(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】MRIイメージングにおいて勾配パルス形状歪みを予測補正する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20240719BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20240719BHJP
G01R 33/385 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61B5/055 340
A61B5/055 350
G01N24/00 610K
G01N24/00 610Y
G01R33/385
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505259
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022071191
(87)【国際公開番号】W WO2023012026
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ボーナート ペーター ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ラーマー ユルゲン アーウィン
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB33
4C096AD09
4C096AD10
4C096BB02
4C096BB03
4C096CB10
4C096CB17
4C096CC19
(57)【要約】
磁気共鳴撮像システム100用の勾配システム102、300に関して、より高い画質のために勾配磁場の制御を改善するソリューションが生成されるべきである。これは、勾配システム102、300によって達成され、前記勾配システム102、300は、電流が供給されたときに勾配磁場を生成する少なくとも1つの勾配コイル110、310を有し、勾配コイル110、310は、選択勾配パルスを送信することによって少なくとも1つの選択勾配磁場を生成するように構成され、前記勾配システム102、300は、勾配コイル110、310に電流を供給するように構成される勾配コイル増幅器112、308を有し、前記勾配システム102、300は更に、勾配コイル増幅器112、308によって勾配コイル110、310に供給される電流をサンプリングするよう構成される電流センサシステム113、312を有し、前記勾配システム102、300は更に、サンプリングされた電流に対し電流磁場変調伝達関数(CGMTF)を適用することによって、選択勾配磁場の実際の選択勾配パルス形状304を得るよう構成され、これにより、磁気共鳴検査システム100は、選択勾配パルスと同時に放射される高周波パルス316を調整することによって、入力される選択勾配パルス形状302からの実際の選択勾配パルス形状304の偏差を補償することができる。本発明はまた、磁気共鳴撮像システム100、勾配システム102、300を動作させる方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴検査システムの撮像ゾーン内に勾配磁場を生成するための磁気共鳴検査システム用の勾配システムであって、
電流が供給される場合に勾配磁場を生成する少なくとも1つの勾配コイルを有し、前記勾配コイルが、選択勾配パルスを送信することによって少なくとも1つの選択勾配磁場を生成するように構成され、
前記選択勾配磁場が、空間読み出し符号化勾配磁場及び/又はクラッシャ勾配磁場及び/又はスライス選択勾配磁場及び/又はスライスリフォーカス勾配磁場及び/又は1次元又は複数次元において空間選択的な勾配磁場であり、
前記勾配システムは、前記勾配コイルに電流を供給するよう構成される勾配コイル増幅器を有し、
前記勾配システムは更に、前記勾配コイル増幅器によって前記勾配コイルに供給される電流をサンプリングするよう構成される電流センサシステムを有し、
前記勾配システムは更に、サンプリングされた電流に対し電流磁場変調伝達関数を適用することによって、前記選択勾配磁場の実際の選択勾配パルス形状を生成するよう構成され、それにより、前記磁気共鳴検査システムは、前記選択勾配パルスと同時に放出される高周波パルスを調整することによって、入力される選択勾配パルス形状からの前記実際の選択勾配パルス形状の偏差を補償することを可能にし、
前記電流磁場変調伝達関数は、前記勾配コイルが入力電流を実際の勾配磁場にどのように変換するかを記述する、勾配システム。
【請求項2】
前記選択勾配磁場は、空間読み出し符号化勾配磁場及び/又はクラッシャ勾配磁場及び/又はスライス選択勾配磁場及び/又はスライスリフォーカス勾配磁場及び/又は1次元又は複数次元で空間選択的な勾配磁場である、請求項1に記載の勾配システム。
【請求項3】
