(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】赤血球濃縮物用添加剤溶液
(51)【国際特許分類】
A61K 41/17 20200101AFI20240719BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20240719BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240719BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240719BHJP
A61K 35/18 20150101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K41/17
A61M1/36 171
A61J3/00 300A
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/12
A61K35/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024505219
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 DE2022100535
(87)【国際公開番号】W WO2023006151
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021119408.3
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508189049
【氏名又は名称】ブルートシュペンデディーンスト デア ランデスフェアベンデ デス ドイチェン ローテン クロイツェス ニーダーザクセン,ザクセン-アンハルト,テューリンゲン,オルデンブルク ウント ブレーメン ゲーゲ-エムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】524035748
【氏名又は名称】ブルートシュペンデディーンスト デス バイアリッシェン ローテン クロイツェス,ゲメインヌッツィーゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BLUTSPENDEDIENST DES BAYERISCHEN ROTEN KREUZES,GEMEINNUTZIGE GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】グラヴェマン,ウーテ
(72)【発明者】
【氏名】ゼルトサム,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】ハントケ,ヴィープケ
【テーマコード(参考)】
4C047
4C076
4C077
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4C047CC01
4C047GG40
4C076AA12
4C076BB11
4C076CC50
4C076DD23
4C076DD26
4C076DD43
4C076DD60
4C076DD67
4C076DD69
4C076FF63
4C077AA13
4C077GG03
4C077JJ03
4C077JJ18
4C084AA11
4C084MA17
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZC80
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB36
4C087DA40
4C087MA17
4C087NA03
4C087NA05
4C087ZC80
(57)【要約】
本発明は、赤血球濃縮物を保存するための添加剤溶液と、該添加剤溶液を含む赤血球濃縮物と、UV光で照射するステップを含む該添加剤溶液で希釈された赤血球濃縮物を製造するためのプロセスと、赤血球濃縮物を保存するための該添加剤溶液の使用とに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とともに少なくとも以下の成分を含む添加剤溶液:
12~50mmol/Lのリン酸水素二ナトリウム、
0.1~3.5mmol/Lのアデニン、
10~90mmol/LのD-グルコース、
0.1~3mmol/Lのグアノシン、
10~80mmol/Lの塩化ナトリウム、及び
10~50mmol/Lのクエン酸三ナトリウム。
【請求項2】
リン酸水素二ナトリウム、アデニン、D-グルコース、グアノシン、塩化ナトリウム及びクエン酸三ナトリウムの濃度がそれぞれ個別に又は同時に以下の通りである、請求項1に記載の添加剤溶液:
17~50mmol/L、特に20~25mmol/Lのリン酸水素二ナトリウム、
1.5~2.5mmol/Lのアデニン、
45~55mmol/LのD-グルコース、
1.25~1.75mmol/Lのグアノシン、
20~60mmol/L、特に35~45mmol/Lの塩化ナトリウム、
14~50mmol/L、特に25~35mmol/Lのクエン酸三ナトリウム。
【請求項3】
前記濃度の前記成分と残部の水とからなる、請求項1又は2に記載の添加剤溶液。
【請求項4】
前記添加剤溶液は22℃の場合に、pHが7以上、好ましくは7.5以上、特に8~9である、請求項1~3のいずれか1項に記載の添加剤溶液。
【請求項5】
前記添加剤溶液の浸透圧は、260~300mOsm/kgである、請求項1~4のいずれか1項に記載の添加剤溶液。
【請求項6】
マンニトール及び/又はソルビトールを含まない、請求項1~5のいずれか1項に記載の添加剤溶液。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の添加剤溶液の濃縮物又は水による希釈液。
【請求項8】
赤血球と、請求項1~6のいずれか1項に記載の添加剤溶液若しくは請求項7に記載の濃縮物若しくは希釈液、又は該添加剤溶液、濃縮物若しくは希釈液の成分とを含む赤血球濃縮物。
【請求項9】
0.40~0.80L/L、好ましくは0.50~0.70L/Lの赤血球と、
0.10~0.60L/L、好ましくは0.25~0.50L/Lの前記添加剤溶液と、を含み、
上記各場合のL/Lの体積比の合計は1L/L以下の数値になる、請求項8に記載の赤血球濃縮物。
【請求項10】
0.0001~0.1L/Lの安定剤溶液、特にCPD安定剤溶液、及び/又は
0.0001~0.2L/Lのヒト血漿をさらに含む、請求項8又は9に記載の赤血球濃縮物。
【請求項11】
UV照射された赤血球を含む、請求項8~10のいずれか1項に記載の赤血球濃縮物。
【請求項12】
全血の際にUV照射された赤血球を含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の赤血球濃縮物。
【請求項13】
希釈赤血球濃縮物の際にUV照射された赤血球を含み、
前記希釈赤血球濃縮物は、請求項1~5のいずれか1項に記載の添加剤溶液を含み、好ましくは0.5未満のhctを有し、UV照射後に濃縮される、請求項8~12のいずれか1項に記載の赤血球濃縮物。
【請求項14】
前記UV照射は、300~200nm、特に280~220nm、好ましくは260~240nmの波長で行われる、請求項8~13のいずれか1項に記載の赤血球濃縮物。
【請求項15】
0.4~0.8、特に0.5~0.7のhctを有する、請求項8~14のいずれか1項に記載の赤血球濃縮物。
【請求項16】
マンニトール又はソルビトールを含まない、請求項8~15のいずれか1項に記載の赤血球濃縮物。
【請求項17】
10~30mmol/L、特に14~26mmol/LのD-グルコースと、
5~12mmol/L、特に6~10mmol/Lのリン酸水素二ナトリウムと、
0.3~1.2mmol/L、特に0.5~0.8mmol/Lのアデニンと、
0.25~0.9mmol/L、特に0.4~0.7mmol/Lのグアノシンと、
