(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】植物性平面繊維構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 17/31 20060101AFI20240719BHJP
D21H 11/00 20060101ALI20240719BHJP
D06N 3/00 20060101ALI20240719BHJP
D06N 7/02 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
D21H17/31
D21H11/00
D06N3/00
D06N7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505241
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022071283
(87)【国際公開番号】W WO2023006924
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021119667.1
(32)【優先日】2021-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524036284
【氏名又は名称】レボルテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス フールマン
【テーマコード(参考)】
4F055
4L055
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055BA02
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4F055GA40
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4L055AH16
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4L055AH50
4L055AJ07
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4L055CA09
4L055CB11
4L055FA30
4L055GA50
(57)【要約】
本発明は、非合成繊維表面構造体の製造方法、及び非合成繊維表面構造体自体に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非合成繊維表面構造体の製造方法であって、
a)少なくとも1種の液体、特に水、少なくとも1種の非合成繊維材料、少なくとも1種の結合剤、少なくとも1種のプロセス添加剤を含むパルプを提供する工程と、
b)前記液体、特に前記水を前記パルプから少なくとも部分的に分離することにより、非合成繊維表面構造体を製造する工程と、
を含み、
前記少なくとも1種の結合剤が、少なくとも1種の天然ラテックスを含む、
方法。
【請求項2】
工程a)が以下のサブ工程:
a1)前記非合成繊維材料を提供する工程であって、前記非合成繊維材料が短縮繊維及び/又は非短縮繊維を含むか、又はそれらからなる工程;及び/又は
a2)前記少なくとも1種の液体、特に前記水を前記非合成繊維材料に添加する工程;及び/又は
a3)前記非合成繊維材料を機械的に加工する工程;及び/又は
a4)前記非合成繊維材料を洗浄する工程;及び/又は
a5)前記少なくとも1種の結合剤を添加する工程;及び/又は
a6)前記少なくとも1種のプロセス添加剤を添加する工程;及び/又は
a7)少なくとも1種の補助剤を添加する工程;及び/又は
a8)前記パルプの製造工程、
の1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程b)が以下のサブ工程:
b1)前記少なくとも1種の液体、特に前記水を少なくとも部分的に分離するために、工程a)で提供された前記パルプを液体透過性担体エレメント、特に水透過性担体エレメントに適用する工程;及び/又は
b2)工程a)からの前記パルプを含むパルプ層を生成する工程であって、前記少なくとも1種の液体、特に前記水が前記パルプ層から少なくとも部分的に除去される工程;及び/又は
b3)前記パルプ層を乾燥する工程;及び/又は
b4)前記パルプ層、特に前記乾燥したパルプ層上で成形工程を実施して、前記非合成繊維表面構造体を得る工程;及び/又は
b5)前記少なくとも1種の補助剤を添加する工程、
の1つ以上を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a3)における機械的調製が、前記非合成繊維材料を繊維に分割すること、又は前記繊維を小繊維化することを含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種のプロセス添加剤が、多糖類、特にデンプン、変性デンプン、カチオン変性デンプン、セルロース又はそれらの誘導体、特にカルボキシメチル化セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、硫酸アルミニウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の結合剤が、合成ラテックスを更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の補助剤が、可塑剤、充填剤、染料、顔料、UV保護剤、疎水化剤、抗菌剤、難燃剤、湿潤強度剤、サイズ剤又はそれらの混合物から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非合成繊維材料が、植物繊維材料、好ましくは天然繊維、セルロース、好ましくはリサイクルセルロース、天然繊維から作製された繊維製品、好ましくは天然繊維から作製されたリサイクル繊維製品、又はそれらの混合物から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
以下の工程:
c)工程b)で製造された前記非合成繊維表面構造体に対して後処理を実施する工程、
