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特表2024-528097上気道における微生物感染の治療のためのペプチダーゼ製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】上気道における微生物感染の治療のためのペプチダーゼ製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/48 20060101AFI20240719BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/68 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240719BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240719BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240719BHJP
【FI】
A61K38/48 100
A61P31/00
A61P1/02
A61P29/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/10
A61P11/04
A61P11/02
A61P31/14
A61P31/16
A61P31/20
A61P11/00
A61P11/14
A61P25/04
A61P17/00
A61P17/00 101
A61K9/12
A61K9/20
A61K9/68
A61K9/06
A61K9/08
A61P15/00
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/20
A61K47/02
A61K47/36
A61K47/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024505421
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2022071842
(87)【国際公開番号】W WO2023012224
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】21189429.0
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522442652
【氏名又は名称】ジーミキュー テクノロジー アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クラーサンド,マッツ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA24
4C076AA36
4C076AA49
4C076AA69
4C076AA89
4C076BB01
4C076BB21
4C076BB22
4C076BB23
4C076BB25
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC10
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC35
4C076DD23
4C076DD26Z
4C076DD38
4C076DD50Z
4C076DD57Z
4C076EE30
4C076EE37
4C076EE58T
4C076FF52
4C076FF61
4C084AA02
4C084BA44
4C084DC03
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA17
4C084MA27
4C084MA34
4C084MA47
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084NA10
4C084ZA071
4C084ZA081
4C084ZA211
4C084ZA341
4C084ZA591
4C084ZA621
4C084ZA661
4C084ZA671
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA901
4C084ZB111
4C084ZB321
4C084ZB331
4C084ZB351
(57)【要約】
本開示は、安定なペプチダーゼ組成物、ならびに微生物感染の治療及び/または予防におけるそれらの使用に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
i.0.005~1.0%w/wのトリプシン、
ii.20~70%w/wのグリセロール、及び
iii.1.0~65%w/wのキシリトール、を含む、前記組成物。
【請求項2】
前記組成物が、0.005~1.0%w/wのトリプシン、例えば、0.01~0.075%w/wのトリプシン、例えば、0.015~0.055%w/wのトリプシンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記トリプシンが、トリプシン、その機能的相同体、またはその官能化誘導体である、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、二価カチオンを含む0.003~0.2%w/wの塩、例えば、二価カチオンを含む0.003~0.15%w/w、例えば、0.003~0.1%w/wの塩をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記トリプシンが、トリプシン、その機能的相同体、またはその官能化誘導体であり、前記組成物が、二価カチオンを含む0.003~0.2%w/wの塩、例えば、二価カチオンを含む0.003~0.15%w/w、例えば、0.003~0.1%w/wの塩をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、35~70%w/wの糖アルコール、例えば、40~65%w/wの糖アルコール、例えば、45~60%w/wの糖アルコールを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記糖アルコールが、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、アラビトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルト、ソルビトール、水素化デンプン加水分解物もしくはプロピレングリコール、または他の関連するポリオールである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、20~70%w/wのグリセロール、例えば、25~65%w/wのグリセロール、例えば、27~57%w/wのグリセロールを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、1.0~65%w/wのキシリトール、例えば、3.0~50%w/wのキシリトール、例えば、4.5~30%w/wのキシリトールを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
グリセロールとキシリトールを合わせた量が、少なくとも40%w/w、例えば、少なくとも45%w/w、例えば、少なくとも50%w/wである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、緩衝液をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、0.01~2.4%w/wの緩衝液、例えば、0.07~0.3%w/wの緩衝液、例えば、0.09~0.2%w/wの緩衝液を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記緩衝液の濃度が、1~200mM、例えば、5~25mM、例えば、8~15mMである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記緩衝液が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)またはリン酸塩からなる群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
pHが、5.5~8.5である、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
pHが、6.2~7.0、例えば、6.4~6.6である、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
pHが、7.2~8.5、例えば、7.4~7.6である、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、水をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、最大でも50%w/wの水、例えば、最大でも40%w/w、例えば、最大でも30%w/wの水を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、ヒアルロン酸、例えば、0.0001~2.0%w/wのヒアルロン酸、例えば、0.0001~1.5%w/w、例えば、0.0001~1.0%w/w、例えば、0.001~1.5%w/w、例えば、0.01~1.0%w/w、例えば、0.02~0.5%w/w、例えば、0.0001~0.1%w/w、例えば、0.0001~0.01%のヒアルロン酸をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、二価カチオンをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記二価カチオンが、カルシウムである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記二価カチオンを含む塩が、薬学的に許容されるカルシウムの塩であり、その水和物を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、0.003~0.2%w/wのカルシウム塩、例えば、0.003~0.15%w/wのカルシウム塩、例えば、0.003~0.1%w/wのカルシウム塩をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が、カルシウムイオン、例えば、0.002~0.2%w/wのカルシウムイオン、例えば、0.003~0.15%w/wのカルシウムイオン、例えば、0.003~0.1%w/wのカルシウムイオンをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
前記二価カチオンを含む塩が、CaClである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記二価カチオンを含む塩が、薬学的に許容されるカルシウムの無機塩であり、その水和物を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記組成物が、0.003~0.2%w/wの二価カルシウム、例えば、0.003~0.15%w/w、例えば、0.003~0.1%の二価カルシウムを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物が、0.002~0.2%w/wの塩化カルシウム、例えば、0.005~0.02%w/wの塩化カルシウム、例えば、0.010~0.015%w/wの塩化カルシウムを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物が、
i.0.005~1.0%w/wのトリプシン、
ii.20~70%w/wのグリセロール、
iii.1.0~65%w/wのキシリトール、
iv.0.0001~1.5%w/wのヒアルロン酸、
v.0.002~0.2%w/wのCaCl、及び
vi.0.01~1.2%w/wの緩衝液を含むか、またはそれらから本質的になる、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記組成物が、
i.0.015~0.055%w/wのトリプシン、
ii.27~57%w/wのグリセロール、
iii.4.5~30%w/wのキシリトール、
iv.0.0002~0.02%w/wのヒアルロン酸、
v.0.010~0.015%w/wのCaCl、及び
vi.0.1~0.14%w/wの緩衝液を含むか、またはそれらから本質的になる、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
カラギーナンをさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項33】
前記組成物が、1%w/w以下のカラギーナン、例えば、0.5%w/w以下のカラギーナン、例えば、0.1%w/w以下のカラギーナンを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項34】
香味剤をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
前記香味剤が、天然または非天然である、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
前記香味剤が、スペアミントまたはユーカリである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項37】
前記組成物が、0.01~0.4%w/wの香味剤、例えば、0.02~0.1%w/wの香味剤、例えば、0.035~0.055%w/wの香味剤化合物を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項38】
前記組成物が、
i.0.02~0.05%w/wのトリプシン、
ii.29~56%w/wのグリセロール、
iii.4~25%w/wのキシリトール、
iv.0.0002~0.0004%w/wのヒアルロン酸、
v.0.01~0.02%w/wのCaCl
vi.0.1~0.2%w/wの緩衝液、
vii.0~0.1%w/wのカラギーナン、及び
viii.0~0.05%w/wの香味剤を含むか、またはそれらから本質的になる、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項39】
