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特表2024-528001ガラスセラミック基板の製造方法及びそれから製造されるガラスセラミック基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ガラスセラミック基板の製造方法及びそれから製造されるガラスセラミック基板
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/04 20060101AFI20240719BHJP
   C03C 10/12 20060101ALI20240719BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C03C10/04
C03C10/12
C03C21/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505095
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 KR2022010908
(87)【国際公開番号】W WO2023008863
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0098107
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516371391
【氏名又は名称】ハス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】HASS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】77-14,Gwahakdanji-ro Gangneung-si Gangwon-do 25452,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イム、ヒョン ボン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン ス
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G059HB00
4G062AA11
4G062BB01
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB03
4G062DC01
4G062DD03
4G062DE02
4G062DF01
4G062EA04
4G062EB01
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4G062ED01
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4G062JJ07
4G062JJ10
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4G062MM12
4G062MM18
4G062NN33
4G062QQ08
4G062QQ09
4G062QQ10
(57)【要約】
ガラスセラミック基板の製造方法及びそれから製造されるガラスセラミック基板に関し、特定のバルクガラス組成物から所定形状の基板を製造した後、熱処理するステップを含み、前記熱処理するステップは、a)最高温度500℃から650℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第1熱処理ステップと、b)最高温度650℃から700℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第2熱処理ステップと、(c)最高温度700℃から800℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第3熱処理ステップと、d)最高温度800℃から870℃までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第4加熱処理ステップの中で選択された1つの方法で行われることにより、曲げ強度と光透過率が多様に組み合わせられた種々のガラスセラミック基板を容易に製造することができる方法を開示する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO65.0~75重量%、LiO10.0~13.5重量%、Al5~9重量%、ZnO0.5~1.0重量%、KO1.5~3.5重量%、CaO0~2.0重量%、P2.5~4.0重量%を含み、SiO/LiOのモル比は2.30~3.50、SiO/Alのモル比は14.50~20.50を満たすガラス組成物を溶融し、成形および冷却し、480℃~250℃で20分~2時間の間、設定された速度でアニーリングして所定形状の基板を製造するステップと、
所定形状の基板を熱処理するステップと、を含み、
熱処理するステップは、a)最高温度500℃から650℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第1熱処理ステップと、b)最高温度650℃から700℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第2熱処理ステップと、(c)最高温度700℃から800℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第3熱処理ステップと、d)最高温度800℃から870℃までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第4加熱処理ステップの中で選択された1つの方法で行われる
ことを特徴とするガラスセラミック基板の製造方法。
【請求項2】
熱処理するステップにおける昇温は、昇温速度0.1℃/分~30℃/分の範囲内で行われ、保持は、最高温度下で少なくとも10分間行われる
請求項1に記載のガラスセラミック基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の製造方法において、a)第1熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相はメタケイ酸リチウムである
ことを特徴とするガラスセラミック基板。
【請求項4】
結晶化度は10~30%である
請求項3に記載のガラスセラミック基板。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法において、b)第2熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相は、メタケイ酸リチウムとバージライト(virgilite)である