撮像ゾーンから磁気共鳴撮像データを取得するよう構成された磁気共鳴撮像システムであって、請求項1又は2に記載の勾配システムを有する、磁気共鳴撮像システム。
【請求項4】
磁気共鳴検査システムにおいて使用される勾配システムを作動させる方法であって、前記勾配システムは、前記磁気共鳴検査システムの撮像ゾーン内に勾配磁場を生成するために使用され、前記方法は、
請求項1又は2に記載の勾配システムを提供するステップと、
勾配コイル増幅器によって勾配コイルに供給される電流を、電流センサシステムによってサンプリングするステップと、
前記サンプリングされた電流に対し電流磁場変調伝達関数を適用することによって、実際の選択勾配パルス形状を取得するステップと、
知られている入力選択勾配パルス形状に基づいて、前記実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを予測するステップと、
前記実際の選択勾配パルスと同時に放出される高周波パルス形状を適応させることによって、前記磁気共鳴検査システムによって前記実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを補正するステップと、
を有する方法。
【請求項5】
前記サンプリングされた電流に対し前記電流磁場変調伝達関数を適用することによって、前記実際の選択勾配パルス形状を取得する前記ステップは、式
G’
S(t)=I(t)*CGMTF(t)
ここで、G’
S(t)は実際の選択勾配パルス形状であり、I(t)はサンプリングされた電流であり、CGMTG(t)は電流磁場変調伝達関数である、
に従う畳み込みによって前記実際の選択勾配パルス形状を取得するステップを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電流磁場変調伝達関数は、前記実際の選択勾配パルス形状を取得するためにサンプリングされた電流に前記関数を適用する前に、事前に記録されている、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
前記知られている入力選択勾配パルス形状に基づいて前記実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを予測する前記ステップが、人工知能によって実行される、請求項4乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記人工知能によって前記実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを予測する前記ステップは、所望の勾配パルス形状を表わすパラメータ値から前記実際の選択勾配パルス形状をリターンする訓練された畳み込みニューラルネットワークを使用するステップを有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記パラメータ値が、最大勾配強度及び/又はスルーレート及び/又は強度及び/又は可変レートの選択励起を使用する場合のバリエーションを含むリストから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記勾配コイル増幅器によって前記勾配コイルに供給される電流を前記電流センサシステムによってサンプリングする前記ステップは、前記磁気共鳴撮像システムのスタートアップ段階中に初期シーケンスダミーショットを用いて又は当該勾配パルスを伴う短い予備スキャン中に、前記電流をサンプリングするステップを有する、請求項5乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記実際の選択勾配パルスと同時に放出される高周波パルス形状を適応させることによって、前記磁気共鳴検査システムによって前記実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを補正する前記ステップが、前記勾配システムの読み出し勾配の勾配歪みを補正することに加えて実行される、請求項5乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
請求項4乃至11のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成された命令を有するコンピュータプログラム。
【請求項13】
コンピュータプログラムがコンピュータによって実行される場合に、請求項4乃至11のいずれか1項に記載の方法に従って、前記実際の選択勾配パルスと同時に放出される高周波パルス形状を適応させることによって、前記実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを補正するよう、磁気共鳴撮像システムを前記コンピュータに制御させる命令を有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴撮像に関し、特に、磁気共鳴撮像システムのための勾配システムに関する。本発明はまた、勾配システムを作動させる方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