前記組成物が、スプレー、ロゼンジ、トローチ、チューインガム、ゲル、または液体の形態で送達される、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物が、噴霧可能な組成物である、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項41】
前記組成物が、スプレーの形態である、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
前記スプレーが、点鼻スプレーまたは喉スプレーである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項43】
粘度が、最大でも0.015Pa.s、例えば、25℃で幾何学的半径20mmのプレートを用いる制御応力Malvern Rheometer(Malvern Instruments)を使用して評価される最大でも0.015Pa.sである、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項44】
医薬に使用するための、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項45】
哺乳動物における及び/または哺乳動物に対する、微生物感染、及び歯肉炎もしくは歯周病等の口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害、または状態の予防及び/または治療における使用のための、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項46】
前記微生物感染が、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、及び酵母感染からなる群から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項47】
前記微生物感染が、ウイルス感染である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項48】
前記ウイルス感染が、ウイルス性上気道感染である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項49】
前記ウイルス性上気道感染が、風邪、インフルエンザ、鼻炎、副鼻腔炎、オミクロン変異株等のCOVID-19、またはウイルス性上気道感染によって引き起こされる疾患をもたらす、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項50】
前記ウイルス感染が、ライノウイルス、A型インフルエンザウイルス等のインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、メタニューモウイルス、及び他の感染性ウイルスからなる群から選択されるウイルスによるものである、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項51】
前記ウイルス感染が、風邪、インフルエンザ、鼻炎、副鼻腔炎、気管支炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、COVID-19オミクロン変異株等のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)、肺炎、ウイルス性髄膜炎、ヘルパンギーナ、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス等の感染性疾患、またはウイルス感染によって引き起こされる任意の他の疾患を引き起こす、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項52】
前記予防及び/または治療が、喉の痛み、倦怠感、鼻漏、鼻づまり、頭痛、咳、くしゃみ、及び/または発熱等の、ウイルス感染に関連する症状の予防及び/または治療である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項53】
前記組成物が、鼻用である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項54】
前記組成物が、経鼻投与用に製剤化されている、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項55】
前記組成物が、経口用である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項56】
微生物感染、皮膚疾患、及び口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害、または状態の治療及び予防のための薬物の製造における、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項57】
微生物感染、皮膚疾患、及び口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害、または状態の治療及び/または予防方法であって、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物を、それを必要とする個体に投与することを含む、前記方法。
【請求項58】
ウイルス感染の予防及び/または低減のための方法であって、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項59】
微生物多様性を増加させるための方法であって、先行請求項のいずれか1項に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項60】
先行請求項のいずれか1項に記載の組成物の製造方法であって、
i.トリプシン、
ii.グリセロール、及び
iii.キシリトールを混合することを含む、前記方法。
【請求項61】
先行請求項のいずれか1項に記載の組成物の製造方法であって、
i.グリセロール、
ii.キシリトール、
iii.緩衝液、
iv.ヒアルロン酸、及び
v.トリプシンを混合することを含む、前記方法。
【請求項62】
先行請求項のいずれか1項に記載の方法であって、
i.カラギーナン、及び/または
ii.香味剤を混合することをさらに含む、前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上気道における微生物感染の治療及び予防のための安定なペプチダーゼ製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
上気道感染は、鼻、副鼻腔、咽頭、または喉頭を含む上気道に関与する急性感染によって引き起こされる。上気道感染は、一般集団で最も多く見られる感染の1つであり、望ましくない職場及び学校の欠席の主な原因である風邪及びインフルエンザを引き起こす。上気道感染の大部分は、ウイルスによって引き起こされる。ライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、メタニューモウイルス及び未知のウイルス等の200を超える異なるウイルスが、上気道感染の患者において単離されている(Heikkinen et al,2003)。
【0003】
SARS-CoV-2患者の場合、鼻ぬぐい液で喉ぬぐい液よりも高いウイルス量が得られたことから、鼻粘膜上皮が最初の感染及び伝播の入り口であることが示唆される(Sungnak et al,2020)。鼻腔保菌がSARS-CoV-2の伝播の重要な特徴である可能性が高いことを考えると、鼻腔内に投与される薬物/ワクチンは、拡散を制限するのに非常に効果的であり得る。
【0004】
ウイルス感染は、風邪等の比較的軽度の短期的な感染、または季節性の流行で世界中に拡散するインフルエンザ等のより重度のウイルス感染から、攻撃的な生命を脅かす感染まで様々である。季節性の流行に加えて、いくつかのパンデミックが起こっており、最も壊滅的なのは1918年のスペイン風邪で、世界中で2,000万人~4,000万人が死亡した。パンデミック中のインフルエンザ関連死亡のほぼ半数は、依然として明らかではないが、二次細菌感染に関連していると疑われる理由により、若い健康な成人の間で発生した(Mallia and Johnston,2007)。ウイルス性呼吸器疾患における細菌重複感染は、臨床的に十分に裏付けられており、ウイルス感染の結果としての呼吸器細胞への物理的損傷は、日和見性の細菌付着につながる可能性がある。
【0005】
MERS(中東呼吸器症候群)及びCOVID-19等の治療が困難な新たに出現したウイルス感染に加えて、風邪、インフルエンザ及びインフルエンザによる健康問題の大きさを考えると、ウイルス感染に対する新規治療法の必要性が明らかである。
【0006】
ワクチン接種は現在、インフルエンザウイルスの拡散を防ぐための主要な焦点であるが、変異のために、毎年新しいワクチンを開発する必要がある。風邪に対する抗ウイルス薬の開発は、この疾患の原因となるウイルスの多様性のために困難である。そのような治療薬は、多様な範囲のウイルスに対する抗ウイルス対策として好適であるために、広域スペクトル活性を有するべきである。
【0007】
風邪感染を予防することが実証されている予防薬剤が存在するが、これらは、鼻腔内出血等の副作用を示す。他の抗ウイルス化学療法剤(例えば、ICAM-1遮断薬、キャプシド結合剤、及びプロテアーゼ阻害剤)も同様に、有望なリスク対効果比を示すことができなかった(Allan et al,2014)。
【0008】
ウイルスの細胞への結合を低減及び/または防止する、広域スペクトル活性を有する抗ウイルス組成物(すなわち、様々なエンベロープ及び非エンベロープウイルス、RNA及びDNAベースのゲノムに対して有効であり、異なるウイルスタンパク質(変異しているまたはしていない)に依存しない)等の、新しい非常に安定な局所抗菌組成物を開発することが緊急に必要である。そのような組成物は、理想的には、非毒性化合物に基づく。さらに、そのような抗ウイルス組成物は、細菌及び真菌によって引き起こされる上気道における二次感染に対しても有効であるべきであり、耐性を誘導しない微生物/細菌付着を標的とするべきであり、さらに、患者の自然な微生物叢に対して影響を与えないか、または影響が少ない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の発明者は、新規製剤を開発した。当該製剤は、上気道におけるウイルス感染の予防及び治療のための安定なペプチダーゼ製剤である。製剤は、経鼻投与によって上気道に投与することができ、それによって鼻咽頭に到達するだけでなく、咽頭に到達するように経口投与によっても投与することができる。
【0010】
本開示は、ワクチン及び全身性抗ウイルス薬を補完するものとして機能する生成物を記載する。それは、鼻腔及び/または喉(咽頭)に薄い保護性の広域スペクトル抗ウイルスゲルを形成し、上気道におけるウイルスの局所的な取り込みを防止するか、またはウイルス感染の伝播を低減する。ウイルスは捕捉され、ゲルに結合し、次いで広域スペクトルペプチダーゼによって不活性化される。製剤は、有効な障壁を構成し、鼻腔に適用されたときに刺痛をほぼまったく引き起こさない。
【0011】
当該製剤は、SARS-CoV-2ウイルスをインビトロで>99.9%減少させることができる。
【0012】
本発明はまた、ウイルスと同じ毒性因子、すなわち、微生物と細胞との間の結合相互作用を標的とすることによって、細菌及び真菌に対しても活性である。当該製剤は、微生物耐性を誘導せず、したがって、抗生物質の良好な代替物である。このように、本明細書に記載の製剤は、臨床用途に高い可能性を有し、抗生物質の使用を廃止するという課題に対する解決策を提供する。
【0013】
一態様では、本開示は、
i.ペプチダーゼ、
ii.糖アルコールを含む安定な組成物に関する。
【0014】
別の態様では、本開示は、
i.ペプチダーゼ、
ii.グリセロール、
iii.キシリトール、
iv.ヒアルロン酸、及び
v.緩衝液を含む組成物に関する。
【0015】
別の態様では、本開示は、医薬に使用するための当該組成物に関する。
【0016】
また別の態様では、本開示は、
i.トリプシン、
ii.グリセロール、
iii.キシリトール、
iv.ヒアルロン酸、
CaCl、及び
vi.緩衝液を含むか、またはそれらから本質的になる組成物に関する。
【0017】
一態様は、哺乳動物における及び/または哺乳動物に対する、微生物感染、皮膚疾患、及び口腔疾患からなる群から選択される状態の治療に使用するための、本明細書に開示される組成物を提供する。
【0018】
一態様は、上気道感染の治療及び/または予防に使用するための本明細書に開示される組成物を提供し、当該組成物は、経鼻及び/または経口投与用に製剤化される。
【0019】
一態様では、本開示は、微生物感染の予防及び/または低減のための方法を提供し、方法は、本明細書に開示される組成物を投与することを含む。
【0020】
また別の態様では、本開示は、微生物多様性を増加させるための方法に関し、方法は、本明細書に開示される組成物を投与することを含む。
【0021】
一態様では、本開示は、本明細書に開示される組成物の製造方法に関し、当該方法は、
i.グリセロール、
ii.キシリトール、
iii.緩衝液、
iv.ヒアルロン酸、及び
v.ペプチダーゼを混合することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】希釈の関数としての酵素活性。最も高い活性は、25~30重量%のグリセロール濃度で見られた。
図2】カラギーナン濃度の増加が酵素活性に及ぼす影響。>0.2mg/mlのカラギーナン濃度は、活性に影響を及ぼす。
図3】様々な製剤における酵素安定性。高い安定性を達成するために、25~30%グリセロールへの>10%キシリトールの添加が必要であった。CXは、市販のトリプシン含有マウススプレーである。
図4】様々な製剤における酵素安定性。製剤N2及びN4は、カラギーナンを添加せずに、高い安定性を発現した。CXは、市販のトリプシン含有マウススプレーである。
図5】増加する濃度のカラギーナンを含有するグリセロールの瞬間粘度。
