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特表2024-528122IL-10誘導性ポリペプチド及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-26
(54)【発明の名称】IL-10誘導性ポリペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/00 20060101AFI20240719BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240719BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20240719BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20240719BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240719BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240719BHJP
   A61K 35/66 20150101ALI20240719BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240719BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20240719BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240719BHJP
【FI】
C07K14/00 ZNA
C12N15/31
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N5/0783
C12N5/0786
A61P1/04
A61P37/02
A61P37/08
A61K38/16
A61K31/7088
A61K48/00
A61K35/66
A61K35/12
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505536
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2022070987
(87)【国際公開番号】W WO2023006774
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21306045.2
(32)【優先日】2021-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524038521
【氏名又は名称】アンテローム・エス・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ボニー
(72)【発明者】
【氏名】アントニエッタ・クルトローネ
(72)【発明者】
【氏名】エレーヌ・フィステル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA02
4C084BA18
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA68
4C084ZB07
4C084ZB13
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA68
4C086ZB07
4C086ZB13
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087BC30
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA68
4C087ZB07
4C087ZB13
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒト細胞からのIL-10の分泌を誘導及び/又は増強することができるポリペプチドに関する。したがって、本発明は、ヒト免疫細胞からのIL-10放出を刺激するポリペプチドを提供する。本発明はまた、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを発現する細胞、それぞれの医薬組成物及びその使用にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
場合により、0、1、2、3、4、5、6、7、又は8アミノ酸が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基は維持されている、配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はのみからなるポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2によるアミノ酸配列を含まない、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号1の7位及び/又は23位のシステイン残基が維持されている、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
120個以下のアミノ酸長を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
一般式(I):
SCX1X2X3YLX4 (I)
(式中、
X1は任意のアミノ酸であってもよく、
X2は任意のアミノ酸であってもよく、
X3は任意のアミノ酸であってもよく、又は欠失され、
X4はP又はDである)
によるアミノ酸配列を含むか又はのみからなるポリペプチド。
【請求項6】
一般式(Ia):
KGSRSCX1X2X3YLX4 (Ia)
(式中、X1~X4は請求項5に定義の通りである)
によるアミノ酸配列を含むか又はのみからなる、請求項5に記載のポリペプチド。
【請求項7】
X3が欠失され、X4がPである、好ましくは、ポリペプチドが配列番号5又は6によるアミノ酸配列を含む、請求項5又は6に記載のポリペプチド。
【請求項8】
X3が任意のアミノ酸であってもよく、X4がDである、好ましくは、ポリペプチドが配列番号7又は8によるアミノ酸を含む、請求項5又は6に記載のポリペプチド。
【請求項9】
場合によりジスルフィド結合を形成する、2個のシステイン残基を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項10】
一般式(II):
CX1X2X3YLX4X5X6X7X8X9KGSRX10C (II)
(式中、
X1は任意のアミノ酸であってもよく、
X2は任意のアミノ酸であってもよく、
X3は任意のアミノ酸であってもよく、又は欠失され、
X4はP又はDであり、
X5は任意のアミノ酸であってもよく、
X6は任意のアミノ酸であってもよく、又は欠失され,
X7は任意のアミノ酸であってもよく、
X8は任意のアミノ酸であってもよく、
X9はK又はQであり、
X10は任意のアミノ酸であってもよい)
によるアミノ酸配列を含むか又はのみからなるポリペプチド。
【請求項11】
一般式(IIa):
SCFFX3YLX4RX6GX8X9KGSRX10C (IIa)
(式中、
X3はIであるか、又は欠失され、
X4はP又はDであり、
X6はQであるか、又は欠失され、
X8はT又はYであり、
X9はK又はQであり、
X10はS又はGである)
によるアミノ酸配列を含むか又はのみからなる、請求項1から10のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項12】
X3及びX6ではなく、X3又はX6のどちらかが欠失されている、請求項10又は11に記載のポリペプチド。
【請求項13】
少なくとも17アミノ酸長を有する、請求項5から12のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項14】
請求項5から13のいずれか一項に規定のアミノ酸配列を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列番号2によるアミノ酸配列を含まない、請求項1から14のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項16】
120個以下のアミノ酸長を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項17】
ヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強することができる、請求項1から16のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はからなり、配列番号2によるアミノ酸配列を含まない、請求項1から17のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項19】
配列番号9によるアミノ酸配列を含むか又はのみからなる、請求項1から18のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸。
【請求項21】
ゲノムDNA; cDNA; siRNA; rRNA; mRNA;アンチセンスDNA;アンチセンスRNA;リボザイム;相補的RNA及び/又はDNA配列;発現エレメント、調節エレメント、及び/又はプロモーターを含む又は含まないRNA及び/又はDNA配列;ベクター;並びにそれらの組み合わせから好ましくは選択されるDNA分子又はRNA分子である、請求項20に記載の核酸。
【請求項22】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの核酸配列が、配列番号10と少なくとも80%の配列同一性を共有する、請求項20又は21に記載の核酸。
【請求項23】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、原核生物細胞、好ましくは細菌による発現のためにコドン最適化されている、請求項20から22のいずれか一項に記載の核酸。
【請求項24】
好ましくは細菌等の原核生物細胞での発現のための、請求項1から19のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、それに作動可能に連結された調節エレメントとを含む発現カセット。
【請求項25】
コードされたポリペプチドの異種発現及び/又は過剰発現のための調節エレメントを含む、請求項24に記載の発現カセット。
【請求項26】
請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸又は請求項24若しくは25に記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項27】
請求項1から19のいずれか一項に記載のポリペプチドを発現する;又は請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸、請求項24若しくは25に記載の発現カセット、若しくは請求項26に記載のベクターを含む(宿主)細胞。
【請求項28】
細菌、好ましくは遺伝子改変細菌である、請求項27に記載の(宿主)細胞。
【請求項29】
ヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強することができる遺伝子改変細菌であって、請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸、請求項24若しくは25に記載の発現カセット、又は請求項26に記載のベクターを含む細菌。
【請求項30】
請求項1から19のいずれか一項に記載のポリペプチドを(過剰)発現する遺伝子改変細菌。
【請求項31】
請求項1から19のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項27若しくは28に記載の(宿主)細胞、又は請求項29若しくは30に記載の細菌を含む培養培地。
【請求項32】
更に(自己)抗原を含む、請求項31に記載の培養培地。
【請求項33】
請求項31又は32に記載の培養培地を用いて培養された単離されたヒト細胞。
【請求項34】
ヒト免疫細胞、好ましくはPBMCである、請求項33に記載の細胞。
【請求項35】
単球、マクロファージ、樹状細胞、又はリンパ球、好ましくはTリンパ球である、請求項33又は34に記載の細胞。
【請求項36】
請求項1から19のいずれか一項に記載のポリペプチド、又は請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸、請求項26に記載のベクター、請求項27若しくは28に記載の細胞、請求項29若しくは30に記載の細菌、又は請求項33から35のいずれか一項に記載のヒト細胞、及び場合により、薬学的に許容される賦形剤若しくは担体を含む医薬組成物。
【請求項37】
医薬において使用するための、請求項1から19のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸、請求項26に記載のベクター、請求項27若しくは28に記載の細胞、請求項29若しくは30に記載の細菌、請求項33から35のいずれか一項に記載のヒト細胞、又は請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
炎症性疾患又は自己免疫障害の処置における請求項37に記載の使用のためのポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、細菌、ヒト細胞、又は医薬組成物。
【請求項39】
炎症性腸疾患(IBD)の処置における請求項37に記載の使用のためのポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、細菌、ヒト細胞、又は医薬組成物。
【請求項40】
アレルギーの処置における請求項37に記載の使用のためのポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、細菌、ヒト細胞、又は医薬組成物。
【請求項41】
対象に、請求項1から19のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸、請求項26に記載のベクター、請求項27若しくは28に記載の細胞、請求項29若しくは30に記載の細菌、請求項33から35のいずれか一項に記載のヒト細胞、又は請求項36に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、対象の炎症性疾患若しくは自己免疫障害の症状を低減、処置、軽減する、又は対象の炎症性疾患若しくは自己免疫障害を改善する方法。
【請求項42】
対象に、請求項1から19のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸、請求項26に記載のベクター、請求項27若しくは28に記載の細胞、請求項29若しくは30に記載の細菌、請求項33から35のいずれか一項に記載のヒト細胞、又は請求項36に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、対象におけるIL-10分泌を誘導及び/又は増強する方法。
【請求項43】
対象に、請求項1から19のいずれか一項に記載のポリペプチド、請求項20から23のいずれか一項に記載の核酸、請求項26に記載のベクター、請求項27若しくは28に記載の細胞、請求項29若しくは30に記載の細菌、請求項33から35のいずれか一項に記載のヒト細胞、又は請求項36に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、対象において寛容を誘導する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト細胞からのIL-10の分泌を誘導及び/又は増強することができるポリペプチドに関する。本発明はまた、そのようなポリペプチドをコードする核酸、そのようなポリペプチドを発現する細胞、それぞれの医薬組成物及びその使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト腸内微生物叢 (HIM)は、ヒト胃腸管(GIT)に定着し、今や隠れたヒト臓器と見なされている1014個の細菌の巨大で複雑な群集である。HIMは、腸の恒常性の維持、病原体の増殖の阻害、抗菌化合物の産生、及び腸管バリア機能の改善等の不可欠な機能を有する。炎症性腸疾患(IBD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルコール性肝疾患、及び脳活性(腸脳軸)さえも含むいくつかのGI障害は、腸内微生物叢のバランス変化(ディスバイオシス)の結果を招き、特定の代謝物及びタンパク質の異常産生を引き起こしうるという事実を多くのエビデンスが支持している。過去10年間に、大量の文献が細菌代謝物の同定及びヒトの健康に対するその潜在的影響を記載している(Levy M、Thaiss CA、Elinav E. Metabolites: messengers between the microbiota and the immune system. Genes Dev. 2016;30(14):1589~97頁; Guo CJ、Chang FY、Wyche TP、Backus KM、Acker TM、Funabashi M、Taketani M、Donia MS、Nayfach S、Pollard KS、Craik CS、Cravatt BF、Clardy J、Voigt CA、Fischbach MA. Discovery of Reactive Microbiota-Derived Metabolites that Inhibit Host Proteases. Cell. 2017;168(3):517~526頁.e18)。
【0003】
現在、細菌のタンパク質とヒト腸細胞の間の相互作用の研究が出現している(Weigele BA、Orchard RC、Jimenez A、Cox GW、Alto NM. A systematic exploration of the interactions between bacterial effector proteins and host cell membranes.. Nat Commun. 2017;8(1):532頁; Guven-Maiorov E、Tsai CJ、Nussinov R. Structural host-microbiota interaction networks. PLoS Comput Biol. 2017;13(10):e1005579)。微生物タンパク質は、GPCR、キナーゼ受容体、及びトランスポーター等の多くのヒト受容体と相互作用する能力を有することができ、免疫監視、代謝、及び細胞の完全性に関与する多くの異なるシグナル伝達経路に影響を与えうる。ヒトタンパク質と微生物タンパク質の間の分子擬態が提唱されている:大腸菌(E. coli)タンパク質ClpBは、満腹シグナル伝達において重要な役割を果たす神経ペプチド、ヒトアルファMSHを模倣する(Breton J、Tennoune N、Lucas N、Francois M、Legrand R、Jacquemot J、Goichon A、Guerin C、Peltier J、Pestel-Caron M、Chan P、Vaudry D、do Rego JC、Lienard F、Penicaud L、Fioramonti X、Ebenezer IS、Hokfelt T、Dechelotte P、Fetissov SO (2016) Gut Commensal E.coli Proteins Activate Host Satiety Pathways following Nutrient-Induced Bacterial Growth. Cell Metab. 2016年2月9日;23(2):324~34頁);ピロリ菌(Helicobacter Pylori) CagAは、ヒト腫瘍抑制因子TP53BP2と相互作用する(Buti L、Spooner E、Van der Veen AG、Rappuoli R、Covacci A、Ploegh HL. (2011) Helicobacter pylori cytotoxin-associated gene A (CagA) subverts the apoptosis-stimulating protein of p53 (ASPP2) tumor suppressor pathway of the host. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011年5月31日;108(22):9238~43頁);ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)由来のSLPAは、DC及びT細胞機能の調節に機能的に関与するDC-SIGNリガンドである(Konstantinov SR、Smidt H、de Vos WM、Bruijns SC、Singh SK、Valence F、Molle D、Lortal S、Altermann E、Klaenhammer TR、van Kooyk Y. (2008) S layer protein A of Lactobacillus acidophilus NCFM regulates immature dendritic cell and T cell functions. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008年12月9日;105(49):19474~9頁);フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fuso細菌 nucleatum)由来のFAp2は、腫瘍発現Gal-GalNAcに結合して結腸直腸腺癌濃縮を媒介すること、TIGIT受容体に結合することが示されている(Gur C、Ibrahim Y、Isaacson B、Yamin R、Abed J、Gamliel M、Enk J、Bar-On Y、Stanietsky-Kaynan N、Coppenhagen-Glazer S、Shussman N、Almogy G、Cuapio A5、Hofer E、Mevorach D、Tabib A、Ortenberg R、Markel G、Miklic K、Jonjic S、Brennan CA、Garrett WS、Bachrach G、Mandelboim O. (2015) Binding of the Fap2 protein of Fusobacterium nucleatum to human inhibitory receptor TIGIT protects tumors from immune cell attack. Immunity. 2015年2月17日;42(2):344~355頁)。
【0004】
故に、片利共生細菌由来のタンパク質は、宿主タンパク質を模倣し、宿主細胞及び免疫系と直接相互作用することによって治療用途を有しうる可能性がある。
【0005】
インターロイキン-10 (IL-10)は、リンパ球、単球、マクロファージ、肥満細胞、及び腸上皮細胞等の様々な細胞タイプによって産生される重要な免疫調節性サイトカインであり(Shouval DS、Biswas A、Goettel JA、McCann K、Conaway E、Redhu NS、Mascanfroni ID、Al Adham Z、Lavoie S、Ibourk M、Nguyen DD、Samsom JN、Escher JC、Somech R、Weiss B、Beier R、Conklin LS、Ebens CL、Santos FG、Ferreira AR、Sherlock M、Bhan AK、Muller W、Mora JR、Quintana FJ、Klein C、Muise AM、Horwitz BH、Snapper SB (2014) lnterleukin-10 receptor signaling in innate immune cells regulates mucosal immune tolerance and anti-inflammatory macrophage function. Immunity. 2014年5月15日;40(5):706~19頁)、主な機能は粘膜免疫応答の制限及び腸の恒常性の維持である。
【0006】
IL-10は「抗炎症性サイトカインのプロトタイプ」と見なされることが多く、マクロファージにおけるTh1サイトカイン、MHCクラスII抗原、及び共刺激分子の発現を下方制御することが知られている。その抑制作用は、IL-1、IL-6、TNF-α、GM-CSF及びIFN-γ等の最も典型的な炎症マーカーに対して主に発揮される。3つの主要な炎症促進性サイトカイン、IL-1β、IL-6、及びTNF-αは、多くの疾患において炎症状態の発生及び維持に関与している。IL-10はTh1型応答及びTh2型応答の両方を抑制することができるが、Th1亜集団に対する効果が顕著であり、IL-10はTh2応答のプロモーターと見なされている(多面的効果)。更に、IL-10は、B細胞の生存、増殖、抗体産生、並びに可溶性TNF-α受容体及びIL-1RAを含む抗炎症因子の産生も増強する。
【0007】
IL-10遺伝子座の多型は潰瘍性大腸炎及びクローン病のリスクを与え(Franke A、Balschun T、Karlsen TH、Sventoraityte J、Nikolaus S、Mayr G、Domingues FS、Albrecht M、Nothnagel M、Ellinghaus D、Sina C、Onnie CM、Weersma RK、Stokkers PC、Wijmenga C、Gazouli M、Strachan D、McArdle WL、Vermeire S、Rutgeerts P、Rosenstiel P、Krawczak M、Vatn MH; IBSEN study group、Mathew CG、Schreiber S (2008) Sequence variants in ILl0, ARPC2 and multiple other loci contribute to ulcerative colitis susceptibility. Nat Genet. 2008年11月;40(11):1319~23頁; Franke A、McGovern DP、Barrett JC,… Parkes M. (2010) Genome-wide meta-analysis increases to 71 the number of confirmed Crohn’s disease susceptibility loci. Nat Genet. 2010年12月;42(12):1118~25頁)、IL-10又はIL-10受容体 (IL-10R)のどちらかが欠損しているマウス及びヒトは、ヘルパーT細胞1型及び17型免疫応答並びに著しい炎症促進性サイトカイン分泌によって支配されるプロセスである重篤な腸炎症を示す(Begue B、Verdier J、Rieux-Laucat F、Goulet O、Morali A、Canioni D、Hugot JP、Daussy C、Verkarre V、Pigneur B、Fischer A、Klein C、Cerf-Bensussan N、Ruemmele FM. (2011) Defective IL10 signaling defining a subgroup of patients with inflammatory bowel desease. Am J Gastroenterol. 8月;106(8):1544~55頁; Moran CJ、Walters TD、Guo CH、Kugathasan S、Klein C、Turner D、Wolters VM、Bandsma RH、Mouzaki M、Zachos M、Langer JC、Cutz E、Benseler SM、Roifman CM、Silverberg MS、Griffiths AM、Snapper SB、Muise AM. (2013) IL-10R polymorphisms are associated with very-early-onset ulcerative colitis. Inflamm Bowel Dis. 1月;19(1):115~23頁)。
【0008】
