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特表2024-528090カウンタトラックジョイントおよびサイドシャフト
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】カウンタトラックジョイントおよびサイドシャフト
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/223 20110101AFI20240719BHJP
【FI】
F16D3/223
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505390
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2021071507
(87)【国際公開番号】W WO2023006229
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504467521
【氏名又は名称】ゲー カー エヌ ドライブライン インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】GKN Driveline International GmbH
【住所又は居所原語表記】Hauptstrasse 130, D-53797 Lohmar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン マウハー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヴェッカーリング
(72)【発明者】
【氏名】イーダ ベンナー
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ クレメリウス
(72)【発明者】
【氏名】アンナ グレメルマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ユルゲン ポスト
(57)【要約】
本発明は、カウンタトラックジョイントであって、ジョイント外側部分(12)と、ジョイント内側部分(13)とを含み、まっすぐにされたカウンタトラックジョイントにおいて、第1のトラック対(22A,23A)が、ジョイント外側部分(12)の開口側に向かって拡張しており、まっすぐにされたカウンタトラックジョイントにおいて、第2のトラック対(22B,23B)が、ジョイント外側部分(12)の接続側に向かって拡張しており、カウンタトラックジョイントはさらに、各第1および第2のトラック対内の各1つのボール(14A,14B)と、それぞれが1つのボール(14)を収容する、周方向に配分された保持器窓(18)を備えたボール保持器(15)とを含み、ボール保持器(15)は、横断面で見て少なくとも、3つの最大値と3つの最小値とを備えた非円形の形状を有している、カウンタトラックジョイントに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウンタトラックジョイントであって、
長手方向軸線(L12)と、接続側および開口側と、長手方向において少なくとも部分的に湾曲させられた内面(24)と、周方向に配分されて配置された第1の外側のボールトラック(22A)および第2の外側のボールトラック(22B)とを備えたジョイント外側部分(12)と、
長手方向軸線(L13)と、第1の内側のボールトラック(23A)および第2の内側のボールトラック(23B)とを備えたジョイント内側部分(13)であって、前記第1の内側のボールトラック(23A)および前記第2の内側のボールトラック(23B)は、前記ジョイント内側部分(13)の外面(26)において周方向に配分されて配置されている、ジョイント内側部分(13)と
を含み、
前記第1の外側のボールトラック(22A)と前記第1の内側のボールトラック(23A)とは互いに、前記ジョイント外側部分(12)の前記開口側に向かって拡張する第1のトラック対(22A,23A)を形成しており、
前記第2の外側のボールトラック(22B)と前記第2の内側のボールトラック(23B)とは互いに、前記ジョイント外側部分(12)の前記接続側に向かって拡張する第2のトラック対(22B,23B)を形成しており、
前記カウンタトラックジョイントはさらに、各前記第1のトラック対(22A,23A)および各前記第2のトラック対(22B,23B)においてトルクを伝達する各1つのボール(14A,14B)と、
前記ジョイント外側部分(12)と前記ジョイント内側部分(13)との間に配置されていて、保持器内面(17)と、保持器外面(16)と、それぞれが少なくとも1つの前記トルクを伝達するボール(14A,14B)を収容する、周方向に配分された保持器窓(18)とを有するボール保持器(15)であって、該ボール保持器(15)は、前記周方向に配分された保持器窓(18)の側方に隣接する、開口側のリングウェブ(37)と、接続側のリングウェブ(38)とを有しており、前記ジョイント内側部分(13)の前記長手方向軸線(L13)と、前記ジョイント外側部分(12)の前記長手方向軸線(L12)とが同軸に方向付けられている場合に、前記ボール(14A,14B)は、前記ボール保持器(15)により、1つの半径方向平面(EM)内に保持される、ボール保持器(15)と
を含み、
前記ジョイント外側部分(12)の前記長手方向軸線(L12)と、前記ジョイント内側部分(13)の前記長手方向軸線(L13)とが互いに一直線に並んでいる場合に、前記保持器外面(16)と、前記ジョイント外側部分(12)の前記内面(24)との間に外側の半径方向ギャップ(25)が形成されており、かつ前記保持器内面(17)と、前記ジョイント内側部分(13)の前記外面(26)との間に内側の半径方向ギャップ(27)が形成されており、
前記ジョイント内側部分(13)は、前記ジョイント外側部分(12)に対して相対的に、軸線方向に限定的に可動であり、前記ボール保持器(15)の前記開口側のリングウェブ(37)は、前記ジョイント外側部分(12)または前記ジョイント内側部分(13)のうちの少なくとも一方の開口側の支持面(24a,26a)に軸線方向において支持され得るようになっており、かつ前記接続側のリングウェブ(38)は、前記ジョイント外側部分(12)または前記ジョイント内側部分(13)のうちの少なくとも一方の接続側の支持面(24b,26b)に軸線方向において支持され得るようになっている、
カウンタトラックジョイントにおいて、
前記保持器外面(16)および前記保持器内面(17)のうちの少なくとも一方は、軟質仕上げ加工され、かつ硬化されており、
前記ボール保持器(15)は、横断面で見て非円形の形状を有しており、これにより、軸線方向摺動時に前記開口側の支持面(24a,26a)に接触する前記開口側のリングウェブ(37)と、前記接続側の支持面(24b,26b)に接触する前記接続側のリングウェブ(38)とは、それぞれ少なくとも、3つの最大値(PH)と、3つの最小値(PL)と、少なくとも30マイクロメートルの最大ピーク・バレー値(HL,HLi,HLo)とを備えた多角形の周囲輪郭(K)を有している
ことを特徴とする、カウンタトラックジョイント。
【請求項2】
前記多角形の周囲輪郭(K)の前記最大ピーク・バレー値(HL)は、200マイクロメートル未満、特に150マイクロメートル未満である、請求項1記載のカウンタトラックジョイント。
【請求項3】
前記多角形の周囲輪郭(K)は、内周輪郭(K37i)と外周輪郭(K37o)とを含み、前記内周輪郭(K37i)の前記最大ピーク・バレー値(HLi)は、少なくとも10マイクロメートルだけ、前記外周輪郭(K37o)の前記最大ピーク・バレー値(HLo)よりも大きくなっている、請求項1または2記載のカウンタトラックジョイント。
【請求項4】
前記ボール保持器(15)は、前記リングウェブ(37,38)の横断面において、全周にわたり可変の壁厚さを有しており、最小半径方向厚さと最大半径方向厚さとの間の厚さの差は、少なくとも50マイクロメートルである、請求項1から3までのいずれか1項記載のカウンタトラックジョイント。