を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
好ましくは請求項1~9のいずれか一項に記載の方法における、プロセス添加剤としてのカチオン性デンプンの使用。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって得られる、非合成繊維表面構造体。
【請求項12】
非合成繊維材料、少なくとも1種のプロセス添加剤、少なくとも1種の結合剤を含む非合成繊維表面構造体であって、前記少なくとも1種の結合剤が、天然ラテックスを含む、非合成繊維表面構造体。
【請求項13】
可塑剤、染料、UV保護剤、疎水化剤、抗菌剤、難燃剤、湿潤強度剤、サイズ剤、顔料又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の補助剤を更に含む、請求項12に記載の非合成繊維表面構造体。
【請求項14】
皮革代替品としての、特にファッション(靴部品、バッグ、アクセサリー、衣類)、家具(シートカバー、家具表面)、車の内部、文房具(例えばカバー)、ファサードパネル、又はフロアカバーの製造のための、請求項11~13のいずれか一項に記載の非合成繊維表面構造体の使用。
【請求項15】
請求項11~13のいずれか一項に記載の非合成繊維表面構造体を含む、皮革代替品。
【請求項16】
装飾、彫刻、エンボス加工、刺繍、被覆、接着、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項15に記載の皮革代替品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非合成繊維表面構造体の製造方法及び非合成繊維表面構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
皮革は常に、衣類及び物体の製造のための重要な材料である。しかしながら、本革は一般に、増加するヴィーガンによって拒絶されている。さらに、皮革の使用は、様々な生態学的及び倫理的理由で批判されている。特に、皮革の製造は、動物の飼育中にかなりのCO2排出を引き起こす。生態学的に疑わしい化学物質は、多くの場合、更に加工を施す際に、製革所で使用される。これは肉産業の副産物であるが、動物の苦痛は皮革に対する決定的な反論となっている。
【0003】
したがって、これらの理由から、伝統的に皮革から作製されるか、又は皮革を用いて作製される多くの製品が、人工皮革(例えば、バッグ、家具、又は車の内装パネル)において提供される。
【0004】
しかしながら、殆どの場合、人工皮革は、生分解性を制限し、マイクロプラスチックの摩耗などの他の生態学的問題をもたらす、合成石油系成分(例えば、PU被覆、合成繊維製の担体材料)に基づいている。
【0005】
人工皮革又は皮革様代用品の製造は、一般に知られている。例えば、DE 16 35 546 C3には、水性スラリーから皮革様シート材料を製造する方法が記載されている。
【0006】
DE 10 2006 001 095 A1は同様の方向に進み、最上層及びバッキング層を有する皮革含有表面構造体を製造するための方法を記載している。
【0007】
しかしながら、これらの2つの方法の後、純粋な皮革が、少なくとも繊維形態で、依然として使用される。
【発明の概要】
【0008】
根本的な目的は、改良された皮革代替品及びそのための適切な製造工程を提供することである。
【0009】
本課題は、非合成繊維表面構造体を製造する方法によって解決され、この方法は、a)少なくとも1種の液体、特に水、少なくとも1種の非合成繊維材料、少なくとも1種の結合剤、少なくとも1種のプロセス添加剤を含むパルプを提供する工程と、b)液体、特に水をパルプから少なくとも部分的に分離することにより、非合成繊維表面構造体を製造する工程と、を含み、少なくとも1種の結合剤が、少なくとも1種の天然ラテックスを含む。
【0010】
本発明による方法は、工程a)において、以下のサブ工程:a1)非合成繊維材料を提供する工程であって、非合成繊維材料が短縮繊維及び/又は非短縮繊維を含むか、又はそれらからなる工程;及び/又はa2)少なくとも1種の液体、特に水を非合成繊維材料に添加する工程;及び/又はa3)非合成繊維材料の機械的調製工程;及び/又はa4)非合成繊維材料の洗浄工程;及び/又はa5)少なくとも1種の結合剤の添加工程;及び/又はa6)少なくとも1種のプロセス添加剤の添加工程;及び/又はa7)少なくとも1種の補助剤の添加工程;及び/又はa8)パルプの製造工程の1つ以上を更に含むことができる。
【0011】
本発明による方法は、工程b)において、以下のサブ工程:b1)少なくとも1種の液体、特に水を少なくとも部分的に分離するために、工程a)で提供されたパルプを液体透過性担体エレメント、特に水透過性担体エレメントに適用する工程;及び/又はb2)工程a)からのパルプを含むパルプ層を生成する工程であって、少なくとも1種の液体、特に水がパルプ層から少なくとも部分的に除去される工程;及び/又はb3)パルプ層を乾燥する工程;及び/又はb4)パルプ層、特に乾燥したパルプ層上で成形工程を実施して、非合成繊維表面構造体を得る工程;及び/又はb5)少なくとも1種の補助剤を添加する工程の1つ以上を更に含むことができる。
【0012】
本発明による方法は、工程a3)における機械的調製中に、非合成繊維材料を繊維に分割すること、又は繊維を小繊維化することを更に含むことができる。
【0013】
本発明による方法は、多糖類、特にデンプン、変性デンプン、カチオン変性デンプン、セルロース又はそれらの誘導体、特にカルボキシメチル化セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、硫酸アルミニウム、又はそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のプロセス添加剤を含むことができる。
【0014】
本発明による方法は、合成ラテックスを更に含む少なくとも1種の結合剤を更に含むことができる。
【0015】
