(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】燃料高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
F02M 55/00 20060101AFI20240719BHJP
F02M 59/26 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
F02M55/00 B
F02M55/00 D
F02M55/00 E
F02M59/26 330J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505203
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2022065631
(87)【国際公開番号】W WO2023006288
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021208117.7
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス フロイホーファー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー コルンハース
(72)【発明者】
【氏名】グイド ブレデンフェルド
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴェーア
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066BA09
3G066CA09
3G066CA34
3G066CA39S
(57)【要約】
燃料高圧ポンプ(10)であって、高圧領域(29)を低圧領域(28)に流体的に接続し、低圧領域(28)に向かって開く圧力制限弁(22)を有していて、この圧力制限弁(22)は、ポンプ本体(12b)を貫通する貫通孔として形成された圧力制限弁孔(22a)内に配置されており、圧力制限弁孔は、減衰領域(28a)から段状室(28d)まで延在していて、減衰領域(28a)に面した側で、圧入された閉鎖体(56,57)によって閉鎖されており、圧力制限弁孔(22)は、段付き孔として形成されていて、相対的に大きな直径を有した第1の区分(22.1)と、相対的に小さな直径を有した第2の区分(22.3)とを有していて、第1の区分(22.1)と第2の区分(22.3)との間に形成されたリング状段部(22.2)を有しており、圧力制限弁(22)は、圧力制限弁孔(22)内に圧入された弁座体(38)を有しており、圧力制限弁(22)は弁エレメント(44)を有していて、弁エレメントは、保持エレメント(46)によって閉鎖方向に押され、保持エレメントは、コイルばね(52)によって閉鎖方向に押され、このコイルばねは、リング状段部(22.2)に支持されている、燃料高圧ポンプ(10)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のための燃料システム用の燃料高圧ポンプ(10)であって、
燃料を供給するための入口(11)と、
圧縮された燃料を放出するための出口(34)と、
ポンプケーシング(12)と、
前記ポンプケーシング(12)内に配置された圧送室(16)と、
前記圧送室(16)を画定し、前記ポンプケーシング(12)内で長手方向(LA)に沿って摺動可能なポンプピストン(18)と、
前記入口(11)と前記圧送室(16)との間に配置された、前記圧送室(16)に向かって開く入口弁(14)と、
前記圧送室(16)と前記出口(34)との間に配置された、前記圧送室(16)から離れる方向に開く出口弁(37)と、
流体的に前記出口弁(37)と前記出口(34)との間に延在する高圧領域(29)と、
流体的に前記入口(11)と前記入口弁(14)との間に延在する低圧領域(28)と、
前記高圧領域(29)内の燃料と前記低圧領域(28)内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に前記高圧領域(29)を前記低圧領域(28)に流体的に接続し前記低圧領域(28)に向かって開いて前記高圧領域(29)から前記低圧領域(28)へと燃料を流出させる圧力制限弁(22)と、
を備え、
前記ポンプピストン(18)は、段付きピストンとして形成されていて、前記圧送室(16)に面し相対的に大きな直径を有した第1の区分(18.1)と、相対的に小さな直径を有し前記圧送室(16)から離反する方向に向けられた第2の区分(18.2)とを有しており、
前記第1の区分(18.1)と前記ポンプケーシング(12)との間には、前記圧送室(16)を前記低圧領域(28)から分離する高圧シール(80)が配置されていて、前記高圧シール内では前記ポンプピストン(18)が摺動可能であって、
前記第2の区分(18.2)と、前記ポンプケーシング(12)に固定されたシール支持体(60)との間には、前記低圧領域(28)を、前記燃料高圧ポンプ(10)の外側の空間(100)から分離する低圧シール(78)が配置されており、
前記シール支持体(60)と前記ポンプケーシング(12)との間には、前記低圧領域(28)の段状室(28d)が位置していて、
前記圧力制限弁(22)は、前記高圧領域(29)内の燃料と前記低圧領域(28)内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に、前記高圧領域(29)を前記低圧領域の前記段状室(28d)に流体的に接続し前記段状室(28d)に向かって開いて、前記高圧領域(29)から前記段状室(28d)へと燃料を流出させ、
前記ポンプケーシング(12)は、互いに接続されているポンプ本体(12a)とポンプカバー(12b)とを有しており、前記ポンプ本体(12a)と前記ポンプカバー(12b)とによって、前記低圧領域(28)に所属の減衰領域(28a)が画定されていて、前記減衰領域内には少なくとも1つのダイヤフラムダンパ(55)が配置されており、
前記圧力制限弁(22)は、前記ポンプ本体(12a)を貫通する貫通孔として形成された圧力制限弁孔(22a)内に配置されており、前記圧力制限弁孔(22a)は、前記減衰領域(28a)から前記段状室(28d)まで延在していて、前記減衰領域(28a)に面した側で、前記圧力制限弁孔(22a)内に圧入されたボール(56)または前記圧力制限弁孔(22a)内に圧入された栓体(57)によって閉鎖されており、
前記圧力制限弁孔(22a)は、段付き孔として形成されていて、相対的に大きな直径を有し前記減衰領域(28a)に面した第1の区分(22.1)と、相対的に小さな直径を有し前記段状室(28d)に面した第2の区分(22.3)とを有していて、前記第1の区分(22.1)と前記第2の区分(22.3)との間に形成されたリング状段部(22.2)を有しており、
