(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】工作機械上でワークピースをクランプするための装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20240719BHJP
B25B 5/02 20060101ALI20240719BHJP
B25B 5/06 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B23Q3/06 302C
B23Q3/06 304K
B25B5/02
B25B5/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505369
(86)(22)【出願日】2022-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 IB2022056412
(87)【国際公開番号】W WO2023007291
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021000020684
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518204969
【氏名又は名称】ハイドロブロック エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ザンニ,ダヴィデ
【テーマコード(参考)】
3C016
3C020
【Fターム(参考)】
3C016CA01
3C016CB02
3C016CC01
3C016CC04
3C016EA00
3C020CC02
3C020FF00
(57)【要約】
工作機械上にワークピースをクランプするための装置(1)は、加圧流体を含有する流体作動シリンダ(3,4,5)が設けられた基礎体(2)と、中間部分(8)、第1の端部(9)、及び第2の端部(10)を有するステム(8,9,10)と、第1の端部(9)と関連付けられ、ホーム位置及び作業位置間を移動可能なクランプブラケット(19,20)と、作業位置に到達するよう制御するための第1の制御アセンブリ(25)と、ホーム位置に到達するよう制御するための第2の制御アセンブリ(36)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械上にワークピースをクランプするための装置(1)であって、
工作機械(M)に固定可能で、加圧流体を含有する流体作動シリンダ(3,4,5)が設けられた、少なくとも1つの基礎体(2)と、
主軸(A)に沿って延在し、加圧下での前記流体の推力により前記主軸(A)に沿って摺動的に前記流体作動シリンダ(3,4,5)に部分的に挿入される、少なくとも1つのステム(8,9,10)であって、前記流体作動シリンダ(3,4,5)の内部に配置された少なくとも1つの中間部分(8)及び前記流体作動シリンダ(3,4,5)から延在する第1の端部(9)を備える、少なくとも1つのステム(8,9,10)と、
前記工作機械(M)上で加工されるワークピース(P)をクランプするための前記ステム(8,9,10)の前記第1の端部(9)に関連付けられた、少なくとも1つのクランプブラケット(19,20)であって、少なくとも、
該クランプブラケット(19,20)が前記基礎体(2)から離間して配置されているホーム位置と、
該クランプブラケット(19,20)が前記ワークピース(P)をクランプするために前記基礎体(2)に接近するよう移動した作業位置と、
の間で移動可能であるクランプブラケット(19,20)と、
前記作業位置に到達するよう制御するための、少なくとも第1の制御アセンブリ(25)であって、
前記ステム(8,9,10)の前記第1の端部(9)に関連付けられた少なくとも第1のプローブ要素(26,27)と、
前記基礎体(2)に関連付けられ、前記作業位置における前記第1プローブ要素(26,27)との接触を検出するよう構成された、少なくとも第1の接触センサ(28)と、
を備える、少なくとも第1の制御アセンブリ(25)と、
を備え、
前記ステム(8,9,10)が、前記第1の端部(9)に対して反対側に、前記流体作動シリンダ(3,4,5)から延在する少なくとも第2の端部(10)を備えており、
前記装置(1)が、前記ホーム位置に到達するよう制御するための、少なくとも第2の制御アセンブリ(36)を備え、該第2の制御アセンブリ(36)は、
前記ステム(8,9,10)の前記第2の端部(10)に関連付けられた、少なくとも第2のプローブ要素(42)と、
前記基礎体(2)に関連付けられ、前記ホーム位置における前記第2のプローブ要素(42)との接触を検出するよう構成された、少なくとも第2の接触センサ(38)と、
を備える、
ことを特徴とする、装置(1)。
【請求項2】
前記基礎体(2)に関連付けられた、前記第2の制御アセンブリ(36)の被覆・保護筐体(40)を備える、