8~25mmol/L、特に11~20mmol/Lの塩化ナトリウムと、
6~18mmol/L、特に8~16mmol/Lのクエン酸三ナトリウムと、
任意に、
0.01~1mmol/L、特に0.02~0.8mmol/Lのリン酸二水素ナトリウムと、
0.01~1mmol/L、特に0.02~0.8mmol/Lのクエン酸とを含む、請求項8~16のいずれか1項に記載の赤血球濃縮物。
【請求項18】
0.6mmol/L未満、特に0.5mmol/L未満のリン酸二水素ナトリウムを含む、請求項8~17のいずれか1項に記載の赤血球濃縮物。
【請求項19】
-全血又は希釈された全血にUV放射線を照射し、請求項1~7のいずれか1項に記載の添加剤溶液又は該添加剤溶液の成分を添加することにより、前記照射された全血から赤血球濃縮物を得るステップ、
又は
-請求項1~7のいずれか1項に記載の添加剤溶液又は該添加剤溶液の成分を含む赤血球濃縮物をUV照射し、ここで、赤血球濃縮物は、好ましくはhctが0.5未満の希釈赤血球濃縮物であり、UV照射後にhctが0.5以上に濃縮されるステップ;
又は
-第2の添加剤溶液を含む希釈赤血球濃縮物をUV照射し、ここで、希釈赤血球濃縮物は、好ましくはhctが0.5未満の希釈赤血球濃縮物であり、UV照射後にhctが0.5以上に濃縮され、
ここで、第2の添加剤溶液は、第2の添加剤溶液を基準として、少なくとも75重量%以上、好ましくは完全に、UV照射後に請求項1~7のいずれか1項に記載の添加剤溶液又は該添加剤溶液の成分と置換されるステップ;を含み、
各場合におけるUV照射は、300~200nm、特に280~220nm、好ましくは260~240nmの波長で行われる、赤血球濃縮物を製造する方法。
【請求項20】
前記赤血球濃縮物は、請求項8~18の少なくともいずれかに記載の特徴を有する、請求項19に記載の赤血球濃縮物を製造する方法。
【請求項21】
添加剤溶液で希釈された赤血球濃縮物を製造する方法であって、
前記添加剤溶液は、請求項1~6のいずれか1項に記載の添加剤溶液又は該添加剤溶液の成分であり、前記赤血球濃縮物に添加され、好ましくは0.5以上のhctを有する前記赤血球濃縮物に添加される、方法。
【請求項22】
赤血球濃縮物、好ましくは請求項8~18のいずれか1項に記載の赤血球濃縮物を保存するための請求項1~6のいずれか1項に記載の添加剤溶液又は該添加剤溶液の成分の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、赤血球濃縮物を保存するための添加剤溶液、その添加剤溶液を含む赤血球濃縮物、及びその添加剤溶液で希釈された赤血球濃縮物を製造するための方法であって300~200nmの範囲のUV光を照射するステップを含む方法、並びに赤血球濃縮物を保存するためのその添加剤溶液の使用又はその添加剤溶液の成分の使用である。
【背景技術】
【0002】
赤血球濃縮物(EC)は、赤血球細胞(赤血球)からなる「保存血液の単位」である。ドイツにおいて、赤血球濃縮物は、1単位当たり少なくとも40gのヘモグロビンを含み0.5~0.7のヘマトクリットを有するものを市場流通可能な形態としている。ヘマトクリット(略号:hct)とは、血液量に占める赤血球細胞(赤血球)の割合を意味し、以下、いずれの場合も単位L/Lとして定義する。先行技術によると、赤血球濃縮物は、通常、添加剤溶液で希釈され、保存により適したものとされる。添加剤溶液は、よく保存溶液とも呼ばれ、赤血球を懸濁して保存する目的を果たす。
【0003】
赤血球濃縮物は、種々の方法で入手され得る。赤血球濃縮物は、全血献血から得る、又はアフェレーシス法を用いて得ることが一般的である。アフェレーシス法では、透析のような装置で赤血球をドナーの血液から連続流プロセスを用いて分離し、残った血液成分をドナーの循環系に戻す。例えば、機械的献血には抗凝固剤ACD-Aが用いられる。
【0004】
全血献血は、それぞれのドナーからの所定量の全血が、例えば静脈採血によって450mLの全血が、プラスチック材料からなるそれぞれの血液バッグに充填されることによって行われる。血液バッグには、安定剤溶液が含まれており、又は安定剤溶液は、全血の保存期間を増やし、血液凝固を抑制するために全血に添加される。
【0005】
クエン酸緩衝液、リン酸二水素ナトリウム、及びD-グルコースを含むCPD安定剤溶液は、典型的な安定剤溶液である。一般に、450mLの全血に対して63mLのCPD安定剤溶液が用いられ、又は500mLの全血に対して70mLのCPD安定剤溶液が用いられる。全血のpH値は、安定剤溶液により7.1~7.2に安定化される。
【0006】
献血された全血を個々の成分に分離すると、赤血球濃縮物(EC)等が得られる。
【0007】
一般に、全血に対して白血球除去を行う、又は赤血球濃縮物の製造前に白血球除去が行われる。白血球除去とは、ドナーの白血球を実質的に除去することであると理解されている。これは、例えばドイツ等の多くの国で法的要件となっている。白血球除去は、例えば安定剤溶液又は添加剤溶液を添加した後に血液が白血球を保持するフィルタを通過する、又は例えば遠心分離によって白血球を赤血球から分離するアフェレーシス中に行われる。用いられるフィルタは、多くの場合、ポリエステル繊維からなり、この繊維はパック内に圧縮されるため、所定のサイズの孔が形成され、又は決められた孔径を有するポリウレタンスポンジが用いられる。
【0008】
白血球除去のためのろ過は、血液を得た後、赤血球濃縮物を得る前に直接行うこともでき、又は赤血球濃縮物の保存後、任意に、患者に投与する前にまず患者のベッドサイドで行うこともできる。少なくともドイツでは、赤血球濃縮物の保存前に白血球除去を行うことが一般的である。
【0009】
赤血球濃縮物を製造するためには、全血を遠心分離する。血漿と、血小板及び白血球からなる所謂バフィーコートとを含む上清を分離し、遠心分離物又は沈殿物として残った赤血球を添加剤溶液に懸濁する。
【0010】
赤血球濃縮物は、任意に、添加剤溶液とは異なり得る栄養溶液に予めもう一度懸濁され、再度分離するために遠心分離され、赤血球が添加剤溶液に懸濁されて保存される前に、ドナーの血漿の残りが栄養溶液と置換される。このような洗浄赤血球濃縮物は、輸血前の不感症(例えば、ドナーの血漿のタンパク質に対するアレルギー反応、例えばIgA欠乏症の患者)の場合に有用である。
【0011】
遠心分離から得られる赤血球濃縮物を生理学的に適合した粘度に調整するために、保存性を高めるのに必要な物質も一緒に供給される添加剤溶液を加えなければならない。添加剤溶液は、生存率を向上し、保存中に起こる赤血球の溶血を抑制する。
【0012】
赤血球濃縮物の添加剤溶液は、それ自体既知であり、以前から種々のデザインで提案されてきた。
【0013】
塩化ナトリウム、グルコース又はフルクトース、及びアデニンに加えて糖アルコールのマンナイトを含む溶液が米国特許第4267269号から知られている。同様に、塩化ナトリウム、グルコース又はフルクトース、及びアデニンを含むが、糖アルコールとしてそれぞれソルビトール又はキシライトを含み、任意にさらにグアノシンを含む溶液が欧州特許出願公開第0100419号に記載されている。欧州特許出願公開第0301250号には、塩化ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム及び/又はリン酸水素ナトリウム、グルコース及び/又はフルクトース、ソルビトール、マンナイト及び/又はキシライト、アデニン及び/又はグアノシン、並びに任意にコロイドを含む添加剤溶液が開示されている。
【0014】
添加剤溶液SAG-Mは、例えば経済的に重要となっている。それは、アデニン、グルコース、D-マンニトール及び塩化ナトリウムを含む(C.F. Hogman, K. Hedlund, Y. Sahlestrom: “Red cell preservation in protein-poor media. III. Protection against in vitro hemolysis” in Vox Sang. 1981 Nov-Dec; 41(5-6):274-81)。
