの切り離し感、及び以前は楽しかった活動への興味の喪失を含む。
【0179】
産後うつ病(PND)は、産後抑鬱(PPD)とも呼ばれ、出産後の女性に影響を及ぼす臨床的うつ病の一種を指す。症状は、悲しみ、疲労、睡眠と食習慣の変化、性的欲求の低下、泣くこと、不安、及び過敏症を含む。いくつかの実施形態では、PNDは、治療抵抗性うつ病(例えば、本明細書に記載の治療抵抗性うつ病)である。いくつかの実施形態では、PNDは、難治性うつ病(例えば、本明細書に記載の難治性うつ病)である。
【0180】
いくつかの実施形態では、PNDを有する対象は、妊娠中にうつ病、またはうつ病の症状も経験した。このうつ病は、本明細書では周産期うつ病と呼ばれる。一実施形態では、周産期うつ病を経験している対象は、PNDを経験するリスクが高くなる。
【0181】
非定型うつ病(AD)は、気分反応性(例えば、逆説的快感消失)及び積極性、大幅な体重増加または食欲の増加を特徴とする。アルツハイマー病に苦しむ患者はまた、過剰な眠気または傾眠(過眠症)、手足の重さの感覚、及び対人拒絶に対する過敏症の結果として重大な社会的障害を引き起こす可能性がある。
【0182】
メランコリー性うつ病は、ほとんどまたは全ての活動における喜びの喪失(無快感症)、楽しい刺激に対する反応の失敗、悲しみまたは喪失感よりも顕著な抑うつ気分、過度の体重減少、または過度の罪悪感を特徴とする。
【0183】
精神病性大うつ病(PMD)または精神病性うつ病は、個人が妄想及び幻覚などの精神病症状を経験する、特にメランコリックな性質の大うつ病エピソードを指す。
【0184】
緊張型うつ病は、運動行動の障害及び他の症状を伴う大うつ病を指す。個人は口をきけなくなり、昏迷状態になり、動けなくなるか、目的のない、または奇妙な動きを示すことがある。
【0185】
季節性感情障害(SAD)は、季節性うつ病の一種を指し、個人では秋または冬にうつ病エピソードの季節的パターンが発生する。
【0186】
気分変調は、単極性うつ病に関連する状態を指し、同様の身体的及び認知的問題が明らかである。それらはそれほど深刻ではなく、より長く続く傾向がある(例えば、少なくとも2年)。
【0187】
二重うつ病は、少なくとも2年間続き、大うつ病の期間が中断される、かなり憂鬱な気分(気分変調)を指す。
【0188】
うつ病性パーソナリティ障害(DPD)は、うつ病の特徴を持つパーソナリティ障害を指す。
【0189】
反復性短期うつ病(RBD)は、個人が月に約1回うつ病エピソードを経験し、各エピソードの持続期間が2週間以下、通常は2~3日未満である状態を指す。
【0190】
軽度うつ病性障害または軽度うつ病とは、少なくとも2つの症状が2週間続いているうつ病を指す。
【0191】
双極性障害または躁うつ病は、感情の高揚(躁状態または軽躁状態)と低調(うつ病)を含む極端な気分の変動を引き起こす。躁状態の期間中、人は異常に幸せ、元気、またはイライラしていると感じたり、行動したりすることがある。彼らは結果をほとんど考慮せずに、よく考えずに決定を下すことがよくある。通常、睡眠の必要性は減少する。うつ病の期間中は、泣いたり、他人とアイコンタクトが悪くなったり、人生に対して否定的な見方をしたりすることがある。この障害を持つ人の自殺リスクは20年間で6%以上と高く、自傷行為は30~40%で発生する。不安障害及び薬物使用障害などの他の精神的健康問題も、一般に双極性障害に関連している。
【0192】
慢性病状に起因するうつ病は、癌または慢性疼痛、化学療法、慢性ストレスなどの慢性病状によって引き起こされるうつ病を指す。
【0193】
治療抵抗性うつ病は、うつ病の治療を受けているが症状が改善しない状態を指す。例えば、抗うつ薬または心理カウンセリング(心理療法)は、治療抵抗性うつ病患者のうつ病の症状を緩和しない。いくつかの例では、治療抵抗性うつ病の個人は症状は改善するが、再発する。難治性うつ病は、三環系抗うつ薬、MAOI、SSRI、二重取り込み阻害剤及び三重取り込み阻害剤及び/または抗不安薬などの標準的な薬物治療、ならびに非薬物治療(例えば、心理療法、電気けいれん療法、迷走神経刺激及び/または経頭蓋磁気刺激)に抵抗性のあるうつ病患者に発生する。
【0194】
術後うつ病は、外科手術後に起こるうつ病の感情を指す(例えば、自分の死と向き合わなければならない結果として)。例えば、個人は悲しみもしくは空虚な気分を持続的に感じたり、通常楽しむ趣味及び活動に対する喜びもしくは興味の喪失、または無価値感もしくは絶望感を持続的に感じたりすることがある。
【0195】
女性の健康の状態または障害に関連する気分障害は、女性の健康の状態または障害(例えば、本明細書に記載される)に関連する(例えば、それに起因する)気分障害(例えば、うつ病)を指す。
【0196】
自殺傾向、自殺念慮、自殺行動は、個人の自殺の傾向を指す。自殺念慮は、自殺についての考えまたは自殺に対する異常な執着を指す。自殺念慮の範囲は、例えば、一時的な考えから広範囲にわたる考え、詳細な計画、ロールプレイング、不完全な試みまで、大きく異なる。症状は、自殺について話す、自殺の手段を手に入れる、社会的接触から遠ざかる、死のことに気を取られる、状況に閉じ込められたり絶望的になったり、アルコールまたは薬物の使用量が増加したり、危険なことまたは自滅的なことをしたり、二度と会わないかのように人々に別れを告げたりすることを含む。
【0197】
うつ病の症状は、持続的な不安感または悲しい感情、無力感、絶望感、悲観主義、無価値感、元気のなさ、落ち着きのなさ、睡眠困難、不眠、イライラ、疲労感、運動障害、楽しい活動または趣味への興味の喪失、集中力の喪失、エネルギーの喪失、自尊心の低下、前向きな考えまたは計画の欠如、過眠、過食、食欲不振、不眠症、自傷行為、自殺念慮、及び自殺未遂を含む。症状の存在、重症度、頻度、期間はケースバイケースで異なる可能性がある。うつ病の症状及びその軽減は、医師または心理学者によって(例えば、精神状態の検査によって)確認され得る。
【0198】
いくつかの実施形態では、該方法は、既知のうつ病スケール、例えば、ハミルトンうつ病(HAM-D)スケール、臨床全体印象改善スケール(CGI)、及びモンゴメリー・アスベルグうつ病評価スケール(MADRS)を用いて対象をモニタリングすることを含む。いくつかの実施形態では、治療効果は、対象が示すハミルトンうつ病(HAM-D)合計スコアの低下によって決定され得る。HAM-D合計スコアの低下は、4、3、2、もしくは1日以下、または96、84、72、60、48、24、20、16、12、10、8時間以下に発生し得る。治療効果は、指定された治療期間にわたって評価できる。例えば、治療効果は、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)を投与した後のHAM-D合計スコアのベースラインからの減少によって決定され得る(例えば、投与後12、24、48時間後、または24、48、72、もしくは96時間以上、または1日、2日、14日、21日、もしくは28日、または1週間、2週間、3週間、もしくは4週間、または1か月、2か月、6か月、もしくは10か月、または1年、2年もしくは終身)。
【0199】
いくつかの実施形態では、対象は、軽度のうつ病性障害、例えば、軽度の大うつ病性障害を有する。いくつかの実施形態では、対象は、中等度のうつ病性障害、例えば、中等度の大うつ病性障害を有する。いくつかの実施形態では、対象は、重度のうつ病性障害、例えば、重度の大うつ病性障害を有する。いくつかの実施形態では、対象は、非常に重度のうつ病性障害、例えば、非常に重度の大うつ病性障害を有する。いくつかの実施形態では、対象(すなわち、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)による治療前)のベースラインHAM-D合計スコアは少なくとも24である。いくつかの実施形態では、対象のベースラインHAM-D合計スコアは少なくとも18である。いくつかの実施形態では、対象のベースラインHAM-D合計スコアは14~18である。いくつかの実施形態では、対象のベースラインHAM-D合計スコアは19~22である。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療前の対象のHAM-D合計スコアは23以上である。いくつかの実施形態では、ベースラインスコアは少なくとも10、15、または20である。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)による治療後の対象のHAM-D合計スコアは約0~10である(例えば、10未満、0~10、0~6、0~4、0~3、0~2、または1.8)。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)で処理した後のHAM-D合計スコアは、10、7、5、または3未満である。