それらを考慮して、組換えヒトIL-10が、急性及び慢性炎症性疾患、自己免疫障害及びアレルギー性疾患、移植後の移植臓器の拒絶反応及び移植片対宿主病、並びに感染症における候補薬として登場してきた。しかし、高用量組換えヒトIL-10を用いた試験は、高用量組換えヒトIL-10の副作用及び組換えヒトIL-10に対する抗体の発生に関連する、治療用途におけるその有用性を制限するいくつかの問題を明らかにした(Fioranelli M. 2014、Twenty-five years of studies and trials for the therapeutic application of IL-10 immunomodulating properties. From high doses administration to low dose medicine new paradigm. J Integr Cardiol 1: DOI: 10.15761/JIC.1000102)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US 2011/0081708 A1
【特許文献2】WO 2016/164636
【特許文献3】WO 2018/045184
【特許文献4】WO 2020/206221 A1
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Levy M、Thaiss CA、Elinav E. Metabolites: messengers between the microbiota and the immune system. Genes Dev. 2016;30(14):1589~97頁
【非特許文献2】Guo CJ、Chang FY、Wyche TP、Backus KM、Acker TM、Funabashi M、Taketani M、Donia MS、Nayfach S、Pollard KS、Craik CS、Cravatt BF、Clardy J、Voigt CA、Fischbach MA. Discovery of Reactive Microbiota-Derived Metabolites that Inhibit Host Proteases. Cell. 2017;168(3):517~526頁.e18
【非特許文献3】Weigele BA、Orchard RC、Jimenez A、Cox GW、Alto NM. A systematic exploration of the interactions between bacterial effector proteins and host cell membranes.. Nat Commun. 2017;8(1):532頁
【非特許文献4】Guven-Maiorov E、Tsai CJ、Nussinov R. Structural host-microbiota interaction networks. PLoS Comput Biol. 2017;13(10):e1005579
【非特許文献5】Breton J、Tennoune N、Lucas N、Francois M、Legrand R、Jacquemot J、Goichon A、Guerin C、Peltier J、Pestel-Caron M、Chan P、Vaudry D、do Rego JC、Lienard F、Penicaud L、Fioramonti X、Ebenezer IS、Hokfelt T、Dechelotte P、Fetissov SO (2016) Gut Commensal E.coli Proteins Activate Host Satiety Pathways following Nutrient-Induced Bacterial Growth. Cell Metab. 2016年2月9日;23(2):324~34頁
【非特許文献6】Buti L、Spooner E、Van der Veen AG、Rappuoli R、Covacci A、Ploegh HL. (2011) Helicobacter pylori cytotoxin-associated gene A (CagA) subverts the apoptosis-stimulating protein of p53 (ASPP2) tumor suppressor pathway of the host. Proc Natl Acad Sci U S A. 2011年5月31日;108(22):9238~43頁
【非特許文献7】Konstantinov SR、Smidt H、de Vos WM、Bruijns SC、Singh SK、Valence F、Molle D、Lortal S、Altermann E、Klaenhammer TR、van Kooyk Y. (2008) S layer protein A of Lactobacillus acidophilus NCFM regulates immature dendritic cell and T cell functions. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008年12月9日;105(49):19474~9頁
【非特許文献8】Gur C、Ibrahim Y、Isaacson B、Yamin R、Abed J、Gamliel M、Enk J、Bar-On Y、Stanietsky-Kaynan N、Coppenhagen-Glazer S、Shussman N、Almogy G、Cuapio A5、Hofer E、Mevorach D、Tabib A、Ortenberg R、Markel G、Miklic K、Jonjic S、Brennan CA、Garrett WS、Bachrach G、Mandelboim O. (2015) Binding of the Fap2 protein of Fusobacterium nucleatum to human inhibitory receptor TIGIT protects tumors from immune cell attack. Immunity. 2015年2月17日;42(2):344~355頁
【非特許文献9】Shouval DS、Biswas A、Goettel JA、McCann K、Conaway E、Redhu NS、Mascanfroni ID、Al Adham Z、Lavoie S、Ibourk M、Nguyen DD、Samsom JN、Escher JC、Somech R、Weiss B、Beier R、Conklin LS、Ebens CL、Santos FG、Ferreira AR、Sherlock M、Bhan AK、Muller W、Mora JR、Quintana FJ、Klein C、Muise AM、Horwitz BH、Snapper SB (2014) lnterleukin-10 receptor signaling in innate immune cells regulates mucosal immune tolerance and anti-inflammatory macrophage function. Immunity. 2014年5月15日;40(5):706~19頁
【非特許文献10】Franke A、Balschun T、Karlsen TH、Sventoraityte J、Nikolaus S、Mayr G、Domingues FS、Albrecht M、Nothnagel M、Ellinghaus D、Sina C、Onnie CM、Weersma RK、Stokkers PC、Wijmenga C、Gazouli M、Strachan D、McArdle WL、Vermeire S、Rutgeerts P、Rosenstiel P、Krawczak M、Vatn MH; IBSEN study group、Mathew CG、Schreiber S (2008) Sequence variants in ILl0, ARPC2 and multiple other loci contribute to ulcerative colitis susceptibility. Nat Genet. 2008年11月;40(11):1319~23頁
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【非特許文献12】Begue B、Verdier J、Rieux-Laucat F、Goulet O、Morali A、Canioni D、Hugot JP、Daussy C、Verkarre V、Pigneur B、Fischer A、Klein C、Cerf-Bensussan N、Ruemmele FM. (2011) Defective IL10 signaling defining a subgroup of patients with inflammatory bowel desease. Am J Gastroenterol. 8月;106(8):1544~55頁
【非特許文献13】Moran CJ、Walters TD、Guo CH、Kugathasan S、Klein C、Turner D、Wolters VM、Bandsma RH、Mouzaki M、Zachos M、Langer JC、Cutz E、Benseler SM、Roifman CM、Silverberg MS、Griffiths AM、Snapper SB、Muise AM. (2013) IL-10R polymorphisms are associated with very-early-onset ulcerative colitis. Inflamm Bowel Dis. 1月;19(1):115~23頁
【非特許文献14】Fioranelli M. 2014、Twenty-five years of studies and trials for the therapeutic application of IL-10 immunomodulating properties. From high doses administration to low dose medicine new paradigm. J Integr Cardiol 1: DOI: 10.15761/JIC.1000102
【非特許文献15】Kuby Immunology、第7版、2013年 - W. H. Freeman
【非特許文献16】Molecular cloning: A laboratory manual 第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press - Cold Spring Harbor、NY、USA、2012
【非特許文献17】Proteins Structure and Molecular Properties (1993) 第2版、T. E. Creighton、New York ; Post-translational Covalent Modifications of Proteins (1983) B. C. Johnson編、Academic Press、New York
【非特許文献18】Seifter等(1990) Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors、Meth. Enzymol. 182: 626~646頁
【非特許文献19】Rattan等(1992) Protein Synthesis: Post-translational Modifications and Aging、Ann NY Acad Sci, 663: 48~62頁
【非特許文献20】Kyte及びDoolittle、1982、J. Mol. Biol. 157(1):105~132頁
【非特許文献21】Karlin等(1993)、PNAS USA、90:5873~5877頁
【非特許文献22】Altschul等、1990、J. Mol. Biol. 215、403~410頁
【非特許文献23】Altschul等(1997)、Nucleic Acids、25:3389~3402頁
【非特許文献24】Pearson (1990)、Methods Enzymol. 183、63~98頁
【非特許文献25】Pearson及びLipman (1988)、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 85、2444~2448頁
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【非特許文献27】Smith及びWaterman (1981)、J. Mol. Biol. 147、195~197頁
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【非特許文献30】Kim DM、Swartz JR. Regeneration of adenosine triphosphate from glycolytic intermediates for cell-free protein synthesis. Biotechnol Bioeng. 2001年8月20日;74(4):309~16頁
【非特許文献31】Hani S. Zaher、Rachel Green: Chapter One - In Vitro Synthesis of Proteins in Bacterial Extracts、編者: Jon Lorsch、Methods in Enzymology、Academic Press、539巻、2014、3~15頁、ISSN 0076-6879、ISBN 9780124201200
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【非特許文献40】Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、ISBN: 0683306472
【非特許文献41】Trovato M、De Berardinis P. Novel antigen delivery systems. World J Viral. 2015年8月12日;4(3):156~68頁
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【非特許文献43】Li等、Peptide Vaccine: Progress and Challenges. Vaccines (Basel). 2014年7月2日;2(3):515~36頁
【非特許文献44】Srinivasan等、2015、J Lab Autom、20: 107~126頁
【非特許文献45】Antoniou, E.等(2016). The TNBS-induced 大腸炎 animal model: An overview. Annals of medicine and surgery、第11巻、9~15頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、高用量組換えヒトIL-10を投与する以外の手段によって治療用途でのIL-10レベルを増加させる必要性がある。それを考慮して、(内因性) IL-10の分泌を誘導することができる化合物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、以下に、特に本発明によって提供される項目及び添付の特許請求の範囲に記載される主題によって達成される。
【0013】
発明の項目
本発明は、特に以下の項目を提供する:
1. 一般式(I):
SCX1X2X3YLX4 (I)
(式中、
X1は任意のアミノ酸であってもよく、
X2は任意のアミノ酸であってもよく、
X3は任意のアミノ酸であってもよく、又は欠失され、
X4はP又はDである)
によるアミノ酸配列を含むか又はからなるポリペプチド。
2. 一般式(Ia):
KGSRSCX1X2X3YLX4 (Ia)
(式中、X1~X4は項目1のように定義される)
によるアミノ酸配列を含むか又はからなる、項目1に記載のポリペプチド。
3. X3が欠失され、X4がPである、項目1又は2に記載のポリペプチド。
4. 配列番号5又は6によるアミノ酸配列を含むか又はからなる、項目3に記載のポリペプチド。[SCFFYLP又はKKGSRSCFFYLP]
5. X3が任意のアミノ酸であってもよく、X4がDである、項目1又は2に記載のポリペプチド。
6. 配列番号7又は8によるアミノ酸配列を含むか又はからなる、項目5に記載のポリペプチド。[SCFFIYLD又はKGSRSCFFIYLD]
7. 場合によりジスルフィド結合を形成する、2個のシステイン残基を含む、項目1から6のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
8. 2つのアミノ酸配列が同じ又は異なっていてもよい、項目1から6のいずれか一項目に記載の2つのアミノ酸配列を含む、項目1から7のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
9. 一般式(II):
CX1X2X3YLX4X5X6X7X8X9KGSRX10C (II)
(式中、
X1は任意のアミノ酸であってもよく、
X2は任意のアミノ酸であってもよく、
X3は任意のアミノ酸であってもよく、又は欠失され、
X4はP又はDであり、
X5は任意のアミノ酸であってもよく、
X6は任意のアミノ酸であってもよく、又は欠失され,
X7は任意のアミノ酸であってもよく、
X8は任意のアミノ酸であってもよく、
X9はK又はQであり、
X10は任意のアミノ酸であってもよい)
によるアミノ酸配列を含むか又はからなるポリペプチド。
10. 一般式(IIa):
SCFFX3YLX4RX6GX8X9KGSRX10C (IIa)
(式中、
X3はIであるか、又は欠失され、
X4はP又はDであり、
X6はQであるか、又は欠失され、
X8はT又はYであり、
X9はK又はQであり、
X10はS又はGである)
によるアミノ酸配列を含むか又はからなる、項目1から9のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
11. X3及びX6ではなく、X3又はX6のどちらかが欠失されている、項目9又は10に記載のポリペプチド。
12. 少なくとも17アミノ酸長を有する、項目1から11のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
13. 場合により、0、1、2、3、4、5、6、7又は8アミノ酸が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基は維持されている、配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はからなるポリペプチド。
14. 項目1から13のいずれか一項目に規定のアミノ酸配列を含む、項目13に記載のポリペプチド。
15. 配列番号1の7位及び/又は23位のシステイン残基が維持されている、項目13又は14に記載のポリペプチド。
16. 配列番号2によるアミノ酸配列を含まない、項目1から15のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
17. 120個以下のアミノ酸長を有する、項目1から16のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
18. ヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強することができる、項目1から17のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
19. ヒト細胞がヒト免疫細胞、好ましくはPBMCである、項目18に記載のポリペプチド。
20. ヒト細胞が単球である、項目18又は19に記載のポリペプチド。
21. 前記ポリペプチドで刺激したヒト細胞からのIL-10分泌が、リポ多糖(LPS)、例えば10ng/ml又は100ng/ml LPSで刺激したIL-10分泌と同じ又はより高い、項目18から20のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
22. 配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はからなる、項目1から21のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
23. 配列番号9によるアミノ酸配列を含むか又はからなる、項目1から22のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
24. 項目1から23のいずれか一項目に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸。
25. 好ましくは、ゲノムDNA; cDNA; siRNA; rRNA; mRNA;アンチセンスDNA;アンチセンスRNA;リボザイム;相補的RNA及び/又はDNA配列;発現エレメント、調節エレメント、及び/又はプロモーターを含む又は含まないRNA及び/又はDNA配列;ベクター;並びにそれらの組み合わせから選択される、DNA分子又はRNA分子である、項目24に記載の核酸。
26. ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの核酸配列が、配列番号10と少なくとも80%の配列同一性を共有する、項目24又は25に記載の核酸。
27. ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、原核生物細胞、好ましくは細菌による発現のためにコドン最適化されている、項目24から26のいずれか一項目に記載の核酸。
28. 好ましくは細菌等の原核生物細胞での発現のための、項目1から23のいずれか一項目に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、それに作動可能に連結された調節エレメントとを含む発現カセット。
29. コードされたポリペプチドの異種発現及び/又は過剰発現のための調節エレメントを含む、項目28に記載の発現カセット。
30. 項目24から27のいずれか一項目に記載の核酸又は項目28若しくは29に記載の発現カセットを含むベクター。
31. 項目1から23のいずれか一項目に記載のポリペプチドを発現する;又は項目24から27のいずれか一項目に記載の核酸、項目28若しくは29に記載の発現カセット、若しくは項目30に記載のベクターを含む(宿主)細胞。
32. 細菌、好ましくは遺伝子改変細菌である、項目31に記載の(宿主)細胞。
33. ヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強することができる遺伝子改変細菌であって、項目24から27のいずれか一項目に記載の核酸、項目28若しくは29に記載の発現カセット、又は項目30に記載のベクターを含む細菌。
34. 項目1から23のいずれか一項目に記載のポリペプチドを(過剰)発現する遺伝子改変細菌。
35. 項目1から23のいずれか一項目に記載のポリペプチド、項目31若しくは32に記載の(宿主)細胞、又は項目33若しくは34に記載の細菌を含む培養培地。
36. 更に(自己)抗原を含む、項目35に記載の培養培地。
37. 項目35又は36に記載の培養培地を用いて培養された単離されたヒト細胞。
38. ヒト免疫細胞、好ましくはPBMCである、項目37に記載の細胞。
39. 単球、マクロファージ、樹状細胞、又はリンパ球、好ましくはTリンパ球である、項目37又は38に記載の細胞。
40. 項目1から23のいずれか一項目に記載のポリペプチド、項目24から27のいずれか一項目に記載の核酸、項目30に記載のベクター、項目31若しくは32に記載の細胞、項目33若しくは34に記載の細菌、又は項目37から39のいずれか一項目に記載のヒト細胞及び、場合により、薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物。
41. 医薬において使用するための、項目1から23のいずれか一項目に記載のポリペプチド、項目24から27のいずれか一項目に記載の核酸、項目30に記載のベクター、項目31若しくは32に記載の細胞、項目33若しくは34に記載の細菌、項目37から39のいずれか一項目に記載のヒト細胞、又は項目40に記載の医薬組成物。
42. 炎症性疾患又は自己免疫障害の処置における項目41に記載の使用のためのポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、細菌、ヒト細胞、又は医薬組成物。
43. 炎症性腸疾患(IBD)の処置における項目41に記載の使用のためのポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、細菌、ヒト細胞、又は医薬組成物。
44. アレルギーの処置における項目41に記載の使用のためのポリペプチド、核酸、ベクター、細胞、細菌、ヒト細胞、又は医薬組成物。
45. 対象に、項目1から23のいずれか一項目に記載のポリペプチド、項目24から27のいずれか一項目に記載の核酸、項目30に記載のベクター、項目31若しくは32に記載の細胞、項目33若しくは34に記載の細菌、項目37から39のいずれか一項目に記載のヒト細胞、又は項目40に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、対象の炎症性疾患若しくは自己免疫障害の症状を低減、処置、軽減する、又は対象の炎症性疾患若しくは自己免疫障害を改善する方法。
46. 対象に、項目1から23のいずれか一項目に記載のポリペプチド、項目24から27のいずれか一項目に記載の核酸、項目30に記載のベクター、項目31若しくは32に記載の細胞、項目33若しくは34に記載の細菌、項目37から39のいずれか一項目に記載のヒト細胞、又は項目40に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、対象におけるIL-10分泌を誘導及び/又は増強する方法。
47. 対象に、項目1から23のいずれか一項目に記載のポリペプチド、項目24から27のいずれか一項目に記載の核酸、項目30に記載のベクター、項目31若しくは32に記載の細胞、項目33若しくは34に記載の細菌、項目37から39のいずれか一項目に記載のヒト細胞、又は項目40に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、対象において寛容を誘導する方法。
【0014】
本発明、及び特に上記に概説された項目は、以下により詳細に記載される。
【0015】
定義
本明細書で特に定義されない限り、本出願で使用される科学用語及び専門用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。更に、文脈によって特に必要とされない限り、本明細書で使用される命名法、並びに細胞及び組織培養の手法は、当技術分野で周知の及び一般的に使用されるものである。
【0016】
そのような手法は、Owen等(Kuby Immunology、第7版、2013 - W. H. Freeman)及びSambrook等(Molecular cloning: A laboratory manual 第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press - Cold Spring Harbor、NY、USA、2012)等の文献で十分に説明されている。
【0017】
しかしながら、本明細書全体にわたる種々の用語の使用に関して、以下の定義がより具体的に適用される。
【0018】