【0015】
PAGGS-マンニトール(PAGGS-M)は、現在水溶液として以下のように販売されており、さらに公知の添加剤溶液である。
47.4mmol/L D-グルコース一水和物
8.0mmol/L リン酸二水素ナトリウム二水和物
8.0mmol/L リン酸水素二ナトリウム二水和物
1.4mmol/L アデニン
1.4mmol/L グアノシン
54.9mmol/L マンニトール
72mmol/L 塩化ナトリウム
【0016】
W.H. Walker, M. Netz, K.H. Ganshrit: “49 Tage Lagerung von Erythrozytenkonzentraten in Blutbeuteln mit der Konservierungslosung PAGGS-Mannitol“. Beitr. Infusionsther. 26(1990): 55-59において、Walterらは、添加剤溶液PAGGS-Mを用いた赤血球濃縮物の保存可能期間を試験し、CPDを安定剤溶液として用いた。
【0017】
血液製剤の治療適用は、血液製剤を受けた者がウイルス及び/又は細菌に感染する危険性と関連していることが知られている。これらには、例えばウイルスB型肝炎(HBV)、ウエストナイル(WNV)及びC型肝炎(HCV)、並びにエイズウイルスHIV-1及びHIV-2、又は細菌、例えばブドウ球菌若しくは連鎖球菌が含まれる。これらの病原体を不活性化又は除去する工程が製剤の製造中に使用されない場合、そのリスクは常に存在する。
【0018】
病原体の不活性化は、例えばUV照射によって行われ得る。この種の方法は、例えば国際公開第2007/076832号から知られている。紫外線(UV)光は、波長によって区別される。本出願では、以下のように定義する:UVA:400~320nm、UVB:320~280nm、UVC:280~200nm。例えば血漿中又は細胞血液製剤中に含まれる細菌だけでなくウイルスも短波長の紫外線(UV)光、すなわち薬320nm以下の波長域(UVB及びUVC)を照射することにより不活性化できることが知られている。320nm以上では、放射線のエネルギーが低すぎて微生物及びウイルスを効果的に不活性化することができない。化学的、光化学的及び光線力学的な病原体不活性化方法とは対照的に、UV光による純粋な照射は、一般的にそれ自体で効果があり、反応性化学物質又は光活性物質の添加を必要としないという利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、赤血球濃縮物、特に添加剤溶液に導入する前にUV照射を受けた赤血球の保存性を改善すること、又は赤血球のUV照射及び保存のための媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、特許請求の範囲の独立請求項により特徴付けられ、好ましい実施形態は従属請求項の主題であり、及び/又は以下に説明される。
【0021】
本発明に係る添加剤溶液は、水に加えて以下の成分を含む:
12~50mmol/L、特に17~50mmol/L又は20~25mmol/Lのリン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4);
0.1~3.5mmol/L、特に1.5~2.5mmol/Lのアデニン;
10~90mmol/L、特に45~55mmol/LのD-グルコース;
0.1~3mmol/L、特に1.25~1.75mmol/Lのグアノシン;
10~80mmol/L、特に20~60mmol/L、さらには35~45mmol/Lの塩化ナトリウム;及び
10~50mmol/L、特に14~50mmol/L又は25~35mmol/Lのクエン酸三ナトリウム。
【0022】
添加剤溶液は、特に以下の成分からなる:
12~50mmol/L、特に17~50mmol/L又は20~25mmol/Lのリン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4);
0.1~3.5mmol/L、特に1.5~2.5mmol/Lのアデニン;
10~90mmol/L、特に45~55mmol/LのD-グルコース;
0.1~3mmol/L、特に1.25~1.75mmol/Lのグアノシン;
10~80mmol/L、特に20~60mmol/L、さらには35~45mmol/Lの塩化ナトリウム;及び
10~50mmol/L、特に14~50mmol/L又は25~35mmol/Lのクエン酸三ナトリウム;
残りは水である。
【0023】
上記の成分は、いずれの場合も水和物としても用いられ得る。その成分は一般に溶液中で解離するように存在する。
【0024】
濃縮物又は希釈液、特に上記の添加剤溶液の希釈液も同様に請求される。
【0025】
ダイ添加剤溶液は、好ましくはpHが7以上、好ましくは7.5以上、特にpHが8~9であり、いずれも22℃の場合である。
【0026】
添加剤溶液の浸透圧は、好ましくは260~300mOsm/kgである。浸透圧の測定は、凝固点降下法(浸透圧計)によって行われる。
【0027】
添加剤溶液で希釈された赤血球濃縮物を製造する方法であって、赤血球濃縮物及び/又は赤血球濃縮物の前駆体、例えば全血に300~200nm、特に280~220nm、好ましくは260~240nmの範囲の紫外線を照射するステップ(以下、通常「UV照射」又は「UV-照射」ともいう)を含む方法は、さらに本発明の主題である。
【0028】
以下の3つの設計において、赤血球濃縮物を製造する方法は以下のステップを含む:
-全血又は希釈された全血にUV放射線を照射し、添加剤溶液又は添加剤溶液の成分を添加することにより、そのようにして照射された全血から赤血球濃縮物を得る;
又は
-添加剤溶液又は添加剤溶液の成分を含む赤血球濃縮物をUV照射し、ここで、赤血球濃縮物は、好ましくはhctが0.5未満の希釈赤血球濃縮物であり、UV照射後にhctが0.5以上に濃縮される;
又は
-第2の添加剤溶液を含む希釈赤血球濃縮物をUV照射し、ここで、希釈赤血球濃縮物は、好ましくはhctが0.5未満の希釈赤血球濃縮物であり、UV照射後にhctが0.5以上に濃縮され、
ここで、第2の添加剤溶液は、第2の添加剤溶液を基準として、少なくとも75重量%以上、好ましくは完全に、照射後に添加剤溶液又は添加剤溶液の成分と置換され;
各場合におけるUV照射は、300~200nm、特に280~220nm、好ましくは260~240nmの波長で行われる。添加剤溶液の成分が添加される場合、これは、添加剤溶液が添加された場合と同一の濃度が各場合に生じるように添加されることを意味する。この点において、添加剤溶液が添加された場合と同一である。
【0029】
従って、本発明は、さらに、上記添加剤溶液を含む、hctが0.1~0.4、好ましくは0.25~0.35の希釈赤血球濃縮物、特に白血球除去された希釈赤血球濃縮物に関する。希釈赤血球濃縮物は、例えば添加剤溶液による赤血球濃縮物の1:2希釈から得られる。hctが0.5未満の赤血球濃縮物は、本明細書において「希釈赤血球濃縮物」とも呼ばれる。
【0030】
赤血球濃縮物は、好ましくは以下を含んで構成される(L=リットル):
赤血球 0.40~0.80L/L、特に0.50~0.70L/L
添加剤溶液 0.10~0.60L/L、特に0.25~0.50L/L
及び任意に
安定剤溶液 0.0001~0.10L/L、特にCPD安定剤溶液
ヒト血漿 0.0001~0.2L/L
それぞれの場合の数値の合計は、1L/L以下、特に1L/Lの値になる。
【0031】
UV照射が全血(WB)に対して行われた場合、赤血球濃縮物の組成は、特に以下のものを含む若しくは以下のものからなる:
赤血球 0.5~0.7L/L
添加剤溶液 0.27~0.48L/L
CPD安定剤溶液 0.03~0.09L/L
ヒト血漿 0.025~0.15L/L若しくは0.015~0.025L/L