ことを特徴とするガラスセラミック基板。
【請求項6】
結晶化度は20~40%である
請求項5に記載のガラスセラミック基板。
【請求項7】
請求項1に記載の製造方法において、c)第3熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相は、リチウムメタシリケート、バージライト(virgilite)および二ケイ酸リチウムである
ことを特徴とするガラスセラミック基板。
【請求項8】
結晶化度は40~60%である
請求項7に記載のガラスセラミック基板。
【請求項9】
c)第3の熱処理ステップにおいて、700℃から800℃未満の温度範囲内で温度が高くなるにつれて、二ケイ酸リチウム結晶相の結晶成長が行われる
請求項7に記載のガラスセラミック基板。
【請求項10】
結晶化度は60~90%である
請求項9に記載のガラスセラミック基板。
【請求項11】
請求項1に記載の製造方法において、d)第4熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相は、二ケイ酸リチウムとスポジュメン(spodumene)である
ことを特徴とするガラスセラミック基板。
【請求項12】
結晶化度は58~80%である
請求項9に記載のガラスセラミック基板。
【請求項13】
550nmの波長における光透過率が少なくとも60%を満たす
請求項3ないし12のいずれかに記載のガラスセラミック基板。
【請求項14】
二軸曲げ強度が少なくとも120MPaを満たす
請求項3ないし12のいずれかに記載のガラスセラミック基板。
【請求項15】
550nmの波長における光透過率が80~82%であり、二軸曲げ強度が100~140MPaである
請求項3又は4に記載のガラスセラミック基板。
【請求項16】
550nmの波長における光透過率が75~82%であり、二軸曲げ強度が130~170MPaである
請求項5又は6に記載のガラスセラミック基板。
【請求項17】
550nmの波長における光透過率が70~75%であり、二軸曲げ強度が200~250MPaである
請求項7又は8に記載のガラスセラミック基板。
【請求項18】
550nmの波長における光透過率が65~73%であり、二軸曲げ強度が280~320MPaである
請求項9又は10に記載のガラスセラミック基板。
【請求項19】
550nmの波長における光透過率が60~65%であり、二軸曲げ強度が330~370MPaである
請求項11又は12に記載のガラスセラミック基板。
【請求項20】
メタケイ酸リチウム、またはケイ酸リチウム結晶相は、その大きさが10nm~200nmであり、バージライト(virgilite)またはスポジュメン(spodumene)結晶相は、その大きさが30nm~2μmである
請求項3ないし12のいずれかに記載のガラスセラミック基板。
【請求項21】
請求項3ないし12のいずれかに記載のガラスセラミック基板を含む
ことを特徴とする強化ガラスセラミック基板。
【請求項22】
強化ガラスセラミック基板は、セラミック基板を化学強化またはイオン強化して得られたものである
請求項21に記載の強化ガラスセラミック基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミック基板の製造方法及びそれから製造されるガラスセラミック基板に関し、曲げ強度と光透過率とが多様に組み合わせられた多種のガラスセラミック基板を特定のバルクガラス組成物から容易に製造する方法およびそれから得られたガラスセラミック基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板またはガラスセラミック基板の用途は多様化しており、その一例として、ディスプレイ用途、対話型入力エレメント、カバー、ハードディスク、家庭用、医療分野及び医薬品分野等が挙げられる。
【0003】
その一例として、特許文献1:日本特許登録第6843743号には、耐性を持つ多機能表面特性を有するコーティングされたガラス基板又はガラスセラミック基板であって、抗菌特性、反射防止特性及び耐指紋特性の組合せを含み、ここで、ガラス基板又はガラスセラミック基板上に反射防止コーティングが存在し、前記ガラス基板又はガラスセラミック基板およびその上に存在する反射防止コーティングはイオン交換されており、前記イオン交換された、反射防止コーティングされたガラス基板又はガラスセラミック基板上に耐指紋コーティングが存在し、ここで、交換されたイオンは、抗菌作用を有する1種以上の金属イオン、または抗菌作用を有する1種以上の金属イオンおよび化学強化をもたらすイオンであり、且つ、前記コーティングされたガラス基板又はガラスセラミック基板は、JIS Z 2801又はISO 22196の規格に準拠して測定して、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対して99%を上回る抗菌効果を有する、ガラス基板又はガラスセラミック基板について記載している。ここでのガラスは、イオン交換可能なガラスであって、アルカリ低含有量のアルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、低含有量のアルミノケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、リチウムアルミニウムケイ酸塩ガラスであってもよく、ガラスセラミックが、セラミック化されたアルミノケイ酸ガラス又はリチウムアルミノケイ酸塩ガラスから選択されるイオン交換可能なガラスセラミックであることが記載されている。このようなガラス基板又はガラスセラミック基板は、例えば、電子デバイス並びに家庭用領域又は工業用領域における多数のデバイス、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレットPC、ノートブックPC、テレビ機器、ATM機器、自動券売機のタッチスクリーンの任意の形態のカバーガラスとして使用されることができ、それに、例えば自動車、病院、美術館、商店において、住宅建設及び輸送などにおいて用いられる、任意の形状及びサイズのコントロールボード、インフォメーションボード及び/又はオペレーティングボード若しくはウインドウ用であってもよいことを記載している。また、このような基板は、数多くの機能が一緒に取り込まれて存在する用途、例えば、スマートフォン又はタブレットPCのタッチスクリーンでも用いられることを記載している。
【0004】
ガラスまたはガラスセラミック基板は、イオン注入などの後工程を経て強化されることにより筐体、ディスプレイ及びカバー基板のような電子デバイスに適用され得ることができる。一例として、ディスプレイの筐体の前面又はその付近に、カバー基板はハウジングの前面又はその上に、並びにディスプレイ上に提供されることができる。
