(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】5-HT2応答性状態を治療するための化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07C 217/58 20060101AFI20240719BHJP
C07D 209/14 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20240719BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240719BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240719BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240719BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240719BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240719BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20240719BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240719BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240719BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240719BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07C217/58
C07D209/14 CSP
A61K31/404
A61P1/04
A61P3/10
A61P9/10 101
A61P11/06
A61P17/06
A61P11/00
A61P19/02
A61P25/00
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/30
A61P25/04
A61P27/02
A61P29/00 101
A61P29/00
A61P31/04
A61P43/00 111
A61K31/137
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505209
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 US2022074139
(87)【国際公開番号】W WO2023010000
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】317019845
【氏名又は名称】ボード オブ スーパーバイザーズ オブ ルイジアナ ステート ユニバーシティ アンド アグリカルチュアル アンド メカニカル カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ニコルス チャールズ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC13
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA59
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA16
4C086ZA33
4C086ZA45
4C086ZA59
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4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB35
4C086ZC35
4C086ZC39
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA11
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA79
4C206NA14
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4C206ZA89
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4C206ZC35
4C206ZC39
4C206ZC41
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB20
4H006BJ50
4H006BN10
4H006BP30
4H006BU32
(57)【要約】
本発明は、5-HT2応答性状態の治療に有用なインドールアルキルアミン化合物及び医薬組成物を特徴とする。5-HT2応答性状態の治療を必要とする対象におけるうつ病又は炎症などの5-HT2応答性状態を治療するために本発明の化合物又は組成物を使用する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
Xが、NH
2、NH(CH
3)、N(CH
3)
2、又はN(CH
3)
3であり、
R
1が、H又はCH
3であり、
R
2が、H又はCH
3であり、
R
3が、H、ハロゲン、トリフルオロメチル、CN、任意選択で置換されたC
1~8アルキル、任意選択で置換されたC
2~8アルケニル、任意選択で置換されたC
1~8アルコキシ、及びC
1~C
8アルキルチオであり、
R
4が、H、OH、OCH
3、又はOCH
2CH
3である]の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R
3が、ブロモ、ヨード、CN、-CH
3、-CH
2CH
3、-CH(CH
3)
2、-CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2CH
2CH(CH
3)
2、-CH
2CH
2CH
2CH
3、-C(CH
3)
3、-CH
2C(CH
3)
3、-OCH(CH
3)
2、
-OC(CH
3)
3、及びC
1~C
8アルキルチオから選択されるか、又は
【化2】
から選択される基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(I)の前記化合物が、化合物1~4のうちのいずれか1つから選択される、請求項1に記載の化合物:
【化3】
【請求項4】
式(II):
【化4】
[式中、
R
1が、H又はCH
3であり、
Xが、N(R
2)(R
3)又はN(R
2)(R
3)(CH
3)であり、
R
2及びR
3が各々独立して、-CH
3、-CH
2CH
3、及び-CH(CH
3)
2、-CH
2CH(CH
3)
2から選択される]の化合物、
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
式(II)の前記化合物が、化合物5~8のうちのいずれか1つから選択される、請求項4に記載の化合物:
【化5】
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、経口、鼻腔内、又は肺投与用に製剤化される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
炎症性障害の治療を必要とする対象における炎症性障害を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項9】
前記炎症性障害が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、神経炎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、乾癬、II型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、敗血症、アルツハイマー病、及び結膜炎からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
心理学的状態の治療を必要とする対象における心理学的状態を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項11】
前記心理学的状態が、うつ病、不安、嗜癖、外傷後ストレス障害、摂食障害、又は強迫行動である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
慢性疼痛の治療を必要とする対象における慢性疼痛を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記化合物が、経口、鼻腔内、又は吸入により投与される、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願は、2021年7月26日に出願された米国仮特許出願第63/225,755号からの優先権の利益を主張する国際出願であり、この全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載され特許請求される本発明の日付時点での当業者に既知の最新技術をより完全に記載するために、これらの刊行物の開示は、参照により本出願に組み込まれる。
【0003】
(著作権)
本特許開示は、著作権保護の対象となる、材料を含む。著作権所有者は、米国特許商標局の特許ファイル又は記録に表れているような特許文書又は特許開示をいかなる者がファクシミリ複製することにも異議はないが、それ以外では、あらゆる全ての著作権を留保する。
【0004】
(発明の分野)
概して、本発明は、5-HT2応答性状態を治療するための組成物及び方法を特徴とする。
【背景技術】
【0005】
精神医学的状態、疼痛障害、免疫学的状態、及び神経学的状態を含む多様な5-HT2応答性状態における治療効果の可能性の証拠(例えば、5-HT2受容体標的調節による状態及び障害の緩和及び改善)に基づいて、5-HT2受容体リガンドの治療的適用に大きな関心が寄せられている。
【0006】
より望ましい治療、吸収、分布、薬物動態、及び/又は安全性プロファイルを有する小分子5-HT2受容体リガンドの発見及び開発が当該技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、強力な薬理学的特性を有する5-HT2受容体に対する新たなクラスのリガンドを開示する。本発明の化合物又は組成物を、例えば、炎症性障害又は神経学的障害の治療を必要とする対象における炎症性障害又は神経学的障害を治療するために使用する方法も提供される。
【0008】
本発明の一態様は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩を特徴とする:
【0009】
【0010】
式(I)中、Xは、NH2、NH(CH3)、N(CH3)2、又はN(CH3)3であり、R1は、H又はCH3であり、R2は、H又はCH3であり、R3は、H、ハロゲン、トリフルオロメチル、CN、任意選択で置換されたC1~8アルキル、任意選択で置換されたC2~8アルケニル、任意選択で置換されたC1~8アルコキシ、及びC1~C8アルキルチオであり、R4は、H、OH、OCH3、又はOCH2CH3である。
【0011】
式(I)の一実施形態では、R3は、ブロモ、ヨード、CN、-CH3、-CH2CH3、-CH(CH3)2、
-CH2CH(CH3)2、-CH2CH2CH(CH3)2、-CH2CH2CH2CH3、-C(CH3)3、-CH2C(CH3)3、-OCH(CH3)2、-OC(CH3)3、
及びC1~C8アルキルチオから選択されるか、又は
【0012】
【0013】
特定の実施形態では、式(I)の化合物は、化合物1~4のうちのいずれか1つから選択される:
【0014】
【0015】
本発明の一態様は、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩を特徴とする:
【0016】
【0017】
式(II)中、R1は、H又はCH3であり、Xは、N(R2)(R3)又はN(R2)(R3)(CH3)であり、R2及びR3は各々独立して、-CH3、-CH2CH3、及び-CH(CH3)2、-CH2CH(CH3)2から選択される。特定の実施形態では、式(II)の化合物は、化合物5~8のうちのいずれか1つから選択される:
【0018】
【0019】
別の態様では、本発明は、前述の態様のうちのいずれか(例えば、式(I)若しくは式(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩)と、薬学的に許容される賦形剤との組成物を含む。かかる医薬組成物は、例えば、経口、鼻腔内、皮下、筋肉内、非経口、局所、眼内、又は肺投与用に製剤化することができる。
【0020】
別の態様では、5-HT2応答性状態の治療を必要とする対象における5-HT2応答性状態を治療する方法であって、対象に、治療有効量の前述の態様のうちのいずれかの化合物又は医薬組成物を投与することを含む、方法が本明細書に提供される。特定の実施形態では、5-HT2応答性状態は、炎症性障害又は神経学的障害である。
【0021】
前述の実施形態のうちのいずれか又は本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、5-HT2応答性状態は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、神経炎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、乾癬、II型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、敗血症、結膜炎、アルツハイマー病、又は本明細書に記載のいずれかの炎症性状態から選択される炎症性障害である。
