(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】苦鉄質岩又は超苦鉄質岩の現場での(地下)蛇紋岩化及び炭化による水素の生成のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
E21B 43/00 20060101AFI20240719BHJP
E21B 43/22 20060101ALN20240719BHJP
【FI】
E21B43/00 A
E21B43/22 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505304
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 IB2022057090
(87)【国際公開番号】W WO2023007467
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ダラー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、ビクラム
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、コリン
(57)【要約】
高濃度の苦鉄質火成岩、超苦鉄質火成岩、又はそれらの組み合わせを含む地下地層を少なくとも部分的に横切る1つ以上の坑井を介して現場で行われる逐次的な蛇紋岩化反応及び炭酸化(無機化)反応を通じて、水素ガスを生成して解放し、二酸化炭素を隔離するための装置、システム、及び方法が開示される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苦鉄質火成岩、超苦鉄質火成岩、又はそれらの組み合わせを含む地層から水素ガスを生成する方法であって、
前記地層を少なくとも部分的に横切る坑井を設けるステップであって、前記坑井は、前記地層への流体の注入と、前記地層からの流体の回収とのための経路を提供する、ステップと、
前記坑井によって提供された前記経路を通じて水性刺激剤を注入し、前記地層の反応性表面に接触させるステップと、
前記経路を介して前記坑井から水素ガスを含む流体組成物を回収するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記水性刺激剤を高圧で前記坑井を通じて前記地層へ圧送することにより、前記地層を水圧で破砕するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性刺激剤は、二酸化炭素を含まない、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性刺激剤は、硫化二水素を含む、
請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記水性刺激剤は、負のEh値を有する酸素フガシティを有する、
請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記水性刺激剤は、約0.1パーミルから4.5パーミルの塩分濃度で塩化ナトリウムを含む、
請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記経路に注入される前記水性刺激剤は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記地層の前記反応性表面付近の圧力は、約1気圧を超え、且つ、前記地層の静岩圧未満である、
請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記地層の前記反応性表面は、約60℃から約260℃の間の温度を有する、
請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記地層の前記反応性表面は、約260℃を超える温度を有する、
請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記水性刺激剤の注入中に、前記地層の前記反応性表面との二酸化炭素の相互作用を最小化するステップをさらに含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記地層の前記反応性表面は、鉄カンラン石、鉄ケイ輝石、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、
請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記地層へ前記水性刺激剤を注入する前に、前記地層から流体を排出するステップをさらに含む、
請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記坑井から回収された前記流体組成物は、前記地層からの1つ以上の酸化還元感受性成分をさらに含む、
請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記坑井から回収された前記流体組成物から前記1つ以上の酸化還元感受性成分を分離するステップをさらに含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記坑井から回収された前記流体組成物を燃料として使用するステップをさらに含む、
請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記経路を介して前記坑井から前記流体組成物を回収するステップは、
前記流体組成物を前記坑井の付近に貯蔵するステップ、又は、
パイプラインを介して前記流体組成物を輸送するステップ
を含む、
請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記流体組成物が回収された後、前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記地層へ二酸化炭素を注入するステップをさらに含み、
前記地層中の苦鉄質岩又は超苦鉄質岩のうちの1つ以上との前記二酸化炭素の少なくとも一部の反応により、少なくとも炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムが生成される、
請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記二酸化炭素を注入するステップは、前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記地層へ水と二酸化炭素との混合物を注入するステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記水と二酸化炭素との混合物は、約4.8から約6.5の間のpHを有する、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記水と二酸化炭素との混合物は、0.1パーミルから4.5パーミルの間の塩分濃度で塩化ナトリウムを含む、
請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記水と二酸化炭素との混合物は、窒素、硫化二水素、メタン、又は他の微量ガスを含む、
請求項19から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記二酸化炭素は、1バールから前記地層の静岩圧の間の圧力で前記地層へ注入される、
請求項18から22の何れか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記地層へ注入される前記二酸化炭素は、超臨界二酸化炭素、又は、超臨界二酸化炭素と他の流体との混合物を含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記二酸化炭素を注入するステップは、坑井刺激プロセスの一部として行われる、
請求項18から24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
苦鉄質火成岩、超苦鉄質火成岩、又はそれらの組み合わせを含む地層から水素ガスを生成するための装置であって、
請求項1から25の何れか一項に記載の方法を実行するための手段を備える、
装置。
【請求項27】
苦鉄質火成岩、超苦鉄質火成岩、若しくはそれらの組み合わせを含む地層から水素ガスを生成するか、又は前記地層内において二酸化炭素を現場で隔離するシステムであって、
前記地層を少なくとも部分的に横切る坑井と、
前記坑井と流体連通して、前記水性刺激剤が、少なくとも部分的に前記坑井によって画定された経路を通じて前記地層へ通過することを可能にするように構成可能な水性刺激剤の供給源と、
前記坑井の上部付近に配置され、1つ以上の流出口を有し、当該1つ以上の流出口を通じて水素ガスを含む流体組成物が前記坑井から回収され得る、流体封じ込め装置と、
前記坑井と流体連通して、前記二酸化炭素が、少なくとも部分的に前記坑井によって画定された前記経路を通じて前記地層へ通過することを可能にするように構成可能な二酸化炭素の供給源と、
を備える、
システム。
【請求項28】
前記流体封じ込め装置の前記1つ以上の流出口に接続され、前記坑井から前記流体封じ込め装置を通過した水素ガスを含む前記流体組成物を吐出するパイプラインをさらに備える、
請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記流体封じ込め装置の前記1つ以上の流出口に接続され、前記坑井から前記流体封じ込め装置を通過した水素ガスを含む前記流体組成物を貯蔵する流体貯蔵容器をさらに備える、
請求項27又は28に記載のシステム。
【請求項30】
前記流体封じ込め装置は、ウェルヘッドである、
請求項27から29の何れか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記二酸化炭素の供給源は、前記二酸化炭素を前記坑井へ1気圧から前記地層の静岩圧の間の圧力で供給するように構成可能である、
請求項27から30の何れか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記水性刺激剤は、二酸化炭素を含まない、
請求項27から31の何れか一項に記載のシステム。
【請求項33】
前記水性刺激剤は、硫化水素を含む、
請求項27から32の何れか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記水性刺激剤は、負のEh値を有する酸素フガシティを有する、
