(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】常温、常圧超伝導セラミック化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/45 20060101AFI20240719BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505479
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 KR2022012773
(87)【国際公開番号】W WO2023027536
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0112104
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511134528
【氏名又は名称】クアンタム エナジー リサーチ センター (キュー-センター)
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM ENERGY RESEARCH CENTRE (Q-CENTRE)
【住所又は居所原語表記】(Garak-dong) B1,46-24 Songi-ro 23-gil Songpa-gu Seoul 05822 Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イ ソクべ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジフン
(72)【発明者】
【氏名】クォン ヨンワン
(57)【要約】
本発明は、超伝導性セラミック化合物及びその製造方法を開示する。本発明に係る超伝導性セラミック化合物及びその製造方法は、化学式1で表されるセラミック化合物を含むことを特徴とし、これによるとき、常温、常圧で超伝導特性を示す効果を発揮する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で表されるセラミック化合物を含むことを特徴とする、超伝導性セラミック化合物。
<化学式1>
A
aB
b(EO
4)
cX
d
A:(s-又はp-ブロック金属)Ca、Ba、Sr、Sn、Pb、(ランタン系列など)Y、La、Ce、またはこれらの組み合わせ
B:(d-ブロック金属)Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、Ni、Ag、またはこれらの組み合わせ
E:P、As、V、Si、B、S、またはこれらの組み合わせ
X:F、Cl、OH、O、S、Se、Te、またはこれらの組み合わせ
(a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4)
【請求項2】
前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて重量を秤量したことを特徴とする、請求項1に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項3】
前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて秤量し、前処理合成したセラミック前駆体であることを特徴とする、請求項1に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項4】
前記セラミック化合物は、白色または黒色を帯びることを特徴とする、請求項1に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項5】
前記セラミック化合物は、灰色を帯びることを特徴とする、請求項1に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項6】
前記セラミック化合物は、温度の変化による磁化率が超伝導特性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項7】
前記セラミック化合物は、磁場の変化による磁化率が超伝導特性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項8】
前記セラミック化合物は、温度の変化による電流-電圧特性が超伝導特性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項9】
前記セラミック化合物は、磁場の変化による電流-電圧特性が超伝導特性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項10】
前記セラミック化合物の温度の変化による抵抗-温度特性が超伝導特性を示すことを特徴とする、請求項1に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項11】
前記セラミック化合物のBは、Aの位置に置換されるか、または結晶構造内の空き空間の間に入ることを特徴とする、請求項1に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項12】
原料を蒸着して、化学式1で表されるセラミック化合物を合成する工程を含むことを特徴とする、超伝導性セラミック化合物の製造方法。
<化学式1>
A
aB
b(EO
4)
cX
d
A:(s-又はp-ブロック金属)Ca、Ba、Sr、Sn、Pb、(ランタン系列など)Y、La、Ce、またはこれらの組み合わせ
B:(d-ブロック金属)Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、Ni、Ag、またはこれらの組み合わせ
E:P、As、V、Si、B、S、またはこれらの組み合わせ
X:F、Cl、OH、O、S、Se、Te、またはこれらの組み合わせ
(a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4)
【請求項13】
前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて秤量したことを特徴とする、請求項12に記載の超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項14】
前記蒸着は、反応温度550℃~2000℃で行われることを特徴とする、請求項12に記載の超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項15】
前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて秤量し、前処理合成したセラミック前駆体であることを特徴とする、請求項12に記載の超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項16】
前記セラミック前駆体は、反応温度550℃~1100℃で反応させて前処理したことを特徴とする、請求項15に記載の超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項17】
ラナルカイト(L、Lanarkite(Pb
2SO
5=PbO・PbSO
4))とリン化銅(Cu
3P)を反応させ、化学式1で表されるセラミック化合物を合成する工程を含むことを特徴とする、超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項18】
前記反応時の温度は600℃~1000℃であることを特徴とする、請求項17に記載の超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項19】
前記ラナルカイトは、PbO及びPbSO
4を組成に応じて秤量し、混合して加熱することを特徴とする、請求項17に記載の超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項20】
前記Cu
3Pの合成は、CuとPを組成比に応じて秤量し、混合して加熱することを特徴とする、請求項17に記載の超伝導性セラミック化合物の製造方法。
【請求項21】
請求項12~20のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする化学式1で表されるセラミック化合物を含むことを特徴とする、超伝導性セラミック化合物。
<化学式1>
A
aB
b(EO
4)
cX
d
A:(s-又はp-ブロック金属)Ca、Ba、Sr、Sn、Pb、(ランタン系列など)Y、La、Ce、またはこれらの組み合わせ
B:(d-ブロック金属)Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、Ni、Ag、またはこれらの組み合わせ
E:P、As、V、Si、B、S、またはこれらの組み合わせ
X:F、Cl、OH、O、S、Se、Te、またはこれらの組み合わせ
(a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4)
【請求項22】
前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて重量を秤量したことを特徴とする、請求項21に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項23】
前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて秤量し、前処理合成したセラミック前駆体であることを特徴とする、請求項21に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項24】
前記セラミック化合物は、白色または黒色を帯びることを特徴とする、請求項21に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項25】
