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特表2024-528075ロボットカニューレ用のガス密封アクセスキャップ、およびロボット支援外科手術を実施する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】ロボットカニューレ用のガス密封アクセスキャップ、およびロボット支援外科手術を実施する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20240719BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20240719BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B34/30
A61B17/94
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505350
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 US2022038628
(87)【国際公開番号】W WO2023009694
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】63/227,449
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/231,390
(32)【優先日】2021-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500103074
【氏名又は名称】コンメッド コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン エミリー
(72)【発明者】
【氏名】ブレンナー コーリー ロンドン
【テーマコード(参考)】
4C130
4C160
【Fターム(参考)】
4C130AA32
4C130AC05
4C160FF42
4C160MM23
(57)【要約】
ロボットカニューレ用のガス密封アクセスキャップが開示されていて、これは、
ハウジングの入口ポートから加圧ガスを受容するために、環状ジェット組立品を支持する内部空洞を画定するハウジングを含み、環状ジェット組立品は、ロボット支援腹腔鏡外科手術の実施中に、患者の外科手術腔内に安定した圧力を維持するために、ロボットカニューレ内にガス密封ゾーンを生成するように適合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットカニューレ用のガス密封アクセスキャップであって、
a)前記ロボットカニューレ内にガス密封ゾーンを生成するために入口ポートを通して加圧ガスを受容する、かつ使用済みガスを前記ガス密封ゾーンから出口ポートまで方向付ける内部空洞と連通する中央アクセスポートを画定するリッドを有するハウジングと、
b)前記ハウジングの前記中央アクセスポートと整列した、かつ前記ロボットカニューレの管状部分と連通するために前記内部空洞から遠位に延在する中央アクセス管であって、前記ハウジングの遠位端が、前記ロボットカニューレの近位ボウル部分内の受容のために、前記中央アクセス管の遠位端を越えて遠位に延在する、中央アクセス管と、
c)前記アクセスキャップを前記ロボットカニューレの前記近位ボウル部分に取り外し可能に固定するために、前記ハウジングの外面と一体的に形成されている円周フランジから延在する、一対の直径方向に対向する可撓性クリップと、
を備える、ガス密封アクセスキャップ。
【請求項2】
環状ジェット組立品が、患者の外科手術腔内に安定した圧力を維持するために、前記ロボットカニューレ内に前記ガス密封ゾーンを生成するための前記ハウジングの前記内部空洞中に支持されていて、前記環状ジェット組立品が、前記リッドの前記中央アクセスポートと整列した中央開口を含む、請求項1に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項3】
円周方向に離間した半径方向内向きに延在する複数の翼部が、前記ハウジングと一体的に形成されていて、かつ前記使用済みガスを前記ガス密封ゾーンから前記ハウジングの前記出口ポートに方向付けるために、前記環状ジェット組立品の下の前記内部空洞内に位置する、請求項2に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項4】
円周溝が、Oリングシールを収容するために、前記直径方向に対向する可撓性クリップの遠位の前記ハウジングの前記外面に形成されている、請求項1に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項5】
前記円周溝が、前記複数の離間した翼部の近位に位置する、請求項1に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項6】
前記直径方向に対向する可撓性クリップがそれぞれ、近位部分、中間部分、遠位部分を含む、請求項1に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項7】
前記直径方向に対向する可撓性クリップの前記近位部分が、互いに平行である、請求項6に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項8】
前記直径方向に対向する可撓性クリップの前記遠位部分が、前記円周溝まで延在する、請求項4に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項9】
前記円周フランジが前記円周溝の近位にある、請求項4に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項10】
前記ハウジングの前記リッドと協働的に係合するための近位ハンドル部分を有するオブチュレータと、前記ハンドルから遠位に延在する、かつ遠位光学切断チップを有する細長いオブチュレータシャフトとをさらに備える、請求項1に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項11】
前記オブチュレータの前記近位ハンドル部分が、スコープを受容するために前記細長いオブチュレータシャフトを通って前記遠位光学切断チップまで延在する穴と連通する中央ポートを画定する、請求項10に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項12】
前記オブチュレータシャフトが前記ハウジングの前記中央アクセスポートを通って延在されている時に、前記中央アクセス管の内面に対して密封するために、環状シールが前記オブチュレータシャフト上に、その長さに沿った位置で支持されている、請求項10に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項13】
前記ハウジングの前記入口ポートおよび前記出口ポートが、フィルタ付き管セットの加圧ガスラインおよび戻りガスラインと連通するために、ブルズアイコネクタ嵌合部と関連付けられたマニホールドと連通する、請求項1に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項14】
