IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プロキシマジェン リミティドの特許一覧

特表2024-528072イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用
<>
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図1
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図2
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図3
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図4A
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図4B
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図5A
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図5B
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図6
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図7
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図8
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図9
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図10
  • 特表-イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】イミダゾール有機化合物及び炎症性腸疾患に対するその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20240719BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240719BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/541 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
C07D519/00 301
C07D519/00 CSP
A61K31/519
C07D487/04 144
A61K31/5377
A61K31/541
A61P1/00
A61P29/00
A61P1/04
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505332
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 GB2022052010
(87)【国際公開番号】W WO2023007185
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】2111001.0
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517318193
【氏名又は名称】ベネボレンタイ ケンブリッジ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア アーモンド-シン
(72)【発明者】
【氏名】リー ペイシェント
(72)【発明者】
【氏名】エドワード アイ.バルモンド
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ロバス
(72)【発明者】
【氏名】モニカ ポリドーロ ベリッチ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB11
4C086ZC01
(57)【要約】
本発明は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグに関する。
本発明はまた、その化合物の調製のための方法、その化合物を含む医薬組成物、並びに炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)に関連する疾患又は病態を治療する際のその化合物の使用に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
【化1】
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグであって、式中
環Aが、アリール及び5又は6員ヘテロアリールからなる群より選択され、それぞれが任意選択で、ハロ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、及び-C(O)NRから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
環Bが、任意選択で、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ又は複数の置換基で置換される、4~7員単環式炭素環若しくは複素環、又は6~10員二環式炭素環若しくは複素環であり、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
環Cが、任意選択で1つ又は複数のRで置換される、5若しくは6員炭素環、5若しくは6員複素環又は5若しくは6員ヘテロアリール基であり;
が、H及び(C-C)アルキルからなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-NR1011、及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
各Rが独立して、ハロ、(C-C)アルキル、-OR12、-NR1314、-C(O)R12、-C(O)OR12、-C(O)NR1314、アリール、及び4~6員複素環からなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
が、H及び(C-C)アルキルから選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-OH、及び-NR1516から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;且つ
~R16がそれぞれ独立して、H及び(C-C)アルキルから選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される、又は基RとR、RとR、R10とR11、R13とR14、R15とR16が一緒になって、それらが結合している原子とともに、任意選択で、ハロ及び(C-C)アルキルから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される5若しくは6員複素環を形成する
化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグ。
【請求項2】
式(IA)の化合物
【化2】
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグであって、式中
Xが、N又はCR18であり;
Yが、N又はCR18であり、好ましくはXとYのうち一方がNであり、他方がCR18であり;
環Aが、アリール及び5又は6員ヘテロアリールからなる群より選択され、それぞれが任意選択で、ハロ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、及び-C(O)NRから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
環Bが、任意選択で、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ又は複数の置換基で置換される、4~7員単環式炭素環若しくは複素環、又は6~10員二環式炭素環若しくは複素環であり、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
が、H及び(C-C)アルキルからなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-NR1011、及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
が、H及び(C-C)アルキルから選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-OH、及び-NR1516から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
17が、H、(C-C)アルキル、-OR12、-NR1314、-C(O)R12、-C(O)OR12、-C(O)NR1314、アリール、及び4~6員複素環からなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
各R18が独立して、H、ハロ、(C-C)アルキル、-OR12、-NR1314、-C(O)R12、-C(O)OR12、-C(O)NR1314、アリール、及び4~6員複素環からなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され、好ましくは各R18がH又はハロであり、より好ましくは各R18がHであり;且つ
~R16がそれぞれ独立して、H及び(C-C)アルキルから選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される、又は基RとR、RとR、R10とR11、R13とR14、R15とR16が一緒になって、それらが結合している原子とともに、任意選択で、ハロ及び(C-C)アルキルから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される5若しくは6員複素環を形成する
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
環Bが、
(i)任意選択で、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される、6~10員二環式複素環、好ましくは7~10員二環式複素環であり、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ若しくは複数のハロで置換される;又は
(ii)ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される少なくとも1つの置換基で置換される、4~7員単環式複素環であり、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ若しくは複数のハロで置換される
請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
環Bが、
(i)任意選択で、ハロ、(C-C)アルキル、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される7~10員二環式複素環であり、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ若しくは複数のハロで置換される;又は
(ii)ハロ、(C-C)アルキル、及び-S(O)(NR)Rから選択される少なくとも1つの置換基で置換される4~7員単環式複素環であり、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ若しくは複数のハロで置換される
請求項2又は請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
環Aが、アリール及び5又は6員ヘテロアリールからなる群より選択され、それぞれが任意選択で、ハロ、(C-C)アルキル、及び-ORから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
が、H及び(C-C)アルキルから選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び-NR1516から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
17が、H、(C-C)アルキル、及び4~6員複素環からなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
各R18が独立して、H、ハロ、及び(C-C)アルキルからなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、好ましくは各R18がH又はハロであり、より好ましくは各R18がHであり;且つ
、R15、及びR16がそれぞれ独立して、H及び(C-C)アルキルから選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換される
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
環Aが、アリール及びピリジルから選択される群から選択され、任意選択で1つ又は複数のハロ及び-ORで置換され、Rが(C-C)アルキル-NMeであり、
好ましくは環Aが、
【化3】
から選択される、請求項2~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
環Bが、
【化4】
からなる群よりから選択され、
それぞれが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換される
請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
環Cが、任意選択で1つ又は複数のRで置換される5又は6員複素環であり、好ましくは環Cが、任意選択で1つ又は複数Rで置換される6員複素環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式(IB)の化合物
【化5】
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグであって、式中
環Aが、アリール及び5又は6員ヘテロアリールからなる群より選択され、それぞれが任意選択で、ハロ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、及び-C(O)NRから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
環Bが、任意選択で、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ又は複数の置換基で置換される、4~7員単環式炭素環若しくは複素環、又は6~10員二環式炭素環若しくは複素環であり、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
が、H及び(C-C)アルキルからなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-NR1011、及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
が、H及び(C-C)アルキルから選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-OH、及び-NR1516から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;且つ
19が、H、(C-C)アルキル、-C(O)R12、-C(O)OR12、-C(O)NR1314、アリール、及び4~6員複素環からなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
各R20が独立して、ハロ、(C-C)アルキル、-OR12、-NR1314、-C(O)R12、-C(O)OR12、-C(O)NR1314、アリール、及び4~6員複素環からなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
~R16がそれぞれ独立して、H及び(C-C)アルキルから選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される、又は基RとR、RとR、R10とR11、R13とR14、R15とR16が一緒になって、それらが結合している原子とともに、任意選択で、ハロ及び(C-C)アルキルから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される5若しくは6員複素環を形成し;且つ
nが、0、1、2、3、4、5、又は6である
請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
19が、H、(C-C)アルキル、及び4~6員複素環からなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
各R20が独立して、ハロ、及び(C-C)アルキルからなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換され;且つ
nが、0、1、2、3、又は4であり、好ましくはnが、0、1、又は2、最も好ましくはnが0である
請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
19が、H、(C-C)アルキル、及び
【化6】
からなる群より選択される、請求項9又は請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
環Aが、アリール及び6員ヘテロアリールからなる群より選択され、それぞれが任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換される、好ましくは環Aがアリール又はピリジル、より好ましくはアリール、又は2-ピリジル、最も好ましくはアリールである、請求項8~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
環Bが、任意選択で、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ又は複数の置換基で置換される、4~7員単環式炭素環又は複素環、好ましくは4~7員単環式複素環であり、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換される
請求項8~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
環Bが、任意選択で、ハロ、及び(C-C)アルキルから選択される1つ又は複数(one of more)の置換基で置換される、6員複素環であり、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換される、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
環Bが、任意選択で、ハロ、及び(C-C)アルキルから選択される1つ又は複数の置換基で置換される、モルホリン、好ましくは、
【化7】
であり、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され、最も好ましくは、環Bが、
【化8】
からなる群より選択される、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
が、H及び(C-C)アルキルからなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、好ましくはRが、H、Me又は-CFである、請求項8~15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
・6-[9-メチル-2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]プリン-6-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン;
・6-[9-メチル-2-[2-[1-メチル-4-(3-ピリジル)イミダゾール-2-イル]エチニル]プリン-6-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン;
・6-[1-メチル-6-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン;
・6-[9-メチル-2-[2-[4-フェニル-1-(テトラヒドロピラン-4-イルメチル)イミダゾール-2-イル]エチニル]プリン-6-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン;
・6-[9-メチル-2-[2-[1-(2-モルホリノエチル)-4-フェニル-イミダゾール-2-イル]エチニル]プリン-6-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン;
・6-[6-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-1-テトラヒドロピラン-4-イル-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン;
・6-[9-メチル-2-[2-(4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル]プリン-6-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン;
・6-[1-(アゼチジン-3-イルメチル)-6-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン;
・(3aS,6aR)-5-[1-メチル-6-[2-(4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]-1,3,3a,4,6,6a-ヘキサヒドロフロ[3,4-c]ピロール;
・2-[3-[2-[2-[4-[(3aS,6aR)-1,3,3a,4,6,6a-ヘキサヒドロフロ[3,4-c]ピロール-5-イル]-1-メチル-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]エチニル]-1H-イミダゾール-4-イル]フェノキシ]-N,N-ジメチル-エタンアミン;
・4-[2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン;
・(3R)-3-メチル-4-[2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン;
・(3S)-3-メチル-4-[2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン;
・4-[2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-7-(オキセタン-3-イル)-6,8-ジヒドロ-5H-ピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン;
・4-[7-(シクロプロピルメチル)-2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-6,8-ジヒドロ-5H-ピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン;
・(3aR,6aS)-5-(1-(シクロプロピルメチル)-6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール;
・(3aR,6aS)-5-(1-エチル-6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール;
・(3aR,6aS)-5-(1-イソプロピル-6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール;