いくつかの実施形態では、HAM-D合計スコアの減少は、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療後、約20~30(例えば、22~28、23~27、24~27、25~27、26~27)のベースラインスコアから約0~10(例えば、10未満、0~10、0~6、0~4、0~3、0~2、または1.8)のHAM-D合計スコアまで減少する。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療後のHAM-D合計スコアに対するベースラインHAM-D合計スコアの減少が少なくとも1、2、3、4、5、7、10、25、40、50、または100倍である。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療後のHAM-D合計スコアに対するベースラインHAM-D合計スコアの減少率は、少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、または90%)である。いくつかの実施形態では、治療効果は、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療後のHAM-D合計スコアのベースラインHAM-D合計スコア(例えば、投与後12、24、48時間、または24、48、72、96時間以上、または1日、2日、14日以上)に対する少なくとも10、15、または20ポイントの減少として測定される。
【0200】
いくつかの実施形態では、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を治療する方法は、14、10、4、3、2もしくは1日以下、または24、20、16、12、10もしくは8時間以下、またはそれ以下に治療効果を提供する。いくつかの実施形態では、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を治療する方法は、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療の1日目または2日目以下に治療効果(例えば、HAM-D合計スコアの統計的に有意な減少によって決定される)をもたらす。いくつかの実施形態では、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を治療する方法は、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療の開始から14日以下に治療効果(例えば、HAM-D合計スコアの統計的に有意な減少によって決定される)をもたらす。いくつかの実施形態では、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を治療する方法は、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療の開始から21日以下に治療効果(例えば、HAM-D合計スコアの統計的に有意な減少によって決定される)をもたらす。いくつかの実施形態では、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を治療する方法は、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療の開始から28日以下に治療効果(例えば、HAM-D合計スコアの統計的に有意な減少によって決定される)をもたらす。いくつかの実施形態では、治療効果は、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)で1日1回14日間治療した後の、HAM-D合計スコアのベースラインからの減少である。いくつかの実施形態では、対象(すなわち、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療前の対象のHAM-D合計スコアは少なくとも24である。いくつかの実施形態では、対象(すなわち、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療前の対象のHAM-D合計スコアは少なくとも18である。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での治療前の対象のHAM-D合計スコアは14~18である。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)で対象を治療した後の、ベースラインHAM-D合計スコアと比較したHAM-D合計スコアの減少は少なくとも10である。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)で対象を治療した後の、ベースラインHAM-D合計スコアと比較したHAM-D合計スコアの減少は少なくとも15(例えば、少なくとも17)である。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での対象の治療に関連するHAM-D合計スコアは6~8の範囲の数値にすぎない。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)での対象の治療に関連するHAM-D合計スコアは7以下である。
【0201】
いくつかの実施形態では、該方法は、14、10、4、3、2もしくは1日以下、または24、20、16、12、10もしくは8時間以下、またはそれ以下に治療効果(例えば、臨床全体印象改善スケール(CGI)の減少によって測定)をもたらす。いくつかの実施形態では、CNS障害は、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害である。いくつかの実施形態では、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を治療する方法は、治療期間の2日目以内に治療効果をもたらす。いくつかの実施形態では、治療効果は、治療期間終了時(例えば、投与後14日後)のCGIスコアのベースラインからの減少である。
【0202】
いくつかの実施形態では、該方法は、14、10、4、3、2もしくは1日以下、または24、20、16、12、10もしくは8時間以下、またはそれ以下に治療効果(例えば、モンゴメリー・アスベルグうつ病評価スケール(MADRS)の減少によって測定)をもたらす。いくつかの実施形態では、CNS障害は、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害である。いくつかの実施形態では、うつ病性障害、例えば、大うつ病性障害を治療する方法は、治療期間の2日目以内に治療効果をもたらす。いくつかの実施形態では、治療効果は、治療期間終了時(例えば、投与後14日後)のMADRSスコアのベースラインからの減少である。
【0203】
大うつ病性障害の治療効果は、対象が示したモンゴメリー・アスベルグうつ病評価スケール(MADRS)スコアの減少によって決定することができる。例えば、MADRSスコアは、4、3、2、もしくは1日以下、または96、84、72、60、48、24、20、16、12、10、8時間以下に減少することができる。モンゴメリー・アスベルグうつ病評価スケール(MADRS)は、精神科医が気分障害患者のうつ病エピソードの重症度を測定するために使用する10項目の診断質問票(見かけの悲しみ、報告された悲しみ、内面の緊張、睡眠の減少、食欲の低下、集中力の低下、倦怠感、感情の無力、悲観的思考、自殺願望について)である。
【0204】
いくつかの実施形態では、この方法は、4、3、2、1日以下、24、20、16、12、10、8時間以下に治療効果(例えば、エディンバラ産後うつ病スケール(EPDS)の減少によって測定)をもたらす。いくつかの実施形態では、治療効果は、EPDSによって測定される改善である。
【0205】
いくつかの実施形態では、この方法は、4、3、2、1日以下、24、20、16、12、10、8時間以下に治療効果(例えば、全般性不安障害の7項目スケール(GAD-7)の減少によって測定される)をもたらす。
【0206】
4.不安障害
【0207】
本明細書では、不安障害(例えば、全般性不安障害、パニック障害、強迫性障害、恐怖症、心的外傷後ストレス障害)を治療するための方法が提供される。不安障害は、異常かつ病的な恐怖と不安のいくつかの異なる形態を含む包括的な用語である。現在の精神医学の診断基準では、様々な不安障害が認識されている。
【0208】
全般性不安障害は、特定の対象または状況に焦点を当てない長期にわたる不安を特徴とする一般的な慢性疾患である。全般性不安に苦しむ人は、非特異的な持続的な恐怖及び心配を経験し、日常の事柄に過度に心配するようになる。全般性不安障害は、高齢者が罹患する最も一般的な不安障害である。
