(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】試薬含有マイクロ流体チップに装填するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/08 20060101AFI20240719BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505318
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 IB2022057062
(87)【国際公開番号】W WO2023007454
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524037074
【氏名又は名称】シンエックスエックスエス マイクロテクノロジー ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】520489282
【氏名又は名称】パターン バイオサイエンス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン ロス
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CC08
2G058DA02
2G058DA07
2G058EB11
(57)【要約】
マイクロ流体デバイスは、入口ポートと、入口ポートから流体を受け取るように構成された試薬含有チャンバと、チャンバから液体を受け取るように構成された非水性液体収容リザーバと、リザーバから液体を受け取ってその液体の液滴を生成するように構成された液滴生成領域とを備えるマイクロ流体回路を含むことができる。回路はまた、第1および第2の弁または脆弱部材を含むことができる。第1の弁または脆弱部材は、流体がそこを通ってチャンバに出入りすることが阻止される閉位置と、流体がそこを通ってチャンバに出入りすることが可能になる開位置とを有することができる。第2の弁または脆弱部材は、流体がそこを通ってチャンバとリザーバとの間を流れることが阻止される閉位置と、流体がそこを通ってチャンバとリザーバとの間を流れることが可能になる開位置とを有することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口ポート;
前記入口ポートから流体を受け取るように構成された、試薬を含有するチャンバ;
流体が第1の弁または脆弱部材を通って前記チャンバに出入りすることが阻止される閉位置と、
流体が第1の弁または脆弱部材を通って前記チャンバに出入りすることが可能になる開位置と
を有する、前記第1の弁または脆弱部材;
前記チャンバから液体を受け取るように構成された、非水性液体を収容するリザーバ;
流体が第2の弁または脆弱部材を通って前記チャンバと前記リザーバとの間を流れることが阻止される閉位置と、
流体が第2の弁または脆弱部材を通って前記チャンバと前記リザーバとの間を流れることが可能になる開位置と
を有する、前記第2の弁または脆弱部材;ならびに
前記リザーバから液体を受け取って該液体の液滴を生成するように構成された液滴生成領域
を備えるマイクロ流体回路を含む、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記マイクロ流体回路が、前記チャンバを第1の部分と第2の部分とに分離する第3の弁または脆弱部材を備え、
前記第3の弁または脆弱部材が、
液体ではなく気体が前記第3の弁または脆弱部材を通って前記第1の部分と前記第2の部分との間を流れることが可能になる閉位置と、
流体が前記第3の弁または脆弱部材を通って前記第1の部分と前記第2の部分との間を流れることが可能になる開位置と
を有する、
請求項1記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項3】
前記第3の弁または脆弱部材が、空気透過性膜を備える、請求項2記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項4】
前記空気透過性膜が試薬を含む、請求項3記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項5】
前記第1の弁または脆弱部材が、第1の流体不透過性膜を備える、請求項1~4のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項6】
前記第2の弁または脆弱部材が、第2の流体不透過性膜を備える、請求項1~5のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項7】
前記第1の弁または脆弱部材が、第1の流体不透過性膜を備え、
前記第2の弁または脆弱部材が、第2の流体不透過性膜を備え、
前記第1の流体不透過性膜と、前記第2の流体不透過性膜と、前記空気透過性膜とが、1つの軸が各々を通って延びるように位置合わせされている、
請求項3または4記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項8】
前記第1の流体不透過性膜と前記第2の流体不透過性膜とが、1つの軸が各々を通って延びるように位置合わせされている、請求項6記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項9】
前記軸に沿って前記膜に対して移動可能な貫通体を備え、前記貫通体が、前記膜が前記開位置にあるように前記膜に穴をあけるように構成されている、請求項7または8記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項10】
前記液滴生成領域が、前記リザーバから離れる方向に流路に沿って増加する最小断面積を有する前記流路を含む、請求項1~9のいずれか一項記載のマイクロ流体デバイス。
【請求項11】
以下の工程を含む、マイクロ流体デバイスの装填方法:
前記マイクロ流体デバイスの入口ポート内に水性液体を配置する工程;
少なくとも、
気体が、試薬を収容する前記マイクロ流体デバイスのチャンバから前記入口ポートの外に流出するように、前記入口ポートにおける圧力を低下させること、および
前記水性液体の少なくとも一部分が前記入口ポートから前記チャンバ内に流入するように前記入口ポートにおける圧力を上昇させること
によって前記水性液体に試薬を導入する工程;ならびに
少なくとも、
前記チャンバと各々流体連通する、第1および第2のポートを開くこと、
気体が、
前記マイクロ流体デバイスの液滴生成領域から、
非水性液体を収容する前記マイクロ流体デバイスのリザーバを通り、
前記第1および第2のポートを介して前記チャンバを通って
流れるように、前記第1のポートにおける圧力を低下させること、
前記水性液体の少なくとも一部分および前記非水性液体の少なくとも一部分が前記リザーバから前記液滴生成領域を通って流れるように、前記第1のポートにおける圧力を上昇させること
によって前記水性液体の液滴を生成する工程。
【請求項12】
前記デバイスが、前記チャンバに流体連通する弁または膜を備え、
液体ではなく気体が前記弁または膜を通って流れるように、前記入口ポートにおける圧力を上昇させることが行われる、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記デバイスが、前記チャンバを第1の部分と第2の部分とに分離する第3の弁または脆弱部材を備え、
液体ではなく気体が前記第3の弁または脆弱部材を通って前記第1の部分と前記第2の部分との間を流れるように、前記入口ポートにおける圧力を上昇させることが行われる、
請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記水性液体の液滴を生成する工程が、液体が前記第3の弁または脆弱部材を通って前記第1の部分と前記第2の部分との間を流れることが可能になるように前記第3の弁または脆弱部材を開くことを含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記第1および第2のポートを開くことが、
開かなければ流体が前記第1のポートを通って流れて前記チャンバに入ることも、前記チャンバを出て前記第1のポートを通って流れることも阻止する、第1の弁または脆弱部材を開くこと、および
開かなければ流体が前記第2のポートを通って流れて前記チャンバに入ることも、前記チャンバを出て前記第2のポートを通って流れることも阻止する、第2の弁または脆弱部材を開くこと