用語「(ポリ)ペプチド」とは、本明細書で使用される場合、ペプチド及び/又はポリペプチドを指す。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」、及びこれらの用語の変形は、好ましくは通常のペプチド結合によって、又は、代わりに、例えばアイソテリックペプチド等の場合は修飾ペプチド結合によって互いに連結された少なくとも2個のアミノ酸を含む、ペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を指す。特に、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」とは、ペプチド結合(-NHCO-)を介して連結された任意の長さのアミノ酸の連続鎖を指す。ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質は、インビトロ及び/又はインビボで細胞における構造的及び/又は機能的役割を果たすことができる。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」は、サイズが2個から少なくとも約1000個のアミノ酸残基にわたるアミノ酸鎖を好ましくは包含する。用語「ペプチド」は本明細書において、サイズが約30個未満のアミノ酸のアミノ酸鎖を好ましくは包含するが、用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、サイズが少なくとも30個のアミノ酸のアミノ酸鎖を好ましくは包含する。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において互換的に使用される。一部の実施形態では、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」は、ペプチドが天然の親ペプチドの生物学的作用を模倣又はアンタゴナイズできる、非ペプチド構造要素を含有するペプチド類似体として定義される「ペプチド模倣体」も含む。ペプチド模倣体は、酵素的に切断しやすいペプチド結合等の古典的ペプチドの特徴を欠く。特に、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、遺伝コードによって規定された20種類のアミノ酸以外のアミノ酸をこれらのアミノ酸に加えて含むことができ、又は遺伝コードによって規定された20種類のアミノ酸以外のアミノ酸からなることができる。特に、本発明の文脈におけるペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質は、翻訳後成熟プロセス等の天然のプロセス、又は当業者に周知の化学プロセスによって修飾されたアミノ酸から同様になることができる。そのような修飾は文献で十分に詳述されている。これらの修飾は、ポリペプチドのどこにでも(ペプチド骨格中、アミノ酸鎖中、又はカルボキシ末端若しくはアミノ末端にさえも)現れることができる。特に、ペプチド又はポリペプチドは、ユビキチン化後に分岐されてもよく、又は分岐を有する若しくは有さない環状であってもよい。このタイプの修飾は、当業者に周知の天然又は合成翻訳後プロセスの結果でありうる。特に本発明の文脈における用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」は、修飾されたペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質も含む。例えば、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質修飾には、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、ヌクレオチド若しくはヌクレオチド誘導体の共有結合固定、脂質若しくは脂質誘導体の共有結合固定、ホスファチジルイノシトールの共有結合固定、共有若しくは非共有結合架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、ペグ化を含むグリコシル化、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセス、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セネロイル化(seneloylation)、硫酸化、アルギニル化等のアミノ酸付加、又はユビキチン化が含まれうる。そのような修飾は文献で十分に詳述されている(Proteins Structure and Molecular Properties (1993) 第2版、T. E. Creighton、New York ; Post-translational Covalent Modifications of Proteins (1983) B. C. Johnson編、Academic Press、New York; Seifter等(1990) Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors、Meth. Enzymol. 182: 626~646頁、及びRattan等、(1992) Protein Synthesis: Post-translational Modifications and Aging、Ann NY Acad Sci, 663: 48~62頁)。したがって、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、「タンパク質」は、好ましくは、例えばリポペプチド、リポタンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質等も含む。
【0019】
好ましくは、(ポリ)ペプチド又はタンパク質は、「古典的」(ポリ)ペプチド又はタンパク質である。「古典的」(ポリ)ペプチド又はタンパク質は、典型的には、通常のペプチド結合によって互いに連結された、遺伝コードによって規定される20種類のアミノ酸から選択されるアミノ酸からなる。
【0020】
一般に、タンパク質又は(ポリ)ペプチドは任意の長さであってもよい。一部の実施形態では、タンパク質の長さは「成熟」タンパク質で(その機能的状態で)評価されうる。すなわち、成熟/機能的タンパク質では除去される「付加的」シグナルペプチドのようなプレタンパク質配列は、タンパク質の長さに見なされえない。好ましくは、本発明のポリペプチドの長さは500アミノ酸を超えない。例えば、本発明によるポリペプチドの最大長は120アミノ酸であってもよい。一部の実施形態では、本発明によるポリペプチドの最大長は100アミノ酸を超えない(例えば、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21又は20以下のアミノ酸)。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「微生物叢タンパク質」とは微生物叢起源のタンパク質を指す。用語「微生物叢」とは、本明細書で使用される場合、植物から動物までのこれまでに研究されているあらゆる多細胞生物において見出された片利共生、共生、及び病原性微生物を指す。特に、微生物叢は、それらの宿主の免疫学的、ホルモン及び代謝の恒常性に極めて重要であることが見出されている。特に、微生物叢は非病原性である。換言すれば、微生物叢は通常、宿主中で疾患を引き起こさない(できない)、及び/又は微生物叢は好ましくは宿主に対して有害でない。微生物叢には、細菌、古細菌、原生生物、真菌、ウイルス、及びファージが含まれる。したがって、微生物叢タンパク質は、細菌タンパク質、古細菌タンパク質、原生生物タンパク質、真菌タンパク質、ウイルスタンパク質、及び/又はファージ タンパク質であってもよい。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「組換え」は、組換え手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離されるような化合物、例えばタンパク質、例えば、異種宿主細胞(天然には前記タンパク質を発現しない)から単離されたタンパク質、又は宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現されたタンパク質を指すものとされる。故に、組換えタンパク質は、組換え手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離されたタンパク質、例えば、タンパク質を発現するようにトランスフェクトされた宿主細胞から単離されたタンパク質、組換えタンパク質ライブラリーから単離されたタンパク質、及びタンパク質をコードするそれぞれの遺伝子配列を他のDNA配列(天然には前記遺伝子と隣接するDNA配列と異なる)にスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離されたタンパク質である。特に、用語「組換え」は、天然には存在しないような化合物、例えばタンパク質を指すものとされる。一部の例では、組換えタンパク質は、天然には存在しないグリコシル化パターンを有してもよい。
【0023】
当技術分野で周知のように、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質は核酸によってコードされうる。用語「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」は本明細書で互換的に使用され、天然のヌクレオチド(例えば、A、T、G、C及びU)、又は合成ヌクレオチドの正確な連続、すなわち、少なくとも2個のヌクレオチドの連鎖を指す。特に、用語「核酸」、「核酸分子」、「核酸配列」、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」とは、DNA又はRNAを指す。核酸は、ゲノムDNA、cDNA、リボソームDNA、及び前記DNAの転写産物、例えばRNAから好ましくは選択される、一本鎖、二本鎖又は部分的二本鎖DNA又はRNAを好ましくは含む。核酸の好ましい例には、rRNA、mRNA;アンチセンスDNA、アンチセンスRNA;相補的RNA及び/又はDNA配列、リボザイム、(相補的) RNA/DNA配列(発現エレメントを含む又は含まない);ベクター;ミニ遺伝子、遺伝子断片、調節エレメント、プロモーター、並びにそれらの組み合わせが含まれる。核酸(分子)及び/又はポリヌクレオチドの更なる好ましい例には、例えば、組換えポリヌクレオチド、ベクター、オリゴヌクレオチド、RNA分子、例えば、rRNA、mRNA、若しくはtRNA、又は上記に記載のDNA分子が含まれる。故に、核酸(分子)は、ゲノムDNA; cDNA; rRNA; mRNA;アンチセンスDNA;アンチセンスRNA;相補的RNA及び/又はDNA配列;発現エレメント、調節エレメント、及び/又はプロモーターを含む又は含まないRNA及び/又はDNA配列;ベクター;並びにそれらの組み合わせから好ましくはから選択される、DNA分子又はRNA分子であることが好ましい。特定のアミノ酸配列をコードすることができるヌクレオチド配列を決定することは当業者の技能の範囲内である。
【0024】
本発明によるポリペプチド及び/又は核酸は、以下に限定されるものではないが、任意の合成方法、任意の組換え方法、任意のエクスビボ生成方法等、及びそれらの任意の組み合わせを含む、当技術分野の任意の既知の方法によって調製することができる。そのような手法は当技術分野で周知である。
【0025】
一般に、用語「配列バリアント」とは、本明細書で使用される場合、すなわち本出願全体にわたって、参照配列(配列表に記載された特定の配列のいずれか1つ等の)と類似している(特に、少なくとも50%の配列同一性を意味する、以下を参照のこと)が、(100%)同一でない配列を指す。したがって、配列バリアントは、参照配列と比較して少なくとも1つの変化を含有する。例えば、配列バリアントでは、参照配列のアミノ酸若しくはヌクレオチドの1つ若しくは複数が欠失若しくは置換され、又は1つ若しくは複数のアミノ酸若しくはヌクレオチドが参照配列の配列に挿入若しくは付加されている。それ故に、「配列バリアント」は、その参照配列と比較して類似しているが、少なくとも1つの変化を含有する。好ましくは、配列バリアントは、特に配列の全長にわたって、参照配列と少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%、更により一層好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも98%又は99%の配列同一性を共有する。配列バリアントは、参照配列の特定の機能を保存することができる。本発明の文脈では、この機能はIL-10分泌(ヒト細胞からの)を誘導及び/又は増強する機能性でありうる。
【0026】
用語「配列バリアント」は、ヌクレオチド配列バリアント及びアミノ酸配列バリアントを含む。例えば、アミノ酸配列バリアントは、参照配列と比較してアミノ酸の1つ若しくは複数が欠失若しくは置換される、又は参照アミノ酸配列と比較して1つ若しくは複数のアミノ酸が挿入若しくは付加されている配列変化を有する。変化の結果、アミノ酸配列バリアントは、参照配列に対して少なくとも50%、例えば、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より一層好ましくは少なくとも85%、更により一層好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、及び最も好ましくは少なくとも98%又は99%同一であるアミノ酸配列を有する。例えば、少なくとも90%同一であるバリアント配列は、参照配列のアミノ酸100個につき10個以下の変化(すなわち、欠失、挿入、又は置換の任意の組み合わせ)を有する。
【0027】
本発明の文脈では、本発明のクエリー(参照)アミノ酸配列に対して少なくとも例えば70%の「配列同一性を共有する」アミノ酸配列は、対象アミノ酸配列がクエリーアミノ酸配列のアミノ酸各10個につき最大3個のアミノ酸変化を含みうることを除いて、対象アミノ酸配列の配列がクエリー配列と同一であることを意味するものとされる。換言すれば、クエリーアミノ酸配列に対して少なくとも70%同一性の配列を有するアミノ酸配列を得るために、対象配列中のアミノ酸残基の最大30% (10個中3個)が、好ましくはバリアント又は断片の上記の定義の範囲内で挿入、又は別のアミノ酸と置換、又は欠失されていてもよい。当然ながら、同じことが核酸配列にも同様に当てはまる。
【0028】
本発明の文脈では、任意のアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的置換の例には、1個の脂肪族残基による別の脂肪族残基の置換(例えばIle、VaI、Leu、又はAlaによる互いの);又は1個の極性残基による別の極性残基の置換(例えばLysとArg; GluとAsp;又はGlnとAsn)が含まれる。他のそのような保存的置換、例えば、類似した疎水性特性を有する領域全体の置換は周知である(Kyte及びDoolittle、1982、J. Mol. Biol. 157(1):105~132頁)。保存的アミノ酸置換の例は、以下のTable 1(表1)に提示される:
【0029】
【表1】
【0030】
正確な対応のない(アミノ酸又は核酸)配列に関して、第1の配列(例えば、配列バリアント)の「同一性%」は、第2の配列(例えば、参照配列)に対して決定されうる。一般に、比較される2つの配列は配列間で最大の相関を示すように整列されうる。これは、どちらか一方又は両方の配列に「ギャップ」を挿入して整列度を高めることを含みうる。同一性%は、次いで、同じ若しくは類似した長さの配列に特に適した、比較される各配列の全長にわたって(いわゆる「グローバルアライメント」)、又は同じでない長さの配列により適した、より短い、定義された長さの配列にわたって(いわゆる「ローカルアライメント」)決定されうる。
2つ以上の配列の同一性(「類似性」又は「相同性」とも呼ばれることがある)を比較する方法は、当技術分野で周知である。2つ(以上)の配列が同一であるパーセンテージは、例えば数学的アルゴリズムを使用して決定することができる。使用されうる数学的アルゴリズムの好ましいが限定的でない例は、Karlin等(1993)、PNAS USA、90:5873~5877頁のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、ワールドワイドウェブサイトncbi.nlm.nih.govのNCBIのホームページより利用可能なBLASTプログラムファミリー、例えば、BLAST又はNBLASTプログラム(Altschul等、1990、J. Mol. Biol. 215、403~410頁、又はAltschul等(1997)、Nucleic Acids、25:3389~3402頁も参照のこと)、及びFASTA (Pearson (1990)、Methods Enzymol. 183、63~98頁; Pearson及びLipman (1988)、Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A 85、2444~2448頁)に組み込まれている。他の配列に対して特定の程度に同一である配列は、これらのプログラムによって同定することができる。更に、Wisconsin Sequence Analysis Package、バージョン9.1 (Devereux等、1984、Nucleic Acids Res.、387~395頁)で利用可能なプログラム、例えばプログラムBESTFIT及びGAPは、2つのポリヌクレオチド間の同一性%、並びに2つのポリペプチド配列間の同一性%及び相同性又は同一性%を決定するのに使用されうる。BESTFITは、(Smith及びWaterman (1981)、J. Mol. Biol. 147、195~197頁)の「ローカルホモロジー」アルゴリズムを使用し、2つの配列間の類似性の最良の単一領域を見出す。
【0031】
「薬学的に許容される賦形剤」とは、本明細書において、活性剤の送達、安定性、又は生物学的利用能を改善し、投与される対象によって代謝される可能性があり、投与される対象に対して無毒である医薬品グレードの化合物を意味する。本発明による好ましい賦形剤には、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール等、及びそれらの組み合わせ等、医薬製品で一般的に使用されるいずれの賦形剤も含まれる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましいであろう。薬学的に許容される賦形剤は、微量の補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、又は保存料を更に含んでもよい。
【0032】
本明細書に記載された本発明の種々の態様及び実施形態によれば、「対象」又は「宿主」とは、好ましくは哺乳動物、及び最も好ましくはヒトを指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、表現「疾患の処置」とは一般的に、疾患若しくは状態を改善、低減、予防、及び/又は処置すること、又は疾患若しくは状態の発生、若しくは疾患若しくは状態を発症するリスクを低減若しくは予防することを指す。したがって、表現「疾患の処置」とは予防的及び治療的設定を指す。予防的設定は一般的に、疾患又は状態が発症する前又は「治癒した」後に、その発症、発生、又は再発を回避又は最小化することを意味し、一方、治療的設定は通常、疾患又は状態(又は疾患若しくは状態の症状)をその発症後に低減、改善、又は治癒することを包含する。特に、用語「予防(preventing)」は、「発生の可能性の低減」又は「再発の可能性の低減」を包含する。
【0034】
「有効量」又は「有効用量」は本明細書で使用される場合、所望の効果をもたらす量である。治療目的として、有効量は、有益な又は所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。所与の適用に好ましい有効量は、例えば、対象のサイズ、年齢、体重、予防又は処置される疾患/障害のタイプ、及び疾患/障害が始まってからの時間を考慮して当業者によって容易に決定されうる。本発明の文脈では、処置に関して、組成物の有効量は通常、ヒト細胞からのIL-10分泌を増強及び/又は誘導するのに十分な量である。
【0035】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲を通して、文脈が特に必要としない限り、用語「含む(comprise)」、並びに「comprises」及び「comprising」等の変形は、述べられたメンバー、整数、又は工程の包含を意味するが、任意の他の述べられないメンバー、整数、又は工程の排除を意味するものではないと理解されよう。用語「からなる(consist of)」は、任意の他の述べられないメンバー、整数、又は工程が排除される、用語「含む」の特定の実施形態である。本発明の文脈では、用語「含む」は用語「からなる」を包含する。用語「含む(comprising)」は故に、「含む(including)」及び「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は排他的にXからなってもよく、又は何か追加のもの、例えば、X+Yを含んで(include)もよい。
【0036】
本発明を記載する文脈(特に特許請求の範囲の文脈)で使用される用語「a」及び「an」及び「the」並びに類似の言及は、本明細書において特に指摘されない限り、又は文脈に明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を含むと解釈されるべきである。本明細書において値の範囲の列挙は単に、該範囲内にあるそれぞれ別々の値に個別に言及する簡単な方法として機能するものとされる。本明細書において特に指摘されない限り、それぞれ個々の値は、本明細書に個別に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる用語も、本発明の実施に不可欠な任意の請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0037】
「実質的に」という語は、「完全に」を排除しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない場合がある。必要に応じて、「実質的に」という語は本発明の定義から省略されてもよい。
【0038】
数値xに関連する用語「約」は、x±10%を意味する。
【0039】
追加の定義は本明細書全体を通して提供される。
【0040】
本発明は、本発明の好ましい実施形態を含む以下の詳細な説明、及び本明細書に含まれる例を参照して、より容易に理解することができる。
【0041】
以下では、添付図面の簡単な説明が与えられる。図面は本発明をより詳細に例示することが意図される。しかし、それらは本発明の主題を限定するものでは決してない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】実施例1に関する、2回目の無細胞合成における10種類の例示微生物叢タンパク質による刺激によるヒト(CD14陰性(neg.)) PBMCからのIL-10分泌のAlphaLISAの結果を示す図である。
図2】実施例2に関する、0.5、0.25、0.1及び0.025μMの用量(最終濃度)での5種類の選択された微生物叢タンパク質による刺激によるヒトPBMCからのIL-10分泌のAlphaLISAの結果を示す図である。
図3】実施例3に関する、単球由来樹状細胞(MoDC; A)及び単球(Monocytes; B)におけるNAT_29用量反応を示す図である。細胞はNAT_29 (配列番号1;示されてい通り1000-100-10-1-0.1nMの濃度の)及びLPS (100ng/mL)で24時間、同時刺激した。
図4】実施例4に関する、NAT_29 (配列番号1; 1μM)及びLPS (10ng/mL)で5-10-24-48-72時間(示されている通りの)同時刺激した単球からのIL-10 (A)、TNF (B)、及びIL-6 (C)分泌の動態(Kinetics)を示す図である。結果は、倍数(NAT_29 vs LPS)として示され、6名の異なる単球ドナーの平均である。
図5】実施例5に関する、配列番号1/NAT_29 (変異バージョン: NAT_38/配列番号9)における様々な変異の効果を示す図である。NATポリペプチドは1μMで、LPSは100ng/mLで使用した。
図6】実施例6に関する、ヒト回腸切除における経上皮電気抵抗(TER) (A)、組織像(H-E染色、B)、及びELISAによるIL-8定量化(C)の測定を示す図である。外植片は、頂端区画で1時間、1000nM又は10nMどちらかのNAT_29 (配列番号1)で前処理し、次いで大腸菌LF82を1×109UFC/mLで添加し、インキュベーションを4時間延長した。対照条件は、培地単独の外植片に対応する。(B)の2つの上段写真は、大腸菌LF82 (T=0及びT=4時間)なしの対照を示すが、(B)の2つの下段写真は、T=4時間のLF82のみ群及びLF82+NAT_29群を示す。
図7】実施例7に関する、ラットにおけるTNBSによって誘発された急性大腸炎のモデルで直腸内投与したNAT29ペプチドの、Wallaceスコアを用いて測定したインビボ抗炎症特性を示す図である。結果は、平均±SEMスコアとして表される。
図8】実施例7に関する、ラットにおけるTNBSによって誘発された急性大腸炎のモデルで直腸内投与したNAT29ペプチドの、リポカリン(LIpocalin)定量化により測定したインビボ抗炎症特性を示す図である。結果は、平均±SEMとして表される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は以下に詳細に記載されるが、本明細書に記載された特定の方法論、プロトコール、及び試薬は変わりうることから、本発明はこれらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになる本発明の範囲を限定するものではないことも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0044】
以下では、本発明の要素が記載される。これらの要素は、特定の実施形態を用いて収載されるが、任意の方法及び任意の数で組み合わされて追加の実施形態を作成できることが理解されるべきである。様々に記載された例及び好ましい実施形態は、明示的に記載された実施形態にのみ本発明を限定すると解釈されるべきでない。この記載は、明示的に記載された実施形態を、任意の数の開示された及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持及び包含すると理解されるべきである。更に、本出願におけるすべての記載された要素の任意の順列及び組み合わせは、文脈が特に指摘しない限り、本出願の記載によって開示されたと見なされるべきである。
【0045】
ヒト細胞からのIL-10分泌を誘導するポリペプチド
【0046】
第1の態様では、本発明は、一般式(I):
SCX1X2X3YLX4 (I)
(式中、
X1は任意のアミノ酸であってもよく、
X2は任意のアミノ酸であってもよく、
X3は任意のアミノ酸であってもよく、又は欠失され、
X4はP又はDである)
によるアミノ酸配列を含むか又はからなるポリペプチドを提供する。
【0047】
好ましくは、X1はF、A、C、G、I、L、M、P、H、W、Y及びVからなる群から選択され、より好ましくはX1はF、H、W及びYからなる群から選択され、特に好ましくはX1はFである。
【0048】
好ましくは、X2はF、A、C、G、I、L、M、P、H、W、Y及びVからなる群から選択され、より好ましくはX2はF、H、W及びYからなる群から選択され、特に好ましくはX2はFである。
【0049】
好ましくは、X3は欠失され、又はI、A、C、G、L、M、F、P、W及びV、Y及びVからなる群から選択され、より好ましくはX3は欠失され、又はI、A、G若しくはLからなる群から選択され、特に好ましくはX3は欠失され、又はIである。
【0050】
本発明者らは、ヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強することができる、例えば配列番号1又は9によるアミノ酸配列を有する種々のポリペプチドを同定した。それに基づき、本発明者等は、ヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強するための、本明細書に記載された配列モチーフを同定した。
【0051】
好ましくは、ポリペプチドは、一般式(Ia):
KGSRSCX1X2X3YLX4 (Ia)
(式中、X1~X4は上記に記載したように定義される)
によるアミノ酸配列を含むか又はからなる。
【0052】
一般式(I)又は(Ia)の一部の実施形態では、X3は欠失されていてもよく、X4はPであってもよい。したがって、ポリペプチドは、配列番号3によるアミノ酸配列:
SCX1X2YLP (配列番号3)
(式中、X1及びX2は上記に定義した通りである)
を含んでもよいか又はからなってもよい。
【0053】
好ましくは、ポリペプチドは、配列番号5によるアミノ酸配列(SCFFYLP)又は配列番号6によるアミノ酸配列(KKGSRSCFFYLP)を含むか又はからなる。
【0054】
一般式(I)又は(Ia)の一部の実施形態では、X3は上記に定義されるアミノ酸であってもよく、X4はDであってもよい。したがって、ポリペプチドは、配列番号4によるアミノ酸配列:
SCX1X2X3YLD (配列番号4)
(式中、X1~X3は上記に定義した通りである)
を含んでもよいか又はからなってもよい。
【0055】