本発明による方法は、少なくとも1種の補助剤を更に含んでもよく、少なくとも1種の補助剤は、可塑剤、充填剤、染料、顔料、UV保護剤、疎水化剤、抗菌剤、難燃剤、湿潤強度剤、サイズ剤又はそれらの混合物から選択される。
【0016】
本発明による方法において、非合成繊維材料は、植物繊維材料、好ましくは天然繊維、セルロース、好ましくはリサイクルセルロース、天然繊維から作製された繊維、好ましくは天然繊維から作製されたリサイクル繊維、又はそれらの混合物から選択され得る。
【0017】
本発明による方法は、以下の工程c):工程b)で製造された非合成繊維表面構造体に後処理を実施する工程、を更に含むことができる。
【0018】
また、本発明によれば、本発明による方法におけるプロセス添加剤としてのカチオン性デンプンの使用を提供する。
【0019】
また、本発明によれば、本発明による方法によって得ることができる非合成繊維表面構造体を提供する。
【0020】
また、本発明によれば、非合成繊維材料、少なくとも1種のプロセス添加剤、少なくとも1種の結合剤を含む非合成繊維表面構造体であって、少なくとも1種の結合剤が天然ラテックスを含む、非合成繊維表面構造体を提供する。
【0021】
本発明による非合成繊維表面構造体は、可塑剤、染料、UV保護剤、疎水化剤、抗菌剤、難燃剤、湿潤強度剤、サイズ剤、顔料、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の補助剤を更に含むことができる。
【0022】
さらに本発明によれば、本発明による非合成繊維表面構造体の皮革代替品としての、特にファッション(靴部品、バッグ、アクセサリー、衣類)、家具(シートカバー、家具表面)、車の内部、文房具(例えばカバー)、ファサードパネル又はフロアカバーの製造のための使用を提供する。
【0023】
また、本発明によれば、本発明による非合成繊維表面構造体を含む皮革代替品を提供する。
【0024】
さらに、本発明による皮革代替品は、装飾、彫刻、エンボス加工、刺繍、被覆、接着、又はそれらの混合物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、非短縮繊維から作製された非合成繊維材料を写真で表示したものである。
【
図2】
図2は、シート形成のための部分的に脱水されたパルプ層を写真で表示したものである。
【
図3】
図3は、完成した非合成繊維表面構造体を写真で表示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本目的は、非合成繊維表面構造体を製造する方法によって解決され、この方法は、a)少なくとも1種の液体、特に水、少なくとも1種の非合成繊維材料、少なくとも1種の結合剤、少なくとも1種のプロセス添加剤を含むパルプを提供する工程と、b)液体、特に水をパルプから少なくとも部分的に分離することにより、非合成繊維表面構造体を製造する工程と、を含み、少なくとも1種の結合剤が少なくとも1種の天然ラテックスを含む。
【0027】
本発明による方法は、皮革代替品として使用できる非合成繊維表面構造体を製造することができるという利点を有する。
【0028】
本出願において使用される「パルプ」という用語は、少なくとも1種の液体、特に水、少なくとも1種の非合成繊維材料、少なくとも1種の結合剤、特に植物系結合剤、及び少なくとも1種のプロセス添加剤、特に植物系プロセス添加剤を含む、繊維状パルプ混合物、特に繊維状パルプ物質を指す。本発明による方法において使用されるパルプは、その特性において、例えば、製紙から公知のパルプと同様である。パルプ中の繊維濃度は、好ましくは0.1重量%以上5重量%以下の値に設定することができる。
【0029】
少なくとも1種の液体は水を含む。一実施形態では、パルプは水性パルプであり、これは液体が水であることを意味する。水は蒸留水又は水道水又はそれらの混合物から選択することができる。液体は有機溶媒又は油を更に含んでもよい。一実施形態では、液体は水と油との混合物である。液体中の油の割合は、使用される非合成繊維材料の乾燥重量に基づいて、5重量%以上40重量%以下の範囲であり得る。
【0030】
少なくとも1種の非合成繊維材料は、好ましくは植物繊維材料、好ましくは天然繊維、セルロース、好ましくはリサイクルセルロース、天然繊維から作製された繊維、好ましくは天然繊維から作製されたリサイクル繊維、又はそれらの混合物から選択される。一実施形態では、非合成繊維材料は非織布又は織布材料としてではなく、むしろ、緩く単離された繊維の集積体、例えばベール又はボールの形態で存在する。非合成繊維材料は、合成繊維、すなわち石油系ポリマーから得られる繊維を含有しない。さらに、非合成繊維材料は動物由来の皮革繊維を含有しない。これは、動物由来の皮革繊維を含有せず、また石油系ポリマーから製造された繊維を含有しない、非合成繊維表面構造体を得ることができるという利点を有する。
【0031】
天然繊維は、農産物の副産物であり得るか、又は一年生植物から得られ得る。天然繊維を得ることができる植物の例は、麻、バナナ、パイナップル、シルフィウム、亜麻、ケナフ、ジュート、綿、サイザル、アガベ、マニラアサ、ラミー、アナナス、ココナッツ及びカポックである。本発明によれば、麻繊維が特に好ましい。上述の天然繊維の混合物も使用することができる。経済的及び生態学的理由から、農産物の副産物として得られた非合成繊維材料天然繊維を使用すると、有利である。このようにして、CO2バランスは、繊維生産のためだけに植えられた植物と比較して、他の全てのものが同じであるならばより良い。また、植物の価値が繊維のみに基づくものではなく、経済的な拡大が可能である場合も有利である。
【0032】
本出願の目的のために、「セルロース」は、セルロースからなり、繊維含有植物又は木材の化学的加工及び機械的加工から生じる繊維材料を意味する。植物は上記に開示された植物から選択することができ、そこから天然繊維も得ることができる。セルロースはまた、リサイクルセルロースからなってもよく、又は少なくともリサイクルセルロースを含んでもよい。
【0033】
さらに、非合成繊維材料は、天然繊維から作製された繊維、好ましくは天然繊維から作製されたリサイクル繊維、例えばジュート、綿、サイザル又は麻などの衣類を作製するのに適した天然繊維から作製された古い衣類から選択することができる。