を含む、請求項11~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記弁または脆弱部材の各々について、
前記弁または脆弱部材が膜を備え、
前記弁または脆弱部材を開くことが、前記膜に穴をあけることを含む、
請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
前記液滴生成領域が、前記リザーバから離れる方向に流路に沿って増加する最小断面積を有する前記流路を含む、請求項11~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
内部容積と、前記内部容積に流体連通する第1の開口部を含む端部とを有する、本体;および
前記内部容積内に配置された試薬
を備え、
マイクロ流体チップのポートに、
前記端部が前記ポートを受け入れるか、または前記ポートによって受け入れられ、かつ、
前記ポートから流出することなく液体が前記内部容積に流入して前記試薬と接触することを可能にするように構成された通路を、前記本体が含む
ように結合されるよう、前記本体が構成されている、
マイクロ流体チップが受け取るための液体を試薬に導入するためのデバイス。
【請求項19】
前記本体が、前記内部容積に流体連通する第2の開口部を含み、
前記デバイスが、
流体が第1の弁または脆弱部材を通って前記内部容積に出入りすることが阻止される閉位置と、
流体が第1の弁または脆弱部材を通って前記内部容積に出入りすることが可能になる開位置と
を有する前記第1の弁または脆弱部材を備える、
請求項18記載のデバイス。
【請求項20】
前記内部容積を第1の部分と第2の部分とに分離する第2の弁または脆弱部材であって、
液体ではなく気体が前記第2の弁または脆弱部材を通って前記第1の部分と前記第2の部分との間を流れることが可能になる閉位置と、
流体が前記第2の弁または脆弱部材を通って前記第1の部分と前記第2の部分との間を流れることが可能になる開位置と
を有する、前記第2の弁または脆弱部材
を備え、
前記ポートから流出することなく液体が前記第1の部分に流入して前記試薬と接触することを可能にするように前記通路が構成されている、
請求項18または19記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月29日に出願された米国仮特許出願第63/227,303号の恩典を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、マイクロ流体チップ装填に関し、具体的には、試薬試験のためのマイクロ流体チップ装填に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
マイクロ流体チップは、化粧品、医薬品、病理、化学、生物学、およびエネルギーを含む多種多様な分野での使用が増加している。マイクロ流体チップは、典型的には、1つまたは複数の試料をその分析のために輸送、混合、および/または分離するように配置された1つまたは複数の溝を有する。(1つまたは複数の)溝のうちの少なくとも1つが1マイクロメートルまたは数十マイクロメートル程度の寸法を有することができ、比較的小量(例えば、ナノリットルやピコリットル)の試料の分析を可能にする。マイクロ流体チップで使用される少量の試料は、従来のベンチトップ法に優るいくつかの利点を提供する。例えば、チップの構成部品の規模により、単一の細胞および/または分子の操作および分析を含むより正確な生物学的測定が、マイクロ流体チップで達成可能であり得る。マイクロ流体チップはまた、細胞の増殖、老化、抗生物質耐性などに関連する実験を容易にするために、その中の細胞環境の制御の改善をもたらすこともできる。また、マイクロ流体チップは、試料体積が小さく、低コストで、廃棄可能であるため、病原体の同定およびポイントオブケア診断を含む診断用途によく適している。
【0004】
いくつかの用途では、マイクロ流体チップは、試料の分析を容易にするために液滴を生成するように構成される。従来、そのようなチップは、チップの入口ポートにおける圧力を上昇させて、液体をチップの試験容積に向かって流し、試験容積に入る液滴を形成させることによって装填される。このプロセス中、試験容積内の圧力は周囲圧力を上回って上昇する。器機の外でマイクロ流体チップ内の液滴のその後の処理が必要とされる場合、試験容積外での液滴の流れを阻止するために、試験容積内の圧力は周囲圧力に戻されるか、またはシールされなければならない。この減圧プロセスは、液滴の融合を軽減するために時間がかかる可能性があり、試験容積をシールすることによりかなりの複雑さが加わる。
【0005】
試料に対する複数の試薬の影響を試験することは有益であり得る。例えば、抗生物質感受性試験の場合、複数の抗生物質を試験することにより、感染症を治療するために細菌の増殖を抑制するのに最も効果的な抗生物質の選択が可能になり得る。従来、そのような試験は、試験装置の個々のウェルに異なる試薬を配置し、ピペットまたはロボットを使用して手動で試料の一部分をウェルの各々に導入することによって行われる。しかしながら、そのようなプロセスは誤りの影響を受けやすく、高価で複雑になり得る。
【0006】
液滴マイクロ流体工学では、液滴は、調査中の細胞または分子をカプセル化して、事実上、その濃度を増幅し、反応数を増加させることができる。したがって、液滴ベースのマイクロ流体チップは、上述のチップ装填の非効率性を有していても、抗生物質感受性試験などのハイスループット試薬試験のための優れた可能性を有する。試薬と試料との相互作用(例えば、細菌の増殖を抑制する抗生物質の能力)を試験するために、試薬は試料に導入される。これは、一部では(1つまたは複数の)試薬を試験中にデバイスに導入することによって、例えば、試験試薬含有液体から液滴のセットを生成し、それらの液滴を試料液体から生成された液滴と融合することによって行われてきた。しかしながら、試験中に試薬を添加すると、試験スループットが低下し、試験プロセスがさらに複雑になる可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
概要
したがって、効率的にマイクロ流体デバイスに試料を装填しかつ試料に1つまたは複数の試薬を導入するための装置および方法が当技術分野において必要とされている。この必要に対処するために、本マイクロ流体デバイスの一部は、1つまたは複数の試薬を予め装填し、試料が(1つまたは複数)試薬の各々に流れることができるように構成することができる。マイクロ流体デバイスは、少なくとも1つの入口ポートと、(1つまたは複数の)試薬の各々のための、試薬を収容し、かつ(1つまたは複数の)入口ポートのうちの少なくとも1つから流体を受け取るように構成されたチャンバとを含むことができる。さらに、チャンバごとに、マイクロ流体デバイスは、非水性液体を収容するリザーバと、閉位置および開位置を各々有する第1および第2の隔離部材(例えば、弁や脆弱部材)とを備えることができる。
【0008】
(1つまたは複数の)入口ポート内の試料がチャンバ内に流入するようにチャンバに流体連通する(1つまたは複数の)入口ポートにおける圧力を上昇させることによって、チャンバごとに、試薬を試料に導入することができる。この圧力上昇の前に、気体がチャンバから(1つまたは複数の)入口ポートの外に流出するように(1つまたは複数の)入口ポートにおける圧力を低下させることが好ましい。この装填中、流体が第1の隔離部材を通ってチャンバに出入りすることができず、かつ流体が第2の隔離部材を通ってチャンバとリザーバとの間を流れることができないように、第1および第2の隔離部材を閉じることができる。よって、閉じられた隔離部材は、チャンバを(1つまたは複数の)入口ポートに流体連通させる1つまたは複数の流路に沿って生じるもの以外のチャンバとの間の流体の流れを阻止することができ、これは、装填中に上述の流れを引き起こす圧力勾配の形成を容易にする。
【0009】
試料がチャンバに受け入れられた後、試料から液滴を生成することができる。そうするために、流体が第1の隔離部材を通ってチャンバに出入りすることができ、かつ流体が第2の隔離部材を通ってチャンバとリザーバとの間を流れることができるように、第1および第2の隔離部材を(例えば、それらが脆弱部材を備える場合にはそれらに穴をあけることによって)開くことができる。隔離部材が開かれた状態で、試薬が導入された試料液体はリザーバに入ることができ、試料の少なくとも一部分および非水性液体の少なくとも一部分がリザーバからマイクロ流体デバイスの液滴生成領域を通って流れて分析のための液滴を形成するように、第1の隔離部材における圧力を上昇させることによって液滴生成のための装填を行うことができる。気体が液滴生成領域からリザーバを通り、チャンバを通って流れるように、圧力を上昇させる前に開かれた第1の隔離部材における圧力を低下させることが好ましい。