前記セラミック化合物は、灰色を帯びることを特徴とする、請求項21に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項26】
前記セラミック化合物は、温度の変化による磁化率が超伝導特性を示すことを特徴とする、請求項21に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項27】
前記セラミック化合物は、磁場の変化による磁化率が超伝導特性を示すことを特徴とする、請求項21に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項28】
前記セラミック化合物は、温度の変化による電流-電圧特性が超伝導特性を示すことを特徴とする、請求項21に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項29】
前記セラミック化合物は、磁場の変化による電流-電圧特性が超伝導特性を示すことを特徴とする、請求項21に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項30】
前記セラミック化合物の温度の変化による抵抗-温度特性が超伝導特性を示すことを特徴とする、請求項21に記載の超伝導性セラミック化合物。
【請求項31】
前記セラミック化合物のBは、Aの位置に置換されるか、または結晶構造内の空き空間の間に入ることを特徴とする、請求項21に記載の超伝導性セラミック化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温、常圧超伝導セラミック化合物及びその製造方法に関し、より詳細には、常温、常圧で超伝導特性を示す超伝導セラミック化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代は電気、電子の時代と呼ばれるほどに、電子を扱う技術においてはものすごい進歩を重ねてきた。その根源的な面は、もちろん、発電、送電、配電をベースとする電力の十分な供給にあり、電力を貯蔵することができる媒体である一次電池、二次電池及び無線電力送受信の技術にまで発展し、現代のものすごい発展を成し遂げる原動力となった。
【0003】
しかし、最近台頭した環境、エネルギーの問題に対する代案の準備、及び半導体の高集積化/高密度化により生じる効率低下の問題などを解決する課題は、根源的に既存の銅、金のような低抵抗物質の使用により解決してきた方式を新たに代替/解決する物質を探さなければならないということに至った。
【0004】
それに対するアプローチとして関心を集めた分野が高温超伝導分野であり、これは、1986年、ベドノルツ(Bednorz)及びミューラー(Muller)が、古典的な理論であるBCS理論の臨界温度の限界よりも高い臨界温度(Tc)を有する超伝導性物質の新しい部類を発表し、固体物理学コミュニティを驚かせた[Bednorz,et al,ZPhys B 64,189(1986)]。これらの物質は、緩衝剤陽イオンによって分離された酸化銅層からなるセラミックである。ベドノルツ及びミューラーの元の化合物(LBCO)において、緩衝剤陽イオンはランタン及びバリウムである。彼らの作業によって鼓舞されたポール・チュー(Paul Chu)は、緩衝イオンがイットリウム及びバリウムである類似の物質を合成した。この物質はYBCOであり、液体窒素の沸点(77K)を超えるTcを有する最初の超伝導体である[Wu,et al,Phys Rev Lett 58,908(1987)]。
【0005】
それと類似の転機を設けた報告の中で、最高の臨界温度の上昇は、155GPaの圧力で硫化水素が示す203.5Kと知られている。[Conventional superconductivity at 203 kelvin at high pressures in the sulfur hydride system.Nature 525,73(2015)。]
【0006】
その後にも、類似の物質を用いた関連研究が進められて、臨界温度が上昇し続け、2020年に常温に近い15℃の臨界温度を有する超伝導物質も報告されたが、267GPaの非常に高い圧力を要求しており、相対的に圧力を下げようとする努力を重ねた結果、2021年には、186GPaの圧力を加えたとき、約零下5℃で超伝導特性を示すものが報告されたが、このような方式で実生活に応用するのは難しいと考えられる(https://en.Wikipedia.org/wiki/Room-temperature_superconductor)。
【0007】
その理由は、このような硫化水素系列や、イットリウム超水素化物の実験結果により、学界でも常温超伝導体に対する期待が大きいのが事実であるが、267GPaや186GPaは、大気圧(1atm)の約20万倍前後に該当する圧力であり、重量に換算すると、1cm2の面積に2700トン以上が加えられているもので、これ自体で産業的に利用することはほとんど不可能であると見られる。
【0008】
そのため、常温だけでなく常圧でも使用可能な超伝導物質の開発が必要であり、これは、硫化水素やイットリウム超水素化物系列ではない、言い換えると、高圧が必要でない物質であってこそ、その応用性が高くなり、産業全般に利用可能性が高まると考えられる。
【0009】
本発明者らは、既に出願した発明において、313Kの臨界温度を有する常温常圧超伝導物質が少量含まれた物質を開示したことがあるが、これは、磁気的特性及びMAMMAの分析を通じて、超伝導物質が含まれた事実は確認したが、含まれた量が少ないため、超伝導特有の電気的特性を、十分ではないが確認したことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明が解決しようとする第一の技術的課題は、常温、常圧で超伝導特性を示す超伝導セラミック化合物を提供することである。
【0011】
また、本発明が解決しようとする第二の技術的課題は、常温、常圧で超伝導特性を示す超伝導セラミック化合物の製造方法を提供することである。
【0012】
併せて、本発明が解決しようとする第三の技術的課題は、常温、常圧で超伝導特性を示す超伝導セラミック化合物の固相製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述した第一の技術的課題を解決するために、化学式1で表されるセラミック化合物を含むことを特徴とする常温、常圧超伝導性セラミック化合物を開示する。
【0014】
<化学式1>
AaBb(EO4)cXd
A:(s-又はp-ブロック金属)Ca、Ba、Sr、Sn、Pb、(ランタン系列など)Y、La、Ce、またはこれらの組み合わせ
B:(d-ブロック金属)Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、Ni、Ag、またはこれらの組み合わせ
E:P、As、V、Si、B、S、またはこれらの組み合わせ
X:F、Cl、OH、O、S、Se、Te、またはこれらの組み合わせ
(a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4)
【0015】
本発明の他の実施例によれば、前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて重量を秤量したものであってもよい。
【0016】
本発明の他の実施例によれば、前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて重量を秤量し、前処理合成したセラミック前駆体であってもよい。
【0017】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、白色または黒色を帯びるものであってもよい。
【0018】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、灰色を帯びるものであってもよい。
【0019】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、温度の変化による磁化率が超伝導特性を示すものであってもよい。
【0020】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、磁場の変化による磁化率が超伝導特性を示すものであってもよい。
【0021】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、温度の変化による電流-電圧特性が超伝導特性を示すものであってもよい。
【0022】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、磁場の変化による電流-電圧特性が超伝導特性を示すものであってもよい。
【0023】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物の温度の変化による抵抗-温度特性が超伝導特性を示すものであってもよい。
【0024】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物のBは、結晶構造上、Aの位置に置換されるか、または空き空間の間に入るものであってもよい。
【0025】
一方、本発明は、上述した第二の技術的課題を解決するために、原料を真空状態で蒸着して、化学式1で表されるセラミック化合物を合成する工程を含むことを特徴とする超伝導性セラミック化合物の製造方法を提供する。
【0026】
<化学式1>
AaBb(EO4)cXd
A:(s-又はp-ブロック金属)Ca、Ba、Sr、Sn、Pb、(ランタン系列など)Y、La、Ce、またはこれらの組み合わせ
B:(d-ブロック金属)Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、Ni、Ag、またはこれらの組み合わせ