前記圧力制限弁(22)は、前記圧力制限弁孔(22a)内に圧入された弁座体(38)を有していて、前記弁座体には、円錐状の弁座(42)が形成されており、前記圧力制限弁(22)は、特にボールの形状を有し前記弁座(42)に密に当接する弁エレメント(44)を有しており、前記弁エレメント(44)は、保持エレメント(46)によって閉鎖方向に押され、前記保持エレメント(46)は、コイルばね(52)によって閉鎖方向に押され、前記コイルばね(52)は、前記リング状段部(22.2)に支持されている、燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項2】
前記出口弁(37)は、前記ポンプケーシング(12)の出口弁孔(37a)内に配置されており、前記出口弁孔(37a)と前記圧力制限弁孔(22a)とは、特に直角に交差している、請求項1記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項3】
前記出口弁(37)は、可動の弁エレメント(37.1)を有していて、前記弁エレメント(37.1)の上流に配置されたシール座部(37.2)を有しており、前記シール座部は、シール座部固定区分(37.3)でポンプ固定に取り付けられていて、前記シール座部には、前記弁エレメント(37.1)と協働するシール座(37.4)が形成されていて、前記出口弁(37)は、前記弁エレメント(37.1)の下流に配置されたポンプ固定の対応プレート(37.5)を有しており、前記対応プレートは、対応プレート固定区分(37.6)でポンプ固定に取り付けられていて、下流方向への前記弁エレメント(37.1)の可動性を制限しており、前記圧力制限弁孔(22a)は、前記シール座部固定区分(37.3)と前記対応プレート固定区分(37.6)との間で前記出口弁孔(37a)に交差する、請求項2記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項4】
前記出口(34)は、前記ポンプケーシング(12)に固定された出口管片(35)として形成されていて、前記ポンプケーシング(12)と前記出口管片(35)との間には、出口管片室(35a)が形成されており、前記出口弁(37)は、前記ポンプケーシング(12)の出口弁孔(37a)に固定されており、前記出口弁孔(37a)は前記出口管片室(35a)を起点としており、前記圧力制限弁孔(22a)は、前記出口管片室(35a)を起点とする、前記高圧領域(29)に位置する高圧接続孔(29a)を介して、前記出口管片室(35a)に接続されている、請求項1記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項5】
前記出口弁孔(37a)と前記高圧接続孔(29a)とは、互いに平行に、かつ前記長手方向(LA)に対して垂直に配置されている、請求項4記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項6】
前記出口弁孔(37a)と前記高圧接続孔(29a)とは、互いに0°ではない角度を成して配置されていて、かつそれぞれ前記長手方向(LA)に対して垂直に配置されている、請求項4記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項7】
前記出口弁孔(37a)の仮想中心軸線は、前記ポンプピストン(18)の仮想中心軸線に交差する、請求項2から6までのいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項8】
前記出口弁孔(37a)の仮想中心軸線は、前記ポンプピストン(18)の仮想中心軸線に交差しない、請求項2から6までのいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項9】
内燃機関のための燃料システム用の燃料高圧ポンプ(10)であって、
燃料を供給するための入口(11)と、
圧縮された燃料を放出するための出口(34)と、
ポンプケーシング(12)と、
前記ポンプケーシング(12)内に配置された圧送室(16)と、
前記圧送室(16)を画定し、前記ポンプケーシング(12)内で長手方向(LA)に沿って摺動可能なポンプピストン(18)と、
前記入口(11)と前記圧送室(16)との間に配置された、前記圧送室(16)に向かって開く入口弁(14)と、
前記圧送室(16)と前記出口(34)との間に配置された、前記圧送室(16)から離れる方向に開く出口弁(37)と、
流体的に前記出口弁(37)と前記出口(34)との間に延在する高圧領域(29)と、
流体的に前記入口(11)と前記入口弁(14)との間に延在する低圧領域(28)と、
前記高圧領域(29)内の燃料と前記低圧領域(28)内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に前記高圧領域(29)を前記低圧領域(28)に流体的に接続し前記低圧領域(28)に向かって開いて前記高圧領域(29)から前記低圧領域(28)へと燃料を流出させる圧力制限弁(22)と、
を備え、
前記ポンプピストン(18)は、段付きピストンとして形成されていて、前記圧送室(16)に面し相対的に大きな直径を有した第1の区分(18.1)と、相対的に小さな直径を有し前記圧送室(16)から離反する方向に向けられた第2の区分(18.2)とを有しており、
前記第1の区分(18.1)と前記ポンプケーシング(12)との間には、前記圧送室(16)を前記低圧領域(28)から分離する高圧シール(80)が配置されていて、前記高圧シール内では前記ポンプピストン(18)が摺動可能であって、
前記第2の区分(18.2)と、前記ポンプケーシング(12)に固定されたシール支持体(60)との間には、前記低圧領域(28)を、前記燃料高圧ポンプ(10)の外側の空間(100)から分離する低圧シール(78)が配置されており、
前記シール支持体(60)と前記ポンプケーシング(12)との間には、前記低圧領域(28)の段状室(28d)が位置していて、
前記圧力制限弁(22)は、前記高圧領域(29)内の燃料と前記低圧領域(28)内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に、前記高圧領域(29)を前記低圧領域(28)の前記段状室(28d)に流体的に接続し前記段状室(28d)に向かって開いて、前記高圧領域(29)から前記段状室(28d)へと燃料を流出させ、