又は、赤血球濃縮物のUV照射後、UV照射が全血(WB)で行われなかった場合は、以下を含む若しくは以下からなる:
赤血球 0.5~0.7L/L
添加剤溶液 0.27~0.49L/L
CPD安定剤溶液 0.001~0.009L/L又は0.001~0.014L/L
ヒト血漿 0.005~0.05L/L。
【0032】
一実施形態によると、適切なCPD安定剤溶液は以下のものを含み構成される:
クエン酸三ナトリウム二水和物 80~100mmol/L、特に89.4mmol/L
クエン酸一水和物 13~18mmol/L、特に15.6mmol/L
NaH2PO4二水和物 13~19mmol/L、特に16.1mmol/L
D-グルコース一水和物 115~140mmol/L、特に128.7mmol/L。
【0033】
一実施形態によると、CPD安定剤溶液は、1:6.1~1:8.1、特に1:7.14(各場合V/V)の体積比で全血に添加され、例えば450mLの全血に対して63mLのCPD安定剤溶液、又は500mLの全血に対して70mLのCPD安定剤溶液が、すなわち添加剤溶液が用いられる前に添加される。再処理によると、CPD安定剤溶液の上記成分は、その後、所定の濃度で赤血球濃縮物中に残存する。
【0034】
グルコース及びクエン酸三ナトリウムも安定剤溶液に含まれるため、CPD安定剤溶液を用いた場合、赤血球濃縮物中のその割合はそれに応じて増加する。しかし、他の安定剤溶液を用いることも可能である。
【0035】
一実施形態によると、赤血球濃縮物は以下のものを含む:
10~30mmol/L、特に14~26mmol/LのD-グルコース;
5~12mmol/L、特に6~10mmol/Lの、例えば二水和物としてのリン酸水素二ナトリウム;
0.3~1.2mmol/L、特に0.5~0.8mmol/Lのアデニン;
0.25~0.9mmol/L、特に0.4~0.7mmol/Lのグアノシン;
8~25mmol/L、特に11~20mmol/Lの塩化ナトリウム;
6~18mmol/L、特に8~16mmol/Lのクエン酸三ナトリウム;
及び任意に、
0.01~1mmol/L、特に0.02~0.8mmol/Lの、例えば二水和物としてのリン酸二水素ナトリウム;
0.01~1mmol/L、特に0.02~0.8mmol/Lの、例えば一水和物としてのクエン酸。
【0036】
この実施形態は、例えば赤血球濃縮物が献血のためのCPD又はCPDA-1安定剤溶液及び本発明に係る添加剤溶液の添加により得られ、リン酸二水素ナトリウム及びクエン酸が、その後にCPD安定剤溶液により導入される場合に得られ得る。
【0037】
従って、本発明は、さらに赤血球濃縮物を保存するための添加剤溶液又は添加剤溶液の成分の使用に関する。
【0038】
CPD安定剤溶液とヒト血漿との濃度の差は、ECを添加剤溶液で希釈し、その後に濃縮したことに起因する。濃縮の際に、上清の一部が除去されるため、元々含まれていた血漿及びCPD安定剤溶液の一部も除去される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】
図2は、UG65中でUVC照射し、UG65中で保存した赤血球濃縮物のグルコース濃度の保存期間中の減少を示す。
【
図3】
図3は、UG65中でUVC照射し、UG65中で保存した赤血球濃縮物の乳酸濃度の保存期間中の増加を示す。
【
図4】
図4は、NaCl、SAG-M又はUG65の存在下でUVC照射し、UG65中で保存した赤血球濃縮物の溶血率を示し、UG65中でUVC照射せずに保存したECをコントロールとした。
【
図5】
図5は、NaCl、SAG-M又はUG65の存在下でUVC照射し、UG65中で保存した赤血球濃縮物のATP含量を示し、UG65中でUVC照射せずに保存したECをコントロールとした。
【
図6】
図6は、UVC照射したECと同一の添加剤溶液中で保存したECの保存過程における溶血率を示す。
【
図7】
図7は、UVC照射したECと同じ添加剤溶液で保存したECの保存終了時(5週目)におけるATP含量を示す。
【
図8】
図8は、UVC照射したECと同じ添加剤溶液で保存したECの保存終了時(5週目)におけるグルコース含量を示す。
【
図9】
図9は、UVC照射したECと同じ添加剤溶液で保存したECの保存終了時(5週目)における乳酸含量を示す。
【
図10】
図10は、UVC照射した全血から得たECをUG65及びSAG-Mで保存した際の溶血率を示す。
【
図11】
図11は、UVC照射した全血から得たECをUG65及びSAG-Mで保存した際の保存終了時(4週目)におけるATP含量を示す。
【
図12】
図12は、UVC照射した全血から得たECをUG65及びSAG-Mで保存した際の保存終了時(4週目)におけるグルコース含量を示す。
【
図13】
図13は、UVC照射した全血から得たECをUG65及びSAG-Mで保存した際の保存終了時(4週目)における乳酸含量を示す。
【
図14】
図14は、UVC照射した全血から得られたECを、UG65及びPAGG-Mで保存した際の、保存過程における溶血速度を示す。
【
図15】
図15は、UVC照射した全血から得られたECを、UG65及びPAGG-Mで保存した際の保存終了時(4週目)におけるATP含量を示す。
【
図16】
図16は、UVC照射した全血から得られたECを、UG65及びPAGG-Mで保存した際の保存終了時(4週目)におけるグルコース含量を示す。
【
図17】
図17は、UVC照射した全血から得られたECを、UG65及びPAGG-Mで保存した際の保存終了時(4週目)における乳酸含量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
一実施形態によると、赤血球濃縮物は、個々の献血から分離される、又は機械的アフェレーシスによって個々のドナーから得られる。調製物の体積は、一般に約200~350mLである。全血献血の体積は、400~500mLが多い。調製物は、それぞれ平らなプラスチックバッグに保存され、通常、全血では約4℃~37℃、赤血球濃縮物では4℃±2℃で保存される。
【0041】
白血球除去は、全血のレベル、すなわち全血の最初の遠心分離の前に、又は遠心分離によって得られた赤血球が添加剤溶液に懸濁されて希釈されたレベル、すなわち赤血球濃縮物のレベルで行われ得る。一般に、白血球除去は、ろ過によって行われる。アフェレーシスによって赤血球を得る場合、白血球除去を別に行う必要は無く、白血球除去は既にアフェレーシスの一部として行われている。
【0042】
一形態によると、白血球除去は、本発明に係る添加剤溶液で希釈された赤血球濃縮物において、例えば0.1~0.4のhctで行われる。白血球除去の後、任意にUV照射が行われ、その後に特に0.5~0.7のhctに濃縮される。白血球除去は、UV照射の前でも後でもよく、好ましくは前に行われる。
【0043】
UV照射は、全血(WB)、すなわち赤血球濃縮物の製造前、又は赤血球濃縮物に対して行われ得る。UV照射されて病原体が除去された赤血球濃縮物、及び任意に白血球除去された赤血球濃縮物が、本発明に係る添加剤溶液中の製品として得られる。
【0044】
赤血球濃縮物のUV照射のための出発材料は、例えばhctが0.8~1、特に0.8~0.98の赤血球濃縮物である。一実施形態によると、それらは本発明に係る添加剤溶液によって0.5~0.7のhctに調整され、この濃度でUV照射されるか又は好ましくは更なる希釈(希釈赤血球濃縮物)がなされてUV照射される。本出願の観点において、hctが0.5未満の赤血球濃縮物は希釈赤血球濃縮物と呼ばれる。
【0045】
また、白血球除去された赤血球濃縮物は、添加剤溶液でさらに希釈することにより、例えば赤血球濃縮物と添加剤溶液との1:2希釈から、0.1~0.4、好ましくは0.25~0.35のhct(希釈赤血球濃縮物)に調整され得る。このようにして希釈された赤血球濃縮物は、滅菌ホース接続を介して照射バッグに移され、激しく動かされた環境下でUV照射される。
【0046】