【請求項5】
前記多角形の周囲輪郭(K)は少なくとも、6つの最大値(PH)と6つの最小値(PL)とを有している、請求項1から4までのいずれか1項記載のカウンタトラックジョイント。
【請求項6】
前記ジョイント外側部分(12)と前記ジョイント内側部分(13)とに対して前記ボール保持器(15)をセンタリングして配置した状態では、前記外側の半径方向ギャップ(25)および前記内側の半径方向ギャップ(27)のうちの少なくとも一方は、75マイクロメートルよりも大きく、前記外側の半径方向ギャップ(25)および前記内側の半径方向ギャップ(27)のうちの他方は、50マイクロメートルよりも大きい、請求項1から5までのいずれか1項記載のカウンタトラックジョイント。
【請求項7】
無負荷状態では、前記保持器外面(16)と、前記ジョイント外側部分(12)の前記内面(24)との間に形成された外側の全軸線方向遊び(So)と、前記保持器内面(17)と、前記ジョイント内側部分(13)の前記外面(26)との間に形成された内側の全軸線方向遊び(Si)とは、それぞれ異なる大きさであり、前記外側の全軸線方向遊び(So)は特に、前記内側の全軸線方向遊び(Si)より少なくとも10%大きくなっている、請求項1から6までのいずれか1項記載のカウンタトラックジョイント。
【請求項8】
トルク負荷状態の前記内側の全軸線方向遊び(Si)に関して、前記ジョイント内側部分(13)が前記ボール保持器(15)に対して軸線方向において中間に位置決めされている場合に、前記外側の全軸線方向遊び(So)は非対称に、外側の開口側の軸線方向遊び(Soa)と外側の接続側の軸線方向遊び(Sob)とに分割されている、請求項7記載のカウンタトラックジョイント。
【請求項9】
前記第1の外側のボールトラック(22A)と前記第2の外側のボールトラック(22B)とは、外側のボールトラック群を形成しており、前記第1の内側のボールトラック(23A)と前記第2の内側のボールトラック(23B)とは、第2のボールトラック群を形成しており、
前記外側のボールトラック群および前記内側のボールトラック群のうちの一方は硬化されかつ硬質加工されており、前記外側のボールトラック群および前記内側のボールトラック群のうちの他方は硬化前に仕上げ加工されている、すなわち、硬化後に機械的に加工されてはいない、請求項1から8までのいずれか1項記載のボールトラックジョイント。
【請求項10】
前記外側のボールトラック群および前記内側のボールトラック群のうちの前記他方は、非切削式の加工成形により仕上げ加工されている、請求項9記載のボールトラックジョイント。
【請求項11】
前記第1の外側のボールトラック(22A)は、開口側に第1の外側のアンダカット(H22A)を有しており、前記第2の外側のボールトラック(22B)は、開口側に第2の外側のアンダカット(H22B)を有しており、前記第1の外側のアンダカット(H22A)は、前記第2の外側のアンダカット(H22B)よりも小さくなっている、請求項1から10までのいずれか1項記載のボールトラックジョイント。
【請求項12】
前記ジョイント外側部分(12)の前記内面(24)と、前記第1の外側のボールトラック(22A)と、前記第2の外側のボールトラック(22B)とは、軟質仕上げ加工されかつ硬化されており、かつ
前記ジョイント内側部分(13)の前記第1の内側のボールトラック(23A)と、前記第2の内側のボールトラック(23B)とは、硬化されかつ硬質仕上げ加工されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のボールトラックジョイント。
【請求項13】
前記ジョイント外側部分(12)の前記第1の外側のボールトラック(22A)と、前記第2の外側のボールトラック(22B)とは、硬化されかつ硬化後に硬質仕上げ加工されており、かつ
前記ジョイント内側部分(13)の前記第1の内側のボールトラック(23A)と、前記第2の内側のボールトラック(23B)とは、軟質仕上げ加工されかつ硬化されている、請求項1から11までのいずれか1項記載のボールトラックジョイント。
【請求項14】
前記第1の外側のボールトラック(22A)および前記第2の外側のボールトラック(22B)は、横断面で見てそれぞれ、トルクを伝達する付属の前記ボール(14A,14B)との2点接触が形成されているように形成されており、かつ/または
前記第1の内側のボールトラック(23A)および前記第2の内側のボールトラック(23B)は、横断面で見てそれぞれ、トルクを伝達する付属の前記ボール(14A,14B)との2点接触が形成されているように形成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載のボールトラックジョイント。
【請求項15】
前記ジョイント外側部分(12)と前記ジョイント内側部分(13)とは、前記ジョイント内側部分(13)が前記ジョイント外側部分(12)に対して相対的に20°よりも大きな屈曲角度(β)だけ、角運動可能であるように形成されている、請求項1から14までのいずれか1項記載のボールトラックジョイント。
【請求項16】
特に自動車を後輪駆動するために、トルクをトランスミッションから車両ホイールに伝達するサイドシャフトであって、トランスミッション側の等速ジョイントと、ホイール側の等速ジョイントと、その間に位置するシャフトとを含む、サイドシャフトにおいて、
前記トランスミッション側の等速ジョイントおよび前記ホイール側の等速ジョイントのうちの少なくとも一方は、請求項1から15までのいずれか1項記載のカウンタトラックジョイントであることを特徴とする、サイドシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウンタトラックジョイントの形態の等速ジョイントならびにこのようなカウンタトラックジョイントを備えたサイドシャフトに関する。
【0002】
独国特許出願公開第10060120号明細書から、ジョイント外側部分と、ジョイント内側部分と、それぞれ外側トラックと内側トラックとから成るトラック対内に収容された、トルクを伝達するボールと、内部にボールが保持されている、保持器窓を備えたボール保持器とを有するカウンタトラックジョイントが公知である。第1の外側トラックは、第1の内側トラックと共に第1のトラック対を形成しており、第1のトラック対の第1の制御角度は、第1の軸線方向に開いており、第1のトラック対内には第1のボールが保持されている。第2の外側トラックは、第2の内側トラックと共に第2のトラック対を形成しており、第2のトラック対の第2の制御角度は、第2の軸線方向に開いており、第2のトラック対内には第2のボールが保持されている。ジョイント外側部分とジョイント内側部分とは、互いに相対的に軸線方向に摺動可能である。国際公開第2013/029655号から、別のカウンタトラックジョイントが公知である。
【0003】
独国特許出願公開第10209933号明細書から公知のカウンタトラックジョイントは、第1および第2の内側転動溝を備えた内側ハブと、第1および第2の外側転動溝を備えた外側ハブと、内側ハブと外側ハブとの間に配置されていて、転動溝に係合するボールが内部でガイドされている半径方向窓を有するリング形の保持器とを含む。カウンタトラックジョイントの外側ハブは、一体の閉じられたリングであり、このリングには、外側転動溝が非切削式に加工成形されている。
【0004】
欧州特許出願公開第2180202号明細書から、摺動式等速ジョイント用のボール保持器が公知である。このボール保持器は、ボールを収容するために周方向に配分された窓と、外側球面状の制御面と、予め成形された素材から出発して機械的に加工されていない外側円錐状の逃げ面とを含む。
【0005】
仏国特許発明第1287546号明細書から、ジョイント外側部分と、このジョイント外側部分に対して長手方向に可動のジョイント内側部分と、保持器と、保持器窓内に保持された、トルクを伝達する4つのボールとを備えた摺動式等速ジョイントが公知である。ジョイント外側部分は、軸線に対して直角に延びる4つの外側トラックを備えた円筒状の内面を有している。ジョイント内側部分は、外側トラックに対して対称的に延びる4つの内側トラックを備えた双円錐状の外面を有している。保持器は、縦断面で見て双円錐状の外面を有しておりかつ横断面で見て長手方向に延びる4つの切欠きを備えた円筒状の内面を有しており、これらの切欠き内には、摺動運動時に、ジョイント内側部分の、内側トラックの間に位置するウェブ領域が延在している。
