(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】調節性T細胞を標的として自己免疫疾患を処置するための滑膜細胞外マトリックス特異的キメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240719BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/115 20100101ALI20240719BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/861 20060101ALI20240719BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240719BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240719BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240719BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240719BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240719BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240719BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240719BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240719BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K14/705 ZNA
C12N15/115
C07K16/18
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N5/10
C12N5/0783
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P37/02
A61P29/00
A61K35/17
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K39/395 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505229
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 US2022074321
(87)【国際公開番号】W WO2023010122
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524035955
【氏名又は名称】ソノマ バイオセラピューティクス, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524035966
【氏名又は名称】キュララ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マッセイ, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ヴルスト デ フリース, アンネ-レネー
(72)【発明者】
【氏名】バイルケ, ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】マルムストローム, ヴィヴィアン
(72)【発明者】
【氏名】フーパー, キャスリン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】クラレスコッグ, ラース
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA13
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4C084ZA96
4C084ZB07
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4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB15
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
シトルリン化ポリペプチドを認識する抗原結合部位を含むキメラ抗原受容体(「CAR」)を本明細書において開示する。シトルリン化ポリペプチド、例えば、シトルリン化ビメンチン、フィブリノゲン、およびフィラグリンは、関節リウマチを有する対象の滑膜に発現する。さらに、このようなCARを発現するT細胞、特に、Treg細胞を開示する。このようなCAR-T細胞の投与は、関節リウマチだけでなくシトルリン化ペプチドと関連する他の疾患の処置において有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、1つまたは複数の共刺激ドメイン、および細胞内シグナリングドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、前記抗原結合ドメインが、3つまたはこれよりも多い異なるシトルリン化タンパク質またはこのシトルリン化断片に特異的に結合する、CAR。
【請求項2】
前記抗原結合ドメインが、(i)シトルリン化ビメンチン、(ii)シトルリン化フィラグリン、および(iii)シトルリン化フィブリノゲンの3つすべて、またはこれらのシトルリン化ペプチド断片に結合する、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
前記抗原結合ドメインが、シトルリン化テネイシンCにさらに結合する、請求項2に記載のCAR。
【請求項4】
前記抗原結合ドメインが、VHドメインおよびVLドメインを含み、
(i)前記VHドメインが、配列番号32のアミノ酸配列を含むVH-CDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むVH-CDR2、および配列番号36のアミノ酸配列を含むVH-CDR3を含み、
(ii)標的結合ドメインの前記VLドメインが、配列番号39のアミノ酸配列を含むVL-CDR1、配列番号41のアミノ酸配列を含むVL-CDR2、および配列番号43のアミノ酸配列を含むVL-CDR3を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項5】
前記細胞内シグナリングドメインが、CD3ゼータに由来する、請求項1に記載のCAR。
【請求項6】
少なくとも1つの前記共刺激ドメインが、FceR1g、Fcg、CD28、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CTLA-4、CTLA-4/CD-28ハイブリッド、DAP10、CD27、2B4、およびこれらの組合せからなる群のメンバーの共刺激(cos-stimulatory)ドメインを含み、必要に応じて、少なくとも1つの前記共刺激ドメインが、CD28および/または4-1BB共刺激ドメインを含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項7】
前記抗原結合ドメインが、抗体、抗体断片、ラクダ類ナノボディ、重鎖のみの抗体またはアプタマーを含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項8】
前記膜貫通ドメインが、CD8膜貫通ドメインまたはCD28膜貫通ドメインである、請求項1に記載のCAR。
【請求項9】
前記ヒンジドメインが、CD8ヒンジドメインまたはCD28ヒンジドメインである、請求項1に記載のCAR。
【請求項10】
シグナルペプチドをさらに含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項11】
前記シグナルペプチドが、CD8シグナルペプチドまたはGM-CSFシグナルペプチドである、請求項10に記載のCAR。
【請求項12】
抗原特異的結合ドメインが、一本鎖断片を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項13】
前記一本鎖断片が、一本鎖可変断片(scFv)を含む、請求項12に記載のCAR。
【請求項14】
前記scFv断片が、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHドメイン、および
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、請求項13に記載のCAR。
【請求項15】
前記scFv断片が、
(a)(1)SBT01 VH(M)
HLHLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSINDTTYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYRGNTHYNSSLRSRVTMSVDTSKNRFSLKVTSVTAADTAVYYCARLDPFDYWGRGTLVTVSS(配列番号1)、または
(2)SBT01 VH(G)
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLDPFDYWGRGTLVTVSS(配列番号2)から選択されるVH、および
(b)(1)SBT01 VL(M)
SYVLTQPPSVSLAPGETATITCGGDDIENQNVNWYQQKSGQAPMLLIFFDTRRPSGIPERFSGSRSEDTANLTITRVEAGDDADYFCQVYDRKTDHQVFGPGTTVTVL(配列番号3)、または
(2)SBT01 VL(G)
SYVLTQPPSVSVAPGKTARITCGGNNIGSKSVHWYQQKPGQAPVLVIYYDSDRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISRVEAGDEADYYCQVWDSSSDHQVFGTGTKVTVL(配列番号4)
から選択されるVL
を含む、請求項13に記載のCAR。
【請求項16】
前記VH-VL断片が、(i)GGGS×3(配列番号20)、(ii)Whitlow218(配列番号21)、および(iii)AB Pur(配列番号22)からなる群から選択されるリンカーにより接合されている、請求項15に記載のCAR。
【請求項17】
前記scFvが、
(a)配列番号5のSBT01G-VHVL-GGGS×3リンカー、または
(b)配列番号6のSBT01G-VHVL-Whitlow218リンカー、または
(c)配列番号7のSBT01G-VHVL-AB purリンカー
のアミノ酸配列を含む、請求項16に記載のCAR。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載のCARをコードする核酸。
【請求項19】
DNAまたはRNAを含む、請求項18に記載の核酸。
【請求項20】
前記VHが、配列番号8または配列番号9を含む核酸配列によりコードされ、前記VLが、配列番号10または配列番号11を含む核酸配列によりコードされる、請求項18に記載の核酸。
【請求項21】
前記VHおよびVL断片が、リンカーにより接合されており、配列番号12、または(ii)配列番号13、または(iii)配列番号14の核酸配列を含む、請求項20に記載の核酸。
【請求項22】
請求項21に記載の核酸配列に作動的に連結する発現制御配列を含む発現ベクター。
【請求項23】
前記発現制御配列が調節領域を含み、前記調節領域が、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答エレメント、タンパク質認識部位、誘導性エレメント、タンパク質結合配列、5’および3’非翻訳領域、転写開始部位、終止配列、ポリアデニル化配列、核局在化、シグナル、ならびにイントロンからなる群から選択される、請求項22に記載の発現ベクター。
【請求項24】
アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはプラスミドである、請求項23に記載の発現ベクター。
【請求項25】
請求項24の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項26】
請求項1~17のいずれかに記載のキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように修飾した修飾T細胞。
【請求項27】
哺乳動物T細胞である、請求項26に記載の修飾T細胞。
【請求項28】
Treg細胞である、請求項27に記載の修飾T細胞。
【請求項29】
ヒトT細胞である、請求項28に記載の修飾T細胞。
【請求項30】
初代T細胞である、請求項29に記載の修飾T細胞。
【請求項31】
CD4+、CD25+、およびCD127loである、請求項30に記載の修飾T細胞。
【請求項32】
請求項31に記載の修飾T細胞の複数および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項33】
関節リウマチに罹患している対象を処置する方法であって、有効量の、請求項32に記載の医薬組成物を前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項34】
前記対象がヒトである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記医薬組成物を前記対象の滑膜に投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記医薬組成物を静脈内に投与する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
関節リウマチに罹患している対象を処置する方法であって、
(a)前記対象から得られる生体試料からT細胞を単離するステップと、
(b)調節性T細胞(Treg)について前記T細胞を富化するステップと、
(c)富化した前記Treg細胞に、請求項1~17のいずれかに記載のCARをコードする発現ベクターをトランスフェクトするステップと、
(d)トランスフェクトした前記Treg細胞を増大させるステップと、
(e)増大させた前記Treg細胞を前記対象に投与するステップと
を含む、方法。
【請求項38】
前記増大が、抗CD3/CD28コートビーズを使用することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記増大が、抗CD3/CD28コートビーズを使用することを含まない、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記トランスフェクションが、ウイルスベクター、エレクトロポレーション、熱ショック、バクテリオファージ、超音波処理、またはリン酸カルシウムの使用により行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
1つまたは複数の抗炎症剤および/または治療剤を前記対象に投与するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記抗炎症剤が、炎症性サイトカインを阻害する抗体を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗炎症剤が、抗TNF抗体、抗IL-6抗体、またはこれらの組合せである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項32に記載の医薬組成物を含み、流体導管を介してドリップチャンバーと連通する容器を含むキットであって、前記ドリップチャンバーが、流体導管を介して静脈内注射針と連通する、キット。
【請求項45】
前記容器がバッグを含む、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
前記容器と前記針との間の前記流体導管が、1つまたは複数のY部位とローラークランプとを含む、請求項44に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願では、2021年7月29日出願の米国特許仮出願第63/227,320号、および2022年5月6日出願の米国特許仮出願第63/339,361号の利点を主張し、それぞれその全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
電子配列表の参照
電子配列表(237752000340SEQLIST.xml;サイズ:50,843バイト;および作成日:2022年7月28日)の内容は、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0003】
分野
本開示は、自己免疫疾患を処置するための、シトルリン化抗原に反応性のキメラ抗原受容体およびこの受容体を発現する調節性T細胞に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
自己免疫疾患は、相当数の人に影響を与えている。例えば、関節リウマチ(RA)は、末梢関節を標的とする慢性炎症性疾患であり、骨侵食、運動障害、および生活の質の低下を引き起こす。世界人口の0.5~1%に影響を与えており、発生率は上昇し続けている。RAの病因は主に滑膜関節に局在し、ここでT細胞、B細胞、マクロファージ、および樹状細胞で構成される免疫細胞が、滑膜に浸潤する。その上、滑膜のサブライニング層に存在する線維芽細胞様滑膜細胞が増殖して、軟骨損傷の要因となる。
【0005】
関節リウマチにおける滑膜過形成によって、免疫細胞による滑膜の浸潤と、引き続く軟骨損傷および骨侵食とが生じる。
【0006】
現在、RAならびに他の多くの自己免疫状態の治療法は存在しない。RAを有する患者には、生涯にわたる処置が通常、必要とされ、これは極めて高価であることに加えて、長期的にみて重度の副作用、例えば、感染症および関節リウマチのリスクをもたらし得る。
【0007】
本明細書に組み込み、本明細書の一部を形成する添付の図面は、例となる実施形態を例示し、本記載とともに、当業者がこのような実施形態および当業者に明らかなその他の実施形態を作製および使用できるようにするのにさらに役立つ。本発明は、次の図面と組み合わせてさらに詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】MNDプロモーターおよびEGFRt骨格を含む最初のデータにより、CV CARであるBVCA1およびSBT01Gが、プレート結合完全長CVに最も強力に応答したことが示された(n=2)。
【0009】
【
図2】可溶性完全長CVを用いたアッセイにより、CV CARであるBVCA1およびSBT01G-HLに対してのみ用量応答が示された(n=1)。
【0010】
【
図3-1】可溶性ビーズ結合ペプチドを用いたアッセイにより、結合特異性が実証された(n=1)。
【
図3-2】可溶性ビーズ結合ペプチドを用いたアッセイにより、結合特異性が実証された(n=1)。
【0011】
【
図4】MND-SBT01Gが、可溶性CVではなくプレート結合CV、抗体捕捉CVに対してMND-BVCA1よりも強力な応答を示す。
【0012】
【
図5-1】Innovative Researchからの滑液の初回ロットの検査により、SBT01GがBVCA1よりも強力な応答をもたらすことが示された。
【
図5-2】Innovative Researchからの滑液の初回ロットの検査により、SBT01GがBVCA1よりも強力な応答をもたらすことが示された。
【0013】
【
図6-1】スウェーデン人患者由来の滑液試料15個のさらなる検査により、応答がもたらされた試料では、SBT01GがBVCA1よりも強力であることが示された。