請求項27から33の何れか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記水性刺激剤は、約0.1パーミルから4.5パーミルの間の塩分濃度で塩化ナトリウムを含む、
請求項27から34の何れか一項に記載のシステム。
【請求項36】
前記水性刺激剤は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
請求項27から35の何れか一項に記載のシステム。
【請求項37】
前記地層の前記坑井付近の領域を水圧で破砕するように構成可能な破砕装置をさらに備える、
請求項27から36の何れか一項に記載のシステム。
【請求項38】
前記二酸化炭素は、超臨界二酸化炭素を含む、
請求項27から37の何れか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記二酸化炭素は、水と二酸化炭素との混合物を含む、
請求項27から38の何れか一項に記載のシステム。
【請求項40】
前記水と二酸化炭素との混合物は、約4.8から約6.5の間のpHを有する、
請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記水と二酸化炭素との混合物は、0.1パーミルから4.5パーミルの間の塩分濃度で塩化ナトリウムを含む、
請求項39又は40に記載のシステム。
【請求項42】
前記水と二酸化炭素との混合物は、窒素、硫化二水素、メタン、又は他の微量ガスを含む、
請求項39から41の何れか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
温室効果ガス、主に二酸化炭素(CO2)及びメタン(CH4)の環境負荷は、過去数十年にわたって多くの公の議論の対象となってきた。より最近には、環境への温室効果ガスの放出を削減するための自主的な民間部門の取り組み及び政府により定められた規制が実施され始めている。二酸化炭素及び他の温室効果ガスの大気への放出を軽減するための二酸化炭素及び他の温室効果ガスの捕捉、及び/又は、隔離に加えて、生成される二酸化炭素、及び/又は、捕捉し隔離する必要がある二酸化炭素の量を削減するために、エネルギー生産のための化石燃料燃焼に代わる代替手段の利用に多くの研究開発努力が集中してきた。
【0002】
水素(H2)ガスは、(例えば、水素燃料としての、若しくは、グリーンアンモニアの使用による)エネルギー源、並びに、燃焼時に温室効果ガスをほとんど若しくは全く生じない化学原料(例えば、メタノール、アンモニア、炭化水素燃料)として有望である。実際、水素ガスを燃焼させると、反応生成物として水だけが生成される。しかし、水素ガスは、伝統的に化石燃料を使用して(例えば、水蒸気改質装置内での天然ガス/メタン変換によって)生成されており、これにより、反応生成物として温室効果ガスである二酸化炭素が生成される。例えば、前述の水蒸気メタン改質反応では、メタンが水蒸気(すなわち、水)と反応し、水素ガスと一酸化炭素とが生成される。続く水性ガスシフト反応では、一酸化炭素が水蒸気とさらに反応し、二酸化炭素と追加の水素ガスとが生成される。水素ガスは、続いて、圧力スイング吸着、膜分離、又は他のガス分離プロセスにより二酸化炭素から分離される。従って、例えば精錬所の操業において生成される水素のほとんどは、温室効果ガスを生成し、有意義な利益を得るには、この温室効果ガスを捕捉して隔離する必要がある。
【0003】
或いは、水素ガスは、水の電気分解によって水素ガスと酸素とに生成され得る。水素ガスは、続いて、圧力スイング吸着、膜分離、又は他のガス分離プロセスにより酸素から分離される。電気分解又は部分熱分解反応による水素の生成は、相当量の電力を必要とする。電気分解、及び/又は、部分熱分解反応による水素生成に必要な電力の少なくとも一部は再生可能な供給源(例えば、風力、太陽光、水力発電)から得ることができるものの、実際には、加水分解に使用される電力の大部分は、伝統的に、且つ、引き続いて、化石燃料の燃焼によって生成されており、この化石燃料の燃焼は、温室効果ガスも生成する。
【0004】
特定の地層内で、例えば
図1A~
図1Dに示すように中央海嶺付近の若い海洋地殻で、水素ガスの非生物的生成が起こることが知られている。これらの自然反応は、様々なpH、酸素フガシティ、化学組成、及び圧力を含む様々な環境条件にわたって起こる。このような反応は、多様で複雑な鉱物的組成及び化学的性質をもたらすものの、反応生成物のいかなる特定の組み合わせも予想どおりにもたらすものではない。実際、
図2の断面写真に概して示されているように、非生物的水素を生成し得る岩石鉱床200は、抽出し難い鉱物相の複雑な混合物又は層を含むことが多く、又は、現場の(in situ)地球化学的条件(例えば、可変酸化還元電位(Eh)、pH、間隙水組成、ガス化学組成、及び温度)に基づいて他の競合反応が優先される場合には所望の生成物を生成しないであろう。例えば、水素生成の反応速度論及び規模は、本質的に可変性が高く、その発生は、pH、Eh、並びに間隙空間内及び鉱物表面における流体地球化学の他の側面に大きく依存する。従って、反応相の複雑な反応速度論と、自然条件下(例えば、中性付近のpH、可変酸素フガシティ、及び可変間隙水化学的性質)での競合反応の発生とが、これらの自然に発生する反応によって生成される生成物を左右する。特定の地層、及び/又は、その岩石は、特定の条件下での二酸化炭素との反応を促し、炭酸鉱物相、例えば炭酸塩を形成する鉱物を含むことも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図3は、世界中の選択された好適な、及び/又は、堅牢な苦鉄質岩及び超苦鉄質岩の鉱床の位置例を強調表示する地図を提供する。カンラン石含有鉱石及び輝石含有鉱石は、そのような苦鉄質地層、及び/又は、超苦鉄質地層で見出され得る。
図3から分かるように、苦鉄質火成岩及び超苦鉄質火成岩の源は、多くの場所で発見され得、非常に豊富であり、地球の大陸地殻の少なくとも10%を占めており、これは、本明細書に記載された解決策の世界的な適用可能性を示している。より最近では、このような苦鉄質火成岩及び超苦鉄質火成岩の源は、炭酸塩鉱物相に二酸化炭素を隔離する(鉱化する)ために利用できる可能性により関心を集めている。しかし、炭素隔離に関する膨大な先行研究にもかかわらず、炭素鉱化のための最良の機械的反応及び最適化された速度についてかなりの議論が存在する。そのため、現場プロセスの経済性は、完全には開発されておらず、地下の苦鉄質岩及び超苦鉄質岩の水素生成能力及び炭素隔離能力も実現されていない。さらに、反応が熱力学的完成、及び/又は、経済性に達するために十分な表面積を実現するためには、間隙率(porosity)、浸透性、及び地下の亀裂生成を最適化する必要がある。
【0006】
このような地層、及び/又は、この地層の鉱石は、地質学的水素又は他の生成物のために、及び、潜在的な炭素隔離のために利用される理論的可能性があるにもかかわらず、これらの反応のプロセス及び反応速度論は、厳密に評価されておらず、地下条件又は地中条件に最適化されてもいない。さらに、地下のこれらの地層から水素を生成するプロセスは、開発されていない。従って、出願人は、特定の地層、及び/又は、この地層の鉱石を現場で利用し、カンラン石及び輝石に富む鉱石を含む地層から水素を遊離させ、及び/又は、生成し、それに加えて、二酸化炭素を炭酸塩として隔離するシステム及び方法の必要性を認識した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書の開示は、苦鉄質岩石層、及び/又は、超苦鉄質岩石層内部における現場での工学的操作による水素の回収及び二酸化炭素の隔離のためのシステム及び方法の1つ以上の実施形態を提供する。
【0008】
例えば、苦鉄質火成岩、超苦鉄質火成岩、又はそれらの組み合わせを含む地層から水素ガスを生成する方法は、地層を少なくとも部分的に横切る坑井を設けるステップであって、坑井は、地層への流体の注入と、地層からの流体の回収とのための経路を提供するステップと、坑井によって提供された経路を通じて水性刺激剤を注入し、地層の反応性表面に接触させるステップと、経路を介して坑井から水素ガスを含む流体組成物を回収するステップと、を含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、方法は、水性刺激剤を高圧で坑井を通じて地層へ圧送することにより、地層を水圧で破砕するステップを含み得る。いくつかの実施形態において、水性刺激剤は、二酸化炭素を含まない。いくつかの実施形態において、水性刺激剤は、硫化二水素を含む。いくつかの実施形態において、水性刺激剤は、負のEh値を有する酸素フガシティを有する。いくつかの実施形態において、水性刺激剤は、約0.1パーミルから4.5の間の塩分濃度で塩化ナトリウムを含む。そして、いくつかの実施形態において、経路に注入される水性刺激剤は、約8.3から約11.1の間のpHを有する。
【0010】
いくつかの実施形態において、地層の反応性表面付近の圧力は、約1気圧(約1バール)を超え、且つ、ターゲット地層の静岩圧未満である。さらに、いくつかの実施形態において、地層の反応性表面は、約60℃から約260℃の間の温度を有する。或いは、地層の反応性表面は、約260℃を超える温度を有し得る。後者の場合、方法は、水性刺激剤の注入中に、地層の反応性表面との二酸化炭素の相互作用を最小化するステップを含み得る。様々な実施形態において、地層の反応性表面は、鉄カンラン石、鉄ケイ輝石、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、この方法は、坑井によって提供された経路を通じて地層へ水性刺激剤を注入する前に、地層から流体を排出するステップを含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、坑井から回収された流体組成物は、岩石層からの1つ以上の酸化還元感受性成分をさらに含む。いくつかのそのような実施形態において、方法は、坑井から回収された流体組成物から1つ以上の酸化還元感受性成分を分離するステップをさらに含み得る。
【0013】
様々な実施形態において、方法は、坑井から回収された流体組成物を燃料として使用するステップを含み得る。追加的に、又は代替的に、経路を介して坑井から流体組成物を回収するステップは、流体組成物を坑井付近に貯蔵するステップ、及び/又は、パイプラインを介して流体組成物を輸送するステップを含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、方法は、流体組成物が回収された後、坑井によって提供された経路を通じて地層へ二酸化炭素を注入するステップを含み、地層中の苦鉄質岩又は超苦鉄質岩のうちの1つ以上との二酸化炭素の少なくとも一部の反応により、少なくとも炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムが生成される。いくつかのそのような実施形態において、注入される二酸化炭素は、水と二酸化炭素との混合物を含む。例えば、この水と二酸化炭素との混合物は、約4.8から約6.5の間のpHを有し得る。さらに、この水と二酸化炭素との混合物は、0.1から4.5の間の塩分濃度で塩化ナトリウムを含み得る。さらに、この水と二酸化炭素との混合物は、窒素、硫化二水素、メタン、又は他の微量ガスを含み得る。
