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特表2024-528026混合マトリックス膜、組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】混合マトリックス膜、組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20240719BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20240719BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20240719BHJP
   B01D 71/28 20060101ALI20240719BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20240719BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240719BHJP
   C08F 12/14 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C08L101/12
B01D53/22
B01D71/02 500
B01D71/28
B01D71/40
B01D71/02
C08K3/013
C08F12/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505201
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-02-29
(86)【国際出願番号】 IB2021000536
(87)【国際公開番号】W WO2023007202
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(71)【出願人】
【識別番号】522178393
【氏名又は名称】トタルエナジーズ・ワンテック
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・エル・ジン
(72)【発明者】
【氏名】コリン・エイ・ダン
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ディー・ノーブル
(72)【発明者】
【氏名】ハイファ・ベン・ハシーン
【テーマコード(参考)】
4D006
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006KE16R
4D006MA03
4D006MA40
4D006MB04
4D006MC03X
4D006MC07X
4D006MC22X
4D006MC24X
4D006MC36X
4D006MC90
4D006NA44
4D006NA51
4D006PA05
4D006PB18
4D006PB64
4D006PB68
4J002AA031
4J002AA071
4J002BC101
4J002BG071
4J002CE001
4J002DD007
4J002DF017
4J002DJ006
4J002DK007
4J002DM007
4J002FB076
4J002FD016
4J002FD117
4J002FD148
4J002FD207
4J002GD00
4J002GT00
4J100AB07P
4J100BB01P
4J100BC73H
4J100CA01
4J100CA31
4J100DA36
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100HA55
4J100HA61
4J100HB42
4J100HC63
4J100JA15
(57)【要約】
本発明は、以下を含む組成物に関する:
-帯電した表面を有する少なくとも1つの多孔質固体添加剤;
-荷電界面剤;
-重合性イオン液体モノマー;
ここで、前記荷電界面剤は、3つ以上の繰り返し単位を含むイオン液体(IL)ベースのオリゴマーである。
本発明はまた、組成物から形成される混合マトリックス膜及び混合マトリックス膜の製造方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む組成物:
-帯電した表面を有する少なくとも1つの多孔質固体添加剤;
-荷電界面剤;及び
-重合性イオン液体;
ここで、前記荷電界面剤は、3つ以上の繰り返し単位を含むイオン液体(IL)ベースのオリゴマーである。
【請求項2】
前記ILベースオリゴマーが、重合したノルボルネン、オキサノルボルネン、スチレン及び/又はアクリレート部分に基づく、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ILベースオリゴマーが、重合したスチレン部分及び/又はアクリレート部分に基づく、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記荷電界面剤が、Tf2-、BF4 -、N(CN)2 -、PF6 -、C(CN)3 -、B(CN)4 -、N(SO2F)2 -、TfO-、SbF6 -、ハロゲン化物、及びスルホン酸塩からなる群から選択されるアニオンを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの多孔質固体が、ゼオライト、金属過酸化物、ゼオライト性イミダゾレート骨格及び金属有機骨格から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの多孔質固体添加剤が以下から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物:
・ゼオライト:ゼオライトA、ZSM-5、ゼオライト-13X、ゼオライト-KY、シリカライト-1、SSZ-13、SAPO-34;
・MCM-41、MCM-48、SBA-11、SBA-12、SBA-15、メソ多孔質ZSM-5、活性炭、TiO2、MgO;及び/又は
・MIL-96、MIL-100、MOF-5、MOF-177、ZIF-7、ZIF-8、Cu-TPA、Cu3(BTC)2、Cu-BPY-HFS。
【請求項7】
架橋剤も含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記重合性イオン液体が3つ未満の繰り返し単位を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物から形成された混合マトリックス膜。
【請求項10】
以下を含む混合マトリックス膜:
-帯電した表面を有する少なくとも1つの多孔質固体添加剤;
-荷電界面剤;及び
-重合性イオン液体;
ここで、前記荷電界面剤は、3つ以上の繰り返し単位を含むイオン液体ベースのオリゴマーである。
【請求項11】
ガス分離、好ましくはCO2分離のための、請求項9又は10に記載の混合マトリックス膜の使用。
【請求項12】
混合ガス中、40バーより高い、好ましくは50バーより高い圧力でのCO2分離のための、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
混合ガス中、50℃より高い温度、好ましくは60℃より高い温度でのCO2分離のための、請求項11に記載の使用。
【請求項14】
混合ガス中、50バーより高い圧力及び60℃より高い温度でのCO2分離のための、請求項11に記載の使用。
【請求項15】
混合マトリックス膜の製造方法であって、
-3つ未満の繰り返し単位を含む重合性ILに基づくリビング鎖付加重合ステップ、
-及び、帯電した表面を有する少なくとも1つの多孔質固体添加剤を荷電界面剤で被覆するステップであって、前記荷電界面剤は、3つ以上の繰り返し単位を含むILベースのオリゴマーであるステップ
を含む方法。
【請求項16】
リビング鎖付加重合を制御するステップを含む、請求項15に記載の混合マトリックス膜の製造方法。
【請求項17】
長さを制御したILオリゴマーを合成するステップを含む、請求項16に記載の混合マトリックス膜の製造方法。
【請求項18】
開環メタセシス重合(ROMP)ステップを含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の混合マトリックス膜の製造方法。
【請求項19】
極薄層の形成を含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の混合マトリックス膜の製造方法。
【請求項20】