【0005】
特許文献2:米国特許出願公開第2017-0369989号には、少なくとも1つのイオン注入された表面を有するガラス又はガラスセラミック基板を含み、ここで前記イオン注入されたガラスあるいはガラスセラミック製品は、少なくとも650gの最終の押込破壊閾値(IFT)荷重を有することを特徴とする製品について記載している。
【0006】
特許文献3:日本特許公開第2014-136668号は、結晶性ガラス基板及び結晶化ガラス基板について記載してあり、特に、有機EL照明に用いる結晶性ガラス基板を記載しており、これは、特にガラス組成として、SiO40~80%、Al10~35%、LiO1~10%を含有すること、より具体的には、ガラス組成として、質量%で、SiO55~73%、Al17~27%、LiO2~5%、MgO0~1.5%、ZnO0~1.5%、NaO0~1%、KO0~1%、TiO0~3.8%、ZrO0~2.5%、SnO0~0.6%を含有することを特徴とする結晶性ガラス基板を記載している。このようなガラス基板は、ロールアウト法やフロート法により成形されてなることができ、この結晶性ガラス基板を熱処理してなる結晶化ガラス基板も記載されている。得られた結晶化ガラス基板は、主結晶がβ-石英固溶体又はβ-スポジュミン固溶体であるものであって、照明装置における拡散板として有用であることが記載されている。
【0007】
特許文献4:韓国公開特許公報第2013-0009796号は、バルク散乱特性を有するガラスセラミック、および該ガラスセラミックのOLEDまたは光電池適用への用途について記載している。ここでは、ガラス基板の代わりにガラスセラミック基板を使用することによって、適切な寸法および屈折率を有する粒子の存在によって散乱を可能にしている。一例として、ここでのガラスセラミックは、重量%で、0%超過~3%のLiO;15~27%のAl;60~85%のSiO;及び1%以上のSnOを含む組成物を含み、前記ガラスセラミックは、400~1200nmで20%以上の拡散透過率を有し、ガラスセラミックは、バルク結晶化ガラスセラミックであることを特徴としている。
【0008】
一方、低膨張透明ガラスセラミックは、光導波路素子において基板として有用であることができるが、特許文献5:韓国特許公開第2002-0003502号には、1530℃以下の融解温度で得られる母材ガラスを熱処理して得られる低膨張透明結晶化ガラスが提供され、前記ガラスセラミックは、100℃~300℃の温度範囲内で+6×10-7/℃~+35×10-7/℃の範囲内の平均線膨張係数(α)を有し、700nm以下の80%透過波長(T80)を有する低膨張透明ガラスセラミックが記載されている。
【0009】
一方、ガラスあるいはガラスセラミックは、露光後エッチングによって光学的構造化が可能となり、これを光学部材およびシステムに適用することができるが、いわゆる感光性ガラス(photosensitive glass)または感光性ガラスセラミック(photosensitive glass-ceramic)であってもよい。これに関連して、特許文献6:韓国特許第10-1934157号には感応型感光性ガラスおよびその製造方法を記載しているが、従来の技術のガラスに比べて結晶性及び感光性に劣る性質を有さないながらも、現行のガラス加工方法での加工及び連続製造に適切なガラスを提案している。
【0010】
本発明は、このような多様な用途に適用可能なガラスセラミック基板を提供するにあたり、一つのバルクガラス組成によって目的とする用途を考慮して要求物性を多様に具現することができるガラスセラミック基板を製造する方法を提供するために案出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】日本特許登録第6843743号
【特許文献2】米国特許出願公開第2017-0369989号
【特許文献3】日本特許公開第2014-136668号
【特許文献4】韓国公開特許公報第2013-0009796号
【特許文献5】韓国特許公開第2002-0003502号
【特許文献6】韓国特許第10-1934157号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、同じバルクガラス組成を用いて光透過率及び曲げ強度において多様な組み合わせができるように、ガラスセラミック基板を製造する方法を提供しようとする。
【0013】
また、本発明は、光透過率と曲げ強度が様々に組み合わせられたガラスセラミック基板を提供しようとする。
【0014】
さらに、本発明は、このようなガラスセラミック基板をイオン強化又は化学強化して強化ガラスセラミック基板を製造するための原板として使用する用途を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施態様は、SiO65.0~75重量%、LiO10.0~13.5重量%、Al5~9重量%、ZnO0.5~1.0重量%、KO1.5~3.5重量%、CaO0~2.0重量%、P2.5~4.0重量%を含み、SiO/LiOのモル比は2.30~3.50、SiO/Alのモル比は14.50~20.50を満たすガラス組成物を溶融し、成形および冷却し、480℃~250℃で20分~2時間の間、設定された速度でアニーリングして所定形状の基板を製造するステップと、
所定形状の基板を熱処理するステップと、を含み、
熱処理するステップは、a)最高温度500℃から650℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第1熱処理ステップと、b)最高温度650℃から700℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第2熱処理ステップと、(c)最高温度700℃から800℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第3熱処理ステップと、d)最高温度800℃から870℃までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第4加熱処理ステップの中で選択されたいずれか1つの方法で行われる、ガラスセラミック基板の製造方法を提供する。
【0016】
好ましい一実施形態による製造方法において、熱処理するステップにおける昇温は、昇温速度0.1℃/分~30℃/分の範囲内で行われ、保持は最高温度下で少なくとも10分間行われることであってもよい。
【0017】
本発明の他の一実施形態は、前述した一実施形態による製造方法において、a)第1熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相はメタケイ酸リチウムである、ガラスセラミック基板を提供する。
【0018】