勾配システム200は、
図2に示されるような複数のコンポーネントを有し、MRIスキャナーにおけるMR信号の空間符号化を容易にするための重要な構成要素である。入力要求波形g
j202は、対応するプリエンファシスユニット206によって適切にプリエンファシスされ、勾配増幅器208によって増幅されて、所望の磁場応答を生成するように勾配コイル210を駆動している対応する電流を生成する。このプロセスは、伝達関数(勾配インパルス応答関数(gradient impulse response function)GIRF又は勾配変調伝達関数(gradient modulation transfer function)GMTF、
図2参照)によるLTI(linear time invariant、線形時不変)センスで記述されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、勾配増幅器208は、予測するのが難しくかつ厳密なLTI仮定に違反するいくつかの非線形性を導入しうる。より単純な/より安価なコンポーネントが勾配増幅器208において使用される場合、非線形性効果はより深刻になる可能性があり、波形予測が再構成において使用されることをかなり困難にする。その結果、画質が悪くなる。この問題を軽減するために、電流検出システム212を用いた基本的な電流検出が提案されている。アプローチの最初に、勾配コイル210が入力電流を実際の勾配磁場204にどのように変換しているかを記述する電流磁場変調伝達関数(current to field modulation transfer function)CGMTFが、この電流検知コンセプトに組み込まれる必要があり、それにより、実際のリアルタイム出力電流測定値に基づいて、正確な勾配波形予測を可能にする。
【0004】
図2は、最新技術による勾配システム200を概略的に示す。勾配システムの概略図は、関連する伝達関数GIRF及びGMTF、並びに電流駆動再構成アプローチを示す。勾配システム200は、渦電流補償(eddy current compensation、ECC)のための線形波形プリエンファシスステップ206と、勾配増幅器208と、それぞれの勾配コイル210(x,y,z)とを有する。勾配インパルス応答関数(GIRF)、又はそのフーリエ変換の勾配変調伝達関数(GMTF)は、完全な勾配システム200の挙動を記述するが、勾配増幅器208において生じる非線形性を表わすことはできない。勾配増幅器出力電流を測定し、電流から磁場への伝達関数(電流磁場インパルス応答関数(current to field impulse response function)CGIRF、電流磁場変調伝達関数(current to field modulation transfer function)CGMTF)を適用することにより、磁場応答のより正確な記述が得られる。電流が撮像と同時に測定される場合、画像再構成のために正確なk空間軌道が導出されることができる。
【0005】
これまで、この概念は、MR信号サンプリング中に存在する実際のk空間軌道を導出するために、非デカルトイメージングについて科学的に試験されてきた。この目的のために、MRデータ取得と並行して、勾配コイル210を通って流れる電流も同期してサンプリングされる。これは、画像再構成216がMRデータをサンプリングした後に開始し、その時点で、実際の勾配波形204を生成するサンプリングされた電流、及びこのようにして導出されたk空間軌道が容易に利用可能にされることができるので、簡単なアプリケーションである。ここで論じられるように、電流ベースの補正アプローチは、再構成のためのk空間軌道が実際の磁場に適応されることができる読み出し勾配に限定されることに留意されたい。
【0006】
国際公開第2019/179797A1号公報は、勾配を生成するように構成された勾配コイルのセットと、勾配コイル増幅器と、勾配コイルのセットの各々に供給される電流を記述する電流センサデータを測定するように構成された電流センサシステムと、を有する勾配コイルシステムを備えた磁気共鳴撮像システムを開示している。マシン実行可能命令の実行は、プロセッサに、磁気共鳴撮像データを取得するようパルスシーケンスコマンドを用いて磁気共鳴撮像システムを制御するステップと、磁気共鳴撮像データの取得中に電流センサデータを記録するステップと、電流センサデータ及び勾配コイル伝達関数を用いて、補正されたk空間軌道を計算するステップと、磁気共鳴撮像データ及び補正されたk空間軌道を用いて、補正された磁気共鳴画像を再構成するステップとを実行させる。
【0007】