【0015】
様々な実施形態において、地層に注入される二酸化炭素は、1バールからターゲット地層の静岩圧の間の圧力で注入され得る。さらに、地層へ注入される二酸化炭素は、超臨界二酸化炭素、又は、超臨界二酸化炭素と他の流体との混合物を含み得る。いくつかの実施形態において、坑井によって提供された経路を通じて二酸化炭素を注入するステップは、坑井刺激プロセスの一部として行われる。
【0016】
様々な方法ステップを実行するための対応する手段を、以下説明する。
【0017】
苦鉄質岩石層、及び/又は、超苦鉄質岩石層の内部における現場での工学的操作による水素の回収、及び/又は、二酸化炭素の隔離のための例示的なシステムは、地層を少なくとも部分的に横切る坑井と、坑井と流体連通し、水性刺激剤が、少なくとも部分的に坑井によって画定された経路を通じて地層へ通過することを可能にするように構成可能な水性刺激剤の供給源と、坑井の上部付近に配置され、1つ以上の流出口を有し、当該1つ以上の流出口を通じて水素ガスを含む流体組成物が坑井から回収され得る流体封じ込め装置と、坑井と流体連通し、二酸化炭素が、少なくとも部分的に坑井によって画定された経路を通じて地層へ通過することを可能にするように構成可能な二酸化炭素の供給源と、を含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、システムは、流体封じ込め装置の1つ以上の流出口に接続され、坑井から流体封じ込め装置を通過した水素ガスを含む流体組成物を吐出するパイプラインを含む。システムは、流体封じ込め装置の1つ以上の流出口に接続され、坑井から流体封じ込め装置を通過した水素ガスを含む流体組成物を貯蔵する流体貯蔵容器をさらに含み得る。さらに、流体封じ込め装置は、ウェルヘッドであってもよい。
【0019】
様々な実施形態において、二酸化炭素の供給源は、二酸化炭素を坑井へ1気圧(約1バール)からターゲット地層の静岩圧の間の圧力で供給するように構成可能である。いくつかのそのような実施形態において、供給される二酸化炭素は、超臨界二酸化炭素、又は、超臨界二酸化炭素と他の流体との混合物であってもよい。いくつかの実施形態において、二酸化炭素は、水と二酸化炭素との混合物であってもよく、いくつかのそのような実施形態において、混合物は、約4.8から約6.5の間のpHを有し得、及び/又は、0.1パーミルから4.5パーミルの間の塩分濃度で塩化ナトリウムを含み得る。さらに、いくつかの実施形態において、二酸化炭素は、窒素、硫化二水素、メタン、及び/又は、他の微量ガスを含む水と二酸化炭素との混合物であってもよい。
【0020】
様々な実施形態において、水性刺激剤は、硫化水素を含み得る。この水性刺激剤は、負のEh値を有する酸素フガシティを有し得る。さらに、水性刺激剤は、約0.1パーミルから4.5パーミルの間の塩分濃度で塩化ナトリウムを含み得る。さらに、水性刺激剤は、約8.3から約11.1の間のpHを有し得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、システムは、地層の坑井付近の領域を水圧で破砕するように構成可能な破砕装置をさらに含み得る。
【0022】
前述の発明の概要は、本明細書で説明されるいくつかの例示的な実施形態を要約することのみを目的として提供されている。上述の実施形態は、単なる例に過ぎないため、これらは、本開示の範囲をいかなる形でも狭めるものとして解釈されるべきではない。本開示の範囲は、上記で要約した実施形態に加えて多くの潜在的な実施形態を包含し、そのうちのいくつかは、以下でさらに詳細に説明されることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
特定の例示的な実施形態を上記で概括的に説明したが、ここで添付図面を参照し、これらの添付図面は必ずしも縮尺に合わせて描かれているわけではない。いくつかの実施形態は、図に示されている構成要素よりも少ない又は多い構成要素を含み得る。
【0024】
【
図1A】
図1Aは、非生物的水素生成をもたらし、及び/又は、ホストし得る理論上の中央海嶺付近に位置する若い海洋地殻及び関連構造の一連の断面図を示す。
【
図1B】
図1Bは、非生物的水素生成をもたらし、及び/又は、ホストし得る理論上の中央海嶺付近に位置する若い海洋地殻及び関連構造の一連の断面図を示す。
【
図1C】
図1Cは、非生物的水素生成をもたらし、及び/又は、ホストし得る理論上の中央海嶺付近に位置する若い海洋地殻及び関連構造の一連の断面図を示す。
【
図1D】
図1Dは、非生物的水素生成をもたらし、及び/又は、ホストし得る理論上の中央海嶺付近に位置する若い海洋地殻及び関連構造の一連の断面図を示す。
【
図2】
図2は、蛇紋岩化した超苦鉄質岩の例示的な断面を示す。
【
図3】
図3は、世界中の好適なカンラン石及び輝石を含む産地の位置を表す地図を示す。
【
図4】
図4は、本明細書に記載された、いくつかの例示的な実施形態に係る、苦鉄質火成岩又は超苦鉄質火成岩の地質源に近接する例示的な坑井現場を示す。
【
図5】
図5は、本明細書に記載された、いくつかの例示的な実施形態に係る、苦鉄質火成岩又は超苦鉄質火成岩からの水素ガスの現場での発生を促進するための例示的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
ここで、以下、いくつかの例示的な実施形態について、添付図面を参照して、より詳細に説明するが、この添付図面では、必ずしも全てではないものの、いくつかの実施形態が示されている。本明細書に記載された発明は、多くの異なる形態で具現化され得るため、本発明は、本明細書に記載された実施形態のみに限定されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用される法的要件を満たすように提供される。
【0026】
[概要]
水素の生成及び二酸化炭素の隔離は、炭素に富む化石燃料に対する依存度がより低い未来の経済へ社会が移行するためにクリアしなければならない重大なハードルである。前述したように、本明細書に記載された例示的な実施形態は、水素を生成する蛇紋岩化反応と炭素を鉱化する炭酸化反応とを促進するために、特定の刺激を苦鉄質火成岩、及び/又は、超苦鉄質火成岩へ現場で適用することによって、同一の操作において両方を行うシステム及び方法を提供する。本明細書で企図される様々な実施形態を実施するには、少なくとも部分的に苦鉄質火成岩石層又は超苦鉄質火成岩石層を横切る坑井が必要である。坑井は、地層の苦鉄質部分又は超苦鉄質部分への流体の注入と、当該地層の苦鉄質部分又は超苦鉄質部分からの流体の回収と、のための経路を提供する。以下により詳細に説明するように、例示的な実施形態では、まず坑井への水性刺激剤(その固有の特性については後述する)の注入によって水素を生成し、次に岩石層内における恒久的な貯蔵のために坑井へ二酸化炭素を注入することによって二酸化炭素を岩石層内に隔離する2段階反応が利用される。例示的な実施形態は、好適な特性を有する岩石層、岩石との流体の好ましい化学反応を最適化する地下深さ、流体の注入及び回収の順序及び性質、並びに岩石層へ注入される流体の固有の特性を特定することによって、有意義な水素回収と炭素隔離との両方を達成することができる。
【0027】
現場外での水素の生成及び二酸化炭素の隔離のための戦略とは対照的に、水素の生成及びそれに応じた地下での二酸化炭素の隔離の経済性を最適化するには、固有の機構プロセスが必要である。現場外環境では、水素生成反応と炭酸化反応との両方の有効性を最大化する、十分に完全な水圧刺激、及び/又は、岩石粉砕が行われ得る。しかし、現場外で可能であり得る水圧刺激及び岩石粉砕の度合いは、地下内部では実現できず、従って、炭酸化反応と蛇紋岩化反応との何れかの完全な熱力学的完成は実現し得ないものの、間隙率、浸透性、及び地下での亀裂生成をさらに好適に向上し、流体(すなわち、水、二酸化炭素、二酸化炭素に富む塩水)の注入が、有意義な規模、且つ、制御可能な方法での水素生成と炭素隔離との両方を促進することを保証するような方法で現場での操作を行うには、追加の考慮が必要である。
【0028】
他の地下炭素隔離戦略は、孤立した地層へ、及び、塩水帯水層へ気相二酸化炭素を注入し得るものの、これらの戦略のそれぞれには重大な課題がある。流体二酸化炭素の貯蔵に関しては、貯蔵されたあらゆるガスは将来いつか移動し得るため、そのような戦略は全て、環境リスク及び将来の炭素管理の課題を生み出す。従って、炭素鉱化は、(米国において炭酸塩鉱物内における恒久的炭素隔離に対して他の形態の貯蔵よりも大幅に高い税額控除が提供されていることが示すように)炭素隔離の好ましいメカニズムである。
【0029】
しかし、既存の炭素鉱化戦略は、炭素鉱化プロセスに本質的に関連する大きな課題にも直面している。炭素鉱化のプロセスは、岩石の体積膨張を引き起こし、この体積膨張は、間隙率の減少、ほとんどの場合における浸透性の低下、及び、岩石内の流体流路の破砕特性(開口度、口径、間隙スロートサイズ、接続性)の変化として現場で現れ、又は、最悪の場合、これらの流体流路を完全に閉鎖してしまう。炭素の鉱化を引き起こすために二酸化炭素を注入すると、二酸化炭素が注入された岩石の透水係数が低下し、ひいては、水素生成と、進行中の炭素隔離のために既存の地下井戸インフラを使用する残りの全体的な能力と、の両方の可能性が減少する。苦鉄質岩及び超苦鉄質岩は、そもそも、間隙率及び浸透性が非常に低く、そのような地層内の炭素鉱化により間隙率及び浸透性がさらに低下するため、炭素鉱化のみに焦点を当てた戦略を使用すると、比較的少量の炭素しか隔離できない。これにより、このような戦略の経済性が、特に困難になる。この問題を部分的に改善する技術は、超臨界二酸化炭素の使用であり、これにより、任意の他の形態の二酸化炭素を使用した場合に可能であろう度合いよりも高い度合いで、あらゆる利用可能な流路へ浸透することが可能となる。出願人は、いくつかの実施形態でこの態様を使用する。
【0030】
そのため、現場プロセスの経済性は、十分に開発されておらず、地下の苦鉄質岩及び超苦鉄質岩の水素生成及び炭素隔離能力も実現されていない。出願人の知る限り、炭素鉱化が続いて行われる水素生成の最適化された化学プロセスを使用し、現場での水素生成の反応速度論及び総容積、貯蔵所の流体流動特性、又は炭素隔離を向上させる先行の試みは無い。