【
図6-2】スウェーデン人患者由来の滑液試料15個のさらなる検査により、応答がもたらされた試料では、SBT01GがBVCA1よりも強力であることが示された。
【0014】
【
図7】滑液(SF)に対する初代Treg応答により、SBT01GがBVCA1よりもRA患者由来のSFに対してより感受性であることが実証される。
【0015】
【
図8】BVCA1ではなくSBT01Gは、プレート結合完全長PAD2シトルリン化フィブリノゲンに対しても応答可能である。
【0016】
【
図9】エフェクターおよびTregとしてのSBT01G CARはシトルリン化フィブリノゲンに対して応答するが、BVCA1は応答しない。
【0017】
【
図10-1】EF1AおよびMNDの両プロモーターにより、可溶性ビーズ結合ペプチドに対するCV CARによる機能的応答が実証される。したがって、CARプロモーターは、Treg表現型に影響しない。
【
図10-2】EF1AおよびMNDの両プロモーターにより、可溶性ビーズ結合ペプチドに対するCV CARによる機能的応答が実証される。したがって、CARプロモーターは、Treg表現型に影響しない。
【
図10-3】EF1AおよびMNDの両プロモーターにより、可溶性ビーズ結合ペプチドに対するCV CARによる機能的応答が実証される。したがって、CARプロモーターは、Treg表現型に影響しない。
【
図10-4】EF1AおよびMNDの両プロモーターにより、可溶性ビーズ結合ペプチドに対するCV CARによる機能的応答が実証される。したがって、CARプロモーターは、Treg表現型に影響しない。
【0018】
【
図11】scFvリンカーは、SBT01G CARに基づく機能にほとんど影響しないかまったく影響しない。
【0019】
【
図12-1】SBT01Gが、BVCA1よりも高いパーセンテージの細胞により発現するが、BVCA1およびSBT01G CAR-T細胞は、FoxP3およびHeliosの類似するプロファイルを有する。
【
図12-2】SBT01Gが、BVCA1よりも高いパーセンテージの細胞により発現するが、BVCA1およびSBT01G CAR-T細胞は、FoxP3およびHeliosの類似するプロファイルを有する。
【
図12-3】SBT01Gが、BVCA1よりも高いパーセンテージの細胞により発現するが、BVCA1およびSBT01G CAR-T細胞は、FoxP3およびHeliosの類似するプロファイルを有する。
【0020】
【
図13】非形質導入Treg細胞ではなくCV-CAR Treg細胞(SBT01G)が、シトルリン化ビメンチン(CV)により活性化される。活性化が、増殖、CD71発現、およびIL-10分泌の標的抗原特異的増加により実証された。
【0021】
【
図14-1】CV-CAR Treg細胞が、大多数のRA患者由来の滑液中のシトルリン化タンパク質に応答する。対照的に、CV-CAR Treg細胞は、正常対照(RAを有しない対象)由来の滑液に応答しない。
【
図14-2】CV-CAR Treg細胞が、大多数のRA患者由来の滑液中のシトルリン化タンパク質に応答する。対照的に、CV-CAR Treg細胞は、正常対照(RAを有しない対象)由来の滑液に応答しない。
【0022】
【
図15】ドナー2名由来の非形質導入Treg細胞ではなくCV-CAR Treg細胞(SBT01G)が、RA患者由来の滑液により特異的に活性化される。
【0023】
【
図16-1】CV-CAR Treg細胞の抑制機能の評価。
図16Aは、CV-CAR Treg細胞がCD3/CD28事前活性化Teff細胞の増殖をCVの非存在下ではなくCVの存在下で抑制することが可能であることを示す。
図16Bは、CV-CAR Treg細胞がCD19-CAR Teff細胞の増殖をCVの存在下で抑制することが可能であるが、一方、非形質導入Treg細胞は不可能であることを示す。
【
図16-2】CV-CAR Treg細胞の抑制機能の評価。
図16Aは、CV-CAR Treg細胞がCD3/CD28事前活性化Teff細胞の増殖をCVの非存在下ではなくCVの存在下で抑制することが可能であることを示す。
図16Bは、CV-CAR Treg細胞がCD19-CAR Teff細胞の増殖をCVの存在下で抑制することが可能であるが、一方、非形質導入Treg細胞は不可能であることを示す。
【0024】
【
図17】リポ多糖(LPS)誘発肺炎症マウスモデルにおけるin vivoでのヒトCV-CAR Treg細胞活性化のタイムラインを示す。簡潔には、0日目にヒトCV-CAR Treg細胞を静脈内に(IV)投与し、ヒトIL-2を腹腔内に(IP)毎日2回投与し、0、1、6、および12日目にLPSを鼻腔内に(IN)投与した。13日目にマウスを屠殺し、臓器を回収してTreg細胞の解析を容易とした。
【0025】
【
図18】ヒトCV-CAR Treg細胞による上皮市長因子(EGFR)発現対Cell Trace Violet(CTV)発現のレベルを比較するフローサイトメトリーのドットプロットを示す。
図18Aは、CV-CAR Treg(EGFR+)の増殖比の決定方法を示す。詳細には、増殖比は、EGFR+CTV-細胞の%をEGFR+CTV-細胞の%で割ったものに等しい。
図18Bは、EGFR比の変化倍率の決定方法を示す。
【0026】
【
図19-1】PBSの対照レシピエントではなくLPS誘発肺炎症マウスモデルにおいてCV-CAR Tregが増殖する。
図19Aは、種々の試験群の肺におけるCD45+CD3+Tregの絶対数を示し、一方、
図19Bは、種々の試験群の肺におけるTregの増殖比を示す。
【
図19-2】PBSの対照レシピエントではなくLPS誘発肺炎症マウスモデルにおいてCV-CAR Tregが増殖する。
図19Aは、種々の試験群の肺におけるCD45+CD3+Tregの絶対数を示し、一方、
図19Bは、種々の試験群の肺におけるTregの増殖比を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
概要
調節性T細胞(Treg)は、RAの患者およびマウスモデルにおいて欠損している。したがって、Tregに基づく養子細胞療法(ACT)は、RAにおいて有望な手法となっている。実際、Tregに基づくACTにより、RAの動物モデルにおいて疾患が回復する。この研究では、RA患者から単離した抗体を使用して、シトルリン化ビメンチン(CV)および罹患関節の滑膜細胞外マトリックス(ECM)に豊富かつほとんど独占的に見出される他の翻訳後修飾タンパク質に特異的なCARを操作した。
【0028】
自己免疫疾患と関連する抗原を特異的に認識するキメラ抗原受容体(CAR)を本明細書において開示する。特に、CARは、翻訳後修飾抗原に特異的であり得る。特に、CARは、ビメンチン、シトルリン化フィラグリン、およびシトルリン化フィブリノゲンを含むシトルリン化ポリペプチドに対する結合に特異的であり得る。
【0029】
キメラ抗原受容体(CAR)は、関節リウマチ(RA)を有する患者における炎症関節の細胞外マトリックス内に発現する翻訳後修飾タンパク質、すなわち、シトルリン化ビメンチン、シトルリン化フィラグリン、およびシトルリン化フィブリノゲンを特異的に標的とするように改変した。一部の実施形態では、CARの一本鎖断片の可変(scFv)部分を、RA患者の末梢血から単離したシトルリン化タンパク質に高度に特異的な抗体から得る。一実施形態では、特異的scFv鎖を第2世代CAR構築物に挿入した。一部の実施形態では、scFv鎖を、レンチウイルスベクターにクローニングしたCAR構築物に挿入した。詳細な説明では、抗体への参照は、文脈上他に指示しない限り本開示のCARの抗原結合ドメインに適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
I.定義
他に特定しない限り、生物化学、核酸化学、分子生物学、発生生物学および分子遺伝学的用語および記号は、当技術分野における標準的約定およびテキスト、例えば、Sambrook et al, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition (Cold Spring Harbor Press, 1989);Alberts and Singer, Developmental Biology, Eighth Edition (Sinauer Associates Inc., Sunderland, MA, 2006);Kornberg and Baker, DNA Replication, Second Edition (W.H. Freeman, New York, 1992);Gaits, ed., Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach (IRL Press, Oxford, 1984);Lehninger, Biochemistry, Second Edition (Worth Publishers, New York, 1975);Eckstein, ed., Oligonucleotides and Analogs: A Practical Approach (Oxford University Press, New York, 1991)等によるものに従う。
【0031】
本明細書において使用する場合、「抗原」、「免疫源」、および「抗体標的」という用語は、抗体により認識される、すなわち、抗体が結合可能な、分子、化合物、または複合体を指す。この用語は、抗体が認識可能な任意の分子、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、化学的部分、またはこれらの組合せ(例えば、リン酸化またはグリコシル化ポリペプチド等)を指し得る。この用語が、いかなる文脈においても分子が免疫原性であることを示さず、分子が抗体に標的とされ得ることを単に示すことを当業者は理解する。
【0032】
本明細書において使用する場合、「エピトープ」という用語は、抗体が認識して結合する抗原上の限局的部位を指す。エピトープは、少数のアミノ酸または少数のアミノ酸の部分、例えば、5もしくは6個またはこれよりも多く、例えば、20個またはこれよりも多くのアミノ酸、あるいはこのようなアミノ酸の部分を含み得る。一部の場合では、エピトープは、例えば、炭水化物、核酸、または脂質由来の非タンパク質成分を含む。一部の場合では、エピトープは、3次元部分である。したがって、例えば、標的がタンパク質である場合、エピトープは、連続的アミノ酸、またはタンパク質フォールディングにより近接したタンパク質の種々の部分由来のアミノ酸(例えば、非連続的エピトープ)で構成され得る。
【0033】
本明細書において使用する場合、「抗体」という用語は、抗原に特異的に結合および認識する免疫グロブリン遺伝子由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドを指す。典型的には「可変領域」は、抗体の抗原結合領域(またはこの機能性等価物)を含み、結合の特異性および親和性において最も重要である。例となる免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一の対となるポリペプチド鎖で構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50~70kD)を有する。
【0034】
抗体は、(i)重鎖定常ドメインの同一性に基づく5種の免疫グロブリン主要クラスであるアルファ(IgA)、デルタ(IgD)、イプシロン(IgE)、ガンマ(IgG)およびミュー(IgM)のいずれか、または(ii)これらのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)の抗体であり得る。軽鎖は、ラムダまたはカッパのいずれかであり得る。
【0035】
次は、種々の抗体型の非包括的一覧であり、すべて抗原結合活性を保持する:
(1)全免疫グロブリン(「インタクト」抗体とも呼ぶ)(2つの軽鎖および2つの重鎖、例えば、四量体)、
(2)免疫グロブリンポリペプチド(軽鎖または重鎖)、
(3)抗体断片、例えば、Fv(一価または二価の可変領域断片および、可変領域(例えば、VLおよび/またはVH)のみを包含し得る、Fab(VLCL VHCH)、F(ab’)2、Fv(VLVH)、scFv(一本鎖Fv)(リンカー、例えば、ペプチドリンカーにより接合されたVLおよびVHを含むポリペプチド)、(scFv)2、sc(Fv)2、二特異性sc(Fv)2、二特異性(scFv)2、ミニボディ(CH3ドメインに融合したsc(FV)2)、ダイアボディ(小型のペプチドリンカーにより繋がれている重鎖可変(VH)および軽鎖可変(VL)領域からなる一本鎖Fv(scFv)断片の非共有結合二量体)、トリアボディは、三価のsc(Fv)3または三特異性sc(Fv)3である、
(4)多価抗体(2つの異なるエピトープまたはタンパク質に結合する結合領域を含む抗体、例えば、「スコーピオン」抗体)、
(5)別のアミノ酸配列に融合する免疫グロブリン結合部分を含む融合タンパク質(例えば、蛍光タンパク質)、ならびに
(6)2つの重鎖のみを有し、通常、抗体に見出される2つの軽鎖を欠く、重鎖のみの抗体または抗体断片。
【0036】
タンデムscFvおよびダイアボディの生成および特性は、例えば、Asano et al. (2011) J Biol. Chem. 286:1812;Kenanova et al. (2010) Prot Eng Design Sel 23:789;Asano et al. (2008) Prot Eng Design Sel 21:597に記載されている。
【0037】
「CDR配列セット」という句は、本明細書において使用する場合、本明細書に記載の特定の抗体の3つの重鎖および/または3つの軽鎖のCDRを指す。「軽鎖」CDR配列セットは、軽鎖CDR配列を指す。「重鎖」CDR配列セットは、重鎖CDR配列を指す。「完全」CDR配列セットは、重鎖および軽鎖の両CDR配列を指す。CDRは、IMGT配列のアラインメントに基づいて予測する。
【0038】
本明細書において使用する場合、「キメラ抗体」という用語は、2つまたはこれよりも多くの種に由来するアミノ酸配列を有する抗体を指す。一実施形態では、軽および重の両鎖の可変領域は、所望の特異性、親和性および能力を有する、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ等)のある種に由来する抗体の可変領域に対応し、一方、定常領域は、免疫応答の誘発を回避するために、別の種に由来する配列に対して相同である(are homologous the sequence)(典型的には、治療を受けている対象、例えば、ヒトにおいて)。
【0039】
本明細書において使用する場合、「ヒト化抗体」という用語は、所望の特異性、親和性および能力を有する非ヒト抗体のVHおよびVL領域から得られたCDRを、ヒトフレームワーク配列に移植したキメラ抗体を指す。一実施形態では、ヒト化抗体のフレームワーク残基は、抗体の特異性、親和性および能力を改良および最適化するように修飾する。ヒト化、すなわち、ヒト抗体の対応する配列に代えての非ヒトCDR配列の置換は、例えば、米国特許第5,545,806号;第5,569,825号;第5,633,425号;第5,661,016号;Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988);Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992);Morrison, Nature 368:812-13 (1994);Fishwild et al., Nature Biotechnology 14:845-51 (1996)に記載の方法に従って実施することができる。
【0040】
本明細書において使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒトが生成した抗体または当技術分野において公知の任意の技術により作製されたこれに対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。
【0041】
結合の特異性は、その環境における抗体および他の物質または一般的非関連分子に関する解離定数(Kd)と比較した場合の、標的に対する抗体(または他の標的部分)の比較解離定数に関して定義することができる。Kdが大きい(高い)場合、Kdにより親和性相互作用が低いことが説明される。逆にKdが小さい(低い)場合、Kdにより、親和性相互作用が高いかまたは結合が強力であることが説明される。単なる例としては、標的に特異的に結合する抗体のKdは、フェムトモル濃度、ピコモル濃度、ナノモル濃度、またはマイクロモル濃度であってもよく、非関連物質に結合する抗体のKdは、ミリモル濃度またはこれよりも大きいことがある。結合親和性は、マイクロモル濃度範囲(kD=10-4~10-6)、ナノモル(nanomole)範囲(kD=10-7M~10-9M)、ピコモル(picomole)範囲(kD=10-10M~10-12M)、またはフェムトモル(femtomole)範囲(kD=10-13M~10-15M)内であり得る。
【0042】
本明細書において使用する場合、抗体は、10-4M未満(すなわち、マイクロモル濃度範囲内)のKdで抗原またはエピトープに結合するとき、抗原またはエピトープを「結合」または「認識」する。細胞型に関して「結合する」という用語(例えば、がん細胞に結合する抗体)は典型的に、薬剤が、そのような細胞の純粋集団において細胞の大多数に結合することを示す。例えば、所与の細胞型に結合する抗体は典型的に、指定された細胞の集団において細胞の少なくとも2/3(例えば、67、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%)に結合する。一部の場合では、ポリペプチドを提示する細胞に対する抗体の結合を、ポリペプチドを発現しない細胞に対する抗体の結合(またはこの欠如)と比較することにより、ポリペプチドに対する結合をアッセイすることができる。当業者は、結合を決定する方法および/または閾値に応じて一部の可変性が生じることを認識する。標的に対する抗体の親和性は、当技術分野において公知の方法、例えば、Ernst et al. Determination of Equilibrium Dissociation Constants, Therapeutic Monoclonal Antibodies (Wiley & Sons ed. 2009)に概説されている方法に従って決定することができる。
【0043】
本明細書において使用する場合、「よりも大きい親和性」という用語は、本明細書において使用するとき、抗体結合の相対的程度を指し、この場合、抗体Xは標的Yに対して、標的Zに対する場合よりも強力に(Kon)および/または小さい解離定数で(Koff)結合し、この文脈では、抗体Xは標的Yに対して、Zに対するよりもより大きい親和性を有する。同様に、「より小さい親和性」という用語は、本明細書において、抗体結合の程度を指し、この場合、抗体Xは標的Yに対して、標的Zに対する場合ほど強力ではなく、かつ/または標的Zに対する場合よりも大きい解離定数で結合し、この文脈では、抗体Xは標的Yに対して、Zに対する場合より小さい親和性を有する。抗体とその標的抗原との結合親和性は、KA=1/KDとして表すことができ、この場合、KDはkon/koffと等しい。konおよびkoff値は、表面プラズモン共鳴技術を使用し、例えば、Molecular Affinity Screening System(MASS-1)(Sierra Sensors GmbH、Hamburg、Germany)を使用して測定することができる。アンタゴニストまたは遮断抗体は、抗体が存在しない場合、標的抗原と関連する生物学的活性を、類似の生理学的条件下の活性と比較して部分的または完全に遮断、阻害または中和する抗体である。アンタゴニストは、競合性、非競合性または不可逆性であり得る。競合性アンタゴニストは、天然のリガンド-受容体相互作用として、同一部位で天然のリガンドまたは受容体に結合するか、または正常な結合を妨げる変化を誘導するようにアロステリックに結合する物質である。非競合性アンタゴニストは、天然リガンド-受容体相互作用とは異なる部位に結合するが、この相互作用から低いKDまたはシグナルが生じる。不可逆性阻害剤は、受容体に共有結合的修飾が生じて、引き続く任意の結合を妨げる。