・(3aR,6aS)-5-(6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール;
・(3aR,6aS)-5-(9-メチル-2-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール;
・(R)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン;
・(S)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン;
・(3aR,6aS)-5-(1-メチル-6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール;
・1-イミノ-4-(1-メチル-6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)-1l6-チオモルホリン-1-オキシド;
・(3aR,6aS)-5-(1-イソプロピル-6-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール;
・(3aR,6aS)-5-(1-(シクロプロピルメチル)-6-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール;
・(3aR,6aS)-5-(1-(オキセタン-3-イル)-6-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール;
(3aR,6aS)-5-(9-メチル-2-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール;
・(R)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン;
・(S)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン;
・(3aR,6aS)-5-(9-メチル-2-((4-(ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール;
・(R)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((4-(ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン;及び
・(S)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((4-(ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグ
からなる群より選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物及び1つ又は複数の賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項19】
医薬品として使用するための、請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
症性腸疾患の予防及び/又は治療に使用するための、好ましくは前記炎症性腸疾患が、潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病である、請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
対象に請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物を投与することを含む、疾患又は病態の予防及び/又は治療のための方法であって、前記疾患又は病態がPDE10A阻害の影響を受けやすい方法。
【請求項22】
前記疾患又は病態が炎症性腸疾患であり、好ましくは前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~17のいずれか一項に記載の化合物の、医薬品の製造のための使用。
【請求項24】
前記医薬品が炎症性腸疾患の予防及び/又は治療のためのものであり、好ましくは前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病である、請求項23に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグに関する。本発明はまた、その化合物の調製のための方法、その化合物を含む医薬組成物、並びに炎症性腸疾患(IBD)、特に潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)に関連する疾患又は病態を治療する際のその化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患は、消化管に影響を及ぼす慢性の制御不能な炎症を特徴とし、体重減少や、腹痛、再発性下痢、出血などの複数の症状を引き起こす。IBDの有病率は、欧州では約1000人に1人であり、より高い有病率及び発生率が欧米(westernized)先進国で見られる(Loftus EV, Clinical epidemiology of inflammatory bowel disease: Incidence, prevalence, and environmental influences, Gastroenterology. 126(6):1504-17200 (2004))。発症のピークは10~30代である。
【0003】
潰瘍性大腸炎(UC)及びクローン病(CD)は、炎症性腸疾患(IBD)と総称される慢性の免疫介在性疾患である。CDとUCはともに、腸管粘膜の免疫応答の調節不全及び異常を特徴とする。CDもUCも治療の目標は、炎症負荷を除去又はコントロールすることによって、症状のコントロールや臨床的寛解を達成すること及び疾患の進行を予防することである(Rubin, D. T., Ananthakrishnan, et al., Clinical Guideline: Ulcerative Colitis in Adults. Am. J. Gastroenterol. 114, 384-413 (2019))。
【0004】
UCとCDは多くの病理学的機序を共有している。抗原提示細胞、Th1、Th2、制御性T細胞及びTh17T細胞は、UCとCDの両方で活性化され、その結果、複数の炎症性サイトカイン及びケモカインの発現が上方制御されている(Sartor, R. B. Mechanisms of Disease: pathogenesis of Crohn’s disease and ulcerative colitis. Nat Clin Pract Gastr. 3, 390-407 (2006))。出願人(the applicant)が患者の生体外結腸生検で測定したサイトカインである、IL-6(Mudter, J. & Neurath, M. F. Il-6 signaling in inflammatory bowel disease: Pathophysiological role and clinical relevance. Inflamm Bowel Dis 13, 1016-1023 (2007))、IL-8(Daig, R. et al. Increased interleukin 8 expression in the colon mucosa of patients with inflammatory bowel disease. Gut 38, 216 (1996))、及びTNF-α(Friedrich, M., Pohin, M. & Powrie, F. Cytokine Networks in the Pathophysiology of Inflammatory Bowel Disease. Immunity 50, 992-1006 (2019))を含めて、疾患の病理において重要な役割を果たす多くの共通の経路及び両疾患で上方制御されているサイトカインがある(Ramos, G. P. & Papadakis, K. A. Mechanisms of Disease: Inflammatory Bowel Diseases. Mayo Clin Proc 94, 155-165 (2019))。UCとCDの両方に共通するこれらの疾患機序を考慮すると、UCに有効な治療法がCDにも有効であろうことは充分に理解され、且つ強力な理論的根拠によって裏付けられており、例えば、中和モノクローナル抗体によるTNFαの遮断は、活動性のCDとUC両方を治療することが臨床的に示されている(Jarnerot, G. et al. Infliximab as Rescue Therapy in Severe to Moderately Severe Ulcerative Colitis: A Randomized, Placebo-Controlled Study. Gastroenterology 128, 1805-1811 (2005); Targan, S. R. et al. A Short-Term Study of Chimeric Monoclonal Antibody cA2 to Tumor Necrosis Factor α for Crohn’s Disease. New Engl J Medicine 337, 1029-1036 (1997))。
【0005】
また、遺伝学的研究において、UC及びCDは疾患の病理に関与する多数の遺伝子を共有しており、各疾患に特異的な遺伝子は少数であることが示されている(Waterman, M. et al. Distinct and overlapping genetic loci in crohn’s disease and ulcerative colitis: Correlations with pathogenesis. Inflamm Bowel Dis 17, 1936-1942 (2011))。CDとUCの複合ゲノムワイド解析により、ゲノムワイド有意性閾値を満たす163遺伝子座のうち110が両方の疾患と関連し、それらうちの50遺伝子座はCDとUCで区別できない効果量を有し、残りの大部分は2つの疾患で同様の方向性をもつことが示された(Jostins, L. et al. Host-microbe interactions have shaped the genetic architecture of inflammatory bowel disease. Nature 491, 119-124 (2012))。遺伝的リスクがこのような程度で共有されていることは、一方の疾患に関与するほぼすべての生物学的機序が他方の疾患において何らかの役割を有し、したがってUCに対する有効な治療はCDに対する治療的利益を有することを示唆している。
【0006】
現在のところUCにもCDにも治療法がない。治療戦略には、生活習慣への介入並びに内科的及び外科的治療が含まれる。薬理学的な管理としては、コルチコステロイド、免疫抑制薬及び抗腫瘍壊死因子(TNF)-α生物製剤(Baumgart et al., Inflammatory bowel disease: clinical aspects and established and evolving therapies, Lancet. 369(9573), 1641-57, (2007))が挙げられる。
【0007】
したがって、炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎及びクローン病に対する治療法が依然として早急に必要である。
【0008】
本発明の目的は、様々な炎症性腸疾患の病態において使用しうる治療法を提供することである。そのような治療法が潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の治療に使用できれば、有益と思われる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様では、式(I)の化合物
【化1】
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグであって、
環Aが、アリール及び5又は6員ヘテロアリールからなる群より選択され、それぞれが任意選択で、ハロ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、及び-C(O)NRから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
環Bが、任意選択で、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ又は複数の置換基で置換される、4~7員単環式炭素環若しくは複素環、又は6~10員二環式炭素環若しくは複素環であり、前記(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
環Cが、任意選択で1つ又は複数のRで置換される、5若しくは6員炭素環、5若しくは6員複素環又は5若しくは6員ヘテロアリール基であり;
が、H及び(C-C)アルキルからなる群より選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-NR1011、及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
各Rが独立して、ハロ、(C-C)アルキル、-OR12、-NR1314、-C(O)R12、-C(O)OR12、-C(O)NR1314、アリール、及び4~6員複素環からなる群より選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
が、H及び(C-C)アルキルから選択され、前記(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-OH、及び-NR1516から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;且つ
~R16がそれぞれ独立して、H及び(C-C)アルキルから選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される、又は基RとR、RとR、R10とR11、R13とR14、R15とR16が一緒になって、それらが結合している原子とともに、任意選択で、ハロ及び(C-C)アルキルから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される5若しくは6員複素環を形成しうる
化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグ
が提供される。
【0010】
式(I)及びその任意の副式(subformula)の化合物は、「本発明の化合物」、又は「化合物(the compounds)」である。
【0011】
本発明の第2の態様は、本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明の化合物は、下に述べる理由により、IBD、特に潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病の予防又は治療に適したレベルでPDE10Aを阻害しうる。
【0013】
低分子阻害剤によるPDE10Aの選択的阻害が、IBD患者の結腸試料中の炎症性サイトカインレベルを低下させることが、驚くべきことに有利に見いだされ、したがってその選択的阻害は、炎症性腸疾患、特に潰瘍性大腸炎やクローン病に対する予想外の有望な治療である。
【0014】
環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(PDE)は、環状ヌクレオチドセカンドメッセンジャーである環状アデノシン一リン酸(cAMP)及び環状グアノシン一リン酸(cGMP)の分解を触媒する酵素ファミリーである。cAMP及びcGMPの細胞内レベルは、(それぞれアデニル酸シクラーゼ及びグアニル酸シクラーゼによる)それ自体の合成の速度と、ホスホジエステラーゼによる加水分解の両方によって調節されている。cAMP及びcGMPのセカンドメッセンジャーシグナルの持続時間及び強さを調節することによって、PDEはシグナル伝達において重要な調節的役割を担っている。
【0015】
PDEには11種類のサブタイプ(PDE1~PDE11)があり、それぞれが、固有の基質特異性、動態、アロステリック制御因子、組織発現プロファイル、薬理学的感受性をもつPDEをコードしている。PDE10AはcAMPとcGMPの両方を加水分解することができる。PDE10Aは0.05μMのKでcAMPを加水分解し、3μMのKでcGMPを加水分解する。PDE10AはcAMPに対するKは低いが、cGMP/cAMPのVmax比は4.7であり、cGMPに対する特異的活性が高いことを示している。これらを総合して、PDE10AはcAMP阻害型のcGMPホスホジエステラーゼであることが示唆される。
【0016】
正常組織では、PDE10Aは限定された発現パターンを有する。高いPDE10A RNAレベルは、脳の線条体(尾状核及び被蓋核)並びに精巣でのみ検出される(Fujishige K, Kotera J, Michibata H, Yuasa K, Takebayashi S, Okumura K, Omori K. Cloning and characterization of a novel human phosphodiesterase that hydrolyzes both cAMP and cGMP (PDE10A). J Biol Chem. 274, 18438-18445 (1999))。今日まで、PDE10Aの阻害剤は、統合失調症及びパーキンソン病を含む神経病態に対して主に研究されてきた(Geerts H, Spiros A, Roberts P. Phosphodiesterase 10 inhibitors in clinical development for CNS disorders. Expert Rev Neurother. 17(6), 553-560 (2017))。PDE10Aは炎症に対してはあまり研究されてきていない。文献の検索により、1つの論文(Garcia AM et al. Targeting PDE10A GAF Domain with Small Molecules: A Way for Allosteric Modulation with Anti-Inflammatory Effects. Molecules., 1472, 22(9), 2017)が見つかり、そこには、PDE10A阻害剤によるRaw264.7マクロファージ細胞株からのLPS誘発亜硝酸塩放出の阻害、すなわちヒト初代細胞ではなく形質転換マウス細胞株における阻害が記載されている。著者らは、その効果は、PDE10AのcGMP活性よりもむしろ、cAMP加水分解活性に起因するものとみている。
【0017】
本発明の発明者は、驚くべきことに、IBD患者から採取した結腸生検において、PDE10A阻害剤が、IBDの特徴である炎症性サイトカインのレベルを低下させることができるのを発見し、したがって、それらの疾患の治療に向けた新たな治療機会であることを示した。
【0018】
炎症性腸疾患としては、潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病を挙げることができる。潰瘍性大腸炎に対するいずれの治療法もクローン病の治療に適している可能性が高く、その逆もまた同様であることはよく理解されている。このことは、下記実施例における本発明の化合物で示されている。
【0019】
本発明は、炎症性腸疾患の予防及び/又は治療に使用するためのPDE10A阻害剤でありうる化合物を提供する。好適には、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎及び(and/or)クローン病から選択される。このことは本発明の第3の態様である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、正常組織におけるPDE10AのRNA発現を示すプロットを含む。プロットは、GTExデータに基づく健康な(healthy)試料中のPDE10A及びGUCY2C(グアニル酸シクラーゼ2C)のベースライン遺伝子発現を表し、x軸は組織を、y軸はlog変換した発現を表す。
図2図2は、PDE10A及びGUCY2CのRNA発現差解析を示すボルケーノプロットを含む。ボルケーノプロットは、選択した比較に関する遺伝子発現差解析を示し、x軸は対数倍率変化(FC)を表し、y軸はlog10変換調整p値(FDR)を表す。水平点線はFDR=0.05閾値であり、点線より上の値は有意とみなさる。中心軸の右側の値は発現上昇を示し、中心軸の左側の値は発現低下を示す。解析に使用されたOmicSoft発現差データセットは次の通りであった:結腸粘膜-OmicSoftプロジェクト名:GSE14580、GSE16879、GSE36807、GSE59071、GSE65114、GSE73661;結腸-OmicSoftプロジェクト名:GSE10191、GSE10616、GSE6731、GSE9686。
図3図3は、IL-8に応答した、単離ヒト好中球活性化に対するPDE10A阻害剤PF-02545920の効果を示すグラフである。
図4図4は、PF-02545920及びTAK-063が、UC患者(USドナー1)の結腸生検試料の生体外培養における炎症性サイトカインIL-6及びIL-8の放出を阻害することを示すグラフを含む。(A)IL-6レベルに対するPDE10A阻害剤の効果、(B)IL-8レベルに対するPDE10A阻害剤の効果、(n=2;平均値±SD)、ここでPred=プレドニゾロン、Tofa=トファシチニブである。
図5図5は、PF-02545920及びTAK-063が、UC患者(UCドナー2)の結腸生検試料の生体外培養における炎症性サイトカインIL-6及びIL-8の放出を阻害することを示すグラフを含む。(A)IL-6レベルに対するPDE10A阻害剤の効果、(B)IL-8レベルに対するPDE10A阻害剤の効果、(n=2;平均値±SD)、ここでPred=プレドニゾロン、Tofa=トファシチニブである。
図6図6~9は、生体外潰瘍性大腸炎結腸組織(UCドナー3)からの炎症性サイトカイン放出に対する、参考例A(図6A)、参考例B(図6B)、参考例C(図7A)、参考例D(図7B)、参考例E(図8A)、参考例F(図8B)、及び参考例G(図9)の化合物の効果を示すグラフを含む。
図7図6~9は、生体外潰瘍性大腸炎結腸組織(UCドナー3)からの炎症性サイトカイン放出に対する、参考例A(図6A)、参考例B(図6B)、参考例C(図7A)、参考例D(図7B)、参考例E(図8A)、参考例F(図8B)、及び参考例G(図9)の化合物の効果を示すグラフを含む。
図8図6~9は、生体外潰瘍性大腸炎結腸組織(UCドナー3)からの炎症性サイトカイン放出に対する、参考例A(図6A)、参考例B(図6B)、参考例C(図7A)、参考例D(図7B)、参考例E(図8A)、参考例F(図8B)、及び参考例G(図9)の化合物の効果を示すグラフを含む。
図9図6~9は、生体外潰瘍性大腸炎結腸組織(UCドナー3)からの炎症性サイトカイン放出に対する、参考例A(図6A)、参考例B(図6B)、参考例C(図7A)、参考例D(図7B)、参考例E(図8A)、参考例F(図8B)、及び参考例G(図9)の化合物の効果を示すグラフを含む。
図10図10は、治療抵抗性UC患者の外科的切除から得られた炎症を起こした結腸組織の生体外培養において、PF-02545920(1μM)が炎症性サイトカインTNFαの放出を阻害することを示すグラフを含む。(A)UCドナー4、(B)UCドナー5(n=5;平均値±SD;*p<0.05)。
図11図11は、PF-2545920が、炎症を起こしたCD結腸組織の生体外培養において、炎症性サイトカインIL-6及びIL-8の自然放出を阻害することを示す。グラフ(A)CDドナー1、グラフ(B)CDドナー2(n=2;平均値±SD)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
出願人は、ある特定の化合物が、PDE10A阻害の影響を受けやすい疾患又は病態を予防及び/又は治療するために使用できることを見出した。本発明の第1の態様では、式(I)の化合物
【化2】
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグであって、式中