E:P、As、V、Si、B、S、またはこれらの組み合わせ
X:F、Cl、OH、O、S、Se、Te、またはこれらの組み合わせ
(a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4)
【0027】
本発明の他の実施例によれば、前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて秤量したものであってもよい。
【0028】
本発明の他の実施例によれば、前記蒸着は、反応温度550℃~2000℃で加熱するものであってもよい。
【0029】
本発明の他の実施例によれば、前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて秤量し、前処理合成したセラミック前駆体であってもよい。
【0030】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック前駆体は、反応温度550℃~1100℃で反応させて前処理したものであってもよい。
【0031】
また、一方、本発明は、上述した第三の技術的課題を解決するために、ラナルカイト(L、Lanarkite(Pb2SO5=PbO・PbSO4))とリン化銅(Cu3P)を反応させ、化学式1で表されるセラミック化合物を合成する工程を含むことを特徴とする超伝導性セラミック化合物の製造方法を提供する。
【0032】
本発明の他の実施例によれば、前記反応時の温度は600℃~1000℃であってもよい。
【0033】
本発明の他の実施例によれば、前記ラナルカイトは、PbO及びPbSO4を組成に応じて秤量し、混合して加熱するものであってもよい。
【0034】
本発明の他の実施例によれば、前記Cu3Pの合成は、CuとPを組成比に応じて秤量し、混合して加熱するものであってもよい。
【0035】
併せて、上述した製造方法によって製造されることを特徴とする化学式1で表されるセラミック化合物を含むことを特徴とする超伝導性セラミック化合物を提供する。
【0036】
<化学式1>
AaBb(EO4)cXd
A:(s-又はp-ブロック金属)Ca、Ba、Sr、Sn、Pb、(ランタン系列など)Y、La、Ce、またはこれらの組み合わせ
B:(d-ブロック金属)Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、Ni、Ag、またはこれらの組み合わせ
E:P、As、V、Si、B、S、またはこれらの組み合わせ
X:F、Cl、OH、O、S、Se、Te、またはこれらの組み合わせ
(a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4)
【0037】
本発明の他の実施例によれば、前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて重量を秤量したものであってもよい。
【0038】
本発明の他の実施例によれば、前記原料は、化学式1をなす物質を、a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4の範囲でモル比に応じて重量を秤量し、前処理合成したセラミック前駆体であってもよい。
【0039】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、白色または黒色を帯びるものであってもよい。
【0040】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、灰色を帯びるものであってもよい。
【0041】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、温度の変化による磁化率が超伝導特性を示すものであってもよい。
【0042】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、磁場の変化による磁化率が超伝導特性を示すものであってもよい。
【0043】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、温度の変化による電流-電圧特性が超伝導特性を示すものであってもよい。
【0044】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物は、磁場の変化による電流-電圧特性が超伝導特性を示すものであってもよい。
【0045】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物の温度の変化による抵抗-温度特性が超伝導特性を示すものであってもよい。
【0046】
本発明の他の実施例によれば、前記セラミック化合物のBは、結晶構造上、Aの位置に置換されるか、または空き空間の間に入るものであってもよい。
【発明の効果】
【0047】
本発明に係るセラミック化合物及びその製造方法によれば、常温、常圧で超伝導特性を発揮する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明に係るセラミック化合物の蒸着された形状を撮影した写真である。
【
図2】本発明に係るセラミック化合物の白色領域に対するSEM写真である。
【
図3】本発明に係るセラミック化合物の明るい(薄い)灰色領域に対するSEM写真である。
【
図4】本発明に係るセラミック化合物の暗い(濃い)灰色領域に対するSEM写真である。
【
図5】本発明に係るセラミック化合物の黒色領域に対するSEM写真である。
【
図6】
図2乃至
図5に対する色相及びセラミック化合物の組成を図式化し、厚さを概念的に示した図である。
【
図7】本発明に係るセラミック化合物のXRDグラフである。
【
図8】本発明に係るセラミック化合物のラマンスペクトルを測定したグラフである。
【
図9】
図8においてバックグラウンド(background、BG)を除去した後、一般的なアパタイトデータとマッチングさせて比較したグラフである。
【
図10】本発明に係るセラミック化合物に対する超伝導の磁化率データに対する判断方法を示すグラフである。
【
図11】本発明に係るセラミック化合物に対する超伝導の抵抗データに対する判断方法を示すグラフである。
【
図12】本発明に係るセラミック化合物に対する超伝導のIVデータに対する判断方法を示すグラフである。
【
図13】本発明に係るセラミック化合物の超伝導特性を示す薄膜に対するM-T(磁化率-温度)データであって、磁場が0.12Oeであるものである。
【
図14】本発明に係るセラミック化合物の超伝導特性を示す薄膜に対するM-T(磁化率-温度)データであって、磁場が10Oeであるものである。
【
図15】
図13及び
図14のデータから、超伝導のみの磁化率値を見るために、骨格物質自体の反磁気値を除去して示したデータグラフである。
【
図16】本発明に係るセラミック化合物の磁場(H)の変化による磁化率を測定したデータグラフである。
【
図17】
図16の点線円形で示した部分を拡大したデータグラフである。
【
図18】
図16において線形フィッティングデータを除去した状態を示したデータグラフである。
【
図19】本発明に係るセラミック化合物の温度の変化に対するIV特性のデータグラフである。
【
図20】
図19の中央の点線円形部分を拡大したグラフである。
【
図21】本発明に係るセラミック化合物の低い温度に対するIV特性のデータである。
【
図22】本発明に係るセラミック化合物の300Kで垂直に磁場の変化を加えながらIVを測定した結果グラフである。
【
図23】本発明に係るセラミック化合物の温度(T)の変化による抵抗値(R)を測定したRTデータのグラフである。
【
図24】本発明に係るセラミック化合物のSEM-EDXを測定した試料、及び左側から右側に位置番号#1、#2、#3を示した写真である。
【
図25-27】
図24の位置番号#1、#2、#3でそれぞれ撮影したSEM写真である。
【
図28】
図24の位置番号#1、#2、#3でSEM-EDXを測定したデータである。
【
図29】本発明に係るセラミック化合物の構造モデリングであって、鉛と銅との関係を2次元的に図式化した図である。
【
図30】本発明に係るセラミック化合物の構造モデリングであって、銅の3次元的な配置を考慮した図である。
【
図31】本発明に係る固相反応によるセラミック化合物の温度の変化による抵抗の変化を測定したグラフである。
【
図32】本発明に係る固相反応によるセラミック化合物のXRD分析グラフである。
【
図33】本発明の実施例1に対する温度の変化によるI-Vを測定した結果を示すグラフである。
【
図34-35】それぞれ、実施例3及び実施例5に対するSEM測定写真である。
【
図36-37】それぞれ、実施例3及び実施例5に対するI-V変化を測定したグラフである。
【
図38】実施例4に対する温度の変化による超伝導特性を示すグラフである。
【
図39】実施例4に対する磁場の変化による超伝導特性を示すグラフである。
【
図40】実施例4に対する温度の変化によるRT特性を示すグラフである。
【
図41】実施例4に対して任意の2箇所(#1、#2)で測定したSEM-EDXデータである。
【
図42】実施例4に対するリアルタイムで抵抗を測定した実験を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0050】
但し、本発明で使用される技術的用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたもので、本発明を限定しようとする意図ではないことに留意しなければならない。
【0051】