好ましくは、ポリペプチドは、配列番号7によるアミノ酸配列(SCFFIYLD)又は配列番号8によるアミノ酸配列(KGSRSCFFIYLD)を含むか又はからなる。
【0056】
好ましくは、ポリペプチドは2個のシステイン残基を含む。いかなる理論にも縛られるものではないが、本発明者等は、2個のシステイン残基はジスルフィド結合を形成し、それによってポリペプチドをある特定のヒトホルモンと類似するループ状にしうると考える。それ故に、2個のシステイン残基は、有利にはポリペプチドの構造を安定化することができる。一部の実施形態では、追加のシステインはポリペプチドに導入されない。故に、ポリペプチドは(単一の)ジスルフィド結合を含み、及び/又はループ(「環状」ポリペプチドとも呼ばれる)を形成することが好ましい。したがって、ポリペプチドは、ジスルフィド結合を形成する2個のシステイン残基を含むことが好ましい。
【0057】
一部の実施形態では、10~20アミノ酸(すなわち、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20アミノ酸)、好ましくは11~19アミノ酸、より好ましくは12~18アミノ酸、より一層好ましくは13~17アミノ酸、更により一層好ましくは14~16アミノ酸、最も好ましくは(正確には)15アミノ酸が、2個のシステイン残基間に位置しうる(及び、故にジスルフィド結合間でループを形成しうる)。
【0058】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、上記に記載の(例えば、一般式(I)及び/又は(Ia) (又は、上記に記載の1つ若しくは複数のその実施形態)による2つのアミノ酸配列を含みうる。それによって、ポリペプチドは2個のシステイン残基を含むことになる。2つのアミノ酸配列は同じであってもよく、又は異なっていてもよい。例えば、ポリペプチドは、配列番号5によるアミノ酸配列及び配列番号7によるアミノ酸配列、好ましくは配列番号6によるアミノ酸配列及び配列番号8によるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0059】
本発明はまた、一般式(II):
CX1X2X3YLX4X5X6X7X8X9KGSRX10C (II)
(式中、
X1は任意のアミノ酸であってもよく、
X2は任意のアミノ酸であってもよく、
X3は任意のアミノ酸であってもよく、又は欠失され、
X4はP又はDであり、
X5は任意のアミノ酸であってもよく、
X6は任意のアミノ酸であってもよく、又は欠失され,
X7は任意のアミノ酸であってもよく、
X8は任意のアミノ酸であってもよく、
X9はK又はQであり、
X10は任意のアミノ酸であってもよい)
によるアミノ酸配列を含むか又はからなるポリペプチドも提供する。
【0060】
特に、一般式(II)のX1~X4は、一般式(I)及び(Ia)について上記に記載したように定義される。したがって、一般式(II)のX1~X4は、一般式(I)のX1~X4に対応する。
【0061】
好ましくは、X5はR、N、D、Q、E、H、K、S、T及びYからなる群から選択され、より好ましくはX5はR、K、Q及びHからなる群から選択され、特に好ましくはX5はRである。
【0062】
好ましくは、X6は欠失され、又はR、N、D、Q、E、H、K、S、T及びYからなる群から選択され、より好ましくはX6は欠失され、又はR、K、Q及びHからなる群から選択され、特に好ましくはX6は欠失され、又はQである。
【0063】
好ましくは、X7はG、A、C、I、L、M、S、F、P、W又はVからなる群から選択され、より好ましくはX7はG、A及びSからなる群から選択され、特に好ましくはX7はGである。
【0064】
好ましくは、X8はY、R、N、D、Q、E、K、H、S及びTからなる群から選択され、より好ましくはX8はY、T及びSからなる群から選択され、特に好ましくはX8はT又はYである。
【0065】
好ましくは、X9は欠失され、又はR、N、D、Q、E、H、K、S、T及びYからなる群から選択され、より好ましくはX9は欠失され、又はR、K、Q及びHからなる群から選択され、特に好ましくはX9は欠失され、又はK若しくはQである。
【0066】
好ましくは、X10はG、A、C、I、L、M、S、F、P、W又はVからなる群から選択され、より好ましくはX10はG、A及びSからなる群から選択され、特に好ましくはX10はS又はGである。
【0067】
ポリペプチドは、一般式(I)、例えば(Ia)によるアミノ酸配列、及び一般式(II)によるアミノ酸配列を含むことも好ましい。それによって、一般式(I)及び(II)は、特に(同じ)X1~X4でオーバーラップしうる。
【0068】
より好ましくは、ポリペプチドは、一般式(IIa):
SCFFX3YLX4RX6GX8X9KGSRX10C (IIa)
(式中、
X3はIであるか、又は欠失され、
X4はP又はDであり、
X6はQであるか、又は欠失され、
X8はT又はYであり、
X9はK又はQであり、
X10はS又はGである)
によるアミノ酸配列を含むか又はからなる。
【0069】
一般式(II)及び(IIa)のアミノ酸配列では、X3及びX6のそれぞれは、独立して存在しても又は存在しなくてもよい。例えば、X3又はX6は両方とも存在してもよい。或いは、X3又はX6は両方とも欠失されていてもよい。しかし、X3又はX6のどちらか(両方、X3及びX6ではなく)が欠失されていることが好ましい。それによって、一般式(II)及び(IIa)では2個のシステイン残基間に15個のアミノ酸残基が位置する。
【0070】
一部の実施形態では、上記に記載の本発明のポリペプチドは、少なくとも17アミノ酸、例えば少なくとも17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27又は28アミノ酸長を有する。好ましくは、上記に記載の本発明のポリペプチドは、少なくとも20アミノ酸長を有する。より好ましくは、上記に記載の本発明のポリペプチドは、少なくとも25アミノ酸、例えば28アミノ酸長を有する。
【0071】
更なる態様では、本発明は、場合により、0、1、2、3、4、5、6、7又は8アミノ酸(配列番号1の)が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基は維持されている、配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はからなるポリペプチドを提供する。
以下では、配列番号1の6位のセリン残基に下線が引かれた、配列番号1のアミノ酸配列が示される。
【0072】
【化1】
【0073】
配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドは、本明細書では「NAT_29」とも呼ばれる。
【0074】
本発明者等は、驚くべきことに、実施例1に示されるようなヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強することができる様々な微生物叢タンパク質を見出した。実施例1 (図1)に示されるように、例示微生物叢タンパク質で刺激したヒト細胞からのIL-10分泌は、大腸菌溶解物で刺激した同じタイプのヒト細胞からのIL-10分泌より高い。特に、微生物叢タンパク質「ID3166」(配列番号2)は、実施例1及び2に記載されるように、IL-10分泌を誘導及び/又は増強する上で低用量でも極めて高い有効性を示した。以下では、配列番号2のアミノ酸配列が示される。
【0075】
【化2】
【0076】
本発明者等は、微生物叢タンパク質「ID3166」(配列番号2)、及び配列番号1の同定されたその断片(NAT_29;上記に示された配列番号2のアミノ酸配列中の下線が引かれた)に注目した。「ID3166」は、実施例に示されるようにヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強することができるが、TNF及びIL-6等の炎症促進性サイトカインを刺激しない。例に示されるように、最大8アミノ酸の欠失はIL-10分泌を抑制しなかった。それ故に、場合により、0、1、2、3、4、5、6、7又は8アミノ酸が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基は維持されている、配列番号1を含むか又はからなるポリペプチドが、抗炎症特性を有する候補薬として登場する。
【0077】
上記に記載の通り、配列番号1のアミノ酸配列(「NAT_29」)は、配列番号2による微生物叢タンパク質(「ID3166」)の断片である。しかし、本明細書に記載の本発明のポリペプチドは、配列番号2によるアミノ酸配列(「ID3166」)を好ましくは含まないか又はからならない。一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチド(天然には存在しない)、例えば(組換え)融合タンパク質であり、部分を標的化又は安定化する種々のドメイン/機能性(天然には同じタンパク質中に存在しない)、例えば標識と組み合わせて本発明のIL-10分泌ポリペプチドを含有しうる。好ましくは、本発明のポリペプチドは、(完全長)微生物叢タンパク質、例えば細菌又はウイルスタンパク質を含まない。一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、前記(完全長)微生物叢タンパク質、例えば配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%の配列同一性を有する(完全長)微生物叢タンパク質、例えば細菌又はウイルスタンパク質の配列バリアント又は断片を含まない。
【0078】
上記に記載の通り、ポリペプチドは20アミノ酸の(最小)長を有してもよい。他の実施形態では、ポリペプチドは21アミノ酸の(最小)長を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは22アミノ酸の(最小)長を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは23アミノ酸の(最小)長を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは24アミノ酸の(最小)長を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは25アミノ酸の(最小)長を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは26アミノ酸の(最小)長を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは27アミノ酸の(最小)長を有する。好ましくは、ポリペプチドは28アミノ酸の(最小)長を有する。
【0079】
一部の実施形態では、ポリペプチドは120アミノ酸の(最大)長を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは100アミノ酸の(最大)長を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは80アミノ酸の(最大)長を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは60アミノ酸の(最大)長を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは50アミノ酸の(最大)長を有する。好ましくは、ポリペプチドは40アミノ酸の(最大)長、例えば35アミノ酸の(最大)長を有する。
【0080】
したがって、ポリペプチドは20~120アミノ酸長、好ましくは22~100アミノ酸長、より好ましくは23~80アミノ酸長、より一層好ましくは24~60アミノ酸長、更により一層好ましくは25~50アミノ酸長、特に好ましくは26~40アミノ酸長、例えば27~35アミノ酸長を有しうる。
【0081】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、(正確には) 1、2、3、4、5、6、7又は8アミノ酸が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基(S6)は維持されている、配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はからなる。したがって、ポリペプチドは、配列番号1の6位のセリン(S6)が維持されている限り、配列番号1と比較して(正確には) 1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又は8つのアミノ酸変異(すなわち、アミノ酸置換、付加又は欠失)を含んでもよい。そのような配列バリアントは通常、参照配列の特定の機能、特に、上記に記載のIL-10分泌(ヒト細胞からの)を誘導及び/又は増強する機能性を保存する。
【0082】
好ましくは、ポリペプチドは、(正確には) 1、2、3、4、5、6又は7アミノ酸が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基(S6)は維持されている、配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はからなる。より好ましくは、ポリペプチドは、(正確には) 1、2、3、4、5又は6アミノ酸が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基(S6)は維持されている、配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はからなる。より一層好ましくは、ポリペプチドは、(正確には) 1、2、3、4又は5アミノ酸が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基(S6)は維持されている、配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はからなる。更により一層好ましくは、ポリペプチドは、(正確には) 1、2、3又は4アミノ酸が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基(S6)は維持されている、配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はからなる。特に好ましくは、ポリペプチドは、(正確には) 1、2又は3アミノ酸が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基(S6)は維持されている、配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はからなる。最も好ましくは、ポリペプチドは、(正確には) 1又は2アミノ酸が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基(S6)は維持されている、配列番号1によるアミノ酸配列を含むか又はからなる。
【0083】
一部の実施形態では、配列番号1の1位のリジン残基(K1)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の1位のリジン残基(K1)が欠失又は置換されうる。配列番号1の1位のリジン残基(K1)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のK1は、例えばR、N、D、Q、E、H、S、T及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のK1は、別の塩基性又は正に荷電したアミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のK1は、R又はH (アルギニン又はヒスチジン)と置換されうる。
【0084】
一部の実施形態では、配列番号1の2位のリジン残基(K2)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の2位のリジン残基(K2)が欠失又は置換されうる。配列番号1の2位のリジン残基(K2)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のK2は、例えばR、N、D、Q、E、H、S、T及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のK2は、別の塩基性又は正に荷電したアミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のK2は、R又はH (アルギニン又はヒスチジン)と置換されうる。
【0085】
一部の実施形態では、配列番号1の3位のグリシン残基(G3)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の3位のグリシン残基(G3)が欠失又は置換されうる。配列番号1の3位のグリシン残基(G3)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のG3は、例えばA、C、I、L、M、F、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のG3は、別の脂肪族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のG3は、A、I又はLと置換されうる。配列番号1のG3は、別の極小アミノ酸と置換されうることも好ましい。例えば、配列番号1のG3は、A又はS (アラニン又はセリン)と置換されうる。
【0086】
一部の実施形態では、配列番号1の4位のセリン残基(S4)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の4位のセリン残基(S4)が欠失又は置換されうる。配列番号1の4位のセリン残基(S4)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のS4は、例えばR、N、D、Q、E、K、H、T及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のS4は、別の極小アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のS4は、A又はG (アラニン又はグリシン)と置換されうる。配列番号1のS4は、別のヒドロキシアミノ酸、例えばT (トレオニン)と置換されうることも好ましい。
【0087】
一部の実施形態では、配列番号1の5位のアルギニン残基(R5)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の5位のアルギニン残基(R5)が欠失又は置換されうる。配列番号1の5位のアルギニン残基(R5)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のR5は、例えばN、D、Q、E、H、K、S、T及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のR5は、別の塩基性又は正に荷電したアミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のR5は、K又はH (リジン又はヒスチジン)と置換されうる。
【0088】
一部の実施形態では、配列番号1の7位のシステイン残基(C7)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の7位のシステイン残基(C7)が欠失又は置換されうる。配列番号1の7位のシステイン残基(C7)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のC7は、例えばA、G、I、L、M、F、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のC7は、別の小アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のC7は、A、G又はS、好ましくはA又はG (アラニン又はグリシン)と置換されうる。
【0089】
一部の実施形態では、配列番号1の8位のフェニルアラニン残基(F8)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の8位のフェニルアラニン残基(F8)が欠失又は置換されうる。配列番号1の8位のフェニルアラニン残基(F8)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のF8は、例えばA、C、G、I、L、M、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のF8は、別の芳香族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のF8は、H、W又はY (ヒスチジン、トリプトファン又はチロシン)と置換されうる。
【0090】
一部の実施形態では、配列番号1の9位のフェニルアラニン残基(F9)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の9位のフェニルアラニン残基(F9)が欠失又は置換されうる。配列番号1の9位のフェニルアラニン残基(F9)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のF9は、例えばA、C、G、I、L、M、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のF9は、別の芳香族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のF9は、H、W又はY (ヒスチジン、トリプトファン又はチロシン)と置換されうる。
【0091】
一部の実施形態では、配列番号1の10位のイソロイシン残基(I10)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の10位のイソロイシン残基(I10)が欠失又は置換されうる。配列番号1の10位のイソロイシン残基(I10)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のI10は、例えばA、C、G、L、M、F、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のI10は、別の脂肪族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のI10は、A、G又はL (アラニン、グリシン又はロイシン)と置換されうる。
【0092】
一部の実施形態では、配列番号1の11位のチロシン残基(Y11)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の11位のチロシン残基(Y11)が欠失又は置換されうる。配列番号1の11位のチロシン残基(Y11)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1の11位のチロシン残基(Y11)は、例えばR、N、D、Q、E、K、H、S及びTからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1の11位のチロシン残基(Y11)は、別の芳香族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1の11位のチロシン残基(Y11)は、H、W又はF (ヒスチジン、トリプトファン又はフェニルアラニン)と置換されうる。
【0093】
一部の実施形態では、配列番号1の12位のロイシン残基(L12)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の12位のロイシン残基(L12)が欠失又は置換されうる。配列番号1の12位のロイシン残基(L12)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のL12は、例えばA、C、G、I、M、F、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のL12は、別の脂肪族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のL12は、A、G又はI (アラニン、グリシン又はイソロイシン)と置換されうる。
【0094】
一部の実施形態では、配列番号1の13位のアスパラギン酸残基(D13)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の13位のアスパラギン酸残基(D13)が欠失又は置換されうる。配列番号1の13位のアスパラギン酸残基(D13)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のD13は、例えばR、N、Q、E、K、H、S、T及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のD13は、別の負に荷電した又は酸性アミノ酸、例えばE (グルタミン酸)と置換されうる。D13はP (プロリン)と置換されることも好ましい。
【0095】
一部の実施形態では、配列番号1の14位のアルギニン残基(R14)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の14位のアルギニン残基(R14)が欠失又は置換されうる。配列番号1の14位のアルギニン残基(R14)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のR14は、例えばN、D、Q、E、H、K、S、T及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のR14は、別の塩基性又は正に荷電したアミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のR14は、K又はH (リジン又はヒスチジン)と置換されうる。
【0096】
一部の実施形態では、配列番号1の15位のグリシン残基(G15)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の15位のグリシン残基(G15)が欠失又は置換されうる。配列番号1の15位のグリシン残基(G15)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のG15は、例えばA、C、I、L、M、F、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のG15は、別の脂肪族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のG15は、A、I又はLと置換されうる。配列番号1のG15は、別の極小アミノ酸と置換されうることも好ましい。例えば、配列番号1のG15は、A又はS (アラニン又はセリン)と置換されうる。
【0097】
一部の実施形態では、配列番号1の16位のトレオニン残基(T16)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の16位のトレオニン残基(T16)が欠失又は置換されうる。配列番号1の16位のトレオニン残基(T16)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のT16は、例えばR、N、D、Q、E、K、H、S及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のT16は、A、S、Y又はG (アラニン、セリン、チロシン又はグリシン)、特にS又はY (セリン又はチロシン)と置換されうる。
【0098】
一部の実施形態では、配列番号1の17位のリジン残基(K17)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の17位のリジン残基(K17)が欠失又は置換されうる。配列番号1の17位のリジン残基(K17)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のK17は、例えばR、N、D、Q、E、H、S、T及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のK17は、Q、R又はH (グルタミン、アルギニン又はヒスチジン)と置換されうる。
【0099】