請求項9又は10に記載の混合マトリックス膜を含む分離システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜を使用するガス分離の分野に関する。特に、本発明は混合マトリックス膜の分野に関する。本発明は、ガス分離を改善するための新しい膜及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスの世界的な需要は増加しており、抽出ガスをパイプライングレードに改善できる技術への需要も高まっている。2019年、米国だけで8,466億立方メートルの天然ガスが消費され、すなわち、2019年には3.3%増加し、2009年からは37%増加した。米国は世界消費量の21.5%を占める世界最大の消費国であり、ロシア(11.3%)や中国(7.8%)を大きく上回っている(BP Statistical Review of World Energy 2020 - 69th edition and Statistical Review of world energy - June 2020)。
【0003】
天然ガスは主にメタン(CH4)で構成されているが、より重質の炭化水素、水(H2O)、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、ヘリウム(He)、窒素(N2)を含む場合がある。CO2は天然ガスの発熱量を低下させ、水の存在下では炭酸を形成してパイプライン設備を腐食させるため、天然ガスの品質に悪影響を及ぼす。
【0004】
CO2を除去する一般的な方法には、極低温蒸留、圧力又は温度スイング吸着、アミン洗浄、及び膜分離が含まれる。現在、アミン洗浄が主流の技術であるが、膜は分離市場のわずか5%を占めている。しかし、洗浄にはアミン塩からCO2を除去するために多大なエネルギーコストが必要であり、環境リスクをもたらす。
【0005】
アミン洗浄や吸着プロセスなどのエネルギー集約型のCO2分離方法と比較して、膜ベースの分離は一般に環境に優しく、設置面積が小さく、必要な資本コストと運用コストが低いと考えられている。CO2/CH4分離用の有望な種類の膜材料は、ポリマーマトリックス中に多孔質固体(ゼオライトなど)を含む混合マトリックス膜(mixed-matrix membranes、MMM)である。
【0006】
膜ガス分離、特にMMMの研究は、高い透過性と選択性を備えた膜の開発に焦点を当てている。従来のMMMは、ポリマーマトリックスに多孔質無機充填剤を添加することによって調製される。実際、MMMはゼオライトの優れた分離特性を利用して、より加工しやすい材料にする戦略として提案された。例えば、MMMの調製は、ゼオライトをポリ(ジメチルシロキサン)のゴム状ポリマーに組み込むことからなることができる。
【0007】
しかし、MMMの性能はゼオライト粒子とポリマーマトリックス間の界面接着力の不足によって制限されることがすぐに判明した。結果として生じる界面空隙は非選択的であり、ガス輸送のための低抵抗ルートを提供するため、最初のMMMのCO2/CH4分離能力は厳しく制限されていた。この影響を制限するための1つの可能な解決策は、ゼオライトを多く配合したMMMを製造することである。これらのMMMは、大幅な選択性の向上を示した。しかし、ゼオライト含有量が高いと機械的安定性が低下し、脆いMMMが生成されるため、天然ガス分離プロセスに存在する高圧差圧には適していない。
【0008】
新しいMMMは、重合イオン液体(PIL)、遊離イオン液体(IL)、及びゼオライトからなる混合物の現場ラジカル架橋によって生成されている。
【0009】
イオン液体(IL)は、100℃未満の融点、好ましくは室温の融点を有する有機溶融塩である。ILは、無視できるほどの蒸気圧、高い熱安定性、幅広い無機及び有機化合物に対する高い溶解性など、他の液体とは異なる多くの特性を示す。重合イオン液体(PIL)は、ILに基づく(例えば、ILモノマーから作られた)荷電した繰り返し単位を持つポリマーである。PILは通常固体材料であるため、イオン及びガスの拡散率はILより低くなるが、ガス溶解度の値は同等であり、機械的安定性は優れている。
【0010】
このようなMMMは、低圧単一ガス試験でCO2をCH4から分離する際に優れた性能を示した(Bara et al. 2008. Improving CO2 permeability in polymerized room-temperature ionic liquid gas separation membranes through the formation of a solid composite with a room-temperature ionic liquid. Polym. Adv. Technol. 2008; 19: 1415-1420)。特に、ILの使用は膜の透過性を高め、PIL(ポリマー)とゼオライトの間の相互作用を促進することが示されている(Hudiono et al. 2010. A three-component mixed-matrix membrane with enhanced CO2 separation properties based on zeolites and ionic liquid materials. Journal of Membrane Science 350 (2010) 117-123)。有利なことに、これらのMMMの調製には、架橋によるラジカル重合が含まれており、これは、縮合重合、カチオン重合、アニオン重合と比較して、工業生産に最も便利で、多種多様な官能基や鎖長に対応する。
【0011】
さらなる研究により、ポリマーマトリックス中にILが存在するとPILが可塑化されることが示された。したがって、ポリマーマトリックスにILを添加すると、研究した複合膜の透過性が増加した。ILは鎖間の充填を破壊し、PILマトリックスはよりゴム状になる。したがって、ポリマー鎖はより自由に動くことができ、ゼオライト粒子の表面との界面相互作用がより良好になる。この研究は、3成分MMMにILが存在すると、ポリマーマトリックスとゼオライト表面の間の接着相互作用が強化され、膜のガス分離性能が向上することを示している(Hudiono et al. 2011. Novel mixed matrix membranes based on polymerizable room-temperature ionic liquids and SAPO-34 particles to improve CO2 separation. J. Membr. Sci. 370 (2011) 141-148)。
【0012】
さらに、界面空隙の減少とPIL-IL-ゼオライトMMMのCO2/CH4分離性能の向上に関与する根本的な要因を最適化することが提案されている(Singh et al. 2016. Determination and optimization of factors affecting CO2/CH4 separation performance in poly(ionic liquid)- ionic liquid- zeolite mixed-matrix membranes. Journal of Membrane Science 509 (2016) 149-155)。これらのMMMの3つの成分間の界面を制御するために、ゼオライトの配合量、ゼオライトの種類、PIL構造、及びポリマー架橋の量が変化した。CO2/CH4分離性能に対するこれらの変動の影響が研究され、CO2/CH4選択性と透過性が改善された最適化されたMMM材料が特定された。さらに、これらのMMMの機械的安定性が実証されており、これらのMMMは、PIL-ILプラットフォームに基づいて、最近100nm厚の活性層で加工された。高いCO2/CH4分離性能、機械的安定性、及び潜在的なプロセス能力の組み合わせは、天然ガス分離用材料における重大な進歩であり、これらのMMMは、産業用CO2/CH4分離への将来の応用にとって魅力的な候補となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、これらのMMMを混合ガス、高圧、及び/又は高温条件下でテストすると、CO2/CH4選択性が劇的に低下した。さらに、これらのMMMを薄膜として適用すると、透過性が大幅に低下する。特に、高圧、高温のガス試験条件下で観察されるCO2/CH4選択性の値が低いのは、選択性ゼオライト粒子からのPILマトリックスの剥離と、その周囲の微細なガス欠陥の形成が原因である可能性がある。さらに、動作温度が高くなると、ゼオライト粒子の表面へのCO2の吸着が妨げられ、高温でのこれらの膜の選択性がさらに低下する。混合ガス供給条件下でのMMMの選択性損失の軽減に関する研究はほとんど発表されていない。
【0014】
したがって、混合ガス、高圧、及び/又は高温の動作条件下で使用した場合に、低コストのシステムを使用し、長期にわたって安定性を高める、より優れたCO2/CH4分離選択性及びCO2透過性を備えたMMMを生成するための、新しい方法と最適化された組成混合物が必要とされている。
【0015】