照射された赤血球濃縮物は、空のバッグに移され、例えば遠心分離及び上清の圧搾により、hctが0.5~0.8、特に0.5~0.7にまで濃縮される。
【0047】
短波長の紫外線(UV)光の照射によって、血液製剤中の病原体を不活性化できることが知られている。これは、本発明に方法によると、血液製剤に300~200nm(UVB~UVCの範囲)の紫外線(UV)光、特にUVCの範囲の波長である280~220nm、特に260~240nmの紫外線(UV)光を照射することにより行われる。
【0048】
放射線エネルギーは、全血では好ましくは0.3~10J/cm2、より好ましくは2.5~5.5J/cm2、特に好ましくは3~5J/cm2であり、赤血球濃縮物では好ましくは1.5~4.5J/cm2、特に好ましくは2~4J/cm2である(いずれの場合も血液製剤に作用する放射線エネルギーに基づく)。照射バッグのような容器に作用する放射線エネルギーは、材料にもよるが、照射バッグが一般的に関連波長の放射線エネルギーを吸収するため、実際にはより大きくなる。
【0049】
照射が紫外線を吸収する媒体を通して行われる場合、照射エネルギーはそれに応じて増加する。EVA(エチレンビニルアセテート)製の照射バッグは、例えば放射線エネルギーの約30~40%を吸収する。照射は、特に2~37℃の血液製剤の温度で行われる。
【0050】
紫外線照射のためのこの種の方法は、例えば国際公開第2007/076832号から知られており、本発明に係る赤血球濃縮物に適用される。これによると、調製物、すなわちドナー血液(全血)及び/又は赤血球濃縮物(EC)は、サンプルの一定の循環が容器内で行われるように、照射バッグ内で適切な方法で動かされる。これにより、液体又は懸濁液内のいくつかの領域において、用いられる光が透過可能な程度に薄い層がそれぞれ形成されるように激しく動かされる。その動作は、それぞれ液体又は懸濁液がバッグの中で効果的に混合されるように行われる。この両方は、例えば以下の条件がそろえば特に実現する:
1.照射バッグは柔軟性がある。
2.照射バッグは、最大充填量の40%、特に最大充填量の30%、特に最大充填量の15%まで充填されている。
3.照射バッグは、例えば水平方向に(前後方向に直線的に、又は円形若しくは楕円形に)、及び/又は垂直方向(揺動)に激しく動かされる。
同時に行われる一定の混合に関連して、製剤全体(及びその中に含まれる病原体)が最終的に照射され、その結果、病原体が減少する。
【0051】
照射バッグは、オービタルシェーカー、プラットフォームシェーカー、ロッキングシェーカー又はウォブルシェーカーを用いて振盪することができ、好ましくは全照射時間の少なくとも4分の3の間、動かされ得る。照射バッグは、通常、最大で5000mLの容積を有する。照射バッグが一側面に配置されている場合、照射バッグの高さは、照射バッグが載置されている面と照射バッグの上面との交点との間の面法線に沿った距離に基づいて、バッグ内容物と接触している照射バッグの上面全体に亘って、それぞれ移動または振盪に起因して絶えず変化する。
【0052】
照射バッグは、UV透過性のプラスチック材料からなる。適切なプラスチックは、例えばエチレンビニルアセテート及びポリオレフィンであり、フィルム厚さは例えば1mm以下、特に0.5mm以下である。照射バッグは、平坦に形成され、好ましくは200~320nmの範囲に吸収極大を有さない。水平に充填された状態において、照射バッグは、わずか数mm、例えば10mm未満、特に5mm、さらに好ましくは3mm未満の厚さを有し、例えば最大600mLのサンプル体積を収容することが意図される。しかし、照射バッグの最大容積(体積)は、そこに収容される実際のサンプル体積よりも大きく、好ましくは少なくとも3倍、一般的には少なくとも5倍、又は少なくとも10倍である。例えば、水平時の照射バッグの底面は19×38cm、充填量は500~600mLであり、水平で静止状態での平均充填高さは6.9~8.3mmとなる。
【0053】
UV照射された各ユニットは、好ましくはドナーまで遡ることができる。
【0054】
ヘマトクリット(hct)は、血液中の細胞成分の割合を示す。血液中のヘマトクリット値の正常値は、男性で0.42~0.5、女性で0.37~0.45である。本症例では、L/Lで特定されている。赤血球は生理学的に血球の全容積の99%を占めることから、hct値はその細胞容積の割合にほぼ一致する。
【0055】
hctは、DIN58933-1:1995-01に従って、チューブ内の非凝固血液サンプルを遠心分離することによって測定される。その際、EDTA(四酢酸エチレンジアミン)又はヘパリン等の抗凝固剤を添加し、血液の凝固を防ぐ。重い赤血球が血漿から分離すると、全血液量に対する赤血球量の高さが測定される。赤血球、白血球/血小板、及び血漿の境界は肉眼で確認できる。白血球及び/又は血小板と血漿とが既に分離している場合、沈殿する固形物はほとんど赤血球のみからなる。
【実施例】
【0056】
UVC照射された血液製剤の品質及びUV照射による血液製剤の病原体不活性化効果に及ぼす添加剤溶液UG65の影響を試験した。
【0057】
(成分の製造)
全血献血(450~500mL)を70mLの抗凝固剤CPD中に収集し(0日目)(以下、全血献血と総称する)、室温で一晩保存した。抗凝固剤CPDには、水以外に以下の成分が含まれていた。
【0058】
1日目、全血を病原体不活性化試験に直接に用いる、又はさらに赤血球濃縮物に処理した。この目的のために、赤血球は、従来のバッグ遠心分離機で遠心分離し、圧搾機で自動成分分離した後、「乾燥」赤血球濃縮物として得られ、その後、それぞれの特定の添加剤溶液(110mL)に懸濁した。白血球除去は、白血球除去フィルタによる全血レベルでのろ過(「全血ろ過」)又は赤血球濃縮物のろ過(遠心分離及び圧搾後のろ過)によって行った。
【0059】
添加剤溶液UG65の組成:
その水溶液は以下の成分を含む:
22.7mmol/L リン酸水素二ナトリウム二水和物
1.85mmol/L アデニン
51.6mmol/L D-グルコース一水和物
1.44mmol/L グアノシン
40mmol/L 塩化ナトリウム
28.4mmol/L クエン酸三ナトリウム二水和物
残り 水。
【0060】
添加剤溶液SAG-Mの組成:
その水溶液は以下の成分を含む:
1.25mmol/L アデニン
45.4mmol/L D-グルコース一水和物
28.8mmol/L D-マンニトール
150mmol/L 塩化ナトリウム
残り 水
【0061】
(UV照射による病原体不活性化)
添加剤溶液で希釈した全血(520~570mL)又は赤血球濃縮物(600mL、hctが約0.3)をUV透過性バッグ(底面19×38cm、EVA製)に充填し、UV照射システム(Macotronic UV)でUVC光(254nm)をそれぞれ4.5J/cm2(EC)又は6J/cm2(WB)照射し、同時に振盪した(300rpm)。
【0062】
その後、遠心分離及び自動分離により、全血又は希釈赤血球濃縮物からhctが0.5~0.7の通常の赤血球濃縮物を得た。
【0063】
照射されたエネルギーに関する情報は、照射バッグの外側に影響する。照射エネルギーの約50~75%、本実施例では約60%が照射バッグを透過すると推定される。照射バッグは上から及び下から照射される。
【0064】
(品質パラメータの測定)
溶血率(%)は、全含有量に対する赤血球濃縮物の上清中の遊離ヘモグロビンの割合として定義される。
溶血率(%)=((100-ヘマトクリット*100)×上清中の遊離ヘモグロビン/総ヘモグロビン)。
【0065】
hctは、ヘマトクリット遠心分離機(Haematokrit210、Hettich)を用いて測定した。上清中の遊離ヘモグロビンは、Harboeによる3波長法によって光学的に測定した(M. Harboe, A method for determination of hemoglobin in plasma by near-ultraviolet spectrophotometry. Scand J Clin Lab Invest, 1959. 11(1): p. 66-70を参照)。総ヘモグロビンは、血液学的測定装置(XS1000i又はXN550、sysmex)によって測定した。