【0044】
本明細書において使用する場合、「アビディティ」という用語は、抗体と標的抗原との結合複合体の全体的安定性を指す。これは、3つの因子、(i)抗原に対する抗体の内因的親和性、(2)抗体の結合価、および(3)相互作用する成分の幾何学的配置により決定される。親和性は、抗体と単一の標的との相互作用の強度であり、一方、アビディティは、複数の親和性の累積強度である。一実施形態では、本明細書において提供する抗体は、二価である。
【0045】
本明細書において使用する場合、抗体は、それが第2の抗原に結合する場合の親和性よりも大きい親和性で第1の抗原に結合する場合、第2の抗原と比較して第1の抗原に「優先的に結合する」結合する。優先的結合は、2倍、5倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍または1000倍大きい親和性の少なくともいずれかであり得る。
【0046】
本明細書において使用する場合、抗体は、1×10-6M、1×10-7M、1×10-8M、1×10-9M、1×10-10M、1×10-11M、1×10-12Mの少なくともいずれかの親和性で標的抗原または抗原の標的群の各メンバーに結合し、例えば、比較する非標的抗原に対する親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で標的抗原または抗原の標的群の各メンバーに結合するとき、標的抗原または抗原の標的群「に特異的に結合する」かまたは「に特異的」である。典型的には、特異的結合は、抗体が、抗原もしくはエピトープを検出するための診断薬として、および/または抗原もしくはエピトープの標的化における治療剤として有用であるのに十分な親和性で抗原に結合することにより特徴付けられる。
【0047】
本明細書において使用する場合、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合により繋がれている天然および/または非天然のアミノ酸の配列を有する分子を指す。「ペプチド」という用語は、短いポリペプチドを指し、典型的には、アミノ酸30個以下の長さである。ポリペプチドのアミノ酸配列は、「一次構造」と呼ぶ。「タンパク質」という用語は、二次、三次および/または四次構造を有し、例えば、二次構造および1つより多くのタンパク質で形成される構造の間の相関である、水素結合により安定化した構造を有するポリペプチドを指す。タンパク質は、他の結合部分、例えば、炭水化物(糖タンパク質)、脂質(リポタンパク質)、リン酸基(リンタンパク質)等によりさらに修飾することができる。
【0048】
本明細書において使用する場合、アミノ酸配列は、その配列内のアミノ酸のみ「からなる」。
【0049】
本明細書において使用する場合、第1のアミノ酸配列が、(1)第2のアミノ酸配列を含み、(2)第2のアミノ酸配列よりもアミノ酸1個以下、アミノ酸2個以下またはアミノ酸3個以下の長さである場合、第1のアミノ酸配列は、第2のアミノ酸配列「から本質的になる」。
【0050】
本明細書において使用する場合、第2のアミノ酸配列が第1のアミノ酸配列を含む場合、第1のアミノ酸配列は、第2のアミノ酸配列の「断片」である。ある特定の実施形態では、第2のアミノ酸配列の断片である第1のアミノ酸配列は、第2のアミノ酸配列よりもアミノ酸1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のいずれか以下少ないアミノ酸を有し得る。
【0051】
本明細書において使用する場合、参照アミノ酸配列の「機能性等価物」は、参照配列と同一ではないが、例えば、1つまたはいくつかのアミノ酸の挿入、欠失または置換のような軽微な変更を含む配列である。機能性等価配列は、等価な参照配列の機能(例えば、免疫原性)を保持する。参照配列に関して機能的に等価なアミノ酸配列が1つまたは複数のアミノ酸の置換を含む場合、これらは一般に保存的アミノ酸置換であり得る。
【0052】
本明細書において使用する場合、「保存的アミノ酸置換」は、タンパク質の所望の特性を消失させることなく、あるアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置き換えるものである。適する保存的アミノ酸置換は、類似の疎水性、極性、およびR鎖長を有するアミノ酸を互いに対して置換することにより成し得る。例えば、Watson, et al., “Molecular Biology of the Gene,” 4th Edition, 1987, The Benjamin/Cummings Pub. Co., Menlo Park, CA, p. 224を参照されたい。保存的アミノ酸置換の例としては、次が挙げられる(一部のカテゴリーは相互排他的ではないことに注意されたい)。
【表1】
【0053】
本明細書において使用する場合、「実質的に同一」という用語は、i)第2のアミノ酸配列のアラインメントしたアミノ酸残基と同一であるか、またはii)第2のアミノ酸配列のアラインメントしたアミノ酸残基の保存的置換となるのに十分な数または最小数のアミノ酸残基を含み、第1および第2のアミノ酸配列が共通の構造ドメインおよび/または共通の機能活性および/または共通の免疫原性を有するような、第1のアミノ酸配列との同一性を指す。例えば、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する共通の構造ドメインまたは抗原ドメインを含むアミノ酸配列は、十分にまたは実質的に同一であると称する。ヌクレオチド配列の文脈では、「実質的に同一」という用語は、第2の核酸配列のアラインメントしたヌクレオチドと同一である十分な数または最小数のヌクレオチドを含む第1の核酸配列を指すために本明細書において使用され、ただし、第1および第2のヌクレオチド配列が共通の機能活性を有するポリペプチドをコードするか、または共通の構造ポリペプチドドメインまたは共通の機能的ポリペプチド活性をコードするか、または同一の免疫原性特性を有するポリペプチドをコードする。
【0054】
本明細書において使用する場合、化学的実体、例えば、ポリペプチドは、組成物中のその種(例えば、ポリペプチド)のうちの優勢な化学的実体である場合、「実質的に純粋」であるか、または「単離」されている。これは、組成物中のその種の化学的実体の50%を超えるか、80%を超えるか、90%を超えるか、95%を超えるか、98%を超えるか、99%を超えるか、99.5%を超えるか、99.9%を超えるか、または99.99%を超える化学的実体を含む。実質的に精製した画分は、対象種が、存在するすべての高分子種の少なくとも約50%(モル基準で)を含む組成物である。一般には、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する高分子種の約80%~90%またはこれよりも多くが、精製した目的の種であることを意味する。組成物が単一の高分子種から本質的になる場合、対象種は、本質的に均一となる(従来の検出方法により組成物中に夾雑種が検出不可能である)まで精製する。溶媒種、低分子、安定剤(例えば、BSA)、および元素イオン種は、この定義の目的では高分子種であるとは考えない。
【0055】
「単離抗体」という句は、抗体を産生した源、例えば、動物、ハイブリドーマまたは他の細胞株(例えば、抗体を産生する昆虫、酵母または細菌の組換え細胞)から取り出した、in vivoまたはin vitroでの生成抗体を指す。
【0056】
「配列同一性」という用語は、本明細書において使用する場合、2つのポリペプチド配列間または2つの核酸配列間の配列同一性のパーセンテージを指す。2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、最適な比較目的で配列をアラインメントする(例えば、第2のアミノ酸または核酸配列との最適なアラインメントのために第1のアミノ酸の配列または核酸配列にギャップを導入することができる)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列内の位置が、第2の配列内の対応する位置として同一のアミノ酸残基またはヌクレオチドが占有する場合、その位置の分子は同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列が共有する同一位置数の関数である(すなわち、%同一性=同一のオーバーラップする位置の数/位置の総数×100%)。一実施形態では、2つの配列は同一の長さである。また、2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。2つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの好ましい非制限的な例は、Karlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:2264-2268のアルゴリズムであり、Karlin and Altschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:5873-5877のように改変された。このようなアルゴリズムは、Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTヌクレオチドプログラムのパラメーター設定、例えば、score=100、wordlength=12により実施して、本出願の核酸分子と相同のヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、例えば、score-50、wordlength=3に設定したXBLASTプログラムのパラメーターを用いて実施して、本明細書に記載のタンパク質分子と相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較目的でギャップを導入したアラインメントを得るために、Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402に記載のようにギャップを導入したBLASTを利用することができる。あるいは、PSI-BLASTを使用して、反復検索を実施し、これにより分子間の距離関係を検出することができる(同上)。BLAST、ギャップを導入したBLAST、およびPSI-Blastのプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用することができる(例えば、NCBIのウェブサイトを参照)。配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい非制限的な例は、Myers and Miller, 1988, CABIOS 4:11-17のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重み残基表、ギャップ長ペナルティー12、およびギャップペナルティー4を使用することができる。2つの配列間のパーセント同一性は、上記に類似の技術を使用してギャップ許容の有無により決定することができる。パーセント同一性の算出では、典型的には、完全一致のみを計数する。
【0057】
抗体では、抗体配列をIMGTにより最大限にアラインメントした場合、パーセンテージ配列同一性を決定することができる。アラインメント後、対象抗体領域(例えば、重または軽鎖の成熟可変領域全体)を参照抗体の同一領域と比較する場合、対象と参照抗体領域とのパーセンテージ配列同一性は、対象および参照抗体の両領域の同一アミノ酸が占有する位置の数を、2つの領域のアラインメントした位置の総数で割り、100を掛けてパーセンテージに変換した数である。
【0058】
また、パーセントアミノ酸配列同一性は、配列比較プログラムNCBI-BLAST2を使用して決定し得る(Altschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402 (1997))。NCBI-BLAST2配列比較プログラムは、国立衛生研究所、Bethesda,Md.から入手し得る。NCBI-BLAST2では、いくつかの検索パラメーターを使用し、この場合、このような検索パラメーターはすべて、例えば、unmask=yes、strand=all、expected occurrences=10、minimum low complexity length=15/5、multi-pass e-value=0.01、constant for multi-pass=25、dropoff for final gapped alignment=25およびscoring matrix=BLOSUM62を含むデフォルト値に設定する。
【0059】
アミノ酸配列比較にNCBI-BLAST2を利用する状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bに比しての、それとの、または、それに対しての%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bに比しての、それとの、または、それに対してのある特定の%アミノ酸配列同一性を有するかまたはこれを含む所与のアミノ酸配列Aとして表現可能)は、次のように算出する:100×(X/Y)。式中、Xは、配列アラインメントプログラムNCBI-BLAST2によるAおよびBのプログラムアラインメントから完全な一致として点数化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性と等しくないことが理解される。「核酸配列」という用語は、本明細書において使用する場合、天然に存在する塩基、糖、および糖間(骨格)連結からなるヌクレオシドまたはヌクレオチド単量体の配列を指し、cDNAを含む。また、この用語は、修飾または置換した配列を含み、天然には存在しない単量体またはこの部分を含む。本出願の核酸配列は、デオキシリボ核酸配列(DNA)またはリボ核酸配列(RNA)であってもよく、アデニン、グアニン、シトシン、チミジン、およびウラシルを含む、天然に存在する塩基を含み得る。また、配列は、修飾した塩基を含み得る。このような修飾塩基の例としては、アザおよびデアザアデニン、アザおよびデアザグアニン、アザおよびデアザシトシン、アザおよびデアザチミジン、およびアザおよびデアザウラシル;ならびにキサンチンおよびヒポキサンチンが挙げられる。転写不能ヌクレオチド塩基を含むポリヌクレオチドは、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイにおいて、プローブとして有用であり得ることが理解される。核酸は、二本鎖または一本鎖のいずれかであり、センス鎖またはアンチセンス鎖となり得る。さらに、「核酸」という用語は、相補性核酸配列ならびにコドン最適化または同義コドンの等価物を含む。
【0060】
「単離核酸」という用語は、本明細書において使用する場合、組換えDNA技術によって生成するときの細胞物質もしくは培養培地、または化学合成するときの化学的前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない核酸を指す。また、単離核酸は、その核酸が由来する核酸に天然に隣接する配列(すなわち、核酸の5’および3’末端に位置する配列)を実質的に含まない。
【0061】
ハイブリダイゼーションは、核酸配列分子の全部または一部に生じ得る。ハイブリダイズする部分は典型的に、少なくとも15(例えば、20、25、30、40または50)ヌクレオチドの長さである。当業者は、核酸二本鎖、またはハイブリッドの安定性はTmにより決定され、これは、ナトリウム含有緩衝液中では、ナトリウムイオン濃度および温度の関数であることを認識する(Tm=81.5℃-16.6(Log10[Na+])+0.41(%(G+C)-600/l)、または類似の式)。したがって、ハイブリッドの安定性を決定する洗浄条件のパラメーターは、ナトリウムイオン濃度および温度である。公知の核酸分子と類似するが同一ではない分子を同定するために、1%の不一致によりTmが約1℃低下すると想定することができ、例えば、95%を超える同一性を有する核酸分子を求める場合、最終洗浄温度を約5℃低下させる。このような考察に基づいて、当業者は、適切なハイブリダイゼーション条件を容易に選択することが可能である。好ましい実施形態では、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を選択する。例として、次の条件を利用してストリンジェントなハイブリダイゼーションを達成し得る:上の式に基づくTm-5℃の5×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)/5×デンハート液/1.0%SDSによるハイブリダイゼーション後、60℃の0.2×SSC/0.1%SDSによる洗浄。中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件では、42℃の3×SSCによる洗浄ステップを含む。しかし、等価なストリンジェンシーを代替の緩衝液、塩、および温度を使用して達成し得ることが理解される。ハイブリダイゼーション条件に関するさらなるガイダンスは、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y., 2002、およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001に見出すことができる。
【0062】
本明細書において使用する場合、「発現構築物」という用語は、発現の対象となる異種ヌクレオチド配列(すなわち、発現制御配列が通常は現実には繋がれていない配列)と作動的に連結する発現制御配列を含むポリヌクレオチドを指す。本明細書において使用する場合、「発現ベクター」という用語は、発現構築物、および宿主細胞における複製または宿主染色体への挿入に十分な配列を含む、ポリヌクレオチドを指す。プラスミドおよびウイルスは、発現ベクターの例である。本明細書において使用する場合、「発現制御配列」という用語は、それに作動的に連結するヌクレオチド配列の転写および/または翻訳を調節するヌクレオチド配列を指す。発現制御配列は、プロモーター、エンハンサー、リプレッサー(転写調節配列)、およびリボソーム結合部位(翻訳調節配列)を含む。
【0063】
本明細書において使用する場合、ヌクレオチド配列は、発現制御配列が細胞内で機能してヌクレオチド配列の転写を調節する場合、発現制御配列と「作動的に連結する」。これには、ポリメラーゼとプロモーターとの相互作用によるヌクレオチド配列の転写の促進を含む。
【0064】
「ベクター」という用語は、本明細書において使用する場合、核酸分子が、例えば、原核細胞および/もしくは真核細胞に導入され、ならびに/またはゲノムに組み込まれることが可能となる、前記核酸分子についての任意の中間ビヒクルを含み、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージまたはウイルスベクター、例えば、レトロウイルスに基づくベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター等を含む。「プラスミド」という用語は、本明細書において使用する場合、通常は環状DNA二本鎖である、染色体外遺伝物質の構築物を一般に指し、これは染色体DNAとは独立的に複製することができる。
【0065】
