(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/32 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
A61B17/32 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505473
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 EP2022071469
(87)【国際公開番号】W WO2023007013
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】301008419
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティー コート オブ ザ ユニバーシティー オブ グラスゴー
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・ジュセッペ・フェヌ
(72)【発明者】
【氏名】サンディ・コクラン
(72)【発明者】
【氏名】マーガレット・ルカス
(72)【発明者】
【氏名】ルパート・シングルトン
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・シャーリー・クリアリー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ13
4C160JJ43
4C160NN01
(57)【要約】
外科用途のための超音波トランスデューサが開示される。超音波トランスデューサは、後方質量部;前方質量部;後方質量部及び前方質量部の間で保持された超音波アクチュエーター部;及び前方質量部よりも前方の超音波ホーン部を含む。後方質量部、超音波アクチュエーター部、前方質量部及び超音波ホーン部が、トランスデューサの長手軸に沿って配置される。超音波アクチュエーター部により生成された振動が、振動エネルギー伝送路に沿って前方質量部に、また超音波ホーン部に伝達し、超音波ホーン部により増幅された振幅になる。後方質量部、前方質量部及び超音波ホーン部の1つ又は複数が、長手軸に向けて開口し、振動エネルギー伝送路に交差し、及び振動エネルギー伝送路に沿う方向において増加した機械的なコンプライアンスを提供するように構成された複数の開口を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用途のための超音波トランスデューサであって、
後方質量部;
前方質量部;
前記後方質量部及び前記前方質量部の間で保持された超音波アクチュエーター部;
前記前方質量部よりも前方の超音波ホーン部を備え、
前記後方質量部、前記超音波アクチュエーター部、前記前方質量部及び前記超音波ホーン部が、前記トランスデューサの長手軸に沿って配置され、
前記超音波アクチュエーター部により生成された振動が、振動エネルギー伝送路に沿って前記前方質量部及び前記超音波ホーン部に伝達し、前記超音波ホーン部により増幅された振幅になり、
前記後方質量部、前記前方質量部及び前記超音波ホーン部の1つ又は複数が、複数の開口を含み、これらが、前記長手軸に向けて開口し、前記振動エネルギー伝送路に交差し、及び前記振動エネルギー伝送路に沿う方向において増加した機械的なコンプライアンス(mechanical compliance)を提供するように構成される、超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記トランスデューサがランジュバン・トランスデューサである、請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記後方質量部、前記前方質量部及び/又は前記超音波ホーンにおける前記振動エネルギー伝送路が環状部を含み、前記振動エネルギー伝送路に交差する前記複数の開口が、前記環状部の壁を貫通して設けられる、請求項1又は2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
各開口は、その深さに沿って実質的に均一な断面を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記複数の開口は、各々、同一のサイズを有する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記複数の開口は、繰り返しパターンに基づいて配列される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
3つ以上の開口が設けられる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記振動エネルギー伝送路に沿う前記後方質量部の近位端から前記ホーンの遠位端まで測定される前記トランスデューサの長さは、40mm以下である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記長さに垂直な方向で測定される前記トランスデューサの最大径は、15mm以下である、請求項8に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサにして、動作時、前記複数の開口が縦モードから捩れモードへの変換を実質的に提供しない、超音波トランスデューサ。
【請求項11】
前記複数の開口がアキラル・アレイにて設けられる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項12】
前記複数の開口は、前記超音波ホーン部に設けられない、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項13】
前記複数の開口は、反射対称アレイ(reflective symmetrical array)にて設けられる、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項14】
前記複数の開口は、繰り返しパターンに基づいて配列される、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項15】
前記複数の開口は、実質的にランダムに、又は、仮想的な規則的な繰り返しパターンからランダムにオフセットして配列される、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項16】
20以上の開口がある、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項17】
その断面に交差する前記開口の最大合計数と一致する前記長手軸に沿った位置で前記長手軸に垂直に取られた断面について、前記複数の開口は、前記前方質量部又は前記後方質量部の周囲長の少なくとも10%を占める、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項18】
前記前方質量部は、前記超音波アクチュエーター部に接触する近位部分と、前記超音波ホーン部に接続された遠位部分と、前記近位部分と前記遠位部分との間に配置された中間部分を含み、前記複数の開口は、前記中間部分に設けられる、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項19】
請求項1乃至18のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサを備える手術器具。
【請求項20】
超音波トランスデューサの動作方法であって、
前記超音波トランスデューサは、
後方質量部;
前方質量部;
前記後方質量部及び前記前方質量部の間で保持された超音波アクチュエーター部;
前記前方質量部よりも前方の超音波ホーン部を備え、
前記後方質量部、前記超音波アクチュエーター部、前記前方質量部及び前記超音波ホーン部が、前記トランスデューサの長手軸に沿って配置され、
前記超音波アクチュエーター部により生成された振動が、振動エネルギー伝送路に沿って前記前方質量部及び前記超音波ホーン部に伝達し、前記超音波ホーン部により増幅された振幅になり、
前記後方質量部、前記前方質量部及び前記超音波ホーン部の1つ又は複数が、複数の開口を含み、これらが、前記長手軸に向けて開口し、前記振動エネルギー伝送路に交差し、及び前記振動エネルギー伝送路に沿う方向において増加した機械的なコンプライアンス(mechanical compliance)を提供するように構成される、方法。
【請求項21】
前記超音波トランスデューサは、1~1000Wの範囲内の電力で動作する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年7月29日に提出されたGB2110897.2の優先権を主張し、その内容及び要素が、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、超音波トランスデューサ及び超音波トランスデューサの操作方法に関する。そのような超音波トランスデューサは、必ずしも排他的ではないが、特に、外科用途に適している。
【背景技術】
【0003】
硬又は軟組織のいずれについても近代の超音波外科装置の設計は、水中用途(underwater applications)のために1922年にポール・ランジュヴァンとチロフスキーにより発明された構成にほぼ常に似ている[1]。一般に、これらの装置は、切断性能を高めるために超音波振動を採用しており、手持ち式の装置に実装されたトランスデューサを採用している。軟組織の切断の場合、幾つかの共通の特徴を特定可能である。
図1は、Harmonic(登録商標) ACE(登録商標) + Shears(Ethicon(登録商標) Endosurgery、Johnson & Johnson、Cincinnati、Ohio、USA)を示しており、導波管10、ハンドピース(handpiece)12、ランジュバン(Langevin)・トランスデューサ14を認識できる。
図1の挿入図は、この場合、長手方向(トランスデューサ及び導波管の長手軸に平行)である振動方向「Vib」と、枢動可能な顎部16及び振動ブレード18を備える顎ブレード機構も示す。
【0004】
SENHANCETM Ultrasonic (BOWA(登録商標) Medical、BOWA-electronic GmbH & Co. KG、ゴマリンゲン、ドイツ)と共にHarmonic(登録商標) ACE(登録商標) + Shears は、本明細書の執筆時点でロボット手術プラットフォームと互換性のあるたった2 つの超音波切断装置であり、これらのプラットフォームは、各々、Da Vinci(登録商標) Surgical System (Intuitive(登録商標) Surgical Inc.、米国カリフォルニア州サニーベール) 及び SENHANCETM Surgical System (BOWA(登録商標) Medical、ゴマリンゲン、ドイツ)である。
【0005】
Da Vinci(登録商標) のエネルギー機器のごく最近の発明品の一つは、EndoWrist(登録商標) (Intuitive(登録商標) Surgical Inc.) である。この多関節ジョイントにより、人間の手首と同様のエンドエフェクタでの可動域(a range of motions)を可能とし、開腹手術の経験を再現する。
図2は、EndoWrist(登録商標)技術を有する一般的なダヴィンチ(登録商標)のエンドエフェクタである。エンドエフェクタ20は、シャフト22の端部に取り付けられ、屈曲及び伸展(第1の軸周りの回転)を可能にする第1のピボットジョイント(車軸関節)24と、内転及び外転((この場合)第1の軸に対して直交する第2の軸周りの回転)を可能にする第2のピボットジョイント26とを有する。把持具28は、エンドエフェクタの遠位端に配置される。
【0006】
本明細書の執筆時点で利用可能なEndoWrist(登録商標)技術を有する数種類のエネルギー器具が直径5~10mmを有し、これにより、腹腔鏡ポートを介して挿入されて人体内で操作されることを可能にする。現在に至るまで、EndoWrist(登録商標)技術を有する超音波切断装置は存在しない。
図2は、EndoWrist(登録商標)の汎用エンドエフェクタで利用可能な可動域を示す[2]。現在の超音波切断装置では、トランスデューサが大きすぎて5~10mmのトロカールに入らないため、軸及び回転運動だけが許容されている。トランスデューサはロボットアームに対して軸方向に拘束されており、人体の外部から内部のエンドエフェクタに超音波振動を伝達する導波管を曲げることができない。これは、外科用超音波装置にとって重大な不利益になる。実際、超音波切断は他のエネルギー器具よりも正確かつ効果的であり、凝固速度が優れていることが示されているものの、後者が、その機敏性のため依然として選択されている。
【0007】
米国特許第9,408,622号は、上記の幾つかの問題を解決する可撓性の導波管を開示しているが、まだ制限のある機敏性を提供するだけである。
【0008】
超音波式手術器具は、電気メス器具の代替品であり、電気メス器具の幾つかの欠点を回避しつつ、同様の結果を達成する可能性を持つ。
【0009】
Harmonic(登録商標) ACE + Shearsは、Da Vinci(登録商標) Surgical Systemと互換性のある唯一の超音波装置である。主な欠点の一つは、EndoWrist(登録商標)と互換性がなく、柔軟性に欠けることにある。この主な理由は、超音波トランスデューサのサイズにあり、エンドエフェクタの手首ジョイント(wristed joint)の端部にクランプしてバーホール(burr hole)や腹腔鏡ポートに通すには長すぎ、大きすぎる。
【0010】
人体の外側から内側に超音波周波数の振動エネルギーを伝達するには、長い剛性のある導波管が好ましい。これにより、必然的に、超音波エネルギー機器は、困難なサイトへのアクセスを要求しない僅かな用途に限定される。
【0011】
表1は、低侵襲手術用のモノポーラ及びバイポーラ手術器具と比較した超音波切削器具の長短所の概要を示す。表5.1に提示の多数の利点にも関わらず、長い直線の導波管のため、また、ブレード先端(blade tip)での多関節ジョイントが欠落しているため、操作性という観点において装置に柔軟性が欠落しており、軸方向の目標物だけに到達可能である幾つかの処置にその用途を限定している。
【0012】