【0034】
本出願において使用される「結合剤」という用語は、非合成繊維材料の繊維を一緒に弾性的に結合して三次元網目構造を形成する物質を意味すると理解される。本発明によれば、少なくとも1種の結合剤は、天然ラテックスの植物系結合剤を含む。天然ラテックスは、ゴムの木(Hevea Brasilensis)、グアユール(Parthenium argentatum)、ロシアタンポポ(Taraxacum koksaghyz)、又はそれらの混合物から得ることができる。後者は特に、ヨーロッパで栽培することもできるため、この原料は地域ごとに調達することができ、したがって、より気候に優しい方法で調達することができる。好ましくは、少なくとも1種の結合剤は天然ラテックスからなる。しかしながら、一実施形態では、結合剤はまた、例えば石油系ポリマーから得られる合成ラテックスを含むことができる。ラテックス又はゴム、又はラテックス又はゴム系結合剤を使用することによって、最終製品、すなわち、本発明による皮革代替品又は非合成繊維表面構造体において、皮革様の、より柔らかい質感が達成される。
【0035】
本出願において使用される「プロセス添加剤」という用語は、非合成繊維材料及び結合剤の三次元網目構造の形成を可能にする沈殿剤を指す。少なくとも1つのプロセス添加剤は、多糖類、特にデンプン、変性デンプン、カチオン変性デンプン、セルロース又はそれらの誘導体、特にカルボキシメチル化セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、硫酸アルミニウム(ミョウバンとも呼ばれる)、又はそれらの混合物からなる群から選択される。少なくとも1つのプロセス添加剤は、好ましくは多糖類、特にデンプン又はセルロース又はそれらの混合物から選択される植物プロセス添加剤である。多糖類、特にカチオン性デンプンの使用は、多糖類が(冷水及び温水の両方において)少なくとも部分的に水溶性であり、中性範囲でその効果を発揮するという利点を有する。したがって、パルプは、もはや酸性ではなく、又は酸で汚染されていない。さらに、健康及び環境に有害な金属塩の使用が回避される。特に、プロセス添加剤としてのカチオン性デンプンの使用も本発明に従ったものであり、好ましくは本発明に従った方法によるものである。
【0036】
本発明による方法の工程a)は、以下のサブ工程:
a1)非合成繊維材料を提供する工程であって、非合成繊維材料が短縮繊維及び/又は非短縮繊維を含むか、又はそれらからなる工程;及び/又は
a2)少なくとも1種の液体、特に水を非合成繊維材料に添加する工程;及び/又は
a3)非合成繊維材料を機械的に加工する工程;及び/又は
a4)非合成繊維材料を洗浄する工程;及び/又は
a5)少なくとも1種の結合剤を添加する工程;及び/又は
a6)少なくとも1種のプロセス添加剤を添加する工程;及び/又は
a7)少なくとも1種の補助剤を添加する工程;及び/又は
a8)パルプの製造工程、
の1つ以上を含むことができる。
【0037】
工程a1)では、非合成繊維材料が提供され、非合成繊維材料は短縮繊維及び/又は非短縮繊維を含むか、又はそれらからなる。本発明による方法において使用される非合成繊維材料は一般に、均一な分布及び強度の増加を達成するために調製されなければならない。非合成繊維材料の種類及び抽出に応じて、例えば梳毛機を使用して、それを解きほぐさなければならない。繊維の場合、例えばシュレッダーを使用して、繊維を最初に小片に細断しなければならない。
【0038】
工程a2)では、工程a1)を通過した可能性がある、提供された非合成繊維材料に、既に上述した少なくとも1種の液体が添加される。これは、非合成繊維材料を適切な容器に入れ、次いで液体を添加することによって、又は逆の順序を使用することによって行うことができる。繊維濃度は、必要に応じて調整することができる。繊維濃度は、少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.2重量%、又は少なくとも0.3重量%、又は少なくとも0.5重量%、又は少なくとも0.7重量%、又は少なくとも1重量%、又は少なくとも1.3重量%、又は少なくとも1.5重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも2.5重量%、又は少なくとも3重量%、及び/又は最大10重量%、又は最大9重量%、又は最大8重量%、又は最大7重量%、又は最大6重量%、又は最大5重量%、又は最大4重量%であってもよい。特に、繊維濃度は、少なくとも0.1重量%以上10重量%以下、又は0.1重量%以上8重量%以下、又は0.1重量%以上5重量%以下であってもよい。
【0039】
工程a3)では、非合成繊維材料は機械的に加工される。非合成繊維材料は、少なくとも工程a2)及びa4)を経ていてもよい。本出願において使用される「機械的調製」という用語は、非合成繊維材料が、非合成繊維材料を繊維に分離し、繊維を小繊維化することを含む機械的加工に供されることを意味する。
【0040】
工程a3)では、非合成繊維材料は機械的に加工される。非合成繊維材料は、少なくとも工程a2)及びa4)を経ていてもよい。本出願において使用される「機械的調製」という用語は、非合成繊維材料が非合成繊維材料を繊維に分離し、繊維を小繊維化することを含む機械的加工に供されることを意味する。これは、繊維束がそれらの個々の繊維に分解され、繊維と結合剤との間の接触表面を増加させるという利点を有する。このようにして、後続の工程において、より破れにくくかつ均質な材料を形成することができる。本質的に、従来技術で知られている全ての工程が、この目的に適している。本発明によれば、非合成繊維材料は、研削工程の形成で機械的に加工される。この目的のために、非合成繊維材料は、粉砕ユニットに導入され、粉砕工程に供される。適切な粉砕ユニットは、円錐リファイナー、ディスクリファイナー、ホランダー(Hollaender)、Papillonリファイナー、PFIミル及びJokroミルである。1つ以上の粉砕工程を実施することができる。粉砕工程は、非合成繊維材料の所望の研削度に応じて調整することができる。通常、より高度の粉砕は、より良好な製品品質も提供する。典型的には、粉砕工程が1分~2時間かかる。しかし、原理的には、研削工程の持続時間が研削工程中のエネルギー入力(kWh/t繊維)と同様に、目標とする研削の程度に依存する。粉砕工程中、繊維は短縮され、分離され、小繊維化される。その結果、均質な繊維懸濁液が得られる。次いで、懸濁液は、圧力スクリーンを使用して、洗浄、すすぎ、又は再濃縮することができる。