本発明は、従来技術の欠点を克服することを目的とする。本発明の目的の1つは、これらの(PIL-IL-ゼオライト)混合物の組成を最適化し、混合ガス、高圧、及び/又は高温の動作条件下で使用した場合に、より優れたCO2/CH4分離選択性及びCO2透過性を備えたMMMを生成する方法、及び可塑化や膨潤の現象が起こりにくいMMMを開発することである。
【0016】
特に、本発明は、少なくとも3つの成分を含む新しい組成物を提案し、前記組成物は、混合ガス、高温、高圧などの特定の条件において、より良好な選択性及び透過性を有するMMMの生成を可能にする。新しい組成物により、局所的な遊離IL欠陥の回避も可能になる。また、本開示は、新たなMMM及びその製造方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下に、本発明の基本的な理解を提供することを目的として、本発明の選択された態様、実施形態、及び実施例の単純化した概要を記載する。しかしながら、この概要は、本発明のすべての態様、実施形態、及び実施例の広範な概観を構成するものではない。概要の唯一の目的は、概要に続く本発明の態様、実施形態及び例のより詳細な説明への導入として、本発明の選択された態様、実施形態及び例を簡潔な形で提示することである。
【0018】
本発明者らは、特定のMMM組成物において、3つ以上の繰り返し単位を含むILベースのオリゴマーによって形成される荷電界面剤を使用することによって、MMM分野の改良を開発した。
【0019】
したがって、本発明の一態様によれば、以下を含む組成物が提供され:
-帯電した表面を有する少なくとも1つの多孔質固体添加剤;
-荷電界面剤;
-重合性イオン液体、好ましくは重合性イオン液体モノマー;
ここで、前記荷電界面剤は、3つ以上の繰り返し単位を含むイオン液体(IL)ベースのオリゴマーである。この組成物は、好ましくは、MMM製造専用である。
【0020】
従来の小分子ILをこれらのILオリゴマーに置き換えることにより、「界面」成分の粘度が増加する。ポリマー中のこれらのオリゴマーにより、可塑化や膨潤に対する耐性がより高い「グラフトポリマーネットワーク」を作成することが可能になる。したがって、特にこれらのMMMが混合ガス、高圧、及び/又は高温の動作条件下で使用される場合、CO2/CH4分離選択性とCO2透過性が向上したMMMを生成することが可能になる。さらに、非常に有利なことに、そのような組成物は、システムコストを削減し、時間の経過とともにより安定する(より長く使用する)ことを可能にする。
【0021】
組成物の他の任意の特徴によれば、組成物は、以下の特徴のうちの1つ以上を単独で又は組み合わせて任意に含んでもよい:
-イオン液体ベースのオリゴマーは、重合したノルボルネン、オキサノルボルネン、スチレン及び/又はアクリレート部分に基づく。好ましくは、ILベースのオリゴマーは、重合したスチレン部分及び/又はアクリレート部分に基づく。
-少なくとも1つの多孔質固体添加剤は、ゼオライト、金属過酸化物、ゼオライト性イミダゾレート骨格及び有機金属骨格から選択される。
-架橋剤も含まれる。特に、架橋剤は、重合性イオン液体の重合中に使用される。
-荷電界面剤は、Tf2-、BF4 -、N(CN)2 -、PF6 -、C(CN)3 -、B(CN)4 -、N(SO2F)2 -、TfO-、SbF6 -、ハロゲン化物、及びスルホン酸塩からなる群から選択されるアニオンを含む。
-少なくとも1つの多孔質固体添加剤は、ゼオライト、金属過酸化物、ゼオライト性イミダゾレート骨格及び有機金属骨格から選択される。
少なくとも1つの多孔質固体添加剤が以下から選択される:
・ゼオライト:ゼオライトA、ZSM-5、ゼオライト-13X、ゼオライト-KY、シリカライト-1、SSZ-13、SAPO-34;
・MCM-41、MCM-48、SBA-11、SBA-12、SBA-15、メソ多孔質ZSM-5、活性炭、TiO2、MgO;及び/又は
・MIL-96、MIL-100、MOF-5、MOF-177、ZIF-7、ZIF-8、Cu-TPA、Cu3(BTC)2、Cu-BPY-HFS。
-さらに架橋剤を含む。
-重合性イオン液体は、3つ未満の繰り返し単位を含む。
【0022】
本発明の別の態様によれば、本発明の組成物から形成された混合マトリックス膜が提供される。特に、本発明は、以下を含む混合マトリックス膜に関する。
-帯電した表面を有する少なくとも1つの多孔質固体添加剤;
-荷電界面剤;及び
-重合性イオン液体;
ここで、前記荷電界面剤は、3つ以上の繰り返し単位を含むイオン液体ベースのオリゴマーである。
【0023】
好ましくは、イオン液体ベースのオリゴマーは、20以下の繰り返し単位を含み、より好ましくは10以下の繰り返し単位を含む。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、ガス分離、好ましくはCO2分離のための、本発明による混合マトリックス膜の使用に関する。
【0025】
組成物の他の任意の特徴によれば、組成物は、以下の特徴のうちの1つ以上を単独で又は組み合わせて任意に含んでもよい:
-混合ガス中でのCO2分離のための混合マトリックス膜の使用は、40バーを超える圧力、好ましくは50バーを超える圧力で行われる。
-混合ガス中でのCO2分離のための混合マトリックス膜の使用は、50℃を超える温度、好ましくは60℃を超える温度で行われる。
-混合ガス中でのCO2分離のための混合マトリックス膜の使用は、50バーを超える圧力、60℃を超える温度で行われる。
【0026】
本発明の別の態様によれば、以下の工程を含む混合マトリックス膜の製造方法が提供される。
-3つ未満の繰り返し単位を含む重合性イオン液体に基づくリビング鎖付加重合ステップ;
-及び、帯電した表面を有する固体多孔質添加剤を荷電界面剤で被覆するステップであって、前記荷電界面剤は、3つ以上の繰り返し単位を含むILベースのオリゴマーであるステップ。
【0027】
この方法の他の任意選択の特徴によれば、方法は、以下の特徴のうちの1つ以上を単独で、又は組み合わせて任意に含むことができる。
-リビング鎖付加重合を制御するステップを含む。
-開環メタセシス重合(ring-opening metathesis polymerization、ROMP)ステップ、又は制御されたラジカル重合(例えば、ATRP又はRAFT)ステップを含む。
-制御された長さのILオリゴマーの合成ステップを含む。
-極薄層の形成を含む。
【0028】
別の態様によれば、本発明は、任意の好ましい又は任意の実施形態を含む、例えば本発明による組成物から形成される、本発明による混合マトリックス膜を含む分離システムに関する。
【0029】
本発明の前述及びその他の目的、特徴及び利点は、添付図面と併せて以下の詳細な説明を読めばより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、RAFTに基づく、PIL/ILゼオライトMMM調製において小分子ILを置き換えるために提案された長さ制御されたILオリゴマーの合成スキームの例を示す。
図2図2は、RAFTに基づく、PIL/ILゼオライトMMM調製において小分子ILを置き換えるために提案された長さ制御されたILオリゴマーの代替的な合成スキームの例を示す。
図3図3は、ATRPに基づく、PIL/ILゼオライトMMM調製において小分子ILを置き換えるために提案された長さ制御されたILオリゴマーの合成スキームの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の例示的な実施形態について以下に説明する。
【0032】
以下の説明において、「ポリマー」とは、(統計的、勾配的、ブロック的、交互型の)コポリマー又はホモポリマーのいずれかを意味する。
【0033】
「コポリマー」とは、いくつかの異なる又は同一のモノマー単位を含むポリマーを意味する。
【0034】
「オリゴマー」という用語、及びダイマー、トリマー、又は重オリゴマーなどの同様の用語は、それぞれモノマーに由来する単位を2、3、又はそれ以上含むオリゴマー化生成物を指す。単位は同じでも異なっていてもよい。
【0035】
使用される「モノマー」という用語は、重合を受けることができる分子を指す。
【0036】
「重合」という用語は、モノマー又はモノマーの混合物を、あらかじめ定義された構造(ブロック、勾配、統計など)のポリマーに変換する化学的方法、2つ以上の分子が結合して、繰り返しの構造単位を含む大きな分子を形成する化学反応を指す。
【0037】
「制御された重合」という表現は、停止させることができる重合反応を意味する。
【0038】
「鎖付加重合技術」という表現は、副生成物を生成しない重合を意味し、縮重合とは区別される。
【0039】
「開環メタセシス重合」(ROMP)という表現は、オレフィンのメタセシス反応の一種である。この反応では、歪んだ環状オレフィンを使用して、予測可能な鎖長の単分散ポリマー及びコポリマーを生成する。
【0040】
