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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】アクリレートの連続蒸留方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/54 20060101AFI20240719BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07C67/54
C07C69/54 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505154
(86)(22)【出願日】2022-07-19
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2022070157
(87)【国際公開番号】W WO2023006499
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21188534.8
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】ティレ・ギースホフ
(72)【発明者】
【氏名】マルヴィン・クランプ
(72)【発明者】
【氏名】コルネリス・ヘンドリクス・デ・ルイター
(72)【発明者】
【氏名】カール-フリードリヒ・シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス・ヒュルスマン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ライン
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト・エリクスマン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AD11
4H006BD80
4H006BD83
4H006KA06
(57)【要約】
精留塔を用いてアクリレートを連続的に蒸留するための方法であって、前記精留塔への供給材料中のアクリレート含有量は少なくとも80重量%であり、前記精留塔の下部領域の液体は蒸発器によって加熱され、生成物に接触している前記蒸発器の部分はステンレス鋼で作製されている、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精留塔を用いてアクリレートを連続的に蒸留するための方法であって、前記精留塔への供給材料中のアクリレート含有量は少なくとも80重量%であり、前記精留塔の下部領域の液体は蒸発器によって加熱され、生成物に接触している前記蒸発器の部分はステンレス鋼で作製されている、方法。
【請求項2】
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルまたはアクリル酸2-エチルヘキシルがアクリレートとして使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精留塔への前記供給材料中の前記アクリレート含有量が少なくとも85重量%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記精留塔への前記供給材料中の前記アクリレート含有量が少なくとも90重量%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記精留塔への前記供給材料中の前記アクリレート含有量が少なくとも95重量%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸発器がシェルアンドチューブ熱交換器である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
生成物に接触している前記蒸発器の前記部分が、10.5重量%~30.0重量%のクロムを有するステンレス鋼から作製されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
生成物に接触している前記蒸発器の前記部分が、2.0重量%~35.0重量%のニッケルをさらに有するステンレス鋼から作製されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
生成物に接触している前記蒸発器の前記部分が、0.1重量%~8.0重量%のモリブデンをさらに有するステンレス鋼から作製されている、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記精留塔への前記供給材料が、供給材料1g当たり水酸化カリウム100mg未満の酸価を有する、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記精留塔への前記供給材料が、供給材料1g当たり水酸化カリウム10mg未満の酸価を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記精留塔への前記供給材料が、供給材料1g当たり水酸化カリウム1mg未満の酸価を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精留塔を用いてアクリレートを連続的に蒸留するための方法に関し、精留塔への供給材料中のアクリレート含有量は、少なくとも80重量%であり、精留塔の下部領域の液体は蒸発器によって加熱され、生成物に接触している蒸発器の部分はステンレス鋼で作製されている。
【背景技術】
【0002】
アクリレートに基づいて調製されたポリマーおよびコポリマーは、ポリマー分散体の形態で非常に経済的に重要である。これらは、例えば、接着剤、塗料、または織物、皮革および製紙助剤として使用される。
【0003】
特開平01-180850号公報には、蒸留塔内でのポリマーの形成に対する表面粗さの影響が記載されている。
【0004】
特開2001-213844号公報には、アクリレートおよびメタクリレートの調製が記載されている。例えば使用される酸性触媒の結果としての腐食を避けるために、6重量%~20重量%のニッケル、14重量%~24重量%のクロムおよび0.5重量%~5.5重量%のコバルトで構成される合金が提案されている。