「トランスフェクション」は、細胞への新たな遺伝物質の導入を指す。これは、形質転換(細胞膜を通じたその周囲からの外因性遺伝物質の直接的取込みおよび組込み)、形質導入(バクテリオファージウイルスによる宿主細胞への外来DNAの導入)、およびコンジュゲーションを含む。
【0066】
本明細書において使用する場合、「宿主細胞」は、発現構築物を含む組換え細胞を指す。
【0067】
本明細書において使用する場合、「生体試料」という用語は、細胞(例えば、腫瘍細胞)または細胞に由来する生体分子を含む試料を指す。
【0068】
本明細書において使用する場合、「治療」、「処置」、「治療的介入」および「回復」という用語(term terms)は、症状の重症度の低下をもたらす任意の活性を指す。「処置する」および「防止する」という用語は、絶対的であることは意図しない。処置および防止は、発症の遅延、症状の回復、患者生存の向上、生存時間または生存率の上昇等のいずれかを指し得る。処置および防止は、完全または部分的であり得る。処置の作用は、処置を受けていない個体もしくは個体のプール、または処置前もしくは処置中の異なる時間における同一患者と比較し得る。一部の態様では、疾患の重症度は、例えば、投与前の個体または処置を受けていない個体対照と比較して少なくとも10%低下する。一部の態様では、疾患の重症度は、少なくとも25%、50%、75%、80%、もしくは90%低下するか、または一部の場合では、標準的診断技術を使用して、もはや検出不可能となる。また、「処置すること(treating)」および「処置」は、処置を受けていない場合に予想された生存と比較した生存の延長を意味し得る。また、「処置すること」および「処置」は、本明細書において使用する場合、予防的処置を含む。
【0069】
1つまたは複数の列挙する要素を「含む(comprising)」または「含む(including)」組成物または方法は、詳細には列挙しない他の要素(例えば、それを含むが制限されないことを意味する無制限の用語)を含み得る。例えば、抗体を「含む(comprise)」または「含む(include)」組成物は、抗体を単独で、または他の成分と組み合わせて含み得る。対照的に、「からなる」という句は、制限的であり、このような実施形態がさらなる要素を含まないことを示す。「から本質的になる」という用語は、列挙する要素、および主張する組合せの基本的かつ新規の特性に実質的に影響しない他の要素(例えば、部分的制限的用語)を包含することを指す。「含む(comprising)」としての本明細書に記載の態様および実施形態は、実施形態「からなる」および実施形態「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0070】
本明細書において使用する場合、他に特定しない限り次の意味を適用する。「may(し得る)」の単語は、強制的意味(すなわち、must(義務や必要)を意味する)ではなく、許容的意味(すなわち、に対し潜在性を有する意味)において使用する。「a」、「an」および「the」の単数形は、複数参照を含む。したがって、例えば、「エレメント」を参照する場合、1つまたは複数のエレメントについての他の用語および句、例えば、「1つまたは複数」の使用にかかわらず、2つまたはこれよりも多いエレメントの組合せを含む。「少なくとも1つ」という句は、「1つ」、「1つまたは複数(one or more)」および「1つまたは複数(one or a plurality)」、ならびに「複数(plurality)」を含む。「または」という用語は、他に指示しない限り、非排他的、すなわち、「および」ならびに「または」の両方を包含する。修飾子とシーケンスとの間に位置する「のいずれか(any of)」という用語は、修飾子がシーケンスの各メンバーを修飾することを意味する。したがって、例えば、「1、2または3の少なくともいずれか」という句は、「少なくとも1、少なくとも2または少なくとも3」を意味する。
II.キメラ抗原受容体
【0071】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」は、必要に応じたシグナルペプチド、標的結合ドメイン、必要に応じたヒンジ領域、膜貫通ドメイン、細胞内シグナリングドメイン、および必要に応じた共刺激ドメインを含む操作された分子である。CARは、T細胞上に発現し、細胞媒介免疫応答に関与する、T細胞受容体の構造に基づく。また「標的結合ドメイン」は、本明細書において「抗原結合ドメイン」と呼び、したがって「標的」という用語は、「抗原」を包含する。
【0072】
いわゆる「第1世代」CARは、標的ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインを有した。いわゆる「第2世代」CARは、共刺激ドメイン、例えば、CD28または4-1BBドメインをさらに含んだ。いわゆる「第3世代」CARは、複数の共刺激ドメインを含む。「TRUCKS」とも呼ぶ、いわゆる「第4世代」CARは、CARシグナリングの際にトランスジェニックサイトカインを放出するように操作されている。
【0073】
キメラ抗原受容体(「CAR」)は、次のエレメント:(1)必要に応じたシグナルペプチド、(2)標的結合ドメイン、(3)必要に応じたヒンジ領域、(4)膜貫通領域、(5)シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインを含む。必要に応じてCARは、CD3ζシグナル伝達ドメイン、Fc受容体シグナル伝達ドメイン、共刺激(シグナル伝達)ドメインのいずれかを含み得る。すなわち、このような必要に応じたエレメントを、他の必要に応じたエレメントに加えて、またはその代わりに含み得る。標的結合ドメインは、他のドメインの少なくとも1つに対して異種である。すなわち、標的結合ドメインは、T細胞受容体上に天然には存在しないか、または他のドメインの少なくとも1つと同一のタンパク質には存在しない。
【0074】
「標的結合ドメイン」は、CARに対する結合特異性をもたらす。「シグナルペプチド」は、細胞膜を通じてポリペプチドを導く。標的結合ドメインは、いわゆる「ユニバーサルCAR」に対する標的抗原に結合する抗体のドメインに結合し得る。「ヒンジ領域」は、可動性コネクター領域、例えば、天然もしくは合成のポリペプチド、または構造的可動性をもたらし、隣接するポリペプチド領域に間隔をあける他の任意の種類の分子である。「膜貫通ドメイン」は、典型的には疎水性の、膜を貫通するタンパク質のドメインである。「シグナル伝達ドメイン」または「シグナリングドメイン」は、結合の際、細胞内にシグナル伝達経路を通じてシグナルを伝える。このようなシグナリングにより、細胞の活性が活性化される。「共刺激ドメイン」は、シグナルをさらに伝えるアクセサリーシグナリングドメインである。
【0075】
一部の実施形態では、CARは次を含む。
(i)シトルリン化タンパク質またはこのシトルリン化断片、例えば、VH-VLまたはVL-VHに反応性の標的結合ドメイン(本明細書において抗原結合ドメインとも呼ぶ)。2つの可変ドメインが、15~25アミノ酸の長さの可動性リンカーにより分離される。
(ii)ヒンジドメイン、
(iii)共刺激ドメイン、および
(iv)細胞内シグナリングドメイン(本明細書において活性化ドメインとも呼ぶ)。すなわち、一部の実施形態では、CARは、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに共刺激ドメインおよび活性化ドメインを含む細胞内ドメインを含む、CARプラットフォームに融合する抗原結合ドメインを含む。CARは、CARの発現を細胞、例えば、Tregの表面に方向付けるシグナルペプチド(本明細書においてリーダー配列とも呼ぶ)をさらに含み得る。
【0076】
一部の実施形態では、CARは、配列番号15、配列番号17、配列番号28、および配列番号19のアミノ酸配列を含むCARプラットフォームにインフレームで融合した抗原結合ドメインを含む。他の実施形態では、CARは、配列番号30、配列番号16、配列番号28、および配列番号19のアミノ酸配列を含むCARプラットフォームにインフレームで融合した抗原結合ドメインを含む。一部の実施形態では、CARは、配列番号30、配列番号16、配列番号29、および配列番号19のアミノ酸配列を含むCARプラットフォームにインフレームで融合した抗原結合ドメインを含む。他の実施形態では、CARは、配列番号30、配列番号16、配列番号29、および配列番号19のアミノ酸配列を含むCARプラットフォームにインフレームで融合した抗原結合ドメインを含む。
A.シグナルペプチド
【0077】
シグナルペプチドは、ポリペプチドの細胞膜横断を可能とする機能を有する任意のペプチドであり得る。シグナルペプチドは、CD4、CD8、CD28、TLRまたは受容体の免疫グロブリンファミリーに由来し得る。
【0078】
例えば、シグナルペプチドは、次の配列を含み得る。
MLLLVTSLLLCELPHPAFLLIP(配列番号18)、または
MALPVTALLLPLALLLHAAR(配列番号23)。
B.標的結合ドメイン
1.構造
【0079】
標的結合ドメインは、標的結合機能を含む任意のポリペプチド、例えば、本明細書に定義の抗体を含み得る。一実施形態では、標的結合ドメインは、本明細書に定義の抗原結合活性を保持する抗体型を含み得る。一実施形態では、標的結合ドメインは、一本鎖抗体(scFV)を含み得る。scFVは、長さ、可動性、および起源によりCAR設計の可変性がもたらされるヒンジドメインを介して膜貫通ドメインに繋がれていてよく、膜貫通ドメインとともに、抗原との相互作用、免疫学的シナプスの構築に寄与し、頑強な活性化シグナルの付与に必要とされるさらなるタンパク質とCARとの会合に影響し得る。
2.標的/抗原
【0080】
本明細書に開示のキメラ抗原受容体は、例えば、関節リウマチを有する対象の滑膜に見出されるシトルリン化抗原に結合する標的結合ドメイン(本明細書において抗原結合ドメインとも呼ぶ)を含む。特に、標的結合ドメインは、(i)シトルリン化ビメンチン、(ii)シトルリン化フィラグリン、(iii)シトルリン化フィブリノゲン、および(iv)これらのシトルリン化ペプチドの1つまたは複数に結合し得る。一部の実施形態では、標的結合ドメインは、(i)~(iii)のシトルリン化ペプチド断片に結合してもよく、この場合、ペプチド断片は、少なくとも10アミノ酸の長さ、例えば、少なくとも12アミノ酸、少なくとも14アミノ酸または少なくとも16アミノ酸の長さのものである。一部の実施形態では、標的結合ドメインは、テネイシンCにさらに結合する。一部の実施形態では、標的結合ドメインは、(i)シトルリン化ビメンチン、(ii)シトルリン化フィラグリン、(iii)シトルリン化フィブリノゲン、および(iv)テネイシンC、またはこれらのシトルリン化ペプチド断片の2つまたはこれよりも多くに結合し得る。
【0081】
一部の実施形態では、標的ドメインは、次の配列から選択される1つまたは複数のシトルリン化ペプチドである。
ST(Cit)SVSSSSY(Cit)(Cit)MFGG(配列番号24);
VYAT(Cit)SSAV(Cit)L(Cit)SSV(配列番号25);
(Cit)PAPPPISGGGY(Cit)A(Cit)(配列番号26);
SHQEST(Cit)GRSRGRSGRSGS(配列番号27)。
【0082】
一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、1つまたは複数のシトルリン化ペプチドに結合するが、非シトルリン化対応物には結合しない。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、STRSVSSSSYRRMFGG(配列番号45)ではなく、配列番号24として記載のシトルリン化ビメンチンペプチドに結合する。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、VYATRSSAVRLRSSV(配列番号46)ではなく、配列番号25として記載のシトルリン化ビメンチンペプチドに結合する。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、RPAPPPISGGGYRAR(配列番号47)ではなく、配列番号26として記載のシトルリン化フィブリノゲンペプチドに結合する。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、SHQESTRGRSRGRSGRSGS(配列番号48)ではなく、配列番号27として記載のシトルリン化フィラグリンペプチドに結合する。
【0083】
標的結合ドメインは、抗体のVHドメインおよびVLドメイン由来の配列を含み得る。一部の実施形態では、標的結合ドメインは、2つのVHドメインのみを有する、重鎖のみの抗体または抗体断片由来の配列を含み得る。これは、VHドメインおよびVLドメイン由来の特定のCDRセットを含む。一部の実施形態では、標的結合ドメインは、配列番号1または配列番号2のVHドメイン由来のCDRを含む。一部の実施形態では、標的結合ドメインは、配列番号3または配列番号4のVLドメイン由来のCDRを含む。一部の実施形態では、標的結合ドメインは、配列番号1のVHドメインおよび配列番号3のVLドメイン由来のCDRをそれぞれ含む。一部の実施形態では、標的結合ドメインは、配列番号1のVHドメインおよび配列番号4のVLドメイン由来のCDRをそれぞれ含む。一部の実施形態では、標的結合ドメインは、配列番号2のVHドメインおよび配列番号3のVLドメイン由来のCDRをそれぞれ含む。一部の実施形態では、標的結合ドメインは、配列番号2のVHドメインおよび配列番号4のVLドメイン由来のCDRをそれぞれ含む。
【0084】
一部の実施形態では、標的結合ドメインは、配列番号1のVHドメイン(SBT01 VH(M))および配列番号4のVLドメイン(SBT01 VL(G))由来の相補性決定領域(CDR)を含む。一部の実施形態では、標的結合ドメインのVHドメインは、配列番号32のアミノ酸配列を含むVH-CDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むVH-CDR2、および配列番号36のアミノ酸配列を含むVH-CDR3を含み、標的結合ドメインのVLドメインは、配列番号39のアミノ酸配列を含むVL-CDR1、配列番号41のアミノ酸配列を含むVL-CDR2、および配列番号43のアミノ酸配列を含むVL-CDR3を含む。
【表2】
【0085】
ある特定の実施形態では、標的結合ドメインは、
(1)SBT01 VH(M)
HLHLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSINDTTYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYRGNTHYNSSLRSRVTMSVDTSKNRFSLKVTSVTAADTAVYYCARLDPFDYWGRGTLVTVSS(配列番号1);
(2)SBT01 VH(G)
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLDPFDYWGRGTLVTVSS(配列番号2)、または
前述の配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
から選択されるVH配列を含むが、ただし、標的結合ドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。
【0086】
標的結合領域は、
(1)SBT01 VL(M)
SYVLTQPPSVSLAPGETATITCGGDDIENQNVNWYQQKSGQAPMLLIFFDTRRPSGIPERFSGSRSEDTANLTITRVEAGDDADYFCQVYDRKTDHQVFGPGTTVTVL(配列番号3);
(2)SBT01 VL(G)
SYVLTQPPSVSVAPGKTARITCGGNNIGSKSVHWYQQKPGQAPVLVIYYDSDRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISRVEAGDEADYYCQVWDSSSDHQVFGTGTKVTVL(配列番号4)、または
前述の配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
から選択されるVL配列を含み得るが、ただし、標的結合ドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。
【0087】
別の実施形態では、抗原結合領域は、配列番号1または配列番号2のVHドメインのアミノ酸配列を含む1つまたは複数のVHドメインを含むscFVを含む。一部の実施形態では、抗原結合領域は、配列番号1または配列番号2の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。
【0088】
一部の実施形態では、scFVは、配列番号3または配列番号4のVLドメインを含む。一部の実施形態では、抗原結合領域は、配列番号3または配列番号4の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。
【0089】
一部の実施形態では、scFVドメインは、配列番号1および配列番号3のVHドメインおよびVLドメインをそれぞれ含む。一部の実施形態では、抗原結合領域は、配列番号1または配列番号3の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。一部の実施形態では、配列番号20、配列番号21または配列番号22から選択されるリンカーは、VHドメインとVLドメインとの間に配置される。
【0090】
一部の実施形態では、scFVドメインは、配列番号1および配列番号4のVHドメインおよびVLドメインをそれぞれ含む。一部の実施形態では、抗原結合領域は、配列番号1および配列番号4の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。一部の実施形態では、配列番号20、配列番号21または配列番号22から選択されるリンカーは、VHドメインとVLドメインとの間に配置される。
【0091】
一部の実施形態では、scFVドメインは、配列番号2および配列番号3のVHドメインおよびVLドメインをそれぞれ含む。一部の実施形態では、抗原結合領域は、配列番号2および配列番号3の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。一部の実施形態では、配列番号20、配列番号21または配列番号22から選択されるリンカーは、VHドメインとVLドメインとの間に配置される。
【0092】
一部の実施形態では、scFVドメインは、配列番号2および配列番号4のVHドメインおよびVLドメインをそれぞれ含む。一部の実施形態では、抗原結合領域は、配列番号2および配列番号4の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。一部の実施形態では、配列番号20、配列番号21または配列番号22から選択されるリンカーは、VHドメインとVLドメインとの間に配置される。
【0093】
別の実施形態では、抗原結合領域は、
SBT01G-VHVL-GGGSx3リンカー-pSB_0149
【化1】
(GGGSx3リンカーに下線を付す);
SBT01G-VHVL-Whitlow 218リンカー-pSB_0158
【化2】
(Whitlow 218リンカーに下線を付す);
SBT01G-VHVL-AB purリンカー-pSB_0159
【化3】
(AB purリンカーに下線を付す);または
前述の配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
から選択されるアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、標的結合ドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。
【0094】