一部の実施形態では、配列番号1の18位のリジン残基(K18)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の18位のリジン残基(K18)が欠失又は置換されうる。配列番号1の18位のリジン残基(K18)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のK18は、例えばR、N、D、Q、E、H、S、T及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のK18は、別の塩基性又は正に荷電したアミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のK18は、R又はH (アルギニン又はヒスチジン)と置換されうる。
【0100】
一部の実施形態では、配列番号1の19位のグリシン残基(G19)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の19位のグリシン残基(G19)が欠失又は置換されうる。配列番号1の19位のグリシン残基(G19)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のG19は、例えばA、C、I、L、M、F、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のG19は、別の脂肪族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のG19は、A、I又はLと置換されうる。配列番号1のG19は、別の極小アミノ酸と置換されうることも好ましい。例えば、配列番号1のG19は、A又はS (アラニン又はセリン)と置換されうる。
【0101】
一部の実施形態では、配列番号1の20位のセリン残基(S20)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の20位のセリン残基(S20)が欠失又は置換されうる。配列番号1の20位のセリン残基(S20)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のS20は、例えばR、N、D、Q、E、K、H、T及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のS20は、別の極小アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のS20は、A又はG (アラニン又はグリシン)と置換されうる。配列番号1のS20は、別のヒドロキシアミノ酸、例えばT (トレオニン)と置換されうることも好ましい。
【0102】
一部の実施形態では、配列番号1の21位のアルギニン残基(R21)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の21位のアルギニン残基(R21)が欠失又は置換されうる。配列番号1の21位のアルギニン残基(R21)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のR21は、例えばN、D、Q、E、H、K、S、T及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のR21は、別の塩基性又は正に荷電したアミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のR21は、K又はH (リジン又はヒスチジン)と置換されうる。
【0103】
一部の実施形態では、配列番号1の22位のセリン残基(S22)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の22位のセリン残基(S22)が欠失又は置換されうる。配列番号1の22位のセリン残基(S22)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のS22は、例えばR、N、D、Q、E、K、H、T及びYからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のS22は、別の極小アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のS22は、A又はG (アラニン又はグリシン)と置換されうる。配列番号1のS22は、別のヒドロキシアミノ酸、例えばT (トレオニン)と置換されうる。ことも好ましい。
【0104】
一部の実施形態では、配列番号1の23位のシステイン残基(C23)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の23位のシステイン残基(C23)が欠失又は置換されうる。配列番号1の23位のシステイン残基(C23)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のC23は、例えばA、G、I、L、M、F、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のC23は、別の小アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のC23は、A、G又はS、好ましくはA又はG (アラニン又はグリシン)と置換されうる。
【0105】
一部の実施形態では、配列番号1の24位のフェニルアラニン残基(F24)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の24位のフェニルアラニン残基(F24)が欠失又は置換されうる。配列番号1の24位のフェニルアラニン残基(F24)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のF24は、例えばA、C、G、I、L、M、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のF24は、別の芳香族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のF24は、H、W又はY (ヒスチジン、トリプトファン又はチロシン)と置換されうる。
【0106】
一部の実施形態では、配列番号1の25位のフェニルアラニン残基(F25)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の25位のフェニルアラニン残基(F25)が欠失又は置換されうる。配列番号1の25位のフェニルアラニン残基(F25)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のF25は、例えばA、C、G、I、L、M、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のF25は、別の芳香族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のF25は、H、W又はY (ヒスチジン、トリプトファン又はチロシン)と置換されうる。
【0107】
一部の実施形態では、配列番号1の26位のチロシン残基(Y26)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の26位のチロシン残基(Y26)が欠失又は置換されうる。配列番号1の26位のチロシン残基(Y26)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のY26は、例えばR、N、D、Q、E、K、H、S及びTからなる群から選択される別の極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のY26は、別の芳香族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のY26は、H、W又はF (ヒスチジン、トリプトファン又はフェニルアラニン)と置換されうる。
【0108】
一部の実施形態では、配列番号1の27位のロイシン残基(L27)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の27位のロイシン残基(L27)が欠失又は置換されうる。配列番号1の27位のロイシン残基(L27)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のL27は、例えばA、C、G、I、M、F、P、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のL27は、別の脂肪族アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のL27は、A、G又はI (アラニン、グリシン又はイソロイシン)と置換されうる。
【0109】
一部の実施形態では、配列番号1の28位のプロリン残基(P28)が維持されている。他の実施形態では、配列番号1の28位のプロリン残基(P28)が欠失又は置換されうる。配列番号1の28位のプロリン残基(P28)は任意のアミノ酸と置換されうるが、保存的置換が好ましい。例えば、配列番号1のP28は、例えばA、C、G、I、L、M、F、W又はVからなる群から選択される別の非極性アミノ酸と置換されうる。好ましくは、配列番号1のP28は、別の小アミノ酸と置換されうる。例えば、配列番号1のP28は、A、G、S又はT (アラニン、グリシン、セリン又はトレオニン)と置換されうる。
【0110】
好ましくは、配列番号1の7位及び/又は23位のシステイン残基(C7及び/又はC23)が、本発明のポリペプチドで維持されている(配列番号1の6位のセリン残基(S6)に加えて)。上記に記載の通り、いかなる理論にも縛られるものではないが、本発明者等は、7位及び23位のシステイン残基はジスルフィド結合を形成し、それによってポリペプチドをある特定のヒトホルモンと類似するループ状にしうると考える。それ故に、配列番号1の7位及び23位のシステインは、有利にはポリペプチドの構造を安定化することができる。一部の実施形態では、追加のシステイン(C7及びC23に加えて)は配列番号1に導入されない。故に、ポリペプチドは(単一の)ジスルフィド結合を含み、及び/又はループ(「環状」ポリペプチドとも呼ばれる)を形成することが好ましい。一部の実施形態では、10~20アミノ酸(すなわち、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20アミノ酸)、好ましくは11~19アミノ酸、より好ましくは12~18アミノ酸、より一層好ましくは13~17アミノ酸、更により一層好ましくは14~16アミノ酸、最も好ましくは(正確には)15アミノ酸が、2個のシステイン残基間に位置しうる(及び、故にジスルフィド結合間でループを形成しうる)。
【0111】
配列番号1の22位のセリン残基(S22)も、配列番号1の6位のセリン残基(S6)に加えて、維持されていることも好ましい。より好ましくは、配列番号1の6位(S6)及び22位(S22)のセリン残基、並びに7位(C7)及び23位(C23)のシステイン残基は維持されているが、配列番号1の残りのアミノ酸(すなわち、S6、C7、S22及びC23以外のアミノ酸)の0個、1個、2個、3個、4個又は5個は置換、付加及び/又は欠失されていてもよい。
【0112】
一部の実施形態では、ポリペプチドは、配列モチーフYLP及び/又はYLD (例えば、配列番号1の11~13位及び/又は26~28位に対応する)を含む。例えば、配列番号1のY11、L12及びD13が維持されてもよい。或いは又は更に、配列番号1のY26、L27及びP28が維持されてもよい。好ましくは、配列モチーフYLP又はYLDは、システイン残基の下流(C末端側)、例えば、配列番号1のC7及び/又はC23に対応する位置に位置する。それによって、例えば、以下の配列番号3及び4 (Xは任意のアミノ酸であってもよい)に示されるように、2個又は3個のアミノ酸がシステイン残基とYLP又はYLDモチーフの間に位置しうる:
SCXXYLP
(配列番号3)
SCXXXYLD
(配列番号4)
【0113】
好ましくは、システイン残基とYLP又はYLDモチーフの間に位置するアミノ酸は、例えば、以下の配列番号5及び7 (Xは任意のアミノ酸であってもよい)に示されるように、フェニルアラニン残基又はイソロイシン残基である:
SCFFYLP
(配列番号5)
SCFFIYLD
(配列番号7)
【0114】
好ましくは、配列番号6及び/又は8によるアミノ酸配列は、配列番号1で維持されうる:
KKGSRSCFFYLP
(配列番号6)
KKGSRSCFFIYLD
(配列番号8)
【0115】
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号1によるアミノ酸配列(NAT_29)を含んでもよいか又はからなってもよい。
【0116】
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、配列番号9によるアミノ酸配列(NAT_38)を含んでもよいか又はからなってもよい。
【0117】
特に、本発明のポリペプチドは、ヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強することができる。ヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強する機能性に照らして、本発明のポリペプチドは、「分泌促進物質」とも呼ぶことができる。一般に、用語「分泌促進物質」とは、他の物質を分泌させる物質を指す。
免疫細胞及び非免疫細胞(例えば、上皮及び神経細胞)を含む様々なヒト細胞がIL-10を分泌することが記載された。好ましくは、ポリペプチドは、ヒト免疫細胞、例えば末梢血単核細胞(PBMC)からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強する。例えば、リンパ球、単球、樹状細胞、及び顆粒球を含む様々な血液細胞タイプがIL-10を産生することが報告された。一部の実施形態では、ポリペプチドは、単球からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強する。一部の実施形態では、ポリペプチドは、リンパ球、例えばTリンパ球からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強する。
【0118】
当業者は、ポリペプチドがヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強できるかどうかを同定する様々な方法を知っている。例えば、IL-10分泌できるヒト細胞(上記に概説したように、例えば、PBMC、リンパ球、単球、樹状細胞、又は顆粒球)は、ポリペプチドの存在下及び非存在下で培養することができ、両方の場合(ポリペプチドの存在下/非存在下)のIL-10分泌が比較されうる。そのような比較目的で、使用されるヒト細胞及び他の実験条件(ポリペプチドの存在/非存在以外の)は通常同一であることが理解される。一部の実施形態では、IL-10分泌の誘導を評価するために、培養培地はIL-10誘導化合物を欠いていてもよい(各実験群ごとに、ポリペプチド以外の)。他の実施形態では、IL-10分泌の増強を評価するために、IL-10誘導化合物(ポリペプチド以外の)が添加されてIL-10分泌が増加されうるか否かを観察してもよい。そのような実験に有用なIL-10誘導化合物の例には、リポ多糖(LPS)、細菌由来の溶解物、フィトヘマグルチニン(PHA)、及び炎症反応を誘導する、又はIL-10を直接誘導する(例えば、ヒト/ヒト細胞で)ことが知られている他の化合物が含まれる。本発明のポリペプチドの非存在下で培養される比較細胞では、対照化合物が使用されてもよい。例えば、そのような細胞は、陰性対照(IL-10誘導/増強でない)又は陽性対照(IL-10誘導/増強であることが知られている)の存在下で培養されうる。IL-10分泌を決定するためのキットは市販されている。例えば、ヒトIL-10 AlphaLisa(登録商標)キット(Perkin社)、「IL-10 Human ELISA Kit」(Invitrogen社);「Human IL-10 Quantikine ELISA Kit D1000B」(R&D Systems社);「Simoa(登録商標) IL-10 Advantage Kit」(Quanterix社);「IL-10 Secretion Assay」(Miltenyi Biotec社);「Human IL10キット」(Cisbio社);「Human IL-10 ELISA Kit」(Abcam社)等。ポリペプチドがヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強できるかどうかを決定するための特定の例は、本明細書の実施例セクションで提供される。
一般に、ポリペプチドの存在下で培養された場合、同じ条件下であるがポリペプチドの非存在下で培養された同じヒト細胞タイプと比較して、ヒト細胞がよりIL-10を増加させるならば、ポリペプチドはヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強することができると見なされる。
【0119】
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドの存在下で培養されたヒト細胞からのIL-10の分泌は、本発明のポリペプチドの非存在下で培養された、及び/又は対照化合物と培養された同じタイプのヒト細胞によって産生されるIL-10レベルより少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍又は10倍高い。
【0120】
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドで刺激したヒト細胞からのIL-10分泌は、LPS、例えば10~100ng/ml、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90又は100ng/ml LPSで(ただし、それ以外は同じ条件下で)刺激した同じタイプのヒト細胞からのIL-10分泌と同じであるか、又はより高い。一部の実施形態では、前記ポリペプチドで刺激したヒト細胞からのIL-10分泌は、10又は100ng/mlリポ多糖(LPS)で刺激したIL-10分泌と同じであるか、又はより高い。
【0121】
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドで刺激したヒト細胞からのIL-10分泌は、大腸菌溶解物で刺激した同じタイプのヒト細胞からのIL-10分泌より高い。(無細胞)大腸菌溶解物は市販されており、又は当技術分野で公知の方法、例えば、超音波処理、均質化、酵素溶解(例えば、リゾチームを使用する)、若しくは凍結及び破砕によって調製することができる。好ましくは、大腸菌溶解物は、参照により本明細書に組み込まれる、Zubay G. In vitro synthesis of protein in microbial systems. Annu Rev Genet. 1973;7:267~87頁に記載された方法により調製されうる。高収率大腸菌溶解物を調製する更なる適切な方法は、参照により本明細書に組み込まれる、Kim、DM.、Swartz、J.R. Oxalate improves protein synthesis by enhancing ATP supply in a cell-free system derived from Escherichia coli. Biotechnology Letters 22、1537~1542頁(2000). https://doi.org/10.1023/A:1005624811710;及びKim DM、Swartz JR. Regeneration of adenosine triphosphate from glycolytic intermediates for cell-free protein synthesis. Biotechnol Bioeng. 2001年8月20日;74(4):309~16頁に記載されている。エキソヌクレアーゼ活性が低い大腸菌株が使用されてもよく、増殖条件は、直鎖状鋳型及びプラスミド鋳型からの最適タンパク質発現を可能にするように最適化されうる。
【0122】
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドで刺激したヒト細胞からのIL-10分泌は、フィトヘマグルチニン(PHA)で刺激した同じタイプのヒト細胞からのIL-10分泌より高い。フィトヘマグルチニン(PHA)は、強力な細胞凝集特性及び分裂促進特性を含有する赤インゲン豆(Phaseolus vulgaris)からの抽出物である。PHAはヒト細胞からのIL-10分泌を誘導することが知られており、故に、陽性対照として使用されることが多い。ある特定の実施形態では、本発明のポリペプチド0.1μMで刺激したヒト細胞からのIL-10分泌は、10μg/ml PHAで刺激した同じタイプのヒト細胞からのIL-10分泌より高い。ある特定の例では、本発明のポリペプチド0.025μMと低い濃度で刺激したヒト細胞からのIL-10分泌は、10μg/ml PHAで刺激した同じタイプのヒト細胞からのIL-10分泌より依然として高い。
【0123】
ポリペプチドの作製
本発明のポリペプチドは、人工的な組換え又は合成手段によって調製することができる(すなわち、ポリペプチドは、組換えタンパク質合成又は化学的ペプチド合成のどちらかにより調製することができる)。例えば、ポリペプチドはインビトロで化学合成によって調製されてもよく、又は別の生物によって発現されてもよい(配列が得られた生物以外の;「異種発現」)。したがって、本発明のポリペプチドは、特に組換えポリペプチドである。一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは化学合成によって調製される。一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、インビトロ合成(無細胞発現)又は組換え過剰発現(例えば、細菌細胞での)によって調製される。好ましくは、ポリペプチドは精製される。
【0124】
当業者は、アミノ酸配列又は核酸配列に基づきポリペプチドを調製する様々な方法を知っている。例えば、ポリペプチドは、化学合成、インビトロ合成(無細胞発現)、又は(インビボ)組換え(過剰)発現によって調製されうる。
【0125】
例えば、本発明のポリペプチドは、当技術分野で周知のポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクターで形質転換された細菌、例えば大腸菌によって(異種)発現されてもよい。
インビトロタンパク質合成(「インビトロタンパク質発現」、「無細胞タンパク質発現」及び「無細胞タンパク質合成」とも呼ばれる)は、細胞から抽出された生体分子翻訳機構を使用した溶液中での組換えタンパク質の作製である。インビトロタンパク質合成は、培養細胞内ではなく細胞溶解物中、又は組換えタンパク質のカクテル中で起こり、故に、生細胞を使用せずに達成される。インビトロタンパク質合成環境は、細胞の生存を維持するのに必要な細胞壁又は恒常性状態に制約されない。したがって、インビトロタンパク質合成は、翻訳環境の直接的なアクセス及び制御を可能にする。更に、この手法は、機能性タンパク質の迅速発現及び製造を可能にする。インビトロタンパク質合成は、タンパク質合成、非天然アミノ酸の組み込み、ハイスループットスクリーニング、機能解析、分子間相互作用検出、分子構造及び局在化解析、並びに分子診断を研究するための、タンパク質作製の最適化、タンパク質複合体の最適化を含む様々な適用に有用である。
【0126】
無細胞反応の共通成分は、インビトロでの転写及び形質導入を達成するのに必要なタンパク質、例えば、組換えタンパク質又は細胞抽出物のカクテルを含む。更に、エネルギー源、アミノ酸の供給、発現されるポリペプチドをコードする核酸、場合により、マグネシウム等の補因子が添加されうる。インビトロタンパク質合成は、いくつかの種類及び種の細胞抽出物、又は組換えタンパク質のカクテルを用いて達成することができる。細胞抽出物は、例えば、必要な細胞機構(リボソーム、アミノアシルt-RNA合成酵素、翻訳開始及び伸長因子、ヌクレアーゼ等を含む)が残るように目的の細胞を溶解し、細胞壁、DNAゲノム、及び他の残屑を遠心分離することによって得ることができる。例には、すべて市販されている、大腸菌(ECE)、ウサギ網状赤血球(RRL)、コムギ胚芽(WGE)、昆虫細胞(ICE、例えばSF9又はSF21)及びヒト細胞から作られた細胞抽出物が含まれる。市販のインビトロタンパク質合成系の例には、RTS (5 PRIME社); Expressway (商標) (Life Technologies社); S30 T7 high yield (Promega社); One-step human IVT (Thermo Scientific社); WEPRO(登録商標) (CellFree Sciences社); TNT(登録商標) coupled (Promega社); RTS CECF (5 PRIME社); TNT(登録商標) Coupled (Promega社); Retic lysate IVT(商標) (Life Technologies社); TNT(登録商標) T7 (Promega社); EasyXpress Insect kit(Qiagen/RiN A社); PURExpress(登録商標) (New England Biolabs社);及びPURESYSTEM(登録商標) (BioComber)社)が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、インビトロでの転写及び形質導入を達成するのに必要な組換えタンパク質のカクテルである、PURExpress(登録商標) (New England Biolabs社)が使用されうる。他の実施形態では、細菌抽出物又は溶解物(例えば、大腸菌由来の)、特にECE (大腸菌抽出物)が使用されうる。その理由は、それらが細菌機構(細菌タンパク質の発現に理想的な)を提供し、典型的には高収率を達成するためである。細菌抽出物でのインビトロタンパク質合成のより詳細な説明は、Hani S. Zaher、Rachel Green: Chapter One - In Vitro Synthesis of Proteins in Bacterial Extracts、編者: Jon Lorsch、Methods in Enzymology、Academic Press、539巻、2014、3~15頁、ISSN 0076-6879、ISBN 9780124201200から得ることができる。無細胞異種発現用のキット、例えば大腸菌無細胞キット(RTS 100 E. coli Disulfide Kit; Biotechrabbit社、ヘニヒスドルフ、ドイツ)は市販されている。
【0127】
インビトロタンパク質合成で使用される核酸は、好ましくはRNA又はDNAである。例えば、インビボで又はインビトロで合成される単離されたRNA (特にmRNA)が翻訳の鋳型として使用されうる。環状若しくは直鎖状DNA、例えばプラスミドベクターにクローニングされた遺伝子/ORF (cDNA)、又は直鎖状DNA鋳型、例えばPCR生成鋳型が使用される、DNA、特に翻訳/転写カップリング系を使用することも好ましい。核酸は、コドン最適化されてもよい。一部の実施形態では、DNAの直接合成が、好ましくはコドン最適化により使用される。
【0128】
核酸、例えば合成DNA分子は、例えば、コードされたタンパク質の(過剰)発現又は異種発現のために、ベクター又はプラスミドにサブクローニングすることができる。ベクターは、ポリペプチド等の発現産物の産生に使用されうる発現ベクターであってもよい。例えば、発現ベクター又は発現用プラスミドは、ベクターの配列ストレッチの転写に必要とされる配列、例えばプロモーター配列(例えば、T7プロモーター)を含んでもよい。したがって、ベクターは(T7)プロモーターを含みうる。「プロモーター」は通常、ポリペプチド(本発明の)をコードするポリヌクレオチドの転写を駆動するDNA配列である。プロモーターは通常、遺伝子の5’領域、特に、ポリペプチド(本発明の)をコードするポリヌクレオチドの転写開始部位の近位に位置する。プロモーターは誘導性であってもよい。更に、ベクターは、必要に応じて特定のタグを含有することができる。一部の実施形態では、ベクター又はプラスミドは、細菌細胞での本発明のポリペプチドの異種発現のための調節エレメント又は制御エレメントを含有する。
【0129】
インビトロ/無細胞タンパク質合成は、20アミノ酸の最小長を有する、好ましくは30アミノ酸の最小長を有する、より好ましくは40アミノ酸の最小長を有する、より一層好ましくは45アミノ酸の最小長を有する、更により一層好ましくは50アミノ酸の最小長を有するタンパク質/ポリペプチドに好ましくは適用される。例えば、50~350アミノ酸又は50~500アミノ酸の長さを有する(好ましくはシグナルペプチドのない)ポリペプチドが、上記に記載のインビトロ/無細胞タンパク質合成によって合成される。