環Aが、アリール及び5又は6員ヘテロアリールからなる群より選択され、それぞれが任意選択で、ハロ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、及び-C(O)NRから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
環Bが、任意選択で、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ又は複数の置換基で置換される、4~7員単環式炭素環若しくは複素環、又は6~10員二環式炭素環若しくは複素環、(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
環Cが、任意選択で1つ又は複数のRで置換される、5若しくは6員炭素環、5若しくは6員複素環又は5若しくは6員ヘテロアリール基であり;
が、H及び(C-C)アルキルからなる群より選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-NR1011、及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
各Rが独立して、ハロ、(C-C)アルキル、-OR12、-NR1314、-C(O)R12、-C(O)OR12、-C(O)NR1314、アリール、及び4~6員複素環からなる群より選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
が、H及び(C-C)アルキルから選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-OH、及び-NR1516から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;且つ
~R16がそれぞれ独立して、H及び(C-C)アルキルから選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換される、又は基RとR、RとR、R10とR11、R13とR14、R15とR16が一緒になって、それらが結合している原子とともに、任意選択で、ハロ及び(C-C)アルキルから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される5若しくは6員複素環を形成する
化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグ
が提供される。
【0022】
本明細書で使用される場合、「任意選択で置換された」とは、言及されている基が、1つ又は複数の位置、すなわち、1、2、3、4、5、6つ又はそれより多い位置で、その後に列挙されるものなどの置換基の任意の1つ又は任意の組み合わせによって非置換又は置換されうることを意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ハロ」という用語は、フルオロ(F)基、クロロ(Cl)基、ブロモ(Br)基及びヨード(I)基を意味する。別段の記載がない限り、ハロはどの場合もフルオロであることが好ましい。
【0024】
「(C-C)アルキル」という用語は、1、2、3、又は4の炭素原子を有する完全に飽和した分岐、非分岐又は環状炭化水素部分を意味する。(C-C)アルキルの代表例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、及びシクロプロピルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0025】
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、ベンゼン(C)のモノラジカルを意味する。これはフェニルとも呼ばれうることが理解されるであろう。
【0026】
「オキソ」という用語は=Oを意味する。オキソ基は二価であり、したがって、置換基として使用されたとき、1つの炭素原子上の2つの水素原子を置換することが理解されるであろう。
【0027】
本明細書全体を通して、且つそれに続く特許請求の範囲において、文脈が別段の要求をしない限り、「含む(comprise)」という語又は「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」などの変形は、記載の物(integer)若しくはステップ又は物若しくはステップのグループを含むことを意味するが、他のいかなる物若しくはステップ又は物若しくはステップのグループを除外することを意味しないと理解されるべきである。
【0028】
本明細書で使用される場合、「5又は6員ヘテロアリール」は、5又は6つの環原子を含む芳香族環系であり、そのうちの少なくとも1つはヘテロ原子である。本明細書に別段の記載がない限り、5又は6員ヘテロアリールの例としては、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、及びトリアジンが挙げられる。
【0029】
「4~7員単環式炭素環」という用語は、それぞれが炭素原子である4~7個の環原子を含む飽和単環系である。例としては、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、及びシクロヘプタンが挙げられる。同様に、「5又は6員炭素環」という用語は、それぞれが炭素原子である5又は6個の環原子を含む飽和単環系である。例としては、シクロペンタン及びシクロヘキサンが挙げられる。
【0030】
「4又は6員複素環」という用語は、少なくとも1つがヘテロ原子である4~6個の環原子を含む飽和単環系である。例としては、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、チアン、ジチアン、モルホリン及びチオモルホリンが挙げられる。「5又は6員複素環」という用語は、少なくとも1つがヘテロ原子である5~6個の環原子を含有するこのサブセットである。
【0031】
「5又は6員ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つがヘテロ原子である5又は6個の環原子からなる芳香族単環である。例としては、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン及びピラジンが挙げられる。
【0032】
「6~10員二環式炭素環又は複素環」という用語は、炭素環の場合にはそれぞれ炭素原子であり、複素環の場合には少なくとも1つがヘテロ原子である6~10個の原子を含む飽和環系である。環系は縮合した2つの環(すなわち、2つの原子が2つの環に共通して共有されている)を含有する、又は環系は1つの原子が2つの環に共通して共有されているスピロ基である。
【0033】
特に言及されない限り、スピロ基である6~10員二環式炭素環の例としては、
【化3】
が挙げられる。
【0034】
特に言及されない限り、縮合基である6~10員二環式炭素環の例としては、
【化4】
が挙げられる。
【0035】
特に言及されない限り、スピロ基である6~10員二環式複素環の例としては、
【化5】
が挙げられる。
【0036】
特に言及されない限り、縮合基である6~10員二環式複素環の例としては、
【化6】
が挙げられる。
【0037】
環C
上述のように、環Cは、5若しくは6員炭素環、5若しくは6員複素環又は5若しくは6員ヘテロアリール基でありうる。それらの基のそれぞれは、任意選択で1つ又は複数のRで置換されうる。これは、環Cと隣接するピリミジンが縮合した完全芳香族二環系を形成する、又は一方の環(ピリミジン)が芳香族で他方が飽和であるただし、不飽和である2つの共通の架橋炭素は除く)縮合二環系を形成することを意味する。
【0038】
式(I)のピリミジン/環C二環(bicycle)の選択肢としては、任意選択で置換されたピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、及びトリアジンから選択される5又は6員ヘテロアリール基に縮合したピリミジンが挙げられる。
【0039】
式(I)のピリミジン/環C二環の選択肢としては、任意選択で置換されたピロリジン、ピラゾリジン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフェン、オキサチオラン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、チアン、ジチアン、モルホリン、及びチオモルホリンから選択される5又は6員複素環基に縮合したピリミジンが挙げられ、5又は6員炭素環の2つの架橋炭素は不飽和である。
【0040】
式(I)のピリミジン/環C二環の選択肢としては、任意選択で置換されたシクロペンタン及びシクロヘキサンから選択される5又は6員炭素環基に縮合したピリミジンが挙げられる、5又は6員炭素環の2つの架橋炭素は不飽和である。
【0041】
環C及び縮合ピリミジンの非限定的な例を以下に示す。その互変異性体は、それぞれ上記のように置換されうる。
【化7-1】
【化7-2】
【0042】
上記の二環式環系のリストには、該当するが、明示的には言及されていない場合、環Cのけるヘテロ原子の位置異性体、及び互変異性体が包含される。
【0043】
環Cは、5若しくは6員ヘテロアリール又は5若しくは6員複素環であることが好ましい。すなわち、環Cが少なくとも1つのヘテロ原子を含有することが好ましい。
【0044】
本発明の化合物における基の定義は、後述のように、環Cの構造によって異なりうる。下記いずれかの基が定義されていない場合、その定義は上記のものから適用される。
【0045】
1.任意選択で置換される5又は6員ヘテロアリールである環C
本発明の第1の態様の特定の特徴は、環Cが上記のものなど5又は6員ヘテロアリールであることである。この場合、環Cは5員ヘテロアリールであることが好ましい。特に好ましい5員ヘテロアリール環C基は、ピロール、ピラゾール、イミダゾール及びトリアゾールであり、すなわち、環Cのヘテロ原子又は複数のヘテロ原子が窒素であることが好ましい。縮合ピリミジンと組み合わせた、それらの特に好ましい5員ヘテロアリール環C基の例としては、
【化8】
(それぞれは、任意選択で1つ又は複数のRで置換されうる)が挙げられるが、これらに限定されない。これには、いずれの場合も、NH基のHの置換が含まれる。
【0046】
環Cの5員ヘテロアリールは、少なくとも2つのヘテロ原子、すなわち少なくとも2つの窒素原子を含むことが好ましい。これは、環Cがピラゾール、イミダゾール、又はトリアゾールであることを意味する。
【0047】
上記に鑑みて、環Cとして5又は6員ヘテロアリールを含む本発明の化合物は、式(IA)の化合物
【化9】
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグであって、式中
Xが、N又はCR18であり;
Yが、N又はCR18であり;
環Aが、アリール及び5又は6員ヘテロアリールからなる群より選択され、それぞれが任意選択で、ハロ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、及び-C(O)NRから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
環Bが、任意選択で、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ又は複数の置換基で置換される、4~7員単環式炭素環若しくは複素環、又は6~10員二環式炭素環若しくは複素環であり、(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
が、H及び(C-C)アルキルからなる群より選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-NR1011、及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
が、H及び(C-C)アルキルから選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-OH、及び-NR1516から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
17が、H、(C-C)アルキル、-OR12、-NR1314、-C(O)R12、-C(O)OR12、-C(O)NR1314、アリール、及び4~6員複素環からなる群より選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
各R18が独立して、H、ハロ、(C-C)アルキル、-OR12、-NR1314、-C(O)R12、-C(O)OR12、-C(O)NR1314、アリール、及び4~6員複素環からなる群より選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;且つ
~R16がそれぞれ独立して、H及び(C-C)アルキルから選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される、又は基RとR、RとR、R10とR11、R13とR14、R15とR16が一緒になって、それらが結合している原子とともに、任意選択で、ハロ及び(C-C)アルキルから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される5若しくは6員複素環を形成する
化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグ
であることが好ましい。
【0048】
本発明のこの態様の特定の特徴は、XとYのうち一方がNであり、他方がCR18である式(IA)の化合物である。これは環Cがピラゾール又はイミダゾールであることを意味する。これら2つの基は環Cにとって特に好ましく、式(IA’)の化合物及び式(IA’’)の化合物の一部である。
【化10】
【0049】
式(IA)、(IA’)及び(IA’’)の各R18は、H、ハロ及び(C-C)アルキルからなる群より独立して選択でき、(C-C)アルキルは任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換される。各R18はH又はハロであることが好ましく、各R18はHであることがより好ましい。
【0050】
上述のように、本発明の化合物が式(IA)の化合物である場合、環Aは、アリール及び5又は6員ヘテロアリールからなる群より選択でき、それぞれが任意選択で、ハロ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、及び-C(O)NRから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、(C-C)アルキルは任意選択で、1つ又は複数のハロで置換される。環Aは、アリール及び5又は6員ヘテロアリールからなる群より選択され、それぞれは任意選択で、ハロ、(C-C)アルキル、及び-ORから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、(C-C)アルキルは任意選択で、1つ又は複数のハロで置換されることが好ましい。この場合、Rは、H及び(C-C)アルキルから選択され、(C-C)アルキルは任意選択で、ハロ及び-NR1516から選択される1つ又は複数の置換基で置換される。特に好ましい環A基は、任意選択で1つ又は複数のハロ及び-ORで置換されるアリール及びピリジルであり、Rは(C-C)アルキル-NMeである。最も好ましい環A基は、
【化11】
である。
【0051】
上記の環Aの定義は、式(IA’)及び(IA’’)に同様に適用される。
【0052】
本発明の化合物が式(IA)の化合物である場合、環Bは単環式基又は二環式基であることができる。
【0053】
二環である場合、任意選択で、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ又は複数の置換基で置換される6~10員二環式複素環であることができ、(C-C)アルキルは任意選択で、1つ又は複数のハロで置換される。この場合、環Bは、好ましくは、任意選択で置換された7~10員二環式複素環であることが好ましい。
【0054】
あるいは、単環(monocycle)である場合、環Bは、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される置換基の少なくとも1つで置換された4~7員単環式複素環であることができ、(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換される。
【0055】
本発明の化合物が式(IA)の化合物である場合、好ましい環B基は、
【化12】
であり、それぞれは任意選択で、1つ又は複数のハロで置換される。
【0056】
上記の環Bの定義は、式(IA’)及び(IA’’)に同様に適用される。
【0057】
本発明の化合物が、式(IA)、又は式(IA’)若しくは(IA’’)の化合物である場合、R、R15、及びR16はそれぞれ独立して、H及び(C-C)アルキルから選択され、(C-C)アルキルは任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換されることが好ましい。
【0058】
本発明の化合物が式(IA)の化合物である場合、R17は、H、(C-C)アルキル、及び4~6員複素環からなる群より選択され、(C-C)アルキルは任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換されることが好ましい。R17のこの定義は、式(IA’)及び(IA’’)に同様に適用される。
【0059】
環Cは、任意選択で置換された5又は6員ヘテロアリールである場合、上記の未定義の基には式(I)の化合物からその定義が引き継がれる。
【0060】
2.任意選択で置換された5若しくは6員炭素環、又は任意選択で置換された5若しくは6員複素環である環C
任意選択で置換されたヘテロアリールである環Cの代替として、任意選択で置換された5若しくは6員炭素環、又は任意選択で置換された5若しくは6員複素環でありうる。炭素環及び複素環は通常、飽和しているが、本発明の場合では、上述のように、ピリミジンと環Cに共通する2つの炭素原子は不飽和である。
【0061】
環Cは5又は6員複素環であることが好ましい。複素環は任意選択で、式(I)に定義されている1つ又は複数のRで置換することができる。より好ましくは、環Cは、任意選択で1つ又は複数のRで置換される6員複素環である。環Cの想定される選択肢のうち、それがピペリジンであることが好ましい(ピリミジンと環Cに共通する2つの炭素原子は不飽和である)。特に重要な位置異性体を式(IB)の化合物に示す。
【化13】
【0062】
したがって、好ましい特徴は、化合物が、式(IB)の化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグであって、式中
環Aが、アリール及び5又は6員ヘテロアリールからなる群より選択され、それぞれが任意選択で、ハロ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、及び-C(O)NRから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
環Bが、任意選択で、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ又は複数の置換基で置換される、4~7員単環式炭素環若しくは複素環、又は6~10員二環式炭素環若しくは複素環であり、(C-C)アルキルが任意選択で、1つ又は複数のハロで置換され;
が、H及び(C-C)アルキルからなる群より選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-NR1011、及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
が、H及び(C-C)アルキルから選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ、-OH、及び-NR1516から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;且つ
19が、H、(C-C)アルキル、-C(O)R12、-C(O)OR12、-C(O)NR1314、アリール、及び4~6員複素環からなる群より選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
各R20が独立して、ハロ、(C-C)アルキル、-OR12、-NR1314、-C(O)R12、-C(O)OR12、-C(O)NR1314、アリール、及び4~6員複素環からなる群より選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロ及び4~6員複素環から選択される1つ又は複数の置換基で置換され;
~R16がそれぞれ独立して、H及び(C-C)アルキルから選択され、(C-C)アルキルが任意選択で、ハロから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される、又は基RとR、RとR、R10とR11、R13とR14、R15とR16が一緒になって、それらが結合している原子とともに、任意選択で、ハロ及び(C-C)アルキルから選択される1つ若しくは複数の置換基で置換される5若しくは6員複素環を形成し;且つ
nが、0、1、2、3、4、5、又は6である
化合物又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグ
であることである。
【0063】
式(IB)の化合物では、R19は、H、(C-C)アルキル、及び4~6員複素環からなる群より選択でき、(C-C)アルキルは任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換される。R19は、H、(C-C)アルキル、又は
【化14】
であることが好ましい。
【0064】
式(IB)の化合物では、各R20は独立して、ハロ、及び(C-C)アルキルからなる群より選択でき、(C-C)アルキルは任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換される。
【0065】
式(IB)の化合物では、nは、0、1、2、3、又は4であることが好ましい。より好ましくは、nは、0、1、又は2である。最も好ましくは、nは0である。
【0066】
環Cが、5又は6員炭素環又は複素環である(但し複素環が好ましい)場合、環Aは、アリール及び6員ヘテロアリールからなる群より選択でき、それぞれは任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換される。環Aは、アリール又はピリジルであることが好ましい。環Cがピリジルある場合、好ましくは2-ピリジルである。しかし、環Aの最も好ましい基はアリールである。
【0067】
環Cが、5又は6員炭素環又は複素環である(但し複素環が好ましい)場合、環Bは、ハロ、オキソ、(C-C)アルキル、-OR、-NR、-C(O)R、-C(O)OR
任意選択で、-C(O)NR、及び-S(O)(NR)Rから選択される1つ又は複数の置換基で置換される4~7員単環式炭素環又は複素環であることができ、(C-C)アルキルは任意選択で、1つ又は複数のハロで置換される。環Bは、任意選択で置換された4~7員単環式複素環であることが好ましい。特に、環Bは、任意選択で、ハロ、及び(C-C)アルキルから選択される1つ又は複数(one of more)の置換基で置換された6員複素環であることができ、(C-C)アルキルは任意選択で、1つ又は複数のハロで置換される。この場合、環Bは、モルホリン、好ましくは
【化15】
の構造をもつものであることができる。
【0068】
モルホリンは任意選択で、ハロ、及び(C-C)アルキルから選択される1つ又は複数の置換基で置換でき、(C-C)アルキルは任意選択で、1つ又は複数のハロで置換される。環Bの特定の例は、
【化16】
である。
【0069】
環Cが、5又は6員炭素環又は複素環である(但し複素環が好ましい)場合、Rは、H及び(C-C)アルキルからなる群より選択でき、(C-C)アルキルは任意選択で、ハロから選択される1つ又は複数の置換基で置換される。Rは、H、Me又は-CFであることが好ましい。
【0070】