【0006】
米国特許第6224490号明細書から、ジョイント外側部分と、ジョイント内側部分と、トルクを伝達するボールと、保持器とを備えた等速ジョイントが公知である。ジョイント外側部分は、転動溝を備えた球面状の内面を有している。ジョイント内側部分は、転動溝を備えた球面状の外面を有しており、転動溝の数は、ジョイント外側部分に設けられた転動溝の数に等しい。ジョイント外側部分に設けられる転動溝と、ジョイント外側部分に設けられる進入斜面とは、塑性加工法により製造される。
【0007】
本発明の根底を成す課題は、簡単かつ効率的に製造可能であると共に、僅かな騒音エミッションを有する、カウンタトラックジョイントの形態の等速ジョイントを提案することにある。さらに、このようなカウンタトラックジョイントを備えた、効率的で騒音の少ないサイドシャフトを提案する、という課題もある。
【0008】
本発明により提案するカウンタトラックジョイントの形態の等速ジョイントは、長手方向軸線と、接続側および開口側と、長手方向において少なくとも部分的に湾曲させられた内面と、周方向に配分されて配置された第1の外側のボールトラックおよび第2の外側のボールトラックとを備えたジョイント外側部分と、長手方向軸線と、第1の内側のボールトラックおよび第2の内側のボールトラックとを備えたジョイント内側部分であって、第1の内側のボールトラックおよび第2の内側のボールトラックは、ジョイント内側部分の外面において周方向に配分されて配置されている、ジョイント内側部分とを含み、第1の外側のボールトラックと第1の内側のボールトラックとは互いに、ジョイント外側部分の開口側に向かって拡張する第1のトラック対を形成しており、第2の外側のボールトラックと第2の内側のボールトラックとは互いに、ジョイント外側部分の接続側に向かって拡張する第2のトラック対を形成しており、等速ジョイントはさらに、各第1のトラック対および各第2のトラック対においてトルクを伝達する各1つのボールと、ジョイント外側部分とジョイント内側部分との間に配置されていて、保持器内面と、保持器外面と、それぞれが少なくとも1つのトルクを伝達するボールを収容する、周方向に配分された保持器窓とを有するボール保持器であって、ボール保持器は、周方向に配分された保持器窓の側方に隣接する、開口側のリングウェブと、接続側のリングウェブとを有しており、ジョイント内側部分の長手方向軸線とジョイント外側部分の長手方向軸線とが同軸に方向付けられている場合に、ボールは、ボール保持器により、1つの半径方向平面内に保持される、ボール保持器とを含み、ジョイント外側部分の長手方向軸線と、ジョイント内側部分の長手方向軸線とが互いに一直線に並んでいる場合に、保持器外面と、ジョイント外側部分の内面との間に外側の半径方向ギャップが形成されており、保持器内面と、ジョイント内側部分の外面との間に内側の半径方向ギャップが形成されており、ジョイント内側部分は、ジョイント外側部分に対して相対的に、軸線方向に限定的に可動であり、ボール保持器の開口側のリングウェブは、ジョイント外側部分および/またはジョイント内側部分の開口側の支持面に軸線方向において支持され得るようになっており、接続側のリングウェブは、ジョイント外側部分および/またはジョイント内側部分の接続側の支持面に軸線方向において支持され得るようになっており、ボール保持器の保持器外面および保持器内面のうちの少なくとも一方は、軟質仕上げ加工され、かつ硬化させられており、ボール保持器は、横断面で見て、接続側のリングウェブの多角形の周囲輪郭と、開口側のリングウェブの多角形の周囲輪郭とを備えた非円形の形状を有しており、多角形の周囲輪郭はそれぞれ少なくとも、3つの最大値と、3つの最小値と、少なくとも30マイクロメートルの最大ピーク・バレー値とを有している。
【0009】
カウンタトラックジョイントは、ボール保持器がその非円形の形状に基づき、軸線方向のストッパにおいて、ジョイント外側部分もしくはジョイント内側部分と点状にのみ接触し、所定のばね機能を有している、という利点を有している。このことは、ストッパにおけるノイズ発生を少なくすると共に、全周にわたる点状の接触に基づき、面状の接触に比べて小さな摩擦力をもたらす。別の利点は、ボール保持器が、硬化前に仕上げ加工される面に基づき、簡単かつ廉価に製造され得る点にある。これにより全体として、簡単かつ効率的に製造可能であり、特に負荷変動時の騒音発生が少ないカウンタトラックジョイントが得られる。
【0010】
ボール保持器の多角形の周囲輪郭は、外面および/または内面に形成されていてもよい。この場合、本開示に関連する多角形の周囲輪郭の特徴は、ボール保持器の横断面または円錐断面において得られる、周囲線中心点に関して全周にわたり可変の半径を有する周囲線を有しているため、実質的に波形の延在部が生じる。この点で、周囲線は連続波と呼ばれることもある。この場合、最大ピーク・バレー値は、中心点を中心とした多角形の周囲線の最小半径と、最大半径との間の差を表す。前述のピーク・バレー値は、両リングウェブの、特に内側と外側とにおける周囲線に関し、これにより、2つの軸線方向の端部ストッパには、軽いばね作用と低減された騒音発生とを伴う点状接触が生じることになる。
【0011】
ボール保持器の多角形の周囲線の幾何学形状の大きさを計算するためには、複数の可能性が存在する。例えば、波形の周囲線の外接円および内接円が定められ、これに基づき、半径方向の差が形成され得る。外接円は、周囲線もしくは周囲線に沿った全ての測定点を完全に取り囲む最小の円である。この外接円は、「最小外接円」(MCC)とも呼ばれる。内接円は、周囲線もしくは周囲線の全ての測定点の完全に内側に位置する最大の円を表す。この内接円は、「最大内接円」(MIC)とも呼ばれる。この方法を使用する場合、外接円と内接円との間の半径方向間隔は、全周にわたり30マイクロメートルよりも大きいことが望ましい。択一的または補足的に、多角形の周囲線のピーク・バレー値は、「最小領域円」(MZC)とも呼ばれる最小円法により求められてもよい。この場合、同一の中心点を有する2つの円が算出され、これにより、一方の円は、周囲線もしくは周囲線の全ての測定点の外側に最小限に位置しており、他方の円は、周囲線もしくは周囲線の全ての測定点の内側に最大限に位置している。この方法を使用する場合、2つの同軸円の半径方向間隔は、全周にわたり30マイクロメートルよりも大きいことが望ましい。択一的または補足的に、多角形の周囲線のピーク・バレー値は、「最小二乗円」(LSC)とも呼ばれるガウス円に基づき求められてもよい。ガウス円は、このガウス円が、多角形の周囲線もしくは周囲線の全ての測定点の可能な限り近くに位置するように求められる。この方法を使用する場合、ガウス基準円に対する多角形の周囲線もしくは周囲線の測定点の絶対最大値および絶対最小値の半径方向間隔は、それぞれ15マイクロメートルよりも大きいことが望ましい。本発明によるピーク・バレー値を計算するために、上述したあらゆる任意の方法が使用され得る、ということは自明である。周囲線を定めるために使用される測定点の数は、保持器窓の領域では、保持器窓の数に相当し、少なくとも6、好適には8または10以上である。リングウェブの領域では、測定点の数はこれを大幅に上回っていてもよく、例えば少なくとも16、または連続した測定線であってもよい。
【0012】
ボール保持器は、両リングウェブに多角形の周囲輪郭を有している。この場合、多角形の内周輪郭および/または外周輪郭は、少なくとも6つの最大値および6つの最小値、特に少なくとも8つの最大値および少なくとも8つの最小値を含んでいてもよい。
【0013】