ことを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記被覆・保護筐体(40)が、内容積(V3)を画定するカップ状の要素(41)を備え、前記第2のプローブ要素(42)は、前記内容積(V3)の内部で移動可能である、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記第2のプローブ要素(42)が、少なくとも1つのプローブブラケット(37)を備え、該プローブブラケット(37)は、前記主軸(A)に対して略横方向(D1)に沿って前記第2の端部(10)から片持ち状に延在し、前記ホーム位置で前記第2の接触センサ(38)に接触するよう構成されている、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記第1のプローブ要素(26,27)が、
前記第1の端部(9)から前記主軸(A)に対して略横方向(D1)に沿って片持ち状に延在する補助ブラケット(26)と、
前記補助ブラケット(26)に関連付けられ、前記主軸(A)と略平行方向に沿って延在し、前記作業位置において前記第1の接触センサ(28)に接触するよう構成された、プローブピン(27)と、
を備える、
ことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項6】
回転移動手段(14,15,16)をさらに備え、
前記回転移動手段(14,15,16)は、前記流体作動シリンダ(3,4,5)と前記ステム(8,9,10)との間に位置し、
前記回転移動手段(14,15,16)は、前記ステム(8,9,10)の運動を、
前記ステム(8,9,10)が前記主軸(A)に沿って摺動し、前記主軸(A)の周りを所定の回転角度(α)だけ回転する、少なくとも第1の回転移動伸長(12)と、
前記ステム(8,9,10)が回転せずに前記主軸(A)に沿って摺動する、少なくとも第2の並進伸長(13)と、
に分割するよう構成された、
ことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記回転移動手段(14,15,16)が、
前記ステム(8,9,10)又は前記流体作動シリンダ(3,4,5)のいずれかの少なくとも一方に形成され、略螺旋状の第1のセクション(17)及び略直線状の第2のセクション(18)を有する、少なくとも1つの溝(14)と、
前記ステム(8,9,10)又は前記流体作動シリンダ(3,4,5)のいずれかの他方に取り付けられ、前記溝(14)の内側に摺動的に挿入される、少なくとも1つの係合要素(15)と、
を備え、
前記第1のセクション(17)に沿った前記係合要素(15)の摺動により、前記第1の伸長(12)に沿った前記ステム(8,9,10)の運動が行われ、前記第2のセクション(18)に沿った前記係合要素(15)の摺動により、前記第2の伸長(13)に沿った前記ステム(8,9,10)の運動が行われる、
ことを特徴とする、請求項6に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記回転移動手段(14,15,16)が、前記係合要素(15)を前記溝(14)の内側に押し込むよう構成された弾性オフセット手段(16)を備える、
ことを特徴とする、請求項7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記クランプブラケット(19,20)が中間位置を備え、
該中間位置において、前記クランプブラケット(19,20)は、前記第1の伸長(12)に沿った前記ステム(8,9,10)の運動の結果として、前記ホーム位置に対して、前記基礎体(2)に接近するよう回転移動され、
前記作業位置において、前記クランプブラケット(19,20)は、前記第2の伸長(13)に沿った前記ステム(8,9,10)の運動の結果として、前記中間位置に対して、前記基礎体(2)にさらに接近して移動される、
ことを特徴とする、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記第1の接触センサ(28)及び前記第2の接触センサ(38)は、前記主軸(A)を通る同一平面(G)上に配置され、
前記補助ブラケット(26)及び前記プローブブラケット(37)は、前記方向(D1,D2)に沿って延在し、前記方向(D1,D2)は、前記主軸(A)に対して略横方向であり、所定の前記回転角度(α)とほぼ等しい角度だけ互いをずらして配置されている、
ことを特徴とする、請求項4乃至9のいずれか一項に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械上でワークピースをクランプするための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、工作機械での加工を必要とする機械工作物の大量生産では、高度に自動化されたシステムが広く使用されている。該システムでは、1つ以上の工作機械が加工制御ユニットによって電子的に制御され、1つ以上の擬人化されたロボットが工作機械で加工される工作物を運び、油圧式又は空気圧式の特殊な締結システムがワークピースを引き継いで、所定の位置にクランプして加工できるようになっている。