環Cが、任意選択で置換された5若しくは6員炭素環、又は式(IB)の化合物など任意選択で置換された5若しくは6員複素環である場合、上記の未定義の基はいずれも、式(I)の化合物からその定義が引き継がれる。
【0071】
上記のすべてに鑑みて、本発明において特に有用な式(I)の具体的な化合物は、
・6-[9-メチル-2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]プリン-6-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
・6-[9-メチル-2-[2-[1-メチル-4-(3-ピリジル)イミダゾール-2-イル]エチニル]プリン-6-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
・6-[1-メチル-6-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
・6-[9-メチル-2-[2-[4-フェニル-1-(テトラヒドロピラン-4-イルメチル)イミダゾール-2-イル]エチニル]プリン-6-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
・6-[9-メチル-2-[2-[1-(2-モルホリノエチル)-4-フェニル-イミダゾール-2-イル]エチニル]プリン-6-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
・6-[6-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-1-テトラヒドロピラン-4-イル-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
・6-[9-メチル-2-[2-(4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル]プリン-6-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
・6-[1-(アゼチジン-3-イルメチル)-6-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
・(3aS,6aR)-5-[1-メチル-6-[2-(4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]-1,3,3a,4,6,6a-ヘキサヒドロフロ[3,4-c]ピロール
・2-[3-[2-[2-[4-[(3aS,6aR)-1,3,3a,4,6,6a-ヘキサヒドロフロ[3,4-c]ピロール-5-イル]-1-メチル-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]エチニル]-1H-イミダゾール-4-イル]フェノキシ]-N,N-ジメチル-エタンアミン
・4-[2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン
・(3R)-3-メチル-4-[2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン
・(3S)-3-メチル-4-[2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン
・4-[2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-7-(オキセタン-3-イル)-6,8-ジヒドロ-5H-ピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン
・4-[7-(シクロプロピルメチル)-2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-6,8-ジヒドロ-5H-ピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン
・(3aR,6aS)-5-(1-(シクロプロピルメチル)-6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
・(3aR,6aS)-5-(1-エチル-6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
・(3aR,6aS)-5-(1-イソプロピル-6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
・(3aR,6aS)-5-(6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1-(オキセタン-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
・(3aR,6aS)-5-(9-メチル-2-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
・(R)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン
・(S)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン
・(3aR,6aS)-5-(1-メチル-6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
・1-イミノ-4-(1-メチル-6-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)-1l6-チオモルホリン-1-オキシド
・(3aR,6aS)-5-(1-イソプロピル-6-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
・(3aR,6aS)-5-(1-(シクロプロピルメチル)-6-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
・(3aR,6aS)-5-(1-(オキセタン-3-イル)-6-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
(3aR,6aS)-5-(9-メチル-2-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
・(R)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン
・(S)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン
・(3aR,6aS)-5-(9-メチル-2-((4-(ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
・(R)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((4-(ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン及び
・(S)-3-メチル-4-(9-メチル-2-((4-(ピリジン-3-イル)-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)モルホリン
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、光学異性体、N-オキシド、及び/若しくはプロドラッグ
である。
【0072】
さらなる定義
本発明の化合物は、その薬学的に許容される塩として存在することができる。「薬学的に許容される塩」とは、非毒性で、生物学的に許容可能であり、又は通常であれば対象への投与に生物学的に適している、前述の式の1つによって表される化合物の遊離酸又は塩基の塩を意味することを意図する。そのような薬学的に許容される塩は当業者に公知である。
【0073】
薬学的に許容される好適な塩の例は、薬理学的に有効であり、過度の毒性、刺激性、又はアレルギー反応なしに対象の組織との接触に適しているものである。本発明の化合物は、充分に酸性の基、充分に塩基性の基、又は双方の官能基を有し、それに応じて多数の無機塩基又は有機塩基、並びに無機酸及び有機酸と反応して、薬学的に許容される塩を形成することができる。
【0074】
薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸、例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物/臭化水素酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、カンフルホン酸塩、塩化物/塩酸塩、クロルテオフィロン酸塩、クエン酸塩、エタンジスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、馬尿酸塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデレート酸塩、メシル酸塩、硫酸メチル、ナフト酸塩、ナプシレート塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素/リン酸二水素塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、及びトリフルオロメチルスルホン酸塩と形成することができる。
【0075】
塩の由来となりうる無機酸としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び同種のものが挙げられる。
【0076】
塩の由来となりうる有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、スルホサリチル酸、及び同種のものが挙げられる。薬学的に許容される塩基付加塩は無機塩基及び有機塩基で形成することができる。
【0077】
塩の由来となりうる無機塩基としては、例えばアンモニウム塩及び周期表のI~XII列の金属が挙げられる。特定の実施形態では、塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銀、亜鉛、及び銅に由来し、特に好適な塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩に由来する。
【0078】
塩の由来となりうる有機塩基としては、例えば第一級、第二級及び第三級アミン、天然由来置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂、並びに同種のものが挙げられる。特定の有機アミンとしては、イソプロピルアミン、ベンザチン、コリン酸塩、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、リジン、メグルミン、ピペラジン及びトロメタミンが挙げられる。
【0079】
薬学的に許容される塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、モノ水素-リン酸塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリレート、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオレート、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、サブベレート酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸エステル、フタル酸エステル、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルアセテート、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、及びマンデレートが特に挙げられる。
【0080】
さらに、本明細書に示されるいずれの式も、その形態が明示的に記載されない場合でも、本発明の化合物の水和物及び溶媒和物並びにそれらの混合物も意味することを意図する。本発明の化合物又は本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、溶媒和物として得られることがある。溶媒和物は、溶液中で又は固体若しくは結晶形態として、本発明の化合物と1つ又は複数の溶媒との相互作用又は錯体生成から形成されるものを包含する。溶媒は水であることがあり、その場合、溶媒和物は水和物である。さらに、本発明の化合物の特定の結晶形態又は本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、共結晶として得ることができる。本発明の化合物又は本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、結晶形態で得ることができる。
【0081】
本発明の化合物は、いくつかの多形形態のうちの1つで、結晶形態の混合物として、多形形態として、又は非晶質形態として得ることができる。本発明の化合物は、溶液中で1つ又は複数の結晶形態間及び/又は多形形態間で変換しうる。
【0082】
水素結合の供与体及び/又は受容体として作用できる基を含有する本発明の化合物は、適切な共結晶形成体と共結晶を形成する能力を有しうる。これらの共結晶は、既知の共結晶形成手順によって本発明の化合物から調製することができる。そのような手順には、粉砕、加熱、共昇華、共融、又は結晶化条件下での本発明の溶液化合物と共結晶形成物との接触、及びそれによって形成された共結晶の単離が含まれる。したがって、本発明はさらに、本発明の化合物を含む共結晶を提供する。
【0083】
本明細書に示されるいずれの式も、構造式によって描かれる構造、及び特定の変形又は形態を有する化合物を表すことを意図する。特に、本明細書に示されるいずれの式の化合物も、不斉中心を有し、したがって異なる鏡像異性体形態で存在しうる。一般式の化合物のすべての光学異性体及び立体異性体、並びにそれらの混合物は、その式の範囲内とみなされる。したがって、本明細書に示されるいずれの式も、ラセミ体、1つ又は複数の鏡像異性体形態、1つ又は複数のジアステレオマー形態、1つ又は複数のアトロプ異性体形態、及びそれらの混合物を表すことを意味する。さらに、特定の構造は幾何異性体(すなわち、シス及びトランス異性体)として、互変異性体として、又はアトロプ異性体として存在することができる。
【0084】
本発明のクレームされる化合物の範囲内に含まれるのは、本発明の化合物のすべての立体異性体、幾何異性体及び互変異性体形態であり、それには複数の種類の異性体を示す化合物、及びそれらの1つ又は複数の混合物が含まれる。また、対イオンが光学的に活性である酸付加塩又は塩基付加塩、例えばD-乳酸塩若しくはL-リジン、又はラセミ体、例えばDL-酒石酸塩又はDL-アルギニンも含まれる。
【0085】
本発明の化合物が、例えばケト基若しくはグアニジン基又は芳香族部分を含有する場合、互変異性体異性(「互変異性」)が起こりうる。結果として1つの化合物が複数のタイプの異性体を呈する可能性があることになる。本発明の化合物によって示される潜在的な互変異性の種類の例としては、次のものが挙げられる;アミド<=>ヒドロキシルイミン及びケト<=>エノール互変異性。
【化17】
【0086】
シス/トランス異性体は、当業者に周知の従来の技術、例えばクロマトグラフィー及び分別結晶化によって分離することができる。
【0087】
個々の鏡像異性体の調製/単離のための従来の技術には、好適で光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、又は例えばキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたラセミ体(若しくは塩若しくは他の誘導体のラセミ体)の分離が含まれる。
【0088】
本発明のキラル化合物(及びそのキラル前駆体)は、不斉固定相を含み、且つ0~50%、典型的には2~20%のエタノールを含有する炭化水素、典型的にはヘプタン又はヘキサンからなる移動相を含む樹脂上で、クロマトグラフィー、典型的にはHPLCを用いて、鏡像異性的に濃縮された形態で得ることができる。溶出物の濃縮により、濃縮混合物が得られる。
【0089】
立体異性体の混合物は、当業者に公知の従来の技術によって分離することができる。
【0090】
本明細書で使用される場合、「異性体」という用語は、同じ分子式を有するが、原子の配列及び配置において異なる化合物を意味する。また本明細書で使用される場合、「光学異性体」又は「立体異性体」という用語は、本発明の所与の化合物に対して存在しうる種々の立体異性体配置のいずれかを意味し、幾何異性体を包含する。置換基は、炭素原子のキラル中心に結合しうることが理解される。したがって、本発明は、化合物の鏡像異性体、ジアステレオマー又はラセミ体を包含する。「鏡像異性体」は一対の立体異性体で、互いの重ね合わせが不可能な鏡像である。一対の鏡像異性体の1:1混合物は「ラセミ」混合物である。この用語は必要に応じラセミ混合物を指すために用いられる。「ジアステレオ異性体」は、少なくとも2つの不斉原子を有するが、互いの鏡像ではない立体異性体である。絶対立体化学は、カーン・インゴールド・プレローグ順位則に従って明らかにされる。化合物が純粋な鏡像異性体である場合、各キラル炭素における立体化学はR又はSのいずれかで示されうる。絶対配置が不明な分割化合物は、ナトリウムD線の波長で平面偏光を回転させる方向(右旋性又は左旋性)に応じ(+)又は(-)と示すことができる。本明細書に記載の化合物の特定のものは、1つ又は複数の非対称中心又は軸を含有し、したがって、絶対立体化学の観点から、(R)-又は(S)-と定義されうる鏡像異性体、ジアステレオマー、及び他の立体異性体形態を生じることができる。本発明は、ラセミ混合物、光学的に純粋な形態及び中間混合物を含め、そのような可能性のある異性体をすべて包含することを意図する。光学活性な(R)-及び(S)-異性体は、キラルシントン若しくはキラル試薬を用いて調製する、又は従来の技術を用いて分割することができる。化合物が二重結合を含有する場合、置換基はE又はZ配置でありうる。化合物が二置換シクロアルキルを含有する場合、シクロアルキル置換基はシス又はトランス配置を有しうる。
【0091】
また、すべての互変異性体形態も包含されることを意図する。互変異性体は、平衡状態で存在し、ある異性体形態から別の異性体形態に容易に変換される2つ以上の構造異性体の1つである。互変異性体の例としては、特許請求の範囲で画定されている化合物が挙げられるが、それらに限定されない。本発明の化合物の任意の不斉原子(例えば炭素又は同種のもの)は、ラセミ体又は鏡像異性体に富む、例えば(R)-、(S)-又は(R,S)-配置で存在しうる。特定の実施形態では、各不斉原子は、(R)-又は(S)-配置において、少なくとも50%の鏡像異性体過剰率、少なくとも60%の鏡像異性体過剰率、少なくとも70%の鏡像異性体過剰率、少なくとも80%の鏡像異性体過剰率、少なくとも90%の鏡像異性体過剰率、少なくとも95%の鏡像異性体過剰率、又は少なくとも99%の鏡像異性体過剰率を有する。不飽和結合をもつ原子の置換基は、可能な場合、シス-(Z)-又はトランス-(E)-の形態で存在しうる。
【0092】
したがって、本明細書で使用される場合、本発明の化合物は、考えられる異性体、回転異性体、アトロプ異性体、互変異性体又はそれらの混合物、例えば実質的に純粋な幾何(シス若しくはトランス)異性体、ジアステレオマー、光学異性体(鏡像体)、ラセミ体又はそれらの混合物のうちの1つの形態でありうる。
【0093】
得られた異性体の混合物はいずれも、成分の物理化学的違いに基づき、例えばクロマトグラフィー及び/又は分別晶析によって、純粋又は実質的に純粋な幾何異性体又は光学異性体、ジアステレオマー、ラセミ体に分離することができる。
【0094】
得られた最終生成物又は中間体のラセミ体はいずれも、公知の方法、例えば光学活性な酸又は塩基で得られたジアステレオマー塩を分離し、光学活性な酸性又は塩基性化合物を遊離させることによって、光学対掌体に分割することができる。特に、塩基性部分はしたがって、光学活性な酸、例えば酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジ-O,O’-p-トルオイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸又はカンファー-10-スルホン酸で形成された塩の分別晶析によって、本発明の化合物をその光学対掌体に分割するために用いることができる。ラセミ生成物はまた、キラル吸着剤を用いた高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)などのキラルクロマトグラフィーで分割することもできる。
【0095】
本発明の化合物は医薬組成物での使用が意図されるので、それらの化合物はそれぞれ、実質的に純粋な形態、例えば、少なくとも60%の純度、より好適には少なくとも75%の純度、好ましくは少なくとも85%、特に少なくとも98%の純度(%は重量に基づいた重量による(% are on a weight for weight basis))で提供されるのが好ましいことが容易に理解されるであろう。化合物の不純調製物は、医薬組成物に用いられるさらに純粋な形態を調製するために使用されうる;化合物の低純度調製物は、本発明の化合物の少なくとも1%、より好適には少なくとも5%、好ましくは10~59%を含有すべきである。
【0096】
塩基性基と酸性基の両方が同じ分子内に存在する場合、本発明の化合物は分子内塩、例えば双性イオン分子を形成することもある。
【0097】
本発明はまた、本発明の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグ及びそのような薬学的に許容されるプロドラッグを用いる治療方法に関する。
【0098】
「プロドラッグ」という用語は、対象への投与後、溶媒分解又は酵素的切断などの化学的又は生理学的プロセスを介して、又は生理学的条件下において、指定の化合物を生体内で生じるその化合物の前駆体を意味する(例えば、生理学的pHに供されるプロドラッグは、式(IA)、(IB)、(IIA)又は(IIB)の化合物に変換される)。
【0099】
「薬学的に許容されるプロドラッグ」は、非毒性であり、生物学的に忍容性がありで、通常は対象への投与に生物学的に適しているプロドラッグである。
【0100】
プロドラッグは、加水分解、代謝及び同種のものなど、生体内の生理作用を通して、対象へのプロドラッグの投与後に本発明の化合物に変わる活性のある又は不活性な化合物である。本発明の化合物はそれ自体が活性な場合もあり、且つ/又は生体内で活性化合物に変換するプロドラッグとして作用する場合もある。プロドラッグの作製及び使用に関与する適合性及び技術は、当業者に周知である。プロドラッグは概念的に、生体前駆体プロドラッグと担体プロドラッグという2つの非排他的なカテゴリーに分けることができる。一般に、生体前駆体プロドラッグは、不活性である、又は対応する活性薬物化合物と比較して活性が低い化合物であり、1つ又は複数の保護基を含有し、代謝又は溶媒溶解によって活性形態に変換される。その活性薬物形態と、いずれの放出された代謝産物はともに、許容できる程度に低い毒性を有するべきである。担体プロドラッグは、例えば作用の部位(複数可)への取り込み及び/又は局所的な送達を向上させる輸送部分を含む薬物化合物である。
【0101】
そのような担体プロドラッグにとって望ましくは、薬物部分と輸送部分との間の結合は共有結合であり、プロドラッグは不活性である、又は薬物化合物よりも活性が低く、且つどの放出輸送部分も無毒であると認められる。輸送部分が取り込みを増強することを意図するプロドラッグの場合、典型的には輸送部分の放出は迅速であるべきである。別の場合には、徐放性をもたらす部分、例えば特定のポリマー又はシクロデキストリンなどの他の部分を利用することが望ましい。担体プロドラッグは、例えば、以下の特性のうちの1つ又は複数をより良くするために使用することができる:親油性の増加、薬理学的効果の持続期間の延長、部位特異性の増大、毒性及び有害反応の減少、及び/又は薬物製剤の改善(例えば安定性、水溶性、望ましくない官能的又は生理化学的特性の抑制)。例えば、親油性は、(a)親油性カルボン酸(例えば少なくとも1つの親油性部分を有するカルボン酸)による水酸基のエステル化、又は(b)親油性アルコール(例えば脂肪族アルコールなど少なくとも1つの親油性部分を有するアルコール)によるカルボン酸基のエステル化によって増加させることができる。