図6】キシリトールを含まないTS01、TS02、TS02、及びCXにおける酵素安定性。CXは、市販のトリプシン含有マウススプレーである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書で使用される「微生物感染」という用語は、真菌、細菌、またはウイルス等の微生物による感染を指す。「ウイルス感染」という用語は、ウイルス感染の任意の段階を指し、これには、潜伏期、潜伏感染期もしくは休眠期、急性期、ならびにウイルスに対する免疫の発達及び維持が含まれる。
【0024】
「上気道」には、口、鼻、副鼻腔、中耳、喉、咽頭、喉頭、及び気管が含まれる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ウイルス感染を予防する」及び「ウイルス感染を治療する」等の用語は、特定のウイルスの複製を阻害すること、ウイルス伝播を阻害すること、またはウイルスがその宿主内でそれ自体を確立するのを防止すること、及びウイルス感染によって引き起こされる疾患の症状、例えば、喉の痛み、鼻づまり及び/または鼻水、咳及び/または体温上昇を改善または緩和することを意味する。治療は、ウイルス量の減少、及び/または罹患率及び/または死亡率の減少がある場合、治療的であるとみなされる。
【0026】
本明細書で使用される「ペプチダーゼ」という用語は、例えば、ペプチド結合を加水分解することによって、ペプチド結合において、任意の長さの、短いまたは長いポリペプチドを切断することができる、プロテアーゼ、プロテイナーゼ及びタンパク質分解酵素、その機能的相同体または官能化誘導体を含む。したがって、ペプチダーゼの基質はポリペプチドである。
【0027】
本明細書で使用される「糖アルコール」という用語は、カルボニル基(アルデヒドまたはケトン、還元糖)が一級または二級ヒドロキシル基に還元された、糖誘導体、単糖、二糖、オリゴ糖を指す。糖アルコールの非限定的な例としては、エチレングリコール(2炭素)、グリセロール(3炭素)、エリスリトール(4炭素)、トレイトール(4炭素)、アラビトール(5炭素)、キシリトール(5炭素)、リビトール(5炭素)、マンニトール(6炭素)、ソルビトール(6炭素)、ドルシトール(6炭素)、イジトール(6炭素)、イソマルト(12炭素)、マルチトール(12炭素)、ラクチトール(12炭素)、ポリグリシトール及び他の関連するポリオール誘導体が挙げられる。
【0028】
本明細書で使用される「ポリオール」という用語は、プロピレングリコール等の複数のアルコール基を含む化合物を指す。本明細書で使用される場合、ポリオールは、必ずしも各炭素原子上に1つのヒドロキシ基を有するわけではない。
【0029】
本明細書で使用される「緩衝液」という用語は、pHを安定化する目的で酸塩基混合物を含有する水溶液を指す。
【0030】
本明細書で使用される「ヒアルロン酸」(HA)という用語は、ヒアルロナンの繰り返し二糖サブユニットを含むポリマーを指す。この用語はまた、二糖サブユニットが、D-グルクロン酸及び/またはD-N-アセチルグルコサミン繰り返しサブユニットの1つ以上の位置で誘導体化され得るポリマーを含む。したがって、ヒアルロン酸という用語は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸の架橋形態、誘導体化形態、及びその薬理学的に許容される塩を包含する。
【0031】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、一般に、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わない、妥当な利益/リスク比に見合った、ヒト及び動物の組織、臓器、及び/または体液と接触させて使用するのに好適な化合物、材料、組成物、及び/または剤形を指す。
【0032】
本明細書で使用される「安定性」という用語は、インビボ安定性または貯蔵安定性(例えば、室温でのペプチダーゼの貯蔵安定性)を指すことができる。
【0033】
本明細書で使用される「香味剤」という用語は、特に4重量%未満、より好ましくは2重量%未満の濃度で、検出可能な香味の影響を与えることができる、天然または非天然の任意の物質を指す。
【0034】
本明細書で使用される「カラギーナン」という用語は、通常、紅海藻から抽出される直鎖硫酸化多糖類のファミリーを指す。全てのカラギーナンは、硫酸化及び非硫酸化の両方の繰り返しガラクトース単位及び3,6アンヒドロガラクトースからなる多糖である。様々な種類のカラギーナンが存在する。それらの中でも主な種類は、カッパ、ラムダ、及びイオタである。カラギーナンは、典型的には、粘度制御のために、または生体付着を達成するために使用される。
【0035】
本明細書で使用される「生体付着」という用語は、ポリマー等の特定の材料が生体組織または体組織に付着する能力を指す。本明細書で使用される「粘膜付着」という用語は、特定の材料が、化学的及び/または物理的結合の形成を通じて、粘膜または粘膜組織(例えば、鼻粘膜)に付着する能力を指す。
【0036】
本明細書で使用される「粘度」という用語は、流れに対する流体の抵抗を指す。粘度の単位は、パスカル秒(Pa・sまたはPas)である。
【0037】
「経口」、「喉」、及び「経口投与によって」等の用語は、本明細書で使用される場合、口腔を介して対象に医薬組成物を導入することを指す。好ましい実施形態において、医薬組成物は、液体組成物である。
【0038】
本明細書で使用される「経鼻」及び「経鼻投与によって」等の用語は、鼻腔を介して対象に医薬組成物を導入することを指す。好ましい実施形態において、医薬組成物は、液体組成物である。
【0039】
本明細書で使用される「忍容性を示す」という用語は、例えば、組成物が経鼻投与のために使用されたときに観察される刺激、刺痛感、及び分泌刺激を指す。忍容性は、本明細書において、被験者によって評価されたときに、容認できないから快適までで評価される。
【0040】
本明細書で一般的に使用される場合、「二価カチオン」という用語は、2の原子価を有する、周期表からの任意の金属の正電荷を帯びたイオンを指す。例えば、水溶液中の、二価カチオンの量が、%w/w等のパーセンテージ濃度で与えられる場合、二価カチオンの濃度は、カチオンが一部を形成する組成物の総重量に対するカチオンの重量に基づく。
【0041】
本開示の文脈において、「w/w」という用語は、「重量/重量」を意味する。「%w/w」という表現は、「重量%」または「重量パーセント」と同義である。例として、50%w/wのAを含む10gの組成物は、5gのAを含む。
【0042】
本開示の文脈では、「X~Y%のAを含む組成物」等の句は、両方の閾値を含む、X~Y%の範囲のAを含む組成物を意味すると解釈される。すなわち、組成物は、X%未満のAを含まず、XがYよりも小さい場合、組成物は、Y%超のAを含まない。
【0043】
鼻の解剖学的構造及び忍容性
ウイルス侵入の最も一般的な経路は、気道を通過することである。気道は、肺に空気を運ぶ経路を指し、上部と下部に分割することができる。上気道は、鼻、副鼻腔、喉(咽頭)及び発声器(喉頭)を含む。機械的障壁は、上気道の抗ウイルス防御において重要な役割を果たす。例えば、気道は、繊毛細胞、粘液を分泌するゴブレット細胞、及び上皮下の粘膜分泌腺からなる粘膜毛様体で裏打ちされている。鼻腔または上気道に沈着した異物粒子は、粘液に閉じ込められ、喉の後ろに運ばれ、飲み込まれる。下気道では、粘液に閉じ込められた粒子が繊毛作用によって肺から喉に持ち上げられる。気道の最も低い部分である肺胞は、繊毛または粘液を欠いているが、肺胞を裏打ちするマクロファージが、粒子を摂取して破壊する。他の細胞性免疫応答及び体液性免疫応答も介在する。気道にうまく感染するためには、ウイルスは、粘液によって一掃されてはならない、抗体によって中和されてはならない、または肺胞マクロファージによって破壊されてはならない。
【0044】
全ての風邪ウイルス、及び他の気道の感染性ウイルスが共有する共通因子は、それらが気道の機械的防御機構を回避しなければならないということである。微生物表面タンパク質が細胞表面タンパク質を認識する微生物付着は、宿主における感染を確立する最も一般的な様式である(Meena et al,2020)。
【0045】
本発明は、微生物感染に対する天然の機械的障壁を強化することを目的とする。特定の宿主細胞受容体に到達するためのウイルスの移動をブロックまたは妨害することは、ウイルスに対する安全かつ有効な保護を提供する魅力的な方法である。
【0046】
上気道におけるウイルス感染に対する最良の広域スペクトル保護のためには、鼻腔及び口腔の両方を保護する必要がある。
【0047】
一般に、鼻腔の粘膜は、中咽頭と比べて高浸透圧溶液に対してより敏感である。局所的な刺激及び鼻灼熱感/疼痛は、例えば、Nasalide(登録商標)点鼻スプレーの経鼻投与後に報告されており、患者の最大45%が鼻灼熱感を認めている(Trangsrud et al,2002)。
【0048】
本発明は、迅速なクリアランス及び鼻腔の感度の両方を考慮に入れる。
【0049】
ペプチダーゼ
風邪ウイルスに対する抗ウイルス薬の開発は、この疾患の原因となるウイルスの多様性のために困難である。本開示では、微生物感染の予防のためのペプチダーゼ組成物が用いられる。本明細書で使用される場合、「ペプチダーゼ」という用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)の体内で、タンパク質分解をインビボで触媒することができ、それによって、例えば、ペプチド結合を加水分解することによって、ペプチド結合において、任意の長さの、短いまたは長いポリペプチドを切断することができる、プロテアーゼ、プロテイナーゼ及びタンパク質分解酵素、ならびにその機能的相同体または官能化誘導体を含む。基質は、天然に存在するポリペプチドまたは合成ポリペプチドであり得る。ペプチダーゼは、特異的であり、選択されたペプチド結合のみを加水分解することができるか、または非特異的であり、多くの異なるペプチド結合を加水分解することができるかのいずれかであり得る。
【0050】
ウイルス及び細菌は、呼吸器症状を引き起こすことなく、鼻咽頭に存在し得る。上気道には、複雑な微生物群集を形成する広範囲の共生細菌及び潜在的な病原性細菌が宿っている。この群集は、常に、相乗的かつ競争的な種間相互作用の対象であると考えられる。例えば、新しい細菌またはウイルスの獲得による、平衡の乱れは、過剰成長及び侵入につながる可能性がある。
【0051】
ペプチダーゼは、ウイルス付着等の不要な微生物付着の低減または阻害に非常に好適であり、さらにペプチダーゼは非毒性であり、忍容性が高く、耐性を誘導しない。ペプチダーゼを含む組成物は、所望の健康な微生物叢を妨げることなく、微生物感染に対する治療における抗生物質の代替物として、治療剤として使用することができる。
【0052】
安定なペプチダーゼ組成物
本開示は、微生物感染の予防及び/または治療のための安定なペプチダーゼ組成物に関する。当該組成物は、ウイルスに対する保護を高めるために固有の障壁を強化する手段を提供する。開示される組成物は、微生物表面タンパク質を加水分解することができ、それによって微生物の付着及び微生物感染の確立を防止するペプチダーゼを含む。さらに、組成物は、経鼻投与に忍容性を示す安定な組成物を提供することができる、糖アルコールまたはポリオールの混合物を含む。
【0053】
本開示の組成物は、ウイルスに対してより効率的であり、他の既知のペプチダーゼ製剤(例えば、市販のペプチダーゼ製剤)と比較して、改善された貯蔵寿命及び活性を有する。さらに、組成物は、ヒト及び他の哺乳動物への経鼻投与に好適であり(開示される実施例4から結論づけられた)、これは、経口投与のみに忍容性を示す他の既知のペプチダーゼ製剤と比較して有意な改善である。
【0054】
実験結果は、本開示の組成物が微生物感染の低減に非常に有効であることを示す。殺ウイルス効果試験(結果が実施例5に提示される)では、インビトロアッセイにおいて、選択された両方の製剤(喉及び鼻用)が、トリプシンを含む市販のマウススプレーと比べて、SARS-CoV-2ウイルスに対してより効率的であることが見出された。
【0055】
本開示の一実施形態は、
i.0.005~1.0%w/wのペプチダーゼ、
ii.1.0~70%w/wの糖アルコールを含む組成物を提供する。
【0056】
一実施形態において、組成物は、
i.0.005~1.0%w/wのペプチダーゼ、
ii.20~70%w/wのグリセロール、及び
iii.1.0~65%w/wのキシリトールを含む。
【0057】
一実施形態において、組成物は、
i.0.005~1.0%w/wのペプチダーゼ、
ii.20~70%w/wのグリセロール、及び
iii.1.0~65%w/wのキシリトールを含み、
当該組成物の成分の組み合わせは100%を超えない。
【0058】
一実施形態において、組成物は、0.005~1.0%w/wのペプチダーゼ、例えば、0.01~0.075%w/wのペプチダーゼ、例えば、0.015~0.055%w/wのペプチダーゼを含む。
【0059】
一実施形態において、当該ペプチダーゼは、セリンプロテアーゼ(トリプシン及びキモトリプシン等)、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ及びメタロプロテアーゼ、その機能的相同体、及びその官能化誘導体からなる群から選択される。一実施形態において、当該ペプチダーゼは、単一種類のペプチダーゼ、または異なる種類のペプチダーゼの混合物である。
【0060】
本開示の一実施形態において、当該組成物の成分の組み合わせは100%を超えない。
【0061】
ペプチダーゼ活性
ペプチダーゼ活性は、ペプチダーゼの量当たりの所与の条件に従って定められた時間の間に形成された生成物を測定することによって決定することができる。ペプチダーゼの比活性は、タンパク質濃度当たりの酵素活性である。したがって、総ペプチダーゼ活性は、比活性及び純度によって決定される。例として、所望の活性は、比較的高い濃度で比較的不純なペプチダーゼを使用することによって達成することができるか、または比較的低い濃度で比較的純粋なペプチダーゼを使用して達成することができる。使用されるペプチダーゼの最適濃度は、酵素活性を測定することによって評価することができる。
【0062】
トリプシン
当該ペプチダーゼは、アミノ酸リジン及びアルギニンのカルボキシル側で主にペプチド鎖を切断するトリプシン等のプロテアーゼであり得る。
【0063】
一実施形態において、ペプチダーゼは、プロテアーゼである。別の実施形態において、当該プロテアーゼは、トリプシンである。また別の実施形態において、プロテアーゼは、タンパク質分解活性を有するトリプシンの機能的相同体または官能化誘導体である。
