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特表2024-528054ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/14 20060101AFI20240719BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07D405/14 CSP
A61K31/454
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505268
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 CN2022097865
(87)【国際公開番号】W WO2023016075
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202110907061.6
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524036860
【氏名又は名称】シャンハイ マイアス ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Maius Pharmaceutical Co. Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 913, Building 1, No.515, Huanke Road, Pudong New Area, Shanghai, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー ミンフォン
(72)【発明者】
【氏名】クオ イェクン
(72)【発明者】
【氏名】フー シアン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン トゥチエン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC22
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、一般式(I)で示されるジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物を開示する。また、本発明は、ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の調製方法およびその多発性骨髄腫治療薬物の調製における使用に関する。本発明のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物は、浸透性が良好であり、経口投与後に穏やかに吸収されて薬効を発揮する。本発明の化合物は、特徴的な吸収・代謝挙動ににより、薬物動態学的特性が従来の薬物よりも臨床ニーズに適している。
【化1】
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表される構造を有する、
ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物。
【化1】
(式中、Rは、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCH、-CHCH(CH、-(CHCH
【化2】
-(CHCH、-(CH10CH、-(CH17CH、-CHCH(C、-CH(C、-CH(CH(CH、および-CHPhから選ばれる。)
【請求項2】
前記Rが、-CH(CH、-(CHCH、および
【化3】
から選ばれる、
請求項1に記載のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物。
【請求項3】
前記Rが、
【化4】
である、
請求項2に記載のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の調製方法であって、
下記の反応式に従い、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンを出発原料とし、目的化合物を、それに対応するクロロホルメートによる反応によって得る、
ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の調製方法。
【化5】
(式中、Rは、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCH、-CHCH(CH、-(CHCH
【化6】
-(CHCH、-(CH10CH、-(CH17CH、-CHCH(C、-CH(C、-CH(CH(CH、および-CHPhから選ばれる。)
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の調製方法であって、
下記な反応式に従い、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンを出発原料とし、クロロギ酸フェニルまたはクロロギ酸p-ニトロフェニルと反応させてフェニルエステル化合物またはp-ニトロフェニルエステル化合物を得、目的化合物を、それに対応するアルコールとのエステル交換によって得る、
ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の調製方法。
【化7】