【0066】
グルコース及び乳酸の濃度の測定は、血液ガス分析装置ABL90FLEX(ラジオメーター)を用いて行った。赤血球のATP含量は、市販のキットATP Hexokinase FS(Diasys Greiner)を用いて測定した。pHは、従来のpHメーターを用いて22℃で測定した。体積は、赤血球濃縮物の比重を考慮し、秤量によって決定した。
【0067】
(試験1)
UG65でUVC照射され、UG65で保存された赤血球濃縮物の品質パラメータ
添加剤溶液UG65中の赤血球濃縮物(n=9)をUVC照射し、上記のように再度濃縮した。約0.6のhctを有する完成した赤血球濃縮物は、その後4±2℃で保存され、インビトロ品質を決定するためのサンプルが毎週採取された。
【0068】
(結果)
UVC照射した赤血球濃縮物のhctは0.59~0.64であり、欧州評議会のガイドラインに適合していた。溶血率は、保存期間中に増加した。しかし、保存開始から36日目には、9種類全ての赤血球濃縮物が溶血率0.8%未満を示し、欧州評議会のガイドラインの品質要件を満たしていた。
【0069】
UVC照射された赤血球濃縮物のpH値は、2日目に7.14±0.06であったが、保存期間中に減少し、36日目には6.54±0.05となった。これと並行して、赤血球濃縮物のグルコース含量は37.8±1.6から23.7±1.9に減少し、乳酸濃度は6.9±0.6から30.4±1.6に増加した。
【0070】
図1は、保存期間中の溶血率を日数で示したものである。
【0071】
図2は、UG65中でUVC照射し、UG65中で保存した赤血球濃縮物のグルコース濃度の減少を示し、
図3は、UG65中でUVC照射し、UG65中で保存した赤血球濃縮物の乳酸濃度の保存期間中の増加を示す。
【0072】
値は、いずれも9サンプルの平均値である。
【0073】
新たに開発された添加剤は、UVC照射された赤血球濃縮物を良好な品質で製造するのに適していることがわかった。
【0074】
(試験2)
添加剤溶液UG65中で保存される赤血球濃縮物のUVC照射の際の添加剤溶液の違いによる影響
4つの乾燥赤血球濃縮物をプールし、再度分割した。赤血球濃縮物を110mLのUG65に懸濁し、白血球除去のためにろ過した(UVC照射無しの未処理コントロール)。
【0075】
残りの3つの赤血球濃縮物については、プールした赤血球濃縮物を110mLの等張食塩水(NaCl0.9%)、110mLの添加剤溶液SAG-M及び110mLの添加剤溶液UG65にそれぞれ懸濁し、ろ過し、その後にそれぞれの同じ添加剤溶液で約0.3のhctに希釈した。UVC照射は、4.5J/cm2のUVC線量で上記のように行った。UVC照射された赤血球濃縮物は、その後に遠心分離され、上清が除去され、全ての赤血球がそれぞれ再びUG65に懸濁された。添加剤溶液UG65中における赤血球濃縮物の保存は、4±2℃で行われ、インビトロ品質を決定するためのサンプルは毎週採取された。
【0076】
(結果)
図4に示すように、非照射コントロールと比較して、UVC照射では溶血率が上昇した。溶血率は、NaCl又はSAG-M存在下で赤血球が照射された場合に最も高かった。UVC照射された赤血球濃縮物の品質が最も優れていたのは、照射の際に添加剤溶液UG65が存在した場合であった。
【0077】
赤血球のエネルギー状態のパラメータであるATP含量も同様にUVC照射の影響を受けた。保存終了時のATP含量は、赤血球をUG65の存在下で照射した場合に最も高かった(
図5)。赤血球濃縮物にNaCl又はSAG-M存在下で照射すると、非照射コントロールと比較して、ATP含量が減少した。
【0078】
図4は、NaCl、SAG-M又はUG65の存在下でUVC照射し、UG65中で保存した赤血球濃縮物の溶血率を示し、
図5は、それらの場合のATP含量を示す。UG65中でUVC照射せずに保存したECをコントロールとした。
【0079】
一連の試験から、UVC照射の際に添加剤溶液UG65で赤血球濃縮物を希釈することは、赤血球の品質に良好な効果をもたらすことがわかった。新規に開発された添加剤溶液は、生理食塩水又は従来の添加剤溶液等の他の可能性がある希釈溶液と比較して利点を提供する。
【0080】
(試験3)
添加剤溶液UG65中で照射及び保存されたUVC照射赤血球濃縮物と従来の添加剤溶液SAG-M中で照射及び保存された赤血球濃縮物との品質比較
「乾燥」赤血球濃縮物(ヘマトクリット>0.8)を上記のようにして得た。2つの乾燥赤血球濃縮物をプールし、再び分割し、その後に一つを市販の添加剤溶液SAG-M(コントロール)110mLに懸濁し、一つを新規に開発した添加剤溶液UG65(試験)110mLに懸濁した。白血球除去は、従来の白血球除去フィルタを用いて、これらの赤血球濃縮物をろ過することによって行った。ろ過後、それぞれの赤血球濃縮物を、同量のそれぞれの添加剤溶液(w/w)と混合した。希釈した赤血球濃縮物600gをUVC透過性照射バッグに移した。UVC照射は上記のように行った。続いて、希釈赤血球濃縮物から、遠心分離及び自動分離により、従来の赤血球濃縮物を得た。完成した赤血球濃縮物(n=3、試験及びコントロール)を4±2℃で保存し、インビトロ品質を決定するためのサンプルを毎週採取した。
【0081】
(結果)
製造後、試験赤血球濃縮物及びコントロール赤血球濃縮物は、体積、hct及び単位当たりのヘモグロビンについて同等の値を示した(表1)。
【表1】
【0082】
赤血球濃縮物の最も重要な品質パラメータである溶血率は、UG65中でUVC照射及び保存された赤血球濃縮物では、従来の添加剤溶液SAG-M中でUVC照射及び保存された赤血球濃縮物と比較して、有意に低かった(
図6)。保存期間中、その他の品質パラメータも全て、コントロール赤血球濃縮物と試験赤血球濃縮物との間で有意差を示した(
図7~9)。
【0083】
図6は、UVC照射したECと同一の添加剤溶液中で保存したECの保存過程における溶血率を示す。
【0084】
それぞれUVC照射したECと同じ添加剤溶液で保存したECの保存終了時(5週目)において、
図7はATP含量、
図8はグルコース含量、
図9は乳酸含量を示す。
【0085】
保存の過程において、新規に開発された添加剤溶液UG65の赤血球濃縮物へのUVC照射における大きな利点が明らかとなった。UG65中でUVC照射され、UG65中で保存されたECは、従来の添加剤溶液SAG-M中で保存したECよりも品質が優れていた。
【0086】
(試験4)
全血レベルでのUVC照射後の赤血球濃縮物の品質における添加剤溶液UG65と従来の添加剤溶液SAG-Mとの比較
全血献血(約570nm)を上記のようにUVCで照射し、その後、圧搾機による自動成分分離によって、「乾燥」赤血球濃縮物(ヘマトクリット>0.8)を得た。2つの乾燥赤血球濃縮物をプールし、再び分割し、その後に一つを市販の添加剤溶液SAG-M(コントロール)110mLに懸濁し、一つを新規に開発した添加剤溶液UG65(試験)110mLに懸濁した。白血球除去は、市販の白血球除去フィルタによるこれらの赤血球濃縮物のろ過によって行った。赤血球濃縮物(n=4、試験及びコントロール)は、その後、4±2℃で保存し、インビトロ品質を決定するためのサンプルを毎週採取した。
【0087】
(結果)
製造後、試験赤血球濃縮物及びコントロール赤血球濃縮物は、体積、hct及び単位当たりのヘモグロビンについて同等の値を示した(表2)。
【表2】
【0088】
赤血球濃縮物の最も重要な品質パラメータとして、UG65中でUVC照射した全血から得られた赤血球濃縮物の溶血率は、従来の添加剤溶液SAG-M中でUVC照射した全血から得られた赤血球濃縮物の溶血率と比較して有意に低かった(
図10)。保存過程において、更なる品質パラメータもコントロール赤血球濃縮物と試験赤血球濃縮物との間で有意差を示した(
図11~13)。
【0089】