本明細書で使用される「イオン液体」(すなわち「IL」)という表現は、カチオンとアニオンからなり、25℃で液体である室温の溶融塩を指すことができる。本発明によるILは、塩を溶融することによって生成することができ、そのように生成される場合、イオンのみからなる。ILは、1種のカチオン及び1種のアニオンを含む均質な物質から形成され得るか、又は2種以上のカチオン及び/又は2種以上のアニオンから構成され得る。したがって、ILは2種以上のカチオンと1種のアニオンで構成され得る。ILはさらに、1種のカチオンと1種以上のアニオンとから構成され得る。さらに、ILは、複数種のカチオン及び複数種のアニオンから構成され得る。ILは溶媒として最も広く知られている。ILは、単一分子又は単一ユニットのような小さな分子を指す。好ましくは、ILは室温又は室温以上で液体である。ILはまた、非重合性室温ILであってもよい。
【0041】
「重合性イオン液体」(すなわち、「重合性IL」又は「ILモノマー」)という表現は、室温で、好ましくはラジカル重合によって重合性モノマー又はオリゴマー、好ましくはモノマーを指す。このような重合性ILとは、カチオン又はアニオンが重合性基を有するILを指す。
【0042】
「帯電」という用語は、分子又は鉱物内の異なる位置に正及び/又は負の電荷を有する分子又は鉱物を指す。
【0043】
「部分」という用語は、分子の特定のセグメント又は官能基を指す。化学部分は、多くの場合、分子に埋め込まれた、又は分子に付加された化学実体として認識される。
【0044】
本明細書で使用される「不飽和」という用語は、部分又は分子が1つ以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0045】
本明細書で使用される用語「飽和」は、部分又は分子が1つ以上の不飽和単位を有さないことを意味する。
【0046】
「骨格」という用語は、本発明のポリマー、コポリマー、又はオリゴマーの主鎖を指す。
【0047】
「分離」(分離膜)という用語は、(膜によって)分離される2つの媒体間で、混合物又は非混合物中の特定の分子又はイオンが選択的に通過することを意味する。膜によって保持される混合物の部分は保持液(又は濃縮液)と呼ばれ、後者を通過する部分は透過液と呼ばれる。分離は、定義された分離メカニズムに従って、移動の駆動力の作用の下で行われる。膜の特性は、透過性と選択性という2つのパラメーターによって決まる。
【0048】
「選択性」という用語は、透過物が膜に保持される特異性の特徴を指す。本出願の意味において、膜の選択的透過性とは、膜が、膜によって分離された2つの媒体間の分子又はイオンの出入りを制御できることを意味する。
【0049】
「透過性」という用語は、分子やイオンが膜を貫通、横切り、又は移動できるようにする膜の特性であり、流体がそれ自体を通過できる能力である。
【0050】
「混合ガス」という用語は、少なくとも2つのガスの混合物を指す。
【0051】
「高圧」という用語は、40バー以上、好ましくは50バー以上の圧力を指す。
【0052】
「高温」という用語は、50℃以上、好ましくは60℃以上の温度を指す。
【0053】
「高粘度」という用語は、25℃、1気圧で測定して、例えば粘度計によって、5.10-3Pa・s、好ましくは1.10-2Pa・s、より好ましくは5.10-2Pa・s以上の粘度を指す。
【0054】
「ゼオライト」という用語は、主にシリコン、アルミニウム、酸素、最終的にはリン、及びチタン、スズ、亜鉛を含む金属を含む結晶構造から形成される、天然又は合成又は水和されたケイ酸塩又はアルミノケイ酸塩のいずれかを指すことができる。
【0055】
「多孔質」という用語は、分子の通過を可能にする小さな隙間又は開口部である細孔空間を有する材料を指すことができる。多孔質材料、特に多孔質固体は、メソ多孔質又はミクロ多孔質であり得る。IUPAC(国際純正応用化学連合)によると、ミクロ多孔質は2nm未満のサイズの細孔(ゼオライト又はアルミノリン酸塩タイプ)に相当し、メソ多孔質(シリカ、アルミナ、カーボン、金属酸化物)は2~50nmのサイズの細孔に相当する。サイズは直径に対応する。
【0056】
「可塑化」という用語は一般に、浸透ガスによるポリマーマトリックスの軟化又は膨潤を指し、ポリマーネットワーク上の膨潤応力に起因すると考えられる。ガラス状ポリマーへの二酸化炭素の収着により、選択透過性が低下して局所的なセグメント組織化が促進され、膜の形態学的性能に大きな影響を与える可能性があることはよく知られている。したがって、可塑化は、膜が供給流中の高濃度のCO2にさらされる商業的なCO2/CH4分離用途のポリマー-ガスシステムで最も頻繁に遭遇する現象である。
【0057】
「薄膜複合膜」という表現は膜厚そのものを指す。膜の厚さは、現在の混合マトリックス膜よりも薄いことが好ましい。例えば、混合マトリックス膜の厚さは、0.05μm~50μmに含まれ、好ましくは5μm未満、より好ましくは2μm未満である。
【0058】
本開示の様々な実施形態の要素を紹介する場合、冠詞「a」、「an」及び「the」は、1つ又は複数の要素が存在することを意味することを意図している。「含む」、「備える」、及び「有する」という用語は包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在する可能性があることを意味する。
【0059】
さらに、本開示の「一実施形態」又は「実施形態」への言及は、記載された特徴も組み込む追加の実施形態の存在を排除するものとして解釈されることを意図していないことを理解されたい。
【0060】
上で説明したように、現在のMMMは、混合ガス、高圧、及び/又は高温の動作条件下で使用すると、CO2/CH4分離選択性とCO2透過性が低下する。さらに、現在のMMMには遊離ILがあり、キャスティング中にMMMフィルム断面の中央にさらに「溜まる」又は凝集する傾向があり、支持フィルムの隣に極薄の「乾燥した」上部「クラスト」及び/又は底面を形成する。このような「IL欠陥」領域は、TFCMMMの厚さを通る全体的なガス透過に関して著しく律速になる。さらに、小分子IL材料はポリマーマトリックス中で静的ではなく、高圧下では物理的変位を受ける可能性がある。これにより、供給側膜表面付近にIL含有量の低い領域が生じ、その領域でのガス透過が大幅に遅くなる。
【0061】
さらに、高圧、高温のガス試験条件下では、ゼオライト粒子の周囲の有機重合IL及び遊離IL(すなわち、PIL+IL)マトリックスの可塑化及び膨潤が起こる。これにより、選択的ゼオライト粒子からPIL(重合IL)マトリックスが剥離し、その周囲に微細なガス欠陥が形成され、選択性が低下する。
【0062】
さらに、動作温度が高くなると、ゼオライト粒子の表面へのCO2の吸着が妨げられ、高温でのこれらの膜の選択性がさらに低下する。薄膜複合膜の透過性を改善するには、活性層をより薄くすることが可能であり、ロールツーロールキャスティングを高速化することで、より大規模な膜の均一性を向上させることができる可能性がある。
【0063】
本発明者らは、混合ガス、高圧、及び/又は高温の動作条件下で使用する場合、より優れたCO2/CH4分離選択性及びCO2透過性を有するMMMを生成するために、これら混合物の組成を最適化する新しい組成物及び新しい方法を開発した。
【0064】
本発明は、以下から、ガスの分離、特にCO2/CH4分離の枠組みで説明されるが、本発明はCO2/CH4及びガス分離に限定されないことを考慮すべきである。本発明の組成物は、様々な流体又はプラズマを用いて、濾過、精製、ガス生成などの多くの異なる技術分野で実施することができる。
【0065】
特に、本発明者らは、重合IL/遊離IL及びゼオライトの新しい混合物を開発した。ここで、遊離ILは、3つ以上の繰り返し単位を含むILベースのオリゴマーである荷電界面剤である。
【0066】
したがって、本発明の一態様によれば、好ましくは混合マトリックス膜製造用の組成物が提供される。本発明による組成物は、以下を含み得る:
-帯電した表面を有する少なくとも1つの多孔質固体添加剤;
-荷電界面剤;及び
-重合性イオン液体モノマー。
【0067】
本発明による組成物は、有利なことに荷電界面剤を含む。好ましくは、荷電界面剤はILベースのオリゴマーであり、前記ILベースのオリゴマーはより好ましくは3つ以上の繰り返し単位を含む。
【0068】
ILベースのオリゴマーは、30以下の繰り返し単位、好ましくは20以下の繰り返し単位、より好ましくは15以下の繰り返し単位、さらにより好ましくは10以下の繰り返し単位を含み得る。
【0069】
好ましくは、ILベースのオリゴマーは、少なくとも0℃~100℃の温度で液体特性を示す有機塩である。
【0070】
さらに、前記ILベースオリゴマーは、荷電した界面剤を指すため荷電している。したがって、本発明によるILベースのオリゴマーは複数の電荷を有することができる。例えば、ILベースのオリゴマーは、少なくとも2つの電荷、好ましくは少なくとも3つの電荷を有することになる。
【0071】