【0064】
本開示の一実施形態において、組成物は、0.005~1.0%w/wのプロテアーゼ、例えば、0.005~1.0%w/wのプロテアーゼを含む。本開示のさらなる実施形態において、組成物は、0.015~0.055%w/wのプロテアーゼを含む。本開示の特定の実施形態において、組成物は、本質的に0.015~0.055%w/wのプロテアーゼ、例えば、0.015~0.055%w/wのプロテアーゼを含む。
【0065】
本開示の一実施形態において、組成物は、0.005~1.0%w/wのトリプシン、その機能的相同体または官能化誘導体、例えば、0.005~1.0%w/wのトリプシン、その機能的相同体または官能化誘導体を含む。
【0066】
本開示のさらなる実施形態において、組成物は、0.015~0.055%w/wのトリプシン、その機能的相同体または官能化誘導体を含む。本開示の特定の実施形態において、組成物は、本質的に0.015~0.055%w/w、例えば、0.015~0.055%w/wのトリプシン、その機能的相同体または官能化誘導体を含む。
【0067】
カルシウム等のカチオン
本開示の組成物は、安定なペプチダーゼ製剤である。ペプチダーゼは、塩によって安定化され得る。
【0068】
一実施形態において、組成物は、塩をさらに含む。別の実施形態において、当該組成物は、二価カチオンを含む。
【0069】
本明細書で使用される場合、「二価カチオン」という用語は、カルシウム等の2の原子価を有する、周期表からの任意の金属の正電荷を帯びたイオンを指す。
【0070】
一実施形態において、本発明は、トリプシンを含む組成物を開示し、当該組成物は、塩をさらに含む。別の実施形態において、本発明は、トリプシンを含む組成物を開示し、当該組成物は、二価カチオンを有する塩をさらに含む。
【0071】
より特定の実施形態において、本発明は、ペプチダーゼを含む組成物を開示し、当該組成物は、二価カチオンを有する塩、例えば、二価カチオンを含む0.003~0.2%w/wの塩、例えば、二価カチオンを含む0.003~0.15%w/w、例えば、0.003~0.1%w/wの塩をさらに含む。
【0072】
別のより特定の実施形態において、トリプシン、その機能的相同体、またはその官能化誘導体を含む組成物は、二価カチオンを含む0.003~0.2%w/wの塩、例えば、二価カチオンを含む0.003~0.15%w/w、例えば、0.003~0.1%w/wの塩をさらに含む。
【0073】
本開示の一実施形態において、二価カチオンは、カルシウム(Ca2+)である。別の実施形態において、二価カチオンを含む塩は、薬学的に許容されるカルシウムの塩であり、水和物を含む。
【0074】
別の実施形態において、薬学的に許容されるカルシウムの塩は、CaClである。また別の実施形態において、二価カチオンを含む塩は、塩化カルシウム二水和物等の、薬学的に許容されるカルシウムの無機塩であり、その水和物を含む。別の実施形態において、二価カチオンを含む塩は、酢酸カルシウムまたはクエン酸カルシウム等の、薬学的に許容されるカルシウムの有機塩である。
【0075】
一実施形態において、組成物は、0.003~0.2%w/wのカルシウム、例えば、0.003~0.15%w/w、例えば、0.003~0.1%のカルシウムを含む。
【0076】
一実施形態において、組成物は、0.003~0.2%w/wのカルシウムイオン、例えば、0.003~0.15%w/wのカルシウムイオン、例えば、0.003~0.1%w/wのカルシウムイオンをさらに含む。カルシウムイオンはCa2+を意味する。
【0077】
別の実施形態において、組成物は、0.002~0.2%w/wの塩化カルシウム、例えば、0.005~0.02%w/wの塩化カルシウム、例えば、0.010~0.015%w/wの塩化カルシウムを含む。
【0078】
また別の実施形態において、組成物は、0.002~0.2%w/wの塩化カルシウム二水和物、例えば、0.005~0.02%w/w塩化カルシウム二水和物、例えば、0.010~0.015%w/wの塩化カルシウム二水和物を含む。
【0079】
本開示の一実施形態において、組成物は、
i.0.005~1.0%w/wのトリプシン、
ii.1.0~70%w/wの糖アルコール、及び
iii.0.010~0.015%w/wの二塩化カルシウム二水和物を含む。
【0080】
糖アルコール/ポリオール
本開示の組成物は、安定なペプチダーゼ製剤である。ペプチダーゼの不活性化は、組成物におけるその安定性を改善する。ペプチダーゼを不活性化する1つの方法は、組成物の水分活性を低下させることによるものである。水溶液の水分活性は、イオン及び/または他の分子の存在によって低下させることができる。
【0081】
本発明は、塩、糖アルコール、及び/またはポリオールを含み、これらは一部、組成物の水分活性を低下させるように作用する。水分活性を低下させると、ペプチダーゼが不活性化する。さらに、当該組成物が高浸透圧性であることは、本開示の目的にとって有益である。高浸透圧組成物は、一般に、細胞または細胞マトリックスにいずれの毒性作用も及ぼすことなく、ウイルス粒子及び自由に浮遊する細菌等の全ての汚染物質の感染表面を洗浄する、鼻粘膜の洗い流し効果を有する鼻汁分泌を刺激する。
【0082】
本開示の一実施形態において、組成物は、ジオール、トリオール、またはポリオール、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、または糖アルコールのうちの1つ以上を含む。
【0083】
別の実施形態において、組成物は、35~70%w/wの糖アルコール、例えば、40~65%w/wの糖アルコール、例えば、45~60%w/wの糖アルコールを含む。
【0084】
糖アルコールは、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、アラビトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルト、ソルビトール、水素化デンプン加水分解物またはプロピレングリコール、及びペプチダーゼの安定な溶液を提供する任意の他の好適なポリオールまたはそれらの混合物であり得る。
【0085】
口腔は、高濃度のグリセロールに十分耐性があるが、高濃度のグリセロールは、より薄く、より敏感な鼻粘膜に対しては、辛い刺痛作用を有する。50%のグリセロールを含む組成物は、グリセロールの高浸透圧効果のために激しく刺すように痛むため、鼻腔に噴霧することができない。10~25%のグリセロールは、少量で容認され得る。しかしながら、希釈後の低グリセロール濃度(25%)では、本明細書に開示される酵素は、長期保存のために安定ではなく、感染の治療及び/または予防におけるそれらの用途が著しく減少する。
【0086】
鼻粘膜は、中咽頭と比べて高浸透圧溶液に対してより敏感であるため、安定な組成物を維持しながら、当該鼻用製剤中のグリセロール濃度を経口用製剤と比較して希釈する必要がある。
【0087】
鼻腔の刺激を最小限に抑えるために、糖及び糖アルコールの様々な組み合わせ及び濃度を適用性についてスクリーニングしたところ、驚くべきことに、糖アルコールであるグリセロール及びキシリトールの混合物を含む開示される組成物が安定な組成物を提供し、当該安定な組成物が鼻腔投与に忍容性を示すことが見出された。
【0088】
キシリトールは、グリセロールと同様の性質を有する糖アルコールである。キシリトールは、タンパク質安定化効果を有することができる。キシリトールはさらに、スクロースに等しい甘味強度を有する。
【0089】
一実施形態において、組成物は、20~70重量%w/wのグリセロール、例えば、25~65重量%w/wのグリセロールを含む。1つの特定の実施形態において、組成物は、27~57%w/wのグリセロールを含む。
【0090】
別の実施形態において、組成物は、1.0~65%w/wのキシリトール、例えば、3.0~50%w/wのキシリトール、例えば、4.5~30%w/wのキシリトールを含む。
【0091】
また別の実施形態において、組成物は、少なくとも40%w/w、例えば、少なくとも45%w/w、例えば、少なくとも50%w/wのグリセロールとキシリトールを合わせた量を含む。
【0092】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、
i.0.005~1.0%w/wのペプチダーゼ、
ii.20~70%w/wのグリセロール、及び
iii.1.0~65%w/wのキシリトールを含む。
【0093】
点鼻スプレーを服用している患者のコンプライアンスのために、生成物の味及び忍容性は特に重要である。本発明は、甘くて心地よい味を有する、忍容性のある製剤を提示する。
【0094】
緩衝液
「緩衝液」という用語は、pHを安定化する目的で酸塩基混合物を含有する水溶液を意味することが意図される。pHは、ペプチダーゼの安定性、ペプチダーゼの活性の両方にとって、ならびに口腔及び鼻腔内の微生物感染の治療に使用される場合、組成物の忍容性にとって重要である。
【0095】
緩衝剤の例は、Trizma、Bicine、Tricine、MOPS、MOPSO、MOBS、Tris、Hepes、HEPBS、MES、リン酸、炭酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、ホウ酸、ACES、ADA、酒石酸、AMP、AMPD、AMPSO、BES、CABS、カコジル酸、CHES、DIPSO、EPPS、エタノールアミン、グリシン、HEPPSO、イミダゾール、イミダゾール乳酸、PIPES、SSC、SSPE、POPSO、TAPS、TABS、TAPSO、及びTESである。緩衝液は、2つ以上の緩衝液系の混合物であり得る。一実施形態において、緩衝液は、2つ以上の緩衝液の混合物を含む、上記の任意の緩衝液である。本開示の一実施形態において、組成物は、組成物のpHを安定化する緩衝液を含む。緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、リン酸塩、または薬学的に許容される緩衝液等の任意の他の好適な緩衝液からなる群から選択され得る。
【0096】
一実施形態において、本開示の組成物は、0.01~2.4%w/wの緩衝液、例えば、0.07~0.3%w/wの緩衝液、例えば、0.09~0.2%w/wの緩衝液を含む。
【0097】
別の実施形態において、組成物は、1~200mM、例えば、5~25mM、例えば、8~15mMの範囲の緩衝液の濃度を含む。
【0098】
組成物のpHは、鼻腔及び口腔のそれぞれにおける使用に好適であるように調整される。鼻腔は、5.5~6.5のpH範囲を有する。喉のpHは、7.2~8.5の範囲を有する。組成物は、5.5~8.5、例えば、6.0~7.0、例えば、6.3~6.7の範囲のpHを有する。
【0099】
一実施形態において、組成物は、6.2~7.0、例えば、6.4~6.6の範囲のpHを有する。別の実施形態において、組成物は、7.2~8.5、例えば、7.4~7.6の範囲のpHを有する。
【0100】
溶液のpHは、いくつかの方法で評価することができる。例えば、pHは、pH電極またはpHインジケータを使用して評価することができる。
【0101】
好ましい実施形態において、組成物は、
i.0.005~1.0%w/wのペプチダーゼ、
ii.20~70%w/wのグリセロール、
iii.1.0~65%w/wのキシリトール、及び
iv.0.01~1.2%w/wの緩衝液を含む。
【0102】
一実施形態において、組成物は、最大でも50%w/wの水、例えば、最大でも40%w/w、例えば、最大でも30%w/wの水をさらに含む。
【0103】
ポリマー
粘膜適用のために、組成物は、有利には、組成物に粘膜付着特性を与える成分を含み得る。
【0104】
開示される組成物は、組成物(例えばゲル)の滞留時間を増加させるためにポリマーを含んでもよい。ある特定の実施形態において、ポリマー(複数可)、相対量、及び濃度は、粘膜付着性であるフィルムを提供するように選択される。粘膜付着性能は、典型的には、水素結合を形成することができる荷電基または非イオン性官能基を有するポリマーに観察される。ヒアルロン酸のヒアルロン酸塩等の負電荷を帯びた多糖類、及びカラギーナン等の硫酸化多糖類が有効であることが分かっている。
【0105】
本開示の一実施形態において、組成物は、粘膜における組成物の滞留時間を増加させることができるポリマーを含む。一実施形態において、組成物は、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸誘導体からなる群から選択されるポリマーを含む。そのようなポリマーは、鼻腔内で、ゲルを強化する、粘膜付着を増加させる、及び刺激を低下させる手段として機能する。
【0106】
一実施形態において、ポリマーは、ゲルを形成することによって組成物を強化し、鼻腔における刺激の可能性を低減するために含まれる。
【0107】
ヒアルロン酸
本開示の一実施形態において、組成物は、ヒアルロン酸を含む。
【0108】
一実施形態において、組成物は、ヒアルロン酸、例えば、0.0001~2.0%w/wのヒアルロン酸、例えば、0.001~1.5%w/w、例えば、0.01~1.0%w/w、例えば、0.02~0.5%w/wのヒアルロン酸を含む。
【0109】
本開示の一実施形態において、組成物は、
i.0.005~1.0%w/wのペプチダーゼ、
ii.20~70%w/wのグリセロール、
iii.1.0~65%w/wのキシリトール、
iv.0.0001~1.5%w/wのヒアルロン酸、及び
v.0.01~1.2%w/wの緩衝液を含むか、またはそれらから本質的になる。
【0110】
本開示の別の実施形態において、組成物は、
i.0.005~1.0%w/wのトリプシン、
ii.20~70%w/wのグリセロール、
iii.1.0~65%w/wのキシリトール、
iv.0.0001~1.5%w/wのヒアルロン酸、
v.0.002~0.2%w/wのCaCl、及び
vi.0.01~1.2%のw/wの緩衝液を含むか、またはそれらから本質的になる。
【0111】
別の実施形態において、組成物は、
i.0.015~0.055%w/wのトリプシン、
ii.27~57%w/wのグリセロール、
iii.4.5~30%w/wのキシリトール、
iv.0.0002~0.02%w/wのヒアルロン酸、
v.0.010~0.015%w/wのCaCl、及び
vi.0.1~0.14%w/wのTris緩衝液を含むか、またはそれらから本質的になる。
【0112】