【0022】
別の態様では、心理学的状態の治療を必要とする対象における心理学的状態を治療する方法であって、対象に、治療有効量の前述の態様のうちのいずれかの化合物又は医薬組成物を投与することを含む、方法が本明細書に提供される。特定の実施形態では、心理学的状態は、うつ病、不安、嗜癖、外傷後ストレス障害、摂食障害、強迫行動、自閉症スペクトラム障害、又は本明細書に記載のいずれかの心理学的状態である。
【0023】
別の態様では、慢性疼痛の治療を必要とする対象における慢性疼痛を治療する方法であって、対象に、治療有効量の前述の態様のうちのいずれかの化合物又は医薬組成物を投与することを含む、方法が本明細書に提供される。
【0024】
別の態様では、記載される組成物は、これらの受容体に対する既知の化学種リガンドクラス、すなわち、非網羅的に、置換フェネチルアミン、リセルガミド、及びトリプタミンからの構造的分化を提供する、5-HT2受容体を標的とするリガンドの新たな化学種クラスを具現化する。異なる構造的化学種は、これらの他のリガンドクラスに対して既知の二次標的及び相補的標的において薬理学の進展を再現しない可能性が高い。したがって、本出願に記載の分子に対する二次代謝調節型、イオンチャネル型、輸送体、又は酵素標的におけるいずれの追加の活性も、既存の5-HT2受容体標的薬と比較して全体的に特有の薬理学的プロファイルに寄与し得る。
【0025】
本明細書に提供される方法のうちのいずれにおいても、本化合物は、任意の好適な投与経路、例えば、経口、鼻腔内、又は吸入により投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明の化合物又はその医薬組成物は、鼻腔、頬側、経口を含む様々な経路のうちの1つ以上によって、吸入によって(例えば、経口スプレー、ネブライザー、鼻腔スプレー、若しくはエアロゾルとして)、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内、直腸、膣内、腹腔内、局所(例えば、散剤、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、及び/若しくは滴剤による)、粘膜、腸、硝子体、腫瘍内、舌下、気管内点滴注入により、気管支点滴注入により、並びに/又は門脈カテーテルを介して投与される。いくつかの実施形態では、本組成物は、全身静脈内注射によって投与される。特定の実施形態では、本組成物は、静脈内及び/又は経口投与される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ヒト5-HT2A受容体の結合ポケット内の最近公開された25CN-NBOHの構造に従って位置付けられたDOx化合物(濃青色、本実施例ではDOI)の芳香環のインシリコ図を示す。5-MeOが突き抜ける(poke into)ための空きスペースしかないことに留意されたい。
【
図2】水分子がこのポケットに配置され、メトキシの酸素が水に水素結合することができ、かつ水がN343に水素結合することができた場合のインシリコ図を示す。
【
図3】構造-活性相関の結果を示す。5-メトキシの喪失又は修飾により、DOx/2Cx化合物の有効性の低下がもたらされる。トリプタミンにおける4-OHの欠如により、抗炎症効果の有効性の完全な喪失がもたらされる(例えば、プシロシン対N,N-DMT)。
【
図4】HT
2A-LSD複合体の最近のX線結晶構造に基づいてLSDのインドール環が占める位置に対応する結合ポケットに配置されたプシロシンのインシリコ図を示す(PMID:32946782を参照されたく、Kim K,et al.Structure of a Hallucinogen-Activated Gq-Coupled5-HT
2A Serotonin Receptor.Cell.2020 Sep 17;182(6):1574-1588も参照されたい)。プシロシンの4-OHは、同様の空のポケットを突き抜ける。空のポケット内に配置した水により、N343への同様の水素結合架橋が可能になる。
【
図5】N343に直接水素結合することができるDOx/2Cx上の5-ヒドロキシエチルの酸素のインシリコ図を示す。
【
図6】N343との水素結合距離内にも酸素を配置したトリプタミン上の4-ヒドロキシエチルのインシリコ図を示す。
【
図7】構造-活性相関の結果を示す。これらの結果は、抗炎症活性に対するトリプタミン上の4-OH基の重要性を示す。
【
図8】アレルギー性喘息のラットモデルにおける、0.5mg/kgの用量で試験した4-ヒドロキシエチル-DIPT(パネルA)及び0.1mg/kgで投与した2-メトキシ-4-ブロモ-5-メトキシエチルフェネチルアミン(パネルB)のグラフを示す。
【
図9】HEK-h5-HT
2Aカルシウムフラックスのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語が、本開示の下及び全体を通して定義される。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における用語は、本発明の特定の実施形態を説明するために使用されるが、それらの用法は、特許請求の範囲に概説される場合を除いて、本発明を限定するものではない。
【0028】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、複数の参照を含む。特許請求の範囲及び/又は明細書において「備える」という用語とともに使用されるときの「a」又は「an」という単語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」及び「1つ又は2つ以上」の意味とも一致する。
【0029】
「例えば」、「など」、「含む」などの句のいずれかが本明細書で使用される場合は常に、他に明確に記載されない限り、「限定することなく」という句が付随することが理解される。同様に、「一例」、「例示的」などは、非限定的であると理解される。
【0030】
「実質的に」という用語は、意図した目的に悪影響を与えない記述語からの逸脱を可能にする。記述用語は、「実質的に」という語が明確に列挙されていなくても、「実質的に」という用語によって修飾されることが理解される。
【0031】
「含む(comprising)」及び「含む(including)」及び「有する(having)」及び「含む(involving)」(並びに同様に「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」、及び「含む(involves)」)などの用語は、交換可能に使用され、同じ意味を有する。具体的には、用語の各々は、「含む(comprising)」の一般的な米国特許法の定義と一致して定義され、したがって、「少なくとも以下(at least the following)」を意味する非限定用語(open term)であると解釈され、追加の特徴、限定、態様などを除外しないとも解釈される。よって、例えば、「ステップa、b、及びcを含むプロセス」は、プロセスが少なくともステップa、b、及びcを含むことを意味する。「a」又は「an」という用語が使用されている場合は常に、そのような解釈が文脈上無意味でない限り、「1つ以上」と理解される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、本明細書では、おおよそ、大まかに、およそ、又はその領域内を意味するために使用される。「約」という用語が数値範囲とともに使用される場合、それは、記載された数値の上及び下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。一般に、「約」という用語は、本明細書では、20パーセント上又は下の(より高い又はより低い)分散によって記載された値を上回る、及び下回る数値を修飾するために使用される。
【0033】
本明細書の様々な箇所で、本開示の化合物の置換基は、群又は範囲で開示されている。本開示がかかる群及び範囲のメンバーのありとあらゆる個々の下位組み合わせを含むことが具体的に意図されている。例えば、「C1~8アルキル」という用語は、メチル、エチル、C3アルキル、C4アルキル、C5アルキル、C6アルキル、C7アルキル、及びC8アルキルを個々に開示するよう具体的に意図されている。本明細書において、「任意選択で置換されたX」(例えば、任意選択で置換されたアルキル)という形態の語句は、「Xであって、Xが任意選択で置換される、X」(例えば、「アルキルであって、当該アルキルが任意選択で置換される、アルキル」)と同等であるよう意図されている。それは、特徴「X」(例えば、アルキル)自体が任意選択であることを意味するようには意図されていない。
【0034】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語及び「アルキ(alk-)」という接頭辞は、直鎖基と分岐鎖基の両方、及び環式基、すなわち、シクロアルキル、並びにそれらの組み合わせを含む。環式基は、単環式又は多環式であることができ、好ましくは、3~6個(境界値も含む)の環炭素原子を有する。例示的な環式基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシル基が挙げられる。C1~8アルキル基は、置換又は非置換とすることができる。例示的な置換基としては、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハライド、ヒドロキシル、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、シアノ、ニトリロ、NH-アシル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、C2~7ヘテロシクリル、四級アミノ、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、及びカルボキシル基が挙げられる。C1~8アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロプロピルエチル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、シクロブチル、シクロブチルメチル、シクロブチルエチル、n-ペンチル、シクロペンチル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルエチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、及びシクロヘキシルが挙げられるが、これに限定されない。
【0035】
「C2~8アルケニル」とは、1つ以上の二重結合を含み、かつ2~8個の炭素原子を有する分岐又は非分岐炭化水素基を指す。C2~8アルケニルは、単環式又は多環式環を含むことができ、これらの環は各々、3~6個の員を有することができる。C2~8アルケニル基は、置換又は非置換とすることができる。例示的な置換基としては、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハライド、ヒドロキシル、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、シアノ、ニトリロ、NH-アシル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、四級アミノ、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、及びカルボキシル基が挙げられる。C2~8アルケニルとしては、ビニル、アリル、2-シクロプロピル-1-エテニル、1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-メチル-1-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、2-エチル-2-プロペニル、1-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、及び2,2-ジメチル-3-ブテニルが挙げられるが、これに限定されない。特定の実施形態では、C2~8アルケニルは、二重結合の周りにシス配置を有する。
【0036】