前記出口弁(37)は、前記ポンプケーシング(12)の出口弁孔(37a)内に配置されており、可動の弁エレメント(37.1)を有していて、前記弁エレメント(37.1)の上流に配置されたシール座部(37.2)を有しており、前記シール座部はシール座部固定区分(37.3)でポンプ固定に取り付けられていて、前記シール座部には、前記弁エレメント(37.1)と協働するシール座(37.4)が形成されており、
前記出口弁(37)は、前記弁エレメント(37.1)の下流に配置されたポンプ固定の対応プレート(37.5)を有しており、前記対応プレートは、対応プレート固定区分(37.6)でポンプ固定に取り付けられていて、下流方向への前記弁エレメント(37.1)の可動性を制限しており、
前記圧力制限弁(22)は、前記ポンプケーシング(12)における圧力制限弁孔(22a)内に配置されていて、前記圧力制限弁孔は、長手方向(LA)で延在していて、前記段状室(28d)を起点として前記出口弁孔(37a)に、すなわち前記シール座部固定区分(37.3)と前記対応プレート固定区分(37.6)との間で開口する、燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項10】
内燃機関のための燃料システム用の燃料高圧ポンプ(10)であって、
燃料を供給するための入口(11)と、
圧縮された燃料を放出するための出口(34)と、
ポンプケーシング(12)と、
前記ポンプケーシング(12)内に配置された圧送室(16)と、
前記圧送室(16)を画定し、前記ポンプケーシング(12)内で長手方向(LA)に沿って摺動可能なポンプピストン(18)と、
前記入口(11)と前記圧送室(16)との間に配置された、前記圧送室(16)に向かって開く入口弁(14)と、
前記圧送室(16)と前記出口(34)との間に配置された、前記圧送室(16)から離れる方向に開く出口弁(37)と、
流体的に前記出口弁(37)と前記出口(34)との間に延在する高圧領域(29)と、
流体的に前記入口(11)と前記入口弁(14)との間に延在する低圧領域(28)と、
前記高圧領域(29)内の燃料と前記低圧領域(28)内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に前記高圧領域(29)を前記低圧領域(28)に流体的に接続し前記低圧領域(28)に向かって開いて前記高圧領域(29)から前記低圧領域(28)へと燃料を流出させる圧力制限弁(22)と、
を備え、
前記ポンプピストン(18)は、段付きピストンとして形成されていて、前記圧送室(16)に面し相対的に大きな直径を有した第1の区分(18.1)と、相対的に小さな直径を有し前記圧送室(16)から離反する方向に向けられた第2の区分(18.2)とを有しており、
前記第1の区分(18.1)と前記ポンプケーシング(12)との間には、前記圧送室(16)を前記低圧領域(28)から分離する高圧シール(80)が配置されていて、前記高圧シール内では前記ポンプピストン(18)が摺動可能であって、
前記第2の区分(18.2)と、前記ポンプケーシング(12)に固定されたシール支持体(60)との間には、前記低圧領域(28)を、前記燃料高圧ポンプ(10)の外側の空間(100)から分離する低圧シール(78)が配置されており、
前記シール支持体(60)と前記ポンプケーシング(12)との間には、前記低圧領域(28)の段状室(28d)が位置していて、
前記圧力制限弁(22)は、前記高圧領域(29)内の燃料と前記低圧領域(28)内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に、前記高圧領域(29)を前記低圧領域の前記段状室(28d)に流体的に接続し前記段状室(28d)に向かって開いて、前記高圧領域(29)から前記段状室(28d)へと燃料を流出させ、
前記出口弁(37)は、前記ポンプケーシング(12)の出口弁孔(37a)内に配置されており、
前記圧力制限弁(22)は、前記ポンプケーシング(12)における圧力制限弁孔(22a)内に配置されていて、前記圧力制限弁孔は、長手方向(LA)で延在していて、前記段状室(28d)を起点として前記ポンプケーシング(12)内の高圧接続孔(29a)に開口していて、前記高圧接続孔は前記高圧領域(29)に配置されていて、前記出口弁孔(37a)に対して、0°ではない角度を成して方向付けられており、特に、前記出口(34)は、前記ポンプケーシング(12)に固定された出口管片(35)として形成されていて、特に前記ポンプケーシング(12)と前記出口管片(35)との間には、出口管片室(35a)が形成されており、特に前記出口弁孔(37a)と前記高圧接続孔(29a)とは両方とも、前記出口管片室(35a)を起点としている、燃料高圧ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
従来技術、例えば本出願人の独国特許出願公開第102018221702号明細書に基づき、燃料高圧ポンプであって、燃料を供給するための入口、圧縮された燃料を放出するための出口、ポンプケーシング、ポンプケーシング内に配置された圧送室、この圧送室を画定し、ポンプケーシング内で長手方向に沿って摺動可能なポンプピストン、入口と圧送室との間に配置された、圧送室に向かって開く入口弁、圧送室と出口との間に配置された、圧送室から離れる方向に開く出口弁、流体的に出口弁と出口との間に延在する高圧領域、流体的に入口と入口弁との間に延在する低圧領域、および高圧領域内の燃料と低圧領域内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に高圧領域を低圧領域に流体的に接続し低圧領域に向かって開いて高圧領域から低圧領域へと燃料を流出させる圧力制限弁を備えた燃料高圧ポンプが既に公知である。
【0002】
冒頭で述べた従来技術で開示されたポンプではさらに、ポンプピストンが、段付きピストンとして形成されていて、圧送室に面し相対的に大きな直径を有した第1の区分と、相対的に小さな直径を有し圧送室から離反する方向に向けられた第2の区分とを有しており、第1の区分とポンプケーシングとの間には、圧送室を低圧領域から分離する高圧シールが配置されていて、この高圧シール内ではポンプピストンが摺動可能であって、第2の区分と、ポンプケーシングに固定されたシール支持体との間には、低圧領域を燃料高圧ポンプの外側の空間から分離する低圧シールが配置されており、シール支持体とポンプケーシングとの間には、低圧領域の段状室が位置しており、圧力制限弁は、高圧領域内の燃料と低圧領域内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に、高圧領域を低圧領域の段状室に流体的に接続し段状室に向かって開いて、高圧領域から段状室へと燃料を流出させ、ポンプケーシングは、互いに接続されているポンプ本体とポンプカバーとを有しており、ポンプ本体とポンプカバーとによって、低圧領域に所属の減衰領域が画定されていて、減衰領域内には少なくとも1つのダイヤフラムダンパが配置されていることが想定されている。