例えば、リンカーは、配列:
GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号20)のGGGS×3リンカー、または
GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号21)のWhitlow218リンカー、または
ASSGGSTSGSGKPGSGEGSSGSAR(配列番号22)のAB purリンカー
を含み得る。
【0095】
必要に応じて、前述の配列のいずれかは、上記のVHドメインおよびVLドメイン由来のCDRセットを含み得る。
C.ヒンジ領域
【0096】
一部の実施形態では、開示するCARのヒンジ領域は、当業者に公知でありGenBankデータベースに見出すことができるように、CD8、CD4、またはCD28細胞外ドメイン、IgG1抗体のFc領域、またはTLR受容体のいずれかの細胞外ドメインから選択され得る。
【0097】
例えば、ヒンジ領域は、配列:
IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号30)(CD28)、または
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC(配列番号15)(CD8)、または
前述のヒンジ領域配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
を含み得る。
D.膜貫通ドメイン
【0098】
膜貫通ドメインは、免疫グロブリンファミリー受容体、例えば、CD8の膜貫通ドメインを含み得る。細胞内ドメインは、T細胞上の膜を貫通する任意の分子から選択され得る。例えば、開示するCARの膜貫通(TM)ドメインは、CD2、CD3、CD16、CD32、CD64、CD28、CD247、4-1BBL、CD4、またはCD8のTMドメインを含み得る。
【0099】
例えば、膜貫通ドメインは、配列:
FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号16)、または
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC(配列番号17)、または
前述のヒンジ領域配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
を含み得る。
E.シグナル伝達ドメイン
1.CD3ζシグナル伝達ドメイン
【0100】
一部の実施形態では、シグナル伝達ドメインは、CD3ζシグナリングドメインを含む。開示するCAR分子のCD3ζシグナリングドメインは、CD3ζアミノ酸配列、例えば、CD3ゼータのシグナル伝達ドメインを含み得る。
【0101】
例えば、CD3ζシグナル伝達ドメインは、配列:
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号19)、または
前述のCD3ゼータシグナル伝達ドメイン配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
を含み得る。
【0102】
例えば、CD3ゼータシグナル伝達ドメインは、配列番号19に示す配列のアミノ酸21~163、31~142、68~89、および/もしくは138~158、またはこれらの機能性バリアントを含み得る(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10~20アミノ酸の置換、欠失、または付加を有する)。
2.Fc受容体シグナル伝達ドメイン
【0103】
一部の実施形態では、シグナル伝達ドメインは、Fcシグナリングドメインを含む。Fcシグナリングドメインは、Fcアルファ、Fcガンマ、Fcイプシロン、Fcミュー、およびFcデルタのいずれか1つの受容体であり得る。例えば、Fc受容体シグナリングドメインは、Srcファミリーキナーゼ(例えば、Fgr、Fyn、Hck、Lyn、Yes、およびSrc)ならびにZAP-70ファミリーキナーゼとの相互作用に関与するアミノ酸、例えば、1つまたは複数のITAMドメインを含み得る(例えば、Sanchez-Mejorada et al. (1998) J. Leukocyte Biol. 63:531;Garcia-Garcia et al. (2002) J. Leukocyte Biol. 72:1092を参照)。一部の実施形態では、Fc受容体シグナル伝達ドメインは、例えば、Fcアルファ、Fcガンマ、Fcイプシロン、Fcミュー、およびFcデルタのいずれか1つの受容体由来であるか、またはこれらと実質的に同一の、少なくとも1つのITAMドメインを含む。
【0104】
また、配列は、次のように見出すことができる。
【表3】
F.共刺激ドメイン
【0105】
本開示のCARは、CD3ζまたはFc受容体のシグナル伝達ドメインに加えて1つまたは複数の共刺激ドメインを含み得る。共刺激ドメインは、例えば、CD28、4-1BB、CD2、CD27、CD30、OX40、CD40、PD-1、PD-L1、PD-L2、ICOS、LFA-1、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83L、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、B7-H3、B7-H4などに由来し得る。CAR構築物は、2つまたはこれよりも多い共刺激シグナリングドメイン(例えば、CD28および4-1BB)を含み得る。
【0106】
1つまたは複数の共刺激ドメインは、シグナル伝達ドメインと膜貫通領域との間に位置し得る。
【0107】
特定の実施形態では、CD28共刺激ドメインは、配列:
RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号29)、または
前述の配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
を含み得る。
【0108】
ある特定の実施形態では、41BB共刺激ドメインは、配列:
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号28)、または
前述の配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
を含み得る。
III.核酸
A.CARをコードする核酸
【0109】
本開示のCARをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子(ポリヌクレオチド)を本明細書において開示する。開示するCARの核酸は、DNAまたはRNAの形態であり得る。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを含み、二本鎖または一本鎖であってもよく、一本鎖である場合、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖であり得る。RNAは、mRNA、siRNA、sRNA、ssRNA等を含む。
【0110】
例えば、核酸は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4のいずれかのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得る。ある特定の実施形態では、VHドメインをコードするヌクレオチド配列は、
(1)SBT01 VH(M)
【化4】
(2)SBT01 VH(G)
【化5】
または
前述の配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
を含む。
【0111】
ある特定の実施形態では、VLドメインをコードするヌクレオチド配列は、
(1)SBT01 VL(M)
【化6】
(2)SBT01 VL(G)
【化7】
または
前述の配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
を含む。
【0112】
別の実施形態では、VHドメインをコードする核酸分子は、配列番号8または配列番号9を含む。一部の実施形態では、VHドメインをコードする核酸分子は、配列番号8または配列番号9の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有する核酸配列(nucleic sequence)を含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。
【0113】
一部の実施形態では、VLドメインをコードする核酸分子は、配列番号10または配列番号11を含む。一部の実施形態では、VLドメインをコードする核酸分子は、配列番号10または配列番号11の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有する核酸配列を含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。
【0114】
一部の実施形態では、scFvドメインをコードする核酸分子は、配列番号8および配列番号10を含む。一部の実施形態では、scFvをコードする核酸分子は、配列番号8または配列番号10の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。
【0115】
一部の実施形態では、scFvドメインをコードする核酸分子は、配列番号8および配列番号11を含む。一部の実施形態では、scFvをコードする核酸分子は、配列番号8または配列番号11の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。
【0116】
一部の実施形態では、scFvドメインをコードする核酸分子は、配列番号9および配列番号10を含む。一部の実施形態では、scFvをコードする核酸分子は、配列番号9または配列番号10の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。
【0117】
一部の実施形態では、scFvドメインをコードする核酸分子は、配列番号9および配列番号11を含む。一部の実施形態では、scFvをコードする核酸分子は、配列番号9または配列番号11の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。
【0118】
別の実施形態では、核酸分子はscFv分子をコードし、ヌクレオチド配列:
SBT01G-VHVL-GGGSx3リンカー-pSB_0149
【化8-1】
【化8-2】
(GGGSx3リンカーに下線を付す);または
前述の配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
を有する。
【0119】
別の実施形態では、核酸分子はscFv分子をコードし、ヌクレオチド配列:
SBT01G-VHVL-Whitlow 218リンカー-pSB_0158
【化9】
(Whitlow 218リンカーに下線を付す);または
前述の配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
を有する。
【0120】
別の実施形態では、核酸分子はscFv分子をコードし、ヌクレオチド配列:
SBT01G-VHVL-AB purリンカー-pSB_0159
【化10】
(AB purリンカーに下線を付す);または
前述の配列との80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%もしくは99.5%の配列同一性の少なくともいずれかを有する配列
を有する。
【0121】
必要に応じて、これらは、本明細書に記載のVHドメインおよびVLドメイン由来のCDRセットをコードする配列を含み得る。
【0122】
ポリヌクレオチドバリアントは、コード領域、非コード領域、またはこの両方における変更を含み得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、サイレント置換、付加、または欠失をもたらすが、コードされたCARポリペプチドの特性または活性は変更しない変更を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、アミノ酸配列のいかなる変化をももたらさない変更を含む。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドバリアントは、遺伝子コードの縮重による「サイレント」置換を含む。ポリヌクレオチドバリアントは、様々な理由から、例えば、特定の宿主のコドンの発現を最適化するために生成し得る。
【0123】
一部の実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、単離されている。
【0124】
CARをコードするポリヌクレオチドは、単離した分子であるか、またはベクター、例えば、プラスミド、コスミド、人工染色体もしくはウイルス内に含まれ得る。このようなベクターを、標的細胞をトランスフェクトするために使用し得る。
B.発現構築物およびベクター
【0125】
本開示のCARをコードするポリヌクレオチドは、CARをコードするヌクレオチド配列と作動的に連結する調節エレメントを含み得る。例えば、ポリヌクレオチドは、1つまたは複数の転写調節エレメント、例えば、プロモーターまたはエンハンサーを含んでもよく、ポリヌクレオチドが細胞に存在する場合、これにより、CARをコードする配列が細胞内で発現するようになる。
【0126】
本明細書に開示の核酸は、細胞をトランスフェクト可能なベクターに組み込むことができる。このようなベクターとしては、ウイルスベクター、プラスミド、およびマイクロベシクル、例えば、リポソームが挙げられるが、これらに制限されない。例となるウイルスベクターは、アデノウイルスベクター Ad、AAV、レンチウイルス、および水疱性口内炎ウイルス(VSV)およびレトロウイルス。レンチウイルスは、レトロウイルス科(の属であり、HIV、SIV、およびFIVを含む。レンチウイルスは、大量の遺伝物質を宿主細胞のDNAへと送達することができる。これらは、非分裂細胞に感染することが可能である。
IV.細胞
【0127】
一部の実施形態では、開示のCARをコードする核酸分子を有する組換え(宿主)細胞であって、ここで、核酸分子が、CARをコードするヌクレオチド配列と作動的に連結する発現制御配列をさらに含み得る。アセンブルしたCAR(当業者に公知のように合成、部位特異的変異誘発または別の方法により)、開示のCARをコードする核酸分子は、発現ベクターに挿入し、所望の宿主における開示のCARの発現に適切な発現制御配列に作動的に連結させることができる。正しいアセンブリは、ヌクレオチドシーケンシング、制限酵素マッピング、および/または適する宿主におけるCARポリペプチドの発現により確認することができる。当技術分野において周知のように、宿主において高発現レベルのトランスフェクト遺伝子を得るために、遺伝子は、選択された発現宿主において機能性である転写および翻訳の発現制御配列に作動的に連結していなくてはならない。
【0128】
また、本開示では、CARをコードし、および/またはCARを発現する核酸分子を含む細胞(例えば、組換え細胞)を提供する。
【0129】
開示のCARをコードする核酸分子は、当業者に公知のようにプラスミドまたはウイルスベクターにより、制限されないが、T細胞、B細胞、骨髄前駆細胞、マクロファージ等を含む宿主細胞に送達することができる。生じる組換え(宿主)細胞は、当業者に公知のようにT細胞、CD4 T細胞、Treg細胞、CD8アルファT細胞、CD8ベータT細胞、ヘルパーT細胞、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)、巨核球、単球、マクロファージ、および樹状細胞、幹細胞メモリーT細胞、ならびにMHCクラスIまたはクラスIIを発現する細胞を含み得るが、これらに制限されない。一部の実施形態では、開示のCARをコードする核酸分子を有する組換え(宿主)細胞は、当業者に公知のように一般的骨髄前駆細胞、顆粒球マクロファージ前駆細胞、巨核球赤血球前駆細胞、顆粒球前駆細胞、および単球前駆細胞からなる群から選択される骨髄前駆細胞であり得る。一部の実施形態では、骨髄細胞は、自家または同種異系の細胞である。
【0130】
一部の実施形態では、本開示のCARを発現する細胞は、Treg細胞である。「調節性T細胞」、または「Treg細胞」は、免疫応答を抑制するように作用し、これにより恒常性および自己寛容を維持するT細胞の特殊化した亜集団に属する細胞である。Tregは、T細胞の増殖およびサイトカインの産生を阻害し、自己免疫の防止において重要な役割を果たすことが可能である。Tregは、FoxP3の発現により特徴付けられる。Tregの表面マーカーは、CD4、CD25high(高分子密度)、およびCD127low(低分子密度)を含む。マウスおよびヒトのTregは、GITR/AITRおよびCTLA-4を発現する。ヒトCD4+FoxP3+Treg細胞は、3つの亜集団:(1)CD45RA+CD25+FoxP3l0w休止Treg細胞、(2)CD45RO+CD25highFoxP3high活性化Treg細胞、および(3)炎症性サイトカイン産生CD45RO+CD25+FoxP3low非抑制性エフェクターT細胞(Teff)に分けることがきる。
【0131】
本明細書に開示の核酸を用いて形質転換する細胞は、組換え細胞を投与する対象から採取した細胞であり得る。このようにして、同種異系免疫応答の問題を軽減することができる。
【0132】
細胞は、対象への投与前にex vivoで増大させることができる。
【0133】
本開示のCARを発現する核酸を組み込んだTreg細胞は、このようなCARを発現させ、関節リウマチを処置する本明細書に記載の方法において使用することができる。
【0134】
また、形質転換/組換え宿主により産生されるタンパク質は、適する任意の方法に従って精製することができる。このような方法としては、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、およびサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、分別溶解度、または他の任意の標準的タンパク質精製技術によるものが挙げられる。親和性タグ、例えば、ヘキサ-ヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列、およびグルタチオンSトランスフェラーゼをタンパク質に結合させて、適切な親和性カラムを通過させることより精製を容易とすることができる。一部の実施形態では、タンパク質は、タンパク質分解、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、核磁気共鳴、およびX線結晶解析のような技術を使用して物理的に特性決定することができる。
V.組成物
【0135】
また、開示のCARポリペプチドをコードし、および/または開示のCARポリペプチドを発現する核酸分子を有する組換え細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物、ならびに関節リウマチ処置における使用の方法を開示する。
【0136】
本明細書において使用する場合、「医薬組成物」という用語は、医薬化合物(例えば、薬物または本明細書に記載の組換えTreg細胞)と薬学的に許容される担体とを含む組成物を指す。