「C2~7ヘテロシクリル」とは、飽和、部分不飽和、又は不飽和(芳香族)であり、かつ2~7個の炭素原子と、N、O、及びSからなる群から独立して選択される1、2、3、又は4個のヘテロ原子とを含み、上で定義された複素環のうちのいずれかがベンゼン環に縮合しているいずれかの二環式基を含む、安定した5~7員単環式又は7~14員二環式複素環を指す。ヘテロシクリル基は、置換又は非置換とすることができる。例示的な置換基としては、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハライド、ヒドロキシ、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、シアノ、ニトリロ、NH-アシル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、四級アミノ、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、及びカルボキシル基が挙げられる。窒素及び硫黄ヘテロ原子は、酸化されている可能性がある。複素環は、安定した構造をもたらす任意のヘテロ原子又は炭素原子を介して共有結合することができ、例えば、イミダゾリニル環は、環炭素原子位置又は窒素原子のいずれかで連結することができる。ヘテロ環中の窒素原子は、四級化されている可能性がある。例えば、複素環中のS原子及びO原子の総数が1を超える場合、これらのヘテロ原子は互いに隣接していない。複素環としては、1H-インダゾール、2-ピロリドニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、2H-ピロリル、3H-インドリル、4-ピペリドニル、4aH-カルバゾール、4H-キノリジニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、アクリジニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ベンズトリアゾリル、ベンズテトラゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンズイソチアゾリル、ベンズイミダザロニル(benzimidazalonyl)、カルバゾリル、4aH-カルバゾリル、ベータ-カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3-b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルザジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、プテリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、カルボリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1,2,5-トリアゾリル、1,3,4-トリアゾリル、キサンテニルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい5~10員複素環としては、ピリジニル、ピリミジニル、トリアジニル、フラニル、チエニル、チアゾリル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、1H-インダゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、オキシインドリル、ベンゾオキサゾリニル、キノリニル、及びイソキノリニルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい5~6員複素環としては、ピリジニル、ピリミジニル、トリアジニル、フラニル、チエニル、チアゾリル、ピロリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、及びテトラゾリルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
「C6~12アリール」とは、共役π電子を有する炭素原子で構成された環系を有する芳香族基(例えば、フェニル)を指す。アリール基は、6~12個の炭素原子を有する。アリール基は、単環式、二環式、又は三環式環を含むことができ、これらの環は各々、5個又は6個の員を含むことができる。アリール基は、置換又は非置換とすることができる。例示的な置換基としては、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハライド、フルオロアルキル、カルボキシル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、一置換アミノ、二置換アミノ、及び四級アミノ基が挙げられる。
【0038】
「C7~14アルカリール」とは、7~14個の炭素原子を有するアリール基(例えば、ベンジル、フェネチル、又は3,4-ジクロロフェネチル)によって置換されたアルキルを指す。
【0039】
「C3~10アルキヘテロシクリル」とは、1個以上のヘテロ原子に加えて3~10個の炭素原子を有するアルキル置換複素環基(例えば、3-フラニルメチル、2-フラニルメチル、3-テトラヒドロフラニルメチル、又は2-テトラヒドロフラニルメチル)を指す。
【0040】
「C1~8ヘテロアルキル」とは、N、O、S、及びPからなる群から独立して選択される1、2、3、又は4個のヘテロ原子に加えて、1~8個の炭素原子を有する分岐又は非分岐アルキル、アルケニル、又はアルキニル基を指す。ヘテロアルキルとしては、三級アミン、二級アミン、エーテル、チオエーテル、アミド、チオアミド、カルバメート、チオカルバメート、ヒドラゾン、イミン、ホスホジエステル、ホスホロアミデート、スルホンアミド、及びジスルフィドが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアルキルは、単環式、二環式、又は三環式環を含むことができ、これらの環は各々、3~6個の員を含むことができる。ヘテロアルキル基は、置換又は非置換とすることができる。例示的な置換基としては、アルコキシ、アリールオキシ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、ハライド、ヒドロキシル、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、シアノ、ニトリロ、NH-アシル、アミノ、アミノアルキル、二置換アミノ、四級アミノ、C2~7ヘテロシクリル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキル、カルボキシアルキル、及びカルボキシル基が挙げられる。C1~8ヘテロアルキルの例としては、メトキシメチル及びエトキシエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「ハライド」とは、臭素、塩素、ヨウ素、又はフッ素を指す。
【0042】
「フルオロアルキル」とは、1個以上のフッ素原子で置換されたアルキル基を指す。
【0043】
「カルボキシアルキル」とは、式-(R)-COOHを有する化学部分を指し、式中、Rが、C1~8アルキル、C2~7ヘテロシクリル、C6~12アリール、C7~14アルカリール、C3~10アルキヘテロシクリル、又はC1~8ヘテロアルキルから選択される。
【0044】
「ヒドロキシアルキル」とは、式-(R)-OHを有する化学部分を指し、式中、Rが、C1~8アルキル、C2~7ヘテロシクリル、C6~12アリール、C7~14アルカリール、C3~10アルキヘテロシクリル、又はC1~8ヘテロアルキルから選択される。
【0045】
「アルコキシ」とは、式-ORを有する化学部分を指し、式中、Rが、C1~8アルキル、C2~7ヘテロシクリル、C6~12アリール、C7~14アルカリール、C3~10アルキヘテロシクリル、又はC1~8ヘテロアルキルから選択される。
【0046】
「アリールオキシ」とは、式-ORの化学置換基を指し、式中、Rが、C6~12アリール基である。
【0047】
「アルキルチオ」とは、式-SRを有する化学部分を指すことができ、式中、Rが、C1~8アルキル、C2~7ヘテロシクリル、C6~12アリール、C7~14アルカリール、C3~10アルキヘテロシクリル、又はC1~8ヘテロアルキルから選択される。
【0048】
「アリールチオ」とは、式-SRの化学置換基を指し、式中、Rが、C6~12アリール基である。
【0049】
「四級アミノ」とは、式-(R)-N(R’)(R’’)(R’’’)+の化学置換基を指し、式中、R、R’、R’’、及びR’’’が各々独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアリール基である。Rは、置換基として四級アミノ窒素原子を別の部分に連結するアルキル基を含むことができる。窒素原子Nは、アルキル基及び/又はアリール基の4個の炭素原子に共有結合しており、この結果、窒素原子に正電荷がもたらされる。
【0050】
「アシル」とは、式R-C(O)-を有する化学部分を指し、式中、Rが、C1~8アルキル、C2~7ヘテロシクリル、C6~12アリール、C7~14アルカリール、C3~10アルキヘテロシクリル、又はC1~8ヘテロアルキルから選択される。
【0051】
「a」、「an」、「the」などの用語は、単数形実体のみならず、特定の例を例証のために使用することができる一般的なクラスも含むよう意図されている。
【0052】
本明細書で使用される場合、「急性ストレス障害」及び「ASD」という用語は、個体において広範な苦痛を引き起こす可能性の高い非常に脅威となる又は壊滅的な性質のストレスの多い事象又は状況(例えば、自然災害若しくは人工災害、戦闘、重大事故、他人の暴力による死を目撃すること、又は極度の苦悶、テロ行為、性的暴行、若しくは他の犯罪の犠牲者になること)に対する応答として生じる状態を指す。PTSDと同様に、急性ストレス障害は、外傷性事象又はストレス要因に曝された後に極めて特殊な反応を伴う不安障害である。しかしながら、急性ストレス障害の持続期間は、PTSDの期間よりも短く、症状は、少なくとも1、2、又は3日間存在するが、4、5、又は6週間を超えては存在しない。より長期間にわたって持続する症状を呈する個体の場合、PTSDと診断することができる。
【0053】
「投与」又は「投与すること」という用語は、対象に化合物又は医薬組成物の投与量を与える方法を指す。
【0054】
「気分変調」又は「気分変調性障害」とは、少なくとも2年間にわたって、ほとんどの日に、1日の大半にわたって起こる慢性的にうつ状態の気分を指す。小児及び青年では、この慢性的にうつ状態の気分は、うつ状態というよりむしろ過敏である可能性があり、必要な最小持続期間は1年である。2年間(小児又は青年の場合は1年間)の間、いずれの症状のない間隔も2ヶ月以下しか続かない。うつ状態の気分の期間中、以下の追加の症状:食欲不振若しくは過食、不眠若しくは過眠、活力低下若しくは疲労感、自尊心低下、集中力低下、又は意思決定の困難、及び絶望感のうちの少なくとも2つが存在する。これらの症状は、社会的分野、職業的(若しくは学問的)分野、又は他の重要な機能分野において臨床的に有意な苦痛又は障害を引き起こす可能性がある。気分変調の診断は、個体が躁病エピソード、混合エピソード、軽躁病エピソードを以前に有していた場合、気分循環性障害の基準を以前に満たしていた場合、うつ病性症状が、慢性精神病的障害(例えば、統合失調症)の経過中にのみ起こる場合、又は障害が薬物の直接的な生理学的影響若しくは全身病状に起因する場合には下されない。気分変調性障害の最初の2年後、大うつ病性エピソードが気分変調性障害に併発する可能性がある(「二重うつ」)。Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(OSM IV),American Psychiatric Press,4th Edition,I 994。心理学的障害の診断ガイダンスは、例えば、ICD-10(The ICD-10 Classification of Mental and Behavioral Disorders:Diagnostic Criteria for Research,Geneva:World Health Organization,1993)及びDSM-V(American Psychiatric Association.Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fifth Edition(DSM-V)Arlington,VA.;American Psychiatric Association,2013)で見つけることができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「全般性不安障害」という用語は、過度の不安及び心配(すなわち、不安を抱く期待)を特徴とする状態を指す。例えば、過度の不安及び心配は、ある期間(例えば、1ヶ月間、2ヶ月間、3ヶ月間、若しくは4ヶ月間、又はそれ以上)にわたって、ほとんどの日に起こる。不安及び心配は、(i)落ち着きのなさ、興奮感、若しくはイライラ感、及び/又は(ii)筋緊張に関連する可能性がある。不安及び心配は、(a)マイナスの結果が起こり得る状況の顕著な回避、(b)マイナスの結果が起こり得る状況への準備に費やす顕著な時間及び労力、(c)心配に起因した行動若しくは意思決定の顕著な先延ばし、並びに(d)心配に起因した安心感を繰り返し求めることに関連する可能性がある。不安、心配、又は身体的症状は、GADを有する必ずしも全てではない多くの個体において、社会的分野、職業的分野、又は他の重要な機能分野において臨床的に有意な苦痛又は障害を引き起こす可能性がある。
【0056】
本明細書で使用される場合、「強迫性障害」、「OCD」、並びに「不安障害及び強迫性スペクトラム障害」という用語は、強迫観念及び/又は強迫行為を特徴とする状態を指す。強迫観念とは、混乱中のある時点で煩わしくて望ましくないものとして経験され、かつ通常は顕著な不安又は苦痛を引き起こす頻発する固執思考、衝動、又は印象であって、顕著な不安又は苦痛時に、強迫観念に取りつかれた個体が、かかる思考、衝動、若しくは印象を無視若しくは抑圧するか、又はそれらを何らかの他の思考若しくは行為で制圧する(すなわち、衝動強迫を持つことにより)よう試みる、頻発する固執思考、衝動、又は印象である。強迫観念は、人が強迫観念に応答して又は厳格に適用されなければならない規則に従って行うように駆り立てられていると感じる反復性行動(例えば、手洗い、順序確認)又は精神的行為(例えば、祈願、数を数えること、無言で言葉を繰り返すこと)である。これらの行動又は精神的行為は、不安若しくは苦痛の予防若しくは軽減、又は何らかの恐ろしい事象若しくは状況の防止を目的とするが、これらの行動又は精神的行為は、それらが制圧若しくは防止するように設計されているものとは現実的な方法で関連していないか、又は明らかに過度である。典型的には、強迫観念又は衝動強迫は、時間がかかる(例えば、1日1時間以上かかる)か、又は社会的分野、職業的分野、又は他の重要な機能分野において臨床的に有意な苦痛又は障害を引き起こす。