リングウェブの領域において、多角形の内周輪郭は、特に少なくとも10マイクロメートルだけ、多角形の外周輪郭よりも大きくなっていてもよい。例えば多角形の内周輪郭は、少なくとも30マイクロメートルの最大ピーク・バレー値を有していてもよく、多角形の外周輪郭は、少なくとも50マイクロメートルの最大ピーク・バレー値を有していてもよい。より大きなピーク・バレー値もしくは振幅に伴い、ジョイント外側部分および/またはジョイント内側部分との当接においてもより小さな点接触と、保持器のより大きなばね作用とが生じる。好適には、多角形の内周輪郭および/または外周輪郭の最大ピーク・バレー値は、200マイクロメートル未満、特に150マイクロメートル未満である。ボール保持器は、多角形の内周面も、多角形の外周面も有していてもよい。この場合、外側多角形および内側多角形の連続波は、周方向において同位相ででもよく、または位相をずらされていてもよい。
【0014】
ボール保持器は、リングウェブの周方向断面において、全周にわたり可変の壁厚さを有していてもよく、この場合、リングウェブの最小半径方向厚さと最大半径方向厚さとの間の厚さの差は、好適には少なくとも50マイクロメートルである。
【0015】
1つの実施形態では、ボール保持器の外面と、内面と、任意には少なくとも1つの端面とは、軟質仕上げ加工され、かつ硬化されていてもよい。本開示に関連して、軟質仕上げ加工されるということは、特に所望の構成部材幾何学形状が専ら軟質加工のみにより生ぜしめられること、すなわち硬化前に行われて完了していることを含む。硬化後には、ボール保持器の外面の少なくとも一部の幾何学形状を変化させる後加工、特に切削加工は想定されていない。ボール保持器の外面、内面および/または端面は、特に変形加工により、例えば鍛造加工、熱間変形加工、冷間変形加工、エンボス加工および/またはハンマ加工により仕上げられてもよい。択一的または補足的に、ボール保持器の部分面は、少なくとも中間ステップにおいて、例えばフライス加工作業、旋削加工作業および/または研削加工作業により切削式に加工されてもよい。
【0016】
特に硬化後に、保持器窓の、軸線方向において互いに反対の側に位置する側面が、さらに硬質加工されてもよい。この場合、本開示に関連して、硬化されることと、硬質加工されることとは特に、硬化前の各ワーク面が、相応する過剰寸法を備えて予備製造され、硬化後に所望の最終幾何学形状へと仕上げ加工される、ということを意味する。予備製造は、旋削またはフライス加工等の切削式の製造法により、かつ/または変形加工もしくは鍛造加工またはエンボス加工等の非切削式の製造法により行われてもよい。仕上げ加工は、特に切削式に、例えば研削加工またはフライス加工により行われてもよい。仕上げ加工に際して、中間製品に設けられた、相応する面の、例えば数十分の1ミリメートルであり得る過剰寸法材料が、硬化後に除去される。
【0017】
ジョイント外側部分と、保持器と、ジョイント内側部分との互いに対向する面は、原則として要求に応じて自由に選択され得る。例えば、ジョイント外側部分の内面、保持器外面、保持器内面、およびジョイント内側部分の外面のうちの1つ、複数、または全ては、球面状に形成されていてもよい。択一的または補足的に、前記面は、円筒状、円環面状および/または円錐状の部分を有していてもよい。球面状の外面と内面とを備えたボール保持器を使用する場合、これらの球面は互いに同軸的に配置されていてもよい、すなわち、両方の面中心点は一致している。1つの択一的な可能性では、球面状の面は、軸線方向において互いにずらされていてもよい、すなわち、内側の球面状の保持器面および外側の球面状の保持器面の両方の面中心点は、互いに軸線方向間隔(オフセット)を有している。同じことは、外側部分の球面状の内面および/または内側部分の球面状の外面が使用される場合に、これらにも同様に当てはまる。
【0018】
1つの実施形態では、ジョイント外側部分とジョイント内側部分とに対してボール保持器をセンタリングして配置した状態では、外側の半径方向ギャップおよび内側の半径方向ギャップのうちの少なくとも一方は、75マイクロメートルよりも大きくなっていてもよい。内側の半径方向ギャップと外側の半径方向ギャップとは、それぞれ異なる大きさであってもよく、特に少なくとも25マイクロメートルだけ互いに異なっていてもよい。同様に、保持器外面とジョイント外側部分の内面との間に形成された外側の全軸線方向遊びと、保持器内面とジョイント内側部分の外面との間に形成された内側の全軸線方向遊びとが、それぞれ異なる大きさであってもよい。例えば、外側の全軸線方向遊びは、内側の全軸線方向遊びよりも、少なくとも10%および/または少なくとも100マイクロメートルだけ、特に少なくとも20%および/または少なくとも200マイクロメートルだけ大きくなっていてもよい。さらにジョイント構成部材は、トルク負荷状態でボール保持器に対してジョイント内側部分を軸線方向において中間に位置決めした場合に、外側の全軸線方向遊びが非対称に、外側の開口側の軸線方向遊びと外側の接続側の軸線方向遊びとに分割されているように形成されていてもよい。この場合、接続側の軸線方向遊びが、好適には開口側の軸線方向遊びよりも小さくなっている。これにより、ボールがボールトラック内で引っ掛かることもしくはボールトラックに圧着することなしに、ボール保持器を介してシャフトを圧入する際にジョイント内側部分は軸線方向においてジョイント外側部分の支持面に支持され得る、ということが有利に支援される。半径方向遊びもしくは軸線方向遊びのそれぞれ異なる構成は、簡単かつ安価な製造に寄与する。それというのも、4対の面のうちの1つにおいて大まかな遊びが可能になるからである。
【0019】
外側および内側のボールトラックは、それぞれトラック底部の縦断面で見て、少なくとも中心区分において湾曲されていてもよい。第1および第2の外側のボールトラックは、外側のボールトラック群を形成していてもよく、第1および第2の内側のボールトラックは、第2のボールトラック群を形成していてもよく、この場合、1つの構成では、外側のボールトラック群および内側のボールトラック群のうちの一方は硬化されかつ硬質加工されており、外側のボールトラック群および内側のボールトラック群のうちの他方は硬化前に仕上げ加工されている、すなわち、硬化後に機械的に加工されてはいない、もしくは幾何学形状を変化させる後加工はもはや施されない。後者のボールトラック群は、例えば非切削式の加工成形により、硬化前に仕上げ加工され得る。硬化後には、表面改質のためにさらにショットピーニングが行われてもよい。硬化前に仕上げ加工されたボールトラック群は、廉価な製造に寄与する。同時に、硬化させられてから硬質仕上げ加工されたボールトラック群と、ジョイント外側部分の支持面と、カウンタトラック形状とに基づき、ボール保持器に対する良好なガイド機能および支持機能ひいては高い効率が与えられている。外側のボールトラック群が軟質仕上げ加工されている場合、外側の半径方向ギャップもしくは外側の全軸線方向遊びは、好適には、内側の半径方向ギャップもしくは内側の全軸線方向遊びよりも大きくなっている。内側のボールトラック群が軟質仕上げ加工されている場合、外側の半径方向ギャップもしくは外側の全軸線方向遊びは、好適には、内側の半径方向ギャップもしくは内側の全軸線方向遊びよりも小さくなっている。
【0020】
例えば研削加工または旋削加工により硬質加工されたボールトラックは、軟質仕上げ加工された、すなわち硬化後に加工されていないボールトラックよりも小さな表面粗さを有することができる。後者は、任意には、硬化前に実施されるショットピーニングにより生ぜしめられる微細構造を有していてもよい。
【0021】
第1の外側のボールトラックおよび第2の外側のボールトラックは、好適には、横断面で見てそれぞれ、トルクを伝達する付属のボールとの2点接触が形成されているように形成されている。択一的または補足的に、第1の内側のボールトラックおよび第2の内側のボールトラックも、横断面で見てそれぞれ、トルクを伝達する付属のボールとの2点接触が形成されているように形成されていてもよい。2点接触は、例えば横断面で見てゴシック様式または楕円形のトラック形状により生ぜしめられてもよい。2点接触もしくは2点トラックにより、ボールトラックの自己センタリング式の測定を実施することが可能である。ただし基本的には円形トラックも使用され得る。
【0022】