【0003】
冒頭で述べた従来技術で開示されたポンプではさらに、圧力制限弁が、圧力制限弁孔内に圧入された弁座体を有していて、弁座体には、円錐状の弁座が形成されており、圧力制限弁は、ボールの形状を有し弁座に密に当接する弁エレメントを有しており、弁エレメントは、保持エレメントによって閉鎖方向に押され、保持エレメントは、コイルばねによって閉鎖方向に押されることが想定されている。
【0004】
冒頭で述べた従来技術で開示されたポンプではさらに、圧力制限弁が、段状室を起点としてポンプ本体の袋孔として形成された圧力制限弁孔内に配置されていること、およびコイルばねが、圧力制限弁孔内に圧入された別個の部分に支持されていることが想定されている。
【0005】
発明の開示
本発明は、燃料高圧ポンプを簡単かつ効率的に製造可能であるように構成するという要望に基づいている。
【0006】
この場合、圧力制限弁孔が、段状室を起点としてポンプ本体の袋孔として実現されている場合には、欠点として、コイルばねを支持するための通流可能な別個の部分が必要となり、この別個の部分を、圧力制限弁の組付けの際に、別個の組付けステップで圧力制限弁孔内に圧入しなければならず、この場合、コイルばねにおいて生じ弁エレメントもしくは弁座に作用する閉鎖力が、圧力制限弁の開放圧を規定し、すなわちこの閉鎖力は正確に調節可能でなければならないということが明らかになった。
【0007】
これに対し本発明による解決手段は、圧力制限弁が、ポンプ本体を貫通する貫通孔として形成された圧力制限弁孔内に配置されており、圧力制限弁孔は、減衰領域から段状室まで延在していて、減衰領域に面した側で、圧力制限弁孔内に圧入されたボールまたは圧力制限弁孔内に圧入された栓体によって閉鎖されており、圧力制限弁孔は、段付き孔として形成されていて、相対的に大きな直径を有し減衰領域に面した第1の区分と、相対的に小さな直径を有し段状室に面した第2の区分とを有していて、第1の区分と第2の区分との間に形成されたリング状段部を有しており、このリング状段部にコイルばねが支持されている点で、公知の解決手段とは異なっている。
【0008】
本発明によるポンプの圧力制限弁は、簡単かつ効率的な形式で、ポンプケーシングの、減衰室に面した側から、好ましくは最初からコイルばねと共に、組付けることができ、これによりコイルばねはリング状段部に当接する。圧力制限弁孔内に圧力制限弁を組付けた後は、圧力制限弁孔を、減衰領域に面した側で、ボールまたは栓体の圧入により簡単に閉鎖することができる。
【0009】
さらなる構成では、出口弁は、ポンプケーシングの出口弁孔内に配置されており、出口弁孔と圧力制限弁孔とは、特に直角に交差していることが想定されている。これにより、他の高圧シール箇所なしに、構成スペースを削減する形式で、高圧領域内への圧力制限弁の組込みが実施される。
【0010】
特に構成スペースを削減するように、出口弁は、可動の弁エレメントを有していて、弁エレメントの上流に配置されたシール座部を有しており、シール座部は、シール座部固定区分でポンプ固定に取り付けられていて、シール座部には、弁エレメントと協働するシール座が形成されていて、出口弁は、弁エレメントの下流に配置されたポンプ固定の対応プレートを有しており、対応プレートは、対応プレート固定区分でポンプ固定に取り付けられていて、下流方向への弁エレメントの可動性を制限しており、圧力制限弁孔は、シール座部固定区分と対応プレート固定区分との間で出口弁孔に交差することが想定されていてよい。この場合、圧力制限弁孔は、出口弁に所属の構成部分が組付けられているスペースに交差するので、このスペースは、いわば二重に利用される。
【0011】
さらに、ポンプケーシングと出口管片との間には、出口管片室が形成されていることが想定されていてよい。出口管片室は、一方では、管片の内室の、ポンプケーシングに面した部分から成っていてよい、もしくはこの部分を含んでいてよい。出口管片室は、付加的に、出口管片によってカバーされた、ポンプ本体内の凹部を含んでいてよく、特にこれらの両部分室から成っていてよい。代替的に、出口管片室は、出口管片によってカバーされた、ポンプ本体内の凹部から成っていてよい。
【0012】
出口は、ポンプケーシングに固定された出口管片として形成されていて、ポンプケーシングと出口管片との間には、出口管片室が形成されており、出口弁は、ポンプケーシングの出口弁孔に固定されており、出口弁孔は出口管片室を起点としており、圧力制限弁孔は、出口管片室を起点とする、高圧領域に位置する高圧接続孔を介して、出口管片室に接続されていることが想定されていてよい。この場合、上述した解決手段と比較して、ポンプ本体内における圧力制限弁孔の配置の柔軟性が高まる。
【0013】
出口弁孔と高圧接続孔とが互いに平行に、かつ例えば長手方向に対して垂直に配置されているならば、これらの孔は、例えば同じ工具で、または一緒に、簡単に製造することができる。
【0014】
出口弁孔と高圧接続孔とが互いに0°ではない角度を成して配置されていて、かつ例えばそれぞれ長手方向に対して垂直に配置されているならば、ポンプ本体内の内側輪郭のために提供可能な構成スペースを最適に利用することができ、もしくは潜在的にはポンプ本体をさらに小型化することができる。
【0015】
出口弁孔の仮想の(場合により延長された)中心軸線が、ポンプピストンの仮想の(場合により延長された)中心軸線、すなわち長手方向軸線に交差することは、常に想定されていてよい。圧送室から出口弁を通る燃料の流出は、この場合、さらなる変向なく、したがって特に低摩擦に可能である。
【0016】
他方で、出口弁孔の仮想の(場合により延長された)中心軸線が、ポンプピストンの仮想の(場合により延長された)中心軸線、すなわち長手方向軸線に交差しない場合も、ポンプ本体内に提供される構成スペースの最適な利用という理由から、有利であり得る。
【0017】