【0041】
工程a4)では、非合成繊維材料は洗浄される。工程a1)の前後に、又は工程a2)の前後に、又は工程a3)の前後に、非合成繊維材料が異物(例えば、埃、破片/木質部分、他の不純物)を含まない場合、非合成繊維材料の品質及び加工性にとって有利であることが見出された。したがって、工程a4)では、非合成繊維材料は、例えば機械的な方法で、異物を含まないことができる。さらに、洗浄はまた、1つ以上の洗浄工程、及び/又はアルカリ煮沸及び/又は酵素処理を含んでもよい。例えば、非合成繊維材料をアルカリ性媒体中で煮沸して、繊維を分解し、リグニンを除去することができる。リグニンが非合成繊維材料中に残存する場合、非合成繊維材料の起源に応じて、天然着色が生じる。この天然着色が望まれない場合、アルカリ煮沸を適用することができる。アルカリ煮沸は、リグニンを除去するだけでなく、非合成繊維材料の強度を低下させる。精製は一般に、異物や、ペクチン又はリグニンなどの干渉化学化合物などの望ましくない成分を、少なくとも部分的に、好ましくは完全に除去できるという利点を有する。これは、工程a3)における小繊維化を支持又は単純化するか、又は工程b)における液体の分離を促進又は加速することができる。
【0042】
工程a5)では、少なくとも1種の結合剤を添加することができる。例えば、結合剤は適切な容器中に提供することができ、任意に工程a1)及び/又はa2)及び/又はa3)及び/又はa4)及び/又はa6)を経た非合成繊維材料を、結合剤に添加することができる。順序はまた、逆であってもよく、すなわち、任意に工程a1)及び/又はa2)及び/又はa3)及び/又はa4)及び/又はa6)を経た非合成繊維材料を、適切な容器に入れ、結合剤を添加することができる。この工程では、結合剤と非合成繊維材料とを混合することができる。非合成繊維材料に対する結合剤の重量比は、非合成繊維表面構造体の所望の特性に応じて変えることができる。例えば、繊維材料よりも多くのラテックスが使用される場合、結果として、よりゴム状の非合成表面構造体が得られる。非合成繊維材料:ラテックス又は結合剤の典型的な重量比は、1:0.2~1:3、又は1:0.3~1:3、又は1:0.5~1:2.5、又は1:0.7~1:2の範囲である。
【0043】
工程a6)では、少なくとも1種のプロセス添加剤を添加することができる。プロセス添加剤は例えば、適切な容器内に提供することができ、任意に工程a1)及び/又はa2)及び/又はa3)及び/又はa4)及び/又はa5)を経た非合成繊維材料を、プロセス添加剤に添加することができる。順序はまた、逆であってもよく、すなわち、任意に工程a1)及び/又はa2)及び/又はa3)及び/又はa4)及び/又はa5)を経た非合成繊維材料を、適切な容器に入れ、プロセス添加剤を添加することができる。この工程では、プロセス添加剤と非合成繊維材料とを混合してもよい。非合成繊維材料:プロセス添加剤の典型的な重量比は、1:0.02~1:0.2、又は1:0.03~1:0.2、又は1:0.05~1:0.15の範囲である。
【0044】
工程a7)では、少なくとも1種の補助剤を添加することができる。補助剤は例えば、適切な容器中に提供することができ、任意に工程a1)及び/又はa2)及び/又はa3)及び/又はa4)及び/又はa5)及び/又はa6)を経た非合成繊維材料を、補助剤に添加することができる。順序はまた、逆であってもよく、すなわち、非合成繊維材料であって、任意に工程a1)及び/又はa2)及び/又はa3)及び/又はa4)及び/又はa5)及び/又はa6)を経た非合成繊維材料を、適切な容器に入れ、少なくとも1種の補助剤を添加することができる。この工程では、補助剤と非合成繊維材料とを混合することができる。
【0045】
適切な添加剤は、可塑剤、充填剤、染料、顔料、UV保護剤、疎水化剤、抗菌剤、難燃剤、湿潤強度剤、サイズ剤又はそれらの混合物から選択することができる。
【0046】
可塑剤は、本発明による非合成繊維表面構造体がより柔軟でなければならない場合に使用される。本発明によれば、様々な種類の可塑剤を使用することができる。好ましくは、無機化学可塑剤は回避される。特に、植物系可塑剤を使用することができ、植物系可塑剤は、変性天然油、アルケニルコハク酸の植物系無水物、植物系アルキル化ケテンダイマー、植物系多価アルコール又はそれらの混合物から選択することができる。植物系変性油は硫酸化することができる。これは、これらの油が乳化しやすいという利点を有する。一般に、そのような天然油は、ヒマワリ油、ロート油(硫酸化ヒマシ油)又は菜種油から選択される植物系油であり得る。さらに、天然油はまた、魚油などの動物起源であってもよい。可塑剤、特に変性植物系油は、小さな液滴として材料中に残存し、したがって、個々の繊維がより自由に動くことができるように自由空間を作り出す。これにより、材料はより柔らかく、より柔軟になる。非合成繊維材料:柔軟剤の典型的な重量比は、1:0.01~1:0.4、又は1:0.05~1:0.35、又は1:0.1~1:0.3の範囲である。
【0047】
充填剤は、本発明による非合成シート材料が滑らかな表面を形成することであり、及び/又はより高い柔軟性を有することである場合に使用することができる。充填剤は、ケイ酸塩、例えばカオリン;炭酸塩、例えばチョーク又は石膏;金属酸化物、例えば酸化チタン又は酸化アルミニウム;硫酸バリウム;ナノセルロース、例えばCNC(セルロースナノ結晶)、CNF(セルロースナノフィブリル)、FNC(フィブリル化ナノセルロース);又はそれらの混合物から選択することができる。非合成繊維材料:充填剤の典型的な重量比は、1:0.1~1:1、又は1:0.15~1:0.9、又は1:0.2~1:0.8の範囲である。
【0048】