ILベースのオリゴマーは、少なくとも2つのIL部分、好ましくは少なくとも3つのIL部分を含み得る。繰り返し単位あたりより多くのIL部分を有するILオリゴマーは、小分子ILと比較してCO2溶解度の向上を示し、本発明による組成物で合成された新しいMMMのCO2透過性を増加させることもできる。
【0072】
好ましくは、ILベースのオリゴマーは、CO2に対して高い親和性を有し得る。より好ましくは、ILベースのオリゴマーは、CO2に対して高い親和性を有する基を含み得る。特定の実施形態では、他の軽ガスよりもCO2に対して高い親和性を有する少なくとも1つの基を含むことになる。他の軽ガスは、例えばN2、CH4、C38から選択できる。好ましくはN2及びCH4からのものである。
【0073】
他の軽ガスよりもCO2に対して高い親和性を持つ分子又は基は、ヘンリー定数(モル分率)を使用して識別できる。例えば、他の軽ガスよりもCO2に対して高い親和性を有する分子又は基は、40℃(atm)で少なくとも30、好ましくは少なくとも40、より好ましくは少なくとも50、さらにより好ましくは少なくとも70のCO2ヘンリー定数を有し得る。
【0074】
しかしながら、本発明で使用されるILベースのオリゴマーは、CO2に対して高い親和性を有し、制御された温度及び圧力での実験計画において可溶化されたCO2の量に従って選択することもできる。したがって、CO2に対して高い親和性を有するILベースのオリゴマーは、例えば、ILベースのオリゴマー1リットル当たり0.1モルを超えるCO2を可溶化することができる。好ましくは、CO2に対して高い親和性を有するILベースオリゴマーは、ILベースオリゴマー1リットル当たり0.2モルを超えるCO2、より好ましくは、ILベースのオリゴマー1リットル当たり0.4モルを超えるCO2、より好ましくは、ILベースオリゴマー1リットル当たり0.5モルを超えるCO2を可溶化することができる。
【0075】
好ましい実施形態では、ILベースのオリゴマーは、CO2に対して高い親和性を有する官能基を少なくとも含むことになる。例えば、CO2に対して高い親和性を有する官能基は、CO2との相互作用エネルギーが-10kJ.mol-1未満になり得る。
【0076】
好ましい実施形態では、ILベースのオリゴマーは、イミダゾリウム、ピリジニウム、第四級アンモニウム、トリアゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、アゾールアルカン、スルホニウム及び/又はホスホニウムから選択される官能基を少なくとも1つ含む。
【0077】
さらに、荷電界面剤は、Tf2-、BF4 -、N(CN)2 -、PF6 -、C(CN)3 -、B(CN)4 -、N(SO2F)2 -、TfO-、SbF6 -、ハロゲン化物、及びスルホン酸塩からなる群から選択されるアニオンを含む。
【0078】
さらに、繰り返し単位当たりのIL画分が多いILオリゴマーは、小分子ILよりもCO2溶解度が向上し、それを用いて合成された新しいMMMのCO2透過性が増加する。
【0079】
ILベースのオリゴマーは、ノルボルネン、オキサノルボルネン、スチレン及び/又はアクリレート部分を含む重合を通じて合成することができる。
【0080】
均一性と長さを制御するために、組成物は、Tf2-イミダゾリウム単位を有するノルボルネン及びオキサノルボルネンモノマーに対するリビング開環メタセシス重合(ROMP)化学によって調製されることが好ましく、これにより、アルキル骨格とよりCO2可溶性のエーテル骨格を備えた、均一で長さ制御されたILオリゴマーを得る(最初の標的ILオリゴマーの一部については、図2を参照)。
【0081】
有利なことに、ROMPは広範囲の化学基と適合し、高度な分子量制御と低い多分散性を備えている。
【0082】
あるいは、リビングROMPを使用して、反応性ノルボルネン又はオキサノルボネン基を含むILモノマーから制御された長さのILオリゴマーを調製する代わりに、原子移動ラジカル重合(ATRP)や可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)などの制御ラジカル重合法を使用して、重合性スチレン又はアクリレート基を含むILモノマーから制御された長さのILオリゴマーを調製できる。
【0083】
このような荷電界面剤を図1図2、及び図3に示す。
【0084】
これらの提案されたILオリゴマー(イオン液体ベースのオリゴマー)化合物は、[EMIM][Tf2N](いくつかのMMM組成物で使用されている現在の低分子遊離IL)の代わりに使用して、新しいMMM組成物を調製することができる。
【0085】
これらの新しいMMM組成物に関するガス透過研究では、通常のILの代わりにILオリゴマーを使用すると、[EMIM][Tf2N]よりも層化/沈降に対する耐性が向上し、浸透がサポートされることが示されている。また、高温及びガス圧下でのCO2可塑化に抵抗することにより、MMMの選択性が向上する。
【0086】
局所的な遊離IL欠陥を回避するために、本発明による組成物は、MMM中の小分子遊離IL成分を、同様の化学物質及び荷電を有する高粘度の低分子量ILオリゴマーで置き換えることを提案する。
【0087】
リビング鎖付加重合技術を使用して製造されたILオリゴマーは、サイズがより均一で、液体のままであるのに十分なほど短いが、「沈降」、層の層化、又はフィルムキャスティング中の浸透に耐えるのに十分な粘度を持っている。
【0088】
本発明者らによれば、低粘度の小分子IL材料はポリマーマトリックス中で静的ではなく、高圧下では潜在的に物理的変位を受ける可能性がある。これにより、供給側膜の表面付近にIL含有量の低い領域が生じ、この領域でのガスの透過が大幅に遅くなる。したがって、テストで観察された予想よりも低いガス透過性は、MMMの最初の溶媒キャスティング中の小分子IL界面剤の「沈降」又は「ウィッキング」によるものである可能性がある。
【0089】
これらのオリゴマーの粘度が高まると、オリゴマーの流れに対する抵抗力が高まり、40バーの機械的ストレスによる供給側膜表面付近のIL濃度勾配を回避するように機能する。
【0090】
有利なことに、ILベースのオリゴマーは、絶対粘度計を使用して20℃で測定した場合、100センチポアズを超える粘度を有し得る。任意選択で、ILベースのオリゴマーは、500g/mol-1を超える、好ましくは700g/mol-1を超える、より好ましくは1000g/mol-1を超える分子量を有し得る。さらに、ILベースオリゴマーは、5000g/mol-1未満、好ましくは4000g/mol-1未満、より好ましくは3000g/mol-1未満の分子量を有し得る。
【0091】
さらに、ILベースオリゴマーは、ラジカル重合反応において重合性イオン液体と反応することができる部分を含まないことが有利である。
【0092】
上記のように、混合マトリックス膜製造用の組成物は、帯電した表面を有する少なくとも1つの多孔質固体添加剤を含むことが好ましい。
【0093】
少なくとも1つの多孔質固体は、好ましくは多孔質、ミクロ多孔質又はナノ多孔質のいずれかであり得る。より正確には、少なくとも1つの多孔質固体は、2~50nmのサイズの細孔(直径)を有するメソ多孔性、又は2nm未満のサイズの細孔を有するミクロ多孔性のいずれかであり得る。
【0094】
特に、多孔質固体添加剤は、ナノ多孔質固体添加剤又はミクロ多孔質固体添加剤であり得る。
【0095】
例えば、多孔質固体添加剤は、ゼオライト、金属過酸化物、ゼオライト性イミダゾレート骨格及び金属有機骨格から選択することができる。
【0096】
好ましくは、少なくとも1つの多孔質固体はゼオライトを含むことができる。本発明によれば、少なくとも1つの多孔質固体は、ゼオライト、金属過酸化物、ゼオライト性イミダゾレート骨格及び有機金属から選択され得る。
【0097】
より好ましくは、少なくとも1つの多孔質固体がゼオライトを含む場合、前記ゼオライトはシリコアルミノリン酸塩、アルミノケイ酸塩、ケイ酸塩、又はアルカリ金属アルミノケイ酸塩を含む。ゼオライトは、Ge、Ga、Ti、V、Fe、又はBを含み得る。
【0098】
好ましいゼオライトは、ゼオライト-A、ZSM-5、エオライト-13X、ゼオライト-KY、シリカライト-1、SSZ-13、及びSAPO-34から選択することができる。
【0099】
好ましいメソ多孔質材料は、MCM-41、MCM-48、SBA-11、SBA-12、SBA-15、メソ多孔質ZSM-5、活性炭、TiO2、及びMgOから選択することができる。
【0100】
ゼオライトは、MOFとして骨格構造を含むこともできる。
【0101】