図10は、UVC照射した全血から得たECをUG65及びSAG-Mで保存した際の溶血率を示す。
【0090】
それぞれ保存終了時(4週目)において、
図11はATP含量を示し、
図12はグルコース含量を示し、
図13は乳酸含量を示す。
【0091】
保存過程において、新規に開発した添加剤溶液UG65の、UVC照射された全血からの赤血球濃縮物の製造における優れた利点が明らかとなった。UG65を添加したUVC照射全血からのECの品質は、従来の添加剤溶液SAG-Mを添加したものよりも優れている。
【0092】
(試験5)
細菌不活性化
細菌株Klebsiella pneumoniae(PEI-B-P-08-01)、Serratia marcescens(PEI-B-P-56)及びPseudomonas fluorescens(PEI-B-P-77)をCASAブイヨンで増殖させ、人アルブミンと混合し、試用まで凍結保存した(U. Gravemann, et al., Bacterial inactivation of platelet concentrates with the THERAFLEX UV-Platelets pathogen inactivation system. Transfusion, 2019. 59(4): p. 1324-1332.を参照)。全血又はhctが約0.3の希釈赤血球濃縮物に約1×106KBE/mLの細菌懸濁液をスパイクし(各使用細菌ごとにn=3)、その後にUVC光を照射し、振盪した。その後、希釈赤血球濃縮物又は全血から従来の赤血球濃縮物を得た。サンプルは異なる時点で採取し、寒天プレートへのプレーティングにより細菌数を測定した。
【0093】
(結果)
赤血球濃縮物(表3)及び全血(表4)では、4~6logレベルの対数減少値で用量依存的に細菌が不活性化された。この試験は、本方法の細菌不活性化効率を証明した。
【表3】
【表4】
【0094】
(試験6)
ウイルス不活性化
EMVC(EMC株、ATCC VR129B)、シンドビスウイルス(Ar339株、ATCC VR-68)及びVSV(インディアナ株、ATCC VR-158)をVero細胞(腎臓組織由来のアフリカミドリザル細胞株、ATCC,Bio Whittaker番号BE76-108B)上で増殖させ、滴定した。培養及び滴定は、Mohrらに記載のように行った(H. Mohr et al., A novel approach to pathogen reduction in platelet concentrates using short-wave ultraviolet light. Transfusion, 2009. 49(12): p. 2612-24)。
【0095】
全血又はhctが約0.3の添加剤溶液UG65で希釈された赤血球濃縮物に、ウイルス懸濁液(10%v/v、使用ウイルスごとにn=3)をスパイクし、その後にUVC光を照射し、振盪照射した。その後、希釈赤血球濃縮物又は全血から従来の赤血球濃縮物を得た。異なる時点でサンプルを採取し、滴定の終点によりウイルス力価を測定した。検出限界に達した時点で、滴定の終点の代わりに大容量プレート法を適用した。
【0096】
赤血球濃縮物中(表5)及び全血中(表6)において、対数減少値が3から5logで、用量依存的にウイルスが不活性化された。この試験は、この方法のウイルス不活性化効率を証明した。
【表5】
【表6】
【0097】
(試験7)
全血レベルでのUVC照射後の赤血球濃縮物の品質についての添加剤溶液UG65と添加剤溶液PAGGS-Mとの比較
2つの全血献血(いずれの場合も約500mLの全血+70mLのCPD安定剤溶液)をプールし、再び分割した。全血は、上記のようにUVCで照射され、その後に圧搾機による自動成分分離によって「乾燥」赤血球濃縮物(ヘマトクリット>0.8)を得た。
【0098】
2つの乾燥赤血球濃縮物をプールし、再び分割し、その後に1つを110mLの市販の添加剤溶液PAGGS-Mに上記のように懸濁し(コントロール、組成は上記の通り)、1つを110mLの新規に開発した添加剤溶液UG65に懸濁した(試験)。白血球除去は、従来の白血球除去フィルタによるこれらの赤血球濃縮物のろ過によって行った。その後、赤血球濃縮物(n=4、試験及びコントロール)を4±2℃で保存し、インビトロ品質を決定するためのサンプルを毎週採取した。同量のCPDを用いた場合、赤血球濃縮物は、本発明に係る添加剤溶液を加えた赤血球濃縮物は、マンニトールを含んでおらず、リン酸水素二ナトリウム及びクエン酸三ナトリウムの含量が、CPD及びPAGGS-Mを含むものと比較して、本発明に係る赤血球濃縮物は、有意に大きかったという点で、少なくとも各場合においてその組成が異なっていた。
【表7】
【表8】
【0099】
(結果)
製造後、試験及びコントロールの赤血球濃縮物は、体積、hct及び単位当たりのヘモグロビンについて同等の値を示した(表9)。
【表9】
【0100】
赤血球濃縮物の最も重要な品質パラメータである溶血率は、UG65中でUVC照射した全血から得られた赤血球濃縮物では、従来の添加剤溶液PAGG-M中でUVC照射した全血から得られた赤血球濃縮物と比較して有意に低かった(
図14)。保存過程において、更なる品質パラメータもコントロール赤血球濃縮物と試験赤血球濃縮物との間で有意差を示した(
図15~17)。
【0101】
図14は、UVC照射した全血から得られたECを、UG65及びPAGG-Mで保存した際の、保存過程における溶血速度を示す。
【0102】
それぞれ保存終了時(4週目)において、
図15はATP含量、
図16はグルコース含量、
図17は乳酸含量を示す。
【0103】
保存過程において、UVC照射された全血からの赤血球濃縮物の製造において、新規に開発した添加剤溶液UG65の大きな利点が明らかとなった。UG65中のUVC照射された全血からのECの品質は、添加剤溶液PAGGS-Mを用いたものよりも優れている。
【手続補正書】
【提出日】2023-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤血球濃縮物を製造する方法であって、
前記赤血球濃縮物はUV照射された赤血球を含み、
前記方法は、
-全血又は希釈された全血にUV放射線を照射し、添加剤溶液又は該添加剤溶液の成分を添加することにより、前記照射された全血から赤血球濃縮物を得るステップ、
又は
-添加剤溶液又は該添加剤溶液の成分を含む、赤血球濃縮物又は0.5未満のhctを有する希釈赤血球濃縮物にUV照射し、前記UV照射後に0.5以上のhctに濃縮されるステップ、
又は
-第2の添加剤溶液を含む希釈赤血球濃縮物にUV照射し、前記第2の添加剤溶液は、第2の添加剤溶液を基準として少なくとも75重量%以上が、UV照射後に前記添加剤溶液又は該添加剤溶液の成分と置換されるステップ;を含み、
前記UV照射は、300~200nmの波長で行われ、
選択肢Aによると、前記添加剤溶液は、水とともに少なくとも以下の成分を含み:
12~50mmol/Lのリン酸水素二ナトリウム、
0.1~3.5mmol/Lのアデニン、
10~90mmol/LのD-グルコース、
0.1~3mmol/Lのグアノシン、
10~80mmol/Lの塩化ナトリウム、及び
10~50mmol/Lのクエン酸三ナトリウム、
又は選択肢Bによると、前記添加剤溶液の成分は以下の成分を含み:
リン酸水素二ナトリウム、アデニン、D-グルコース、グアノシン、塩化ナトリウム及びクエン酸三ナトリウム、
前記選択肢Bにおける前記成分は、
10~30mmol/LのD-グルコース、
5~12mmol/Lのリン酸水素二ナトリウム、
0.3~1.2mmol/Lのアデニン、
0.25~0.9mmol/Lのグアノシン、
8~25mmol/Lの塩化ナトリウム、及び
6~18mmol/Lのクエン酸三ナトリウム
を含む前記赤血球濃縮物を得るための量で用いられる、方法。
【請求項2】
リン酸水素二ナトリウム、アデニン、D-グルコース、グアノシン、塩化ナトリウム及びクエン酸三ナトリウムの