ロボットカニューレ用のガス密封アクセスキャップであって、
a)前記ハウジングの入口ポートから加圧ガスを受容するために環状ジェット組立品を支持する内部空洞まで延在する中央アクセスポートを画定するリッドを有するハウジングであって、前記環状ジェット組立品が、前記リッドの前記中央アクセスポートと整列した中央開口を含み、かつ患者の前記外科手術腔内に安定した圧力を維持するために、前記ロボットカニューレ内にガス密封ゾーンを生成するように適合されている、ハウジングと、
b)前記ハウジングと一体的に形成された、かつ使用済みガスを前記ガス密封ゾーンから前記ハウジングの出口ポートに方向付けるために、前記環状ジェット組立品の下のその前記内部空洞内に位置する、円周方向に離間した半径方向内向きに延在する複数の翼部と、
c)前記ハウジングの前記中央アクセスポートおよび前記環状ジェット組立品の前記中央開口と整列した、かつ前記ロボットカニューレの管状部分と連通するために、前記翼部の下の前記ハウジングの前記内部空洞から遠位に延在する中央アクセス管であって、前記ハウジングの遠位端が、前記ロボットカニューレの近位ボウル部分内の受容のために、前記中央アクセス管の遠位端を越えて遠位に延在する、中央アクセス管と、
d)前記アクセスキャップを前記ロボットカニューレの前記近位ボウル部分に取り外し可能に固定するために、前記ハウジングの外面と一体的に形成されている円周フランジから延在する、一対の直径方向に対向する可撓性クリップと、
を備える、ガス密封アクセスキャップ。
【請求項15】
円周溝が、Oリングシールを収容するために、前記対向する可撓性クリップの遠位の前記ハウジングの前記外面に形成されている、請求項14に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項16】
前記円周溝が、前記離間した翼部の近位に位置する、請求項14に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項17】
前記直径方向に対向する可撓性クリップがそれぞれ、近位部分、中間部分、遠位部分を含む、請求項14に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項18】
前記直径方向に対向する可撓性クリップの前記近位部分が、互いに平行である、請求項17に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項19】
前記直径方向に対向する可撓性クリップの前記遠位部分が、前記円周溝まで延在する、請求項17に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項20】
前記円周フランジが前記円周溝の近位にある、請求項15に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項21】
前記ハウジングの前記リッドと協働的に係合するための近位ハンドル部分を有するオブチュレータと、前記ハンドルから遠位に延在する、かつ遠位切断チップを有する細長いオブチュレータシャフトとをさらに備える、請求項14に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項22】
前記オブチュレータの前記近位ハンドル部分が、スコープを受容するために前記細長いオブチュレータシャフトを通って前記遠位光学切断チップまで延在する穴と連通する中央ポートを画定する、請求項21に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項23】
前記オブチュレータシャフトが前記ハウジングの前記中央アクセスポートを通って延在されている時に、前記中央アクセス管の内面に対して密封するために、環状密封フランジが前記オブチュレータシャフト上に、その長さに沿った位置で支持されている、請求項21に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項24】
前記ハウジングの前記入口ポートおよび前記出口ポートが、フィルタ付き管セットの加圧ガスラインおよび戻りガスラインと連通するために、ブルズアイコネクタ嵌合部と関連付けられたマニホールドと連通する、請求項14に記載のガス密封アクセスキャップ。
【請求項25】
患者の腹腔内でロボット支援腹腔鏡外科手術を実施する方法であって、
a)患者の前記腹腔に送気する工程と、
b)ガス密封カニューレキャップをロボットカニューレに接続する工程と、
c)前記ロボットカニューレを前記送気された腹腔の中に挿入する工程と、
d)管セットを前記ガス密封カニューレキャップに接続する工程と、
を含む方法。
【請求項26】
患者の前記腹腔に送気する前記工程が、
a)前記患者の前記腹腔の中にヴェレス針を挿入することと、
b)前記管セットの単一内腔管部分を前記ヴェレス針に接続することと、
c)設定された腹腔内圧に達するまで、前記ヴェレス針を通して前記腹腔に送気することと、
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
セットを前記ガス密封カニューレキャップに接続する前記工程が、前記管セットの二重内腔管部分の遠位端上の嵌合部からプラグを取り外す工程と、前記嵌合部を前記ガス密封カニューレキャップに接続する工程とを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
第二のロボットカニューレを、弁密封カニューレキャップがそれに接続された状態で、前記患者の前記腹腔の中に挿入する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記管セットの前記単一内腔管部分を前記ヴェレス針から切り離す工程と、その後、前記管セットの前記単一内腔管部分を前記弁密封カニューレキャップに接続する工程とをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
患者の腹腔内でロボット支援腹腔鏡外科手術を実施する方法であって、
a)第一のロボットカニューレを、弁密封カニューレキャップがそれに接続された状態で、前記患者の前記腹腔の中に挿入する工程と、
b)管セットの単一内腔管部分を前記弁密封カニューレキャップに接続する工程と、
c)第二のロボットカニューレを、ガス密封カニューレキャップがそれに接続された状態で、前記患者の前記腹腔の中に挿入する工程と、
d)前記フィルタ付き管セットの二重内腔管部分を前記ガス密封カニューレキャップに接続する工程と、
を含む方法。
【請求項31】
ヴェレス針を通して前記患者の前記腹腔に送気する工程をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記管セットの前記単一内腔管部分を前記ヴェレス針に接続する工程をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
患者の腹腔内でロボット支援腹腔鏡外科手術を実施する方法であって、