この場合、並列して特許請求される第1のさらなる対象では、内燃機関のための燃料システム用の燃料高圧ポンプであって、燃料を供給するための入口、圧縮された燃料を放出するための出口、ポンプケーシング、ポンプケーシング内に配置された圧送室、圧送室を画定し、ポンプケーシング内で長手方向に沿って摺動可能なポンプピストン、入口と圧送室との間に配置された、圧送室に向かって開く入口弁、圧送室と出口との間に配置された、圧送室から離れる方向に開く出口弁、流体的に出口弁と出口との間に延在する高圧領域、流体的に入口と入口弁との間に延在する低圧領域、および高圧領域内の燃料と低圧領域内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に高圧領域を低圧領域に流体的に接続し低圧領域に向かって開いて高圧領域から低圧領域へと燃料を流出させる圧力制限弁を備え、ポンプピストンは、段付きピストンとして形成されていて、圧送室に面し相対的に大きな直径を有した第1の区分と、相対的に小さな直径を有し圧送室から離反する方向に向けられた第2の区分とを有しており、第1の区分とポンプケーシングとの間には、圧送室を低圧領域から分離する高圧シールが配置されていて、この高圧シール内ではポンプピストンが摺動可能であって、第2の区分と、ポンプケーシングに固定されたシール支持体との間には、低圧領域を燃料高圧ポンプの外側の空間から分離する低圧シールが配置されており、シール支持体とポンプケーシングとの間には、低圧領域の段状室が位置していて、圧力制限弁は、高圧領域内の燃料と低圧領域内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に、高圧領域を低圧領域の段状室に流体的に接続し段状室に向かって開いて、高圧領域から段状室へと燃料を流出させ、出口弁は、ポンプケーシングの出口弁孔内に配置されており、可動の弁エレメントを有していて、弁エレメントの上流に配置されたシール座部を有しており、シール座部はシール座部固定区分でポンプ固定に取り付けられていて、シール座部には、弁エレメントと協働するシール座が形成されており、出口弁は、弁エレメントの下流に配置されたポンプ固定の対応プレートを有しており、対応プレートは、対応プレート固定区分でポンプ固定に取り付けられていて、下流方向への弁エレメントの可動性を制限しており、圧力制限弁は、ポンプケーシングにおける圧力制限弁孔内に配置されていて、この圧力制限弁孔は、長手方向で延在していて、段状室を起点として出口弁孔に、すなわちシール座部固定区分と対応プレート固定区分との間に開口する、燃料高圧ポンプが想定されている。
【0018】
冒頭で引用した従来技術と比較して、特に、圧力制限弁孔が、シール座部固定区分と対応プレート固定区分との間で出口弁孔に開口する配置により、他の高圧シール箇所なしに、構成スペースを削減する形式で、高圧領域内への圧力制限弁の組込みが実施されるという利点が生じる。出口弁に所属の構成部分が組付けられているスペースは、同時に、圧力制限弁孔の開口区域であり、これによりこのスペースは、いわば二重に利用される。
【0019】
第1のさらなる対象は、有利には、改良することができ、すなわち、好ましくは、従属請求項2、3、7および/または8の特徴により、かつ/または
図6および/または
図6に関する説明に開示された特徴により、改良することができる。
【0020】
この場合、並列して特許請求される第2のさらなる対象では、内燃機関のための燃料システム用の燃料高圧ポンプであって、燃料を供給するための入口、圧縮された燃料を放出するための出口、ポンプケーシング、ポンプケーシング内に配置された圧送室、圧送室を画定し、ポンプケーシング内で長手方向に沿って摺動可能なポンプピストン、入口と圧送室との間に配置された、圧送室に向かって開く入口弁、圧送室と出口との間に配置された、圧送室から離れる方向に開く出口弁、流体的に出口弁と出口との間に延在する高圧領域、流体的に入口と入口弁との間に延在する低圧領域、および高圧領域内の燃料と低圧領域内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に高圧領域を低圧領域に流体的に接続し低圧領域に向かって開いて高圧領域から低圧領域へと燃料を流出させる圧力制限弁を備え、ポンプピストンは、段付きピストンとして形成されていて、圧送室に面し相対的に大きな直径を有した第1の区分と、相対的に小さな直径を有し圧送室から離反する方向に向けられた第2の区分とを有しており、第1の区分とポンプケーシングとの間には、圧送室を低圧領域から分離する高圧シールが配置されていて、この高圧シール内ではポンプピストンが摺動可能であって、第2の区分と、ポンプケーシングに固定されたシール支持体との間には、低圧領域を燃料高圧ポンプの外側の空間から分離する低圧シールが配置されており、シール支持体とポンプケーシングとの間には、低圧領域の段状室が位置していて、圧力制限弁は、高圧領域内の燃料と低圧領域内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に、高圧領域を低圧領域の段状室に流体的に接続し段状室に向かって開いて、高圧領域から段状室へと燃料を流出させ、出口弁は、ポンプケーシングの出口弁孔内に配置されており、圧力制限弁は、ポンプケーシングにおける圧力制限弁孔内に配置されていて、圧力制限弁孔は、長手方向で延在していて、段状室を起点としてポンプケーシング内の高圧接続孔に開口していて、高圧接続孔は高圧領域に配置されていて、出口弁孔に対して、0°ではない角度を成して方向付けられており、特に、出口は、ポンプケーシングに固定された出口管片として形成されていて、特にポンプケーシングと出口管片との間には、出口管片室が形成されており、特に出口弁孔と高圧接続孔とは両方とも、出口管片室を起点としている、燃料高圧ポンプが想定されている。
【0021】
冒頭で引用した従来技術と比較して、特に、高圧接続孔が出口弁孔に対して、0°ではない角度を成して方向付けられている配置により、ポンプ本体内の内側輪郭のために提供可能な構成スペースを最適に利用できることが、もしくは潜在的にはポンプ本体をさらに小型化できることが達成される。
【0022】
第2のさらなる対象は、有利には、改良することができ、すなわち好ましくは、出口弁孔と高圧接続孔とが両方とも出口管片室を起点としているという特徴により、改良することができる。これらの孔は、この場合、簡単に、例えば同じ工具で製造することができる。
【0023】
第2のさらなる対象は、さらに、請求項7または8の特徴により、かつ/または
図7および/または
図7に関する説明に開示された特徴により、有利には改良することができる。
【0024】
本発明の範囲では、孔(特に、出口弁孔、圧力制限弁孔、低圧接続孔、高圧接続孔等)は、特に、回転するスパイラルドリルによって外側から切削加工によりポンプケーシングもしくはポンプ本体内に加工可能な、ポンプケーシングもしくはポンプ本体の内側輪郭であると理解される。したがって、孔は、特に軸方向の対称性を有しており、その対称軸線はスパイラルドリルの回転軸線に相当する。この対称軸線は、この場合、孔が向けられている方向を規定する。この場合、孔は、基本的には、ポンプケーシングもしくはポンプ本体を貫通する貫通孔であってよい、またはポンプケーシングもしくはポンプ本体内に配置された孔底部で終端する袋孔であってよい。孔の起点は、本発明の範囲では、ドリルがポンプケーシングもしくはポンプ本体内に進入する際に最初に切削加工により形成される、孔の側である。袋孔の場合、孔の起点は常に、孔底部とは反対の側である。したがって、孔がそこで、ポンプケーシングもしくはポンプ本体の別の内側輪郭に到る場合またはポンプケーシングもしくはポンプ本体から出る場合、孔の開口は、孔の起点とは反対の側である。本発明の孔は、特に、その起点から見てアンダカットを有していない。