【0003】
加工が完了すると、前述の締結システムが加工されたワークピースをリリースし、ロボットによって再び移動する。
【0004】
ある特定のタイプの締結システムは、ブラケットで構成されている。このブラケットは、油圧又は空気圧駆動により、回転軸の周りの回転モード又は同回転軸に沿った摺動モードで移動可能である。
【0005】
ブラケットは、流体作動シリンダに部分的に挿入された油圧/空気圧アクチュエータのステムに片持ち状に取り付けられている。
【0006】
ステムとシリンダの間には、回転移動手段が設けられている。言い換えれば、ステム、ひいては、その上に取り付けられたブラケットを回転移動させる特殊な拘束手段が設けられている。
【0007】
このような締結システムは、加工するワークピースに非常に大きなクランプ力を掛けることができるように構成されていなければならない。
【0008】
こうしたニーズは、例えば自動車産業において特に高まっている。同産業では、生産サイクルを最適化し続ける必要性があり、その結果、非常に高い速度で作動するツールが使用され、非常に大きな力と振動がワークピースにかかるため、これらを締結システムによって相殺しなければならない。
【0009】
さらに、自動車分野では、アルミニウムなどの特に軽量な材料の使用がますます一般的になっているが、工作機械での加工時において、鋳鉄や鋼などの材料と同等の強度を確保することができない。
【0010】
したがって、ワークピースクランプブラケットは、非常に大きな力を発揮することに加えて、加工対象のワークピースが新たに工作機械に取り付けられるたびに、所定のポイントで、非常に正確に、再現性のある方法で、工作機械にワークピースを載置する必要がある。それができない場合、実際には、ブラケットによって加えられる大きな力により、ワークピースが変形する可能性があり、機械加工の品質が損なわれ、許容範囲に収まらないワークピースとなるリスクが生じる。
【0011】
この点で、高度な自動化を備えたシステムでは、ワークピース締結システムを含む各コンポーネントの動作信頼度は、通常、非常に高いものである。
【0012】
それにもかかわらず、機械加工される機械的なワークピースが正しく正確に配置されず、締結システムがワークピースを完全に固定できない(又は固定しても、間違った位置に固定してしまう)場合があり、加工作業全体の品質が損なわれ、ワークピース及び/又は工作機械及び/又は締結システムが損傷する危険性がある。
【0013】
同様の問題は、機械加工プロセスの最後にワークピースを取り外す際にも発生する可能性がある。実際、締結システムが加工されたワークピースを完全かつ正確にリリースしなかった場合、ワークピースハンドリングロボットは完全リリースされきれなかったワークピースをピックアップし(又はピックアップを試みて)、ワークピース及び/又は締結システム及び/又はロボット自体に深刻な損傷を与える危険性がある。
【0014】
これに関連して、高度に自動化されたプラントでは、機械加工の停止を引き起こす誤動作は、生産の損失、さらにはシステムの損傷に瞬時につながり、その結果、無視できないほどの経済的損害が生じるという事実が強調される。
【0015】
この問題を部分的に解決するために、既知の締結システムのなかには、閉鎖制御弁を使用したものがある。閉鎖制御弁は、プローブにより、ブラケットのクランプ構成が得られたかどうかを検知する。これにより、工作機械の処理及び制御部に、締結システムがワークピースの加工位置にあり、ワークピースの加工を実際に安全に開始できるという情報が提供される。
【0016】
しかし、このような閉鎖制御弁は、ワークピースが完全にリリースされたかどうかを検出する効果はないため、意味をなさず、加工作業終了時のワークピースの取り外し段階で発生する可能性のある、上記問題を解決することはできない。
【0017】
加えて、既知の締結システムが動作する条件は、多くの場合、非常に複雑であるという事実がある。従来の工作機械のボード上のスペースは、一般的に非常に小さいにもかかわらず、それらの一部の領域は結露、汚れ、錆、その他の侵食剤の蓄積にさらされるため、状況によっては従来の保護亜鉛めっきコーティングでさえ、長持ちすることができない。よって、ただでさえ小さなスペースにも関わらず、その全てを利用することができない。
【0018】
したがって、従来の締結システムは非常に小さいサイズとなってしまう点において、不便であり、その性能を向上させるための追加のコンポーネントを提供することは常に非常に複雑で困難であった。
【0019】
上記をふまえると、既知の締結システムに解決の余地があることが容易に理解されるであろう。