【0005】
国際公開第2005/040084号パンフレットには、エチレン性不飽和モノマーの重合を回避するのに十分な銅を有する合金の使用が記載されている。
【0006】
アクリレートは、通常、アクリル酸のエステル化によって調製される。反応で得られたアクリレートは、その後、蒸留される。精製蒸留には、非合金鋼から作製された蒸発器を有する精留塔がここで使用される。
【0007】
蒸発器の表面には固体堆積物(ファウリング)が形成される。これは熱伝達を妨げ、さらには閉塞を引き起こす可能性がある。これらの固体堆積物は、定期的に機械によって除去する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平01-180850号公報
【特許文献2】特開2001-213844号公報
【特許文献3】国際公開第2005/040084号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、目的は、特に使用する蒸発器内の固体堆積物のレベルが低い、改良されたアクリレートの蒸留方法を見出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、精留塔を用いてアクリレートを連続的に蒸留するための方法であって、精留塔への供給材料中のアクリレート含有量は少なくとも80重量%であり、精留塔の下部領域の液体は蒸発器によって加熱され、生成物に接触している蒸発器の部分はステンレス鋼で作製されている方法によって達成される。
【0011】
適切なアクリレートは、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルである。アクリレートはアクリル酸エステルとも呼ばれる。
【0012】
精留塔への供給材料中のアクリレート含有量は、好ましくは少なくとも85重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%である。
【0013】
精留塔への供給材料は、好ましくは、供給材料1g当たり100mg未満の水酸化カリウム、より好ましくは、供給材料1g当たり10mg未満の水酸化カリウム、最も好ましくは、供給材料1g当たり1mg未満の水酸化カリウムの酸価を有する。酸価を決定するために、1gの供給材料を100mlのエタノールで希釈し、フェノールフタレインを使用して0.1モルの水酸化カリウムを含むエタノールで滴定する。
【0014】
精留塔は、それ自体既知の設計のものであり、分離内部構造物を有する実際の塔本体、精留塔の下部領域の蒸発器、および精留塔の上部領域の凝縮器で構成される。連続蒸留では、供給材料が精留塔に連続的に計量供給され、蒸留されたアクリレートが連続的に抜き出される。
【0015】
使用される分離内部構造物は、原則として、すべての標的な準内部構造物、例えばトレイ、構造化パッキンおよび/またはランダムパッキンであってもよい。トレイのうち、バルブキャップトレイ、シーブトレイ、バルブトレイ、Thormannトレイおよび/またはデュアルフロートレイが好ましい。ランダムパッキンのうち、リング、螺旋、サドル、ラシヒ、イントスもしくはポールリング、バレルもしくはインタロックスサドル、Top-Pakなど、またはブレードを含むものが好ましい。
【0016】
蒸発器は、それ自体公知の設計のものである。生成物に接触している蒸発器の部分では、蒸発器から蒸発する液体への熱の伝達が行われる。適した蒸発器は、例えば、シェルアンドチューブ熱交換器である。シェルアンドチューブ熱交換器は、シェル空間とチューブ空間からなる。熱媒体は、シェル空間を通って流れる。蒸発器の場合、熱媒体は、通常、加熱蒸気であり、シェル空間内のチューブの外側で凝縮する。蒸発させる液体は、多くのチューブからなるチューブ空間を通って流れる。ここでのチューブの内側は、生成物に
接触している蒸発器の部分である。
【0017】
シェルアンドチューブ熱交換器は、内部または外部蒸発器として動作することがある。内部蒸発器は、精留塔の分離内部構造物の真下に存在する。外部蒸発器は、精留塔と並んで存在し、精留塔の底部領域に接続されている。外部蒸発器を通る循環は、ポンプ(強制循環蒸発器)によって促進することができる。圧力保持弁を強制循環蒸発器の還流に組み込むことが可能である。これにより、シェルアンドチューブ熱交換器内での沸騰が回避され、精留塔(強制循環フラッシュ蒸発器)の底部領域への膨張時にのみ蒸発が起こる。後者は特に穏やかである。
【0018】
凝縮器も同様に、それ自体既知の設計である。凝縮器は、内部または外部凝縮器として動作することがある。外部凝縮器は、精留塔と並んで存在し、精留塔の上部領域に接続されている。適した凝縮器は、例えば、シェルアンドチューブ熱交換器である。シェルアンドチューブ熱交換器は、シェル空間とチューブ空間からなる。冷却媒体は、シェル空間を通って流れる。凝縮させるガスは、多くのチューブからなるチューブ空間を通って流れる。凝縮ガスの一部は、還流として精留塔にリサイクルされる。
【0019】
生成物に接触している蒸発器の部分は、ステンレス鋼でできている。本発明の文脈におけるステンレス鋼は、鉄を主成分として、少なくとも10.5重量%のクロムを有する鋼である。
【0020】
好ましいステンレス鋼は、好ましくは10.5重量%~30.0重量%、より好ましくは16.0重量%~26重量%、特に好ましくは17.0重量%~20.5重量%、最も好ましくは18.0重量%~20.0重量%のクロムを含み、より好ましくは追加的に好ましくは2.0重量%~35.0重量%、より好ましくは8.0重量%~26.0重量%、特に好ましくは10.0重量%~25.0重量%、最も好ましくは12.0重量%~24.0重量%のニッケルを含み、かつ/あるいは追加的に好ましくは0.1重量%~8.0重量%、より好ましくは2.0重量%~5.0重量%、特に好ましくは2.5重量%~4.5重量%、最も好ましくは3.0重量%~4.0重量%のモリブデンを含む。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、ステンレス鋼の使用が固体堆積物の形成を明らかに減少させることができるという知見に基づいている。