(式中、Rは、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCH、-CHCH(CH、-(CHCH
【化8】
-(CHCH、-(CH10CH、-(CH17CH、-CHCH(C、-CH(C、-CH(CH(CH、および-CHPhから選ばれ、R’は、Hまたはニトロ基である。)
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の、多発性骨髄腫治療薬物の調製における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の技術分野に属し、具体的には、ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫(multiple myeloma、MM)は、高齢者に多く発症し、骨髄内で単クローン性形質細胞が大量に増殖し、患者の骨髄造血機能の重度の低下、ひいては骨髄造血機能不全を誘発し、最終的に生体の多発性骨破壊を引き起こす予後不良の悪性腫瘍である。
【0003】
現時点において、化学療法が多発性骨髄腫の主な治療手段である。「中国多発性骨髄腫の診断および治療ガイドライン(2020年版)」には、現在の導入療法の多くは、プロテアソーム阻害剤、免疫調節剤およびデキサメタゾンの3種の薬物を併用するレジメンを主に採用しており、一般的なレジメンには、ボルテゾミブ/サリドマイド/デキサメタゾン(BTD)、レナリドミド/ボルテゾミブ/デキサメタゾン(RVD)、サリドマイド/シクロホスファミド/デキサメタゾン(TCD)などが含まれると記されている。
【0004】
サリドマイド(thalidomide)、レナリドミド(lenalidomide)およびポマリドミド(pomalidomide)は臨床で多く使用される免疫調節剤であり、構造的にはいずれもジヒドロ-2H-イソインドールとピペリジンジオンが結合する骨格を有する。
【0005】
【化1】
【0006】
上記の免疫調節剤の既知の作用機序には、抗腫瘍作用、血管新生阻害作用、赤血球生成促進作用および免疫調節作用などの特性が含まれており、形質細胞微小環境における複数の標的を攻撃してアポトーシスを誘導することが可能であって、免疫調節と血管新生阻害の二重作用を有すると考えられている。
【0007】
上記3種のサリドマイド系製剤に関する詳細な研究によってそれらの適用範囲は拡大し続けており、種々のがんに対する汎がん製剤となりつつある。
【0008】
使用過程における血液学的毒性(好中球減少および血小板減少)と静脈血栓症(深部静脈血栓症および肺塞栓症)は3種の薬物に共通する副作用である。特に、好中球減少および血小板減少は主な用量制限毒性となっている。
【0009】
レナリドミドを例にとると、臨床研究において、50mg/日で治療を受けた患者のすべてにおいて28日目以降にグレード3の骨髄抑制が見られ、また、投与量を25mg/日まで減少させると忍容性が良好となり、この投与量が最大耐容用量(MTD)と見なされることが示された。研究によると、重篤な骨髄抑制(グレード3以上)は投与量と関連性を有し、好中球減少や血小板減少などの骨髄抑制による毒性・副作用が見られる場合は、投与量を減らす必要がある。
【0010】
臨床薬物動態研究においては、サリドマイド系製剤は吸収と代謝が速く、血漿中薬物濃度の変化の幅が大きいことが示されている。高い血漿中薬物濃度ピーク値は、投与量の制限要因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、サリドマイド系製剤の実際の使用における上記の欠点や不足に鑑み、構造に対して一連の改変を行い、かつ改変後の各化合物の薬物動態などについて研究を行った結果、ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物を見出すに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明の第1の態様は、下記一般式(I)で示される構造を有するジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物を提供することである。
【化2】
ここで、Rは、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCH、-CHCH(CH、-(CHCH
【化3】
-(CHCH、-(CH10CH、-(CH17CH、-CHCH(C、-CH(C、-CH(CH(CH、および-CHPhから選ばれる。
【0013】
本発明の第2の態様は、前記ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の調製方法を提供することである。
【0014】
第1の方法は、市販の3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンを出発原料として、目的化合物を、それに対応するクロロホルメートとの反応によって得る。
【化4】
【0015】
また、第2の方法としては、同様の出発原料をクロロギ酸フェニル(またはクロロギ酸p-ニトロフェニル)と反応させてフェニルエステル(またはp-ニトロフェニルエステル)化合物を得、目的化合物を、それに対応するアルコールとのエステル交換によって得る。
【化5】
ここで、Rは、-CH(CH、-(CHCH、-(CHCH、-CHCH(CH、-(CHCH
【化6】