【発明の概要】
【0020】
本発明の主な目的は、工作機械上でワークピースをクランプするための装置を考案することにある。該装置により、工作機械に適切に載置・クランプされていないワークピースに対して、機械加工が施されないようにできると同時に、加工終了時に完全にリリースされていないワークピースを取り外すことも回避できる。
【0021】
本発明のさらなる目的は、高い信頼性と高精度な動作により工作機械上でワークピースをクランプする装置を考案することにある。
【0022】
本発明の少なくとも1つの目的は、加工されるワークピース及び/又は工作機械の工具及び/又はワークピースハンドリングロボット及び/又はクランプ装置自体への望ましくない誤動作及び損傷を回避することを可能にする、工作機械上でワークピースをクランプするための装置を考案することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、小型であり、従来の工作機械に格段に容易に装着することができる、工作機械上でワークピースをクランプする装置を考案することにある。
【0024】
本発明のもう1つの目的は、従来技術の前述の欠点を、単純で、合理的で、使い勝手がよく、費用対効果の高い解決策の枠組みの中で克服することを可能にする、工作機械上でワークピースをクランプするための装置を考案することである。
【0025】
上記の目的は、請求項1の特性を有する、工作機械上でワークピースをクランプする装置によって達成される。
【0026】
本発明の他の特性及び利点は、工作機械上でワークピースをクランプするための装置の、好適かつ非制限的な実施形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明による装置の軸等角投影図である。
【
図3】
図3は、ホーム位置における、本発明による装置の側面図及び部分断面図である。
【
図4】
図4は、中間位置における、本発明による装置の側面図及び部分的断面図である。
【
図5】
図5は、作業位置における、本発明による装置の側面図及び部分的断面図である。
【
図6】
図6は、
図3のVI-VI平面に沿った、本発明による装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
これらの図を特に参照すると、全体を通して、工作機械上でワークピースをクランプする装置を符号1により表す。
【0029】
装置1は、特に、ワークピースPが工作機械MのワークピーストップLに載置された後、かつ、機械加工が始まる前に、これをクランプするものである。
【0030】
ワークピーストップLは、実際には、工作機械Mのボード上の空間を第1の容積V1に分割する。第1の容積V1は、ワークピースPが置かれ、機械加工作業が行われる領域を表す。第2の容積V2は、機械加工作業の実行中、通常アクセスできない工作機械M内部の領域を表す。
【0031】
工作機械Mは、高度に自動化されたタイプのものが好ましく、擬人化ロボットは、加工されるワークピースPの装填と、加工されたワークピースPの取り外しに専念する。
【0032】
工作機械Mには、ワークピースPの形状及び実行される機械加工操作の種類に応じて、適切な位置及び量で配置される複数の装置1が有用に設けられていることが強調される。
【0033】
図中及び本開示の以下の説明部分において、特に断りのない限り、1つの装置1のみが参照される。
【0034】
装置1は、工作機械M、例えば、ワークピーストップL、ベッドプレート、又は任意の他の部分に固定可能な、少なくとも1つの基礎体2を備える。
【0035】
基礎体2には、加圧された流体を含有する流体作動シリンダ3,4,5が設けられている。
【0036】
本開示の文脈において、加圧流体は、油圧回路又は空気圧回路におけるエネルギー伝達のためのキャリア媒体として使用される液体(したがって理想的には非圧縮性を有する)又は気体(したがって圧縮性を有する)状態の任意の流体として定義され、好ましくは、加圧流体は、従来の合成油からなるが、鉱油、植物油、水、空気等の代替の実施形態を除外するものではない。
【0037】
装置1は、加圧流体と接触するいくつかの部分を有するので、特別なシールが装置1の異なる点に配置されており、これらは、表現の簡略化のために、一般に参照符号21で識別されている。
【0038】
流体作動シリンダ3,4,5は、例えば、貫通孔6を設けたメインブロック3と、メインブロック3から延在する中空ライナー4と、メインブロック3とは反対側に中空ライナー4に関連付けられた底板5とによって、形成される。
【0039】
中空ライナー4は、例えば、基礎体2と一体のモノリシック体で作られ、一方、底板5は、ネジ35又は他の締結手段によって中空ライナー4に関連付けられた1つ以上の別体で作られる。
【0040】
底板5は、貫通孔6と整列し、そこから反対側に配置された貫通開口部22で終端するキャビティ11を有する。