しかしながら、勾配増幅器の性能があまりにも損なわれると、MRスキャンに関与する他の勾配の性能も損なわれる。クラッシャ勾配については、これは、多くの場合、あまり懸念されないが、MR信号励起又は勾配を伴うリフォーカス処理の場合に重要である。空間選択的なRFパルスの最適な性能のために、勾配システムの挙動は、十分に予測可能であるか、又は事前に知られていなければならない。
【0008】
RF送信オブジェクトへの検知された選択勾配電流のリアルタイムフィードバックは、最適な選択を能動的にステアするのに役立ち得るが、それは、非常に高い帯域幅要求を有する電流増幅器制御ループの機能を何らかの形で模倣する。そのようなアプローチは、未知の実現可能性及び性能とは別に、別の望ましくないコストドライバである。
【0009】
米国特許第6,377,043B1号公報は、勾配コイルによって生成される磁場の時間的変動が、勾配コイルを通る電流の測定された時間的変動と、関連するコイルに関して決定され記憶されたパルス応答と、から導出することを可能にするシステムを記載する。
【0010】
C. Aigner他の"Time optimal control-based RFT pulse design under gradient imperfections"と題する論文は、高周波(RF)パルス設計のための制御フレームワークにフィットする勾配システム欠陥モデルを記述している。
【0011】
高画質のための勾配磁場の制御を改善し、勾配増幅器の出力電流を継続的に監視する必要性を最小限に抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、この目的は、独立請求項の主題によって対処される。本発明の好ましい実施形態は従属請求項に記載されている。
【0013】
従って、本発明によれば、磁気共鳴検査システムの撮像ゾーン内に勾配磁場を生成するための磁気共鳴検査システムの勾配システムであって、電流が供給されると勾配磁場を生成する少なくとも1つの勾配コイルを有し、前記勾配コイルは、軸に沿って選択勾配パルスを送信することによって少なくとも1つの選択勾配磁場を生成するよう構成され、前記勾配システムは、勾配コイルに電流を供給するよう構成される勾配コイル増幅器を有し、前記勾配システムは更に、前記勾配コイル増幅器によって前記勾配コイルに供給される電流をサンプリングするように構成される電流センサシステムを有し、前記勾配システムは更に、サンプリングされた電流に対し電流磁場変調伝達関数(CGMTF)を適用することによって、選択勾配磁場の実際の選択勾配パルス形状を生成するよう構成され、これにより、磁気共鳴検査システムは、選択勾配パルスと同時に放射される高周波パルスを調整することによって、入力される選択勾配パルス形状からの実際の選択勾配パルス形状の偏差を補償することができる、勾配システムが提示される。
【0014】
基本的なアイデアは、読出勾配のみを監視する代わりに、選択勾配、又はMR信号符号化に使用される他の潜在的に重要な勾配も、電流検知を介して監視されることである。知られている入力勾配パルス形状及び検知される出力電流に基づいて、制限された増幅器性能がどのように出力電流を損なうかが導き出されることができる。アクティブ増幅器制御ループ内で発生する非線形効果のため、これらの妥協効果は、単純にモデル化することはできず、測定された入力に依存する必要がある。検出された電流は、対応する勾配コイルチャネルの電流磁場変調伝達関数(CGMTF)を介して、実際の選択勾配磁場に関連付けられる。伝達関数は、検知された電流に基づいて、勾配コイル内の実際の選択勾配パルス形状(Gf)を予測するために使用される。本発明は、勾配増幅器の出力電流を連続的に監視する必要性を回避することを達成する。
【0015】
本発明の一実施形態において、選択勾配磁場は、空間読み出し符号化勾配磁場及び/又はクラッシャ勾配磁場及び/又はスライス選択勾配磁場及び/又はスライスリフォーカス勾配磁場及び/又は1又は複数の次元で空間選択的な勾配磁場である。
【0016】
別の態様では、本発明は、撮像ゾーンから磁気共鳴撮像データを取得するように構成された磁気共鳴撮像システムを提供し、磁気共鳴撮像システムは、上述の勾配システムを有する。
【0017】
別の態様では、本発明は、磁気共鳴検査システムの撮像ゾーン内に勾配磁場を生成する磁気共鳴検査システム用の勾配システムを作動させる方法であって、上記のような勾配システムを提供するステップと、勾配コイル増幅器によって勾配コイルに供給される電流を、電流センサシステムによってサンプリングするステップと、サンプリングされた電流に対し電流磁場変調伝達関数CGMTFを適用することによって、実際の選択勾配パルス形状を取得するステップと、知られている入力選択勾配パルス形状に基づいて、実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを予測するステップと、実際の選択勾配パルスと同時に放出される高周波パルス形状を適応させることにより、磁気共鳴検査システムによって実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを補正するステップと、を有する方法を提供する。