-(CHCH、-(CH10CH、-(CH17CH、-CHCH(C、-CH(C、-CH(CH(CH、および-CHPhから選ばれ、R’は、Hまたはニトロ基である。
【0016】
本発明の第3の態様は、前記ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の、多発性骨髄腫治療薬物の調製における使用である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
【0018】
1.本発明のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物は、従来の薬物よりも浸透性に優れ、経口投与後に穏やかに吸収されて活性代謝物に加水分解され、薬効を持続的に発揮する。特徴的な吸収代謝挙動故に、本発明の化合物の薬物動態学的特性は従来の薬物よりも臨床ニーズに適している。
【0019】
2.本発明のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物は、活性代謝物のAUCが、同量を投与した従来の薬物の40~60%程度に相当するが、ピーク到達時間は最速で7時間、平均保持時間は4~9時間に達し、いずれも従来の薬物における0.7時間と3時間に優るという利点を有する。
【0020】
ここで、化合物1の活性代謝物のAUCは、同量を投与した従来の薬物の45%に相当し、ピーク到達時間は0.8時間、平均保持時間は4.5時間である。化合物3の活性代謝物のAUCは、同量を投与した従来の薬物の40%に相当し、ピーク到達時間は5時間、平均保持時間は5.6時間である。化合物6の活性代謝物のAUCは、同量を投与した従来の薬物の61%に相当し、ピーク到達時間は7時間、平均保持時間は8.6時間である。
【0021】
ここで、化合物6の活性代謝物のAUCは、同量を投与した従来の薬物の61%に相当し、ピーク到達時間は7時間、平均保持時間は8.6時間であり、ピーク到達時間と平均保持時間が従来の薬物に比べていずれも遥かに優れている。
【0022】
3.本発明のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物は、より穏やかな血中薬物濃度と、より長い作用持続時間を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】ラットに対照薬物を強制経口投与した後の薬物濃度-時間曲線を示す。
図2】ラットに化合物1を強制経口投与した後の活性代謝物の薬物濃度-時間曲線を示す。
図3】ラットに化合物3を強制経口投与した後の活性代謝物の薬物濃度-時間曲線を示す。
図4】ラットに化合物6を強制経口投与した後の活性代謝物の薬物濃度-時間曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、具体的な実施形態により本発明の技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。なお、記載された実施形態は本発明のすべての実施形態ではなく、一部の実施形態にすぎない。当業者が本発明の実施形態に基づいて創造を要することなくなしうる他のあらゆる実施形態は、すべて本発明の範囲に属する。
【0025】
本発明の文脈において、使用される用語の定義は下記の通りである。
【0026】
血中薬物濃度:血中薬物濃度とは、薬物吸収後の血漿中における、血漿タンパク質に結合した薬物または血漿中に遊離した薬物として存在する、血漿中の薬物の総濃度を指し、広く全血中の薬物濃度を指す場合もある。薬物の作用の強さは血漿中の薬物濃度に正比例し、体内の薬物濃度は経時的に変化する。
【0027】
ピーク到達時間:薬物の投与後に血中薬物濃度がピーク値に達するまでに要する時間を指す。この時間の経過後に血中薬物濃度は最も高くなる。ピーク到達時間は、適切な投与時間を分析的に決定するために使用され得る。
【0028】
AUCは血中薬物濃度-時間曲線の曲線下面積の略称である。現代の薬物動態研究において、AUCは、薬物のインビボ特性を評価するための重要なパラメータである。この面積は、単回投与から特定時間経過後の薬物吸収の総量を表し、薬物のバイオアベイラビリティの計算に使用され得る。
【0029】
終末相消失半減期とは、薬物が分布平衡に達した後の血中薬物濃度が50%減少するのに要する時間である。
【0030】
本発明の文脈における一般式(I)の化合物の番号とR基との対応関係は、下記表1の通りである。
【0031】
【表1】
【実施例
【0032】
実施例1 化合物1の調製
250mlの三つ口フラスコに12gの3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンを加えた後、100gのテトラヒドロフランを加え、還流するまで昇温した。次に、5.7gのクロロギ酸イソプロピルを加え、還流状態で4時間反応させた。次に、3.6gのクロロギ酸イソプロピルを追加し、引き続き4時間反応させた。さらに2.7gのクロロギ酸イソプロピルを追加し、4時間反応させた。TLCによるモニタリングによって出発原料のスポットがほぼ消失したことを確認した時点で反応を停止した。
【0033】
反応完了後、80gのテトラヒドロフランを留去し、次に50gのエタノールを加え、70℃で撹拌した。20~25℃まで冷却して濾過し、濾過ケイクを回収した。50gのエタノールを用いて濾過ケイクを70℃で再度撹拌し、次に20~25℃まで冷却して濾過し、濾過ケイクを回収し、乾燥して12.0gの生成物を得た。収率は75%であった。
