(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】放射音と振動を低減するためのメタマテリアルを備える回転又は振動ツール
(51)【国際特許分類】
B23D 47/00 20060101AFI20240719BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240719BHJP
B23C 9/00 20060101ALI20240719BHJP
【FI】
B23D47/00 E
B23Q11/00 A
B23C9/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505398
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2022071293
(87)【国際公開番号】W WO2023006931
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】102021208300.5
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】リース セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アツート ヘイコ
(72)【発明者】
【氏名】マヌシャナ ダリア
(72)【発明者】
【氏名】ドロステ マーヴィン
【テーマコード(参考)】
3C011
3C022
3C040
【Fターム(参考)】
3C011AA06
3C022QQ03
3C040GG37
(57)【要約】
ツールは、回転、振動、又は他の周期的な動きを行うように設計された第1ツール部(1、14、15、16)と、第1ツール部を固定又は案内するように設計され、第1ツール部とともに移動しない第2ツール部(18、20、21、23)と、を備える。ツールは、各々が少なくとも1つの振動質量(3)と、振動質量(3)をツールに接続するバネ要素(4)とを含み、第1関連周波数周辺の関連周波数範囲で少なくとも1つの共振を示すように調整された局所共振器(2)の配列を備える。局所共振器(2)の配列は、少なくとも第1関連周波数周辺のツールで弾性波伝播のための少なくとも1つの阻止帯域を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールであって、
回転、振動、又は他の周期的な動きを行うように設計された第1ツール部(1、14、15、16)と、
前記第1ツール部を固定又は案内するように設計され、前記第1ツール部とともに移動しない第2ツール部(18、20、21、23)と、
を備え、
前記ツールは、各々が少なくとも1つの振動質量(3)と、前記振動質量(3)を前記ツールに接続するバネ要素(4)とを含み、第1関連周波数周辺の関連周波数範囲で少なくとも1つの共振を示すように調整された局所共振器(2)の配列を備え、
前記局所共振器(2)の前記配列は、少なくとも前記第1関連周波数周辺の前記ツールで弾性波伝播のための少なくとも1つの阻止帯域を生成する、
ツール。
【請求項2】
前記第1ツール部(1、14、15、16)は、鋸刃(1、15)、切削ディスク(14)、ドリルビット(16)、カップホイール、ドラム、ブレード、又は剛毛を含む、
請求項1に記載のツール。
【請求項3】
前記局所共振器(2)の前記配列は、周期的である、
請求項1又は2に記載のツール。
【請求項4】
前記局所共振器(2)間の距離は、前記第1関連周波数の波長の半分未満である、
請求項3に記載のツール。
【請求項5】
前記局所共振器(2)の前記周期的な配列は、ブラッグ散乱のために、少なくとも1つの更なる周波数による弾性波伝播のための少なくとも1つの更なる阻止帯域を形成する、
請求項3又は4に記載のツール。
【請求項6】
前記局所共振器(2)の前記配列は、このようであり、及び/又は前記局所共振器(2)は、前記弾性波伝播のためのいくつかの阻止帯域が前記ツール内に生成されるように設計される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のツール。
【請求項7】
前記共振器のそれぞれは、前記少なくとも1つの阻止帯域が広がるように、わずかに異なる周波数同調を有する、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のツール。
【請求項8】
前記各局所共振器の前記バネ要素及び/又は前記振動質量は、前記局所共振器の前記配列における該局所共振器の位置にそれぞれ同調され、前記局所共振器は、前記位置及びこの位置に作用する力にかかわらず、ほぼ同じ周波数同調を有する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のツール。
【請求項9】
前記局所共振器は、減衰要素(7)をさらに含む、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のツール。
【請求項10】
前記第1ツール部(1、14、15、16)は、前記局所共振器(2)の前記配列を備える、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のツール。
【請求項11】
前記局所共振器(2)は、前記第1ツール部(1、14、15、16)と一体に形成される、
請求項10に記載のツール。
【請求項12】
前記振動質量(3)は、前記第1ツール部の凹部(5)により規定される前記第1ツール部(1、14、15、16)の領域であり、前記バネ要素(4)は、これらの領域を前記第1ツール部(1、14、15、16)に接続するウェブである、