【0010】
(1つまたは複数の)試薬は試料と共にマイクロ流体デバイスに導入される必要がないので、試薬試験をより簡単かつ効率的にすることができる。また、従来のピペット操作法よりも確実であり得る。また、最初に試薬を試料に導入し、次に液滴を生成する2段階の装填プロセスは、マイクロ流体デバイスに導入される試料の量の一貫性を容易にする。例えば、マイクロ流体デバイス内で複数の試薬が試験される場合、そのような一貫性により、そこで試薬の効果を比較するときの正確な分析を促進するために、各チャンバに実質的に同じ量の試料を受け入れることが可能になり得る。さらに、液体がマイクロ流体デバイスに導入される前に気体が排出されると、マイクロ流体デバイス内の圧力は、試料がその中を流れるときに周囲圧力に戻ることができる。よって、従来の装填マイクロ流体デバイスで行われる周囲圧力への時間のかかる戻りなしに、装填後の液滴の移動を軽減することができる。
【0011】
本マイクロ流体デバイスの一部は、入口ポートと、入口ポートから流体を受け取るように構成された、試薬を収容するチャンバと、第1の弁または脆弱部材とを含むマイクロ流体回路を含む。第1の弁または脆弱部材は、いくつかの態様では、流体が第1の弁または脆弱部材を通ってチャンバに出入りすることが阻止される閉位置と、流体が第1の弁または脆弱部材を通ってチャンバに出入りすることが可能になる開位置とを有する。いくつかの態様では、第1の弁または脆弱部材は、第1の流体不透過性膜を備える。
【0012】
いくつかの態様では、マイクロ流体回路は、チャンバから液体を受け取るように構成されたリザーバを含む。リザーバは、いくつかの態様では、非水性液体を収容する。いくつかの態様では、マイクロ流体回路は、流体が第2の弁または脆弱部材を通ってチャンバとリザーバとの間を流れることが阻止される閉位置と、流体が第2の弁または脆弱部材を通ってチャンバとリザーバとの間を流れることが可能になる開位置とを有する第2の弁または脆弱部材を含む。第2の弁または脆弱部材は、いくつかの態様では、第2の流体不透過性膜を備える。いくつかの態様では、第1の流体不透過性膜と第2の流体不透過性膜とは、1つの軸が各々を通って延びるように位置合わせされる。
【0013】
マイクロ流体回路は、いくつかの態様では、リザーバから液体を受け取ってその液体の液滴を生成するように構成された液滴生成領域を含む。液滴生成領域は、いくつかの態様では、リザーバから離れる方向に流路に沿って増加する最小断面積を有する流路を含む。
【0014】
いくつかの態様では、マイクロ流体回路は、チャンバを第1の部分と第2の部分とに分離する第3の弁または脆弱部材を備える。第3の弁または脆弱部材は、いくつかの態様では、液体ではなく気体が第3の弁または脆弱部材を通って第1の部分と第2の部分との間を流れることが可能になる閉位置と、流体が第3の弁または脆弱部材を通って第1の部分と第2の部分との間を流れることが可能になる開位置とを有する。いくつかの態様では、第3の弁または脆弱部材は、空気透過性膜を備える。いくつかの態様では、第1の流体不透過性膜と、第2の流体不透過性膜と、空気透過性膜とは、1つの軸が各々を通って延びるように位置合わせされる。空気透過性膜は、いくつかの態様では、試薬を含む。
【0015】
いくつかの態様では、マイクロ流体デバイスは貫通体を備える。貫通体は、いくつかの態様では、軸に沿って膜に対して移動可能であり、貫通体は、膜が開位置にあるように膜に穴をあけるように構成される。
【0016】
マイクロ流体デバイスに装填する本方法の一部は、マイクロ流体デバイスの入口ポート内に水性液体を配置する工程と、水性液体に試薬を導入する工程とを含む。いくつかの態様では、試薬を導入する工程は、少なくとも、気体が、試薬を収容するマイクロ流体デバイスのチャンバから入口ポートの外に流出するように、入口ポートにおける圧力を低下させること、および水性液体の少なくとも一部分が入口ポートからチャンバ内に流入するように入口ポートにおける圧力を上昇させることによって行われる。
【0017】
いくつかの方法は、少なくとも、チャンバと各々流体連通する第1および第2のポートを開くことによって、水性液体の液滴を生成する工程を含む。いくつかの方法では、液滴を生成する工程は、気体がマイクロ流体デバイスの液滴生成領域から、非水性液体を収容するマイクロ流体デバイスのリザーバを通り、第1および第2のポートを介してチャンバを通って流れるように、第1のポートにおける圧力を低下させることを含む。いくつかの方法では、液滴を生成する工程は、水性液体の少なくとも一部分および非水性液体の少なくとも一部分がリザーバから液滴生成領域を通って流れるように、第1のポートにおける圧力を上昇させること含む。液滴生成領域は、いくつかの方法では、リザーバから離れる方向に流路に沿って増加する最小断面積を有する流路を含む。
【0018】
いくつかの方法では、第1および第2のポートを開くことは、開かなければ流体が第1のポートを通って流れてチャンバに入ることも、チャンバを出て第1のポートを通って流れることも阻止する、第1の弁または脆弱部材を開くことと、開かなければ流体が第2のポートを通って流れてチャンバに入ることも、チャンバを出て第2のポートを通って流れることも阻止する、第2の弁または脆弱部材を開くこととを含む。
【0019】
いくつかの方法では、弁または脆弱部材の各々について、弁または脆弱部材は膜を備え、弁または脆弱部材を開くことは膜に穴をあけることを含む。
【0020】
いくつかの方法では、デバイスは、チャンバに流体連通する弁または膜を備える。そのような方法の一部では、液体ではなく気体が弁または膜を通って流れるように、入口ポートにおける圧力を上昇させることが行われる。
【0021】
いくつかの方法では、デバイスは、チャンバを第1の部分と第2の部分とに分離する第3の弁または脆弱部材を備える。そのような方法の一部では、入口ポートにおける圧力を上昇させることは、液体ではなく気体が第3の弁または脆弱部材を通って第1の部分と第2の部分との間を流れるように行われる。水性液体の液滴を生成する工程は、いくつかの方法では、液体が第3の弁または脆弱部材を通って第1の部分と第2の部分との間を流れることが可能になるように第3の弁または脆弱部材を開くことを含む。
【0022】
マイクロ流体チップが受け取るための液体を試薬に導入するためのいくつかのデバイスは、内部容積と、内部容積に流体連通する第1の開口部を含む端部とを有する本体を備える。いくつかのデバイスは、内部容積内に配置された試薬を含む。いくつかのデバイスでは、マイクロ流体チップのポートに、端部がポートを受け入れるかまたはポートによって受け入れられ、かつ、ポートから流出することなく液体が内部容積に流入して試薬と接触することを可能にするように構成された通路を本体が含むように結合されるよう、本体は構成されている。
【0023】
いくつかのデバイスでは、本体は、内部容積に流体連通する第2の開口部を含む。いくつかのデバイスは、流体が第1の弁または脆弱部材を通って内部容積に出入りすることが阻止される閉位置と、流体が第1の弁または脆弱部材を通って内部容積に出入りすることが可能になる開位置とを有する第1の弁または脆弱部材を備える。いくつかのデバイスは、内部容積を第1の部分と第2の部分とに分離する第2の弁または脆弱部材を備え、第2の弁または脆弱部材は、液体ではなく気体が第2の弁または脆弱部材を通って第1の部分と第2の部分との間を流れることが可能になる閉位置と、流体が第2の弁または脆弱部材を通って第1の部分と第2の部分との間を流れることが可能になる開位置とを有する。通路は、いくつかのデバイスでは、ポートから流出することなく液体が第1の部分に流入して試薬と接触することを可能にするように構成される。
【0024】
「結合された」という用語は、必ずしも直接的ではなく、必ずしも機械的ではないが、接続されていると定義され、「結合された」2つのものは、互いに一体であり得る。「1つの(a)」および「1つの(an)」という用語は、本開示が特に明示的に必要としない限り、1つまたは複数として定義される。「実質的に(substantially)」という用語は、当業者によって理解されるように、指定されたものの大部分であるが、必ずしも全部ではないとして定義され、指定されたものを含み、例えば、実質的に90度は90度を含み、実質的に平行は平行を含む。任意の開示の態様では、「実質的に」という用語は、指定されたものの「[パーセンテージ]内」で置き換えられてもよく、パーセンテージは0.1、1、5、および10パーセントを含む。
【0025】