【0022】
アクリレートの調製において得られる、アクリレート含有量の高い物質の流れは腐食性ではない。したがって、アクリレートの精製蒸留では、非合金鋼製の精留塔および蒸発器が使用される。腐食による材料の著しい損失は予想されない。それにもかかわらず、微量の鉄が溶解しており、それが固体堆積物の形成を促進する可能性がある。
【0023】
アクリレートの調製を以下に記載する。
【0024】
アクリレートは、アクリル酸とアルコール、例えばアルカノールとのエステル化により、それ自体既知の様式で様々な方法で調製される。アクリレートは、一般に、例えば、Kirk Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,4th ed.,1994,pages 301-302 and Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th edition,volume A1,pages 167-169に記載されるように、均一系または不均一系触媒によるエステル化によって得られる。
【0025】
文献には、アクリル酸とアルコールとのエステル化によりアクリレートを調製するための多数の方法が記載されており、例えば独国特許出願公開第19604252(A1)号および独国特許出願公開第19604253(A1)号に記載されている。アクリル酸とn-ブタノールとの酸触媒エステル化によってアクリル酸n-ブチルを調製する方法は、例えば国際公開第98/52904号に開示されている。バッチ式酸触媒エステル化の一例は、欧州特許出願公開第0890568(A1)号である。
【0026】
使用されるアルコールは、典型的には、1~12個の炭素原子を含む任意のアルコール、例えば、一価または多価アルコール、好ましくは一価~四価、より好ましくは一価~三価、最も好ましくは一価または二価、特に一価である。
【0027】
例は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、プロパン-1,3-ジオールモノメチルエーテル、プロパン-1,2-ジオール、エチレングリコール、2,2-ジメチルエタン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ジメチルアミノエタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-デカノール、n-ドデカノール、2-エチルヘキサノール、3-メチルペンタン-1,5-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、2,4-ジエチルオクタン-1,3-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、シクロドデカノール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、n-ペンタノール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、トリメチロールブタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコールおよびそのエトキシル化およびプロポキシル化転化生成物、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ペンタエリトリトール、2-エチルプロパン-1,3-ジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、グリセロール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリトール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールS、5-メチル-5-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、シクロヘキサン-1,1-、-1,2-、-1,3-および-1,4-ジメタノール、シクロヘキサン-1,2-、-1,3-または-1,4-ジオールである。
【0028】
好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコール、n-オクタノールおよびジメチルアミノエタノールである。特に好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、n-ブタノール、2-エチルヘキシルアルコールおよびジメチルアミノアルコールである。
【0029】
非常に特に好ましいアルコールは、メタノール、エタノール、n-ブタノール、および2-エチルヘキシルアルコールである。
【0030】
使用可能な酸性触媒は、好ましくは硫酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸またはそれらの混合物であり、酸性イオン交換体またはゼオライトも考えられる。
【0031】
硫酸、p-トルエンスルホン酸およびメタンスルホン酸を使用することが特に好ましい。硫酸およびp-トルエンスルホン酸が非常に特に好ましい。
【0032】
反応混合物に基づく触媒濃度は、例えば、1重量%~20重量%、好ましくは5重量%~15重量%である。
【0033】
酸性または塩基性触媒の存在下でのエステル交換によるアクリレートの調製は、一般的な知識である(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,5th edition,volume A 1,page 171)。
【0034】
文献には、アクリレートとアルコールからアクリレートを調製するためのエステル交換反応の例が数多くある。例えば、欧州特許出願公開第0906902(A2)号におけるアクリル酸メチルとジメチルアミノエタノールとのエステル交換によるアクリル酸ジメチルアミノエチルの調製である。バッチ式エステル交換は、例えば欧州特許出願公開第1078913(A2)号に記載されている。
【0035】