非合成繊維表面構造体が特定の色を有する場合、染料を使用することができる。したがって、非合成繊維表面構造体を染色することができ、それによって、染色工程は、工程中の異なる時間に実施することができる。例えば、染料は工程a)の前に、工程a)の間に、又は工程a)の後に実施することができる。非合成繊維材料又はパルプのいずれかを染色することができる。染料は無機顔料、例えば、炭素、金属酸化物又は金属硫酸塩;天然染料、例えば、サフラン、インディゴ、オニオンピール、ケブラチョウッド抽出物、アカネ根抽出物、ウォード抽出物、ブラジリン、ブルーウッド抽出物、合成染料、例えば、直接染料、カチオン染料、バット染料、反応性染料、現像染料、食品染料、又はそれらの混合物から選択することができる。着色される材料は、対応する液体/懸濁液に入れることができる。加えて、完成した非合成繊維表面構造体は、表面に染料を適用することによって染色することができる。あるいは、染料/顔料をパルプに添加することができる。染色された繊維を加工することによって、材料は完全に染色される。これは、例えば、塗装仕上げの場合のように、色の摩耗を防止する。
【0049】
工程a8)では、パルプが製造され、非合成繊維材料、少なくとも1種の結合剤、少なくとも1種のプロセス添加剤、及び少なくとも1種の液体が互いに接触させられ、混合されて、パルプが形成される。
【0050】
本発明による方法の工程a)のサブ工程a1)~a8)は、任意の順序で、又は並行して実施することができる。例えば、非合成繊維材料の一部を工程a2)に供し、一方、非合成繊維材料の別の一部を工程a5)に供することができる。好ましくは、工程a6)が工程a)の最後のサブ工程として実施又は実施される。
【0051】
さらに、本発明による方法は工程b)を含み、工程b)は、以下のサブ工程:
b1)工程a)で提供されたパルプを、少なくとも1種の液体、特に水の少なくとも部分的な分離のための液体透過性担体エレメント、特に水透過性担体エレメントに適用する工程;及び/又は
b2)工程a)からのパルプを含むパルプ層を製造する工程であって、少なくとも1種の液体、特に水をパルプ層から少なくとも部分的に除去する工程;及び/又は
b3)パルプ層を乾燥させる工程;及び/又は
b4)パルプ層上、特に乾燥したパルプ層上で成形工程を実施して、非合成繊維表面構造体を得る工程;及び/又は
b5)少なくとも1種の補助剤を添加する工程、
の1つ以上を含むことができる。
【0052】
工程b1)では、工程a)で提供されるパルプは、少なくとも1種の液体、特に水の少なくとも部分的な分離のために、液体透過性担体エレメント、特に水透過性担体エレメントに適用される。用途は、ブラッシング又は注入などの従来技術から公知の適当な方法によって実施することができる。「液体透過性担体エレメント」は、パルプを適用して液体を分離する、ふるい又は多孔板などの装置である。
【0053】
工程b2)では、工程a)からのパルプを含むパルプ層が製造され、少なくとも1種の液体、特に水はパルプ層から少なくとも部分的に除去される。少なくとも1種の液体は、重力の作用によって、又は圧力板のような外力の作用によって、又は真空の印加によって除去される。一度液体が除去されると、部分的に乾燥された又は部分的に脱水されたパルプ層は、液体透過性担体エレメントから除去される。これは、液体透過性担体エレメントを、完成品中に残存する先行技術から公知の担体材料と区別する。
【0054】
工程b3)では、例えば、工程b2)において製造されたパルプ層は、少なくとも1種の液体の少なくとも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも98%、又は少なくとも99%がパルプ層から除去されるまで、更に乾燥される。乾燥は、蒸発によって室温で、又は圧力及び/又は高圧での乾燥オーブンなどの適切な装置で行うことができる。工程b3)では、いわゆるシート形成が行われる。このシート形成は、連続的であっても不連続的であってもよい。連続シート形成は、真空吸引(抄紙装置と同様)を備える大型のスクリーニング装置を必要とする。不連続シート形成は、実験室装置(例えば、Rapid-Kоthenシート形成機)を使用して、又は紙のすくい取りと同様に手で行うことができる。
【0055】
工程b4)では、パルプ層、特に乾燥したパルプ層に対して成形工程を実施して、非合成繊維表面構造体を得る。工程b3)及びb4)は同時に行うことができ、すなわち、乾燥は、成形工程と同時に行われる。しかしながら、工程b3)及びb4)は交互に、すなわち、工程b4)はb3)の後に行うこともでき、逆もまた同様である。成形工程はまた、ローラーなどの先行技術から公知の装置を使用して実施することができる。工程b4)で行われる成形は、材料をプレス及び/又はエンボス加工することを含むことができる。乾燥状態で材料をプレスすることによって、表面は滑らかになり、場合によっては、サテン仕上げによってわずかに光沢もある。
【0056】
工程b5)では、工程a7)において既に上述したように、少なくとも1種の補助剤を添加することができる。工程b5)は、工程b1)~b4)の前後の任意の時点で、又は工程b1)~b4)と同時に実施することができる。
【0057】
本発明による方法の工程b)の上述のサブ工程b1)~b5)は、任意の順序で又は並行して実施することができる。
【0058】
本発明による方法は、工程c):
c)工程b)で製造された非合成繊維表面構造体に対して後処理を実施する工程、
を更に含むことができる。
【0059】
後処理は、縮絨、滑り止め(Stollen)及び/又はミリング;UV保護及び/又は難燃性及び/又は(例えば、ナノ銀を適用することによる)抗菌保護、(例えば、ポリマーエマルジョンを適用することによる)疎水化を備えること;湿潤強度剤及び/又はサイズ剤を適用すること;刺繍;(レーザー)彫刻;(例えば、プレート又はローラーによる)エンボス加工;(例えば、タンパク質又はワックスによる)被覆;表面染色;顔料適用(例えば、エフェクト顔料)から選択される1つ以上の加工からなり得る。後処理の目的は、非合成繊維表面構造体を微細化すること、又は特定の特性を提供することである。本発明によれば、そのような後処理は、非合成繊維表面構造体を被覆又は含浸すること、例えば表面をワックスで疎水化することを含む。表面はまた、適切な装置を使用して、レーザー彫刻又は刺繍することができる。材料をエンボス加工して、例えば、動物の革の外観を作り出すための砥粒エンボス加工など、特殊な外観及び感触を与えることができる。ロゴ、文字などもエンボス加工することができる。既に記載したように、更なる機械的加工は例えば、縮絨、滑り止め及び/又はミリングによって行うこともできる。これにより繊維が緩み、素材の安定性が失われ、したがってより柔らかく、又はより柔軟になる。