また、本発明で使用される技術的用語は、本発明で特に他の意味で定義されない限り、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解される意味で解釈されなければならず、過度に包括的な意味で解釈されたり、過度に縮小された意味で解釈されてはならない。本発明で使用される技術的な用語が、本発明の思想を正確に表現できない誤った技術的用語である場合には、当業者が正しく理解できる技術的用語で代替されて理解されなければならない。本発明で使用される一般的な用語は、辞書の定義に従って、または前後の文脈によって解釈されなければならず、過度に縮小された意味で解釈されてはならない。本発明で使用される単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を示すものでない限り、複数の表現を含み、本発明において、「構成される」又は「含む」などの用語は、発明に記載された様々な構成要素、または様々な段階を必ず全て含むものと解釈してはならず、そのうち一部の構成要素又は一部の段階は含まれなくてもよく、または追加の構成要素又は段階をさらに含むことができるものと解釈しなければならない。本発明を説明するにおいて、関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0052】
図1は、本発明に係るセラミック化合物の蒸着された形状を撮影した写真であり、
図2は、本発明に係るセラミック化合物の白色領域に対するSEM写真であり、
図3は、本発明に係るセラミック化合物の明るい(薄い)灰色領域に対するSEM写真であり、
図4は、本発明に係るセラミック化合物の暗い(濃い)灰色領域に対するSEM写真であり、
図5は、本発明に係るセラミック化合物の黒色領域に対するSEM写真であり、
図6は、
図2乃至
図5に対する色相及びセラミック化合物の組成を図式化し、厚さを概念的に示した図であり、
図7は、本発明に係るセラミック化合物のXRDグラフであり、
図8は、本発明に係るセラミック化合物のラマンスペクトルを測定したグラフであり、
図9は、
図8においてバックグラウンド(background、BG)を除去した後、一般的なアパタイトデータとマッチングさせて比較したグラフであり、
図10は、本発明に係るセラミック化合物に対する超伝導の磁化率データに対する判断方法を示すグラフであり、
図11は、本発明に係るセラミック化合物に対する超伝導の抵抗データに対する判断方法を示すグラフであり、
図12は、本発明に係るセラミック化合物に対する超伝導のIVデータに対する判断方法を示すグラフであり、
図13は、本発明に係るセラミック化合物の超伝導特性を示す薄膜に対するM-T(磁化率-温度)データであって、磁場が0.12Oeであるものであり、
図14は、本発明に係るセラミック化合物の超伝導特性を示す薄膜に対するM-T(磁化率-温度)データであって、磁場が10Oeであるものであり、
図15は、
図13及び
図14のデータから、超伝導のみの磁化率値を見るために、骨格物質自体の反磁気値を除去して示したデータグラフであり、
図16は、本発明に係るセラミック化合物の磁場(H)の変化による磁化率を測定したデータグラフであり、
図17は、
図16の点線円形で示した部分を拡大したデータグラフであり、
図18は、
図16において線形フィッティングデータを除去した状態を示したデータグラフであり、
図19は、本発明に係るセラミック化合物の温度の変化に対するIV特性のデータグラフであり、
図20は、
図19の中央の点線円形部分を拡大したグラフであり、
図21は、本発明に係るセラミック化合物の低い温度に対するIV特性のデータであり、
図22は、本発明に係るセラミック化合物の300Kで垂直に磁場の変化を加えながらIVを測定した結果グラフであり、
図23は、本発明に係るセラミック化合物の温度(T)の変化による抵抗値(R)を測定したRTデータのグラフであり、
図24は、本発明に係るセラミック化合物のSEM-EDXを測定した試料、及び左側から右側に位置番号#1、#2、#3を示した写真であり、
図25、
図26及び
図27は、
図24の位置番号#1、#2、#3でそれぞれ撮影したSEM写真であり、
図28は、
図24の位置番号#1、#2、#3でSEM-EDXを測定したデータであり、
図29は、本発明に係るセラミック化合物の構造モデリングであって、鉛と銅との関係を2次元的に図式化した図であり、
図30は、本発明に係るセラミック化合物の構造モデリングであって、銅の3次元的な配置を考慮した図であり、
図31は、本発明に係る固相反応によるセラミック化合物の温度の変化による抵抗の変化を測定したグラフであり、
図32は、本発明に係る固相反応によるセラミック化合物のXRD分析グラフであり、
図33は、本発明の実施例1に対する温度の変化によるI-Vを測定した結果を示すグラフであり、
図34及び
図35は、それぞれ、実施例3及び実施例5に対するSEM測定写真であり、
図36及び
図37は、それぞれ、実施例3及び実施例5に対するI-V変化を測定したグラフであり、
図38は、実施例4に対する温度の変化による超伝導特性を示すグラフであり、
図39は、実施例4に対する磁場の変化による超伝導特性を示すグラフであり、
図40は、実施例4に対する温度の変化によるRT特性を示すグラフであり、
図41は、実施例4に対して任意の2箇所(#1、#2)で測定したSEM-EDXデータであり、
図42は、実施例4に対するリアルタイムで抵抗を測定した実験を撮影した写真であり、これを参照して説明する。
【0053】
本発明は、既に出願した発明で公開できなかった少量存在する超伝導物質のみの結晶構造に対してさらに開示しようとする。
【0054】
本発明は、気相蒸着(VD:Vapor Deposition)方式を通じて薄膜の形態で超伝導物質の量を増やすことができる方法を見出し、また、さらなる分析を通じて、超伝導物質の反応メカニズム及び結晶構造を確認する一方、この情報に基づいて、一般の固相反応を用いてインゴット(ingot)又は粉末(powder)の形態でも超伝導物質を合成することができた。
【0055】
併せて、蒸着のために使用される様々なエネルギー源は、熱を用いた化学気相蒸着(chemical vapour deposition;CVD)に限定せず、原子層蒸着(atomic layer deposition;ALD)、スパッタリング(sputtering)、熱蒸着(thermal evaporation)、電子ビーム蒸着(e-beam evaporation)、分子ビーム蒸着(molecular beam epitaxy;MBE)、パルスレーザー蒸着(pulsed laser deposition;PLD)なども、原料を蒸着させることができる限り、制限なしに含まれる。
【0056】
また、本発明は、反復的な実験を通じて、本超伝導物質は、2つ以上の臨界温度(Tc)を有する安定した相(phase)が混合されていることを開示し、これは、YBCOが90K(約零下180℃)の臨界温度を有する相がよく知られているが、60K(約零下210℃)の相もよく作られる理由と同様であり、これは、結晶構造が同一であっても、酸素の量の若干の差(doping)によって電子構造が変わり、臨界温度が変わるためである。
【0057】
YBCOは、90K相と60K相が広いドーピング(doping)範囲を有するので、この2つの相がよく作られるものであり、YBCOの場合には、合成中に酸素分圧を高めるほど、90K相がさらに優勢であることが知られている(https://www.researchgate.net/figure/YBCO-phase-diagram-as-a-function-of-the-oxygen-content-between-6-and-7-12_fig15_33436805)。
【0058】
本発明に係る超伝導物質も、同じ結晶構造を有するが、電子構造の差によって、大きく、次の3つの臨界温度を有する安定した相が存在することができる。すなわち、(1)310K~320K(約40℃~50℃):以下、Tc_I、(2)340K~350K(約70℃~80℃):以下、Tc_II、(3)375K~390K(約100℃~125℃):以下、Tc_IIIに領域を分けることができる。
【0059】
YBCOと同様に、前記の3つの相は、いずれも同一の結晶構造を有するが、微細な電子構造の差によって臨界温度特性が区別されるものと見られ、また、3つの相の比率は、合成条件によって変わる。
【0060】
微細な電子構造の差は、超伝導現象が発生する位置を正確に特定しなければならず、量子力学的な計算など、非常に学術的な研究範囲に属するため、ここではさらに詳細に議論しない。
【0061】
本発明に係る薄膜は、抵抗の測定を通じて、Tc_IとTc_IIの臨界温度の変化が観察され、Tc_IIIは明確な転移(transition)が観察されず、磁化率の測定では、Tc_IIとTc_IIIで変化を示したが、抵抗の測定でよく見られなかったTc_IIIで信号が捕捉されたのは、抵抗の測定よりも磁化率の測定がさらに感度(sensitivity)が良いためであると考えられる。
【0062】
併せて、本発明に係る薄膜のメカニズムを確認するために試みた固相反応合成物では、Tc_IIIが最も大きく観察され、Tc_IとTc_IIは弱く見られたが、これは、Tc_IIIの量が確実に増加したということを意味する。
【0063】
上述したTc_I、Tc_II、Tc_III領域についてのさらに詳細な説明は後述する。
【0064】
本発明に係る超伝導性セラミック化合物は、化学式1で表されるセラミック化合物を含むことを特徴とする。
【0065】
<化学式1>
AaBb(EO4)cXd
A:(s-又はp-ブロック金属)Ca、Ba、Sr、Sn、Pb、(ランタン系列など)Y、La、Ce、またはこれらの組み合わせ
B:(d-ブロック金属)Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、Ni、Ag、またはこれらの組み合わせ
E:P、As、V、Si、B、S、またはこれらの組み合わせ
X:F、Cl、OH、O、S、Se、Te、またはこれらの組み合わせ
(a:0~10、b:0~10、c:0~6、d:0~4)
【0066】