【0130】
或いは、本発明のポリペプチドは、当技術分野で公知のように、及び例えば、Fields GB. Introduction to peptide synthesis. Curr Protoc Protein Sci. 2002; 第18章:Unit-18.1. doi:10.1002/0471140864.ps1801s26によって記載されているように、化学合成によって調製することができる。例えば、例えばFmocベースの化学を適用して、当技術分野で公知の固相技術(固相ペプチド合成(SPPS))が使用されてもよい。SPPSは、不溶性多孔質支持体上のアミノ酸誘導体の逐次反応によるペプチド鎖の迅速構築を可能にする。或いは、液相ペプチド合成(LPPS)が使用されてもよい。化学的タンパク質及びペプチド合成の様々な商業的供給業者、例えば、Pepscan社(レリスタット、オランダ)、GenScript社(ピスカタウェイ、NJ、USA)、LifeTein社(サマセット、NJ、USA)、JPT社(ベルリン、ドイツ)、SB-Peptide社(サンテグレーヴ、フランス)が利用可能である。
【0131】
化学合成、例えばSPPSは、100アミノ酸の最大長を有する、好ましくは90アミノ酸の最大長を有する、より好ましくは80アミノ酸の最大長を有する、より一層好ましくは70又は60アミノ酸の最大長を有する、更により一層好ましくは50アミノ酸の最大長を有するポリペプチドに適用されうる。例えば、15~50アミノ酸又は20~50アミノ酸の長さを有するポリペプチドが、化学合成、例えばSPPSによって合成される。
【0132】
一部の実施形態では、例えば上記に記載の長さ(例えば、50~350アミノ酸)を有する、より長いポリペプチドがインビトロ/無細胞タンパク質合成又は組換え過剰発現によって合成されてもよく、例えば上記に記載の長さ(例えば、20~50アミノ酸)を有する、より短いタンパク質が化学合成、例えばSPPSによって合成されてもよい。
【0133】
ポリペプチドをコードする核酸及びベクター
更なる態様では、本発明は、上記に記載の本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸も提供する。
【0134】
核酸(分子)は、核酸成分を含む分子である。核酸(分子)という用語は、通常DNA又はRNA(分子)を指す。該用語は、用語「ポリヌクレオチド」と同義に使用されうる。すなわち、核酸分子は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなりうる。或いは、核酸分子は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに加えて更なるエレメントも含みうる。典型的には、核酸分子は、糖/リン酸骨格のホスホジエステル結合によって互いに共有結合されたヌクレオチドモノマーを含むか又はからなるポリマーである。用語「核酸(分子)」は、修飾された核酸(分子)、例えば、塩基修飾、糖修飾、又は骨格修飾等されたDNA又はRNA分子も包含する。
【0135】
核酸は、ゲノムDNA、cDNA、RNA、siRNA、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、リボザイム、相補的RNA/DNA配列(発現エレメントを含む又は含まない)、ミニ遺伝子、遺伝子断片、調節エレメント、プロモーター、及びそれらの組み合わせから好ましくは選択される、一本鎖、二本鎖又は部分的二本鎖核酸を好ましくは含む。核酸(分子)の更なる好ましい例には、例えば、組換えポリヌクレオチド、ベクター、オリゴヌクレオチド、RNA分子、例えばrRNA、mRNA若しくはtRNA、又は上記に記載のDNA分子が含まれる。故に、核酸(分子)は、ゲノムDNA; cDNA; rRNA; mRNA;アンチセンスDNA;アンチセンスRNA;相補的RNA及び/又はDNA配列;発現エレメント、調節エレメント、及び/又はプロモーターを含む又は含まないRNA及び/又はDNA配列;ベクター;並びにそれらの組み合わせ好ましくはから選択される、DNA分子又はRNA分子であることが好ましい。
【0136】
本発明によるポリペプチドをコードする核酸は、裸の核酸、又はプラスミド若しくはウイルスベクターにクローニングされた核酸(Tregoning及びKinnear、Using Plasmids as DNA Vaccines for Infectious Diseases. Microbiol Spectr. 2014年12月;2(6). doi: 10.1128/microbiolspec.PLAS-0028-2014)の形態であってもよく、後者が好ましい。本発明による適切なウイルスベクターの例には、限定するものではないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、及びポックスウイルスベクターが含まれる。当技術分野の標準的な組換え法を使用して、核酸をプラスミド又はウイルスベクターにクローニングすることは当業者の技能の範囲内である。
【0137】
一般に、核酸(分子)は、ある特定の核酸配列を挿入、欠失、又は変更するために操作されうる。そのような操作からの変化には、制限部位を導入する、コドン使用頻度を修正する、転写及び/又は翻訳調節配列を追加又は最適化するための変化等が含まれるが、これらに限定されない。コードされたアミノ酸を変更するために核酸を変化させることもできる。例えば、1つ又は複数(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10等)のアミノ酸置換、欠失及び/又は挿入をポリペプチドのアミノ酸配列に導入することが有用でありうる。そのような点変異は、エフェクター機能、翻訳後修飾、免疫原性等を修飾することができ、共有結合基(例えば、標識)の付着のためにアミノ酸を導入することができ、又はタグ(例えば、精製目的の)を導入することができる。或いは、核酸配列の変異は「サイレント」、すなわち、遺伝コードの重複性のためにアミノ酸配列に反映されなくてもよい。一般に、変異は特定の部位に導入されうるか、又はランダムに導入され、その後淘汰されうる(例えば、分子進化)。例えば、本発明のポリペプチドをコードする1つ又は複数の核酸は、コードされたアミノ酸に種々の特性を導入するためにランダム変異又は方向性変異させることができる。そのような変化は、最初の変化が保持され、他のヌクレオチド位置での新たな変化が導入される反復プロセスの結果でありうる。更に、独立した工程で達成された変化が組み合わされてもよい。
【0138】
一部の実施形態では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は(完全)核酸分子)は、コドン最適化されてもよい。当業者は、コドン最適化のための様々なツール、例えば、Ju Xin Chin、Bevan Kai-Sheng Chung、Dong-Yup Lee、Codon Optimization OnLine (COOL): a web-based multi-objective optimization platform for synthetic gene design、Bioinformatics、30巻、15号、2014年8月1日、2210~2212頁;若しくはGrote A、Hiller K、Scheer M、Munch R、Nortemann B、Hempel DC、Jahn D、JCat: a novel tool to adapt codon usage of a target gene to its potential expression host. Nucleic Acids Res. 2005年7月1日;33(ウェブサーバー号): W526~31頁;若しくはUS 2011/0081708 A1に記載されたツール;又は商業的供給業者によって提供されているツール、例えば、Twist Bioscience社(サンフランシスコ、USA)によって提供されるコドン最適化アルゴリズムを知っている。一部の実施形態では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(又は(完全)核酸分子)は、原核細胞による発現のためにコドン最適化され、好ましくは、大腸菌等の細菌での発現のためにコドン最適化される。
【0139】
特に、上記に記載の本発明によるポリペプチドの好ましい実施形態は、本発明によるような核酸にも適用される。例えば、核酸は、場合により0、1、2、3、4、5、6、7又は8アミノ酸が置換、付加及び/又は欠失されていてもよく、ただし、配列番号1の6位のセリン残基は維持されている、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むか又はからなるポリペプチドをコードしうる。
【0140】
配列番号10のヌクレオチド配列:
AAAAAAGGCAGCAGAAGCTGCTTTTTTATTTACCTCGACAGGGGTACCAAAAAAGGCAGCAGAAGCTGCTTTTTTTATTTACCTは、配列番号1のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列の具体的な例である。
【0141】
したがって、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号10に記載の核酸配列、又は上記に記載のその配列バリアントを含むか又はからなることが好ましい。例えば、前記ポリヌクレオチドの核酸配列は配列番号10と少なくとも80%の配列同一性を共有しうる。いずれの配列バリアントについても、配列番号1の6位のセリン(S6)をコードするヌクレオチド配列は維持されていることが理解される。より好ましくは、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、配列番号10による核酸配列を有する。しかし、遺伝コードの重複により、異なる核酸配列が同じアミノ酸配列をコードしうることが理解される。したがって、配列番号1のポリペプチドは、上述の例示された核酸とは異なる核酸によってもコードされうる。
【0142】
遺伝コードの重複により、本発明はまた、同じアミノ酸配列をコードする核酸配列の配列バリアントも含む。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリペプチドの発現のために最適化することができる。例えば、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、ポリペプチドを産生する発現系における翻訳の効率を改善するのに使用されうる。更に、核酸分子は、異種エレメント(すなわち、ポリペプチドのコード配列と同じ核酸分子では天然に存在しないエレメント)を含んでもよい。例えば、核酸分子は、異種プロモーター、異種エンハンサー、異種UTR (例えば、最適な翻訳/発現のための)、異種ポリAテール等を含みうる。
【0143】
一部の実施形態では、核酸は、(本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに加えて)シグナルペプチド(分泌ペプチド又は搬出ペプチド)又は分泌タグをコードするポリヌクレオチドを更に含んでもよい。
【0144】
シグナルペプチド又は分泌タグは、典型的にはタンパク質が分泌経路用に設計されていることを示す。したがって、シグナルペプチド又は分泌タグを含むタンパク質は、細胞から、例えば前記タンパク質を発現する細菌から典型的には分泌される。シグナルペプチドは通常、タンパク質のN末端(すなわち、N末端)に位置する。シグナルペプチドは、典型的には細胞の分泌機構によって認識される。タンパク質分泌に適したシグナルペプチドの非限定的な例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Degering等(Degering C等、Optimization of protease secretion in Bacillus subtilis and Bacillus licheniformis by screening of homologous and heterologous signal peptides. Appl Environ Microbiol. 2010年10月;76(19):6370~6頁. doi: 10.1128/AEM.01146-10)及びWatanabe等(Watanabe K等、Scanning the Corynebacterium glutamicum R genome for high-efficiency secretion signal sequences. Microbiology (Reading). 2009年3月;155(Pt 3):741~750頁 doi: 10.1099/mic.0.024075-0.)に記載されている。
【0145】
Freudl R. Signal peptides for recombinant protein secretion in bacterial expression systems. Microb Cell Fact. 2018年5月29日;17(1):52頁に記載されているように、細菌には、細胞膜を越えてタンパク質を輸送するために2つの主要な搬出経路、一般的な分泌経路又はSec経路、及びツインアルギニン透過経路又はTat経路が存在する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、プロトタイプのN末端Sec依存性分泌シグナル又はTat依存性分泌シグナルである分泌タグをコードする。
【0146】
シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド及び本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、同じオープンリーディングフレーム(ORF)に含まれてもよい。したがって、発現後、本発明のポリペプチドは、シグナルペプチドに作動可能に連結されうる。換言すれば、タンパク質発現は、(i)シグナルペプチド、及び(ii)本発明によるポリペプチドを含む融合タンパク質を産生しうる。それによって、シグナルペプチドは、本発明によるポリペプチドのN末端に好ましくは位置し、より好ましくは、シグナルペプチドは、N末端(融合タンパク質の)に位置する。したがって、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチド及び本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドが、融合タンパク質をコードする配列の5’末端に位置するように配置されうる。
【0147】
一部の実施形態では、シグナルペプチド又は分泌タグは、(成熟)タンパク質がシグナルペプチドを含まないように、例えば分泌前、分泌中、又は分泌後に除去されうる(例えば切断によって)。特に、シグナルペプチド又は分泌タグは、ペリプラズム空間への分泌時に切断されうる。例えば、分泌装置は、宿主細胞、例えば改変細菌からタンパク質を分泌する前にシグナルペプチドを除去できうる。例えば、V型自己分泌媒介分泌では、N末端シグナルペプチドは、天然の分泌装置によって細胞質からペリプラズム画分へ「パッセンジャー」ペプチドが移行すると除去される。更に、自己分泌型が外膜を超えて移行すると、C末端分泌タグは自己触媒切断又はプロテアーゼ触媒(例えば、OmpT)切断のどちらかによって除去され、それによって本発明のポリペプチドを細胞外環境に放出することができる。
【0148】
シグナルペプチド及び本発明によるポリペプチドを含む融合タンパク質は、組換え融合タンパク質であってもよい。したがって、シグナルペプチド及び本発明によるポリペプチドは、天然には(一緒に)存在しなくてもよい。例えば、シグナルペプチド及び/又は本発明によるポリペプチドは組換え(天然に存在しない)であってもよく、又は-両方とも天然に存在する場合-それらは異なる生物中に天然に存在し、タンパク質の「異種」分泌をもたらしてもよい。したがって、核酸は、例えば組換え融合タンパク質(天然に存在しない)をコードするポリヌクレオチドを含む組換え核酸、及び/又はコドン最適化核酸でありうる。
【0149】
更なる態様では、本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は上記に記載の本発明の核酸(分子)を含む発現カセットも提供する。更に、発現カセットは通常、本発明のポリペプチドを発現するための調節エレメント-ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド又は核酸に作動可能に連結された-を含む。一部の実施形態では、発現カセットは、コードされたポリペプチドの組換え発現、例えば異種発現及び/又は過剰発現のための調節エレメントを含む。
【0150】
上記に記載の通り、「異種発現」は、コードされたポリペプチドが別の生物(該ポリペプチドを天然にコード及び/又は発現する生物以外の)によって発現されることを意味する。換言すれば、「異種発現」とは、前記タンパク質を天然にコード(又は発現)しない(宿主)生物におけるコードされたタンパク質の発現を指す。組換え「過剰発現」は、天然の発現と比較してタンパク質のより多くのコピーが産生されることを意味する。例えば、細菌がタンパク質を正常に発現するならば、形質転換(遺伝子改変)細菌がその後タンパク質のより多くのコピーを発現するように、細菌は、例えば過剰発現用のプラスミド又はベクター(例えば、発現を増加させる特定のプロモーターを使用する)で形質転換することができる。
【0151】
調節エレメントは、(異種)プロモーターであってもよい。異種プロモーターは、天然にはそれぞれのコード配列と組み合わせて存在しない(すなわち、コード配列は天然には異なるプロモーターの制御下にある)。プロモーターは転写を開始し、それ故に、コードされたタンパク質の発現の制御ポイントとなる。プロモーターは、IPTG等の誘導物質の導入によって、必要な場合にのみタンパク質合成が開始されるように誘導性であってもよい。しかし、遺伝子発現は恒常性であってもよい(すなわち、タンパク質は常に発現されうる)。プロモーターの例には、lacオペロンのプロモーター又はT7プロモーターが含まれる。それらはlacオペレーターによって調節されうる。プロモーターはまた、異なるプロモーターのハイブリッド、例えば、trpプロモーター及びlacプロモーターのハイブリッドであるTac-プロモーターであってもよい。
【0152】
例えば、発現カセットは、(異種)プロモーター、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むか又はからなるオープンリーディングフレーム(ORF)、及び3’非翻訳領域(3’UTR)を(互いに作動可能に連結された状態で)含みうる。一部の実施形態では、発現カセットは、(異種)プロモーター、リボソーム結合部位、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び転写ターミネーター (DNA転写を終結させるための)を(互いに作動可能に連結された状態で)含む。一部の実施形態では、発現カセットは、(異種)プロモーター、並びに上記に記載のシグナルペプチド又は分泌タグをコードするポリヌクレオチド、及び本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むか又はからなるオープンリーディングフレーム(ORF)を(互いに作動可能に連結された状態で)含みうる。一部の実施形態では、発現カセットは、(異種)プロモーター;リボソーム結合部位;上記に記載のシグナルペプチド又は分泌タグをコードするポリヌクレオチド、及び本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むか又はからなるORF;並びに転写ターミネーター(DNA転写を終結させるための)を(互いに作動可能に連結された状態で)含む。
【0153】
発現カセットは、典型的には、発現される遺伝子(本ケースでは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド/核酸、及び発現のための調節エレメントを含む。コードされたタンパク質がベクターを含む細胞、例えばベクターをトランスフェクトされた細胞によって発現されうるように、発現カセットはベクター、特に発現ベクターの成分であってもよい。発現カセットは通常、RNA及びタンパク質を産生する細胞の機構を駆動する。一部の実施形態では、発現カセットは、同じカセットが異なるタンパク質を作るように容易に変更されるように、タンパク質コード配列のモジュールクローニング用に設計されてもよい。発現カセットの調節エレメントは通常、コードされたタンパク質(発現される)と比較して異種である。すなわち、調節エレメント及び目的のタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の特定の組み合わせは、典型的には天然に存在しない。調節エレメントは通常、コードされたタンパク質の発現を制御する。
【0154】
発現カセットは、発現されたポリペプチドがタグを含有するように、タグをコードする核酸配列を更に含むことができる(例えば、本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの直ぐ下流に)。タグは、例えば、発現後のポリペプチドの精製に、又はレポーター(標識)として有用でありうる。タグの例には、ヒスチジン(His)タグ、他のマーカーペプチド、又はグルタチオンS-トランスフェラーゼ若しくはマルトース結合タンパク質等の融合パートナーが含まれる。
【0155】
発現カセットは、真核又は原核細胞での発現に最適化されうる。例えば、原核生物発現ベクター用の発現カセットは、その翻訳開始部位にリボソームの結合のためのシャインダルガーノ配列を含みうるが、真核生物発現用の発現カセットはコザックコンセンサス配列を含有しうる。好ましくは、発現カセットは、細菌等の原核細胞での発現に最適化される。
【0156】
上記に記載の本発明による核酸又は上記に記載の本発明による発現カセットを含むベクター、例えば発現ベクターが本発明の範囲内に更に含まれる。例えば、上記に記載の核酸分子がベクターであってもよい。したがって、本発明はまた、上記に記載の本発明による核酸又は上記に記載の本発明による発現カセットを含むベクターも提供する。
【0157】
ベクターは通常、天然に存在しない(組換え)核酸分子である。したがって、ベクターは、異種エレメント(すなわち、天然では異なる起源の配列エレメント)を含みうる。例えば、ベクターは、マルチクローニングサイト、異種プロモーター、異種エンハンサー、異種選択マーカー(前記ベクターを含まない細胞と比較して、前記ベクターを含む細胞を同定する)、又はそれらの組み合わせを含みうる。本発明の文脈におけるベクターは、所望の核酸配列を組み込む又は有するのに適している。そのようなベクターは、ストレージベクター、発現ベクター、クローニングベクター、トランスファーベクター等でありうる。ストレージベクターは、核酸分子を簡便に保管することができるベクターである。故に、ベクターは、例えば本発明によるポリペプチドに対応する(又はコードする)配列を含みうる。発現ベクターは、RNA、例えばmRNA、又はペプチド、ポリペプチド若しくはタンパク質等の発現産物の産生に使用することができる。例えば、発現ベクターは、例えば上記に記載の、(異種)プロモーター配列等の、ベクターの一続きの配列の転写に必要とされる配列を含んでもよい。クローニングベクターは、典型的には、核酸配列をベクターに組み込むのに使用されうるクローニング部位を含有するベクターである。クローニングベクターは、例えば、プラスミドベクター又はバクテリオファージベクターであってもよい。トランスファーベクターは、核酸分子を細胞又は生物、例えばウイルスベクターに導入するのに適したベクターでありうる。
【0158】
本発明の文脈におけるベクターは、例えば、RNAベクター又はDNAベクターであってもよい。好ましくは、ベクターはDNA分子である。例えば、本出願の意味におけるベクターは、クローニング部位、選択マーカー、例えば抗生物質耐性因子、及びベクターの増殖に適した配列、例えば複製起点を含む。好ましくは、本発明の文脈におけるベクターはプラスミドベクターである。好ましくは、本発明の文脈におけるベクターは発現ベクターである。発現ベクターは、発現されたポリペプチドがタグを含有するように、タグをコードする核酸配列を更に含むことができる(例えば、本発明によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの直ぐ下流に)。タグは、例えば、発現後のポリペプチドの精製に、又はレポーター(標識)として有用でありうる。タグの例には、ヒスチジン(His)タグ、他のマーカーペプチド、又はグルタチオンS-トランスフェラーゼ若しくはマルトース結合タンパク質等の融合パートナーが含まれる。更に、発現ベクターは、上記に記載のシグナルペプチド又は分泌タグ(例えば、シグナルペプチド及び上記に記載の本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質の発現のための)をコードするポリヌクレオチドを含むことができる。
【0159】
好ましいベクターは、大腸菌等の細菌細胞における発現のためのベクターである。大腸菌等の細菌細胞における目的のポリペプチド/タンパク質の発現のための多くの発現ベクターが市販されている。
【0160】
ベクターは、生きた細菌細胞(細菌又は細菌胞子、例えば、内生胞子、外生胞子、又は微生物嚢子等の)が投与されうる、いわゆる「生菌ベクター」での発現に有用でありうる。その好ましい例は、Palffy R、Gardlik R、Hodosy J、Behuliak M、Resko P、Radvansky J、Celec P. Bacteria in gene therapy: bactofection versus alternative gene therapy. Gene Ther. 2006年1月;13(2):101~5頁に記載されている。
【0161】
細胞及び培養培地
更なる態様では、本発明はまた、本発明によるポリペプチドを発現する、又は本発明による核酸、発現カセット、若しくはベクターを含む(宿主)細胞も提供する。(宿主)細胞は単離細胞でありうる。
【0162】
そのような細胞の例には、真核細胞、例えば、酵母細胞、動物細胞若しくは植物細胞、又は大腸菌を含む原核細胞が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、細胞は、哺乳動物細胞株等の哺乳動物細胞である。例には、ヒト細胞、CHO細胞、HEK293T細胞、PER.C6細胞、NS0細胞、ヒト腎細胞、骨髄腫細胞、又はハイブリドーマ細胞が含まれる。
【0163】
好ましくは、(宿主)細胞は、大腸菌細胞等の細菌細胞である。そのような細胞は、本発明によるポリペプチドの産生に好ましくは使用される。更に、そのような(宿主)細胞は、医薬組成物中の活性成分でもありうる。
【0164】
好ましくは、(宿主)細胞は、細菌細胞、より好ましくは腸内細菌細胞である。そのような細菌細胞は、生きた細菌細胞(細菌又は細菌胞子、例えば、内生胞子、外生胞子、又は微生物嚢子等の)が、本発明のポリペプチド又はこれをコードする核酸を提供するためのベクターとして機能できる「生菌ベクター」として機能しうる。その好ましい例は、Palffy R、Gardlik R、Hodosy J、Behuliak M、Resko P、Radvansky J、Celec P. Bacteria in gene therapy: bactofection versus alternative gene therapy. Gene Ther. 2006年1月;13(2):101~5頁に記載されている。細菌細胞(細菌又は細菌胞子、例えば、内生胞子、外生胞子、又は微生物嚢子等の)、特に腸内細菌種(全体)は、それらが含有するタンパク質又は核酸より大きな免疫応答をトリガーする可能性を有することから、有利でありうる。
【0165】
更に、本発明による細菌細胞、特に腸内細菌は、プロバイオティクス、すなわち、生きた腸内細菌の形態で提供することができ、故に、それがもたらしうる健康上の利益のため食品添加物として使用することができる。それらは、例えば、顆粒、ピル又はカプセルに凍結乾燥され、又は食用の乳製品と直接混合されてもよい。
【0166】