【0060】
非合成繊維表面構造体を製造するための本発明による方法の一実施形態は、以下の工程:
a1)非合成繊維材料を提供する工程であって、非合成繊維材料は、短縮繊維及び/又は非短縮繊維を含むか、又はそれらからなる、工程と、
a2)少なくとも1種の液体、特に水を非合成繊維材料に添加する工程と、
a3)非合成繊維材料を機械的に加工する工程と、
a5)植物系結合剤を添加する工程と、
a6)植物系プロセス添加剤を添加して、パルプを得る工程と、
b1)パルプを水透過性担体エレメントに適用して、パルプから水を分離する工程と、
b3)パルプ層を乾燥する工程と、
b4)成形する工程と、
b)非合成繊維表面構造体を得る工程と、
を含む。
【0061】
本発明による方法は、植物及び/又は植物系原料に完全に基づくことができるという利点を有し、その結果、一方ではヴィーガンで他方では非石油系で実施することができ、本発明によりヴィーガンで非石油製品である非合成繊維表面構造体をもたらすことができる。
【0062】
用語「植物系」又は「天然」は、本出願において同義語として使用され、合成の石油系原料/物質が含まれないこと、又は、例えば、植物系結合剤が人工の原料を添加せずに、植物成分に由来することを意味する。
【0063】
本発明による方法は、生成された非合成繊維表面構造体が合成繊維又は人工皮革の場合のように、いかなるマイクロプラスチック摩耗も発生しないので、好ましくは完全に生態学的であり得る。天然繊維及び植物系原料を使用することによって、本発明による方法の生成物は生分解性であり得る。
【0064】
さらに、本発明の課題は、非合成繊維表面構造体によって解決される。特に、非合成繊維表面構造体は、上述の本発明による方法によって得ることができる。好ましくは、非合成繊維表面構造体が単層構造を有し、完全に植物系材料からなる。本発明による非合成繊維表面構造体は、動物起源の皮革を含有しない。好ましくは、本発明による非合成繊維表面構体は、石油系成分を含まない。好ましくは、本発明による非合成繊維表面構造体は、ヒトの健康に有害な化学物質を含まない。
【0065】
本出願の目的のために、用語「非合成繊維表面構造体」は本革又は人工皮革に類似し、皮革のように加工することができ、したがって、皮革の代替品として使用することができる材料を指す。非合成繊維表面構造体は不織布である。本出願の意味の範囲内の非合成繊維表面構造体は、少なくとも1つの非合成繊維材料、少なくとも1種のプロセス添加剤、及び少なくとも1種の結合剤を含み、少なくとも1種の結合剤は天然ラテックスを含む。
【0066】
さらに、本発明による非合成繊維表面構造体は、可塑剤、染料、UV保護剤、疎水化剤、抗菌剤、難燃剤、湿潤強度剤、サイズ剤、顔料、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の補助剤を含むことができる。これらの補助剤の実施例及び特定の実施形態は、本発明による方法に関連して既に上述されている。
【0067】
植物系繊維表面構造体は基本的に、本発明による方法について上述したものと同じ利点を有する。本発明による非合成繊維表面構造体は、植物及び/又は植物系原料から完全に製造することができ、その結果、一方ではヴィーガンであり、他方では非石油系である。本発明による方法及び使用される原料又は補助剤により、いかなる金属残留物も含有することができない。本発明による非合成繊維表面構造体は、いかなるマイクロプラスチック摩耗も生じず、生分解性でもある。
【0068】
動物皮膚とは対照的に、本発明による非合成繊維表面構造体の厚さは、本質的に予め決定されていないが、自由に選択し、制御することができる。本発明による非合成繊維表面構造体は、皮革に対して慣用の厚さを有することができ、例えば、0.2mm以上5mm以下の厚さを有することができる。
【0069】
本発明による非合成繊維表面構造体は、多層人工皮革とは異なり、開いた縁部で加工することができる。
【0070】
本発明による非合成繊維表面構造体は、従来の方法を使用して更に加工することができる単層製品である。例えば、縫い付け、接着、釘付け、及び刺繍することができる。
【0071】
さらに本発明によれば、本発明による非合成繊維表面構造体の、特に繊維、シートカバー、バッグ、用途の製造のための使用が提供される。適用可能な領域は、ファッション(靴部品、バッグ、アクセサリー、衣類)、家具(シートカバー、家具表面)、車の内部、文房具(例えばカバー)である。本発明による非合成繊維表面構造体はまた、建設産業において、又は、例えば、ファサードパネル又はフロアカバーのためのインテリアデザインにおいて、使用することができる。
【0072】
また、本発明によれば、本発明による非合成繊維表面構造体を含む皮革代替品が提供される。本発明による皮革代替品は、装飾、彫刻、エンボス加工、刺繍、被覆、接着、又はそれらの混合物を含むことができる。本発明による皮革代替品は、通常皮革と組み合わせることができる他の材料と組み合わせることができる。本発明による皮革代替品は、動物起源の従来の皮革又は人工皮革と同様に加工及び使用することができる。特に、本発明による皮革代替品、並びに本発明による非合成繊維表面構造体は、動物起源の従来の皮革又は人工皮革と比較して、同じ、同様の、又は更に改善された特性を有することができる。そのような特性には、例えば15N/mm2以上50N/mm2以下の範囲の引張強度、例えば10%以上50%以下の範囲の破断点伸び、例えば4N/mm以上40N/mm以下の範囲の引裂抵抗、例えば0.5%以上10%以下の範囲の残留水分、又は例えばMartindaleによる20,000超周期の範囲の耐摩耗性が含まれる。