【0031】
例示的な実施形態の工程の高次の説明が上記に提供されているものの、そのような例示的な実施形態の構成に関する具体的な詳細が、以下に提供される。
【0032】
[蛇紋岩化反応及び炭酸化反応]
本明細書における開示は、苦鉄質火成岩、及び/又は、超苦鉄質火成岩中に見出されるカンラン石及び輝石に富む鉱石が関与する蛇紋岩化反応による水素、及び/又は、他の所望の鉱物の生成を促進するシステム及び方法の1つ以上の実施形態を提供する。カンラン石は、苦鉄質岩と超苦鉄質岩との両方の主要な成分であり、ケイ酸マグネシウム(苦土カンラン石)とケイ酸鉄(鉄カンラン石)との固溶体系列である。カンラン石に富んだ鉱床において、鉄カンラン石は、通常、微量成分であり、濃度は、カンラン石の5%から20%の範囲であり、より低い範囲の濃度が、より一般的である。その結果、そのような鉱床中の鉄カンラン石の熱化学活性は、苦土カンラン石の熱化学活性に比べて比較的低い。それにもかかわらず、反応は、完了すると、磁鉄鉱、シリカ、及び(水との鉄カンラン石の反応から)水素を生成する。輝石は、同じく苦鉄質岩と超苦鉄質岩との両方の共通成分であり、多くの場合、鉄ケイ輝石と頑火輝石との固溶体で構成されている。鉄カンラン石と同様に、水との鉄ケイ輝石(輝石の5%~20%)の反応が、磁鉄鉱、シリカ、及び水素を生成する。
【0033】
以下に提供された表1は、鉄カンラン石(Fe2SiO4)、鉄ケイ輝石(Fe2Si2O6)、及び苦土カンラン石(Mg2SiO4)が関与する代表的な蛇紋岩化反応を示す。鉄カンラン石及び苦土カンラン石は、カンラン石に富む鉱石に関連する鉱物相であり、鉄ケイ輝石は、輝石に富む鉱石に関連する鉱物相である。特定の条件(すなわち、8を超えるpH、(負のEh値又は負の電位を有する)低酸素フガシティ)の下で、水は、鉄カンラン石及び鉄ケイ輝石と反応し、磁鉄鉱(Fe3O4)、シリカ(SiO2)、及び水素ガス(H2)を好適な化学量論比で生成する。それぞれの場合において、3モルの鉄カンラン石又は鉄ケイ輝石鉱物から2モルの水素ガスが生成される。他の条件(酸性又は中性付近のpH、酸化条件)の下で、水は、苦土カンラン石と反応し、アンチゴライト(Mg3Si2O5(OH)4)、ブルーサイト(Mg(OH)2)、及び/又は、多数の他の副鉱物相を好適な化学量論比で生成する。このような場合、2モルの苦土カンラン石鉱物からは、水素ガスが生成されないものの、これらの条件の下では、それに応じた二酸化炭素の鉱化が促進され、この二酸化炭素の鉱化は、間隙率、浸透性、及び流体の流れの可能性を低下させる。
【0034】
【0035】
1つ以上の実施形態において、開示されたシステム及び方法は、苦鉄質岩、及び/又は、超苦鉄質岩中に見出されるカンラン石及び輝石に富む鉱石が関与する炭酸化反応による気体状二酸化炭素の(例えば、炭酸塩鉱物相としての)隔離も促進し得る。以下に提供された表2は、苦土カンラン石(Mg2SiO4)、頑火輝石(Mg2Si2O6)、灰長石(CaAl2Si2O8)、アンチゴライト(Mg3Si2O5(OH)4)、及びブルーサイト(Mg(OH)2)が関与する代表的な炭酸化反応を示す。苦土カンラン石は、カンラン石に富む鉱石に関連する鉱物相であり、頑火輝石は、輝石に富む鉱石に関連する鉱物相であり、灰長石は、斜長石に富む鉱石に関連する鉱物相であり、アンチゴライト及びブルーサイトは、蛇紋岩に富む鉱石に関連する鉱物相である。
【0036】
二酸化炭素は、苦土カンラン石、頑火輝石、灰長石、及び/又は、アンチゴライトと反応し、少なくとも炭酸マグネシウム(若しくは、灰長石の場合には、少なくとも炭酸カルシウム)並びにシリカ(SiO2)(若しくは、灰長石の場合には、カオリナイト(Al2Si2O5(OH)4))を生成し;これらの反応は、水及びCO2の存在下、酸性条件で促進される。二酸化炭素とのアンチゴライト及びブルーサイトの反応は、化学量論量の水をさらに生成する。苦土カンラン石及び頑火輝石が関与する炭酸化反応の場合、苦土カンラン石又は頑火輝石鉱物1モルあたり、2モルの二酸化炭素ガスが炭酸マグネシウムに変換される。アンチゴライトの炭化の場合、アンチゴライト1モルあたり、3モルの二酸化炭素ガスが炭酸マグネシウムに変換される。灰長石の場合、灰長石1モルあたり、3モルの二酸化炭素ガスが炭酸カルシウムに変換される。最後に、二酸化炭素とのブルーサイトの反応により、表2に示す化学量論比に示すように、水2モルあたり1モルの炭酸マグネシウムが生成される。
【0037】
【0038】
自然界では、且つ、前述したように、上述の蛇紋岩化反応及び炭化反応は、発生するものの、予測が難しく、多くの場合、混沌としている、様々な環境条件において、現場で、可変であり、時には変化する特性(例えば、pH、酸素フガシティ、間隙水化学組成(例えば、塩分濃度)、気体化学的性質、及び自然界で見られる圧力)を有する流体の特性に基づいて同時に(又は逐次的に)発生する反応の組み合わせにおいてのみ発生する。自然界で発生する多数の反応は、多様且つ複雑な鉱物学的組成及び化学的性質をもたらすものの、使用可能な反応生成物のいかなる特定の組み合わせも予想どおりにもたらすものではない。
【0039】
出願人は、上述したように、苦鉄質火成岩、及び/又は、超苦鉄質火成岩(すなわち、例えば鉄含有量が高いカンラン石及び輝石を含む鉱石)の理論上の可能性が大きいにもかかわらず、蛇紋岩化及び炭酸化反応のプロセス及び反応速度論は、厳密に評価されておらず、地下において生産目的のために最適化されてもいないことを認識している。従って、そのような反応は、歴史的に、地質資源を経済的な地質水素のために利用し、水素製造又は炭素隔離のための天然資源及び触媒として利用するために展開されてこなかった。具体的に、地下炭素隔離と、これらの種類の岩石からの水素、及び/又は、他の鉱物の生成と、を向上させるプロセスステップは、開発されていない。さらに、出願人の知る限り、水素生成又は炭素鉱化の最適化された化学プロセスを使用し、水素生成の反応速度論及び総容積、貯蔵所の流体流動特性を向上させるか、又は、追加の地下二酸化炭素鉱化の能力を向上させる先行の試みは無い。
【0040】
[現場での水素の生成及び二酸化炭素の隔離]
本明細書で企図される様々な実施形態では、蛇紋岩化反応及び炭酸化反応を最適化するための苦鉄質岩又は超苦鉄質岩の地下掘削及び水圧刺激によりアクセスされたカンラン石及び輝石に富む鉱石を使用する工学的システムによって、二酸化炭素が鉱化され得、水素が、経済的に(且つ、全体的に中立から正味マイナスのカーボンフットプリントで)生成され得る。これらの結果を生み出すために、出願人は、
図4に示すような坑井現場システムによって、及び/又は、この坑井現場システムの内部で実行され得る逐次反応を刺激する工学的プロセスを開発した。
【0041】
図4は、苦鉄質火成岩又は超苦鉄質火成岩の地層に近接する坑井現場400を含む例示的な工学的システムを示す。
図4に示すように、地層への流体の注入と、地層からの流体の回収と、を促進するために構成要素のシステムが坑井現場400に配置される。これらの構成要素は、流体の注入及び回収を可能にするために地層に掘削された坑井402を介して地層と相互作用する。坑井は、
図4に示すように、掘削リグ404の使用など、任意の好適な方法で掘削され得る。ウェルヘッド(
図4には図示せず)などの流体封じ込め装置を(掘削リグ404の代わりに)坑井402の上部付近に配置し、坑井402からの流体の注入及び回収のための構造及び耐圧(pressure containing)インターフェースを提供し得る。流体封じ込め装置は、1つ以上の流出口を有し得、この流出口を通じて流体が坑井402へ注入されるか、又は、坑井402から回収される。
【0042】
坑井402の深さは、水素の生成又は二酸化炭素の鉱化に適した温度を有する地層の地下領域と流体が相互作用することを可能にする深さまで坑井402を掘削することを目的として、坑井402が掘削される地層の固有の特性に基づいて設計され得る。
【0043】
地層への流体の注入は、岩石を水圧刺激し、これにより、坑井付近の岩石層の内部に亀裂406が誘発又は拡大され得る。例えば、水性刺激剤の注入により、岩石の反応性鉱物相の内部で蛇紋岩化及び他の反応が促進され得る。前述したように、蛇紋岩化反応は、水素を生成し、追加の間隙空間、浸透性、及び坑井402に近い地層の水力学的接続性を導入するように岩石層の結晶構造を変更する化学反応(すなわち、構成鉱物の変化)を引き起こす。最初の水素生成ステップ中の間隙体積の増加がなければ、(すなわち、自然系で起こることが知られている)二酸化炭素鉱化プロセスの発生により、構成成分である苦鉄質岩及び超苦鉄質岩の間隙率が減少するであろう。別の例として、方向性掘削、水圧破砕などの利用可能な技術を使用して破砕を誘発し、ひいては(工学的な二次)間隙率及び浸透性を増加させ、ひいては地下での反応に適した表面積を増加させてもよい。この点に関して、水圧刺激(すなわち、水圧破砕)技術は、破砕装置を利用し、流体、場合によってはプロパントを高圧で坑井402を通じて地層内へ圧送して、新たな亀裂406を誘発するか、又は、岩石層内に既に存在する亀裂406を拡大、及び/若しくは、維持することによって地層を水圧破砕し得る。
【0044】
図4は、流体が、流体タンク408を積んだタンカートラックによって坑井402への注入のために提供され得ることをさらに示す。流体タンク408は、ホース410を介して流体封じ込め装置の流出口に接続し得る(これにより、坑井402を通じた標的の地層への流体タンク408内の流体の輸送が促進され得る)。説明を容易にするために流体タンク408が示されているが、様々な例示的な実施形態は、坑井402へ注入するために流体を流体封じ込め装置へ送達する様々な異なる方法を利用し得ることが理解されよう。例えば、そのような流体は、
図4に示すようなトラックによって受け取られ得るものの、流体は、流体の供給源を流体封じ込め装置へ接続するパイプライン又は封じ込め池によって伝送され得る。同様に、様々な例示的な実施形態は、様々な異なる種類の流体(例えば、塩水、CO
2に富む塩水、H
2Sに富む塩水、CO
2)の何れかを、流体封じ込め装置を介して坑井402へ注入するように構成可能であることが理解されるであろうし、本明細書に記載されたように水性刺激剤及び二酸化炭素、破砕流体、及び/若しくは、プロパントなどの他の流体なども、坑井402を介して岩石層へ注入され得る。
【0045】