基本的に、硬化前もしくは硬化後に仕上げ加工されたボールトラックをジョイント外側部分もしくはジョイント内側部分に対応して配置することにより生じる2つの実施形態が可能である。第1の構成では、硬化前に軟質仕上げ加工されたボールトラックがジョイント外側部分に対応して配置されていてもよい一方で、硬化されてから硬質加工されたボールトラックは、ジョイント内側部分に対応して配置されている。択一的な逆の構成では、硬化前に軟質仕上げ加工されたボールトラックがジョイント内側部分に対応して配置されていてもよい一方で、硬化されてから硬質加工されたボールトラックは、ジョイント外側部分に対応して配置されている。
【0023】
1つの実施例では、外側部分の内面は硬化され、硬化後には機械的に加工されていなくてもよい。すなわち、内面の幾何学形状は、硬化前に仕上げられている、もしくは完成している。硬化後には、内面の幾何学形状を変化させる後加工、特に切削加工は想定されていない。外側部分の内面は、特に変形加工により、例えば鍛造加工、熱間変形加工、エンボス加工および/またはハンマ加工により仕上げられてもよい。択一的または補足的に、外側部分の内面は、少なくとも中間ステップにおいて、例えばフライス加工作業、旋削加工作業および/または研削加工作業により切削式に加工されてもよい。
【0024】
ジョイント内側部分の外面は、硬化され、かつ硬化後に硬質加工されていてもよい。このことは特に、硬化前の内側部分の外面が、相応する過剰寸法を備えて予備製造され、硬化後に所望の最終幾何学形状へと仕上げ加工される、ということを意味する。この場合、予備製造は、旋削またはフライス加工等の切削式の製造法により、かつ/または変形加工もしくは鍛造等の非切削式の製造法により行われてもよい。外面の仕上げ加工は、特に切削式に、例えば研削加工または旋削加工により行われてもよい。
【0025】
第1の外側のボールトラックは、開口側に向かって第1のアンダカットを形成していてもよく、第2の外側のボールトラックは、開口側に向かって第2のアンダカットを形成していてもよい。この場合は特に、開口側に向かって開いた第1のボールトラックの第1のアンダカットは、接続側に向かって開いた第2のボールトラックの第2のアンダカットよりも小さくなっていることが想定されている。
【0026】
上述の具体化は、ジョイント外側部分のボールトラックの幾何学形状が専ら軟質加工のみにより製造されており、ジョイント内側部分のボールトラックは硬質加工されている実施形態に関する。ジョイント外側部分のボールトラックが硬質加工されており、ジョイント内側部分のボールトラックの幾何学形状は硬化前に専ら軟質加工のみにより製造されている択一的な実施形態では、各特徴が相応に逆転して構成されねばならない、ということは自明である。
【0027】
1つの実施形態では、ジョイント外側部分とジョイント内側部分とは、ジョイント内側部分がジョイント外側部分に対して相対的に20°よりも大きな、特に30°よりも大きな屈曲角度(β)だけ、角運動可能であるように形成されていてもよい。第1のトラック対の第1のボールは第1の部分円直径を形成しており、第2のトラック対の第2のボールは第2の部分円直径を形成している。ジョイント内側部分の差込み開口の最大部分円直径(PCDS)に対する第1および第2の部分円直径(PCDA,PCDB)のうちの少なくとも一方の比は、好適には2.5未満、特に2.1未満である(PCDA/PCDS<2.5および/またはPCDB/PCDS<2.5)。
【0028】
トルクを伝達するボールならびに対応する外側および内側のボールトラックの数は、好適には2で割ることができ、特に8であるが、これとは異なる6または10等の数も可能である。
【0029】
前記課題はさらに、特に自動車を後輪駆動するために、トルクをトランスミッションから車両ホイールに伝達するサイドシャフトであって、トランスミッション側の等速ジョイントと、ホイール側の等速ジョイントと、その間に位置するシャフトとを含む、サイドシャフトにおいて、トランスミッション側の等速ジョイントおよびホイール側の等速ジョイントのうちの少なくとも一方は、上述の実施形態のうちの1つに基づき構成されたカウンタトラックジョイントである、サイドシャフトにより解決される。本発明によるカウンタトラックジョイントを備えたサイドシャフトにより、有利には、特に負荷変動時の小さな騒音が得られる。
【0030】
以下に、図面に基づき好適な実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A】本発明によるカウンタトラックジョイントの第1の実施形態におけるウェブ領域を示す縦断面図である。
図1B】本発明によるカウンタトラックジョイントの第1の実施形態における第1のトラック対を示す縦断面図である。
図1C】本発明によるカウンタトラックジョイントの第1の実施形態における第2のトラック対を示す縦断面図である。
図1D】本発明によるカウンタトラックジョイントの第1の実施形態における第1のトラック対を図面下半分に、第2のトラック対を図面上半分に概略的に示す縦断面図である。
図1E】本発明によるカウンタトラックジョイントの第1の実施形態における開口側のストッパを示す、図1Dに示した縦断面図である。
図1F】本発明によるカウンタトラックジョイントの第1の実施形態における接続側のストッパを示す、図1Dに示した縦断面図である。
図2A図1に示したカウンタトラックジョイントを、ジョイント内側部分およびジョイント外側部分と同軸の向きに差し込まれたシャフトと共に示す図である。
図2B図1に示したカウンタトラックジョイントを、第1のトラック対の縦断面で見て折り曲げられた状態で示された、差し込まれたシャフトと共に示す図である。
図2C図1に示したカウンタトラックジョイントを、第2のトラック対の縦断面で見て折り曲げられた状態で示された、差し込まれたシャフトと共に示す図である。
図2D図1に示したカウンタトラックジョイントを、ウェブ領域の縦断面で見て折り曲げられた状態で示された、差し込まれたシャフトと共に示す図である。
図3A図1に示したカウンタトラックジョイントのボール保持器を、互いに反対の側に位置する2つの保持器窓の縦断面で示す図である。
図3B図1に示したカウンタトラックジョイントのボール保持器を、窓平面の横断面で示す図である。
図3C図1に示したカウンタトラックジョイントのボール保持器を、窓平面内に書き込まれた測定点と共に示す立体図である。
図4図3Cに示した窓平面内で検出される測定点の例示的な誇張図である。
図5A図1に示したカウンタトラックジョイントのボール保持器を、リングウェブの周方向測定用の測定平面が例示的に書き込まれた2つの窓ウェブの縦断面で示す図である。
図5B図1に示したカウンタトラックジョイントのボール保持器の、図5Aに示した測定平面内で測定されたリングウェブの外面の例示的な外側の周囲輪郭線を軸線方向に見た図である。
図5C図1に示したカウンタトラックジョイントのボール保持器の、図5Aに示した測定平面内で測定されたリングウェブの内面の例示的な内側の周囲輪郭線を軸線方向に見た図である。
図6図1に示したカウンタトラックジョイントのジョイント外側部分を、例示的に書き込まれた補助球と共に示す図である。
図7図1に示した本発明によるカウンタトラックジョイントを備えたサイドシャフトを示す概略図である。
【0032】
以下で一緒に説明する図1A図6には、本発明によるカウンタトラックジョイント11が示されている。カウンタトラックジョイント11は、ジョイント外側部分12と、ジョイント内側部分13と、トルクを伝達する複数のボール14A,14Bと、ボール保持器15とを含む。ボール保持器15の実質的に球面状の外面16と、ジョイント外側部分12の実質的に球面状の内面24との間には、周方向に延びるギャップ25が形成されている。また、ボール保持器15の実質的に球面状の内面17と、ジョイント内側部分13の実質的に球面状の外面26との間にも、周方向に延びるギャップ27が形成されている。本実施形態では、面中心点M16とM17とが、1つの共通のジョイント中心平面EMに位置しており、別の構成では、面中心点M16とM17とがそれぞれ、ジョイント中心平面EMに対して互いに反対の方向に軸線方向間隔(オフセット)を有することも可能である。ボール14A,14Bは、ボール保持器15において1つの平面内で周方向に配分された保持器窓18内に保持されている。ジョイント外側部分12には長手方向軸線L12が示されており、ジョイント内側部分13には長手方向軸線L13が示されている。トルク負荷時に生じる、長手方向軸線L12,L13とジョイント中心平面EMとの交点が、ジョイント中心点Mを形成する。