【0209】
パニック障害では、人は激しい恐怖と不安の短い発作に苦しみ、多くの場合、振戦、身震い、混乱、めまい、吐き気、呼吸困難を特徴とする。これらのパニック発作は、突然生じて10分以下にピークに達する恐怖または不快感としてAPAによって定義されており、数時間続く場合があり、ストレス、恐怖、更には運動によって引き起こされることもあり、しかし、特定の原因が必ずしも明らかであるとは限らない。パニック障害の診断には、予期せぬパニック発作が再発することに加えて、その発作が慢性的な結果を伴うことも必要であり、つまり、発作の潜在的な影響についての心配、将来の発作に対する持続的な恐怖、または発作に関連した行動の重大な変化のいずれかである。従って、パニック障害に苦しむ人は、特定のパニックエピソード以外でも症状を経験する。多くの場合、パニック患者は心拍の正常な変化に気づき、心臓に何か問題がある、または再びパニック発作が起こりそうだと考えるようになる。いくつかの例では、パニック発作中に体の機能に対する意識の高まり(過覚醒)が起こり、生理学的変化が知覚されると、生命を脅かす病気(極度の心気症)の可能性があると解釈される。
【0210】
強迫性障害は、不安障害の一種であり、主に反復的な強迫観念(苦痛、持続的、侵入的な思考またはイメージ)と強迫行為(特定の行為または儀式を実行したいという衝動)を特徴とする。OCDの思考パターンは、現実には存在しない因果関係を信じるという点で、迷信にたとえられるかもしれない。多くの場合、そのプロセスはまったく非論理的であり、例えば、差し迫った危害への強迫観念を軽減するために、特定のパターンで歩くという強迫観念が利用され得る。そして多くの場合、その衝動はまったく説明のつかないもので、単に緊張によって引き起こされる儀式を完了したいという衝動に過ぎない。少数の例では、OCD患者は強迫観念を経験するだけで、明白な強迫行為はなくなり、強迫行為のみを経験する患者ははるかに少数である。
【0211】
不安障害の最大のカテゴリは恐怖症であり、これは、特定の刺激または状況によって恐怖及び不安が引き起こされる全ての例を含む。患者は通常、動物、場所、体液に至るまで、恐怖の対象に遭遇した場合に恐ろしい結果が生じることを予期する。
【0212】
心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、トラウマ的な経験から生じる不安障害である。心的外傷後ストレスは、戦闘、レイプ、人質の状況、または更には重大な事故などの極端な状況によって生じることがある。また、個別の戦闘には耐えても継続的な戦闘には対処できない兵士など、深刻なストレス因子に長期(慢性的に)さらされることによって生じることもある。一般的な症状には、フラッシュバック、回避行動、うつ病などがある。
【0213】
5.女性の健康障害
【0214】
本明細書では、女性の健康に関連する状態または障害を治療する方法が提供される。女性の健康に関連する状態または障害は、婦人科の健康と障害(例えば、月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD))、妊娠の問題(例えば、流産、妊娠中絶)、不妊症と関連障害(例えば、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS))、その他の障害及び状態、女性の全体的な健康とウェルネスに関連する問題(例えば、閉経)を含むが、これらに限定されない。
【0215】
女性に影響を与える婦人科の健康と疾患は、月経と月経不順、尿失禁や骨盤底疾患などの尿路の健康、及び細菌性膣症、膣炎、子宮筋腫、外陰痛などの疾患を含む。
【0216】
月経前症候群(PMS)は、女性の生理前の1~2週間に起こる身体的及び精神的な症状を指す。症状は様々であるが、出血、気分の変動、乳房の圧痛、食べ物への渇望、疲労、イライラ、ニキビ、うつ病などがある。
【0217】
月経前不快気分障害(PMDD)は、PMSの重度の形態である。PMDDの症状はPMSに似ているが、より重篤で、仕事、社会活動、人間関係に支障をきたす可能性がある。PMDDの症状は、気分の変動、抑うつ気分または絶望感、著しい怒り、対人対立の増大、緊張と不安、過敏症、通常の活動への関心の低下、集中力の低下、疲労感、食欲の変化、制御不能または圧倒された感、睡眠障害、身体的な問題(例えば、膨満感、乳房の圧痛、腫れ、頭痛、関節痛、筋肉痛)を含む。
【0218】
妊娠の問題は、受胎前ケアと出生前ケア、妊娠喪失(流産と死産)、早産と早産、乳児突然死症候群(SIDS)、母乳育児、先天異常などを含む。
【0219】
流産は、妊娠の最初の20週間以下に自然に終了する妊娠を指す。
【0220】
妊娠中絶は、妊娠を意図的に中絶することを指し、妊娠の最初の28週間以下に行うことができる。
【0221】
不妊症及び関連疾患は、子宮筋腫、多嚢胞性卵巣症候群、子宮内膜症、及び原発性卵巣機能不全を含む。
【0222】
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、生殖年齢の女性の内分泌系疾患を指す。PCOSは、女性の男性ホルモンの上昇に起因する一連の症状である。PCOSを患うほとんどの女性は、卵巣に小さな嚢胞を多数成長させる。PCOSの症状は、月経不順または無月経、過多な月経、過剰な体毛及び顔の毛、座瘡、骨盤痛、妊娠困難、ならびに厚く黒いビロードのような皮膚の斑点を含む。PCOSは、2型糖尿病、肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、心臓病、気分障害、子宮内膜癌などの症状に関連することができる。
【0223】
女性のみが罹患する他の障害及び症状は、ターナー症候群、レット症候群、及び卵巣癌と子宮頸癌を含む。
【0224】
女性の全体的な健康とウェルネスに関連する問題は、女性に対する暴力、障害のある女性とその特有の課題、骨粗鬆症と骨の健康、及び更年期障害を含む
【0225】
閉経は、女性の最後の月経から12か月を指し、月経周期の終わりを示す。閉経は通常、女性の40代または50代に起こる。ほてりなどの身体的症状及び更年期障害の精神的症状は、睡眠を妨げたり、エネルギーを低下させたり、不安や悲しみまたは喪失感を引き起こしたりすることがある。閉経期は、自然閉経期と、手術(子宮摘出術、卵巣摘出術、癌など)などの事象による誘発性閉経の一種である外科的閉経とを含む。これは、放射線、化学療法、他の薬物療法などによって卵巣が重大な損傷を受けると誘発される。
【0226】
6.てんかん
【0227】
化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、またはその薬学的に許容される組成物は、本明細書に記載の方法、例えば、てんかん、てんかん重積状態、もしくは発作などの本明細書に記載の障害の治療に使用され得る。
【0228】
てんかんは、長期間にわたって繰り返し発作を引き起こす脳疾患である。てんかんの種類は、全身性てんかん、例えば、小児期欠神てんかん、若年性ナイオクロニーてんかん、起床時に大発作を伴うてんかん、ウェスト症候群、レノックス・ガストー症候群、部分てんかん、例えば、側頭葉てんかん、前頭葉てんかん、小児期の良性限局性てんかんを含むが、これらに限定されない。
【0229】
7.てんかん誘発
【0230】
化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)及び本明細書に記載の方法は、てんかん誘発を治療または予防するために使用され得る。てんかん誘発は、正常な脳がてんかん(発作が起こる慢性疾患)を発症する段階的なプロセスである。てんかん誘発は、最初の発作によって引き起こされた神経損傷(例えば、てんかん重積状態)によって引き起こされる。
【0231】
8.てんかん重積状態(SE)
【0232】
てんかん重積状態(SE)は、例えば、けいれん性てんかん重積状態(例えば、初期てんかん重積状態、確立したてんかん重積状態、難治性てんかん重積状態、超難治性てんかん重積状態)、非けいれん性てんかん重積状態(例えば、全身性てんかん重積状態、複雑部分てんかん重積状態)、全般性周期性てんかん様放電、及び周期性片側性てんかん様放電を含み得る。けいれん性てんかん重積状態は、けいれん性てんかん重積発作の存在を特徴とし、初期てんかん重積状態、確立したてんかん重積状態、難治性てんかん重積状態、超難治性てんかん重積状態を含む。初期てんかん重積状態は、一次治療で治療される。確立したてんかん重積状態は、一次治療による治療にもかかわらず持続するてんかん重積発作を特徴とし、二次治療が実施される。難治性てんかん重積状態は、一次治療及び二次治療にもかかわらず持続するてんかん重積発作を特徴とし、一般に全身麻酔薬が投与される。超難治性てんかん重積状態は、一次治療、二次治療、及び24時間以上の全身麻酔薬による治療にもかかわらず持続するてんかん重積発作を特徴とする。