【0102】
例示的なプロドラッグは、例えば、アルコール又はフェノールのチオール及びO-アシル誘導体の遊離カルボン酸及びS-アシル誘導体のエステルであり、ここでアシルは、本明細書で定義される意味を有する。好適なプロドラッグは多くの場合、生理学的条件下での溶媒分解によって親カルボン酸に変換可能な、薬学的に許容されるエステル誘導体であり、例えば、低級アルキルエステル、シクロアルキルエステル、低級アルケニルエステル、ベンジルエステル、ω(アミノ、モノ又はジ低級アルキルアミノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル)-低級アルキルエステル、α-(低級アルカンノイルオキシ、低級アルコキシカルボニル又はジ低級アルキルアミノカルボニル)-低級アルキルエステル、例えば当該技術分野において従来から用いられているピバロイルオキシメチルエステル及び同種のものである。くわえて、アミンはアリールカルボニルオキシメチル置換誘導体としてマスクされており、生体内でエステラーゼによって切断され、遊離薬物及びホルムアルデヒドを放出する。さらに、イミダゾール、イミド、インドール及び同種のものなどの酸性NH基を含有する薬物は、N-アシルオキシメチル基でマスクされている。ヒドロキシ基はエステル及びエーテルとしてマスクされている。
【0103】
本発明の化合物は、N-オキシドでもあり得る。N-オキシド、又は「アミンオキシド」は、N-O配位共有結合を含有する化合物であることが理解されるであろう。N-オキシド基の例として、以下の官能基が挙げられる。
【化18】
【0104】
本明細書に示されるいずれの式も、化合物の非標識形態も同位体標識形態も表すことを意図する。同位体標識化合物は、1つ又は複数の原子が、選ばれた原子質量又は質量数を有する原子によって置換されることを除いて、本明細書に示される式によって描かれる構造を有する。本発明の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素の同位体として、それぞれH、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、170、180、18Fなどが挙げられる。そのような同位体標識化合物は、代謝研究(好ましくは14Cによる)、反応速度論研究(例えばH又はHによる)、薬物若しくは基質組織分布アッセイを含む検出若しくはイメージング技術(陽電子放出断層撮影(PET)若しくは単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)など)、又は対象の放射線治療において有用である。11Cや、18F、15O、13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、基質受容体の占有率を調べるためのPET研究に有用でありうる。特に、18F又は11C標識化合物は、特にPET研究に好まれうる。さらに、重水素(H)などのより重い同位体による置換は、代謝安定性の向上、例えば生体内での半減期の増加又は求められる投与量の減少に起因する特定の治療上の利点をもたらしうる。本発明の放射性同位体を組み込んだ特定の同位体標識化合物は、薬物及び/又は基質組織分布研究に有用である。放射性同位体であるトリチウム、すなわちH及び炭素-14、すなわち14Cは、その取り込みが容易で検出手段がすぐに使用できるという点で、この目的に特に有用である。
【0105】
本発明の同位体標識化合物及びそのプロドラッグは、一般に、非同位体標識試薬を容易に入手可能な同位体標識試薬に置き換えることによって、下記のスキーム又は例及び調製に開示の手順を実施することによって調製することができる。
【0106】
さらに、より重い同位体、特に重水素(すなわちH又はD)による置換は、代謝安定性の向上、例えば生体内の半減期の増加又は投与量の必要量の減少、あるいは治療指数の改善に起因する特定の治療上の利点をもたらしうる。この文脈における重水素は、本発明の化合物の置換基と見なされることが理解される。そのようなより重い同位体、特に重水素の濃度は、同位体濃縮係数によって定義することができる。本明細書で使用される「同位体濃縮係数」という用語は、特定の同位体の同位体存在度と天然存在度との比を意味する。本発明の化合物における置換基が重水素と表記される場合、そのような化合物の同位体濃縮係数は、各指定重水素原子に対し少なくとも3500(各指定重水素原子における52.5%重水素取り込み)、少なくとも4000(60%重水素取り込み)、少なくとも4500(67.5%重水素取り込み)、少なくとも5000(75%重水素取り込み)、少なくとも5500(82.5%重水素取り込み)、少なくとも6000(90%重水素取り込み)、少なくとも6333.3(95%重水素取り込み)、少なくとも6466.7(97%重水素取り込み)、少なくとも6600(99%重水素取り込み)、又は少なくとも6633.3(99.5%重水素取り込み)である。
【0107】
本発明において薬学的に許容される溶媒和物には、結晶化の溶媒が同位体的に置換されうるもの、例えばDO、d-アセトン、d-DMSOが含まれる。
【0108】
化学構造と関連する化学名が一致しない場合は、その逆が真であることが容易に理解されない限り、化学構造が優先される。
【0109】
本発明の化合物は、PDE10A阻害の影響を受けやすい疾患又は病態の予防及び/又は治療に使用される可能性があるので、本発明の第3の態様では、本発明の化合物を含む医薬組成物が提供される。よく知られているように、医薬組成物は他の任意の成分に加え、1つ又は複数の賦形剤を含みうる。賦形剤は、薬学的に許容される賦形剤であることが好ましい。
【0110】
本発明の化合物は、単独で又は1つ若しくは複数の追加の有効成分と組み合わせて使用して、医薬組成物を製剤化することができる。本発明の医薬組成物は(a)有効量の少なくとも1つの本発明の化合物;及び(b)薬学的に許容される賦形剤を含みうる。
【0111】
「薬学的に許容される賦形剤」とは、無毒で、生物学的に許容され、通常は対象への投与に生物学的に適している物質、例えば薬理学的組成物に添加される、又は薬剤の投与を容易にするためにビヒクル、担体、若しくは希釈剤として別の方法で使用され、それらと適合する物質を意味する。賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及びデンプンの種類、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、当業者に公知であろう、いずれの溶媒、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、薬物、薬物安定剤、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香料、染料及び同種のもの及びそれらの組み合わせを包含する。任意の従来の担体が有効成分と非相容でない限りは、治療組成物又は医薬組成物においてその使用が企図される。
【0113】
本発明による医薬組成物は、容易に入手可能な成分を用いて従来のやり法で製剤化することができる。したがって、有効成分を、任意に他の活性物質、1つ又は複数の従来の担体、希釈剤及び/又は賦形剤とともに組み込んで、錠剤、丸剤、粉末、トローチ剤、小袋、カシェット、エリキシル剤、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体又は液体媒体中)、軟膏、軟質及び硬質ゼラチンカプセル、坐剤、無菌注射液、無菌包装粉末、及び同種のものなど従来のガレノス製剤を製造することができる。
【0114】
本発明の医薬組成物は、経口投与、非経口投与、及び直腸投与などの特定の投与経路に沿って製剤化することができる。さらに本発明の医薬組成物は、固体形態(カプセル剤、錠剤、丸剤、顆粒剤、粉末若しくは坐剤を含むがそれに限定されない)又は液体形態(溶液、懸濁液若しくはエマルジョンを含むがそれに限定されない)で構成することができる。医薬組成物は、滅菌などの従来の医薬操作に供することができる、且つ/又は従来の不活性希釈剤、潤滑剤、若しくは緩衝剤、並びに防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤及び緩衝剤などの補助薬を含有することができる。
【0115】
医薬組成物が、錠剤又はゼラチンカプセルである場合、以下の活性成分(本発明の化合物)を一緒に含むことができる。
a)希釈剤、例えば乳糖、ポリラクトン、ブドウ糖、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/若しくはグリシン;
b)潤滑剤、例えばシリカ、タルカム、ステアリン酸、そのマグネシウム塩若しくはカルシウム塩及び/若しくはポリエチレングリコール;錠剤ではさらに
c)結合剤、例えばケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプンペースト、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/若しくはポリビニルピロリドン;所望により
d)崩壊剤、例えばデンプン、寒天、アルギン酸若しくはそのナトリウム塩、若しくは発泡性混合物;並びに/又は
e)吸収剤、着色剤、香料及び甘味料。
【0116】
錠剤は、当該技術分野において公知の方法に従って、フィルムコーティング又は腸溶性コーティングを施してもよい。
【0117】
経口投与に適した組成物は、錠剤、トローチ剤、水性若しくは油性懸濁液、分散性粉末若しくは顆粒剤、エマルジョン、硬質若しくは軟カプセル、又はシロップ剤若しくはエリキシル剤の形態で有効量の本発明の化合物を含む。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物の製造のために当該技術分野において公知の任意の方法に従って調製され、そのような組成物は、薬学的に洗練された嗜好性の高い調製物を提供するために、甘味剤、矯味剤、着色剤及び保存剤からなる群より選択される1つ又は複数の薬剤を含有することができる。錠剤は、錠剤の製造に適した薬学的に許容される無毒の賦形剤と混合して有効成分を含有しうる。それらの賦形剤は、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒及び崩壊剤、例えばコーンスターチ、又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクである。錠剤はコーティングされていない、又は消化管での崩壊及び吸収を遅らせ、それにより、より長い時間持続的な作用をもたらすように公知の技術によってコーティングされている。例えば、モノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を使用することができる。経口使用のための製剤は、有効成分が不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合される硬質ゼラチンカプセルとして、又は有効成分が水若しくは油媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合される軟質ゼラチンカプセルとして提示することができる。
【0118】
ある種の注射用組成物は、等張水溶液又は懸濁液であり、坐剤は脂肪エマルジョン又は懸濁液から有利に調製される。前記の組成物は、滅菌される、且つ/又は、保存剤、安定化剤、湿潤剤若しくは乳化剤、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩及び/若しくは緩衝剤などの補助剤を含有することができる。さらに、他の治療上価値のある物質を含有することができる。前記組成物は、それぞれ従来の混合、造粒又はコーティング方法に従って調製され、約0.1~75%、又は約1~50%の活性成分を含有する。
【0119】
本発明の化合物は局所的に投与することができる。皮膚又は粘膜(例えば皮膚及び眼)への、経皮的(dermally)又は経皮的(transdermally)局所適用に適した組成物には、水溶液、懸濁液、軟膏、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、マイクロエマルジョン、散布粉末、被覆材、フォーム、フィルム、皮膚パッチ、ウエハー、インプラント、繊維、包帯又は例えばエアゾール若しくは同種のものなどによる送達用スプレー製剤が含まれる。そのような局所送達系は、特に皮膚適用、例えばアトピー性皮膚炎の治療に適することになる。したがって、それらは当該技術分野において周知の化粧品を含む局所製剤に使用するのに特に適している。そのようなものは、可溶化剤、安定剤、張度改良剤(tonicity enhancing agents)、緩衝剤及び防腐剤を含みうる。典型的な担体としては、アルコール、水、鉱物油、液体ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールが挙げられる。浸透促進剤が組み込まれることもある。
【0120】
経皮適用に適した組成物は、好適な担体をもつ本発明の化合物の有効量を含む。経皮送達に適した担体は、宿主の皮膚を通過するのを補助するように吸収性の薬理学的に許容される溶媒を含む。例えば、経皮吸収型デバイスは、包帯の形態であり、裏打ち部材、任意選択で担体とともに化合物を含有するリザーバー、任意選択で長期間にわたって制御された所定の速度で宿主の皮膚の化合物(deliver the compound of the skin of the host)を送達する速度制御バリア、及びデバイスを皮膚に固定する手段を含む。
【0121】
本明細書で使用される場合、局所適用はまた、吸入又は鼻腔内投与に関しうる。それらは好適な推進剤の使用の有無にかかわらず、乾燥粉末(単独で、混合物として、例えば乳糖との乾燥混合物、又はリン脂質との混合成分粒子として)の形態で、乾燥粉末吸入器から、又は加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器若しくはネブライザーからのエアゾールスプレー体裁(presentation)で簡便に送達することができる。
【0122】
本発明の実施に際して用いられる本発明の薬剤の投与量は、例えば治療される特定の病態、所望の効果及び投与方法によって当然異なることになる。一般には、吸入による投与に適した1日あたりの投与量は0.0001~30mg/kg程度、典型的には一患者あたり0.01~10mgであり、一方で、経口投与に適した1日あたりの投与量は0.01~100mg/kg程度である。
【0123】
水は特定の化合物の分解を助長する可能性があるので、本発明はさらに、本発明の化合物を有効成分として含む無水医薬組成物及び剤形を提供する。
【0124】
本発明の無水医薬組成物及び剤形は、無水又は低水分含有成分及び低水分又は低湿度条件を用い調製することができる。無水医薬組成物は、その無水物性が維持されるように調製及び保存することができる。したがって、無水組成物は、適切なフォーミュラリーキットに含めることができるような、水への曝露を防ぐことが知られている材料を用いて包装される。好適な包装の例としては、密封された箔、プラスチック、単位用量容器(薬瓶など)、ブリスターパック、及びストリップパックが挙げられるが、それらに限定されない。
【0125】
本発明はさらに、有効成分としての本発明の化合物が分解することになる速度を下げる1つ又は複数の薬剤を含む医薬組成物及び製剤を提供する。本明細書において「安定剤」と呼ばれるそのような薬剤としては、アスコルビン酸、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤などの酸化防止剤が挙げられるが、それに限定されない。
【0126】
本発明の化合物は、1つ又は複数の他の治療剤と同時に、又はその前又は後に投与することができる。本発明の化合物は、別々に、同じ若しくは異なる投与経路によって、又は他の薬剤と同じ医薬組成物中に一緒に投与することができる。
【0127】
本発明は、治療における同時、別個又は逐次使用のための複合製剤として、化合物及び少なくとも1つの他の治療剤を含む製品を含む。治療は、PDE10Aが介在する病態又は障害の治療でありうる。複合製剤として提供される製品には、本発明の化合物及び他の治療剤(複数可)を同じ医薬組成物中に一緒に含む組成物、又は本発明の薬剤と他の治療剤とを別々の形態、例えばキットの形態で含む組成物が含まれる。
【0128】
治療及び方法
本発明の化合物は、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を予防及び/又は治療することができる。理論に縛られることを望むものではないが、本発明の化合物のPDE10Aを阻害する能力により、治療が達成できると考えられる。
【0129】
本明細書で使用される場合、任意の疾患又は障害について「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」又は「治療(treatment)」という用語は、1つの実施形態において、疾患又は障害を改善すること(すなわち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの進行を遅らせる、又は阻止する、又は抑えること)を意味する。「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語はまた、患者によって識別できないものを含む少なくとも1つの身体的パラメータを緩和又は改善することを意味する。治療は、生理的治療(例えば識別可能な症状の安定化)、身体的治療(例えば身体的パラメータの安定化)、又はその両方でありうる。さらに、「治療する」、「治療すること」又は「治療」という用語は、疾患又は障害の発症又は進行を防ぐこと又は遅らせることも意味する。
【0130】
病態又は障害の「予防」は、病態又は障害の1つ又は複数の症状の出現又は程度によって評価して、前記病態又は障害の発症を遅らせる若しくは防ぐこと、又はその重症度を軽減することを意味する。
【0131】
本発明の第4の態様は、本発明の化合物、又は本発明の化合物を含む医薬組成物の使用に関する。
【0132】
本発明の化合物、又は本発明の化合物を含む医薬組成物は、医薬品としての使用のためのものである。
【0133】
したがって、本発明の第4の態様の1つの特徴は、医薬品の製造のための本発明の化合物の使用である。医薬品は、潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病などの炎症性腸疾患の予防及び/又は治療(好ましくは治療)のためのものでありうる。
【0134】
本発明の化合物、又は本発明の化合物を含む医薬組成物は、潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病などの炎症性腸疾患の予防及び/又は治療(好ましくは治療)における使用のためのものでありうる。
【0135】
また、本明細書には、本発明の化合物、又は本発明の化合物を含む医薬組成物を対象に投与することを含む疾患又は病態の予防及び/又は治療のための方法であって、その疾患又は病態はPDE10A阻害の影響を受けやすい方法も記載されている。PDE10A阻害の影響を受けやすい疾患又は病態は、潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病などの炎症性腸疾患でありうる。
【0136】
別の方法は、対象に本発明の化合物、又は本発明の化合物を含む医薬組成物を投与することを含む、炎症性腸疾患の予防及び/又は治療のためのものである。
【0137】
前述の方法は、好ましくは、炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病である方法である。
【0138】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は動物を意味する。典型的には、動物は哺乳類である。対象はまた、例えば霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、魚、鳥類及び同種のものを意味する。対象は霊長類であることが好ましく、ヒトであることが最も好ましい。
【0139】
本発明の化合物、及び関連する医薬組成物は、予防及び/又は治療に使用されうるが、いかなる場合でも、それらは治療用であることが好ましい。したがって、本方法は治療を必要とする対象に関連しうる。本明細書で使用される場合、対象が、治療から生物学的、医学的又は生活の質において利益を得る場合、そのような対象はそのような治療を「必要としている」。
【0140】
本発明の化合物及び関連する医薬組成物は、治療有効量で対象に与えられるべきである。本発明の化合物の「治療有効量」という用語は、対象の生物学的若しくは医学的反応、例えば酵素若しくはタンパク質活性の低下若しくは阻害を誘発する、病態を緩和する、疾患の進行を減速させる若しくは遅らせる、又は疾患を予防する、本発明の化合物の量を意味する。1つの非限定的な実施形態において、「治療有効量」という用語は、対象に投与されたときに、PDE10Aが介在する病態又は障害を少なくとも部分的に緩和、阻害、予防及び/又は改善するのに有効である本発明の化合物の量を意味する。別の非限定的な実施形態において、「治療有効量」という用語は、細胞、又は組織、又は非細胞生体材料、又は培地に投与されたときに、PDE10A活性を少なくとも部分的に阻害するのに有効である本発明の化合物の量を意味する。
【0141】
本発明の化合物の調製
上記の式の化合物は、従来の方法によって、又はそれと同様に調製することができる。本発明の例による中間体及び化合物の調製は、特に以下のスキームによって明らかにすることができる。本明細書のスキーム中の構造における変数の定義は、本明細書に示されている式における対応する位置の変数の定義と同じである。
【0142】
【化19】
スキーム1において、X及びYはCH又はNから選択され、少なくとも1つのCR18及び1つのNが存在する。環A、環B、R、R17及びR18は上の定義の通りである。
【0143】
一般式(IA)及び(IB)の化合物は、標準的な手法によって容易に調製することができる。例えば、4-フェニル-3-H-イミダゾール(1-1)は、適切なハロゲン化アルキルによるアルキル化を介して一般式(Ib)の化合物に変換することができる。さらに、一般式(Ia)の化合物は、好適なハロゲン化イミダゾールを用いた鈴木・宮浦カップリングを介して(Ib)に変換することができる。一般式(Ib)の化合物はヨウ素と反応させて、一般式(Ic)の化合物を得ることができる。一般式(Ic)の化合物は薗頭カップリング条件下で中間体(Ig)又は(Ii)と反応させて、任意選択のBoc又はSEM脱保護後に一般式(Id)又は(IA)の化合物を得ることができる。一般式(Id)の化合物は、TFA媒介Boc脱保護、及び好適なハロゲン化アルキルによる任意選択のアルキル化又は好適なケトンによる還元アミノ化を介して、一般式(IB)の化合物に変換することができる。
【0144】
【化20】
スキーム2において、X及びYはCR18又はNから選択され、少なくとも1つのCH及び1つのNが存在する。環B、R17、及びR18は上の定義の通りである。
【0145】
一般式(1g)の化合物は、標準的な手法によって容易に調製することができる。中間体(2-1)はメチル化されて中間体(2-2)を生じることができ、その後ザンドマイヤー反応を介して中間体(2-3)に変換することができる。中間体(2-3)又は一般式(Ie)の化合物は、求核芳香族置換及び任意選択のアルキル化を介して一般式(If)の化合物に変換することができる。一般式(If)の化合物は、トリメチルシリルアセチレンを用いた薗頭カップリング、それに続く炭酸カリウムを用いた脱保護を介して一般式(Ig)の化合物に変換することができる。
【0146】
【化21】
スキーム2において、環Bは上の定義の通りである。
【0147】
一般式(1i))の化合物は、標準的な手法によって容易に調製することができる。中間体(3-1)は、求核芳香族を介して一般式(Ih)の化合物に変換することができる。一般式(Ih)の化合物は、トリメチルシリルアセチレンを用いた薗頭カップリング、それに続く炭酸カリウムを用いた脱保護を介して一般式(Ig)の化合物に変換することができる。
【実施例1】
【0148】
上記の式(IA)及び(IB)を含めた式(I)の化合物は、従来の方法によって、又はそれと同様に調製することができる。本発明の例による中間体の調製は、特に以下のスキームによって明らかにすることができる。本明細書のスキーム中の構造における変数の定義は、本明細書に示されている式における対応する位置の変数の定義と同じである。