a)ガス送達装置と、ヴェレス針と、弁密封カニューレキャップと、ガス密封カニューレキャップに接続されたオブチュレータを有するガス密封カニューレキャップと、第一のロボットカニューレと、第二のロボットカニューレと、フィルタカートリッジ、単一内腔管部分、二重内腔管部分を含むフィルタ付き管セットとを含む外科手術アクセスシステムを提供する工程であって、前記フィルタ付き管セットの前記二重内腔管部分の前記遠位端にある嵌合部にプラグが取り付けられている、提供する工程と、
b)前記フィルタ付き管セットの前記フィルタカートリッジを前記ガス送達装置の受容ポートの中に挿入する工程と、
c)前記ガス送達装置の機械的レバーアームを回転させることによって、前記フィルタカートリッジを前記受容ポート内にロックする工程と、
d)前記ガス送達装置の流量設定および圧力設定が前記患者にとって適切であることを確認する工程と、
e)前記ヴェレス針を前記患者の前記腹腔の中に挿入する工程と、
f)前記フィルタ付き管セットの前記単一内腔管部分を前記ヴェレス針のコネクタに接続する工程と、
g)設定された腹腔内圧に達するまで、前記ヴェレス針を通して前記腹腔に送気する工程と、
h)前記ガス密封カニューレキャップを、前記オブチュレータと一緒に前記第二のロボットカニューレに接続する工程と、
i)前記第一のロボットカニューレを、前記弁密封カニューレキャップがそれに接続された状態で、前記患者の前記腹腔の中に挿入する工程と、
j)前記第二のロボットカニューレを、前記ガス密封カニューレキャップがそれに接続された状態で、前記患者の前記腹腔の中に挿入する工程と、
k)前記フィルタ付き管セットの前記二重内腔管部分の前記遠位端にある前記嵌合部から前記プラグを取り外す工程と、
l)前記フィルタ付き管セットの前記二重内腔管部分の前記嵌合部を、前記ガス密封カニューレキャップのコネクタに接続する工程と、
m)前記管セットの前記単一内腔管部分を前記ヴェレス針から切り離す工程と、
n)前記管セットの前記単一内腔管部分を前記弁密封カニューレキャップのコネクタに接続する工程であって、その後に前記ガス送達装置が、前記管セットの前記二重内腔部分によって前記ガス密封カニューレを通して加圧ガスの循環を開始することになり、前記ガス送達装置が較正プロセスを実行することになる、接続する工程と、
o)前記オブチュレータを前記ガス密封カニューレキャップから取り外す工程と、
を含む方法。
【請求項34】
前記ロボット支援腹腔鏡外科手術の終了時に、
a)前記ガス密封カニューレキャップ内の前記オブチュレータを交換する工程と、
b)前記ガス送達装置による加圧ガスの前記循環を停止する工程と、
c)前記管セットの前記二重内腔部分を前記ガス密封カニューレキャップの前記コネクタから切り離す工程と、
をさらに含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本件出願は、2021年7月30日出願の米国仮特許出願第63/227,449号、および2021年8月10日出願の米国仮特許出願第63/231,390号に対する優先権を主張するものであり、それらの開示は参照によりその全体(それらのすべての付属書類を含む)が本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の分野
本件開示は、内視鏡外科手術、より具体的に、ロボットカニューレを使用してロボット支援腹腔鏡外科手術を実施するためのガス密封アクセスキャップ、およびそれを使用する方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
腹腔鏡下または「低侵襲性」外科手術技術は、胆嚢摘出、虫垂切除術、ヘルニア修復および腎摘出などの手術の実施において普及しつつある。こうした手術の利点には、患者への外傷の減少、感染の可能性の低減、および回復時間の短縮が含まれる。腹(腹膜)腔内のこうした手術は典型的に、トロカールまたはカニューレとして知られる装置を通して実施され、これは患者の腹腔内への腹腔鏡器具の導入を容易にする。
【0004】
加えて、こうした手術は一般に、二酸化炭素などの加圧流体で腹腔の充填または腹腔に「送気」して、気腹と称される手術空間を作り出すことを伴う。送気は、送気用流体を送達するように装備されたトロカールなどの手術用アクセス装置、または送気用(ヴェレス)針などの別個の送気用装置によって、実施されることができる。気腹を維持するために、送気ガスの実質的な損失なしに、外科手術器具を気腹中に導入することが望ましい。
【0005】
典型的な腹腔鏡下手術中に、外科医は3~4個所の小さい切開(通常は各々約12ミリメートル以下)を作り、これは手術用アクセス装置自体を用いて、しばしばその中に配置された別個の挿入器または閉塞具を使用して行われる。挿入後、閉塞具が取り外され、トロカールは腹腔内に挿入される器具に対するアクセスを可能にする。典型的なトロカールは、外科医が作業する開放内部空間を有するように、腹腔に送気する経路を提供する。
【0006】
トロカールは、トロカールと使用されている外科手術器具の間の密封によって空洞内の圧力を維持する方式を提供しなければならない一方で、外科手術器具の少なくとも最小量の移動の自由を依然として可能にする。こうした器具には例えば、はさみ、把持器具および閉塞具、焼灼ユニット、カメラ、光源、他の外科手術器具が含まれることができる。密封要素または機構は典型的に、腹腔からの送気ガスの漏れを防ぐためにトロカールに提供される。これらの密封機構は多くの場合、トロカールを通過する外科手術器具の外側表面の周りを密封するために、比較的に柔軟な材料で作られたダックビル型弁を備える。
【0007】
ConMed Corporationの完全子会社であるSurgiQuest, Inc.は、例えば米国特許第8,795,223号に記載の通り、従来の機械的弁シールを必要とせずに、送気された外科手術腔にすぐにアクセスできる、独自のガス密封外科手術アクセス装置を開発した。これらの装置は、内側管状体部分および同軸外側管状体部分を含む幾つかのネストされた構成要素から構築される。内側管状体部分は、従来の腹腔鏡外科手術器具を患者の腹腔に導入するための中央ルーメンを画定し、外側管状体部分は、患者の腹腔に送気用ガスを送達するための、かつ腹圧の定期的な感知を容易にするための内側管状体部分を囲む環状ルーメンを画定する。
【0008】
ロボット支援最小侵襲性外科手術も、ますます一般的になってきている。これらの手術を実施するための一つの周知のシステムは、Da Vinciロボット外科手術システムと呼ばれていて、これはカリフォルニア州サニーベールのIntuitive Surgical, Inc.によって製造および販売されている。Da Vinciシステムは、ロボット器具を受容するように、かつロボットアームによって係合されるように適合および構成されている、独自仕様のトロカールまたはカニューレを利用する。独自仕様のDa Vinciカニューレは、例えば米国特許第10,463,395号に開示の通り、ガス密シール組立品などの構成要素を受容するためのボウルを形成する近位ハウジングを有する。Da Vinciガス密シール組立品は、カニューレを通過する外科手術器具の外側表面の周りを密封するために、かつ腹腔からの送気ガスの漏れを防止するために、機械的シールを利用する。
【0009】