「備える(comprise)」という用語およびその任意の形態、例えば「備える(comprises)」や「備える(comprising)」、「有する(have)」およびその任意の形態、例えば「有する(has)」や「有する(having)」、「含む(include)」およびその任意の形態、例えば「含む(includes)」や「含む(including)」、ならびに「含有する(contain)」およびその任意の形態、例えば「含有する(contains)」や「含有する(containing)」は、オープンエンドの連結動詞である。結果として、1つまたは複数の要素を「備える(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」、または「含有する(contains)」装置は、それらの1つまたは複数の要素を保持または含有するが、それらの要素のみを保持または含有することに限定されない。同様に、1つまたは複数の工程を「含む(comprises)」、「有する(has)」または「含む(includes)」方法は、それらの1つまたは複数の工程を有するが、それらの1つまたは複数の工程のみを有することに限定されない。
【0026】
装置、システム、および方法のいずれかの任意の態様は、記載の工程、要素、および/または特徴のいずれかを備える/含む/有するのではなく、記載の工程、要素、および/または特徴のいずれかからなるか、またはから本質的になることができる。よって、特許請求の範囲のいずれかにおいて、所与の請求項の範囲を、そうでなければオープンエンドの連結動詞を使用することになるものから変更するために、「~からなる(consisting of)」または「~から本質的になる(consisting essentially of)」という用語を、上記のオープンエンドの連結動詞の代わりに使用することができる。
【0027】
さらに、特定の方法で構成されるデバイスまたはシステムは、少なくともその方法で構成されるが、具体的に記載されたもの以外の他の方法で構成することもできる。
【0028】
一態様の1つまたは複数の特徴は、本開示または態様の性質によって明示的に禁止されていない限り、記載または例示されていなくても、他の態様に適用されてもよい。
【0029】
上記の態様および他の態様と関連付けられるいくつかの詳細を以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下の図面は、限定ではなく例として示されている。簡潔および明瞭にするために、所与の構造のすべての特徴は、その構造が現れるすべての図においてラベル付けされているとは限らない。同一の参照符号は、必ずしも同一の構造を指示するものではない。むしろ、同じ参照符号は、同一ではない参照符号と同様に、類似の特徴または類似の機能を有する特徴を指示するために使用され得る。図面中の図は、特に断らない限り、縮尺通りに描かれており、これは、少なくとも図内の態様に関して図示の要素のサイズが互いに対して正確であることを意味する。
【0031】
【
図1A】1つまたは複数の試薬が予め装填され、真空装填され得る本マイクロ流体デバイスのうちの1つの斜視図である。
【
図1B】
図1B~1Eは、
図1Aのマイクロ流体デバイスの側面図、正面図、背面図、および底面図である。
【
図2】蓋を取り外された状態の
図1Aのマイクロ流体デバイスの斜視図である。
【
図3】マイクロ流体デバイスの貫通体アセンブリおよびマイクロ流体チップの相対的な位置決めを示す、外殻が取り外された状態の
図1Aのマイクロ流体デバイスの斜視図である。
【
図4A】
図1Aのマイクロ流体デバイスのマイクロ流体チップのうちの1つの斜視図である。
【
図4C】
図4Aのチップの線4C-4Cに沿った断面図である。
【
図4D】
図4Aのチップの線4D-4Dに沿った断面図である。
【
図5】
図5Aは、試薬を収容するチャンバを画定するためにマイクロ流体チップに取り付けられるように構成された
図1Aのマイクロ流体デバイスのプラグデバイスの底面図である。
図5Bは、オーバーフローキャップがない
図5Aのプラグデバイスの上面図である。
【
図6】
図6Aは、液滴生成領域および試験容積を示す、
図4Aのチップの一部分の底面図である。
図6Bは、液滴生成領域を示す、
図6Aの線6B-6Bに沿った
図4Aのチップの断面図である。
【
図7A】水性試料液体がレセプタクル内に配置された状態の
図4Aのマイクロ流体チップの断面図である。
【
図7B】真空装填中の試料を通した気体排出を示す、
図4Aのマイクロ流体チップの断面図である。
【
図7C】チップに結合されたプラグデバイスのうちの1つによって画定されたチャンバへの試料の流入を示す、
図4Aのマイクロ流体チップの断面図である。
【
図7D】第1および第2の脆弱部材に穴をあけてその第1および第2のポートを開く貫通体アセンブリを示す、
図4Aのマイクロ流体チップの断面図である。
【
図7E】リザーバへの試料流入を示す、
図4Aのマイクロ流体チップの断面図である。
【
図7F】真空装填中のリザーバ内に配置された試料および非水性液体を通した気体排出を示す、
図4Aのマイクロ流体チップの断面図である。
【
図7G】チップの液滴生成領域における液滴形成を示す、
図4Aのマイクロ流体チップの断面図である。
【
図8】試料をデバイスのマイクロ流体チップに装填するために使用することができる装填チャンバ内に配置された
図1Aのマイクロ流体デバイスを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
図1A~1Eを参照すると、試料に1つまたは複数の試薬を導入するための本マイクロ流体デバイスの態様10が示されている。デバイス10は、シェル14と、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、もしくは8つ以上のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間のマイクロ流体回路などの、1つまたは複数のマイクロ流体回路22とを含むことができ、図示のように、デバイスは2つのマイクロ流体回路を含む。さらに
図2を参照すると、(1つまたは複数の)マイクロ流体回路22の各々は、分析のために液体試料を受け取ることができる少なくとも1つの入口ポート26を含むことができる。デバイス10は、(1つまたは複数の)入口ポート26に係合する閉位置と、液体を(1つまたは複数の)入口ポートに導入することができる開位置との間で移動可能な(例えば、旋回可能または取り外し可能な)蓋18を備えることができる。以下でさらに詳細に説明するように、各マイクロ流体回路22は、1つまたは複数の試薬を収容することができ、かつ、(1つまたは複数の)入口ポート26に導入された試料が、(1つまたは複数の)試薬の各々へ、そして試料と試薬との間の相互作用を分析することができる試験容積98内へと流れることができるように構成することができる。
【0033】
シェル14の一部分が取り外された状態のデバイス10を示す
図3を参照すると、(1つまたは複数の)マイクロ流体回路22は、シェル内の1つまたは複数、任意で2つ以上のマイクロ流体チップ30によって少なくとも部分的に画定することができる。図示のように、デバイス10は、回路22のそれぞれの一部分を各々画定する2つのマイクロ流体チップ30を備える。
図4A~4Dをさらに参照すると、各マイクロ流体回路22は、1つまたは複数のチャンバ34を含むことができ、(1つまたは複数の)チャンバのうちの少なくとも1つは試薬38を収容する(
図4D)。複数の試薬38の分析を可能にするために、デバイス10の(1つまたは複数の)マイクロ流体回路22は、単一の回路の一部であれ、または複数の回路の一部であれ、2個以上、3個以上、4個以上、6個以上、8個以上、10個以上、12個以上、14個以上、16個以上、20個以上、24個以上、28個以上、もしくは32個以上のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間のチャンバなどの、複数のチャンバ34を有することができる。例えば、図示の態様では、デバイス10が合計で32個のチャンバを含むように、2つのマイクロ流体回路22の各々が16個のチャンバ34を有する。チャンバ34のうちの少なくとも1つは(例えば、対照分析を行うことができるように)試薬を省くことができ、チャンバの他のものは異なる試薬38を有することができる。
【0034】