【0025】
本発明の範囲では、貫通孔の場合、孔壁とは、貫通孔によって形成される内側輪郭であり;袋孔の場合、孔壁とは、貫通孔によって形成される内側輪郭の、孔底部ではない部分である。
【0026】
本発明の範囲では、高圧領域とは、特に介在する別の弁なしに、単に出口に連通している全ての空間を意味し、これにより、高圧領域には、ポンプ作動時に例えば500barの統一された圧力が生じる。
【0027】
本発明の範囲では、低圧領域とは、特に介在する別の弁なしに、単に入口に連通している全ての空間を意味し、これにより、低圧領域には、ポンプ作動時に、低圧ポンプが入口に接続された状態で、例えば5barの統一された圧力が生じる。
【0028】
特に、燃料が貫流する、燃料高圧ポンプの内側輪郭は、結局のところ、低圧領域と、圧送室と、高圧領域とから成る。これらの領域は、入口弁、出口弁、および圧力制限弁によって互いに分離されている。
【0029】
燃料は、例えば、ガソリンのような燃料であってよい。
【0030】
本発明の範囲では、0°ではない角度に調節される場合には、この角度は、0°とは明らかに異なっている角度、すなわち例えば少なくとも2°または少なくとも5°の角度であってよい。例えば、この角度は、2°~90°の角度であってよい。
【0031】
以下に、本発明の例示的な実施形態を、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】内燃機関のための燃料システムを簡略化して示した概略図である。
【
図3】実施例で使用することができるような圧力制限弁を例示した詳細図である。
【0033】
図1には、その他の部分は示されていない内燃機関のための燃料システム1が単純化された概略図で示されている。燃料システム1の作動中、燃料タンク2から、燃料が、吸込管路4を経由して、フィードポンプ6および低圧管路8を介して、ピストンポンプとして形成された燃料高圧ポンプ10の入口管片20に供給される。流体的に入口管片20の後続に、入口弁14が配置されている。流体的に入口管片20と入口弁14との間には、燃料高圧ポンプ10の低圧領域28が位置している。入口弁14の下流には、燃料高圧ポンプ10の圧送室16が位置している。低圧領域28における圧力脈動は、圧力減衰装置によって減衰することができる。入口弁14は、この場合、電磁的なアクチュエータ30として形成された操作装置を介して強制的に開放させることができる。操作装置、ひいては入口弁14は、制御ユニット32を介して制御可能である。
【0034】
燃料高圧ポンプ10のポンプピストン18は、この場合、カムディスクとして形成された駆動装置36によって、長手方向LAで延在する、ポンプピストン18の対称軸線を成す長手方向軸線に沿って、
図1に両方向矢印40によって示されているように上下に運動することができる。流体的に燃料高圧ポンプ10の圧送室16と出口管片35との間に、出口管片35と、さらに下流に位置する高圧アキュムレータ45(「レール」)とに向かって開くことができる出口弁37が配置されている。したがって、流体的に出口弁37と出口管片35との間には、燃料高圧ポンプ10の高圧領域29が延在している。
【0035】
燃料高圧ポンプ10の高圧領域29における、もしくは高圧領域に連通している高圧アキュムレータ45における境界圧が超過されると開放する圧力制限弁22を介して、高圧領域29と低圧領域28とは互いに直接接続されている。圧力制限弁22は、ばね負荷された逆止弁として形成されていて、燃料高圧ポンプ10の低圧領域28に向かって開くことができる。このようにして、燃料高圧ポンプ10により高圧アキュムレータ45内に生成可能な圧力が制限されている。
【0036】
図2は、本発明の第1の実施例としての燃料高圧ポンプ10を示す断面図である。
【0037】
燃料高圧ポンプ10は、入口管片20として形成された入口11を有している。入口11は、燃料高圧ポンプ10の全低圧領域28に、弁を介在することなく連通している。
【0038】
燃料高圧ポンプ10は、出口管片35として形成された出口34を有している。出口34は、燃料高圧ポンプ10の全高圧領域29に、弁を介在することなく連通している。
【0039】
出口管片35と入口管片20とは、ポンプケーシング12に固定されていて、ポンプケーシングには、長手方向LAに沿って摺動可能なポンプピストン18によって画定される圧送室16も配置されている。
【0040】
低圧領域28は、この断面図では見えていない流体接続部を介して入口11に接続されている減衰室28aを含んでおり、この減衰室は、ポンプケーシング12のポンプ本体12aとポンプケーシング12のポンプカバー12bとの間に形成されている。減衰室28a内には、ダイヤフラムダンパ55が配置されていて、ダイヤフラムダンパは、2つの金属ダイヤフラムによって形成された、扁平で圧縮可能な缶の形状を有していてよい。
【0041】
入口11と減衰室28aとの間の見えていない流体接続部は、例えばフィルタ孔を有していてよく、フィルタ孔には、フィルタ孔を貫流する燃料から、最小サイズを上回る連行された固体粒子を除去するフィルタエレメントが配置されている。
【0042】
図2においてポンプ本体12aの下方区分には、シール支持体60が取り付けられていて、ポンプ本体12aとシール支持体60との間には、段状室28dが形成されている。段状室28dは、この断面図では見えていない貫通孔を介して、ポンプ本体12aを貫通して減衰室28aと連通していて、したがって段状室は、低圧領域28の一部である。
【0043】
圧送室16は、相応の差圧のもとで圧送室16に向かって開く入口弁14によって、低圧領域28に対して画定されている。
【0044】
燃料高圧ポンプ10の圧送量を制御するために、入口弁14を、アクチュエータ30によって駆動されるプランジャ31により強制的に開放することができる。このために、アクチュエータ30は、ポンプケーシング12に固定されたアクチュエータケーシング30aを有していて、このアクチュエータケーシング内には電磁コイル30bが配置されていて、この電磁コイルには、外側からアクセス可能な燃料高圧ポンプ10の電気端子30cを介して給電可能である。
【0045】
ポンプケーシング内では、ジオメトリ的に入口弁14とアクチュエータ30との間に、低圧領域28の入口弁領域28cが形成されている。入口弁領域は、この断面図では見えている孔28fを介して減衰領域28aに連通している。
【0046】