機械的シール組立品を必要とせずに、送気された外科手術腔にすぐにアクセスできる、Da Vinciカニューレで使用するシール組立品を提供することが有益であると考えられている。実際に、こうした弁のないシール組立品の最近の一例は、同一出願人による米国特許第11,026,717号に開示されていて、これにはDa Vinciロボットカニューレで使用するガス密封アクセスキャップが記載されている。本件開示は、この以前のガス密封アクセスキャップを改善し、腹腔鏡外科手術を実施するためにアクセスキャップをロボットカニューレで設置および使用する有用な方法を提供する。
【発明の概要】
【0010】
本件開示は、ロボットカニューレで使用する新しい有用なガス密封アクセスキャップを対象とし、これは吸引中および漏出中であっても、一定の曝露のための安定した気腹を提供し、かつ外科医が低い腹腔内圧で自信を持って手術することを可能にし、かつ手術を通して視界を確保するために一定の排煙を提供し、かつ外科手術部位への弁なしのアクセスを提供して無傷の標本摘出を可能にする。
【0011】
本件開示のガス密封アクセスキャップは、ロボットカニューレ内にガス密封ゾーンを生成するために入口ポートを通して加圧ガスを受容する、かつ使用済みガスをガス密封ゾーンから出口ポートまで方向付ける、内部空洞と連通する中央アクセスポートを画定するリッドを有するハウジングを含む。ハウジングの入口ポートおよび出口ポートは、フィルタ付き管セットの加圧ガスラインおよび戻りガスラインと連通するために、ブルズアイコネクタ嵌合部と関連付けられたマニホールドと連通する。
【0012】
中央アクセス管は、ハウジングの中央アクセスポートと整列し、ロボットカニューレの管状部分と連通するために内部空洞から遠位に延在する。ハウジングの遠位端は、ロボットカニューレの近位ボウル部分内の受容のために、中央アクセス管の遠位端を越えて遠位に延在し、一対の直径方向に対向する可撓性クリップは、アクセスキャップをロボットカニューレの近位ボウル部分に取り外し可能に固定するために、ハウジングの外面と一体的に形成されている円周フランジから延在する。
【0013】
環状ジェット組立品は、患者の外科手術腔内に安定した圧力を維持するために、ロボットカニューレ内にガス密封ゾーンを生成するためのハウジングの内部空洞中に支持されている。環状ジェット組立品は、リッドの中央アクセスポートと整列した中央開口を含む。円周方向に離間した半径方向内向きに延在する複数の翼部は、ハウジングと一体的に形成されていて、かつ使用済みガスをガス密封ゾーンからハウジングの出口ポートに方向付けるために、環状ジェット組立品の下の内部空洞内に位置する。
【0014】
円周溝は、Oリングシールを収容するために、直径方向に対向する可撓性クリップの遠位のハウジングの外面に形成されている。円周溝は、複数の離間した翼部の近位に位置する。直径方向に対向する可撓性クリップはそれぞれ、近位部分、中間部分、遠位部分を含む。直径方向に対向する可撓性クリップの近位部分は、互いに平行であり、直径方向に対向する可撓性クリップの遠位部分は、円周溝まで延在し、円周フランジは、円周溝の近位にある。
【0015】
ガス密封アクセスキャップは、ハウジングのリッドと協働的に係合するための近位ハンドル部分を有するオブチュレータと、ハンドルから遠位に延在する、かつ遠位切断チップを有する細長いオブチュレータシャフトとをさらに含む。環状シールは、オブチュレータシャフトがハウジングの中央アクセスポートを通って延在されている時に、中央アクセスチューブの内面に対して密封するために、オブチュレータシャフト上に、その長さに沿った位置で支持されている。
【0016】
本件開示はまた、患者の腹腔内でロボット支援腹腔鏡外科手術を実施する、新規かつ有用な方法を対象とする。方法は、第一のロボットカニューレを、弁密封カニューレキャップがそれに接続された状態で、患者の腹腔の中に挿入する工程と、管セットの単一内腔管部分を弁密封カニューレキャップに接続する工程と、第二のロボットカニューレを、弁密封カニューレキャップがそれに接続された状態で、患者の腹腔の中に挿入する工程と、フィルタ付き管セットの二重内腔管部分をガス密封カニューレキャップに接続する工程とを含む。
【0017】
より具体的に、方法は、ガス送達装置と、ヴェレス針と、弁密封カニューレキャップと、ガス密封カニューレキャップに接続されたオブチュレータを有するガス密封カニューレキャップと、第一のロボットカニューレと、第二のロボットカニューレと、フィルタカートリッジ、単一内腔管部分、二重内腔管部分を含むフィルタ付き管セットとを含む外科手術アクセスシステムを提供することであって、フィルタ付き管セットの二重内腔管部分の遠位端にある嵌合部に、取り外し可能なプラグが最初に取り付けられている、提供することを含む。
【0018】
方法は、フィルタ付き管セットのフィルタカートリッジをガス送達装置の受容ポートの中に挿入する工程と、ガス送達装置の機械的レバーアームを回転させることによってフィルタカートリッジを受容ポート内にロックする工程と、次いでガス送達装置の流量設定および圧力設定が患者にとって適切であることを確認する工程とをさらに含む。
【0019】
方法は、ヴェレス針を患者の腹腔の中に挿入する工程と、フィルタ付き管セットの単一内腔管部分をヴェレス針のコネクタに接続する工程と、次いで、設定された腹腔内圧に達するまで、ヴェレス針を通して腹腔に送気する工程とをさらに含む。
【0020】
方法は、ガス密封カニューレキャップをオブチュレータとともに第二のロボットカニューレに接続する工程と、第一のロボットカニューレを、バルブ密封カニューレキャップがそれに接続された状態で、患者の腹腔の中に挿入する工程と、次いで第二のロボットカニューレを、ガス密封カニューレキャップがそれに接続された状態で、患者の腹腔の中に挿入する工程とをさらに含む。
【0021】
方法は、フィルタ付き管セットの二重内腔管部分の遠位端にある嵌合部からプラグを取り外す工程と、次いでフィルタ付き管セットの二重内腔管部分の嵌合部をガス密封カニューレキャップのコネクタに接続する工程とをさらに含む。方法は、管セットの単一内腔管部分をヴェレス針から切り離す工程と、次いで管セットの単一内腔管部分を弁密封カニューレキャップのコネクタに接続する工程であって、その後にガス送達装置が、管セットの二重内腔部分によってガス密封カニューレを通して加圧ガスの循環を開始することになり、ガス送達装置が較正プロセスを実行することになる、接続する工程とをさらに含む。その後、オブチュレータはガス密封カニューレキャップから取り外される。
【0022】
ロボット支援腹腔鏡外科手術の終了後、方法は、ガス密封カニューレキャップ内のオブチュレータを交換する工程を伴う。こうした時点で、ガス送達装置による加圧ガスの循環が停止され、方法は、管セットの二重内腔部分をガス密封カニューレキャップのコネクタから切り離す工程を含む。
【0023】
本件開示の装置、システム、方法のこれらおよび他の特徴は、図面と併せてなされる開示された実施形態の以下の詳細な説明から、より容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
当業者が必要以上の実験無しに、本件開示のガス密封アクセスキャップを製造および使用する方法を容易に理解するように、その実施形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0025】
図1図1は、本件開示のガス密封アクセスキャップが用いられたロボット外科手術システムを包含する手術室の図である。