【0233】
非けいれん性てんかん重積状態は、例えば、限局性非けいれん性てんかん重積状態(例えば、複雑な部分的な非けいれん性てんかん重積状態、単純な部分的な非けいれん性てんかん重積状態、微妙な非けいれん性てんかん重積状態)、全身性非けいれん重積状態(例えば、遅発性欠神非けいれん重積状態、非定型欠神非けいれん重積状態、または定型欠神非けいれん重積状態)を含み得る。
【0234】
化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、またはその薬学的に許容される組成物は、CNS障害、例えば、外傷性脳損傷、てんかん重積状態、例えば、けいれん性てんかん重積状態、例えば、初期てんかん重積状態、確立したてんかん重積状態、難治性てんかん重積状態、超難治性てんかん重積状態、非けいれん性てんかん重積状態、例えば、全身性てんかん重積状態、複雑部分てんかん重積状態、全般性周期性てんかん様放電、及び周期性片側性てんかん様放電、発作開始前を有する対象に予防薬として投与され得る。
【0235】
9.発作
【0236】
発作は、脳内の異常な電気活動のエピソードの後に起こる身体的所見または行動の変化である。「発作」という用語は、「けいれん」と同じ意味で使用されることがよくある。けいれんは、人の体が制御不能に急速に震えることである。けいれん中、人の筋肉は収縮と弛緩を繰り返す。
【0237】
行動の種類と脳活動に基づいて、発作は、全身性発作と部分発作(局所発作または焦点発作とも呼ばれる)の2つの大きなカテゴリに分類される。発作の種類を分類することは、医師が患者がてんかんであるかどうかを診断するのに役立つ。
【0238】
全身性発作は脳全体からの電気インパルスによって引き起こされるが、部分発作は(少なくとも最初は)脳の比較的小さな部分の電気インパルスによって引き起こされる。発作を引き起こす脳の部分は、焦点と呼ばれることもある。
【0239】
全身性発作には、6つの種類がある。最も一般的で劇的であり、従って最もよく知られているのは、大発作とも呼ばれる全身性けいれんである。この種類の発作では、患者は意識を失い、通常は卒倒する。意識を失った後、全身が30~60秒間硬直し(発作の「強直」相と呼ばれる)、次に30~60秒間激しいけいれん(「間代発作」相)が続き、その後患者は深い眠りに入る(「発作後」または発作の後相)。大発作の際には、舌を噛んだり、尿失禁などの怪我及び事故が起こることがある。
【0240】
欠神発作は、症状がほとんどまたはまったくなく、短時間(わずか数秒)の意識喪失を引き起こす。患者(ほとんどの場合子供)は、通常、活動を中断し、ぼんやりと見つめる。これらの発作は突然始まり、突然終わり、1日に数回発生することができる。患者は通常、「時間を失っている」ということ以外は、自分が発作を起こしていることに気づかない。
【0241】
ミオクロニー発作は、通常は体の両側に起こる散発的なけいれんで構成される。患者は時々、その衝撃を短時間の電気ショックとして表現する。これらの発作が激しくなると、物を落としたり、無意識に投げたりすることがある。
【0242】
間代発作は、体の両側が同時に起こるリズミカルなけいれんが繰り返される発作である。
【0243】
強直発作は筋肉の硬直を特徴とする。
【0244】
脱力発作は、特に腕や脚の突然の全体的な筋肉の緊張の喪失で構成され、多くの場合、転倒を引き起こす。
【0245】
本明細書に記載の発作は、てんかん発作、急性反復発作、群発発作、継続的な発作、絶え間ない発作、長期にわたる発作、再発性発作、てんかん重積状態発作(例えば、難治性けいれん性てんかん重積状態、非けいれん性てんかん重積状態発作)、難治性発作、ミオクロニー発作、強直発作、強直間代発作、単純部分発作、複雑部分発作、二次性全身性発作、非定型欠神発作、欠神発作、脱力発作、良性ローランド発作、熱性けいれん、感情的な発作、焦点発作、ゲル状発作、全身性発症発作、乳児けいれん、ジャクソン発作、重度の両側性ミオクローヌス発作、多焦点発作、新生児期発症発作、夜間発作、後頭葉発作、外傷後発作、微妙な発作、シルバン発作、視覚反射発作、または離脱発作を含み得る。いくつかの実施形態では、この発作は、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、結節性硬化症複合体、レット症候群、またはPCDH19女性小児てんかんに関連する全身性発作である。
【0246】
10.運動障害
【0247】
また、運動障害を治療する方法も本明細書に記載される。本明細書で使用される場合、「運動障害」は、多動性運動障害及び関連する筋肉制御の異常に関連する様々な疾患及び障害を指す。例示的な運動障害は、パーキンソン病及びパーキンソニズム(特に運動緩慢によって定義される)、ジストニア、舞踏病及びハンチントン病、運動失調、振戦(例えば、本態性振戦)、ミオクローヌス及び驚愕、チック及びトゥレット症候群、レストレスレッグス症候群、スティッフパーソン症候群、ならびに歩行障害を含むが、これらに限定されない。
【0248】
本明細書に記載の方法は、振戦を治療するために使用することができ、例えば、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、またはそれらの任意の組み合わせ)は、小脳振戦もしくは意図振戦、ジストニア性振戦、本態性振戦、起立性振戦、パーキンソン病振戦、生理的振戦、心因性振戦、または赤核性振戦を治療するために使用され得る。振戦は、それぞれウィルソン病、パーキンソン病、及び本態性振戦などの遺伝性、変性性、特発性疾患、代謝疾患(例えば、甲状腺、副甲状腺、肝疾患、低血糖)、末梢神経障害(シャルコー・マリー・トゥース、ルシー・レヴィ病、糖尿病、複合性局所疼痛症候群に関連)、毒素(ニコチン、水銀、鉛、二酸化炭素、マンガン、ヒ素、トルエン)、薬物誘発性(ナルコレプシー薬、三環系薬、リチウム、コカイン、アルコール、アドレナリン、気管支拡張薬、テオフィリン、カフェイン、ステロイド、バルプロ酸、アミオダロン、甲状腺ホルモン、ビンクリスチン)、及び心因性障害を含む。臨床的振戦は、生理的振戦、増強された生理的振戦、本態性振戦症候群(古典的本態性振戦、一次起立性振戦、課題特異的振戦及び体位特異的振戦を含む)、ジストニック振戦、パーキンソン病振戦、小脳振戦、ホームズ振戦(すなわち、赤核性振戦)、口蓋振戦、神経障害性振戦、毒性または薬物誘発性振戦、及び心因性振戦に分類され得る。
【0249】
振戦は、身体の1つ以上の部分(手、腕、目、顔、頭、声帯、体幹、脚など)の振動またはけいれんを伴う、不随意の、時にはリズミカルな筋肉の収縮と弛緩である。
【0250】
小脳振戦または意図振戦は、意図的な動作の後に起こる四肢のゆっくりとした広い振戦である。小脳振戦は、例えば、腫瘍、脳卒中、または疾患(例えば、多発性硬化症、遺伝性変性疾患)に起因する小脳の病変または小脳への損傷によって引き起こされる。
【0251】
ジストニア性振戦は、ジストニアに罹患している人に発生し、ジストニアは、持続的な不随意な筋肉の収縮により、ねじれと反復的な動作、及び/または痛みを伴う異常な姿勢もしくは体位を引き起こす運動障害である。ジストニア性振戦は、体のあらゆる筋肉に影響を与える可能性がある。ジストニア性振戦は不規則に発生し、完全な休息によって軽減されることがよくある。
【0252】
本態性振戦または良性本態性振戦は、最も一般的な種類の振戦である。本態性振戦は、一部の人では軽度で非進行性である場合もあれば、体の片側から始まり、3年以内に両側に影響を与えるゆっくりとした進行性の場合もある。最も多くの場合、手が影響を受けるが、頭、声、舌、脚、胴体も影響を受ける場合がある。年齢が上がるにつれて振戦の頻度は減少するが、重症度は増加する可能性がある。感情の高まり、ストレス、発熱、肉体的疲労、または低血糖は、振戦を引き起こしたり、その重症度を高めたりすることができる。症状は一般に時間の経過とともに進行し、発症後に目に見える場合もあれば持続する場合もある。
【0253】
起立性振戦は、立った直後に脚と体幹に起こる速い(例えば、12Hzを超える)リズミカルな筋肉収縮を特徴とする。大腿部と脚にけいれんを感じ、患者は同じ場所に立たされると制御不能に震えることがある。起立性振戦は、本態性振戦の患者に発生することができる。
【0254】
パーキンソン病振戦は、運動を制御する脳内の構造の損傷によって引き起こされる。パーキンソン病振戦はパーキンソン病の前兆であることが多く、通常は手の「ピルローリング」動作として見られ、顎、唇、脚、体幹にも影響を与える可能性がある。パーキンソン病振戦の発症は典型的に60歳以降に始まる。運動は片方の手足または体の片側から始まり、反対側も含めて進む場合がある。
【0255】