最後に、坑井現場400は、パイプラインを介して流体封じ込め装置に(例えばパイプラインを介して)接続し、坑井402への注入のために流体を流体封じ込め装置へ送達するか、又は、流体封じ込め装置を介して坑井402から回収された流体を受け取るように構成可能な1つ以上の流体貯蔵容器412A~412Nを収容し得る。流体貯蔵容器412A~412Nは、さらに、坑井現場400に配置された追加の処理又は精製構成要素に接続し得、又は、貯蔵ガスを坑井現場400から離れた遠隔地へ伝送するためのパイプラインに接続され得、若しくは接続するように構成可能である。いくつかの実施形態において、流体貯蔵容器412A~412Nは、トラック、鉄道、若しくはボートによる輸送のために貯蔵ガスをタンカーへ伝送するようにさらに構成可能であってよく、又は、いくつかの実施形態では、それら自体が、運搬可能であり、そのような方法で輸送され得る。追加的に、又は代替的に、回収された流体は、坑井現場400にはない、現場から離れた遠隔地へ直接伝送され得る。いくつかの実施形態において、坑井402から回収された流体は、処理若しくは精製機械に動力を供給するために、又は、岩石層へ注入される流体に加えられる熱の生成、若しくは任意の他の好適な目的のための坑井現場における他のエネルギー需要のために燃料として現場で利用され得る。
【0046】
図5を参照すると、本明細書に記載された実施形態に係る、現場での水素の生成及び二酸化炭素の隔離のための例示的な工程を含むフローチャートが示されている。
図5に示された手順は、手順の後続の工程を可能にするために新しい坑井が掘削される工程502から、又は、既存の坑井が本明細書に記載の例示的な方法で使用するために再利用され得る工程508から開始し得る。
【0047】
例示的な方法は、まず工程502で始まり、苦鉄質火成岩又は超苦鉄質火成岩を含む地層の位置を特定するステップを含み得る。前述したように、水素を生成し、炭素を隔離する特定の望ましい反応には、苦鉄質火成岩、及び/又は、超苦鉄質火成岩中に見出されるカンラン石及び輝石に富む鉱石が関与する。カンラン石は、苦土カンラン石と鉄カンラン石との固溶体である。水素を生成するための対象のカンラン石鉱床において、鉄カンラン石は、通常、6%から20%の範囲の微量成分であり、通常は、下限の濃度で存在する。輝石は、多くの場合、鉄含有鉄ケイ輝石と同程度の割合で鉄ケイ輝石と頑火輝石とを含んでなる固溶体系列で構成されている。その結果、固溶体系列の一部としての鉄カンラン石と鉄ケイ輝石との両方の潜在的な熱化学活性は、純粋な鉄カンラン石及び鉄ケイ輝石の潜在的な熱化学活性に比べて比較的低い。鉱物の混合物は、ほぼ「理想的な」溶体である。理想的な溶体において、熱化学活性は、モル分率に応じて直線的に変化し、モル分率にほぼ等しい。従って、カンラン石と輝石との固溶体の一端を最初にターゲットとする複数段階の反応を触媒することで、残留相の化学反応性が向上され、これにより、初期亀裂に起因する活性の増加と、対応する浸透性の増加と、にさらに利益がもたらされる。
【0048】
本明細書で企図される、工学的解決策に利用するための理想的な岩石層の特性に加えて、経済的考慮も、適切な地層の特定を推進する。この目的のために、例示的な実施形態を実施するための理想的な場所は、生成された水素ガスの潜在的なユーザの近くに岩石層を有し、それによって、坑井現場から買い手への水素ガスの輸送に伴う追加の費用又はロジスティクスを必要とせずに、近傍のエンドユーザに生成された水素を供給し得る。
【0049】
さらに、水素生成反応の主要な推進要因は、原岩石中の鉄に富む鉱物相の存在であるため、苦鉄質岩又は超苦鉄質岩以外の他の岩石層も、本明細書で企図される特定の実施形態に適している可能性がある。例えば、黄鉄鉱などの還元鉄鉱物は、水と反応すると有効に水素を発生し得、従って、(たとえ、そのような場所が、その後の炭素隔離に適していないとしても)本明細書で企図される、いくつかの実施形態の水素生成構成要素に適した場所であり得る。
【0050】
工程504によって示されるように、例示的な方法は、位置を特定された地層に坑井を掘削するステップを含み得る。坑井は、蛇紋岩化反応を触媒、及び/又は、促進するために好適な温度プロファイルを有する深さまで掘削され得る。例えば、前述した蛇紋岩化反応は、温度に非常に敏感であり、反応は、約60℃以上で水素の生成が始まり、温度の上昇につれて反応速度が増大する。しかし、本明細書で企図される全ての実施形態において、より高い温度が好ましいとは限らない。約260℃を超えると、原岩石との水の反応から現場で生成された水素が、二酸化炭素と反応し、サバティエ反応として知られる反応でメタンを生成し得る。従って、いくつかの実施形態では、坑井が、約60℃から約260℃の間の温度を地層が有する深さに達するまで、特に、地下においてありふれており、多くの場合に豊富なCO2の存在下で掘削され得る。しかし、メタン自体が有用な生成物であるため、水素とメタンとの両方が地層から回収され得るいくつかの実施形態では、260℃を超える温度を有する地下領域に広がる坑井が、さらに好適であり得る。さらに、より高い温度が蛇紋岩化反応を促進するため、生成された水素の一部が反応してメタンが生成されるものの、より高い温度設定によって、より多くの水素が生成され得ると考えられる。最後に、いくつかの実施形態において、サバティエプロセスによるメタンの生成は、地下での水素との二酸化炭素の相互作用を最小化することによって、例えば最初の蛇紋岩化/水和ステップ中に坑井に注入される任意の流体内の二酸化炭素の存在を最小化するか、又は、除去することによって回避され得、この場合、より高い温度を提供する深さまで坑井を掘削することも好ましい可能性がある。これらの深さでは、地層の反応性表面付近の圧力は、約50バール以上になるであろう。
【0051】
工程506によって示されるように、いくつかの例示的な方法は、地層を水圧破砕し、地層の水力学的接続性を向上させ、追加の反応性表面を露出させ得る。しかし、前述したように、岩石層への水性刺激剤の注入自体が、前駆破砕ステップが不要になるように、間隙率、浸透性、及び水力学的接続性の十分な増加を引き起こし得る。工程504に続いて、又は、任意の工程506に続いて、手順は、次に、後述する工程510へ進み得る。既存の坑井現場が使用のために選択される実施形態において、手順は、工程502からではなく工程508から開始し得る。
【0052】
工程508において、いくつかの例示的な方法は、苦鉄質岩又は超苦鉄質岩の反応性表面へのアクセスを提供する既存の坑井の位置を特定することによって手順を開始し得る。例えば、特定の地熱井は、苦鉄質地層又は超苦鉄質地層に掘削され得、その後、本明細書に記載された例示的な実施形態の好適な候補になり得る。さらに、坑井の掘削に適した岩石層の位置を特定することに関連した同じ考慮事項が、本明細書で説明するように、水素生成、及び/又は、炭素隔離に再利用され得る既存の坑井を特定するために使用され得る。
【0053】
工程504及び工程506で説明されたような坑井の掘削(及び、場合によっては水圧破砕)に続いて、又は、工程508で説明されたように好適な既存の坑井の位置を単に特定した後、手順は、その後、2つの人工的に誘発された岩石反応段階のうちの最初の段階のための工程510へ進み得る。任意で、工程510を実行する前に、坑井を評価し、坑井内に存在する潜在流体(例えば、ガス、水、塩水、掘削流体など)を除去し得る。
【0054】
工程510によって示されるように、例示的な方法は、坑井によって提供された経路内へ、地層の反応性表面に接触するように水性刺激剤を注入するステップを含む。前述した蛇紋岩化反応に従って、地層の反応性表面の1つ以上との水性刺激剤の少なくとも一部の反応は、水素を生成する。水圧刺激の後、又は、自然の亀裂網を利用する場合、好ましい温度条件(60℃~260℃)、圧力(>1気圧、但し通常は50バール超)、気体化学組成、間隙水化学組成(例えば塩分濃度)、pH(>8.3、但し通常は9.5超)、還元条件/低酸素フガシティ(すなわち、負のEh)で鉄カンラン石又は鉄ケイ輝石を水と反応させることで鉄カンラン石をまず除去することによって、熱化学的活性が、ひいては反応速度が向上され得る。最適化された組成の水との反応により鉄カンラン石及び鉄ケイ輝石が固溶体から脱落すると、残りの苦土カンラン石及び頑火輝石、及びアンチゴライト、及び/若しくはブルーサイト、及び/若しくは炭酸化反応によって生成された他の鉱物相の熱化学的活性が、新たに露出された表面積に応じて増加する。従って、残りの苦土カンラン石及び頑火輝石鉱物の反応性は、固溶体中のこの相の今やより高くなったモル分率に応じて増加した速度(実験室シミュレーションでは4%から19%速いと判明)で進行する。
【0055】
多くの実施形態において、水性刺激剤は、二酸化炭素を意図的に含まなくてもよい。二酸化炭素の存在によって促進される、自然界では一般的な炭素鉱化の共反応を起こすことなく水性刺激剤を地層へ注入することにより、工程510は、岩石層自体における間隙率及び浸透性を増大させ、それによって、さらなる水素生成のための追加の水がより浸透することを可能にし、最終的に、(鉄ケイ酸塩相の理論的限界まで(例えば~20%まで))新たに形成された間隙の内部での二酸化炭素鉱化が増加する可能性を向上させる。この向上は、苦鉄質岩又は超苦鉄質岩中の鉄カンラン石及び鉄ケイ輝石との水の反応により、体積的に小さい結晶構造を有する岩石構造が生成されるため現れる。例えば、磁鉄鉱は、反応前の鉄カンラン石(4,390kg/m3)又は鉄ケイ輝石(3,880kg/m3)よりも密度が高く(5,170kg/m3)、体積的に小さいスピネル結晶構造を有する。従って、工程510における水性刺激剤の注入は、水との鉄カンラン石及び鉄ケイ輝石の反応を促進し、それにより、地層の反応性表面の体積が減少し、間隙率及び浸透性が増加し、ひいては坑井に近接した地下領域における水力学的接続性が増加し、それによってその後の反応のために利用可能な表面積が増加する。
【0056】
さらに、この水-岩反応は、地下で自然に起こる反応とは、いくつかの重要な点で異なる。第一に、水性刺激剤には、自然界には存在しない特性が含まれ得る。例えば、水性刺激剤は、純水を含まなくてもよいが、(気相中で0体積%~30体積%)硫化水素又は塩(例えば、Na、Ca、Cl、Br)などの他の成分も含んでもよい。さらに、水性刺激剤は、塩化ナトリウム(NaCl)の様々な塩分濃度(0.1パーミル~4.5パーミル)にわたって、負のEh値(すなわち、負の電位)を伴う酸素フガシティ、約8.3から約11.1の間のpHを有し得る。この特性の組み合わせは、自然に現場で発生することはほとんどなく、様々な地質学的プロセスの展開を通じて維持することが困難である。低酸素フガシティを有する水性刺激剤を生成するために、水が、自然に低酸素フガシティを有する地下水、都市下水、鉱水、地熱水、及び/又は、他の廃水流/処理水流から供給されてもよいし、又は、(例えば、坑井へ注入する前に水性刺激剤を加熱された銅くずの床に通過させるか、若しくは、他の方法で酸素の除去を電気的に触媒することによって)低酸素フガシティを人工的に誘発するように事前処理されていてもよい。さらに、水性刺激剤のpHバランスは、重炭酸ナトリウム又は様々な水酸化物の添加によって調整され得る。最後に、水性刺激剤の塩分濃度は、塩化ナトリウム又は他の食塩(例えばKCl)を添加することによって調整され得る。