【0041】
装置1はまた、主軸Aに沿って延在する少なくとも1つのステム8,9,10を備え、加圧下での作動油の推力によって主軸Aに沿って摺動的に流体作動シリンダ3,4,5に部分的に挿入される。
【0042】
ステム8,9,10は、流体作動シリンダ3,4,5の内側に配置された少なくとも1つの中間部分8と、前記流体作動シリンダ3,4,5の外側に延在する第1の端部9とを備える。
【0043】
より詳細に説明すると、第1の端部9は、貫通孔6を貫通する。
【0044】
中間部分8は、駆動ピストン23を定義する形状を有する。すなわち、流体作動シリンダ3,4,5の内壁に適したサイズを有する厚みのある部分であり、それによってシリンダを逆向きの二つのチャンバに分割する。圧力供給された流体が交互にこれらの2つのチャンバに供給され、これによりステム8,9,10は主軸Aに沿って、一方向に又は反対方向に摺動可能となる。
【0045】
底板5の近傍において、中間部分8は、キャビティ11に挿入されるガイド伸長体7を画定するように成形されている。
【0046】
ガイド伸長体7及びキャビティ11は、いずれも主軸Aに沿って延在しており、主軸Aに沿ったステム8,9,10の運動の間、ガイド伸長体7は、常に少なくとも部分的にキャビティ11に挿入されたままである。
【0047】
第1の端部9とは反対側において、ステム8,9,10は、流体作動シリンダ3,4,5から延在する少なくとも第2の端部10も備えている。
【0048】
具体的には、第2端部10は、底板5に設けられた貫通孔22を通って流体作動シリンダ3,4,5の外に延在している。
【0049】
実際、第2の端部10は、ガイド伸長体7から片持ち状に、主軸Aと一直線に並んで延在している。
【0050】
なお、第2端部10の動作及び有用性については、本開示において後述する。
【0051】
有利には、回転移動手段14,15,16は、流体作動シリンダ3,4,5とステム8,9,10との間に位置し、回転移動手段は、ステム8,9,10の運動を、
・ステム8,9,10が主軸Aに沿って摺動し、主軸Aの周りを所定の回転角度αだけ回転する、少なくとも第1の回転移動伸長12
・ステム8,9,10が回転せずに主軸Aに沿って摺動する、少なくとも第2の並進伸長13
に分割するよう構成されている。
【0052】
所定の回転角度αは、好ましくは90°に等しいが、そのような角度ではない、代替実施形態を排除するものではない。
【0053】
回転移動手段14,15,16は、
・ステム8,9,10又は流体作動シリンダ3,4,5のいずれかの少なくとも一方に形成され、主軸Aに平行に伸びる略螺旋状の第1のセクション17及び略直線状の第2のセクション18を有する、少なくとも1つの溝14
・ステム8,9,10又は流体作動シリンダ3,4,5のいずれかの他方に取り付けられ、溝14の内側に摺動的に挿入される、少なくとも1つの係合要素15
を備える。
【0054】
第1のセクション17に沿った係合要素15の摺動により、第1の伸長12に沿ったステム8,9,10の運動が行われ、第2のセクション18に沿った係合要素15の摺動により、第2の伸長13に沿ったステム8,9,10の運動が行われる。
【0055】
図に示された本発明の特定の実施形態では、係合要素15がキャビティ11の内側に突出するように底板5に取り付けられている一方、溝14は、有利には、ガイド伸長体7の外面に形成される。
【0056】
さらに詳細に説明すると、図に示される本発明の特定の実施形態では、回転移動手段14,15,16は、ガイド伸長体7の反対側の面に形成された2つの溝14と、キャビティ11の反対側の面に取り付けられた2つの係合要素15とを備え、これにより、ステム8,9,10の起動時の安定性と精度をさらに高める。
【0057】
回転移動手段14,15,16が、係合要素15を溝14の内側に押し込むよう構成された弾性オフセット手段16を備えることによっても、ステム8,9,10の移動における精度向上を実現できる。
【0058】
弾性オフセット手段16により、実際、接触面で摩耗が生じ始めた場合でも、対応する溝14における係合要素15の摺動が常に最高精度で確実に行われる。換言すれば、弾性オフセット手段16は、溝14と係合要素15との間のバックラッシュ及び摩耗オフセットを許容する。
【0059】
弾性オフセット手段16は、例えば、1つ以上の円盤ばねからなり、該円盤ばねは、底板5の内側に収容され、主軸Aに直交する方向に沿った方向に向かう力を係合要素15に与えるように配置される。
【0060】
この点、ステム8,9,10には円盤ばね16の横方向拘束用の止め輪33が取り付けられており、止め輪33と円盤ばね16との間の径方向に位置する一組のパッド34が取り付けられている。
【0061】
パッド34は、円盤ばね16のプリロードを較正する機能を果たすとともに、円盤ばね16の正常な動作を保護するため、係合要素15のストローク終了時に始動する。
【0062】