このようなガラスセラミック基板において、結晶化度は10~30%であることができる。
【0019】
本発明の他の一実施形態は、前述した一実施形態による製造方法において、b)第2熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相は、メタケイ酸リチウムとバージライト(virgilite)である、ガラスセラミック基板を提供する。
【0020】
このようなガラスセラミック基板において、結晶化度は20~40%であることができる。
【0021】
本発明の他の一実施形態は、前述した一実施形態による製造方法において、c)第3熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相は、リチウムメタシリケート、バージライト(virgilite)および二ケイ酸リチウムである、ガラスセラミック基板を提供する。
【0022】
このようなガラスセラミック基板において、結晶化度は40~60%であることができる。
【0023】
本発明の具体的な一実施の形態によるガラスセラミック基板は、前述した一実施形態による製造方法において、c)第3の熱処理ステップにおいて、700℃から800℃未満の温度範囲内で温度が高くなるにつれて、二ケイ酸リチウム結晶相の結晶成長が行われるものであってもよい。
【0024】
このようなガラスセラミック基板において、結晶化度は60~90%であることができる。
【0025】
本発明の他の一実施形態は、前述した一実施形態による製造方法において、d)第4熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相は、二ケイ酸リチウムとスポジュメン(spodumene)である、ガラスセラミック基板を提供する。
【0026】
このようなガラスセラミック基板において、結晶化度は58~80%であることができる。
【0027】
前記一実施形態によるガラスセラミック基板において、550nmの波長における光透過率が少なくとも60%を満たすものであってもよい。
【0028】
前記一実施形態によるガラスセラミック基板において、二軸曲げ強度が120MPa以上を満たすものであってもよい。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、550nmの波長における光透過率が80~82%であり、二軸曲げ強度が100~140MPaであるガラスセラミック基板を提供することができる。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、550nmの波長における光透過率が75~82%であり、二軸曲げ強度が130~170MPaであるガラスセラミック基板を提供することができる。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、550nmの波長における光透過率が70~75%であり、二軸曲げ強度が200~250MPaであるガラスセラミック基板を提供することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、550nmの波長における光透過率が65~73%であり、二軸曲げ強度が280~320MPaであるガラスセラミック基板を提供することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、550nmの波長における光透過率が60~65%であり、二軸曲げ強度が330~370MPaであるガラスセラミック基板を提供することができる。
【0034】
本発明の一実施形態によるガラスセラミック基板において、メタケイ酸リチウム、またはケイ酸リチウム結晶相は、その大きさが10nm~200nmであり、バージライト(virgilite)またはスポジュメン(spodumene)結晶相は、その大きさが30nm~2μmであることができる。
【0035】
本発明の例示的な一実施形態では、前述した一実施形態によるガラスセラミック基板を含む、強化ガラスセラミック基板を提供する。
【0036】
前記一実施形態による強化ガラスセラミック基板は、セラミック基板を化学強化またはイオン強化して得られたものであってもよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、同一のバルクガラス組成を用いて光透過率及び曲げ強度において多様な組み合わせができるように、ガラスセラミック基板を容易に製造することができ、光透過率と曲げ強度が様々に組み合わせられたガラスセラミック基板を提供することができ、このようなガラスセラミック基板をイオン強化又は化学強化して強化ガラスセラミック基板に製造するための原板として用いて多様な特性が強化された基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1a】本発明の製造方法における熱処理条件による段階別結果物のX線回折分析(X-Ray Diffraction)結果のグラフであって、(a)ステージIに大別される熱処理結果物のグラフであり、各グラフにおいて、○は、LiO・SiOを、●は、LiO・2SiOを、◇は、LiO・4SiOを、◆は、LiO・10SiOを示す。
図1b】本発明の製造方法における熱処理条件による段階別結果物のX線回折分析(X-Ray Diffraction)結果のグラフであって、(b)ステージIIに大別される熱処理結果物のグラフであり、各グラフにおいて、○は、LiO・SiOを、●は、LiO・2SiOを、◇は、LiO・4SiOを、◆は、LiO・10SiOを示す。
図1c】本発明の製造方法における熱処理条件による段階別結果物のX線回折分析(X-Ray Diffraction)結果のグラフであって、(c)ステージIIIに大別される熱処理結果物のグラフであり、各グラフにおいて、○は、LiO・SiOを、●は、LiO・2SiOを、◇は、LiO・4SiOを、◆は、LiO・10SiOを示す。
図1d】本発明の製造方法における熱処理条件による段階別結果物のX線回折分析(X-Ray Diffraction)結果のグラフであって、(d)ステージIVに大別される熱処理結果物のグラフであり、各グラフにおいて、○は、LiO・SiOを、●は、LiO・2SiOを、◇は、LiO・4SiOを、◆は、LiO・10SiOを示す。
図1e】本発明の製造方法における熱処理条件による段階別結果物のX線回折分析(X-Ray Diffraction)結果のグラフであって、(e)ステージVに大別される熱処理結果物のグラフであり、各グラフにおいて、○は、LiO・SiOを、●は、LiO・2SiOを、◇は、LiO・4SiOを、◆は、LiO・10SiOを示す。
図2】本発明の製造方法における熱処理条件による段階別結果物に対する結晶相の変化を図式化したものである。