【0149】
以下の略語が使用されている:
aq 水溶液
Boc tert-ブチルオキシカルボニル
DCM ジクロロメタン
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMF ジメチルホルムアミド
dppf 1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
ES+ エレクトロスプレーイオン化
h 時間(複数可)
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析
min 分(複数可)
PE 石油エーテル
Rt 保持時間
sat 飽和
SEM トリメチルシリルエトキシメチル
TBAF テトラブチルアンモニウムフルオリド
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMS トリメチルシラン
UPLC 超高速液体クロマトグラフィー
XantPhos-Pd-G2 クロロ[(4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン)-2-(2′-アミノ-1,1′-ビフェニル)]パラジウム(II)
【0150】
実施例及び中間体化合物
実験方法
反応は、特に指定のない限り室温で行った。分取クロマトグラフィーは、Isolute Flash IIシリカカラムを装備したCombiFlash(登録商標)システムを用いて行った。逆相カラムクロマトグラフィーは、RediSep Rf C18カラムを備えたCombiFlash(登録商標)システムを用いて行った。逆相HPLCは、ACE-5AQ、100×21.2mm、5μmカラムを装備したUV検出器付きGilsonシステム又はUV及び質量検出器付きACCQPrepシステムのいずれかで行った。化合物の分析は、Agilent 1290 Infinityシステムを用いたUPLCで行った(下に方法を列挙)。LCMS分析は、Kinetex EVO C18カラムを用いたPDA:SPD-M40及びMS:LCMS-2020検出器を備えたShimadzu LCMS-2020システムを使用して行った。調製した化合物はIUPAC命名法を用いて命名した。
【0151】
UPLC法
方法A(5分、5~100)
Phenomenex Kinetex XB-C18、1.7μm、2.1×50mm、40℃、0.8mL/分、水(+0.1%ギ酸)中5%MeCN(+0.1%ギ酸)、0.7分間、3.0分かけて5~100%、0.3分間保持、再平衡化1.0分、254 nm
方法B(5分、5~100)
Phenomenex Kinetex XB-C18、1.7μm、2.1×50mm、40℃、0.8mL/分、水(+0.1%TFA)中5%MeCN(+0.1%TFA)で1.0分、3.0分かけて5~100%、0.2分間保持、再平衡化0.8分。200~300nm
方法C(3分、5~50)
HALO C18、2.0μm、3.0×50mm、40℃、1.5mL/分、水(+0.1%ギ酸)中5%MeCN(+0.1%ギ酸)、3.0分かけて5~50%、254nm
方法D(3分、10~70)
Titan C18、1.9μm、3.0×50mm、40℃、1.5mL/分、水(+0.04%NH・HO)中10%MeCN、3.0分かけて10~70%、254nm
方法E(3分、10~95)
Kinetex EVO C18、2.6μm、3.0×50mm、40℃、1.2mL/分、水(5mM NHHCO)中10%MeCN、3.0分かけて10~70%、254nm
方法F(10分、5~100)
Phenomenex Kinetex XB-C18、1.7μm、2.1×100mm、40℃、0.5mL/分、水(+0.1%TFA)中5%MeCN(+0.085%TFA)で1.0分、8.0分かけて5~100%、0.2分間保持、再平衡化0.8分、200~300nm
方法G(3分、5~50)
HALO C18、2.0μm、3.0×50mm、40℃、1.5mL/分、水(+0.05%TFA)中5%MeCN(+0.05%TFA)、3.0分かけて5~95%、254nm
【0152】
実験手順
中間体1
【化22】
1-メチル-4-フェニル-イミダゾール
の雰囲気下、NaH(鉱物油中60%、3.33g、83.2mmol)を、0でDMF(70mL)中の4-フェニル-3H-イミダゾール(10g、69.4mmol)の溶液に加えた。溶液を30分間攪拌した後、温度を0℃に維持しながら、CHI(5.2mL、83.5mmol)を10分かけて滴下した。結果として生じた混合物を、冷却することなくさらに1時間間攪拌した。次いで水(100mL)を加えることによって、反応をクエンチし、EtOAc(5×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(7.80g、71.1%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):159.0[MH]
【0153】
実施例2~5は、イミダゾールのアルキル化によって中間体1と同様に調製した;下の表1を参照。
表1:水素化ナトリウムを用いたイミダゾールのアルキル化
【化23】
【表1】
【0154】
中間体6
【化24】
3-(1-メチルイミダゾール-4-イル)ピリジン
の雰囲気下、1,4-ジオキサン(40mL)及び水(4.0mL)中の3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン(2.00g、9.80mmol)、4-ヨード-1-メチルイミダゾール(2.28g、11.0mmol)、Pd(dppf)Cl・CHCl(0.81g、1.00mmol)及びKCO(4.14g、30.0mmol)の混合物を、100℃に4時間熱した。反応物を真空中で濃縮し、水(10mL)で希釈し、EtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(10mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(590mg、38.0%)を褐色油として得た。LCMS(ES+):160.2[MH]
【0155】
中間体7及び48は、鈴木・宮浦カップリングを介して中間体6と同様に調製した:下の表2を参照。
表2:イミダゾールをもたらす鈴木・宮浦カップリング
【化25】
【表2】
【0156】
中間体8
【化26】
N,N-ジメチル-2-[3-[1-(2-トリメチルシリルエトキシメチル)イミダゾール-4-イル]フェノキシ]エタンアミン
の雰囲気下、(2-ブロモエチル)ジメチルアミン臭化水素酸塩(2.69g、11.6mmol)を、DMF(30mL)中の中間体7(2.8g、9.64mmol)及びCsCO(6.28g、19.3mmol)の懸濁液に加えた。結果として生じた混合物を100℃で16時間攪拌した後、水(50mL)でクエンチし、EtOAc(5×50mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(570mg、16.0%)を褐色油として得た。LCMS(ES+):362.2[MH]
【0157】
中間体9
【化27】
2-ヨード-1-メチル-4-フェニル-イミダゾール
の雰囲気下、n-BuLi(ヘキサン中の2.5M、29.6mL、74.0mmol)を、-78℃でTHF(80mL)中の中間体1(7.8g、49.3mmol)の溶液に10分かけて滴下した。溶液を-78℃で1時間攪拌した後、THF(20mL)中のI(13.8g、54.2mmol)を10分かけて滴下した。結果として生じた混合物を0℃に温め、さらに1時間攪拌した後、水(100mL)でクエンチし、EtOAc(5×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(7.70g、55.0%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):285.0[MH]
【0158】
実施例10~14及び49は、イミダゾールのヨウ素化によって中間体9と同様に調製した;下の表3を参照。
表3:n-ブチルリチウム及びヨウ素を使用したイミダゾールのヨウ素化
【化28】
【表3】
【0159】
中間体15
【化29】
6-クロロ-9-メチル-プリン-2-アミン
の雰囲気下、DMF(100mL)中の6-クロロ-9H-プリン-2-アミン(15.0g、59.0mmol)、CHI(3.67mL、59.0mmol)及びKCO(16.3g、118mmol)の懸濁液を16時間攪拌した後、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(3.4g、24.9%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):184.0[MH]
【0160】
中間体50
【化30】
4-クロロ-1-メチル-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-アミン
の雰囲気下、メチルヒドラジン硫酸塩(3.75g、26.0mmol)を、DMF(50mL)中の2-アミノ-4,6-ジクロロピリミジン-5-カルバルデヒド(5.00g、26.0mmol)及びTEA(10.9mL、78.2mmol)の溶液に加えた。結果として生じた混合物を50℃で1時間攪拌した後、真空中で濃縮した。結果として生じた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(3.82g、79.9%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):184.1[MH]
【0161】
中間体51は、環化を介したピラゾール形成によって中間体50と同様に調製した;下の表12を参照。
表12:環化を介したピラゾール形成
【化31】
【表4】
【0162】
中間体16
【化32】
6-クロロ-2-ヨード-9-メチル-プリンe
の雰囲気下、亜硝酸イソアミル(7.47mL、55.6mmol)を、THF(70mL)中の中間体15(3.4g、18.5mmol、1.0当量)、CuI(3.53g、18.5mmol)、及びCH(7.47mL、92.6mmol)の懸濁液に加え、反応物を80℃に2時間熱した。次いで反応物を真空中で濃縮し、結果として生じた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(3.2g、58.7%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):295.1[MH]
【0163】
中間体52は、ザンドマイヤー反応を介したピリミジンのヨウ素化によって、中間体16と同様に調製した;下の表13を参照。
表13:ザンドマイヤー反応を介したピリミジンのヨウ素化
【化33】
【表5】
【0164】
中間体17
【化34】
6-(6-クロロ-1-メチル-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
EtOH(30mL)中の、4,6-ジクロロ-1-メチルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(3.00g、14.9mmol)、2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン(1.47g、14.9mmol)、及びDIPEA(7.76mL、44.6mmol)の溶液を、16時間攪拌した後、真空中で濃縮した。結果として生じた残渣をPE(3×5mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、標題化合物(1.92g、48.8%)を黄色固体として得た。その材料をさらに精製することなく次の反応に引き継いだ。LCMS(ES+):266.1[MH]
【0165】
実施例18~23及び53~55は、ハロゲン化ピリミジンのSnArによって中間体17と同様に調製した;下の表4を参照。
表4:ハロゲン化ピリミジンのSnAr
【化35】

【表6-1】
【表6-2】
【0166】
中間体24
【化36】
6-(6-クロロ-1-テトラヒドロピラン-4-イル-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
の雰囲気下、NaH(鉱物油中60%、239mg、5.98mmol)及び4-ブロモオキサン(784mg、4.78mmol)を順次、DMF(10mL)中の中間体19(1.00g、3.98mmol)の溶液に加えた。次いで反応物を100℃に5時間熱した後、水(10mL)でクエンチし、次いでEtOAc(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(400mg、30.0%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):336.2[MH]
【0167】
中間体25
【化37】
6tert-ブチル3-[[6-クロロ-4-(2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン-6-イル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]メチル]アゼチジン-1-カルボキシレート
3-(ヨードメチル)アゼチジン(1.17g、5.96mmol)を、DMF(15mL)中の中間体19(1.00g、3.97mmol)、CsCO(2.59g、7.95mmol)の懸濁液に加えた。次いで反応物を80℃に2時間熱した後、水(20mL)でクエンチし、次いでDCM(3×20mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(10mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(660mg、51.8%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):421.2[MH]
【0168】
中間体56及び57は、CsCOを用いたピラゾロピリミジンのアルキル化によって中間体25と同様に調製した;下の表14を参照。
表14:CsCOを用いたピラゾロピリミジンのアルキル化
【化38】
【表7】
【0169】
中間体26
【化39】
トリメチル-[2-[1-メチル-4-(2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン-6-イル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]エチニル]シラン
の雰囲気下、TEA(996μL、7.15mmol)及びトリメチルシリルアセチレン(848μL、5.96mmol)を順次、DMF(25mL)中の中間体17(600mg、2.26mmol)、CuI(90.8mg、0.48mmol)、及びPd(dppf)Cl・CHCl(583mg、0.72mmol)の溶液に10分かけて滴下した。結果として生じた混合物を1時間攪拌した後、水(15mL)で希釈し、DCM(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(625mg、84.5%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):328.3[MH]
【0170】
実施例27~33及び58~63は、トリメチルシリルアセチレンを用いた薗頭カップリングを介して中間体17と同様に調製した;下の表5を参照。
表5:TMS-アルキンをもたらす薗頭カップリング
【化40】
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【0171】
中間体34
【化41】
6-(6-エチニル-1-メチル-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
MeOH(5.0mL)及びDCM(5.0mL)中の中間体26(625mg、1.91mmol)及びKCO(551mg、3.99mmol)の懸濁液を、1時間攪拌した後、水(15mL)で希釈し、DCM(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(380mg、78.0%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):256.1[MH]
【0172】
実施例35~40及び64~69は、アルキニルTMS基の除去によって、中間体34と同様に調製した;下の表6を参照。
表6:アルキニルTMS脱保護
【化42】
【表9-1】
【表9-2】
【0173】
中間体41
【化43】
トリメチル-[2-[[2-[2-[9-メチル-6-(2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン-6-イル)プリン-2-イル]エチニル]-4-フェニル-イミダゾール-1-イル]メトキシ]エチル]シラン
の雰囲気下、THF(5mL中の、Pd(PPhCl(27.5mg、39.0μmol)及び中間体35(78.4mg、196μmol)の溶液を、THF(10mL)中の中間体10(50.0mg、196μmol)、CsCO(128mg、392μmol)及びCuI(14.9mg、78μmol)の懸濁液に、10分かけて滴下した。結果として生じた混合物を2時間攪拌し、水(5mL)で希釈し、EtOAc(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(10mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(45.0mg、43.5%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):527.6[M]
【0174】
中間体42及び実施例1~4は、Pd(PPhClを用いた薗頭カップリングを介して、中間体41と同様に調製した;下の表7を参照(表は2つの部分に分かれている)。
表7:Pd(PPhClを用いた薗頭カップリング
【化44】
【表10】
表7続き - 化合物の例
【表11】
【0175】
中間体43
【化45】
tert-ブチル2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-4-モルフォリノ-6,8-ジヒドロ-5H-ピリド[3,4-d]ピリミジン-7-カルボキシレート
の雰囲気下、DMF(2.5mL中の、中間体9(455mg、1.32mmol)の溶液を、TEA(2.0mL)及びDMF(7.5mL)中の中間体38(150mg、0.53mmol)、CuI(5.0mg、26μmol)、XantPhos-Pd-G2(74.0mg、79μmol)、及びキサントホス(45.8mg、79μmol)の溶液に滴下した。結果として生じた混合物を80℃で2時間攪拌した後、水(5mL)で希釈し、EtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(20mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(202mg、76.6%)を褐色固体として得た。LCMS(ES+):501.25[MH]
【0176】
実施例44~47及び70~76並びに実施例6及び16~19は、XantPhos-Pd-G2を用いた薗頭カップリングに介して、中間体43と同様に調製した;下の表8を参照(表は2つの部分に分かれている)。
表8:XantPhos-Pd-G2を用いた薗頭カップリング
【化46】
【表12-1】
【表12-2】
表8続き - 化合物の例
【表13】
【0177】
実施例20
【化47】
(3aR,6aS)-5-(9-メチル-2-((1-メチル-4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル)-9H-プリン-6-イル)ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール
DMF(1.0mL)中の中間体70(60mg、0.17mmol)、(3aR,6aS)-ヘキサヒドロ-1H-フロ[3,4-c]ピロール(39mg、0.34mmol)、及びTEA(76μL、0.51mmol)の溶液を、1時間攪拌した後、水(5mL)でクエンチし、EtOAc(2×10mL)で抽出した。合わせた有機層を、飽和NHCl水溶液(3×5mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLC(NHHCOによる緩衝)で精製して、標題化合物(19.9mg、26.8%)を黄色固体として得た。UPLC(方法C):Rt1.39分。HRMS(ES+/QToF)m/z:[M+H]2424Oの理論値426.2042;実測値426.2048
【0178】
実施例77~82及び実施例21~24は、ハロゲン化ピリミジンの後期SnArによって実施例20と同様に調製した;下の表15を参照。
表15:ハロゲン化ピリミジン後期SnAr
スキーム
【表14】
表15続き - 化合物の例
【表15】
【0179】
実施例7
【化48】
6-[9-メチル-2-[2-(4-フェニル-1H-イミダゾール-2-イル)エチニル]プリン-6-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
TBAF(5.00mL、19.1mmol)を、THF(5.0mL)中の中間体41(45mg、85μmol)の溶液に加え、反応物を16時間攪拌した。水(5mL)を加えることによって、反応物をクエンチし、DCM(5×5mL)で抽出した。合わせた有機層を、飽和NHCl水溶液(3×5mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLC(NHHCOによる緩衝)で精製して、標題化合物(8.3mg、24.5%)を白色固体として得た。UPLC(方法A):Rt1.81分。HRMS(ES+/QToF)m/z:[M+H]2220Oの理論値398.1729;実測値398.1727
【0180】
実施例8
【化49】
6-[1-(アゼチジン-3-イルメチル)-6-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]-2-オキサ-6-アザスピロ[3.3]ヘプタン
TFA(2.0mL)を、DCM(4.0mL)中の中間体42(80.0mg、141μmol)の溶液に加えた。反応物を1時間攪拌した後、真空中で濃縮し、逆相HPLC(NHHCOによる緩衝)で精製して、標題化合物(40.6mg、59.9%)を黄色固体として得た。UPLC(方法C):Rt0.99分。LCMS(ES+):467.3[MH]
【0181】
実施例9~13及び25~33は、TFA媒介脱保護によって、実施例8と同様に調製した;下の表9を参照。
表9:TFAによるSEM又はBocの脱保護
【化50】
【表16-1】
【表16-2】
【表16-3】
【0182】
実施例14
【化51】
4-[2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-7-(オキセタン-3-イル)-6,8-ジヒドロ-5H-ピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン
THF(5.0mL)中の実施例11(120mg、300μmol)及び3-オキセタンone(176μL、3.00mmol)の溶液を、70℃で30時間攪拌した後、室温にまで冷やした。冷却してすぐに、NaBHCN(94.2mg、1.50mmol)を数回に分けて加え、反応物を16時間攪拌した。反応を水(5mL)でクエンチし、EtOAc(3×15mL)で抽出した。合わせた有機層を真空中で濃縮し、残渣を逆相HPLC(HCOOHによる緩衝)で精製して、標題化合物(26.4mg、19.0%)を褐色固体として得た。UPLC(方法E):Rt1.57分。HRMS(ES+/QToF)m/z:[M+H]2629の理論値457.2352;実測値457.2348
【0183】
実施例15
【化52】
4-[7-(シクロプロピルメチル)-2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]-6,8-ジヒドロ-5H-ピリド[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン
の雰囲気下、DMF(10mL)中の実施例11(140mg、350μmol)、KCO(144mg、1.05mmol)、及び(ヨードメチル)シクロプロパン(191mg、1.05mmol)の懸濁液を、℃で1時間攪拌した。次いで反応物を真空中で濃縮し、残渣を逆相HPLC(NHHCOによる緩衝)で精製して、標題化合物(28.7mg、17.8%)を黄色固体として得た。UPLC(方法E):Rt1.68分。LCMS(ES+):455.3[MH]
【0184】
生化学的ヒトPDE10A活性アッセイ - PDE10A2リン酸センサーアッセイ
最終濃度50μMから始まる半対数希釈した化合物液を、Echo Acousticディスペンサーを用いて、DMSO及び阻害コントロールと一緒に黒色384ウェルプレートに分注した。ヒトPDE10A2とCD73をともに、それぞれ最終濃度0.25nMと1nMのトリスベースアッセイバッファーで希釈し、化合物と室温で15分間インキュベートした後、基質であるcGMP及びリン酸センサーをそれぞれ最終濃度3μM及び0.9μMのトリスベースアッセイバッファーで希釈したものを加えた。BMG CLARIOStarプレートリーダーでEx430nm/Em450nmの光学フィルターを用いて蛍光強度を測定する前に、プレートを室温でさらに35分間インキュベートした。データは4パラメータフィットを用いて分析した。
【0185】
細胞ベースのヒトPDE10A活性アッセイ - HEK293 rhPDE10A2細胞株におけるcAMP HTRFアッセイ
Tecan D300eデジタルディスペンサーを用い、DMSO及び阻害対照とともに、最終濃度10μMから始まる半対数希釈した化合物液を白色384ウェルプレートに分注した。組換えヒトPDE10A2を過剰発現するHEK293細胞を、2500細胞/ウェル、体積5μL/ウェルで化合物に播いた。プレートを室温で60分間インキュベートした。内因性cAMPを誘導するために、最終アッセイ濃度10μMのフォルスコリン5μL/ウェルをプレートに加えた。プレートを室温でさらに45分間インキュベートした。cAMP HTRF検出試薬を加え、プレートを室温で60分間インキュベートした。FRETシグナルは、HTRF光学フィルター(337/620/665)を用いてBMG PHERAstar FSプレートリーダーで測定した。データは4パラメータフィットを用いて分析した。
表10:本発明の化合物のPDE10阻害データ
【表17-1】
【表17-2】
【0186】
上表のデータは、本発明の化合物、式(IA)、(IB)、(IIA)及び(IIB)の化合物は強力なPDE10A阻害剤であり、したがって、潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病などの炎症性腸疾患の治療に使用するのに適している可能性があることを示す。
【0187】
生体内におけるCNS浸透性の測定
300~350gの雄Sprague Dawleyラット(チャールス・リバー、英国)を12時間の明暗サイクルの下、餌と水を自由に摂取できるようにしてn=3で群飼いした。投与2日前に動物を吸入イソフルランで麻酔し、右頸静脈を露出させて外科的にカニューレ処置した。次いで、回復のために単独で動物を収容し、残りの手順を通して飼育した。投与当日、動物の体重を測定し、尾に印をつけ、静脈留置カニューレから1mg/kgの化合物を3~5mL/kgの量で静脈内投与した。動物は投与後10~30分でペントバルビタールの静脈内投与によって殺処分した。死後血液を心臓穿刺で採取し、K2 EDTA血液チューブに氷上で短時間保存した後、14,000gで4℃、4分間回転させた。血漿を96ウェルプレートに取り出し、ドライアイスの上に置き、-80℃で保存した。脳を素早く解剖し、ドライアイス上に置き、-80℃で保存した。
【0188】
雄Sprague-Dawleyラットに試験化合物を投与(静脈内)後、ある時点で動物を犠牲にする。心全採血(cardiac exsanguination)後の全血から遠心血液分画によって血漿を単離し、全脳を分離する。試料を氷上で保存し、-80℃でバイオアナリシスラボの保存庫に移す。血漿及び脳試料のバイオアナリシスを下記詳細のように行う。
【0189】
血漿バイオアナリシス
典型的には、1.00mg/mL DMSOストックを用いて、1.00~6,000ng/mLの範囲で試験化合物の検量線標準物質を調製した。検量線は、96ウェルプレートに25~150,000pgの範囲で分析物の既知質量をプリント(printing)して調製した。各ウェルに25μLの対照雄Sprague-Dawley Rat血漿を加えて、検量線範囲にわたって適切な濃度の検量線用標準物質を調製した。実験試料を室温にまで解凍し、25μLのアリコートを96ウェル沈殿プレートに検量線と並べて加えた。タンパク質沈殿を用いて試料を抽出した(内部標準物質として25ng/mLのトルブタミドを含むMeCN 400μLを用い、室温で少なくとも5分間撹拌)。タンパク質の沈殿物を、4000rpmで4℃にて5分間遠心分離することによって、抽出した試験化合物から分離した。希釈剤である1:1MeOH:HOを用いて、得られた上清を1:2の比で希釈した。
【0190】
AB Sciex API6500 QTrap又はWaters TQ-S質量分析計のいずれかで、試験化合物に特異的なあらかじめ最適化した分析MRM(多重反応モニタリング)法を用いて試料をUPLC-MS/MSによって分析した。
【0191】
適切な回帰と重み付けを用いて、試料セットの前後に注入した、検量線の2回反復に対する試料の分析後に、単離試料中の試験化合物の濃度を決定した。予想される試験物質濃度値の±15%(LLoQでは±20%)以内の検量標準物質のみを検量線に含め、検量線の限界から外れた試料は、定量限界未満又は定量限界超(LLoQ/ALoQ)とみなした。
【0192】
脳バイオアナリシス
典型的には、1.00mg/mL DMSOストックを用いて、3.00~18,000ng/mLの範囲で試験化合物の検量線標準物質を調製した。検量線は、96ウェルプレートに25~150,000pgの範囲で分析物の既知質量をプリントして調製した。各ウェルに25μLの量の対照雄Sprague-Dawley Rat脳ホモジネート(8.33mgの脳組織を含む)を加えて、検量線範囲にわたって適切な濃度の検量線用標準物質を調製した。
【0193】
対照及び実験の脳ホモジネートを調製するために、脳を室温で解凍し、秤量し、脳1グラムあたり2mLの割合で希釈液(50:50MeCN/HO)を加えた。脳のホモジナイズは、Precellys EvolutionとCKMix50 7mL混合セラミックビーズホモジネーションチューブを用いたビーズビーターホモジネーションで行った。
【0194】
25μLの実験試料のアリコートを、タンパク質沈殿(内部標準物質として25ng/mLのトルブタミドを含有する400μLのMeCNとともに、室温で少なくとも5分間撹拌)を用いて検量線に沿って抽出した。タンパク質の沈殿物を、4000rpmで4℃にて5分間遠心分離することによって、抽出した試験化合物から分離した。希釈剤である1:1MeOH:HOを用いて、得られた上清を1:2の比で希釈した。
【0195】
AB Sciex API6500 QTrap又はWaters TQ-S質量分析計のいずれかで、試験化合物に特異的なあらかじめ最適化した分析MRM(多重反応モニタリング)法を用いて試料をUPLC-MS/MSによって分析した。
【0196】
適切な回帰と重み付けを用いて、試料セットの前後に注入した、検量線の2回反復に対する試料の分析後に、単離試料中の試験化合物の濃度を決定した。予想される試験濃度値の±15%(LLoQでは±20%)以内の検量用試料のみが検量線に含まれ、検量線の限界から外れた試料は、定量の限界より下又は定量の限界を超える(LLoQ/ALoQ)とみなした。
【0197】
脳/血漿比及び遊離脳濃度の測定
各時点の脳内濃度を血漿中濃度で割ることによって全CNS浸透率を算出した。これらの比を平均して平均脳/血漿比(Br:Pl)を算出した(どの時点のものを用いたかを明確に記載した)。
【0198】
遊離薬物仮説は、結合していない化合物のみが相互作用し、薬理効果を引き起こすことができると述べている。したがって、化合物は高い遊離脳濃度を有することが望ましい。各マトリックス中の遊離濃度を計算するために、決定された濃度に、迅速な平衡透析を用いた血漿タンパク質結合及び脳組織結合試験によって求めた遊離%値を掛ける。次いで、それらの値をモル濃度に変換し、各時点におけるナノモル遊離濃度を得る。
【0199】
Kpuuを、血漿中で結合していない遊離薬物に対する脳内で結合していない遊離薬物画分の比として算出した。
表11:本発明の化合物の脳から血漿への分配(Kpuu)
【表18】
【0200】
潰瘍性大腸炎治療に使用するためのPDE10A阻害剤の評価
潰瘍性大腸炎(UC)におけるPDE10Aの役割を詳しく調べるために、Genotype-Tissue Expression(GTEx)データベースを使用して、正常組織及び疾患組織におけるPDE10AのRNA発現を調べた。それと並行して、グアニル酸シクラーゼ2C(GUCY2C)の発現レベルも評価した。GUCY2Cは、大腸菌の熱安定性エントロトキシンと同様に、内在性ペプチドであるグアニリン及びウログアニリンに反応してcGMPを合成する酵素である。
【0201】
以前に文献に記載されているように、正常組織ではPDE10Aは脳を除いて低レベルで発現している(図1に示す)。しかし、潰瘍性大腸炎患者に由来する結腸粘膜及び結腸組織では、PDE10Aの発現レベルは正常対照と比較して有意に上昇していた(図2に示す)。これは、これまで文献報告されていなかった所見であり、IBD病理におけるPDE10Aの未発見の役割の可能性を強調するものである。
【0202】
GUCY2Cは、正常な結腸及び小腸において高レベルで特異的に発現していることが認められ(図1に示す)、正常な腸のホメオスタシスにおけるこの酵素の役割が示唆された。UCの結腸粘膜と結腸では、GUCY2Cは有意に発現低下しており(図2に示す)、この所見は以前にも文献報告されている。
【0203】
グアニル酸シクラーゼ-C及びcGMPシグナル伝達は潰瘍性大腸炎において下方制御され(Brenna et al. The guanylate cyclase-C signaling pathway is down-regulated in inflammatory bowel disease Scand J Gastroenterol. 50(10), 1241-52 (2015))、グアニル酸シクラーゼ2C、グアニリン、及びウログアニリンの発現の低下は疾患の重症度と相関する(Lan et al. Expression of guanylate cyclase-C, guanylin, and uroguanylin is downregulated proportionally to the ulcerative colitis disease activity index Sci Rep. 6, 25034, (2016) published online 29 April 2016 doi: 10.1038/srep25034)。これは、cGMPシグナル伝達の低下がUC病理に関与していることを示唆する。消化管におけるcGMPもまた、体液及び電解質の分泌、バリア機能、炎症、並びに増殖に関与していることが示されている(Waldman et al. Guanylate cyclase-C as a therapeutic target in gastrointestinal disorders., Gut. 67(8), 1543-1552 (2018))。
【0204】
炎症における研究はcAMPよりも少ないが、cGMPシグナル伝達の減少もまた、他の系において炎症を増加させることが示されている(Ahluwalia et al. Antiinflammatory activity of soluble guanylate cyclase: cGMP-dependent down-regulation of P-selectin expression and leukocyte recruitment. Proc Natl Acad Sci U S A. 101(5), 1386-91 (2004); Raposo et al. Role of iNOS-NO-cGMP signaling in modulation of inflammatory and myelination processes. Brain Res Bull. 104, 60-73 (2014))。
【0205】
これらを総合すると、UCの結腸及び結腸粘膜では、PDE10AによるcGMP加水分解活性が増加し、グアニル酸シクラーゼ2CによるcGMP合成活性が減少することになり、結果としてcGMPレベル及びシグナル伝達が最終的に減少すると考えられる。
【0206】
炎症性腸疾患の治療に対するPDE10Aの阻害剤の治療可能性を、潰瘍性大腸炎患者の炎症結腸粘膜の組織試料を用いて評価した。
【0207】
ルーチンの内視鏡検査の間に採取した潰瘍性大腸炎患者の炎症結腸粘膜で、選択的PDE10A阻害の効果を調べた(以下に詳述するプロトコール1)。これらの試料は、生体外培養で疾患表現型を保持し、高いベースレベルの炎症性サイトカインを分泌し、非常に関連性の高いトランスレーショナル疾患モデルである。これらの組織試料から放出される炎症性サイトカインIL-6及びIL-8のレベルに対するPDE10A阻害剤の効果を測定した。IL-6とIL-8はともに、潰瘍性大腸炎病理における重要な調節因子であり、それらのレベルは疾患の重症度と相関している(Waldner MJ et al. Master regulator of intestinal disease: IL-6 in chronic inflammation and cancer development. Semin Immunol. 26(1), 75-9 (2014); Bernardo D et al. IL-6 promotes immune responses in human ulcerative colitis and induces a skin-homing phenotype in the dendritic cells and T-cells they stimulate. Eur J Immunol. 42(5),1337-53 (2012); Pearl DS, Cytokine mucosal expression in ulcerative colitis, the relationship between cytokine release and disease activity. J Crohns Colitis. 7(6), 481-9 (2013))。
【0208】
構造的に異なるPDE10A阻害剤PF-02545920とTAK-063を、2名の潰瘍性大腸炎患者の結腸生検試料において、2つの陽性対照化合物であるステロイドプレドニゾロン及びヤヌスキナーゼ阻害剤のトファシチニブとともに試験した。これらの結腸生検は炎症性表現型を保持し、生体外培養で高レベルの炎症性サイトカインを分泌する。選択的PDE10A阻害は、DMSOビヒクルと比較して、IL-6及びIL-8の分泌レベルを有意に下げた(図4及び5)。この低下は、陽性対照で見られたものと同等であった。PF-02545920は0.1μM及び1μMの濃度で試験した。TAK-063は1uMの濃度で試験した。各阻害剤の試験投与量は、他のPDEファミリーメンバーと比べて選択的にPDE10A阻害をもたらすことになる。
【0209】
PDE10A阻害剤、参考例A~G(その合成を、そのPDE10A阻害活性とともに下記に概説)を、100nMの濃度(PDE10A阻害に対して選択的な濃度)で試験し、ビヒクル対照と比較して、IL-6及びIL-8の分泌レベルを有意に下げることが見出された。本発明の化合物による選択的PDE10A阻害が、生体外のUC患者由来の結腸組織における病理学的炎症性サイトカインのレベルを有意に下げる能力は、UCの治療に対するPDE10A阻害剤の治療的有用性を示している。結果を図6~9に示す。
【0210】
PF-02545920の構造を以下に示す。PF-02545920は、IC50値が1.26nMと報告されている強力で且つ選択的な環状ヌクレオチドPDE10A競合阻害剤である。PF-02545920は、ハンチントン病の治療に向けた治験で研究されている。患者は1日2回、5mg又は20mgのPF-02545920を受けた。
【化53】
【0211】
単離酵素生化学的アッセイにおいて、PF-02545920は、PDE10Aに対するIC50が<5nM、他のPDEファミリーメンバーに対するIC50が>1μMであり、高選択的PDE10A阻害剤であることが示されている(Grauer SM et.al. Phosphodiesterase 10A inhibitor activity in preclinical models of the positive, cognitive, and negative symptoms of schizophrenia. J Pharmacol Exp Ther. 2009 331(2), 574-90)。したがって、生体外組織アッセイにおける試験濃度0.1μM及び1μMで、PF-02545920はPDE10Aを選択的に阻害することになる。
【0212】
以下にTAK-063の構造を示す。TAK-063は、統合失調症をもつ人に向けた第2相治験において検討された。TAK-063は1日1回20mgで投与されたが、高投与量が忍容できない場合は1日1回10mgに減量されうる。
【化54】
【0213】
単離酵素生化学的アッセイにおいて、TAK-063は、PDE10Aに対するIC50が0.3nM、他のPDEファミリーメンバーに対するIC50が>5μMであり、高選択的PDE10A阻害薬であることが示されている(Kunitomo J et.al. Discovery of 1-[2-fluoro-4-(1H-pyrazol-1-yl)phenyl]-5-methoxy-3-(1-phenyl-1H-pyrazol-5-yl)pyridazin-4(1H)-one (TAK-063), a highly potent, selective, and orally active phosphodiesterase 10A (PDE10A) inhibitor. J Med.Chem. 57(22), 9627-43 (2014))。したがって、TAK-063は、生体外組織アッセイにおいて、試験濃度1uMでPDE10Aを選択的に阻害することになる。
【0214】
選択的PDE10A阻害の効果を、結腸切除術の間に採取された、薬物療法治療抵抗性の潰瘍性大腸炎患者の炎症結腸粘膜でも調べた(以下に詳述するプロトコール2)。PDE10A阻害剤PF-02545920(1μM)を、2名の潰瘍性大腸炎患者の結腸試料で試験した。これらの組織試料から放出された炎症性サイトカインTNFαのレベルに対する選択的PDE10A阻害の効果を測定した。TNFαは、UCをもつ患者の結腸粘膜において高いレベルで発現している炎症促進性メディエーターであり、UC治療に有効性を示している抗TNFα生物製剤の標的である(Pugliese D. et al. Anti TNF-α therapy for ulcerative colitis: current status and prospects for the future., Expert Rev Clin Immunol. 13(3), 223-233 (2017))。選択的PDE10A阻害は、DMSOビヒクルと比較して、TNFαの分泌レベルを有意に下げた(図10)。
【0215】
UC患者由来の結腸粘膜における炎症性サイトカインのレベルを有意に下げる選択的PDE10A阻害の能力は、UCの治療に対するPDE10A阻害剤の治療的有用性を示している。
【0216】
クローン病の治療に用いるためのPDE10A阻害薬の評価
上述のように、UCの治療はCDの治療にも有効であるはずである。特に、UCとCDの両方においてcGMPシグナル伝達が低減していることが示されており(Brenna, et al. The guanylate cyclase-C signaling pathway is down-regulated in inflammatory bowel disease. Scand J Gastroentero 50, 1241-1252 (2015))、その機序はPDE10Aと大きく関連している。
【0217】
さらに、ルーチンの内視鏡検査で採取したクローン病患者の炎症大結腸粘膜に対して、0.1uMのPF-2545920を用いて選択的PDE10A阻害の効果を試験した(プロトコール1)。選択的PDE10A阻害は、DMSOビヒクルと比較して、2つの独立したCD患者生検からのIL-6及びIL-8の分泌レベルを有意に下げた(図11)。
【0218】
CD患者由来の結腸粘膜における炎症性サイトカインのレベルを有意に下げる選択的PDE10A阻害の能力は、UCにくわえてCDの治療に対するPDE10A阻害剤の治療的有用性を示している。PF-2545920がPDE10Aの阻害によってCDを治療しうるように、本発明の化合物もCDを治療しうる。
【0219】
プロトコール1
潰瘍性大腸炎患者又はクローン病患者の炎症を起こした結腸粘膜から、ルーチンの内視鏡検査で生検組織を採取した。炎症性サイトカインバイオマーカーの解析のための生体外生検培養は、既報にように行った(Vossenkamper A. et al. A CD3- specific antibody reduces cytokine production and alters phosphoprotein profiles in intestinal tissues from patients with inflammatory bowel disease. Gastroenterology, 147, 172-183 (2014))。陽性対照化合物又は特異的PDE10A阻害剤を加えて、生検を24時間臓器培養した。実験終了時に集めた上清をスナップ凍結し、-70℃で保存した。サイトカインの測定では、凍結培養上清を解凍し、Luminexサイトカインアッセイキット(R&D Systems)とR&D Systems MAGPIX(登録商標)分析装置を用いて炎症性サイトカインのレベルを分析した。各治療群の生検培養上清で測定された自発的サイトカイン産生のレベルについて、平均値±SDを算出した。
【0220】
プロトコール2
潰瘍性大腸炎ドナー試料を、潰瘍性大腸炎の治療的切除を受けた患者から完全な(full)倫理的同意を得た上で入手した。組織は上部(粘膜)側を上向きにしてネットウェルフィルター上に置いた。次いで、生検組織を対照培地又は試験化合物を含有する培地中で、37℃、高O雰囲気状態のインキュベーター内で培養した。ばらつきを最小限に抑えるようにするため、炎症刺激物質であるスタフィロコッカスエンテロトキシンB(SEB)の存在下でも生検を培養して、サイトカインレベルの正常化を促した。培養開始から約18時間後に培地試料を集め、プロテアーゼ阻害剤を加え、試料を-80℃で保存した。その後、上清をELISA分析に供してサイトカインを測定した。
【0221】
IL-8好中球活性化におけるPDE10A阻害剤の評価
PDE10A化合物PF-02545920を、IL-8好中球活性化のインビトロアッセイで評価した。PF-02545920は(図3に示されるように)IL-8誘導好中球活性化を投与量依存的に阻害した。好中球機能におけるPDE10Aの役割がこれまで報告されていなかったので、これは興味深い結果であり、さらに、炎症調節におけるPDE10Aの役割と、PDE10A阻害剤が炎症性腸疾患の治療薬として適しているであろうことが示唆された。
【0222】
PDE10A阻害剤(参考例)A~Gの合成
参考中間体1
【化55】
4-ベンジルオキシ-N-メトキシ-N-メチル-ベンズアミド
塩化オキサリル(3.76mL、43.8mmol)を、0℃で、DCM(75mL)及びDMF(400μL)中の4-ベンジルオキシ安息香酸(5.00g、21.9mmol)の懸濁液に滴下した。反応物を室温にまで温め、2時間攪拌し、次いで真空中で濃縮した。残渣をDCM(100mL)に溶かし、N,O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩(2.14g、21.9mmol)を加えた。反応物を0℃に冷やし、TEA(7.63mL、54.8mmol)を滴下し、次いで室温にまで温め、18時間攪拌した。反応混合物を、DCM(250mL)と飽和NaHCO水溶液(250mL)に分けた。水層をDCM(250mL)で抽出し、有機層を合わせ、ブライン(250mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮した。残渣を順相カラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(4.53g、76.3%)を白色固体として得た。UPLC(方法F)Rt5.53分、100%。LCMS(ES+):272.1[MH]