前記添加剤溶液中における濃度がそれぞれ個別に又は同時に以下の通りである、請求項1に記載の
方法:
17~50mmol/L、特に20~25mmol/Lのリン酸水素二ナトリウム、
1.5~2.5mmol/Lのアデニン、
45~55mmol/LのD-グルコース、
1.25~1.75mmol/Lのグアノシン、
20~60mmol/L、特に35~45mmol/Lの塩化ナトリウム、
14~50mmol/L、特に25~35mmol/Lのクエン酸三ナトリウム。
【請求項3】
前記添加剤溶液は、前記濃度の前記成分と残部の水とからなる、請求項1又は2に記載の
方法。
【請求項4】
前記添加剤溶液は22℃の場合に、pHが7以上、好ましくは7.5以上、特に8~9である、請求項1~3のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項5】
前記添加剤溶液の浸透圧は、260~300mOsm/kgである、請求項1~4のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項6】
前記添加剤溶液は、マンニトール
若しくはソルビトールを含まない
、又はマンニトール及びソルビトールの両方を含まない、請求項1~5のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項7】
前記赤血球濃縮物は、
0.40~0.80L/L、好ましくは0.50~0.70L/Lの赤血球と、
0.10~0.60L/L、好ましくは0.25~0.50L/Lの前記添加剤溶液と、を含み、
上記各場合のL/Lの体積比の合計は1L/L以下の数値になる、請求項
1~6のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項8】
前記赤血球濃縮物は、
0.0001~0.1L/Lの安定剤溶液、特にCPD安定剤溶液、及び/又は
0.0001~0.2L/Lのヒト血漿をさらに含む、請求項
1~7のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項9】
前記赤血球濃縮物は、全血の際にUV照射された赤血球を含む、請求項
1~
8のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項10】
前記赤血球濃縮物は、希釈赤血球濃縮物の際にUV照射された赤血球を含み、
前記希釈赤血球濃縮物は
、好ましくは0.5未満のhctを有し、UV照射後に濃縮される、請求項
1~
8のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項11】
前記赤血球濃縮物は、0.4~0.8、特に0.5~0.7のhctを有する、請求項
1~
10のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項12】
前記赤血球濃縮物は、マンニトール
若しくはソルビトールを含まない、
又はマンニトール及びソルビトールの両方を含まない、請求項
1~
11のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項13】
前記赤血球濃縮物は、選択肢Aとして、
10~30mmol/L、特に14~26mmol/LのD-グルコースと、
5~12mmol/L、特に6~10mmol/Lのリン酸水素二ナトリウムと、
0.3~1.2mmol/L、特に0.5~0.8mmol/Lのアデニンと、
0.25~0.9mmol/L、特に0.4~0.7mmol/Lのグアノシンと、
8~25mmol/L、特に11~20mmol/Lの塩化ナトリウムと、
6~18mmol/L、特に8~16mmol/Lのクエン酸三ナトリウムと、
任意に、
0.01~1mmol/L、特に0.02~0.8mmol/Lのリン酸二水素ナトリウムと、
0.01~1mmol/L、特に0.02~0.8mmol/Lのクエン酸とを含む、
又は、選択肢Bとして、
14~26mmol/LのD-グルコースと、
6~10mmol/Lのリン酸水素二ナトリウムと、
0.5~0.8mmol/Lのアデニンと、
0.4~0.7mmol/Lのグアノシンと、
11~20mmol/Lの塩化ナトリウムと、
8~16mmol/Lのクエン酸三ナトリウムと、
任意に、
0.01~1mmol/L、特に0.02~0.8mmol/Lのリン酸二水素ナトリウムと、
0.01~1mmol/L、特に0.02~0.8mmol/Lのクエン酸とを含む、請求項
1~
12のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項14】
前記赤血球濃縮物は、0.6mmol/L未満、特に0.5mmol/L未満のリン酸二水素ナトリウムを含む、請求項
1~
13のいずれか1項に記載の
方法。
【請求項15】
-前記添加剤溶液又は該添加剤溶液の成分を含む赤血球濃縮物をUV照射し、ここで、赤血球濃縮物は
、hctが0.5未満の希釈赤血球濃縮物であり、UV照射後にhctが0.5以上に濃縮されるステップ;
又は
-第2の添加剤溶液を含む希釈赤血球濃縮物をUV照射し、ここで、希釈赤血球濃縮物は
、hctが0.5未満の希釈赤血球濃縮物であり、UV照射後にhctが0.5以上に濃縮され、
ここで、第2の添加剤溶液は、第2の添加剤溶液を基準として、少なくとも75重量%以上、好ましくは完全に、UV照射後に
前記添加剤溶液又は該添加剤溶液の成分と置換されるステップ;を含
む、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記UV照射は、280~220nm、好ましくは260~240nmの波長で行われる、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記添加剤溶液又は該添加剤溶液の成分
は、0.5以上のhctを有する前記赤血球濃縮物に添加される、
請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
UV照射された赤血球を含む赤血球濃縮
物を保存するため
の添加剤溶
液の使用
であって、
前記添加剤溶液は、水とともに少なくとも以下の成分を含む、使用:
12~50mmol/Lのリン酸水素二ナトリウム、
0.1~3.5mmol/Lのアデニン、
10~90mmol/LのD-グルコース、
0.1~3mmol/Lのグアノシン、
10~80mmol/Lの塩化ナトリウム、及び
10~50mmol/Lのクエン酸三ナトリウム。
【請求項19】
前記リン酸水素二ナトリウム、アデニン、D-グルコース、グアノシン、塩化ナトリウム及びクエン酸三ナトリウムの濃度がそれぞれ個別に又は同時に以下の通りである、請求項18に記載の使用:
17~50mmol/L、特に20~25mmol/Lのリン酸水素二ナトリウム、
1.5~2.5mmol/Lのアデニン、
45~55mmol/LのD-グルコース、
1.25~1.75mmol/Lのグアノシン、
20~60mmol/L、特に35~45mmol/Lの塩化ナトリウム、
14~50mmol/L、特に25~35mmol/Lのクエン酸三ナトリウム。
【請求項20】
前記添加剤溶液は、前記濃度の前記成分と残部の水とからなる、請求項18又は19に記載の使用。
【請求項21】
前記添加剤溶液は、22℃の場合に、pHが7以上、好ましくは7.5以上、特に8~9である、請求項18~20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
前記添加剤溶液の浸透圧は、260~300mOsm/kgである、請求項18~21のいずれか1項に記載の使用。
【請求項23】
前記添加剤溶液は、マンニトール若しくはソルビトールを含まない、又はマンニトール及びソルビトールの両方を含まない、請求項18~22のいずれか1項に記載の使用。
【請求項24】
前記添加剤溶液は、水による前記添加剤溶液の希釈液、又は前記添加剤溶液の濃縮液である、請求項18~23のいずれか1項に記載の使用。
【国際調査報告】