図2図2は、本件開示のガス密封アクセスキャップ、ならびにそれらと併せて使用される弁密封アクセスキャップと動作可能に関連付けられたフィルタ付き管セットの斜視図である。
図3図3は、外科手術ガス送達装置内に設置された、図2に示すフィルタ付き管セットの図であり、本件開示のガス密封アクセスキャップおよび二つの弁密封アクセスキャップは、図1に描写されたそれぞれのロボットマニピュレーターアームによって支持されていて、患者の腹腔の中に挿入されている。
図4図4は、ロボットカニューレの近位ボウル部分から分離された本件開示のガス密封アクセスキャップの斜視図である。
図5図5は、ロボットカニューレの近位ボウル部分内に設置されて示されている、ガス密封アクセスキャップから分離されたオブチュレータの斜視図である。
図6図6は、ロボットカニューレの近位ボウル部分内に設置されている、ガス密封アクセスキャップ内に設置されたオブチュレータの斜視図である。
図7図7は、図示しやすいように部品が分離された、本件開示のガス密封アクセスキャップの分解斜視図である。
図8図8は、本件開示のガス密封アクセスキャップのコネクタマニホールドの拡大側面図である。
図9図9は、図7の線9-9に沿って切り取った、ガス密封アクセスキャップのハウジングの断面図である。
図10図10は、図6の線10-10に沿って切り取った部分断面図である。
図11図11は、外科手術ガス送達装置に挿入されているフィルタ付き管セットの図である。
図12図12は、機械的レバーを回転させることによって所定位置にロックされているフィルタ付き管のフィルタカートリッジの図である。
図13図13は、動作モード、ガス流、腹腔内圧に対する適切な設定を確認する能力をユーザーに提供する、外科手術ガス送達装置のグラフィカルユーザーインターフェース画面を図示する。
図14図14は、動作モード、ガス流、腹腔内圧に対する適切な設定を確認する能力をユーザーに提供する、外科手術ガス送達装置のグラフィカルユーザーインターフェース画面を図示する。
図15図15は、ロボットカニューレの近位ボウル部分におけるガス密封アクセスキャップの接続を図示し、ここで、聞こえるクリック音が生成されて、安定した接続を確実にする。
図16図16は、患者の腹腔の中への従来のヴェレス針の挿入を図示する。
図17図17は、図16に示すヴェレス針のストップコック弁への送気管の接続を図示する。
図18図18は、腹腔の送気を開始する能力をユーザーに提供する、外科手術ガス送達装置のグラフィカルユーザーインターフェース画面を図示する。
図19図19は、設定された腹腔内圧に達したことをユーザーに通知する外科手術ガス送達装置のグラフィカルユーザーインターフェース画面を図示し、その後にカニューレは腹腔の中に挿入されてもよく、管セットは、オブチュレータが所定位置にある状態で、カニューレに接続されることができる。
図20図20は、本件開示のガス密封アクセスキャップがロボットカニューレにしっかりと取り付けられた状態での、患者の腹腔の中へのロボットカニューレの挿入を図示する。
図21図21は、管セットの二重内腔部分がガス密封アクセスキャップのブルズアイコネクタに取り付けられることができるように、管セットの二重内腔嵌合部からのプラグの取り外しを図示する。
図22図22は、ロボットカニューレに取り付けられた弁密封アクセスキャップのルアー嵌合部へのフィルタ付き管セットの送気管の接続を図示する。
図23図23は、ガス送達装置がガス密封使用モードへと自動的に起動していることをユーザーに示す、外科手術ガス送達装置のグラフィカルユーザーインターフェース画面を図示し、その後にシステムはオブチュレータが所定位置にある状態で較正することになる。
図24図24は、較正が完了した際の外科手術ガス送達装置のグラフィカルユーザーインターフェース画面を図示し、その後にガス密封使用モードがアクティブと宣言され、オブチュレータをガス密封アクセスキャップから取り外すことができる。
図25図25は、較正が完了した後のガス密封アクセスキャップからのオブチュレータの取り外しを図示する。
図26図26は、ガス密封使用モードを停止する能力をユーザーに提供する外科手術ガス送達装置のグラフィカルユーザーインターフェース画面を図示し、その後に腹腔内圧の喪失を防止するため、フィルタ付き管セットからアクセスキャップを切り離す前に、オブチュレータを交換することができる。
図27図27は、外科用ガス送達装置が最終較正を行うことになることを示す、外科用ガス送達装置のグラフィカルユーザーインターフェース画面上のメッセージを図示し、その後、ガス送達装置の電源を切ることができ、フィルタ付き管セットをガス送達装置およびカニューレから取り外すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで図面を参照すると、ロボット外科手術システム10およびマルチモーダルガス送達装置20を包含する外科手術室が図1に図示されていて、これとともに、患者に腹腔鏡外科手術を実施するために本件開示の新規ガス密封アクセスキャップ30が用いられている。
【0027】
図1に図示したロボット外科手術システム10は、Da Vinciロボット外科手術システムとして描写されていて、これはカリフォルニア州サニーベールのIntuitive Surgical, Inc.によって製造および販売されている。システムは基本的に、外科医が患者に外科手術を遠隔で実施するために座るコンソール12と、コンソール12から外科医によって制御される四つのインタラクティブ型ロボットアーム16a~16dを有する患者側カート14とを含む。
【0028】
図1に示すマルチモーダルガス送達装置20は、iFSインテリジェントフローシステムとして図示されていて、これはフロリダ州ラーゴのConmed Corporationによって製造および販売されている。こうした装置の一例は、米国特許第9,526,849号に開示されていて、その開示は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。ガス送達装置20は、外科医が外科手術中に内視鏡によってコンソール12で腹腔内の何を見ているかを手術室スタッフが見ることを可能にするためのモニタ画面24を有するモバイルタワーカート22において支持されている。ガス送達装置20は、外科手術中に、患者の腹腔に送気して腹腔内圧を測定し、安定した気腹を維持して腹腔への弁なしの器具のアクセスを容易にし、腹腔からの煙排出を容易にするために、複数のモードで動作するように適合および構成されている。
【0029】
ここで図2および図3を参照すると、本件開示のガス密封アクセスキャップ30が、フィルタ付き管セット40および弁密封アクセスキャップ60と併せて示されている。ガス密封アクセスキャップ30および弁密封アクセスキャップ60はそれぞれ、それぞれのロボットカニューレ35cおよび35aに動作可能に接続されている。これらはDa Vinci Xi/X型ロボットカニューレである。一例は米国特許第10,463,395号に開示されていて、これはIntuitive Surgical Operation Inc.に譲渡されていて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。弁密封アクセスキャップ60もまた、Intuitive Surgical, Inc.によって製造されている。弁密封アクセスキャップの同様の例は、米国特許第10,463,395号に開示されている。