したがって、本発明はまた、ヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強することができる遺伝子改変細菌(又は組換え細菌)であって、本発明による核酸、本発明による発現カセット、又は上記に記載の本発明によるベクターを含む前記細菌も提供する。更に、本発明はまた、本発明によるポリペプチドを(過剰)発現する遺伝子改変細菌(又は組換え細菌)も提供する。特に、遺伝子改変細菌(又は組換え細菌)は、本発明によるポリペプチドを分泌することができる。したがって、本発明はまた、本発明によるポリペプチドを分泌することができる遺伝子改変細菌(又は組換え細菌)も提供する。この目的のために、遺伝子改変細菌(又は組換え細菌)は、上記に記載の発現カセットを含みうる。一部の実施形態では、細菌は上記に記載の発現ベクター(又はプラスミド)を含む。一部の実施形態では、発現カセットは、特に組換え発現(例えば、異種発現又は過剰発現)のために細菌のゲノムに組み込まれうる。
【0167】
好ましくは、細菌(宿主)細胞/細菌は改変細菌(又は組換え細菌)である。一般に、改変細菌(又は組換え細菌)は、天然に存在しない細菌である。特に、遺伝子改変細菌(又は組換え細菌)は、ポリペプチドを組換え的に、例えば異種発現又は過剰発現によって発現することができる。この目的のために、(宿主)細菌は、例えば、ポリペプチドをコードするベクター(又はプラスミド)を(宿主)細菌に導入して(例えば、形質転換により)修飾されうる。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む前記ベクター、又はその部分は、場合により(宿主)細菌のゲノムに組み込まれうる。
【0168】
一部の実施形態では、細菌(宿主)細胞は、細胞膜を透過しやすくする;運ばれるプラスミド若しくは発現されたポリペプチドの放出を促進する;又は臨床的症候性感染のリスクを最小限にするために遺伝子修飾されうる。改変細菌は、例えば、Palffy R、Gardlik R、Hodosy J、Behuliak M、Resko P、Radvansky J、Celec P. Bacteria in gene therapy: bactofection versus alternative gene therapy. Gene Ther. 2006年1月;13(2):101~5頁に記載されている。目的のタンパク質を分泌する改変細菌は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、WO 2016/164636、WO 2018/045184、又はWO 2020/206221 A1に記載されている。
【0169】
一部の実施形態では、遺伝子改変細菌(又は組換え細菌)は、上記に記載のシグナルペプチド又は分泌タグをコードするポリヌクレオチドを含みうる。したがって、遺伝子改変細菌(又は組換え細菌)は分泌装置(特に本発明のポリペプチドを分泌するための)を含みうる。本明細書で使用される場合、用語「分泌装置」とは、本発明のポリペプチドを細菌細胞質から分泌又は搬出することができる天然又は非天然分泌機構を指す。分泌装置は、当技術分野で公知のように、単一のタンパク質を含んでもよく、又は複合体に構築された2つ以上のタンパク質を含んでもよい。グラム陰性菌の分泌装置の非限定的な例には、修飾III型べん毛分泌装置、I型(例えば、溶血素分泌装置)、II型、IV型、V型、VI型、及びVII型分泌装置、resistance-nodulation-division (RND)多剤排出ポンプ、様々な単一の膜分泌装置が含まれる。グラム陽性菌の分泌装置の非限定的な例には、Sec及びTAT分泌装置が含まれる。
【0170】
一般に、(改変)細菌は、好ましくは非病原性細菌である。用語「非病原性細菌」とは、本明細書で使用される場合、宿主において疾患又は有害な応答を引き起こすことが本質的にできない細菌を指す。一部の実施形態では、非病原性細菌は片利共生細菌である。非病原性細菌の例には、桿菌、バクテロイデス、ビフィズス菌、ブレビバクテリウム、クロストリジウム、腸球菌、大腸菌(Escherichia coli) (大腸菌(E. coli))、乳酸桿菌、乳酸球菌、サッカロミセス、及びブドウ球菌、例えば、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、枯草菌(Bacillus subtilis)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、バクテロイデス・サブチリス(Bacteroides subtilis)、バクテロイデス・テタイオタオミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、酪酸菌(Clostridium butyricum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ジョンソニ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、及びサッカロミセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)が含まれるが、これらに限定されない。これらのうち、細菌、(改変)大腸菌は特に好ましい。
【0171】
更なる態様では、本発明はまた、本発明によるポリペプチド、本発明による(宿主)細胞、又は本発明による細菌を含む培養培地も提供する。
【0172】
培養培地は、好ましくはヒト細胞、特にヒト免疫細胞用の培養培地である。PBMC等のヒト免疫細胞用の様々な培養培地は技術分野で公知であり、市販されている。例には、RPMI-1640培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、TexMACS培地、及びAIM V培地(ThermoFisher社)が含まれる。培養培地は、例えば、抗生物質、グルタミン、及び/又は(不活性化)ウシ胎仔血清(FBS)を補充することができる。一部の実施形態では、培養培地は無血清である。好ましくは、培養培地は、IL-10及び/又は、本発明によるポリペプチド、本発明による(宿主)細胞、若しくは本発明による細菌以外の、ヒト細胞からのIL-10分泌を誘導する化合物を含有しない。
【0173】
一部の実施形態では、培養培地は、抗原、例えば自己抗原を更に含む。例えば、アレルギー及び自己免疫では、特異的抗原(Ag)をパルスした患者由来免疫細胞(樹状細胞等)が自己Ag特異的1型制御性T (Tr1)細胞産物の分化を誘導し、それ故に、Ag特異的寛容を促進/回復させるのに使用されうる。
【0174】
更なる態様では、本発明はまた、上記に記載の、すなわち、本発明によるポリペプチド、本発明による(宿主)細胞、又は本発明による細菌を含む培養培地で培養された単離されたヒト細胞も提供する。本発明によるポリペプチド(又はそのようなポリペプチドを発現する細胞)は通常、上記に記載のようにヒト細胞からのIL-10分泌を誘導及び/又は増強することができる。好ましくは、ポリペプチド(又はそのようなポリペプチドを発現する細胞)と共に培養されるヒト細胞は、ヒト免疫細胞、例えば梢血単核細胞(PBMC)である。例えば、リンパ球、単球、樹状細胞、及び顆粒球を含む様々な血液細胞タイプがIL-10を産生すると報告された。一部の実施形態では、本発明のポリペプチド(又はそのようなポリペプチドを発現する細胞)と共に培養されるヒト細胞は、リンパ球、例えばTリンパ球である。
【0175】
上記に記載の通り、本発明のポリペプチド(又はそのようなポリペプチドを発現する細胞)の存在下でのヒト細胞(上記に記載の)培養は、通常、ヒト細胞からのIL-10放出を誘導及び/又は増強させる。本発明のポリペプチドの存在下でのヒト細胞のIL-10分泌に関する更なる詳細は、上記に示されており、ここに準用する。
【0176】
医薬組成物及び医学的処置及び使用
更なる態様では、本発明は、
- 上記に記載の本発明のポリペプチド;
- 上記に記載の核酸;
- 上記に記載のベクター;
- 上記に記載の(宿主)細胞;
- 上記に記載の細菌;又は
- 上記に記載のヒト細胞
を含む医薬組成物を提供する。
【0177】
好ましくは、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体を更に含む。担体又は賦形剤は投与を促進しうるが、組成物を受け取る個体にとって有害な抗体の産生を誘導するべきではない。また、毒性であるべきではない。適切な担体は、大きなゆっくり代謝される高分子、例えば、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び不活性ウイルス粒子であってもよい。一部の実施形態では、本発明による医薬組成物中の薬学的に許容される担体、希釈剤及び/又は賦形剤は、ヒト細胞からのIL-10分泌の誘導及び/又は増強に関して活性成分ではない。
【0178】
薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、及び硫酸塩等の鉱酸塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、及び安息香酸塩等の有機酸の塩が使用されうる。
【0179】
医薬組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノール等の液体を更に含有することができる。更に、湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝物質等の補助物質が、そのような組成物中に存在していてもよい。そのような担体は、対象による摂取のために、医薬組成物を錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、及び懸濁液として製剤化できるようにする。薬学的に許容される担体の徹底的な考察は、Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy、第20版、ISBN: 0683306472で利用可能である。
【0180】
本発明の医薬組成物は5.5~8.5のpHを有してもよく、一部の実施形態では、これは6~8、例えば約7であってもよい。pHは、緩衝液の使用によって維持することができる。組成物は、滅菌及び/又はパイロジェンフリーでありうる。組成物は、ヒトに対して等張性でありうる。一部の実施形態では、本発明の医薬組成物は密封容器で供給される。
【0181】
一部の実施形態では、組成物中の(唯一の)有効成分は、上記に記載の本発明によるポリペプチド、核酸、ベクター、(宿主)細胞、細菌、又はヒト細胞である。そのため、有効成分は胃腸管で分解を受けやすい可能性がある。故に、組成物が胃腸管を使用する経路によって投与される場合、組成物は前記活性成分を分解から保護する薬剤を含有しうる。
【0182】
一部の実施形態では、本発明のポリペプチドは、(腸内)細菌細胞等の微生物の形態で投与することができる。更に、本発明による(腸内)細菌は、プロバイオティクス、すなわち、生きた細菌の形態であってもよく、故に、それがもたらしうる健康上の利益のため食品添加物として使用することができる。それらは、例えば、顆粒、ピル又はカプセルに凍結乾燥され、又は食用の乳製品と直接混合されてもよい。
【0183】
本発明のポリペプチド、本発明による核酸(又はベクター)及び組成物は更に、それを必要とする対象へのそれらの投与を促進するためにカプセル化することができる。例えば、それらは、ペプチドナノ担体、ビロソーム、又はリポソーム-ポリカチオン-DNA複合体等の脂質ベースの担体系にカプセル化されうる(Trovato M、De Berardinis P. Novel antigen delivery systems. World J Viral. 2015年8月12日;4(3):156~68頁; Saade F、Petrovsky N. Technologies for enhanced efficacy of DNA vaccines. Expert Rev Vaccines. 2012年2月;11(2):189~209頁; Li等、Peptide Vaccine: Progress and Challenges. Vaccines (Basel). 2014年7月2日;2(3):515~36頁)。
【0184】
本発明による組成物は、他の活性剤、例えば、本発明のポリペプチドの効果を増強できるような活性剤を更に含むことができる。或いは、組成物は、任意の他の活性剤(すなわち、本発明によるポリペプチド、本発明による細胞、本発明による核酸、又は本発明による宿主細胞以外の)を含まなくてもよい。
【0185】
本発明によるポリペプチドによって誘導及び/又は増強されるIL-10分泌を考慮して、本発明はまた、対象に、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌を投与する工程を含む、対象におけるIL-10分泌を誘導及び/又は増強する方法も提供する。
【0186】
好ましくは、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、又は本発明によるヒト免疫細胞は、医薬として使用されうる。
【0187】
換言すれば、本発明はまた、医薬において使用するための、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、本発明によるヒト免疫細胞、又は本発明による医薬組成物も提供する。
【0188】
IL-10は「抗炎症性サイトカインのプロトタイプ」と見なされることが多く、その抑制作用は、IL-1、IL-6、TNF-α、GM-CSF及びIFN-γ等の最も典型的な炎症マーカーに対して主に発揮される。3つの主要な炎症促進性サイトカイン、IL-1β、IL-6、及びTNF-αは、多くの疾患において炎症状態の発生及び維持に関与している。更に、TH1免疫応答は、自己免疫及び炎症性疾患の特徴であることが知られている。IL-10はTh1型及びTh2型応答の両方を抑制することができるが、Th1亜集団に対する効果が顕著であり、IL-10はTh2応答のプロモーターと見なされている(多面的効果)。したがって、ヒト細胞からのIL-10の分泌を誘導又は増強することによる炎症促進性サイトカイン及びTh1免疫応答の抑制/低減は、様々な炎症性疾患及び自己免疫疾患に役立つ。
【0189】
一部の実施形態では、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、又は本発明によるヒト免疫細胞は、故にIL-10等の抗炎症性サイトカインの分泌を増加させるのに有用である。
【0190】
更に、本出願の実施例は、経上皮電気抵抗を評価するアッセイにおいて本発明のポリペプチドを適用したときの腸上皮細胞バリア機能の増加を示す。したがって、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、又は本発明によるヒト免疫細胞は、故に、腸上皮細胞バリア機能又は完全性(対象における)を増加させるのに有用でありうる。それらはそれ故に、それを必要とする対象、例えば、化学物質を用いた処置による腸組織損傷を有する対象において腸上皮細胞創傷治癒を増加させる、又は腸組織病理、具体的には胃腸粘膜炎症を低減するためにインビボで使用することができる。上皮細胞層の構造的及び機能的完全性は、例えばTERアッセイにより評価されうる。TERアッセイは当技術分野で周知であり、例えば、Srinivasan等、2015、J Lab Autom、20: 107~126頁及び以下の実施例6に記載されている。
【0191】
したがって、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、本発明によるヒト免疫細胞、又は本発明による医薬組成物は、炎症性疾患、自己免疫障害、及び胃腸管(GIT)の疾患、例えば炎症性腸疾患(IBD)の処置を含む、様々な医学用途で有用でありうる。炎症性腸疾患(IBD)には、例えば、クローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)が含まれる。したがって、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、本発明によるヒト免疫細胞、又は本発明による医薬組成物は、炎症性腸疾患(IBD)の処置に使用されうる。
【0192】
一般に、炎症性疾患には、炎症を特徴とする無数の障害及び状態が含まれる。炎症性疾患は、急性又は慢性でありうる。炎症性疾患の例には、食物アレルギー等のアレルギー、アレルギー性喘息等の喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、クローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)等の炎症性腸疾患(IBD)、乾癬、アトピー性皮膚炎(AD)、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)等のループス、多発性硬化症、及び1型糖尿病(T1D)が含まれる。
【0193】
一部の実施形態では、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、本発明によるヒト免疫細胞、又は本発明による医薬組成物は、食物アレルギー等のアレルギーの処置に使用されうる。
【0194】
更に、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、本発明によるヒト免疫細胞、又は本発明による医薬組成物は、
- それを必要とする患者における胃腸炎の低減、
- それを必要とする患者における腸粘膜炎症の低減、
- それを必要とする患者における胃腸創傷治癒の増加、
- それを必要とする患者における腸上皮細胞増殖の増加、及び/又は
- それを必要とする患者における上皮バリア機能障害の処置若しくは予防
のいずれか1つ(又は組み合わせ)に使用されうる。
【0195】
前記上皮バリア機能障害は、例えば、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎(UC)、小児UC、クローン病(CD)、小児クローン病、短腸症候群、GI粘膜炎、経口粘膜炎、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸(結腸)、及び/又は直腸の粘膜炎、化学療法誘発性粘膜炎、放射線誘発性粘膜炎、壊死性腸炎、嚢炎、代謝性疾患、セリアック病、過敏性腸症候群(IBS)、又は化学療法関連脂肪性肝炎(CASH)からなる群において選択されうる。
【0196】
好ましくは、前記上皮バリア機能障害は、クローン病(CD)等のIBDである。処置される別の好ましい障害は潰瘍性大腸炎(UC)である。
【0197】
したがって、本発明は、対象に、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、本発明によるヒト免疫細胞、又は本発明による医薬組成物を投与する工程を含む、対象の炎症性疾患若しくは自己免疫障害の症状を低減、処置、軽減する、又は対象の炎症性疾患若しくは自己免疫障害を改善する方法を提供する。
【0198】
更に、本発明は、対象に、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、本発明によるヒト免疫細胞、又は本発明による医薬組成物を投与する工程を含む、対象のアレルギーの症状を低減、処置、軽減する、又は対象のアレルギーを改善する方法を提供する。
【0199】
本発明はまた対象に、本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、又は本発明によるヒト免疫細胞を投与する工程を含む、対象において寛容を誘導する方法も提供する。
【0200】
本発明によるポリペプチド、本発明による核酸、本発明によるベクター、本発明による(宿主)細胞、本発明による細菌、又は本発明によるヒト免疫細胞の投与の方法は、当業者に周知である。例えば、それは、対象、罹患臓器に直接投与(すなわち、局所投与)、又は全身投与(すなわち、腸内又は非経口投与)されてもよい。腸内投与には、経口及び直腸投与、並びに胃栄養チューブ、十二指腸栄養チューブ、又は胃瘻造設を介した投与が含まれる。非経口投与には、特に、皮下、静脈内、筋肉内、動脈内、皮内、骨内、脳内、及び髄腔内注射が含まれる。投与方法は、処置される疾患のタイプ、及び活性化合物のタイプに依存することが多いであろう。例えば、投与は、特に炎症性腸疾患(IBD)等の胃腸管(GIT)の疾患の処置には、好ましくは腸内経路を介する。一部の実施形態では、例えばポリペプチドが上記に定義される(腸内)細菌の形態で送達される場合、例えば腸内細菌がプロバイオティクスの形態である場合、投与は好ましくは経口投与である。
【実施例
【0201】
以下では、本発明の様々な実施形態及び態様を例示する特定の例が提示される。しかし、本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態による範囲に限定されるものではない。以下の調製物及び例は、当業者が本発明を明確に理解し、実施できるようにするために示される。しかし、本発明は、本発明の単一の態様の例示としてのみ意図される例示された実施形態による範囲に限定されず、機能的に同等である方法は本発明の範囲内である。実際に、本明細書に記載されたものに加えて本発明の様々な変更は、前述の説明、添付図面、及び以下の例から当業者に容易に明らかになるであろう。そのような変更はすべて、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。
【0202】
(実施例1)
ヒト細胞からのIL-10放出を誘導するヒト微生物叢由来タンパク質の同定
この試験の目的は、ヒト免疫細胞からIL-10の分泌を誘導することができる、ヒト微生物叢によって発現されるタンパク質を同定することであった。この目標のために、ヒト微生物叢によって発現されるタンパク質のライブラリーをスクリーニングして、ヒト免疫細胞からのIL-10放出を誘導するタンパク質を同定した。
【0203】
実験手順:
ライブラリー:インシリコ方法
腸の片利共生細菌からの分泌タンパク質の化合物ライブラリーを、インシリコベースのアプローチによって生成した。ライブラリーは、ヒト腸のマイクロバイオームカタログ及び免疫調節における役割が知られている細菌種から予測した12,000を超えるタンパク質を含んだ。ライブラリーを得るために、50~350アミノ酸長を有する細菌タンパク質を、生物情報学ツールPhobiusを使用して分泌シグナルペプチドの存在についてスクリーニングし、HMMSCAN及びPFAMデータベースを使用してアノテーションした。75%でのカットオフを適用して配列重複を低減した。
【0204】
免疫調節における小さなシステインリッチタンパク質の関連性を考慮して、ジスルフィド結合を形成するために少なくとも2個のシステインが存在している必要があるという、システインリッチタンパク質を同定するための追加の選択基準を適用した。インビトロでの正しい合成及び折り畳みを確保するために、シグナルペプチドに対応するアミノ酸配列を除去した。
【0205】
ライブラリー:無細胞タンパク質合成及び定量化
タンパク質ライブラリーを、ジスルフィド結合の生成に適した大腸菌無細胞キットを使用して、供給業者のプロトコールに従って生成した(RTS 100大腸菌ジスルフィドキット; Biotechrabbit社、ヘニヒスドルフ、ドイツ)。無細胞系は、転写及び翻訳のための成分を含有する反応区画と、アミノ酸及び他のエネルギー成分を含有する供給チャンバーの間の半透膜を通じた連続交換に基づく。
【0206】
大腸菌の転写機構を使用する異種タンパク質発現を、選択配列すべてに適用されるコドン最適化アルゴリズム(Twist Bioscience社、サンフランシスコ、USA)により改善した。すべての合成ORFを、Hisタグ付けタンパク質の高収率無細胞発現のために特異的に設計されたpIVEX 2.4ベクター(Biotechrabbit社、ヘニヒスドルフ、ドイツ)にサブクローニングした。
【0207】
Hisタグ付けタンパク質の検出には、HTRF(登録商標)技術を使用する6His Check kit Gold (Cisbio社、コドレ、フランス)を供給業者のプロトコールに従って使用した。1×PBS中、1:20で前もって希釈したタンパク質を、無細胞合成に使用した溶解物(溶解物も1×PBS中、1:20で希釈した)の段階希釈で希釈した0.1μg/mLの6×His GFP (ThermoFisher社、ウォルサム、USA)の標準曲線に対して384ウェルプレートで定量化した。
【0208】
組換えタンパク質の大腸菌産生
陽性ヒットからのDNAを、N末端6×His-Tagを有するpET-28aベクター(Twist Bioscience社、サンフランシスコ、USA)にサブクローニングし、次いで大腸菌BL21(DE3)又はNico21(DE3) (3166タンパク質の場合と同様)熱コンピテント細胞(New England Biolabs社、イプスウィッチ、MA、USA)に形質転換した。組換えタンパク質の発現のために、BL21(DE3)又はNico21(DE3)クローンの前培養を、LB培地で振盪(180rpm)条件下、30℃で行った。培養物はLB又は2YT培地で同じ条件下で作製し、OD600 0.4~0.8になったときタンパク質特性に応じて0.1又は0.5mM IPTGを使用して誘導を開始した。誘導時間も各タンパク質に適合させ、2時間から一晩行った。
【0209】
培養物を4℃、4500rpmで15分間遠心分離した。上清を除去し、ペレットを-80℃で凍結して細胞を破壊した。ペレット次いで解凍し、Benzonase(登録商標)ヌクレアーゼ(Sigma-Aldrich社、セントルイス、USA)及びリゾチーム(Sigma-Aldrich社、セントルイス、USA)を補充した1×BugBuster(登録商標) (Novagen(登録商標)、Merck KGaA社、ダルムシュタット、ドイツ)に再懸濁した。試料を穏やかに振盪して室温でインキュベートし、4℃、15,000gで30分間遠心分離した。可溶性タンパク質を上清からニッケル充填カラム(Protino(登録商標)、Macherey-Nagel社、デューレン、ドイツ)に供給業者のプロトコールに従って精製した。3166タンパク質の場合、固有のプロトコールを開発した。このプロトコール: 50mMイミダゾールの結合緩衝液、試料適用流速0,5mL/分、及び混合モード工程による溶出:最初に5CVで溶出緩衝液の勾配0から25%、次いで10CVで溶出緩衝液75%の工程、次いで10CVで溶出緩衝液100%に従って、可溶性タンパク質を上清からAktaシステム(Cytivia社、マールボロ、USA)を使用してHisTrap (Cytivia社、マールボロ、USA)に精製した。タンパク質溶出に使用したイミダゾールは、3kDa Slide-A-Lyzer透析カセット(ThermoFisher社、ウォルサム、USA)を使用する透析によって除去した。クマシーブルー(Imperial protein Stain; ThermoFisher社、ウォルサム、USA)で染色した12%Bis-Trisアクリルアミドゲル(ThermoFisher社、ウォルサム、USA)でタンパク質を可視化し、1:5000で希釈した6X-Hisタグモノクローナル抗体HRP (Miltenyi Biotec社、ベルギッシュグラートバッハ、ドイツ)を使用してウエスタンブロットによって検出し、DAB (Sigma-Aldrich社、セントルイス、USA)を使用して発色させた。精製したタンパク質をBradfordタンパク質アッセイ(Bradford M (1976) A rapid and sensitive method for the quantitation of microgram quantities of protein utilizing the principle of protein-dye binding. Anal. Biochem. 72:248~254頁)によって定量化した。
【0210】
IL10スクリーニング
CD14枯渇ヒト末梢血単核細胞(PBMC)に対して微生物叢タンパク質ライブラリーのIL-10スクリーニングを行った。この細胞モデルは、合成された(ただし、精製されていない)タンパク質において、細胞壁成分及び無細胞合成キットの溶解物に存在する可能性がある他の細菌汚染物質によるバックグラウンドを低減するために選択された。
【0211】
CD14枯渇PBMC:
PBMCは、バフィーコートから次のように単離した: 80ml PBSを50ml血液に添加; 4つのSepMate(商標)-50 IVDチューブ(Stemcell Technologies社、バンクーバー、Canada)にドナー1人あたりFicoll(登録商標) (Ficoll(登録商標) Paque Plus; Sigma-Aldrich社、セントルイス、USA) 15mLを充填し、次いでPBS希釈血液30mlを穏やかに添加した。試料を室温、1200gで20分間遠心分離し、PBSで3回洗浄した。赤血球を溶解するために、ペレットを赤血球溶解緩衝液1×(Miltenyi Biotec社、ベルギッシュグラートバッハ、ドイツ)に再懸濁し、室温で10分間インキュベートした。次いで細胞をMACS緩衝液で洗浄し、カウントした。