【0034】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 11.01 (s, 1H), 9.45 (s, 1H), 7.76 (dt, J = 7.4, 3.7 Hz, 1H), 7.54 - 7.42 (m, 2H), 5.13 (dd, J = 13.2, 5.1 Hz, 1H), 4.91 (hept, J = 6.3 Hz, 1H), 4.53 - 4.26 (m, 2H), 2.92 (ddd, J = 17.2, 13.5, 5.4 Hz, 1H), 2.69 - 2.55 (m, 1H), 2.36 (qd, J = 13.2, 4.4 Hz, 1H), 2.03 (ddd, J = 9.6, 5.1, 2.4 Hz, 1H), 1.27 (d, J = 6.2 Hz, 6H).13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 173.34, 171.48, 168.30, 153.88, 134.49, 133.52, 133.22, 129.16, 124.77, 118.81, 68.47, 52.07, 46.78, 31.69, 23.06, 22.40。
【0035】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=346.1であり、分子式と一致した。
【0036】
実施例2 化合物2の調製
クロロギ酸イソプロピルをクロロギ酸プロピルに置き換えた以外は、実施例1と同様のステップで調製を行い、13.4gの目的化合物を得た。収率は83.6%であった。
【0037】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 11.01 (s, 1H), 9.51 (s, 1H), 7.76 (dt, J = 7.4, 3.7 Hz, 1H), 7.56 - 7.43 (m, 2H), 5.13 (dd, J = 13.2, 5.1 Hz, 1H), 4.54 - 4.28 (m, 2H), 4.06 (t, J = 6.7 Hz, 2H), 2.92 (ddd, J = 18.1, 13.4, 5.3 Hz, 1H), 2.74 - 2.55 (m, 1H), 2.36 (qd, J = 13.3, 4.5 Hz, 1H), 2.15 - 1.91 (m, 1H), 1.65 (q, J = 7.1 Hz, 2H). 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 173.33, 171.48, 168.28, 154.39, 134.42, 133.56, 133.23, 129.20, 124.79, 118.89, 66.57, 52.06, 46.75, 31.68, 23.07, 22.34, 10.72。
【0038】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=346.1であり、分子式と一致した。
【0039】
実施例3 化合物3の調製
クロロギ酸イソプロピルをクロロギ酸ブチルに置き換えた以外は、実施例1と同様のステップで調製を行い、12.0gの目的化合物を得た。収率は72.1%であった。
【0040】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 11.01 (s, 1H), 9.50 (s, 1H), 7.76 (dt, J = 7.3, 3.6 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 3.0 Hz, 2H), 5.13 (dd, J = 13.2, 5.1 Hz, 1H), 4.56 - 4.23 (m, 2H), 4.11 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.92 (ddd, J = 18.4, 13.6, 5.4 Hz, 1H), 2.61 (d, J = 16.9 Hz, 1H), 2.35 (qd, J = 13.1, 4.3 Hz, 1H), 2.03 (dtd, J = 10.2, 7.9, 6.5, 3.5 Hz, 1H), 1.62 (tt, J = 8.4, 6.4 Hz, 2H), 1.49 - 1.27 (m, 2H), 0.92 (t, J = 7.3 Hz, 3H). 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 173.33, 171.48, 168.29, 154.39, 134.44, 133.52, 133.23, 129.18, 124.74, 118.87, 64.77, 52.07, 46.76, 31.69, 31.02, 23.09, 19.07, 14.04。
【0041】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=360.1であり、分子式と一致した。
【0042】
実施例4 化合物4の調製
15gの出発原料を使用し、かつクロロギ酸イソプロピルを相応の量のクロロギ酸イソブチルに置き換えた以外は、実施例1と同様のステップで調製を行い、14.9gの目的化合物を得た。収率は71.6%であった。