MOFは、多孔質になり得る1次元、2次元、又は3次元構造を形成するために有機分子に配位した金属イオン又はクラスターを有する化合物である。MOFはそれ自体、非常に高いガス吸着容量を有することが実証されており、これは一般にガスが膜に組み込まれた場合にMOFを通って容易に拡散することを示唆している。しかし、共有結合、水素結合、又はファンデルワールス相互作用を介して高分子膜に結合したMOFは、空隙がない、又は実質的に空隙がないため(ポリマーとMOFの界面には空隙が存在しないか、又は数オングストローム未満の空隙が存在する)、透過性及び選択性パラメーターが向上する膜を作成することが発見されている。一実施形態によれば、合成後の修飾のためのペンダント官能基を有するリンカーを使用するために、MOFを化学修飾することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、MOFはゼオライトイミダゾレートフレームワーク(ZIF)である。ZIFはMOFのサブクラス又は種であり、高い比表面積、高い安定性、化学的に柔軟なフレームワークなどの魅力的な特性を備えている。
【0103】
さらなる態様では、イミダゾレート構造又は誘導体をさらに官能化して、ケージ及びチャネル、特に細孔の内側を覆う官能基を付与して、所望の構造又は細孔サイズを得ることができる。
【0104】
本発明による組成物はまた、重合性イオン液体モノマーなどの重合性イオン液体を含む。
【0105】
重合性ILは、3つ未満の繰り返し単位を含み得る。
【0106】
好ましくは、重合性ILは、ラジカル重合反応において別の重合性イオン液体の重合性基と反応してポリマーを形成するように構成された1つの重合性基と、他の軽ガスよりもCO2に対して高い親和性を有する少なくとも1つの基とを含み、好ましくは、CO2に対して高い親和性を有する前記少なくとも1つの基はホスホニウム;アンモニウム;イミダゾリウム;及び/又はピリジニウムを含む。
【0107】
組成物は、混合マトリックス膜内にブロックコポリマーを形成するために、少なくとも2つの重合性ILモノマーを含むことができる。
【0108】
特に、本発明の一実施形態によれば、組成物は架橋剤を含むことができる。
【0109】
さらに、これらのMMMのPILマトリックスの調製に最適な量の、よりCO2選択性の高い架橋剤を使用することにより、高温及び高CO2圧力の操作条件下でCO2/CH4選択性の低下につながるCO2可塑化は、減少又は緩和される。
【0110】
前述したように、「遊離IL」成分をこれらのILオリゴマーで置き換えることにより、「界面」成分の粘度が増加する。これにより、材料が下にある支持体に失われてしまうことや、「沈降」して膜の長さ全体にわたって界面剤の不均一な分布が生じることが少なくなる。さらに、これらのオリゴマーをポリマーにブレンドすると、可塑化や膨潤に対する耐性がより高い「グラフトポリマーネットワーク」が形成される。
【0111】
架橋剤は、ラジカル重合反応において重合性ILモノマーと反応するように構成された少なくとも2つの重合性基を含んでもよく、前記重合性基は好ましくは二重結合を含む。
【0112】
架橋剤はまた、少なくとも1つの極性基を含んでもよい。
【0113】
いくつかの重合及び架橋ソリューションが提案されている。本発明者らは、本発明に関して、ラジカル重合反応で反応するように構成された少なくとも2つの重合性基を含む架橋剤が最良の結果をもたらすと判断した。
【0114】
有利なことに、架橋剤は、他の軽ガスよりもCO2に対して高い親和性を有する少なくとも1つの基を含み得る。
【0115】
高い親和性とは、ベンゼン環のCO2に対する親和性よりも高いCO2に対する親和性と考えることができる。
【0116】
好ましい実施形態では、架橋剤は、CO2に対して高い親和性を有する官能基を少なくとも含むことになる。例えば、CO2に対して高い親和性を有する官能基は、CO2との相互作用エネルギーが-10kJ.mol-1未満になり得る。
【0117】
好ましい実施形態では、架橋剤は、以下から選択される少なくとも1つの官能基を含む:
-ヘテロ原子を含む少なくとも1つのπ結合を含む官能基、
-イミダゾリウム、ピリジニウム、第四級アンモニウム、トリアゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、モルホリニウム、アゾールアルカン、スルホニウム、ホスホニウム;及び/又は
-エチレングリコール、ポリオール、フルオロアルキル、芳香環、ニトリルなどの極性基。
【0118】
別の態様によれば、本発明は、好ましくはガス分離のための混合マトリックス膜に関する。混合マトリックス膜は、本発明による組成物から形成される。
【0119】
特に、そのような混合マトリックス膜は以下を含む:
-帯電した表面を有する少なくとも1つの多孔質固体添加剤;
-荷電界面剤;及び
-重合イオン液体;
ここで、荷電界面剤は、3つ以上の繰り返し単位を含むイオン液体ベースのオリゴマーである。
【0120】
混合マトリックス膜はガス分離に使用でき、所望のガス成分、好ましくは二酸化炭素及びメタンの通過を可能にする。
【0121】
膜は、成分のうちの1つ、例えば二酸化炭素又はメタンのいずれかがより速い速度で膜を通って拡散するように、異なる拡散速度でガス状成分の通過を可能にすることができる。好ましい実施形態では、二酸化炭素がポリマーを通過する速度は、メタンがポリマーを通過する速度より少なくとも10倍速い。
【0122】
3つ以上の繰り返し単位を含むILベースのオリゴマーとして荷電界面剤を有する混合マトリックス膜により、膜はより優れたCO2/CH4分離選択性及びCO2透過性を示すことができる。
【0123】
膜の透過性を改善するには、活性層をより薄くすることが可能であり、ロールツーロールキャスティングを高速化することで、より大規模な膜の均質性を向上させることが可能である。
【0124】
一般に、薄膜の厚さは、膜の機械的安定性が適切に改善されるように選択することができる。
【0125】
薄膜の厚さが厚くなるほど、薄膜の透過性は低くなる。したがって、厚さは、透過性と機械的安定性との間で許容可能な妥協が達成されるように選択される。
【0126】
膜は硬質、ゴム状、又は可撓であり得る。
【0127】
混合マトリックス膜は、好ましくは、フィルム、チューブ、又はガス分離に使用される他の従来の形状の形態である。
【0128】
別の態様によれば、本発明は、本発明による膜を含む分離システムに関する。
【0129】
分離システムは、ガス分離システムであることが好ましい。
【0130】
分離システムは、混合マトリックス膜を含む1つ又は複数の内側管を取り囲む外側の穴あきシェルを含んでもよい。
【0131】
分離システムはまた、少なくとも入口と少なくとも出口を備えていてもよい。入口によりシステムに流体、好ましくはガスを供給し、出口から汚染物質を排出することができる。
【0132】
例えば、ガス状混合物は内管を通って上方に通過する。ガス状混合物が内管を通過すると、混合物の1つ又は複数の成分が内管から混合マトリックス膜を通って浸透する。
【0133】
混合マトリックス膜はカートリッジに含めることができ、ガス状混合物から汚染物質を透過するために使用できる。汚染物質は膜を通って透過し得るが、目的の成分は膜の上部から外へ出続ける。膜は、多孔管内に積み重ねて内管を形成するか、相互接続して自立管を形成することができる。
【0134】
混合マトリックス膜のそれぞれは、ガス状混合物の1つ以上の成分を透過するように設計され得る。
【0135】
膜はシステム内で取り外し可能であり、交換可能であってもよい。したがって、システムは、直列、並列、又は組み合わせて配置された膜を備えることもできる。
【0136】
有利なことに、膜を含む分離システムは可変長であってもよい。
【0137】
ガス状混合物は、内側から外側への流路に従って、又は外側から内側への流路に従って膜を通って流れることができる。
【0138】
膜は、説明したように耐久性があり、高温に耐性があり、高圧に耐性があることが好ましいため、システムの耐久性も向上し、時間の経過とともに耐久性も向上する。
【0139】
別の態様によれば、本発明は、混合マトリックス膜の製造方法に関する。
【0140】
MMMは、重合、好ましくはラジカルを可能にする任意の方法によって形成することができる。より好ましくは、MMMはROMPによって形成され得る。
【0141】
有利なことに、ROMPは広範囲の化学基と適合し、高度な分子量制御と低い多分散性を備えている。
【0142】
本発明による方法は、以下を含む:
-3つ未満の繰り返し単位を含む重合性ILに基づくリビング又は制御された鎖付加重合ステップ;
-及び、帯電した表面を有する少なくとも1つの多孔質固体添加剤を荷電界面剤で被覆するステップであって、前記荷電界面剤は、3つ以上の繰り返し単位を含むILベースのオリゴマーであるステップ
【0143】
すでに述べたように、繰り返し単位を3つ以上有するILベースオリゴマーにより、可塑化を緩和することができる。
【0144】
本発明による方法は、制御された長さのILオリゴマーの合成による荷電界面剤の合成ステップ、開環メタセシス重合(ROMP)ステップ、及び鎖付加重合の制御ステップを含み得る。
【0145】