【0057】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的使用に好適な本明細書に記載の化合物の塩を指す。薬学的に許容される塩は、当該技術分野で周知である。例えば、薬学的に許容される塩は、Berge et al.,J.Pharmaceutical Sciences 66:1-19,1977及びPharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,(Eds.P.H.Stahl and C.G.Wermuth),Wiley-VCH,2008に記載されている。これらの塩は、例えば、本化合物の遊離塩基を好適な有機酸若しくは無機酸と反応させることによって、又は本化合物の遊離酸を好適な有機酸若しくは無機塩基と反応させることによって、本明細書に記載の化合物の最終単離及び精製中にインサイツで又は別個に調製することができる。
【0058】
本明細書で使用される場合、「パニック障害」という用語は、再発性の予想外のパニック発作を特徴とする状態を指す。パニック障害には、広場恐怖症を伴うパニック障害及び広場恐怖症を伴わないパニック障害の両方が含まれる。この状態を有する対象は、以下の一方又は両方:(i)更なるパニック発作若しくはそれらから招かれる結果(例えば、自制心を失う、心臓発作を起こす、気が変になる)、及び/又は(ii)広場恐怖症回避を含むことができる、発作に関連する行動の有意な不適応な変化(例えば、パニック発作を起こすことを回避するように設計された行動)を呈する可能性がある。
【0059】
本明細書で使用される場合、「外傷後ストレス障害」及び「PTSD」という用語は、個体において広範な苦痛を引き起こす可能性のある非常に脅威となる又は壊滅的な性質のストレスの多い事象又は状況(例えば、自然災害又は人工災害、戦闘、重大事故、他人の暴力による死を目撃すること、又は極度の苦悶、テロ行為、性的暴行、若しくは他の犯罪の犠牲者になること)に対する遅延型及び/又は持続的応答として生じる状態(短期間続くか長期間続くかのいずれかである)を指す。人格特性(例えば、強迫的、無力的)又は神経症の既往歴などの素因は、状態の発症の閾値を低下させ得るか、又はその経過を悪化させ得るが、それらは、その発症を説明するには必要でも十分でもない。PTSDは、より頻繁に見られる急性ストレス応答よりも頻度が少なく、心理学的外傷のより長く続く結果である。PTSDは、これまでに、鉄道の背骨、ストレス症候群、砲弾ショック、戦闘神経症、外傷性戦争神経症、及び外傷後ストレス症候群として認識されている。診断的症状には、フラッシュバック又は悪夢による原点にある外傷の再体験、外傷に関連する刺激の回避、並びに入眠障害又は安眠障害、怒り、及び過覚醒などの覚醒の増加が含まれる。正式な診断基準(DSM-V、DSM-IV、及び/又はICD-9)は、症状が1ヶ月を超えて続き、かつ社会的分野、職業的分野、若しくは他の重要な機能分野において有意な障害(例えば、職場及び/又は人間関係の問題)を引き起こす症状を必要とする。正式な診断基準は、(i)外傷性事象に関連する侵入症状(例えば、(a)外傷性事象の自発的な若しくは刺激された繰り返し、不随意、及び侵入性の悲惨な記憶、(b)夢の内容及び/若しくは影響がその事象に関連する繰り返しの悲惨な夢、(c)外傷性事象が繰り返されているかのように個体が感じる若しくは行動する解離性反応(例えば、フラッシュバック)(かかる反応は連続して起こる可能性があり、最も極端な表現は、現在の周囲の認識の完全な喪失である、(d)外傷性事象の局面を象徴する若しくはそれに似た内部刺激若しくは外部刺激に曝された際の強い若しくは長期にわたる心理学的苦痛、並びに/又は(e)外傷性事象を思い出させるものに対する顕著な生理学的反応)、(ii)外傷性事象に関連する刺激の持続的な回避(例えば、(a)外傷性事象の想起を喚起する思考、感情、若しくは物理的感覚、(b)外傷性事象の想起を喚起する活動、場所、物理的に思い出させるもの、若しくは時期(例えば、記念日反応)、及び/又は(c)外傷性事象の想起を喚起する人々、会話、若しくは対人的状況)、(iii)外傷的事象に関連する認知及び気分のマイナスの変化(例えば、(a)外傷的事象の重要な局面を記憶することができない(典型的には、解離性健忘)、(b)自身、他人、若しくは世界についての持続的な誇張されたマイナスの期待、(c)外傷性事象の原因若しくは結果についての自身若しくは他人の持続的な歪められた非難、(d)広汎性のマイナスの情動状態(例えば、恐れ、恐怖、怒り、罪悪感、若しくは羞恥心)、(e)有意な活動への関心若しくは参加の顕著な減少、(f)他人からの孤立感若しくは疎外感、及び/又は(g)プラスの感情を経験することが持続的にできない(例えば、愛情を抱く感情を持つことができない、精神的無感覚)、並びに(iv)外傷性事象に関連する覚醒(すなわち、過覚醒)及び反応性の変化(例えば、(a)過敏、怒り、若しくは攻撃的行動、(b)無謀な行動若しくは自己破壊的行動、(c)過覚醒、(d)誇張された驚愕反応、(e)集中力の問題、及び/又は(f)睡眠障害(例えば、入眠障害若しくは安眠障害、又は浅い睡眠))を含むことができる。正式な診断基準は、障害の持続期間がある特定の期間(例えば、1ヶ月間、3ヶ月間、又は6ヶ月間)を超えること、及び障害が社会的分野、職業的分野、又は他の重要な機能分野において有意な苦痛又は障害を引き起こすことを更に含むことができる。わずかな割合の患者において、この状態は、長年にわたる慢性経過及び永続的な人格変化への遷移を示す可能性がある。PTSDに関連する3つの主な症状は、(1)フラッシュバック、悪夢、侵入思考及び想起などの外傷性事象の「軽減」、(2)回避行動及び情動無感覚、並びに(3)睡眠不能、不安感覚、過活動性驚愕反応、覚醒亢進、過覚醒、過敏性、及び怒りの爆発などの過敏症である。
【0060】
本明細書で使用される場合、「心理学的障害」及び「心理学的状態」という用語は、精神機能の根底にある心理学的プロセス、生物学的プロセス、又は発達プロセスにおける機能不全を反映する人の感情的調節又は行動的調節の障害を特徴とする状態をいう。心理学的障害としては、うつ病性障害(大うつ病、治療抵抗性うつ病、メランコリー型うつ病、非定型うつ病、若しくは気分変調)、不安障害(終生不安、全般性不安障害、パニック障害、社会不安、外傷後ストレス障害、急性ストレス障害、強迫性障害、若しくは対人恐怖症)、嗜癖(例えば、薬物乱用(substance abuse)、例えば、アルコール中毒、タバコ乱用、若しくは薬物乱用(drug abuse)))、摂食障害(例えば、神経性食欲不振、神経性過食症、及び過食性障害)、並びに強迫行動障害(例えば、一次衝動調節障害又は強迫性障害)が挙げられるが、これらに限定されない。心理学的障害は、1つ以上の症状、例えば、身体症状(例えば、慢性疼痛、身体的愁訴の重篤度とは不釣り合いな不安、疼痛障害、身体醜形障害、転換(すなわち、不安に起因した身体機能の喪失)、ヒステリー、若しくは原因特定不能な神経学的状態)、又は心身医学的症状(例えば、背痛、線維筋痛症、片頭痛、及び慢性疲労症候群)に関連するいずれかの心理学的状態とすることができる。心理学的障害には、チック障害(例えば、トゥレット症候群、抜毛症、爪を噛む、顎関節障害、親指を吸う、反復性口腔-指(oral-digital)、唇を噛む、指爪を噛む、眼をこする、皮膚をつまむ、又は慢性運動チック障害)などの反復性身体集中行動も含まれる。いくつかの事例では、心理学的障害の発症は、うつ状態の気分、食欲減退、体重減少、食欲増加、体重増加、初期不眠症、中期不眠症、早期覚醒、過眠症、活力低下、興味若しくは快楽の低下、自己非難、集中力低下、優柔不断、自殺傾向、精神運動激越、精神運動遅延、泣く頻度が増える、泣くことができない、絶望感、心配/陰気、自尊心低下、過敏、依存、自己憐憫、身体的愁訴、有効性低下、無力感、及び自発的応答の開始の低下などの前駆症状に関連するか、又はそれを特徴とする。
【0061】
本明細書で使用される場合、「対人恐怖」及び「社会不安障害」という用語は、1つ以上の社会的状況に関連する恐怖又は不安を特徴とする状態を指す。この状態を有する対象は、典型的には、その対象が他人による可能な精査に曝される1つ以上の社会的状況についての顕著な恐怖又は不安を呈する。例としては、社会的交流(例えば、会話をする)、観察されること(例えば、飲食する)、又は他人の前でのパフォーマンス(例えば、発話する)が挙げられる。例えば、この状態を有する個体は、(i)彼若しくは彼女がある方法で行動するか、又は否定的に評価される不安症状を示す(すなわち、恥をかかせて当惑させることにより、拒絶につながる、若しくは他人を怒らせる)ことを恐れる、(ii)これらの社会的状況がほぼ例外なく即時の恐怖又は不安を引き起こす、(iii)これらの社会的状況が回避されるか、又は強い恐怖若しくは不安を持って耐えられる、及び(iv)恐怖又は不安がこれらの社会的状況によってもたらされる危険に比例しない。小児では、恐怖又は不安は、泣くこと、かんしゃく、凍りつくこと、依存心、縮まること、又は社会的状況で発話することを拒絶することによって表現され得る。恐怖、不安、及び回避は、社会的分野、職業的分野、又は他の重要な機能分野において臨床的に有意な苦痛又は障害を引き起こす可能性がある。
【0062】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、対象において所望の効果を誘導する際に、又は本明細書に記載の状態若しくは障害(例えば、炎症性障害)を有する対象を治療する際に有効な量、例えば、医薬用量を指す。本明細書において、「治療有効量」が、1回以上の用量で若しくは任意の投薬量若しくは経路で摂取される、及び/又は単独で若しくは他の治療薬と組み合わせて摂取される、所望の治療的及び/又は予防的効果をもたらす量として解釈することができることも理解されたい。例えば、障害又は状態の治療のために使用される本明細書に記載の組成物を投与する状況において、化合物の有効量は、例えば、化合物の投与なしで得られた応答と比較した場合の、障害又は状態の進行を予防、減速、又は逆転させるために十分な量である。
【0063】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」という用語は、治療目的のための化合物又は医薬組成物の投与を指す。「障害を治療する」こと又は「治療的治療」のために使用することとは、疾患に既に罹患している患者に治療を施して、疾患又はその1つ以上の症状を改善し、患者の状態を改善すること(例えば、炎症、うつ病、不安、アルツハイマー病などの5-HT2応答性状態の1つ以上の症状を軽減することによって)を指す。「治療的」という用語は、特定の炎症過程の有害な臨床効果(すなわち、炎症の症状ではなく、炎症の結果)を軽減する効果を含む。本発明の方法は、一次予防手段として、すなわち、状態を予防するために、又は状態を発症するリスクを低減するために使用することができる。予防とは、状態又は障害を完全には発症していない可能性があるが、その状態に罹りやすいか、又はそうでなければその状態のリスクがある患者の予防的処置を指す。したがって、特許請求の範囲及び実施形態において、本発明の方法は、治療目的又は予防目的のいずれかのために使用することができる。
【0064】
「単極性うつ病」又は「大うつ病性障害」とは、躁病エピソード、混合エピソード、又は軽躁病エピソードの既往歴のない個体における1つ以上の大うつ病性エピソードを特徴とする臨床経過を指す。単極性うつ病の診断は、躁病エピソード、混合エピソード、若しくは軽躁病エピソードがうつ病経過中に発症した場合、うつ病が薬物の直接的な生理学的影響に起因する場合、うつ病が全身病状の直接的な生理学的影響に起因する場合、うつ状態が死別若しくは他の重大な喪失(「反応性うつ病」)に起因する場合、又はこれらのエピソードが統合失調感情障害によってより良好に説明され、統合失調症、統合失調症様障害、妄想性障害、若しくは精神病性障害に併発する場合には下されない。躁病エピソード、混合エピソード、又は軽躁病エピソードが発症した場合、診断は、双極性障害に変更される。うつ病は、慢性全身病状(例えば、糖尿病、心筋梗塞、癌腫、及び脳卒中)に関連する可能性がある。例えば、単極性うつ病は、気分変調よりも重篤である可能性がある。大うつ病性エピソードの本質的な特徴は、少なくとも2つの15週間の期間であり、その間、ほぼ全ての活動においてうつ状態の気分又は興味若しくは快楽の喪失のいずれかが存在する。小児及び青年では、気分は、悲しいというよりむしろ過敏である可能性がある。大うつ病性エピソードは、単一のエピソードとすることができ、再発性とすることもできる。個体は、食欲又は体重、睡眠、及び精神運動活動の変化;気力低下;憧倦怠感若しくは罪悪感;思考困難、集中困難、若しくは決断困難;又は死若しくは自殺念慮の繰り返しの思考、計画、若しくは試みを含むリストから選ばれた少なくとも4つの追加の症状も経験する。各症状は、新たに存在するか、又はその個体のエピソード前の状態と比較して明らかに悪化していなければならない。症状は、1日の大半、ほぼ毎日、少なくとも2週間連続して持続しなければならず、エピソードは、社会的分野、職業的(又は学問的)分野、又は他の重要な機能分野における臨床的に有意な苦痛又は障害を伴わなければならない(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(OSM IV),American Psychiatric Press,4th Edition,1994)。心理学的障害の診断ガイダンスは、例えば、ICD-10(The ICD-10 Classification of Mental and Behavioral Disorders:Diagnostic Criteria for Research,Geneva:World Health Organization,1993)及びDSM-V(American Psychiatric Association.Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,Fifth Edition(DSM-V)Arlington,VA.;American Psychiatric Association,2013)で見つけることができる。