【0043】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 11.01 (s, 1H), 9.51 (s, 1H), 7.77 (dt, J = 7.4, 3.7 Hz, 1H), 7.56 - 7.42 (m, 2H), 5.13 (dd, J = 13.2, 5.1 Hz, 1H), 4.57 - 4.25 (m, 2H), 3.90 (d, J = 6.7 Hz, 2H), 2.92 (ddd, J = 18.1, 13.4, 5.4 Hz, 1H), 2.61 (d, J = 17.2 Hz, 1H), 2.36 (qd, J = 13.2, 4.5 Hz, 1H), 2.13 - 1.96 (m, 1H), 1.94 (dp, J = 13.4, 6.8 Hz, 1H), 0.94 (d, J = 6.7 Hz, 6H). 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 173.33, 171.49, 168.28, 154.42, 134.42, 133.56, 133.23, 129.20, 124.80, 118.90, 70.96, 52.05, 46.73, 31.69, 28.03, 23.08, 19.36。
【0044】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=360.1であり、分子式と一致した。
【0045】
実施例5 化合物5の調製
クロロギ酸イソプロピルをクロロギ酸n-ヘキシルに置き換えた以外は、実施例1と同様のステップで調製を行い、11.0gの目的化合物を得た。収率は62.5%であった。
【0046】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 11.01 (s, 1H), 9.50 (s, 1H), 7.76 (dt, J = 7.4, 3.7 Hz, 1H), 7.57 - 7.35 (m, 2H), 5.13 (dd, J = 13.2, 5.1 Hz, 1H), 4.55 - 4.25 (m, 2H), 4.10 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.92 (ddd, J = 17.8, 13.4, 5.3 Hz, 1H), 2.61 (d, J = 17.6 Hz, 1H), 2.35 (qd, J = 13.2, 4.4 Hz, 1H), 2.03 (dtd, J = 12.0, 5.1, 4.6, 1.9 Hz, 1H), 1.74 - 1.52 (m, 2H), 1.46 - 1.20 (m, 6H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 3H). 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6) δ 173.31, 171.47, 168.28, 154.38, 134.44, 133.52, 133.23, 129.18, 124.75, 118.87, 65.07, 52.06, 46.74, 31.69, 31.39, 28.95, 25.51, 23.09, 22.51, 14.34。
【0047】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=388.2であり、分子式と一致した。
【0048】
実施例6 化合物6の調製
1Lの一つ口フラスコに17gの3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオン、19.8gのクロロギ酸p-ニトロフェニル、250mLのテトラヒドロフランを加え、65℃で3時間加熱攪拌した。TLCによるモニタリングによって出発原料の完全消費が確認されたら、回転乾燥処理(旋干)に付した。酢酸エチル200mLを加えて撹拌し、24gの濾過して白色固体を得た。
【0049】
500mLの三つ口フラスコに19gの上記で得られた白色固体、9.7gの4-(ヒドロキシメチル)-5-メチル-[1,3]ジオキソール-2-オン、7.6gのトリエチルアミン、および250mLのDMFを加え、25℃で24時間攪拌した。TLCによるモニタリングによって出発原料の完全消費が確認されたら、反応液を氷水に注ぎ、1Lの酢酸エチルで抽出した。無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、回転乾燥処理に付した。石油エーテル:酢酸エチル=1:1~0:1でカラムクロマトグラフィーを行い、溶出液を濃縮して7gの油状物約を得た。n-ヘプタン(200mL)を加えて撹拌し、濾過して目的化合物である4.4gの白色固体を得た。純度は93.6%であった。
【0050】
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6) δ 11.01 (s, 1H), 9.78 (s, 1H), 7.77 (dt, J = 7.7, 3.8 Hz, 1H), 7.59 - 7.45 (m, 2H), 5.13 (dd, J = 13.2, 5.1 Hz, 1H), 5.05 (s, 2H), 4.56 - 4.24 (m, 2H), 2.92 (ddd, J = 18.0, 13.4, 5.3 Hz, 1H), 2.69 - 2.56 (m, 1H), 2.34 (qd, J = 13.2, 4.4 Hz, 1H), 2.20 (s, 3H), 2.10 - 1.95 (m, 1H). 13C NMR (76 MHz, DMSO-d6) δ 173.33, 171.47, 168.20, 153.57, 152.36, 140.61, 134.16, 133.94, 133.77, 133.31, 129.31, 124.95, 119.30, 54.77, 52.08, 46.68, 31.68, 23.07, 9.32。