表 1: 低侵襲手術のためのモノポーラ及びバイポーラ電気メス手術器具と比較した超音波エネルギー器具の利点と欠点 [6]、[7]。
【0013】
超音波技術は、臓器の実質組織(parenchyma)を結合及び支持組織から切り離す実質組織(機能組織)の切断を目的とするロボット腹腔鏡手術に採用されている。超音波エネルギーは、臓器の一部の切除のための葉切除術でも使用される。無関節の器具にも関わらず、超音波エネルギーが好まれる他の一般的な腹腔鏡手術には、胃切除術、副腎摘出術、脾臓摘出術、肝切除術が含まれる[6]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上の点に鑑みて本発明が想到された。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ランジュバン・トランスデューサ設計の現時点の最先端技術では、解剖器具(解剖器具)といった超音波手術器具は、装置の機能と性能を維持したまま小型化できない。
【0016】
従って、本発明者らは、トランスデューサの振動エネルギー伝送路に沿ったトランスデューサのコンポーネントの機械的なコンプライアンス(機械的な伸展性(mechanical compliance))の影響を詳細に検討することにより、上述のところで特定した問題に対処した。
【0017】
本開示では、本発明の異なる「開発」を示し、各々が、異なるオプションの側面と更なるオプションの特徴を備える。これらは、以下、開発A及び開発Bとして提示される。
【0018】
開発A
開発Aの第1側面では、本発明は、外科用途のための超音波トランスデューサを提供し、当該超音波トランスデューサは、
後方質量部;
前方質量部;
前記後方質量部及び前記前方質量部の間で保持された超音波アクチュエーター部;
前記前方質量部よりも前方の超音波ホーン部を備え、
前記超音波アクチュエーター部により生成された振動が、振動エネルギー伝送路に沿って前記前方質量部及び前記超音波ホーン部に伝達し、前記超音波ホーン部により増幅された振幅になり、
前記後方質量部、前記前方質量部及び前記超音波ホーン部の1つ又は複数が、複数の開口を含み、これらが、前記振動エネルギー伝送路に交差し、前記振動エネルギー伝送路に沿う方向において増加した機械的なコンプライアンス(mechanical compliance)を提供するように構成される。
【0019】
開発Aの第2側面においては、本発明は、第1側面に係る超音波トランスデューサを備える手術器具を提供する。
【0020】
開発Aの第3側面においては、本発明は、超音波トランスデューサの操作方法を提供し、当該超音波トランスデューサは、
後方質量部;
前方質量部;
前記後方質量部と前記前方質量部の間で保持された超音波アクチュエーター部;
前記前方質量部よりも前方の超音波ホーン部を備え、
前記方法は、前記超音波アクチュエーター部に電気信号を与え、振動エネルギー伝送路に沿って前記前方質量部及び前記超音波ホーン部に伝達し、前記超音波ホーン部により増幅された振幅になるべき振動を生成することを含み、
前記後方質量部、前記前方質量部及び前記超音波ホーン部の1つ又は複数が、複数の開口を含み、これらが、前記振動エネルギー伝送路に交差し、前記振動エネルギー伝送路に沿う方向において増加した機械的なコンプライアンス(mechanical compliance)を提供するように構成される。
【0021】
開発Aの第4側面においては、本発明は、超音波ブレードを用いた超音波切断によって組織を切断する方法を提供し、第3の側面に記載のように超音波トランスデューサを動作(operating)させ、振動エネルギーを超音波ブレードに伝達させる方法を含む。
【0022】
トランスデューサは、ボルト締めランジュバン・トランスデューサといったランジュバン型トランスデューサであり得る。そのようなトランスデューサは、その低い周波数及びハイパワー動作特性(high power operating characteristics)により、外科用途に有用である。
【0023】
超音波アクチュエータ部は、圧電セラミック素子といった圧電材料素子を備え得る。 このような素子を複数個設けてもよい。1つ又は複数の関連の電極が、圧電材料素子(群)に駆動信号を伝達するために設けられ得る。前方及び/又は後方質量部が、金属といった導電性材料から成る場合、前方及び/又は後方質量部は、圧電材料素子(群)のためのグランド電気コンタクト(群)を提供し得る。
【0024】
後方質量部、前方質量部及び/又は超音波ホーンにおける振動エネルギー伝送路が環状部を含み得る。環状部は、例えば、中空円筒の形態を取り得、円筒の壁が、振動エネルギー伝送路に沿って延び、動作中、振動エネルギーが、円筒の壁に沿って進行する。振動エネルギー伝送路に交差する複数の開口は、従って、環状部の壁を貫通して提供され得る。開口は、典型的には、貫通穴である。原理としては、止まり穴を使用することは可能であるが、これに続くトランスデューサの動作が適切でないと予期される。
【0025】
各開口は、その深さに沿って実質的に均一な断面を有し得る。開口の深さ方向が開口の壁に平行な方向であると考えると、深さ方向は、(例えば、トランスデューサにおいて局所的に)振動エネルギー伝送路に対して実質的に垂直であり得る。
【0026】
各開口は、同一のサイズを有し得る(例えば、開口が円形の断面形状を有するならば、同一の直径、又は、他の形状については他の特徴的な線形寸法(linear dimension(s)))。開口は、同一の断面積を有し得る。更には、開口は、お互いに同一の形状を有し得、又は、限られた数(例えば、2つ、3つ又は4つ)の形状から選択され得る。
【0027】
開口は、繰り返しパターンに基づいて配列され得る。例えば、開口は、正方格子、長方格子、三角格子、六角格子といった規則的な格子に基づいて配列され得る。
【0028】
代替として、開口は、実質的にランダムに配列され得、若しくは、仮想的な規則的な繰り返しパターンからランダムにオフセットされ得る。
【0029】
開口は3つ以上あり得る。例えば、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、30個以上、35個以上、40個以上、45個以上又は50個以上の開口があり得る。幾つかの実施形態ではより多くの開口があり得るが、典型的には、500未満の個数の開口がある。
【0030】
開口に適した断面形状には、円形、楕円形、長円形、円形、三角形、四角形、長方形、正方形、ひし形、五角形、六角形、五角形、八角形等が含まれる。そのような2つ以上の形状の組み合わせが開口として用いられ得る。開口はランダムに生成された形状を有し得る。開口は、通常、閉じた境界線を有する。
【0031】
開口は、例えば、少なくとも0.01mm2、少なくとも0.05mm2、少なくとも0.1mm2、少なくとも0.2mm2、少なくとも0.4mm2、少なくとも0.6mm2、少なくとも0.8mm2、少なくとも1mm2、少なくとも1.5mm2、又は少なくとも2mm2の断面積を有し得る。関連コンポーネントのコンプライアンス(compliance)に影響を与えるために、適切な数の開口がトランスデューサの全体サイズに適合される必要があることを除いて、 開口の断面積に特に上限はない。
【0032】
開口は、任意の適切な製造技術、例えば、機械加工、切断(例えば、レーザー切断)又はエッチング、若しくは、鋳造、積層造形(additive manufacture)等といった網形状(net shape)又は略網形状の技術で部品を製造することによって形成することができる。
【0033】
開口は充填材で満たされ得る。 充填材料は、開口が形成される材料のヤング率よりも低い(例えば、少なくとも5の因数だけ低い、少なくとも10の因数だけ低い、少なくとも20の因数だけ低い、又は少なくとも50の因数だけ低い)ヤング率を有し得る。適切な材料には、エポキシ材料又は他の樹脂ベースの材料が含まれる。
【0034】
開口は、後方質量部、前方質量部及び超音波ホーン部の2つ以上に形成され得る。
【0035】
トランスデューサの動作周波数は、例えば、少なくとも1kHz、少なくとも5kHz、少なくとも10kHz、少なくとも20kHz、又は少なくとも30kHz、又は少なくとも40kHzであり得る。 トランスデューサの動作周波数は、例えば、最大200kHz、最大150kHz、最大100kHz、又は最大90kHz、最大80kHz、又は最大70kHzであり得る。例えば、適切な動作周波数は約55kHzである。
【0036】
ホーンの遠位端における変位振幅は、動作周波数でのピーク間(peak-to-peak)で1~200 ミクロンの範囲にあり得る。
【0037】
動作方法においては、超音波トランスデューサは、例えば、10~1000Wcm-2の範囲の電力密度で動作され得る。超音波トランスデューサは、例えば、1~1000Wの範囲の電力で動作され得る。
【0038】
上述したように、開口は、後方質量部、前方質量部及び超音波ホーン部の1つ又は複数に形成される。ここでは、これらがトランスデューサの振動エネルギー伝送路・コンポーネントと呼ばれる。各コンポーネントは、モノリシック構造を有し得、即ち、ヘテロ界面(heterointerfaces)無しで単一の材料片から形成される(粒界は、勿論、許容される)。従って、発明の実施形態の構成に関して、複数の開口が、振動エネルギー伝送路に沿う方向において増加した機械的なコンプライアンスを提供するという要件は、開口が関連コンポーネントの材料に置き換えられている点を除いて超音波トランスデューサが同一である参照構成と比較されることを意図している。本発明の実施形態の構成に係るトランスデューサの動作周波数を参照構成のものと比較して考慮すると、本発明の実施形態の構成の動作周波数は、参照構成の動作周波数とは、少なくとも1kHz(又は少なくとも2kHz、又は少なくとも3kHz、又は少なくとも4kHz、又は少なくとも5kHz、又は少なくとも6kHz、又は少なくとも7kHz、又は少なくとも8kHz、又は少なくとも9kHz、又は少なくとも10kHz)だけ異なる(例えば、より小さい)。従って、発明の実施形態の構成は、同一の動作周波数に関して他の参照構成よりも小型な形式(format)を持つことができる。そのようなトランスデューサは、トランスデューサを体外に配置して長尺な導波管を用いるよりも、手術中に体内への挿入のために配置されることがより現実的であることが意味される。従って、トランスデューサを手術器具の可撓性ジョイント(flexible joint)の遠位側に配置可能となり、トランスデューサのより簡便な位置決めが可能になることが意味される。
【0039】
トランスデューサの長さは40mm 以下であり得る(振動エネルギー伝達経路に沿って、後方質量部の近位端からホーンの遠位端まで測定)。トランスデューサの最大直径 (長さに垂直な方向で測定) は 15 mm 以下であり得る。
【0040】
また更には、上述したように、本発明の実施形態の構成を参照構成と比較して考慮すると、本発明の実施形態の構成は、参照構成と同じ、又はそれよりも優れた1つ又は複数の性能指数(figures of merit)を実証し得る。例えば、本発明の実施形態の構成のkeffは、参照構成のkeffと同一、又は、より優れている可能性がある。追加又は代替として、本発明の実施形態の構成のQmは、参照構成のQmと同一、又は、より優れている可能性がある。
【0041】
開発 B
本発明者らは、開発Aにつながる研究に続いて、さらなる研究を行い、本技術分野におけるその発明は、さらに、ここでは開発Bと命名される更なる開発として表現できると考えている。以下の側面及び/又は更なるオプションの特徴のいずれかが、単独又は任意の組み合わせで、開発Aに関して述べた側面又はオプションの特徴のいずれかに組み合わされ得ることが意図されている。
【0042】
開発Bの一般的な側面において、本発明は、外科用途のための超音波トランスデューサを提供し、当該超音波トランスデューサは、
後方質量部;
前方質量部;
前記後方質量部と前記前方質量部の間で保持された超音波アクチュエーター部;
前記前方質量部よりも前方の超音波ホーン部を備え、
前記後方質量部、前記超音波アクチュエーター部、前記前方質量部及び前記超音波ホーン部が、前記トランスデューサの長手軸に沿って配置され、
前記超音波アクチュエーター部により生成された振動が、振動エネルギー伝送路に沿って前記前方質量部及び前記超音波ホーン部に伝達し、前記超音波ホーン部により増幅された振幅になり、
前記後方質量部、前記前方質量部及び前記超音波ホーン部の1つ又は複数が、複数の開口を含み、これらが、前記長手軸に向けて開口し、前記振動エネルギー伝送路に交差し、及び前記振動エネルギー伝送路に沿う方向において増加した機械的なコンプライアンス(mechanical compliance)を提供するように構成される。
【0043】
開発Bの第1の態様において、本発明は、次の1以上の特徴と共に一般的な態様に係る超音波トランスデューサを提供する。
【0044】
トランスデューサは、ボルト締めランジュバン・トランスデューサといったランジュバン型トランスデューサであり得る。そのようなトランスデューサは、その低い周波数及びハイパワー動作特性により、外科用途に有用である。
【0045】
超音波アクチュエータ部は、圧電セラミック素子といった圧電材料素子を備え得る。このような素子を複数個設けてもよい。1つ又は複数の関連の電極が、圧電材料素子(群)に駆動信号を伝達するために設けられ得る。前方及び/又は後方質量部が、金属といった導電性材料から成る場合、前方及び/又は後方質量部は、圧電材料素子(群)のためのグランド電気コンタクト(群)を提供し得る。
【0046】
後方質量部、前方質量部及び/又は超音波ホーンにおける振動エネルギー伝送路が環状部を含み得る。環状部は、例えば、中空円筒の形態を取り得、円筒の壁が、長手軸を囲み、振動エネルギー伝送路に沿って延び、動作中、振動エネルギーが、円筒の壁に沿って進行する。振動エネルギー伝送路に交差する複数の開口は、従って、環状部の壁を貫通して提供され得る。開口は、典型的には、貫通穴である。原理としては、止まり穴を使用することは可能であるが、これに続くトランスデューサの動作が適切でないと予期される。
【0047】
複数の開口部は、振動エネルギー伝送路に沿う方向において機械的なコンプライアンスを増加するように配置される。詳細には、後方質量部、前方質量部及び/又は超音波ホーンの軸方向の剛性は、開口の存在によって調整され得る。軸方向の剛性は、縦モードが生じる共振周波数に影響する。
【0048】