【0018】
本発明の一実施形態において、サンプリングされた電流に、電流磁場変調伝達関数(CGMTF)を適用することによって、実際の選択勾配パルス形状を取得する前記ステップは、以下の式に従う畳み込み(コンボリューション)によって実際の選択勾配パルス形状を取得するステップを有する:
Gf(t)=I(t)*CGMTF(t)
ここで、Gf(t)は、実際の選択勾配パルス形状であり、I(t)は、サンプリングされた電流であり、CGMTG(t)は、所望の次数(少なくとも0次及び1次)の電流磁場変調伝達関数である。
【0019】
本発明の別の実施形態において、電流磁場変調伝達関数は、当該関数を実際の選択勾配パルス形状に適用する前に事前に記録される。
【0020】
本発明の一実施形態において、知られている入力選択勾配パルス形状に基づいて実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを予測するステップは、人工知能によって実行される。
【0021】
本発明の別の実施形態において、人工知能によって実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを予測するステップは、所望の勾配パルス形状を表わすパラメータ値から実際の選択勾配パルス形状をリターンする、訓練された畳み込みニューラルネットワークを使用するステップを有する。
【0022】
本発明の一実施形態において、パラメータ値は、最大勾配強度及び/又はスルーレート及び/又は強度及び/又は可変レートの選択励起(VERSE)を使用する場合のバリエーションを含むリストから選択される。
【0023】
本発明の別の実施形態において、勾配コイル増幅器によって勾配コイルのセットの各々に供給される電流を電流センサシステムによってサンプリングするステップは、初期シーケンスダミーショットを用いて、磁気共鳴撮像システムのスタートアップフェーズ中に、又は当該勾配パルスを伴う短い予備スキャン中に、電流をサンプリングするステップを有する。
【0024】
本発明の一実施形態において、実際の選択勾配パルスと同時に放出される高周波パルス形状を適応させることによって、実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを補正するステップは、勾配システムの読み出し勾配の勾配歪みを補正することに加えて行われる。
【0025】
別の態様では、本発明は、命令を含むコンピュータプログラム製品を提供し、プログラムがコンピュータによって実行される場合に、コンピュータに、上記の方法ステップによって記述された方法を実行させる。
【0026】
更なる態様では、本発明は、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、実際の選択勾配パルスと同時に放出される高周波パルス形状を適応させることによって、実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みを補正するように磁気共鳴撮像システムを制御させる命令を含むコンピュータプログラム製品を提供する。
【0027】
本発明のこれら及び他の態様は以下に記載される実施形態から明らかになり、それらを参照して説明される。しかしながら、そのような実施形態は、必ずしも本発明の全範囲を表わすものではなく、従って、本発明の範囲を解釈するために、特許請求の範囲及び本明細書を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態による磁気共鳴撮像システムの例を示す図。
【
図2】最新技術による勾配システムを概略的に示す図。
【
図3】本発明の一実施形態による勾配システムを概略的に示す図。
【
図4】本発明の一実施形態によるサンプル電流波形に適応されたRF励起を示す図。
【
図5】
図3による勾配システムの作動作法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明の一実施形態による磁石104を有する磁気共鳴撮像システム100の一例を示す。磁石104は、それを貫通するボア106を有する円筒形の超電導磁石である。異なるタイプの磁石の使用も可能であり、例えば、分割円筒形磁石といわゆるオープン磁石の両方を使用することも可能である。分割円筒形磁石は、クライオスタットが磁石の等平面へのアクセスを可能にするために2つのセクションに分割されていることを除いて、標準の円筒形磁石と同様であり、このような磁石は例えば、荷電粒子ビーム治療と併せて使用されることができる。オープン磁石は、2つの磁石セクションを有し、それら2つの磁石セクションは上下に配置され、それらの間には、被検体を受け入れることができる大きさの空間があり、2つの磁石セクションの配置は、ヘルムホルツコイルに似ている。オープン磁石は、被検体の閉じ込めが少ないので、人気がある。円筒形磁石のクライオスタットの内部には、超電導コイルの集合体がある。円筒形磁石104のボア106内には、磁場が磁気共鳴撮像を実行するのに十分に強くかつ均一である撮像ゾーン108が存在する。関心領域109が撮像ゾーン108内に示されている。磁気共鳴撮像データは、典型的には、関心領域について取得される。被検体118は、被検体118の少なくとも一部が撮像ゾーン108及び関心領域109内にあるように、被検体支持体120によって支持されているように示されている。