【0065】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、実施例、及び特許請求の範囲から明らかであろう。
【0066】
発明の詳細な説明
本発明の態様は、5-HT2応答性状態を治療する化合物及び方法を対象とする。本発明は、式(I)及び式(II)の化合物を含む。本化合物は、5-HT2応答性状態(例えば、炎症、疼痛、うつ病、不安、PTSD、及びアルツハイマー病)の治療に有用であり得る。本化合物は、(インシリコモデリングにより)5-HT2Aのオルソステリック結合ポケット内のある特定のアミノ酸残基に結合するように設計されたものである。本発明の化合物は、他の5-HT2Aリガンドと比較して、天然5-HT2A受容体における抗炎症効果に対して改善された効力及び/又は有効性を有し得る。
【0067】
1つ以上の実施形態の詳細な説明が本明細書に提供される。しかしながら、本発明を様々な形態で具現化することができることを理解されたい。したがって、本明細書に開示される特定の詳細は、限定として解釈されるべきではなく、特許請求の範囲の根拠として、及び当業者に本発明を任意の適切な方法で用いるように教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0068】
5-HT2受容体
セロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5-HT)は、気分、情動行動、及び睡眠に関与すると思われるアミノ酸であるトリプトファンに由来する神経伝達物質である(Bear,Connors,and Paradiso,Neuroscience Exploring the Brain,Wolter Kluwer,2016)。セロトニンは最初に特定され、末梢組織から単離されたが、精神医学的障害におけるその潜在的な関与が研究の対象となっている(Squire,L.R.,Bloom,F.E.,Spitzer,N.C.,de Luc,S.,Gosh,A.,Berg,D.,(Eds.),Fundamentals of Neuroscience,Third Edition,Elsevier,2008)。5-HTの効果は、13個のGタンパク質共役受容体及び1個のリガンド開口型イオンチャネルからなる14個の異なるサブタイプで構成された受容体タンパク質(5-HT受容体)の7つの異なるファミリーにおける相互作用を介して媒介される。例えば、5-HT1A、5-HT1B、5-HT1D、5-HT1E、5-HT2A、5-HT2B、5-HT4、及び5-HT5Aは、5-HTに対するGタンパク共役神経伝達物質受容体であり(Bear et al.2016)、ヒトにおいてサイケデリック効果を誘発することが特定されている。
【0069】
本発明の態様は、5-HT2Aのオルソステリック結合ポケット内のある特定のアミノ酸残基に結合(engage)して、対象において抗炎症効果及び/又は抗ROS効果を誘発することができる化合物を対象とする。本明細書で使用される場合、「結合する(engage)」という用語は、分子間の会合、相互作用、及び/又は結合をもたらす分子間の非共有結合性相互作用を指すことができる。例えば、非共有結合性相互作用は、水素結合、イオン力、及びファンデルワールス力を含む。例えば、本化合物は、膜貫通ヘリックスのある特定の残基に結合する。例えば、この化合物は、膜貫通ヘリックス6(TM6)中の特定のアミノ酸残基に結合する。例えば、本化合物は、TM6上のアスパラギン残基に結合する。例えば、本化合物は、TM6の343位のアミノ酸残基に結合する。例えば、本化合物は、水素結合を介してTM6の343位に結合する。
【0070】
本明細書で使用される場合、h5-HT2Aは、5-HT2Aと互換的に使用することができる。本明細書で使用される場合、h5-HT2Aは、ヒト5-HT2Aを指すことができる。
【0071】
化合物
本発明の態様は、5-HT2Aのある特定のアミノ酸残基に結合する化合物を対象とする。複数の実施形態では、本発明の化合物は、5-HT2AにおけるTM6のアスパラギン343(N343)に直接結合することができる。例えば、本発明の化合物は、5-HT2A中のTM6のN343に結合するために中間化合物(例えば、構造水)を必要としない。例えば、本発明の化合物は、5-HT2AのTM6のN343に直接水素結合することができる。
【0072】
理論に束縛されることを望むものではないが、2-メトキシエチルを含む化合物は、5-HT2A中のTM6のN343に直接結合することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、2-メトキシエチル基を含む化合物及び/又は含むように修飾された化合物(DOx化合物及び2Cx化合物を含むが、これらに限定されない)は、5-HT2AのTM6のN343に直接結合することができる。複数の実施形態では、本発明の化合物は、5-メトキシエチル基を含むことができる。複数の実施形態では、5-メトキシエチル基は、5-HT2AのTM6のN343に直接結合することができる。例えば、5-メトキシエチル基を有するDox/2Cx化合物は、5-HT2AのN343に直接結合することができる。複数の実施形態では、本発明の化合物は、5-メトキシ基を含むことができる。複数の実施形態では、5-メトキシ基は、5-HT2AのTM6のN343に直接結合することができる。例えば、5-メトキシ基を有するDOx/2Cx化合物は、5-HT2AのN343に直接結合することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、5-メトキシは、5-(2-ヒドロキシエチル)によって置き換えることができる。理論に束縛されることを望むものではないが、5-メトキシを5-(2-ヒドロキシエチル)で置き換えることにより、血液脳関門透過を減少させることができる。理論に束縛されることを望むものではないが、血液脳関門透過を減少させることにより、行動障害を軽減することができる。
【0073】
理論に束縛されることを望むものではないが、4-ヒドロキシを含む化合物及び/又は含むように修飾された化合物(トリプタミンを含むが、これに限定されない)は、5-HT2AのTM6のN343に直接結合することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、化合物(例えば、トリプタミン化合物)上の4-ヒドロキシ基を4-(2-ヒドロキシエチル)又は4-(2-メトキシエチル)で置き換えることにより、5-HT1A受容体よりも5-HT2受容体に対して改善された選択性を提供することができる。
【0074】
本発明は、式(I)及び(II)の化合物:
【0075】
【化6】
又はそれらの薬学的に許容される塩を特徴とする。
【0076】
式(I)の化合物は、スキーム1(以下)に記載の方法と類似の方法を使用して合成することができる。
【0077】
【0078】
式(II)の化合物は、スキーム2(以下)に記載の方法と類似の方法を使用して合成することができる。
【0079】
【0080】
理論に束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載の化合物は、治療標的に対する所望の選択性をもたらすように四級化することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載の化合物は、それらを末梢に制限するために四級化することができる。例えば、末梢制限とは、血液脳関門透過のレベルを低下させることを指すことができる。例えば、血液脳関門透過のレベルを低下させることにより、対象の行動に対する影響を軽減することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、本明細書に記載の化合物は、治療受容体に対するそれらの選択性を増加させるように四級化することができる。例えば、本明細書に記載の化合物は、5-HT1Aよりも5-HT2Aに対してそれらの選択性を増加させるように四級化することができる。
【0081】
医薬組成物
前述の化合物のうちのいずれかの医薬組成物は、非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に本化合物を含む経口使用のための錠剤を含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤又は充填剤(例えば、スクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶セルロース、ジャガイモデンプンを含むデンプン、塩化ナトリウム、又はラクトース)、造粒剤及び崩壊剤(例えば、微結晶セルロースを含むセルロース誘導体、ジャガイモデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、又はアルギン酸)、結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はポリエチレングリコール)、並びに滑沢剤、流動促進剤、及び粘着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油、又はタルク)とすることができる。他の薬学的に許容される賦形剤は、着色剤、香味剤、可塑剤、保湿剤、緩衝剤などであり得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%純粋である。いくつかの実施形態において、賦形剤は、ヒトでの使用及び獣医学的な使用が承認されている。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は医薬品グレードである。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方の基準を満たす。
【0083】
いくつかの実施形態では、本医薬組成物は、例えば、ネブライザーによる肺投与に好適な製剤で調製、包装、及び/又は販売される。かかる製剤は、活性成分を含み、かつ約0.5nm~約7nm又は約1nm~約6nmの範囲の粒径を有する乾燥粒子を含むことができる。かかる組成物は、好都合なことに、粉末を分散させるために推進剤の流れを指向することができる乾燥粉末貯蔵器を含むデバイスを使用する投与、並びに/又は密閉容器内の低沸点推進剤中に溶解及び/若しくは懸濁した活性成分を含むデバイスなどの自己推進溶媒/粉末分注容器を使用する投与のための乾燥粉末の形態である。そのような粉末は、重量で粒子の少なくとも98%が0.5nmより大きい直径を有し、数で粒子の少なくとも95%が7nm未満の直径を有する粒子を含む。あるいは、重量で粒子の少なくとも95%が1nmよりも大きい直径を有し、数で粒子の少なくとも90%が6nm未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、糖などの固体微粉末希釈剤を含むことができ、好都合なことに、単位剤形で提供される。
【0084】
低沸点推進剤には、一般に、大気圧で65°F未満の沸点を有する液体推進剤が含まれる。概して、推進剤は、本組成物の50w/w%~99.9w/w%を構成することができ、活性成分は、本組成物の0.1w/w%~20w/w%を構成することができる。推進剤は、液体非イオン性及び/若しくは固体アニオン性界面活性剤並びに/又は固体希釈剤(活性成分を含む粒子と同じ桁数の粒径を有することができる)などの追加の成分を更に含むことができる。
【0085】
肺送達用に製剤化された医薬組成物は、溶液及び/又は懸濁液の液滴の形態で活性成分を提供することができる。かかる製剤は、活性成分を含む、任意選択で滅菌の、水性及び/若しくは希薄アルコール溶液並びに/又は懸濁液として調製、包装、及び/又は販売することができ、好都合なことに、任意の噴霧及び/又は微粒化デバイスを使用して投与することができる。かかる製剤は、サッカリンナトリウムなどの香味剤、揮発性油、緩衝剤、界面活性剤、及び/又はヒドロキシ安息香酸メチルなどの保存料を含むが、これらに限定されない1つ以上の追加の成分を更に含むことができる。この投与経路によって提供される液滴は、約0.1nm~約200nmの範囲の平均直径を有することができる。
【0086】
肺送達に有用であるとして本明細書に記載されている製剤は、医薬組成物の鼻腔内送達のために有用である。鼻腔内投与に好適な別の製剤は、活性成分を含み、かつ約0.2pm~500pmの平均粒径を有する粗粉末である。かかる製剤は、鼻から吸い込む様式で、すなわち、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻腔を通して急速に吸入することによって投与される。
【0087】
経鼻投与に好適な製剤は、例えば、約0.1w/w%~最大100w/w%の活性成分を含むことができ、本明細書に記載の追加の成分のうちの1つ以上を含むことができる。医薬組成物は、肺投与に好適な製剤で調製、包装、及び/又は販売することができる。あるいは、頬側投与に好適な製剤は、活性成分を含む粉末並びに/又はエアロゾル化及び/若しくは微粒化溶液及び/若しくは懸濁液を含むことができる。かかる粉末化、エアロゾル化、及び/又はエアロゾル化製剤は、分散された場合、約0.1nm~約200nmの範囲の平均粒子及び/又は液滴サイズを有することができ、本明細書に記載のいずれかの追加成分のうちの1つ以上を更に含むことができる。
【0088】