各試薬38が試料に導入されることを可能にするために、各チャンバ34は、そのマイクロ流体回路22のうちの少なくとも1つの入口ポート26に流体連通することができる。そのような流体連通は、入口ポート26とチャンバ34との間に延在する流路42を介して達成することができる。図示のように、例えば、流路42は、レセプタクルがそこから試料を受け取ることができるように入口ポート26に結合された、チップ30のレセプタクル46を含むことができる(
図3および4A)。流路42は、レセプタクル46と、流体がそこを通ってチャンバ34に入ることができる通路66との間に延在する1つまたは複数の溝50をさらに備えることができる(
図4B~4D)。例示として、マイクロ流体回路22ごとに、入口ポート26からの液体試料の一部分はレセプタクル46に流れ、(1つまたは複数の)溝50を通り、チャンバ34ごとに、通路66を通ってチャンバに流入することができる。
【0035】
各チャンバ34は、マイクロ流体チップ30に結合されたプラグデバイス54によって画定することができる。
図5Aおよび5Bにさらに例示するように、プラグデバイス54は、チャンバ34を含む内部容積62を有する本体58を備えることができる。本体58の端部は、内部容積62と連通する開口部を画定することができ、チップ30の入口ポート70を受け入れるかまたはチップ30の入口ポート70によって受け入れられることができる。チップ入口ポート70に結合されると、プラグデバイス54の本体58はまた、上述したように、チップ30の(1つまたは複数の)溝50のうちの1つからの試料液体が(例えば、チップ入口ポートから流出することなく)チャンバ34に入って、存在する場合、チャンバ内の試薬38と接触することを可能にする通路66を画定することができる。チップ入口ポート70は、以下でさらに詳細に説明するように、チャンバ34から試料液体を受け取るように構成することができ、液滴生成のための非水性液体(例えば、194)を収容することができるリザーバ74を画定することができる。
【0036】
各マイクロ流体回路22は、チャンバ34ごとに、少なくとも第1および第2の隔離部材78a、78b、ならびに任意で第3の隔離部材78cを備えることができ、これは、チャンバへの試料の装填を容易にし、試薬導入中に試料がリザーバ74に入ることを阻止する。第1、第2、および第3の隔離部材78a~78cは、閉位置および開位置を各々有することができる。第1の隔離部材78aが閉位置にあるとき、流体が第1の隔離部材を通ってチャンバ34に出入りすることが阻止される。したがって、マイクロ流体デバイス10が圧力の変化にさらされると、圧力の変化は、閉じられた隔離部材78aを通らずに(1つまたは複数の)入口ポート26に伝達され得、これが、流体を(1つまたは複数の)入口ポート26とチャンバ34との間に流す圧力勾配がもたらすことができる。第2の隔離部材78bが閉位置にあるとき、試料がリザーバに入る前にチャンバを満たすことができるように、流体が第2の隔離部材を通ってチャンバ34とリザーバ74との間を流れることが阻止される。これにより、試薬が試料に導入されたときに、以下でさらに詳細に説明する、リザーバ74の下流のマイクロ流体回路22の部分に液体が流入するのを阻止することができ、これはさらに、各チャンバがその後の液滴生成のために実質的に同量の試料を収容するように、複数のチャンバ34への一定量の試料の計量を容易にすることができる。さらに、閉じられた第2の隔離部材78bは、(例えば、チャンバに収容された試薬38との意図しない接触を防止するために)リザーバ74内に収容された非水性液体がチャンバ34に入るのを阻止することができる。
【0037】
第3の隔離部材78cは、一定量の試料の計量をさらに容易にすることができる。第3の隔離部材78cは、チャンバ34を第1および第2の部分82a、82bに分離することができ、閉位置にあるとき、液体ではなく気体が第1の部分と第2の部分との間を流れることを可能にすることができる。それによって、チャンバ34に流入する液体試料をチャンバの第1の部分82a内に拘束することができる。一方、試料が流入するときにチャンバ34に流れ得るマイクロ流体回路22内の任意の気体は、第3の隔離部材78cを通って第2の部分82bに入ることができ、この第2の部分は、第1の隔離部材78a、第3の隔離部材、およびプラグデバイス54の本体58のオーバーフローキャップ86によって境界を画定することができる。気体が第2の部分82bに流入することにより、試料はチャンバ34の第1の部分82aの全容積を容易に占めることができ、いくつかが他のものの前に充填されても、複数のチャンバへの実質的に同じ量の試料の送達を容易にする。第3の隔離部材78cはまた、試料が第1の部分82aを満たし、第3の隔離部材と接触するときに試薬を試料に導入することができるように、試薬38を含むことができる。例えば、試薬38は、マイクロ流体デバイス10を組み立てる前に、試薬含有液体をマイクロ流体デバイスに導入し、試薬が隔離部材に残るように隔離部材を(例えば、凍結乾燥によって)乾燥させることによって、第3の隔離部材78cに添加することができる。しかしながら、他の態様では、チャンバ34は、第1および第2の部分82a、82bに分割されないように第3の隔離部材78cを含まなくてもよく、そのような態様の一部では、第1の隔離部材78aは、閉じられたときに液体ではなく気体がそこを通ってチャンバに出入りすることを可能にすることができ、任意で試薬38を含むこともできる(例えば、空気透過性膜を含む場合)。
【0038】
第1、第2、および第3の隔離部材78a~78cは、試薬が装填されたら試料がリザーバ74に入り、分析のためにデバイス10の(1つまたは複数の)試験容積98のうちの1つの中に導かれることができるように、開くことができる。隔離部材78a~78cの各々は、弁や脆弱部材などの、開くことができる任意の適切な構造を備えることができ、図示のように、脆弱部材を各々備え、第1および第2の隔離部材は流体不透過性膜を各々備え、第3の隔離部材は空気透過性(および液体不透過性)膜を備える。脆弱部材78a~78cを開くために、マイクロ流体デバイス10は、チャンバ34ごとに、貫通体94を備える貫通体アセンブリ90を含むことができる(
図3)。貫通体アセンブリ90は、各チャンバ34の脆弱部材78a~78cが閉じられる第1の位置から、アセンブリの(1つまたは複数の)貫通体94の各々が(1つまたは複数の)チャンバのそれぞれの脆弱部材に穴をあけてそれらを開く第2の位置に移動可能とすることができる。例えば、マイクロ流体デバイス10のシェル14は、プランジャがそこを通って係合し、それによって貫通体アセンブリ90を第2の位置に移動させることができる1つまたは複数の開口部178を含むことができる。チャンバ34ごとに、脆弱部材78a~78cを、1つの軸が各々を通って延びるように位置合わせすることができ、これにより軸と位置合わせされた貫通体94が脆弱部材を貫通することが可能になる。
【0039】
さらに
図6Aおよび6Bを参照すると、各マイクロ流体回路22は、その(1つまたは複数の)チャンバ34の各々に対して、(例えば、チップ入口ポート70によって画定された)リザーバ74と、試験容積98と、リザーバと試験容積との間に延在する1つまたは複数の流路102とを含む試験部分を有することができる。各流路102は、液滴生成領域106を含むことができ、液滴が形成され、分析のために試験容積に導入されるように、流路に沿って、流体がリザーバ74から液滴生成領域を通って試験容積98に流れることができる。各流路102は、流体がそこを通って流れることができる1つまたは複数の溝および/または他の通路によって画定することができ、2,000μm以下、1,500μm以下、1,000μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、もしくは25μm以下のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間の、マイクロ流体の流れを促進するための任意の適切な最大横断寸法、例えば、流路の中心線に垂直に取られた最大横断寸法などを有することができる。各マイクロ流体ネットワーク22の各試験部分は、任意で、少なくともいくつかの(例えば、過剰な)液滴が試験容積98から入ることができる出口ポート146を含み、出口ポートは、出口ポートと試験容積との間の(1つまたは複数の)流路を介する場合を除いて、流体が出口ポートに出入りするのを阻止するようにシールすることができる。
【0040】
液滴生成は、任意の適切な方法で達成することができる。例えば、
図6Bに示すように、液滴生成領域106において、流路102の最小断面積は、リザーバ74から離れる方向に流路に沿って増加し得る。例示として、流路102は、狭窄区間110および拡張領域114を含むことができ、流路の最小断面積は、狭窄区間よりも拡張領域において大きい。よって、非水性液体の存在下で水性試料を含む液体は、狭窄区間110から拡張領域114まで流路102に沿って流れるときに膨張して液滴を形成することができる。