縦-ねじり(L-T)モード変換は、縦モードから捩れモードへの変化、又は縦モード及び捩れモードの結合によって起こり得る[例えば、Ultrasonics 52 (2012) 950-988を参照]。動作中、複数の開口は、縦モードから捩れモードへの変換を実質的に提供しない可能性がある。例えば、開口は、アキラル・アレイ(achiral array)で提供され得る。追加又は代替として、開口は、非螺旋アレイ(non-helical array)で提供され得る。螺旋アレイがアレイにおいて識別可能であるならば、好適には、アレイにおいて鏡像対称の螺旋アレイも識別可能である。L-Tモード変換の回避によって縦モードが保持され、これが軟組織の切断に望ましいものである。
【0049】
アレイのアキラルな性質は、開口の相対位置によって、オプションとして各開口の形状との組み合わせにおいて決定され得る。例えば、各開口の相対位置及び各開口の形状は、開口のアレイが、自身の鏡像上に重ね合わせ可能なように配置され得る。鏡像は、長手軸に平行な反射面(plane of reflection)に関して定義され得る。
【0050】
幾つかの実施形態では、複数の開口は、超音波ホーン部に設けられない。従って、本明細書が、後方質量部、前方質量部及び超音波ホーン部の1つ又は複数のものに開口が設けられることを提案し、トランスデューサが本明細書に開示の更なる特徴をオプションとして含む限りにおいて、この開示の変更は、開口が超音波ホーン部ではなく、後方質量部及び/又は前方質量部のみに形成されることにあるものと明白に理解されるべきである。
【0051】
開口の配列は、各開口の幾何学的中心又は重心(centroid)に関連して定義され得る。幾何学的中心は、開口の縁に沿ったすべての点の平均位置である。開口(例えば幾何学的中心)は、反射対称アレイ(reflective symmetrical array)で設けられ得、アレイの少なくとも一部について、長手軸に平行、かつ長手軸に一致する少なくとも1つの反射対称面(plane of reflective symmetry)が存在する。代替的又は追加的に、アレイの少なくとも一部又は複数の部分について、長手軸に垂直な反射対称面が少なくとも1つ存在し得る。
【0052】
開口は繰り返しパターンに基づいて配置され得る。例えば、開口は、前方質量部及び/又は後方質量部の表面にマッピングされた2次元の規則的格子に基づいて配置され得る。規則的な格子は、格子パラメータa、b及びβによって定義される単位セルを含み得、a及びbは単位セルの各エッジ(respective edges)の長さ及びβはエッジ間のなす角である。規則的な格子は、βが90度である、及び/又は、aがbに等しい単位格子を含み得る。正方格子、長方形格子、三角格子、六角格子といった規則的な格子が適切であり得る。
【0053】
代替として、開口は、実質的にランダムに配置され得、若しくは、仮想的な規則的な繰り返しパターンからランダムにオフセットされ得る。
【0054】
開口は3つ以上あり得る。例えば、開口は、前方質量部及び/又は後方質量部に形成され得、そこには、4つ以上、6つ以上、8つ以上、10つ以上、12つ以上、16つ以上、20つ以上、24つ以上、30つ以上、40つ以上、又は50つ以上の開口があり得る。幾つかの実施形態ではより多くの開口があり得るが、典型的には、500未満の個数の開口がある。
【0055】
開口は、長手軸に沿ってお互いに長手方向にオフセットされ得る。この長手方向の配置は、2つ以上の開口を備え得る。例えば、3個以上、4個以上、5個以上、8個以上、9個以上、又は10個以上の開口がお互いに長手方向にオフセットして配置され得る。
【0056】
開口は、長手軸に平行な軸方向に配置され得る。開口は、前方質量部及び/又は後方質量部に形成され得、また、その平面に交差する開口の合計数が最大の長手軸に平行かつそこで終端する平面について、その平面に交差する開口の最大合計数は、少なくとも2つの開口であり得る。例えば、その平面が交差する、少なくとも3つの開口、少なくとも5つの開口、少なくとも6つの開口、又は少なくとも8つの開口があり得る。平面は、開口らの幾何学的中心に亘って開口らに合致し得る(重なり得る(coincide))。
【0057】
追加的又は代替的に、開口は、周方向に配置され得る。例えば、開口は、前方及び/又は後方質量部に形成され得、また、その断面に交差する開口の合計数が最大である長手軸沿いの位置で長手軸に垂直に取られた断面について、その断面に交差する開口の最大合計数は、少なくとも2つの開口であり得る。例えば、断面が交差する、4つ以上、6つ以上、8つ以上、10つ以上、12つ以上の開口があり得る。断面は、それらの幾何中心を通じて開口らに一致し得る。
【0058】
代替的に、又は追加的に、開口は、前方及び/又は後方質量部に形成されても得、その断面に交差する開口の最大合計数と一致する長手軸に沿った位置で長手軸に垂直に取られた断面について、開口は、各々、前方質量部又は後方質量部の周囲長(circumference)の少なくとも10%を占め得る。例えば、開口は、各々、前方質量部又は後方質量部の周囲長(circumference)の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも60%を占め得る。
【0059】
開口は、後方質量部、前方質量部及び超音波ホーン部の2つ以上に形成され得る。
【0060】
各開口は、その深さに沿って実質的に均一な断面を有し得る。開口の深さ方向が開口の壁に平行な方向であると考えると、深さ方向は、(例えば、トランスデューサにおいて局所的に)振動エネルギー伝送路に対して実質的に垂直であり得る。
【0061】
開口に適した断面形状には、円形、楕円形、長円形、円形、三角形、四角形、長方形、正方形、ひし形、五角形、六角形、五角形、八角形等が含まれる。そのような2つ以上の形状の組み合わせが開口として用いられ得る。 開口はランダムに生成された形状を有し得る。開口は、通常、閉じた境界線を有する。
【0062】
各開口は、同一のサイズを有し得る(例えば、開口が円形の断面形状を有するならば、同一の直径、又は、他の形状については他の特徴的な線形寸法(linear dimension(s)))。開口は、同一の断面積を有し得る。更には、開口は、お互いに同一の形状を有し得、又は、限られた数(例えば、2つ、3つ又は4つ)の形状から選択され得る。
【0063】
開口は、例えば、少なくとも0.01mm2、少なくとも0.05mm2、少なくとも0.1mm2、少なくとも0.2mm2、少なくとも0.4mm2、少なくとも0.6mm2、少なくとも0.8mm2、少なくとも1mm2、少なくとも1.5mm2、又は少なくとも2mm2の断面積を有し得る。関連コンポーネントのコンプライアンスに影響を与えるために、適切な数の開口がトランスデューサの全体サイズに適合される必要があることを除いて、 開口の断面積に特に上限はない。
【0064】
開口は、前方質量部及び/又は後方質量部に形成され得、各開口は、長手軸に平行な反射対称面を備え得る。
【0065】
各開口は、長手軸に平行な方向の長手方向の長さと、長手軸に垂直な周方向(circumferential direction)の周方向幅(circumferential width)を備え得る。周方向の幅は、長手方向の長さより大きい可能性がある。例えば、長手方向の長さの値は、周方向の幅の95%未満、90%未満、80%未満、60%未満、50%未満又は40%未満の割合であり得る。
【0066】
開口は、長手軸に垂直な横断面によって二等分される頂角θを有し得る。代替的、又は追加的に、開口は、長手軸に平行な平面によって二等分される頂角θを有し得る。幾つかの実施形態では、開口の横方向(例えば、周方向)と縦方向の寸法は、頂角θの大きさに基づいて所定の断面積に関して決定される。
【0067】
開口は、任意の適切な製造技術、例えば、機械加工、切断(例えば、レーザー切断)又はエッチング、若しくは、鋳造、積層造形(additive manufacture)等といった網形状(net shape)又は略網形状の技術で部品を製造することによって形成することができる。
【0068】
開口は充填材で満たされ得る。充填材料は、開口が形成される材料のヤング率よりも低い(例えば、少なくとも5の因数だけ低い、少なくとも10の因数だけ低い、少なくとも20の因数だけ低い、又は少なくとも50の因数だけ低い)ヤング率を有し得る。 適切な材料には、エポキシ材料又は他の樹脂ベースの材料が含まれる。
【0069】
前方質量部は、超音波アクチュエーター部に接触する近位部分と、超音波ホーン部に接続された遠位部分と、近位部分と遠位部分との間に配置された中間部分を含み得る。開口は、中間部分に設けられ得る。
【0070】
近位部分と中間部分は、実質的に同じ外径を有し得る。例えば、近位部分と中間部分は、お互いに一体的に形成され得る。中間部分と近位部分は、実質的に同じ外径を有し得る。例えば、前部質量部は実質的に均一な断面を備え得る。 例えば、前部及び/又は後部質量部は、実質的に一定の直径を有する円柱であり得る。均一な断面と一定の直径は、開口の存在又は形成に単に起因するばらつきを考慮することなく、そのようにみなされる。
【0071】
中間部分の見かけの弾性率は、想定される参照の中間部分の見かけの弾性率の80%以下であり得、想定される参照の中間部分は、開口が存在しないことを除いて中間部分と同一である。
【0072】
トランスデューサの長さ(長手軸に沿って、後方質量部の近位端からホーンの遠位端まで測定)は、60mm以下であり得る。例えば、トランスデューサの長さは40mm以下であり得る。トランスデューサの最大直径(長さに垂直な方向で測定)は15mm以下であり得る。
【0073】
トランスデューサの動作周波数は、例えば、少なくとも1kHz、少なくとも5kHz、少なくとも10kHz、少なくとも20kHz、又は少なくとも30kHz、又は少なくとも40kHzであり得る。トランスデューサの動作周波数は、例えば、最大200kHz、最大150kHz、最大100kHz、又は最大90kHz、最大80kHz、又は最大70kHzであり得る。例えば、適切な動作周波数は約55kHzである。
【0074】
ホーンの遠位端における変位振幅は、動作周波数でのピーク間(peak-to-peak)で1~200ミクロンの範囲にあり得る。
【0075】
動作方法においては、超音波トランスデューサは、例えば、10~1000Wcm-2の範囲の電力(power)で動作され得る。
【0076】
上述したように、開口は、後方質量部、前方質量部及び超音波ホーン部の1つ又は複数に形成される。ここでは、これらがトランスデューサの振動エネルギー伝送路・コンポーネントと呼ばれる。各コンポーネントは、モノリシック構造を有し得、即ち、ヘテロ界面(heterointerfaces)無しで単一の材料片から形成される(粒界は、勿論、許容される)。従って、発明の実施形態の構成に関して、複数の開口が、振動エネルギー伝送路に沿う方向において増加した機械的なコンプライアンスを提供するという要件は、開口が関連コンポーネントの材料に置き換えられている点を除いて超音波トランスデューサが同一の参照構成と比較されることを意図している。本発明の実施形態の構成に係るトランスデューサの動作周波数を参照構成のものと比較して考慮すると、本発明の実施形態の構成の動作周波数は、参照構成の動作周波数とは、少なくとも1kHz(又は少なくとも2kHz、又は少なくとも3kHz、又は少なくとも4kHz、又は少なくとも5kHz、又は少なくとも6kHz、又は少なくとも7kHz、又は少なくとも8kHz、又は少なくとも9kHz、又は少なくとも10kHz)だけ異なる(例えば、より小さい)。従って、発明の実施形態の構成は、同一の動作周波数に関して他の参照構成よりも小型な形式(format)を持つことができる。そのようなトランスデューサは、トランスデューサを体外に配置して長尺な導波管を用いるよりも、手術中に体内への挿入のために配置されることがより現実的であることが意味される。従って、トランスデューサを手術器具の可撓性ジョイント(flexible joint)の遠位側に配置可能となり、トランスデューサのより簡便な位置決めが可能になることが意味される。
【0077】
また更には、上述したように、本発明の実施形態の構成を参照構成と比較して考慮すると、本発明の実施形態の構成は、参照構成と同じ、又はそれよりも優れた1つ又は複数の性能指数(figures of merit)を実証し得る。例えば、本発明の実施形態の構成のkeffは、参照構成のkeffと同一、又は、より優れている可能性がある。追加又は代替として、本発明の実施形態の構成のQmは、参照構成のQmと同一、又は、より優れている可能性がある。
【0078】
開発Bの第2の側面においては、本発明は、開発Bの第1の側面に係る超音波トランスデューサを含む手術器具を提供する。
【0079】
開発Bの第3の側面において、本発明は、開発Bの第1の側面に係る超音波トランスデューサの動作方法を提供し、この方法は、超音波アクチュエーター部に電気信号を与え、振動エネルギー伝送路に沿って前方質量部に、また超音波ホーン部に伝達し、超音波ホーン部により増幅された振幅になるべき振動を生成することを含む。
【0080】
開発Bの第4の側面において、本発明は、第3の側面に記載の超音波トランスデューサを操作することと、超音波ブレードに振動エネルギーを伝達することを含む方法を含む、超音波ブレードを用いた超音波切断による組織の切断方法を提供する。
【0081】
本発明は、そのような組み合わせが明らかに不可であるか又は避けられることが明示される場合を除いて、ここに記載された側面及びオプションの特徴の任意の組み合わせを含む。
【図面の簡単な説明】
【0082】
ここで、本発明の原理を説明する実施形態及び実験について、添付の図を参照して説明する:
【
図1】
図1は、Harmonic(登録商標) ACE(登録商標) + Shears(Ethicon(登録商標) Endosurgery, Johnson & Johnson, Cincinnati, Ohio, USA)を示す。
【
図2】
図2はEndoWrist(登録商標)技術を具備する一般的なダヴィンチ(登録商標)エンドエフェクタを示す。
【
図3】
図3は、その主要コンポーネントを備えた一般的な手術用超音波システムを示す。
【
図4】
図4は、古典的なd
33モードのランジュバン型超音波トランスデューサの概略的な切断斜視図を示す。
【
図5A】
図5Aは、対称型ランジュバン・トランスデューサの概略図である。
【
図5B】
図5Bは、非対称ランジュバン・トランスデューサの概略図である。