【0033】
ここに示す実施形態では、ジョイント外側部分12の内面24と、保持器外面16と、保持器内面17と、ジョイント内側部分13の外面26とは、実質的に球面状に形成されている。択一的または補足的に、前記面のうちの1つまたは複数は、円筒状、円環面状および/または円錐状の部分を有していてもよい。外側部分12の内面24に関して、図1Aには開口側の区分24a、中心区分24cおよび底部側の区分24bが書き込まれている。底部側の区分24bは、支持面を形成しており、この支持面には、ボール保持器15がその外面16でもって軸線方向において支持され得る。さらに、ジョイント内側部分13の外面26には、開口側の区分26a、中心区分26cおよび底部側の区分26bが書き込まれている。
【0034】
ジョイント外側部分12は、例えば接続ピンに移行し得る底部19と開口20とを有している。ジョイント内側部分13は、開口21を有しており、開口21には、トルクを伝達するドライブシャフト30のピンを相対回動不能に差し込むことができる。シャフト30が取り付けられたカウンタトラックジョイント11は、図2A図2Dに示されている。底部19の位置を、以下では「接続側に向かう」軸線方向と言い、開口20の位置を、以下では「開口側に向かう」軸線方向と言う。これらの用語は、ジョイント内側部分に関しても用いられ、この場合、ジョイント内側部分13に対するシャフトの実際の接続は考慮されないままである。ジョイント外側部分は、底部に代えて、例えばディスクジョイントの形態で接続側に向かって開かれて構成されていてもよい、ということは自明である。
【0035】
全周にわたり、トルクを伝達する第1のボール14Aを備えた第1のトラック対22A,23Aと、トルクを伝達する第2のボール14Bを備えた第2のトラック対22B,23Bとが交互に設けられている。第1のトラック対22A,23Aの形状は図1Bに示されており、第2のトラック対22B,23Bの形状は図1Cに示されている。第1のボール14Aは、ジョイント外側部分における第1の外側のボールトラック22Aと、ジョイント内側部分における第1の内側のボールトラック23Aとに接触している。この場合、第1のボール14Aの中心点が、外側の第1のボールトラック22Aと内側の第1のボールトラック23Aとに沿って移動する際に、それぞれ第1の中心点ラインを規定する一方で、第2のボール14Bの中心点は、外側の第2のボールトラック22Bと内側の第2のボールトラック23Bとに沿って移動する際に、それぞれ第2の中心点ラインを規定する。
【0036】
ジョイント外側部分12とジョイント内側部分13とが同軸に方向付けられている場合、ボール14Aに対する接線T22A,T23Aは、第1のトラック22A,23Aとの接触点において、開口側に向かって開いた開放角度δAを形成している。第2のボール14Bは、ジョイント外側部分12における外側のボールトラック22Bと、ジョイント内側部分13における内側のボールトラック23Bとにおいてガイドされている。ボール14Bは、ボールトラックのトラック底部に接触した状態で示されているが、接触は必ずしも生ぜしめられている必要はない。図示の延在位置で、第2のボール14Bに対する接線T22B,T23Bは、第2のトラック22B,23Bとの接触点において、接続側に向かって開いた第2の開放角度δBを形成している。カウンタトラックジョイントのトラック形状が変更された場合には、互いに反対の軸線方向に向けられた開放角度が、特に最大2°の、やや曲げられたジョイントの位置でも生じ得る。
【0037】
第1および第2のトラック対は、それぞれその中心線でもって、ジョイントを通る1つの半径方向平面内に位置している。ボール14A,14Bはそれぞれ、ボール保持器15に設けられた保持器窓18内に収容されている。半径方向平面は、互いにそれぞれ等しい角距離を有している。トルクを伝達するボール14A,14Bの数と、対応する外側および内側のボールトラックの数は、この場合8であるが、これに限定されることはない。この場合、ジョイント外側部分12およびジョイント内側部分13の2つの第1のトラック対22A,23Aが、それぞれ直径方向において互いに対向して位置しており、2つの第2のトラック対22B,23Bが、それぞれ直径方向において互いに対向して位置している。
【0038】
次に、本発明によるカウンタトラックジョイント11の特徴について、特にボール保持器15の構成について、より詳しく説明する。この場合、本発明によるカウンタトラックジョイントに関連して、以下の定義が当てはまる。
【0039】
ジョイント屈曲角度βは、ジョイント外側部分12の長手方向軸線L12と、ジョイント内側部分13の長手方向軸線L13との間に形成される角度を規定する。ジョイント屈曲角度βは、まっすぐにされたジョイントではゼロである。
【0040】
トラック屈曲角度β/2は、ジョイント中心点Mからボール中心までの半径がジョイント中心平面EMと形成する角度を規定する。この場合、トラック屈曲角度β/2は、ジョイントのあらゆる角度位置において常に、ジョイント屈曲角度βの1/2である。
【0041】
開口開放角度δは、まっすぐにされたジョイントにおいて、ボールに対する接線Tにより、第1のボールトラックもしくは第2のボールトラックとの接触点において形成される角度を規定する。
【0042】
制御角度δ/2は、まっすぐにされたジョイントにおいて、ボール中心点で各ボール中心点ラインに当接した接線が、ジョイント外側部分もしくはジョイント内側部分に属す長手方向軸線Lと形成する角度を規定する。制御角度δ/2は、開口開放角度δの1/2に相当する。
【0043】
中心点平面EMは、まっすぐにされたジョイントにおいてトルクを伝達するボール14A,14Bのボール中心点により規定されている。
【0044】
第1の部分円直径PCDAは、まっすぐにされたジョイントにおいて複数の第1のボール14Aの中心点により形成された直径を規定する。
【0045】
第2の部分円直径PCDBは、まっすぐにされたジョイントにおいて複数の第2のボール14Bの中心点により形成された直径を規定する。
【0046】
部分円直径PCDSは、特に差込み開口の歯元線により、ジョイント内側部分13の差込み開口の直径を規定する。
【0047】
ボール保持器15は、周方向に配分された保持器窓18の側方に隣接する、開口側のリングウェブ37と、接続側のリングウェブ38とを有している。リングギャップ25に基づき、ボール保持器15は、ジョイント外側部分12に対して相対的に、軸線方向に限定的に可動である。これにより、運転時に生じる、ジョイント内側部分13とジョイント外側部分との間の振動が補償され得る。開口20の方向への軸線方向の動きは、開口側のストッパS20により制限される。このためには図1Eに示すように、ボール保持器15の開口側のリングウェブ37が、ジョイント内側部分13の開口側の支持面26aおよび/またはジョイント外側部分12の開口側の支持面24aに当接する。底部の方向への軸線方向の動きは、底部側のストッパS19により制限される。このためには図1Fに示すように、ボール保持器の接続側のリングウェブ38が、ジョイント内側部分13の接続側の支持面26bおよび/またはジョイント外側部分12の開口側の支持面24bに当接する。
【0048】
本発明では、ボール保持器の保持器外面16および保持器内面17のうちの少なくとも一方が、軟質仕上げ加工され、かつ硬化されている。さらにボール保持器15は、横断面で見て非円形もしくは多角形の形状を有している。特に図4図5Bおよび図5Cから判るように、ボール保持器は、中間ウェブ39およびリングウェブ37,38の領域に多角形の周囲輪郭K37,K38,K39を有している。周囲輪郭K37,K38,K39は、それぞれ高点と呼ばれることもある少なくとも3つの最大値PHと、低点と呼ばれることもある3つの最小値PLと、少なくとも30マイクロメートルの最大ピーク・バレー値HL,HLo,HLiとを有している。最大値の群は、少なくとも1つの絶対最大値と、複数の相対最大値とを含んでいてもよい。最小値の群は、少なくとも1つの絶対最小値と、複数の相対最小値とを含んでいてもよい。