請求項11に記載のツール。
【請求項13】
前記凹部(5)には、制振材料(7)が充填される、
請求項12に記載のツール。
【請求項14】
前記振動質量(3)は、剛性低下領域(8)に囲まれた前記第1ツール部(1、14、15、16)の領域であり、前記バネ要素(4)は、これらの剛性低下領域(8)により形成される、
請求項11乃至13のいずれか一項に記載のツール。
【請求項15】
前記剛性低下領域(8)は、ビーズ又はエンボスとして形成される、
請求項14に記載のツール。
【請求項16】
前記局所共振器(2)は、ピッチ円セグメントとして設計される、
請求項11乃至15のいずれか一項に記載のツール。
【請求項17】
前記局所共振器(2)は、前記第1ツール部の凹部内に配置される、
請求項10に記載のツール。
【請求項18】
前記第1ツール部(1、14、15、16)は、少なくとも三層のサンドイッチ構造を有し、前記局所共振器は、前記サンドイッチ構造の内層に配置される、
請求項10に記載のツール。
【請求項19】
前記局所共振器(2)は、前記第1ツール部(1、14、15、16)の表面上に位置する、
請求項10に記載のツール。
【請求項20】
前記第1ツール部(1、14、15、16)は、剛性低下又は増加領域(8)を有する、
請求項1乃至19のいずれか一項に記載のツール。
【請求項21】
前記第2ツール部(18、20、21、23)は、前記局所共振器(2)の前記配列を備える、
請求項1乃至20のいずれか一項に記載のツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射音及び振動を低減する目的でメタマテリアルを備えたツールであって、鋸で切ったり、切断したり、他の機械加工プロセスを行うためのツールに関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工プロセスは、一般的に、高い騒音放射(空気伝播騒音および構造伝播騒音)を伴う。これは、特に、ツールが特定の周波数で動作するときに、ツールの回転、振動、又は他の周期的な動きに定在波が形成されることにより引き起こされる。例えば、定在波は、臨界速度で丸鋸刃に形成される。これらは、高い騒音放射と、鋸刃の不安定性につながり、切削パターンを悪化させる。そのため、鋸刃は、通常、臨界速度の数分の1でしか動作しないので、切削性能が低下する。したがって、可能な限り高い臨界速度を有するように鋸刃を設計することが重要である。また、この概念は、切削ディスク、ドリル、チェーンソー、チッパーブレード、カップホイール、又はカップブラシなどの他の回転又は振動ツールにも適用することができる。一般に、労働安全上の理由から、このような臨界振動数以下であっても、騒音、振動、及び振動を避けることが望ましい。
【0003】
鋸刃の場合、特別な鋸歯形状、軸受、又はサンドイッチ設計の鋸刃が騒音を低減するために使用される。しばしば拡張スロットと呼ばれる鋸刃の切断も一般的である。これらのスロットは、異なる形状を取ることができ、制振材料で充填することもできる。特定の配置に応じて、これらの切断は、鋸刃の固有振動数を変更し、鋸刃の残留応力を低減し、定在波の形成を防止し、振動エネルギをより大きなスペクトルに分散させることを意図している。別の可能性は、圧延リングで鋸刃をプリテンションすることにより、鋸刃の臨界振動数を増加させることである。
【0004】
音の放出、振動、振動を低減するもう一つの選択肢は、いわゆる振動音響メタマテリアルの使用である。メタマテリアルは、特別な導電性、絶縁性、減衰性、又は補強性を達成するように設計された人工的な、通常は周期的な構造である。このようにして、例えば、阻止帯域を形成する構造を設計することができる。阻止帯域は、波の伝搬が大きく減衰される周波数範囲である。振動音響メタマテリアルでは、これらの概念を用いて、弾性波及び音波の伝搬を制御したり、操作したりする。この文脈では、密度、圧縮率、及び弾性率などの固体の特性が関連する。このようなメタマテリアルの簡単な例は、例えば、造の弾性パラメータのジャンプ又は不均一性によって音響範囲で実現される、周期的に変化する屈折率を持つ材料で作られた構造である。ブラッグ散乱は、このような構造で起こる:音波は、周波数に依存する屈折率の遷移で反射される。不均一性の格子構造に依存する特定の周波数範囲では、相殺的干渉が起こり、阻止帯域が生じる。振動音響メタマテリアルを用いて阻止帯域を生成する別の方法は、共振構造の周期的配列、いわゆる局所共振器を用いることである。局所共振器とそれらの環境との相互作用のために、結果として生じる構造は、負の有効質量を有するかのようにある周波数範囲で振る舞い、そのため、波伝搬は、この範囲で強く妨げられる。強い阻止帯域を生成するために、個々の共振器はすべて、同じ周波数に同調しなければならない。共振器の周期性と周波数同調のずれは、より広いがあまり目立たない阻止帯域をもたらす。振動音響メタマテリアルを巧みに設計することにより、これらの効果は、騒音、振動、及び振動を低減するためにも使用できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、保護のための本出願の目的は、このようなメタマテリアルの使用を通じて振動、振動、及び騒音放射を低減するツールを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
独立請求項1にかかるツールにより、この目的は解決される。
【0007】
そのようなツールは、