【0030】
図2に示すフィルタ付き管セット40は、ガス送達装置20の受容ポート27の中への挿入のために寸法設定かつ構成された使い捨てフィルタカートリッジ42を含む。回転可能なレバーアーム25は、フィルタカートリッジ42を受容ポート27内にロックするために使用されている。フィルタカートリッジ42は、後端キャップ44と前端キャップ46の間に延在する、複数の内部フィルタ付き流路(図示せず)を画定する概して円筒状のハウジング45を含む。このタイプのフィルタカートリッジは、同一出願人による米国特許第9,067,030号に開示されていて、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる。フィルタカートリッジの内部フィルタ付き流路は、その中に図示および記載されている。
【0031】
送気および感知内腔または管48、ガス供給内腔または管50、およびガス戻り内腔または管52は、フィルタカートリッジ42の前端キャップ46上のマニホールド54から延在する。本開示の一実施形態において、送気内腔48は透明な管から成り、その一方でガス供給管50およびガス戻り管52は色付き管から成る。これは、手術室内でこれらの管を互いに視覚的に区別するのに役立つ。送気および感知内腔48は、弁密封アクセスキャップ60のルアーコネクタ58と嵌合するための標準的なルアー嵌合部56をその遠位端に有する。ガス供給内腔50およびガス戻り内腔52は、ガス密封アクセスキャップ30上のマルチ内腔ブルズアイコネクタ96と嵌合するために、共通のマルチ内腔ブルズアイ嵌合部62に遠位に延在する(図8を参照)。
【0032】
ブルアイ嵌合部62は、同一出願人による米国特許第9,526,886号に開示された三重内腔型のものであり、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。ブルアイ嵌合部62は、嵌合部の三つのガス流路のうちの二つのみがガス流に利用されるという点で、米国特許第9,526,886号に開示された三重内腔嵌合部と多少異なる。より具体的に、嵌合部62のガス送達およびガス戻り通路が利用される。残りの未使用の流路は、図3で最もよく分かる通り、製造中に意図的に塞がれている。ガス送達装置20は、この差異を認識するようにプログラムされている。
【0033】
しかしながら、例えば同一出願人による米国特許第10,736,657号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示の通り、嵌合部62は、二つのガス流路のみを有する二重内腔ブルズアイ嵌合部として構築されうることが想定されていて、本件開示の範囲内である。同一出願人による米国特許第11,065,430号(これもまた参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に開示されているタイプなど、他のタイプの二重内腔嵌合部およびコネクタも使用することができる。
【0034】
図3に図示の通り、患者側カート14のロボットアーム16a~16cは、ロボット支援腹腔鏡外科手術中に、それぞれのロボットカニューレ35a~35cを把持および操作するために使用されている。より具体的に、第一のロボットアーム16aは、ルアー嵌合部56によって管セット40の送気および感知内腔48に接続された弁密封アクセスキャップ60aに関連付けられている第一のロボットカニューレ35aを把持していることが示されている。第二のロボットアーム16bは、第二の弁密封アクセスキャップ60bに関連付けられている第二のロボットカニューレ35bを把持していることが示されていて、第三のロボットアーム16cは、本件開示のガス密封アクセスキャップ30に関連付けられた第三のロボットカニューレ35cを把持していることが示されている。ガス密封アクセスポート30は、ブルズアイ嵌合部62によってガス供給内腔50およびガス戻り内腔52に接続されている。
【0035】
図3のこの例示的な図において、内腔48に接続された第一の弁密封アクセスキャップ60aは、患者の腹腔の送気のために、かつガス送達装置20が腹腔内圧を定期的に感知することを可能にするために使用されている。この弁の第一の密封アクセスキャップはまた、器具へのアクセスのために使用されることができる。第二の弁密封アクセスポート60bは、腹腔鏡Aに腹部アクセスを提供するために使用されていて、内腔50および52に接続されたガス密封アクセスポート30は外科手術中に、安定した気腹を維持するために、かつ外科手術器具Bに弁なしのアクセスを提供するために、かつ腹腔からの煙排出を可能にするために使用されている。当業者であれば、図3に示すロボットカニューレおよび外科手術器具のサイズ、配向、および/または配置が、患者の解剖学的構造、および実施される外科手術に応じて変化しうることを容易に理解するであろう。
【0036】
ここで図4~6を参照すると、本件開示のガス密封アクセスキャップ30が、ロボットカニューレ35およびオブチュレータ70と併せて示されている。オブチュレータ70は、外科手術中にロボットカニューレ35を患者の腹腔の中に経皮的に導入することを容易にするように適合および構成されている。これは典型的に、腹壁の小さい切開を通して視覚下で外科医によって行われる。
【0037】
ロボットカニューレ35(すなわち、Da Vinci X/Xiロボットカニューレ)は、概して円筒状の近位ボウル部分32と、近位ボウル部分32から遠位に延在する細長い管状本体部分34とを含む。近位ボウル部分32は、ガス密封アクセスキャップ30を受容するように寸法設定および構成されている内部ボウル領域37を含む。把持ハンドル36は、図3に示す通り、ロボットアーム16a~16dによるカニューレ35の操作を容易にするために、近位ボウル部分32の外壁から半径方向外向きに延在する。環状係合フランジ38は、カニューレ35の近位ボウル部分32の上端に形成されている。係合フランジ38は、図5および図6に示す通り、アクセスキャップ30と一体的に形成されている、一対の直径方向に対向するカンチレバー可撓性係合クリップ102および104と協働する。係合クリップ102、104、およびそれらがフランジ38と協働し、解放可能に係合する方法は、図9および10を参照して以下でより詳細に説明される。
【0038】
アクセスキャップ30がロボットカニューレ35の近位ボウル部分32の内部ボウル領域37の中に挿入されている時に、図4に描写の通り、アクセスキャップ30の外面上に着座された環状Oリングシール118は、ボウル領域37の内面と密封係合することになる。この密封インターフェースも、図9および図10を参照して以下でより詳細に説明される。
【0039】
引き続き図5および図6を参照すると、オブチュレータ70は、同一出願人による米国特許第9,545,264号に開示されたタイプのものであり、その開示の全体が参照によって本明細書に組み込まれる。オブチュレータ70は、ハウジングのリッド84の一対の直径方向に対向する凹部83と協働的に係合するための、一対の直径方向に対向するばね付勢された留め金73a、73bを有する近位ハンドル部分72を有する(図10を参照)。
【0040】