図3】本発明の製造方法における熱処理条件による段階別結果物の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図4】本発明の製造方法における熱処理条件による段階別結果物の可視光線透過率のグラフである(試料厚さ1.2mm基準)。
図5】本発明の製造方法における熱処理条件による段階別結果物の二軸曲げ強度(biaxial flexure strength)のグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
前述した、並びに更なる本発明の態様は、添付の図面を参照して説明する好ましい実施形態によって更に明らかになる。以下では、本発明のこのような実施形態によって当業者が容易に理解して再現できるように詳細に説明する。
【0040】
本発明は、特定のバルクガラス組成を用いた場合、熱処理ステップにおいて、その条件を異ならせることにより最も低い温度でガラスマトリックス内に最初にメタケイ酸リチウムが形成され、その後、熱処理温度が上昇するにつれてバージライト(Virgilite)、二ケイ酸リチウム、スポジュメン(spodumene)の順に結晶が形成されることを見出し、これから得られた段階別結果物がそれぞれ異なる曲げ強度と光透過率の組み合わせを具現できることを確認して案出されたものである。
【0041】
このような段階別結晶相の変化を簡易に確認できるように図2に示した。
【0042】
具体的には、本発明の一実施形態は、SiO65.0~75重量%、LiO10.0~13.5重量%、Alを5~9重量%、ZnO0.5~1.0重量%、KO1.5~3.5重量%、CaOを0~2.0重量%、P2.5~4.0重量%を含み、SiO/LiOのモル比は2.30~3.50、SiO/Alのモル比は14.50~20.50を満たすガラス組成物を溶融し、成形および冷却し、480℃~250℃で20分~2時間の間、設定された速度でアニーリングして所定形状の基板を製造するステップと、
所定形状の基板を熱処理するステップと、を含み、
熱処理するステップは、a)最高温度500℃から650℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第1熱処理ステップと、b)最高温度650℃から700℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で第2熱処理を行われる第2熱処理ステップと、(c)最高温度700℃から800℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第3熱処理ステップと、d)最高温度800℃から870℃までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第4加熱処理ステップの中で選択された1つの方法で行われる、ガラスセラミック基板の製造方法を提供する。
【0043】
上記及び以下の記載において、本発明の一実施形態による製造方法におけるガラス組成は、SiO65.0~75重量%、LiO10.0~13.5重量%、Alを5~9重量%、ZnO0.5~1.0重量%、KO1.5~3.5重量%、CaOを0~2.0重量%、P2.5~4.0重量%を含み、SiO/LiOのモル比は2.30~3.50、SiO/Alのモル比は14.50~20.50を満たすガラス組成物であって、ここに記載の更なる他の成分についてその制限があるものではなく、例えば、NaO、MgO、CeOなどのような酸化物を含むことができることは勿論である。
【0044】
前述したようなSiO65.0~75重量%、LiO10.0~13.5重量%、Alを5~9重量%、ZnO0.5~1.0重量%、KO1.5~3.5重量%、CaOを0~2.0重量%、P2.5~4.0重量%を含み、SiO/LiOのモル比は2.30~3.50、SiO/Alのモル比は14.50~20.50を満たすガラス組成物の場合、所定形状の基板に製造された後、これを熱処理して結晶化させる際に、メタケイ酸リチウム結晶がガラスマトリックス内に形成され始める温度は500℃付近であり(ステージIに大別する)、これが二ケイ酸リチウムおよびLASに完全に相転移されることは、800℃付近で完了する。LAS系バージライト(Virgilite)は、650℃付近から形成されて(ステージIIに大別する)、800℃付近でスポジュメン(spodumene)に相転移が完了する。二ケイ酸リチウムは、700℃付近で形成され始め、(ステージIIIに大別する)が、その後の温度で結晶成長が持続されて(ステージIVに大別する)、870℃付近でガラス相で再溶融が起こり始める。LAS系スポジュメン(spodumene)は800℃付近でバージライト(virgilite)から相転移により形成され始める(ステージVに大別する)。
【0045】
かかる側面で、本発明の一実施形態によるガラスセラミック基板の製造方法は、前述したようなSiO65.0~75重量%、LiO10.0~13.5重量%、Alを5~9重量%、ZnO0.5~1.0重量%、KO1.5~3.5重量%、CaOを0~2.0重量%、P2.5~4.0重量%を含み、SiO/LiOのモル比は2.30~3.50、SiO/Alのモル比は14.50~20.50を満たすガラス組成物を用いて所定形状の基板に製造した後、これを熱処理して結晶化させる際に、熱処理するステップは、a)最高温度500℃から650℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第1熱処理ステップと、b)最高温度650℃から700℃以下までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第2熱処理ステップと、c)最高温度700℃から800℃未満までの範囲内に昇温して保持する方法で行われる第3熱処理ステップと、d)最高温度800℃から870℃の範囲に昇温して保持する方法で行われる第4熱処理ステップの中で選択されたいずれか一つの方法で選択的に行われることができる。
【0046】
a)第1熱処理ステップは、ステージIを具現する方法であってもよく、b)第2熱処理ステップはステージIIを具現する方法であってもよく、c)第3熱処理ステップは、ステージIII及びステージIVを具現する方法であってもよく、d)第4熱処理ステップは、ステージVを具現する方法であってもよい。
【0047】
特に、c)第3の熱処理ステップにおいて、700℃から800℃未満までの範囲内で熱処理するとき、温度が低い場合は、ステージIIIを具現でき、その温度が上昇するにつれて、ステージIVを具現することができる。
【0048】
これらのステップは、目的とする最高温度まで連続的な昇温過程を経て当該最高温度に保持する方法だけでなく、目的とする最高温度まで段階的に昇温し、当該温度に一定時間保持しながら目的とする最高温度まで到達して一定時間保持する方法、いわゆるマルチステップ段階で行われることもできる。