【0137】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の他の成分と適合し、対象に安全に投与可能な担体を指す。この用語は、「生理学的に許容される」および「薬理学的に許容される」と同義的に使用する。医薬組成物ならびにこれらの調製および使用のための技術は、本開示を踏まえて当業者に公知である。これらの投与に適する薬理学的組成物および技術の詳細な一覧については、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 17th ed. 1985;Brunton et al., “Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,” McGraw-Hill, 2005;University of the Sciences in Philadelphia (eds.), “Remington: The Science and Practice of Pharmacy,” Lippincott Williams & Wilkins, 2005;およびUniversity of the Sciences in Philadelphia (eds.), “Remington: The Principles of Pharmacy Practice,” Lippincott Williams & Wilkins, 2008のようなテキストを参照することができる。
【0138】
薬学的に許容される担体は一般に、少なくともヒトに使用するためには無菌である。医薬組成物は一般に、緩衝および貯蔵所における保存のための作用物質(agent)を含み、適切に送達するためのバッファーおよび担体を投与経路に応じて含み得る。薬学的に許容される担体の例としては、生理(0.9%)食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、および多電解質溶液、例えば、PlasmaLyte A(商標)(Baxter)が挙げられるが、これらに制限されない。
【0139】
医薬組成物は、粘膜(例えば、鼻、舌下、膣、頬側、もしくは直腸)、非経口(例えば、皮下、静脈内、筋肉内、もしくは動脈内への注射、ボーラスもしくは注入のいずれか)、経口、または経皮を含む任意の投与経路用に製剤化し得る。
【0140】
注射用(例えば、静脈内)組成物は、許容される担体、例えば、水性担体に懸濁した組成物の溶液を含み得る。様々な水性担体、例えば、水、緩衝水、0.4%食塩水、0.9%等張食塩水、0.3%グリシン、5%デキストロース等のいずれかを使用することができ、安定性の増強のために糖タンパク質、例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリン等を含み得る。緩衝生理食塩水(135~150mMのNaCl)を使用することが多い。組成物は、生理学的条件に近付けるために薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤および緩衝剤、浸透圧調整剤、湿潤剤、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン等を含み得る。一部の実施形態では、組成物は、静脈内投与用のキットに製剤化し得る。
【0141】
例えば、関節腔内(関節内)、静脈内、筋肉内、腫瘍内、皮内、腹腔内、および皮下経路などによる非経口投与に適する製剤は、水性および非水性の等張滅菌注射用液剤を含み、これらは、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、および意図するレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および保存剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁剤を含み得る。注射用液剤および懸濁剤は、滅菌した粉剤・散剤(powder)、顆粒剤、および錠剤から調製することもできる。本発明の実践では、組成物は、例えば、静脈内注入により、局所的、腹腔内、膀胱内、または髄腔内に投与することができる。組成物の製剤は、単位用量または複数用量の密封した容器、例えば、アンプルおよびバイアルで提供することができる。
【0142】
細胞は凍結保存し得る。凍結保存は、凍結保存剤、例えば、DMSOを用いた細胞の製剤化を含み得る。市販の培地としては、例えば、Millipore Sigmaから入手可能なCryoStor(登録商標)およびpZerve(登録商標)が挙げられる。
【0143】
組成物は、投与のための剤形として製剤化することができる。「剤形」という用語は、医薬品の特定の形態を指し、投与経路に依存する。剤形の例としては、分散液剤;坐剤;軟膏剤;パップ剤(湿布剤);ペースト剤;粉剤・散剤;包帯剤;クリーム剤;硬膏剤;液剤;パッチ剤;エアロゾル剤(例えば、鼻スプレー剤または吸入剤);ゲル剤;懸濁剤(例えば、水性もしくは非水性の液剤懸濁剤、水中油型乳剤、または油中水型乳剤)、液剤、およびエリキシル剤を含む患者への経口または粘膜投与に適する液体剤形;患者への非経口投与に適する液体剤形;ならびに患者への非経口投与に適する液体剤形を提供するために復元することが可能な滅菌固形剤(例えば、結晶性または非晶質の固体)が挙げられるが、これらに制限されない。
【0144】
「用量」および「投与量」という用語は、本明細書において互換的に使用する。用量は、各投与時に個体に与えられる活性成分の量を指す。用量は、投与頻度;個体のサイズおよび忍容性;状態の重症度;副作用のリスク;投与経路;ならびに検出可能な標識(存在する場合)のイメージング様式を含むいくつかの因子に応じて変動し得る。当業者は、上の因子に応じて、または治療の進行に基づいて用量を修正し得ることを認識する。
【0145】
医薬調製物は、単位剤形にパッケージングまたは調製することができる。このような形態では、調製物は、例えば、治療剤の用量または組成物の濃度に応じて、適切な量の活性成分を含む単位用量に細分する。単位剤形は、パッケージングした調製物であってもよく、そのパッケージは、個別の量の調製物を含む。所望の場合、組成物は、他の適合する治療剤をも含み得る。
【0146】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号1または配列番号2のVHドメイン由来の相補性決定領域(CDR)を含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号3または配列番号4のVLドメイン由来のCDRを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号1のVHドメインおよび配列番号3のVLドメイン由来のCDRを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号1のVHドメインおよび配列番号4のVLドメイン由来のCDRを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号2のVHドメインおよび配列番号3のVLドメイン由来のCDRを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号2のVHドメインおよび配列番号4のVLドメイン由来のCDRを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、細胞は、T細胞、CD4 T細胞、Treg細胞、CD8アルファT細胞、CD8ベータT細胞、ヘルパーT細胞、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)、巨核球、単球、マクロファージ、および樹状細胞、または幹細胞メモリーT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、Treg細胞である。
【0147】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号1のVHドメイン(SBT01 VH(M))および配列番号4のVLドメイン(SBT01 VL(G))由来のCDRを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、CARポリペプチドのVHドメインは、配列番号32のアミノ酸配列を含むVH-CDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むVH-CDR2、および配列番号36のアミノ酸配列を含むVH-CDR3を含み、CARポリペプチドのVLドメインは、配列番号39のアミノ酸配列を含むVL-CDR1、配列番号41のアミノ酸配列を含むVL-CDR2、および配列番号43のアミノ酸配列を含むVL-CDR3を含む。一部の実施形態では、細胞は、T細胞、CD4 T細胞、Treg細胞、CD8アルファT細胞、CD8ベータT細胞、ヘルパーT細胞、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)、巨核球、単球、マクロファージ、および樹状細胞、または幹細胞メモリーT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、Treg細胞である。
【0148】
別の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号1または配列番号2のVHドメインのアミノ酸配列を含む1つまたは複数のVHドメインを含むscFVを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、CARポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号1または配列番号2の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。一部の実施形態では、細胞は、T細胞、CD4 T細胞、Treg細胞、CD8アルファT細胞、CD8ベータT細胞、ヘルパーT細胞、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)、巨核球、単球、マクロファージ、および樹状細胞、または幹細胞メモリーT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、Treg細胞である。
【0149】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号3または配列番号4のVLドメインを含むscFVを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、CARポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号3または配列番号4の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。一部の実施形態では、細胞は、T細胞、CD4 T細胞、Treg細胞、CD8アルファT細胞、CD8ベータT細胞、ヘルパーT細胞、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)、巨核球、単球、マクロファージ、および樹状細胞、または幹細胞メモリーT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、Treg細胞である。
【0150】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号1および配列番号3のVHおよびVLドメインを含むscFVを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、CARポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号1または配列番号3の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。一部の実施形態では、細胞は、T細胞、CD4 T細胞、Treg細胞、CD8アルファT細胞、CD8ベータT細胞、ヘルパーT細胞、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)、巨核球、単球、マクロファージ、および樹状細胞、または幹細胞メモリーT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、Treg細胞である。
【0151】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号1および配列番号4のVHおよびVLドメインを含むscFVを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、CARポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号1および配列番号4の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。一部の実施形態では、細胞は、T細胞、CD4 T細胞、Treg細胞、CD8アルファT細胞、CD8ベータT細胞、ヘルパーT細胞、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)、巨核球、単球、マクロファージ、および樹状細胞、または幹細胞メモリーT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、Treg細胞である。
【0152】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号2および配列番号3のVHおよびVLドメインを含むscFVを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、CARポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号2および配列番号3の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。一部の実施形態では、細胞は、T細胞、CD4 T細胞、Treg細胞、CD8アルファT細胞、CD8ベータT細胞、ヘルパーT細胞、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)、巨核球、単球、マクロファージ、および樹状細胞、または幹細胞メモリーT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、Treg細胞である。
【0153】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、配列番号2および配列番号4のVHおよびVLドメインを含むscFVを含むCARポリペプチドをコードする核酸分子を有する組換え細胞を含む。一部の実施形態では、CARポリペプチドをコードする核酸分子は、配列番号2および配列番号4の80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%または99.5%の少なくともいずれかを有するアミノ酸配列を含むscFVを含むが、ただし、scFVドメインは、本明細書に記載のシトルリン化抗原に結合する。一部の実施形態では、細胞は、T細胞、CD4 T細胞、Treg細胞、CD8アルファT細胞、CD8ベータT細胞、ヘルパーT細胞、顆粒球(好中球、好塩基球、好酸球)、巨核球、単球、マクロファージ、および樹状細胞、または幹細胞メモリーT細胞である。一部の実施形態では、細胞は、Treg細胞である。
VI.使用の方法
【0154】
本明細書に開示のCARを発現する、T細胞および特に、Treg細胞は、関節リウマチの処置において有用である。使用の方法は、有効量の本開示の医薬組成物を、それを投与することを必要とする対象、例えば、関節リウマチに罹患している対象に投与するステップを含む。
【0155】
本明細書において使用する場合、「対象」という用語は、個々の動物を指す。「患者」という用語は、本明細書において使用する場合、医療提供者、例えば、医師または看護師の医療または監視下の対象を指す。対象は、哺乳動物、例えば、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えば、サル、ならびにイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ウサギ、ラット、マウス、ヤギ、ブタ、および他の哺乳動物種を含む。また、対象は、トリを含み得る。患者は、処置、モニタリング、既存の治療レジメンの調整または修正等を求める個体であり得る。「関節リウマチ対象」という用語は、関節リウマチと診断されている個体を指す。関節リウマチ患者は、処置を受けていない個体、現在処置を受けている個体、処置を受けていた個体、および処置を中断した個体を含み得る。
【0156】
本明細書において使用する場合、「有効量」、「有効用量」、および「治療有効量」という用語は、所望の応答を生じるのに、例えば、状態の徴候もしくは症状を減少もしくは除去するかまたは障害を回復させるのに十分な薬剤の量を指す。一部の例では、「有効量」は、1つもしくは複数の症状および/または障害もしくは疾患のいずれかの基礎をなす原因を処置し(予防を含む)、ならびに/あるいは疾患の増悪を防止する量である。例えば、所与のパラメーターでは、治療有効量により、5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%の少なくともいずれか、または少なくとも100%の治療効果の増加または低下が示される。また、治療有効性は、「~倍」の増加または低下として表し得る。例えば、治療有効量は、対照に対して1.2倍、1.5倍、2倍、5倍、またはこれよりも大きい効果の少なくともいずれかを有し得る。
【0157】
医薬組成物は、制限されないが、静脈内、皮下、筋肉内または腹腔内経路を含む適する任意の経路により投与し得る。医薬組成物の投与の例は、4℃での注射用に滅菌等張水性食塩液中10mg/mlの組成物を貯蔵するステップと、患者への投与前に注射用に0.9%の塩化ナトリウム100mlまたは200mlのいずれかにこれを希釈するステップとを含む。医薬組成物は、0.2~10mg/kgの間の用量で1時間にわたって静脈内注入により投与する。他の実施形態では、医薬組成物は、15分~2時間の期間にわたって静脈内注入により投与する。なお他の実施形態では、投与手順は、皮下ボーラス注射を介する。
【0158】
組成物の用量は、患者に有効な治療を提供するために選択され、0.1mg/kg体重~約25mg/kg体重未満の範囲または患者1名あたり1mg~2gの範囲である。一部の場合では、用量は、1~100mg/kg、またはおよそ50mg~8000mg/患者の範囲である。用量は、組成物の薬物動態(例えば、循環中の組成物の半減期)および薬力学的応答(例えば、組成物の治療効果の持続期間)に応じて、適切な頻度で反復してもよく、この頻度は、1日1回~3ヵ月毎に1回の範囲であり得る。一部の実施形態では、約7~約25日のin vivoでの半減期および組成物投与は、1週間に1回~3ヵ月毎に1回で反復する。
【0159】
投与は、定期的であり得る。投与経路に応じて、例えば、1、3、5、7、10、14、21、もしくは28日またはこれよりも長い期間毎に1回(例えば、2、3、4、または6ヵ月毎に1回)用量を投与し得る。一部の場合では、投与は、さらに頻繁であり、例えば、1日に2または3回である。当業者により認識されるように、患者をモニターし、治療の進行および有害な任意の副作用に応じて投与量および投与頻度を調整し得る。
【0160】
したがって、一部の実施形態では、さらなる投与は、患者の進行に依存し、例えば、投与間に患者をモニターする。例えば、最初の投与または繰り返しの投与の後、腫瘍成長の速度、再発(例えば、術後患者の場合)、または疾患と関連する全身的症状、例えば、脱力、疼痛、悪心等について患者をモニターし得る。
【0161】
特定の実施形態では、本明細書に記載のT細胞は、関節リウマチを有する対象の関節の滑膜に投与する。このような投与は、関節への直接的注射によってであり得る。
【0162】