生理的振戦は正常な人にも発生する可能性があるが、臨床的な意味を有さない。それは全ての随意筋群で見られる。生理的振戦は、特定の薬物、アルコール離脱、または甲状腺機能亢進や低血糖などの病状によって引き起こされる可能性がある。振戦の周波数は古典的に約10Hzである。
【0256】
心因性振戦もしくはヒステリー性振戦は、安静時、または姿勢もしくは運動中に発生することができる。心因性振戦のある患者は、転換性障害または別の精神疾患を患っている可能性がある。
【0257】
赤核性振戦は、安静時、姿勢時、及び意図を持って存在する可能性がある、粗くゆっくりとした振戦を特徴とする。この振戦は、中脳の赤核に影響を与える症状、典型的な異常な脳卒中と関連している。
【0258】
パーキンソン病は、ドーパミンを生成する脳内の神経細胞に影響を与える。症状は、筋肉の硬直、振戦、及び会話と歩き方の変化を含む。パーキンソニズムは、振戦、運動緩慢、固縮、姿勢の不安定性を特徴とする。パーキンソニズムはパーキンソン病に見られる症状を共有するが、進行性の神経変性疾患ではなく複合症状である。
【0259】
ジストニアは、持続的または断続的な筋肉収縮が原因で、異常な、しばしば反復的な動きまたは姿勢を引き起こすことを特徴とする運動障害である。ジストニアの動きはパターン化され、体をねじったり、震えたりする場合がある。ジストニアは多くの場合、自発的行動によって開始または悪化し、オーバーフロー筋活動に関連している。
【0260】
舞踏病は、通常は肩、腰、顔に影響を及ぼすぎくしゃくした不随意運動を特徴とする神経疾患である。ハンチントン病は、脳の神経細胞が消耗する遺伝性疾患である。症状は、制御不能な動き、ぎこちなさ、及びバランスの問題を含む。ハンチントン病は、歩行、会話、嚥下を妨げる可能性がある。
【0261】
運動失調は、体の動きを完全に制御できなくなることを指し、指、手、腕、脚、体、言語、目の動きに影響を与える可能性がある。
【0262】
ミオクローヌスと驚愕は、音響、触覚、視覚、前庭などの突然の予期せぬ刺激に対する反応である。
【0263】
チックは、通常、突然始まり、短時間、反復的ですが非リズミカルな不随意運動であり、通常は正常な行動を模倣し、通常の活動の背景から発生することがよくある。チックは運動チックまたは音声チックに分類でき、運動チックは運動に関連し、音声チックは音に関連する。チックは単純なものと複雑なものとして特徴づけられる。例えば、単純な運動チックでは、体の特定の部分に限定された少数の筋肉のみが関与する。トゥレット症候群は、小児期に発症する遺伝性の精神神経疾患であり、複数の運動チックと少なくとも1回の音声チックを特徴とする。
【0264】
レストレスレッグス症候群は、安静時に脚を動かしたいという圧倒的な衝動を特徴とする神経性感覚運動障害である。
【0265】
スティッフパーソン症候群は、不随意の痛みを伴うけいれん及び筋肉の硬直を特徴とする進行性の運動障害で、通常は腰及び脚に影響を及ぼす。通常、過度の腰椎前弯症を伴う足の硬直した歩行が生じる。通常、傍脊柱軸筋の継続的な運動単位活動を伴うEMG記録上の特徴的な異常が観察される。変種は、典型的に遠位脚及び足に影響を与える局所的な硬直を引き起こす「四肢硬直症候群」を含む。
【0266】
歩行障害は、神経筋、関節炎、または他の体の変化に起因する、歩き方またはスタイルの異常を指す。歩行は、異常な運動の原因となるシステムに応じて分類され、片麻痺歩行、両麻痺歩行、神経障害歩行、筋障害歩行、パーキンソン病歩行、舞踏病様歩行、運動失調歩行、及び感覚歩行を含む。
【0267】
11.麻酔/鎮静
【0268】
麻酔は、薬理学的に誘発され、記憶喪失、鎮痛、反応性の喪失、骨格筋反射の喪失、ストレス反応の低下、またはこれら全てが同時に起こった可逆的な状態である。これらの効果は、単独で適切な効果の組み合わせを提供する単一の薬剤から得られることもあれば、非常に特殊な結果の組み合わせを達成するために複数の薬剤(睡眠薬、鎮静薬、麻痺薬、鎮痛薬など)を組み合わせて使用することもある。麻酔を使用すると、患者は麻酔を使用しない場合に経験する苦痛及び痛みを感じることなく手術及び他の処置を受けることができる。
【0269】
鎮静は、一般に医療処置または診断処置を容易にするために、薬剤を投与することによってイライラまたは興奮を軽減することである。
【0270】
鎮静及び鎮痛は、最小限の鎮静(抗不安)から全身麻酔までの一連の意識状態を含む。
【0271】
最小限の鎮静は、抗不安療法としても知られている。最小限の鎮静は、患者が口頭での命令に正常に反応する薬物誘発性の状態である。認知機能と調整が損なわれる可能性がある。通常、換気機能と心血管機能は影響を受けない。
【0272】
中等度の鎮静/鎮痛(意識的鎮静)は、薬物による意識の抑制であり、患者は単独で、または軽い触覚刺激を伴う言葉による命令に意図的に反応する。通常、開存気道を維持するために介入は必要がない。典型的には自発換気で十分である。通常、心血管機能は維持される。
【0273】
深い鎮静/鎮痛は薬物誘発性の意識抑制であり、患者は容易に覚醒することはできないが、反復または痛みを伴う刺激の後には意図的に反応する(痛みを伴う刺激からの反射的離脱ではない)。独立した換気機能が損なわれる可能性があり、患者は開存気道を維持するために援助を必要とする場合がある。自発的換気が不十分になる可能性がある。通常、心血管機能は維持される。
【0274】
全身麻酔は薬剤によって引き起こされる意識喪失であり、その間患者はたとえ痛みを伴う刺激に対してさえ覚醒することができなくなる。独立した換気機能を維持する能力が損なわれることが多く、開存気道を維持するために援助が必要になることがよくある。自発換気量の低下または薬物による神経筋機能の低下により、陽圧換気が必要になる場合がある。心血管機能が損なわれる可能性がある。
【0275】
集中治療室(ICU)での鎮静により、患者の環境に対する意識が低下し、外部刺激に対する反応が低下する。これは重篤な患者のケアにおいて役割を果たすことができ、患者ごとに、また病気の経過全体を通じて個人ごとに異なる幅広い症状制御を網羅する。救急医療における重度の鎮静は、気管内チューブの耐性と人工呼吸器の同期を促進するために、多くの場合神経筋遮断薬とともに使用されてきた。
【0276】
いくつかの実施形態では、鎮静(例えば、長期鎮静、継続的鎮静)は、ICU内で長期間(例えば、1日、2日、3日、5日、1週間、2週間、3週間、1か月、2か月)にわたって誘発され、維持される。長期鎮静薬は作用時間が長い場合がある。ICU内の鎮静薬の消失半減期は短い場合がある。
【0277】
意識的鎮静とも呼ばれる処置的鎮静及び鎮痛は、心肺機能を維持しながら対象が不快な処置に耐えられる状態を誘導するために、鎮痛薬の有無にかかわらず鎮静薬または解離剤を投与する技術である。
【0278】
また、本明細書には、有効量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)または本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における呼吸状態の1つ以上の症状を改善する方法も記載される。
【0279】
一態様では、本明細書は、対象の治療方法を提供し、対象が呼吸器疾患の1つ以上の症状を示し、及び/または呼吸器疾患と診断されており、該方法は、有効量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物を上記対象に投与することを含む。
【0280】
いくつかの実施形態では、本開示は、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物を対象に投与することを含む、対象を治療する方法を企図し、対象は、呼吸器疾患を有する。
【0281】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患の症状を示す対象への化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物の投与は、呼吸器疾患の1つ以上の症状の重症度を軽減したり、または呼吸器疾患の1つ以上の症状の進行を妨害したり、もしくは遅らせたりする可能性がある。
【0282】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患のある対象は、人工呼吸器または酸素による治療を受けた、または治療を受けている。いくつかの実施形態では、呼吸器疾患のある対象は、人工呼吸器による治療を受けた、または治療を受けている。
【0283】
いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物を、人工呼吸器で治療されている、または治療された対象に投与する。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物の投与は、人工呼吸器による対象の治療の間継続する。いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物の投与は、対象が機人工呼吸器による治療を終了した後も継続する。
【0284】
いくつかの実施形態では、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物を、鎮静薬による治療を受けている、または受けた対象に投与する。いくつかの実施形態では、鎮静薬はプロポフォールまたはベンゾジアゼピンである。
【0285】
いくつかの実施形態では、本開示は、投与を必要とする対象に、血液中の酸素飽和度を増加させるのに十分な量の化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施形態では、血液中の酸素飽和度は、パルスオキシメトリーを使用して測定される。
【0286】
いくつかの実施形態では、本開示は、患者のサイトカインストームを治療する方法を企図する。いくつかの実施形態では、サイトカインストームを治療する方法は、化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を患者に投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、サイトカインストームの症状は肺の炎症である。いくつかの実施形態では、サイトカインストームに見舞われている患者は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を患っている。
【0287】
12.呼吸状態
【0288】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患のある対象は呼吸困難に苦しんでいる。いくつかの実施形態では、呼吸困難は、急性呼吸困難を含む。
【0289】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患のある対象は、気道過敏症、肺組織の炎症、肺過敏症、及び炎症に関連した肺痛からなる群から選択される1つ以上の状態を示す可能性がある。
【0290】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患のある対象は肺組織の炎症を示す可能性がある。いくつかの実施形態では、肺組織の炎症は気管支炎または気管支拡張症である。いくつかの実施形態では、肺組織の炎症が肺炎である。いくつかの実施形態では、肺炎は、人工呼吸器関連肺炎または院内肺炎である。いくつかの実施形態では、肺炎は人工呼吸器関連肺炎である。
【0291】
いくつかの実施形態では、呼吸状態の症状を示す対象への化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、またはその医薬組成物の投与は、呼吸器疾患のある対象における呼吸困難の重症度の軽減をもたらし、または呼吸器疾患のある対象における呼吸困難の進行を妨害もしくは遅らせる。
【0292】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患の症状を示す対象への化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物の投与は、コロナウイルスに関連する疾患のある対象における気道過敏性の重症度の軽減をもたらし、または呼吸器疾患のある対象における気道過敏性の進行を妨害もしくは遅らせる。
【0293】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患の症状を示す対象への化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物の投与は、呼吸器疾患のある対象における肺組織の炎症の重症度の軽減をもたらし、または呼吸器疾患のある対象における肺組織の炎症の進行を妨害もしくは遅らせる。いくつかの実施形態では、呼吸器疾患の症状を示す対象への化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物の投与は、呼吸器疾患のある対象における肺炎の重症度の軽減をもたらし、または呼吸器疾患のある対象における肺炎の進行を妨害もしくは遅らせる。
【0294】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患の症状を示す対象への化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物の投与は、呼吸器疾患のある対象における肺過敏症の重症度の軽減をもたらし、または呼吸器疾患のある対象における肺過敏症の進行を妨害もしくは遅らせる。
【0295】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患の症状を示す対象への化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)、または化合物(1)の結晶形(例えば、形態S1、形態S4、もしくはそれらの任意の組み合わせ)を含む組成物の投与は、呼吸器疾患のある対象における炎症に関連した肺痛の重症度の軽減をもたらし、または呼吸器疾患のある対象における炎症に関連した肺痛の進行を妨害もしくは遅らせる。
【0296】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患のある対象は、感染症、線維症、線維症エピソード、慢性閉塞性肺疾患、サルコイドーシス(もしくは肺サルコイドーシス)または喘息/喘息関連炎症の治療を受けている、または治療を受けた。
【0297】
いくつかの実施形態では、対象は、喘息の症状を示している、及び/または喘息と診断された。いくつかの実施形態では、対象は喘息発作を起こしている、または起こした。
【0298】
いくつかの実施形態では、対象は線維症または線維症エピソードの治療を受けている、または受けた。いくつかの実施形態では、線維症は嚢胞性線維症である。
【0299】
いくつかの実施形態では、呼吸器疾患は、嚢胞性線維症、喘息、喫煙誘発性COPD、慢性気管支炎、副鼻腔炎、便秘、膵炎、膵機能不全、先天性両側精管欠損症(CBAVD)による男性不妊症、軽度の肺疾患、肺サルコイドーシス、特発性膵炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、肝疾患、遺伝性肺気腫、遺伝性ヘモクロマトーシス、プロテインC欠損症などの凝固線溶欠損症、1型遺伝性血管浮腫、家族性高コレステロール血症、1型カイロミクロン血症、無ベタリポタンパク質血症などの脂質処理欠損症、I細胞病/偽ハーラーなどのライソゾーム病、ムコ多糖症、サンドホフ/テイ・サックス、クリグラー・ナジャールII型、多発性内分泌障害/高インスリン血症、糖尿病、ラーロン小人症、ミレオペルオキシダーゼ欠損症、原発性副甲状腺機能低下症、黒色腫、グリカノーシスCDG1型、先天性甲状腺機能亢進症、骨形成不全症、遺伝性低フィブリノゲン血症、ACT欠損症、尿崩症(DI)、神経生理性(neurophyseal)DI、腎性DI、シャルコー・マリー・トゥース症候群、ペリゼウス・メルツバッハー病、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、ピック病などの神経変性疾患、ハンチントン、脊髄小脳失調症I型、球脊髄性筋萎縮症、歯状核赤核淡蒼球ルイシアン、及び筋強直性ジストロフィーなどのいくつかのポリグルタミン神経障害、及び遺伝性クロイツフェルト・ヤコブ病(プリオンタンパク質処理欠陥による)、ファブリー病、ストラウスラー・シャインカー症候群、COPD、ドライアイ疾患、またはシェーグレン病などの海綿状脳症からなる群から選択される疾患または状態の結果である、及び/またはそれに関連している。
【0300】
13.感染症
【0301】
本開示は、とりわけ、感染症を患っている対象の治療を企図する。本開示は、とりわけ、感染症に関連する疾患を有する対象の治療を企図する。いくつかの実施形態では、感染症は、ウイルス感染症または細菌感染症である。いくつかの実施形態では、感染症は、ウイルス感染症である。いくつかの実施形態では、感染症は、細菌感染症である。
【0302】
いくつかの実施形態では、ウイルス感染症は、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ヒトライノウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス及びハンタウイルスからなる群から選択されるウイルスの感染症である。いくつかの実施形態では、ウイルスは、コロナウイルスである。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV、SARS-CoV-2、及びMERS-CoVからなる群から選択される。