回転、振動、又は他の周期的な動きを行うように設計された第1ツール部と、
第1ツール部を固定又は案内するように設計され、第1ツール部とともに移動しない第2ツール部と、
を備え、
ツールは、各々が少なくとも1つの振動質量と、振動質量をツールに接続するバネ要素とを含み、第1関連周波数周辺の関連周波数範囲で少なくとも1つの共振を示すように調整された局所共振器の配列を備え、
局所共振器の配列は、少なくとも第1関連周波数周辺の弾性波伝播のための少なくとも1つの阻止帯域を生成する。
【0008】
ここで、ツールは、別のオブジェクトを処理又は生成するために用いることができる任意のオブジェクトとして定義される。したがって、用語は、用語はハンドツールから工業用工作機械の処理ツールまで拡張する。ツールは、モータ、油圧、空気圧、又は筋肉の力によって、直接又は間接的に駆動することができる。それは、切削、特に、鋸引き、穴あけ、旋削又は研削などの機械加工プロセス、又はその他の製造プロセス又は機械加工のために設計可能である。
【0009】
そのようなツールは、少なくとも2つの構成要素を備える。例えば、材料除去の製造プロセスを実行するように設計された第1ツール部。したがって、第1ツール部は、回転、振動、又は別の周期的な動きを実行するように設計される。第1ツール部は、ツールを介してツール部に作用する力と、加工される材料又はワークピースを介して作用する力との両方の影響を受ける。第1ツール部は、1つの部品で設計可能である。しかしながら、ブレード、ディスク、アクスル、軸受、フランジ、ネジ、リベットなどの、同じ動作を実行する他の構成要素でも構成可能である。
【0010】
第2ツール部は、第1ツール部を固定又は案内するために使用され、第1ツール部の動作を実行しない。したがって、第2ツール部は、第1ツール部に対して不動のままである。第2ツール部は、例えば、ハンドツールのハンドル、ホルダ、ハウジング、又は工作機械の支持構造であり得る。
【0011】
ツールは、騒音放射、振動、及び振動を低減するための局所共振器の配列を備える。この局所共振器の配列は、振動音響メタマテリアルを形成する。個々の共振器はそれぞれ、少なくとも1つの振動質量と、1つのバネ要素とからなる。振動質量は、任意の形状と寸法を有することができる。振動質量の質量は、共振器の周波数同調における重要な因子である。振動質量は、周囲の部品と同じ材料で作ることができる。しかしながら、それは、別の材料で作ることもできる。バネ要素は、弾性特性を有する。それは、振動質量をツールに接続する。これは、直接接続又は他の構成要素を介した間接接続であり得る。バネ要素は、振動質量と一体に形成したり、ツールと一体に形成したり、ツールと振動質量の両方と一体に形成したりし得る。また、それは、板バネなどの単一の弾性要素にすることもできる。バネ要素は、任意の形状と寸法を持つことができる。特に、バネ要素の形状と寸法は、共振器の周波数同調において重要な因子である。バネ要素は、周囲の構成要素と同じ材料で作ることができる。しかしながら、それは、別の材料、特にエラストマで作ることもできる。振動質量、バネ要素、及びツールの周辺材料の特定の領域は、共振器の単位セルを形成する。局所共振器の配列は、これらの単位セルの空間的反復から構成される。
【0012】
各個別の共振器は、少なくとも1つの第1関連共振周波数を有する。共振周波数で励起されると、共振器の振動の振幅が最大になる。共振器の共振周波数は、単位セル全体の特性によって決められる。振動質量の質量、バネ要素、及びバネ要素の弾性特性に加えて、周囲の構造の形状、質量、及び弾性も役割を果たす。したがって、これらの特性を変化させることにより、共振器の周波数を調整することができる。単位セルは、第1関連周波数の波長の半分又はそれ以下のオーダで寸法化すべきである。
【0013】
メタマテリアルのすべての局所共振器は、同じ共振周波数、又は少なくともほぼ同じ共振周波数に調整される。これにより、この周波数の周りに阻止帯域が作られ、メタマテリアルとそれに取り付けられたツールの波伝播が大幅に減衰される。局所共振器の共振周波数を調整することにより、ツールの音放出とその振動音響挙動に関して有利な特性を持つ阻止帯域を設計することができる。共振器が関連周波数範囲内のいくつかの共振周波数を有すると、いくつかの阻止帯域がそれらの周りに発生することができる。これらいくつかの阻止帯域は、異なる周波数範囲の振動を個別に低減したり、大きな阻止帯域を形成するために重なり合ったりすることができる。
【0014】
第1ツール部は、材料除去のための鋸刃、切削ディスク、カップホイール、ドラム、ブレード、剛毛、又は他のタイプの切削エッジを含むことができる。また、ツール部は、第1ツール部が回転、振動、又は他の周期的な動きを行うことができるように、ツール全体で第1ツール部を移動可能に支持する役割を果たすボルト、リベット、ナット、フランジ、軸受、及び他の支持構造を含むことができる。
【0015】
局所共振器の配列は、周期的であり得る。周期的な構造は、局所共振器の単位セルの空間的反復から生じる。
【0016】
局所共振器の配列における局所共振器間の距離は、配置の有利な挙動を保証するために、第1関連周波数の波長の半分より小さくすることができる。第1周波数の波長の半分のオーダにおける局所共振器の単位セルとともに、配置の分散挙動も方向に依存しないことができる。
【0017】
波長の半分以下の距離を持つ局所共振器の周期的な配列は、配列でのブラッグ散乱により作られる少なくとも1つの追加の阻止帯域がツールに形成されることを保証することができる。このように、追加の阻止帯域は、追加の周波数によって利用可能である。
【0018】