【0057】
その後、工程512で、水素、水素と窒素との混合物、水素とメタンとの混合物、及び/又は、水素と二酸化炭素ガスとの混合物を含む流体組成物が、坑井から回収され得る。重要なことに、現場での反応によって形成される水素の分子組成及び同位体組成が判定され、現場の温度条件の測定と、H2OとH2との間の既知の分別係数(α)に基づく標準的な地熱計との比較と、に基づいて、現場での水素生成による寄与を定量化するために使用され得る。流体は、それ自体の圧力に基づいて自発的に流れるか、又は、工程512に続いて坑井から汲み出され得、その後、後の使用のために貯蔵され得、さらに処理されて坑井現場から送出されるか、又は、坑井現場自体で燃料として使用されることさえある。水素の生成は、注入された水性刺激剤と、苦鉄質岩又は超苦鉄質岩の反応性表面と、の間の相互作用の生成物であるものとして前述されたが、他の反応も発生し得る。例えば、処理中に使用される流体組成に応じて、リチウム、ニッケル、モリブデン、コバルト、希土類元素(例えばランタン、セリウム)、ウランなどの岩石層の特定の酸化還元感受性成分が、工程510で説明された水の注入から動員され得る。開示された2ステップの流体注入プロセスは、酸化還元条件の変化(すなわち、Eh、酸化から還元への変化)及びpH条件の変化(酸性から塩基性への変化)を伴うため、様々なレアメタルが可溶化され、ひいては坑井からの環流流体により回収可能である。坑井から回収された流体組成物は、これらの動員された成分も含み得、これらの成分は、その後、坑井からの抽出後に流体組成物からさらに分離され得る。分離は、密度分離、膜、又は脈石物質の収集を使用して実行され得る。
【0058】
工程512に続いて、手順は、水性刺激剤をもう一度注入するために工程510へ戻り得る。或いは、手順は、後述するように工程514へ進み得る。
【0059】
流体組成物の回収後、工程514は、例示的な方法が、その後の、坑井によって提供された経路及び地層への二酸化炭素の注入を利用し得ることを示す。二酸化炭素は、大気圧を超える、(様々な安全因子を考慮して)ターゲット岩石層内部の潜在圧力に関して予想される静岩圧までの(但し、それ未満の)圧力で注入され得る。地層中の苦土カンラン石、頑火輝石、アンチゴライト、又はブルーサイトのうち1つ以上との二酸化炭素の少なくとも一部の反応により、注入された二酸化炭素からの炭素が、炭酸マグネシウム又は他の炭酸塩鉱物の固体(鉱化)形態に恒久的に鉱化される。様々な実施形態において、注入される二酸化炭素は、超臨界二酸化炭素、及び/又は、二酸化炭素と水と他の要素との流体混合物であってもよい。例えば、二酸化炭素混合物は、様々な割合の窒素(N2、少なくとも50%まで)、又は、様々な割合の他の気体(例えば、ヘリウム(He、少なくとも1%まで)、アルゴン(Ar、少なくとも1%まで)、硫化二水素(H2S、少なくとも10%まで))も含み得る。二酸化炭素混合物は、約4.8から約6.5の間のpHを有し得、ある塩分濃度(0.1パーミルから4.5パーミル)の塩化ナトリウム(NaCl)を含み得る。
【0060】
二酸化炭素の注入は、岩石層内部の鉱化を促進し、それによって岩石の間隙率、浸透性、及び水力学的結合性を低下させる。従って、炭素鉱化には岩石層を「塞ぐ」傾向があるため、いくつかの実施形態では、坑井によって提供された経路を通じて二酸化炭素を注入する工程514のステップが、坑井刺激プロセスの一部として実行され得る。
【0061】
上述したように、例示的な実施形態は、現場での水素の生成及び二酸化炭素の恒久的(鉱化)隔離のための方法及びシステムを提供する。
【0062】
図5は、様々な例示的な実施形態において実行される工程を示す。各フローチャートブロック、及び、フローチャートブロックの各組み合わせは、様々な手段によって実装され得ることが理解されるであろう。フローチャートブロックは、特定の機能を実行するための手段の組み合わせと、特定の機能を実行するための工程の組み合わせと、をサポートする。いくつかの実施形態では、上記の工程の一部を変更したり、さらに拡張したりしてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、追加の任意の工程が含まれ得る。上記の工程に対する変更、拡張、又は追加は、任意の順序及び任意の組み合わせで実行され得る。
【0063】
[実験室実験]
本開示の実施形態のシステム及び方法のシミュレーション実装では、超苦鉄質鉱石を二酸化炭素と反応させて二酸化炭素を炭酸マグネシウムとして隔離し、超苦鉄質鉱石を水と反応させて水素ガスを生成した。この例は、3段階で実行された:1)岩石の準備;2)水の準備;3)反応プロセスであり、これらのそれぞれについては以下でより詳細に説明する。システム全体及び方法の分析の一環として、鉱石の組成(すなわち、苦土カンラン石、鉄カンラン石、及び他の鉱物)、鉱石がさらされる反応条件、並びに炭酸化反応/蛇紋岩化反応生成物の特性が評価される。例えば、鉱石の組成に関しては、バルク岩石の質量、鉱物学的組成、及び地球化学的組成を粉末X線回折(XRD)によって判定し、関連成分(例えば鉄カンラン石、鉄ケイ輝石、FeO、MgO、CaO)の存在量を評価した。
【0064】
岩石準備段階では、サイズが約1.0cmの軽く砕かれた岩石を主に含む超苦鉄質骨材材料が、4つの稼働中の採石場(すなわち、ペンシルバニア州の2つの採石場、バージニア州の1つの採石場、及びケンタッキー州の1つの採石場)から収集された。超苦鉄質骨材材料は、最初にロックハンマーで、次にSpex Ballミルで解砕(すなわち、軽く破砕/粉砕)された。次に、粉末材料が、150ミクロンの粒子を通過させ、次に80ミクロンの粒子を通過させるように配置され設計された鉱石ふるいを使用してふるいにかけられた。これにより、少なくとも2つの異なる粒径について実験を行うことが可能となる。別の材料である均質化されたカンラン石鉱物も、カリフォルニアの科学サプライヤから購入された。このカンラン石材料は、サイズ及び組成が均一化されており、約100ミクロンの均一な粒径を有していた。
【0065】
水準備段階では、2つの準備が行われた。まず、水のpHを約8.5から約11.1の間となるように調整するために水道水に重炭酸ナトリウムを添加することによって、低酸素フガシティ、高pHの水が得られた。当業者には理解されるように、酸素フガシティ(fO2)は、鉄、炭素などの複数の価電子状態を有する要素と反応するために利用可能な酸素の量の尺度である。高い酸素フガシティは、水中の酸素の化学ポテンシャルが高いことを示す。水の酸素フガシティの低下は、様々な方法で(例えば、都市下水、地下水、鉱水、又は他の廃水流などの低酸素フガシティの給水を使用することによって)実現され得る。低酸素フガシティ水を簡単かつ確実に生成する方法の1つは、125℃に加熱された銅くずの床を利用し、この床に水を通過させる。別の方法では、水道水に塩(塩化ナトリウム)を加え、0.09%から1.5%の範囲の塩溶液を作成することで塩水が得られた。炭素鉱化実験の準備として、蒸留水と酢酸ナトリウム緩衝液との混合物中の希HClを使用して、塩水のpHが、約4.8から約6の間となるように調整された。
【0066】
反応プロセスに関しては、炭酸化反応及び蛇紋岩化反応を、バッチ構成と逐次構成との両方で実行するようにバッチ反応器が設計され構築された。全ての反応は、この密閉ステンレス鋼反応容器内で「バッチ」反応(すなわち、密閉システム)として実行された。各実験では、サンプル全体(約250グラム)が選択され、均等に2つにスライスされ、約125グラムの原料が気密ステンレス鋼反応容器に入れられた。容器への注水の準備として、高pH(水道水と重炭酸ナトリウムとを使用して得られる8.3~11.1)の低酸素フガシティ水及び(NaClを0.1パーミルから4.5パーミルの濃度まで添加することによって得られる)塩水。酸素フガシティを低減するために、実験装置では125℃の加熱された銅くずの床が利用された。別にCO2導入段階のために、蒸留水と酢酸ナトリウム緩衝液との混合物中の希HClを使用して水道水が軽く酸性化され、周囲の酸素フガシティで0.1パーミルから4.5パーミルまでNaClが混合され、粉末状の岩石に噴霧されて、反応のための(CO2反応性を向上させることが知られている)湿った表面を提供する。
【0067】
最初の反応段階では、水素の生成が目標とされた。低酸素フガシティを有する水を導入する前に、機械式ラフポンプを使用して周囲の酸素を除去し、反応器を真空化する。次に、室温で、且つ、周囲大気圧で水が導入された。初期圧力が記録された。温度が60℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、及び400℃まで昇温され、温度は、外部のバンドヒータによって制御され、Omega K-wire熱電対により測定される。各ステップで、標準Omega0~100psi圧力計で監視することによりサンプリングポートで気相圧力が測定され、スタンフォードリサーチシステムズ社残留ガス分析装置(「四重極質量分析計」)と、熱電対検出器が装備されたSRIガスクロマトグラフと、を使用して気体のアリコートが測定された。水素の全圧が、残留ガス分析計、及び/又は、ガスクロマトグラフを使用して測定された水素ガスの割合と、大気圧と比較した圧力と、の積を求め、PV=nRTと仮定して計算された。予備結果は、粒径を150ミクロンから80ミクロンに減少させることにより、熱力学的平衡状態における水素の反応速度(約1.3倍)及び水素の総体積(所定の温度及び組成で1.8倍多い)が改善されることを示していた。
【0068】