提案されている触媒は、特に、アルキル基がC1~C4-アルキル基であるチタンアルコキシド、例えばテトラメチル、テトラエチル、テトライソプロピル、テトラプロピル、テトライソブチルおよびテトラブチルチタネートである(欧州特許第1298867(B1)号、欧州特許出願公開第0960877(A2)号を参照されたい)。さらなるチタン化合物は、独国特許出願公開第10127939(A1)号にも記載されている。また、チタンフェノキシド(独国特許出願公開第2008618(A1)号)、ジブチル錫オキシド(欧州特許出願公開第0906902(A2)号)、例えばハフニウム、チタン、ジルコニウムまたはカルシウムの金属キレート化合物、アルカリ金属およびマグネシウムアルコキシド、有機錫化合物またはカルシウムおよびリチウム化合物、例えば酸化物、水酸化物、炭酸塩またはハロゲン化物も提案されている触媒である。
【0036】
適した重合防止剤は、例えば、N-オキシド(ニトロキシルまたはN-オキシルフリーラジカル、すなわち少なくとも1つの>N-O基を有する化合物)、例えば4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンN-オキシルまたは4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンN-オキシル、フェノール類およびナフトール類、例えばp-アミノフェノール、p-ニトロソフェノール、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-メチル-4-tert-ブチルフェノール、2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノールまたは4-tert-ブチル-2,6-ジメチルフェノール、キノン類、例えばヒドロキノンまたはヒドロキノンモノメチルエーテル、芳香族アミン類、例えばN,N-ジフェニルアミン、フェニレンジアミン類、例えばN,N’-ジアルキル-p-フェニレンジアミン(ここでアルキル基は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立に1~4個の炭素原子からなり、直鎖であっても分枝していてもよい)、例えばN,N’-ジメチル-p-フェニレンジアミンまたはN,N’-ジエチル-p-フェニレンジアミン、ヒドロキシルアミン類、例えばN,N-ジエチルヒドロキシルアミン、イミン類、例えばメチルエチルイミンまたはメチレンバイオレット、スルホンアミド類、例えばN-メチル-4-トルエンスルホンアミドまたはN-tert-ブチル-4-トルエンスルホンアミド、オキシム類、例えばアルドキシム、ケトキシムまたはアミドキシム、例えばジエチルケトキシム、メチルエチルケトキシムまたはサリチルアルドキシム、リン化合物、例えばトリフェニルホスフィン、トリフェニルまたはトリエチルホスファイト、硫黄化合物、例えばジフェニルスルフィドまたはフェノチアジン、金属塩、例えば例えば酢酸セリウム(III)またはエチルヘキサン酸セリウム(III)またはそれらの混合物であってよい。
【0037】
重合は、好ましくは、フェノチアジン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンN-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンN-オキシル、2,6-tert-ブチル-4-メチルフェノールまたはそれらの混合物によって阻害される。
【0038】
フェノチアジンを重合防止剤として使用することが非常に特に好ましい。
【0039】
実施例
実施例1
下部領域にシェルアンドチューブ熱交換器(62m2)、上部領域に外部冷却器を備えた精留塔(直径1000mm、15のデュアルフロートレイ)の第1のトレイの下に、アクリル酸エチル(99.88重量%のアクリル酸エチル、0.05重量%のアクリル酸イソブチル、0.03重量%のN,N’-ジ-sec-ブチル-パラ-フェニレンジアミン、0.01重量%の4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシル)を連続的に計量した。精留塔は400mbarの圧力で運転された。還流比は0.2であった。還流は4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシルで安定化させた。精留塔への供給量は6094kg/hであった。精留塔の上部では、7386kg/hの留出物が除去された。
【0040】
生成物に接触している蒸発器の部分は、ステンレス鋼(DIN EN 10088に準拠した1.4571材料:16.5重量%~18.5重量%のクロム、10.5重量%~13.5重量%のニッケル、2.0重量%~2.5重量%のモリブデン、0.7重量%までのチタン)から作製された。腐食速度は0.01mm/a.未満であった。
【0041】
蒸発器では、100日後にポリマー堆積物は見られなかった。
【0042】
実施例2(比較例)
下部領域にシェルアンドチューブ熱交換器(51m2)、上部領域に外部冷却器を備えた精留塔(直径1100mm、52のデュアルフロートレイ)の39番目のトレイに、アクリル酸エチル(99.88重量%のアクリル酸エチル、0.05重量%のアクリル酸イソブチル、0.03重量%のN,N’-ジ-sec-ブチル-パラ-フェニレンジアミン、0.01重量%の4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシル)を連続的に計量した。精留塔は1000mbarの圧力で運転された。還流比は0.93であった。還流は4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニルオキシルで安定化させた。精留塔への供給量は6399kg/hであった。6094kg/hの生成物が精留塔の下部から排出された。
【0043】
生成物に接触している蒸発器の部分は、非合金鋼(1.0425材料:0.3重量%までのクロム、0.3重量%までのニッケル、0.08重量%までのモリブデン、0.03重量%までのチタン)から作製された。腐食速度は0.01mm/a.未満であった。
【0044】
蒸発器では、100日後に明確なポリマー堆積物が明らかであった。
【国際調査報告】