【0051】
質量分析法で測定した結果、[M+H]=416.1であり、分子式と一致した。
【0052】
実施例7 化合物7の調製
5当量のn-オクタノール、7.5当量のトリエチルアミンおよび2.5当量のトリホスゲンを用いてクロロギ酸n-オクチルの粗生成物を調製し、そのまま実施例1におけるクロロギ酸イソプロピルの代わりに使用したこと以外は、実施例1と同様のステップで調製を行った。反応後にカラムクロマトグラフィーにより4.20gの目的化合物を得た。収率は52.4%であった。
【0053】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.01 (s, 1H), 9.51 (s, 1H), 7.76 (dt, J = 7.1, 3.5 Hz, 1H), 7.62 - 7.36 (m, 2H), 5.12 (dd, J = 13.2, 5.1 Hz, 1H), 4.40 (dd, J = 36.2, 17.6 Hz, 2H), 4.19 - 4.01 (m, 2H), 3.00 - 2.84 (m, 1H), 2.66 (dd, J = 36.3, 20.1 Hz, 1H), 2.35 (qd, J = 13.2, 4.4 Hz, 1H), 2.07 - 1.94 (m, 1H), 1.75 - 1.41 (m, 2H), 1.31 - 1.26 (m, 10H), 0.86 (t, J = 6.8 Hz, 3H)。
【0054】
質量分析法で測定した結果、[M+H]+=416.23であり、分子式と一致した。
【0055】
実施例8 化合物8の調製
5当量のn-ウンデカノール、7.5当量のトリエチルアミンおよび2.5当量のトリホスゲンを用いてクロロギ酸n-ウンデシルの粗生成物を調製し、そのまま実施例1におけるクロロギ酸イソプロピルの代わりに使用したこと以外は、実施例1と同様のステップで調製を行った。反応後にカラムクロマトグラフィーにより5.6gの目的化合物を得た。収率は63.2%であった。
【0056】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.01 (s, 1H), 9.49 (s, 1H), 7.76 (dt, J = 7.1, 3.5 Hz, 1H), 7.58 - 7.39 (m, 2H), 5.12 (dd, J = 13.3, 5.1 Hz, 1H), 4.39 (q, J = 17.6 Hz, 2H), 4.08 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.00 - 2.83 (m, 1H), 2.63 (t, J = 16.4 Hz, 1H), 2.34 (qd, J = 13.2, 4.4 Hz, 1H), 2.02 (ddd, J = 13.2, 6.5, 4.5 Hz, 1H), 1.77 - 1.41 (m, 2H), 1.40 - 1.15 (m, 16H), 0.85 (t, J = 6.8 Hz, 3H)。
【0057】
質量分析法で測定した結果、[M+H]+=458.29であり、分子式と一致した。
【0058】
実施例9 化合物9の調製
5当量のn-オクタデカノール、7.5当量のトリエチルアミンおよび2.5当量のトリホスゲンを用いてクロロギ酸n-オクタデシルの粗生成物を調製し、そのまま実施例1におけるクロロギ酸イソプロピルの代わりに使用したこと以外は、実施例1と同様のステップで調製を行った。反応後にカラムクロマトグラフィーにより6.4gの目的化合物を得た。収率は60.1%であった。
【0059】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.00 (s, 1H), 9.49 (s, 1H), 7.76 (dd, J = 5.9, 2.3 Hz, 1H), 7.48 (dd, J = 8.6, 5.0 Hz, 2H), 5.12 (dd, J = 13.2, 5.0 Hz, 1H), 4.39 (q, J = 17.6 Hz, 2H), 4.08 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 3.02 - 2.81 (m, 1H), 2.60 (d, J = 17.0 Hz, 1H), 2.34 (qd, J = 13.2, 4.3 Hz, 1H), 1.99 (dd, J = 27.4, 21.9 Hz, 1H), 1.57 (dt, J = 69.7, 34.9 Hz, 2H), 1.41 - 0.95 (m, 30H), 0.85 (t, J = 6.6 Hz, 3H)。
【0060】
質量分析法で測定した結果、[M+H]+=556.39であり、分子式と一致した。
【0061】
実施例10 化合物10の調製
5当量の2-エチルブタノール、7.5当量のトリエチルアミンおよび2.5当量のトリホスゲンを用いてクロロギ酸2-エチルブチルの粗生成物を調製し、そのまま実施例1におけるクロロギ酸イソプロピルの代わりに使用したこと以外は、実施例1と同様のステップで調製を行った。反応後、カラムクロマトグラフィーにより3.9gの目的化合物を得た。収率は52.5%であった。