また、更なる阻止帯域は、それらがいくつかの共振周波数を持つように、局所共振器を設計することにより、生成され得る。さらに、局所共振器の配列は、配列内の異なる関連周波数を持つ共振器を使用するか、又は配列の形状による追加の阻止帯域を使用することによって、配列に対して追加の共振周波数が生じるように選択することができる。
【0019】
個々の局所共振器がわずかに異なるように調整されると、阻止帯域は、第1共振周波数だけ広げることができる。しかしながら、それは、その鋭さを失い、この周波数範囲の振動の減少は、あまり顕著ではない。しかしながら、これらの効果は望ましいかもしれない。
【0020】
局所共振器がツールに接続される場所によって、異なる力が作用する。これは、ツールの使用中に個々の共振器の周波数同調が変わり得ることを意味する。これを防止するために、周波数同調がツール上の位置に一致するように、共振器を設計することができる。特に、個々の共振器の振動質量とバネ要素は、作用力の影響下でツールの使用中にすべての共振器がほぼ同じ周波数同調を持つように、設計され得る。鋸刃の場合、例えば、個々の共振器は、遠心力の影響下で関連する回転周波数に達したときに共振器が同じ共振周波数を持つように、それらが取り付けられる半径に応じて異なる剛性を持つわずかに異なる質量又はバネ要素を持つことができる。
【0021】
振動質量及びバネ要素に加えて、共振器は減衰要素を含むこともできる。これは、例えば、単位セルに挿入される粘弾性材料であり得る。阻止帯域の形状は、減衰により影響を受け得る。共振器の追加的な減衰は、阻止帯域を広げ、望ましい効果を得ることができる。
【0022】
局所共振器の配列は、第1ツール部に取り付け可能である。この場合、局所共振器は、例えば、鋸刃、切削ディスク、ブレード、又はドラムに取り付けられる。この設計は、騒音放射、振動、及び振動の低減が、低減される振動及び振動を発生する回転又は振動コンポーネント上で直接行われるので、有用であり得る。騒音放射の低減に加えて、これは、改善された切削パターン又はより高い鋸刃回転周波数のような、更なる改善された動作特性を可能にするかもしれない。局所共振器がツール部の全表面上に配置されているのではなく、その代わりに、例えば、エッジ領域又は鋸刃のセンターボアの近くにのみ配置されている場合に、それは有用であり得る。これは、ツール部が所望の振動低減を達成するために必要な範囲でのみ変更され、ツール部のトポロジを最適化することができるという利点を有する。
【0023】
局所共振器の配列は、第1ツール部と一体に形成することができる。局所共振器は、第1ツール部と同じ材料で形成することができる。そして、共、振器の振動質量とバネ要素も一体に設計され、その形状によって定義される。したがって、局所共振器は、第1ツール部の不可欠な部分である。
【0024】
例えば、局所共振器は、ツール部の凹部により定義され得る。これらの凹部は、ウォータージェット、レーザ又は火炎切断、ワイヤ浸食又はパンチングなどの適切なプロセスを使用して作成可能である。そして、振動質量は、凹部により定義され、ウェブとして設計されたバネ要素を介して第1ツール部の残りの部分に接続される第1ツール部の領域によって与えられる。そして、局所共振器の単位セルは、振動質量、バネ要素、それを囲む凹部、及び第1ツール部の隣接領域から構成される。ここで、振動質量、バネ要素、及び隣接領域は、一体に形成される。
【0025】
凹部は、局所共振器の減衰要素として機能する粘弾性材料を収容することができる。
【0026】
また、局所共振器は、振動質量として設計された第1ツール部の領域が、バネ要素を表す剛性低下領域を介して残りの第1ツール部に接続される点で、第1ツール部と一体に形成することもできる。また、バネ要素として剛性低下領域をそなえる本実施の形態は、第1ツール部に凹部を備える実施の形態と組み合わせることもできる。
【0027】
剛性低下領域は、例えば、第1ツール部の表面におけるビーズ又はエンボスであり得る。ビーズ又はエンボスは、技術的に簡単であり、凹部とは異なり、ツール部をさらに弱くすることはない。
【0028】
特に、鋸刃などの回転する円盤状の第1ツール部では、ピッチ円セグメントの形で共振器を設計することができる。この形状では、局所共振器は、特に密に配置可能である。回転するツール部の回転方向に対してピッチ円セグメントを配置することにより、回転により共振器がツール部の表面に対して垂直になることを防止することもできる。
【0029】
局所共振器が第1ツール部と一体に形成されていないとしても、それらは、第1ツール部の凹部内に配置することができる。このように、ツール部の省スペース設計を確保することができる。
【0030】
第1ツール部が少なくとも3層からなるサンドイッチ構造を有すると、局所共振器は、サンドイッチ構造の内層の1つに配置することができる。この目的のために、内層には、サンドイッチ構造の層内に空洞を形成する凹部を設けることができる。局所共振器は、これらの空洞内に配置することができる。空洞は、振動質量を囲む弾性材料で充填可能である。したがって、弾性材料は、局所共振器のバネ要素を表す。サンドイッチ設計で第1ツール部を構築することにより、局所共振器は、省スペースで保護された方法で配置可能であり、同時に、ツール部の表面は影響を受けず、プロセスを分離するための特定のアプリケーションで有用であり得る。
【0031】
その代わりに、局所共振器は、ツール部の表面にも配置可能であり、バネ要素は、振動質量をツール部の表面に垂直に接続する。これは、ツール部自体の静的剛性に影響を与えないと、特に有用であり得る。繰り返しになるが、局所共振器は、ツール部が動作中に必要な隙間を有するツール部の領域に配置されることが重要である。