【0041】
流路102の断面積のそのような変化は、流路の深さの変動からもたらされ得る。例えば、拡張領域114において、流路102は、(例えば、そこに沿った流路の深さが実質的に同じである)一定区間および/または(例えば、そこに沿った流路の深さが流路に沿って増加する)拡張区間を含むことができ、各々の最大深さ126bは、狭窄区間110の最大深さ122より大きい、例えば、少なくとも10%、50%、100%、150%、200%、250%、または400%大きい。例示として、狭窄区間110の最大深さ122は、20μm以下、15μm以下、10μm以下、もしくは5μm以下のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間(例えば、10~20μm)とすることができ、拡張領域114の最大深さ126bは、15μm以上、30μm以上、45μm以上、60μm以上、75μm以上、90μm以上、105μm以上、もしくは120μm以上のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間(例えば、65~85μm)とすることができる。
【0042】
図示のように、拡張領域114は、拡張区間の深さが狭窄区間から離れると(例えば、最小深さ126aから最大深さ126bまで)増加するように角度138だけ狭窄区間110に対して角度を付けて配置された傾斜部134を有するランプ118を含む拡張区間を備える。角度138は、狭窄区間110の中心線に平行な方向に対して測定した場合に、5°以上、10°以上、20°以上、30°以上、40°以上、50°以上、60°以上、70°以上、もしくは80°以上のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間(例えば、20°~40°)とすることができる。図示のように、ランプ118は、ランプが上述の傾斜部134のうちのいずれかを有するような立上りおよび奥行きを有する複数の段142によって画定されており、しかしながら、他の態様では、ランプを単一の平坦な表面によって画定することができる。
【0043】
液滴生成領域106は、液滴を形成するために他の構成を有することができる。例えば、他の態様では、液体の膨張は、一定区間のみ、拡張区間の上流の一定区間、または一定区間の上流の拡張区間を用いて達成することができる。また、他の態様では、液滴生成領域106は、T接合部(例えば、そこで2つの溝、すなわち、一方を通って流れる水性液体と他方を通って流れる非水性液体が、非水性液体が水性液体をせん断して液滴を形成するように接続する)、流れ集束、共流などを介して液滴を形成するように構成することができる。そのような代替の態様の一部では、(1つまたは複数の)マイクロ流体ネットワーク22の各々は複数のチップ入口ポート70を含むことができ、水性および非水性液体を、異なる入口ポートに(例えば、それらが液滴生成のための接合部で出会うことができるように)受け入れることができる。
【0044】
液滴生成領域106の幾何学的形状に少なくとも部分的に起因して、液滴生成領域内で生成される液滴は、例えば、10,000ピコリットル(pL)以下、5,000pL以下、1,000pL以下、500pL以下、400pL以下、300pL以下、200pL以下、100pL以下、75pL以下、もしくは25pL以下のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間(例えば、25~500pL)の体積などの、比較的小さい体積を有することができる。各液滴は、例えば、100μm以下、95μm以下、90μm以下、85μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、もしくは60μm以下のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間(例えば、60~85μm)の直径を有することができる。比較的少量の液滴は、例えば、水性試料液体によって含有される微生物の分析を容易にすることができる。液滴生成中、微生物のうちの1つまたは複数の各々を、液滴のうちの1つによって(例えば、カプセル化する液滴の各々が単一の微生物および、任意でその子孫を含むように)カプセル化することができる。液滴中のカプセル化された(1つまたは複数の)微生物の濃度は、液滴体積が小さいために比較的高くすることができ、これにより、(1つまたは複数の)微生物を増殖させるための長時間の培養を必要とせずにその検出が可能になり得る。
【0045】
液滴生成領域106からの液滴は試験容積98に流れることができ、試験容積は、分析に十分な液滴を収容する液滴容量を有することができる。例えば、試験容積98は、1,000個以上、5,000個以上、10,000個以上、20,000個以上、30,000個以上、40,000個以上、50,000個以上、60,000個以上、70,000個以上、80,000個以上、90,000個以上、もしくは100,000個以上のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間の液滴(例えば、13,000~25,000個の液滴)を収容するようなサイズとすることができる。そうするために、試験容積98は、各々、試験容積の最大深さの少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、もしくは120倍の大きさの長さおよび幅など、その最大深さに対して各々大きい長さ130および幅132を有することができる。例として、長さ130および幅132は、各々、3mm以上、4mm以上、5mm以上、6mm以上、7mm以上、8mm以上、9mm以上、10mm以上、11mm以上、12mm以上、13mm以上、14mm以上、15mm以上、16mm以上、もしくは17mm以上のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間とすることができ、図示のように、長さは幅よりも大きい(例えば、長さは11~15mmであり、幅は5~9mmである)。試験容積98の深さは、液滴の積み重ねを軽減しながら(例えば、液滴を圧縮せずに)液滴を収容することができる。その深さは、例えば、15μm以上、30μm以上、45μm以上、60μm以上、75μm以上、90μm以上、105μm以上、もしくは120μm以上のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間(例えば、15~90μm、65~85μmなど)(例えば、拡張領域114の最大深さ126bと実質的に同じ)とすることができ、任意で、試験容積98にわたって実質的に同じとすることもできる。
【0046】
図7A~7Gを参照すると、マイクロ流体デバイス(例えば、10)(例えば、本明細書に記載されるものいずれか)を装填するために、いくつかの方法は、そのうちの1つまたは複数の入口ポート(例えば、26)内に水性液体(例えば、186)(例えば、患者からの尿、唾液、血液、軟組織、粘液などの分析のための試料を含有する液体)を配置する工程を含む。上述したように、入口ポート内の水性液体は、入口ポートに流体連通するチップ(例えば、30)のレセプタクル(例えば、46)に流入することができる(
図7A)。
【0047】
いくつかの方法は、1つまたは複数の、任意で2つ以上の試薬(例えば、38)を水性液体に導入する工程を含み、(1つまたは複数の)試薬の各々は、マイクロ流体デバイスの1つまたは複数のチャンバ(例えば、34)のうちのそれぞれに収容される。例えば、マイクロ流体デバイスを使用して、(1つまたは複数の)抗生物質が(1つまたは複数の)微生物を死滅させるかまたは微生物の増殖を抑制する能力を評価することができるように、水性液体は、1つまたは複数の微生物を含有することができ、(1つまたは複数の)試薬の各々は、抗生物質(例えば、抗菌剤や抗真菌剤)などの薬物を含むことができる。真空装填を使用して、(1つまたは複数の)試薬を水性液体に導入することができる。図示のように、真空装填では、いくつかの方法は、入口ポートに流体連通する(1つまたは複数の)チャンバの各々について、気体(例えば、190)がチャンバから(例えば、中に配置された水性液体を通って)入口ポートの外に流出するように、(1つまたは複数の)入口ポートの各々における圧力を低下させることを含む(