医薬組成物は、従来の方法を使用して作製された錠剤及び/又はトローチの形態でとすることができ、0.1w/w%~20w/w%の活性成分を含むことができ、残りは、経口溶解性及び/又は分解性組成物と、任意選択で、本明細書に記載の追加の成分のうちの1つ以上とを含むことができる。錠剤は、コーティングされていなくてもよいか、又は既知の技法によってコーティングされて、任意選択で、胃腸管での崩壊及び吸収を遅延させ、それにより、長期間にわたって持続した作用を提供することができる。例えば、コーティングは、(例えば、制御放出製剤を達成するために)所定のパターンで本化合物を放出するように適合させることができるか、又は胃を通過するまで本化合物を放出しないように適合させることができる。コーティングは、糖コーティング、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、ポリエチレングリコール、及び/若しくはポリビニルピロリドン系)、又は腸溶コーティング(例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、シェラック、及び/若しくはエチルセルロース系)であり得る。加えて又はあるいは、例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を錠剤に組み込むことができる。
【0089】
固体錠剤組成物は、望ましくない化学変化(例えば、本化合物の放出前の化学的分解)から化合物を保護するように適合されたコーティングを含むことができる。コーティングは、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology(eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New York)に記載の様式と同様の様式で固体剤形上に適用することができる。
【0090】
経口使用のための医薬組成物は、チュアブル錠剤として、又は本化合物が不活性固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、若しくはカオリン)と混合される硬質ゼラチンカプセル剤として、又は本化合物が水又は油媒体、例えば、ピーナッツ油、液体パラフィン、又はオリーブ油と混合される軟質ゼラチンカプセル剤として提示することもできる。粉末及び顆粒は、例えば、ミキサー、流動床装置、又は噴霧乾燥装置を使用する従来の方法で、錠剤及びカプセル剤について上述の成分を使用して調製することができる。
【0091】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した粉末、分散性粉末、又は顆粒は、化合物の経口投与のための便利な剤形である。懸濁液としての製剤は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤、及び1つ以上の保存料との混合物中の化合物を提供する。好適な分散剤又は湿潤剤は、例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン、又はエチレンオキシドと脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、若しくは脂肪酸に由来する部分エステルとの縮合生成物)及びヘキシトール又はヘキシトール無水物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど)である。適切な懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどである。
【0092】
本医薬組成物は、従来の非毒性の薬学的に許容される担体及びアジュバントを含む剤形で、それを含む製剤で、又はそれを含む好適な送達デバイス若しくはインプラントを介して、注射、注入、又は埋め込み(静脈内、筋肉内、皮下など)によって非経口的に投与することもできる。そのような組成物の製剤化及び調製は、医薬製剤の当業者には周知である。製剤は、Hayes(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,volume I and volume II.Twenty-second edition.Philadelphia,2012)で見つけることができる。
【0093】
非経口使用のため(例えば、静脈内投与用)の組成物は、単位剤形(例えば、単回投与アンプル)で、又は数回用量を含み、かつ好適な防腐剤を添加することができるバイアルで提供することができる(以下を参照されたい)。本組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、注入デバイス、又は埋め込み用の送達デバイスの形態とすることができるか、又は使用前に水又は他の好適なビヒクルで再構成される乾燥粉末として提示することができる。化合物(例えば、式(I)の構造を有する化合物)とは別に、本組成物は、好適な非経口的に許容される担体及び/又は賦形剤を含むことができる。本化合物は、制御放出のためにミクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに組み込むことができる。更に、本組成物は、懸濁剤、可溶化剤、安定剤、pH調整剤、及び/又は分散剤を含むことができる。
【0094】
本明細書に指示されるように、本発明による医薬組成物は、滅菌注射に好適な形態とすることができる。そのような組成物を調製するために、化合物は、非経口的に許容される液体ビヒクルに溶解又は懸濁される。用いることができる許容されるビヒクル及び溶媒の中には、水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウム、又は好適な緩衝液の添加により好適なpHに調整された水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液、及び等張塩化ナトリウム溶液がある。水性製剤は、1つ以上の防腐剤(例えば、メチル、エチル、又はn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエート)を含むこともできる。本化合物のうちの1つが水にやや溶けにくい又はわずかにしか溶けない場合、溶解促進剤又は可溶化剤を添加することができるか、又は溶媒は、10~60w/w%のプロピレングリコールなどを含むことができる。
【0095】
方法
対象における5-HT2応答性状態を治療するために本明細書に記載の化合物又は医薬組成物を使用する方法が本明細書に提供される。5-HT2応答性状態を治療する方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の化合物又は医薬組成物を投与することを含む。
【0096】
治療効果のために必要とされる化合物又は組成物の正確な量は、対象の種、年齢、体重、及び全身状態、疾患の重症度、特定の組成物、その投与様式、その活動モードなどに応じて、対象毎に異なり得る。本開示に従う医薬組成物は、典型的には、投与の容易さ及び投与量の均一性のために投与単位形態で製剤化される。しかし、本開示の組成物の毎日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解される。任意の特定の対象の具体的な治療有効レベルは、治療される特定の炎症性障害及びその重症度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物;対象の年齢、体重、全身健康状態、性別、及び食生活;用いられる特定の化合物の投与時間、投与経路、及び排出速度;治療の持続期間;用いられる特定の化合物と組み合わせて又はそれと同時に使用される薬物;並びに医学分野で周知の同様の要因を含む様々な要因に依存する。
【0097】
本明細書に記載の組成物は、対象、例えば、ヒト患者、あるいは家畜動物、ネコ、イヌ、マウス、又はラットなどの他の哺乳動物に投与することができる。
【0098】
本明細書に記載の組成物は、任意の経路で投与することができる。いくつかの実施形態では、本化合物又はその医薬組成物は、鼻腔、頬側、経口を含む様々な経路のうちの1つ以上によって、吸入によって(例えば、経口スプレー、鼻腔スプレー、若しくはエアロゾルとして)、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内、直腸、膣内、腹腔内、局所(例えば、散剤、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、及び/若しくは滴剤による)、粘膜、腸、硝子体、腫瘍内、舌下、気管内点滴注入により、気管支点滴注入により、並びに/又は門脈カテーテルを介して投与される。いくつかの実施形態において、この組成物は、全身静脈内注射によって投与される。特定の実施形態において、組成物は、静脈内及び/又は経口的に投与される。
【0099】
本発明の化合物は、治療有効量(例えば、炎症を軽減するのに十分な用量と精神活性効果を誘発する用量との間の治療ウィンドウ(約10倍差)内で、例えば、所望の治療効果をもたらす量)で投与することができる。いくつかの実施形態では、本化合物は、例えば、ヒト対象において、200ng/mL未満(例えば、0.5~200ng/mL、例えば、1~150ng/mL、0.5~100ng/mL、又は10~50ng/mL、例えば、0.5~1ng/mL、1~2ng/mL、2~3ng/mL、3~4ng/mL、4~5ng/mL、5~10ng/mL、10~50ng/mL、50~100ng/mL、100~150ng/mL、又は150~200ng/mL、例えば、約0.5ng/mL、1ng/mL、2ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、20ng/mL、25ng/mL、50ng/mL、75ng/mL、100ng/mL、120ng/mL、150ng/mL、又は200ng/mL)の循環血漿薬物レベルで投与される。いくつかの実施形態では、本化合物の循環血漿薬物レベルは、検出限界未満(例えば、0.1ng/mL以下)である。いくつかの実施形態では、本化合物の治療有効量は、約2000μg/kg体重未満(例えば、1000μg/kg体重未満、500μg/kg体重未満、100μg/kg体重未満、又は50μg/kg体重未満、例えば、100~2000μg/kg体重、例えば、100~500μg/kg、500~1000μg/kg、1000~1500μg/kg、又は1500~1000μg/kg、例えば、約500μg/kg、約1000μg/kg、約1500μg/kg、又は約2000μg/kg)とすることができる。
【0100】
ある特定の実施形態では、本開示に従う組成物は、所望の治療効果を得るために、約0.0001μg/kg~約1mg/kg、約0.01μg/kg~約500μg/kg、約0.1μg/kg~約400μg/kg、約0.5μg/kg~約30μg/kg、約0.01μg/kg~約10mg/kg、約0.1μg/kg~約10μg/kg、又は約1μg/kg~約25μg/kg対象の体重/日を送達するのに十分な投薬量レベルで1日1回以上、投与することができる。所望の投薬量は、1日3回、1日2回、1日1回、1日毎、3日毎、毎週、2週間毎、3週間毎、又は4週間毎に送達することができる。いくつかの実施形態では、本化合物は、週1~3回(例えば、週1回、週2回、週3回、週4回、週5回、週6回、週7回、又はそれ以上、例えば、1日1回、1日2回、1日3回など)の頻度で投与される。いくつかの実施形態では、本化合物は、間欠的に、例えば、1日毎、1週間毎、月1回などで投与される。ある特定の実施形態では、所望の投薬量は、複数回投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、又はそれ以上の投与)を使用して送達することができる。
【0101】
本明細書に記載の組成物は、1つ以上の他の治療薬、予防薬、診断薬、又は造影剤と組み合わせて使用することができる。「と組み合わせて」とは、これらの送達方法が本開示の範囲内であるが、薬剤が同時に投与され、及び/又は一緒に送達されるように製剤化されなければならないことを意図するものではない。医薬組成物は、1つ以上の他の所望の治療又は医療手順と同時に、その前に、又はその後に投与することができる。一般に、各薬剤は、その薬剤について決定された用量及び/又はタイムスケジュールで投与される。いくつかの実施形態において、本開示は、それらの生物学的利用能を改善し、それらの代謝を低減及び/若しくは改変し、それらの排泄を阻害し、並びに/又はそれらの体内でのそれらの分布を改変する薬剤と組み合わせた医薬組成物、予防組成物、診断組成物、又は画像化組成物の送達を包含する。
【0102】
組み合わせて利用される化合物又は組成物を単一の組成物で一緒に投与することができるか、又は異なる組成物で別個に投与することができることが更に理解される。一般に、組み合わせて利用される薬剤は、それらが個別に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが期待される。いくつかの実施形態では、組み合わせて利用されるレベルは、個別に利用されるレベルよりも低い。
【0103】