【0032】
局所共振器の配列に加えて、ツール部は、剛性増加又は低下領域を有することができる。ツール部と共振器の固有周波数をさらに同調するために、これらを用いることができる。
【0033】
第1ツール部に加えて、又は第1ツール部の代わりに、第2ツール部、すなわち、ハンドル又はホルダも、局所共振器の配列を備えることができる。これは、ツールの騒音放射、不快な振動、又は危険な振動につながるこれらの構成部品の振動も低減可能であることを意味する。第2ツール部は、基本的に、第1ツール部について上述したものと同じ特徴を有することができるが、第2ツール部自体は、回転又は振動せず、したがって、第1ツール部の振動又は駆動によって励起されることに留意されたい。
【0034】
本出願の主題の記載された実施形態は、付加的な効果を達成し、振動を低減するために局所共振器の形態でメタマテリアルを備えたツールを提供するために、個別に又は組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の更なる態様と同様に、上述の態様は、例示的な実施の形態の詳細な説明に基づいて明らかになるであろう。この説明は、以下の図面の助けで提供される。
【
図2】局所共振器が制振材料をさらに備える、
図1に示すような鋸刃を示す。
【
図3】
図3aは、局所共振器の配列と剛性低下領域を有する鋸刃の代替の実施の形態を示し、
図3bは、
図3aの領域の拡大図を示し、
図3cは、バネ要素が剛性低下領域として設計された局所共振器を示す。
【
図4】局所共振器がピッチ円セグメントとして設計された鋸刃の代替の実施の形態を示す。
【
図5】
図5aは、局所共振器の配列を持つサンドイッチ構造の鋸刃の断面を示し、
図5bは、エラストマで充填した局所共振器の配列を持つサンドイッチ構造の鋸刃の断面を示す。
【
図6】
図6aは、局所共振器の取り付けた配列を持つ鋸刃の断面を示し、
図6bは、局所共振器の取り付けた配列を持つ鋸刃を有する丸鋸を示す。
【
図7】局所共振器の配列を備えた切削ディスクを示す。
【
図8】局所共振器の配列を備えた往復鋸の鋸刃を示す。
【
図9】局所共振器の配列を備えたドリルビットを示す。
【
図10】
図10aは、そのハウジングが局所共振器の配列を備えた丸テーブル鋸を示し、
図10bは、ブレードとハウジングが局所共振器の配列を備えたチェーンソーを示し、
図10cは、そのハンドルが局所共振器の配列を備えたアングルグラインダを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に基づいて、クレームした主題をより詳細に説明する。同一の参照番号は、同一の構成要素を示す。
【0037】
図1~
図6bは、丸鋸刃1を例として用いて、請求項に係る対象物の概念を示す図である。しかしながら、示した実施の形態は、同じ利点を達成するためにわずかな設計変更のみで、
図7、
図8、及び
図9に示すような他の第1ツール部にも適用可能である。
【0038】
図1は、局所共振器2の配列を備えた鋸刃1を示す。1つの局所共振器2を拡大して示す。局所共振器2の単位セルを拡大して示す。共振器は、振動質量3とバネ要素3からなる。これらは、鋸刃1と一体に形成されており、例えば、ウォータージェット切削により切り出すことができる。このように、振動質量3及びバネ要素4は、凹部5によって画定される。バネ要素4は、振動質量3と鋸刃1の周囲構造6とを接続するウェブによって形成される。したがって、振動質量3は、周囲構造6に対して振動可能に取り付けられる。共振器2は、振動質量3の振幅が最大となる共振周波数を有する。拡大におけるグレースケール勾配は、局所共振器の単位セルの変形に関する情報を提供する。見て分かるように、これは、振動質量とバネ要素4の両方に影響を及ぼすとともに、周囲構造6の領域にも影響を及ぼす。このことから、局所共振器2の固有振動数は、局所共振器2の単位セル全体の設計に依存することが推測可能である。図示した設計実施形態では、固有振動数は、特に、鋸刃1の材料の弾性特性、その厚さ、振動質量3の形状、及びバネ要素4の形状により決定される。
【0039】
局所共振器の配列は、鋸刃1全体に及ぶ。局所共振器2の配列は、周期的であり、すべての局所共振器2は、同じ周波数同調を有する。したがって、局所共振器の配列は、局所共振器の共振周波数周辺の周波数範囲において負の有効質量特性を有するメタマテリアルを形成する。外部駆動回転によって、鋸刃1がこの第1周波数で振動するように励起されると、周波数は大幅に減少し、振動エネルギは局所共振器2に吸収される。これにより、阻止帯域、すなわち、鋸刃1の波伝搬が抑制される周波数範囲が形成される。
【0040】
鋸刃1は、外部からの励振により定在波が形成されると、高レベルの音を発する。これは、鋸刃1がいわゆる限界速度で回転するときに発生する。しかしながら、臨界速度における定在波の周波数がメタマテリアルの阻止帯域の範囲内になるように、局所共振器2の形状や弾性特性、相互の距離を巧みに選択して局所共振器2の配列を調整すれば、これらの波を強力に減衰させることができ、音の放出を低減することができる。立軸の形成が鋸刃の不安定性にもつながるため、鋸刃の切削パターンも改善することができる。したがって、全体として、鋸刃は、より高速で動作することができる。
【0041】