前記化学式1は、アパタイト(Apatite)と構造的に類似した面があるが、物性や特性が異なるので、本特許では、この構造を「LK99」と称する。
【0067】
前記アパタイトは、リン酸基などと金属が結合された鉱物であって、昔から染料としてよく使用されてきた。これは、エネルギーギャップが大きい電気的不導体(insulator)である反面、本発明に係るLK99構造は、化合物に置換体(substituent)や添加不純物(Dopant)及び欠陥(defect)などで新しいエネルギー準位を形成して、電気的導体、特に超伝導特性を発揮する特性がある。
【0068】
また、前記化学式1でのA、E、Xは、アパタイト鉱物を構成する一般的な元素であり(https://www.intechopen.com/books/apatites-and-their-synthetic-analogues-synthesis-structure-properties-and-applications/introduction-to-apatites)、ここで、Bは、一種の置換体や添加不純物であって、d軌道を有する元素であり、これによって、電気的不導体から伝導体または超伝導体に変化する特性がある。
【0069】
すなわち、より詳細には、Aは、Ca、Ba、Sr、Sn、Pbなどの金属であって、s-ブロック金属又はp-ブロック金属の特徴を有し、またはY、La、Ceなどであって、金属はランタン系列など、またはこれらの組み合わせを含む。
【0070】
また、Bは、Cu、Cd、Zn、Mn、Fe、Ni、Agなどであって、d-ブロック金属の特徴を有し、Eは、P、As、V、Si、B、Sまたはこれらの組み合わせであり、Xは、F、Cl、OH、O、S、Se、Teまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0071】
併せて、上述したaは0~10であり、bは0~10であり、cは0~6であり、dは0~4であるが、ここでの‘0’の意味は、無いという意味よりは、極少量(例:10-10(g))ではあるが、存在できるという意味と見ることができる。
【0072】
また、前記原料は、化学式1のAaBb(EO4)cXdをなす物質を、aは0~10、bは0~10、cは0~6、dは0~4の範囲でモル比に応じて重量を秤量し、真空調節が可能な反応容器で反応温度550℃~2000℃、反応時間1~100時間反応させて蒸気相蒸着されるようにしてセラミック化合物を合成することができる。
【0073】
併せて、蒸気相蒸着が効果的に緻密かつ均一に行われるように、前記原料を前処理することができ、このような前処理は、化学式1のAaBb(EO4)cXdをなす物質を、aは0~10、bは0~10、cは0~6、dは0~4の範囲でモル比に応じて重量を秤量し、真空調節が可能な反応容器で反応温度550℃~1100℃、反応時間10~100時間反応させて前処理したセラミック前駆体を、蒸着原料として使用することができる。
【0074】
本発明では、工程温度、工程時間は、(1)セラミック前駆体の場合には550℃~1100℃、10~100時間、(2)蒸着工程の場合には550℃~2000℃、0.5~100時間を適用する。その理由として、セラミック前駆体の場合は、一次的に組成比に応じて相対的に低い温度に安定的に(550℃~1100℃)反応条件を設定して、よく混合された固体(Solid-solution)状態で反応が行われるようにし、これを蒸着の原料として使用するために、一次的に準備する前駆体であるためである。
【0075】
ここで、セラミック前駆体の加熱温度が550℃未満であると、十分な混合が行われず、これによって、所望の反応が十分に起こらないことがあり、反対に、1100℃を超えると、高い温度によって組成の変化が起こることがあり、他の反応に進行して所望の組成が得られない問題と共に、エネルギー浪費の問題があり、前記加熱時間は、10~100時間が必要であるが、もし10時間未満であると、温度が低い場合と同様に、十分な反応が起こらないことが問題であり、反対に、100時間を超えると、あまりにも多くのエネルギーが消耗されることが問題となり得る。
【0076】
また、蒸着工程の場合、蒸着が行われる条件を大きく2種類に分けることができ、一つは、CVD(化学気相蒸着方法)であって、加熱部に、よく準備された(前処理物質を含む)試料を真空状態で載せておき、エネルギー源を加えて温度を上げて気相に移動させ、このとき、550℃未満であると、気体状態になるべき物質の気化が良好に行われず、2000℃を超える温度で加熱すると、蒸着面の温度が過度に上昇し、所望の蒸着相が良好に形成されないことがあり、前記加熱時間は0.5~100時間が必要であるが、もし0.5時間未満であると、十分な気化が難しいため、蒸着が薄くなることがあり、反対に、100時間を超えると、蒸着が完了した後、エネルギー浪費的であり得る。
【0077】
また、他の一つは、熱蒸着を含む物理的蒸着工程の加熱温度が550~2000℃であるものであり得、もし550℃未満であると、元素が十分に気化できず、均一に化合物を生成することが難しく、反対に、2000℃を超えると、超伝導化合物の生成が難しいことがあり、前記加熱時間は0.5~100時間が必要であり、もし0.5時間未満であると、十分な気化が難しいため、蒸着が薄くなることがあり、反対に、100時間を超えると、蒸着が完了した後、エネルギー浪費的であり得る。
【0078】
一方、本発明に係るセラミック化合物の合成時に高温で加熱する関係上、合成されるセラミック化合物の生成や合成中に微細な時間が経過するにつれて、生成物の層や領域(layer or domain)で自然冷却のような温度偏差の温度変化領域(temperature gradient)が存在するが、特定の温度領域(100℃~400℃)で蒸着膜が形成されることもあり、高温部分では白色膜が、低温部分では黒色膜が生じるようになり、中間領域では2つの膜が共存しながら灰色に見える膜が形成され、この色を帯びるセラミック化合物が超伝導特性を発揮することができ、特に灰色領域で超伝導特有の電気的特性が強く発現され、これは、電気的接続(percolation)が可能なほどにその量が十分に形成されたことを意味し、添付の
図1の本発明に係るセラミック化合物の蒸着された形状を撮影した写真を見ると、原料を加熱する加熱源Sに近い領域Nは白色Wを帯び、遠い領域Fは黒色Bを帯び、その中間領域Mが灰色Gを示すことが分かる。
【0079】
このような本発明に係るセラミック化合物と、白色、黒色及び灰色などの色との関係を走査電子顕微鏡(SEM)写真を通じて説明すると、
図2乃至
図5の写真は、生成されたセラミック化合物を斜視的に(約45°)傾けた状態で撮影したSEM写真であり、
図2は、本発明に係るセラミック化合物の白色領域に対する、
図3は明るい(薄い)灰色領域、
図4は暗い(濃い)灰色領域、
図5は黒色領域に対する写真である。
【0080】
このような色相の発現は、形成されたセラミック化合物の組成と関連するもので、白色領域はラナルカイト(Lanarkite)(Pb2SO5)が支配的であり、黒色領域はPbSが支配的に形成されたものと見られる。
【0081】
ラナルカイトが形成される反応は、PbSが先に気化し、基板(substrate)から酸素の供給を受けて形成されるものと考えられ、反応式は、次の通りである。
【0082】
2PbS(s)+5/2O2(s、from substrate)→Pb2SO5(s)+S(g)↑
【0083】
図6は、
図2乃至
図5に対する色相及びセラミック化合物の組成を図式化し、厚さを概念的に示した図であり、原料を加熱する加熱源Sに近い領域Nは白色Wを帯び、30μm程度の厚さを有し、遠い領域Fは黒色Bを帯び、0.6μm程度の厚さを有し、その中間領域Mが、明るい、濃い灰色Gを示すのは、ブラックが1.3~3.3μm程度の厚さを有し、白色が4~30μm程度の厚さを有することで、濃い灰色や薄い灰色を発現するものと考えられるが、単純にそれぞれの色相を示すセラミック化合物の混合によるものか、組成の変化によるものかについては後述する。
【0084】
このような組成に関する一つの説明は、X線回折分析器の結晶構造分析(XRD)を通じて説明することができ、
図7は、本発明に係るセラミック化合物のXRDグラフであって、特に超伝導特性が発揮される灰色領域M(
図6の2(dark gray))に関するもので、グラフの黒色線は測定データ(Experimental pattern)に基づいたものであり、これに対して、COD(Crystallography Open Database)を用いて濃い線(Apatite)及び薄い線(Lead Phosphate)とマッチングさせて示したグラフである。
【0085】
ここで、濃い線は、リン酸基(phosphate)鉱物の一種であるアパタイト(Apatite)とマッチングしたもので、ピーク位置の若干の偏差はあるが、概ねよく一致することを示し、薄い線は、リン酸鉛(lead phosphate)であって、本発明のセラミック化合物の合成時に共に生成された少量の副反応物である。
【0086】
図7のグラフから分かるように、前記セラミック化合物は、主成分がアパタイト(Apatite)の構造と類似するという特性があるが、アパタイトは、白色または若干の色を帯びる物質であって、電気的特性は不導体(insulator)であり、本発明に係る伝導体や超伝導体ではないので、通常のアパタイトは、本発明のセラミック化合物の構造‘LK99’とは異なるということが分かる。
【0087】
併せて、本発明に係るセラミック化合物の超伝導特性が明確に発揮される灰色領域M(
図6の2(dark gray))に対して、3箇所の地点を任意に選択してラマンを測定してみると、リン酸基(phosphate group)の存在の有無を確認することができ、
図8は、本発明に係るセラミック化合物のラマン測定を行ったグラフであり、これを参照すると、グラフの左側上端の写真での1、2、3は、測定した位置を示したものである。
【0088】