「対象」又は「患者」という用語は、本発明の態様を、例えば、実験、診断、予防、及び/又は治療目的のために投与することができる任意の生物を指す。本開示の化合物を投与することができる典型的な対象は、動物、具体的には、霊長類などの哺乳動物、特にヒトである。獣医学的用途では、多種多様な対象、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタなどの家畜;ニワトリ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウなどの家禽;並びに飼い慣らされた動物、特にイヌ及びネコなどのペットが好適である。診断又は研究用途では、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、及び近交系ブタなどのブタなどを含む、多種多様な哺乳動物が好適な対象である。「生体対象」という用語は、上記の対象又は生きている別の生物を指す。「生体対象」という用語は、生体対象から切除された一部(例えば、肝臓又は他の臓器)のみならず、対象又は生物全体も指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、「それを必要とする」対象とは、治療される障害若しくは疾患を有するか、又は疾患若しくは障害に罹りやすいか、又はさもなければ疾患若しくは障害を発症するリスクのある対象を指す。
【0105】
化合物をスクリーニングする方法
抗炎症活性及び/又は抗ROS活性について化合物を試験及び/又はスクリーニングするための方法が本明細書に提供される。理論に束縛されることを望むものではないが、N343の変異は、抗炎症活性及び/又は抗ROS活性について化合物を試験及び/又はスクリーニングするために生成することができる。例えば、この変異は、N343からA343への受容体変異(N343A)を含む。このN343A変異受容体を使用して、抗炎症活性について化合物をスクリーニングすることができる。複数の実施形態では、N343A変異体をペルオキシダーゼ近接標識アッセイに組み込んで、抗炎症活性及び/又は抗ROS活性に関連するエフェクターを特定することができる。例えば、この受容体変異体は、インビトロTNF-アルファ投与アッセイで使用することができる。複数の実施形態では、この変異受容体は、酸化ストレス応答を試験するインビトロアッセイで使用することができる。これらの事例の各々において、理論に束縛されることを望むものではないが、天然受容体が完全な抗炎症活性を付与し、変異体が、それぞれ、フェネチルアミン及びトリプタミンの5位又は4位の性質に応じて、ある特定の分子の抗炎症活性を低下させる。
【0106】
心理学的状態
特定の実施形態では、治療される5-HT2応答性状態は、心理学的状態である。心理学的状態を治療する方法が本明細書に開示される。心理学的状態は、本明細書に記載のいずれかの心理学的状態とすることができる。いくつかの実施形態では、心理学的状態は、うつ病、不安、嗜癖、外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder、PTSD)、摂食障害、又は強迫行動を含む。いくつかの実施形態では、心理学的状態は、うつ病とすることができる。心理学的状態は、不安とすることもできる。不安は、緩和ケアを受けている対象又はホスピスプログラムに登録されている対象によって経験され得る。ある特定の実施形態では、不安を経験している対象は、過覚醒、疲労、レーシング思考、過敏、過度の心配、及び/又は恐怖などの症状を有する。
【0107】
心理学的状態を有する対象は、臨床医、医師、又は療法士によって診断され得る。医師、臨床医、又は療法士が身体検査に基づいて対象の症状を評価することによって、対象を心理学的状態と診断することができる。例えば、うつ病の診断の際に、血液検査を使用して、ホルモン、カルシウム、ビタミンD、電解質、及び鉄などのある特定のバイオマーカーの血中濃度レベルを評価することができる。加えて又はあるいは、うつ病の可能性のある状態を有する患者の場合、医師、臨床医、又は療法士がうつ病スクリーニング検査を行い、うつ病の診断を助けることができる。うつ病スクリーニング検査は、患者健康質問表-9(Patient Health Questionnaire-9、PHQ-9)、ベックうつ病インベントリ(Beck Depression Inventory、BDI)、ツァング自己評価式うつ病尺度、疫学研究用うつ病尺度(Epidemiological Studies Depression Scale、CES-D)、うつ病用ハミルトン評価尺度(Hamilton Rating Scale for Depression、HRSD)、又はモンゴメリ・アスバーグうつ病評価尺度(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale、MADRS-C)とすることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、心身医学的疼痛状態を治療することができる。いくつかの実施形態では、心身医学的疼痛状態は、線維筋痛症、慢性疲労、片頭痛、又は背痛とすることができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、患者は、式(I)の化合物でうつ病の治療を受けている。患者は、うつ病スクリーニング検査を使用してそれらのうつ病の症状を評価してもらうことができる。うつ病の症状は、臨床全般印象(Clinical Global Impression、CGI)評価を使用して臨床医によって評価され得る。うつ病スクリーニング検査は、患者健康質問表-9(PHQ-9)、ベックうつ病インベントリ(BDI)、ツァング自己評価式うつ病尺度、疫学研究用うつ病尺度(CES-D)、うつ病用ハミルトン評価尺度(HRSD)、及び/又はモンゴメリ・アスバーグうつ病評価尺度(MADRS)とすることができる。式(I)の化合物でうつ病の治療を受けている患者は、モンゴメリ-アスバーグうつ病評価尺度(MADRS-C)を使用してうつ病の症状を評価してもらうことができる。いくつかの実施形態では、患者は、臨床医、医師、又は第三者評価者によってMADRS-Cを使用して評価される。ある特定の実施形態では、患者は、MADRSを使用して自己評価することができる。MADRS-Cを使用して得られた患者のスコアは、治療前のスコアと比較して減少している可能性がある。患者のスコアは、治療前のスコアと比較して少なくとも50%減少している可能性がある。MADRS-Cを使用して得られた患者のスコアは、10未満とすることができる。いくつかの実施形態では、MADRS-Cを使用した患者のスコアの減少は、治療後1週間にわたって減少する。ある特定の実施形態では、MADRS-Cを使用した患者のスコアの減少は、治療後4週間にわたって減少する。特定の実施形態では、MADRS-Cを使用した患者のスコアは、治療後4週間超にわたって減少する。
【0109】
ある特定の実施形態では、患者は、式(I)の化合物で不安の治療を受けている。患者は、不安スクリーニング検査を使用して不安の症状を評価してもらうことができる。不安スクリーニング検査は、ツァング自己評価式不安尺度、ハミルトン不安尺度、ベック不安インベントリ、社会恐怖インベントリ、ペンステート心配質問票、エール・ブラウン強迫尺度、又は全般性不安障害-7とすることができる。いくつかの実施形態では、これらのスクリーニング検査のうちのいずれか1つを使用した患者の不安スコアは、治療を受ける前の患者のスコアと比較して減少する。ある特定の実施形態では、上記のスクリーニング検査のうちのいずれか1つを使用した患者の不安スコアは、治療を受ける前の患者のスコアと比較して50%減少する。複数の実施形態では、患者は、治療を受ける前と比較して、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersによって記載されるより少ない不安基準を満たす。
【0110】
一実施形態では、本発明の方法は、心理学的状態に関連する症状を治療するために必要に応じて式(I)の化合物を投与することによって、心理学的状態、例えば、うつ病、不安、PTSD、摂食障害、及び強迫行動を治療するために使用される。複数の実施形態では、本発明の方法は、心理学的状態の治療を必要とする対象に本明細書に記載の化合物のうちの少なくとも1つを投与することによって心理学的状態を治療するために使用される。
【0111】
神経学的損傷
特定の実施形態では、治療される5-HT2応答性状態は、神経学的損傷である。神経学的損傷を治療する方法も本明細書に開示される。神経学的損傷は、任意の神経学的損傷とすることができる。いくつかの実施形態では、神経学的損傷は、脳卒中、外傷性脳損傷、又は脊髄損傷である。本明細書に記載の神経学的損傷を治療する方法は、急性炎症を軽減することができる。ある特定の実施形態では、海馬活動亢進が軽減される。また、神経学的損傷を治療するための本明細書に記載の方法は、行動療法、理学療法、又は言語療法と組み合わせて投与することができる。
【0112】
特定の実施形態では、本発明の方法は、疼痛、炎症、及び/又は神経学的損傷に関連する他の症状に必要に応じて式(I)の化合物を投与することによって、神経学的損傷、例えば、脳卒中、外傷性脳損傷、及び脊髄損傷を治療するために使用される。複数の実施形態では、本発明の方法は、神経学的損傷の治療を必要とする対象に本明細書に記載の化合物のうちの少なくとも1つを投与することによって神経学的損傷を治療するために使用される。
【0113】
変性疾患
複数の実施形態では、治療される5-HT2応答性状態は、変性疾患である。変性疾患を治療する方法も本明細書で論じられる。変性疾患は、任意の変性疾患とすることができる。いくつかの実施形態では、変性疾患は、糖尿病性網膜症、黄斑変性、及びアルツハイマー病を含む。
【0114】
複数の実施形態では、本発明の方法は、変性疾患の治療を必要とする対象に本明細書に記載の化合物のうちの少なくとも1つを投与することによって変性疾患を治療するために使用される。
【0115】
炎症性状態
特定の実施形態では、治療される5-HT2応答性状態は、炎症性状態である。対象における炎症性状態は、本発明の方法を使用して式(I)の化合物で治療することができる。治療される炎症性状態は、肺炎症(例えば、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD)、神経炎症(例えば、アルツハイマー病)、慢性炎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、乾癬、II型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、結膜炎、多発性硬化症、及び/又は敗血症とすることができる。
【0116】
一実施形態では、炎症は、(i)炎症の急性発作(例えば、炎症性腸疾患)又は(ii)慢性炎症性状態(例えば、関節炎)を治療するために必要に応じて式(I)の化合物を投与することによって治療される。複数の実施形態では、本発明の方法は、炎症性状態の治療を必要とする対象に本明細書に記載の化合物のうちの少なくとも1つを投与することによって炎症性状態を治療するために使用される。
【0117】
慢性疼痛
特定の実施形態では、治療される5-HT2応答性状態は、慢性疼痛である。慢性疼痛に関連する障害又は状態は、本発明の方法を使用して式(I)の化合物で治療することができる。慢性疼痛は、術後疼痛、緊張性頭痛、慢性腰痛、線維筋痛症、腎症、多発性硬化症、帯状疱疹、複合性局所疼痛症候群、頭部痛、又は坐骨神経痛に起因し得る。慢性疼痛は、手術に起因し得る。慢性疼痛は、腎症、多発性硬化症、帯状疱疹、又は複合性局所疼痛症候群などの特定の疾患又は状態に関連する疼痛とすることもできる。頭部痛に関連する1つの特定の障害又は状態は、本発明の方法を使用して式(I)の化合物で治療することができる。本明細書で使用される場合、頭部痛に関連する障害又は状態は、その症状のうちの1つとして頭部痛(cephalic pain)/頭部痛(head pain)(例えば、頭痛)を有する障害又は状態である。かかる障害又は状態の例としては、反復発作性及び慢性群発頭痛(cluster headache、CH)、反復発作性及び慢性発作性片側頭痛(paroxysmal hemicrania、PH)、並びに結膜充血及び流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(short-lasting unilateral neuralgiform headache attacks with conjunctival injection and tearing、SUNCT)などの三叉神経自律神経系頭痛が挙げられる。本発明に従って治療することができる障害又は状態の他の例としては、血管性頭痛(例えば、片頭痛性頭痛)、緊張性頭痛、薬物の使用(例えば、スマトリプタンなどのトリプタン、アルプラゾラムなどのベンゾジアゼピン、イブプロフエンなどの鎮痛剤、エルゴタミンなどの麦角、モルヒネなどのオピオイド、カフェイン、ニコチン、アルコールなどの娯楽薬、及び例えばエストロゲンを含むホルモン補充療法)又はその離脱に関連する頭痛が挙げられる。頭部痛に関連する障害又は状態の更に追加の例としては、構造的病変に関連しない各種の頭痛、非血管性頭蓋障害に関連する頭痛、非頭部感染に関連する頭痛、代謝障害に関連する頭痛、頭蓋、首、眼、鼻、洞、歯、口、又は他の顔面若しくは頭蓋構造の障害に関連する頭痛、神経幹痛、及び除神経後痛が挙げられる。
【0118】
複数の実施形態では、本発明の方法は、慢性疼痛の治療を必要とする対象に本明細書に記載の化合物のうちの少なくとも1つを投与することによって慢性疼痛を治療するために使用される。
【実施例】
【0119】
以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求されている組成物及び方法をどのように実施、製造、及び評価することができるかについての説明を提供するために提示され、本発明の純粋な例示を意図するものであり、本発明者が自分の発明と見なす範囲を制限することを意図しているものではない。
【0120】
実施例1.5-HT2A受容体残基と抗炎症活性のための新たなリガンドとの結合
理論に束縛されることを望むものではないが、小分子リガンドによるヒトセロトニン5-HT2A受容体のアスパラギン343(6.55位)の特異的結合は、例えば、5-HT2A受容体に対する親和性を有する薬物の抗炎症活性のために必要であり得る。