【0030】
磁気共鳴撮像システム100は、勾配システム102を有し、勾配システム102は、磁気共鳴撮像で使用される主要な空間符号化システムである。勾配システム102は、複数のコンポーネントを有する。磁石のボア106内には、磁石104の撮像ゾーン108内の磁気スピンを空間符号化するために予備的な磁気共鳴撮像データの取得に使用される少なくとも1つの勾配コイル110がある。磁場勾配コイル110は、磁場勾配コイル増幅器112に接続される。勾配コイル110は、例えば、3つの直交する空間方向において空間符号化するための3つの別個のコイルを有することができる。勾配磁場電源は、勾配磁場コイルに電流を供給する。勾配コイル110に供給される電流は、時間の関数として制御され、ランプ又はパルス化されることができる。勾配磁場コイル110は、本発明の一実施形態において、撮像ゾーン108内に勾配磁場を生成するための3つの別個の直交勾配磁場コイルを表わすことができる。これらは、典型的には、軸122、123、及び124が示すように方向付けられる。軸124は、磁石104の軸とアラインされる。これは、典型的には、z軸と呼ばれる。122及び123は、それぞれx軸及びy軸である。それらは、互いに直交し、z軸124にも直交する。
【0031】
磁場勾配コイル増幅器112は、磁場勾配コイルに電流を供給するように構成される。磁場勾配コイル増幅器112は、磁場勾配コイル110に供給される電流を測定するための電流センサシステム113を有するものとして示されている。電流センサシステム113は、例えば、磁場勾配コイル増幅器112の一部であってもよく、又は磁場勾配コイル110に組み込まれてもよい。撮像ゾーン108に隣接して、撮像ゾーン108内の磁気スピンの向きを操作し、撮像ゾーン108内のスピンからの無線送信も受信するための高周波コイル114がある。高周波アンテナは、複数のコイル素子を有することができる。高周波アンテナは、チャネル又はアンテナと称されることができる。高周波コイル114は、高周波トランシーバ116に接続される。高周波コイル114及び高周波トランシーバ116は、別個の送信コイル及び受信コイル、並びに別個の送信機及び受信機と置き換えられることができる。高周波コイル114及び高周波トランシーバ116は、代表的な例であることが理解される。高周波コイル114は、専用の送信アンテナ及び専用の受信アンテナを表わすことも意図されている。同様に、トランシーバ116も、別個の送信機及び受信機を表わすことができる。また、高周波コイル114は、複数の受信/送信素子を有してもよく、高周波トランシーバ116は、複数の受信/送信チャネルを有することができる。例えば、SENSEなどのパラレルイメージング技術が実行される場合、高周波コイル114は、複数のコイル素子を有することになる。
【0032】
トランシーバ116及び勾配コントローラ112は、コンピュータシステム126のハードウェアインタフェース128に接続されているように示されている。コンピュータシステムは更に、ハードウェア・システム128、メモリ134、及びユーザインタフェース132と通信するプロセッサ130を有する。メモリ134は、プロセッサ130にアクセス可能なメモリの任意の組み合わせであってもよい。これは、メイン・メモリ、キャッシュ・メモリのようなものや、フラッシュRAM、ハード・ドライブなどの不揮発性メモリ、又はその他の記憶装置も含む。いくつかの例では、メモリ134は、非一時的コンピュータ可読媒体であると考えることができる。メモリ134は、マシン実行可能命令140を含むものとして示されている。マシン実行可能命令140は、プロセッサ130が磁気共鳴撮像システム100の作動及び機能を制御することを可能にする。マシン実行可能命令140はまた、プロセッサ130が様々なデータ分析及び計算機能を実行することを可能にし得る。
【0033】
図2は、本明細書の導入部分で既に説明した最新技術による勾配システムを概略的に示す。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態による勾配システム300を概略的に示す。勾配システムの概略図は、関連する伝達関数GIRF、GMTF、及び電流駆動される補正アプローチCGIRF、CGMTFを示す。勾配システム300(例えば勾配増幅器308)の重大な不完全性により、選択勾配G