本開示の例となる方法としては、対象から得られる生体試料からTリンパ球を単離するステップが挙げられる。このようなT細胞は、例えば、誘導体化固体支持体および抗CD4抗体を使用する免疫親和性により単離し得る。CD4+調節性T細胞(Treg)は、マーカープロファイルに基づいて非Treg細胞から分離することができる。Treg細胞は、CD4+、CD25+、CD127loである。非Treg細胞は、CD4+、CD25+、およびCD127+である。次いで、単離したTreg細胞は、本開示のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする発現ベクターをトランスフェクトする。トランスフェクトした細胞は、増大させる。増大させた細胞は、対象に投与する。
VII.キット
【0163】
本明細書において使用する場合、「キット」という用語は、一緒に使用することを意図する一群の品目を指す。キットは必要に応じて、参照剤および/またはその使用のための指示を含み得る。キットは、本明細書に開示の組成物を含むバイアルのような容器を保持するように構成された輸送用の容器をさらに含み得る。キットは、一群の品目を内包する容器を含み得る。
【0164】
本開示のキットは、本明細書に記載の医薬組成物を静脈内投与用のバッグまたはビンのような容器に含み得る。また、ドリップチャンバーを有する流体導管、例えば、プラスチックチューブをキットに含み得る。ドリップチャンバーは、流体導管を介して静脈内注射針と連通し得る。また、流体導管は、1つまたは複数のY部位とローラークランプとを含み得る。
【実施例】
【0165】
略語:CAR(キメラ抗原受容体)、CF(シトルリン化フィブリノゲン)、CFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)、CV(シトルリン化ビメンチン)、EGFR(上皮成長因子受容体)、IN(鼻腔内)、IV(静脈内)、LPS(リポ多糖)、PAD2(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ2)、PBMC(末梢血単核細胞)、PBS(リン酸緩衝食塩水)、RA(関節リウマチ)、scFv(一本鎖可変断片)、SF(滑液)、Teff(エフェクターT細胞)、Treg(調節性T細胞)、およびUTD(非形質導入)。
(実施例1)
ルシフェラーゼ系においてSBT01GはBVCA1と同等に、またはこれよりも優位に一貫して機能した
【0166】
ジャーカットFFルシフェラーゼ形質導入 - 1ウェルあたり50,000細胞を平底の96ウェルプレート2つそれぞれの2×硫酸プロタミンを加えたRPMI中にプレーティングした。ウイルスは、100μlでおよそのMOIが1となるようにRPMI中に希釈した。次いで、100μlを各96ウェルプレートの1列に加えた。次いで、プレートを回転させてインキュベーターに入れた。その翌日に試料をプールした。形質導入細胞は、培地中に再懸濁し、100μlをU底プレートに二連で移した。細胞は、1:100の抗EGFR-PEを用いて、CV-AF488およびCV-AF647により4℃で20分間染色して1回洗浄し、次いで、Novocyteにより解析した。次いで、新鮮培地3mlを加えることにより6ウェルプレートへと試料をスケールアップさせた。
【0167】
プレートコーティング - シトルリン化ビメンチン(CV)を最初に1:100でPBS 4ml中に希釈した。1mlを3mlに移すことにより5段階の4倍希釈物を作製した。次いで、100μlを96ウェルプレートに加えた。プレートを4℃で置いて一晩コーティングした。
【0168】
ルシフェラーゼアッセイ - 正規化形質導入細胞をペレット化し、RPMI 1ml中に再懸濁した。CVコーティングプレートをPBSで3回洗浄した。細胞50μlをプレートに加えた。3×PMA/Iono 25μlを加え、プレートを37℃のインキュベーターに入れた。およそ24時間後、BioGlo試薬75μlを加え、暗所で2~3分インキュベートし、プレートを読み取ることによりルシフェラーゼプレートを読み取った。
【0169】
図1は、種々の濃度の完全CVコーティングプレートに対するウイルス形質導入ジャーカットFFルシフェラーゼ細胞の応答を示す。結果は、プレートに結合した完全長CVに対してBVCA1およびSTB01が最も強力に応答したことを示す。
【0170】
図2は、種々の濃度の可溶性CVに対するウイルス形質導入ジャーカットFFルシフェラーゼ細胞の応答を示す。結果は、可溶性の完全長CVに対してBVCA1およびSBT01G-HLのみが用量依存的に応答したことを示す。
【0171】
図3は、可溶性ビーズ結合ペプチドを用いたアッセイにおいて、BVCA1およびSBT01により、CVに対する結合特異性が実証されたことを示す。
【0172】
図4は、種々のタンパク質濃度における、プレート結合CV、抗体(V9)捕捉CV、および可溶性CVに対するBVCA1およびSBT01Gの応答を示す。結果は、SBT01Gが、可溶性CVではなくプレート結合CVおよび抗体(V9)捕捉CVに対してBVCA1よりも強力に応答したことを示す。
(実施例2)
SBT01およびBVCA1は関節リウマチ患者からの滑液に応答する
【0173】
ジャーカットFFルシフェラーゼ形質導入 - 24×106ジャーカットFF-luc細胞をペレット化し、硫酸プロタミンおよびMOI 3のウイルスを含むRPMI 24ml中に再懸濁して、pSB_0147、pSB-0149、およびpSB0139のCARを発現させた。細胞を混合し、4mlを6ウェルプレートの各ウェルに等分した。次いで、プレートを回転させてインキュベーターに一晩入れた。細胞をペレット化し、T75フラスコ内のRPMT 25ml中に再播種した。
【0174】
滑液の刺激 - 形質導入細胞をペレット化し、RPMI中に再懸濁し、黒/白プレートのウェルに入れた。RA患者由来の滑液(SF)試料を解凍し、ボルテックスし、RPMI中に希釈した後、形質導入細胞を含むプレートに加えた。細胞は、SFとともに37℃で培養した。
【0175】
ルシフェラーゼアッセイ - およそ24時間後、BioGlo試薬75μlを各ウェルに加え、プレートを暗所で2~3分インキュベートした。次いで、発光をプレートリーダーで読み取った。
【0176】
Tregの単離および組織培養 - 初代ヒトTreg細胞は、健常ドナーの白血球除去チャンバー残留物またはリューコパック(leukopak)から調達した。末梢血単核細胞(PBMC)を密度勾配遠心分離によりFicoll-Paque Plusを使用して単離した。CD25+細胞は、正の選択により富化した。次いで、Treg細胞は、FACSを使用してCD4+CD25+CD127lo細胞についてゲーティングすることにより単離した。単離後、細胞は、CTS Dynabeads Treg Xpander(Gibco)により1:1のビーズ対細胞比で刺激し、10%のFBS、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびベータ-メルカプトエタノールを補充したRPMI培地中で、300IU/mLの組換えヒトIL-2とともに、25~30万細胞/mLの密度で培養した。増大から9日目に、新鮮なCTS Dynabeads Treg Xpanderを1:1のビーズ対細胞比で加えた。
【0177】
初代Tregの形質導入 - 増大から2日目に初代TregにCV-CAR構築物をスピンオキュレーションにより硫酸プロタミンの存在下で形質導入した。
【0178】
Tregの活性化 - CV-CAR発現Treg細胞は、in vitroで1:5~1:160の範囲の滑液試料の希釈物とともに培養した。Tregの活性化は、CD71の発現を測定することにより評価した。
【0179】
フローサイトメトリーおよびFACS解析 - 活性化培養物を採取し、300×gで5分間遠心分離し、次いで、バイアビリティー色素(Invitrogen)、抗EGFR表面染色抗体、およびCD71表面染色抗体を加えた1×Flowstain Buffer(Invitrogen)中に再懸濁した。Tregは、4℃で30分間インキュベートし、次いで、遠心分離して1×Flow stain Bufferで洗浄した。染色した細胞は、CytoFix(BD Biosciences)で固定し、次いで、フローサイトメトリーにより解析した。
【0180】
図5は、RA患者由来の滑液に対するSBT01GおよびBVCA1の応答を示す。データは、SBT01Gが、RA患者数名由来の滑液に対してBVCA1よりも強力な応答をもたらすことを示す。
【0181】
図6は、応答が引き起こされたスウェーデン人RA患者由来の滑液試料では、SBT01GがBVCA1よりもやはり強力であったことを示す。
【0182】
図7は、複数のRA患者由来の滑液に対するCV-CARを形質導入した初代Treg細胞の応答を示す。SBT01G CARを発現する初代Treg細胞は、BVCA1 CARを発現する初代Treg細胞よりもRA患者由来の滑液に対して感受性である。
(実施例3)
シトルリン化フィブリノゲンに対するSBT01およびBVCA1の応答
【0183】
プレートコーティング - シトルリン化タンパク質をPBS中に希釈し、黒/白アイソプレートのウェルに加えた。プレートは、4℃で一晩置いてプレートウェルをコーティングした。
【0184】
ルシフェラーゼアッセイ - 安定に形質導入したジャーカットFF-luc細胞株および非形質導入(UTD)ジャーカットFF-luc細胞株をペレット化し、10%のFBSを含むRPMI中に再懸濁した。シトルリン化タンパク質をコーティングしたプレートは、PBSで3回洗浄した。1ウェルあたり75μl中50,000細胞をコーティングプレートに加えた。RPMI中の15×PMA/Iono 5μlを各ウェルに加え、プレートを37℃のインキュベーターに入れた。およそ24時間後、BioGlo試薬75μlを各ウェルに加え、プレートを暗所で2~3分インキュベートした。次いで、発光をプレートリーダーで読み取った。
【0185】
Tregの単離および組織培養 - 初代ヒトTreg細胞は、健常ドナーの白血球除去チャンバー残留物またはリューコパックから調達した。末梢血単核細胞(PBMC)を密度勾配遠心分離によりFicoll-Paque Plusを使用して単離した。CD25+細胞は、正の選択により富化した。次いで、Treg細胞は、FACSを使用してCD4+CD25+CD127lo細胞についてゲーティングすることにより単離し、Teffは、CD4+CD25loCD127posについてFACSゲーティングを使用して単離した。単離後、細胞は、CTS Dynabeads Treg Xpander(Gibco)により1:1のビーズ対細胞比で刺激し、10%のFBS、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびb-メルカプトエタノールを補充したRPMI培地中で、300IU/mLの組換えヒトIL-2とともに、25~30万細胞/mLの密度で培養した。増大から9日目に、新鮮なCTS Dynabeads Treg Xpanderを1:1のビーズ対細胞比で加えた。
【0186】
初代TregおよびTeffの形質導入 - 増大から2日目に初代TregおよびTeffにCD19-CARまたはCV-CAR構築物をスピンオキュレーションにより硫酸プロタミンの存在下で形質導入した。
【0187】
Tregの活性化 - 活性化培養の開始前に、CARを発現するTregおよびTeffを増殖色素CFSEで標識した。CD19-CARおよびCV-CARを発現するTreg細胞は、30ng/ml~10μg/mlの用量範囲にわたるプレートにコーティングしたシトルリン化ビメンチン(CV)またはシトルリン化フィブリノゲン(CF)とともにin vitroで培養した。Tregの活性化は、増殖細胞のパーセンテージの測定およびCD71の発現により評価した。
【0188】
フローサイトメトリーおよびFACS解析 - 活性化培養物を採取し、300×gで5分間遠心分離し、次いで、バイアビリティー色素(Invitrogen)、抗EGFRおよびCD71表面染色抗体を加えた1×Flowstain Buffer(Invitrogen)中に再懸濁した。Tregを、4℃で30分間インキュベートし、次いで、遠心分離して1×Flowstain Bufferで洗浄した。染色した細胞を、CytoFix(BD Biosciences)で固定し、次いで、フローサイトメトリーにより解析した。
【0189】
図8は、プレートに結合した完全長のペプチジルアルギニンデイミナーゼ2(PAD2)シトルリン化フィブリノゲンに対するSBT01GおよびBVCA1の応答を示す。結果は、BVCA1ではなくSBT01Gもプレート結合完全長PAD2シトルリン化フィブリノゲンに応答可能であることを示す。
【0190】
図9は、Teff細胞およびTreg細胞上に発現したSBT01G CARが、シトルリン化ビメンチン(CV)およびシトルリン化フィブリノゲン(CF)に応答することを示す。対照的に、Teff細胞およびTreg細胞上に発現したBVCA1 CARは、CFではなくCVに応答する。
【0191】
したがって、
図1~9は、すべてのアッセイ系においてSBT01GがBVCA1と同等に、またはこれよりも優位に一貫して機能したことを示す。
(実施例4)
種々のプロモーターおよびリンカーを使用する場合CV CARにより機能的応答が実証される
【0192】
Tregの単離および組織培養 - 初代ヒトTreg細胞は、健常ドナーの白血球除去チャンバー残留物またはリューコパックから調達した。末梢血単核細胞(PBMC)を密度勾配遠心分離によりFicoll-Paque Plusを使用して単離した。CD25+細胞は、正の選択により富化した。次いで、Treg細胞は、FACSを使用してCD4+CD25+CD127lo細胞についてゲーティングすることにより単離した。単離後、細胞は、CTS Dynabeads Treg Xpander(Gibco)により1:1のビーズ対細胞比で刺激し、10%のFBS、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびb-メルカプトエタノールを補充したRPMI培地中で、300IU/mLの組換えヒトIL-2とともに、25~30万細胞/mLの密度で培養した。増大から9日目に、新鮮なCTS Dynabeads Treg Xpanderを1:1のビーズ対細胞比で加えた。
【0193】
初代Tregの形質導入 - 増大から2日目に初代TregにCV-CAR構築物をスピンオキュレーションにより硫酸プロタミンの存在下で形質導入した。
【0194】
Tregの活性化 - 活性化培養の開始前に、CAR発現Tregを増殖色素CFSEで標識した。CV-CAR発現Treg細胞は、ビーズで捕捉したCVペプチドとともにin vitroで培養した。Tregの活性化は、増殖細胞のパーセンテージの測定により評価した。
【0195】
フローサイトメトリーおよびFACS解析活性化アッセイ - 活性化培養物を採取し、300×gで5分間遠心分離し、次いで、バイアビリティー色素(Invitrogen)および抗EGFR表面染色抗体を加えた1×Flowstain Buffer(Invitrogen)中に再懸濁した。Tregは、4℃で30分間インキュベートし、次いで、遠心分離して1×Flowstain Bufferで洗浄した。染色した細胞を、CytoFix(BD Biosciences)で固定し、次いで、フローサイトメトリーにより解析した。
【0196】
Treg表現型のフローサイトメトリーおよびFACS解析 - 増大から14日目に、非形質導入(UTD)Treg、CD19-CARおよびCV-CARを発現するTregを、転写因子FoxP3およびHeliosについて染色した。細胞を、eBiosciences FoxP3転写因子緩衝液セット(eBiosciences)を使用して固定および透過処理した。
【0197】
Treg培養物の休止 - 増大から14日目に、CD19-CARおよびCV-CARを発現するTregを回収し、磁石を使用してビーズを除去し、300IU/mlのIL-2のみとともに50万細胞/mlで培養を行った。
【0198】
CAR発現のフローサイトメトリーおよびFACS解析 - 増大から14日目および休止から2または5日後にCD19-CARおよびCV-CARを発現するTregを、バイアビリティー色素(Invitrogen)および抗EGFR表面染色抗体で染色した。CV-CAR発現は、1μg/mlのCVとともに、続いてFITC標識抗ビメンチン(クローンV9、Invitrogen)とともに細胞をインキュベートすることにより検出した。
【0199】
プレートコーティング - シトルリン化ビメンチン(CV)をPBS中に希釈し、黒/白アイソプレートのウェルに加えた。プレートは、4℃で一晩置いてプレートウェルをコーティングした。
【0200】
ルシフェラーゼアッセイ - 安定に形質導入したジャーカットFF-luc細胞株および非形質導入(UTD)ジャーカットFF-luc細胞株をペレット化し、10%のFBSを含むRPMI中に再懸濁した。シトルリン化タンパク質をコーティングしたプレートを、PBSで3回洗浄した。75μl中1ウェルあたり50,000細胞をコーティングプレートに加えた。RPMI中の15×PMA/Iono 5μlを各ウェルに加え、プレートを37℃のインキュベーターに入れた。およそ24時間後、BioGlo試薬75μlを各ウェルに加え、プレートを暗所で2~3分インキュベートした。次いで、発光をプレートリーダーで読み取った。
【0201】
図10Aは、EF1AおよびMNDの両プロモーターが、可溶性ビーズ結合シトルリン化ペプチド(pCV)に対するCV-CAR T細胞による発現および機能的応答を駆動することを示す。
図10Bは、種々のプロモーターの使用によりCV-CAR Treg細胞の表現型は変化しないことを示す。
【0202】
図11は、scFvリンカーの選択は、完全長CVに対するSBT01G CAR T細胞応答にほとんど影響しないかまったく影響しないことを示す。
【0203】
図12Aは、SBT01G CARベクターによる形質導入によって、BVCA1 CARベクターにより形質導入した場合よりも高いパーセンテージの細胞においてCV-CAR発現が生じたことを示す。
図12Bは、SBT01G CARおよびBVCA1 CARのTreg細胞が、FoxP3およびHeliosの類似のプロファイルを有することを示す。
【0204】
図10~12は、SBT01Gが高いパーセンテージのCAR陽性Tregを示し、SBT01Gが高いレベルのCAR発現を示したことを示す。
(実施例5)
in vitroでのシトルリン化ビメンチンによるCV-CAR Treg活性化の評価
【0205】
Tregの単離および組織培養 - 初代ヒトTreg細胞は、健常ドナーの白血球除去チャンバー残留物またはリューコパックから調達した。末梢血単核細胞(PBMC)を密度勾配遠心分離によりFicoll-Paque Plusを使用して単離した。CD25+細胞は、正の選択により富化した。次いで、Treg細胞は、FACSを使用してCD4+CD25+CD127lo細胞についてゲーティングすることにより単離した。単離後、細胞を、CTS Dynabeads Treg Xpander(Gibco)により1:1のビーズ対細胞比で刺激し、10%のFBS、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI培地中で、300IU/mLの組換えヒトIL-2とともに、25~30万細胞/mLの密度で培養した。
【0206】
Tregの活性化 - 非形質導入Treg細胞およびCV-CAR発現Treg細胞を、10ng/mL~10μg/mLの用量範囲にわたるシトルリン化ビメンチン抗原とともにin vitroで培養した。Tregの活性化は、増殖細胞のパーセンテージの測定ならびにCD71発現およびIL-10分泌のレベルにより評価した。
【0207】