圧送室16は、高圧領域29に対して、相応の差圧のもとで圧送室16から離れるように開く出口弁37によって画定されている。この例では、出口弁は、ポンプケーシング12もしくはポンプ本体12aの出口弁孔37a内に配置されている。出口弁は、可動の弁エレメント37.1を有していて、この弁エレメントは、弁エレメント37.1の上流でポンプ固定に配置されたシール座部37.2に形成されたシール座37.4と協働する。ポンプ固定に配置された対応プレート37.5を介して、弁エレメント37.1の可動性は下流方向で制限されている。出口弁孔37aは、出口管片35とポンプケーシング12もしくはポンプ本体12aとの間に位置する出口管片室35aを起点としている。
【0047】
ポンプピストン18は、段付きピストンとして形成されている。ポンプピストンは、相対的に大きな直径を有する、圧送室16に面した第1の区分18.1と、(第1の区分18.1の直径に対して相対的に)小さな直径を有する、圧送室から離反する方向に向けられた第2の区分18.2とを有している。第1の区分18.1と第2の区分18.2との間には、
図2で垂直に下方に向けられたリング状段部18.3が形成されている。
【0048】
第1の区分18.1とポンプケーシング12との間には高圧シール80が配置されていて、この高圧シール内で、ポンプピストン18は摺動可能である。高圧シール80は、圧送室16を低圧領域28からシールして分離している。
【0049】
高圧シール80は、例えば本出願人の国際公開第19015862号に詳細に説明されているように、例えば金属またはプラスチックから成る例えば別個のシールリングであってよい。他方で、高圧シール80は、例えば、本出願人の国際公開第06069819号に詳細に説明されているように、ポンプピストン18とブシュとの間、またはポンプピストン18とポンプケーシング12との間に、所定の長さにわたって延在する狭い間隙であってもよい。
【0050】
第2の区分18.2と、既に上述したシール支持体60との間には、低圧領域28の段状室28dを、燃料高圧ポンプ10の外側に位置する空間100から分離する低圧シール78が配置されている。ポンプピストン18は低圧シール78内で摺動可能である。
【0051】
ポンプピストン18に固定されたばね受け19.1と、ばね受け19.1とシール支持体60との間に緊締されたポンプばね19.2とを介して、ポンプピストン18は、
図2で下方に向かう長手方向LAに予荷重をかけられている。
【0052】
本発明による燃料高圧ポンプ10は、高圧領域29内の燃料と低圧領域28内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に高圧領域29を低圧領域28に流体的に接続し低圧領域28に向かって開いて、高圧領域29から低圧領域28へと燃料を流出させる圧力制限弁22を有している。
【0053】
図3には、圧力制限弁が詳細に例示されている。この圧力制限弁は、圧力制限弁孔22a内にまたは圧力制限弁22のケーシング内に圧入された弁座体38を有しており、この弁座体には円錐状の弁座42が形成されている。圧力制限弁22は、さらにボールの形状を有した弁エレメント44を有しており、この弁エレメントは、弁座42に密に当接する。弁エレメント44は、保持エレメント46によって閉鎖方向に押され、保持エレメント46は、コイルばね52によって閉鎖方向に押される。コイルばね52は、圧力制限弁22のケーシングに、またはポンプケーシング12に直接支持されている。この場合、コイルばね52は、保持エレメント46の半径方向外側の領域464に当接する。保持エレメント46の半径方向内側の領域465は、コイルばね52によって収容される。コイルばね52の剛性を介して、および圧力制限弁22に作用する面積を介して、圧力制限弁22の開放圧が規定され、ひいては同時に、燃料高圧ポンプ10が入口11と出口34との間に生成することができる最大の差圧が規定される。
【0054】
本発明による燃料高圧ポンプ10における圧力制限弁22の配置について、以下にさらに例示的に説明する。
【0055】
この場合、本発明(独立請求項1)の範囲では、圧力制限弁22が、高圧領域29内の燃料と低圧領域28内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に、高圧領域29を低圧領域28の段状室28dに流体的に接続し段状室28dに向かって開いて、高圧領域29から段状室28dへと燃料を流出させること、およびこの圧力制限弁22は、ポンプ本体12bを貫通する貫通孔として形成された圧力制限弁孔22a内に配置されており、圧力制限弁孔22aは、減衰領域28aから段状室28dまで延在していて、減衰領域28aに面した側で、圧力制限弁孔22a内に圧入されたボール56または圧力制限弁孔22a内に圧入された栓体57によって閉鎖されており、圧力制限弁孔22aは、段付き孔として形成されていて、相対的に大きな直径を有し減衰領域28aに面した第1の区分22.1と、相対的に小さな直径を有し段状室28dに面した第2の区分22.3とを有していて、第1の区分22.1と第2の区分22.3との間に形成されたリング状段部22.2を有しており、圧力制限弁22の既に上述したコイルばね52は、圧力制限弁孔22aのリング状段部22.2に支持されていることが想定されている。
【0056】
本発明の第1の実施例(
図2および
図3)によれば、さらに、出口弁孔37aと圧力制限弁孔22aとは、特に直角に交差していることが想定されている。この場合、交差は、この例では、高圧領域29の内側で行われる。
【0057】
より詳細には、本発明の第1の実施例によれば、この交差は、シール座部37.2がシール座部固定区分37.3でポンプ固定に取り付けられていて、対応プレート37.5が対応プレート固定区分37.6でポンプ固定に取り付けられていて、圧力制限弁孔22aが、シール座部固定区分37.3と対応プレート固定区分37.6との間で出口弁孔37aに交差するように行われる。
【0058】
例えば、出口弁孔37aの仮想中心軸線が、ポンプピストン18の仮想中心軸線に、したがってガソリン高圧ポンプの長手方向軸線に交差することが想定されている。
【0059】
図4には、本発明の第2の実施例が、
図4aでは、断面図で部分的に、
図4bでは、半透過図で示されたポンプ本体12aの平面図により、示されている。第2の実施例は、出口弁孔37aと圧力制限弁孔22aとが交差していることが想定されていない点で第1の実施例とは異なっている。その代わりに、第2の実施例では、圧力制限弁孔22aは、高圧領域29に位置する、出口管片室35aを起点とする高圧接続孔29aを介して出口管片室35aに接続されていることが想定されている。
【0060】
この場合、出口弁孔37aと高圧接続孔29aとは、互いに0°ではない角度、特に、少なくとも20°の角度を成して配置されていて、かつそれぞれ長手方向LAに対して垂直に配置されている。
【0061】