【0062】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.01 (s, 1H), 9.47 (s, 1H), 7.75 (dt, J = 33.1, 16.5 Hz, 1H), 7.61 - 7.27 (m, 2H), 5.13 (dd, J = 13.2, 5.1 Hz, 1H), 4.40 (q, J = 17.6 Hz, 2H), 4.03 (d, J = 5.9 Hz, 2H), 3.00 - 2.83 (m, 1H), 2.61 (d, J = 16.9 Hz, 1H), 2.35 (qd, J = 13.2, 4.4 Hz, 1H), 2.10 - 1.94 (m, 1H), 1.58 - 1.47 (m, 1H), 1.45 - 1.28 (m, 4H), 0.88 (t, J = 7.4 Hz, 6H)。
【0063】
質量分析法で測定した結果、[M+H]+=388.19であり、分子式と一致した。
【0064】
実施例11 化合物の薬物動態測定
計測機器:超高速液体クロマトグラフ(Acquity UPLC、Waters社製)、トリプル四重極質量分析計(Qtrap 5500、SCIEX社製)、高速冷却遠心分離機(5430R、Eppendorf社製)。
【0065】
クロマトグラフィー条件:カラム:2.1×50mm(1.7μm、BEH C18、Waters社製)、カラム温度:45℃。移動相:0.1%のギ酸水溶液(A)/アセトニトリル、勾配:下記表の通り。
【0066】
【表2】
【0067】
質量分析条件:陽イオン多重反応モニタリングモード(MRM)。カーテンガス(Curtain Gas)、ガス1(Gas1)、およびガス2(Gas2)はいずれも45psi。イオン源温度:500℃、イオン源電圧:5000V。一部の化合物のプリカーサーイオン(Q1)、プロダクトイオン(Q3)および衝突エネルギー(CE)は下記表の通り。
【0068】
【表3】
【0069】
実験動物:雄性SDラット、各群6匹、体重200~220グラム、実験前に一晩絶食させた。
【0070】
薬物の調製:対照薬物であるレナリドミドおよび各試験化合物(化合物1~10)を精秤し、0.5%のCMC-Na溶液に分注して懸濁液を調製した。
【0071】
動物への投与および採血:ラットに強制経口投与を行い、投与前および投与後10分、20分、40分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、5時間、8時間、12時間、21時間、24時間、30時間の時点で100μlの血液を採取し、氷浴上に置き、遠心分離して血漿を調製し、凍結保存した。
【0072】
血中薬物濃度データと薬物動態パラメータの計算:
血漿中薬物濃度データはMultiQuan3.0(SCIEX社製)で処理し、薬物動態パラメータの計算にあたっては、DAS 2.0ソフトウェアを用いて分析を行った。血中薬物濃度の単位はμg/Lである。
【0073】
図1図4は、それぞれ対照群および化合物1、3、6試験群の血漿中薬物濃度と時間との関係のグラフを示し、表2は、薬物動態試験結果を示す。
【0074】
図1図4および表2の薬物動態試験結果から、本発明の化合物は、経口投与後に血漿中で意図した薬効を発揮し、化合物1、3、6などの活性代謝物のAUCは同量を投与した従来の薬物とほぼ同程度である。しかし、本発明の化合物は、血漿中薬物濃度のピーク値がより小さく、ピーク到達までの時間がより長く、平均保持時間がより長いため、薬物動態学的特性がより臨床ニーズに適していることが分かる。
【0075】
【表4】
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表される構造を有する、ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物。
【化1】
(式中、Rは、
【化2】
である。)
【請求項2】
請求項1に記載のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の調製方法であって、
下記の反応式に従い、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンを出発原料とし、目的化合物を、それに対応するクロロホルメートによる反応によって得る、
ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の調製方法。
【化3】
(式中、Rは、
【化4】
である。)
【請求項3】
請求項1に記載のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の調製方法であって、
下記な反応式に従い、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンを出発原料とし、クロロギ酸フェニルまたはクロロギ酸p-ニトロフェニルと反応させてフェニルエステル化合物またはp-ニトロフェニルエステル化合物を得、目的化合物を、それに対応するアルコールとのエステル交換によって得る、
ジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の調製方法。
【化5】
(式中、Rは、
【化6】
であり、R’は、Hまたはニトロ基である。)
【請求項4】
請求項1に記載のジヒドロ-2H-イソインドールエステル化合物の、多発性骨髄腫治療薬物の調製における使用。
【国際調査報告】