【0049】
多角形の形状に基づき、ボール保持器15は、軸線方向のストッパS19,S20において少なくとも最初は複数の点でのみ、つまり最大値PHの領域においてのみ、ジョイント外側部分12もしくはジョイント内側部分13と接触する。多角形の保持器形状の点状の接触と軽度のばね作用とにより、環状のストッパは「軟性」であり、これに相応して騒音発生は比較的少ない。
【0050】
ボール保持器15の多角形の周囲輪郭K37,K38,K39はそれぞれ、周囲線中心点MK,MC,MG,MIに関して可変の半径Rを全周にわたり有しており、これにより、波形の延在部が生じる。この場合、最大ピーク・バレー値HL,HLo,HLiは、中心点を中心とした多角形の周囲線の最小半径RLと、最大半径RHとの間の差を表す。最大半径RHを有する円は最大円線と呼ばれることもあり、最小半径を有する円は最小円線と呼ばれることもある。最大円線と最小円線とは、同心であってもよく、または互いにややずらされていてもよい。
【0051】
全体的に符号Kも付されている多角形の周囲線の幾何学形状の大きさを計算するためには、以下に例示的に説明する複数の可能性が存在する。
【0052】
例えば、多角形の周囲線Kのピーク・バレー値HLは、「最小二乗円」とも呼ばれるガウス円LSCに基づき求めることもできる。ガウス円LSCは、図4に例示的に示すように、ガウス円LSCが、周囲線Kの多角形の周囲線もしくは全ての測定点pmの可能な限り近くに位置するように求められる。この方法を使用する場合、本発明では、多角形の周囲線Kの、もしくは周囲線の測定点pmからガウス基準円LSCまでの、絶対最大値PHの半径方向距離shおよび絶対最小値PLの半径方向距離slは、それぞれ15マイクロメートルよりも大きい、ということが想定されている。このことから、絶対最小値PLと絶対最大値PHとの間の半径方向の差を成すピーク・バレー値HLは、30マイクロメートルよりも大きく、特に50マイクロメートルよりも大きい、ということが判る。
【0053】
多角形の周囲線Kのピーク・バレー値HLを求める別の方法は、「最小領域円」(MZC)とも呼ばれる最小円法であり、以下で図5Bに基づき説明する。図5Aに示す測定平面E37内で測定された、ボール保持器15のリングウェブ37の外側の周囲線K37oが示されている。最小円法では、同一の中心点MCを有する2つの円CHおよびCLが算出され、これにより、一方の円CHは、周囲線Kもしくは周囲線Kの全ての測定点pmの外側に最小限に位置しており、他方の円CLは、周囲線Kもしくは周囲線Kの全ての測定点pmの内側に最大限に位置している。この方法を使用する場合、図5BにおいてHLoで表された、2つの同軸の円CH,CLの半径方向距離HLは、30マイクロメートルよりも大きく、特に50マイクロメートルよりも大きいことが望ましい。
【0054】
例示的に図5Cに基づき説明する1つの別の択一的または補足的な方法では、波形の周囲線Kの外接円MCCおよび内接円MICが定められ、これに基づき、半径方向の差HLが形成され得る。図5Aに示す測定平面E37内で測定された、ボール保持器15のリングウェブ37の外側の周囲線K37iが示されている。外接円MCCは、周囲線K37iもしくは周囲線に沿った全ての測定点pmを完全に取り囲む最小の円である。この外接円は、中心点MCを有しており、「最小外接円」とも呼ばれる。内接円MICは、周囲線Kもしくは周囲線の全ての測定点pmの完全に内側に位置する最大の円を表す。この内接円は、中心点MIを有しており、「最大内接円」(MIC)とも呼ばれる。本発明では、図5CにおいてHLiで表された、外接円MCCと内接円MICとの間の半径方向距離もしくはピーク・バレー値HLは、全周にわたり30マイクロメートルよりも大きく、特に50マイクロメートルよりも大きく、また任意には75マイクロメートルよりも大きい、ということが想定されている。
【0055】
本発明によるピーク・バレー値HLを計算するために、上述したあらゆる任意の方法が使用され得る、ということは自明である。周囲線を定めるために使用される測定点の数は、保持器窓18の領域では、保持器窓18の数に相当し、本例では、図3Cおよび図4において認められるように8である。リングウェブ37,38の領域では、測定点の数はこれを大幅に上回っていてもよく、例えば図5Bおよび図5Cに示すように、少なくとも16または連続した測定線であってもよい。
【0056】
リングウェブ37,38の領域において、多角形の内周輪郭Kiは、特に少なくとも10マイクロメートルだけ、多角形の外周輪郭Koよりも大きくなっていてもよい。例えばリングウェブ37において、多角形の内周輪郭K37iは、少なくとも50マイクロメートルの最大ピーク・バレー値HLを有していてもよく、多角形の外周輪郭K37oは、少なくとも30マイクロメートルの最大ピーク・バレー値HLを有していてもよい。より大きなピーク・バレー値もしくは振幅に伴い、ジョイント外側部分12および/またはジョイント内側部分13との当接においてもより小さな点接触と、保持器15のより大きなばね作用とが生じる。多角形の内周輪郭Kiおよび/または外周輪郭Koの最大ピーク・バレー値HLは、好適には200マイクロメートル未満、特に150マイクロメートル未満である。
【0057】
ボール保持器15の外面16と、内面17と、任意には少なくとも1つの端面とは、軟質仕上げ加工され、かつ硬化されている。換言すると、上述の面の所望の幾何学形状は、専ら軟質加工のみにより、すなわち硬化前に生ぜしめられる。硬化後には、ボール保持器15の少なくとも外面16および内面17の幾何学形状を変化させる後加工、特に切削加工は想定されていない。ボール保持器15の外面16と内面17とは、変形加工により仕上げられてもよい。択一的または補足的に、ボール保持器の部分面は、少なくとも中間ステップにおいて切削加工されてもよい。
【0058】
硬化後に、保持器窓18の、軸線方向において互いに反対の側に位置する側面が、さらに硬質加工されてもよい。このとき、側面は、所望の最終幾何学形状に仕上げ加工される。窓18の予備製造は、打抜き等の切断法により行われてもよい。仕上げ加工は、特に切削式に、例えば研削により行われてもよい。仕上げ加工に際して、中間製品に設けられた、相応する面の、例えば数十分の1ミリメートルであり得る過剰寸法材料が、硬化後に除去される。
【0059】
ジョイント外側部分12、保持器15およびジョイント内側部分13の互いに対向する面は、原則として要求に応じて自由に選択され得る。特に例示的に補助球Shが書き込まれた図6において認められるように、ジョイント外側部分の内面は、実質的に球面状に形成されている。同じことは、保持器外面、保持器内面およびジョイント内側部分の外面にも当てはまる。ジョイント外側部分12とジョイント内側部分13とに対してボール保持器15をセンタリングして配置した状態では、外側の半径方向ギャップ25および内側の半径方向ギャップ27のうちの少なくとも一方は、75マイクロメートルよりも大きくなっている。内側の半径方向ギャップ27および外側の半径方向ギャップ25は、それぞれ異なる大きさであってもよく、特に少なくとも25マイクロメートルだけ互いに異なっていてもよい。
【0060】
ボール保持器15の保持器外面16およびジョイント外側部分12の内面24、ならびにボール保持器の保持器内面17およびジョイント内側部分13の外面26は、カウンタトラックジョイント11が組み立てられてまっすぐにされた状態において、ボール保持器15とジョイント外側部分12との間の外側の全軸線方向遊びSoと、ボール保持器15とジョイント内側部分13との間の内側の全軸線方向遊びSiとが、それぞれ異なる大きさであるように形成されている。図1Dに示したように、外側の全軸線方向遊びSoは、保持器15と外側部分12との間の外側の開口側の軸線方向遊びSoaと、接続側の軸線方向遊びSobとから構成されている。同様に、内側の全軸線方向遊びSiは、保持器15と内側部分13との間の内側の開口側の軸線方向遊びSiaと、接続側の軸線方向遊びSibとから構成されている。この場合、外側の全軸線方向遊びSoは、内側の全軸線方向遊びSiよりも、例えば少なくとも10%および/または少なくとも100マイクロメートルだけ大きくなっていてもよい。