一実施形態において、当該組成物のpHは、5.5~8.5、例えば、6.0~7.0、例えば、6.3~6.7である。一実施形態において、当該組成物のpHは、6.2~7.0、例えば、6.4~6.6である。一実施形態において、当該組成物のpHは、7.2~8.5、例えば、7.4~7.6である。
【0113】
一実施形態において、組成物は、水を含む。本開示の特定の実施形態において、組成物の水の少なくとも一部は、緩衝液に由来する。遊離水の存在は、ペプチダーゼを活性化及び/または不安定化し得る。組成物中の水は、例えば、グリセロール及び本明細書に記載される他のアルコール等の他の成分によって不活性化され得る。したがって、一実施形態において、組成物は、最大でも50%w/wの水、例えば、最大でも40%w/wの水、例えば、最大でも30%w/wの水を含む。ペプチダーゼの安定性を向上させるためには、組成物中の水分活性が低いことが重要である。組成物を、例えば、鼻腔、口腔、創傷、または皮膚に適用すると、当該記鼻腔、口腔、創傷または皮膚からの水が組成物と混合し、水分活性が増加する。これにより、ペプチダーゼが活性化する。
【0114】
別の実施形態において、組成物は、スプレー、ロゼンジ、トローチ、チューインガム、ゲル、または液体の形態である。
【0115】
カラギーナン
一実施形態において、組成物は、カラギーナンを含む。
【0116】
カラギーナンは、典型的には、粘度制御のために、または生体付着を達成するために使用される。「カラギーナン」という用語は、通常、紅海藻から抽出される直鎖硫酸化多糖類のファミリーを指す。カラギーナンは、硫酸化及び非硫酸化の両方の繰り返しガラクトース単位及び3,6アンヒドロガラクトースからなる多糖である。
【0117】
一実施形態において、組成物は、1%w/w以下のカラギーナン、例えば、0.5%w/w以下のカラギーナン、例えば、0.1%w/w以下のカラギーナンを含む。
【0118】
香味剤
開示される組成物を投与される患者のコンプライアンスのために、生成物の香り及び味は特に重要である。本発明は、キシリトールの存在に一部起因して、甘くて心地よい味を有する忍容性のある製剤を提示する。組成物が香味剤をさらに含む場合、香り及び味はさらに改善され得る。
【0119】
「香味剤」という用語は、特に4%w/w未満、より好ましくは2%w/w未満の濃度で、検出可能な香味の影響を与えることができる、天然または非天然の任意の物質を指す。好適な香味または香味剤としては、ユーカリ、ペパーミント及びスペアミント等のミント、メントール、チョコレート、リコリス、柑橘類及び他の果実の香味、ガンマオクタラクトン、バニリン、エチルバニリン、口臭清涼剤の香味、シナモン、サリチル酸メチル、リナロール、ベルガモットオイル、ゼラニウムオイル、レモンオイル、及びジンジャーオイル等の香辛料の香味が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
一実施形態において、組成物は、香味剤を含む。
【0121】
別の実施形態において、香味剤は、天然であるか、または非天然、例えば合成である。
【0122】
また別の実施形態において、天然または非天然の香味剤は、スペアミントまたはユーカリである。
【0123】
さらなる実施形態において、組成物は、0.01~0.4%w/wの香味剤、例えば、0.02~0.1%w/wの香味剤、例えば、0.035~0.055%w/wの香味剤化合物を含む。
【0124】
一実施形態において、組成物は、
i.0.02~0.05%w/wのペプチダーゼ、
ii.29~56%w/wのグリセロール、
iii.4~25%w/wのキシリトール、
iv.0.0002~0.0004%w/wのヒアルロン酸、
v.0.1~0.2%w/wの緩衝液、
vi.0~0.1%w/wのカラギーナン、及び
vii.0~0.05%w/wの香味剤を含むか、またはそれらから本質的になる。
【0125】
製剤
本発明の開示は、微生物感染、具体的には、上気道におけるウイルス感染の治療のための安定な組成物である。
【0126】
ウイルス複製は、上気道で起こる。現在開発されている口腔スプレーは、中咽頭に到達するが、経口投与経路では鼻咽頭を含む鼻腔に到達しない。したがって、点鼻スプレーを使用して鼻腔及び鼻咽頭に到達するように、鼻から投与することができる噴霧可能な組成物を開発することが非常に望ましい。組成物が噴霧可能であるために、組成物は、最大でも0.015Pa・sである粘度を有することが好ましい。組成物が上気道における微生物感染に対して活性であるためには、上気道への投与が必要である。
【0127】
一実施形態において、組成物は、スプレー、ロゼンジ、トローチ、チューインガム、ゲル、または液体として製剤化される。
【0128】
一実施形態において、組成物は、噴霧可能な組成物である。別の実施形態において、組成物は、スプレーの形態である。好ましい実施形態において、組成物は、点鼻スプレーまたは喉スプレーである。
【0129】
点鼻スプレーまたは喉スプレーを使用して組成物を投与するためには、組成物の粘度が、組成物が噴霧可能であることを可能にしなければならない。
【0130】
一実施形態において、組成物は、最大でも0.015Pa.sの粘度を有する。これは、本明細書に開示される実施例6の知見によって支持される。
【0131】
口腔スプレーと比較して、点鼻スプレーは、上気道感染の原発部位である鼻腔を標的とする。
【0132】
医学的用途
本発明の開示は、微生物感染、具体的には、上気道におけるウイルス感染の治療のための安定な組成物である。
【0133】
本開示の組成物は、ワクチン及び全身性抗ウイルス薬を補完することができる。それは、鼻腔及び喉に薄い保護性の広域スペクトル抗ウイルスゲルを形成し、ウイルス感染の伝播を防止または低減する。ウイルスは捕捉され、ゲルに結合し、次いで広域スペクトルペプチダーゼによって不活性化される。複製系を阻害するために全身的に及び細胞内で作用する抗ウイルス薬と比較して、本開示の組成物は、上気道におけるウイルスの局所的な取り込みを低減及び/または防止する。これらの作用機序は、感染のより効率的な治療及び/または予防を達成するように互いに補完する。本発明はまた、ウイルスと同じ毒性因子、すなわち、微生物と細胞との間の付着を担うタンパク質を標的とすることによって、細菌及び真菌に対しても活性を有する。
【0134】
一実施形態において、ウイルス感染は、風邪、肺炎、気管支炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、副鼻腔炎、中耳炎、及び咽頭炎からなる群から選択される。一実施形態は、ペプチダーゼ活性を有する治療有効量のポリペプチドを対象に投与することを含む、哺乳動物におけるウイルス感染の治療及び/または予防方法を提供する。
【0135】
風邪は、喉の痛み、倦怠感、鼻漏、鼻づまり、頭痛、咳、くしゃみ、時には軽度の発熱を特徴とする、軽度の急性呼吸器感染症である(Jackson et al,1958)。インフルエンザは、より重篤なウイルス感染であり、季節性流行で世界中に拡散し、人口の最大20%に感染し、循環ウイルスに応じて相当な死亡率を引き起こす可能性がある。
【0136】
一実施形態において、本開示の組成物は、医薬に使用するためのものである。
【0137】
一実施形態において、本開示は、微生物感染の治療及び/または予防に使用するための組成物に関する。
【0138】
一実施形態において、本開示は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、及び/または酵母感染の治療及び/または予防に使用するための組成物に関する。
【0139】
一実施形態において、本開示は、ウイルス感染の治療及び/または予防に使用するための組成物に関する。
【0140】
一実施形態において、本開示は、ライノウイルス、A型インフルエンザウイルス等のインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、メタニューモウイルス、及び他の感染性ウイルスからなる群から選択されるウイルスからのウイルス感染の治療及び/または予防に使用するための組成物に関する。
【0141】
一実施形態において、本開示は、風邪、インフルエンザ、鼻炎、副鼻腔炎、気管支炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)、肺炎、ウイルス性髄膜炎、ヘルパンギーナ、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス等の感染性疾患、またはウイルス感染によって引き起こされる任意の他の疾患の治療及び/または予防に使用するための組成物に関する。
【0142】
一実施形態において、本開示は、ウイルス性上気道感染の治療及び/または予防に使用するための組成物に関する。
【0143】
一実施形態において、本開示は、風邪、インフルエンザ、鼻炎、副鼻腔炎、COVID-19をもたらすウイルス性上気道感染、またはウイルス性上気道感染によって引き起こされる他の疾患の治療及び/または予防に使用するための組成物に関する。
【0144】
一実施形態において、本明細書に開示される組成物は、喉の痛み、倦怠感、鼻漏、鼻づまり、頭痛、咳、くしゃみ、及び/または発熱等のウイルス感染に関連する症状の予防及び/または治療に使用するためのものである。
【0145】
一実施形態において、本明細書に開示される組成物は、微生物感染及び/または口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害または状態の予防及び/または治療に使用するためのものである。
【0146】
一実施形態において、本明細書に開示される組成物は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、及び酵母感染からなる群から選択される微生物感染の予防及び/または治療に使用するためのものである。
【0147】
別の実施形態において、本明細書に開示される組成物は、哺乳動物における及び/または哺乳動物に対する、微生物感染及び/または歯周病等の口腔疾患の予防及び/または治療に使用するためのものである。
【0148】
別の実施形態において、本明細書に開示される組成物は、哺乳動物における及び/または哺乳動物に対する、微生物感染及び/または歯肉炎等の口腔疾患の予防及び/または治療に使用するためのものである。
【0149】
一実施形態において、本開示は、医薬に使用するための、
i.ペプチダーゼ、
ii.グリセロール、
iii.キシリトール、
iv.ヒアルロン酸、及び
v.緩衝液を含む組成物を提供する。
一実施形態において、当該組成物のペプチダーゼは、トリプシンである。一実施形態において、トリプシンを含む組成物は、カルシウム(Ca2+)等の二価カチオンをさらに含む。
【0150】
一実施形態は、微生物感染及び/または口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害または状態の予防及び/または治療に使用するための、
i.ペプチダーゼ、
ii.グリセロール、
iii.キシリトール、
iv.ヒアルロン酸、及び
v.緩衝液を含む組成物を提供する。
【0151】
一実施形態において、微生物感染及び/または口腔疾患は、哺乳動物における及び/または哺乳動物に対する歯肉炎または歯周病である。
【0152】
一実施形態は、微生物感染、及び口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害または状態の予防及び/または治療における使用のための、
i.0.005~1.0%w/wのペプチダーゼ、
ii.20~70%w/wのグリセロール、
iii.1.0~65%w/wのキシリトール、
iv.0.0001~1.5%w/wのヒアルロン酸、及び
v.0.01~1.2%w/wの緩衝液を含む組成物を提供する。
【0153】
一実施形態は、微生物感染、及び口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害または状態の予防及び/または治療における使用のための、
i.0.015~0.055%w/wのトリプシン、
ii.27~57%w/wのグリセロール、
iii.4.5~30%w/wのキシリトール、
iv.0.0002~0.02%w/wのヒアルロン酸、
v.0.010~0.015%w/wのCaCl、及び
vi.0.1~0.14%w/wの緩衝液を含む組成物を提供する。
【0154】
一実施形態は、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、及び酵母感染からなる群から選択される微生物感染の予防及び/または治療に使用するための、本明細書に開示される組成物を提供する。
【0155】
一実施形態は、ウイルス感染である微生物感染の予防及び/または治療に使用するための、本明細書に開示される組成物を提供する。別の実施形態において、組成物はウイルス性上気道感染の治療に使用するためのものである。別のより特定の実施形態において、微生物感染は、ウイルス性上気道感染である。
【0156】
一実施形態は、風邪、インフルエンザ、鼻炎、副鼻腔炎、COVID-19をもたらす上気道感染、または上気道感染によって引き起こされる別の疾患の予防及び/または治療に使用するための、本明細書に開示される組成物を提供する。
【0157】
一実施形態は、ライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、メタニューモウイルス、及び他の感染性ウイルスからなる群から選択されるウイルスからのウイルス感染の予防及び/または治療に使用するための、本明細書に開示される組成物を提供する。
【0158】
一実施形態において、細胞に感染及び/または侵入することができる他の感染性ウイルスは、コリネバクテリウムジフテリア、ラッサ熱ウイルス(アレナウイルス)、アストロウイルス、ハンタウイルス、リフトバレー熱ウイルス(フレボウイルス)、カリシウイルス、エボラウイルス、マールブルグウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルス、黄熱病ウイルス、C型肝炎ウイルス、G型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、D型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス)、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス、ヒトヘルペスウイルス、風疹ウイルス、ムンプスウイルス、モルビリウイルス、麻疹ウイルス、パピローマウイルス、JCウイルス(ポリオーマウイルス)、BKウイルス(ポリオーマウイルス)、パルボウイルス、コクサッキーウイルス(A及びB)、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、レオウイルス、狂犬病ウイルス(リッサウイルス)、ヒト免疫不全ウイルス1及び2、ヒトT細胞白血病ウイルス等のウイルスである。