【
図6A】
図6Aと
図6Bは、高出力超音波の効率(
図6A)に関する圧電セラミック・スタックの長さと位置の影響を示している。この図は、文献[15]から取られたものである。
【
図6B】
図6Bは、正規化された性能指数(normalised figure of merit)(
図6B)に関する圧電セラミック・スタックの長さと位置の影響を示している。この図は、文献[15]から取られたものである。
【
図7】
図7は、サーペンタイン電極(serpentine electrodes)と、それらが圧電スタックにどのように配置され得るかを示す概略図を示す。
【
図8】
図8は、ポアソン効果を持つロッドの縦振動モードを模式的に示す。
【
図9】
図9は、見かけのヤング率を修正するための異なる穴の影響を検討するために使用した異なる中空円筒の図を示す。
【
図10】
図10は、
図9に示したサンプルに使用した穴の形状と特徴角度θを示す。この図面における穴の向きは
図9と同じであり、長手軸は紙面に直立であることに留意されたい。
【
図11】
図11は、角度θの異なる値に基づく各穴構成について、円筒長の関数として縦モード周波数を示す。これらのグラフは、モデル化した異なる円筒の見かけのヤング率も示す。
【
図12】
図12は、角度θの異なる値に基づく各穴構成について、円筒長の関数として縦モード周波数を示す。これらのグラフは、モデル化した異なる円筒の見かけのヤング率も示す。
【
図13】
図13は、角度θの異なる値に基づく各穴構成について、円筒長の関数として縦モード周波数を示す。これらのグラフは、モデル化した異なる円筒の見かけのヤング率も示す。
【
図14】
図14は、前方質量部における穴形状及び分布の影響を評価するために調査したBLTモデルの概略的な斜視図を示す。
【
図15】
図15は、開口角の変化が4f.p.p.HC-TSMトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相に及ぼす影響を示す。
【
図16】
図16は、開口角の変化が4f.p.p.HC-TSMトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相に及ぼす影響を示す。
【
図17】
図17は、開口角の変化が4f.p.p.HC-TSMトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相に及ぼす影響を示す。
【
図18】
図18は、開口角の変化が4f.p.p.HC-TSMトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相に及ぼす影響を示す。
【
図19】
図19は、開口角の変化が8f.p.p.HC-TSMトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相に及ぼす影響を示す。
【
図20】
図20は、開口角の変化が8f.p.p.HC-TSMトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相に及ぼす影響を示す。
【
図21】
図21は、開口角の変化が8f.p.p.HC-TSMトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相に及ぼす影響を示す。
【
図22】
図22は、開口角の変化が8f.p.p.HC-TSMトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相に及ぼす影響を示す。
【
図23】
図23は、標準及びHC-TSMトランスデューサの適合曲線の比較を示し、後方質量部(BM)長に対するL1f
r及び前方質量部(FM)の関係を示す。
【
図24】
図24は、各々、標準及びHC-TSM 55kHz同調トランスデューサに係る電気インピーダンスの大きさ及び電気インピーダンスの位相を示す。
【
図25】
図25は、各々、標準及びHC-TSM 55kHz同調トランスデューサに係る電気インピーダンスの大きさ及び電気インピーダンスの位相を示す。
【
図26】
図26は、本発明の実施形態による例示的な超音波トランスデューサの斜視図である。
図26はトランスデューサを前方透視にて示す。
【
図27】
図27は、本発明の実施形態による例示的な超音波トランスデューサの斜視図である。
図27はトランスデューサを後方透視にて示す。
【
図28】
図28は、本発明の実施形態による例示的な超音波トランスデューサの斜視図である。
図28は、長手方向の斜視断面においてトランスデューサを示す。
【
図29】
図29は、本発明の実施形態による例示的な超音波トランスデューサの斜視図である。
図29は、分解後方斜視にてトランスデューサを示す。
【
図30】
図30は、本発明の実施形態による例示的な超音波トランスデューサの斜視図である。
図30は、ホーンが変位した状態の前側斜視にてトランスデューサを示す。
【
図31】
図31は、例示的な超音波トランスデューサの信号周波数に関する速度振幅を示す。
【
図32】
図32は、例示的な超音波トランスデューサの信号周波数に関する変位振幅を示す。
【
図33】
図33は、本発明の実施形態に係る別の例示的な超音波トランスデューサの側面透視図である。
【
図34】
図34は、本発明の実施形態に係る別の例示的な超音波トランスデューサの側面透視図である。
【
図35】
図35は、軸方向角θの変化の影響を評価するために調査された5つの異なるひし形の形状の穴の寸法を示す。この図面及びこれ以降の図面では、角度θは、例えば
図10とは対照的に、長手軸と比較して異なる頂点で測定されることに留意されたい。
【
図36A】
図36Aは、軸方向角度、軸方向に配置された穴の数、及び周方向に配置された穴の数を変化させた場合の個別及び複合効果を評価するために調査した前方質量部構造の概略的な斜視図を示す。
【
図36B】
図36Bは、軸方向角度、軸方向に配置された穴の数、及び周方向に配置された穴の数を変化させた場合の個別及び複合効果を評価するために調査した前方質量部構造の概略的な斜視図を示す。
【
図36C】
図36Cは、軸方向角度、軸方向に配置された穴の数、及び周方向に配置された穴の数を変化させた場合の個別及び複合効果を評価するために調査した前方質量部構造の概略的な斜視図を示す。
【
図37】
図37は、穴の異なる配置及び寸法に関して、軸方向に配置された穴の個数の変更が共振周波数に与える影響を示す。
【
図38】
図38は、穴の異なる配置及び寸法に関して、周方向に配置された穴の個数の変更が共振周波数に与える影響を示す。
【
図39】
図39は、穴の異なる配置に関して、軸角度θの変更が共振周波数に与える影響を示す。
【
図40】
図40は、軸方向及び周方向に配置された穴の個数の変更が、各トランスデューサの第1の縦モードL1の利得に及ぼす影響を示す。
【
図41】
図41は、各前方質量部構造のその結果の質量と比較して、前方質量部における穴の配列及び寸法の変化が共振周波数に与える影響を示す。
【
図42A】
図42Aは、各々、CAD及びワイヤフレーム(Wireframe)図として提示された標準の装置モデルの概略的な側方斜視図を示す。
【
図42B】
図42Bは、各々、CAD及びワイヤフレーム(Wireframe)図として提示された標準の装置モデルの概略的な側方斜視図を示す。
【
図42C】
図42Cは、各々、L1縦モードの収縮及び展開形状の標準装置モデルの側方斜視図を示す。
【
図42D】
図42Dは、各々、L1縦モードの収縮及び展開形状の標準装置モデルの側方斜視図を示す。
【
図43A】
図43Aは、各々、CAD及びワイヤフレーム図として示された、折り畳まれた前方質量部装置モデルの概略的な側方斜視図を示す。
【
図43B】
図43Bは、各々、CAD及びワイヤフレーム図として示された、折り畳まれた前方質量部装置モデルの概略的な側方斜視図を示す。
【
図43C】
図43Cは、各々、L1縦モードの収縮及び展開形状の折り畳まれた前方質量部装置モデルの側方斜視図を示す。
【
図43D】
図43Dは、各々、L1縦モードの収縮及び展開形状の折り畳まれた前方質量部装置モデルの側方斜視図を示す。
【
図44A】
図44Aは、各々、CAD及びワイヤフレーム図として提示された本発明の実施形態に係る改良された前方質量部装置モデルの概略的な側方斜視図を示す。
【
図44B】
図44Bは、各々、CAD及びワイヤフレーム図として提示された本発明の実施形態に係る改良された前方質量部装置モデルの概略的な側方斜視図を示す。
【
図44C】
図44Cは、各々、L1縦モードの収縮及び展開形状における改良された前方質量部の装置モデルの側方斜視図を示す。
【
図44D】
図44Dは、各々、L1縦モードの収縮及び展開形状における改良された前方質量部の装置モデルの側方斜視図を示す。
【
図45A】
図45Aは、各々、CAD及びワイヤフレーム図面として提示された本発明の実施形態に係る別の改良された前及び後方質量部装置モデルの概略的な側方透視図を示す。
【
図45B】
図45Bは、各々、CAD及びワイヤフレーム図面として提示された本発明の実施形態に係る別の改良された前及び後方質量部装置モデルの概略的な側方透視図を示す。
【
図45C】
図45Cは、各々、L1縦モードの収縮及び展開形状における改良された前及び後方質量部装置モデルの側方斜視図を示す。
【
図45D】
図45Dは、各々、L1縦モードの収縮及び展開形状における改良された前及び後方質量部装置モデルの側方斜視図を示す。
【
図46A】
図46Aは、各々、CAD及びワイヤフレーム図として提示された、本発明の実施形態に係る更に改良された前部及び後部質量部装置モデルの概略的な側方透視図を示す。
【
図46B】
図46Bは、各々、CAD及びワイヤフレーム図として提示された、本発明の実施形態に係る更に改良された前部及び後部質量部装置モデルの概略的な側方透視図を示す。
【
図46C】
図46Cは、各々、L1縦モードの収縮及び展開形状における、第2の改良された前方及び後方質量部装置モデルの側方透視図を示す。
【
図46D】
図46Dは、各々、L1縦モードの収縮及び展開形状における、第2の改良された前方及び後方質量部装置モデルの側方透視図を示す。
【
図47】
図47は、本発明の別の例示的な実施形態に係る、前方又は後方質量部構造に組み込むための開口の好適なランダム配列を示す円筒の正面斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0083】
ここで、本発明の更なる背景、並びに本発明の側面及び実施形態が、添付の図を参照して議論する。更なる側面及び実施形態は、当業者には明確である。本明細書で言及した全ての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0084】
主要コンポーネントを備える一般的な外科用超音波システムが
図3に示される。高出力信号発生器30が電源32に接続され、原則的に参照番号34で示される超音波トランスデューサを制御する。超音波トランスデューサは、電気エネルギーを有用な機械的振動に変換するシステムのキー要素である。トランスデューサの典型的な動作周波数は、外科用途では20~100kHzの範囲である。超音波トランスデューサは、通常、ケーシング36内に設置され、安全に取り扱うことができる。トランスデューサの一端には、プローブ(導波管)38が取り付けられ、波動を組織に向けて導く。
図3に模式的に示すように、トランスデューサは、前方質量部42及び後方質量部44の間に挟まれた圧電スタック40を含む。ホーン46は、前方質量部 42及び導波管 38の間に配置される。
【0085】
システムの各コンポーネントは、それ自身の役目及び重要度を有し、各パーツの設計は、ある規則に従い、組織における所望の周波数、特性、及び効果を達成する。
【0086】
ランジュバン・トランスデューサの設計ガイドラインは、長年に亘る成功裏の利用の結果である。多数の書籍、論文、学位論文が、これらについて広範囲に報告している。例えば、文献8,9,10参照。設計に関する検討事項のガイドとして、重要な設計仕様の概要を以下に示す。
【0087】
図4に示した古典的なd
33-モードのランジュバン型超音波トランスデューサの概略的な斜視断面図では、対応の特徴について
図3と同様の参照番号が用いられる。
【0088】
多くの既知の装置において、超音波トランスデューサは、ランジュバン及びチロフスキーによって提案されたサンドイッチ構成から想起され、1918年に水中音波投射機に初めて適用された[1]。「歌うキノコ」としてドイツ語で「Tonpilz」とも呼ばれるランジュバン設計は、電極52が介在した圧電リング(通常は圧電セラミック)のスタックから単に成り、スタックが、プリストレス・ボルト50で後方質量部 44及び前方質量部 46の間にプリストレスされる[8]。この種のトランスデューサは、ボルト締めランジュバン変換器(BLT)としても知られている。
図4において、前方質量部は、前方質量部の後端のフランジ54と、フランジ54を貫通して形成された冷却孔56を含む。
【0089】
設計の出発点として、直径dが長さlよりかなり小さい(d << l)細いロッドの場合をランジュバン・トランスデューサと比較し、幾つかの基本的な概念を紹介する。細いロッドを仮定すると、トランスデューサのおおよその長さは、式1で定義された、波長の半分、λである。
【0090】
ここで、cはロッド内の音速、fは所望の動作周波数である。特定の材料における音速は、式2で定義される。
ここで、E
Mは、ヤング率であり、ρは、材料の密度である。式3は、細いロッドの縦振動モードn (n= 1,2,3...)について、固有振動数
が如何様に推定されるかを示す。
【0091】
図5Aは、対称ランジュバン・トランスデューサの概略図である。もしトランスデューサをノード面(nodal plane)で中心で分割可能ならば、
の長さに対応する、トランスデューサの各半分を独立して研究可能である。
【0092】
図5Bは、非対称ランジュバン・トランスデューサの概略図である。
【0093】
共振周波数(
であることを思い出して)、音響インピーダンス、圧電スタック及び端部質量部の両方のζ,及び長さの関係が式4により表される。
下付文字p及びmは、各々、圧電及び端部質量部(後方又は前方質量部のいずれか)を表す。
は、各々、圧電リングの厚み及び端部質量部の長さである。
は、端部質量部の音響インピーダンスであり、これは、式5から算出される。
及び
は、式6から算出された圧電要素の音響インピーダンスである。