【0049】
これに制限があるものではなく、一例として、第2熱処理ステップの場合、500℃から650℃未満までの範囲内で一定時間熱処理し、更に昇温して650℃から700℃未満までの範囲内で熱処理する方法で行われることができる。同様の一例として、第3の熱処理ステップの場合、500℃から650℃未満までの範囲で一定時間熱処理し、650℃から700℃未満までの範囲で一定時間熱処理した後、更に昇温して700℃から800℃未満まで最高温度範囲内で一定時間保持して熱処理する方法で行われることができる。同様の一例として、第4の熱処理ステップの場合も、500℃から650℃未満までの範囲で一定時間熱処理し、650℃から700℃未満までの範囲内で一定時間熱処理し、700℃から800℃未満までの範囲内で一定時間熱処理した後、800℃から870℃までの範囲内の最高温度で一定時間保持する方法で熱処理を行うことができる。
【0050】
一方、好ましい一実施形態によるガラスセラミック基板の製造方法において、熱処理ステップにおける昇温は、昇温速度が0.1℃/分~30℃/分の条件下で行われることが好ましく、保持は最高温度下で少なくとも10分間行われることが好ましい。
【0051】
より具体的には、温度区間別保持時間は、最小10分~6時間であることが好ましく、熱処理の昇温速度は0.1℃/分~30℃/分が適当である。保持時間が短すぎるか昇温速度が速い場合は、結晶形成時間が短いため、ガラス質に対する結晶の含量が低く、LAS系結晶相の中でもSiOの少ない結晶が析出することができる。すなわち、ガラスからのイオンの移動時間が不十分であるから、結晶形成に寄与できなかった多量のイオンがガラス成分として残存することがあり、その場合、未熟な結晶に起因してガラスセラミック基板の強度が低くなる恐れがある。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の具体的な一実施形態では、最初に、SiO65.0~75重量%、LiO10.0~13.5重量%、Alを5~9重量%、ZnO0.5~1.0重量%、KO1.5~3.5重量%、CaOを0~2.0重量%、P2.5~4.0重量%を含み、SiO/LiOのモル比は2.30~3.50、SiO/Alのモル比は14.50~20.50を満たすガラス組成物を秤量し、混合する。
【0053】
ガラス組成物において、SiO/LiOのモル比は2.30~3.50であり、SiO/Alのモル比は14.50~20.50を満たす場合、リチウムシリケート系結晶相と、LAS系結晶相と、LAS系結晶相の中で目的とするようなバージライト(virgilite)またはスポジュメン(spodumene)結晶相が得られるという点で好ましい。
【0054】
ガラス組成物として、LiOの代わりに、LiCOを添加してもよく、LiCOの炭素(C)成分である二酸化炭素(CO)は、ガラスの溶融工程において、ガスとして排出されて抜け出る。また、アルカリ酸化物において、KOおよびNaOの代わりに、それぞれKCO、NaCOを添加しても良く、KCO、NaCOの炭素(C)成分である二酸化炭素(CO)は、ガラスの溶融工程でガスとして排出されるようになる。
【0055】
混合は、乾式混合工程を利用し、乾燥混合工程としては、ボールミル(ball milling)工程などを用いることができる。ボールミル工程について具体的に説明すると、出発原料をボールミル機(ball milling machine)に装入し、ボールミル機を一定速度で回転させて出発原料を機械的に粉砕し、均一に混合する。ボールミル機に用いられるボールは、ジルコニアやアルミナのようなセラミックス材質からなるボールを用いることができ、ボールの大きさはいずれも同一であるか、または、少なくとも2種以上のサイズを有するボールを用いることができる。目標の粒子の寸法を考慮して、ボールのサイズ、ミル時間、ボールミル機の分当たり回転速度などを調節する。一例として、粒子の寸法を考慮して、ボールのサイズは、1mm~30mm程度の範囲に設定し、ボールミル機の回転速度は50~500rpm程度の範囲に設定することができる。ボールミルは、目標の粒子の寸法などを考慮して1~48時間実施することが好ましい。ボールミルにより、出発原料は、微細な寸法の粒子に粉砕され、均一な粒径を有し、かつ、均一に混合されることになる。
【0056】
混合された出発原料を溶融炉に入れ、出発原料が入れられた溶融炉を加熱して出発原料を溶融する。ここで、溶融とは、出発原料が固体状態ではない液体状態の粘性を有する物質状態に変化することを意味する。溶融炉は、高融点を有しながら強度が大きく、溶融物がくっつく現象を抑えるために、接触角が低い物質からなることが好ましく、このために白金(Pt)、DLC(diamond-like-carbon)、シャモット(chamotte)などの物質からなるか、白金(Pt)またはDLC(diamond-like-carbon)のような物質で表面がコーティングされた溶融炉であることが好ましい。
【0057】
溶融は、1,400~2,000℃で常圧で1~12時間行うことが好ましい。溶融温度が1,400℃未満である場合は、出発原料が未だ溶融していない恐れがあり、溶融温度が2,000℃を超える場合は、過度なエネルギー消費が必要であるから経済的ではないため、前述した範囲の温度で溶融することが好ましい。また、溶融時間が短すぎる場合には出発原料が十分に溶融しないことがあり、溶融時間が長すぎる場合は、過度なエネルギー消費が必要であるから経済的ではない。溶融炉の昇温速度は、5~50℃/分程度であることが好ましいが、加熱炉の昇温速度が遅過ぎる場合は、長い時間がかかり、生産性が劣り、溶融炉の昇温速度が速過ぎる場合には急激な温度上昇により出発原料の揮発量が多くなり、結晶化ガラスの物性が良くないことがあるので、前述の範囲の昇温速度で溶融炉の温度を上げることが好ましい。溶融は、酸素(O)、空気(air)のような酸化雰囲気下で行うことが好ましい。
【0058】
溶融物を所望する形状および大きさの所定の基板に成形および冷却するが、冷却過程の後に480℃~250℃で20分~2時間の間、設定された速度で徐冷(annealing)するステップを経ることが望ましい場合がある。このように徐冷工程を経ることが、成形物内における応力のばらつきを減らして、好ましくは、応力が存在しないようにして、その以降の結晶化ステップにおける結晶相の大きさの制御及び結晶分布の均一性の向上に好ましい影響を与えることができ、これにより、最終的に目的とするガラスセラミック基板を製造し得るようにする。
【0059】
ここで、設定された速度とは、好ましくは、2.3~14℃/分であり、十分な徐冷が行われるという点で望ましい。
【0060】