図7B)。(1つまたは複数の)入口ポートにおける圧力は、周囲圧力を下回って低下させることができる。例えば、圧力を低下させることは、(1つまたは複数の)入口ポートにおける圧力が、0.5atm以下、0.4atm以下、0.3atm以下、0.2atm以下、0.1atm以下、もしくは0atm以下のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間になるように行うことができる。より大きな圧力低下は、(1つまたは複数の)チャンバの各々から排出される気体の量を増加させることができる。
【0048】
次いで、入口ポートに流体連通する(1つまたは複数の)チャンバの各々に対して、水性液体の少なくとも一部分が入口ポートからチャンバ内に流入するように、(1つまたは複数の)入口ポートの各々における圧力を(例えば、周囲圧力まで)上昇させることができる(
図7C)。例えば、上述したように、(1つまたは複数の)チャンバの各々について、水性液体の一部分は、チップのレセプタクルから、1つまたは複数の溝(例えば、50)に沿って、通路(例えば、66)を通ってチャンバに流入することができる。液体をチャンバに導入する前に気体を排出することによって、チャンバ内の圧力は、液体がその中に導入されるときに周囲圧力に戻ることができ、減圧を必要とせずにその後の工程が行われることを可能にする。しかしながら、他の態様では、気体排出なしで(例えば、(1つまたは複数の)入口ポートにおける圧力を上昇させる前に(1つまたは複数の)デバイスの入口ポートにおける圧力を低下させることなく)正圧装填を使用することができる。
【0049】
試薬含有チャンバに受け入れられた水性液体の部分は、水性液体が試薬を含むようにチャンバ内の試薬と接触することができる。デバイスが複数のチャンバを含む場合、(1つまたは複数の)チャンバのうちの少なくとも1つは、対照実験を行うことができるように試薬を省くことができる。
【0050】
上述したように、(1つまたは複数の)チャンバの各々は、第1および第2の隔離部材、ならびに任意で第3の隔離部材(例えば、78a~78c)を含むことができる。第1および第2の隔離部材は、それぞれ、第1および第2のポート(例えば、148aおよび148b)を通る流れを制御することができる。図示のように、第1および第2のポートは、チャンバと各々流体連通することができ、開いたときに、第1のポートは、(通路を通って流れることなく)チャンバに出入りする流体の流れを可能にし、第2のポートは、チャンバと非水性液体(例えば、194)を収容するリザーバ(例えば、74)との間の流体の流れを可能にする。(1つまたは複数の)チャンバの各々に対して、(1つまたは複数の)試薬が水性液体に導入されるとき、第1および第2のポートを各々閉じることができる。したがって、マイクロ流体デバイスの(1つまたは複数の)入口ポートに伝達された圧力低下および/または圧力上昇は、第1のポートを介してチャンバに伝達されず、これはチャンバへの流体の流入を促進することができる。さらに、第2のポートが閉じられた状態では、チャンバ内に受け入れられた水性液体が、チャンバ装填が完了する前にリザーバに流入することが阻止される。また、第3の隔離部材は、使用される場合、チャンバを第1および第2の部分(例えば、82aおよび82b)に分離し、(1つまたは複数の)入口ポートにおける圧力が上昇したときに、チャンバ内に受け入れられた水性液体の部分が、チャンバの第1の部分を満たし、気体がチャンバの第1の部分と第2の部分との間を流れる間チャンバの第1の部分に拘束され得るように、液体ではなく気体が通過することを可能にすることができる。しかしながら、上述したように、他の態様では、チャンバは、第1および第2の部分に分割されないように第3の隔離部材を含まなくてもよく、そのような態様の一部では、第1の隔離部材は、(1つまたは複数の)入口ポートにおける圧力が上昇したときに気体が第1の隔離部材を通って流れるように、液体ではなく気体がそこを通って流れることを可能にすることができる。
【0051】
いくつかの方法は、(1つまたは複数の)チャンバの各々に対して、水性液体の液滴を生成する工程を含む。液滴生成は、(1つまたは複数の)チャンバの各々について、流体が(例えば、第1および第2の隔離部材を開くことによって)各々を通って連通することができるように、第1および第2のポートを開くことを含むことができる(
図7D)。図示のように、ポートは、第1および第2の隔離部材(例えば、各々流体不透過性膜とすることができる第1および第2の脆弱部材)に貫通体(例えば、94)で穴をあけることによって開かれる。第3の隔離部材もまた、存在する場合には、第1のポートにおける圧力変化をチャンバを介して第2のポートにより容易に伝達することができるようにそこを横断する流体の流れを可能にするために(例えば、空気透過性膜とすることができる隔離部材に穴をあけることによって)開くことができる。
【0052】
(1つまたは複数の)チャンバの各々について、第1および第2のポートが開かれた状態で、チャンバ内の水性液体は第2のポートを通ってリザーバに入ることができ(
図7E)、第1のポートにおける圧力を変化させて液滴生成のための流体の流れをもたらすことができる。試薬導入と同様に、液滴生成は真空装填によって達成することができる。そうするために、気体がマイクロ流体デバイスの液滴生成領域(例えば、106)からリザーバを通り、第1および第2のポートを介してチャンバを通って流れるように、第1のポートにおける圧力を低下させることができる(
図7F)。第1のポートにおける圧力は、例えば、第1のポートにおける圧力が0.5atm以下、0.4atm以下、0.3atm以下、0.2atm以下、0.1atm以下、もしくは0atm以下のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間になるように、周囲圧力を下回るまで低下させることができる。図示のように、気体は、気泡としてリザーバ内の水性液体および非水性液体を通って流れることができ、これは有利には、水性液体を撹拌し、それによって混合して、その装填および/または分析を容易にすることができる。
【0053】
次いで、水性液体の少なくとも一部分および非水性液体の少なくとも一部分がリザーバから液滴生成領域を通って流れるように、第1のポートにおける圧力を(例えば、周囲圧力まで)上昇させることができる(
図7G)。水性液体は、液滴生成領域を通過するときに液滴(例えば、198)を形成することができ、次いで、分析のために試験容積(例えば、98)に入ることができる。上述したように、液滴生成領域において、流路の最小断面積は、リザーバから離れる方向に流路に沿って増加することができ、これが、非水性液体の存在下で水性液体が液滴を形成することを可能にする。液滴生成を促進するために、非水性液体を水と比較して比較的高密度とすることができ、例えば、非水性液体の比重は、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、もしくは1.7以上のうちのいずれか1つまたはそれらのうちのいずれか2つの間(例えば、1.5以上)とすることができる。真空装填では、水性液体および非水性液体が試験容積に入ると、試験容積内の圧力は、実質的に周囲圧力に達するまで上昇することができる。
【0054】
真空装填はいくつかの利益を提供する。正圧勾配を使用する従来の装填技術では、試験容積は、液滴が装填されるときに周囲圧力を上回るまで加圧される可能性があり、よって、その方法で装填された液滴は、マイクロ流体デバイスの周囲の環境が周囲圧力に戻ると、移動して試験容積から排出される傾向があり得る。その排出を軽減するために、従来方式で装填されたデバイスは、液滴を試験容積内に保持するためのシールまたは他の保持機構を必要とする場合があり、外部環境内の圧力は周囲圧力にゆっくり戻される必要があり得る。負圧勾配を使用して試験容積とマイクロ流体デバイスの外部の環境との間の(例えば、周囲圧力までの)圧力均等化を達成することによって、追加のシールまたは他の保持機構を必要とせずに分析のために試験容積内の液滴の位置を維持することができ、圧力均等化をより速く行うことができる。さらに、マイクロ流体デバイスに装填するために使用される負圧勾配は、(例えば、その異なる部分間の)シールを補強して層間剥離を防止することができ、故障がある場合に気体を漏れ口に引き込むことによって意図しない漏れを封じ込めることができる。漏れの封じ込めは、例えば、水性液体が病原体を含む場合に安全性を促進することができる。それにもかかわらず、いくつかの態様では、正圧勾配を使用して液滴生成を行うことができる。
【0055】