ここで、Aは、コンポーネントの断面積である。
【0094】
式4は、寸法が既知のトランスデューサの共振周波数を近似し、又は、周波数及びその他のパラメータが既知であれば未知の寸法を求めるのに使用可能である[12]。
【0095】
圧電スタック40は、一般的にd33モード・リング又はd31モード・リングのいずれかで製作される。高出力用途では、PZT4やPZT8のような「硬い」圧電セラミックが、圧電スタックを製作するべく偶数個のリングにおいて使用され、電極を挟んで前方及び後方質量部の間に配置される。
【0096】
圧電スタックの全長はlの約4分の1になるように選択される。但し、この選択は利用可能な駆動電子機器の影響を受ける:なぜなら、セラミック厚の増加は、より高い駆動電場を必要とし、より高い電気インピーダンス、より高い機械的損失、より高い静電容量を有し、結果的に全体的なコスト高に帰結するためである[13]。
【0097】
スタックの中心は、歪みが最も高い対称設計のトランスデューサの中心に位置する、
図5Aにおいて「ノード」とラベルされたノード面(nodal plane)に最適には位置付けられる。スタック位置は共振周波数と振動振幅の両方に影響し、従って、その位置は設計工程の重要な側面となる[14]。
【0098】
一般的に、ケーシングの取り付けのための支持フランジの配置を可能にするため、圧電スタックは、非対称構成において、
図5Bに示すように、ノード位置(nodal position)から後方質量部側に離れて配置される。この構成では、フランジが振動モードに与える影響は最小である。非対称設計では、各λ/4区分を独立に分析可能であり、後方質量部、圧電セラミック・スタック、及び前方質量部の一部l1を含むトランスデューサの半分を検討すると、式7はトランスデューサの周波数又は未知の寸法のいずれかを推定するために使用可能である。
【0099】
Lierke [15]によって、圧電セラミック・スタックが中央に配置され、その長さがトランスデューサの全長の半分である場合、トランスデューサの最大効率が達成されることが示されている。
図6Aに示すように、ノードからのオフセットが大きいほど、
図6Aに図示のように、効率
が低くなる。
の最大値で正規化された性能指数を考慮すると、ここでも、圧電スタックの最適な位置は、トランスデューサの中心にあるものと分かる。図 6B に示すように、L
ピエゾ/L
トランスデューサの比が 0.2 ~ 0.5 の場合、正規化された性能指数は 90% を超える[15]。
【0100】
電極は、通常、望まない応力集中を避けるために、圧電材料と同様の材料特性(密度、弾性率、音響インピーダンス)を備えたものが選択される。ここでは、圧電材料上に形成されるメタライゼーションとは別個の存在として「電極」が言及されることに留意されたい。
【0101】
手持ち型トランスデューサでは、個々の圧電リング58の各側に電気的コンタクトを提供するため、
図7に示すサーペンタイン電極52a、52bが使用され得る。各圧電リングは開口付きのディスク形状を取り、開口60はその主軸に沿ってディスク58を貫通して形成される。
図7の左側部分には、1つの電極52a及び1つの圧電リング58が別々に示される。
図7の右側部分には、2つのサーペンタイン電極52a、52bと、圧電スタックを形成する4つの圧電リングR
1、R
2、R
3、R
4が示されている。各サーペンタイン電極52a、52bは、各圧電リングの端面に対向するように間隔をあけて配置された電極リング部と、電極リング部間の接続部とを有する。このようなサーペンタイン電極は、横方向への限定的な突出と少数の終端ワイヤだけを有し、リング近傍でのはんだ付けが不要であるという点で有用である。ただ必要な半田付けは、提示の半田付けエリア62において行われる。幾つかの用途では冷却フィンも見られる[16]。
【0102】
圧電素子(リング)上のメタライゼーションは、通常、材料供給元に依存してCr、Ni又はAu又は他の組み合わせのスパッタリング堆積、電気メッキ、又は特別なコーティングによって得られる3~10μmの層で形成され、これらが、圧電素子及び電極の間の界面を形成する。
【0103】
プリストレス・ボルト(prestressing bolt)は、スタック内にプリストレスを付与して分布させるために使用される。チタン(又はチタンベースの合金)は、強度が高く、繰り返し荷重に耐えることができるため、好ましい材料である。プリストレスを与える主な理由は、圧電セラミックが圧縮よりも引張において典型的には7倍ほど弱いため、圧電セラミックが振動中に過度の引張応力を受けるのを防ぐためにある。更には、プリストレスは、共振周波数とインピーダンスの大きさの両方を安定化するのに役立ち、加えて、高レベルの振動中の電気的コンタクトの持続を確保する[16]。
【0104】
プリストレス・ボルトに求められる基本的な特性は、長いボルト、小さなシャンク直径、及び低いヤング率で達成される低い剛性、並びに繰り返し荷重に対する高い耐性である。前方質量部が伸びるとボルトのねじ山が伸び、ボルト及び前方質量部の間に発生する摩擦によって、望ましくない加熱及びその後のねじ山の破壊(例えば疲労破壊)が引き起こされ得る。プリストレス・ボルトの剛性は、前方質量部の剛性と等しいかそれ以下であり、また圧電セラミック・スタックの剛性よりも低い可能性がある。 しかし、長い伝動ボルト(transmission bolts)は、機械的な故障に悩まされることが多くなる[17]。
【0105】
一般的に、適用される必要及び最適なプリストレスは規定されておらず、設計及び使用する圧電材料毎に変化する。硬い圧電セラミックスに適用される典型的なプリストレスは、PZT4について25~50MPaの範囲内にあり、PZT8について30~79 MPaの範囲内にある[16]。圧電セラミックの特性がプリストレスの増加に応じて劣化することに留意することが重要であり、それにより、圧電係数の低下及び最高動作温度の低下が生じる;また、それにより、圧電材料の脱分極(depolarisation)及び機械的損失の増加が引き起こされ得る。これらの全パラメータは、プリストレスが付与されると経年によってより劣化することも知られている。
【0106】
プリストレス条件下での圧電結晶の挙動については、0~60MPaの範囲の一軸圧力が電気機械的特性に悪影響を及ぼし、圧電セラミックスについて強調したものと同じ結果をもたらすことが報告されている(文献[18]~[20]参照)。加えて、ピエゾ結晶は、高出力電場(high-power electric field)及び一軸圧力の同時の組み合わせの下で相転移も経験し得る[21]。
【0107】
後方質量部は慣性質量(inertial mass)として主要な役割を果たし、また圧電セラミック・リングに亘って横方向にプリストレスを分布させる。それは、通常、中実の円筒であるが、円錐形状が使用可能であると報告されており、トランスデューサの帯域幅が増加する[22]。鋼鉄製の後方質量部に関する経験則は、その長さは、圧電セラミック・スタックの直径の少なくとも45%であるべきであり、また、その直径は、少なくとも圧電セラミック・スタックのものと等しいべきであることを示す。鋼鉄の代わりに他の材料を使用するならば、ヤング率を比較として利用でき、寸法はそれに応じて反比例に調整される。例えば、ヤング率が鋼の半分の材料を使用する場合、後方質量部の長さは2倍にする必要がある(参考文献[8]~[10]及び[23]参照)。
【0108】
前方質量部は、振動エネルギーをホーン及びプローブ/ブレードに伝達し、また、度々、ケースに接続するフランジを含む。フランジは、時々、空冷用の穴を含む(
図4参照)。度々、同一の材質から成るため、それがホーンに組み合わされて、これらが一緒に加工され得るが、それが不可能な時、スパナ穴(spanner holes)又はレンチフラット(wrench flats)のいずれかを設け、前方質量部とホーンをねじで接続する。手術器具では、小径の器具により適しているため、レンチフラットが好まれる。前方質量部に用いられる材料は、典型的には、後方質量部に用いられる材料と比較して、超音波振動の伝導をより促進するため、コンプライアンス(伸展性(compliant))がより高く、密度がより低い[24]。
【0109】
ホーンは、前方質量部からの振動振幅を増加させる機械的増幅器である: 一定の断面積を通過する振動エネルギーは一定のままである;しかし、 振動エネルギーが進行する方向に沿って断面積が漸次減少すると、振動エネルギー密度及び振幅が増加する。
【0110】
当業者であれば理解できるように、階段状、直線状、テーパー状、及び指数関数状といった異なるホーン設計を使用可能である。幾つかのホーンは、表面の切り込みを用いて、縦モードからねじり又は横モードに振動を変換する。幾つかの場合、多数のホーンがカスケードで一緒にリンクされ、増幅部が「ブースター」と呼ばれる[24][25]。
【0111】
ケースは、トランスデューサの励振に必要な高電圧及び電流から、また過剰な加熱からもユーザーを保護する。それは、装置をそのノード面(nodal plane)でクランプするように設計され、装置の基本振動モードが影響を受けない。
【0112】
導波管又はプローブは一般にロッド状構造体であり、その先端まで波動を案内する。腹腔鏡手術で使用される軟組織切断用の装置では、通常、先端は、長い導波管の先端にあるブレードである。超音波振動の周期的な応力に対処し、同時にどの負荷にも耐えられるように、それは、通常、Ti6Al4V合金(チタン90%、アルミニウム6%、バナジウム4%、鉄0.25%及び酸素0.2%)から成る。伝送ロッドの長さは、装置の動作共振周波数で半波長の整数倍であり、また、波腹(antinode)でホーンに付着する [26]。
【0113】
プローブの先端にあるブレードは、超音波エネルギーを組織に伝達し、所望の効果/用途に応じて形状付けられる。様々なブレード設計を以下に概説する。
【0114】
適切なブレード先端:
(a)軟組織切断及びシーリング用: THUNDERBEAT(登録商標) type S、Olympus(登録商標) Medical [3];
(b) 超音波吸引用: SONOPET(登録商標)(Stryker(登録商標)、Kalamazoo、MI、USA);
(c)体内の他の場所での再利用のための骨の精密切断: SONOPET(登録商標) Payner(登録商標) 360骨チップ、(Stryker(登録商標) [27])[28];
(d)骨切断用:SONOPET(登録商標)ベントブレード(Stryker(登録商標))[29]。
【0115】
既述のように、トランスデューサ設計工程の重要な側面は、使用する材料の選択であり、これは、その特性及び用途要求に依存する。
【0116】
ヤング率E
Mは、弾性材料の剛性を定量化し、式8で定義される:
応力σ及びひずみεの比であり、Fは断面積Aを介して材料に付与される力であり、及びdlは、軸に沿った、長さの変化であり、初期長がlである。
【0117】
弾性とは、材料が、歪んだ後、どのように元の形状に復元するかを示し、復元力は、付与された応力に比例する。弾性はフックの法則、式9によって説明される:
ここで、kは、剛性を示す。
【0118】
周知のように、フックの法則は、降伏強さに至る曲線の部分である応力-ひずみ曲線の弾性領域のみにおいて有効である。一般的な材料は次のような応力を受ける:
-垂直に引き伸ばされる時の引張応力
-垂直に圧縮される時の圧縮応力
-応力領域の面内で剪断される時の剪断応力。
【0119】
材料選択における別の重要なパラメータは音響減衰である。縦波の音波が媒体を通じて伝搬する時、その強度は波源から減少する。エネルギー損失現象は散乱及び吸収によるものであり、これらは、縦方向以外の方向の波の動き及び摩擦による発熱によって生じる。音響減衰の少ない材料が好まれる;これらには、チタン、アルミニウム及びマグネシウムといった金属から生成された軽合金が含まれる;真鍮及びタングステンといった重い材料は、できるならば避けるべきである。これを見る簡単な方法は、縦波の音波の速度の利用にある:物質中の音速が速いほど、エネルギー損失は小さくなる[10]。
【0120】
周期的な引張荷重の間、トランスデューサのコンポーネントは、例えば、鋭利な角部及び段差形状のコンポーネントの形状及び材料特性に依存した高レベルの応力及び歪みの両方を受けて動的に変形する。これらの力が集中し、加熱や破損、例えば、亀裂を引き起こし得る。典型的な設計ガイドは、各材料の極限引張強さは、工具が使用条件下で受ける最大応力より30%高くあるべきであると示している[30]。
【0121】
トランスデューサのコンポーネントは音響的にも整合するべきである。物質中の音速はEm及びρ(式2)に依存するが、別の物質が存在する場合、エネルギーの一部が前方に伝達され、その一部が、物質間の界面から後方に反射され、エネルギーの一部が異なる波モードに変換される可能性がある。
【0122】
反射されたエネルギーの量は、式10の反射係数Rcで表される:
ここで、
は、各々、第1及び第2媒質の音響インピーダンスである。
【0123】
材料の音響インピーダンスが近いほど、界面を通してより多くのエネルギーが伝達され、これは、効率的な装置のために望ましい。後方及び前方質量部は、異なる材料から成るべきであり、前方質量部のために「より低密度」のものが用いられる。これは、トランスデューサの前方での振動振幅の増加に貢献する。従って、式11:
は、ピエゾスタック及び前方質量部の間の最大エネルギー伝送を達成するために尊重されなければならない[10]、[31]。
【0124】
超音波エネルギーを媒体に加えることで、異なる振動モードを発生させることができ、その最も単純なものが、
図8に示す縦モードであり、ここでは、トランスデューサの長手軸に沿って連続的な膨張及び収縮が観察され、ポアソン比によって生じる横方向の動きも同時に観察される[24]。
【0125】
縦モードは、前述のように、導波管及び/又はホーンの変更により、他モードの生成のためにも使用され得る。非対称ブレードの使用によって横振動を縦方向の動きに加えることによって非対称の縦方向の動きを実現可能であり、超音波骨切削手術器具について前述したように、特定用途においてより効率的な切断工程を可能とする。
【0126】
切断メカニズム及び作用力学は、特定の外科的作業に依存する。キャビテーションは、組織保存器具において用いられ、骨切断器具におけるダイレクト・インパクト又は「ジャックハンマー効果」及び熱効果が、軟組織切断及び凝固用の装置において採用されている。
【0127】