装置1はまた、工作機械M上で加工されるワークピースPをクランプするためのステム8,9,10の第1の端部9に関連付けられた、少なくとも1つのクランプブラケット19,20を備える。
【0063】
クランプブラケット19,20は、
・ステム8,9,10の第1の端部9に、例えば締結リングナット24によって取り付けられる近位部19
・近位部19から、主軸Aに対して略横方向、好ましくは、主軸Aに対して直交する方向である作業方向Bに沿って片持ち状に延在し、ワークピースPに接触するよう構成された遠位部20
を備える。
【0064】
クランプブラケット19,20は、
・クランプブラケット19,20が基礎体2から、つまり、ワークピーストップLから離間して配置されているホーム位置
・クランプブラケット19,20がワークピースPをクランプするために基礎体2に接近するよう移動した作業位置
の間で移動可能である。
【0065】
ここで、図に示される特定の実施形態では、前述のように、装置1は、有利には、回転移動手段14,15,16も備え、クランプブラケット19,20は、回転移動タイプのものであり、ホーム位置と作業位置との間に位置する中間位置を備える。
【0066】
ホーム位置(
図3に示す)と比較して、中間位置(
図4に示す)において、クランプブラケット19,20は、第1の伸長12に沿ったステム8,9,10の運動の結果として、ホーム位置に対して、基礎体2に接近するよう回転移動され、作業位置
図5に示すにおいて、クランプブラケット19,20は、第2の伸長13に沿ったステム8,9,10の運動の結果として、中間位置に対して、基礎体2にさらに接近して移動される。
【0067】
しかしながら、代替実施形態において、回転移動手段14,15,16が設けられておらず、クランプブラケット19,20が回転することなくホーム位置と作業位置との間で移動可能である解決策を除外するものではない。
【0068】
なお、図に示された特定の実施形態では、装置1の基礎体2は、主軸Aが略垂直であるように配置されており、ワークピースPは、ワークピーストップLの上方に配置され、作業位置で停止しているクランプブラケット19,20が載置され上面を有する。
【0069】
この配置では、第1の容積V1はワークピーストップLの上方に配置され、第2の容積V2はワークピーストップLの下方に配置される。
【0070】
説明を簡略化するために、本開示の以下の説明部分では、図示された装置1の配置を参照し、「上側」、「下側」、「上方」、「下方」、「持ち上げる」、「下げる」などの用語及びそれらに関連するその他の用語は、図に示されているものを参照して理解される。
【0071】
しかしながら、クランプするワークピースPの形状や配置の仕方によって、主軸Aを異なる方向(例えば水平方向又は斜め方向)として、工作機械Mに装置1を取り付け得ることは、容易に理解されるであろう。
【0072】
装置1は、クランプブラケット19,20が作業位置に到達する制御を行うよう構成された、少なくとも第1の制御アセンブリ25を含む。
【0073】
前記第1の制御アセンブリ25は、
・ステム8,9,10の第1の端部9に関連付けられた少なくとも第1のプローブ要素26,27
・基礎体2に関連付けられ、作業位置における第1プローブ要素26,27との接触を検出するよう構成された、少なくとも第1の接触センサ28
を備える。
【0074】
より詳細には、第1のプローブ要素26,27は、例えば、
・第1の端部9から主軸Aに対して略横方向、好ましくは、主軸Aに対して直交する方向である方向D1に沿って、片持ち状に延在する補助ブラケット26
・補助ブラケット26に関連付けられ、主軸Aと略平行方向に沿って延在し、作業位置において第1の接触センサ28に接触するよう構成された、プローブピン27
を備える。
【0075】
なお、補助ブラケット26は、クランプブラケット19,20の介在によりステム8,9,10の第1の端部9に締結されている。より具体的には、補助ブラケット26は、クランプブラケット19,20に、例えばネジ、ボルト等の種類の着脱可能な連結手段29を介して連結され、順番に第1の端部9に取り付けられる。
【0076】
一方、第1の接触センサ28は、有利には、第1のスライダを備える。第1のスライダは、主軸Aと略平行方向に沿って摺動的に基礎体2に取り付けられ、検知流体が流れる第1の検知ライン30に接続される。
【0077】
第1の検知ライン30は、基礎体2に少なくとも部分的に形成され、流体作動方式で制御システムに接続される。制御システムは、検知流体圧力が閾値を超えるか、又は閾値を下回ったときに、ワークピースPの加工を許可するよう構成される。
【0078】
制御システムは、図示しないが、例えば、工作機械Mの動作を管理する制御ユニット(電子式、油圧式、又は両方の組み合わせ)から構成される。
【0079】