このように徐冷過程を経た成形体を結晶化熱処理焼成炉に移し、前述したような択一的な熱処理ステップを経てガラスセラミック基板を製造することができる。
【0061】
本発明によるガラスセラミック基板の製造方法によれば、様々な結晶相や結晶相の組み合わせで構成されるガラスセラミック基板を容易に提供することができ、その一例として、前述した一実施形態による製造方法において、a)第1熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相はメタケイ酸リチウムである、ガラスセラミック基板を提供することができる。
【0062】
このようなガラスセラミック基板は、ステージIに大別される結晶化ステップを経て得られたものであってもよく、これは、図1のXRD分析結果から確認することができる。
【0063】
上記及び以下の記載において、XRD分析は、X線回折分析器(D/MAX-2500、Rigaku社製、日本;CuKα(40kV、60mA)、走査速度:6°/分、2θ:10~60(°)、Rigaku社製、日本)を用いて分析した結果であると理解されるべきである。
【0064】
本発明の一実施形態による製造方法において、a)第1熱処理ステップを行うことにより得られるガラスセラミックは、結晶化度が10~30%であることができる。
【0065】
上記及び以下の記載において、「結晶化度」とは、ガラスマトリックスに比べて結晶相の重量分率であると理解されるべきである。
【0066】
このようなガラスセラミック基板は、550nmの波長における光透過率が少なくとも60%を満たし、二軸曲げ強度が少なくとも120MPaを満たすことができる。
【0067】
上記及び以下の記載において、光透過率は、紫外可視分光光度計(UV-2401PC、Shimadzu社製、日本)を用いて測定したものである。
【0068】
より具体的に、このようなガラスセラミック基板は、550nmの波長における光透過率が80~82%であり、二軸曲げ強度が100~140MPaであるガラスセラミック基板を提供することができる。
【0069】
上記及び以下の記載において光透過率は、試片厚さ1.2mmを基準とした値であると定義する。
【0070】
図3には、このようなガラスセラミック基板の一実施形態による試片に対する走査電子顕微鏡写真を示しており、図5には二軸曲げ強度の結果グラフを示した。
【0071】
このような高透過率を満足しながら曲げ強度がやや低いガラスセラミック基板の場合は、低熱膨張特性を発現することができるため、ディスプレイカバーよりは絶縁基板等に有用である。
【0072】
しかし、このようなガラスセラミック基板を原板として化学強化やイオン強化等の方法で強化ガラスセラミック基板に製造される場合、その方法に応じて透過率や強度特性が変わることから、その用途がディスプレイカバーやハードコート用薄型ガラスセラミック製品等に拡張できることは勿論である。
【0073】
本発明によるガラスセラミック基板の製造方法に従って得られる他のタイプのガラスセラミック基板であり、前述した一実施形態による製造方法において、b)第2熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相は、メタケイ酸リチウムとバージライト(virgilite)である、ガラスセラミック基板を提供する。
【0074】
このようなガラスセラミック基板において、結晶化度は20~40%であることができる。
【0075】
このようなガラスセラミック基板は、ステージIIに大別される結晶化工程を経て得られたものであってもよく、これは、図1のXRD分析結果から確認することができる。
【0076】
このようなガラスセラミック基板も、550nmの波長での光透過率が少なくとも60%を満たし、二軸曲げ強度が少なくとも120MPaを満たすことができる。
【0077】
より具体的に、このようなガラスセラミック基板は、550nmの波長での光透過率が75~82%であり、二軸曲げ強度が130~170MPaであるガラスセラミック基板を提供することができる。
【0078】
図3には、このようなガラスセラミック基板の一実施形態による試片に対する走査電子顕微鏡写真を示しており、図4には光透過率のグラフであり、図5には二軸曲げ強度の結果グラフを示した。
【0079】
このような高透過率を満足しながら曲げ強度がやや低いガラスセラミック基板の場合は、低熱膨張特性を発現することができるため、ディスプレイカバーよりは絶縁基板等に有用である。
【0080】
しかし、このようなガラスセラミック基板を原板として化学強化やイオン強化等の方法で強化ガラスセラミック基板に製造される場合、その方法に応じて透過率や強度特性が変わることから、その用途がディスプレイカバーやハードコート用薄型ガラスセラミック製品等に拡張できることは勿論である。
【0081】
本発明によるガラスセラミック基板の製造方法に従って得られる他のタイプのガラスセラミック基板であり、前述した一実施形態による製造方法において、c)第3熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相は、リチウムメタシリケート、バージライト(virgilite)および二ケイ酸リチウムである、ガラスセラミック基板を提供する。
【0082】
このようなガラスセラミック基板において、結晶化度は40~60%であることができる。
【0083】
本発明の一実施形態による製造方法において、c)第3熱処理ステップを行うことにより得られるガラスセラミック基板は、結晶相は、リチウムメタシリケート、バージライト(virgilite)および二ケイ酸リチウムであることができ、c)第3熱処理ステップにおける700℃から800℃未満の温度範囲内で温度が上昇するにつれて二ケイ酸リチウム結晶相の結晶成長が行われることができる。
【0084】
このように二ケイ酸リチウム結晶相の結晶成長が行われる場合、ガラスセラミック基板は、結晶化度が60~90%であってもよい。
【0085】
このような一実施形態によるガラスセラミック基板も、550nmの波長で光透過率が少なくとも60%を満たし、二軸曲げ強度が少なくとも120MPaを満たすことができる。
【0086】
より具体的には、このようなガラスセラミック基板は、透過率が70~75%であり、二軸曲げ強度が200~250MPaであるガラスセラミック基板を提供することができる。
【0087】
このようなガラスセラミック基板は、前述した一実施形態による製造方法において、c)第3熱処理ステップを行うに際して、700℃から800℃未満の温度範囲内で700℃付近で得られるガラスセラミック基板であってもよく、図3にはこのようなガラスセラミック基板の一実施形態の試片に対する走査電子顕微鏡写真を示し、図4には光透過率のグラフを示し、図5には二軸曲げ強度の結果グラフを示した(ステージIIIに大別する)。