細長い管状オブチュレータシャフト74は、オブチュレータ70のハンドル部分72から遠位に延在する。シャフト74は、挿入中の可視化のために、その遠位端に透明な光学切断チップ76を有する。環状シール78は、アクセスキャップ30の内面と相互作用するために、オブチュレータシャフト74上に、その長さに沿った位置で支持されていて、これは図10を参照して以下でさらに詳細に説明される。オブチュレータ70の近位ハンドル部分72は、中央ポート75を画定する(図25を参照)。ハンドル部分72の中央ポート75は、細長いオブチュレータシャフト74を通って遠位光学切断チップ76まで延在する中央穴77と連通する(図5を参照)。シャフト74の中央穴77は、患者の腹壁を通した挿入中の切断チップ76を通した視覚化のための剛直なスコープを収容するように寸法設定および構成されている。
【0041】
ここで図7図10を参照すると、ガス密封アクセスキャップ30は、軽量の医療グレードの熱可塑性材料から射出成形プロセスで形成された概して円筒状のハウジング82を含む。材料は透明、半透明、または不透明とすることができる。アクセスキャップ30のハウジング82は、中央アクセスポート86を画定するカバーまたはリッド84によって囲まれている内部空洞88を有する。図6において前に示した通り、直径方向に対向する凹部83がリッド84に形成されていて、オブチュレータハウジング72上の直径方向に対向するばね付勢された留め金73aおよび73bと協働する。
【0042】
ハウジング82の内部空洞88は、入口ポート90を通してガス送達装置20のポンプから加圧ガスを受容する。加圧ガスは、ロボットカニューレ35内にガス密封ゾーンを生成するために使用されている。ガス密封ゾーンは、安定した気腹を維持し、カニューレ35を通した腹腔への弁なしのガス密封器具のアクセスを容易にする。ロボットカニューレ35内にガス密封ゾーンを作り出すために使用された使用済みガスは、ハウジング82の内部空洞88から出口ポート92まで方向付けられていて、再循環のために、フィルタカートリッジ42によってガス送達装置20に戻る。
【0043】
図7および図8を参照すると、ハウジング82の入口ポート90および出口ポート92は、管セット40のブルズアイ嵌合部62と連通するように設計されているマルチ内腔ブルズアイコネクタ96に関連付けられたマニホールド94と連通する。ブルズアイコネクタ96およびそれが嵌合部62と協働する方法は、同一出願人による米国特許第9,526,886号により詳細に記載されている。
【0044】
図7で最もよく分かる通り、2ピースの環状ジェット組立品110は、患者の外科手術腔内に安定した圧力を維持するために、ロボットカニューレ35内にガス密封ゾーンを生成するためのアクセスキャップ30のハウジング82の内部空洞88に密封的に支持されている。環状ジェット組立品110は、同一出願人による米国特許第9,907,569号に開示されたタイプのものであり、その開示の全体が参照により本明細書に組み込まれる。ジェット組立品110は、リッド84の中央アクセスポート86と整列した中央開口112を含む(図10を参照)。発泡材料から作製された音減衰ディスク87は、リッド84と環状ジェット組立品110の間のハウジング82内に位置付けられている。発泡体ディスク87は、ガス密封ゾーンを生成するジェット組立品110から生じうるノイズをフィルタリング、減衰、またはそうでなければ低減するように機能する。
【0045】
ここで図9および図10を参照すると、円周方向に離間した半径方向内向きに延在する複数の翼部またはフィン114は、ハウジング82と一体的に形成されていて、その内部空洞88内に、環状ジェット組立品110の下に位置する。これらの翼部114は、使用済みガスをカニューレ35のガス密封ゾーンからハウジング82の出口ポート92に方向付けるように適合および構成されている。翼部またはフィン114の配置は、同一出願人による米国特許第8,795,223号に開示された翼部の配置と類似していて、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。しかしながら、その特許において、円周方向に離間した翼部は、アクセスキャップ30のハウジング82と一体的に形成されているのではなく、別個の入れ子インサート内に形成されている。
【0046】
中央アクセス管98は、内部空洞88の下部分内の円周方向翼部114の配置から遠位に延在し、ハウジング82のリッド84の中央アクセスポート86、およびジェット組立品110の中央開口112と整列している。図10で最もよく分かる通り、中央アクセス管98は、ロボットカニューレ35の内部ボウル領域37および管状本体部分34の中央穴と連通する。図9で最もよく分かる通り、アクセスキャップ30のハウジング82の遠位端は、中央アクセス管98の遠位端を越えて遠位に延在する。
【0047】
ハウジング82の遠位端と中央アクセス管98の遠位端の間の寸法関係は、二つの構成要素が一緒に接続されている時に、ガス密封アクセスキャップ30がロボットカニューレ35の近位ボウル部分32内に適切に着座されることになることを確実にする。上述の通り、環状シール78は、オブチュレータ70のオブチュレータシャフト74上に、その長さに沿った位置で支持されている。より具体的に、環状シール78は、図10に示す通り、内面中央アクセス管98に対して、その遠位端に隣接して密封するように位置する。これは、較正中またはガス密封モードがアクティブでない時など、外科手術中の特定の時点でのガス密封アクセスキャップ30を通した送気ガスの流出を防止する。
【0048】
上述の通り、一対の直径方向に対向するカンチレバー可撓性係合クリップ102および104は、ロボットカニューレ35の近位ボウル部分32の上部で環状フランジ38を取り外し可能に係合するために、アクセスキャップ30のハウジング82と一体的に形成されている。より具体的に、係合クリップ102および104は、アクセスキャップ30のハウジング82の外面から半径方向外向きに延在する円周フランジ106と一体的に形成されていて、かつ円周フランジ106に動作可能に接続されている。
【0049】
二つの係合クリップ102、104はそれぞれ、近位部分102a、104a、中間部分102b、104b、遠位部分102c、104cを含む。可撓性クリップ102、104の近位部分102a、104aは、互いに平行に延在し、かつクリップ102、104をフランジ38から解放するために、またはそうでなければ係合解除するために、ユーザーによって内向きに押されるか、または屈曲されることができる外側把持表面を有する。中間部分102b、104bは、ハウジング82に向かって内向きに角度付けられていて、遠位部分102c、104cへの移行を提供する。クリップ102、104の遠位部分102c、104cは、一体型円周フランジ106のそれぞれの半径方向外向きに延在する対向する横方向ブリッジと一体的に形成されている。クリップ102、104の遠位部分102c、104cの遠位端は、半径方向内向きに曲がっていて、機械的に保持する様態で環状フランジ38の下で取り外し可能に係合する、直径方向に対向する足部102d、104dを形成し、これは図10で最もよく分かる。
【0050】