出口弁孔37aの仮想中心軸線は、特に、ポンプピストン18の仮想中心軸線に交差している。
【0062】
図5には、本発明の第3の実施例が、
図5aでは、断面図で部分的に、
図5bでは、半透過図で示されたポンプ本体12aの平面図により、示されている。第3の実施例は、出口弁孔37aと高圧接続孔29aとが互いに平行に配置されている点で第2の実施例とは異なっている。
【0063】
例えば、これらの両孔22a,37aは、長手方向LAに対して垂直に配置されている。出口弁孔37aの仮想中心軸線は、ポンプピストン18の仮想中心軸線に交差していない、もしくは必ずしも交差していない。
【0064】
本発明の第4の実施例は、第1の並列独立請求項により形成されていて、
図6の断面図に示されている。この実施例は、内燃機関のための燃料システム用の燃料高圧ポンプ10であって、燃料を供給するための入口11、圧縮された燃料を放出するための出口34、ポンプケーシング12、ポンプケーシング内に配置された圧送室16、圧送室を画定し、ポンプケーシング12内で長手方向LAに沿って摺動可能なポンプピストン18、入口11と圧送室16との間に配置された、圧送室16に向かって開く入口弁14、圧送室16と出口34との間に配置された、圧送室16から離れる方向に開く出口弁37、流体的に出口弁20と出口34との間に延在する高圧領域29、流体的に入口11と入口弁14との間に延在する低圧領域28、および高圧領域29内の燃料と低圧領域28内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に高圧領域29を低圧領域28に流体的に接続し低圧領域28に向かって開いて高圧領域29から低圧領域28へと燃料を流出させる圧力制限弁22を備え、ポンプピストン18は、段付きピストンとして形成されていて、圧送室16に面し相対的に大きな直径を有した第1の区分18.1と、相対的に小さな直径を有し圧送室16から離反する方向に向けられた第2の区分18.2とを有しており、第1の区分18.1とポンプケーシング12との間には、圧送室16を低圧領域28から分離する高圧シール80が配置されていて、この高圧シール内ではポンプピストン18が摺動可能であって、第2の区分18.2と、ポンプケーシング12に固定されたシール支持体60との間には、低圧領域28を燃料高圧ポンプ10の外側の空間100から分離する低圧シール78が配置されており、シール支持体60とポンプケーシング12との間には、低圧領域28の段状室28dが位置していて、圧力制限弁22は、高圧領域29内の燃料と低圧領域28内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に、高圧領域29を低圧領域の段状室28dに流体的に接続し段状室28dに向かって開いて、高圧領域29から段状室28dへと燃料を流出させ、出口弁37は、ポンプケーシング12の出口弁孔37a内に配置されており、可動の弁エレメント37.1を有していて、弁エレメント37.1の上流に配置されたシール座部37.2を有しており、シール座部はシール座部固定区分37.3でポンプ固定に取り付けられていて、シール座部には、弁エレメント37.1と協働するシール座37.4が形成されており、出口弁37は、弁エレメント37.1の下流に配置されたポンプ固定の対応プレート37.5を有しており、対応プレートは、対応プレート固定区分37.5でポンプ固定に取り付けられていて、下流方向への弁エレメント37.1の可動性を制限しており、圧力制限弁37は、ポンプケーシング12における圧力制限弁孔37内に配置されていて、この圧力制限弁孔は、長手方向LAで延在していて、段状室28dを起点として出口弁孔22aに、すなわちシール座部固定区分37.3と対応プレート固定区分37.6との間に開口する、燃料高圧ポンプである。
【0065】
本発明の第5の実施例が、第2の並列独立請求項により形成されていて、
図7aでは、断面図で部分的に、
図7bでは、半透過図で示されたポンプ本体12aの平面図により、示されている。この実施例は、内燃機関のための燃料システム用の燃料高圧ポンプ10であって、燃料を供給するための入口11、圧縮された燃料を放出するための出口34、ポンプケーシング12、ポンプケーシング内に配置された圧送室16、圧送室を画定し、ポンプケーシング12内で長手方向LAに沿って摺動可能なポンプピストン18、入口11と圧送室16との間に配置された、圧送室16に向かって開く入口弁14、圧送室16と出口34との間に配置された、圧送室16から離れる方向に開く出口弁37、流体的に出口弁20と出口34との間に延在する高圧領域29、流体的に入口11と入口弁14との間に延在する低圧領域28、および高圧領域29内の燃料と低圧領域28内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に高圧領域29を低圧領域28に流体的に接続し低圧領域28に向かって開いて高圧領域29から低圧領域28へと燃料を流出させる圧力制限弁22を備え、ポンプピストン18は、段付きピストンとして形成されていて、圧送室16に面し相対的に大きな直径を有した第1の区分18.1と、相対的に小さな直径を有し圧送室16から離反する方向に向けられた第2の区分18.2とを有しており、第1の区分18.1とポンプケーシング12との間には、圧送室16を低圧領域28から分離する高圧シール80が配置されていて、この高圧シール内ではポンプピストン18が摺動可能であって、第2の区分18.2と、ポンプケーシング12に固定されたシール支持体60との間には、低圧領域28を燃料高圧ポンプ10の外側の空間100から分離する低圧シール78が配置されており、シール支持体60とポンプケーシング12との間には、低圧領域28の段状室28dが位置していて、圧力制限弁22は、高圧領域29内の燃料と低圧領域28内の燃料との間の差圧が開放圧を超過した際に、高圧領域29を低圧領域の段状室28dに流体的に接続し段状室28dに向かって開いて、高圧領域29から段状室28dへと燃料を流出させ、出口弁37は、ポンプケーシング12の出口弁孔37a内に配置されており、圧力制限弁22は、ポンプケーシング12における圧力制限弁孔22a内に配置されていて、この圧力制限弁孔は、長手方向LAで延在していて、段状室28dを起点としてポンプケーシング12内の高圧接続孔29aに開口していて、高圧接続孔は高圧領域29に配置されていて、出口弁孔37aに対して、0°ではない角度、例えば5°~15°の角度を成して方向付けられており、特に、出口34は、ポンプケーシング12に固定された出口管片35として形成されていて、特にポンプケーシング12と出口管片35との間には、出口管片室35aが形成されており、特に出口弁孔37aと高圧接続孔29aとは両方とも、出口管片室35aを起点としている、燃料高圧ポンプである。
【国際調査報告】