【0088】
このようなガラスセラミック基板は、図1のXRD分析結果から確認することができる。
【0089】
一方、c)第3の熱処理ステップにおいて、700℃から800℃未満の温度範囲内で温度が上昇するにつれて二ケイ酸リチウム結晶相の結晶成長が行われることができ、より具体的に、このようなガラスセラミック基板は、550nmの波長での光透過率が65~73%であり、二軸曲げ強度が280~320MPaであるガラスセラミック基板を提供することができる。
【0090】
図3には、このようなガラスセラミック基板の一実施形態による試片に対する走査電子顕微鏡写真を示し、図4には光透過率のグラフであり、図5には二軸曲げ強度の結果グラフを示した(ステージIVに大別する)。
【0091】
このようなガラスセラミック基板は、図1のXRD分析結果から確認することができる。
【0092】
本発明の一実施形態による製造方法において、c)第3熱処理ステップを行うことにより得られ、結晶相がメタケイ酸リチウム、バージライト(virgilite)および二ケイ酸リチウムガラスセラミック基板においても二ケイ酸リチウム結晶相の結晶成長が進められたステージIVの結果物の場合、ステージIIIの結果物と比べて著しく曲げ強度が向上することが分かる。
【0093】
このようなガラスセラミック基板の場合は、強度特性を要するディスプレイカバー基板や、ハードコート用薄型(超薄型)ガラスセラミック製品等により有用である。
【0094】
本発明によるガラスセラミック基板の製造方法に従って得られる他のタイプのガラスセラミック基板であり、前述した一実施形態による製造方法において、d)第4熱処理ステップを行うことによって得られ、非晶質のガラスマトリックス内に結晶相を含み、結晶相は、二ケイ酸リチウムとスポジュメン(spodumene)である、ガラスセラミック基板を提供する。
【0095】
このようなガラスセラミック基板において、結晶化度は58~80%であることができる。
【0096】
このような一実施形態によるガラスセラミック基板も、550nmの波長で光透過率が少なくとも60%を満たし、二軸曲げ強度が少なくとも120MPaを満たすことができる。
【0097】
より具体的に、550nmの波長で光透過率が60~65%であり、二軸曲げ強度が330~370MPaであるガラスセラミック基板を提供することができる。
【0098】
図4には、このようなガラスセラミック基板の一実施形態の試片に対する光透過率のグラフを、そして図5には二軸曲げ強度の結果グラフを示した(ステージVに大別する)。
【0099】
図3に示すように、走査電子顕微鏡写真による分析によれば、前述した本発明の一実施形態によるガラスセラミック基板は、メタケイ酸リチウム、またはケイ酸リチウム結晶相のようなリチウムシリケート系結晶相は、その大きさが10nm~200nmであり、バージライト(virgilite)またはスポジュメン(spodumene)結晶相のようなLAS系結晶相は、その大きさが30nm~2μmを示す。
【0100】
このような大きさの結晶相を有することで、550nmの波長での光透過率が少なくとも60%を満たし、二軸曲げ強度が少なくとも120MPaを満たすガラスセラミック基板を提供することができる。
【0101】
なお、図4図5の結果から、光透過率は、熱処理するステップでの温度および処理時間の増加に伴い増加することが分かるが、550nm波長基準でステージIIからステージVの結果物に行くにつれ82~60%の光透過率を示す。二軸曲げ強度は、ガラス相(glass phase)のみある場合(ステージ0に大別する)と比べてステージIからステージVの結果物のようにリチウムシリケート系結晶及び/又はLAS系結晶が析出する場合の1.5~4.3倍の強度の増加を示すことが分かる。
【0102】
このような結果から、本発明で提案するSiO65.0~75重量%、Li2O10.0~13.5重量%、Alを5~9重量%、ZnO0.5~1.0重量%、KO1.5~3.5重量%、CaOを0~2.0重量%、P2.5~4.0重量%を含み、SiO/LiOのモル比は2.30~3.50、SiO/Alのモル比は14.50~20.50を満たすバルクガラス組成物を用いて、目的とする用途に応じて曲げ強度と光透過率が組み合わせられた様々なガラスセラミック基板を提供することができることが分かる。
【0103】
このような様々な曲げ強度と光透過率の組合せを満たすガラスセラミック基板は、電気回路基板におけるガラス基板を代替する基板ガラス、感光性ガラスセラミック基板、低膨張透明ガラスセラミック基板ガラス、ディスプレーユニットの基板ガラス、拡散板等の基板ガラス、接触損傷に対する耐性を有する保護ガラス、ディスプレイガラスへの適用が可能であることが分かる。
【0104】
具体例として、可撓性であり、印刷された電子デバイス、タッチ制御パネル用センサ、指紋センサ、薄膜バッテリー基板、モバイル電子デバイス、半導体インターポーザー、フォルダブルディスプレイ、太陽電池、または高い化学的安定性、温度安定性、低いガス透過性、可撓性、および低い厚さの組み合わせが必要なその他の用途での可撓性汎用平面としてのガラスセラミック基板を用いることができる。消費者用および産業用電子製品(例えば、フレキシブル/フォルダブルスマートフォン及びタブレットのためのカバー)以外にも、産業生産又は計測学における保護への適用に使用することができる。別の適用分野は、モバイルデバイス、例えばスマートフォン、タブレットなどの裏側カバーとしての用途、並びに、様々な適用のための拡散板としての用途としても考えられる。
【0105】
なお、このような用途を考慮して本発明の一実施形態によるガラスセラミック基板を原板とする、強化ガラスセラミック基板を提供することができるが、ここでの強化は、化学強化またはイオン強化であると理解されるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
以上、本発明を図面に示された一実施形態を参照して説明したが、これは例示的なものに過ぎず、本技術分野における通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、曲げ強度と光透過率とが多様に組み合わせられた多種のガラスセラミック基板を特定のバルクガラス組成物から容易に製造する方法およびそれから得られたガラスセラミック基板を提供することで、電気回路基板におけるガラス基板を代替する基板ガラス、感光性ガラスセラミック基板、低膨張透明ガラスセラミック基板ガラス、ディスプレーユニットの基板ガラス、拡散板等の基板ガラス、接触損傷に対する耐性を有する保護ガラス、ディスプレイガラスなどへの適用を可能にすることができる。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】