図8のグラフにおいてバックグラウンド(background、BG)を除去した後、一般的なアパタイトのデータとマッチングさせて比較したグラフを
図9に示しており、
図9においてv1、v2、v3、v4は、リン酸基であるPO
4分子の振動モードを意味するもので、v1:対称伸縮振動(symmetric stretching)、v2:対称曲げ振動(symmetric bending)、v3:非対称伸縮振動(antisymmetric stretching)、v4:非対称曲げ振動(antisymmetric bending)であり、本発明のセラミック化合物がリン酸基(phosphate group)を有していることを確認することができる。
【0089】
上述したTc_I、Tc_II、Tc_III領域についての説明を続けると、
図10、
図11及び
図12に示したように、セラミック化合物の超伝導の判断方法を説明する必要がある。
【0090】
すなわち、超伝導であるか否かは、大きく2つの特性を測定して判断することができ、1)磁化率(磁気モーメント)と、2)抵抗又はIV(電流-電圧)データに基づいた判断である。
【0091】
図10は、本発明に係るセラミック化合物に対する超伝導の磁化率データであって、温度が臨界温度(Tc)以上に上がると、磁化率値が急に増加する転移(transition)が発生するが、この測定法をZFCといい、温度を高温から下げながら測定する方式をFCといい、磁化率測定の部分で詳細に説明する。
【0092】
図11は、本発明に係るセラミック化合物に対する超伝導の抵抗データであって、温度が臨界温度(Tc)以下に下がると、抵抗値が急に減少(理論的にはゼロ‘0’に行く)する転移(transition)が発生するが、温度が低温から始まって臨界温度以上に上昇しても、同じデータが得られる。
【0093】
このような
図10及び
図11から分かる特性は、いずれも臨界温度以上では非超伝導状態の物質であって、物質自体の特性によって様々なパターンで現れ得る。
【0094】
図12は、本発明に係るセラミック化合物に対する超伝導のIVデータであって、臨界温度(Tc)以下で電流を(-)から(+)に印加する際に両端にかかる電圧を測定するものであり、電流が臨界電流以下(-Ic~+Ic)に流れると、電圧が‘0’という超伝導特性が検出され、臨界電流以上では非超伝導状態であって、通常の物質のようにオームの法則に従う特性を示す。
【0095】
図13及び
図14は、本発明に係るセラミック化合物の超伝導特性を示す薄膜に対するM-T(磁化率-温度)データであって、それぞれ、磁場0.12Oe、10Oeを印加したもので、VSM(Vibrating Sample Magnetometer)方式で測定され、温度は200K~400Kまで測定されたものであり、VSM方式で測定すれば、試料の非常に小さな信号も捕捉することができるという利点があるが、その小さな信号に対して低いS/N比を示し得る。
【0096】
したがって、上のデータでは、理解の便宜のために、元のデータ以外にスムージング(smoothing)データを
図15に示した。
【0097】
ZFC(zero-field cooling)及びFC(field cooling)は、超伝導の反磁気特性(Diamagnetism)であるマイスナー効果(Meissner effect)を確認するための典型的な測定方法であって、詳細には、1)外部磁場(field)がゼロである状態で試料の温度を下げた後、一定の磁場(field)を加え、温度を上げながら磁化率を測定する方法(ZFC)、2)加えた磁場をそのまま維持した状態で、再び反対に温度を下げながら磁化率を測定する方法(FC)、3)単純な金属元素のような第1種超伝導体でない限り、ZFCとFCは差を示し、ZFCは臨界温度以下で反磁気転移(diamagnetic transition)を示すかを確認する方法などがある。
【0098】
本発明に係るセラミック化合物は、超伝導特性が発生する部分以外に、それ自体の構成骨格物質(リン酸基、ケイ酸基、硫酸基など)が本質的な反磁気特性(intrinsic diamagnetism)を有するので、(1)超伝導の反磁気特性と(2)元の物質の反磁気特性が合わせられている状態で示され得る。
【0099】
すなわち、(1)は、臨界温度以下で反磁気特性が大きくなる反磁気転移を示すが、(2)は、そのような転移がなく、外部磁場の変化に対して、(1)はヒステリシスを示すが、(2)はそのような特性がなく、外部磁場が強くなると、(1)の反磁気特性は弱化または消滅するが、(2)は比例的に増加する特性を示す。
【0100】
また、(1)と(2)の特性以外に、その中間で現れる(3)強磁性(Ferromagnetism)が新たに発生するが、この強磁性の原因は、詳細に研究されたことはないが、本発明者らは、近接効果(proximity effect)の一種と解釈している。
【0101】
このように超伝導以外の他の磁性が合わせられている場合、超伝導のみの反磁気転移を観察するためには、他の磁性の影響を最小化しなければならないので、実験的に可能な方法は、磁化率の測定のために加える外部磁場の値を最小化することであり、
図13のデータは磁場0.12Oe(この程度に磁場を調節するためには、low-field optionを有したSQUIDのみが可能である)を、
図14のデータは磁場10Oeを加えて測定した資料である。
【0102】
図15は、
図13及び
図14のデータから、超伝導のみの磁化率値を見るために、骨格物質自体の反磁気値を除去して示したデータであり、骨格物質自体の反磁気値は、上述した超伝導であるか否かの判断方法での磁化率(磁気モーメント)方法の線形フィッティング(Linear Fitting)データから0.12Oeと10Oeに対して求める(-1.03×10
-7 emu at 0.12Oe、-4.06×10
-7 emu at 10Oe)。
【0103】
図13乃至
図15を参照すると、ZFCでは、Tc_III程度で一次的に反磁気転移が始まり、Tc_IIでも2次転移と見られる傾きの変化があり(黄色矢印で表示)、磁化率値は負数(反磁性)を示し、外部磁場の増加によって臨界温度が-325K程度に減少し、既に磁化率値が正数(強磁性の影響)値を示すことが分かる。
【0104】
次に、本発明に係るセラミック化合物の磁場の変化による磁化率特性を、‘磁化率の測定(Magnetization measurements)を磁場(H)の変化によって測定したデータ(M-Hデータともいう、測定装備:SQUID-Vibration Sample Magnetometer、Quantum Design MPMS3)’を通じて説明する。
【0105】
図16は、本発明に係るセラミック化合物の磁化率の測定(Magnetization measurements)を、磁場(H)の変化によって測定したデータグラフであり、
図17は、
図16の点線円形で示した部分を拡大したデータグラフであり、
図18は、
図16において線形フィッティングデータを除去した状態を示したデータグラフであり、これを参照すると、(a)M-Hヒステリシスが-3T~+3Tの間で測定されるが、全体的には、ヒステリシスのないアパタイト骨格物質の反磁気特性が観察され、骨格物質の反磁気値を得るために線形フィッティング(Linear Fitting、
図16にフィッティングデータを示す)し、(b)中央の点線円形で示した部分を拡大したもので、強磁場領域では無かったヒステリシスが観察され、これは、骨格物質によるものではなく、低磁場領域で超伝導が合わせられて現れる特性であると判断され、(c)(a)から線形フィッティングデータを除去したもので、強磁性が検出され、この強磁性については上述したので、その説明で代替し、ここでは省略する。
【0106】
一方、本発明に係るセラミック化合物の電気的特性を説明するために、温度の変化によってI-V(電流-電圧)を測定した。
【0107】
図19は、本発明に係るセラミック化合物の温度の変化に対するIV特性のデータであって、4端子法により測定し、探針(probe)間の間隔は1mmであり、272K~343Kまでのいくつかの区間に対して試料のIV特性を観察したものであり、超伝導でのみ観察される特有のパターンが見られる。
【0108】
図20は、
図19の中央の点線円形部分を拡大したグラフであって、超伝導特性を観察することができ、‘0’を基準として非対称グラフを示し、これは、薄膜試料の不均一性(厚さの偏差、ジョセフソン接合として作用する非超伝導物質を含むなど)のため現れるものと判断される。
【0109】
図21は、本発明に係るセラミック化合物の低い温度に対するIV特性のデータであって、低い温度(261K)で対称性が増加して、非対称性は非常に減少することが分かり、このようなIV非対称性はIVヒステリシスともいい、原因が非常に多様であり、最小比抵抗値は10
-7Ω・cmであるが、残留抵抗値(residual resistance)が存在するので、セラミック化合物の大きさがさらに大きくなると、対称性は増加すると判断される。
【0110】
なぜなら、粒子の大きさが小さいと、粒子間に、境界線である粒界(grain boundary)が多く存在するようになり、これが残留抵抗値の原因となるためである。
【0111】
また、一方、本発明に係るセラミック化合物の電気的特性を説明するために、磁場の変化によるI-V特性をさらに説明すると、
図22は、本発明に係るセラミック化合物の300Kで垂直に磁場の変化を加えながらIVを測定した結果グラフであり(測定装備:Power(voltage/current) Source KEITHLEY 228A、Sensitive Digital Voltmeter KEITHLEY 182、プローブ方式:4端子法(4-probe method))、臨界温度以下の一定の温度で磁場が増加するほど臨界電流の範囲が減少する超伝導特性をよく示す。
【0112】
また、本発明に係るセラミック化合物の温度の変化による抵抗の測定(R-T(抵抗-温度))を
図23に示した。
【0113】