好ましくは、荷電界面剤の長さの制御は、開環メタセシス重合(ROMP)又は鎖付加重合の制御に基づく。MMMの調製において小分子ILの代わりに3つ以上の繰り返し単位を持つILベースのオリゴマーを使用すると、ガス透過性と選択性を向上させることができる。
【0146】
さらに、ILベースのオリゴマー(すなわち、制御された長さのILオリゴマー)を使用すると、キャスティング中のMMMフィルム断面の中央での凝集を減らすことができる。有利なことに、制御された長さのILオリゴマーは「IL欠陥」領域を回避する。3つを超える繰り返し単位を有するILオリゴマー、遊離ILはそれ以上存在せず、制御された長さのオリゴマーは遊離ILよりも静的であり、高圧下での物理的変位を受けにくい。これにより、均一な再分割を備えた混合マトリックス膜が得られ、ガス透過性が大幅に向上する。
【0147】
ROMP、ATRP、RAFTなどのリビング又は制御された鎖付加重合技術を使用して製造されたILベースのオリゴマーは、均一なサイズを持ち、液体のままであるのに十分短いが、フィルムキャスティング中の「沈降」、層の層化、又は支持体の浸透に抵抗するのに十分な粘度を持っている。
【0148】
さらに、得られる混合マトリックス膜はグラフトポリマーに似ており、可塑化や膨潤に対する耐性が優れている。
【0149】
この方法を改善するために、単純なイミダゾリウムベースのノルボルネンモノマーに対してROMPステップを実行して、図1に示す最初のタイプの提案されたILオリゴマーを含む、均一で低分子量のILオリゴマー及びブロックコポリマーを作製することができる。
【0150】
ROMPは、Ti、Mo、W、Ta、Re、Ruなどの遷移金属ベースの錯体の存在下で環状オレフィンをポリマー材料に変換する連鎖成長重合である。ROMPはオレフィンメタセシス重合の一種で、反応の原動力は環状オレフィン(例えば、ノルボルネンやシクロペンテン)の環歪みの緩和である。したがって、両方の多環式オレフィン(ノルボルネン;ノルボルナジエン;ジシクロペンタジエン及びシクロペンテンを含む低ひずみ環状オレフィン;又はシクロヘプテンなど)の変換反応により、達成可能な鎖状ポリマーの範囲を拡大することができる。
【0151】
ROMPでは、モノマーにノルボルネン官能基、シクロペンテン官能基などのひずみ環官能基を含めてポリマー鎖を形成することができる。例えば、ノルボルネンは、パラ位にメチレン基で架橋されたシクロヘキセン環を有する架橋環状炭化水素である。
【0152】
ROMPプロセスでは、金属カルベン種の形成に続いて、カルベンによる環構造内の二重結合の攻撃が行われ、高度に歪みのあるメタラシクロブタン中間体が形成される。その後、環が開き、ポリマーの始まりが形成される。直鎖が金属に二重結合し、末端二重結合も形成される。新しいカルベンは次のモノマーの二重結合と反応し、反応が伝播する。
【0153】
ROMPの合成における重要なステップは、終了時の連鎖移動プロセスである。ROMPは、特定の官能基を含む薬剤の添加によって広く停止される。この薬剤は、成長鎖の末端からの遷移金属触媒を不活性化し、官能基を選択的に挿入する。
【0154】
すべてのメタセシス反応と同様に、原則としてすべてのステップが可逆であることに注意することが重要である。さらに、モノマーの二重結合は形式的には保存され、繰り返し単位ごとに1つの二重結合が生じる。得られるROMPのこの高い不飽和度は、得られるポリマーの酸素に対する安定性に影響を与える。
【0155】
あるいは、リビングROMPを使用して長さを制御したILオリゴマーを調製する代わりに、原子移動ラジカル重合(ATRP)や可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合などの制御されたラジカル重合法を使用することもできる。
【実施例
【0156】
以下の実験例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。これらの例は、説明のみを目的として提供されており、特に指定がない限り、限定することを意図したものではない。したがって、本発明は、決して以下の実施例に限定されるものと解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書に提供される教示の結果として明らかになるあらゆる変形を包含すると解釈されるべきである。
【0157】
さらなる説明がなくても、当業者であれば、前述の説明及び以下の例示的な実施例を用いて、本発明の化合物を製造及び利用し、特許請求の範囲に記載の方法を実施できると考えられる。したがって、以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を具体的に指摘するものであり、本開示の残りの部分をいかなる意味でも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0158】
詳細に述べたように、本発明は、MMMにおけるイオン液体(IL)ベースのオリゴマーの使用を含む。これらの例は、特にそのような態様を対象としている。
【0159】
1.材料
CO2、CH4、HeガスはAirgasから購入した超高純度(99.999%)であった。
【0160】
1-ビニル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルイミド)([VMIM][Tf2N])及び1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルイミド)([EMIM][Tf2N])は、以前に公開された文献の方法に従って合成された(S. Li, J.L. Falconer, R.D. Noble, Improved SAPO-34 Membranes for CO2/CH4 Separations, Adv. Mater. 18, (2006) 2601-2603. https://doi.org/10.1002/adma.200601147)。そしてそれらの構造は1H NMR分光法によって確認され、報告された特性データと一致した(Liら、2006)。
【0161】
架橋化合物ジビニルベンゼン(DVB)と2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HMP)などのラジカル光開始剤はSigma-Aldrichから購入し、そのまま使用した。
【0162】
SAPO-34は、先行文献で報告されている手順を使用して合成された(Y. Zheng, N. Hu, H. Wang, N. Bu, F. Zhang, R. Zhou, Preparation of steam-stable high-silica CHA (SSZ-13) membranes for CO2/CH4 and C2H4/C2H6 separation, J. Membr. Sci. 475 (2015) 303-310. https://doi.org/10.1016/j.memsci.2014.10.048)。SAPO-34は600℃で焼成され、使用前に乳鉢と乳棒で細かく粉砕された。
【0163】
2.イオン液体(IL)ベースのオリゴマー
[VMIM][Tf2N]又は[EMIM][Tf2N]を含むMMMの性能は、代わりにILベースのオリゴマーを含むMMMの性能と比較することができる。
【0164】
ILベースのオリゴマーとして使用できるいくつかの分子。ILベースのオリゴマーは、開環メタセシス重合(ROMP)を使用して合成できる。
【0165】
あるいは、ATRPやRAFTなどの制御されたラジカル重合法を使用して、ILベースのオリゴマーを合成することもできる。これらの技術は、特にILベースのスチレン及び/又はアクリレートモノマーから制御された長さのILオリゴマーを製造するための効率的かつ拡張可能な方法である。
【0166】
RAFT
図1に示すように、ILベースのオリゴマーは、制御されたRAFT重合によって合成できる。
【0167】
特に、制御された逐次重合では、α-クロロメチルスチレン(CMS)、連鎖移動剤としてシアノメチルドデシルトリチオカーボネート、ラジカル開始剤としてアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、重合溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を使用することができる。
【0168】