実際には、クランプブラケット19,20が主軸Aに沿って移動してクランプ位置に到達すると、第1プローブ要素26,27が接触し、第1のスライダ28を押して主軸Aと平行に摺動させる。これにより、第1の検知ライン30における検知流体の圧力が変化し、装置1がクランプ位置に正確かつスムーズに到達したという情報が制御システムに伝達される。
【0080】
図5に示すこの状況では、制御システムは、工作機械Mの工具による機械加工操作の実行に同意する。
【0081】
そうでない場合、すなわち、第1のスライダ28が第1のプローブ要素26,27によって押圧されていない場合、制御システムは、クランプブラケット19,20がクランプ位置に達していない(例えば、ワークピースPのクランプフェーズがまだ終了していない、あるいは、工作機械M上のワークピースPが不適切に配置されている)と判断し、機械加工操作の実行を許可しない。
【0082】
実行許可が下りないことにより、ワークピースPと工作機械Mを保護し、それらの正常な動作にとって潜在的に危険となる操作を防止する。
【0083】
実行許可が下りなかった場合、ワークピースPを再配置したり、オペレータが介入したりするなど、通常の作業条件を復元するためのプロトコルがアクティブ化され得る。
【0084】
装置1は、ホーム位置への到達をモニタリングするよう構成された、少なくとも第2の制御アセンブリ36を備える。
【0085】
前記第2の制御アセンブリ36は、
・ステム8,9,10の第2の端部10に関連付けられた、少なくとも第2のプローブ要素42
・基礎体2に関連付けられ、ホーム位置における第2のプローブ要素42との接触を検出するよう構成された、少なくとも第2の接触センサ38
を備える。
【0086】
より詳細には、第2のプローブ要素42は、少なくとも1つのプローブブラケットを備える。このプローブブラケットは、第2の端部10から主軸Aに対して略横方向、好ましくは、主軸Aに対して直交する方向である方向D2に沿って、片持ち状に延在し、ホーム位置に到達したときに第2の接触センサ38と接触するように構成されている。
【0087】
一方、第2の接触センサ38は、有利には、第2のスライダを備える。第2のスライダは、主軸Aと略平行方向に沿って摺動的に基礎体2に取り付けられ、検知流体が流れる第2の検知ライン39に接続される。
【0088】
第2の検知ライン39は、基礎体2に少なくとも部分的に形成され、流体作動方式で制御システムに接続される。制御システムは、検知流体圧力が閾値を超えるか、又は閾値を下回ったときに、機械MからのワークピースPのピッキングを許可するよう構成されている。
【0089】
ワークピースPのピッキングを許可することを意図した制御システムは、ワークピースPの加工を許可することを意図した制御システムと同じであると便利であり、例えば、工作機械Mの動作を管理する制御ユニットから構成され得る。
【0090】
実際には、クランプブラケット19,20が主軸Aに沿って移動してホーム位置に到達すると、第2のプローブ要素42が接触し、第2のスライダ38を押して主軸Aと平行に摺動させる。これにより、第2の検知ライン39における検知流体の圧力が変化し、装置1がホーム位置に正しくかつスムーズに到達したという情報が制御システムに伝達される。
【0091】
図3に示すこの状況では、制御システムは、ワークピースPをピックアップするためのロボットの起動に同意する。
【0092】
そうでない場合、すなわち、第2のスライダ38が第2のプローブ要素42によって押圧されていない場合、制御システムは、クランプブラケット19,20がホーム位置に達していない(例えば、ワークピースPのリリースフェーズがまだ終了していない、あるいは、クランプブラケット19,20及び工作機械Mのその他の部分やワークピースPの間で望ましくない衝突があった)と判断し、ロボットがピッキング操作を開始することを許可しない。
【0093】
ここでも、実行許可が下りないことにより、潜在的に危険な操作を防止することによって、ワークピースP及び工作機械Mの正常な動作を保護する。許可が下りなかった場合に、クランプブラケット19,20に発生した可能性のある障害物又は衝突をチェックするため、オペレータが介入するなど、通常の作業条件を回復することを目的としたプロトコルを作動させることができる。
【0094】
なお、特に、プローブブラケット37を方向D2に延在した形状にするという特別な工夫により、クランプブラケット19,20及びステム8,9,10が回転移動を正常に完了してホーム位置に戻ったこと、ひいては、主軸A沿いに移動するだけでなく、所定の回転角度αで回転したことを確認する場合にのみ、第2プローブ要素42が第2の接触センサ38と接触する。
【0095】
なお、この点に関して、ワークピースPのリリース中に、クランプブラケット19,20が機械工具Mの他の部分やワークピースPと望ましくない衝突を起こし、事故が発生した場合、クランプブラケット19,20は、回転が妨げられていても、自由に平行移動ができる場合がある。つまり、障害物に接触した際、回転はできないが、主軸A沿いに摺動することはできる。