【0159】
一実施形態は、風邪、インフルエンザ、鼻炎、副鼻腔炎、気管支炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)、肺炎、ウイルス性髄膜炎、ヘルパンギーナ、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス等の感染性疾患、またはウイルス感染によって引き起こされる任意の他の疾患を引き起こすウイルス感染の予防及び/または治療に使用するための、本明細書に開示される組成物を提供する。
【0160】
一実施形態は、喉の痛み、倦怠感、鼻漏、鼻づまり、頭痛、咳、くしゃみ、及び/または発熱等のウイルス感染に関連する症状の予防及び/または治療に使用するための、本明細書に開示される組成物を提供する。
【0161】
一実施形態は、微生物感染、皮膚疾患、及び口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害、または状態を予防及び/または治療するための薬物の製造に使用するための、本明細書に開示される組成物を提供する。
【0162】
一実施形態において、組成物は、経口用である。別の実施形態において、本組成物は、鼻用である。
【0163】
一実施形態において、鼻用組成物は、6.2~7.0、例えば、6.4~6.6の範囲のpHを有する。別の実施形態において、経口用組成物は、7.2~8.5、例えば、7.4~7.6の範囲のpHを有する。
【0164】
一実施形態は、微生物感染、皮膚疾患、及び口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害、または状態の治療または予防方法を提供し、当該方法は、本明細書に開示される組成物を、それを必要とする個体に投与することを含む。
【0165】
一実施形態は、微生物感染、皮膚疾患、及び口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害または状態の治療または予防方法を提供し、当該方法は、
i.ペプチダーゼ、
ii.グリセロール、
iii.キシリトール、
iv.ヒアルロン酸、及び
v.緩衝液を含む組成物を投与することを含む。
【0166】
一実施形態において、当該組成物のペプチダーゼは、トリプシンである。一実施形態において、トリプシンを含む組成物は、カルシウム(Ca2+)等の二価カチオンをさらに含む。
【0167】
一実施形態は、ウイルス感染を予防及び/または低減する方法を提供し、当該方法は、本明細書に開示される組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0168】
一実施形態は、微生物多様性を増加させる方法を提供し、組成物を投与することを含む当該方法は、本明細書に開示される組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0169】
一実施形態は、本明細書に開示される組成物の製造方法を提供し、当該方法は、
i.糖アルコール
ii.緩衝液、
iii.ヒアルロン酸、及び
iv.ペプチダーゼを混合することを含む。
【0170】
1つのさらなる実施形態は、
i.カラギーナン、及び/または
ii.香味剤を混合することをさらに含む、本明細書に開示される組成物の製造方法を提供する。
【0171】
一実施形態は、微生物多様性を増加させる方法を提供し、当該方法は、本明細書に開示される組成物を投与することを含む。
【実施例
【0172】
実施例1 Tris-HCl緩衝液における希釈の関数としての酵素活性
実験の目的は、Tris-HCl緩衝液における希釈の関数として酵素活性を測定することであった。さらに、酵素活性に対するカラギーナン濃度を評価した。
【0173】
方法
40~15重量%のグリセロール濃度を有する7つの異なる製剤を、カラギーナン濃度を増加させた製剤とともに調製した。酵素活性を測定した。所定の時点で試料を取り出し、酵素活性を測定することによって直接分析した。405nmの分光光度計でZ-Gly-Pro-Arg-pNAを基質として用いて、30℃で活性を測定した。1分当たりの吸光度の減少を活性パラメータとして使用した。ゼロ時点に対する残りの活性を決定し、安定性を説明するために使用した。
【0174】
結果及び結論
グリセロール希釈の結果を図1に示す。酵素活性は、緩衝液で希釈すると増加する。絶対最大活性は、25~30%のグリセロールで得られた。
【0175】
添加するカラギーナンの濃度を増加させた製剤(0~0.8mg/ml)の結果を図2に示す。>0.2mg/mlの濃度が活性を低下させると考えられる。
【0176】
実施例2 点鼻スプレー製剤の安定性
実験の目的は、様々な点鼻スプレー製剤における酵素安定性を測定することであった。
【0177】
方法
様々な組み合わせを混合し、Tris緩衝液を使用してpHをpH6.5に調整した。
表1に記載される製剤を試験した。
【表1】
【0178】
製剤を密封されたポリプロピレン製ボトルに入れた。各製剤組成物からの生成物の安定性は、最長115日間、それらをストレス状態(40±2℃/100%RH)に置くことによって試験した。実施例1に記載したのと同じ方法を用いて酵素活性を測定した。
【0179】
結果及び結論
結果を図3に示す。25~30%グリセロールへの>10%キシリトールの添加は、高い安定性をもたらし、これは製剤NO3、NO4及びNO5によって例示される。
【0180】
これらの知見は、40℃のストレス条件で酵素の安定性を改善するために、グリセロールの一部をキシリトールに置き換えることの可能性を示唆している。30%グリセロール(製剤NO1)を含有する製剤の予想される貯蔵寿命は、25℃で<3~6ヶ月であるが、NO5の予想される貯蔵寿命は、2年を超えると予想される。過剰量のカラギーナンの存在は、安定性を低下させた。
【0181】
実施例3.喉スプレー製剤の安定性
実験の目的は、様々な喉スプレー製剤における酵素安定性を測定することであった。
【0182】
方法
表2に記載されるように、様々な製剤を試験した。Tris緩衝液を使用して、pHをpH7.5に調整した。
【表2】
【0183】
製剤を密封されたポリプロピレン製ボトルに保管した。各製剤組成物からの生成物の安定性は、最長115日間、それらをストレス状態(40±2℃/100%RH)下に置くことによって試験した。実施例1に記載したのと同じ方法を用いて酵素活性を測定した。
【0184】
結果及び結論
結果を図4に示す。製剤N2及びN4は、最も高い安定性を示した。0.5%カラギーナンの添加は安定性を低下させたが、ヒアルロン酸及びキシリトールの存在は、安定性に悪影響を示さなかった。
【0185】
実施例4.点鼻スプレー製剤の忍容性
実験の目的は、鼻腔内に製剤を噴霧することによって、様々な点鼻スプレー製剤の忍容性、刺激/刺痛感、及び経験された分泌刺激を評価することであった。点鼻スプレーは高浸透圧性であり、したがって、鼻粘膜の洗い流し効果を有する鼻汁分泌を刺激することが意図される。鼻腔の刺激を最小限に抑えるために、鼻粘膜が口腔粘膜と比べて高浸透圧溶液に対してより敏感であるという観察に基づいて、鼻用製剤中のグリセロール濃度を経口用製剤と比較して希釈した。
【0186】
方法
表3に記載される製剤を調製し、試験した。
【表3】
【0187】
2人の健康なボランティアの左右の鼻孔の鼻腔に、点鼻スプレーを使用して50μlの溶液を噴霧した。
【0188】
4段階のスケールを使用して、噴霧直後に忍容性を決定した。
0:容認できない、1:不快、2:容認できる、3:快適。
【0189】
3段階のスケールを使用して、2分後に分泌刺激を決定した。
0:分泌なし、1:分泌あり、2、鼻水。
【0190】
鼻への噴霧を2回繰り返し、各噴霧後に忍容性及び分泌刺激を認めた。
【0191】
結果及び結論
平均結果を表4に示す。製剤6及びCXの両方は、54重量%のグリセロール濃度を有し、鼻腔内に噴霧されると激しく刺すように痛み、重度の鼻水を引き起こす。グリセロール濃度を30重量%に低下させ、濃度を5~25重量%(製剤1~5)に増加させてキシリトールを添加することで、刺痛感を完全に排除し、忍容性は、容認できる~快適として経験された。さらに、製剤4及び5で、わずかな分泌刺激が観察された。
【0192】
これらの知見は、グリセロール30重量%溶液中のキシリトール濃度を25重量%に増加させることが、そのような溶液を鼻腔内に噴霧したときに刺痛感を増加させることなく、可能であることを示している。これは、トリプシンがそのような溶液中で安定化されるために、グリセロール/キシリトールベースの製剤が鼻腔へのトリプシンの送達に好適であることを支持する(実施例2)。
【表4】
【0193】
実施例5.喉スプレー製剤及び点鼻スプレー製剤の殺ウイルス効果
実験の目的は、喉スプレー製剤(経口用)及び点鼻スプレー製剤のSARS-CoV-2ウイルスに対する殺ウイルス効果を決定することであった。喉スプレーとは対照的に、点鼻スプレーは、ウイルス性上気道感染の原発部位である鼻腔を標的とする。
【0194】
方法
本試験は、開示される製剤の殺ウイルス効果を測定し、それによって、製剤が懸濁液中の標的ウイルス-SARS-CoV-2を不活性化する可能性を判定するように設計された。試験は、E1052「懸濁液中のウイルスに対する殺菌剤の活性を評価するための標準試験法」と称されるASTM Internationalの試験方法に従った。重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス2(SARS-CoV-2、COVID-19ウイルス)、株:USA-WA1/2020、供給源:BEIリソース、NR-52281を使用した。ウイルスストックを使用前に超低温で保管し、試験当日に解凍した。チャレンジウイルスのストックは、5.0%の血清を含有していた。試験した製剤の組成を、表5に記載するように調製した。試験製剤は、試験前に試験温度に予め平衡化した。試験溶液は、1回の複製で、1回の接触時間で評価した。実験ごとに、0.3mLのウイルスストックのアリコートを、1.4mLの試験溶液+1.3mLのリン酸緩衝液の混合物に添加し、ボルテックスによって混合した。混合物を35~37℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、反応混合物のアリコートまたは反応混合物全体を取り出し、直ちに等体積の新生仔牛血清(NCS)と混合し、次いでボルテックスした。選択された希釈物を宿主細胞に接種して、感染性ウイルス単位の量をアッセイした。
【0195】
対照実験
ウイルス回収対照実験、中和剤有効性/ウイルス干渉対照実験、細胞毒性対照実験、培地陰性対照実験及びウイルスストック力価対照実験を含む複数の対照実験を行った。中和剤有効性/ウイルス干渉対照実験は、中和後に残留活性成分が存在したかどうか、及び中和された被験物質がウイルス感染性に干渉したかどうかを決定するために実施した。全ての対照実験を試験と同時に行い、同じ条件下でインキュベートし、試験と同じ方法でアッセイした。
【0196】
i.ウイルス回収対照実験:
最小必須培地(MEM)+2%NCSの2.7mLのアリコートに、0.3mLのウイルスを加え、ボルテックスによって混合した。ウイルスを添加してから30分(接触時間)後に、反応混合物のアリコートまたは反応混合物全体を、ボルテックスにより等体積のNCSと混合した。「感染性アッセイ」の項に記載されるように、選択された希釈物を宿主細胞に接種して、感染性ウイルスの量をアッセイした。この対照実験の結果を入力ウイルス量として使用し、被験物質の結果と比較して、被験物質によるウイルスの減少を評価した。
【0197】
ii.中和剤有効性/ウイルス干渉対照実験:
この対照実験により、中和後に残留活性成分が存在したかどうか、及び中和された被験物質がウイルス感染性に干渉したかどうかを決定した。2.7mLの被験物質のアリコート(1.4mLの試験溶液+1.3mLのリン酸緩衝液)に、0.3mLの最小必須培地(MEM)+2%のNCSを加え、ボルテックスによって混合し、接触時間にわたって保持した。接触時間が終了してから、反応混合物のアリコートまたは反応混合物全体を、ボルテックスにより等体積の最小必須培地(MEM)+2% NCS培地と直ちに混合し、細胞毒性対照実験用と、中和剤有効性/ウイルス干渉対照実験用の2つの部分に分け、試験として処理した。
【0198】
iii.細胞毒性対照実験:
中和剤有効性/ウイルス干渉対照試験の設定から得られた試料の選択された希釈物を宿主細胞に接種し、試験手順について記載されているように試料とともにインキュベートした。宿主細胞の状態をインキュベーション期間の終了時に記録した。細胞毒性効果は、ウイルス特異的細胞変性効果とは区別されるべきであり、これは、ストック力価及びウイルス回収対照の培養物において顕著であろう。
【0199】
iv.細胞生存率対照実験:
試験のインキュベーション段階中に、少なくとも4つのウェルに適切な培地を接種した。この対照実験は、細胞がアッセイ期間を通して生存可能であるかどうかを実証する。加えて、アッセイ期間を通して培地の無菌性が用いられるかどうかを確認する。
【0200】
v.ウイルスストック力価対照実験:
試験で使用されるウイルスストックのアリコートを直接段階希釈し、宿主細胞に接種して、ストックウイルスの力価を確認した。この対照実験は、ストックウイルスの力価が使用に適切であるかどうか、及びウイルス感染性アッセイが適切に実施され得るかどうかを実証する。
【0201】
感染性アッセイ:
被験物質及び対照における残留感染性ウイルスは、ウイルス誘発性細胞変性効果(CPE)によって検出した。
【0202】
試験する混合物の選択された希釈物を、試料当たりの希釈ごとに少なくとも4ウェルで培養細胞単層に添加した。接種したプレートを、5±3%のCO中、36±2℃で4~9日間インキュベートした。接種前に、宿主細胞をリン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄した。宿主細胞培養物を観察し、必要に応じて、インキュベーション期間中に再供給した。インキュベーション期間の終了後、宿主細胞を感染性ウイルスの存在について調べた。得られたウイルス特異的CPE及び被験物質特異的細胞毒性効果は、存在する場合、被験物質及び対照の両方を調べることによってスコア化した。必要に応じて、ウイルス特異的抗体で染色することによってウイルスを検出した。