【0061】
ジョイント構成部材12,13,15の球面状の面24,16,17,26は、ジョイント外側部分12の球面状の面24の赤道と保持器外面16の赤道とが1つの平面内に位置しており、かつ保持器内面17の赤道とジョイント内側部分13の球面状の面26の赤道とが1つの平面内に位置している、ジョイント11の組立て状態において、外側の半径方向ギャップ25が、開口側の方向において、接続側の方向におけるよりも大きくなるように形成されている。これにより、ボール保持器15もしくは支持面26b,24bを介してシャフト30を圧入する際に、ボール14A,14Bがボールトラック22A,23A;22B,23B内で引っ掛かることなく、ジョイント内側部分13は軸線方向においてジョイント外側部分12に支持され得る。本実施形態では、ボール保持器15の内面17と外面16とは両方共、実質的に互いに同軸的に配置されている。
【0062】
共に外側のボールトラックまたは外側のボールトラック群と呼ばれることもある第1および第2の外側のボールトラック22A,22Bと、共に内側のボールトラックまたは内側のボールトラック群と呼ばれることもある第1および第2の内側のボールトラック23A,23Bとは、互いに異なって製造されていてもよい。本実施例では、ジョイント外側部分12のボールトラック22A,22Bは、硬化前に軟質仕上げ加工されており、ジョイント内側部分13のボールトラック23A,23Bは、硬化後に硬質仕上げ加工されている。
【0063】
ジョイント外側部分12、特に第1および第2の外側のボールトラック22A,22Bは、変形加工作業により、例えば鍛造加工、熱間変形加工、冷間変形加工、エンボス加工および/またはハンマ加工により製造され得る。個々の変形加工ステップ間には、例えば内径旋削および/またはバリ取りのために、切削式の中間ステップが設けられていてもよい、ということは自明である。第1の外側のボールトラック22Aは、円弧状の中央機能区分を有している。中央機能部分を形成する円弧の中心点は、ジョイント11の中心平面に対して開口側にずらされており、このことは、オフセット平面EAを有する軸線方向オフセットとも呼ばれる。ジョイント外側部分12の第1の外側のボールトラック22Aは、その開口側の端部に半径方向拡張部28を有しており、これにより、組立て時の付属のボール14Aの挿入を容易にする。ジョイント外側部分12の第1の外側のボールトラック22Aは、その底部側の端部に、機能トラック区分に対して半径方向に凹設されたポケット29Aを有しており、ポケット29Aには、開口側に挿入されるボール14Aaの組込み時に、直径方向において反対側に位置するボール14Abが侵入し得る。
【0064】
第2の外側のボールトラック22Bは、円弧状の中央機能区分を有している。中央機能部分を形成する円弧の中心点は、ジョイント11の中心平面EMに対して底部側に向かって、平面EB内にずらされている。ジョイント外側部分12の第2の外側のボールトラック22Bは、その底部側の端部に、機能トラック区分に対して半径方向に凹設されたポケット29Bを有している。
【0065】
第1の外側のボールトラック22Aは、開口側に向かって第1のアンダカットH22Aを形成しており、第2の外側のボールトラック22Bは、開口側に向かって第2のアンダカットH22Bを形成している。この場合、特に図1Dにおいて認められるように、開口側に向かって開いた第1のボールトラック22Aの第1のアンダカットH22Aは、接続側に向かって開いた第2のボールトラック22Bの第2のアンダカットH22Bよりも小さくなっている。
【0066】
本実施形態のジョイント外側部分12の場合、好適には球面状の面24も軟質仕上げ加工される、すなわち球面状の面24は、硬化後は機械的に加工されないままである。つまり、ボールトラック22A,22Bと球面24とを備えたジョイント外側部分12の内側輪郭全体は、硬化前に仕上げられる。硬化後には、幾何学形状を変化させる後加工は想定されていない。この場合、外側部分の内面24は、第1および第2の外側のボールトラック22A,22Bと共に、変形加工作業により製造され得る。
【0067】
第1および第2の外側のボールトラック22A,22Bは特に、各ボールトラックの横断面で見て、付属のボール14A,14Bとの2点接触が形成されているように成形されている。2点接触は、例えば横断面で見てゴシック様式または楕円形のトラック形状により生ぜしめられてもよい。
【0068】
ジョイント内側部分13、特に第1および第2の内側のボールトラック23A,23Bは、旋削および/またはフライス加工等の切削加工法により製造され得、この場合、変形加工作業による製造も同様に可能である。内側のボールトラック23A,23Bは、硬化前に、相応の過剰寸法を備えて予備製造されてもよい。硬化後に、内側のボールトラック23A,23Bは、所望の最終幾何学形状へと仕上げ加工される。仕上げ加工は、特に切削式に、例えば研削加工作業および/または旋削加工作業により行われる。第1および第2の内側のボールトラック23A,23Bも、好適にはやはり、各ボールトラックの横断面で見て、付属のボール14A,14Bとの2点接触が形成されているように形成されている。
【0069】
本実施形態では、好適にはジョイント内側部分13の球面状の外面26も、最初に軟質前加工され、次いで硬化させられ、硬化後に硬質仕上げ加工される。予備製造は、旋削またはフライス加工等の切削式の製造法により、かつ/または変形加工もしくは鍛造等の非切削式の製造法により行われてもよい。ジョイント内側部分の外面26の仕上げ加工は、特に切削式に、例えば研削により行われる。
【0070】
ここに示したカウンタトラックジョイント11は、好適には、ジョイント構成部材12,13が20°よりも大きな屈曲角度βだけ、互いに相対的に角運動可能であるように設計されている。この場合、ジョイント内側部分13の差込み開口の最大部分円直径PCDSに対する第1および/または第2の部分円直径PCDA,PCDBの比は、特に2.5未満である、すなわちPCDA/PCDS<2.5であり、かつ/またはPCDB/PCDS<2.5である。
【0071】
図7には、トルクをトランスミッションから車両ホイール(図示せず)に伝達するための、本発明によるサイドシャフト40が示されている。サイドシャフト40は、トランスミッション側の等速ジョイント42と、シャフト41と、ホイール側の等速ジョイント2とを含む。ホイール側の等速ジョイントは、図1A図1Dに示した本発明によるカウンタトラックジョイントである。サイドシャフト40は、特に自動車の後輪駆動に使用され得る。
【符号の説明】
【0072】
11 カウンタトラックジョイント
12 ジョイント外側部分
13 ジョイント内側部分
14A,14B ボール
15 ボール保持器
16 外面(15)
17 内面(15)
18 窓
19 接続側
20 開口側
21 開口
22A,22B 外側のボールトラック
23A,23B 内側のボールトラック
24 内面(12)
25 外側のギャップ
26 外面(13)
27 内側のギャップ
28 半径方向拡張部
29 ポケット
30 シャフト
31 切欠き
32 ウェブ(12)
33 ウェブ(13)
34 拡張部
35A,35B 面取り部
36 開口
37,38 リングウェブ
39 中間ウェブ
40 サイドシャフト
41 シャフト
42 等速ジョイント
C 円
EA 第1のオフセット平面
EB 第2のオフセット平面
EM ジョイント中心平面
HL ピーク・バレー値
K 周囲輪郭線
L 長手方向軸線
M ジョイント中心点
pm 測定点
PCD 円直径
PH 最大値
PL 最小値
R 半径
S19,S20 ストッパ
Si 内側の全軸線方向遊び
So 外側の全軸線方向遊び
T 接線
β ジョイント屈曲角度
δ 開口開放角度
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
【国際調査報告】