【0121】
例えば、5-HT2AのN343に結合する化合物は、喘息、関節炎、炎症性腸疾患、乾癬を含むが、これらに限定されない疾患の治療用の抗炎症薬として使用することができる。これらの化合物は、変性疾患(例えば、糖尿病性網膜症、黄斑変性、アルツハイマー病であるが、これらに限定されない)を治療するための薬剤として使用することもできる。
【0122】
理論に束縛されることを望むものではないが、5-HT2A受容体において抗炎症薬として作用する現在の薬物は、5-HT2A受容体のN343(6.55)に直接結合しない。例えば、リガンド自体との水素結合を介したこの残基の直接結合は、治療利益のために抗炎症/抗ROS(活性酸素種)効果の有効性及び/又は効力の増加を提供することができる。理論に束縛されることを望むものではないが、これらの化合物は、電子受容体である酸素を電子供与体である窒素から約3Å以下離して移動させることができる。例えば、本化合物は、電子受容体である酸素を移動させて、電子供与体である窒素と直接水素結合することができる。
【0123】
実施例2.ヒト5-HT2A受容体内で、343位(6.55)でのTM6アスパラギンの結合は完全な抗炎症効力に重要であり得る。新たな化学物質は、抗炎症薬設計目的のためにこの残基に特異的に結合することができる。
25CN-NBOHに結合したh5-HT2A受容体の結晶構造の発見及び開示(Kimet al.2020)の際に、我々は、5-メトキシの近傍にそれが水素結合するのに利用可能なものがないことに気付き、これは、奇妙であり、DOx(4-置換2,5-ジメトキシアンフェタミン)化合物がこの受容体にどのように結合するかに関して情報的に有益ではなかった。代わりに、リガンドと最も近い極性残基との間にギャップがあった(
図1)。理論に束縛されることを望むものではないが、そのギャップに水分子を配置することにより、TM6 N343と5-メトキシ酸素との間に水素結合を形成するための架橋を提供することができる。実際、そこに配置した場合、それがこの相互作用に正確に適合することを示す(
図2)。例えば、結合ポケットの配向及びDOx/2Cx化合物の受容体の活性確認におけるこの受容体の結合を実験的に検証することができる。
【0124】
我々は、修飾5-メトキシ又を有するか、又は5-メトキシが欠損しているDOx/2Cx構造が、抗炎症活性を低下させることを決定した(
図3)。更に、実験データは、トリプタミンの場合、4-OHの不在が全ての抗炎症効力の喪失をもたらすことも示した。理論に束縛されることを望むものではないが、DOx/2Cx化合物の5-メトキシは、トリプタミンの4-OHに結合するものと同様の結合ポケット中の残基に結合することができるが、5-HT2A受容体中のトリプタミンの結晶構造は依然として公開されていないため、トリプタミンが結合する残基は解明されていない。しかしながら、公開されている結晶構造(Kim et al.2020)由来のLSDのインドールコアの配向に基づいてプシロシンを結合ポケットに手動で配置することにより、同様の結果が示され、4-OHが同じ大きいポケット上に突出している(
図4)。したがって、理論に束縛されることを望むものではないが、酸素からN343への水素結合架橋を形成するためには、水分子もそこに存在しなければならない。
【0125】
図3に示すSAR結果は、水分子との水素結合架橋を介した、それぞれ、DOx/2Cx又はトリプタミンの5-メトキシ又は4-OHによるTM6 N343の結合と一致し、抗炎症エフェクターを活性化受容体に動員するための立体構造変化を生じさせる。
【0126】
実験的に検証した場合、構造水の仲介なしにTM6 N343に直接結合して、抗炎症エフェクター経路の動員のための正確なTM6ヘリックス回転及び立体構造変化を生じさせることができるリガンドは、合理的な薬物設計又はハイスループットインシリコスクリーニング努力のいずれかによる、NCEの開発のための重要なパラメータであり得る。
【0127】
試験の非限定的な例:
h5-HT2A N343A変異体を生成することができる。アスパラギンをアラニンの小さいメチルで置換することにより、受容体ポケットのこの領域からあらゆる水素結合供与体能力を除去することができ、理論に束縛されることを望むものではないが、この空間への水分子の動員を必要としない。これらの特徴なしでは、伝統的な5-メトキシDOx/2Cx薬及び4-OHトリプタミン薬の親和性及び/又は有効性は、この変異体において、野生型と比較して低下すると予測される。構造がこれらの部分を欠く薬物の親和性は変化しないと予想される(例えば、プシロシン対DMT(N,N-ジメチルトリプタミン)、2,4-DMA(2,4-ジメトキシアンフェタミン)対2,4,5-TMA(2,4,5-トリメトキシアンフェタミン)。1つの試験は、伝統的なDOx/2Cx及び4-OHトリプタミンが、インビトロ細胞ベースの系(例えば、プライミング状況において過酸化物で刺激した天然又は変異受容体発現細胞)において抗炎症有効性又は抗酸化有効性を失うかを決定することである。この関与がMoAの重要な特徴である場合、DOI(2,5-ジメトキシ-4-ヨードアンフェタミン)及びプシロシンなどの薬物は、低下した効力及び/又は有効性を有し得るが、2,4-TMAの部分的な有効性は変化しないであろう。この変異受容体は、哺乳類細胞発現ベクターにクローニングすることができる。
【0128】
理論に束縛されることを望むものではないが、水分子架橋を使用することなくN343に直接結合する構造的特徴を組み込んだ化学物質を生成することができる(
図5~6)。理論に束縛されることを望むものではないが、N343に直接結合することができる化合物は、2-メトキシ-5-ヒドロキシエチル-4-メチルアンフェタミン、2-メトキシ-5-ヒドロキシエチル-4-メチルフェネチルアミン、及び4-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-DETを含むことができる(本明細書を参照されたい)。これらの化合物は、天然受容体における抗炎症効果について、親分子(例えば、DOM、DET)と比較して改善された効力及び/又は有効性を有し得るが、変異受容体と比較して低下した効力及び/又は有効性を有し得る。これらの化合物の2-メトキシエチルバージョンを生成して、N343に直接結合することができる。
【0129】
これらの化合物での更なる可能性は、以下のとおりである。
1)DOx/2Cxにおいて5-メトキシを5-(2-ヒドロキシエチル)で置き換えることにより、血液脳関門透過を減少させ、行動障害を軽減することができる。
2)トリプタミンの場合、5-HT1 A受容体が6.55位に水素結合供与体残基を有さないため、4-(2-ヒドロキシエチル)(又は4-(2-メトキシエチル))が5-HT1 A受容体よりも5-HT2に対して改善された選択性を提供することができる。
3)4-ヒドロキシエチルトリプタミンの四級アミンを生成することにより、(5-HT1 Aよりも高い選択性を提供することに加えて)それを脳から遠ざけることができる。->5-HT2A/5-HT1Aに対する増強された選択性を有する強力な末梢制限抗炎症薬。
【0130】
追加の考慮すべき事項:
理論に束縛されることを望むものではないが、計画されたペルオキシダーゼ近接標識アッセイに変異N343 A受容体を組み込むことにより、抗炎症活性に関連しているシグナルプレックスに動員されるエフェクターの特定に向けた別の道を提供することができる。例えば、DOIに対するN343A受容体対野生型受容体->変異ではなく野生型においてDOIに動員された経路が関連している。
【0131】
本明細書に記載の非限定的な例示的な実験によって特定された収束エフェクターは、抗炎症機構に関与する候補である可能性がある。
【0132】
本発明の態様の非限定的な化合物:
a)NCCC1=C(OC)C=C(C)C(CCO)=C1
2-(5-(2-アミノエチル)-4-メトキシ-2-メチルフェニル)エタン-1-オール
b)NC(C)CC1=C(OC)C=C(C)C(CCO)=C1
2-(5-(2-アミノプロピル)-4-メトキシ-2-メチルフェニル)エタン-1-オール
c)OCCC1=C2C(NC=C2CCN(CC)CC)=CC=C1
2-(3-(2-(ジエチルアミノ)エチル)-1H-インドール-4-イル)エタン-1-オール
【0133】
【0134】
実施例3.
4-ヒドロキシエチル-DIPT及び2-メトキシ-4-ブロモ-5-メトキシエチルフェネチルアミンを、アレルギー性喘息のラットモデル(OVA感作及び曝露モデル)におけるPenHの増加を防止するそれらの能力について試験した(
図8)。OVA単独処理と比較した薬物処理+OVAの場合のPenHの減少は、抗炎症活性を表す。4-ヒドロキシ-DIPTを0.5mg/kgの用量で試験し(パネルA)、2-メトキシ-4-ブロム-5-メトキシエチルフェネチルアミンを0.1mg/kgで投与した(パネルB)。
【0135】
カルシウムフラックス用量反応実験を、セロトニン(5-HT)と比較して3つの薬物に対するヒト5-HT2A受容体を安定的にトランスフェクトしたHEK細胞で行った(
図9)。これらは3つ全て、カルシウムフラックスに関して5-HT2A受容体でアゴニストである。各曲線のEC50値をグラフに示す。
【0136】
実施例4.
5-HT2 A受容体に対する結合親和性の非限定的な例
【0137】
【化10】
放射性リガンド置換結合アッセイにおける[3]-ケタンセリンに対するK
i=6.34×10^10-7nM。決定されたKi値は、調製物中で利用可能な結合部位の半分が試験薬によって占有されている薬物の濃度を表す。
【0138】
【化11】
放射性リガンド置換結合アッセイにおける[3]-ケタンセリンに対するKi=3.45×10^-6nM。決定されたKi値は、調製物中で利用可能な結合部位の半分が試験薬によって占有されている薬物の濃度を表す。
【0139】
【化12】
理論に束縛されることを望むものではないが、4-ヒドロキシエチル-DIPTは、5-HT2A受容体と相互作用する。
【0140】
放射性リガンド結合アッセイのための非限定的な例示的な実験プロトコル
ヒト5-HT2 A受容体を安定的に発現するHEK細胞を、10%(v/v)ウシ胎児血清(Gibco、カタログ番号16000-044、ロット番号2344386RP)、100単位/mLのペニシリン、及び100mg/mLのストレプトマイシン、100μg/mLのZeocin(商標)を充填したDMEM(Gibco、カタログ番号10569-010)中で培養し、37℃及び5%CO2の加湿雰囲気中で維持した。その後、細胞を、DMEM(Gibco、カタログ番号10569-010)中で12時間血清飢餓させた。氷上のDMEM中の細胞(15cmディッシュ当たり約5mL)を掻き取って均質化することにより膜を調製し、4℃で10分間、2,000×gで遠心分離した。細胞を冷結合緩衝液(50mMトリス-HCl、10mM MgCl2、0.1mM EDTA、pH7.4)中に再懸濁し、均質化し、再度遠心分離した。冷結合緩衝液中に再懸濁した後、1mLのアリコートを予冷した1.5mLの微量遠心管に分配し、4℃で20分間、13,000rpmで遠心分離した。上清を直ちに吸引し、必要になるまでペレットを-80℃で保管した。翌日、1つのペレットを1mLの冷結合緩衝液中に再懸濁し、Quick Start(商標)Bradford Protein Assay Kit 2(Bio-Rad、カタログ番号500-0202)を使用してタンパク質濃度を定量した。アッセイ当日に、以下の成分:25μg膜調製物、[3H]-ケタンセリン塩酸塩(1nM、最終濃度)(PerkinElmer Life Sciences、部品番号NET791025UC)、及び一連の7つの濃度の薬物(1×10^-11~1×10^-5M、最終濃度)を、96ウェル2mLディープウェルポリプロピレンプレート中の冷結合緩衝液で希釈し、プラットフォームロッカー上で、室温で1時間インキュベートした。ミアンセリン(100μM)を使用して、別個の反応における非特異的結合を定義した。各薬物濃度点を三連で試験した。試料を、PerkinElmer FilterMate(商標)セルハーベスターを使用して0.25%ポリエチレンイミンコーティングUniFilter-96 GF/Cマイクロプレート(PerkinElmer Life Sciences、部品番号6055690)で濾過し、PerkinElmer Microbeta2 System上のMicroScint(商標)-20カクテル(PerkinElmer Life Sciences、部品番号6013621)中で、57%の効率性で計数した。生データをExcelスプレッドシートにエクスポートし、非特異的ベースラインを差し引いた。Ki値を、GraphPad Prism 9.3.1「One site-Fit Ki」関数(GraphPad Software,San Diego,CA)を使用して生成した。
【0141】
他の実施形態
本明細書に言及されている全ての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれの独立した刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0142】
本発明がその特定の実施形態に関連して説明されているが、本発明に更なる修正を加えることが可能であり、本出願が、概して、本発明の原理に従い、かつ本発明が関連し、かつ前述の本質的な特徴に適用することができる当該技術分野で既知の又は慣習的な慣行の範囲内にあり、かつ特許請求の範囲に続く本開示からの逸脱を含む、本発明のいずれの変形、使用、又は適合も網羅するよう意図されていることが理解される。
【0143】
他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。
【国際調査報告】