局所共振器は、それらの実施の形態に応じていくつかの共振周波数を有することができるので、いくつかの阻止帯域もまた、他の周波数の周りに形成することができる。これらの阻止帯域は、異なる周波数範囲をカバーすることができるか、拡大された阻止帯域を作成するために重なり合うことができる。また、個々の局所共振器は、わずかに異なる周波数同調で設計することもできる。これにより、阻止帯域領域の振動低減が弱くなるが、振動低減が広がる。その代わりに、できるだけ明確な阻止帯域を生成するために、局所共振器2ができるだけ正確な周波数同調を有する場合には、それらの正確な配列によっては、例えば、周波数同調に影響を及ぼし得る遠心力により、鋸刃1の動作中に個々の局所共振器2に追加の力が作用し得ることに注意することは、特に重要である。したがって、周波数同調のために局所共振器の形状を選択する際には、それぞれの局所共振器の位置に応じて、そのような力を考慮に入れることが理にかなっている。
【0042】
付加的な効果は、局所共振器2の周期的な配置から生じる。これらは、鋸刃1の材料のパラメータの不均一性を表し、それにより、ブラッグ散乱が起こり得る。相殺的干渉は、局所共振器間の距離に依存して更なる周波数の周りに阻止帯域を生成することができる。それは、局所共振器の第1周波数に対応する必要はない。また、この阻止帯域は、鋸刃2の不要な振動を防止し、従って騒音放射を低減するために使用することができる。
【0043】
鋸刃1は、鋸刃1が回転R方向に回転したとき、ほぼ同様の力が個々の共振器2に作用し、それらが整列しないように、局所共振器2がそれぞれ90°回転して配置される四つの象限に分割される。
【0044】
図2は、
図1の鋸刃にほぼ対応する鋸刃1を示す。しかしながら、本実施の形態では、凹部5に制振材7を挿入する。それは、粘弾性材料であり得る。この付加的な減衰により、局所共振器配列の阻止帯域を広げることができる。また、制振材料7は、凹部5を閉鎖し、それらへのチップの固着を防止する。また、減衰共振器では、阻止帯域の最高周波数より高い周波数もすべて減衰されるので、阻止帯域は、一種のローパスフィルタとして機能する。
【0045】
局所共振器2は、必ずしも鋸刃と一体に形成する必要はない。また、それらは、個々に取り付けて凹部5に固定することもできる。例えば、
図1及び
図2に示すものにほぼ対応する構造がこの目的のために適しているが、振動質量3は、鋸刃1の材料から作られておらず、ウェブを介して、単位セルの周囲構造6に接続される。その代わりに、局所共振器2は、例えば、板金ディスクによって形成されたエンボス振動質量3を有するバネ要素4として、弾性又は粘弾性材料7で構成することができる。これらの局所共振器は、その周波数同調の要件に従って設計することができ、後に凹部に挿入されるだけであり、より単純で自由な同調可能性を可能にする。
【0046】
図3aは、局所共振器2の配列を有する鋸刃1の代替の実施の形態を示す。
図3bは、本実施の形態の拡大断面を示す。本実施の形態では、局所共振器2は、同心の剛性低下領域8に沿って配置される。これらは、機械加工プロセスを用いて鋸刃1の厚さに作成されたビーズ、エンボス、又は凹部であり得る。これらの剛性低下領域8がバネ要素4を表すウェブにも影響を与えるため、局所共振器の固有周波数も調整することができる。この手順は、低周波数での周波数同調を可能にするために、厚いツール部に特に有益である。また、更なる周波数同調を可能にするために、剛性増加領域を持つツール部1を提供することも有用である。
【0047】
別の代替案は、凹部5に基づいていないが、剛性低下領域8を用いてバネ要素4を実現する局所共振器である。そのような一実施の形態を
図3cに示す。エンボス加工又は機械加工プロセスを用いて、そのような可撓性の膜表面8を製造することができ、これは、振動質量3として囲まれた表面のためのバネ要素4として機能する。ツール部が凹部5によって弱体化される必要がなく、連続した表面になるため、本実施の形態は、有利である。
【0048】
鋸刃1上の他の可能な局所共振器2の配列を
図4に示す。ここでは、局所共振器2は、ピッチ円セグメントとして設計される。これにより、可能な限り近接して局所共振器を配置することができ、共振器を回転させることを避けることができる。ピッチ円セグメントは、凹部5により振動質量3として規定されるが、本実施の形態では、セグメントの鋸刃の周囲構造に接続する側がバネ要素4を形成する。もちろん、本実施の形態は、
図2に示すような制振材料7、又は、
図3aに示すような剛性低下領域と組み合わせることもできる。さらに有利な特性を提供する局所共振器の他の配置も考えられる。
【0049】
図1~
図4において、局所共振器の配列はそれぞれ、鋸刃1のほぼ全面に分布している。しかしながら、既に十分な振動低減が達成されている場合には、ツール部の特定の領域のみに配置することも考えられる。例えば、
図3aでは、局所共振器の配列の個々の同心円部を省略することができる。これにより、ツール部の静的剛性が低下しにくいという利点を有することができる。例えば、鋸刃1のトポロジ最適化後に、材料を除去して最適化した領域に共振器2を配置することもできる。
【0050】
図5a及び
図5bは、サンドイッチ構造、すなわち、複数の層からなる鋸刃1の実施の形態を示す。この設計では、局所共振器2は、鋸刃1の内部、サンドイッチ構造の中間層又は内層の凹部に配置することができる。
図5a及び
図5bは、それぞれ、鋸刃1の断面を示す。鋸刃は、鋸歯9と、鋸刃1の中央部を形成し、中央孔を有するフランジ11とを有する。鋸刃1の実際の本体は、少なくとも三層からなり、そのうちの二層は、鋸刃1の表面を形成する。これらの間に、少なくとも1つの内層が配置される。これらの内層は、鋸刃1に空洞を形成する凹部を有する。体積の割合として、これらの空洞は、図に概略的に示すように、内層の大部分を構成することができる。しかしながら、個々の局所的な凹部がある場合もある。局所共振器は、空洞内に配置される。