液滴が生成され、マイクロ流体デバイスの(1つまたは複数の)試験容積に配置された後に、いくつかの方法は、(1つまたは複数の)試験容積の各々について、試験容積内の液体(例えば、液滴)の画像を取り込む工程を含む。水性液体は、微生物の存在下で経時的に変化する特定の蛍光を有することができる生存率指示薬(例えば、レサズリン)などの蛍光化合物を含むことができる。例えば、微生物をカプセル化する液滴では、微生物は生存率指示薬と相互作用して蛍光シグネチャを示し得る。液滴は、(存在する場合に)液滴がそのような蛍光を示すことができるように1つまたは複数の光源で照射することができ、これは、水性液体に導入された試薬の影響を評価するために画像取込みを使用して測定することができる。例えば、抗生物質は、液滴にカプセル化された(1つまたは複数の)微生物の増殖を抑制し得、より少ない液滴が対照試験容積中の液滴に対して蛍光シグネチャを示すことは、抗生物質の有効性を証明し得る。
【0056】
図示のように、複数の試薬(例えば、複数の抗生物質)を対照と共に評価することができるように、複数のチャンバおよび試験容積を同時に装填することができる。そうするために、マイクロ流体デバイスの(1つまたは複数の)入口ポートおよびチャンバの第1のポートにおける圧力変化を、デバイスをチャンバ内に配置し、中の圧力を変化させることによって、もたらすことができる。例として、
図8を参照すると、マイクロ流体デバイスの上述の装填を行うために使用することができるシステム150が示されている。システム150は、マイクロ流体デバイスを受け入れて収容するように構成されたチャンバ152を備えることができる。圧力源154(例えば、真空源)および1つまたは複数の制御弁158a~158dを、チャンバ152内の圧力を調整するように構成することができる。例えば、真空源の場合、圧力源154は、チャンバ152から気体を除去し、それによって中の圧力を、よって(1つまたは複数の)入口ポート26における(また、隔離部材78a~78cが開いた後に、(1つまたは複数の)第1のポート148aにおける)の圧力を(例えば、周囲圧力を下回るまで)減少させるように構成することができる。圧力減少は、(1つまたは複数の)マイクロ流体回路22の気体排出を促進することができる。(1つまたは複数の)制御弁158a~158dの各々は閉位置と開位置との間で移動可能であり、それらの位置において、制御弁は、チャンバ152、圧力源154、および/または外部環境162の間の流体の移動を、それぞれ阻止および可能にする。例えば、チャンバ152内に真空が生成された後、(1つまたは複数の)制御弁158a~158dのうちの少なくとも1つを開くことにより、気体を(例えば、外部環境162から)真空チャンバに流入させて、中の圧力を、よって(1つまたは複数の)入口ポート26における(また、隔離部材78a~78cが開いた後に、(1つまたは複数の)リザーバ74における)圧力を(例えば、周囲圧力まで)上昇させることができる。圧力上昇は、(1つまたは複数の)チャンバ34および(1つまたは複数の)試験容積98への水性試料の流入を促進することができる。圧力源154は、マイクロ流体デバイス10の真空装填を可能にするための真空源とすることができるが、他の態様では、圧力源は、(例えば、中に気体を導入することによって)チャンバ152内の圧力を上昇させて正圧を使用してデバイスに装填するように構成された正圧源とすることができる。
【0057】
システム150は、圧力源154および/または(1つまたは複数の)制御弁158a~158dを制御してチャンバ152内の圧力を調節するように構成されたコントローラ166を備えることができる。コントローラ166は、圧力センサ170からチャンバ圧力測定値を受信するように構成することができる。それらの圧力測定値に少なくとも部分的に基づいて、コントローラ166を、例えば(例えば、比例・積分・微分コントローラを用いて)チャンバ152内の目標圧力を達成するために圧力源154および/または(1つまたは複数の)制御弁158a~158dのうちの少なくとも1つを作動させるように、構成することができる。例えば、システム150の(1つまたは複数の)制御弁158a~158dは、各々、開位置にあるときにチャンバ158aと圧力源154および外部環境162の少なくとも一方との間の流体の流れを可能にする低速弁158aおよび高速弁158bを備えることができる。システム150は、気体が低速弁158aを通って流れることができる最大速度が、気体が高速弁158bを通って流れることができる最大速度よりも低くなるように構成することができる。図示のように、例えば、システム150は、低速弁158aに流体連通する制限部146を備える。コントローラ166は、少なくとも、(例えば、低流量の場合には)低速弁158aおよび(例えば、高流量の場合には)高速弁158bの少なくとも一方を選択して開き、選択されていない(1つまたは複数の)弁がある場合にはそれを閉じることによって、気体がチャンバ152に出入りする速度、よってチャンバ内の圧力の変化率を制御することができる。よって、可変動力圧力源または比例弁を必要とせずに適切な制御を達成することができるが、いくつかの態様では、圧力源154は異なるレベルの真空動力を提供することができ、かつ/または制御弁158a~158dのうちの少なくとも1つは比例弁を備えることができる。
【0058】
システム150の(1つまたは複数の)制御弁158a~158dは、源弁158cおよび通気弁158dを備えることができる。圧力源154が気体を排出する(真空源の場合)か、または気体を導入する(正圧源の場合)とき、圧力源がチャンバ152から気体を引き出すか、またはチャンバ152に気体を追い込み、チャンバが外部環境162から隔離されるように、源弁158cを開くことができ、通気弁158dを閉じることができる。チャンバ152内の圧力を周囲圧力に戻すために、気体(例えば、空気)が外部環境162からチャンバ152内に(真空装填が使用される場合)、またはチャンバから外部環境内に(正圧装填が使用される場合)流入することができるように、源弁158cを閉じることができ、通気弁158dを開くことができる。低速弁158aおよび高速弁158bは、コントローラ166が、両方の段階において低速弁および高速弁を用いてチャンバ152に出入りする流量を調整することができるように、源弁158cと通気弁158dの両方に流体連通することができる。
【0059】
システム150はまた、上述したように(1つまたは複数の)貫通体94が(1つまたは複数の)隔離部材78a~78cを開くように、デバイスの(1つまたは複数の)開口部178を通ってマイクロ流体デバイス10の貫通体アセンブリ90に係合するように構成された1つまたは複数のプランジャ174を含むことができる。また、システム150は、上述したように(1つまたは複数の)試験容積98内の液滴を分析するための光学センサ182(例えば、カメラ)を含むことができる。例えば、マイクロ流体デバイス10のシェル14は、そこを通して光学センサ182が(1つまたは複数の)試験容積98内の液滴の画像を取り込むことができる1つまたは複数の透明部分を含むことができる(
図1E)。
【0060】
上記の明細書および例は、例示的な態様の構造および使用の完全な説明を提供している。特定の態様を、ある程度の特殊性を伴って、または1つもしくは複数の個々の態様を参照して上述したが、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、開示の態様に多くの変更を加えることができる。よって、方法およびシステムの様々な例示的な態様は、開示の特定の形態に限定されることを意図されていない。むしろ、それらは特許請求の範囲内に入るすべての修正例および代替例を含み、図示されたもの以外の態様は、図示の態様の特徴の一部または全部を含んでもよい。例えば、要素は省略されても、または一体構造として組み合わされてもよく、かつ/または接続部が置き換えられてもよい。さらに、適切な場合には、同等の、または異なる特性および/または機能を有し、同じか、または異なる問題に対処するさらなる例を形成するために、上述した例のいずれかの局面が説明したその他の例のいずれかの局面と組み合わされてもよい。同様に、上述した利益および利点は、1つの態様に関連してもよいし、またはいくつかの態様に関連してもよいことが理解されよう。
【0061】
特許請求の範囲は、そのような限定が、それぞれ、「~する手段(means for)」または「~する工程(step for)」という(1つまたは複数の)語句を使用して所与の請求項に明示的に記載されていない限り、ミーンズプラスファンクションまたはステッププラスファンクションの限定を含むことを意図されておらず、そのような限定を含むと解釈されるべきではない。
【国際調査報告】