精製したCMSをDMFに溶解し、磁気撹拌子を備えたシュレンクフラスコに加えた。次いで、RAFT剤であるシアノメチルドデシルトリチオカーボネートをフラスコに添加した。次に、AIBNをフラスコに加え、試薬を混合するために撹拌を開始した。Arガスのブランケットをフラスコ内に通し、外部雰囲気を置換した。反応フラスコの内容物は、排気時に無視できる圧力上昇が検出されるまで、液体窒素を使用するフリーポンプ解凍サイクルを繰り返すことによって脱気された。最終解凍サイクルが完了したら、Arガスを正圧下でフラスコに流し、還流冷却器を取り付けた。凝縮器を密閉し、Arの流れを遮断した。次に、密封した反応系を70℃の温度に設定した油浴に置き、内容物を急速に撹拌した。その温度で24時間撹拌した後、反応フラスコを熱から外し、周囲温度まで放冷した。次いで、ポリマー溶液を、急速に撹拌されたメタノール700mLを含む1L三角フラスコに滴下した。沈殿したポリCMSオリゴマーは、固体物質の淡黄色の「チップ」として見えた。メタノールをデカントした後、ポリCMSオリゴマーを真空中40℃で一晩乾燥させた。
【0169】
ILオリゴマーは、ポリCMSオリゴマーを過剰のN-メチルイミダゾールと反応させて、すべてのクロロメチル基がIL部分で置換されるようにすることによって調製された。ポリCMSオリゴマーをDMFとともに磁気撹拌子を備えた50mL丸底フラスコに加えた。この混合物は、ポリマーが完全に溶解するまで撹拌された。フラスコに還流冷却器を取り付け、フラスコを70℃に加熱し、その温度に保持した。次いで、反応混合物の不可逆的なゲル化を避けるために、フラスコを冷却せずに、N-メチルイミダゾール及びメタノールをフラスコに添加した。この反応を70℃で24時間還流して実行すると、Cl-中間体の硬化性ポリマーが得られた。中間ポリマーを50mLの脱イオン(DI)H2Oに溶解した。1.5倍モル過剰のLiTf2N(11.0g、38.32mmol)を350mLのDIH2Oに溶解した。中間ポリマーの水溶液を、急速に撹拌されているLiTf2N溶液に滴下すると、オフホワイトのゴムが直ちに形成された。この新しい沈殿物は、Tf2-置換硬化性ILオリゴマーであった。
【0170】
あるいは、図2に示すように、ILベースのオリゴマーは、連鎖移動剤としてシアノメチルドデシルトリチオカーボネート、アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)をラジカル開始剤として使用し、N,N-ジメチルホルムアミドを重合溶媒として使用して、ビニルベンジル([VBMI][Tf2N]など)を含むILの制御されたRAFT重合によって合成できる。
【0171】
簡単に説明すると、精製した[VBMI][Tf2N]をDMFに溶解し、磁気撹拌子を備えたシュレンクフラスコに加えた。次いで、RAFT剤であるシアノメチルドデシルトリチオカーボネートをフラスコに添加した。次に、AIBNをフラスコに加え、試薬を混合するために撹拌を開始した。Arガスのブランケットをフラスコ内に通し、外部雰囲気を置換した。反応フラスコの内容物は、排気時に無視できる圧力上昇が検出されるまで、液体窒素を使用するフリーポンプ解凍サイクルを繰り返すことによって脱気された。最終解凍サイクルが完了したら、Arガスを正圧下でフラスコに流し、還流冷却器を取り付けた。凝縮器が密閉され、Arの流れが遮断された。次に、密封した反応系を70℃の温度に設定した油浴に置き、内容物を急速に撹拌した。その温度で24時間撹拌した後、反応フラスコを熱から外し、周囲温度まで放冷した。次いで、ポリマー溶液を、急速に撹拌されたメタノール700mLを含む1L三角フラスコに滴下する。沈殿したものがILオリゴマーであった。
【0172】
ATRP
図3に示すように、ILベースのオリゴマーは、触媒系としてCuBr/N,N,N’,N’,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、開始剤としてブチロニトリル溶液中の2-ブロモ-2-メチルプロパン酸2-(トリメチルシリル)エチルを使用して、ATRP経由で合成できる。
【0173】
[VBMI][Tf2N]、PMDETA、ブチロニトリルなどのILモノマーを火炎乾燥したシュレンクフラスコに加え、凍結-ポンプ-解凍サイクルを3回繰り返して脱気した。フラスコを室温まで温め、Arを再充填した後、CuBrを添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌し、最終的にスチレンを含むマクロ開始剤を添加した。次にフラスコを90℃の油浴に入れて撹拌した。ILモノマーが完全に消費されると(1H NMR分析により確認)、得られた反応混合物を精製して、ILベースのオリゴマーを得た。
【0174】
類似のILベースのアクリレートモノマーを使用して、ATRP及びRAFTによって同様の重合を行うこともできる(図示せず)。
【0175】
3.MMM合成
自立型MMMは、重合性ILモノマー、荷電界面剤、帯電した表面を有する多孔質固体添加剤(SAPO-34など)などの重合性ILを適切な重量比で組み合わせることによって合成された。
【0176】
この混合物を24時間撹拌し、続いて0.5~6重量%の架橋剤(ILベースの成分の総質量に基づく)、及び0.5~2重量%の2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンなどのラジカル光開始剤(ILベースの成分の総質量に基づく)を添加した。
【0177】
この混合物を軽く撹拌してから、Rain-X(商標)で処理した石英プレート上にキャストした。2枚の厚さ150μmのスライドガラスをスペーサーとして使用し、2番目のRain-X(商標)で処理したプレートを混合物の上に置き、膜フィルムを生成した。プレートを一緒にクランプで固定し、365nmUVランプ(サンプル表面で4.3mW/cm2)を17℃で5時間照射した。次にプレートを分離し、50℃の真空オーブン(20torr)に24時間入れた。
【0178】
次に、膜をプレートの1つから剥がし、ペトリ皿に置き、静的真空下で保管するか、すぐにガス透過性評価の準備をした。デジタルマイクロメーターを使用して、得られる自立型MMMフィルムの厚さを測定できる。厚さの範囲は通常120~160μmである。
【0179】
参照MMMフィルムは遊離ILを用いて製造され、本発明のMMMフィルムは3つ以上の繰り返し単位を含むイオン液体(IL)ベースのオリゴマーを用いて製造された。イオン液体(オリゴマーであり得る)は、得られるMMMが同数のイミダゾリウム基を含むような負荷レベルで添加されることが好ましい。
【0180】
2.3.ガス透過率測定
MMMサンプルのガス透過性は、高圧及び二元ガス供給用に装備された特注の装置を使用し、次の手順で測定された。円形の膜片を鋼製試験セルの下半分に装填し、その上にゴム製ガスケットを置き、セルの上半分をその上に置き、ネジで固定した。CO2及びCH4シリンダーに取り付けられた一対のマスフローコントローラー(MFC)により、LabViewソフトウェアを介して供給流量と組成を制御できる。供給流量は透過速度よりも桁違いに大きいため、供給成分と保持液の組成が等しいと想定できる。
【0181】
3つ目のMFCは、膜の透過側にHeのスイープストリームを提供するために使用された。供給物/残留物の流れと透過物の流れは両方とも、50℃で作動する長さ6mのHaysep Dカラムを備えたインラインSRI8610Cガスクロマトグラフ(GC)によって監視された。供給側の背圧調整器を使用して供給圧力を選択し、デジタルゲージで供給ストリームと透過ストリームの圧力を監視した。透過水と残留水の流量は、気泡流量計とストップウォッチを使用して測定された。膜セルをヤマトDX300オーブン内に置き、さまざまな高温でMMMサンプルのガス透過測定を実行した。GC組成データ、流量、圧力の組み合わせを使用して、各MMMサンプルのCO2とCH4の透過性、及びCO2/CH4選択性が計算された。
【0182】
このような実験により、本発明によるMMMがCO2可塑化の問題を緩和し、より高圧及び高温でのCO2による膨潤を低減するように設計されていることを確認することができる。さらに、本発明によるMMMは、高いCO2透過性及び高いCO2/CH4選択性を有する。
【0183】
本明細書における変数の定義における要素のリストの記載には、任意の単一要素又は列挙された要素の組み合わせ(又は部分組み合わせ)としてのその変数の定義が含まれる。本明細書における実施形態の記載には、その実施形態が任意の単一の実施形態として、又は任意の他の実施形態もしくはその一部と組み合わせて含まれる。
【0184】
本明細書で引用されるすべての特許、特許出願、及び出版物の開示は、定義、主題の免責事項又は否認を除き、組み込まれた資料が本明細書の明示的な開示と矛盾する場合(その場合には本開示の文言が優先される)を除き、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0185】
本発明を特定の実施形態を参照して開示したが、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって本発明の他の実施形態及び変形が考案され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、そのようなすべての実施形態及び同等の変形を含むように解釈されることを意図している。
図1
図2
図3
【国際調査報告】