図5aは、個々のバネ要素に取り付けられた振動質量として、局所共振器を示す。振動質量は、例えば、板金ディスクであり、バネ要素は、螺旋状、板バネ、又は弾性材料の形態であり得る。鋸刃1の残りの空洞は、空気充填されたままである。その代わりに、
図5bは、空洞がエラストマ10で充填される実施の形態を示す。これは、局所共振器のバネ要素を形成するのに対し、振動質量は、印象質量要素として順次設計される。
図5a及び
図5bの鋸刃における局所共振器2の配列は、その周波数同調及び間隔に関して、
図1~
図4のメタマテリアルについて説明したのと同じ要件を満たし、同様に変化させることができる。局所共振器2をサンドイッチ構造に配置する利点は、局所共振器2が外部の影響から保護されるとともに、鋸刃1の表面が連続的に密閉されたままであり、鋸刃1の使用を妨げる可能性のある追加構造を有さないということである。
【0051】
その使用が可能な限り負の影響を受けないように、局所共振器2の非単一部品の実施の形態をツール部に取り付ける更なる可能性を
図6a及び
図6bに概略的に示す。いずれの図においても、局所共振器2の配列は、鋸刃の全面には分布せず、特定の領域にのみ分布する。
図6aは、局所共振器が縁部に集中し、鋸歯9の連結の明確な寸法内に配置される鋸刃1の断面図である。鋸刃1を使用するとき、局所共振器は、鋸材料13に接触しない。その代わりに、局所共振器2の配列は、鋸刃1の中心孔付近に集中させることもできる。テーブルソーの例を用いた本実施の形態を
図6bに示す。ここで、局所共振器2は、作動中にテーブル12及び切断すべき材料13に接触しないように、鋸刃2の中央領域に配置される。しかしながら、局所共振器2がツール部の全面に張り出していないような
図6a及び
図6bの配列では、十分な振動低減を確保する必要がある。
【0052】
上述の実施の形態では、鋸刃の例を用いて、振動低減に用いるメタマテリアルについて説明した。しかしながら、同様の概念は、振動を発生させ、その動きに起因して騒音を放射する他の多数の回転、振動、又は他の移動ツール部に適用可能である。これを
図7~
図9に示す。
【0053】
図7は、カットオフ又はアングルグラインダで使用するための切削ディスク14を示す。このような切削ディスクは、高速で動作し、通常、鋼又は合成樹脂複合材料で作られる。図示の局所共振器2の配列は、
図1に示すものに対応する。切削ディスクは、しばしば、サンドイッチ構造で製造されるので、
図5a又は
図5bに示すようなサンドイッチ構造の局所共振器の配列もそれらに適している。
【0054】
図8は、レシプロソー又はジグソーの鋸刃15を示す。このような鋸刃15は、通常、電気モータによる振動運動で駆動される。結果として生じる振動を減衰させるために、鋸刃15は、鋸刃15と一体に形成された局所共振器2の配列を備えることができる。また、閉鎖帯鋸刃は、局所共振器を備えることもできる。
【0055】
図9は、回転による振動を減衰させるために、局所共振器2の配列が円周に沿って延びるドリルビット又はホールソー16を示す。この原理は、カップホイール、研磨板、カップブラシホルダにも適用可能である。
【0056】
したがって、振動減衰のための局所共振器の配列からなるメタマテリアルの原理は、騒音放射を低減するとともに、相殺的振動の低減を介して、切削パターンの改善、材料応力の低減、又は操作安全性の向上などの更なる利点を達成するために、様々な異なるツール部に適用可能である。
【0057】
また、この原理は、移動するツール部だけでなく、支持構造、ブラケット、又はガイドのような他のツール部にも適用可能であることを言及すべきである。これらは、例えば、ツールのハンドル、そのハウジング、又は工作機械の支持構造であり得る。しかしながら、それらは、チェーンソーのブレードなどの案内要素であってもよい。
図10a、
図10b、及び
図10cは、その例を示す。これらのツール部は、能動的には動かないが、第1ツール部の回転又は振動、あるいは駆動により振動するように刺激される。また、これらの振動は、第2ツール部の材料疲労、追加の騒音放射、ユーザーにとって不快な操作、又は安全上のリスクにつながる可能性があるため、問題になることもある。したがって、関連する振動を減衰させるために、このような第2ツール部に局所共振器の配列を提供することも意味があり得る。
【0058】
図10aは、円形テーブルソー17を示す。これは、局所共振器2の配列を備えることができる鋸刃1を含む。また、円形テーブルソー17は、説明した構造及び駆動部を有するテーブル12及びハウジング18を含む。ハウジング18の振動を低減するために、それは、局所共振器の配列を備える。これにより、騒音放射を低減し、円形テーブルソー17の切削パターンを改善することができる。
図10bは、チェーンソー19を示す。ソーチェーン、すなわち、実際の移動ツール部には、振動低減のためのメタマテリアルを設けることができないので、その代わりに、ソーチェーンを案内するブレード20が、局所共振器2の配列を備える。したがって、騒音放射やチェーンソー19の取り扱い上問題となるブレード20の振動を低減することができる。また、チェーンソー19のハウジング21が局所共振器2の配列を備えることができるので、チェーンソー19の取り扱い、ひいては安全性をさらに向上させることができる。
図10cは、アングル研削盤22を示す。これは、局所共振器2の配列を備えることができる切削ディスク14を含む。また、ハンドル23も、振動を低減することにより、より低い騒音放射と安全な取り扱いを保証するために、局所共振器の配列を備える。