図23は、温度(T)の変化によって抵抗値(R)を測定したRTデータのグラフであり(測定装備:Power(voltage/current) Source KEITHLEY 228A、Sensitive Digital Voltmeter KEITHLEY 182、プローブ方式:4端子法(4-probe method))、上述したように、本発明に係るセラミック化合物は、超伝導特性により、(1)310K~320K(約零上40℃~50℃、Tc_I)、(2)340K~350K(約零上70℃~80℃、Tc_II)、(3)375K~390K(約零上100℃~125℃、Tc_III)など、3つの臨界温度を有する相が存在するが、Tc_I、Tc_IIは確認され、図面には表示されていないが、Tc_III領域で転移(transition)と見られる急激な変化パターンが観察されず、ブロード(broad)に減少する形状のみが観察され、感度(sensitivity)がさらに良い磁化率測定では、Tc_III領域も観察された(上述したZFCでは、Tc_III程度で一次的に反磁気転移が始まる)。
【0114】
一方、本発明に係るセラミック化合物の固相反応についてさらに説明する。
【0115】
まず、本発明に係るセラミック化合物の成分の分析のために、SEM-EDXを用いて測定し(測定装備FE-SEM、EDX)、
図24乃至
図27に示した。
【0116】
図24は、本発明に係るセラミック化合物のSEM-EDXを測定した試料、及び左側から右側に位置番号#1、#2、#3を示した写真であり、それぞれの位置で撮影したSEM写真は
図25、
図26、
図27に示した。
【0117】
ここで、
図28は、成分の分析のためにSEM-EDXを測定したデータであり、当該元素のモル比率(atomic%)を、中心金属である鉛(Pb)と比較して示した表である。
【0118】
上の表を参照すると、測定した位置番号#1、#2、#3に対して、鉛(Pb)、銅(Cu),硫黄(S)、リン(P)、酸素(O)、ケイ素(Si)のそれぞれに対する比率を知ることができ、元のアパタイト(Apatite)は、鉛とリンの重量比率(Pb:P)=1:0.6であるのに対し、本発明に係るセラミック化合物は、1:0.4程度であることが分かる。
【0119】
これは、アパタイトのリン(P)の一部が他の元素(例えば、P=0.4、S=0.2程度)で置換されていることが分かる。
【0120】
また、銅(Cu)は、アパタイト(Apatite)のPbの位置に一部置換されるか、または構造の間に不純物として一部配列されて、本発明の構造‘LK99’を構成していると判断され、前記LK99の構造をモデリングし、
図29及び
図30に示すことができる。
【0121】
図29は、本発明に係るセラミック化合物の構造モデリングであって、鉛と銅との関係を2次元的に図式化した図であり、
図30は、本発明に係るセラミック化合物の構造モデリングであって、銅の3次元的な配置を考慮した図であり、これを参照すると、銅(Cu)が入る位置は2種類にモデリングすることができるところ、鉛(Pb)を置換する場合と構造の中の空き空間の間に入る場合であって、鉛を置換する場合は、
図29から分かるように、Pb_1及びPb_2の2つの位置のいずれか一方または両方で起こることができ、空き空間の間に入る場合は、
図30から分かるように、楕円形の位置(上のPb_2と下のPb_2の間の空間)、及び四角形の位置(O_2が一部抜け、その位置に入るか、隣接するO_2の間の空間)のいずれか一方または両方で起こることができる。
【0122】
また、図面には表示されていないが、硫黄(S)はリン(P)の位置に存在し、リンを一部置換している。
【0123】
併せて、本発明に係るセラミック化合物の分析を通じて、超伝導物質が形成されるいくつかの特徴は、(1)超伝導物質は、ラナルカイト(Lanarkite)がある領域で形成され、(2)超伝導物質の領域ではCuとPが共に検出され、(3)CuとPがなす化合物のうち、データベース(COD)上にある物質はCu3Pであり、(4)したがって、ラナルカイトとCu3Pが反応して、本発明に係るセラミック化合物である超伝導物質の構造である‘LK99’を生成することが分かり、これを下記の反応式で示すことができる。
【0124】
<反応式>
L+Cu3P→LK99
(L:ラナルカイト(Pb2SO5=PbO・PbSO4))
【0125】
上の反応式は、本発明に係るセラミック化合物の反応メカニズムであり、アパタイトの構造は、硫酸基(sulfate)のみでは存在せず、リン酸基(phosphate)単独またはリン酸基と硫酸基の混合形態で存在し、ラナルカイトは、硫酸基化合物であるが、Cu3Pと反応して、一部または全体の硫黄がリンで置換されることによってリン酸基を形成することが分かる。
【0126】
一方、本発明に係るセラミック化合物の合成は、前記反応式を用いて固相反応(solid-state reaction)を行って合成することができる。
【0127】
まず、ラナルカイトを合成するために、PbO粉末とPbSO4粉末を1:1のモル比で均一に混合し、アルミナ坩堝に入れた後、加熱炉に入れ、725℃で24時間反応させ、反応終了後、粉砕してバイアルに入れて保管する。
【0128】
次に、Cu3Pを合成するために、Cu粉末とP粉末を組成比で混合し、反応管(石英管)に入れ、真空形成後に密閉(sealing)し、550℃で48時間反応させ、反応終了後、反応管から取り出してインゴット(ingot)を粉砕し、バイアルに入れて保管する。
【0129】
次に、本発明に係るセラミック化合物を得るために、合成したラナルカイトとCu3Pを1:1のモル比で均一に混合し、反応管に投入し、真空形成後に密閉し、600℃~1000℃で5~40時間反応させ(もし、この温度範囲未満では、十分な反応エネルギーを供給できなくなり、この範囲を超えると、ラナルカイトに含まれたSO4が分解されることがあり、また、この時間範囲未満では、未反応の物質が多く存在するようになり、この範囲を超えても、既に反応が終了して、特に効果がないことがある)、反応終了後、反応管から取り出した試料はインゴット(ingot)の形態であり、必要に応じて、このインゴットを加工または粉砕して保管することができる。
【0130】
前記反応式に基づいて固相反応(solid-state reaction)を通じて合成した本発明に係るセラミック化合物に対する電気的特性及び構造的特性は、
図31及び
図32を通じて確認することができる。
【0131】
図31を参照すると、電気的特性の抵抗は、固相反応のインゴットを四角形の形状に加工し、温度の変化(304K~382K)によって抵抗の変化を測定したもので、測定方式は、先の電気的特性の測定方式と同じ方法を用いることができる。
【0132】
全体的に最も大きい転移(transition)は、377K(約104℃)でのTc_IIIであり、Tc_IとTc_IIはよく見えないが、当該温度領域を拡大してみると、315K(約42℃)と343K(約70℃)で変化を示すことが分かり、ここで、Tc_III相が最も多く、Tc_I相とTc_II相が一部混ざっていると判断される。
【0133】
また、
図32を参照すると、XRD分析グラフであって、固相反応で合成したインゴットを粉砕して測定したXRDパターンを(a)に示し、上述した蒸着によって合成したセラミック化合物に対するXRDデータと比較できるように、CODを用いてマッチングさせた結果を(b)に示しており、特異な点は、蒸着生成物では見られなかったユーリタイト(Eulytite)構造が副反応物として観察され、その理由は、ユーリタイトは、リン酸基と硫酸基が共存するという点で‘LK99’と類似の組成を有するためであると考えられ、また、不導体特性を示すが、これは、ドーピング(doping)物質である銅(Cu)が入っていないためであると考えられ、エネルギーギャップの大きい電気的不導体(insulator)であるため、電気的導体、特に超伝導特性を有するためには、新しいエネルギー準位を作り出すことができる置換体(substituent)や添加不純物(Dopant)及び欠陥(defect)などが必要であり、ここで、エネルギーギャップの大きい電気的不導体である理由は、アパタイトが、元々全酸化数がゼロになるイオン結合物質であるためであり、イオン結合物質の特性が、元々、大きいエネルギーギャップにより透明な結晶(粉末は白色)又は若干の色を帯びる電気的不導体であり、ユーリタイトも同様にイオン結合物質であるため、電気的不導体である。
【0134】
その他のそれぞれの副反応物がどの程度の体積を占めているかを調べるために、(a)には体積%を計算し、その値を示し(Rietveld softwareであるMAUDを用いる)、点線が実験値であり、実線が計算値であり、体積比を調べる理由は、超伝導と非超伝導が混ざっている場合に、超伝導の体積の比率がある限界点を超えてこそ、超伝導粒子間に互いに電気的に接続されて(percolation)、超伝導特性であるIV転移やRT転移を示すためであり、本発明に係る固相反応によって合成したセラミック化合物は、アパタイトの体積%がほぼ半分程度(48.9体積%)を占めるので、超伝導の電気的特性を示す。
【0135】
実施例1 蒸着合成
化学式1のAaBb(EO4)cXdにおいて、AはPb、BはCu、EはP、XはSを使用し(Pb:DAEJUNG、EP、Cu:DAEJUNG、EP、S:DAEJUNG、EP、P:JUNSEI、EP)、aは0~10、bは0~10、cは0~6、dは0~4である範囲でモル比に応じて総重量3gを秤量して、石英管に入れ、真空ポンプで10-5Torrの真空状態を維持したまま、石英管を加熱炉(furnace)チャンバに入れ、反応温度550℃~2000℃、反応時間0.5~100時間の間気化させながら蒸着して、本発明に係るセラミック化合物を合成した。
【0136】
実施例2 蒸着合成