S(ここでは台形)が歪む。勾配増幅器308の出力電流を測定し、電流から磁場への伝達関数CGIRF、CGMTFを適用することは、電界応答のより正確な記述を与える。これらの歪みは予測され又は測定されることができ、RFパルスの形状は、勾配磁場の偏差を補償するよう適切に適応させることができ、従って、スライス定義に対する悪影響を回避することができる。読み出し勾配のみを監視する代わりに、選択勾配もまた、電流検知を介して監視される。知られている入力波形302及び検知される出力電流に基づいて、制限される増幅器の性能が出力電流をどのように損ねるかについて結論が導き出されることができる。アクティブ増幅器制御ループ内で発生する非線形効果のため、これらの妥協効果は、単純にモデル化されることはできず、測定される入力に依存する必要がある。検出された電流は、対応する勾配チャネルに関して電流から磁場への伝達関数(CGMTF)を介して、実際の選択勾配磁場304に関連付けられることができる。事前に記録された伝達関数CGMTFを使用することにより、検知された電流に基づいて、次式による単純な畳み込み演算を介して、勾配コイル310内の実際の選択勾配磁場Gfが予測される:
G’
S(t)=I(t)*CGMTF(t)
【0035】
本発明の一実施形態において、GS(t)の予測は、人工知能を用いて学習される。知られている所望の入力勾配Gi(t)を、ボア内で実現される実際の勾配G’S(t)と比較し、所望の勾配にいくつかの記述パラメータ(最大勾配強度、スルーレート、強度、VERSEを使用する場合の変動など)を加えることによって、公称入力勾配波形及びその基本パラメータに基づいて実際のものを予測することができる単純な畳み込みネットワークが訓練されることができる。必要な訓練データは、いくつかのテストスキャンを行う初期MRIシステム設置中に、又は最終システムの初期試験段階中に生成されることができる。この学習は、各MRシステムにおいて個々に、又は工場で同一のハードウェアを1回使用する際に実行されることができ、それにより、訓練されたAIモデルをシステムフリート全体に適用する。次に、このように予測された勾配波形を、RF設計プロセスにおいて、例えば、低いチップ角(小チップ角)に関して使用して、目標空間選択プロファイルを実現することができる。
【0036】
本発明の別の実施形態において、選択勾配電流は、臨床スキャンにおいてMR信号の定常状態を達成するために共通に適用される初期シーケンスダミーショット中に監視される。RFパルス設計にそれをフィードバックし、実際に印加される勾配磁場を考慮して次のRFパルスについてより良いスライス定義を達成するようにこのダミー段階中にRF波形をオンザフライで変化させることは、対応するRF問題をそれに応じて修正することができる。これらの適応は、MR励起、リフォーカス、又は例えば適切な磁化準備のために使用される任意の空間選択的RFパルスに対して実施されることができることは明らかである。これは、1つ又は複数の送信コイルへの印加を含む1つ又は複数の次元において空間選択的であるRFパルスに当てはまることに更に留意されたい。
【0037】
提案されたAI学習及びダミーショット評価方法はまた、信号読み出し中の実際の勾配をより良く予測するために使用されることができ、従って、撮像中に出力電流又は直接の勾配磁場を連続的に読み取ることなく非線形効果を除去する方法にもなりうる。
【0038】
図4は、本発明の実施形態による、サンプリングされた電流波形に適応されたRF励起の図を示す。
図4(a)は、ほぼ矩形のスライスプロファイルを励起するために選択勾配G
Sの存在下で印加される通常の励起RFパルスを示す。得られたRF波形及びスライスプロファイルは、小チップ角励起の場合のフーリエ対を表わす。
図4(b)は、勾配波形の歪みG’
Sの場合の選択勾配を示している。この場合、良好なスライスプロファイルを得るために、RFに対するソリューションが適用されなければならない。それは、測定された増幅器出力電流と、使用された勾配コイルの対応する電流磁場伝達関数とに基づいて計算されることができ、所望とほぼ同じ矩形の励起プロファイルをもたらす。この場合、RFパルス後のリフォーカスローブも重要であり、RF設計プロセスにおいて考慮されなければならず、すべての励起された横磁化が、最大SNRを与えるように適切にリフォーカスされることを確実にする。点線は、
図4(b)に示す2つのチャネルの理想的な波形を示している。
【0039】
本発明の一実施形態において、スタートアップ段階中に勾配波形を検知する場合が考慮されることができる。これは、
図4に基本的に示されている。簡潔さのために、z方向に沿ったスライスセクションが考慮される。選択勾配G
Sが生成されている間、z勾配コイル110、310内を流れる電流Izは、電流センサシステム113、312によってサンプリングされる。サンプリングされた電流は、以下の式に従って得られるCGMTFにより畳み込みされる:
G’
S(t)=Iz(t)*CGMTFz(t)
【0040】
CGMTFは、例えば、MRシステムの設置の終了時に一度測定されてもよい。これにより、勾配コイル110、310に生成される実際の勾配磁場G’Sを得ることができる。RF励起パルスが小チップ角クラスに属する場合、新しい補正されたRFパルスを計算するために、Paulyのアプローチが使用されることができる。この励起の場合にも、RFは存在しないが、リフォーカスローブが考慮されなければならない。これは、励起された横磁化のリフォーカスを容易にし、SNRを維持するために小チップ角近似では選択勾配の積分知の半分に相当するべきである。3つの基本勾配のコンポーネントすべてからなる傾斜選択勾配を使用する場合、同じ式が成り立つことに留意されたい。この場合、上記の式で与えられる畳み込みは、サンプリングされた電流のより多くのコンポーネント(少なくともx,y,z)と、対応する伝達関数(CGMTF)とを含まなければならない。CGMTFは、基本勾配よりも更に多くのコンポーネントを有することに留意されたい。B0項とは別に、高次項(クロス項を含む)は、測定された電流から実際の磁場を適切に予測すると考えることができる。
【0041】
図5は、磁気共鳴検査システム100の撮像ゾーン108内に勾配磁場を生成するための磁気共鳴検査システム100用の
図3による勾配システム102、300を作動させる方法を示すフローチャートを示す。まず、ステップ500において、上述のような勾配システム102、300が提供される。次に、ステップ502において、勾配コイル増幅器112、308によって勾配コイルに供給される電流が、電流センサシステム113、312によってサンプリングされる。ステップ504において、サンプリングされた電流に対し電流磁場変調伝達関数(CGMTF)を適用することによって、実際の選択勾配パルス形状G’
Sが得られる。ステップ506において、実際の選択勾配パルス形状G’
Sの勾配歪みが、知られている入力選択勾配パルス形状G
Sに基づいて予測される。最後に、ステップ508において、実際の選択勾配パルスG’
Sの勾配歪みは、実際の選択勾配パルスG’
Sと同時に放出される高周波パルス形状を適応させることによって、磁気共鳴検査装置100によって補正される。
【0042】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示され説明されてきたが、そのような図示及び説明は、説明的又は例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。本発明は開示された実施形態に限定されるものではない。開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、及び添付の請求項の検討から、請求項に記載された発明を実施する際に当業者によって理解され、及び実施されることができる。請求項において、単語「有する(comprising)」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。更に、明瞭にするために、図面中のすべての構成要素に参照符号が付されているわけではない。
【符号の説明】
【0043】
磁気共鳴撮像システム 100
勾配システム 102
磁石 104
磁石のボア 106
撮像ゾーン 108
関心領域 109
勾配コイル 110
磁場勾配コイル増幅器 112
電流センサシステム 113
高周波コイル 114
トランシーバ 116
被検体 118
被検体支持体 120
x軸 122
y軸 123
z軸 124
コンピュータシステム 126
ハードウェアインタフェース 128
プロセッサ 130
ユーザインタフェース 132
コンピュータメモリ 134
マシン実行可能命令 140
勾配システム 200
入力波形 202
勾配磁場展開 204
プリエンファシス 206
勾配増幅器 208
勾配コイル 210
電流センサシステム 212
AD変換器 214
再構成 216
再構成画像 218
勾配インパルス応答関数 GIRF
勾配変調伝達関数 GMTF
電流磁場インパルス応答関数 CGIRF
電流磁場変調伝達関数 CGMTF
勾配システム 300
入力勾配パルス形状 302
実際の勾配パルス形状 304
プリエンファシス 306
勾配増幅器 308
勾配コイル 310
電流センサシステム 312
AD変換器 314
RF適応 316
サンプリングされた電流波形に適応されるRF励起 318
高周波パルス RF
選択勾配 GS
補正された高周波パルス RF’
実際の選択勾配 G’S
勾配システムの提供 500
電流のサンプリング 502
実際の選択勾配パルス形状の取得 504
実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みの予測 506
実際の選択勾配パルス形状の勾配歪みの補正 508
【国際調査報告】