【0203】
計算:
1mL当たり50%の組織培養感染用量(TCID50/mL)は、Spearman-Karber(Karber G.etal,1931)またはReed and Muench(Reed and Muench,1938)等の他の適切な方法を用いて決定した。
【0204】
Log10減少係数(LRF)は、以下の方法で計算した:
Log10減少係数=ウイルス回収対照(Log10 TCID50)-被験物質(Log10 TCID50)
式中:
ウイルス量(Log10 TCID50)=ウイルス力価(Log10 TCID50/mL)+Log10[体積(mL)×体積補正(例えば、中和)]。
【0205】
結果及び結論
TS01及びTS02の配合を表5に示す。点鼻スプレーのみがカラギーナンを含有する。喉スプレー(TS01)及び点鼻スプレー(TS02)の殺ウイルス効果を6に示す。


【表5】
【0206】
各アッセイのウイルスストック力価対照実験により、適切な力価が実験に使用されたこと、及びウイルス回収対照実験のために十分な量のウイルスが回収されたことを確認した。いずれの希釈度でも細胞毒性は検出されなかった。全ての対照実験は、有効な試験の基準を満たしていた。
【0207】
SARS-CoV-2ウイルス減少試験からのデータを6に示す。データから、点鼻スプレー製剤及び喉スプレー製剤の両方が、SARS-CoV-2ウイルスをインビトロで>99.9%減少させることは明らかである。
【0208】
これは、鼻スプレーまたはマウススプレー等の抗菌スプレーで鼻及び口をそれぞれ標的とすることが、ウイルスに感染する可能性を防止または低減するのに効率的であることを示している。
【表6】
【0209】
実施例6.レオロジー実験
この実験の目的は、カラギーナンを添加したときに粘度がどのように変化したかを測定することであった。
【0210】
方法
グリセロール(55重量%)及びカラギーナン(0~1重量%)を含有する異なる製剤を混合し、溶液の瞬間粘度を測定した。喉スプレー溶液TS03(TS01+0.05重量%のカラギーナン)も評価した。
【0211】
レオロジー測定-回転レオメータ:
製剤のレオロジー特性は、連続剪断技術を使用して高い剪断速度で調べ、幾何学的半径20mmのプレートを用いる制御応力Malvern Rheometer(Malvern Instruments)を用いて実施した。周波数スイープ法は、25℃で、0.8%の剪断ひずみを用いて、0.1Hz~10Hzで実施し、剪断速度法の表は、25℃で剪断速度を0.1s-1から100s-1に増加させることによって実施した。この方法により剪断応力を測定し、剪断応力を剪断速度で除すことにより見かけの粘度を計算した。
【0212】
結果及び結論
結果を図5に示す。粘度に影響を与えることなく、少なくとも0.1重量%のカラギーナンを添加することが可能であった。TS01へのカラギーナンの添加(TS03を提供する)は、粘度を著しく増加させなかったため、製剤をスプレーに使用することができる。観察された粘度の増加は、粘膜付着性の増加を示唆する。
【0213】
実施例7.A型インフルエンザウイルスに対する喉スプレーの殺ウイルス効果
実験の目的は、A型インフルエンザウイルス株H3N2に対する喉スプレー製剤の殺ウイルス効果を決定することであった。
【0214】
材料及び方法
本試験は、実施例5に十分に記載されているのと同じ実験設定を有していた。本試験はまた、E1052「懸濁液中のウイルスに対する殺菌剤の活性を評価するための標準試験法」と称されるASTM Internationalの試験方法に従った。実施例5の実験設定に対して以下の具体的な変更を行った。試験したウイルス:A型インフルエンザウイルス株、H3N2、Charles River Laboratories。宿主細胞株:MDCK細胞、ATCC CCL-34。希釈培地:最小必須培地(MEM)+1.0μg/mlのトリプシン。中和剤:MEM+1%ウシ胎児血清(FBS)。インキュベーション期間6日。
【0215】
結果及び結論
喉スプレー溶液(表5)を、A型インフルエンザウイルス(H3N2)を不活性化する能力について試験し、懸濁液中のTS01喉スプレー溶液に36℃で30分間曝露した。アッセイのウイルスストック力価対照実験により、適切な力価が実験に使用されたこと、及びウイルス回収対照実験のために十分な量のウイルスが回収されたことを確認した。いかなる希釈度でも細胞毒性は検出されなかった。全ての対照実験は、有効な試験の基準を満たしていた。
【0216】
A型インフルエンザウイルス(H3N2)に対するTS01溶液でのウイルス減少は、94.4%の減少に対応する1.25の対数減少であった。TS01溶液は、インビトロでインフルエンザウイルスに対しても有効である。
【0217】
実施例8.呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の細胞変性効果の阻害
RSVに対する抗ウイルス活性を評価するために、T01及びT02についてHEp-2細胞における細胞変性効果(CPE)に基づく阻害アッセイを使用した(表5)。CPEは、細胞病原性ウイルス感染によって引き起こされる細胞の形態変化である。
【0218】
材料及び方法
CPE阻害アッセイ
-1日目に、HEp-2細胞を、ウェル当たり1.30E+04細胞で透明な96ウェルプレートに播種した。T01及びT02を1:10でPBSに希釈し、HEp-2細胞に3連で添加した。細胞を37℃で1時間インキュベートした。次いで、約200PFU/ウェルのRSV A2(0.02MOI)をTA/細胞ウェルに添加した。対照実験及び計算のために、ウイルスのみ及び細胞のみも含め、アッセイ検証のために、内部アッセイ対照も含めた。HEp-2細胞を37℃で3日間インキュベートした。感染後3日目に、細胞を免疫染色し、光学密度を読み取り、ウイルス阻害の割合を決定した。
【0219】
細胞毒性アッセイ
T01及びT02を1:10でPBSに希釈し、黒色96ウェルプレートに播種したHEp-2細胞とともに3日間インキュベーションした。細胞のみ及び培地のみのウェルを添加した。3日後、PromegaのCell Titer Gloキットを使用してATP含有量を評価するために細胞を溶解した。相対発光単位(RLU)でルシフェラーゼ発光を読み取り、細胞毒性の割合を決定した。
【0220】
結果及び結論
T01及びT02の両方が、RSVに対する阻害を示したが、両方の溶液は、HEp-2細胞に対する高い毒性も示した(表7)。高グリセロール濃度は、その高浸透圧のために一般的にヒト細胞に対して細胞毒性であることは周知であり、したがって、少なくともT01製剤については、さらなる希釈を実施して阻害を検証することができる。


【表7】
【0221】
実施例9.SARS-CoV-2(オミクロン変異株)に対するインビトロ抗ウイルス効果
このアッセイのために、水疱性口内炎ウイルス(VSV)糖タンパク質(G)をSARS-CoV-2 B.1.1.529(オミクロン)スパイク(S)タンパク質で置換して、バイオセーフティレベル2で安全に取り扱うことができる組換えウイルスを作製した。この実施例では、T01及びT02を細胞とともにインキュベートし、次いでウイルスを添加して細胞に感染させた。実施例5では、ウイルス及びT01またはT02をプレインキュベートし、次いで細胞に添加した。
【0222】
材料及び方法
ルシフェラーゼベースの阻害アッセイ
-1日目に、Vero細胞を、ウェル当たり5.00E+04細胞で黒色96ウェルプレートに播種した。T01及びT02を1:1及び1:10でPBSに希釈し、Vero細胞に3連で添加した。細胞を37℃で1時間インキュベートした。次いで、約10,000RLUのrVSV-SARS-CoV-2 B.1.1.529オミクロンをTA/細胞ウェルに添加した。対照実験及び計算のために、ウイルスのみ及び細胞のみも含め、アッセイ検証のために、内部アッセイ対照も含めた。Vero細胞を37℃で24時間インキュベートした。Bright-Glo(商標)Assay Systemキット(Promega)を使用して蛍ルシフェラーゼ活性を検出し、ウイルス阻害の割合を決定した。
【0223】
細胞毒性アッセイ
T01及びT02を1:1及び1:10でPBSに希釈し、黒色96ウェルプレートに播種したVero細胞とともに24時間インキュベーションした。細胞のみ及び培地のみのウェルを添加した。24時間後、PromegaのCell Titer Gloキットを使用してATP含有量を評価するために細胞を溶解した。相対発光単位(RLU)でルシフェラーゼ発光を読み取り、細胞毒性の割合を決定した。
【0224】
結果及び結論
1:10希釈で、T01及びT02の両方に低い細胞毒性が観察された。T01及びT02の両方が、1:10希釈製剤でSARS-CoV-2B.1.1.529に対する阻害を示した。1:1希釈で、T01及びT02の両方に高い細胞毒性が観察された。結果を表8に示す。
【表8】
【0225】
実施例10:点鼻スプレー製剤及び喉スプレー製剤の安定性
実験の目的は、TS01及びTS02における酵素安定性を測定することであった。
【0226】
方法
キシリトールを含まないTS01、TS02、TS02、及び市販のトリプシン含有口腔スプレー(CX)を、密封されたガラス瓶に保管した。各製剤組成物中のトリプシンの安定性を、最長97日間ストレス条件下(40±2℃/100%RH)に置くことによって試験した。実施例1に記載したのと同じ方法を用いて酵素活性を測定した。
【0227】
結果及び結論
結果を図6に示す。TS01は、最も高い安定性を示した。TS01及びTS02の両方が、CXよりも安定である。キシリトールを含まないTS02は安定ではない。
【0228】
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【0229】
項目
1.組成物であって、
i.0.005~1.0%w/wのペプチダーゼ、及び
ii.1.0~70%w/wの糖アルコール、を含む、前記組成物。
【0230】
2.項目1に記載の組成物であって、
i.0.005~1.0%w/wのペプチダーゼ、
ii.20~70%w/wのグリセロール、及び
iii.1.0~65%w/wのキシリトールを含む、前記組成物。
【0231】
3.前記組成物が、0.005~1.0%w/wのペプチダーゼ、例えば、0.01~0.075%w/wのペプチダーゼ、例えば、0.015~0.055%w/wのペプチダーゼを含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0232】
4.前記ペプチダーゼが、セリンプロテアーゼ、スレオニンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、グルタミン酸プロテアーゼ及びメタロプロテアーゼ、その機能的相同体、またはその官能化誘導体からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0233】
5.前記ペプチダーゼが、トリプシン、その機能的相同体、または官能化誘導体である、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0234】
6.前記ペプチダーゼがトリプシンである、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0235】
7.前記組成物が、0.005~1.0%w/wのトリプシン、例えば、0.01~0.075%w/wのトリプシン、例えば、0.015~0.055%w/wのトリプシンを含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0236】
8.先行項目のいずれか1つに記載の組成物であって、
i.0.005~1.0%w/wのトリプシン、
ii.20~70%w/wのグリセロール、及び
iii.1.0~65%w/wのキシリトールを含む、前記組成物。
【0237】
9.前記組成物が、0.005~1.0%w/wのトリプシン、例えば、0.01~0.075%w/wのトリプシン、例えば、0.015~0.055%w/wのトリプシンを含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0238】
10.前記組成物が、二価カチオンを含む0.003~0.2%w/wの塩、例えば、二価カチオンを含む0.003~0.15%w/w、例えば、0.003~0.1%w/wの塩をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0239】
11.前記ペプチダーゼが、トリプシン、その機能的相同体、またはその官能化誘導体であり、前記組成物が、二価カチオンを含む0.003~0.2%w/wの塩、例えば、二価カチオンを含む0.003~0.15%w/w、例えば、0.003~0.1%w/wの塩をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0240】
12.前記組成物が、35~70%w/wの糖アルコール、例えば40~65%w/wの糖アルコール、例えば45~60%w/wの糖アルコールを含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0241】
13.前記糖アルコールが、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、アラビトール、マルチトール、ラクチトール、イソマルト、ソルビトール、水素化デンプン加水分解物もしくはプロピレングリコール、または他の関連するポリオールである、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0242】
14.前記組成物が、20~70%w/wのグリセロール、例えば、25~65%w/wのグリセロール、例えば、27~57%w/wのグリセロールを含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0243】
15.前記組成物が、1.0~65%w/wのキシリトール、例えば、3.0~50%w/wのキシリトール、例えば、4.5~30%w/wのキシリトールを含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0244】
16.グリセロールとキシリトールを合わせた量が、少なくとも40%w/w、例えば、少なくとも45%w/w、例えば、少なくとも50%w/wである、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0245】