第2の一連の実験は、カーボンニュートラルからカーボンネガティブな水素を追求するための炭素隔離に焦点を当てた。このセットアップでは、最初は粉末岩石に焦点を当て、その後、プロセスがステップアップされ、岩石コアプラグサンプル全体が利用された。両方の場合において、材料に水を噴霧し、ステンレス鋼反応容器に入れ、「バッチ」反応として実行された。水の導入前に、機械式ラフポンプを使用して周囲の酸素を除去し、反応器を真空化した;その後の実験で、酸素の存在は、この反応にとって重要ではないことが実証された。次に、二酸化炭素(UHP CO2、及び、別にN2と4:1で混合したCO2)が、室温で、且つ、(大気圧より高い)2気圧の初期圧力で導入された。次に、(外部バンドヒータにより制御され、熱電対で測定された)温度が、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、及び400℃に昇温された。各ステップで、標準Omega0~100psi圧力計で監視することによりサンプリングポートで気相圧力が測定され、スタンフォードリサーチシステムズ社残留ガス分析装置(「四重極質量分析計」)と、熱電対検出器が装備されたSRIガスクロマトグラフと、を使用して気体のアリコートが測定された。水素の全圧が、残留ガス分析計、及び/又は、ガスクロマトグラフを使用して測定された水素ガスの割合と、大気圧と比較した圧力と、の積を求め、PV=nRTと仮定して計算された。このプロセスにおける次のステップとして、タンク上CO2圧力計を使用して測定されたCO2の圧力が5バール、10バール、25バール、及び50バールに昇圧された。地下では、顕著に高い圧力が実現され得るものの、現在の実験装置では実現不可能であった;圧力を昇圧すると、反応速度が向上するであろう。各ステップで、減圧するための拡張ボリュームに取り付けられたサンプリングポートで気相圧力が測定され、標準Omega0~100psi圧力計を使用して監視され、スタンフォードリサーチシステムズ社残留ガス分析装置(「四重極質量分析計」)と、熱電対検出器が装備されたSRIガスクロマトグラフと、を使用して気体のアリコートが測定された。水素の全圧は、残留ガス分析計、及び/又は、ガスクロマトグラフを使用して測定された水素ガスの割合と、大気圧と比較した圧力と、の積を求め、PV=nRTと仮定して計算された。CO2隔離反応速度論も、粒径が小さくなると改善した(約1.8倍)。同じ体系的な実験計画では、超臨界CO2が利用される。実験後、(1回目と2回目との両方の)各サンプルの断片が、光学顕微鏡下で比較され、鉱化が特定され、間隙率が評価された。
【0069】
水素発生実験の後、磁鉄鉱、ブルーサイト、及び蛇紋岩、並びに岩石全体におけるMgに富むMg-シリカ相の「事前濃縮」が確認された。新しい材料には、最適化された炭素隔離実験計画が適用された。各温度ステップで、注入されたCO2からの圧力は、より顕著に減少し、これは、CO2隔離の反応速度がより速いことを示す(バッチ実験において、18時間にわたって、50℃から400℃の間で3.6倍速い減少が観察された)。実験後、(1回目と2回目との両方の)各サンプルの断片が、光学顕微鏡下で比較され、鉱化が特定され、間隙率が評価された。水素の生成とCO2による粉砕とが岩石のさらなる分解の促進を助けるため、反応速度が向上した(約1.4倍)。
【0070】
逐次反応の後、バルク岩石の質量、鉱物学的組成、及び地球化学的組成をXRDによって判定し、関連成分(例えば鉄カンラン石、鉄ケイ輝石、FeO、MgO、CaO)の存在量を評価した。マグネサイト及び方解石の存在量は、逐次反応の場合の方が、最初に水素生成を開始せずに反応を行った場合よりも顕著に高い(1.4倍)ことが観察された。実験を開始する前に、光学顕微鏡を使用して1番目の断片が評価され、鉱物分布、亀裂、及び間隙空間が特定され、処理後のサンプルと比較された。各サンプルの1番目の断片は、気密ステンレス鋼反応容器内の反応チャンバーに配置された。各サンプルの2番目の断片は、比較のための対照物として使用された。
【0071】
[グリーン(カーボンネガティブ)水素]
前述したように、二酸化炭素中の炭素の隔離が、炭酸化反応により目標とされた。苦鉄質岩又は超苦鉄質岩へ(現場で)注入されたCO2及び水を使用した「水-岩」蛇紋岩化反応によるマグネサイト(炭酸マグネシウム)及び方解石(炭酸カルシウム)の形成は、経済的で、拡張性があり、恒久的な(すなわち、鉱化された)炭素隔離の形態を提供する。現場での工学的水素生成に関連する炭素隔離の発明は、以下を含む2段階のプロセスであり:1)まず、最適化された条件下における蛇紋岩化反応を利用した現場での工学的水素生成により、Feに富むFeケイ酸塩(又は、場合によってはFe硫化物)相を除去し、それによって、炭酸化反応の熱化学的推進力が増大し;2)最適化された条件(大気(酸化)条件下で4.4~6のpH)下で水とCO2とを混合して注入し、苦鉄質岩及び超苦鉄質岩のMgに富みCaに富むケイ酸塩部分を、100℃~400℃の温度において、約50バールを超える圧力で化学的に分解し、マグネサイト(炭酸マグネシウム)及び方解石(炭酸カルシウム)を生成する。このプロセスは、マグネサイト及び方解石の生成を可能にし、促進する一方、副相/競合相の形成を最小化する最適化された条件で、逐次反応によって実現される高い間隙率、浸透性、及び破砕強度の形成に続いて逐次的に行われる。
【0072】
[結論]
本明細書に記載された発明の多くの変更及び他の実施形態が、前述の説明及び関連する図面に示された教示の恩恵を受けて、これらの発明が属する分野の当業者には思い浮かぶであろう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変更及び他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。さらに、上記の説明及び関連する図面は、要素、及び/又は、機能の特定の例示的な組み合わせに関連して例示的な実施形態を説明しているが、要素、及び/又は、機能の異なる組み合わせが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく代替実施形態によって提供され得ることを理解されたい。これに関して、例えば、添付の特許請求の範囲の一部に記載されているように、明示的に上述したものとは異なる要素、及び/又は、機能の組み合わせも企図される。本明細書では特定の用語が使用されているが、それらは、一般的且つ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
【0073】
(付記)
(付記1)
苦鉄質火成岩、超苦鉄質火成岩、又はそれらの組み合わせを含む地層から水素ガスを生成する方法であって、
前記地層を少なくとも部分的に横切る坑井を設けるステップであって、前記坑井は、前記地層への流体の注入と、前記地層からの流体の回収とのための経路を提供する、ステップと、
前記坑井によって提供された前記経路を通じて水性刺激剤を注入し、前記地層の反応性表面に接触させるステップと、
前記経路を介して前記坑井から水素ガスを含む流体組成物を回収するステップと、
を含む、
方法。
【0074】
(付記2)
前記水性刺激剤を高圧で前記坑井を通じて前記地層へ圧送することにより、前記地層を水圧で破砕するステップをさらに含む、
付記1に記載の方法。
【0075】
(付記3)
前記水性刺激剤は、二酸化炭素を含まない、
付記1又は2に記載の方法。
【0076】
(付記4)
前記水性刺激剤は、硫化二水素を含む、
付記1から3の何れか一つに記載の方法。
【0077】
(付記5)
前記水性刺激剤は、負のEh値を有する酸素フガシティを有する、
付記1から4の何れか一つに記載の方法。
【0078】
(付記6)
前記水性刺激剤は、約0.1パーミルから4.5パーミルの塩分濃度で塩化ナトリウムを含む、
付記1から5の何れか一つに記載の方法。
【0079】
(付記7)
前記経路に注入される前記水性刺激剤は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
付記1から6の何れか一つに記載の方法。
【0080】
(付記8)
前記地層の前記反応性表面付近の圧力は、約1気圧を超え、且つ、前記地層の静岩圧未満である、
付記1から7の何れか一つに記載の方法。
【0081】
(付記9)
前記地層の前記反応性表面は、約60℃から約260℃の間の温度を有する、
付記1から8の何れか一つに記載の方法。
【0082】
(付記10)
前記地層の前記反応性表面は、約260℃を超える温度を有する、
付記1から8の何れか一つに記載の方法。
【0083】
(付記11)
前記水性刺激剤の注入中に、前記地層の前記反応性表面との二酸化炭素の相互作用を最小化するステップをさらに含む、
付記10に記載の方法。
【0084】
(付記12)
前記地層の前記反応性表面は、鉄カンラン石、鉄ケイ輝石、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、
付記1から11の何れか一つに記載の方法。
【0085】
(付記13)
前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記地層へ前記水性刺激剤を注入する前に、前記地層から流体を排出するステップをさらに含む、
付記1から12の何れか一つに記載の方法。
【0086】
(付記14)
前記坑井から回収された前記流体組成物は、前記地層からの1つ以上の酸化還元感受性成分をさらに含む、
付記1から13の何れか一つに記載の方法。
【0087】
(付記15)
前記坑井から回収された前記流体組成物から前記1つ以上の酸化還元感受性成分を分離するステップをさらに含む、
付記14に記載の方法。
【0088】
(付記16)
前記坑井から回収された前記流体組成物を燃料として使用するステップをさらに含む、
付記1から15の何れか一つに記載の方法。
【0089】
(付記17)
前記経路を介して前記坑井から前記流体組成物を回収するステップは、
前記流体組成物を前記坑井の付近に貯蔵するステップ、又は、
パイプラインを介して前記流体組成物を輸送するステップ
を含む、
付記1から16の何れか一つに記載の方法。
【0090】
(付記18)
前記流体組成物が回収された後、前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記地層へ二酸化炭素を注入するステップをさらに含み、
前記地層中の苦鉄質岩又は超苦鉄質岩のうちの1つ以上との前記二酸化炭素の少なくとも一部の反応により、少なくとも炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムが生成される、
付記1から17の何れか一つに記載の方法。
【0091】
(付記19)
前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記二酸化炭素を注入するステップは、前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記地層へ水と二酸化炭素との混合物を注入するステップを含む、
付記18に記載の方法。
【0092】
(付記20)
前記水と二酸化炭素との混合物は、約4.8から約6.5の間のpHを有する、
付記19に記載の方法。
【0093】
(付記21)
前記水と二酸化炭素との混合物は、0.1パーミルから4.5パーミルの間の塩分濃度で塩化ナトリウムを含む、
付記19又は20に記載の方法。
【0094】
(付記22)
前記水と二酸化炭素との混合物は、窒素、硫化二水素、メタン、又は他の微量ガスを含む、