軟組織に使用される超音波切断装置では、熱効果が望まれ、組織は、変性点まで加熱される。この効果を生じさせる装置の先端は、
図1の挿入図に示したように、非結合分岐(decoupled bifurcation)を持ち、顎の移動を許容し、超音波振動ブレードへの組織の押し付けを許容する。顎を閉じるために必要なクランプ圧は、機械的なレバーを通して外科医の手によって加えられる。誘起された摩擦により、組織が、出血することなく数秒で、加熱、変性、及び切断される。
【0128】
軟組織と超音波装置の相互作用は複雑であり、外科処置を受ける組織のタンパク質及び水分含有量に依存する。一般的に、水分を多く含む組織は切りやすく、一方、血管、神経、結合組織などタンパク質を多く含む組織は、より多くのエネルギーを必要とする。温度は100℃を超えることができ、これは、タンパク質を変性させるのに十分であり、もし組織が臨界壊死温度を超えて加熱されれば、損傷は不可逆的で修復不可能になる。
【0129】
切断及び止血効果は独立したものではなく、同時に発生する。しかしながら、ブレードの周波数及び振動振幅に依存して、いずれか一つが優勢になり得る。周波数が低く、振動が大きいと、高速な切断及び低速の凝固になり、周波数が高く、振動が低いと、低速の切断及び高速の凝固になる[25]、[26]。
【0130】
Da Vinci(登録商標) Surgical System (Intuitive(登録商標) Surgical, Inc.)は、上記のEndoWrist(登録商標)とともに導入された。Harmonic(登録商標)ACE+Shears(Ethicon(登録商標) Endo-Surgery)は、現在までのところ、ダヴィンチ(登録商標)に対応した唯一の超音波手術器具である。このツールの欠点の一つは、操作性に欠けること、つまりEndoWrist(登録商標)技術との互換性がないことである。 この非互換性は、以下に述べるいくつかの相互に関連した理由によるものである。
【0131】
まず、動作周波数及び装置構成を検討する。止血切開機能を持つ超音波外科装置は、一般に約55kHzで動作する [34]。 BLTの動作周波数は、装置長に関連付けられる。一般的に、BLTは、半波長に対応する、第1縦振動モード、L1で主に動作するように設計される。これが、装置長に制約を与える。加えて、圧電スタックの体積及び位置が、装置の効率及び機能に影響を与える。これにより、要求される振動振幅性能を達成するためのスタック内の圧電リング素子の数及びその直径が決定される。このような条件下では、動作周波数において妥協し、かつ性能を低下させること無しで、装置を小型化することは不可能である;即ち、ブレードの縦振動振幅(約80μm)[35]。
【0132】
次に導波管を考える。先述の条件から、結果物の超音波トランスデューサが、事実上、長すぎ、また大きすぎ、腹腔鏡ポートに入らないことが明らかになる;従って、人体外のトランスデューサから人体内のエンドエフェクタ(ブレード)に振動を伝達するために導入波管が使用される。結果として、この設計は、トランスデューサを人体外に設けるために導波管を十分に長くする必要がある点からブレードの操作性を制限する。ブレードの操作性を向上させるためには、装置のエンドエフェクタに一体化された手首ジョイント(wristed joint)を含めることが有効である。しかしながら、この場合、導波管に中断、従って、不連続性を含む界面を生じさせる。この場合、超音波は、ブレードに向かって伝送されず、反射され、ブレードの不動に帰結する。
【0133】
本発明者らは、この分野における従前の改良が、手術に有用な超音波トランスデューサの小型化を支援するために有用であるかどうかを検討した。
【0134】
例えば、[36]では、BLT最適化が実施され、血管切断及び封止用の超音波メスが小型化され、Micro Hand(登録商標) Sロボットシステム(天津大学、中国)用の多自由度エンドエフェクタに装置が統合された。長さ約50mm、及び直径10mmの55kHz共振装置が開発された。この装置は、手首状ジョイントを超えて成功裏に一体化及び実装され、100μmを超えるブレード変位が報告された。鶏の組織を用いて生体外実験を行い、装置の機能性及び可能性を実証した。しかしながら、実際には、報告された研究は、革新的な小型化戦略を提示していない。製作された装置の長さは、55kHzの共振器として予想される長さとほぼ同じであり、実用的な腹腔鏡手術には大きすぎる。
【0135】
[37]及び[38]は、折り畳み型ホーントランスデューサを報告しており、このホーン設計により、同じ動作周波数を維持しながら、ホーン長が1/2だけ低減された。この設計は装置の全長を短くするが、実際のホーン長からデカップリングしない。
【0136】
フレクステンション・トランスデューサ(Flextensional transducers)は、圧電ディスクを2つのシンバル型の金属製エンドキャップで挟んで組み立てられる。この設計について、幾つかの改良が報告されており、ハイパワー駆動による接着エポキシ層による故障を防ぐためのボルトの導入が挙げられる。フレクセンショナル・トランスデューサは、比較的小型の形式(format)を持つことができる。しかしながら、この設計の欠点は、装置の振動モードを変え得る、エポキシ接着層から生じ得る非対称性にある。加えて、典型的な設計では、圧電ディスクの半径方向モードを利用するが、これは異方性圧電結晶には適していない。
【0137】
[42]及び[43]では、平面型の超音波シリコンメスが報告されている。 この設計は、PZT圧電セラミックスを使用し、68kHzで約50μmのブレード振動振幅を達成した。装置寸法は、長さ=80mm、厚さ=20mm及び幅=22.5mmであり、現在の構成及びSiの材料特性では小型化に適さない。この設計は、ピエゾ結晶でも示され、実証されている[23]。
【0138】
d31モードの別の使用は、麻酔用の標準的な針の作動のためのピエゾ結晶の使用を実証した[44]。 この設計が後方及び前方質量部に組み込まれ、この理由から、圧電リングスタック構成との類似性のために擬似ランジュバン装置と呼ぶことができる。この設計は、70VPPで10μm未満の針の先端の変位を達成する。更には、装置の動作周波数は約80kHzであり、及び針を含まない全長は40mmを超える。このことは、55kHzを達成するためには装置の全長を増加しなければならないことを意味し、この設計を小型化の目的により不向きにする。これらの設計の更なる欠点は、ボンディング層の存在にあり、この場合、導電性エポキシから成り、高い振動応力下で破損する可能性がある。この設計の別のボンディング関連の問題は、振動モードの対称性の崩壊に起因しており、これにより応力集中点が生じ、これにより高い振動応力で装置破損、即ち、基板からの剥離及びクラックが生じ得る。
【0139】
次に、本開示に関連するロボット手術のニーズについて考察する。標準的な電気メスよりも超音波メスの方が、切開の質及び封止速度が優れていることは、多くの研究で報告されている、例えば、[45]参照。興味深いことに、手術中の外科的な煙の発生について言及している研究は少ない[46]、[47]。これは腹腔鏡の視認性を低下させ、また内視鏡洗浄のために手術時間全体の遅延を招くおそれがある。
【0140】
ロボット手術では、超音波解剖器具は、臓器の機能組織を結合及び支持組織から分離するための実質組織の切開、及び臓器の葉や一部を切除する葉切除術に主に使用される[5]、[6]、[48]。特定の術中作業(intra-operative tasks)を実行するための超音波解剖器の使用を含む一般的なロボット手術は、肝切除、脾臓切除、腸切除、副腎切除、及び甲状腺切除を含む。ロボット支援甲状腺手術に関する研究 [49]では、手首付き双極電気焼灼器 (Vessel Sealer Extend、Intuitive(登録商標) Surgical、Inc.)と超音波切開器 (Harmonic(登録商標) ACE + Shears、Ethicon(登録商標) Endo-Surgery) が比較された。
【0141】
直接比較の結果、標準的な電気メスと比較して、超音波メスの使用は術中血液損失を減少させ、切開マージン及び封止速度を向上させた。しかしながら、高温の導波管温度及び器具の操作性の欠如の組み合わせのため、火傷及び不注意による組織穿孔といった高リスクの患者傷害が超音波治療器では見られた。従って、フレキシブル・ジョイントを持ち、手首を超えてロボットシャフトの先端に実装される超音波解剖器具により、これらの問題が対処されよう。
【0142】
本発明は、上述において特定した幾つかの設計上の制約に対処するため、及び縦モードについてf_rを装置長からデカップリングするために、超音波トランスデューサのコンポーネントの剛性を設計可能であるという実現に基づいている。本開示において「メタ構造」という言葉は(「メタマテリアル」の概念と同様に)、その構造が作られるバルク材料とは異なる機械的特性を示すように設計された構造を示す。
【0143】
式3は、縦モードの固有振動数y、音速及び細いロッド長の関係を示す。 n=1を考慮し、及びcを数学的定義(式2)に置き換えると、式12が得られる:
ヤング率は材料の剛性を表し、従って、E
Mが低い材料で得られたロッド状構造体は、コンプライアンス(compliance)が低い(剛性が高い)材料よりも低い周波数で長手方向に振動する。従って、本明細書の実施形態の内容では、ロッド状構造体の長さを変えることなく、その剛性を変更(又は調整)し、所望の周波数で共振させることに関心を置く。
【0144】
機械的メタマテリアルのレビュー[50]は、全体の格子を形成するユニットセルを設計することで、構造の機械的特性を変化させる幾つかの戦略を示す。特には、構造体の見かけのヤング率を1つ又は複数の方向で変えることができ、典型的には、構造体のヤング率の異方性の増加に繋がる。
【0145】
この概念を超音波トランスデューサに実装するために、研究が行われ、その結果、トランスデューサの長さを変えることなく、その見かけのヤング率を変更し、これによって縦モードの周波数を変更するようにトランスデューサの円筒コンポーネントを設計できることが示された。この研究では、中空円筒コンポーネントについて3つの異なる形式(formats)が検討され、各々が、BLTトランスデューサの前方質量部としての使用に適していた。
【0146】
図9に示すように、六角形のサンプルは、中空円筒の壁を貫通する六角形の貫通穴のアレイを用い、穴の総数は54個であった。穴の配列は六角形格子に基づいている。各穴の中心を考慮すると、これらの中心は、円筒の主軸に垂直な平面に各中心が整列され、一平面当たり6つの中心があり、円筒の周囲に周方向に規則的な間隔で配置される。図面では、円筒の軸方向長さは12mmであったが、これは説明のためであり、モデリングでは、穴の配列が剛性に及ぼす影響を示すために、円筒の軸方向長さを変更した。力Fは円柱の主軸に沿って加えられた。
【0147】
図9に示すスプリングネット(SpringNet)のサンプルは、ひし形である穴の形状を除いて、六角形のサンプルと同じであった。
【0148】
図9に示すホールのサンプルは、楕円形である穴の形状を除いて、六角形のサンプルと同じであった。
【0149】
各サンプルの穴の形状は、
図10に基づいて変更した。各穴について、円柱の主軸に平行な方向で測定した穴の高さを1.5mmとして、角度θを定義した。本開示の本パートでは、角度θは
図10に示すように定義されることに留意されたい。本開示の以降のパートでは、角度θが、異なって定義される。
【0150】
図11、
図12及び
図13は、角度θの異なる値に基づく各穴形状について、円筒長の関数として縦モード周波数を示している。
【0151】
非中空円筒について、E = 121 GPa(すなわちバルク材料のヤング率)及び周波数応答が上側の破線で示される。中空円筒について、見かけのヤング率が42GPaであり、周波数応答は下側の破線で示される。上述のように配置された穴が組み込まれた各サンプルは、中空円筒と比較して、円筒の特定長に関してより低い共振周波数を有する。若しくは、別の言い方をすれば、穴の追加により、特定の共振周波数を達成するために必要な円筒長が短くなる。更には、穴の種類ごとに角度θを小さくすると、共振周波数の低下に繋がる。尚、中空円筒及び穴あきサンプルの環状壁の厚みは同一である。
【0152】
上記の研究に基づき、ハニカム(HC)形状の穴に基づいて更なる研究が行われた。 HCは、L1に近接する他の振動モードを導入することなく、共振周波数を下げる大きな能力を示したため、この選択がなされた。 TSMとは、Tuneable Stiffness Metastructure(調整可能な剛性メタ構造)の略である。
【0153】
HC-TSM角度θ及び一平面あたりのHC-TSM特徴の数(f.p.p.)は、これらの変数が見かけのヤング率、ひいてはL1モードに係るf
rに影響を与えるはずである仮説のもとに調査された。本研究で調査した全モデルを
図14に示す。外科用途の超音波トランスデューサで関心のある振動モードを表すためL1モードについてのみHC-TSMの設計研究の結果を示して説明する。
【0154】
図15-18は、開口角の変化が4f.p.p.HC-TSMトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相に及ぼす影響を示す。
図19-22は、開口角の変化が8f.p.p.HC-TSMトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相に及ぼす影響を示す。
【0155】
図15及び
図17は、より広いスペクトル、0~300kHzにおいて、電気インピーダンスの大きさ及び位相、並びにL1モードの周波数位置に変化が観察されることを示す。
図16及び
図18にL1モード近傍のデータを示す。これらは、開口角を120°から90°及び60°に減少させた結果、L1モードの周波数が低下することが分かることを示す。標準的なトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相も参考までに示す。
【0156】
同様に、
図19及び21は、より広いスペクトル、0-300kHzにおいて、電気インピーダンスの大きさ及び位相、並びにL1モードの周波数位置に変化が観察されることを示している。
図20及び
図22にL1モード近傍のデイトを示す。これらは、開口角を120°から90°及び60°に減少させた結果、L1モードの周波数が低下することが分かることを示す。標準的なトランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び位相も参考までに示す。