【0223】
参考中間体2
【化56】
1-(4-ベンジルオキシフェニル)-2-(4-ピリジル)エタノン
下で、n-BuLi(ヘキサン中2.5M、13.4mL、33.4mmol)を、-78℃で、THF(40mL)中のdiisopropylアミン(4.71mL、33.4mmol)の溶液に滴下した。反応物を30分間攪拌し、0℃に温め、30分間攪拌した。4-メチルピリジン(3.28mL、33.4mmol)を滴下し、反応物を30分間攪拌した。別のフラスコで、N下、参考中間体1(4.53g、16.7mmol)をTHF(100mL)に溶かし、-78℃に冷やした。4-メチルピリンアニオンの溶液を1時間滴下した。反応物を1時間攪拌した。AcOH(20mL)を加え、反応物を一晩放置して室温にまで温めた。反応混合物を真空中で濃縮し、次いでDCM(250mL)と水(250mL)に分けた。水性部分をDCM(250mL)で抽出した。合わせた有機部分を飽和NaHCO(250mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮して、標題化合物(4.85g、93.0%)を淡黄色固体として得た。UPLC(方法F)Rt4.67分、97.2%。LCMS(ES+):304.2[MH]
【0224】
参考中間体3(及び副生成物)
4-[3-(4-ベンジルオキシフェニル)-1-メチル-ピラゾール-4-イル]ピリジン及び4-[5-(4-ベンジルオキシフェニル)-1-メチル-ピラゾール-4-イル]ピリジン(副生成物)
【化57】
DMFDMA(25mL)中の参考中間体2(3.85g、純度97.2%、12.3mmol)を、2時間潅流で加熱し、次いで真空中で濃縮した。残渣をEtOH(60mL)に溶かし、メチルヒドラジン(1.95mL、37.0mmol)及び濃硫酸(138.3μL、2.46mmol)を加え、反応物を70℃で3時間加熱した。反応混合物を真空中で濃縮し、次いでDCM(250mL)と飽和NaHCO水溶液(250mL)に分けた。水層をDCM(250mL)で抽出し、有機層を合わせ、乾燥させ(MgSO4)、真空中で濃縮した。残渣を順相カラムクロマトグラフィー(1%TEAによる緩衝)で精製して、標題化合物をそれぞれ、黄色固体(2.84g、65.9%)及び黄色固体(625mg、10.7%)として得た。UPLC Rt4.67分、97.6%。LCMS(ES+):342.2[MH]。UPLC(方法F)4.74分、72.2%。LCMS(ES+):342.3[MH]
【0225】
参考中間体4
4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノール
【化58】
参考中間体3(3.48g、純度97.6%、9.95mmol)を、EtOH(100mL)及びEtOAc(100mL)に溶かし、H-cube(70×4mm、10%Pd/C CatCart、1.0mL/min、60℃、50bar)に2回通した。反応混合物を真空中で濃縮して、標題化合物(2.57g、98.9%)を白色固体として得た。UPLC(方法F)Rt2.73分、96.1%。LCMS(ES+):252.1[MH]
【0226】
参考中間体5
tert-ブチル2-メチルキノリン-4-カルボキシレート
【化59】
N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.65g、8.01mmol)を、DCM(60mL)中の2-メチルキノリン-4-カルボン酸(1.00g、5.34mmol)、DMAP(65.3mg、534μmol)及びtert-ブタノール(1.02mL、10.7mmol)の懸濁液に少しずつ加え、混合物を16時間撹拌した。反応混合物を濾過し、真空中で濃縮した。残渣を順相カラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(539mg、41.2%)を黄色油として得た。UPLC(方法F)Rt4.31分、99.4%。LCMS(ES+):244.2[MH]
【0227】
参考中間体6
メチル2-(ブロモメチル)キノリン-3-カルボキシレート
【化60】
アゾビスイソブチロニトリル(44.1mg、269μmol)を、CCl(13mL)中のメチル2-メチルキノリン-3-カルボキシレート(548mg、純度98.8%、2.69mmol)及びNBS(718mg、4.03mmol)の溶液に加え、反応物を還流で4時間加熱した。反応混合物を濾過し、真空中で濃縮し、次いで順相カラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(492mg、60.9%)を黄色固体として得た。UPLC(方法F)Rt5.55分、93.2%。LCMS(ES+):280.0[MH]
【0228】
参考中間体7A及び7B
参考中間体7A及び7Bは、NBSとの適切な中間体の臭素化によって参考中間体6と同様に調製した。
【表19】
【0229】
参考中間体8
エチル2-(クロロメチル)-1,5-ナフチリジン-3-カルボキシレート
【化61】
3-アミノピコリンアルデヒド(500mg、4.09mmol)及び4-クロロ-3-オキソブタン酸エチル(0.66mL、4.91mmol)をEtOH(27mL)に溶かし、還流下で18時間加熱した。混合物を真空中で濃縮した。残渣をEtOAc(100mL)と水(100mL)の間で分離し、水性部分をEtOAc(100mL)で抽出し、合わせた有機物を乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮した。残渣をイソヘキサン中でトリチュレートして精製して、標題化合物(724mg、69.5%)を褐色固体として得た。UPLC(方法B)Rt2.46分、98.5%。LCMS(ES+):251.0[MH]
【0230】
参考中間体9
メチル2-[[4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノキシ]メチル]キノリン-3-カルボキシレート
【化62】
下で、DMF(4.0mL)中の参考中間体4(300mg、純度96.1%、1.15mmol)の溶液を、DMF(8.0mL)中のNaH(鉱油中60%、50.5mg、1.26mmol)の懸濁液に0℃で滴下し、30分間撹拌した。参考中間体6(345mg、純度93.2%、1.15mmol)を加え、混合物を放置して16時間かけて室温にまで温めた。反応混合物をDCM(100mL)、HO(100mL)とブライン(50mL)に分離させ、水層をDCM(100mL)で抽出し、有機層を合わせ、ブライン(100mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮した。残渣を順相カラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(439mg、82.5%)を黄色固体として得た。UPLC(方法F)、Rt4.52分、97.1%。LCMS(ES+):451.2[MH]
【0231】
参考中間体10
tert-ブチル2-[[4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノキシ]メチル]キノリン-4-カルボキシレート
【化63】
参考中間体10は、NaHを用いた参照中間体4と参照中間体7Aのアルキル化によって参考中間体9と同様に調製した。黄色ガム。収率500mg、90.1%;LCMS(ES+):493.3[MH];UPLC(方法F)、Rt5.23分、89.5%
【0232】
参考中間体11
2-[[4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノキシ]メチル]キノリン-3-カルボン酸
【化64】
LiOH.HO(119mg、2.84mmol)を、THF(5.0mL)及び水(5.0mL)中の参考中間体9(439mg、純度97.1%、946μmol)の溶液に加え、2時間攪拌した。揮発性物質を真空中で除去した。残りの水性部分に1M塩酸(2.84mL)を加えた。得られた固体を濾過によって集め、水(2×5mL)で洗浄して、2-[[4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノキシ]メチル]キノリン-3-カルボン酸(370mg、87.8%)を白色固体として得た。UPLC(方法F)Rt3.78分、98.0%。LCMS(ES+):437.1[MH]
【0233】
参考中間体12
アンモニウム2-[[4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノキシ]メチル]キノリン-4-カルボキシレート
【化65】
1,4-ジオキサン(5.0mL)及び塩酸(1,4-ジオキサン中4M、5.0mL、20mmol)を、水(5.0mL)中の参考中間体10(500mg、909μmol)に加え、反応物を60℃で3時間加熱した。反応混合物を真空中で濃縮して、2-[[4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノキシ]メチル]キノリン-4-カルボン酸ジヒドロクロリド(510mg、99.8%)を褐色固体として得た。50mgをTHF(2.0mL)及び水(2.0mL)に溶かし、pH7に中和し、次いで逆相HPLC(アンモニアによる緩衝)で精製して、標題化合物(14.8mg、3.58%)を白色固体として得た。UPLC(方法F)、Rt3.77分、99.6%。LCMS(ES+):437.1[MH]
【0234】
参考中間体13
メチル2-(ブロモメチル)キナゾリン-4-カルボキシレート
【化66】
塩化オキサリル(0.19mL、2.23mmol)を、DCM(11mL)及びDMF(10μL)中の2-メチルキナゾリン-4-カルボン酸ハイドロクロライド(250mg、1.11mmol)の溶液に0℃で加えた。反応物を30分間撹拌した。MeOH(1.0mL)を加え、反応物を室温にまで温め、30分間撹拌した。混合物を真空中で濃縮し、EtOAc(30mL)で希釈し、飽和NaHCO水溶液(30mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮した。残渣をCCl(5.0mL)に溶かし、混合物をNで5分間スパージした。アゾビスイソブチロニトリル(15.5mg、9.45μmol)及びNBS(210mg、1.18mmol)を加え、反応物を還流下で20時間加熱した。混合物を濾過し、真空中で濃縮した。残渣を順相カラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(58.0mg、20.0%)を白色固体として得た。UPLC(方法B)Rt2.46分、91.5%。LCMS(ES+):281.0[MH]
【0235】
参考中間体14
メチル2-[[4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノキシ]メチル]キナゾリン-4-カルボキシレート
【化67】
DMF(3.0mL)中の中間体4(56.1mg、純度99.2%、0.22mmol)、中間体13(68.0mg、純度91.5%、0.22mmol)及びCsCO(79.3mg、0.24mmol)の混合物を16時間撹拌した。混合物をDCM(20mL)で希釈し、飽和NaHCO水溶液(20mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮した。残渣を順相カラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(35.0mg、34.6%)を黄色固体として得た。UPLC(方法B)Rt2.24分、98.7%。LCMS(ES+):452.1[MH]
【0236】
参考中間体15及び16
参考中間体15及び16は、CsCOを用いた適切な臭化物/塩化物中間体による適切なフェノール中間体のアルキル化によって、中間体14と同様に調製した。
【表20】
【0237】
参考中間体17
【化68】
トリメチル(2-キナゾリン-2-イルエチニル)シラン
の雰囲気下、トリメチルシリルアセチレン(2.6mL、18.4mmol)及びDIPEA(3.0mL、17.2mmol)を順次、DMF(15mL)中の2-クロロキノキサリン(1.50g、9.11mmol)、CuI(174mg、0.91mmol)、及びPd(dppf)Cl・CHCl(1.48g、1.82mmol)の懸濁液に加えた。混合物を80℃で1時間攪拌した後、水(30mL)でクエンチし、EtOAc(5×30mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(1.40g、65.8%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):227.2[MH]
【0238】
参考中間体18
【化69】
2-エチニルキナゾリン
MeOH(5.0mL)及びDCM(5.0mL)中の参考中間体17(600mg、2.65mmol)及びKCO(366mg、2.65mmol)の懸濁液を、1時間攪拌した後、水(40mL)を加え、EtOAc(5×40mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(360mg、88.1%)を白色固体として得た。LCMS(ES+):155.3[MH]
【0239】
参考中間体19
【化70】
1-メチル-4-フェニル-イミダゾール
の雰囲気下、NaH(鉱物油中60%、3.33g、83.2mmol)を、0でDMF(70mL)中の4-フェニル-3H-イミダゾール(10g、69.4mmol)の溶液に加えた。溶液を30分間攪拌した後、温度を0℃に維持しながら、CHI(5.2mL、83.5mmol)を10分かけて滴下した。結果として生じた混合物を、冷却することなくさらに1時間間攪拌した。次いで水(100mL)を加えることによって、反応をクエンチし、EtOAc(5×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(7.80g、71.1%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):159.0[MH]
【0240】
参考中間体20
【化71】
2-ヨード-1-メチル-4-フェニル-イミダゾール
の雰囲気下、n-BuLi(ヘキサン中2.5、29.6mL、74.0mmol)を、-78℃で10分かけて、THF(80mL)中の参考中間体19(7.8g、49.3mmol)の溶液に滴下した。溶液を-78℃で1時間攪拌した後、THF(20mL)中のI(13.8g、54.2mmol)を10分かけて滴下した。結果として生じた混合物を0℃に温め、さらに1時間攪拌した後、水(100mL)でクエンチし、EtOAc(5×100mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(7.70g、55.0%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):285.0[MH]
【0241】
参考中間体21
【化72】
4-(6-クロロ-1,3-ジメチル-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル)モルホリン
DMF(10mL)中の4,6-ジクロロ-1,3-ジメチルピラゾロ[3,4-d]ピリミジン(300mg、1.38mmol)、TEA(578μL、4.15mmol)及びモルホリン(143μL、1.66mmol)を、室温で2時間攪拌した後、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(200mg、54.1%)を黄色固体として得た。LCMS(ES+):268.2[MH]
【0242】
参考中間体22
【化73】
1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-カルバルデヒド
の雰囲気下、n-BuLi(ヘキサン中2.5M、1.5mL、3.8mmol)を、-40℃で10分かけてTHF(10mL)中の参考中間体19(500mg、3.16mmol)の溶液に滴下し、30分間攪拌した後、-78℃に冷やした。DMF(300μL、4.11mmol)を10分かけて滴下し、その後さらに1時間攪拌した後、溶液を放置して2時間かけて室温にまで温めた。水(30mL)を加えることによって、反応物をクエンチし、EtOAc(5×50mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(3×10mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(450mg、75.5%)を白色固体として得た。LCMS(ES+):187.3[MH]
【0243】
参考中間体23
【化74】
(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)メタノール
NaBH(183mg、4.84mmol)を、MeOH(5.0mL)中の参考中間体22(450mg、2.42mmol)の溶液に加え、1時間攪拌した後、水(20mL)を加え、EtOAc(5×30mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(3×10mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(440mg、96.7%)を白色固体として得た。LCMS(ES+):189.2[MH]
【0244】
以下の化合物が参考例である。
参考例A
アンモニウム2-[[4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノキシ]メチル]キノリン-4-カルボキシレート
【化75】
1,4-ジオキサン(5.0mL)及び塩酸(1,4-ジオキサン中4M、5.0mL、20mmol)を、水(5.0mL)中の参考中間体10(500mg、909μmol)に加え、反応物を60℃で3時間加熱した。反応混合物を真空中で濃縮して、2-[[4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノキシ]メチル]キノリン-4-カルボン酸二塩酸塩(510mg、99.8%)を褐色固体として得た。50mgをTHF(2.0mL)及び水(2.0mL)に溶かし、pH7に中和し、次いで逆相HPLC(アンモニアによる緩衝)で精製して、標題化合物(14.8mg、3.58%)を白色固体として得た。UPLC(方法F)、Rt3.77分、99.6%。LCMS(ES+):437.1[MH]
【0245】
参考例B
2-[[4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノキシ]メチル]-N-メチルスルホニル-キノリン-3-カルボキサミド
【化76】
DIPEA(58.7μL、337μmol)を、DCM(1.2mL)中の参考中間体11(50.0mg、純度98.0%、112μmol)、メタンスルホンアミド(21.4mg、224μmol)及びHATU(85.4mg、224μmol)の懸濁液に加え、6.5時間攪拌した。反応混合物をDCM(30mL)とHO(30mL)に分けた。水層をDCM(30mL)で抽出し、有機層を合わせ、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLCで精製して、標題化合物(18.8mg、32.1%)を白色固体として得た。UPLC(方法F)、Rt3.96分、98.4%。LCMS(ES+):514.1[MH]
【0246】
参考例C及びD
参考例C及びDは、HATUを用いた適切な中間体と適切なアミンのアミドカップリングによって、参考例Bと同様に調製した。
【表21】
【0247】
参考例E
N-[ジメチル(オキソ)-λ6-スルファニリデン]-2-[[4-[1-メチル-4-(4-ピリジル)ピラゾール-3-イル]フェノキシ]メチル]キナゾリン-4-カルボキサミド
【化77】
参考中間体14(35.0mg、純度98.7%、76.5μmol)をTHF(2.0mL)及び水(2.0mL)に溶かした。LiOH.HO(3.85mg、91.8μmol)を加え、反応物を1時間攪拌した。混合物を真空中で濃縮した。残渣をDMF(2.0mL)に溶かし、HATU(58.2mg、0.15mmol)、S,S-ジメチルスルホキシミン(14.3mg、0.15mmol)及びDIPEA(26.7μL、0.15mmol)を加え、反応物を1.5時間攪拌した。混合物をDCM(30mL)で希釈し、飽和NaHCO水溶液(30mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO)、真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLC(NHによる緩衝)で精製して、標題化合物(24.4mg、61.8%)を黄色固体として得た。UPLC(方法F)Rt3.68分、99.4%。LCMS(ES+):513.1[MH]
【0248】
参考例F及びG
参考例F及びGは、適切な中間体の鹸化、それに続くHATUを用いた適切なアミンとのアミドカップリングによって、参考例Eと同様に調製した。
【表22】
【0249】
参考例H
【化78】
2-[2-(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)エチニル]キナゾリン
の雰囲気下、DMF(5.0mL)中の参考中間体18(150mg、0.97mmol)、参考中間体20(332mg、1.17mmol)、第2世代XantPhosプレ触媒(86mg、0.10mmol)、キサントホス(56mg、0.10mmol)、CuI(9.00mg、0.05mmol)、及びTEA(500μL、3.63mmol)の混合物を、1時間攪拌した後、水(20mL)を加え、EtOAc(5×30mL)で抽出した。合わせた有機層を真空中で濃縮し、残渣を逆相HPLC(HCOOHによる緩衝)で精製して、標題化合物(27.9mg、9.21%)を褐色固体として得た。UPLC(方法E):Rt1.39分。LCMS(ES+):311.10[MH]
【0250】
参考例J
【化79】
4-[1,3-ジメチル-6-[(1-メチル-4-フェニル-イミダゾール-2-イル)メトキシ]ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-4-イル]モルホリン
DMF(3.0mL)中の参考中間体23(150mg、0.80mmol)、参考中間体21(200mg、0.80mmol)、及びCsCO(520mg、1.57mmol)の懸濁液を、100℃で16時間攪拌した後、水(20mL)を加え、EtOAc(5×30mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(3×10mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空中で濃縮した。残渣を逆相HPLC(NH4HCOによる緩衝)で精製して、標題化合物(104mg、32.3%)を白色固体として得た。UPLC(方法E):Rt1.50分。LCMS(ES+):402.1[MH]
【0251】
これらの参考例は、上記ヒトPDE10A活性アッセイ及び細胞ベースのヒトPDE10A活性アッセイにおいて、以下の活性を有する。
【表23】
【0252】
上表のデータは、参考例は強力なPDE10A阻害剤であり、したがって、潰瘍性大腸炎及び/又はクローン病などの炎症性腸疾患の治療に使用するのに適している可能性があることを示す。
【0253】
前述の実施形態は、特許請求の範囲によって与えられる保護の範囲を限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明がどのように実行できるかについての例を説明することを意図するものである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】