前述の通り、アクセスキャップ30がロボットカニューレ35の近位ボウル部分32の内部ボウル領域37に挿入されている時に、アクセスキャップ30の外面上に着座された環状Oリングシール118は、ボウル領域37の内面と密封係合することになる。Oリングシール118は、図9で最もよく分かる通り、ハウジング82の外面に形成された円周溝116内に着座されている。Oリングシール118は、可撓性クリップ102、104の対向する足部102d、104dの遠位に位置する。これは、Oリングシール118が、ロボットカニューレ35の近位ボウル部分32の内部ボウル領域37の内壁に対して適切に着座されていることを確実にし、これは図10で最もよく分かる。
【0051】
ここで図11~27を参照すると、本件開示によるロボット支援腹腔鏡外科手術を実施するために、方法は、ガス送達装置20、標準的なヴェレス針120、ガス密封アクセスキャップ30、弁密封アクセスキャップ60に接続されたオブチュレータ70を有する弁密封アクセスキャップ60、第一のロボットカニューレ35a、第二のロボットカニューレ35b、ならびにフィルタカートリッジ42と、気腹/感知内腔48を含む単一内腔部分と、ガス供給内腔50およびガス戻り内腔52を含む二重内腔部分とを含むフィルタ付き管セット40を含む外科手術アクセスシステムを提供することを含む。取り外し可能なプラグ85は、図21で最もよく分かる通り、二重内腔部分50、52の遠位端にある嵌合部62に取り付けられている。
【0052】
方法は、図11に示す通り、フィルタ付き管セット40のフィルタカートリッジ42をガス送達装置20の受容ポート27の中に最初に挿入することと、次いで、図12に示す通り、ガス送達装置20の機械的レバーアーム25を回転させることによって、フィルタカートリッジ42を受容ポート27内にロックすることとを含む。こうした時点で、図13に描写の通り、ユーザーはガス送達装置20のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)画面26を参照して、ガス送達装置20の流量設定(L/分)および圧力設定(mmHg)が患者にとって適切であることを確認する。ガス送達装置20は、異なる流量および圧力設定を有する小児モードまたは成人モードで動作することができる。設定が正しい場合、図14に示す通り、ユーザーは確認ボタンを押すことになる。
【0053】
方法は、図15に示す通り、ガス密封アクセスキャップ30をオブチュレータ70とともにロボットカニューレ35に接続する工程をさらに含む。カニューレキャップ30とカニューレ35の間の安定した接続を確実にするために、聞こえるクリック音が生成される。この聞こえるクリック音は、可撓性係合クリップ102、104、およびカニューレ35の環状フランジ38の機械的相互作用によって生成されることになる。
【0054】
方法は、図16に示す通り、ヴェレス針120を患者の腹腔の中に経皮的に挿入する工程と、次いで、図17に示す通り、フィルタ付き管セット40の嵌合部56の単一内腔管部分48をヴェレス針120のルアーコネクタ122に接続する工程とをさらに含む。その後、ガス送達装置20のGUI画面26は、装置準備完了を示し、ユーザーは、図18に示す通り、開始ボタンを押して、ヴェレス針120を通した腹腔の初期送気を開始する。設定された腹腔内圧に達した時(例えば、8mmHg)、図19に図示の通り、ユーザーが管セット40の二重内腔部分50、52をガス密封カニューレキャップ30に安全に接続できることを示すメッセージがGUI画面26上に表示されることになる。こうした時点で、二重内腔部分50、52の遠位端にあるブルズアイ嵌合部62上のプラグ85を取り外すことができる。
【0055】
方法は、ロボットカニューレ35aを、弁密封カニューレキャップ60がそれに接続された状態で、患者の腹腔の中に挿入する工程(図22を参照)と、次いで、図20に示す通り、ロボットカニューレ35を、それに接続されたオブチュレータ70を使用して、ガス密封カニューレキャップ30を用いて患者の腹腔の中に挿入する工程とをさらに含む。次に、図21に示す通り、フィルタ付き管40のセットの二重内腔部分50、52に関連付けられたブルズアイ嵌合部62が、ガス密封カニューレキャップ30のコネクタ96上に挿入され、かつそれと回転可能に係合される。当業者であれば、手術に伴うすべての弁密封カニューレが定置された後に、ガス密封カニューレを最後に挿入すべきであることを容易に理解するであろう。これは、ガス密封カニューレキャップ30を有するカニューレの挿入中に最も硬い腹壁を可能にする。
【0056】
弁密封カニューレキャップ60を有するカニューレ35aが定置されると、管セット40の単一内腔管部分48の遠位端にある嵌合部56は、ヴェレス針120から切り離され、次いで、図22に示す通り、弁密封カニューレキャップ60のルアーコネクタに回転可能に接続されている。その後、ガス送達装置20は、管セット40の二重内腔部分50、52によってガス密封カニューレ30を通した加圧ガスの循環を自動的に開始することになり、ガス送達装置20は較正プロセスを実行することになる。
【0057】
図23は、ガス送達装置20がガス密封使用モードを自動的に開始しているか、またはそうでなければガス密封使用モードへと起動していることをユーザーに示す、外科手術ガス送達装置20のグラフィカルユーザーインターフェース画面26を図示し、その後にシステムはオブチュレータ(例えば、オブチュレータ70)が所定位置にある状態で較正することになる。この時点で、オブチュレータシャフト74上のシール78は、アクセスキャップ30を通した送気ガスの流出を防止する。外科手術ガス送達装置20のグラフィカルユーザーインターフェース画面26は、図24に描写の通り、較正が完了すると、ガス密封使用モードがアクティブであることを示すメッセージを提供することになる。次に、ユーザーは、図25に示す通り、ガス密封カニューレキャップ30からオブチュレータ70を取り外し、ロボット支援腹腔鏡外科手術を開始することができる。
【0058】
ロボット支援腹腔鏡外科手術が終了すると、方法は、ガス密封カニューレキャップ30内のオブチュレータ70を交換する工程を伴う。こうした時点で、ガス送達装置20による加圧ガスの循環は停止され、管セット40の二重内腔部分50、52の遠位端にある嵌合部62が、ガス密封カニューレキャップ30のコネクタ96から切り離される。
【0059】
図26は、ガス密封使用モードを停止する能力をユーザーに提供する外科手術ガス送達装置20のグラフィカルユーザーインターフェース画面26を図示し、その後に、腹腔内圧の喪失を防止するために、カニューレ35をフィルタ付き管セット40から切り離す前に、オブチュレータ70をアクセスキャップ30、60内で交換することができる。図27に示すGUIは、システムが最終的な較正を行うことになることを図示し、その後、ガス送達装置20の電源を切ることができ、フィルタ付きチューブセット40をガス送達装置20からラッチ解除して取り外すことができる。その後に、ロボット支援腹腔鏡手術は終了することになる。
【0060】
本件開示は好ましい実施形態を参照して示され、記述されてきたが、当業者であれば、本件開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、それに変更および/または修正がなされうることを容易に理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【国際調査報告】