【0303】
本開示は、とりわけ、コロナウイルスに関連する疾患を有する対象の治療を企図する。いくつかの実施形態では、コロナウイルスに関連する疾患は、2019年コロナウイルス病(COVID-19)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、及び中東呼吸器症候群(MERS)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、コロナウイルスに関連する疾患は、COVID-19からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、及び2012-nCoVからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2である。
【0304】
いくつかの実施形態では、細菌感染症は、肺炎球菌、肺炎クラミジア、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、及びインフルエンザ菌からなる群から選択される細菌の感染症である。いくつかの実施形態では、黄色ブドウ球菌は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌である。
【実施例】
【0305】
VI.実施例
【0306】
本明細書に記載の本発明をより十分に理解するために、以下の実施例を説明する。本出願に記載される実施例は、本明細書に提供される結晶固体形態を説明するために提供されるものであり、その範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0307】
一般的な分析方法。
【0308】
本明細書に別段の記載がない限り、化合物(1)の固体(すなわち、結晶)形態の分析及び特徴においては、以下の分析方法に従った。
【0309】
A.XRPD分析。
【0310】
XRPD分析は、PIXcel検出器(128個のチャンネル)を有するPANalytical X’pert proを使用して、3~35°2θの間でサンプルをスキャンして実行された。固体化合物(1)を穏やかに粉砕して凝集物を解放し、サンプルを支持するマイラーポリマーフィルムを有するマルチウェルプレートにロードした。次に、マルチウェルプレートを回折計に配置し、40kV/40mAジェネレータ設定を使用して透過モード(ステップサイズが0.0130°2θ、ステップ時間が18.87秒)で実行するCu K放射線(α1λ=1.54060Å、α2=1.54443Å、β=1.39225Å、α1:α2比=0.5)を使用して分析した。データは、HighScore Plus 4.7デスクトップアプリケーション(PANalytical、2017)を使用して視覚化され、画像が生成された。2θ位置は、アルミナ粉末参照標準を使用して毎月校正した。
【0311】
B.TGA/DSC分析。
【0312】
TGAデータはTA InstrumentsのTA Q500 TGAを使用して収集され、DSCはTA InstrumentsのTA Q2000 DSCを使用して実行された。TGA及びDSCの動作パラメータは表1に示される。TGAは、ニッケル参照標準で校正され、DSCは、インジウム参照標準で校正された。
【0313】
【0314】
C.13C固体NMR分析。
【0315】
固体NMR(SSNMR)実験は、13Cについては100.51MHz、1Hについては399.67MHzで動作するBruker Avance I分光計(Bruker、Billerica、MA)で実施した。7mmマジックアングルスピニングモジュール(Revolution NMR、Fort Collins、CO)を再装備したChemagnetics APEXプローブを使用してデータを取得した。各サンプルを7mmジルコニアロータに詰めた。マジックアングル回転速度は5kHzであった。13C化学シフトは、18.84ppmの3-メチルグルタル酸のメチルピークに対して、±0.4ppmの精度で報告される。
【0316】
飽和回復を使用して、1H T1緩和時間を測定した。13Cスペクトルは、飽和前の期間(1H p/2、遅延なし、ループ1x)、可変遅延リスト、1H p/2パルス、次に交差偏波回転側波帯完全抑制(CPTOSS)シーケンス、及び約63.3kHz(3.95ms 1H p/2) 1H SPINAL-64デカップリングを使用して収集された。Bruker Topspin 2.1パッチレベル6のソフトウェアパッケージのT1guideを使用して、サンプルの1H T1値を決定した。高品質の13C CPTOSSスペクトルは、CPTOSSシーケンス、624回の取得、20秒のパルス遅延、1.5msの接触時間、3994の取得ポイント(約50msの取得時間)、及び約3.46時間の実験時間を使用して、5kHz MASで取得された。データ収集は公称温度18.5℃で行った。データはTopsinソフトウェアで処理した。
【0317】
E.動的蒸気収着(DVS)分析。
【0318】
約10~20mgのサンプルをメッシュ蒸気収着天秤に置き、Surface Measurement SystemsによってDVS Intrinsic/Advantage動的蒸気収着天秤にロードした。サンプルに相対湿度(RH)40~90%の範囲で10%刻みの傾斜プロファイルを適用し、25℃で安定した重量に達するまで各ステップでサンプルを維持した(dm/dtが0.004%、最小ステップ長が30分、最大ステップ長が500分)。収着サイクルの完了後、同じ手順を使用してサンプルを相対湿度0%まで乾燥させ、次に2回目の収着サイクルで相対湿度40%に戻した。2つのサイクルを実行した。吸着/脱着サイクル中の重量変化がプロットされ、サンプルの吸湿性の性質を決定できるようになった。次に、保持された任意の固体に対してXRPD分析を実行した。微量天秤は認定された校正分銅を使用して毎月校正され、25℃での相対湿度はLiCl、MgCl、及びNaClの潮解点に対して校正された。データはサンプルの初期含水量については補正されておらず、データは0%RHでのサンプルの乾燥質量に従って示された。
【0319】
実施例1:化合物(1)の形態S1の調製。
【0320】
方法1。
【0321】
粗化合物(1)(431g)を窒素下で撹拌しながら、テトラヒドロフラン(3500mL)に溶解する。部分真空下で蒸留し、内容物の温度を40℃以下に保ち、容器内の体積を約3500mLに維持しながら、n-ヘプタン(6500mL)をゆっくりと加えることによって溶媒を交換する。化合物(1)は蒸留中に結晶化し始める。蒸留の最後に、窒素を用いて真空を解除して大気圧にし、得られたスラリーを55~60℃に加熱する。次いで、スラリーを周囲温度(15~25℃)まで冷却し、1時間保持する。化合物(1)の無水形態S1を濾過によって収集し、容器及び濾過ケーキをn-ヘプタン(1600mL)ですすぐ。温度を40℃未満に維持しながら、固体を真空下で乾燥させる。
【0322】
方法2。
【0323】
粗化合物(1)(431g)を、窒素下で撹拌しながら、ジクロロメタン(1600mL)またはテトラヒドロフラン(2000mL)のいずれかに溶解する。溶液は研磨濾過装置(孔径が1μm以下)を通して第2容器に移される。内容物の温度を40℃以下に保ちながら、部分真空下で溶液を約1000~1200mLまで濃縮する。得られた溶液を2000mLのイソプロピルアルコールで希釈し、加熱還流する(ジクロロメタンを使用する場合は45~55℃、テトラヒドロフランを使用する場合は70~75℃)。蒸留しながら、容器内の内容物を約3000mLに維持しながら、イソプロピルアルコール(5000mL)をゆっくりと加えることにより、低沸点溶媒を交換する。蒸留の終了後、内容物を少なくとも15分間還流状態に保ち、固体が確実に溶解するようにする。透明な溶液を68~72℃に冷却し、形態S1の化合物(1)種結晶(4g、1%w/w)を加えて結晶化を誘導する。結晶化が始まったことを確実にするために1時間保持した後、内容物を58~62℃まで冷却し、最大2時間保持する。次に、内容物を約2~3時間かけて20~25℃までゆっくり冷却し、1時間保持してから更に0~10℃まで冷却する。少なくとも15分間保持した後、化合物(1)の無水形態S1を濾過によって収集し、容器及び濾過ケーキを冷イソプロピルアルコール(900mL)で洗浄する。温度を40℃未満に維持しながら、固体を真空下で乾燥させる。
【0324】
化合物(1)の形態S1は、XRPD、TGA/DSC、13C固体NMR、及びDVR分析を使用して特徴付けられた。
【0325】
1.XRPD分析。
【0326】