フローサイトメトリーおよびFACS解析:非形質導入Treg細胞およびCV-CAR発現Treg細胞を採取し、300×gで5分間遠心分離し、次いで、CD71表面染色抗体およびCell Trace Violet(CTV)バイアビリティー色素カクテル(Invitrogen)を加えた1×RoboSep Buffer(StemCell Technologies)中に再懸濁した。Tregは、4℃で30分間インキュベートし、次いで、遠心分離して1×RoboSep Bufferで洗浄した。次いで、染色した細胞を、フローサイトメトリーにより解析した。
結果
【0208】
シトルリン化ビメンチン(CV)に応答したTregの活性化をin vitroで評価した。
図13は、増殖細胞、CD71発現、およびIL-10分泌の増加により実証されたようにCV-CAR Treg細胞の用量依存的なCV誘導活性化を示す。対照的に、非形質導入Treg細胞はCVにより活性化されなかった。このような結果により、CVによる刺激の際のTregの活性化は、CV-CARを発現するTregに特異的であることが実証される。
【0209】
健常ドナーおよび関節リウマチ(RA)患者の滑液に存在するCVの量を、
図14に示すようにELISAにより評価した。3つの異なるCV-CARのうちの1つまたは対照CD19-CARを発現するジャーカットレポーター細胞を漸増量の滑液とともにインキュベートし、CV-CAR結合およびT細胞活性化のためのシグナル伝達の指標として応答を測定した。
図14は、CV-CAR3(C03)またはCD19-CARではなく、CV-CAR1(BVCA1)およびCV-CAR2(SBT01G)を発現するジャーカット細胞(不死化ヒトTリンパ球)が、滑液(SF)に応答して増加を示したことを示す。また、
図14は、CV-CAR2(SBT01G)T細胞が、RA患者由来のSF試料によって、CV-CAR1(BVCA1)T細胞よりも活性化されたことを示す。
【0210】
CV-CARを発現するTregがRA患者の滑液中のシトルリン化抗原により活性化されることを実証するために、非形質導入TregおよびCV-CAR2 TregをRA滑液またはビヒクルとともにインキュベートし、増殖およびCD71発現のレベルを測定した。
図15は、ドナー2名由来のCV-CAR2 Treg細胞が、RA滑液特異的に活性化されたことを示す。
【0211】
まとめると、このような結果により、CV-CAR Treg細胞は、RA滑液中に存在するシトルリン化抗原に結合して、抑制機能に必要な活性化を生じさせることが可能であることが確立される。
(実施例6)
CV-CAR TregによるTeff細胞のCV誘導抑制の評価
【0212】
Treg抑制アッセイ - CV-CARを発現するTreg細胞を、96ウェルのU底プレート内で新鮮なヒトリューコパックから上記のように調製した。Tregを、抗原刺激としてCVまたはビヒクル対照とともにインキュベートした。Tregを、CD3/CD28活性化Teff細胞またはCD19-CAR特異的Teff細胞のいずれかと共培養して、標的細胞のTregによる抑制を評価した。Teff細胞は、次のTreg:Teff比:(CD3/CD28活性化)1:4=0.25、1:2=0.5、1:1=1、2:1=2、および4:1=4、または(CD19特異的)1:4、1:2、1:1、2:1、および4:1で共培養した。
結果
【0213】
図16Aは、CVにより刺激されたCV-CAR Tregが、CD3/CD28活性化Teff細胞の増殖を低いTreg:Teff比で抑制可能であったことを示す。
図16Bは、CVにより刺激されたCV-CAR Tregも、CD19-CAR Teff細胞の増殖を低いTreg:Teff比で抑制可能であったことを示す。
(実施例7)
CV関連肺炎症の齧歯動物モデルにおけるCV-CAR Tregの解析
【0214】
ヒト関節リウマチ(RA)患者では、一貫して高い濃度の滑液中シトルリン化ビメンチン(CV)が、ヒトRAについての関連バイオマーカーとしてCVを同定する。しかし、現在のRAマウスモデルでは、矛盾したCVレベルを呈し、これによりin vivoでのCV-CAR Treg解析が複雑となる。CVの産生および細胞外マトリックスへの放出を誘導するために、LPS誘発肺炎症マウスモデルを開発した。このモデルは、LPSの鼻腔内曝露後数日以内の、肺好中球増加症、炎症性サイトカインであるインターロイキン6(IL-6)、インターロイキン1ベータ(IL-1b)、および腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)の分泌増加、ならびに肺組織内でのCV蓄積を含む急性炎症応答により特徴付けられる。CVに特異的なキメラ抗原受容体(CAR)は、肺組織内に蓄積したCVタンパク質に反応することが示されており、これによってそれぞれのCV-CAR Treg細胞の抗原特異的な生存、増殖、および抑制活性の増加をもたらす。
方法
【0215】
6~8週齢の免疫不全NCGマウスをCharles River Laboratoriesから入手した。マウスは体重により無作為化し、5~10匹の動物群に分けた。0、1、6、および12日目にマウスをLPS(5mg/kg)による鼻腔内(IN)処置に供して肺炎症を誘発し、罹患組織内にシトルリン化ビメンチン(CV)を放出および蓄積させた。0日目にCV-CAR Treg細胞を活発に成長している培養物から回収し、刺激ビーズを磁気的に除去し、その後、TregをCell Trace Violet(CTV)(Invitrogen)で標識した。最初のLPSチャレンジ後約4時間に、CTV標識Tregを0.9%の滅菌食塩水(NaCl)により25×106細胞/mLに調整し、用量200μlを静脈内に(IV)注射して各マウスに総量5×106細胞を投与した。CV-CAR Tregまたは対照CD19-CAR Tregの養子細胞移植後、1、2、5、6、7、8、9、および12日目にすべてのマウスにIL-2(160,000IU)の腹腔内(IP)注射を与えた。マウスは、窮迫のあらゆる臨床的徴候について毎日モニタリングし、体重を1週間に2回測定した。13日目にマウスを安楽死させ、脾臓および肺を回収し、単一細胞懸濁物へと処理して、ヒトCV-CAR TregおよびCD19-CAR Tregのフローサイトメトリー解析を行った。
結果
【0216】
図17は、マウスにおけるCVに関連する肺炎症の誘発およびin vivoでのCV-CAR Treg細胞の活性化についての例となるタイムラインを示す。
結果
【0217】
図18Aは、フローサイトメトリーデータからの増殖比の算出方法を示し、一方、
図18Bは、同一データからのEGFR比(CARマーカー)における変化倍率の算出方法を示す。
【0218】
図19Aは、CV-CAR Tregの絶対数が、LPS誘発肺炎症を有するマウス由来の肺組織において有意に富化されたことを示す。
図19Bは、CV-CAR Tregの増殖比が、LPS誘発肺炎症を有するマウス由来の肺組織において有意に増加したことを示す。このような結果により、CV-CAR Tregは対照Tregと比較して、シトルリン化ビメンチンの蓄積により特徴付けられる炎症肺組織に磨きをかけ、該炎症肺組織において増殖する能力が向上していることが実証される。したがって、このマウス肺炎症モデルにより、in vivoでのヒトCV-CAR Tregの検査が可能となる。
例となる実施形態
1.抗原結合ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、1つまたは複数の共刺激ドメイン、および細胞内シグナリングドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)であって、抗原結合ドメインが、シトルリン化ポリペプチドに結合し、必要に応じて、抗原結合ドメインが、3つまたはこれよりも多い異なるシトルリン化タンパク質またはこのシトルリン化断片に特異的に結合する、CAR。
2.抗原結合ドメインが、異なるシトルリン化タンパク質またはこのシトルリン化断片の複数に結合する、実施形態1に記載のCAR。
3.抗原結合ドメインが、例えば、10、12、14または16アミノ酸の少なくともいずれかの、(i)シトルリン化ビメンチン、(ii)シトルリン化フィラグリン、(iii)シトルリン化フィブリノゲン、および(iv)これらのシトルリン化ペプチド断片の1つまたは複数に結合する、実施形態1に記載のCAR。
4.抗原結合ドメインが、(i)シトルリン化ビメンチン、(ii)シトルリン化フィラグリン、および(iii)シトルリン化フィブリノゲンの少なくとも2つ、またはこれらのシトルリン化ペプチド断片に結合する、実施形態1に記載のCAR。
5.抗原結合ドメインが、(i)シトルリン化ビメンチン、(ii)シトルリン化フィラグリン、および(iii)シトルリン化フィブリノゲンの3つすべて、またはこれらのシトルリン化ペプチド断片に結合する、実施形態1に記載のCAR。
6.シトルリン化テネイシンCにさらに結合する、実施形態5に記載のCAR。
7.抗原結合ドメインが、VHドメインおよびVLドメインを含み、
(i)VHドメインが、配列番号32のアミノ酸配列を含むVH-CDR1、配列番号34のアミノ酸配列を含むVH-CDR2、および配列番号36のアミノ酸配列を含むVH-CDR3を含み、
(ii)標的結合ドメインのVLドメインが、配列番号39のアミノ酸配列を含むVL-CDR1、配列番号41のアミノ酸配列を含むVL-CDR2、および配列番号43のアミノ酸配列を含むVL-CDR3を含む、実施形態1に記載のCAR。
8.細胞内シグナリングドメインが、CD3ゼータに由来する、実施形態1に記載のCAR。
9.少なくとも1つの共刺激ドメインが、FceR1g、Fcg、CD28、4-1BB、CTLA-4、CTLA-4/CD-28ハイブリッド、DAP10、CD27、および2B4からなる群のメンバーに由来し、必要に応じて、少なくとも1つの共刺激ドメインが、CD28および/または4-1BB共刺激ドメインを含む、実施形態1に記載のCAR。
10.抗原結合ドメインが、抗体、抗体断片、ラクダ類ナノボディ、重鎖のみの抗体またはアプタマーを含む、実施形態1に記載のCAR。
11.膜貫通ドメインが、CD8膜貫通ドメインまたはCD28膜貫通ドメインであり、ヒンジドメインが、CD8ヒンジドメインまたはCD28ヒンジドメインである、および/またはシグナルペプチドをさらに含み、必要に応じて、シグナルペプチドが、CD8シグナルペプチドまたはGM-CSFシグナルペプチドである、実施形態1~10のいずれか1つに記載のCAR。
12.抗原特異的結合ドメインが、一本鎖断片を含む、実施形態11に記載のCAR。
13.一本鎖断片が、一本鎖可変断片(scFv)を含み、必要に応じて、scFv断片が、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むVHドメイン、および
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むVLドメイン
を含む、実施形態12に記載のCAR。
14.scFv断片が、
(a)(1)SBT01 VH(M)
HLHLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSINDTTYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYRGNTHYNSSLRSRVTMSVDTSKNRFSLKVTSVTAADTAVYYCARLDPFDYWGRGTLVTVSS(配列番号1)、または
(2)SBT01 VH(G)
QLQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISSSSYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYYSGSTYYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARLDPFDYWGRGTLVTVSS(配列番号2)から選択されるVH、および
(b)(1)SBT01 VL(M)
SYVLTQPPSVSLAPGETATITCGGDDIENQNVNWYQQKSGQAPMLLIFFDTRRPSGIPERFSGSRSEDTANLTITRVEAGDDADYFCQVYDRKTDHQVFGPGTTVTVL(配列番号3)、または
(2)SBT01 VL(G)
SYVLTQPPSVSVAPGKTARITCGGNNIGSKSVHWYQQKPGQAPVLVIYYDSDRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISRVEAGDEADYYCQVWDSSSDHQVFGTGTKVTVL(配列番号4)
から選択されるVL
を含む、実施形態13に記載のCAR。
15.VH-VL断片が、(i)GGGS×3(配列番号20)、(ii)Whitlow218(配列番号21)、および(iii)AB Pur(配列番号22)からなる群から選択されるリンカーにより接合されている、実施形態14に記載のCAR。
16.scFvが、
(a)SBT01G-VHVL-GGGS×3リンカー-pSB_0149
【化11】
(GGGSx3リンカーに下線を付す)、または
(b)SBT01G-VHVL-Whitlow218リンカー-pSB_0158
【化12】
(Whitlow 218リンカーに下線を付す)、または
(c)SBT01G-VHVL-AB purリンカー-pSB_0159
【化13】
(AB purリンカーに下線を付す)
のアミノ酸配列を含む、実施形態16に記載のCAR。
17.共刺激ドメインが、CD28、41BB、OX40、OX40、CD40L、MyD88、CD40、CD27、ICOS、またはRANK/TRANCE-R共刺激ドメインを含む、実施形態1~16のいずれかに記載のCAR。
18.実施形態1~17のいずれかに記載のCARをコードする核酸。
19.DNAまたはRNAを含む、実施形態18に記載の核酸。
20.VHが、
【化14】
を含む核酸配列によりコードされ、
VLが、
【化15】
を含む核酸配列によりコードされる、実施形態18に記載の核酸。
21.VHおよびVL断片が、リンカーにより接合されており、(i)配列番号12、(ii)配列番号13、または(iii)配列番号14の核酸配列を含む、実施形態20に記載の核酸。
22.実施形態16~21のいずれかに記載の核酸配列に作動的に連結する発現制御配列を含む発現ベクター。
23.発現制御配列が調節領域を含み、調節領域が、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答エレメント、タンパク質認識部位、誘導性エレメント、タンパク質結合配列、5’および3’非翻訳領域、転写開始部位、終止配列、ポリアデニル化配列、核局在化、シグナル、ならびにイントロンからなる群から選択される、実施形態22に記載の発現ベクター。
24.アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはプラスミドである、実施形態23に記載の発現ベクター。
25.実施形態22、23または24の発現ベクターを含む宿主細胞。
26.実施形態1~17のいずれかに記載のキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように修飾した修飾T細胞。
27.哺乳動物T細胞である、実施形態26に記載の修飾T細胞。
28.Treg細胞である、実施形態27に記載の修飾T細胞。
29.ヒトT細胞である、実施形態28に記載の修飾T細胞。
30.初代T細胞である、実施形態29に記載の修飾T細胞。
31.CD4+、CD25+、およびCD127loである、実施形態30に記載の修飾T細胞。
32.実施形態26~31のいずれかに記載の修飾T細胞の複数および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
33.関節リウマチに罹患している対象を処置する方法であって、有効量の、実施形態32に記載の医薬組成物を対象に投与するステップを含む、方法。
34.対象がヒトである、実施形態33に記載の方法。
35.医薬組成物を対象の滑膜に投与する、実施形態33または34に記載の方法。
36.医薬組成物を静脈内に投与する、実施形態33または34に記載の方法。
37A.投与するステップが、
(a)対象から得られる生体試料からT細胞を単離するステップと、
(b)調節性T細胞(Treg)についてT細胞を富化するステップと、
(c)富化したTreg細胞に、シトルリン化ポリペプチドに結合する抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードするヌクレオチド配列に作動的に連結する発現制御配列を含む発現ベクターをトランスフェクトするステップと、
(d)トランスフェクトしたTreg細胞を増大させるステップと、
(e)増大させたTreg細胞を対象に投与するステップと
を含む、実施形態33に記載の方法。
37B.関節リウマチに罹患している対象を処置する方法であって、
(a)対象から得られる生体試料からT細胞を単離するステップと、
(b)調節性T細胞(Treg)についてT細胞を富化するステップと、
(c)富化したTreg細胞に、実施形態1~17のいずれか1つに記載のCARをコードする発現ベクターをトランスフェクトするステップと、
(d)トランスフェクトしたTreg細胞を増大させるステップと、
(e)増大させたTreg細胞を対象に投与するステップと
を含む、方法。
38.増大が、抗CD3/CD28コートビーズを使用することを含む、実施形態37に記載の方法。
39.増大が、抗CD3/CD28コートビーズを使用しない、実施形態37に記載の方法。
40.トランスフェクションが、ウイルスベクター、エレクトロポレーション、熱ショック、バクテリオファージ、超音波処理、またはリン酸カルシウムの使用により行われる、実施形態37~40のいずれかに記載の方法。
41.1つまたは複数の抗炎症剤および/または治療剤を対象に投与するステップをさらに含む、実施形態37に記載の方法。
42.抗炎症剤が、炎症性サイトカインを阻害する抗体を含む、実施形態41に記載の方法。
43.抗炎症剤が、抗TNF抗体、抗IL-6抗体、またはこれらの組合せである、実施形態42に記載の方法。
44.実施形態32に記載の医薬組成物を含み、流体導管を介してドリップチャンバーと連通する容器を含むキットであって、ドリップチャンバーが、流体導管を介して静脈内注射針と連通する、キット。
45.容器がバッグを含む、実施形態44に記載のキット。
46.容器と針との間の流体導管が、1つまたは複数のY部位とローラークランプとを含む、実施形態44に記載のキット。
【0219】
本記載および本図面は、開示する特定の形態に本発明を制限することは意図しないが、反対に、添付の特許請求の範囲により定義する本発明の趣旨および範囲に含まれるすべての修正形態、均等物、および代替物を包含することを意図することを理解すべきである。本発明の種々の態様のさらなる修正形態および代替実施形態は、本記載を考慮すれば当業者に明らかである。したがって、本記載および本図面は、単なる例示として解釈すべきであり、本発明を実行する一般的様式を当業者に教示する目的のためのものである。本明細書において指示および記載する本発明の形態は、実施形態の例として解釈されることを理解すべきである。要素および材料は本明細書において例示および記載するものと置換してもよく、部分およびプロセスは逆行または省略してもよく、すべては本発明の記載の利点を有した後に当業者に明らかとなるように、本発明のある特定の特徴を独立的に利用してもよい。次の特許請求の範囲に記載する本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の要素の変更を行い得る。本明細書において使用する見出しは、単なる構成目的のためのものであり、本記載の範囲を制限するために使用することは意図しない。
【0220】
本明細書において言及するすべての公表文献、特許、および特許出願は、個々の公表文献、特許、または特許出願をそれぞれ参照により組み込むものと詳細かつ個別に示す場合と同様に参照により本明細書において組み込む。
【配列表】
【国際調査報告】