17.前記組成物が、緩衝液をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0246】
18.前記組成物が、0.01~2.4%w/wの緩衝液、例えば、0.07~0.3%w/wの緩衝液、例えば、0.09~0.2%w/wの緩衝液を含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0247】
19.前記緩衝液の濃度が、1~200mM、例えば、5~25mM、例えば、8~15mMである、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0248】
20.前記緩衝液が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)またはリン酸塩からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0249】
21.pHが、5.5~8.5である、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0250】
22.pHが、6.2~7.0、例えば、6.4~6.6である、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0251】
23.pHが、7.2~8.5、例えば、7.4~7.6である、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0252】
24.前記組成物が、水をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0253】
25.前記組成物が、最大でも50%w/wの水、例えば、最大でも40%w/w、例えば、最大でも30%w/wの水を含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0254】
26.前記組成物が、ヒアルロン酸、例えば、0.0001~2.0%w/wのヒアルロン酸、例えば、0.0001~1.5%w/w、例えば、0.0001~1.0%w/w、例えば、0.001~1.5%w/w、例えば、0.01~1.0%w/w、例えば、0.02~0.5%w/w、例えば、0.0001~0.1%w/w、例えば、0.0001~0.01%のヒアルロン酸をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0255】
27.前記組成物が、二価カチオンをさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0256】
28.前記二価カチオンが、カルシウムである、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0257】
29.前記二価カチオンを含む塩が、薬学的に許容されるカルシウムの塩であり、その水和物を含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0258】
30.前記組成物が、0.003~0.2%w/wのカルシウム塩、例えば、0.003~0.15%w/wのカルシウム塩、例えば、0.003~0.1%w/wのカルシウム塩をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0259】
31.前記組成物が、カルシウムイオン、例えば、0.002~0.2%w/wのカルシウムイオン、例えば、0.003~0.15%w/wのカルシウムイオン、例えば、0.003~0.1%w/wのカルシウムイオンをさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0260】
32.前記二価カチオンを含む塩が、CaClである、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0261】
33.前記二価カチオンを含む塩が、薬学的に許容されるカルシウムの無機塩であり、その水和物を含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0262】
34.前記組成物が、0.003~0.2%w/wの二価カルシウム、例えば、0.003~0.15%w/w、例えば、0.003~0.1%の二価カルシウムを含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0263】
35.前記組成物が、0.002~0.2%w/wの塩化カルシウム、例えば、0.005~0.02%w/wの塩化カルシウム、例えば、0.010~0.015%w/wの塩化カルシウムを含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0264】
36.前記組成物が、
i.0.005~1.0%w/wのトリプシン、
ii.20~70%w/wのグリセロール、
iii.1.0~65%w/wのキシリトール、
iv.0.0001~1.5%w/wのヒアルロン酸、
v.0.002~0.2%w/wのCaCl、及び
vi.0.01~1.2%w/wの緩衝液を含むか、またはそれらから本質的になる、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0265】
37.前記組成物が、
i.0.015~0.055%w/wのトリプシン、
ii.27~57%w/wのグリセロール、
iii.4.5~30%w/wのキシリトール、
iv.0.0002~0.02%w/wのヒアルロン酸、
v.0.010~0.015%w/wのCaCl、及び
vi.0.1~0.14%w/w緩衝液を含むか、またはそれらから本質的になる、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0266】
38.カラギーナンをさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0267】
39.前記組成物が、1%w/w以下のカラギーナン、例えば、0.5%w/w以下のカラギーナン、例えば、0.1%w/w以下のカラギーナンを含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0268】
40.香味剤をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0269】
41.前記香味剤が、天然または非天然である、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0270】
42.前記香味剤が、スペアミントまたはユーカリである、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0271】
43.前記組成物が、0.01~0.4%w/wの香味剤、例えば、0.02~0.1%w/wの香味剤、例えば、0.035~0.055%w/wの香味剤化合物を含む、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0272】
44.前記組成物が、
i.0.02~0.05%w/wのペプチダーゼ、
ii.29~56%w/wのグリセロール、
iii.4~25%w/wのキシリトール、
iv.0.0002~0.0004%w/wのヒアルロン酸、
v.0.01~0.02%w/wのCaCl
vi.0.1~0.2%w/wの緩衝液、
vii.0~0.1%w/wカラギーナン、及び
viii.0~0.05%w/wの香味剤を含むか、またはそれらから本質的になる、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0273】
45.前記組成物が、スプレー、ロゼンジ、トローチ、チューインガム、ゲル、または液体の形態で送達される、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0274】
46.前記組成物が、噴霧可能な組成物である、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0275】
47.前記組成物が、スプレーの形態である、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0276】
48.前記スプレーが、点鼻スプレーまたは喉スプレーである、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0277】
49.粘度が、最大でも0.015Pa.s、例えば、25℃で幾何学的半径20mmのプレートを用いる制御応力Malvern Rheometer(Malvern Instruments)を使用して評価される最大でも0.015Pa.sである、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0278】
50.医薬に使用するための、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0279】
51.哺乳動物における及び/または哺乳動物に対する、微生物感染、及び歯肉炎もしくは歯周病等の口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害、または状態の予防及び/または治療における使用のための、先行項目のいずれか1つに記載の組成物。
【0280】
52.前記微生物感染が、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、及び酵母感染からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0281】
53.前記微生物感染が、ウイルス感染である、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0282】
54.前記ウイルス感染が、ウイルス性上気道感染である、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0283】
55.前記ウイルス性上気道感染が、風邪、インフルエンザ、鼻炎、副鼻腔炎、オミクロン変異株等のCOVID-19、またはウイルス性上気道感染によって引き起こされる疾患をもたらす、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0284】
56.前記ウイルス感染が、ライノウイルス、A型インフルエンザウイルス等のインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、コロナウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス、メタニューモウイルス、及び他の感染性ウイルスからなる群から選択されるウイルスによるものである、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0285】
57.前記ウイルス感染が、風邪、インフルエンザ、鼻炎、副鼻腔炎、気管支炎、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、COVID-19オミクロン変異株等のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)、肺炎、ウイルス性髄膜炎、ヘルパンギーナ、ヘルペスウイルス、パピローマウイルス等の感染性疾患、またはウイルス感染によって引き起こされる任意の他の疾患を引き起こす、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0286】
58.前記予防及び/または治療が、喉の痛み、倦怠感、鼻漏、鼻づまり、頭痛、咳、くしゃみ、及び/または発熱等の、ウイルス感染に関連する症状の予防及び/または治療である、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0287】
59.前記組成物が、鼻用である、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0288】
60.前記組成物が、経鼻投与用に製剤化される、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0289】
61.前記組成物が、経口用である、先行項目のいずれか1つに記載の使用のための組成物。
【0290】
62.微生物感染、皮膚疾患、及び口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害、または状態の治療及び予防のための薬物の製造における、先行項目のいずれか1つに記載の組成物の使用。
【0291】
63.微生物感染、皮膚疾患、及び口腔疾患からなる群から選択される疾患、障害、または状態の治療及び/または予防方法であって、先行項目のいずれか1つに記載の組成物を、それを必要とする個体に投与することを含む、前記方法。
【0292】
64.ウイルス感染の予防及び/または低減のための方法であって、先行項目のいずれか1つに記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【0293】
65.微生物多様性を増加させるための方法であって、先行項目のいずれか1つに記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【0294】
66.先行項目のいずれか1つに記載の組成物の製造方法であって、
i.ペプチダーゼ、及び
ii.糖アルコールを混合することを含む、前記方法。
【0295】
67.先行項目のいずれか1つに記載の組成物の製造方法であって、
i.トリプシン、
ii.グリセロール、及び
iii.キシリトールを混合することを含む、前記方法。
【0296】
68.先行項目のいずれか1つに記載の組成物の製造方法であって、
i.グリセロール、
ii.キシリトール、
iii.緩衝液、
iv.ヒアルロン酸、及び
v.ペプチダーゼを混合することを含む、前記方法。
【0297】
69.先行項目のいずれか1つに記載の方法であって、
i.カラギーナン、及び/または
ii.香味剤を混合することをさらに含む、前記方法。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】