【0212】
PBMC枯渇は、供給業者のプロトコールに従ってCD14マイクロビーズキット(Miltenyi Biotec社、ベルギッシュグラートバッハ、ドイツ)を使用して行った。枯渇単球を、1%L-グルタミン(Sigma-Aldrich社、セントルイス、USA)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich社、セントルイス、USA)、及び10%の加熱不活性化FBS (Sigma-Aldrich社、セントルイス、USA)を補充したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM; GIBCO(商標)、Life Technologies社、カールズバッド、USA)に再懸濁した。
【0213】
IL-10スクリーニング:
スクリーニングは、384ウェルプレートで最終容量60μlで行った。PBMCをマルチドロップによって72,000細胞/ウェルで播種し、37℃、加湿5%CO2雰囲気中、PBSで前もって1:10で希釈した10% (vol/vol)のライブラリー(タンパク質)で72時間刺激した(Hamilton Robotics社、マルティンスリート、ドイツ)。無細胞キットに含まれる大腸菌溶解物は、陰性対照として使用した(ライブラリーと同じ希釈で)。10μg/ml (0.087μM)のフィトヘマグルチニン(PHA)を陽性対照として使用した。技術的堅牢性を確保するために、少なくとも2人の異なるドナーからのCD14枯渇PBMCに関してスクリーニングを行った。
【0214】
IL-10分泌を、非希釈上清でAlphaLISA (登録商標) (IL10 (ヒト) AlphaLISA検出キット; PerkinElmer社、ウォルサム MA、USA)により供給業者のプロトコールに従って測定した。結果をAlphaLISA (登録商標)シグナル(数)として表した。少なくとも単一の生データシグナル(2名のPBMCドナーの2つのシグナルのうちの)が対応するプレート平均+3SD (標準偏差)より高いか、又は両方の生データシグナル(2名のPBMCドナーの2つのシグナルのうちの)が対応するプレート平均+2SD (標準偏差)より高いとき、結果を陽性ヒットと見なした。偽陽性を避けるために、一次スクリーニングによって得られた、可能性のあるヒットの濃度を、対応するプレート平均と比較した。
【0215】
次いで、可能性のあるヒットを新たな回の無細胞合成によってバリデートし、数名のドナー(上記に記載の)からのCD14枯渇PBMCで試験した。標的配列を含有するpET-28aベクターを形質転換した大腸菌BL21 (DE3)株で産生された組換えタンパク質(上記に記載、パラグラフ「組換えタンパク質の大腸菌産生」を参照のこと)で、更なる特徴付けを行った。或いは、一部のタンパク質の無細胞産生は、商業的供給業者(Synthelis社、ラ・トロンシュ、フランス)によって行われた。ペプチドは、商業的供給業者(SB-Peptide社又はPepscan社)によるカスタム合成により得た。
【0216】
結果
スクリーニング
ヒトPBMCからのIL-10分泌を刺激することができるタンパク質を同定するために、ライブラリーの合計11904種類のタンパク質をCD14枯渇PBMCでスクリーニングした。一次スクリーニングで得られた様々な可能性のあるヒットから、これまでに10種類のタンパク質を2回目の無細胞合成で確かめた。ヒトPBMCからのIL-10分泌を刺激することができるこれらの微生物叢タンパク質は、ID3166 (配列番号2)、並びにID6359; ID1888; ID1889; ID2661; ID5682; ID5138; ID6077; ID6274;及びID6298として標識された更なる微生物叢タンパク質を含む。
【0217】
2回目の無細胞合成のヒトPBMCからのIL-10分泌に関するAlphaLISAの結果を図1に示す。データは、ヒトPBMCからのIL-10放出の刺激時にヒトマイクロバイオームメタセクレトームタンパク質ライブラリー(human microbiome metasecretome protein library)をスクリーニングすることによって、タンパク質「3166」を含む10種類のIL-10分泌促進物質タンパク質が同定されたことを示している。これらの微生物叢タンパク質は、ヒト免疫細胞からのIL-10放出を誘導する。
【0218】
(実施例2)
選択されたIL-10誘導微生物叢タンパク質の用量反応
微生物叢タンパク質ID3166 (配列番号2); ID2661; ID5682;及びID5138を選択した。これらのタンパク質は、サイズ14、15.5、6、及び4kDaにそれぞれ対応する、121 (ID3166)、144 (ID2661)、58 (ID5682)、及び44 (ID5138)アミノ酸をそれぞれ含有する。
【0219】
試験の前に、タンパク質を精製した。それを考慮すると、精製タンパク質に存在する残留汚染物質によって誘発されるバックグラウンドは極めて低いため、PBMCのCD14枯渇は必要なかった。それ故に、精製タンパク質を特徴付けるための実施例2の細胞アッセイを全PBMCに関して行った。
【0220】
選択したタンパク質を、0.5、0.25、0.1及び0.025μMの濃度(最終濃度)でPBMCに関して試験した。細胞を384ウェルプレートに72,000細胞/ウェル、最終容量60μlで播種し、37℃、加湿5%CO2雰囲気中、精製タンパク質(10%vol/vol)又は相対対照(陽性及び陰性)のどちらかで24時間刺激した。試料は、少なくとも2名の異なるPBMCドナーに関して2回試験した。希釈物はすべてPBSで作製した。
【0221】
基本的には上記に記載のように、IL-10の分泌をAlphaLISAによって測定し、PBS (陰性対照)及び10μg/mlのPHA (陽性対照)のIL-10の分泌と比較した。
【0222】
選択した微生物叢タンパク質の異なる用量でのヒトPBMCからのIL-10分泌に関するAlphaLISAの結果を図2に示す。データは、PBMCからのIL-10分泌を誘導する上で、テストしたタンパク質すべてがPHA (陽性対照)と同じくらい有効(ID5138)、又はPHAより更に有効(ID3166; ID2661;及びID5682)であることを示している。更に、微生物叢タンパク質ID3166は、テストした最も低い用量でさえ極めて高い有効性を示す。
【0223】
(実施例3)
微生物叢タンパク質ID3166のIL-10誘導断片のインビトロ特徴付け
微生物叢タンパク質ID3166 (「NAT_29」;配列番号1と呼ばれる)の28のアミノ酸断片を、そのIL-10誘導/増強能力に関して調べた。NAT_29配列(配列番号1)は2個のシステイン(C7及びC23)を特徴とし、いかなる理論にも縛られるものではないが、本発明者等は、NAT_29配列がヒトホルモンのクラスと類似しうるループを形成すると考える。
【0224】
NAT_29のIL-10誘導/増強能力を調べるために、NAT_29の異なる用量の存在下のヒト免疫細胞のインビトロIL-10分泌をテストした。簡単には、ヒトCD14+ 単球を、健康なヒトボランティア由来の末梢血単核細胞(PBMC)から、SepMate(商標)-50 IVDチューブ(Stemcell社、参照番号85460)を使用して密度勾配遠心分離によって単離した。得られたPBMCをダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Sigma社、D88537)で3回洗浄し、赤血球溶解緩衝液1×(Miltenyi Biotec社、130-094-183)中、室温で10分間溶解した。細胞をMACS緩衝液(Miltenyi Biotec社、130-091-221)で洗浄し、トリパンブルー色素排除法を使用してカウントした。製造者のプロトコールに従って、抗ヒトCD14マイクロビーズ(Miltenyi Biotec社、130-050-201)を使用してCD14+ 単球を保管した。陽性CD14+ 画分を回収し、10%FBS及び1×抗生物質溶液を補充したIMDM培地(Gibco社、12440-046)に、384ウェルプレートの1ウェルあたり2×104細胞で播種した。
【0225】
単球由来樹状細胞(MoDC)はCD14+ 細胞の分化に由来し、選択的選別後に得た。CD14+ 細胞を、20ng/mLのヒトIL4 (Miltenyi Biotec社、130-093-921)及び20ng/mLのヒトGM-CSF (Miltenyi Biotec社、130-093-865)を補充した完全IMDM培地で1.5×106細胞/mLの密度で7日間培養した。MoDCを、IMDM培地に384ウェルプレートの1ウェルあたり1.2×104細胞で播種した。
【0226】
単球又はMoDCを、NAT_29の様々な濃度(1~1000nM)で刺激し、大腸菌O111:B4 (InvivoGen社、tlrl-eblps)由来のLPS 100ng/mLで同時刺激し、5%CO2/37℃で24時間、加湿CO2インキュベーターに入れた。IL-10分泌を、24時間時点で供給業者のプロトコールに従って細胞上清でAlphaLISA(登録商標)によって測定し、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer社)で読み取った。
【0227】
結果を図3に示す(A: MoDC; B:単球)。結果は、NAT_29 (配列番号1)のIL-10分泌促進物質活性を実証するものである。NAT_29を0.1~1000nMの用量範囲内で試験し、最も高いIL-10レベルを、試験したNAT_29の最も高い濃度で両方の細胞タイプにおいて測定したが、かなり低い濃度のNAT_29においてさえ、IL-10分泌促進物質活性を依然として観察することができる。このアッセイでは、単球はMoDCよりNAT_29の作用に感受性であるようであった。この理由のために、NAT_29の更なるインビトロ特徴付けを単球に関して行った。
【0228】
(実施例4)
NAT_29はインビトロで抗炎症特性を有する
NAT_29 (配列番号1)の抗炎症能力を確かめるために、IL-10並びに主な炎症促進性サイトカインTNF-α及びIL-6の同時分泌を試験する動態研究を行った。この目的のために、単球を実施例3に記載のように得、1μM NAT_29ポリペプチド(配列番号1)で刺激し、大腸菌O111:B4 (InvivoGen社、tlrl-eblps)由来のLPS 10ng/mLで同時刺激し、5%CO2/37℃で72時間、加湿CO2インキュベーターに入れた。IL-10、TNF-a、及びIL-6分泌を、AlphaLISA(登録商標)によって細胞上清で供給業者のプロトコールに従って5、10、24、48及び72時間時点で測定し(Perkin社、参照番号AL218F、AL208F、AL223F)、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer社)で読み取った。
【0229】
結果を図4に示す(A: IL-10; B: TNF-α; C: IL-6)。この動態研究は、NAT_29 (配列番号1)のIL-10分泌促進物質活性を裏付け、24時間時点でIL-10分泌のピークを示し、LPSに対して2倍に達した(図4A)。IL-10分泌は、実験の終了まで(72時間)一定のままであった(1,5倍)。
【0230】
それとは対照的に、主な炎症促進性サイトカインTNF-α及びIL-6の有意な分泌は実験を通して測定されなかった(図4B~C)。全体として、これらのデータは、NAT_29ポリペプチドによって誘導されたIL-10分泌vs炎症促進性サイトカインの分泌の正のバランスを実証するものである。
【0231】
(実施例5)
NAT_29の様々な変異はIL-10分泌を消失させない
NAT_29の種々の配列変異の影響を調べるために、6名のドナーからの単球を実施例3に記載のように得、1μM NAT_29ポリペプチド(配列番号1)又は8つの変異を含有するその配列バリアント(NAT_38; 配列番号9)で刺激し、大腸菌O111:B4 (InvivoGen社、tlrl-eblps)由来の100ng/mL LPS (NAT_38対照)で同時刺激し、5%CO2/37℃で24時間、加湿CO2インキュベーターに入れた。IL-10分泌を、AlphaLISA(登録商標)によって細胞上清で供給業者のプロトコールに従って24時間時点で測定し、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer社)で読み取った。
【0232】
NAT_29 (配列番号1)との比較のためにNAT_29配列と8つのアミノ酸位置が異なるポリペプチドを選択した(NAT_38; 配列番号9)。すなわち、配列番号9では
(i)配列番号1のI10が欠失され、
(ii)配列番号1のD13がPと置換され(D13P)、
(iii)Qが配列番号1のR14とG15の間に付加され、
(iv)配列番号1のT16がYと置換され(T16Y)、
(v)配列番号1のK17がQと置換され(K17Q)、
(vi)配列番号1のS22がGと置換され(S22G)、
(vii)Iが配列番号1のF25とY26の間に付加され、及び
(viii)配列番号1のP28が欠失されている。
【0233】
これらの違いを、以下の配列比較に図示する:
【0234】
【化3】
【0235】
結果を図5に示す(A:様々な変異(NAT_38); B: C末端トランケーション(NAT_31.1、NAT_31.2及びNAT_31.3))。これらのデータは、NAT_29 (配列番号1)の配列に導入された様々な変異にもかかわらず、ポリペプチドNAT_38 (配列番号9)では、IL-10分泌促進物質活性が維持されたことを示している。したがって、IL-10分泌促進物質活性はNAT_29 (配列番号1)と全く同じ配列に厳密には依存せず、様々な変異を許容する。
【0236】
(実施例6)
NAT_29はエクスビボで抗炎症特性を有し、炎症後の上皮細胞の完全性を高める
次に、ヒト回腸切除物で行ったエクスビボ実験を使用して、NAT_29の役割を炎症性疾患の文脈で評価した。この目的のために、外植片をウッシングチャンバーに取り付けて、腸内に天然に存在するように側底側から頂端側を分離した。組織をNAT_29 (配列番号1)と1時間プレインキュベートした後、生きた大腸菌LF82で4時間、炎症をトリガーした。
【0237】
細菌の調製:
アッセイの前日、LBブロス(Sigma Aldrich社、L3522)に、-80℃で維持したグリセロールストックからの細菌(大腸菌LF82-gfp)を滅菌ループを使用して接種した。チューブを一晩、37℃で振盪せずにインキュベートした。翌日、細菌細胞密度の推定を可能にする分光光度計(Amersham Ultrospec 10)を使用して、細菌懸濁液の光学密度を600nMで読み取り、以下に説明するようにヒト外植片に細菌を添加した。
【0238】
ヒト回腸外植片の調製:
ヒト組織試料は、手術を受ける患者から患者の同意を得て入手した。外科医によって同定された肉眼的には罹患していない領域から試料を採取した。切除後、1%ストレプトマイシン/ペニシリン溶液(Gibco社、15140-122)及び50μg/mLゲンタマイシン(Thermofisher社、Gentamicin Hyclone、SV30080-03)を含有する氷冷酸素化DMEM培地(Gibco社、61965-026)に検体を入れた。腸切除物を広範に洗浄し、双眼顕微鏡下で鉗子を使用して血管及び結合組織から取り除いた。筋及び神経叢を除去し、上皮層のみを保持した。次いで、手術用パンチ(直径1cm2)を使用して清浄切除物から腸外植片を単離した。抗生物質を含まない大容量のDMEM培地で腸外植片を3回洗浄した後、ウッシングチャンバーに取り付け(Harward apparatus社、66-0015)、外植片の頂端側/管腔又は基底外側/漿膜側のいずれかへのアクセスを可能にした。ウッシングチャンバーの両方の区画に抗生物質を含まないDMEM培地1mLを充填した後、NAT_29及び細菌に曝露した。
【0239】
画分及び細菌へのヒト回腸外植片の曝露:
ヒト回腸外植片は未処理のままにするか、又は10nM若しくは1μMのNAT_29で37℃、1時間前処理した(ウッシングチャンバーの頂端/粘膜区画)。CO2インキュベーター(Panasonic社、モデルMCO-19AICUV-PE)で37℃、1時間のプレインキュベーション時間後、ウッシングチャンバーの頂端区画にLF82-gfp細菌を1×109細菌/mLで10nM又は1μMのNAT_29と一緒に添加した。
【0240】
3つのパラメーターを評価して、NAT_29の抗炎症能力をエクスビボモデルで評価した:
1)ヒト外植片の完全性/堅固さの尺度である経上皮電気抵抗(TER);
2)組織像;
3)IL-8 分泌(Elisaにより定量化)。
【0241】
経上皮電気抵抗(TER)アッセイ
TERアッセイは、上皮細胞層の構造的及び機能的完全性に対する影響を測定するための周知の方法であり、例えば、Srinivasan等、2015、J Lab Autom、20: 107~126頁に記載されている。したがって、インキュベーション中のヒト外植片の完全性/堅固さを、Millicell-ERS (Electrical Resistance System) Voltohmmeter (Millipore社、MERS00002)を使用して経上皮電気抵抗(TER)測定により評価した。IL-8測定のために、基底外側からの上清のアリコートをT0及びT4時間時点で回収した。
【0242】
IL-8分析:
IL-8レベルをELISA (BD Biosciences社、555244)によって測定した。ELISAはHRP基質Sigma Fast OPD (Sigma-Aldrich社、P9187-50SET)を使用して可視化した。吸光度はマイクロプレートリーダー(BioTek社、Synergy MX、モデルSMATLD)を使用して490nmで測定した。
【0243】
顕微鏡検査(H&E染色)
実験の最後に、ヒト外植片をウッシングチャンバーから除去し、PBS (Gibco社、14040-091) 2mLで6回洗浄し、PBS PFA 4%溶液(Merck社、ZC906196547)を使用して4℃で24時間固定した。翌日、すべてのパンチをPBS 1mlで2回洗浄した。次いで、パンチを2つに切断し、封入培地(TFM-EMS、72592)に横位で含めて陰窩-絨毛軸で切断できるようにした。組織すべてを含めるために、各切片が次の切片から100μm離れている、1外植片あたり5μm厚の4つの切片を得た(cryostat Leica CM3050)。次いで、外植片をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色プロトコールを使用して染色した。
【0244】
手順は次の通りであった:
- ヘマトキシリン(Sigma-Aldrich社、HS16-500mL)でのインキュベーション8分
- 水道水でのインキュベーション2分(染色の展開を可能にするため)
- エオシン(Sigma-Aldrich社、318906-500)でのインキュベーション1分
- 水道水でのインキュベーション1分
- 70%エタノールでのインキュベーション2分
- 95%エタノールでのインキュベーション2分
- 100%エタノールでのインキュベーション2分
- キシレンでのインキュベーション15分(2回行った)
- Eukitt(組織封入剤)を使用してカバースリップスライドでマウントする
- 一晩乾燥させる。
【0245】
結果を図6に示す(A: TERアッセイ; B:組織像; C: IL-8分泌)。図6Aで観察されるように、大腸菌LF82単独で4時間インキュベートした外植片は、TERの著しい減少(52%低下)を示した。1000nM又は10nMどちらかのNAT_29 (配列番号1)との組織のプレインキュベーションは、TER値によって観察される組織の分解を同様に防いだ(32%低下)。これは、大腸菌LF82によってトリガーされる炎症がない対照条件と類似していた(24%低下)。
【0246】
次いで、図6Bに示すように、TER結果を組織学的分析によって確かめた。H&E染色の観察(図6B)は、T=0で腸粘膜は完全に均一であり、落屑はなかったことを示した。組織の非炎症性ベースライン状態を反映して、粘膜の厚さは正常であった。細菌感染がないT=4時間の対照は、特に陰窩でより薄い粘膜が観察され、チャンバー構築及び37℃、4時間のインキュベーション中に組織が経験したストレスをおそらく原因とする組織の前炎症性段階を示した。LF82細菌の存在下、4時間のインキュベーションは、炎症状態の進展を誘導し、粘膜はその頂端極及び絨毛のレベルでも完全に落屑していた。1000nM NAT_29との外植片プレインキュベーションは、LF82誘導分解に対する保護効果を誘導した。この条件下、粘膜及び粘膜下層は両方とも、同じ時点(T=4h)で対照と依然として類似していた。
【0247】
ウッシングチャンバーの基底外側から回収した培地からの炎症促進性サイトカインIL-8の定量化は、NAT_29の全体的な抗炎症能力を裏付けた。図6Cに示されるように、LF82とのインキュベーション後にIL-8は4倍の増加を示した。1000又は10nMどちらかのNAT-29による処理は、IL-8分泌を完全に消失させた。
【0248】
要約すると、これらのデータは、炎症性疾患のエクスビボモデルにおける、上皮細胞層の構造的及び機能的完全性に対するNAT_29の抗炎症能力及び有利な効果を実証するものである。
【0249】
(実施例7)
NAT_29ポリペプチドはインビボで抗炎症特性を有する
次に、NAT_29 ポリペプチド(配列番号1)の抗炎症特性を、2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)誘導大腸炎モデルで評価した。ラットでTNBSによって誘導された大腸炎のモデルは、炎症性腸疾患(IBD)における薬物の抗炎症特性を評価するためにバリデートされた動物モデルである。TNBSは深い炎症を誘導し、結腸の壊死(腸壁の全層性破壊)をもたらす。このモデルは、IBDにおいて十分に特徴付けられ、信頼性が高く、再現性があり、規制当局によって承認されている(例えば、その全体が本明細書に組み込まれる、Antoniou, E.等(2016). The TNBS-induced 大腸炎 animal model: An overview. Annals of medicine and surgery、第11巻、9~15頁に記載されているように)。
【0250】
この目的のために、Sprague-DawleyラットにおけるTNBS (80mg/kgで直腸内投与)によって誘導された急性大腸炎のモデルで、NAT_29 ポリペプチド(配列番号1)を2つの異なる濃度(1及び0.1μM)で直腸内点滴注入によって投与した。Wallaceのバリデートされたスコアを使用して抗炎症効果を肉眼的レベルで評価し、同様に直腸内点滴注入によって投与した陽性対照(5-ASA)によって誘導された抗炎症効果と比較した。
【0251】
炎症の消炎も結腸リポカリン-2 (Lcn-2)定量化を使用して評価した。好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)としても知られるリポカリン-2は、IBDの臨床的に意味のあるバイオマーカーと見なされている。リポカリン2は正常な組織で発現され、炎症が生じると、IBD患者由来の結腸上皮組織等でのように著しく増加する。大腸炎の齧歯類モデルでは、Lcn-2のレベル上昇と大腸炎重症度の間に強い関連が示されている。
【0252】
A.材料及び方法
オスのSprague-Dawleyラット(体重:約100~150g)を無作為及び盲検的に1ケージあたり4匹に割り当て、1週間馴化させた。ラットはJanvier Laboratoires社、Le Genest Saint-Isle、フランスから入手した。
【0253】
試験産物を-5日目、すなわち大腸炎誘導(D0)の5日前に開始し、D4の安楽死まで、合計9日間の処置日数に相当する予防及び治療モードで、直腸内点滴注入(500μl)により1日1回投与した。
【0254】
大腸炎誘導のために、12.5mg/kgのキシラジン/25mg/kgのケタミンの皮下注射を使用して、Sprague Dawleyラットに2時間麻酔した。カテーテルを使用して肛門から8cmのところに250μL TNBS (40%EtOH中80mg/kg)を直腸内注射して、大腸炎を誘導した。80mg/kgのTNBS溶液は、TNBS溶液調製前に記録するラットの平均体重に基づき調製した。
【0255】
以下のTable 2 (表2)に示す5つの動物群を本研究に使用した。
【0256】
【表2】
【0257】
NAT_29をPBSに可溶化し、ラットの結腸-直腸含量の最大容量を3.5mlと仮定して、動物処置のための活性濃度を算出した。ラット結腸で0.1μMの最終濃度を達成するために、NAT_29の0.7μM溶液500μlを直腸内投与した。ラット結腸で1μMの最終濃度を達成するために、NAT_29の7μM溶液500μlを直腸内投与した。
【0258】
Pentasa(登録商標)を抗炎症性化合物の陽性対照として、30mMの最終濃度で使用した。大腸炎の強さの評価を4日後に行った。
【0259】
大腸炎の強さを評価するために、TNBS投与(D0)の4日後(D4)に動物を屠殺した。遠位結腸から試料を回収し、肉眼的評価及びリポカリン定量化に使用した。
【0260】
大腸炎の肉眼的及び組織学的評価は、スコアをバリデートするために2名のオペレーターによって独立に行われた。各ラットの結腸を調べて、Wallace基準に従って肉眼的病変を評価した。Wallaceスコアは、肉眼的病変を0~10のスケールに等級付ける。このスコアは、以下のTable 3 (表3)に示すように充血、腸の肥厚、及び潰瘍の程度等の炎症を反映する特徴に基づく。
【0261】
【表3】
【0262】
好中球浸潤のマーカーであるリポカリン-2 (Lcn-2) (多形核好中球一次顆粒に含有される酵素)のレベルを、安楽死時に取り除いた遠位結腸片でELISA (Clinisciences社、ラット好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンNGAL 参照番号DLR-NGAL-Ra-96T)によって定量化した。セラミックビーズ(1.4及び2.8mm) (Bertin社、フランス)を使用してPrecellysホモジナイザーで、プロテアーゼ阻害剤を含有するTris-HCl緩衝液(Sigma-Aldrich社)中で結腸片をホモジナイズした(50mg/ml)。
【0263】
StatXactソフトウェアを使用する2つの独立した試料に関する並べ替え検定を使用して、すべての比較を解析した。比較はTNBS対照群に対して行った。p値が<0.05であるならば、差を統計的に有意と見なした。
【0264】
B.結果
TNBSによる大腸炎誘導の4日後に試験産物の抗炎症効果の評価を行った。この工程は、炎症のピークの終わりに相当する。試験産物の投与、又は大腸炎の誘導に関連する死亡は記録されず、それによって、炎症状態であっても連続8日間、活性産物を連日直腸投与することの安全性及び無害性を示した。
【0265】
慢性炎症及び病変の強さを、Table 3 (表3)に記載れているバリデートされた Wallace基準に従って肉眼的レベルで評価した。結果を図7に示す。結果は、最終濃度1μMでのNAT_29の直腸内投与が、Wallaceスコアで測定した場合の炎症性パラメーターに対する統計的保護効果を誘発することを示している。保護のレベルは、参照化合物5-ASA (Pentasa)で観察されたものと類似している。最終濃度0.1μMでのNAT_29による処置は、保護効果も誘発した(有意ではないが)。
【0266】
慢性炎症の強さを、結腸組織1mlあたりのリポカリン定量化(ELISA)を使用して評価した。リポカリンレベルは、主に好中球によって分泌される疾患重症度のバイオマーカーと見なされ、IBDに罹患しているヒトと同じように大腸炎の動物モデルからの血清、糞便試料、及び結腸試料で調節される。結果を図8に示す。結果は、最終濃度1μMでのNAT_29の直腸内投与が、結腸におけるリポカリンレベルの有意な減少と関連することを示している。保護のレベルは、参照化合物5-ASA (Pentasa)で観察されたものと類似している。最終濃度0.1μMでのNAT_29による処置は、リポカリン-2レベルのわずかな減少と関連する(有意ではないが)。
配列及び配列番号の表(配列表):
【0267】
【表4】
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
【配列表】
2024528122000001.xml
【国際調査報告】