図1は、化合物(1)の形態S1の非正規化粉末X線回折パターンを示す。非正規化粉末X線回折パターンから観察された特定のXRPDピーク及び他のXRPDデータを以下の表2にまとめる。
【0327】
【0328】
2.TGA/DSC分析。
【0329】
図2に示すように、化合物(1)の形態S1のTGA分析は、TGA曲線上で185℃まで0.1%の重量損失を示した。化合物(1)の形態S1のDSC分析は、155℃、155.9℃、及び165.1℃で融解-結晶化-融解転移を示した。これらの熱分析の結果は、化合物(1)の形態S1が加熱条件下で形態S4に変換することを実証している。
【0330】
3.13C固体NMR分析。
【0331】
図3は、化合物(1)の形態S1の
13C固体NMRスペクトルを示す。NMRスペクトルから観察された特定のピークは以下の表3にまとめられる。化合物(1)の形態S1の
13C固体NMR分析中に、単一の純粋相が観察された。
【0332】
【0333】
4.DVS分析。
【0334】
図4に示すように、化合物(1)の形態S1のDVS分析は、形態S1がDVSによって実質的に非吸湿性であり、90%RHで約0.6重量%(水0.14当量)の質量取り込みを有することを示した。DVS分析後のサンプルのXRPDパターンには変化が観察されず、これは、サンプルがDVS分析中に形状変化を受けた場合、サンプルはXRPD分析前に形態S1に戻ったことを示した。
【0335】
実施例2:化合物(1)の形態S4の調製。
【0336】
粗化合物(1)(431g)を窒素下で撹拌しながら、テトラヒドロフラン(2000mL)に溶解する。N-ヘプタン(400mL)を加え、溶液を大気圧で加熱還流し(70~75℃)、蒸留しながら、容器内の体積を約2500mLに維持しながら、n-ヘプタン(5000mL)をゆっくりと加えることによって溶媒を交換する。温度が85~90℃に達すると、化合物(1)は結晶化し始める。蒸留の最後に、得られたスラリーを周囲温度(15~25℃)まで冷却し、1時間保持する。化合物(1)の無水形態S4を濾過によって収集し、容器及び濾過ケーキをn-ヘプタン(900mL)ですすぐ。温度を40℃未満に維持しながら、固体を真空下で乾燥させる。
【0337】
化合物(1)の形態S4は、XRPD、TGA/DSC、13C固体NMR、及びDVR分析を使用して特徴付けられた。
【0338】
1.XRPD分析。
【0339】
図5は、化合物(1)の形態S4の非正規化粉末X線回折パターンを示す。非正規化粉末X線回折パターンから観察された特定のXRPDピーク及び他のXRPDデータを以下の表4にまとめた。
【0340】
【0341】
図6は、化合物(1)の形態S1(上)及びS4(下)の重ね合わせた非正規化X線回折パターンを示す。
【0342】
2.TGA/DSC分析
【0343】
図7に示すように、化合物(1)の形態S4のTGA分析は、TGA曲線上で185℃まで0.1%の重量損失を示した。化合物(1)の形態S4のDSC分析は、分解前に164.8℃で融解吸熱を示した。
【0344】
図8に示すように、形態S1及び形態S4のDSC分析で生成されたDSCデータは、形態S1と形態S4との間のエナンチオトロピック関係を示す。
【0345】
3.13C固体NMR分析。
【0346】
図9は、化合物(1)の形態S4の
13C固体NMRスペクトルを示す。NMRスペクトルから観察された特定のピークは以下の表5にまとめられる。化合物(1)の形態S4の
13C固体NMR分析中に、単一の純粋相が観察された。
【0347】
【0348】
図10は、比較のための化合物(1)の形態S1及び化合物(1)の形態S4の
13C SSNMRスペクトルの重ね合わせを示す。
【0349】
4.DVS分析。
【0350】
図11に示すように、化合物(1)の形態S4のDVS分析は、形態S4がDVSによって非吸湿性であり、90%RHで約0.12重量%(水0.02当量)の質量取り込みを有することを示す。DVS分析後のサンプルのXRPDパターンには変化が観察されず、これは、サンプルがDVS分析中に形状変化を受けた場合、サンプルはXRPD分析前に形態S4に戻ったことを示した。
【0351】
実施例3:化合物(1)の形態S1及び形態S4のスラリー変換。
【0352】
DSCデータから計算された化合物(1)の形態S1と形態S4との間の転移温度を検証するために、形態S1と形態S4の競合スラリー実験を行った。
【0353】
各実験では、ほぼ同量の形態S1と形態S4を使用してスラリーを生成した。この形態を、1.5mLガラスバイアル中の0.3mLの溶媒中に懸濁した。懸濁液を目標温度で4日間磁気的に撹拌(1000rpm)した。残った固体を遠心分離(10000rpm、3分間)によって単離し、上記XPRD分析法を使用して分析した。実験条件と結果を表10にまとめる。
【0354】
【0355】
図12に示すように、この実験の結果は、60℃及び70℃で形態S4が形態S1に変換され、80℃で形態S1が形態S4に変換されたことを示した。
【0356】
同等物及び範囲
特許請求の範囲において、「a」、「an」、及び「the」などの冠詞は、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、1つ以上を意味する場合がある。グループの1つ以上のメンバー間に「または」を含む請求項または説明は、特に示されていない限り、グループのメンバーの1つ、複数、または全てが特定の製品またはプロセスに存在する、使用される、またはその他の方法で関連する場合、反対の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、満たされているとみなされる。本発明は、グループのちょうど1つのメンバーが所与の製品またはプロセスに存在する、使用される、あるいはそれに関連する実施形態を含む。本発明は、グループのメンバーの2つ以上、または全てが所与の製品またはプロセスに存在する、使用される、またはそれに関連する実施形態を含む。
【0357】
更に、本発明は、列挙された請求項の1つ以上からの1つ以上の限定、要素、条項、及び説明用語が別の請求項に導入される全ての変形、組み合わせ、及び置換を包含する。例えば、別の請求項に従属する請求項は、同じ基本請求項に従属する他の請求項に見られる1つ以上の制限を含むように修正できる。要素がリストとして提示される場合、例えばマークーシュグループ形式では、要素の各サブグループも開示され、任意の要素をグループから削除できる。理解すべきものとして、一般に、本発明または本発明の態様が特定の要素及び/もしくは特徴を含むと言及される場合、本発明の特定の実施形態または本発明の態様は、そのような要素及び/もしくは特徴からなる、あるいは本質的にそれらからなる。簡単にするために、これらの実施形態は、本明細書では直接的に具体的に説明されない。「含む」及び「含有する」という用語はオープンであることを意図しており、追加の要素またはステップを含めることを許容することにも留意されたい。範囲が指定される場合は、エンドポイントも含まれる。更に、別段の指示がない限り、または文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表現される値は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、本発明の異なる実施形態において記載された範囲内の任意の特定の値またはサブ範囲を、範囲の下限の単位の10分の1まで想定することができる。
【0358】
この出願は、様々な発行された特許、公開された特許出願、雑誌記事、及び他の出版物を参照し、それらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参考文献のいずれかと本明細書との間に矛盾がある場合には、明細書が優先するものとする。更に、従来技術に該当する本発明の特定の実施形態は、いずれか1つ以上の請求項から明示的に除外され得る。このような実施形態は当業者には既知であるとみなされるため、本明細書に明示的に除外が記載されなくても、除外することができる。本発明のいかなる特定の実施形態も、先行技術の存在に関連するか否かにかかわらず、いかなる理由でもいかなる請求項からも除外することができる。
【0359】
別の実施形態
当業者は、本明細書に記載の特定の実施形態に対する多くの均等物を日常の実験だけで認識するか、確認することができるであろう。本明細書に記載の本実施形態の範囲は、上記説明に限定されることを意図するものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されるとおりである。当業者であれば、特許請求の範囲で定義される本発明の精神または範囲から逸脱することなく、この説明に対する様々な変更及び修正が可能であることを理解するであろう。
【国際調査報告】