化学式1のAaBb(EO4)cXdにおいて、AはPb、BはCu、EはP、XはSを使用し、aは0~10、bは0~10、cは0~6、dは0~4である範囲でモル比に応じて総重量3gを秤量して、石英管に入れ、真空ポンプで10-5Torrの真空状態にした後、20分間維持し、その後、管の全長が15cmになるようにして、トーチを用いて密閉し、石英管を加熱炉チャンバに入れ、反応温度550℃~1100℃、反応時間10~100時間反応させてセラミック前駆体を合成して、蒸着の原料として使用した以外は、実施例1と同様に行って、本発明に係るセラミック化合物を合成した。
【0137】
実施例3 蒸着合成
化学式1のAaBb(EO4)cXdにおいて、AはPb、BはCu、EはP、XはSを使用し、aは0~10、bは0~10、cは0~6、dは0~4である範囲でモル比に応じて総重量3gを秤量して、石英管に入れ、真空ポンプで10-5Torrの真空状態にした後、20分間維持し、その後、管の全長が15cmになるようにして、トーチを用いて密閉し、石英管を加熱炉チャンバに入れ、反応温度550℃~1100℃、反応時間10~100時間反応させてセラミック前駆体を合成し、これを、原料として基材(Substrate)上に載せ、真空チャンバ(Chamber)内に配置した後、加熱部(tungsten boat)上に置き、10-5Torr以下に真空を維持し、加熱部の温度を550℃~900℃程度に約1~5分間維持しながら液化させた後、900℃~2000℃に昇温して気化させ、気体の上昇経路に配置された高純度のガラス(Glass)板の表面に蒸着させて、本発明に係るセラミック化合物を合成した。
【0138】
実施例4 固相反応合成
ラナルカイト(Lanarkite)を合成するために、PbO粉末とPbSO4粉末を1:1のモル比で均一に混合し、アルミナ坩堝に入れた後、加熱炉に入れ、725℃で24時間反応させ、反応終了後、粉砕し、Cu3Pを合成するために、Cu粉末とP粉末を組成比で混合し、反応管(石英管)に入れ、真空形成後に密閉(sealing)し、550℃で48時間反応させ、反応終了後、反応管から取り出してインゴット(ingot)を粉砕し、前記ラナルカイトとCu3Pを1:1のモル比で均一に混合し、反応管に投入し、真空形成後に密閉し、600℃~1000℃で5~40時間反応させ、本発明に係るセラミック化合物を合成した。反応終了後、反応管から取り出した試料はインゴット(ingot)の形態である。ここで、固相反応に使用した材料は、PbO(JUNSEI、GR)、PbSO4(KANTO、GR)、Cu(DAEJUNG、EP)、P(JUNSEI、EP)であった。
【0139】
実施例5 蒸着合成
実施例4の固相反応合成を通じて得られた物質を原料とした以外は、実施例3と同様に行った。
【0140】
実験例1 色相及び微細写真(走査電子顕微鏡(SEM)写真)
実施例2によるセラミック化合物は、
図1に示されたように、原料を加熱する加熱源Sに近い領域Nは白色Wを帯び、遠い領域Fは黒色Bを帯び、その中間領域Mが灰色Gを示すことが分かる。
【0141】
また、
図2乃至
図5に示されたように、白色、黒色、灰色に対する微細な構造が50μmで均一に形成されたことが分かる。
【0142】
併せて、
図34及び
図35は、それぞれ、実施例3及び実施例5に対するSEM測定写真を示す。
【0143】
実験例2 結晶構造
実施例2によるセラミック化合物を測定装備(Multi-Purpose X-ray Diffractometer、PHILIPS)を通じて測定する場合、
図7に示されたように、本発明のセラミック化合物の構造‘LK99’は、アパタイトの構造と異なることが分かる。
【0144】
実験例3 ラマン測定
実施例2に対して測定装備(Raman Spectrometer、NOST)を用いてラマンスペクトロスコピー(Raman Spectroscopy)を測定して
図8に示した。これを参照すると、本発明のセラミック化合物は、リン酸基(phosphate group)を有していることを確認することができる。
【0145】
実験例4 温度の変化による磁化率の測定
実施例2に対する磁化率を測定装備(SQUID-Vibration Sample Magnetometer、Quantum Design MPMS3)を用いて測定し、
図13乃至
図15に示した。これを参照すると、本発明に係るセラミック化合物は超伝導特性を示すことが分かる。
【0146】
実験例5 磁場の変化による磁化率の測定
実施例2に対する磁化率を測定装備(SQUID-Vibration Sample Magnetometer、Quantum Design MPMS3)を用いて測定し、
図16乃至
図18に示した。これを参照すると、本発明に係るセラミック化合物は超伝導特性を示すことが分かる。
【0147】
実験例6 I-V変化の測定
実施例1に対する温度の変化によるI-Vを、測定装備(Power(voltage/current) Source KEITHLEY 228A、Sensitive Digital Voltmeter KEITHLEY 182、プローブ方式:4端子法(4-probe method))を用いて測定し、その結果を
図33に示した。これを参照すると、温度の変化によってI-V変化曲線の傾きの急激な変化、言い換えると、電圧の変化が+/-の電流方向によって現れるが、0(V)付近で、電流値が一定の区間が現れることを示し、
図12に基づいて説明したように、超伝導現象であることが分かる。
【0148】
また、
図36及び
図37は、それぞれ、実施例3及び実施例5に対するグラフであって、超伝導現象であることが分かる。
【0149】
実験例7 温度の変化によるIVの測定
実施例2に対する温度の変化によるI-Vを、測定装備(Power(voltage/current) Source KEITHLEY 228A、Sensitive Digital Voltmeter KEITHLEY 182、プローブ方式:4端子法(4-probe method))を用いて測定し、その結果を
図19乃至
図21に示した。これを参照すると、本発明に係るセラミック化合物は超伝導特性を示すことが分かる。
【0150】
また、商業的な銅ホイル(Cu foil)の比抵抗値は10-6Ω・cm程度で、本発明に係るセラミック化合物よりも抵抗がさらに高いことが分かる(1桁(one order)程度の差を示す)。
【0151】
併せて、
図38は、実施例4に対するグラフであって、温度の変化による超伝導特性を示す。
【0152】
実験例8 磁場の変化によるIVの測定
実施例2に対して磁場の変化によるIV特性を、測定装備(Power(voltage/current) Source KEITHLEY 228A、Sensitive Digital Voltmeter KEITHLEY 182、プローブ方式:4端子法(4-probe method))を用いて測定し、その結果を
図22に示した。これを参照すると、本発明に係るセラミック化合物は超伝導特性を示すことが分かる。
【0153】
また、
図39は、実施例4に対するグラフであって、磁場の変化による超伝導特性を示す。
【0154】
実験例9 温度の変化によるRTの測定
実施例2に対して温度の変化によるRT特性を、測定装備(Power(voltage/current) Source KEITHLEY 228A、Sensitive Digital Voltmeter KEITHLEY 182、プローブ方式:4端子法(4-probe method))を用いて測定し、その結果を
図23に示した。これを参照すると、本発明に係るセラミック化合物は超伝導特性を示すことが分かる。
【0155】
併せて、
図40は、実施例4に対するグラフであって、最も高い臨界温度を有する相であるTc_III領域が主に作られた固相法による製造物のRTの測定結果、-104℃を超える臨界温度を示す。
【0156】
実験例10 固相反応のセラミック化合物の成分分析
実施例4に対して成分の分析のために、SEM-EDXを用いて測定し(測定装備FE-SEM、EDX)、
図24乃至
図27に示しており、微細写真(SEM)を見ると、実施例1と類似の表面形状を有していることが分かり、
図28を見ると、本発明に係るセラミック化合物の構造が、アパタイト構造とは異なるLK99であることが分かる。
【0157】
【0158】
実験例11 固相反応のセラミック化合物の電気的特性の測定
実施例4に対して固相反応のインゴットを四角形の形状に加工し、温度の変化(304K~382K)による抵抗の変化を、測定装備(Power(voltage/current)Source KEITHLEY 228A、Sensitive Digital Voltmeter KEITHLEY 182、プローブ方式:4端子法(4-probe method))を用いて測定し、その結果を
図29に示した。これを参照すると、本発明に係るセラミック化合物は超伝導特性を示すことが分かる。
【0159】
併せて、
図42は、実施例4に対するリアルタイムで抵抗を測定した実験を撮影した写真であって、測定された抵抗が、ほぼ10
-12~10
-10Ohmcmと非常に低い抵抗を示す。
【0160】
実験例12 固相反応のセラミック化合物の結晶構造
実施例4に対してXRD分析のために、測定装備(Multi-Purpose X-ray Diffractometer、PHILIPS)を通じて測定し、その結果を
図30に示した。これを参照すると、本発明に係るセラミック化合物は、その構造が、アパタイト構造とは異なるLK99であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明は、部分的に充填されたSQWモデルで立証され、常温で超伝導パズルを研究するにおいて非常に有用な材料となるはずであり、全ての証拠と説明は、LK-99が最初の室温及び周囲圧力超伝導体であるということを示し、LK-99は、磁石、モーター、ケーブル、磁気浮上列車、電源ケーブル、量子コンピュータ用キュービット、THzアンテナなどのような様々な応用可能性を有しているといえる。
【国際調査報告】