【0059】
局所共振器に基づく振動音響メタマテリアルを用いることにより、一般的に、騒音放射を低減し、なおかつ広範なアプリケーションの要件を満たすツールを設計することができる。
【0060】
ここに示す例示的な実施の形態は、限定的ではない。特に、付加的な効果を達成するために、これらの例示的な実施の形態の特徴を互いに組み合わせることが可能である。特許請求の範囲で定義される本財産権出願の主題の基本原則から逸脱することなく、これらの例示的実施の形態に変更を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツールであって、
回転、振動、又は他の周期的な動きを行うように設計された第1ツール部(1、14、15、16)と、
前記第1ツール部を固定又は案内するように設計され、前記第1ツール部とともに移動しない第2ツール部(18、20、21、23)と、
を備え、
前記ツールは、各々が少なくとも1つの振動質量(3)と、前記振動質量(3)を前記ツールに接続するバネ要素(4)とを含み、第1関連周波数周辺の関連周波数範囲で少なくとも1つの共振を示すように調整された局所共振器(2)の配列を備え、
前記局所共振器(2)の前記配列は、少なくとも前記第1関連周波数周辺の前記ツールで弾性波伝播のための少なくとも1つの阻止帯域を生成する、
ツール。
【請求項2】
前記第1ツール部(1、14、15、16)は、鋸刃(1、15)、切削ディスク(14)、ドリルビット(16)、カップホイール、ドラム、ブレード、又は剛毛を含む、
請求項1に記載のツール。
【請求項3】
前記局所共振器(2)の前記配列は、周期的である、
請求項
1に記載のツール。
【請求項4】
前記局所共振器(2)間の距離は、前記第1関連周波数の波長の半分未満である、
請求項3に記載のツール。
【請求項5】
前記局所共振器(2)の前記周期的な配列は、ブラッグ散乱のために、少なくとも1つの更なる周波数による弾性波伝播のための少なくとも1つの更なる阻止帯域を形成する、
請求項
3に記載のツール。
【請求項6】
前記局所共振器(2)の前記配列は、このようであり、及び/又は前記局所共振器(2)は、前記弾性波伝播のためのいくつかの阻止帯域が前記ツール内に生成されるように設計される、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のツール。
【請求項7】
前記共振器のそれぞれは、前記少なくとも1つの阻止帯域が広がるように、わずかに異なる周波数同調を有する、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のツール。
【請求項8】
前記各局所共振器の前記バネ要素及び/又は前記振動質量は、前記局所共振器の前記配列における該局所共振器の位置にそれぞれ同調され、前記局所共振器は、前記位置及びこの位置に作用する力にかかわらず、ほぼ同じ周波数同調を有する、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のツール。
【請求項9】
前記局所共振器は、減衰要素(7)をさらに含む、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のツール。
【請求項10】
前記第1ツール部(1、14、15、16)は、前記局所共振器(2)の前記配列を備える、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のツール。
【請求項11】
前記局所共振器(2)は、前記第1ツール部(1、14、15、16)と一体に形成される、
請求項10に記載のツール。
【請求項12】
前記振動質量(3)は、前記第1ツール部の凹部(5)により規定される前記第1ツール部(1、14、15、16)の領域であり、前記バネ要素(4)は、これらの領域を前記第1ツール部(1、14、15、16)に接続するウェブである、
請求項11に記載のツール。
【請求項13】
前記凹部(5)には、制振材料(7)が充填される、
請求項12に記載のツール。
【請求項14】
前記振動質量(3)は、剛性低下領域(8)に囲まれた前記第1ツール部(1、14、15、16)の領域であり、前記バネ要素(4)は、これらの剛性低下領域(8)により形成される、
請求項
11に記載のツール。
【請求項15】
前記剛性低下領域(8)は、ビーズ又はエンボスとして形成される、
請求項14に記載のツール。
【請求項16】
前記局所共振器(2)は、ピッチ円セグメントとして設計される、
請求項
11に記載のツール。
【請求項17】
前記局所共振器(2)は、前記第1ツール部の凹部内に配置される、
請求項10に記載のツール。
【請求項18】
前記第1ツール部(1、14、15、16)は、少なくとも三層のサンドイッチ構造を有し、前記局所共振器は、前記サンドイッチ構造の内層に配置される、
請求項10に記載のツール。
【請求項19】
前記局所共振器(2)は、前記第1ツール部(1、14、15、16)の表面上に位置する、
請求項10に記載のツール。
【請求項20】
前記第1ツール部(1、14、15、16)は、剛性低下又は増加領域(8)を有する、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のツール。
【請求項21】
前記第2ツール部(18、20、21、23)は、前記局所共振器(2)の前記配列を備える、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載のツール。
【国際調査報告】