【0157】
表2は、HC-TSMの導入が、L1モードに関連するトランスデューサのパラメータに与える影響を示す。この設計研究から明らかになった重要点は、トランスデューサ長を変更することなく、L1モードが変更されたことである。加えて、frにおける電気インピーダンスの大きさの減少及び動作帯域幅の改善といった他のトランスデューサ特性においても、僅かではあるがポジティブな変化が観察された。
【0158】
表2:HC-TSMトランスデューサにおいて検討した設計変数に関するL1モードの結果概要。
【0159】
従って、「標準的な」55 kHzのトランスデューサと、例示のHC-TSMトランスデューサの比較を行うことは可能であり、ここで、これらのトランスデューサは、上記の議論に基づいて前方質量部の構造において異なる。この2つのトランスデューサ・モデルの間でできる最重要の初期比較は、
図23に示すように、等しい長さ及び同一材料から成るにも関わらず、標準的な装置よりも低い周波数にL1モードで共振するHC-TSM装置の能力である。
【0160】
図24及び
図25は、各々、標準的及びHC-TSM 55kHz同調トランスデューサの電気インピーダンスの大きさ及び電気インピーダンスの位相を示す。
図24及び
図25の電気インピーダンスの大きさ及び位相のスペクトルは、カーブフィッティングにより、両方の場合で55kHz共振装置についてFM-BMの長さが正しく決定されたことを示している。
【0161】
表3は、各装置のL1モードについて装置パラメータを比較したものである。HC-TSMの導入により、ほぼ同じfrで標準設計よりも20.5%短い長さのトランスデューサ設計が可能になった。更には、HC-TSMトランスデューサは、標準設計よりも30%低減した共振時の電気インピーダンスを提示し、かつ28%拡大した帯域幅を示した。
【0162】
表3:L1モードについて55kHz調整された装置について、シミュレーションされた
図24及び
図25の電気インピーダンスから外挿した装置パラメータ。
【0163】
図26~30は、本発明の実施形態による例示的な超音波トランスデューサの図を示す。
図26は、トランスデューサを前側斜視にて示す。
図27は、トランスデューサを後側斜視にて示す。
図28は、トランスデューサを長手断面斜視にて示す。
【0164】
図29は、トランスデューサを分解後方側面斜視にて示す。
図30は、ホーンが変化したトランスデューサを正面斜視にて示す。
【0165】
図26~30各々では、トランスデューサは、後方質量部44及び前方質量部46を有し、前方質量部の前方にホーン48が配置される。逆極性の2つの圧電セラミックリング58が電極52を挟み込んで圧電スタック(超音波アクチュエーター部)を形成し、これが、プリストレス・ボルト50及びナット51によって後方及び前方質量部の間に保持される。前方質量部は、長手軸Aを周囲する円筒状の外壁の形態を取る環状部を有し、穴(この場合は円形の穴)の配列がそれを貫通して形成される。動作時、電極52に駆動信号が印加され、前方及び後方質量部が接地され、圧電リングの振動を生じさせる。後方質量部44、圧電セラミックリング58、電極52、前方質量部46及びホーン48は、トランスデューサの長手軸に沿って配置される。これにより、圧電セラミックリング58で発生した振動は、振動エネルギー伝送路に沿って前方質量部46及びホーン48に伝達する。振動は、続いてホーン48によって増幅された振幅になる。長手軸に向かって開いた円形の穴は、振動エネルギー伝送路に交差する。この構成により、振動エネルギー路に沿い、かつ長手軸に平行な軸方向において増加した機械的なコンプライアンスが提供される。
【0166】
特に
図29を参照すると、前方質量部46は、近位部46a、中間部46b及び遠位部46cを含む。近位部46aは、アクチュエーター部と接触している。開口らは、中間部46bに形成されている。遠位部46cは、ホーン部に接触している。前方質量部46の近位部46a、中間部46b及び遠位部46cはお互いに一体的に形成されており、開口70の存在による外径への影響を無視した場合、実質的に同一の外径を有する。
【0167】
動作時、開口の配列により、縦モードから捩れモードへの変換は実質的に行われない。これにより、縦モードが維持される。これは、アキラル・アレイの穴により達成され、これは、それ自身の鏡像に重ね合わせ可能である。
【0168】
この実施形態では、全部で24個の穴があり、その全てが前方質量部に形成されている。各穴の深さ及び断面積は同一である。穴は、(各穴の幾何学的中心に対して)反射対称アレイで設けられており、長手軸に平行かつ一致する多数の反射対称面がある。そのような反射対称面の一つが、断面図が取られた面として
図28に示される。長手軸に垂直な面にも反射対称面があることが明らかである。アレイは、軸方向(長手軸に平行)に配列された3列の穴からなり、各列は周方向に配列された8個の穴からなる。穴は、前方質量部の表面にマッピングされた矩形格子に配列されている。従って、2列目(中央)の穴に一致(coincident)する長手軸に垂直な反射対称面がある。
【0169】
長手軸に平行で長手軸で終端する平面にして、当該平面に交差する孔の合計数が最大である平面(例えば、
図28に模式的に示す平面R)について、本実施形態における前方質量部においてその平面と交差する孔の最大合計数は3である。また、その断面に交差する孔の合計数が最大である長手軸沿いの位置で長手軸に直交に取られた断面において、その断面に交差する穴の最大合計数は、8である。
【0170】
標準及びHC-TSM 55kHzトランスデューサの達成可能な振動振幅を比較した。HC-TSMトランスデューサは、同一の駆動信号で、標準的設計よりもブレード先端で33%高い変位を示した。
【0171】
図31は、例示的な超音波トランスデューサの信号周波数に関する速度振幅を示す。凡例ではVrmsが0.8Vの信号を示しているが、これに関するデータ点はない。代わりに、最も低い曲線は3.5VのVrmsであり、曲線は73VのVrmsまで漸増する。
【0172】
図32は、例示的な超音波トランスデューサの信号周波数に関する変位振幅を示す。最も低い曲線はVrmsが0.8Vの場合であり、曲線はVrmsが73Vまで漸増する。
【0173】
図33は、本発明の異なる実施形態による別の例示的な超音波トランスデューサの側面斜視図を示す。この実施形態では、後方質量部64及び前方質量部46は、それぞれ、それを貫通して形成された円形の穴の配列を有する円筒状の外壁を有する。
【0174】
図34は、本発明の別の実施形態による別の例示的な超音波トランスデューサの側面斜視図を示す。この実施形態では、後方質量部64のみが、それを貫通して形成された円形の穴の配列を有する円筒状の外壁を有する。
【0175】
上述の洞察を更に探索するために行った更なる研究では、帰結の共振周波数を評価するため、異なる開口のアレイを有する多数の前方質量部を提案した。前方質量部構造は、中空円筒状の前方質量部に形成された穴のアレイでモデル化し、前方質量部が、10.00mmの外形を有した。
【0176】
この更なる研究で用いられた各穴の一般的な形状は、(内部曲率半径0.10mmの丸み付いた角を有する)2本の対称線を持つひし形である。各穴は、前方質量部の長手軸に(従って、トランスデューサの長手軸に)整列され、一方の対称線が長手軸に平行で、他方の対称線が長手軸に垂直になる。換言すれば、ひし形の対向する内角の第1の組は、長手軸に平行かつ一致する平面によって二等分され、対向する内角の第2の組は、長手軸に垂直な平面によって二等分される。各前方質量部構造は、寸法が異なる5種類のひし形穴の一つを有する。
図35に示すように、各穴種は、約1.00mmの辺長を有する。従って、穴の寸法は、その内角によって決定され、本明細書では、対向する内角の第1の組に対応する軸方向角度によって特定される。5種類の穴の軸角は、それぞれ150°、120°、90°、60°及び30°である。これらの穴を特徴づける角度の定義は、
図10で使用した定義とは異なることに注意されたい。ひし形開口の長手方向及び周方向の寸法を表4に示す。
【0177】
【0178】
ひし形の穴の各辺の長さを1.00mmとすると、周方向の幅に対するパーセントとしての長手方向の長さの値は、軸角120°の穴について57.73%、軸角150°の穴について26.79%である。
【0179】
各前方質量部の間で3つのパラメータ、穴の軸角度、軸方向の(即ち、長手軸に平行に配置された)穴の数、及び周方向の(即ち、長手軸に垂直に配置された)穴の数が変更された。
【0180】
この更なる研究における簡素化のため、穴の配列は、前方質量部の円筒形状の上に重ね合わされた長方形格子のみに基づいている。
【0181】
軸方向の穴の個数を1、3及び5の間で変化させた。周方向の穴の個数を2、4及び8の間で変化させた。従って、合計45個の新しい前方質量部構造を調査した。
図36A~Cは、各前方質量部構造の正面斜視図を示す。
図36A、
図36B及び
図36Cは、各々、周方向に配列された2孔、4孔及び8孔を有する前方質量部構造のセットを示す。
【0182】
各前方質量部構造を識別する目的で、以下の命名法を開発した:XA_YP_Z、ここで、X、Y及びZは、各々、軸方向の穴の数、周方向の穴の数、及び軸角度を表す。
【0183】
各前方質量部は31.42mmの外周長を有する。従って、その平面に交差する孔の最大合計数に一致する長手軸沿いの位置で長手軸に垂直に取られた断面について、各前方質量部構造に関する穴の最大個数(又は周方向の充填率)による周囲長の割合(the proportion of the circumference occupied by the maximum number of holes (or circumferential fill-factor))は、以下の表5に示す。
【0184】
表5:各前方質量部構造について、断面に交差する穴による周囲長の最大割合(周方向充填率)(occupied by holes intersecting a planar cross-section)。
【0185】
図37は、軸方向の穴の数を変化させた場合の第一縦モードの共振周波数を示している。点間の線は、軸方向に配置された穴の数の増加に応じて共振周波数が減少することを実証するために、説明の目的で示すものに過ぎないことに留意されたい。5A列のデータ点に関して、最も低い曲線は、_8P_150構造に対応し、これに続いて、_8P_120、_8P_90、_4P_150、_4P_120、_2P_150、_4P_90、_8P_60、_2P_120、_2P_90、_4P_60、_2P_60、_8P_30、_4P_30及び_2P_30であり、末尾のものが最も高い曲線である。0A列の実線のデータ点は、穴のない前方質量部の標準的なソリッドモデルに対応する。水平破線は、標準的なソリッドモデルと比較した共振周波数の増加及び減少の分界(divide)を明確にするためにある。0A列のもう1つのデータ点は、穴のない中空の前方質量部に対応する。
【0186】
最大の軸角を持つ150 1A_8P_150,3A_8P_150,及び5A_8P_150の装置間の共振周波数の変化を観察すると、最初に5.5%の共振周波数の減少が観察され、続いて4.5%の減少が観察された。この傾向は、共通の角度を持つ各シリーズの装置において見られる;従って、軸方向の穴の数を3個から5個に増やすと、1個から3個に増やした後の共振周波数の変化に比べて、共振周波数のより少ない減少を促し、共振周波数及び軸方向に配置された穴の数の間に反比例の関係が存在することを意味する。
【0187】
従って、軸方向の穴の個数の更なる増加は、共振周波数に対してより減少した影響を有する。軸方向の穴の個数は、トランスデューサの寸法によって制限され、穴の個数の更なる増加により構造的完全性が劣化してしまうおそれがある。
【0188】
図38は、周方向における穴の個数の変動について、第一縦モードの共振周波数を示している。上述と同様、0Pの列のデータ点は、穴のない前方質量部の標準的なソリッドモデル及び中空モデルに対応していることに留意されたい。水平破線は、標準的なソリッドモデルと比較した共振周波数の増加及び減少の分界(divide)を明確にするためにある。8Pの列のデータ点に関して、最も低い曲線は5A_ _150構造に対応し、これに続いて5A_ _120、3A_ _150、3A_ _120、5A_ _90、1A_ _150、3A_ _90、1A_ _120、5A_ _60、3A_ _60、1A_ _90、1A_ _60、5A_ _30、3A_ _30及び1A_ _30があり、最後のものが、最も高い曲線である。
【0189】
装置の5A_X_150クラス(Xは2P、4P、8Pのいずれか)を取り上げると、例えば、穴の数を2個から4個、4個から8個に増やすと、共振周波数において2.2%の減少があり、続いて8.8%の減少がある。この傾向は、装置の各クラスで示されている;従って、周方向の穴の数を2つから4つに増やすと、穴の数を4つから8つに増やす場合と比較して、共振周波数に僅かな変化を生じさせる。このような非線形関係は、垂直な穴の個数の更なる増加は、共振周波数を効果的に減少させ続けることを示唆する。しかしながら、穴の個数はトランスデューサの周囲長に対する穴の寸法によって制限される。軸方向の穴の数と同様に、穴の個数の増加により前方質量部の構造的完全性が劣化し、応力解析が、前方質量部の安定性に悪影響を与えず、この方向で可能な穴の最大個数を理解するのに同様に役立つ。
【0190】
図39は、穴の軸角度の増加について第一縦モードの共振周波数を示す。上述と同様、0列のデータ点は、穴のない前方質量部の標準的なソリッドモデル及び中空モデルに対応していることに留意されたい。水平破線は、標準的なソリッドモデルと比較した共振周波数の増加及び減少の分界(divide)を明確にするためにある。150°列のデータ点に関して、最も低い曲線は5A_8P_構造に対応し、これに続いて3A_8P_、5A_4P_、1A_8P_、3A_4P_、5A_2P_、3A_2P_、1A_4P_及び1A_2P_があり、最後のものが最も高い曲線である。
【0191】
共振周波数は、穴の角度の増加に応じて減少する。90度未満の角度の穴を有する装置は、標準的なソリッドモデルと比較して、分解する破線から明らかなように、予想される周波数の増加を示す。共振周波数の低下は、軸角度が90°を超える孔を有する装置で予想され、これら18個の装置のうち11個がそのような低下を示した。従って、穴の軸角度の増加は、穴のアレイを採用したある装置の共振周波数を低減するための効果的な戦略であるが、共振周波数の最大の低減を見ることができるのは、穴のアレイに関連する3つのパラメータの修正の組み合わせによると結論付けできる。