付記19から21の何れか一つに記載の方法。
【0095】
(付記23)
前記二酸化炭素は、1バールから前記地層の静岩圧の間の圧力で前記地層へ注入される、
付記18から22の何れか一つに記載の方法。
【0096】
(付記24)
前記地層へ注入される前記二酸化炭素は、超臨界二酸化炭素、又は、超臨界二酸化炭素と他の流体との混合物を含む、
付記18に記載の方法。
【0097】
(付記25)
前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記二酸化炭素を注入するステップは、坑井刺激プロセスの一部として行われる、
付記18から24の何れか一つに記載の方法。
【0098】
(付記26)
苦鉄質火成岩、超苦鉄質火成岩、又はそれらの組み合わせを含む地層から水素ガスを生成するための装置であって、
付記1から25の何れか一つに記載の方法を実行するための手段を備える、
装置。
【0099】
(付記27)
苦鉄質火成岩、超苦鉄質火成岩、若しくはそれらの組み合わせを含む地層から水素ガスを生成するか、又は前記地層内において二酸化炭素を現場で隔離するシステムであって、
前記地層を少なくとも部分的に横切る坑井と、
前記坑井と流体連通して、前記水性刺激剤が、少なくとも部分的に前記坑井によって画定された経路を通じて前記地層へ通過することを可能にするように構成可能な水性刺激剤の供給源と、
前記坑井の上部付近に配置され、1つ以上の流出口を有し、当該1つ以上の流出口を通じて水素ガスを含む流体組成物が前記坑井から回収され得る、流体封じ込め装置と、
前記坑井と流体連通して、前記二酸化炭素が、少なくとも部分的に前記坑井によって画定された前記経路を通じて前記地層へ通過することを可能にするように構成可能な二酸化炭素の供給源と、
を備える、
システム。
【0100】
(付記28)
前記流体封じ込め装置の前記1つ以上の流出口に接続され、前記坑井から前記流体封じ込め装置を通過した水素ガスを含む前記流体組成物を吐出するパイプラインをさらに備える、
付記27に記載のシステム。
【0101】
(付記29)
前記流体封じ込め装置の前記1つ以上の流出口に接続され、前記坑井から前記流体封じ込め装置を通過した水素ガスを含む前記流体組成物を貯蔵する流体貯蔵容器をさらに備える、
付記27又は28に記載のシステム。
【0102】
(付記30)
前記流体封じ込め装置は、ウェルヘッドである、
付記27から29の何れか一つに記載のシステム。
【0103】
(付記31)
前記二酸化炭素の供給源は、前記二酸化炭素を前記坑井へ1気圧から前記地層の静岩圧の間の圧力で供給するように構成可能である、
付記27から30の何れか一つに記載のシステム。
【0104】
(付記32)
前記水性刺激剤は、二酸化炭素を含まない、
付記27から31の何れか一つに記載のシステム。
【0105】
(付記33)
前記水性刺激剤は、硫化水素を含む、
付記27から32の何れか一つに記載のシステム。
【0106】
(付記34)
前記水性刺激剤は、負のEh値を有する酸素フガシティを有する、
付記27から33の何れか一つに記載のシステム。
【0107】
(付記35)
前記水性刺激剤は、約0.1パーミルから4.5パーミルの間の塩分濃度で塩化ナトリウムを含む、
付記27から34の何れか一つに記載のシステム。
【0108】
(付記36)
前記水性刺激剤は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
付記27から35の何れか一つに記載のシステム。
【0109】
(付記37)
前記地層の前記坑井付近の領域を水圧で破砕するように構成可能な破砕装置をさらに備える、
付記27から36の何れか一つに記載のシステム。
【0110】
(付記38)
前記二酸化炭素は、超臨界二酸化炭素を含む、
付記27から37の何れか一つに記載のシステム。
【0111】
(付記39)
前記二酸化炭素は、水と二酸化炭素との混合物を含む、
付記27から38の何れか一つに記載のシステム。
【0112】
(付記40)
前記水と二酸化炭素との混合物は、約4.8から約6.5の間のpHを有する、
付記39に記載のシステム。
【0113】
(付記41)
前記水と二酸化炭素との混合物は、0.1パーミルから4.5パーミルの間の塩分濃度で塩化ナトリウムを含む、
付記39又は40に記載のシステム。
【0114】
(付記42)
前記水と二酸化炭素との混合物は、窒素、硫化二水素、メタン、又は他の微量ガスを含む、
付記39から41の何れか一つに記載のシステム。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苦鉄質火成岩、超苦鉄質火成岩、又はそれらの組み合わせを含む地層から水素ガスを生成する方法であって、
前記地層を少なくとも部分的に横切る坑井を設けるステップであって、前記坑井は、前記地層への流体の注入と、前記地層からの流体の回収とのための経路を提供する、ステップと、
前記坑井によって提供された前記経路を通じて水性刺激剤を注入し、前記地層の反応性表面に接触させるステップと、
前記経路を介して前記坑井から水素ガスを含む流体組成物を回収するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記水性刺激剤を高圧で前記坑井を通じて前記地層へ圧送することにより、前記地層を水圧で破砕するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水性刺激剤は、二酸化炭素を含まない、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記水性刺激剤は、硫化二水素を含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記水性刺激剤は、負のEh値を有する酸素フガシティを有する、
請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記水性刺激剤は、約0.1パーミルから4.5パーミルの塩分濃度で塩化ナトリウムを含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記経路に注入される前記水性刺激剤は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記地層の前記反応性表面付近の圧力は、約1気圧を超え、且つ、前記地層の静岩圧未満である、
請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記地層の前記反応性表面は、約60℃から約260℃の間の温度を有する、
請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記地層の前記反応性表面は、約260℃を超える温度を有する、
請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記水性刺激剤の注入中に、前記地層の前記反応性表面との二酸化炭素の相互作用を最小化するステップをさらに含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記地層の前記反応性表面は、鉄カンラン石、鉄ケイ輝石、又はそれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記地層へ前記水性刺激剤を注入する前に、前記地層から流体を排出するステップをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記坑井から回収された前記流体組成物は、前記地層からの1つ以上の酸化還元感受性成分をさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
前記坑井から回収された前記流体組成物から前記1つ以上の酸化還元感受性成分を分離するステップをさらに含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記坑井から回収された前記流体組成物を燃料として使用するステップをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
前記経路を介して前記坑井から前記流体組成物を回収するステップは、
前記流体組成物を前記坑井の付近に貯蔵するステップ、又は、
パイプラインを介して前記流体組成物を輸送するステップ
を含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項18】
前記流体組成物が回収された後、前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記地層へ二酸化炭素を注入するステップをさらに含み、
前記地層中の苦鉄質岩又は超苦鉄質岩のうちの1つ以上との前記二酸化炭素の少なくとも一部の反応により、少なくとも炭酸マグネシウム又は炭酸カルシウムが生成される、
請求項
1に記載の方法。
【請求項19】
前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記二酸化炭素を注入するステップは、前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記地層へ水と二酸化炭素との混合物を注入するステップを含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記水と二酸化炭素との混合物は、約4.8から約6.5の間のpHを有する、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記水と二酸化炭素との混合物は、0.1パーミルから4.5パーミルの間の塩分濃度で塩化ナトリウムを含む、
請求項1
9に記載の方法。
【請求項22】
前記水と二酸化炭素との混合物は、窒素、硫化二水素、メタン、又は他の微量ガスを含む、
請求項1
9に記載の方法。
【請求項23】
前記二酸化炭素は、1バールから前記地層の静岩圧の間の圧力で前記地層へ注入される、
請求項1
8に記載の方法。
【請求項24】
前記地層へ注入される前記二酸化炭素は、超臨界二酸化炭素、又は、超臨界二酸化炭素と他の流体との混合物を含む、
請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記坑井によって提供された前記経路を通じて前記二酸化炭素を注入するステップは、坑井刺激プロセスの一部として行われる、
請求項1
8に記載の方法。
【請求項26】
苦鉄質火成岩、超苦鉄質火成岩、又はそれらの組み合わせを含む地層から水素ガスを生成するための装置であって、
請求項
1に記載の方法を実行するための手段を備える、
装置。
【国際調査報告】