【0073】
本発明による皮革代替品は、本発明による皮革代替品が特定の特性を達成するために、例えば、切断又は更なる(表面)処理によって、後続の適用のためにすでに最適化されているという点で、本発明による非合成繊維表面構造体とは異なる。そのような(表面)処理の例は、既に上述されている。
【0074】
更なる目的、特徴、利点、及び可能な用途は、図面及び本発明の実施形態の以下の非限定的な例に示される。記載及び/又は図示された全ての特徴は、特許請求の範囲におけるそれらの要約又はそれらの相互の関係とは無関係に、個々に又は任意の組み合わせで、本発明の目的を形成する。
【0075】
図1は、非短縮繊維から作製された非合成繊維材料を写真で表示したものである。
図2は、シート形成のための部分的に脱水されたパルプ層を写真で表示したものである。
図3は、完成した非合成繊維表面構造体を写真で表示したものである。
【0076】
一実施形態では、本発明による非合成繊維表面構造体は、麻繊維から作製される。繊維は、ドイツの農場から得られる。繊維は
図1に写真で示されるように、ベールの形態で、羊毛として入手可能である。繊維に加えて、羊毛は、残存する木の破片及び他の不純物を含有する。製品品質を改善するために、これらの木製の破片及び不純物は、第1のプロセス工程において残りの繊維から分離することができる。麻繊維の使用は、植物が繊維製造の目的で栽培されないという利点を有する。したがって、繊維は副産物である。
【0077】
本発明に従い繊維から破れにくくかつ均質な表面構造を製造することができるようにするために、繊維は最初に機械的に加工されなければならない。調製は様々な機械で行うことができる。この方法は、製紙業界から公知の円錐リファイナー又はホランダーのいずれかを用いて実施することができる。加工の前に、繊維に水を添加することができる。いわゆる精製工程の間、繊維は、精製ユニットにおいて短縮され、分離され、小繊維化される。その結果、均質な繊維懸濁液が得られる。次いで、懸濁液は、圧力スクリーンを使用して、洗浄、すすぎ、又は再度増粘することができる。
【0078】
次の工程では、パルプが製造される。好ましくは希釈された(植物系)結合剤及び(植物系)プロセス添加剤は、繊維懸濁液に交互に添加される。固定が成功すると、眼にはっきりと見える。繊維は顕著に凝集し、休止期間後に容器の底部に沈降する。
【0079】
次いで、いわゆるシートが形成される。シート形成は、連続工程及び不連続工程の両方で行うことができる。連続シート形成は、真空吸引(抄紙装置と同様)を備える大型のスクリーニング装置を必要とする。不連続シート形成は、実験室装置(例えば、Rapid-Kоthenシート形成機)を使用して、又は紙のすくい取りと同様に手で行うことができる。
【0080】
シート形成中、水はパルプ中の他の固体から分離される。パルプは、この目的のためにふるい(水透過性担体エレメント)上に置かれる。このようなパルプ層は
図2に写真で示されている。手動工程では、この目的のためにふるい箱が使用される。固体が保持されている間、水はふるいを通って排出することができる。ふるい分け機では、真空を適用することによって工程を加速することができる。
【0081】
次いで、繊維マットの形態の部分的に脱水されたパルプ層は、(一時的にのみ)スクリーンボックスを反転させることによって、スクリーンからフェルトに移される。更なる脱水のために、繊維マットは、プレスにおいて2つの不織布の間でプレスされる。残存する液体は、三次元構造を損傷しないように可能な限りゆっくりと押し出されなければならない。プレス後、形成されたシートはすでに、取り扱いが容易であるほど耐引裂き性である。ここで、平衡に達するまで、シートを室内空気で更に乾燥させなければならない。乾燥は、中程度の温度のオーブン中で、又は空気中で行われる。
【0082】
連続工程では、プレス加工及び乾燥は、一対のローラーと乾燥シリンダーを介して、又はカレンダーを介して行われる。
【0083】
乾燥した材料の表面は、金属板又はローラーの間でエンボス加工又はプレス加工することによって更に微細化することができる。
【0084】
このようにして、本発明による非合成繊維表面構造体が得られる。この非合成繊維表面構造体の具体的な実施形態を、
図3に写真で示す。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明を再度説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
実施例1
200gの繊維(麻、ロングウール繊維)を、ホランダー中の18Lの水に添加する。その後の粉砕工程は、標準重量下で30分間行われる。10gのカーボンブラック(カラー顔料として)及び60gのラテックス(結合剤)を撹拌しながら添加する。30gのカチオン性デンプン(プロセス添加剤)を3Lの水に溶解し、次いでこれも添加する。パルプを撹拌し、撹拌しながらパルプを沈殿させる。次いで、このパルプを、脱水のためのふるい箱に入れる。脱水後、生成された部分的に脱水されたパルプ層は、フェルトの2つの層の間に配置され、プレスされ、次いで空気乾燥される。
【0087】
皮革を触覚的に思い出させる灰色/黒色の表面構造体が得られる。表面構造体は乾燥後に堅い。
【0088】
実施例2
麻繊維30gを長さ0.5cmに切断し、水と混合して総重量300gとする。混合物をPFIミルに入れ、通常の重量で3分間粉砕する。次いで、繊維懸濁液を1.5Lの水と混合し、泡立て装置中で泡立てる。次いで、パルプは、1gの硫酸化ヒマワリ油(可塑剤)、10gのラテックス(結合剤)、2gのカオリン(充填材)及び1Lの水を添加することによって製造される。0.01M~0.02Mの硫酸アルミニウム(プロセス添加剤)を、pH値が5に達するまで撹拌しながら添加して、パルプを沈殿させるか又は固定する。このようにして得られたパルプを、脱水のためのふるい箱に入れる。脱水後、生成された部分的に脱水されたパルプ層は、フェルトの2つの層の間に配置され、プレスされ、次いで空気乾燥される。
【0089】
図3に示される非合成繊維表面構造体が得られ、この非合成繊維表面構造体は、その感触及び外観において皮革を思い起こさせる。
【国際調査報告】