【0192】
この研究の結果は、周方向の穴の個数の増加が共振周波数に対して最大の影響を有し、穴の角度及び軸方向の穴の個数が、これに次ぐ。しかしながら、これら3つのパラメータの全てに対する変更が有利である。
【0193】
共振周波数の最大の低下が5A_8P_150装置で見られ、ソリッドモデルの共振周波数から10.5%の周波数の低下が観察され、~35kHzの共振周波数になった。この装置と共振周波数40kHzの市販BLT[51](メーカー品番:SMBLTD45F40H)の比較は、同様の(5A_8P_150 = 53 mm、SMBLTD45F40H = 53.75mm)にも関わらず、設計された装置が、より低い周波数を示すことを実証する。
【0194】
超音波トランスデューサの小型化のための実行可能な戦略として前方質量部構造の変更を確実なものにするべく、変更された装置の長手又は軸方向の変位の程度は、標準的な中実又は中空モデルのものと同等又はそれ以上でなければならない。特に、トランスデューサは、中実及び中空の標準モデルよりも大きな適切なゲインを有するべきである。ゲインは、トランスデューサの各端部、即ち、前方質量部の前端(遠位端)及び後方質量部の後端(近位端)の最大軸方向変位の比によって決定される。軸方向変位は、長手軸に平行な方向における超音波トランスデューサの一部の、その平衡位置(equilibrium position)に対する位置変化である。従って、変位がゼロに等しい位置は、装置のノード(node)に相当する。
【0195】
図40は、変更された45個の前方質量部構造のそれぞれの第一縦モードL1に対応する各トランスデューサ装置について計算されたゲインを示す。X軸の前方質量部タイプは、軸方向に配置された穴の数が共通のグループに分けられる。穴の配列に関係なく、各前方質量部構造は、左端のデータ点で表される標準的なソリッドモデルのゲインよりも大きいゲインに帰結することが明らかである。これにもかかわらず、
図38は、軸方向に配置された穴の数の増加が、ゲインへの相対的に小さい影響を有することを示す。対照的に、周方向に配置された穴の数の増加(即ち、f.p.p.の数の増加)が、より大きい利得の増加に帰結し、この影響は、f.p.p.の数を4から8に増やしたときに、より大きい程度で観察される。30°から150°への軸角度の増加に応じて生じるゲインの増加は、周方向に配置されたより多くの個数の孔を用いる装置において顕著である。
【0196】
標準的なソリッドモデルに対するゲインの最大の増加が5A_8P_150前方質量部タイプで生じ、82.4%のゲインの増加を提供した。この装置は、共振周波数の最大の減少も示した。
【0197】
共振周波数の違いは、機械的なコンプライアンス及び波動伝播に関して変化した前方質量部構造の影響だけでなく、質量の変化によって生ずるとの認識が重要である。従って、各前方質量部タイプの共振周波数と比較するため、各前方質量部タイプについて除かれた質量の体積(volume of mass removed)を考慮することにより、質量損失がトランスデューサの動作に及ぼす影響を調査した。
【0198】
図41は、各前方質量部タイプについて、「十字」データ点が示す前方質量部の総質量、及び「円」データ点が示す第一縦モードL1の共振周波数を示す。前方質量部タイプは、X軸において、まず軸角度で、次に軸方向に配列された穴の数、次に周方向に配列された穴の数で順序付けられている。線で結ばれた点のグループは、共通の軸角度を共有する前方質量部タイプを表す。
【0199】
5A_8P_30(40.2kHz)及び5A_8P_150(35.3kHz)の質量及び共振周波数を比較すると、同一の質量(6.54g)を有しているにも関わらず、共振周波数に4.9kHzの差があり、質量が0.0%減少すると共振周波数が12.2%減少することに対応する。従って、共振周波数の低下は、質量の変化よりもむしろ、前方質量部の構造の変化によって引き起こされることが多分に明らかである。
【0200】
更なる研究では、「標準」中実モデル及び「折り畳み」前方質量部モデルとの直接的比較のために、開口の配置が異なる3つのトランスデューサモデルを提案した。標準的な中実モデルは、後部及び前方質量部を貫通するボルト用の所要の通路がある以外は、中実な前方及び後方質量部を使用する。5つのモデルの全ては、前方質量部、後方質量部、2つの圧電リング、2つの電極、後方質量部を貫通して前方質量部に結合されたボルトを含む。各トランスデューサは、67mmに等しい同一の全長及び15mmに等しい同一の全直径を有する。前方質量部、後方質量部及びボルトを含む各装置を構成する材料金属は、チタン(Ti)であり、各装置の電極材料は銅(Cu)である。各装置モデルは、同じ圧電タイプPZ26(MEGGITT)[52]を使用している。
【0201】
図42~
図46は、各モデルの側面斜視図を示すべく、個別のCAD及びワイヤーフレーム図を使用した各トランスデューサ装置のモデルの概略図を示す。縦モードの共振周波数における収縮及び拡大した振動位相が各モデルについて示される。
【0202】
図42A~Dは、前方及び後方質量部に開口が無い標準モデルを示す。
図42Cに示す収縮した形状はωt=0°の位相に対応し、
図42Dに示す拡張した形状はωt=180°の振動位相に対応し、ここで、ωは縦モードにおける標準的なモデルの共振周波数である。
【0203】
図43A-Dは、前方質量部及び後方質量部に開口が無いが、前方質量部が一連の同心円状の内側層(concentric inner folds)を備える層型の前方質量部モデルを示す。一連の層は、個別の、重複した、内側及び外側の環状キャビティにより画定される。内側環状キャビティは、前方質量部の遠位端から内側に延び出し、外側環状キャビティは、内側環状キャビティを周囲する。最も内側の層は、前方質量部の遠位端に向かって軸方向に延びて前方質量部の前方に振動を伝導する中実の円柱部(
図43Dでは軸方向に延びているように見える)を備える。
図43Cに示す収縮形状はωt=0°の位相に対応し、
図43Dに示す拡張形状はωt=180°の振動位相に対応し、ここで、ωは、縦モードでの層型モデルの共振周波数である。
【0204】
図44A~Dは、中実の後部質量部と、中空の前部質量部に形成された楕円形の穴のアレイを備える、改良された前部質量部モデル(FM-mod)を示す。アレイは、軸方向に配列された9列の穴を備え、各列は周方向に配列された8個の穴を備える。各穴の周方向の寸法は、対応する各穴の長手方向の寸法よりも大きい。合計72個の穴がある。
図44Cに示す収縮形状はωt=0°の位相に対応し、
図44Dに示す拡張形状はωt=180°の振動位相に対応し、ωは、縦モードでのFM-modモデルの共振周波数である。
【0205】
図45A-Dは、中空の前方質量部及び中空の後方質量部に形成された楕円形状の穴のアレイを備える第1改良された前方及び後方質量部モデル(FM&BM-mod)を示す。各穴の周方向寸法は、対応する各穴の長手方向寸法よりも大きい。合計144個の穴があり、前方及び後方質量部にそれぞれ72個の穴がある。アレイは、軸方向に配置された18列の穴を備え、前方質量部及び後方質量部それぞれに9列が配置され、各例は、周方向に配置された8個の穴を備える。穴は、各々、前方質量部及び後方質量部の表面にマッピングされた2つの矩形格子に配置される。従って、長手軸に平行であり、そこで終端する平面にして、その平面に交差する穴の合計数が最大である平面について、前方質量部においてその平面に交差する穴の最大合計数は9である。後方質量部は、その平面に交差する同一の穴の最大合計数を有する。その断面に交差する穴の合計数が最大である長手軸に沿う位置で長手軸に垂直に取られた断面について、前方質量部及び後方質量部においてその断面に交差する穴の最大合計数は8である。
図45Cに示す収縮形状はωt=0°の位相に対応し、
図45Dに示す拡張形状はωt=180°の振動位相に対応し、ωは、縦モードでのFM&BM-modモデルの共振周波数である。
【0206】
図46A-Dは、中空の前方質量部及び中空の後方質量部に形成された楕円形状の穴のアレイを備える第2変形された前方及び後方質量部モデル(FM&BM-mod2)を示す。各穴の周方向寸法は、対応する各穴の長手方向寸法よりも大きい。合計104個の穴があり、前方及び後方質量部それぞれに52個の穴がある。アレイは、軸方向に配列された26列の穴を備え、前方及び後方質量部のそれぞれに13列あり、各列は4つの穴を備える。このモデルでは、穴は、各々、前方質量部及び後方質量部の表面にマッピングされた2つの三角格子に配置される。従って、長手軸に平行であり、そこで終端する平面にして、その平面に交差する穴の合計数が最大である平面について、前方質量部においてその平面に交差する穴の最大合計数は7である。後方質量部は、その平面に交差する同一の穴の最大合計数を有する。その断面に交差する穴の合計数が最大である長手軸に沿う位置で長手軸に垂直に取られた断面について、前方質量部及び後方質量部においてその断面に交差する穴の最大合計数は4である。
【0207】
表6は、各トランスデューサ装置のモデルについて、L1モードの共振周波数及び圧電スタックの中心から前方質量部の遠位端までのゲインを示す。上述の設計研究により示されたように、トランスデューサの長さ変更無しでL1モードの周波数を変更できた。標準モデルと比較して、3つの改良された全装置が、より低い共振周波数及びより高いゲインを提供する。標準モデルに対して層型の(folded)前方質量部モデルで共振周波数が減少した。これにもかかわらず、FM-mod及びFM&BM-mod2モデルは、層型の前方質量部モデルよりも共振周波数が低い。これにより、トランスデューサ装置の機械的なコンプライアンスは、層型の前方質量部の配置の代わりに複数の開口部を持たせることによって、より大きい程度で低減され得ることが証明された。
【0208】
前方質量部及び/又は後方質量部に形成された穴のアレイを有する3つの全てのトランスデューサモデルは、層型の前方質量部モデル又は標準モデルのいずれよりも大きなゲインを有する。FM&BM-mod2トランスデューサ装置モデルは、表6に提示した5つのトランスデューサモデルの中で最低の共振周波数を有する。
【0209】
表6:提案したトランスデューサモデルにおけるL1モードの共振周波数及びゲインの結果
【0210】
観察として、FM&BM-mod装置モデルは層型の装置モデルよりも共振周波数が高いことに注目されたい。理論に束縛されることを望まないが、これは、より高いモード密度(higher modal density)及び格子自体による振動応答の支配(the lattice itself dominating the vibrational response)の両方の組み合わせによるものと考えられる。特に、共振周波数に<1kHzの差しかない場合、折り畳み型(folded)ホーン構造に比べてゲインが相当に増加していることを鑑みると、この結果は興味深い。
【0211】
図47は、本明細書の別の例示的な実施形態に係る前方又は後方質量部構造に組み込まれる開口70aの適切なランダム配列を示す円筒90の前側斜視図を示す。穴は実質的にランダムに配置されるが、装置の構造的完全性を維持するために、各穴が最小の距離で隔てられている。従って、穴のアレイは、上述の規則的な穴のアレイと同様の効果を奏することを意図しており、特に、実質的な縦モードから捩れモードへの変換を供しないことを意図している。
【0212】
その具体的な形態で、又は開示された機能を実行するための手段に関して、又は開示された結果を得るための方法又はプロセスで表現された、上述の既述、又は次の請求項、又は添付の図面に開示された特徴は、適切なように、別々に、又はそのような特徴の任意の組み合わせにおいて、その多様な形態において発明を具現化するために利用され得る。
【0213】
本発明は、上述の例示的な実施形態と共に説明したが、本開示を参照すれば、多くの同等の改良及び変形が当業者には明らかであろう。従って、上述した本発明の例示的な実施形態は、例示的なものであり、かつ限定的なものではないと考えられる。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に様々な変更を加えることができる。
【0214】
疑念を避けるために、本明細書で提供される理論的説明はすべて、読者の理解を深める目的で提供されるものである。本発明者らは、これらの理論的説明に拘束されることを望まない。
【0215】
本明細書で使用されるいかなるセクションの見出しも、整理の目的のみに使用されるものであり、及び記載される主題を限定するものとして解釈されるものではない。
【0216】
次の請求項を含む本明細書全体を通じて、文脈上そうでなければならない場合を除き、「備える(comprise)」及び「含む(include)」、及び「comprises」、「comprising」及び「including」といった活用は、述べられた完全体又はステップ、若しくは、完全体又はステップのグループの包含を意味するものと理解され、他の完全体、ステップ、若しくは、完全体又はステップのグループの除外を意味するものと理解されない。
【0217】
本明細書及び添付請求項で使用されているように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指定しない限り、複数の参照語を含むことに留意しなければならない。本明細書において、範囲は、ある特定値の「約」から/又は別の特定値の「約」までとして表現され得る。そのように範囲が表現される時、別の実施形態では、ある特定値から及び/又は他の特定値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、先行詞「約」の使用により、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。数値に関する「約」という用語は任意であり、例えば±10%を意味する。
【0218】
参照文献
本発明をより完全に説明及び開示するため、及び本発明が関連する技術状態をより完全に説明するため、上述において多数の刊行物を引用した。これらの文献の完全な引用を以下に示す。これらの各文献の全体は、本明細書に組み込まれる。
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【国際調査報告】