【0096】
このような場合、加圧流体によって生じる力により、回転移動手段14,15,16が停止し、クランプブラケット19,20及びステム8,9,10を上昇させる程度の、所定の回転角度αの周りでの意図した回転を実行させることができない。
【0097】
こうした回転が実行できない場合、プローブブラケット37も回転しないため、第2の接触センサ38に到達して有利に接触せず、制御システムはワークピースPのピックアップを許可しない。そのため、例えば、工作機械M又はワークピースハンドリングロボットへのより大きな損傷が回避できる。
【0098】
他のタイプの第2のプローブ要素42、例えば、方向D2に沿っておらず、むしろ水平面全体にわたって延在する拡大された形状を有するものは、プローブブラケット37の信頼性の高い動作を確保できないであろうことが強調される。こうした形状の場合、所定の回転角度α周りの回転が完了していなくても、第2の接触センサ38に接触することになる。
【0099】
第1の接触センサ28と第2の接触センサ38は、主軸Aを通るほぼ同一平面G上に配置されている。
【0100】
これにより、有利には、検知ライン30、39を基礎体2と同じ側に配置することができ、それらを制御システムと容易に接続することができる。
【0101】
補助ブラケット26及びプローブブラケット37は、主軸Aに対して略横方向、好ましくは、主軸Aに対して直交する方向である方向D1及びD2に沿って、所定の回転角度α(
図6参照)に実質的に等しい角度だけ、互いからずらして延在している。
【0102】
なお、ホーム位置では、プローブブラケット37の方向D2は、平面Gにあり、補助ブラケット26の方向D1は、平面Gに対して、所定の回転角度αに等しい角度だけ回転する。一方、作業位置では、プローブブラケット37の方向D2が平面Gに対して所定の回転角度αに等しい角度だけ回転しており、補助ブラケット26の方向D1が平面Gにある。
【0103】
便宜上、装置1は、被覆・保護筐体40を備える。被覆・保護筐体40は、基礎体2に関連付けられ、第2の制御アセンブリ36を覆い、保護するように構成されている。
【0104】
被覆・保護筐体40は、第2のプローブ要素42が移動可能である内部容積V3を画定するカップ状の要素41を備える。
【0105】
このようにして、第2のプローブ要素42及び第2の接触センサ38は、工作機械Mの残りの部分から実質的に隔離保護された環境に留まる。
【0106】
特に、図示の装置1の特定の配置では、上述のように、中空ライナー4及び底板5は、第2の容積V2内に収められている。第2の容積V2は機械加工操作の実行中に、一般的にアクセスが困難な機械工具M内の領域を表し、そのため、凝結物、汚れ、さび、及び他の浸食剤が蓄積しやすい領域となっている。
【0107】
被覆・保護筐体40により、第2のプローブ要素42及び第2の接触センサ38は、清潔で保護された状態に保たれ、装置1の適切な動作を妨げる可能性のある損傷も回避される。
【0108】
本発明の作用は、以下の通りである。
【0109】
ワークピースPは、ホーム位置に配置されたクランプブラケット19,20によって、ワークピーストップL上に載置される。
【0110】
ホーム位置では、実際には、クランプブラケット19,20は、工作機械M上でのワークピースPの位置決めができるよう、ワークピーストップLの一部領域を空けた状態にする。
【0111】
この状況では、プローブブラケット37が第2のスライダ38に接触することで、制御システムは、クランプブラケット19,20が実際にホーム位置にあるかどうかを検証し、ワークピーストップL上のワークピースPを把持・ハンドリングする操作に必要なロボットの起動を承認することができる(
図3)。
【0112】
流体作動シリンダ3,4,5の内部で加圧された作動油の供給に続いて、ステム8,9,10が第1の伸長12に沿って基礎体2の内部を摺動し、クランプブラケット19,20がホーム位置から中間位置に移動する。
【0113】
中間位置では、クランプブラケット19,20がホーム位置に対して回転し、ワークピースP(
図4)に張り出した遠位部20によって載置される。
【0114】
一旦中間位置に達すると、流体作動シリンダ3,4,5の内部の加圧下の作動油の供給が継続され、ステム8,9,10は、第2の伸長13に沿って基礎体2の内部を摺動する。
【0115】
ステム8,9,10が第2の伸長13に沿って移動する間、クランプブラケット19,20は中間位置から作業位置に移動する。作業位置において、工作機械M上でワークピースPをクランプすることで、遠位部20がワークピースP上に載る。
【0116】
この状況において、第1のプローブ要素26,27が第1のスライダ28に接触することで、制御システムは、クランプブラケット19,20が実際にクランプ位置にあるかどうかを検証して、工作機械Mのツールによる機械加工操作の実行に同意することができる(
図5)。
【国際調査報告】